(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】ビシクロ[3.2.0]ヘプタンビス(アミド)RXFP1アゴニスト
(51)【国際特許分類】
C07C 237/24 20060101AFI20250128BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20250128BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20250128BHJP
A61K 31/27 20060101ALI20250128BHJP
C07D 261/20 20060101ALI20250128BHJP
A61K 31/423 20060101ALI20250128BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20250128BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20250128BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C07C237/24
A61K31/192
A61K31/167
A61K31/27
C07D261/20 CSP
A61K31/423
A61P9/10
A61P9/04
A61P9/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535947
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 US2022081522
(87)【国際公開番号】W WO2023114824
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ディルガー,アンドリュー ケイ
(72)【発明者】
【氏名】スミス ザ セカンド,レオン エム
(72)【発明者】
【氏名】オーワット,マイケル ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ピント,ドナルド ジェイ ピー
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC68
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA40
4C086ZA45
4C086ZB21
4C086ZC02
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206GA07
4C206GA31
4C206HA22
4C206KA01
4C206KA04
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZA40
4C206ZA45
4C206ZB21
4C206ZC02
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB23
4H006BJ30
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM30
4H006BM71
4H006BP30
4H006BV64
4H006BV73
(57)【要約】
本開示は、RXFP1受容体アゴニストである、式(I)の化合物に、それらを含有する組成物に、および例えば、心不全、線維形成疾患、ならびに肺疾患(例えば、特発性肺線維症)、腎疾患(例えば、慢性腎臓病)、または肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝炎および門脈圧亢進症)などの関連疾患の治療にてそれらを用いる方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中:
【化2】
は任意選択の結合であり;
R
1はHまたはハロであるか;またはR
1とR
1とが一緒になってフェニル環を形成し;
R
2は、ハロ、C
1-4アルキル、OH、または-OC
1-4アルキル(0~4個のハロ、OH、または-OC
1-4アルキルで置換される)であり;
R
4aはハロであり;
R
4bはC
1-4アルキル(0~4個のハロで置換される)であり;
R
5は、C
2-8アルケニル(0~3個のR
6および0~2個のR
7で置換される)、C
2-8アルキニル(0~3個のR
6および0~2個のR
7で置換される)、C
6-12アリール(0~3個のR
6および0~2個のR
7で置換される)、または3員ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)
p、NおよびNR
10から選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~3個のR
6および0~1個のR
7で置換される)であり;ここで該ヘテロシクリルは炭素または窒素原子を介してフェニル部分と結合し;
R
6は、ハロ、=O、-OH、-OC
1-4アルキル、またはC
1-4アルキル(0~2個のハロまたはOHで置換される)であり;
R
7は、C
1-3アルキル(0~1個のR
8および0~1個のR
9で置換される)、-OR
b、-NR
aR
a、-NR
aC(=O)R
b、-NR
aC(=O)OR
b、-NR
aC(=O)NR
aR
a、-NR
aS(=O)
pR
c、-C(=O)R
b、-C(=O)OR
b、-C(=O)NR
aR
a、-C(=O)NR
aS(=O)
pR
c、-OC(=O)R
b、-S(=O)
pR
c、-S(=O)
pNR
aR
a、C
3-6シクロアルキル、または4ないし6員のヘテロシクリル(O、S(=O)
p、NおよびNR
dから選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~5個のR
eで置換される)であり;
R
8は、ハロ、-C(=O)OR
b、-C(=O)NHR
a、-C(=O)NHOR
b、またはC
1-4アルキル(0~3個のハロまたはOHで置換される)であり;
R
9は、-OR
b、-NR
aR
a、-NR
aC(=O)R
b、-NR
aC(=O)OR
b、-NR
aS(=O)
pR
c、-NR
aS(O)
pNR
aR
a、-OC(=O)NR
aR
a、-OC(=O)NR
aOR
b、-S(=O)
pNR
aR
a、または-S(O)
pR
cであり;
R
10は、H、C
1-4アルキル(0~2個のR
11で置換される)、-C(=O)R
b、-C(=O)OR
b、-C(=O)NR
aR
a、C
3-6シクロアルキル(0~5個のR
eで置換される)、または4ないし6員のヘテロシクリル(O、S(=O)
p、NおよびNR
12から選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~5個のR
eで置換される)であり;
R
11は、-OH、-C(=O)OH、またはアリールであり;
R
12は、H、C
1-3アルキル、またはアリールであり;
R
aは、H、C
1-6アルキル(0~5個のR
eで置換される)、C
2-5アルケニル(0~5個のR
eで置換される)、C
2-6アルキニル(0~5個のR
eで置換される)、-(CH
2)
n-C
3-10カルボシクリル(0~5個のR
eで置換される)、または-(CH
2)
n-ヘテロシクリル(0~5個のR
eで置換される)であるか;またはR
aおよびR
aは、それらの両方が結合する窒素原子と一緒になって、ヘテロシクリル(0~5個のR
eで置換される)を形成し;
R
bは、H、C
1-6アルキル(0~5個のR
eで置換される)、C
2-6アルケニル(0~5個のR
eで置換される)、C
2-6アルキニル(0~5個のR
eで置換される)、-(CH
2)
n-C
3-10カルボシクリル(0~5個のR
eで置換される)、または-(CH
2)
n-ヘテロシクリル(0~5個のR
eで置換される)であり;
R
cは、C
1-5アルキル(0~5個のR
eで置換される)、C
2-5アルケニル(0~5個のR
eで置換される)、C
2-5アルキニル(0~5個のR
eで置換される)、C
3-6カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり;
R
dはHまたはC
1-4アルキルであり;
R
eは、ハロ、CN、=O、C
1-6アルキル(0~5個のR
gで置換される)、C
2-6アルケニル(0~5個のR
gで置換される)、C
2-6アルキニル(0~5個のR
gで置換される)、-(CH
2)
n-C
3-6シクロアルキル、-(CH
2)
n-アリール、-(CH
2)
n-ヘテロシクリル、-(CH
2)
nOR
f、または-C(=O)OR
fであり;
R
fはHまたはC
1-3アルキルであり;
R
gは、ハロ、CN、OH、C
1-6アルキル、C
3-6シクロアルキル、またはアリールであり;
nは0、1、2、または3であって;
pは0、1、または2である]
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
式(II):
【化3】
[式中:
R
2は-OC
1-4アルキル(0~4個のハロで置換される)であり;
R
4aはハロであり;
R
4bはC
1-3アルキル(0~4個のFで置換される)であり;
R
5は、C
2-6アルキニル(0~3個のR
6および0~2個のR
7で置換される)、C
6アリール(0~3個のR
6および0~2個のR
7で置換される)、または3員ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)
p、NおよびNR
10から選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~3個のR
6および0~1個のR
7で置換される)であり;
R
6は、ハロ、CN、C
1-3アルキル、-OH、または-OC
1-4アルキルであり;
R
7は、C
1-2アルキル(0~1個のR
8および0~1個のR
9で置換される)、OR
b、-NR
aR
a、-NR
aC(=O)R
b、-NR
aC(=O)NR
aR
a、-NR
aS(=O)
pR
c、-C(=O)R
b、-C(=O)OR
b、-C(=O)NR
aR
a、-C(=O)NR
aS(=O)
pR
c、-OC(=O)R
b、-S(=O)
pR
c、-S(=O)
pNR
aR
aであり;
R
8は、ハロ、-C(=O)OR
b、-C(=O)NHR
a、-C(=O)NHOR
b、またはC
1-4アルキル(0~3個のハロまたはOHで置換される)であり;
R
9は、-OR
b、-NR
aR
a、-NR
aC(=O)R
b、-NR
aC(=O)OR
b、-NR
aS(=O)
pR
c、-NR
aS(O)
pNR
aR
a、-OC(=O)NR
aR
a、-OC(=O)NR
aOR
b、-S(=O)
pNR
aR
a、または-S(O)
pR
cであり;
R
10は、H、C
1-4アルキル(0~2個のR
11で置換される)、-C(=O)R
b、-C(=O)OR
b、または-C(=O)NR
aR
aであり;
R
aは、H、C
1-5アルキル(0~4個のR
eで置換される)、C
2-5アルケニル(0~4個のR
eで置換される)、C
2-5アルキニル(0~4個のR
eで置換される)、-(CH
2)
n-C
3-10カルボシクリル(0~4個のR
eで置換される)、または-(CH
2)
n-ヘテロシクリル(0~4個のR
eで置換される)であるか;またはR
aおよびR
aは、それらの両方が結合する窒素原子と一緒になって、ヘテロシクリル(0~4個のR
eで置換される)を形成し;
R
bは、H、C
1-5アルキル(0~4個のR
eで置換される)、C
2-5アルケニル(0~4個のR
eで置換される)、C
2-5アルキニル(0~4個のR
eで置換される)、-(CH
2)
n-C
3-10カルボシクリル(0~4個のR
eで置換される)、または-(CH
2)
n-ヘテロシクリル(0~4個のR
eで置換される)であり;
R
cは、C
1-5アルキル(0~4個のR
eで置換される)、C
2-5アルケニル(0~4個のR
eで置換される)、C
2-5アルキニル(0~4個のR
eで置換される)、C
3-6カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり;
R
dはHまたはC
1-2アルキルであり;
R
eは、ハロ、CN、=O、C
1-6アルキル(0~5個のR
gで置換される)、C
2-6アルケニル(0~5個のR
gで置換される)、C
2-6アルキニル(0~5個のR
gで置換される)、-(CH
2)
n-C
3-6シクロアルキル、-(CH
2)
n-アリール、-(CH
2)
n-ヘテロシクリル、-(CH
2)
nOR
f、または-C(=O)OR
fであり;
R
fはHまたはC
1-3アルキルであり;
R
gは、ハロ、CN、OH、C
1-6アルキル、またはC
3-6シクロアルキルであり;
nは0、1、2、または3であって;
pは0、1、または2である]
で示される、請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項3】
式(III):
【化4】
[式中:
R
2は-OC
1-3アルキルであり;
R
4aはFであり;
R
4bはCF
3であり;
R
6はハロであり;
R
7は、C
1-2アルキル(0~1個のR
8および0~1個のR
9で置換される)、-C(=O)OR
b、または-C(=O)NR
aR
aであり;
R
8は、-C(=O)OR
b、-C(=O)NHR
a、またはC
1-4アルキル(0~3個のハロまたはOHで置換される)であり;
R
9は、-OR
b、-NR
aR
a、-NR
aC(=O)R
b、または-OC(=O)NR
aR
aであり;
R
aは、H、C
1-4アルキル(0~3個のR
eで置換される)、-(CH
2)
n-C
3-6シクロアルキル(0~3個のR
eで置換される)、またはフェニル(0~3個のR
eで置換される)であり;
R
bはHまたはヘテロシクリル(0~3個のR
eで置換される)であり;
R
eは、ハロ、CN、=O、またはC
1-6アルキルであって;
nは0または1である]
で示される、請求項2に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【請求項4】
R
2が-OCH
3であり;
R
4aがFであり;
R
4bがCF
3であり;
R
5が
【化5】
であり;
R
6が、ハロ、-OH、またはC
1-4アルキル(0~1個のOHで置換される)であり;
R
7はC
1-2アルキル(0~1個のR
8および0~1個のR
9で置換される)であり;
R
8は-C(=O)OR
b、-C(=O)NHR
a、または-C(=O)NHOR
bであり;
R
9は-OR
bまたは-NR
aR
aであり;
R
10は、H、-C(=O)R
b、またはC
1-4アルキル(0~1個のR
11で置換される)であり;
R
11は、-OH、-C(=O)OH、またはアリールであり;
R
aはHまたはC
1-3アルキルであって;
R
bはHまたはC
1-3アルキルである、
請求項2に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項5】
R
2が-OCH
3であり;
R
4aがFであり;
R
4bがCF
3であり;
R
5が
【化6】
であり;
R
6が、ハロ、C
1-4アルキル、-OH、または-OC
1-4アルキルであり;
R
7がC
1-4アルキル(0~1個のR
8および0~1個のR
9で置換される)であり;
R
8が-C(=O)OR
bであり;
R
9がOHであり;
R
10が、H、C
1-3アルキル(0~2個のR
11で置換される)、または-C(=O)OC
1-4アルキルであり;
R
11が、-OH、-C(=O)OH、またはアリールであって;
R
bがHまたはC
1-3アルキルである、
請求項2に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項6】
R
2が-OCH
3であり;
R
4aがFであり;
R
4bがCF
3であり;
R
5がC
2-5アルキニル(0~1個のR
7で置換される)であり;
R
7が-OR
bであり;
R
bが、H、C
1-3アルキル、またはフェニル(0~2個のR
eで置換される)であり;
R
eが、ハロ、C
1-3アルキル、またはC(=O)OR
fであって;
R
fがHまたはC
1-3アルキルである、
請求項2に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項8】
リラキシンに関連する疾患を治療する方法であって、治療的に効果的な量の請求項7に記載の組成物を、治療を必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項9】
疾患が、狭心症、不安定狭心症、心筋梗塞、心不全、急性冠動脈疾患、急性心不全、慢性心不全、および心臓異所性損傷からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
疾患が心不全である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
疾患が線維症である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年12月15日付け出願の米国仮特許出願番号63/289,859号の利益を主張するものであり、その開示のすべてを出典明示により本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本開示は、レラキシンファミリーペプチド受容体1(RXFP1)アゴニストである、新規な化合物、それらを含有する組成物、およびそれらを、例えば、心不全、線維化疾患、および肺疾患(例えば、特発性肺線維症)、腎臓病(例えば、慢性腎疾患)および肝臓病(例えば、非アルコール性脂肪肝炎および門脈圧亢進症)などの関連疾患の治療にて使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトリラキシンホルモン(リラキシンまたはH2リラキシンとも称される)は、Frederick Hisawが、1926年に、ブタ黄体から由来の粗抽出物をバージンモルモットに注射した時に、線維軟骨性恥骨結合関節の弛緩が観察されたことでその活性が最初に発見された、53個のアミノ酸から構成される6kDaのペプチドである(Hisaw FL、Proc. Soc. Exp. Biol.Med., 1926, 23, 661-663)。リラキシン受容体は、以前はLgr7として知られていたが、今では正式にはリラキシンファミリーペプチド受容体1(RXFP1)と称され、2002年にリラキシンの受容体としてオーファンではなくなった(Hsu SY.ら、Science, 2002, 295, 671-674)。RXFP1はマウスとヒトとの間で85%アミノ酸同一性で合理的によく保存されており、ヒトと他の種において本質的に偏在的に発現する(Halls ML.ら、Br. J.Pharmacol., 2007, 150, 677-691)。リラキシンおよびRXFP1の細胞シグナル伝達経路は細胞型依存性であり、非常に複雑である(Halls ML.ら、Br. J.Pharmacol., 2007, 150, 677-691;Halls ML.ら、Ann. NY Acad. Sci., 2009, 1160, 108-111;Halls ML.、Ann. NY Acad. Sci., 2007, 1160, 117-120)。最も研究されている経路は、リラキシンがRXFP1アゴニストとして機能し、GαSカップリングおよびアデニル酸シクラーゼの活性化を促進する、cAMPの細胞レベルがリラキシン依存的に増加する経路である(Halls ML.ら、Mol. Pharmacol., 2006, 70, 214-226)。
【0004】
リラキシンを最初に発見して以来、多くの実験的研究は、リラキシンが女性の生殖生物学において果たす役割を明確にすること、および哺乳動物の妊娠中に生じる生理的変化を明らかにすることに焦点を当ててきた(Sherwood OD.、Endocr. Rev., 2004, 25, 205-234)。ヒト妊娠の間には、胎児から課せられる栄養要求を満たすために、女性の身体は全身血管抵抗(SVR)が有意に約30%低下し、それに付随して心拍出力が約50%上昇する(Jeyabalan AC., K.P.、Reanl and Electrolyte Disorders. 2010, 462-518)、(Clapp JF & Capeless E.、Am. J. Cardio., 1997, 80, 1469-1473)。さらなる血管適応には、効果的な心室-動脈のカップリングを維持するのに重要である全身の動脈コンプライアンスが約30%増加すること、ならびに代謝性老廃物の排出に重要である腎血流量(RBF)と糸球体濾過量(GFR)の両方が約50%増加することが含まれる(Jeyabalan AC.、K.P.、Reanl and Electrolyte Disorders. 2010, 462-518)、(Poppas A.ら、Circ., 1997, 95, 2407-2415)。齧歯動物での前臨床実験ならびに種々の患者セッティングで行われる臨床実験の両方で、これらの適応的な生物学的変化を媒介するにおいて、リラキシンが少なくともある程度まで関与しているという証拠が得られている(Conrad KP.、Regul Integr. Comp. Physiol., 2011, 301, R267-275)、(Teichman SL.ら、Heart Fail. Rev., 2009, 14, 321-329)。重要なことは、これらの適応応答の多くが、過度の線維化、低い動脈コンプライアンス、および腎機能の低下のすべてが心不全の患者に共通する特性であるという点で、HF患者に利益のある可能性があるということである(Mohammed SF.ら、Circ., 2015, 131, 550-559)、(Wohlfahrt P.ら、Eur. J. Heart Fail., 2015, 17, 27-34)、(Damman K.ら、Prog. Cardiovasc. Dis., 2011, 54, 144-153)。
【0005】
心不全(HF)は、血行動態学的に「心臓ポンプ機能が損傷した結果、全身のかん流が不十分となり、人体の代謝需要を満たせない状態」として定義され、米国にて推定580万人に、世界中で2300万人より多くに普及しており、今日の健康管理システムにて莫大な負担を示す(Roger VL.ら、Circ. Res., 2013, 113, 646-659)。2030年までに米国だけでさらに300万人がHFとなり、2010年から25%増であろうと推定される。2010年にHFに関連する直接的な推定費用(2008ドル(2008 dollars))は250億ドルであり、2030年には780億ドルに膨れ上がると推測された(Heidenreich PA.ら、Circ., 2011, 123, 933-944)。意外にも、米国では9件の死亡のうちの1件がその死亡診断書にHFと示されており(Roger VL.ら、Circ., 2012, 125, e2-220)、HFと診断された後の生存率は時代と共に改善されているが(Matsushita K.ら、Diabetes, 2010, 59, 2020-2026)、(Roger VL.ら、JAMA, 2004, 292, 344-350)、その死亡率は高いままであり、診断から5年以内にHF患者の約50%が死亡する(Roger VL.ら、Circ., 2012, 125, e2-220)、(Roger VL.ら、JAMA, 2004, 292, 344-350)。
【0006】
HFの徴候は不十分な心拍出力の結果であり、疾患の進行段階に応じてかなり衰弱し得る。HFの主たる徴候および兆候には:1)左心室から前方への流れが効果的でなく、肺毛細血管床での圧が増加することに起因する肺浮腫からもたらされる呼吸困難(苦しそうな呼吸);2)右心室が全身の静脈リターンに適合できない場合に起こる下肢浮腫;および3)心不全のため身体の代謝上の要求を満たすの十分な心拍出力(CO)を維持できないことによる疲労が含まれる(Kemp CD. & Conte JV.、Cardiovasc. Pathol., 2011, 21, 365-371)。また、徴候の重篤度に関連して、HF患者は、しばしば、「代償性」または「非代償性」と説明される。代償性心不全では、徴候は安定しており、流体貯留および肺浮腫の多くの明らかな特徴は見られない。非代償性心不全は、肺浮腫の急性エピソード、運動耐容能の減少、および運動の際の息切れの増加として存在し得る、悪化をいう(Millane T.ら、BMJ, 2000, 320, 559-562)。
【0007】
心機能の低下により代謝要求を満たすことができなくなり得るとの単純な定義とは対照的に、極めて多くの原因疾患、多数の危険因子、および最終的に心不全に至る多くの病理学的変化が、この疾患を極めて複雑なものとしている(Jessup M. & Brozena S.、N. Engli. J. Med., 2003, 348, 3007-2018)。HFの病態生理に関与すると考えられる有害な事象は、心筋梗塞などの極めて急性なものから生涯続く高血圧などの慢性の損傷にまで及ぶ。歴史的に、HFは、主に、左心室(LV)収縮機能の低下が血液の排出を制限し、その結果として駆出率(ejection fraction)(EFは1回拍出量/拡張末期容量)の低下をもたらす「収縮期HF」として、または活動的弛緩が拡張期のLV充満を減少させ、受動的スティフネスがそれを増大させるが、全体的なEFは維持される「拡張期HF」として説明されてきた(Borlaug BA. & Paulus WJ.、Eur Heart J., 2011, 32, 670-679)。最近になって、拡張期および収縮期LVの機能不全はこれらの2つのグループに独特で特異的なものではないと理解されるようになったため、新たな用語:「駆出率が低下した心不全」(HFrEF)および「駆出率が保たれた心不全」(HFpEF)が採用された(Borlaug BA. & Paulus WJ.、Eur Heart J., 2011, 32, 670-679)。これら2つの患者の集団は極めて類似する徴候および症状を示すが、HFrEFおよびHFpEFがHFの2つの異なる形態を表すか、または共通する病態を共有する単一のスペクトルの2つの極端な形態を表すかのいずれであるかは、現在のところ、循環器社会のうちでは議論中である(Borlaug BA. & Redfield MM.、Circ., 2011, 123, 2006-2013)、(De Keulenaer GW. & Brutsaert DL.、Circ., 2011, 123, 1996-2004)。
【0008】
セレラキシン(Serelaxin)は、第1相薬物動態学的半減期が0.09時間と相対的に短いヒト組換えリラキシンペプチドの静脈内(IV)製剤であって、現在、HFを治療するために開発中にある(ノバルティス、2014)。セレラキシンを健常者のボランティア(NHV)に投与すると、RBF(Smith MC.ら、J. Am. Soc. Nephrol. 2006, 17, 3192-3197)およびGFRの推定値(Dahlke M.ら、J. Clin. Pharmacol.,2015, 55, 415-422)が増加することが証明された。RBFの増加は安定した代償性HF患者でも観察された(Voors AA.ら、Cir. Heart Fail., 2014, 7, 994-1002)。大規模な臨床試験では、セレラキシンの院内での48時間に及ぶ静脈内注入に応答して、腎機能の悪化、HFの悪化、ならびに少ない死亡において望ましい変化が急性非代償性HF(ADHF)患者にて観察された(Teerlink JR.ら、Lancet, 2013, 381, 29-39)、(Ponikowski P.ら、Eur Heart, 2014, 35, 431-441)。セレラキシンの慢性投与がHF患者に対して持続的な利益を提供し得ることを示唆するものとして、皮下ポンプを用いてセレラキシンを6カ月にわたって連続して投与した強皮症の患者にて、クレアチンの血清中レベルに基づく腎機能の改善が観察された(Teichman SL.ら、Heart Fail. Rev., 2009, 14, 321-329)。HFを治療するためのその治療剤としての可能性に加えて、リラキシンの持続皮下投与もまた、肺損傷(Unemori EN.ら、J. Clin. Invet. 1996, 98, 2739-2745)、腎損傷(Garber SL.ら、Kidney Int., 2001, 59, 876-882)、および肝損傷(Bennett RG.、Liver Int., 2014, 34, 416-426)の種々の動物実験にて効果的であることが証明されている。
【0009】
要約すれば、多くの証拠は、哺乳動物の妊娠中に起こる適応的変化を媒介するRXFP1のリラキシン依存性アゴニスト作用の役割を支持しており、リラキシンがHF患者に投与された場合に、これらの変化が好ましい生理学的効果および結果となることを支持する。肺、腎臓および肝臓の損傷の種々の疾患実験におけるさらなる前臨床動物実験から、リラキシンが、慢性的に投与された場合に、HFに加えて、複数の適応症に治療効果を提供する可能性のある証拠が提供される。より具体的には、リラキシンの慢性投与は、肺疾患(例えば、特発性肺線維症)、腎疾患(例えば、慢性腎疾患)または肝臓病(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎および門脈圧亢進症)に罹患している患者に対して利益があり得る。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、RXFP1受容体アゴニストとして有用である、新規な置換シクロブチルシクロペンタン化合物、その立体異性体、互変異性体、医薬的に許容される塩または溶媒和物を含む、そのアナログを提供する。
本発明はまた、本発明の化合物を製造するための方法および中間体を提供する。
本発明はまた、医薬的に許容される担体、および本発明の化合物、またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容される塩または溶媒和物の少なくとも一つを含む、医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明の化合物は、例えば、心不全、線維性疾患、および肺疾患(例えば、特発性肺線維症)、腎疾患(例えば、慢性腎疾患)、または肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎および門脈圧亢進症)の治療および/または予防にて使用されてもよい。
本発明の化合物は療法にて使用されてもよい。
本発明の化合物は心不全の治療および/または予防のための医薬の製造に使用されてもよい。
【0012】
本発明の化合物は、単独で、本発明の他の化合物と組み合わせて、または1または複数の、好ましくは1ないし2種の他の薬剤と組み合わせて使用され得る。
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、開示が進むにつれて、拡大された形態にて記載されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、RXFP1受容体アゴニストである、式(I)の化合物、該化合物を含有する組成物、および該化合物または組成物を使用する方法を包含する。
【0014】
第1の態様において、本発明は、とりわけ、式(I):
【化1】
[式中:
【化2】
は任意選択の結合であり;
R
1はHまたはハロであるか;またはR
1とR
1とが一緒になってフェニル環を形成し;
R
2は、ハロ、C
1-4アルキル、OH、または-OC
1-4アルキル(0~4個のハロ、OH、または-OC
1-4アルキルで置換される)であり;
R
4aはハロであり;
R
4bはC
1-4アルキル(0~4個のハロで置換される)であり;
R
5は、C
2-8アルケニル(0~3個のR
6および0~2個のR
7で置換される)、C
2-8アルキニル(0~3個のR
6および0~2個のR
7で置換される)、C
6-12アリール(0~3個のR
6および0~2個のR
7で置換される)、または3員ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)
p、NおよびNR
10から選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~3個のR
6および0~1個のR
7で置換される)であり;ここで該ヘテロシクリルは炭素または窒素原子を介してフェニル部分と結合し;
R
6は、ハロ、=O、-OH、-OC
1-4アルキル、またはC
1-4アルキル(0~2個のハロまたはOHで置換される)であり;
R
7は、C
1-3アルキル(0~1個のR
8および0~1個のR
9で置換される)、-OR
b、-NR
aR
a、-NR
aC(=O)R
b、-NR
aC(=O)OR
b、-NR
aC(=O)NR
aR
a、-NR
aS(=O)
pR
c、-C(=O)R
b、-C(=O)OR
b、-C(=O)NR
aR
a、-C(=O)NR
aS(=O)
pR
c、-OC(=O)R
b、-S(=O)
pR
c、-S(=O)
pNR
aR
a、C
3-6シクロアルキル、または4ないし6員のヘテロシクリル(O、S(=O)
p、NおよびNR
dから選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~5個のR
eで置換される)であり;
R
8は、ハロ、-C(=O)OR
b、-C(=O)NHR
a、-C(=O)NHOR
b、またはC
1-4アルキル(0~3個のハロまたはOHで置換される)であり;
R
9は、-OR
b、-NR
aR
a、-NR
aC(=O)R
b、-NR
aC(=O)OR
b、-NR
aS(=O)
pR
c、-NR
aS(O)
pNR
aR
a、-OC(=O)NR
aR
a、-OC(=O)NR
aOR
b、-S(=O)
pNR
aR
a、または-S(O)
pR
cであり;
R
10は、H、C
1-4アルキル(0~2個のR
11で置換される)、-C(=O)R
b、-C(=O)OR
b、-C(=O)NR
aR
a、C
3-6シクロアルキル(0~5個のR
eで置換される)、または4ないし6員のヘテロシクリル(O、S(=O)
p、NおよびNR
12から選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~5個のR
eで置換される)であり;
R
11は、-OH、-C(=O)OH、またはアリールであり;
R
12は、H、C
1-3アルキル、またはアリールであり;
R
aは、H、C
1-6アルキル(0~5個のR
eで置換される)、C
2-5アルケニル(0~5個のR
eで置換される)、C
2-6アルキニル(0~5個のR
eで置換される)、-(CH
2)
n-C
3-10カルボシクリル(0~5個のR
eで置換される)、または-(CH
2)
n-ヘテロシクリル(0~5個のR
eで置換される)であるか;またはR
aおよびR
aは、それらの両方が結合する窒素原子と一緒になって、ヘテロシクリル(0~5個のR
eで置換される)を形成し;
R
bは、H、C
1-6アルキル(0~5個のR
eで置換される)、C
2-6アルケニル(0~5個のR
eで置換される)、C
2-6アルキニル(0~5個のR
eで置換される)、-(CH
2)
n-C
3-10カルボシクリル(0~5個のR
eで置換される)、または-(CH
2)
n-ヘテロシクリル(0~5個のR
eで置換される)であり;
R
cは、C
1-5アルキル(0~5個のR
eで置換される)、C
2-5アルケニル(0~5個のR
eで置換される)、C
2-5アルキニル(0~5個のR
eで置換される)、C
3-6カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり;
R
dはHまたはC
1-4アルキルであり;
R
eは、ハロ、CN、=O、C
1-6アルキル(0~5個のR
gで置換される)、C
2-6アルケニル(0~5個のR
gで置換される)、C
2-6アルキニル(0~5個のR
gで置換される)、-(CH
2)
n-C
3-6シクロアルキル、-(CH
2)
n-アリール、-(CH
2)
n-ヘテロシクリル、-(CH
2)
nOR
f、または-C(=O)OR
fであり;
R
fはHまたはC
1-3アルキルであり;
R
gは、ハロ、CN、OH、C
1-6アルキル、C
3-6シクロアルキル、またはアリールであり;
nは0、1、2、または3であって;
pは0、1、または2である]
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0015】
第1の態様の範囲内にある第2の態様において、本発明は、式(II):
【化3】
[式中:
R
2は-OC
1-4アルキル(0~4個のハロで置換される)であり;
R
4aはハロであり;
R
4bはC
1-3アルキル(0~4個のFで置換される)であり;
R
5はC
2-6アルキニル(0~3個のR
6および0~2個のR
7で置換される)、C
6アリール(0~3個のR
6および0~2個のR
7で置換される)、または3員ないし12員のヘテロシクリル(O、S(=O)
p、NおよびNR
10から選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~3個のR
6および0~1個のR
7で置換される)であり;
R
6は、ハロ、CN、C
1-3アルキル、-OH、または-OC
1-4アルキルであり;
R
7は、C
1-2アルキル(0~1個のR
8および0~1個のR
9で置換される)、OR
b、-NR
aR
a、-NR
aC(=O)R
b、-NR
aC(=O)NR
aR
a、-NR
aS(=O)
pR
c、-C(=O)R
b、-C(=O)OR
b、-C(=O)NR
aR
a、-C(=O)NR
aS(=O)
pR
c、-OC(=O)R
b、-S(=O)
pR
c、-S(=O)
pNR
aR
a、C
3-6シクロアルキル、または4ないし6員のヘテロシクリル(O、S(=O)
p、NおよびNR
dから選択される1~4個のヘテロ原子を含み、0~4個のR
eで置換される)であり;
R
8は、ハロ、-C(=O)OR
b、-C(=O)NHR
a、-C(=O)NHOR
b、またはC
1-4アルキル(0~3個のハロまたはOHで置換される)であり;
R
9は、-OR
b、-NR
aR
a、-NR
aC(=O)R
b、-NR
aC(=O)OR
b、-NR
aS(=O)
pR
c、-NR
aS(O)
pNR
aR
a、-OC(=O)NR
aR
a、-OC(=O)NR
aOR
b、-S(=O)
pNR
aR
a、または-S(O)
pR
cであり;
R
10は、H、C
1-4アルキル(0~2個のR
11で置換される)、-C(=O)R
b、-C(=O)OR
b、または-C(=O)NR
aR
aであり;
R
aは、H、C
1-5アルキル(0~4個のR
eで置換される)、C
2-5アルケニル(0~4個のR
eで置換される)、C
2-5アルキニル(0~4個のR
eで置換される)、-(CH
2)
n-C
3-10カルボシクリル(0~4個のR
eで置換される)、または-(CH
2)
n-ヘテロシクリル(0~4個のR
eで置換される)であるか;またはR
aおよびR
aは、それらの両方が結合する窒素原子と一緒になって、ヘテロシクリル(0~4個のR
eで置換される)を形成し;
R
bは、H、C
1-5アルキル(0~4個のR
eで置換される)、C
2-5アルケニル(0~4個のR
eで置換される)、C
2-5アルキニル(0~4個のR
eで置換される)、-(CH
2)
n-C
3-10カルボシクリル(0~4個のR
eで置換される)、または-(CH
2)
n-ヘテロシクリル(0~4個のR
eで置換される)であり;
R
cは、C
1-5アルキル(0~4個のR
eで置換される)、C
2-5アルケニル(0~4個のR
eで置換される)、C
2-5アルキニル(0~4個のR
eで置換される)、C
3-6カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり;
R
dはHまたはC
1-2アルキルであり;
R
eは、ハロ、CN、=O、C
1-6アルキル(0~5個のR
gで置換される)、C
2-6アルケニル(0~5個のR
gで置換される)、C
2-6アルキニル(0~5個のR
gで置換される)、-(CH
2)
n-C
3-6シクロアルキル、-(CH
2)
n-アリール、-(CH
2)
n-ヘテロシクリル、-(CH
2)
nOR
f、または-C(=O)OR
fであり;
R
fはHまたはC
1-3アルキルであり;
R
gは、ハロ、CN、OH、C
1-6アルキル、またはC
3-6シクロアルキルであり;
nは0、1、2、または3であって;
pは0、1、または2である]
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0016】
第1および第2の態様の範囲内にある第3の態様において、本発明は、式(III):
【化4】
[式中:
R
2は-OC
1-3アルキルであり;
R
4aはFであり;
R
4bはCF
3であり;
R
6はハロであり;
R
7は、C
1-2アルキル(0~1個のR
8および0~1個のR
9で置換される)、-C(=O)OR
b、または-C(=O)NR
aR
aであり;
R
8は、-C(=O)OR
b、-C(=O)NHR
a、またはC
1-4アルキル(0~3個のハロまたはOHで置換される)であり;
R
9は、-OR
b、-NR
aR
a、-NR
aC(=O)R
b、または-OC(=O)NR
aR
aであり;
R
aは、H、C
1-4アルキル(0~3個のR
eで置換される)、-(CH
2)
n-C
3-6シクロアルキル(0~3個のR
eで置換される)、またはフェニル(0~3個のR
eで置換される)であり;
R
bはHまたはヘテロシクリル(0~3個のR
eで置換される)であり;
R
eは、ハロ、CN、=O、またはC
1-6アルキルであって;
nは0または1である]
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0017】
第2の態様の範囲内にある第4の態様において、本発明は、
R
2が-OCH
3であり;
R
4aがFであり;
R
4bがCF
3であり;
R
5が
【化5】
であり;
R
6が、ハロ、-OH、またはC
1-4アルキル(0~1個のOHで置換される)であり;
R
7はC
1-2アルキル(0~1個のR
8および0~1個のR
9で置換される)であり;
R
8は-C(=O)OR
b、-C(=O)NHR
a、または-C(=O)NHOR
bであり;
R
9は-OR
bまたは-NR
aR
aであり;
R
10は、H、-C(=O)R
b、またはC
1-4アルキル(0~1個のR
11で置換される)であり;
R
11は、-OH、-C(=O)OH、またはアリールであり;
R
aはHまたはC
1-3アルキルであって;
R
bはHまたはC
1-3アルキルである、
式(II)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0018】
第2の態様の範囲内にある第5の態様において、本発明は、
R
2が-OCH
3であり;
R
4aがFであり;
R
4bがCF
3であり;
R
5が
【化6】
であり;
R
6が、ハロ、C
1-4アルキル、-OH、または-OC
1-4アルキルであり;
R
7がC
1-4アルキル(0~1個のR
8および0~1個のR
9で置換される)であり;
R
8が-C(=O)OR
bであり;
R
9がOHであり;
R
10が、H、C
1-3アルキル(0~2個のR
11で置換される)、または-C(=O)OC
1-4アルキルであり;
R
11が、-OH、-C(=O)OH、またはアリールであって;
R
bがHまたはC
1-3アルキルである、
式(II)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0019】
第2の態様の範囲内にある第6の態様において、本発明は、
R2が-OCH3であり;
R4aがFであり;
R4bがCF3であり;
R5がC2-5アルキニル(0~1個のR7で置換される)であり;
R7が-ORbであり;
Rbが、H、C1-3アルキル、またはフェニル(0~2個のReで置換される)であり;
Reが、ハロ、C1-3アルキル、またはC(=O)ORfであって;
RfがHまたはC1-3アルキルである、
式(II)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0020】
式(I)の化合物では、R1、R2、R3、R4a、R4b、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、およびRgを含む、可変的な置換基の例としてのいずれの範囲も、可変的な置換基の例としての他の任意の範囲とも独立して使用され得る。このように、本発明は異なる態様の組み合わせを包含する。
【0021】
式(II)または(III)の1の実施態様において、R4aはFである。
式(II)または(III)の1の実施態様において、R4bはCF3である。
【0022】
式(III)の1の実施態様において、R
2は-OCH
3であり;R
4aはFであり;R
4bはCF
3であり;R
5は
【化7】
であり;R
6はFであり;R
8は-C(=O)OH、-C(=O)NHR
a、またはCF
3であり;R
9は-NHR
a、-NHC(=O)R
b、-NHS(=O)
pC
1-4アルキルまたは-OC(=O)NHR
aであり;R
aはH、C
1-3アルキル、-(CH
2)
0-1-C
3-6シクロアルキル、または-(CH
2)
0-1-フェニル(0~2個のR
eで置換される)であり;R
bはHまたはヘテロシクリルであり;R
eはC
1-3アルキル、-(CH
2)
0-1OR
fであって;R
fはHまたはC
1-3アルキルである。
【0023】
式(II)の1の実施態様において、R
2は-OCH
3であり;R
4aはFであり;R
4bはCF
3であり;R
5は
【化8】
であり;R
7はC
1-4アルキル(0~1個のR
9で置換される)であり;R
9は-OHであり;R
10は-C(=O)R
bであり;R
bはHまたはC
1-3アルキル(0~4個のR
eで置換される)であり;R
eは-(CH
2)
0-1OR
fであって;R
fはHまたはC
1-3アルキルである。
【0024】
特記されない限り、これらの用語は次の意味を有する。
「ハロ」はフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを包含する。
「アルキル」または「アルキレン」は、特定された数の炭素原子を有する分岐鎖および直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を包含するものとする。例えば、「C1~C10アルキル」または「C1-10アルキル」(またはアルキレン)は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、およびC10アルキル基を包含するものとする。加えて、例えば、「C1~C6アルキル」または「C1-C6アルキル」は1~6個の炭素原子を有するアルキルを示す。アルキル基は、非置換とすることができ、あるいは少なくとも1つの水素がもう一つ別の化学基と置き換えられるように置換され得る。例示的なアルキル基としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n-プロピルおよびイソプロピル)、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル)、およびペンチル(例えば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)が挙げられるが、これらに限定されない。「C0アルキル」または「C0アルキレン」が用いられる場合、それは直接結合を示すものとする。「アルキル」はまた、CD3などの重水素アルキルも包含する。
【0025】
「アルケニル」または「アルケニレン」は、1または複数の、好ましくは1~3個の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分岐鎖のいずれかの配置の炭化水素鎖を包含するものとし、その二重結合は該鎖に沿った任意の安定な点で生じてもよい。例えば、「C2~C6アルケニル」または「C2-6アルケニル」(またはアルケニレン)は、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニルなどの、C2、C3、C4、C5、およびC6アルケニル基を包含するものとする。
「アルキニル」または「アルキニレン」は、1または複数の、好ましくは1~3個の炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分岐鎖のいずれかの配置の炭化水素鎖を包含するものとし、その三重結合は該鎖に沿った任意の安定な点で生じてもよい。例えば、「C2~C6アルキニル」または「C2-6アルキニル」(またはアルキニレン)は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルおよびヘキチニルなどの、C2、C3、C4、C5、およびC6アルキニル基を包含するものとする。
【0026】
「炭素環」、「カルボシクリル」、または「炭素環式残基」は、任意の安定した3員、4員、5員、6員、7員、または8員の単環式または二環式、あるいは7員、8員、9員、10員、11員、12員、または13員の二環式または三環式炭化水素環を意味するものとし、そのいずれもが飽和、部分不飽和、不飽和または芳香族であってもよい。かかるカルボシクリルの例として、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘプテニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、アダマンチル、シクロオクチル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、[3.3.0]ビシクロオクタン、[4.3.0]ビシクロノナン、[4.4.0]ビシクロデカン(デカリン)、[2.2.2]ビシクロオクタン、フルオレニル、フェニル、ナフチル、インダニル、アダマンチル、アントラセニル、およびテトラヒドロナフチル(テトラリン)が挙げられる。上記されるように、架橋環もカルボシクリル(例えば、[2.2.2]ビシクロオクタン)の定義に含まれる。架橋環は、1または複数の炭素原子が2つの隣接しない炭素原子を連結する場合に生じる。好ましい架橋は1または2個の炭素原子である。架橋は常に単環式環を三環式環に変換することに留意されたい。環が架橋される場合、環について列挙される置換基はまた、架橋上に存在してもよい。「カルボシクリル」なる語が用いられる場合、それは「アリール」、「シクロアルキル」、「スピロシクロアルキル」を包含するものとする。好ましいカルボシクリルは、特記されない限り、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、およびインダニルである。
【0027】
「シクロアルキル」は、単環式、二環式または多環式環系を含む、環化アルキル基を意味するものとする。「C3~C7シクロアルキル」または「C3-7シクロアルキル」はC3、C4、C5、C6、およびC7シクロアルキル基を包含するものとする。単環式シクロアルキルの非限定的な例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。多環式シクロアルキルの非限定的な例として、1-デカリニル、ノルボルニルおよびアダマンチルが挙げられる。
「スピロシクロアルキル」は、両方の環が単一の原子を介して接続されている、炭化水素二環式環系を意味するものとする。環の大きさおよび性質は異なるものとすることができ、大きさおよび性質が同じとすることもできる。例として、スピロペンタン、スピロヘキサン、スピロヘプタン、スピロオクタン、スピロノナン、またはスピロデカンが挙げられる。
【0028】
「二環式カルボシクリル」または「二環式炭素環基」は、2つの縮合環を含有し、炭素原子からなる、安定した9または10員の炭素環式環系を意味するものとする。2つの縮合環のうち、1つの環は別の環に縮合したベンゾ環であり、その別の環は、飽和、部分不飽和、または不飽和である、5または6員の炭素環である。二環式炭素環基は、安定した構造をもたらす任意の炭素原子でそのペンダント基に結合していてもよい。本明細書に記載の二環式炭素環基は、得られる化合物が安定しているならば、いずれの炭素上で置換されてもよい。二環式炭素環基の例として、限定されないが、ナフチル、1,2-ジヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、およびインダニルが挙げられる。
【0029】
「アリール」基は、例えば、フェニル、ナフチル、およびフェナントラニルを含む、単環式または多環式芳香族炭化水素をいう。アリール部分は周知であり、例えば、Lewis, R.J.編、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary, 13th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York(1997)。
「ベンジル」は、水素原子の1つがフェニル基で置換されているメチル基を意味するものであり、ここで該フェニル基は、所望により、1~5個の基、好ましくは1~3個の基で置換されてもよい。
【0030】
「ヘテロサイクル」、「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環式環」は、飽和、部分的に不飽和または完全に不飽和であって、炭素原子と、N、OおよびSからなる群より独立して選択される1、2、3または4個のヘテロ原子とを含有する、安定した3員、4員、5員、6員、または7員の単環式または二環式の、あるいは7員、8員、9員、10員、11員、12員、13員、または14員の多環式ヘテロ環式環を意味するものとし、ここで、上記したヘテロ環式環のいずれかがベンゼン環に縮合しているいずれの多環式基も含むものとする。窒素および硫黄ヘテロ原子は、所望により、酸化されてもよい(すなわち、
【化9】
およびS(O)
pであり、ここでpは0、1または2である)。窒素原子は置換されていても、いなくてもよい(すなわち、NまたはNRであり、ここでRは、定義するとすれば、Hまたはもう一つ別の置換基である)。ヘテロ環式環は、安定した構造をもたらす、任意のヘテロ原子または炭素原子でそのペンダント基と結合してもよい。本明細書に記載のヘテロ環式環は、得られる化合物が安定しているならば、炭素上または窒素原子上で置換されてもよい。ヘテロシクリルにある窒素は、所望により、四級化されてもよい。ヘテロシクリル中にあるSおよびO原子の総数が1を超える場合、その時にはこれらのヘテロ原子は互いに隣接していないことが好ましい。ヘテロシクリル中にあるSおよびO原子の総数は多くても1であることが好ましい。架橋環もヘテロシクリルの定義に含まれる。「ヘテロシクリル」なる語が使用される場合、ヘテロアリールを含むものとする。
【0031】
ヘテロシクリルの例として、限定されないが、アクリジニル、アゼチジニル、アゾシニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH-カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、イミダゾロピリジニル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソチアゾロピリジニル、イソキサゾリル、イソキサゾロピリジニル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾロピリジニル、オキサゾリジニルペルイミジニル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、フテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾロピリジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾリル、ピリドイミダゾリル、ピリドチアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2-ピロリドニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラゾリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チアゾロピリジニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,5-トリアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、およびキサンテニルが挙げられる。また、上記のヘテロシクリルを含有する縮合環およびスピロ化合物も含まれる。
【0032】
「二環式ヘテロサイクル」、「二環式ヘテロシクリル」または「二環式ヘテロ環基」は、2つの縮合環を含有し、炭素原子と、N、OおよびSからなる群より独立して選択される1、2、3または4個のヘテロ原子とからなる、安定した9または10員のヘテロ環式環系を意味するものとする。2つの縮合環のうちの1つの環は、5員のヘテロアリール環、6員のヘテロアリール環またはベンゾ環からなる5員または6員の単環式芳香族環であり、各々が第2の環に縮合している。第2の環は、飽和、部分的に不飽和、不飽和であって、5員のヘテロシクリル、6員のヘテロシクリルまたはカルボシクリルからなる5員または6員の多環式環である(ただし、第2の環がカルボシクリルである場合、第1の環はベンゾ以外の環である)。
【0033】
二環式ヘテロ環基は安定した構造をもたらす任意のヘテロ原子または炭素原子でそのペンダント基に結合していてもよい。本明細書に記載の二環式ヘテロ環基は、得られる化合物が安定しているならば、炭素上または窒素原子上で置換されてもよい。ヘテロシクリル中にあるSおよびO原子の総数が1を超える場合、その時にはこれらのヘテロ原子は互いに隣接していないことが好ましい。ヘテロシクリル中にあるSおよびO原子の総数は多くても1であることが好ましい。
【0034】
二環式ヘテロ環基の例は、限定されないが、キノリニル、イソキノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、1H-インダゾリル、ベンズイミダゾリル、1,2,3,4-テトラヒドロキノリニル、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリニル、5,6,7,8-テトラヒドロキノリニル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、クロマニル、1,2,3,4-テトラヒドロキノキサリニル、および1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリニルである。
【0035】
「ヘテロアリール」は、硫黄、酸素または窒素などの少なくとも1個のヘテロ原子の環員を含む、安定した単環式および多環式の芳香族炭化水素を意味するものとする。ヘテロアリール基には、限定されないが、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、フリル、キノリル、イソキノリル、チエニル、イミダゾリル、チアゾリル、インドリル、ピロリル、オキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンズチアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インダゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、イソチアゾリル、プリニル、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、インドリニル、ベンゾジオキソラニル、およびベンゾジオキサンが含まれる。ヘテロアリール基は置換されているか、されていないかである。窒素原子は置換されているか、いないかである(すなわち、NまたはNRであり、ここでRは、定義するとすれば、Hまたはもう一つ別の置換基である)。窒素および硫黄ヘテロ原子は、所望により、酸化されてもよい(すなわち、
【化10】
およびS(O)
pであり、ここでpは0、1または2である)。
【0036】
本明細書に言及される場合、「置換される」なる語は、少なくとも1つの水素原子が水素以外の基で置換されることを意味する:ただし、正常な原子価が維持され、置換が安定した化合物をもたらすことを条件とする。置換基がケト(すなわち、=O)である場合、その時には原子上の2個の水素が置き換えられる。ケト置換基は芳香族部分には存在しない。環系(例えば、炭素環式環系またはヘテロ環式環系)がカルボニル基または二重結合で置換されていそうである場合、カルボニル基または二重結合は環の一部である(すなわち、環内にある)ものとする。本明細書にて使用される場合、環二重結合は、2個の隣接する環原子の間で形成される二重結合(例えば、C=C、C=N、またはN=N)である。
【0037】
本発明の化合物上に窒素原子(例えば、アミン)がある場合には、これらは酸化剤(例えば、mCPBAおよび/または過酸化水素)で処理することによりN-オキシドに変換し、本発明の他の化合物を得ることができる。かくして、表示かつ請求される窒素原子は、表示される窒素と、そのN-オキシド
【化11】
誘導体の両方に及ぶと考えられる。
【0038】
任意の可変基が化合物のいずれかの構成要素または式中に複数回出現する場合、各出現でのその定義は他のすべての出現でのその定義から独立している。かくして、例えば、基が0~3個のR基で置換されていると示されている場合、その時には、該基は、所望により、3個までのR基で置換されてもよく、各出現で、RはRの定義から独立して選択される。また、置換基および/または可変基の組み合わせは、かかる組み合わせが安定した化合物をもたらす場合にのみ、許容される。
【0039】
置換基との結合が環での2個の原子を連結する結合を横切って示される場合、その時にはかかる置換基は環上のいずれの原子と結合していてもよい。置換基が、かかる置換基が所定の式の化合物の残りの部分に結合している原子を示すことなく、記載されている場合、その時にはかかる置換基はそのような置換基のいずれの原子を介して結合してもよい。置換基および/または可変基の組み合わせは、かかる組み合わせが安定した化合物をもたらす場合にのみ、許容される。
【0040】
本発明は化合物のすべての医薬的に許容される塩の形態を包含する。医薬的に許容される塩は、対イオンが化合物の生理学的活性または毒性に有意に寄与せず、それ自体が薬学的均等物として作用する、塩である。これらの塩は、一般的な有機技術に従い、市販の試薬を利用して製造され得る。アニオン型塩のいくつかの形態には、アセテート、アシストレート、ベシレート、ブロミド、クロリド、シトレート、フマレート、グルコウロネート、ヒドロブロミド、ヒドロクロリド、ヒドロヨーダイド、ヨーダイド、ラクテート、マレエート、メシレート、ニトレート、パモエート、ホスフェート、スクシネート、サルフェート、タートレート、トシレート。およびキシノホエートが含まれる。カチオン型塩のいくつかの形態には、アンモニウム、アルミニウム、バンザチン、ビスマス、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、リチウム、マグネシウム、メグルミン、4-フェニルシクロヘキシルアミン、ピペラジン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、および亜鉛が含まれる。
【0041】
明細書および添付した特許請求の範囲を通して、所定の化学式または化学名は、異性体が存在する場合には、そのようなすべての立体異性体および光学異性体ならびにラセミ体を包含する。特記されない限り、すべてのキラル(エナンチオマーおよびジアステレオマー)およびラセミ体は本発明の範囲内にある。エナンチオマーおよびジアステレオマーは立体異性体の例である。「エナンチオマー」なる語は、互いの鏡像であり、重なり合わせることのできない、一対の分子種の一方をいう。「ジアステレオマー」なる語は、鏡像でない、立体異性体をいう。「ラセミ体」または「ラセミ混合物」なる語は、等モル量の2種のエナンチオマー種からなる組成物をいい、ここで該組成物は光学活性を欠いている。
【0042】
本発明は、化合物の互変異性体、アトロプ異性体および回転異性体のすべてを包含する。
本発明の化合物を製造するのに使用されるすべての方法、およびその途中で製造される中間体は本発明の一部であると考えられる。
「R」および「S」なる記号は、キラル炭素原子の回りの置換基の配置を表す。異性体記述子「R」および「S」は、本明細書にて記載される場合に、コア分子に対する原子配置を示すために使用され、文献(IUPAC Recommendations 1996, Pure and Applied Chemistry, 68:2193-2222 (1996))にて定義されるように使用されるものとする。
【0043】
「キラル」なる語は、一の分子をその鏡像と重ね合わせることを不可能とする、該分子の構造的特徴をいう。「ホモキラル」なる語はエナンチオマー的に純粋である状態をいう。「光学活性」なる語は、ホモキラル分子またはキラル分子の非ラセミ混合物が偏光面を回転させる角度をいう。
【0044】
本発明は化合物中に存在する原子のすべての同位体を包含するものとする。同位体には、原子番号は同じであるが、質量数の異なる、それらの原子が含まれる。一例として、限定するものではないが、水素の同位体は重水素および三重水素を包含する。炭素の同位体は13Cおよび14Cを包含する。本発明の同位体標識された化合物は、一般に、当業者に公知の従来技術によって、または他の方法にて利用される非標識の試薬の代わりに同位体で適切に標識された試薬を用いる、本明細書に記載の方法と類似する方法によって製造され得る。かかる化合物は、例えば、生物学的活性を決定するにおいて標体または試薬として、種々の使用の可能性があり得る。安定した同位体の場合には、かかる化合物は、生物学的、薬理学的、または薬物動態学的特性を有利に修飾する可能性があり得る。
【0045】
明細書および添付した特許請求の範囲を通して、所定の化学式または化学名は、すべての立体異性体および光学異性体ならびにかかる異性体が存在するとした場合にそのラセミ体を包含するであろう。特記されない限り、すべてのキラル(エナンチオマーおよびジアステレオマー)およびラセミ形態は本発明の範囲内にある。C=C二重結合、C=N二重結合、環系等の多数の幾何異性体も化合物にて存在することができ、かかる安定した異性体はすべて本発明に含まれるものと考える。本発明の化合物のシス-およびトランス-(またはE-およびZ-)幾何異性体が記載されており、それは異性体の混合物として、または分離した異性体として単離され得る。本発明の化合物は光学活性な形態またはラセミ形態にて単離され得る。光学活性な形態はラセミ形態を分割することによって、または光学活性な出発材料から合成することによって製造され得る。本発明の化合物および本明細書にて製造される中間体を製造するのに使用されるすべての方法は、本発明の一部を形成すると考えられる。エナンチオマーまたはジアステレオマーの生成物が製造される場合、該生成物は、従来の方法によって、例えば、クロマトグラフィーまたは分別晶析によって分離されてもよい。方法の条件に応じて、本発明の最終生成物は、遊離(中性)または塩のいずれかの形態にて得られる。これらの最終生成物の遊離および塩の両方の形態は本発明の範囲内にある。望むならば、化合物の一の形態をもう一つ別の形態に変換できる。遊離塩基または酸は塩に変換でき;塩は遊離化合物またはもう一つ別の塩に変換でき;本発明の異性化合物の混合物は個々の異性体に分離できる。本発明の化合物、その遊離形態および塩は、水素原子が分子の他の部分に移され、分子の原子間の化学結合が結果として転位されている、複数の互変形態にて存在してもよい。互変異性形態はすべて、それらが存在する限り、本発明の範囲内に含まれると理解すべきである。
【0046】
「立体異性体」なる語は、構成が同じであるが、それらの原子の配置が空間にて異なる、異性体をいう。エナンチオマーおよびジアステレオマーは立体異性体の例である。「エナンチオマー」なる語は、相互に鏡像であり、重なり合わない一対の分子種の一方をいう。「ジアステレオマー」なる語は、鏡像でない、立体異性体をいう。「ラセミ体」または「ラセミ混合物」なる語は、2つのエナンチオマー種が等モル量で構成される組成物をいい、ここで該組成物は光学活性を欠く。
【0047】
生物学的方法
RXFP1 環状アデノシン一リン酸(cAMP)アッセイ
ヒト胚性腎細胞293(HEK293細胞)およびヒトRXFP1を安定して発現するHEK293細胞を、10%の適格性のあるFBS、および300μg/mlのヒグロマイシン(Life Technologies)を添加したMEM培地にて培養した。細胞を解離させ、アッセイ緩衝液に懸濁させた。アッセイ緩衝液は、20mM HEPES、0.05%BSA、および0.5mM IBMXを含有するHBSS緩衝液(カルシウムとマグネシウムとを含む)であった。細胞(ヒトRXFP1を安定して発現するHEK293細胞ではウェルに付き1500個の細胞とするのを除き、ウェルに付き3000個の細胞)を384ウェルのプロキシプレート(Proxiplates)(Perkin-Elmer)に加えた。細胞をDMSO中試験化合物(2%最終)を用いて0.010nMから50μMの範囲にて最終濃度で直ちに処理した。細胞を室温で30分間にわたってインキュベートした。細胞内cAMPのレベルを、HTRF HiRange cAMPアッセイ試薬キット(Cisbio)を用い、メーカーの指示に従って、測定した。クリプテート結合抗-cAMPおよびd2蛍光標識cAMPの溶液を、供給されている溶解緩衝液で別々に製造した。反応の終了後、細胞を等容量のd2-cAMP溶液および抗-cAMP溶液で溶解させた。室温で1時間にわたってインキュベートした後、Envision(Perkin-Elmer)を用い、400nmの励起波長と、590nmおよび665nmのデュアル発光波長とで時間分解蛍光強度を測定した。検量線は、2.7μM~0.1pMの範囲にある濃度で、外部cAMP標体を用い、665nmの発光の蛍光強度と、590nmの発光の蛍光強度との割合をcAMP濃度に対してプロットすることによって作成した。次に、cAMPレベルを化合物濃度に対してプロットして4パラメトリックロジスティック方程式に当て嵌めることにより、cAMP産生を阻害する化合物の効能と活性を測定した。
【0048】
下記に開示の実施例を、上記のヒトRXFP1(hRXFP1)HEK293 cAMPアッセイにて試験し、アゴニスト活性のあることが見出された。表Aには、実施例について測定されたhRXFP1 HEK293 cAMPアッセイにおけるEC50値を列挙する。
【0049】
【0050】
医薬組成物および使用方法
式(I)の化合物はRXFP1受容体アゴニストであり、心不全、線維化疾患、ならびに肺疾患(例えば、特発性肺線維症)、腎疾患(例えば、慢性腎疾患)、または肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝炎、および門脈圧亢進症)などの関連疾患等の医学的適応症の治療にて用途を見出し得る。
【0051】
本発明のもう一つ別の態様は、式(I)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物にある。
本発明のもう一つ別の態様は、リラキシン関連障害を治療するための式(I)の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物にある。
本発明のもう一つ別の態様は、効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、リラキシンと関連する疾患を治療する方法にある。
【0052】
本発明のもう一つ別の態様は、心血管疾患を治療する方法であって、それを必要とする患者に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法にある。
本発明のもう一つ別の態様は、心不全を治療する方法であって、それを必要とする患者に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法にある。
本発明のもう一つ別の態様は、線維症を治療する方法であって、それを必要とする患者に治療的に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法にある。
【0053】
本発明のもう一つ別の態様は、線維症に付随する疾患を治療する方法であって、それを必要とする患者に治療的に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法にある。
本発明のもう一つ別の態様は、腎不全を治療または予防する方法であって、それを必要とする患者に治療的に効果的な量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法にある。
本発明のもう一つ別の態様は、腎機能の改善、安定化または回復を必要とする患者にてその機能を改善、安定化または回復させる方法であって、治療的に効果的な量の式(I)の化合物を該患者に投与することを含む、方法にある。
【0054】
特記されない限り、以下の用語は記載の意味を有する。
「患者」または「対象」なる語は、この分野の当業者によって置換されるように、RXFP1アゴニストを用いる治療から利益を受け得る可能性のある、任意のヒトまたはヒト以外の生体をいう。例示的な対象には、心血管疾患の危険因子を有するいずれの年齢のヒトも含まれる。一般的な危険因子には、限定されないが、年齢、性別、体重、家族歴、睡眠時無呼吸、アルコールまたはタバコの使用、身体的不活動、不整脈、または黒色表皮腫、高血圧、脂質異常症、または多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などのインスリン耐性の徴候が挙げられる。
【0055】
「治療する」または「治療」は、この分野の当業者によって理解されるように、病態の治療に及び、以下:(a)病態を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること;(b)病態を緩和すること、すなわち、病態の退行を生じさせること;および/または(c)哺乳動物にて、特にかかる哺乳動物が病態に罹患する素因を有するが、まだそうだとは診断されていない時に、その疾患を発症するのを防止することを含む。
【0056】
「予防する」または「予防」は、この分野の当業者によって理解されるように、臨床的病態の発生する確率を減少させることを目的とした亜臨床的病態の予防的治療(すなわち、予防および/またはリスク軽減)に及ぶ。患者は、一般集団と比べて、臨床的病態に罹患するリスクを増大させるのが知られている因子に基づいて、予防的治療のために選択される。「予防」療法は、(a)一次予防および(b)二次予防に分けることができる。一次予防は、未だに臨床的病態を呈していない対象での治療と定義され、それに対して二次予防は、同じまたは類似する臨床的病態の二次的な発症を予防することとして定義される。「リスク軽減」または「リスクを減らす」は、臨床的病態の発症率を下げる療法に及ぶ。一次および二次予防療法は、それ自体が、リスク軽減の例である。
【0057】
「治療的に効果的な量」は、この分野の当業者によって理解されるように、障害を治療するために単独で、または他の薬剤と組み合わせて投与された場合に効果的である、本発明の化合物の量を含むものとする。組み合わせに適用される場合、該用語は、組み合わせて、連続して、または同時に投与されるいずれであっても、予防的または治療的効果をもたらす、活性成分を組み合わせた量をいう。
【0058】
「心血管系の障害」または「心血管障害」には、例えば、以下の障害:高血圧症(高い血圧)、末梢血管および心血管障害、冠状動脈性心疾患、安定および不安定狭心症、心臓発作、心筋不全、異常な心臓リズム(または不整脈)、持続的虚血性機能不全(「冬眠心筋」)、一時的虚血後機能不全(「気絶心筋」)、心不全、末梢血流の障害、急性冠状動脈症候群、心不全、心筋疾患(心筋症)、心筋梗塞および血管の病気(血管疾患)が含まれる。
【0059】
「心不全」には、心不全の急性および慢性の両方の症状、ならびに進行性心不全、急性心不全後の心臓-腎臓症候群、腎機能障害を伴う心不全、慢性心不全、駆出率が中程度の慢性心不全(HFmEF)、代償性心不全、非代償性心不全、右心不全、左心不全、グローバル不全、虚血性心筋症、拡張型心筋症、先天性心損傷に付随する心不全、心臓弁膜症、心臓弁膜症に付随する心不全、僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、三尖弁狭窄症、三尖弁閉鎖不全症、肺動脈弁狭窄症、兵動脈弁閉鎖不全症、複合型心臓弁障害に付随する心不全、心筋炎症(心筋炎)、慢性心筋炎、急性心筋炎、ウイルス性心筋炎、糖尿病性心不全、アルコール性心筋症、心臓貯蔵障害に付随する心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、急性期の悪化している心不全、駆出率が保たれた心不全(HFpEF)、駆出率が低下した心不全(HFrEF)、駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)、駆出率が保たれた慢性心不全(HFpEF)、心筋リモデリング後の狭窄症、高血圧、肺高血圧および肺動脈高血圧などのより特異的な型または関連する型の疾患が含まれる。
【0060】
「線維性障害」は、とりわけ、以下の疾患および障害:肝線維症、肝硬変、NASH、肺線維症、心筋線維症、心内膜線維症、腎症、糸球体腎炎、間質性腎線維症、糖尿病に起因する線維性障害、骨髄線維症および類似する線維性障害、強皮症モルフェア、ケロイド、肥厚性瘢痕(外科手術の後でも)、母斑、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症および結合組織の障害(例えば、サルコイドーシス)を含む、線維形成によって特徴付けられる疾患および障害を包含する。
リラキシン関連障害には、限定されないが、心臓血管系の障害および線維形成障害が含まれる。
【0061】
本発明の化合物は、任意の適切な手段、例えば、経口的には、錠剤、カプセル(その各々は、徐放性または時間放出性製剤を含む)、ピル、散剤、顆粒、エリキシル、チンキ、懸濁液(ナノ懸濁液、マイクロ懸濁液、噴霧乾燥分散液)、シロップ、およびエマルジョンなどの手段;舌下的手段;バッカル的手段;非経口的には、皮下、静脈内、筋肉内、または胸骨内注射または注入技法による(例えば、滅菌注射可能な水性または非水性溶液または懸濁液として)などの手段;経鼻的には、吸入スプレーによるなどの鼻腔膜への投与を含む手段;局所的には、クリームまたは軟膏の形態でのような手段;あるいは経直腸的には、坐剤の形態でのような手段によって投与され得る。該化合物は単独で投与され得るが、一般には、選択される投与経路および標準的な薬務を基礎として選択される医薬用担体と一緒に投与されるであろう。
【0062】
「医薬組成物」は、本発明の化合物と、少なくとも1つのさらなる医薬的に許容される担体とを組み合わせて含む、組成物を意味する。「医薬的に許容される担体」は、投与様式および剤形の特性に応じて、すなわち、希釈剤、保存剤、充填剤、流動調節剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、沈殿防止剤、甘未剤、香味剤、香料、抗菌剤、抗真菌剤、滑沢剤および分散剤などのアジュバント、賦形剤またはビヒクルを含め、生物学的に活性な薬剤を動物に、特に哺乳動物に送達するための当該分野にて一般的に許容される媒体をいう。
【0063】
医薬的に許容される担体は、当業者の視野の範囲に十分に入る多くの因子に従って処方される。これらの因子は、限定されないが、製剤化される活性剤の型および性質;薬剤含有の組成物が投与される予定の対象;組成物の投与を意図する経路;および標的とされる治療適応症を包含する。医薬的に許容される担体は、水性および非水性の両方の液体媒体、ならびに種々の固体および半固体の剤形を包含する。かかる担体は、活性剤に加えて、多くの異なる成分および添加剤を含めることができ、かかる付加的な成分は種々の理由で、例えば、当業者に周知の、活性剤、結合剤等の安定化を理由として製剤中に配合される。適切な医薬的に許容される担体、およびその選択に関与する因子の記載は、例えば、Allen, L.V.ら、Remington:The Science and Practice of Pharmacy (2 Volumes), 22nd Edition, Pharmaceutical Press (2012)などの様々な容易に入手可能な供給源に記載されている。
【0064】
本発明の化合物の投与レジメンは、もちろん、特定の薬剤の薬理学的特性、ならびにその投与様式および経路;レシピエントの種類、年齢、性別、健康状態、病状、および体重;徴候の性質および程度;同時治療の種類;治療の頻度;投与経路;患者の腎臓および肝臓の機能;および所望する効果などの既知の因子に応じて変化するであろう。
【0065】
一般的な指針によれば、各活性成分の一日当たりの経口投与量は、指示される効果を得るのに使用される場合、一日当たり約0.01~約5000mgの間の範囲に、好ましくは一日当たり約0.1~約1000mgの間の範囲に、最も好ましくは一日当たり約0.1~約250mgの間の範囲にあるであろう。静脈内投与では、最も好ましい用量は、定速点滴で約0.01~約10mg/kg/分の範囲にあるであろう。本発明の化合物は一日に1回の用量で投与されてもよく、あるいは一日の総投与量を一日2回、3回または4回の分割用量で投与されてもよい。
【0066】
化合物は、典型的には、意図する投与形態、例えば、経口用錠剤、カプセル、エリキシル、およびシロップに関して適切に選択され、従来の製薬慣行と一致する、適切な医薬用希釈剤、賦形剤、または担体(本明細書にて総称して医薬用担体と称される)と混和して投与される。
【0067】
投与に適した剤形(医薬組成物)は、投与単位当たり約1ミリグラム~約2000ミリグラムの活性成分を含有してもよい。これらの医薬組成物において、活性成分は、組成物の総重量に基づいて、通常、約0.1重量%-95重量%の量で配合されるであろう。経口投与用の典型的なカプセルは、本発明の少なくとも1つの化合物(250mg)、ラクトース(75mg)、およびステアリン酸マグネシウム(15mg)を含有する。混合物を60メッシュの篩に通し、No.1ゼラチンカプセルに充填する。典型的な注射製剤は、本発明の少なくとも1つの化合物(250mg)を無菌状態でバイアルに入れ、無菌状態で凍結乾燥させて密封することころにより製造される。使用時には、バイアルの中身を2mLの生理食塩水と混合し、注射可能な製剤を製造する。
【0068】
本発明の化合物は、抗アテローム性動脈硬化症剤、抗脂血症剤、抗糖尿病剤、抗高血糖剤、抗高インスリン血症剤、抗血栓剤、抗網膜症剤、抗神経障害剤、抗腎障害剤、抗虚血剤、抗高血圧剤、抗肥満剤、抗高脂血症剤、抗高トリグリセリド血症剤、抗高コレステロール血症剤、抗再狭窄剤、抗膵臓剤、脂質低下剤、食欲不振剤、記憶増強剤、抗認知症剤、認知促進剤、食欲抑制剤、心不全治療剤、末梢動脈疾患治療剤、悪性腫瘍治療剤、および抗炎症剤を含め、疾患または障害の治療に有用な他の適切な治療剤と組み合わせて利用され得る。
【0069】
さらなる治療剤には、ACE阻害剤、β-遮断剤、利尿剤、ミネラロコルチコイド受容体アンタゴニスト、リアノジン受容体モジュレーター、SERCA2aアクチベーター、レニン阻害剤、カルシウムチャネル遮断剤、アデノシンA1受容体アゴニスト、部分アデノシンA1受容体、ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼ阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、細胞シグナル伝達経路を選択するためにアゴニスト作用にバイアスを付したアンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、アンジオテンシンII受容体アンタゴニストとネプリライシン酵素阻害剤との組み合わせ、ネプリライシン酵素阻害剤、可溶性グアニル酸シクラーゼ活性化剤、ミオシンATPase活性化剤、rho-キナーゼ1阻害剤、rho-キナーゼ2阻害剤、アペリン受容体アゴニスト、ニトロキシル供与性化合物、カルシウム依存性キナーゼII阻害剤、抗線維形成剤、ガレクチン-3阻害剤、バソプレシン受容体アンタゴニスト、FPR2受容体モジュレーター、ナトリウム利尿ペプチド受容体アゴニスト、一過性受容体電位バニロイド-4チャネル遮断剤、抗不整脈剤、仮の(If )「ファニー電流」チャネル遮断剤、ニトレート、ジギタリス化合物、強心剤およびβ-受容体アゴニスト、細胞膜再封鎖剤、例えば、ポロキサマー188、抗高脂血症剤、血漿中HDL-上昇剤、抗高コレステロール血症剤、コレステロール生合成阻害剤(HMG CoA還元酵素阻害剤)、LXRアゴニスト、FXRアゴニスト、プロブコール、ラロキシフェン、ニコチン酸、ナイアシンアミド、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸封鎖剤、アニオン交換樹脂、四級アミン、コレスチルアミン、コレスチポール、低密度リポタンパク質受容体誘導剤、クロフィブラート、フェノフィブラート、ベザフィブラート、シプロフィブラート、ゲムフィブリゾール、ビタミンB6、ビタミンB12、抗酸化ビタミン、抗糖尿病剤、血小板凝集阻害剤、フィブリノゲン受容体アンタゴニスト、アスピリンおよびフィブリン酸誘導体、PCSK9阻害剤、アスピリン、およびP2Y12阻害剤、例えば、クロピドグレルが含まれてもよい。
【0070】
さらなる治療剤にはまた、ニンテダニブ、ピルフェニドン、LPA1アンタゴニスト、LPA1受容体アンタゴニスト、GLP1アナログ、トラロキヌカブ(IL-13、AstraZeneca製)、ビスモデギブ(ヘッジホッグアンタゴニスト、Roche製)、PRM-151(ペントラキシン-2、TGF ベータ-1、Promedior製)、SAR-156597(二特異性Mab IL-4&IL-13、Sanofi製)、シムツズマブ((抗リシルオキシダーゼ様2(抗LOXL2)抗体、Gilead製)、CKD-942、PTL-202(PDE阻害剤/ペントキシフィリン/NAC経口用制御放出剤、Pacific Ther.製)、オミパリシブ(経口用PI3K/mTOR阻害剤、GSK製)、IW-001(経口用溶液、ウシV型コラーゲン修飾、ImmuneWorks製)、STX-100(インテグリンアルファV/ベータ-6アント、Stromedix/Biogen製)、アクチムン(IFNガンマ)、PC-SOD(ミジスマーゼ;吸入剤、LTT Bio-Pharma/CKD Pharm製)、レブリキズマブ(抗-IL-13 SC ヒト化mAb、Roche製)、AQX-1125 (SHIP1アクチベータ、Aquinox製)、CC-539(JNK阻害剤、Celgene製)、FG-3019(FibroGen製)、SAR-100842(Sanofi製)、およびオベチコール酸(OCAまたはINT-747、Intercept製)を含めることもできる。
【0071】
上記の他の治療剤は、本発明の化合物と組み合わせて利用される場合に、例えば、上記した特許にあるように、Physicians’ Desk Referenceにて示されるそれらの量で、あるいはそうでなければ当業者によって決定される量で使用されてもよい。
【0072】
特に、単一の投与単位として提供される場合、組み合わせた活性成分の間で化学的相互作用のある可能性が存在する。このために、本発明の化合物と、別の治療剤とが単一の投与単位中にて組み合わされる場合には、その活性成分は単一の投与単位にて組み合わされるのであるが、活性成分間での物理的接触が最小となる(すなわち、縮小する)ようにそれらは製剤化される。例えば、活性成分の1つを腸溶コーティングしてもよい。活性成分の1つを腸溶コーティングすることで、組み合わされた活性成分の間の接触を最小とすることができるだけでなく、これらの成分の一方が胃で放出されずに、むしろ腸で放出されるように、これらの成分の一方を消化管で放出するように調節することも可能である。また、活性成分の一方を、消化管全体を介する徐放性に影響を及ぼし、さらに組み合わされた活性成分の間の物理的接触を最小とするのに供する、材料でコーティングしてもよい。さらには、徐放性成分を、この成分の放出が腸でのみ起こるように、さらに腸溶コーティングすることもできる。さらにもう一つ別の解決方法は、活性成分をさらに分離するために、一方の成分を徐放性および/または腸溶性ポリマーでコーティングし、他方の成分も低粘度のグレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)または当該分野にて公知の他の適切な材料などのポリマーでコーティングする、組み合わせの生成物に製剤化することにも関与するであろう。ポリマーコーティングは他の成分との相互作用に対してさらなる障壁を形成するのに供する。
【0073】
本発明の化合物はまた、RXFP1の関与する試験またはアッセイにおいて、標体または対照の化合物として、例えば、品質の標体または対照として有用である。かかる化合物は、例えば、RXFP1の関与する医薬の研究にて用いるための市販のキットにて提供されてもよい。例えば、本発明の化合物は、その既知の活性を未知の活性の化合物と比較するためにアッセイにて対照として使用され得る。これにより、該アッセイが適切に行われたことを、実験の研究者は確認でき、特に試験化合物が対照となる化合物の誘導体であった場合に、比較する根拠が提供される。新たなアッセイまたはプロトコルを開発する場合に、本発明に係る化合物を用いてその有効性を試験することができる。本発明の化合物はまた、RXFP1の関与する診断アッセイにて使用することもできる。
【0074】
本発明はまた製品をも包含する。本明細書にて使用される場合、製品はキットおよびパッケージを含むが、それらに限定されるものではない。本発明の製品は、(a)第1の容器;(b)第1の容器内に入れられた医薬組成物であって、本発明の化合物またはその医薬的に許容される塩の形態を含む第1の治療剤を含む、組成物;および(c)医薬組成物が脂質異常症およびその後遺症の治療に使用され得ることを記載する添付文書を含む。もう一つ別の実施態様において、添付文書には、医薬組成物が脂質異常症およびその後遺症の治療用の第2の治療剤と(上記されるように)組み合わせて使用され得ることが記載される。製品はさらに、(d)第2の容器であって、成分(a)および(b)を第2の容器内に入れ、成分(c)を第2の容器の内側または外側に置く、ところの第2の容器を含み得る。第1および第2の容器の内側に置かれるとは、各容器がその境界内にアイテムを保持することを意味する。
【0075】
第1の容器は医薬組成物を保持するために使用される容器である。この容器は、製造し、貯蔵し、および/または個別に/大量に販売するためとすることができる。第1の容器は、ボトル、ジャー、バイアル、フラスコ、シリンジ、(例えば、クリーム製剤用の)チューブ、あるいは医薬製品を製造、保持、貯蔵または流通させるのに使用される他の任意の容器にも及ぶものとする。
【0076】
第2の容器は、第1の容器を保持し、所望により添付文書を保持するために使用される容器である。第2の容器の例として、限定されないが、箱(例えば、段ボール箱またはプラスチック箱)、木枠、カートン、袋(例えば、紙袋またはプラスチック袋)、ポーチおよびサックが挙げられる。添付文書は、テープ、接着剤、ステープル、またはもう一つ別の取り付け手段を介して第1の容器の外側に物理的に取り付けることができ、あるいは何らかの物理的手段で第1の容器に取り付けることもなく第2の容器の内側に留めることもできる。あるいはまた、添付文書を第2の容器の外側に位置付ける。第2の容器の外側に位置付けられる場合、その添付文書はテープ、接着剤、ステープル、またはもう一つ別の取り付け手段を介して物理的に取り付けられるのが好ましい。あるいはまた、添付文書を、物理的に取り付けられることなく、第2の容器の外側に隣接させることも、外側と接触させることもできる。
【0077】
添付文書は、第1の容器の中に位置付けられる医薬組成物に関する情報を記載するラベル、タグ、マーカー等である。記載される情報は、通常、製品を販売する予定の地域を統括する規制機関(例えば、合衆国食品医薬品局)のよって決定されるであろう。添付文書には、医薬組成物が承認されている適応症を具体的に記載するのが好ましい。添付文書は任意の材料で製造されてもよく、その材料で人はその中にまたはその上に含まれる情報を読むことができる。好ましくは、添付文書は、その上に所望の情報が形成されている(例えば、印刷または塗布されている)印刷可能な材料(例えば、紙、プラスチック、段ボール、ホイール、接着剤を裏打ちした紙またはプラスチック等)である。
【0078】
化学的方法
本発明の化合物は、以下のスキームに記載の方法、および具体的な実施態様のセクションに記載の方法を含む、当該分野にて公知の種々の方法によって製造され得る。合成スキームにて示される構造物の番号および可変基の番号は、特許請求の範囲または明細書の残りの部分での構造物または可変基の番号とは異なっており、混同されるべきではない。スキーム中の可変基はいくつかの本発明の化合物をどのようにして製造するかを説明することだけを意味するものである。
【0079】
この分野における任意の合成経路を計画するにおいてもう一つ別の主として考慮すべきことは、本発明に記載の化合物にて存在する反応性官能基の保護に使用される保護基の賢明な選択であることも理解されるであろう。当業者にとって多数の選択肢を記載する権威ある著書は、Greene, T.W.ら、Protecting Groups in Organic Synthesis, 4th Edition, Wiley (2007))である。
【0080】
略語は、次のように:1回については「1x」と、2回については「2x」と、3回については「3x」と、摂氏については「℃」と、水性について「aq」と、当量については「eq」または「equiv」と、グラムについては「g」と、ミリグラムについては「mg」と、リットルについては「L」と、ミリリットルについては「mL」と、マイクロリットルについては「μL」と、規定については「N」と、モルについては「M」と、ナノモルについては「nM」と、ピコモルについては「pM」と、モルについては「mol」と、ミリモルについては「mmol」と、分については「min」と、時間については「h」と、室温については「rt」と、保持時間については「RT」と、大気については「atm」と、ポンド毎平方インチについては「psi」と、濃縮については「conc.」と、水性について「aq」と、飽和については「sat.」と、分子量については「MW」と、質量分析については「MS」または「Mass Spec」と、電子噴射イコンか質量分析については「ESI」と、液体クロマトグラフィー-質量分析については「LC-MS」と、高圧液体クロマトグラフィーについては「HPLC」と、逆相HPLCについては「RP HPLC」と、核磁気共鳴分光法については「NMR」と、超臨界流体クロマトグラフィーについては「SFC」と、プロトンについては「1H」と、デルタについては「δ」と、一重項については「s」と、二重項については「d」と、三重項については「t」と、四重項については「q」と、多重項については「m」と、「広範」については「br」と、ヘルツについては「Hz」と、メガヘルツについては「MHz」と、および「α」、「β」、「R」、「S」、「E」、および「Z」は当業者に馴染みのある立体化学的呼称である。
【0081】
【0082】
例示した実施例では、特記されない限り、以下の方法を用いた。中間体および最終生成物の精製は、順相クロマトグラフィーまたは逆相クロマトグラフィーのいずれかを介して実施された。順相クロマトグラフィーは、特記されない限り、ヘキサンと酢酸エチルの勾配、またはDCMとMeOHのいずれかの勾配で溶出する、SiO2を予め充填したカートリッジを用いて実施された。逆相分取性HPLCはC18カラムを用いてUV220nmで実施するか、あるいは溶媒A(90%水、10%MeOH、0.1%TFA)および溶媒B(10%水、90%MeOH、0.1%TFA)の勾配で、または溶媒A(95%水、5%ACN、0.1%TFA)および溶媒B(5%水、95%ACN、0.1%TFA)の勾配で、または溶媒A(95%水、2%ACN、0.1%HCOOH)および溶媒B(98%ACN、2%水、0.1%HCOOH)の勾配で、または溶媒A(95%水、5%ACN、10mM NH4OAc)および溶媒B(98%ACN、2%水、10mM NH4OAc)の勾配で、溶媒A(98%水、2%ACN、0.1%NH4OH)および溶媒B(98%ACN、2%水、0.1%NH4OH)の勾配で溶出する分取性LCMS検出を行った。
【0083】
実施例の特性評価に利用したLC/MS法を以下に列挙する。
分析性HPLC方法A:カラム:ウォーターズ・エックスブリッジ(Waters XBridge)C18、2.1mm x 50mm、1.7μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+10mM酢酸アンモニウム;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+10mM酢酸アンモニウム;温度:50℃;勾配:3分間にわたって0%Bから100%Bとし、ついで100%Bで0.50分間保持する;流速:1mL/分;検出:MSおよびUV(220nm)
【0084】
分析性HPLC方法B条件:カラム:ウォーターズ・エックスブリッジC18、2.1mm x 50mm、1.7μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+0.1%トリフルオロ酢酸;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+0.1%トリフルオロ酢酸;温度:50℃;勾配:3分間にわたって0%Bから100%Bとし、ついで100%Bで0.50分間保持する;流速:1mL/分;検出:MSおよびUV(220nm)
【0085】
分析性HPLC方法C条件:カラム:サンファイア(Sunfire)C18、3.0 x 150mm、3.5μm粒子、移動相A:5:95 アセトニトリル:水+0.05%トリフルオロ酢酸;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+0.05%トリフルオロ酢酸;勾配:12分間にわたって0%Bから100%Bとする;流速:0.5mL/分;検出:UV(220nmおよび254nm)
【0086】
実施例の特性評価にて利用するNMR
1H NMRスペクトルは、以下の周波数:1H NMR:400MHz(ブルカー(Bruker))または500MHz(ブルカー)で作動する、ブルカーフーリエ変換スペクトロメーターを用いて得られた。スペクトルデータは、フォーマット:化学シフト(多重度、カップリング定数、水素の数)で報告される。化学シフトは、テトラメチルシランの内部標体(δ単位、テトラメチルシラン=0ppm)のダウンフィールドppmで特定されるか、および/または1H NMRにおいて、DMSO-d6では2.51ppmで、CD3ODでは3.30ppmで、CD3CNでは1.94ppmで、およびCDCl3では7.24ppmで現れる、溶媒ピークを基準とする。
【0087】
スキームIは、本発明の化合物が、既知の化合物であって、その合成がOrg. Lett. 2012, 14, 4, 1110-1113において説明されている、ラセミ中間体I-1からどのように製造され得るかを示す。I-1にあるベンジルエステルを水素化分解に付し、メチルエステル/カルボン酸I-2を得る。I-3にあるアミンは、クルチウス転位によってTeocカルバメートとして導入される。残りのエステルを加水分解に付し、アミンまたはアニリンとカップリングさせ、I-4を得る。ジオキサン中HClまたはCH2Cl2中TFAなどの酸性条件下でカルバメートを切断し、HATUまたはBOPなどの標準的アミンカップリング試薬を用いて、種々のカルボン酸(I-5)とのカップリングに適するアミンを得、実施例1を得る。
【0088】
【0089】
スキームIIはマンデル酸をベースとするビアリールアナログに至る一般的経路を説明する。市販のII-1をt-ブチルエステルII-2に変換し、次に臭素化してII-3を得た。該ブロミドを酢酸との置換に付して中間体II-4を得、次にそれを鈴木反応に供して中間体8を提供した(アセテートの切断はビアリール形成と同時になされた)。得られた酸を、スキームIにて記載されるように、アミン中間体と直接的にカップリングさせ、II-6を得た。II-6にあるヒドロキシル基は、適切なイソシアネートまたは2工程のカルバメート形成プロトコル(例えば、ニトロフェニルクロロホルメート、TEA、つづいてアミン)のいずれかでエラボレートされ得た。次にt-ブチルエステルを切断して(TFA/DCM)、本発明の化合物を得る。
【0090】
【0091】
スキームIIIは置換イソキサゾリンアナログを生成する経路を説明する。III-1をNaOClで、つづいて置換オレフィンで処理し、その後でそのエステルをケン化に付して中間体III-2を得た。これらの中間体をスキームIに概説された方法に従ってアミンとカップリングさせ、本発明の化合物を得た。
【0092】
【0093】
スキームIVは、本発明のベンゾ縮合した実施例のコア構造を作製するための、光化学[2+2]反応を説明する。インデンIV-1とモノベンジルマレエートIV-2との、(Ir[dF(CF3)ppy]2(dtbpy))PF6などの適切な光触媒の存在下、青色または紫色LED光に暴露することで反応させて[2+2]アダクツIV-3およびIV-4(エンド環化付加反応によってもたらされるベンゾ縮合位置異性体)、IV-5およびIV-6(エキソ環化付加反応によってもたらされるベンゾ縮合位置異性体)、およびIV-7、IV-8、IV-9、およびIV-10(IV-3~IV-6のトランス異性体)を得る。
【0094】
【0095】
スキームVは、スキームIV中の中間体、限定されないが、一例としてIV-3を用いてベンゾ縮合アナログの合成を説明する。IV-3をクルチウス転位に供し、V-1を得ることができる。残りのベンジルエステルを水素化分解に、そして適切なアミンV-2との標準的アミンカップリング条件に付し、V-3を得る。V-3にあるカルバメートをジオキサン中HClまたはCH2Cl2中TFAなどの酸性条件下で切断して、種々のカルボン酸(V-4)とのカップリングに適するアミンを得、HATUまたはBOPなどの標準的なアミンカップリング試薬を用いて一般構造式のV-5の化合物を得る。
【0096】
【0097】
中間体1- シス-6-ベンジル 7-メチル-ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6,7-ジカルボキシレート
【化17】
【0098】
中間体1は、Org. Lett. 2012, 14, 4, 1110-1113において説明される方法を用いることでラセミ体として製造された。
【0099】
中間体2- 5-(3-ヒドロキシプロパ-1-イン-1-イル)-2-メトキシ安息香酸
【化18】
【0100】
中間体2A- メチル 5-(3-ヒドロキシプロパ-1-イン-1-イル)-2-メトキシベンゾエートの製造
TEA(31mL)中にてスラリーにしたメチル 5-ブロモ-2-メトキシベンゾエート(3.0g、12ミリモル)およびプロパルギルアルコール(1.5mL、25ミリモル)に、Pd(PPh3)4(0.28g、0.25ミリモル)およびCuI(0.023g、0.12ミリモル)を添加した。容器をN2を用いてかき混ぜ、80℃で16時間にわたって加熱した。反応混合物を水とEtOAcとの間に分配し、有機層を分離し、Na2SO4上で乾燥させた。有機層をデカントし、真空下で濃縮し、残渣を80gISCOカラムにロードし、ヘキサン中0%から100%EtOAcの線状勾配で溶出し、メチル 5-(3-ヒドロキシプロパ-1-イン-1-イル)-2-メトキシベンゾエート(1.3g、6.1ミリモル、収率50%)を得た。1H NMR(500MHz、CDCl3)δ 7.92(d,J=2.1Hz,1H)、7.56(dd,J=8.7,2.3Hz,1H)、6.95(d,J=8.7Hz,1H)、4.50(d,J=6.1Hz, 2H)、3.94(s,3H)、3.91(s,3H)、1.64(t,J=6.1Hz,1H);MS(ESI)m/z 221.1(M+H)+
【0101】
中間体2:2ドラムの反応バイアルに、中間体2A(50mg、0.23ミリモル)、THF(1mL)、水(0.5mL)、およびLiOH一水和物(35mg、0.85ミリモル)を添加した。反応混合物を23℃で1時間にわたって攪拌し、EtOAc(10mL)で希釈し、1.5ミリモルのHClを含有する飽和NH4Clで洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮し、中間体2を得、それをさらに精製することなく用いた(47mg、0.23ミリモル)。LC-MS RT:0.76分;MS(ESI)m/z=206.8(M+H)+
【0102】
中間体3(キラルピーク-1)、中間体4(キラルピーク-2):2-メトキシ-5-(3a,4,6,6a-テトラヒドロフロ[3,4-d]イソキサゾール-3-イル)安息香酸:
【化19】
【0103】
中間体3A:メチル (E)-5-((ヒドロキシイミノ)メチル)-2-メトキシベンゾエートの製造:商業的に入手可能なメチル 5-ホルミル-2-メトキシベンゾエート(1.16g、6.00ミリモル)をDCM(5mL)に溶かし、この溶液にHONH2・HCl(415mg、6.00ミリモル)を、つづいてTEA(1mL)を添加し、反応混合物を室温で20時間にわたって攪拌した。反応混合物を水(100mL)で希釈し、EtOAc(2x25mL)で抽出した。有機層を合わせ、MgSO4上で乾燥させ、真空下で濃縮乾固させ、中間体3A(1.2g、95%)を白色固体として得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ 8.13(s,1H)、8.03(d,J=2.4Hz,1H)、7.78-7.67(m,1H)、7.03(d,J=8.8Hz,1H)、3.97(s,3H)、3.93(s,3H);LCMS(ESI)m/z=210.1(M+H)+
【0104】
中間体3B:メチル (Z)-5-(クロロ(ヒドロキシイミノ)メチル)-2-メトキシベンゾエートの製造:中間体3A(23g、0.10モル)をDMF(100mL)に溶かし、この溶液にNCS(15g、0.10モル)を加え、反応混合物を室温で24時間にわたって攪拌した。反応物を水(300mL)でクエンチさせ、この時点で固体が形成され、それをろ過で集めた。次にろ過した固体を真空下で乾燥させ、中間体3B(23g、収率86%)を淡黄色の固体として得た。LCMS(ESI)m/z:=244.1(M+H)+
【0105】
中間体3C:メチル 2-メトキシ-5-(3a,4,6,6a-テトラヒドロフロ[3,4-d]イソキサゾール-3-イル)ベンゾエートの製造:中間体3B(0.4g、2ミリモル)および2,5-ジヒドロフラン(1.2g、17ミリモル)のDCM(10mL)中混合物に、TEA(0.7mL、5.2ミリモル)を添加し、反応混合物を24時間にわたって攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を40g ISCOカラムにロードし、CH2Cl2中0%から10%MeOHの線状勾配で溶出し、中間体3C(0.40g、収率83%)を得た。1H NMR(500MHz、CDCl3)δ 7.98(d,J=2.3Hz,1H)、7.86(dd,J=8.8、2.4Hz,1H)、7.04(d,J=8.7Hz,1H)、5.38(dd,J=9.2、3.9Hz,1H)、4.34-4.26(m,2H)、4.20-4.09(m,1H)、3.96(s,3H)、3.91(s,3H)、3.83-3.76(m,1H)、2.92-2.70(m,1H);LCMS(ESI)m/z=278.3(M+H)+
【0106】
キラル中間体3Dおよび3E:以下のキラル中間体は、中間体3Cから次の分取性クロマトグラフィー方法(装置:ベルガー製(Berger)MG II カラム:キラルパック(Chiralpak)IA、21x250mm、5ミクロン、移動相:20%MeOH/80%CO2、フロー条件:45mL/分、150バール、40℃、検出器波長:220nm)によってキラルSFCを用いて分離され、分析性方法(装置:島津製(Shimadzu)ネキセラ(Nexera)SFC、カラム:キラルパックIA、4.6x100mm、3ミクロン、移動相:20%MeOH/80%CO2、フロー条件:2mL/分、150バール、40℃、検出器波長:220nm)に付し、キラル中間体3D(ピーク-1、RT=3.80分、>99%ee)およびキラル中間体3E(ピーク-2、RT=7.43分、>98%ee)を得た。
【0107】
中間体3:2-メトキシ-5-(3a,4,6,6a-テトラヒドロフロ[3,4-d]イソキサゾール-3-イル)安息香酸の製造:中間体3D(75mg、0.30ミリモル)のTHF(3mL)中溶液に、MeOH(0.6mL)を、つづいてLiOH(2M、0.4mL、0.8ミリモル)を添加した。4時間後、反応混合物を水(20mL)で希釈し、該溶液をHCl(1N)でpH=4~5とした。反応混合物をEtOAc(2x25mL)で抽出し、有機層を合わせ、乾燥(MgSO4)させ、減圧下で濃縮乾固させて中間体3(71mg、収率100%)を得た。1H NMR(400MHz、CD3OD)δ 7.78(d,J=2.3Hz,1H)、7.71(dd,J=8.7、2.3Hz,1H)、7.09(d,J=8.8Hz,1H)、5.33(dd,J=9.2、3.6Hz,1H)、4.44(ddd,J=8.9、7.2、1.3Hz,1H)、4.18(d,J=10.6Hz,1H)、4.08(dd,J=9.4、1.0Hz,1H)、3.91-3.88(m,3H)、3.86(dd,J=9.4、6.9Hz,1H)、3.73(dd,J=10.7、3.7Hz,1H);LCMS(ESI)m/z:=264.1(M+H)+
【0108】
中間体4:2-メトキシ-5-(3a,4,6,6a-テトラヒドロフロ[3,4-d]イソキサゾール-3-イル)安息香酸の製造:中間体3E(52mg、0.2ミリモル、収率100%)は、中間体3と同様の方法にて製造されるが、中間体3Dの代わりに中間体3Eを用いた。1H NMR(500MHz、CD3OD)δ 8.10(d,J=2.4Hz,1H)、7.87(dd,J=8.8、2.4Hz,1H)、7.23(d,J=8.7Hz,1H)、5.38(dd,J=9.2、3.7Hz,1H)、4.47(ddd,J=8.9、7.2、1.2Hz,1H)、4.22(d,J=10.7Hz,1H)、4.12(q,J=7.1Hz,1H)、4.07(dd,J=9.5、0.9Hz,1H)、3.97(s,3H)、3.88(dd,J=9.5、6.9Hz,1H)、3.76(dd,J=10.8、3.6Hz,1H);LCMS(ESI)m/z:=264.1(M+H)+
【0109】
中間体5C:5-(5-ヒドロキシ-3a,5,6,6a-テトラヒドロ-4H-シクロペンタ[d]イソキサゾール-3-イル)-2-メトキシ安息香酸
【化20】
【0110】
中間体5は、シクロペンタ-3-エン-1-イルメタノールの代わりにシクロペンタ-3-エン-1-オールを用い、つづいて中間体3に記載されるようにエステル加水分解に付すことによって、中間体3Cと同様の方法にて、4種の異性体の混合物として製造され、中間体5のジアステレオマー混合物を得た。1H NMR(600MHz、CDCl3)δ 8.04(d,J=2.3Hz,1H)、7.85(dd,J=8.8、2.3Hz,1H)、7.03(d,J=8.8Hz,1H)、5.30(ddd,J=9.4、6.2、2.9Hz,1H)、4.50(quin,J=5.9Hz,1H)、4.19(td,J=9.3、4.7Hz,1H)、3.92(s,3H)、2.33-2.27(m,1H)、2.18-2.06(m,3H);MS(ESI)m/z=292.0(M+H)+
【0111】
中間体5の異性体は、キラルSFCによって、以下の分取性クロマトグラフィー方法:装置:ベルガー製SFC(LVL-L4021 Lab)カラム:IC 25x3cm ID、5μm、温度:40℃、流速:85mL/分、移動相:12分間にわたって75/25 CO2/MeOHから45%MeOHとする勾配;検出器波長:235nm、注入容量:1000μLに付して分離され、中間体5A(ピーク1、>99%ee、分析性RT=8.80分)、中間体5B(ピーク2、>95%ee、分析性RT=9.86分)、中間体5C(ピーク3、>99%ee、分析性RT=13.53分)、中間体5D(ピーク4、>99%ee、分析性RT=16.67分)を得た。分析性クロマトグラフィー条件:装置:アジレント(Agilent)SFC(LVL-L4021 Lab)、カラム:IC 250x4.6mmID、5μm、温度:外界温度、流速:2.0mL/分、移動相:12分間の75/25 CO2/MeOHから45%MeOHへの勾配に付した。ピーク1-4の分析データ:1H NMR(600MHz、CD3OD)δ 8.07(d,J=2.2Hz,1H)、7.82(dd,J=8.7、2.1Hz,1H)、7.18(d,J=8.8Hz,1H)、5.21(ddd,J=9.2、6.2、2.5Hz,1H)、4.27(m,1H)、4.24(td,J=9.4、4.0Hz,1H)、3.94(s,3H)、2.16(m,1H)、2.05(m,1H)、2.00(m,1H)、1.99(m,1H);13C NMR(151MHz、CD3OD)δ 169.5、161.6、160.0、133.2、131.4、122.6(2C)、113.9、87.3、72.7、56.8、51.5、44.1、40.3
【0112】
中間体6:(S)-5’-(1-((シクロブチルカルバモイル)オキシ)-2,2,2-トリフルオロエチル)-2’-フルオロ-4-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボン酸
【化21】
【0113】
中間体6A:1-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-2,2,2-トリフルオロエタン-1-オールの製造
3-ブロモ-4-フルオロベンズアルデヒド(0.2g、1.2ミリモル)をDMF(3.5mL)に溶かし、この溶液に(トリフルオロメチル)トリメチルシラン(0.30mL、2.3ミリモル)、およびK2CO3(8.0mg、58マイクロモル)を加えた。反応混合物を室温にて60分間にわたって攪拌し、HCl(2N、3mL)を添加した。室温でさらに1時間にわたって攪拌した後、反応混合物をEtOAc(15mL)で希釈し、該溶液を飽和NH4Cl(25mL)を用いて洗浄した。水相をEtOAc(2x10mL)で抽出し、乾燥(Na2SO4)させ、減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付して精製し、中間体6A(0.2g、0.8ミリモル、収率65%)を得た。1H NMR(500MHz、CDCl3)δ 7.74(dd,J=6.5、2.1Hz,1H)、7.43(ddd,J=8.4、4.8、2.2Hz,1H)、7.19(t,J=8.4Hz,1H)、5.11-4.98(m,1H)、2.69(d,J=4.4Hz,1H)
【0114】
中間体6B:(S)-1-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-2,2,2-トリフルオロエタン-1-オールの製造
(S)-2-フェニル-2,3-ジヒドロベンゾ[d]イミダゾ[2,1-b]チアゾール(0.4g、1.6ミリモル)および中間体6A(11g、40ミリモル)をジイソプロピルエーテル(134mL)に溶かし、0℃ないし-20℃の間で冷却した。次に該溶液をイソブチル無水物(isobutyl anhydride)(4ml、24ミリモル)で処理し、冷凍庫(-20℃で18時間)に移した。反応物をMeOH(1mL)を用いてリン酸緩衝液でクエンチさせ、得られた溶液をEtOAc(2x25mL)で抽出し、有機抽出液を乾燥(MgSO4)させ、減圧下で残渣にまで濃縮し、それを溶出液としてヘキサン/EtOAcを用いる順相クロマトグラフィーに付して精製し、中間体6B(5.0g、18ミリモル、収率44%、>99%ee)を得た。1H NMR(500MHz、CDCl3)δ 7.74(dd,J=6.3、1.9Hz,1H)、7.50-7.39(m,1H)、7.18(t,J=8.4Hz,1H)、6.71-5.53(m,1H)、5.03(q,J=6.5Hz,1H)
【0115】
中間体6C:(S)-1-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-2,2,2-トリフルオロエチル シクロブチルカルバメートの製造
中間体6B(0.30g、1.1ミリモル)、ピリジン(0.40mL、5.5ミリモル)、およびDMAP(13mg、0.10ミリモル)をDCM(20mL)に溶かし、4-ニトロフェニルカルボノクロリデート(1.0g、5.5ミリモル)を添加した。反応混合物を1時間にわたって攪拌し、つづいてシクロブタンアミン(0.78g、11ミリモル)を添加した。2時間後、反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を溶出液としてヘキサン/EtOAcを用いる順相クロマトグラフィーに付して精製し、中間体6C(0.35g、0.90ミリモル、収率85%)を白色固体として得た。LCMS(ESI)m/z 369.7-371.7(M+H)+
【0116】
中間体6:(S)-5’-(1-((シクロブチルカルバモイル)オキシ)-2,2,2-トリフルオロエチル)-2’-フルオロ-4-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボン酸の製造
密封されるバイアルにて、中間体6C(0.3g、0.8ミリモル)、5-ボロノ-2-メトキシ安息香酸(0.2g、1ミリモル)、PdCl2(dppf)-DCM(98mg、0.12ミリモル)、Na2CO3(0.3g、3.2ミリモル)、THF(12mL)およびH2O(2.9mL)を添加した。反応混合物にN2を10分間にわたって通気することで脱気処理に付し、密封し、65℃で3時間にわたって攪拌した。室温に冷却した後、反応物をHCl(1N)でクエンチさせ、EtOAc(2x25mL)で抽出した。有機抽出液を合わせ、乾燥(Na2SO4)させ、減圧下で濃縮し、逆相クロマトグラフィーに付して精製し、中間体6(72mg、0.16ミリモル、収率20%)を得た。LCMS(ESI)m/z 442.0(M+H)+
【0117】
中間体8:5’-(2-(tert-ブトキシ)-1-ヒドロキシ-2-オキソエチル)-2’-フルオロ-4-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボン酸
【化22】
【0118】
中間体8A: 中間体8Aは、反応温度を80℃で12時間にわたって維持することを除き、類似するサブストレートについて既知の条件(Ludwig,J.;Lehr, M. Syn. Comm. 2004, 34, 3691-3695)を利用して製造された。1H NMR(500MHz、CDCl3)δ 7.49(dd,J=6.6、2.2Hz,1H)、7.20(ddd,J=8.3、4.6、2.2Hz,1H)、7.13-7.03(m,1H)、3.49(s,2H)、1.46(s,9H)
【0119】
中間体8B:中間体8A(266mg、0.920ミリモル)を充填した20mLの反応バイアルに、NBS(196mg、1.10ミリモル)、四塩化炭素(10mL)、およびAIBN(15mg、0.090ミリモル)を添加した。該溶液を77℃で3時間にわたって攪拌し、室温にまで冷却させ、減圧下で濃縮し、順相シリカゲルクロマトグラフィーに付して精製し、中間体8B(308mg、0.840ミリモル、収率91.0%)を得た。
【0120】
中間体8C:中間体8Bを充填した2ドラムのバイアルに、酢酸エチル(2mL)、トリエチルアミン(0.27mL、2.0ミリモル)、および酢酸(0.1mL、2ミリモル)を添加した。反応混合物を80℃で12時間にわたって攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、順相シリカゲルクロマトグラフィーに付して精製し、中間体8Cを得た。1H NMR(500MHz、CDCl3)δ 7.70(dd,J=6.6、2.2Hz,1H)、7.41(ddd,J=8.4、4.7、2.1Hz,1H)、7.15(t,J=8.4Hz,1H)、5.77(s,1H)、2.22(s,3H)、1.43(s,9H)
【0121】
中間体8:中間体8C(51mg、0.15ミリモル)を含有する反応容器に、5-ボロノ-2-メトキシ安息香酸(37mg、0.19ミリモル)、PdCl2(dppf)-CH2Cl2アダクツ(24mg、0.030ミリモル)、およびNa2CO3(93mg、0.88ミリモル)を添加した。反応混合物に窒素を3分間にわたって通気し、密封し、65℃で2時間にわたって攪拌した。23℃まで冷却させた後、反応混合物をEtOAcで抽出した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーに付して精製して中間体8を生成した。材料の半分をO-アセテート(85mg、0.60ミリモル、34%)として単離し;1H NMR(500MHz、CDCl3)δ 8.43-8.36(m,1H)、7.81(dt,J=8.7、2.0Hz,1H)、7.56(dd,J=7.3、2.3Hz,1H)、7.45(ddd,J=8.5、4.6、2.3Hz,1H)、7.23-7.16(m,2H)、5.84(s,1H)、4.17(s,3H)、2.23(s,3H)、1.45(s,9H);一方で、他の半分を遊離アルコール(70mg、0.19ミリモル、31%)として単離した;1H NMR(500MHz、CDCl3)δ 8.40(d,J=2.2Hz,1H)、7.82(dt,J=8.6、2.2Hz,1H)、7.54(dd,J=7.4、2.5Hz,1H)、7.41(ddd,J=8.4、4.8、2.2Hz,1H)、7.19-7.14(m,2H)、5.09(s,1H)、4.16(s,3H)、1.47(s,9H)。ラセミ中間体8をキラルSFCを用いて個々のエナンチオマーに分離した。分取性クロマトグラフィー条件:装置:ベルガー製MG II;カラム:キラルパックID、21x250mm、5ミクロン;移動相:25%IPA/75%CO2;フロー条件;45mL/分、120バール、40℃;検出器波長:220nm;注入の詳細:IPA中約20mg/mLを0.36mLで8回注入;分析性クロマトグラフィー条件:装置:ウォーターズ(Waters)UPC2分析SFC;カラム:キラルパックID 4.6x100mm、3ミクロン;移動相:25%IPA/75%CO2;フロー条件:2mL/分、150バール、40℃;検出器波長:220nm;ピーク1、RT=3.89分、>99.5%ee;ピーク2、RT=5.44分、>99.5%ee;中間体8-2はピーク#2で集められた(収率31%)。
【0122】
中間体9:5-(5-(ヒドロキシメチル)-4,5-ジヒドロイソキサゾール-3-イル)-2-メトキシ安息香酸
【化23】
【0123】
中間体9A:メチル (E)-5-((ヒドロキシイミノ)メチル)-2-メトキシベンゾエートの製造
商業的に入手可能なメチル 5-ホルミル-2-メトキシベンゾエート(1.16g、5.97ミリモル)をCH2Cl2(5mL)に溶かし、この溶液にヒドロキシルアミン・HCl(415mg、5.97ミリモル)を、つづいてEt3N(1mL)を添加し、反応混合物を室温で18時間にわたって攪拌した。水(100mL)を加え、該溶液をEtOAc(2x25mL)で抽出し、有機部分を合わせて乾燥(MgSO4)させ、ろ過し、減圧下で蒸発させ、中間体9A(1.2g、収率95%)を生成した。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ 8.13(s,1H)、8.03(d,J=2.4Hz,1H)、7.78-7.67(m,1H)、7.03(d,J=8.8Hz,1H)、3.97(s,3H)、3.93(s,3H);MS(ESI)m/z=210.1(M+H)+
【0124】
中間体9B:
メチル 5-(5-(ヒドロキシメチル)-4,5-ジヒドロイソキサゾール-3-イル)-2-メトキシベンゾエートの製造
中間体9A(55mg、0.26ミリモル)をDMF(2mL)に溶かし、この溶液にNCS(35mg、0.26ミリモル)を加え、反応混合物を室温で4時間にわたって攪拌した。水(10mL)を添加し、該溶液をEtOAc(2x25mL)で抽出し、有機部分を合わせ、乾燥(MgSO4)させ、ろ過し、減圧下で濃縮し、残渣を直ちにDCM(5mL)に再び溶かした。アリルアルコール(61mg、1.1ミリモル)を、つづいてTEA(0.5mL)を該溶液に加え、得られた反応混合物を室温で18時間にわたって攪拌した。水(20mL)を添加し、該溶液をEtOAc(2x20mL)で抽出し、有機部分を合わせ、乾燥(MgSO4)させ、ろ過し、ヘキサン/EtOAcで溶出する順相クロマトグラフィーに付して精製し、中間体9B(58mg、収率85%)を得た。1H NMR(500MHz、CDCl3)δ 8.05(d,J=2.4Hz,1H)、7.89(dd,J=8.8、2.4Hz,1H)、7.05(d,J=8.9Hz,1H)、4.90(dddd,J=10.8、7.7、4.6、3.2Hz,1H)、4.08-3.85(ss,6H)、3.81-3.68(m,1H)、3.46-3.36(m,1H)、1.89(brt,J=6.2Hz,1H)、1.57(s,2H);MS(ESI)m/z=266.1(M+H)+
【0125】
中間体9C:中間体9B(58mg、0.22ミリモル)をTHF(2mL)に溶かし、これにLiOH(6.3g、0.26ミリモル)を、つづいて水(2mL)およびメタノール(1mL)を添加し、室温で4時間にわたって攪拌した。HCl(1N)を反応混合物に添加してpHが7に達するようにし、得られた溶液をEtOAc(2x25mL)で抽出した。有機部分を合わせ、乾燥(MgSO4)させ、ろ過し、減圧下で濃縮して中間体9C(640mg、収率84%)を得た。1H NMR(500MHz、CDCl3)δ 8.28(d,J=2.3Hz,1H)、8.14(dd,J=8.8、2.4Hz,1H)、7.28-7.14(m,1H)、4.92(dddd,J=10.8、7.7、4.6、3.1Hz,1H)、4.16(s,3H)、4.09-3.89(m,1H)、3.72(dd,J=12.4、4.6Hz,1H)、3.48-3.39(m,1H)、3.38-3.29(m,1H)、1.94-1.72(m,1H)、1.60(brs,1H);MS(ESI)m/z=252.3(M+H)+
【0126】
中間体9Dおよび9:中間体9C(640mg)を、以下の分取方法:装置:ベルガー製MG II、カラム:キラルパック IC、21x250mm、5ミクロン;移動相:20%メタノール/80%CO2;フロー条件:2mL/分、150バール、40℃;検出器波長:220nm;注入の詳細:MeOH中約35mg/mLを0.7mLで注入することに従ってキラルSFC分離に供し、中間体9C(ピーク1、>99%de、分析RT=5.6分)および中間体9(ピーク2、99%de、分析RT=6.6分)を得、分析性クロマトグラフィー条件:装置:島津製ネキセラSFC(CTR-L410-SFC3)、カラム:キラルパックIC、4.6x100mm、3ミクロン、移動相:20%メタノール/80%CO2;フロー条件:2.0mL/分、150バール、40℃、検出器波長:220nm;注入の詳細:MeOH中約1mg/mLを5μLで注入する
【0127】
実施例1:6-フルオロ-3’-(((1S,5R,6S,7R)-7-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-イル)カルバモイル)-4’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボン酸
【化24】
【0128】
実施例1:メチル (1R,5S,6R,7S)-7-(((2-(トリメチルシリル)エトキシ)カルボニル)アミノ)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-カルボキシレートの製造
【0129】
中間体1(450mg、1.56ミリモル)を250mLの丸底圧力フラスコ中にてEtOAc(30mL)に溶かし、該溶液に窒素を5分間にわたって注入してかき混ぜることで脱気処理に付した。次にPd-C(166mg、0.156ミリモル)を窒素の緩やかな流れの下で添加した。次に該フラスコを真空/窒素の埋め戻しを3回および真空/水素の埋め戻しを2回行うことで脱気処理に付した。フラスコを40psiの水素で加圧し、室温で3時間にわたって攪拌した。減圧および窒素での埋め戻しに付した後、反応混合物をセライト(登録商標)のプラグを介してろ過し、ろ液を真空下で濃縮して(1S,5R,6S,7R)-7-(メトキシカルボニル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-カルボン酸(300mg、1.5ミリモル、収率97%)を無色透明の油として得、それをさらに精製することなく用いた。MS(ESI)m/z 199.1[M+H]+。得られた(1S,5R,6S,7R)-7-(メトキシカルボニル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-カルボン酸を、テフロン製セプタムキャップを備えた20mLのバイアル中にて、トルエン(3mL)に溶かし、Et3N(420μl、3.03ミリモル)、およびDPPA(391μl、1.81ミリモル)を添加した。反応混合物を室温で30分間にわたって攪拌し、その際に窒素が激しく発生し始めた。気体の発生が止むまで、攪拌を60℃で続けた。次に2-(トリメチルシリル)エタン-1-オール(870μl、6.05ミリモル)を加え、混合物を80℃で26時間にわたって加熱した。混合物を室温にまで冷却させ、真空下で濃縮乾固させた。残渣を40gISCOカラム上にロードさせ、18分間にわたってヘキサン中0%~100%EtOAcの線状勾配で溶出し、ELSDで検出した。メチル (1R,5S,6R,7S)-7-(((2-(トリメチルシリル)エトキシ)カルボニル)アミノ)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-カルボキシレート(400mg、1.3ミリモル、収率84%)を無色透明の油としてラセミ体で単離した。MS(ESI)m/z 314.2[M+H]+;1H NMR(500MHz、CDCl3)δ 5.68-5.39(m,1H)、4.13(brs,2H)、4.06-3.94(m,1H)、3.69(s,3H)、3.00-2.90(m,1H)、2.89-2.78(m,1H)、2.77-2.63(m,1H)、1.78(brd,J=9.0Hz,3H)、1.69-1.40(m,3H)、0.97(brs,2H)、0.04(s,9H)
【0130】
実施例1-2:2-(トリメチルシリル)エチル((1S,5R,6S,7R)-7-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-イル)カルバメートの製造
【0131】
実施例1-1を、20mLのバイアル中にて、アセトニトリル(3.8mL)、水(0.12mL)、およびEt3N(0.53mL、3.8ミリモル)の混合液に溶かした。LiBr(1.10g、12.8ミリモル)を加え、反応混合物を室温で18時間にわたって攪拌した。次に反応混合物をEtOAc(50mL)および水(50mL)で希釈し、ついで水層を分離し、1N HClで酸性にし、EtOAcで逆抽出した。有機層を分離し、真空下で黄褐色の粉末にまで濃縮し、2-(トリメチルシリル)エチル ((1S,5R,6S,7R)-7-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-イル)カルバメートを、さらに精製することなく、次の工程にて用いた。MS(ESI)m/z 300.0[M+H]+。2-(トリメチルシリル)エチル ((1S,5R,6S,7R)-7-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-イル)カルバメート(240mg、0.80ミリモル)、4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)アニリン(144mg、0.800ミリモル)、およびEt3N(0.22mL、1.60ミリモル)をDMF(2mL)に溶かした。BOP(390mg、0.88ミリモル)を添加し、反応混合物を65℃で2時間にわたって攪拌した。反応混合物を室温にまで冷却させ、水(25mL)で希釈した。沈殿物が形成され、それをろ過し、真空下で乾燥させて実施例1-2を得、2-(トリメチルシリル)エチル ((1S,5R,6S,7R)-7-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-イル)カルバメート(460mg、収率65%)を黄褐色の固体として得た。1H NMR(500MHz、CDCl3)δ 7.86-7.78(m,1H)、7.75-7.65(m,2H)、7.15(t,J=9.3Hz,1H)、5.26-5.15(m,1H)、4.13-4.05(m,1H)、4.02-3.91(m,2H)、3.26-3.17(m,1H)、2.97-2.89(m,1H)、2.65-2.56(m,1H)、1.98-1.87(m,1H)、1.83-1.72(m,2H)、1.68-1.63(m,3H)、1.59-1.49(m,1H)、0.87-0.71(m,2H)、-0.02(s,9H)
【0132】
実施例1-3:(1R,5S,6R,7S)-7-アミノ-N-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-カルボキシアミド・塩酸塩の製造
【0133】
実施例1-2(57mg、0.12ミリモル)をジオキサン(6mL)に溶かし、HCl(0.25ml、1.0ミリモル)をジオキサン中4M溶液として添加した。透明な溶液を1時間にわたって攪拌し、次に減圧下で濃縮乾固させた。ラセミ体の実施例1C、(1R,5S,6R,7S)-7-アミノ-N-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-カルボキシアミド・塩酸塩(44mg、100%)を褐色の固体として単離した。MS(ESI)m/z 317.1[M+H]+;1H NMR(500MHz、CD3OD)δ 8.13(dd,J=6.4、2.6Hz,1H)、7.86-7.79(m,1H)、7.32(t,J=9.6Hz,1H)、3.52(dd,J=7.8、4.4Hz,1H)、3.11-3.00(m,2H)、2.98-2.89(m,1H)、2.04-1.93(m,1H)、1.92-1.79(m,3H)、1.76-1.58(m,2H)
【0134】
実施例1-4:(1R,5S,6R,7S)-7-(5-ブロモ-2-メトキシベンズアミド)-N-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-カルボキシアミド
【0135】
実施例1-3(100mg、0.232ミリモル)、5-ブロモ-2-メトキシ安息香酸(54mg、0.23ミリモル)、Et3N(0.032mL、0.23ミリモル)を、次にHATU(88mg、0.23ミリモル)を20mLのバイアル中にてDMF(2mL)に溶かし、反応混合物を室温で1時間にわたって攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮乾固させ、残渣を以下の条件:カラム:エックスブリッジ(XBridge)C18、200mm x 19mm、5μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+10mM酢酸アンモニウム;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+10mM酢酸アンモニウム;勾配:44%Bで0分間保持し、20分間にわたって44-84%Bとし、ついで100%Bで10分間にわたって保持する;流速:20mL/分; カラム温度:25℃で分取性HPLCに付して精製した。フラクションはMSおよびUVシグナルによって収集を始めた。所望の生成物を含有するフラクションを合わせ、遠心蒸発を介して乾燥させた。実施例1-1、(1R,5S,6R,7S)-7-(5-ブロモ-2-メトキシベンズアミド)-N-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-カルボキシアミド、ラセミ体(118mg、96%)を白色の粉末として単離した。MS(ESI)m/z 529.0[M+H]+;MS(ESI)m/z 531.1[M+3]+;1H NMR(500MHz、DMSO-d6)δ 10.26(s,1H)、8.88(brd,J=8.2Hz,1H)、8.25-8.13(m,1H)、7.79-7.66(m,1H)、7.62-7.49(m,2H)、7.44(t,J=9.7Hz,1H)、7.06(d,J=8.8Hz,1H)、4.29(td,J=8.5、5.1Hz,1H)、3.85-3.69(m,3H)、3.07(brdd,J=8.7、4.1Hz,1H)、3.01-2.92(m,1H)、2.73(brd,J=5.1Hz,1H)、1.94-1.76(m,2H)、1.75-1.62(m,2H)、1.60-1.38(m,2H)
【0136】
実施例1:6-フルオロ-3’-(((1S,5R,6S,7R)-7-((4-フルオロ-3-トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-イル)カルバモイル)-4’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボン酸
【0137】
実施例1-4(54mg、0.10ミリモル)および3-ボロノ-4-フルオロ安息香酸(19mg、0.10ミリモル)を、セプタム密封キャップを備えた20mLのバイアル中にて、DMF(2mL)に溶かした。K3PO4の3M水溶液(0.10mL、0.30ミリモル)を該溶液に加え、反応混合物を真空と窒素の埋め戻しとを3回介して脱気処理に付した。XPhos Pd G2(8mg、10.2マイクロモル)を窒素の緩やかな流れの下で添加し、反応混合物を75℃で30分間にわたって攪拌した。次に反応混合物を減圧下で濃縮乾固させ、残渣を次の条件:カラム:エックスブリッジ C18、200mm x 19mm、5μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+0.1%トリフルオロ酢酸;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+0.1%トリフルオロ酢酸;勾配:42%Bで0分間保持し、20分間にわたって42-82%Bとし、次に100%Bで4分間にわたって保持する;流速:20mL/分;カラム温度:25℃で分取性HPLCに付して精製した。フラクションをMSシグナルによって収集を開始し、6-フルオロ-3’-(((1S,5R,6S,7R)-7-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-イル)カルバモイル)-4’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボン酸(4.3mg、7%)を97.1%純度(方法A、保持時間:1.78分)で単離した。MS(ESI)m/z 589.3[M;H]+;1H NMR(500MHz、DMSO-d6)δ 10.25(s,1H)、8.90(brd,J=8.3Hz,1H)、8.12(brd,J=3.2Hz,1H)、8.02-7.90(m,2H)、7.73(brs,2H)、7.64(brd,J=8.6Hz,1H)、7.39(brt,J=9.3Hz,1H)、7.34(brt,J=9.7Hz,1H)、7.21(d,J=8.5Hz,1H)、4.39-4.26(m,1H)、3.86(s,3H)、3.08(brdd,J=8.9、4.2Hz,1H)、3.02-2.93(m,1H)、2.79-2.71(m,1H)、1.95-1.76(m,2H)、1.73(brdd,J=12.2、5.5Hz,1H)、1.66(brdd,J=12.5、5.7Hz,1H)、1.60-1.42(m,2H)
【0138】
実施例2:(1R,5S,6R,7S)-N-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-7-(5-(3-ヒドロキシプロパ-1-イン-1-イル)-2-メトキシベンズアミド)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-カルボキシアミド
【化25】
【0139】
実施例2:実施例2は、実施例1-3(100mg、0.32ミリモル)を5-(3-ヒドロキシプロパ-1-イン-1-イル)-2-メトキシ安息香酸(65mg、0.32ミリモル)とカップリングさせることによって、実施例1-4に記載の一般的操作を用いて製造された。実施例2(153mg、96%)は95%純度で単離された。
【0140】
実施例7:2-(6-フルオロ-3’-(((1S,5R,6S,7R)-7-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-イル)カルバモイル)-4’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-2-((フェニルカルバモイル)オキシ)酢酸の製造
【化26】
【0141】
実施例7-1:tert-ブチル 2-(6-フルオロ-3’-(((1S,5R,6S,7R)-7-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-イル)カルバモイル)-4’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-2-ヒドロキシアセテートの製造
【0142】
実施例7-1は、5-ブロモ-2-メトキシ安息香酸の代わりに中間体8-2(43mg、0.11ミリモル)を用い、実施例1-4を製造するのに記載される一般的なカップリング操作を用いて製造され、tert-ブチル 2-(6-フルオロ-3’-(((1S,5R,6S,7R)-7-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-イル)カルバモイル)-4’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-2-ヒドロキシアセテート(61mg、収率80%)を得た。MS(ESI)m/z 589.3[M+H]+
【0143】
実施例7-2:tert-ブチル 2-(6-フルオロ-3’-(((1S,5R,6S,7R)-7-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)カルバモイル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタン-6-イル)カルバモイル)-4’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-2-ヒドロキシアセテート(60mg、0.089ミリモル)およびピリジン(0.072mL、0.89ミリモル)を、2ドラムのバイアル中にて、CH2Cl2(4mL)に溶かし、つづいてフェニルイソシアネート(0.10mL、0.89ミリモル)を添加した。反応混合物を室温で19時間にわたって攪拌した。反応混合物を40g ISCOカラム上にロードし、ヘキサン中0%~100%EtOAcの線状勾配で溶出した。MS(ESI)m/z 794.3(M+H)+
【0144】
実施例7:実施例7-2をCH2Cl2(4mL)およびTFA(1mL)に溶かした。得られた溶液を室温で2時間にわたって攪拌した。減圧下で濃縮乾固させた後、残渣を以下の条件:カラム:エックスブリッジ C18、200mm x 19mm、5μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+0.1%トリフルオロ酢酸;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+0.1%トリフルオロ酢酸;勾配:45%Bで0分間保持し、20分間にわたって45-85%Bとし、ついで100%Bで4分間にわたって保持する;流速:20mL/分;カラム温度:25℃で分取性HPLCに付して精製した。フラクションをMSおよびUVシグナルによって収集を開始した。
【0145】
得られたジアステレオマーの混合物を、以下の条件:カラム:キラル(Chiral)OD、30x250mm、5ミクロン粒子;移動相:75%CO2/25%MeOHw/0.1%DEA;フロー条件:100mL/分;検出器波長:220nm;注入の詳細:4.4mgを3mLのMeOHに溶かして1,500μLを注入する;を用いて、キラルSFCによって分離した。
【0146】
ピーク1は25.7分で溶出下。
ピーク2(実施例7)は31.4分で溶出した。
【0147】
ピークを、精製した後に、以下の分析条件:カラム:キラル OD、4.6x100mm、5ミクロン、移動相 75%CO2/25%MeOHw/0.1%DEA、フロー条件:2.0mL/分、150バール、40℃、検出器波長:220nm、注入の詳細:MeOH中の約1mg/mLを10μLで注入する;を用いてエナンチオマー純度について分析した。
【0148】
ピーク1(>95%ee)は実施例7のジアステレオマーである。1H NMR(500MHz、DMSO-d6)δ 10.30(s,1H)、9.87(brs,1H)、8.97(d,J=8.5Hz,1H)、8.17(dd,J=6.6、2.3Hz,1H)、7.89(s,1H)、7.80-7.71(m,1H)、7.61(brt,J=9.9Hz, 2H)、7.53(brdd,J=5.0、2.6Hz,1H)、7.48(brd,J=7.9Hz, 2H)、7.39(t,J=9.8Hz,1H)、7.35-7.26(m,3H)、7.23(d,J=8.9Hz,1H)、7.01(t,J=7.3Hz,1H)、5.85(s,1H)、4.41-4.34(m,1H)、3.87(s,2H)、3.14-3.07(m,1H)、3.03-2.93(m,1H)、2.78-2.71(m,1H)、1.92-1.79(m,2H)、1.75(brdd,J=12.4、5.3Hz,1H)、1.69(brdd,J=12.7、6.0Hz,1H)、1.61-1.53(m,1H)、1.53-1.45(m,1H)
【0149】
ピーク2(>95%ee)は実施例7である。MS(ESI)m/z 738.1[M+H]+;1H NMR(500MHz、DMSO-d6)δ 10.30(s,1H)、9.94-9.78(m,1H)、8.96(d,J=8.5Hz,1H)、8.17(dd,J=6.4、2.4Hz,1H)、7.88(s,1H)、7.79-7.71(m,1H)、7.66-7.57(m,2H)、7.56-7.51(m,1H)、7.48(brd,J=7.6Hz, 2H)、7.42-7.35(m,1H)、7.34-7.26(m,3H)、7.26-7.20(m,1H)、7.06-6.97(m,1H)、5.85(s,1H)、4.41-4.32(m,1H)、3.87(s,2H)、3.14-3.06(m,1H)、3.01-2.92(m,1H)、2.79-2.70(m,1H)、1.93-1.78(m,2H)、1.79-1.71(m,1H)、1.72-1.64(m,1H)、1.62-1.53(m,1H)、1.53-1.44(m,1H)、1.28-1.20(m,1H)
【0150】
下記の表1にある実施例2、3、および5は、実施例1&7に記載の一般的操作によって製造された。
【表4】
【表5】
【0151】
本開示が上記した例示としての実施例に限定されるものではなく、該開示がその本質的な属性から逸脱することなく、他の特定の形態にて具現化され得ることは、当業者にとって明らかであろう。従って、実施例はあらゆる点で例示であって、限定的ではないと考えるべきであり、上記した実施例よりもむしろ添付した特許請求の範囲に言及されることが望ましく、特許請求の範囲の意義および均等な領域の範囲内にあるすべての変更はこの中に含まれるものとする。
【国際調査報告】