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特表2025-503444アルファ-シヌクレインの標的化分解
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】アルファ-シヌクレインの標的化分解
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20250128BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 9/88 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/60 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20250128BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20250128BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 38/53 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/18
C12N9/88
C12N15/60
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/761
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61K38/53
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535998
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 GB2022053257
(87)【国際公開番号】W WO2023111580
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】2118272.0
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.OMERO
(71)【出願人】
【識別番号】518451183
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・ダンディー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゴパル・サプコタ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084DC28
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA02
4C084ZA15
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA02
4C087ZA15
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA01
4H045GA05
(57)【要約】
本発明は、α-シヌクレインの分解のための、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤へとテザリングされたE3ユビキチンリガーゼ成分を含むプロテアソーム分解タンパク質複合体に関する。本発明はまた、シヌクレイノパシーを含む神経障害の処置のための、作用機構、組成物、及び関連する方法も含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤へとテザリングされたE3ユビキチンリガーゼ成分を含み、α-シヌクレインを、プロテアソーム分解の標的とすることが可能であるプロテアソーム分解タンパク質複合体。
【請求項2】
α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤が、抗体、抗体断片、モノボディー、及び/又はナノボディーである、請求項1に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体。
【請求項3】
α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤が、α-シヌクレインタンパク質のC末端領域内の標的エピトープに結合し、プロテアソーム分解タンパク質複合体が、α-シヌクレインを分解することが可能である、請求項1又は2に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体。
【請求項4】
α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤が、NbSYN87、又はNbSYN87と少なくとも70、80%、90%、95%、若しくは99%同一である配列を含む、その機能的バリアントであるか;
又はα-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤が、NbSYN87と同じである、α-シヌクレイン上のエピトープを標的とするか;
又はα-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤が、NbSYN87と同等であるか、若しくはより高度のアフィニティーを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体。
【請求項5】
E3ユビキチンリガーゼ成分が、CRL(cullin ring E3 ligase)複合体の基質受容体である、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体。
【請求項6】
E3ユビキチンリガーゼ成分が、α-シヌクレインを、CUL2-CRL、CUL3、又はCUL4のうちのいずれかへと動員することが可能である、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体。
【請求項7】
E3ユビキチンリガーゼ成分が、VHL(von Hippel-Lindau)腫瘍抑制遺伝子又はその機能的バリアントであり、適切には、機能的バリアントが、野生型VHLと、少なくとも60%同一である配列、好ましくは、野生型VHLと、少なくとも70%、80%、90%、95%、又は99%同一である配列を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体。
【請求項8】
α-シヌクレインタンパク質が、ユビキチン媒介型プロテアソーム分解システムによる分解の標的とされる、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体。
【請求項9】
AdPROM(affinity-directed protein missile)である、請求項1から8のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体をコードする、1つ又は複数の核酸構築物。
【請求項11】
E3リガーゼ成分が、VHL又はその機能的バリアントであり、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤が、NbSYN87又はその機能的バリアントである、請求項10に記載の、1つ又は複数の核酸構築物。
【請求項12】
配列番号3に従うヌクレオチド配列、又はこれと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、若しくは99%同一である配列を含む、請求項10又は11に記載の、1つ又は複数の核酸構築物。
【請求項13】
1つ又は複数の発現制御配列に作動可能に連結された、請求項10から12のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む発現構築物。
【請求項14】
請求項13に記載の発現構築物を含むベクター。
【請求項15】
遺伝子治療用ベクター、適切には、ウイルスベクター、適切には、AAVベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、又はレンチウイルスベクターである、請求項14に記載のベクター。
【請求項16】
請求項1から9のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体、請求項10から12のいずれか一項に記載の核酸構築物、請求項13に記載の発現構築物、又は請求項14又は15に記載のベクターと、薬学的に許容される担体又は希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項17】
神経変性障害を伴う対象の処置における使用のための、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体、請求項10から12のいずれか一項に記載の核酸構築物、請求項13に記載の発現構築物、請求項14若しくは15に記載のベクター、又は請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
神経変性障害が、シヌクレイノパシーである、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体、請求項10から12のいずれか一項に記載の核酸構築物、請求項13に記載の発現構築物、請求項14若しくは15に記載のベクター、又は請求項17に記載の使用のための、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
神経変性障害が、パーキンソン病、認知症、及び/又は多系統委縮症である、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体、請求項10から12のいずれか一項に記載の核酸構築物、請求項13に記載の発現構築物、請求項14若しくは15に記載のベクター、又は請求項17若しくは18に記載の使用のための、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
プロテアソーム分解タンパク質複合体が、α-シヌクレインを、プロテアソーム分解の標的とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体、請求項10から12のいずれか一項に記載の核酸構築物、請求項13に記載の発現構築物、請求項14若しくは15に記載のベクター、又は請求項17から19のいずれか一項に記載の使用のための、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項21】
対象が、SNCA二重重複、SNCA三重重複、又は点変異であるA53T、A30P、H50Q、E46K、G51D、及び/若しくはA53Eを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体、請求項10から12のいずれか一項に記載の核酸構築物、請求項13に記載の発現構築物、請求項14若しくは15に記載のベクター、又は請求項17から20のいずれか一項に記載の使用のための、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項22】
請求項1から9のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体、請求項10から12のいずれか一項に記載の核酸構築物、請求項13に記載の発現構築物、請求項14若しくは15に記載のベクター、又は請求項16に記載の医薬組成物を使用してα-シヌクレインを分解の標的とするための方法。
【請求項23】
in vitro又はin vivoにおいて、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体、請求項10から12のいずれか一項に記載の核酸構築物、請求項13に記載の発現構築物、請求項14若しくは15に記載のベクター、又は請求項16に記載の医薬組成物を、細胞へと投与する工程
を含み;
プロテアソーム分解タンパク質複合体の、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤成分が、α-シヌクレインに結合し;
α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤へとテザリングされたE3リガーゼ成分が、α-シヌクレインタンパク質を、細胞内のE3リガーゼシステムへと動員し;
α-シヌクレインが分解されるように、細胞内のE3リガーゼシステムが、α-シヌクレインをユビキチン化する、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
α-シヌクレインが、単量体、オリゴマー、プロトフィブリル、成熟線維、又は凝集物である、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
α-シヌクレインが、A53T、A30P、H50Q、E46K、G51D、及び/又はA53Eの変異体である、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
α-シヌクレインが、プロテアソーム分解の標的とされる、請求項22から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
プロテアソーム分解が、ユビキチン媒介型プロテアソーム分解である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
それを必要とする対象を処置する方法であって、前記対象へと、治療有効量の、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体、請求項10から12のいずれか一項に記載の核酸構築物、請求項13に記載の発現構築物、請求項14若しくは15に記載のベクター、又は請求項16に記載の医薬組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項29】
対象が、神経変性障害を有し、任意選択で、神経変性障害が、シヌクレイノパシーであり、任意選択で、神経変性障害が、パーキンソン病、認知症、及び/又は多系統委縮症である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
プロテアソーム分解タンパク質複合体が、α-シヌクレインを、プロテアソーム分解の標的とし、適切には、対象が、SNCA二重重複、SNCA三重重複、又は点変異であるA53T、A30P、H50Q、E46K、G51D、及び/若しくはA53Eを有する、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
標的とするための調査研究用ツールとしての使用のための、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体、請求項10から12のいずれか一項に記載の核酸構築物、請求項13に記載の発現構築物、請求項14若しくは15に記載のベクター、又は請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項32】
請求項1から9のいずれか一項に記載のプロテアソーム分解タンパク質複合体、請求項10から12のいずれか一項に記載の核酸構築物、請求項13に記載の発現構築物、請求項14若しくは15に記載のベクター、又は請求項16に記載の医薬組成物と、使用のための指示書とを含む、請求項22から28のいずれか一項に記載の方法における使用のためのキット、又は請求項31に記載の調査研究用ツールとしての使用のためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、E3リガーゼ基質受容体を含み、標的タンパク質の特異的結合剤へと連結されたプロテアソーム分解タンパク質複合体に関する。特に、本発明は、E3リガーゼを含み、内因性α-シヌクレインを分解するための、特異的ポリペプチド結合剤に連結されたプロテアソーム分解タンパク質複合体並びに神経変性障害等の処置における、関連する方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の議論は、読者による本開示の理解の一助となるように提示されるものであり、先行技術の内容又は妥当性についての、いかなる容認も構成しない。
【0003】
英国では、パーキンソン病は、2番目によく見られる神経変性障害であり、500人当たり1人に影響を及ぼす。ドーパミン作動性ニューロン内に主に見出されるレビー小体として公知である細胞内タンパク質性封入体は、パーキンソン病の目印となる特徴である。レビー小体の主要成分は、SNCA遺伝子によりコードされ、α-シヌクレインと呼ばれる、140kDaの低分子タンパク質である。
【0004】
細胞内封入体内のα-シヌクレインの存在はまた、シヌクレイノパシーと総称されている、レビー小体を伴う認知症、及び多系統委縮症等、他の様々な神経変性障害においても見出されている。シヌクレイノパシーは、SNCA遺伝子の変異体である、A53T、A30P、H50Q、E46K、G51D、及びA53E、又は二重重複及び三重重複を含む、多様なSNCA変異と関連する。更に、ドーパミン作動性ニューロン内における、α-シヌクレインの凝集は、シヌクレイノパシーの発症機序及び進行と関連するので、治療的介入のための潜在的標的と関連する。しかし、α-シヌクレインは、常套的な低分子方法によっては、「創薬不可能」な標的であると見なされている。したがって、シヌクレイノパシーにおいて、α-シヌクレインを標的とする、新たな方法及び治療剤の開発が必要とされている。
【0005】
AdPROM(affinity-directed protein missile)システムの技術は、内因性タンパク質を、タンパク質分解の標的とするために開発された(Fulcher LJら、2017、「Targeting endogenous proteins for degradation through the affinity-directed protein missile system」、Open Biol. 7: 170066)。AdPROMシステムは、CUL2-CRL基質受容体である、VHL(von Hippel-Lindau)腫瘍抑制遺伝子等のE3リガーゼ成分を、抗体又はその断片等の標的特異的ポリペプチド結合剤へと連結することにより、ユビキチン-プロテアソーム系を利用する。E3リガーゼ成分を、標的特異的ペプチド結合剤へとテザリングすることにより、系は、標的タンパク質を、CUL2-CRL機構へと、選択的に動員し、次いで、ユビキチン化、並びに、その後における、プロテアソームを介し、高度の選択性及び特異性を伴う、タンパク質の分解を容易とするのに利用されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2014/144229
【特許文献2】WO2019/028306
【特許文献3】WO2000/28004
【特許文献4】WO2001/23001
【特許文献5】WO2004/112727
【特許文献6】WO2005/005610
【特許文献7】WO2005/072364
【特許文献8】米国特許第US6204059号
【特許文献9】米国特許第US5756283号
【特許文献10】米国特許第US6258595号
【特許文献11】米国特許第US6261551号
【特許文献12】米国特許第US6270996号
【特許文献13】米国特許第US6281010号
【特許文献14】米国特許第US6365394号
【特許文献15】米国特許第US6475769号
【特許文献16】米国特許第US6482634号
【特許文献17】米国特許第US6485966号
【特許文献18】米国特許第US6943019号
【特許文献19】米国特許第US6953690号
【特許文献20】米国特許第US7022519号
【特許文献21】米国特許第US7238526号
【特許文献22】米国特許第US7291498号
【特許文献23】米国特許第US7491508号
【特許文献24】米国特許第US5064764号
【特許文献25】米国特許第US6194191号
【特許文献26】米国特許第US6566118号
【特許文献27】米国特許第US8137948号
【特許文献28】国際公開第WO1996039530号
【特許文献29】国際公開第WO1998010088号
【特許文献30】国際公開第WO1999014354号
【特許文献31】国際公開第WO1999/015685号
【特許文献32】国際公開第WO1999/047691号
【特許文献33】国際公開第WO2000/055342号
【特許文献34】国際公開第WO2000/075353号
【特許文献35】国際公開第WO2001/023597号
【特許文献36】米国特許第4,683,195号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Fulcher LJら、2017、「Targeting endogenous proteins for degradation through the affinity-directed protein missile system」、Open Biol. 7: 170066
【非特許文献2】Guilliamsら、Journal of Molecular Biology、425巻、14号、2013年7月24日、2397~2411頁
【非特許文献3】Sambrookら、「Molecular Cloning, A laboratory manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1~3巻、2001(ISBN-0879695773)
【非特許文献4】Ausubelら、「Short Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、4版、1999(ISBN-0471250929)
【非特許文献5】「Methods In Molecular Biology」、Richard編、Humana Press、NJ(1995)
【非特許文献6】O'Reillyら、「Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual」、Oxford Univ. Press (1994)
【非特許文献7】Samulskiら、J Fir.、63:3822~8 (1989)
【非特許文献8】Kajigayaら、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA、88: 4646~50 (1991)
【非特許文献9】Ruffingら、J. Vir.、66:6922~30 (1992)
【非特許文献10】Kimbauerら、Vir.、219:37~44 (1996)
【非特許文献11】Zhaoら、Vir.、272: 382~93 (2000)
【非特許文献12】Selene Ingusciら(「Gene Therapy Tools for Brain Diseases」、Front. Pharmacol.、10:724. doi: 10.3389)
【非特許文献13】Keiserら、Curr Protoc Mouse Biol.、2018年12月、8(4):e57
【非特許文献14】「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubel、2000、Wiley and son Inc、Library of Congress、USA)
【非特許文献15】「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、3版、(Sambrookら、2001、Cold Spring Harbor、New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press)
【非特許文献16】「Oligonucleotide Synthesis」(M. J. Gait編、1984)
【非特許文献17】「Nucleic Acid Hybridization」(Harries及びHiggins編、1984)
【非特許文献18】「Transcription and Translation」(Hames及びHiggins編、1984)
【非特許文献19】「Culture of Animal Cells」(Freshney、Alan R. Liss, Inc.、1987)
【非特許文献20】「Immobilized Cells and Enzymes」(IRL Press、1986)
【非特許文献21】Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」(1984)
【非特許文献22】「Methods in Enzymology」(Abelson及びSimon責任編集、Academic Press,Inc.、New York)、特に、154及び155巻(Wuら編)及び185巻、「Gene Expression Technology」(Goeddel編)
【非特許文献23】「Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells」(Miller及びCalos編、1987、Cold Spring Harbor Laboratory)
【非特許文献24】「Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology」(Mayer及びWalker編、Academic Press、London、1987)
【非特許文献25】「Handbook of Experimental Immunology」、I~IV巻(Weir及びBlackwell編、1986)
【非特許文献26】「Manipulating the Mouse Embryo」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986)
【非特許文献27】Tatusova及びMadden、1999(FEMS Microbiol Lett、174:247~250)
【非特許文献28】Smith及びWaterman(1981)、Adv.Appl.Math.、2:482
【非特許文献29】Needleman及びWunsch(1970)、J.Mol.Biol.、48:443
【非特許文献30】Pearson及びLipman(1988)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、85:2444
【非特許文献31】Higgins及びSharp(1988)、Gene、73:237~44
【非特許文献32】Higgins及びSharp(1989)、CABIOS、5:151~3
【非特許文献33】Corpetら(1988)、Nucleic Acids Res.、16:10881~90
【非特許文献34】Huangら(1992)、Comp.Appl.Biosci.、8:155~65
【非特許文献35】Pearsonら(1994)Methods Mol.Biol.、24:307~31
【非特許文献36】Tatianaら(1999)、FEMS Microbiol.Lett.、174:247~50
【非特許文献37】Altschulら(1990)、J.Mol.Biol.、215:403~10
【非特許文献38】Bekes、Langley and Crews、2022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在のところ、シヌクレイノパシーに有効な治療は存在せず、α-シヌクレインを、効果的に標的とする、公知の治療剤も存在しない。したがって、α-シヌクレインを分解する、新規の方法を提供し、シヌクレイノパシーを処置するための治療システムを提供することが必要とされている。
【0009】
したがって、少なくとも一部の態様では、本開示は、内因性α-シヌクレインを、プロテアソーム分解の標的とし、シヌクレイノパシーのための治療処置のための、高度に選択的であり、かつ、特異的である標的をもたらすことを目的とするプロテアソーム分解タンパク質複合体について記載する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤へとテザリングされたE3ユビキチンリガーゼ成分を含み、α-シヌクレインを、プロテアソーム分解の標的とすることが可能であるプロテアソーム分解タンパク質複合体が提供される。
【0011】
α-シヌクレインの分解は、α-シヌクレインを、細胞内のプロテアソーム系による分解の標的とすることにより達成される。好ましくは、一部の実施形態では、α-シヌクレインは、ユビキチン媒介型プロテアソーム分解システムによる分解の特異的標的とされる。
【0012】
α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤:
適切には、一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、抗体、抗体断片、モノボディー、及び/又はナノボディーである。しかし、当業者には、他の種類のα-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤、例えば、多様な足場タンパク質に基づく、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤が使用されうることが明らかであろう。本発明における使用のために、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、細胞コンテクストにおいて、すなわち、細胞内で、α-シヌクレインに結合し、これにより、複合体のE3ユビキチンリガーゼ成分によるユビキチン化のためにα-シヌクレインを提示することが可能であるものとする。
【0013】
α-シヌクレインのアミノ酸配列(配列番号11)は、3つの領域:N末端ドメイン(残基1~60)、NACドメイン(残基61~95)、及びC末端ドメイン(残基96~140)へと分けられうる(Farzadfard, Aら、2022)。
【0014】
一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、α-シヌクレインタンパク質のC末端領域(配列番号11の残基96~140)内の標的エピトープに特異的な抗体である。適切には、一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、α-シヌクレインタンパク質のC末端領域内の標的エピトープに特異的なナノボディーである。
【0015】
一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、α-シヌクレインタンパク質のN末端領域(配列番号11の残基1~60)内の標的エピトープに特異的な抗体である。適切には、一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、α-シヌクレインタンパク質のN末端領域内の標的エピトープに特異的なナノボディーである。
【0016】
一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、α-シヌクレインタンパク質のNACドメイン(配列番号11の残基61~95)内の標的エピトープに特異的な抗体である。適切には、一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、α-シヌクレインタンパク質のNACドメイン内の標的エピトープに特異的なナノボディーである。
【0017】
一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、ナノボディーであるNbSYN87、又はその機能的バリアントである。一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、配列番号12に従うナノボディーであるNbSYN87、又はその機能的バリアントである。NbSYN87は、本発明における使用のために、特に有効なα-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤であることが示されている。NbSYN87の機能的バリアントは、適切には、野生型NbSYN87(配列番号12)と、少なくとも60%同一であり、より好ましくは、野生型NbSYN87と、少なくとも70%、80%、90%、95%、又は99%同一である配列を含む。NbSYN87の機能的バリアントは、適切には、配列番号12と、少なくとも60%同一であり、より好ましくは、配列番号12と、少なくとも70%、80%、90%、95%、又は99%同一である配列を含む。一部の実施形態では、NbSYN87の機能的バリアントは、配列番号1と、少なくとも60%同一であり、より好ましくは、配列番号1と、少なくとも70%、80%、90%、95%、又は99%同一であるDNA配列によりコードされうる。好ましくは、NbSYN87の機能的バリアントは、α-シヌクレインに対する、野生型NbSYN87と比較して、同等であるか、又はより高度のアフィニティー、例えば、α-シヌクレインに対する、野生型NbSYN87と比較して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、又は100%のアフィニティーを保持する。
【0018】
本発明では、NbSYN87が、特に、良好に機能することが示されているが、当業者は、他のα-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤が使用されうることを理解するであろう。一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、α-シヌクレインに、NbSYN87と同等であるか、又はより高度のアフィニティー(例えば、α-シヌクレインに対する、NbSYN87と比較して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、又は100%のアフィニティー)で結合する。
【0019】
本発明の文脈において、任意の推定α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤が機能する能力は、本明細書で記載される方法を使用して評価されうる。例えば、候補α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤について調べるための初期スクリーンとして、任意のα-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤と、α-シヌクレインとの相互作用が、免疫沈降(IP)により実行されうる(例えば、下記の実施例2で記載される)。その後、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤が、免疫沈降において、所望の機能を果たすと仮定すると、細胞文脈において、α-シヌクレインに特異的に結合するその能力が評価されうる(例えば、下記の実施例2で記載される通り、免疫蛍光法を使用して)。本発明のプロテアソーム分解タンパク質複合体の文脈における、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤の活性は、この結合剤で、下記で論じられる多様な具体例におけるNbSYN87を置き換えることにより、たやすく評価されうる。
【0020】
理論に束縛されることを望まずに述べると、NbSYN87と同じである、α-シヌクレイン上のエピトープを標的とするα-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、α-シヌクレインの、分解のための効果的な標的化において、特に有益でありうると考えられる。したがって、一部の実施形態では、特異的ポリペプチド結合剤は、同じ標的エピトープに対する、NbSYN87と同等であるか、又はより高度のアフィニティー(例えば、NbSYN87と同じ標的エピトープに対する、NbSYN87の、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、又は100%のアフィニティー)で結合する。ポリペプチド結合剤の、α-シヌクレインに対する、高度の選択性は、プロテアソーム分解タンパク質複合体の機能に有益であると考えられる。一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチドは、同じ標的エピトープへの結合について、NbSYN87と競合し(例えば、競合的結合アッセイにおいて)、例えば、標的エピトープに対する、NbSYN87と同等であるか、又はより高度のアフィニティーを有する。
【0021】
NbSYN87についての推定エピトープは、α-シヌクレインに由来する、以下の部分(C末端)配列:
【0022】
【化1】
【0023】
すなわち、α-シヌクレインのアミノ酸118~129において下線を付される。NbSYN87のさらなる詳細については、Guilliamsら、Journal of Molecular Biology、425巻、14号、2013年7月24日、2397~2411頁において見出されうる。
【0024】
本明細書で使用されるナノボディーとは、重鎖だけの(VHH)抗体に由来する、単一ドメイン抗体を指す場合がある。一部の実施形態では、ナノボディーは、α-シヌクレインに特異的であり、本発明のプロテアソーム分解タンパク質複合体の部分である場合に、α-シヌクレインの分解を誘導することが可能である、単量体ナノボディー、二量体ナノボディー、二特異性ナノボディー、又は多価ナノボディーのうちのいずれかを含む。
【0025】
常套的抗体と比較した、ナノボディーの小サイズは、多数の利点をもたらす。低分子ポリペプチド結合剤は、複雑なフォールディング又はジスルフィド架橋の形成を要求しないので、細胞内発現のために理想的である。ナノボディーの小サイズはまた、非露出型エピトープ及び/又は溝型エピトープへのアクセスをも可能とする。ナノボディーは、血液脳関門を越えるそれらの能力のために、CNS適用において、特に、有用である。
【0026】
本発明の一部の実施形態では、ナノボディーは、ラクダ科動物由来(例えば、ラクダ、アルパカ、及びラマ)の場合もあり、かつ/又はサメ由来の場合もある。ナノボディーは、非内因性タンパク質であるが、それらの、ヒト可変重(VH)配列との高度の類似性のために、非免疫原性であるか、又は低免疫原性であると考えられる。したがって、適切には、ナノボディーの、本発明のポリペプチド結合剤としての使用は、複合体の免疫原性を低減する、さらなる利点を有しうる。
【0027】
E3ユビキチンリガーゼ成分:
本明細書で記載される、複数の実施形態では、プロテアソーム分解タンパク質複合体の、E3ユビキチンリガーゼ成分は、標的タンパク質を、E3ユビキチンリガーゼ、及びそのコグネイトのE2-Ubコンジュゲートの近位に動員及び配置することが可能である、任意のE3ユビキチンリガーゼ成分でありうる。これは、標的タンパク質のユビキチン化、及び後続における、プロテアソームを介する、標的タンパク質の分解を容易とする。適切には、プロテアソーム分解タンパク質複合体は、α-シヌクレインタンパク質を、ユビキチン媒介型プロテアソーム分解による分解の標的とする。
【0028】
一部の実施形態では、E3ユビキチンリガーゼ成分は、CRL(cullin ring E3 ligase)複合体の基質受容体である。CRL(cullin ring ubiquitin ligase)は、特異的CUL(Cullin)を、E2酵素を、基質へと架橋するための中心的足場として使用するマルチサブユニットE3ユビキチンリガーゼである。一部の実施形態では、E3ユビキチンリガーゼ成分は、α-シヌクレインを、CUL2-CRL、例えば、VHL(von Hippel-Lindau)腫瘍抑制遺伝子又はその機能的バリアントへと動員する基質受容体である。適切には、E3ユビキチンリガーゼ成分は、野生型VHLタンパク質(配列番号13)又はその機能的バリアントである。適切には、機能的バリアントは、野生型VHLと、少なくとも60%同一である配列(配列番号13)、好ましくは、野生型VHLと、少なくとも70%、80%、90%、95%、又は99%同一である配列(配列番号13)を含む。機能的バリアントはまた、CUL2-CRL機構を、目的のタンパク質へと動員する能力を保持する、VHLの任意のバリアントも含む。
【0029】
別の実施形態では、E3ユビキチンリガーゼ成分は、野生型KLHL6(Kelch-like protein 6)(配列番号15)、又はその機能的バリアントである。適切には、機能的バリアントは、野生型KLHL6(配列番号15)に対して、少なくとも60%同一であり、好ましくは、野生型KLHL6(配列番号15)に対して、少なくとも70%、80%、90%、95%、又は99%同一である配列を含む。機能的バリアントはまた、CUL3を、目的のタンパク質へと動員する能力を保持する、KLHL6の任意のバリアントも含む。
【0030】
別の実施形態では、E3ユビキチンリガーゼ成分は、野生型KEAP1(Kelch-like ECH-associated protein 1)(配列番号16)、又はその機能的バリアントである。適切には、機能的バリアントは、野生型KEAP1(配列番号16)に対して、少なくとも60%同一であり、好ましくは、野生型KEAP1に対して、少なくとも70%、80%、90%、95%、又は99%同一である配列を含む。機能的バリアントはまた、CUL3を、目的のタンパク質へと動員する能力を保持する、KEAP1の任意のバリアントも含む。
【0031】
別の実施形態では、E3ユビキチンリガーゼ成分は、野生型CRBN(Cereblon)(配列番号17)、又はその機能的バリアントである。適切には、機能的バリアントは、野生型CRBN(配列番号17)に対して、少なくとも60%同一であり、好ましくは、野生型CRBNに対して、少なくとも70%、80%、90%、95%、又は99%同一である配列を含む。機能的バリアントはまた、CUL4を、目的のタンパク質へと動員する能力を保持する、KEAP1の任意のバリアントも含む。
【0032】
別の実施形態では、E3ユビキチンリガーゼ成分は、野生型KLHDC2(Kelch Domain Containing 2)(配列番号18)、又はその機能的バリアントである。適切には、機能的バリアントは、野生型KLHDC2(配列番号18)に対して、少なくとも60%同一であり、好ましくは、野生型KLHDC2に対して、少なくとも70%、80%、90%、95%、又は99%同一である配列を含む。機能的バリアントはまた、CUL2を、目的のタンパク質へと動員する能力を保持する、KEAP1の任意のバリアントも含む。
【0033】
別の実施形態では、E3ユビキチンリガーゼ成分は、野生型TRAF3d56(配列番号19)、又はその機能的バリアントである。適切には、機能的バリアントは、野生型TRAF3d56(配列番号19)に対して、少なくとも60%同一であり、好ましくは、野生型TRAF3d56に対して、少なくとも70%、80%、90%、95%、又は99%同一である配列を含む。理論に束縛されることを望まずに述べると、TRAF3d56は、RING E3リガーゼである、CULLINタンパク質を要求する場合もあり、これを要求しない場合もあることが考えられる。
【0034】
本発明は、VHL(von Hippel-Lindau)腫瘍抑制遺伝子を、最も強力な(すなわち、VHLは、全細胞内α-シヌクレインタンパク質含量の最大の低減を結果としてもたらす)E3ユビキチンリガーゼ成分として示す、下記の具体例において裏付けられるが、当業者には、他のE3ユビキチンリガーゼ成分も使用されうることが明らかであることに留意されたい。これは、KLHL6、KEAP1、CRBN、KLHDC2、及びTRAF3d56が、本発明における使用に適するE3リガーゼである、下記の実施例で裏付けられている。任意の推定E3リガーゼの、本発明における使用のための適切性は、候補E3ユビキチンリガーゼで、下記で記載される例におけるVHLを置き換えることにより容易に評価されうる。当業者は、一部の実施形態では、細胞内で、本発明のプロテアソーム分解タンパク質複合体により分解される、α-シヌクレインの総量は、複合体における使用のために選択されるα-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤、複合体における使用のために選択されるE3リガーゼ、及び/又は成分部分の配向性に応じて変動しうることを理解するであろう。全細胞内α-シヌクレインタンパク質の全て又はかなりの比率を分解することが所望される場合、VHL、KEAP1、又はKLHL6を、E3リガーゼ成分として選択することが所望されうる。代替的実施形態では、全細胞内α-シヌクレインタンパク質のうちの低比率を分解することが所望でありうる。このような実施形態では、当業者は、CRBN、KLHDC2、又はTRAF3d56のうちのいずれか1つを、E3リガーゼ成分として使用しうる。
【0035】
ヒトは、4つのファミリー:HECT、RINGフィンガー、U-box、及びPHDフィンガーへと分類される、推定500~1000のE3ユビキチンリガーゼを有する。本発明における使用に適する、代替的E3ユビキチンリガーゼ成分は、以下(又はこれらの機能的バリアント):
APPBP2、KLHDC10、KLHDC3、KLHDC2、LRR1、LRRC58、LRRC28、LRRC14、PRAME、VHL、LRRC42、MED8、RACK1、ARID1A、ARID1B、FEM1A、FEM1C、FEM1B、ZER1、ZYG11A、ZYG11B、ZSWIM5、ZSWIM8、ANKRD9、NEURL2、ASB1、ASB12、ASB11、ASB5、ASB9、ASB13、ASB7、ASB10、ASB18、ASB16、ASB4、ASB8、ASB14、ASB15、ASB2、ASB3、SPSB1、SPSB4、SPSB2、SPSB3、ASB17、ASB6、PCMTD1、PCMTD2、CISH、SOCS2、SOCS3、SOCS1、SOCS6、SOCS7、SOCS4、SOCS5、RAB40A、RAB40AL、RAB40B、RAB40C、WSB1、WSB2、ELOA、ELOA2、ELOA3、LRRC41、TULP4、BTRC、FBXW11、FBXW7、FBXW4、FBXW2、FBXW12、FBXW9、FBXW5、FBXW8、CDRT1、FBXW10、CCNF、ECT2L、FBXO16、FBXO36、FBXO43、FBXO5、FBXO17、FBXO27、FBXO2、FBXO44、FBXO6、NCCRP1、FBXO28、FBXO45、FBXO22、FBXO4、FBXO25、FBXO32、FBXO39、FBXO33、FBXO8、FBXO48、FBXO7、FBXO9、FBXO47、FBXO3、TSPAN17、FBXO15、FBXO31、FBXO24、FBXO21、FBXO34、FBXO46、FBXO30、FBXO40、FBXO42、FBXO41、FBXO10、FBXO11、FBXO18、FBXO38、LMO7、FBXL12、FBXL7、FBXL14、FBXL2、FBXL20、LRRC29、FBXL15、FBXL16、FBXL6、SKP2、FBXL13、FBXL17、FBXL4、FBXL21、FBXL3、FBXL8、FBXL22、FBXL19、KDM2A、KDM2B、FBXL5、FBXL18、DCAF8L2、DCAF8L1、DCAF8、WDTC1、DCAF6、DCAF5、CRBN、ERCC8、DDB2、RBBP7、RBBP4、GRWD1、NUP43、DCAF7、DCAF4L1、DCAF4、DCAF4L2、TLE3、TLE1、TLE2、TRPC4AP、TOR1AIP2、DCAF17、DCAF12L2、DCAF12L1、DCAF12、AHR、DCAF10、RBBP5、DCAF13、WDR53、WDR26、WDR61、SMU1、PAFAH1B1、NLE1、GNB2、WDR82、ATG16L1、SNRNP40、DCAF11、WDR5B、WDR5、POC1B、EED、WDR12、PWP1、DTL、KATNB1、CIAO1、DCAF1、DCAF16、DCAF15、WDR76、DET1、AMBRA1、WDR59、PHIP、BRWD1、KLHL4、KLHL1、KLHL5、KLHL8、KLHL20、KLHL3、KLHL2、KLHL17、KLHL18、KLHL12、KLHL7、IVNS1ABP、KLHL28、KLHL10、KEAP1、IPP、KLHL23、KLHL34、BCL6B、KLHL32、KLHL15、KLHL36、KLHL22、KLHL9、KLHL13、KLHL26、KLHL14、KLHL31、KLHL42、KBTBD11、KBTBD13、KLHL33、GAN、KLHL35、KLHL24、KLHL6、KLHL29、KLHL38、KLHL25、ENC1、CCIN、KLHL11、KBTBD4、KBTBD3、KLHL30、KLHL21、KBTBD7、KBTBD6、KBTBD8、KBTBD2、KBTBD12、KLHL41、KLHL40、BTBD6、BTBD3、BTBD2、BTBD1、TNFAIP1、KCTD13、KCTD10、KCTD7、KCTD14、KCTD8、KCTD12、KCTD16、KCTD18、KCTD15、KCTD1、KCTD6、KCTD4、KCTD21、SHKBP1、KCTD3、KCTD5、KCTD17、KCTD2、KCTD9、KCNRG、KCTD19、KCTD11、ARMC5、KCTD20、BTBD10、SLX4、RCBTB2、RCBTB1、IBTK、SPOPL、SPOP、LZTR1、RHOBTB2、RHOBTB1、RHOBTB3、ABTB2、ABTB1、CDC20、FZR1、後期促進複合体(APC)、BC-box、eloBC、CUL5、RING、LNXp80、CBX4、PIAS1、PIAS2、PIAS3、PIAS4、又はRANBP2を含むがこれらに限定されない。
【0036】
代替的E3ユビキチンリガーゼ成分は、単一ポリペプチドであるE3リガーゼを含みうる。本発明における使用に適する、単一ポリペプチドであるE3リガーゼは、以下(又はこれらの機能的バリアント):
UBR1、UBR2、UBR7、UBR3、UBR4、NOSIP、PPIL2、STUB1、PRPF19、WDSUB1、UBE4A、UBE4B、UBOX5、MEFV、TRIM10、TRIM15、TRIM26、TRIM31、TRIM11、TRIM58、TRIM21、TRIM68、TRIM38、TRIML1、TRIM17、TRIM27、TRIM7、TRIM39、TRIM60、TRIM61、TRIM4、TRIM62、TRIM69、TRIM22、TRIM34、TRIM6、TRIM5、TRIM43、TRIM48、TRIM49D1、TRIM49、TRIM49B、TRIM51、TRIM64、TRIM77、TRIM35、TRIM50、TRIM73、TRIM74、TRIM72、TRIM41、TRIM52、TRIM40、TRIM13、TRIM59、TRIM65、TRIM14、TRIM25、TRIM8、TRIM16、TRIM47、TRIM29、MID1、MID2、TRIM44、TRIM54、TRIM55、TRIM63、TRIM67、TRIM9、TRIM36、TRIM46、TRIM2、TRIM3、TRIM71、TRIM45、TRIM56、TRIM32、TRIM24、TRIM33、TRIM28、TRIM23、TRIM42、PML、TRIM37、TRAF2、TRAF3、TRAF5、TRAF4、TRAF6、TRAF7、TRAF3d56、ANKIB1、ARIH1、ARIH2、RNF144A、RNF144B、RNF217、RNF14、PRKN、RBCK1、RNF19A、RNF19B、RNF216、RNF31、NEURL3、NEURL1B、NEURL1、RNF34、RFFL、MUL1、CGRRF1、UNKL、UNK、RNF123、VPS8、VPS18、MIB1、MYLIP、DCST1、RNF220、LTN1、RNF214、RAPSN、RNF32、RNF213、RNF26、BRAP、NSMCE1、VPS11、CBLB、CBL、CBLC、RNF113B、RNF113A、RNF8、RNF208、PHF7、LRSAM1、FANCL、TMEM129、LONRF2、LONRF1、PEX10、RNF139、RNFT1、PJA2、PJA1、RNF4、LNX2、LNX1、TTC3、RNF157、MGRN1、PELI2、PELI1、PELI3、RNF180、RNF181、RNF175、RNF121、RNF24、RNF122、DZIP3、PEX2、RNF150、RNF130、RNF149、RNF148、RNF133、RNF128、RNF167、RNF13、ZNRF4、RNF44、RNF38、RNF6、RLIM、ZNRF2、ZNRF1、RNF11、RNF103、RNF145、RNF126、RNF115、RNF141、SHPRH、RNF186、LONRF3、ZNRF3、RNF43、RNF215、RNF165、RNF111、RFWD3、PEX12、ANAPC11、RNF112、RNF187、RNF169、RNF168、RNF40、RNF20、RNF219、CCNB1IP1、RFPL3、RFPL1、RFPL4A、RFPL4B、RNF39、PDZRN4、PDZRN3、RNF41、BRCA1、BARD1、RC3H2、RC3H1、SYVN1、AMFR、UHRF2、UHRF1、RNF17、RSPRY1、RNF135、NHLRC1、TOPORS、RNF207、RNF183、SIAH2、SIAH1、IRF2BPL、MAP3K1、CNOT4、RNF166、ZNF598、GID4、SH3RF2、RNF146、RNF151、SH3RF1、RNF182、RNF152、TRAIP、RNF10、RAG1、BFAR、MIB2、RNF25、RNF138、RNF114、RNF125、HLTF、RNF170、RNF5、RNF185、MNAT1、COP1、PCGF5、PCGF3、PCGF6、PCGF2、BMI1、PCGF1、RNF2、RING1、PHRF1、CHFR、ZSWIM2、MSL2、RNF212、RBBP6、RAD18、ZFPL1、MYCBP2、VPS41、CBLL2、CBLL1、RCHY1、RNF7、RBX1、MEX3A、MEX3B、MEX3C、MEX3D、MDM2、MDM4、MARCH1、MARCH8、MARCH2、MARCH3、MARCH11、MARCH4、MARCH9、MARCH5、MARCH10、MARCH7、MARCH6、MKRN1、MKRN3、MKRN2、AREL1、HECTD2、UBE3A、HERC3、HERC4、HERC5、HERC6、HACE1、HECW1、HECW2、ITCH、WWP1、WWP2、SMURF1、SMURF2、NEDD4、NEDD4L、HUWE1、UBE3D、G2E3、HECTD3、UBE3B、UBE3C、TRIP12、HECTD1、UBR5、HECTD4、HERC1、HERC2、DTX1、DTX4、DTX2、DTX3、DTX3L、BIRC2、BIRC3、BIRC8、XIAP、又はBIRC7を含むがこれらに限定されない。
【0037】
一部の実施形態では、プロテアソーム分解タンパク質複合体の、E3ユビキチンリガーゼ成分は、神経系、適切には、末梢神経系又は中枢神経系において機能的であるE3ユビキチンリガーゼ成分である。好ましい実施形態では、プロテアソーム分解タンパク質複合体の、E3ユビキチンリガーゼ成分は、中枢神経系において機能的であるE3ユビキチンリガーゼ成分である。適切には、一部の実施形態では、E3ユビキチンリガーゼは、Nedd4ファミリーのリガーゼ、HERCファミリーのリガーゼ、及び他のHECT型リガーゼを含むHECT型リガーゼである。一部の実施形態では、E3ユビキチンリガーゼは、RNF183である。
【0038】
理論に束縛されることを望まずに述べると、α-シヌクレインに選択的に結合し、これを、ユビキチン化のために適正に配置する、任意のα-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤と、任意のE3ユビキチンリガーゼ成分とは、本発明における使用に適する。α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤と、E3ユビキチンリガーゼ成分との適切な組合せは、本明細書で記載される方法を使用してたやすく同定されうる。
【0039】
当業者は、一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤の配向性と、プロテアソーム分解タンパク質複合体の、任意のE3ユビキチンリガーゼ成分とが、複合体の活性又は効力に影響を及ぼしうることを理解するであろう。適切には、一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、タンパク質複合体のN末端に配置される。代替的に、一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、タンパク質複合体のC末端に配置される。一部の実施形態では、E3ユビキチンリガーゼ成分は、タンパク質複合体のN末端に配置される。代替的実施形態では、E3ユビキチンリガーゼ成分は、タンパク質複合体のC末端に配置される。最適の配向性は、本明細書で記載される方法を使用してたやすく同定されうる。
【0040】
本発明のプロテアソーム分解タンパク質複合体の成分部分は、リンカータンパク質を介してテザリング又は相互連結されうることが理解されるであろう。当技術分野では、適切なリンカーが公知であり、下記の例において記載される。一実施形態では、リンカータンパク質は、アミノ酸配列である5'-GGGGG-3'(配列番号28)を含む。代替的実施形態では、本明細書で記載されるE3リガーゼ成分と、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤とは、例えば、細胞内で発現されると、コンジュゲートする、個別の成分として提供されうる。適切には、このような実施形態では、E3リガーゼ成分と、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤とは、当技術分野で公知である、適切なタンパク質コンジュゲーションシステムにより、改変又はタグ付けされる。適切には、プロテアソーム分解タンパク質複合体は、ドメインと、その結合パートナーとの相互作用を介してタンパク質複合体として提供されうる。例えば、一実施形態では、E3リガーゼ成分が、ビオチニル化され、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤が、ストレプトアビジンタグを有する場合もあり、この逆の場合もある。代替的に、E3リガーゼ成分が、ストレプトアビジンタグ付けされ、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤が、ビオチニル化される場合もある。当技術分野では、他のタンパク質結合対(例えば、SH3ドメイン、PDZドメイン、GKドメイン、GBドメイン等と、これらの結合パートナーとの結合対)も公知である。更に別の実施形態では、E3リガーゼ成分を、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤へと融合させて、複合体を形成するように、複合体の成分上に、インテインがもたらされうる。
【0041】
核酸及びベクター:
本発明の第2の態様では、第1の態様のプロテアソーム分解タンパク質複合体をコードする、1つ又は複数の核酸構築物が提供される。
【0042】
一部の実施形態では、核酸構築物は、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤をコードする核酸へと連結された、E3ユビキチンリガーゼ成分をコードする核酸を含む。
【0043】
当業者には、一部の実施形態では、例えば、複合体が、融合タンパク質ではない場合、複合体の個別の成分は、別個の核酸構築物上にもたらされ、本明細書の核酸構築物への言及は、このように(すなわち、適切な場合、1つを超える核酸構築物が存在する可能性を排除しないように)読まれるものとすることが明らかであろう。したがって、一部の実施形態では、複合体の別個の成分をコードする核酸配列を含む、1つ又は複数の発現構築物が提供されうる。一部の実施形態では、第1の核酸構築物は、E3ユビキチンリガーゼ成分をコードする、第1の核酸を含み、第2の核酸構築物は、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤をコードする、第2の核酸を含む。適切には、このような実施形態では、第1の核酸及び第2の核酸は、E3リガーゼ成分と、成分が、コンジュゲートし、活性複合体を形成することを可能とするのに適するエレメントへと連結された、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤成分とをコードする。
【0044】
一部の実施形態では、核酸構築物は、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤をコードする核酸へと連結された、VHL又はその機能的バリアントをコードする核酸を含む。適切には、一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、ナノボディーであり、一部の実施形態では、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤は、NbSYN87、又はその機能的バリアント若しくは生物学的同等物でありうる。
【0045】
一実施形態では、核酸構築物は、配列番号2に従うVHL、又はその機能的バリアントをコードする核酸、及び配列番号1に従うナノボディーであるNbSYN87、又はその機能的バリアントをコードする核酸を含む。
【0046】
一部の実施形態では、核酸構築物は、配列番号3に従う核酸配列、又はその機能的バリアントを含む。適切には、一部の実施形態では、核酸構築物は、配列番号3と、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、又は99%同一である核酸配列を含む。
【0047】
一実施形態では、核酸構築物は、配列番号6に従うKLHL6、又はその機能的バリアントをコードする核酸、及び配列番号1に従うナノボディーであるNbSYN87、又はその機能的バリアントをコードする核酸を含む。
【0048】
一実施形態では、核酸構築物は、配列番号7に従うKEAP1、又はその機能的バリアントをコードする核酸、及び配列番号1に従うナノボディーであるNbSYN87、又はその機能的バリアントをコードする核酸を含む。
【0049】
一実施形態では、核酸構築物は、配列番号8に従うCRBN、又はその機能的バリアントをコードする核酸、及び配列番号1に従うナノボディーであるNbSYN87、又はその機能的バリアントをコードする核酸を含む。
【0050】
一実施形態では、核酸構築物は、配列番号9に従うKLHDC2、又はその機能的バリアントをコードする核酸、及び配列番号1に従うナノボディーであるNbSYN87、又はその機能的バリアントをコードする核酸を含む。
【0051】
一実施形態では、核酸構築物は、配列番号10に従うTRAF3d56、又はその機能的バリアントをコードする核酸、及び配列番号1に従うナノボディーであるNbSYN87、又はその機能的バリアントをコードする核酸を含む。
【0052】
本発明のプロテアソーム分解タンパク質複合体をコードする核酸は、完全に合成の場合もあり、部分的に合成の場合もあり、DNA、cDNA、及びRNAを含みうるがこれらに限定されない。本発明のプロテアソーム分解タンパク質複合体をコードする核酸配列は、Sambrookら、「Molecular Cloning, A laboratory manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1~3巻、2001(ISBN-0879695773);及びAusubelら、「Short Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、4版、1999(ISBN-0471250929)において記載された技法等、当業者に周知の技法を使用して、当業者によりたやすく調製されうる。前記の技法は、(i)核酸の試料を増幅するための、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用、(ii)化学合成、又は(iii)cDNA配列の調製を含む。本発明のプロテアソーム分解タンパク質複合体をコードするDNAは、当業者に公知である、任意の適切な方式であって、コードDNAを採取する工程、発現される部分の両側において、適切な制限酵素認識部位を同定する工程、及び前記部分を、DNAから切り出す工程を含む方式で作出され、使用されうる。次いで、切り出された部分は、適切なプロモーターに作動可能に連結され、市販の発現系等、適切な発現系内で発現されうる。代替的に、DNAの、目的とする部分は、適切なPCRプライマーを使用することにより増幅されうる。DNA配列に対する改変は、部位指向変異誘発を使用することによりなされうる。
【0053】
本発明のプロテアソーム分解タンパク質複合体をコードする核酸配列は、1つ又は複数の発現制御配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリA配列、イントロン等へと作動可能に連結された、上記で記載された、少なくとも1つの核酸を含む、プラスミド、ベクター、転写カセット又は発現カセットの形態にある発現構築物として提供されうる。適切には、発現制御配列は、標的細胞内のプロテアソーム分解タンパク質複合体の発現をもたらすのに十分である。発現は、構成的な場合もあり、調節可能の場合もある。
【0054】
したがって、本発明の第3の態様では、上記で明示された核酸構築物を含む発現構築物が提供される。適切には、発現構築物は、真核細胞内又は原核細胞内の発現に適合させられたベクター、例えば、発現ベクターである。
【0055】
適切には、本発明の一部の実施形態では、ベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター等のウイルスベクターである。一部の好ましい実施形態では、ベクターは、AAVベクターである。
【0056】
一部の実施形態では、ベクターは、遺伝子治療用ベクター、適切には、AAVベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、又はレンチウイルスベクターである。レンチウイルスベクターは、CNS内の遺伝子導入ツールとして、広範に使用されており、ニューロン、星状細胞、及び希突起膠細胞への形質導入の成功を可能とすることが公知である。レンチウイルスベクターは、比較的大きなクローニング能を有し、ウイルス遺伝子は発現されないため、有益である。特に、好ましいレンチウイルスベクター系は、HIV-1に基づく。単純ヘルペスウイルスベクター及びアデノウイルスベクターもまた、CNS細胞への形質導入の成功を示すので、CNS内の遺伝子導入ツールとしての使用のための潜在的可能性を示すが、それらの毒性のために、それほど好ましくない。
【0057】
当技術分野では、AAVベクターは、広範に論じられている。AAVベクターは、典型的に、ゲノムへと統合されず、免疫応答を誘発しないので、特に目的のベクターである。AAVの血清型1、2、4、5、8、9、及び2g9(AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV8、AAV9、及びAAV2g9)は、CNSにおける効果的形質導入を達成することが注目されている。したがって、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV8、AAV9、及びこれらの誘導体は、特に、好ましいAAV血清型である。一部の実施形態では、AAV9は、特に、好ましいAAVベクターである。他の実施形態では、AAV2g9は、特に、好ましいAAVベクターである(WO2014/144229)。更に他の実施形態では、特に、好ましいAAVベクターは、AAVDJ8である(Hammondら、2017)。適切には、AAVベクターは、2つのITR(inverted terminal repeat)の間に配置された、本発明の核酸配列を含むウイルスゲノムを含む。例えば、WO2019/028306は、CNSにおいて使用されうる、多様な野生型AAVベクター、及び改変AAVベクターを開示する。一実施形態では、AAVベクターは、AAVベクターの送達後において、血液脳関門を透過することが可能である。一実施形態では、本発明のAAVベクターは、複製欠損であり、それらのウイルスゲノム内において、機能的なRepタンパク質及びCapタンパク質をコードする配列を欠く、組換えAAVウイルスベクターである。これらの欠損AAVベクターは、大半の親コード配列又は全ての親コード配列を欠く場合があり、本質的に、1つ又は2つのAAV ITR配列、及び細胞、組織、臓器、又は生物への送達のための目的の核酸だけを運ぶ。適切には、本明細書における使用のためのAAVベクターは、目的の核酸ペイロード又は核酸カーゴの形質導入に必要な、最小限の成分へと削減されたウイルスを含む。このように、AAVベクターは、野生型ウイルスにおいて見出される、有害な複製特徴及び/又は組込み特徴を欠く一方で、特異的送達のための媒体として操作される。一実施形態では、本発明のAAV粒子は、scAAVである。別の実施形態では、本発明のAAV粒子は、ssAAVである。当技術分野では、AAV粒子を作製及び/又は改変するための方法が、広範に開示されている(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、WO2000/28004;WO2001/23001;WO2004/112727;WO2005/005610、及びWO2005/072364を参照されたい)。一実施形態では、AAVベクターは、血管内(例えば、静脈内又は動脈内)投与において、血液脳関門の透過を可能とするカプシド(例えば、血液脳関門の効果的越境のために操作されたカプシド、例えば、VOY101、VOY201、AAVPHP.N、AAVPHP.A、AAVPHP.B、PHP.B2、PHP.B3、G2A3、G2B4、G2B5、PHP.S、及びこれらのバリアントを含む、カプシド又はペプチドインサートについて論じる、例えば、WO2014/144229を参照されたい)を含む。
【0058】
当技術分野では、AAVベクターを作製する方法が周知であり、それらの各々の内容が、参照により本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許第US6204059号、同第US5756283号、同第US6258595号、同第US6261551号、同第US6270996号、同第US6281010号、同第US6365394号、同第US6475769号、同第US6482634号、同第US6485966号、同第US6943019号、同第US6953690号、同第US7022519号、同第US7238526号、同第US7291498号、及び同第US7491508号、同第US5064764号、同第US6194191号、同第US6566118号、同第US8137948号;又は国際公開第WO1996039530号、同第WO1998010088号、同第WO1999014354号、同第WO1999/015685号、同第WO1999/047691号、同第WO2000/055342号、同第WO2000/075353号、及び同第WO2001/023597号;「Methods In Molecular Biology」、Richard編、Humana Press、NJ(1995);O'Reillyら、「Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual」、Oxford Univ. Press (1994);Samulskiら、J Fir.、63:3822~8 (1989);Kajigayaら、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA、88: 4646~50 (1991);Ruffingら、J. Vir.、66:6922~30 (1992);Kimbauerら、Vir.、219:37~44 (1996);Zhaoら、Vir.、272: 382~93 (2000)において記載されている。組換えAAVウイルス粒子の作製のために一般に使用されるウイルス複製細胞は、HEK293細胞、COS細胞、HeLa細胞、KB細胞、及び他の哺乳動物細胞系を含むがこれらに限定されない。
【0059】
一部の実施形態では、ベクターは、例えば、当技術分野で公知の通り、カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質を使用する、非ウイルスベクターである。多様な非ウイルスベクターについては、Selene Ingusciら(「Gene Therapy Tools for Brain Diseases」、Front. Pharmacol.、10:724. doi: 10.3389)において論じられている。
【0060】
一部の実施形態では、本発明に従うベクター、適切には、ウイルスベクターを含むビリオン(ウイルス粒子)が提供される。一部の実施形態では、ビリオンは、AAVビリオンである。
【0061】
したがって、本発明は、上記で記載されたベクターを含む組換えビリオン(ウイルス粒子)を更に提供する。
【0062】
医薬組成物:
別の態様では、本発明は、治療有効量の、上記で明示されたプロテアソーム分解タンパク質複合体を含む医薬組成物を提供する。このような組成物は、典型的に、少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤又は担体を含む。
【0063】
本明細書で使用される、「担体」は、任意の溶媒、分散媒、媒体、コーティング、希釈剤、抗菌剤、及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイド等、並びに全てのこれらを含む。当技術分野では、医薬活性物質のためのこのような媒質及び薬剤の使用が周知である。また、補助有効成分も、組成物へと組み込まれうる。「薬学的に許容可能な」という語句は、宿主へと投与される場合に、アレルギー性の有害反応又は類似の有害反応をもたらさない分子実体及び組成物を指す。適切な担体は、医薬組成物が方向付けられる適応を念頭に、当業者により、たやすく選択されうる。例えば、1つの適切な担体は、様々な緩衝液により製剤化されうる、生理食塩液(例えば、リン酸緩衝生理食塩液)を含む。他の例示的な担体は、滅菌の、生理食塩液、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ラッカセイ油、ゴマ油、及び水を含む。担体の選択は、本開示により限定されない。医薬組成物により、保存剤又は化学的安定化剤等、他の多様な常套的医薬成分ももたらされうる。適切な、例示的保存剤は、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、及びパラクロロフェノールを含む。適切な化学的安定化剤は、ゼラチン及びアルブミンを含む。
【0064】
リポソーム、ナノカプセル、微粒子、マイクロスフェア、脂質粒子、小胞等の送達媒体は、本開示の組成物の、適切な宿主細胞への導入のために使用されうる。特に、ベクターにより送達されるトランス遺伝子は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、又はナノ粒子等に封入される送達のために製剤化されうる。
【0065】
適切には、本発明の一態様では、上記で論じられた、プロテアソーム分解タンパク質複合体、核酸、発現構築物、ベクター、又はビリオンと、薬学的に許容される担体又は希釈剤とを含む医薬組成物が提供される。適切には、一実施形態では、組成物は、標的細胞内のα-シヌクレインの阻害剤として作用するのに適する。さらなる実施形態では、組成物は、標的細胞内のα-シヌクレインのレベルを調節するのに適する。タンパク質レベルの調節とは、α-シヌクレインのレベルの低減又は上昇を指す場合がある。適切には、医薬組成物は、α-シヌクレインの分解を結果としてもたらす。
【0066】
適切には、一実施形態では、本明細書で提示される態様及び実施形態のうちのいずれかに従う、プロテアソーム分解タンパク質複合体又は医薬組成物、α-シヌクレインを、標的細胞内のプロテアソーム分解の標的とする。任意選択で、α-シヌクレインは、SNCA二重重複、SNCA三重重複、並びに/又はA53T、A30P、H50Q、E46K、G51D、及び/若しくはA53Eを含む群から選択される点変異を有する。適切には、一部の実施形態では、α-シヌクレインは、α-シヌクレインの単量体、オリゴマー、プロトフィブリル、成熟線維、又は凝集物である。
【0067】
適切な標的細胞は、任意の真核細胞を含む。好ましくは、標的細胞は、哺乳動物細胞、より好ましくは、ヒト細胞である。一部の実施形態では、標的細胞は、神経細胞、好ましくは、中枢神経系に由来する細胞である。神経細胞は、一次ニューロン細胞、又はニューロン由来細胞系、例えば、不死化細胞系の細胞でありうる。一部の実施形態では、標的細胞は、ニューロン、星状細胞、希突起膠細胞、小膠細胞、及び/又は上衣細胞である。
【0068】
本開示に従う医薬組成物は、バルクにより調製され、パッケージングされ、かつ/若しくは販売される場合もあり、単一単位用量として、調製され、パッケージングされ、かつ/若しくは販売される場合もあり、かつ/又は複数の単一単位用量として、調製され、パッケージングされ、かつ/若しくは販売される場合もある。本明細書で使用される、「単位用量」とは、所定量の有効成分を含む医薬組成物の個別量を指す。有効成分の量は、一般に、対象へと投与される有効成分の投与量と等量であり、かつ/又は、例えば、このような投与量の2分の1若しくは3分の1等、このような投与量の好都合な分数である。
【0069】
治療及び関連する方法:
さらなる態様では、本発明は、それを必要とする対象における疾患を処置又は防止する方法であって、前記対象へと、治療有効量の、上記で論じられた、プロテアソーム分解タンパク質複合体、発現構築物、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0070】
適切には、方法は、対象の細胞へと、上記で論じられた、プロテアソーム分解タンパク質複合体、発現構築物、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物を導入する工程を含む。適切な標的細胞については、上記で論じられている。
【0071】
一部の実施形態では、方法は、本発明に従うベクター又はビリオンを、対象へと投与する工程を含む。適切には、ベクターは、遺伝子治療用ウイルスベクター、例えば、AAVベクターである。
【0072】
本発明はまた、対象における疾患を処置又は防止する方法における使用のための、本明細書で記載される、プロテアソーム分解タンパク質複合体、発現構築物、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物も提供する。方法は、適切には、前記対象へと、治療有効量の、本発明のプロテアソーム分解タンパク質複合体又は医薬組成物を投与する工程を含む。
【0073】
適切には、上記で論じられた、プロテアソーム分解タンパク質複合体、発現構築物、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物は、神経疾患及び/又は神経障害の処置、予防、緩和、又は改善のために使用される。一実施形態では、プロテアソーム分解タンパク質複合体、発現構築物、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物は、神経変性障害を伴う対象の処置における使用のための、プロテアソーム分解タンパク質複合体、発現構築物、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物である。一部の実施形態では、神経変性障害は、シヌクレイノパシーである。一部の実施形態では、神経変性障害は、PD、認知症、及び/又は多系統委縮症のうちのいずれかである。
【0074】
一部の実施形態では、方法は、プロテアソーム分解タンパク質複合体、発現構築物、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物を全身投与する工程を含む。全身投与は、腸内投与(例えば、経口投与、舌下投与、及び直腸内投与)の場合もあり、非経口投与(例えば、注射)の場合もある。適切な投与法は、腸内投与(例えば、経口投与、舌下投与、及び直腸内投与)の場合もあり、静脈内注射、動脈内注射、頭蓋内注射、筋内注射、皮下注射、関節内注射、髄腔内注射、及び皮内注射を含む非経口投与(例えば、注射)の場合もある。好ましい投与法は、静脈内注射、動脈内注射、頭蓋内注射、及び髄腔内注射である。
【0075】
一部の実施形態では、方法は、対象のCNSへと、本明細書で記載される医薬組成物を導入する工程を含む。CNSへの、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物の導入に伴う特定の困難は、血液脳関門である。血液脳関門は、血流中のある特定の化学物質及び分子が、中枢神経系の細胞外液へと越境することを防止する、内皮細胞による半透性境界である。動物研究では、この障害は、頭蓋内注射、適切には、脳室内(ICV)注射等、動物の脳への直接的な注射により克服されている(例えば、Keiserら、Curr Protoc Mouse Biol.、2018年12月、8(4):e57を参照されたい)。この投与法は、実施するのに困難であるので、ヒトにおける遺伝子治療に不利な場合があり、対象に危険でありうる。
【0076】
そうではなくて、ヒトにおける遺伝子治療状況では、本明細書で記載される発現カセットは、発現カセットを含むウイルスベクターの、静脈内投与又は動脈内(例えば、頸動脈内)投与により、CNSへと導入されることが好ましい。適切には、ウイルスベクターは、AAVベクターである。AAVの一部の血清型の静脈内投与又は動脈内投与は、AAVベクターの、脳への透過を可能とする。静脈内投与又は動脈内投与は、頭蓋内投与より安全、かつ、侵襲性が小さい一方で、血液脳関門を介する透過を、なおも可能とする。
【0077】
一部の実施形態では、遺伝子治療用ウイルスベクターは、1つ若しくは複数のさらなる治療剤、又は細網内皮系によるベクターのクリアランスを防止するようにデザインされた、1つ若しくは複数の飽和剤と共に、共時的に投与される場合もあり、逐次的に投与される場合もある。
【0078】
ベクターが、AAVベクターである場合、ベクターの投与量は、1kg当たり1×1010ゲノムコピー~1kg当たり1×1015ゲノムコピー又はこれを超える投与量、適切には、1kg当たり1×1012ゲノムコピー~1kg当たり1×1014ゲノムコピー、適切には、1kg当たり5×1012ゲノムコピー~1kg当たり5×1013ゲノムコピーでありうる。
【0079】
一般に、処置を必要とする対象は、哺乳動物であり、好ましくは、霊長動物、より好ましくは、ヒトであろう。典型的に、それを必要とする対象は、疾患に特徴的な症状、例えば、上記で論じられた疾患、最も好ましくは、シヌクレイノパシーを提示するであろう。方法は、典型的に、治療量の、本発明の治療用生成物を発現させることにより、それを必要とする対象により提示される症状を改善する工程を含む。
【0080】
当技術分野では、in vitro及びin vivoの標的細胞内における、治療用遺伝子発現のための遺伝子治療プロトコールが周知であり、本明細書では、詳細に論じられない。略述すると、遺伝子治療プロトコールは、プラスミドDNAベクター(ネイキッド又はリポソーム内)又はウイルスベクターの、筋内注射、間質内注射、気道内滴下、内皮への適用、肝実質内投与、及び静脈内投与又は動脈内投与(例えば、肝動脈内投与、肝静脈内投与)を含む。DNAの、標的細胞へのアベイラビリティーを増強するために、多様なデバイスが開発されている。簡単な手法は、標的細胞を、目的とするベクターを含有する、カテーテル又は植込み用材料と、物理的に接触させることであるが、より複雑な手法は、ジェット式注射デバイス等を使用しうる。哺乳動物細胞への遺伝子導入は、ex vivo手順及びin vivo手順の両方を使用して実施されている。ex vivo法は、細胞の採取、in vitroにおける、適切な発現ベクターによる形質導入に続く、形質導入された肝細胞の、肝臓への再導入を典型的に要求する。in vivoにおける遺伝子導入は、DNA又はウイルスベクターを注射することにより達成される。
【0081】
本発明のさらなる態様では、例えば、患者の処置のための医薬としての使用のための、本発明の任意の態様に従う、プロテアソーム分解タンパク質複合体、発現構築物、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物が提供される。適切には、患者は、シヌクレイノパシーを患っている。
【0082】
α-シヌクレイン:
α-シヌクレインは、天然変性タンパク質(IDP)ファミリーのメンバーであり、α-シヌクレイン自体は、三次構造を有さず、そのコンフォメーションは、相互作用因子又は脂質膜の存在等、多数の異なる因子の影響を受ける(15)。PDにおけるその役割は、家族性PDを伴う患者において見出される、タンパク質の6つの異なる変異が、凝集過程において、示差的オリゴマー及び線維状形態を優先することが示されているという事実によってもまた、更に複雑化される(16)。興味深いことに、これらのレビー小体内のα-シヌクレインは、ほぼ全てが、セリン129においてリン酸化されており(17)、健常個体の脳内には、PDを伴う患者と比較して、微量レベルのリン酸化タンパク質が存在するに過ぎないので、これは、これらの凝集構造の存在を確認するためのマーカーとして使用されうる。このリン酸化が、タンパク質の凝集を促進するのか、凝集物形成の後で生じるのかは、不明である。細胞上で誘発された毒性が、凝集物自体に起因するのか、毒性の機能獲得を介するのか、機能喪失を誘発する、その内因性作用部位からのαシヌクレインの動員に起因するのかもまた、未だ決定されていない。
【0083】
適切には、一実施形態では、本明細書で提示される任意の態様に従うプロテアソーム分解タンパク質複合体は、α-シヌクレインを、プロテアソーム分解の標的とする。適切には、α-シヌクレインは、SNCA二重重複、SNCA三重重複、並びに/又はA53T、A30P、H50Q、E46K、G51D、及び/若しくはA53Eを含む群から選択される点変異を有する。
【0084】
本発明の任意の態様に従う、分解の標的とされるα-シヌクレインは、α-シヌクレインの単量体、オリゴマー、プロトフィブリル、成熟線維、又は凝集物である。
【0085】
さらなる態様では、本発明は、本明細書で記載される、任意の態様のプロテアソーム分解タンパク質複合体を使用してα-シヌクレインを分解の標的とするための方法を提供する。
【0086】
一実施形態では、方法は、
in vitroの場合もあり、in vivoの場合もある、本発明のプロテアソーム分解タンパク質複合体、発現構築物、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物を、細胞へと投与する工程
を含み;
プロテアソーム分解タンパク質複合体の、α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤成分が、α-シヌクレインに結合し;
α-シヌクレイン特異的ポリペプチド結合剤へとテザリングされたE3リガーゼ成分が、α-シヌクレインタンパク質を、細胞内のE3リガーゼシステムへと動員し;
α-シヌクレインが分解されるように、細胞内のE3リガーゼシステムが、α-シヌクレインをユビキチン化する。
【0087】
当業者は、どのCullinタンパク質が、複合体へと動員されるのかは、プロテアソーム分解タンパク質複合体である、E3ユビキチンリガーゼ成分が決定づけることを理解するであろう。E3ユビキチンリガーゼは、各々、E2リガーゼを動員する場合に、特異的Cullinを、中心的足場として使用する。適切には、一部の実施形態では、本発明のE3リガーゼ成分は、そのコグネイトのCullin、例えば、CUL1、CUL2、CUL3、CUL4A、CUL4B、CUL5、又はCUL7のうちのいずれか1つを動員するであろう。適切には、一部の実施形態では、E3リガーゼシステムは、CUL2-CRLを含む。別の実施形態では、E3リガーゼシステムは、CUL3を含む。更に別の実施形態では、E3リガーゼシステムは、CUL4Aを含む。別の実施形態では、E3リガーゼシステムは、CUL4Bを含む。一部の実施形態では、E3リガーゼシステムは、CUL5を含む。別の実施形態では、E3リガーゼシステムは、CUL7. 6を含む。適切には、本発明のプロテアソーム分解タンパク質複合体についての一実施形態では、E3ユビキチンリガーゼ成分は、α-シヌクレインを、CUL2-CRL、CUL3、又はCUL4のうちのいずれかへと動員することが可能である。適切には、E3リガーゼ成分が、TRAF3d56、すなわち、TRAF3のバリアントである実施形態では、Cullinタンパク質が、複合体へと動員されない場合がある。
【0088】
一実施形態では、プロテアソーム分解タンパク質複合体、発現構築物、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物は、細胞へと投与される。適切には、細胞は、上記で記載された、任意の標的細胞である。
【0089】
好ましい実施形態では、α-シヌクレインは、プロテアソーム分解の標的とされ、ユビキチン媒介型プロテアソーム分解を介して分解される。一部の実施形態では、本明細書で記載された、分解の標的とされるα-シヌクレインは、SNCA二重重複、SNCA三重重複、並びに/又はA53T、A30P、H50Q、E46K、G51D、及び/若しくはA53Eを含む群から選択される任意の点変異を含む。適切には、一部の実施形態では、α-シヌクレインは、α-シヌクレインの単量体、オリゴマー、プロトフィブリル、成熟線維、又は凝集物である。
【0090】
調査研究用ツール:
本発明のさらなる態様では、本発明のプロテアソーム分解タンパク質複合体は、細胞内の目的の経路を探索するためのツールとして使用される。適切には、プロテアソーム分解タンパク質複合体は、調査研究用ツールとして、適用可能である。一部の実施形態では、プロテアソーム分解タンパク質複合体は、目的のタンパク質(POI)に特異的なポリペプチド結合剤へとテザリングされたE3リガーゼを含む。適切には、プロテアソーム分解タンパク質複合体は、POIを分解する。一部の実施形態では、プロテアソーム分解タンパク質複合体は、POIの発現を制御する。適切には、プロテアソーム分解タンパク質複合体は、細胞、好ましくは、哺乳動物細胞へと送達される。一部の実施形態では、細胞は、中枢神経系(CNS)細胞である。一部の実施形態では、POIは、α-シヌクレインである。
【0091】
一部の実施形態では、本発明のプロテアソーム分解タンパク質複合体が、調査研究用ツールとして使用される場合、プロテアソーム分解タンパク質複合体は、in vitro、ex vivo、又はin vivoにおいて、細胞へと送達されうる。
【0092】
キット:
一態様では、本発明の態様及び実施形態のうちのいずれかにおける使用のためのキットであって、上記で論じられた、プロテアソーム分解タンパク質複合体、発現構築物、ベクター、ビリオン、又は医薬組成物と、使用のための指示書とを含むキットが提供される。
【0093】
本明細書で記載される、任意の態様及び/又は実施形態では、プロテアソーム分解タンパク質複合体は、適切には、AdPROM(affinity-directed protein missile)である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】α-シヌクレインのポリユビキチン化を誘導するように、VHLへとテザリングされたナノボディーである、NbSYN87を使用する、AdPROMシステムを描示する概略図である。
図2A】GFP特異的ナノボディーへとテザリングされたVHLは、α-シヌクレインを分解する。E3リガーゼである、RIM32、RNF126、SIAH3、RNF144A、RNF125を使用したところ、α-シヌクレインの分解は、観察されなかった。
図2B】E3リガーゼである、Ubch5a、WDR5、KLHDC2、MDM2、KLHL6、KLHL7、TRAF3d52、TRAF3d56、TRAF4、LONRF2(P430-N500)、LONRF2(339-754)、TRAF3、WWP1、WWP2、VHL、TRIM24、KEAP1、PHIP、及びCRBNの構築物及び関連する陰性対照を発現するように、レトロウイルスにより、U2OS Flp-In-T-Rex GFP-アルファ-シヌクレイン細胞へと形質導入を行ったことを示す図である。
図2C】U2OS Flp-In-T-Rex GFP-アルファ-シヌクレイン細胞を、細胞溶解の前に、表示の濃度の、NEDD化阻害剤であるMLN4924、プロテアソーム阻害剤であるMG-132又はボルテゾミブ、リソソーム阻害剤であるバフィロマイシンA1、又は陰性対照としてのDMSOで、14時間にわたり処理した。FLAG-KLHL6-抗GFP16又はFLAG-抗GFP16-KLHL6を発現する、U2OS Flp-In-T-Rex GFP-アルファ-シヌクレイン細胞である。FLAG-VHL-抗GFP16又はFLAG-KEAP1-抗GFP16を発現する、U2OS Flp-In-T-Rex GFP-アルファ-シヌクレイン細胞である。FLAG-CRBN-抗GFP16又はFLAG-TRAF3d56-抗GFP16を発現する、U2OS Flp-In T-Rex GFP-アルファ-シヌクレイン細胞系である。
図3A】AdPROMシステムによる、抗GFPナノボディー及び抗α-シヌクレインナノボディーの両方の使用を介する、GFP-α-シヌクレインの標的化分解を示す図である。A)Tet Onプロモーターの制御下で、GFPでタグ付けされた、野生型又はA53T変異体のα-シヌクレインを発現する、U2OS Flp-In T-REX細胞を、表示の時点において、20ng/mlのドキシサイクリンで処理した。細胞を溶解させ、20μgのタンパク質を、SDS-PAGEにより解像し、ニトロセルロース膜へと転写し、表示の抗体によりイムノブロットした。GFPでタグ付けされたα-シヌクレインを発現する、U2OS Flp-In T-REX細胞に、レトロウイルスを感染させて、AdPROM構築物であるVHL-抗GFP、又はVHL単独対照及び抗GFP単独対照を発現させた。細胞を溶解させ、20μgの溶解物を、SDS-PAGEにより解像し、ニトロセルロース膜へと転写し、表示の抗体によりイムノブロットした。
図3B】AdPROMシステムによる、抗GFPナノボディー及び抗α-シヌクレインナノボディーの両方の使用を介する、GFP-α-シヌクレインの標的化分解を示す図である。B)GFPでタグ付けされた、野生型α-シヌクレインを発現する、U2OS Flp-In T-REX細胞に、レトロウイルスを感染させて、AdPROM構築物であるVHL-抗GFP、又は2つのα-シヌクレイン特異的ナノボディー(NbSYN87及びNbSYN2)のうちの1つへとコンジュゲートされたVHLを発現させた。細胞を溶解させ、20μgの溶解物を、SDS-PAGEにより解像し、ニトロセルロース膜へと転写し、表示の抗体によりイムノブロットした。
図3C】AdPROMシステムによる、抗GFPナノボディー及び抗α-シヌクレインナノボディーの両方の使用を介する、GFP-α-シヌクレインの標的化分解を示す図である。C)Bと同様であるが、GFPタグ付けα-シヌクレインのA53T変異体を発現する細胞による図である。
図4A】AdPROMシステムを介する、非タグ付けα-シヌクレインの標的化分解を示す図である。A)AdPROMシステムを介して、非タグ付けα-シヌクレインのポリユビキチン化を誘導するように、VHLへとテザリングされたNbSYN87の使用を描示する概略図である。
図4B】AdPROMシステムを介する、非タグ付けα-シヌクレインの標的化分解を示す図である。B)α-シヌクレインの野生型又はA53T変異体を発現する、U2OS Flp-In T-REX細胞に、レトロウイルスを感染させて、VHL-NbSYN87又はVHL-抗GFPを、適切な対照と共に発現させた。細胞を溶解させ、20μgの溶解物を、SDS-PAGEにより解像し、ニトロセルロース膜へと転写し、表示の抗体によりイムノブロットした。
図4C】AdPROMシステムを介する、非タグ付けα-シヌクレインの標的化分解を示す図である。C)野生型α-シヌクレイン又はA53Tα-シヌクレインを発現する、HeLa Flp-In T-Rex細胞に、レトロウイルスを感染させて、NbSYN2又はNbSYN87へとテザリングされたVHLを、適切な対照と共に発現させた。細胞を溶解させ、20μgの溶解物を、SDS-PAGEにより解像した。
図4D】AdPROMシステムを介する、非タグ付けα-シヌクレインの標的化分解を示す図である。D)N末端両親媒性領域内において、5つの家族性変異体を示す、α-シヌクレインの、3つの主要領域を描示する概略図である。C末端ドメイン内のナノボディーであるNbSYN87の結合部位は赤線で描示される。
図4E】AdPROMシステムを介する、非タグ付けα-シヌクレインの標的化分解を示す図である。E)α-シヌクレインのA30P変異体又はE46K変異体を発現する、HeLa Flp-In T-Rex細胞に、レトロウイルスを感染させて、VHL-NbSYN87を、VHL対照及びNbSYN87対照と共に発現させた。細胞を溶解させ、20μgの溶解物を、SDS-PAGEにより解像した。
図4F】AdPROMシステムを介する、非タグ付けα-シヌクレインの標的化分解を示す図である。F)Eと同様であるが、α-シヌクレインのG51D変異体又はH50Q変異体による図である。
図5A】NbSyn87と、内因性アルファ-シヌクレインとの相互作用を示す図である。A)SKMEL13 WT(Flag-VHL又は3×Flag-NbSYN87(表示の通り)を感染させられた)抽出物若しくはKO細胞抽出物(インプット)、これらの抽出物に由来する、内因性アルファ-シヌクレイン免疫沈降物(IP)、又は免疫沈降後抽出物(フロースルー)を、表示の抗体によるウェスタンブロット解析にかけた。
図5B】NbSyn87と、内因性アルファ-シヌクレインとの相互作用を示す図である。B)対照ベクター(空)又はGFP-NBSYN87をコードするベクターで、一過性にトランスフェクトされた、SK-MEL13細胞を、免疫蛍光法のために加工し、蛍光顕微鏡法により、GFP-NbSyn87と、内因性アルファ-シヌクレインとの共局在について解析した。代表的画像を添付する。DAPI染色は、核DNA染色のために実施した。
図6A】黒色腫細胞内における、内因性α-シヌクレインの標的化分解を示す図である。A)5つの異なる黒色腫細胞のパネルを溶解させ、20μgの溶解物を、SDS-PAGEにより解像し、α-シヌクレインについてイムノブロットした。
図6B】黒色腫細胞内における、内因性α-シヌクレインの標的化分解を示す図である。B)SK-MEL13細胞及びG-361細胞に、レトロウイルスを感染させて、VHL-NbSYN87又はVHL-抗GFPを、適切な対照と共に発現させた。細胞を溶解させ、20μgの溶解物を、SDS-PAGEにより解像した。
図6C】黒色腫細胞内における、内因性α-シヌクレインの標的化分解を示す図である。C)VHL-NbSYN87、又はNbSYN87単独を発現するG-361細胞を、1uMのNEDD化阻害剤であるMLN4924で、24時間にわたり処理してから、溶解させた。20μgの溶解物を、SDS-PAGEにより解像した。
図7A】FLAGタグ付けNbSYN87-KEAP1、KEAP1-NbSYN87、KLHDC2-NbSYN87、又はKLHL6-NbSYN87を発現するように、レトロウイルスにより、SK-MEL-13細胞へと形質導入を行ったことを示す図である。細胞を溶解させ、20μgの溶解物タンパク質を、SDS-PAGEにより解像し、表示の抗体によるイムノブロット法のために、ニトロセルロース膜へと転写した。独立反復実験のN=2について、GAPDH対照±SDに対して正規化された、アルファ-シヌクレインの定量である。
図7B】FLAGタグ付けNbSYN87-KEAP1、KEAP1-NbSYN87、KLHDC2-NbSYN87、又はKLHL6-NbSYN87を発現するように、レトロウイルスにより、SK-MEL-13細胞へと形質導入を行ったことを示す図である。細胞を溶解させ、20μgの溶解物タンパク質を、SDS-PAGEにより解像し、表示の抗体によるイムノブロット法のために、ニトロセルロース膜へと転写した。独立反復実験のN=2について、GAPDH対照±SDに対して正規化された、アルファ-シヌクレインの定量である。
図8A】α-シヌクレインの分解が、CRISPR KOレベルと同等であり、神経芽細胞腫細胞系において再現可能であることを示す図である。CRISPR/CAS9戦略を使用して、SNCAノックアウトSK-MEL13細胞を作出した。野生型細胞に、レトロウイルスを感染させて、AdPROM構築物を発現させた。細胞を、KO細胞と共に溶解させ、20μgの溶解物を、SDS-PAGEにより解像した。
図8B】α-シヌクレインの分解が、CRISPR KOレベルと同等であり、神経芽細胞腫細胞系において再現可能であることを示す図である。独立実験のn=3とするローディング対照±SDに対して正規化された、(A)によるα-シヌクレインレベルの定量である。
図8C】α-シヌクレインの分解が、CRISPR KOレベルと同等であり、神経芽細胞腫細胞系において再現可能であることを示す図である。SK-MEL13空、VHL-NbSYN87、及び2つのSNCA KOクローン(クローン14及びクローン22)を、抗α-シヌクレイン免疫蛍光法にかけ(赤)、DNAを、DAPIで染色した(青)。
図8D】α-シヌクレインの分解が、CRISPR KOレベルと同等であり、神経芽細胞腫細胞系において再現可能であることを示す図である。SH-SY5Y細胞に、レトロウイルスを感染させて、VHL-NbSYN87、VHL、NbSYN87を発現させるか、又は空ベクターを感染させた。細胞を溶解させ、20μgの溶解物を、SDS-PAGEにより解像し、ニトロセルロース膜へと転写し、表示の抗体によりイムノブロットした。
図8E】α-シヌクレインの分解が、CRISPR KOレベルと同等であり、神経芽細胞腫細胞系において再現可能であることを示す図である。独立実験のn=3とするローディング対照±SDと比べた、(D)によるα-シヌクレインレベルの定量である。
図9】全プロテオミクスに供された試料についてのイムノブロット法を示す図である。空ベクター又はVHL-NbSYN87を形質導入されたSK-MEL13細胞を、DMSO、又は40uMのプロテアソーム阻害剤であるMG132で、24時間にわたり処理してから、溶解させた。
図10】VHL-NbSYN87を介する、アルファ-シヌクレインの標的化分解が、高度に特異的であることを示す図である。VHL-NbSYN87及び対照のプロテオームについてのボルカノプロットである。タンパク質存在度の倍数変化(log2)を、t検定のp値(-log10)に対してプロットする。有意のタンパク質を指し示す、カットオフ曲線である。アルファ-シヌクレインは、その存在度が、VHL-NbSYN87 AdPROMを形質導入された細胞内において、対照と比較して有意に低度である、唯一のタンパク質である。
図11】VHL-NbSYN87を介する、アルファ-シヌクレインの標的化分解が、タンパク質のヒト形態に特異的であることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
下記では、本発明の多様な実施形態の実行及び使用について、詳細に論じられるが、本発明は、多種多様な具体的文脈において実施されうる、多くの適用可能な発明概念を提示することを理解されたい。本明細書で論じられる具体的実施形態は、本発明を実行及び使用するための具体的方途を例示するだけのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0096】
本発明の実施は、そうでないことが指し示されない限りにおいて、当技術分野の技術の範囲内にある、細胞生物学、細胞培養物、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の常套的技法を利用する。このような技法については、文献において、十分に説明されている。例えば、「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubel、2000、Wiley and son Inc、Library of Congress、USA);「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、3版、(Sambrookら、2001、Cold Spring Harbor、New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press);「Oligonucleotide Synthesis」(M. J. Gait編、1984);米国特許第4,683,195号;「Nucleic Acid Hybridization」(Harries及びHiggins編、1984);「Transcription and Translation」(Hames及びHiggins編、1984);「Culture of Animal Cells」(Freshney、Alan R. Liss, Inc.、1987);「Immobilized Cells and Enzymes」(IRL Press、1986);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」(1984);「Methods in Enzymology」(Abelson及びSimon責任編集、Academic Press,Inc.、New York)、特に、154及び155巻(Wuら編)及び185巻、「Gene Expression Technology」(Goeddel編);「Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells」(Miller及びCalos編、1987、Cold Spring Harbor Laboratory);「Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology」(Mayer及びWalker編、Academic Press、London、1987);「Handbook of Experimental Immunology」、I~IV巻(Weir及びBlackwell編、1986);並びに「Manipulating the Mouse Embryo」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986)を参照されたい。
【0097】
本発明の理解を容易にするため、下記では、多数の用語が規定される。本明細書で規定される用語は、本発明に関与する領域の当業者により一般に理解される意味を有する。「ある(a)」、「ある(an)」、及び「その」等の用語は、単数の実体だけを指すことが意図されるものではなく、それらの具体例が、例示のために使用されうる、一般的なクラスを含むことが意図される。本明細書における用語法は、本発明の具体的実施形態について記載するのに使用されるが、それらの用法は、特許請求の範囲で概括されることを除き、本発明を限定しない。
【0098】
本明細書における、本発明に対する背景についての議論は、本発明の文脈を説明するために組み入れられる。これは、言及された素材のうちのいずれかが、請求項のうちのいずれかの優先日現在、任意の国において、公表されているか、公知であるか、又は一般的な共通の知見の一部であったことの容認としては理解されないものとする。
【0099】
本開示を通して、多様な刊行物、特許、及び特許明細書の公開は、引用を同定することにより参照される。本明細書で引用される全ての文献は、参照によりそれらの全体において組み込まれる。特に、本明細書で具体的に言及される、このような文献の教示又は節は、参照により組み込まれる。
【0100】
本明細書では、CUL2-CRL基質受容体である、VHL(von Hippel-Lindau)腫瘍抑制遺伝子等、E3ユビキチンリガーゼ成分を含み、標的特異的ポリペプチド結合剤へとテザリングされた、プロテアソーム分解タンパク質複合体が開示される。この複合体は、affinity-directed protein missile又は「AdPROM」と称される場合がある。本明細書で使用される、「AdPROM(affinity-directed protein missile)」又は「AdPROMシステム」という用語は、E3ユビキチンリガーゼ成分を含み、標的タンパク質を認識するためのポリペプチド結合剤へと「テザリング」又は「相互連結」された、プロテアソーム分解システムを指す。
【0101】
標的特異的ポリペプチド結合剤とは、標的エピトープを認識し、これに結合する、任意のポリペプチドを指す。適切には、標的特異的ポリペプチド結合剤は、標的特異的ポリペプチド結合剤が、細胞内で発現されるか、又は細胞へと導入されると、その標的に結合しうる。標的特異的ポリペプチド結合剤は、抗体、抗体断片、モノボディー、ナノボディー、及び/又は、例えば、足場タンパク質に基づく、他の種類の結合剤を含みうる。本発明では、任意の適切な標的特異的ポリペプチド結合剤の使用が可能であり、任意の所与の標的特異的ポリペプチド結合剤の適切性は、本明細書で記載される方法を使用して、例えば、別の標的特異的ポリペプチド結合剤で、具体例で明示される方法において使用されるナノボディーを置き換えることにより評価されうる。
【0102】
本明細書で使用される、「抗体」という用語は、広範な用語であり、当業者に、その通常かつ慣用的な意味が与えられ(特殊であるか、又は独自である意味に限定されない)、限定せずに述べると、免疫グロブリン分子の可変領域内に配置された、少なくとも1つの抗原認識部位を介する、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド等の標的への特異的結合が可能な免疫グロブリン分子を指す。本明細書で使用される、「抗体」という用語は、無傷ポリクローナル抗体又は無傷モノクローナル抗体だけでなく、また、そうでないことが指定されない限りにおいて、特異的結合について、無傷抗体と競合する、その任意の抗原結合性部分、抗原結合性部分を含む融合タンパク質、及び免疫グロブリン分子の、他の任意の改変構成であって、抗原認識部位を含む改変構成も包含する。抗原結合性部分は、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、Fv、ドメイン抗体(dAb、例えば、サメ抗体及びラクダ科動物抗体)、相補性決定領域(CDR)を含む断片、単鎖可変断片抗体(scFv)、マキシボディー、ミニボディー、イントラボディー、ダイアボディー、トリアボディー、テトラボディー、v-NAR及びbis-scFv、並びに特異的抗原結合性を、ポリペプチドへと付与するのに十分な、免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチドを含む。抗体は、IgG、IgA、又はIgM(又はこれらのサブクラス)等、任意のクラスの抗体を含み、抗体は、何らかの特定のクラスの抗体である必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスへと割り当てられうる。免疫グロブリンには、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2へと、更に分けられうる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する、重鎖定常領域は、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元構成は、周知である。
【0103】
本明細書で使用される、「ナノボディー」という用語は、重鎖だけの(VHH)抗体に由来する、単一ドメイン抗体を指す場合がある。VHH抗体は、ラクダ、アルパカ、及びラマを含む、ラクダ科動物由来でありうる。VHH抗体は、サメ由来でありうる。本明細書で使用される、「ナノボディー」は、標的タンパク質に特異的である、単量体ナノボディー、二量体ナノボディー、二特異性ナノボディー、又は多価ナノボディーのうちのいずれかを含む。
【0104】
本明細書で使用される、「モノボディー」という用語は、III型フィブロネクチンドメイン(FN3)を、分子足場として使用して構築された、合成結合性タンパク質を指す場合がある。このクラスの結合性タンパク質は、ヒトフィブロネクチンの、第10のFN3ドメインについての多様化ライブラリーに基づき構築される。当技術分野では、足場タンパク質に基づく、他の多様な合成結合性タンパク質が公知であり、本発明において使用されうる。
【0105】
本明細書で使用される、「タンパク質複合体」という用語は、2つ又はこれを超えるポリペプチド鎖の会合を指す。したがって、2つ又はこれを超える、本発明のタンパク質は、「テザリング」又は「相互連結」されている。このように、これらの用語は、E3リガーゼ成分の、標的特異的ポリペプチド結合剤への接続を指す。当業者は、これらの用語が、直接的なコンジュゲート又はリンカータンパク質を介する接続を意味することを理解するであろう。
【0106】
E3ユビキチンリガーゼ成分(また、E3ユビキチンリガーゼ、E3リガーゼ、又はユビキチンリガーゼとも呼ばれる)は、ユビキチンをロードされたE2ユビキチン結合酵素を動員し、ユビキチンの、E2から、タンパク質基質への転移を支援するか、又は直接的に触媒するタンパク質である。ユビキチンは、イソペプチド結合により、標的タンパク質上のリジンへと接合される。E3リガーゼは、典型的に、標的タンパク質及びE2酵素の両方と相互作用するので、基質特異性を、E2へと付与する。しかし、本発明の文脈では、基質特異性は、標的特異的ポリペプチド結合剤により付与される。一般に、E3リガーゼは、それらの基質を、ユビキチンのLys連結鎖によりポリユビキチン化し、基質を、プロテアソームによる破壊の標的とする。本発明では、任意の適切なE3リガーゼの使用が可能であり、任意の所与のE3リガーゼの適切性は、本明細書で記載される方法を使用して、例えば、別のE3リガーゼで、具体例で明示される方法におけるVHLを置き換えることにより評価されうる。
【0107】
「ユビキチン媒介型プロテアソーム分解」という用語、又は同様の用語は、細胞内におけるタンパク質の代謝回転を制御して、タンパク質のホメオスタシスを維持する、鍵となる細胞過程を指す。進化において保存された、7つのメンバー(CUL1/2/3/4A/4B/5/7)から構成される、CRL(cullin ring E3 ubiquitin ligase)ファミリーは、多くの細胞内タンパク質のユビキチン化及び分解において、中心的役割を果たす(20、21)。各CRL機構は、基質受容体(例えば、VHL(von Hippel-Lindau))、固有のアダプター(例えば、Elongin A/B)のほか、RING E3リガーゼ(Rbx1/2)からなる(21)。基質受容体サブユニットは、基質タンパク質を動員し、E3リガーゼ及びそのコグネイトのE2-Ubコンジュゲートの近位に配置するが、これは、基質のユビキチン化、及び、その後における、プロテアソームを介する、基質の分解を容易とする。例えば、酸素正常条件下で、VHLタンパク質は、そのユビキチン化及び分解のために、プロリン水酸化HIF1α転写因子を、CUL2-CRLへと動員する。本発明では、目的のタンパク質を動員し、ユビキチン化し、分解するのに、CUL2-CRL機構の基質受容体が利用されうる。実際、VHLが、ナノボディー又はモノボディーへとテザリングされ、異なる細胞へと導入されると、効果的かつ迅速な破壊のために、標的タンパク質の、CUL2-CRLへの選択的動員がなされる(18、19)。当業者は、異なるE3リガーゼが、参照E3リガーゼと比較して多い場合であれ、少ない場合であれ、細胞内の全標的タンパク質の分解を結果としてもたらしうることを理解するであろう。適切には、本明細書で記載される通り、VHLは、NbSYN87と複合体化されると、強力なE3リガーゼであり、したがって、参照E3リガーゼでありうる。
【0108】
本明細書で使用される、「アフィニティー」という用語は、単一の抗原結合性部位の、抗原決定基との結合強度を意味する。アフィニティーは、抗体又は抗原結合性タンパク質の結合部位と、抗原決定基との間の立体化学的適合の緊密さ、それらの間の接触面積の大きさ、並びに帯電基及び疎水性基の分布等に依存する。アフィニティーは、平衡解析により測定される場合もあり、表面プラズモン共鳴(「SP」)法、例えば、BIACORE(商標)により測定される場合もある。SPR法は、表面プラズモン波が、金属/液体界面において励起された場合に生じる、表面プラズモン共鳴(SPR)の現象に依拠する。光は、表面のうちの、試料と接触しない側の面に方向付けられ、この面から反射され、SPRは、反射角と波長との特異的組合せにおいて、反射された光強度の低減を引き起こす。二分子間の結合イベントは、SPRシグナルの変化として検出される、表面層における屈折率の変化を引き起こす。本発明の文脈では、高度のアフィニティーは、競合結合剤と比較した場合に、ポリペプチド結合剤の、標的抗原への強い結合を指す場合がある。低度のアフィニティーは、競合結合剤と比較した場合に、ポリペプチド結合剤の、標的抗原への弱い結合を指す場合がある。
【0109】
本明細書で使用される、「選択性」とは、ポリペプチド結合剤の、標的エピトープへの結合優先性を指す。高度の選択性は、標的エピトープに、もっぱら、又は優先的に結合するポリペプチド結合剤を指す場合がある。一部の実施形態では、ポリペプチド結合剤の選択性が大きいほど、ポリペプチド結合剤の、存在する任意のタンパク質との交差反応性は小さい。低度の選択性は、他のタンパク質と共有されるエピトープ、又は標的タンパク質に固有でないエピトープに結合するポリペプチド結合剤を指す場合がある。
【0110】
本発明の文脈における、核酸構築物又はアミノ酸配列の「機能的バリアント」は、参照配列と同じ形で機能する能力を保持する、参照配列のバリアントである。このような機能的バリアントのための代替的用語は、「生物学的同等物」又は「同等物」を含む。
【0111】
「同一性」及び「同一」等の用語は、2つのポリマー性分子の間、例えば、2つのDNA分子の間等、2つの核酸分子の間の配列類似性を指す。配列アライメント及び配列同一性の決定は、例えば、Tatusova及びMadden、1999(FEMS Microbiol Lett、174:247~250)により記載されている、「Blast 2 sequences」アルゴリズム等、元来、Altschulら、1990(J Mol Biol、215:403~10)により記載されている、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)を使用してなされうる。
【0112】
当技術分野では、比較のために配列をアライメントするための方法が周知である。多様なプログラム及びアライメントアルゴリズムについては、例えば、Smith及びWaterman(1981)、Adv.Appl.Math.、2:482;Needleman及びWunsch(1970)、J.Mol.Biol.、48:443;Pearson及びLipman(1988)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、85:2444;Higgins及びSharp(1988)、Gene、73:237~44;Higgins及びSharp(1989)、CABIOS、5:151~3;Corpetら(1988)、Nucleic Acids Res.、16:10881~90;Huangら(1992)、Comp.Appl.Biosci.、8:155~65;Pearsonら(1994)Methods Mol.Biol.、24:307~31;Tatianaら(1999)、FEMS Microbiol.Lett.、174:247~50において記載されている。配列アライメント法及び相同性の計算についての詳細な検討は、例えば、Altschulら(1990)、J.Mol.Biol.、215:403~10において見出されうる。
【0113】
National Center for Biotechnology Information(NCBI)によるBLAST(商標)(Basic Local Alignment Search Tool;Altschulら(1990))は、National Center for Biotechnology Information(Bethesda、MD)を含む、いくつかの供給源から入手可能であり、いくつかの配列解析プログラムと接続して使用するために、インターネットにおいても入手可能である。このプログラムを使用して、どのようにして配列同一性を決定するのかについての記載は、BLAST(商標)については、インターネット上の、「ヘルプ」セクションの下で入手可能である。核酸配列の比較のために、デフォルトのパラメータを使用する、BLAST(商標)(Blastn)プログラムの「Blast 2 sequences」関数が利用されうる。参照配列に対して、類似性がなお大きな核酸配列は、この方法により評価された場合、同一性百分率の増大を示すであろう。典型的に、配列同一性百分率は、配列長の全体にわたり計算される。
【0114】
例えば、グローバル最適アライメントは、適切には、以下の評定パラメータ:マッチスコア:+2、ミスマッチスコア:-3;ギャップペナルティー:ギャップ開始:5、ギャップ伸長:2を伴う、Needleman-Wunschアルゴリズムにより見出される。結果として得られる最適グローバルアライメントの同一性百分率は、適切には、アライメントされた塩基の数の、マッチ及びミスマッチの両方を含む、アライメントの全長に対する比により計算され、100が乗じられる。
【0115】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、互換的に使用され、ペプチド結合により共有結合的に連結されたアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質又はペプチドの配列を構成しうるアミノ酸の最大数には、限定が設けられない。ポリペプチドは、ペプチド結合により互いと接続された、2つ又はこれを超えるアミノ酸を含む、任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書で使用される、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語はまた、例えば、当技術分野では一般に、ペプチド、オリゴペプチド、及びオリゴマーとも称される短鎖、並びに、当技術分野では一般に、タンパク質と称され、多くの種類が存在する長鎖の両方を指す。「ポリペプチド」は、例えば、中でも、生物学的に活性の断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、改変ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質を含む。ポリペプチドは、天然ペプチド、組換えペプチド、又はこれらの組合せを含む。
【0116】
「ベクター」という用語は、当技術分野で周知であり、本明細書で使用され、その中に、本発明に従う核酸配列が挿入されている可能性がある、核酸分子、例えば、二本鎖DNAを指す。ベクターは、適切には、挿入された核酸分子を、適切な宿主細胞へと輸送するのに使用される。ベクターは、典型的に、インサートである核酸分子の転写と、好ましくは、転写物の、ポリペプチドへの翻訳とを可能とする、必要なエレメントの全てを含有する。ベクターは、典型的に、宿主細胞内に入ると、宿主の染色体DNAから独立であるか、又はこれと同時である複製が可能であり;ベクター及びその挿入核酸分子のいくつかのコピーが作出されうるように、必要なエレメントの全てを含有する。本発明のベクターは、エピソームベクター(すなわち、宿主細胞のゲノムへと組み込まれないベクター)の場合もあり、宿主細胞のゲノムへと組み込まれる場合もある。この定義は、非ウイルスベクター及びウイルスベクターの両方を含む。非ウイルスベクターは、プラスミドベクター(例えば、pMA-RQ、pUCベクター、Bluescriptベクター(pBS)、及びpBR322、又は細菌配列を欠く、これらの誘導体(ミニサークル))、トランスポゾンベースのベクター(例えば、PiggyBac(PB)ベクター、又はSleeping Beauty(SB)ベクター)等を含むがこれらに限定されない。人工染色体(細菌(BAC)、酵母(YAC)、又はヒト(HAC))等の大型ベクターは、大型のインサートを収容するのに使用されうる。ウイルスベクターは、ウイルスに由来し、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルスベクター等を含むがこれらに限定されない。ウイルスベクターは、複製に不可欠なウイルス遺伝子が、ウイルスベクターから消失させられており、所与の細胞内で繁殖する能力を喪失しているので、必ずではないが、典型的に、複製欠損性である。しかし、一部のウイルスベクターはまた、例えば、がん細胞等、所与の細胞内で特異的に複製されるように適合させられる場合もあり、典型的に、(がん)細胞特異的(腫瘍)溶解を誘発するのに使用される。ウィロソームは、ウイルスエレメント及び非ウイルスエレメントの両方を含むベクターの非限定例であり、特に、ウィロソームは、リポソームを、不活化HIV又は不活化インフルエンザウイルスと組み合わせる(Yamadaら、2003)。別の例は、カチオン性脂質と混合されたウイルスベクターを包含する。
【0117】
本明細書で使用される、「CNS細胞」又は「CNS細胞」という用語は、ニューロン、星状細胞、希突起膠細胞、小膠細胞、及び/又は上衣細胞を含む。
【0118】
本明細書で使用される、「薬学的に許容される」という用語は、限定せずに述べると、実体又は成分が、本明細書で提示される組成物中に含まれ、指定されたレベルで、又は、レベルが指定されない場合に、当業者により許容可能であることが公知のレベルで、患者において、著明な有害毒性作用を引き起こさない実体又は成分であることを指す。本明細書で記載される組成物中の全ての成分は、薬学的に許容されるレベルで提供される。明確さのために述べると、有効成分は、1つ又は複数の副作用を引き起こす場合があり、副作用プロファイルが、このような成分についての規制的観点から、許容可能である成分の組入れは、これらの成分についての、「薬学的に許容される」レベルであると見なされるものとする。
【0119】
本明細書で使用される、「処置」又は「~を処置すること」という用語は、疾患又は状態の、1つ又は複数の徴候、症状、又は影響を軽減するか、改善するか、又は消失させることを指す。本明細書で使用される、「処置」は、哺乳動物、特に、ヒトにおける疾患の任意の処置を含み、(a)疾患に対する素因があるか、又は疾患に罹患する危険性があるが、未だ、疾患を有すると診断されていない対象において、疾患が生じることを防止すること;(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発生を停止させること;(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の退縮を引き起こすこと;及び(d)疾患の任意の症状を和らげるか、又は軽減することを含む。
【0120】
本明細書で使用される、「~を阻害する」、「~を低減する」という用語、及び同様の用語は、少なくとも約5%、10%、15%;20%、25%、35%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、又はこれを超える減少を意味する。
【0121】
本明細書で使用される、そうでないことが言明されない限りにおいて、「対象」という用語は、「個体」又は「患者」と互換的に使用され、防止又は処置を必要とする、疾患又は状態を伴う、任意の個別の対象を指す。本開示の目的では、対象は、哺乳動物、好ましくは、ヒトでありうる。
【0122】
利点:
下記の実施例で詳細に論じられる通り、本発明者らは、本発明のプロテアソーム分解タンパク質複合体が、有効であり、精緻に選択的であることを裏付けた。バイアスのない定量的プロテオーム法を使用することにより、α-シヌクレインタンパク質の、AdPROMによる標的化分解において、α-シヌクレインは、同定された10,000を超えるタンパク質のうち、分解される唯一の標的であることが明らかとなった(図9)。なおも翻訳される、タンパク質の切断形態を結果としてもたらす場合もあり、オフ標的のサイレンシングを結果としてもたらす場合もある、この選択性は、ゲノム改変又は転写物阻害を介するタンパク質サイレンシング法よりも有利である。高度に選択的である、プロテアソーム分解タンパク質複合体は、調査研究用ツールとしての使用のための、さらなる利点をもたらす。プロテアソーム分解タンパク質複合体は、ゲノム又は転写のモジュレーションに依存せずに、標的タンパク質を除去する効果について研究するのに使用されうる。
【0123】
このシステムは、目的のタンパク質(POI)の遺伝子座への、IAAデグロン配列の挿入を要求する、オーキシンにより誘導可能なデグロン等、他の標的化タンパク質分解法に優る、さらなる利点を有する。本発明は、POI遺伝子座への挿入を要求せず、これにより、オフ標的効果を低減している。
【0124】
ZIF1プロテアソーム分解システム等、ナノボディーと組み合わされた、他のE3リガーゼシステムも提起されている。しかし、ZIF1自体は、異なる発生段階において調節されるので、POI分解は、内因性基質と競合し、このため、それほど効果的ではない。
【0125】
本明細書で提示されるプロテアソーム分解タンパク質複合体は、POI分解を、迅速に標的とするように、任意の細胞内で適用されうる。これは、かつて利用可能ではなかった、新規の治療選択肢を開く。
【0126】
非限定例を目的として、付属の図面を参照しながら、本発明の実施形態が記載される。
【実施例
【0127】
序説:
英国では、パーキンソン病(PD)は、2番目によく見られる神経変性障害であり、500人中約1人に影響を及ぼす(1)。PDは、黒質緻密部のドーパミン作動性ニューロン内に、主に見出される、レビー小体として公知である、細胞内タンパク質性封入体の存在により特徴付けられる(2、3)。PDは、運動関連障害であり、主要症状は、動作緩慢、休止時振戦、及び姿勢の不安定のほか、うつ病及び認知症等、報告される認知症状を含む(4)。疾患発生の基礎原因は、依然として未知であるが、これらのレビー小体は、疾患の目印となる特徴であり、潜在的な治療標的を含有する。これらのレビー小体は、多数の異なるタンパク質からなることが報告されているが、それらの主要成分は、SNCA遺伝子によりコードされ、α-シヌクレインと呼ばれる、140kDaの低分子タンパク質であることが見出された(5)。PDの発症機序へのその関与は、家族性PDにおけるタンパク質の多数の異なる変異:最も一般に、変異体であるA53T(6)のほか、変異である、A30P、H50Q、E46K、G51D、及びA53E(7~10)の発見により、更に確認されている。家族性PDを伴う患者では、遺伝子の二重重複及び三重重複もまた示されており(11、12)PDにおけるα-シヌクレインの関与についての証拠だけでなく、α-シヌクレインの、治療標的としての潜在的可能性についての証拠もまた強化している。α-シヌクレインによる細胞内封入体はまた、シヌクレイノパシーと総称されている、レビー小体を伴う認知症、及び多系統委縮症(MSA)等、多数の異なる神経変性障害においても見出される。シヌクレイノパシーに対して有効な処置は、依然として捉えどころがないが、全世界的な平均余命の延長に伴い、有効な処置に対する必要は、火急のものとなっている。
【0128】
集約的な調査研究にもかかわらず、α-シヌクレインの機能は、依然として未知であるが、シナプス前終末において濃縮されることが見出されており(13)、調査研究は、α-シヌクレインが、シナプス小胞の放出を可能とするSNARE複合体の形成において役割を果たすことを示唆する(14)。天然変性タンパク質(IDP)ファミリーのメンバーとして、α-シヌクレイン自体は、三次構造を有さず、そのコンフォメーションは、相互作用因子又は脂質膜の存在等、多数の異なる因子の影響を受けうる(15)。PDにおけるその役割は、家族性PDを伴う患者において見出される、タンパク質の6つの異なる変異が、凝集過程において、示差的オリゴマー及び線維状形態を優先することが示されているという事実によってもまた、更に複雑化される(16)。興味深いことに、これらのレビー小体内のα-シヌクレインは、ほぼ全てが、セリン129においてリン酸化されており(17)、健常個体の脳内には、PDを伴う患者と比較して、微量レベルのリン酸化タンパク質が存在するに過ぎないので、これは、これらの凝集構造の存在を確認するためのマーカーとして使用されうる。このリン酸化が、タンパク質の凝集を促進するのか、凝集物形成の後で生じるのかは、不明である。細胞上で誘発された毒性が、凝集物自体に起因するのか、毒性の機能獲得を介するのか、機能喪失を誘発する、その内因性作用部位からのαシヌクレインの動員に起因するのかもまた、未だ決定されていない。しかし、証拠は、PDの発症機序及び進行における、凝集α-シヌクレインの関与を示唆し、凝集α-シヌクレインを、治療的介入のための潜在的標的として特徴付ける。α-シヌクレインは、常套的な低分子薬発見によっては、「創薬不可能」な標的であると見なされている。このように、本研究は、Sapkota lab内で開発された、AdPROM(affinity-directed protein missile)システムの使用を介する標的化タンパク質分解法が、α-シヌクレインを、効果的に分解し、治療戦略のための新たな道を切り開きうるのかどうかを探索することを目的とする(18、19)。
【0129】
affinity-directed protein missileシステムつまりAdPROMシステムは、タグ付けタンパク質及び内因性タンパク質の両方に対するユビキチン化の標的化、並びに、後続におけるプロテアソーム分解を誘導するように開発された、新規の標的化タンパク質分解戦略である。ユビキチン媒介型プロテアソーム分解は、細胞内におけるタンパク質の代謝回転を制御して、タンパク質のホメオスタシスを維持する、鍵となる細胞過程である。進化において保存された、7つのメンバー(CUL1/2/3/4A/4B/5/7)から構成される、CRL(cullin ring E3 ubiquitin ligase)ファミリーは、多くの細胞内タンパク質のユビキチン化及び分解において、中心的役割を果たす(20、21)。各CRL機構は、基質受容体(例えば、VHL(von Hippel-Lindau))、固有のアダプター(例えば、Elongin A/B)のほか、RING E3リガーゼ(Rbx1/2)からなる(21)。基質受容体サブユニットは、基質タンパク質を動員し、E3リガーゼ及びそのコグネイトのE2-Ubコンジュゲートの近位に配置するが、これは、基質のユビキチン化、及び、その後における、プロテアソームを介する、基質の分解を容易とする。例えば、酸素正常条件下で、VHLタンパク質は、そのユビキチン化及び分解のために、プロリン水酸化HIF1α転写因子を、CUL2-CRLへと動員する。本発明者らは、CUL2-CRL機構の基質受容体を、本発明者らのAdPROMシステムと共に利用して、POIを動員し、ユビキチン化し、分解することができる。実際、VHLを、特異的タンパク質に対する、低分子の、高アフィニティーポリペプチド結合剤である、ナノボディー又はモノボディーへとテザリングし、これらを、異なる細胞へと導入したところ、本発明者らは、標的タンパク質を、効果的かつ迅速な破壊のために、CUL2-CRLへと選択的に動員することができた(18、19)。これまでのところ、本発明者らは、異なるヒト細胞内の、異なる内因性細胞内標的タンパク質の破壊における、AdPROMの有効性を裏付けている(18、19)。
【0130】
AdPROMは、2つの成分:標的タンパク質に対する「アフィニティー」プローブ(例えば、α-シヌクレインに対するナノボディー)と、CUL2-CRL基質受容体であるVHL等、相互連結されたE3リガーゼ成分とからなる。アフィニティープローブのために、本発明者らは、GFPに対するナノボディー(概念実証として、細胞内で過剰発現された、GFPタグ付けα-シヌクレインを分解する)と、野生型α-シヌクレインタンパク質抗原を使用して作出されたナノボディー(アルパカから作出された単鎖VHH抗体)とを使用した(22、23)。これらのナノボディーのうちの1つであるNbSYN87は、PESTプロテアソーム標的化配列へと接合されると、アルファ-シヌクレインの分解において、特に有望であることを示した(24)。本発明者らは、GFPタグ付けα-シヌクレインを分解する、抗GFPナノボディー、及び非タグ付けであり、かつ、内因性であるアルファ-シヌクレインを分解するNbSYN87のいずれの使用も、AdPROMシステムを介して達成されることを示す。
【0131】
材料及び方法:
プラスミド:
全てのDNA構築物は、MRC PPU Reagents and Servicesにより作出され、MRC PPU DNA Sequencing and Servicesによりシーケンシングされた。本研究で使用される、全てのプラスミドは、https://mrcppureagents.dundee.ac.ukに依頼すれば入手可能である。SK-MEL13 SNCA KO細胞のために、以下のガイドRNA(gRNA):センスgRNA(DU64505)及びアンチセンスgRNA(DU64516)を作出した。
【0132】
レトロウイルスによる、安定的細胞系の作出:
レトロウイルスは、pBABED puroベクターを使用して作出した。コンフルエンシーを約70%とする、10cmディッシュのHEK 293FT細胞に、6μgのベクターを、2.2μgのpCMV5-VSV-G及び3.8μgのpCMV5-GAG/POLと共に、一過性にトランスフェクトした。略述すると、6μgのベクター、2.2μgのVSV-G、及び3.8μgのGAG/POLを、1つの試験管内の、Opti-MEM 300ulへと添加した。1mg/mlのPEI 24ulを、第2の試験管内のOpti-MEM 300ulへと添加した。両方の試験管を、放置して、5分間にわたりインキュベートしてから、混合し、更に20分間にわたり放置した。次いで、試験管の内容物を、9mlのDMEM培地へと添加してから、HEK 293FT細胞上に注いだ。トランスフェクションの16時間後に、新鮮な培地を、細胞へと添加した。24時間後、ウイルス培地を採取し、0.45μmの滅菌シリンジフィルターを流過させた。8μg/mlのポリブレン(Sigma-Aldrich)を含有する、新鮮な培地中で希釈された、最適化力価のレトロウイルス培地を、コンフルエンシーを、約60%とする標的細胞へと、24時間にわたり形質導入した。次いで、構築物を組み込んだ細胞を選択するために、レトロウイルス培地を、2μg/mlのピューロマイシンを含有する選択培地で置き換えた。並行して選択下に置かれた、非形質導入細胞の完全な死の後、形質導入細胞のプールを、後続の実験のために利用した。
【0133】
Flp-In T-Rex細胞系の作出:
Tetリプレッサーの発現及びFlp-組換え部位の完全性のそれぞれを維持するように、Flp-In T-Rex U2OS細胞及びFlp-In T-Rex HeLa細胞を、15μg/mlのブラスチシジン及び100μg/mlのゼオシンを補充された完全培地中で維持した。コンフルエンシーを、60~70%とする細胞に、1mg/mlのPEI 20μlを伴う、Opti-MEM 1ml中の、POI並びにpOG44 Flpリコンビナーゼプラスミド9μgをコードする、pcDNA5-FRT/TOベクター1μgをトランスフェクトした。トランスフェクション混合物を、室温で、20分間にわたりインキュベートしてから、滴下により、細胞へと添加した。24時間後、培地を、15μg/mlのブラスチシジン及び50μg/mlのヒグロマイシンBを含有する、新鮮な選択培地で置き換えた。陽性クローンを選択するまで、選択培地を、2~3日ごとに、約2~3週間にわたり置き換えた。クローンを拡大し、イムノブロット法により検証した。図面のキャプションで、そうでないことが言明されない限りにおいて、タンパク質の発現を誘導するために、使用の前に、細胞を、20ng/mlのドキシサイクリンと共に、24時間にわたりインキュベートした。発現レベルの漏出が見られた場合には、これらを使用して、POIの過剰発現により潜在的に引き起こされる、任意のアーチファクトを低減した。
【0134】
細胞の溶解:
まず、細胞を、氷冷PBS中で、2回にわたり洗浄してから、1倍濃度のcOmplete(商標)プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を補充された、溶解緩衝液(50mMのトリス-HCl pH7.5、0.27Mのスクロース、150mMのNaCl、1mMのEGTA、1mMのEDTA、1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、10mMのβ-グリセロリン酸ナトリウム、50mMのフッ化ナトリウム、5mMのピロリン酸ナトリウム、及び1%のNP-40)中の氷上で掻爬した。溶解物を、エッペンドルフ管へと移し、4℃で、30分間~1時間にわたり回転させることによりインキュベートした。4℃、17,000rpmで、20分間にわたる遠心分離により、溶解物を清澄化させた。上清を、未使用のエッペンドルフ管へと移し、ペレットを廃棄した。試料を、即時使用のために加工するか、そうでなければ、液体窒素中で瞬時凍結させ、-80℃で保存した。
【0135】
SDS-PAGE及びウェスタンブロット法:
ビス-トリスゲルを使用して、等容量のタンパク質(10~20μg)を含有する細胞溶解物を、SDS-PAGEにより解像した。ゲルを、ニトロセルロース膜へと転写し、5%(w/v)の脱脂粉乳(Marvel)/TBS-Tにより、室温で、1時間にわたりブロッキングした。膜を、適切な一次抗体希釈液を含有する、5%(w/v)のミルク/TBS-T中、4℃で、一晩にわたりインキュベートした。一次抗体及びそれらを使用する希釈率は、抗α-シヌクレイン(Ab6162、Abcam、1:500)、抗FLAG HRP(A8592、Sigma、1:1000)、抗HIF1α(610959、BD Biosciences、1:1000)、抗GAPDH(2118S、CST、1:5000)、抗GFP(11814460001、Sigma、1:1000)、抗Cullin2(51-1800、Invitrogen、1:1000)、抗ユビキチン(Z0458、DAKO、1:1000)である。その後、TBS-Tにより、膜を洗浄し、室温で、1時間にわたり、HRPコンジュゲート二次抗体又は蛍光二次抗体と共にインキュベートした。使用された二次抗体、及びそれらの希釈率は、ウサギ抗ヒツジIgG(31480、Thermo Fisher Scientific、1:2500)、ヤギ抗ウサギIgG(7074、CST、1:5000)、ヤギ抗マウスIgG(31430、Thermo Fisher Scientific、1:5000)、StarBright Blue 700ヤギ抗ウサギIgG(12004161、Bio-Rad、1:5000)である。TBS-Tにより、膜を、再度洗浄し、ECL(Merck)及びChemiDoc MP System(Bio-Rad)を使用して、シグナルの検出を実施した。Image Lab(Bio-Rad)を使用して、濃度測定により、タンパク質バンドを解析した。
【0136】
免疫蛍光顕微鏡法:
まず、免疫蛍光イメージングのために、細胞を、12ウェル培養プレート内、直径16mmの円形滅菌カバースリップへと播種し、一晩にわたり放置して接着させた。使用の前に、全てのカバースリップを、100%(v/v)エタノールにより滅菌し、乾燥させた。細胞を、PBS中で、2回にわたり洗浄してから、4%(w/v)パラホルムアルデヒド(PBS中で希釈された)中、室温で、10分間にわたり固定した。PFAを除去し、カバースリップを、PBS中で、2回にわたり洗浄した。次いで、カバースリップを、PBS中で0.2%(v/v)のNP40により、3分間にわたり透過処理した。次いで、細胞を、2回にわたる洗浄、及び1%(w/v)のBSA/PBS中で、15分間にわたるインキュベーションによりブロッキングした。次いで、カバースリップを、加湿チャンバー内、室温で、1.5時間にわたり、希釈率を1:100とする、抗α-シヌクレイン抗体(610786、BD Biosciences)と共にインキュベートした。次いで、カバースリップを、0.2%(w/v)BSA/PBS中で、3回(各回、10分間ずつ)にわたり洗浄してから、希釈率を1:500とする、ヤギ抗マウスIgG alexa-fluor 594コンジュゲート二次抗体(A-11005、Thermo Fisher Scientific)と共に、37℃で、1時間にわたりインキュベートし、光から保護した。次いで、カバースリップを、各回、初回の洗浄が、希釈率を1:15,000とするDAPIを含有する、0.2%(w/v)のBSA/PBS中で、10分間ずつ、3回にわたり洗浄した。次いで、ピンセットを使用して、カバースリップを、短時間、脱イオン水中に浸漬し、ペーパータオル上に静置して、通気乾燥させた。乾燥させたら、約5μlのVectashieldを、スライドガラス上に滴下し、カバースリップを、溶液へと、静かに添加して(細胞側を下にして)から、無色透明のマニキュアで封止した。細胞は、60倍又は40倍の油浸対物レンズを伴う、Deltavisionシステム(Applied Precision)上でイメージングし、SoftWoRx(Applied Precision)により加工した。該当する場合、Z-series画像を得、SoftWoRxを使用して、デコンボリューションした。ソフトウェアである、Adobe Photoshop又はOMEROを使用して、画像を加工し、図面を作成した。
【0137】
プロテオミクス解析:
細胞の溶解、溶液中の消化、TMT(tandem mass tag)による標識化、及び分画
細胞を、溶解緩衝液(8M尿素、20mMのHEPES pH8.0、1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、2.5mMのピロリン酸ナトリウム、1mMのβ-グリセロリン酸)中で溶解させ、超音波処理し、16,000×gで、20分間にわたり遠心分離した。タンパク質濃度は、BCAアッセイ(Pierce、Waltham、MA)を使用して決定した。各試料に由来する、タンパク質100μgずつを、それぞれ、5mMのDTTにより、60℃で、20分間にわたり還元し、10mMのヨードアセトアミドにより、室温で、10分間にわたりアルキル化した。トリプシン消化のために、試料を、20mMのHEPES、pH8.0により希釈して、尿素濃度を、<2Mへと低減し、1:20の酵素対基質(Worthington Biochemical Corp、Lakewood、NJ)中のTPCK(tosyl phenylalanyl chloromethyl ketone)処理トリプシンによる、室温で、12~16時間にわたる消化にかけた。消化されたペプチドを、1%のトリフルオロ酢酸(TFA)により酸性化させ、C18 Sep-Pak cartridge(Waters、型番:WAT051910)を使用して脱塩化し、真空濃縮器中で乾燥させた。対応する試料に由来するこれらのペプチドを、製造元の指示書に従い、16-plex TMT試薬により標識化した。標識化されたペプチドを、併せてプールし、塩基性pH下の分画にかけた。略述すると、ペプチドを、緩衝液A(10mMのギ酸アンモニウム、pH10)中に溶解させ、XBridge BEH RPLC column(Waters XBridge BEH C18 Column、130、5μm、4.6mm×250mm;型番:186003010)上で、流量を0.3ml/分とし、7~40%の勾配(溶媒B、10mMのギ酸アンモニウム、pH10中に、容量で90%のアセトニトリル)を、80分間にわたり適用することにより、合計96の画分へと分解した。隣接する各画分を、併せてプールして、質量分析のために、48の画分を作製した。
【0138】
質量分析
これらの個々の画分を、0.1%のギ酸中で復元し、Dionex 3000 RSLC nano-liquid chromatographyと、インターフェース接続された、Orbitrap Fusion Tribrid Mass spectrometer(Thermo Fisher Scientific、San Jose、U.S.A.)上で解析した。ペプチド試料は、nano viper trap column(C18、5μm、100A、100μm×2cm;型番:164562、Thermo Scientific)上でエンリッチし、50cm analytical column(2μm、100A、75μm×50cm;型番:ES803、Thermo Scientific)上で、溶媒B(100%CAN、0.1%ギ酸)の勾配により、100分間にわたり分離した。質量分析計は、データ依存収集モードで作動させた。サーベイフルスキャンMS(m/z:400~1600)は、200m/zにおける分解能を、120,000として、Orbitrapにより得た。3秒間のサイクル時間(MS1及びMS2)を含む、最高スキャンスピードを使用した。前駆イオンは、四重極内の電荷状態を≧2とし、質量幅を1.6m/zとして分離し、正規化衝突エネルギーを32%として、HCD断片化を使用して断片化し、質量分解能を、60,000として検出した。MS1のAGCターゲット:3×105及び50ミリ秒;並びにMS2のAGCターゲット:5×104;MS1のイオン溜め込み時間:50ミリ秒;MS2のイオン溜め込み時間:250ミリ秒を使用した。ダイナミックエクスクルージョンは、質量範囲を10ppmとして、30秒間に設定した。
【0139】
データ解析
MS/MS検索は、Proteome Discoverer 2.4(Thermo Fisher Scientific、Bremen、Germany)を使用する、UniProtヒトタンパク質データベースに対するSEQUEST検索アルゴリズムを使用して実行した。ワークフローは、[spectrum selector]、[SEQUEST search]ノード、[peptide validator]、[reporter ion quantifier]、及び[percolator]ノードを含んだ。メチオニンの酸化は、可変修飾として設定し、システインのカルバミドメチル化、並びにN末端及びリジンにおけるTMT修飾は、固定修飾として設定した。MS公差及びMS/MS質量公差は、それぞれ、10ppm及び0.02Daに設定した。トリプシンは、プロテアーゼとして指定し、最大1つの切断過誤を許容した。データはまた、デコイデータベースに対しても検索し、FDR(false discovery rate)を1%としてフィルタリングした。有意に示差的なタンパク質を同定するために、2つの試料についての「t検定」を使用した。
【0140】
(実施例1)
α-シヌクレインを分解することが可能なE3リガーゼのスクリーニング
序説:AdPROMシステムは、E3リガーゼを、標的タンパク質の結合剤と連結するようにデザインした(図1を参照されたい)。どのE3リガーゼが、α-シヌクレインの分解において、最も効果的であるのかを決定するために、E3リガーゼである、TRIM32、RNF126、SIAH3、RNF144A、RNF125、及びVHLを、GFP特異的ナノボディーへとテザリングし、GFP-α-シヌクレイン分解する、それらの能力について調べた。
【0141】
方法:ヒト骨肉腫上皮細胞(U2OS細胞系)に、GFP-α-シヌクレインをコードする、pcDNA5-FRT/TOベクター1μg、並びに9μgのpOG44 Flpリコンビナーゼプラスミドを、妥当な陰性対照構築物と共にトランスフェクトした。陽性クローンは、2~3週間にわたり選択した。スクリーンは、テトラサイクリンによる誘導を伴わずに、GFP-α-シヌクレインを組み込まれた、Flp-IN TRex U2OS細胞上において実施した。GFP-α-シヌクレインを組み込まれた、Flp-IN TRex U2OS細胞は、テトラサイクリンによる発現の誘導を伴わずに、低レベルのGFP-α-シヌクレインを発現した。GFP-α-シヌクレインタンパク質の分解は、GFP特異的ナノボディーへとテザリングされたE3リガーゼである、TRIM32、RNF126、SIAH3、RNF144A、RNF125、及びVHLを発現する細胞内で、SDS-PAGE/ウェスタンブロット解析により測定した。細胞は、SDS-PAGEにより解像される、20μgのタンパク質により溶解させた。タンパク質は、ニトロセルロース膜へと転写し、E3リガーゼである、TRIM32、RNF126、SIAH3、RNF144A、RNF125、及びVHLに対する、表示の抗体によりイムノブロットした。
【0142】
結果:興味深いことに、被験E3リガーゼのうち、GFP特異的ナノボディーへとテザリングされたVHLだけが、α-シヌクレインの分解を結果としてもたらした。AdPROMシステムにおいて、TE3リガーゼである、TRIM32、RNF126、SIAH3、RNF144A、RNF125を使用したところ、α-シヌクレインの分解は、観察されなかった(図2を参照されたい)。
【0143】
本明細書で記載される方法は、本発明における使用に適する、機能的E3リガーゼについて調べるのに適するツールである。
【0144】
(実施例2)
α-シヌクレインを分解することが可能な、E3リガーゼについての、さらなるスクリーニング
序説:AdPROMコンジュゲートの部分である場合に、α-シヌクレインの分解における使用に適する、さらなるE3リガーゼを同定するために、拡大E3リガーゼAdPROMスクリーンを実行して、GFP-アルファ-シヌクレインの分解について調べた。
【0145】
方法:実施例1で記載された方法を実施し、1つのE2リガーゼ及び18のE3リガーゼ(表1(Table 1))を、レトロウイルス形質導入により、抗GFP16をC末端とする配向性、及びN末端とする配向性の両方で発現させるのに続き、溶解及びイムノブロット法を行って、任意の分解剤を同定した。
【0146】
結果:
このスクリーンにおける唯一の被験E2であるUbch5aは、AdPROMシステムと共に使用された場合に、非形質導入対照と比較して、アルファ-シヌクレインの分解を誘導できなかった(図2B)。興味深いことに、18の被験E3リガーゼによるAdPROMのうち、3つだけが、イムノブロット法により指し示される通り、E3/抗GFP16単独対照と比較して、アルファ-シヌクレインレベルの低下を誘導すると考えられる(図2B)。初期スクリーン(実施例1)において、アルファ-シヌクレインを分解することが示された、VHL-抗GFP16は、GFP-アルファ-シヌクレインタンパク質レベルの、ロバストな低下を示した(図2B)。KLHL6及びKEAP1もまた、対照と比較して、アルファ-シヌクレインレベルのロバストな低下を示した(図2B)。KLHL6及びKEAP1の、抗GFP16に対する、C末端側及びN末端側のいずれの配向性も、分解を示したが、いずれのE3についても、E3-抗GFP16の配向性の方が、わずかに良好な分解を示すと考えられた。CRBN-抗GFP16もまた、GFP-アルファ-シヌクレインのわずかな分解を示すと考えられたが、逆の配向性は、タンパク質レベルの変化を示さなかった(図2B)。これは、TRAF3d56-抗GFP16及び抗GFP16-KLHDC2の配向性だけについて同様であり、これらのいずれも、アルファ-シヌクレインの、対照と比較した、わずかな分解を示したが、逆の配向性は分解を示さなかった(図2B)。興味深いことに、MDM2は、アルファ-シヌクレインの分解を示さなかった。MDM2は、VHL及びCRBNと共に、PROTAC開発のために一般に使用されるE3リガーゼである(Bekes、Langley and Crews、2022)ので、これは驚くべきことであった。
【0147】
スクリーンにおいて同定されたE3リガーゼにより観察された分解が、ユビキチンプロテアソーム経路を介して生じていたことを確認するために、阻害剤のパネル:NEDD化阻害剤であるMLN4924、プロテアソーム阻害剤であるMG-132及びボルテゾミブ、並びにリソソーム阻害剤であるバフィロマイシンA1を使用した。まず、野生型U2OS Flp-In T-REX細胞を、これらの阻害剤で、14時間にわたり処理して、処理単独が、GFP-アルファ-シヌクレインレベルに対して、何らかの影響を及ぼすのかどうかを決定した。ボルテゾミブ及びMG-132のいずれによる処理も、レベルを、わずかに上昇させると考えられたのに対し、MLN4924及びバフィロマイシンA1のいずれも、GFP-アルファ-シヌクレインタンパク質のレベルを、DMSO処理対照と比較して、わずかに低下させると考えられた(図2C)。抽出物中の全ユビキチンについてのイムノブロット法を実行して、プロテアソーム阻害の成功を確認する一方で、Cul2及びLC3bについてのイムノブロット法を実行して、NEDD化の阻害及びリソソーム分解のそれぞれの成功を確認した(図2C)。KLHL6の、抗GFP16に対する、いずれの配向性も、E3リガーゼスクリーンにおいて、GFP-アルファ-シヌクレインのロバストな分解を示したので、いずれの配向性を発現する細胞も、阻害剤で処理した。MG-132及びボルテゾミブのいずれも、KLHL6 AdPROMにより引き起こされる、アルファ-シヌクレインの分解のレスキューを結果としてもたらしたことは、この分解が、プロテアソーム依存性であることを確認する(図2C)。バフィロマイシンA1及びMLN4924は、KLHL6-AdPROM依存性アルファ-シヌクレインの分解のレスキューを結果としてもたらさなかったが、KLHL6は、Cullin 3 RING E3 ligaseに対する基質受容体であり、したがって、MLN4924処理は、Cul3の不活化及び分解のレスキューをもたらすことが示されているので、これは予測外であった。しかし、既往の24時間後の時点は、任意のAdPROM媒介型分解のレスキューを示したので、MLN4924処理単独が、GFP-アルファ-シヌクレインレベルの低下を引き起こすことに起因して、レスキュー効果が遮蔽され、より長い時間後の時点を使用すべきことが考えられる。
【0148】
VHL-抗GFP16及びKEAP1-抗GFP16を発現する細胞もまた、これらの阻害剤で処理したところ、ここでもまた、MG-132及びボルテゾミブによる処理は、これらのAdPROMにより引き起こされる、GFP-アルファ-シヌクレインの分解をレスキューした(図2C)。ここでもまた、バフィロマイシンA1又はMLN4924によるレスキューは見られなかった。この結果は、MLN4924を伴う、14時間という、短い時間後の時点が、GFP-アルファ-シヌクレインの分解をレスキューするのに不十分であったことを確認する。E3のうち、わずかな分解を示した2つである、CRBN-抗GFP16及びTRAF3d56-抗GFP16もまた、これらの異なる阻害剤で処理した。これらのE3 AdPROMにより観察された分解は、VHL、KLHL6及びKEAP1によるAdPROMにより見られる分解ほどロバストではなかった(図2C)が、分解が、ボルテゾミブ処理及びMG-132処理によりレスキューされたことは、これが、プロテアソーム依存性分解であることを確認する(図2C)。細胞を、バフィロマイシンA1及びMLN4924で処理したところ、レスキューは、観察されなかった。MLN4924によるレスキューの欠如は、CUL基質受容体を伴うAdPROMについて、驚くべきことであるが、プロテアソーム阻害時に観察されたレスキューは、GFP-アルファ-シヌクレインの標的化分解が、ユビキチンプロテアソーム系(UPS)を介して生じることを確認する。スクリーンは、AdPROMシステムと共に使用された場合における、GFP-アルファ-シヌクレインを含む、GFP-POIの強力な近接性誘導性分解剤としての、KLHL6及びKEAP1を更に確立する。
【0149】
【表1】
【0150】
(実施例3)
AdPROMである、VHL-抗GFP及びVHL-NbSYN87は、U2OS骨肉腫細胞内で過剰発現された、GFPタグ付けα-シヌクレインを分解する
序説:α-シヌクレインが、AdPROMによるタンパク質分解の標的とされうるのかどうかについて査定するために、野生型、及び家族性PD症例において見出される、共通の変異体であるA53Tの両方の、単一コピーN末端GFPタグ付けα-シヌクレインを、上流のTetにより誘導可能なプロモーターを含有する、特異的ゲノム遺伝子座へと組み込んだ、Flp-IN T-Rex U2OS骨肉腫細胞を作出した。GFPを指向し、VHLへとテザリングされ、既に、GFPタグ付けタンパク質を分解するのに利用されているナノボディーを使用する、AdPROMシステムを介して、アルファ-シヌクレインを分解する能力を決定した。
【0151】
結果:Flp-IN T-Rex U2OS骨肉腫細胞の、ドキシサイクリンによる、24時間にわたる処理は、GFP-α-シヌクレイン及びGFP-α-シヌクレイン-A53Tの両方の発現の、時間依存性増大を結果としてもたらした(図3A)。いずれの場合にも、ドキシサイクリンの非存在下であってもなお、ある程度のタンパク質発現が検出され、GFP-α-シヌクレインと比べて、実質的に多くのGFP-α-シヌクレイン-A53T変異体が検出された(図3A)。タンパク質の大量の過剰発現を介する、任意の潜在的分解による遮蔽を消失させ、タンパク質の標的化分解について調べるために、発現の漏出基礎レベルを利用した。次いで、AdPROM構築物をコードするレトロウイルス粒子を作出し、GFP-α-シヌクレイン及びGFP-α-シヌクレイン-A53Tを安定的に発現するU2OS細胞に感染させるのに使用した。VHL-抗GFP AdPROMを感染させられた細胞内の、GFP-α-シヌクレインのレベルは、非感染細胞内、又はVHL単独対照若しくは抗GFP単独対照を感染させられた細胞内のレベルより、実質的に低度であった(図3B)。同様に、VHL-抗GFP AdPROMを感染させられた細胞内の、GFP-α-シヌクレイン-A53Tのレベルは、非感染細胞内、又はVHL単独対照若しくは抗GFP単独対照を感染させられた細胞内のレベルより、はるかに低度であった(図3B)。これらの結果は、GFPタグ付けα-シヌクレイン又はその変異体が、AdPROMによるタンパク質分解の標的とされうることを含意する。
【0152】
次に、2つのナノボディーの使用が、α-シヌクレインに対して方向付けられるのかどうかを決定するために、GFPタグ付けα-シヌクレインを分解するのに、GFPナノボディーの代わりに、NbSYN87及びNbSYN2を使用することができた。これは、非タグ付けであり、内因性であるα-シヌクレインの分解を容易とし、タンパク質をタグ付けする必要を廃するであろう。ナノボディーを、VHL-AdPROM構築物(図4B)へとパッケージングし、GFP-α-シヌクレイン又はGFP-α-シヌクレイン-A53Tを安定的に発現するU2OS細胞に感染させた。前出と同様に、VHL-抗GFP AdPROMを感染させられた細胞内の、GFP-α-シヌクレインのレベルは、非感染細胞又は抗GFP対照及びVHL対照を感染させられた細胞と比べて、実質的に低減された(図4C)。これらの条件下で、GFP-α-シヌクレインのレベルは、VHL-NbSYN87 AdPROMを感染させられた細胞内において、非感染細胞又はVHL対照及びNbSYN87対照を感染させられた細胞と比較して、ほぼ検出不能であった(図4C)。これに対し、細胞への、VHL-NbSYN2又はNbSYN2単独の感染は、非感染細胞と比べて、GFP-α-シヌクレインのレベルに影響を及ぼさなかった(図4B)。GFP-α-シヌクレイン-A53Tを安定的に発現する細胞内でも、VHL-Nb1 AdPROMが、対照と比較して、GFP-α-シヌクレイン-A53Tの効果的低減を結果としてもたらした点において、同一の結果が得られた(図4D)。これらの結果は、VHL-NbSYN87 AdPROMが、U2OS細胞内における、GFP-α-シヌクレイン及びGFP-α-シヌクレイン-A53Tの、標的化タンパク質分解において有効であることを示唆する。
【0153】
本発明の標的特異的ポリペプチド結合剤は、VHL-NbSYN87によるα-シヌクレインの分解は可能であるが、VHL-NbSYN2によるα-シヌクレインの分解は可能でないことにより例示されるように、細胞文脈で結合しなければならない(図3C)。理論に束縛されることを望まずに述べると、ポリペプチド結合剤の選択性は、プロテアソーム分解タンパク質複合体の機能にとって、重要である。
【0154】
ポリペプチド結合剤と、標的タンパク質との間における、適切な候補ポリペプチド結合剤の相互作用について調べるために、初回通過の免疫沈降(IP)スクリーンを開発して、候補結合剤を同定した。
【0155】
NbSyn87と、アルファ-シヌクレインとの相互作用は、抽出物中及び細胞中で決定し、アルファ-シヌクレインノックアウト細胞を、アルファ-シヌクレインのクリーン免疫沈降のための対照として組み入れた。単一のflagタグは、検出不能であるので、ナノボディーであるNbSyn87を検出するために、インサートである3×Flagタグを使用した。NbSYN87は、アルファ-シヌクレインを、プルダウンした(図5A)。結果は、GFPタグ付けNbSyn87が、内因性アルファ-シヌクレインと共に、完全に共局在化する、細胞内の免疫蛍光法により確認した(図5B)。
【0156】
このスクリーンを利用して、目的の標的タンパク質の、適切な選択的結合剤について調べることができる。特異的結合剤を同定したら、結合剤及びE3リガーゼ成分が活性であるのかどうか、例えば、場合によって、ユビキチン化のために、E3リガーゼ成分が、基質を適正に配置するように、結合剤が基質と相互作用することが必要でありうるのかどうかを決定するために、他のAdPROM成分と共に調べることができる。
【0157】
(実施例4)
VHL-NbSYN87 AdPROMは、U2OS骨肉腫細胞及びHeLa細胞の両方において過剰発現された、α-シヌクレインの野生型形態及び変異体形態を分解する
序説:VHL-NbSYN87による、GFP-α-シヌクレインを活性化させながらの分解は、α-シヌクレイン自体ではなく、GFPタグ上のリジン残基のユビキチン化により媒介された可能性がある。したがって、VHL-Nb1が、非タグ付けα-シヌクレイン又はα-シヌクレイン-A53T変異体を分解する有効性について調べるために、テトラサイクリンプロモーター下において、非タグ付けα-シヌクレイン又はα-シヌクレイン-A53T変異体を安定的に組み込まれた、Flp-In T-Rex細胞を、U2OS細胞系及びHeLa細胞系の両方において作出して、2つの異なる細胞系における、この標的化分解の適用可能性について調べた。VHLへとテザリングされたナノボディーであるNbSYN87を利用して、本発明者らは、AdPROMシステムを介する、非タグ付けα-シヌクレインの分解能について調べることを目的とした(図4A)。
【0158】
結果:U2OS細胞に、VHL-抗GFP AdPROMを感染させたところ、非感染細胞又はVHL対照若しくは抗GFP対照を感染させられた細胞と比べた、非タグ付けα-シヌクレイン又はα-シヌクレイン-A53Tのレベルの低減は、観察されなかった。VHL-NbSYN87 AdPROMを感染させられた細胞は、α-シヌクレイン及びα-シヌクレイン-A53Tの両方のレベルの、非感染細胞、又はVHL-抗GFP対照、VHL対照、抗GFP対照、若しくはNb1対照を感染させられた細胞と比べた、実質的な低下を示した(図4B)。VHL-NbSYN87を発現する細胞内における、このα-シヌクレインの分解はまた、タンパク質の非タグ付け形態を発現する、HeLa Flp-In T-Rex細胞内でも、再現可能であった(図4B)。GFPタグ付けα-シヌクレイン細胞系について既に示された通り、これらの細胞にまた、VHL-NbSYN2を発現するように、レトロウイルスも感染させたところ、このナノボディーの使用による分解は観察されなかった(図4B)。これらの結果は、VHL-NbSYN87が、被験細胞系である、HeLa及びU2OSの両方において過剰発現された、非タグ付けα-シヌクレイン及びα-シヌクレイン-A53Tを分解することが可能であることを示唆する。
【0159】
α-シヌクレインは、3つの主要ドメインである、N末端両親媒性αヘリックス領域、非アミロイド成分として公知である、中央部の疎水性コア又はNACドメイン、及びC末端酸性テールからなる、140kDaのタンパク質である。PDの家族性症例では、α-シヌクレインについて、6つの変異が見出されており、全てが、タンパク質のN末端領域内に含有されている。ナノボディーであるNbSYN87のエピトープは、赤線により指し示される、タンパク質のC末端領域である(図4D)。これは、この手法が、家族性パーキンソン病の臨床症例において現在のところ記載されている、タンパク質の全ての変異体形態を分解するのに使用されうることを含意する。
【0160】
タンパク質の他の4つの変異体である、A30P、E46K、G51D、及びH50Qを発現する、HeLa Flp-In T-Rex細胞を作出した。VHL-NbSYN87、VHL単独、又はNbSYN87単独を発現するように、レトロウイルスを感染させたところ、VHL-NbSYN87 AdPROMを発現する細胞内で、α-シヌクレインの4つの変異体全ての著明な分解が観察された(図4E~4F)。これは、VHL-NbSYN87が、非タグ付けα-シヌクレイン、及びタンパク質の、臨床的に関連する変異形態を分解することが可能であることを指し示す。
【0161】
(実施例5)
VHL-NbSYN87 AdPROMは、内因性α-シヌクレインを分解する
VHL-NbSYN87 AdPROMが、生理学的レベルのα-シヌクレインの分解を標的化するのかどうかについて探索するために、既往の研究が、ある特定の黒色腫細胞系における、タンパク質の内因性レベルについて報告しているので、検出可能レベルのα-シヌクレインを発現するあらゆる黒色腫細胞系を発見するために、近接する適切な神経細胞の非存在下で、一般に使用されるヒト黒色腫細胞系をプローブ化した(25)。2つの黒色腫細胞系、すなわち、SK-MEL13及びG-361は、実際に、ウェスタンブロット法により検出されうるレベルのα-シヌクレインタンパク質を発現したのに対し、本発明者らが調べた他の大半の細胞系は、これを発現しなかった(図6A)。
【0162】
SK-MEL13細胞及びG361細胞の両方に、VHL-NbSYN87 AdPROMを感染させたところ、内因性α-シヌクレインレベルの、非感染細胞又はVHL-抗GFP対照、VHL対照、抗GFP対照、若しくはNbSYN87対照を感染させられた細胞と比べた、ほぼ完全な消失が見られた(図6B)。これらの結果は、VHL-NbSYN87が、α-シヌクレインを発現する細胞に由来する生理学的α-シヌクレインタンパク質を分解することができ、α-シヌクレインの治療的除去に関与する可能性を有することを示唆する。VHL-NbSYN87による、内因性α-シヌクレインレベルの喪失が、実際に、CUL2-CRL機構により媒介されるのかどうかを決定するために、本発明者らは、細胞溶解の前に、G-361細胞を、汎Cullin Nedd化阻害剤であるMLN4924で、24時間にわたり処理した。予測される通り、G-361細胞の、MLN4924による処理は、CUL2のNedd化のロバストな阻害、及びその内因性標的であるHIF1αの安定化を結果としてもたらした(図6C)。これらの条件下で、内因性α-シヌクレインレベルの喪失は、24時間後における、細胞の、MLN4924による処理を介して、部分的にレスキューされた(図6C)。重要なことは、VHL-NbSYN87の発現が、対照と比べて、内因性HIF1αのレベルに影響を及ぼさなかったことであり、これは、AdPROMシステムが、内因性CUL2 E3ユビキチンリガーゼ機構に干渉しないことを示唆する(図6C)。
【0163】
(実施例6)
AdPROMである、KLHL6-NbSYN87、KEAP1-NbSYN87、及びKLHDC2-NbSYN87は、内因性α-シヌクレインを分解する
序説:上記で論じられた通り、VHLに加えて、KLHL6、KLHDC2、及びKEAP1も、E3リガーゼスクリーンにおいて、GFP-アルファ-シヌクレインを分解することが可能であることが見出された。次いで、KLHL6、KLHDC2、及びKEAP1が、内因性α-シヌクレインを分解する能力を決定した。
【0164】
方法:KLHL6、KLHDC2、及びKEAP1の各々を、NbSYN87と共に、ベクターへとクローニングした。KEAP1については、NbSYN87を、N末端上に有する場合と、C末端上に有する場合との間に、何らかの差違が見られるのかどうかを決定するために、両方の配向性について調べたのに対し、KLHL6及びKLHDC2については、ナノボディーをC末端とする配向性だけについて検討した。これらの構築物を発現するように、SK-MEL-13細胞へと、レトロウイルスにより形質導入し、ピューロマイシンによる選択の後、溶解させ、イムノブロット法を実行して、アルファ-シヌクレインレベルに対する、任意の影響について検討した。
【0165】
結果:全てのAdPROMである、NbSYN87-KEAP1、KEAP1-NbSYN87、KLHL6-NbSYN87、及びKLHDC2-NbSYN87は、SK-MEL-13細胞内における、内因性アルファ-シヌクレインタンパク質の分解を、空ベクター対照と比べて誘導した(図7A)。2連の生物学的反復による定量は、アルファ-シヌクレイン分解のレベルが、空ベクター対照と比較して、約50%であることを示した(図7B)。E3スクリーンは、VHL-NbSYN87により達成された、完全な分解に接近する代替法をもたらしうる、近接性による誘導を介して、内因性アルファ-シヌクレインを分解することが可能である、3つのさらなるE3リガーゼを明らかにした。
【0166】
(実施例7)
VHL-NbSYN87を介するα-シヌクレインの標的化分解は、ノックアウト細胞と同等であり、神経芽細胞腫細胞系内において再現可能である
VHL-NbSYN87を発現させる、これらの黒色腫細胞内における、α-シヌクレインレベルの低減の程度により、本発明者らは、この分解を定量し、これを、完全なKO細胞と比較しようと試みた。SNCA三重重複患者に由来する、iPSCから分化させた、ドーパミン作動性ニューロンにおいて実行された、既往の研究は、アルファ-シヌクレインの完全なKOが、播種性凝集を、野生型細胞と比較して低減することを示した(26)。KO細胞を使用する、他の研究は、α-シヌクレインタンパク質レベルの廃絶が、パーキンソン病についての、ある特定の神経毒性モデルに対する抵抗性を結果としてもたらすことを示した(27~29)。治療剤開発のための、CRISPR/Cas9戦略の利用の困難のために、本発明者らは、AdPROMシステムが、アルファ-シヌクレインを標的とする類似の戦略として利用されうるのかどうかを決定するのに、アルファ-シヌクレインの分解のレベルを、完全KO細胞と比較して検討することを望んだ。
【0167】
SK-MEL13細胞内において、CRISPR/Cas9戦略を使用して、ノックアウト細胞を作出した。VHL-NbSYN87、VHL、又はNbSYN87を発現するように、レトロウイルスを感染させられた細胞を、得られたSK-MEL13 SNCA KO細胞の2つのクローン(クローン20及び22)と共に溶解させた。AdPROMシステムを介する標的化分解により得られる、α-シヌクレインレベルの低減は、全KO細胞と同等であり(図8A)、これは3つの独立の実験、及びその後における相対α-シヌクレインレベルの定量により確認された(図8B)。α-シヌクレインについての、SK-MEL13細胞の免疫染色は、KO細胞及びVHL-NbSYN87細胞における、野生型細胞と比較した、著明な染色の欠如を示す(図8C)。これは、AdPROMシステムの分解能を強調し、KO細胞を使用して実行された既往の研究により、AdPROMシステムによる、このアルファ-シヌクレインの標的化分解における潜在的治療価値を示唆する。
【0168】
一次ニューロン細胞が入手不可能であるために、本発明者らは、次に、神経芽細胞腫細胞系であるSH-SY5Y細胞における、この手法の適用可能性を示そうと試みた。VHL-NbSYN87、又は適切な対照を発現するように、レトロウイルスを感染させられると、これらの細胞は、VHL-NbSYN87構築物を発現する細胞だけにおいて、内因性α-シヌクレインレベルの、有意の低減を示した(図8D)。この実験の三連の独立の反復による、相対α-シヌクレインレベルの定量は、VHL-NbSYN87発現細胞だけにおいて、タンパク質レベルの有意の低下を示す(図8E)。これは、この手法の実行可能性を、より多くの神経様細胞系において確認することから、一次ニューロンにおける、この手法の可能性を示唆する。
【0169】
(実施例8)
VHL-NbSYN87を介するα-シヌクレインの標的化分解は、高度に特異的である
序説:このα-シヌクレインの標的化分解の特異性を決定するために、本発明者らは、SK-MEL13細胞内の、VHL-NbSYN87 AdPROMの発現時における、グローバルな定量的プロテオーム変化について検討した。
【0170】
pBABED空ベクター対照又はVHL-NbSYN87 AdPROMをコードするウイルスにより形質導入されたSK-MEL13細胞を比較した。これらの細胞内では、プロテオーム解析のために試料を加工する前に、イムノブロット法により、アルファ-シヌクレインレベルの減少を確認した(図9)。潜在的ユビキチン部位を同定しようと試みる、現在進行中の全プロテオミクスのために、プロテアソーム阻害剤であるMG132により処理された試料もまた調製した(図10)。興味深いことに、α-シヌクレインは、VHL-NbSYN87構築物を発現する細胞内で、空ベクター対照細胞と比較して、レベルが著明に低下した、唯一のタンパク質であった(図10)。細胞への、VHL-NbSYN87プラスミドの形質導入のために予測されたことであるが、VHLタンパク質レベルは、著明に上昇した。VHL-NbSYN87細胞内では、SerpinB2遺伝子によりコードされる別のタンパク質である、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤2(PAI2)もまた、空ベクターで処理された細胞と比較して増大した(図10)。シヌクレインファミリーの他の2つのメンバーである、β-シヌクレイン及びγ-シヌクレインのタンパク質レベルが、試料にわたり変化しなかったことは、この手法の高度の特異性を指し示す。ナノボディー自体もまた、ヒトα-シヌクレインに高度に特異的であることが示されている。VHL-NbSYN87又はVHL及びNbSYN87単独を発現するように、マウスアルファ-シヌクレインを発現するU2OS Flp-In T-REX細胞に、レトロウイルスにより形質導入したところ、タンパク質のヒト形態と、マウス形態との間では、約97%の配列同一性が見られるにもかかわらず、VHL-NbSYN87を発現する細胞内では、マウスα-シヌクレインの分解が見られなかった(図11)。
【0171】
配列(5'から3')
【0172】
NbSYN87をコードするDNA配列(配列番号1) :
【0173】
【化2】
【0174】
NbSYN87のアミノ酸配列(配列番号12):
【0175】
【化3】
【0176】
VHLをコードするDNA配列(配列番号2):
【0177】
【化4】
【0178】
VHLのアミノ酸配列(配列番号13):
【0179】
【化5】
【0180】
VHL-NbSYN87をコードするDNA配列(配列番号3):
【0181】
【化6】
【0182】
VHL-NbSYN87のアミノ酸配列(配列番号14)
【0183】
【化7】
【0184】
KLHL6をコードするDNA配列(配列番号6):
【0185】
【化8】
【0186】
KLHL6のアミノ酸配列(配列番号15):
【0187】
【化9】
【0188】
KEAP1をコードするDNA配列(配列番号7):
【0189】
【化10】
【0190】
KEAP1のアミノ酸配列(配列番号16):
【0191】
【化11】
【0192】
CRBNをコードするDNA配列(配列番号8):
【0193】
【化12】
【0194】
CRBNのアミノ酸配列(配列番号17):
【0195】
【化13】
【0196】
KLHDC2をコードするDNA配列(配列番号9):
【0197】
【化14】
【0198】
KLHDC2のアミノ酸配列(配列番号18):
【0199】
【化15】
【0200】
TRAF3d56をコードするDNA配列(配列番号10):
【0201】
【化16】
【0202】
TRAF3d56のアミノ酸配列(配列番号19):
【0203】
【化17】
【0204】
α-シヌクレイン:
【0205】
【化18】
【0206】
NbSYN87(5-Gリンカー)KEAP1のDNA配列(配列番号20)
【0207】
【化19A】
【0208】
【化19B】
【0209】
NbSYN87(5-Gリンカー)KEAP1(配列番号21)
【0210】
【化20】
【0211】
KEAP1(5-Gリンカー)NbSYN87のDNA配列(配列番号22)
【0212】
【化21】
【0213】
KEAP1(5-Gリンカー)NbSYN87のアミノ酸配列(配列番号23)
【0214】
【化22】
【0215】
KLHDC2(5-Gリンカー)NbSYN87のDNA配列(配列番号24)
【0216】
【化23】
【0217】
KLHDC2(5-Gリンカー)NbSYN87のアミノ酸配列(配列番号25)
【0218】
【化24】
【0219】
KLHL6(5-Gリンカー)NbSYN87のDNA配列(配列番号26)
【0220】
【化25A】
【0221】
【化25B】
【0222】
KLHL6(5-Gリンカー)NbSYN87のアミノ酸配列(配列番号27)
【0223】
【化26】
【0224】
(参考文献)
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10
図11
【配列表】
2025503444000001.xml
【国際調査報告】