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特表2025-503473ALK関連疾患の治療的処置におけるNegr1タンパク質及びその生物学的に活性な断片の使用
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  • 特表-ALK関連疾患の治療的処置におけるNegr1タンパク質及びその生物学的に活性な断片の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】ALK関連疾患の治療的処置におけるNegr1タンパク質及びその生物学的に活性な断片の使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/48 20060101AFI20250128BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20250128BHJP
【FI】
C07K14/48 ZNA
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/18
A61P25/28
A61P35/00
A61K31/7088
A61K47/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537486
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2022087229
(87)【国際公開番号】W WO2023118291
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】102021000032243
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】523440341
【氏名又は名称】フォンダッツィオーネ テレソン イーティーエス
(71)【出願人】
【識別番号】521035417
【氏名又は名称】ウニヴェルシタ・デッリ・ストゥーディ・ディ・トレント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITA DEGLI STUDI DI TRENTO
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】ピッコリ, ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】ピスケーダ, フランチェスカ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076CC01
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF63
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084CA28
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZA151
4C084ZB261
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA21
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、ALKを阻害するか又はALKを低下させる活性を有する新規Negr1タンパク質断片及びそれをコードする核酸、並びに癌及びタウオパチーなどのALK関連疾患の治療的処置におけるNegr1タンパク質、その断片及びそれをコードする核酸の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍疾患及びタウオパチー(taupathies)から選択される疾患の治療的処置に使用するための、単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な断片であって、ALKタンパク質発現レベルを低下させることができ、かつ前記断片が少なくとも6アミノ酸長を有する、単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な断片。
【請求項2】
前記単離されたNegr1タンパク質が、以下(i)~(iii)からなる群より選択される、請求項1記載の使用のための単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な断片:
(i)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5を含むか、本質的に配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5からなるか、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5からなる、アミノ酸配列;
(ii)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的に配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなるか、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなり、かつALKタンパク質発現レベルを低下させることができる、アミノ酸配列;及び
(iii)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的に配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなるか、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなり、かつ生物学的に活性のある最小配列(minimum biologically active sequence)である配列番号6又は配列番号7を含む、アミノ酸配列
【請求項3】
前記生物学的に活性な断片が、生物学的に活性のある最小配列である配列番号6又は配列番号7を含む、請求項2記載の使用のための単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な断片。
【請求項4】
前記生物学的に活性な断片が、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群より選択される、請求項1記載の使用のための単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な断片。
【請求項5】
安定性を増大させる修飾(stability-increasing modification)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な断片。
【請求項6】
前記安定性を増大させる修飾が、N末端修飾、C末端修飾、側鎖修飾、アミノ酸修飾、骨格修飾及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項5記載の使用のための単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な断片。
【請求項7】
前記安定性を増大させる修飾が、PEG化(PEGylation)、環化、N-メチル化、少なくとも2つのアミノ酸残基の対応するD-立体異性体への置換、骨格内の少なくとも2つのアミドのスルホンアミドへの置換、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項5記載の使用のための単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な断片。
【請求項8】
前記疾患が腫瘍疾患であり、かつ前記使用が、抗腫瘍活性を有する化合物若しくは物質又は放射線療法剤との同時的、個別的又は連続的な併用使用である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な断片。
【請求項9】
前記抗腫瘍活性を有する化合物若しくは物質が、シクロホスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、エトポシド、トポテカン、メルファラン、ブスルファン、チオテパ、ジヌツキシマブ、ジヌツキシマブ ベータ、クリゾチニブ、セリチニブ、アレクチニブ、ブリガチニブ、ロルラチニブ、エンサルチニブ、エヌトレクチニブ及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項8記載の使用のための単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な断片。
【請求項10】
前記腫瘍疾患が、神経芽腫、神経節膠腫、神経節細胞腫、肺の腺癌、腎細胞癌、食道扁平上皮癌、乳癌、甲状腺癌、結腸腺癌、膠芽腫、食道扁平上皮癌、悪性黒色腫、卵巣癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)及び炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(IMT)からなる群より選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な断片。
【請求項11】
前記疾患がタウオパチー(taupathy)であり、かつ前記使用が、タウオパチーの治療的処置に有効な化合物又は物質との同時的、個別的又は連続的な併用使用である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な断片。
【請求項12】
前記タウオパチーが、アルツハイマー病、脳炎後パーキンソニズム、慢性外傷性脳症(CTE)、グアム島パーキンソン認知症複合(Parkinson-dementia complex of Guam)、17番染色体に連鎖する前頭側頭型認知症及びパーキソニズム(FTDP-17)、原発性年齢関連タウオパチー(PART)認知症、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、空胞型タウオパチー(Vacuolar tauopathy)、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)からなる群より選択される、請求項1~7及び11のいずれか一項に記載の使用のための単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な断片。
【請求項13】
Negr1タンパク質の断片であり、かつALKタンパク質発現レベルを低下させることができる、少なくとも6アミノ酸長の単離されたペプチド又はポリペプチド。
【請求項14】
下記(i)及び(ii)からなる群より選択されるNegr1タンパク質の断片である、請求項13記載の単離されたペプチド又はポリペプチド:
(i)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5を含むか、本質的に配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5からなるか、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5からなる、アミノ酸配列;及び
(ii)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的に配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなるか、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなる、アミノ酸配列
【請求項15】
生物学的に活性のある最小配列である配列番号6又は配列番号7を含む、請求項14記載の単離されたペプチド又はポリペプチド。
【請求項16】
配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群より選択される、請求項15記載の単離されたペプチド又はポリペプチド。
【請求項17】
安定性を増大させる修飾を含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の単離されたペプチド又はポリペプチド。
【請求項18】
前記安定性を増大させる修飾が、N末端修飾、C末端修飾、側鎖修飾、アミノ酸修飾、骨格修飾及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項17記載の単離されたペプチド又はポリペプチド。
【請求項19】
前記安定性を増大させる修飾が、PEG化、環化、N-メチル化、少なくとも2つのアミノ酸残基の対応するD-立体異性体への置換、ペプチド骨格内の少なくとも2つのアミドのスルホンアミドへの置換、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項17記載の単離されたペプチド又はポリペプチド。
【請求項20】
請求項13~16のいずれか一項に記載のペプチド又はポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項21】
腫瘍疾患及びタウオパチーから選択される疾患の治療的処置に使用するための、Negr1タンパク質又は請求項13~16のいずれか一項に記載のペプチド若しくはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項22】
請求項13~16のいずれか一項に記載のペプチド又はポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項23】
請求項21記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項24】
請求項13~19のいずれか一項に記載の単離されたペプチド若しくはポリペプチド又は請求項21記載の単離された核酸と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項25】
腫瘍疾患又はタウオパチー(thaupaty)に罹患した被験体のALKタンパク質発現レベルを低下させるのに使用するための、請求項13~19のいずれか一項に記載の単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品(biopharmaceuticals)の分野にある。
【0002】
特に、本発明は、Negr1タンパク質をベースとしたバイオ医薬品、及びALK関連疾患の治療(処置)におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
Negr1(Neuronal growth regulator 1(ニューロン成長調節因子1))は、膜露出接着タンパク質(membrane exposed adhesion proteins)である免疫グロブリンスーパーファミリー(IgLONファミリー)に属する。Negr1は、3つのN-グリコシル化C2型Ig様(免疫グロブリン様)ドメインを含み、N末端シグナル配列を有する。推定GPI付加部位は、このタンパク質のC末端の近くに存在する。
【0004】
Negr1は、脳内で高レベルに発現され、その発現は、出生後に脳が発達する間に徐々に増加し、成人期には定常状態レベルに達する(Miyata et al. 2003(非特許文献1))。Negr1発現は、海馬ニューロンのシナプス形成、神経突起伸長、及び樹状突起スパインの可塑性を調節する(Pischedda et al. 2014(非特許文献2);Pischedda and Piccoli 2015(非特許文献3))。Negr1は、FGFR2との機能的かつ物理的な相互作用を介して、皮質領域における上層の形成及び適切な皮質-海馬の接続性の確立を制御する(Pischedda et al., 2014(非特許文献2);Pischedda and Piccoli, 2015(非特許文献3);Szczurkowska et al., 2018(非特許文献4))。
【0005】
Negr1は、多くの型のヒト癌組織において一般に下方制御された遺伝子として同定されている(Bobyn et al. 2020(非特許文献5);Kim et al. 2014(非特許文献6))。例えば、IgLONファミリーの発現により、散発性上皮性卵巣腫瘍及び転移性神経芽腫(転移性神経芽細胞種)が変質することが観察されており(Takita et al. 2011(非特許文献7)及びMcKie et al. 2012(非特許文献8))、これらの遺伝子が腫瘍抑制因子としての役割を果たす可能性を示唆している。
【0006】
神経芽腫(ORPHA:635)は、15歳未満の乳児及び小児における固形腫瘍の約10%を示し、この年齢層における年間発生率は約1/70,000である。
【0007】
神経芽腫は、傍脊椎神経節又は副腎髄質などの交感神経系組織に影響を及ぼして、胸部、頸部、骨盤及び/又は腹部において顕著な腫瘤を生成する可能性がある(Mahapatra and Challagundla 2021(非特許文献9))。
【0008】
神経芽腫は、高頻度のMYCN増幅、1p36及び11qにおけるヘテロ接合性の消失、並びに17qからの遺伝物質の獲得を含む、様々な遺伝的変化を有する。未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)は、非ホジキンリンパ腫のサブタイプ(NPM-ALK)及び肺の腺癌(EML4-ALK)における融合キナーゼとして最初に同定され、進行性神経芽腫及び他の癌における遺伝子変異(genetic alteration)においてしばしば標的にされている。ALK遺伝子及びMYCN遺伝子は、染色体2pの近傍に局在する。したがって、MYCN遺伝子座の増幅は、ALK遺伝子にも影響を及ぼす可能性がある。さらに、ALKはMYCN転写を促進し(Schoenherr et al. 2012(非特許文献10))、そしてALKはMYCNの直接的な転写標的である(Hasan et al. 2013(非特許文献11))。このようなポジティブフィードバックループは、持続的な腫瘍成長(増殖)を支持する(Janoueix-Lerosey et al. 2008(非特許文献12))。
【0009】
臨床的には、神経芽腫は、低リスクと高リスクとに分類される。リスク分類は、神経芽腫患者が治癒する見込み(probability)を予測し、その予測によってその患者の治療(処置)をどの程度集中的に行うべきかを判断するのに役立つ。例えば、外科手術単独などの限定的な(limited)治療で治癒できることが予想される患者は、低リスク群に分類される。そうではなく、より高リスクの患者は、より集中的な治療を必要とする可能性が高い患者である。リスク分類は、癌のステージ(程度)、並びに予後に影響を及ぼす可能性のある他の要因(その主なものは年齢)に基づいている。低リスク患者の5年生存率は95%を超えるが、高リスク患者では40%まで低下する(Bhoopathi et al. 2021(非特許文献13))。
【0010】
外科的な介入治療(surgical intervention)は、単独で又は最小化学療法治療(minimal chemotherapy treatment)と組み合わせて、低リスクの場合に生存率を増加させることができる。しかし、進行期の神経芽腫は、近年治療が進歩しているにもかかわらず、最も難治性の小児癌の1つである。ステージIII及びIVの患者[国際神経芽腫病期分類(INSS)に従う分類]では、しばしば、化学療法後に早期に再発が起こるが、集学的治療を包含する治療戦略は、高リスク患者の予後を改善し得る。腫瘍のこのような再発は、しばしば、より侵襲的な成長(増殖)(aggressive growth)、化学療法に対する耐性、及び転移に関連する(Speleman et al. 2016(非特許文献14))。
【0011】
転移性神経芽腫の患者の長期生存率は低いが、これは非増殖性腫瘍細胞(non-proliferating tumour cells)が大量に存在することが一因である。神経芽腫の患者の術後合併症率(surgical complication rates)は、腫瘍のステージに応じて、5~25%の範囲にわたる。後遺障害は、多様で深刻な症状を示す可能性があるので、考慮されるべきである。神経芽腫の治療に使用される化学療法レジメンは、心肺毒性(アントラサイクリン)、聴器毒性(シスプラチン)、腎不全(イホスファミド及びシスプラチン)、不妊及び不能(アルキル化剤及び放射線療法)、二次癌並びに心理的影響を含む長期毒性をもたらす可能性がある。
【0012】
したがって、神経芽腫の治療に有効な新規治療剤を見出す必要性がある。しかし、この必要性は、神経芽腫のみに限定されるものではなく、実質的にすべての種類の腫瘍に及ぶものである。なぜなら、腫瘍は、従来の治療法に対して耐性を獲得できることが知られており、薬物耐性腫瘍の有病率(prevalence)の増加により、新たな治療を提供するための継続的な研究が必要とされるからである。また、特定の患者の腫瘍の生物学的特徴を含む多くの要因に応じて、抗癌療法に対する反応が患者ごとに異なることも知られている。このことは、新たなかつ差別化された抗腫瘍剤を開発するために、継続的な研究が必要であることにもつながる。
【0013】
従来技術には、Negr1の一過性発現(Negr1発現ベクターのin vitro細胞トランスフェクション(細胞導入)による)が、種々の神経芽腫株における細胞成長(増殖)を阻害することが教示されている(Takita et al. 2011(非特許文献7))。Kim et al. 2014(非特許文献6)には、ヒト卵巣癌細胞株SKOV-3におけるNegr1過剰発現が発癌表現型の減衰をもたらすことが示されている。
【0014】
しかし、前述の刊行物は、腫瘍組織における遺伝子発現プロファイルに関する研究論文であり、癌患者に対して具体的に実現可能でかつ効果的な治療法を提供するという問題に対処していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Miyata S., Matsumoto N., Taguchi K., Akagi A., Iino T., Funatsu N., Maekawa S. (2003) Biochemical and ultrastructural analyses of IgLON cell adhesion molecules, Kilon and OBCAM in the rat brain. Neuroscience 117, 645-658.
【非特許文献2】Pischedda F., Szczurkowska J., Cirnaru M.D., Giesert F., Vezzoli E., Ueffing M., Sala C., et al. (2014) A cell surface biotinylation assay to reveal membrane-associated neuronal cues: Negr1 regulates dendritic arborization. Mol. Cell Proteomics 13, 733-748.
【非特許文献3】Pischedda F., Piccoli G. (2015) The IgLON Family Member Negr1 Promotes Neuronal Arborization Acting as Soluble Factor via FGFR2. Front Mol Neurosci 8, 89.
【非特許文献4】Szczurkowska J., Pischedda F., Pinto B., Manago F., Haas C. A., Summa M., Bertorelli R., et al. (2018) NEGR1 and FGFR2 cooperatively regulate cortical development and core behaviours related to autism disorders in mice. Brain.
【非特許文献5】Bobyn A., Zarrei M., Zhu Y., Hoffman M., Brenner D., Resnick A. C., Scherer S. W., Gallo M. (2020) Ancestry and frequency of genetic variants in the general population are confounders in the characterization of germline variants linked to cancer. BMC Med Genet 21, 92.
【非特許文献6】Kim H., Hwang J.-S., Lee B., Hong J., Lee S. (2014) Newly Identified Cancer-Associated Role of Human Neuronal Growth Regulator 1 (NEGR1). J Cancer 5, 598-608.
【非特許文献7】Takita J., Chen Y., Okubo J., Sanada M.,Adachi M., Ohki K., Nishimura R., et al. (2011) Aberrations of NEGR1 on 1p31 and MYEOV on 11q13 in neuroblastoma. Cancer Sci. 102, 1645-1650.
【非特許文献8】McKie A. B., Vaughan S., Zanini E., Okon I.S., Louis L., Sousa C. de, Greene M. I., et al. (2012) The OPCML tumor suppressor functions as a cell surface repressor-adaptor, negatively regulating receptor tyrosine kinases in epithelial ovarian cancer. Cancer Discov 2, 156-171.
【非特許文献9】Mahapatra S., Challagundla K. B. (2021) Neuroblastoma, in StatPearls. StatPearls Publishing, Treasure Island (FL).
【非特許文献10】Schoenherr C., Ruuth K., Kamaraj S., Wang C.-L., Yang H.-L., Combaret V., Djos A., et al. (2012) Anaplastic Lymphoma Kinase (ALK) regulates initiation of transcription of MYCN in neuroblastoma cells. Oncogene 31, 5193-5200.
【非特許文献11】Hasan M. K., Nafady A., Takatori A., Kishida S., Ohira M., Suenaga Y., Hossain S., et al. (2013) ALK is a MYCN target gene and regulates cell migration and invasion in neuroblastoma. Sci Rep 3, 3450.
【非特許文献12】Janoueix-Lerosey I., Lequin D., Brugieres L., Ribeiro A., Pontual L. de, Combaret V., Raynal V., et al. (2008) Somaticand germline activating mutations of the ALK kinase receptor in neuroblastoma. Nature 455, 967-970.
【非特許文献13】Bhoopathi P., Mannangatti P., Emdad L., Das S. K., Fisher P. B. (2021) The quest to develop an effective therapy for neuroblastoma. J Cell Physiol.
【非特許文献14】Speleman F., Park J. R., Henderson T. O.(2016) Neuroblastoma: A Tough Nut to Crack. Am Soc Clin Oncol Educ Book 35,e548-557.
【発明の概要】
【0016】
従来技術の短所及び欠点を克服するために、本発明者らは、まず、可溶型の完全長Negr1タンパク質を用いた様々な癌細胞株の異所性治療(ectopic treatment)の効果を研究し、Negr1がin vitroでの癌細胞増殖及びex vivoでの腫瘍体積を有意に減少できることを見出した。この発見は予想外のものである。なぜなら、従来技術は、可溶型のNegr1タンパク質を用いた治療が、実際に実現可能であり、かつ癌の成長(増殖)を阻止するのに有効であることを教示も示唆もしていないからである。
【0017】
次いで、本発明者らは、検出された完全長Ngr1タンパク質の抗腫瘍活性を分析し、原因となるドメイン、すなわち、ヒトNegr1のI/PepA(aa1-127)ドメインを同定した。これにより、本発明者らは、抗腫瘍活性に必要な最小活性配列(minimum active sequence)である、完全長Negr1タンパク質内のアミノ酸ストレッチ(amino acid stretch)を同定した。この結果は、完全長タンパク質の抗腫瘍活性を保持する様々なNegr1の活性な断片(Negr1活性断片)を提供できるため、極めて有利である。したがって、表現「Negr1の活性な断片(単数又は複数)」又はより単純に「活性な断片(単数又は複数)」は、ALKタンパク質発現レベルを低下させることができるNegr1タンパク質の単離されたペプチド又はポリペプチド断片(単数又は複数)を示す。
【0018】
いくつかの点では、ペプチド又はポリペプチド断片は、タンパク質全長よりも有利である可能性がある。なぜなら、完全長タンパク質の調製には、複雑でかつ高価な生物学的手順が必要となる可能性があるのに対して、より小さな断片は、ペプチド合成によって調製できるからである。さらに、完全長ヒトNegr1タンパク質の分子量が天然型では38,719Daであり、グリコシル化により50kDaを超えることを考慮すると、ペプチド又はポリペプチド断片の分子量が低いほど、活性及び生体内分布が改善される可能性がある。
【0019】
本発明者らはまた、Negr1及びその活性な断片(フラグメント)の抗腫瘍活性が、処理された細胞におけるALKタンパク質発現レベルを低下させる能力と相関していることを見出した。
【0020】
ALKの変異型は、神経芽腫のみならず、とりわけ甲状腺癌及び腎臓癌を含む、広範な他のヒト腫瘍型にも関与していることが知られている。さらに、腫瘍形成性(発癌性)ALK遺伝子の転座又は逆位は、非小細胞肺癌(NSCLC)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(IMT)及び他の固形腫瘍のまれな症例で見出されている(Villa et al., 2021)。
【0021】
また、ALKがタウ(tau)のリン酸化及び凝集を促進すること(Park et al., 2021)、病理学的なタウ凝集がアルツハイマー病並びに、とりわけ脳炎後パーキンソニズム、慢性外傷性脳症、グアム島パーキンソン認知症複合(Parkinson-dementia complex of Guam)、及びMAPT変異に起因するFTDP-17を含む、いくつかの他のタウオパチー(タウパチー、taupathies)において生じることも知られている。
【0022】
したがって、Negr1タンパク質及びその生物学的に活性な断片は、脳内の異常タウタンパク質の蓄積を特徴とする神経変性障害などのタウオパチーの治療にも有効であると予測される。
【0023】
したがって、本発明の一態様は、腫瘍疾患及びタウオパチーからなる群より選択される疾患の治療的処置(治療的療法)に使用するための、単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な、少なくとも6アミノ酸長の断片であって、ここで、Negr1の生物学的に活性な断片は、ALKタンパク質発現レベルを低下させる能力を有する。
【0024】
本明細書において、表現「Negr1タンパク質」には、とりわけヒトNegr1タンパク質、並びにマウスなどの他の動物種由来のそのオーソログが含まれる。
【0025】
ヒト及びマウスNegr1の主なアイソフォームのアミノ酸配列は、UniProt Databaseから、それぞれ、アクセッション番号Q7Z3B1及びQ80Z24で入手可能である。
【0026】
UniProtKB-Q7Z3B1(NEGR1_HUMAN)
MDMMLLVQGACCSNQWLAAVLLSLCCLLPSCLPAGQSVDFPWAAVDNMMVRKGDTAVLRCYLEDGASKGAWLNRSSIIFAGGDKWSVDPRVSISTLNKRDYSLQIQNVDVTDDGPYTCSVQTQHTPRTMQVHLTVQVPPKIYDISNDMTVNEGTNVTLTCLATGKPEPSISWRHISPSAKPFENGQYLDIYGITRDQAGEYECSAENDVSFPDVRKVKVVVNFAPTIQEIKSGTVTPGRSGLIRCEGAGVPPPAFEWYKGEKKLFNGQQGIIIQNFSTRSILTVTNVTQEHFGNYTCVAANKLGTTNASLPLNPPSTAQYGITGSADVLFSCWYLVLTLSSFTSIFYLKNAILQ(配列番号1)
【0027】
UniProtKB-Q80Z24(NEGR1_MOUSE)
MVLLAQGACCSNQWLAAVLLSLCSCLPAGQSVDFPWAAVDNMLVRKGDTAVLRCYLEDGASKGAWLNRSSIIFAGGDKWSVDPRVSISTLNKRDYSLQIQNVDVTDDGPYTCSVQTQHTPRTMQVHLTVQVPPKIYDISNDMTINEGTNVTLTCLATGKPEPVISWRHISPSAKPFENGQYLDIYGITRDQAGEYECSAENDVSFPDVKKVRVIVNFAPTIQEIKSGTVTPGRSGLIRCEGAGVPPPAFEWYKGEKRLFNGQQGIIIQNFSTRSILTVTNVTQEHFGNYTCVAANKLGTTNASLPLNPPSTAQYGITGSACDLFSCWSLALTLSSVISIFYLKNAILQ(配列番号2)
【0028】
マウスNegr1タンパク質のさらなるアイソフォームは、UniProt Databaseから、アクセッション番号A0A4W9、H3BKU7及びD3Z4T6で入手可能である。
【0029】
UniProtKB-A0A4W9(A0A4W9_MOUSE)
MVLLAQGACCSNQWLAAVLLSLCSCLPAGQSVDFPWAAVDNMLVRKGDTAVLRCYLEDGASKGAWLNRSSIIFAGGDKWSVDPRVSISTLNKRDYSLQIQNVDVTDDGPYTCSVQTQHTPRTMQVHLTVQVPPKIYDISNDMTINEGTNVTLTCLATGKPEPVISWRHISPSAKPFENGQYLDIYGITRDQAGEYECSAENDVSFPDVKKVRVIVNFAPTIQEIKSGTVTPGRSGLIRCEGAGVPPPAFEWYKGEKRLFNGQQGIIIQNFSTRSILTVTNVTQEHFGNYTCVAANKLGTTNASLPLNQSSIPWQVFFMLKVSFLLVCIL(配列番号3)
【0030】
UniProtKB-H3BKU7(H3BKU7_MOUSE)
MVLLAQGACCSNQWLAAVLLSLCSCLPAGQSVDFPWAAVDNMLVRKGDKWSVDPRVSISTLNKRDYSLQIQNVDVTDDGPYTCSVQTQHTPRTMQVHLTVQVPPKIYDISNDMTINEGTNVT(配列番号4)
【0031】
UniProtKB-D3Z4T6(D3Z4T6_MOUSE)
MVLLAQGACCSNQWLAAVLLSLCSCLPAGQSVDFPWAAVDNMLVRKGDTAVLRCYLEDGASKGAWLNRSSIIFAGGDKWSVDPRVSISTLNKRDYSLQIQNVDVTDDGPYTCSVQTQHTPRTMQVHLTVQVPPKIYDISNDMTINEGTNVTLTCLATGKPEPVISWRHISPSAKPFENGQYLDIYGITRDQAGEYECSAENDVSFPDVKKVRVIVNFAPTIQEIKSGTVTPGRSGLIRCEGAGVPPPAFEWYKGEKRLFNGQQGIIIQNFSTRSILTVTNVTQEHFGNYTCVAANKLGTTNASLPLNLWCHLQMCWAHSWQCCLDILQA(配列番号5)
【0032】
表現「Negr1タンパク質」には、さらに、上記で同定されたヒト及びマウスNegr1タンパク質のいずれか1つに由来し、1又は複数のアミノ酸残基が置換されたバリアント(variant)タンパク質も含まれ、バリアントタンパク質は、上記で同定されたヒト及びマウスNegr1タンパク質のいずれか1つと少なくとも90%同一である。
【0033】
アミノ酸置換を行う際、一般的には、置換されるアミノ酸残基は、保存的アミノ酸置換(conservative amino acid substitution)であってもよく、例えば、極性残基は極性残基に、親水性残基は親水性残基に、疎水性残基は疎水性残基に、正に荷電した残基は正に荷電した残基に、又は負に荷電した残基は負に荷電した残基に置換される。
【0034】
ヒトNegr1と少なくとも90%の同一性%を示すUniProt Database内のすべてのアミノ酸配列は、ニューロン成長調節因子1(Negr1)タンパク質であるので、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4又は配列番号5と少なくとも90%同一であるバリアントタンパク質は、ALKタンパク質発現レベルを低下させる能力を保持することが予測される。
【0035】
2つの配列間の配列比較及びパーセント(%)同一性の決定は、blosum62マトリックスを使用するblastp(blastp BLASTP 2.9.0+)プログラムなどの数学的アルゴリズムを用いて行われる。
【0036】
したがって、本発明の好ましい一実施形態は、腫瘍疾患又はタウオパチー(タウパチー)の治療的処置に使用するための、単離されたNegr1タンパク質又はその生物学的に活性な、少なくとも6アミノ酸長の断片であって、ここで、単離されたNegr1タンパク質は、以下(i)及び(ii)からなる群より選択される:
(i)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5を含むか、本質的に配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5からなるか、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5からなる、アミノ酸配列;
(ii)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的に配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなるか、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなり、かつALKタンパク質発現レベルを低下させることができる、アミノ酸配列
【0037】
上記の%同一性の範囲は、以下:配列番号1と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%及び少なくとも99%;配列番号2と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%及び少なくとも99%;配列番号3と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%及び少なくとも99%;配列番号4と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%及び少なくとも99%;配列番号5と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%及び少なくとも99%の実施形態を含む。
【0038】
以下の実験の項で説明されるように、本発明者らは、配列番号6が、ALKタンパク質発現レベルを低下させる生物学的活性を維持する、Negr1アミノ酸配列の活性のある最小配列(最小活性配列)であることを見出した。本発明者らはまた、驚くべきことに、W(トリプトファン)がI(イソロイシン)に置換された、上記の生物学的に活性のある最小配列(生物学的に活性な最小配列、minimum biologically active sequence)のバリアント(多様体)(配列番号7)が、配列番号6のALK発現低下活性を保持することを見出した。
【0039】
したがって、本発明の好ましい別の実施形態は、腫瘍疾患又はタウオパチーの治療的処置に使用するための、単離されたNegr1タンパク質又は生物学的に活性な断片であって、ここで、単離されたNegr1タンパク質は、以下(iii)からなる群より選択される:
(iii)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的に配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなるか、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなり、かつ生物学的に活性のある最小配列である配列番号6又は配列番号7を含む、アミノ酸配列
【0040】
本発明者らの知る限りでは、ALKタンパク質の発現レベルを低下させることができるNegr1タンパク質の生物学的に活性な断片である単離されたペプチド又はポリペプチドは、それ自体、従来技術において開示されていない。
【0041】
したがって、本発明の範囲には、少なくとも6アミノ酸長を有しかつALKタンパク質発現レベルを低下させることができるNegr1タンパク質の断片である、単離されたペプチド又はポリペプチドも含まれ、ここで、表現「Negr1タンパク質」には、上記で定義されたアイソフォーム、オーソログ及びバリアントタンパク質が含まれる。
【0042】
このような断片の例には、Negr1タンパク質のアミノ酸配列由来の6~96個のアミノ酸が含まれ、ここで、表現「Negr1タンパク質」には、上記で定義されたアイソフォーム、オーソログ及びバリアントタンパク質が含まれる。このような断片のさらなる例には、上記で定義されたNegr1タンパク質のアミノ酸配列由来の6~35個のアミノ酸又は6~70個のアミノ酸又は35~70個のアミノ酸が含まれる。具体的な例は、上記で定義されたNegr1タンパク質のアミノ酸配列由来の6、33、70又は96個のアミノ酸を含む断片である。
【0043】
このような断片の好ましい実施形態としては、生物学的に活性のある最小配列である配列番号6又は配列番号7が挙げられる。
【0044】
このような断片の最も好ましい実施形態は、「PepA」である配列番号8;「PepA-1」である配列番号9;「PepA-2」である配列番号10;「PepA-3」である配列番号11;生物学的に活性のある最小配列である配列番号6;「PepAバリアント」である配列番号12;「PepA-1バリアント」である配列番号13;「PepA-2バリアント」である配列番号14;「PepA-3バリアント」である配列番号15;及び生物学的に活性のある最小配列のバリアント(minimum variant biologically active sequence)である配列番号7である。
【0045】
本発明のペプチド又はポリペプチドは、完全長Negr1タンパク質と比較して、アミノ酸配列が短く立体障害が低いことが有利であり、その結果、合成が容易になり、かつ細胞膜への浸透が容易になる可能性がある。通常、ペプチド又はポリペプチド断片は、活性、特異性及び親和性が高く、最小限の薬物-薬物相互作用並びに生物学的及び化学的多様性も有する。薬物としてのペプチド又はポリペプチドのさらなる利点は、通常、特定の器官(例えば、腎臓又は肝臓)に蓄積されないため、毒性の副作用を最小限に抑えることができることである。通常、前記ペプチド又はポリペプチドはまた、組み換え抗体又はタンパク質よりも免疫原性が低い。
【0046】
このような特徴により、本発明のペプチド又はポリペプチドは治療薬としての使用に特に適しているが、前述のように、完全長Negr1タンパク質も有効である。
【0047】
本発明の範囲には、上記で定義されたNegr1ペプチド又はポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸(DNA又はRNA)、並びに腫瘍疾患又はタウオパチーの治療的処置におけるその使用も含まれる。
【0048】
また、本発明の範囲内には、上記で定義されたNegr1ペプチド又はポリペプチドをコードする上記ヌクレオチド配列を含む発現ベクター(好ましくは、ウイルス発現ベクター)、並びに前記発現ベクターで形質転換された宿主細胞が含まれる。
【0049】
限定されない例として、33aaペプチド「PepA-1」又は「PepA-1バリアント」のヒト細胞での発現に最適化されたヌクレオチド配列を以下に示す:
【0050】
GACGGCGCCAGCAAGGGCGCTTGGCTGAACCGGAGCAGCATCATCTTCGCCGGCGGAGATAAGTGGTCCGTGGACCCTAGAGTGTCTATCAGCACCCTG(PepA-1 nt配列)(配列番号21)
【0051】
GACGGCGCCAGCAAGGGCGCTTGGCTGAACCGGAGCAGCATCATCTTCGCCGGCGGAGATAAGATCTCTGTGGACCCTAGAGTGTCCATCAGCACCCTG(PepA-1バリアント nt配列)(配列番号22)
【0052】
この2つの配列の上流に、血清アルブミンプレプロタンパク質NP_000468のリーダー配列を挿入してもよい:
【0053】
ATGAAGTGGGTGACCTTCATCAGCCTGCTGTTTCTGTTCAGCTCCGCCTACTCT(血清アルブミンプレプロタンパク質NP_000468のリーダー配列)(配列番号23)
【0054】
上記の核酸に基づいて、2つの発現ベクターを構築することができ、それぞれ、以下の外因性核酸の1つを含む:
【0055】
ATGAAGTGGGTGACCTTCATCAGCCTGCTGTTTCTGTTCAGCTCCGCCTACTCTGACGGCGCCAGCAAGGGCGCTTGGCTGAACCGGAGCAGCATCATCTTCGCCGGCGGAGATAAGTGGTCCGTGGACCCTAGAGTGTCTATCAGCACCCTG(リーダー配列+PepA-1)(配列番号24)
【0056】
ATGAAGTGGGTGACCTTCATCAGCCTGCTGTTTCTGTTCAGCTCCGCCTACTCTGACGGCGCCAGCAAGGGCGCTTGGCTGAACCGGAGCAGCATCATCTTCGCCGGCGGAGATAAGATCTCTGTGGACCCTAGAGTGTCCATCAGCACCCTG(リーダー配列+PepA-1バリアント)(配列番号25)
【0057】
これらの核酸は、以下のペプチドをコードする:PepA-1をコードする配列番号24を最適化したペプチド、及びヒト細胞での発現のために配列番号5を最適化したペプチド。
【0058】
MKWVTFISLLFLFSSAYSDGASKGAWLNRSSIIFAGGDKWSVDPRVSISTL(リーダー配列+PepA-1)(配列番号26)
【0059】
MKWVTFISLLFLFSSAYSDGASKGAWLNRSSIIFAGGDKISVDPRVSISTL(リーダー配列+PepA-1バリアント)(配列番号27)。
【0060】
当業者は、Negr1をコードする公知のヌクレオチド配列に基づいて、組み換えDNA技術の分野で利用可能な通常の一般的知識を用いて、過度の負担なしに、本発明の核酸、発現ベクター及び宿主細胞のさらなる実施形態を設計及び製造することができる。
【0061】
治療用途に関する限り、治療される好ましい腫瘍疾患は、神経芽腫、神経節膠腫、神経節細胞腫、肺の腺癌、腎細胞癌、食道扁平上皮癌、乳癌、甲状腺癌、結腸腺癌、膠芽腫、食道扁平上皮癌、悪性黒色腫(メラノーマ)、卵巣癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)及び炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(IMT)からなる群より選択される。
【0062】
治療される好ましいタウオパチーは、アルツハイマー病、脳炎後パーキンソニズム、慢性外傷性脳症(CTE)、グアム島パーキンソン認知症複合、17番染色体に連鎖する前頭側頭型認知症及びパーキソニズム(FTDP-17)、原発性年齢関連タウオパチー(PART)認知症、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、空胞型タウオパチー(Vacuolar tauopathy)、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)からなる群より選択される。
【0063】
Negr1タンパク質及びその生物学的に活性な断片は、有効成分(活性成分)及び1又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤(添加剤、excipient)を含む医薬組成物に配合されてもよい。
【0064】
当業者は、とりわけ、治療される特定の疾患及び患者の特徴(特性)を含むいくつかの要因に応じて、投与経路、医薬品剤形(pharmaceutical dosage form)及び投与される有効成分の用量(dose)を選択することができる。
【0065】
本発明の使用のためのNegr1タンパク質及びその生物学的に活性な断片は、併用療法として、すなわち、抗腫瘍活性を有する化合物若しくは物質又は放射線療法剤との同時的(simultaneous)、個別的(separate)又は連続的(sequential)な併用投与として、腫瘍に罹患した患者に投与されてもよい。
【0066】
好ましい一実施形態によると、抗腫瘍活性を有する化合物又は物質は、シクロホスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、エトポシド、トポテカン、メルファラン、ブスルファン、チオテパ、ジヌツキシマブ、ジヌツキシマブ ベータ、クリゾチニブ、セリチニブ、アレクチニブ、ブリガチニブ、ロルラチニブ、エンサルチニブ、エヌトレクチニブ及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0067】
同様に、本発明の使用のためのNegr1タンパク質及びその生物学的に活性な断片は、併用療法として、すなわち、タウオパチーの治療的処置に有効な化合物又は物質との同時的、個別的又は連続的な併用投与によって、タウオパチーに罹患した患者に投与されてもよい。
【0068】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面を参照して、本発明者らが実施した実験の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1図1は、本発明者らが得た実験結果を示しており、Negr1の過剰発現がin vitro及びin vivoで神経芽腫の成長(増殖)を阻止することを示す。(A)ヒト神経芽腫(SH5Y)、膠芽腫(U87)、マウス神経芽腫(N2a)及びマウス初代皮質ニューロンのウエスタンブロット分析。サンプルを抗Negr1抗体及び抗アクチン抗体で染色した。(B)野生型N2a細胞並びにNegr1を安定的に発現する3つの異なるクローン(コロニー3、7及び11)の増殖率を分析した。N2aクローンを0日目に一定量(20000個の細胞)で播種した。細胞数をDIV5にカウントした;n=12、**p<0.01 対 野生型。(C)20000個のN2a野生型又は安定発現Negr1(col3及び11)細胞を軟寒天に播種し、14日間培養した。次に、細胞をクリスタルバイオレットで染色した。(D)コロニー(50個を超える細胞を含むクラスター)の数を示すグラフである;n=6、**p<0.01 対 野生型。(E)100万個のN2a細胞(野生型、クローン3、及びクローン11)を、CD1免疫不全ヌードマウスに皮下注射した。注射の3、5、7、9、13及び15日後に、腫瘍の成長(増殖)をモニターした。画像は2つの代表的な腫瘤塊(tumor mass)を示し、スケールバー=1cmである。(F)腫瘍体積を示すグラフである;n=6、**p<0.01 対 野生型。
図2図2は、本発明者らが得た実験結果を示しており、本発明の一実施形態であるPepAがin vitroで神経芽腫の成長(増殖)を阻止することを示す。(A)組み換えGFP又はNegr1(200ng、毎日)で処理した野生型N2a細胞の増殖率を分析した。N2aクローンを0日目に一定量(20000個の細胞)で播種し、5日間培養した。培養生存能力(culture viability)をMTTアッセイによって測定した。処理していない培養に対する倍率(fold-over)として表される細胞生存能力(cell viability)を示すグラフである;n=10、**p<0.01 対 GFP。(B)NCBI(NP_776169.2.)で報告されているNegr1 IgG様ドメインの境界を示す図(cartoon)である。組み換えGFP、Negr1又はNegr1由来のPepA、PepB及びPepC(200ng、毎日)で処理した野生型N2a細胞の増殖率を分析した。N2a細胞を0日目に一定量(20000個の細胞)で播種し、5日間培養した。5日目における細胞数を示すグラフである;n=12、**p<0.01 対 GFP。(C)組み換えGFP、Negr1又はPepA(200ng、毎日)で処理したU87、SK-MEL5、MCF7、A549及びSH-SY5Y細胞の増殖率を分析した。細胞を0日目に一定量(20000個の細胞)で播種し、5日間培養した。培養生存能力をMTTアッセイによって測定した。ビヒクルに対する倍率として表される細胞生存能力を示すグラフである;n=8、**p<0.01 対 GFP。
図3図3は、本発明者らが得た実験結果を示しており、PepAがin vivoで神経芽腫の成長(増殖)を阻止することを示す。(A)100万個のN2a細胞を、CD1免疫不全ヌードマウスに皮下注射した。腫瘍が100mmの体積に達した時点で、2μgのGFP又はPepAをin situで注射した。この処置を1日おきに繰り返した。注射の1~9日後に、腫瘍の成長(増殖)をモニターした。1日目に対する倍率として表される腫瘍体積の成長(増殖)を示すグラフである;n=9、**p<0.01 対 GFP。(B)腫瘍、肝臓及び腎臓におけるGFP及びPepAの存在を、STREPプルダウン(STREP-pulldown)によって調査した。(C)GFP又はPepAで処理した腫瘍から採取した20μm厚の薄片を、免疫蛍光法によって分析した。試料を抗CD34抗体(未熟な血管を染色する、赤)及びDAPI(細胞核を視覚化する、青)で染色した。(D~E)血管数(E)及び平均面積(任意単位)(E)を示すグラフである;n=4、p<0.05 対 GFP。
図4図4は、本発明者らが得た実験結果を示しており、可溶性のNegr1由来ペプチド(すなわち、PepA-1、PepA-2及びPepA-3)がin vitro及びin vivoで神経芽腫の成長(増殖)をさらに阻止することを示す。(A)上記のペプチドの境界を示す図である。(B)組み換えGFP、PepA、PepA-1、PepA-2又はPepA-3(500ng、毎日)で処理した野生型N2a細胞の増殖率を分析した。N2a細胞を0日目に一定量(20000個の細胞)で播種し、5日間培養し、最終的にMTTアッセイによって測定した。GFP値に正規化した、5日目における細胞活力(cell vitality)を示すグラフである;n=10、**p<0.01 対 GFP。(C)ビヒクル、ロルラチニブ、GFP、rNegr1及びPepA-1(3μM、毎日)で処理した野生型N2a細胞の増殖率を分析した。N2a細胞を0日目に一定量(20000個の細胞)で播種し、5日間培養し、最終的にMTTアッセイによって測定した。ビヒクル(ロルラチニブに対して)又はGFP(rNegr1及びPepA-1に対して)処理時に測定した値に正規化した、5日目における細胞活力を示すグラフである;n=10、***p<0.01 対 ビヒクル、°°°p<0.01 対 GFP。(D)初代皮質ニューロンを、DIV7から毎日、40-80-160-200ng/mlのPepA-1又はGFPで処理した。5日後、細胞毒性をMTTによって評価した。GFP値に正規化した細胞活力を示すグラフである;n=6。(E)100万個のN2a細胞を、CD1免疫不全ヌードマウスに皮下注射した。腫瘍が100mmの体積に達した時点で、2μgのGFP又はPepA-1をin situで注射した。この処置を1日おきに繰り返した。注射の3、5、7及び10日後に、腫瘍の成長(増殖)をモニターした。1日目に対する倍率として表される腫瘍体積の成長(増殖)を示すグラフである;n=3、p<0.05 対 GFP。
図5図5は、本発明者らが得た実験結果を示しており、合成PEG-PepA-1がin vitro及びin vivoで神経芽腫の成長(増殖)を阻止することを示す。(A)100万個のN2a細胞を、CD1免疫不全ヌードマウスに皮下注射した。腫瘍が100mmの体積に達した時点で、10μgのPEG-スクランブル(PEG-scramble)ペプチド又はPEG-PepA-1をin situで注射した。この処置を1日おきに繰り返した。注射後、腫瘍の成長(増殖)を毎日モニターした。1日目に対する倍率として表される腫瘍体積の成長(増殖)を示すグラフである;n=6、p<0.05、**p<0.01 対 PEG-スクランブル。(B)100万個のN2a細胞を、CD1免疫不全ヌードマウスに皮下注射した。腫瘍が100mmの体積に達した時点で、150μgのPEG-スクランブルペプチド又はPEG-PepA-1を腹腔内注射した。この処置を1日おきに繰り返した。注射後、腫瘍の成長(増殖)を毎日モニターした。1日目に対する倍率として表される腫瘍体積の成長(増殖)を示すグラフである;n=6~8、p<0.05 対 PEG-スクランブル。
図6図6は、本発明者らが得た実験結果を示しており、ペプチドPepAがALKシグナル伝達を調節することを示す。(A)PepA、PepB及びPepCの境界を示す図である。(B)50000個のN2a細胞を、5日間毎日、300ng/mlのGFP、rNegr1又はPepAで処理した。DIV5に、培養物をウエスタンブロッティングのために処理し、ALK及びMYCNについてのタンパク質発現レベル並びにアクチン及びS6リボソームタンパク質についてのタンパク質発現レベルを評価した。(C~D)アクチン及びS6RP量に対して正規化し、GFP処理した細胞の倍率として表されるALKレベル(C)及びMYCレベル(D)を示すグラフである;n=6、p<0.05 対 GFP。(E)50000個のN2a細胞を、5日間毎日、3μMのGFP、ロルラチニブ又はPepA-1で処理した。DIV5では、培養物をウエスタンブロッティングのために処理し、ALK及びMYCNについてのタンパク質発現レベル並びにアクチン及びS6リボソームタンパク質についてのタンパク質発現レベルを評価した。(F~G)アクチン及びS6RP量で正規化し、GFP処理した細胞に対する倍率として表されるALKレベル(F)及びMYCレベル(G)を示すグラフである;n=6、p<0.05、***p<0.001 対 GFP。(H)150000個のN2a細胞を、3μMのGFP、ロルラチニブ又はPepA-1で10分間処理した。次に、培養物をウエスタンブロッティングのために処理し、AKT、リン酸化AKT(phospho-AKT)、ERK1/2及びリン酸化ERK1/2(phospho-ERK1/2)についてのタンパク質発現レベル並びにS6リボソームタンパク質についてのタンパク質発現レベルを評価した。(I~J)ビヒクルで処理した細胞に対する倍率として表されるpAKT/AKT比(I)及びpERK/ERK比(J)を示すグラフである;n=6、**p<0.01、***p<0.001 対 ビヒクル。
図7図7は、本発明者らが得た実験結果を示しており、PepA-1の合成バージョン及び生物学的に活性のある最小配列のバリアントを含むスクランブルペプチドがALKシグナル伝達を調節することを示す。(A)生物学的に活性のある最小配列GDKWSV(配列番号8)の位置を示す図である(出典PDB:6DLD)。(B)合成ペプチドの配列。(C)150000個のN2a細胞を、ビヒクル又は以下の合成ペプチド(10μM、10分 10μM)で処理した:スクランブルペプチド、PepA-1由来ペプチドであるが生物学的に活性のある最小配列のバリアントGDKISV(配列番号9)を含むscr-GDKISV、及びPepA-1。次に、培養物をウエスタンブロッティングのために処理し、ERK1/2及びリン酸化ERK1/2の発現レベルを評価した。(D)ビヒクルに対する倍率としてリン酸化ERK/ERK(phospho-ERK/ERK)比を示すグラフである;n=8、p<0.05、***p<0.01 対 ビヒクル。(E)150000個のN2a細胞を、3μM又は30μMのビヒクル、ロルラチニブ又はGDKWSVペプチドで10分間処理した。次に、培養物をドットブロッティングのために処理し、ERK1/2及びリン酸化ERK1/2の発現レベルを評価した。(F)ビヒクルに対する倍率としてリン酸化ERK/ERK比を示すグラフである;n=5、**p<0.01 対 ビヒクル。(G)150000個のN2a細胞を、以下の合成ペプチド(10μM、10分 10μM)で処理した:スクランブルペプチド、PepA-1、及びPepA-1由来ペプチドであるがGDKISVヘキサペプチド(esapeptide)の代わりにスクランブル配列を有するPepA-1 6aaスクランブル。次に、培養物をウエスタンブロッティングのために処理し、ERK1/2及びリン酸化ERK1/2の発現レベルを評価した。(H)ビヒクルに対する倍率としてリン酸化ERK/ERK比を示すグラフである;n=4、***p<0.01 対 他の条件。
図8図8は、PEG-PepA-1と称されるPepA-1のPEG化(ペグ化、pegylated)型の有効性(efficacy)に関して、本発明者らが得た実験結果を示している。(A)150000個のN2a細胞を、3μM又は30μMのビヒクル、ロルラチニブ又はPEG-PepA-1で10分間処理した。次に、培養物をウエスタンブロッティングのために処理し、ERK1/2及びリン酸化ERK1/2についてのタンパク質発現レベルを評価した。(B)30μMで処理したときのビヒクルに対する倍率としてリン酸化ERK/ERK比を示すグラフである;n=8、**p<0.01 対 ビヒクル。(C)150000個のN2a細胞を、5μMのビヒクル、ロルラチニブ、スクランブルペプチド又はPEG-PepA-1で24時間又は48時間処理した。次に、培養物をウエスタンブロッティングのために処理し、ALKについてのタンパク質発現レベルを評価した。対照に対する倍率として、正規化したALK光学密度を示すグラフである;n=4、**p<0.01 対 PEG-PepA-1、°°p<0.01 対 スクランブルペプチド。(D)150000個のN2a細胞を、ビヒクル、ロルラチニブ+スクランブルペプチド、又はロルラチニブ+PEG-PepA-1で、5μMで24時間処理した。次に、培養物をウエスタンブロッティングのために処理し、ALKについてのタンパク質発現レベルを評価した。ビヒクルに対する倍率として、正規化したALK光学密度を示すグラフである;n=4、**p<0.01 対 スクランブルペプチド。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本発明者らが得た結果を、以下に詳細に説明する。
【0071】
第1の一連の実験では、本発明者らは、Negr1タンパク質が脳癌由来細胞株SH5Y(ヒト神経芽腫)、U87(膠芽腫)及びN2a(マウス神経芽腫)において下方制御されることを(観察によって)認めた。本発明者らはまた、N2a細胞における異所性Negr1発現によって細胞増殖が有意に低下すること、及びNegr1発現N2a細胞クローンでは軟寒天上でコロニーを生成する能力が大幅に低下することを見出した。さらに、in vivoでの癌の進行を調査するための確立されたツールである異種移植(Xenograft)マウスモデルを用いるin vivo研究において、本発明者らは、皮下注射(s.c.)したNegr1発現N2a細胞由来の腫瘍のサイズが、野生型N2a細胞由来の腫瘍のサイズよりも有意に小さいことを認めた。
【0072】
これらの知見は、Negr1の過剰発現がin vitro及びin vivoの両方で癌の成長(増殖)を阻止できることを実証する。
【0073】
第2の一連の実験では、本発明者らは、ナイーブN2a細胞を可溶性組み換え完全長Negr1タンパク質で処理したところ、N2aの成長(増殖)が有意に低下することを認めた。
【0074】
本発明者らはまた、抗新生物(抗腫瘍)活性を発揮できる最小アミノ酸配列を同定することを目的とした一連の実験を行った。Negr1タンパク質は、3つのIgG様ドメインを含む。ヒト完全長Negr1タンパク質のアミノ酸配列は、UniProtKBから、アクセッション番号Q7Z3B1(NEGR1_HUMAN)で入手可能であり、添付の配列表において配列番号1として指定されている。したがって、本発明者らは、1つ1つのIgG様ドメインをクローニング(クローン化)し、特徴付けた。Negr1の3つのIgG様ドメインを、以下、PepA(配列番号8)、PepB(配列番号16)及びPepC(配列番号17)と称する。ナイーブN2a細胞をNegr1、PepA、PepB、PepC又は対照としてのGFP(緑色蛍光タンパク質)(GFPは完全長Negr1とほぼ同じサイズである。)で処理したところ、本発明者らは、Negr1及びPepAがN2aの増殖を有意に低下させるのに対し、PepB及びPepCはN2aの増殖を有意に低下させないことを認めた。本発明者らはまた、Negr1及びPepAが他の癌細胞株、すなわち、U87(膠芽腫)、SK-Mel5(悪性黒色腫)、MCF7(乳腺腺癌)、A549(腺癌性肺胞基底上皮細胞(adenocarcinomic alveolar basal epithelial cells))及びSH-SY5Y(神経芽腫)の成長(増殖)を阻止する能力について試験した。rNegr1及びPepAで処理したところ、分析したすべての癌株の成長(増殖)が有意に低下した。
【0075】
PepAの抗腫瘍活性は、6週齢のCD1ヌードマウスを用いたin vivo実験においても確認され、この実験において、本発明者らは、同所性PepA処置により腫瘍の成長(増殖)が大きく(robust)低下することを認めた。さらに、本発明者らは、in situ投与したところ、PepAが腫瘍、肝臓及び腎臓に存在するのに対して、対照として用いたGFPタンパク質は主に腫瘍に存在することを見出した。このことは、PepAが血流に到達して体内に分布できることを示唆している。さらに、本発明者らは、CD34タンパク質を検出することにより腫瘍の新生血管形成を分析し、PepAで処理した腫瘍では血管新生が大幅に減少していることを認めた。
【0076】
PepAの生物学的に活性のある最小配列をさらに絞り込むために、本発明者らは、PepA構造のin silico分析(コンピュータによる分析)を行った。本発明者らは、PepAのアミノ酸配列全体にわたる3つの部分的に重複するペプチドをクローニングし、特徴付けた。これらのペプチドを、以下、PepA-1(配列番号9)、PepA-2(配列番号10)及びPepA-3(配列番号11)と称する。N2a細胞をGFP(対照)、PepA、PepA-1、PepA-2又はPepA-3で処理したところ、本発明者らは、試験したすべてのNegr1由来ペプチドがN2aの成長(増殖)を有意に低下させるが、PepA-1及びPepA-3がより強く低下させることを認めた。さらに、MTTアッセイにおいて、本発明者らは、rNegr1、PepA-1及びロルラチニブ(FDAにより承認されたALK阻害剤)がN2Aの成長(増殖)を同程度に低下させることを認めた。注目すべきことに、本発明者らはさらに、濃度を増大させたPepA-1による処理では、GFPによる処理と比較して、初代皮質ニューロンにおいて高い毒性が引き起こされないことを認めた。PepA-1の有意な抗新生物活性は、6週齢のヌードマウスにおけるin vivoでも確認された。
【0077】
生物学的証拠は、ヒトNegr1タンパク質がPepA-1のアミノ酸配列の+10位に対応する位置でグリコシル化されていることを示唆しているので、本発明者らは、PepA-1のPEG化バージョンを作製し、N2a細胞に対するin vitro及び6週齢のCD1ヌードマウスにおけるin vivoの両方で抗腫瘍活性を有することを確認した。
【0078】
本発明者らはまた、本発明のNegr1由来ペプチドの抗腫瘍活性の根底にある分子機構を、ALK-MYCN経路で特定することにより明らかにした。本発明者らは、N2a細胞をPepA又はPepA-1で処理することにより、ALK受容体及びMYCN転写因子タンパク質の発現レベルが低下し、ERKキナーゼ及びAKTキナーゼのリン酸化も減少することを認めた。
【0079】
重要なことに、本発明者らはまた、抗腫瘍活性に必要なNegr1の生物学的に活性のある最小配列、すなわち、GDKWSV(配列番号6)を同定した。この配列は、生物学的に活性であることが示されたすべてのNegr1由来ペプチド、すなわち、PepA、PepA-1、PepA-2及びPepA-3に存在するが、不活性であることが示されたPepB及びPepCには存在しない。
【0080】
上記の実験結果に基づいて、配列番号8(PepA)のNegr1ペプチドのみならず、配列番号8の45位と50位との間に位置する生物学的に活性のある最小配列である配列番号86を含む少なくとも6アミノ酸長のNegr1ペプチド断片も抗腫瘍活性を有すると結論付けることができる。
【0081】
このようなペプチド断片の例示的な例は、PepA-1(配列番号9)、PepA-2(配列番号10)及びPepA-3(配列番号11)であるが、これらに限定されない。さらなる例示的な例は、配列番号6のアミノ酸配列からなるヘキサペプチドである。
【0082】
本発明者らが得た結果はまた、生物学的に活性のある最小配列である配列番号6が配列番号7に置き換えられている、上記で定義されたNegr1ペプチドの機能的バリアントも抗腫瘍活性を有することを示す。
【0083】
このようなバリアントペプチド断片の例示的な例は、PepA-1v(配列番号13)、PepA-2v(配列番号14)及びPepA-3v(配列番号15)であるが、これらに限定されない。さらなる例示的な例は、配列番号7のアミノ酸配列からなるヘキサペプチドである。
【0084】
本発明のすべてのNegr1断片は、PEG化型で提供することができる。PEG化型は、天然に存在するヒトNegr1タンパク質のグリコシル化型に似せたものである。
【0085】
さらに、Negr1タンパク質及びその生物学的に活性な断片、ペプチド又はポリペプチドは、いずれも、その薬物動態的特性を改善するために、例えば、効力を増大し、活性を持続し、及び/又は半減期を延長するために、修飾された形態(修飾型)で提供されてもよい。このような修飾としては、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化(ペグ化、pegylation)、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への結合などが挙げられる。多数の化学的修飾のいずれかが、公知の技術によって行われてもよい。当業者にそれ自体公知のこのような修飾の具体的で例示的な例としては、以下が挙げられ、本発明の文脈で使用されてもよい:
・Kong and Heinis 2021に開示されている環状ペプチド;
・Vlieghe et al. 2010に開示されている少なくとも2つのD-アミノ酸の含有;
・Hook et al. 2005に開示されている少なくとも2つのβ-アミノ酸の含有;
・Linde et al. 2008に開示されているN-メチル化;
・Daepp et al. 2012に開示されている異なるPEG基の含有;及び/又は
・de Bont et al. 1999に開示されているペプチド骨格の少なくとも2つのアミドのスルホンアミドによる置換。
【0086】
以下の実験の項は、例示のみを目的として提供されており、添付の請求の範囲に定められる本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0087】
実験の項
材料及び方法
コンストラクト及びペプチド
【0088】
mNegr1 cDNA(Addgene クローン C3342IRCKp5014P057-rzpdm13-21)を、strep-FLAG pcDNA3.1ベクターにクローニングした。mNegr1-ペプチドを、strep-FLAG pcDNA3.1ベクターにサブクローニングした。
【0089】
スクランブル:
DGGSKGGFADLSSIIWARWNKARVDPLVSISTS(配列番号18)
スクランブル-GDKISV:
NRGDKISVSVSSSSGGRAWDWDIAKPGLAILTF(配列番号19)
PepA-1-6aaスクランブル:
DGASKGAWLNRSSIIFAGVWGSKDDPRVSISTL(配列番号20)
【0090】
細胞培養及びトランスフェクション
【0091】
N2a(Neuro2a、ATCC CCL-131)、HEK293(ATCC CRL-1573)、U87 MG(ATCC(登録商標) HTB14)、SKMEL5(ATCC(登録商標) HTB70)、MCF7 ATCC(登録商標) HTB-22、A549 ATCC(登録商標) CCL-185、及びSHSY5Y(ATCC(登録商標) CRL 2266(商標))細胞を、10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン及び1%グルタミンを含むDMEM高グルコース(Gibco)で、5%COの加湿雰囲気中、37℃で培養した。皮質ニューロン培養物を、マウス胚(E17.5-18.5;C57BL/6株)から調製した。
【0092】
高密度(750~1000細胞/mm)ニューロン培養物を、以前に記載された24穴プラスチック組織培養プレートに播種して増殖させた(Iwaki; Bibby Sterilin)(Pischedda et al. 2018)。
【0093】
N2a細胞及びHEK293細胞を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を使用して、異なるコンストラクトで、48時間トランスフェクトした。mNegr1を発現する安定したN2aクローンを、ネオマイシンセレクション(1mg/ml)によって単離した。
【0094】
STREP樹脂による精製
関連するコンストラクト(relative construct)でトランスフェクトしたHEK293細胞を、4℃で1時間、RIPA緩衝液(150mM NaCl、50mM HEPES、0,5%NP40、1%デオキシコール酸ナトリウム)中に溶解し、次いで、ストレプトアビジンによる免疫沈降(streptavidin immunoprecipitation)のために処理した。タンパク質を、4℃で1時間穏やかに攪拌しながら、STREP樹脂から溶出緩衝液(2.5mMデスチオビオチン、100mM Tris-HCL、150mM NaCl、1mM EDTA)中に溶出した。タンパク質の濃度を標準Bradford(ブラッドフォード)アッセイ(Bio-Rad)によって測定し、タンパク質の純度をSDS-PAGE及びそれに続く銀染色によって評価した。合成ペプチドは、ジェンスクリプト、オランダ(Genscript Nederland)で購入した。マウス組織を、4℃で1時間、RIPA緩衝液(150mM NaCl、50mM HEPES、0.5%NP40、1%デオキシコール酸ナトリウム、組織1mgにつき1ml(1ml/mg of tissue))中に溶解し、次いで、ストレプトアビジン免疫沈降のために処理した。タンパク質を、STREP樹脂からレムリー(Laemmli)緩衝液中に溶出した。
【0095】
MTTアッセイ
3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイを実施して、培養物の活力(culture vitality)を評価した。96穴プレートで、N2a細胞を濃度5×10細胞/cmで培養した。処理条件を結果の項に示す。処理の最後に、MTT溶液を、最終濃度0.25mg/mLで細胞培地に添加した。37℃で30分インキュベーションした。次に、培地を除去し、ホルマザン沈殿物をDMSO(200μL)中に収集した。細胞生存能力の代わりとして、吸光度を、分光光度計(Varioskan LUX、Thermofisher)を用いて570nmで測定した。対照条件に対する相対的な細胞生存能力の倍率を表す。
【0096】
ウエスタンブロッティング
タンパク質レベル及び相対的リン酸化を、ウエスタンブロッティングによって評価した。簡単に説明すると、PBSで洗浄した後、細胞を溶解緩衝液(150mM NaCl、50mM HEPES、0.5%NP40、1%デオキシコール酸ナトリウム)に可溶化した。1時間穏やかに攪拌した後、溶解産物(ライセート)を、16,000gで20分間遠心分離して清澄化した。すべての実験手順を4℃で実施した。タンパク質濃度をBradfordアッセイ(Bio-Rad、米国)によって評価した。ウエスタンブロッティング実験について、等量のタンパク質を、0.25% 5×レムリー緩衝液で希釈した。サンプルを10%SDS-PAGEゲルで分離し、80Vで120分間、4℃でニトロセルロース膜(Sigma-Aldrich)に転写した。一次抗体は以下のとおりであった:βアクチン(Santa Cruz Biotechnology、sc-47778)、ALK(Santa Cruz Biotechnology、sc-398791)、N-myc(Santa Cruz Biotechnology、sc-56729)、Phospho-p44/42 MAPK(Erk1/2)(Thr202/Tyr204)(Cell Signaling Technology)、p44/42 MAPK(Erk1/2)(137F5) Rabbit mAb(Cell Signaling Technology)、Akt(pan)(11E7) Rabbit mAb(Cell Signaling Technology)、Phospho-Akt(Ser473)(D9E)XP(登録商標) Rabbit mAb(Cell Signaling Technology)、S6 Ribosomal Protein(5G10) Rabbit mAb(Cell Signaling Technology)。抗体を、ブロッキング緩衝液(20mM Tris、pH7.4、150mM NaCl、0.1%Tween 20、及び5%脱脂粉乳)に一晩浸した(applied)。タンパク質をECL prime検出システム(GE Healthcare)を用いて検出した。ECLシグナルを、イメージングChemiDoc Touchシステム(Bio Rad Laboratory Italy、イタリア国セグラーテ)を用いて取得した。特定のバンドの光学密度を、ImageLabソフトウェア(Bio Rad)で定量化した。
【0097】
動物
100万個のN2a細胞を150μlのDMEM高グルコースに懸濁し、マイクロシリンジ(Hamilton)を用いる注射によって、8週齢のnu/nuマウス(Charles River)の左後足部(left rear paw)に皮下投与した。動物に関するすべての手順は、Institutional and National Agencies(認定(authorization)559/2016-PR)によって承認された。
【0098】
免疫蛍光法
腫瘍を解剖し、4%PFAに2時間浸漬して後固定し、次いで、OCTに入れて、処理するまで-80℃で保存した。Leicaクリオスタットで連続切片化して14μmの切片を得、Polysine Slides(Thermo Fischer Scientific)に載置した。薄片を、2.5%BSA、10%NGS、0.2%Triton(トリトン)X-100、PBS 1X中に、室温(RT)で1時間浸し、一次抗体(抗CD34抗体[EP373Y]、ABCAM、ab81289)とともに4℃で一晩(O/N)インキュベートした。PBS 1X-0.2%Triton X-100で3回洗浄した後、切片を、結合二次抗体(AffiniPure Goat Anti-Rabbit IgG (H+L) Alexa Fluor 594、Jackson ImmunoResearch、111-585-003)とともに室温で1時間インキュベートした。その後、薄片を、PBS 1X-0.2%Triton X-100で3回すすぎ、PBS 1Xで1回すすぎ、次いで、水性封入剤に封入した。切片を、40倍(40X)対物レンズを装備したZeiss Axio Imager M2で画像を取得するまで、4℃で暗所に保管した。
【0099】
統計分析及びガイドライン
すべてのデータを、最小、最大及び中央値を示す箱ひげ図として表した。データ分布の正規性を、ダゴスティーノ及びピアソンのオムニバス正規性検定(D’Agostino and Pearson omnibus normality test)、続いて対応のないスチューデントのt検定(unpaired Student’s t test)、分散分析(ANOVA)に続くテューキーの事後検定(Tuckey’s post-hoc test)又は二元配置分散分析(two-way ANOVA)に続くボンフェローニ若しくはスチューデントの事後t検定(Bonferroni or Student’s t post-hoc test)を用いて適宜決定した。実験数(n)及び有意水準(p)を、本文全体にわたって示す。すべての方法を、関連するガイドライン及び国の規制に従って実施した。
【0100】
結果
Negr1過剰発現は、in vitro及びin vivoで癌の成長(増殖)を阻止する。
ヒト神経芽腫(SH5Y)、膠芽腫(U87)、マウス神経芽腫(N2a)から得たタンパク質サンプルを、ウエスタンブロッティングによって処理した。本発明者らは、Negr1タンパク質が脳癌由来株において下方制御されることを認めた。対照的に、Negr1は、終末分化した(terminally differentiated)マウス皮質ニューロンにおいて検出できた(図1A)。次に、本発明者らは、Negr1タンパク質レベルが細胞増殖と相関しているか否かを評価した。この目的のために、Strep-FLAG Negr1融合タンパク質を発現するいくつかのN2aクローンを生成し、特徴付けた。N2aクローンを、in vitroで0日目(DIV0)に一定量(20000個の細胞)で播種した。DIV5に細胞増殖を評価した。異所性Negr1発現によってN2a増殖が有意に減少することを見出した(図1B)。
【0101】
癌細胞が固体表面から独立して成長(増殖)できることは公知である。このような足場非依存性成長(増殖)は、発癌のホールマーク(特徴、hallmark)である。この特徴は、軟寒天マトリックス内でのコロニー成長をモニターすることによってin vitroで再現できる。したがって、軟寒天コロニー形成アッセイは、細胞が悪性形質転換したか否かを試験する。したがって、一定量(20000個の細胞)の野生型及びNegr1発現細胞を軟寒天に播種し、14日間培養した。次に、細胞を、クリスタルバイオレット染色によって可視化した。コロニー(50個を超える細胞を含むクラスター)の数をスコア化することによって、本発明者らは、Negr1発現N2a細胞クローンでは軟寒天上でコロニーを生成する能力が大幅に低下することを認めた(図1C~D)。
【0102】
異種移植マウスモデルは、in vivoでの癌の進行を調べるための確立された手段である。この目的のために、100万個のN2a細胞(ナイーブ、クローン3及びクローン11)を、免疫不全CD1ヌードマウスに皮下注射した。腫瘍のサイズをノギスで測定することによって、腫瘍体積をex-vivoでモニターした。腫瘍体積を、楕円体の式(長さ×幅×高さ×0.52)を用いて計算した。本発明者らは、Negr1発現細胞由来の腫瘍のサイズが野生型N2a細胞由来の腫瘍のサイズよりも有意に小さいことを認めた(図1E~F)。
【0103】
可溶性Negr1は、in vitro及びin vivoで癌の成長(増殖)を阻止する。
生理学的レベルでは、Negr1は、GPIアンカー型膜結合タンパク質として、及び金属プロテアーゼ切断時に放出される可溶性タンパク質として存在している(Sanz et al. 2015;Pischedda and Piccoli 2015)。したがって、本発明者らは、可溶性組み換えNegr1(Negr1)による異所性処理が癌細胞の成長(増殖)を調節できるか否かについて研究した。この目的のために、本発明者らは、HEK293細胞から、Strep-FLAG Negr1及びStrep-GFPを発現して精製した。後者は、対照として使用した生物学的に不活性なタンパク質である。次に、10000個のナイーブN2a細胞を播種し、200ngのrNegr1又はGFPで毎日処理した。DIV5に、細胞の成長(増殖)をMTTアッセイによって評価した。本発明者らは、Negr1での処理により、N2aの成長(増殖)が有意に低下することを認めた(図2A)。
【0104】
次に、本発明者らは、Negr1抗新生物作用を発揮できる最小配列を同定することを目的とした。Negr1タンパク質は、3つのIgG様ドメインを含む。したがって、本発明者らは、1つ1つのIgG様ドメインをstrep-FLAGタグ付き組み換えタンパク質としてクローニングし、特徴付けた。本発明者らは、HEK293細胞から、これら3つのドメイン(以下、PepA、PepB、PepCと称する)を発現して精製した。
【0105】
次に、10000個のナイーブN2a細胞を播種し、200ngのNegr1、PepA、PepB、PepC又はGFPで毎日処理した。DIV5に、細胞数を評価した。本発明者らは、Negr1及びPepAでの処理により、N2aの増殖が有意に低下することを認めた(図2B)。
【0106】
次に、Negr1及びペプチドPepAがヒト癌由来の細胞株、すなわち、U87(膠芽腫)、SK-Mel5(悪性黒色腫)、MCF7(乳腺腺癌)、A549(腺癌性肺胞基底上皮細胞)及びSH-SY5Y(神経芽腫)の成長(増殖)を阻止する能力を試験した。この目的のために、各株を、200ngのGFP、rNegr1又はPepAで毎日処理した。DIV5に、細胞の成長(増殖)をMTTアッセイによって評価した。rNegr1及びPepAでの処理により、試験したすべての癌株の成長(増殖)が有意に低下することを見出した(図2C)。このような結果は、外胚葉起源の癌細胞株(小細胞肺癌、乳癌、悪性黒色腫、神経芽腫及び膠芽腫を含む)において実験的に検出された受容体ALKの発現と十分に一致している(Dirks et al. 2002)。
【0107】
PepAの抗新生物活性をさらに評価するために、100万個のN2a細胞を、6週齢のCD1ヌードマウスに皮下注射した。腫瘍が100mmの体積に達した時点で、2μgのGFP又はPepAをin situで注射した。この処置を1日おきに繰り返し、腫瘍の成長(増殖)を毎日モニターした。PepA処置により腫瘍の成長(増殖)が大きく低下することを認めた(図3A)。
【0108】
注射後9日目(又は腫瘍が2.5cmの体積に達した場合にはそれよりも早い日)に、動物を安楽死させ、マウスの組織を採取してGFP及びPepAの存在を分析した。特に、STREP樹脂へ固定化することにより、本発明者らは、PepAが腫瘍、肝臓及び腎臓に存在する一方、GFPタンパク質は主に腫瘍に存在することを認めた(図3B)。この生化学的証拠は、PepAが血流に到達して体内に分布できることを示唆している。
【0109】
癌の成長(増殖)は血管新生を必要とし、血管新生を誘発する。特に、癌腫瘤は、CD34タンパク質で修飾された未熟な血管の存在によって特徴付けられる。したがって、本発明者らは、CD34タンパク質を検出することによって腫瘍の新生血管形成を分析した。PepAで処理した腫瘍は、CD34で染色された総面積及び平均血管面積の点から、血管新生が大幅に低下していた(図3C~E)。
【0110】
33アミノ酸長の生物学的抗新生物性ペプチドの特徴付け
PepA内の生物学的に活性のある最小配列をさらに絞り込むために、PepA構造をin silico分析した。予測された二次構造と一致して、本発明者らは、PepA配列をカバーする3つのペプチドをクローニングし、特徴付けた(図4A)。3つのペプチドを、HEK293細胞から、strep-FLAGタグ付き組み換えペプチドとして発現し、精製した。これら3つのペプチドを、以下、PepA-1(33アミノ酸)、PepA-2(70アミノ酸)、PepA-3(70アミノ酸)と称する。これら3つのペプチドのin vitro活性を評価するために、10000個のナイーブN2a細胞を播種し、500ng/mlのGFP、PepA、PepA-1、PepA-2及びPepA-3で毎日処理した。DIV5に、細胞の成長(増殖)をMTTアッセイによって評価した。本発明者らは、最小ペプチドPepA-1が、N2aの成長(増殖)を有意に低下させることを認めた(図4B)。
【0111】
PepA1の有効性をさらに調べるために、ビヒクル、ロルラチニブ(Lorlatininb)(FDAにより承認されたALK阻害剤)、GFP、rNegr1及びPepA-1による慢性処理(毎日、すべての分子を3μM)に対するN2A細胞の増殖を調査した。DIV5に、細胞の活力をMTTアッセイによって評価した。rNegr1、PepA-1及びロルラチニブは、N2Aの成長(増殖)を同程度に低下させた(図4C)。興味深いことに、濃度を増大させたPepA-1による処理(毎日、DIV7から12まで)は、GFPによる処理に比べて、DIV12の初代皮質ニューロンに対する過剰な毒性を引き起こさなかった(図4D)。
【0112】
次に、100万個のN2a細胞を、6週齢のヌードマウスに皮下注射した。腫瘍が100mmの体積に達した時点で、2μgのGFP又はPepA-1をin situで注射した。この処置を1日おきに繰り返し、腫瘍の成長(増殖)を毎日モニターした。本発明者らは、PepA-1処置により成長(増殖)が大きく低下することを認めた(図4E)。
【0113】
33アミノ酸長の合成抗新生物性ペプチドの特徴付け
生物学的証拠は、PepA1が+10位のアスパラギン残基(N)でグリコシル化されていることを示唆している。本発明者らは、グリコシル化に似せるために、PepA-1配列のN末端にミニPEG1部分(MW:152Da)が結合している合成ペプチドを設計した。得られたペプチド(以下、PEG-PepA-1と称する)は、5mg/mlの濃度で水に可溶である。
【0114】
PEG-PepA-1の抗新生物活性を評価するために、100万個のN2a細胞を、6週齢のCD1ヌードマウスに皮下注射した。腫瘍が100mmの体積に達した時点で、10μgのPEG-PepA-1又はPEG-スクランブルペプチドをin situで注射した。処置を1日おきに繰り返し、腫瘍の成長(増殖)を毎日モニターした。本発明者らは、PepA処置により腫瘍の成長(増殖)が大きく低下することを認めた(図5A)。
【0115】
最後に、本発明者らは、全身投与によるPEG-PepA-1の有効性を試験した。この目的のために、100万個のN2a細胞を、6週齢のCD1ヌードマウスに皮下注射した。腫瘍が100mmの体積に達した時点で、150μgのPEG-PepA-1又はPEG-スクランブルペプチドを腹腔内注射した。この処置を1日おきに繰り返し、腫瘍の成長(増殖)を毎日モニターした。本発明者らは、PEG-PepA-1処置により腫瘍(増殖)の成長が大きく低下することを認めた(図5B)。
【0116】
in vitro及びin vivoで癌細胞の成長(増殖)に大きな効果が認められたことから、本発明者らは、Negr1由来ペプチドによって誘発された抗新生物性効果の根底にある分子機構の解明を目指した(図6A)。ALK受容体の活性の変化及び遺伝子増幅、並びにそれに伴う下流のMYCN転写因子の発現の増加は、神経芽腫の重要な分子ホールマーク(molecular hallmarks)である。さらに、ALK遺伝子は、非小細胞肺癌(NSCLC)及び未分化大細胞リンパ腫(ALCL)を含むいくつかの悪性腫瘍において、腫瘍形成的に変化する可能性がある。
【0117】
本発明者らは、rNegr1又はPepAによる処理がALK-MYCN経路に影響を及ぼすか否かをモニターした。この目的のために、50000個のN2a細胞を、5日間毎日、300ng/mlのGFP、rNegr1又はPepAで処理した。DIV5に、培養物をウエスタンブロッティングのために処理し、ALK及びMYCNタンパク質の発現レベルを評価した。PepA処理により、ALK及びMYCNタンパク質レベルが大きく低下した(図6B~D)。
【0118】
次に、50000個のN2a細胞を、5日間毎日、3μMのGFP、ロルラチニブ又はPepA-1(50ng/ml)で処理した。DIV5に、培養物をウエスタンブロッティングのために処理し、ALK及びMYCNタンパク質の発現を評価した。注目すべきことに、本発明者らは、PepA-1による慢性処理により、ALK及びMYC-Nの強力な下方制御が引き起こされることを認めた(図6E~G)。
【0119】
ALKは、ERKキナーゼ及びAKTキナーゼのリン酸化を伴うシグナル伝達カスケードを誘発する。したがって、上記の知見を補完するために、本発明者らは、ERK及びAKTのリン酸化に対するPepA-1の影響を評価した。急性処理(3μM、10分)では、PepA-1は、ERK及びAKTのリン酸化を有意に低下させた(図6H~J)。
【0120】
さらに、N2a細胞を、以下の合成ペプチドで処理した:PepA-1の合成バージョン(synPepA-1)、GDKISV配列を含むスクランブルペプチド(scr-GDKISV、酸化される可能性のあるW(トリプトファン)をI(イソロイシン)に置換したもの)及びスクランブルペプチド(10μM、10分)。注目すべきことに、本発明者らは、scr-GDKISV及びsynPepA-1がERK1/2のリン酸化を低下させることを見出した(図7C~D)。
【0121】
補完的なアプローチとして、N2a細胞を、GDKWSV配列がスクランブル配列に置き換えられたPepA-1由来ペプチドで処理した(PepA-1-6aaスクランブル、10μM、10分)。本発明者らは、PepA-1-6aaスクランブルがERKのリン酸化を変化させないことを認めた(図7E~F)。
【0122】
最後に、GDKWSVペプチド単独の生物学的活性を試験した。この目的のために、150000個のN2a細胞を、合成GDKWSVペプチド又はALK阻害剤であるロルラチニブで処理した(30nM、10分)。ドットプロットにより、本発明者らは、GDKWSVペプチドによる処理が、ERK1/2のリン酸化の大幅な低下と相関していることを認めた(図7E~F)。この知見は、ヘキサペプチドGDKWSVがPepA-1ペプチドの生物学的活性の維持に不可欠であることを示唆している。最終的に、本発明者らは、PEG-PepA1の薬力学的特性をモニターした。急性処理(30μM、10分)により、PEG-PepA-1は、ERKのリン酸化を有意に低下させた(図8A~B)。
【0123】
本発明者らは、PEG-PepA-1とロルラチニブとの併用効果についても研究した。本発明者らは、長期間の処理では、PEG-PepA-1がALKタンパク質のレベルを有意に低下させる一方、ロルラチニブは受容体の強力な上方制御を誘導することを認めた(いずれも5μM、24時間又は48時間、図8C)。注目すべきことに、PEG-PepA-1の同時投与は、ロルラチニブによる長期間の処理で認められたALKタンパク質のレベルを有意に低下させた(5μM、24時間、図8D)。
【0124】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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【国際調査報告】