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特表2025-503542植物発育段階を計算するための圃場規模の作物フェノロジーモデル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】植物発育段階を計算するための圃場規模の作物フェノロジーモデル
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20250128BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539516
(86)(22)【出願日】2022-12-30
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 US2022054335
(87)【国際公開番号】W WO2023129708
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】63/295,542
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルッソ,ジョセフ,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】グリム,ジェフリー,ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】シュレーゲル,ジェイ,ウェズリー
(72)【発明者】
【氏名】スペンサー,ジェフリー,トーマス
【テーマコード(参考)】
5L050
【Fターム(参考)】
5L050CC01
(57)【要約】
作物の植物発育段階をシミュレート/計算するための圃場規模の作物フェノロジーモデルのシステム及び方法に関する本開示の実施形態。圃場規模の作物フェノロジーモデルは、栽培期における植物発育段階をシミュレートするために使用される。特に予測として、植物の段階の知識は、化学物質を適用する時期及び他の作物に応じた管理の決定に役立つ。作物フェノロジーモデルは、ユーザの圃場位置、植え付け日、及び品種情報と共に、ロバストな圃場規模の意思決定ツールとして機能する。特定の実施形態では、フェノロジーモデルは、3つの異なるシナリオ、すなわち、過去、栽培期前、又は栽培期中のシナリオの下で実行され得る。フェノロジーモデルは、様々な気象データ入力のブレンドを使用して、ユーザの所望のシナリオに基づくフェノロジーの結果を生成し得る。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物の植物発育段階をシミュレートする方法であって、前記方法が、
ユーザのデバイス、データベース、又はセンサからの入力を受信することであって、前記入力が、前記作物の種類及び前記作物の栽培される地理的位置を含む、受信することと、
前記地理的位置の気候指数モデルに基づいて、前記作物の植え付け日を計算することと、
前記植え付け日及び土壌温度モデルに基づいて、前記作物の出芽日を計算することと、
前記植え付け日、前記出芽日、及び度日積算モデルに基づいて、前記作物の前記植物発育段階を成長プロファイルとしてシミュレートすることと、
前記成長プロファイルを、
表示のための前記ユーザのデバイス、
更なるモデリングのため、若しくは前記作物に適用するための推薦される薬剤を生成するための別個のコンピューティングデバイス、又は
前記作物を収穫又は処理するためのツールを動作させるように適合されたデバイス、
のうちの1つ以上に送信することを含む、方法。
【請求項2】
前記入力が、前記作物の前記植え付け日を指定しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作物の前記種類の過去の植え付け日を気候指数の関数としてモデリングすることによって、前記気候指数モデルを生成することであって、気候指数が、気候学的な冬の1日の最高気温及び気候学的な冬の1日の最低気温に基づいて計算される、生成することと、
前記地理的位置の気候指数を計算することであって、前記作物の前記植え付け日が、前記決定された気候指数に基づいて前記気候指数モデルから計算される、計算することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記作物の前記種類の過去の植え付け日を気候指数の関数としてモデリングすることによって、前記気候指数モデルを生成することであって、気候指数が、北半球では10月1日と3月31日との間の冬期間を使用し、南半球では4月1日と9月30日との間の冬期間を使用して、前記気候学的な冬の1日の最高気温(WTMPXH)(単位℃)から、前記気候学的な冬の1日の最低気温(WTMPNH)(単位℃)を差し引いたものを、前記気候学的な冬の1日の最高気温(WTMPXH)(単位℃)で除算したものとして計算される、生成することと、
前記地理的位置の気候指数を計算することであって、前記作物の前記植え付け日が、前記決定された気候指数に基づいて前記気候指数モデルから計算される、計算することを更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記作物の前記種類の播種深度に少なくとも部分的に基づいて、前記土壌温度モデルを生成することを更に含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記出芽日を計算することが、前記土壌温度モデルに基づいて、前記作物の前記植え付け日から、前記作物の予定成長度に到達するまでの日数を推定することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記地理的地域に関連する気候学的データに基づいて、前記作物の前記種類の出芽と成熟との間の積算度日の目標数を満たすために必要な日数を予測することによって、前記度日積算モデルを生成することであって、積算度日の前記目標数が、過去の作物成熟データに基づいて決定される、生成することと、
前記予測された日数及び前記出芽日に基づいて、前記作物の成熟日を計算することを更に含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記度日積算モデルを生成することが、前記作物の前記種類が冬作物に対応すると判定したことに応じて、冬の休眠期間を考慮することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記作物の処理に使用可能な農業機械を制御する直接又は間接制御パラメータとして、前記成長プロファイルを少なくとも部分的に使用することを更に含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
作物の植物発育段階をシミュレートするシステムであって、前記システムが、
メモリデバイスと、
前記メモリデバイスに動作可能に結合されたプロセッシングデバイス、
を備え、
前記プロセッシングデバイスが、
ユーザのデバイス、データベース、又はセンサからの入力を受信し、前記入力が、前記作物の種類及び前記作物の栽培される地理的位置を含み、
前記地理的位置の気候指数モデルに基づいて、前記作物の植え付け日を計算し、
前記植え付け日及び土壌温度モデルに基づいて、前記作物の出芽日を計算し、
前記植え付け日、前記出芽日、及び度日積算モデルに基づいて、前記作物の前記植物発育段階を成長プロファイルとしてシミュレートし、
前記成長プロファイルを、
表示のための前記ユーザのデバイス、
更なるモデリングのため、若しくは前記作物に適用するための推薦される薬剤を生成するための別個のコンピューティングデバイス、又は
前記作物を収穫又は処理するためのツールを動作させるように適合されたデバイス、
のうちの1つ以上に送信する、
ように構成される、システム。
【請求項11】
前記入力が、前記作物の前記植え付け日を指定しない、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッシングデバイスが、
前記作物の前記種類の過去の植え付け日を気候指数の関数としてモデリングすることによって、前記気候指数モデルを生成し、気候指数が、気候学的な冬の1日の最高気温及び気候学的な冬の1日の最低気温に基づいて計算され、
前記地理的位置の気候指数を計算し、前記作物の前記植え付け日が、前記決定された気候指数に基づいて前記気候指数モデルから計算される
ように更に構成される、請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッシングデバイスが、
前記作物の前記種類の過去の植え付け日を気候指数の関数としてモデリングすることによって、前記気候指数モデルを生成し、気候指数が、北半球では10月1日と3月31日との間の冬期間を使用し、南半球では4月1日と9月30日との間の冬期間を使用して、前記気候学的な冬の1日の最高気温(WTMPXH)(単位℃)から、前記気候学的な冬の1日の最低気温(WTMPNH)(単位℃)を差し引いたものを、前記気候学的な冬の1日の最高気温(WTMPXH)(単位℃)で除算したものとして計算され、
前記地理的位置の気候指数を計算し、前記作物の前記植え付け日が、前記決定された気候指数に基づいて前記気候指数モデルから計算される
ように更に構成される、請求項10~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッシングデバイスが、前記作物の前記種類の播種深度に少なくとも部分的に基づいて、前記土壌温度モデルを生成するように更に構成される、請求項10~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記出芽日を計算することが、前記土壌温度モデルに基づいて、前記作物の前記植え付け日から、前記作物の予定成長度に到達するまでの日数を推定することを含む、請求項10~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッシングデバイスが、
前記地理的地域に関連する気候学的データに基づいて、前記作物の前記種類の出芽と成熟との間の積算度日の目標数を満たすために必要な日数を予測することによって、前記度日積算モデルを生成し、積算度日の前記目標数が、過去の作物成熟データに基づいて決定され、
前記予測された日数及び前記出芽日に基づいて、前記作物の成熟日を計算するように更に構成される、請求項10~15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記度日積算モデルを生成することが、前記作物の前記種類が冬作物に対応すると判定したことに応じて、冬の休眠期間を考慮することを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記プロセッシングデバイスが、前記作物の処理に使用可能な農業機械を制御する直接又は間接制御パラメータとして、前記成長プロファイルを少なくとも部分的に使用するように更に構成される、請求項10~17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
プロセッシングデバイスによって実行されると、前記プロセッシングデバイスに請求項1に記載の方法を実行させる命令を符号化した非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
請求項1に記載の方法を実行するように構成されたオンボードプロセッシングデバイスを備える、作物を収穫又は処理するためのツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月31日に出願された米国仮特許出願第63/295,542号の優先権の利益を主張するものであり、同米国仮特許出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、作物発育をモデリングする計算技法に関する。
【背景技術】
【0003】
農業では、所定の農産物の生産量すなわち収量を最大化することが望ましい。作物の発育及び収量をシミュレートする技法が数多く存在し、これらはいくつかのユーザ指定のパラメータを必要とすることが多い。ユーザ指定のパラメータ又は種子製造業者指定のパラメータが限られる状況では、モデル精度が低下することがある。更に、モデルは、植え付け条件の変動性、並びに気候及び気象パターンの変化から生じる基礎的前提の変化を考慮していないことが多い。
【0004】
ここで、本開示のより十分な理解を助けるために、添付の図面を参照する。添付の図面では、同様の要素は同様の数字を用いて参照される。これらの図面は、本開示を限定するものとして解釈されるべきではなく、例示のみを意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本開示の実施形態による、例示的なシステムアーキテクチャを示す。
【0006】
図2】本開示の実施形態による、例示的なコンピュータシステムを示すブロック図である。
【0007】
図3】本開示の実施形態による、作物フェノロジーモデルを示すグラフである。
【0008】
図4】本開示の実施形態による、圃場レベルの作物フェノロジーモデリングを示すフロー図である。
【0009】
図5】50%コホートのトウモロコシ植え付け日と冬の気候指数との間の関係を示すプロットである。
【0010】
図6】本開示の実施形態による、圃場レベルの作物フェノロジーモデルにおいて使用される様々な式の入力及び出力を示すフロー図である。
【0011】
図7】本開示の実施形態による、植物発育段階をシミュレートする方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、植物発育段階をシミュレート及びモデリングするための圃場規模の作物フェノロジーモデルの実施形態を説明する。圃場規模の作物フェノロジーモデル(本明細書では「作物フェノロジーモデル」又は「フェノロジーモデル」とも呼ぶ)が、栽培期における植物発育段階をシミュレートするために使用される。特に予測として、植物の段階の知識は、化学物質を適用する時期及び他の作物に応じた管理の決定に役立つ。作物フェノロジーモデルは、ユーザの圃場位置、植え付け日、及び品種情報(すなわち、1つ以上の作物の種類)と共に、ロバストな圃場規模の意思決定ツールとして機能する。特定の実施形態では、フェノロジーモデルは、3つの異なるシナリオ、すなわち、過去、栽培期前、又は栽培期中のシナリオの下で実行され得る。フェノロジーモデルは、様々な気象データ入力(過去、予測、長期予測、及び気候学的なもの)のブレンドを使用して、ユーザの所望のシナリオに基づいてフェノロジーの結果を生成し得る。
【0013】
フェノロジーモデルの特定の実施形態は、栽培期における植物の発育及び成長をシミュレートするために、日数ではなく熱量を利用する。植物には、その日々の生理学的プロセスを行うための熱的要件がある。これらの要件は気温によって定義され得る。植物は、気温の上限と下限との間で生存し、機能することができ、これらの限界の間のどこかで最適に成長する。作物の種類ごとに、その気温よりも高い気温で栽培期において測定可能なバイオマス蓄積量が観測されるという固有の基準気温がある。この基準気温から1日の平均気温を差し引いたものが、植物の発育及び成長のための熱量の尺度とされる。この減算の結果は、「成長度日」又は「成長度単位」と呼ばれる。作物の発育及び成長を追跡するために、1日の成長度日が栽培期にわたって積算される。
【0014】
特定の実施形態では、フェノロジーモデルは、植え付け段階と収穫段階との間の気候学的に導出された積算度日を使用する。しかしながら、出芽前の作物は、気温ではなく土壌温度に応じて成長する。したがって、本明細書で説明される実施形態は、作物の種類固有の係数を用いた1つ以上の一般式を利用し、この一般式は、作物の発芽及び出芽をよりよくシミュレートするために播種深度における土壌温度を使用する。土壌温度出芽関数を使用することにより、度日積算手法単独の場合と比べてより正確な所定の栽培期におけるシミュレーションが可能となる。
【0015】
特に、出芽は、鞘葉の先端が培地(例えば、土壌又は土壌代替物など)の表面を突破した場合に発生すると考えられ得る。例えば、出芽は、BBCH段階09に到達した時に発生すると言える。
【0016】
特定の実施形態では、出芽と開花との間、及び開花と成熟との間の両方で、度日に対して調整が行われる。出芽と開花との間における積算度日に対する調整は、光周期及び日長を考慮する。この調整は、冬季に休眠を経る種類の作物にとって特に重要である。開花と成熟と間における積算度日に対する調整は、等結果性を考慮する。本明細書で使用される場合、「等結果性」とは、開花の段階までに作物の発育が大幅に遅延したことに起因して登熟期間が早まる(度日が不十分である)ことを指す。成長度日及びその調整の導出については、後で詳述する。休眠及び等結果性の調整を利用することにより、植物の発育に関連する生理学的プロセスをより現実的にシミュレートすることができる。
【0017】
特定の実施形態は、気候学的フレームワークを利用する。多くの国では、作物の品種及びその発育特性に関するデータがほとんど又はまったくない。したがって、本明細書における実施形態は、作物の成長段階の過去の観測値及び気候学的な気温の記録を利用するフレームワークを企図するものである。このフレームワークは、気候学的指数に基づいて主要な生物季節学的段階の日付を計算するために作物の種類固有の係数を用いた一般関数をもたらす。これにより、成熟に必要な日数に関する度日の要件を、世界中のどこでも気候学的に決定することができる。気候学的フレームワークは、ユーザが提供した品種の成熟までの日数の妥当性を評価するための重要なレファレンスを提供し、更に、作物が栽培期において最適な発育を達成しているか否かの判定を可能にする。
【0018】
生物季節学的段階の積算度日への割り当ては、作物成長度によって間接的に実現される。作物成長度は、後でより詳しく論じるように、積算度日を段階間の度日の総数で除算することにより計算される。作物成長度は、積算度日を成熟までの度日の合計に対して正規化することによって、作物フェノロジースキーム(例えば、BBCH生物季節学的スキーム)を成長度日に関連付ける必要性を軽減する。
【0019】
本開示に関連して使用される「薬剤」などの用語は、限定されるものではないが、除草剤、防カビ剤、殺虫剤、殺ダニ剤、軟体動物駆除剤、殺線虫剤、殺鼠剤、忌避剤、殺菌剤、殺生物剤、毒性緩和剤、補助剤、植物生長調節剤、肥料、ウレアーゼ阻害剤、脱窒阻害剤、硝酸化成抑制剤、バイオ除草剤、バイオ防カビ剤、バイオ殺虫剤、バイオ殺ダニ剤、バイオ軟体動物駆除剤、バイオ殺線虫剤、バイオ殺鼠剤、バイオ忌避剤、バイオ殺菌剤、生物学的殺生物剤、生物学的毒性緩和剤、生物学的補助剤、生物学的植物生長調節剤、生物学的ウレアーゼ阻害剤、生物学的脱窒阻害剤、若しくは生物学的硝酸化成抑制剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む、作物を処理するために使用可能な任意の物質、材料、又は微生物を指す。
【0020】
一般的システム実施形態
ここでは、本明細書で説明される実施形態の例示的な実施態様を説明する。図1は、本開示の実施形態による、例示的なシステムアーキテクチャ100を示している。システムアーキテクチャ100は、データストア110と、ユーザデバイス120A~120Zと、モデリングサーバ130とを含み、システムアーキテクチャ100の各デバイスはネットワーク105を介して通信可能に結合される。システムアーキテクチャ100のデバイスのうちの1つ以上が、図2に関して後述する一般化されたコンピュータシステム200を使用して実施され得る。システムアーキテクチャ100の各デバイスは単なる例示であり、更なるデータストア、ユーザデバイス、モデリングサーバ、及びネットワークが存在してもよいことを理解されたい。
【0021】
一実施形態では、ネットワーク105は、パブリックネットワーク(例えば、インターネット)、プライベートネットワーク(例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN))、有線ネットワーク(例えば、イーサネットネットワーク)、無線ネットワーク(例えば、802.11ネットワーク又はWi-Fiネットワーク)、セルラーネットワーク(例えば、ロングタームエボリューション(LTE)ネットワーク)、ルータ、ハブ、スイッチ、サーバコンピュータ、及び/又はそれらの組み合わせを含み得る。ネットワーク105は単一のネットワークとして示されているが、ネットワーク105は、スタンドアロン型ネットワークとして、又は互いに協力して動作する1つ以上のネットワークを含んでもよい。ネットワーク105は、通信可能に結合されている1つ以上のデバイスの1つ以上のプロトコルを利用してもよい。ネットワーク105は、他のプロトコルに変わってもよいし、他のプロトコルからネットワークデバイスの1つ以上のプロトコルに変わってもよい。
【0022】
一実施形態では、データストア110は、短期メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ)、キャッシュ、ドライブ(例えば、ハードドライブ)、フラッシュドライブ、データベースシステム、又はデータを格納することができる別のタイプのコンポーネント若しくはデバイスのうちの1つ以上を含み得る。データストア110はまた、複数のコンピューティングデバイス(例えば、複数のサーバコンピュータ)にもわたり得る複数のストレージコンポーネント(例えば、複数のドライブ又は複数のデータベース)を含み得る。特定の実施形態では、データストア110はクラウドベースであり得る。システムアーキテクチャ100のデバイスのうちの1つ以上が、パブリックデータ及びプライベートデータを格納する自身のストレージ及び/又はデータストア110を利用し得、データストア110は、プライベートデータにセキュアなストレージを提供するように構成され得る。特定の実施形態では、データストア110は、データのバックアップ又はアーカイブの目的で使用され得る。
【0023】
ユーザデバイス120A~120Zは、パーソナルコンピュータ(PC)、ラップトップ、携帯電話、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ネットブックコンピュータなどのコンピューティングデバイスを含み得る。ユーザデバイス120A~120Zは、「クライアントデバイス」又は「モバイルデバイス」とも呼ばれ得る。個々のユーザは、ユーザデバイス120A~120Zのうちの1つ以上に関連付けられ得る(例えば、ユーザデバイス120A~120Zのうちの1つ以上を所有し得る、及び/又は動作させ得る)。ユーザデバイス120A~120Zのうちの1つ以上はまた、異なる位置にいる異なるユーザによって所有及び利用され得る。本明細書で使用される場合、「ユーザ」は一個人として表され得る。しかしながら、本開示の他の実施形態は、「ユーザ」が、1組のユーザ及び/又は自動化されたソースによって制御されるエンティティであることを包含する。例えば、会社又は政府組織におけるコミュニティとして結びついた1組の個人ユーザが、「ユーザ」と見なされ得る。
【0024】
ユーザデバイス120A~120Zは、それぞれ1つ以上のローカルデータストアを利用し得、データストアは、内部デバイス又は外部デバイスであり得、それぞれ短期メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ)、キャッシュ、ドライブ(例えば、ハードドライブ)、フラッシュドライブ、データベースシステム、又はデータを格納することができる別のタイプのコンポーネント若しくはデバイスのうちの1つ以上を含み得る。ローカルデータストアはまた、複数のコンピューティングデバイス(例えば、複数のサーバコンピュータ)にもわたり得る複数のストレージコンポーネント(例えば、複数のドライブ又は複数のデータベース)を含み得る。特定の実施形態では、ローカルデータストアは、データのバックアップ又はアーカイブの目的で使用され得る。
【0025】
ユーザデバイス120A~120Zは、ユーザインターフェース122A~122Zをそれぞれ実装し得、ユーザインターフェース122A~122Zは、それぞれのユーザデバイスが他のユーザデバイス、データストア110、及びモデリングサーバ130との間で情報を送受信することを可能にし得る。ユーザインターフェース122A~122Zのそれぞれが、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)であってもよい。例えば、ユーザインターフェース122Aは、モデリングサーバ130によって提供されるコンテンツ(例えば、ハイパーテキストマークアップ言語(HTML)ページなどのウェブページ)にアクセスし、コンテンツを読み出し、コンテンツを提示し、及び/又はコンテンツをナビゲートし得るウェブブラウザインターフェースであり得る。一実施形態では、ユーザインターフェース122Aは、ユーザがユーザデバイス120Aを使用して他のユーザデバイス、データストア110、及びモデリングサーバ130との間で情報を送受信することを可能にするスタンドアロン型アプリケーション(例えば、モバイル「アプリ」など)であってもよい。
【0026】
一実施形態では、モデリングサーバ130は、デジタルコンテンツが読み出され得る1つ以上のコンピューティングデバイス(ラックマウントサーバ、ルータコンピュータ、サーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、メインフレームコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、デスクトップコンピュータなど)、データストア(例えば、ハードディスク、メモリ、データベース)、ネットワーク、ソフトウェアコンポーネント、及び/又はハードウェアコンポーネントを含み得る。特定の実施形態では、モデリングサーバ130は、ユーザデバイス120のいずれかによってコンテンツ又はコンテンツに関連する情報を読み出し/アクセスするために利用されるサーバであり得る。特定の実施形態では、更なるモデリングサーバが存在し得る。
【0027】
特定の実施形態では、モデリングサーバ130は、様々な作物の植物発育段階を動的にシミュレートする作物フェノロジーモデリングコンポーネント140を実装し得る。作物フェノロジーモデリングコンポーネント140の機能については、図3図7に関して後でより詳細に説明する。
【0028】
図1では、データストア110、ユーザデバイス120A~120Z、及びモデリングサーバ130のそれぞれが、単一の異種の構成要素として示されているが、これらの構成要素は、単一のデバイスで一緒に実装されてもよいし、一緒に動作する複数の異なるデバイスの様々な組み合わせでネットワーク化されてもよい。特定の実施形態では、モデリングサーバ130の機能の一部又は全部が、ユーザデバイス120A~120Zのうちの1つ以上、又はモデリングサーバ130の制御下にある他のデバイスによって実行され得る。
【0029】
図2は、(例えば、本明細書で論じる方法論のうちのいずれか1つ以上をマシンに実行させるための)1セットの命令が実行され得るコンピュータシステム200の例示的な形態をしたマシンの図式表現を示している。代替的な実施形態では、マシンは、LAN、イントラネット、エクストラネット、又はインターネットにおいて他のマシンに接続され得る(例えば、ネットワーク化され得る)。マシンは、クライアントサーバネットワーク環境におけるサーバ若しくはクライアントマシンとして、又はピアツーピア(又は分散型)ネットワーク環境におけるピアマシンとして動作し得る。マシンは、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、セットトップボックス(STB)、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ウェブアプライアンス、サーバ、ネットワークルータ、スイッチ若しくはブリッジ、又はそのマシンによって取られるべき動作を指定する1セットの命令(シーケンシャル又はそれ以外)を実行することができる任意のマシンであり得る。更に、単一のマシンのみが示されているが、「マシン」という用語は、本明細書で論じる方法論のうちのいずれか1つ以上を実行する1セットの命令(又は複数セットの命令)を個別又は共同で実行するマシンの任意の集合体も含むと解釈されるものとする。コンピュータシステム200の構成要素の一部又は全部は、データストア110、ユーザデバイス120A~120Zのうちの1つ以上、及びモデリングサーバ130などのシステムアーキテクチャ100のデバイスのいずれかによって利用され得る、又はいずれかの例示であり得る。
【0030】
例示的なコンピュータシステム200は、プロセッシングデバイス(プロセッサ)202、メインメモリ204(例えば、読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、シンクロナスDRAM(SDRAM)又はラムバスDRAM(RDRAM)などのダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)など)、スタティックメモリ206(例えば、フラッシュメモリ、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)など)、及びデータストレージデバイス220を備え、これらはバス210を介して互いに通信する。
【0031】
プロセッサ202は、マイクロプロセッサ、中央処理ユニットなどの1つ以上の汎用プロセッシングデバイスを表す。より詳細には、プロセッサ202は、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、若しくは他の命令セットを実装するプロセッサ、又は命令セットの組み合わせを実装するプロセッサであってもよい。プロセッサ202はまた、ASIC、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサなどの1つ以上の専用プロセッシングデバイスであってもよい。プロセッサ202は、本明細書で論じる動作及びステップを実行するための命令226を実行するように構成される。
【0032】
コンピュータシステム200は、ネットワークインターフェースデバイス208を更に備え得る。コンピュータシステム200はまた、ビデオディスプレイデバイス212(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、陰極線管(CRT)、又はタッチスクリーン)、英数字入力デバイス214(例えば、キーボード)、カーソル制御デバイス216(例えば、マウス)、及び信号発生デバイス222(例えば、スピーカ)を備え得る。
【0033】
パワーデバイス218は、コンピュータシステム200又はその構成要素のうちの1つ以上に電力を供給するために使用されるバッテリの電力レベルを監視し得る。パワーデバイス218は、電力レベルの指示、コンピュータシステム200又はその構成要素のうちの1つ以上のシャットダウンまでの残り時間ウィンドウ、電力消費率、コンピュータシステムが外部電源又はバッテリ電力を利用しているか否かのインジケータ、及び他の電力関連情報を提供する1つ以上のインターフェースを提供し得る。特定の実施形態では、パワーデバイス218に関連する指示は、リモートでアクセス可能であり得る(例えば、ネットワーク接続を介してリモートバックアップ管理モジュールにアクセス可能であり得る)。特定の実施形態では、パワーデバイス218によって利用されるバッテリは、コンピュータシステム200のローカル又はリモートの無停電電源(UPS)であり得る。このような実施形態では、パワーデバイス218は、UPSの電力レベルに関する情報を提供し得る。
【0034】
データストレージデバイス220は、本明細書で説明される方法論又は機能のいずれか1つ以上を具現化する1つ以上のセットの命令226(例えば、ソフトウェア)が格納されたコンピュータ可読記憶媒体224を備え得る。命令226はまた、コンピュータシステム200、メインメモリ204、及びプロセッサ202によるその実行中に完全に又は少なくとも部分的にメインメモリ204内及び/又はプロセッサ202内に常駐し得る。コンピュータシステム200、メインメモリ204、及びプロセッサ202もまた、コンピュータ可読記憶媒体を備える。命令226は、更に、ネットワークインターフェースデバイス208を介してネットワーク230(例えば、ネットワーク105)を介して送受信され得る。
【0035】
一実施形態では、命令226は、図1に関して及び本開示全体を通して説明されるように、作物フェノロジーモデリングコンポーネント140のための命令を含む。例えば、作物フェノロジーモデリングコンポーネント140は、モデリングサーバ130又はユーザデバイス120A~120Zによって実施され得る。例示的な実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体224は単一の媒体であると示されているが、「コンピュータ可読記憶媒体」又は「機械可読記憶媒体」という用語は、1つ以上のセットの命令を格納する単一の媒体又は複数の媒体(例えば、集中型データベース若しくは分散型データベース、並びに/又は関連するキャッシュ及びサーバ)を含むように解釈されるべきである。「コンピュータ可読記憶媒体」又は「機械可読記憶媒体」という用語はまた、マシンによる実行のための1セットの命令を格納、符号化、又は搬送することが可能であり、本開示の方法論のうちのいずれか1つ以上をマシンに実行させる任意の一時的媒体又は非一時的媒体を含むと解釈されるものとする。したがって、「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、限定されるものではないが、ソリッドステートメモリ、光媒体、及び磁気媒体を含むと解釈されるものとする。
【0036】
フェノロジーモデル
圃場規模の作物フェノロジーモデル(本明細書では「作物フェノロジーモデル」又は「フェノロジーモデル」とも呼ぶ)が、栽培期における植物発育段階をシミュレートするために使用される。特に予測として、植物の段階の知識は、化学物質を適用する時期及び他の作物発育に応じた管理の決定に役立つ。作物フェノロジーモデルは、ユーザの圃場位置、植え付け日、及び品種情報(すなわち、1つ以上の作物の種類)と共に、ロバストな圃場規模の意思決定ツールとして機能する。特定の実施形態では、フェノロジーモデルは、3つの異なるシナリオ、すなわち、過去、栽培期前、又は栽培期中のシナリオの下で実行され得る。フェノロジーモデルは、様々な気象データ入力(過去、予測、長期予測、及び気候学)のブレンドを使用して、ユーザの所望のシナリオに基づいてフェノロジーの結果を生成し得る。
【0037】
フェノロジーモデルの特定の実施形態は、栽培期における植物の発育及び成長をシミュレートするために、植え付け後の日数ではなく温度を利用する。植物には、その日々の生理学的プロセスを行うための熱的要件がある。これらの要件は気温によって定義され得る。植物は、気温の上限と下限との間で生存し、機能することができ、これらの限界の間のどこかで最適に成長する。作物の種類ごとに、その気温よりも高い気温で栽培期において測定可能なバイオマス蓄積量が観測されるという固有の基準気温がある。この基準気温から1日の平均気温を差し引いたものが、植物の発育及び成長のための熱量の尺度とされる。この減算の結果は、「成長度日」又は「成長度単位」と呼ばれる。作物の発育及び成長を追跡するために、1日の成長度日が栽培期にわたって積算される。
【0038】
特定の実施形態では、フェノロジーモデルは、植え付け段階と収穫段階との間の気候学的に導出された積算度日を使用する。しかしながら、出芽前の作物は、気温ではなく土壌温度に応じて成長する。したがって、本明細書で説明される実施形態は、作物の種類固有の係数を用いた1つ以上の一般式を利用し、この一般式は、作物の発芽及び出芽をよりよくシミュレートするために播種深度における土壌温度を使用する。土壌温度出芽関数を使用することにより、度日積算手法単独の場合と比べてより正確な所定の栽培期におけるシミュレーションが可能となる。
【0039】
特定の実施形態では、出芽と開花との間、及び開花と成熟との間の両方で、度日に対して調整が行われる。出芽と開花との間における積算度日に対する調整は、作物の発育に対する光周期及び日長の影響を考慮する。この調整は、冬季に休眠を経る種類の作物にとって特に重要である。開花と成熟と間における積算度日に対する調整は、等結果性を考慮する。本明細書で使用される場合、「等結果性」とは、開花の段階までに作物の発育が大幅に遅延したことに起因して登熟期間が早まる(度日が不十分である)ことを指す。成長度日及びその調整の導出については、後で詳述する。光周期及び等結果性の調整を利用することにより、植物の発育に関連する生理学的プロセスをより現実的にシミュレートすることができる。
【0040】
特定の実施形態は、気候学的フレームワークを利用する。多くの国では、作物の品種及びその発育特性に関するデータがほとんど又はまったくない。したがって、本明細書における実施形態は、作物の成長段階の過去の観測値及び気候学的な気温の記録を利用するフレームワークを企図するものである。このフレームワークは、気候学的指数に基づいて主要な生物季節学的段階の日付を計算するために作物の種類固有の係数を用いた一般関数をもたらす。これにより、成熟に必要な日数に関する度日の要件を、世界中のどこでも気候学的に決定することができる。気候学的フレームワークは、ユーザが提供した品種の成熟までの日数の妥当性を評価するための重要なレファレンスを提供し、更に、作物が栽培期において最適な発育を達成しているか否かの判定に関する決定を可能にする。
【0041】
生物季節学的段階の積算度日への割り当ては、作物成長度によって間接的に実現される。作物成長度は、後でより詳しく論じるように、積算度日を段階間の度日の総数で除算することにより計算される。作物成長度は、積算度日を成熟までの度日の合計に対して正規化することによって、作物フェノロジースキーム(例えば、BBCH生物季節学的スキーム)を成長度日に関連付ける必要性を軽減する。
【0042】
1.フェノロジーモデル概説
特定の実施形態では、フェノロジーモデルは、植物成長の生物季節学的段階を動的にシミュレートする物理的決定論的モデルである。モデルは、作物の種類によってパラメータ化された一連の一般式で機能し、作物と栽培地域との両方でモデルを迅速にスケーリングすることができる。特定の実施形態では、モデルは、まず作物成長度を計算する。作物成長度の計算は、異なる生物季節学的スキームへの対応を柔軟なものにすることができる独自の手法である。植え付けと出芽との間の期間は土壌温度モデルを利用して成長度を計算し、出芽と成熟との間の期間は積算度日を利用する。成長度、積算度日、及びBBCH生物季節学的スキームへのマッピングについては、図3に関してより詳しく論じる。図4は、本開示の実施形態による、作物フェノロジーモデルの高度な概要を示すフロー図である。
【0043】
特定の実施形態では、作物成長度(CGF)が、0.0から3.0の範囲にあるように定義され、作物の成長は、3つの期間、すなわち、植え付けから作物出芽(0~1.0)、出芽から成熟(1.0~2.0)、及び成熟から収穫(2.0~3.0)に分割される。植え付けと作物出芽との間の期間において、作物成長度は、播種深度における土壌温度の5日間の移動平均を追跡する関数に依存する。土壌温度モデルは、植え付けと出芽との間の合計日数を提供する。そして、この期間の成長度は、植え付け日からの現在の日数を、出芽に到達するまでの合計日数で除算する式を使用して決定される。特定の実施形態では、出芽の日付に到達するまで、気象条件及び土壌温度が変化するにつれて、この成長度は動的に変化する。
【0044】
特定の実施形態では、まず出芽と成熟との間の成長度が、1日の季節積算度日を、その期間を定義する生物季節学的段階間の気候学的に導出された総積算度日で除算したものを使用して計算される。そして、出芽と成熟との間の作物成長度は、1.0から2.0へと段階的に増加する。
【0045】
次に、成長度を実証する例を説明する。図3に示すデータに基づけば、出芽と成熟との間に必要な積算度日の数は2400(この例では、2700から植え付けと出芽との間の積算300を差し引いたもの)である。栽培期の毎日、1日の度日が計算され、積算される。出芽の翌日に10の度日があった場合、成長度は1.0+10/2400、つまり1.0042となる(出芽と成熟との間で成長度は1.0から2.0に増加することに留意されたい)。その次の日に15の度日が発生した場合、ここでは、成長度は1+25/2400、つまり1.0104となる。
【0046】
同様に、成熟と収穫との間の期間における作物成長度が、1日の季節積算度日を、その期間を定義する生物季節学的段階間の気候学的に導出された総積算度日で除算したものを使用して計算され得る。そして、成熟と収穫との間の作物成長度は、2.0から3.0へと段階的に増加する。
【0047】
最後に、例えばBBCHコードによって列挙される生物季節学的段階は、作物成長度に関連付けられる。成長度とBBCHとの間の変換(又はマッピング)は、作物にも地域にも依存する。BBCHコードをトウモロコシの成長度にマッピングする例は、以下のとおりであり得る:
植え付けでは、BBCH0を成長度0にマッピング
発芽では、BBCH5を成長度0.5にマッピング
出芽では、BBCH9を成長度1.0にマッピング
第一葉では、BBCH11を成長度1.02にマッピング
九葉期では、BBCH19を成長度1.24にマッピング
柱頭の完全出現では、BBCH65を成長度1.55にマッピング
乳熟初期では、BBCH73を成長度1.66にマッピング
ブラックレイヤー(成熟)では、BBCH89を成長度2.0にマッピング
収穫では、BBCH99を成長度3.0にマッピング
【0048】
BBCHをデフォルトの作物フェノロジースケールとして選択したが、当業者には理解され認識されるように、他のフェノロジースケール(例えば、ISUスケール)を成長度に容易にマッピングすることもできる。
【0049】
図3は、更に、成熟までの日数(DTM)の概念を示している。本明細書で使用される場合、DTMは、作物が植え付けの日から成熟に到達するまでに必要な時間の量として日数で定義され得、気候的に正常な季節の場合に、植え付けと成熟との間の総積算度日が、成熟に関する品種固有の閾値に到達する時点を示す。DTMは、作物の種類、品種、及び栽培地域に応じて変化し、DTMは、通常、種子製造業者によって報告される。報告されない場合、DTMを過去の観測値から導出することもできる。DTMは作物の品種に必要な積算度日を決定するため、生物季節学的段階の正確なシミュレーションには正しいDTMを利用することが重要である。間違ったDTM又は不正確なDTMは、モデルがシミュレートする作物の発育が速すぎたり遅すぎたりする結果に繋がって、栽培期における処理の時期又は他の段階固有の圃場活動の計画が複雑になり得る。
【0050】
2.気候学的計算
特定の実施形態では、作物フェノロジーモデルは、作物の種類と栽培地域との両方によって迅速にスケーリングされ得、これは基礎となる気候学的バックボーンに起因し得る。大規模な地理的データセットを組み合わせることによって、長期にわたる作物固有の植え付け、出芽、成熟、及び収穫の記録と、同じ年数及び同じ規模の気象データとの間に関係を構築することができる。そのようなデータセットの例として、米国農務省内の全米農業統計局(NASS)によって提供された作物統計データセットがある。米国の州ごとに、所定の作物の植え付け日、出芽日、成熟日、及び収穫日の年次観測が公開されている。これらの日付は、最も有効な日付又は「平均的な」日付を中心とした日付の範囲又は分布として提示されている。本明細書では、平均的な日付は、実際の植え付け日のそれぞれの分布における位置づけを示すため、「50%コホート」日と呼ぶ。平均的な日付は、気象データとの関係を構築するために使用される。ドイツ気象局(DWD)も独国について同様の統計値を提供している。これらの気候学的計算は、赤道から北及び南に24度を超える緯度に対して有効であることに留意されたい。特定の実施形態では、熱帯地方に対して異なる気候学的手法が使用される。
【0051】
2.1 年率、冬の気候指数、及びジェネリック50%コホート関数
作物フェノロジーと気象データとの間の関係は、2段階で定義され得る。まず、過去の最低気温データ及び最高気温データから2つの気候学的指数が策定される。これらの指数は、世界中の気候学的環境における勾配を定義するために使用され得る。本明細書では、2つの指数を「年率」及び「冬の気候指数」と呼ぶ。1月1日と12月31日との間の期間を使用して、年率(RATIO)は、気候学的に最も暖かい1日の気温(TMPXH)(単位℃)から、気候学的に最も寒い1日の気温(TMPNH)(単位℃)を差し引いたものを、気候学的に最も暖かい1日の気温(TMPXH)(単位℃)で除算したものとして計算され得る。特定の実施形態では、気候学的に最も暖かい気温及び最も寒い気温は、それぞれ30年間の1日の最高気温及び最低気温のデータを調和フィッティングすることによって導出される。年率(RATIO)の式は以下のように定義される。
RATIO=(TMPXH-TMPNH)/TMPXH,℃ 式1
【0052】
北半球における10月1日と3月31日との間の期間を使用して、冬の気候指数(WCI)は、気候学的な冬の1日の最高気温(WTMPXH)(単位℃)から、気候学的な冬の1日の最低気温(WTMPNH)(単位℃)を差し引いたものを、気候学的な冬の1日の最高気温(WTMPXH)(単位℃)で除算したものとして計算され得る。気候学的な冬の1日の最高気温及び最低気温は、それぞれ30年間の1日の冬の最高気温及び最低気温のデータを調和フィッティングすることによって導出される。南半球については、WCI計算の日付の範囲は、4月1日から9月30日までである。冬の気候指数(WCI)は、以下のように定義される。
WCI=(WTMPXH-WTMPNH)/WTMPXH,℃ 式2
【0053】
作物フェノロジーデータと気象データとの間の関係を導出するための第2のステップは、観測された各作物固有の生物季節学的段階の平均日付と、気候指数のうちの1つとを関連付ける関数を作成することである。結果として得られる関数は、指数のうちの1つによって定義された各気候学的環境における50%の圃場について、作物固有の生物季節学的段階(PSDATE50%)が出現する日を決定するために使用される。特定の実施形態では、関数における係数(PSDATEA、PSDATEB、PSDATEC、PSDATED)の値は、作物ごと、及び生物季節学的段階ごとに独自である。
【0054】
年率(RATIO)を利用する特定の実施形態では、
PSDATE50%=PSDATEA-PSDATEB/(1.0+EXP(PSDATEC*(PSDATED-RATIO))),DOY 式3
であり、冬の作物指数(WCI)を利用する特定の実施形態では、
PSDATE50%=PSDATEA-PSDATEB/(1.0+EXP(PSDATEC*(PSDATED-WCI))),DOY 式4
であり、上式で、
PSDATE50%は、ある段階における平均又は50%コホート日であり、
PSDATEAは、ある段階における最も遅い植え付け日であり、
PSDATEBは、ある段階における最も遅い植え付け日と最も早い植え付け日との間の差分であり、
PSDATECは、ある段階における曲線の傾きを決定する単位なしのスカラーであり、
PSDATEDは、RATIO又はWCIの単位なしの最小値である。
【0055】
この関数から導出された曲線の一例を図5に示す。図5は、トウモロコシの平均又は50%コホート植え付け日とWCIとの間の関係を示している(関数は実線で描かれ、観測された生物季節学的データは点で描かれている)。特定の実施形態では、平均又は50%コホート日とRATIO及びWCIとを関連付ける式は、すべての作物の種類で同じであり、係数は作物の種類ごとに異なる。
【0056】
2.2 50%コホート植え付け日
以下の式は、50%コホート植え付け日(PLDATE50%)の通日(DOY)をRATIO又はWCIのいずれかの関数として計算する。
【0057】
RATIOを利用する特定の実施形態では、
PLDATE50%=PLDATEA-PLDATEB/(1.0+EXP(PLDATEC*(PLDATED-RATIO))),DOY 式5
であり、WCIを利用する特定の実施形態では、
PLDATE50%=PLDATEA-PLDATEB/(1.0+EXP(PLDATEC*(PLDATED-WCI))),DOY 式6
であり、上式で、
PLDATEAは、最も遅い植え付け日であり、
PLDATEBは、最も遅い植え付け日と最も早い植え付け日との間の差分であり、
PLDATECは、曲線の傾きを決定する単位なしのスカラーであり、
PLDATEDは、RATIO又はWCIの単位なしの最小値である。
【0058】
上述のパラメータPLDATEA、PLDATEB、PLDATEC、及びPLDATEDは、作物ごとに異なり得る。
【0059】
3.ユーザ固有の圃場規模の計算
特定の実施形態では、作物フェノロジーモデルが異なる空間規模で稼働される場合、又は品種の特性若しくは植え付け慣行の知識が限られている場合に、上記の気候学的関数が様々な役割を果たす。ここで、気候学的関数の役割を、作物の品種及び植え付け日についての完全な説明が提供される圃場規模のフェノロジーモデルの実施形態について論じる。
【0060】
3.1 用語
特定の実施形態では、作物フェノロジーモデルを圃場規模で実行するために、ユーザ(例えば、栽培者)は、最低限、作物の種及び品種の選択と植え付け日とに関する情報を提供する。選択された品種は、種子製造業者によって報告されることもあれば報告されないこともある、遺伝学的に表現された生理学的特性(例えば、熟度評価、抗病性、耐倒伏性、耐干性など)を有する。生物季節学的モデリングに重要な特性の1つに成熟までの日数(DTM)があり、これは、作物が植え付け後に成熟に到達するのに必要な日数である。DTMは、栽培期の長さの尺度である。そのため、DTMは、特定の実施形態では、ユーザが所定の地理的地域において典型的又は平均的な日付(過去の植え付け慣行から決定されるようなもの)を中心とした日々の範囲において作物を植え付けるという仮定で導出される。
【0061】
作物は、暦日ではなく季節の気象条件にしたがって発育するため、特定の実施形態では、DTMは、度日などの環境尺度に変換される。成熟までの日数によって定義される期間にわたって度日を加算又は積算することは、栽培期にわたって作物に利用可能な熱量の尺度として解釈され得る。
【0062】
植え付け日が既知であると仮定すると、特定のDTMに関する積算度日は、特定の実施形態では、過去の気象データから導出され得る。積算度日は、植え付け日とDTMによって定義された成熟日との間の1日の気候学的な度日の加算に対応し得る。気候学的な度日は、それまでの10年間の過去の気温の記録から導出され得る。ユーザ植え付け日が異なればDTMの開始及び終了の暦日が変わるため、同じ日数にわたる必要な積算度日も変わり得る。同じDTMについて、特定のユーザ植え付け日から積算される度日の数は、過去の慣行に基づく平均的な植え付け日から積算される度日の数とは異なり得る。換言すれば、ユーザ植え付け日は、特定の品種のDTMを定義するために種子製造業者が行った研究試験における植え付け日とは異なり得る。適切な品種及び植え付け日を選択することは、ある位置での栽培期における潜在収量を最大化するために重要である。植え付けが早すぎたり遅すぎたりすると、品種の遺伝学的に表現された環境要件とのミスマッチが生じ、潜在収量が減少し得る。
【0063】
ある品種のDTMがユーザの地理的位置及び植え付け日に関して適切であったとしても、栽培期においては、ある生物季節学的段階のシミュレートをされ、観測された日付に差異が生じる可能性がある。気温以外の変数が発育に影響することもある。条間及び植え付け間隔、播種深度、及び生長調整剤の適用などの管理上の決定が、作物の生物季節学的段階の季節の進行の差異に寄与することもある。更に、圃場内の植物の発育は通常不均一であるため(すなわち、同じ日に異なる段階が生じる)、観察プロトコルは、圃場全体の代表的な段階を決定する上で大きな役割を果たす。これらの様々な要因に起因するフェノロジーモデルの出力における逸脱を考慮するために、特定の実施形態は、シミュレーションと観測との間の潜在的に大きな逸脱を考慮するために、「バイオフィックス」ファクタを利用し得る。バイオフィックスファクタは、シミュレートされた生物季節学的段階に置き換わる、ユーザが入力した観測値であり得る。このような実施形態では、作物フェノロジーモデルは、ユーザが入力した段階を取り込み、必要な度日のリアルタイム較正を、観測日まで、及び観測日の後まで実行し得る。較正の最終結果は、栽培期の残りの期間において、より正確なシミュレートされた段階となる。
【0064】
上述のように、作物成長度は、特定の実施形態では、3つの期間、すなわち、植え付けから出芽(0~1.0)、出芽から成熟(1.0~2.0)、及び成熟から収穫(2.0~3.0)に対応するように定義される。第1の期間は、種子の発芽、根の成長、及び地表での第一葉の出芽までを含む地下部の植物の成長を追跡する。第2の期間は、地下部の根の伸張と、茎の伸長及び葉の増加、開花、並びに着果及び果実肥大を含む地上部の植物の成長との両方を示す。第3の期間は、地上部の葉が乾燥して落葉し、地下部の根系が細く縮んで枯死することを特徴とする。第1の期間の作物の発育は、主に、熱(土壌温度)と土壌水分(発根深度における有効水分)の関数である。第2の期間の作物の発育は、主に、光(入射太陽放射)、熱(気温)、及び土壌水分(発根深度における有効水分)の関数である。第3の期間の作物の発育は、熱(気温)と草冠水分(降水に起因する湿潤)の関数である。
【0065】
作物の発育及び成長は、栽培期において、地上の環境と地下の環境とで異なる影響を受ける。したがって、特定の実施形態では、生物季節学的段階のシミュレーションは、3つの成長度期間のそれぞれについて異なる手法を利用する。特定の実施形態では、第1の期間の生物季節学的段階(植え付けから出芽まで)が土壌温度でシミュレートされる。特定の実施形態では、第2の期間の段階(出芽から成熟まで)は、積算度日数でシミュレートされる。特定の実施形態では、第2の期間の必要とされる度日積算は、植え付けと成熟との間のDTMの合計度日から、植え付けと出芽との間の第1の期間の合計度日を差し引いたものである。特定の実施形態では、第3の期間の段階(成熟から収穫まで)は、過去の慣行及び気象データから導出された積算度日でシミュレートされる。
【0066】
第1の期間における積算度日は、2つの手法を使用して推定され得る。特定の実施形態では、第1の手法は、上述の気候学的関数を利用する。度日積算は、気候学的に決定された50%コホート植え付け日と出芽日との間の日々について計算され得る。DTMの植え付けから成熟までの度日から、気候学的な植え付けから出芽までの度日を差し引いて、出芽と成熟との間の度日積算(DDMATとも呼ばれる)を導出することができる。
【0067】
特定の実施形態では、第2の手法は、まず、ユーザが入力した植え付け日を利用し、土壌温度に基づいて関数を実行して、出芽日を計算することである。次に、過去10年間のそれぞれの気温データを使用して、ユーザが入力した植え付け日と計算された出芽日との間で度日が計算される(異なる実施形態では、年数が異なり得ることに留意されたい)。最後に、全10年間にわたるユーザ植え付け日と計算された出芽日との間の計算された度日の平均を取る。第1の手法と同様に、DTMの植え付けから成熟までの度日から、植え付けと出芽との間の10年間の平均度日積算を差し引いて、DDMATすなわち出芽と成熟との間の度日積算を導出する。この第2の手法は、ユーザ植え付け日が、品種のDTMを定義するために使用される平均日を中心とした日数の範囲内にあることを仮定していることに留意されたい。ユーザ植え付け日が範囲外にある場合、DDMATが不正確となり、栽培期における生物季節学的日付のシミュレーションにエラーが生じ得る。
【0068】
3.2 ユーザ作物出芽日
特定の実施形態では、ユーザ出芽日(UEMDATE)は、ユーザ植え付け日(UPLDATE)の後の季節の土壌条件によって決定される。出芽までの日数は、播種深度における土壌温度によって決定され得、出芽(EM)関数を用いて計算され得る。特定の実施形態では、作物の出芽とは、植え付けと第一葉が土壌表面を突破するときとの間の日数を指す。作物の出芽は、例えば、播種深度における土壌温度の5日間移動平均(5dST)に依存する。出芽(EM)の式は、現在の季節の気象条件に基づいて、出芽に必要な日数を定義する。出芽に必要な日数は、年によって最小(Min)日数と最大(Max)日数との間で変動するが、これは以下のパラメータ、すなわち、出芽までの最小日数、出芽までの最小日数と最大日数との間の差分、シグモイド曲線の形状を決定する単位なしスカラー、植え付け深度における土壌温度、出芽までの最大日数に対応する基準土壌温度、及び観測された土壌温度と基準土壌温度との間の差分を正規化する係数の関数である。
【0069】
土壌温度の5日間移動平均は、植え付け後、日を追うごとに変化し、特定の実施形態では、出芽に必要な日数は動的に計算され得る。温暖な土壌温度を有する一連の日々によって出芽までの日数は短くなる一方、一連の低温の土壌温度によって日数は長くなる。特定の実施形態では、出芽までの必要な日数は、植え付けからの積算日数とともに毎日動的に計算される。出芽は、植え付け後の積算日数が、土壌温度出芽(EM)関数から決定された必要な日数以上となった日に発生したと見なされ得る。
【0070】
出芽までの日数の動的な計算を説明する例として、播種深度における土壌温度の5日移動平均が、植え付けの翌日に低温であったと考える。低温の土壌温度では、出芽までの日数は15日と計算される。植え付けから4日目(積算4日)には土壌が温暖になり、出芽までの日数の新たな計算は12日である。植え付けから8日目(積算8日)には土壌は温暖になり続け、新たな計算では10日となる。その後2日間にわたって、土壌の温暖化は進まなかった。植え付けからの積算日数が10日に達し、これは出芽に必要な日数と一致するため、その日(UEMDATE)に出芽する。
【0071】
出芽日は植え付け後に動的に計算され得るため、作物成長度も動的に導出され得る。特定の実施形態では、作物成長度は、植え付けと出芽との間の期間について0~1.0の範囲にあり、植え付け後の積算日数を、シミュレーションされた出芽に必要な日数で除算したものとして計算され得る。必要な日数は日々変化し得るため、作物成長度は、植え付け後に続く日々で非線形に変化し得る。
【0072】
植え付けと出芽との間の作物成長度の動的性質を説明するための例として、先の例における植え付け後の積算日数及び出芽までの日数の計算の同じ進行を使用する。作物成長度の計算は、植え付け日に0に設定される。出芽までの必要日数を植え付け後1日目に15と計算すると、成長度は1/15すなわち0.07となる。必要日数を植え付け後4日目に12と計算すると、成長度は4/12すなわち0.33となる。必要日数を植え付け後8日目に10と計算すると、成長度は8/10すなわち0.8となる。必要日数を植え付け後10日目に10と計算すると、成長度は10/10すなわち1.0となり、出芽の発生を示す。出芽日は、植え付け日後10日目である。表1は、この概念を更に例示する。
【表1】
【0073】
3.3 ユーザ作物成熟日(春作物)
特定の実施形態では、春作物又は冬作物の作物成熟日は、所定の季節について、出芽後、積算がDDMATによって定義された品種要件以上になる日まで、1日の度日を加算することにより決定される。冬作物のDDMATは、冬季における成長の鈍化によって複雑になり得る。DDMATの冬季の成長鈍化又は「休眠」の調整については、後でより詳しく論じる。
【0074】
春作物及び冬作物のいずれの場合も、種子製造業者は、通常、ある季節の長さ(植え付けから成熟まで)を定義するDTMしか公開せず、出芽日は土壌環境に起因して年ごとに大きく変わるため、ユーザは品種のDDMATにめったに気付かない。したがって、DDMATは、特定の実施形態では、過去の植え付け慣行又はユーザから報告された植え付け日のいずれかから導出される。ユーザ植え付け日は、調査研究からDTMを決定するために使用された日付の範囲外であることがあるため、最善の手法として過去の慣行が選択されることがある。
【0075】
特定の実施形態では、ユーザ作物成熟日(UMATDATE)の導出は3つの計算を含む。第1の計算は、ユーザが報告したDTM(UDTM)の積算度日である。この計算は、UDTMの開始日(植え付け日)及び終了日(成熟日)を確立した後に行われ得る。気候学的手法を使用して、開始日は50%植え付け日(PLDATE50%)であり、終了日は植え付け日にDTMの成熟までの日数を加算した後の日(CMATDATE)である。そうすると、UDTMの積算度日は、開始日(PLDATE50%)と終了日(CMATDATE)との間の気候学的な1日の度日を加算したものに対応する。
UDTM=Σ(CMATDATEとPLDATE50%と間の度日),度日 式7
【0076】
第2の計算は、UDDMATの積算度日、すなわち報告されたユーザ品種の出芽から成熟までの日数を決定する。UDDMATの積算度日は、UDTMの積算度日から、気象学的な植え付け日(PLDATE50%)と出芽日(EMDATE50%)との間の積算度日を差し引くことにより計算される。
UDDMAT=UDTM-Σ(EMDATE50%とPLDATE50%との間の度日),度日 式8
【0077】
UDDMATは、ユーザが報告したDTMと、その品種の植え付け日が過去の慣行にしたがったという仮定とに基づく、出芽と成熟との間の必要な積算度日を表す。
【0078】
ユーザ成熟日(UMATDATE)を導出するための第3の最後の計算は、ユーザ出芽日(UEMDATE)に、積算度日によって定義される期間の等価日数でUDDMATを加算することである。
UMATDATE=UEMDATE+UDDMAT(日),DOY 式9
【0079】
ユーザ成熟日(UMATDATE)の計算を用いて、作物フェノロジーモデルは、任意の地理における任意のユーザ植え付け日及びDTMについて、生物季節学的段階の圃場規模のシミュレーションを提供し得る。上述の計算は春作物に当てはまることに留意されたい。冬作物の発育は、冬季における休眠によって複雑になるため、後で詳しく論じる。
【0080】
特定の実施形態では、1日の成長度が、1日の度日積算をUDDMATで除算して計算することにより、出芽日と収穫日との間で計算される。成長度の積算は、1.0(UEMDATE)から開始し、2.0(UMATDATE)で終了する。その後、積算成長度(AGF)が、関連する作物フェノロジースケール(例えば、BBCHスケールでは9から89まで)にマッピングされる。
【0081】
3.4 ユーザ作物成熟日(冬作物)
特定の実施形態では、冬作物のユーザ作物成熟日(UMATDATE)の導出は、成長が鈍化する冬の期間を除いて春作物と同様である。より高緯度では、温度低下及び日照時間の減少に起因して、低温の冬季においては作物の発育が遅れる。本明細書では、成長の鈍化するこの期間を「休眠」と呼び、その長さは作物の光周期及び日長に対する感受性によって決定される。特定の実施形態では、作物フェノロジーモデルは、以下のように定義される休眠(DORM)関数を使用して、光周期感受性(R)及び日長(L)を考慮する:
DORM=1-0.002*R*(20-L,単位なし 式10
上式で、
DORMは単位なしのスカラーであり、
0.0002は、時間-2を単位とする係数であり、
は、単位なしのスカラーとしての光周期感受性であり、
は、時間を単位とする日長である。
【0082】
DORMは、出芽と開花との間の生物季節学的段階間の作物の発育速度に対する光周期感受性及び日長を考慮する。DORMの範囲は、1(発育の遅れなし)と0(完全な発育の中断)との間である。特定の実施形態では、冬作物の温度由来の1日の最適発育度日(DOPT)に、1日の休眠関数値(DORM)を乗算して、1日の実際の発育度日(DACT)が導出される。
【0083】
DACTは、作物の光周期感受性及び圃場位置における日長によって決定される、所定の日の度日が実質的に減少することによる発育の鈍化を反映する。度日が少ないと、休眠を経験しない作物と同じ発育ペースを達成するためには、冬季においてより多くの日数を必要とすることになる。DACTは、以下のように定義される。
DACT=DOPT*DORM,度日 式11
【0084】
冬作物のユーザ作物成熟日を計算するために、UDDMATは、特定の実施形態では、栽培期における休眠を考慮するように調整される。春作物については、UDDMATは、ユーザDTMと、その品種の植え付け日が過去の慣行にしたがったという仮定とに基づく、出芽日と成熟日との間の必要な積算度日である。休眠がなければ、UDDMATは以下のように、ユーザ出芽日と成熟日との間のDOPT度日の和に対応する。
UDDMAT=Σ(UEMDATEとUMATDATEとの間のDOPT度日),度日 式12
【0085】
休眠がある場合、UDDMATは、特定の実施形態では、2つの和を含む。1つ目の和は、ユーザ出芽日と開花日との間の実際の発育(DACT)度日であり、2つ目の和は、ユーザ開花日と成熟日との間の最適発育(DOCT)度日である。UDDMATDは、休眠に関して調整されたUDDMATに対応する。
UDDMATD=Σ(UEMDATEとUFLDATEとの間のDACT度日)+Σ(UFLDATEとUMATDATEとの間のDOPT度日),度日 式13
【0086】
UDDMATDの導出により、冬作物のユーザ作物成熟日(UMATDATE)が、以下のように、ユーザ出芽日(UEMDATE)に、積算度日によって定義される期間の等価日数でUDDMATDを加算することによって計算される。
UMATDATE=UEMDATE+UDDMATD(日),DOY 式14
【0087】
3.5 ユーザ作物成熟日及び等結果性
ユーザ開花日と成熟日との間の度日は、等結果性に関して更に調整され得る。特定の実施形態では、作物フェノロジーモデルは、開花と成熟との間の毎日の度日要件を発育の遅れにしたがって含めることにより、等結果性を考慮する。特定の実施形態では、このように含めることは3つのステップで実現される。第1のステップは、作物の作物成長度(CGF)が1.5以上となった暦日から、気候学的に導出された成熟日(MATDATE)までの残りの度日(DACC)を計算することである。
DACC=Σ(CGF1.5の日付とMATDATEとの間の度日),度日 式15
【0088】
第2のステップは、気候学的に導出されたCGFが1.5の日と成熟日(MATDATE)との間の積算度日(DCLI)を計算することである。
DCLI=Σ(CGF1.5の日付とMATDATEとの間の度日),度日 式16
【0089】
第3のステップでは、DCLIがDACCよりも大きい場合、開花時の発育が著しく遅れていることに起因して、作物の成熟に到達するのに予測される度日は十分ではない。DCLI/DACCの比率は「アクセラレータ」(ACC)と呼ばれるスカラーであり、その値は1.0よりも大きいように制約される。DACCには、CGFが1.5の日とMATDATEとの間の積算度日(ADACC)を調整するために、アクセラレータ比率が乗算される。
ADACC=ACC*DACC,度日 式17
【0090】
特定の実施形態では、栽培期中の作物の1日の度日が、CGFが1.5に達した日の後の毎日、アクセラレータによって増加される。1日の度日を含めることによって、栽培期中の作物は、成熟日までの度日の積算を増加又は促進する。CGFが1.5と成熟との間に作物の発育を早めることを、等結果性と呼ぶ。
【0091】
3.6 ユーザ作物収穫日
春作物及び冬作物のいずれの場合も、種子製造業者は特定の作物品種(例えば、作物の種類)の成熟から収穫までの日数をめったに公開しない。成熟と収穫との間の期間の長さは、ユーザ植え付け日、品種の選択、及び栽培期に優勢な気象条件に応じて変わり得る。その結果、植え付けと出芽との間の期間と同様に、成熟と収穫との間の期間の度日積算は、例えば、10年間の過去の平均気温を使用して気候学的に導出され得る。この度日積算の導出は、作物が所定の位置での過去の慣行と矛盾しない日付の範囲内で植え付けされたと仮定する。50%コホート成熟日(MATDATE50%)と50%コホート収穫日(HRVDATE50%)との間の気候学的に導出された積算度日(DDHRV)は以下のとおりである。
DDHRV=Σ(MATDATE50%とHRVDATE50%との間の度日),度日 式18
【0092】
ユーザ作物収穫日(UHRVDATE)は、ユーザ成熟日(UMATDATE)までに積算度日によって定義された期間のDDHRVを等価日数で加算することによって計算される。
UHRVDATE=UMATDATE+DDHRV(日),DOY 式19
【0093】
特定の実施形態では、1日の成長度が、1日の度日積算をDDHRVで除算して計算することにより、成熟日と収穫日との間で計算される。成長度の積算は、2.0(UMATDATE)において開始し、3.0(UHRVDATE)において終了し、BBCHコードの積算成長度(AGF)への品種マッピングに基づいて、89から99のBBCH範囲に及ぶ。
【0094】
図6は、モデルの各段階における様々な入力及び出力を説明するために上で説明され、定義されたモデリングパラメータ及び連立式を利用する圃場レベルの作物フェノロジーモデルを示すフロー図600である。
【0095】
図7は、本開示の実施形態による、植物の発育段階をシミュレートする方法700を示すフロー図である。方法700は、ハードウェア(例えば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ソフトウェア(例えば、ハードウェアシミュレーションを行うためにプロセッシングデバイス上で実行される命令)、又はそれらの組み合わせを含むプロセッシングロジックによって実行され得る。特定の実施形態では、方法700の1つ以上の要素は、例えば、モデリングサーバ(例えば、モデリングサーバ130の作物フェノロジーモデリングコンポーネント140)によって実行され得る。
【0096】
ブロック710において、プロセッシングデバイス(例えば、モデリングサーバ130のプロセッシングデバイス)は、ユーザのデバイス(例えば、それぞれのユーザインターフェース122A~122Zを介して、ユーザデバイス120A~120Zのうちの1つ以上)からの入力を(例えば、ネットワーク105を介して)受信する。特定の実施形態では、入力は、1つ以上の作物の品種(例えば、1つ以上の作物の種類の識別子)、及び作物の栽培される地理的位置を含む。
【0097】
特定の実施形態では、入力は、作物の植え付け日を指定しない。他の実施形態では、ユーザ入力は、実際の植え付け日又は植え付け予定日を指定する。特定の実施形態では、地理的位置は、国、州/行政区、市、又は町などの地政学的位置として指定される。特定の実施形態では、地理的位置は、緯度及び経度又は全地球測位システムの範囲によって指定される。特定の実施形態では、位置情報は、ユーザが直接位置を入力する必要がないように、デバイスから直接取得される(例えば、入力時のデバイスの位置)。
【0098】
ブロック720において、プロセッシングデバイスは、指定された地理的位置における年間気候指数(式1)又は冬の気候指数(式2)のいずれかの値に基づいて、作物の植え付け日を計算する。特定の実施形態では、気候指数モデルは、気候指数の関数として、作物の種類に関して過去の植え付け日をモデリングすることによって生成される。
【0099】
ブロック730において、プロセッシングデバイスは、植え付け日及び土壌温度モデルに基づいて出芽日を計算する。特定の実施形態では、プロセッシングデバイスは、作物の種類に関して播種深度における土壌温度をシミュレートする。特定の実施形態では、プロセッシングデバイスは、土壌温度モデルに基づいて、作物の植え付け日から、出芽を表す作物の予定成長度に到達するまでの日数を推定することによって、出芽日を計算する。
【0100】
ブロック740において、プロセッシングデバイスは、植え付け日、出芽日、及び度日積算モデルに基づいて、作物の植物発育段階を成長プロファイルとして計算/決定(例えば、シミュレート)する。特定の実施形態では、プロセッシングデバイスは、度日積算モデルを使用して成熟までの作物の生物季節学的発育をシミュレートして、特定の位置及び特定の栽培期において生物季節学的段階に到達する日付を決定する。積算度日の予定数は、(例えば、データストア110から読み出され得る)過去の作物成熟データに基づいて決定される。特定の実施形態では、プロセッシングデバイスは、予測日数及び出芽日に基づいて、作物の成熟日を計算する。特定の実施形態では、プロセッシングデバイスは、冬作物の光周期感受性を反映するように冬季の成長度日を調整する。
【0101】
特定の実施形態では、プロセッシングデバイスは、成長プロファイルを、表示のためのユーザのデバイスに送信する。特定の実施形態では、プロセッシングデバイスは、成長プロファイルを、更なるモデリングのため、又は作物に適用するための推薦される薬剤を生成するための別個のコンピューティングデバイスに送信する。特定の実施形態では、プロセッシングデバイスは、成長プロファイルを、作物を収穫又は処理するためのツールを動作させるように適合されたデバイスに送信する。
【0102】
本明細書で説明される実施形態は、いかなる特定の用途又は環境での使用にも限定されるものではなく、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなしに、開示された実施態様に変更を加えることができることを理解されたい。本明細書では、特定の目的のための特定の環境における特定の実施態様に関連して本開示を説明してきたが、当業者であれば、その有用性はこれに限定されるものではなく、本開示は、任意の数の目的のために任意の数の環境で有益に実施され得ることを認識されよう。
【0103】
説明を簡単にするために、本開示の方法は、一連の動作として描かれ、記載される。しかしながら、本開示にしたがった動作は、様々な順序で及び/又は同時に且つ本明細書に提示及び記載されない他の動作と一緒に行われ得る。更に、すべての例示された動作が、開示された主題にしたがった方法を実施することを必要とされ得るとは限らない。加えて、当業者は、方法が代替的に状態図又は事象を介した一連の相互関連状態として表され得ることを理解し、認識するであろう。加えて、本明細書で開示される方法は、このような方法を実行するための命令をコンピューティングデバイスに輸送及び転送することを助けるために、製品上に格納することが可能であることを理解されたい。本明細書で使用される場合、「製品」という用語は、任意のコンピュータ可読デバイス又は記憶媒体からアクセス可能なコンピュータプログラムを包含することが意図されている。
【0104】
上記の説明では、多数の詳細が記載されている。しかしながら、本開示の恩恵を受けた当業者には、これらの具体的な詳細がなくても本開示を実施し得ることが明らかなはずである。場合によっては、本開示を不明瞭にすることを避けるために、周知の構造及びデバイスが、詳細にではなくブロック図の形式で示される。
【0105】
詳細な説明のいくつかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビットでの動作のアルゴリズム及び記号式表現の観点から提示されていることがある。これらのアルゴリズム的説明及び表現は、仕事の本質を他の当業者に最も効率的に伝えるためにデータ処理分野の当業者により使用される手段である。アルゴリズムは本明細書では及び一般に、所望の結果に繋がる自己矛盾のない一連のステップであると考えられる。これらのステップは、物理数量の物理的操作を必要とするものである。必ずしもそうである必要はないが、通常、これらの数量は、記憶、転送、結合、比較、及び他の方法での操作が可能な電気信号又は磁気信号の形態を取る。時に、主に慣例を理由として、これらの信号をビット、値、要素、シンボル、文字、条件、数等と呼ぶことが時に便利なことが判明している。
【0106】
しかしながら、これらの用語及び同様の用語のすべてが、適切な物理数量と関連付けられるべきであり、それらの数量に適用される単に好都合なラベルであることに留意されたい。特に別段の記載のない限り、上述の議論から明らかなように、本明細書全体を通じて、「構成する」、「受信する」、「変換する」、「生起させる」、「ストリーミングする」、「適用する」、「マスキングする」、「表示する」、「読み出す」、「送信する」、「計算する」、「生成する」、「加算する」、「減算する」、「乗算する」、「除算する」、「選択する」、「解析する」、「最適化する」、「較正する」、「検出する」、「格納する」、「実行する」、「分析する」、「決定する」、「可能にする」、「識別する」、「変更する」、「変換する」、「集約する」、「抽出する」、「実行する」、「スケジューリングする」、「シミュレートする」などの用語を利用した議論は、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内の物理的(例えば、電子的)量として表現されたデータを、コンピュータシステムのメモリ若しくはレジスタ、又は他のそのような情報記憶、伝送、若しくは表示デバイス内の物理的量として同様に表現された他のデータに操作及び変換するコンピュータシステム又は同様の電子コンピューティングデバイスの動作及びプロセスを指すことを理解されたい。
【0107】
本開示はまた、本明細書における各動作を実行するための装置、デバイス、又はシステムに関する。この装置、デバイス、又はシステムは、必要とされる目的に向けて特に構築されてもよく、又はコンピュータに格納されたコンピュータプログラムにより選択的にアクティブ化若しくは再構成される汎用コンピュータを含んでもよい。このようなコンピュータプログラムは、限定されるものではないが、フロッピーディスク、光ディスク、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、及び光磁気ディスクを含む任意のタイプのディスク、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード若しくは光カード、又は電子命令を格納するのに適した任意のタイプの媒体などのコンピュータ可読記憶媒体又は機械可読記憶媒体に格納され得る。
【0108】
「例」又は「例示的」という用語は、本明細書では、例、実例又は例示として役立つことを意味するために用いられる。「例」又は「例示的」として本明細書に記載される任意の態様又は設計は、他の態様又は設計よりも好ましい又は有利であると必ずしも解釈されない。むしろ、「例」又は「例示的」という語の使用は、具体的な様式で概念を提示することが意図される。本出願で用いる場合、「又は」という用語は、排他的な「又は」よりもむしろ包括的な「又は」を意味することが意図される。すなわち、特に明記しない限り又は文脈から明らかでない限り、「Xは、A又はBを含む」は、自然な包含的配列のいずれかを意味することが意図される。すなわち、XがAを含む;XがBを含む;又はXがA及びBの両方を含む場合、「Xは、A又はBを含む」は、前述の例のいずれの下でも満たされる。加えて、本出願及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、冠詞「a」及び「an」は、別段の指定のない限り、又は文脈から単数形を指すことが明らかでない限り、一般に、「1つ以上(one or more)」を意味するように解釈される。本明細書全体にわたり、「実施形態」又は「一実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたって様々な箇所での語句「実施形態」又は「一実施形態」の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及するわけではない。更に、図面の特定の要素を参照するために使用される「A~Z」の表記は、要素の特定の数を限定することを意図されていないことに留意されたい。よって、「A~Z」は、特定の実施形態において要素うちの1つ以上が存在すると解釈される。
【0109】
本開示は、本明細書に記載の特定の実施形態によってその範囲を限定されるものではない。実際、本明細書及び添付の図面を読めば、本明細書で説明されたもの以外に、本開示の他の様々な実施形態及び修正形態が当業者には明らかになるはずである。よって、そのような他の実施形態及び修正形態は、本開示の範囲に含まれることが意図されている。更に、特定の目的のための特定の環境における特定の実施形態に関連して本開示を説明してきたが、当業者であれば、その有用性はこれに限定されるものではなく、本開示は、任意の数の目的のために任意の数の環境で有益に実施され得ることを認識されよう。したがって、以下に記載される特許請求の範囲は、本明細書に記載される本開示の全範囲及び趣旨を、かかる特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と併せて考慮して解釈されるものとする。
【0110】
本発明を以下の実施形態によっても表すことができる。
実施形態1:
作物の植物発育段階をシミュレートする方法であって、本方法が、
ユーザのデバイス、データベース、又はセンサからの入力を受信することであって、入力が、作物の種類及び作物の栽培される地理的位置を含む、受信することと、
地理的位置の気候指数モデルに基づいて、作物の植え付け日を計算することと、
植え付け日及び土壌温度モデルに基づいて、作物の出芽日を計算することと、
植え付け日、出芽日、及び度日積算モデルに基づいて、作物の植物発育段階を成長プロファイルとしてシミュレートすることと、
成長プロファイルを、
表示のためのユーザのデバイス、
更なるモデリングのため、若しくは作物に適用するための推薦される薬剤を生成するための別個のコンピューティングデバイス、又は
作物を収穫又は処理するためのツールを動作させるように適合されたデバイス
のうちの1つ以上に送信することを含む、方法。
実施形態2:
入力が、作物の植え付け日を指定しない、実施形態1に記載の方法。
実施形態3:
作物の種類の過去の植え付け日を気候指数の関数としてモデリングすることによって、気候指数モデルを生成することであって、気候指数が、気候学的な冬の1日の最高気温及び気候学的な冬の1日の最低気温に基づいて計算される、生成することと、
地理的位置の気候指数を計算することであって、作物の植え付け日が、決定された気候指数に基づいて気候指数モデルから計算される、計算することを更に含む、実施形態1又は2に記載の方法。
実施形態4:
作物の種類の過去の植え付け日を気候指数の関数としてモデリングすることによって、気候指数モデルを生成することであって、気候指数が、北半球では10月1日と3月31日との間の冬期間を使用し、南半球では4月1日と9月30日との間の冬期間を使用して、気候学的な冬の1日の最高気温(WTMPXH)(単位℃)から、気候学的な冬の1日の最低気温(WTMPNH)(単位℃)を差し引いたものを、気候学的な冬の1日の最高気温(WTMPXH)(単位℃)で除算したものとして計算される、生成することと、
地理的位置の気候指数を計算することであって、作物の植え付け日が、決定された気候指数に基づいて気候指数モデルから計算される、計算することを更に含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
実施形態5:
作物の種類の播種深度に少なくとも部分的に基づいて、土壌温度モデルを生成することを更に含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
実施形態6:
出芽日を計算することが、土壌温度モデルに基づいて、作物の植え付け日から、作物の予定成長度に到達するまでの日数を推定することを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
実施形態7:
地理的地域に関連する気候学的データに基づいて、作物の種類の出芽と成熟との間の積算度日の目標数を満たすために必要な日数を予測することによって、度日積算モデルを生成することであって、積算度日の目標数が、過去の作物成熟データに基づいて決定される、生成することと、
予測された日数及び出芽日に基づいて、作物の成熟日を計算することを更に含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
実施形態8:
度日積算モデルを生成することが、作物の種類が冬作物に対応すると判定したことに応じて、冬の休眠期間を考慮することを含む、実施形態7に記載の方法。
実施形態9:
作物の処理に使用可能な農業機械を制御する直接又は間接制御パラメータとして、成長プロファイルを少なくとも部分的に使用することを更に含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
実施形態10:
作物の植物発育段階をシミュレートするシステムであって、本システムが、
メモリデバイスと、
メモリデバイスに動作可能に結合されたプロセッシングデバイスであって、プロセッシングデバイスが、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法を実行するように構成される、プロセッシングデバイスを備える、システム。
実施形態11:
プロセッシングデバイスによって実行されると、プロセッシングデバイスに実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法を実行させる命令を符号化した非一時的コンピュータ可読媒体。
実施形態12:
実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法を実行するように構成されたオンボードプロセッシングデバイスを備える、作物を収穫又は処理するためのツール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】