(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】FAP-アルファに対するヒト抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/40 20060101AFI20250128BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20250128BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250128BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250128BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250128BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250128BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250128BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250128BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250128BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C07K16/40 ZNA
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P29/00
A61P27/16
A61P29/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539285
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-08-16
(86)【国際出願番号】 CN2022143358
(87)【国際公開番号】W WO2023125796
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/143087
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524069695
【氏名又は名称】コンセプト トゥー メディシン バイオテック カンパニー, リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】524068414
【氏名又は名称】レプ バイオファーマ カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, リウ
(72)【発明者】
【氏名】ジアン, ウェンチン
(72)【発明者】
【氏名】ファン, レイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC01
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
さらに最適化されたCDR配列を有する完全ヒト抗FAPα抗体およびそれらのバリアントが提供される。これらの新たな抗体は、FAPαタンパク質に対して高い親和性を示したものであり、がんおよび炎症状態を処置するために使用され得る。本開示の一実施形態によれば、ヒト線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPα)タンパク質に対して特異性を有する抗体またはその抗原結合性断片であって、VH CDR1とVH CDR2とVH CDR3とを含む重鎖可変領域(VH)、およびVL CDR1とVL CDR2とVL CDR3とを含む軽鎖可変領域(VL)を含む、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPα)タンパク質に対して特異性を有する抗体またはその抗原結合性断片であって、VH CDR1とVH CDR2とVH CDR3とを含む重鎖可変領域(VH)、およびVL CDR1とVL CDR2とVL CDR3とを含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
前記VH CDR1が、配列番号67のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が、配列番号15~17および43~55からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が、配列番号20~23、25、59および60からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が、配列番号68のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が、配列番号31のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が、配列番号69のアミノ酸配列を含む、
抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項2】
前記VH CDR1が、配列番号67のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が、配列番号15および43~48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が、配列番号20、59および60からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が、配列番号68のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が、配列番号31のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が、配列番号69のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項3】
前記VH CDR1が、配列番号11のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が、配列番号15および43~48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が、配列番号20、59および60からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が、配列番号27のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が、配列番号31のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が、配列番号34、61および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項4】
前記VHが、配列番号1のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項5】
前記VH CDR1が、配列番号67のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が、配列番号16および49~54からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が、配列番号21のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が、配列番号68のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が、配列番号31のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が、配列番号69のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項6】
前記VH CDR1が、配列番号12のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が、配列番号16および49~54からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が、配列番号21のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が、配列番号28のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が、配列番号31のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が、配列番号35、63および64からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、
請求項5に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項7】
前記VHが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項8】
前記VH CDR1が、配列番号67のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が、配列番号17または55のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が、配列番号22のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が、配列番号68のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が、配列番号31のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が、配列番号69のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項9】
前記VH CDR1が、配列番号12のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が、配列番号17または55のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が、配列番号22のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が、配列番号27のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が、配列番号31のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が、配列番号34、61および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、
請求項8に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項10】
前記VHが、配列番号5のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項11】
前記VH CDR1が、配列番号67のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が、配列番号17または55のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が、配列番号23のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が、配列番号68のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が、配列番号31のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が、配列番号69のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項12】
前記VH CDR1が、配列番号12のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が、配列番号17または55のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が、配列番号23のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が、配列番号27のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が、配列番号31のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が、配列番号36、65および66からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、
請求項11に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項13】
前記VHが、配列番号7のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項14】
前記VH CDR1が、配列番号67のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が、配列番号17または55のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が、配列番号25のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が、配列番号68のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が、配列番号31のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が、配列番号69のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項15】
前記VH CDR1が、配列番号12のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が、配列番号17または55のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が、配列番号25のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が、配列番号27のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が、配列番号31のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が、配列番号34、61および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、
請求項14に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項16】
前記VHが、配列番号9のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項17】
二価Fab抗体であるか、またはF(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、FvおよびscFvからなる群から選択される断片である、請求項1から16のいずれか一項に記載の抗体またはその断片。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の抗原結合性断片と、FAPαではない標的抗原に対して結合特異性を有する1つまたは複数の抗体または抗原結合性断片とを含む、多重特異性抗体。
【請求項19】
請求項1から17のいずれか一項に記載の抗原結合性断片と、膜貫通ドメインと、共刺激ドメインと、CD3ζ細胞内ドメインとを含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項20】
請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または請求項19に記載のCARをコードする、1つまたは複数のポリヌクレオチド。
【請求項21】
1つまたは複数のmRNAである、請求項20に記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
前記mRNAが、化学的に改変されている、請求項21に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
請求項20に記載のポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項24】
請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または請求項19に記載のCARと、薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
【請求項25】
がんを処置することを必要とする患者におけるがんを処置する方法であって、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または請求項19に記載のCARの有効量を前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項26】
がんを処置するための医薬の調製のための、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または請求項19に記載のCARの使用。
【請求項27】
炎症状態を処置することを必要とする患者における炎症状態を処置する方法であって、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片の有効量を前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項28】
炎症状態を処置するための医薬の調製のための、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片の使用。
【請求項29】
前記炎症状態が、リウマチ性鼻炎(RA)と関連する、請求項27に記載の方法または請求項28に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
FAPα(線維芽細胞活性化タンパク質アルファ、FAP、FAPA、またはFAPアルファ)は、がん関連線維芽細胞(CAF)に過剰発現される膜内在性ゼラチナーゼである。CAFは、腫瘍微小環境の最も顕著な成分に相当する腫瘍間質細胞である。CAFは、腫瘍発生、血管新生、転移、免疫抑制、および薬物耐性の促進をはじめとする、腫瘍成長の複数の態様をモジュレートする。FAPαは、発達、組織修復および上皮発癌の過程で線維芽細胞成長または上皮-間葉相互作用の制御に関与すると考えられる。
【0002】
FAPαは、上皮がんの反応性間質線維芽細胞、治癒している創傷の肉芽組織、ならびに骨の悪性細胞および軟部組織肉腫に選択的に発現される。胃癌、膵臓がん、乳がんおよび結腸がんなどの広範なヒトがん型にわたって、FAPαの発現は、固形腫瘍におけるより高い腫瘍悪性度およびより不良な全生存期間と相関すると報告されている。現在は、FAP阻害剤は、腫瘍PET/コンピューター断層撮影(CT)イメージング分野で広く開発されている。理論的には、FAPを標的とする薬物も、腫瘍進行および転移の阻害のための有望な治療標的として役立つ可能性がある。とはいえ、満足のいく治療効果は、これまでに観察されていない。それ故、腫瘍進行におけるFAPαの重要な役割および健康な組織におけるその稀な発現を考えれば、がんの処置におけるFAPαの治療価値をさらに調査することは、価値がある。
【0003】
加えて、RA(関節リウマチ)線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)におけるFAPαの高度な発現は、細胞外基質の高度な増殖および破壊を伴うFLSの浸潤性表現型に関連することが、観察された。それ故、FAPαを、FLSの破壊力を阻害するための治療標的と見なすことができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本開示は、様々な実施形態で、ヒトFAPαタンパク質に特異的な完全ヒト抗体および抗原結合性断片を提供する。実験的試験は、これらの新たに同定された抗体がヒトFAPαタンパク質に強力にかつ特異的に結合することができることを示す。加えて、それらの大多数は、細胞表面に発現されるFAPαタンパク質に対する強力な親和性を保持し、FAPα発現に関連する疾患の処置に好適に使用され得る。
【0005】
本開示の一実施形態によれば、ヒト線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPα)タンパク質に対して特異性を有する抗体またはその抗原結合性断片であって、VH CDR1とVH CDR2とVH CDR3とを含む重鎖可変領域(VH)、およびVL CDR1とVL CDR2とVL CDR3とを含む軽鎖可変領域(VL)を含む、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。
【0006】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号67のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号15~17および43~55からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号20~23、25、59および60からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号68のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号69のアミノ酸配列を含む。
【0007】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号67のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号15および43~48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号20、59および60からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号68のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号69のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号11のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号15および43~48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号20、59および60からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号27のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号34、61および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0008】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号67のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号16および49~54からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号21のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号68のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号69のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号16および49~54からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号21のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号28のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号35、63および64からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0009】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号67のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号17または55のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号22のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号68のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号69のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号17または55のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号22のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号27のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号34、61および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号67のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号17または55のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号23のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号68のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号69のアミノ酸配列を含む。
【0011】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号17または55のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号23のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号27のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号36、65および66からなる群から選択されるミノ酸配列を含む。
【0012】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号67のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号17または55のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号25のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号68のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号69のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号17または55のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号25のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号27のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号34、61および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
本開示の抗原結合性断片と、FAPαではない標的抗原に対して結合特異性を有する1つまたは複数の抗体または抗原結合性断片とを含む、多重特異性抗体も提供される。
【0014】
別の実施形態では、本開示の抗原結合性断片と、膜貫通ドメインと、共刺激ドメインと、CD3ζ細胞内ドメインとを含む、キメラ抗原受容体(CAR)も提供される。
【0015】
本開示の抗体もしくはその抗原結合性断片またはCARをコードするポリヌクレオチドも提供される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、必要に応じて化学的に改変されている、mRNAである。
【0016】
本開示の抗体またはその抗原結合性断片を用いる、がんおよび炎症状態を処置するための方法および使用も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、試験した全ての抗体の、ヒトおよびマウスFAPαタンパク質との、ELISA結合活性を示す。
【0018】
【
図2】
図2は、I38およびJ59を除いて、試験した抗体が、CHO-K1-hFAPα細胞上のFAPαタンパク質に高い親和性で結合したことを示す。
【0019】
【
図3-1】
図3は、試験した抗体各々についてのBiacore動態試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
定義
用語「1つの(a)」または「1つの(an)」実体は、その実体の1つまたは複数を指し、例えば、「1つの抗体(an antibody)」は、1つまたは複数の抗体を表すと理解されることに留意されたい。したがって、用語「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたは複数(one or more)」および「少なくとも1つ(at least one)」は、本明細書では同義で使用され得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「抗体」または「抗原結合性断片」は、抗原を特異的に認識し、それに結合する、ポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。抗体は、全抗体およびその任意の抗原結合性断片または一本鎖であり得る。したがって、用語「抗体」は、抗原に結合する生物活性を有する免疫グロブリン分子の少なくとも一部分を含む分子を含有する、任意のタンパク質またはペプチドを含む。そのようなものの例としては、重鎖もしくは軽鎖またはそのリガンド結合部分の相補性決定領域(CDR)、重鎖または軽鎖可変領域、重鎖または軽鎖定常領域、フレームワーク(FR)領域、あるいはその任意の部分、あるいは結合タンパク質の少なくとも一部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
用語「抗体断片」または「抗原結合性断片」は、本明細書で使用される場合、抗体の一部分、例えば、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどである。構造に関係なく、抗体断片は、無傷抗体により認識される同じ抗原と結合する。用語「抗体断片」は、アプタマー、スピーゲルアイゼン、およびダイアボディを含む。用語「抗体断片」は、特定の抗原に結合して複合体を形成することにより抗体のように動作する、任意の合成のまたは遺伝子操作されたタンパク質も含む。
【0023】
抗体という用語は、生化学的に区別され得るポリペプチドの様々な広範なクラスを包含する。重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として、一部はこれらの中のサブクラス(例えば、γ1~γ4)として、分類されることは、当業者には理解されるであろう。それは、それぞれIgG、IgM、IgA、IgGまたはIgEのような抗体の「クラス」を決定するこの鎖の性質である。
【0024】
免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5などは、十分に特徴付けられており、機能の特化をもたらすことが公知である。これらのクラスおよびアイソタイプの各々についての改変バージョンは、本開示に鑑みて当業者には容易に識別可能であり、したがって、本開示の範囲内である。全ての免疫グロブリンクラスは、明らかに本開示の範囲内であり、以下の論述は、一般に、免疫グロブリン分子のIgGクラスに関することになる。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量おおよそ23,000ダルトンの2つの同一の軽鎖ポリペプチド、および分子量53,000~70,000ダルトンの2つの同一の重鎖ポリペプチドを含む。4本の鎖は、典型的に、ジスルフィド結合により「Y」形状に連結されており、軽鎖が、「Y」の口で始まって可変領域まで続いて重鎖を両側から挟んでいる。
【0025】
本開示の抗体、その抗原結合ポリペプチド、バリアントまたは誘導体は、ポリクローナル、モノクローナル、多重特異性、ヒト、ヒト化、霊長類化またはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合性断片、例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VKまたはVHドメインを含む断片、Fab発現ライブラリーにより生成される断片、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書で開示される抗体に対する抗Id抗体を含む)を含むが、これらに限定されない。本開示の免疫グロブリンまたは抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスのものであり得る。
抗FAPα抗体
【0026】
別記実験例で実証されるように、本発明者らは、全てがヒトFAPαタンパク質に対して高い結合親和性を有するものである、完全ヒト抗FAPα抗体G14、G52、I30、I37、I38、J40およびJ59(表1)を生成することができた。さらに、それらのうちの少なくとも5つ、G14、G52、I30、I37およびJ40は、細胞表面FAPαに対する優れた親和性を保持し、治療応用にとって好適な分子になった。さらなる実験は、抗体の全てが、FAPα上の、ベンチマーク抗FAPα抗体と同じエピトープを標的とすることを実証する。興味深いことに、これらの抗体は、高度に相同なVH CDR1および全VL CDR配列を共有する。
【0027】
本開示の一実施形態によれば、抗体またはその抗原結合性断片が提供される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトFAPαタンパク質に対して結合特性を有する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、VH CDR1と、VH CDR2と、VH CDR3とを含む重鎖可変領域(VH)、およびVL CDR1と、VL CDR2と、VL CDR3とを含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0028】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号67のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号15~17および39~47からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号20~23、25および51からなる群から選択されるのアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号68のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号69のアミノ酸配列を含む。
【0029】
表1Cに示されているように、配列番号67は、SYAMXの配列を有し、この配列中のXは、HまたはSである。配列番号68は、RASQGX1X2SWLAの配列を有し、この配列中、X1は、IまたはVであり、X2は、GまたはSである。配列番号69は、QQAX1X2FPX3Tの配列を有し、この配列中、X1は、NまたはWであり、X2は、AまたはSであり、X3は、L、PまたはVである。
【0030】
一部の実施形態では、抗体G14に由来する、抗体または抗原結合性断片が提供される。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号67のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号15および43~48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号20および51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号68のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号69のアミノ酸配列を含む。
【0031】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号11のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号15のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は、配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号27のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は、配列番号34のアミノ酸配列を含む。
【0032】
一部の実施形態では、CDRの1つまたは複数は、PTM(翻訳後改変)リスク回避されている。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号11のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号15および43~48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号20、59および60からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号27のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号34、61および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0033】
一部の実施形態では、VHは、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、または配列番号1に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%の配列同一性を有し、さらに配列番号1のVH CDRもしくはそれのPTM再リスク化バージョン(re-risked version)を保持する、配列を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、または配列番号2に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%の配列同一性を有し、さらに配列番号2のVL CDRまたはそれのPTM再リスク化バージョンを保持する、配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0034】
したがって、一部の実施形態では、G14と同様、FAPα上の同じエピトープに結合する抗体および抗原結合性断片も提供される。したがって、一部の実施形態では、FAPαへの結合に関してG14と競合する、抗体および抗原結合性断片も提供される。
【0035】
一部の実施形態では、抗体G52に由来する、抗体または抗原結合性断片が提供される。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号67のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号16および49~54からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号21のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号68のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号69のアミノ酸配列を含む。
【0036】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号16のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は、配列番号21からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号28のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は、配列番号35のアミノ酸配列を含む。
【0037】
一部の実施形態では、CDRの1つまたは複数は、PTM(翻訳後改変)リスク回避されている。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号16および49~54からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号21からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号28のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号35、63および64からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0038】
一部の実施形態では、VHは、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、または配列番号3に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%の配列同一性を有し、さらに配列番号3のVH CDRもしくはそれのPTM再リスク化バージョン(re-risked version)を保持する、配列を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号4のアミノ酸配列を含むか、または配列番号4に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%の配列同一性を有し、さらに配列番号4のVL CDRまたはそれのPTM再リスク化バージョンを保持する、配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号3のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。
【0039】
したがって、一部の実施形態では、G52と同じ、FAPα上のエピトープに結合する抗体および抗原結合性断片も提供される。したがって、一部の実施形態では、FAPαへの結合に関してG52と競合する、抗体および抗原結合性断片も提供される。
【0040】
一部の実施形態では、抗体I30に由来する、抗体または抗原結合性断片が提供される。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号67のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号17および55からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号22のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号68のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号69のアミノ酸配列を含む。
【0041】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号17のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は、配列番号22からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号27のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は、配列番号34のアミノ酸配列を含む。
【0042】
一部の実施形態では、CDRの1つまたは複数は、PTM(翻訳後改変)リスク回避されている。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号17または55のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号22からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号27のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号34、61および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0043】
一部の実施形態では、VHは、配列番号5のアミノ酸配列を含むか、または配列番号5に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%の配列同一性を有し、さらに配列番号5のVH CDRもしくはそれのPTM再リスク化バージョン(re-risked version)を保持する、配列を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、または配列番号6に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%の配列同一性を有し、さらに配列番号6のVL CDRまたはそれのPTM再リスク化バージョンを保持する、配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号5のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0044】
したがって、一部の実施形態では、I30と同じ、FAPα上のエピトープに結合する抗体および抗原結合性断片も提供される。したがって、一部の実施形態では、FAPαへの結合に関してI30と競合する、抗体および抗原結合性断片も提供される。
【0045】
一部の実施形態では、抗体I37に由来する、抗体または抗原結合性断片が提供される。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号67のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号17および55からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号23のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号68のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号69のアミノ酸配列を含む。
【0046】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号17のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は、配列番号23からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号27のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は、配列番号36のアミノ酸配列を含む。
【0047】
一部の実施形態では、CDRの1つまたは複数は、PTM(翻訳後改変)リスク回避されている。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号17または55のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号23からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号27のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号36、65および66からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0048】
一部の実施形態では、VHは、配列番号7のアミノ酸配列を含むか、または配列番号7に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%の配列同一性を有し、さらに配列番号7のVH CDRもしくはそれのPTM再リスク化バージョン(re-risked version)を保持する、配列を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号8のアミノ酸配列を含むか、または配列番号8に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%の配列同一性を有し、さらに配列番号8のVL CDRまたはそれのPTM再リスク化バージョンを保持する、配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号7のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0049】
したがって、一部の実施形態では、I37と同じ、FAPα上のエピトープに結合する抗体および抗原結合性断片も提供される。したがって、一部の実施形態では、FAPαへの結合に関してI37と競合する、抗体および抗原結合性断片も提供される。
【0050】
一部の実施形態では、抗体J40に由来する、抗体または抗原結合性断片が提供される。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号67のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号17および55からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号25のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号68のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号69のアミノ酸配列を含む。
【0051】
一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は、配列番号17のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は、配列番号25からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、VL CDR1は、配列番号27のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は、配列番号34のアミノ酸配列を含む。
【0052】
一部の実施形態では、CDRの1つまたは複数は、PTM(翻訳後改変)リスク回避されている。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号17または55のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号25からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号27のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号31のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号34、61および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0053】
一部の実施形態では、VHは、配列番号9のアミノ酸配列を含むか、または配列番号9に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%の配列同一性を有し、さらに配列番号9のVH CDRもしくはそれのPTM再リスク化バージョン(re-risked version)を保持する、配列を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号10のアミノ酸配列を含むか、または配列番号10に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%の配列同一性を有し、さらに配列番号10のVL CDRまたはそれのPTM再リスク化バージョンを保持する、配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号9のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0054】
したがって、一部の実施形態では、J40と同じ、FAPα上のエピトープに結合する抗体および抗原結合性断片も提供される。したがって、一部の実施形態では、FAPαへの結合に関してJ40と競合する、抗体および抗原結合性断片も提供される。
【0055】
一部の実施形態では、抗体I38に由来する、抗体または抗原結合性断片が提供される。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号13のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号18のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号24のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号29のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号32のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号37のアミノ酸配列を含む。
【0056】
一部の実施形態では、VHは、配列番号39のアミノ酸配列を含むか、または配列番号39に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%の配列同一性を有し、さらに配列番号39のVH CDRもしくはそれのPTM再リスク化バージョン(re-risked version)を保持する、配列を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号40のアミノ酸配列を含むか、または配列番号40に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%の配列同一性を有し、さらに配列番号40のVL CDRまたはそれのPTM再リスク化バージョンを保持する、配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号39のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号40のアミノ酸配列を含む。
【0057】
したがって、一部の実施形態では、I38と同じ、FAPα上のエピトープに結合する抗体および抗原結合性断片も提供される。したがって、一部の実施形態では、FAPαへの結合に関してI38と競合する、抗体および抗原結合性断片も提供される。
【0058】
一部の実施形態では、抗体J59に由来する、抗体または抗原結合性断片が提供される。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号14のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号19のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号26のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号30のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号33のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号38のアミノ酸配列を含む。
【0059】
一部の実施形態では、CDRの1つまたは複数は、PTM(翻訳後改変)リスク回避されている。一部の実施形態では、VH CDR1は、配列番号14のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は、配列番号19および56~58からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VH CDR3は、配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;VL CDR1は、配列番号30のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は、配列番号33のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は、配列番号38のアミノ酸配列を含む。
【0060】
一部の実施形態では、VHは、配列番号41のアミノ酸配列を含むか、または配列番号41に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%の配列同一性を有し、さらに配列番号41のVH CDRもしくはそれのPTM再リスク化バージョン(re-risked version)を保持する、配列を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号42のアミノ酸配列を含むか、または配列番号42に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%の配列同一性を有し、さらに配列番号42のVL CDRまたはそれのPTM再リスク化バージョンを保持する、配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号41のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号42のアミノ酸配列を含む。
【0061】
したがって、一部の実施形態では、J59と同様、FAPα上の同じエピトープに結合する抗体および抗原結合性断片も提供される。したがって、一部の実施形態では、FAPαへの結合に関してJ59と競合する、抗体および抗原結合性断片も提供される。
【0062】
一部の実施形態では、1つ、2つまたは3つのアミノ酸置換、欠失および/または付加を有する、本開示のCDR配列に由来するCDR配列を含む、抗体および抗原結合性断片も提供される。
多機能性分子
【0063】
FAPαに特異的な抗体または抗原結合性断片、例えば、本明細書で開示されるものと、第2の抗原に対して特異性を有する1つまたは複数の抗体または抗原結合性断片とを含む、多機能性分子。
【0064】
一部の実施形態では、第2の抗原は、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、食細胞、ナチュラルキラー細胞、好酸球、好塩基球およびマスト細胞などの、免疫細胞上に発現されるタンパク質である。
【0065】
一部の実施形態では、第2の抗原は、CD3、CD47、PD1、PD-L1、LAG3、TIM3、CTLA4、VISTA、CSFR1、A2AR、CD73、CD39、CD40、CEA、HER2、CMET、4-1BB、OX40、SIRPA、CD16、CD28、ICOS、CTLA4、BTLA、TIGIT、HVEM、CD27、VEGFR、またはVEGFに対するものである。
【0066】
異なる形式の二重特異性抗体も提供される。一部の実施形態では、抗FAPα断片および第2の断片の各々は、各々独立して、Fab断片、一本鎖可変断片(scFv)、または単一ドメイン抗体から選択される。一部の実施形態では、二重特異性抗体は、Fc断片をさらに含む。
【0067】
単に抗体を含むものでも抗原結合性断片を含むものでもない、二機能性分子も提供される。腫瘍抗原標的化分子として、FAPαに特異的な抗体または抗原結合性断片、例えば、本明細書に記載されるものなどを、免疫サイトカインまたはリガンドと、必要に応じてペプチドリンカーを介して、化合させることができる。連結される免疫サイトカインまたはリガンドとしては、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、GM-CSF、TNF-α、CD40L、OX40L、CD27L、CD30L、4-1BBL、LIGHTおよびGITRLが挙げられるが、これらに限定されない。そのような二機能性分子は、免役チェックポイント遮断効果と腫瘍部位局所免疫調節を併せ持つことができる。
キメラ抗原受容体
【0068】
一実施形態では、本開示の抗体またはその断片を標的化ユニットとして含む、キメラ抗原受容体(CAR)も提供される。一部の実施形態では、CARは、本開示の抗体またはその断片と、膜貫通ドメインと、共刺激ドメインと、CD3ε細胞内ドメインとを含む。
【0069】
膜貫通ドメインは、抗体または断片を含む細胞外ドメインに、必要に応じてヒンジドメインを介して、融合されるように設計され得る。それは、同様に、共刺激ドメインなどの細胞内ドメインに融合され得る。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、共刺激ドメインの天然の膜貫通領域(例えば、共刺激ドメインとして利用されるCD28Tもしくは4-IBBのTM領域)またはヒンジ領域の天然の膜貫通ドメイン(例えば、ヒンジドメインとして利用されるCD8アルファまたはCD28TのTM領域)を含み得る。
【0070】
一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、細胞膜を貫通する、しかし細胞の細胞質へとおよび/または細胞外空間へと伸びる、配列を含み得る。例えば、膜貫通のものは、細胞の細胞質および/または細胞外空間へ伸びる1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多くのアミノ酸をそれ自体がさらに含み得る、膜を貫通する配列を含み得る。したがって、膜貫通ドメインは、膜を貫通する領域を含み、その上、膜自体の内または外面を超えて伸びるアミノ酸をさらに含むことができ、それでもやはり、このような配列は、「膜貫通ドメイン」であると見なされ得る。
【0071】
一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、短いリンカーを介して細胞質ドメインに融合している。必要に応じて、短いペプチドまたはポリペプチドリンカー、好ましくは、長さ2アミノ酸~10アミノ酸の間のものは、膜貫通ドメインとキメラ受容体の近位細胞質シグナル伝達ドメインとの連結を形成し得る。グリシン-セリンダブレット(GS)、グリシン-セリン-グリシントリプレット(GSG)、またはアラニン-アラニン-アラニントリプレット(AAA)は、好適なリンカーになる。
【0072】
一部の実施形態では、CARは、さらに、共刺激ドメインを含む。一部の実施形態では、共刺激ドメインは、膜貫通ドメインと活性化ドメインの間に位置する。共刺激ドメインの例としては、CD2、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD4、CD7、CD8a、CD8、CD11a(ITGAL)、CD11b(ITGAM)、CD11c(ITGAX)、CD11d(ITGAD)、CD18(ITGB2)、CD19(B4)、CD27(T FRSF7)、CD28、CD28T、CD29(ITGB1)、CD30(TNFRSF8)、CD40(TNFRSF5)、CD48(SLAMF2)、CD49a(ITGA1)、CD49d(ITGA4)、CD49f(ITGA6)、CD66a(CEACAM1)、CD66b(CEACAM8)、CD66c(CEACAM6)、CD66d(CEACAM3)、CD66e(CEACAM5)、CD69(CLEC2)、CD79A(B細胞抗原受容体複合体関連アルファ鎖)、CD79B(B細胞抗原受容体複合体関連ベータ鎖)、CD84(SLAMF5)、CD96(Tactile)、CD100(SEMA4D)、CD103(ITGAE)、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD158A(KIR2DL1)、CD158B1(KIR2DL2)、CD158B2(KIR2DL3)、CD158C(KIR3DP1)、CD158D(KIRDL4)、CD158F1(KIR2DL5A)、CD158F2(KIR2DL5B)、CD158K(KTR3DL2)、CD160(BY55)、CD162(SELPLG)、CD226(DNAM1)、CD229(SLAMF3)、CD244(SLAMF4)、CD247(CD3-ゼータ)、CD258(LIGHT)、CD268(BAFFR)、CD270(T FSF14)、CD272(BTLA)、CD276(B7-H3)、CD279(PD-1)、CD314(KG2D)、CD319(SLAMF7)、CD335(K-p46)、CD336(K-p44)、CD337(K-p30)、CD352(SLAMF6)、CD353(SLAMF8)、CD355(CRTAM)、CD357(TNFRSF 18)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、LFA-1(CD 1 1a/CD 18)、KG2C、DAP-10、ICAM-1、Kp80(KLRF1)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、LFA-1、SLAMF9、LAT、GADS(GrpL)、SLP-76(LCP2)、PAG1/CBP、CD83リガンド、Fcガンマ受容体、MHCクラス1分子、MHCクラス2分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリンタンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、活性化NK細胞受容体、Tollリガンド受容体、およびこれらの断片または組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0073】
一部の実施形態では、CARの細胞質部分は、シグナル伝達/活性化ドメインも含む。一実施形態では、シグナル伝達/活性化ドメインは、CD3ζドメインであるか、またはCD3ζドメインに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
ポリヌクレオチド、mRNA、および抗体を発現させるまたは調製する方法
【0074】
本開示は、本開示の抗体、そのバリアントもしくは誘導体、またはCARをコードする、ポリヌクレオチドまたは核酸分子も提供する。本開示のポリヌクレオチドは、抗原結合ポリペプチド、そのバリアントまたは誘導体の重鎖および軽鎖可変領域全体を同じポリヌクレオチド分子上にまたは別々のポリヌクレオチド分子上にコードし得る。加えて、本開示のポリヌクレオチドは、抗原結合ポリペプチド、そのバリアントまたは誘導体の重鎖および軽鎖可変領域の部分を同じポリヌクレオチド分子上にまたは別々のポリヌクレオチド分子上にコードし得る。
【0075】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、mRNA分子である。一部の実施形態では、mRNAを、抗体またはその断片を発現させるための標的細胞に導入することができる。
【0076】
mRNAを様々な公知の方法のいずれに従って合成してもよい。例えば、mRNAをin vitro転写(IVT)によって合成することができる。手短に述べると、典型的にはIVTは、プロモーター、リボヌクレオチド三リン酸のプール、DTTとマグネシウムイオンとを含み得るバッファー系、および適切なRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7またはSP6 RNAポリメラーゼ)、DNAse I、ピロホスファターゼ、および/またはRNAse阻害剤を含有する、直鎖状または環状の鋳型DNAを用いて行われる。厳密な条件は、具体的な応用に応じて変わる。
【0077】
一部の実施形態では、抗体をコードするmRNAの調製のために、鋳型DNAは、in vitroで転写される。好適な鋳型DNAは、典型的には、in vitro転写のためのプロモーター、例えば、T3、T7またはSP6プロモーター、続いて、所望の抗体をコードする(例えば、重鎖または軽鎖をコードする)mRNAについての所望のヌクレオチド配列、および終結シグナルを有する。
【0078】
標準的な方法を使用して、所望の抗体をコードする(例えば、重鎖または軽鎖をコードする)mRNA配列を決定し、鋳型DNAに組み込むことができる。例えば、所望のアミノ酸配列(例えば、所望の重鎖または軽鎖配列)から出発して、仮想逆翻訳が縮重遺伝子コードに基づいて行われる。次いで、最適化アルゴリズムを好適なコドンの選択に使用することができる。典型的には、G/C含有量を、一方ではできる限り高いG/C含有量を達成するように、他方ではコドン使用頻度に従ってtRNAの頻度をできる限りよく考慮して、最適化することができる。最適化されたRNA配列を確立し、例えば適切な表示デバイスを活用して、表示し、元の(野生型)配列と比較することができる。二次構造を解析して、安定化および不安定化特性または、それぞれ、RNAの領域を算出することもできる。
【0079】
mRNAを未改変または改変mRNAとして合成することができる。典型的には、mRNAは、安定性を向上させるように改変される。mRNAの改変は、例えば、RNAのヌクレオチドの改変を含み得る。したがって、改変mRNAは、例えば、骨格改変、糖改変または塩基改変を含み得る。一部の実施形態では、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖および軽鎖をコードするmRNA)を天然に存在するヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体(改変ヌクレオチド)から合成することができ、天然に存在するヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体(改変ヌクレオチド)には、プリン(アデニン(A)、グアニン(G))またはピリミジン(チミン(T)、シトシン(C)、ウラシル))、ならびに改変ヌクレオチドとして、プリンおよびピリミジンの類似体または誘導体、例えば、1-メチル-アデニン、2-メチル-アデニン、2-メチルチオ-N-6-イソペンテニル-アデニン、N6-メチル-アデニン、N6-イソペンテニル-アデニン、2-チオ-シトシン、3-メチル-シトシン、4-アセチル-シトシン、5-メチル-シトシン、2,6-ジアミノプリン、1-メチル-グアニン、2-メチル-グアニン、2,2-ジメチル-グアニン、7-メチル-グアニン、イノシン、1-メチル-イノシン、シュードウラシル(5-ウラシル)、ジヒドロ-ウラシル、2-チオ-ウラシル、4-チオ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5-(カルボキシヒドロキシメチル)-ウラシル、5-フルオロ-ウラシル、5-ブロモ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウラシル、5-メチル-2-チオ-ウラシル、5-メチル-ウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、5-メチルアミノメチル-ウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5’-メトキシカルボニルメチル-ウラシル、5-メトキシ-ウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、1-メチル-シュードウラシル、キューオシン(queosine)、13-D-マンノシル-キューオシン、ワイブトキソシン、ならびにホスホロアミデート、ホスホロチオエート、ペプチドヌクレオチド、メチルホスホネート、7-デアザグアノシン、5-メチルシトシンおよびイノシンなどが含まれるが、これらに限定されない。このような類似体の調製は、当業者には、例えば、米国特許第4,373,071号、同第4,401,796号、同第4,415,732号、同第4,458,066号、同第4,500,707号、同第4,668,777号、同第4,973,679号、同第5,047,524号、同第5,132,418号、同第5,153,319号、同第5,262,530号および同第5,700,642号から公知であり、これらの開示は、その全範囲が参照によりここに含まれる。
【0080】
一部の実施形態では、mRNA(例えば、重鎖および軽鎖をコードするmRNA)は、RNA骨格改変を含有し得る。典型的には、骨格改変は、RNAに含有されるヌクレオチドの骨格のリン酸が化学的に改変される、改変である。例示的な骨格改変は、典型的には、メチルホスホン酸基、メチルホスホロアミド酸基、ホスホロアミド酸基、ホスホロチオ酸(例えば、シチジン5’-O-(1-チオリン酸))基、ボラノリン酸基、正荷電グアニジニウム基などからなる群からの改変を含むがこれらに限定されず、これは、ホスホジエステル結合が他のアニオン性基、カチオン性基または中性基により置き換えられることを意味する。
【0081】
一部の実施形態では、mRNA(例えば、重鎖および軽鎖をコードするmRNA)は、糖改変を含有し得る。典型的な糖改変は、それが含有するヌクレオチドの糖の化学的改変であり、2’-デオキシ-2’-フルオロ-オリゴリボヌクレオチド(2’-フルオロ-2’-デオキシシチジン5’-三リン酸、2’-フルオロ-2’-デオキシウリジン5’-三リン酸)、2’-デオキシ-2’-デアミン-オリゴリボヌクレオチド(2’-アミノ-2’-デオキシシチジン5’-三リン酸、2’-アミノ-2’-デオキシウリジン5’-三リン酸)、2’-O-アルキルオリゴリボヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-C-アルキルオリゴリボヌクレオチド(2’-O-メチルシチジン5’-三リン酸、2’-メチルウリジン5’-三リン酸)、2’-C-アルキルオリゴリボヌクレオチド、およびこれらの異性体(2’-アラシチジン5’-三リン酸、2’-アラウリジン5’-三リン酸)、またはアジド三リン酸(2’-アジド-2’-デオキシシチジン5’-三リン酸、2’-アジド-2’-デオキシウリジン5’-三リン酸)からなる群から選択される糖改変を含むが、これらに限定されない。
【0082】
一部の実施形態では、mRNA(例えば、重鎖および軽鎖をコードするmRNA)は、ヌクレオチドの塩基の改変(塩基改変)を含有し得る。塩基改変を含有する改変ヌクレオチドは、塩基改変ヌクレオチドとも呼ばれる。そのような塩基改変ヌクレオチドの例としては、2-アミノ-6-クロロプリンリボシド5’-三リン酸、2-アミノアデノシン5’-三リン酸、2-チオシチジン5’-三リン酸、2-チオウリジン5’-三リン酸、4-チオウリジン5’-三リン酸、5-アミノアリルシチジン5’-三リン酸、5-アミノアリルウリジン5’-三リン酸、5-ブロモシチジン5’-三リン酸、5-ブロモウリジン5’-三リン酸、5-ヨードシチジン5’-三リン酸、5-ヨードウリジン5’-三リン酸、5-メチルシチジン5’-三リン酸、5-メチルウリジン5’-三リン酸、6-アザシチジン5’-三リン酸、6-アザウリジン5’-三リン酸、6-クロロプリンリボシド5’-三リン酸、7-デアザアデノシン5’-三リン酸、7-デアザグアノシン5’-三リン酸、8-アザアデノシン5’-三リン酸、8-アジドアデノシン5’-三リン酸、ベンゾイミダゾールリボシド5’-三リン酸、N1-メチルアデノシン5’-三リン酸、N1-メチルグアノシン5’-三リン酸、N6-メチルアデノシン5’-三リン酸、O6-メチルグアノシン5’-三リン酸、シュードウリジン5’-三リン酸、ピューロマイシン5’-三リン酸またはキサントシン5’-三リン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
典型的には、mRNA合成は、N末端(5’)側終端への「キャップ」、およびC末端(3’)側終端への「尾部」の付加を含む。キャップの存在は、大部分の真核細胞に見られるヌクレアーゼに対する耐性を持たせる上で重要である。「尾部」の存在は、mRNAをエキソヌクレアーゼ分解から保護するのに役立つ。
【0084】
それ故、一部の実施形態では、mRNA(例えば、重鎖および軽鎖をコードするmRNA)は、5’キャップ構造を含む。5’キャップは、典型的には次のように付加される:先ず、RNA末端ホスファターゼが、5’ヌクレオチドから末端リン酸基の1つを除去し、2つの末端リン酸を残す;次いで、グアノシン三リン酸(GTP)がグアニリルトランスフェラーゼによって末端リン酸に付加され、その結果、5’5’5三リン酸結合が生じる;次いで、グアニンの7-窒素が、メチルトランスフェラーゼによってメチル化される。キャップ構造の例としては、m7G(5’)ppp(5’(A,G(5’)ppp(5)AおよびG(5)ppp(5’)Gが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
一部の実施形態では、mRNA(例えば、重鎖および軽鎖をコードするmRNA)は、3’ポリ(A)尾部構造を含む。mRNAの3’末端のポリA尾部は、典型的には、約10~300アデノシンヌクレオチド(例えば、約10~200アデノシンヌクレオチド、約10~175アデノシンヌクレオチド、約10~150アデノシンヌクレオチド、約10~125アデノシンヌクレオチド、10~100アデノシンヌクレオチド、約10~75アデノシンヌクレオチド、約20~70アデノシンヌクレオチド、または約20~60アデノシンヌクレオチド)を含む。一部の実施形態では、抗体をコードするmRNA(例えば、重鎖および軽鎖をコードするmRNA)は、3’ポリ(C)尾部構造を含む。mRNAの3’末端の好適なポリC尾部は、典型的には、約10~200シトシンヌクレオチド(例えば、約10~150シトシンヌクレオチド、約10~100シトシンヌクレオチド、約20~70シトシンヌクレオチド、約20~60シトシンヌクレオチド、または約10~40シトシンヌクレオチド)を含む。ポリC尾部は、ポリA尾部に付加され得るか、またはポリA尾部を置換し得る。
【0086】
一部の実施形態では、mRNA(例えば、重鎖および軽鎖をコードするmRNA)は、5’および/または3’非翻訳領域を含む。一部の実施形態では、5’非翻訳領域は、mRNAの安定性または翻訳に影響を与える1つまたは複数のエレメント、例えば、鉄応答エレメントを含む。一部の実施形態では、5’非翻訳領域は、長さ約50ヌクレオチド~500ヌクレオチドの間(例えば、長さ約50ヌクレオチド~400ヌクレオチドの間、長さ約50ヌクレオチド~300ヌクレオチドの間、長さ約50ヌクレオチド~200ヌクレオチドの間、または長さ約50ヌクレオチド~100ヌクレオチドの間)であり得る。
【0087】
一部の実施形態では、mRNA(例えば、重鎖および軽鎖をコードするmRNA)の5’領域は、本明細書に記載されるものなどの、シグナルペプチドをコードする配列を含む。特定の実施形態では、ヒト成長ホルモン(hGH)に由来するシグナルペプチドが5’領域に組み込まれる。典型的には、シグナルペプチドをコードする配列は、N末端の重鎖または軽鎖をコードする配列に直接または間接的に連結される。
【0088】
本技術を使用して、当技術分野で公知の任意の抗体、および標準的な方法を使用して所望の抗原に対して産生され得る抗体を、送達することができる。本発明を使用して、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体混合物もしくはカクテル、ヒトもしくはヒト化抗体、キメラ抗体、または二重特異性抗体を送達することができる。
【0089】
抗体を作製する方法は、当技術分野において周知であり、本明細書に記載される。ある特定の実施形態では、本開示の抗原結合ポリペプチドの可変領域と定常領域の両方が、完全にヒトのものである。完全ヒト抗体は、当技術分野において記載されている技法を使用して、および本明細書に記載されているように作製することができる。例えば、特定の抗原に対する完全ヒト抗体を、抗原投与に応答してそのような抗体を産生するように改変されているが内在性遺伝子座が無効にされているトランスジェニック動物に抗原を投与することによって、調製することができる。そのような抗体を作製するために使用され得る例示的な技法は、米国特許第6,150,584号、同第6,458,592号、同第6,420,140号に記載されており、これらの参考特許文献は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
処置および使用
【0090】
本明細書に記載されるように、本開示の抗体、バリアント、誘導体、または抗体-薬物コンジュゲートを、ある特定の処置および診断方法において使用することができる。
【0091】
本開示は、本開示の抗体、断片、または抗体-薬物コンジュゲートを、本明細書に記載される障害または状態の1つまたは複数を処置するために患者、例えば、動物、哺乳動物およびヒトに投与することを含む、抗体に基づく治療に、さらに関する。本開示の治療化合物は、本開示の抗体(本明細書に記載のそのバリアントおよび誘導体を含む)、および本開示の抗体(本明細書に記載のそのバリアントおよび誘導体を含む)をコードする核酸またはポリヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。
【0092】
本開示の抗体を使用してがんを処置または阻害することもできる。上で提供されたように、FAPαは、腫瘍細胞において、特に、肝臓、胃、膵臓、食道、卵巣および肺腫瘍において、過剰発現され得る。FAPαの阻害は、腫瘍の処置に有用であることが示されている。
【0093】
したがって、一部の実施形態では、それを必要とする患者におけるがんを処置するための方法が提供される。方法は、一実施形態では、本開示の抗体、断片、または抗体-薬物コンジュゲートの有効量を患者に投与するするステップを必然的に伴う。一部の実施形態では、患者におけるがん細胞(例えば、間質細胞)の少なくとも1つは、FAPαを過剰発現する。
【0094】
細胞療法、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法も、本開示で提供される。本開示の抗FAPα抗体を含む(または代替的に、本開示の抗FAPα抗体を発現するように操作された)CARをコードするまたはそれと接触させるベクターによって形質導入される、好適な細胞を使用することができる。したがって、そのような接触または操作によって、細胞を、処置を必要とするがん患者に導入することができる。がん患者は、本明細書で開示されるようなタイプのいずれかのがんを有し得る。細胞(例えば、T細胞)は、例えば、腫瘍浸潤Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはこれらの組合せであり得るが、それらに限定されない。
【0095】
一部の実施形態では、細胞は、がん患者彼または彼女自身から単離された。一部の実施形態では、細胞は、ドナーによりまたは細胞バンクから提供された。細胞が、がん患者から単離された場合、望ましくない免疫反応を最小限に抑えることができる。
【0096】
がんの非限定的な例としては、膀胱がん、乳がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、腎臓がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、および甲状腺がんが挙げられる。一部の実施形態では、がんは、胃がん、膵臓がん、食道がん、卵巣がんおよび肺がんのうちの1つまたは複数である。
【0097】
本開示の抗体もしくはバリアント、またはそれらの誘導体によって処置、予防、診断および/または予後判定され得る、細胞生存期間の増加に関連するさらなる疾患または状態としては、悪性病変および関連障害、例えば、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病を含む))および慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病)を含む)、真性赤血球増加症、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、重鎖病、および固形腫瘍の、進行および/または転移が挙げられるがこれらに限定されず、固形腫瘍には、肉腫および癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーマ、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞種、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0098】
FAPαは、発達、組織修復および上皮発癌の過程で線維芽細胞成長または上皮-間葉相互作用の制御に関与する。RA(関節リウマチ)線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)の高度な発現は、細胞外基質の高度な増殖および破壊を伴うFLSの浸潤性表現型に関連することが、観察された。それ故、FAPαを、FLSの破壊力を阻害するための治療標的と見なすことができる。
【0099】
炎症状態または自己免疫疾患を処置するための方法および使用も提供される。一部の実施形態では、本開示される抗体、断片および組成物により処置される炎症性疾患または状態は、アルツハイマー病、アジソン病、アテローム性動脈硬化症、強直性脊椎炎、関節炎、変形性関節症(OA)、関節リウマチ(RA)、乾癬性関節炎(PA)、強直性脊椎炎、喘息、アテローム性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、クローン病、大腸炎、皮膚炎、憩質炎、線維筋痛症、肝炎、過敏性腸症候群(IBS)、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematous)(SLE)、腎炎、パーキンソン病(PD)、血管炎、および潰瘍性大腸炎のうちの1つまたは複数を含む。
【0100】
一部の実施形態では、本開示される抗体、断片および組成物により処置される自己免疫疾患または状態は、円形脱毛症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、皮膚筋炎、糖尿病(1型)、セリアック病、自己免疫性若年性特発性関節炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、重力筋無力症、自己免疫性心筋炎、多発性硬化症、天疱瘡/類天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、関節リウマチ、強皮症/全身性硬化症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、自己免疫性ぶどう膜炎、白斑、および多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)のうちの1つまたは複数を含む。
【0101】
関節リウマチ(RA)は、主として関節に影響する(affect)長期自己免疫障害である。その結果として、典型的には、関節が熱を持ち、腫脹し、痛くなる。疼痛およびこわばりは、多くの場合、休息後に悪化する。通常、手首および手が冒され、体の両側の同じ関節が典型的に冒される。この疾患は、体の他の部位に影響することもある。関節リウマチの原因は不明であるが、遺伝因子と環境因子の組合せが関係すると考えられている。根本的な機序は、関節を攻撃する身体の免疫系が関与する。この結果として、関節包の炎症および肥厚が生じる。処置の目標は、疼痛を軽減すること、炎症を低減すること、および人の全体的な機能を改善することである。症状に役立つように鎮痛剤、ステロイド、およびNSAIDが頻繁に使用される。疾患の進行を遅らせようとして、ヒドロキシクロロキンおよびメトトレキサートなどの、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)と呼ばれる薬物群が使用され得る。
【0102】
いずれの特定の患者についても具体的な投薬量および処置レジメンは、使用される特定の抗体、そのバリアントまたは誘導体、患者の年齢、体重、総体的な健康、性別および食事、ならびに投与の回数、排泄率、薬物の組合せ、ならびに処置される特定の疾患の重症度をはじめとする、様々な因子に依存することになる。医療介護者によるそのような因子の判断は、当技術分野における通常技能の範囲内である。量は、処置すべき個々の患者、投与経路、製剤のタイプ、使用される化合物の特徴、疾患の重症度、および所望される効果にも依存することになる。使用される量を当技術分野において周知の薬理学および薬物動態の原則によって決定することができる。
【0103】
抗体、断片、または抗体-薬物コンジュゲートの投与方法は、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口経路を含むが、これらに限定されない。抗原結合ポリペプチドまたは組成物を、任意の適便な経路により、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)からの吸収により、投与することができ、他の生物活性薬剤とともに投与することができる。したがって、本開示の抗原結合ポリペプチドを含有する医薬組成物を、経口投与、直腸投与、非経口投与、大槽内(intracistemally)投与、膣内投与、腹腔内投与、局所的に(粉末、軟膏、滴剤もしくは経皮パッチとして)投与、頬側投与、または口腔噴霧剤もしく
は点鼻薬として投与することができる。
【0104】
用語「非経口」は、本明細書で使用される場合、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内注射および注入を含む、投与方法を指す。
【0105】
投与は、全身または局所のものであり得る。加えて、本開示の抗体を、脳室内および髄腔内注射を含む任意の好適な経路により、中枢神経系に導入することが望ましいことがあり、脳室内注射を、例えば、オマヤ貯留槽などの貯留槽に取り付けられた、脳室内カテーテルによって容易にすることができる。経肺投与も、例えば、吸入器またはネブライザー、およびエアロゾル化剤を含有する製剤を使用することにより、利用することができる。
【0106】
本開示の抗原結合ポリペプチドまたは組成物を、処置を必要とするエリアに局所投与することが望ましいことがあり、これは、例として、限定としてではなく、外科手術中の局所注入、外科手術後の創傷包帯法の、例えばそれと併せての、局所的適用により、注射により、カテーテルによって、坐薬によって、または留置剤によって達成することができ、前記留置剤は、膜、例えばシラスティック(sialastic)膜、または繊維を含む、多孔質、無孔質またはゼラチン質材料のものである。好ましくは、本開示の、抗体を含む、タンパク質を投与する場合、タンパク質が吸収されない材料を使用するように心掛けなければならない。
【0107】
炎症性、免疫または悪性疾患、障害または状態の処置、阻害および予防において有効であろう、本開示の抗体、断片、または抗体-薬物コンジュゲートの量を、標準的な臨床技法により決定することができる。加えて、in vitroアッセイを、最適な投薬量範囲の同定を助けるために、必要に応じて利用することができる。製剤に利用されることになる正確な用量は、投与経路、および疾患、障害または状態の重篤性にも依存することになり、実施者の判断および各患者の状況に応じて決定されるべきである。有効用量をin
vitroまたは動物モデル試験系から導出された用量応答曲線から外挿することができる。
【0108】
一般的な提案として、本開示の抗体、断片、または抗体-薬物コンジュゲートの患者に投与される投薬量は、典型的に、患者の体重のkg当たり0.001mg~100mg、患者の体重のkg当たり0.01mg~20mgの間、または患者の体重のkg当たり0.5mg~10mgである。一般に、ヒト抗体は、外来ポリペプチドへの免疫応答に起因してヒトの体内で他の動物種からの抗体より長い半減期を有する。したがって、ヒト抗体のより少ない投薬量、およびより低頻度の投与が、多くの場合、可能である。さらに、本開示の抗体の投薬量および投薬頻度を、例えば脂質化などの改変により抗体の取込みおよび組織透過性(例えば、脳への)を増強することによって、低減させることができる。
【0109】
追加の実施形態では、本開示の組成物は、サイトカインと組み合わせて投与される。本開示の組成物とともに投与され得るサイトカインとしては、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、抗CD40、CD40L、およびTNF-αが挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
追加の実施形態では、本開示の組成物は、例えば放射線療法などの、他の治療または予防レジメンと組み合わせて投与される。
組成物
【0111】
本開示は、医薬組成物も提供する。そのような組成物は、抗体、断片、または抗体-薬物コンジュゲートの有効量と、許容される担体とを含む。一部の実施形態では、組成物は、第2の抗がん剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)をさらに含む。
【0112】
具体的な実施形態では、用語「薬学的に許容される」とは、動物における、さらに特にヒトにおける使用について、連邦もしくは州政府の監督機関により承認された、または米国薬局方もしくは他の一般に認知されている薬局方に収載されている、という意味である。さらに、「薬学的に許容される担体」は、一般に、任意のタイプの、非毒性固体、半固体もしくは液体フィラー、希釈剤、カプセル化材または製剤助剤であろう。
【0113】
用語「担体」は、それを用いて治療薬が投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、滅菌液、例えば、水および油であり得、この油には、石油、動物、植物または合成起源のもの、例えば、落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などが含まれる。水は、医薬組成物が静脈内投与されるときに好ましい担体である。生理食塩水、ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液も、液体担体として、特に、注射可能溶液に、利用することができる。好適な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、所望される場合には、少量の湿潤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩もしくはリン酸塩も含有し得る。抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;および浸透張力の調整のための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースも、想定される。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末、徐放性製剤などの形態をとり得る。旧来の結合剤および担体、例えば、トリグリセリドを用いて、組成物を坐薬として製剤化することができる。経口製剤は、標準的な担体、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含み得る。好適な医薬品担体の例は、参照により本明細書に組み込まれる、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。そのような組成物は、好ましくは精製された形態での、抗原結合ポリペプチドの治療有効量を、患者への適正投与のための形態を提供するために好適な量の担体とともに、含有することになる。製剤は、投与方法に適していなければならない。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数回投与用バイアルに封入され得る。
【0114】
ある実施形態では、組成物は、人間への静脈内投与に適応する医薬組成物として常套的手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、滅菌等張性水性緩衝液中の溶液である。必要に応じ、組成物は、可溶化剤、および注射部位の痛みを和らげるためのリグノカインなどの局所麻酔薬も含み得る。一般に、これらの成分は、別々にまたは混合されて単位剤形で、のどちらかで、例えば、活性薬剤の量を示すアンプルまたはサッシェなどの密閉シールされている容器の中の乾いた凍結粉末または無水濃縮物として供給される。組成物を注入により投与すべき場合、それは、医薬品グレードの滅菌水または食塩水が入っている注入ボトルを用いて分注され得る。組成物が注射により投与される場合、投与の前に成分を混合することができるように、注射用滅菌水または食塩水のアンプルが提供され得る。
【0115】
本開示の化合物を中性または塩形態として製剤化することができる。薬学的に許容される塩は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどのアニオンとで形成されるもの、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどのカチオンとで形成されるものを含む。
【実施例】
【0116】
(実施例1)
完全ヒトナイーブファージライブラリーパニングおよびスクリーニング
この実施例は、ヒトナイーブファージライブラリーからの完全ヒト抗FAPα抗体についてスクリーニングした。
【0117】
抗原:ヒトFAPα-Hisタグ(Sino biological)。
【0118】
完全ヒトナイーブファージライブラリーの調製:ファージライブラリーを、健康なヒト対象のPBMCから増幅した抗体遺伝子断片からなるファージミドベクターを使用することにより構築した。ライブラリー形式は、Fabファージライブラリーである。ライブラリーサイズは、5.2×1010であった。
【0119】
ヒトFAPαタンパク質に対するファージライブラリー固相パニングおよび溶液パニング。溶液パニングのために、ファージライブラリーに対して、先ず、BSAをコーティングしたストレプトアビジンDynabeadsとともにインキュベートすることによるネガティブスクリーニングを行った。得られたファージをビオチン化FAPα-Hisタグタンパク質とともにインキュベートし、Kingfihser磁気ビーズシステムにより洗浄した。結合剤をトリプシンにより溶離した。固相パニングのために、ファージライブラリーに対して、先ず、5%PBSMによるネガティブブロッキングを行った。得られたファージをFAPα-Hisタグタンパク質とともにインキュベートし、PBST+PBSにより洗浄した。結合剤をトリプシンにより溶離した。
【0120】
固相パニングを溶液パニングと組み合わせて潜在的な結合剤を包括的にスクリーニングした。溶離したファージを、その後、抗原に結合するそれらの力価について試験し、E.coliと共培養した。5ラウンドのパニングおよびスクリーニングがあった。産出物4および産出物5の力価が有意に増加された。
【0121】
単一クローンを産出物4および5から慎重に選び、次いで、96ディープウェルプレートにおいて培養した。培養上清をIgG濃縮および抗原結合力価評価に付した。合計390の陽性クローンを選択し、配列決定に付した。配列解析後、176の特有の配列を同定した。これらのクローン全てをELISA結合解析に付した。上位7つの配列を同定した。下の表を参照されたい。それらの配列を下の表1Aで提供する。
表1A. 候補抗体配列
【表1A-1】
【表1A-2】
【0122】
これらの抗体のCDR配列(Kabatシステムによる)を下の表1Bに収載する。翻訳後改変(PTM)の潜在的な部位を生物学的に等価のものに変異させたものである(例えば、NG→NA、NG→QG、NS→NA、NS→QS、DG→DAおよびDS→DA)それらのバリアントも示す。これらの置換は、抗体の生物学的活性を保持すると同時にPTMを防止して製造を容易にすると想定される。
表1B. CDR配列
【表1B-1】
【表1B-2】
【0123】
これらの抗体の一部、特に、G14、G52、I30、I37およびJ40は、高度に相同なVH CDR1およびVL CDR配列を有する。これらのCDR配列は交換可能であると想定される。それらのアラインメントおよびコンセンサス配列を表1Cに示す。
表1C. コンセンサスCDR
【表1C-1】
【表1C-2】
【0124】
(実施例2)
ヒトおよびマウスFAPα抗原に対する結合活性
この実施例は、ヒトおよびマウスFAPαタンパク質に対する抗体の結合活性を試験した。
2.1 ヒトFAPαへのELISA結合
【0125】
クローンの結合活性を評価するために、試験した抗体をELISA試験に付した。
【0126】
手短に述べると、マイクロタイタープレートを、PBS中の0.5ug/mlのヒトFAPα-Hisタンパク質、100μl/ウェルで、4℃で一晩、コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1%BSAでブロッキングした。1ug/mlで出発する試験した抗体の3倍希釈物を各ウェルに添加し、1時間、37℃でインキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、抗ヒトIgG(H&L)(ヤギ)抗体・ペルオキシダーゼコンジュゲートとともに、30分間、37℃でインキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、分光光度計によりOD 450nmで解析した。
図1Aおよび表2に示すように、G14、G52、I30、I37、I38、J40およびJ59クローンの全てがヒトFAPαに高い親和性で結合した。RocheからのFAP-4B9クローンは、陽性対照としての役割を果たし、これをFAPα-BMKと表示した。
2.1 マウスFAPαへのELISA結合
【0127】
クローンの結合活性を評価するために、試験した抗体をELISA試験に付した。
【0128】
手短に述べると、マイクロタイタープレートを、PBS中の0.5ug/mlのマウスFAPα-Hisタンパク質、100μl/ウェルで、4℃で一晩、コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1%BSAでブロッキングした。1ug/mlで出発する試験した抗体の3倍希釈物を各ウェルに添加し、1時間、37℃でインキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、抗ヒトIgG(H&L)(ヤギ)抗体・ペルオキシダーゼコンジュゲートとともに、30分間、37℃でインキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、分光光度計によりOD 450nmで解析した。
図1Bおよび表2に示すように、I37およびFAPα-BMKのみがマウスFAPαに高い親和性で結合した。
表2. ヒトおよびマウスFAPαに対する結合活性
【表2】
2.2 ヒトFAPαへの細胞ベースの結合
【0129】
ヒトFAPαへの細胞ベースの結合特性を評価するために、試験した抗体をCHO-K1-hFAPαへのそれらの結合についてFACSにより解析した。各ウェルにおいて合計数1×10
5のCHO-K1-hFAPα細胞を、FACS緩衝液中、3μg/mlから出発して4倍段階希釈した抗体とともに30分間、4℃でインキュベートした。FACS緩衝液による洗浄後、PEコンジュゲート抗ヒトIgG抗体を各ウェルに添加し、4℃で30分間、インキュベートした。洗浄後、PEのMFIをMACSQuant Analyzer 16により評価した。
図2および表3に示すように、G14、I30、I37およびJ40抗体は、陽性参照である「FAPα BMK抗体」と同等の結合能力を示したが、I38およびJ59クローンは、結合活性を劇的に失った。
表3. CHO-K1-hFAPα細胞に対する結合活性
【表3】
2.3 ヒトFAPαについてのタンパク質完全動力学
【0130】
組換えFAPαタンパク質(ヒトFAPα-hisタグ)への試験した抗体の結合を、捕捉法を使用してBiacoreで試験した。mAbを、プロテインAチップを使用して捕捉した。ヒトFAPα-hisタグタンパク質の段階希釈物を、捕捉された抗体上に3分間、30μl/分の流速で注入した。抗原を、800秒間、解離させた。全ての実験を、Biacore T200で行った。データ解析は、Biacore T200評価ソフトウェアを使用して行った。結果を
図3および下の表4に示す。
表4: Biacoreにより測定した完全動力学
【表4】
【0131】
(実施例3)
競合ELISAによるエピトープビニング
競合ELISAを行って、ヒトFAPαに対する結合エピトープに基づいてFAPα mAbを分類した。
【0132】
手短に述べると、マイクロタイタープレートを、PBS中の0.5μg/mlのヒトFAPαタンパク質、100μl/ウェルで、4℃で一晩、コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1%BSAでブロッキングした。キメラ抗体の段階希釈物、およびビオチンをコンジュゲートした参照mAbを、各ウェルに添加し、1時間、RTでインキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、ストレプトアビジン-HRPとともに15分間、RTでインキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、分光光度計によりOD 450nmで解析した。参照mAb(ベンチマーク、または「BMK」)との競合能力に応じて、試験した全てのFAPα mAbは、表5に示すように同様のエピトープに結合する。
表5: ELISAによるエピトープビニング試験。
【表5】
* * *
【0133】
本開示は、記載した特定の実施形態によって範囲が限定されることはなく、これらの実施形態は、本開示の個々の態様の単一の実例として意図したものであり、機能的に等価であるあらゆる組成物または方法が本開示の範囲内である。本開示の主旨および範囲を逸脱することなく、本開示の方法および組成物に様々な改変および変形を加えることができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、本開示の改変形態および変形形態を、それらが添付の請求項およびそれらの均等物の範囲内に入ることを条件に、包含する。
【0134】
本明細書で言及した全ての公表文献および特許出願は、個々の公表文献または特許出願各々が参照により組み込まれると具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】