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  • 特表-チゲサイクリンを含む医薬組成物 図1
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  • 特表-チゲサイクリンを含む医薬組成物 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】チゲサイクリンを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/65 20060101AFI20250128BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250128BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
A61K31/65
A61K9/72
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/04
A61P11/00
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535663
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2022085366
(87)【国際公開番号】W WO2023110739
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】102021000031133
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.ZIPLOC
(71)【出願人】
【識別番号】524223769
【氏名又は名称】ツァンボン エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】ZAMBON S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via Lillo Del Duca, 10 20091 Bresso Milano ITALY
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッギ, ロレッタ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェネチアーニ, クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ブッチ, ヘイケ
(72)【発明者】
【氏名】ザネロッティ, ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】タンゲリーニ,ジョバンニ
(72)【発明者】
【氏名】カポネッティ, ジョバンニ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA93
4C076BB22
4C076CC32
4C076DD22Z
4C076DD41Z
4C076DD51
4C076DD67
4C076EE41
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA29
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA13
4C086NA03
4C086NA11
4C086ZA59
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、組成物の総重量に対して50重量%未満の量のグリシルサイクリン、特にチゲサイクリン、前記チゲサイクリンの量以上の量のラクトース、及び場合によりロイシンを含む、吸入投与のための乾燥粉末の形態の医薬組成物に関する。

【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入投与のための乾燥粉末の形態の医薬組成物であって、
前記医薬組成物の総重量に対して50重量%未満の量でグリシルサイクリン、特にチゲサイクリンを含み、前記グリシルサイクリンの量以上の量でラクトースを含む、
吸入投与のための乾燥粉末の形態の医薬組成物。
【請求項2】
前記グリシルサイクリンの量対前記ラクトースの量の重量比が、1:1~1:3、好ましくは1:1~1:2である、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物は、ロイシンを含む、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が、前記医薬組成物の総重量に対して5重量%~30重量%、好ましくは10重量%~25重量%の量で前記ロイシンを含む、
請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記乾燥粉末が、10.0μm未満、好ましくは7.0μm未満、より好ましくは5.0μm未満のX90を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記乾燥粉末が、5μm未満、好ましくは2μm~4μmのMMADを有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記乾燥粉末が、50%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超の呼吸可能割合(FPF)を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物が、前記医薬組成物の総重量に対して15重量%~45重量%、好ましくは20重量%~40重量%、より好ましくは25重量%~35重量%の量で前記グリシルサイクリンを含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物が、前記医薬組成物の総重量に対して30重量%~85重量%、好ましくは35重量%~80重量%、より好ましくは40重量%~75重量%の量で前記ラクトースを含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記グリシルサイクリンが、前記医薬組成物の前記グリシルサイクリンの総重量に対して90~100%の量で非晶質固体状態で存在する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
グリシルサイクリン、特にチゲサイクリンを含む、吸入投与のための乾燥粉末の形態の医薬組成物を調製するための方法であって、
グリシルサイクリン、特にチゲサイクリン、ラクトース、及び場合によりロイシンを含む水性溶媒において溶液を調製する工程(a)と、
10μm未満のX90を有する乾燥粉末を得るために、前記工程(a)の溶液を乾燥する工程(b)と、
前記乾燥粉末を回収する工程(c)であって、
前記溶液が、前記溶液に6.5~7.5のpH値を与えるのに必要な量の有機酸又は無機酸をさらに含む、工程(c)と、を含む、
方法。
【請求項12】
前記工程(b)が噴霧乾燥機の手段によって実施される、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記有機酸又は無機酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸及びリン酸、好ましくはギ酸及びリン酸からなる群から選択される、
請求項11から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
マイコバクテリアの感染の治療に使用するための吸入投与のための乾燥粉末の形態の医薬組成物であって、
前記医薬組成物が、前記医薬組成物の総重量に対して50重量%未満の量でグリシルサイクリン、特にチゲサイクリンを含み、前記グリシルサイクリンの量以上の量でラクトースを含み、場合によりロイシンを含む、
医薬組成物。
【請求項15】
前記マイコバクテリアが、非結核性マイコバクテリア(NTM)であり、好ましくは、ゆっくり増殖するNTM(SGM)及び急速に増殖するNTM(RGM)からなる群から選択される、
請求項14に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い通気性及び安定性を備えた吸入投与のための乾燥粉末の形態の医薬組成物に関する。
【0002】
特に、本発明は、グリシルサイクリンクラスに属する薬物、特にチゲサイクリンを含有する、マイコバクテリア、特に非結核性マイコバクテリアによって引き起こされる肺感染症の治療に適応される吸入粉末に関する。
【背景技術】
【0003】
マイコバクテリアは、1896年に最初に同定されたマイコバクテリウム属に属する。マイコバクテリウム属は、浸透圧、環境因子及び抗生物質に対する耐性を付与するろう状及びミコール酸に富む細胞壁を特徴とする約190の細菌種を含む。
【0004】
マイコバクテリア肺感染症に関しては、2つの主要な病原体、結核菌及び非結核性マイコバクテリア(NTM、非結核性マイコバクテリア)を区別することができる。
【0005】
結核(TB)の病原体である結核菌は、生息地、病原性、伝染性、及び化学療法剤に対する感受性において、他の全てのマイコバクテリア種とはきちんと異なり、世界で最も共通感染及び死亡の原因の1つである。
【0006】
それとは異なり、NTM肺感染症(NTM肺疾患、NTM-PD)は、たとえそれらが世界中で絶えず成長しているために、世界的な健康に対する主な関心事の1つになりつつあるとしても、あまり知られていない。
【0007】
非結核性マイコバクテリアの分類は、2つのステップに従った。第一段階は、マイコバクテリアを2群に細分することによって、増殖速度を特徴的な基準として用いることによって分類に至った。播種から7日後に肉眼で観察可能なコロニーは、ゆっくり増殖するNTM(ゆっくり増殖するマイコバクテリア、SGM)に属すると考えられたが、7日未満の目に見えるコロニーは急速に増殖するNTM(急速に増殖するマイコバクテリア、RGM)に起因すると考えられた。
【0008】
非結核性マイコバクテリアの分類の第二段階は90年代に始まり、リボソームDNA 16Sをコードする遺伝子の配列の研究が始まり、現在では150近くの種数の著しい増加をもたらしている。
【0009】
NTMは日和見病原体であり、主に免疫不全患者、又はのう胞性線維症(CF)、気管支拡張症又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの既存の肺疾患を有する患者において、ほぼ結核に類似する肺疾患を引き起こす。
【0010】
結核の発生率は過去数年間に減少し始めたが(2016年以降2.3%の減少)、NTM肺感染症の世界有病率は急速に増加している。年間の成長率は地域によって異なり、一般に0.2/100000~9.8/100000であり、世界的な成長率は驚くべきものである。この状況は、脆弱な人々の間で最も悪く、世界全体におけるNTMの有病率も、誤った診断に起因して推定されるよりも高くなり得るという認識の高まりが、さらなる懸念の原因である。
【0011】
発展途上国では、結核と誤診されたNTMの誤診が、痰塗抹標本の顕微鏡検査における類似の態様のために一般的である。これは多くの方法で問題である:NTMの発生率は広く過小評価されており、結核に対する世界的な戦いに専念するリソースを不必要に排出し、NTM感染が結核に対する古典的な薬物レジメンに応答しないため、患者の誤った治療をもたらす。
【0012】
マイコバクテリア肺感染症は、一般にエアロゾル吸入によって引き起こされる。これらのエアロゾルの供給源は、結核について注目され得るように、NTMについて、又は他の感染した個体からしばしば生じるような環境であり得る。一旦肺に入ると、これらの感染症の生理病理は比較的類似していると考えられるが、臨床的重症度は変化するようだ。両方の場合において、病原性侵入体は、肺胞マクロファージによって迅速に認識され、貪食され、そこでマイコバクテリアは生存し、細胞内レベルで増殖する。これに応じて、ヒト生物は、循環単球、好中球、T細胞及び樹状細胞の形態で免疫系を動員して、マイコバクテリア肺感染症の特徴的なマークの1つの肉芽腫を形成する。この戦略は多くの場合、隔離領域内の病原体の生存を可能にし、組織空洞化、播種、及び呼吸機能の低下をもたらす。したがって、任意のマイコバクテリア治療は、侵入する病原性侵入者を効果的に標的とするために、この炎症環境に浸透することができなければならない。
【0013】
肺感染症を引き起こすNTMの中で、Mycobacterium abscessus complex(MABc)は、特定のう胞性線維症を有する患者において、肺感染症に関連する最も重要なもの1つである。1992年に初めて分離されたMycobacterium abscessus complexは、Mabscessus sensu stricto(Mabscessus s.)、Mmassiliensee、Mbolletiiの3つの系統発生的に非常に類似した亜種に分けられている。
【0014】
MABcは、急速に増殖するマイコバクテリア(RGM)の最も病原性が高いと考えられている。特に、MABcは、マクロライドを含むほとんどの抗マイコバクテリア剤に対する内因性及び獲得耐性に関連する。
【0015】
過去数年にわたって、MABcヒト感染症の症例は、臨床分野においてかなりの懸念を引き起こしつつある。のう胞性線維症を有する患者、慢性呼吸器疾患を有する患者、及び気管支拡張症を有する患者からのMABcの臨床的隔離に関する文学的研究の数は絶えず増加しており、かつてないほど大きな臨床的重要性をカバーしている。現在、MABcはRGM肺感染症の約80%の原因であると考えられている。
【0016】
マイコバクテリア感染のための既知の治療はしばしば長く、主にマイコバクテリアの粘り強い性質及び肉芽腫性構造の発生のために、厳格な密着性を必要とする。現在の結核治療は、イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、及びピラジナミドを6~30ヶ月間投与することを含む。NTM肺感染症の治療は、3種又は4種の抗生物質の使用に基づいて、少なくとも12ヶ月間、ほぼ経験的である。
【0017】
一般に、非経口抗生物質、例えばアミノグリコシド(ストレプトマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、アミカシン及びトブラマイシン)、セフォキシチン、イミペネム又はチゲサイクリンと組み合わせたマクロライド(クラリスロマイシン又はアジスロマイシン)に基づく多剤レジメンが、少なくとも12ヶ月の治療のために処方され、これらはしばしば18~24ヶ月間延長される。
【0018】
NTM肺感染症の治療は、しばしば、結果として高い治療中断率を有する患者にとって、重大な経済的及び心理的負担を伴う。治療中断の主な原因は、治療の長期間、観察された改善の欠如、及び経口及び非経口投与に関連する重篤な副作用である。
【0019】
上記の理由から、NTM肺感染症の治療のためのより生物学的に利用可能な薬物によって構成される、より効果的でより安全なレジメンを開発する緊急の医学的必要性があり、それは吸入による抗生物質による治療の開発につながった。
【0020】
今日、吸入による薬物の投与は、以下のような吸入装置を用いた送達によって得られる:
薬物が懸濁形成で溶解又は分散され、微細な噴霧液滴として肺中に運ばれる噴霧器;
加圧された缶から空気中で急速に膨張する不活性ガスによって、依然として溶液又は懸濁液の滴の形態の薬物が肺内に運ばれる加圧吸入器;
吸入器内で薬物を送達し、それを微粉化乾燥粒子として肺内に運搬することができる粉末吸入器。
【0021】
WO2020/239696で公開された国際特許出願において、吸入によるマイコバクテリア感染の治療におけるグリシルサイクリン、特にチゲサイクリンの使用が提案されている。WO2020/239696は、吸入器のための溶液及び噴霧器のための粉末の使用を記載しており、後者は、WO2011/073002に記載の処理に従って実現され、98~99.9%のグリシルサイクリン及び0.1~2%の潤滑剤(特にステアリン酸マグネシウム)を含む。
【0022】
WO2006/099258に記載されているように、非経口経路によるマイコバクテリア感染の治療におけるグリシルサイクリン、特にチゲサイクリンの公知の溶液も存在し、これは、チゲサイクリン、ラクトース、マンノース、スクロース及びグルコースから選択される炭水化物、ならびに酸及び/又は緩衝液を含む粉末の水溶液中で、pH4~5の溶液を提供する量で再構成することによって得られる。WO2014/032956は、pH7.2~7.7のチゲサイクリン及びラクトースの溶液のバイアル中凍結乾燥技術によるチゲサイクリン-ラクトース粉末の調製の例を記載している。
【0023】
それにもかかわらず、グリシルサイクリン、特にチゲサイクリンは現在、これらの活性成分が40年以上にわたって知られているにもかかわらず、病院環境において静脈内注入のための溶液の製剤のみが存在し、承認されているか又は規制当局によって承認されているかのいずれかで、吸入による投与に適した製剤が存在しないように、製剤技術的困難性を提示する活性成分である。
【0024】
WO2006/099258及びWO2014/032956に記載されているような、非経口投与のための水溶液中で再構成するためのチゲサイクリン粉末を作製するために使用されるバイアル中凍結乾燥技術は、粉末形態での吸入投与に必要なサイズ及び空気力学的特性を得ることを可能にしない。凍結乾燥によって得られる粉末は、吸入による直接投与には適していない。
【0025】
粉末の形態の吸入製剤は、一般に直径が5.0μm未満、より好ましくは2.0μm未満の粒子を得るために、結晶形態の活性成分を粉砕/微粉化することによって従来得られてきた。一般に、賦形剤の使用は、微粉化された活性成分の粉末流動性の問題を解決することに限定されてきた。
【0026】
粉砕/微粉化に基づく製剤技術は、活性成分を処理することができるという観点から、化学的及び物理化学的特性が広く異なるものを含むいくつかの制限を有し、一方、最終製剤が呼吸器系の深部領域への吸入送達に適した空気力学的特性を有することを確実にすることが明らかである。
【0027】
この点に関して、良好な空気力学的特性を有する吸入粉末を得るための有効なアプローチは、噴霧乾燥の製造技術によって達成可能な粒子工学によって表される。この技術によれば、活性成分及び適切な賦形剤は、その空気力学的特性が組成物及び採用される処理条件によって定義される粒子を形成するために、組み合わされ得る。
【0028】
粒子工学によって提供される機会にもかかわらず、この技法は、克服するための配合上の困難がないわけではない。粉末吸入製品の開発において直面する最も重要なもの中には、製造工程の実施中に開発中の製品の十分な化学的安定性を確保する必要性があることは確かである。
【0029】
吸入製品の安定性は、粒子が肺の最も深い領域まで定量的に浸透するためにその物理的特性を保持しながら、深部肺に投与されなければならないという事実に関連して特に重要である。これには、吸入投与について現在承認され、及びしたがって肺組織に対する毒性に関して許容される賦形剤の数が極めて限られているという事実が追加されなければならない。
【発明の概要】
【0030】
上記のすべての考察を考慮すると、実装の容易さを維持しながら、一般的な乾燥粉末吸入器で安定かつ容易に投与可能なグリシルサイクリン、特にチゲサイクリンを含む乾燥粉末形態の吸入投与のための医薬組成物を作製することが有利であろう。
【0031】
当技術分野では安定であり、一般的な乾燥粉末吸入器と共に投与することができ、高い送達性及び通気性の特徴を保持し、経済的に有利な方法で工業的に製造することができる、グリシルサイクリン、特にチゲサイクリンを含む吸入製剤を提供する問題は、未解決のままであるか、又は不十分に解決されたままである。
【0032】
したがって、本出願人は、非結核性マイコバクテリア肺感染症の治療のための、グリシルサイクリン、特定チゲサイクリンを含む吸入製剤を作製する技術的問題に取り組んでおり、特定、マイコバクテリウム・アブッセスス(Mycobacterium Abscessus)複合体種に属するマイコバクテリアによって引き起こされる感染症に関心が寄せられている。
【0033】
特に、本出願人は、製造工程中及び乾燥粉末の形態の最終製品の両方において、チゲサイクリンの高い安定性を得るという問題に取り組んだ。
【0034】
同時に、本出願人は肺胞マクロファージに到達し、細胞壁を通る直接的かつ迅速な透過のメカニズムを通してそれらの中に浸透することができる目的で、最も遠位の気管支及び肺胞領域として同定される肺のより深い領域に、高い治療量で到達するために、高い通気性を確保するという問題に取り組んだ。
【0035】
本出願人は酸性化合物、特に有機酸又は無機酸、好ましくは乾燥工程の作業温度で不揮発性の酸性化合物を添加することによってpH7に維持されたチゲサイクリンを含む溶液中でラクトースを使用することにより、乾燥の手段によって粉末製造工程中に安定な溶液を得ることができ、同じ経時的に安定であり、最適な通気性を有する乾燥粉末を実現することができることを観察した。
【0036】
特に、本出願人は、これらの結果がラクトースの量がチゲサイクリンの量以上である場合に得られたことを観察した。
【0037】
本出願人はまた、乾燥工程において使用される溶液へのロイシンの添加が、得られる乾燥粉末の通気性及び流動性特性ならびに環境湿度に対するその安定性をさらに改善することを観察した。
【0038】
したがって、第1の態様では、本発明が組成物の総重量に対して50重量%未満の量のグリシルサイクリン、特にチゲサイクリンと、前記グリシルサイクリンの量以上の量のラクトースとを含む、吸入投与用の乾燥粉末の形態の医薬組成物に関する。
【0039】
有利には、本発明の第1の態様による医薬組成物はまた、ロイシンを含む。
【0040】
本出願人は、本発明による乾燥粉末中に存在するチゲサイクリンが実質的に非晶質形態であることを観察した。
【0041】
第2の態様において、本発明はまた、グリシルサイクリン、特にチゲサイクリンを含む、吸入投与のための乾燥粉末の形態の医薬組成物を調製するための方法であって、前記方法は、
グリシルサイクリン、特にチゲサイクリン、ラクトース、及び場合によりロイシンを含む水性溶媒において溶液を調製する工程(a)と、
10μm未満のX90を有する乾燥粉末をえるために、前記工程(a)の溶液を乾燥する工程(b)と、
前記乾燥粉末を回収する工程(c)であって、前記溶液が、前記溶液に6.5~7.5、好ましくは約7.0のpH値を与えるのに必要な量の有機酸又は無機酸をさらに含む、工程(c)と、を含む。
【0042】
第3の態様において、本発明がマイコバクテリア感染症、特に非結核性マイコバクテリアの治療に使用するための吸入投与用の乾燥粉末の形態の医薬組成物であって、前記組成物が、組成物の総重量に対して50重量%未満の量でグリシルサイクリン、特にチゲサイクリンを含み、前記グリシルサイクリンの量以上の量でラクトースを含む、医薬組成物に関する。
【0043】
第4の態様において、本発明は、マイコバクテリア感染症、特に非結核性マイコバクテリアの治療を必要とする対象におけるマイコバクテリア感染症の治療のための方法であって、組成物の総重量に対して50重量%未満の量でグリシルサイクリン、特にチゲサイクリンを含む乾燥粉末の形態の有効量の医薬組成物、及び前記グリシルサイクリンの量以上の量のラクトースの吸入による投与を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
ここで、説明は、添付の図面を参照して以下に示され、例示目的のみのために提供され、したがって、限定するものではない。
【0045】
図1図1は、チゲサイクリンの溶液を5℃、25℃及び40℃でそれぞれ24時間保存した後の、次第に強い色の分解生成物の形成を示している。
【0046】
図2図2は、噴霧乾燥によって得られた、チゲサイクリンとラクトースとを1:1の比で含む粉末(曲線A)と、チゲサイクリンとラクトースとロイシンとを1:1:1の比で含む粉末(曲線B)とを用いて得られた回折図を示す。
【0047】
図3A図3は、実施例1に記載の製剤1(3A)及び製剤2(3B)の試料の電子顕微鏡写真を示す。
図3B図3は、実施例1に記載の製剤1(3A)及び製剤2(3B)の試料の電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、組成物の総重量に対して50重量%未満の量のグリシルサイクリン、特にチゲサイクリンと、前記グリシルサイクリンの量以上の量のラクトースとを含む、吸入投与のための乾燥粉末の形態の医薬組成物に関する。
【0049】
本発明によれば、「吸入投与のための粉末」という表現は、肺投与に適した粉末を意味する。吸入投与のための粉末は、任意吸入器の手段により、その構成である活性成分の薬理学的特徴を発揮させるために、その構成である粒子が肺胞まで肺内に浸透できるように、散布及び吸入され得る。空気力学的直径が5.0μm未満の粒子は、通常吸入可能であると考えられる。
【0050】
本発明によれば、「乾燥粉末」という表現は、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは3%未満の湿度含有量を有する粉末を意味する。
【0051】
有利には、本発明の医薬組成物において使用されるグリシルサイクリンは、チゲサイクリンである。本発明の医薬組成物において有用な他のグリシルサイクリンは、エラバサイクリン、ならびに頭字語DMG-DMDOT、DMG-MINO、及びDMG-DOXYで知られている他の実験的グリシルサイクリンである。
【0052】
本発明の乾燥粉末の形成で医薬組成物中に存在するチゲサイクリンの量は、組成物の総重量に対して、好ましくは15重量%~45重量%、より好ましくは20重量%~40重量%、さらにより好ましくは25重量%~35重量%である。
【0053】
本発明の医薬組成物中に存在するラクトースの量は、組成物の総重量に対して、好ましくは30重量%~85重量%、より好ましくは35重量%~80重量%、さらにより好ましくは40重量%~75重量%である。
【0054】
有利には、本発明による医薬組成物中に存在するチゲサイクリンの量とラクトースの量との間の重量比は、1:1~1:3、好ましくは1:1~1:2である。
【0055】
有利には、本発明の医薬組成物はまた、ロイシンを含む。
【0056】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の医薬組成物は、組成物の総重量に対して5重量%~30重量%、好ましくは10重量%~25重量%の量のロイシンを含む。
【0057】
ロイシンは、賦形剤としてロイシンを含有する吸入粉末がまだ市場に導入されていないにもかかわらず、現在、その吸入後の局所耐容性特性が広く認識され、文書化されている天然アミノ酸である。
【0058】
ロイシンは疎水性アミノ酸であり、本出願人は乾燥工程中に、ロイシンが粒子の表面上に沈着する傾向があり、生成された粒子の耐湿性及び流動性を高める実質的に疎水性の層を形成することを観察した。
【0059】
有利には、本発明の医薬組成物が組成物の総重量に対して20重量%~40重量%、好ましくは25重量%~35重量%の量のチゲサイクリンと、組成物の総重量に対して30重量%~80重量%、好ましくは40重量%~70重量%の量のラクトースと、100重量%に達するのに必要な量の残りの部分のロイシンとを含む。
【0060】
特に好ましい態様では、本発明の医薬組成物が組成物の総重量に対して約30重量%の量のチゲサイクリン、45重量%~60重量%の量のラクトース、及び25重量%~10重量%の量のロイシンを含む。好ましくは、少なくとも90%の粒子が10.0μm未満、好ましくは7.0μm未満、より好ましくは5.0μm未満の等価粒径を有するように、本発明の医薬組成物が好ましくは粒度分布(X90)を有する。
【0061】
出願人はX90が低くなるほど、粉末の表面積が大きくなり、肺沈着が深くなることを観察した。
【0062】
特に、本発明による粉末中の医薬組成物は、5μm未満、好ましくは2μm~4μmの粒子の空気力学的質量中央径(Mass Median Aerodynamic Diameter-MMAD)を有する。
【0063】
有利には、本発明による粉末中の医薬組成物は、50%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超の呼吸可能な微粒子割合(FPF)を有する。
【0064】
「微粒子割合(FPF)」という用語は、5.0μm未満の空気力学的直径(dae)を有する、吸入器によって送達される全粉末に対する粉末の割合を意味する。「送達された割合(DF)」という用語は、総荷電成分に対する、送達された活性成分の割合を意味する。これらの粉末特性を評価するために実施される特性評価試験は、欧州薬局方の現行版に記載されている次世代インパクター(NGI)である。本発明によれば、この試験を実行するための条件は、60±2リットル/分の流量が生成されるように、粉末を吸入器を通して吸引することからなる。この吸入器mod.RS01(Plastiape、Osnago IT)の場合のフローは、1.4 KPaのシステムにおける圧力降下を生成することによって得られる。
【0065】
好ましい態様によれば、本発明による粉末の医薬組成物中に存在するチゲサイクリン及びラクトースは、実質的に非晶質形態であり、一方、ロイシンは、存在する場合、実質的に結晶形態である。
【0066】
本発明によれば、「実質的に非晶質形態」という表現は、非晶質形態のチゲサイクリン又はラクトースのパーセンテージが粉末中の医薬組成物中のチゲサイクリン又はラクトースの総量に対して、51~100%、好ましくは70~100%、さらにより好ましくは90~100%であることを意味する。
【0067】
本発明によれば、「実質的に結晶形態」という表現は、結晶形態のロイシンのパーセンテージが粉末中の医薬組成物中のロイシンの総量に対して、51~100%、好ましくは70~100%、より好ましくは80~100%、さらにより好ましくは90~100%であることを意味する。
【0068】
本発明によれば、粉末は、吸入投与に適した賦形剤も含むことができる。
【0069】
これらの賦形剤は、好ましくは界面活性剤、例えばポリソルベート及びポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンブロックコポリマー(「ポロキサマー」として知られる)、特に「Tween 80」として知られるポリソルベート80、糖、例えばラクトース、マンニトール、スクロース、トレハロース、マルトデキストリン及びシクロデキストリン;脂肪酸;脂肪酸エステル;脂質、好ましくはリン脂質、例えば天然及び合成スフィンゴリン脂質、ならびに天然及び合成グリセロリン脂質、例えばジアシル-リン脂質、アルキル-アシルリン脂質及びアルケニル-アシルリン脂質;アミノ酸;ならびにペプチド、例えばジロイシン及びトリロイシン又は疎水性タンパク質などである。
【0070】
界面活性剤の存在は、それを含まない製剤中に最終的に存在する帯電の除去を確実にするために有用であり、脂肪酸及び他の脂質物質の存在は粉末の平滑性を確実にするために有用であり、さらなる粉末コーティングのためにさらなる糖の存在が有用であり得る。
【0071】
有利には、粉末の残留湿度を低下させることができる賦形剤、例えば疎水性の賦形剤は、本発明の医薬組成物の安定性を改善するために特に有用である。
【0072】
第2の態様において、本発明は、グリシルサイクリン、特にチゲサイクリンを含む、吸入投与のための乾燥粉末の形態の医薬組成物を調製するための方法であって、前記方法は、
グリシルサイクリン、特にチゲサイクリン、ラクトース、及び場合によりロイシンを含む水性溶媒において溶液を調製する工程(a)と、
10μm未満のX90を有する乾燥粉末を得るために、前記工程(a)の溶液を乾燥する工程(b)と、
前記乾燥粉末を回収する工程(c)であって、前記溶液が、前記溶液に6.5~7.5、好ましくは約7.0のpH値を与えるのに必要な量の有機酸又は無機酸をさらに含む、工程(c)と、を含む。
【0073】
チゲサイクリンは、水溶液中で極めて不安定な活性成分であり、図1に示すように、主に酸化及びエピマー化によって分解現象を起こし、これは、チゲサイクリンの溶液を5℃、25℃及び40℃でそれぞれ24時間保存した後に、より強い色の分解生成物が形成されることを示している。
【0074】
本出願人は、チゲサイクリン、ラクトース、及び任意にロイシンを含む水溶液であって、その中に有機酸又は無機酸が前記溶液に6.5~7.5、好ましくは約7.0のpH値を与えるのに十分な量で添加される水溶液が、チゲサイクリンの分解現象なしに乾燥工程を実施することを可能にすることを観察した。
【0075】
好ましくは、有機酸又は無機酸が、乾燥工程の作業温度で揮発性化合物であり、特に、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、塩酸、臭素酸、硝酸及びリン酸を含む群から選択される。
【0076】
本出願人は、乾燥工程の作業温度において、ギ酸が二酸化炭素及び水に分解し、得られる粉末中に痕跡を残さないことを観察したので、ギ酸が特に好ましい。
【0077】
有利には、溶液を調製する工程(a)が光から離れて、20℃以下、好ましくは10℃未満、より好ましくは0℃~5℃の温度で行われる。
【0078】
好ましくは、使用される溶媒が水、有利には脱塩水、蒸留水、滅菌水、又は脱イオン水によって構成されるが、70:30v/v~30:70v/vの水:アルコール比を有する水-アルコール混合物も使用することができる。
【0079】
有利には、使用される溶媒が、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは3%未満の溶存酸素含有量を有するように適切に脱気される。
【0080】
本出願人は、溶媒中の酸素含有量の減少がチゲサイクリンの酸化現象を減少させることを可能にし、乾燥工程のために調製された溶液中でのチゲサイクリンのより大きな安定性をもたらすことを観察した。
【0081】
好ましく使用されるアルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノールの単独又は混合物を含む群から選択される。エタノールの使用が特に好ましい。
【0082】
有利には、溶液が使用される溶媒、好ましくは水にグリシルサイクリン、特にチゲサイクリン、ラクトース、及び場合によりロイシンを添加し、次いでpHを所望の値、好ましくは約7.0に調整することにより、10%ギ酸の水溶液を添加することにより調製される。
【0083】
本発明の第2の態様の特に好ましい実施形態によれば、工程(a)は、
10重量%未満の溶存酸素含有量が得られるまで前記水性溶媒を脱気する工程(a1);
前記水性溶媒に、前記ラクトース、及び場合により前記ロイシンを添加し、前記ラクトース、及び場合により前記ロイシンを完全に溶解した後、前記グリシルサイクリン、特にチゲサイクリンを添加する工程(a2);
前記溶液に約7.0のpH値を与えるのに十分な量の有機酸又は無機酸を添加する工程(a3);
前記溶液を、光から密封された容器内で5℃未満の温度で冷却する工程(a4)を含む。
【0084】
有利には、本発明による調製方法の工程(b)は、噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥する技法を用いて実施される。
【0085】
本出願人は、噴霧乾燥が均一で実質的に非晶質の粒子を有する乾燥粉末を得ることを可能にすることを観察した。
【0086】
特に、本出願人は、噴霧乾燥処理が制御された入口及び出口温度環境における適切に霧化された溶液の乾燥機構を通して、非常に微細な吸入可能な粒径からなる粉末を得ることを可能にし、これは処理後に得られる粉末の実質的な安定性を確実にする、数百分の1秒で起こることを観察した。
【0087】
本発明による所望の特性を有する乾燥粉末を得るために操作することが可能な供給速度は、使用される噴霧乾燥のタイプ、すなわち、工業サイズの噴霧乾燥機もしくは「パイロット」サイズの噴霧乾燥機、又は研究室の噴霧乾燥機によって与えられる。
【0088】
有利には、本出願人が実験室噴霧乾燥機において、噴霧乾燥の工程(b)が3g/分以上の供給速度で最適な結果を与えるのに対し、パイロットサイズのシステムでは10g/分以上、好ましくは15g/分以上、さらにより好ましくは20g/分以上の供給速度で最適な結果が得られることを観察した。
【0089】
一般に、工業サイズの噴霧乾燥機によって使用される供給速度は、一般に150~200g/分であるが、より大きなサイズの噴霧乾燥機が使用された場合には制限はない。
【0090】
有利には、噴霧乾燥の工程(b)が80℃~200℃、有利には90℃~160℃の入口温度で実施される。
【0091】
本発明による入口温度という用語は、乾燥チャンバの入口において、噴霧乾燥機のノズル出口で溶液が出会う温度を意味する。
【0092】
好ましくは、噴霧乾燥の工程(b)が40℃~120℃、有利には50℃~100℃の出口温度で実施される。
【0093】
本発明による用語「出口温度」はサイクロン分離器に入る前に、乾燥チャンバから出た後の、既に乾燥された生成物の温度を意味する。
【0094】
第3の態様では、本発明がマイコバクテリア感染症の治療に使用するための吸入投与用の乾燥粉末の形態の医薬組成物であって、組成物の総重量に対して50重量%未満の量でグリシルサイクリン、特にチゲサイクリンを含み、前記チゲサイクリンの量以上の量でラクトースを含み、場合によりロイシンを含む、医薬組成物に関する。
【0095】
特に、本発明の医薬組成物は、マイコバクテリウム・ツベルクローシス及び非結核性マイコバクテリア(NTM)によって引き起こされる感染症、好ましくはゆっくりと成長するNTM(SGM)及び急速に成長するNTM(RGM)からなる群から選択される感染症の治療に適用される。
【0096】
特に、ゆっくり成長する非結核性マイコバクテリア(SGM)は、マイコバクテリウム・アビウム複合体(MAC)、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラー、マイコバクテリウム・キメラ、マイコバクテリウム・キセノピ、マイコバクテリウム・シミエ、マイコバクテリウム・マリナム及びマイコバクテリウム・カンサシイからなる群から選択される。
【0097】
有利には、急速に増殖する非結核性マイコバクテリア(RGM)は、マイコバクテリウム・アブセスス(Mycobacterium abscessus)、マイコバクテリウム・フォルトゥイタム(Mycobacterium fortuitum)、マイコバクテリウム・アブセスス・センス・ストリクト(Mycobacterium abscessus sensu stricto)、マイコバクテリウム・マッシリエンセ(Mycobacterium massiliensee)、マイコバクテリウム・ボレティ(Mycobacterium bolletii)、マイコバクテリウム・ペレグリヌム(Mycobacterium peregrinum)、マイコバクテリウム・シェロナエ(Mycobacterium chelonae)およびマイコバクテリウム・アブセスス・コンプレックス(Mycobacterium abscessus complex)からなる群から選択される。
【0098】
本発明は、特定の数の調製例の手段によって以下にさらに説明されるが、それらは純粋に例示のために提供されるものであり、本発明を限定するものではない。
【0099】
実施例1
乾燥溶液の調製
本発明の乾燥粉末の形態の医薬組成物の調製のために、5~5.5重量%の固体濃度を有するように、以下の表に示されるチゲサイクリン及び賦形剤を含む水溶液が使用され、そのpH値が10%ギ酸水溶液で約7.0にされた。
【0100】
チゲサイクリン水溶液の調製工程は、乾燥工程全体の間、化学的安定性を維持するために、様々な工程及び測定を含む。
【0101】
溶剤として使用した水は、溶存酸素を除去する目的で、プローブ(酸素計Hanna HI98198)を介して測定して10%未満の酸素含有量が得られるまで、(溶液100mlの場合、25分間、12l/分)の流れで窒素流を介して脱気工程を受けた。
【0102】
賦形剤を脱気水に溶解し、完全に溶解した後、活性成分(チゲサイクリン)を、各実施例に示される量で、5重量%~5.5重量%の固体濃度に等しい量で添加する。
【0103】
活性成分の溶解後、溶液は、ギ酸を添加することによってpH7.00に調整される。
【0104】
そのようにして得られた溶液は、活性成分が敏感である光から保護するために、不透明な容器内で、5℃以下の温度で冷却されたままである。
【0105】
粉末組成物の調製
このようにして得られた溶液を、以下の処理パラメータを設定することにより、噴霧乾燥機ProCepT装置の手段によって処理した。
直径0.6mmの溶液出口用ノズル
噴霧圧力:3バール
乾燥ガスフロー:0.35m/min
入口温度:90℃
出口温度:45~47℃
供給速度:3g/分
【0106】
乾燥工程の最後に、製造直後に、粉末組成物を、ガラス容器中の窒素雰囲気下で包装し、次いで、これを、ヒートシールされたアルミニウム袋中に保存した。
【0107】
以下の表は、上述の仕様に従って実施された一連の比較及び発明の実施例を示す。
【0108】
表1は、表1の第1列に示される組成物を用いて得られた粒子の分析測定及び粒径分析の結果をまとめたものである。
【表1】
TGC:チゲサイクリン
LEU:ロイシン
LAT:ラクトース
ALB:アルブミン
WC:含水量
90:粒子の90%が存在する直径以下
FPF:5μm未満の微粒子割合
【0109】
結果は、チゲサイクリン及び得られた粉末中に存在する不純物の分析的判定に関連する表1に再開され、ラクトースの存在がチゲサイクリンの安定性に必要であるが、ロイシン又はアルブミン単独の存在はチゲサイクリンを安定化するのに十分ではなく、その結果として不純物が形成されることを示した。
【0110】
同時に、含水量に関連する表1において再開された結果は、ロイシンの存在がより低い含水量5%未満、さらには4%以下の乾燥粉末を得ることを可能にすることを示した。
【0111】
対照的に、表1で再開された結果は、アルブミンの存在がラクトースとの組合せであっても、含水量及び所望のX90値を得ることを可能にせず、FPF%の最低値を与えたことを示した。
【0112】
最後に、粒径分析の結果は、それらの空気力学的特性(X90及びFPF%)と共に、TGC:LAT:ALBの三成分の組合せを除いて、全ての組合せが良好な結果を与えることを示した。
【0113】
表2は、室温(25℃及び60%RH)で9ヶ月間、及び4℃で15ヶ月間貯蔵した後の同じ粒子の分析測定及び粒径分析の結果をまとめたものである。
【0114】
【表2】
TGC:チゲサイクリン
LEU:ロイシン
LAT:ラクトース
ALB:アルブミン
【0115】
表2の結果は、4℃又は室温での保存後の、ラクトースを含む組成物の長期安定性を確認した。
【0116】
表3は、温度又は相対湿度の様々な条件で1ヶ月又は3ヶ月間、バルク又はカプセルで貯蔵した後の、表1の第1列に示される組成物で得られた粒子の分析的判定の結果をまとめたものである。
【0117】
【表3】
TGC:チゲサイクリン
LEU:ロイシン
LAT:ラクトース
RH:相対湿度
KO:試験不合格、5%を超える不純物の形成
OK:テスト成功、安定製品
【0118】
表3の結果は、チゲサイクリンの量とラクトースの量との間の重量比が1:1~1:2の範囲でチゲサイクリンの量以上のラクトースの量を有する必要性を強調した。
【0119】
表4は、様々な温度又は相対湿度の条件で1ヶ月間、窒素雰囲気中に充填した後、バルク又は乾燥カプセル中で貯蔵した後の、表1の第1列に示される組成物で得られた粒子の分析的判定の結果を要約する。
【0120】
【表4】
TGC:チゲサイクリン
LEU:ロイシン
LAT:ラクトース
RH:相対湿度
KO:試験不合格、5%を超える不純物の形成
OK:テスト成功、安定製品
【0121】
表4の結果は、粉末の長期安定性の改善のためのロイシンの有用性を確認し、それによって、30℃及び65%相対湿度での試験、ならびに窒素雰囲気中に充填した後の乾燥カプセル中の40℃及び75%相対湿度での最も極端な試験に成功した。
【0122】
また、1:1~1:2のチゲサイクリン:ラクトースの比率で最良の結果が得られ、粒径解析(X90及びFPF%)の結果から、チゲサイクリンの最適量は30重量%以下であることが観察された。
【0123】
以下の表5は、30重量%のチゲサイクリンならびに本発明によるラクトース及びロイシンの最適量を含む2つの三成分製剤の分析判定及び粒径分析の結果をまとめている。
【0124】
製剤1は、1:1.5のチゲサイクリン:ラクトース比で30:45:25に等しいパーセンテージ比のTGC:LAT:LEUを含み、一方、製剤2は、1:2のチゲサイクリン:ラクトース比で30:60:10に等しいパーセンテージ比のTGC:LAT:LEUを含んでいた。
【0125】
【表5】
TGC:チゲサイクリン
LEU:ロイシン
LAT:ラクトース
BULK WC%:バルク中の含水量
CPS WC%:カプセル中の含水量
PSD:粒度分布
VMD:体積平均径
PA:空力パラメータ
FPF:微粒子割合
MMAD:空気力学的質量中央径
GSD:幾何標準偏差
【0126】
表5のデータは、通気性の観点から、PSD及びPAの最適な値で、ならびに安定性の観点から、チゲサイクリンの最適な値及び不純物の最小量の両方を用いて、組成物1及び2の両方で得られた最適な結果を確認した。
【0127】
図3は、製剤1(3A)及び製剤2(3B)の試料の電子顕微鏡写真を示す。
【0128】
実施例2
使用した分析法の説明
前の表に示した値は、以下の方法で測定した。
【0129】
粉末組成物のキャラクタリゼーション
1.粒子サイズ分析
得られた粉末組成物を、粉末の解析のためのRODOS/L分散システムを備え、試料の自動装填のためのAspiros/Lシステムに関連する粒子のサイズを解析することができる、Laser Diffraction Sympatec HELOS/BR装置を使用して、乾燥粒子サイズに関して特徴付けた。
【0130】
器具は参照材料を用いて較正され、ツールのユーザマニュアルに与えられた指示に従って調整された。
【0131】
解析処理
製品をAspirosを通して適宜サンプルホルダー(バイアル)でサンプリングし、分析した。
【0132】
使用した分散ガスは、粒子を適切に除去した圧縮空気であった。
【0133】
粒子径分布解析を行う方法は以下の通りである:
解析ツール:レーザー光回折粒子サイザーシンパテックHELOS/BR
レンズ:R1(0.1~35μm)
サンプル分散システム:RODOS/L
試料供給システム:Aspiros/L
分散圧力:3bar、減圧自動調整付き
信号積分時間:10.0s
基準測定時間:10.0s
1.5%から50%までのチャネル20の濃度範囲で有効な測定
ソフトウェアバージョン:PAQXSOS 3.1.1
計算方法:FREE
【0134】
すべての分析は室温及び湿度の環境で行った。
【0135】
粒径分析は、粉末組成物試料中の粒子集団の50%の集団(X50)、90%の集団(X90)及び体積平均直径(VMD)がそれぞれ低下する直径を返す。
【0136】
2.粉末組成物中の活性成分及び他の成分の判定
粉末組成物中の活性成分及び他の成分の含有量を決定するために、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析法を使用した。
【0137】
使用される分析方法は、以下のパラメータによって特徴付けられる:
溶剤:80/20リン酸緩衝液pH8/アセトニトリル
移動相:アセトニトリル/リン酸緩衝液pH6.4
勾配溶離
流量:1ml/min
注入量:25μl
分析カラム:Agilent Pursuit XR C18、150mmx4.6mm、3μm
カラム温度:30℃
オートサンプラー温度:5℃
波長:248nm
保持時間:20分
【0138】
分析のために、ダイオードアレイ型検出器を有するHPLC Agilentモデル1200、モデルG1315Cを使用した。
【0139】
活性成分含有量の分析のための試料は参照溶液の場合と同様に、チゲサイクリンについて500μg/ml~600μg/mlの濃度を得るような量の粉末組成物を溶媒に溶解することによって得られた。
【0140】
不純物の分析には、活性成分含有量の分析用のサンプルを用いた。
【0141】
参照溶液を、2%未満でなければならない相対標準偏差パーセンテージ(RSD%)として表される、システムの精度を決定するためのサンプルの前に3回連続して注入した。
【0142】
活性成分含有量は、既知濃度の参照溶液中のチゲサイクリンピークの面積に対する面積比によって得られる。生成物の分解は、各反応係数について補正した分解生成物に対応する分析ピークの面積の合計と、試料中の総面積(活性+不純物)との比として計算される。全面積の0.1%を超える面積を有する全ての分析ピークは、分解生成物の合計内に計数される。
【0143】
3.NGI(Next Generation Impactor)による呼吸性試験
次世代インパクター(NGI)は、エアロゾルの形成で空気中に分散された粉末粒子の空気力学的直径の測定に使用される、薬局方(EP;USP)に記載されている粉末のインパクターである。
【0144】
適切な吸入器によって送達され、吸引によって装置内に運ばれる吸入製剤は、粒子のサイズ、密度及び形状に依存する、その空気力学的特性の機能として直列に配置された、インパクターの様々な段階における堆積物である。NGIの各段階において、本発明の活性成分のUVによる定量分析によって決定される、NGI内に堆積された粉末の空気力学的粒径の範囲に対応する。
【0145】
各段階における活性成分の定量判定によって、粉末の空気力学的サイズ分布が得られ、5.0μm未満の空気力学的直径を有する割合として欧州薬局方によって定義される平均空気力学的直径及び呼吸可能割合を計算することができる。
【0146】
通気性試験のために、実施例の製剤の粉末をHPMCサイズ3のカプセルに分割し、粉末吸入器RS01-モデル7単一用量cod.239700001AB(Aerolizer-Plastiape S.p.A.)を通して送達した。
【0147】
装置は、使用者の指示及び欧州薬局方の指示に従って組み立てた。
【0148】
分析の観点から、試験の実施のためには、呼吸性の各試験のための単一の粉末カプセルの送達で十分である。試験は、1.4KPaのシステムにおける圧力降下から導かれる、60Lpmの流速で4秒間行った。
【0149】
NGIの各段階のこの流量は、空気力学的直径の以下のカットオフに対応する。
段階1:>8.06μm
段階2:8.06μm~4.46μm
段階3:4.46μm~2.82μm
段階4:2.82μm~1.66μm
段階5:1.66μm~0.94μm
段階6:0.94μm~0.55μm
段階7:0.55μm~0.34μm
段階8(MOC):<0.34μm
【0150】
呼吸可能割合(微粒子割合)は、送達された用量に対して計算された薬物量であり、5.0μm未満の平均空気力学的直径を有する粒子によって特徴付けられ、適切な検証されたソフトウェア(CITDAS Copley)によって計算される。
【0151】
NGI解析に供される吸入製剤の空気力学的パラメータは、以下の通りである:
送達割合(DF):すなわち、負荷用量に対する、吸入器マウスピースの外側に送達される活性成分用量のパーセンテージ。
微粒子用量(FPD):5.0μm未満の空気力学的直径を特徴とする、理論的に吸入可能な用量の活性物質。
微粒子割合(FPF):送達された量のパーセンテージとして表される、理論的に呼吸可能な活性物質の割合(5.0μm未満の空気力学的直径)。
空気力学的質量中央径(MMAD):送達される粒子の平均空気力学的直径。
幾何標準偏差(GSD):空気力学的中央径に対する幾何標準偏差。
【0152】
各段階における活性成分の定量判定は、下記の分析方法を用いたUV分光光度法により行った:
溶剤:80/20リン酸緩衝液pH8/アセトニトリル
解析用キュベット:プラスチック製、使い捨て、光路10mm
波長:411nm
【0153】
分析のために、AgilentモデルCary 3500マルチセル分光光度計を使用した。
【0154】
NGI試験に由来する活性成分含有量の分析のためのサンプルは、チゲサイクリンについて0.4μg/ml~60μg/mlの濃度範囲を得るような溶媒容量を使用することによって得られ、参照溶液は約25μg/mlのチゲサイクリン濃度を有する。
【0155】
活性成分含有量は、既知の濃度での参照溶液中のチゲサイクリンピークの吸光度に対する吸光度の比によって得られる。
【0156】
実施例3
粉末のキャラクタリゼーション:X線回折法による固体状態の判定
X線回折測定
【0157】
粉末の固体状態を判定するためにX線回折測定を行った。
【0158】
結晶は、その構造に特徴的な方法でX線を回折する。この理由のため、X線回折法の技法は、試料の成分の結晶又は非晶質固体状態を決定することを可能にする。
【0159】
使用される機器は、LYNXEYEセンサ付きBruker AXS製D2-Phaser、DIFFRAC.MEASUREMENT CENTER.V7測定ソフトウェアである。
【0160】
粉末試料は、直径20mm、厚さ0.5mmのシリコン試料ホルダー上に均一な層に配置した。
【0161】
選択された分析方法は、以下の機器構成を使用する:
発生源:銅
発散スリット:0.2mm
ソルラースリット:4°
ナイフ:1m
走査パラメータは以下の通りであった:
角度範囲:3~50°2θ
メジャー間のピッチの長さ:0.02°
各角度の滞留時間:1s
検出器開口:4mm
試料回転:15rpm
【0162】
図2は、チゲサイクリンとラクトースとを1:1の比で含む粉末(曲線A)と、チゲサイクリン、ラクトース及びロイシンを1:1:1の比で含む粉末(曲線B)とで得られた回折図を示す。
【0163】
容易に言及されるように、曲線Aは結晶性のいかなるピークも示さず、その結果、粉末は実質的に非晶質形態である。
曲線Bはロイシンに起因する2つのピークを示し、結晶化傾向とのその位置を明らかにする。
【0164】
実施例4
抗マイコバクテリア活性の評価
チゲサイクリン/ラクトース/L-ロイシン(30/60/10w/w/w)で構成される実施例1の製剤2のTHP-1マクロファージの細胞株における非結核性マイコバクテリア(NTM)(Mycobacterium abscessus)に対する細胞傷害活性及び抗マイコバクテリア活性を、純粋な活性成分チゲサイクリンと比較して評価するために試験を行った。
【0165】
マクロファージ組成物に使用される完全DMEM培地
Dulbecco Eagle媒体(Cellgro 15-017-cv)の改変:
熱不活化ウシ胎児血清(Atlas Biologicals、Fort Collins、CO、F-500-A)(10%)
LCM(10%)
L929によって調整された媒体:L-929(CCL-1)(ATCC)細胞は、骨髄マクロファージ/単球前駆細胞を成熟マクロファージの均一な集団に分化させるサイトカインであるマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)を分泌する。4.7×10個の細胞を55mlのDMEM+10%のウシ胎児血清に75cmの球で播種する。細胞を3日間増殖させたままにし、次いで上清を回収し、0.45μmフィルターを通して濾過し、アリコートし、-20℃で凍結する。
無細胞濾液をDMEM培地中で使用する。
L-グルタミン(Sigma G-7513)(2mM)
HEPES緩衝液(Sigma H-887)(10mM)抗生物質/抗真菌薬(Sigma A-9909)(1X)
非必須アミノ酸MEM(Sigma M-7145)(1X)
2-メルカプトエタノール(Sigma M-6250)(50nM)
【0166】
マクロファージ細胞株THP-1の調製及び培養
THP-1細胞を2週間増殖させた。その後、THP-1細胞を完全DMEM培地(5×10細胞/mLのマクロファージ用)に懸濁した。細胞を24ウェル組織培養プレートに、ウェルあたり2mL(ウェルあたり1×10)播種した。24ウェル組織培養プレートは、7つの薬物濃度の範囲及び未処理制御を3回試験することを可能にする。細胞を、加湿チャンバ中、5%COと共に37oCでインキュベートした。
【0167】
抗生物質/抗真菌剤を含まない完全DMEM媒体は、3日間の試験中に変化しなかった。
【0168】
THP-1マクロファージの感染及び治療
0日目に、培地を細胞から取り出し、マクロファージ当たり10細菌の比率で、Mycobacterium abscessusを含有する0.2mLの抗生物質/抗真菌剤を含まないDMEMと交換した。
【0169】
組織培養プレートを閉じたZiplocバッグ内に置き、インキュベーターに輸送した。インキュベーター内に入ると、バッグを開けた。細胞を細菌と共に2時間インキュベートした。
【0170】
感染後、細胞外細菌を、各ウェルをPBSで1回洗浄することによって除去した。次いで、抗生物質/抗真菌剤及び様々な薬物濃度を含まない2mLの完全DMEM培地を添加した。
【0171】
薬物濃度を調製するために、次のバイアル中の10mlの完全培地+血清に10mlの前の懸濁液を添加することによって2回連続希釈を実施し、0.25、1、4及び16xMICの試験範囲を得た。
【0172】
各薬物濃度を3連で試験した。培養平板を37℃+5%COで3日間培養した。
【0173】
3日後、細胞をゲンタマイシンで2時間処理して細胞外細菌を死滅させ、次いで培地で3回洗浄した。感染細胞溶解物のプレーティング及び製剤2及びチゲサイクリン原料への曝露、ならびにTHP-1細胞の細胞生存率の評価を、4時間後、1日後及び2日後に行った。
【0174】
結果を以下の表6及び7にまとめる。
【0175】
【表6】
【0176】
【表7】
【0177】
試験は、純粋な活性成分及び製剤1の両方からの感染したマクロファージ内のチゲサイクリンの関連する潅流を示した。
【0178】
純粋な活性成分に対する製剤1の効率の比較は、製剤1中のチゲサイクリンの量が全体の30%に等しいことを考慮して、2つの製剤間の挙動の実質的な同等性を強調した。
【0179】
製剤1の場合、使用されたチゲサイクリンの最大濃度は、純粋なチゲサイクリンで評価されたものよりも十分に低い7.2μg/mlに等しかった。
【0180】
それにもかかわらず、Mycobacterium abscessusのCFUの減少は、低濃度のチゲサイクリンでさえ明白であり、したがって、製剤1と活性成分との間の同等の溶解速度、とりわけ噴霧乾燥による調製後のチゲサイクリンの安定性を示す。
図1
図2
図3A
図3B
【国際調査報告】