(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】処理設備及び工作物を処理する方法
(51)【国際特許分類】
C23G 3/00 20060101AFI20250128BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20250128BHJP
B62D 65/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C23G3/00 Z
B08B3/02 E
B62D65/00 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535301
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 DE2022100972
(87)【国際公開番号】W WO2023116981
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】102021214987.1
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389784
【氏名又は名称】デュール システムズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Durr Systems AG
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】トビアス イェーガー
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ザイボート
【テーマコード(参考)】
3B201
3D114
4K053
【Fターム(参考)】
3B201AA47
3B201BB21
3B201BB92
3D114AA03
3D114BA01
3D114CA10
4K053PA02
4K053RA05
4K053SA04
4K053SA06
4K053XA14
4K053XA23
(57)【要約】
構造が簡単であって、効率的に利用することができる、工作物を処理するため、特に車両ボディをクリーニング及び/又はコーティングするための、処理設備を提供するために、処理設備が以下のものを有する:a)複数の処理ステーションであって、前記処理ステーションがそれぞれ処理容器を有し、その処理容器が工作物を収容するための処理室を包囲する、前記処理ステーション;b)流体を収容するための1つ又は複数の流体タンク;そしてc)流体ガイドであって、それを用いて流体が、i)処理室の少なくとも1つに注入するために、1つ又は複数の流体タンクから少なくとも1つの処理室内へ、かつ/又はii)少なくとも1つの処理室から排出するために、少なくとも1つの処理室から1つ又は複数の流体タンク内へ案内可能である、前記流体ガイド、を有することが提案される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物(102)を処理するため、特に自動車ボディ(104)をクリーニング及び/又はコーティングするための処理設備(100)であって、前記処理設備(100)が以下のものを有する:
a)複数の処理ステーション(106)であって、前記処理ステーションがそれぞれ処理容器(110)を有し、前記処理容器が前記工作物(102)を収容するための処理室(108)を有している、前記処理ステーション;
b)流体を収容するための1つ又は複数の流体タンク(112);及び
c)流体ガイド(120)であって、前記流体ガイドを用いて前記流体が、i)前記処理室(108)の少なくとも1つの処理室に注入するために、前記1つ又は複数の流体タンク(112)から前記少なくとも1つの処理室(108)内へ、かつ/又はii)前記少なくとも1つの処理室(108)から排出するために前記少なくとも1つの処理室(108)から前記1つ又は複数の流体タンク(112)内へ、案内可能である、
処理設備(100)。
【請求項2】
前記処理ステーション(106)の複数のものが、互いに異なる高さレベルに配置されており、これらの処理ステーション(106)の前記処理室(108)が前記流体ガイド(120)を用いて次のように、すなわち前記流体が1つの処理室(108)から次の処理室へ、特に直接的、あるいは流れに関して及び/又は前記流体タンク(112)の垂直の配置に関して、それらの間に配置された中間貯蔵タンク(118)を介して間接的に、案内可能であるように、互いに結合されており、あるいは結合可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の処理設備(100)。
【請求項3】
前記処理設備(100)が、垂直方向に互いに重ねて配置された複数の処理レベルを有しており、前記処理レベルの1つ又は複数上にそれぞれ複数の処理ステーション(106)が配置されており、かつ前記処理レベルの1つ上に共通に配置されている処理ステーション(106)の前記処理室(108)が前記流体ガイド(120)によって互いに、かつ/又は1つ又は複数の他の処理レベル上に配置されている、前記処理ステーション(106)の1つ又は複数のものの1つの処理室(108)又は複数の処理室(108)と接続されている、ことを特徴とする請求項1から2のいずれか1項に記載の処理設備(100)。
【請求項4】
前記処理設備(100)が、共通の処理レベル上に配置された2つ以上の処理ステーション(106)を有し、前記処理ステーションの処理室(108)が前記流体ガイド(120)によって互いに接続されており、
前記処理設備(100)がさらに制御装置を有し、前記制御装置が次のように、すなわち前記制御装置によって、前記処理室(108)を互いに接続する前記流体ガイド(120)を用いて、特に重力のみを利用して流体が前記処理室(108)の1つから前記処理室(108)の他のものへ案内可能であることにより、前記処理室(108)の1つのものの部分的充填プロセスが実施可能であるように、形成され、かつ構成されている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の処理設備(100)。
【請求項5】
前記流体ガイド(120)が、貯蔵タンク(114)及び/又は中間貯蔵タンク(118)を有し、前記のタンクから選択的に、前記貯蔵タンク(114)もしくは前記中間貯蔵タンク(118)の下方に配置されている複数の処理ステーション(106)の1つに流体が供給可能である、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の処理設備(100)。
【請求項6】
前記処理設備(100)が圧力補償装置(138)を有し、前記圧力補償装置によって、特に液体充填状態が変化した場合に圧力補償を行うために、複数の流体タンク(112)及び/又は複数の処理容器(110)、特にすべての流体タンク(112)とすべての処理容器(110)が、互いに流体接続されている、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の処理設備(100)。
【請求項7】
前記流体ガイド(120)が1つ又は複数のバイパス導管(142)を有しており、前記バイパス導管を用いて流体が、垂直方向下方に、1つ又は複数の流体タンク(120)を迂回して案内可能であり、かつ/又は垂直方向により低い位置にある1つ又は複数の流体タンク(112)内へ充填可能である、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の処理設備(100)。
【請求項8】
前記処理設備(100)が、垂直方向において2つ又は2つより多い処理ステーション(106)の間に配置されている中間貯蔵タンク(118)を有し、かつ
前記流体ガイド(120)が還流導管(130)を有し、前記還流導管を用いて流体が、垂直方向において前記中間貯蔵タンク(118)の下方に配置されている流体タンク(112)からこの中間貯蔵タンク(118)へ供給可能である、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の処理設備(100)。
【請求項9】
前記処理設備(100)が、垂直方向に一番下の流体タンク(112)、特にカウンタータンク(116)から、垂直方向により高い位置にある流体タンク(112)、特に中間貯蔵タンク(118)内へ、あるいは垂直方向に一番上にある流体タンク(112)、たとえば貯蔵タンク(114)内へ流体を還流させるために還流装置(126)を有している、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の処理設備(100)。
【請求項10】
前記還流装置(126)がポンプ装置(128)を有し、前記ポンプ装置を用いて還流プロセスが次のように、すなわち前記流体が少なくともほぼ連続的に、かつ/又は少なくともほぼ一定の流体体積流及び/又は流体質量流をもって還流されるように、実施可能であり、あるいは前記ポンプ装置が前記処理設備(100)の制御装置を用いて次のように、すなわち前記流体が少なくともほぼ連続的に、かつ/又は少なくともほぼ一定の流体体積流及び/又は流体質量流をもって還流されるように、制御可能であって、前記ポンプ装置(128)によって発生された流体体積流及び/又は流体質量流が、前記処理ステーション(106)の1つの処理室(108)を充填する際の前記流体の流体体積流及び/又は流体質量流の、最大で約10分の1、特に最大で約50分の1である、ことを特徴とする請求項9に記載の処理設備(100)。
【請求項11】
垂直方向においてより高い位置にある流体タンク(112)から、垂直方向においてより低い位置にある流体タンク(112)内へ流体を供給するための1つ又は複数の供給導管(122)に、エネルギ回収装置(141)、特にタービンが設けられている、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の処理設備(100)。
【請求項12】
1つ又は複数の流体タンク(112)が次のように、すなわち流体、特に液体の流出によって前記1つもしくは複数の流体タンクを空にすることにより、1つ又は複数の流体タンク(112)内に負圧が発生され、あるいは発生可能であるように、流体密に密閉可能又は密閉されており、前記負圧が後の時点で、特に前記1つの流体タンク(112)もしくは複数の流体タンク(112)をより簡単に充填するために、利用可能である、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の処理設備(100)。
【請求項13】
垂直方向において一番下の流体タンク(112)内に、前記一番下の流体タンク(112)の前記流体を再生するための流体再生循環(146)が設けられており、前記流体再生循環が少なくとも1つのポンプ装置(128)、少なくとも1つの熱交換器(136)及び少なくとも1つのクリーニング装置(134)を有している、ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の処理設備(100)。
【請求項14】
工作物(102)、特に車両ボディ(104)を処理する方法であって、前記方法が以下のことを有する:
i)少なくとも1つの処理室(108)に注入するために、1つ又は複数の流体タンク(112)から前記少なくとも1つの処理室(108)内へ、かつ/又は
ii)前記少なくとも1つの処理室(108)から排出するために、前記少なくとも1つの処理室(108)から前記1つ又は複数の流体タンク(112)内へ、
流体を案内する、
ことを有する、方法。
【請求項15】
前記流体が、注入プロセスを準備するために、前記処理室(108)の上方に配置されている流体タンク(112)に、少なくともほぼ、前記注入プロセスを実施するために必要な量で、供給される、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記流体が還流装置(126)によって選択的に、
a)貯蔵タンク(114)へ供給され、それによって前記貯蔵タンクが流体で満たされ、かつ前記流体が前記貯蔵タンク(114)の下方に配置されている処理ステーション(106)内の注入プロセス用に準備され、あるいは
b)バイパス導管(142)によって前記処理ステーション(106)を迂回して循環して案内される、
ことを特徴とする請求項14又は15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作物処理の分野、特に工作物、たとえば車両ボディ又は車両部品の清掃とコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
工作物を処理するために、たとえば工作物を浸漬槽内へ浸漬することができる。その場合に工作物は、浸漬槽内へ沈められ、かつ処理ステップの後に浸漬槽から取り出される。その場合に工作物を最適に処理するための工作物の回転は、接近が難しい箇所で行われる場合もある。
【0003】
この種の浸漬処理設備において、これは、様々な大きさ/形状の工作物を処理しなければならない場合、かつ/又は種々の工作物のために異なる処理期間が設けられる場合に、欠点となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の課題は、コスト効率のよいコンポーネントを使用して最適な工作物処理を可能にする、装置と方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、独立請求項に記載の処理設備と方法によって解決される。
【0006】
処理設備は、工作物を処理するために用いられ、かつ特にそれぞれ1つ又は複数の処理ステップを実施するための1つ又は複数の処理ステーションを有している。
【0007】
処理ステーションは、好ましくは処理容器を有しており、その処理容器が工作物を収容するための処理室を包囲している。
【0008】
さらに、処理ステーションが、この種の処理容器を複数有している場合がある。
【0009】
好ましくは、処理室に流体を注入可能である。
【0010】
流体は、特に処理液、たとえば、特に工作物を脱脂するための、クリーニング流体である。さらに流体は、たとえば工作物をリン酸処理し、あるいは塗装するためのコーティング流体とすることができる。
【0011】
この流体は、それを工作物処理に利用する間中、好ましくは液状の凝集状態で存在する。特に流体は、標準条件において液状である。
【0012】
処理容器は、処理室内へ工作物を挿入するため、かつ/又は処理室から工作物を取り出すための、少なくとも1つの出入開口部を有することができる。
【0013】
好ましくは処理容器は、少なくとも1つの出入開口部を選択的に閉鎖し、かつ解放するための閉鎖装置を有している。
【0014】
処理容器は、工作物を処理室内へ挿入し、かつ処理室から工作物を取り出すための唯一の出入開口部を有することができる。
【0015】
その代わりに、処理容器が処理室内へ工作物を挿入するための入口開口部と、処理室から工作物を取り出すための他の出口開口部とを有することができ、その場合にこれらの出入開口部は、特に処理容器の互いに対向する側又は端部又は前壁に配置されている。
【0016】
少なくとも1つの出入開口部が、処理容器の1つ又は複数の側壁内に、特に処理容器の1つ又は複数の前壁内に配置かつ/又は形成されていると、効果的であり得る。
【0017】
処理容器は、実質的に直方体形状に形成されており、かつ好ましくは、たとえば閉鎖された天井壁、底壁、2つ又は3つの閉鎖された側壁及び2つの他の、もしくは1つの他の側壁を有しており、それに少なくとも1つの出入開口部が設けられており、その場合に少なくとも1つの出入開口部は閉鎖装置によって好ましくは完全に閉鎖可能である。
【0018】
閉鎖装置が、少なくとも1つの出入開口部を流体密に閉鎖するために用いられると、効果的であり得る。
【0019】
そのために閉鎖装置は、特に閉鎖部材を有しており、その閉鎖部材がたとえばセルフロックするように形成されており、かつ/又はセルフロックするロック部材及び/又はセルフロックする密閉部材を有している。閉鎖装置が、閉鎖装置の閉鎖部材を上昇かつ下降させるため、特に閉鎖部材を持ち上げて、開放位置へ移動させ、かつ/又は閉鎖部材を下降させて、閉鎖位置へ移動させるための、リフト装置を有していると、効果的であり得る。さらに閉鎖部材は、リフト装置によって下降して、開放位置へ移動することができ、かつ/又は上昇して、閉鎖位置へ移動することができる。この種の閉鎖部材は、たとえばゲート、特にロックゲートとすることができる。
【0020】
閉鎖部材は、たとえば一体的に形成して、全体として移動可能であるようにすることができる。その代わりに、閉鎖部材をいくつかに分けて形成することができ、その場合に閉鎖部材の諸部分は互いに独立して移動可能であり、あるいは互いに異なる運動を実施して、出入開口部を閉鎖し、あるいは解放することができる。
【0021】
その代わりに、あるいはそれに加えて、閉鎖装置は、閉鎖部材を選択的に開放位置又は閉鎖位置へ移動させるために、たとえば閉鎖部材を側方へスライドさせるスライド装置を有することができる。
【0022】
さらに、閉鎖装置が、閉鎖装置の閉鎖部材を揺動させるための揺動装置を有することができ、その場合に閉鎖部材は特に、少なくともほぼ水平の揺動軸線を中心に揺動することができる。その代わりに、閉鎖部材が少なくともほぼ垂直の揺動軸線を中心に揺動可能であるようにすることができる。
【0023】
処理ステーションが、流体、特に処理流体を収容するための流体タンクを有していると、効果的であり得る。
【0024】
流体は、好ましくは処理室に注入するために、流体ガイドによって流体タンクから処理室内へ投入可能である。
【0025】
処理室から排出するために、流体は、好ましくは流体ガイドによって処理室から流体タンク内へ戻すように案内可能である。
【0026】
その場合に、注入するためにも、排出するためにも、処理室と流体タンクの間に直接的な接続を設けることができる。その代わりに、1つ又は複数の中間ステーションあるいはその他の、貫流すべき装置を設けることができる。
【0027】
処理ステーションは、好ましくは工作物を移送するため、特に工作物を処理室内へ挿入し、かつ/又は工作物を処理室から放出し、かつ/又は工作物を1つの処理ステーションから次の処理ステーションへ移送するための、移送装置を有している。
【0028】
移送装置が、工作物を移送及び/又は移動させるため、特に工作物を処理室内へ投入し、かつ/又は工作物を処理室から取り出し、かつ/又は工作物を1つの処理ステーションから次のものへ移送するために、1つ又は複数のローラコンベア、チップコンベア、スライドコンベア及び/又はスタッカークレーンを有していると、効果的であり得る。
【0029】
その代わりに、あるいはそれに加えて、移送装置が、工作物を移送及び又は移動させるため、特に工作物を処理室内へ投入し、かつ/又は工作物を処理室から取り出し、かつ/又は工作物を1つの処理ステーションから次のものへ移送するために、1つ又は複数の無人のトランスポートシステムを有することができる。
【0030】
工作物は、好ましくは移送装置によって水平のレベルに沿って移動可能であり、特に処理室内へ挿入可能、かつ/又は処理室から取出し可能である。
【0031】
処理ステーションを用いて、特に工作物を処理する方法が実施可能である。その場合にこの方法は、好ましくは以下のステップを有している:
工作物を、処理容器の出入開口部を通して処理容器の処理室内へ投入するステップ;
閉鎖装置を用いて処理容器の出入開口部を閉鎖するステップ;
工作物処理を実施するために、処理室に流体を注入するステップ。
【0032】
工作物処理(処理ステップ)の実施後に、好ましくは流体が処理室から除去され、特に放出される。
【0033】
その後さらに好ましくは、工作物が1つの出入開口部又は他の出入開口部を通して処理室から取り出される。
【0034】
本発明の好ましい形態において、処理ステーションが流体を収容するための流体タンクを有することができる。さらに処理ステーションは、好ましくは流体ガイドを有しており、それを用いて流体が処理室に注入するために流体タンクから処理容器内へ、かつ/又は処理室から排出するために処理容器から流体タンク内へ案内可能である。
【0035】
流体ガイドはそのために、1つ又は複数の流体導管を有しており、その場合に好ましくは流体タンクから処理容器へ流体を供給するための流体導管と処理室から流体タンクへ流体を供給するための他の流体導管、特に別の流体導管が設けられている。
【0036】
流体タンクが、重力方向に関して処理容器の上方に配置されていると、効果的であり得る。
【0037】
それによって特に、処理容器へ流体を供給するために重力を利用することができ、その場合に好ましくは別体のポンプ装置を省くことができる。
【0038】
それに対して、流体を処理室から流体タンク内へ汲み上げるために、ポンプ装置が好ましい場合がある。
【0039】
その代わりに、処理容器を重力方向に関して流体タンクの上方に配置することができる。その場合にはそれによって、ポンプ装置を利用せずに流体が処理容器から流体タンク内へ案内可能であり、一方で好ましくは、流体を流体タンクから処理容器内へ案内するために、ポンプ装置が設けられている。
【0040】
流体ガイドが、供給導管として形成された流体導管を有することができ、それを用いて流体が処理室へ供給可能であり、その場合に供給導管は好ましくは処理容器の底領域内で処理容器内へ連通している。それによって特に流体を処理容器内へ供給する際の望ましくない泡形成を減少させ、あるいは完全に回避することができる。
【0041】
処理容器の底領域は、特に処理室の全体高さに関して、かつ/又は最大充填高さに関して、処理室の下3分の1、好ましくは下5分の1である。
【0042】
処理容器は、好ましくは流入領域を有しており、その流入領域は特に処理容器の出入開口部の下方に配置されている。この流入領域は、好ましくは、工作物を交換するために設けられた、処理容器の排出された状態においても、流体で満たされている。
【0043】
供給導管は、好ましくは、処理室内への最適な流体供給を可能にするために、特に流入領域の流体ラインの下方で、流入領域内へ連通している。
【0044】
流体ガイドが複数の供給導管を有していると、効果的な場合もあり、その場合にこれらの供給導管の1つ又は複数が処理容器の底領域内で、処理容器内へ連通し、かつ/又はその場合に1つ又は複数の供給導管が1つ又は複数のノズル及び/又はその他の供給開口部内で、あるいはそれに接して終了しており、そのノズル及び/又は供給開口部を用いて流体をたとえばビーム又は大波として工作物へ向けることができ、かつ/又は提供することができる。
【0045】
処理容器の排出された状態は、好ましくは出入開口部を通して流体の流出がなく、あるいはそれを恐れることなしに、1つ又は複数の出入開口部を開放することができる、処理容器の状態である。したがって排出された状態は、特に、残留流体が処理容器から除去された、処理容器の状態である必要はない。
【0046】
処理室に注入する際に処理室から押し出された媒体、特にガス、たとえば空気は、例えば周囲へ放出し、あるいは再生し、あるいは、たとえば排気浄化設備へ、かつ/又は工作物を乾燥させるための乾燥器内へ、案内することができる。
【0047】
特に、流体流からもたらされる圧力変動を補償するために、圧力補償装置を設けることができる。特に圧力補償装置は、液体、特に処理液を流体タンク内へ導入することによって生じる圧力上昇を、たとえば液体によって押し出されたガスを放出することによって、阻止し、あるいは少なくとも緩和するために、用いることができる。
【0048】
さらに、押し出された媒体を流体タンク内へ導入することができる。
【0049】
流体ガイドが、流体を浄化するためのクリーニング装置を有していると、好ましい場合がある。
【0050】
クリーニング装置は、好ましくは処理容器の外部及び/又は流体タンクの外部に配置されている。
【0051】
好ましくはクリーニング装置は、流体を流体タンク内へ還流させるための還流導管内に配置されている。それによって流体は、好ましくはそれを還流させる場合、かつ/又は循環の各開始前、特に1つ又は複数の処理容器内に新たに注入する前に、浄化し、かつ/又は再生することができる。
【0052】
処理装置が熱交換器を有しており、それを用いて特に還流すべきガス又は還流されたガス、特に処理流体が、温度調節可能、特に冷却可能又は加熱可能であると、効果的であり得る。その場合に熱伝達は、特に処理設備の周囲へ、あるいは周囲から、かつ/又は熱交換媒体へ、あるいは熱交換媒体から、行うことができる。
【0053】
処理ステーションは、好ましくは制御装置を有し、それを用いて処理室内の注入プロセスが、特に処理室へ流体を供給するための供給導管を開閉する弁装置の開ループ制御及び/又は閉ループ制御によって、開ループ制御可能かつ/又は閉ループ制御可能である。
【0054】
注入プロセスを開ループ制御及び/又は閉ループ制御するために、好ましくは1つ又は複数の工作物パラメータ、特に処理室内部のそれぞれの工作物の幾何学配置及び/又は大きさ及び/又は位置が、考慮される。
【0055】
1つ又は複数の工作物パラメータは、特に機械制御を介し、かつ/又はCADデータ、バーコード認識、RFID情報及び/又はその他の工作物固有のデータセットによって制御装置へ引き渡される。
【0056】
注入プロセスは、制御装置によって好ましくは次のように、すなわち充填速度及び/又は処理室内の流体の充填状態の変化率が注入の間に変化され、特に工作物のローカルな安定性変化に適合され、かつ/又は水面の重力方向に沿って変化する面に適合されるように、制御可能である。
【0057】
たとえば、注入プロセスは制御装置によって、処理室内の流体レベルが少なくともほぼ一定に上昇するように、制御することができる。
【0058】
その代わりに、注入プロセスを制御装置によって次のように、すなわち流体面が工作物のより安定した領域の上に広がる場合に、供給される流体の体積流が増大され、かつ流体の流体面が工作物のあまり安定していない領域の上に広がる場合には、供給される流体の体積流が減少されるように、制御することができる。
【0059】
処理ステーションは、たとえば1つ又は複数の測定装置を有することができ、それを用いてたとえば、処理室内へ流入する流体の体積流及び/又は処理室の内部の充填状態又は充填レベル及び/又は流体タンク内の充填状態又は充填レベルを求めることができる。
【0060】
1つ又は複数の測定装置の1つ又は複数の測定値は、好ましくは注入プロセスの開ループ制御及び/又は閉ループ制御のために考慮される。
【0061】
好ましくは、注入プロセスにおける最大の充填高さ(最大の充填レベル)は、工作物幾何学配置及び/又は位置にしたがって選択される。たとえば、工作物が車両ボディとして形成されている場合に、処理室は常に、充填レベルが車両ボディのルーフのすぐ上、たとえばルーフ上の最大で約10cm、好ましくは最大で約5cm、たとえば最大で約3cmであるように、流体で満たされる。
【0062】
さらに、1つ又は複数の測定装置を用いて、たとえば1つ又は複数の測定装置によって充填状態又は充填レベル又は体積流を監視することによって、1つ又は複数の漏れを求めることができる。好ましくはそれに基づいて、1つ又は複数の閉鎖装置の密閉性を推定することができる。
【0063】
処理ステーションは、ある形態において、カウンタータンクを有することができ、そのカウンタータンクは重力方向に関して処理室の下方に配置されており、かつそのカウンタータンクに処理室から導出すべき流体が供給可能である。
【0064】
その場合に流体は、好ましくは重力のみを利用して、流体タンクから処理室内へ、かつ/又は処理室から流体タンク内へ案内可能である。
【0065】
たとえばポンプ装置を用いて、流体を好ましくはカウンタータンクから流体タンク内へ戻すことができる。
【0066】
したがってこの流体タンクは、特に流体を、特に処理プロセスを実施する準備ができた状態で、準備する貯蔵タンクである。そのために流体は、特にカウンタータンクと流体タンクの間の移送路上で、特にクリーニング装置を用いて、浄化し、あるいは再生することができる。
【0067】
処理ステーションが2つ又は2つより多い処理室、特にそれぞれ処理容器を備えた2つ又は2つより多い処理室を有していると、効果的であり得る。
【0068】
その場合に、2つ又は2つより多い処理室へ流体を供給するための共通の流体タンクを設けることができる。
【0069】
その代わりに、特に同一の処理室内の複数の流体のために、複数の流体タンクを設けることができる。
【0070】
たとえば、特に処理室内にある1つ又は複数の工作物において様々な処理ステップを実施するために、処理ステーションの処理室に選択的に、特に交互に、異なる流体を注入することができる。
【0071】
そのためにさらに、複数の流体のための複数のカウンタータンクを設けることができる。
【0072】
さらに、1つのカウンタータンクを2つより多い処理室のために共通に設けることができる。
【0073】
この明細書と添付の請求項において、タンクは、特に流体のために一般的な収容部であり、たとえばこれは、個別容器又は互いに結合された複数の容器とすることができる。
【0074】
処理ステーションが、処理室を洗浄及び/又は清掃するための洗浄装置を有することができ、その場合に洗浄装置によって特に流体とは関係なく、流体タンクとは関係なく、かつ/又はカウンタータンクとは関係なく、洗浄媒体を処理室内へ投入可能であり、特にスプレイ可能であって、かつその処理室から除去可能であり、特に放出可能である。
【0075】
洗浄装置は、特に処理室内に配置された、かつ/又は処理室内へ向けられたスプレイノズルを有することができ、そのスプレイノズルが特に壁及び/又は処理室内に配置された移送装置を洗浄するために用いられる。
【0076】
工作物を処理するために、記載された処理ステーションにおいて、特に、工作物を処理容器の処理室内へ挿入することができ、かつ工作物処理を実施するために処理室に流体を注入することができ、その場合に処理室に注入するための流体は、流体タンクから処理容器内へ、かつ/又は処理室から排出するために処理容器から流体タンク内へ案内される。
【0077】
1つ又は複数の処理室に注入する場合に、処理室の内部の流体レベルが、好ましくは少なくともファクター10、好ましくは少なくともファクター50、たとえば少なくとも100増大される。
【0078】
さらに1つ又は複数の処理室に注入する場合に、液体レベルは好ましくは、最少状態から、処理室の室内高さ全体の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約70%、たとえば少なくとも約90%に高められる。
【0079】
1つ又は複数の処理室から排出するために、その中にある流体、特に処理液が、好ましくは少なくとも約50%、特に少なくとも約80%、たとえば少なくとも約90%、処理室から除去される。
【0080】
好ましくは各工作物のため、あるいは別々に処理室内へ投入される工作物の各グループのために、注入プロセスと排出プロセスが実施される。
【0081】
本発明のある形態において、処理設備は、第1のステップを実施するための複数の第1の処理ステーションと、第2の処理ステップを実施するための複数の第2の処理ステーションとを有しており、その場合にそれぞれ1つ又は複数の第1の処理ステーションと1つ又は複数の第2の処理ステーションは、好ましくは処理設備の処理ユニットの、工作物の処理ステップを実施するために通過する、構成要素であり、あるいはそれを形成する。
【0082】
処理ユニットは、特に、工作物を移送する移送装置のメイン移送方向に沿って互いに連続する複数の処理ステーションを有している。処理ユニットを用いて、好ましくは工作物処理のために次々と実施可能なすべての処理ステップが実施可能である。
【0083】
処理設備が複数の処理ユニットを有することができ、それらが特にそれぞれ1つ又は複数の第1の処理ステーションと1つ又は複数の第2の処理ステーションを有し、かつ/又は特に処理設備の互いに異なる処理ラインを形成する。
【0084】
互いに異なる処理ユニットの1つ又は複数の第1の処理ステーションは、共通の流体ガイド及び/又は共通の流体タンクを有している。その代わりに、あるいはそれに加えて、互いに異なる処理ユニットの1つ又は第2の複数の処理ステーションが、共通の流体ガイド及び/又は共通の流体タンクを有することができる。
【0085】
その代わりに、あるいはそれに加えて、さらに、互いに異なる処理ユニットの1つの又は複数の第1の処理ステーションが、共通のカウンタータンク及び/又は共通のクリーニング装置を有することができる。その代わりに、あるいはそれに加えて、さらに、互いに異なる処理ユニットの1つ又は複数の第2の処理ステーションが、共通のカウンタータンク及び/又は共通のクリーニング装置を有することができる。
【0086】
流体、特に第1の処理流体が、流体ガイドを用いて、まず、
a)第1の処理ユニットの1つ又は複数の処理ステーションの、特に第1の処理ステーションの、1つ又は複数の処理室へ供給可能であり、その後
b)第2の処理ユニットの1つ又は複数の処理ステーション、特に第1の処理ステーションの、1つ又は複数の処理室へ供給可能であると、
効果的であり得る。第1の処理ユニットと第2の処理ユニットの間、かつ/又は同一の処理ユニット又は互いに異なる処理ユニットの、2つの処理ステーションの間に、1つ又は複数の中間貯蔵タンクを設けることができる。
【0087】
流体、特に第2の処理流体が、流体ガイドを用いて、まず、
a)第1の処理ユニットの1つ又は複数の処理ステーション、特に第2の処理ステーションの、1つ又は複数の処理室へ供給可能であり、その後、
b)第2の処理ユニットの1つ又は複数の処理ステーション、特に第2の処理ステーションの、1つ又は複数の処理室へ供給可能であると、
効果的であり得る。第1の処理ユニットと第2の処理ユニットの間、かつ/又は同じ処理ユニットの、あるいは互いに異なる処理ユニットの、2つの処理ステーションの間に、1つ又は複数の中間貯蔵タンクを配置することができる。
【0088】
流体が流体ガイドを用いて交互に、互いに異なる処理ユニットの処理室へ供給可能であると、効果的であり得る。
【0089】
その代わりに、あるいはそれに加えて、流体が流体ガイドを用いて交互に同一の処理ユニットの処理室へ供給可能であるように、することができる。
【0090】
流体ガイドは、好ましくはクリーニング装置と接続されており、あるいはそれを有しているので、流体は処理室の1つから取り出した後に、かつ/又は処理室の他のものへ新たに供給する前に、浄化可能である。
【0091】
流体の浄化は、好ましくは処理室から排出する際に、かつ/又はその流体を注入プロセス及び/又は処理ステップにおいて1回又は多数回利用した後に、行われる。
【0092】
流体ガイド内に全体として含まれる流体の総量は、処理室内で個々の注入プロセスを実施するために必要な流体の量の、最大で約2倍、特に最大で約3倍である。
【0093】
流体ガイドは、好ましくは、流体を案内し、かつ収容するすべてのコンポーネント、特に1つ又は複数の流体タンク、1つ又は複数の処理室、1つ又は複数の中間貯蔵タンク及び/又は1つ又は複数のカウンタータンク及び選択的に1つ又は複数のクリーニング装置を有している。
【0094】
流体の量は、特に標準条件において、特に流体の質量及び/又は流体の体積である。
【0095】
クリーニング作業を実施するために、流体は、好ましくは流体ガイドの個々の、あるいは複数のコンポーネント内へ投入可能、特に汲み上げ可能かつその中に保管可能である。たとえば、少なくとも1つの流体を浄化するために、流体は、1つ又は複数の処理容器内かつ/又は1つ又は複数のカウンタータンク内に完全に収容することができる。さらに、たとえば1つ又は複数の処理容器を清掃するために、流体は1つ又は複数の流体タンク内に、かつ/又は1つ又は複数のカウンタータンク内に、完全に収容することができる。さらに選択的に、たとえば1つ又は複数のカウンタータンクを清掃するために、流体は1つ又は複数の流体タンク内かつ/又は1つ又は複数の処理容器内に完全に収容することができる。
【0096】
処理ユニットの複数の、特にすべての処理ステーション、特に1つ又は複数あるいはすべての第1の処理ステーション及び処理ユニットの1つ又は複数あるいはすべての第2の処理ステーションが、処理設備の共通のレベルに配置されていると、効果的であり得る。ということは、特に、処理ステーションの処理室が、工作物を水平に移動させるだけで、特に水準変化又はレベル変化なしで、それ自体接近できるということである。
【0097】
処理設備の複数の処理ユニットが、処理設備の互いに異なるレベルに配置されていると、効果的であり得る。
【0098】
共通の流体ガイドを有し、かつ/又は同一の処理ステップを実施するために用いられる、処理設備の互いに異なる処理ユニットの1つ又は複数の処理ステーションは、好ましくは重力方向に沿って互いに重ねて配置されている。
【0099】
処理設備の異なるレベルに配置されている複数の処理ユニットは、好ましくは機能的に同一であるので、特に各処理ユニットによって同一の処理ステップを実施して、最終的に単独の処理ユニットに比較して処理設備のより大きい処理容量を提供することができる。
【0100】
その場合に工作物は、好ましくはそれぞれそれ自体考えて、複数の処理ユニットの唯一のものに対応づけられており、かつこの唯一の処理ユニットを通過する。それに対して1つ又は複数の流体ガイドは、好ましくは処理ユニットにわたって形成されており、かつ特に同一の処理ステップを実施するための複数の処理ユニットに対応づけられている。
【0101】
重力方向に沿って互いに重ねて配置されている処理ステーションが、共通の流体ガイドによって接続されており、それによって特に流体が次々と個々の処理ステーションへ供給可能であり、かつ注入プロセスを実施するために利用可能であると、好ましい場合があって、その場合に特に重力を利用して流体が1つの処理ステーションから、重力方向に沿ってその下にある他の処理ステーションへ供給可能である。
【0102】
すべての処理ステーションの下方に共通のカウンタータンクが配置されており、かつ/又はすべての処理ステーションの上方に共通の流体タンクが配置されていると、効果的であり得る。
【0103】
その場合に流体は、特に流体タンクから上方の処理ステーションへ、その後下方の処理ステーションへ(場合によってはそれらの間で中間の処理ステーションへ)、そして最終的にカウンタータンク内へ案内可能である。カウンタータンクから流体は、好ましくはポンプ装置を用いて流体タンク内へ汲み上げて戻すことができる。
【0104】
処理設備が、互いに異なる処理流体を案内するための複数の流体ガイドを有していると、好ましい場合があり、その場合に流体ガイドは、様々な処理ステップを実施するために互いに異なる処理ステーションに対応づけられている。
【0105】
その代わりに、あるいはそれに加えて、処理設備が互いに異なる処理流体を案内するための複数の流体ガイドを有することができ、その場合に流体ガイドは同一の処理ステーションに対応づけられているので、選択的に異なる処理ステップを実施するために、処理ステーションに選択的にそれぞれ処理流体の1つが供給可能である。
【0106】
流体ガイドを用いて、流体が1つ又は複数の処理室に注入するために流体タンクからそれぞれの処理室内へ、かつ/又は処理室から排出するために、それぞれの処理室から流体タンク内へ案内される。
【0107】
流体が次々に、特に時間的に完全にずれて、流体タンクから取り出されて、1つ又は複数の処理室へ供給されると、好ましい場合がある。特にその後、たとえばそれに続いて、あるいは後の時点で、選択的にクリーニング装置内で流体を浄化した後に、流体は流体タンク内へ戻される。したがって流体タンク及び/又は1つあるいは複数の処理室は、好ましくは交互に充填され、かつ排出される。
【0108】
さらに、流体を次々と、特に時間的に完全にずらして、第1の処理ユニットの処理ステーション内の1つ又は複数の処理室へ供給し、その後、特にそれに続いて、あるいは後の時点で、たとえば中間貯蔵タンクに一時的に貯蔵した後に、第2の処理ユニットの処理ステーションの1つ又は複数の処理室へ供給することができる。
【0109】
処理設備が、工作物を処理するため、特に車両ボディをクリーニング及び/又はコーティングするために、複数の処理ステーションを有していると、好ましい場合があり、その場合に1つ又は複数の処理ステーションが好ましくは少なくとも1つの処理容器を有し、その処理容器が工作物を収容するための処理室を包囲している。
【0110】
本発明のある形態において、工作物を処理するため、特に車両ボディをクリーニング及び/又はコーティングするための処理設備は、次のものを有する:
a)複数の処理ステーション;それらがそれぞれ処理容器を有し、その処理容器が工作物を収容するための処理室を包囲している;
b)流体を収容するための1つ又は複数の流体タンク;及び
c)流体ガイド;これを用いて流体が、i)処理室の少なくとも1つに注入するために1つ又は複数の流体タンクから少なくとも1つの処理室内へ案内可能であり、ii)少なくとも1つの処理室から排出するために、少なくとも1つの処理室から1つ又は複数の流体タンク内へ案内可能である。
【0111】
処理ステーションの複数が、互いに異なる高さレベルに配置されていると、好ましい場合があり、その場合にこれらの処理ステーションの処理室は、流体ガイドによって次のように、すなわち流体が1つの処理室から次の処理室内へ、特に直接、あるいは流れに関して及び/又は流体タンクの垂直の配置を介してそれらの間にある中間貯蔵タンクを介して間接的に、案内可能であるように、互いに結合され、あるいは結合可能である。
【0112】
処理設備は、好ましくは垂直方向に重ねて配置された複数の処理レベルを有しており、その場合に処理レベルの1つ又は複数上に、好ましくはそれぞれ複数の処理ステーションが配置されている。処理レベルの1つ上に共通に配置されている処理ステーションの処理室は、好ましくは流体ガイドを用いて互いに、かつ/又は、1つ又は複数の他の処理レベル上に配置されている1つ又は複数の処理ステーションの1つの処理室又は複数の処理室と接続されている。
【0113】
処理レベルは、この明細書及び添付の請求項内で、特に、たとえば工作物が処理室へ供給され、あるいは工作物が処理プロセスを受ける、垂直方向における高さ位置である。
【0114】
処理設備が、共通の処理レベル上に配置された2つ又は2つより多い処理ステーションを有し、それらの処理室が流体ガイドによって互いに接続されていると、効果的な場合があり、その場合に処理設備はさらに、好ましくは制御装置を有しており、その制御装置は次のように、すなわち、特に重力のみを利用して流体が処理室の1つから処理室の他のもの内へ案内可能であることにより、処理室を互いに接続する流体ガイドを用いて、処理室の1つのものの部分的な充填プロセスが実施可能であるように、形成され、かつ構成されている。
【0115】
その場合に2つ処理室の流体接続は、特に、注入プロセスのために必要な充填高さの半分の下方、たとえば処理室のそれぞれの底領域内に、設けられている。
【0116】
流体接続は、特に互いに連通するパイプの原理に基づいており、それによれば流体は、2つの処理室内で同じ充填状態(レベル状態)が達成されるまで、自動的に処理室の1つから他の処理室へ流れる。
【0117】
したがって少なくともほぼ構造の等しい流体タンクが同一の高さレベルにある場合に、特に1つの流体タンク内に含まれる流体の約半分を他の流体タンクへ供給することができる。
【0118】
第1の流体タンクの残りの排出は、特に重力の影響によって垂直方向においてより低い位置にある流体タンク内へと行うことができ、他の流体タンクに残りを注入することは、垂直方向においてより高い位置にある流体タンクから流体を供給することによって行うことができる。
【0119】
たとえば、流体循環の内部で垂直方向と水平方向におけるカスケードガイドを設けることができる。
【0120】
特に、上方と下方のレベル(より高い位置にある処理レベルとより低い位置にある処理レベル)上の流体循環の内部に、それぞれ2つの、たとえば構造の等しい処理ステーション、特に構造の等しい流体タンクを設けることができ、それらは特に交互に注入される。これら2つのレベルの間に、好ましくは付加的な中間貯蔵タンクを設けることができる。その場合に各注入プロセス/排出プロセスにおいて、注入すべき処理室は50%だけ、同一レベル上の排出すべき処理室から注入することができる。その場合にそれぞれの処理室の注入すべき容量の残りの50%の注入もしくは排出は、たとえばその上に配置されている貯蔵タンク又は中間貯蔵タンクから、もしくはその下に配置されている中間貯蔵タンク又はカウンタータンク内へ、行われる。
【0121】
このような二重のカスケードガイドの利点は、特にポンプ体積流とそれに伴うエネルギ需要の削減であろう。というのは、上方のレベル上で行われる各注入プロセスのために、必要な流体量の50%だけ上方へ汲み上げれば済むからである。下方のレベルにおける注入プロセスのためには、好ましくはそれ以上のポンピングエネルギは不要である。
【0122】
処理プロセスを実施するために流体を次々と供給することができる、すべての流体タンクは、垂直方向に重ねて、あるいは少なくとも異なる高さレベルに配置することができる。
【0123】
さらに、2つ又はそれより多い流体タンクを水平方向に互いに隣接して配置することができる。
【0124】
流体の少なくとも一部は、好ましくはまず、垂直方向においてより高い位置にある流体タンクから、垂直方向においてより低い位置にある流体タンク内へ、その後水平方向においてより低い位置にある他の流体タンク内へ、そして最終的にその下にある流体タンク内へ案内される。
【0125】
特に、流体ガイドを用いて流体を交互に垂直と水平に案内することができる。
【0126】
流体ガイドが、貯蔵タンク及び/又は中間貯蔵タンクを有し、そこから選択的に、貯蔵タンクもしくは中間貯蔵タンクの下方に配置されている1つ又は複数の処理ステーションに流体を供給することができると、効果的であり得る。
【0127】
その場合に特に、注入プロセス用の処理室を選択し、他の処理室を迂回することができる。
【0128】
処理設備が圧力補償装置を有し、それを用いて複数の流体タンク及び/又は複数の処理容器が、特に液体充填状態が変化した場合に圧力を補償するために、互いに流体接続されていると、効果的であり得る。
【0129】
特に好ましくは、すべての流体タンクとすべての処理容器が、互いに流体接続されている。
【0130】
特に処理室内の充填状態が連続的に変化している場合に、圧力変動が生じる。したがって流体循環内、特に液体循環内のすべての流体タンクが、圧力補償開口部、特に通気開口部を有することができ、それを通してガス、特に空気が流入もしくは流出することができる。熱損失を回避し、かつ流体の、特に処理媒体の、蒸気の排出を回避するために、流体タンクと周囲との間でできるだけわずかなガス交換しか生じないようにすることが、望ましい場合がある。これを達成するために、流体タンクの通気開口部が、好ましくは配管又は通路によって互いに接続される。
【0131】
それによって、流体タンクの充填の間に押し出された空気は、他の流体タンク内へ、たとえば充填プロセス用の流体を取り出した流体タンク内へ、逃げることができる。それによって、周囲とのガス交換は不要である。
【0132】
したがって好ましくは、ガス収支、特に空気収支も閉鎖されたシステムを形成する。このシステムを、処理ステーショのゲートを開放している間も閉鎖しておくために、この処理ステーションに対応づけられた圧力補償開口部、特に空気開口部に、特にゲート開放の期間の間空気開口部を閉鎖するために、キャップ又は弁を設けることができる。それによって好ましくは、残りの流体タンクの間の空気交換はシステムの内部だけで行われ、開放された処理ステーションを通しては行われないことを、保証することができる。
【0133】
流体タンクの間のガス交換をシステム内部のみで行わせることが望まれるが、安全の視点に基づいて、圧力補償開口部を接続するパイプシステム又は通路システムに周囲への開口部も形成されていると、有意義な場合がある。この圧力補償開口部は、好ましくは、工作物を処理ステーションへ移送する、移送技術のハウジングに接続することができる。
【0134】
圧力補償開口部、特に通気開口部及び/又は圧力補償装置の1つ又は複数の圧力補償導管が、それらが同時に、上方のレベルに位置決めされている流体タンクのためにカウンタータンク内への溢流口として用いることができるように、配置され、形成され、かつ/又は寸法設計されていると、好ましい場合がある。そのために圧力補償開口部、特に通気開口部は、好ましくは流体タンクの最大の充填高さの領域内に、特に天井領域内に位置決めされる。
【0135】
1つ又は複数の圧力補償導管が、同時に流体、特に液体を下方へ、そしてガスを上方へ流すことができるように、寸法成形され、かつ/又は形成されていると、好ましい場合がある。したがって溢流した場合でも、圧力補償が可能である。
【0136】
流体ガイドは、好ましくは1つ又は複数のバイパス導管を有しており、それを用いて流体が垂直方向下方へ1つ又は複数の流体タンクを迂回することができ、かつ垂直方向においてより低い位置にある1つ又は複数の流体タンク内へ充填可能である。
【0137】
垂直方向の関連は、この明細書及び添付の請求項において、好ましくは単に様々な高さ位置の参照に用いられる。その場合に垂直方向の配置又は運動は、必ずしもそれ自体垂直に延びる必要はなく、垂直の成分を持てばよい。
【0138】
特に、処理ステーションが異なる高さレベルに配置されており、かつ共通の流体ガイドを用いて互いに接続されている場合に、処理設備が1つ又は複数のバイパス導管を有することができ、それを用いて、互いに連続する流体タンクへ流体を供給する代わりに、流体供給のない1つ又は複数の流体タンクをスキップすることができる。
【0139】
還流装置を用いてカウンタータンクとして形成されている一番下の流体タンクから流体を直接、特に貯蔵タンクとして形成されている一番上の流体タンクを介して迂回することなしに、中間貯蔵タンクへ供給可能であると、好ましい場合がある。それによって、中間貯蔵タンクとカウンタータンクの間に配置されている処理ステーションは、その上に配置されている処理ステーションが、たとえば保守作業に基づいて駆動から外れている場合でも、利用しつづけることができる。
【0140】
その代わりに、あるいはそれに加えてさらに、バイパス導管を用いて流体が、中間貯蔵タンクとして形成されている流体タンクから直接、カウンタータンクとして形成されている流体タンクへ、特に処理ステーションの流体タンクを通して流体を案内することなしに、供給可能である。流体は、好ましくはさらに、カウンタータンクから直接、貯蔵タンクとして形成されている一番上の流体タンクへ供給可能である。それによって、特に中間貯蔵タンクと貯蔵タンクとの間に配置されている処理ステーションは、その下に配置された処理ステーションが、たとえば保守作業によって駆動から外れている場合でも、利用しつづけることができる。
【0141】
本発明のある形態において、処理設備が、垂直方向において2つ又は2つより多い処理ステーションの間に配置された中間貯蔵タンクを有することができ、かつ流体ガイドが還流導管を有することができ、それを用いて流体が垂直方向において中間貯蔵タンクの下方に配置されている流体タンクからこの中間貯蔵タンクへ供給可能である。
【0142】
好ましくは、1つ又は複数の貯蔵タンクかつ/又は1つ又は複数の中間貯蔵タンクに、それぞれ常に少なくともほぼ、次のステップにおいて処理プロセスを実施するために必要な流体量が供給可能である。その場合に供給は、特に直接カウンタータンクから、かつ/又は直接1つ又は複数の貯蔵タンク及び/又は1つ又は複数の中間貯蔵タンク内へ、行われる。
【0143】
処理設備が、垂直方向に一番下の流体タンク、特にカウンタータンクから流体を、垂直方向により高い位置にある流体タンク、特に中間貯蔵タンク内へ、あるいは垂直方向に一番上の流体タンク、特に貯蔵タンク内へ、還流させる還流装置を有していると、効果的な場合がある。
【0144】
還流装置がポンプ装置を有することができ、そのポンプ装置を用いて還流プロセスが次のように、すなわち流体が少なくともほぼ連続的に、かつ/又は少なくともほぼ一定の流体体積流及び/又は流体質量流で還流されるように、実施可能であり、かつ/又はポンプ装置が処理設備の制御装置を用いて次のように、すなわち流体が少なくともほぼ連続的に、かつ/又は少なくともほぼ一定の流体体積流及び/又は流体質量流で還流されるように、制御可能であって、その場合にポンプ装置を用いて発生された流体体積流及び/又は流体質量流は好ましくは、処理ステーションの処理室を充填する際の流体の流体体積流及び/又は流体質量流の、最大で約10分の1、特に最大で約50分の1である。
【0145】
垂直方向により高い位置にある流体タンクから垂直方向により低い位置にある流体タンク内へ流体を供給するための1つ又は複数の流体導管は、好ましくはエネルギ回収装置、特にタービンを有している。
【0146】
特にエネルギ回収装置は、カウンタータンクとして用いられる流体タンクの上流に配置することができる。
【0147】
1つ又は複数のエネルギ回収装置が、フォールパイプとして形成された1つ又は複数の供給導管内に配置されていると、好ましい場合がある。
【0148】
弁装置、特に1つ又は複数の弁キャップが、エネルギ回収装置の下流に配置されており、特に同一の供給導管内に配置されていると、好ましい場合がある。それによって好ましくは、エネルギ回収装置の、特にタービンの、流体と接触する部分が、中断されずに流体によって覆われ、あるいは満たされることを、保証することができる。
【0149】
本発明のある形態において、1つ又は複数の流体タンクが次のように、すなわちその1つ又は複数の流体タンクを流体、特に液体を流出させることによって排出することにより、1つ又は複数の流体タンク内に負圧が発生され、あるいは発生可能であるように、流体密に密閉可能であり、あるいは密閉されており、その負圧が後の時点で特に、1つ又は複数の流体タンクを簡単に充填するために、利用可能である。
【0150】
この種の流体密の密閉は、特に中間貯蔵タンクが流体で満たされ、かつカウンタータンクとして形成されている流体タンクが少なくとも限りなく空である場合に、行うことができる。中間貯蔵タンクから排出することによって、その中に負圧を発生させることができ、一方で、カウンタータンク内には流入する流体が過圧を発生させる。その場合にこの圧力状況は、流体が還流装置によってカウンタータンクから中間貯蔵タンク内及び/又は貯蔵タンク内へ移送される場合に、ポンプ出力又はポンピング効率を上昇させるために、利用することができる。
【0151】
本発明の他の形態において、垂直方向に一番下の流体タンクに、一番下の流体タンクの流体を再生させるっための流体再生循環が設けられており、それが少なくとも1つのポンプ装置、少なくとも1つの熱交換器及び少なくとも1つのクリーニング装置を有している。
【0152】
好ましくは、流体の温度調節をする熱交換器が設けられ、流体再生循環のポンプ装置の下流に配置されており、かつさらにクリーニング装置が好ましくは熱交換器の下流に配置されている。
【0153】
流体再生循環によって、垂直方向に一番下の流体タンク内、特にカウンタータンク内の流体が、好ましくは連続的に、再生されるので、還流装置を介して垂直方向により高い位置にある流体タンク、特に貯蔵タンクと中間タンクへ還流される流体が、少なくとも部分的に再生されており、すなわち特に少なくとも部分的に浄化されている。
【0154】
本発明の課題は、さらに、簡単かつ効率的に実施可能な、工作物を処理する方法を提供することである。
【0155】
この課題は、本発明によれば、独立した方法請求項に記載の方法によって解決される。
【0156】
この方法は、好ましくは、処理設備に関連して記述された特徴及び/又は利点の1つ又は複数を有している。好ましくはさらに、処理設備は、この方法に関連して記述された特徴及び/又は利点の1つ又は複数を有している。
【0157】
方法が以下のことを有していると、効果的であり得る:
流体を、
i)少なくとも1つの処理室に注入するために、1つ又は複数の流体タンクから少なくとも1つの処理室内へ、かつ/又は
ii)少なくとも1つの処理室から排出するために、少なくとも1つの処理室から1つ又は複数の流体タンク内へ、
案内する。
【0158】
注入プロセスを準備するために流体が、処理室の上方に配置された流体タンクへ少なくともほぼ、注入プロセスを実施するために必要な量で、供給されると、好ましい場合がある。
【0159】
特に、注入プロセスを実施するために必要な量の、120%未満、好ましくは110%未満が供給される。
【0160】
本発明の形態において、還流装置を用いて流体を選択的に、
a)貯蔵タンクを流体によって満たし、かつ貯蔵タンクの下方に配置されている処理ステーション内の注入プロセス用の流体を準備するために、貯蔵タンクへ供給し;あるいは
b)バイパス導管を用いて処理ステーションを迂回して、循環内で案内する、
ことができる。
【0161】
本発明の特に好ましい形態において、特に垂直方向に一番上の流体タンクを形成する貯蔵タンクを連続的に流体、特に処理流体、好ましくは処理液体で満たすことができる。したがってポンプ装置が流体を、好ましくは連続的に貯蔵タンク内へ移送する。
【0162】
1つ又は複数の弁装置を用いて、好ましくは2つ又は2つより多い流体容器間に流体接続が形成されるので、特に、フォールパイプとして形成されている1つ又は複数の供給導管を介して、流体がその下に位置する1つ又は複数の流体タンク内へ流入することができる。
【0163】
制御装置を用いて、1つ又は複数の弁装置の開放が、好ましくは次のように、すなわちその下にある1つ又は複数の流体タンク内に少なくともほぼあらかじめ定められ充填状態が達成されるように、開ループ制御され、かつ/又は閉ループ制御される。その場合に開ループ制御及び/又は閉ループ制御は、貯蔵タンク内及び/又は中間貯蔵タンク内及び/又はそれぞれの流体タンク内の充填状態を測定し、あるいは他のように求めることによって行うことができる。
【0164】
注入プロセスの開始時の中間貯蔵タンク又は貯蔵タンク内の充填状態にしたがって、注入プロセス後にその中で残留充填状態が維持され、あるいは中間貯蔵タンク又は貯蔵タンクは、注入プロセスの間空になることができるので、その下にある流体タンク内で処理プロセスを実施するために必要な目標充填状態に達するまで、ポンプ装置によって中間貯蔵タンク又は貯蔵タンク内へ移送される流体が、じゃまされずに中間貯蔵タンク又は貯蔵タンクを通ってその下に位置する流体タンク内へ、特に処理室内へ流入する。
【0165】
その代わりに、一番上の流体タンク、特に貯蔵タンクは、各注入プロセスの前に、ポンプ装置によって正確に、処理室に1回注入するためにその下に位置する流体タンク内で必要とされる流体量で充填することができる。この場合において、注入プロセスのために、流体タンク、特に貯蔵タンクからその下に位置する流体タンク内へ完全に放出されるまで、弁装置が開放される。このようにして、きわめて動的な注入プロセスの間充填状態測定を利用する必要がないので、目標充填状態をより簡単に調節することができる。それによって充填しすぎる危険は、最小限に抑えられる。
【0166】
その場合に選択的に、少なくとも注入プロセスが続く間、カウンタータンク内へのポンピングプロセスを中断することができ、それによって一時的に移送体積流の増大が必要となる場合がある。好ましくはこの場合において、ポンプ循環内にバイパスが設けられ、それによって、オン-オフプロセスによってポンプの摩耗を増大させる代わりに、移送プロセスの中断の間、媒体を循環させることができる。
【0167】
本発明の他の好ましい特徴及び/又は利点が、実施例についての以下の説明及び図面表示の対象である。
【0168】
図面において:
【図面の簡単な説明】
【0169】
【
図1】
図1は、処理設備の第1の実施形態の図式的な表示であって、それにおいて貯蔵タンク、処理ステーション、中間貯蔵タンク、他の処理ステーション及びカウンタータンクが重なり合うように配置されている。
【
図2】
図2は、処理設備の第2の実施形態の、
図1と同様の図式的な表示であって、それにおいて2つの処理レベルにそれぞれ2つの処理ステーションが配置されている。
【
図3】
図3は、処理設備の第3の実施形態の、
図1と同様の図式的な表示であって、それにおいて1つの処理レベルの少なくとも1つの処理ステーションを迂回するためにバイパス導管が設けられている。
【
図4】
図4は、処理設備の第4の実施形態の、
図1と同様の図式的な表示であって、それにおいて複数の処理レベルの複数の処理ステーションを迂回するために複数のバイパス導管が設けられている。
【
図5】
図5は、処理設備の第5の実施形態の、
図1と同様の図式的な表示であって、それにおいてカウンタータンクに流体再生循環が設けられている。
【発明を実施するための形態】
【0170】
等しい部材又は機能的に等価の部材には、ずべての図において同一の参照符号が付されている。
【0171】
全体を符号100で示す処理設備の、
図1に示す実施形態は、工作物102、特に車両ボディ104を処理するために用いられる。
【0172】
処理設備100は、たとえばコーティング設備、前処理設備及び/又は塗装設備であって、それらは自動車、特に乗用自動車を製造する場合に使用される。
【0173】
処理設備100は、複数の処理ステーション106を有しており、それらの処理ステーションにおいて処理ステップ、特に前処理ステップ、コーティングステップ及び/又は塗装ステップを実施することができる。
【0174】
処理ステーション106は、それぞれ処理室108を有しており、その処理室は処理容器110によって包囲されている。処理容器110は、特に流体タンク112によって形成されており、その流体タンクに流体を充填することができる。
【0175】
流体は、特に処理流体、たとえば処理液である。
【0176】
さらに処理設備100は複数の他の流体タンク112を有しており、その他の流体タンクは、処理容器110を形成する1つ又は複数の流体タンク112内に流体が配置されていない場合に、流体を収容し、かつ/又は準備するために用いられる。
【0177】
他の流体タンク112は、特に貯蔵タンク114、カウンタータンク116及び中間貯蔵タンク118を形成し、貯蔵タンクは特に垂直方向において一番上の位置に配置されており、カウンタータンクは特に垂直方向において一番下の位置に配置されており、かつ中間貯蔵タンクは、処理容器110を形成する2つの流体タンク112の間に配置されている。
【0178】
処理設備100は、さらに流体ガイド120を有しており、その流体ガイドを用いて、1つの流体タンク112から次の流体タンクへ流体を案内することができるようにするために、流体タンク112が流体作用的に互いに接続されており、あるいは接続可能である。
【0179】
特に流体ガイド120を用いて、処理室108に流体を供給可能であり、かつ処理後に流体を処理室から搬出可能である。
【0180】
流体ガイド120は、複数の供給導管122を有しており、それらの供給導管を用いて特に、垂直方向により高い位置にある流体タンク112から流体を垂直方向により低い位置にある流体タンク112へ案内することができる。その場合にポンプ又は他の駆動装置は不要である。供給導管122を介しての流体の供給は、好ましくは重力のみを利用して行われる。
【0181】
供給導管122内に、供給すべき流体量及び/又は流体体積流及び/又は流体質量流を調節し、開ループ制御し、かつ/又は閉ループ制御することができるようにするために、好ましくは弁装置124が配置されている。特に開ループ制御及び/又は閉ループ制御するために、処理設備100の制御装置(図示せず)を設けることができる。
【0182】
流体ガイド120は、さらに還流装置126を有しており、それを用いて流体を重力方向に抗して、垂直方向により低い位置にある流体タンク112から垂直方向により高い位置にある流体タンク112内へ案内可能、特に移送可能である。そのために還流装置126は、特にポンプ装置128と還流導管130を有しており、その還流導管がカウンタータンク116を貯蔵タンク114と直接接続する。
【0183】
供給導管122と還流導管130は、特に流体タンク112と共に、処理室108内の流体を反復して使用するための閉成された流体循環132を形成する。
【0184】
流体を再生及び/又は浄化するために、処理設備100は好ましくはクリーニング装置134を有しており、それを用いて特に流体から汚れを除去することができ、かつ/又は最適かつ均一な処理結果を保証するために、流体の化学的組成が調節可能である。
【0185】
クリーニング装置134は、たとえば還流導管130内に配置され、あるいはそれと接続されているので、流体の浄化又は他の再生は、特に流体がカウンタータンク116から貯蔵タンク114へ還流する間に行うことができる。
【0186】
さらに処理設備100は、選択的に、流体の温度調節のための熱交換器136を有している。熱交換器136は、流体を必要に応じて加熱又は冷却することができるようにするために、任意の熱源又はヒートシンクと結合することができる。また熱交換器136は、たとえば還流導管130内に配置され、あるいはそれと接続されているので、流体の温度調節は、特に流体をカウンタータンク116から貯蔵タンク114内へ還流させる間に行うことができる。
【0187】
図1から明らかなように、処理設備100はさらに圧力補償装置138を有しており、その圧力補償装置が流体タンク112を流体作用的に互いに、かつ/又は処理設備100の周囲と接続する。その場合に圧力補償装置138が、流体タンク112間のガス交換を可能にし、流体ガイド120が液体交換を可能にする。
【0188】
圧力補償装置138によって、特に流体タンク112の充填と排出の際に生じる、流体タンク112内の圧力変動を補償することができる。
【0189】
場合によって流体から漏れた蒸気又はその他の、流体容器112内に生じるガス状の不純物は、圧力補償装置138を介して好ましくは環境になじむように搬出し、特に熱的に処理して、廃棄することができる。
【0190】
図1に示す処理設備100の実施形態は、以下のように機能する:
【0191】
まず流体が貯蔵タンク114内に準備されて、その下にある、上方の処理室108を形成する流体タンク112内に工作物が浸漬される。その後流体タンク112は、それへの流入を可能にし、かつ周囲への流体の望まれない流出を回避するために、閉鎖される。その場合に工作物102は、完全に、あるいは少なくとも部分的に流体によって包囲され、その場合に化学的又は物理的処理、たとえばクリーニングステップ又はコーティングステップが実施される。
【0192】
この処理の後に、流体が、上方の処理室108を形成する流体タンク112から放出される。その場合に流体は、中間貯蔵タンク118内へ達し、かつそれに伴って流体を新たに利用するために、下方の処理室108を形成する流体タンク112内に準備される。
【0193】
この下方の処理室108内に工作物102が投入されて、処理室108が閉鎖されるとすぐに、中間貯蔵タンク118からの流体が供給されて、工作物処理が実施される。その場合にこの工作物処理は、好ましくは、上方の処理室108内で実施される工作物処理に相当する。
【0194】
それに続いて流体が下方の処理室108から放出されて、その場合にカウンタータンク116内へ達する。
【0195】
そして還流装置126を用いて流体を、特にクリーニング装置134により流体を浄化した後、かつ/又は熱交換器136により温度調節した後に、新たに貯蔵タンク114へ供給することができる。
【0196】
図2に示す処理設備100の第2の実施形態は、
図1に示す第1の実施形態から、それぞれ2つの処理室108が同一の高さレベルに、すなわち水平方向に並んで設けられていることによって、実質的に区別される。
【0197】
同一の高さレベルに配置された2つの処理室108は、それぞれその底領域内で流体導管140によって流体作用的に互いに接続されている。流体導管140内には、流体接続を選択的に形成し、あるいは阻止することができるようにするために、それぞれ弁装置124が配置されている。
【0198】
流体導管140は、特に1つの処理室108から同一の高さ水準に配置されている他の処理室108へ流体を供給することを可能にする。そのためにまず、処理室108の1つだけにその上にある流体タンク112から流体が充填され、他の処理室108は空のままである。まず充填された処理室108内で工作物処理が行われた後に、流体ガイド140内の弁装置124を開放することができるので、流体が他の処理室108内へ流入し、かつそれが充填される。
【0199】
2つの処理室108は同一の高さレベルに配置されており、かつこの箇所においてポンプ装置は好ましくは省かれるので、弁装置124の開放によっては、他の処理室108内への流体の完全な移行は行われない。むしろ両処理室108内の充填状態が一様化されるだけである。
【0200】
その後、次のステップにおいて必要に応じて他の処理室108を所望の充填状態に充填するために、弁装置124が閉鎖されて、その上に位置する流体タンク112から流体が供給される。
【0201】
まず充填された処理室108は、他の処理室108内へ流入しない流体がその下に位置する流体タンク112、特に中間貯蔵タンク118内へ放出されることによって、特にそれに並行して完全に空にされる。
【0202】
したがって
図2に示す処理設備100の第2の実施形態において、流体は、好ましくは少なくとも部分的に交互に、水平方向と垂直方向にさらに案内される。
【0203】
同一の高さレベルの流体を部分的に利用することによって、好ましくは処理設備100のエネルギ効率を最適化することができる。
【0204】
そのほかにおいて、
図2に示す処理設備100の第2の実施形態は、構造と機能に関して
図1に示す第1の実施形態と一致するので、その限りにおいて上述したその説明が参照される。
【0205】
図3に示す処理設備100の第3の実施形態は、
図2に示す第2の実施形態から、付加的な流体導管が設けられており、それが中間貯蔵タンク118をカウンタータンク116と直接接続することによって、実質的に区別される。この流体導管はバイパス導管142であって、それが下方の処理室108を形成する流体タンク112を迂回している。
【0206】
バイパス導管142内に配置されている弁装置124によって、中間貯蔵タンク118からカウンタータンク116内への流体流が開ループ制御可能かつ/又は閉ループ制御可能である。
【0207】
したがってバイパス導管142は、下方の処理室108を迂回して流体循環132を維持することを可能にするので、処理設備100は特に、下方の処理室108がたとえば保守作業によって駆動されていない場合に、引き続き利用することができる。
【0208】
さらに、
図3に示す第3の実施形態の処理設備100は、還流導管130内に分岐144を有しているので、流体は還流装置126によって選択的に貯蔵タンク114へ、あるいは中間貯蔵タンク118へ供給可能である。
【0209】
したがって貯蔵タンク114及びそのすぐ下にある上方の処理室108は、同様に選択的に迂回することができるので、必要な場合には、下方の処理室108のみを利用することができる。その場合に上方の処理室108は、たとえば保守目的で接近することができる。
【0210】
選択的にさらに、説明され、かつ/又は示される実施形態の各々において、エネルギ回収装置141を設けることができ、そのエネルギ回収装置は、たとえば
図3の処理設備100のバイパス導管142内に示されている。
【0211】
エネルギ回収装置141は、流体の位置エネルギ及び/又は運動エネルギを電気的エネルギ及び/又は機械的エネルギに変換するために用いられる。したがってたとえば中間貯蔵タンク118から流出する流体は、機械的及び/又は電気的エネルギを発生させるために利用することができる。それによって、流体ガイドの駆動に必要な絵エネルギの少なくとも一部は、好ましくは回収することができる。
【0212】
そのほかにおいて、
図3に示す処理設備100の第3の実施形態は、構造と機能に関して
図2に示す第2の実施形態と一致するので、その限りにおいて上述したその説明が参照される。
【0213】
図4に示す処理設備100の第4の実施形態は、
図3に示す第3の実施形態から、中間貯蔵タンクが設けられていないことによって、実質的に区別される。
【0214】
もっと正確に言うと、流体ガイド120の供給導管122、バイパス導管142及びその他の流体導管140が設けられており、それらを介して貯蔵タンク114から始まってすべての処理室108に、直接又は間接的に先行する処理室108を介して流体が供給可能である。
【0215】
さらに、貯蔵タンク114からカウンター容器116へ延びる、一貫したバイパス導管142を用いて、必要な場合にはすべての処理室108が迂回可能である。それによって、特に一時的に工作物処理は実施されないが、ポンプ装置128の遮断は望ましくない場合にも、流体循環132は維持可能である。
【0216】
そのほかにおいて、
図4に示す処理設備100の第4の実施形態は、構造と機能に関して
図3に示す第3の実施形態と一致するので、その限りにおいて上述したその説明が参照される。
【0217】
図5に示す処理設備100の第5の実施形態は、
図3と4に示す第3もしくは第4の実施形態から次のことによって、すなわち処理設備100の流体ガイド120の最大に設けられた拡充段階内でカウンタータンク116に、カウンタータンク116の流体を再生するための流体再生循環146が配置されており、バイパス導管142が設けられており、かつ圧力補償装置138が設けられており、それが、液体充填状態が変化した場合に圧力を補償するために、すべての流体タンク112と処理室108を互いに流体接続することによって、実質的に区別される。
【0218】
流体再生循環146がカウンタータンク116から流体を導出し、かつ流体がポンプ装置128によって流体再生循環146を通して移送される。
【0219】
ポンプ装置128の下流には、流体の温度調節に用いられる熱交換器136が配置されており、そして熱交換器136の下流には、流体の再生に用いられるクリーニング装置134が配置されている。
【0220】
クリーニング装置134の下流において、再生された流体がカウンタータンク116へ供給される。
【0221】
流体の再生は、好ましくは処理設備100の駆動の間連続的に行われる。カウンタータンク116内に集められる流体の再生によって、少なくとも部分的に再生された流体が還流装置126内へ案内されて、それによって少なくとも部分的に再生されて再び貯蔵タンク114及び/又は中間貯蔵タンク118内に準備される。
【0222】
還流導管130内には、さらに、還流装置126のポンプ装置128の下流に他のクリーニング装置134を設けることができ、そのクリーニング装置が還流された流体をさらに再生処理して、その後に流体が貯蔵タンク114及び/又は中間貯蔵タンク118へ供給される。
【0223】
バイパス導管142が、貯蔵タンク114、中間貯蔵タンク118及びカウンタータンク116を互いに接続する。
【0224】
一方で、バイパス導管142によって、貯蔵タンク114からの流体を中間貯蔵タンク118を迂回してカウンタータンク116内へ案内することが可能であって、そのために弁装置124は中間貯蔵タンク118のすぐ上流で遮断された位置になければならない。したがってたとえば貯蔵タンク114はカウンタータンク116内へ放出することができる。
【0225】
他方で、バイパス導管142を用いて貯蔵タンク114から流体を上方の処理容器110を迂回し、分岐144を介して中間貯蔵タンク118内へ案内することを可能にすることができ、それによってより多くの流体が処理するために下方の処理容器110へ提供される。
【0226】
貯蔵タンク114からの流体を中間貯蔵タンク118内へ迂回させるためには、貯蔵タンク114とカウンタータンク116の間に配置された付加的な弁装置124(分岐144の下流に配置されている)が、遮断された位置になければならない。
【0227】
さらに、処理設備100を通過する工作物102の通過量が少ない場合に、たとえば1つの水平のレベル上の、すなわち1つのレベルのすべての処理容器110内の、かつ/又はレベル毎の処理容器110内の処理は、省くことができる。
【0228】
そのほかにおいて、
図5に示す処理設備100の第5の実施形態は、構造と機能に関して
図3と4に示す第3もしくは第4の実施形態と一致するので、その限りにおいて上述したその説明が参照される。
【符号の説明】
【0229】
100 処理設備
102 工作物
104 車両ボディ
106 処理ステーション
108 処理室
110 処理容器
112 流体タンク
114 貯蔵タンク
116 カウンタータンク
118 中間貯蔵タンク
120 流体ガイド
122 供給導管
124 弁装置
126 還流装置
128 ポンプ装置
130 還流導管
132 流体循環
134 クリーニング装置
136 熱交換器
138 圧力補償装置
140 流体導管
141 エネルギ回収装置
142 バイパス導管
144 分岐
146 流体再生循環
【国際調査報告】