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特表2025-503510OLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】OLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 71/13 20230101AFI20250128BHJP
   H10K 71/40 20230101ALI20250128BHJP
   H10K 50/11 20230101ALI20250128BHJP
   H10K 50/81 20230101ALI20250128BHJP
   H10K 50/82 20230101ALI20250128BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20250128BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20250128BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
H10K71/13
H10K71/40
H10K50/11
H10K50/81
H10K50/82
H10K59/10
B05D1/26 Z
B05D3/00 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538503
(86)(22)【出願日】2023-04-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 CN2023090090
(87)【国際公開番号】W WO2024093161
(87)【国際公開日】2024-05-10
(31)【優先権主張番号】202211364103.7
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202310064695.9
(32)【優先日】2023-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
(71)【出願人】
【識別番号】522101645
【氏名又は名称】季華実験室
(74)【代理人】
【識別番号】110003915
【氏名又は名称】弁理士法人岡田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朱▲雲▼▲竜▼
(72)【発明者】
【氏名】スー ウェイジャオ
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼新海
(72)【発明者】
【氏名】▲賈▼智慧
【テーマコード(参考)】
3K107
4D075
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107FF15
3K107GG08
3K107GG26
3K107GG28
3K107GG36
4D075AC06
4D075AC07
4D075AC92
4D075AC99
4D075AE15
4D075BB24Z
4D075BB92Y
4D075DC24
4D075EA05
(57)【要約】
本願は、OLED技術分野に関し、具体的にOLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法に関する。当該OLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法は、前記OLEDの目標膜厚、画素溝のメッシュパラメータ、及びインクジェット装置における各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを取得し、前記目標膜厚、メッシュパラメータ、及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算することと、各画素溝内のインクジェット体積及び分布状況に基づいて、各画素溝に対してインクジェットを行うことと、各画素溝に対してベーク処理を行い、ベークされた各画素溝内の各メッシュの膜厚を取得することと、各画素溝内の各メッシュの膜厚及び前記目標膜厚に基づいて、各画素溝内の各メッシュの補償インクジェット体積を特定し、各画素溝の膜厚が目標膜厚に達するまで、前記補償インクジェット体積に従え各画素溝内の各メッシュに対してインクジェットを行うこととを含む。本方法を用いることで、OLEDの膜厚均一性を向上させることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
OLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法であって、
前記方法は、
前記OLEDの目標膜厚、画素溝のメッシュパラメータ、及びインクジェット装置における各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを取得し、前記目標膜厚、メッシュパラメータ、及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算することと、
各画素溝内のインクジェット体積及び分布状況に基づいて、各画素溝に対してインクジェットを行うことと、
各画素溝に対してベーク処理を行い、ベークされた各画素溝内の各メッシュの膜厚を取得することと、
各画素溝内の各メッシュの膜厚及び前記目標膜厚に基づいて、各画素溝内の各メッシュの補償インクジェット体積を特定し、各画素溝の膜厚が目標膜厚に達するまで、前記補償インクジェット体積に従え各画素溝内の各メッシュに対してインクジェットを行うことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記OLEDの目標膜厚、画素溝のメッシュパラメータ、及びインクジェット装置におけるインクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを取得することは、
インクジェット装置における各インクジェットヘッドを制御してインク滴を吐出させ、前記インク滴の第1画像を取得し、前記第1画像に基づいて各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを特定することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目標膜厚、メッシュパラメータ及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算することは、
前記画素溝が位置された基板の画像を取得し、前記画像に基づいて各画素溝を対応する画素溝のタイプに区分することと、
前記目標膜厚、メッシュパラメータ、インク滴に関するパラメータ及び各画素溝のタイプに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算することと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記画素溝のタイプは、基板の1つの縁部に近接するシングルエッジ画素溝、基板の2つの縁部に近接するダブルエッジ画素溝、及び基板の内部に位置する内部画素溝のうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記各画素溝内の各メッシュの膜厚及び前記目標膜厚に基づいて、各画素溝内の各メッシュの補償インクジェット体積を特定し、各画素溝の膜厚が目標膜厚に達するまで、前記補償インクジェット体積に従え各画素溝内の各メッシュに対してインクジェットを行うことは、
前記目標膜厚及び前回のベークされた各画素溝内の各メッシュ膜厚の膜厚補充パラメータを取得することと、
前記膜厚補充パラメータ及び予め設定された重み付けパラメータに基づいて、各画素溝のインク滴補充体積を取得することと、
各画素溝のインク滴補充体積に基づいて、逐次最適化を行い、各画素溝の補償インク滴体積と分布の組み合わせの方案を取得ことと、を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記膜厚補充パラメータ及び予め設定された重み付けパラメータに基づいて、各画素溝のインク滴補充体積を取得することは、
各画素溝のタイプを特定し、各画素溝のタイプに基づいて、各画素溝膜厚補充パラメータに対応する重み付けパラメータを特定することを含む、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記インクジェット装置における各インクジェットヘッドは、複数のインクジェット孔を含み、各インクジェットヘッドは、対応する複数のインクジェット孔を介して少なくとも2種類の異なる体積のインク滴を吐出することができ、前記目標膜厚、メッシュパラメータ及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算することは、
各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合を取得することと、
各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合、前記目標膜厚、メッシュパラメータ及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算することと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合を取得することは、
各画素溝のインク滴体積と前記目標膜厚での各画素溝の体積との差を取得することと、
前記体積の差に基づき逐次計算を行って、各画素溝のインク滴体積及び線形結合を取得することと、を含む、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合、前記OLEDの目標膜厚、メッシュパラメータ及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算することは、
各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合に基づいて、各インクジェットヘッドの単位ステップ数当たりの完了可能な複数の画素溝のインクジェット行列を取得することと、
基板における画素溝の数、及び単位ステップ数当たりの完了可能な複数の画素溝のインクジェット行列に基づいて、最小のインクジェットのステップ数、ひいては各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を取得することと、を含む、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
各画素溝内の各メッシュの大きさは、インクジェット装置が実現できる最小の印刷領域の大きさである、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2023年2月6日に中国国家知識産権局に出願した、出願番号が202310064695.9であり、出願の名称が「OLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法」である中国特許出願、及び2022年11月2日に中国国家知識産権局に出願した、出願番号が202211364103.7であり、出願の名称が「インク滴印刷方法、装置、システム及び記憶媒体」である中国特許出願の優先権を主張し、そのすべての内容は、参照により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本願は、OLED技術分野に関し、特にOLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法に関する。
【背景技術】
【0003】
OLEDは、電流型の発光デバイスとして、ますます高性能表示に応用されている。自発光の特性を持つから、LCDに比べて、AMOLEDは、コントラスト比が高く、超薄型であり、可撓性があるなどの多くの利点を有する。
【0004】
OLED印刷プロセスは、製造過程において、まずインクジェット装置を利用してOLED材料及び溶媒としてのインクをインクジェットヘッドでTFT基板の画素溝内にプリントし、溶液状態を呈し、そして、VCD(真空乾燥)及びBake(ベーク)プロセスを経て、インクにおける溶媒を揮発させて除去し、OLED材料を残して画素溝に成膜される。インクジェット装置が画素溝内に噴射するインク滴の体積の大きさ及び分布は、膜厚均一性及び成膜効果に直接影響され、さらに発光の品質に影響されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術は、OLEDインクジェット印刷による画素溝の膜厚が均一ではない問題を解決するために、主にインクジェット過程、乾燥とベークなどの印刷プロセスのフローを改良した。しかしながら、乾燥過程において、画素レベルの領域で精密に制御することが困難であり、画素溝における膜厚が均一ではない状況を引き起こしやすい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の各実施例によれば、OLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法を提供する。
【0007】
第1態様として、本願は、OLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法を提供する。前記方法は、
前記OLEDの目標膜厚、画素溝のメッシュパラメータ、及びインクジェット装置における各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを取得し、前記目標膜厚、メッシュパラメータ、及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算することと、
各画素溝内のインクジェット体積及び分布状況に基づいて、各画素溝に対してインクジェットを行うことと、
各画素溝に対してベーク処理を行い、ベークされた各画素溝内の各メッシュの膜厚を取得することと、
各画素溝内の各メッシュの膜厚及び前記目標膜厚に基づいて、各画素溝内の各メッシュの補償インクジェット体積を特定し、各画素溝の膜厚が目標膜厚に達するまで、前記補償インクジェット体積に従え各画素溝内の各メッシュに対してインクジェットを行うことと、を含む。
【0008】
第2態様として、本願は、さらに、OLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償装置を提供し、前記装置は、
前記OLEDの目標膜厚、画素溝のメッシュパラメータ、及びインクジェット装置における各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを取得し、前記目標膜厚、メッシュパラメータ、及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算するための取得モジュールと、
各画素溝内のインクジェット体積及び分布状況に基づいて、各画素溝に対してインクジェットを行うためのインクジェットモジュールと、
各画素溝に対してベーク処理を行い、ベークされた各画素溝内の各メッシュの膜厚を取得するための膜厚取得モジュールと、
各画素溝内の各メッシュの膜厚及び前記目標膜厚に基づいて、各画素溝内の各メッシュの補償インクジェット体積を特定し、各画素溝の膜厚が目標膜厚に達するまで、前記補償インクジェット体積に従え各画素溝内の各メッシュに対してインクジェットを行うための補充モジュールと、を含む。
【0009】
第3態様として、本願は、さらに、コンピュータデバイスを提供する。前記コンピュータデバイスは、メモリ及びプロセッサを含み、前記メモリにコンピュータプログラムが記憶され、前記プロセッサによって前記コンピュータプログラムを実行すると、第1態様に記載のOLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法のステップが実施される。
【0010】
第4態様として、本願は、さらに、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。前記コンピュータ読み取り可能な記憶媒体にコンピュータプログラムが記憶され、前記コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されると、第1態様に記載のOLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法のステップが実施される。
【0011】
第5態様として、本願は、さらに、コンピュータプログラム製品を提供する。前記コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムを含み、当該コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されると、第1態様に記載のOLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法のステップが実施される。
【0012】
本願の1つまたは複数の実施例の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載される。本願の他の特徴、目的、および利点は、明細書および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に開示される本発明の実施例および/または例示をより明白に記述および説明するために、1つ以上の図面が参照され得る。図面を説明するために追加される説明または例示は、開示される発明、説明されている実施例および/または例示、ならびに理解される発明の最良の形態のいずれかの範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1】一実施例におけるOLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法の応用環境を示す模式図である。
図2】一実施例におけるOLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法の模式的なフローチャートである。
図3】一実施例における画素溝メッシュ化を示す模式図である。
図4】一実施例におけるインク滴の組み合わせを示す模式図である。
図5】一実施例におけるインク滴の溶込みを示す模式図である。
図6】一実施例における、前記目標膜厚、メッシュパラメータ及びインク滴に関するパラメータに基づいて各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算するステップがさらに細化されたフローを示す模式図である。
図7】一実施例における画素溝の分類を示す模式図である。
図8】一実施例におけるOLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償装置の構成を示すブロック図である。
図9】一実施例におけるコンピュータデバイスの内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
理解すべきこととして、ここで説明する具体的な実施例は、本願を解釈するためのものに過ぎず、本願を限定するものではない。
【0015】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的用語および科学的用語は、本願が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、特定の実施例を説明することのみを目的としており、本願を限定することを意図するものではない。本願の明細書および特許請求の範囲ならびに前述の図面の説明における「含む」および「有する」という用語ならびにそれらの任意の変形は、排他的ではない包含を網羅することが意図される。
【0016】
要素が別の要素に「固定されている」と言及される場合、それは別の要素に直接接続されていてもよく、または介在要素が存在してもよいことに留意されたい。要素が別の要素に「接続されている」と言及される場合、それは別の要素に直接接続されていてもよく、または介在要素が存在してもよいことに留意されたい。本明細書で使用される「垂直」、「水平」、「左」、「右」などの用語は、説明のみを目的とする。
【0017】
図面において、層及び領域のサイズは、説明を明確にするために拡大される場合がある。また、層または要素が別の層または基板の「上に」あると言及される場合、その層または要素は、直接その別の層または基板の上にあってもよく、または1つ以上の介在層が存在してもよいことも理解されるである。また、層が2つの層の「間に」あると言及される場合、その層は2つの層の間の唯一の層であってもよく、または1つ以上の介在層が存在してもよいことも理解されるである。さらに、同様の参照番号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0018】
以下の実施例において、層、領域、または要素が「接続される」と言及される場合、これは、層、領域、または要素が、直接接続されるだけでなく、それらの間に介在する他の構成要素を介しても接続されることを意味すると解釈され得る。例えば、層、領域、要素などが接続または電気的に接続されていると記載されている場合、その層、領域、要素などは、直接接続または電気的に接続されているだけでなく、それらの間に介在する別の層、領域、要素などを介して接続または電気的に接続されていてもよい。
【0019】
「含む/包含」または「有する」などの用語は、記載された特徴、整数、ステップ、動作、構成要素、部分、またはそれらのグループの存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、構成要素、部分、またはそれらのグループの存在または追加の可能性を排除しないことがさらに理解されるである。
【0020】
従来技術の一つは、凝縮板において改良を行うことにより、溶媒の揮発速度を変化させ、基板の縁部の気流が速くてインクの揮発速度が異なることによって、膜厚が均一ではない問題を解決した。当該方法は、乾燥過程において膜厚が均一ではない問題をある程度解決したが、実際の乾燥過程において、ガスの温度、流量及び圧力を精密に制御する必要があり、さらにインクにおける溶媒が揮発し、且つ画素溝内に残留した発光材料に物理的な歪みを与えないことを保証する必要もあり、部材装置の精度に対する要求が高すぎて、方案の設計難易度を高くなる。
【0021】
他の従来技術の一つは、乾燥したインクのインクジェットヘッドが発生される熱源ビームの横断面において改良を行うことにより、目標基板の画素溝においてインクの中間領域の凝固速度を縁部領域の凝固速度よりも速くする。しかし、当該方法を用いて基板を乾燥処理し、乾燥過程中膜厚が均一ではない問題をある程度解決したが、実際の乾燥過程において圧力を精密に制御し且つ乾燥過程の状態が安定であると保証することが非常に難しいため、実際の乾燥処理後に異なる領域の表示の品質が一致しない可能性があり、表示の品質を低下してしまう。
【0022】
さらに他の従来技術の一つは、検出モジュールを設けることにより、膜層の厚さを検出し、検出された膜層の厚さのデータに基づいて膜層の表面の各箇所の膜厚の差異を分析することができ、さらにそれに基づいて、印刷されるインク滴の数を修正する。しかし、当該方案では、印刷されるインク滴の数に対する補償は、後続の乾燥処理を含まず、後続の乾燥、ベークプロセスも画素溝において膜厚が均一ではないことになる原因であり、且つ印刷されるインク滴の数のみを補償する際に、インク滴の分布の要素を無視し、それによって、印刷された表示画像の膜厚均一性がりそうてきではない問題を引き起こす。
【0023】
本願は、図1に示すようなシステムに応用することができる。当該システムは、インク滴観測装置10、OLEDインクジェット装置20、膜厚検出器30、乾燥装置40、基板50及びプロセッサ60を含む。OLEDインクジェット装置20は、複数組のインクジェットヘッド21を含む。また、インク滴観測装置10は、CCD高速カメラ、フラッシュユニットを含んでもよい。インク滴観測装置10は、インクジェットヘッドのインク滴が飛ぶ軌跡に対して画像を撮影して分析検出する。撮影された画像から、インクジェットヘッドから吐出されたインク滴が落下して飛ぶ軌跡を得るとともに、インク滴の速度、インク滴の体積の大きさ、衛星インク滴、尾引きなどのデータを測定してインクの良否を判断し、それにより、インクジェットヘッドの制御ボードの電圧、インクジェットヘッドの制御波形とインクとの相互の適応状況を調整して、印刷精度を向上させる。
【0024】
OLEDインクジェット装置20は、インクジェット印刷と類似する形式の装置であり、ユーザが設定したインクジェットのパターンに従って、OLED画素点を可動プラットフォーム及びインクジェットヘッドによってガラス又はプラスチック底板に直接印刷する。OLEDインクジェット装置20は、通常、複数のインクジェット孔を有するインクジェットヘッドを用いて、1つ又は複数のインクジェットヘッドに数千個のインクジェット孔を用いる。
【0025】
乾燥装置40は、乾燥室であり、表示領域を有するパターンを乾燥するために用いられ、前記表示領域は、揮発性を有するキャリア液に溶解又は懸濁されたOLED材料によって湿潤される。
【0026】
膜厚検出器30は、装置の照明システムによって検出される部品に対して異なる光色と照度を与え、そして高解像度のCCDカメラを利用することで、検出される部品の画像を採集してコンピュータ処理システムに伝送し、標準画像のグレースケールと比較し、判別分析を行うことにより、最終的に検出結果を出力する。それは、OLED製品の成膜の厚さの均一性を測定するために用いられる。膜厚検出器30は、従来技術における既存の装置であり、対応する膜厚の測定結果を出力する。当該膜厚検出器30は、各画素がグレースケール処理された後の画像のグレースケールがずれた位置及び大きさを比較することによって、他の画素の前記グレースケール画像の位置及び大きさと異なる画素を選別するとともに、印刷要求と比べて、対応する膜厚検出のパラメータを出力する。
【0027】
OLED基板は、インクジェットが完了された後、乾燥装置40内に搬送されてベークさせることができる。膜厚検出器30は、OLED基板における各画素溝内のインク滴の厚さ、及びベークされた膜厚を検出し、そしてプロセッサ60にフィードバックすることができる。プロセッサ60は、受信したフィードバックに基づいてインクジェットヘッド21を制御して補償インクジェットを行い、最終の膜厚が目標膜厚に達するようにする。
【0028】
一実施例において、図2に記載のように、本願は、OLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法を提供し、当該方法は、以下のステップを含む。
【0029】
ステップ110において、前記OLEDの目標膜厚、画素溝のメッシュパラメータ、及びインクジェット装置における各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを取得し、前記目標膜厚、メッシュパラメータ、及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算する。
【0030】
本願は、図1に示すプロセッサに応用される。まず、基板における各画素溝をメッシュ化する。具体的には、図3に示すように、各画素溝をメッシュ化された複数の領域に区分し、各画素溝は、20個の領域を有する。なお、各領域の大きさは、インクジェット装置が実現できる最小の印刷領域の大きさである。メッシュ化を行った後、各画素溝のメッシュパラメータを取得する。
【0031】
プロセッサは、まず予め記憶された各種パラメータを取得し、当該パラメータは、具体的に、OLEDの目標膜厚、画素溝のメッシュパラメータ、及びインクジェット装置における各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを含み、また、インク滴に関するパラメータは、各インクジェットヘッドにおける各インクジェット孔が吐出するインク滴の体積を含む。
【0032】
一実施例として、前記OLEDの目標膜厚、画素溝のメッシュパラメータ、及びインクジェット装置における各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを取得することは、インクジェット装置における各インクジェットヘッドを制御してインク滴を吐出させ、前記インク滴の第1画像を取得し、前記第1画像に基づいて各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを特定することを含む。
【0033】
具体的には、インク滴材料が異なることによって、インク滴の体積に影響を与える可能性があり、また、同一の孔でも、装置の老朽化などの状況によって、インク滴の体積が変化することを引き起こす可能性がある。そのため、本実施例において、まずインクジェット装置における各インクジェットヘッドを制御してインク滴を吐出させ、そして吐出された各インク滴の画像を取得して第1画像と定義され、第1画像に基づいて各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを特定する、具体的なプロセスについては、従来技術を参照すればよい。
【0034】
OLEDの目標膜厚、画素溝のメッシュパラメータ及びインクジェット装置における各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを取得した後、目標膜厚に基づいて重み付け計算を行い、各メッシュに必要とするインク滴の体積及び分布状況を取得し、即ち、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を取得する。
【0035】
なお、前記インクジェット装置における各インクジェットヘッドは、複数のインクジェット孔を含み、各インクジェットヘッドは、対応する複数のインクジェット孔によって少なくとも2種類の異なる体積のインク滴を吐出することができ、前記目標膜厚、メッシュパラメータ、及びインク滴に関するパラメータに基づいて各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算することは、
各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合を取得することと、
各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合、前記目標膜厚、メッシュパラメータ、及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算することと、を含む。
【0036】
具体的には、取得された画素のメッシュ化によって、区分後のそれぞれの画素溝の最小印刷可能な領域のインク滴体積は、インクジェットヘッドの駆動波形及びインクジェット孔のスイッチングによって制御され、これで、それぞれの最小印刷可能な領域に対し固定されるとともに体積の大きさが選択可能のインク滴を実現できるため、単一の画素溝のインク滴体積は、複数の最小印刷可能な領域のインク滴体積の大きさの線形結合になると意味されており、例示的に、単一の画素溝のインク滴体積が複数の最小印刷可能な領域のインク滴体積の大きさの線形結合であることは、図4に示される通りである。図4には、いくつかの印刷インク滴の組み合わせが示され、具体的に実施する際、各種のインク滴の組み合わせは、インクジェットヘッドにおける各インクジェット孔に基づいて、配列して組み合わせることで取得することができる。
【0037】
また、各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合を取得することは、
各画素溝のインク滴体積と前記目標膜厚での各画素溝の体積との差を取得することと、
前記体積の差に基づき逐次計算を行って、各画素溝のインク滴体積及び線形結合を取得することと、を含む。
【0038】
具体的には、画素溝の体積と目標膜厚での画素溝の体積との差をコスト関数として、引き続き逐次最適化計算により、画素溝のインク滴体積の大きさと分布の組み合わせに関する方案を得る。
【0039】
ステップ120において、各画素溝内のインクジェット体積及び分布状況に基づいて、各画素溝に対してインクジェットを行う。
【0040】
ステップ130において、各画素溝に対してベーク処理を行い、ベークされた各画素溝内の各メッシュの膜厚を取得する。
【0041】
具体的には、各画素溝のインクジェット体積及び分布状況を取得した後、インクジェット装置を制御して各画素溝内に対してインクジェット印刷を行わせ、インクジェット印刷が完了後、インクジェット印刷された基板を乾燥装置まで搬送して乾燥し、印刷と乾燥の過程は、従来技術を参照すればよく、ここで限定しない。
【0042】
例示的に、図5を参照すると、異なるメッシュに対しインクジェットを行うため、溶け込まれた後、異なる位置での膜厚が異なる可能性があり、溶け込まれる前の各インク滴の位置及び形状は、M1及びM3に示すように、M1における3つのインク滴の大きさが同じであり、3つのインク滴が溶け込まれた後、M2示すように、各メッシュ位置での液面が基本的に平坦であり、M3における3つのインク滴は、真ん中のインク滴が大きく、両側のインク滴が小さいから、溶け込まれた後、真ん中が高く両側が低い状況が現れる可能性がある。そのため、本発明では、乾燥が完了した後、乾燥後の各メッシュ内の膜の厚さを測定し、各画素溝内の各メッシュの膜厚を取得する。
【0043】
ステップ140において、各画素溝内の各メッシュの膜厚及び前記目標膜厚に基づいて、各画素溝内の各メッシュの補償インクジェット体積を特定し、各画素溝の膜厚が目標膜厚に達するまで、前記補償インクジェット体積に従え各画素溝内の各メッシュに対してインクジェットを行う。
【0044】
ステップ130で取得された各メッシュの膜厚に基づいて、各画素溝内の各メッシュの膜厚と目標膜厚との間の差を特定し、各メッシュの補償インクジェット体積を特定し、溶込むは、補償インクジェット体積に従え各画素溝内の各メッシュに対してインクジェットを行い、インクジェットが完了した後、再びベーク処理を行い、そして再びベークされた各メッシュの膜厚を取得し、再び取得された各メッシュの膜厚に基づいて、目標膜厚との間の差を特定し、差が存在すれば、再び補償インクジェット体積を特定し、さらに各画素溝の膜厚が目標膜厚に達するまでに、補償インクジェットとベーク処理を行い、再び膜厚を特定することを繰り返す。
【0045】
上述したOLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法によれば、前記OLEDの目標膜厚、画素溝のメッシュパラメータ及びインクジェット装置における各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを取得することにより、前記目標膜厚、メッシュパラメータ及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算する。各画素溝内のインクジェット体積及び分布状況に基づいて、各画素溝に対してインクジェットを行う。各画素溝に対してベーク処理を行い、ベークされた各画素溝内の各メッシュの膜厚を取得する。各画素溝内の各メッシュの膜厚及び前記目標膜厚に基づいて、各画素溝内の各メッシュの補償インクジェット体積を特定し、各画素溝の膜厚が目標膜厚に達するまで、前記補償インクジェット体積に従え各画素溝内の各メッシュに対してインクジェットを行う。上述した方法により、本発明は、各画素溝をメッシュ化し、そして各画素溝内の各メッシュのインク滴体積及び分布状況を計算し、そしてベーク処理後、各画素溝の膜厚を取得し、各画素溝の膜厚及び目標膜厚に基づいて、各画素溝内の各メッシュの補償インクジェット体積を特定し、再びインクジェットを行う。このように、ベーク処理による膜厚の誤差を避けることができる。従来技術において改良された乾燥装置を用いて膜厚が均一ではないことによって設計の複雑性の問題を引き起こすことを解決し、設計の複雑性を低下させるとともに、膜厚均一性をよく保証する。また、本実施例では、乾燥処理をフローに加えることにより、従来の印刷補償技術において乾燥、ベークなどのプロセスが考慮されないことによって画素溝内の膜厚が均一ではない問題を解決し、膜厚均一性を検出する正確性を向上させる。
【0046】
一実施例において、図6に示すように、前記目標膜厚、メッシュパラメータ及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算するステップは、
ステップ111において、前記画素溝が位置された基板の画像を取得し、前記画像に基づいて各画素溝を対応する画素溝のタイプに区分することと、
ステップ112において、前記目標膜厚、メッシュパラメータ、インク滴に関するパラメータ及び各画素溝のタイプに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算することと、を含む。
【0047】
具体的には、画素溝の位置が異なることよる影響を考慮し、本実施例では、各画素溝の位置に基づいて、各画素溝を異なるタイプに区分し、例示的に、図7を参照すると、取得された基板の画像に基づいて、基板における各画素溝の位置を特定し、各画素溝を対応する画素溝のタイプに区分し、画素溝のタイプは、基板の1つ縁部に近接するシングルエッジ画素溝(例えば、図7においてA2で示す画素溝)、基板の2つの縁部に近接するダブルエッジ画素溝(例えば、図7においてA1で示す画素溝)、及び基板の内部に位置する内部画素溝(例えば図7においてA3で示す画素溝)のうちの少なくとも1種を含み、具体的な実施例では、画素溝を他のタイプに区分することができる。各画素溝のタイプを特定した後、目標膜厚、メッシュパラメータ、インク滴に関するパラメータ及び各画素のタイプに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算する。
【0048】
一実施例において、前記各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合、前記OLEDの目標膜厚、メッシュパラメータ及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算することは、
各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合に基づいて、各インクジェットヘッドの単位ステップ数当たりの完了可能な複数の画素溝のインクジェット行列を取得することと、
基板における画素溝の数、及び単位ステップ数当たりの完了可能な複数の画素溝のインクジェット行列に基づいて、最小のインクジェットのステップ数、ひいては各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を取得することと、を含む。
【0049】
具体的には、各インクジェット孔は、2種以上のインク滴体積の大きさを有し、各インクジェット孔が吐出する体積にわずかな差異がある。インク滴体積の正確性を保証するとともに、印刷時に最少のステップ数を使用して印刷効率を高めるために、行列数学による実行最適化の方式を使用し、取得されたインク滴に関するパラメータ及びステップ110で取得された各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況、さらに入力としての基板の画素溝の座標に基づいて、印刷着弾点と波形選択データを生成する。
【0050】
また、印刷過程において、各画素溝は、インクジェットヘッドが1回移動するだけで印刷の要求を満たすことができず、また、1つのインクジェットヘッドアレイは、同時に複数の画素溝を印刷し、インクジェットヘッドの連続的なステップ移動による印刷を必要とし、これは、最小のステップ数の問題に関わるようになる。ステップ110で取得された各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況に基づいて、1つのインクジェットヘッドアレイが1回で最大限に印刷できる複数の画素溝インク滴の大きさの分布を1つの大きなインク滴の分布行列に組み合わせ、その後、最適化の方法により、行列演算を利用してインクジェットヘッド移動の最小のステップ数を目標関数とすると、最終の印刷着弾点とインク滴体積の大きさに対応する波形選択データを特定することができる。
【0051】
また、最適化の方法として、粒子群最適化アルゴリズムを選定し、当該粒子群最適化アルゴリズムは、進化的計算の1つの分岐であり、自然界の生物学的活動をシミュレーションするランダムサーチアルゴリズムである。この方法の使用において、インクジェットヘッド全体のアレイをなすインクジェット孔を「粒子」とみなし、対応するサーチ空間は、ステップ110で取得された各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況であり、基板全体の印刷過程での最小のステップ数に基づいてグローバル最適値及び適応度関数を設定し、終了条件を満たす最小の印刷ステップ数を得るまで、グローバルサーチ時に対応的に最適値を1回更新し、印刷のステップ数を得た後、対応するインク滴体積の大きさ及び分布に関する方案の唯一の解を特定することができる。
【0052】
前記各画素溝内の各メッシュの膜厚及び前記目標膜厚に基づいて、各画素溝内の各メッシュの補償インクジェット体積を特定し、各画素溝の膜厚が目標膜厚に達するまで、前記補償インクジェット体積に従え各画素溝内の各メッシュに対してインクジェットを行うことは、
前記目標膜厚及び前回のベークされた各画素溝内の各メッシュ膜厚の膜厚補充パラメータを取得することと、
前記膜厚補充パラメータ及び予め設定された重み付けパラメータに基づいて、各画素溝のインク滴補充体積を取得することと、
各画素溝のインク滴補充体積に基づいて、逐次最適化を行い、各画素溝の補償インク滴体積と分布の組み合わせの方案を取得することと、を含む。
【0053】
また、前記膜厚補充パラメータ及び予め設定された重み付けパラメータに基づいて、各画素溝のインク滴補充体積を取得することは、
各画素溝のタイプを特定し、各画素溝のタイプに基づいて、各画素溝膜厚補充パラメータに対応する重み付けパラメータを特定することを含む。
【0054】
【0055】
【0056】
このように、領域A1における各画素溝に対応するインクジェット体積を特定することができる。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
ただし、J(w)は、コスト関数であり、mは、画素溝の総数であり、wは、画素溝内の各メッシュインク滴の数であり、yiは、画素溝のインク滴補充体積(上述したように計算されたVA1、VA2、VA3から取得される)、wnewは、現在使用されているパラメータであり、woldは、前回で使用されたパラメータであり、ηは、学習率であり、▽wJ(w)は、勾配演算子であり、当該勾配演算子は、コスト関数J(w)に基づいて、既存のアルゴリズムによって取得され、Xiは、各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを表す。Xiとwとの積は、単位メッシュ当たりのインクジェット体積を表し、各画素溝内の各メッシュのインクジェット体積の組み合わせは、各画素溝のインクジェット体積及び分布状況を構成する。なお、イテレーションの過程において、コスト関数J(w)が最小であることを目的としてイテレーションを行い、最終的にXiとwの値を取得し、即ち、各メッシュで使用されるインクジェットヘッド(又は、1回のインクジェット体積)、及びインクジェットの回数を取得した。
【0061】
一実施例において、最小のインクジェットのステップ数を特定し、即ち、使用しようとするインクジェットヘッド、即ち目標のインクジェットヘッドの組み合わせを特定し、また、最小のインクジェットは、印刷過程において、1つ目の印刷点から最後の1つの印刷点まで移動するのに、インクジェット孔が移動しなければならない距離である。そして、特定された目標のインクジェットヘッドの組み合わせ及び補償インクジェット体積に従え各前記インクジェットヘッドを制御して前記目標画素溝に対して印刷を行わせ、具体的には、まず、目標のインクジェットヘッドの組み合わせ及び前記補償インクジェット体積に従え目標画素溝の印刷画像を生成し、また、印刷画像は、予め印刷された画像であり、目標のインクジェット孔の組み合わせが吐出できるインク滴体積の大きさ及び位置分布に基づいて、それに対応する画像を得る。さらに、各画素溝の印刷画像に基づいて、各インクジェット孔を制御して各画素溝に対して印刷を行わせる。
【0062】
理解できるように、上述した各実施例に係るフローチャートにおける各ステップは、矢印で示す順序で順次示されているが、これらのステップは、必ずしも矢印で示す順序で順次実行される必要はない。これらのステップの実行は、本明細書に明示的に記載されていない限り、厳密な順序に限定されず、他の順序で実行されてもよい。また、上述した実施例に係るフローチャートのステップの少なくとも一部は、複数のステップまたは複数の段階を含んでもよく、これらのステップまたは段階は、必ずしも同時に実行される必要はなく、異なる時間に実行されてもよく、これらのステップまたは段階の実行順序は、必ずしも順次に実行される必要はなく、他のステップまたは他のステップのうちのステップもしくは段階の少なくとも一部と交互に実行されてもよい。
【0063】
同様の発明の構想に基づいて、本願の実施例は、さらに上記の説明に係るOLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法を実現するためのOLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償装置を提供する。当該装置が提供した、問題を解決する技術案は、上記方法に記載された技術案と類似するため、以下に提供される1つ又は複数のOLEDのインクジェット制御装置の実施例における具体的な限定は、上述したOLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法に対する限定を参照すればよく、ここで繰り返し述べない。
【0064】
一実施例において、図8に示すように、OLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償装置を提供し、当該装置は、以下のモジュールを含む。
【0065】
取得モジュール810は、前記OLEDの目標膜厚、画素溝のメッシュパラメータ及びインクジェット装置における各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを取得し、前記OLEDの目標膜厚、メッシュパラメータ及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算するために用いられる。
【0066】
インクジェットモジュール820は、各画素溝内のインクジェット体積及び分布状況に基づいて、各画素溝に対してインクジェットを行うために用いられる。
【0067】
膜厚取得モジュール830は、各画素溝に対してベーク処理を行い、ベークされた各画素溝内の各メッシュの膜厚を取得するために用いられる。
【0068】
補充モジュール840は、各画素溝内の各メッシュの膜厚に基づいて、各画素溝内の各メッシュの補償インクジェット体積を特定し、各画素溝の膜厚が目標膜厚に達するまで、前記補償インクジェット体積に従え各画素溝内の各メッシュに対してインクジェットを行うために用いられる。
【0069】
一実施例において、取得モジュール810は、
インクジェット装置における各インクジェットヘッドを制御してインク滴を吐出させ、前記インク滴の第1画像を取得し、前記第1画像に基づいて各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを特定するために用いられる。
【0070】
一実施例において、取得モジュール810は、
前記画素溝が位置された基板の画像を取得し、前記画像に基づいて各画素溝を対応する画素溝のタイプに区分し、
前記目標膜厚、メッシュパラメータ、インク滴に関するパラメータ及び各画素溝のタイプに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算するために用いられる。
【0071】
一実施例において、前記画素溝のタイプは、基板の1つ縁部に近接するシングルエッジ画素溝、基板の2つの縁部に近接するダブルエッジ画素溝、及び基板の内部に位置する内部画素溝のうちの少なくとも1種を含む。
【0072】
一実施例において、補充モジュール840は、
前記目標膜厚及び前回のベークされた各画素溝内の各メッシュ膜厚の膜厚補充パラメータを取得し、
前記膜厚補充パラメータ及び予め設定された重み付けパラメータに基づいて、各画素溝のインク滴補充体積を取得し、
各画素溝のインク滴補充体積に基づいて、逐次最適化を行い、各画素溝の補償インク滴体積と分布の組み合わせの方案を取得するために用いられる。
【0073】
一実施例において、補充モジュール840は、
各画素溝のタイプを特定し、各画素溝のタイプに基づいて、各画素溝膜厚補充パラメータに対応する重み付けパラメータを特定するために用いられる。
一実施例において、前記インクジェット装置における各インクジェットヘッドは、複数のインクジェット孔を含み、各インクジェットヘッドは、対応する複数のインクジェット孔を介して少なくとも2種類の異なる体積のインク滴を吐出することができ、取得モジュール810は、
各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合を取得し、
各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合、前記目標膜厚、メッシュパラメータ及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算するために用いられる。
【0074】
一実施例において、取得モジュール810は、
各画素溝のインク滴体積と前記目標膜厚での各画素溝の体積との差を取得し、
前記体積の差に基づき逐次計算を行って各画素溝のインク滴体積及び線形結合を取得することために用いられる。
【0075】
一実施例において、取得モジュール810は、
各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合に基づいて、各インクジェットヘッドの単位ステップ数当たりの完了可能な複数の画素溝のインクジェット行列を取得し、
基板における画素溝の数、及び単位ステップ数当たりの完了可能な複数の画素溝のインクジェット行列に基づいて、最小のインクジェットのステップ数、ひいては各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を取得するために用いられる。
【0076】
一実施例において、各画素溝内の各メッシュの大きさは、インクジェット装置が実現できる最小の印刷領域の大きさである。
【0077】
上述したOLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償装置における各モジュールは、全て又は一部がソフトウェア、ハードウェア及びその組み合わせによって実現することができる。上記各モジュールはハードウェア形式でコンピュータデバイスにおけるプロセッサに内蔵され又は独立してもよく、ソフトウェア形式でコンピュータデバイスにおけるメモリに記憶されてもよく、それにより、プロセッサは以上の各モジュールに対応する操作を呼び出して実行する。
【0078】
一実施例において、コンピュータデバイスを提供し、当該コンピュータデバイスは、サーバであり、その内部構成図は、図9に示す通りである。当該コンピュータデバイスは、システムバスによって接続されたプロセッサ、メモリ及びネットワークインターフェースを含む。また、当該コンピュータデバイスのプロセッサは、計算及び制御能力を提供するために用いられる。当該コンピュータデバイスのメモリは、不揮発性記憶媒体及び内部メモリを含む。当該不揮発性記憶媒体にオペレーティングシステム、コンピュータプログラムとデータベースが記憶されている。当該内メモリは、不揮発性記憶媒体におけるオペレーティングシステム及びコンピュータプログラムの実行のための環境を提供する。当該コンピュータデバイスのデータベースは、目標膜厚、画素溝のメッシュパラメータ及びインクジェット装置における各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータなどのデータを記憶するために用いられる。当該コンピュータデバイスのネットワークインターフェースは、外部の端末とネットワーク接続によって通信するために用いられる。当該コンピュータプログラムがプロセッサによって実行される際にOLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法のステップを実施する。
【0079】
当業者は、図9に示される構成が、本願の解決策に関連する構成の一部のみのブロック図であり、本願の解決策が適用されるコンピュータデバイスを限定するものではなく、特定のコンピュータデバイスが、図に示されるものよりも多いまたは少ない構成要素を含んでもよく、いくつかの構成要素を組み合わせてもよく、または構成要素の異なる配置を有してもよいことを理解できるである。
【0080】
一実施例において、コンピュータデバイスを提供し、当該コンピュータデバイスは、メモリ及びプロセッサを含み、メモリにコンピュータプログラムが記憶され、当該プロセッサは、コンピュータプログラムを実行する際に、以下のステップを実施する。
【0081】
前記OLEDの目標膜厚、画素溝のメッシュパラメータ及びインクジェット装置における各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを取得し、前記目標膜厚、メッシュパラメータ及びインク滴に関するパラメータに基づいて各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算し、
各画素溝内のインクジェット体積及び分布状況に基づいて、各画素溝に対してインクジェットを行い、
各画素溝に対してベーク処理を行い、ベークされた各画素溝内の各メッシュの膜厚を取得し、
各画素溝内の各メッシュの膜厚及び前記目標膜厚に基づいて、各画素溝内の各メッシュの補償インクジェット体積を特定し、各画素溝の膜厚が目標膜厚に達するまで、前記補償インクジェット体積に従え各画素溝内の各メッシュに対してインクジェットを行う。
【0082】
一実施例において、プロセッサがコンピュータプログラムを実行する際に、さらに以下のステップを実施する。
【0083】
インクジェット装置における各インクジェットヘッドを制御してインク滴を吐出させ、前記インク滴の第1画像を取得し、前記第1画像に基づいて各インクジェットヘッドのインク滴に関するパラメータを特定する。
【0084】
一実施例において、プロセッサがコンピュータプログラムを実行する際に、さらに以下のステップを実施する。
【0085】
前記画素溝が位置された基板の画像を取得し、前記画像に基づいて各画素溝を対応する画素溝のタイプに区分し、
前記目標膜厚、メッシュパラメータ、インク滴に関するパラメータ及び各画素溝のタイプに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算する。
【0086】
一実施例において、前記画素溝のタイプは、基板の1つの縁部に近接するシングルエッジ画素溝、基板の2つの縁部に近接するダブルエッジ画素溝、及び基板の内部に位置する内部画素溝のうちの少なくとも1種を含む。
【0087】
一実施例において、プロセッサがコンピュータプログラムを実行する際に、さらに以下のステップを実施する。
【0088】
前記目標膜厚及び前回のベークされた各画素溝内の各メッシュ膜厚の膜厚補充パラメータを取得し、
前記膜厚補充パラメータ及び予め設定された重み付けパラメータに基づいて、各画素溝のインク滴補充体積を取得し、
各画素溝のインク滴補充体積に基づいて、逐次最適化を行い、各画素溝の補償インク滴体積と分布の組み合わせの方案を取得する。
【0089】
一実施例において、プロセッサがコンピュータプログラムを実行する際に、さらに以下のステップを実施する。
【0090】
各画素溝のタイプを特定し、各画素溝のタイプに基づいて、各画素溝膜厚補充パラメータに対応する重み付けパラメータを特定する。
【0091】
一実施例において、前記インクジェット装置における各インクジェットヘッドは、複数のインクジェット孔を含み、各インクジェットヘッドは、対応する複数のインクジェット孔を介して少なくとも2種類の異なる体積のインク滴を吐出することができる。
【0092】
プロセッサがコンピュータプログラムを実行する際に、さらに以下のステップを実施する。
【0093】
各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合を取得し、
各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合、前記目標膜厚、メッシュパラメータ及びインク滴に関するパラメータに基づいて、各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を計算する。
【0094】
一実施例において、プロセッサがコンピュータプログラムを実行する際に、さらに以下のステップを実施する。
【0095】
各画素溝のインク滴体積と前記目標膜厚での各画素溝の体積との差を取得し、
前記体積の差に基づき逐次計算を行って、各画素溝のインク滴体積及び線形結合を取得する。
【0096】
一実施例において、プロセッサがコンピュータプログラムを実行する際に、さらに以下のステップを実施する。
【0097】
各インクジェットヘッドが各画素溝に吐出するインク滴体積及び線形結合に基づいて、各インクジェットヘッドの単位ステップ数当たりの完了可能な複数の画素溝のインクジェット行列を取得し、
基板における画素溝の数、及び単位ステップ数当たりの完了可能な複数の画素溝のインクジェット行列に基づいて、最小のインクジェットのステップ数、ひいては各画素溝内のインク滴のインクジェット体積及び分布状況を取得する。
【0098】
一実施例において、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供し、当該記憶媒体にコンピュータプログラムが記憶されており、コンピュータプログラムがプロセッサによって実行される際に上述したいずれかの実施例に記載のOLEDインクジェット印刷の膜厚均一性の補償方法のステップを実施する。
【0099】
当業者は、上述した実施例の方法の全て又は一部のプロセスを実施することが、コンピュータプログラムによって関連するハードウェアを命令して完了することができ、前記コンピュータプログラムは不揮発性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶することができ、当該コンピュータプログラムを実行する時、上記各方法の実施例のプロセスを含むことができる。また、本願の提供する各実施例に使用されるメモリ、データベース又は他の媒体に対する任意の参照は、いずれも不揮発性及び揮発性メモリのうちの少なくとも1種を含むことができる。不揮発性メモリは、読み出し専用メモリ(Read-Only Memory、ROM)、テープ、フロッピーディスク、フラッシュメモリ、光メモリ、高密度埋め込み型不揮発性メモリ、抵抗変化メモリ(ReRAM)、磁気抵抗変化メモリ(Magnetoresistive Random Access Memory、MRAM)、強誘電体メモリ(Ferroelectric Random Access Memory、FRAM)、相変化メモリ(Phase Change Memory、PCM)、グラフェンメモリ等を含むことができる。揮発性メモリは、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAM)又は外部キャッシュメモリ等を含むことができる。説明のためであって限定するものではなく、RAMは、様々な形式であってもよく、例えばスタティックランダムアクセスメモリ(Static Random Access Memory、SRAM)又はダイナミックランダムアクセスメモリ(Dynamic Random Access Memory、DRAM)等である。本願の提供する各実施例に係るデータベースは、リレーショナルデータベース及び非リレーショナルデータベースのうちの少なくとも1種を含むことができる。非リレーショナルデータベースは、ブロックチェーンに基づく分散型データベース等を含むことができ、これに限定されるものではない。本願の提供する各実施例に係るプロセッサは、汎用プロセッサ、中央プロセッサ、グラフィックスプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、プログラマブルロジック、量子計算に基づくデータ処理ロジック等であってもよく、これに限定されるものではない。
【0100】
以上の実施例の各技術的特徴は、任意の組み合わせを行うことができ、説明を簡潔にするために、上記実施例における各技術的特徴の全ての可能な組み合わせを説明していないが、しかしながら、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、いずれも本明細書に記載の範囲と見なされるべきである。
【0101】
以上の前記実施例は、本願のいくつかの実施形態のみを示し、その説明は具体的かつ詳細であるが、本願の特許範囲を限定するものと理解すべきではない。なお、当業者であれば、本願の概念から逸脱することなく、さらに複数の変形及び改良を行うことができ、これらはいずれも本願の保護範囲に属する。従って、本願の保護範囲は添付の特許請求の範囲を基準とすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】