(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20250128BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250128BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20250128BHJP
A61P 13/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20250128BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250128BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250128BHJP
A61K 31/553 20060101ALI20250128BHJP
A61K 31/5517 20060101ALI20250128BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250128BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
A61K47/68 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61P1/00
A61P11/00
A61P1/18
A61P13/00
A61P13/08
A61P15/00
A61P13/12
A61K45/00
A61K45/00 101
A61P43/00 121
A61K31/553
A61K31/5517
A61K39/395 N
A61K39/395 D
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538652
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 IB2022062797
(87)【国際公開番号】W WO2023126822
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】502097090
【氏名又は名称】アストラゼネカ ユーケー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【氏名又は名称】大栗 由美
(74)【代理人】
【識別番号】100155125
【氏名又は名称】池田 直俊
(72)【発明者】
【氏名】ロス,サラ ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】メテタル 2世,ジェローム トーマス
(72)【発明者】
【氏名】チャクラボーティ,アタヌ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA26
4C085BB11
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB11
4C086CB22
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
RASG12C阻害剤と組み合わせて抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを投与するための医薬品が提供される。治療的使用及び方法であって、抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤が組み合わせて対象に投与される治療的使用及び方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み合わせて投与するための、抗体が抗HER2抗体である抗体-薬物コンジュゲートと、RASG12C阻害剤とを含む医薬品。
【請求項2】
前記RASG12C阻害剤は、以下の式(I):
【化1】
(式中、
Aは、フェニル又は二環式ヘテロアリール基であり、
X及びYは、二重結合によって接続されており、i)Xは、CR
7であり、及びYは、CR
8であるか、ii)Xは、Nであり、及びYは、CR
8であるか、又はiii)Xは、CR
7であり、及びYはNであるか、又は
X及びYは、共にC(O)NR
9であるか、又は
X及びYは、Zで置換された芳香環に縮合されている、任意選択的に置換された5又は6員のN-ヘテロ環の隣接する環原子であり、且つX及びYは、両方ともCであるか又はC及びNであり、
Zは、O、NH又はNMeであり、
R
1は、独立して、F、Cl、Br、OH、CH
2OH、OMe、CH
2OMe、C
1~C
3アルキル及びC
1~C
3フルオロアルキルから選択され、
nは、0、1、2又は3であり、
R
2は、H、F、Cl、CCH、CCMe、CN、Br、C
1~C
3アルキル、C
1~C
3フルオロアルキル、OMe又はOEtであり、
R
3a及びR
3bは、共に=Oであるか、又はR
3a及びR
3bは、Hであり、
R
4は、H又はMeであり、
R
5は、H又はMeであり、
R
6は、H又はCH
2NMe
2であり、
R
7及びR
8は、独立して、H、F、Cl、CCH、CC(C
1~C
3アルキル)、CCCH
2NMe
2、CCCH
2O(C
1~C
3アルキル)、CN、Me、C
1~C
6アルキル、OH、OMe、O(C
1~C
3アルキル)、O(C
1~C
3ジューテロアルキル)、O(C
1~C
3フルオロアルキル)、O(C
3~C
6シクロアルキル)、C
1~C
3フルオロアルキル、OCH
2CH
2NMe
2、OCH
2CH
2OMe、CH
2OMe、OCH
2CH
2N(CH
2CH
2)
2CH、OCH
2CH
2N(CH
2CH
2)
2O、OCH
2CH
2(2-ピリジル)又は任意選択的に置換された3、4、5若しくは6員の炭素環若しくはヘテロ環から選択されるか、又は
R
7及びR
8は、結合して、任意選択的に置換された5又は6員の炭素環又はヘテロ環を形成し、
R
9は、H、Me、Et、C
3H
7及びC
1~C
3フルオロアルキルから選択される)
によって表される化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬品。
【請求項3】
式(I)中、i)Xは、CR
7であり、及びYは、CR
8であるか、ii)Xは、Nであり、及びYは、CR
8であるか、又はiii)Xは、CR
7であり、及びYは、Nである、請求項2に記載の医薬品。
【請求項4】
式(I)中、Zは、Oである、請求項2又は3に記載の医薬品。
【請求項5】
式(I)中、R
3a及びR
3bは、Hである、請求項2~4のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項6】
式(I)中、R
4は、Hである、請求項2~5のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項7】
式(I)中、R
6は、Hである、請求項2~6のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項8】
式(I)中、Aは、フェニルである、請求項2~7のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項9】
前記RASG12C阻害剤は、
(12aS)-2-アクリロイル-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-6-オン;
1-((12aS)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-メトキシ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-ヒドロキシ-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
1-((12aR)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-8-フルオロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジクロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-ヒドロキシ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-(1H-イミダゾール-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-7-カルボニトリル;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-(1H-ピラゾール-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((12aR)-10-クロロ-8-フルオロ-9-(5-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-4-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-8,10-ジクロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-メチル-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジクロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
8-[(12aR)-10-クロロ-8-フルオロ-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-9-イル]-7-メチルイソキノリン-1(2H)-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-メトキシ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aS)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,3,4,11,12,12a-ヘキサヒドロピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-6(2H)-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aS)-10-クロロ-11-メチル-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,3,4,11,12,12a-ヘキサヒドロピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-6(2H)-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2,3-ジフルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジフルオロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジフルオロ-9-[2-フルオロ-6-(ヒドロキシメチル)フェニル]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジフルオロ-9-[2-ヒドロキシ-6-(トリフルオロメチル)フェニル]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-エチル-6-ヒドロキシフェニル)-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-[2-(ジフルオロメチル)-6-ヒドロキシフェニル]-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
1-[(12aR)-9-(2-ブロモ-6-ヒドロキシフェニル)-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8-クロロ-10-フルオロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8-クロロ-10-エチニル-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-エチニル-8-フルオロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(6aR)-4-クロロ-3-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-8-(プロパ-2-エノイル)-2,6,6a,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-1-オン;
1-[(6aR)-1,4-ジクロロ-3-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(6aR)-4-クロロ-3-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(プロパ-2-エノイル)-2,6,6a,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-1-オン;
1-[(8aR)-6-クロロ-5-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8a,9,11,12-テトラヒドロ-14H-ピラジノ[2,1-c][1,2,4]トリアゾロ[4’,3’:1,2]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(7aR)-5-クロロ-4-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-メチル-1,7a,8,10,11,13-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[7,6-g]インダゾール-9(7H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;及び
1-[(7aR)-5-クロロ-4-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-2,7a,8,10,11,13-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[7,6-g]インダゾール-9(7H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((12aR)-10-クロロ-8-エチニル-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(7aR)-5-クロロ-4-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-メチル-1,7a,8,10,11,13-ヘキサヒドロイミダゾ[4,5-g]ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-9(7H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-(プロパ-1-イン-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-エチニル-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[2,3-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-10-メチル-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-7,8-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(ジフルオロメトキシ)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-7,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(ジフルオロメトキシ)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(シクロプロピルオキシ)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(3-(ジメチルアミノ)プロパ-1-イン-1-イル)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-[(ピリジン-4-イル)メトキシ]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(2-メトキシエトキシ)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-[2-(ピペリジン-1-イル)エトキシ]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(プロパ-1-イン-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-[(
2H
3メチルオキシ]-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[2,3-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(メトキシメチル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-(プロパ-1-イン-1-イル)-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;及び
1-((6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-エチニル-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;又は
これらの薬学的に許容される塩
から選択される化合物である、請求項2に記載の医薬品。
【請求項10】
前記RASG12C阻害剤は、1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オンである、請求項2に記載の医薬品。
【請求項11】
前記RASG12C阻害剤は、1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-(プロパ-1-イン-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オンである、請求項2に記載の医薬品。
【請求項12】
前記RASG12C阻害剤は、LY3537982(Loxo/Lilly)、AZD4625(AstraZeneca)、ソトラシブ(AMG510)、アダグラシブ(MRTX849)、JDQ443(Novartis)、GDC-6036(Genentech)、BI 1,823,911(Boehringer Ingelheim)、D1553(InventisBio)及びJNJ-74699157(Johnson and Johnson)又はこれらの薬学的に許容される塩から選択される、請求項1に記載の医薬品。
【請求項13】
前記RASG12C阻害剤は、以下の式:
【化2】
によって表される化合物A又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬品。
【請求項14】
前記抗HER2抗体は、配列番号3によって表されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号4によって表されるアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号5によって表されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖と、配列番号6によって表されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号7のアミノ酸残基1~3からなるアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号8によって表されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖とを含む抗体である、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項15】
前記抗HER2抗体は、配列番号9によって表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番号10によって表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む抗体である、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項16】
前記抗HER2抗体は、配列番号1によって表されるアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号2によって表されるアミノ酸配列からなる軽鎖とを含む抗体である、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項17】
前記抗HER2抗体は、配列番号11によって表されるアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号2によって表されるアミノ酸配列からなる軽鎖とを含む抗体である、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項18】
前記抗体-薬物コンジュゲートは、以下の式:
【化3】
(式中、Aは、抗体に対する接続位置を表す)
によって表される薬物-リンカーがチオエーテル結合を介して抗HER2抗体にコンジュゲートされている抗体-薬物コンジュゲートである、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項19】
前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、以下の式:
【化4】
(式中、「抗体」は、チオエーテル結合を介して前記薬物-リンカーにコンジュゲートされた前記抗HER2抗体を示し、及びnは、前記抗体-薬物コンジュゲート中の1つの抗体分子当たりのコンジュゲートされた前記薬物-リンカーの単位の平均数を示し、nは、7~8の範囲である)
によって表される、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項20】
前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、トラスツズマブデルクステカン(DS-8201)又はトラスツズマブエムタンシン(T-DM1)である、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項21】
前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、トラスツズマブデルクステカン(DS-8201)である、請求項20に記載の医薬品。
【請求項22】
別々に同時投与のための、前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及び前記RASG12C阻害剤を含む組成物である、請求項1~21のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項23】
逐次投与のための、前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及び前記RASG12C阻害剤を含む組み合わせ調製物である、請求項1~21のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項24】
癌を処置するためのものである、請求項1~23のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項25】
前記癌は、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌、食道胃接合部腺癌、胆道癌、パジェット病、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌肉腫、尿路上皮癌、前立腺癌、膀胱癌、胃腸間質腫瘍、消化管間質腫瘍、子宮頸癌、扁平上皮細胞癌腫、腹膜癌、肝臓癌、肝細胞癌、子宮体部癌腫、腎臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、陰茎癌、白血病、悪性リンパ腫、形質細胞腫、骨髄腫、多形性膠芽腫、骨肉腫、肉腫及び黒色腫からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項24に記載の医薬品。
【請求項26】
前記癌は、乳癌である、請求項25に記載の医薬品。
【請求項27】
前記乳癌は、IHC 3+のHER2ステータススコアを有する、請求項26に記載の医薬品。
【請求項28】
前記乳癌は、HER2低発現乳癌である、請求項26に記載の医薬品。
【請求項29】
前記乳癌は、IHC 2+のHER2ステータススコアを有する、請求項26に記載の医薬品。
【請求項30】
前記乳癌は、IHC 1+のHER2ステータススコアを有する、請求項26に記載の医薬品。
【請求項31】
前記乳癌は、IHC>0及び<1+のHER2ステータススコアを有する、請求項26に記載の医薬品。
【請求項32】
前記乳癌は、トリプルネガティブ乳癌である、請求項26に記載の医薬品。
【請求項33】
前記癌は、胃癌である、請求項24に記載の医薬品。
【請求項34】
前記癌は、結腸直腸癌である、請求項24に記載の医薬品。
【請求項35】
前記癌は、肺癌である、請求項24に記載の医薬品。
【請求項36】
前記肺癌は、非小細胞肺癌である、請求項35に記載の医薬品。
【請求項37】
前記癌は、膵臓癌である、請求項24に記載の医薬品。
【請求項38】
前記癌は、卵巣癌である、請求項24に記載の医薬品。
【請求項39】
前記癌は、前立腺癌である、請求項24に記載の医薬品。
【請求項40】
前記癌は、腎臓癌である、請求項24に記載の医薬品。
【請求項41】
癌の処置での使用のための、請求項1~23のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項42】
前記癌は、請求項25~40のいずれか一項に記載の通りである、請求項41に記載の使用のための医薬品。
【請求項43】
癌を処置するためにRASG12C阻害剤と組み合わせて使用するための薬剤の製造における抗HER2抗体-薬物コンジュゲートの使用であって、前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及び前記RASG12C阻害剤は、請求項1~21のいずれか一項に記載の通りである、使用。
【請求項44】
前記薬剤は、逐次投与により、前記RASG12C阻害剤と組み合わせて使用するためのものである、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
前記薬剤は、別々の同時投与により、前記RASG12C阻害剤と組み合わせて使用するためのものである、請求項43に記載の使用。
【請求項46】
癌を処置するために抗HER2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせて使用するための薬剤の製造におけるRASG12C阻害剤の使用であって、前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及び前記RASG12C阻害剤は、請求項1~21のいずれか一項に記載の通りである、使用。
【請求項47】
前記薬剤は、逐次投与により、前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせて使用するためのものである、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
前記薬剤は、別々の同時投与により、前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせて使用するためのものである、請求項46に記載の使用。
【請求項49】
前記癌は、請求項25~40のいずれか一項に記載の通りである、請求項43~48のいずれか一項に記載の使用。
【請求項50】
癌の処置においてRASG12C阻害剤と組み合わせて使用するための抗HER2抗体-薬物コンジュゲートであって、前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及び前記RASG12C阻害剤は、請求項1~21のいずれか一項に記載の通りである、抗HER2抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項51】
前記癌は、請求項25~40のいずれか一項に記載の通りである、請求項50に記載の使用のための抗HER2抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項52】
前記使用は、逐次的な前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及び前記RASG12C阻害剤の投与を含む、請求項50又は51に記載の使用のための抗HER2抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項53】
前記使用は、別々の且つ同時の前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及び前記RASG12C阻害剤の投与を含む、請求項50又は51に記載の使用のための抗HER2抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項54】
対象における癌の処置で使用するための抗HER2抗体-薬物コンジュゲートであって、前記処置は、前記対象への、i)前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲートと、ii)RASG12C阻害剤との逐次投与又は別々の同時投与を含み、前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及び前記RASG12C阻害剤は、請求項1~21のいずれか一項に記載の通りである、抗HER2抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項55】
癌の処置において抗HER2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせて使用するためのRASG12C阻害剤であって、前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及び前記RASG12C阻害剤は、請求項1~21のいずれか一項に記載の通りである、RASG12C阻害剤。
【請求項56】
前記癌は、請求項25~40のいずれか一項に記載の通りである、請求項50に記載の使用のためのRASG12C阻害剤。
【請求項57】
前記使用は、逐次的な前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及び前記RASG12C阻害剤の投与を含む、請求項55又は56に記載の使用のためのRASG12C阻害剤。
【請求項58】
前記使用は、別々の且つ同時の前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及び前記RASG12C阻害剤の投与を含む、請求項55又は56に記載の使用のためのRASG12C阻害剤。
【請求項59】
対象における癌の処置で使用するためのRASG12C阻害剤であって、前記処置は、前記対象への、i)前記RASG12C阻害剤と、ii)抗HER2抗体-薬物コンジュゲートとの逐次投与又は別々の同時投与を含み、前記RASG12C阻害剤及び前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、請求項1~21のいずれか一項に記載の通りである、RASG12C阻害剤。
【請求項60】
癌を処置する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~21のいずれか一項に記載の抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤を組み合わせて投与することを含む方法。
【請求項61】
前記癌は、請求項25~40のいずれか一項に記載の通りである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及び前記RASG12C阻害剤を逐次的に投与することを含む、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及び前記RASG12C阻害剤を別々に且つ同時に投与することを含む、請求項60又は61に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、RASG12C阻害剤と組み合わせて、リンカー構造を介して抗HER2抗体にコンジュゲートされた抗腫瘍薬を有する抗体-薬物コンジュゲートを投与するための医薬品と、治療的使用及び方法であって、特異的な抗原-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤が組み合わせて対象に投与される治療的使用及び方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
KRAS、NRAS及びHRAS遺伝子は、本明細書で集合的にRasタンパク質又はRasと称される、82~90%の全体的な配列同一性を共有する、密接に関連する低分子量GTPアーゼタンパク質KRas、NRas及びHRasのセットをコードする。Rasタンパク質は、細胞表面受容体からのシグナルを伝達して、細胞の増殖、生存及び分化を制御するシグナリング経路の重要な構成要素である。
【0003】
Rasタンパク質は、188~189個のアミノ酸の長さであり、分子スイッチとして機能し、不活性なGDP結合状態と活性なGTP結合状態との間で循環する。具体的には、Rasタンパク質は、ヌクレオチドに結合するp-ループ領域を含む高度保存N末端Gドメインと、調節及びエフェクタータンパク質相互作用にとって重要なスイッチI及びスイッチII領域とを有する。Rasの最も良好に特性決定されたエフェクターは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路の活性を制御するセリン/スレオニンキナーゼRafである。PI3K経路は、クラスIホスホイノシチド3-キナーゼのp110触媒サブユニットがRasと相互作用する、Rasの下流の別の重要なエフェクター経路である。RalGDS、Tiam1、PLC-e及びRassf1を含むRasの他のエフェクターも記載されている(Cox,et al.Nature Reviews Drug Discovery,2014,13:828-851)。
【0004】
RAS変異は、癌において多くの場合に見られ、全ヒト癌のおよそ30%がKRAS、NRAS又はHRAS遺伝子中に変異を有する。発癌性Rasは、典型的には、しかし排他的にではなく、Rasのグリシン12、グリシン13又はグルタミン61での変異と関連している。これらの残基は、Rasの活性部位に位置し、変異は、固有の及び/又はGAPに触媒されるGTPアーゼ活性を損ない、GTP結合Rasの形成及び下流エフェクター経路の異常な活性化に有利に作用する。KRASは、癌において最も高頻度で変異しているRAS遺伝子であり、それにNRAS、次いでHRASが続く。膵臓(約90%有病率)、結腸直腸(約40%有病率)及び非小細胞肺癌(約30%有病率)を含む、KRAS中に高頻度の活性化変異を示すいくつかの腫瘍タイプがある。KRAS変異は、多発性骨髄腫、子宮癌、胆管癌、胃癌、膀胱癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、横紋筋肉腫、皮膚の扁平上皮癌、子宮頸癌、精巣胚細胞癌を含む他の癌タイプにも見られる。
【0005】
Rasの残基12でのグリシンからシステインへの変異(G12C変異)は、コドン12でのG.CからT.Aへの塩基転換によって生じ、癌の種類にわたって全KRAS変異の14%、全NRAS変異の2%及び全HRAS変異の2%を占める、RAS遺伝子で通常見られる変異である。G12C変異は、KRAS変異非小細胞肺癌で特に多く、およそ半数がこの変異を有し、タバコの煙によって形成されるDNA付加物と関連付けられてきた。G12C変異は、肺癌とのみ関連しているのではなく、全KRAS変異体結腸直腸癌の8%を含む他のRAS変異体癌タイプに見られる。
【0006】
G12C変異体Rasタンパク質阻害活性を示す化合物(RASG12C阻害剤)は、例えば、国際公開第2019/099524号パンフレット、同第2019/215203号パンフレット、同第2020/178282号パンフレット、同第2021/118877号パンフレット、同第2021/245051号パンフレットに開示されている。既知のRASG12C阻害剤として、LY3537982(Loxo/Lilly)、AZD4625(AstraZeneca)、AMG510(ソトラシブ:Amgen)、MRTX849(アダグラシブ:Mirati)、JDQ443(Novartis)、GDC-6036(Genentech)、BI 1,823,911(Boehringer Ingelheim)、D1553(InventisBio)及びJNJ-74699157(Johnson and Johnson)と命名された化合物が挙げられる。
【0007】
抗体にコンジュゲートした細胞毒性薬からなる抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、選択的に癌細胞に対して薬物を送達し得、従って癌細胞内で薬物の蓄積をもたらして癌細胞を殺傷することが期待される(Ducry,L.,et al.,Bioconjugate Chem.(2010)21,5-13;Alley,S.C.,et al.,Current Opinion in Chemical Biology(2010)14,529-537;Damle N.K.Expert Opin.Biol.Ther.(2004)4,1445-1452;Senter P.D.,et al.,Nature Biotechnology(2012)30,631-637;Burris HA.,et al.,J.Clin.Oncol.(2011)29(4):398-405)。
【0008】
リンカーを介して薬物にコンジュゲートされた抗HER2抗体を含むADCは、例えば、国際公開第2015/115091号パンフレットに開示されている。既知のADCとして、細胞毒性微小管阻害剤(DM1)に共有結合的に連結されたHER2標的化抗体(トラスツズマブ)で構成されるトラスツズマブエムタンシン(Kadcyla(登録商標)、T-DM1)及びトラスツズマブとエキサテカンの誘導体とで構成されるトラスツズマブデルクステカン(Enhertu(登録商標)、DS-8201)が挙げられる(Ogitani Y.et al.,Clinical Cancer Research(2016)22(20),5097-5108;Ogitani Y.et al.,Cancer Science(2016)107,1039-1046)。
【0009】
トラスツズマブデルクステカン(Enhertu(登録商標)、DS-8201)は、乳癌、胃癌、結腸直腸癌及び非小細胞肺癌を含むHER2発現固形腫瘍で有意な臨床的有効性を示している。意義深いことに、DS-8201は、上記適応症においてHER2低発現の腫瘍での有望な活性を実証している。しかしながら、DS-8201の治療可能性を高めるために、DS-8201の組み合わせパートナーを依然として同定する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
トラスツズマブエムタンシン及びトラスツズマブデルクステカン等の抗HER2-ADC並びにRASG12C阻害剤の治療可能性にも関わらず、既存の癌処置剤の有効性を増強し得、治療反応の持続性を延長させ得、患者に対する寛容性を改善し得、且つ/又は用量依存的な毒性を低下させ得る、改善された治療組成物及び治療方法が依然として必要とされている。
【0011】
様々な抗体-薬物コンジュゲート(例えば、構成成分として微小管阻害剤(DM1)又はトポイソメラーゼI阻害剤エキサテカンの誘導体を含む抗HER2抗体-薬物コンジュゲート)は、乳癌及び胃癌等の特定の癌の処置において、単独で投与された場合に優れた抗腫瘍効果を示すことが分かっている。さらに、RASG12C阻害剤は、特定の癌の処置で抗腫瘍効果を示すことが確認されている。しかし、有効性の増強、治療反応の持続時間の延長及び/又は用量依存的な毒性の低下等、癌の処置での優れた抗腫瘍効果を得ることができる薬剤及び処置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、RASG12C阻害剤と組み合わせた抗HER2抗体-薬物コンジュゲートの投与を通して、癌の処置で卓越した抗腫瘍効果を示し得る医薬品を提供する。本開示は、抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤を組み合わせて対象に投与する治療的使用及び方法も提供する。
【0013】
具体的には、本開示は、以下の[1]~[63]に関する。
【0014】
[1]組み合わせて投与するための、抗体が抗HER2抗体である抗体-薬物コンジュゲートと、RASG12C阻害剤とを含む医薬品。
【0015】
[2][1]に記載の医薬品であって、RASG12C阻害剤は、以下の式(I):
【化1】
(式中、
Aは、フェニル若しくは二環式ヘテロアリール基であり、
X及びYは、二重結合によって接続されており、i)Xは、CR
7であり、及びYは、CR
8であるか、ii)Xは、Nであり、及びYは、CR
8であるか、又はiii)Xは、CR
7であり、及びYは、Nであるか、又は
X及びYは、共にC(O)NR
9であるか、又は
X及びYは、Zで置換された芳香環に縮合されている、任意選択的に置換された5又は6員のN-ヘテロ環の隣接する環原子であり、且つX及びYは、両方ともCであるか又はC及びNであり、
Zは、O、NH又はNMeであり、
R
1は、独立してF、Cl、Br、OH、CH
2OH、OMe、CH
2OMe、C
1~C
3アルキル及びC
1~C
3フルオロアルキルから選択され、
nは、0、1、2又は3であり、
R
2は、H、F、Cl、CCH、CCMe、CN、Br、C
1~C
3アルキル、C
1~C
3フルオロアルキル、OMe又はOEtであり、
R
3a及びR
3bは、共に=Oであるか、又はR
3a及びR
3bは、Hであり、
R
4は、H又はMeであり、
R
5は、H又はMeであり、
R
6は、H又はCH
2NMe
2であり、
R
7及びR
8は、独立して、H、F、Cl、CCH、CC(C
1~C
3アルキル)、CCCH
2NMe
2、CCCH
2O(C
1~C
3アルキル)、CN、Me、C
1~C
6アルキル、OH、OMe、O(C
1~C
3アルキル)、O(C
1~C
3ジューテロアルキル)、O(C
1~C
3フルオロアルキル)、O(C
3~C
6シクロアルキル)、C
1~C
3フルオロアルキル、OCH
2CH
2NMe
2、OCH
2CH
2OMe、CH
2OMe、OCH
2CH
2N(CH
2CH
2)
2CH、OCH
2CH
2N(CH
2CH
2)
2O、OCH
2CH
2(2-ピリジル)又は任意選択的に置換された3、4、5若しくは6員の炭素環若しくはヘテロ環から選択されるか、又は
R
7及びR
8は、結合して、任意選択的に置換された5又は6員の炭素環又はヘテロ環を形成し、
R
9は、H、Me、Et、C
3H
7及びC
1~C
3フルオロアルキルから選択される)
によって表される化合物又はその薬学的に許容される塩である、医薬品。
【0016】
[3][2]に記載の医薬品であって、式(I)中、i)Xは、CR7であり、及びYは、CR8であるか、ii)Xは、Nであり、及びYは、CR8であるか、又はiii)Xは、CR7であり、及びYは、Nである、医薬品。
【0017】
[4][2]又は[3]に記載の医薬品であって、式(I)中、Zは、Oである、医薬品。
【0018】
[5][2]~[4]のいずれか1つに記載の医薬品であって、式(I)中、R3a及びR3bは、Hである、医薬品。
【0019】
[6][2]~[5]のいずれか1つに記載の医薬品であって、式(I)中、R4は、Hである、医薬品。
【0020】
[7][2]~[6]のいずれか1つに記載の医薬品であって、式(I)中、R6は、Hである、医薬品。
【0021】
[8][2]~[7]のいずれか1つに記載の医薬品であって、式(I)中、Aは、フェニルである、医薬品。
【0022】
[9][2]に記載の医薬品であって、RASG12C阻害剤は、
(12aS)-2-アクリロイル-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-6-オン;
1-((12aS)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-メトキシ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-ヒドロキシ-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
1-((12aR)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-8-フルオロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジクロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-ヒドロキシ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-(1H-イミダゾール-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-7-カルボニトリル;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-(1H-ピラゾール-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((12aR)-10-クロロ-8-フルオロ-9-(5-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-4-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-8,10-ジクロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-メチル-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジクロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
8-[(12aR)-10-クロロ-8-フルオロ-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-9-イル]-7-メチルイソキノリン-1(2H)-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-メトキシ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aS)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,3,4,11,12,12a-ヘキサヒドロピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-6(2H)-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aS)-10-クロロ-11-メチル-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,3,4,11,12,12a-ヘキサヒドロピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-6(2H)-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2,3-ジフルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジフルオロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジフルオロ-9-[2-フルオロ-6-(ヒドロキシメチル)フェニル]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジフルオロ-9-[2-ヒドロキシ-6-(トリフルオロメチル)フェニル]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-エチル-6-ヒドロキシフェニル)-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-[2-(ジフルオロメチル)-6-ヒドロキシフェニル]-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
1-[(12aR)-9-(2-ブロモ-6-ヒドロキシフェニル)-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8-クロロ-10-フルオロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8-クロロ-10-エチニル-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-エチニル-8-フルオロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(6aR)-4-クロロ-3-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-8-(プロパ-2-エノイル)-2,6,6a,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-1-オン;
1-[(6aR)-1,4-ジクロロ-3-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(6aR)-4-クロロ-3-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(プロパ-2-エノイル)-2,6,6a,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-1-オン;
1-[(8aR)-6-クロロ-5-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8a,9,11,12-テトラヒドロ-14H-ピラジノ[2,1-c][1,2,4]トリアゾロ[4’,3’:1,2]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(7aR)-5-クロロ-4-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-メチル-1,7a,8,10,11,13-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[7,6-g]インダゾール-9(7H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(7aR)-5-クロロ-4-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-2,7a,8,10,11,13-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[7,6-g]インダゾール-9(7H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((12aR)-10-クロロ-8-エチニル-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(7aR)-5-クロロ-4-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-メチル-1,7a,8,10,11,13-ヘキサヒドロイミダゾ[4,5-g]ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-9(7H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-(プロパ-1-イン-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-エチニル-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[2,3-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-10-メチル-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-7,8-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(ジフルオロメトキシ)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-7,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(ジフルオロメトキシ)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(シクロプロピルオキシ)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(3-(ジメチルアミノ)プロパ-1-イン-1-イル)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-[(ピリジン-4-イル)メトキシ]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(2-メトキシエトキシ)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-[2-(ピペリジン-1-イル)エトキシ]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(プロパ-1-イン-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-[(2H3メチルオキシ]-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[2,3-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(メトキシメチル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-(プロパ-1-イン-1-イル)-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;及び
1-((6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-エチニル-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;又は
これらの薬学的に許容される塩
から選択される化合物である、医薬品。
【0023】
[10][2]に記載の医薬品であって、RASG12C阻害剤は、1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オンである、医薬品。
【0024】
[11][2]に記載の医薬品であって、RASG12C阻害剤は、1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-(プロパ-1-イン-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オンである、医薬品。
【0025】
[12][1]に記載の医薬品であって、RASG12C阻害剤は、LY3537982(Loxo/Lilly)、AZD4625(AstraZeneca)、ソトラシブ(AMG510)、アダグラシブ(MRTX849)、JDQ443(Novartis)、GDC-6036(Genentech)、BI 1,823,911(Boehringer Ingelheim)、D1553(InventisBio)及びJNJ-74699157(Johnson and Johnson)又はこれらの薬学的に許容される塩から選択される、医薬品。
【0026】
[13][1]に記載の医薬品であって、RASG12C阻害剤は、以下の式:
【化2】
によって表される化合物A又はその薬学的に許容される塩である、医薬品。
【0027】
[14][1]~[13]のいずれか1つに記載の医薬品であって、抗HER2抗体は、配列番号3によって表されるアミノ酸配列からなるCDRH1[=配列番号1のアミノ酸残基26~33]、配列番号4によって表されるアミノ酸配列からなるCDRH2[=配列番号1のアミノ酸残基51~58]及び配列番号5によって表されるアミノ酸配列からなるCDRH3[=配列番号1のアミノ酸残基97~109]を含む重鎖と、配列番号6によって表されるアミノ酸配列からなるCDRL1[=配列番号2のアミノ酸残基27~32]、配列番号7のアミノ酸残基1~3からなるアミノ酸配列からなるCDRL2[=配列番号2のアミノ酸残基50~52]及び配列番号8によって表されるアミノ酸配列からなるCDRL3[=配列番号2のアミノ酸残基89~97]を含む軽鎖とを含む抗体である、医薬品。
【0028】
[15][1]~[13]のいずれか1つに記載の医薬品であって、抗HER2抗体は、配列番号9によって表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基1~120]からなる重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番号10によって表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基1~107]からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む抗体である、医薬品。
【0029】
[16][1]~[13]のいずれか1つに記載の医薬品であって、抗HER2抗体は、配列番号1によって表されるアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号2によって表されるアミノ酸配列からなる軽鎖とを含む抗体である、医薬品。
【0030】
[17][1]~[13]のいずれか1つに記載の医薬品であって、抗HER2抗体は、配列番号11によって表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基1~449]からなる重鎖と、配列番号2によって表されるアミノ酸配列からなる軽鎖とを含む抗体である、医薬品。
【0031】
[18][1]~[17]のいずれか1つに記載の医薬品であって、抗体-薬物コンジュゲートは、以下の式:
【化3】
(式中、Aは、抗体に対する接続位置を表す)
によって表される薬物-リンカーがチオエーテル結合を介して抗HER2抗体にコンジュゲートされている抗体-薬物コンジュゲートである、医薬品。
【0032】
[19][1]~[18]のいずれか1つに記載の医薬品であって、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、以下の式:
【化4】
(式中、「抗体」は、チオエーテル結合を介して薬物-リンカーにコンジュゲートされた抗HER2抗体を示し、及びnは、抗体-薬物コンジュゲート中の1つの抗体分子当たりのコンジュゲートされた薬物-リンカーの単位の平均数を示し、nは、7~8の範囲である)
によって表される、医薬品。
【0033】
[20][1]~[13]のいずれか1つに記載の医薬品であって、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、トラスツズマブデルクステカン(DS-8201)又はトラスツズマブエムタンシン(T-DM1)である、医薬品。
【0034】
[21][20]に記載の医薬品であって、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、トラスツズマブデルクステカン(DS-8201)である、医薬品。
【0035】
[22][1]~[21]のいずれか1つに記載の医薬品であって、別々に同時投与のための、抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤を含む組成物である医薬品。
【0036】
[23][1]~[21]のいずれか1つに記載の医薬品であって、逐次投与のための、抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤を含む組み合わせ調製物である医薬品。
【0037】
[24][1]~[23]のいずれか1つに記載の医薬品であって、癌を処置するためのものである医薬品。
【0038】
[25][24]に記載の医薬品であって、前記癌は、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌、食道胃接合部腺癌、胆道癌、パジェット病、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌肉腫、尿路上皮癌、前立腺癌、膀胱癌、胃腸間質腫瘍、消化管間質腫瘍、子宮頸癌、扁平上皮細胞癌腫、腹膜癌、肝臓癌、肝細胞癌、子宮体部癌腫、腎臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、陰茎癌、白血病、悪性リンパ腫、形質細胞腫、骨髄腫、多形性膠芽腫、骨肉腫、肉腫及び黒色腫からなる群から選択される少なくとも1つである、医薬品。
【0039】
[26][25]に記載の医薬品であって、癌は、乳癌である、医薬品。
【0040】
[27][26]に記載の医薬品であって、乳癌は、IHC 3+のHER2ステータススコアを有する、医薬品。
【0041】
[28][26]に記載の医薬品であって、乳癌は、HER2低発現乳癌である、医薬品。
【0042】
[29][26]に記載の医薬品であって、乳癌は、IHC 2+のHER2ステータススコアを有する、医薬品。
【0043】
[30][26]に記載の医薬品であって、乳癌は、IHC 1+のHER2ステータススコアを有する、医薬品。
【0044】
[31][26]に記載の医薬品であって、乳癌は、IHC>0及び<1+のHER2ステータススコアを有する、医薬品。
【0045】
[32][26]に記載の医薬品であって、乳癌は、トリプルネガティブ乳癌である、医薬品。
【0046】
[33][24]に記載の医薬品であって、癌は、胃癌である、医薬品。
【0047】
[34][24]に記載の医薬品であって、癌は、結腸直腸癌である、医薬品。
【0048】
[35][24]に記載の医薬品であって、癌は、肺癌である、医薬品。
【0049】
[36][35]に記載の医薬品であって、肺癌は、非小細胞肺癌である、医薬品。
【0050】
[37][24]に記載の医薬品であって、癌は、膵臓癌である、医薬品。
【0051】
[38][24]に記載の医薬品であって、癌は、卵巣癌である、医薬品。
【0052】
[39][24]に記載の医薬品であって、癌は、前立腺癌である、医薬品。
【0053】
[40][24]に記載の医薬品であって、癌は、腎臓癌である、医薬品。
【0054】
[41][1]~[23]のいずれか1つで定義されている医薬品であって、癌の処置で使用するためのものである医薬品。
【0055】
[42][41]に記載の使用のための医薬品であって、癌は、[25]~[40]のいずれか1つで定義されている通りである、医薬品。
【0056】
[43]癌を処置するためにRASG12C阻害剤と組み合わせて使用するための薬剤の製造における抗HER2抗体-薬物コンジュゲートの使用であって、抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤は、[1]~[21]のいずれか1つで定義されている通りである、使用。
【0057】
[44][43]に記載の使用であって、薬剤は、逐次投与により、RASG12C阻害剤と組み合わせて使用するためのものである、使用。
【0058】
[45][43]に記載の使用であって、薬剤は、別々の同時投与により、RASG12C阻害剤と組み合わせて使用するためのものである、使用。
【0059】
[46]癌を処置するために抗HER2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせて使用するための薬剤の製造におけるRASG12C阻害剤の使用であって、抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤は、[1]~[21]のいずれか1つで定義されている通りである、使用。
【0060】
[47][46]に記載の使用であって、薬剤は、逐次投与により、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせて使用するためのものである、使用。
【0061】
[48][46]に記載の使用であって、薬剤は、別々の同時投与により、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせて使用するためのものである、使用。
【0062】
[49][43]~[48]のいずれか1つに記載の使用であって、癌は、[25]~[40]のいずれか1つで定義されている通りである、使用。
【0063】
[50]癌の処置においてRASG12C阻害剤と組み合わせて使用するための抗HER2抗体-薬物コンジュゲートであって、抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤は、[1]~[21]のいずれか1つで定義されている通りである、抗HER2抗体-薬物コンジュゲート。
【0064】
[51][50]に記載の使用のための抗HER2抗体-薬物コンジュゲートであって、癌は、[25]~[40]のいずれか1つで定義されている通りである、使用のための抗HER2抗体-薬物コンジュゲート。
【0065】
[52][50]又は[51]に記載の使用のための抗HER2抗体-薬物コンジュゲートであって、使用は、逐次的な抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤の投与を含む、使用のための抗HER2抗体-薬物コンジュゲート。
【0066】
[53][50]又は[51]に記載の使用のための抗HER2抗体-薬物コンジュゲートであって、使用は、別々の且つ同時の抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤の投与を含む、使用のための抗HER2抗体-薬物コンジュゲート。
【0067】
[54]対象における癌の処置で使用するための抗HER2抗体-薬物コンジュゲートであって、前記処置は、前記対象への、i)前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲートと、ii)RASG12C阻害剤との逐次投与又は別々の同時投与を含み、前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及び前記RASG12C阻害剤は、[1]~[21]のいずれか1つで定義されている通りである、抗HER2抗体-薬物コンジュゲート。
【0068】
[55]癌の処置において抗HER2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせて使用するためのRASG12C阻害剤であって、抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤は、[1]~[21]のいずれか1つで定義されている通りである、RASG12C阻害剤。
【0069】
[56][55]に記載の使用のためのRASG12C阻害剤であって、癌は、[25]~[40]のいずれか1つで定義されている通りである、使用のためのRASG12C阻害剤。
【0070】
[57][55]又は[56]に記載の使用のためのRASG12C阻害剤であって、使用は、逐次的な抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤の投与を含む、使用のためのRASG12C阻害剤。
【0071】
[58][55]又は[56]に記載の使用のためのRASG12C阻害剤であって、使用は、別々の且つ同時の抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤の投与を含む、使用のためのRASG12C阻害剤。
【0072】
[59]対象における癌の処置で使用するためのRASG12C阻害剤であって、前記処置は、前記対象への、i)前記RASG12C阻害剤と、ii)抗HER2抗体-薬物コンジュゲートとの逐次投与又は別々の同時投与を含み、前記RASG12C阻害剤及び前記抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、[1]~[21]のいずれか1つで定義されている通りである、RASG12C阻害剤。
【0073】
[60]癌を処置する方法であって、それを必要とする対象に、[1]~[21]のいずれか1つで定義されている抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤を組み合わせて投与することを含む方法。
【0074】
[61][60]に記載の方法であって、癌は、[25]~[40]のいずれか1つで定義されている通りである、方法。
【0075】
[62][60]又は[61]に記載の方法であって、抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤を逐次的に投与することを含む方法。
【0076】
[63][60]又は[61]に記載の方法であって、抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤を別々に且つ同時に投与することを含む方法。
【発明の効果】
【0077】
本開示は、リンカー構造を介して抗HER2抗体にコンジュゲートされている抗腫瘍薬を有する抗HER2抗体-薬物コンジュゲートとRASG12C阻害剤とが組み合わせて投与される医薬品と、治療的使用及び方法であって、特異的な抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤が組み合わせて対象に投与される治療的使用及び方法とを提供する。従って、本開示は、癌の処置で卓越した抗腫瘍効果を得ることができる薬剤及び処置を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】抗HER2抗体の重鎖のアミノ酸配列(配列番号1)を示す図である。
【
図2】抗HER2抗体の軽鎖のアミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。
【
図3】重鎖CDRH1のアミノ酸配列(配列番号3[=配列番号1のアミノ酸残基26~33])を示す図である。
【
図4】重鎖CDRH2のアミノ酸配列(配列番号4[=配列番号1のアミノ酸残基51~58])を示す図である。
【
図5】重鎖CDRH3のアミノ酸配列(配列番号5[=配列番号1のアミノ酸残基97~109])を示す図である。
【
図6】軽鎖CDRL1のアミノ酸配列(配列番号6[=配列番号2のアミノ酸残基27~32])を示す図である。
【
図7】軽鎖CDRL2のアミノ酸配列(SAS)(配列番号7[=配列番号2のアミノ酸残基50~56])を含むアミノ酸配列を示す図である。
【
図8】軽鎖CDRL3のアミノ酸配列(配列番号8[=配列番号2のアミノ酸残基89~97])を示す図である。
【
図9】重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号9[=配列番号1のアミノ酸残基1~120])を示す図である。
【
図10】軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号10[=配列番号2のアミノ酸残基1~107])を示す図である。
【
図11】重鎖のアミノ酸配列(配列番号11[=配列番号1のアミノ酸残基1~449])を示す図である。
【
図12】KRAS
G12C肺癌細胞株H358及びH2122並びにKRAS
G12C食道細胞株KYSE410における、化合物AとDS-8201との組み合わせに関する組み合わせマトリックスを示す。
【
図13】8種のKRAS
G12C癌細胞株におけるインビトロでの処置中止時の腫瘍増殖阻害及び再増殖に対する化合物AとDS-8201との組み合わせの効果を表すグラフを示す。
【
図14】KRAS
G12C変異体肺癌異種移植片モデルNCI-H358におけるインビボでの腫瘍増殖阻害に対する化合物AとDS-8201との組み合わせの効果を表すグラフを示す。
【
図15】KRAS
G12C変異体肺癌異種移植片モデルNCI-H2122におけるインビボでの腫瘍増殖阻害に対する化合物AとDS-8201との組み合わせの効果を表すグラフを示す。
【
図16】KRAS
G12C変異体肺癌異種移植片モデルLU99におけるインビボでの腫瘍増殖阻害に対する化合物AとDS-8201との組み合わせの効果を表すグラフを示す。
【
図17】KRAS
G12C変異体結腸直腸癌患者由来移植片モデルCTG-1489におけるインビボでの腫瘍増殖阻害に対する化合物AとDS-8201との組み合わせの効果を表すグラフを示す。
【
図18】KRAS
G12C変異体結腸直腸癌患者由来移植片モデルCTG-0387におけるインビボでの腫瘍増殖阻害に対する化合物AとDS-8201との組み合わせの効果を表すグラフを示す。
【
図19A】KRAS
G12C肺癌細胞株H358における、化合物A、AMG510又はMRTX849とT-DM1との組み合わせに関する組み合わせマトリックスを示す。
【
図19B】KRAS
G12C肺癌細胞株H358における、化合物A、AMG510又はMRTX849とトラスツズマブとの組み合わせに関する組み合わせマトリックスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本開示をより容易に理解し得るように、特定の用語を最初に定義する。追加の定義は、詳細な説明全体にわたって記載される。
【0080】
本開示を詳細に説明する前に、本開示は、特定の組成又は方法工程に限定されず、従って変更可能であることを理解されたい。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈上明確に指示されない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、複数の指示対象を含む。「1つの(a)」(又は「1つの(an)」)という用語並びに「1つ又は複数」及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書で互換的に使用され得る。
【0081】
さらに、本明細書で使用される「及び/又は」は、他の特徴又は構成要素の有無に関わらず、2つの特定の特徴又は構成要素のそれぞれの特定の開示であると見なされるべきである。そのため、本明細書における「A及び/又はB」等の語句で使用される用語「及び/又は」は、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)及び「B」(単独)を含むものとする。同様に、「及び/又は」という用語は、「A、B及び/又はC」等の語句で使用される場合、以下の態様のそれぞれを包含することが意図される:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)。
【0082】
別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は全て、本開示が関連する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;及びOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示で使用される用語の多くの一般辞書を当業者に提供する。
【0083】
単位、接頭辞及び記号は、これらの国際単位系(SI)で認められている形態で表記される。数値範囲には、この範囲を画定する数字が含まれる。
【0084】
本明細書中で態様が「含む」という語と共に記載されるときには常に、「からなる」及び/又は「から本質的になる」という用語で説明される、他の点では類似の態様も提供されることを理解されたい。
【0085】
「阻害する」、「遮断する」及び「抑制する」という用語は、本明細書では同義的に使用され、生物学的活性の任意の統計学的に有意な減少(活性の完全遮断を含む)を指す。例えば、「阻害」は、生物学的活性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%の減少を指し得る。細胞増殖は、細胞分裂速度及び/又は細胞集団内で細胞分裂を起こす細胞の割合及び/又は終末分化又は細胞死に起因する細胞集団からの細胞損失率(例えば、チミジン取込み)を計測する当技術分野で認められている技法を使用してアッセイされ得る。
【0086】
「対象」という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類等が挙げられるが限定されない、特定の処置のレシピエントとなるいずれかの動物(例えば哺乳動物)を指す。典型的には、「対象」及び「患者」という用語は、ヒト対象に関連して、本明細書では互換的に使用される。
【0087】
「医薬品」という用語は、全ての活性成分を含有する組成物(同時投与用)又はそれぞれが活性成分の少なくとも1つを含有するが全ては含有しない個別の組成物の組み合わせ(組み合わせ調製物)(逐次的投与又は同時投与用)のいずれかとして活性成分の生物活性を可能にするような形態であり、且つ生成物が投与される対象に対して容認できないほどの毒性がある追加成分を含有しない製剤を指す。このような生成物は、無菌であり得る。「同時投与」とは、活性成分が同時に投与されることを意味する。「逐次投与」とは、活性成分が任意の順序で個々の投与間に時間間隔をおいて1つずつ投与されることを意味する。時間間隔は、例えば、24時間未満であり得、好ましくは6時間未満であり得、より好ましくは2時間未満であり得る。
【0088】
「処置すること」、若しくは「処置」、若しくは「処置する」又は「緩和すること」若しくは「緩和する」等の用語は、(1)診断された病態又は障害の症状を治癒させ、減速させ、減少させ、且つ/又はその進行を停止させる治療的措置と、(2)標的とする病態又は障害の発症を予防し、且つ/又は減速させる予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)措置との両方を指す。そのため、処置を必要とする者として、既に障害を有する者、障害を有する傾向がある者及び障害を予防すべき者が挙げられる。特定の態様では、患者が例えば特定のタイプの癌の完全、部分的又は一時的な寛解を示す場合、本開示の方法に従い、対象の癌は、問題なく「処置」される。
【0089】
「癌」、「腫瘍」、「癌性」及び「悪性」という用語は、典型的には、無秩序な細胞成長によって特徴付けられる哺乳動物における身体的病態を指すか又は説明する。癌の例として、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌、食道胃接合部腺癌、胆道癌、パジェット病、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌肉腫、尿路上皮癌、前立腺癌、膀胱癌、胃腸間質腫瘍、消化管間質腫瘍、子宮頸癌、扁平上皮細胞癌腫、腹膜癌、肝臓癌、肝細胞癌、子宮体部癌腫、腎臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、陰茎癌、白血病、悪性リンパ腫、形質細胞腫、骨髄腫、多形性膠芽腫、骨肉腫、肉腫及び黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない。癌として、血液悪性腫瘍、例えば急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫並びに固形腫瘍、例えば乳癌、肺癌、神経芽細胞腫及び結腸癌が挙げられる。
【0090】
「細胞毒性剤」という用語は、本明細書で使用される場合、広く定義され、細胞の機能を阻害するか若しくは防止し、且つ/又は細胞の破壊(細胞死)を引き起こし、且つ/又は抗新生物/抗増殖性効果を発揮する物質を指す。例えば、細胞毒性剤は、新生腫瘍細胞の発生、成熟又は拡散を直接又は間接的に防止する。この用語は、細胞増殖抑制効果のみを引き起こし、単なる細胞毒性効果を引き起こさないような薬剤も含む。この用語は、以下に規定される化学療法剤並びに他のHER2アンタゴニスト、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、プロテインキナーゼA阻害剤、サイトカインファミリのメンバー、放射性同位体及び毒素、例えば細菌、真菌、植物又は動物起源の酵素学的に活性な毒素を含む。
【0091】
「化学療法剤」という用語は、天然化合物又は合成化合物を含む「細胞毒性剤」という用語の部分集合である。
【0092】
本開示の方法又は使用によれば、本開示の化合物を患者に投与して、癌に関する正の治療応答を促進し得る。癌処置に関する「正の治療応答」という用語は、疾患に伴う症状の改善を指す。例えば、疾患の改善は、完全応答として特徴付けられ得る。「完全寛解」という用語は、任意の事前の試験結果を正規化して臨床的に検出可能な疾患が存在しないことを指す。代わりに、疾患における改善は、部分寛解であるとしても分類可能である。「正の治療応答」は、癌の進行及び/若しくは持続期間の低減若しくは癌の重症度の低減若しくは改善及び/又は本開示の化合物の投与から生じる1つ若しくは複数のその症状の改善を包含する。具体的な態様では、このような用語は、本開示の化合物の投与後の1、2若しくは3つ又はそれを超える結果を指す:
(1)癌細胞集団の安定化、低減又は排除、
(2)癌成長の安定化又は低減、
(3)癌形成の低下、
(4)原発性、局所性及び/又は転移性の癌の根絶、除去又は制御、
(5)死亡率の低減、
(6)無病、無再発、無進行及び/又は全生存の持続期間又は割合の増加、
(7)応答率、応答持続性又は応答若しくは寛解する患者数の増加、
(8)入院率の減少、
(9)入院期間の短縮、
(10)癌のサイズが維持され、且つ増加しないか又は10%未満、好ましくは5%未満、好ましくは4%未満、好ましくは2%未満だけ増加すること、及び
(11)寛解患者数の増加。
(12)他の場合に癌の処置に必要となるであろうアジュバント療法剤(例えば、化学療法剤又はホルモン療法剤)の数の減少。
【0093】
臨床奏効は、以下を使用して評価され得る:スクリーニング技術、例えば、PET、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャン、X放射線イメージング、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、フローサイトメトリー若しくは蛍光活性化セルソーター(FACS)分析、組織学的検査、肉眼的所見及び血液化学検査、例えば、限定されないが、ELISA、RIA、クロマトグラフィー及び同様のものによって検出可能な変化。これらの正の治療奏効に加えて、治療を受けている対象は、疾患に伴う症状の改善の有益な効果を受け得る。
【0094】
アルキル基及びアルキル部分は、直鎖又は分岐鎖、例えばC1~8アルキル、C1~6アルキル、C1~4アルキル又はC5~6アルキルである。アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル及びn-オクチル、例えばメチル又はn-ヘキシルである。
【0095】
フルオロアルキル基は、1つ又は複数のH原子が1つ又は複数のフルオロ原子に置き換えられているアルキル基であり、例えばC1~8フルオロアルキル、C1~6フルオロアルキル、C1~4フルオロアルキル又はC5~6フルオロアルキルである。例として、フルオロメチル(CH2F-)、ジフルオロメチル(CHF2-)、トリフルオロメチル(CF3-)、2,2,2-トリフルオロエチル(CF3CH2-)、1,1-ジフルオロエチル(CH3CHF2-)、2,2-ジフルオロエチル(CHF2CH2-)及び2-フルオロエチル(CH2FCH2-)が挙げられる。
【0096】
ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを意味する。一実施形態では、ハロは、フルオロ又はクロロである。
【0097】
本明細書で使用される場合、「有効量」という語句は、処置すべき症状及び/又は病態を有意に且つ正に変化させる(例えば、正の臨床応答を提供する)のに十分である化合物又は組成物の量を意味する。医薬品に使用する活性成分の有効量は、担当医の知識及び専門的技術内で、処置されている特定の病態、病態の重症度、処置期間、同時療法の性質、利用されている特定の活性成分、利用される特定の薬学的に許容される賦形剤/キャリア及び同様の因子により様々であろう。具体的には、抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせて癌の処置で使用される化合物の有効量は、この組合わせが温血動物(例えばヒト)における症状を緩和するか、癌の症状を緩和するか、癌の進行を遅延させるか又は癌の症状を有する患者で悪化リスクを低減させるのに十分であるような量である。
【0098】
本明細書では、特に明記しない限り、「薬学的に許容される」という用語は、本明細書で使用される場合、健全な医学的判断の範囲内において、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症なく、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに好適である、妥当なベネフィット/リスク比に見合う化合物、材料、組成物及び/又は剤形を指す。
【0099】
式(I)又は(II)の化合物は、安定な薬学的に許容される酸性塩又は塩基性塩を形成し得、そのような場合、塩としての化合物の投与が適切であり得ることが理解される。酸付加塩の例として、酢酸塩、アジピン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、コリン、クエン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、ジエチレンジアミン、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、メグルミン、2-ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、キナ酸塩、サルチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルファミン酸塩、スルファニル酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシレート(p-トルエンスルホン酸塩)、トリフルオロ酢酸塩及びウンデカン酸塩が挙げられる。非毒性の生理的に許容される塩が好ましいが、例えば生成物の単離又は精製に際して他の塩も有用であり得る。
【0100】
塩は、通常の手段、例えば塩が不溶性の溶媒若しくは媒質又は水等の溶媒(真空若しくは凍結乾燥で除去される)中の適切な酸の1種又は複数の均等物と遊離塩基形態の生成物を反応させることによって形成され得るか、又は既存の塩のアニオンを好適なイオン交換樹脂上の別のアニオンと交換することによって形成され得る。
【0101】
式(I)又は(II)の化合物は、複数のキラル中心を有し得、本出願は、全ての個々の立体異性体、鏡像異性体及びジアステレオ異性体並びにこれらの混合物を包含することを理解されたい。そのため、式(I)又は(II)の化合物が、1つ又は複数の不斉炭素原子により、光学活性体又はラセミ体で存在し得る限り、本出願は、その定義において、上記の活性を有するそのような任意の光学活性体又はラセミ体を含むことを理解されたい。本出願は、本明細書に定義する活性を有するこうした立体異性体を全て包含する。
【0102】
そのため、本明細書全体にわたり、式(I)又は(II)の化合物に言及する場合、化合物という用語には、RASG12C阻害剤であるジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の混合物及び鏡像異性体が含まれることを理解されたい。
【0103】
特定の式(I)又は(II)の化合物及びその薬学的塩は、溶媒和形態及び非溶媒和形態、例えば水和形態及び無水形態で存在し得ることも理解されたい。本明細書の化合物は、こうした溶媒和形態を全て含むことを理解されたい。明瞭化のために、これは、化合物の遊離形態の溶媒和(例えば、水和)形態及び化合物の塩の溶媒和(水和)形態の両方を含む。
【0104】
式(I)又は(II)の化合物のいくつかは、結晶性であり得、複数の結晶形を有し得る。本開示は、RASG12C阻害活性を有する任意の結晶若しくは非晶質形態又はこれらの混合物を包含することを理解されたい。結晶性材料は、例えば、X線粉末回折(以下、XRPD)分析及び示差走査熱量測定(DSC)等の従来の技術を使用して分析され得ることが一般に知られている。
【0105】
本明細書で説明されている式(I)又は(II)は、その構成原子の全ての同位体を包含するものとする。例えば、H(又は水素)は、1H、2H(D)及び3H(T)等の水素のあらゆる同位体形態を含み、Cは、12C、13C及び14C等の炭素のあらゆる同位体形態を含み、Oは、16O、17O及び18O等の酸素のあらゆる同位体形態を含み、Nは、13N、14N及び15N等の窒素のあらゆる同位体形態を含み、Fは、19F及び18F等のフッ素のあらゆる同位体形態を含むなどである。一態様では、式(I)又は(II)の化合物は、その中に含まれる原子の同位体を、それらの天然存在度に相当する量で含む。しかしながら、特定の事例では、通常、より低い存在量で存在し得る特定の同位体で1つ又は複数の原子を富化することが望ましい場合がある。例えば、1Hは、通常、99.98%を超える存在量で存在するが、一態様では、本明細書に示されるいずれかの式の化合物は、Hが存在する1つ又は複数の位置で2H又は3Hが富化され得る。別の態様では、本明細書に示されるいずれかの式の化合物が放射性同位体、例えば3H及び14Cに富んでいる場合、化合物は、薬物及び/又は基質組織分布アッセイで有用であり得る。本出願は、全てのこのような同位体形態を包含することを理解されたい。
【0106】
以下では、本開示を実行するための好ましい態様を説明する。以下で説明されている実施形態は、本開示の典型的な実施形態の一例を説明するために示されているにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図されない。
【0107】
1.抗体-薬物コンジュゲート
本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲートは、抗体が、リンカーによって薬物にコンジュゲートされている抗HER2抗体である、抗体薬物コンジュゲートである。本開示で使用される抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、特に限定されず、例えばトラスツズマブデルクステカン、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブデュオカルマジン(SYD985)、A166、XMT-1522、RC48、ALT-P7、ARX788、PF-06804103、MRG002、ZW49及びBDC-1001を含むリストから選択され得る。好ましくは、本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲートは、以下の式:
【化5】
(式中、Aは、抗体に対する接続位置を表す)
によって表される薬物-リンカーがチオエーテル結合を介して抗HER2抗体にコンジュゲートされている抗体-薬物コンジュゲート(例えば、トラスツズマブデルクステカン)である。代わりに、この抗体-薬物コンジュゲートは、トラスツズマブエムタンシン(T-DM1)であり得る。
【0108】
本開示では、抗体-薬物コンジュゲート中のリンカー及び薬物からなる部分構造は、「薬物-リンカー」と称される。この薬物-リンカーは、抗体中の鎖間ジスルフィド結合部位(重鎖間の2箇所の部位及び重鎖と軽鎖との間の2箇所の部位)に形成されたチオール基(換言すると、システイン残基の硫黄原子)に接続され得る。
【0109】
例えば、この薬物-リンカーは、エキサテカン(IUPAC名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-1,2,3,9,12,15-ヘキサヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10H,13H-ベンゾ[デ]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13-ジオン、(化学名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオンとしても表される))を構成成分として含み、これは、トポイソメラーゼI阻害剤である。エキサテカンは、抗腫瘍効果を有するカンプトテシン誘導体であり、以下の式:
【化6】
によって表される。
【0110】
本開示で使用される好ましい抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、以下の式:
【化7】
によっても表され得る。
【0111】
ここで、薬物-リンカーは、チオエーテル結合を介して抗HER2抗体(「抗体-」)にコンジュゲートされている。nの意味は、コンジュゲートされた薬物分子の平均数(DAR;薬物-抗体比)と称されるものの意味と同じであり、1つの抗体分子当たりのコンジュゲートされた薬物-リンカーの単位の平均数を示す。
【0112】
癌細胞中に移行した後、好ましい抗HER2抗体-薬物コンジュゲート(例えば、トラスツズマブデルクステカン)は、リンカー部分で切断されて、以下の式:
【化8】
によって表される化合物を放出し得る。
【0113】
この化合物は、好ましい抗HER2抗体-薬物コンジュゲート(例えば、トラスツズマブデルクステカン)の抗腫瘍活性の元供給源であると推定され、トポイソメラーゼI阻害効果を有することが確認されている(Ogitani Y.et al.,Clinical Cancer Research,2016,Oct 15;22(20):5097-5108,Epub 2016 Mar 29)。
【0114】
好ましい抗HER2抗体-薬物コンジュゲートであるトラスツズマブデルクステカンは、バイスタンダー効果を有することが知られている(Ogitani Y.et al.,Cancer Science(2016)107,1039-1046)。このバイスタンダー効果は、それにより、本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲートが、標的を発現する癌細胞中に内在化し、続いて、放出された化合物が、その周辺に存在して標的を発現しない癌細胞に対しても抗腫瘍効果を発揮する、プロセス全体を通して発揮される。このバイスタンダー効果は、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートが本開示に従ってRASG12C阻害剤と組み合わせて使用される場合でも優れた抗腫瘍効果として発揮され得る。
【0115】
代替実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、構成成分としてメルタンシン(DM1)等のメイタンシノイド又は別の微小管阻害剤を含み得る。特定の実施形態では、メイタンシノイドは、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)等の切断不能性チオエーテルリンカーを介して抗体に連結され得る。他の実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、構成成分としてDNAアルキル化剤(例えば、デュオカルマイシン)、アウリスタチン誘導体(例えば、デュオスタチン-5、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)若しくはAUR-06380101))、チューブリン阻害剤(例えば、AS269)又はTLR 7/8アゴニストを含み得る。
【0116】
2.抗体-薬物コンジュゲート中の抗体
本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲート中の抗HER2抗体は、任意の種から誘導され得、好ましくはヒト、ラット、マウス又はウサギから誘導される抗HER2抗体である。この抗体がヒト種以外の種から誘導される場合、これは、好ましくは、周知の技術を使用してキメラ化されるか又はヒト化される。この抗HER2抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であり得、好ましくはモノクローナル抗体である。
【0117】
本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲート中の抗体は、好ましくは、癌細胞を標的化することが可能な特性を有する抗HER2抗体であり、好ましくは例えば癌細胞を認識する性質、癌細胞に結合する性質、癌細胞中に内在化する性質及び/又は癌細胞に対する細胞破壊活性を有する抗体である。
【0118】
癌細胞に対する抗HER2抗体の結合活性は、フローサイトメトリーを使用して確認され得る。癌細胞中への抗体の内在化は、以下を使用して確認され得る:(1)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識化)を使用する、蛍光顕微鏡下での細胞中に組み込まれた抗体の可視化アッセイ(Cell Death and Differentiation(2008)15,751-761)、(2)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識化)を使用する、細胞中に組み込まれた蛍光強度を測定するアッセイ(Molecular Biology of the Cell,Vol.15,5268-5282,December 2004)、又は(3)細胞に組み込まれると毒素が放出されて細胞成長を阻害する、治療抗体に結合する免疫毒素を使用するMab-ZAPアッセイ(Bio Techniques 28:162-165,January 2000)。免疫毒素として、ジフテリア毒素触媒ドメイン及びタンパク質Gの組み換え複合体タンパク質を使用し得る。
【0119】
抗HER2抗体の抗腫瘍活性は、細胞成長に対する阻害活性を測定することによってインビトロで確認され得る。例えば、抗体の標的タンパク質としてHER2を過剰発現する癌細胞株を培養し、培養系に抗体を様々な濃度で添加して、病巣形成、コロニー形成及び球状体増殖に対する阻害活性を測定する。例えば、標的タンパク質を多く発現する癌細胞株が移植されたヌードマウスに抗体を投与し、癌細胞の変化を測定することにより、インビボで抗腫瘍活性を確認し得る。
【0120】
抗HER2抗体-薬物コンジュゲートには、抗腫瘍効果を発揮する化合物が結合されているため、抗HER2抗体自体が抗腫瘍効果を有することは、好ましいが必須ではない。癌細胞に対する抗腫瘍化合物の細胞毒性活性を特異的に且つ選択的に発揮させる目的では、抗HER2抗体が内在化して腫瘍細胞中に移行する性質を有することが重要であり、且つ好ましい。
【0121】
本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲート中の抗HER2抗体は、当技術分野で既知の手順によって得ることができる。例えば、本開示の抗体は、抗原性ポリペプチドで動物に免疫付与し、インビボで産生された抗体を回収して精製することを伴う、当技術分野で通常実施される方法を使用して得ることができる。抗原の由来はヒトに限定されず、マウス、ラット等の非ヒトの動物に由来する抗原で動物に免疫付与し得る。この場合、得られた異種抗原に結合する抗体とヒト抗原との交差反応性を試験して、ヒト疾患に適用可能な抗体をスクリーニングし得る。
【0122】
代わりに、当技術分野で既知の方法に従い、抗原に対する抗体を産生する抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させて(例えば、Kohler and Milstein,Nature(1975)256,p.495-497;及びKennet,R.ed.,Monoclonal Antibodies,p.365-367,Plenum Press,N.Y.(1980))、ハイブリドーマを確立し、続いてここからモノクローナル抗体を得ることができる。
【0123】
抗原は、抗原タンパク質をコードする遺伝子を産生するように宿主細胞を遺伝子操作することによって得ることができる。具体的には、抗原遺伝子を発現させることのできるベクターを調製し、これを宿主細胞に導入してこの遺伝子を発現させる。こうして発現した抗原を精製し得る。抗体は、上記の遺伝子操作された抗原発現細胞又は抗原を発現する細胞株で動物に免疫付与する方法によっても得ることができる。
【0124】
本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲート中の抗HER2抗体は、好ましくは、キメラ抗体若しくはヒト化抗体等のヒトに対する異種抗原性を低下させることを目的として人工的改変によって得られた組み換え抗体であるか、又は好ましくはヒトに由来する抗体(即ちヒト抗体)の遺伝子配列のみを有する抗体である。これらの抗体は、既知の方法を使用して産生され得る。
【0125】
キメラ抗体として、抗体の可変領域及び定常領域が異なる種に由来する抗体、例えばマウス又はラット由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に接合したキメラ抗体を例に挙げ得る(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81,6851-6855,(1984))。
【0126】
ヒト化抗体として、異種抗体の相補性決定領域(CDR)のみをヒト由来抗体に組み込むことによって得られる抗体(Nature(1986)321,pp.522-525)と、CDR移植法により、異種抗体のフレームワークのアミノ酸残基の一部及び異種抗体のCDR配列をヒト抗体に移植することによって得られた抗体(国際公開第90/07861号パンフレット)と、遺伝子変換変異誘発戦略を使用してヒト化した抗体(米国特許第5821337号明細書)とを例示し得る。
【0127】
ヒト抗体として、ヒト抗体の重鎖及び軽鎖の遺伝子を含むヒト染色体断片を有するヒト抗体産生マウスを使用することによって生成された抗体(Tomizuka,K.et al.,Nature Genetics(1997)16,p.133-143;Kuroiwa,Y.et.al.,Nucl.Acids Res.(1998)26,p.3447-3448;Yoshida,H.et.al.,Animal Cell Technology:Basic and Applied Aspects vol.10,p.69-73(Kitagawa,Y.,Matsuda,T.and Iijima,S.eds.),Kluwer Academic Publishers,1999;Tomizuka,K.et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)97,p.722-727等を参照されたい)を例示し得る。代替として、ファージディスプレイによって得られた抗体、ヒト抗体ライブラリから選択された抗体(Wormstone,I.M.et.al,Investigative Ophthalmology&Visual Science.(2002)43(7),p.2301-2308;Carmen,S.et.al.,Briefings in Functional Genomics and Proteomics(2002),1(2),p.189-203;Siriwardena,D.et.al.,Ophthalmology(2002)109(3),p.427-431等を参照されたい)を例示し得る。
【0128】
本開示では、本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲート中の抗HER2抗体の改変バリアントも含まれる。この改変バリアントは、本開示に係る抗体を化学的改変又は生物学的改変に供することによって得られるバリアントを指す。化学的改変バリアントの例として、以下が挙げられる:アミノ酸骨格への化学的部位の連結を含むバリアント、N連結型又はO連結型の炭水化物鎖への化学的部位の連結を含むバリアント等。生物学的改変バリアントの例として、以下が挙げられる:翻訳後改変(例えば、N連結型若しくはO連結型のグリコシル化、N末端若しくはC末端の処理、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化又はメチオニンの酸化)によって得られるバリアント及び原核宿主細胞中で発現されることにより、N末端にメチオニン残基が付加されているバリアント。さらに、本開示に係る抗体又は抗原の検出又は単離を可能にするように標識された抗体(例えば、酵素標識抗体、蛍光標識抗体及び親和性標識抗体)も改変バリアントの意味に含まれる。本開示に係る抗体のそのような改変バリアントは、抗体の安定性及び血液中保持の改善、その抗原性の低減、抗体又は抗原の検出又は単離及び同様のものに有用である。
【0129】
さらに、本開示に係る抗体に連結されているグリカンの改変(グリコシル化、脱フコシル化等)を調節することにより、抗体依存性細胞毒性活性を増強し得る。抗体のグリカンの改変を調節する技術として、国際公開第99/54342号パンフレット、同第00/61739号パンフレット、同第02/31140号パンフレット、同第2007/133855号パンフレット、同第2013/120066号パンフレット等に開示されているものが知られている。しかしながら、この技術は、これらに限定されない。本開示に係る抗HER2抗体では、グリカンの改変が調節されている抗体も含まれる。
【0130】
培養された哺乳動物細胞中で産生された抗体の重鎖のカルボキシル末端でリシン残基が欠失していることが既知であり(Journal of Chromatography A,705:129-134(1995))及び培養された哺乳動物細胞中で産生された抗体の重鎖のカルボキシル末端で2つのアミノ酸残基(グリシン及びリシン)が欠失しており、このカルボキシル末端に新たに位置するプロリン残基がアミド化されていることも既知である(Analytical Biochemistry,360:75-83(2007))。しかし、重鎖配列のこのような欠失及び改変は、抗体の抗原-結合親和性及びエフェクター機能(補体の活性化、抗体依存性の細胞傷害性等)に影響を及ぼさない。従って、本開示に係る抗HER2抗体では、このような改変を受けた抗体及びこの抗体の機能断片も含まれ、重鎖のカルボキシル末端で1又は2個のアミノ酸が欠失している欠失バリアント、欠失バリアントのアミド化によって得られるバリアント(例えば、カルボキシル末端プロリン残基がアミド化されている重鎖)等も含まれる。本開示に係る抗HER2抗体の重鎖のカルボキシル末端での欠失を有する欠失バリアントのタイプは、抗原-結合親和性及びエフェクター機能が保存される限り、上記バリアントに限定されない。本開示に係る抗体を構成する2本の重鎖は、全長重鎖及び上記の欠失バリアントからなる群から選択される1タイプであり得るか、又はそこから選択される組み合わせにおける2タイプであり得る。各欠失バリアントの量の比は、本開示に係る抗HER2抗体を産生する、培養された哺乳動物細胞のタイプ及び培養条件によって影響を受け得る。しかし、本開示に係る抗体において2本の重鎖の両方でカルボキシル末端の1つのアミノ酸残基が欠失している抗体は、好ましい例であり得る。
【0131】
本開示に係る抗HER2抗体のアイソタイプとして、例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)は、典型的な例であり得、IgG1又はIgG2は、好ましい例であり得る。
【0132】
本開示では、「抗HER2抗体」という用語は、HER2(ヒト上皮増殖因子受容体タイプ2;ErbB-2)に特異的に結合する抗体を指し、好ましくは、HER2への結合により、HER2発現細胞で内部移行活性を有する。
【0133】
抗HER2抗体の例として、トラスツズマブ(米国特許第5821337号明細書)及びペルツズマブ(国際公開第01/00245号パンフレット)が挙げられ、トラスツズマブは、好ましい例であり得る。代替実施形態では、抗HER2抗体は、ヘルツズマブ、HT-19、MAB802及びZW25を含むリストから選択され得る。
【0134】
3.抗体-薬物コンジュゲートの製造
本開示に係る抗HER2抗体-薬物コンジュゲートの製造で使用される好ましい薬物-リンカー中間体は、以下の式:
【化9】
によって表される。
【0135】
この薬物-リンカー中間体は、化学名N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミドとして表され得、国際公開第2014/057687号パンフレット、同第2015/098099号パンフレット、同第2015/115091号パンフレット、同第2015/155998号パンフレット、同第2019/044947号パンフレット等での説明を参照して作製され得る。
【0136】
好ましい抗HER2抗体-薬物コンジュゲート(例えば、トラスツズマブデルクステカン)は、上記の薬物-リンカー中間体と、チオール基(スルフィドリル基とも呼ばれる)を有する抗HER2抗体とを反応させることによって製造され得る。
【0137】
スルフィドリル基を有する抗HER2抗体は、当技術分野で周知の方法によって得ることができる(Hermanson,G.T,Bioconjugate Techniques,pp.56-136,pp.456-493,Academic Press(1996))。例えば、抗体内の1つの鎖間ジスルフィド当たりトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)等の還元剤の0.3~3モル当量を使用し、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等のキレート剤を含有する緩衝液中で抗体と反応させることにより、抗体内に部分的に又は完全に還元される鎖間ジスルフィドがあるスルフィドリル基を有する抗HER2抗体を得ることができる。
【0138】
さらに、スルフィドリル基を有する1つの抗HER2抗体当たり薬物-リンカー中間体の2~20モル当量を使用することにより、2~8個の薬物分子が抗体分子毎にコンジュゲートされている抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを製造し得る。
【0139】
製造された抗体-薬物コンジュゲートの1つの抗HER2抗体分子当たりのコンジュゲートされた薬物分子の平均数は、例えば、280nm及び370nmの2つの波長での抗体-薬物コンジュゲート及びそのコンジュゲーション前駆体に対するUV吸収の測定に基づいて計算する方法(UV法)又は抗体-薬物コンジュゲートを還元剤で処理することによって得られた断片に対するHPLC測定を通じて定量に基づいて計算する方法(HPLC法)によって決定され得る。
【0140】
抗HER2抗体と薬物-リンカー中間体とのコンジュゲーション及び抗体-薬物コンジュゲートの1つの抗体分子当たりのコンジュゲートされた薬物分子の平均数の算出は、国際公開第2014/057687号パンフレット、同第2015/098099号パンフレット、同第2015/115091号パンフレット、同第2015/155998号パンフレット、同第2017/002776号パンフレット及び同第2018/212136号パンフレット等での説明を参照して実施され得る。
【0141】
本開示では、「抗HER2抗体-薬物コンジュゲート」という用語は、本開示に係る抗体-薬物コンジュゲート中の抗体が抗HER2抗体であるような抗体-薬物コンジュゲートを指す。
【0142】
抗HER2抗体は、好ましくは、配列番号1のアミノ酸残基26~33からなるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号1のアミノ酸残基51~58からなるアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号1のアミノ酸残基97~109からなるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖と、配列番号2のアミノ酸残基27~32からなるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号2のアミノ酸残基50~52からなるアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号2のアミノ酸残基89~97からなるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖とを含む抗体であり、より好ましくは、配列番号1のアミノ酸残基1~120からなるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番号2のアミノ酸残基1~107からなるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む抗体であり、さらにより好ましくは、配列番号1によって表されるアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号2によって表されるアミノ酸配列からなる軽鎖とを含む抗体であるか、又は配列番号1のアミノ酸残基1~449からなる重鎖と、配列番号2の全てのアミノ酸残基1~214からなるアミノ酸配列からなる軽鎖とを含む抗体である。
【0143】
抗HER2抗体-薬物コンジュゲート中の1つの抗体分子当たりのコンジュゲートされた薬物-リンカーの平均単位数は、好ましくは2~8であり、より好ましくは3~8であり、さらにより好ましくは7~8であり、さらにより好ましくは7.5~8であり、さらにより好ましくは約8である。
【0144】
本開示で使用される好ましい抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第2015/115091号パンフレット等での説明を参照して製造され得る。
【0145】
好ましい実施形態では、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、トラスツズマブデルクステカン(DS-8201)又はトラスツズマブエムタンシン(T-DM1)であり、好ましくはトラスツズマブデルクステカンである。
【0146】
4.RASG12C阻害剤
本開示では、「RASG12C阻害剤」という用語は、G12C変異体Rasタンパク質(例えば、KRAS、NRAS又はHRAS遺伝子によってコードされ、好ましくはKRAS遺伝子によってコードされるタンパク質)を阻害する化合物を指す。RASG12C阻害剤の好ましい例として、本明細書に開示されているものが挙げられ得る。
【0147】
本開示に従って使用され得るRASG12C阻害剤の例として、国際公開第2019/215203号パンフレットに開示されている式(I)の化合物(例えば、化合物A)並びに国際公開第2019/099524号パンフレット、同第2020/178282号パンフレット、同第2021/118877号パンフレット及び同第2021/245051号パンフレットに開示されている化合物が挙げられる。さらなる例として、LY3537982(Loxo/Lilly)、AZD4625(AstraZeneca)、AMG510(ソトラシブ:Amgen)、MRTX849(アダグラシブ:Mirati)、JDQ443(Novartis)、GDC-6036(Genentech)、BI 1,823,911(Boehringer Ingelheim)、D1553(InventisBio)及びJNJ-74699157(Johnson and Johnson)と命名された化合物が挙げられる。好ましくは、使用されるRASG12C阻害剤は、血液脳関門を通過可能な物理化学的特性を有する。
【0148】
従って、本開示で使用されるRASG12C阻害剤の好ましい実施形態では、このRASG12C阻害剤は、以下の式(I):
【化10】
(式中、
Aは、フェニル又は二環式ヘテロアリール基であり、
X及びYは、二重結合によって接続されており、i)Xは、CR
7であり、及びYは、CR
8であるか、ii)Xは、Nであり、及びYは、CR
8であるか、又はiii)Xは、CR
7であり、及びYは、Nであるか、又は
X及びYは、共にC(O)NR
9であるか、又は
X及びYは、Zで置換された芳香環に縮合されている、任意選択的に置換された5又は6員のN-ヘテロ環の隣接する環原子であり、且つX及びYは、両方ともCであるか又はC及びNであり、
Zは、O、NH又はNMeであり、
R
1は、独立してF、Cl、Br、OH、CH
2OH、OMe、CH
2OMe、C
1~C
3アルキル及びC
1~C
3フルオロアルキルから選択され、nは、0、1、2又は3であり、
R
2は、H、F、Cl、CCH、CCMe、CN、Br、C
1~C
3アルキル、C
1~C
3フルオロアルキル、OMe又はOEtであり、
R
3a及びR
3bは、共に=Oであるか、又はR
3a及びR
3bは、Hであり、
R
4は、H又はMeであり、
R
5は、H又はMeであり、
R
6は、H又はCH
2NMe
2であり、
R
7及びR
8は、独立して、H、F、Cl、CCH、CC(C
1~C
3アルキル)、CCCH
2NMe
2、CCCH
2O(C
1~C
3アルキル)、CN、Me、C
1~C
6アルキル、OH、OMe、O(C
1~C
3アルキル)、O(C
1~C
3ジューテロアルキル)、O(C
1~C
3フルオロアルキル)、O(C
3~C
6シクロアルキル)、C
1~C
3フルオロアルキル、OCH
2CH
2NMe
2、OCH
2CH
2OMe、CH
2OMe、OCH
2CH
2N(CH
2CH
2)
2CH、OCH
2CH
2N(CH
2CH
2)
2O、OCH
2CH
2(2-ピリジル)若しくは任意選択的に置換された3、4、5若しくは6員の炭素環若しくはヘテロ環から選択されるか、又は
R
7及びR
8は、結合して、任意選択的に置換された5若しくは6員の炭素環若しくはヘテロ環を形成し、
R
9は、H、Me、Et、C
3H
7及びC
1~C
3フルオロアルキルから選択される)
によって表される化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0149】
別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、式(I)(式中、i)Xは、CR7であり、及びYは、CR8であるか、ii)Xは、Nであり、及びYは、CR8であるか、又はiii)Xは、CR7であり、及びYは、Nである)の化合物である。別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、式(I)(式中、Zは、Oである)の化合物である。別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、式(I)(式中、R3a及びR3bは、Hである)の化合物である。別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、式(I)(式中、R4は、Hである)の化合物である。別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、式(I)(式中、R6は、Hである)の化合物である。別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、式(I)(式中、Aは、フェニルである)の化合物である。
【0150】
別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、
(12aS)-2-アクリロイル-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-6-オン;
1-((12aS)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-メトキシ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-ヒドロキシ-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
1-((12aR)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-8-フルオロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジクロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-ヒドロキシ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-(1H-イミダゾール-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-7-カルボニトリル;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-(1H-ピラゾール-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((12aR)-10-クロロ-8-フルオロ-9-(5-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-4-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-8,10-ジクロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-メチル-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジクロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
8-[(12aR)-10-クロロ-8-フルオロ-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-9-イル]-7-メチルイソキノリン-1(2H)-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-メトキシ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aS)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,3,4,11,12,12a-ヘキサヒドロピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-6(2H)-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aS)-10-クロロ-11-メチル-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,3,4,11,12,12a-ヘキサヒドロピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-6(2H)-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2,3-ジフルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジフルオロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジフルオロ-9-[2-フルオロ-6-(ヒドロキシメチル)フェニル]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジフルオロ-9-[2-ヒドロキシ-6-(トリフルオロメチル)フェニル]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-エチル-6-ヒドロキシフェニル)-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-[2-(ジフルオロメチル)-6-ヒドロキシフェニル]-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
1-[(12aR)-9-(2-ブロモ-6-ヒドロキシフェニル)-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8-クロロ-10-フルオロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8-クロロ-10-エチニル-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-エチニル-8-フルオロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(6aR)-4-クロロ-3-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-8-(プロパ-2-エノイル)-2,6,6a,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-1-オン;
1-[(6aR)-1,4-ジクロロ-3-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(6aR)-4-クロロ-3-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(プロパ-2-エノイル)-2,6,6a,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-1-オン;
1-[(8aR)-6-クロロ-5-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8a,9,11,12-テトラヒドロ-14H-ピラジノ[2,1-c][1,2,4]トリアゾロ[4’,3’:1,2]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(7aR)-5-クロロ-4-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-メチル-1,7a,8,10,11,13-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[7,6-g]インダゾール-9(7H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(7aR)-5-クロロ-4-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-2,7a,8,10,11,13-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[7,6-g]インダゾール-9(7H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((12aR)-10-クロロ-8-エチニル-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(7aR)-5-クロロ-4-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-メチル-1,7a,8,10,11,13-ヘキサヒドロイミダゾ[4,5-g]ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-9(7H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-(プロパ-1-イン-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-エチニル-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[2,3-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-10-メチル-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-7,8-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(ジフルオロメトキシ)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-7,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(ジフルオロメトキシ)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(シクロプロピルオキシ)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(3-(ジメチルアミノ)プロパ-1-イン-1-イル)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-[(ピリジン-4-イル)メトキシ]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(2-メトキシエトキシ)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-[2-(ピペリジン-1-イル)エトキシ]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(プロパ-1-イン-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-[(2H3メチルオキシ]-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[2,3-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(メトキシメチル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-(プロパ-1-イン-1-イル)-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;及び
1-((6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-エチニル-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;又は
これらの薬学的に許容される塩
から選択される式(I)の化合物である。
【0151】
別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オンである式(I)の化合物である。
【0152】
別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-(プロパ-1-イン-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オンである式(I)の化合物である。
【0153】
本開示で使用されるRASG12C阻害剤の他の好ましい実施形態では、RASG12C阻害剤は、以下の式(II):
【化11】
(式中、
環Aは、フェニル及び二環式ヘテロアリールから選択され、
R
1は、各出現において、C
1~4アルキル、ハロ、ヒドロキシ、C
1~4アルコキシ、C
1~3フルオロアルキル、C
1~3フルオロアルコキシ、シアノ及びアセチレニルから独立して選択され、
bは、0、1、2又は3であり、
Yは、CH
2又はCH
2CH
2であり、
R
2は、シアノ、ハロ、C
1~4アルキル、C
1~4アルコキシ又はC
1~3フルオロアルキルであり、
R
3は、F、Me、Et、MeO又はC
1~2フルオロアルキルであり、
R
4は、H又はMeであり、
R
5は、H又はMeであり、
R
6は、H又はCH
2NMe
2である)
によって表される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、但し、YがCH
2であり、R
2がClであり、R
3がFであり、Aがフェニルであり、bが2であり、R
1基がF及びOHであり、且つビアリール結合に対してそれぞれオルトである場合且つR
4及びR
6の両方がHである場合、R
5は、Meである。
【0154】
一実施形態では、RASG12C阻害剤は、構造:
【化12】
の構造を有する式(II)の化合物である。
【0155】
別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、式(II)の化合物であって、環Aは、
【化13】
からなる群から選択される、式(II)の化合物である。
【0156】
別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、式(II)の化合物であって、R4は、Hである、式(II)の化合物である。別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、式(II)の化合物であって、R6は、Hである、式(II)の化合物である。別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、式(II)の化合物であって、Yは、CH2である、式(II)の化合物である。別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、式(II)の化合物であって、Yは、CH2CH2である、式(II)の化合物である。別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、式(II)の化合物であって、R2は、Clである、式(II)の化合物である。別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、式(II)の化合物であって、R3は、Fである、式(II)の化合物である。別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、式(II)の化合物であって、R4は、Hであり、R5は、Meである、式(II)の化合物である。
【0157】
別の実施形態では、RASG12C阻害剤は、
7-[(8aS)-10-アクリロイル-6-クロロ-4-フルオロ-8,8a,9,10,11,12-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-5-イル]-6-メチル-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン;
1-[(8aS,11R)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-11-メチル-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(8aS,11R)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-11-メチル-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
5-[(8aS)-10-アクリロイル-6-クロロ-4-フルオロ-8,8a,9,10,11,12-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-5-イル]-6-メチルキナゾリン-4(3H)-オン;
1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(5-メチル-1H-ベンゾイミダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
8-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-10-(プロパ-2-エノイル)-8,8a,9,10,11,12-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-5-イル]イソキノリン-1(2H)-オン;
1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(1H-インダゾール-3-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(2E)-1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
8-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-10-(プロパ-2-エノイル)-8,8a,9,10,11,12-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-5-イル]-7-メチルイソキノリン-1(2H)-オン;
1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(5-フルオロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(5-フルオロ-1H-インダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(5-フルオロ-1-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(5-フルオロ-1H-ベンゾトリアゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
8-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-10-(プロパ-2-エノイル)-8,8a,9,10,11,12-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-5-イル]-7-フルオロイソキノリン-1(2H)-オン;
(2E)-1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR,9S)-3-クロロ-1-フルオロ-2-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-9-メチル-5,6,6a,7,9,10-ヘキサヒドロ-8H-ピラジノ[1’,2’:5,6][1,5]オキサゾシノ[4,3,2-de]キナゾリン-8-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR,9S)-3-クロロ-1-フルオロ-2-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-9-メチル-5,6,6a,7,9,10-ヘキサヒドロ-8H-ピラジノ[1’,2’:5,6][1,5]オキサゾシノ[4,3,2-de]キナゾリン-8-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
8-[3-クロロ-1-フルオロ-8-(プロパ-2-エノイル)-6,6a,7,8,9,10-ヘキサヒドロ-5H-ピラジノ[1’,2’:5,6][1,5]オキサゾシノ[4,3,2-de]キナゾリン-2-イル]-7-メチルイソキノリン-1(2H)-オン;
1-[(6aS,9R)-3-クロロ-1-フルオロ-2-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-9-メチル-5,6,6a,7,9,10-ヘキサヒドロ-8H-ピラジノ[1’,2’:5,6][1,5]オキサゾシノ[4,3,2-de]キナゾリン-8-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR,9R)-3-クロロ-1-フルオロ-2-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-9-メチル-5,6,6a,7,9,10-ヘキサヒドロ-8H-ピラジノ[1’,2’:5,6][1,5]オキサゾシノ[4,3,2-de]キナゾリン-8-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aS,9S)-3-クロロ-1-フルオロ-2-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-9-メチル-5,6,6a,7,9,10-ヘキサヒドロ-8H-ピラジノ[1’,2’:5,6][1,5]オキサゾシノ[4,3,2-de]キナゾリン-8-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(8aS)-4-クロロ-6-フルオロ-5-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(8aS,11R)-6-クロロ-4-フルオロ-11-メチル-5-(5-メチル-1H-ベンゾイミダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
8-[(8aS,llR)-6-クロロ-4-フルオロ-ll-メチル-10-(プロパ-2-エノイル)-8,8a,9,10,ll,12-ヘキサヒドロピラジノ、
[2’,l’:3,4][l,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-5-イル]-7-メチルイソキノリン-l(2H)-オン;
(2E)-1-[(8aS,11R)-6-クロロ-4-フルオロ-11-メチル-5-(5-メチル-1H-ベンゾイミダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;及び
(2E)-1-[(8aS,11R)-6-クロロ-4-フルオロ-11-メチル-5-(5-メチル-1H-ベンゾイミダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;又は
これらの薬学的に許容される塩
から選択される式(II)の化合物である。
【0158】
特に好ましい実施形態では、本開示で使用されるRASG12C阻害剤は、以下の式:
【化14】
によって表される化合物A(1-[(6aS,9R)-3-クロロ-1-フルオロ-2-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-9-メチル-5,6,6a,7,9,10-ヘキサヒドロ-8H-ピラジノ[1’,2’:5,6][1,5]オキサゾシノ[4,3,2-de]キナゾリン-8-イル]プロパ-2-エン-1-オン)又はその薬学的に許容される塩である。
【0159】
別の好ましい実施形態では、本開示で使用されるRASG12C阻害剤は、AMG510(ソトラシブ:Amgen)である。
【0160】
別の好ましい実施形態では、本開示で使用されるRASG12C阻害剤は、MRTX849(アダグラシブ:Mirati)である。
【0161】
別の実施形態では、本開示で使用されるRASG12C阻害剤は、4-[(13aS)-10-クロロ-8-フルオロ-6-オキソ-2-プロパ-2-エノイル-1,3,4,12,13,13a-ヘキサヒドロピラジノ[2,l-d][l,5]ベンゾキサゾシン-9-イル]-2-アミノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリルである。
【0162】
5.抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤の組み合わせ
本開示の第1の組み合わせ実施形態では、RASG12C阻害剤と組み合わされる抗体-薬物コンジュゲートは、抗体が抗HER2抗体である抗体-薬物コンジュゲートである。
【0163】
上述した第1の組み合わせ実施形態のある実施形態では、RASG12C阻害剤と組み合わされる抗体-薬物コンジュゲートは、抗体-薬物コンジュゲートであって、抗HER2抗体は、配列番号3によって表されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号4によって表されるアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号5によって表されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖と、配列番号6によって表されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号7のアミノ酸残基1~3からなるアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号8によって表されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖とを含む抗体である、抗体-薬物コンジュゲートである。
【0164】
上述した第1の組み合わせ実施形態の別の実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号9によって表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番号10によって表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む抗体である。
【0165】
上述した第1の組み合わせ実施形態の別の実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号1によって表されるアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号2によって表されるアミノ酸配列からなる軽鎖とを含む抗体である。
【0166】
上述した第1の組み合わせ実施形態の別の実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号11によって表されるアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号2によって表されるアミノ酸配列からなる軽鎖とを含む抗体である。
【0167】
上述した第1の組み合わせ実施形態の別の実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、以下の式:
【化15】
(式中、Aは、抗体に対する接続位置を表す)
によって表される薬物-リンカーがチオエーテル結合を介して抗HER2抗体にコンジュゲートされている抗体-薬物コンジュゲートである。
【0168】
本開示の別の組み合わせ実施形態では、RASG12C阻害剤と組み合わされる抗体-薬物コンジュゲートは、トラスツズマブデルクステカン(DS-8201)又はトラスツズマブエムタンシン(T-DM1)である。
【0169】
上述した組み合わせ実施形態のそれぞれのある実施形態では、上記の組み合わせ実施形態に関して定義された抗体-薬物コンジュゲートは、以下の式(I):
【化16】
(式中、
Aは、フェニル又は二環式ヘテロアリール基であり、
X及びYは、二重結合によって接続されており、i)Xは、CR
7であり、及びYは、CR
8であるか、ii)Xは、Nであり、及びYは、CR
8であるか、又はiii)Xは、CR
7であり、及びYは、Nであるか、又は
X及びYは、共にC(O)NR
9であるか、又は
X及びYは、Zで置換された芳香環に縮合されている、任意選択的に置換された5又は6員のN-ヘテロ環の隣接する環原子であり、且つX及びYは、両方ともCであるか又はC及びNであり、
Zは、O、NH又はNMeであり、
R
1は、独立してF、Cl、Br、OH、CH
2OH、OMe、CH
2OMe、C
1~C
3アルキル及びC
1~C
3フルオロアルキルから選択され、nは、0、1、2又は3であり、
R
2は、H、F、Cl、CCH、CCMe、CN、Br、C
1~C
3アルキル、C
1~C
3フルオロアルキル、OMe又はOEtであり、
R
3a及びR
3bは、共に=Oであるか、又はR
3a及びR
3bは、Hであり、
R
4は、H又はMeであり、
R
5は、H又はMeであり、
R
6は、H又はCH
2NMe
2であり、
R
7及びR
8は、独立して、H、F、Cl、CCH、CC(C
1~C
3アルキル)、CCCH
2NMe
2、CCCH
2O(C
1~C
3アルキル)、CN、Me、C
1~C
6アルキル、OH、OMe、O(C
1~C
3アルキル)、O(C
1~C
3ジューテロアルキル)、O(C
1~C
3フルオロアルキル)、O(C
3~C
6シクロアルキル)、C
1~C
3フルオロアルキル、OCH
2CH
2NMe
2、OCH
2CH
2OMe、CH
2OMe、OCH
2CH
2N(CH
2CH
2)
2CH、OCH
2CH
2N(CH
2CH
2)
2O、OCH
2CH
2(2-ピリジル)若しくは任意選択的に置換された3、4、5若しくは6の炭素環若しくはヘテロ環から選択されるか、又は
R
7及びR
8は、結合して、任意選択的に置換された5若しくは6員の炭素環若しくはヘテロ環を形成し、
R
9は、H、Me、Et、C
3H
7及びC
1~C
3フルオロアルキルから選択される)
によって表される化合物又はその薬学的に許容される塩であるRASG12Cと組み合わされる。
【0170】
別の好ましい実施形態では、上記の組み合わせ実施形態に関して定義された抗体-薬物コンジュゲートは、上記で定義されたRASG12C阻害剤であって、式(I)中、i)Xは、CR7であり、及びYは、CR8であるか、ii)Xは、Nであり、及びYは、CR8であるか、又はiii)Xは、CR7であり、及びYは、Nである、RASG12C阻害剤と組み合わされる。別の実施形態では、式(I)中、Zは、Oである。別の実施形態では、式(I)中、R3a及びR3bは、Hである。別の実施形態では、式(I)中、R4は、Hである。別の実施形態では、式(I)中、R6は、Hである。別の実施形態では、式(I)中、Aは、フェニルである。
【0171】
別の組み合わせ実施形態では、上記の組み合わせ実施形態に関して定義された抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、RASG12C阻害剤と組み合わされ、このRASG12C阻害剤は、
(12aS)-2-アクリロイル-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-6-オン;
1-((12aS)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-メトキシ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-ヒドロキシ-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
1-((12aR)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-8-フルオロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジクロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-ヒドロキシ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-(1H-イミダゾール-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-7-カルボニトリル;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-(1H-ピラゾール-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((12aR)-10-クロロ-8-フルオロ-9-(5-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-4-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-8,10-ジクロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-メチル-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-6-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジクロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
8-[(12aR)-10-クロロ-8-フルオロ-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-9-イル]-7-メチルイソキノリン-1(2H)-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-メトキシ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aS)-10-クロロ-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,3,4,11,12,12a-ヘキサヒドロピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-6(2H)-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aS)-10-クロロ-11-メチル-9-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,3,4,11,12,12a-ヘキサヒドロピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-6(2H)-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2,3-ジフルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジフルオロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジフルオロ-9-[2-フルオロ-6-(ヒドロキシメチル)フェニル]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8,10-ジフルオロ-9-[2-ヒドロキシ-6-(トリフルオロメチル)フェニル]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-エチル-6-ヒドロキシフェニル)-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-[2-(ジフルオロメチル)-6-ヒドロキシフェニル]-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-(プロパ-2-エノイル)-1,2,3,4,12,12a-ヘキサヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-8-カルボニトリル;
1-[(12aR)-9-(2-ブロモ-6-ヒドロキシフェニル)-8,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8-クロロ-10-フルオロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8-クロロ-10-エチニル-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-エチニル-8-フルオロ-9-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(6aR)-4-クロロ-3-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-8-(プロパ-2-エノイル)-2,6,6a,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-1-オン;
1-[(6aR)-1,4-ジクロロ-3-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(6aR)-4-クロロ-3-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(プロパ-2-エノイル)-2,6,6a,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-1-オン;
1-[(8aR)-6-クロロ-5-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8a,9,11,12-テトラヒドロ-14H-ピラジノ[2,1-c][1,2,4]トリアゾロ[4’,3’:1,2]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(7aR)-5-クロロ-4-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-メチル-1,7a,8,10,11,13-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[7,6-g]インダゾール-9(7H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(7aR)-5-クロロ-4-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-2,7a,8,10,11,13-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[7,6-g]インダゾール-9(7H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((12aR)-10-クロロ-8-エチニル-9-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(7aR)-5-クロロ-4-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-メチル-1,7a,8,10,11,13-ヘキサヒドロイミダゾ[4,5-g]ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-9(7H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-8-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-(プロパ-1-イン-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-エチニル-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[2,3-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-10-メチル-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-7,8-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(ジフルオロメトキシ)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-7,10-ジフルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(ジフルオロメトキシ)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(シクロプロピルオキシ)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(3-(ジメチルアミノ)プロパ-1-イン-1-イル)-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[f]ピラジノ[2,1-c][1,4]オキサゼピン-2(1H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-[(ピリジン-4-イル)メトキシ]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(2-メトキシエトキシ)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-[2-(ピペリジン-1-イル)エトキシ]-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(プロパ-1-イン-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-2-[(2H3メチルオキシ]-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[2,3-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-10-クロロ-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-(メトキシメチル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-7-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-(プロパ-1-イン-1-イル)-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;及び
1-((6aR)-4-クロロ-3-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-エチニル-6a,7,9,10-テトラヒドロ-12H-ピラジノ[2,1-c]ピリド[3,4-f][1,4]オキサゼピン-8(6H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン
から選択される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0172】
別の組み合わせ実施形態では、RASG12C阻害剤は、1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-8-エチニル-10-フルオロ-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オンである式(I)の化合物である。
【0173】
別の組み合わせ実施形態では、RASG12C阻害剤は、1-[(12aR)-9-(2-クロロ-6-ヒドロキシフェニル)-10-フルオロ-8-(プロパ-1-イン-1-イル)-3,4,12,12a-テトラヒドロ-6H-ピラジノ[2,1-c][1,4]ベンゾオキサゼピン-2(1H)-イル]プロパ-2-エン-1-オンである式(I)の化合物である。
【0174】
上述の組み合わせ実施形態のそれぞれの別の実施形態では、上記の組み合わせ実施形態に関して定義された抗体-薬物コンジュゲートは、以下の式(II):
【化17】
(式中、
環Aは、フェニル及び二環式ヘテロアリールから選択され、
R
1は、各出現において、C
1~4アルキル、ハロ、ヒドロキシ、C
1~4アルコキシ、C
1~3フルオロアルキル、C
1~3フルオロアルコキシ、シアノ及びアセチレニルから独立に選択され、
bは、0、1、2又は3であり、
Yは、CH
2又はCH
2CH2であり、
R
2は、シアノ、ハロ、C
1~4アルキル、C
1~4アルコキシ又はC
1~3フルオロアルキルであり、
R
3は、F、Me、Et、MeO又はC
1~2フルオロアルキルであり、
R
4は、H又はMeであり、
R
5は、H又はMeであり、
R
6は、H又はCH
2NMe
2である)
によって表される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、但し、YがCH
2であり、R
2がClであり、R
3がFであり、Aがフェニルであり、bが2であり、R
1基がF及びOHであり、且つビアリール結合に対してそれぞれオルトである場合且つR
4及びR
6の両方がHである場合、R
5は、Meである、化合物又はその薬学的に許容される塩であるRASG12C阻害剤と組み合わされる。
【0175】
別の組み合わせ実施形態では、上記の組み合わせ実施形態に関して定義された抗体-薬物コンジュゲートは、構造:
【化18】
を有する、上記で定義されたRASG12C阻害剤と組み合わされる。
【0176】
別の組み合わせ実施形態では、上記の組み合わせ実施形態に関して定義された抗体-薬物コンジュゲートは、上記で定義されたRASG12C阻害剤であって、式(II)中、環Aは、
【化19】
からなる群から選択される、RASG12C阻害剤と組み合わされる。
【0177】
別の組み合わせ実施形態では、上記の組み合わせ実施形態に関して定義された抗体-薬物コンジュゲートは、上記で定義されたRASG12C阻害剤であって、式(II)中、R4は、Hである、RASG12C阻害剤と組み合わされる。別の実施形態では、式(II)中、R6は、Hである。別の実施形態では、式(II)中、Yは、CH2である。別の実施形態では、式(II)中、Yは、CH2CH2である。別の実施形態では、式(II)中、R2は、Clである。別の実施形態では、式(II)中、R3は、Fである。別の実施形態では、式(II)中、R4は、Hであり、且つR5は、Meである。
【0178】
別の組み合わせ実施形態では、上記の組み合わせ実施形態に関して定義された抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、RASG12C阻害剤であって、
7-[(8aS)-10-アクリロイル-6-クロロ-4-フルオロ-8,8a,9,10,11,12-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-5-イル]-6-メチル-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン;
1-[(8aS,11R)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-11-メチル-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(8aS,11R)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-11-メチル-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
5-[(8aS)-10-アクリロイル-6-クロロ-4-フルオロ-8,8a,9,10,11,12-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-5-イル]-6-メチルキナゾリン-4(3H)-オン;
1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(5-メチル-1H-ベンゾイミダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
8-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-10-(プロパ-2-エノイル)-8,8a,9,10,11,12-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-5-イル]イソキノリン-1(2H)-オン;
1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(1H-インダゾール-3-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(2-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
(2E)-1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
8-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-10-(プロパ-2-エノイル)-8,8a,9,10,11,12-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-5-イル]-7-メチルイソキノリン-1(2H)-オン;
1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(5-フルオロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(5-フルオロ-1H-インダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-((8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(5-フルオロ-1-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(5-フルオロ-1H-ベンゾトリアゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
8-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-10-(プロパ-2-エノイル)-8,8a,9,10,11,12-ヘキサヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-5-イル]-7-フルオロイソキノリン-1(2H)-オン;
(2E)-1-[(8aS)-6-クロロ-4-フルオロ-5-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR,9S)-3-クロロ-1-フルオロ-2-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-9-メチル-5,6,6a,7,9,10-ヘキサヒドロ-8H-ピラジノ[1’,2’:5,6][1,5]オキサゾシノ[4,3,2-de]キナゾリン-8-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR,9S)-3-クロロ-1-フルオロ-2-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-9-メチル-5,6,6a,7,9,10-ヘキサヒドロ-8H-ピラジノ[1’,2’:5,6][1,5]オキサゾシノ[4,3,2-de]キナゾリン-8-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
8-[3-クロロ-1-フルオロ-8-(プロパ-2-エノイル)-6,6a,7,8,9,10-ヘキサヒドロ-5H-ピラジノ[1’,2’:5,6][1,5]オキサゾシノ[4,3,2-de]キナゾリン-2-イル]-7-メチルイソキノリン-1(2H)-オン;
1-[(6aS,9R)-3-クロロ-1-フルオロ-2-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-9-メチル-5,6,6a,7,9,10-ヘキサヒドロ-8H-ピラジノ[1’,2’:5,6][1,5]オキサゾシノ[4,3,2-de]キナゾリン-8-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aR,9R)-3-クロロ-1-フルオロ-2-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-9-メチル-5,6,6a,7,9,10-ヘキサヒドロ-8H-ピラジノ[1’,2’:5,6][1,5]オキサゾシノ[4,3,2-de]キナゾリン-8-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(6aS,9S)-3-クロロ-1-フルオロ-2-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-9-メチル-5,6,6a,7,9,10-ヘキサヒドロ-8H-ピラジノ[1’,2’:5,6][1,5]オキサゾシノ[4,3,2-de]キナゾリン-8-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(8aS)-4-クロロ-6-フルオロ-5-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
1-[(8aS,11R)-6-クロロ-4-フルオロ-11-メチル-5-(5-メチル-1H-ベンゾイミダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]プロパ-2-エン-1-オン;
8-[(8aS,llR)-6-クロロ-4-フルオロ-ll-メチル-10-(プロパ-2-エノイル)-8,8a,9,10,ll,12-ヘキサヒドロピラジノ、
[2’,l’:3,4][l,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-5-イル]-7-メチルイソキノリン-l(2H)-オン;
(2E)-1-[(8aS,11R)-6-クロロ-4-フルオロ-11-メチル-5-(5-メチル-1H-ベンゾイミダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;及び
(2E)-1-[(8aS,11R)-6-クロロ-4-フルオロ-11-メチル-5-(5-メチル-1H-インダゾール-4-イル)-8a,9,11,12-テトラヒドロピラジノ[2’,1’:3,4][1,4]オキサゼピノ[5,6,7-de]キナゾリン-10(8H)-イル]-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;又は
これらの薬学的に許容される塩
から選択される式(II)の化合物であるRASG12C阻害剤と組み合わされる。
【0179】
別の組み合わせ実施形態では、上記の組み合わせ実施形態に関して定義された抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、RASG12C阻害剤であって、以下の式:
【化20】
によって表される化合物A又はその薬学的に許容される塩であるRASG12C阻害剤と組み合わされる。
【0180】
別の組み合わせ実施形態では、上記の組み合わせ実施形態に関して定義された抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、RASG12C阻害剤であって、LY3537982(Loxo/Lilly)、AZD4625(AstraZeneca)、AMG510(ソトラシブ:Amgen)、MRTX849(アダグラシブ:Mirati)、JDQ443(Novartis)、GDC-6036(Genentech)、BI 1,823,911(Boehringer Ingelheim)、D1553(InventisBio)及びJNJ-74699157(Johnson and Johnson)から選択されるRASG12C阻害剤と組み合わされる。
【0181】
別の組み合わせ実施形態では、上記の組み合わせ実施形態に関して定義された抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、RASG12C阻害剤であって、AMG510(ソトラシブ)であるRASG12C阻害剤と組み合わされる。
【0182】
別の組み合わせ実施形態では、上記で定義された抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、RASG12C阻害剤であって、MRTX849(アダグラシブ)であるRASG12C阻害剤と組み合わされる。
【0183】
本開示の特に好ましい組み合わせ実施形態では、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、トラスツズマブデルクステカン(DS-8201)であり、RASG12C阻害剤は、以下の式:
【化21】
によって表される化合物(化合物Aとしても特定されている)である。
【0184】
本開示の別の特に好ましい組み合わせ実施形態では、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、トラスツズマブデルクステカン(DS-8201)であり、RASG12C阻害剤は、AMG510(ソトラシブ)である。
【0185】
本開示の別の特に好ましい組み合わせ実施形態では、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、トラスツズマブデルクステカン(DS-8201)であり、RASG12C阻害剤は、MRTX849(アダグラシブ)である。
【0186】
6.治療上での併用及び治療方法
医薬品並びに治療用の使用及び方法を以下で説明するが、ここで、本開示に係る抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤が組み合わせて投与される。
【0187】
本開示の医薬品並びに治療用の使用及び方法は、抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤が異なる製剤中に有効成分として個別に含有され、同時に若しくは異なる時間に投与されることを特徴とし得るか、又は抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤が単一の製剤中に有効成分として含有されて投与されることを特徴とし得る。
【0188】
本開示の医薬品及び治療方法では、本開示で使用される単一のRASG12C阻害剤は、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせて投与され得るか、又は2種以上の異なるRASG12C阻害剤が抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせて投与され得る。
【0189】
本開示の医薬品及び治療方法は、癌を処置するために使用され得、好ましくは乳癌(トリプルネガティブ乳癌及びルミナル乳癌を含む)、胃癌(別名:胃腺癌)、結腸直腸癌(別名:結腸及び直腸癌であり、結腸癌及び直腸癌を含む)、肺癌(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む)、食道癌、頭頸部癌(唾液腺癌及び咽頭癌を含む)、食道胃接合部腺癌、胆道癌(胆管癌を含む)パジェット病、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌肉腫、尿路上皮癌、前立腺癌、膀胱癌、胃腸間質腫瘍、子宮頸癌、扁平上皮細胞癌腫、腹膜癌、肝臓癌、肝細胞癌、子宮体部癌腫、腎臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、陰茎癌、白血病、悪性リンパ腫、形質細胞腫、骨髄腫、多形性膠芽腫、骨肉腫、肉腫及び黒色腫からなる群から選択される少なくとも1種の癌を処置するために使用され得、より好ましくは乳癌、胃癌、結腸直腸癌、肺癌(好ましくは非小細胞肺癌)、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌及び腎臓癌からなる群から選択される少なくとも1種の癌を処置するために使用され得る。
【0190】
HER2腫瘍マーカーの有無は、例えば癌患者から腫瘍組織を採取して、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試験片を調製し、この試験片を、例えば免疫組織化学(IHC)法、フローサイトメーター若しくはウエスタンブロット法を用いる遺伝子産物(タンパク質)に関する試験又は例えばインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)法、定量PCR法(q-PCR)若しくはマイクロアレイ解析を用いる遺伝子転写に関する試験に供することによって決定され得るか、又は癌患者から無細胞循環腫瘍DNA(ctDNA)を採取し、このctDNAを、次世代配列決定法(NGS)等の方法を用いる試験に供することによって決定され得る。
【0191】
本開示の医薬品及び治療方法は、HER2過剰発現癌(高度又は中程度)であり得るか又はHER2低発現癌であり得るHER2発現癌に使用され得る。
【0192】
本開示では、「HER2過剰発現癌」という用語は、それが当業者によってHER2過剰発現癌であると認識される限り、特に限定されない。HER2過剰発現癌の好ましい例として、IHC法でHER2発現に関して3+のスコアを得た癌及びIHC法でHER2発現に関して2+のスコアを得、且つインサイチュハイブリダイゼーション法(ISH)でHER2発現に関して陽性であると決定された癌が挙げられ得る。本開示のインサイチュハイブリダイゼーション法として、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション法(FISH)及びデュアルカラーインサイチュハイブリダイゼーション法(DISH)が挙げられる。
【0193】
本開示では、「HER2低発現癌」という用語は、それが当業者によってHER2低発現癌と認識される限り、特に限定されない。HER2低発現癌の好ましい例として、IHC法でHER2発現に関して2+のスコアが付与され、且つインサイチュハイブリダイゼーション法でHER2発現に関して陰性と決定された癌及びIHC法でHER2発現に関して1+のスコアが付与される癌が挙げられ得る。
【0194】
IHC法によってHER2発現の程度をスコア化する方法又はインサイチュハイブリダイゼーション法によってHER2発現に対して陽性若しくは陰性と決定する方法は、当業者によって認識される限り、特に限定されない。この方法の例として、4th edition of the guidelines for HER2 testing,breast cancer(Japanese Pathology Board for Optimal Use of HER2 for Breast Cancer編)で説明されている方法が挙げられ得る。
【0195】
癌(特に乳癌の処置に関する癌)は、HER2過剰発現(高若しくは中程度)乳癌若しくは低発現乳癌又はトリプルネガティブ乳癌であり得、且つ/又はIHC 3+、IHC 2+、IHC 1+若しくはIHC>0及び<1+のHER2ステータススコアを有し得る。
【0196】
本開示の医薬品及び治療方法を好ましくは哺乳動物に使用し得るが、より好ましくはヒトに使用し得る。
【0197】
本開示の医薬品及び治療方法の抗腫瘍効果は、癌細胞を被験動物に移植してモデルを調製し、本開示の医薬品及び治療方法の適用による腫瘍量の減少又は延命効果を測定することによって確認され得る。また、次に、本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤の組み合わせた使用の効果は、抗腫瘍効果に関して、本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲートの単独投与及びRASG12C阻害剤の単独投与と比較することによって確認され得る。
【0198】
本開示の医薬品及び治療方法の抗腫瘍効果は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)、WHO評価法、Macdonald評価法、体重測定及び他のアプローチでの評価法のいずれかを使用して臨床試験で確認され得、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、進行性疾患(PD)、奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存率(OS)等の指標に基づいて決定され得る。
【0199】
上記方法を使用することにより、癌処置のための既存の医薬品及び治療方法に対する本開示の医薬品及び治療方法の抗腫瘍効果の卓越性を確認し得る。
【0200】
本開示の医薬品及び治療方法は、癌細胞の発生を遅延させ、その成長を阻害し、癌細胞をさらに死滅させ得る。これらの効果により、癌患者で癌によって引き起こされる症状がなくなるか、又は癌患者のクオリティーオブライフ(QOL)の改善を達成し、癌患者の生命を保持することによって治療効果を達成することが可能になり得る。本開示の医薬品及び治療方法が癌細胞の死滅を完遂しないとしても、これらは、癌細胞の成長を阻害するか又は調節することにより、より長期間の生存を達成しながら、癌患者のより高いQOLを達成し得る。
【0201】
本開示の医薬品は、患者への全身療法としての適用、さらに癌組織への局所適用によって治療効果を発揮すると予想され得る。
【0202】
本開示の医薬品及び治療方法は、別の態様では、電離放射線又は他の化学療法剤を用いた癌治療の補助剤としての使用を提供する。例えば、癌の処置において、処置は、処置を必要とする対象に有効量の医薬品を電離放射線又は他の化学療法剤と同時に又は逐次的に投与することを含み得る。
【0203】
本開示の医薬品及び治療方法は、外科手術と組み合わせたアジュバント化学療法として使用され得る。本開示の医薬品は、外科手術前に腫瘍サイズを減少させる目的で投与され得る(術前アジュバント化学療法又はネオアジュバント療法と称される)か、又は外科手術後に腫瘍の再発を防止する目的で投与され得る(術後アジュバント化学療法又はアジュバント療法と称される)。
【0204】
いくつかの実施形態では、癌細胞は、BRCA1及び/又はBRCA2欠損表現型を有し得、即ち癌細胞でBRCA1及び/又はBRCA2活性が低下又は消失している。この表現型を有する癌細胞は、BRCA1及び/又はBRCA2が欠損し得、即ち、BRCA1及び/又はBRCA2の発現及び/又は活性は、例えば、コード核酸における変異若しくは多型又は調節因子をコードする遺伝子(例えば、BRCA2調節因子をコードするEMSY遺伝子)における増幅、変異若しくは多型によって癌細胞で低下又は消失し得る(Hughes-Davies,et al.,Cell,115,523-535)。BRCA1及びBRCA2は、その野生型対立遺伝子がヘテロ接合保因者の腫瘍で頻繁に失われる既知の腫瘍抑制因子である(Jasin M.,Oncogene,21(58),8981-93(2002);Tutt,et al.,Trends Mol Med.,8(12),571-6,(2002))。BRCA1及び/又はBRCA2の変異と乳癌との関連は、当技術分野で十分に特徴付けられている(Radice,P.J.,Exp Clin Cancer Res.,21(3 Suppl),9-12(2002))。BRCA2結合因子をコードするEMSY遺伝子の増幅も乳癌及び卵巣癌と関連することが知られている。BRCA1及び/又はBRCA2における変異の保因者は、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、血液癌、消化管癌及び肺癌を含む特定の癌のリスクも高い。いくつかの実施形態では、個体は、BRCA1及び/若しくはBRCA2又はその調節因子で1つ又は複数の多様性(例えば、変異及び多型)についてヘテロ接合性である。BRCA1及びBRCA2における多様性の検出は、当技術分野で公知であり、例えば、欧州特許第699754号明細書、同第705903号明細書、Neuhausen,S.L.and Ostrander,E.A.,Genet.Test,1,75-83(1992);Chappnis,P.O.and Foulkes,W.O.,Cancer Treat Res,107,29-59(2002);Janatova M.,et al.,Neoplasma,50(4),246-505(2003);Jancarkova,N.,Ceska Gynekol.,68{1),11-6(2003))で説明されている。BRCA2結合因子EMSYの増幅の決定は、Hughes-Davies,et al.,Cell,115,523-535)で説明されている。
【0205】
癌に関連する変異及び多型は、バリアント核酸配列の存在を検出することによって核酸レベルで検出され得るか、又はバリアント(即ち変異体又は対立遺伝子バリアント)ポリペプチドの存在を検出することによってタンパク質レベルで検出され得る。
【0206】
本開示の医薬品を、少なくとも1種の医薬的に好適な成分を含有して投与することが可能である。薬学的に適切な成分は、好適には、本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲート及びRASG12C阻害剤の投与量、投与濃度等に従い、一般に当技術分野で使用される製剤添加剤等から選択されて適用され得る。本開示で使用される抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、例えば、緩衝液、例えばヒスチジン緩衝液、ビヒクル、例えばスクロース及びトレハロース並びに界面活性剤、例えばポリソルベート80及び20を含有する医薬品として投与され得る。本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲートを含有する医薬品を好ましくは注射として使用し得、より好ましくは水性注射物又は凍結乾燥注射物として使用し得、さらにより好ましくは凍結乾燥注射物として使用し得る。本開示で使用される抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを含有する医薬品が水性注射物である場合、この水性注射物を好ましくは適切な希釈剤で希釈し、次に静脈内点滴として与え得る。希釈剤の例として、デキストロース溶液が挙げられ得、生理食塩水、デキストロース溶液が好ましくは例示され得、5%デキストロース溶液がより好ましくは例示され得る。本開示の医薬品が凍結乾燥注射物である場合、注射用の水中で予め溶解された凍結乾燥注射物の必要量を好ましくは適切な希釈剤で希釈し、次に静脈内点滴として与え得る。希釈剤の例として、デキストロース溶液及び生理食塩水が挙げられ得、デキストロース溶液が好ましくは例示され得、5%デキストロース溶液がより好ましくは例示され得る。
【0207】
本開示の医薬品の投与に適用可能な投与経路の例として、静脈内、皮内、皮下、筋肉内及び腹腔内経路が挙げられ得、静脈内経路が好ましい。
【0208】
本開示で使用される抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを1~180日の間隔でヒトに投与し得、好ましくは1週間、2週間、3週間又は4週間の間隔で投与し得、より好ましくは3週間の間隔で投与し得る。本開示で使用される抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを1投与当たり約0.001~100mg/kgの用量で投与し得、好ましくは1投与当たり0.8~12.4mg/kgの用量で投与し得る。例えば、本抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを0.8mg/kg、1.6mg/kg、3.2mg/kg、5.4mg/kg、6.4mg/kg、7.4mg/kg又は8mg/kgの用量で3週間に1回投与し得、好ましくは5.4mg/kg又は6.4mg/kgの用量で3週間に1回投与し得る。
【0209】
RASG12C選択的阻害剤を任意の好適な投与経路によって好適な用量で投与し得る。特定の病状の治療的処置に必要な用量のサイズは、処置される対象、投与経路及び処置される疾病の重症度に応じて必然的に変化する。投与経路及び投与レジメンに関するさらなる情報は、Comprehensive Medicinal Chemistry(Corwin Hansch;Chairman of Editorial Board),Pergamon Press 1990、Volume 5、Chapter 25.3を参照し得る。
【0210】
式(I)若しくは(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、通常、薬学的に許容される剤形中、活性成分若しくはその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物又はこうした塩の溶媒和物を含む医薬製剤の形態において、経口経路を介して、非経口、静脈内、筋肉内、皮下で又は他の注射法、口腔、直腸、膣、経皮及び/若しくは鼻内経路並びに/又は吸入で投与する。処置される障害及び患者並びに投与経路に応じて、本組成物を様々な用量で投与し得、例えば1mg~1,000mg又は100mg~2,000mgの経口用量で投与し得る。上述した式(I)又は(II)の化合物の医薬製剤を例えば非経口投与、皮下投与、筋肉内投与又は静脈内投与のために調製し得る。上述した式(I)又は(II)の化合物の医薬製剤を簡便には単位剤形で投与し得、医薬の技術分野で周知の方法のいずれによっても調製し得、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA.(1985)で説明されている通りに調製し得る。経口投与に好適な医薬製剤は、1種又は複数の生理学的に適合した担体及び/又は賦形剤を含み得、且つ固体形態又は液体形態であり得る。錠剤及びカプセルは、結合剤、充填剤、潤滑剤及び界面活性剤を用いて調製され得る。液状組成物は、懸濁化剤、乳化剤及び防腐剤等の従来の添加剤を含み得る。液状組成物は、例えば、ゼラチン等の中にカプセル化されて単位剤形を提供し得る。固体の経口剤形として、錠剤、ツーピース硬シェルカプセル剤及び軟弾性ゼラチン(SEG)カプセル剤が挙げられる。例示的な経口組成物は、ツーピースハードシェルカプセル又はソフト弾性ゼラチン(SEG)カプセル中に充填された式(I)又は(II)の化合物及び少なくとも1種の薬学的に許容できる賦形剤を含むであろう。
【実施例】
【0211】
以下に示す実施例を考慮して本開示を具体的に説明する。しかしながら、本開示は、これらに限定されない。さらに、これは、決して限定的に解釈されるべきではない。
【0212】
実施例1:抗体-薬物コンジュゲートの製造
国際公開第2015/115091号パンフレットで説明されている製造方法に従い、且つ抗HER2抗体(配列番号11によって表されるアミノ酸配列(配列番号1のアミノ酸残基1~449)からなる重鎖と、配列番号2の全アミノ酸残基1~214からなるアミノ酸配列からなる軽鎖とを含む抗体)を用いて、以下の式:
【化22】
(式中、Aは、抗体に対する接続位置を表す)
によって表される薬物-リンカーがチオエーテル結合を介して抗HER2抗体にコンジュゲートされている抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを製造した(DS-8201:トラスツズマブデルクステカン)。抗体-薬物コンジュゲートのDARは7.7又は7.8である。
【0213】
実施例2:RASG12C阻害剤の製造
既知の製造方法に従い、式(I)のRASG12阻害剤を調製する。具体的には、1-[(6aS,9R)-3-クロロ-1-フルオロ-2-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-9-メチル-5,6,6a,7,9,10-ヘキサヒドロ-8H-ピラジノ[1’,2’:5,6][1,5]オキサゾシノ[4,3,2-de]キナゾリン-8-イル]プロパ-2-エン-1-オン
【化23】
を国際公開第2019/215203号パンフレットの実施例39に従って調製し得る。
【0214】
実施例3:抗腫瘍試験
抗体-薬物コンジュゲートDS-8201(トラスツズマブデルクステカン(Enhertu(登録商標)))とKRAS G12C阻害剤との組み合わせ
KRAS G12C阻害剤とDS-8201との組み合わせの利点を評価するために、様々なKRASG12C変異体ヒト細胞株でのインビトロ細胞増殖アッセイを実行した。阻害剤の用量範囲を使用する5日間細胞増殖アッセイを使用して、KRAS G12C阻害剤とDS-8201との相乗的な組み合わせの可能性を調査した。薬物処置中止後の増殖のモニタリングを含む長期(20日間)細胞増殖アッセイを利用して、KRAS G12C阻害剤としての化合物AとDS-8201との組み合わせ利点の深さ及び持続期間を調べた。KRAS G12C阻害剤とDS-8201との抗腫瘍組み合わせ利点をKRAS G12C変異体肺異種移植片モデル及び結腸直腸患者由来移植片モデルにおいてインビボで調査した。
【0215】
方法
前臨床モデル
NCI-H358(CRL-5807)細胞、NCI-H2122(CRL-5985)細胞、NCI-H1792(CRL-5895)細胞、SW1573(CRL-2170)細胞及びSW837(CCL-235)細胞をAmerican Type Culture Collection (ATCC)から入手した。LIM2099(12062002)細胞及びKYSE410(94072023)細胞は、European Collection of Authenticated Cell Cultures (ECACC)由来であった。LU99細胞(JCRB0080)をJapanese Collection of Research Bioresources(JCRB)から入手し、HCC44(70044)は、Korean Cell line bank(KCLB)由来であった。細胞株をショートタンデムリピート分析(STR)によって認証した。CTG-1489及びCTG-0387は、Champions Oncologyの結腸直腸癌患者由来移植片(PDX)モデルである。
【0216】
インビトロ研究
細胞株をGrowth Media(フェールレッドを含まないRPMI-1640、10% FCS、2mM L-グルタミン)中で常に培養した。アッセイ用のプレートに細胞を播種するために、0.25%トリプシン溶液で細胞を剥離し、次いで18Gの鈍針に通して3回シリンジに出し入れして、細胞を完全に分散させた。
【0217】
相乗的な組み合わせ効果を決定するために、細胞を500~1000個の細胞/ウェルにおいて増殖培地70μlで384ウェルプレートに播種した。プレートを24時間にわたってインキュベートし、直ちに処理したか(0日目)、又はECHO 555リキッドハンドラー(Labcyte)により、8×8投与マトリックスを使用してKRAS G12C阻害剤(化合物A)及びDS-8201で処理し、さらに5日にわたってインキュベートした。細胞増殖を、CellTiter-Glo(Promega)を使用してアデノシン三リン酸含有量で評価した。CellTiter-Glo試薬35μlを添加し、室温で1時間にわたってインキュベートした。発光をSpectraMax i3(Molecular Devices)プレートリーダーで測定した。データを0日目に対して正規化し、2次元用量反応マトリックス及びカーブフィッティングをGenedata Screener12(商標)(Genedata,Basel,Switzerland)の組み合わせ拡張で処理した。組み合わせ活性(相乗)を、Loewe用量加算性モデルを使用して算出した。加算性のこのモデルは、2つの薬剤が同じ薬物であった場合、予期される応答によって予想されるヌル参照を提供する。2つの単剤応答曲線から予想した3次元モデル表面を、実験的に得られた3次元用量効果表面から減算して、差分容量を生じさせる。この過剰なマトリックス容量を統合して、相乗スコアを生じさせ得る。相乗的な組み合わせは、5以上のLoeweスコアを有すると定義されている。組み合わせマトリックスとしての結果を
図12に示す。
【0218】
再増殖までの時間アッセイのために、細胞を増殖培地で48ウェル組織培養プレートに播種し、一晩放置して付着させた。24時間後、細胞にKRAS G12C阻害剤(化合物A)及び/又はDS-8201を投与した。4日目及び7日目に、阻害剤を含む新鮮な培地を細胞に再投与し、10日目に、阻害剤を含まない新鮮な培地を添加した。細胞の培養密度を、Incucyte Zoom生細胞イメージングプラットフォーム(Sartorius)を使用してモニタリングした。結果を
図13にグラフで示す。
【0219】
KRAS G12C変異体癌細胞株のパネルにおけるKRAS G12C阻害剤(化合物A;AMG510;MRTX849)とDS-8201との組み合わせ処置に関して、Loewe相乗スコアを得た。相乗スコアを独立した組み合わせ実験から得た。相乗的な組み合わせは、5以上のLoeweスコアを有すると定義されている。結果を以下の表1に示す。
【0220】
【0221】
図12の結果から、KRAS
G12C肺癌細胞株H358及びH2122並びにKRAS
G12C食道癌細胞株KYSE410では、化合物AがインビトロでDS-8201との相乗的な組み合わせ活性を示すことが分かる。
【0222】
図13の結果から、肺癌、結腸直腸癌及び食道癌の細胞株では、化合物AとDS-8201との組み合わせがインビボで腫瘍増殖阻害を増加させ、且つ処置中止時の再増殖を遅延させることが分かる。
【0223】
表1の結果から、AMG510及びMRTX849は、KRASG12C肺癌、結腸直腸癌及び食道癌の細胞株においてインビトロでDS-8201との相乗的な組み合わせ活性を示すことと、DS-8201及び化合物Aは、KRASG12C肺癌細胞株で相乗的な組み合わせ活性を示すこととが分かる。
【0224】
インビボ研究
インビボ研究をAthymic Nude-Foxn1nuマウス(Envigo)において現地の規制に従ってAstraZeneca(異種移植片モデル)又はChampions Oncology(PDXモデル)で実施した。NCI-H358、NCI-H2122又はLU99の異種移植片研究に関して、移植日に細胞をMatrigel:細胞の50:50比でそれぞれ3×106、2.5×105又は5×106個の細胞の濃度において調製した。細胞懸濁液を左脇腹に0.1ml/マウスで皮下移植した。腫瘍が活発に増殖している動物を、平均腫瘍体積が約0.2~0.3cm3に達した時点で関連する処置群に無作為に割り当てた。患者由来移植片(PDX)研究に関して、動物の左脇腹に適切なPDX腫瘍断片を移植し、移植後7~10日目に腫瘍体積を記録した。腫瘍の平均体積が0.15~0.3cm3に達した時点で、活発に増殖している腫瘍を関連する処置群に無作為に割り当てた。
【0225】
無作為化の翌日に処置を開始した。指定された処置期間にわたり、ビヒクルコントロール又は100mg/kg化合物Aの1日1回の用量を動物に経口投与した。DS-8201を単回静脈内用量で投与した。化合物Aを0.5% HPMC/0.1% Tween80で製剤化した。DS-8201を25mMヒスチジン緩衝液-9%スクロース(pH5.5)で製剤化した。腫瘍をカリパスで週2回計測し、楕円式(pi/6×幅×幅×長さ)を使用して体積を算出した。研究期間中、動物の体重及び腫瘍の状態も週2回記録した。
【0226】
結果を
図14~18のグラフに示す。結果から分かるように、化合物A及びDS-8201の組み合わせは、KRAS
G12C変異体肺癌異種移植片モデルNCI-H358、NCI-H2122及びLU99並びにKRAS
G12C変異体結腸直腸癌患者由来移植片モデルCTG-1489及びCTG-0387においてインビボで腫瘍増殖阻害の増強及び延長を示す。
【0227】
そのため、実施例3の結果(
図12~18;表1)から、KRAS G12C阻害剤(化合物A)を使用するKRAS G12C阻害により、インビトロ及びインビボで、HER2発現細胞株における抗HER2抗体-薬物コンジュゲート(DS-8201)の抗腫瘍効果が増強されることが実証されている。
【0228】
実施例4:抗腫瘍試験
抗体-薬物コンジュゲートT-DM1(トラスツズマブエムタンシン(Kadcyla(登録商標)))とKRAS G12C阻害剤との組み合わせ。
KRAS G12C阻害剤とT-DM1との組み合わせの利点を評価するために、様々なKRASG12C変異体ヒト細胞株でのインビトロ細胞増殖アッセイを実行した。阻害剤の用量範囲を使用する5日間細胞増殖アッセイを使用して、KRAS G12C阻害剤とDS-8201との相乗的な組み合わせの可能性を調査した。
【0229】
方法
前臨床モデル
NCI-H358(CRL-5807)細胞及びNCI-H2122(CRL-5985)細胞をAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手した。細胞株をショートタンデムリピート分析(STR)によって認証した。
【0230】
インビトロ研究
細胞株をGrowth Media(フェールレッドを含まないRPMI-1640、10% FCS、2mM L-グルタミン)中で常に培養した。アッセイ用のプレートに細胞を播種するために、0.25%トリプシン溶液で細胞を剥離し、次いで18Gの鈍針に通して3回シリンジに出し入れして、細胞を完全に分散させた。
【0231】
相乗的な組み合わせ効果を決定するために、細胞を500~1000個の細胞/ウェルにおいて増殖培地70μlで384ウェルプレートに播種した。プレートを24時間にわたってインキュベートし、直ちに処理するか(0日目)、又はECHO 555リキッドハンドラー(Labcyte)により、8×8投与マトリックスを使用してKRAS G12C阻害剤(化合物A)及びT-DM1又はトラスツズマブで処理し、さらに5日にわたってインキュベートした。細胞増殖を、CellTiter-Glo(Promega)を使用してアデノシン三リン酸含有量で評価した。CellTiter-Glo試薬35μlを添加し、室温で1時間にわたってインキュベートした。発光をSpectraMax i3(Molecular Devices)プレートリーダーで測定した。データを0日目に対して正規化し、2次元用量反応マトリックス及びカーブフィッティングをGenedata Screener12(商標)(Genedata,Basel,Switzerland)の組み合わせ拡張で処理した。組み合わせ活性(相乗)を、Loewe用量加算性モデルを使用して算出した。加算性のこのモデルは、2つの薬剤が同じ薬物であった場合、予期される応答によって予想されるヌル参照を提供する。2つの単剤応答曲線から予想した3次元モデル表面を、実験的に得られた3次元用量効果表面から減算して、差分容量を生じさせる。この過剰なマトリックス容量を統合して、相乗スコアを生じさせ得る。相乗的な組み合わせは、5以上のLoeweスコアを有すると定義されている。組み合わせマトリックスとしての結果を
図19A及び
図19Bに示す。
【0232】
NCI-H358癌細胞株及びNCI-H2122癌細胞株では、KRAS G12C阻害剤(化合物A;AMG510;MRTX849)とT-DM1又はトラスツズマブとの組み合わせ処置に関して、Loewe相乗スコアを得た。相乗スコアを独立した組み合わせ実験から得た。相乗的な組み合わせは、5以上のLoeweスコアを有すると定義されている。結果を以下の表2に示す。
【0233】
【0234】
図19A及び
図19Bの結果から、KRAS
G12C肺癌細胞株H358では、化合物A、AMG510及びMRTX849がインビトロでT-DM1との相乗的な組み合わせ活性を示すが、トラスツズマブとでは示さないことが分かる。
【0235】
表2の結果から、KRASG12C肺癌細胞株NCI-H358及びNCI-H2122では、化合物A、AMG510及びMRTX849がインビトロで、T-DM1との相乗的な組み合わせ活性を示すことが分かる。
【0236】
そのため、実施例4の結果(
図19A;表2)から、KRAS G12C阻害剤(化合物A;AMG510;MRTX849)を使用するKRAS G12C阻害により、インビトロで、HER2発現肺癌細胞株における抗HER2抗体-薬物コンジュゲート(T-DM1)の抗腫瘍効果が増強されることが実証されている。
【0237】
上記の本明細書は、当業者が実施形態を実施することを可能にするために十分であると見なされる。上記の説明及び実施例は、特定の実施形態を詳細に説明し、本発明者らによって企図される最良の態様を説明する。しかしながら、上記の記載がどの程度詳細に文章で記述されているかに関わらず、実施形態は、多くの方法で実行することが可能であり、特許請求の範囲は、その任意の均等物を含むことを理解されたい。
【0238】
配列表のフリーテキスト
配列番号1 - 抗HER2抗体の重鎖のアミノ鎖配列
配列番号2 - 抗HER2抗体の軽鎖のアミノ鎖配列
配列番号3 - 重鎖CDRH1のアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基26~33]
配列番号4 - 重鎖CDRH2のアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基51~58]
配列番号5 - 重鎖CDRH3のアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基97~109]
配列番号6 - 軽鎖CDRL1のアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基27~32]
配列番号7 - 軽鎖CDRL2のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列(SAS)[=配列番号2のアミノ酸残基50~56]
配列番号8 - 軽鎖CDRL3のアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基89~97]
配列番号9 - 重鎖可変領域のアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基1~120]
配列番号10 - 軽鎖可変領域のアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基1~107]
配列番号11 - 重鎖のアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基1~449]
【配列表】
【国際調査報告】