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特表2025-503434体内の構造の状態を判定するための装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】体内の構造の状態を判定するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20250128BHJP
   A61B 17/32 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
A61B8/12
A61B17/32 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535742
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2022086798
(87)【国際公開番号】W WO2023111361
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/086669
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】2208980.9
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】521193304
【氏名又は名称】ヴァーソノ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VERSONO MEDICAL LIMITED
【住所又は居所原語表記】SSL BUILDINGS, PARKMORE WEST BUSINESS PARK, GALWAY,H91 HP4F, IRELAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ドラン,フィンバー
(72)【発明者】
【氏名】ムーニー,イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】キンセラ,ベン
(72)【発明者】
【氏名】ギルフォイル,ディオン
(72)【発明者】
【氏名】オドナヒュー,ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】オドナヒュー,メアリー
(72)【発明者】
【氏名】スメッドリー,ジム
【テーマコード(参考)】
4C160
4C601
【Fターム(参考)】
4C160JJ25
4C160MM33
4C601DD14
4C601EE09
4C601FE04
4C601FF11
4C601GA19
4C601GA24
(57)【要約】
体内の血管の状態を判定するための血管内装置は、ワイヤなどの細長い導波要素と、導波要素を作動させ、したがって導波要素のアクティブ遠位部に超音波エネルギーを伝達するための超音波エネルギー源を含む作動ユニットと、を備える。信号取得システムは、血管の状態を解釈するために装置からフィードバック信号を取得する。信号取得システムは、導波要素が作動されたときに装置によって生成される音響フィードバック信号を取得するための少なくとも1つの音響センサ、及び/又は作動ユニットの向き、及び/又は作動ユニットの加速度を表す情報を取得するための少なくとも1つの慣性センサを備える。音響フィードバック信号及び/又は非音響フィードバック信号(慣性信号若しくは電気信号を含む)からデータセットを生成することができ、それらのデータセットの組合せ、又はデータセット間の比較により、血管における閉塞部などの任意の病変を含む、血管の状態を特徴付けることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内の血管、空洞、又は構造の状態を判定するための血管内装置であって、前記装置は、
細長い導波要素と、
超音波エネルギーの供給源と、前記供給源を前記導波要素に結合して前記導波要素を作動させ、それによって超音波エネルギーを前記供給源から前記導波要素に沿って前記導波要素のアクティブ遠位部に伝達するための結合部と、を含む作動ユニットと、
前記血管、前記空洞、又は前記構造の状態を解釈するために前記装置からフィードバック信号を取得するように構成された信号取得システムと、を備え、
前記信号取得システムは、
前記導波要素が作動しているときに前記装置によって生成される音響フィードバック信号を取得するための少なくとも1つの音響センサ、及び/又は
前記作動ユニットの向き及び/又は加速度を表す情報を取得するための少なくとも1つの慣性センサ、を備える、装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの音響センサが前記作動ユニット内又は前記作動ユニット上に取り付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの音響センサが、前記作動ユニットの前記結合部と長手方向に整列して、又は前記作動ユニットの前記結合部に対して近位に、取り付けられている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの音響センサが、前記作動ユニットに対して遠位に取り付けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの音響センサが、前記導波要素上又は前記導波要素と平行に取り付けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの音響センサが、前記導波要素の前記長さに対して近位又は遠位に取り付けられている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記導波要素は、カテーテルである、又はカテーテルを備える、又はカテーテルによって囲まれており、少なくとも1つの音響センサが前記カテーテルに取り付けられている、請求項5又は請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記導波要素は、ワイヤである、又はワイヤを備えており、少なくとも1つの音響センサが前記ワイヤに取り付けられている、請求項5又は請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記ワイヤから動作フィードバック信号を取得するために、ひずみゲージが前記導波要素に固定されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記導波要素は、ワイヤである、又はワイヤを備えており、前記ひずみゲージが前記少なくとも1つの音響センサとして機能する、請求項8に従属するときの請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの音響センサが、身体の一部に当たるように配置される体外センサである、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの音響センサが、体内に挿入されるように配置される体内センサである、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記信号取得システムは、互いに長手方向に離間された少なくとも2つの音響センサを備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記信号取得システムの前記少なくとも1つの慣性センサを使用して、前記作動ユニットの向き及び/又は加速度を感知することによって制御されるように構成される、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
外科処置中に前記信号取得システムの前記少なくとも1つの慣性センサによって感知された前記作動ユニットの向き及び/又は加速度を記録するためのレコーダを更に備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記信号取得システムは、前記超音波エネルギーの前記供給源の動作パラメータを表す動作フィードバック信号を取得するように構成された少なくとも1つの電子センサを更に備える、請求項1~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記動作パラメータは、前記超音波エネルギーの前記供給源によって引き込まれる電流、又は前記超音波エネルギーの前記供給源の両端間で降下する電圧、の周波数及び/又は振幅及び/又は位相である、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記信号取得システムは、前記結合部を介した前記導波要素の振動の周波数又は振幅の変動を監視するように構成されている、請求項16又は請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記信号取得システムによって取得されるフィードバック信号を処理するための信号処理システム、を更に備える、請求項1~18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記信号処理システムは、前記導波要素の特定のタイプに対して選択される数値アルゴリズムを採用するように構成されている、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記信号処理システムは、前記取得されたフィードバック信号から、閉塞部の特徴を判定するように構成されている、請求項19又は請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記信号処理システムは、前記アクティブ遠位部を閉塞部まで誘導する際の解剖学的蛇行からの損失と、前記アクティブ遠位部が前記閉塞部を通過する際に生じる損失との相対的寄与を比較するように構成されている、請求項19~21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記信号処理システムは、前記取得されたフィードバック信号を、既知の閉塞部を特徴付ける記憶されているデータと比較し、前記比較を参照して閉塞部を特徴付けるように構成されている、請求項19~22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記信号処理システムは、ユーザインターフェースへの出力及び/又は外部データ取得システムへの出力を更に備える、請求項19~23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記信号処理システムは、ユーザインターフェースからの入力及び/又は外部データネットワークからの入力を更に備える、請求項19~24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記信号処理システムは、前記音響フィードバック信号を時間領域から周波数領域に変換するように構成される、請求項19~25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記信号処理システムは、周波数領域データ及び/又はパワースペクトルデータを評価するように構成される、請求項19~26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記信号処理システムは、前記周波数領域データ及び/又はパワースペクトルデータにおけるピークから特徴的な特徴を判定するように構成される、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記信号処理システムは、周波数帯域範囲内のパワーから特徴的な特徴を判定するように構成される、請求項27又は請求項2289に記載の装置。
【請求項30】
前記信号処理システムは、前記音響フィードバック信号の全周波数スペクトルの特徴的な特徴を判定するように構成される、請求項19~29のいずれか一項に記載の装置。
【請求項31】
前記信号処理システムは、スペクトログラムのシーケンス画像をサンプリングして処理するように構成される、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記信号処理システムは、前記特徴的な特徴を、事前の試験を通して評価された閾値パラメータと比較するように構成される、請求項28~31のいずれか一項に記載の装置。
【請求項33】
前記信号処理システムは、前記特徴的な特徴を前記超音波エネルギーの前記供給源に関する電気的性能データと組み合わせることによって特徴データセットを形成するように構成される、請求項28~32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項34】
前記信号処理システムは、前記特徴データセットを機械学習アルゴリズムによる分類にかけるように構成される、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記信号処理システムは、前記特徴的な特徴のうちの2つ以上を評価及び比較するように構成される、請求項28~34のいずれか一項に記載の装置。
【請求項36】
前記信号処理システムは、前記導波要素の構成を示す前記音響フィードバック信号における高調波を検出及び監視するように構成される、請求項19~35のいずれか一項に記載の装置。
【請求項37】
前記信号処理システムは、前記音響フィードバック信号の2つ以上の周波数帯域におけるパワーを検出及び監視するように構成される、請求項19~36のいずれか一項に記載の装置。
【請求項38】
前記信号処理システムは、前記音響フィードバック信号から背景ノイズを減算するように構成される、請求項19~37のいずれか一項に記載の装置。
【請求項39】
前記信号処理システムに応答するコントローラを更に備える、請求項19~38のいずれか一項に記載の装置。
【請求項40】
前記コントローラは、前記超音波エネルギーの前記供給源に印加される励起電圧、又は前記超音波エネルギーの前記供給源に供給される励起電流を変調するように構成されている、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
前記コントローラは、前記超音波エネルギーの前記供給源に印加される励起電圧の周波数及び/又は振幅を変化させることにより、前記超音波エネルギーの前記供給源を制御するように構成されている、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記コントローラは、前記励起電圧の振幅と組み合わせて、前記励起電圧と前記励起電流との間の位相差を使用することにより、前記励起電圧の周波数を駆動するように構成されている、請求項40又は請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記コントローラは、振幅フィードバックコントローラを備えており、制御の動作点として共振周波数を使用するように構成されている、請求項39~42のいずれか一項に記載の装置。
【請求項44】
前記コントローラは、前記超音波エネルギーの前記供給源への駆動信号をパルス化又は変化させるように構成されている、請求項39~43のいずれか一項に記載の装置。
【請求項45】
前記コントローラは、
伝達される信号の変調を監視し、前記アクティブ遠位部が閉塞に接近する際に前記導波要素において発生する背景エネルギー損失を補正するように前記超音波エネルギーの前記供給源を自動的に制御し、
前記背景エネルギー損失と、前記アクティブ遠位部が前記閉塞を通過する際の追加エネルギー損失とを区別し、前記アクティブ遠位部における変位を維持するように前記背景エネルギー損失を補正する、ように構成されている、請求項39~44のいずれか一項に記載の装置。
【請求項46】
前記コントローラは、使用中に前記アクティブ遠位部と閉塞部との相互作用から生じる前記超音波エネルギーの前記供給源の動作パラメータの変動に応答して、制御アルゴリズムを修正又は変更するように構成されている、請求項39~45のいずれか一項に記載の装置。
【請求項47】
前記コントローラは、動作モード間で多重化又は切り替えを行うように構成され、前記動作モードのうちの少なくとも1つにおいて、前記超音波エネルギーの前記供給源は、病変又は状態の診断を最適化するように駆動される、請求項39~46のいずれか一項に記載の装置。
【請求項48】
前記コントローラは、前記動作モードを交互に切り替えるように構成され、前記動作モードのうちの少なくとも1つにおいて、前記超音波エネルギーの前記供給源は、病変又は状態の治療を最適化するように駆動される、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
請求項1~48のいずれか一項に記載の装置を備える通信システムであって、前記装置からデータを受信し、それに応じて制御アルゴリズムを最適化及び更新し、前記最適化され更新された制御アルゴリズムを前記装置に出力するように構成されたコンピュータシステムとデータ通信する、通信システム。
【請求項50】
2つ以上の前記装置が、前記コンピュータシステムとデータ通信し、前記コンピュータシステムは、前記装置を使用して実行された複数の処置から受信されたデータに従って制御アルゴリズムを最適化し、前記最適化され更新された制御アルゴリズムを前記装置に出力するように構成されている、請求項49に記載の通信システム。
【請求項51】
体内の血管、空洞、又は構造の状態を判定するための方法であって、前記方法は、
細長い導波要素の遠位部を前記血管、前記空洞、又は前記構造内の部位まで誘導することと、
前記遠位部に超音波エネルギーを伝達することによって前記導波要素を作動させることと、
前記導波要素が作動されるときに生成される音響信号であるフィードバック信号、及び/又は前記導波要素を作動させる作動ユニットの向き及び/若しくは加速度を表す慣性信号を取得することと、
前記フィードバック信号を解釈して、前記血管、前記空洞、又は前記構造の前記状態を特徴付けることと、を含む、方法。
【請求項52】
前記作動された導波要素の前記遠位部を前記血管、前記空洞、又は前記構造内の病変に係合させることと、前記音響フィードバック信号における結果として生じる変化を解釈して前記病変を特徴付けることと、を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記作動された導波要素の前記遠位部によって前記病変を破壊することを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記病変に対する前記作動された導波要素の応答を表す感知されたデータを、既知の病変との相互作用に対する対応する作動された導波要素の応答を表す記憶されているデータと比較することを更に含む、請求項52又は請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記導波要素の近位に配置された体外作動ユニットにおいて前記音響フィードバック信号を取得することを含む、請求項51~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記導波要素に沿った1つ以上の位置において前記音響フィードバック信号を取得することを含む、請求項51~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記導波要素に沿った体内遠位位置において前記音響フィードバック信号を取得することを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記血管又は前記空洞の外側の1つ以上の位置において前記音響フィードバック信号を取得することを含む、請求項51~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
互いに長手方向に離間した2つ以上の位置において前記音響フィードバック信号を取得することを含む、請求項51~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記導波要素を作動させる作動ユニットに対して遠位である1つ以上の位置で前記音響フィードバック信号を取得することを含む、請求項51~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記導波要素上又は傍らの1つ以上の位置で、あるいは前記導波要素を取り囲むチューブ又はカテーテル上で、前記音響フィードバック信号を取得することを含む、請求項51~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
身体に沿った1つ以上の位置において前記音響フィードバック信号を取得することを含む、請求項51~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記体内の前記位置又は前記位置の各々が、前記血管、前記空洞又は前記構造の外側にある、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
身体の体外の1つ以上の位置において前記音響フィードバック信号を取得することを含む、請求項51~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記作動ユニットの向き及び/又は加速度を表す前記慣性フィードバック信号に応答することによって前記作動ユニットを制御することを含む、請求項51~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記方法を含む処置中に前記作動ユニットの向き及び/又は加速度を記録することを含む、請求項51~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記慣性フィードバック信号を前記音響フィードバック信号と相関させることを含む、請求項65又は請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記導波要素と結合された超音波エネルギーの供給源の動作パラメータを表す電気フィードバック信号を取得することを更に含む、請求項51~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記血管、前記空洞、又は前記構造、及び前記血管内、前記空洞内、又は前記構造内の任意の病変に遭遇する前記導波要素に対して前記供給源がどのように応答するかを前記動作パラメータから判定することを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記非音響フィードバック信号は、前記超音波エネルギーの前記供給源によって引き込まれる電流、又は前記超音波エネルギーの前記供給源の両端間で降下する電圧、の周波数及び/又は振幅及び/又は位相、の変動を表す、請求項68又は請求項69に記載の方法。
【請求項71】
電流信号の減衰を経時的に監視することによって前記導波要素の減衰を判定することを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記導波要素の振動の周波数又は振幅の変動を監視することを含む、請求項68~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記音響フィードバック信号及び前記非音響フィードバック信号からデータセットを生成し、前記それぞれのデータセットの組合せ又は前記それぞれのデータセット間の比較を使用して、前記血管、前記空洞、又は前記構造の前記状態を特徴付けることを含む、請求項68~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記非音響フィードバック信号に応答して、前記導波要素に沿って前記遠位部に伝達される前記超音波エネルギーの振幅又は周波数を調整すること、を更に含む、請求項68~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記非音響フィードバック信号に応答して、前記導波要素における共振周波数を維持するように前記供給源を制御すること、を更に含む、請求項68~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記電気フィードバック信号を前記慣性フィードバック信号及び/又は前記音響フィードバック信号と相関させることを含む、請求項68~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記慣性フィードバック信号、前記音響フィードバック信号及び/又は前記電気フィードバック信号からデータセットを生成し、前記それぞれのデータセットの組合せ又は前記それぞれのデータセット間の比較を使用して、前記血管、前記空洞、又は前記構造の前記状態を特徴付けることを含む、請求項68~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
外部データネットワークにデータを出力することと、応答として前記ネットワークからデータを受信することと、前記ネットワークからデータを受信すると、それに応じて制御アルゴリズムを修正又は変更することと、を含む、請求項51~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
外部コンピュータシステムにデータを出力することと、前記外部コンピュータシステムにおいて、前記データに従って制御アルゴリズムを最適化及び更新することと、前記最適化され更新された制御アルゴリズムを前記外部コンピュータシステムから出力することと、前記最適化され更新された制御アルゴリズムを使用して前記導波要素の作動を制御することと、を含む、請求項51~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記コンピュータシステムは、複数の処置から受信されたデータに従って前記制御アルゴリズムを最適化する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記血管の壁又は前記血管内の物質との接触から生じる損失によって引き起こされる前記導波要素の変位の振幅の減衰又は周波数のシフトを評価すること、を含む、請求項51~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記超音波エネルギーの供給源に2つ以上の異なる波形を連続して印加することを含み、前記波形は、正弦波形、パルス波形、マルチトーン波形、チャープ波形、又はノイズ波形から選択される、請求項51~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記作動した導波要素の前記遠位部を前記血管内の病変の近くに前進させることと、
ベースラインフィードバック信号を取得することと、
前記作動した導波要素の前記遠位部を前進させて前記病変に係合させることと、
動作フィードバック信号を取得することと、
前記動作フィードバック信号から前記ベースラインフィードバック信号を減算することと、
を含む、請求項51~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記音響フィードバック信号を時間領域から周波数領域に変換することを含む、請求項51~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
周波数領域データ及び/又はパワースペクトルデータを評価することを含む、請求項51~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記周波数領域データ及び/又はパワースペクトルデータにおけるピークから特徴的な特徴を判定することを含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
周波数帯域範囲内のパワーから特徴的な特徴を判定することを含む、請求項85又は請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記音響フィードバック信号の全周波数スペクトルの特徴的な特徴を判定することを含む、請求項51~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
スペクトログラムのシーケンス画像をサンプリング及び処理することを含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記特徴的な特徴を、事前の試験を通して評価された閾値パラメータと比較することを含む、請求項86~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記特徴的な特徴を前記超音波エネルギーの供給源に関する電気的性能データと組み合わせることによって特徴データセットを形成することを含む、請求項86~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記特徴データセットを機械学習アルゴリズムによる分類に供することを含む、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記特徴的な特徴の2つ以上を評価及び比較することを含む、請求項86~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記導波要素の構成を示す前記音響フィードバック信号内の高調波を検出及び監視することを含む、請求項51~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記音響フィードバック信号の2つ以上の周波数帯域におけるパワーを検出及び監視することを含む、請求項51~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記音響フィードバック信号から背景ノイズを減算することを含む、請求項51~95のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内の血管、空洞、又は他の構造の状態を判定する技術に関し、そのような構造内における閉塞又は閉塞部を特徴付けることを含む。
【0002】
本発明の実施形態は、ワイヤ及びカテーテルなどのアクティブな細長い要素を使用する。これらのワイヤ及びカテーテルのいくつかは、例えば、虚血を治療するために、体内の閉塞又は閉塞部を通過又は横断するように適合され、したがって、そのような要素は、交差ワイヤ及び交差カテーテルとして当該技術分野で公知である。横断ワイヤ及び横断カテーテルは、閉塞部が横断された後に、後続の治療を誘導するなどの付加的な機能を有し得ることも理解されたい。
【0003】
本明細書では、本発明の概念を例示するために横断ワイヤを使用するが、本発明の概念は横断カテーテルにも適用できることを理解されたい。しかしながら、他の実施形態では、ワイヤ又はカテーテルなどのアクティブな細長い要素は、必ずしも閉塞を横断しない。これは、本発明が、交差ワイヤ及び交差カテーテルの使用のみに限定されないことを意味する。
【背景技術】
【0004】
虚血とは、身体の臓器に血液が十分に供給されないことである。アテローム硬化性血管では、血管壁における病変、アテローム硬化性プラーク、又は他の原因から生じた塞栓から生じる閉塞によって血管が遮断される結果、虚血が起こる。血管が部分的又は完全に閉塞することにより、閉塞部は、そこから遠位の組織への血液の流れが制限され、細胞死が起こり、それらの組織の健康状態が急速に悪化する。
【0005】
慢性完全閉塞(CTO)などの閉塞部は、創傷及び外傷に対する虚血反応を引き起こし、創傷及び切創の難治性潰瘍形成、並びに組織に対する他の傷害をもたらす。このような反応が予想されるため、外科的介入は好ましくない。したがって、このような閉塞部を治療する好ましい方法は、血管形成術などの低侵襲の血管内処置である。このような処置では、小口径の治療デバイスをガイドワイヤ又はカテーテルを介して血管構造に導入し、静脈及び動脈の内腔を通って閉塞部まで誘導し、病変部位において展開して開存性を回復する。慢性アテローム硬化性プラークを治療することによって冠動脈及び末梢動脈の閉塞を血行再建するために用いられる処置は、急性の塞栓性閉塞、血栓、又は閉塞性血餅の治療にも使用することができる。
【0006】
より一般的には、ガイドワイヤ又はカテーテルは、他の低侵襲処置において、他のデバイス及び器具を血管又は体内の他の空洞内に導入して、検査、診断、及び異なるタイプの治療を可能にするために使用される。ガイドワイヤ又はカテーテルを使用する他の医療処置としては、胃腸、泌尿器科、婦人科の処置が挙げられるが、これらは全て、病変部位又は病変から遠位の他の標的組織へのしばしば大型のデバイスの通過を容易にするために、閉塞部を貫く通路を形成する必要がある場合がある。
【0007】
血管内処置では、血管構造へのアクセスを得るのに使用するための動脈が選択され、採用される。この選択は、目的とする診断デバイス又は治療デバイスを標的部位まで通すことに対応する動脈の能力と、組織及び患者の外傷を最小限に抑えることができる程度に基づいて行われる。
【0008】
末梢動脈の血行再建処置では、多くの場合、大腿動脈、膝窩動脈、及び足動脈への外科的切開及び穿刺によってアクセスが行われ、これは、医学用語では、セルディンガー法として一般に知られている。アクセスが行われると、イントロデューサワイヤ及びイントロデューサシースが血管内に挿入され、部位に固定される。このシースは、デバイスの導入、引き抜き、及び交換のためのポートとして機能し、動脈組織の剥離を最小限に抑える。次に、カテーテル及びガイドワイヤが動脈内へ導入されて、更なる保護を提供し、標的部位にデバイスを進めることを支援する。
【0009】
例えばガイドワイヤは、血管壁への外傷を避けるために血管内腔に沿って注意深く押し込まれ、閉塞部位まで誘導される。処置が成功した場合、ガイドワイヤは閉塞部位の向こう側に、又は閉塞部位を通って押され、その場に保持されて、バルーンカテーテル及び/又はステントなどの診断又は治療デバイスを閉塞部位まで追跡するガイドとして機能する。ガイドワイヤ、カテーテル、その他の診断又は治療デバイスが生体構造を通過する過程の可視化は、一般的にX線、二重超音波、又はMRIによって行われる。
【0010】
バルーン血管形成術の場合、バルーンカテーテルをガイドワイヤに沿って血管内に導入し、閉塞部位まで誘導する。次にバルーンを拡張し、閉塞物質を外側に押し出して血流を回復させる。血管の開存性を維持するための足場としてステントを病変内に留置することもある。
【0011】
従来の血管内ワイヤは、様々な生体構造における病変へのアクセス及び病変の横断を容易にし、様々なデバイスを支持するために、様々な構造及びデザインのものがある。このようなワイヤは、関係する生体構造、及び予測される作動距離に応じて、様々な外径及び長さのものが用意されている。これらのワイヤは様々な材料から作られており、最も一般的なものはステンレス鋼又はNiTi(ニチノール)である。その製造には通常、材料を冷間加工しながらワイヤに成形し、望ましい性能を得るためにワイヤを様々な形状に機械加工又は研磨することが含まれる。一例として、ワイヤの長さに沿って異なる程度の可撓性を形成するために、ワイヤの長さにわたって特定のテーパを研削することができる。
【0012】
ワイヤは、特にその遠位端において、血管の蛇行に適合するのに十分な可撓性を有していなければならず、更に、遠位先端に力を伝達し、病変を通過するのに十分な軸方向強さ及びねじり強さも有していなければならない。「トラッカビリティ」として表される可撓性と、「プッシャビリティ」又は「ステアリング性」として表される剛性との間のバランスが必要とされる。プッシャビリティは長手方向の円柱剛性を必要とし、ステアリング性はねじれ剛性を必要とする。
【0013】
従来の血管内ワイヤは、近位端を押す、引っ張る、トルクを加えることによって操作されて閉塞部まで誘導され、閉塞部を通って押し出される。したがって従来の血管内ワイヤは、臨床医が加えるエネルギー以外は伝達しないという意味で、受動的である。
【0014】
血管内処置が行われ得る生体構造としては、冠動脈、神経脈管動脈、下肢に作用する末梢動脈が挙げられるが、これらに限定されない。異なる生体構造は異なるタイプの病変に関連付けられる。例えば、様々な末梢血管に見られる病変は、冠動脈に見られる病変とは異なる課題をもたらす。
【0015】
多くの場合、閉塞は、ガイドワイヤのような従来の血管内要素では通過するのが困難である。この点で、アテローム硬化性プラークは、経時的に徐々に硬くなる物質から構成されている。例えば、腸骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈、及び膝窩下動脈は広範な石灰化の影響を受けやすく、血管内処置の成功に重大な障害となる。従来の血管内要素では、ほぼ塞がっている、又は完全に塞がっており更に著しく石灰化されている場合もある閉塞部を横断しようとするときには、制限が課される。
【0016】
例えば、末梢腸骨下処置では、閉塞部は、好ましい順行性アプローチ又は大腿骨アプローチにおいて遭遇する石灰化された近位キャップを有することがある。病変を横断するために従来の順行性アプローチを試み、更に順行性アプローチにおいて異なるワイヤを介してエスカレーションを行った後、逆行性アプローチに変更するまでに、多くの時間が費やされ得る。逆行性処置では、末梢疾患の場合には足又は足首の病変に対して遠位の血管を通して、又は冠状動脈の生体構造における側副(典型的には中隔)血管を通してアクセスが得られる。この点で、逆行性処置では、石灰化した近位キャップよりも横断するのが容易である、より柔らかい遠位キャップを有することがある閉塞を利用する。しかしながら、逆行性処置は、順行性処置よりも複雑であり、より高い技能を必要とし、実施するのにはるかに長い時間がかかる。
【0017】
末梢動脈症例の50%以上、特に膝窩動脈、脛骨動脈、及び腓骨動脈では、血管は病変によって完全に閉塞している。症例の約30%において、標的病変は重度に石灰化されている。これらの石灰化した病変は、実際には、平均して長さ20cm~25cmのオーダーの更に長い広範なびまん性病変の中に通常3cm~5cmの長さまで広がっている硬い非弾性セグメントから構成されている。このような病変に対する治療法を選択するには、従来の画像診断では容易に得られない病変の長さ及び組成に関する洞察が必要である。
【0018】
末梢動脈の場合、閉塞部が重篤であったり、ガイドワイヤが容易に通過できないほど抵抗性の高い物質で構成されていたりすることが多い。このような場合、処置が完了するまでにかなり時間がかかり、病変を横断するために追加のデバイスの使用が必要になることもある。極めて多くの場合、処置は最終的に完全に放棄され、これによりバルーン血管形成術及びステント留置術などの好ましい後続の処置が妨げられ、したがって患者を治療する能力が制限される。
【0019】
このような欠点に鑑み、アテローム切除術又は血栓除去術に使用するための、超音波によって作動するガイドワイヤ及びカテーテルがいくつか提案されており、この場合、超音波振動が要素に沿って遠位先端部まで伝達され、閉塞部の物質を攪拌及び切除する。したがって要素は、超音波エネルギーを遠位側に伝達する導波路として機能する。この文脈における超音波作動のコンセプトに関連する先行技術の多くは、国際公開第2020/094747号、国際公開第2021/089847号、国際公開第2021/089859号、及び国際公開第2021/224357号として公開された本発明者らの以前の特許出願において説明されており、これらの文書の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
国際公開第2020/094747号として公開された本発明者らの以前の特許出願には、他のコンセプトの中でも、超音波源と、アクティブ横断ワイヤと、信号取得、処理、及び通信チップセット又は制御回路と、を備えたシステムが開示されている。チップセット又は回路は、システムを制御するための信号を生成することができ、ユーザ及び/又は外部データ取得システムに出力を提供することができる。特に、コントローラは、超音波源における電流及び電圧の周波数及び振幅、並びにワイヤにおける入射波形、反射波形、及び定常波形の測定値を監視し、それによって遠位先端部の変位を推定する。ワイヤが生体構造を通過し、石灰化CTOを含む様々なタイプの閉塞を通過する際に、これらの変数の変調が監視される。これにより、石灰化病変か非石灰化病変かの判定、及び病変の石灰化セグメントの存続期間又は長さの判定が可能となる。石灰性であると判定される病変に遭遇すると、例えば入力電力を増加させることにより、ユーザが応答してシステムを制御する、又はシステムがそれに応じて自己制御することができる。
【0021】
国際公開第2020/094747号では、デジタル信号プロセッサが、生成された測定値を調べて、フィードバックを提供し、部位まで誘導される際の解剖学的蛇行による損失と、閉塞を通過する際に生じる損失との相対的寄与を解釈し、比較することを提案している。システムは、血管構造を通過し閉塞を通過する間に共振振動の変換が生じるときの超音波波形を示す測定値から得られるデータを処理する。アルゴリズムが、生データを、処置に関連する出力に変換する。システムは、血管を閉塞している物質の性質を特徴付けるために、アクティブシステムからの計算値と所定の値のセットとの差を比較し、解釈することができる。
【0022】
このように、国際公開第2020/094747号のシステムは、様々な健常組織タイプ及び病変組織タイプとアクティブワイヤとが係合するときの典型的な特徴的な損失の変動を考慮する。血管における損失と病変に関連付けられる損失との間、及び異なる組成の病変の間、特に石灰化病変と非石灰化病変との間で区別される。異なる媒質において生じる、及び、異なる生体構造の中を血管内ワイヤが通過するか誘導される際に生じる差異変化に対する特徴的な応答を使用して、1)システム内の損失の原因を求め、それを補正するため、2)動脈血管のトーンを評価するため、3)病変の組成の詳細を求めるため、に用いる個別のアルゴリズムを作成する。これらのアルゴリズムは、例えば、ワイヤの先端が適合性物質、非適合性物質、及び石灰化物質と接触する際にワイヤの先端に補正を提供し得、後者の場合はそれに応じてシステムへのエネルギー入力を増幅し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】国際公開第2020/094747号
【特許文献2】国際公開第2021/089847号
【特許文献3】国際公開第2021/089859号
【特許文献4】国際公開第2021/224357号
【特許文献5】国際公開第2022/129623号
【特許文献6】国際公開第2019/152898号
【特許文献7】米国特許第5284148号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2017/215837号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/260180号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、国際公開第2020/094747号を出発点とし、国際公開第2022/129623号として公開された本発明者らの国際特許出願に開示された概念を更に発展させ、その内容も参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、ワイヤなど、超音波によって作動する細長い導波要素が、生体構造、及び生体構造内で遭遇する閉塞又は他の病変を横断し、それらと相互作用する際の、導波要素の挙動に関するフィードバックの質を改善することを目的とする。この点で、インサイチュで作動したとき、要素は、病変、血管の組織、及び場合によっては血管に沿った血液の流れを特徴付ける様々な特性を示す特徴的な音響シグネチャを生成することが判明している。
【0025】
国際公開第2019/152898号は、受動的ガイドワイヤに沿って前進させられる超音波作動式管状要素を開示している。国際公開第2019/152898号の管状要素は、血餅を治療することができる場合があるが、石灰化CTOを横断することができる場合であっても、本発明の好ましい実施形態において企図されるようなワイヤと対比されるべきである。ワイヤは、超音波エネルギーを遠位端部分に効果的に伝達し、アクティブな遠位端部分を所望の特性で振動させるように構成することができる。しかしながら、管状要素は、要素に沿って遠位端部分に及びその逆に信号を伝達するのに望ましい剛性及び均一性を失うことなく、蛇行した狭い経路に沿って病変部位を追跡するのに十分なほど可撓性にすることができない。更に、管状要素又は円柱状要素は、曲げられたときのその物質特性の変化に起因して、超音波励起下で破損する重大なリスクがある。しかしながら、本発明では、必要に応じて、ワイヤを取り囲むカテーテル又はチューブが音響センサを支持することが好都合であり得る。
【0026】
国際公開第2019/152898号は、パワー、周波数、振幅、位相及び/又はストローク長などの超音波特性を感知することを記載しているが、本発明によって企図されるような独立した音響センサを開示していない。暗黙のうちに、これらの超音波特性は、国際公開第2019/152898号において、トランスデューサ又はアクティブ要素を聞くことによってではなく、その駆動入力及び機械的特性を測定することによって、トランスデューサから直接測定される。
【0027】
広範囲の異なるセンサ及び感知されるパラメータが国際公開第2019/152898号において提案されているが、センサがどこに配置され得るか、又は音響センサ若しくは音を聞くことについては言及されていない。センサは、ワイヤと血管壁又は周囲の組織又は閉塞部との間の相互作用に関係せず、デバイスが臨床医のための診断補助として機能することを可能にしない。代わりに、国際公開第2019/152898号によって提案されたセンサは、横断処置中にデバイスを制御することに専用である。デバイスの制御とは独立した音響出力の監視、又は本発明によって想定されるような臨床診断としてのデータの使用については言及されていない。
【0028】
米国特許第5284148号は、半径方向に走査することができるが長手方向には走査することができず、閉塞部に遭遇した場合に閉塞部を横切ることができない超音波診断プローブを開示している。
【0029】
米国特許出願公開第2017/215837号は、音響センサがガイドワイヤに対して近位に配置された受動ガイドワイヤを開示している。これは、ガイドワイヤのすぐ遠位の構造(例えば、閉塞部の石灰性キャップ)との相互作用のみを聞くことができ、周囲の血管壁又は閉塞部の内部構造(例えば、より硬いキャップの後ろにゲル様の粘稠度を有し得る)との相互作用は聞くことができない。したがって、ワイヤがその最初の遭遇を通過し、それを越えて通過するとき、病変又は血管を更に特徴付ける可能性はない。
【0030】
米国特許出願公開第2004/260180号は、二重方式で信号を送受信するトランシーバを開示している。トランシーバ及びそれをサポートする電子機器は、それ自体が伝達する信号の反射を検出及び処理することしかできず、したがって、遠位端が体内の構造内でアクティブである交差ワイヤに作用するトランスデューサなど、別の源から駆動される信号を検出及び処理することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0031】
したがって、本発明は、体内の血管、空洞、又は他の構造の状態(そのような構造内の任意の病変を含む)を判定するための血管内装置に属する。本装置は、細長い導波要素と、超音波エネルギーの供給源と、供給源を導波要素に結合して導波要素を作動させ、それによって超音波エネルギーを供給源から導波要素に沿って導波要素のアクティブ遠位部に伝達するための結合部と、を含む作動ユニットと、血管の状態を解釈する際に使用するためのフィードバック信号を装置から取得するように構成された信号取得システムと、を備える。信号取得システムは、導波要素が作動しているときに装置によって生成される音響フィードバック信号を取得するための少なくとも1つの音響センサを備える。少なくとも2つの音響センサを、互いに長手方向に間隔をあけて配置することができる。
【0032】
少なくとも1つの音響センサを、作動ユニット内又は作動ユニット上に、例えば作動ユニットの結合部と長手方向に整列して、又は作動ユニットの結合部に対して近位に、又は作動ユニットの結合部に対して遠位に、取り付けることができる。少なくとも1つの音響センサを、導波要素上又は導波要素と平行に、例えば導波要素の長さに対して近位又は遠位に、取り付けることができる。
【0033】
導波要素は、カテーテルであってもよいし、カテーテルを備えていてもよいし、カテーテルによって囲まれていてもよく、この場合、少なくとも1つの音響センサをカテーテルに取り付けることができる。これに加えて、又はこれに代えて、導波要素はワイヤであってもよいし、ワイヤを備えていてもよく、この場合、少なくとも1つの音響センサをワイヤに取り付けることができる。ひずみゲージを、導波要素から動作フィードバック信号を取得するために、ワイヤなどの導波要素に固定することができる。このようなひずみゲージは、音響センサとして機能することができる。
【0034】
少なくとも1つの音響センサは、身体の一部に当たるように配置される体外センサであってもよいし、体内に挿入されるように配置される体内センサであってもよい。
【0035】
好ましい実施形態では、信号取得システムは、超音波エネルギーの供給源の動作パラメータを表す動作フィードバック信号を取得するように構成された少なくとも1つの電子センサを更に備える。これらの動作パラメータは、超音波エネルギーの供給源によって引き込まれる電流、又は超音波エネルギーの供給源の両端間で降下する電圧、の周波数及び/又は振幅及び/又は位相とすることができる。信号取得システムは、結合部を介した導波要素の振動の周波数又は振幅の変動を監視するように構成することができる。
【0036】
本装置は、信号取得システムによって取得されたフィードバック信号を処理するための信号処理システムを更に備えることができる。このような信号処理システムは、例えば、導波要素の特定のタイプに対して選択される数値アルゴリズムを採用するように構成することができる。
【0037】
信号処理システムは、取得されたフィードバック信号から、血管内の閉塞の特徴を求めるように構成することができる。信号処理システムはまた、アクティブ遠位部を閉塞まで誘導する際の解剖学的蛇行からの損失と、アクティブ遠位部が閉塞を通過することにより生じる損失との相対的寄与を比較するように、構成することができる。
【0038】
信号処理システムは、取得されたフィードバック信号を、既知の閉塞を特徴付ける記憶されているデータと比較し、その比較を参照して閉塞を特徴付けるように構成することができる。
【0039】
信号処理システムは更に、ユーザインターフェースへの出力、及び/又は外部データ取得システムへの出力、及び/又はユーザインターフェースからの入力、及び/又は外部データネットワークからの入力を含むことができる。
【0040】
本装置は、信号処理システムに応答するコントローラを更に備えることができる。このようなコントローラは、超音波エネルギーの供給源に印加される励起電圧、又は超音波エネルギーの供給源に供給される励起電流を変調するように構成することができる。コントローラは、特に、超音波エネルギーの供給源に印加される励起電圧の周波数及び/又は振幅を変化させることによって超音波エネルギーの供給源を制御するように構成することができる。また、コントローラは、励起電圧の振幅と併せて、励起電圧と励起電流との間の位相差を使用することによって、励起電圧の周波数を駆動するように構成することができる。
【0041】
コントローラは、振幅フィードバックコントローラを備えることができ、制御の動作点として共振周波数を使用するように構成することができる。コントローラは、超音波エネルギーの供給源への駆動信号をパルス化又は変化させるように構成することができる。
【0042】
コントローラは、伝達される信号の変調を監視し、アクティブ遠位部が閉塞に接近する際に導波要素内で発生する背景エネルギー損失を補正するように超音波エネルギーの供給源を自動的に制御するように、及び、背景エネルギー損失と、アクティブ遠位部が閉塞を通過する際の追加エネルギー損失とを区別し、背景エネルギー損失を補正してアクティブ遠位部における変位を維持するように、構成することができる。
【0043】
コントローラは、使用中にアクティブ遠位部と閉塞との相互作用から生じる超音波エネルギーの供給源の動作パラメータの変動に応答して、制御アルゴリズムを修正又は変更するように、構成することができる。
【0044】
本発明のコンセプトは、装置からデータを受信し、それに応じて制御アルゴリズムを最適化及び更新し、最適化され更新された制御アルゴリズムを装置に出力するように構成されたコンピュータシステム、とデータ通信する本発明の装置を備えた通信システムを包含する。最適には、2つ以上のこのような装置が、コンピュータシステムとデータ通信を行い、したがってコンピュータシステムは、装置を使用して実行される複数の処置から受信したデータに従って制御アルゴリズムを最適化し、最適化され更新された制御アルゴリズムを装置に出力するように構成される。
【0045】
本発明のコンセプトは、体内の血管の状態を判定するための対応する方法も包含する。本方法は、細長い導波要素の遠位部を血管内の部位まで誘導することと、遠位部に超音波エネルギーを伝達することによって導波要素を作動させることと、導波要素が作動しているときに生成される音響フィードバック信号を取得することと、音響フィードバック信号を解釈して血管の状態を特徴付けることと、を含む。
【0046】
本発明の方法は、血管の壁、又は閉塞病変などの血管内の物質との接触から生じる損失によって引き起こされる導波要素の変位の振幅の減衰、又は周波数のシフトを評価することができる。
【0047】
作動した導波要素の遠位部を血管内の病変に係合させることができ、その結果生じる音響フィードバック信号の変化を解釈して病変を特徴付けることができる。好都合なことに、作動した導波要素の遠位部は、病変を破壊することもできる。
【0048】
本方法は更に、病変に対する、作動した導波要素の応答を表す感知されたデータを、既知の病変との相互作用に対する対応する作動した導波要素の応答を表す記憶されているデータと比較することを含むことができる。
【0049】
音響フィードバック信号は、導波要素の近位に配置された体外の作動ユニットにおいて、及び/又は導波要素に沿った1つ以上の位置において、及び/又は導波要素に沿った体内の遠位位置において、及び/又は血管の外側の1つ以上の位置において、及び/又は互いに長手方向に離間された2つ以上の位置において、取得することができる。
【0050】
好ましくは、本方法は、導波要素と結合された超音波エネルギーの供給源の動作パラメータを表す非音響フィードバック信号を取得すること、又は、より一般的には、導波要素の振動の周波数又は振幅の変動を監視することによって得られる非音響フィードバック信号を取得すること、を更に含む。導波要素が血管及び血管内の任意の病変に遭遇したときに供給源がどのように応答するかは、動作パラメータから判定することができる。例えば、非音響フィードバック信号は、超音波エネルギーの供給源によって引き込まれる電流、又は超音波エネルギーの供給源の両端間で降下する電圧の周波数及び/又は振幅及び/又は位相の変動を表す電気フィードバック信号であり得る。好都合なことに、導波要素の減衰は、電流信号の経時的減衰を監視することによって求めることができる。非音響フィードバック信号は、作動ユニットの向き及び加速度を表す慣性信号であってもよい。
【0051】
音響フィードバック信号及び非音響フィードバック信号からデータセットを生成することができ、それぞれのデータセットの組合せ、又はデータセット間の比較を使用して、血管の状態を特徴付けることができる。導波要素に沿って遠位部に伝達される超音波エネルギーの振幅又は周波数を、非音響フィードバック信号に応答して調整することができる。また、非音響フィードバック信号に応答して、導波要素内の共振周波数を維持するように供給源を制御することもできる。
【0052】
本発明の方法は、外部データネットワークにデータを出力することと、応答としてネットワークからデータを受信することと、ネットワークからデータを受信すると、それに応じて制御アルゴリズムを修正又は変更することと、を含み得る。本方法はまた、外部コンピュータシステムにデータを出力することと、外部コンピュータシステムにおいて、データに従って制御アルゴリズムを最適化及び更新することと、最適化され更新された制御アルゴリズムを外部コンピュータシステムから出力することと、最適化され更新された制御アルゴリズムを使用して導波要素の作動を制御することと、を含む方法。好ましくは、コンピュータシステムは、複数の処置から受信されたデータに従って制御アルゴリズムを最適化することができる。
【0053】
2つ以上の異なる波形を超音波エネルギーの供給源に連続的に印加することができ、それらの波形は、例えば、正弦波形、パルス波形、マルチトーン波形、チャープ波形、又はノイズ波形から選択される。
【0054】
感度を向上させるために、本方法は、作動した導波要素の遠位部を血管内の病変の近くに前進させることと、ベースラインフィードバック信号を取得することと、作動した導波要素の遠位部を前進させて病変に係合させることと、動作フィードバック信号を取得することと、動作フィードバック信号からベースラインフィードバック信号を減算することと、を含むことができる。
【0055】
要約すると、本発明は、超音波によって作動するワイヤなどの管腔内要素の効果を音響的に特徴付けることを含む。特に、本発明は、病変を掘削し、血管内の石灰化した管腔内プラーク又は壁内プラークを破壊するためのみならず、血管管腔の特徴を求めるために、横断ワイヤなどの超音波導波デバイスを採用する。これらの特徴には、血管の内径、血管の血管緊張、並びに血管を塞いでいる任意の物質の機械的特徴及び組成が含まれ得る。
【0056】
国際公開第2020/094747号では、本発明者らは、研削されたテーパ形状、ランドの長さ及び直径の特定の組合せなどの既知の特徴を有する異なるワイヤが、石灰化性又は非石灰化性の病変を区別することができる方法で、病変に応答することを提案した。本発明者らは、スペクトルを更に分析及び処理することにより、病変、及び/又はワイヤが血管構造内で接触し得る他の表面の、より高感度の評価を提供することができると判断した。より具体的には、本発明は、血管の内径の評価を可能にし、血管壁及び血管を塞いでいる可能性のある任意の物質の機械的特性を補間によって特徴付けることを目的とする。したがって、本発明は、閉塞部がゼラチン状プラーク、石灰化物質、血栓、又は何らかの他の形態の塞栓性物質から構成されているかどうかを識別することを可能にする。特に着目されるのは、閉塞部が脆弱な軟質プラーク又は石灰化プラークであるかどうかを判定すること、又は閉塞部が血栓である場合、どのタイプの血栓が存在するかを特徴付けることである。
【0057】
説明される例では、本発明のシステムは、その遠位端に向かって特定の研削プロファイルで製造され、かつその長手方向に連続する部分が特定の直径及び長さを有するワイヤを備える。このようなワイヤの特徴の例は、本発明者らの前述の先行特許出願に教示されている。これらの特徴により、ワイヤの遠位端部分は、ワイヤを作動させる圧電超音波トランスデューサの共振周波数(及び共振周波数に関連付けられるか又は一致する高調波周波数)において、特定の方法で作動することができる。
【0058】
結合機構は、ワイヤがトランスデューサに結合されることを可能にする。トランスデューサは、トランスデューサ及びしたがってワイヤを所望の周波数及び振幅で励起することができる超音波信号発生器によって駆動される。制御回路は、トランスデューサの両端間の電気的負荷を監視及び制御して、所望の作動をもたらす。
【0059】
本発明によれば、少なくとも1つの音響センサが、ワイヤ、カプラ、及び/又はトランスデューサからの音響放射を検出し、実質的にリッスンする。システムは、検出された音響スペクトルを監視及び分析することができ、処理された情報を意味のある方法でユーザに提示することができる。音響情報は、制御回路への入力又は制御回路からの出力などの他の情報と組み合わせて使用することで、分析、検出、及び判定の質を向上させることができる。また、処理された情報は、クラウドなどの外部データベースに保存し、そこから共有することもでき、これは、実際の処置における本発明の使用を表すサンプル数の増加とともに、医師を教育し、分析アルゴリズムをより完全にするためにより好ましい。
【0060】
本発明は、振動するワイヤ又は他の導波体が血管構造を通過する間に放出される音響スペクトルを解釈することにより、組織の特徴を解釈する手段を提供できるという洞察を利用する。これが可能であるのは、ワイヤが、血管の内面又は血管を塞いでいる病変などの任意の表面と強制的に接触すると、その接触により、ワイヤを通って移動する音響波形の周波数及び/又は振幅が変調されるためである。これらの変調を血管の生体構造の特定の特徴と関連付けることが可能である。また、そのような超音波高周波数では、血管壁との相互作用によって壁内の石灰化物質が破壊され、したがって血管の硬さを評価すると同時にプラークを軟化させることができる。
【0061】
また、音響スペクトルのみを調べることにより、及び/又は環境からの他の入力から、ワイヤが血管内腔の内部形態を通過する際に接触し得る構造又は物質が何であるかを、ワイヤの変形から解釈することも可能である。これには、管腔内に存在し得る任意の閉塞部、又は、ワイヤがそのような閉塞部を掘削又は除去している場合には、その閉塞部の特徴が含まれる。
【0062】
このような評価を行う根拠は、システムにおける共振に関連付けられる軸方向又は半径方向の変位の振幅が入力振幅とともに変化し、その減衰又は周波数の変位が、ワイヤがその端部において又は長さに沿って他の物質又は表面と接触することによって生じる損失に関連付けられることである。ワイヤに沿って検出される音響のこれらの変化を利用して、血管、その内腔、及び閉塞を特徴付けることができる。更に、トランスデューサのインピーダンスも、ワイヤが減衰される、又は多かれ少なかれ拘束されるようになるにつれて、システムにおける損失の変化の結果として変調し得るため、この電気的応答の重ね合わせを利用して、血管、その内腔、及び任意の閉塞の特徴をより正確に分析し記述することができる。
【0063】
放出される音を検出し、周囲の雑音を差し引くために、例えば、トランスデューサのハウジング上、ハウジング内、若しくはハウジングの近く、又はワイヤ上、又はカテーテル上、又は患者の身体内、若しくは身体と接触して、1つ以上の音響センサを配置することができる。得られた音響スペクトルは、特定の種類の干渉並びに共振周波数及び低調波周波数に特徴的な音響スペクトルを認識するアルゴリズムによって処理及び分析される。上述したように、音響アルゴリズムの感度は、トランスデューサをその共振周波数で駆動するために使用される電気信号の変動を調べることによって向上させることができる。
【0064】
システムは、音響スペクトルと、ワイヤの遠位端部分が軸方向及び半径方向変位を伴って共振することを可能にする周波数及び振幅で共振する、ワイヤなどの血管内導波体を採用するデバイス内の超音波スペクトルとを比較する。横断ワイヤの場合、軸方向及び半径方向変位の主な目的は、血管を閉塞している物質を掘削することである。本発明では、これらの変位を別の目的又は追加の目的、すなわち、血管構造を通って移動する際、及び病変に遭遇して係合する際に様々に変化する音響信号を発生させるために使用する。音響信号はまた、異なるタイプの病変と係合する際に異なる様式で変化し、したがって、病変を特徴付ける音響シグネチャとして機能する。
【0065】
前述した本発明者らの以前の特許出願において説明したように、横断ワイヤの寸法及びプロファイルは、ワイヤが、特にその遠位端部分において、様々な変位モードで高調波周波数及び低調波周波数で共振することを可能にする。ワイヤが様々な表面と接触すると変調が起こる。例えば、ワイヤの遠位先端が、その横方向変位を抑制する石灰化した閉塞部に遭遇すると、ワイヤの変位のモードは、「固定-自由」から「固定-固定」に遷移する。「固定-自由」は、ワイヤの近位端における波節及びワイヤの遠位端における波腹として視覚化することができ、「固定-固定」は、近位端及び遠位端の両方における波節として視覚化することができる。この変調は波長をわずかにシフトさせるため、ワイヤによって伝達される音響信号が変化する。
【0066】
システムは、波長の変化を分析することにより、どのような種類の物質がその波長及び周波数を乱したかを感知することができ、したがってワイヤの遠位端部分が接触している物質の種類を求めることができる。このように、導波体が血管構造を通過する間に放出される音響スペクトルを解釈することで、ワイヤが接触する組織の特徴を解釈する手段を提供することができる。また、血管における閉塞部を除去する際にワイヤが内腔の内部形態にどのように応答しているかを示す音響スペクトル又は電気信号の特徴を、数学的変換によって補間することもできる。
【0067】
システムは動的であるため、電子制御と、音響的に放出される変数との比較に忠実であるためには、システムが応答する様式の特徴付けを動的に行う必要がある。特徴の動的な調査及び減算、又はパターン化された励起の場合の追加は、適時に監視される必要がある。この点で、特定の特徴の変動を求めるために、パルス又はパターンなどの比較されたプログラムされた入力からフィードバックを調べることができる。フィードバックはまた、減衰を表す品質係数又はQ値など、比較される経時的変動から調べることもできる。
【0068】
したがって、本発明は音響的な特徴付けの原理を具現化するものであり、血管内のインサイチュのワイヤなどのアクティブ要素が、血管壁、及び内腔内又は血管壁内の血栓(軟質又は線維性)又はアテローム硬化性病変(硬質又は軟質)のいずれかの閉塞部と接触する際に、特徴的な音響を発生させることを提案する。捕捉される音響シグネチャは、血管内腔及びその周辺組織に特徴的である。補間又は外挿される直接的な比較測定により、後処理分析及び適切なアルゴリズムを使用して、これらの特徴的な音響スペクトルを組織の性質及び完全性に関連付ける信頼性の高い診断出力を生成することが可能になることを提案する。
【0069】
本発明の好ましい実施形態では、同時に動作する2つのセンサ、すなわち電気又は電子センサと音響センサとを採用している。
【0070】
電子センサは、超音波エネルギーを発生させるトランスデューサなどの特徴に作用し、トランスデューサがどのように動作しているかを判定し、調べることのできるデータを感知及び生成するその能力の範囲を設定する。電子センサはまた、電気駆動周波数と、蛇行する血管の中を病変点まで移動するワイヤによってもたらされる変動性又は不安定性にシステムが応答する様式を検出する。電気駆動周波数は、血管壁及び内腔の閉塞部に遭遇することによって変調される。ドライバ電子回路は、位相角、電流、及び/又は電圧の変数を追跡することによって、この変調に応答する。本発明は、血管及び血管内の任意の閉塞部の物理的特徴に関連付けることができる特徴的な特徴を提供するために、主要変数におけるこの動的制御変動を調べることを企図する。
【0071】
1つ以上の音響センサ又はマイクロフォンは、アクティブワイヤが生体内にあるとき、壁内、管腔内、又は体外のいずれであっても、生物学的組織を通る、及び生物学的組織からの音響放射の全て又は一部をリッスンする。音響センサは、特に、血管の管腔内で内部的に作動するワイヤからの音響放射をリッスンする。本発明は、ワイヤと血管又はCTOなどの血管内の任意のものとの干渉の影響を受ける音響放射の変動を調べることを可能にする。
【0072】
音響センサからのデータセットは、ワイヤを作動させる際に使用される小さい範囲の動作周波数からのデータセットよりも(たとえ音響放射がその小さい作動範囲によって生成されるとしても)、はるかに豊富である。その結果、膨大な量の追加データが得られ、それらをマイニングして様々な数学的手法を使用して特徴を見つけ出すことができ、それらの特徴を、血管及びその内容物の性質、ワイヤの挙動、並びにワイヤの使用によって掘削された新しい流路の性質と関連付けることができる。このように、音響データを統合することによって、電子データセットを大幅に強化することができる。
【0073】
発現している様々な周波数の全範囲及びスペクトルを全て調べるには、かなりの後処理評価が必要であり、したがって、高度なアルゴリズムの動作、開発、更新には、クラウドベースの機械学習アプローチが好ましい。しかしながら、適切にプログラムされたオンボードプロセッサ設備がローカルデバイスにあれば、適切なアルゴリズムによってデータを操作し、病変が石灰化であるか非石灰化であるか、硬質であるか軟質であるかといった少なくとも「二値」のフィードバックを提供することができるであろう。クラウドであるか否かにかかわらず、いかなる形式の後処理も必要条件ではないことを強調しておく。そのような処理は、リアルタイムでローカルに実行されてもよい。
【0074】
したがって、開示されるのは、カスタマイズされた血管内外科用ワイヤデバイスに振動を誘発し、音響フィードバックと、任意選択でシステム内の他のフィードバックも調べて、人工知能を適用する超音波システムである。このフィードバックを使用して、血管内閉塞部まで誘導する際の、血管内閉塞部を横断する際の、並びに血管内閉塞部の構造及び特性を特徴付け及び修正する際の、システムの性能を最適化することができる。
【0075】
データを取得及び処理するための、並びにシステムの作動を制御するためのプログラム可能な回路システムは、統合された、又はオンボードの、プログラム可能なデジタル信号処理チップセットを含むことができる。このチップセットは、監視された、送信及び受信された、又は入力された音響信号及び/又は電気信号又は電子信号を、応答を調べるための、超音波フィードバックと共振周波数定常波への影響を比較するための、作動した先端部による病変を貫通する開口部のサイズを推定するための、電圧振幅及びシステム周波数を介してシステムのパワーを変調するための、アルゴリズムを使用して処理する。
【0076】
デバイスのアナログ及びデジタル信号解析並びにパワー制御と、通信モジュールとによって、デバイス及びそのデータをより広範なデータネットワーク及びインターネットに有線接続及び無線接続することが可能になる。これにより、例えば、システムを管理するためのよりインテリジェントなアルゴリズムの開発が容易になり得る。
【0077】
超音波振動が、導波体として機能する伝達部材を介して伝達されると、伝達部材の遠位先端は、病変組織又は他の物質を有利に破壊する能力を有する所定の周波数及び振幅で振動する。デジタル信号処理及び制御回路は、音響フィードバック及び他のフィードバックに応答して、病変の半自律的な全体的特徴付け、パワー制御、及びシステム内の開口部のサイズの推定を可能にする。
【0078】
超音波システムが作動すると、放出された波はワイヤに沿ってその遠位先端まで進み、そこで反射される、又は透過して近隣の物質に到達する。様々な移行点でワイヤに生じる残響により、一連の二次反射及び三次反射が確立される。これらの波は、異なるワイヤの設計及び特徴に特徴的であり、信号の特徴の違いを強調するように最適化することができる。反射は、所与の入力に対していつでも波形の特定の応答パターンから構成されているものと判定され、その変動は周囲環境の摂動又は差異に関連付けられる。波形は、単独で、又は他のフィードバック信号に加えて使用することのできる特徴的な音響放射を生じさせる。
【0079】
特定の周波数における、ワイヤに沿った変位の振幅は、病変部位まで誘導される間、又は病変における病変組織、非適合性組織、若しくは石灰化組織と接触しているときのいずれかにおいて、周辺組織との接触による減衰の結果として、処置の過程で変化する。システム内の残響及び結果として生じる音響放射も同様に、特徴的な様式で影響を受けるため、減衰を生じさせている原因及び性質を特徴付けるのに使用することができる。
【0080】
一定の振動振幅をもたらすために、超音波トランスデューサは適切なフィードバックコントローラによって制御される。超音波波形の場合には、Butterworth-vanDykeモデルなどの電気的等価モデルによって位相フィードバック制御及び比較を行うことができる。
【0081】
超音波トランスデューサは、励起電圧の周波数及び振幅によって制御することができる。周波数を変えることで、電圧と電流の間の位相に影響を与えることができる。電流を制御する励起電圧の振幅は、共振における振動振幅に比例する。これにより制御アルゴリズムは、位相及び振幅のみを使用して周波数を駆動することができる。
【0082】
好ましい実施形態では、アプローチは、振幅フィードバックコントローラと組み合わせて、制御の動作点として共振周波数を使用してシステムを駆動し、各ワイヤタイプに固有のカスタマイズされたプログラム制御アルゴリズムを使用してこの動作を管理する。
【0083】
共振駆動式の減衰の少ないシステムの利点は、必要な電圧が低く、有効パワーの値が高いことである。この解決策はまた、超音波作動に対するニチノールワイヤの応答を制御する際に利点を提供する。
【0084】
ニチノールにおける温度効果、及び周囲の組織との相互作用による処置中の負荷条件の変化は、共振周波数及び振動振幅を変化させる可能性があるが、所与のトランスデューサでは、範囲内で補正することができる。
【0085】
このように、電圧及び電流の使用に関しては、共振周波数を通じた制御及び分析を使用して、時間及び長さにわたる微分変化を監視することができ、この調査及び補正を使用して血管内生体構造の性質を特徴付けることができる。システムと隣接組織との相互作用からの音響放射を捕捉する能力は、ワイヤとの相互作用に対する組織の応答が組織の構造的特性によって決まるため、組織の性質を推測する、又は組織を特徴付ける追加の別個の手段を提供する。
【0086】
ワイヤにおける一次放出信号と三次フィードバック応答の比較及び解析では、健常組織と病変組織という異なる組織タイプにアクティブ部材が係合する場合に典型的な特徴的損失の変動を考慮する。血管内のこれらのタイプの損失と、異なる組成の病変(例えば石灰化病変と非石灰化病変)間の病変に関連付けられる損失とを区別する。
【0087】
遭遇する抵抗負荷と、システムによって記録される音響放射は変化する。アクティブ部材が様々な生体構造を通過する際、アナログ信号がオンボードのデジタル信号プロセッサによって調べられ、調整され、パラメトリック出力がアルゴリズムによって処理され、音響フィードバックからのデータに追加され、応答を特徴付け、フィードバックを定義し、制御を行うことができる。
【0088】
アルゴリズムは、ワイヤタイプに合わせてカスタマイズされてもよい。アルゴリズムは、信号処理回路によってフィルタリングされた変化の範囲、変化率、及び変化の微分次数を使用して、ワイヤが通過する材料の性質を特徴付けることができる。これは、治療法の決定に役立てるため、処置が行われているときに医師に伝えることができる。
【0089】
性能を向上させるために、アルゴリズムを、ベンチex-vivo及びin-vivoデータによって訓練することができる。後者の可能性は、デバイスとの間のデータ転送を提供する通信モデルによって可能になる。システムは、解析及び保存のために、デバイスと別のデバイス又はクラウドサービスとの間でデータの有線通信又は無線通信を可能にすることができる。
【0090】
したがって、デバイスによる動作及び解釈の質は、使用経験に基づいて構築される追加の処置からのより多くのデータセットの補間によって、経時的に改善することができる。そのようなデータは、制御及び解釈アルゴリズムの反復生成の設計に情報を与えることができる。その結果、アルゴリズムのオンボード、ローカル、及び/又はクラウドベースの改良により、治療デバイスの設計及び操作インターフェースを改善することができ、様々なワイヤ形状及び生体構造に適合するようにデバイスの動作をカスタマイズすることに加えて、デバイスを使用する医師により詳細なフィードバックを提供することができる。
【0091】
トランスデューサが機械的信号を生成する周波数は、ワイヤの長さにわたる様々な力による相互作用及び衝突からの損失に対応するために、短い周波数範囲にわたる設定された短距離周波数掃引であってもよい。マイクロプロセッサの速度により、デバイスは共振の小さな変動をリアルタイムで処理することができる。
【0092】
超音波発生器を駆動するために使用される信号は、加熱を低減し、共振周波数におけるオフセットの分析及び整合を最適化するために、パルス化又は変化させることができる。例えば、小さな周波数範囲にわたる電圧のパルス変調が、横断ワイヤを作動させることができ、デジタル信号プロセッサユニットが、行われた測定値を調べ、フィードバックを提供し、部位まで誘導する際の解剖学的蛇行からの損失と、閉塞部を通過することから生じる損失の相対的寄与を解釈し、比較することができる。
【0093】
本発明は、フィードバック信号を調べて、ワイヤが横断している血管又は病変を特徴付け、医師によって標的病変が治療され得る様式を知らせるファセットであるその長さ及び組成などの、横断している病変に関するデータを収集する方法を採用する。このデータはまた、医師がデバイスを操作するのを助けるために、ディスプレイ上に触覚形式及び/又は視覚形式及び/又は音声形式で医師にフィードバックとして提供されてもよい。例えば、このフィードバックにより、医師は、小型の作動ユニット上の単純なバックライト付きスクリーンを使用して、病変の特徴を表示及び評価しながら、横断手順を監視することができる。
【0094】
別の実施形態では、ユーザがネットワークへのアクセスを有する場合、処置からのデータが、患者の機密性を保護するために匿名で取り込まれ、デバイスからデータストレージ及び処理プラットフォームに伝えられてもよく、そこでリアルタイム又は後から分析することができる。病変の特徴付けは、処置を行っている間に分析及び解釈できるようにユーザに提示することもできる。
【0095】
アタッチメントを使用して、ワイヤが血管構造を横断する際のワイヤの変位を記録及び測定し、そのデータをフィードバックからの病変組成に対してマッピングして、病変を通る変位の関数として病変の特性を特徴付けることができる。
【0096】
変換器の特徴的なキャパシタンスに伴う、電流、電圧、及び周波数の入力及び制御パラメータの大きさの変動は、パワーを決定し、横断される病変を特徴付けるために音響フィードバックと組み合わせて使用できる測定及び制御のマトリックスを提供する。
【0097】
音響放射及び電流などの電子応答を監視することで、病変の解釈をサポートすることができ、電圧を変調することで、デバイスが接触面を作動させてオフセットを減少させる際に、パワーの増幅及び周波数の回復が可能になる。このような小さい周波数範囲での一連の測定により、病変の長さの全体又は一部にわたって、石灰化、繊維状、ゼラチン状など、病変の組成を全体的に特徴付けることができる。これらの補間された特徴的な構成要素は、病変の絶対的な特徴ではなく、代わりに、組成、石灰化の程度、及び病変が硬いか、圧縮されているか、又は脱凝集しているか、を示す。これは病変の性質を示し、考慮すべき最適な治療法を医師に知らせることができる。これは例えば、病変の組成又は粘稠度が、圧縮された石灰化粒子であるか、又は圧縮されていない線維性であるか、又は硬質若しくは軟質のゼラチン状であるかを判定するのに役立ち得る。
【0098】
標準的なワイヤの種類ごとに、特定のアルゴリズムを採用することで、処置に関連する条件下で、様々なレベルの周波数及びパワー、並びにデバイス構成で励起されたときの遠位先端の偏位によってマッピング(mapped out)される直径を推定することができる。これによって、閉塞部を通る、結果として生じるトンネル状流路の直径の推定値が提供される。
【0099】
システムは、超音波波形が生成されるとき、波形がワイヤ又は他の伝達部材を通過するとき、共振振動の変換が起こるとき、及び血管構造及び閉塞部を通過する間に反射波形が伝達部材によって減衰されるときに、超音波波形の測定から得られるデータを処理することができる。
【0100】
伝達された信号の変調を監視及び分析することにより、電圧制御を通じてシステム内のエネルギー損失を自動的に調整してシステムのパワーを増加させ、ワイヤが血管構造を通って閉塞部に至る際にワイヤ内で発生するエネルギー損失を補正することができる。また、伝達された信号の変調を監視及び分析することで、これらの損失と、ワイヤが閉塞部を通過する際の追加損失とを区別し、遠位先端での変位を維持するためにこれらの追加損失を補正することができる。
【0101】
測定されたパラメータ及び変数を数値的に操作して、互いに対する、及び他のパラメータに対する変化率を求めることができる。アクティブシステムからのこれらの計算された値と、所定の値のセットとの間の差異を比較し、数値的に解釈して、血管を閉塞している物質の性質を特徴付けることができる。
【0102】
要約すると、本発明は、体内の血管の状態を判定するための血管内装置に関する。装置は、ワイヤなどの細長い導波要素と、導波要素を作動させ、したがって導波要素のアクティブ遠位部に超音波エネルギーを伝達するための超音波エネルギーの供給源を含む作動ユニットと、を備える。本発明によれば、信号取得システムは、身体の血管、空洞又は構造の状態を解釈するために装置からフィードバック信号を取得する。信号取得システムは、導波要素が作動されたときに装置によって生成される音響フィードバック信号を取得するための少なくとも1つの音響センサ、及び/又は作動ユニットの向き、かつ/若しくは作動ユニットの加速度を表す情報を取得するための少なくとも1つの慣性センサを備える。音響フィードバック信号及び/又は非音響フィードバック信号(慣性信号若しくは電気信号を含む)からデータセットを生成することができ、それらのデータセットの組合せ、又はデータセット間の比較により、血管、空洞、又は構造における閉塞部などの任意の病変を含む、血管、空洞、又は構造の状態を特徴付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
本発明をより容易に理解することができるように、例として添付の図面を参照する。
図1】本発明を実施する装置の斜視図である。
図2】作動時の本装置の横断ワイヤの概略側面図である。
図3a】第1、第2、第3、及び第4の高調波波形を表しており、第2、第3、及び第4の波形の波長は、それぞれ先行する波形の波長の半分である。
図3b図3aの高調波波形から生成される基本複合波形を表している。
図4】カテーテルから遠位方向に突出した本装置のアクティブワイヤの詳細側面図である。
図5】血管を閉塞していた病変にトンネルを掘削している作動時のワイヤを示した一連の図である。
図6】病変にトンネルを掘削するアクティブワイヤを示す一連の図である。
図7】病変にトンネルを掘削するアクティブワイヤを示す一連の図である。
図8】病変にトンネルを掘削するアクティブワイヤを示す一連の図である。
図9】経時的な音響信号の図であり、病変を表すカルシウムサンプルに遭遇した際のアクティブワイヤの応答を示している。
図10】本発明の実施形態のブロック図である。
図11】本発明の別の実施形態のブロック図である。
図12図1に示したような装置のトランスデューサに印加される電圧波形及び電流波形の典型的なオシロスコープ画像を示している。
図13】作動ユニットに結合された横断ワイヤ及びカテーテルの長手方向断面の側面図であり、作動ユニット内の可能な音響センサの位置を示している。
図14】作動ユニットに結合された横断ワイヤ及びカテーテルの側面図であり、カテーテル上の可能な音響センサの位置を示している。
図15】横断ワイヤを含むカテーテルの斜視図であり、カテーテル上の可能な音響センサの位置を示している。
図16】横断ワイヤの斜視図であり、ワイヤ上の可能な音響センサの位置を示している。
図17】患者の脚部の概略断面図であり、患者の血管構造の病変部位に近い位置で脚部に貼付された粘着パッチに組み込まれた本発明の音響センサを示している。
図18図17に対応しているが、粘着パッチの代わりに、病変に近い位置で脚部に当てて保持された音響センサユニットを示している。
図19図18に対応しているが、病変に近い位置で脚部を掃引するハンドヘルドスキャナの形態における音響センサを示している。
図20】患者の脚部の概略側面図であり、脚部の皮下に埋め込まれた本発明の音響センサを示している。
図21図19に対応する概略断面図であり、患者の血管構造における病変部位の近くに埋め込まれた音響センサの1つを示している。
図22】アクティブワイヤが白亜のサンプルを横切るときに、125kHzまでの周波数範囲において、放出される音響信号を示している。
図23図22に対応しているが、10kHzまでの範囲に焦点を当てている。
図24】アクティブワイヤがBegoStone石膏のサンプルを横切るときに、125kHzまでの周波数範囲において、放出される音響信号を示している。
図25図24に対応しているが、10kHzまでの範囲に焦点を当てている。
図26】アクティブワイヤがサンプルを横切らず、代わりに水中においてアクティブであるときに、125kHzまでの周波数範囲において、放出される音響信号を示している。
図27図26に対応しているが、10kHzまでの範囲に焦点を当てている。
図28】血管内の閉塞部に係合して開口部を形成する本発明のデバイスの概略図である。
図29】本発明のデータ取得及び処理技術のフローチャートである。
図30】外部マイクロフォンによって捕捉され、作動されたワイヤのパワースペクトルプロットである。
図31】振幅対時間として表されるパワー帯域の範囲内のパワーのプロットである。
図32】特定の周波数帯域における時間に対してプロットされた全パワーのプロットである。
図33】駆動電流の振幅が変化するときの電流信号の周波数のスペクトログラムである。
図34】周波数に対してプロットされたトランスデューサのインピーダンス振幅及びインピーダンス位相を示す。
図35】作動ユニットに結合された横断ワイヤ及びカテーテルの長手方向断面の側面図であり、作動ユニット内の慣性センサに関する更なるオプションを示している。
図36】本発明の作動ユニットの下から見た斜視図であり、X軸、Y軸、Z軸を示し、これらの軸に沿って直線加速度を測定することができ、作動ユニットのピッチ、ロール及びヨー運動の変化をユニット内の慣性測定システムによって測定することができる。
図37図35及び図36に示されるような慣性感知を実装する本発明の実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0104】
図面の図1は、本発明を実施するシステムの全体的な構成を示し、そのようなシステムのいくつかの主要な構成要素を示している。この例は、手持ち式超音波作動ユニット2を特徴とし、血管内導波体又はワイヤ4の形態の可撓性伝達部材が、これを通って中心に整列して延びる。この例では、ワイヤ4の一部は、作動ユニット2から近位側及び遠位側の両方に延びている。この配置は、本発明者による先の特許出願で説明したように、様々な理由で有利であるが、ここでは、本発明を例示するために記載されており、本発明を限定するためではない。本発明は、例えば、超音波アクチュエータから遠位方向にのみ延び得る、より従来的な、作動される横断要素と組み合わせて有利に使用することができる。
【0105】
ワイヤ4は、患者の血管構造に挿入され、その遠位端を病変の位置に移動するように横断され得る。ワイヤ4が横断するのに抵抗する複雑な病変に遭遇した時点で、又はその前に、作動ユニット2を、適切な長手方向の位置でワイヤ4に結合することができる。作動すると、作動ユニット2は、超音波振動をワイヤ4に、かつワイヤ4に沿って伝達し、アブレーション及び他の機構を介してワイヤ4が病変を横断する能力を高める。これにより、ワイヤ4は、血管内の閉塞を通過するための横断ワイヤとして機能し、その後、病変を治療するために後続の治療デバイスを送達するためのガイドワイヤとして機能するように、インサイチュに留まることができる。
【0106】
一般に、ワイヤ4の長さは、2mより長く、最大3mとすることができる。例えば、足の中又は足を通しての病変へのアクセスは、同側、反対側、又は橈骨アプローチが選択されるかどうかに応じて、血管構造内で、通常は、1200mm~2000mmの距離をワイヤが移動することを伴い得る。この点で、その先端で細いワイヤになるように、遠位にテーパしているワイヤ4は、足動脈に、及び背側動脈と足底動脈との間の足の土踏まずの周りに誘導することができる。しかしながら、本発明は、足の鼠径部下又は末梢血管に限定されるものではなく、例えば、蛇行した小径動脈内を進んで掘削するワイヤ4の能力も有益である冠状動脈用途に使用することができる。
【0107】
作動ユニット2は、ユーザ制御部6と、任意選択的にディスプレイとを含んでもよい。作動ユニット2は、ユーザがユニット2及びワイヤ4の中心長手方向軸を中心に回転することができる遠位ハンドトグル8を更に備える。特に、作動ユニット2は、ワイヤ4上を摺動することができ、トルクを加えてトグル8を回転させることによって、複数の長手方向に離間した位置でワイヤ4に結合することができる。
【0108】
結合を行うために、後の図面に示すように、トグル8は、ワイヤ4を取り囲み、ワイヤ4と同軸である作動ユニット2内のコレットに作用する。トグル8が締め付けられると、コレットはワイヤ4を把持して、作動ユニット2内の一体化された超音波トランスデューサから、任意選択でトランスデューサに結合された増幅器ホーンを介して超音波エネルギーを伝達する。ワイヤ4は、いくつかの実施形態ではトランスデューサに直接結合されてもよく、その場合、ホーンは省略されてもよい。
【0109】
トグル8の回転は、作動ユニット2をワイヤ4から解放するために反転可能である。これにより、異なる目的のために異なる寸法、構成又は材料のワイヤ4を交換することができる。作動ユニット2内でトランスデューサ、ホーン、及び/又はコレットを交換する可能性もある。
【0110】
図1に例示されている分解構成では、超音波信号発生器10は、作動ユニット2とは別個であり、コネクタケーブル12によって作動ユニット2に接続される。超音波信号発生器10が作動ユニット2のハウジング内に組み込まれる一体化された構成も可能である。
【0111】
図1に示される例は、外部から電力供給される超音波信号発生器10を有し、したがって、外部電力の供給源に接続する電力ケーブル14を備える。他の例は、超音波信号発生器ユニット10又は作動ユニット2に組み込まれ得る内部電池によって電力供給され得る。
【0112】
一般に、システムの構成要素は、好ましくは持ち運び可能であり、より好ましくは手持ち式である。構成要素は、無線、再充電可能、再使用可能及びリサイクル可能であってもよい。電力又は信号を伝達するための任意の外部ケーブル12、14は、スリップリングを通して結合され、ケーブル12、14の自由回転を可能にし、ワイヤ4との絡み合いを回避してもよい。
【0113】
ワイヤ4の遠位部の直径は、その遠位部の可撓性と、それが通過することが意図されている生体構造の形状に容易に適合する能力を決定する。例えば、特定の熱転移温度を有する特定のニチノールでは、適切な長さ及び例えば0.005インチ~0.007インチの直径を有する遠位部は、適切な可撓性と、蛇行した(足又は冠動脈)生体構造において閉塞物質を掘削する能力とを兼ね備えている。
【0114】
ワイヤ4を励起するために超音波エネルギーを使用するとき、病変を掘削して横断するために、ワイヤの遠位先端部及びその周辺における変位振幅を最適化することが望ましい。逆に、患者の体外にあり、その一部が作動ユニット2の近位側から自由に垂れ下がる可能性があるワイヤ4の近位端部分の変位又は移動を最小限に抑えることが望ましい。これを達成するために、遠位先端から作動ユニット2がワイヤ4に結合される場所までのワイヤ4の遠位長さは、超音波の4分の1波長の奇数倍であるべきである。これにより、遠位先端に振動する腹を有する定常波がワイヤに形成され、遠位先端における振動の振幅が最大になる。
【0115】
ここで図2も参照すると、ワイヤ4は、直径の変化をもたらすように幾何学的形状がテーパする領域を含む。具体的には、図2に示されるワイヤ4は、実質的に直線状の近位部16と、病変を横断するための掘削部分を提供する実質的に直線状の遠位先端部18とを備える。遠位部18は、近位部16より細く、テーパ状であってもよく、又はその長さに沿って直径が均一であってもよい。
【0116】
遠位部18は、遠位方向にテーパをつけた移行部20によって近位部16に接合されている。近位部16、遠位部18及び移行部20は、ワイヤ4の中央長手方向軸に沿って互いに同軸に整列しているが、それらの長さに沿って曲げられるように実質的に可撓性である。
【0117】
テーパ状移行部20の目的は、利得を提供し、ワイヤ4を通る超音波エネルギーの伝達を持続させることである。増幅の目的のために、断面積の変化は、ワイヤ4における横方向及び長手方向の両方の変位振幅の利得のレベルを表す。遠位部18の長さ及び直径は、軸方向及び半径方向における変位のモード及び大きさを決定する。移行部20はまた、ワイヤの遠位部18において変位の横方向モードがどのように確立され得るかに影響を及ぼす。
【0118】
全ての血管内ワイヤと同様に、「トラッカビリティ」として表される可撓性と、「プッシャビリティ」又は「ステアリング性」として表される剛性との間のバランスが必要とされる。前述したように、プッシャビリティは長手方向の円柱剛性を必要とし、ステアリング性はねじれ剛性を必要とする。しかしながら、パッシブワイヤとは異なり、ワイヤ4はまた、病変を横断するのを支援するために、超音波エネルギーを遠位部18に伝達可能である必要がある。このようにして、ワイヤ4は、その先端だけでなく、その長さの一部に沿って掘削機として機能する。特に、遠位部18は、血管内の病変に開口部をあけるための横方向掘削デバイスとして半径方向に作用する。ワイヤ4はまた、半径方向の掘削を増幅するように形成された遠位部分を有することができる。
【0119】
作動したワイヤ4の目標は、病変を通過することであるので、その寸法は、所与の入力で可能な限り大きな開口部を掘削する目的で最適化される。具体的には、ワイヤ4の遠位部18は、図2に示したように超音波エネルギーによって作動すると、一次長手方向モードで移動し、内外に移動し、また半径方向に移動し、ワイヤ4に沿った横方向移動又は半径方向変位を介して遠位端でより大きなボリュームをマッピングし、掘削する。ワイヤ4の遠位部18はまた、作動周波数、遠位部18の長さ、及び解剖学的構造の蛇行に依存して、共振波及び微分高調波の二次モードの下で、駆動周波数又はその付近での横方向及び波状運動を通して移動することが分かる。これらの波形は、互いに干渉することがあり、異なる瞬間に物質を掘削する際に多かれ少なかれ効果的であり得る。
【0120】
図3a及び図3bは、ワイヤ4が作動したときの遠位部18のこれらの複雑な動きの理由の1つを示している。図3aは、第1、第2、第3、及び第4の高調波波形22A、22B、22C、22Dを表している。第2、第3、及び第4の低調波波形22B、22C、及び22Dの各々の波長は、それぞれ先行する波形の波長の1/2であることに留意されたい。図3bは、低調波波形22B、22C、22Dと図3aの高調波波形22Aとの組合せ又は重ね合わせから生成される複合波形24A、24B、24Cを表している。
【0121】
図面の図4に示したように、ワイヤ4の遠位部18が周囲のシース又はカテーテル26から出る場合、更なる低周波の横振動が生じ得る。運動の自由度は、横方向成分が表現されることを可能にし、運動のいくつかの成分は、カンチレバー効果から生じ得る。この点に関して、図4は、このようにワイヤ4にスリーブを付けることで、所望の遠位長さが、図示したように横方向に自由に振動できるようにする方法を示している。スリーブの遠位範囲、したがってワイヤ4の自由端の長さは、ワイヤ4の遠位部18による掘削を制御する。カテーテル26の遠位端が共振長さ又は高調波長さと実質的に一致するように、共振長さ又は高調波長さまでワイヤ4にスリーブを付ける又は被覆することにより、ワイヤ4がより大きな開口部を掘削することが可能になる。
【0122】
任意選択で、例えばカテーテル26の外側スリーブに作用する作動ユニット2上のサムホイールを回転させることによって、カテーテル26及び/又はワイヤ4を、図示したように遠位方向及び近位方向に互いに対して長手方向に移動させることができる。また、カテーテル26とワイヤ4との間の半径方向の間隙を調整することによって、又は図4にも概略的に示したようにワイヤ4の周囲にカテーテル26から半径方向内向きの力を印加することによって、ワイヤ4の挙動に影響を及ぼすことができる。バルーンなどのカラーを使用してワイヤを絞ったり、半径方向に強制的に拘束したりすることは、そのときの周波数、並びに音響源の相対的な位置、及びワイヤと結合している位置によって、効果が異なる。
【0123】
ワイヤ4の様々な部分16、18、20の直径は、標準寸法の後続デバイスがワイヤ4をガイドワイヤとして使用することを可能にすることに加えて、プッシャビリティとトラッカビリティとの間の最適なバランスのために選択される。例として、近位部16は、0.43mmの直径を有し得、遠位部18は、0.18mm又は0.25mmの直径を有し得る。中間移行部20のテーパはわずかであるため、図2では大きく誇張されている。移行部20は、長さがλの倍数又は長さがλの分数にわたって延在してもよく、その分数は、好ましくは、分子が1であり、分母が偶数である(例えば、1/2、1/4、1/8...の配列である)のに対して、遠位部18は、長さがλ/2又はλ/2の倍数又はλ/4などのλ/2の分数であってもよい。部分18及び20に対して考慮されている材料に対して我々が見出した最適な長さは、λ、λ/2であり、より低い低調波において、及び細いワイヤに対して潜在的にλ/4である。
【0124】
公称直径及び長さを含むワイヤ4の全体的な幾何学的形状、並びにシステムの駆動周波数は、ワイヤの材料における固有音速によって決定される。この特徴は、その材料の特性及びその幾何学的形状の関数である。選択された周波数は、ワイヤの長さに沿って高調波を生成し、ワイヤ4の先端の負荷は、定常波を確立するのを助ける。システムは、駆動周波数の周波数範囲から離れた周波数範囲にわたって横方向及び長手方向の変位を生成することができ、多くの場合、遠位部18における周波数の低調波で生じる。
【0125】
他の寸法を排除しない一実施例では、近位部16を画定する0.43mmのコア断面直径を有するワイヤ4は、直径0.18mmの遠位部18に移行するように最適に配置されたテーパ状移行部20を有する。ワイヤ4の各部分16、18、20の長さは、駆動周波数、例えば40kHz又はその付近に長手方向共振モードを有するように選択することができ、20kHz又はその付近、10kHzなどに強い低調波を有する。適切な設計により、40kHz付近及び20kHz付近などに隣接する横方向モードがある。テーパ状移行部20全体で約2.4倍又は他の適切な値の増幅があり得る。
【0126】
その結果、ワイヤ4が長手方向振動で駆動される場合であっても、材料、幾何形状、及び遠位設計の特徴を適切に選択することによって、図2に示したように、望ましい横方向モードが励起される。長手方向及び横方向の振動の両方が一体となって病変の掘削に寄与し、その結果、ワイヤ4は、内径がワイヤ4の直径よりも実質的に大きい開口部又は管腔を病変に開く。
【0127】
したがって、作動すると、ワイヤ4は、ワイヤ4の長手方向の運動によってワイヤ4の先端18の遠位側の物質を掘削し、次いで、血管構造内でのワイヤ4のオフセットされた並進又は横方向の運動によって、トンネルの直径を広げる横方向のオフセットを提供することによって、自身の経路をトンネル状に掘削する掘削工具として機能する。その結果、ワイヤ4は、その遠位先端だけでなく、遠位先端から近位に延びるその長さの一部に沿っても閉塞の内面を削り、ワイヤ4上の後続の治療デバイスが通過するためのより広い開口部を形成する。この効果は、図面の図5図8に示されている。
【0128】
図5は、ワイヤ4の遠位部18が、直径がワイヤ4の直径よりも大きい開口部28を病変30内にどのように掘削して、病変30に治療を導入することのできる、より大きい内腔をどのように形成し得るかを示している。アクティブワイヤ4は、一貫した単調な方法で、ワイヤ4の軸方向平面の外側でワイヤ4を異なる高調波で周回することにより、長手方向、軸方向、又は方向性の掘削と、半径方向、横方向、又は軌道方向の掘削の両方を行う。
【0129】
ワイヤ4は、アクティブモード又はパッシブモードにおいて、血管32に沿って病変30まで誘導することができる。作動して病変30に接触すると、ワイヤ4は「固定-自由」状態から「固定-固定」状態へと移行し、これによりワイヤ4において発現する振幅がある程度減衰する。ワイヤ4が病変30を通過する際に、低調波変位が発現し、その後、ワイヤ4が「固定-自由」状態に戻ると、横方向の低調波成分が発現し、より大きな開口部28を掘削する。このように、ワイヤ4の横方向の振動によって、血管32の管腔内の病変30を通る流路が切り開かれる。
【0130】
図6図7、及び図8は、ワイヤ4とカテーテル26の相対的な長手方向の位置を変更する能力を利用して、ワイヤ4の遠位端の横方向の動きに影響を与え、それによって病変30内のワイヤ4による病変30の二次的又は横方向の掘削、穿孔、又はトンネル形成に影響を及ぼし得る方法を例示している。特に、図6図7、及び図8は、最初にワイヤ4の遠位端が図6に示したように病変30を貫通して、長手方向の開口部28を形成し、次に、ワイヤ4の横方向の振動を最適化して、図7及び図8に示したように、開口部28を広げて所望の直径の管腔を形成する方法を概略的に示している。
【0131】
ワイヤ4の十分な自由端の長さが病変30を超えて遠位に延びるとき、その自由端部分における横方向の振動は、図7に示したように、病変30の遠位セグメントの横方向の掘削を開始する。次に、作動しているワイヤ4を病変30を通じて近位側に引き戻すと、図8に示したように、カテーテル26と病変30との間のワイヤ4の部分において横方向の振動が最適化されることによって助けられ、開口部28が拡張して広がる。必要に応じて、作動しているワイヤ4を病変30を通じて遠位側に押し戻し、開口部28を更に広げることができる。
【0132】
図2図8を再び参照すると、アクティブワイヤ4、特にその遠位先端部18の挙動は、ワイヤ4が生体構造内での使用において変化する周囲の影響を受けるにつれて変化することが明らかであろう。したがって、ワイヤ4の挙動は、生体構造における遠位先端部18の位置、遠位先端部18が移動する媒体、特に遠位先端部18が接触する物質及び構造に依存する。これらの挙動、及び挙動間の変化は、波長、周波数、振幅、並びに低調波波形及び複合波形の表現に関連して発現する。
【0133】
本発明は、アクティブワイヤ4の挙動のこれらの特徴によって特有の音響放射が生成され、この音響放射を検出及び分析することで、アクティブワイヤ4の挙動を求め、それによってその挙動を生成する要因を推測することができるという原理を具現化する。したがって音響シグネチャを使用して、遠位先端部18が移動している媒体、並びに遠位先端部18が接触している物質及び構造などの情報を推測することが可能である。
【0134】
この原理を説明するために、図9は、病変30と接触する前のアクティブワイヤ4の音響シグネチャを左側に示し、病変30と接触している間の音響シグネチャを右側に示す。図9の右側には2つの音響シグネチャが示されており、1つはワイヤ4のアクティブな先端に近い遠位に配置された音響センサからのものであり、もう1つは例えば作動ユニット2内又は作動ユニット2に隣接した近位に配置された音響センサからのものである。音響シグネチャは、横軸の時間に対する縦軸の周波数としてプロットされている。この例では、病変30は、白亜の形態の炭酸カルシウムのサンプルによって表した。ワイヤ4は40kHzの周波数で駆動した。
【0135】
図9の左側に示したように、病変30に接触する前は、ワイヤ4は主に20kHzの低調波付近の振動を発現することが明らかである。逆に、図9の右側に示したように、病変30に接触している間、ワイヤ4は、楕円Aで示すように、20kHz未満の様々な低調波周波数で振動を発現し始める。したがって音響シグネチャは、ワイヤ4が現在病変30を通過する過程にあることを反映している。更に、音響シグネチャのアスペクトを分析し、既知のシグネチャと比較すると、病変30自体を特徴付けることができる。例えば、キャビテーションの発生は、通常、広帯域ノイズの増加によって特徴付けられる。
【0136】
図10は、アクティブワイヤ4からの音響フィードバックを検出してそれに作用するシステム34の構成要素及び要素を示している。図10はまた、通信を含む、システムを通るデータの流れも示している。作動ユニット2のハウジング内に配置され得るコントローラ36は、超音波発生器38を制御して、トランスデューサ40によって超音波エネルギーに変換される信号を発生させる。超音波エネルギーは、前述のコレットなどの結合部42及びオプションの音響ホーンを介して、血管構造内を誘導されてCTOなどの閉塞部を横断するアクティブワイヤ4に供給される。
【0137】
アクティブワイヤ4からの音響フィードバックは、マイクロフォンなどの1つ以上の音響センサ44又は他のトランスデューサによって受信され、増幅器46によって増幅され、一連のバンドパスフィルタ48によってフィルタリングされた後、アナログ・デジタル変換50を経て、プロセッサ52に送信されるフィードバックデータが生成される。コントローラ36は、例えばWi-Fiネットワーク又はBluetooth接続を使用する好ましくは無線通信システム54を制御して、プロセッサ52からデータを受信し、そのデータをローカルストレージ56及び/又はクラウド58に伝える。図10は更に、前述のディスプレイ60及び/又は触覚フィードバックシステムなど、ユーザにフィードバックを提供する手段も示している。
【0138】
図11に示したシステム62は、図10のシステム34を改良したものである。類似する特徴には類似する数字が使用されている。図11のシステム62では、非音響フィードバックが、第2の追加の源、すなわち電気フィードバック受信機64から得られる。電気フィードバック受信機64からの信号は、増幅器46によって増幅され、帯域パスフィルタ48によってフィルタリングされた後にアナログ・デジタル変換50を受けて、プロセッサ52に送られる追加の補助フィードバックデータが生成される。
【0139】
電気フィードバック受信機64は、例えば、ワイヤ4を駆動するトランスデューサ40のインピーダンスの変化を検出することができ、これらの変化は、ワイヤ4が減衰される、又は多かれ少なかれ拘束されるようになるにつれてシステム内の損失が変化することに起因する。例えば、減衰が増加すると、システムのQ値が低下する。
【0140】
Q値は、図12に示したように測定することができる。図12の上側のトレースは、超音波発生器38によってトランスデューサ40に印加される電圧を示している。下側のトレースは、電気フィードバック受信機64によって測定された、トランスデューサを通る電流を示している。電圧信号が突然停止されると、システムは、Qに比例する時間長にわたって共振し続ける。指数減衰関数を電流信号に曲線フィッティングすることによって、プロセッサ52は、Qの値、したがって減衰を導出することができる。この値は病変30の性質によって影響を受ける。
【0141】
インピーダンス変化の特徴付けは、位置又は動的変動に基づく差異を分離し、異なる時間の間の電圧、電流、及び位相角の変動を比較することを含み得る。この電気的応答を表すデータと、所与の時点における対応する音響応答を表すデータの重ね合わせを使用して、血管32、その内腔、及び病変30の特徴をより正確に分析し、記述することができる。
【0142】
同様に、血管32、その内腔、及び任意の病変30の測定された特徴を裏付けて確認するための追加の音響データを提供するために、システム内又は病変30を基準とする異なる位置に2つ以上の音響センサ44を採用することも可能であろう。図12図20は、この点に関する様々な可能性を示しているが、1つ、2つ、又はそれ以上の音響センサ44が、説明及び図示された位置のいずれか又はその近くで採用され得ることが理解される。
【0143】
一般に、音響センサ44は、システム内の様々な位置のうちのいずれに配置されてもよい。センサの位置が異なれば、異なる音響シグネチャが得られる。トランスデューサ40及び関連するコレットの周囲に複数の音響センサを配置することにより、様々な特徴との関連付けのために調べることのできる特徴的なスペクトルの異なる相対パターンを生成することができる。外部音響センサはまた、システムの性能に関する視覚的フィードバックを提供するために、LEDなどの照明を統合することもできる。これは、音響シグネチャの変化から補間したり、システムの電子的又は電気的応答の上に音響応答を重ね合わせたりすることができる。
【0144】
次に図13を参照するが、図13は、ワイヤ4が長手方向に延びている超音波作動ユニット2を示している。この例では、作動ユニット2は外部から電力を供給され、任意選択でケーブル12を介して超音波信号が供給される。
【0145】
図13は、作動ユニット2が、超音波トランスデューサ40と、トランスデューサ40の遠位面に取り付けられた、遠位方向にテーパをつけた音響ホーン66とを含むことを示している。コレット68が、ワイヤ4をホーン66の遠位端に結合している。トランスデューサ40、ホーン66、及びコレット68には、ワイヤ4が通過することができるように中心管腔が貫いている。これにより、ワイヤ4は、作動ユニット2の全長にわたって延び、作動ユニット2から近位側に出る。作動ユニット2は、ワイヤ4に沿って移動させることができ、次いでワイヤ4に沿った様々な位置のいずれかにおいて結合して、超音波エネルギーをワイヤ4に伝達することができる。別の配置構成では、代わりに、ワイヤ4は、コレット68に対して近位の位置で作動ユニット2から横方向に出ることができる。
【0146】
図13において、ワイヤ4を取り囲んで支持するカテーテル26を、ワイヤ4の遠位領域に結合することができる。この例では、結合はカテーテル26内の遠位環状バルーン70によって行われ、バルーン70はワイヤ4の周囲でカテーテル26の遠位内腔に拡張する。バルーン36は、カテーテル26上の膨張ポート38を介して膨張させることができる。カテーテル26には、例えば塞栓の吸引、又は掘削中に発生する断片若しくは粒子の吸引のために、追加のポート及び管腔を含めることもできる。
【0147】
任意選択で、バルーン70又は他の結合部は、ワイヤ4を把持して、ワイヤ4の遠位部分に内向きのクランプ力を加えるように構成することができる。このようにして、超音波エネルギーがカテーテル26の導波要素を介して結合され、電気機械エネルギーを、カテーテル26からバルーン70による結合部を介してワイヤ4の遠位先端領域に伝達することができる。
【0148】
カテーテル26の近位端は、アダプタ要素72によってトランスデューサ40に結合されている。アダプタ要素72の近位端は、コレット68の周囲でホーン66の遠位端に当接しており、それにより、超音波エネルギーを受け取るようにトランスデューサ40に結合されている。原理的には、アダプタ要素72は、3つの動作モード、すなわち、ワイヤ4を独立して作動させること、カテーテル26を独立して作動させること、又は、カテーテル26及びワイヤ4を同時に作動させること、のいずれにおいても、トランスデューサ40からのエネルギーの伝達を容易にすることができる。
【0149】
音響センサ44は、作動ユニット2の外側、作動ユニット2の本体内、又はカテーテル26の異なる部分、に配置することができる。音響センサが異なる位置にあることにより、音響スペクトルにおける特有の干渉及び特徴パターンを提供することができる。
【0150】
図13に示した例では、音響センサ44は、コレット68に隣接してコレット68に対して近位にあるアダプタ要素72上に配置され、ここでは作動ユニット2のハウジングに取り付けられている。
【0151】
音響センサ44を作動ユニット2のハウジング又はケーシング内に配置することに加えて、音響センサ44をハウジングの外側に、例えばカテーテル26に沿って配置することも可能である。この点に関して、図14は、ユニット2から遠位方向に延びるカテーテル26を有する作動ユニット2の外観を示している。ここでは、様々な音響センサ44がコレット68に対して遠位側に配置されている。1つの音響センサ44は、ユニット2の遠位端、具体的には、内部のコレット68に作用するトグル8上又はトグル8内に配置されている。更に2つの音響センサ44がカテーテル26上に示されており、1つはカテーテル26の近位端の近く、もう1つは遠位端の近くである。
【0152】
図15は、作動ユニット2から分離して、カテーテル26及びその中のワイヤ4を示している。カテーテル26の遠位端の近くに音響センサ44が示されている。したがって、カテーテル26は血管内に音響センサを導入する手段を提供する。
【0153】
音響センサ44をカテーテル26に組み込み、ワイヤ4上で閉塞部の位置又はワイヤ4の遠位端までカテーテル26を導入することにより、ワイヤ4と、血液と、ワイヤ4と血管32又はその中の任意の閉塞部30との相互作用によって生じる任意の音響効果との間の相互作用の様式を測定する方法が提供される。前述のように、ワイヤ4がマイクロカテーテルスリーブを超えて延びる距離、したがって血管32の管腔内に露出するワイヤ4の長さを調整及び制御することが可能である。これにより、ワイヤ4がどのように励起されるか、及び音響放射が血管32内からどのように形成され得るかについての追加の制御が加わる。
【0154】
音響センサ44をカテーテル26内又はカテーテル26上に収容することにより、システム全体がより効率的になる。ワイヤ4と音響センサ44とが近いことと、カテーテル26からの放射を捕捉する能力とにより、音響感知の信頼性が高まり、組織のばらつきから生じる可能性のある変動が低減する一方で、ワイヤ4とカテーテル26との相互作用から生じる音響放射のパターンに生じる可能性のある変動に対してより敏感になる。
【0155】
図16は、例えば電気的又は光学的ひずみゲージ74の形で、センサをワイヤ4自体に貼り付けることもできることを示している。この例では、ひずみゲージは、ワイヤ4のより細い遠位部18につながるテーパ状の移行部20の近く、ワイヤ4の近位部16に取り付けられている。このようなセンサは音響センサとして機能することができる、又は作動したときにワイヤ4に生じるひずみからワイヤ4の挙動をより直接的に求めることができる。例えば、ワイヤ4の表面に音響エミッタ又はマイクロアレイを組み込むことにより、関心のある特定の範囲における放射を最適化する手段を提供することができる。ひずみゲージ74からの信号は、図11に示したような電気フィードバック受信機64からの非音響フィードバックに加えて、又はその代わりに、音響センサ44から受信されるデータを更に裏付けることができる。
【0156】
図17図21は、ここでは患者の脚部76によって例示される患者の身体上又は身体内に音響センサを配置する様々な方法を示している。それぞれの場合において、アクティブワイヤ4は、患者の血管構造を通り、ここでは下腿76に示されている病変30によって閉塞された血管32内に進められている。ワイヤ4の遠位先端は病変30に係合しており、超音波エネルギーで作動して、病変30を貫く流路の掘削を開始しようとしている。
【0157】
図16図19は、音響センサ44の体外での配置を示している。音響センサ44を身体の外側に配置することにより、ワイヤ4及び血管32からの音響放射を周囲組織を通して調べることができる。
【0158】
図16では、音響センサ44は、音響センサ44を組織に近接させるために、外科用パッチに組み込まれるか、外科用バンドなどに具現化される。音響センサ44は、血管32の長さに沿って、あるいは血管32の疾患によって影響を受ける患者の身体の領域において、関心領域の近くに配置される。これに代えて、図17に固定ユニットとして、図18には病変30に近い患者の皮膚上を掃引できる手持ち型ユニットとして示したように、超音波プローブを音響センサ44として機能させて音響放射を検出することもできる。次いで、プローブからのデータを直接使用して、病変30の位置及び近接性、並びにワイヤの移動が妨げられる様式を補間し、どのような閉塞部が存在しても特徴付けることができる。
【0159】
図20及び図21は、身体の内部に配置されるプローブ78上の音響センサ44の体内配置を示している。これにより、音響センサ44は、組織を通って血管32を取り囲む区画に導入され、病変30が治療される血管32の領域又は病変した内側組織について評価される血管32の領域に近づくことができる。
【0160】
遠位先端に音響センサ44を担持するプローブ78を組織内に外科的に挿入することにより、病変30又は血管32の領域に近づく方法が提供される。これにより、かなりの厚さの筋肉及び皮膚を通過することによって生じ得る音響スペクトルの損失及び収差を伴うことなく、ワイヤ4とその周囲との相互作用により発生して血管32を透過する音響放射を検出することが可能になる。
【0161】
図22図27は、アクティブワイヤが様々な物質を通過する際に放出される音響信号、特に特定の周波数がどのように発現するかを示している。選択された物質は、白亜(図22及び図23)、BegoStone(図24及び図25)、水(図26及び図27)である。BegoStone(登録商標)は、もともと歯科用途のために開発された市販の超硬質石膏である。各場合において、ワイヤ及びサンプルを水槽に入れ、ワイヤの遠位先端付近に配置されたハイドロフォンを使用して信号を取得した。信号はオシロスコープに取り込み、後処理は行わなかった。
【0162】
各物質について、音響信号は、125kHzまでの広い周波数範囲(図22図24図26)と、10kHzまでのより狭い低(可聴)共振範囲(図23図25図27)にわたり示されている。低い方の範囲は、それ自体が時間におけるサンプルである、より大きなデータセットから取られている。
【0163】
公称では、システムは40kHzで駆動するように設計されているが、ワイヤ4及びコレット68が所定の位置にある状態で、システムは実際には約38kHzというわずかに異なる周波数で共振する(したがって電子機器がシステムを駆動する)。したがって、他の全ての音響的影響を差し引いた場合、約38kHzの周波数に線が見えるだけであることが予想される。このような線は明らかであり、ワイヤ4が共振するように設計されている40kHzの線と同様に、電気フィードバック受信機64によって電子的に測定することもできる。しかしながら、異なる周波数、特にシステムの駆動周波数の高調波だけでなく、他の周波数にも現れる特徴として、更にいくつかの放出される共振周波数が観察される。したがって、38kHzの線に加えて、8kHz、19kHz、及び76kHzの高調波と、114kHzなどの更に高い周波数において、大きな振幅の音響放射を見ることができる。駆動周波数のこれらの高調波の周辺及びその間には、他の特徴的な特徴が現れる。図23図25図27に示す低い範囲に、異なる周波数における特徴的な放射も発現している。
【0164】
要約すると、本発明の好ましい実施形態は、超音波発生器と、トランスデューサと、ワイヤ及び/又はカテーテルなどのアクティブな細長い要素と、信号処理システムと、コントローラとを備える。コントローラは、信号処理システムのセンサデータ出力を監視し、マイクロフォンからの電気フィードバック信号及び音響信号の両方を含む。
【0165】
センサデータは、生の形態であろうと処理された形態であろうと、システムの自律的かつ適応的な制御のためにコントローラにリアルタイム情報を提供することができる。センサデータは更に、アクティブ要素によって横切られる閉塞部の性質などの、体内の血管又は空洞の状態に関するリアルタイム又はフォローアップ情報をユーザに提供することができる。センサデータは更に、更なる処理のために、有線又は無線インターフェースを介して二次システムに伝達され得る。
【0166】
図28に示される実施形態では、表面マイクロフォン80などの振動又は音響センサが、患者の身体の外部に設置される。例えば、圧電接触マイクロフォン80は、アクティブ要素からの放射を検出するのに最も適した位置で患者の皮膚に接着されてもよい。アクティブ要素は、ここではワイヤ82として例示されており、ワイヤ82は、周囲のカテーテル84内から遠位に突出し、身体88の外部にある手持ち式作動ユニット86によって駆動されて、血管94を遮断する閉塞部92に開口部90を掘削する。
【0167】
図28に示されるコントローラ96は、プロセッサ98と、ユーザインターフェース100と、統合データ取得システム102とを備える。コントローラ96は、ここでは作動ユニット86とは別個のユニットとして示されているが、代わりに作動ユニット86に組み込まれてもよい。マイクロフォン80は、音響放射データ104をコントローラ96に伝達するために、有線又は無線信号伝達接続を介して、作動ユニット86又はコントローラ96に接続されてもよい。データ取得システム102は、作動ユニット86からの電気的性能データとマイクロフォン80からの音響信号との両方を、適切な分解能及びデータサンプリングレートで取り込むことができる。
【0168】
他の実施形態では、マイクロフォン80、ハイドロフォン、又は他の振動若しくは音響センサは、例えば、支持カテーテル84の遠位先端上又はその近傍に搭載される、統合される、又は別様に位置付けられることによって、他の場所に位置付けられてもよい。この場合、マイクロフォン80は、カテーテル84に沿って延びる有線信号伝達接続を介して作動ユニット86又はコントローラ96に接続されるのが最も便利であるが、原理的には無線接続も可能である。マイクロフォン80を支持するカテーテル84は、アクティブワイヤ82を収容してもよく、又はアクティブワイヤ/カテーテルシステムから分離されてもよい。
【0169】
マイクロフォン80又は他の振動センサ又は音響センサは、可聴音響範囲、したがって20Hzから20kHz、及び/又は250kHzまで、あるいは任意の他の適切な周波数範囲で動作するように設計され得る。
【0170】
図29に例示される本発明の処理アルゴリズムの1つの実施形態では、マイクロフォン80から取得された音響放射データ信号104は、データ取得システム102によって時間領域から周波数領域に変換される。時間領域から周波数領域への変換は、高速フーリエ変換(FFT)、パワースペクトル、又は他の既知の方法によって達成され得る。データ取得システム102は更に、作動ユニット86のトランスデューサから取得されるトランスデューサ電圧及び電流などの電気的性能データ106を取得する。
【0171】
108における周波数領域データ及び110におけるパワースペクトルデータは、112における周波数又はパワースペクトルにおけるピーク及び114における周波数帯域範囲におけるパワーなどの特徴的な特徴を判定するために評価される。判定されると、それらの特徴は、アクティブ要素と患者の組織との間の相互作用を判定するために、広範な試験を通して評価される閾値パラメータと比較され、患者の身体内の血管又は空洞における閉塞を含み得る。
【0172】
112において検出されたピーク、114における周波数帯域の範囲内のパワー、及び電気的性能データ106は、116において特徴データセットを形成するために組み合わされる。次いで、データセット116内の特徴は、分類のために、118において、事前訓練された機械学習決定アルゴリズムによって解釈され得る。具体的には、そのようなアルゴリズム118は、広範な試験実行及び分類ラベルを有するデータから導出された教師ありデータセットに対して事前に訓練される。特徴データセットは、新しい情報担持特徴が発見され、追加されるにつれて、経時的に拡張することができる。
【0173】
処理されたデータの特徴的な特徴は、周波数ピーク112及び帯域114に限定されない。例えば、全周波数スペクトルは、それ自体が特徴的な特徴として機能することができる。この点において、完全な周波数スペクトルは、人間が観測可能ではなく、抽出するために機械学習アルゴリズムを必要とする情報を含み得る。例えば、規則的な間隔でサンプリングされたスペクトログラムのシーケンス画像は、画像を識別及び分類するために、したがって、例えば、ワイヤ交差プロセスにおける段階を識別及び特徴付けるために、深層学習ニューラルネット又は同様の画像処理技法を受けることができる。
【0174】
説明されるシステムは、ワイヤ82が閉塞部92内に開口部90を掘削する「通常」モードで作動ユニット86のトランスデューサを駆動しながら、電気センサデータと音響センサデータとを組み合わせることによって、センサ融合アプローチを採用する。このようにして2つの異なる源からのデータを組み合わせることは、同時に抽出され得る複数の特徴を有する、より豊富なデータセット116を提供する。これで、より洗練された分析が可能になり、測定結果の信頼性も向上する。
【0175】
「通常」モード励起では、システムは、デバイス性能を分析及び判定し、ワイヤ82又は他のアクティブ要素と組織との間の相互作用を推測する目的で、電気フィードバックデータを音響放射データと統合する。これは、測定量におけるピーク及び最大値/最小値などの抽出された特徴を調べることによって行われる。そのような相互作用は、ワイヤ-組織接触、組織組成の特徴付け、閉塞部92に対して遠位のワイヤ出現、及び閉塞部92を通過した後の開口部90の結果として生じるプロファイルを含み得るが、これらに限定されない。
【0176】
図30は、外部マイクロフォン80を介してキャプチャされた作動されたワイヤ82の音響放射信号104のFFTプロットを示す。検出されたピークは駆動周波数に関連するが、他の高調波はワイヤ構成を示し、矢印によって示されるピークの位置及び振幅はワイヤ構成の変化に応答して変化する。例えば、カテーテル84の遠位端から現れるワイヤ82の長さが長くなるにつれて、ピーク位置は、図30の矢印によって示されるように応答して変化する。
【0177】
図31は、ここでも矢印によって示されるワイヤ組織接触事象が、パワー又は周波数帯域の範囲内のパワーを監視することによってどのように検出され得るかを示す。
【0178】
図32は、マイクロフォン80からの音響放射データ104が周波数領域に変換される別の例を示す。ここで、特定の帯域(この場合、600Hz~800Hz)におけるパワーが抽出され、システムが3mmの病変を横切るときの全パワーが経時的にプロットされる。
【0179】
図32に示される例は、閉塞部92内に生成される任意の開口部又は開口部90の直径、及び周囲血管94の組成又は「トーン」を評価することがどのように可能であるかを実証する実験作業を反映する。これは、ワイヤ82を閉塞部92を越えて遠位方向にある距離だけ前進させることによって行われ、所与のワイヤプロファイルに対して、図6図8に示すようなワイヤ82の横方向変位を確立する。次に、特徴的なパワー帯域応答又は周波数スペクトルにおけるパワーの変動を調べることにより、開口部90の直径を推定することができる。種々の数学的処理を使用するデジタル信号処理又は画像処理による一次電気及び音響信号の変動又は変形のリアルタイム監視及び処理も、血管94の直径及び機械的トーンを判定するために使用されることができる。
【0180】
より具体的には、ワイヤ82の遠位先端を閉塞部92を越えた距離まで前進させることにより、特徴的な低調波におけるワイヤ82の変位の横方向モードの発現が可能になる。その幾何学的形状によって判定される、ワイヤ82内に設定されたこの横方向のハイポトロコイド変位は、任意の開口部又は開口部90を開き、閉塞部92を通って長手方向に延びる特定の直径のトンネルを生成する。
【0181】
システムにおける電気的及び音響的応答のパワー及び勾配は、ワイヤ82が、それが接触する物質又は構造と相互作用する方法の特性であり、したがって、それらの物質及び構造の性質の特性である。データを数学的に処理することにより、閉塞部92及びワイヤ82が通される血管94の幾何学的形状及び組成を特徴付けることができる。
【0182】
図32の線120は、単純なアクティブモードにあるワイヤ82を示し、超音波エネルギーは、遠位先端部の主に軸方向の振動を生成するが、閉塞部92の任意の物質とまだ接触しておらず、したがって閉塞部92の任意の物質をアブレーションしていない。逆に、図32の線122は、閉塞部92と接触した後の遠位先端の半径方向振動による閉塞部92のアブレーションを示す。
【0183】
図32の線124は、閉塞部92の物質がワイヤ82によって切除され、閉塞部92の開口部90が広がるときのパワーの減衰の勾配を示す。図32の線126は、線124に対応するが、ワイヤ82が線124よりも大きく(「y」mmは「x」mmよりも大きい)遠位に前進させられ、閉塞部92を通してより大きい直径のトンネル状開口部90を掘削する状況を示す。
【0184】
この例で観察することができる様々な他の特徴的な特徴は、図32に注釈が付けられている。すなわち:
超音波発生器が作動ユニット86のトランスデューサにパワーを印加し始めるときの広帯域ノイズの全体的な増加、
ワイヤ82が閉塞部92又は他の組織と接触するときの帯域パワーの著しい増加、
ワイヤ82が閉塞部92を通過するときの帯域パワーの著しい減少、および
ワイヤ82の横方向の動きが、閉塞部92を通る開口部90又は管腔を広げ続けるときの、帯域パワーの漸進的な減衰。
【0185】
図32のノイズフロアは、環境からの背景ノイズによるものである。背景ノイズは、超音波発生器がオフである間に測定され得、後に、全ての後続の測定値から減算され得る。
【0186】
図32に示される例は、1つの抽出された特徴的な特徴のみを使用する。他の例では、他の周波数範囲から抽出された特徴は、周波数ピークの位置、帯域の範囲内のピーク又はパワーの振幅、又はこれらの特徴のいずれかが経時的に又は何らかのベースライン値に対してどのように変化するかなどの、識別された特徴の範囲とは独立して、又は組み合わせて使用され得る。
【0187】
システムの別の態様は、「通常」モードと「プローブ」モードとの間で多重化又は切り替えを行う能力である。この点において、組織組成を特徴付ける目的は、統計的方法が測定データから動的システムの数学的モデルを構築するシステム識別アプローチによって達成される。より具体的には、本発明のシステムへの刺激を制御することが可能であるので、入出力システム識別手法を採用し得る。言い換えれば、特徴的な特徴の抽出は、特定のタイプの応答を生成するように設計された特定のタイプの刺激を選択することで容易にし得る。
【0188】
作動中、血管内ワイヤ82などの振動するアクティブ要素は、近くの血管構造内及びその周囲の流体及び組織と相互作用する。振動ワイヤ82は、それ自体が、本体88内でのその移動が音響放射及び反射の発生をもたらすので、音響エネルギー源である。動作中、トランスデューサ-ワイヤシステムのダイナミクスは更に、電気フィードバック信号の正確な性質を判定する。
【0189】
「プローブ」モードでは、入力刺激の意図的な操作により、ワイヤ82が相互作用している構造又は物質を特徴付け又は分類する際に使用するために抽出及びエクスポートすることができる、より明示的な特徴の作成が可能になる。この手法の一例、すなわち、ワイヤ82が接触している閉塞部92の性質によって影響を受ける可能性があるQ値の測定については、図12を参照して既に上述した。入力電圧信号が停止すると、システムは、Qに比例する時間の長さにわたって共振し続けることが想起されるであろう。指数減衰関数を曲線フィッティングすることによって、コントローラ96は、閉塞部92の減衰効果を判定し、したがって閉塞部92自体の性質を特徴付けるために、Qの値を導出することができる。
【0190】
コントローラ96は、特に閉塞部92を横断するために、デバイスの主要機能に著しく影響を及ぼすことなく、「通常」モードと「プローブ」モードとの間で周期的に交替し得る。異なるモードを多重化し、異なる特徴的な特徴を検索するこの能力は、より豊富なデータセットが、アクティブワイヤ82と接触しているか、又はその周囲にある物質又は構造を特徴付けることを可能にする。
【0191】
作動ユニット86のトランスデューサに印加される刺激信号の性質を意図的に変更することが可能である。一般的な場合(及び図21図26に示したように)、印加される刺激は、1つの周波数の連続正弦波である。しかしながら、パルス波形、マルチトーン波形、チャープ波形、ノイズ波形などの他の波形を使用することにより、対応する応答信号から異なる特徴を抽出することができる。これは、入力刺激と出力応答を相関させるコントローラ96の能力を利用する。
【0192】
図33は、例として、駆動電流の振幅が変化するときの電流信号のスペクトログラムを示す。これは、2014 IEEE International Ultrasonics Symposium Proceedingsで発表されたBornmann et al.による論文「Self-Sensing Ultrasound Transducer for Cavitation Detection」から引用されている。広帯域変化及び/又は別個の周波数における変化は、キャビテーションの開始などのシステムの異なる特徴を示すことができる。
【0193】
図34は、作動ユニット86のトランスデューサの複素インピーダンスが周波数に対してプロットされた別の例を示す。この応答は、単一トーンの周波数掃引、チャープ信号、又は広帯域ノイズを含む、種々の異なる刺激を使用して測定され得る。この例では、43kHzのすぐ下の寄生共振は、この場合、支持カテーテル84を越えて遠位に延びる支持されていないワイヤ82の短い長さによって引き起こされる、システム内の余分な振動モードの指標である。
【0194】
これらの例を図32に示される例と組み合わせると、電気データと音響データとの組み合わせが、閉塞部92における開口部90のより正確な特徴付けを可能にすることが明らかであろう。この情報は、様々な方法で使用でき、例えば、開口部90の直径をユーザに知らせるために、又は支持カテーテル84を後退又は前進させて、遠位に突出するワイヤ82の活動を修正して、必要な開口部90を作成することを推奨するために使用し得る。
【0195】
特徴データセット116が大きくなるにつれて、組織特性とデータ特徴との間の相関はより複雑になる。この分類問題は、特徴学習技術を含む機械学習技術の適用に適している。したがって、システムの別の態様は、データが、人工ニューラルネットワークを含む任意のタイプの機械学習モデルにおいて処理されることを可能にし得る。
【0196】
機械学習モデルは、訓練データの標準セットを使用して事前に訓練でき、モデルのアルゴリズムは、それに応じてプログラムすることができる。しかしながら、システムは、トレーニングデータが経時的に更新されることも可能にする。例えば、閉塞部92を横断するために特定のデバイスが成功裏に使用される場合、ユーザは、関連データをサーバにアップロードする能力を有する。ユーザは更に、例えば、組織分類などを確認するために、処置に関するメタデータを手動で入力及びアップロードするオプションを有する。
【0197】
独立した検証に続いて、このアップロードされたデータ及びメタデータは、次いで、訓練データに組み込まれてもよく、ラベル付けされていないデータを使用する教師なし学習、ラベル付けされたデータを使用する教師あり学習、又はラベル付けされたデータとラベル付けされていないデータとの混合を使用する半教師あり学習を可能にする。更新された訓練データは、以前に認識されなかった特徴の識別、及びそれらの抽出のための新しいアルゴリズムの作成を可能にする。次いで、新しいアルゴリズムは、いつでも本発明の任意のデバイスにダウンロードすることができる。
【0198】
本発明の機械学習モデルは、性能要件の要求に応じて任意の利用可能なハードウェア上で実行することができる。例えば、コントローラ96は、スタンドアロンベースで動作するデバイス上でローカルに機械学習モデルを実行することができる。あるいは、デバイスは、より多くの処理能力を提供するが同じコンピュータネットワーク上に位置するネットワーク化されたローカルサーバにデータを伝達することができる。この例では、リアルタイムフィードバックが依然として可能であり、病院内の複数の検査室及びユーザ、又は実際にはプライベートネットワークによって接続された任意の医療施設若しくは組織にわたってデータを集約する可能性がある。別のオプションは、デバイスがクラウドベースのサービスにデータを伝達することであり、弾力的でスケーラブルな性能と、複数の病院、研究所、及び位置にわたってデータを集約する可能性とを提供する。この場合も、リアルタイムのフィードバックは、クラウドベースのソリューションにおいて可能なままである。
【0199】
最後に図35図37を参照すると、これらの図面は、慣性感知を本発明の手持ち式作動ユニット2に組み込む可能性を示している。作動ユニット2の向き及び加速度を表す慣性データの利用可能性は、動作データセットを有用に充実させることができる非音響動作フィードバックの別の源を追加する。
【0200】
図35は、X軸、Y軸及びZ軸を示しており、これらの軸を中心として作動ユニット2を回転させることができ、これらの軸に沿って、作動ユニット2は、使用中に医師によって操作されるときに加速度を受けることができる。具体的には、Y軸が、水平に保持された作動ユニット2の長手方向軸と一致する場合、作動ユニット2は、水平X軸の周りに縦揺れし、水平Y軸の周りに横揺れし、垂直Z軸の周りに偏揺れすることができる。
【0201】
図36は、概して図13に対応し、同様の特徴に対して同様の番号を含むが、作動ユニット2のハウジング内に慣性センサ128を備える慣性測定ユニットも示す。作動ユニット2の向き及び加速度を感知することによって、慣性センサ128は、作動ユニット2を保持する医師の正確な手の動きに関する情報をリアルタイムで生成できる。この目的のために、慣性測定ユニットは、MEMS(微小電気機械システム)技術を採用するのに適しており、直線加速度を測定するための3軸加速度計及び角速度を測定するための3軸ジャイロスコープである慣性センサ128を備えることができる。
【0202】
図37は、概して、図10及び図11に対応し、同様の特徴のための同様の数字も含むが、図36に示される慣性測定ユニットの慣性センサ128も備える。したがって、簡潔に要約すると、図37に示すシステム130は、作動ユニット2のハウジング内にあってもよいコントローラ36を備える。コントローラ36は、超音波発生器38を制御して、トランスデューサ40によって超音波エネルギーに変換される信号を発生させる。超音波エネルギーは、結合部42を介して、血管構造内を誘導されてCTOなどの閉塞部を横断するアクティブワイヤ4に供給される。図37は更に、ワイヤ4を包囲し得るカテーテル26を示す。カテーテル26は、受動的であり得るか、又は作動ユニット2によって超音波エネルギーを用いて作動され得る。
【0203】
アクティブワイヤ4からの音響フィードバックは、1つ以上の音響センサ44によって受信される。この例では、音響センサ44は、作動ユニット2の中又は上、カテーテル26及び/又はワイヤ4の上又はそれに隣接して、及び他の場所、例えば、作動ユニット2の遠位の位置、及びワイヤ4のアクティブ遠位部分の近くの患者の身体の内側、外側、又はそれに対して配置されて示されている。実際には、音響センサ44は、これらの位置のいずれか、いくつか、又はすべてに配置することができる。
【0204】
各音響センサ44からの音響フィードバックは、46で増幅され、48でフィルタリングされ、50でデジタルフィードバックデータに変換され、プロセッサ52に送られる。コントローラ36は、通信システム54を制御して、プロセッサ52からデータを受信し、そのデータをローカルストレージ56及び/又はクラウド58に通信する。図37は更に、前述のディスプレイ60及び/又は触覚フィードバックシステムなど、ユーザにフィードバックを提供する手段も示している。
【0205】
図37に示されるシステム130において、非音響フィードバックは、1つ以上の追加の源、すなわち、作動ユニット2の中又は上に位置し得る電気フィードバック受信機64及び/又は慣性センサ128から得られる。電気フィードバック受信機64及び/又は慣性センサ128からの信号は、46において増幅され、48においてフィルタリングされた後、50においてアナログ-デジタル変換される。これは、典型的にはシリアル周辺インターフェースを介してプロセッサ52にストリーミングされる追加の補助フィードバックデータを生成する。
【0206】
このようにして、プロセッサ52は、電気インピーダンス又は音響放射などの他のセンサ信号の変化を、作動ユニット2の動き、したがってアクティブワイヤ4の動きと相関させることができる。1つの実施例では、これは、アクティブワイヤ4が病変に遭遇し、それを横断するとき、接触及びブレイクスルー事象のアルゴリズムによる識別を促進するであろう。これらの事象は、慣性センサ128の出力の同時変化によって表されるアクティブワイヤ4の前進運動と相関させることができる、電気応答信号又は音響応答信号の著しい変化を引き起こす。
【0207】
別の実施例では、アクティブワイヤ4がわずかに後方又は近位に移動されるときの電気応答信号又は音響応答信号の有意な変化は、アクティブワイヤ4の遠位先端が石灰化病変などの硬質物質に接触したことを示すであろう。逆に、アクティブワイヤ4がわずかに後方又は近位に移動されたときに電気応答信号又は音響応答信号が著しく変化しない場合、これは、アクティブワイヤ4の遠位先端が血管の均質な流体充填部内にあることを示す。
【0208】
慣性センサ128から導出される向き及び加速度に関する情報は更に、病変を横断する速度を監視するために使用され得る。この情報は、システムがいかに良好に動作しているかについてのフィードバックを医師に提供するために、及び潜在的に、アクティブワイヤ4が必要に応じてより速く又はより遅く前進させられるべきであることを医師に推奨するために使用されてもよい。
【0209】
他の潜在的な用途では、慣性センサ128を使用して、処置中の作動ユニット2、したがってアクティブワイヤ4のすべての動きを記録することができる。これは、アクティブワイヤ4を含む事象の時間相関シーケンスと関連して、その後の再生を可能にする。これは、医師にフィードバックを提供して医師の技術を改善するため、機械学習モデルを微調整するため、及び/又は臨床レビューを容易にするため、例えば専門の過失主張を調査するためなど、様々な目的のために使用され得る。
【0210】
作動ユニット2のハウジング又は制御要素に対するシングルタップ又はダブルタップなどの触覚制御入力を検出することによって、慣性センサ128の中の加速度計を使用して作動ユニット2を制御することができる。原理的には、作動ユニット2の向きの変化をシステム130への制御入力として使用することもできる。
【0211】
本発明の概念の範囲内で多くの他の変形が可能である。例えば、国際公開第2021/224357号として公開された本発明者らの以前の特許出願に開示されているものと同様に、1つ以上の音響センサ44を遠位チューブ上に配置することができる。このようなチューブは、作動ユニット2から遠位方向に延びて、その内部でワイヤ4を保護及び案内する、ひずみを緩和する、及び/又は、ワイヤ4に減衰力を加える。このようなチューブはまた、ルアー継手又は他の入口ポートなど、作動ユニット2の遠位側に配置された構造へのコネクタとして機能することもできる。
【0212】
電気フィードバック受信機64、慣性センサ128、及び/又は音響センサ44からの応答信号を分析するときにシステムの感度を最大にするために、変化する応答信号から後で差し引くことができる「ベースライン」応答信号を作成することが可能である。ベースラインは、ワイヤ4の遠位先端が病変30に近いが触れていないときに、最も有用に得られる。このようにして、ベースライン応答信号は、ワイヤ4が病変30まで延びている血管構造の蛇行を含む、システムの基本的な特徴の全てをカプセル化する。あるいは、ベースラインは連続的に自動的に取得されてもよく、システム自体が、減算アルゴリズムを適用するタイミングを決定することができる。
【0213】
図36及び図37に示すように、慣性センサ128によって検出された触覚制御入力を使用してベースライン応答信号を取得するためのワークフローの例では、ユーザは、最初に、ワイヤ4の遠位先端を病変の近傍に位置付ける。次に、ユーザは、超音波エネルギーでワイヤ4を作動させるために、作動ユニット2のコントローラ上で作動モードを選択する。その動作は、ユーザが一時的に目をそらし、作動ユニット2をわずかに動かすことを必要とし得る。次いで、ユーザは、アクティブワイヤ4の遠位先端の正確な位置決めを微調整した後、作動ユニット2を安定して保持しながら、1本の指で作動ユニット2のハウジングをダブルタップする。これは、プロセッサ52をトリガして、1つ以上のベースライン応答信号を取得する。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
【国際調査報告】