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特表2025-503476操作された細菌における遺伝子療法ベクターの生産
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】操作された細菌における遺伝子療法ベクターの生産
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20250128BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20250128BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/69 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/55
C12N15/54
C12N15/09 100
C12N1/15
C12N1/19
C12N5/10
C12N5/071
C12N15/85 Z
C12N15/69 Z
A61K48/00
A61K47/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537513
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 US2022082078
(87)【国際公開番号】W WO2023122625
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/291,871
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】523089036
【氏名又は名称】アルデブロン,エル.エル.シー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ ジョディ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076EE30
4C076EE57
4C084AA13
4C084NA13
4C084ZB211
4C084ZB212
(57)【要約】
本明細書において、環状DNAベクターを生産するように細菌細胞を操作する改良された方法、そのような方法によって生産された環状DNAベクター、及びそのような環状DNAベクターを含む医薬組成物が提供される。本明細書において提供される方法は、環状DNAベクターの高純度組成物の大規模生産に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作された細菌細胞であって、
(a)細菌ゲノム内に組み込まれた細菌性複製タンパク質をコードするRep遺伝子と、
(b)(i)コーディング配列、及び(ii)前記複製タンパク質に依存する複製起点を含む環状DNAベクターと、
を含む、操作された細菌細胞。
【請求項2】
前記複製起点は、50塩基対未満の長さである、請求項1に記載の操作された細菌細胞。
【請求項3】
前記複製起点及び前記複製タンパク質は、ColE2関連プラスミドに由来する、請求項1又は2に記載の操作された細菌細胞。
【請求項4】
前記ColE2関連プラスミドは、ColE2-P9である、請求項3に記載の操作された細菌細胞。
【請求項5】
前記Rep遺伝子は、第1の誘導性プロモーターに作動的に結合されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項6】
前記第1の誘導性プロモーターは、T7 RNAポリメラーゼ依存性プロモーターである、請求項5に記載の操作された細菌細胞。
【請求項7】
前記細菌ゲノム内に組み込まれたT7 RNAポリメラーゼをコードする遺伝子(T7RNAP)を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項8】
前記T7RNAP遺伝子は、第2の誘導性プロモーターに作動的に結合されている、請求項7に記載の操作された細菌細胞。
【請求項9】
前記第2の誘導性プロモーターは、Ptacである、請求項8に記載の操作された細菌細胞。
【請求項10】
前記細菌ゲノム内に組み込まれた外因性制限酵素をコードする遺伝子を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項11】
前記外因性制限酵素をコードする遺伝子は、第3の誘導性プロモーターに作動的に結合されている、請求項10に記載の操作された細菌細胞。
【請求項12】
前記第3の誘導性プロモーターは、Pbadである、請求項11に記載の操作された細菌細胞。
【請求項13】
前記細菌ゲノムは、前記外因性制限酵素についての認識配列を含まない、請求項11又は12に記載の操作された細菌細胞。
【請求項14】
前記コーディング配列は、治療用遺伝子又は治療用核酸をコードする、請求項1~13のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項15】
前記コーディング配列は、真核生物配列である、請求項1~14のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項16】
前記複製起点は、前記環状DNAベクター内の唯一の細菌性配列である、請求項1~15のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項17】
前記操作された細菌細胞は、少なくとも20コピーの前記環状DNAベクターを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項18】
前記操作された細菌細胞は、少なくとも20回の細胞分裂を通じて前記環状DNAベクターを維持することができる、請求項1~17のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項19】
前記操作された細菌細胞は、1コピー以上の前記環状DNAベクター以外のゲノム外環状DNA分子を一切含まない、請求項1~18のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項20】
操作された細菌細胞当たりの前記環状DNAベクターの平均コピー数は、少なくとも10である、請求項1~19のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞を複数含む培養物。
【請求項21】
少なくとも10個の操作された細菌細胞を含む、請求項20に記載の培養物。
【請求項22】
操作された細菌細胞であって、
(a)細菌ゲノム内に組み込まれた細菌性複製タンパク質をコードするRep遺伝子と、
(b)(i)コーディング配列、及び前記細菌性複製タンパク質に依存する複製起点を含み、選択可能なマーカーを含まない、第1のセグメント、並びに(ii)選択可能なマーカーを含む第2のセグメントを含み、前記第1のセグメントが、少なくとも1つの外因性制限酵素又は外因性リコンビナーゼについての認識配列によって両側で挟まれている、プラスミドと、
を含む、操作された細菌細胞。
【請求項23】
前記第1のセグメントを両側で挟んでいる前記認識配列は、同じものである、請求項22に記載の操作された細菌細胞。
【請求項24】
前記第1のセグメントを両側で挟んでいる前記認識配列は、異なっている、請求項22に記載の操作された細菌細胞。
【請求項25】
前記第2のセグメントは、複製起点を更に含み、ここで、前記第2のセグメントにおける前記複製起点は、前記第1のセグメントにおける前記複製起点とオーソロガスである、請求項22に記載の操作された細菌細胞。
【請求項26】
前記複製起点は、50塩基対未満の長さである、請求項22に記載の操作された細菌細胞。
【請求項27】
前記複製起点及び前記複製タンパク質は、ColE2関連プラスミドに由来する、請求項22に記載の操作された細菌細胞。
【請求項28】
前記ColE2関連プラスミドは、ColE2-P9である、請求項22に記載の操作された細菌細胞。
【請求項29】
前記Rep遺伝子は、第1の誘導性プロモーターに作動的に結合されている、請求項22~27のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項30】
前記第1の誘導性プロモーターは、T7 RNAポリメラーゼ依存性プロモーターである、請求項29に記載の操作された細菌細胞。
【請求項31】
前記細菌ゲノム内に組み込まれたT7 RNAポリメラーゼをコードする遺伝子(T7RNAP)を更に含む、請求項22~30のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項32】
前記T7RNAP遺伝子は、第2の誘導性プロモーターに作動的に結合されている、請求項31に記載の操作された細菌細胞。
【請求項33】
前記第2の誘導性プロモーターは、Ptacである、請求項32に記載の操作された細菌細胞。
【請求項34】
前記細菌ゲノム内に組み込まれた前記外因性制限酵素又は前記外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子を更に含む、請求項22~33のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項35】
前記外因性制限酵素又は前記外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子は、第3の誘導性プロモーターに作動的に結合されている、請求項34に記載の操作された細菌細胞。
【請求項36】
前記第3の誘導性プロモーターは、Pbadである、請求項35に記載の操作された細菌細胞。
【請求項37】
前記細菌ゲノムは、前記外因性制限酵素又は前記外因性リコンビナーゼについての認識配列を含まない、請求項22~36のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項38】
前記コーディング配列は、治療用遺伝子又は治療用核酸をコードする、請求項22~37のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項39】
前記コーディング配列は、真核生物配列である、請求項1~19のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項40】
前記外因性制限酵素又は前記外因性リコンビナーゼを更に含む、請求項22~39のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項41】
環状DNAベクターを作製する方法であって、
(a)細菌細胞内のプラスミドと外因性制限酵素とを接触させて前記プラスミドから第1のセグメントを切り出す工程と、
ここで、前記第1のセグメントは、前記外因性制限酵素についての認識配列によって両側で挟まれており、かつ前記第1のセグメントは、コーディング配列、及び細菌性複製タンパク質に依存する複製起点を含み、これによって相補的なオーバーハングを有する5’末端及び3’末端を含む、線状DNA断片が生成される;
(b)前記線状DNA断片の5’末端及び3’末端を互いにライゲーションして前記環状DNAベクターを生成する工程と、
を含む、方法。
【請求項42】
工程(a)の前に、前記プラスミドは、選択可能なマーカーを含む第2のセグメントを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第2のセグメントは、複製起点を更に含み、ここで、前記第2のセグメントにおける前記複製起点は、前記第1のセグメントにおける前記複製起点とオーソロガスである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第1のセグメントは、選択可能なマーカーを含まない、請求項41~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞内の前記プラスミドと前記外因性制限酵素との接触は、前記細胞内での前記外因性制限酵素の発現の誘導を含む、請求項41~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記外因性制限酵素をコードする遺伝子は、誘導性プロモーターと作動的に結合されて前記細菌ゲノム内に組み込まれている、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記誘導性プロモーターは、Pbadであり、かつ前記細胞内での前記外因性制限酵素の発現の誘導は、前記細胞へのアラビノースの供給を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記細胞内の前記プラスミドと前記外因性制限酵素との接触は、前記細菌細胞の外部から前記細胞内への前記外因性制限酵素の導入を含む、請求項41~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記ライゲーションは、外因性リガーゼによって行われる、請求項41~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記外因性リガーゼは、前記細菌ゲノム内に組み込まれた遺伝子から発現される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記外因性リガーゼは、前記細菌細胞の外部から前記細菌細胞内に導入される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記細菌細胞は、前記ゲノム内に組み込まれた前記細菌性複製タンパク質をコードするRep遺伝子を含む、請求項41~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記Rep遺伝子は、前記細菌性複製タンパク質を第1の発現レベル及び第2の発現レベルで発現することができる誘導性プロモーターに作動的に結合されており、ここで、前記第1の発現レベルは、前記第2の発現レベルよりも低い、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記細菌性複製タンパク質の前記第1の発現レベルにより前記複製起点が第1のコピー数で維持され、かつ前記細菌性複製タンパク質の前記第2の発現レベルにより前記複製起点が第2のコピー数で維持され、ここで、前記第1のコピー数は、細胞当たり5コピー未満、10コピー未満、15コピー未満、20コピー未満、又は50コピー未満であり、かつ前記第2のコピー数は、細胞当たり少なくとも20コピー、少なくとも50コピー、少なくとも100コピー、又は少なくとも200コピーである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記細菌性複製遺伝子は、工程(b)の前に前記第1の発現レベルで発現され、かつ工程(b)の前に前記第2の発現レベルで発現されない、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記細菌性複製遺伝子は、工程(b)の後に前記第2の発現レベルで発現される、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
前記誘導性プロモーターは、T7 RNAポリメラーゼに依存するPT7である、請求項53~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記細菌細胞は、前記ゲノム内に組み込まれたT7 RNAポリメラーゼをコードする遺伝子(T7RNAP)を含む、請求項41~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記T7RNAP遺伝子は、誘導性プロモーターに作動的に結合されている、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記誘導性プロモーターは、Ptacである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記プラスミドの前記第2のセグメントは、前記Ptacプロモーターからの発現を抑制することができるラクトース阻害タンパク質をコードするLacI遺伝子を更に含み、かつ前記細菌性複製遺伝子の発現は、前記ラクトース阻害タンパク質の発現によって前記第1の発現レベル以下で維持される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
工程(b)の後に前記ラクトース阻害タンパク質の発現が減少し、それによって前記細菌性複製遺伝子が誘導されて前記第2の発現レベルで発現され、かつ前記環状DNAベクターが前記第2のコピー数で維持される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記プラスミド上の前記選択可能なマーカーが継続的な成長に必要とされない条件下で前記細胞を培養し、それによって前記選択可能なマーカーを欠く前記細菌細胞の後代の集団を生成することを更に含む、請求項41~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記集団は、少なくとも50回の倍化の後に前記環状DNAベクターを細胞当たり少なくとも20コピーの平均コピー数で維持する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記環状DNAベクターを精製することを更に含む、請求項63又は64に記載の方法。
【請求項66】
前記複製起点は、50塩基対未満の長さである、請求項41~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記複製起点及び前記複製タンパク質は、ColE2関連プラスミドに由来する、請求項41~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記ColE2関連プラスミドは、ColE2-P9である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
環状DNAベクターを作製する方法であって、
(a)請求項22~40のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞を得ることと、
(b)前記プラスミドと前記外因性制限酵素とを接触させて、前記プラスミドの前記第1のセグメントを切り出し、それによって相補的なオーバーハングによって両側で挟まれた線状DNA断片を生成することと、
(c)前記線状DNA断片をセルフライゲーションさせて、前記環状DNAベクターを生成することと、
を含む、方法。
【請求項70】
環状DNAベクターを作製する方法であって、
(a)請求項22~40のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞を得ることと、
(b)前記プラスミドと、前記第1のセグメントを両側で挟んでいる前記認識配列を認識する前記外因性リコンビナーゼとを接触させることと、
を含む、方法。
【請求項71】
医薬組成物であって、
(a)請求項41~70のいずれか一項に記載の方法によって生産された環状DNAベクターと、
(b)被験体に前記医薬組成物を送達する際に使用するのに適した担体と、
を含む、医薬組成物。
【請求項72】
コーディング配列、及び50塩基対未満の長さである複製起点を含み、選択可能なマーカーを欠いている環状DNAベクターを含む、操作された細菌細胞。
【請求項73】
前記操作された細菌細胞は、1コピー以上の前記環状DNAベクター以外のゲノム外DNA分子を一切含まない、請求項72に記載の操作された細菌細胞。
【請求項74】
前記操作された細菌細胞は、選択可能なマーカーをコードする遺伝子を含まない、請求項72又は73に記載の操作された細菌細胞。
【請求項75】
前記操作された細菌細胞は、ゲノム外DNA分子上に選択可能なマーカーを含まない、請求項72~74のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項76】
前記複製起点は、ColE2-P9プラスミドに由来する、請求項72~75のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項77】
前記複製起点を認識する細菌性複製タンパク質をコードするRep遺伝子を更に含む、請求項72~76のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項78】
前記Rep遺伝子は、ColE2-P9プラスミドに由来する、請求項77に記載の操作された細菌細胞。
【請求項79】
前記Rep遺伝子は、前記細菌ゲノム内に組み込まれている、請求項77又は78に記載の操作された細菌細胞。
【請求項80】
前記Rep遺伝子は、誘導性プロモーターに作動的に結合されている、請求項77~79のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項81】
前記環状DNAベクターは、組換え部位を更に含む、請求項72~80のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項82】
前記環状DNAベクターは、前記複製起点及び存在する場合には前記組換え部位の他に細菌性(又は他の原核生物若しくはファージ)配列を一切含まない、請求項72~81のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項83】
前記複製起点及び前記組換え部位は、合わせて90塩基対以下の長さである、請求項81に記載の操作された細菌細胞。
【請求項84】
リコンビナーゼをコードする遺伝子を更に含む、請求項72~83のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項85】
前記細菌細胞は、少なくとも10コピーの前記環状DNAベクターを含む、請求項72~83のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項86】
操作された細菌細胞であって、
(a)コーディング配列、及び50塩基対未満の長さである複製起点を含み、選択可能なマーカーを含まない、第1のセグメントと、
(b)選択可能なマーカーを含む第2のセグメントと、
を含み、前記第1のセグメントが、外因性リコンビナーゼについての認識配列によって両側で挟まれている、プラスミドを含む、操作された細菌細胞。
【請求項87】
前記複製起点を認識する細菌性複製タンパク質をコードするRep遺伝子をコードする遺伝子を更に含む、請求項86に記載の操作された細菌細胞。
【請求項88】
前記Rep遺伝子は、前記細菌ゲノム内に組み込まれている、請求項87に記載の操作された細菌細胞。
【請求項89】
前記Rep遺伝子は、第1の誘導性プロモーターに作動的に結合されている、請求項87又は88に記載の操作された細菌細胞。
【請求項90】
前記複製起点及び前記複製タンパク質は、ColE2関連プラスミドに由来する、請求項87~89のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項91】
前記ColE2関連プラスミドは、ColE2-P9である、請求項87~90のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項92】
前記外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子を更に含む、請求項86~91のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項93】
前記外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子は、前記細菌ゲノム内に組み込まれている、請求項92に記載の操作された細菌細胞。
【請求項94】
前記外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子は、プラスミド又は細菌人工染色体上にある、請求項92に記載の操作された細菌細胞。
【請求項95】
前記外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子は、第2の誘導性プロモーターに作動的に結合されている、請求項92~94のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項96】
前記第2の誘導性プロモーターは、クミン酸誘導性プロモーターである、請求項95に記載の操作された細菌細胞。
【請求項97】
前記リコンビナーゼは、Bxb1である、請求項92~96のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞。
【請求項98】
前記認識配列は、attP-GA及びattB-GAを含む、請求項97に記載の操作された細菌細胞。
【請求項99】
環状DNAベクターを作製する方法であって、請求項86~98のいずれか一項に記載の操作された細菌細胞において前記プラスミドの組換えを誘導することを含む、方法。
【請求項100】
前記プラスミドの組換えの誘導は、前記操作された細菌細胞における前記外因性リコンビナーゼの発現の誘導を含む、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
環状DNAベクターを生産する方法であって、操作された細菌細胞においてプラスミドの組換えを誘導することを含み、ここで、
(a)前記プラスミドは、
(ii)コーディング配列、及び50塩基対未満の長さである複製起点を含み、選択可能なマーカーを含まない、第1のセグメントと、
ここで、前記第1のセグメントは、外因性リコンビナーゼについての認識配列によって両側で挟まれている;
(ii)選択可能なマーカーを含む第2のセグメントと、
を含み、かつ、
(b)前記操作された細菌細胞は、前記外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子を含み、ここで、前記誘導により前記プラスミドの組換えが引き起こされ、それによって前記第1のセグメントを含む前記環状DNAベクターが生産される、方法。
【請求項102】
前記操作された細菌細胞は、前記複製起点を認識する細菌性複製タンパク質をコードするRep遺伝子を更に含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記Rep遺伝子は、前記細菌ゲノム内に組み込まれている、請求項101又は102に記載の方法。
【請求項104】
前記Rep遺伝子は、第1の誘導性プロモーターに作動的に結合されている、請求項102又は103に記載の方法。
【請求項105】
前記複製起点は、ColE2-P9複製起点である、請求項101~104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記Rep遺伝子は、ColE2-P9 Rep遺伝子である、請求項102~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記外因性リコンビナーゼは、プラスミド又は細菌人工染色体上にある、請求項101~106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子は、第2の誘導性プロモーターに作動的に結合されている、請求項101~107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記プラスミドの組換えの誘導は、前記外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子の発現の誘導を含む、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記プラスミドの組換えの誘導は、前記プラスミドの前記操作された細菌細胞内への導入を含み、ここで、前記導入時に、前記外因性リコンビナーゼが前記操作された細菌細胞内で発現される、請求項101~108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記外因性リコンビナーゼは、前記導入時に非誘導レベルで発現される、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記外因性リコンビナーゼは、Bxb1であり、かつ前記認識配列は、attP-GA及びattB-GAを含む、請求項101~111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
Bxb1をコードする遺伝子は、クミン酸誘導性プロモーターに作動的に結合されており、前記操作された細菌細胞は、前記導入時にクミン酸の不存在下で維持され、かつ前記Bxb1は、前記導入時に非誘導レベルで発現される、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
医薬組成物であって、
(a)請求項99~113のいずれか一項に記載の方法によって生産された環状DNAベクターと、
(b)被験体に前記医薬組成物を送達する際に使用するのに適した担体と、
を含む、医薬組成物。
【請求項115】
環状DNAベクターであって、
(a)真核生物プロモーターと、
(b)真核生物コーディング配列と、
(c)50bp未満の長さである細菌性複製起点と、
を含み、ここで、前記環状DNAベクターは、選択可能なマーカーを欠いている、環状DNAベクター。
【請求項116】
前記真核生物コーディング配列の3’末端は、前記細菌性複製起点を含む配列によって前記プロモーターの5’末端に連結されており、ここで、前記細菌性複製起点を含む配列は、100bp未満の長さである、請求項115に記載の環状DNAベクター。
【請求項117】
医薬組成物であって、
(d)請求項115又は116に記載の環状DNAベクターと、
(e)被験体に前記医薬組成物を送達する際に使用するのに適した担体と、
を含む、医薬組成物。
【請求項118】
請求項115又は116に記載の環状DNAベクターを含む、宿主細胞。
【請求項119】
前記宿主細胞は、哺乳動物細胞である、請求項118に記載の宿主細胞。
【請求項120】
前記宿主細胞は、ヒト細胞である、請求項118又は119に記載の宿主細胞。
【請求項121】
前記宿主細胞は、in vitroで分離されている、請求項117~120のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[相互参照]
本出願は、2021年12月20日に出願された米国仮特許出願第63/291,871号の利益を主張し、この全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
概して、本開示は、操作された細菌内の治療用ベクターを含む。
【背景技術】
【0003】
遺伝子療法は、ヒト患者における多岐にわたる疾患及び障害を治療する有望な手法として浮上しつつある。組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターにより、ヒト患者及び様々なモデル系における高効率の遺伝子導入の実績が確立されている。rAAVベクターのゲノムは、これらが標的細胞の寿命にわたってin vivoで環状エピソームとして残存することができるという利点がある。一方、rAAVベースのベクターには、最大ペイロードの制限、免疫原性、及び製造の非効率性等の大きな不利点がある。
【0004】
rAAV技術におけるこれらの課題の一部に対処するのに、近年、非ウイルス性の代替手段が勢いを増している。しかしながら、rAAVの効率性及び残存性を備えた拡張可能な非ウイルス性遺伝子療法プラットフォームの開発は難しいことが分かっている。例えば、従来の細菌性プラスミドDNAベクターは、遺伝子送達における汎用性のあるツールではあるが、抗生物質耐性遺伝子及び転写制御エレメント等のプラスミドDNAベクターの細菌性構成要素を豊富に有するため、免疫原性及び転写サイレンシングによる遺伝子発現の喪失につながる可能性があるという点で制限される。
【0005】
バックボーン構成要素を除去することによりプラスミドDNAベクターを改良する様々な取り組みにもかかわらず、最小限の細菌性エレメントを有する非ウイルス性のベクター及びそれらを大規模に効率的に生産する方法が求められている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において、細菌によって生産される環状DNAベクター(例えば、治療用環状DNAベクター)、及び親プラスミド、例えば、細菌細胞(例えば、操作された細菌細胞)内の親プラスミドから、環状DNAベクターを生産するのに使用することができる細菌細胞(例えば、操作された細菌細胞)が開示されている。本明細書において提供される治療用環状DNAベクターは、小さな(例えば、50塩基対未満の)複製起点を含み、かつ選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)を欠いていることから、ベクター内の外来配列によって引き起こされるリスクが軽減され得る。そのため、このような細菌によって生産される環状DNAベクターを治療用途向けに効率的かつ大規模に生産することができる。
【0007】
本明細書に開示される実施の形態には、(a)細菌ゲノム内に組み込まれた細菌性複製タンパク質をコードするRep遺伝子と、(b)(i)コーディング配列、及び(ii)複製タンパク質に依存する複製起点を含む環状DNAベクターとを含み、環状DNAベクターが選択可能なマーカーを含まない、操作された細菌細胞が含まれる。幾つかの実施の形態において、複製起点は、50塩基対未満の長さである。幾つかの実施の形態において、複製起点及び複製タンパク質は、ColE2関連プラスミドに由来する。幾つかの実施の形態において、ColE2関連プラスミドは、ColE2-P9である。
【0008】
幾つかの実施の形態において、Rep遺伝子は、第1の誘導性プロモーターに作動的に結合されている。幾つかの実施の形態において、第1の誘導性プロモーターは、T7 RNAポリメラーゼ依存性プロモーターである。幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、細菌ゲノム内に組み込まれたT7 RNAポリメラーゼをコードする遺伝子(T7RNAP)を更に含む。幾つかの実施の形態において、T7RNAP遺伝子は、第2の誘導性プロモーターに作動的に結合されている。幾つかの実施の形態において、第2の誘導性プロモーターは、Ptacである。
【0009】
幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、細菌ゲノム内に組み込まれた外因性制限酵素をコードする遺伝子を更に含む。幾つかの実施の形態において、外因性制限酵素をコードする遺伝子は、第3の誘導性プロモーターに作動的に結合されている。幾つかの実施の形態において、第3の誘導性プロモーターは、Pbadである。幾つかの実施の形態において、細菌ゲノムは、外因性制限酵素についての認識配列を含まない。
【0010】
幾つかの実施の形態において、環状DNAベクターをコードするコーディング配列は、治療用遺伝子又は治療用核酸を含む。幾つかの実施の形態において、コーディング配列は真核生物配列(例えば、哺乳動物細胞において発現可能な配列)である。
【0011】
幾つかの実施の形態において、複製起点は、環状DNAベクター内の唯一の細菌性配列である。
【0012】
幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、少なくとも20コピーの環状DNAベクターを含む。幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、少なくとも20回の細胞分裂を通じて環状DNAベクターを維持することができる。
【0013】
幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、1コピー以上の環状DNAベクター以外のゲノム外環状DNA分子を一切含まない。
【0014】
本明細書に開示される実施の形態には、本明細書に記載される操作された細菌細胞のいずれかを複数含む培養物であって、操作された細菌細胞当たりの環状DNAベクターの平均コピー数が少なくとも10である、培養物が含まれる。幾つかの実施の形態において、培養物は少なくとも10個の操作された細菌細胞を含む。
【0015】
本明細書に開示される実施の形態には、操作された細菌細胞であって、(a)細菌ゲノム内に組み込まれた細菌性複製タンパク質をコードするRep遺伝子と、(b)(i)コーディング配列、及び細菌性複製タンパク質に依存する複製起点を含み、選択可能なマーカーを含まない、第1のセグメント、並びに(ii)選択可能なマーカーを含む第2のセグメントを含み、第1のセグメントが、少なくとも1つの外因性制限酵素又は外因性リコンビナーゼについての認識配列によって両側で挟まれている、プラスミドとを含む、操作された細菌細胞が含まれる。幾つかの実施の形態において、第1のセグメントを両側で挟んでいる認識配列は、同じものである。幾つかの実施の形態において、第1のセグメントを両側で挟んでいる認識配列は、異なっている。幾つかの実施の形態において、第2のセグメントは、複製起点を更に含み、ここで、第2のセグメントにおける複製起点は、第1のセグメントにおける複製起点とオーソロガスである。
【0016】
幾つかの実施の形態において、複製起点は、50塩基対未満の長さである。幾つかの実施の形態において、複製起点及び複製タンパク質は、ColE2関連プラスミドに由来する。幾つかの実施の形態において、ColE2関連プラスミドは、ColE2-P9である。
【0017】
幾つかの実施の形態において、Rep遺伝子は、第1の誘導性プロモーターに作動的に結合されている。幾つかの実施の形態において、第1の誘導性プロモーターは、T7 RNAポリメラーゼ依存性プロモーターである。幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、細菌ゲノム内に組み込まれたT7 RNAポリメラーゼをコードする遺伝子(T7RNAP)を更に含む。幾つかの実施の形態において、T7RNAP遺伝子は、第2の誘導性プロモーターに作動的に結合されている。幾つかの実施の形態において、第2の誘導性プロモーターは、Ptacである。
【0018】
幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、細菌ゲノム内に組み込まれた外因性制限酵素又は外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子を更に含む。幾つかの実施の形態において、外因性制限酵素又は外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子は、第3の誘導性プロモーターに作動的に結合されている。幾つかの実施の形態において、第3の誘導性プロモーターは、Pbadである。幾つかの実施の形態において、細菌ゲノムは、外因性制限酵素又は外因性リコンビナーゼについての認識配列を含まない。
【0019】
幾つかの実施の形態において、第1のセグメントのコーディング配列は治療用遺伝子又は治療用核酸をコードする。幾つかの実施の形態において、コーディング配列は真核生物配列(例えば、哺乳動物細胞において発現可能な配列)である。
【0020】
幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、外因性制限酵素又は外因性リコンビナーゼを更に含む。
【0021】
本明細書に開示される実施の形態には、環状DNAベクターを作製する方法であって、(a)細菌細胞内のプラスミドと外因性制限酵素とを接触させてプラスミドから第1のセグメントを切り出す工程と、ここで、第1のセグメントは、外因性制限酵素についての認識配列によって両側で挟まれており、かつ第1のセグメントは、コーディング配列、及び細菌性複製タンパク質に依存する複製起点を含み、これによって相補的なオーバーハングを有する5’末端及び3’末端を含む、線状DNA断片が生成される;(b)線状DNA断片の5’末端及び3’末端を互いにライゲーションして環状DNAベクターを生成する工程とを含む、方法が含まれる。幾つかの実施の形態において、工程(a)の前に、プラスミドは、選択可能なマーカーを含む第2のセグメントを含む。幾つかの実施の形態において、第2のセグメントは、複製起点を更に含み、ここで、第2のセグメントにおける複製起点は、第1のセグメントにおける複製起点とオーソロガスである。幾つかの実施の形態において、第1のセグメントは、選択可能なマーカーを含まない。
【0022】
幾つかの実施の形態において、細胞内のプラスミドと外因性制限酵素との接触は、細胞内での外因性制限酵素の発現の誘導を含む。幾つかの実施の形態において、外因性制限酵素をコードする遺伝子は、誘導性プロモーターと作動的に結合されて細菌ゲノム内に組み込まれている。幾つかの実施の形態において、誘導性プロモーターは、Pbadであり、かつ細胞内での外因性制限酵素の発現の誘導は、細胞へのアラビノースの供給を含む。幾つかの実施の形態において、細胞内のプラスミドと外因性制限酵素との接触は、細菌細胞の外部から細胞内への外因性制限酵素の導入を含む。
【0023】
幾つかの実施の形態において、ライゲーションは、外因性リガーゼによって行われる。幾つかの実施の形態において、外因性リガーゼは、細菌ゲノム内に組み込まれた遺伝子から発現される。幾つかの実施の形態において、外因性リガーゼは、細菌細胞の外部から細菌細胞内に導入される。
【0024】
幾つかの実施の形態において、細菌細胞は、ゲノム内に組み込まれた細菌性複製タンパク質をコードするRep遺伝子を含む。幾つかの実施の形態において、Rep遺伝子は、細菌性複製タンパク質を第1の発現レベル及び第2の発現レベルで発現することができる誘導性プロモーターに作動的に結合されており、ここで、第1の発現レベルは、第2の発現レベルよりも低い。幾つかの実施の形態において、細菌性複製タンパク質の第1の発現レベルにより複製起点が第1のコピー数で維持され、かつ細菌性複製タンパク質の第2の発現レベルにより複製起点が第2のコピー数で維持され、ここで、第1のコピー数は、細胞当たり5コピー未満、10コピー未満、15コピー未満、20コピー未満、又は50コピー未満であり、かつ第2のコピー数は、細胞当たり少なくとも20コピー、少なくとも50コピー、少なくとも100コピー、又は少なくとも200コピーである。幾つかの実施の形態において、細菌性複製遺伝子は、工程(b)の前に第1の発現レベルで発現され、かつ工程(b)の前に第2の発現レベルで発現されない。幾つかの実施の形態において、細菌性複製遺伝子は、工程(b)の後に第2の発現レベルで発現される。幾つかの実施の形態において、誘導性プロモーターは、T7 RNAポリメラーゼに依存するPT7である。幾つかの実施の形態において、細菌細胞は、ゲノム内に組み込まれたT7 RNAポリメラーゼをコードする遺伝子(T7RNAP)を含む。幾つかの実施の形態において、T7RNAP遺伝子は、誘導性プロモーターに作動的に結合されている。幾つかの実施の形態において、誘導性プロモーターは、Ptacである。幾つかの実施の形態において、プラスミドの第2のセグメントは、Ptacプロモーターからの発現を抑制することができるラクトース阻害タンパク質をコードするLacI遺伝子を更に含み、かつ細菌性複製遺伝子の発現は、ラクトース阻害タンパク質の発現によって第1の発現レベル以下で維持される。幾つかの実施の形態において、工程(b)の後にラクトース阻害タンパク質の発現が減少し、それによって細菌性複製遺伝子が誘導されて第2の発現レベルで発現され、かつ環状DNAベクターが第2のコピー数で維持される。
【0025】
幾つかの実施の形態において、環状DNAベクターを作製する方法は、プラスミド上の選択可能なマーカーが継続的な成長に必要とされない条件下で細胞を培養し、それによって選択可能なマーカーを欠く細菌細胞の後代の集団を生成することを更に含む。幾つかの実施の形態において、上記集団は少なくとも50回の倍化の後も環状DNAベクターを維持する。幾つかの実施の形態において、上記集団は、少なくとも100回の倍化、例えば、少なくとも150回の倍化、少なくとも200回の倍化、少なくとも250回の倍化、又は少なくとも290回の倍化の後も環状DNAベクターを維持する。幾つかの実施の形態において、上記集団は、少なくとも50回の倍化の後も環状DNAベクターを細胞当たり少なくとも20コピーの平均コピー数で維持する。幾つかの実施の形態において、上記集団は、少なくとも100回の倍化の後も環状DNAベクターを細胞当たり少なくとも20コピーの平均コピー数で維持する。幾つかの実施の形態において、上記集団は、少なくとも150回の倍化、少なくとも200回の倍化、少なくとも250回の倍化、又は少なくとも290回の倍化の後も環状DNAベクターを細胞当たり少なくとも20コピーの平均コピー数で維持する。幾つかの実施の形態において、上記方法は環状DNAベクターを精製することを更に含む。
【0026】
幾つかの実施の形態において、複製起点は50塩基対未満の長さ(例えば、45塩基対未満の長さ、又は約40塩基対の長さ)である。幾つかの実施の形態において、複製起点及び複製タンパク質はColE2関連プラスミドに由来する。幾つかの実施の形態において、ColE2関連プラスミドはColE2-P9である。幾つかの実施の形態において、複製起点は、配列番号2(又は逆相補鎖)又はその機能的変異体(例えば、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性(例えば、配列番号2と少なくとも92%の配列同一性、配列番号2と少なくとも94%の配列同一性、配列番号2と少なくとも95%の配列同一性、配列番号2と少なくとも96%の配列同一性、配列番号2と少なくとも97%の配列同一性、配列番号2と少なくとも98%の配列同一性、配列番号2と少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号2と100%の配列同一性)を有する機能的変異体)を含むか、又はそれらからなる。幾つかの実施の形態において、複製起点は、配列番号3(又は逆相補鎖)又はその機能的変異体(例えば、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性(例えば、配列番号3と少なくとも92%の配列同一性、配列番号3と少なくとも94%の配列同一性、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性、配列番号3と少なくとも96%の配列同一性、配列番号3と少なくとも97%の配列同一性、配列番号3と少なくとも98%の配列同一性、配列番号3と少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号3と100%の配列同一性)を有する機能的変異体)を含むか、又はそれらからなる。幾つかの実施の形態において、複製起点は、配列番号4(又は逆相補鎖)又はその機能的変異体(例えば、配列番号4と少なくとも90%の配列同一性(例えば、配列番号4と少なくとも92%の配列同一性、配列番号4と少なくとも94%の配列同一性、配列番号4と少なくとも95%の配列同一性、配列番号4と少なくとも96%の配列同一性、配列番号4と少なくとも97%の配列同一性、配列番号4と少なくとも98%の配列同一性、配列番号4と少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号4と100%の配列同一性)を有する機能的変異体)を含むか、又はそれらからなる。
【0027】
本明細書に開示される実施の形態には、環状DNAベクターを作製する方法であって、(a)コーディング配列、及び細菌性複製タンパク質に依存する複製起点を含む第1のセグメントを含む親プラスミドを含む、本明細書に記載される操作された細菌細胞のいずれかを得ることと、ここで、第1のセグメントは選択可能なマーカーを含まず、かつ第1のセグメントは少なくとも1種の外因性制限酵素についての認識配列によって両側で挟まれている;(b)該プラスミドと外因性制限酵素とを接触させて、該プラスミドの第1のセグメントを切り出し、それによって相補的なオーバーハングによって両側で挟まれた線状DNAフラグメントを生成することと、(c)線状DNAフラグメントをセルフライゲーションさせて環状DNAベクターを生成することとを含む、方法が含まれる。
【0028】
本明細書に開示される実施の形態には、環状DNAベクターを作製する方法であって、(a)コーディング配列、及び細菌性複製タンパク質に依存する複製起点を含む第1のセグメントを含む親プラスミドを含む本明細書に記載される操作された細菌細胞のいずれかを得ることと、ここで、第1のセグメントは選択可能なマーカーを含まず、かつ第1のセグメントは少なくとも1種の外因性リコンビナーゼについての認識配列によって両側で挟まれている;(b)該プラスミドと第1のセグメントを両側で挟んでいる認識配列を認識する外因性リコンビナーゼとを接触させることとを含む、方法が含まれる。
【0029】
本明細書に開示される実施の形態には、医薬組成物であって、(a)本明細書に記載される方法のいずれかによって生産された環状DNAベクターと、(b)被験体に医薬組成物を送達する際に使用するのに適した担体とを含む、医薬組成物が含まれる。
【0030】
別の態様において、コーディング配列、及び50塩基対未満の長さである複製起点を含み、選択可能なマーカーを欠いている環状DNAベクターを含む操作された細菌細胞(例えば、E.コリ(E. coli))が提供される。幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、1コピー以上の環状DNAベクター以外にゲノム外DNA分子を一切含まない。幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、選択可能なマーカーをコードする遺伝子を含まない。幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、ゲノム外DNA分子上に選択可能なマーカーを含まない。幾つかの実施の形態において、複製起点はColE2関連プラスミド(例えば、ColE2-P9プラスミド)に由来する。幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、複製起点を認識する細菌性複製タンパク質をコードするRep遺伝子を更に含む(例えば、Rep遺伝子はColE2-P9プラスミド(例えば、配列番号1)に由来する)。幾つかの実施の形態において、Rep遺伝子は細菌ゲノム内に組み込まれている。幾つかの実施の形態において、Rep遺伝子は誘導性プロモーターに作動的に結合されている。
【0031】
幾つかの実施の形態において、環状DNAベクターは、組換え部位(例えば、attL部位(例えば、attL-GA)又はattR部位)を更に含む。
【0032】
幾つかの実施の形態において、環状DNAベクターは、複製起点及び存在する場合には組換え部位の他に細菌性(又は他の原核生物若しくはファージ)配列を一切含まない。幾つかの実施の形態において、複製起点及び組換え部位は、合わせて90塩基対以下の長さである。
【0033】
幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、リコンビナーゼをコードする遺伝子を更に含む。
【0034】
幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、少なくとも10コピーの環状DNAベクターを含む。
【0035】
別の態様において、操作された細菌細胞であって、(a)コーディング配列、及び50塩基対未満の長さである複製起点を含み、選択可能なマーカーを含まない、第1のセグメントと、(b)選択可能なマーカーを含む第2のセグメントとを含み、第1のセグメントが、外因性リコンビナーゼについての認識配列によって両側で挟まれている、プラスミドを含む、操作された細菌細胞が本明細書において提供される。幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、複製起点を認識する細菌性複製タンパク質をコードするRep遺伝子をコードする遺伝子を更に含む。幾つかの実施の形態において、Rep遺伝子は、細菌ゲノム内に組み込まれている。幾つかの実施の形態において、Rep遺伝子は、第1の誘導性プロモーターに作動的に結合されている。
【0036】
幾つかの実施の形態において、複製起点及び複製タンパク質は、ColE2関連プラスミド、例えばColE2-P9に由来する。
【0037】
幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子を更に含む。幾つかの実施の形態において、外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子は、細菌ゲノム内に組み込まれている。幾つかの実施の形態において、外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子は、プラスミド又は細菌人工染色体上にある。幾つかの実施の形態において、外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子は、第2の誘導性プロモーターに作動的に結合されている。幾つかの実施の形態において、第2の誘導性プロモーターは、クミン酸誘導性プロモーターである。
【0038】
幾つかの実施の形態において、リコンビナーゼは、Bxb1である。幾つかの実施の形態において、認識配列は、attP-GA及びattB-GAを含む。
【0039】
別の態様において、環状DNAベクターを作製する方法であって、上述の態様のいずれか1つの操作された細菌細胞内のプラスミドの組換えを誘導することを含む、方法が本明細書において提供される。幾つかの実施の形態において、プラスミドの組換えの誘導は、操作された細菌細胞における外因性リコンビナーゼの発現の誘導を含む。
【0040】
別の態様において、環状DNAベクターを生産する方法であって、操作された細菌細胞においてプラスミドの組換えを誘導することを含み、ここで、(a)プラスミドは、(i)コーディング配列、及び50塩基対未満の長さである複製起点を含み、選択可能なマーカーを含まない、第1のセグメントと、ここで、第1のセグメントは、外因性リコンビナーゼについての認識配列によって両側で挟まれている;(ii)選択可能なマーカーを含む第2のセグメントとを含み、かつ、(b)操作された細菌細胞は、外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子を含み、ここで、誘導によりプラスミドの組換えが引き起こされ、それによって第1のセグメントを含む環状DNAベクターが生産される、方法が提供される。
【0041】
幾つかの実施の形態において、操作された細菌細胞は、複製起点を認識する細菌性複製タンパク質をコードするRep遺伝子を更に含む。幾つかの実施の形態において、Rep遺伝子は、細菌ゲノム内に組み込まれている。幾つかの実施の形態において、Rep遺伝子は、第1の誘導性プロモーターに作動的に結合されている。
【0042】
幾つかの実施の形態において、複製起点は、ColE2-P9複製起点であり、及び/又はRep遺伝子は、ColE2-P9 Rep遺伝子である。
【0043】
幾つかの実施の形態において、外因性リコンビナーゼは、プラスミド又は細菌人工染色体上にある。幾つかの実施の形態において、外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子は、第2の誘導性プロモーターに作動的に結合されている。
【0044】
幾つかの実施の形態において、プラスミドの組換えの誘導は、外因性リコンビナーゼをコードする遺伝子の発現の誘導を含む。幾つかの実施の形態において、プラスミドの組換えの誘導は、プラスミドの操作された細菌細胞内への導入を含み、ここで、導入時に、外因性リコンビナーゼが操作された細菌細胞内で発現される。幾つかの実施の形態において、外因性リコンビナーゼは、導入時に非誘導レベルで発現される。
【0045】
幾つかの実施の形態において、外因性リコンビナーゼは、Bxb1であり、かつ認識配列は、attP-GA及びattB-GAを含む。幾つかの実施の形態において、Bxb1をコードする遺伝子は、クミン酸誘導性プロモーターに作動的に結合されており、操作された細菌細胞は、導入時にクミン酸の不存在下で維持され、かつBxb1は、導入時に非誘導レベルで発現される。
【0046】
別の態様において、(a)真核生物プロモーター、(b)真核生物コーディング配列、及び(c)50bp未満の長さである細菌性複製起点を含み、選択可能なマーカーを欠いている環状DNAベクター(例えば、操作された環状DNAベクター)が提供される。幾つかの実施の形態において、真核生物コーディング配列の3’末端は、細菌性複製起点を含む配列によってプロモーターの5’末端に連結されており、ここで、細菌性複製起点を含む配列は100bp未満の長さである。幾つかの実施の形態において、環状DNAベクターは単量体スーパーコイル状である。
【0047】
別の態様において、(a)真核生物プロモーター、(b)真核生物コーディング配列、及び(c)50bp未満の長さである細菌性複製起点を含み、選択可能なマーカーを欠いている環状DNAベクターを含む医薬組成物が提供される。幾つかの実施の形態において、真核生物コーディング配列の3’末端は、細菌性複製起点を含む配列によってプロモーターの5’末端に連結されており、ここで、細菌性複製起点を含む配列は100bp未満の長さであり、かつ医薬組成物を被験体に送達する際に使用するのに適した担体。
【0048】
別の態様において、(a)真核生物プロモーター、(b)真核生物コーディング配列、及び(c)50bp未満の長さである細菌性複製起点を含み、選択可能なマーカーを欠いている環状DNAベクターを含む宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞、例えばヒト細胞)が提供される。幾つかの実施の形態において、真核生物コーディング配列の3’末端は、細菌性複製起点を含む配列によってプロモーターの5’末端に連結されており、ここで、細菌性複製起点を含む配列は100bp未満の長さである。幾つかの実施の形態において、宿主細胞はコーディング配列によってコードされるタンパク質を発現する。幾つかの実施の形態において、宿主細胞はin vitroで分離されている。幾つかの実施の形態において、環状DNAベクターはエレクトロポレーションによって宿主細胞内にトランスフェクションされる。
【0049】
本開示の特徴は添付の特許請求の範囲に詳細に記載される。本開示の特徴及び利点は、本開示の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の発明を実施するための形態及び添付の図面を参照することによってより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】E.コリの拡大培養に対してプラスミドに安定性を与える能力について3つのColE2-P9複製起点を試験した安定性研究からの結果を示す表を示す図である。
図2】本明細書に開示される実施形態において使用することができる親プラスミドをアセンブリする方法の一例を示す図である。
図3】本明細書に開示される実施形態に従って試験環状DNAベクターを生産する実験手順を示す図である。
図4】クロラムフェニコールを含む(「Cm」、レーン7~レーン12)又はクロラムフェニコールを含まない(「Cmなし」、レーン1~レーン6)富栄養培地中で成長させた操作された細菌から精製された染色体外DNAのアガロースゲル電気泳動の結果を示す図である。レーン2、レーン3、レーン5、レーン8、レーン9、及びレーン11は、試験親プラスミドからの組換えによって生産された試験環状DNAベクターに対応するバンドを示している。レーン1、レーン4、レーン7、及びレーン10は、試験親プラスミドに対応するバンドを示している。
図5】クロラムフェニコール(「Cm」)を含む場合又は含まない場合の示された成長培地中のsfGFP陽性細胞のパーセンテージを示すグラフを示す図である。ZB=Zymoブロス、TB=Terrificブロス、SB=Superブロス、SOB=Super Optimalブロス、SOC=カタボライト抑制を伴うSuper Optimalブロス(Super Optimal Broth with Catabolite Repression)、LB=Luriaブロス。
図6】対抗選択を使用して本発明の環状DNAベクターを生産する例示的なプロセスを示す図式チャートを示す図である。
図7A-7F】細菌人工染色体(BAC)に基づいてBxb1を発現させて環状DNAベクターを生産する方法の内容を示す概略図である。図7Aは、宿主ゲノム内に組み込まれたRep遺伝子である。図7B及び図7Cは2つの代替的なBAC設計である。図7BのBxb1はクミン酸誘導性プロモーターによって駆動されるのに対し、図7CのBxb1はアラビノース誘導性プロモーターによって駆動される。図7Dは、テンプレートプラスミドであり、これは、Bxb1による組換えにより図7Eの環状DNAベクター及び図7Fの副産物となる。環状DNAベクターは複製起点を含み、(任意に)副産物はPheS対抗選択マーカーを含むため、宿主細菌が複製され拡大培養されるにつれて、環状DNAベクターが優勢な種となる。
図8A-8B】BAC1696を使用した形質転換後、それぞれ24時間及び72時間の時点でのクローンの蛍光を示す写真を示す図である。
図9A-9B】BAC1697を使用した形質転換後、それぞれ24時間及び72時間の時点でのクローンの蛍光を示す写真を示す図である。
図10】クミン酸誘導物質との接触から24時間後のクローンの蛍光を示す一式の写真を示す図である。
図11】アラビノース誘導物質との接触から24時間後のクローンの蛍光を示す一式の写真を示す図である。
図12】LB寒天プレート上で様々な条件下にて一晩インキュベートされた再画線された1696コロニーの蛍光を示す一連の写真を示す図である。
図13】LB寒天プレート上で様々な条件下にて一晩インキュベートされた再画線された1697コロニーの蛍光を示す一連の写真を示す図である。
図14】1696及び1697の両方についての対抗選択された培養物中に環状DNAベクターが存在することを示すゲル電気泳動実験の写真を示す図である。理論的なバンドを示す消化マップが写真の左側に示されている。
図15A】例示的なABCA4テンプレートプラスミドのプラスミドマップを示す図である。
図15B図15Aのテンプレートプラスミドから得られるABCA4環状DNAベクターのプラスミドマップを示す図である。
図16A】実施例7に記載される環状DNAコンストラクト消化物についてのバンド形成パターンを示す理論的なゲルマップを示す図である。
図16B図16Aに対応する実際のバンド形成パターンを示すゲルの写真を示す図である。
図17A】テンプレートプラスミドと一緒での2時間のKan耐性インキュベーションを使用して生産された精製されたABCA4環状DNAベクターからのロングリードシーケンシングデータを示すヒストグラムを示す図である。主ピークはBAC及び二量体環状DNAベクターである。
図17B】テンプレートプラスミドと一緒での一晩のKan耐性インキュベーションを使用して生産された精製されたABCA4環状DNAベクターからのロングリードシーケンシングデータを示すヒストグラムを示す図である。主ピークは単量体環状DNAベクター及びBACである。
図18】細菌宿主においてBxb1を発現するのに有用なヘルパープラスミドの構成要素を示すプラスミドマップを示す図である。
図19図18のヘルパープラスミドによるBxb1発現の結果としての、バックボーン副産物を含まない環状DNAベクターを含む緑色蛍光コロニー(丸で囲んだ)を示す写真を示す図である。
図20】Bxb1を宿主細胞ゲノム内に組み込むプロセスを示す一式の図である。
図21】Bxb1の組込みについての2つの陽性クローンを示すゲルの写真を示す図である。1696プラスミドコントロールが左下に3連で示されている。
図22】細菌によって生産されるABCA4環状DNAベクターでトランスフェクションされたHEK293T細胞がABCA4タンパク質を発現することを示すウェスタンブロットの写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本明細書において、操作された細菌細胞内の親プラスミドから環状DNAベクターを生産する改良された方法、及び関連する組成物が提供される。過去には、バックボーン構成要素を除去することによってプラスミドDNAベクターを改良する取り組みがあった。例えば、組換えを使用してプラスミドからバックボーンを除去し、ミニサークルベクター及び環状バックボーン副産物を生成することで、細菌細胞内でミニサークルを作製する。しかしながら、ミニサークルは、それを単離するのに、類似の構造を有するバックボーン副産物からの精製が必要となるため、大規模に生産することが困難である。ベクターに複製起点及び選択可能なマーカーを含めることによって正の選択による精製をより容易にするように、ナノプラスミド等の代替的なベクタータイプが設計されている。しかし、このような異質なエレメントは比較的大きく、一般的には数百塩基対の長さであり、患者にとって異物である。
【0052】
本明細書において、細菌によって生産される環状DNAベクター(例えば、治療用環状DNAベクター)、及び親プラスミド、例えば、細菌細胞(例えば、操作された細菌細胞)の内部の親プラスミドから、環状DNAベクターを生産するのに使用することができる細菌細胞(例えば、操作された細菌細胞)が開示されている。本明細書において提供される治療用環状DNAベクターは、小さな(例えば、50塩基対未満の)複製起点を含み、かつ選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)を欠いているため、ベクター内の外来配列によって引き起こされるリスクが軽減され得る。そのため、このような細菌によって生産される環状DNAベクターを治療用途向けに効率的かつ大規模に生産することができる。さらに、RNAPIIアレスト部位等の細菌性プラスミドDNA配列を排除又は低減することによって、環状DNAベクターの転写サイレンシングを低減又は排除することができるため、個体におけるベクター配列の残存がもたらされる。本発明の特定の実施形態において、免疫原性構成要素(例えば、細菌エンドトキシン、DNA若しくはRNA、又はCpGモチーフ等の細菌性シグネチャー)が本環状DNAベクターには存在せず、又は医薬用途若しくは実験室用途に適した非常に低いレベルで存在するため、宿主の免疫応答を刺激するリスクはプラスミドDNAベクター等の従来のDNAベクターに比べて低減される。開示された実施形態のこれらの態様及び他の態様について、以下でより詳細に論じる。
【0053】
I.定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形("a", "an" and "the")は、文脈上特段の明確な規定がない限り、複数の指示対象を含む。また、「又は」という用語は、文脈上特段の明確な規定がない限り、一般に「及び/又は」を含む意味において使用されることにも留意されたい。本明細書において使用される「及び/又は」及び「それらのあらゆる組合せ」という用語、並びにそれらの文法的同義語は区別なく使用され得る。これらの用語は、あらゆる組合せが具体的に企図されていることを意味し得る。例示のみを目的として、次の語句「A、B、及び/又はC」又は「A、B、C、又はそれらのあらゆる組合せ」は、「Aを個別に、Bを個別に、Cを個別に、A及びB、B及びC、A及びC、並びにA、B、及びC」を意味し得る。「又は」という用語は、文脈上離接的な使用を具体的に指示していない限り、接続的にも又は離接的にも使用され得る。
【0054】
本明細書及び請求項(複数の場合もある)において使用される場合、「含む(comprising)」(及び「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」等の含む(comprising)のあらゆる形態)、「有する(having)」(及び「有する(have)」及び「有する(has)」等の有する(having)のあらゆる形態)、「含む(including)」(及び「含む(includes)」及び「含む(include)」等の含む(including)のあらゆる形態)、又は「含む(containing)」(及び「含む(contains)」及び「含む(contain)」等の含む(containing)のあらゆる形態)という語は、包括的又はオープンエンド型であって、挙げられていない追加の要素又は方法工程を除外するものではない。本明細書において論じられる実施形態はいずれも、本開示のあらゆる方法又は組成物に関して実装され得ることが企図され、その逆も同様である。さらに、本開示の組成物を使用して、本開示の方法を実現することができる。
【0055】
本明細書における「幾つかの実施形態」、「実施形態」、「一実施形態」、又は「他の実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が本開示の少なくとも幾つかの実施形態に含まれるが、必ずしも全ての実施形態に含まれるわけではないことを意味する。この説明の或る特定の具体的な詳細は、様々な実施形態の徹底した理解がもたらされるように示されている。しかしながら、当業者であれば、これらの詳細がなくても本開示を実施することができることを理解するであろう。他の例では、実施形態の説明が不必要に不明瞭となるのを避けるために、よく知られた構造については詳細に示すことも説明することもしていない。
【0056】
本明細書において使用される場合、「誘導性プロモーター」は、刺激に応じて発現がオンになり得る又は増加し得るプロモーターを指す。刺激は、例えば、特定の分子又は培養条件の存在であり得る。刺激はまた、例えば、特定の分子又は培養条件の不存在であり得る。本明細書において使用される場合、「誘導性プロモーター」としては、プロモーターからの発現を抑制する特定の分子の存在等の条件、又は他の培養条件を除去することによって発現がオンになり得る又は増加し得るプロモーターが挙げられる。幾つかの実施形態において、誘導性プロモーターは、T7 RNAポリメラーゼ依存性プロモーター、Ptacプロモーター、Pbadプロモーター、PT7プロモーター、又はそれらの組合せである。幾つかの実施形態において、誘導性プロモーターは細菌ゲノム内に組み込まれ、例えば、Repタンパク質、制限酵素、又は組換え酵素をコードする遺伝子等の遺伝子に作動的に連結されている。
【0057】
本明細書において使用される場合、「外因性」とは、生物、細胞、組織、又は系から導入されるか、又はそれらの外部で生産されるあらゆる物質に対して言及される。例えば、操作された細菌細胞内に外因性制限酵素が存在する本明細書に記載される実施形態において、外因性制限酵素は、操作された細菌細胞の外部から操作された細菌細胞へと外因性制限酵素が導入されていなければ、操作された細菌細胞内に存在しないはずのものである。例えば、外因性制限酵素をコードする遺伝子を細菌細胞内に導入するか、又はエレクトロポレーション等により細胞膜を越えて細胞内に制限酵素を導入することによって、外因性制限酵素を操作された細菌細胞内に導入することができる。本明細書に記載される実施形態には、例えば、外因性リガーゼ及び外因性リコンビナーゼも含まれる。
【0058】
本明細書において使用される場合、「親プラスミド」は、ベクター配列(以下に定義される)と「バックボーン配列」(以下に定義される)との両方を含むプラスミドである。本明細書に開示される実施形態には、ベクター配列からバックボーン配列を除去することを含む、環状DNAベクターを作製する方法が含まれる。
【0059】
本明細書において使用される場合、親プラスミドの「ベクター配列」とは、複製起点及び対象遺伝子のコーディング配列を含むプラスミドDNAの一部を指す。本明細書の実施形態の一部の記載において、ベクター配列はプラスミドの「第1のセグメント」と呼ばれる。
【0060】
本明細書において使用される場合、親プラスミドの「バックボーン配列」とは、薬物耐性遺伝子又はその断片等の1つ以上の選択可能なマーカーを含むベクター配列の外側のプラスミドDNAの一部を指す。本明細書の実施形態の一部の記載において、バックボーン配列はプラスミドの「第2のセグメント」と呼ばれる。
【0061】
本明細書において使用される場合、「複製タンパク質」は、複製タンパク質に対応する複製起点配列での複製の開始に必要なタンパク質である。複製起点が特定の複製起点配列での複製の開始の場合に所与の複製タンパク質に依存している場合、その複製起点配列はその複製タンパク質に対応する。一例として、ColE2-P9プラスミドによってコードされる複製タンパク質はColE2-P9 ori配列に対応する。すなわち、ColE2-P9複製タンパク質は、ColE2-P9 ori配列でのDNA複製の開始に必要である。
【0062】
本明細書において使用される場合、核酸配列の「機能的変異体」は、天然に存在する核酸配列等の参照核酸配列と少なくとも1つの核酸残基の点で異なり、ここで、変異体の関連する機能的活性は、参照核酸配列の関連する機能的活性のレベルの少なくとも90%である(例えば、参照核酸配列の関連する機能と実質的に同様である)。この文脈において、少なくとも1つの核酸残基における相違は、例えば、或る核酸残基から別の核酸への突然変異、欠失、又は挿入にあり得る。変異体は、参照核酸配列によってコードされる治療用タンパク質又はその断片の相同体、アイソフォーム、又は転写変異体をコードする場合があり、ここで、相同体、アイソフォーム、又は転写変異体は、それぞれ本明細書において定義される同一性又は相同性の程度によって特徴付けられる。
【0063】
幾つかの場合においては、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの機能的変異体は、少なくとも1つの核酸置換(例えば、1個~100個の核酸若しくはアミノ酸の置換、1個~50個の核酸若しくはアミノ酸の置換、1個~20個の核酸若しくはアミノ酸の置換、1個~10個の核酸若しくはアミノ酸の置換、例えば、1個の核酸若しくはアミノ酸の置換、2個の核酸若しくはアミノ酸の置換、3個の核酸若しくはアミノ酸の置換、4個の核酸若しくはアミノ酸の置換、5個の核酸若しくはアミノ酸の置換、6個の核酸若しくはアミノ酸の置換、7個の核酸若しくはアミノ酸の置換、8個の核酸若しくはアミノ酸の置換、9個の核酸若しくはアミノ酸の置換、又は10個の核酸若しくはアミノ酸の置換)を含む。同じクラスからのアミノ酸での交換を有する発現されたポリペプチドをもたらす核酸の置換を本明細書において保存的置換と呼ぶ。特に、これらは、脂肪族側鎖、正又は負に帯電した側鎖、側鎖又はアミノ酸中に芳香族基を有するアミノ酸であり、その側鎖は、水素架橋、例えばヒドロキシル官能基を有する側鎖を形成することができる。保存的置換により、例えば、極性側鎖を有するアミノ酸は、対応する極性側鎖を有する別のアミノ酸によって置き換えられてもよく、又は、例えば、疎水性側鎖を特徴とするアミノ酸は、対応する疎水性側鎖を有する別のアミノ酸によって置き換えられてもよい(例えば、セリン(スレオニン)がスレオニン(セリン)によって、又はロイシン(イソロイシン)がイソロイシン(ロイシン)によって)。
【0064】
2つの配列(例えば、核酸配列、例えば、DNA又はアミノ酸配列)が同一であるパーセンテージを決定するために、配列を、その後に互いに比較するために整列させることができる。この目的のため、ギャップを第1の配列の配列に挿入し、第2の配列の対応する位置にある構成要素を比較することができる。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置の場合と同じ構成要素によって占められている場合、2つの配列はこの位置において同一である。2つの配列が同一であるパーセンテージは、同一位置の数を位置の総数で割った関数である。2つの配列が同一であるパーセンテージは、数学的アルゴリズムを使用して決定され得る。使用され得る数学的アルゴリズムの好ましいが限定的ではない例は、Karlin et al. (1993), PNAS USA, 90:5873-5877、又はAltschul et al. (1997), Nucleic Acids Res., 25:3389-3402のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムを、例えば、BLASTプログラムに統合することができる。本発明の配列と或る程度同一である配列を、このプログラムによって同定することができる。
【0065】
本明細書において使用される場合、「両側で挟む」、「両側で挟んでいる」、及び「両側で挟まれる」という用語は、核酸分子(例えば、プラスミド)上の、核酸分子の参照領域の外側にある一対の領域又は点に対して言及される。幾つかの実施形態において、核酸上の参照領域を両側で挟んでいる一対の領域又は点は、参照領域に隣接(すなわち、当接)している(すなわち、参照点と両側で挟んでいる点との間に介在塩基が存在しない)。他の実施形態において、参照領域を両側で挟む核酸分子上の一対の領域又は点は、1つ以上の介在塩基(例えば、最大1000個の介在塩基)によって参照領域から隔離されている。例えば、第1の制限部位が所与の配列の200塩基上流にあり、かつ第2の制限部位が所与の配列の100塩基下流にある場合、第1の制限部位及び第2の制限部位がその配列を両側で挟むと言われる。幾つかの実施形態において、両側で挟んでいる領域又は点と参照領域との間の全ての介在配列には細菌性配列がない。このような実施形態において、ベクター配列を両側で挟んでいる制限部位又は組換え部位で親プラスミドから切り出されたベクター配列をセルフライゲーションさせることによって生産された環状DNAベクターには、ori配列以外の細菌性配列は存在しない。例えば、このような実施形態において、ベクター配列を両側で挟んでいる部位を切断する外因性制限酵素は、治療用配列の5’末端と3’末端との間に配列を有するが、この領域には細菌性配列(例えば、薬物耐性遺伝子)が含まれない環状DNAベクターを生産することができる。このような介在配列は、例えば外因性制限酵素によって生成されたオーバーハング塩基に対応する、粘着末端ライゲーションからの人為構造であり得る。
【0066】
「ABCA4」という用語は、特段の指摘がない限り、霊長類(例えば、ヒト及びカニクイザル)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含むあらゆる脊椎動物起源のあらゆる本来のABCA4だけでなく、機能的変異体(例えば、天然変異体又は合成変異体)、例えば、それらの突然変異体、ムテイン、類縁体、サブユニット、受容体複合体、アイソタイプ、スプライス変異体、及び断片も指す。機能的変異体は、既知のABCA4シグナル伝達に基づいて決定され得る。ABCA4には、全長のプロセシングされていないABCA4だけでなく、細胞内での本来のプロセシングから得られるあらゆる形式のABCA4も包含される。例示的なヒトABCA4配列は、NCBI参照配列:NG_009073又はNM_000350として提供されている。
【0067】
「MYO7A」という用語は、特段の指摘がない限り、霊長類(例えば、ヒト及びカニクイザル)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含むあらゆる脊椎動物起源のあらゆる本来のMYO7A(DFNB2、MYU7A、NSRD2、USH1B、DFNA11、又はMYOVIIAとしても知られる)だけでなく、機能的変異体(例えば、天然変異体又は合成変異体)、例えば、それらの突然変異体、ムテイン、類縁体、サブユニット、受容体複合体、アイソタイプ、スプライス変異体、及び断片も指す。機能的変異体は、既知のMYO7Aシグナル伝達に基づいて決定され得る。MYO7Aには、全長のプロセシングされていないMYO7Aだけでなく、細胞内での本来のプロセシングから得られるあらゆる形態のMYO7Aも包含される。例示的なヒトMYO7A配列は、アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)遺伝子ID:4647として提供されている。
【0068】
本明細書において使用される場合、「自己複製RNA分子」という用語は、1つの複製起点から複製するRNAを含む自己複製遺伝子エレメントを指す。
【0069】
本明細書において使用される場合、「作動的に連結された(operatively linked)」又は「作動的に結合された(operatively coupled)」という用語は、要素の配置を指し、ここで、そのように記載された構成要素は、それらの通常の機能を果たすように構成される。核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれるときに「動作可能に連結」又は「作動的に結合」される。例えば、プロモーターは、1つ以上の異種遺伝子の転写に影響を及ぼす場合、1つ以上の異種遺伝子に作動的に連結される。さらに、コーディング配列に作動的に連結された制御エレメントは、コーディング配列の発現に影響を及ぼすことができる。制御エレメントは、その発現を指示するように機能する限り、コーディング配列と連続している必要はない。したがって、例えば、介在する未翻訳であるが転写された配列が、プロモーター配列とコーディング配列との間に存在する可能性があり、プロモーター配列は依然としてコーディング配列に「動作可能に連結されている」又は「作動的に結合されている」と考えることができる。
【0070】
本明細書において使用される場合、「ベクター」は、対象の配列を担持することができる核酸分子を指し、標的細胞に連結され、次いで、対象の配列を標的細胞に転写させ、複製させ、プロセシングさせ、及び/又は発現させることができる。標的細胞又は宿主細胞がベクターの対象の配列をプロセシングした後は、対象の配列はベクターとは見なされない。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これは自律複製が可能であり、かつ細菌性複製起点及び選択可能なマーカーを含む細菌バックボーンを含む環状二本鎖DNAループを指し、その中に追加のDNAセグメントをライゲーションすることができる。別のタイプのベクターは、ファージベクターである。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ここでは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得る。或る特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自律複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに、或る特定のベクターは、それらが作動的に連結している遺伝子の発現を指示することができる。かかるベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(又は単に「組換えベクター」又は「発現ベクター」)と称される。
【0071】
本明細書において使用される場合、「個体」及び「被験体」という用語は区別なく使用され、例えば、本明細書に記載される環状DNAベクター又はその医薬組成物による治療又は予防を必要とするあらゆる哺乳動物を含む。幾つかの実施形態において、個体又は被験体はヒトである。他の実施形態において、個体又は被験体は非ヒト哺乳動物(例えば、非ヒト霊長類(例えば、サル)、マウス、ブタ、ウサギ、ネコ、又はイヌ)である。個体又は被験体は雄であっても又は雌であってもよい。
【0072】
本明細書において使用される場合、環状DNAベクター又はその医薬組成物の「有効量」又は「有効用量」とは、例えば、選択された投与形態、投与経路、及び/又は投与スケジュールに従って個体に投与される場合、所望の生物学的効果、薬理学的効果、又は治療的効果を達成するのに十分な量を指す。当業者には理解されるように、有効な特定の組成物の絶対量は、所望の生物学的エンドポイント又は薬理学的エンドポイント、送達される作用物質、標的組織等のような要因に応じて変動し得る。当業者であれば、「有効量」を、単回用量において又は多回用量の使用を通じて細胞と接触させ、又は被験体に投与することができることを更に理解するであろう。疾患を治療する組成物の有効量は、参照集団、例えば未処置集団若しくはプラセボ集団、又は標準治療による治療を受けている集団と比べて、疾患の進行を遅らせ、若しくは疾患の進行を止め、又は部分的奏効若しくは完全奏効を高めることができる。
【0073】
本明細書において使用される場合、「治療」(及び「治療する」又は「治療すること」等の文法的変形例)は、治療される個体の自然な経過を変えようとする臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理学の経過中のいずれかに行うことができる。治療の望ましい効果としては、限定されるものではないが、疾患の発生又は再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の軽減、疾患進行速度の低下、疾患状態の改善又は緩和、及び予後の改善が挙げられる。幾つかの実施形態において、本発明の環状DNAベクターは、疾患の発症を遅らせるため、又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0074】
「発現のレベル」又は「発現レベル」という用語は区別なく使用され、一般に、生体試料(例えば、網膜)中のポリヌクレオチド、又はアミノ酸産物若しくはタンパク質の量を指す。「発現」は、一般に、遺伝子コードされた情報が細胞内に存在し、動作する構造に変換されるプロセスを指す。したがって、本発明によれば、「発現」は、ポリヌクレオチドへの転写、タンパク質への翻訳、又はタンパク質の翻訳後修飾を指す場合がある。転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたタンパク質、又は翻訳後修飾されたタンパク質の断片も、それらが選択的スプライシングによって生成された転写産物若しくは分解された転写産物に由来するか、又は例えばタンパク質分解による、タンパク質の翻訳後プロセシングに由来するかにかかわらず、発現されたとみなされるものとする。「発現された遺伝子」は、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写された後、タンパク質に翻訳されるものを含み、RNAに転写されるがタンパク質に翻訳されないもの(例えば、トランスファーRNA及びリボソームRNA)も含む。
【0075】
本明細書において使用される場合、「発現残存性」という用語は、対象の配列又はその機能部分(例えば、環状DNAベクターの1つ以上のコーディング配列)が、トランスフェクトされた細胞(「細胞内残存性」)又はトランスフェクトされた細胞の任意の後代(「世代間残存性」)において発現可能である期間を指す。対象の配列、例えば、治療用配列又はその機能部分は、例えば、DNAメチル化及び/又はヒストンメチル化及びコンパクションによってサイレンシングされない場合に発現可能であり得る。発現残存性は、(i)標的細胞又はその後代における配列から転写されるmRNA(例えば、qPCR、RNA-seq、又は任意の他の適切な方法を介して)、及び(ii)標的細胞又はその後代における配列から翻訳されたタンパク質(例えば、ウェスタンブロット、ELISA、又は任意の他の適切な方法を介して)を検出又は定量化することによって評価することができる。幾つかの例において、発現残存性は、(i)標的細胞又はその後代において治療用配列から転写されるmRNA、及び(ii)標的細胞又はその後代において治療用配列から翻訳されたタンパク質のいずれか又は両方と併せて、標的細胞又はその後代における治療用DNAを検出又は定量化することによって評価される(例えば、標的細胞における環状DNAベクターの存在、例えば、エピソームDNAコピー数解析による)。対象の配列、又はその機能部分の発現残存性を、当該技術分野において知られている任意の遺伝子発現を特性評価する方法を用いて、本発明のベクターに存在しない1つ以上の細菌シグネチャーを有するコントロールベクター等の参照ベクター(例えば、プラスミド)に対して、定量化することができる。発現残存性は、ベクターの投与後の任意の所与の時点で定量化することができる。例えば、幾つかの実施形態において、本発明の環状DNAベクターの発現は、環状DNAベクターの投与から2週間後に標的細胞又はその後代において検出可能である場合、投与後少なくとも2週間持続する。幾つかの実施形態において、遺伝子の発現は、投与後1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、又はそれより長い間、標的細胞において検出可能である場合、標的細胞において「持続する」。幾つかの実施形態において、配列の発現は、所与の期間後(例えば、投与後1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、又はそれより長い間)、元の発現レベルの任意の検出可能な割合(例えば、元の発現量の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、又は少なくとも100%)が残存する場合、投与後所与の期間持続すると言われる。
【0076】
本明細書において使用される場合、「細胞内残存性」とは、配列又はその機能的部分(例えば、環状DNAベクターの1つ以上のコーディング配列)が、それらがトランスフェクションされた細胞(例えば、有糸分裂後細胞又は静止細胞等の標的細胞)において発現可能である期間を指す。細胞内残存性は、(i)標的細胞における配列から転写されたmRNA、及び(ii)標的細胞における配列から翻訳されたタンパク質を検出又は定量化することによって評価され得る。幾つかの場合においては、細胞内残存性は、標的細胞におけるDNA(例えば、標的細胞内の環状DNAベクターの存在)と組み合わせて、(i)標的細胞における配列から転写されたmRNA、及び(ii)標的細胞における配列から翻訳されたタンパク質のいずれか又は両方を検出又は定量化することによって評価される。幾つかの実施形態において、本発明の環状DNAベクターは、参照ベクター(例えば、プラスミドDNAベクター)と比べて細胞内残存性の向上を示す。
【0077】
本明細書において使用される場合、「世代間残存性」とは、配列又はその機能的部分(例えば、DNAベクターの1つ以上のコーディング配列)が、遺伝子がトランスフェクションされた細胞の後代(例えば、環状DNAベクターを介して遺伝子がトランスフェクションされた細胞の第1世代、第2世代、第3世代、又は第4世代の子孫等の標的細胞の後代)において発現可能である期間を指す。世代間残存性は、細胞分裂を越えた遺伝子のあらゆる希釈を考慮するため、分裂中の組織におけるベクターの残存性を経時的に測定するのに役立つ可能性がある。幾つかの実施形態において、本発明の環状DNAベクターは、参照ベクター(例えば、プラスミドDNAベクター)と比べて世代間残存性の向上を示す。世代間残存性は、(i)標的細胞の後代におけるベクター配列から転写されたmRNA、及び(ii)標的細胞の後代におけるベクター配列から翻訳されたタンパク質を検出又は定量化することによって評価され得る。幾つかの場合においては、細胞内残存性は、標的細胞の後代におけるDNA(例えば、標的細胞の後代における環状DNAベクターの存在)と組み合わせて、(i)標的細胞の後代における配列から転写されたmRNA、及び(ii)標的細胞の後代における配列から翻訳されたタンパク質のいずれか又は両方を検出又は定量化することによって評価される。幾つかの実施形態において、本発明の環状DNAベクターは、参照ベクター(例えば、プラスミドDNAベクター)と比べて世代間残存性の向上を示す。
【0078】
本明細書において使用される場合、DNA分子の「コピー数」という用語は、所与の細胞集団における細胞当たりのDNA分子の平均コピー数を指す。
【0079】
「薬学的に許容可能な」という用語は、ヒト等の哺乳動物への投与に安全であることを意味する。幾つかの実施形態において、薬学的に許容可能な組成物は、動物、より詳細にはヒトにおける使用について、連邦政府若しくは州政府の規制機関によって承認されているか、又は米国薬局方若しくは他の一般に認識される薬局方において列挙されている。
【0080】
「担体」という用語は、本発明のベクター又は組成物と一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。適切な医薬担体の例は、"Remington's Pharmaceutical Sciences," Mack Publishing Co., Easton, PA., 23rd edition, 2020に記載されている。
【0081】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、特段の指定がない限り、参照値から±10%の変動範囲内の値を指す。
【0082】
様々な出典又は参考文献の間で定義に何らかの対立がある場合、本明細書において示される定義が優先されるものとする。
【0083】
他に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料を本開示の実施又は試験に使用することができ、好適な方法及び材料を下記に説明する。
【0084】
本開示全体を通じて、数値的特徴は範囲形式で示される。範囲形式での記載は、単に利便性及び簡潔性のためのものであり、あらゆる実施形態の範囲に対する不動の限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、文脈上明確な規定がない限り、全ての可能な部分範囲だけでなく、その範囲内の下限の単位の10分の1までの個々の数値も具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1~6等の範囲の記載は1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等のような部分範囲だけでなく、その範囲内の個々の値、例えば1.1、2、2.3、5、及び5.9も具体的に開示したものとみなされるべきである。これは範囲の広さに関係なく適用される。これらの介在範囲の上限及び下限は、独立してより小さな範囲に含まれる場合もあり、また、指定された範囲内のあらゆる具体的に除外された限界を条件として、本発明に包含される。指定された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、文脈上特段の規定がない限り、それらの含まれる限界の一方又は両方を除く範囲も本発明に含まれる。
【0085】
II.細菌において環状DNAベクターを生産する方法
本明細書に開示される実施形態には、操作された細菌細胞において環状DNAベクターを生産する方法が含まれる。本明細書に開示される操作された細菌細胞を使用して、親プラスミドから環状DNAベクターを生産することができる。幾つかの実施形態において、操作された細菌細胞は、細菌ゲノム内に組み込まれた細菌性複製タンパク質をコードするRep遺伝子と親プラスミドとを含む。幾つかの実施形態において、Rep遺伝子は、例えばプラスミド(例えば、ヘルパープラスミド)又は細菌人工染色体(「BAC」)等の染色体外DNA分子上に含まれる。幾つかの実施形態において、Rep遺伝子は親プラスミド上に含まれる。親プラスミドはベクター配列とバックボーン配列とを含む。ベクター配列は、Rep遺伝子に対応するori配列を含み、選択可能なマーカーを含まない。バックボーン配列は、選択可能なマーカーを含み、ベクター配列に含まれるori配列を含まないが、一部の実施形態においては、異なるori配列を含んでよい。親プラスミドはまた、ベクター配列を両側で挟んでいる制限酵素認識配列又は部位特異的組換え配列を有し、これらは、制限消化又は部位特異的組換えによってプラスミドバックボーン配列を細胞の内部でベクター配列から分離することができるように配置されている。制限消化の場合、次いで、ベクター配列のセルフライゲーションによって環状DNAベクターが形成される。部位特異的組換えの場合、組換えが完了すると環状DNAベクターが形成される。ベクター配列の分離及び環状DNAベクターの形成後にrepタンパク質が発現されると、環状DNAベクターが選択可能なマーカーを欠いているにもかかわらず、環状DNAベクターが高コピー数で維持され得る。対照的に、培養条件を変更して選択可能なマーカーについての選択圧を取り除くことにより、分離後の操作された細菌細胞におけるプラスミドバックボーン配列の維持を回避することができる。親プラスミドが維持されない条件下で、高コピー数の環状DNAベクターを有する細菌細胞集団を培養すると、高収率の高純度環状DNAベクターを効率的に生産することができる。
【0086】
1.操作された細菌細胞
本明細書に開示される環状DNAベクターを生産する方法には、例えば操作されたE.コリ細菌細胞又は他の適切な細菌を含み得る操作された細菌細胞の使用が含まれる。幾つかの実施形態において、操作された細菌細胞は、細菌ゲノム内に組み込まれた複製タンパク質をコードする外因性Rep遺伝子と、Rep遺伝子に対応するori配列を有する親プラスミドとを含む。幾つかの実施形態において、Rep遺伝子は細菌ゲノム内に組み込まれずに、プラスミド又はBAC等の染色体外DNA分子上に存在する。
【0087】
幾つかの実施形態において、操作された細菌細胞は、細菌ゲノム内に組み込まれた外因性Rep遺伝子を有する。当該技術分野においてよく知られる組込みカセット及び組込み手順を含む、あらゆる適切な染色体組込みプロセスを使用して、Rep遺伝子を細菌ゲノム内に導入することができる。幾つかの実施形態において、Rep遺伝子はColE2-P9複製タンパク質又は関連タンパク質をコードする。幾つかの例示的な実施形態において、Rep遺伝子は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するColE2-P9複製タンパク質をコードする。他の適切な複製タンパク質としては、例えば、ColE3-CA38等のColE2-P9に関連するものを含む、天然に存在するプラスミドによってコードされる複製タンパク質が挙げられる。複製タンパク質は、本明細書に記載される実施形態において、それらの対応する複製起点配列と組み合わせて使用され得る。
【0088】
親プラスミドのベクター配列において含まれるori配列は、これが操作された細菌細胞のゲノム内に組み込まれている又はその他に操作された細菌細胞内に、例えばプラスミド若しくはBAC上に存在するRep遺伝子と対応するように選択される。幾つかの例示的な実施形態において、oriは、配列番号2に示されるヌクレオチド配列を含む。したがって、本明細書に開示される操作された細菌細胞の実施形態には、親プラスミド及び/又は環状DNAベクターの複製を可能にする複製タンパク質と複製起点配列との機能的なペアが含まれる。幾つかの実施形態において、ベクター配列に存在するori配列は、ColE2-P9 ori配列又はその機能的断片である。幾つかの実施形態において、ベクター配列に存在するori配列は、配列番号2に示されるDNA配列を有するColE2-P9 ori配列の機能的断片である。配列番号2に示される40塩基対の機能的断片は、ColE2-P9を発現する細胞におけるベクターの複製を支持することが可能である。幾つかの実施形態において、より短い又はより長い機能的断片を使用することができる。幾つかの実施形態において、ColE2-P9の31塩基対の断片を使用することができる。他の適切なori配列としては、限定されるものではないが、適切なRepタンパク質に対応するori配列及びその機能的断片、例えばColE3-CA38のori配列等が挙げられる。幾つかの実施形態において、oriは、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、26ヌクレオチド、27ヌクレオチド、28ヌクレオチド、29ヌクレオチド、30ヌクレオチド、31ヌクレオチド、32ヌクレオチド、33ヌクレオチド、34ヌクレオチド、35ヌクレオチド、36ヌクレオチド、37ヌクレオチド、38ヌクレオチド、39ヌクレオチド、40ヌクレオチド、41ヌクレオチド、42ヌクレオチド、43ヌクレオチド、44ヌクレオチド、45ヌクレオチド、46ヌクレオチド、47ヌクレオチド、48ヌクレオチド、49ヌクレオチド、50ヌクレオチド、51ヌクレオチド、52ヌクレオチド、53ヌクレオチド、54ヌクレオチド、55ヌクレオチド、56ヌクレオチド、57ヌクレオチド、58ヌクレオチド、59ヌクレオチド、60ヌクレオチド、65ヌクレオチド、70ヌクレオチド、75ヌクレオチド、80ヌクレオチド、85ヌクレオチド、90ヌクレオチド、95ヌクレオチド、100ヌクレオチド、150ヌクレオチド、200ヌクレオチド、250ヌクレオチド、300ヌクレオチド、350ヌクレオチド、又は400ヌクレオチドの長さ以下又はそれ未満である。幾つかの実施形態において、ori配列は、天然に存在するoriの機能的改変型、例えば、複製開始を支持する能力を依然として保持しながら、対応する天然に存在するori配列よりも短くなるよう改変されたori配列等である。幾つかの実施形態において、ori配列は天然に存在するori配列である。
【0089】
幾つかの実施形態において、Rep遺伝子は誘導性プロモーターに作動的に連結されている。適切な誘導性プロモーターとしては、限定されるものではないが、T7 RNAポリメラーゼによって誘導されるPT7プロモーター、熱誘導性Pプロモーター、LacIによって抑制可能(したがって、LacIの不存在又は除去によって誘導可能)なPtacプロモーター、アラビノースによって誘導可能なPbadプロモーターが挙げられる。本明細書に開示される実施形態において、例えばバクテリオファージプロモーター(例えば、Ps1con、T3、T7、SP6)及び細菌プロモーター(例えば、PmgrB、pLlacO、Ptrc2、pLtetO、Plac/ara、Pm)を含む、当該技術分野において知られる他の誘導性プロモーターを使用することもできる。本開示により使用される細菌プロモーターの例としては、限定されるものではないが、正に制御されるE.コリプロモーター、例えば正に制御されるσ70プロモーター(例えば、誘導性pBad/araCプロモーター、Luxカセット右プロモーター、改変型ラムダPrmプロモーター、plac Or2-62(正)、別個にREN部位を有するpBad/AraC、pBad、P(Las)TetO、P(Las)CIO、P(Rhl)、Pu、FecA、pRE、cadC、hns、pLas、pLux)、σプロモーター(例えば、Pdps)、σ32プロモーター(例えば、熱ショック)、及びσ54プロモーター(例えば、glnAp2)、負に制御されるE.コリプロモーター、例えば負に制御されるσ70プロモーター(例えば、プロモーター(PRM+)、改変型ラムダPrmプロモーター、TetR-TetR-4C P(Las)TetO、P(Las)CIO、P(Lac)IQ、RecA_DlexO_dLacO1、dapAp、FecA、Pspac-hy、pcI、plux-cI、plux-lac、CinR、CinL、グルコース制御された改変型Pr、改変型Prm+、FecA、Pcya、rec A(SOS)、Rec A(SOS)、EmrR_制御(EmrR_regulated)、BetI_制御(BetI_regulated)、pLac_lux、pTet_Lac、pLac/Mnt、pTet/Mnt、LsrA/cI、pLux/cI、LacI、LacIQ、pLacIQ1、pLas/cI、pLas/Lux、pLux/Las、LexA結合部位を有するpRecA、リバースbBa_R0011、pLacI/ara-1、pLacIq、rrnB P1、cadC、hns、PfhuA、pBad/araC、nhaA、OmpF、RcnR)、σプロモーター(例えば、代替的なシグマ因子σ38を有するLutz-Bujard LacO)、σ32プロモーター(例えば、代替的なシグマ因子σ32を有するLutz-Bujard LacO)、及びσ54プロモーター(例えば、glnAp2)、負に制御されるB.サブチリス(B. subtilis)プロモーター、例えば抑制可能なB.サブチリスσプロモーター(例えば、グラム陽性IPTG誘導性、Xyl、hyper-spank)、及びσプロモーターが挙げられる。他の誘導性細菌プロモーターを本開示に従って使用することができる。例えば、pCymRC等のクミン酸誘導性プロモーターを、幾つかの実施形態において使用することができる。
【0090】
幾つかの実施形態において、複製タンパク質の発現レベルは、対応するori配列を含む親プラスミド又は環状DNAベクターのコピー数に影響を及ぼす。したがって、比較的低いコピー数(例えば、細胞当たり5コピー未満、10コピー未満、又は20コピー未満の平均)が望ましい場合、操作された細菌細胞は、複製タンパク質が比較的低いレベルで発現される条件において維持され得る。比較的高いコピー数(例えば、細胞当たり20コピー超、50コピー超、又は100コピー超の平均)が望まれる場合、操作された細菌細胞は、複製タンパク質が誘導性プロモーターから比較的高いレベルで発現される条件において維持され得る。幾つかの実施形態において、Rep遺伝子は、非誘導条件において第1の発現レベルをもたらし、対応するori配列を含む親プラスミド又は環状DNAベクターのより高いコピー数をもたらすより高い第2の発現レベルをもたらすように誘導することができる誘導性プロモーターに作動的に連結されている。幾つかの実施形態において、親プラスミドのベクター配列とバックボーン配列とが分離される前に、操作された細菌細胞における親プラスミドを低いコピー数で維持することが有利である。ベクター配列とバックボーン配列とが制限消化によって分離される実施形態において、比較的低いコピー数を有すると、線状化されたベクター配列をバックボーン配列又はベクター配列の他のコピーとライゲーションするのではなく、セルフライゲーションさせることを確実にするのに役立ち得る。ベクター配列をバックボーン配列から分離し、環状DNAベクターを形成した後、幾つかの実施形態において、高収率の環状DNAベクターを生産するのに、ori配列を含む環状DNAベクターを比較的高いコピー数で維持することが有利である。したがって、幾つかの実施形態において、操作された細菌細胞内で環状DNAベクターが形成された後に、例えば、Rep遺伝子に作動的に連結された誘導性プロモーターからより高い発現を誘導する分子を加えることによって、複製タンパク質のより高い発現レベルが誘導される。幾つかの実施形態において、誘導性プロモーターは、ベクター配列がバックボーン配列から分離される後まで非誘導状態で維持される。幾つかの実施形態において、誘導性プロモーターは、ベクター配列がバックボーン配列から分離された後に誘導される。幾つかの実施形態において、誘導性プロモーターは、ベクター配列がバックボーン配列から分離されたと同時に誘導される。幾つかの実施形態において、誘導性プロモーターは、ベクター配列がバックボーン配列から分離される前に誘導される。
【0091】
幾つかの実施形態において、親プラスミドのコピー数は、細胞当たり少なくとも約、最大で約、又は約1コピー、約2コピー、約3コピー、約4コピー、約5コピー、約6コピー、約7コピー、約8コピー、約9コピー、約10コピー、約11コピー、約12コピー、約13コピー、約14コピー、約15コピー、約16コピー、約17コピー、約18コピー、約19コピー、約20コピー、約30コピー、約40コピー、約50コピー、約60コピー、約70コピー、約80コピー、約90コピー、約100コピー、約110コピー、約120コピー、約130コピー、約140コピー、約150コピー、約160コピー、約170コピー、約180コピー、約190コピー、約200コピー、約250コピー、約300コピー、約350コピー、約400コピー、約450コピー、約500コピー、約550コピー、約600コピー、約650コピー、約700コピー、約750コピーのコピー数で、又はこれらの値のいずれか2つの間で維持される。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターのコピー数は、細胞当たり少なくとも約、最大で約、又は約10コピー、約11コピー、約12コピー、約13コピー、約14コピー、約15コピー、約16コピー、約17コピー、約18コピー、約19コピー、約20コピー、約25コピー、約30コピー、約35コピー、約40コピー、約45コピー、約50コピー、約55コピー、約60コピー、約65コピー、約70コピー、約75コピー、約80コピー、約85コピー、約90コピー、約95コピー、約100コピー、約110コピー、約120コピー、約130コピー、約140コピー、約150コピー、約160コピー、約170コピー、約180コピー、約190コピー、約200コピー、約250コピー、約300コピー、約350コピー、若しくは約400コピーで、又はこれらの値のいずれか2つの間で維持される。
【0092】
幾つかの実施形態において、操作された細菌細胞ゲノム内に組み込まれたRep遺伝子は、構成的プロモーター又は非誘導性プロモーターの制御下にある。幾つかの実施形態において、複製タンパク質の発現は、ベクター配列がバックボーン配列から分離される前、その間、又はその後に調整されない。幾つかの実施形態において、分離前の親プラスミド及び分離後の環状DNAベクターは、細胞当たり少なくとも約、最大で約、又は約1コピー、約2コピー、約3コピー、約4コピー、約5コピー、約6コピー、約7コピー、約8コピー、約9コピー、約10コピー、約11コピー、約12コピー、約13コピー、約14コピー、約15コピー、約16コピー、約17コピー、約18コピー、約19コピー、約20コピー、約25コピー、約30コピー、約35コピー、約40コピー、約45コピー、約50コピー、約55コピー、約60コピー、約65コピー、約70コピー、約75コピー、約80コピー、約85コピー、約90コピー、約95コピー、約100コピー、約110コピー、約120コピー、約130コピー、約140コピー、約150コピー、約160コピー、約170コピー、約180コピー、約190コピー、若しくは約200コピーのコピー数で、又はこれらの値のいずれか2つの間で維持される。
【0093】
親プラスミド又は親プラスミドから分離されたベクター配列に加えて、操作された細菌は、ヘルパープラスミド又はBAC等の他の染色体外DNA分子も含み得る。染色体外DNA分子は、例えば、外因性リコンビナーゼ、制限酵素、複製タンパク質、リガーゼ、選択可能なマーカー、対抗選択マーカー、又はレポーター遺伝子をコードしていてよい。幾つかの実施形態において、ベクター配列以外の染色体外DNA分子を操作された細菌細胞から除去した後、操作された細菌細胞の培養物から環状DNAベクターを精製する。幾つかの実施形態において、選択圧を適用せずに染色体外DNA分子を維持する条件下で細胞を培養することによって、又は染色体外DNA分子を含む細胞の成長を低減若しくは排除する対抗選択条件下で細胞を培養することによって、染色体外DNA分子を操作された細菌細胞から除去することができる。
【0094】
幾つかの実施形態において、操作された細菌細胞内に含まれる染色体外DNA分子には、細胞内の染色体外DNA分子の存在を追跡するのに使用することができるレポーターコンストラクトが含まれる。例えば、親プラスミドのバックボーン配列又はヘルパープラスミド若しくはBACは、GFP又はRFP等の視覚的に検出可能なタンパク質をコードする遺伝子を含み得る。その場合、紫外光下でコロニーの色を視覚的に観察することで、コロニーの細胞内に染色体外DNA分子が存在するかどうかを明らかにすることができる。このようにして、所与の染色体外DNA分子を欠いているコロニーを検出することができる。他の様式で検出することができる他の適切なレポーターコンストラクトを使用して、操作された細菌細胞又はコロニーが所与の染色体外DNA分子を含むかどうかを判定することもできる。
【0095】
B.親プラスミド
本明細書に開示される操作された細菌の実施形態には、2つの制限部位又は組換え部位によって互いに分離されるベクター配列及びバックボーン配列を含む親プラスミド(テンプレートプラスミド又はプラスミドテンプレートとも呼ばれる)が含まれる。
【0096】
ベクター配列は、ori配列と、幾つかの実施形態において、治療用コーディング配列、レポーターコンストラクト、又はそれらの組合せである対象配列とを含む。ベクター配列は、本明細書に記載される環状DNAベクターの実施形態のあらゆる構成要素を含み得る。幾つかの実施形態において、ベクター配列はori配列以外に細菌起源の配列を一切含まない。幾つかの実施形態において、親プラスミドは、ori配列及び/又は治療用配列又はレポーターコンストラクトのすぐ隣に制限部位又は組換え部位を含むため、環状DNAベクターとなるベクター配列に含まれる異質なDNA又は非機能的DNAは存在しない。
【0097】
幾つかの実施形態において、バックボーン配列は、選択可能なマーカーを含み、組み込まれたRep遺伝子によってコードされる外因性複製タンパク質に対応するori配列を含まない。幾つかの実施形態において、バックボーン配列は、組み込まれたRep遺伝子に対応しない、すなわち、ベクター配列内のori配列及び組み込まれたRep遺伝子に対してオーソロガスであるori配列を含む。幾つかの実施形態において、バックボーン配列に含まれる選択可能なマーカーは、細胞の成長又は生存に選択可能なマーカーが必要である条件下で培養された操作された細菌細胞の集団において親プラスミドが維持されることを確実にするのに役立つ。例えば、幾つかの実施形態において、選択可能なマーカーは抗生物質耐性遺伝子である。操作された細菌細胞を対応する抗生物質の存在下で培養すると、選択圧がかかるため、操作された細菌細胞の集団において親プラスミドが維持される。しかしながら、成長培地を抗生物質耐性遺伝子に対応する抗生物質を欠いた培地に変更すること等によって選択圧を取り除くと、抗生物質耐性遺伝子を含むDNA分子が集団から失われる可能性があり、特にそのようなDNA分子がori配列を含まない場合にその可能性がある。したがって、ベクター配列がバックボーン配列から分離された後、培養条件によりバックボーン配列を維持する選択圧がかからないと、バックボーン配列は集団から失われるか、又は大量に維持することができなくなる可能性がある。
【0098】
幾つかの実施形態において、バックボーン配列は対抗選択マーカーを含む。対抗選択マーカーは、バックボーン配列を含まない細胞を選択的に成長させる方法を提供し得る。幾つかの実施形態において、ベクター配列がバックボーン配列から分離された後、対抗選択条件下で細胞を成長させることにより、純度が高められ、培養物中及び/又は精製されたベクター配列を含む組成物中のバックボーン配列の量が減少する可能性がある。適切な対抗選択マーカーは当該技術分野において知られており、例えば、pheS、sacB、thyA、lacY、gata-1、ccdB、rpsL、又はtetARを含み得る。
【0099】
親プラスミド内のベクター配列を両側で挟んでいる制限部位又は組換え部位を、ベクター配列内に存在しないあらゆる適切な制限部位又は組換え部位から選択することができる。
【0100】
C.制限消化及びライゲーション
本明細書に開示される実施形態には、制限消化を行って、ベクター配列を親プラスミドのバックボーン配列から分離する工程が含まれる。幾つかの実施形態において、制限消化は操作された細菌細胞内で行われる。幾つかの実施形態において、親プラスミドを消化する制限酵素は、操作された細菌細胞内に導入された外因性制限酵素遺伝子から発現される外因性制限酵素である。幾つかの実施形態において、外因性遺伝子は、操作された細菌細胞のゲノム内に組み込まれている。幾つかの実施形態において、外因性遺伝子は、操作された細菌細胞内のプラスミド又はBAC上にコードされている。幾つかの実施形態において、ベクター配列を親プラスミドのバックボーン配列から分離することが所望されるようなときまで、制限酵素の発現の誘導を抑制又は遅延させる必要がある。したがって、幾つかの実施形態において、外因性遺伝子は誘導性プロモーターに作動的に連結されている。分離が所望される場合、制限酵素の発現を誘導し、分離を進めることができる。
【0101】
幾つかの実施形態において、ベクター配列をバックボーン配列から分離するのに使用される制限酵素は、細胞膜を越えて操作された細菌細胞内に導入される外因性制限酵素である。幾つかの実施形態において、これはエレクトロポレーションによって達成される。エレクトロポレーション手順及び消化手順の非限定的な例は次の通りである。親プラスミドを有する操作されたエレクトロコンピテントなE.コリを、SOB中で30℃にて0.8のODまで培養する。細菌を氷冷した10%のグリセロールで3回洗浄し、10%のグリセロール中に再懸濁する。それぞれ0.5μlの制限酵素及びリガーゼをエレクトロコンピテントな細胞と混合し、1μgのDNAを10単位の制限酵素で消化させる。混合物をキュベット(1mmギャップ)に移し、エレクトロポレーター(BTX)を使用して1800ボルトの設定を用いてエレクトロポレーションする。細胞をSOC中で37℃にて1時間成長させることによってレスキューし、抗生物質を含まないLB寒天プレート上にプレーティングする。コロニーを成長させ、QIAGENのミニプレップキットを使用してDNAを精製する。
【0102】
ベクター配列を分離した後、ベクター配列をセルフライゲーションさせることによって環状DNAベクターを形成することができる。幾つかの実施形態において、ライゲーションは操作された細菌細胞内で行われる。幾つかの実施形態において、ベクター配列の末端を接合するリガーゼは、操作された細菌細胞内に導入された外因性リガーゼ遺伝子から発現される外因性リガーゼである。リガーゼは、例えば、T3リガーゼ、T4リガーゼ、又はT7リガーゼであり得る。幾つかの実施形態において、外因性リガーゼ遺伝子は、操作された細菌細胞のゲノム内に組み込まれている。幾つかの実施形態において、外因性リガーゼ遺伝子は、操作された細菌細胞内のプラスミド上にコードされている。幾つかの実施形態において、ベクター配列を親プラスミドのバックボーン配列から分離することが達成されるようなときまで、リガーゼの発現を抑制するか、又は誘導しない。したがって、幾つかの実施形態において、外因性リガーゼ遺伝子は誘導性プロモーターに作動的に連結されている。
【0103】
幾つかの実施形態において、リガーゼは、細胞膜を越えて操作された細菌細胞内に導入される外因性リガーゼである。幾つかの実施形態において、これはエレクトロポレーションによって達成され、上記のエレクトロポレーションプロトコルに従って行うことができる。幾つかの実施形態において、制限酵素及びリガーゼのエレクトロポレーションは、制限酵素及びリガーゼ酵素の両方が単回のエレクトロポレーション工程で細胞に入る単回の工程で行われる。幾つかの実施形態において、制限酵素(複数の場合もある)及びリガーゼは細胞に別々に加えられる。
【0104】
幾つかの実施形態において、ベクター配列のセルフライゲーションは、操作された細菌細胞によって生産される内因性リガーゼによって達成される。
【0105】
幾つかの実施形態において、外因性制限酵素及び外因性リガーゼは、操作された細菌細胞内に同時に存在する。幾つかの実施形態において、外因性制限酵素を(例えば、外因性制限酵素のエレクトロポレーション、外因性制限酵素をコードするDNA分子による形質転換、又は誘導性プロモーターの制御下での外因性制限酵素遺伝子の発現の誘導によって)操作された細菌細胞内に導入した後に、外因性リガーゼを(例えば、外因性リガーゼのエレクトロポレーション、外因性リガーゼをコードするDNA分子による形質転換、又は誘導性プロモーターの制御下での外因性リガーゼ遺伝子の発現の誘導によって)操作された細菌細胞内に導入する。幾つかの実施形態において、外因性制限酵素を操作された細菌細胞内に導入した後に、外因性リガーゼを操作された細菌細胞内に導入する。幾つかの実施形態において、外因性制限酵素を、操作された細菌細胞内に外因性リガーゼと同時に導入する。
【0106】
D.部位特異的組換え
部位特異的組換えを、配列間の部位特異的組換えをもたらす様々な系を使用して実施することができる。幾つかの実施形態において、部位特異的組換えには、リコンビナーゼの存在下で互いに組換えを可能にする2つの特異的な配列が必要とされる。
【0107】
幾つかの実施形態において、ベクター配列をプラスミド配列から分離するリコンビナーゼは、操作された細菌細胞内に導入された外因性リコンビナーゼ遺伝子から発現される外因性リコンビナーゼである。幾つかの実施形態において、外因性リコンビナーゼ遺伝子は、操作された細菌細胞のゲノム内に組み込まれている。幾つかの実施形態において、外因性リコンビナーゼ遺伝子は、操作された細菌細胞内のプラスミド又はBAC上にコードされている。幾つかの実施形態において、ベクター配列を親プラスミドのバックボーン配列から分離することが所望されるようなときまで、リコンビナーゼの発現の誘導を抑制又は遅延させる必要がある。したがって、幾つかの実施形態において、外因性リコンビナーゼ遺伝子は、本明細書に開示される誘導性プロモーターのいずれか等の誘導性プロモーターに作動的に連結されている。分離が所望される場合、外因性リコンビナーゼの発現を誘導し、分離を進めることができる。幾つかの実施形態において、外因性リコンビナーゼは、親プラスミドが操作された細菌細胞内に導入されたときに発現され、これによってリコンビナーゼの発現を誘導する必要なしに、親プラスミドの組換えを起こさせることができる。幾つかの実施形態において、親プラスミドが操作された細菌細胞内に導入されたときに、リコンビナーゼは比較的低いレベルで発現される。一例として、幾つかの実施形態において、操作された細菌細胞には、非誘導条件下で低レベルの発現をもたらす誘導性プロモーターに作動的に結合された外因性リコンビナーゼ遺伝子(これは、例えば、親プラスミドを操作された細菌細胞内に導入する前に、細菌染色体内に組み込まれていてよく、又は細菌細胞内に存在するプラスミド若しくはBAC上に含まれていてよい)が含まれていてよい。外因性リコンビナーゼの適切に低い発現レベルを有する操作された細菌細胞内に親プラスミドを導入すると、親プラスミドのバックボーン配列上の選択可能なマーカーについて選択的な培地上でコロニーの成長が可能となり得ると同時に、親プラスミドの十分な組換えが誘導されて、バックボーン配列から分離されたベクター配列を有するコロニーにおいて細胞集団も生成される。
【0108】
幾つかの実施形態において、ベクター配列をバックボーン配列から分離するのに使用されるリコンビナーゼは、細胞膜を越えて操作された細菌細胞内に導入される外因性リコンビナーゼである。幾つかの実施形態において、これはエレクトロポレーションによって達成される。エレクトロポレーション手順及び組換え手順の非限定的な例は次の通りである。親プラスミドを有する操作されたエレクトロコンピテントなE.コリを、SOB中で30℃にて0.8のODまで培養する。細菌を氷冷した10%のグリセロールで3回洗浄し、10%のグリセロール中に再懸濁する。1μlのCre(15単位、NEB、M0298M)を50μlのエレクトロコンピテントな細胞と混合する。混合物をキュベット(1mmギャップ)に移し、エレクトロポレーター(BTX)を使用して1800ボルトの設定を用いてエレクトロポレーションする。細胞をSOC中で37℃にて1時間成長させることによってレスキューし、抗生物質を含まないLB寒天プレート上にプレーティングする。コロニーを成長させ、QIAGENのミニプレップキットを使用してDNAを精製する。1μgのDNAを10単位の制限酵素で消化する。
【0109】
本明細書に開示される実施形態において使用される特定の組換え系は、様々な起源のものであり得る。特に、使用される特定の配列及びリコンビナーゼは、バクテリオファージλのインテグラーゼファミリー又はトランスポゾンTn3のリゾルバーゼファミリー等の様々な構造クラスに属し得る。
【0110】
バクテリオファージλのインテグラーゼファミリーに属するリコンビナーゼには、例えば、ファージラムダ(Landy et al., Science 197: 1147, 1977)、P22、及びφ80(Leong et al., J. Biol. Chem. 260: 4468,1985)のインテグラーゼ、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)のHP1(Hauser et al., J. Biol. Chem. 267 6859,1992)、ファージP1のCreインテグラーゼ(これはLoxP部位を認識して組換えを引き起こす)、プラスミドpSAM2のインテグラーゼ(欧州特許第350,341号)、或いは2μプラスミドのFLPリコンビナーゼが含まれる。バクテリオファージλのインテグラーゼファミリーの部位特異的な系による組換えによって環状DNAベクターを調製する実施形態において、得られる環状DNAベクターは一般に、対応するバクテリオファージ又はプラスミドの2つのatt付着配列間の組換えから得られる配列を含む。
【0111】
トランスポゾンTn3のファミリーに属するリコンビナーゼには、例えば、トランスポゾンTn3又はトランスポゾンTn21及びTn522のリゾルバーゼ(Stark et al., Trends Genet, 8, 432-439,1992)、バクテリオファージmuのGinインベルターゼ、或いはRP4のpar断片のリゾルバーゼ等のプラスミドのリゾルバーゼ(Albert et al., Mol. Microbiol. 12: 131, 1994)が含まれる。トランスポゾンTn3のファミリーの部位特異的な系による組換えによって環状DNAベクターを調製する実施形態において、得られる環状DNAベクターは一般に、当該トランスポゾンのリゾルバーゼの2つの認識配列間の組換えから得られる配列を含む。
【0112】
幾つかの実施形態において、親プラスミド上の部位特異的組換え配列はバクテリオファージに由来する。幾つかの実施形態において、これらの配列は、バクテリオファージインテグラーゼの付着配列(attP配列及びattB配列)又はこのような付着配列から誘導された配列である。これらの配列は、エクシジョナーゼの有無にかかわらず、インテグラーゼと呼ばれるリコンビナーゼの存在下で互いに特異的に組換えを行うことが可能である。「このような付着配列から誘導された配列」という用語には、適切なリコンビナーゼの存在下で特異的に組換えを行う能力を保持するバクテリオファージの付着配列の改変(複数の場合もある)によって得られる配列が含まれる。したがって、このような配列は、これらの配列の縮小された断片であるか、或いは他の配列(制限部位等)の付加によって拡張された断片であり得る。これらはまた、例えばattP-GA付着配列及びattB-GA付着配列等の突然変異、特に点突然変異によって得られた変異体であり得る。
【0113】
幾つかの実施形態において、使用される認識配列及びリコンビナーゼは、例えば、Flp、XerC、XerD、λインテグラーゼ、若しくはHP1インテグラーゼ等のチロシンリコンビナーゼファミリーのメンバー、又は例えば、φBT1、TP901、Bxb1、MR11、A118、φK38、φC31、若しくはWβ等のセリンリコンビナーゼファミリーのメンバーに由来する。
【0114】
幾つかの実施形態において、認識配列及びリコンビナーゼは、Bxb1に由来する(例えば、外因性リコンビナーゼはBxb1であり、かつ認識配列はattP-GA及びattB-GAである)。
【0115】
E.細胞の培養による環状DNAベクターの増幅
本明細書に記載される実施形態に従って、操作された細菌細胞内で環状DNAベクターを形成させた後、環状DNAベクターを含む操作された細菌細胞の集団を培養することによって、生産される環状DNAベクターの量を増加させることができる。培養条件は、細菌細胞の成長及び環状DNAベクターの追加のコピーの生産を最大化するように選択され得る。幾つかの実施形態において、培養条件は、複製タンパク質の高レベルの発現を誘導し、それによって対応するori配列を有する環状DNAベクターの高コピー数を支持するように選択される。幾つかの実施形態において、培養条件は、選択可能なマーカーを含むバックボーン配列の維持についての選択圧を取り除くように選択されるため、バックボーン配列は細胞分裂を通じて維持されない。幾つかの実施形態において、バックボーン配列上に存在する対抗選択マーカーについての対抗選択圧を与える培養条件が選択されるため、バックボーン配列を含む細胞は成長能力が低下するか、又は成長することができない。
【0116】
幾つかの実施形態において、環状DNAベクターを含む操作された細菌細胞の集団を培養することにより、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも15回、少なくとも20回、少なくとも25回、少なくとも30回、少なくとも35回、少なくとも40回、少なくとも45回、少なくとも50回、少なくとも55回、少なくとも60回、少なくとも65回、少なくとも70回、少なくとも75回、少なくとも80回、少なくとも85回、少なくとも90回、少なくとも95回、又は少なくとも100回の細胞分裂を通じて、そのような培養された細胞内の環状DNAベクターの維持がもたらされる。幾つかの実施形態において、操作された細菌細胞の培養された集団は、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、少なくとも14回、少なくとも15回、少なくとも16回、少なくとも17回、少なくとも18回、少なくとも19回、少なくとも20回、少なくとも25回、少なくとも30回、少なくとも35回、少なくとも40回、少なくとも45回、少なくとも50回、少なくとも55回、少なくとも60回、少なくとも65回、少なくとも70回、少なくとも75回、少なくとも80回、少なくとも85回、少なくとも90回、少なくとも95回、又は少なくとも100回の倍化の後に細胞当たり少なくとも1コピー、少なくとも2コピー、少なくとも3コピー、少なくとも4コピー、少なくとも5コピー、少なくとも6コピー、少なくとも7コピー、少なくとも8コピー、少なくとも9コピー、少なくとも10コピー、少なくとも11コピー、少なくとも12コピー、少なくとも13コピー、少なくとも14コピー、少なくとも15コピー、少なくとも16コピー、少なくとも17コピー、少なくとも18コピー、少なくとも19コピー、少なくとも20コピーの平均コピー数(例えば、少なくとも10回の倍化の後に細胞当たり少なくとも1コピー(例えば、少なくとも10回の倍化の後に細胞当たり少なくとも5コピー、少なくとも10回の倍化の後に細胞当たり少なくとも10コピー、又は少なくとも10回の倍化の後に細胞当たり少なくとも20コピー)、少なくとも20回の倍化の後に細胞当たり少なくとも1コピー(例えば、少なくとも20回の倍化の後に細胞当たり少なくとも5コピー、少なくとも20回の倍化の後に細胞当たり少なくとも10コピー、又は少なくとも20回の倍化の後に細胞当たり少なくとも20コピー)、少なくとも50回の倍化の後に細胞当たり少なくとも1コピー(例えば、少なくとも50回の倍化の後に細胞当たり少なくとも5コピー、少なくとも50回の倍化の後に細胞当たり少なくとも10コピー、又は少なくとも50回の倍化の後に細胞当たり少なくとも20コピー)、又は少なくとも100回の倍化の後に細胞当たり少なくとも1コピー(例えば、少なくとも100回の倍化の後に細胞当たり少なくとも5コピー、少なくとも100回の倍化の後に細胞当たり少なくとも10コピー、又は少なくとも100回の倍化の後に細胞当たり少なくとも20コピー))で環状DNAベクターを維持する。幾つかの実施形態において、ベクター配列をバックボーン配列から分離した後のバックボーン配列の平均コピー数は、少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、少なくとも14回、少なくとも15回、少なくとも16回、少なくとも17回、少なくとも18回、少なくとも19回、少なくとも20回、少なくとも25回、少なくとも30回、少なくとも35回、少なくとも40回、少なくとも45回、少なくとも50回、少なくとも55回、少なくとも60回、少なくとも65回、少なくとも70回、少なくとも75回、少なくとも80回、少なくとも85回、少なくとも90回、少なくとも95回、又は少なくとも100回の倍化の後に細胞当たり5コピー未満、4コピー未満、3コピー未満、2コピー未満、1コピー未満、0.5コピー未満、0.1コピー未満、0.01コピー未満若しくは0.001コピー未満であるか、又は検出不能である(例えば、少なくとも1回の倍化の後に細胞当たり0.001コピー未満(例えば、少なくとも10回の倍化の後に細胞当たり0.001コピー未満、少なくとも20回の倍化の後に細胞当たり0.001コピー未満、少なくとも50回の倍化の後に細胞当たり0.001コピー未満、又は少なくとも100回の倍化の後に細胞当たり0.001コピー未満)、少なくとも1回の倍化の後に細胞当たり0.01コピー未満(例えば、少なくとも10回の倍化の後に細胞当たり0.01コピー未満、少なくとも20回の倍化の後に細胞当たり0.01コピー未満、少なくとも50回の倍化の後に細胞当たり0.01コピー未満、又は少なくとも100回の倍化の後に細胞当たり0.01コピー未満)、少なくとも1回の倍化の後に細胞当たり0.1コピー未満(例えば、少なくとも10回の倍化の後に細胞当たり0.1コピー未満、少なくとも20回の倍化の後に細胞当たり0.1コピー未満、少なくとも50回の倍化の後に細胞当たり0.1コピー未満、又は少なくとも100回の倍化の後に細胞当たり0.1コピー未満)、又は少なくとも1回の倍化の後に細胞当たり1コピー未満(例えば、少なくとも10回の倍化の後に細胞当たり1コピー未満、少なくとも20回の倍化の後に細胞当たり1コピー未満、少なくとも50回の倍化の後に細胞当たり1コピー未満、又は少なくとも100回の倍化の後に細胞当たり1コピー未満))。幾つかの実施形態において、ベクター配列をバックボーン配列から分離した後のバックボーン配列の平均コピー数は、最大1回、最大2回、最大3回、最大4回、最大5回、最大6回、最大7回、最大8回、最大9回、最大10回、最大11回、最大12回、最大13回、最大14回、最大15回、最大16回、最大17回、最大18回、最大19回、最大20回、最大25回、最大30回、最大35回、最大40回、最大45回、最大50回、最大55回、最大60回、最大65回、最大70回、最大75回、最大80回、最大85回、最大90回、最大95回、又は最大100回の倍化の後に細胞当たり5コピー未満、4コピー未満、3コピー未満、2コピー未満、1コピー未満、0.5コピー未満、0.1コピー未満、0.01コピー未満若しくは0.001コピー未満であるか、又は検出不能である(例えば、最大1回の倍化の後に細胞当たり0.001コピー未満(例えば、最大10回の倍化の後に細胞当たり0.001コピー未満、最大20回の倍化の後に細胞当たり0.001コピー未満、最大50回の倍化の後に細胞当たり0.001コピー未満、又は最大100回の倍化の後に細胞当たり0.001コピー未満)、最大1回の倍化の後に細胞当たり0.01コピー未満(例えば、最大10回の倍化の後に細胞当たり0.01コピー未満、最大20回の倍化の後に細胞当たり0.01コピー未満、最大50回の倍化の後に細胞当たり0.01コピー未満、又は最大100回の倍化の後に細胞当たり0.01コピー未満)、最大1回の倍化の後に細胞当たり0.1コピー未満(例えば、最大10回の倍化の後に細胞当たり0.1コピー未満、最大20回の倍化の後に細胞当たり0.1コピー未満、最大50回の倍化の後に細胞当たり0.1コピー未満、又は最大100回の倍化の後に細胞当たり0.1コピー未満)、又は最大1回の倍化の後に細胞当たり1コピー未満(例えば、最大10回の倍化の後に細胞当たり1コピー未満、最大20回の倍化の後に細胞当たり1コピー未満、最大50回の倍化の後に細胞当たり1コピー未満、又は最大100回の倍化の後に細胞当たり1コピー未満))。
【0117】
幾つかの実施形態において、環状DNAベクターを含む操作された細菌細胞の集団を培養することにより、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも15回、少なくとも20回、少なくとも25回、少なくとも30回、少なくとも35回、少なくとも40回、少なくとも45回、少なくとも50回、少なくとも55回、少なくとも60回、少なくとも65回、少なくとも70回、少なくとも75回、少なくとも80回、少なくとも85回、少なくとも90回、少なくとも95回、少なくとも100回、少なくとも150回、少なくとも200回、少なくとも250回、少なくとも290回、少なくとも294回、少なくとも300回、少なくとも350回、少なくとも400回、少なくとも450回、又は少なくとも500回の細胞分裂を通じて、そのような培養された細胞内の環状DNAベクターの維持がもたらされる(例えば、サンガーシーケンシングによって確認される)。幾つかの実施形態において、操作された細菌細胞の培養された集団は、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、少なくとも14回、少なくとも15回、少なくとも16回、少なくとも17回、少なくとも18回、少なくとも19回、少なくとも20回、少なくとも25回、少なくとも30回、少なくとも35回、少なくとも40回、少なくとも45回、少なくとも50回、少なくとも55回、少なくとも60回、少なくとも65回、少なくとも70回、少なくとも75回、少なくとも80回、少なくとも85回、少なくとも90回、少なくとも95回、少なくとも100回、少なくとも150回、少なくとも200回、少なくとも250回、少なくとも290回、少なくとも294回、少なくとも300回、少なくとも350回、少なくとも400回、少なくとも450回、又は少なくとも500回の倍化の後に細胞当たり少なくとも1コピー、少なくとも2コピー、少なくとも3コピー、少なくとも4コピー、少なくとも5コピー、少なくとも6コピー、少なくとも7コピー、少なくとも8コピー、少なくとも9コピー、少なくとも10コピー、少なくとも11コピー、少なくとも12コピー、少なくとも13コピー、少なくとも14コピー、少なくとも15コピー、少なくとも16コピー、少なくとも17コピー、少なくとも18コピー、少なくとも19コピー、少なくとも20コピーの平均コピー数で環状DNAベクターを維持する。幾つかの実施形態において、ベクター配列をバックボーン配列から分離した後のバックボーン配列の平均コピー数は、最大1回、最大2回、最大3回、最大4回、最大5回、最大6回、最大7回、最大8回、最大9回、最大10回、最大11回、最大12回、最大13回、最大14回、最大15回、最大16回、最大17回、最大18回、最大19回、最大20回、最大25回、最大30回、最大35回、最大40回、最大45回、最大50回、最大55回、最大60回、最大65回、最大70回、最大75回、最大80回、最大85回、最大90回、最大95回、最大100回、150回、最大200回、最大250回、最大290回、最大294回、最大300回、最大350回、最大400回、最大450回、又は最大500回の倍化の後に細胞当たり5コピー未満、4コピー未満、3コピー未満、2コピー未満、1コピー未満、0.5コピー未満、0.1コピー未満、0.01コピー未満若しくは0.001コピー未満であるか、又は検出不能である(例えば、最大1回の倍化の後に細胞当たり0.001コピー未満(例えば、最大10回の倍化の後に細胞当たり0.001コピー未満、最大20回の倍化の後に細胞当たり0.001コピー未満、最大50回の倍化の後に細胞当たり0.001コピー未満、又は最大500回の倍化の後に細胞当たり0.001コピー未満)、最大1回の倍化の後に細胞当たり0.01コピー未満(例えば、最大10回の倍化の後に細胞当たり0.01コピー未満、最大20回の倍化の後に細胞当たり0.01コピー未満、最大50回の倍化の後に細胞当たり0.01コピー未満、又は最大100回の倍化の後に細胞当たり0.01コピー未満)、最大1回の倍化の後に細胞当たり0.1コピー未満(例えば、最大10回の倍化の後に細胞当たり0.1コピー未満、最大20回の倍化の後に細胞当たり0.1コピー未満、最大50回の倍化の後に細胞当たり0.1コピー未満、又は最大100回の倍化の後に細胞当たり0.1コピー未満)、又は最大1回の倍化の後に細胞当たり1コピー未満(例えば、最大10回の倍化の後に細胞当たり1コピー未満、最大20回の倍化の後に細胞当たり1コピー未満、最大50回の倍化の後に細胞当たり1コピー未満、又は最大100回の倍化の後に細胞当たり1コピー未満))。
【0118】
幾つかの実施形態には、環状DNAベクター又は親プラスミドの平均コピー数が細胞当たり少なくとも1コピー、少なくとも2コピー、少なくとも3コピー、少なくとも4コピー、少なくとも5コピー、少なくとも6コピー、少なくとも7コピー、少なくとも8コピー、少なくとも9コピー、少なくとも10コピー、少なくとも11コピー、少なくとも12コピー、少なくとも13コピー、少なくとも14コピー、少なくとも15コピー、少なくとも16コピー、少なくとも17コピー、少なくとも18コピー、少なくとも19コピー、少なくとも20コピー、少なくとも25コピー、少なくとも30コピー、少なくとも35コピー、少なくとも40コピー、少なくとも45コピー、少なくとも50コピー、少なくとも55コピー、少なくとも60コピー、少なくとも65コピー、少なくとも70コピー、少なくとも75コピー、少なくとも80コピー、少なくとも85コピー、少なくとも90コピー、少なくとも95コピー、若しくは少なくとも100コピーであるか、又はこれらの値のいずれか2つの間である操作された細菌細胞の培養物が含まれる。幾つかの実施形態において、この培養物は、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも1010個、少なくとも1011個、若しくは少なくとも1012個の総細胞、又はこれらの値のいずれか2つの間を含む。幾つかの実施形態において、この培養物は、1ml当たり少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、少なくとも10個、若しくは少なくとも1010個の細胞、又はこれらの値のいずれか2つの間を含む。
【0119】
E.環状DNAベクターの回収
本明細書に開示される実施形態によって生産された環状DNAベクターを、当該技術分野において知られる抽出手順及び精製手順によって、操作された細菌の培養物から回収することができる。幾つかの実施形態において、培養された操作された細菌細胞1リットル当たり少なくとも0.001mg、少なくとも0.01mg、少なくとも0.1mg、少なくとも0.2mg、少なくとも0.3mg、少なくとも0.4mg、少なくとも0.5mg、少なくとも0.6mg、少なくとも0.7mg、少なくとも0.8mg、少なくとも0.9mg、少なくとも1.0mg、少なくとも1.1mg、少なくとも1.2mg、少なくとも1.3mg、少なくとも1.4mg、少なくとも1.5mg、少なくとも1.6mg、少なくとも1.7mg、少なくとも1.8mg、少なくとも1.9mg、少なくとも2.0mg、少なくとも2.5mg、少なくとも3.0mg、少なくとも3.5mg、少なくとも4.0mg、少なくとも4.5mg、又は少なくとも5.0mgの環状DNAベクターを回収することができる。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターは、エンドトキシン等の細菌性汚染物質の量を医薬組成物における使用に許容可能なレベルまで低減する精製手順を経る。適切な精製手順としては、陰イオン交換クロマトグラフィー又は疎水性相互作用クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー手順が挙げられる。
【0120】
幾つかの実施形態において、環状DNAベクターは、操作された細菌細胞の培養物中に維持され得るバックボーン配列による汚染を更に避けるのにゲル電気泳動によって精製される。幾つかの実施形態において、バックボーン配列による環状DNAベクターの検出可能な汚染を避けるのに精製は必要ない。
【0121】
幾つかの実施形態において、バックボーン配列又は何らかの他の染色体外DNA分子によって精製産物が汚染されることなく、環状DNAベクターを、本明細書に記載される操作された細菌細胞の培養物から精製することができる。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される操作された細菌細胞から精製された単離された環状DNAベクターの組成物には、バックボーン配列を含むDNAが10ng/ml未満、1ng/ml未満、0.1ng/ml未満、0.01ng/ml未満、0.001ng/ml未満、又は0.0001ng/ml未満含まれている。幾つかの実施形態において、バックボーン配列を含むDNAは、定量的PCRによって組成物中で検出不能である。幾つかの実施形態において、これらの純度レベルは、操作された細菌細胞から環状DNAベクターを単離した後にゲル精製工程又はカラム精製工程を実施することなく達成される。
【0122】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される環状DNAベクターを作製する方法は、米国食品医薬品局によって公布され、連邦規則集第21章第210条及び第211条に規定されている基準に従った現行の適正製造規範(GMP)に準拠しており、これらは引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。
【0123】
III.環状DNAベクター
本明細書において、本明細書に記載される生産方法のいずれかによって生産された環状DNAベクターが提供される。幾つかの場合においては、このような環状DNAベクターは、例えばAAVベクターと同様にして、エピソームとして細胞内(例えば、分裂中の細胞内、又は有糸分裂後の細胞等の静止細胞内)に残存する。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、環状DNAベクターは非組込みベクターであってよい。本明細書において提供される環状DNAベクターは、ウイルスベクター(例えば、ウイルスタンパク質)及び細菌性プラスミドDNAに固有の構成要素、例えば免疫原性構成要素(例えば、免疫原性細菌性シグネチャー(例えば、CpGアイランド又はCpGモチーフ))又は追加的な構成要素、又はその他に残存性の低下に関連する構成要素(例えば、CpGアイランド又はCpGモチーフ)がない裸のDNAベクターであり得る。本明細書に記載されるように生産される環状DNAベクターは、1つ以上の治療用配列を特徴とし、プラスミドバックボーンエレメント(例えば、薬物耐性遺伝子)を欠いている場合がある。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターは組換え部位を欠いている。幾つかの実施形態において、特に、組換えを使用してプラスミドバックボーン配列からベクター配列を除去する実施形態において、環状DNAベクターは組換え部位を含む。
【0124】
幾つかの実施形態において、上記ベクターは、DNAの少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は本質的に全て)が、免疫原性構成要素(例えば、免疫原性細菌性シグネチャー(例えば、CpGモチーフ))又は追加的な構成要素、又はその他に残存性の低下に関連する構成要素(例えば、CpGアイランド)等の細菌性プラスミドDNAの1つ以上のエレメントを欠いているDNAを含む。幾つかの実施形態において、DNAの少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は本質的に全て)はCpGメチル化を欠いている。幾つかの実施形態において、上記ベクターは、DNAの少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は本質的に全て)がDamメチル化及びDcmメチル化等の細菌性メチル化シグネチャーを欠いているDNAを含む。例えば、幾つかの実施形態において、上記ベクターは、GATC配列の少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は本質的に全て)が(例えば、Damメチラーゼにより)メチル化されていないDNAを含む。追加的に又は代替的に、上記ベクターは、CCAGG配列及び/又はCCTGG配列の少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は本質的に全て)が(例えば、Dcmメチラーゼにより)メチル化されていないDNAを含む。
【0125】
幾つかの実施形態において、環状DNAベクターはin vivoで残存性がある(例えば、環状DNAベクターは、参照ベクター、例えば、細菌内で生産された環状DNAベクター、又は本発明のベクター、例えば、プラスミドDNAには存在しない1つ以上の細菌性シグネチャーを有する環状DNAベクターと比べて、発現残存性(例えば、細胞内残存性及び/又は世代間残存性)及び/又は治療的残存性の改善を示す)。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターの発現残存性は、参照ベクターよりも5%~50%大きい、50%~100%大きい、1倍~5倍又は5倍~10倍(例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、又はそれ以上)大きい。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターの細胞内残存性は、参照ベクターよりも5%~50%大きい、50%~100%大きい、1倍~5倍又は5倍~10倍(例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、又はそれ以上)大きい。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターの世代間残存性は、参照ベクターよりも5%~50%大きい、50%~100%大きい、1倍~5倍又は5倍~10倍(例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、又はそれ以上)大きい。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターの治療的残存性は、参照ベクターよりも5%~50%大きい、50%~100%大きい、1倍~5倍又は5倍~10倍(例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、又はそれ以上)大きい。幾つかの実施形態において、参照ベクターは、(a)比較される環状DNAベクターと同じコーディング配列を有し、かつ(b)比較される環状DNAベクターには存在しない1つ以上の細菌性シグネチャーを有し、そのシグネチャーに、例えば、抗生物質耐性遺伝子又は他の選択可能なマーカーが含まれ得る環状ベクター又はプラスミドである。
【0126】
幾つかの実施形態において、環状DNAベクターの発現は、投与後1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、又はそれ以上にわたって残存する。特定の実施形態において、環状DNAベクターは、投与後1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、又はそれ以上の細胞内残存性及び/又は世代間残存性を示す。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターの治療的残存性は、投与後1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、又はそれ以上にわたって持続する。
【0127】
幾つかの実施形態において、環状DNAベクターの発現及び/又は治療効果は、1週間~4週間、1ヶ月~4ヶ月、又は4ヶ月~1年(例えば、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、又はそれ以上)にわたって残存する。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターの発現レベルは、トランスフェクション後1週間以上、例えば、2週間、3週間、5週間、7週間、9週間以上、13週間以上、18週間以上において、最初の1日以内、2日以内、又は3日以内に観察されたレベルから90%より多く、50%より多く、又は10%より多く減少しない。
【0128】
環状DNAベクターは、単量体、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体等であってよい。幾つかの好ましい実施形態において、環状DNAベクターは単量体である。幾つかの実施形態において、このDNAベクターはスーパーコイル状である。環状DNAベクターは、操作された細菌細胞内の内因性プロセス、又はトポイソメラーゼ(例えば、ジャイレース)での処理により、スーパーコイル状であってよい。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターは単量体スーパーコイル状の環状DNA分子である。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターにはニックが入っている。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターは開環状である。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターは二本鎖環状である。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターを含む組成物は、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.9%のスーパーコイル状単量体を含む。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターを含む組成物は、外因性トポイソメラーゼによる処理なしで、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.9%のスーパーコイル状単量体を含む。
【0129】
IV.治療用配列
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される環状DNAベクターのコーディング配列は、1つ以上のタンパク質コーディングドメイン及び/又は1つ以上の非タンパク質コーディングドメイン(例えば、治療用核酸)を含み得る治療用配列を含む。
【0130】
治療用タンパク質をコードする治療用ドメインを含む特定の実施形態において、治療用配列は、5’→3’方向に連結された、プロモーター及び単一の治療用タンパク質コーディングドメイン(例えば、単一の転写単位)、プロモーター及び2つ以上の治療用タンパク質コーディングドメイン(例えば、マルチシストロン性単位)、又は第1の転写単位及び1つ以上の追加の転写単位(例えば、多重転写単位)を含む。このようなタンパク質をコードする治療用配列はいずれも、ポリアデニル化部位、制御エレメント、エンハンサー、DNAを標識する配列(例えば、抗体認識用)、PCR増幅部位、制限酵素部位を規定する配列、部位特異的リコンビナーゼ認識部位、核酸に結合する及び/又は核酸を修飾するタンパク質によって認識される配列、リンカー、スプライス部位、プレmRNA結合ドメイン、制御配列、及び/又は治療用核酸(例えば、マイクロRNAをコードする配列)等の非タンパク質コーディングドメインを更に含んでいてよい。治療用タンパク質コーディングドメインは、全長タンパク質コードドメイン(例えば、本来の遺伝子又はその天然の変異体に対応する)、又は短縮されたタンパク質コードドメイン(例えば、ミニ遺伝子)等のその機能的部分であり得る。
【0131】
幾つかの実施形態において、治療用配列は、単量体タンパク質(例えば、生理学的条件下で二次構造を有する単量体タンパク質、例えば、生理学的条件下で二次構造及び三次構造を有する単量体タンパク質、例えば、生理学的条件下で二次構造、三次構造、及び四次構造を有する単量体タンパク質)をコードする。追加的に又は代替的に、治療用配列は、多量体タンパク質(例えば、二量体タンパク質(例えば、ホモ二量体タンパク質又はヘテロ二量体タンパク質)、三量体タンパク質等)をコードしてもよい。
【0132】
特定の場合においては、治療用配列としては、眼遺伝子が挙げられる。幾つかの実施形態において、眼遺伝子は、例えば光受容細胞及び/又は網膜色素上皮(RPE)細胞を含み得る、例えば網膜組織等の眼組織において発現される遺伝子である。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される発現コンストラクト内のコーディング配列はヒトABCA4遺伝子配列又はヒトMYO7A遺伝子配列である。例示的なヒトABCA4遺伝子配列は、アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)参照配列:NG_009073として提供されている。例示的なABCA4タンパク質のアミノ酸配列はタンパク質アクセッション番号P78363.3によって示されている。例示的なヒトMYO7A遺伝子配列はNCBI遺伝子ID:4647として提供されている。例示的なMYO7Aタンパク質のアミノ酸配列はタンパク質アクセッション番号Q13402によって示されている。
【0133】
幾つかの実施形態において、治療用配列は抗体、又はその部分、フラグメント、若しくは変異体をコードする。抗体には、Fv、単鎖Fv(scFv)、Fab、Fab’、ジ-scFv、sdAb(単一ドメイン抗体)、(Fab’)2(化学的に連結されたF(ab’)2を含む)、及びナノボディ等の抗原に結合することが可能なフラグメントが含まれる。抗体のパパイン消化により、それぞれ単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントと、その容易に結晶化する能力を反映した名称の残留「Fc」フラグメントとが生ずる。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができるF(ab’)2フラグメントが得られる。抗体にはキメラ抗体及びヒト化抗体も含まれる。さらに、本明細書において提供される全ての抗体コンストラクトについては、他の生物由来の配列を有する変異体も企図される。したがって、ヒト型の抗体が開示される場合、当業者は、ヒト配列ベースの抗体をマウス、ラット、ネコ、イヌ、ウマ等の配列に変換する方法を理解するであろう。抗体フラグメントには、単鎖scFv、タンデムジ-scFv、ダイアボディ、タンデムトリ-sdcFv、ミニボディ、ナノボディ等のいずれかの方向性も含まれる。幾つかの実施形態において、例えば抗体がscFvである場合、治療用遺伝子配列の単一のポリヌクレオチドは、重鎖及び軽鎖の両方が一緒に連結されたものを含む単一のポリペプチドをコードする。抗体フラグメントには、ナノボディ(例えば、sdAb、軽鎖を有しない重鎖の可変ドメインのペア等の単一の単量体ドメインを有する抗体)も含まれる。多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、三重特異性抗体等)は、当該技術分野において知られており、本発明の治療用遺伝子配列の発現産物として考慮される。
【0134】
幾つかの場合においては、治療用配列は、それぞれ少なくとも25アミノ酸、少なくとも50アミノ酸、少なくとも100アミノ酸、少なくとも200アミノ酸、少なくとも500アミノ酸、少なくとも1000アミノ酸、少なくとも1500アミノ酸、少なくとも2000アミノ酸、少なくとも2500アミノ酸、少なくとも3000アミノ酸、又はそれ以上(例えば、25アミノ酸~5000アミノ酸、50アミノ酸~5000アミノ酸、100アミノ酸~5000アミノ酸、200アミノ酸~5000アミノ酸、500アミノ酸~5000アミノ酸、1000アミノ酸~5000アミノ酸、1500アミノ酸~5000アミノ酸、又は2000アミノ酸~5000アミノ酸、例えば、25アミノ酸~4000アミノ酸、50アミノ酸~4000アミノ酸、100アミノ酸~4000アミノ酸、200アミノ酸~4000アミノ酸、500アミノ酸~4000アミノ酸、1000アミノ酸~4000アミノ酸、1500アミノ酸~4000アミノ酸、又は2000アミノ酸~4000アミノ酸、例えば、25アミノ酸~3000アミノ酸、50アミノ酸~3000アミノ酸、100アミノ酸~3000アミノ酸、200アミノ酸~3000アミノ酸、500アミノ酸~3000アミノ酸、1000アミノ酸~3000アミノ酸、1500アミノ酸~3000アミノ酸、又は2000アミノ酸~3000アミノ酸)の長さを有する1つ以上のタンパク質(例えば、単一のタンパク質、2つのタンパク質、3つのタンパク質、4つのタンパク質、又はそれ以上)をコードする。このような治療用配列が2つ以上のタンパク質をコードする実施形態において、治療用配列は、マルチシストロン性治療用配列又は多重転写単位治療用配列であり得る。このようなマルチシストロン性治療用配列は、例えば、本明細書の実施例7に記載されるFlt3L、IL-12、及びXCL1をコードするトリシストロン性カセットであってよい。
【0135】
タンパク質をコードしない治療用配列を含む実施形態において、治療用配列はタンパク質コードドメイン(例えば、治療用タンパク質コーディングドメイン)を欠いている。例えば、幾つかの実施形態において、治療用配列には、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)をコードする配列又は免疫活性化治療用核酸(例えば、TLRアゴニスト)等のタンパク質をコードしない治療用核酸が含まれる。
【0136】
幾つかの実施形態において、治療用配列又は他の対象配列(これは、発現又は残存性を測定するのに使用されるレポーター遺伝子等の非治療用コーディング配列を含み得る)は、0.1Kb~100Kbの長さである(例えば、この配列は、0.2Kb~90Kb、0.5Kb~80Kb、1.0Kb~70Kb、1.5Kb~60Kb、2.0Kb~50Kb、2.5Kb~45Kb、3.0Kb~40Kb、3.5Kb~35Kb、4.0Kb~30Kb、4.5Kb~25Kb、4.6Kb~24Kb、4.7Kb~23Kb、4.8Kb~22Kb、4.9Kb~21Kb、5.0Kb~20Kb、5.5Kb~18Kb、6.0Kb~17Kb、6.5Kb~16Kb、7.0Kb~15Kb、7.5Kb~14Kb、8.0Kb~13Kb、8.5Kb~12.5Kb、9.0Kb~12.0Kb、9.5Kb~11.5Kb、又は10.0Kb~11.0Kbの長さ、例えば、0.1Kb~0.5Kb、0.5Kb~1.0Kb、1.0Kb~2.5Kb、2.5Kb~4.5Kb、4.5Kb~8Kb、8Kb~10Kb、10Kb~15Kb、15Kb~20Kbの長さ又はそれ以上、例えば、0.1Kb~0.25Kb、0.25Kb~0.5Kb、0.5Kb~1.0Kb、1.0Kb~1.5Kb、1.5Kb~2.0Kb、2.0Kb~2.5Kb、2.5Kb~3.0Kb、3.0Kb~3.5Kb、3.5Kb~4.0Kb、4.0Kb~4.5Kb、4.5Kb~5.0Kb、5.0Kb~5.5Kb、5.5Kb~6.0Kb、6.0Kb~6.5Kb、6.5Kb~7.0Kb、7.0Kb~7.5Kb、7.5Kb~8.0Kb、8.0Kb~8.5Kb、8.5Kb~9.0Kb、9.0Kb~9.5Kb、9.5Kb~10Kb、10Kb~10.5Kb、10.5Kb~11Kb、11Kb~11.5Kb、11.5Kb~12Kb、12Kb~12.5Kb、12.5Kb~13Kb、13Kb~13.5Kb、13.5Kb~14Kb、14Kb~14.5Kb、14.5Kb~15Kb、15Kb~15.5Kb、15.5Kb~16Kb、16Kb~16.5Kb、16.5Kb~17Kb、17Kb~17.5Kb、17.5Kb~18Kb、18Kb~18.5Kb、18.5Kb~19Kb、19Kb~19.5Kb、19.5Kb~20Kb、20Kb~21Kb、21Kb~22Kb、22Kb~23Kb、23Kb~24Kb、24Kb~25Kbの長さ又はそれ以上、例えば、約4.5Kb、約5.0Kb、約5.5Kb、約6.0Kb、約6.5Kb、約7.0Kb、約7.5Kb、約8.0Kb、約8.5Kb、約9.0Kb、約9.5Kb、約10Kb、約11Kb、約12Kb、約13Kb、約14Kb、約15Kb、約16Kb、約17Kb、約18Kb、約19Kb、約20Kbの長さ又はそれ以上である)。幾つかの実施形態において、治療用配列は、少なくとも10Kb(例えば、10Kb~15Kb、15Kb~20Kb、又は20Kb~30Kb、例えば、10Kb~13Kb、10Kb~12Kb、又は10Kb~11Kb、例えば、10Kb~11Kb、11Kb~12Kb、12Kb~13Kb、13Kb~14Kb、又は14Kb~15Kb)である。幾つかの実施形態において、上記配列は、少なくとも1100bpの長さ(例えば、1100bp~10000bp、1100bp~8000bp、又は1100bp~5000bpの長さ)である。幾つかの実施形態において、上記配列は、少なくとも2500bpの長さ(例えば、2500bp~15000bp、2500bp~10000bp、又は2500bp~5000bpの長さ、例えば、2500bp~5000bp、5000bp~7500bp、7500bp~10000bp、10000bp~12500bp、又は12500bp~15000bp)である。幾つかの実施形態において、上記配列は、少なくとも8000bp、少なくとも9000bp、少なくとも10000bp、少なくとも11000bp、少なくとも12000bp、少なくとも13000bp、少なくとも14000bp、少なくとも15000bp、少なくとも16000bp(例えば、11000bp~16000bp、12000bp~16000bp、13000bp~16000bp、14000bp~16000bp、又は15000bp~16000bp)である。特定の実施形態において、上記配列は、タンパク質をコードするのに十分な大きさであり、オリゴヌクレオチド療法薬ではない(例えば、アンチセンス療法薬、siRNA療法薬、shRNA療法薬等ではない)。
【0137】
幾つかの実施形態において、治療用コーディング配列又は非治療用コーディング配列等の対象配列の3’末端は、50bp以下(例えば、3bp~34bp、4bp~20bp、5bp~12bp、又は6bp~10bp、例えば、3bp~5bp、4bp~6bp、8bp~12bp、12bp~18bp、18bp~24bp、24bp~30bp、30bp~35bp、又は35bp~40bp、例えば、3bp、4bp、5bp、6bp、7bp、8bp、10bp、15bp、20bp、25bp、30bp、31bp、32bp、33bp、34bp、35bp、36bp、37bp、38bp、39bp、40bp、41bp、42bp、43bp、44bp、45bp、46bp、47bp、48bp、49bp、又は50bp)の非細菌性配列(例えば、組換え部位、例えば組換えscar)によって環状DNAベクター内のori配列の5’末端に接続されている。
【0138】
幾つかの実施形態において、治療用コーディング配列又は非治療用コーディング配列等の対象配列の3’末端は、30bp以下(例えば、3bp~24bp、4bp~18bp、5bp~12bp、又は6bp~10bp、例えば、3bp~5bp、4bp~6bp、8bp~12bp、12bp~18bp、18bp~24bp、又は24bp~30bp、例えば、3bp、4bp、5bp、6bp、7bp、8bp、10bp、15bp、20bp、25bp、又は30bp)の非細菌性配列によって環状DNAベクター内のori配列の5’末端に接続されている。
【0139】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される環状DNAベクターに含まれる対象配列は、タンパク質をコードする治療用ドメイン又はタンパク質をコードしない治療用ドメインに加えて、レポーター配列を含む。幾つかの実施形態において、治療用配列はレポーター配列を欠いている。幾つかの実施形態において、対象配列はレポーター配列を含み、治療用配列を含まない。レポーター配列は、例えば、レポーター遺伝子であり得る。このようなレポーター遺伝子は、例えば特定の細胞及び組織における治療用遺伝子配列の発現を検証するのに有用であり得る。環状DNAベクターに提供され得るレポーター配列としては、限定されるものではないが、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、及び当該技術分野においてよく知られるその他のものをコードするDNA配列が挙げられる。レポーター配列は、その発現を駆動する制御エレメントと会合したとき、酵素アッセイ、放射線アッセイ、比色アッセイ、蛍光アッセイ、又はその他の分光アッセイ、蛍光活性化セルソーティングアッセイ、並びに酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫組織化学を含む免疫学的アッセイを含む従来の手段によって検出可能なシグナルをもたらす。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを媒介するベクターの存在がβ-ガラクトシダーゼ活性のアッセイによって検出される。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質又はルシフェラーゼである場合、シグナルを媒介するベクターをルミノメーターにおいて発色又は発光によって視覚的に測定することができる。
【0140】
治療用配列又はその他の対象配列の一部として、本発明の環状DNAベクターは、標的細胞における転写、翻訳、及び/又は発現を調節又は改善する従来の制御エレメントを含んでよい。適切な制御エレメントは国際公開第2021/055760号に記載されており、これは引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。
【0141】
幾つかの場合においては、自己複製RNA分子は、(i)レプリカーゼをコードする配列(例えば、自己複製RNA分子からRNAを転写することができるRNA依存性RNAポリメラーゼをコードするRNA配列)と、(ii)異種調節遺伝子とを含む。ポリメラーゼはアルファウイルスレプリカーゼ、例えば、アルファウイルス非構造タンパク質nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4の1つ、2つ、3つ、又は4つ全てを含むアルファウイルスレプリカーゼであり得る。幾つかの場合においては、ポリメラーゼはVEEレプリカーゼ、例えば、アルファウイルス非構造タンパク質nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4の1つ、2つ、3つ、又は4つ全てを含むVEEレプリカーゼである。
【0142】
本発明の幾つかの場合においては、自己複製RNA分子は、アルファウイルス構造タンパク質(例えば、カプシドタンパク質)をコードしない。このような自己複製RNAは、細胞内で自身のゲノムRNAコピーの生成につながり得るが、RNAを含むビリオンの生成にはつながり得ない。これらのビリオンを生成することができないということは、野生型のアルファウイルスとは異なり、自己複製するRNA分子が感染性形態でそれ自体存続することができないことを意味する。サブゲノム転写物がアルファウイルスビリオンの構造タンパク質ではなく、異種調節タンパク質(複数の場合もある)をコードするように、アルファウイルスの構造タンパク質を、対象の異種調節タンパク質(複数の場合もある)をコードする遺伝子(複数の場合もある)によって置き換えることができる。
【0143】
したがって、幾つかの場合においては、本発明の自己複製RNA分子は2つのオープンリーディングフレームを有し得る。第1(5’)のオープンリーディングフレームはレプリカーゼをコードし、第2(3’)のオープンリーディングフレームは1つ以上(例えば、2つ又は3つ)の治療用タンパク質をコードする。幾つかの実施形態において、このRNAは、例えば更なる遺伝子をコードするか、又は補助ポリペプチド(accessory polypeptides)をコードする追加の(例えば、下流の)オープンリーディングフレームを有してよい。
【0144】
適切な自己複製RNA分子は様々な長さを有し得る。本発明の幾つかの実施形態において、自己複製RNA分子の長さは5000ヌクレオチド~50000ヌクレオチド(すなわち、5kb~50kb)である。幾つかの場合において、自己複製RNA分子は、5kb~20kbの長さ(例えば、6kb~18kb、7kb~16kb、8kb~14kb、又は9kb~12kbの長さ、例えば、5kb~6kb、6kb~7kb、7kb~8kb、8kb~9kb、9kb~10kb、10kb~11kb、11kb~12kb、12kb~13kb、13kb~14kb、14kb~15kb、15kb~16kb、16kb~18kb、又は18kb~20kbの長さ、例えば、約5kb、約6kb、約7kb、約8kb、約9kb、約10kb、約10.5kb、約11kb、約11.5kb、約12kb、約12.5kb、約13kb、約14kb、約15kb、約16kb、約17kb、約18kb、約19kb、又は約20kbの長さ)である。
【0145】
自己複製RNA分子は3’ポリAテールを有してよい。さらに、自己複製RNA分子は、ポリAポリメラーゼ認識配列(例えば、AAUAAA)を含んでよい。
【0146】
特定の実施形態において、本発明によるRNAは、ルシフェラーゼ等のレポーター分子、又は緑色蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光タンパク質をコードしない。
【0147】
幾つかの実施形態において、自己複製RNAによってコードされるレプリカーゼは、本明細書に記載されるレプリカーゼのいずれかの変異体であり得る。幾つかの実施形態において、変異体は機能的断片(例えば、タンパク質と機能的に類似又は機能的に等価なタンパク質の断片)である。
【0148】
V.医薬組成物
効率の向上により、本発明の方法は、環状DNAベクターを含む医薬組成物の拡張可能な製造に特に適したものとなる。本明細書に記載される環状DNAベクターを生産する方法のいずれも、薬学的に許容可能な担体中に環状DNAベクターを含む医薬組成物の生産に適応させることができる。
【0149】
本明細書に記載される方法のいずれかの一部として、下流の精製プロセスを容易に適用することができる。例えば、様々なクロマトグラフィー工程が当該技術分野において知られており、これを細菌副産物、エンドトキシン、細菌人工染色体(BAC)、ヘルパープラスミド等の除去に適切に適応させることができる。幾つかの場合においては、細菌によって生産される環状DNAベクターの医薬組成物は、陰イオン交換クロマトグラフィー又は疎水性相互作用クロマトグラフィーによって精製される。
【0150】
幾つかの実施形態において、本発明の医薬製剤は、薬学的に許容可能な担体中に少なくとも1.0mg(例えば、1.0mg~10g、1.0mg~5.0g、1.0mg~1.0g、1.0mg~500mg、1.0mg~200mg、1.0mg~100mg、1.0mg~50mg、1.0mg~25mg、1.0mg~20mg、1.0mg~15mg、1.0mg~10mg、1.0mg~5.0mg、2.0mg~10g、2.0mg~5.0g、2.0mg~1.0g、2.0mg~500mg、2.0mg~200mg、2.0mg~100mg、2.0mg~50mg、2.0mg~25mg、2.0mg~20mg、2.0mg~15mg、2.0mg~10mg、2.0mg~5.0mg、5.0mg~10g、5.0mg~5.0g、5.0mg~1.0g、5.0mg~500mg、5.0mg~200mg、5.0mg~100mg、5.0mg~50mg、5.0mg~25mg、5.0mg~20mg、5.0mg~15mg、5.0mg~10mg、10mg~10g、10mg~5.0g、10mg~1.0g、10mg~500mg、10mg~200mg、10mg~100mg、10mg~50mg、10mg~25mg、10mg~20mg、又は10mg~15mg)の環状DNAベクターを含む。
【0151】
幾つかの実施形態において、本発明の医薬製剤は、薬学的に許容可能な担体中に少なくとも2.0mgの環状DNAベクターを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される方法のいずれかによって生産される医薬製剤は、薬学的に許容可能な担体中に少なくとも5.0mgの環状DNAベクターを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される方法のいずれかによって生産される医薬製剤は、薬学的に許容可能な担体中に少なくとも10.0mgの環状DNAベクターを含む。
【0152】
幾つかの実施形態において、本発明の医薬製剤には実質的に不純物が存在しない。例えば、幾つかの実施形態において、医薬製剤は、2.0%未満の質量基準のタンパク質含有量(例えば、1.9%未満、1.8%未満、1.7%未満、1.6%未満、1.5%未満、1.4%未満、1.3%未満、1.2%未満、1.1%未満、1.0%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.05%未満、又は0.01%未満の質量基準のタンパク質含有量)を含む。幾つかの場合においては、タンパク質含有量はビシンコニン酸アッセイによって決定される。追加的に又は代替的に、タンパク質含有量はELISAによって決定される。
【0153】
幾つかの場合においては、医薬製剤は、5.0%未満の質量基準のRNA含有量(例えば、4.5%未満、4.0%未満、3.5%未満、3.0%未満、2.5%未満、2.0%未満、1.9%未満、1.8%未満、1.7%未満、1.6%未満、1.5%未満、1.4%未満、1.3%未満、1.2%未満、1.1%未満、1.0%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.05%未満、又は0.01%未満の質量基準のRNA含有量)を含む。幾つかの実施形態において、RNA含有量はアガロースゲル電気泳動によって決定される。幾つかの実施形態において、RNA含有量は定量的PCRによって決定される。幾つかの実施形態において、RNA含有量は蛍光アッセイ(例えば、Ribogreen)によって決定される。
【0154】
幾つかの実施形態においては、医薬製剤は、5.0%未満の質量基準のgDNA含有量(例えば、4.5%未満、4.0%未満、3.5%未満、3.0%未満、2.5%未満、2.0%未満、1.9%未満、1.8%未満、1.7%未満、1.6%未満、1.5%未満、1.4%未満、1.3%未満、1.2%未満、1.1%未満、1.0%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.05%未満、又は0.01%未満の質量基準のgDNA含有量)を含む。幾つかの実施形態において、gDNA含有量はアガロースゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動によって決定される。幾つかの実施形態において、gDNA含有量は定量的PCRによって決定される。幾つかの実施形態において、gDNA含有量はサザンブロットによって決定される。
【0155】
幾つかの実施形態において、医薬製剤は40EU/mg未満のエンドトキシンを含む。幾つかの実施形態において、医薬製剤は20EU/mg未満のエンドトキシンを含む。幾つかの実施形態において、医薬製剤は10EU/mg未満のエンドトキシンを含む。幾つかの実施形態において、医薬製剤は、例えばカブトガニ血球抽出物(LAL)アッセイによって測定した場合に、5EU/mg未満のエンドトキシン(例えば、4EU/mg未満のエンドトキシン、3EU/mg未満のエンドトキシン、2EU/mg未満のエンドトキシン、1EU/mg未満のエンドトキシン、0.5EU/mg未満のエンドトキシン)を含む。
【0156】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される医薬組成物は、米国食品医薬品局によって公布され、連邦規則集第21章第210条及び第211条に規定されている基準に従った現行の適正製造規範(GMP)に準拠しており、これらは引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。
【0157】
本明細書において提供される医薬組成物は、治療される個体(例えば、ヒト患者)に対して無毒である賦形剤及び/又は安定剤等の1種以上の薬学的に許容可能な担体を、使用される投薬量及び濃度で含んでよい。幾つかの実施形態において、薬学的に許容可能な担体は水性pH緩衝溶液である。薬学的に許容可能な担体の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン若しくはリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む単糖、二糖、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール若しくはソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又はtween、ポリエチレングリコール(PEG)、及びpluronic等の非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0158】
医薬組成物を液体形態で提供する場合、薬学的に許容可能な担体は、水(例えば、パイロジェンフリー水)、等張食塩水、又は緩衝水溶液、例えば、リン酸緩衝溶液又はクエン酸緩衝溶液であり得る。医薬組成物の注射は、水、又は例えば、ナトリウム塩(例えば、少なくとも50mMのナトリウム塩)、カルシウム塩(例えば、少なくとも0.01mMのカルシウム塩)、若しくはカリウム塩(例えば、少なくとも3mMのカリウム塩)を含有する水性緩衝液等の緩衝液中で行うことができる。特定の実施形態によると、ナトリウム塩、カルシウム塩、又はカリウム塩は、それらのハロゲン化物、例えば、塩化物、ヨウ化物、又は臭化物の形態、それらの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、又は硫酸塩等の形態で生じ得る。限定されるものではないが、ナトリウム塩の例としては、NaCl、NaI、NaBr、NaCO、NaHCO、及びNaSOが挙げられる。カリウム塩の例としては、例えば、KCl、KI、KBr、KCO、KHCO、及びKSOが挙げられる。カルシウム塩の例としては、例えば、CaCl、CaI、CaBr、CaCO、CaSO、及びCa(OH)が挙げられる。さらに、上述のカチオンの有機アニオンが緩衝液中に含有されていてもよい。特定の実施形態によると、上で定義された注射目的に適した緩衝液は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl)又は塩化カリウム(KCl)から選択される塩を含有していてもよく、更なるアニオンが存在していてもよい。CaClをKCl等の別の塩に置き換えることもできる。幾つかの実施形態において、注射緩衝液中の塩は、少なくとも50mMの塩化ナトリウム(NaCl)、少なくとも3mMの塩化カリウム(KCl)、及び少なくとも0.01mMの塩化カルシウム(CaCl)の濃度で存在する。注射緩衝液は、特定の参照媒体を基準にして高張、等張、又は低張であってもよく、すなわち、緩衝液は、特定の参照媒体を基準にして、より高い、同一の又はより低い塩含有量を有していてもよく、好ましくは、浸透圧又は他の濃度効果による細胞の損傷を引き起こさない濃度の上述の塩が使用され得る。参照媒体は、血液、リンパ液、細胞質液、他の体液、又は一般的な緩衝液等の液体であり得る。かかる一般的な緩衝液又は液体は、当業者に既知である。乳酸リンゲル液が、液体基剤として特に好ましい。
【0159】
1つ以上の適合性の固体又は液体の充填剤、希釈剤、又は封入化合物が個体(person)への投与に適し得る。本発明による医薬組成物の構成成分は、典型的な使用条件下で本発明による(医薬)組成物の薬学的有効性を大幅に低下させる相互作用が生じないような方法で、本明細書において定義される本発明による核酸ベクターと混合することが可能である。薬学的に許容可能な担体、充填剤及び希釈剤は、治療される個体への投与に適したものとなるように、十分に高い純度及び十分に低い毒性を有し得る。薬学的に許容可能な担体、充填剤、又はその構成成分として使用することができる化合物の幾つかの例は、ラクトース、グルコース、トレハロース、及びスクロース等の糖;トウモロコシデンプン若しくはジャガイモデンプン等のデンプン;デキストロース;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース及びその誘導体;トラガント末;麦芽;ゼラチン;獣脂;ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム等の固体流動促進剤;硫酸カルシウム;ラッカセイ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びカカオ由来の油等の植物油;ポリプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコール等のポリオール;又はアルギン酸である。
【0160】
薬学的に許容可能な担体の選択は、医薬組成物を投与する方法に応じて決定することができる。
【0161】
注射に適した単位投与形態としては、水、生理食塩水、及びそれらの混合物の滅菌溶液が挙げられる。かかる溶液のpHは、約7.4に調整することができる。注射に適した担体としては、ヒドロゲル、制御放出又は遅延放出のためのデバイス、ポリ乳酸、及びコラーゲンマトリックスが挙げられる。局所適用に適した薬学的に許容可能な担体には、ローション、クリーム、ゲル等への使用に適したものが含まれる。医薬組成物を経口投与する場合、錠剤、カプセル等が好ましい単位投与形態である。
【0162】
医薬組成物に含まれ得る更なる添加剤は、tween等の乳化剤、ラウリル硫酸ナトリウム等の湿潤剤、着色剤、医薬担体、安定剤、酸化防止剤、及び防腐剤である。
【0163】
本発明による医薬組成物は、液体で、又は乾燥(例えば、凍結乾燥)形態で提供され得る。特定の実施形態において、医薬組成物の核酸ベクターは、凍結乾燥形態で提供される。本発明の核酸ベクターを含む凍結乾燥組成物は、投与前に、有利には水性担体をベースとする好適な緩衝液、例えば、乳酸リンゲル液、リンゲル液、又はリン酸緩衝溶液中で再構成することができる。
【0164】
本発明の或る特定の実施形態において、本発明の環状DNAベクターのいずれかを、1つ以上のカチオン性若しくはポリカチオン性の化合物、例えば、カチオン性若しくはポリカチオン性のポリマー、カチオン性若しくはポリカチオン性のペプチド若しくはタンパク質、例えば、プロタミン、カチオン性若しくはポリカチオン性の多糖、及び/又はカチオン性若しくはポリカチオン性の脂質と複合体形成させることができる。
【0165】
特定の実施形態によると、本発明の環状DNAベクターを脂質と複合体形成させて、1つ以上のリポソーム、リポプレックス、又は脂質ナノ粒子を形成することができる。したがって、一実施形態において、医薬組成物は、環状DNAベクターを含むリポソーム、リポプレックス、及び/又は脂質ナノ粒子を含む。
【0166】
脂質ベースの製剤は、その生体適合性及びその大規模生産の容易さから、核酸ベクターの効果的な送達系であり得る。カチオン性脂質は、核酸の送達のための合成材料として広く研究されている。混合後に、核酸がカチオン性脂質によって縮合され、リポプレックスとして知られる脂質/核酸複合体が形成される。これらの脂質複合体は、ヌクレアーゼの作用から遺伝物質を保護し、負に帯電した細胞膜と相互作用することによって遺伝物質を細胞内に送達することができる。リポプレックスは、正に帯電した脂質と負に帯電した核酸とを生理的pHで直接混合することによって作製することができる。
【0167】
従来のリポソームは、カチオン性、アニオン性、又は中性のリン脂質とコレステロールとで構成され得る脂質二重層を含み、脂質二重層が水性コアを取り囲む。脂質二重層及び水性空間はどちらも、それぞれ疎水性又は親水性の化合物を組み込むことができる。リポソームの特性及びin vivoでの挙動は、親水性ポリマーコーティング、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)をリポソーム表面に付加して、立体安定化をもたらすことによって変更することができる。さらに、リポソームは、リガンド(例えば、抗体、ペプチド、及び炭水化物)を、その表面に又は付着させるPEG鎖の末端に付着させることによって特異的標的化に使用することができる。
【0168】
リポソームは、水性コンパートメントを取り囲むリン脂質二重層で構成されたコロイド状の脂質ベース及び界面活性剤ベースの送達系である。リポソームは、球形の小胞として存在することができ、サイズは20nm~数ミクロンの範囲であり得る。カチオン性脂質ベースのリポソームは、負に帯電した核酸と静電相互作用によって複合体形成させることができ、in vivo臨床用途に必要とされる生体適合性、低毒性、及び大規模生産の可能性をもたらす複合体を生じる。リポソームは、取込みのために原形質膜と融合することができる。細胞内に入ると、リポソームがエンドサイトーシス経路によってプロセシングされ、遺伝物質が続いてエンドソーム/担体から細胞質へと放出される。
【0169】
カチオン性リポソームは、環状DNAベクターの送達系として機能することができる。MAP、(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)及びDOTMA(N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチル-アンモニウムメチルスルフェート)等のカチオン性脂質は、負に帯電した核酸と静電相互作用によって複合体又はリポプレックスを形成して、ナノ粒子を形成することができ、高いin vitroトランスフェクション効率をもたらす。さらに、核酸ベクター送達のための中性脂質ベースのナノリポソーム、例えば、中性1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)ベースのナノリポソームが利用可能である。
【0170】
このため、本発明の一実施形態において、環状DNAベクターをカチオン性脂質及び/又は中性脂質と複合体形成させ、それにより、本医薬組成物において、リポソーム、脂質ナノ粒子、リポプレックス又は中性脂質ベースのナノリポソームを形成する。
【0171】
特定の実施形態において、医薬組成物は、カチオン性若しくはポリカチオン性の化合物、及び/又はポリマー担体とともに配合される本発明の環状DNAベクターを含む。したがって、本発明の更なる実施形態において、本明細書において定義される環状DNAベクターは、任意に約5:1(w/w)~約0.25:1(w/w)、例えば、約5:1(w/w)~約0.5:1(w/w)、例えば、約4:1(w/w)~約1:1(w/w)若しくは約3:1(w/w)~約1:1(w/w)、例えば、約3:1(w/w)~約2:1(w/w)の範囲から選択される核酸ベクターとカチオン性若しくはポリカチオン性の化合物及び/又はポリマー担体との重量比で、又は任意に約0.1~10の範囲、例えば、約0.3~4若しくは0.3~1の範囲、例えば、約0.5~1若しくは0.7~1の範囲、例えば、約0.3~0.9若しくは0.5~0.9の範囲の核酸ベクターとカチオン性若しくはポリカチオン性の化合物及び/又はポリマー担体との窒素/リン酸(N/P)比で、カチオン性若しくはポリカチオン性の化合物又はポリマー担体と会合又は複合体形成させる。例えば、環状DNAベクターと1つ以上のポリカチオンとのN/P比は、約0.3~4、約0.5~2、約0.7~2及び約0.7~1.5の範囲を含む約0.1~10の範囲である。
【0172】
本明細書に記載される核酸ベクターは、トランスフェクション効率及び/又は本発明による調節遺伝子の発現を増加させるためのビヒクル、トランスフェクション剤又は複合体形成剤と会合させることもできる。
【0173】
幾つかの例において、本発明による環状DNAベクターを1つ以上のポリカチオン、好ましくはプロタミン又はオリゴフェクタミンと複合体形成させる。トランスフェクション剤又は複合体形成剤として使用され得る更なるカチオン性又はポリカチオン性の化合物としては、カチオン性多糖、例えばキトサン、ポリブレン、カチオン性ポリマー、例えばポリエチレンイミン(PEI)、カチオン性脂質、例えばDOTMA:[1-(2,3-)プロピル)]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、DMRIE、ジ-C14-アミジン、DOTIM、SAINT、DC-Chol、BGTC、CTAP、DOPE、LEAP、DOPE:ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、DOSPA、DODAB、DOIC、DMEPC、DOGS:ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン、DIMRI:ジミリストオキシプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、MAP:ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン、DC-6-14:O,O-ジテトラデカノイル-N-(α-トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミンクロリド、CLIP1:rac-[(2,3-ジオクタデシルオキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)]-ジメチルアンモニウムクロリド、CLIP6:rac-[2(2,3-ジヘキサデシルオキシプロピル-オキシメチルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム、CLIP9:rac-[2(2,3-ジヘキサデシルオキシプロピル-オキシスクシニルオキシ)エチル]-トリメチルアンモニウム、オリゴフェクタミン、又はカチオン性若しくはポリカチオン性のポリマー、例えば修飾ポリアミノ酸、例えばβ-アミノ酸ポリマー若しくは逆ポリアミド等、修飾ポリエチレン、例えばPVP(ポリ(N-エチル-4-ビニルピリジニウムブロミド))等、修飾アクリレート、例えばpDMAEMA(ポリ(ジメチルアミノエチルメチルアクリレート))等、修飾アミドアミン、例えばpAMAM(ポリ(アミドアミン))等、修飾ポリβ-アミノエステル(PBAE)、例えばジアミン末端修飾1,4-ブタンジオールジアクリレート-co-5-アミノ-1-ペンタノールポリマー等、デンドリマー、例えばポリプロピルアミンデンドリマー若しくはpAMAMベースのデンドリマー等、ポリイミン(類)、例えばPEI:ポリ(エチレンイミン)、ポリ(プロピレンイミン)等、ポリアリルアミン、糖骨格ベースのポリマー、例えばシクロデキストリンベースのポリマー、デキストランベースのポリマー、キトサン等、シラン骨格ベースのポリマー、例えばPMOXA-PDMSコポリマー等、1つ以上のカチオン性ブロック(例えば上述のようなカチオン性ポリマーから選択される)と1つ以上の親水性若しくは疎水性のブロック(例えばポリエチレングリコール)との組合せからなるブロックポリマー等を挙げることができる。
【0174】
特定の実施形態によると、医薬組成物は、ポリマー担体内に封入されるか、又はポリマー担体に付着した環状DNAベクターを含む。本発明に従って使用されるポリマー担体は、ジスルフィド架橋カチオン性構成要素によって形成されたポリマー担体であり得る。ジスルフィド架橋カチオン性構成要素は、互いに同じであっても、又は異なっていてもよい。ポリマー担体は、更なる構成要素を含有することもできる。本発明に従って使用されるポリマー担体が、本明細書に記載されるようにジスルフィド結合によって架橋された、カチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマー、及び任意に本明細書において定義される更なる構成要素の混合物を含むことも特に好ましい。この文脈において、国際公開第2012/013326号の開示が引用することにより本明細書の一部をなす。この文脈において、ジスルフィド架橋によってポリマー担体の基礎を形成するカチオン性構成要素は、通例、この目的に適した任意の好適なカチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマー、特に本明細書において定義される核酸ベクター又は組成物に含まれる更なる核酸と複合体形成し、それにより好ましくは核酸ベクターを縮合させることが可能な任意のカチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマーから選択される。カチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマーは、直鎖状分子であってもよいが、分岐したカチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマーを使用することもできる。
【0175】
医薬組成物の一部として含まれる、本発明による環状DNAベクターを複合体形成させるために使用され得る、ポリマー担体の全てのジスルフィド架橋のカチオン性又はポリカチオン性のタンパク質、ペプチド又はポリマーは、本明細書において言及されるようなポリマー担体のカチオン性構成要素としての少なくとも1つの更なるカチオン性又はポリカチオン性のタンパク質、ペプチド又はポリマーとの縮合の際にジスルフィド結合を形成することが可能な少なくとも1つのSH部分(例えば、少なくとも1つのシステイン残基、又はSH部分を示す任意の更なる化学基)を含み得る。
【0176】
本発明の環状DNAベクターを複合体形成させるために使用される、かかるポリマー担体は、ジスルフィド架橋カチオン性(又はポリカチオン性)構成要素によって形成され得る。特に、少なくとも1つのSH部分を含むか、又は少なくとも1つのSH部分を含むように付加的に修飾されたポリマー担体のかかるカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質又はポリマーは、複合体形成剤としてタンパク質、ペプチド、及びポリマーから選択することができる。
【0177】
他の実施形態において、本発明による環状DNAベクターは、任意の更なるビヒクル、トランスフェクション剤、又は複合体形成剤と会合させることなく、好適な緩衝液中に裸で投与され得る。
【0178】
VI.使用方法
本明細書において、本明細書に記載される環状DNAベクター又はその医薬組成物のいずれかを被験体に投与することによって、誘導を必要とする被験体における対象配列(例えば、治療用配列)の発現(例えば、残存性発現)を誘導する方法(例えば、遺伝子療法レジメンの一部として)が提供される。サザンブロッティング又はPCR分析等により宿主細胞の核酸配列(例えば、RNA配列、例えば、mRNA配列)を調べることによって、被験体の標的細胞又は標的組織を特徴付けて、送達された治療用配列の存在(例えば、残存性)を検出又は定量化することができる。代替的に、治療用配列の送達によって治療される疾患(例えば、治療用配列によって標的とされる欠陥又は突然変異に関連する)の進行をモニタリングすることによって、被験体における治療用配列の発現を(例えば、定量的又は定性的に)特徴付けることができる。幾つかの実施形態において、治療用配列の転写又は発現(例えば、残存性転写又は残存性発現)は、疾患に関連する1つ以上の症状の減少を観察することによって確認される。
【0179】
したがって、本発明の実施形態には、本明細書に記載される環状DNAベクター又はその医薬組成物のいずれかを被験体に投与することによって、被験体における疾患を治療する方法が含まれる。本明細書に記載される環状DNAベクター又はその医薬組成物のいずれかを、1μg~10mgのDNA(例えば、5μg~5.0mg、10μg~2.0mg、又は100μg~1.0mgのDNA、例えば、10μg~20μg、20μg~30μg、30μg~40μg、40μg~50μg、50μg~75μg、75μg~100μg、100μg~200μg、200μg~300μg、300μg~400μg、400μg~500μg、500μg~1.0mg、1.0mg~5.0mg、又は5.0mg~10mgのDNA、例えば、約10μg、約20μg、約30μg、約40μg、約50μg、約60μg、約70μg、約80μg、約90μg、約100μg、約150μg、約200μg、約250μg、約300μg、約350μg、約400μg、約450μg、約500μg、約600μg、約700μg、約750μg、約1.0mg、約2.0mg、約2.5mg、約5.0mg、約7.5mg、又は約10mgのDNA)の投薬量において被験体に投与することができる。
【0180】
幾つかの実施形態において、環状DNAベクター又はその医薬組成物の投与は、他の遺伝子療法ベクター(例えば、プラスミドDNAベクター及びウイルスベクター)の投与と比較して、被験体における免疫応答を誘導する可能性が低い。
【0181】
幾つかの場合においては、本明細書において提供される環状DNAベクター及びその医薬組成物は、免疫応答を惹起することなく、又は上記で論じたプラスミドDNAベクター若しくはAAVベクター等の参照ベクターと比べて免疫応答の低下を誘導することなく、標的細胞をトランスフェクションすることができるため、繰り返し投与するのに適している。したがって、本発明は、本明細書に記載される環状DNAベクター及び医薬組成物を繰り返し投与する方法を提供する。上述の投与量のいずれかを適切な頻度及び期間で繰り返すことができる。幾つかの実施形態において、被験体は、1日当たり約2回、1日当たり約1回、1週間当たり約5回、1週間当たり約4回、1週間当たり約3回、1週間当たり約2回、1週間当たり約1回、1ヶ月当たり約2回、1ヶ月当たり約1回、6週間に約1回、2ヶ月に約1回、3ヶ月に約1回、4ヶ月に約1回、1年当たり2回、1年に1回、又はより少ない頻度で投与を受ける。幾つかの実施形態において、投与回数及び投与頻度は標的細胞のターンオーバー速度に対応する。本明細書に記載されるベクターを使用してトランスフェクションされた長寿命の有糸分裂後標的細胞においては、標的細胞内での異種遺伝子の発現を相当な期間にわたって維持するのにベクターの単回投与で十分であることが理解されるであろう。したがって、他の実施形態において、本明細書において提供される環状DNAベクターは単回投与で被験体に投与され得る。環状DNAベクターが被験体に送達される回数は、臨床的(例えば、治療的)便益を維持するのに必要とされる回数であり得る。
【0182】
本発明の方法は、あらゆる適切な経路による環状DNAベクター又はその医薬組成物の投与を含む。環状DNAベクター又はその医薬組成物を、全身的又は局部的に、例えば、静脈内で、眼内で(例えば、硝子体内で(例えば、硝子体内注射による)、網膜下で、点眼により、眼内で、眼窩内で)、筋肉内で、皮内で、肝臓内で、脳内で、筋肉内で、経皮で、動脈内で、腹腔内で、病変内で、頭蓋内で、関節内で、前立腺内で、胸膜腔内で、気管内で、髄腔内で、鼻腔内で、膣内で、直腸内で、腫瘍内で、皮下で、結膜下で、膀胱内で、粘膜内で、心膜内で、臍帯内で、経口で、局所的で、経真皮で、吸入により、エアロゾル化により、注射により(例えば、ジェット注射により)、エレクトロポレーションにより、移植により、注入により(例えば、持続注入により)、標的細胞を直接浸す局部灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリーム剤において、又は脂質組成物において投与することができる。
【0183】
本明細書に記載される環状DNAベクターを、in vivoエレクトロトランスファー(例えば、in vivoエレクトロポレーション)によって細胞内に送達することができる。in vivoエレクトロポレーションは、皮膚、骨格筋、或る特定の腫瘍型、及び肺上皮等の或る特定の組織において実証されている。in vivoエレクトロポレーションによる細胞への裸のDNAの送達は、DNAを標的組織に投与した後に電界を印加して、孔を生成することにより組織内の細胞膜透過性を一時的に高め、DNA分子が細胞膜を通過することができるようにすることを含む。一例として、in vivoエレクトロポレーションを使用した皮膚への送達は、Cha & Daud Hum. Vaccin. Immunother. 2012, 8(11):1734-1738に記載されており、これは引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。骨格筋のin vivoエレクトロポレーションは、Sokolowska & Blachnio-Zabielska , Int. J. Molecular Sci. 2019, 20:2776に記載されており、これは引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。in vivoエレクトロポレーションを使用した腫瘍内送達は、Aung et al. Gene Therapy 2009, 16:830-839に記載されており、これは引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。肺細胞内へのDNAのin vivoエレクトロポレーションは、Pringle et al. J. Gene Med. 2007, 9:369-380に記載されており、これは引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。眼球内の細胞(例えば、網膜細胞及び/又は光受容細胞)への環状DNAベクターのin vivoエレクトロトランスファーは、国際公開第2022/198138号の国際特許公報に記載されており、これは引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。幾つかの場合においては、環状DNAベクターを眼に投与した後、眼の内部(例えば、網膜から約1mm以内)に電極を配置し、環状DNAベクターを標的細胞にエレクトロトランスファーするのに適した条件で(例えば、それぞれ10V~100Vの6回~10回のパルスを印加することによって)電極を介して標的眼組織内に電界を伝えることができる。哺乳動物組織において電界を伝えるのに適した電極を備えた装置及びシステムは市販されており、本明細書に開示される方法において有用であり得る。幾つかの場合においては、電界はニードル(例えば、硝子体液内又は網膜下腔内に配置されたニードル)を備える電極を介して伝えられる。適切なニードル電極としては、IGEA(商標)により販売されるCLINIPORATOR(商標)電極及びAMBU(商標)により販売されるニードル電極が挙げられる。本発明の方法は、本明細書に記載される環状DNAベクターのいずれか、又はその医薬組成物を、in vivoエレクトロトランスファーを介して皮膚、骨格筋、腫瘍(例えば、黒色腫を含む)、眼、及び肺に投与することを含む。
【0184】
追加的に又は代替的に、環状DNAベクター又はその医薬組成物を、個々の患者から外植された(又はその他に、例えば分化の誘導から得られた)細胞等によってex vivoで宿主細胞に投与し、続いて、例えばベクターが導入された細胞を選択した後、宿主細胞を患者に再移植することができる。したがって、幾つかの態様において、本開示は、疾患を治療するトランスフェクションされた宿主細胞及びその投与方法を提供する。
【0185】
追加的に又は代替的に、本発明には、本発明の単離されたDNAベクター(又はその組成物)を被験体に投与することによって、疾患又は障害を患う被験体を治療する方法が含まれる。
【0186】
本明細書に記載される環状DNAベクターのいずれかのトランスフェクション効率の評価を、当該技術分野において知られる又は本明細書に記載されるあらゆる方法を使用して実施することができる。トランスフェクションされた細胞の分離を標準的な技術に従って実施することもできる。例えば、治療用遺伝子を含む細胞は、異種遺伝子を含む細胞(単数又は複数)の特定及び分離を助ける異種遺伝子の配列によってコードされる蛍光タンパク質(例えば、GFP)又は他のレポータータンパク質等の可視マーカーを発現することができる。サザンブロッティング又はPCR分析等により宿主細胞の核酸配列(例えば、RNA配列、例えば、mRNA配列)を調べることによって、治療用遺伝子を含む細胞を特徴付けて、ベクターに含まれる異種遺伝子の存在についてアッセイすることもできる。
【0187】
したがって、本発明の方法は、本明細書に記載される遺伝子をコードする環状DNAベクターのいずれかを被験体に投与した後、引き続き、被験体における遺伝子の発現を検出することを含む。発現を、投与から1週間後~4週間後、投与から1ヶ月後~4ヶ月後、投与から4ヶ月後~1年後、投与から1年後~5年後、又は投与から5年後~20年後(例えば、投与から少なくとも1週間後、少なくとも2週間後、少なくとも1ヶ月後、少なくとも4ヶ月後、少なくとも1年後、少なくとも2年後、少なくとも5年後、少なくとも10年後)に検出することができる。これらの検出時点のいずれにおいても、環状DNAベクターの残存性(例えば、エピソーム残存性)が観察され得る。幾つかの実施形態において、環状DNAベクターの残存性は、参照ベクター(例えば、細菌において生産された環状ベクター、又は本発明のベクターには存在しない1つ以上の細菌性シグネチャーを有する環状ベクター)よりも5%~50%大きい、50%~100%大きい、1倍~5倍又は5倍~10倍(例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、又はそれ以上)大きい。
【0188】
VII.キット及び製造品
本発明の別の態様において、環状DNAベクターのいずれか又はその医薬組成物を含む製造品又はキットが本明細書に記載されている。製造品には、容器と、容器上の又は容器に付属したラベル又は添付文書とが含まれる。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、注射器、静注液バッグ等が挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチック等の様々な材料から形成され得る。容器は、組成物を単独で又は病態の治療、予防、及び/又は診断に有効な別の組成物と組み合わせて収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は静注液バッグ又は皮下注射針によって穿孔可能な栓を有するバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1種の活性作用物質は、本発明の環状DNAベクター、又は環状DNAベクターを含む医薬組成物である。ラベル又は添付文書は、組成物がその内容物で治療可能な病態の治療に使用されることを示す。さらに、製造品は、(a)環状DNAベクター又はその医薬組成物を含む組成物が中に収容された第1の容器と、(b)追加の療法剤を含む組成物が中に収容された第2の容器とを含む。製造品は、組成物を使用して特定の病態を治療することができることを示す添付文書を更に含んでいてもよい。代替的に又は追加的に、製造品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液等の薬学的に許容可能な担体又は上記に開示される薬学的に許容可能な担体のいずれかを収容する第2(又は第3)の容器を更に含んでいてもよい。製造品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、注射器又は他の送達デバイスを含む、商業的な観点及び利用者の観点から望ましい他の材料を更に含んでいてもよい。
【実施例
【0189】
実施例1.ColE2-P9複製起点は安定したプラスミド維持をもたらす
プラスミド内に配置されたColE2-P9複製起点(ori)がE.コリにおいてプラスミドの安定した維持をもたらすかどうかを試験するのに、oriの3つの別形(配列番号2~配列番号4)のうちの1つ、R6K起点、及びカルベニシリン耐性マーカーを含むプラスミドを構築し、pir細胞において調製した。プラスミドをS1037へと形質転換し、カルベニシリンが補充されたLB寒天プレート上で選択した。各プレートからのコロニーを、抗生物質を含まないLB中で37℃にて培養した。一晩培養物を、抗生物質を含まない新しいLB中で1000倍希釈し、37℃で培養した。5回の継代後、各一晩培養物を、抗生物質を含まないLB寒天プレート上に再画線し、37℃で一晩成長させた。各プレートから、20個のコロニーを、カルベニシリンを含むLB寒天プレート上又は含まないLB寒天プレート上にプレーティングした。合計6日後(その間に推定210回以上の集団倍化が起こった)、全ての起源変異体についてのコロニーサイズは正常であり、3つの全ての起源変異体についての20個のコロニー全てにおいてプラスミドが検出された(図1)。これらの結果は、40bpの複製起点により、E.コリにおいて多くの集団倍化にわたってプラスミドを安定した状態に保つことができることを示している。
【0190】
実施例2.環状DNAベクターの生産用の親プラスミドの生産
図2は、本明細書に開示される実施形態に従って環状DNAベクターを生産するのに使用することができる親プラスミドの生産プロセスの一例を示している。転写単位の個々の構成要素をゴールデンゲートアセンブリによってアセンブリして、転写単位とする。次いで、転写単位をゴールデンゲートアセンブリによってアセンブリして、親プラスミドとする。この実施例において、親プラスミドはLoxP組換え部位配列を含み、これはベクター配列(ori及びMYO7A遺伝子を含むセグメント)を両側で挟んでおり、かつベクター配列をバックボーン配列(SpecR遺伝子、KanR遺伝子、及びRFP遺伝子を含むセグメント)から分離する。
【0191】
実施例3.親プラスミドからの環状DNAベクターのin vivo生産
図3は、環状DNAベクターをin vivo生産する実験プロセスを示している。ゴールデンゲートアセンブリ法を使用して、LoxP組換え部位によって両側で挟まれたベクター配列を含む試験親プラスミドを生産する。試験親プラスミドの試験ベクター配列は、ColE2-P9 ori配列とレポーター遺伝子(sfGFP)とを含む。実験の目的上、試験ベクター配列はまたクロラムフェニコール耐性遺伝子(CmR)を含むが、本明細書に記載される環状DNAベクターの実施形態は抗生物質耐性遺伝子を欠いている。試験親プラスミドはまた、抗生物質耐性遺伝子のSpecR及びKanRとレポーター遺伝子(RFP)とを含む試験バックボーン配列を含む。試験親プラスミドを、ゲノム内に組み込まれた構成的プロモーター(J23119)の制御下のColE2-P9 Rep遺伝子を有する操作されたE.コリ細胞へと形質転換した。試験ベクター配列を両側で挟んでいるLoxP部位の代わりに、試験ベクター配列を両側で挟んでいる2つのI-PpoI制限部位、2つのI-SceI制限部位、2つのPI-SceI制限部位、2つのI-CeuI制限部位、又は1つのPI-PspI制限部位及び1つのSceI制限部位を有する更なる型の試験親プラスミドを作製した。LoxP部位を有する試験親プラスミドをp1603と呼び、2つのPI-SceI制限部位を有する試験親プラスミドをp1600と呼ぶ。
【0192】
親試験プラスミドを有する細菌コロニーは、RFP蛍光が陽性であることによって特定された。Creリコンビナーゼを、p1603を有する細胞内にエレクトロポレーションして、LoxP部位での組換えを誘導し、試験環状DNAベクターを生産した。Creエレクトロポレーションについての手順は次の通りであった。親プラスミドを有する操作されたエレクトロコンピテントなE.コリを、SOB中で30℃にて0.8のODまで培養した。E.コリを氷冷した10%のグリセロールで3回洗浄し、10%のグリセロール中に再懸濁した。1μlのCre(15単位、NEB、M0298M)を50μlのエレクトロコンピテントな細胞と混合した。混合物をキュベット(1mmギャップ)に移し、エレクトロポレーター(BTX)を使用して1800ボルトの設定を用いてエレクトロポレーションした。細胞をSOC中で37℃にて1時間成長させることによってレスキューし、抗生物質を含まないLB寒天プレート上にプレーティングした。コロニーを成長させ、QIAGENのミニプレップキットを使用してDNAを精製した。エレクトロポレーションした細胞を、抗生物質を含まないLBプレート上に塗抹した。LBプレート上のGFP陽性のコロニーを、カナマイシン(Kan)及びスペクチノマイシン(Spec)を含むLB上に画線し、試験バックボーン配列の喪失(Kan/Spec感受性コロニー)について試験した。
【0193】
図4は、個々のコロニーの培養物から精製されたゲノム外DNAのアガロースゲル電気泳動を示しており、(1)試験環状DNAベクターがp1603を有する細胞のCreエレクトロポレーションによって生産されたこと、及び(2)試験環状DNAベクターが選択圧の不存在下で細胞内に維持されたことを示している。レーン2、レーン3、及びレーン5は、Creエレクトロポレーション後にGFP陽性かつKan/Spec感受性であり、かつクロラムフェニコールを欠いた富栄養培地中で成長させたp1603形質転換細胞に由来するゲノム外DNAを示している。これらのレーンにおけるバンドは、試験環状DNAベクターに予想されるサイズであるおよそ1500bpに向かって流れることから、これはCreエレクトロポレーションによって試験環状DNAベクターの生産がもたらされたことを示している。レーン8、レーン9、及びレーン11はそれぞれレーン2、レーン3、及びレーン5に対応するが、クロラムフェニコールを含む富栄養培地中で成長されたものである。レーン2、レーン3、及びレーン5におけるDNAの存在量はレーン8、レーン9、及びレーン11と同様であったことから、これは環状DNAベクターが選択圧なしに細胞内で維持されることを示している。レーン4は、Creエレクトロポレーション後にGFP陽性、RFP陽性、かつKan/Spec耐性であるp1603形質転換細胞に由来するゲノム外DNAを示している。このレーンにおけるバンドは、試験親プラスミドに予想されるサイズであるおよそ5000bpに向かって流れる。レーン10はレーン4に対応するが、クロラムフェニコールを含む培地中で成長させた細胞由来のDNAを示している。レーン1は、p1600形質転換細胞からのGFP陽性、RFP陽性、Kan/Spec耐性コロニーから精製された染色体外DNAを示している。このレーンにおけるバンドは、試験親プラスミドに予想されるサイズであるおよそ5000bpに向かって流れる。レーン7はレーン1に対応するが、クロラムフェニコールを含む培地中で成長させた細胞由来のDNAを示している。レーン6は、ColE2-P9 oriを欠くプラスミドで形質転換され、かつクロラムフェニコールを欠いた培地中で成長させた同じ操作されたE.コリ細胞から精製された染色体外DNAを示している。この培養物からは検出可能なプラスミドは回収されなかったことから、選択圧の不存在下でプラスミドの維持にはこのoriが必要とされることが示唆され得る。レーン12は、レーン6に使用したのと同じ細胞の培養物であるが、クロラムフェニコールの存在下で成長させた培養物から精製されたDNAを示している。これらの細胞からプラスミドが回収されたことから、選択圧により細胞内でプラスミドが維持されたことが示唆され得る。
【0194】
実施例4.ColE2-P9 oriを有する環状DNAベクターは、選択圧なしでColE2-P9複製タンパク質を発現する操作された細胞内で維持される
ColE2-P9由来のori配列(例えば、配列番号2)を有する環状DNAベクターが選択圧の不存在下にColE2-P9複製タンパク質(例えば、配列番号1)を発現する細胞内で維持され得ることを試験するのに、実施例2に記載されるCre組換えによって生産された試験環状DNAベクターを有する細胞を、クロラムフェニコールを含む及び含まない様々なブロス中で培養した。各培養物中のsfGFP陽性細胞のパーセンテージを定量化した。結果を図5に示す。試験環状DNAベクターは、クロラムフェニコールを含む場合及び含まない場合のSOC培地以外の全ての培地において高レベルで維持されたが、SOC培地ではクロラムフェニコールを含む場合及び含まない場合の両方で維持レベルがより低かった。
【0195】
試験環状DNAベクターを、クロラムフェニコールを含まないTB培養物及びZB培養物から精製し、定量化した。TB培養物では0.33mg/Lの試験環状DNAベクターが得られ、SB培養物では0.45mg/Lの試験環状DNAベクターが得られた。これらの結果により、環状DNAベクターが選択圧に関係なく維持されたことが裏付けられる。
【0196】
実施例5.対抗選択を用いた環状DNAベクターのin vivo生産プロセス
図6は、対抗選択を使用して本発明の環状DNAベクターを生産する例示的なプロセスを示している。この実施例における導入遺伝子はABCA4であるが、ABCA4を駆動するプロモーターを他の導入遺伝子カセットに置き換えることが可能であることは理解されるであろう。0日目に、本明細書に記載されるプロセスのいずれかを使用して、Rep遺伝子を発現するコンピテントな操作された細菌細胞を(例えば、細菌人工染色体(BAC)上にコードされたリコンビナーゼを細胞に形質転換することによって)調製する。1日目に、細胞をKanが補充されたLB寒天プレート上にプレーティングし、テンプレートプラスミドを加える。この実施例において、テンプレートプラスミドは、プロモーター及び複製起点(ori)の下流にABCA4導入遺伝子を含んでいた。このori-ABCA4カセットは、組換え部位(attP-GA及びattB-GA)によって両側で挟まれていた。プラスミドの反対側(バックボーン領域)には、選択可能なマーカー、すなわち、抗生物質耐性遺伝子のSpR及びKanR、対抗選択マーカーのPheS、並びに蛍光マーカーのRFPがあった。2日目に、赤色のコロニーから白色のコロニーを選び出し、4CPが補充されたLB中で成長させて対抗選択を行った。3日目に、環状DNAベクターを精製する。
【0197】
実施例6.環状DNAベクターの生産についての誘導性Bxb1の試験
Bxb1が環状DNAベクターを生産する外因性リコンビナーゼとして有効であり得るかどうかを試験するのに、Bxb1リコンビナーゼを細菌人工染色体(BAC)上にコード化し、構成的プロモーターによって駆動されるゲノム内に組み込まれたRep遺伝子(配列番号1)を有する宿主E.コリへと形質転換した(図7A)。2つの誘導性Bxb1 BACを試験した。1696(図7B、配列番号5)はクミン酸誘導性プロモーター及びクロラムフェニコール(Cm)耐性(CmR)遺伝子を含んでおり、1697(図7C、配列番号6)はアラビノース誘導性プロモーター及びCmR遺伝子を含んでいた。各BACをエレクトロポレーションによってS1037細胞へと形質転換し、クロラムフェニコールの存在下でプレーティングした。
【0198】
次に、細胞をレポーター導入遺伝子としてGFPを有するテンプレートプラスミドで形質転換した(図7D)。ColE2-P9複製起点(ori)はGFP及びそのプロモーターの上流に配置されており、組換え部位(attP-GA及びattB-GA)によりori-GFPカセットが両側で挟まれていた。プラスミドの反対側(バックボーン領域)には、選択可能なマーカー(抗生物質耐性遺伝子のSpR及びKanR、対抗選択マーカーのPheS、並びに蛍光マーカーのRFP)があった。したがって、テンプレートプラスミドを含む細胞は、GFP、RFP、Kan耐性、Spec耐性、及び4CP感受性であるのに対し、環状DNAベクターのみを含む細胞(図7E)(バックボーン副産物を含まない(図7F))は、GFP、RFP、Kan感受性、Spec感受性、及び4CP耐性である。
【0199】
テンプレートプラスミドを、誘導物質を用いずにS1037細胞へとエレクトロポレーションし、Cm+Kanプレート上にプレーティングした。形質転換から24時間後及び72時間後の結果を図8及び図9に示す。図8A及び図8Bは、1696BACを有するコロニーの大部分が、それぞれ形質転換から24時間後及び72時間後に緑色であったことを示している。赤色のコロニーが少数観察された。緑色のコロニーを選択し、サンガーシーケンシング及びゲル電気泳動によって環状DNAベクターの存在及び配列を確認した。1696とは対照的に、図9A及び図9Bは、1697BACを有するコロニーの殆どが、それぞれ形質転換から24時間後及び72時間後に黄色であったのに対し、72時間の時点で緑色のコロニーが少数観察されたことを示している(図9B)。
【0200】
Cm及びアラビノース誘導物質の効果を評価するのに、各プレートから様々な色のコロニーを採取し、Cm及びクミン酸又はアラビノースのいずれかとともに24時間インキュベートした。結果を図10(1696)及び図11(1697)に示す。次に、各培養物を500倍希釈し、4CPが補充されたLB中で誘導物質を用いて又は誘導物質を用いずに一晩成長させて、対抗選択を行った。一晩培養物をそのままのLB寒天プレート上に再画線し、蛍光を観察した。結果を図12(1696)及び図13(1697)に示す。各プレートからの単コロニーを4CPが補充されたLB中で一晩成長させ、少量調製し、消化マッピング(BsaI)を行った。ゲル電気泳動の結果を図14に示す。それぞれの予想される種1~種4について予測されるバンドを以下の表1に示す:
【0201】
【表1】
【0202】
いずれかの種類のBAC(1696又は1697)を有するコロニーでは、いずれかの誘導物質を添加するとGFP発現コロニーが増加するように見えたことから、これは誘導物質の不存在下にBxb1の発現が起こったことを示している。実際、テンプレートプラスミドの形質転換及びCm/Kanプレート上へのプレーティングの後に、Bxb1組換えは既に起こっていた。1606BACを含む細菌において、非誘導のBxb1によって90%を超える緑色のコロニーが得られたことから、これは90%超がテンプレートプラスミドを殆ど含まない又は全く含まない環状DNAベクターを含んでいたことを示している。
【0203】
実施例7.治療用導入遺伝子を含む環状DNAベクターの生産
この研究において、様々な種類の治療用導入遺伝子、すなわち、(1)ABCA4、(2)IL-12、並びに(3)Flt3L、IL-12、及びXCL1をコードするトリシストロン性カセットを含む環状DNAベクターを作製した。ABCA4コンストラクト及びIL-12コンストラクトはCAGプロモーターを含み、トリシストロン性コンストラクトは3つの遺伝子それぞれの上流にCAGプロモーターを含んでいた。ABCA4テンプレートプラスミド及び得られる環状DNAベクターについての例示的な配列は、それぞれ図15A(配列番号7)及び図15B(配列番号8)によって示されている。
【0204】
最初に、S1037細胞を1696BACで形質転換し、一晩成長させた。1日後、細胞をコンピテント化し、ABCA4、IL-12、又はトリシストロン性カセットをコードするテンプレートプラスミドで形質転換した。細胞をKanが補充されたLB寒天プレート上にプレーティングした。3日間の培養後に、小さな白色のコロニーを採取し(赤色のコロニーは残す)、LB+4CP中で一晩成長させて対抗選択を行った後に精製した。
【0205】
精製されたコンストラクトを、BsaIによる消化マッピングを使用して各群における単コロニーからスクリーニングした。図16A(理論上のゲルプロファイル)及び図16B(実際のゲルプロファイル)に示されるように、全てのコロニーで、予想されるサイズの環状DNAベクターのバンドが得られた。これらの結果により、本明細書に記載される環状DNAベクターの生産プロセスを、様々なサイズ及び構成(例えば、マルチシストロン性)の導入遺伝子を有する環状DNAベクターを効率的に生産するのに広く利用することができることが裏付けられる。
【0206】
実施例8.細菌の成長及びスケールアップに対する環状DNAベクターの安定性
本明細書に記載されるベクター系の有意義な利点は、選択マーカーを用いずに(例えば、選択可能なマーカー及びその他の細菌バックボーンエレメントを培養物から除去した後に)環状DNAベクターを有する細菌細胞を成長させることができることである。この目的に向けて、出願人は、治療用導入遺伝子を含む環状DNAベクターが、ベクター生産のスケールアップに伴う多くの細胞分裂にわたって細菌培養物において安定的に発現され得るかどうかを試験した。
【0207】
実施例7と同様に、バックボーンを含まないABCA4をコードする環状DNAベクターを含むと特定された細胞の一晩培養(各14時間~16時間)を7夜連続にわたって行った。7回目の培養後、シーケンシングによって環状DNAベクターの存在を確認した。1時間当たり3回の平均分裂速度に基づくと、この培養物は少なくとも294回の分裂を経ており、驚くべきことに、選択が行われていないにもかかわらず、環状DNAベクターの発現を維持していた。
【0208】
この特筆すべき安定性を活用することで、細胞をスケールアップして、ABCA4導入遺伝子を含む環状DNAベクターをより大量に生産した。細胞をLBプレート上に再画線し、成長させて、2.5Lの調製物を生産した。グリセロールストックを生産し、このストックを再画線して、25Lの調製物を生産した。この調製物から環状DNAベクターを精製し、これにより18mgの環状DNAベクターが得られた。
【0209】
実施例9.単量体環状DNAベクターの検出
この研究において、1696BACを使用して生産されたABCA4導入遺伝子を含む環状DNAベクターをシーケンシングして、環状DNAベクターが単量体の形態(別のテンプレートプラスミドとのトランスの組換えから得ることができる二量体とは異なる)であることを確認した。この研究において、S1037細菌を25μg/mLのKanを含むLBブロス中で37℃にて2時間培養した。次に、細胞を4CP及び10ngのDNAを含むプレートに移し、37℃で一晩インキュベートした。試料を、従来の方法を使用したロングリードシーケンシング(Oxford Nanopore)によって分析した。図17Aに示されるように、単量体のピークが観察され、二量体は観察されなかった。対照的に、培養物をKanとともに一晩インキュベートした場合、環状DNAベクターは主に二量体であった(図17B)。
【0210】
実施例10.Bxb1ヘルパープラスミドを使用して作製された環状DNAベクター
BAC-Bxb1の代替戦略として、ヘルパープラスミドを使用して宿主細胞に形質転換されたBxb1を使用して環状DNAベクターを作製した。クミン酸誘導性プロモーター(CuO)を含む例示的なヘルパープラスミドを図18に示す。さらに、ヘルパープラスミドは温度感受性のバックボーンを含むため、環状DNAベクターの生産後にヘルパープラスミドを除去することが可能であった。このヘルパープラスミドのDNA配列は、配列番号11によって示されている。この方法において使用された宿主細胞は、同様の実施例の場合と同じもの、すなわち、構成的プロモーターによって駆動される宿主ゲノム内に組み込まれたRep(配列番号1)を有するS1037細胞であった。テンプレートプラスミドは実施例6(図7D)の場合と同じものであった。
【0211】
この研究において、ヘルパープラスミドをS1037細胞へと形質転換し、100μg/mLのカルベニシリン(carb100)とともに一晩インキュベートした。次いで、プラスミドテンプレートを形質転換し、carb100及び500μMのCumaとともにプレーティングし、細胞を30℃で成長させた。このヘルパープラスミド手法を使用することで、幾つかの緑色のコロニーが観察された(図19)ことから、これはバックボーン副産物を含まない環状DNAベクターを含む細胞の生産に成功したことを示している。
【0212】
実施例11.Bxb1を宿主ゲノム内に組み込むことによって作製された環状DNAベクター
本明細書において提供されるリコンビナーゼの別の供給源は、細菌宿主ゲノム内への組込みを介したものである。この実施例においては、図20に例示されるプロセスに従ってBxb1の組込みを実施した。最初に、λred組換えヘルパープラスミドを有するS1037細胞を0.2%のアラビノースとともに成長させ、エレクトロコンピテント化した。次いで、500ngの線状化された1696BACをエレクトロポレーションした。BAC1696をrsd-thiC遺伝子座へと組み込んだ後、λred組換えプラスミドを除去した。
【0213】
得られたコロニーに対してコロニーPCRを実施し、ゲル電気泳動を使用して陽性クローンを特定した(図21)。得られた細胞は、ゲノム組込みによってRep及びBxb1の両方を発現するように操作されている。
【0214】
実施例12.ColE2-P9 oriを有する環状DNAベクターによるABCA4タンパク質の発現
ColE2由来の複製起点を有する細菌によって生産される環状DNAベクターがヒト細胞においてタンパク質を発現することが可能かどうかを判定するのに、ヒトABCA4遺伝子を有するそのような環状DNAベクターをHEK293T細胞へとトランスフェクションし、ABCA4タンパク質の発現をウェスタンブロットによって評価するin vitro研究を実施した。
【0215】
HEK293T細胞を24ウェルプレートにおいて0.5mLの標準培地中に150000個の細胞で播種した。プレートを37℃で24時間インキュベートした。トランスフェクションの時点で、細胞は60%~80%のコンフルエンスであった。細胞にリポフェクタミン3000(Invitrogen)を使用して製造業者のプロトコルに従って環状DNAベクターをトランスフェクションした。1ウェル当たりに加えられたDNAの総量は500ngであった。37℃で24時間インキュベートした後、細胞を採取して、ベータアクチンをコントロールとして使用してウェスタンブロットにより分析した。ウェスタンブロットの結果を図22に示し、各レーンを以下の表2において特定する。
【0216】
【表2】
【0217】
これらの結果は、ColE2由来の起源を有する細菌によって生産される環状DNAベクターがHEK293Tヒト細胞においてそれらのABCA4導入遺伝子を発現したことを示している。
【0218】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22
【配列表】
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【国際調査報告】