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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】TIGIT抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20250128BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20250128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20250128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61K48/00
A61K35/12
A61P43/00 105
A61P37/04
A61K45/00
A61K47/68
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P31/00
A61P17/00
A61P15/00
A61P11/00
A61P1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536095
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 CN2022139205
(87)【国際公開番号】W WO2023109890
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/139122
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524226449
【氏名又は名称】上海九葫禾生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI NIGENE BIOLOGICAL SCIENCE AND TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】3rd Floor, Block 1, 400 Fangchun Road, Shanghai Pilot Free Trade Zone, Shanghai 201203, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高旭
(72)【発明者】
【氏名】押村 光雄
(72)【発明者】
【氏名】杜智敏
(72)【発明者】
【氏名】平松 敬
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AB05
4B065AC14
4B065BA08
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA13
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZB071
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZB321
4C084ZC411
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA25
4C085AA27
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C087AA01
4C087AA03
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZB07
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZB32
4C087ZC41
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、TIGITと特異的に結合する抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片を含む組成物、及びTIGIT関連疾患の診断と治療におけるその用途を提供する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)と特異的に結合する抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片であって、
重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含み、且つ、前記重鎖可変領域は、CDRH1、CDRH2、CDRH3を含み、且つ、前記軽鎖可変領域は、CDRL1、CDRL2、CDRL3を含む、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
(a)前記CDRH1が、配列番号23、配列番号29、配列番号35、配列番号41、配列番号47、配列番号53、配列番号59、配列番号65、配列番号75、配列番号81、及び1つ若しくは複数のアミノ酸を付加、欠失若しくは置換して生成されたそれらの変異体配列からなる群から選ばれる配列を含み、
(b)前記CDRH2が、配列番号24、配列番号30、配列番号36、配列番号42、配列番号48、配列番号54、配列番号60、配列番号66、配列番号76、配列番号82、及び1つ若しくは複数のアミノ酸を付加、欠失若しくは置換して生成されたそれらの変異体配列からなる群から選ばれる配列を含み、且つ
(c)前記CDRH3が、配列番号25、配列番号31、配列番号37、配列番号43、配列番号49、配列番号55、配列番号61、配列番号67、配列番号77、配列番号83、及び1つ若しくは複数のアミノ酸を付加、欠失若しくは置換して生成されたそれらの変異体配列からなる群から選ばれる配列を含み、及び/又は
(d)前記CDRL1が、配列番号20、配列番号26、配列番号32、配列番号38、配列番号44、配列番号50、配列番号56、配列番号62、配列番号72、配列番号78、及び1つ若しくは複数のアミノ酸を付加、欠失若しくは置換して生成されたそれらの変異体配列からなる群から選ばれる配列を含み、
(e)前記CDRL2が、配列番号21、配列番号27、配列番号33、配列番号39、配列番号45、配列番号51、配列番号57、配列番号63、配列番号73、配列番号79、及び1つ若しくは複数のアミノ酸を付加、欠失若しくは置換して生成されたそれらの変異体配列からなる群から選ばれる配列を含み、且つ
(f)前記CDRL3が、配列番号22、配列番号28、配列番号34、配列番号40、配列番号46、配列番号52、配列番号58、配列番号64、配列番号74、配列番号80、及び1つ若しくは複数のアミノ酸を付加、欠失若しくは置換して生成されたそれらの変異体配列からなる群から選ばれる配列を含む、請求項1に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
(a)前記CDRH1が、配列番号23、配列番号29、配列番号35、配列番号41、配列番号47、配列番号53、配列番号59、配列番号65、配列番号75及び配列番号81からなる群から選ばれる配列に対して、少なくとも80%の同一性を有する配列を含み、
(b)前記CDRH2が、配列番号24、配列番号30、配列番号36、配列番号42、配列番号48、配列番号54、配列番号60、配列番号66、配列番号76及び配列番号82からなる群から選ばれる配列に対して、少なくとも80%の同一性を有する配列を含み、且つ
(c)前記CDRH3が、配列番号25、配列番号31、配列番号37、配列番号43、配列番号49、配列番号55、配列番号61、配列番号67、配列番号77及び配列番号83からなる群から選ばれる配列に対して、少なくとも80%の同一性を有する配列を含み、及び/又は
(d)前記CDRL1が、配列番号20、配列番号26、配列番号32、配列番号38、配列番号44、配列番号50、配列番号56、配列番号62、配列番号72及び配列番号78からなる群から選ばれる配列に対して、少なくとも80%の同一性を有する配列を含み、
(e)前記CDRL2が、配列番号21、配列番号27、配列番号33、配列番号39、配列番号45、配列番号51、配列番号57、配列番号63、配列番号73及び配列番号79からなる群から選ばれる配列に対して、少なくとも80%の同一性を有する配列を含み、且つ
(f)前記CDRL3が、配列番号22、配列番号28、配列番号34、配列番号40、配列番号46、配列番号52、配列番号58、配列番号64、配列番号74及び配列番号80からなる群から選ばれる配列に対して、少なくとも80%の同一性を有する配列を含む、請求項1又は2に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
(a)前記CDRH1が、配列番号23、配列番号29、配列番号35、配列番号41、配列番号47、配列番号53、配列番号59、配列番号65、配列番号75及び配列番号81からなる群から選ばれる配列を含み、
(b)前記CDRH2が、配列番号24、配列番号30、配列番号36、配列番号42、配列番号48、配列番号54、配列番号60、配列番号66、配列番号76及び配列番号82からなる群から選ばれる配列を含み、
(c)前記CDRH3が、配列番号25、配列番号31、配列番号37、配列番号43、配列番号49、配列番号55、配列番号61、配列番号67、配列番号77及び配列番号83からなる群から選ばれる配列を含み、
(d)前記CDRL1が、配列番号20、配列番号26、配列番号32、配列番号38、配列番号44、配列番号50、配列番号56、配列番号62、配列番号72及び配列番号78からなる群から選ばれる配列を含み、
(e)前記CDRL2が、配列番号21、配列番号27、配列番号33、配列番号39、配列番号45、配列番号51、配列番号57、配列番号63、配列番号73及び配列番号79からなる群から選ばれる配列を含み、且つ
(f)前記CDRL3が、配列番号22、配列番号28、配列番号34、配列番号40、配列番号46、配列番号52、配列番号58、配列番号64、配列番号74及び配列番号80からなる群から選ばれる配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
前記重鎖可変領域が、CDRH1、CDRH2、CDRH3を含み、且つ
(a)前記CDRH1は配列番号23の配列を含み、前記CDRH2は配列番号24の配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号25の配列を含み、
(b)前記CDRH1は配列番号29の配列を含み、前記CDRH2は配列番号30の配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号31の配列を含み、
(c)前記CDRH1は配列番号35の配列を含み、前記CDRH2は配列番号36の配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号37の配列を含み、
(d)前記CDRH1は配列番号41の配列を含み、前記CDRH2は配列番号42の配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号43の配列を含み、
(e)前記CDRH1は配列番号47の配列を含み、前記CDRH2は配列番号48の配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号49の配列を含み、
(f)前記CDRH1は配列番号53の配列を含み、前記CDRH2は配列番号54の配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号55の配列を含み、
(g)前記CDRH1は配列番号59の配列を含み、前記CDRH2は配列番号60の配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号61の配列を含み、
(h)前記CDRH1は配列番号65の配列を含み、前記CDRH2は配列番号66の配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号67の配列を含み、
(i)前記CDRH1は配列番号75の配列を含み、前記CDRH2は配列番号76の配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号77の配列を含み、又は
(j)前記CDRH1は配列番号81の配列を含み、前記CDRH2は配列番号82の配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号83の配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記軽鎖可変領域は、CDRL1、CDRL2、CDRL3を含み、且つ
(a)前記CDRL1は配列番号20の配列を含み、前記CDRL2は配列番号21の配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号22の配列を含み、
(b)前記CDRL1は配列番号26の配列を含み、前記CDRL2は配列番号27の配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号28の配列を含み、
(c)前記CDRL1は配列番号32の配列を含み、前記CDRL2は配列番号33の配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号34の配列を含み、
(d)前記CDRL1は配列番号38の配列を含み、前記CDRL2は配列番号39の配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号40の配列を含み、
(e)前記CDRL1は配列番号44の配列を含み、前記CDRL2は配列番号45の配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号46の配列を含み、
(f)前記CDRL1は配列番号50の配列を含み、前記CDRL2は配列番号51の配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号52の配列を含み、
(g)前記CDRL1は配列番号56の配列を含み、前記CDRL2は配列番号57の配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号58の配列を含み、
(h)前記CDRL1は配列番号62の配列を含み、前記CDRL2は配列番号63の配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号64の配列を含み、
(i)前記CDRL1は配列番号72の配列を含み、前記CDRL2は配列番号73の配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号74の配列を含み、又は
(j)前記CDRL1は配列番号78の配列を含み、前記CDRL2は配列番号79の配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号80の配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
(a)前記CDRH1が配列番号23の配列を含み、前記CDRH2が配列番号24の配列を含み、且つ前記CDRH3が配列番号25の配列を含み、且つ前記CDRL1が配列番号20の配列を含み、前記CDRL2が配列番号21の配列を含み、且つ前記CDRL3が配列番号22の配列を含み、
(b)前記CDRH1が配列番号29の配列を含み、前記CDRH2が配列番号30の配列を含み、且つ前記CDRH3が配列番号31の配列を含み、且つ前記CDRL1が配列番号26の配列を含み、前記CDRL2が配列番号27の配列を含み、且つ前記CDRL3が配列番号28の配列を含み、
(c)前記CDRH1が配列番号35の配列を含み、前記CDRH2が配列番号36の配列を含み、且つ前記CDRH3が配列番号37の配列を含み、且つ前記CDRL1が配列番号32の配列を含み、前記CDRL2が配列番号33の配列を含み、且つ前記CDRL3が配列番号34の配列を含み、
(d)前記CDRH1が配列番号41の配列を含み、前記CDRH2が配列番号42の配列を含み、且つ前記CDRH3が配列番号43の配列を含み、且つ前記CDRL1が配列番号38の配列を含み、前記CDRL2が配列番号39の配列を含み、且つ前記CDRL3が配列番号40の配列を含み、
(e)前記CDRH1が配列番号47の配列を含み、前記CDRH2が配列番号48の配列を含み、且つ前記CDRH3が配列番号49の配列を含み、且つ前記CDRL1が配列番号44の配列を含み、前記CDRL2が配列番号45の配列を含み、且つ前記CDRL3が配列番号46の配列を含み、
(f)前記CDRH1が配列番号53の配列を含み、前記CDRH2が配列番号54の配列を含み、且つ前記CDRH3が配列番号55の配列を含み、且つ前記CDRL1が配列番号50の配列を含み、前記CDRL2が配列番号51の配列を含み、且つ前記CDRL3が配列番号52の配列を含み、
(g)前記CDRH1が配列番号59の配列を含み、前記CDRH2が配列番号60の配列を含み、且つ前記CDRH3が配列番号61の配列を含み、且つ前記CDRL1が配列番号56の配列を含み、前記CDRL2が配列番号57の配列を含み、且つ前記CDRL3が配列番号58の配列を含み、
(h)前記CDRH1が配列番号65の配列を含み、前記CDRH2が配列番号66の配列を含み、且つ前記CDRH3が配列番号67の配列を含み、且つ前記CDRL1が配列番号62の配列を含み、前記CDRL2が配列番号63の配列を含み、且つ前記CDRL3が配列番号64の配列を含み、
(i)前記CDRH1が配列番号75の配列を含み、前記CDRH2が配列番号76の配列を含み、且つ前記CDRH3が配列番号77の配列を含み、且つ前記CDRL1が配列番号72の配列を含み、前記CDRL2が配列番号73の配列を含み、且つ前記CDRL3が配列番号74の配列を含み、又は
(j)前記CDRH1が配列番号81の配列を含み、前記CDRH2が配列番号82の配列を含み、且つ前記CDRH3が配列番号83の配列を含み、且つ前記CDRL1が配列番号78の配列を含み、前記CDRL2が配列番号79の配列を含み、且つ前記CDRL3が配列番号80の配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
前記重鎖可変領域が、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号69及び配列番号71からなる群から選ばれる配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
前記軽鎖可変領域が、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号68及び配列番号70からなる群から選ばれる配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
(a)前記重鎖可変領域が配列番号5の配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域が配列番号4の配列を含み、
(b)前記重鎖可変領域が配列番号7の配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域が配列番号6の配列を含み、
(c)前記重鎖可変領域が配列番号9の配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域が配列番号8の配列を含み、
(d)前記重鎖可変領域が配列番号11の配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域が配列番号10の配列を含み、
(e)前記重鎖可変領域が配列番号13の配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域が配列番号12の配列を含み、
(f)前記重鎖可変領域が配列番号15の配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域が配列番号14の配列を含み、
(g)前記重鎖可変領域が配列番号17の配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域が配列番号16の配列を含み、
(h)前記重鎖可変領域が配列番号19の配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域が配列番号18の配列を含み、
(i)前記重鎖可変領域が配列番号69の配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域が配列番号68の配列を含み、又は
(j)前記重鎖可変領域が配列番号71の配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域が配列番号70の配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含み、
(a)前記VHは配列番号5で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号4で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(b)前記VHは配列番号7で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号6で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(c)前記VHは配列番号9で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号8で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(d)前記VHは配列番号11で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号10で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(e)前記VHは配列番号13で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号12で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(f)前記VHは配列番号15で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号14で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(g)前記VHは配列番号17で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号16で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(h)前記VHは配列番号19で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号18で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(i)前記VHは配列番号69で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号68で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、又は
(j)前記VHは配列番号71で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号70で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む、請求項1に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
さらに、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE及びIgDの重鎖定常領域から選ばれる重鎖定常領域を含み、及び/又は、さらに、ヒトIgGの重鎖定常領域を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
F(ab’)、Fab’、Fab、Fv、scFv、二重特異性抗体及びその組み合わせからなる群から選ばれる形態である、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項14】
試薬と結合される抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片であって、前記試薬は、例えば、検出可能な標識又は細胞傷害性薬物である、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片の発現を可能にする、発現ベクター。
【請求項17】
請求項15に記載のポリヌクレオチド又は請求項16に記載のベクターを含む、操作された細胞。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片と、請求項15に記載のポリヌクレオチドと、請求項16に記載のベクター又は請求項17に記載の細胞と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項19】
さらに、別の免疫チェックポイント阻害剤、特に、PD-1/PD-L1阻害剤及び/又はCTLA-4阻害剤を含む抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片であって、特に、別の阻害剤は、抗体又はその抗原結合断片である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
TIGIT関連疾患を治療するための薬物の製造における、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片、請求項15に記載のポリヌクレオチド、請求項16に記載のベクター、請求項17に記載の細胞又は請求項18若しくは19に記載の医薬組成物の用途であって、
好ましくは、前記TIGIT関連疾患は、T細胞機能不全疾患であり、
より好ましくは、前記TIGIT関連疾患は、腫瘍、免疫疾患又は感染症であり、且つ、特に、前記腫瘍の細胞は、CD155陽性又はPVR陽性であり、且つ
より好ましくは、前記腫瘍は、黒色腫、乳がん、非小細胞肺がん、結腸腺がん、胃がん、急性骨髄性白血病及び多発性骨髄腫からなる群から選ばれる、用途。
【請求項21】
有効量の、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片、請求項15に記載のポリヌクレオチド、請求項16に記載のベクター、請求項17に記載の細胞又は請求項18若しくは19に記載の医薬組成物を、必要とする被験者に投与することを含む、TIGIT関連疾患の治療の方法であって、
好ましくは、前記TIGIT関連疾患は、T細胞機能不全疾患であり、
より好ましくは、前記TIGIT関連疾患は、腫瘍、免疫疾患又は感染症であり、且つ、特に、前記腫瘍の細胞は、CD155陽性又はPVR陽性であり、且つ
より好ましくは、前記腫瘍は、黒色腫、乳がん、非小細胞肺がん、結腸腺がん、胃がん、急性骨髄性白血病及び多発性骨髄腫からなる群から選ばれる、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2021年12月17日に提出された、出願番号がPCT/CN2021/139122で、発明名称が「TIGIT抗体及びその用途」である中国PCT出願の優先権を主張しており、その内容のすべては、援用で本明細書に取り込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、TIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)と特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、腫瘍免疫療法は、大きな進歩を遂げており、腫瘍治療では新しい方法として有望である。特に、PD-1/PD-L1、CTLA-4をはじめとする腫瘍免疫抑制チェックポイントを遮断する治療法は注目を集めている。FDAは2000年から、黒色腫、非小細胞肺がん、前立腺がんなどのような悪性腫瘍の臨床治療へのPD-1/PD-L1モノクローナル抗体の使用を相次いで承認し、良好な治療効果を上げている。しかし、PD-1/PD-L1モノクローナル抗体療法は臨床応答率が依然として限られているため、その臨床的使用が大きく制限されている。そのため、新しい免疫抑制チェックポイントを探すことが、研究のホットスポットとなっている。
【0004】
TIGITは、Genentechチームが2009年に発見した新しい免疫抑制因子である(Nat Immunol,2009,10:48-57)。それはPVR様タンパク質ファミリーのメンバーである。TIGITは、CD4T細胞、CD8T細胞、Treg細胞を含む、T細胞及びNK細胞で発現される。一般的に、TIGITの発現レベルは低いが、T細胞及びNK細胞が活性化される時に、TIGITの発現は大幅に増加する(J Immunol,2012,188:3869-3875,Cancer Cell 26,923-937,Nat Immunol,19,723-732)。今までに発見されているTIGITリガンドは、CD155、CD112、CD113を含み、、そのうち、CD155がTIGITの主なリガンドである。結晶構造解析では、TIGIT及びCD155はそれぞれホモ二量体を形成させ、リガンドと受容体との間の相互作用によりさらにヘテロ四量体を形成させることが示されている(Proc Natl Acad Sci USA 2012;109:5399-404)。CD112又はCD113に対するTIGITの結合親和性は、CD155に対するTIGITの結合親和性より顕著に低い。CD155は、主として樹状細胞、T細胞、B細胞、マクロファージ及び非造血組織(例えば、腎臓、神経系、小腸)で発現される。TIGITと同じように、活性化受容体DNAM-1及びCD96もCD155と結合できるが、それらの親和性はTIGITより弱い。要するに、TIGIT/CD155のリガンド-受容体作用様式はCTLA-4/CD28経路と似ている。高い親和性を有する抑制性受容体と低い親和性を有する活性化受容体が競合して同じリガンドと結合することで、免疫応答が正確に制御される。CD155と結合したTIGITは、DCの機能を制御し、エフェクターT細胞の活性を抑制し、DNAM-1の共活性化を妨害し、Tregの抑制を向上させることにより免疫抑制効果を発揮することができる(Clinical and Experimental Immunology,2020 May;200(2):108-119,Immunity 40,569-581)。
【0005】
ヒト及びマウスを対象とするいくつかの研究により、TIGITは腫瘍浸潤リンパ球で高度に発現されることが分かった。黒色腫、乳がん、非小細胞肺がん、結腸腺がん、胃がん、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫を含む様々な悪性腫瘍では、TIGITが上方制御される(Clinical and Experimental Immunology,2020 May;200(2):108-119)。また、いくつかの研究により、TIGITは、CD8T細胞、腫瘍浸潤Treg及びNK細胞で高度に発現されることも分かった。腫瘍患者では、腫瘍浸潤CD8T細胞及びNK細胞におけるTIGITの発現が一般的に他の抑制性受容体(例えば、PD-1、LAG-3、Tim-3)の高発現及びDNAM-1の低発現と一致している。TIGITの高発現は、一般的に悪性腫瘍の不良な予後に関係している。NK細胞におけるTIGITの高発現は疾患の重症度に関係している。TIGITノックアウトマウスでは腫瘍の増殖が顕著に低下し、生存率が向上している。
【0006】
高分子という性質上、その抗体医薬品は一般的に免疫関連有害事象(irAE)を伴う。TIGITノックアウトマウスでは、自発的な自己免疫症状もなければ、造血細胞の発達障害もない。自己免疫疾患になる傾向のあるマウスとハイブリダイゼーションした後にのみ、自己免疫疾患の発生率は向上する。動物試験では、PD-1及びCTLA-4 mAbと比べて、抗TIGIT mAbの投与期間中にirAEの発生率が低いことが分かった(Oncoimmunology 2018;7:e1445949)。したがって、TIGITを標的とする抗体医薬品は、副作用の生じるリスクが比較的低く、臨床抗がん剤として質の高い候補である。
【0007】
過去の臨床試験結果から分かるように、TIGIT抗体とPD-1/PD-L1モノクローナル抗体との組み合わせは、患者の応答率を顕著に高め、治療効果を改善することができ、それに、一部の患者における薬剤耐性を解消している(Cancers 2019;11:877,Cancer Discov,10:1086-1087(2020))。現在、世界中に販売許可の下りたTIGITに対するモノクローナル抗体はまだないため、高い親和性及び活性を有する抗体を候補薬物として開発することが必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の発明者らは、大量の試験を経て、ヒト抗体遺伝子配列完全長を有する染色体導入マウス(TC mAbTMマウス)モデルを用いてスクリーニングしたところ、思いがけないことに、TIGITと特異的に結合する抗体を得ている。前記抗体は、TIGITに対する優れた親和性を示すとともに創薬可能性を秘めている。
【0009】
本発明は、がん及び慢性ウイルス感染症に用いて改善された薬物及び療法を提供し、前記改善された薬物及び療法は、ヒトTIGIT(huTIGIT)と特異的に結合する抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片を含む。本明細書は、huTIGITと特異的に結合し、所望の機能特性、例えば、huTIGITに対する高い親和性での特異的結合、サルTIGIT(例えば、カニクイザルTIGIT)との結合、PVR及びネクチン-2(Nectin-2)に対するTIGITの結合の遮断能力、TIGITとDNAMとの相互作用の遮断能力又はそれらの特性の任意の組み合わせを有する、分離された抗体、例えば、モノクローナル抗体、特に、ヒトモノクローナル抗体を提供する。
【0010】
本発明は、本明細書に開示されている重鎖及び軽鎖可変ドメイン配列を有する抗体と競合してhuTIGITと結合し、本明細書に開示されている重鎖及び軽鎖可変ドメイン配列を有する抗体のhuTIGITに対する結合を交差遮断する抗体に関する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、抗腫瘍免疫応答、例えば、抗原特異的T細胞応答を増強させる。他の実施形態では、本発明の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、TIGITによって媒介される抑制性シグナル伝達を遮断し、NK細胞のPVR/DNAM共刺激を可能にすることによりNK媒介性抗腫瘍応答による死滅を増加させる。別の実施形態では、本発明の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、腫瘍内の制御性T細胞集団を枯渇させ、さもなければ前記制御性T細胞集団は抗腫瘍免疫応答を抑制する。別の実施形態では、IgG1形態の本発明の抗TIGIT抗体は、CD8枯渇性T細胞及びTregを枯渇させることにより、新しい非枯渇性CD8T細胞の流入を可能にする。いくつかの実施形態では、IgG1形態の本発明の抗TIGIT抗体は、腫瘍微小環境におけるCD8TIL集団の割合を上昇させる。他の実施形態では、前記のメカニズムは必ずしも互いに矛盾するとは限らないため、本発明の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、前記メカニズムのうちの1種又は複数種により役割を果たす。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、例えば、TIGIT発現細胞の抗腫瘍活性に対する増強に依存する実施形態では、活性化Fcγ受容体(FcγR)と結合しない。代替の実施形態では、本発明の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、例えば、TIGIT発現細胞(例えば、枯渇性CD8T細胞又はTreg)の死滅に依存する実施形態では、1種又は複数種の活性化FcγRと結合する。
【0013】
第1の態様では、本発明は、TIGITと特異的に結合する抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片を提供する。前記抗TIGIT抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含み、且つ、前記重鎖可変領域は、CDRH1、CDRH2、CDRH3を含み、且つ、軽鎖可変領域は、CDRL1、CDRL2、CDRL3を含む。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、
(a)前記CDRH1は、配列番号23、配列番号29、配列番号35、配列番号41、配列番号47、配列番号53、配列番号59、配列番号65、配列番号75若しくは配列番号81の配列を含み、又は前記CDRH1は、配列番号23、配列番号29、配列番号35、配列番号41、配列番号47、配列番号53、配列番号59、配列番号65、配列番号75若しくは配列番号81に1つ若しくは複数のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換して誘導された配列を含み、
(b)前記CDRH2は、配列番号24、配列番号30、配列番号36、配列番号42、配列番号48、配列番号54、配列番号60、配列番号66、配列番号76若しくは配列番号82の配列を含み、又は前記CDRH1は、配列番号24、配列番号30、配列番号36、配列番号42、配列番号48、配列番号54、配列番号60、配列番号66、配列番号76若しくは配列番号82に1つ若しくは複数のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換して誘導された配列を含み、且つ
(c)前記CDRH3は、配列番号25、配列番号31、配列番号37、配列番号43、配列番号49、配列番号55、配列番号61、配列番号67、配列番号77若しくは配列番号83の配列を含み、又は前記CDRH1は、配列番号25、配列番号31、配列番号37、配列番号43、配列番号49、配列番号55、配列番号61、配列番号67、配列番号77若しくは配列番号83に1つ若しくは複数のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換して誘導された配列を含む。
【0015】
本発明のいくつかの他の実施形態では、
(a)前記CDRL1は、配列番号20、配列番号26、配列番号32、配列番号38、配列番号44、配列番号50、配列番号56、配列番号62、配列番号72若しくは配列番号78の配列を含み、又は前記CDRH1は、配列番号20、配列番号26、配列番号32、配列番号38、配列番号44、配列番号50、配列番号56、配列番号62、配列番号72若しくは配列番号78に1つ若しくは複数のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換して誘導された配列を含み、
(b)前記CDRL2は、配列番号21、配列番号27、配列番号33、配列番号39、配列番号45、配列番号51、配列番号57、配列番号63、配列番号73若しくは配列番号79の配列を含み、又は前記CDRH1は、配列番号21、配列番号27、配列番号33、配列番号39、配列番号45、配列番号51、配列番号57、配列番号63、配列番号73若しくは配列番号79に1つ若しくは複数のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換して誘導された配列を含み、且つ
(c)前記CDRL3は、配列番号22、配列番号28、配列番号34、配列番号40、配列番号46、配列番号52、配列番号58、配列番号64、配列番号74若しくは配列番号80の配列を含み、又は前記CDRH1は、配列番号22、配列番号28、配列番号34、配列番号40、配列番号46、配列番号52、配列番号58、配列番号64、配列番号74若しくは配列番号80に1つ若しくは複数のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換して誘導された配列を含む。
【0016】
本発明のいくつかの他の実施形態では、
(a)前記CDRH1は、配列番号23、配列番号29、配列番号35、配列番号41、配列番号47、配列番号53、配列番号59、配列番号65、配列番号75及び配列番号81からなる群から選ばれる配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有する配列を含み、
(b)前記CDRH2は、配列番号24、配列番号30、配列番号36、配列番号42、配列番号48、配列番号54、配列番号60、配列番号66、配列番号76及び配列番号82からなる群から選ばれる配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有する配列を含み、且つ
(c)前記CDRH3は、配列番号25、配列番号31、配列番号37、配列番号43、配列番号49、配列番号55、配列番号61、配列番号67、配列番号77及び配列番号83からなる群から選ばれる配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有する配列を含み、及び/又は
(d)前記CDRL1は、配列番号20、配列番号26、配列番号32、配列番号38、配列番号44、配列番号50、配列番号56、配列番号62、配列番号72及び配列番号78からなる群から選ばれる配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有する配列を含み、
(e)前記CDRL2は、配列番号21、配列番号27、配列番号33、配列番号39、配列番号45、配列番号51、配列番号57、配列番号63、配列番号73及び配列番号79からなる群から選ばれる配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有する配列を含み、且つ
(f)前記CDRL3は、配列番号22、配列番号28、配列番号34、配列番号40、配列番号46、配列番号52、配列番号58、配列番号64、配列番号74及び配列番号80からなる群から選ばれる配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。
【0017】
本発明のいくつかの他の実施形態では、
(a)前記CDRH1は、配列番号23、配列番号29、配列番号35、配列番号41、配列番号47、配列番号53、配列番号59、配列番号65、配列番号75及び配列番号81からなる群から選ばれる配列を含み、
(b)前記CDRH2は、配列番号24、配列番号30、配列番号36、配列番号42、配列番号48、配列番号54、配列番号60、配列番号66、配列番号76及び配列番号82からなる群から選ばれる配列を含み、
(c)前記CDRH3は、配列番号25、配列番号31、配列番号37、配列番号43、配列番号49、配列番号55、配列番号61、配列番号67、配列番号77及び配列番号83からなる群から選ばれる配列を含み、
(d)前記CDRL1は、配列番号20、配列番号26、配列番号32、配列番号38、配列番号44、配列番号50、配列番号56、配列番号62、配列番号72及び配列番号78からなる群から選ばれる配列を含み、
(e)前記CDRL2は、配列番号21、配列番号27、配列番号33、配列番号39、配列番号45、配列番号51、配列番号57、配列番号63、配列番号73及び配列番号79からなる群から選ばれる配列を含み、且つ
(f)前記CDRL3は、配列番号22、配列番号28、配列番号34、配列番号40、配列番号46、配列番号52、配列番号58、配列番号64、配列番号74及び配列番号80からなる群から選ばれる配列を含む。
【0018】
本発明のいくつかの他の実施形態では、前記重鎖可変領域は、CDRH1、CDRH2、CDRH3を含み、且つ
(a)前記CDRH1は配列番号23で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号24で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号25で示される配列を含み、
(b)前記CDRH1は配列番号29で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号30で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号31で示される配列を含み、
(c)前記CDRH1は配列番号35で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号36で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号37で示される配列を含み、
(d)前記CDRH1は配列番号41で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号42で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号43で示される配列を含み、
(e)前記CDRH1は配列番号47で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号48で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号49で示される配列を含み、
(f)前記CDRH1は配列番号53で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号54で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号55で示される配列を含み、
(g)前記CDRH1は配列番号59で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号60で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号61で示される配列を含み、
(h)前記CDRH1は配列番号65で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号66で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号67で示される配列を含み、
(i)前記CDRH1は配列番号75の配列を含み、前記CDRH2は配列番号76の配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号77の配列を含み、又は
(j)前記CDRH1は配列番号81の配列を含み、前記CDRH2は配列番号82の配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号83の配列を含む。
【0019】
本発明のいくつかの他の実施形態では、前記軽鎖可変領域は、CDRL1、CDRL2、CDRL3を含み、且つ
(a)前記CDRL1は配列番号20で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号21で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号22で示される配列を含み、
(b)前記CDRL1は配列番号26で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号27で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号28で示される配列を含み、
(c)前記CDRL1は配列番号32で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号33で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号34で示される配列を含み、
(d)前記CDRL1は配列番号38で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号39で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号40で示される配列を含み、
(e)前記CDRL1は配列番号44で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号45で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号46で示される配列を含み、
(f)前記CDRL1は配列番号50で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号51で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号52で示される配列を含み、
(g)前記CDRL1は配列番号56で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号57で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号58で示される配列を含み、
(h)前記CDRL1は配列番号62で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号63で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号64で示される配列を含み、
(i)前記CDRL1は配列番号72の配列を含み、前記CDRL2は配列番号73の配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号74の配列を含み、又は
(j)前記CDRL1は配列番号78の配列を含み、前記CDRL2は配列番号79の配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号80の配列を含む。
【0020】
本発明のいくつかの他の実施形態では、
(a)前記CDRH1は配列番号23で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号24で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号25で示される配列を含み、且つ前記CDRL1は配列番号20で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号21で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号22で示される配列を含み、
(b)前記CDRH1は配列番号29で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号30で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号31で示される配列を含み、且つ前記CDRL1は配列番号26で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号27で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号28で示される配列を含み、
(c)前記CDRH1は配列番号35で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号36で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号37で示される配列を含み、且つ前記CDRL1は配列番号32で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号33で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号34で示される配列を含み、
(d)前記CDRH1は配列番号41で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号42で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号43で示される配列を含み、且つ前記CDRL1は配列番号38で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号39で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号40で示される配列を含み、
(e)前記CDRH1は配列番号47で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号48で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号49で示される配列を含み、且つ前記CDRL1は配列番号44で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号45で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号46で示される配列を含み、
(f)前記CDRH1は配列番号53で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号54で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号55で示される配列を含み、且つ前記CDRL1は配列番号50で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号51で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号52で示される配列を含み、
(g)前記CDRH1は配列番号59で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号60で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号61で示される配列を含み、且つ前記CDRL1は配列番号56で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号57で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号58で示される配列を含み、
(h)前記CDRH1は配列番号65で示される配列を含み、前記CDRH2は配列番号66で示される配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号67で示される配列を含み、且つ前記CDRL1は配列番号62で示される配列を含み、前記CDRL2は配列番号63で示される配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号64で示される配列を含み、
(i)前記CDRH1は配列番号75の配列を含み、前記CDRH2は配列番号76の配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号77の配列を含み、且つ前記CDRL1は配列番号72の配列を含み、前記CDRL2は配列番号73の配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号74の配列を含み、又は
(j)前記CDRH1は配列番号81の配列を含み、前記CDRH2は配列番号82の配列を含み、且つ前記CDRH3は配列番号83の配列を含み、且つ前記CDRL1は配列番号78の配列を含み、前記CDRL2は配列番号79の配列を含み、且つ前記CDRL3は配列番号80の配列を含む。
【0021】
本発明のいくつかの他の実施形態では、
(a)CDRH1の配列は配列番号23で示され、CDRH2の配列は配列番号24で示され、且つCDRH3の配列は配列番号25で示され、且つCDRL1の配列は配列番号20で示され、CDRL2の配列は配列番号21で示され、且つCDRL3の配列は配列番号22で示され、
(b)CDRH1の配列は配列番号29で示され、CDRH2の配列は配列番号30で示され、且つCDRH3の配列は配列番号31で示され、且つCDRL1の配列は配列番号26で示され、CDRL2の配列は配列番号27で示され、且つCDRL3の配列は配列番号28で示され、
(c)CDRH1の配列は配列番号35で示され、CDRH2の配列は配列番号36で示され、且つCDRH3の配列は配列番号37で示され、且つCDRL1の配列は配列番号32で示され、CDRL2の配列は配列番号33で示され、且つCDRL3の配列は配列番号34で示され、
(d)CDRH1の配列は配列番号41で示され、CDRH2の配列は配列番号42で示され、且つCDRH3の配列は配列番号43で示され、且つCDRL1の配列は配列番号38で示され、CDRL2の配列は配列番号39で示され、且つCDRL3の配列は配列番号40で示され、
(e)CDRH1の配列は配列番号47で示され、CDRH2の配列は配列番号48で示され、且つCDRH3の配列は配列番号49で示され、且つCDRL1の配列は配列番号44で示され、CDRL2の配列は配列番号45で示され、且つCDRL3の配列は配列番号46で示され、
(f)CDRH1の配列は配列番号53で示され、CDRH2の配列は配列番号54で示され、且つCDRH3の配列は配列番号55で示され、且つCDRL1の配列は配列番号50で示され、CDRL2の配列は配列番号51で示され、且つCDRL3の配列は配列番号52で示され、
(g)CDRH1の配列は配列番号59で示され、CDRH2の配列は配列番号60で示され、且つCDRH3の配列は配列番号61で示され、且つCDRL1の配列は配列番号56で示され、CDRL2の配列は配列番号57で示され、且つCDRL3の配列は配列番号58で示され、
(h)CDRH1の配列は配列番号65で示され、CDRH2の配列は配列番号66で示され、且つCDRH3の配列は配列番号67で示され、且つCDRL1の配列は配列番号62で示され、CDRL2の配列は配列番号63で示され、且つCDRL3の配列は配列番号64で示され、
(i)CDRH1の配列は配列番号75で示され、CDRH2の配列は配列番号76で示され、且つCDRH3の配列は配列番号77で示され、且つCDRL1の配列は配列番号72で示され、CDRL2の配列は配列番号73で示され、且つCDRL3の配列は配列番号74で示され、又は
(j)CDRH1の配列は配列番号81で示され、CDRH2の配列は配列番号82で示され、且つCDRH3の配列は配列番号83で示され、且つCDRL1の配列は配列番号78で示され、CDRL2の配列は配列番号79で示され、且つCDRL3の配列は配列番号80で示される。
【0022】
本発明のいくつかの他の実施形態では、前記重鎖可変領域は、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号69及び配列番号71からなる群から選ばれる配列を含む。
【0023】
本発明のいくつかの他の実施形態では、前記軽鎖可変領域は、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号68及び配列番号70からなる群から選ばれる配列を含む。
【0024】
本発明のいくつかの他の実施形態では、
(a)前記重鎖可変領域は配列番号5で示される配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域は配列番号4で示される配列を含み、
(b)前記重鎖可変領域は配列番号7で示される配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域は配列番号6で示される配列を含み、
(c)前記重鎖可変領域は配列番号9で示される配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域は配列番号8で示される配列を含み、
(d)前記重鎖可変領域は配列番号11で示される配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域は配列番号10で示される配列を含み、
(e)前記重鎖可変領域は配列番号13で示される配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域は配列番号12で示される配列を含み、
(f)前記重鎖可変領域は配列番号15で示される配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域は配列番号14で示される配列を含み、
(g)前記重鎖可変領域は配列番号17で示される配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域は配列番号16で示される配列を含み、又は
(h)前記重鎖可変領域は配列番号19で示される配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域は配列番号18で示される配列を含む。
【0025】
本発明のいくつかの他の実施形態では、
(a)前記重鎖可変領域の配列は配列番号5で示され、且つ前記軽鎖可変領域の配列は配列番号4で示され、
(b)前記重鎖可変領域の配列は配列番号7で示され、且つ前記軽鎖可変領域の配列は配列番号6で示され、
(c)前記重鎖可変領域の配列は配列番号9で示され、且つ前記軽鎖可変領域の配列は配列番号8で示され、
(d)前記重鎖可変領域の配列は配列番号11で示され、且つ前記軽鎖可変領域の配列は配列番号10で示され、
(e)前記重鎖可変領域の配列は配列番号13で示され、且つ前記軽鎖可変領域の配列は配列番号12で示され、
(f)前記重鎖可変領域の配列は配列番号15で示され、且つ前記軽鎖可変領域の配列は配列番号14で示され、
(g)前記重鎖可変領域の配列は配列番号17で示され、且つ前記軽鎖可変領域の配列は配列番号16で示され、
(h)前記重鎖可変領域の配列は配列番号19で示され、且つ前記軽鎖可変領域の配列は配列番号18で示され、
(i)前記重鎖可変領域は配列番号69の配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域は配列番号68の配列を含み、又は
(j)前記重鎖可変領域は配列番号71の配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域は配列番号70の配列を含む。
【0026】
本発明のいくつかの他の実施形態では、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含み、且つ
(a)前記VHは配列番号5で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号4で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(b)前記VHは配列番号7で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号6で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(c)前記VHは配列番号9で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号8で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(d)前記VHは配列番号11で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号10で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(e)前記VHは配列番号13で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号12で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(f)前記VHは配列番号15で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号14で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(g)前記VHは配列番号17で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号16で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(h)前記VHは配列番号19で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号18で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、
(i)前記VHは配列番号69で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号68で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、又は
(j)前記VHは配列番号71で示されるVHのCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、及び/若しくは前記VLは配列番号70で示されるVLのCDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明の分離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片のうち、(a)いくつかの抗体は、それ自体(1B2-8C)とチラゴルマブ(Tiragolumab)、4A042-H3、4A042-H7及び4B030aとの結合を遮断でき、4A063との結合を部分的に遮断できるが、4B037a、4B056a、4A063、4D035a及び4E061aとの結合を遮断できず、(b)いくつかの抗体は、それ自体(4A042-H3)、1B2-8C、4A042-H7及び4B030aとの結合を遮断できるが、4B037a、4B056a、4A063、4D035a及び4E061aとの結合を遮断せず、(c)いくつかの抗体は、それ自体(4A042-H7)、1B2-8C、4A042-H3及び4B030aとの結合を遮断でき、4B037a及び4A063との結合を部分的に遮断できるが、4B056a、4D035a及び4E061aとの結合を遮断できず、(d)いくつかの抗体は、それ自体(4B030a)との結合を遮断でき、4B056a及び4A063の結合を部分的に遮断でき、且つ4B037a、4D035a及び4E061aとの結合を遮断せず、(e)いくつかの抗体は、それら自体(4B037a、4A063)、4B056a、4D035a及び4E061aとの結合を遮断でき、且つチラゴルマブ、1B2-8C、4A042-H3、4A042-H7及び4B030aとの結合を部分的に遮断でき、(f)いくつかの抗体は、それ自体(4B056a)、4B037a、4A063、4D035a及び4E061aとの結合を遮断でき、チラゴルマブ、1B2-8C、4A042-H3及び4B030aとの結合を部分的に遮断できるが、4A042-H7の結合を遮断できず、(g)いくつかの抗体は、それら自体(4D035a、4E061a)、4B037a、4B056a、4A063との結合を遮断できるが、チラゴルマブ、1B2-8C、4A042-H3、4A042-H7及び4B030aとの結合を遮断しない。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明の抗huTIGIT抗体又はその抗原結合断片は、カニクイザルTIGITとも結合する。
【0029】
本発明のいくつかの他の実施形態では、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、さらに、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE及びIgDの重鎖定常領域から選ばれる重鎖定常領域を含む。
【0030】
本発明のいくつかの実施例では、前記重鎖定常領域は、ヒトIgGの重鎖定常領域又はその変異体である。
【0031】
本発明のいくつかの他の実施形態では、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、F(ab’)、Fab’、Fab、Fv、scFv、二重特異性抗体及びその組み合わせからなる群から選ばれる形態である。
【0032】
本発明は、また、試薬(例えば、検出可能な標識又は細胞傷害性薬物)と結合した本明細書に記述されている抗TIGIT抗体を含む免疫複合体を提供する。
【0033】
他の実施形態では、本発明の抗体は、抗原結合ドメインが二重特異性分子に存在し、且つさらに、異なる免疫制御受容体と特異的に結合する抗原結合ドメインを含み、前記免疫制御受容体は、PD-1、CTLA-4又はLAG3を含み、ただしそれらに限定されない。
【0034】
第2の態様では、本発明は、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0035】
第3の態様では、本発明は、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片を発現する発現ベクターを提供する。
【0036】
第4の態様では、本発明は、前記抗TIGIT抗体又は抗原結合断片を発現するベクターを含む操作された細胞を提供する。
【0037】
第5の態様では、本発明は、第1の態様の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片と、第2の態様のポリヌクレオチドと、第3の態様のベクター又は第4の態様の細胞と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。本発明は、さらに、第1の態様の抗TIGIT抗体又は抗原結合断片を含む抗体薬物複合体を提供する。本明細書は、また、前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片と、取扱説明書とを含有するキットを提供する。
【0038】
第6の態様では、本発明は、TIGIT関連疾患を治療するための薬物の製造における、第1の態様の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片、第2の態様のポリヌクレオチド、第3の態様のベクター、第4の態様の細胞又は第5の態様の医薬組成物の用途を提供する。好ましくは、前記TIGIT関連疾患は、T細胞機能不全疾患であり、より好ましくは、前記TIGIT関連疾患は、腫瘍、免疫疾患又は感染症であり、より好ましくは、前記がんは、黒色腫、乳がん、非小細胞肺がん、結腸腺がん、胃がん、急性骨髄性白血病及び多発性骨髄腫からなる群から選ばれる。より好ましくは、前記腫瘍の細胞は、CD155陽性又はPVR陽性である。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明は、T細胞を本発明の抗huTIGIT抗体又はその抗原結合断片に接触させることにより、抗原特異的T細胞応答を増強させることを含む、抗原特異的T細胞応答を増強させる方法を提供し、例えば、抑制性シグナルを減少させることによりそれを増強させ、さもなければ、前記抑制性シグナルは抗腫瘍応答を弱める。いくつかの実施形態では、前記抗原特異的T細胞は、腫瘍抗原特異的エフェクターT細胞であり、例えば、CD8T細胞であり、且つ、例えば、TIGITによって媒介される抑制性エフェクターの遮断を増強させることにより、抗腫瘍活性を増加させる。本発明の抗huTIGIT抗体又はその抗原結合断片は、NK細胞中の抑制性シグナルを減少させることにより、それらの抗腫瘍活性を増加させることもできる。特定の理論に拘束されることなく、本発明の抗huTIGIT抗体は、TIGITとPVRとの結合を遮断することによりエフェクターT細胞又はNK細胞の機能を向上させ、これにより抑制性シグナルを減少又は解消し、さもなければ、前記抑制性シグナルは細胞に送達される。代替又は追加として、本発明の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、TIGITとDNAM-1/CD226との間の相互作用を抑制でき、さもなければ、前記相互作用は、DNAM-1によって媒介される免疫の活性化を低減させる。
【0040】
本発明は、有効量の本発明の抗huTIGIT抗体を投与することを含む、必要とする被験者の腫瘍におけるTregsを減少又は枯渇させる方法を提供し、前記抗体は、エフェクター機能又は増強されたエフェクター機能を有するため、腫瘍におけるTregsの数を減少させる。
【0041】
本発明は、有効量の本発明の抗huTIGIT抗体又はその抗原結合断片を被験者に投与することにより、被験者の免疫応答を増強させることを含む、被験者の免疫応答を増強させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、被験者は、腫瘍を持っており、且つ腫瘍に対する免疫応答が増強される。別の実施形態では、被験者は、ウイルス感染症を持っており、且つ抗ウイルス免疫応答が増強される。
【0042】
本発明は、また、本発明の抗huTIGIT抗体又はその抗原結合断片を被験者に投与することにより、腫瘍の増殖を抑制することを含む、被験者における腫瘍の増殖を抑制する方法を提供する。
【0043】
本発明は、さらに、例えば、治療有効量の本発明の抗huTIGIT抗体又はその抗原結合断片を、例えば、医薬組成物として必要とする被験者に投与することにより、がんを治療することを含む、免疫療法によりがんを治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、がんは、膀胱がん、乳がん、子宮若しくは子宮頸がん、卵巣がん、前立腺がん、精巣がん、食道がん、消化器がん、膵臓がん、結腸直腸がん、結腸がん、腎臓がん、頭頸部がん、肺がん、胃がん、胚細胞腫瘍、骨腫瘍、肝臓がん、甲状腺がん、皮膚がん、中枢神経系腫瘍、リンパ腫、白血病、骨髄腫、肉腫、ウイルス性がんである。いくつかの実施形態では、がんは、転移性がん、難治性がん又は再発性がんである。
【0044】
第7の態様では、本発明は、有効量の、第1の態様の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片、第2の態様のポリヌクレオチド、第3の態様のベクター、第4の態様の細胞又は第5の態様の医薬組成物を、必要とする被験者に投与することを含む、TIGIT関連疾患の治療の方法を提供する。
【0045】
第8の態様では、本発明は、第1の態様の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片、第2の態様のポリヌクレオチド、第3の態様のベクター又は第4の態様の細胞を含む、TIGIT関連疾患を治療するための医薬組成物を提供する。1種若しくは複数種の別の治療薬と併用され、又は1種若しくは複数種の別の治療薬と共に二重特異性試薬として働き、前記治療薬は、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗LAG3抗体、抗GITR抗体、抗OX40抗体、抗CD73抗体、抗CD40抗体、抗CD137mAb、抗CD27mAb、抗CSF-1R抗体及び/若しくは抗CTLA-4抗体、TLR作動薬若しくはIDO若しくはTGFβの低分子拮抗剤(小分子アンタゴニスト)である。特定の実施形態では、抗huTIGIT療法と、抗PD-1及び/又は抗PD-L1療法(例えば、ヒトPD-1と結合する抗体若しくはその抗原結合断片で治療し、又はヒトPD-L1と結合する抗体若しくはその抗原結合断片で治療する)とを組み合わせる。
【0046】
本発明は、また、サンプル中、サンプル中の細胞上(例えば、FACS)又は細胞若しくは組織中の特定の位置(例えば、IHC)におけるTIGITの存在を検出する方法、又はその表面におけるTIGITの存在又は不存在に基づいて細胞を選別する方法(例えば、FACS)を提供し、前記方法は、抗体又はその抗原結合断片とTIGITとの間に複合体を形成できる条件で、サンプルを本発明の抗huTIGIT抗体又はその抗原結合断片に接触させることと、前記複合体の形成を検出することとを含む。いくつかの実施形態では、検出用の抗TIGIT抗体を検出可能な標識と結合させる。
【0047】
本発明では、ヒト抗体遺伝子配列完全長(遺伝子制御配列を含む)が導入されている染色体導入マウス(TC-mAbTMマウス)モデルを使用する。標的抗原は、染色体導入マウスを免疫することにより、直接的に完全ヒト化抗体を得るために用いられる。得られた抗体は、後続のヒト化及び親和性修飾が不要であるため、コストが低減され開発期間が短縮される。また、前記抗体は染色体導入マウスから誘導された完全ヒト抗体であるため、その免疫原性が顕著に低減され、薬物の開発に一層役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】組換えhuTIGITタンパク質及び本発明における所定のTC-mAbTMマウスを使用して誘導された抗TIGIT抗体のhuTIGIT結合親和性の結果を示すグラフである。実施例3を参照する。
図2A】組換えhuTIGITタンパク質及び本発明における所定のTC-mAbTMマウスを使用して誘導された抗TIGIT抗体のエピトープ競合の結果を示す。実施例3を参照する。
図2B】組換えhuTIGITタンパク質及び本発明における所定のTC-mAbTMマウスを使用して誘導された抗TIGIT抗体のエピトープ競合の結果を示す。実施例3を参照する。
図3A】ヒトTIGITを発現するCHO細胞及び本発明における所定のTC-mAbTMマウスを使用して誘導された抗TIGIT抗体の異なる濃度でのCHO-TIGIT結合測定の結果を示すグラフである。
図3B】カニクイザルTIGIT(mkTIGIT)を発現するCHO細胞及び本発明における所定のTC-mAbTMマウスを使用して誘導された抗TIGIT抗体の異なる濃度でのCHO-TIGIT結合測定の結果を示すグラフである。実施例4を参照する。
図4】ヒトTIGITを発現するCHO細胞及び本発明の所定のTC-mAbTMマウスを使用して誘導された抗TIGIT抗体の異なる濃度でのCHO-TIGIT CD155遮断測定の結果を示すグラフである。実施例5を参照する。
図5A】ヒトTIGIT遺伝子組換えマウスモデルにおける腫瘍増殖に対する、抗PD1抗体と併用された本発明における所定のTC-mAbTMマウスによって誘導された抗TIGIT抗体4A063の抑制効果を示すグラフである。
図5B】各群のマウスの平均体重を時間の関数として示す。実施例6を参照する。
図6A】抗PD1抗体と併用された、所定のTC mAbTMによって誘導された抗TIGIT抗体4A063で処理されたCT26腫瘍における、CD3T細胞集団中の腫瘍浸潤リンパ球CD8T(CD8TIL)細胞の割合の調整を示すグラフである。実施例7を参照する。
図6B】抗PD1抗体と併用された、所定のTC mAbTMによって誘導された抗TIGIT抗体4A063で処理されたCT26腫瘍担持のヒトTIGIT遺伝子組換えマウスにおける、脾細胞中のCD3T細胞集団でのCD8T細胞の割合の調整を示すグラフである。実施例7を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0049】
(定義)
特に定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者の一般的な理解と同じ意味を有する。本明細書には、本発明に用いる方法及び材料が記述されているが、当分野の従来の他の適切な方法及び材料を使用してもよい。材料、方法及び実施例は、例示的なもので、制限するためのものではない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ及び他の参考文献は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。矛盾が生じる場合は、本明細書(定義を含む)に準拠する。
【0050】
本開示では数値範囲及びパラメータの近似値が大きい範囲として示されているが、特定の実施例で示される数値は、なるべく正確に記述されている。しかし、いかなる数値にも固有の誤差が含まれており、前記誤差は測定にある標準偏差から発生する。また、本明細書に開示されている全ての範囲は、そのいずれかの及び全ての部分範囲をカバーしているものと理解される。例えば、範囲「1~10」の場合は、最小値1と最大値10(端点を含む)との間のいずれかの及び全ての部分範囲、つまり、全ての以最小値1又はより大きい値から始まる部分範囲(例えば、1~6.1)、及び最大値10又はより小さい値で終わる部分範囲(例えば、5.5~10)を含むものと考えられる。
【0051】
なお、1つの対象であるとはっきりと明確に限定しない限り、本明細書で単数形を使用する場合は、対象の複数形が含まれる。文脈で特に指示がない限り、用語「又は」と「及び/又は」は入れ替えて使用される。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「含有」又は「含む」とは、様々な成分を合わせて本発明の混合物又は組成物に用いてもよいということを意味する。したがって、用語「主に…からなる」又は「…からなる」は、用語「含有」又は「含む」のうちに含まれる。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「同一性」「パーセンテージ同一性」「相同性」又は「同一」とは、2つのアミノ酸配列の間又は2つの核酸配列の間の配列同一性を指す。パーセンテージ同一性は、2つの配列を整列して決定されてもよく、また、配列の共通の位置での同じ残基(即ち、アミノ酸又はヌクレオチド)の数を比較することを指す。当分野の標準的なアルゴリズム(例えば、Smith and Waterman,1981,Adv.Appl.Math.2:482、Needleman and Wunsch,10 1970,J.MoI.Biol.48:443、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,85:2444)又はこれらのアルゴリズムのコンピュータ化バージョン(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,WI)を利用して配列の整列及び比較を行ってもよく、前記コンピュータ化バージョンは、BLAST及びFASTAとして開示されて利用できる。また、アメリカ国立衛生研究所(メリーランド州・ベセスダ)で入手可能なENTREZは、配列の比較に用いることができる。BLAST又はGapped BLASTプログラムを使用する場合、各プログラムのデフォルトのパラメータ(例えば、アメリカ国立生物工学情報センターのウェブサイトで利用可能なBLASTN)を利用してもよい。一実施形態では、ギャップ重み(Gap Weight)が1であるGCGを、2つの配列との間のパーセンテージ同一性を決定するために用いることができる。どのアミノ酸ギャップにも、2つの配列の間の1つのアミノ酸のミスマッチであるかのように、重みが付与されている。代替として、GCG(カリフォルニア州サンディエゴ・アクセルリス社)による配列比較ソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(v2.0)を使用してもよい。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」とは、少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つ)の相補性決定領域(CDR)(例えば、免疫グロブリンの軽鎖の3つのCDRに由来するいずれか又は免疫グロブリンの重鎖の3つのCDRに由来するいずれか)を含有し、エピトープと特異的に結合できるあらゆる抗原結合分子を指す。抗体の非限定的な例として、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、一本鎖抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体のFc領域を含有してもよい。用語「抗体」には、例えば、二重特異性抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ、線形抗体、抗体断片から形成された多重特異性抗体などの誘導体が含まれる。
【0055】
従来の抗体構造単位は、一般的に四量体を含む。各四量体は一般的に、それぞれ1つの「軽」鎖及び1つの「重」鎖を有する2対の同じポリペプチド鎖によって構成される。ヒト軽鎖はκ軽鎖及びλ軽鎖に分類される。重鎖はμ、δ、γ、α及びεに分類され、且つ、抗体のアイソタイプは、それぞれ、IgM、IgD、IgG及びIgEと定義される。IgGには、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含み、ただしそれらに限定されない複数のサブクラスがある。IgMには、IgM1及びIgM2を含み、ただしそれらに限定されないサブクラスがある。したがって、本明細書で使用される「アイソタイプ」とは、定常領域の化学的特徴及び抗原特性によって定義される免疫グロブリンのあらゆるサブクラスを意味する。従来のヒト免疫グロブリンのアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM1、IgM2、IgD及びIgEである。なお、治療用抗体は、アイソタイプ及び/又はサブクラスのハイブリッドを含んでもよい。
【0056】
本明細書で使用される場合、「CDR領域」又は「CDR」とは、Kabatらによって定義される(Kabat et al.,Sequences of proteins of immunological interest,5th Ed.,U.S.Department of Health and Human Services,NIH,1991,and later)免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の超可変領域を指す。3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRがある。本明細書で使用される場合、用語「CDR又は複数のCDR」は、それらの領域のうちの1つ、複数あるいは全てを指し、抗体と抗原又はそのエピトープとの間の親和性により結合される大多数のアミノ酸残基を含有する。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「抗体断片」又は「抗原結合断片」とは、抗原(例えば、tigit)と特異的に結合する能力が保持されており、一般的に親抗体の抗原結合領域又は可変領域の少なくとも一部を含む、全長抗体及び抗体の抗体類似体の一部を指す。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、少なくとも1つの可変ドメイン(例えば、重鎖の可変ドメイン又は軽鎖の可変ドメイン)を含有する。抗体断片には、親抗体の少なくとも一部の結合特異性が保持されている。一般的に、モル数で活性を示す場合、抗体断片には親に対する結合活性が少なくとも10%保持されている。好ましくは、抗体断片には、標的に対する親抗体の結合親和性が少なくとも、20%、50%、70%、80%、90%、95%又は100%保持されている。抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fv断片、scFv断片、FD断片、相補性決定領域(CDR)断片、ジスルフィド安定化タンパク質(dsFv)などや、線形抗体、一本鎖抗体(例えば、scFv一本鎖抗体)(Genmab社の技術により作製される)、二価の一本鎖抗体、ファージ提示型単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHドメイン抗体)、ドメイン抗体(Ablynx社の技術により作製される)や、抗体断片から形成された多重特異性抗体(例えば、三本鎖抗体、四本鎖抗体など)や、遺伝子操作による修飾抗体(例えば、ヒト化マウス抗体などのキメラ抗体)、ヘテロ複合体抗体などを含み、ただしそれらに限定されない。これらの抗体断片は、当業者が通常の技術により得るもので、且つこれらの断片の実用性は完全抗体と同じ方法でスクリーニングされる。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「一本鎖抗体」とは、少なくとも2つの免疫グロブリン可変ドメイン(例えば、哺乳動物の免疫グロブリンの重鎖又は軽鎖の可変ドメイン)を含有し、抗原と特異的に結合できる単一のポリペプチドを指す。本明細書には一本鎖抗体の非限定的な例が記述されている。
【0059】
一実施形態では、本発明の抗体は、多重特異性抗体、特に二重特異性抗体であってもよく、「ダイアボディ」と呼ばれることもある。これらは、2種(又はそれ以上)の異なる抗原又は同じ抗原の異なるエピトープと結合する抗体である。ダイアボディは、当分野の従来の様々な方法で、例えば、化学的方法又はハイブリドーマから製造してもよい。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語「染色体導入マウス(TC-mAbTMマウス)」とは、マウス人工染色体を含有するマウスを指し、前記マウス人工染色体は、ヒト抗体の重鎖の遺伝子若しくは遺伝子座及び/又はヒト抗体のκ軽鎖の遺伝子若しくは遺伝子座及び/又はヒト抗体のλ軽鎖の遺伝子若しくは遺伝子座を含有し、且つヒト抗体の遺伝子又は遺伝子座に対応する少なくとも2つのマウス内因性抗体の遺伝子若しくは遺伝子座がノックアウトされている。TC-mAbTMマウス及びその子孫は、ヒト抗体遺伝子を安定的に保持し、ヒト抗体を産生することができる。
【0061】
本発明の抗体は一般的に、分離された又は組み換えられたものである。「分離された」で本明細書に開示されている様々なポリペプチドを記述する場合は、ポリペプチドを発現する細胞又は細胞培養物から同定され、分離及び/又は回収されているポリペプチドを意味する。一般的には、分離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製ステップを経由して得られる。「分離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す。
【0062】
本発明は、さらに、変異体抗体を提供する。つまり、本発明の抗体に対して様々な修飾を行ってもよく、これらの修飾は、CDRにおけるアミノ酸修飾(親和性成熟)、Fc領域におけるアミノ酸修飾、グリコシル化変異体、他のタイプの共有結合修飾を含み、ただしそれらに限定されない。例えば、本明細書で「変異体」とは、少なくとも1つのアミノ酸の修飾により親ポリペプチドのポリペプチド配列と異なるポリペプチド配列を意味する。アミノ酸の修飾は、置換、挿入及び欠失を含んでもよい。一般的には、変異体は、本明細書で記述されているタンパク質の機能が保持されている限り、任意の数の修飾を含んでもよい。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」とは、抗体分子の可変領域の特異的抗原結合部位(パラトープと呼ばれる)と相互作用する決定基を指す。エピトープは、一般的に特定の構造的特徴及び特定の電荷特性を有する分子(例えば、アミノ酸又は糖側鎖)の集合である。1つの抗原は、1つ以上のエピトープを有してもよい。
【0064】
エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(エピトープの免疫優性成分とも呼ばれる)、及び結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば、特異的抗原結合ペプチドによって効果的に遮断されるアミノ酸残基を含んでもよく、言い換えれば、アミノ酸残基は特異的抗原結合ペプチドのフットプリントのうちにある。エピトープは、一般的に特別な立体配座を示す少なくとも3つ、より一般的には少なくとも5つ又は8つ~10個のアミノ酸を含む。同じエピトープを認識する抗体は、簡易なイムノアッセイにおいて検証でき、前記イムノアッセイは、標的抗原に対する別の抗体の結合を遮断する抗体の能力を示す。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」、「ペプチド」と「タンパク質」は、少なくとも2つのアミノ酸からなる任意の長さのアミノ酸ポリマーを指すよう入れ替えて使用される。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」、「核酸分子」と「核酸配列」は、少なくとも2つのヌクレオチドからなる任意の長さのヌクレオチドポリマーを指すよう、本明細書では入れ替えて使用され、且つ、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド及びその変異体を含み、ただしそれらに限定されない。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「医薬組成物」、「組合せ薬物」と「薬物組合せ」は、入れ替えて使用され、少なくとも1種の薬物と、任意選択的に、特定の目的を実現するための薬学的に許容される担体又は賦形剤の組み合わせを意味する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、時間的及び/又は空間的において分離された組み合わせを含み、それらが共に作用して本開示の目的を実現するものでさえあればよい。
【0068】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」又は「有効量」とは、投与される被験者に利点を発揮するのに十分な用量を指す。実際の投与量及び投与の速度と期間は、治療を受けるヒトの状態及び重症度に依存する。治療処方(例えば、用量の決定など)は、最終的に、一般開業医及び他の医師の責任及び判断であり、一般的に、治療する疾患、個々の患者の状態、送達部位、投与方法及び医師に知られる他の要因が考慮される。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「被験者」と「患者」は、明細書全体において入れ替えて使用され、本発明の方法による治療を受ける動物、ヒト又は非ヒトを指す。本発明では、獣医学的応用及び非獣医学的応用が想定される。ヒト患者は、成人又は青少年(例えば、18歳未満の人)であってもよい。患者は、ヒトの他に、さらに、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、フェレット、ネコ、イヌ、霊長類を含み、ただしそれらに限定されない。例えば、非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー、ゴリラなど)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、スナネズミ、ハムスター、フェレット、ウサギ)、兎形目、ブタ(例えば、家畜化イノシシ、ミニブタ)、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ及び他の家畜、農業動物、動物園の動物を含む。
【0070】
従来の方法により本発明の抗体及び化学療法製剤を被験者に投与し、例えば、単回用量の形態又は一定期間内の連続注入で静脈内投与し、筋肉内、腹腔内、脳脊髄腔内、皮下、関節内、滑膜内、髄内、経口、局所又は吸入の経路で投与する。
【0071】
本明細書では、用語「薬学的に許容される」とは、化合物をヒトに投与する時に生理学的に許容され、且つ、有害事象、例えば、胃腸疾患、めまい若しくは他の有害事象又はこれらの有害事象に類似する全身性有害事象を引き起こさないことを意味する。
【0072】
本開示では、「薬学的に許容される担体」は、結合剤(例えば、微結晶セルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン)、充填剤(例えば、デンプン、スクロース、グルコース、無水乳酸)、崩壊剤(例えば、架橋型PVP、クロスグリコール酸デンプンナトリウム、クロスカルボキシメチルセルロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、タルク、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム)、湿潤剤(例えば、グリセリン)、界面活性剤(例えば、セチルアルコール)、及び、吸収促進剤、矯味剤、甘味料、希釈剤、コーティング剤などを含み、ただしそれらに限定されない。
【0073】
特に指示がない限り、本明細書で使用される用語「TIGIT」又は「Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体」とは、任意の脊椎動物に由来するあらゆる天然のTIGITを指し、前記脊椎動物は、哺乳動物(例えば、霊長類(例えば、ヒト))、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)を含み、TIGITは、当分野でDKFZp667A205、FLJ39873、V-set、免疫グロブリンドメインを含有するタンパク質9、V-set、膜貫通ドメインを含有するタンパク質3、VSIGU、VSTM3、WUCAMとも呼ばれる。当該用語は、「全長」、未加工のTIGIT(例えば、所定の配列番号のアミノ酸配列を有する全長ヒトTIGIT)、及び、任意の形態のTIGITをカバーしている。前記用語は、また、天然に存在するTIGIT変異体、例えば、スプライス変異体又は対立遺伝子変異体をカバーしている。用語「TIGIT関連疾患」とは、被験者(例えば、ヒト)における腫瘍(例えば、黒色腫、乳がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、結腸腺がん(COAD)、胃がん、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)(Clin Exp Immunol.2020 May;200(2):108-119))又は免疫関連疾患(例えば、T細胞機能不全疾患)におけるTIGITタンパク質又はそのリガンドCD155の異常な発現を指す。抗TIGIT抗体がそれとリガンドの結合を遮断すると、前記抗TIGIT抗体は、腫瘍細胞の増殖を抑制し、又は他の疾患の症状を軽減させ、又は関連疾患を治癒することにより、疾患の治療効果を実現できる。このような疾患は、TIGIT関連疾患と定義される。
【0074】
「T細胞機能不全疾患」は、抗原刺激に対する応答性の低減を特徴とするT細胞疾患又は病状である。いくつかの実施形態では、T細胞機能不全疾患の特徴は、T細胞の枯渇にある。特定の実施形態では、T細胞機能不全疾患は、OX40及び/又はOX40Lを経由するシグナル伝達の不適切な減少に明らかに関係している疾患である。別の実施形態では、T細胞機能不全疾患は、T細胞の応答がなく又はサイトカインの分泌、増殖若しくは細胞溶解機能の実行能力が低減する疾患である。特定の態様では、応答性の低減は、免疫原を発現する病原体又は腫瘍に対する制御を無効にする。T細胞機能障害を特徴とするT細胞機能不全疾患の例は、未解決の急性感染症、慢性感染症、腫瘍免疫を含む。いくつかの実施形態では、被験者は、ヒトである。
【0075】
用語「がん」と「腫瘍」は入れ替えて使用される。それらは、体内の異常な細胞の制御不能な増殖を特徴とする一連の疾患を指す。制御不能な細胞分裂は、悪性腫瘍の形成又は隣接組織への細胞浸潤を引き起こす場合があり、リンパ系又は血流を介して体の遠位端に転移する場合がある。がんには、良性及び悪性がん、及び休眠状態の腫瘍又は微小転移が含まれる。がんには、血液悪性腫瘍も含まれる。
【0076】
「血液悪性腫瘍」には、リンパ腫、白血病、骨髄腫又はリンパ性悪性腫瘍、脾臓及びリンパ節のがんが含まれる。例示的なリンパ腫には、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫が含まれる。B細胞リンパ腫には、ホジキンリンパ腫、大多数の非ホジキンリンパ腫が含まれる。B細胞リンパ腫の非限定的な例として、びまん性の濾胞性リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫(慢性リンパ性白血病に含まれる)、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、ワルデンストレーム(Waldenstmm)マクログロブリン血症、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症が挙げられる。T細胞リンパ腫の非限定的な例として、節外性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫が挙げられる。血液悪性腫瘍には、白血病も含まれ、二次性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病に限定されない。血液悪性腫瘍には、さらに、骨髄腫が含まれ、多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫に限定されない。他の血液がん及び/又はB細胞若しくはT細胞関連のがんが血液悪性腫瘍という用語によってカバーされる。
【0077】
用語「PVR陽性腫瘍」とは、がん組織におけるPVRの発現が増加する腫瘍を指す。PVR陽性腫瘍には、副腎皮質がん、嫌色素性腎細胞がん、乳頭状腎細胞がん、肝細胞がん、膵管腺がん、褐色細胞腫及び傍神経節腫、肺腺がん、頭頸部扁平上皮がん、前立腺がん、子宮体がん(子宮内膜がん)、子宮頸がん、黒色腫(皮膚)、中皮腫、尿路上皮がん(膀胱がん)、結腸・直腸腺がん、淡明細胞型腎細胞がん、肺扁平上皮がん、子宮がん肉腫、肉腫、卵巣漿液性嚢胞腺がん、甲状腺乳頭がん、多形性神経膠芽腫、乳がん、低悪性度神経膠腫、びまん性B細胞リンパ腫が含まれ、ただしそれらに限定されない。
【0078】
本明細書では、用語「免疫関連疾患」とは、哺乳動物免疫系の構成要素によって引き起こされ、媒介され又は他の方式で発生する哺乳動物の免疫関連疾患を指し、免疫応答を刺激又は妨害することにより疾患の進行を改善できる疾患もそのうちに含まれる。「免疫関連疾患」には、免疫介在性炎症性疾患、非免疫介在性炎症性疾患、感染症、免疫不全疾患、腫瘍などが含まれる。
【0079】
本発明の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、被験者(例えば、ヒト)の感染又は感染症を治療するために用いてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、感染又は感染症は、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症から選ばれ、HIV、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、CMV、EBV、インフルエンザウイルスが含まれ、ただしそれらに限定されない。
【0080】
以下、特定の実施例と結び付けて本発明のいくつかの好ましい実施形態及び態様をさらに記述し、ただしこれらの実施例は本発明の範囲に対する制限と捉えるべきではない。
【0081】
(実施例)
実施例1:抗TIGITモノクローナル抗体の生成
1.抗原免疫化及び結合測定用のTIGIT組換えタンパク質
GenBank配列(遺伝子座:NM_173799)による全長ヒトTIGIT(huTIGIT、配列番号1)をコードするcDNAに基づいて合成し、前記cDNAはEurofinsから購入された。全長ヒトTIGITのアミノ酸(AA)1~141(配列番号2)に対応する細胞外ドメインECDのコード領域をPCRで増幅し、且つそれを発現ベクターにクローニングすることにより、それぞれ、2つの組換え融合タンパク質Trx-huTIGIT-HIS及びGst-huTIGIT-HISの発現プラスミドを産生した。組換え融合タンパク質を産生するために、組換え融合タンパク質(Trx-TIGIT-HIS及びGst-TIGIT-HIS)の発現プラスミドを大腸菌コンピテントセル(E.coli gamiB(DE3)pLysS,Novagen)に転移して培養した。IPTG誘導後、大腸菌細胞を遠心分離して沈殿物を収集した。超音波の中で大腸菌を打ち砕いた後、遠心分離して沈殿物を得た。可溶化試薬を添加して沈殿物を溶解し、次にNi-NTAカラム(Qiagen、Ni-NTA Superflow、#30410)により精製し、それを透析した。PAGEにより組換えタンパク質の精製の効果を検出し、次に組換えタンパク質を少量に等分して-30℃で保存した。
ATGCGCTGGTGTCTCCTCCTGATCTGGGCCCAGGGGCTGAGGCAGGCTCCCCTCGCCTCAGGAATGATGACAGGCACAATAGAAACAACGGGGAACATTTCTGCAGAGAAAGGTGGCTCTATCATCTTACAATGTCACCTCTCCTCCACCACGGCACAAGTGACCCAGGTCAACTGGGAGCAGCAGGACCAGCTTCTGGCCATTTGTAATGCTGACTTGGGGTGGCACATCTCCCCATCCTTCAAGGATCGAGTGGCCCCAGGTCCCGGCCTGGGCCTCACCCTCCAGTCGCTGACCGTGAACGATACAGGGGAGTACTTCTGCATCTATCACACCTACCCTGATGGGACGTACACTGGGAGAATCTTCCTGGAGGTCCTAGAAAGCTCAGTGGCTGAGCACGGTGCCAGGTTCCAGATTCCATTGCTTGGAGCCATGGCCGCGACGCTGGTGGTCATCTGCACAGCAGTCATCGTGGTGGTCGCGTTGACTAGAAAGAAGAAAGCCCTCAGAATCCATTCTGTGGAAGGTGACCTCAGGAGAAAATCAGCTGGACAGGAGGAATGGAGCCCCAGTGCTCCCTCACCCCCAGGAAGCTGTGTCCAGGCAGAAGCTGCACCTGCTGGGCTCTGTGGAGAGCAGCGGGGAGAGGACTGTGCCGAGCTGCATGACTACTTCAATGTCCTGAGTTACAGAAGCCTGGGTAACTGCAGCTTCTTCACAGAGACTGGTTAG(配列番号1)
MMTGTIETTGNISAEKGGSIILQCHLSSTTAQVTQVNWEQQDQLLAICNADLGWHISPSFKDRVAPGPGLGLTLQSLTVNDTGEYFCIYHTYPDGTYTGRIFLEVLESSVAEHGAR FQIP(配列番号2)
【0082】
2.安定発現細胞株の構築
それぞれ、GenBank配列(NM_73799)及び(XM_005548101.2)による全長ヒトTIGIT(huTIGIT、配列番号1)及びカニクイザルTIGIT(mkTIGIT、配列番号3)をコードするcDNAに基づいて合成し、前記cDNAはGenscriptから購入された。PCR増幅後、DNA産物をpcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen)にクローニングし、CHO-K1細胞株(JCRB、#JCRB9018)に形質導入することにより、CHO-huTIGIT及びCHO-mkTIGIT細胞株を産生した。G418を含んだ培地での培養、eGFP発現及びFACSによる結合測定で、HuTIGIT又はmkTIGIT高発現安定細胞株を選んだ。
ATGCGGTGGTGTCTCTTCCTGATCTGGGCCCAGGGGCTGAGGCAGGCTCCCCTCGCCTCAGGAATGATGACAGGCACAATAGAAACAACGGGGAACATTTCTGCAAAGAAAGGTGGCTCTGTTATCTTACAATGTCACCTCTCCTCCACCATGGCACAAGTGACCCAGGTCAACTGGGAGCAGCATGACCATTCGCTTCTGGCCATTCGTAATGCTGAGTTGGGGTGGCACATCTACCCAGCCTTCAAGGATCGAGTGGCCCCGGGTCCTGGCCTGGGCCTCACCCTCCAGTCGCTGACCATGAATGATACAGGGGAGTACTTCTGCACCTATCACACCTACCCTGATGGGACTTACAGAGGGAGAATCTTCCTGGAGGTCCTAGAAAGCTCAGTGGCTGAGCACAGTGCCAGGTTCCAGATTCCATTGCTTGGAGCCATGGCCATGATGCTGGTGGTCATCTGCATAGCAGTCATCGTGGTGGTCGTGTTGGCTAGAAAGAAGAAATCCCTCAGAATCCATTCTGTGGAAAGTGGCCTCCAGAGAAAATCAACTGGACAGGAAGAACAGATTCCCAGTGCTCCCTCACCCCCAGGAAGCTGTGTCCAGGCAGAAGCTGCACCTGCTGGGCTCTGTGGAGAGCAGCAGGGAGATGACTGTGCCGAGCTGCATGACTACTTCAATGTCCTGAGTTACAGAAGCCTGGGGAGCTGCAGCTTCTTCACAGAGACTGGGTAG(配列番号3)
【0083】
3.免疫化、ハイブリドーマ融合及びクローニング
6~8週齢の染色体導入マウス(TC-mAbTMマウス)への初回の免疫注射に備えて、ヒトTIGIT組換えタンパク質(Trx-huTIGIT-HIS融合タンパク質、初回1マウスあたり100μg、ブースト1マウスあたり50μg)と完全フロイントアジュバント(FCA、BDから購入、カタログ番号263810、初回1マウスあたり100μL)を混合し、また、Sigma Adjust System(登録商標)(SAS、sigmaから購入、カタログ番号s6322-1vl、ブースト1マウスあたり50μL)を使用してブースト免疫注射を行い、間隔は2~3週であった。最終の免疫化はアジュバントが不要で、Trx-huTIGIT-HIS融合タンパク質(最終1マウスあたり50μg)だけでよい。全ての免疫化が腹腔内注射で行われた。
【0084】
最終の免疫化の3日後、マウスの安楽死を実施し、無菌状態で脾臓及びリンパ節を除去し、また無菌状態でマウスリンパ球を分離及び抽出した。電気融合により、得られたリンパ球集団とマウス骨髄腫細胞(1:1、P3X63-Ag8.653、ATCC、#CRL-1580)を融合させた。融合細胞を96ウェルプレート内のHAT培地に静置し、37℃、5%のCOで7日間インキュベートし、HT培地と交換して、5日間インキュベートした。
【0085】
4.ELISA、免疫細胞化学(ICC)及びフローサイトメトリーによる抗TIGIT抗体の結合活性の評価
ヒトTIGITタンパク質を使用し、ELISAにより特異的抗TIGIT抗体を含有する上清をスクリーニングした。96ウェルプレート(Nunc、カタログ番号44-2404)をそれぞれ、Gst-huTIGIT-HIS融合タンパク質、Trx-huTIGIT-HIS(50ng/ウェル)でコーティングして、PBS緩衝液で希釈し、また4℃で一晩インキュベートした。次に、スキムミルク及びTween20を含有する300μLのTBSを使用して室温でウェルを30分間ブロックした。洗浄後、100μLの上清及び/又は血清を添加し、また室温でインキュベートした。抗体の特異性を検出するために、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合した抗ヒトIgG抗体(ヤギ抗ヒトIgG-Fc断片交差吸着抗体がHRPと結合したもの、BETHYL、#A80-304P)を、0.05%のTween20を含有するPBSにおいて最適濃度に希釈し、次に、洗浄後、100μL/ウェルで添加し、室温で30分間インキュベートした。0.05%のTween20を含有する300μLのTBSを使用してプレートを3回洗浄した。0.5mg/mLのOPD及び0.03%のHを含有する100μLのマトリックス溶液を添加して、プレートを室温で30分間インキュベートし、次に、25μLの1M HSO(Nacalai Tesque、#95626-06)を添加し、次に、492nmで読み取った。陽性クローンを選び、それを新しい96ウェルプレートに接種した。3日後、ヒトTIGITタンパク質を使用してELISAにより新しい96ウェルプレートの上清をスクリーニングした。ヒトTIGITと結合したハイブリドーマ細胞株を増殖させ、2~4日間培養し、CHO-huTIGIT及びCHO-mkTIGIT細胞を使用してICC及びフローサイトメトリーによりELISA陽性クローンを検出し、また陽性クローンを選んだ。数日培養した後、上記の方法に従った二次検出した。二次陽性クローンを限界まで希釈し、また2週後、再びICC及びフローサイトメトリーでテストし、再び限界希釈を行った。
【0086】
実施例2:抗TIGIT抗体の配列解析
ELISA、ICC及びFACSによる予備スクリーニングを経た後、限界希釈法により陽性ハイブリドーマクローンに対してサブクローニングした。再び検証した後、クローニングされたハイブリドーマ細胞を10cmのシャーレにおいて培養した。細胞密度が80%~90%に達すると、細胞を収集し、溶液でそれを浮遊させた。microKit(QIAGEN、#74104)を用いて浮遊細胞からRNAを抽出した。キット(タカラ、#Z4858N)を使用して5’cDNA末端において、抽出されたRNAを迅速に増幅させた。産物の配列解析(Eurofins)結果は、表1に示されている。前記配列に基づいて、TIGIT抗体発現プラスミドを構築し、またHEK293細胞において発現した。8種の抗体をプロテインAにより精製し、またSDS-PAGEを行って分析したところ、前記抗体の純度は95%を超えていた。得られた10種の抗体に対してアミノ酸配列決定を行い、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)の配列は、表1に示されている。
【0087】
【表1】
【0088】
IMGTプログラムを利用して、VL及びVHのCDRを予測した。結果は、表2に示されている。
【表2】
【0089】
なお、使用するCDR予測プログラムによって、同じVH又は同じVLのCDRでもわずかな違い、例えば、アミノ酸位置の変化がある。同じVH又はVLによるこれらの異なるCDRも、本発明の範囲に含まれる。
【0090】
実施例3:組換えヒトTIGITタンパク質に対する所定のTC-mAbTMマウスによって誘導された抗TIGIT抗体の親和性の測定
FortebioOctet RED96により、ヒトTIGITと結合した本発明の上述した8種の抗体の平衡解離定数(K)を測定した。測定方法は、従来の方法で行った(Estep,P et al.,High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning,MAbs,2013.5(2):p.270-8)。TIGIT-HIS(Biointron、BI120)に対する所定のTC-mAbTMマウスによって誘導された本発明の抗TIGIT抗体の親和性を測定した。NTA(HIS-タグ)センサを用いた。センサを分析用緩衝液に入れて平衡させた後、ヒトTIGIT-HISをNTAセンサ(fortebio)にロードして親和性を測定した。抗原がロードされたセンサを抗体を含んだ溶液(抗体濃度は、それぞれ、5、2.5、0.83、0.278、0.09、0.03、0.01μg/mLであった)に、静止期になるまで静置し、次に、センサを分析用緩衝液に移して、解離速度の測定に備えて少なくとも2分間解離させた。1:1組合せモデルを利用して動的解析を行った。
【0091】
上記で記述されているの試験では、本発明における所定のTC-mAbTMマウスによって誘導された抗TIGIT抗体のK値は、表3に示されている。
【表3】
【0092】
抗TIGIT抗体参照・チラゴルマブ(KEGG-DRUGデータベースに開示されているチラゴルマブ配列に基づいて合成した)と比較し、Octet結合テストを利用して全てのヒトTIGIT抗体(1B2-8C、4A042-H3、4A042-H7、4B030a、4B037a、4B056a、4A063、4D035a、4E061a)のヒトTIGITと結合するエピトープを研究した。試験手順は次のとおりであった。TIGIT-HIS(Biointron、BI120)がロードされたセンサを静止期になるまで、TIGIT抗体を含んだ溶液に静置し、次に、センサを分析用緩衝液に移して飽和の状態とし、次に、参照抗体(チラゴルマブ)を含んだ他の分析物又は緩衝液にセンサを移した。結合が静止期になると、それを溶離した。エピトープ群が示すように、チラゴルマブと比べて、3つの候補クローンエピトープの間で競合が認められ、つまり、それらがTIGITの同じ抗原エピトープと結合する。結果は、図2Aに示されている。
【0093】
本発明の様々な抗体の間でエピトープ競合が認められる。1B2-8Cは、それ自体とチラゴルマブ、4A042-H3、4A042-H7及び4B030aとの結合を遮断でき、4A063との結合を部分的に遮断できるが、4B037a、4B056a、4A063、4D035a及び4E061aとの結合を遮断せず、チラゴルマブ及び4A042-H3は、チラゴルマブ、1B2-8C、4A042-H7及び4B030aとの結合を遮断できるが、4B037a、4B056a、4A063、4D035a及び4E061aとの結合を遮断せず、4A042-H7は、それ自体とチラゴルマブ、1B2-8C、4A042-H3及び4B030aとの結合を遮断でき、4B037a及び4A063との結合を部分的に遮断できるが、4B056a、4D035a及び4E061aとの結合を遮断せず、4B030aは、それ自体との結合を遮断でき、4B056a及び4A063との結合を部分的に遮断でき、且つ4B037a、4D035a及び4E061aとの結合を遮断せず、4B037a及び4A063は、4B037a、4B056a、4A063、4D035a及び4E061aとの結合を遮断でき、且つチラゴルマブ、1B2-8C、4A042-H3、4A042-H7及び4B030aとの結合を部分的に遮断でき、4B056aは、それ自体と4B037a、4A063、4D035a及び4E061aとの結合を遮断でき、チラゴルマブ、1B2-8C、4A042-H3及び4B030aとの結合を部分的に遮断できるが、4A042-H7との結合を遮断せず、4D035a及び4E061aは、4B037a、4B056a、4A063、4D035a及び4E061aとの結合を遮断できるが、チラゴルマブ、1B2-8C、4A042-H3、4A042-H7及び4B030aとの結合を遮断しなかった。結果は、図2B及び図2Cに示されている。
【0094】
実施例4:細胞表面のTIGITに対する所定のTC-mAbTMマウスによって誘導された抗TIGITモノクローナル抗体の結合活性
CHO-huTIGIT細胞又はCHO-mkTIGIT細胞を96ウェルプレートに播種した。実施例2の抗体をそれぞれ、異なる濃度に希釈し、また、細胞によって覆われた96ウェルプレートに添加し(100μL/ウェル)、4℃(氷上)で1時間インキュベートした。
【0095】
200μL/ウェルで洗浄緩衝液を添加して細胞を洗浄し、また1600rpm(約260×g)で4℃、3分間遠心分離し、また上清を捨て、これを2回繰り返した。各ウェルに、抗ヒトIgG二次抗体(Jackson ImmunoResearch、#109-585-190、Alexa Fluor(登録商標)594 AffiniPureヤギ抗ヒトIgG、Fcγ断片特異性)を含んだ30μLの洗浄緩衝液を添加し、細胞を4℃(氷上)で1時間培養した。2回洗浄し、細胞を平底96ウェルプレートに移し、またCytoFLEX Sで細胞を分析した。10を底とする対数を横座標、2つのチャネルの蛍光強度の中央値を縦座標として抗体濃度で製図した。EC50(CHO-huTIGIT及びCHO-mkTIGIT)を曲線のピーク値と比較した。(μg/mL)結果は、表4、図3A図3Bに示されている。
【表4】
【0096】
実施例5:本発明のTC-mAbTMマウスによって誘導された抗TIGITモノクローナル抗体によるTIGITとCD155の結合遮断
CHO-huTIGIT-eGFP細胞をV底96ウェルプレートに播種した。実施例2の抗体及び参照抗体をそれぞれ、異なる濃度に希釈し、また細胞によって覆われた(100%)の96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLを添加し、4℃で1時間インキュベートした。
【0097】
200μL/ウェルで洗浄緩衝液を添加して細胞を洗浄し、また1600rpm(約260×g)で4℃、3分間遠心分離し、また上清を捨て、これを2回繰り返した。ビオチン化ヒトCD155(ヒトCD155/PVR/NECL5タンパク質(Fcタグ)、ビオチン化、Sin Biological、10109-H02H-B)を含んだ30μLの洗浄緩衝液を添加し、次に、細胞を4℃(氷上)で1時間培養した。ストレプトアビジン-594(f.c.=10μg/mL)を含んだ30μLの洗浄緩衝液をウェルに添加し、次に、細胞を4℃で30分間インキュベートした。1回洗浄し、また細胞を平底96ウェルプレートに移し、またCytoFLEX Sで細胞を分析した。抗体濃度(μg/mL)の10を底とする対数値を横座標、また各抗体濃度に対応する蛍光強度の中央値を縦座標とした。曲線のIC50を分析してCD155とTIGITとの結合に対する異なる抗体の遮断能力を区別した。
【0098】
IgG1を陰性対照抗体として、CD155に対する8種の抗体の遮断能力をテストした。IC50(μg/mL)結果は、表5、図4に示されている。
【表5】
【0099】
実施例6:抗TIGIT抗体と抗PD-1抗体の併用療法のインビボ有効性
抗TIGIT抗体と抗PD-1抗体のインビボでの相乗効果を評価するために、マウス結腸・直腸がん細胞株CT26.WT(5×10個の細胞/マウス)をTIGITヒト化BALB/cマウスに皮下移植した。平均腫瘍体積が120±50mmに達すると、腫瘍体積によりマウスをランダムに群分けし(n=3)、またIgG陰性対照抗体(抗HELヒトIgG1アイソタイプ、biointron、各回1マウスあたり200μg)、抗mPD-1抗体(インビボMAb抗マウスPD-1、承認番号:795720D1、各回1マウスあたり20μg)、陽性参照抗体(チラゴルマブ-hIgG1、各回1マウスあたり200μg)と抗mPD-1抗体(各回1マウスあたり20μg)の組み合わせ、4A063抗体(4A063-hIgG1、各回1マウスあたり200μg)と抗mPD-1抗体(各回1マウスあたり20μg)の組み合わせを投与し、3日ごとに1回で、合計で6回であった。腫瘍体積及び体重を、週2回測定した。
【0100】
結果は、図5に示されている。図5は、各群のマウスの平均腫瘍体積及び各群のマウスの平均体重をそれぞれ時間の関数として提供している。陽性参照抗体と比べて、4A063は、腫瘍増殖に対する顕著な抑制(TGI:44%対92.33%)を示しており、また各群の平均体重の間で顕著な差異がなかった。
【0101】
実施例7:抗TIGIT抗体と抗PD-1抗体の併用療法のインビボ抗腫瘍活性の作用機序に関する研究
抗TIGIT抗体のインビボでの作用様式を研究するために、抗TIGIT抗体4A063(hIgG1)と抗PD-1抗体の併用治療を行った後、フローサイトメトリーにより腫瘍の免疫細胞浸潤を分析した。実施例6で記述されているとおり、マウスに接種及び治療を行った。6回の治療から3日後、マウスを殺し、腫瘍及び脾臓を摘出した。腫瘍消化緩衝液(1mg/mLのI型コラゲナーゼ及び20μg/mLのDNAase I、sigma)で腫瘍を溶解し、また脾臓を研磨した後、そのまま脾臓単細胞懸濁液を得た。Fc-blockで染色した後、抗CD3(FITC抗マウスCD3、Biolegend、100204)、抗CD8(PE抗マウスCD8a、Biolegend、100708)で細胞を染色した。さらに、市販緩衝液(BD Cytofix/CytopermTM固定/透明化キット、554714)で固定及び透明化した後、抗IFNγ抗体(PerCP/Cyanine5.5抗マウスIFN-γ、Biolegend、505822)で細胞を染色した。通常の洗浄及び濾過を経て、フローサイトメトリーにより細胞を分析した。
【0102】
結果は、図6に示されている。図6Aに示すように、対照群と比べて、抗TIGIT抗体4A063 hIgG1を用いて腫瘍のインビボ併用治療を行う場合、腫瘍微小環境ではCD8TIL集団の割合が上昇したが(P=0.0335)、PD-1抗体単独群ではこれが観察されなかった。また、脾臓細胞におけるT細胞のフローサイトメトリー結果(図6Bに示されている)は、腫瘍微小環境における結果に一致しており、併用治療群でCD8TIL集団の割合がサブタイプ対照群での割合より有意に高く(P=0.0025)、またPD-1抗体単独治療群での割合より高い(P=0.0171)ことが分かった。これは、併用治療を経て細胞傷害性エフェクターT細胞が活性化されることを示しており、実施例5で取り上げたような併用治療群とPD-1単独群との間の差異はこれで説明がつく。併用治療群間の比較では、抗TIGIT抗体参照(チラゴルマブ-hIgG1)併用群と比べて、4A063-hIgG1併用群のCD8TILの増加がより顕著であった。抗TIGIT抗体4A063 hIgG1とPD-1抗体の併用治療でも、腫瘍内のT細胞の機能が改善され、またCD3CD8T細胞によるIFNγの産生が増加していた。
【0103】
本願で言及される全ての刊行物及び特許はいずれも参照により本明細書に組み込まれる。本発明の範囲と趣旨から逸脱しない限り、本発明に記述されている方法及び組成物の様々な変更及び変形は当業者にとって自明なものである。特定の好ましい実施形態と結び付けて本発明を記述しているが、保護を主張される本発明はこれらの特定の実施形態に限定されるべきではない。実際には、ここで記述されている本発明を実施するための形態の様々な変形も、特許請求の範囲のうちに含まれることが意図され、これらの変形は当業者にとって自明なものである。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6
【配列表】
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【国際調査報告】