(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】セストリン-MAPK複合体阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07K 7/64 20060101AFI20250128BHJP
C07K 5/12 20060101ALI20250128BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20250128BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20250128BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250128BHJP
C12N 5/0781 20100101ALI20250128BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20250128BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20250128BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250128BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20250128BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20250128BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20250128BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20250128BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20250128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20250128BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20250128BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20250128BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20250128BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20250128BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C07K7/64
C07K5/12 ZNA
C07K14/47
C12N15/11 Z
C12N15/12
C12N5/0781
C12N5/0783
A61K38/12
A61K48/00
A61K39/39
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/00
A61P31/00
A61P37/02
A61P43/00 107
A61P35/00
A61P11/00
A61P25/08
A61P25/24
A61P3/04
A61P3/00
A61P19/10
A61P15/10
A61P25/00
A61P25/28
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024538274
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 IT2021000059
(87)【国際公開番号】W WO2023119337
(87)【国際公開日】2023-06-29
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524235821
【氏名又は名称】セントセル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100227008
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(72)【発明者】
【氏名】ラナ,アレッシオ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA16
4C084BA24
4C084CA59
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA06
4C084ZA12
4C084ZA16
4C084ZA59
4C084ZA70
4C084ZA81
4C084ZA97
4C084ZB07
4C084ZB26
4C084ZB32
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZB37
4C084ZC52
4C085AA38
4C085EE06
4C085FF13
4C085FF17
4H045AA10
4H045BA01
4H045BA09
4H045BA13
4H045BA35
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、セストリンに由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含むまたはそれからなる、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体を提供する。環状ポリペプチドは、感染性疾患(ウイルス性および細菌性)ならびに加齢関連状態、例えば癌および神経変性障害、特に、T細胞により媒介される免疫系応答の障害に関連するまたはそれにより引き起こされる状態を処置し、予防し、または寛解させる際に用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セストリンに由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含むまたはそれからなる、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項2】
前記環状ポリペプチド、誘導体、または類似体がセストリン1に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含みまたはそれからなり、任意に、セストリン1が、実質的に配列番号1、2、もしくは3によって表されるアミノ酸配列、またはそのバリアントもしくは断片を含む、請求項1に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項3】
前記環状ポリペプチド、誘導体、または類似体が、セストリン2に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含みまたはそれからなり、任意に、セストリン2が、実質的に配列番号4で表されるアミノ酸配列またはそのバリアントもしくは断片を含む、請求項1に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項4】
前記環状ポリペプチド、誘導体、または類似体が、セストリン3に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含みまたはそれからなり、任意に、セストリン3が、実質的に配列番号5、6、もしくは7で表されるアミノ酸配列、またはそのバリアントもしくは断片を含む、請求項1に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項5】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン2を形成する最初の160アミノ酸に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含むまたはそれからなる、請求項3に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項6】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1、セストリン2、および/またはセストリン3のドメインAと、および/またはドメインAとCとの界面で結合するように構成される、前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項7】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、2個から15個のアミノ酸残基、より好ましくは3個から9個のアミノ酸残基、より好ましくは3個から8個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは4個から7個のアミノ酸を含むまたはそれからなる、前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項8】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、5個のアミノ酸残基を含むまたはそれからなる、前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項9】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に:
(i)配列番号8~84、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(ii)配列番号58、59、63、65、86、87、92、94~97、107、113、114、116~119、121~124、126、130、133、148、150、154、155、159~162、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(iii)配列番号170~172、174、179、187、190、196~199、もしくは202、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(iv)配列番号58~60、62、64、88~91、93、98~112、115、120、125、127~129、131、132、もしくは134~147、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(v)配列番号47、58もしくは77、62~65、71~73、149、151~153、156~158、163~169、173、175、176、180~186、188、189、191~195、200、201、もしくは203~205、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(vi)配列番号89~91、97、206~218、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(vii)配列番号176、180、219~234、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(viii)配列番号235~247、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(viv)配列番号248~260、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(vv)配列番号58、59、62~65、またはその機能性バリアントもしくは断片;または
(vvi)配列番号261~269、またはその機能性バリアントもしくは断片
のいずれか1つで表されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項10】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に配列番号22、47、もしくは77で表されるアミノ酸配列、またはその機能性バリアントもしくは断片を含むまたはそれからなる、前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項11】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、L-アミノ酸単独からなり、またはD-アミノ酸単独からなり、またはD-アミノ酸とL-アミノ酸の両方からなる、前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項12】
配列番号8~84のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項13】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1、セストリン2、およびセストリン3、好ましくはそのドメインAに結合するおよび/またはそれを阻害する、前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項14】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、
(i)セストリン2に選択的に結合するおよび/もしくはそれを阻害する;
(ii)同じ位置におけるblast検索上でセストリン1とセストリン2の間に保存されたアミノ酸残基を含む;
(iii)同じ位置におけるblast検索上でセストリン3とセストリン2の間に保存されたアミノ酸残基を含む;
(iv)同じ位置におけるblast検索上でセストリン1とセストリン2の間に保存されたアミノ酸残基を含まない;
(v)同じ位置におけるblast検索上でセストリン3とセストリン2の間に保存されたアミノ酸残基を含まない;
(vi)異なる位置におけるセストリン1相同性(化学的類似性)領域を含む;
(vii)異なる位置におけるセストリン3相同性(化学的類似性)領域を含む;
(viii)セストリン2とのセストリン1の配列重複および/もしくは化学的類似性を含む;
(viv)セストリン2とのセストリン3の配列重複および/もしくは化学的類似性を含む;
(vv)全ての3つのセストリンの間で完全に重複する配列からなるもしくはそれを含む;ならびに/または
(vvi)セストリン1とセストリン3の間で完全に重複する配列からなるもしくはそれを含む、
前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項15】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、式(I)
【化1】
を含むまたはそれからなる、前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項16】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、以下の結合またはコンジュゲーションを含む、
(i)末端のNH
2基とCOOH基(すなわち、ペプチド結合);
(ii)NH
2基とNH
2基(すなわち、ヒドラジン結合);
(iii)NH
2基とCONH
2基(すなわち、一級アミド結合);
(iv)N=NH基とNH
2基(すなわち、ヒドラジン結合);
(v)NH
2基とOH基(すなわち、ヒドロキシルアミン結合);
(vi)NH
2基とSH基(すなわち、チオール-ヒドロキシルアミン結合);
(vii)NH
2基とSR基(すなわち、ヒドロスルフィド結合);
(viii)COOH基とCONH
2基(すなわち、アミド結合);
(ix)COOH基とCOOH基(すなわち、ジカルボン酸結合);
(x)COOH基とN=NH基(すなわち、カルボキシル-アミドゲン結合);
(xi)COOH基とOH基(すなわち、ヒドロキシカルボキシル結合);
(xii)COOH基とSH基(すなわち、チオール結合);
(xiii)COOH基とSR基(すなわち、チオール結合);
(xiv)N=NH基とCONH
2基(すなわち、アミドゲン結合);
(xv)N=NH基とOH基(すなわち、N-ヒドロキシルアミン結合);
(xvi)CONH
2基とCONH
2基(すなわち、ジアミド結合);
(xvii)CONH
2基とSR基(すなわち、s-アミド結合);
(xviii)SR基とOH基(すなわち、ヒドロキシ-チオール結合);
(xix)SR基とNH基(すなわち、チオールアミン結合);
(xx)NH
2基とNH基(すなわち、ヒドラジン結合);
(xxi)COOH基とNH基(すなわち、アミノ-プロパン酸結合);
(xxii)SH基とOH基(すなわち、親水性結合);
(xxiii)SH基とNH基(すなわち、アミノ-チオール結合);
(xxiv)OH基とNH基(すなわち、ヒドロキシルアミン結合);
(xxv)OH基とOH基(すなわち、ヒドロキシ結合);
(xxvi)CONH
2基とOH基(すなわち、ヒドロキシアミド結合);
(xxvii)SH基とSH基(すなわち、ジチオール結合);
(xxviii)CONH
2基とNH基(すなわち、ヒドロキシアミド結合);または
(xxix)NH基とNH基(すなわち、ジアンモニウム結合)
請求項15に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項17】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、以下の配列番号85として本明細書に提供されるコンセンサスまたは再現性配列を含むまたはそれからなる:
x
1x
2x
3x
4x
5 [配列番号85]
(式中、x
1は、A、P、H、L、R、M、D、F、V、I、E、N、Y、S、Q、もしくはTであり、好ましくは、x
1は、A、P、H、L、R、M、もしくはDであり;
x
2は、Y、A、L、R、M、F、K、V、E、I、D、S、Q、NもしくはTであり、好ましくはx
2が、Y、A、LもしくはRであり;
x
3は、L、A、S、R、M、D、E、K、F、T、Q、C、V、PもしくはNであり、好ましくはx
3が、L、A、SもしくはRであり;
x
4は、L、A、E、S、K、D、V、I、F、Q、H、C、T、P、N、RもしくはYであり、好ましくはx
4が、L、AもしくはEであり;
および/または
x
5は、L、R、A、E、S、K、I、P、D、F、H、Y、C、T、N、Q、V、もしくはMであり、好ましくは、x
5は、L、R、A、もしくはEである)
前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項18】
前記ポリペプチド、その誘導体または類似体の環化が、セストリン2(配列番号4)のアミノ酸残基4、9、10、15、16、19、20、21、24、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、39、40、41、46、50、56、61、63、65、66、67、71、73、84、91、94、96、99、103、108、109、110、131、134、147、185、204、217、220、226、228、230、233、234、236、237、238、239、240、241、244、249、251、252、255、256、272、273、274、277、284、292、298、299、301、303、304、306、309、310、311、313、314、319、331、333、334、343、359、369、431、442、もしくは467、および/またはセストリン1(配列番号1)のアミノ酸残基1~68、72、77、78、79、84、85、88、89、90、93、95、96、97、98、99、100、102、103、104、109、113、119、124、126、128、129、130、131、135、137、148、155、158、160、163、167、172、173、174、195、198、211、249、268、281、284、290、292、294、297、298、300~312、315、319、320、321、323、325、326、329、330、346、347、350、357、365、371、372、374、376、378、381、382、383、385、386、391、403、405、414、430、440、502、513、もしくは538で起こる、前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項19】
前記ポリペプチド、その誘導体または類似体の環化が、セストリン2(配列番号4)のアミノ酸残基1、2、4、5、10、11、14~29、34、35、36、39、40、41、50、56、59、61、63、66、69、70、71、81、87、91、94、96、99、103、108、109、110、131、134、142、143、147、151、180、192、204、217、220、222、224、226、228、230、231、233、234、239、240、241、243、244、245、246、249、251、255、256、272、273、277、289、299、301、302、303、306、307、310、313、314、320、331、333、334、357、359、369、380、342、もしくは367、および/またはセストリン3(配列番号5)のアミノ酸残基1~14、16、17、22、23、30、31、32、35、36、37、46、52、55、57、59、62、65、66、67、77、83、87、90、92、95、99、104、105、106、127、130、138、138、143、147、176、188、200、213、216、218、220、222、224、226、227、229、230、232、234、235、236、237、238、239、243、244、245、247、248、249、250、253、255、259、260、276、280、292、302、304、305、308、309、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、325、326、332、343、345、346、369、371、381、392、454、もしくは479で起こる、前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項20】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、免疫細胞におけるセストリン、好ましくは、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および/またはT細胞(Tリンパ球)におけるセストリンを標的とする、前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項21】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、CD4+および/またはCD8+ T細胞におけるセストリン、好ましくはCD4+ CD27+ CD28+ 細胞および/またはCD4+ CD27- CD28+ 細胞におけるセストリン、より好ましくはCD4+ CD27- CD28- T細胞(老化T細胞)におけるセストリンを標的とする、請求項20に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項22】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、サイトカイン産生を誘導しまたは回復させ、好ましくは、IFNガンマ、TNFアルファ、および/またはIL-4の産生を誘導しまたは回復させる、前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項23】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、免疫老化を防止しまたは反転させる、前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項24】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、免疫系を若返らせるように構成される、前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項25】
免疫系を若返らせることが、(i)抗原刺激に対する免疫細胞応答性を回復させること;(ii)免疫細胞におけるテロメア長および/もしくはテロメラーゼ活性を回復させること;(iii)免疫細胞における抗原特異的増殖および/もしくはサイトカイン産生を回復させること;ならびに/または(iv)B細胞および/もしくはCD8
+ T細胞および/もしくはナチュラルキラー細胞増殖による抗原特異的抗体産生を回復させることを含む、請求項24に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項26】
治療における使用のための、前記請求項のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項27】
治療における使用のための、請求項1~25のいずれか一項に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体をコードする核酸。
【請求項28】
微生物感染、加齢関連状態、またはT細胞媒介性疾患を処置し、予防し、または寛解させる際における使用のための、請求項1~25のいずれか一項に記載の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸。
【請求項29】
前記微生物感染が、細菌性、ウイルス性、真菌性、または原生生物である、請求項28に記載の使用のための環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項30】
前記加齢関連状態が、免疫系の加齢および/または減退に伴う、それにより引き起こされる、または関連する状態であり、任意に、前記加齢関連状態が、セストリン依存性sMAC活性化および/または免疫老化により特徴付けられる、請求項28に記載の使用のための環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項31】
前記加齢関連状態が、癌(例えば、小児神経芽細胞腫、メラノーマ、肝臓、膵臓、精巣、もしくは膵臓の癌)、喫煙誘発性肺気腫、てんかん、うつ病、代謝疾患(肥満を含む)、骨粗鬆症、勃起不全、不妊、または神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病もしくは認知症からなる群から選択される、請求項28に記載の使用のための環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項32】
請求項1~25のいずれか一項に記載の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸、およびワクチンを含む組成物。
【請求項33】
免疫応答を刺激する際における、好ましくはワクチンブースターとしての使用のための、請求項1~25のいずれか一項に記載の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸。
【請求項34】
請求項1~25のいずれか一項に記載の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸の治療有効量、および任意に薬学的に許容される媒体を含む、医薬組成物。
【請求項35】
請求項1~25のいずれか一項に記載の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸の治療有効量を、薬学的に許容される媒体と組み合わせるステップを含む、請求項34に記載の医薬組成物を作製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セストリン-MAPK複合体(sMAC)の阻害剤(本明細書においてsMACの破壊剤(disruptors of sMAC)(すなわち、「DOS」)とも呼ばれる)、特に、排他的ではないが、sMACの環状ポリペプチド(DOS)阻害剤に関する。本発明はまた、感染性疾患(ウイルス性、細菌性、および原生生物)ならびに加齢関連状態、例えば癌および神経変性障害を処置し、予防し、または寛解させる際におけるこれらのDOS化合物の使用に関する。本発明は特に、加齢、またはT細胞により媒介される免疫系応答の障害に関連するまたはそれにより引き起こされる状態を処置することに関する。本発明はまた、DOS化合物を含む医薬組成物、およびそのようなDOS化合物を作製する方法にも及ぶ。
【背景技術】
【0002】
世界中の人口動態は、より高齢へとシフトし続けており、老年人口は、2050年までには、20億人超に達すると予想されている(Lutz et al., 2008)。健康的な加齢に課せられる一つの難題は、免疫老化であり、それは、より高齢の個体の、癌、神経変性および感染性疾患、例えば、インフルエンザおよび他の生命を脅かす大発生、例えば、つい最近のコロナウイルスパンデミックなどのリスクを増加させやすくする(Akbar et al., 2016; Dorshkind et al., 2009)。ワクチン接種は、より若い人々において免疫を高めるための効率的な方法であるが、高齢者および免疫不全者におけるいかなるワクチン接種ストラテジーの有効性も、非常に損なわれ、入院の増加をもたらし、高い罹患率および死亡率を伴う(Goronzy and Weyand, 2013; Levin, 2012; Yousefzadeh et al., 2021)。現在、高齢者において長続きする免疫防御を回復するためのストラテジー、特に、免疫系を若返らせ、ワクチン接種個体間での感染の伝播を止めることを目指すアプローチは欠けている。したがって、加齢における生活の質を向上させるための新しいストラテジーを実行する緊急の必要性がある。
【0003】
老化の特徴を示す免疫細胞は、加齢中、増加する(Weng et al., 2009)。実際、より高齢の個体において、免疫細胞の50%超は老化である。T細胞は老化へと進むにつれて、共刺激受容体CD27およびCD28の連続的喪失がある。初期CD4+ T細胞はCD27+ CD28+であり、中間期におけるそれらはCD27- CD28+であり、老化CD4+ T細胞集団はCD27- CD28-である(Lanna et al., 2014)。
【0004】
セストリンとして知られたストレス分子は、ヒトにおいてSesn1、Sesn2、およびSesn3遺伝子によりコードされる。セストリンはT細胞中に蓄積し、AMP応答性タンパク質キナーゼ(AMPK)と結合して、活性化する(Lanna et al., 2017)。AMPKは、増加した細胞内AMP/ATP比に応答して活性化される、触媒性αサブユニットならびに制御性βおよびγサブユニットからなるヘテロ三量体タンパク質である。次に、AMPKの活性化は、自己リン酸化を通してのグローバルな(ERK、JNK、p38)マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)活性化を協調する(
図1参照)。
【0005】
細胞外制御タンパク質キナーゼ(ERK)、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)、およびp38を含むMAPKの3つの主なサブグループが同定されている(Johnson and Lapadat, 2002)。MAPKシグナル伝達酵素は、老化、加齢、および代謝を含む哺乳動物の生理機能の多様な側面に関与している。例えば、
図1に示されているように、JNKはTCR-CD28シグナル伝達を阻害し、p38はテロメラーゼ活性を阻害し、ERKはDNA損傷を増加させ、全てが、加齢中の老化T細胞の蓄積に寄与する(Lanna et al., 2017)。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、免疫阻害性タンパク質の巨大複合体である、セストリン-MAPK複合体(sMAC)が、加齢中、免疫学的細胞(例えば、T細胞)内に蓄積し、老化性機能不全状態を引き起こすことを以前、示している(Lanna et al, Nature Immunology, 2014 and 2017;国際公開第2018/100410号)。したがって、本発明者らは、セストリンを標的として阻害することにより、セストリン依存性sMAC活性化が破壊され、その結果として、免疫老化の防止、遅延、または反転を生じ得ると仮定した。
【0007】
現在、sMACを能動的に標的として阻害する既知の薬物はない。mTOR阻害剤の持続投与などのある特定の実験アプローチが、高齢者において免疫老化と戦い、ワクチン接種効力を向上させると提案されているが、これらのアプローチはわずかな効果を示しているだけである(Mannick et al., 2014)。例えば、そのようなアプローチは、ワクチン接種後、抗体力価の20%増加を超えていない(Mannick et al., 2014)。追加として、これらのアプローチは、それらが、ワクチン接種プロトコールが開始できる前に、毎日8週間投与されなければならないため、高い費用および困難な順守を伴う(Mannick et al., 2014)。セノリティクス(senolytics)での他の実験アプローチは理想にほど遠く、若返りを達成するために老化免疫細胞を殺すことは、年齢進行性胸腺退縮による重度の免疫不全をもたらし得るからである(Carpenter et al., 2021)。追加として、sMAC活性化を防止するために小分子阻害剤によりセストリンを標的とすることは、セストリンが酵素活性を欠き、標的とする明らかな触媒ドメインをもたないという事実により、さらに複雑にされている(Budanov et al., 2010)。
【0008】
したがって、セストリン依存性sMAC活性化および免疫老化を直接的に標的と防止し、結果として、加齢中、免疫を生き返らせることができる向上した治療の大きな必要性がある。
【0009】
実施例に記載されているように、本発明者らは、DOS化合物(sMACの破壊剤)と名付けられた、sMACの新規な阻害剤を作製している。これらのDOS化合物は、(たいていの実施形態において)五量体の環状ペプチドであり、直接的にセストリンをプロテアソーム分解へ仕向けることにより、ナノモル量でsMACを阻害する。驚くべきことに、これらの新規なDOS化合物が、ワクチンの存在下と非存在下の両方において、単一用量で長期免疫防御を与え得ることを本発明者らは観察し、ワクチンの非存在下では、非常に予想外のことであった。これは、ワクチンと共に事前投与(免疫化の数週間前)を必要とする(mTORC1阻害剤)(Mannick et al., 2014)かまたはメモリー免疫応答が生じる時にタイミングを合わせる必要がある(AMPK活性化因子)(Pearce et al., 2009)かのいずれかであるmTORC1阻害剤またはAMPK活性化因子と比較して、特に有利である。DOS化合物は、細胞死を誘導することはないが、代わりに、加齢した免疫系をリプログラミングして、それを効果的に「若返らせる」ことができる。有利には、老化細胞を殺すよりむしろ、若返らせることができると、高齢者において免疫を保存し、かつヒト寿命をさらに延ばす可能性がある。
【0010】
したがって、本発明の第1の態様によれば、セストリンに由来するアミノ酸配列またはその短縮体(truncation:トランケーション)を含むまたはそれからなる、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体(analogue:アナログ)が提供される。
【0011】
セストリンはストレス誘導性代謝タンパク質であり、ヒトは、3つのセストリンタンパク質、セストリン1、セストリン2、およびセストリン3を発現する(Lee et al., 2013)。セストリンタンパク質のそれぞれは、それぞれ、遺伝子Sesn1、Sesn2、およびSesn3によりコードされている。
【0012】
したがって、一実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含むまたはそれからなる。
【0013】
ヒトセストリン1(Gen Bank:27244)の1つのアイソフォームのタンパク質配列は、492アミノ酸長であり、以下のように、配列番号1として本明細書に提供される:
【0014】
【0015】
ヒトセストリン1(Gen Bank:27244)の別のアイソフォームのタンパク質配列は、551アミノ酸長であり、以下のように、配列番号2として本明細書に提供される:
【0016】
【0017】
ヒトセストリン1(Gen Bank:27244)の別のアイソフォームのタンパク質配列は、426アミノ酸長であり、以下のように、配列番号3として本明細書に提供される:
【0018】
【0019】
したがって、好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含みまたはそれからなり、セストリン1が、実質的に配列番号1、2、もしくは3で表されるアミノ酸配列、またはそのバリアントもしくは断片(fragment:フラグメント)を有する。
【0020】
あるいは、別の実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン2に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含むまたはそれからなる。
【0021】
セストリン2(Gen Bank:83667)の1つのアイソフォームのタンパク質配列は480アミノ酸長であり、以下のように、配列番号4として本明細書に提供される:
【0022】
【0023】
したがって、好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン2に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含みまたはそれからなり、セストリン2が、実質的に配列番号4で表されるアミノ酸配列またはそのバリアントもしくは断片を有する。
【0024】
あるいは、別の実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン3に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含むまたはそれからなる。
【0025】
ヒトセストリン3(Gen Bank:143686)の1つのアイソフォームのタンパク質配列は492アミノ酸長であり、以下のように、配列番号5として本明細書に提供される:
【0026】
【0027】
ヒトセストリン3(Gen Bank:143686)の別の実施形態のタンパク質配列は321アミノ酸長であり、以下のように、配列番号6として本明細書に提供される:
【0028】
【0029】
ヒトセストリン3(Gen Bank:143686)の別の実施形態のタンパク質配列は353アミノ酸長であり、以下のように、配列番号7として本明細書に提供される:
【0030】
【0031】
したがって、好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン3に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含みまたはそれからなり、セストリン3が、実質的に配列番号5、6、もしくは7で表されるアミノ酸配列、またはそのバリアントもしくは断片を有する。
【0032】
しかしながら、好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン2に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含むまたはそれからなる。
【0033】
環状ポリペプチドは、N末端とC末端が、アミノ酸の環状鎖を形成するペプチド結合で一緒に自分自身と連結している、ペプチド鎖であり(Joo, 2012)、これまで、セストリン1、2、もしくは3(好ましくはセストリン2)のいずれかに由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含む環状ペプチドが開発されたことはない。
【0034】
用語「その誘導体または類似体」は、アミノ酸残基が、類似した側鎖またはペプチドバックボーン性質を有する残基(天然アミノ酸か、非天然アミノ酸か、またはアミノ酸模倣体かに関わらず)によって置き換えられている、ポリペプチドを意味し得る。追加として、そのようなペプチドの末端は、アセチル基またはアミド基に類似した性質を有するN末端および/またはC末端保護基によって保護され得る。
【0035】
本発明によるポリペプチドの誘導体および類似体には、インビボでのペプチドの半減期を増加しているそれらも挙げられ得る。例えば、本発明のペプチドの誘導体または類似体には、そのペプチドのペプトイドおよびレトロペプトイド(retropeptoid)誘導体、そのペプチドのペプチド-ペプトイドのハイブリッド、ならびにそのペプチドのD-アミノ酸誘導体が挙げられ得る。
【0036】
ペプトイドまたはポリ-N-置換グリシンは、側鎖が、アミノ酸内にある場合のようにアルファ-炭素へ付加されているのではなく、ペプチドバックボーンの窒素原子へ付加されている、ペプトイド模倣体の類である。本発明のペプチドのペプトイド誘導体は、そのペプチドの構造の知識から容易にデザインされ得る。レトロペプトイド(全てのアミノ酸が、ペプトイド残基によって逆の順序で置き換えられている)もまた、本発明による適切な誘導体である。レトロペプトイドは、ペプチド、または1個のペプトイド残基を含有するペプトイド-ペプチドハイブリッドと比較して、リガンド結合性溝において反対方向で結合することが予想される。結果として、ペプトイド残基の側鎖は、最初のペプチドにおける側鎖と同じ方向を指すことができる。ペプチドの(L-アミノ酸よりむしろ)D-アミノ酸誘導体は、プロテアーゼによるペプチドの望ましくない分解を減少させる。用語「に由来する」は、セストリン1、2、または3(好ましくはセストリン2)およびその一部分に存在し、またはそれを形成するアミノ酸配列の誘導体または改変であるアミノ酸配列を意味し得る。
【0037】
用語「その短縮体」は、セストリン1、2、または3(好ましくはセストリン2)に由来する環状ポリペプチドが、アミノ酸の除去によりサイズが低下していることを意味し得る。アミノ酸の減少は、本発明の環状ポリペプチドへの環化の前のペプチドのC末端および/もしくはN末端からの残基の除去によって達成され得、または環化前にペプチドのコア内からの1個もしくは複数のアミノ酸の欠失によって達成され得る。
【0038】
好ましくは、環状ポリペプチドは精製および/または単離され、すなわち、それは、天然に見出されず、さらにより好ましくは、後で記載されているように、新たに合成される。
【0039】
セストリン2(配列番号4)の最初の160個のアミノ酸残基が、セストリン-AMPK相互作用に関与していると考えられることが示されている(Budanov and Karin, 2008)。したがって、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン2を形成する最初の160アミノ酸に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含みまたはそれからなり、好ましくはセストリン2が、実質的に配列番号4で表されるアミノ酸配列またはそのバリアントもしくは断片を含むことが好ましい。
【0040】
あるいは、別の実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1を形成する最初の160アミノ酸に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含みまたはそれからなり、好ましくはセストリン1が、実質的に配列番号1、2、もしくは3で表されるアミノ酸配列、またはそのバリアントもしくは断片を含むことが好ましい。
【0041】
あるいは、別の実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン3を形成する最初の160アミノ酸に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含みまたはそれからなり、好ましくはセストリン3が、実質的に配列番号5、6、もしくは7で表されるアミノ酸配列、またはそのバリアントもしくは断片を含むことが好ましい。最も好ましくは、セストリン3は、実質的に配列番号5で表されるアミノ酸配列を含む。
【0042】
実施例で論じられ、
図27に示されているように、本発明者らは、DOS化合物が、セストリン2のドメインA内で、ドメインBおよびCとの界面で、かつ重要なことには、二重アスパラギン酸(D406/D407)GATOR/mTORC1制御部位(Kim et al., 2015)から遠く離れて、結合する可能性が高いことを見出した。実際、ビオチン化化合物は、T細胞において、sMACと結合するが、gator/mTORC1複合体のエレメントとは結合しないことが見出された(
図8D)。したがって、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン2のドメインAと結合するように構成されることが好ましい。さらにより好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン2のドメインAと、セストリン2のドメインBおよびドメインCとの界面で結合するように構成される。好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン2の二重アスパラギン酸(D406/D407)GATOR/mTORC1制御部位から遠く離れて(すなわち、それとは結合しない)結合するように構成される。
【0043】
追加として、DOS化合物はまた、セストリン1および3のドメインA内で結合すると予想される。したがって、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1および/またはセストリン3のドメインAと結合するように構成されることが好ましい。さらにより好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1および/またはセストリン3のドメインAと、セストリン1および/またはセストリン3のドメインBおよびドメインCとの界面で結合するように構成される。好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1および/またはセストリン3のGATOR/mTORC1制御部位から遠く離れて(すなわち、それとは結合しない)結合するように構成される。セストリン1およびセストリン3における制御部位は、必ずしも同一であるとは限らず、特に、セストリン3において、それのGATORとの相互作用が、恒常的である(例えば、ロイシン欠乏に対して感受性がない)ことが見出されたからであることに留意されたい(Wolfson et al., 2016)。
【0044】
好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、2個から20個のアミノ酸残基、より好ましくは2個から15個のアミノ酸残基、より好ましくは2個から10個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは2個から7個のアミノ酸を含むまたはそれからなる。好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、3個から20個のアミノ酸残基、より好ましくは3個から15個のアミノ酸残基、より好ましくは3個から10個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは3個から7個のアミノ酸を含むまたはそれからなる。好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、4個から20個のアミノ酸残基、より好ましくは4個から15個のアミノ酸残基、より好ましくは4個から10個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは4個から7個のアミノ酸を含むまたはそれからなる。
【0045】
好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、2個から15個のアミノ酸残基、より好ましくは3個から9個のアミノ酸残基、より好ましくは3個から8個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは4個から7個のアミノ酸を含むまたはそれからなる。
【0046】
最も好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、5個のアミノ酸残基を含むまたはそれからなる。
【0047】
一実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、以下のような配列番号8~84のいずれか1つで表されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる:
【0048】
【0049】
したがって、本発明による好ましい環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に配列番号8~84またはその機能性バリアントもしくは断片のいずれか1つで表されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。第1の態様のペプチドは、本明細書ではDOS化合物、すなわちsMACの破壊剤と呼ばれる。
【0050】
図30および31に示されているように、環状ポリペプチドはDOS
altと呼ばれる場合があり、すなわち、同じ位置におけるblast検索上でセストリン1/3とセストリン2の間に保存されたアミノ酸残基を有する環状ポリペプチドである。あるいは、環状ポリペプチドは、DOS
selと呼ばれる場合があり、すなわち、同じ位置におけるblast検索上でセストリン1/3とセストリン2の間に保存されたアミノ酸残基を有しない環状ポリペプチドである。選択的阻害が好ましい状況において、必須モチーフがない選択的化合物が望ましくあり得ることは留意されたい。例として、配列番号167(DOSsel3
***、RGGGS)は、セストリン3が疾患発生において役割を果たす状態であるてんかんについての最も好ましい選択的阻害剤であり得る(Johnson et al., 2015)。
【0051】
あるいは、
図32および33に示されているように、環状ポリペプチドは、DOS
simと呼ばれる場合があり、すなわち、blast検索が、異なる位置で相同性(化学的類似性)領域を同定している場合である。さらに、2つの型のコンセンサス配列;配列が任意の2つのセストリンの間で重複しおよび/または化学的類似性を有し、それらが本明細書でDOS
conと呼ばれる第1の型(
図34および
図35);配列が全ての3つのセストリンの間で完全に重複している第2の型(これらはDOS
superconとして示されている(
図36))の存在に留意されたい。
【0052】
したがって、別の実施形態において、本発明による環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に配列番号58、59、63、65、86、87、92、94~97、107、113、114、116~119、121~124、126、130、133、148、150、154、155、159~162、170~172、174、179、187、190、196~199、もしくは202で表されるアミノ酸配列、またはその機能性バリアントもしくは断片のいずれか1つを含むまたはそれからなる。これらの環状ペプチドはDOSalt環状ポリペプチドと呼ばれる。
【0053】
あるいは、さらに別の実施形態において、本発明による環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に配列番号58~60、62~65、71~73、88~91、93、98~112、115、120、125、127~129、131、132、134~147、149、151~153、156~158、163~169、173、175、176、180~186、188、189、191~195、200、201、もしくは203~205で表されるアミノ酸配列、またはその機能性バリアントもしくは断片のいずれか1つを含むまたはそれからなる。これらの環状ペプチドはDOSsel環状ポリペプチドと呼ばれる。
【0054】
あるいは、さらに別の実施形態において、本発明による環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に配列番号89~91、97、176、180、もしくは206~234で表されるアミノ酸配列、またはその機能性バリアントもしくは断片のいずれか1つを含むまたはそれからなる。これらの環状ペプチドはDOSsim環状ポリペプチドと呼ばれる。
【0055】
あるいは、さらに別の実施形態において、本発明による環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に配列番号54、56、57、177、178、235~269で表されるアミノ酸配列、またはその機能性バリアントもしくは断片のいずれか1つを含むまたはそれからなる。これらの環状ペプチドはDOScon環状ポリペプチドと呼ばれる。
【0056】
あるいは、さらに別の実施形態において、本発明による環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に配列番号58、59、62~65、107で表されるアミノ酸配列、またはその機能性バリアントもしくは断片のいずれか1つを含むまたはそれからなる。これらの環状ペプチドはDOSsupercon環状ポリペプチドと呼ばれる。
【0057】
アミノ酸がL型またはD型であり得ることは当業者に周知である。したがって、一実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、L-アミノ酸単独からなる。したがって、この実施形態において、本発明の環状ポリペプチドはL-鏡像異性体であることが理解されるであろう。あるいは、別の実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、D-アミノ酸単独からなる。したがって、この実施形態において、本発明の環状ポリペプチドはD-鏡像異性体である。あるいは、別の実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、D-アミノ酸とL-アミノ酸の両方を含む。本発明の環状ポリペプチドに与えられた名称は、それらがD-鏡像異性体であるかL-鏡像異性体であるかを示し、例えば、DOS46L(配列番号22)はL-鏡像異性体であり、一方、DOS46DはD-鏡像異性体である。
【0058】
最も好ましい環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に配列番号22で表されるアミノ酸配列またはその機能性バリアントもしくは断片を含むまたはそれからなる。さらにより好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に配列番号22で表されるL-鏡像異性体を含むまたはL-アミノ酸配列からなる。このペプチドは本明細書ではDOS46Lと呼ばれる。
【0059】
別の好ましい環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に配列番号77で表されるアミノ酸配列またはその機能性バリアントもしくは断片を含むまたはそれからなる。さらにより好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に配列番号77で表されるD-鏡像異性体を含むまたはD-アミノ酸配列からなる。このペプチドは本明細書ではDOS144Dと呼ばれる。
【0060】
別の好ましい環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に配列番号47で表されるアミノ酸配列またはその機能性バリアントもしくは断片を含むまたはそれからなる。さらにより好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に配列番号47で表されるL-鏡像異性体を含むまたはL-アミノ酸配列からなる。このペプチドは本明細書ではDOS104Lと呼ばれる。
【0061】
本明細書に記載されたポリペプチドまたはペプチドは、当業者に一般的に知られた標準ペプチド合成方法を用いて新規に合成され得、したがって、その後、本明細書に記載された治療的適用のいずれかに用いられ得ることが理解されるであろう。したがって、ペプチドのいずれも、本明細書に提供される配列の隣接アミノ酸間にペプチド結合を形成して、完全な配列長へ構築する、すなわち、1番目のアミノ酸が提供され、それへ2番目のアミノ酸が付着するなど、ペプチドの所望の長さまで続くことにより作製することができる。それゆえに、完全なセストリン1、2、もしくは3の配列(好ましくはセストリン2)またはそのより短い短縮体から始めて、所望のペプチド長に達するまでN末端および/またはC末端からアミノ酸を除去することによりポリペプチドの長さを減少させる必要はない。実際、速さ、便利さ、および費用のために、ポリペプチド、またはその生物学的活性のあるバリアントもしくは断片は、新規のペプチド合成方法を用いて作出されることが好ましい。いったんポリペプチドまたはペプチドが合成されたならば、その後、それらは環化を起こすことができる。
【0062】
配列番号8~84として表された配列のいずれも容易に環化して、第1の態様の環状ポリペプチド、または誘導体もしくは類似体を形成し得ることが理解されるであろう。例えば、ペプチドの環化は、側鎖-側鎖、頭部-側鎖、尾部-側鎖、頭部-尾部(C末端-N末端)、またはバックボーン-バックボーンの環化技術によって達成することができる。一つの好ましい実施形態において、頭部-尾部の環化は、環状ポリペプチドが作製される好ましい方法である。環状ポリペプチドは、古典的溶液(液)相直鎖ペプチド環化かまたは樹脂(固体)に基づいた環化かのいずれかを用いて合成され得る。この実施形態において、ポリペプチドは、環化切断アプローチを用いて作製され、そのアプローチにおいて、環状ポリペプチドは、段階的な直鎖ペプチド合成後の環化により合成される。この方法の利点は、側鎖が繋ぎ止められる必要がないことであり、そのアプローチをより一般的なものにしている。好ましくは、使用前に、結果として生じた、環状ペプチドの試料をMALDI-TOF MSにより分析することができる。
【0063】
好ましい実施形態において、環化は、アミド結合を通して達成される。あるいは、環化は、エステル結合またはジスルフィド結合を通して達成され得る。
【0064】
したがって、第2の態様において、配列番号8~84のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる環状ポリペプチド、その誘導体または類似体が提供される。
【0065】
実施例に記載されているように、本発明者らは、セストリン2に由来するDOS化合物(例えば、DOS46L)(すなわち、第1の態様のポリペプチド)は、sMAC複合体内のセストリン2に加えて、セストリン1およびセストリン3タンパク質に結合しそれを阻害することを示した(
図8D)。実際、本発明者らは、DOS化合物のいくつかが、全ての3つのセストリンタンパク質(セストリン1、セストリン2、およびセストリン3)にわたって保存されまたは相同性を有することを発見し、そのことは、同じ結合/阻害性質を維持することが予想される。これらの化合物は、汎阻害剤と呼ばれる。しかしながら、本発明者らはまた、DOS化合物のいくつかが、セストリンの1つまたは2つのアイソフォームを特異的に結合または阻害することができるのみである、すなわち、それらが選択的阻害剤であることを発見した。
【0066】
しかしながら、直接的結合は、DOSセストリン阻害機能の必須条件ではないことは考慮されるべきである。例えば、DOS46Lは、インビトロで組換え型セストリン3と直接的には結合しないが、それは、sMAC全体を有する実在の細胞(最も好ましくは、T細胞)においてセストリン3と複合体を形成して見出され、それが、結果として、sMAC複合体破壊による汎セストリン阻害を生じる(
図8B~D)。
【0067】
したがって、一実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1、セストリン2、およびセストリン3に結合しおよび/またはそれを阻害し得る。この実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1、セストリン2、およびセストリン3の阻害剤(またはアンタゴニスト)である。あるいは、別の実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1、セストリン2、および/またはセストリン3に選択的に結合しおよび/またはそれを阻害し得る。この実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1、セストリン2、および/またはセストリン3の選択的阻害剤である。
【0068】
別の実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン2に結合せずおよび/またはそれを阻害せず、セストリン1および/またはセストリン3に選択的に結合しおよび/またはそれを阻害し得る。この実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1および/またはセストリン3の選択的阻害剤である。
【0069】
別の実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン3に結合せずおよび/またはそれを阻害せず、セストリン1および/またはセストリン2に選択的に結合しおよび/またはそれを阻害し得る。この実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1および/またはセストリン2の選択的阻害剤である。
【0070】
別の実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1に結合せずおよび/またはそれを阻害せず、セストリン2および/またはセストリン3に選択的に結合しおよび/またはそれを阻害し得る。この実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン2および/またはセストリン3の選択的阻害剤である。
【0071】
一実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1の選択的阻害剤であり、セストリン1が、実質的に配列番号1、2、もしくは3で表されるアミノ酸配列、またはそのバリアントもしくは断片を有する。
【0072】
好ましくは、この実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1の選択的阻害剤であり、実質的に配列番号58~60、62、64、88~91、93、98~112、115、120、125、127~129、131、132、または134~147で表されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。さらにより好ましくは、セストリン1の選択的阻害剤は、
図30に見出すことができ、DOSsel
*として示されている。例として、配列番号138はセストリン1の選択的DOS阻害剤である。その配列はPLPLHである。
【0073】
別の実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン3の選択的阻害剤であり、セストリン3が、実質的に配列番号5、6、もしくは7で表されるアミノ酸配列、またはそのバリアントもしくは断片を有する。
【0074】
好ましくは、この実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン3の選択的阻害剤であり、実質的に配列番号47、58もしくは77、62~65、71~73、149、151~153、156~158、163~169、173、175、176、180~186、188、189、191~195、200、201、または203~205で表されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。さらにより好ましくは、セストリン3の選択的阻害剤は、
図31に見出すことができ、DOSsel
***として示されている。例として、配列番号167はセストリン3の選択的DOS阻害剤である。その配列はRGGGSである。
【0075】
本発明者は、
図26に示されているように、一般式を作成している。
【0076】
【0077】
したがって、好ましくは、本発明の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、式(I)の環化形態を含むまたはそれからなる。
【0078】
式(I)のR基は、最も好ましくは、当業者に周知の標準アミノ酸から選択されることが理解されるであろう。したがって、式(I)のR基は、以下のアミノ酸のいずれか1個から選択され得る:アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、および/またはチロシン。加えて、一般式における任意のアミノ酸が、当業者に知られている非天然バリアントで置換され得るという可能性が観察される。
【0079】
誤解を避けるために記すと、用いられ得る非天然アミノ酸には、以下が挙げられるが、それらに限定されない:2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸、ベータ-アラニン、ベータ-アミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、ピペリジン酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、2,4-ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、N-エチルアスパラギン、ヒドロキシリジン、アロ-ヒドロキシリジン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ-イソロイシン、N-メチルグリシン、サルコシン、N-メチルイソロイシン、6-N-メチルリジン、N-メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン。
【0080】
一実施形態において、式(I)を含むまたはそれからなる環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体を作出する、
(i)末端のNH2基とCOOH基(すなわち、ペプチド結合);
(ii)NH2基とNH2基(すなわち、ヒドラジン結合);
(iii)NH2基とCONH2基(すなわち、一級アミド結合);
(iv)N=NH基とNH2基(すなわち、ヒドラジン結合);
(v)NH2基とOH基(すなわち、ヒドロキシルアミン結合);
(vi)NH2基とSH基(すなわち、チオール-ヒドロキシルアミン結合);
(vii)NH2基とSR基(すなわち、ヒドロスルフィド結合);
(viii)COOH基とCONH2基(すなわち、アミド結合);
(ix)COOH基とCOOH基(すなわち、ジカルボン酸結合);
(x)COOH基とN=NH基(すなわち、カルボキシル-アミドゲン結合);
(xi)COOH基とOH基(すなわち、ヒドロキシカルボキシル結合);
(xii)COOH基とSH基(すなわち、チオール結合);
(xiii)COOH基とSR基(すなわち、チオール結合);
(xiv)N=NH基とCONH2基(すなわち、アミドゲン結合);
(xv)N=NH基とOH基(すなわち、N-ヒドロキシルアミン結合);
(xvi)CONH2基とCONH2基(すなわち、ジアミド結合);
(xvii)CONH2基とSR基(すなわち、s-アミド結合);
(xviii)SR基とOH基(すなわち、ヒドロキシ-チオール結合);
(xix)SR基とNH基(すなわち、チオールアミン結合);
(xx)NH2基とNH基(すなわち、ヒドラジン結合);
(xxi)COOH基とNH基(すなわち、アミノ-プロパン酸結合);
(xxii)SH基とOH基(すなわち、親水性結合);
(xxiii)SH基とNH基(すなわち、アミノ-チオール結合);
(xxiv)OH基とNH基(すなわち、ヒドロキシルアミン結合);
(xxv)OH基とOH基(すなわち、ヒドロキシ結合);
(xxvi)CONH2基とOH基(すなわち、ヒドロキシアミド結合);
(xxvii)SH基とSH基(すなわち、ジチオール結合);
(xxviii)CONH2基とNH基(すなわち、ヒドロキシアミド結合);または
(xxix)NH基とNH基(すなわち、ジアンモニウム結合)
の結合またはコンジュゲーションを含むが、それらに限定されない。
【0081】
頭部-尾部のNH
2-COOH環化とは異なる上記の結合のいずれも、分子の任意の地点において起こって、DOS
alt(同じ位置におけるblast検索上でセストリン1/3とセストリン2の間に保存されたアミノ酸残基を有する環状ポリペプチド)、DOS
sel(同じ位置におけるblast検索上でセストリン1/3とセストリン2との間に保存されたアミノ酸残基を有しない環状ポリペプチド)、およびDOS
sim(blast検索が、異なる位置で、相同性、例えば、化学的類似性の領域を同定している)を生成し得る。最も好ましくは、環化は、配列における必須のアミノ酸を破壊すべきではない。誤解を避けるために記すと、ここでの必須とは、Blast検索上で少なくとも1つの他のセストリンタンパク質において保存されているアミノ酸を意味する。進化および/または選択的スプライシング中に起こるフレームシフトの結果として、そのタンパク質の異なる位置における、いかなるセストリンにもわたる少なくとも3アミノ酸の保存モチーフ(五量体配列内で必ずしも連続しているとは限らない)の存在にも注目される。誤解を避けるために記すと、保存モチーフもまた必須と見なされるべきである。例として、DOS46Lの保存モチーフはFIPであり、一方、DOS144Dの保存モチーフはWL-Gである。DOS46LをDOS144Dと比較して、本発明者らは、DOS46Lにおける頭部(A)-尾部(V)の環化が末端の非必須AおよびV(頭部におけるアラニンおよび尾部におけるバリン)を必要とし、その結果として、頭部(E)-尾部(G)の環化が必須アミノ酸(尾部におけるG、グリシン)を破壊するDOS144Dにおける頭部-尾部の環化より、良い結果を生じている(
図3)ことを発見した。その結果は、必須アミノ酸に対する非必須アミノ酸への環化の優位性を示した。
【0082】
一実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、以下のように:
x1x2x3x4x5 [配列番号85]
(式中、x1、x2、x3、x4、またはx5は任意のアミノ酸残基である)
配列番号85として本明細書に提供されるコンセンサスまたは再現性(recurrentem)配列を含むまたはそれからなる。一実施形態において、x1、x2、x3、x4、またはx5は、無極性かつ中性のアミノ酸、すなわち、A、G、I、L、M、F、P、またはVであり得る。
【0083】
別の実施形態において、x1、x2、x3、x4、またはx5は、極性かつ中性のアミノ酸、すなわち、C、S、T、Y、N、またはQであり得る。
【0084】
別の実施形態において、x1、x2、x3、x4、またはx5は、極性かつ塩基性のアミノ酸、すなわち、H、K、またはRであり得る。
【0085】
別の実施形態において、x1、x2、x3、x4、またはx5は、極性かつ酸性のアミノ酸、すなわち、DまたはEであり得る。
【0086】
好ましくは、x1は、A、P、H、L、R、M、D、F、V、I、E、N、Y、S、Q、もしくはTであり;
x2は、Y、A、L、R、M、F、K、V、E、I、D、S、Q、N、WもしくはTであり;
x3は、L、A、S、R、M、D、E、K、F、T、Q、C、V、P、IもしくはNであり;
x4は、L、A、E、S、K、D、V、I、F、Q、H、C、T、P、N、R、もしくはYであり;および/または
x5は、L、R、A、E、S、K、I、P、D、F、H、Y、C、T、N、Q、V、もしくはMである。
【0087】
したがって、一実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、配列番号85またはそのバリアントもしくは断片に示されているアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0088】
好ましくは、配列番号85において、x1は、A、P、H、L、R、M、またはDである。好ましくは、x2は、Y、A、L、またはRである。好ましくは、x3は、L、A、S、またはRである。好ましくは、x4は、L、A、またはEである。好ましくは、x5は、L、R、A、またはEである。好ましくは、環化は、コンセンサス位置内のアミノ酸で起こるべきではない。万一、環化がコンセンサス位置内の2個以上のアミノ酸間で起こる場合、ソフトウェアに基づいたアラインメントを用いて、再現性がより低いものが好まれるように、どのアミノ酸が環化のために選択されるべきかを決定し得る。
【0089】
コンセンサス性または再現性の他に、かつそれに加えて、最も好ましくは少なくとも2つのセストリンタンパク質において保存されかつターゲティングでの汎セストリン阻害の原因となる少なくとも3アミノ酸(必ずしも連続しているとは限らない)の、上記で指摘されているような保存モチーフ(コンセンサス)の存在が注目される。それは、タンパク質におけるそれらの正確な位置を問わず(例えば、最も好都合には、最初の160アミノ酸内であるが、そのタンパク質内のどこでも存在し得る)、おそらくタンパク質進化および/または選択的スプライシングによる可能性が高い、フレームシフトの結果である。したがって、これらのモチーフは、コンピュータに基づいた検索で明らかとならないが、それらは、1個前方の位置から開始して(例として、1アミノ酸ペースで)、DOS配列をフレームシフトした時現れる。上述のように、例として、このフレームシフトによって、好ましいDOS化合物のうちの2つ、DOS46LおよびDOS144D内にFIPおよびWL-Gモチーフ(それぞれ、セストリン1、セストリン3、または両方のいずれかに存在する)の存在を本発明者らは発見することができた。
【0090】
したがって、好ましくは、環化は、セストリン機能に必須ではないアミノ酸残基で起こる。例えば、セストリン機能に必須ではないアミノ酸残基は、3つのセストリンのいずれにおいても、またはそのタンパク質全体を通してのそれらの保存モチーフのいずれの内においても保存されていないものであり得る。
【0091】
別の実施形態において、セストリン2とセストリン1の間でのアラインメント(
図28)を考慮すると、ポリペプチド、その誘導体または類似体の環化は、セストリン2(配列番号4)のアミノ酸残基4、9、10、15、16、19、20、21、24、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、39、40、41、46、50、56、61、63、65、66、67、71、73、84、91、94、96、99、103、108、109、110、131、134、147、185、204、217、220、226、228、230、233、234、236、237、238、239、240、241、244、249、251、252、255、256、272、273、274、277、284、292、298、299、301、303、304、306、309、310、311、313、314、319、331、333、334、343、359、369、431、442、もしくは467、および/またはセストリン1(配列番号1)のアミノ酸残基1~68、72、77、78、79、84、85、88、89、90、93、95、96、97、98、99、100、102、103、104、109、113、119、124、126、128、129、130、131、135、137、148、155、158、160、163、167、172、173、174、195、198、211、249、268、281、284、290、292、294、297、298、300~312、315、319、320、321、323、325、326、329、330、346、347、350、357、365、371、372、374、376、378、381、382、383、385、386、391、403、405、414、430、440、502、513、もしくは538で起こる。
【0092】
別の実施形態において、セストリン2とセストリン3の間でのアラインメント(
図29)を考慮すると、ポリペプチド、その誘導体または類似体の環化は、セストリン2(配列番号4)のアミノ酸残基1、2、4、5、10、11、14~29、34、35、36、39、40、41、50、56、59、61、63、66、69、70、71、81、87、91、94、96、99、103、108、109、110、131、134、142、143、147、151、180、192、204、217、220、222、224、226、228、230、231、233、234、239、240、241、243、244、245、246、249、251、255、256、272、273、277、289、299、301、302、303、306、307、310、313、314、320、331、333、334、357、359、369、380、342、もしくは367、および/またはセストリン3(配列番号5)のアミノ酸残基1~14、16、17、22、23、30、31、32、35、36、37、46、52、55、57、59、62、65、66、67、77、83、87、90、92、95、99、104、105、106、127、130、138、138、143、147、176、188、200、213、216、218、220、222、224、226、227、229、230、232、234、235、236、237、238、239、243、244、245、247、248、249、250、253、255、259、260、276、280、292、302、304、305、308、309、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、325、326、332、343、345、346、369、371、381、392、454、もしくは479で起こる。
【0093】
好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、免疫細胞におけるセストリンを標的とする。より好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および/またはT細胞(Tリンパ球)におけるセストリンを標的とする。さらにより好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、CD4+および/またはCD8+ T細胞におけるセストリンを標的とする。さらにより好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、CD4+ CD27+ CD28+細胞および/またはCD4+ CD27- CD28+細胞におけるセストリンを標的とする。より好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、CD4+ CD27- CD28- T細胞(すなわち、老化T細胞)におけるセストリンを標的とする。
【0094】
好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、サイトカイン産生を誘導しまたは回復させる。例えば、好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、IFNガンマ、TNFアルファ、IL-10、および/またはIL-4の産生を誘導しまたは回復させる。好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、免疫細胞における、さらにより好ましくは、T細胞におけるサイトカイン産生を誘導しまたは回復させる。最も好ましくは、T細胞は老化T細胞である。
【0095】
好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、免疫老化を防止しまたは反転させる。
【0096】
免疫老化は、自然に加齢により引き起こされる免疫系の緩やかな劣化である(Montecino-Rodriguez et al., 2013)。免疫老化は、宿主の感染に対して応答する能力と、長期免疫記憶の、特にワクチン接種による、発生の両方に影響を及ぼす(Goronzy and Weyand, 2013)。免疫老化は、高齢者の中での罹患および/または死亡の頻度の増加の主な要因であると考えられている。免疫老化は、短いテロメア、内因性DNA損傷、テロメラーゼ活性の欠乏、または本発明者により最近、発見されたように(Lanna (Group), 2020)、抗原提示細胞からT細胞へのテロメア移動の喪失、およびセストリン発現の増加により引き起こされる、抗原刺激に対する応答性の喪失と共に、老化リンパ球、特に老化T細胞の年齢依存性蓄積により引き起こされる。本化合物は、抗原提示細胞からT細胞への両方のテロメア移動を回復させることができ、その結果として、
図23に示されているように、テロメアを獲得したT細胞におけるテロメア伸長を生じる。したがって、好ましくは、本発明による環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリンに結合しそれを阻害し、その結果として、免疫老化の防止を生じる。
【0097】
好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、免疫系を若返らせるように構成される。
【0098】
「免疫系を若返らせること」とは、抗原刺激に対する免疫細胞、特にT細胞の応答性を回復させることを意味し得る。追加として、免疫系を若返らせることとは、免疫細胞におけるテロメアの長さおよび/もしくは移動、ならびに/またはテロメラーゼ活性を回復させることを意味し得る。免疫系を若返らせることとはまた、免疫細胞、好ましくはT細胞における抗原特異的増殖および/またはサイトカイン産生を回復させることを意味し得る。加えて、若返りは、B細胞および/またはCD8+ T細胞および/またはナチュラルキラー細胞増殖による抗原特異的抗体産生を回復させることを意味し得る。
【0099】
実施例に記載されているように、本発明者らは、本発明の新規な環状ポリペプチド、誘導体、または類似体(すなわち、DOS化合物)を作製しており、それらは、単一用量で加齢中に免疫を生き返らせることができる。例えば、本発明者らは、それらの環状ペプチド(DOS)の単回注射が、老齢マウスにおいて抗ウイルス応答を回復させたことを見出しており、それゆえに、驚くべきことに、DOSが次世代ワクチン製剤へ加えられ得ることを示している。追加として、本発明者らは、DOS化合物が、幹様長命メモリーT細胞のレベルを増加させながら、老化T細胞を減少させたことを示している(Gattinoni et al., 2009, 2011)。したがって、その化合物は、細胞、例えば、移植のための骨髄常在細胞において、幹様状態を誘導しまたは幹細胞性を増加させるために用いることができる(Copelan, 2006)。DOS化合物はまた、DOS処置により、IFNガンマ、TNFアルファ、およびIL-10などのサイトカインのレベルを増加させ、したがって、いくつかの加齢関連状態を予防し、寛解させ、もしくは処置するために用いることができ、またはそれらは、
図25に示されているように、抗原特異的様式での免疫刺激剤として作用する。
【0100】
したがって、本発明の第3の態様において、治療における使用のための、第1または第2の態様による環状ポリペプチド、その誘導体または類似体が提供される。
【0101】
本発明の第4の態様において、治療における使用のための、第1または第2の態様による環状ポリペプチド、その誘導体または類似体をコードする核酸が提供される。
【0102】
核酸分子は、単離または精製された核酸配列であり得る。核酸配列は、DNA配列であり得る。核酸分子は合成DNAを含み得る。核酸分子はcDNAを含み得る。核酸は、異種性プロモーターと作動可能に連結され得る。環状ポリペプチド、その誘導体または類似体をコードする核酸配列は、治療における使用のためにまたはクローニングを目的として、遺伝的構築物へ組み入れられ得る。
【0103】
したがって、一つの好ましい実施形態において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体をコードする核酸分子は遺伝的構築物である。より好ましくは、核酸分子または遺伝的構築物は組換えベクター内で提供される。
【0104】
本発明の遺伝的構築物は、発現カセットの形をとり得、その発現カセットは、宿主細胞における、コードされた環状ポリペプチド、その誘導体または類似体の発現に適し得る。遺伝的構築物は、それがベクター内に組み入れられることなしに、宿主細胞へ導入され得る。例として、核酸分子であり得る遺伝的構築物は、リポソームまたはウイルス粒子内に組み入れられ得る。
【0105】
あるいは、精製された核酸分子(例えば、ヒストンを含まないDNAまたは裸のDNA)が、宿主細胞へ適切な手段、例えば、直接的エンドサイトーシスの取込みにより直接的に挿入され得る。クローニングを目的として、構築物は、トランスフェクション、感染、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、プロトプラスト融合、または弾道的衝撃により宿主対象の細胞(例えば、細菌、真核生物、または動物の細胞)へ直接的に導入され得る。
【0106】
あるいは、本発明の遺伝的構築物は、微粒子銃を用いて宿主細胞へ直接的に導入され得る。あるいは、遺伝的構築物は、適切な宿主細胞における発現のために、組換えベクター内に存在し得る。処置されている対象への投与について、構築物は、AAVなどのファージ送達系に含有され得る。
【0107】
組換えベクターは、プラスミド、コスミド、またはファージであり得る。そのような組換えベクターは、宿主細胞を遺伝的構築物で形質転換するのに、およびそこにおいて発現カセットを複製するのに有用である。当業者は、本発明の遺伝的構築物が、発現を目的として、多くの型のバックボーンベクターと組み合わせられ得ることを理解するであろう。組換えベクターは、様々な他の機能性エレメント、例えば、遺伝子発現を開始するための適切なプロモーターを含み得る。例として、組換えベクターは、それが、宿主細胞のサイトゾルにおいて自律的に複製するようにデザインされ得る。この場合、DNA複製を誘導または制御するエレメントが組換えベクター内に必要とされ得る。あるいは、組換えベクターは、それが宿主細胞のゲノムへ組み込まれるようにデザインされ得る。この場合、標的組込み(例えば、相同組換えによる)を好むDNA配列が想定される。
【0108】
クローニングを促進するために、組換えベクターはまた、クローニング工程において選択マーカーとして、すなわち、トランスフェクトまたは形質転換されている細胞の選択を可能にするために、および異種性DNAを組み入れたベクターを有する細胞の選択を可能にするために、用いられ得る遺伝子をコードするDNAを含み得る。あるいは、選択マーカー遺伝子は、目的の遺伝子を含有するベクターと同時に用いられ得る異なるベクター内にあり得る。ベクターはまた、コード配列の発現を制御することに関与するDNA、または発現した環状ポリペプチドを宿主細胞のある特定の部分へとターゲティングするためのDNAを含み得る。
【0109】
第5の態様において、微生物感染、加齢関連状態、またはT細胞媒介性疾患を処置し、予防し、または寛解させる際における使用のための、第1もしくは第2の態様による環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸が提供される。
【0110】
第6の態様において、対象において微生物感染、加齢関連状態、またはT細胞媒介性疾患を処置し、予防し、または寛解させる方法であって、そのような処置を必要としている対象へ、第1もしくは第2の態様による環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸の治療有効量を投与するステップを含む、方法が提供される。
【0111】
微生物感染は細菌性、ウイルス性、真菌性、または原生生物であり得る。
【0112】
加齢関連状態は、免疫系の加齢および/または減退に伴う、それにより引き起こされる、または関連する状態である。好ましくは、加齢関連状態は、セストリン依存性sMAC活性化および/または免疫老化により特徴付けられる(Lanna et al., 2017)。例えば、加齢関連状態は、癌(例えば、小児神経芽細胞腫、メラノーマ、肝臓、膵臓、精巣、もしくは膵臓の癌(Guo et al., 2020;Kumar et al., 2018;Wang et al., 2018;Won et al., 2019;Zhao et al., 2017))、喫煙誘発性肺気腫(Heidler et al., 2013)、てんかん(Johnson et al., 2015)、うつ病(Kato et al., 2019)、代謝疾患(EL-Ashmawy and Ahmed, 2019)、骨粗鬆症(Oh et al., 2021)、または神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病(Rai et al., 2016)もしくは認知症(Chen et al., 2019)、加えて、勃起不全、不妊、および多嚢胞性卵巣症候群(Xu et al., 2021)からなる群から選択され得る。
【0113】
T細胞媒介性疾患は、感染性疾患(例えば、微生物感染)、癌、自己免疫障害(例えば、I型糖尿病を含む)、炎症性障害、様々な傷害(化学的、電気的、物理的)、潰瘍、および火傷を含む皮膚障害からなる群から選択される疾患であり得る。
【0114】
特に実施例および
図5に示されているように、いくつかのDOS化合物は、全ての3つのセストリンを阻害する能力を有し(例えば、DOS46LおよびDOS144D)、したがって、汎阻害剤として定義することができる。他のものは、1つまたは2つのセストリンだけを阻害し(例えば、DOS104DおよびDOS117L)、したがって、選択的阻害剤として定義することできる。したがって、これは、処置される状態に依存して、sMACを不活化する汎阻害剤かまたは選択的阻害剤かのいずれかを選択する可能性を示している。例として、ある特定の治療的アプローチ、例えば、細菌またはウイルス感染に対するワクチン接種は、セストリンの汎阻害(例えば、DOS46Lによる)から恩恵を受け得、一方、他の状態、例えば、てんかんは、セストリン3により調節され(Johnson et al., 2015)、選択的セストリン3阻害剤、例えば、DOS117Lから恩恵を受け得る。
【0115】
したがって、一実施形態において、てんかんを処置し、予防し、または寛解させる際における使用のための、実質的に配列番号47、58もしくは77、62~65、71~73、149、151~153、156~158、163~169、173、175、176、180~186、188、189、191~195、200、201、または203~205で表されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる環状ポリペプチド、その誘導体または類似体が提供される。これらのペプチドがセストリン3を阻害することが理解されるであろう。
【0116】
別の実施形態において、微生物感染を処置し、予防し、または寛解させる際における使用のための、実質的に配列番号8、13、14、15、38、68、または70で表されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる環状ポリペプチド、その誘導体または類似体が提供される。これらのペプチドがセストリン1、2、および3のそれぞれを阻害することが理解されるであろう。
【0117】
第7の態様において、第1もしくは第2の態様の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸、およびワクチンを含む組成物が提供される。
【0118】
第8の態様において、免疫応答を刺激する際における、好ましくはワクチンブースターとしての使用のための、第1もしくは第2の態様の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸が提供される。
【0119】
ワクチンは、任意の抗微生物性ワクチン、例えば、抗ウイルス、抗細菌、抗真菌、または抗原生生物ワクチンであり得る。
【0120】
好ましくは、第1または第2の態様の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、T細胞媒介性免疫応答を刺激する際において使用される。
【0121】
本発明による環状ポリペプチド、その誘導体または類似体が、微生物(例えば、細菌またはウイルス)感染または加齢関連状態を処置し、寛解させ、または予防するための単剤治療(すなわち、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体の使用)に用いられ得る薬物に使用され得ることが理解されるであろう。例えば、DOS(例えば、DOS46L)の単剤治療の使用は、
図18において単一用量投与後に実証された。この例において、DOSの単回注射は、ウイルス感染(H1N1 PR8/54)の致死的曝露による動物の死を防止した。とりわけ、その効果は長期間持続している(例えば、DOSの皮下投与から8週間後のウイルス曝露時における防御)。
【0122】
あるいは、本発明による環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、微生物(例えば、細菌またはウイルス)感染を処置し、寛解させ、または予防するために、既知の治療、例えば、コロナウイルスまたはインフルエンザなどの感染を予防するためのワクチン製剤の補助として、またはそれと併用して、用いられ得る。例えば、DOS(例えば、DOS46LまたはDOS144D)の組合せ使用は、
図15において、インフルエンザワクチン(FLUAD)と共の単一用量投与後に実証された。したがって、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、免疫細胞が若返ることができるように、ワクチン製剤と共に投与することができる。
【0123】
あるいは、本発明による環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、加齢関連状態を処置し、寛解させ、または予防するために、既知の治療の補助として、またはそれと併用して、用いられ得る。例えば、環状ポリペプチド、誘導体、または類似体は、チェックポイント阻害剤などの癌免疫療法薬と組み合わせて用いられ得る。
【0124】
本発明による環状ポリペプチドは、特に組成物が用いられる様式に依存して、いくつかの異なる形をもつ組成物中に組み合わせられ得る。したがって、例えば、組成物は、粉末、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ハイドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル溶液、経皮パッチ、リポソーム懸濁液、または処置を必要としているヒトもしくは動物に投与され得る任意の他の適切な形をとり得る。本発明による薬物の媒体が、それが与えられる対象によって十分許容されるものであるべきであることが理解されるであろう。
【0125】
本発明による環状ポリペプチドを含む薬物は、いくつかの様式で用いられ得る。例として、経口投与が必要とされ得、その場合、環状ポリペプチドは、例えば、錠剤、カプセル、または液体の形をとって経口摂取され得る組成物内に含有され得る。あるいは、環状ポリペプチドは、タンパク質分解に対する抵抗性を与えることにより経口投与に有利に働くように、例えばメチル化により、修飾され得る。環状ポリペプチドを投与するための代替の選択肢は、鼻腔用スプレーを用いることであろう。したがって、本発明の環状ポリペプチドを含む組成物は、吸入により(例えば、鼻腔内に)投与され得る。組成物はまた、局所使用のために製剤化され得る。例として、クリームまたは軟膏が皮膚に塗布され得る。
【0126】
本発明による環状ポリペプチドはまた、持続または遅延放出性デバイス内に組み入れられ得る。そのようなデバイスは、例えば、皮膚の上または下に挿入され得、薬物は、数週間またはさらに数ヶ月間にわたって放出され得る。デバイスは、処置部位に少なくとも隣接して位置付けられ得る。そのようなデバイスは、本発明により用いられる環状ポリペプチドでの長期処置が必要とされかつそれが通常には頻繁な投与(例えば、少なくとも毎日の注射)を必要とする場合、特に有利であり得る。
【0127】
好ましい実施形態において、本発明による薬物は、血流への注射により、または処置を必要とする部位へ直接的に、対象へ投与され得る。注射は、静脈内(ボーラスまたは注入)、または皮下(ボーラスまたは注入)、または皮内(ボーラスまたは注入)であり得る。
【0128】
必要とされる環状ポリペプチド、その類似体または誘導体の量が、それの生物学的活性および生物学的利用率によって決定され、次にそれが、投与様式、環状ポリペプチドの生理化学的性質、およびそれが単剤治療として用いられているのかまたは併用治療で用いられているのかに依存することが理解されるであろう。投与の頻度もまた、処置されている対象内の環状ポリペプチドの半減期によって影響される。投与されるべき最適な投薬量は、当業者によって決定され得、使用される特定の環状ポリペプチド、医薬組成物の強度、投与様式、および処置されるべき状態の進行によって異なる。処置されている特定の対象に依存する追加の因子、例えば、対象の年齢、体重、性別、食事、および投与の時間は、投薬量を調整する必要性を生じる。
【0129】
一般的に、本発明による環状ポリペプチドの0.001μg/kg体重から10mg/kg体重の一日量が、どの環状ポリペプチドが用いられるかに依存して、細菌もしくはウイルス感染または加齢関連状態を処置し、寛解させ、または予防するために用いられ得る。より好ましくは、一日量は、0.01μg/kg体重から1mg/kg体重、さらにより好ましくは、およそ0.1μg/kgから100μg/kg体重、最も好ましくは、およそ0.1μg/kgから10μg/kg体重である。
【0130】
環状ポリペプチドは、細菌もしくはウイルス感染または加齢関連状態の発生の前、中、または後に投与され得る。一日量は、単回投与(例えば、1日1回の注射または鼻腔用スプレーの吸入)として与えられ得る。あるいは、環状ポリペプチドは、1日に2回またはそれ以上の投与を必要とし得る。例として、環状ポリペプチドは、0.07μgから700mg(すなわち、70kgの体重と仮定して)の1日2回(または、処置されている細菌もしくはウイルス感染または加齢関連状態の重症度に依存して、それ以上)の服用として投与され得る。処置を受ける患者は、目が覚めた時に1回目の服用、その後、夜に2回目の服用(2回投与計画においての場合)、またはその後、3時間もしくは4時間ごとの間隔で服用し得る。あるいは、持続放出性デバイスが、繰り返し投与を施す必要性なしに、本発明による環状ポリペプチドの最適な用量を患者へ供給するために用いられ得る。
【0131】
製薬業界(例えば、インビボ実験、臨床試験など)により通常、用いられるものなどの公知の手順が、本発明による環状ポリペプチドの特定の製剤および正確な治療計画(例えば、作用物質の一日量および投与の回数)を形成するために用いられ得る。本発明者らは、それらが、初めて、本発明の環状ポリペプチドの使用に基づいた、抗sMAC組成物を示唆するものだと考えている。
【0132】
したがって、本発明の第9の態様において、第1もしくは第2の態様による環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸の治療有効量、および任意に薬学的に許容される媒体を含む医薬組成物が提供される。
【0133】
本発明はまた、第10の態様において、第1もしくは第2の態様による環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸の治療有効量を、薬学的に許容される媒体と組み合わせるステップを含む、第9の態様による医薬組成物を作製するための方法を提供する。
【0134】
「対象」は、脊椎動物、哺乳動物、または飼い慣らされた動物であり得る。したがって、本発明による薬物は、任意の哺乳動物、例えば、家畜(例えば、ウマ)、ペットを処置するために用いられ得、または他の獣医学的適用において用いられ得る。しかしながら、最も好ましくは、対象はヒトである。さらにより好ましくは、対象は少なくとも50歳、60歳、70歳、80歳、90歳、または100歳である。
【0135】
環状ポリペプチドの「治療有効量」は、対象へ投与される時に微生物(例えば、細菌、またはウイルス、または原生生物、または寄生生物)感染もしくは加齢関連状態を処置しまたは所望の効果を生じるために必要とされる活性物質の量である、任意の量である。
【0136】
例えば、用いられる環状ポリペプチドの治療有効量は、約0.001mgから約800mgまで、好ましくは約0.01mgから約500mgまでであり得る。環状ポリペプチドの量が、約0.1mgから約100mgまでの量であることは好ましい。
【0137】
本明細書で言及される場合、「薬学的に許容される媒体」は、医薬組成物を製剤化する際において有用であると当業者に知られている、任意の既知の化合物、または既知の化合物の組合せである。
【0138】
一実施形態において、薬学的に許容される媒体は固体であり得、組成物は、粉末または錠剤の形をとり得る。固体の薬学的に許容される媒体には、香味剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁剤、色素、増量剤、流動促進剤、圧縮補助剤、不活性結合剤、甘味剤、保存剤、コーティング剤、または錠剤の崩壊剤として働き得る1つまたは複数の物質が挙げられ得る。媒体はまた、封入材料であり得る。粉末において、媒体は、本発明による微粉化活性物質と混合される微粉化固体である。錠剤において、活性物質(すなわち、モジュレーター)は、必要な圧縮特性を有する媒体と適切な割合で混合され、望まれる形およびサイズで圧縮され得る。粉末および錠剤は、好ましくは、最高99%の活性物質を含有する。適切な固体媒体には、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリドン、低融点ワックス、およびイオン交換樹脂が挙げられる。別の実施形態において、薬学的媒体は、ゲルであり得、組成物は、クリームまたは同種のものの形をとり得る。
【0139】
しかしながら、薬学的媒体は液体であってもよく、医薬組成物は溶液の形をとる。液体媒体は、溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ、エリキシル剤、および加圧組成物を調製することに用いられる。本発明による活性物質(環状ポリペプチド)は、水、有機溶媒、両方の混合物、または薬学的に許容される油もしくは脂肪などの薬学的に許容される液体媒体中に溶解または懸濁され得る。液体媒体は、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味剤、香味剤、懸濁剤、濃厚剤、着色剤、粘性調節剤、安定剤、または浸透圧調節剤などの他の適切な薬学的添加物を含有し得る。経口および非経口投与のための液体媒体の適切な例には、水(一部には、上記のような添加物、例えば、セルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を含有する)、アルコール(例えば、一価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコール)およびそれらの誘導体、ならびに油(例えば、分留ココナッツ油および落花生油)が挙げられる。非経口投与について、媒体はまた、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルであり得る。滅菌液体媒体は、非経口投与のための滅菌液状組成物において有用である。加圧組成物についての液体媒体は、ハロゲン化炭化水素または他の薬学的に許容される噴霧剤であり得る。
【0140】
滅菌溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋肉内、くも膜下腔内、硬膜外、腹腔内、静脈内、および特に皮下の注射により利用することができる。環状ポリペプチドは、投与時点に、滅菌水、食塩水、または他の適切な滅菌注射用媒体を用いて溶解または懸濁し得る滅菌固体組成物として調製され得る。
【0141】
本発明の環状ポリペプチドおよび組成物は、他の溶質または懸濁剤(例えば、溶液を等張性にするための十分な食塩水またはグルコース)、胆汁酸塩、アカシアゴム、ゼラチン、ソルビタンモノオレイン酸、ポリソルベート80(エチレンオキシドと共重合した、ソルビトールおよびそれの無水物のオレイン酸エステル)およびその他同種類のものを含有する滅菌溶液または懸濁液の形で経口投与され得る。本発明により用いられる環状ポリペプチドはまた、液体かまたは固体かのいずれかの組成物の形で経口投与することができる。経口投与に適した組成物には、丸剤、カプセル、顆粒、錠剤、および粉末などの固体の形、ならびに溶液、シロップ、エリキシル剤、および懸濁液などの液体の形が挙げられる。非経口投与に有用な形には、滅菌溶液、乳濁液、および懸濁液が挙げられる。
【0142】
本発明が、実質的に本明細書で言及された配列のいずれかのアミノ酸または核酸配列(その機能性バリアントまたは機能性断片を含む)を含む、任意の核酸もしくはペプチド、またはそのバリアント、誘導体、もしくは類似体に及ぶことが理解されるであろう。3つのセストリン中に異なる位置で見出すことができる少なくとも3アミノ酸の保存モチーフの存在が、タンパク質配列進化および/または選択的スプライシングの結果である可能性が高いことも注目される。例えば、FIPは、わずかに異なる位置ではあるが、セストリン1と3の両方において見出される、DOS46Lの保存ドメインであり、それでもなお強力な汎セストリン阻害を生じる。用語「実質的に、アミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列」、「機能性バリアント」、および「機能性断片」は、本明細書で言及された配列のいずれか1つのアミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列と少なくとも40%配列同一性、例えば、配列番号1~235として同定された配列との40%同一性などを有する配列であり得る。
【0143】
言及された配列のいずれかとの60%より高い、好ましくは65%より高い、より好ましくは70%より高い、さらにより好ましくは75%より高い、なおより好ましくは80%より高い配列同一性である、配列同一性を有するアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列もまた構想される。好ましくは、アミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列は、言及された配列のいずれかとの少なくとも85%同一性、より好ましくは、本明細書で言及された配列のいずれかとの少なくとも90%同一性、さらにより好ましくは少なくとも92%同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%同一性、さらにより好ましくは少なくとも97%同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%同一性、最も好ましくは少なくとも99%同一性を有する。
【0144】
当業者は、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間のパーセンテージ同一性を計算する方法を理解するであろう。2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間のパーセンテージ同一性を計算するために、その2つの配列のアラインメントがまず、調製されなければならず、その後、配列同一性値が計算される。2つの配列についてのパーセンテージ同一性は、以下に依存して異なる値をとり得る:(i)配列をアラインメントするために用いられる方法、例えば、ClustalW、BLAST、FASTA、Smith-Waterman(異なるプログラムにおいて実行される)、または3D比較からの構造アラインメント;および(ii)アラインメント方法に用いられるパラメータ、例えば、局所対大域アラインメント、用いられるペア-スコアマトリックス(例えば、BLOSUM62、PAM250、Gonnetなど)、およびギャップペナルティ、例えば、関数形式および定数。
【0145】
アラインメントを作成したならば、2つの配列間のパーセンテージ同一性を計算する多くの異なる方法がある。例えば、同一の数を以下で割り得る:(i)最も短い配列の長さ;(ii)アラインメントの長さ;(iii)配列の平均の長さ;(iv)ギャップではない位置の数;または(iv)オーバーハングを除く、等しくされた位置の数。さらに、パーセンテージ同一性がまた、長さに強く依存することが理解されるであろう。したがって、配列のペアが短ければ短いほど、配列同一性が高くなることが偶然に起こると予想され得る。
【0146】
したがって、タンパク質またはDNA配列の正確なアラインメントが複雑な過程であることが理解されるであろう。人気があるマルチプルアラインメントプログラムClustalW(Thompson et al., 1994, Nucleic Acids Research, 22, 4673-4680;Thompson et al., 1997, Nucleic Acids Research, 24, 4876-4882)は、本発明に従ってタンパク質またはDNAのマルチプルアラインメントを作成するための好ましい方法である。ClustalWについての適切なパラメータは以下の通りであり得る:DNAアラインメントについて:ギャップ開始ペナルティ=15.0、ギャップ伸長ペナルティ=6.66、およびマトリックス=Identity。タンパク質アラインメントについて:ギャップ開始ペナルティ=10.0、ギャップ伸長ペナルティ=0.2、およびマトリックス=Gonnet。DNAおよびタンパク質アラインメントについて:ENDGAP=-1、およびGAPDIST=4。当業者は、最適な配列アラインメントのためにこれらを始めとするパラメータを変えることが必要であり得ることがわかるであろう。
【0147】
好ましくは、その後、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間のパーセンテージ同一性の計算は、そのようなアラインメントから(N/T)×100として計算され得、式中、Nは、配列が同一の残基を共有する位置の数であり、Tは、ギャップを含みかつオーバーハングを含むか除くかのいずれかでの、比較される位置の総数である。好ましくは、オーバーハングは、計算に含まれる。したがって、2つの配列間のパーセンテージ同一性を計算するための最も好ましい方法は、(i)例えば上記に示されている、適切なセットのパラメータを用いるClustalWプログラムを用いて配列アラインメントを調製するステップ;ならびに(ii)NおよびTの値を以下の式:配列同一性=(N/T)×100へ挿入するステップを含む。
【0148】
類似した配列を同定するための代替方法は、当業者に知られているであろう。例えば、実質的に類似したヌクレオチド配列は、DNA配列またはそれらの相補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列によってコードされる。ストリンジェントな条件とは、ヌクレオチドが、フィルターに結合したDNAまたはRNAと、3×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、およそ45℃でハイブリダイズし、続いて、0.2×SSC/0.1%SDS中、およそ20~65℃で少なくとも1回洗浄されることを意味する。あるいは、実質的に類似したポリペプチドは、配列番号1~235に示された配列と、少なくとも1個だが、5個未満、10個未満、20個未満、50個未満、または100個未満のアミノ酸だけ、異なり得る。
【0149】
遺伝暗号の縮重により、本明細書に記載された任意の核酸配列が、それによりコードされたタンパク質の配列に実質的に影響することなく、変わりまたは変化して、その機能性バリアントを与え得ることは明らかである。適切なヌクレオチドバリアントは、配列内で同じアミノ酸をコードする異なるコドンの置換によって変化した配列を有し、それゆえに、サイレント変化を生じるものである。他の適切なバリアントは、置換するアミノ酸と類似した生物物理学的性質の側鎖を有するアミノ酸をコードする異なるコドンの置換により変化して、保存的変化を生じている配列の全部または一部分を含むことを除いて、相同ヌクレオチド配列を有するものである。例えば、小さく、無極性で、疎水性のアミノ酸には、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、およびメチオニンが挙げられる。大きく、無極性で、疎水性のアミノ酸には、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが挙げられる。極性の中性アミノ酸には、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられる。正荷電(塩基性)アミノ酸には、リジン、アルギニン、およびヒスチジンが挙げられる。負荷電(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。したがって、どのアミノ酸が、類似した生物物理学的性質を有するアミノ酸で置き換えられ得るかが理解され、当業者は、これらのアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を知っているであろう。例として、
図32~33におけるコンセンサスでDOS
simの化合物を作製するためにそのことが考慮されている。
【0150】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に記載された特徴の全部、および/またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスのステップの全部は、上記の態様のいずれかと任意の組合せで、そのような特徴および/またはステップの少なくとも一部がお互いに排他的である場合の組合せを除いて、組み合わせられ得る。
【0151】
本発明のより良い理解のために、およびそれの実施形態がどのように実行へ移され得るかを示すために、今、例として、添付の図について言及する。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【
図1】老化T細胞におけるセストリン-MAPK複合体(sMAC)のモデルを示す図である。
【
図2】AMPK1活性のパーセンテージにより示された場合の、本発明のポリペプチド(すなわち、本明細書でDOSペプチドと呼ばれる)の様々な実施形態の阻害活性を示す図である。DOSペプチド阻害活性を、組換えセストリン1およびセストリン2の存在下での、AMPKキナーゼ反応アッセイにおけるATP消費によりスクリーニングした。
【
図3】本発明のポリペプチド(DOS化合物)の効力を示す図である。IC50用量を、有意なセストリン2阻害を示す化合物について計算した。log濃度値が示されている。
【
図4】T細胞におけるDOSの細胞透過性およびそれのsMACへの配置を示す図である。(A~B)CD4+ T細胞を、健康なドナー由来の末梢血単核球(PBMC)から単離し、DOS化合物で処置した。(A)DOS-FITCおよびCD3-AF594で染色されたCD4+ T細胞の代表的な共焦点画像。(B)CD4+ CD27- CD28- 細胞(T
sen)およびCD4+ CD27+ CD28+ 細胞(T
erl)におけるフローサイトメトリーによるDOS46L透過の定量化。(C)sMACが存在するER(KDEL ERマーカー)におけるDOSの局在。
**p<0.01。
【
図5】DOS化合物によるシグナル破壊を示すヒートマップを示す図である。CD4+ T細胞を健康なドナー由来のPBMCから単離し、DOS化合物で4時間処置し、イムノブロット分析のために収集した。セストリン1、セストリン2、セストリン3、p-mTOR1、p-JNK、p-AMPK、p-ERK1/2、およびp-p38のヒートマップは、3~9つの実験の平均を表す。ヒストン3を対照として用いた。
【
図6】DOS46LによるsMAC破壊を示す図である。(A)CD4+ T細胞を、健康なドナー由来のPBMCから精製し、DOS46L(10uM)で、示された時間の間処置した。AMPKのセストリン2との結合を、免疫沈降したセストリン2の総レベルに対して定量化し、ELISAにより検出した。IgG免疫沈降物はバックグラウンド対照としての役割を果たした。(B)細胞を、プロテアソーム阻害剤MG-132(10uM)で30分間前処置し、続いて、DOS46L(10uM)で4時間処置した。細胞を、イムノブロット分析のために収集し、または免疫沈降へ進めた。セストリン2、p38、およびAMPKのレベルをイムノブロッティングにより評価した。H3をローディング対照として用いた。3つの実験の代表的な画像が示されている。(C)セストリン2免疫沈降物およびそれらの溶解物におけるユビキチン、セストリン2、およびヒストン3のイムノブロットレベルを分析した。代表的な画像が示されている(上部)。セストリン2免疫沈降物におけるユビキチン化タンパク質の平均値(下部)が示されている。結果は、4つの繰り返し実験の平均値±SDとして示されている。データを分析するためにスチューデントT検定を用いた。
**p<0.01
【
図7】DOS46Lの滴定を示す図である。(A~B)CD4+ CD27- CD28- T細胞を、健康なドナー由来のPBMCから単離し、増加性用量のDOS46L化合物で4時間処置し、イムノブロット分析のために収集した。(A)セストリン2、p-p38、およびH2Bのレベルをイムノプロットにより評価した。(B)セストリン2の定量化を、ヒストン3をローディング対照として、分析した。少なくとも3つの独立した実験の平均値±SEMが表されている。値は、一元配置ANOVA検定、その後、チューキーの事後検定を用いて、比較されている。(C~D)CD4+ CD27- CD28- T細胞を、DOS46L化合物(10uM)で0.5時間、1時間、2時間、および4時間処置し、示された時点においてイムノブロット分析のために収集した。(C)セストリン1、セストリン2、およびセストリン3のレベルをイムノブロットにより評価した。ヒストン3をローディング対照として用いた。(D)ヒストン3をローディング対照としての、セストリン1、セストリン2、およびセストリン3の定量化。少なくとも4つの独立した実験の平均値±SEMが表されている。値は、一元配置ANOVA検定、その後、チューキーの事後検定またはスチューデントT検定を用いて、比較されている。
*p<0.05、
**p<0.01
【
図8】DOS46LのsMACとの結合を示す図である。(A)ビオチン化DOS46Lを、フラグ-組換えセストリンと混合し、ストレプトアビジンで免疫沈降させ、フラグ-セストリンに関してイムノブロットした。DOS46Lはセストリンと直接的に結合する。3つの実験からの代表的な画像が示されている。(B~C)組換えセストリンはお互いに結合しない。(D)DOS46Lは、CD4 T細胞におけるsMAC複合体全体と結合する。CD4+ T細胞を、健康なドナー由来のPBMCから単離し、ビオチン化DOS46L化合物(10uM)で4時間処置した。細胞を、免疫沈降分析のために収集した。
【
図9】セストリン有りまたは無しで、DOSの存在下での細胞増殖を示す図である。CD4+ CD27- CD28- T細胞を、健康なドナー由来のPBMCから精製し、セストリンを除去するためにレンチウイルスベクターを形質導入し、CTV(Cell Trace Violet)で染色し、DOS46L化合物(10uM)で96時間処置した。細胞増殖を、FACS分析により評価した。shCtrl T細胞は、セストリンを発現した。9つの実験の代表。
【
図10】DOS46Lの免疫若返りを示す図である。(A)PBMCを、健康なドナー由来のPBMCから精製し、DOS46L化合物(10uM)で12日間処置した。老化T細胞および幹細胞を、FACS分析を用いて分析した。(B~C)未処置の試料に対する比率が表されている。各ドットは、個々のドナーである。(D)DOS46Lで24時間処置されたT細胞の酸素消費速度(OCR)を、Seahorseにより測定した。DOS46Lによる脂肪酸酸化(FAO)の誘導。(E)FAO指数を、Seahorseによる、FAO阻害剤エトモキシルの存在下または非存在下での、対照とDOS46L処置T細胞の間のOCR差により計算した。データを分析するためにスチューデントT検定を用いた。
**p<0.01;
***p<0.001。
【
図11】DOSによるサイトカイン産生を示す図である。PBMCを、健康なドナーから精製し、DOS46L化合物(10uM)で12日間処置し、その後、FACS分析により分析した。12日間のDOS46L刺激後の老化T細胞におけるサイトカイン分析。サイトカイン産生細胞の数は下線が引かれている。
【
図12】DOSによるインビトロIgG定量化を示す図である。(A)PBMCを全血から単離し、様々なDOS化合物(10uM)で処置した。IgGのレベルをELISAにより分析した。(B)DOS化合物(10uM)で処置されたマウス脾細胞。IgGのレベルをELISAにより分析した。データを分析するために、チューキーの事後補正検定と共のAnovaを用いた。
**p<0.01、
***p<0.001
【
図13】DOS処置されたマウス血液および組織におけるセストリンのレベルを示す図である。(A~B)老齢マウスに、DOS46L化合物(0.1mg/kgまたは1mg/kg)を皮下に接種した。接種後0時間目、48時間目、72時間目、および8週間目に血液を採取した。CD4+ T細胞集団においてセストリン2の薬力学をFACSにより分析した。(C)DOS46Lの単回投与(0.1mg/Kg)から10日後の、老齢マウスからの脾臓におけるセストリン発現の長期mRNAサイレンシング。未処置の同齢の対照が示されている。(D)DOS処置から72時間後、マウスを屠殺し、老組織を収集して、異なる器官におけるセストリンレベルをイムノブロッティングにより分析した。
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図14】免疫化後のDOSの長期効果を示す図である。老齢マウスに、DOS化合物(0.1mg/kgまたは1mg/kg)を皮下に接種した。免疫化から18日後(A)、36日後(B)、および8週間後(C)、血液を採取した。(D)18日間のDOS46での処置後のマウス由来の血液におけるIgGレベルとセストリン2との間の相関曲線。スチューデントT検定を適用した。
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図15】ワクチン接種と共のDOSの臨床効果を示す図である。老齢マウスに、DOS化合物の存在下または非存在下でワクチン接種し、6ヶ月後、H1N1 PR8/54を感染させた。マウスを14日間モニターし、彼らの生存(A)、臨床スコア(B)、および体重(C)を分析した。疾患重症度は(D)に要約されている。ボンフェローニ事後補正検定と共のANOVA。
**p<0.001、
***p<0.001
【
図16】感染前および後のインフルエンザ特異的IgG抗体およびそれらの中和効果の分析を示す図である。(A)ワクチン接種されかつH1N1 PR8/54に感染した若齢マウスおよび老齢マウス由来の血液中の循環インフルエンザ特異的IgG抗体の存在を、ELISAにより評価した。(B)ワクチン接種されかつDOS46L(0.1mg/Kg)で処置された若齢マウスおよび老齢マウス由来の血清の中和効果を、6ヶ月後、評価し、続いて、H1N1 PR8/54を感染させ、そのウイルスに対するマイクロ中和アッセイを行った。グラフは、ウイルス成長の阻害のパーセンテージを示す。各ドットは、期間中通しての個々のマウスである。ボンフェローニ事後補正検定と共のANOVAを用いた。
****p<0.0001;ns、有意でない。
【
図17】感染マウスの肺におけるDOSによるインビボ免疫活性化を示す図である。DOS化合物(単一用量)有りまたは無しで、FLUADでワクチン接種され、その後、6ヶ月後、H1N1 PR8/54に感染した老齢マウス由来の肺CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞におけるサイトカイン産生。ワクチン接種された若齢マウスは対照としての役割を果たした。群あたり10匹の動物の代表。
【
図18】DOSのみで処置されたマウスの生存データを示す図である。(A)老齢マウスを、DOSで処置しまたは処置せず、その後、72時間後または10週間後(長期)、H1N1 PR8/54に感染させた。マウスを14日間モニターし、彼らの生存を分析した。DOSで処置されなかった若齢マウスもまた示されている。ワクチン接種の非存在下、短期間と長期間の両方におけるインフルエンザ感染(3.5×10
5個のウイルス粒子)からマウスを防御するDOSの予防作用に注目されたい。臨床スコアは右側に示されている。群あたり7~10匹のマウスが示されている。若齢マウスは対照としての役割を果たした。(B)DOSのみで10日間処置されかつH1N1 PR8/54に感染した老齢マウスにおけるIgG力価。若齢対照および老齢対照もまた示されている。各ドットは個々のマウスである。(C)DOS処置以来長期感染したマウスの血清に実施されたマイクロ中和アッセイ。老齢対照および若齢対照もまた示されている。DOSのみの中和効果が、ワクチン接種されたマウスの中和効果に匹敵することに注目されたい。ボンフェローニ事後補正検定と共のANOVA。
****p<0.0001;
***p<0.001。
【
図19】老齢マウスの肺からのDOS化合物によるウイルスクリアランスを示す図である。肺を、感染後6日目に取り出した。(A)剖検肺分析および(B)ウイルスクリアランスを、ハウスキーピング遺伝子L34に対して標準化されたウイルスタンパク質PAの非存在により測定した。H1N1の感染の2日前にDOS46Lで処置されなかったまたは処置された老齢マウスの肺由来の細胞においてqPCRを実施した。マンホイットニー検定を用いた。
*p<0.05。
【
図20】インビボでの幹様メモリーT細胞へのDOS効果を示す図である。CD95
+ CD62L
+ CD44
- CD4
+ メモリーT細胞の中での幹様生成の時間経過を、DOS46L(0.1mg)の注射後10日目、21日目、30日目、および8週間目に、マウスの脾臓においてFACS分析によりモニターした。結果は、群あたり少なくとも3匹のマウスを代表する。
【
図21】DOSによるチェックポイント阻害を示す図である。DOS(10mM)の存在下または非存在下、抗CD3および抗CD28で12日間活性化された初代ヒト老化CD27
- CD28
- CD4
+ T細胞におけるPD1およびTim3発現。結果は6人のドナーを代表する。チェックポイント阻害剤陽性細胞のパーセンテージが示されている。DOSはチェックポイント発現を阻害する。UNは未処置の対照を表す。スチューデントt検定を用いた。
*p<0.05、
**p<0.001。
【
図22】DOS化合物による癌細胞死の誘導を示す図である。(左)不死化小児神経芽細胞腫細胞株(sh-sy5y)を、異なる濃度のDOS46LおよびDOS144D(1uMから20uMまで)で48時間処置し、その後、生死判別染色に関してFACSにより分析した。(右)乳癌細胞株(MCF-7)を、一定濃度のDOS46LおよびDOS144D(20uM)で48時間処置し、その後、生死判別色素染色に関してFACSにより分析した。UNは未処置の対照を表す。3連の培養物の結果が示されている。
【
図23】DOSの存在下でのAPCからT細胞へのテロメアのライブでの移動を示す図である。(A、左):Tel Cのチャネルにおけるベースライン蛍光を示すT細胞;(A、中央):APCと培養された、DOSで処置されたT細胞;(A、右):DOSの非存在下でAPCと共培養されたT細胞。DOSはテロメア移動を約2倍、増強する。3つの実験の代表。(B):テロメア延長をqPCRにより定量化した。APCに曝露されかつDOS46Lで処置されたまたは処置されなかったT細胞におけるシナプス駆動型テロメア延長(Δkb)。5人のドナーからの結果が示されている。テロメア長における回復が、若いT細胞において観察された延長と類似していることが注目される(Lanna (Group), 2020)。マンホイットニー検定を用いた。
*p<0.05。
【
図24】DOSによるCOVID特異的抗体の刺激を示す図である。高齢のドナー(75~95歳)由来のPBMCを全血から単離し、様々なDOS46LまたはDOS132L化合物(10μM)で処置した。IgGのレベルをELISAにより分析した。
**p<0.01。
【
図25】DOSによる抗原特異的増殖の誘導を示す図である。代理CD3/IL2活性化(A)または特異的抗原を負荷されたAPC(B)と共にDOS化合物で3日間処置された老化ヒトCD27
- CD28
- CD4
+ T細胞における回復した増殖(Ki67
*)を示すフローサイトメトリーアッセイ。DOSが、用いられた抗原と無関係にT細胞増殖を刺激することに注目されたい。(A)において5人のドナー、(B)において4人のドナーを代表する実験。データを分析するためにスチューデントT検定を用いた。
***p<0.001。
【
図26】本発明の環状ポリペプチドを作製するための、式(I)および異なる結合選択肢を示す図である。
【
図27-1】セストリン2との本発明の環状ポリペプチド、特にDOS46Lのドッキングを示す図である。
【
図28】ヒトセストリン2とヒトセストリン1のアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。
*は保存されたアミノ酸を示す;
**は化学的に類似したアミノ酸を示す。
【
図29】ヒトセストリン2とヒトセストリン3のアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。
*は保存されたアミノ酸を示す;
**は化学的に類似したアミノ酸を示す。
【
図30-1】セストリン1およびセストリン2に由来する環状ポリペプチド(DOS化合物)の比較を示す図である。保存されたアミノ酸残基は下線が引かれている。セストリン1とセストリン2の間での保存されたアミノ酸残基を有する環状ポリペプチドは、DOS代替的バリアント、すなわち、「DOS
alt」と名付けられている。セストリン1とセストリン2の間での保存されたアミノ酸残基を有しない環状ポリペプチドは、選択的DOS化合物、すなわち、「DOS
sel」と名付けられている。
【
図31-1】セストリン2およびセストリン3に由来する環状ポリペプチド(DOS化合物)の比較を示す図である。保存されたアミノ酸残基は下線が引かれている。セストリン2とセストリン3の間での保存されたアミノ酸残基を有する環状ポリペプチドは、DOS代替的バリアント、すなわち、「DOS
alt」と名付けられている。セストリン2とセストリン3の間での保存されたアミノ酸残基を有しない環状ポリペプチドは、選択的DOS化合物、すなわち、「DOS
sel」と名付けられている。
*****は、セストリン2とセストリン3の間で実際に保存されている代替的化合物を示す。
【
図32】セストリン1についてのDOS
sim環状ポリペプチドのアミノ酸配列を示す図である。DOS
sim環状ポリペプチドは、blast検索がセストリン1と2の間において異なる位置で相同性(化学的類似性)領域を同定しているものである。
【
図33】セストリン3についてのDOS
sim環状ポリペプチドのアミノ酸配列を示す図である。DOS
sim環状ポリペプチドは、blast検索がセストリン3と2の間において異なる位置で相同性(化学的類似性)領域を同定しているものである。
【
図34】セストリン2とセストリン1の間でのDOS
con環状ポリペプチドのアミノ酸配列を示す図である。DOS
conは、任意の2つのセストリンの間で重複しおよび/または化学的類似性を有するものである。
【
図35】セストリン2とセストリン3の間でのDOS
con環状ポリペプチドのアミノ酸配列を示す図である。DOS
conは、任意の2つのセストリンの間で重複しおよび/または化学的類似性を有するものである。
【
図36】DOS
supercon環状ポリペプチドのアミノ酸配列を示す図である。DOS
superconは、全ての3つのセストリンの間で重複しおよび/または化学的類似性を有するものである。
【実施例】
【0153】
本発明者らは、DOS(sMACの破壊剤)と名付けられた、セストリン-MAPK複合体(sMAC)の新規な環状ポリペプチド阻害剤を作製し、これらのポリペプチドDOS化合物が、セストリンをプロテアソーム分解へとターゲティングすることにより、sMACをナノモル量で阻害し得ることを実証している。
【0154】
材料および方法
ペプチドライブラリーを用いた、セストリン1によるAMPK1刺激の阻害のインビトロスクリーニング
1.組換えタンパク質AMPK1(5ng)およびDOSペプチド(20ng)を室温で30分間インキュベートした;
2.セストリン1/ATP/AMP/SAMsite(1ug)を加え、室温で1時間インキュベートした;
3.20μl ADP-Glo試薬を加え、室温で40分間インキュベートした;
4.その後、40μlのキナーゼ検出試薬を加え、室温で30分間インキュベートした;
5.ELISAリーダーで結果が得られた。
【0155】
CD3+ 細胞におけるDOS局在についての免疫蛍光
1.精製されたT細胞を、24ウェルプレートに1×106細胞/ウェルの濃度でプレーティングした
2.細胞を、10μMのDOS-FITCで4時間処置した
3.その後、収集し、500gで5分間遠心分離した
4.氷冷PBSで2回洗浄した
5.細胞を、200ulのPBS中に再懸濁し、ポリリジンで前処置されたカバーグラスにプレーティングした
6.細胞を、氷中で4%のホルムアルデヒドで20分間固定した
7.PBSで3回洗浄した
8.PBS-BSA5%でブロッキングした
9.その後、細胞を一次抗体(抗CD3 1:100)と4℃で一晩インキュベートした
10.PBSで3回洗浄した
11.その後、二次抗体(AF-594とコンジュゲートされた抗マウス;1:250)と室温で1時間インキュベートした
12.PBSで3回洗浄した
13.細胞を、PBS中Triton 0.25%で2分間透過処理した
14.続いて、1:100希釈された抗体 抗KDEL(Abcam)および抗セストリン2(Gentex)と4℃で一晩インキュベートした
15.PBSで3回洗浄した
16.その後、1:250希釈された二次抗体 647コンジュゲート型抗マウスまたは594コンジュゲート型抗ウサギと室温で1時間インキュベートした
17.全て、PBSで3回洗浄した
18.カバーグラスを、Vectashieldマウンティング封入剤DAPI+でマウンティングした
19.共焦点顕微鏡Zeissで画像を取得した
【0156】
ウェスタンブロッティングプロトコール
1.CD4+ 細胞を、適切なマイクロビーズキット(Miltenyi)を用いてPBMCから分離した
2.細胞を、ホールRPMI培地中に再懸濁し、24マルチウェルプレートにプレーティングした
3.その後、DOS化合物で4時間活性化した
4.その後、細胞を、収集し、PBSで洗浄し、溶解緩衝液(ホスフェート阻害剤を含むRIPA)中に再懸濁した
5.細胞溶解混合物を、氷上で20分間インキュベートした
6.試料を、最高速度で20分間遠心分離した
7.上清を収集し、Lemmli緩衝液+β-メルカプトエタノールを加えた
8.その後、試料を95℃で5分間煮沸した
9.試料を、ポリアクリルアミドゲル上にロードし、TRIS-グリシン-SDSランニング緩衝液中で流しておいた
10.流動が完了したならば、Trans-Blot machine(Biorad)を用いることにより、そのタンパク質をゲルからニトロセルロース膜へ転写した
11.膜を0.1% Tween-TBS緩衝液で洗浄し、5%無脂肪乳中で1時間ブロッキングした
12.続いて、一次抗体と一晩インキュベートした
13.次の日、膜を0.1% Tween-TBS緩衝液で、それぞれ少なくとも30分間で3回洗浄した
14.その後、二次抗体を1時間加えた
15.膜を、0.1% Tween-TBS緩衝液で、それぞれ少なくとも30分間で3回洗浄した
16.ECL溶液を用いてシグナルを発生させた
【0157】
セストリン2の免疫沈降
1.細胞ペレットを、100μLの変性溶解緩衝液で溶解した
2.その後、最高速度で2~3秒間激しくボルテックスすることにより十分混合した。
3.その後、試料を95℃で5分間煮沸した。
4.その後、試料を、900μlの非変性溶解緩衝液で希釈し、穏やかに混合した。
5.その後、細胞溶解物を、1mLシリンジに付着した針の中に5~10回通過させ、または超音波処理した。
6.その後、氷上で5分間インキュベートした
7.試料を、4℃で20分間最高速度で回転させることによりプレクリーニングした。
8.上清を新しいチューブに収集した
9.7ul(5ug)のSESN2(abcam)一次抗体を上清へ直接加え、ローター上、4℃で一晩インキュベートした
10.200ulのプロテインA/GビーズをIP緩衝液中で4~5回洗浄し、その後、BSAを含むIP緩衝液中で一晩ブロッキングし、ローター上、4℃で放置した。
11.次の日、50ulのプロテインA/Gビーズを試料に加え、ローター上、4℃で3時間インキュベートした
12.タンパク質-ビーズのコンジュゲートを、IP緩衝液中、3000gで2~3分間回転させることにより5~10回洗浄した
13.その後、1×Laemmli還元剤を加え、試料を95℃で10分間煮沸した
14.続いて、ウェスタンブロッティングプロトコールを実施した
【0158】
細胞抽出物からのタンパク質のインビトロプルダウン
1.5×106細胞を、200ulのPE緩衝液(ホスファターゼ阻害剤およびプロテアーゼ阻害剤を補充)中に溶解し、氷上で30分間インキュベートした;
2.細胞抽出物を1800μlのPD緩衝液と混合した;
3.抽出物を、最高速度で30分間の遠心分離により、プレクリアリングした;
4.その後、600ulの上清をDOS-ビオチン(20μM濃度)と4℃で一晩インキュベートした;
5.ストレプトアビジン-アガロースビーズ(1000μl)を、PD緩衝液で洗浄し、5%BSAで一晩ブロッキングした;
6.ビーズを再び洗浄し、細胞抽出物と室温で1時間インキュベートした
7.続いて、ビーズをPD緩衝液で洗浄した
8.タンパク質を、50μlのLaemmli 1×で溶出した
【0159】
HEK293細胞におけるレンチウイルス産生
1.0日目:HEK293細胞を、次の日に70%コンフルエンスを生じるように、ある特定の濃度において細胞培養フラスコt75中にプレーティングした(それぞれについて、レンチウイルスを、HEK293細胞の2個のフラスコt75中にプレーティングした)。
2.1日目:リポフェクタミンLTX試薬をPLUS試薬(Invitrogen)と共に用いることにより、HEK293細胞をトランスフェクトした;
3.具体的には、トランスフェクション前に、培地を除去し、5mL Opti-MEM血清低減培地(Gibco)を各フラスコへ加えた;
4.4μgのDNAを10μlリポフェクタミン2000およびPLUS試薬と1:1の比で組み合わせることにより、プラスミドDNA-PLUS脂質複合体を得た。その混合物を室温で10分間インキュベートした。レンチウイルス粒子の産生について、細胞に、以下の3つのプラスミド:pCMV-VSV-Gエンベロープベクター(Cell Biolabs);p.891パッケージングベクター;p-SIREN-スクランブル/p-SIREN-shsesn1/p-SIREN-shsesn2/p-SIREN-shsesn3を同時トランスフェクトした。
5.その後、DNA-脂質複合体を細胞へ液滴で加えた;
6.トランスフェクションから5時間後、培地を慎重に吸引し、15mLの新鮮なDMEM完全培地に置き換えた;
7.細胞を、37℃、5%CO2で48時間インキュベートした。
8.3日目:レンチウイルスを含有する培地を、トランスフェクション後48時間目に収集し、細胞を、新鮮な培地に置き換えた。
9.4日目:レンチウイルスを含有する培地をまた、トランスフェクション後72時間目に採取した。
【0160】
レンチウイルス濃度
1.Lenti-Pacレンチウイルス濃縮溶液(GeneCopoeia)を用いて、レンチウイルス粒子を濃縮した。
2.レンチウイルス粒子を含有する培地を、4℃、2000gで10分間遠心分離した;
3.その後、Lenti-Pac濃縮溶液と5:1の比で混合した;
4.0~4℃で一晩インキュベートし、4℃、3500gで25分間遠心分離した;
5.上清を慎重に捨てた
6.ウイルスペレットを100μLのPBSで再懸濁した
7.ウイルスアリコートを-80℃で保存した。
【0161】
CTV染色
1.形質導入細胞を収集した
2.細胞上清を遠心分離し、細胞ペレットを5μMのCTVを含む温かいPBS中に再懸濁した
3.続いて、37℃で10分間インキュベートした
4.冷たいPBSを加え、細胞を遠心分離した
5.その後、細胞を培地中に再懸濁し、カウントした
6.これらの細胞のアリコートをFACSによりチェックした
7.その後、細胞を200μL中のDOSで刺激し、12日間培養させておいた
【0162】
RNA抽出、逆転写、およびqPCR
1.適切なマイクロビーズ(Miltenyi)を用いて、CD4+ 細胞をマウス脾臓から精製した
2.「PureLink RNA Mini Kit」(Invitrogen)を用いて、CD4+ 細胞から全RNAを抽出した。
3.RNA濃度を、NANO-DROP分光光度計(Thermo-Scientific)により取得した。
4.キット「qScript cDNA合成キット」(Quanta Biosciences)からアドバイスされたプロトコールに従って、1μgの全RNAをcDNAへ逆転写した。
5.SensiFAST Hi ROXキット(Bioline)というキットを用いて、qPCR反応を、試料あたり100μgのcDNAに関して実施した。
6.ヒトセストリンの調査について、以下のTaqmanプローブを用いた:
- セストリン1 Hs00902782_m1、
- セストリン2 Hs00230241_m1、
- セストリン3 Hs00914870_m1
- RPLPO Hs00420895_gH(ハウスキーピング対照として用いられた)
マウスセストリン2の調査について、以下のプライマーを用いた:
- Fw TCTCGGCACTTTGAGGACAC
- Rw AACCATGGTCTTCCCAGCAG
RPL34についての標準プライマーを、ハウスキーピング対照として用いた
H1N1ウイルスのPAウイルスタンパク質の調査について、以下のプライマーを用いた:
- Fw CGGTCCAAATTCCTGCTGA
- Rw CATTGGGTTCCTTCCATCCA
7.qPCR反応を、「StepOne Plus System」機械(Applied Biosystems)を用いることにより行った
【0163】
細胞代謝についてのSeahorseアッセイ
1.適切なマイクロビーズ(Miltenyi)を用いて、CD4+ 細胞をPBMCから精製した
2.精製されたCD4+ 細胞をCD3/CD28 Dynabeads(Gibco)で活性化し、10μMにおけるDOS46Lで一晩処置した。
3.次の日、通常の成長培地を細胞から除去し、0.5mMグルコース、1mMグルタミンおよび1%FBSを加えた基本DMEMで構成される「基質制限成長培地」を加えた。
4.その後、インキュベーターにおいて、細胞をこの培地と4時間インキュベートした。
5.その後、細胞をカウントし、ポリリジンで前処置されたXF96ウェルプレート内に、2×105細胞/ウェルの濃度でプレーティングした。
6.その後、細胞に、2mMのグルコースおよび0.5mM L-カルニチンを含むXF DMEMで構成された「アッセイ培地」を追加した。
7.アッセイを実行する直前に、細胞を1×パルミテート-BSAまたは1×BSAで処置した。
8.アッセイ中、細胞を、異なる時点に、Etomoxir(4μM)、オリゴマイシン(1.5μM)、FCCP(1μM)、およびロテノン/アンチマイシンA(0.5μM)で処置した。
9.Seahorse機械は、120分間の時間、異なる時点にOCR値を読み取った。
【0164】
DOSでのPBMCインビトロ処置
1.PBMCを解凍し、5mLの培地中に再懸濁した
2.インキュベーター内に一晩放置した
3.適切なマイクロビーズ(Miltenyi)を用いて、CD4+ CD27- CD28- 細胞を精製した
4.その後、細胞を、平底96ウェルプレートにおいて、DOS化合物の存在下または非存在下、CD3 CD28 Dynabeads(106細胞について20uL)で一晩刺激した
5.細胞をインキュベーター内に12日間放置し、その後、それらを分析した。
【0165】
免疫化後のIgG産生の決定
1.ウイルスH1N1に特異的な血漿IgGの分析を、免疫化後18日目および36日目にELISAにより実施した
2.抗原(FLUAD)を、96ウェルプレート内にコーティングした;ウェルあたり50μl、希釈1:40(12mlのPBS+300μl FLUAD)
3.その後、PBS 0.5%Tween-20中で洗浄した
4.そして、PBS 0.5%Tween-20中4%ミルクで、室温で2時間ブロッキングした
5.その後、マウス血漿を、ブロッキングされたプレートへ、0.1%ミルク PBS 0.5%Tween-20中希釈1:200で加えた
6.プレートを4℃で一晩インキュベートした
7.PBS 0.5%Tween-20で1回洗浄した
8.その後、0.1%ミルク PBS 0.5%Tween-20中に1:250希釈された抗マウスIgG1ビオチンコンジュゲート型抗体を加え、室温で2時間インキュベートした
9.プレートを、PBS 0.5%Tween-20で2回洗浄した
10.PBS 0.5%tween-20中1:3000希釈されたストレプトアビジン-HRPコンジュゲート型抗体を加え、室温で1時間放置した
11.続いて、PBS 0.5%Tween-20で3回洗浄した
12.TMB基質をウェルに加え、発色するまで、15~30分間放置した
13.その反応を、停止溶液(ThermoFisher)で停止させた
14.ELISAリーダーにより吸光度を450nmにおいて検出した
【0166】
テロメアのライブでの移動
1.適切なマイクロビーズ(Miltenyi)を用いて、CD4+ 細胞をPBMCから精製した
2.CD4+ 細胞およびCD4- 細胞を収集した
3.続いて、CD4+ 細胞を用いて、Miltenyi精製キットによりCD27-およびCD28- 細胞を精製した。
4.1×107個のCD4- 細胞をウェル(6ウェルプレート)の中央にスポットでプレーティングし、DOS46L 10μMで処置し、2.30時間付着させておいた。
5.並行して、5×105個のCD27-/CD28- 細胞もまた、DOS46L 10μMで2.30時間処置した。
6.その後、CD4- 細胞を、PBS中1:50希釈されたTelC-Cy5プローブ(PNA bio Link)で5分間染色した
7.染色されたCD4- 細胞を含有する各ウェルにおいて、ガラスビーズを加えた;プレートを2分間穏やかに動かして、細胞膜にポアを生じさせた
8.細胞をPBSで洗浄し、遠心分離した
9.ペレットを再懸濁し、CD4- 細胞をカウントした
10.CD4+ 細胞をCD4- 細胞と比1:3で混合した
11.その後、組み合わされたCD4+ 細胞とCD4- 細胞を、1:1のCMVとEBVの混合物で刺激した
12.細胞を一晩インキュベートした
13.次の日、細胞を、表面タンパク質について染色し、フローサイトメーターで分析した。
【0167】
マイクロ中和アッセイ
1.マウス血清を、1:200希釈し、1:10000希釈されたH1N1ウイルスと、37℃で1時間インキュベートした
2.その後、MDCK細胞を、ウェル(96ウェルプレート)あたり15,000細胞の濃度で加え、5%のCO2と37℃で一晩インキュベートした。
3.次の日、細胞を、PBS中80%の冷たいアセトンで固定した
4.1:250希釈された一次抗体の抗インフルエンザA NPをウェルに加え、室温で1時間インキュベートした
5.プレートを、PBS-Tween0.3%で2回洗浄した
6.1:2500希釈された二次抗体(HRP標識型ヤギ抗マウスIgG)を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。
7.プレートを、PBS-Tween0.3%で2回洗浄した
8.TMB基質を各ウェルに加え、色が変化するまで放置した。
9.その反応を、停止溶液(Thermos Fisher)で停止させ、O.Dを、ELISAリーダーで750nmにおいて取得した。
【0168】
インビトロキナーゼアッセイ
1.セストリンまたはAMPK免疫沈降物を、溶解緩衝液中で2回、キナーゼ緩衝液中で2回洗浄した(全て、Cell Signaling製)。
2.免疫沈降物を、30℃で30分間、200μM ATP(Cell Signaling)の存在下もしくは非存在下、未処置のままにし、または10μMの環状DOS化合物で処置した。
3.試料をPBSで再懸濁した
4.ELISAプレートを、キナーゼ反応生成物で、4℃で一晩コーティングした
5.その後、プレートを、PBS-Tween0.5%中4%ミルクで1時間ブロッキングした。
6.MAPK活性を、抗体の抗リン酸化p38(D3F9、Cell-Signalling)を用いることにより、または抗リン酸化SAPK/JNK(81E11)(Cell Signalling)およびリン酸化p44/42 MAPK(ERK 1/2)(D13.14.4E)(Cell Signalling)を用いることにより、評価した。全ての抗体は、1:100希釈され、室温で2時間インキュベートされた。
7.プレートを、PBS-Tween0.5%で2回洗浄した
8.1:2000希釈された二次の抗ウサギIgG-HRPコンジュゲート型抗体(Millipore)を各ウェルに加え、室温で1時間放置した。
9.プレートを、PBS-Tween0.5%で3回洗浄した
10.TMB基質を、発色するまで加えた;その反応を、停止溶液(ThermoFisher)で停止させた
11.吸光度をELISAリーダーで読み取った。
12.インビトロキナーゼアッセイデータは、免疫共沈降したMAPKの総量に対して標準化された3連のウェルの450nm吸光度±s.e.mの倍数増加に比例するものとして示された。
【0169】
マウス生存
1.マウス(系統CS7B)に、2つの異なる用量0.1mg/kgおよび1mg/kgにおけるDOS(46L、144D、および144L)と1:20で組み合わされたFluadワクチン(GSK)を注射した。群の数=8
2.マウスを、群について8匹の動物である、5つの群へ分けた。群は以下のものであった:
- 群1:DOSなしのFluadをワクチン接種された老齢マウス(月齢18ヶ月);
- 群2:Fluad+2つの用量でのDOS46Lをワクチン接種された老齢マウス(月齢18ヶ月);
- 群3:Fluad+DOS144Dをワクチン接種された老齢マウス(月齢18ヶ月);
- 群4:Fluad+DOS144Lをワクチン接種された老齢マウス(月齢18ヶ月);
- 群5:DOSなしのFluadをワクチン接種された若齢マウス(月齢8ヶ月)
3.ワクチン接種から4ヶ月後、マウスにH1N1インフルエンザウイルス(ウイルスpfu 6×105)を感染させた
4.マウスを15日間モニターした:体重、疾患進行、臨床スコア、生存データを取得した。
5.15日後、マウスを屠殺し、組織を収集した(血液、肺、脾臓、および胸腺)。
【0170】
動態DOS
1.マウス(若齢および老齢)にDOS46L(0.1mgまたは1mg)を皮下注射し、その後、2時間目、4時間目、24時間目、48時間目に頬から採血した
2.PBMCを精製した
3.細胞を、T細胞表面タンパク質について、30分間染色した
4.PBSで洗浄した
5.細胞を、PBS-固定緩衝液(1:1)で固定し、37℃で10分間インキュベートした
6.PBSで洗浄し、遠心分離した
7.その後、冷たいPerm Buffer(BD)を細胞に加え、暗闇中、4℃で20分間インキュベートした
8.PBSで洗浄した
9.細胞を、抗体の抗セストリン2(1:100)(GenTex)で氷中、20分間染色した
10.PBS中で洗浄した
11.細胞をPBS中に再懸濁し、FACS機械で分析した
【0171】
DOSでのみ処置されかつH1N1ウイルスに感染したマウス
1.マウス(系統CS7B)を、以下の3つの群に分けた:
- 群1:0.1mg/kgにおけるDOS46Lを皮下注射された10匹の老齢マウス(月齢18ヶ月)
- 群2:DOSを注射されなかった10匹の老齢マウス(月齢18ヶ月)
- 群3:DOSを注射されなかった3匹の若齢マウス(月齢8ヶ月)
2.DOS投与から48時間後、全ての群からの全てのマウスに、鼻腔内様式でマウスあたり3.5×105PFUの濃度でのウイルスH1N1を感染させた。
3.臨床スコアを各マウスについて感染から1日目から10日目まで記録した。臨床スコアは以下のパラメータ評価を含む:
- 体重
- 挙動
- 毛の状態
- 胸呼吸
- 眼の状態
4.マウスを、それらが13の臨床スコア(倫理委員会に認められた重症度のグレード)に達した時、屠殺した。組織を各マウスから収集した(血液、肺、脾臓、および胸腺)。
【0172】
テロメア長定量化アッセイ
1.適切なマイクロビーズキット(Miltenyi)を用いて、CD4- 細胞およびCD4+ 細胞をPBMCから精製した
2.その後、CD4+ 細胞を用いて、Miltenyi精製キットを用いることにより、CD27-およびCD28- 細胞を精製した。
3.CD4-細胞およびCD4+/CD27-/CD28- 細胞のペレットを凍結した。
4.4×106個のCD4- 細胞を1×106個のCD4+/CD27-/CD28- 細胞と、DOS 46L 10μMの存在下または非存在下で混合した。
14.混合された細胞を、CMVとEBVの1:1混合物で一晩刺激した
15.次の日、冷たいPBSを用いることによりシリンジで、CD4- 細胞をCD4+/CD27-/CD28- 細胞とのコンジュゲートから脱離させた
5.その後、Miltenyi精製キットを用いることにより、CD4- 細胞をCD4+ 細胞から精製した。
16.その後、コンジュゲート後のCD4- 細胞ペレットおよびCD4+ 細胞ペレットを凍結した。
17.PureLink Genomic DNA Mini Kit(Invitrogen)を用いることにより、凍結細胞ペレットからのゲノムDNAを抽出した
18.qPCR反応を、「絶対ヒトテロメア長定量化qPCRアッセイキット」(ScienCell-Research Laboratories)により示唆されたプロトコールに従って実施した
19.上述されたキットにより示唆された式に従って、テロメア長をΔCTから計算した。
【0173】
DOS化合物のデザイン
本発明者らは、タンパク質セストリン2に関するDOS化合物をデザインした。しかしながら、DOS化合物を、潜在的にセストリン1およびセストリン3に対して活性があり得るものへ広げるために、
図28および29に示されているように、本発明者らは、セストリン2についてデザインされたDOS化合物を、セストリン1および3のタンパク質配列に対してアラインメントした。
【0174】
そうすることで、本発明者らは、セストリン1またはセストリン3と特異的に結合するが、セストリン2と結合しないDOS化合物を同定し、それゆえに、これらを選択的DOS化合物と名付けた。これらの化合物について、およびセストリン2配列と部分的にマッチした全ての化合物について、本発明者らは、特定の式に従って、DOS配列を構成するアミノ酸に存在する反応性化学基間で自然にまたは合成的に起こり得る可能な化学結合を予測した。
【0175】
機能性化合物の形成をもたらし得る可能な環状二次構造形成の全部を報告するために、本発明者らは、結合の各型について特定のコードを用いた。その時、各コードについて、結合に関与するアミノ酸の文字を結びつけた。具体的には、アミノ酸が、1つより多い特定の反応基を有する場合には、彼らは、各基についての番号をそのアミノ酸の文字に割り当てた。例えば、アルギニンは利用可能な3つのNH基を提示し、本発明者らはそれらをR2、R3、およびR4と名付けた。彼らは、アルギニンがアミノ酸配列のN末端に位置する場合に利用可能な追加のNH基を指すためにコードR’を用いた。
【0176】
DOS合成
環状ペプチドDOS化合物を合成するために、1番目のアミノ酸のアミノ官能性が除去可能なアミノ保護基(例えば、ベンゾイルオキシカルボニル(Cbz)、tert-ブトキシカルボニル(t-Boc)、および9-フルオレン-メトキシカルボニル(FMOC))で保護され、かつ2番目のアミノ酸のカルボキシル官能性が、除去可能なカルボキシル保護基で保護されるような通常の保護および活性化化学を用いた。カルボキシル基は、酸または塩基不安定性エステル、例えば、メチル、エチル、ベンジル、またはトリメチルシリルエステルを形成することにより保護され得る。保護後、1番目および2番目のアミノ酸が、もっぱら、それぞれのL/D-アミノ酸だけで構成される、すなわち、L/D-Arg、L/D-Gly、およびL/D-Aspで構成される溶液中で反応する。カップリング反応後、1番目のアミノ酸のアミノ基の選択的脱保護が、2番目のアミノ酸のカルボキシル保護基を除去しない条件下での酸性加水分解により達成される。その手順が、保護された追加のアミノ酸に関して繰り返される。周知のメリフィールド、FMOC、およびMeDBz樹脂などの固相合成は、本発明のDOSペプチドを合成するために用いられ得る。直鎖ペプチドは、まず、天然のセストリンから引き出され、続いて環化される。
【0177】
[実施例1]
DOS化合物の発見
セストリンのファーストインクラスの阻害剤を開発するために、本発明者らは、細菌性に精製されたタンパク質(セストリン1およびセストリン2)での最小インビトロアッセイをデザインした。セストリンは、ヘテロ三量体アルファ-ベータ-ガンマのキナーゼである、AMPKを標的とし、そのAMPKは、sMAC内のセストリン依存性MAPK活性化を協調する。ATP媒介性キナーゼ反応により検出されるAMPKの活性化後、156個の異なる配列を、インビトロELISAアッセイにより試験し、その結果は
図2に示されている。
【0178】
セストリン2(配列番号4)のアミノ酸残基1~160間の領域に基づいて五量体配列を合理的にデザインしたが、これは、この領域全体がセストリン-AMPK相互作用に必須であることが示されたからである。追加として、5個のアミノ酸は、阻害機能を有する細胞透過性ペプチドを作製するための限界の長さであると考えられる。このアプローチは、いくつかの有望な阻害性セストリン断片(ISF)、セストリン2についての74個およびセストリン1についての50個を同定し、それらは、アッセイにおいてAMPK活性を40~100%、抑止することができた(
図2参照)。残りの配列は、AMPKを阻害することができず、したがって、これらはさらなる分析から除外された。
【0179】
しかしながら、本発明者らは、T細胞のISFとのインキュベーションが、セストリンまたはAMPKリン酸化の阻害を生じることができず、限られた細胞透過性および/または安定性を示唆したことを発見した。したがって、これらの課題を克服するために、本発明者らは、インビトロスクリーニングにおいて同定されたISFについて頭部-尾部の環状ペプチド模倣体(L-バリアントとD-バリアントの両方)を作製した。下記で説明される理由のために、本発明者らは、これらの環状ペプチド模倣体をsMACの破壊剤(DOS)化合物と改名した。
【0180】
[実施例2]
DOS化合物のsMACを不活化する能力
試験されたDOS化合物の全部の中で、本発明者らは、sMAC不活化において最も効果的な化合物としてDOS46LおよびDOS144Dを同定した。例えば、DOS46Lは、sMAC経路を90%、サイレンシングした。したがって、例として、本発明者らは、以下の研究の大部分についてDOS46L(配列番号22)およびDOS144D(配列番号77)に焦点を合わせた。
【0181】
次に、本発明者らは、DOS化合物、DOS46LおよびDOS144Dの、AMPK1/セストリン2活性への滴定研究を行った。
図3に示されているように、滴定研究は、DOS化合物が、インビトロでの組換えタンパク質に関して、セストリン駆動性AMPK活性化をナノモル量で抑制し得る(DOS46L、IC50 0.096mM;DOS144D、0.844mM)ことを示し、その新たに作製されたDOS化合物の効力を実証した。
【0182】
次に、本発明者らは、DOS化合物のT細胞を透過する能力を試験した。
図4に示されているように、DOS化合物(DOS46L)は、T細胞、特に老化CD3+ CD4+ CD27- CD28- 集団を透過することができた。同様の結果は、CD8+ T細胞および主要な抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞、単球、マクロファージ、およびB細胞に関して得られた。DOS化合物がAPCへ加えられた時、それらは、若返りに用いられ得るテロメア小胞の放出を自発的に引き起こした。
【0183】
10μM濃度での全CD4
+ T細胞において試験した場合、DOS化合物は、
図5に示されているように、全sMACシグナル伝達を阻害した。これは、セストリン1、2、および3の発現、ならびにAMPKおよびMAPKリン酸化の下方制御により示された。したがって、これは、活性セストリン阻害が、セストリン依存性sMAC活性化の破壊をもたらし、その結果として、MAPKシグナル伝達の下方制御を生じることを示している。
【0184】
図5に示されているように、いくつかのDOS化合物(例えば、DOS46LおよびDOS144D)は、全ての3つのセストリンを阻害する能力を有し、したがって、汎阻害剤として定義することができる。他のもの(例えば、DOS104DおよびDOS117L)は、1つまたは2つのセストリンのみを機能的に阻害し、したがって、選択的阻害剤として定義することができる。したがって、これは、処置されるべき状態に依存して、sMACを不活化するために汎阻害剤かまたは選択的阻害剤かのいずれかを選択する可能性を示している。例として、ある特定の治療アプローチ、例えば、細菌、ウイルス、または寄生生物感染に対するワクチン接種は、セストリンの汎阻害(例えば、DOS46Lによる)から恩恵を受け得、一方、てんかんなどの他の状態は、セストリン3により調節され、DOS117Lなどの選択的セストリン3阻害剤から恩恵を受け得る。
【0185】
次に、セストリン2免疫沈降と連結されたELISAを用いて、本発明者らは、インビトロでのDOS化合物(DOS46L)のセストリン免疫沈降物への直接的な添加がまた、セストリン-AMPK相互作用を破壊し、それがsMAC複合体内のグローバルなMAPK活性化(ERK、p38、およびJNK)を抑制することを確認した(
図6)。例えば、
図6Aに示されているように、CD4+ T細胞におけるAMPKのセストリン2との結合が、DOS46Lでの1時間または2時間の処置後に減少した。
【0186】
図7を参照して、DOS46Lに曝露された老化CD4+ T細胞における滴定研究は、DOS化合物が、ナノモル量(16nM)から開始して、処置から4時間以内にsMAC活性化を抑制することを示した。これは、組換えタンパク質に関して行われた以前の観察と類似し、実在の細胞におけるその新たに作製された阻害剤の効力を確認している。
【0187】
プロテアソーム阻害剤MG132およびDOS46LでのCD4+ T細胞の処置は、セストリン、加えてAMPKの阻害が、プロテアソーム媒介性分解によることを示唆した。これは、
図6Bに示されているように、その効果がプロテアソーム阻害剤で前処置された細胞において消滅するからである。本発明者らはまた、DOS46Lに曝露されているT細胞における増加した量のユビキチン化セストリン2を免疫沈降した(
図6C)。したがって、これらのデータは、DOS化合物がsMACのファーストインクラスの阻害剤であり、その複合体をセストリンの地点で標的とし、それにより、ユビキチン化を通してsMAC分解を誘導することを示している。
【0188】
図8を参照して、DOS46Lのビオチン化バリアントでの免疫沈降およびフラグ付きのセストリンへのイムノブロットは、DOSがセストリン1およびセストリン2と直接的に結合することを示した(
図8A)。遊離ビオチンでの対照沈降物中にセストリンは見出されず、インビトロで、直接的なDOS46L-セストリン結合を実証した。対照的に、セストリンは、お互いに結合せず、セストリンが、一緒に複合体を形成して見出されるために、sMAC内にある必要があることを示唆した(
図8B~C)。実在の細胞において、ビオチン化DOS46Lは、sMAC(セストリン1、2、および3、加えてAMPKおよびMAPK)内に見出されたが、GATOR複合体のエレメント(WDR59およびmTOR;
図8D)と共には見出されなかった。沈着されたセストリン2結晶構造に基づいた分子ドッキング予測についての最先端のAlphaFoldアルゴリズムを用いて、選択的相互作用もまた研究した。これらの研究により、本化合物が、セストリン2のドメインAにおいて、ドメインBおよびCとの界面で、重要なことには、GATOR/mTORC1制御部位(ドメインC;
図27)から遠く離れて、結合する可能性が高いことが明らかにされた。これらのデータは、DOSが、ファーストインクラスの選択的sMAC阻害剤であることを示している。
【0189】
DOS化合物の特異性を、shRNA送達により作製された「セストリンヌル」T細胞においてさらに試験した。DOS化合物は、shCtrl(対照)において老化CD4+ T細胞増殖を回復させたが、セストリンヌルT細胞においては回復させなかった(
図9);これは、試験された全ての9つのドナーにおいて確認された。この所見は、DOS化合物がT細胞機能を、セストリンを介して調節するという事実を裏付けている。
【0190】
[実施例3]
DOS化合物の免疫系を若返らせる能力
DOSで12日間処置された、健康なドナー由来のPBMCの免疫表現型検査は、老化CD4+ T細胞の50%低下、ならびに免疫若返りの特性である、幹様メモリーT細胞およびナイーブT細胞の同時の増加を示した(
図10A~B)。若返った能力はまた、DOS処置T細胞における酸化的代謝および脂肪燃焼(FAO)の増加によっても示されている(Seahorse実験)(
図10C~D)。
【0191】
老化CD8+ T細胞においても当てはまる。加えて、刺激されたCD4+ T細胞におけるサイトカインの分析により、DOS処置によるIFNガンマ、TNFアルファ、およびIL-4の産生の増加が明らかにされ、それらは全て、T細胞-B細胞協調および抗体産生を促進する十分確立された因子である(
図11)(Bot et al 2000)。
【0192】
実際、高齢のドナー(70~85歳)から単離された初代ヒト末梢血単核球(PBMC)へのDOSの添加は、インビトロでのインフルエンザ特異的IgG抗体産生を、DOSで処置されていない若いドナー細胞(20~40歳)において観察されたレベルまで回復させるのに十分であった(
図12A)。この効果はまた、マウス脾細胞培養物においても観察され、最高3倍のインフルエンザ特異的IgG抗体産生に達した(
図12B)。顕著には、本発明者らは、熱失活したSARS-CoV2を用いた場合、同様の結果を得た(
図24)。したがって、これらのデータは、DOS化合物が有効なワクチンブースターとして用いられ得ることを示している。
【0193】
インビボでのDOS活性を2つの異なる用量で試験した。T細胞セストリンの阻害は、DOS化合物を注射されたマウスの血液においてロバストであり、48時間後、明らかであり、72時間目にピークに達し(最高80%セストリン阻害)、8週間目まで安定的に持続した(
図13A)。長期セストリン下方制御は、転写サイレンシングによる可能性が高く、DOS処置マウス由来の試料が、未処置の同齢の動物と比較して、DOS投与の10日目から始まった、低下したmRNAセストリン発現を示し(Lanna et al., 2017)、それは若齢マウスに存在する発現レベルと類似していたからである。したがって、DOSはsMACを3段機構で阻害する;1段目では、それらがAMPK-セストリン制御結合の破壊を誘導する(例えば、2時間以内);2段目では、それらが、その解離したタンパク質を、ユビキチン媒介性プロテアソーム分解へ仕向ける(例えば、4時間以内);最後に、それらは、セストリンmRNA発現を転写的にサイレンシングし(例えば、10日目から始まる)、その結果として、単一用量投与で永久の若返りを生じる。若齢マウスおよび老齢マウスは、類似した傾向を示し、DOSの、セストリンを異なる年齢において阻害する能力を示した。本化合物が、老齢マウスにおいて非常に低い投薬量(0.1mg/Kg)で有効であるという事実は、sMACだけをもち、mTORをもたない老T細胞に対する特異性の増強を示唆している。さらに、採取された器官におけるイムノブロッティングは、循環血液細胞においてだけでなく、脳、心臓、肝臓、腎臓、および肺においてもセストリン阻害を示した(
図13C)。これは、DOSが、それゆえに、セストリン/sMAC活性化により特徴付けられる様々な状態において用いられ得ることを例証している。
【0194】
長く持続する薬力学的効果から着想を得て、本発明者らは、DOSの単回注射が、老齢マウス(月齢16ヶ月中央値)においてワクチン応答性を回復させるのに十分であるかどうかを試験することにした。顕著なことには、ワクチンと共のDOS46Lの単一用量投与(0.1mg/Kg)は、ワクチン接種後2週間目、4週間目、および8週間目にインフルエンザ特異的抗体力価を、DOSの非存在下でワクチン接種された若齢マウス(月齢3ヶ月中央値)に観察されたレベルまで完全に回復させた(
図14A~C)。インビボでのIgG刺激効果は、それが、血液中のDOS誘導性T細胞セストリン下方制御と強く相関するため、セストリン依存性である可能性が高い(
図14D)。同様の結果は、別のsMAC阻害剤、DOS144Dに関して得られた。これらのデータは、インビボでのファーストインクラスのsMAC阻害剤による、加齢中のワクチン応答性の回復を実証している。
【0195】
長く持続する保護を、DOSと共のワクチン接種から6ヶ月後の6×10
5PFUの生きているH1N1 PR8/54ウイルス粒子の致死的接種および14日間のモニタリングにより試験した。
図15は、ワクチン接種された若齢マウス(n=8)と同一の、感染におけるDOS処置マウス(n=8)の100%生存を示している。対照的に、DOSの非存在下でワクチン接種された老齢コホートは、ほんの15%生存を示した(n=7)。生存データは、DOS46LおよびDOS144Dについて類似しているが、さらにDOS46Lは、非常に低い用量(0.1mg/Kg)においてより効果的であり、インビトロで示されたそれのより高い効力と一致している。DOSの有益な効果をまた、挙動、毛、呼吸、眼、および体重を含む臨床スコアによりモニターした。
【0196】
剖検分析により、DOS処置マウスの組織(例えば、肺)に浸潤したリンパ球が、高レベルのIFNガンマおよびIL10、すなわち、肺ウイルス感染からの炎症および免疫防御に関与するサイトカインを示したことが明らかにされた(
図17)。合わせると、これらのデータは、DOSを、高齢者において免疫を回復させるために次世代のワクチン製剤に加えることができる新しいクラスの化合物であると同定している。
【0197】
しかしながら、インビボでのたったDOS単独の単回処置だけで、DOS処置後すぐ(2日目)と長期プロトコールにおいて(8週間)の両方で、老齢マウスにおける致命的インフルエンザ感染に対して免疫防御をブーストするのに十分である(
図18A)。IgG-H1N1特異的抗体力価およびそれらの中和効果もまた、DOSのみのレジメンで老齢マウスにおいて、DOS46Lと共のワクチンで処置されたマウスと類似して、回復した(
図16および
図18)。
図19は、未処置の同齢の感染した老齢対照と比較した、DOS46L処置動物における肺壊死からの保護を示している。結果的に、実際、DOS処置動物の肺におけるリアルタイムqPCRが、DOSを注射されなかった老齢マウスより、はるかに低い量のH1N1ウイルス力価を示した。長期若返り効果はまた、DOS46Lで処置された動物における永久的幹様生成によっても観察され、それは、DOSの免疫予防効果に関連し得る最長8週間まで調べられた。
【0198】
DOSレジメンは、完全に免疫を若返らせかつ抗原特異的機能を回復させ、その結果として、COVID(
図24)、サイトメガロウイルス(CMV)、および水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)(
図25)について示されているようにウイルスからの非常に幅広い免疫防御、加えて、結核BCGワクチンについてのような細菌からの防御を生じるという理由により、ワクチン接種に補完的であるだけでなく、ワクチン接種に代わるものでもあり得る。したがって、これは、DOS化合物が、一般的には予防的抗ウイルスおよび抗微生物の化合物として、加えてワクチンブースターとして用いられ得ることを示している。
【0199】
癌は、T細胞上のチェックポイント阻害剤、例えば、PD-1およびTIM-3を調節することにより、免疫系を逃避できることは当業者に周知である(Robert, Nature Communication 2020)。追加して、セストリンが様々な種類の癌および疾患において重要なメディエーターであることは、文献において十分に立証されている。表現型分析によってさらに、DOS処置T細胞が、免疫回避のために癌により利用されかつチェックポイント阻害剤抵抗性治療の原因である免疫チェックポイント阻害剤受容体PD-1およびTIM3を下方制御することが示された(
図21)。したがって、DOS誘導性チェックポイント阻害剤下方制御は、癌細胞が免疫応答を回避するのを阻止し得る。したがって、チェックポイント阻害剤とDOSの併用治療、加えて、DOSの単独での処置は有益であり得る。例えば、DOS化合物は、単独で作用して、癌細胞、特に、非常に悪い予後の小児科疾患である、神経芽細胞腫、および乳癌の細胞の死を誘導し得る(
図22)。
【0200】
結論
本発明者らは、DOS(sMACの破壊剤)と名付けられた、sMACの新規な阻害剤(環状ポリペプチド)を作製し、これらのDOS化合物が、セストリンをプロテアソーム分解へ仕向けることにより、ナノモル量でsMACを阻害できることを実証している。有利には、本発明者らは、新規なDOS化合物が、ワクチンの存在下と非存在下の両方において、単一用量で、細菌またはウイルス感染に対する長期免疫防御を提供できることを実証した。さらに、本発明者らは、DOS化合物が、DOS処置で、老化T細胞を減少させ、IFNガンマ、TNFアルファ、およびIL-4などのサイトカインのレベルを増加させ得ることを示している。したがって、有利には、これは、DOS化合物の、高齢者において加齢した免疫系を若返らせる能力、いくつかの細菌またはウイルス感染、加えて、癌および神経変性疾患を含む加齢関連状態を予防し、処置し、または寛解させる能力を示している。
【手続補正書】
【提出日】2024-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セストリンに由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含むまたはそれからなる、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項2】
前記環状ポリペプチド、誘導体、または類似体がセストリン1に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含みまたはそれからなり、任意に、セストリン1が、実質的に配列番号1、2、もしくは3によって表されるアミノ酸配列、またはそのバリアントもしくは断片を含む、請求項1に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項3】
前記環状ポリペプチド、誘導体、または類似体が、セストリン2に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含みまたはそれからなり、任意に、セストリン2が、実質的に配列番号4で表されるアミノ酸配列またはそのバリアントもしくは断片を含む、請求項1に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項4】
前記環状ポリペプチド、誘導体、または類似体が、セストリン3に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含みまたはそれからなり、任意に、セストリン3が、実質的に配列番号5、6、もしくは7で表されるアミノ酸配列、またはそのバリアントもしくは断片を含む、請求項1に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項5】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン2を形成する最初の160アミノ酸に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含むまたはそれからなる、請求項3に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項6】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1、セストリン2、および/またはセストリン3のドメインAと、および/またはドメインAとCとの界面で結合するように構成される、
請求項1~5のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項7】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、2個から15個のアミノ酸残基、より好ましくは3個から9個のアミノ酸残基、より好ましくは3個から8個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは4個から7個のアミノ酸を含むまたはそれからなる、
請求項1~6のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項8】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、5個のアミノ酸残基を含むまたはそれからなる、
請求項1~7のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項9】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に:
(i)配列番号8~84、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(ii)配列番号58、59、63、65、86、87、92、94~97、107、113、114、116~119、121~124、126、130、133、148、150、154、155、159~162、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(iii)配列番号170~172、174、179、187、190、196~199、もしくは202、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(iv)配列番号58~60、62、64、88~91、93、98~112、115、120、125、127~129、131、132、もしくは134~147、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(v)配列番号47、58もしくは77、62~65、71~73、149、151~153、156~158、163~169、173、175、176、180~186、188、189、191~195、200、201、もしくは203~205、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(vi)配列番号89~91、97、206~218、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(vii)配列番号176、180、219~234、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(viii)配列番号235~247、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(viv)配列番号248~260、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(vv)配列番号58、59、62~65、またはその機能性バリアントもしくは断片;または
(vvi)配列番号261~269、またはその機能性バリアントもしくは断片
のいずれか1つで表されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、
請求項1~8のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項10】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に配列番号22、47、もしくは77で表されるアミノ酸配列、またはその機能性バリアントもしくは断片を含むまたはそれからなる、
請求項1~9のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項11】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、配列番号22で表されるアミノ酸配列、またはその機能性バリアントもしくは断片を含むまたはそれからなる、請求項10に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項12】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、配列番号47で表されるアミノ酸配列、またはその機能性バリアントもしくは断片を含むまたはそれからなる、請求項10に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項13】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、配列番号77で表されるアミノ酸配列、またはその機能性バリアントもしくは断片を含むまたはそれからなる、請求項10に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項14】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、L-アミノ酸単独からなり、またはD-アミノ酸単独からなり、またはD-アミノ酸とL-アミノ酸の両方からなる、
請求項1~13のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項15】
配列番号8~84のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項16】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1、セストリン2、およびセストリン3、好ましくはそのドメインAに結合するおよび/またはそれを阻害する、
請求項1~15のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項17】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、
(i)セストリン2に選択的に結合するおよび/もしくはそれを阻害する;
(ii)同じ位置におけるblast検索上でセストリン1とセストリン2の間に保存されたアミノ酸残基を含む;
(iii)同じ位置におけるblast検索上でセストリン3とセストリン2の間に保存されたアミノ酸残基を含む;
(iv)同じ位置におけるblast検索上でセストリン1とセストリン2の間に保存されたアミノ酸残基を含まない;
(v)同じ位置におけるblast検索上でセストリン3とセストリン2の間に保存されたアミノ酸残基を含まない;
(vi)異なる位置におけるセストリン1相同性(化学的類似性)領域を含む;
(vii)異なる位置におけるセストリン3相同性(化学的類似性)領域を含む;
(viii)セストリン2とのセストリン1の配列重複および/もしくは化学的類似性を含む;
(viv)セストリン2とのセストリン3の配列重複および/もしくは化学的類似性を含む;
(vv)全ての3つのセストリンの間で完全に重複する配列からなるもしくはそれを含む;ならびに/または
(vvi)セストリン1とセストリン3の間で完全に重複する配列からなるもしくはそれを含む、
請求項1~16のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項18】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、式(I)
【化1】
を含むまたはそれからなる、
請求項1~17のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項19】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、以下の結合またはコンジュゲーションを含む、
(i)末端のNH
2基とCOOH基(すなわち、ペプチド結合);
(ii)NH
2基とNH
2基(すなわち、ヒドラジン結合);
(iii)NH
2基とCONH
2基(すなわち、一級アミド結合);
(iv)N=NH基とNH
2基(すなわち、ヒドラジン結合);
(v)NH
2基とOH基(すなわち、ヒドロキシルアミン結合);
(vi)NH
2基とSH基(すなわち、チオール-ヒドロキシルアミン結合);
(vii)NH
2基とSR基(すなわち、ヒドロスルフィド結合);
(viii)COOH基とCONH
2基(すなわち、アミド結合);
(ix)COOH基とCOOH基(すなわち、ジカルボン酸結合);
(x)COOH基とN=NH基(すなわち、カルボキシル-アミドゲン結合);
(xi)COOH基とOH基(すなわち、ヒドロキシカルボキシル結合);
(xii)COOH基とSH基(すなわち、チオール結合);
(xiii)COOH基とSR基(すなわち、チオール結合);
(xiv)N=NH基とCONH
2基(すなわち、アミドゲン結合);
(xv)N=NH基とOH基(すなわち、N-ヒドロキシルアミン結合);
(xvi)CONH
2基とCONH
2基(すなわち、ジアミド結合);
(xvii)CONH
2基とSR基(すなわち、s-アミド結合);
(xviii)SR基とOH基(すなわち、ヒドロキシ-チオール結合);
(xix)SR基とNH基(すなわち、チオールアミン結合);
(xx)NH
2基とNH基(すなわち、ヒドラジン結合);
(xxi)COOH基とNH基(すなわち、アミノ-プロパン酸結合);
(xxii)SH基とOH基(すなわち、親水性結合);
(xxiii)SH基とNH基(すなわち、アミノ-チオール結合);
(xxiv)OH基とNH基(すなわち、ヒドロキシルアミン結合);
(xxv)OH基とOH基(すなわち、ヒドロキシ結合);
(xxvi)CONH
2基とOH基(すなわち、ヒドロキシアミド結合);
(xxvii)SH基とSH基(すなわち、ジチオール結合);
(xxviii)CONH
2基とNH基(すなわち、ヒドロキシアミド結合);または
(xxix)NH基とNH基(すなわち、ジアンモニウム結合)
請求項
18に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項20】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、以下の配列番号85として本明細書に提供されるコンセンサスまたは再現性配列を含むまたはそれからなる:
x
1x
2x
3x
4x
5 [配列番号85]
(式中、x
1は、A、P、H、L、R、M、D、F、V、I、E、N、Y、S、Q、もしくはTであり、好ましくは、x
1は、A、P、H、L、R、M、もしくはDであり;
x
2は、Y、A、L、R、M、F、K、V、E、I、D、S、Q、NもしくはTであり、好ましくはx
2が、Y、A、LもしくはRであり;
x
3は、L、A、S、R、M、D、E、K、F、T、Q、C、V、PもしくはNであり、好ましくはx
3が、L、A、SもしくはRであり;
x
4は、L、A、E、S、K、D、V、I、F、Q、H、C、T、P、N、RもしくはYであり、好ましくはx
4が、L、AもしくはEであり;
および/または
x
5は、L、R、A、E、S、K、I、P、D、F、H、Y、C、T、N、Q、V、もしくはMであり、好ましくは、x
5は、L、R、A、もしくはEである)
請求項1~19のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項21】
前記ポリペプチド、その誘導体または類似体の環化が、セストリン2(配列番号4)のアミノ酸残基4、9、10、15、16、19、20、21、24、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、39、40、41、46、50、56、61、63、65、66、67、71、73、84、91、94、96、99、103、108、109、110、131、134、147、185、204、217、220、226、228、230、233、234、236、237、238、239、240、241、244、249、251、252、255、256、272、273、274、277、284、292、298、299、301、303、304、306、309、310、311、313、314、319、331、333、334、343、359、369、431、442、もしくは467、および/またはセストリン1(配列番号1)のアミノ酸残基1~68、72、77、78、79、84、85、88、89、90、93、95、96、97、98、99、100、102、103、104、109、113、119、124、126、128、129、130、131、135、137、148、155、158、160、163、167、172、173、174、195、198、211、249、268、281、284、290、292、294、297、298、300~312、315、319、320、321、323、325、326、329、330、346、347、350、357、365、371、372、374、376、378、381、382、383、385、386、391、403、405、414、430、440、502、513、もしくは538で起こる、
請求項1~20のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項22】
前記ポリペプチド、その誘導体または類似体の環化が、セストリン2(配列番号4)のアミノ酸残基1、2、4、5、10、11、14~29、34、35、36、39、40、41、50、56、59、61、63、66、69、70、71、81、87、91、94、96、99、103、108、109、110、131、134、142、143、147、151、180、192、204、217、220、222、224、226、228、230、231、233、234、239、240、241、243、244、245、246、249、251、255、256、272、273、277、289、299、301、302、303、306、307、310、313、314、320、331、333、334、357、359、369、380、342、もしくは367、および/またはセストリン3(配列番号5)のアミノ酸残基1~14、16、17、22、23、30、31、32、35、36、37、46、52、55、57、59、62、65、66、67、77、83、87、90、92、95、99、104、105、106、127、130、138、138、143、147、176、188、200、213、216、218、220、222、224、226、227、229、230、232、234、235、236、237、238、239、243、244、245、247、248、249、250、253、255、259、260、276、280、292、302、304、305、308、309、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、325、326、332、343、345、346、369、371、381、392、454、もしくは479で起こる、
請求項1~21のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項23】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、免疫細胞におけるセストリン、好ましくは、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および/またはT細胞(Tリンパ球)におけるセストリンを標的とする、
請求項1~22のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項24】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、CD4+および/またはCD8+ T細胞におけるセストリン、好ましくはCD4+ CD27+ CD28+ 細胞および/またはCD4+ CD27- CD28+ 細胞におけるセストリン、より好ましくはCD4+ CD27- CD28- T細胞(老化T細胞)におけるセストリンを標的とする、請求項
23に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項25】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、サイトカイン産生を誘導しまたは回復させ、好ましくは、IFNガンマ、TNFアルファ、および/またはIL-4の産生を誘導しまたは回復させる、
請求項1~24のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項26】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、免疫老化を防止しまたは反転させる、
請求項1~25のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項27】
前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、免疫系を若返らせるように構成される、
請求項1~26のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項28】
免疫系を若返らせることが、(i)抗原刺激に対する免疫細胞応答性を回復させること;(ii)免疫細胞におけるテロメア長および/もしくはテロメラーゼ活性を回復させること;(iii)免疫細胞における抗原特異的増殖および/もしくはサイトカイン産生を回復させること;ならびに/または(iv)B細胞および/もしくはCD8
+ T細胞および/もしくはナチュラルキラー細胞増殖による抗原特異的抗体産生を回復させることを含む、請求項
27に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項29】
治療における使用のための、
請求項1~28のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項30】
治療における使用のための、請求項1~
28のいずれか一項に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体をコードする核酸。
【請求項31】
微生物感染、加齢関連状態、またはT細胞媒介性疾患を処置し、予防し、または寛解させる際における使用のための、請求項1~
28のいずれか一項に記載の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸。
【請求項32】
前記微生物感染が、細菌性、ウイルス性、真菌性、または原生生物である、請求項
31に記載の使用のための環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項33】
前記加齢関連状態が、免疫系の加齢および/または減退に伴う、それにより引き起こされる、または関連する状態であり、任意に、前記加齢関連状態が、セストリン依存性sMAC活性化および/または免疫老化により特徴付けられる、請求項
31に記載の使用のための環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項34】
前記加齢関連状態が、癌(例えば、小児神経芽細胞腫、メラノーマ、肝臓、膵臓、精巣、もしくは膵臓の癌)、喫煙誘発性肺気腫、てんかん、うつ病、代謝疾患(肥満を含む)、骨粗鬆症、勃起不全、不妊、または神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病もしくは認知症からなる群から選択される、請求項
31に記載の使用のための環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
【請求項35】
請求項1~
28のいずれか一項に記載の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸、およびワクチンを含む組成物。
【請求項36】
免疫応答を刺激する際における、好ましくはワクチンブースターとしての使用のための、請求項1~
28のいずれか一項に記載の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸。
【請求項37】
請求項1~
28のいずれか一項に記載の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸の治療有効量、および任意に薬学的に許容される媒体を含む、医薬組成物。
【請求項38】
請求項1~
28のいずれか一項に記載の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸の治療有効量を、薬学的に許容される媒体と組み合わせるステップを含む、請求項
37に記載の医薬組成物を作製するための方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0200
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0200】
結論
本発明者らは、DOS(sMACの破壊剤)と名付けられた、sMACの新規な阻害剤(環状ポリペプチド)を作製し、これらのDOS化合物が、セストリンをプロテアソーム分解へ仕向けることにより、ナノモル量でsMACを阻害できることを実証している。有利には、本発明者らは、新規なDOS化合物が、ワクチンの存在下と非存在下の両方において、単一用量で、細菌またはウイルス感染に対する長期免疫防御を提供できることを実証した。さらに、本発明者らは、DOS化合物が、DOS処置で、老化T細胞を減少させ、IFNガンマ、TNFアルファ、およびIL-4などのサイトカインのレベルを増加させ得ることを示している。したがって、有利には、これは、DOS化合物の、高齢者において加齢した免疫系を若返らせる能力、いくつかの細菌またはウイルス感染、加えて、癌および神経変性疾患を含む加齢関連状態を予防し、処置し、または寛解させる能力を示している。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] セストリンに由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含むまたはそれからなる、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[2] 前記環状ポリペプチド、誘導体、または類似体がセストリン1に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含みまたはそれからなり、任意に、セストリン1が、実質的に配列番号1、2、もしくは3によって表されるアミノ酸配列、またはそのバリアントもしくは断片を含む、[1]に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[3] 前記環状ポリペプチド、誘導体、または類似体が、セストリン2に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含みまたはそれからなり、任意に、セストリン2が、実質的に配列番号4で表されるアミノ酸配列またはそのバリアントもしくは断片を含む、[1]に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[4] 前記環状ポリペプチド、誘導体、または類似体が、セストリン3に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含みまたはそれからなり、任意に、セストリン3が、実質的に配列番号5、6、もしくは7で表されるアミノ酸配列、またはそのバリアントもしくは断片を含む、[1]に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[5] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン2を形成する最初の160アミノ酸に由来するアミノ酸配列またはその短縮体を含むまたはそれからなる、[3]に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[6] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1、セストリン2、および/またはセストリン3のドメインAと、および/またはドメインAとCとの界面で結合するように構成される、[1]~[5]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[7] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、2個から15個のアミノ酸残基、より好ましくは3個から9個のアミノ酸残基、より好ましくは3個から8個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは4個から7個のアミノ酸を含むまたはそれからなる、[1]~[6]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[8] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、5個のアミノ酸残基を含むまたはそれからなる、[1]~[7]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[9] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に:
(i)配列番号8~84、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(ii)配列番号58、59、63、65、86、87、92、94~97、107、113、114、116~119、121~124、126、130、133、148、150、154、155、159~162、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(iii)配列番号170~172、174、179、187、190、196~199、もしくは202、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(iv)配列番号58~60、62、64、88~91、93、98~112、115、120、125、127~129、131、132、もしくは134~147、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(v)配列番号47、58もしくは77、62~65、71~73、149、151~153、156~158、163~169、173、175、176、180~186、188、189、191~195、200、201、もしくは203~205、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(vi)配列番号89~91、97、206~218、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(vii)配列番号176、180、219~234、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(viii)配列番号235~247、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(viv)配列番号248~260、またはその機能性バリアントもしくは断片;
(vv)配列番号58、59、62~65、またはその機能性バリアントもしくは断片;または
(vvi)配列番号261~269、またはその機能性バリアントもしくは断片
のいずれか1つで表されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、[1]~[8]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[10] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、実質的に配列番号22、47、もしくは77で表されるアミノ酸配列、またはその機能性バリアントもしくは断片を含むまたはそれからなる、[1]~[9]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[11] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、L-アミノ酸単独からなり、またはD-アミノ酸単独からなり、またはD-アミノ酸とL-アミノ酸の両方からなる、[1]~[10]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[12] 配列番号8~84のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[13] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、セストリン1、セストリン2、およびセストリン3、好ましくはそのドメインAに結合するおよび/またはそれを阻害する、[1]~[12]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[14] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、
(i)セストリン2に選択的に結合するおよび/もしくはそれを阻害する;
(ii)同じ位置におけるblast検索上でセストリン1とセストリン2の間に保存されたアミノ酸残基を含む;
(iii)同じ位置におけるblast検索上でセストリン3とセストリン2の間に保存されたアミノ酸残基を含む;
(iv)同じ位置におけるblast検索上でセストリン1とセストリン2の間に保存されたアミノ酸残基を含まない;
(v)同じ位置におけるblast検索上でセストリン3とセストリン2の間に保存されたアミノ酸残基を含まない;
(vi)異なる位置におけるセストリン1相同性(化学的類似性)領域を含む;
(vii)異なる位置におけるセストリン3相同性(化学的類似性)領域を含む;
(viii)セストリン2とのセストリン1の配列重複および/もしくは化学的類似性を含む;
(viv)セストリン2とのセストリン3の配列重複および/もしくは化学的類似性を含む;
(vv)全ての3つのセストリンの間で完全に重複する配列からなるもしくはそれを含む;ならびに/または
(vvi)セストリン1とセストリン3の間で完全に重複する配列からなるもしくはそれを含む、
[1]~[13]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[15] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、式(I)
【化9】
を含むまたはそれからなる、[1]~[14]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[16] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、以下の結合またはコンジュゲーションを含む、
(i)末端のNH
2
基とCOOH基(すなわち、ペプチド結合);
(ii)NH
2
基とNH
2
基(すなわち、ヒドラジン結合);
(iii)NH
2
基とCONH
2
基(すなわち、一級アミド結合);
(iv)N=NH基とNH
2
基(すなわち、ヒドラジン結合);
(v)NH
2
基とOH基(すなわち、ヒドロキシルアミン結合);
(vi)NH
2
基とSH基(すなわち、チオール-ヒドロキシルアミン結合);
(vii)NH
2
基とSR基(すなわち、ヒドロスルフィド結合);
(viii)COOH基とCONH
2
基(すなわち、アミド結合);
(ix)COOH基とCOOH基(すなわち、ジカルボン酸結合);
(x)COOH基とN=NH基(すなわち、カルボキシル-アミドゲン結合);
(xi)COOH基とOH基(すなわち、ヒドロキシカルボキシル結合);
(xii)COOH基とSH基(すなわち、チオール結合);
(xiii)COOH基とSR基(すなわち、チオール結合);
(xiv)N=NH基とCONH
2
基(すなわち、アミドゲン結合);
(xv)N=NH基とOH基(すなわち、N-ヒドロキシルアミン結合);
(xvi)CONH
2
基とCONH
2
基(すなわち、ジアミド結合);
(xvii)CONH
2
基とSR基(すなわち、s-アミド結合);
(xviii)SR基とOH基(すなわち、ヒドロキシ-チオール結合);
(xix)SR基とNH基(すなわち、チオールアミン結合);
(xx)NH
2
基とNH基(すなわち、ヒドラジン結合);
(xxi)COOH基とNH基(すなわち、アミノ-プロパン酸結合);
(xxii)SH基とOH基(すなわち、親水性結合);
(xxiii)SH基とNH基(すなわち、アミノ-チオール結合);
(xxiv)OH基とNH基(すなわち、ヒドロキシルアミン結合);
(xxv)OH基とOH基(すなわち、ヒドロキシ結合);
(xxvi)CONH
2
基とOH基(すなわち、ヒドロキシアミド結合);
(xxvii)SH基とSH基(すなわち、ジチオール結合);
(xxviii)CONH
2
基とNH基(すなわち、ヒドロキシアミド結合);または
(xxix)NH基とNH基(すなわち、ジアンモニウム結合)
[15]に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[17] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、以下の配列番号85として本明細書に提供されるコンセンサスまたは再現性配列を含むまたはそれからなる:
x
1
x
2
x
3
x
4
x
5
[配列番号85]
(式中、x
1
は、A、P、H、L、R、M、D、F、V、I、E、N、Y、S、Q、もしくはTであり、好ましくは、x
1
は、A、P、H、L、R、M、もしくはDであり;
x
2
は、Y、A、L、R、M、F、K、V、E、I、D、S、Q、NもしくはTであり、好ましくはx
2
が、Y、A、LもしくはRであり;
x
3
は、L、A、S、R、M、D、E、K、F、T、Q、C、V、PもしくはNであり、好ましくはx
3
が、L、A、SもしくはRであり;
x
4
は、L、A、E、S、K、D、V、I、F、Q、H、C、T、P、N、RもしくはYであり、好ましくはx
4
が、L、AもしくはEであり;
および/または
x
5
は、L、R、A、E、S、K、I、P、D、F、H、Y、C、T、N、Q、V、もしくはMであり、好ましくは、x
5
は、L、R、A、もしくはEである)
[1]~[16]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[18] 前記ポリペプチド、その誘導体または類似体の環化が、セストリン2(配列番号4)のアミノ酸残基4、9、10、15、16、19、20、21、24、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、39、40、41、46、50、56、61、63、65、66、67、71、73、84、91、94、96、99、103、108、109、110、131、134、147、185、204、217、220、226、228、230、233、234、236、237、238、239、240、241、244、249、251、252、255、256、272、273、274、277、284、292、298、299、301、303、304、306、309、310、311、313、314、319、331、333、334、343、359、369、431、442、もしくは467、および/またはセストリン1(配列番号1)のアミノ酸残基1~68、72、77、78、79、84、85、88、89、90、93、95、96、97、98、99、100、102、103、104、109、113、119、124、126、128、129、130、131、135、137、148、155、158、160、163、167、172、173、174、195、198、211、249、268、281、284、290、292、294、297、298、300~312、315、319、320、321、323、325、326、329、330、346、347、350、357、365、371、372、374、376、378、381、382、383、385、386、391、403、405、414、430、440、502、513、もしくは538で起こる、[1]~[17]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[19] 前記ポリペプチド、その誘導体または類似体の環化が、セストリン2(配列番号4)のアミノ酸残基1、2、4、5、10、11、14~29、34、35、36、39、40、41、50、56、59、61、63、66、69、70、71、81、87、91、94、96、99、103、108、109、110、131、134、142、143、147、151、180、192、204、217、220、222、224、226、228、230、231、233、234、239、240、241、243、244、245、246、249、251、255、256、272、273、277、289、299、301、302、303、306、307、310、313、314、320、331、333、334、357、359、369、380、342、もしくは367、および/またはセストリン3(配列番号5)のアミノ酸残基1~14、16、17、22、23、30、31、32、35、36、37、46、52、55、57、59、62、65、66、67、77、83、87、90、92、95、99、104、105、106、127、130、138、138、143、147、176、188、200、213、216、218、220、222、224、226、227、229、230、232、234、235、236、237、238、239、243、244、245、247、248、249、250、253、255、259、260、276、280、292、302、304、305、308、309、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、325、326、332、343、345、346、369、371、381、392、454、もしくは479で起こる、[1]~[18]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[20] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、免疫細胞におけるセストリン、好ましくは、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および/またはT細胞(Tリンパ球)におけるセストリンを標的とする、[1]~[19]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[21] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、CD4+および/またはCD8+ T細胞におけるセストリン、好ましくはCD4+ CD27+ CD28+ 細胞および/またはCD4+ CD27- CD28+ 細胞におけるセストリン、より好ましくはCD4+ CD27- CD28- T細胞(老化T細胞)におけるセストリンを標的とする、[20]に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[22] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、サイトカイン産生を誘導しまたは回復させ、好ましくは、IFNガンマ、TNFアルファ、および/またはIL-4の産生を誘導しまたは回復させる、[1]~[21]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[23] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、免疫老化を防止しまたは反転させる、[1]~[22]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[24] 前記環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、免疫系を若返らせるように構成される、[1]~[23]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[25] 免疫系を若返らせることが、(i)抗原刺激に対する免疫細胞応答性を回復させること;(ii)免疫細胞におけるテロメア長および/もしくはテロメラーゼ活性を回復させること;(iii)免疫細胞における抗原特異的増殖および/もしくはサイトカイン産生を回復させること;ならびに/または(iv)B細胞および/もしくはCD8
+
T細胞および/もしくはナチュラルキラー細胞増殖による抗原特異的抗体産生を回復させることを含む、[24]に記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[26] 治療における使用のための、[1]~[25]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[27] 治療における使用のための、[1]~[25]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体をコードする核酸。
[28] 微生物感染、加齢関連状態、またはT細胞媒介性疾患を処置し、予防し、または寛解させる際における使用のための、[1]~[25]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸。
[29] 前記微生物感染が、細菌性、ウイルス性、真菌性、または原生生物である、[28]に記載の使用のための環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[30] 前記加齢関連状態が、免疫系の加齢および/または減退に伴う、それにより引き起こされる、または関連する状態であり、任意に、前記加齢関連状態が、セストリン依存性sMAC活性化および/または免疫老化により特徴付けられる、[28]に記載の使用のための環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[31] 前記加齢関連状態が、癌(例えば、小児神経芽細胞腫、メラノーマ、肝臓、膵臓、精巣、もしくは膵臓の癌)、喫煙誘発性肺気腫、てんかん、うつ病、代謝疾患(肥満を含む)、骨粗鬆症、勃起不全、不妊、または神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病もしくは認知症からなる群から選択される、[28]に記載の使用のための環状ポリペプチド、その誘導体または類似体。
[32] [1]~[25]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸、およびワクチンを含む組成物。
[33] 免疫応答を刺激する際における、好ましくはワクチンブースターとしての使用のための、[1]~[25]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸。
[34] [1]~[25]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸の治療有効量、および任意に薬学的に許容される媒体を含む、医薬組成物。
[35] [1]~[25]のいずれかに記載の環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または前記環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体をコードする核酸の治療有効量を、薬学的に許容される媒体と組み合わせるステップを含む、[34]に記載の医薬組成物を作製するための方法。
【国際調査報告】