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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】グラフト化ポリエチレン
(51)【国際特許分類】
   C08F 255/02 20060101AFI20250128BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20250128BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20250128BHJP
   C08F 20/06 20060101ALI20250128BHJP
   C08F 287/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C08F255/02
C08L51/06
C08K5/098
C08F20/06
C08F287/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532306
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 CN2021137810
(87)【国際公開番号】W WO2023108408
(87)【国際公開日】2023-06-22
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【弁理士】
【氏名又は名称】潮 太朗
(72)【発明者】
【氏名】バウィスカル、サントーシュ エス.
(72)【発明者】
【氏名】エノキダ、ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】スン、シャオフェイ
(72)【発明者】
【氏名】マンロ、ジェフリー シー.
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ボー
(72)【発明者】
【氏名】モリス、バリー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】パラドカル、ラジェシュ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ウェインホールド、ジェフリー ディ.
(72)【発明者】
【氏名】エワート、ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ポール、モウ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BN031
4J002BN071
4J002BN111
4J002BN121
4J002BP021
4J002EG046
4J002EZ046
4J002FD206
4J002GF00
4J002GG02
4J026AA11
4J026AA12
4J026AA38
4J026AA43
4J026AA45
4J026AC04
4J026AC07
4J026AC16
4J026AC36
4J026BA25
4J026BB01
4J026DB05
4J026DB07
4J026DB29
4J026GA01
4J026HA03
4J026HA27
4J026HA39
4J026HB04
4J026HB39
4J026HB48
4J100AK08P
4J100AK26P
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA09
4J100FA02
4J100FA18
4J100HE17
(57)【要約】
グラフト化ポリエチレンの実施形態は、少なくとも0.75g/10分のメルトインデックス(190℃、2.16kgで)を有するポリエチレンと、0.5重量%~10重量%の、ポリエチレン上に少なくとも部分的にグラフトされた金属アクリレート又は金属メタクリレートと、0.1重量%~10重量%の1つ以上の金属カルボキシレートと、の反応生成物を含み、当該金属カルボキシレートはいかなる末端不飽和も有しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフト化ポリエチレンであって、
少なくとも0.75g/10分のメルトインデックス(190℃、2.16kgで)を有するポリエチレンと、
0.5重量%~10重量%の、前記ポリエチレン上に少なくとも部分的にグラフトされた金属アクリレート又は金属メタクリレートと、
0.1重量%~10重量%の、いかなる末端不飽和も有しない1つ以上の金属カルボキシレートと、
の反応生成物を含む、グラフト化ポリエチレン。
【請求項2】
前記金属アクリレート又は金属メタクリレートの金属が、亜鉛、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項3】
前記グラフト化ポリエチレンが、ジアクリル酸亜鉛を含む、請求項1又は2に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項4】
前記グラフト化ポリエチレンが、アクリル酸ナトリウムを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項5】
前記金属カルボキシレートが、少なくとも8個の炭素の炭化水素鎖を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項6】
前記金属カルボキシレートが、金属ステアレート、金属ラウレート、金属オクトエート、ジブチルスズジラウレート、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項7】
過酸化物を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項8】
前記ポリエチレンが、高密度ポリエチレン(HDPE)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項9】
前記ポリエチレンが、オレフィンブロックコポリマー(OBC)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項10】
前記ポリエチレンが、極性エチレンコポリマーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のグラフト化ポリエチレンを含む、物品。
【請求項12】
前記物品が、押出単層若しくは多層キャストフィルム若しくはインフレーションフィルム、押出繊維、成形若しくは押出発泡体、又は熱成形若しくは吹き込み成形から生成された成形物品である、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載のグラフト化ポリエチレンを含む、請求項11又は12に記載の物品。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載のグラフト化ポリエチレンを生成するプロセスであって、
バッチ又は連続ミキサーを使用して、前記ポリエチレン、前記金属アクリレート又は金属メタクリレート、及び前記金属カルボキシレートをブレンドして、前記グラフト化ポリエチレンを生成することを含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、一般に、ポリエチレン、具体的には、ポリエチレン上に少なくとも部分的にグラフトされた金属アクリレート又は金属メタクリレートと、いかなる末端不飽和も有しない金属カルボキシレートと、から生成される、グラフト化ポリエチレンに関する。
【背景技術】
【0002】
金属アクリレートのポリエチレンへのグラフトは、特にアイオノマーのグラフトのための従来既知のプロセスである。これは、加工並びに機械的、接着、及び/又は熱的特性にとって有益である。これらの理由から、可撓性包装などの様々な用途における改善されたグラフトが絶えず必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の実施形態は、この必要性を満たし、分散剤及び/又は触媒として作用し得る金属カルボキシレートと組み合わせて金属アクリレート又は金属メタクリレートをグラフトしながら、優れたグラフトを作製することができる。金属アクリレート又は金属メタクリレートと金属カルボキシレートとのこの相乗的組み合わせは、金属アクリレートを単独で使用する場合と比較してより大きな粘度変化をもたらし、所与の粘度変化に対して使用される金属アクリレートをより少なくすることができ、それによって反応の効率を増大させる。
【0004】
ベース非グラフト化樹脂と比較して粘度が増加することは、イオノマー結合の形成の指標である。イオン性架橋を導入することによって、改善された溶融強度(高いゼロせん断粘度)、耐温度性、耐クリープ性、接着性、耐摩耗性などの望ましいレオロジー変化をポリマーに導入することができる。
【0005】
一実施形態によれば、グラフト化ポリエチレンは、少なくとも0.75g/10分のメルトインデックス(190℃、2.16kgで)を有するポリエチレンと、0.5重量%~10重量%の、ポリエチレン上に少なくとも部分的にグラフトされた金属アクリレート又は金属メタクリレートと、0.1重量%~10重量%の1つ以上の金属カルボキシレートと、の反応生成物を含み、当該金属カルボキシレートはいかなる末端不飽和も有しない。
【0006】
追加の特徴及び利益は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、一部は、その説明から当業者に容易に明らかになるか、又は以下の「発明を実施するための形態」、及び「特許請求の範囲」を含む本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0007】
上記の全般的な説明及び下記の詳細な説明の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質及び特徴を理解するための概要又は枠組みの提供を意図していることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本出願の特定の実施形態を説明する。しかしながら、本開示は、異なる形態で具体化されてもよく、本開示に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が、徹底的かつ完全なものとなり、本主題の範囲を当業者に十分に伝えるものとなるように提供される。
【0009】
定義
「ポリマー」という用語は、モノマー(同じ種類か又は異なる種類かにかかわらず)を重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、通常、1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる「ホモポリマー」という用語、並びに2つ以上の異なるモノマーから調製されたポリマーを指す「コポリマー」を包含する。本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称は、コポリマーと、ターポリマーなどの2種を超える異なる種類のモノマーから調製されたポリマーと、を含む。
【0010】
「ポリエチレン」又は「エチレン系ポリマー」とは、50重量%を超えるエチレンモノマーに由来する単位を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマー又はコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。コモノマーは、オレフィンコモノマー並びに極性コモノマーを含み得る。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、極低密度ポリエチレン(ULDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度樹脂及び実質的に直鎖状低密度樹脂の両方を含む、シングルサイト触媒による直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、並びに高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
「LDPE」という用語は、「高圧エチレンポリマー」又は「高分岐ポリエチレン」と称されることもあり、ポリマーが、過酸化物などのフリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)を上回る圧力で、オートクレーブ又は管状反応器内において、部分的又は完全にホモ重合又は共重合されることを意味すると定義される(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,599,392号を参照)。LDPE樹脂は、典型的には、0.916グラム/立方センチメートル(g/cc)~0.935g/ccの範囲の密度を有する。
【0012】
「LLDPE」という用語は、チーグラー・ナッタ触媒系を使用して作製された樹脂、並びにビスメタロセン触媒(「m-LLDPE」と称されることもある)及び拘束幾何触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製された樹脂、並びにポストメタロセン分子触媒を使用して作製された樹脂を含む。LLDPEには、線状の、実質的に線状の、又は不均一な、ポリエチレンコポリマー又はホモポリマーが含まれる。LLDPEは、LDPEよりも少ない長鎖分岐を含有し、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第5,582,923号、及び同第5,733,155号に更に定義されている、実質的に直鎖状エチレンポリマー;米国特許第3,645,992号のものなどの、均質に分岐した直鎖状エチレンポリマー組成物;米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されるものなどの不均質分岐エチレンポリマー;及び/又はこれらのブレンド(米国特許第3,914,342号又は同第5,854,045号に開示されているものなど)が挙げられる。LLDPE樹脂は、当該技術分野において既知の任意の種類の反応器又は反応器構成を使用して、気相、溶液相、若しくはスラリー重合、又はそれらの任意の組み合わせを介して作製され得る。
【0013】
「MDPE」という用語は、0.926~0.940g/ccの密度を有するポリエチレンを指す。「MDPE」は、典型的には、クロム若しくはチーグラー・ナッタ触媒を使用して、又はビス-メタロセン触媒及び拘束幾何触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製される。
【0014】
「HDPE」という用語は、約0.940g/ccを超える密度を有するポリエチレンを指し、それらは、一般に、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又はこれらに限定されないが、ビスメタロセン触媒及び拘束ジオメトリ触媒を含むシングルサイト触媒で調製される。
【0015】
「オレフィンブロックコポリマー」又は「OBC」という用語は、エチレン/アルファ-オレフィンマルチブロックインターポリマーを指し、2つ以上(好ましくは3つ以上)の重合モノマー単位の複数のブロック又はセグメント(当該ブロック又はセグメントは化学的又は物理的特性が異なる)を特徴とする、重合形態のエチレン及び1つ以上の共重合性アルファ-オレフィンコモノマーを含む。具体的には、「オレフィンブロックコポリマー」という用語は、線状に結合した2つ以上(好ましくは3つ以上)の化学的に異なる領域又はセグメント(「ブロック」と称される)を含むポリマー、すなわち、ペンダント又はグラフト化ではなく、重合した官能基に対して端と端とが結合(共有結合)した化学的に異なる単位を含むポリマーを指す。ブロックは、そこに組み込まれるコモノマーの量若しくは種類、密度、結晶化度の量、結晶化度の種類(例えば、ポリエチレン対ポリプロピレン)、そのような組成のポリマーに起因する結晶のサイズ、立体規則性の種類若しくは程度(アイソタクチック若しくはシンジオタクチック)、領域規則性若しくは領域不規則性、長鎖分岐若しくは超分岐を含む分岐の量、均一性、及び/又は任意の他の化学的若しくは物理的特性において異なる。ブロックコポリマーは、例えば、触媒系と組み合わせたシャトリング剤の使用効果に基づいて、ポリマー多分散性(PDI又はMw/Mn)及びブロック長分布の両方の独特の分布を特徴とする。本開示のオレフィンブロックコポリマーの非限定的な例及びそれを調製するプロセスは、米国特許第7,858,706(B2)号、同第8,198,374(B2)号、同第8,318,864(B2)号、同第8,609,779(B2)号、同第8,710,143(B2)号、同第8,785,551(B2)号、及び同第9,243,090(B2)号に開示されており、これらは全てその全体が参照により本明細書に組み入れられる。本開示で使用するとき、「ブレンド」又は「ポリマーブレンド」という用語は、使用するとき、2つ以上のポリマーの混合物を指す。ブレンドは、混和性であってもなくても(分子レベルで相分離していても)よい。ブレンドは、相分離していても、相分離していなくてもよい。ブレンドは、透過電子分光法、光散乱、x線散乱、及び当該技術分野において既知の他の方法から決定される1つ以上のドメイン構成を含有してもよいか、又は含有しなくてもよい。ブレンドは、マクロレベル(例えば、樹脂の溶融ブレンド若しくは調合)又はミクロレベル(例えば、同じ反応器内での同時形成)で2つ以上のポリマーを物理的に混合することによって調製され得る。溶融相中で、又は一般的な溶媒中での溶液ブレンドを使用してブレンドを調製することが可能である。
【0016】
本開示で使用される場合、「アイオノマー」という用語は、電気的に中性の繰り返し単位と、ペンダント部分としてポリマー骨格に共有結合したイオン化単位の画分との両方の繰り返し単位を含むポリマーを指す。
【0017】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語は、あらゆる追加の構成成分、工程、又は手順の存在を、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。疑義を避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求される全ての組成物は、特に反対の記載がない限り、ポリマーであるか否かにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる以降の記述の範囲から任意の他の成分、工程、又は手順を排除する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に描写又は列記されていないあらゆる構成成分、工程、又は手順を排除する。
【0018】
本開示の実施形態は、少なくとも0.75g/10分のメルトインデックス(190℃、2.16kgで)を有するポリエチレンと、0.5重量%~10重量%の、ポリエチレン上に少なくとも部分的にグラフトされた金属アクリレート又は金属メタクリレートと、0.1重量%~10重量%の1つ以上の金属カルボキシレートとを含み、当該金属カルボキシレートはいかなる末端不飽和も有しない、グラフト化ポリエチレンを目的とする。
【0019】
金属アクリレート
様々な金属が、本開示の金属アクリレート又は金属メタクリレートに適していると考えられる。例えば、金属アクリレート又は金属メタクリレートの金属は、亜鉛、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、リチウム、又はそれらの組み合わせを含んでいてよい。更なる実施形態において、金属アクリレートは、ジアクリル酸亜鉛又はアクリル酸ナトリウムを含んでいてよい。一実施形態において、金属アクリレート又は金属メタクリレートはその場で生成されてもよい。一例として、アクリル酸及び酸化亜鉛を使用してジアクリル酸亜鉛を生成することができる、又はメタクリル酸及び酸化亜鉛を使用してジメタクリル酸亜鉛をその場で生成することができる。
【0020】
1つ以上の実施形態において、ポリエチレン及びグラフト化アクリレートの総重量に基づいて、0.5重量%~10重量%、2~8重量%、又は2~5重量%の金属アクリレート又は金属メタクリレートが、ポリエチレンにグラフトされ得る。
【0021】
金属カルボキシレート
同様に、いかなる末端不飽和も有しない金属カルボキシレートは、亜鉛、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、リチウム、又はそれらの組み合わせなどの様々な好適な金属を含み得る。金属カルボキシレートは、少なくとも8個の炭素、少なくとも12個の炭素、少なくとも16個の炭素、又は少なくとも18個の炭素の炭化水素鎖を含み得る。いくつかの実施形態において、金属カルボキシレートは、金属ステアレート、金属ラウレート、金属オクトエート、又はそれらの組み合わせを含む。更なる実施形態において、金属カルボキシレートは、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ジブチルスズジラウレート、又はそれらの組み合わせを含む。
【0022】
1つ以上の実施形態において、0.1重量%~10重量%の1つ以上の金属カルボキシレート又は1~5重量%の金属カルボキシレートを使用してよい。
【0023】
理論に束縛されるものではないが、金属アクリレートは、ポリエチレンのためのグラフト剤であり、金属カルボキシレートは、アクリレートのポリエチレンへのグラフトを改善する分散剤及び/又は触媒である。
【0024】
ポリエチレンへのグラフトには、フリーラジカルを生成するフリーラジカル開始剤を利用してもよい。グラフト重合は、有機過酸化物(例えば、アルキル過酸化物)又はアゾ化合物などのフリーラジカル発生剤の存在下で実施され得る。超音波若しくは紫外線照射、又は任意の高エネルギー放射線が、フリーラジカルを発生させるために使用され得る。アクリレートは、代替的に又は追加的に、熱グラフト化を使用してポリオレフィンにグラフトされ得る。熱グラフトとは、押出機又は高せん断混合器を使用してせん断及び熱を使用して達成されるグラフト化を指し得る。
【0025】
本明細書において使用されるとき、フリーラジカル開始剤は、化学的及び/又は放射線手段によって発生したフリーラジカルを指す。特にアゾ含有化合物、カルボン酸ペルオキシ酸及びペルオキシ酸エステル、アルキルヒドロペルオキシド、並びにジアルキル及びジアシルペルオキシドを含む、分解してフリーラジカルを形成することによってグラフト反応を開始させることができる数種の化合物が存在する。これらの化合物及びそれらの特性の多くが記載されている(参考文献:J.Branderup,E.Immegut,E.Grulke,eds.「Polymer Handbook,」4th ed.,Wiley,New York,1999,Section II,pp.1-76.)。開始剤の分解により形成される種は、酸素系フリーラジカルであることが好ましい。開始剤は、カルボン酸ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ジアルキルペルオキシド、及びジアシルペルオキシドから選択されることがより好ましい。過酸化物開始剤のいずれか1つ、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート、ベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオクトエート、メチルエチルケトンペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ラウリルペルオキシド、及びtert-ブチルペルアセテート、t-ブチルアルファ-クミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジ-t-アミルペルオキシド、t-アミルペルオキシベンゾエート、l,l-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、アルファ,アルファ’-ビス(t-ブチルペルオキシ)-l,3-ジイソプロピルベンゼン、アルファ,アルファ’-ビス(t-ブチルペルオキシ)-l,4-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、及び2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシンなどの有機開始剤が好ましい。好適なアゾ化合物はアゾビスイソブチルニトライトである。
【0026】
ポリエチレン
様々な選択肢がポリエチレンに好適であると考えられる。例えば、ポリエチレンは、高密度ポリエチレン(HDPE)を含んでいてもよい。HDPEは、0.940g/cc~0.980g/cc、0.945g/cc~0.965g/cc、又は0.950g/cc~0.965g/ccの密度を有し得る。更に、HDPEは、ASTM D1238(2.16kg/190℃)に従って測定したときに、0.5~100g/10分、5~80g/10分、5~50g/10分、50~10g/10分、50~80g/10分、又は55~75g/10分のメルトインデックスを含み得る。
【0027】
上述したように、グラフトによってポリエチレンの粘度が増加するが、これは、0.1秒-1のせん断速度及び190℃におけるより高い粘度(V0.1)によって反映され得る。多くの場合、金属アクリレートと金属カルボキシレートとの相乗的組み合わせは、金属アクリレート単独によって生成されるHDPE上のグラフトと比較して、グラフト化HDPEのV0.1粘度を少なくとも2倍だけ少なくとも倍増させることができる。更に、「レオロジー比」とは、0.1秒-1のせん断速度及び190℃で測定された粘度と100秒-1及び190℃において測定された粘度との比を指し得る。グラフト後、HDPEは、25を超えるレオロジー比(V0.1/V100)を示し得る。
【0028】
更なる実施形態において、ポリエチレンは、オレフィンブロックコポリマー(OBC)を含む。OBCは、0.850g/cc~0.900g/cc、0.855g/cc~0.895g/cc、又は0.860g/cc~0.890g/ccの密度を有し得る。更に、OBCは、ASTM D1238(2.16kg/190℃)に従って測定したときに、0.5~50g/10分、1~30g/10分、2~25g/10分、又は4~20g/10分のメルトインデックスを含み得る。
【0029】
更に、金属アクリレートと金属カルボキシレートとの相乗的組み合わせは、金属アクリレート単独によって生成されるグラフトと比較して、グラフト化OBCのV0.1粘度を少なくとも3倍だけ少なくとも倍増させることができる。更に、OBCは、25を超えるレオロジー比(V0.1/V100)を示し得る。
【0030】
更なる実施形態では、ポリエチレンは、ポリオレフィンエラストマー(POE)を含む。本明細書で定義される場合、ポリオレフィンエラストマーは、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーであり、当該アルファ-オレフィンは、好ましくはC~C20脂肪族化合物、より好ましくはC~C10脂肪族化合物である。好ましいC~C10脂肪族アルファ-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-デセン、より好ましくは1-オクテンが挙げられる。「エチレン-アルファ-オレフィンインターポリマー」という用語は、重合形態で、エチレン及びアルファ-オレフィンを含むランダムなインターポリマーを指す。
【0031】
POEは、0.840g/cc~0.900g/cc、0.850g/cc~0.875g/cc、又は0.860g/cc~0.890g/ccの密度を有し得る。更に、POEは、ASTM D1238(190℃/2.16kg)に従って測定したときに、0.1~5.0g/10分、0.5~2.5g/10分、又は0.75~1.5g/10分のメルトインデックスを含み得る。更に、金属アクリレートと金属カルボキシレートとの相乗的組み合わせは、金属アクリレート単独によって生成されるグラフトと比較して、グラフト化POEのV0.1粘度を少なくとも3倍だけ少なくとも倍増させることができる。
【0032】
更に、ポリエチレンは、構造E/X/Y(式中、Eは、エチレンであり、Xは、α,β-不飽和C~Cカルボン酸、アルキルアクリレート、及び酢酸ビニルから選択される)を有する極性エチレンコポリマーを含んでいてもよい。Xは、0~40重量%、0.1~40重量%、又は1~25重量%の極性エチレンコポリマーを含み得る。「X」の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、当該ジカルボン酸のモノエステル、例えばマレイン酸水素メチル、フマル酸水素メチル、フマル酸水素エチル、及び無水マレイン酸を挙げることができる。
【0033】
E/X/Yエチレンインターポリマーの「Y」は、アルキルアクリレート(例えば、C~Cアルキルアクリレート)、α,β-不飽和C~Cカルボン酸、及び一酸化炭素を含む任意選択のコモノマーであってよい。アルキルアクリレートは、エチルアクリレート、メチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソ-ブチルアクリレート、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
一実施形態では、極性エチレンコポリマーは、エチレンアルキルアクリレートコポリマーを含む、すなわち、Xはアルキルアクリレートである。エチレンアルキルアクリレートコポリマーは、0.900g/cc~0.945g/cc、0.910g/cc~0.940g/cc、又は0.920g/cc~0.940g/ccの密度を有し得る。更に、エチレンアルキルアクリレートコポリマーは、ASTM D1238(2.16kg/190℃)に従って測定したときに、1.0~50g/10分、5~40g/10分、10~40g/10分、又は20~30g/10分のメルトインデックスを含み得る。1つ以上の実施形態では、エチレンアルキルアクリレートコポリマーは、1~40重量%のアルキルアクリレートモノマー、5~35重量%のアルキルアクリレートモノマー、10~30重量%のアルキルアクリレートモノマー、又は15~25重量%のアルキルアクリレートモノマーを含んでもよい。
【0035】
一実施形態では、極性エチレンコポリマーは、エチレンα,β-不飽和C~Cカルボン酸コポリマーを含む、すなわち、Xはα,β-不飽和C~Cカルボン酸である。エチレンα,β-不飽和C~Cカルボン酸コポリマーは、0.900g/cc~0.975g/cc、0.925g/cc~0.950g/cc、又は0.935~0.945g/ccの密度を有し得る。更に、エチレンα,β-不飽和C~Cカルボン酸コポリマーは、ASTM D1238(2.16kg/190℃)に従って測定したときに、1.0~100g/10分、20~80g/10分、30~75g/10分、又は50~70g/10分のメルトインデックスを含み得る。1つ以上の実施形態では、エチレンα,β-不飽和C~Cカルボン酸コポリマーは、1~40重量%のα,β-不飽和C~Cカルボン酸アクリレートモノマー、5~35重量%のα,β-不飽和C~Cカルボン酸アクリレートモノマー、10~30重量%のα,β-不飽和C~Cカルボン酸アクリレートモノマー、又は15~25重量%のα,β-不飽和C~Cカルボン酸アクリレートモノマーを含み得る。
【0036】
一実施形態では、極性エチレンコポリマーはアイオノマーを含み、当該アイオノマーは、金属カチオンによって少なくとも部分的に中和されたエチレンα,β-不飽和C~Cカルボン酸コポリマーである。典型的なカチオン供給源としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酸化亜鉛、酢酸亜鉛、水酸化マグネシウム、及び水酸化リチウムが挙げられる。他のイオン供給源も周知であり、当業者には理解されるであろう。ナトリウム、亜鉛、マグネシウム、及びリチウムイオンに加えて、他のアルカリ金属又はアルカリ土類金属カチオンが有用であり、カリウム、カルシウム、スズ、鉛、アルミニウム、及びバリウムを挙げることができる。イオンの組み合わせもまた、使用され得る。中和は、触媒を用いて又は用いずに金属塩を介して起こり得ることが企図される。水又は酢酸などの触媒が、使用され得る。
【0037】
中和度は、所望の用途に依存し得ると考えられる。本開示において使用される場合、「中和度」とは、金属塩によって中和される酸部位の量を指し得る。中和度は、ポリエチレンにおける酸部位の量に基づき得る。実施形態では、中和度は、15%~90%、15%~80%、15%~70%、15%~60%、15%~50%、15%~40%、15%~30%、15%~20%、25%~90%、25%~80%、25%~70%、25%~60%、25%~50%、25%~40%、25%~30%、35%~90%、35%~80%、35%~70%、35%~60%、35%~50%、35%~40%、45%~90%、45%~80%、45%~70%、45%~60%、45%~50%、55%~90%、55%~80%、55%~70%、55%~60%、65%~90%、65%~80%、65%~70%、75%~90%、75%~80%、又は85%~90%であってもよい。
【0038】
更なる実施形態では、極性エチレンコポリマーは、エチレン酢酸ビニルコポリマーを含む、すなわち、Xは酢酸ビニルである。エチレン酢酸ビニルコポリマーは、0.925g/cc~0.975g/cc、0.950g/cc~0.975g/cc、又は0.960g/cc~0.970g/ccの密度を有し得る。更に、エチレン酢酸ビニルコポリマーは、ASTM D1238(2.16kg/190℃)に従って測定したときに、1.0~100g/10分、20~80g/10分、又は40~60g/10分のメルトインデックスを含み得る。1つ以上の実施形態において、エチレン酢酸ビニルコポリマーは、0.1~40重量%の酢酸ビニルモノマー、1~30重量%の酢酸ビニルモノマー、又は5~30重量%の酢酸ビニルモノマーを含み得る。
【0039】
更に、極性エチレンコポリマーは、エチレン酢酸ビニル一酸化炭素ターポリマーを含んでいてもよい、すなわち、Xは酢酸ビニルであり、Yは一酸化炭素である。更に、エチレン酢酸ビニル一酸化炭素ターポリマーは、ASTM D1238(2.16kg/190℃)に従って測定したときに、10~50g/10分のメルトインデックスを含み得る。1つ以上の実施形態において、エチレン酢酸ビニル一酸化炭素ターポリマーは、0.1~40重量%の酢酸ビニルモノマー、1~30重量%の酢酸ビニルモノマー、又は5~30重量%の酢酸ビニルモノマーを含み得る。1つ以上の実施形態において、エチレン酢酸ビニル一酸化炭素ターポリマーは、0.1~40重量%の一酸化炭素モノマー、1~30重量%の一酸化炭素モノマー、又は5~30重量%の一酸化炭素モノマーを含み得る。
【0040】
金属アクリレートと金属カルボキシレートとの相乗的組み合わせは、金属アクリレート単独によって生成されるグラフトと比較して、グラフト化極性エチレンコポリマーのV0.1粘度を増大させる。
【0041】
グラフト化ポリエチレンを生成するための様々なプロセスが企図される。ポリエチレン、金属アクリレート又は金属メタクリレート、及び金属カルボキシレートをバッチ又は連続ミキサー中でブレンドして、グラフト化ポリエチレンを生成することができる。金属アクリレート又は金属メタクリレートは、粉末又はマスターバッチとして供給され得る。使用され得る連続装置のいくつかの例としては、共回転又は逆回転二軸スクリュー押出機、一軸スクリュー押出機、連続混合器、往復混練機、及び多軸スクリュー押出機が挙げられる。バッチ混合器のいくつかの例は、2本ロールミル、噛合又は非噛合内部混合器である。
【0042】
添加剤
グラフト化ポリエチレン組成物は、可塑剤、粘度安定剤を含む安定剤、難燃剤、加水分解安定剤、一次及び二次酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、染料、顔料、若しくは他の着色剤、無機充填剤、難燃剤、潤滑剤、ガラス繊維及びフレークなどの強化剤、合成(例えば、アラミド)繊維若しくはパルプ、起泡剤若しくは発泡剤、加工助剤、スリップ添加剤、シリカ若しくはタルクなどの粘着防止剤、剥離剤、粘着付与樹脂、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含む、少量の添加剤を追加で含み得る。炭酸カルシウムなどの無機充填剤もまた、ポリマーブレンド及びアイオノマー組成物に組み込まれ得る。
【0043】
これらの添加剤は、0.01重量%~40重量%、0.01~25重量%、0.01~15重量%、0.01~10重量%、又は0.01~5重量%の範囲の量で存在し得る。添加剤の組み込みは、例えば、乾式ブレンドによって、様々な構成成分の混合物を押し出すことによって、従来のマスターバッチ技術によってなどの任意の既知のプロセスによって行われ得る。
【0044】
様々な実施形態によれば、本開示のグラフト化ポリエチレンを使用して、インフレーションフィルム若しくはキャストフィルムなどの押出物品、発泡体、又は成形物品を形成することができる。例えば、グラフト化ポリエチレンは、エンジニアリングサーモプラスチックの耐衝撃性改質においてブレンド成分として使用することもできる。ポリエチレンを使用して発泡体を形成することもでき、グラフト化ポリエチレンを発泡体特性を制御するために使用される添加剤と組み合わせて、様々な形状の発泡体を形成することができる。いくつかの実施形態では、発泡体は、当業者に既知であるように、押出機などから押し出してよい。
【0045】
試験方法
密度
密度測定のための試料は、ASTM D1928に従って調製する。ポリマー試料は、190℃及び30,000psiで3分間、次いで21℃及び207MPaで1分間押圧される。測定は、ASTM D792、方法Bを使用して、試料の押圧から1時間以内に行う。
【0046】
メルトインデックス(I及びI10
メルトインデックスI及びI10(グラム/10分又はdg/分)は、手順Dを使用して、それぞれASTM 1238、条件190℃/2.16kg及び190℃/10kgに従って測定した。比は、I10/Iとして報告される。
【0047】
溶融強度
溶融強度は、Goettfert Rheotens 71.97(Goettfert Inc.;Rock Hill,S.C.)を使用して190℃で測定し、溶融物は、長さ30mm及び直径2mmの平坦な入口角度(180度)を備えるGoettfert Rheotester2000キャピラリレオメータで供給した。ペレットを、バレル(L=300mm、直径=12mm)に供給し、圧縮し、10分間溶融させた後、所与のダイ直径で壁せん断速度38.2s-1に相当する一定ピストン速度0.265mm/sで押し出した。押出物を、ダイ出口の下方100mmに位置するRheotensのホイールに通し、加速度2.4mm/sでホイールによって下向きに引っ張った。ホイールに加えられた力(cN)をホイールの速度(mm/s)の関数として記録した。溶融強度は、ストランドが破断する前のプラトー力(cN)として報告した、又は有意な引取共振を有する。
【0048】
動的機械分光法(DMS)
窒素パージ下でAdvanced Rheometric Expansion System(ARES)レオメータを使用して、DMSによって溶融レオロジーを分析した。0.1~100rad/sの範囲の一定温度動的周波数掃引を、窒素下190℃で実施した。サンプルを下部プレート上に置き、5分間軟化させた。次いで、プレートを「2.0mm」のギャップに閉じ、試料を直径「25mm」にトリミングした。試験を開始する前に、サンプルを190℃で5分間平衡化させた。複素粘度を、10%の一定の歪み振幅で測定した。応力応答を振幅及び位相の観点から分析し、そこから貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、動的粘度η*、及びtanデルタを計算することができた。V0.1は、0.1rad/s(190℃)での粘度であり、V100は、100rad/s(190℃)での粘度であり、記録した。V0.1/V100をレオロジー比とした。
【0049】
動的機械熱分析(DMTA)
DMTA測定を、窒素パージ下でARES-G2測定器で実施した。約3mmの厚さの試料を、12.7mm×30mm寸法の長方形試験片に打ち抜いた。温度掃引を、30℃~140℃で、5℃刻みでねじれモードにおいて実施した。10rad/sの周波数を使用した。ひずみ振幅を調整して(0.1%~5%)、トルク応答を制御した。貯蔵弾性率を温度の関数として測定した。試験前に試料を70℃~80℃で8~10時間乾燥させた。
【実施例
【0050】
実施形態は、以下の実施例によって更に明確になるであろう。
【0051】
以下の実施例を、様々な成分を使用して調製した。表1は、ポリエチレン成分の商品名及びこれらの成分の特性を記載する。これらのポリマーは全て、Dow Inc.(Midland,MI)によって供給される。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
マスターバッチ
金属アクリレート及び分散助剤の取り扱いを容易にするために、いくつかのマスターバッチを調製した。
【0055】
ジアクリル酸亜鉛(ZnDA)マスターバッチAについては、70%活性ジアクリル酸亜鉛マスターバッチを、20ムーニー(ML1+4@125℃)EPRゴム(70%エチレン)組成物をバッチミキサーを用いて100℃を超えない温度で配合した。マスターバッチを混練押出機に移し、更なる使用のためにペレット化した。
【0056】
ジアクリル酸亜鉛マスターバッチB及びCについては、50%活性ジアクリル酸亜鉛マスターバッチを、160℃未満の温度で二軸押出機において以下に概説する配合に基づいて調製した。
【0057】
ZnDAマスターバッチB=HDPE8965 重量比50:50、バッチミキサー
ZnDAマスターバッチC=AFFINITY(商標)GA1875 重量比50:50、バッチミキサー
【0058】
バッチミキサーグラフト
Rheometers Services Inc.製のRS5000バッチミキサーで、少量サンプルのグラフトを行った。最大45gのバッチを混合することができる小型ボウルを、ローラーブレードローターと共に使用した。ベースポリマーを最初に1分間流動させた後、製剤中の残りの成分を低速でミキサーに投入した。全ての他の成分の組み込みに続いて、50rpmのローター速度及び245℃のボウル温度を使用した。更に8分間混合を続けた。混合後、バッチをガラス強化テフロンシート上に収集し、圧縮成形機上で加圧して平らな「パテ」にし、周囲温度に冷却した。
【0059】
個々の成分に応じて、ミキサーへの様々な添加方法を使用した。全てのペレット及びトローチを直接添加した。粉末状ZnDAを使用した場合、ベース樹脂から作製したフィルム上で秤量し、次いでロール状にした。次いで、このロールをミキサーに加えた。DBTDLを使用前にペレット上に一晩浸漬した。液体形態のオクタン酸亜鉛をシリンジに予め秤量し、ミキサーに注入した。
【0060】
二軸押出機グラフト
二軸を使用した場合、26mm共回転二軸押出機(Coperion Corp.製のZSK-26)でグラフト反応を行った。押出機は15バレル(60L/D)で構成された。最大スクリュー速度は1200rpmであり、最大モーター出力は40HPであった。押出機は「ロスインウェイトフィーダー」を備えていた。全ての成分を予備混合し、押出機に供給した。不活性雰囲気を維持し、酸化を最小限に抑えるために、5標準立方フィート/時(SCFH)の窒素を使用して第1のバレルセクションをパージした。バレル13において真空引き(~15Hg)を行った。2穴ダイを使用してストランドを生成し、これをストランドカッターでペレットに切断した。12lbsの実行速度及び450rpmのスクリュー速度を使用した。バレル1を水冷し、バレル2~5を170℃で維持し、バレル6~11を240℃で維持し、バレル12~15を190℃で維持した。
【0061】
以下の実施例は、亜鉛又はナトリウム塩の存在下でジアクリル酸亜鉛を種々のポリオレフィンにグラフトすることの効果を示す。
【0062】
ジアクリル酸亜鉛のOBCへのグラフト中にステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、又はオクタン酸亜鉛を添加することの効果を表3に示す(比較例CE1~3及び本発明の実施例IE4~8)。これは、ベース樹脂と比較してはるかに高い低せん断粘度(V0.1)及びレオロジー比をもたらす。更に、ジブチルスズジラウレートは、単独で又はステアリン酸亜鉛と組み合わせて使用した場合、低せん断粘度及びレオロジー比に対して同様の効果を有する。表3(比較例CE9及び本発明の実施例IE10~11)はまた、金属カルボキシレートの存在下でのアクリル酸ナトリウムのHDPEへのグラフト及びレオロジー特性の変化を示す。表3の実施例は全てバッチミキサーで行った。
【0063】
【表3】
【0064】
表4は、ステアリン酸亜鉛の有り無し両方でのOBC(比較例CE12、CE16、及びCE17、並びに本発明の実施例IE13~IE15)及びエチレン-オクテンPOEコポリマー(比較例CE18~CE19、並びに本発明の実施例IE20)へのジアクリル酸亜鉛のグラフトの効果を示す。この場合も、ジアクリル酸亜鉛とステアリン酸亜鉛との組み合わせは相乗効果を有し、ジアクリル酸亜鉛単独の使用に比べてレオロジー変化が著しく大きい。更に、溶融強度における低せん断粘度の向上もみられる。CE17は、ステアリン酸亜鉛単独では効果がないことを示す。CE16は、過酸化物では同様の効果を達成できないことを示す(過酸化物はゲル形成につながるため、高レベルでは使用できないことに留意されたい)。
【0065】
【表4】
【0066】
表5は、二軸押出機を使用して、ステアリン酸亜鉛の有り無し両方で、ジアクリル酸亜鉛をHDPE(比較例CE21~23、CE28、及びCE29、並びに本発明の実施例IE24~27)にグラフトすることの効果を示す。この場合も、ジアクリル酸亜鉛とステアリン酸亜鉛との組み合わせは相乗効果を有し、ジアクリル酸亜鉛単独の使用に比べてレオロジー変化が著しく大きく、溶融強度における低せん断粘度の向上もみられる。CE29は、ステアリン酸亜鉛単独では効果がないことを示す。CE28は、過酸化物では同様の効果を達成することができず(過酸化物はゲル形成につながるため、高レベルでは使用できないことに留意されたい)、溶融強度がより低い場合、粘度が同等であることを示す。
【0067】
【表5】
【0068】
表6は、バッチミキサーを使用して、金属カルボキシレート(実施例では、DBTDL及びステアリン酸亜鉛)の有り無し両方で、ジアクリル酸亜鉛を極性エチレンコポリマー(比較例CE30~31及びCE34~36、並びに本発明の実施例IE33及びIE37~41)にグラフトすることの効果を示す。使用した極性エチレンコポリマーは、エチレンエチルアクリレート、エチレンメタクリル酸コポリマー、及びエチレン酢酸ビニルコポリマーであった。この場合も、ジアクリル酸亜鉛とステアリン酸亜鉛との組み合わせは相乗効果を有し、ジアクリル酸亜鉛単独(又はDBTDLとの組み合わせ)の使用に比べてレオロジー変化が著しく大きい。CE36は、ステアリン酸亜鉛単独では効果がないことを示す。
【0069】
【表6】
【0070】
特許請求される主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書で記載される実施形態に様々な修正及び変更を加え得ることが当業者には明らかであろう。したがって、本明細書は、本明細書に記載される様々な実施形態のそのような修正及び変更を網羅することが意図され、ただし、そのような修正及び変更は添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内に入る。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフト化ポリエチレンであって、
少なくとも0.75g/10分のメルトインデックス(190℃、2.16kgで)を有するポリエチレンと、
0.5重量%~10重量%の、前記ポリエチレン上に少なくとも部分的にグラフトされた金属アクリレート又は金属メタクリレートと、
0.1重量%~10重量%の、いかなる末端不飽和も有しない1つ以上の金属カルボキシレートと、
の反応生成物を含む、グラフト化ポリエチレン。
【請求項2】
前記金属アクリレート又は金属メタクリレートの金属が、亜鉛、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項3】
前記グラフト化ポリエチレンが、ジアクリル酸亜鉛を含む、請求項1に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項4】
前記グラフト化ポリエチレンが、アクリル酸ナトリウムを含む、請求項1に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項5】
前記金属カルボキシレートが、少なくとも8個の炭素の炭化水素鎖を含む、請求項1に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項6】
前記金属カルボキシレートが、金属ステアレート、金属ラウレート、金属オクトエート、ジブチルスズジラウレート、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項7】
過酸化物を更に含む、請求項1に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項8】
前記ポリエチレンが、高密度ポリエチレン(HDPE)を含む、請求項1に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項9】
前記ポリエチレンが、オレフィンブロックコポリマー(OBC)を含む、請求項1に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項10】
前記ポリエチレンが、極性エチレンコポリマーを含む、請求項1に記載のグラフト化ポリエチレン。
【請求項11】
請求項1に記載のグラフト化ポリエチレンを含む、物品。
【請求項12】
前記物品が、押出単層若しくは多層キャストフィルム若しくはインフレーションフィルム、押出繊維、成形若しくは押出発泡体、又は熱成形若しくは吹き込み成形から生成された成形物品である、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載のグラフト化ポリエチレンを含む、請求項11に記載の物品。
【請求項14】
請求項1に記載のグラフト化ポリエチレンを生成するプロセスであって、
バッチ又は連続ミキサーを使用して、前記ポリエチレン、前記金属アクリレート又は金属メタクリレート、及び前記金属カルボキシレートをブレンドして、前記グラフト化ポリエチレンを生成することを含む、プロセス。
【国際調査報告】