(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】腸運動性障害を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20250128BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20250128BHJP
A61K 31/4174 20060101ALI20250128BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20250128BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20250128BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20250128BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20250128BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20250128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250128BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250128BHJP
A61K 31/27 20060101ALI20250128BHJP
A61K 31/166 20060101ALI20250128BHJP
A61K 31/4468 20060101ALI20250128BHJP
A61K 31/451 20060101ALI20250128BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P1/00
A61K31/4174
A61K31/4375
A61K31/44
A61P1/14
A61P1/10
A61P1/12
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/27
A61K31/166
A61K31/4468
A61K31/451
A61K31/192
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539980
(86)(22)【出願日】2023-01-03
(85)【翻訳文提出日】2024-08-30
(86)【国際出願番号】 US2023060053
(87)【国際公開番号】W WO2023130149
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2022-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ファタヒ ファラナク
(72)【発明者】
【氏名】マジド ホマ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA28
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA57
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZA69
4C084ZA72
4C084ZA73
4C084ZC02
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC21
4C086BC38
4C086BC50
4C086CB09
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA31
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA57
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZA69
4C086ZA72
4C086ZA73
4C086ZC02
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA17
4C206GA23
4C206HA22
4C206HA24
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA33
4C206MA37
4C206MA42
4C206MA43
4C206MA48
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA77
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA66
4C206ZA69
4C206ZA72
4C206ZA73
4C206ZC02
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、例えば、無弛緩症、ヒルシュスプルング病、腸偽閉塞、胃食道逆流症(GERD)、機能性嚥下障害、機能性消化不良、過敏性腸症候群(IBS)、胃不全麻痺、機能性便秘、機能性下痢、及び便失禁などの腸運動性障害を治療するための化合物及び組成物を対象にする。この要約は、特定の技術分野での検索の目的のための走査ツールとして意図されており、本発明を限定することを意図していない。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸運動性障害の治療を必要とする対象において腸運動性障害を治療するための方法であって、前記対象に、有効量の、カルプロフェン、メフェナム酸、フェナセチン、バルデコキシブ、フェノルドパムメシル酸塩、フルフェナジン塩酸塩、ブピバカインHCl、フェナゾピリジンHCl、アルベリンクエン酸塩、ニテンピラム、4-アミノ酪酸(GABA)、PF-3845、エスモロールHCl、シメチジン、コニバプタンHCl、(+)-MK-801マレイン酸塩、MK-0752、R04929097、ロスマリン酸、テオフィリン、アリピプラゾール、フロプロピオン、ラトレピルジン2HCl、ADX-47273、MPEP、ネホパムHCl、フェナゾピリジンHCl、エピネフリン、(+)-マトリン、フェノチアジン、ナプロキセンナトリウム、AMG-517、イソリキリチゲニン、ニルバジピン、プレドニゾン、及びシンバスタチン、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記化合物が、アリピプラゾール、デクスメデトミジン、マトリン、及びMPEP、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が、デクスメデトミジンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記腸運動性障害が、無弛緩症、ヒルシュスプルング病、腸偽閉塞、胃食道逆流症(GERD)、機能性嚥下障害、機能性消化不良、過敏性腸症候群(IBS)、胃不全麻痺、機能性便秘、機能性下痢、及び便失禁から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記投与ステップの前に、前記対象が、前記腸運動性障害の治療の必要性があると診断されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
腸運動性障害の治療を必要とする前記対象を特定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記有効量が、治療有効量である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有効量が、予防有効量である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
腸運動性障害を有する対象におけるNOニューロン活性を調節するための方法であって、前記対象に、有効量の、カルプロフェン、メフェナム酸、フェナセチン、バルデコキシブ、フェノルドパムメシル酸塩、フルフェナジン塩酸塩、ブピバカインHCl、フェナゾピリジンHCl、アルベリンクエン酸塩、ニテンピラム、4-アミノ酪酸(GABA)、PF-3845、エスモロールHCl、シメチジン、コニバプタンHCl、(+)-MK-801マレイン酸塩、MK-0752、R04929097、ロスマリン酸、テオフィリン、アリピプラゾール、フロプロピオン、ラトレピルジン2HCl、ADX-47273、MPEP、ネホパムHCl、フェナゾピリジンHCl、エピネフリン、(+)-マトリン、フェノチアジン、ナプロキセンナトリウム、AMG-517、イソリキリチゲニン、ニルバジピン、プレドニゾン、及びシンバスタチン、若しくはそれらの薬学的に許容される塩のうちの1つ又は組み合わせから選択される化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項12】
前記化合物が、アリピプラゾール、デクスメデトミジン、マトリン、及びMPEP、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が、デクスメデトミジンである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
NOニューロン活性を調節することが、結腸活性を誘導する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
カルプロフェン、メフェナム酸、フェナセチン、バルデコキシブ、フェノルドパムメシル酸塩、フルフェナジン塩酸塩、ブピバカインHCl、フェナゾピリジンHCl、アルベリンクエン酸塩、ニテンピラム、4-アミノ酪酸(GABA)、PF-3845、エスモロールHCl、シメチジン、コニバプタンHCl、(+)-MK-801マレイン酸塩、MK-0752、R04929097、ロスマリン酸、テオフィリン、アリピプラゾール、フロプロピオン、ラトレピルジン2HCl、ADX-47273、MPEP、ネホパムHCl、フェナゾピリジンHCl、エピネフリン、(+)-マトリン、フェノチアジン、ナプロキセンナトリウム、AMG-517、イソリキリチゲニン、ニルバジピン、プレドニゾン、及びシンバスタチン、若しくはそれらの薬学的に許容される塩のうちの1つ又は組み合わせから選択される化合物と、
(a)腸運動性障害を治療するための薬剤、
(b)前記腸運動性障害を治療するための指示書、及び
(c)前記腸運動性障害を治療することに関連して前記化合物を投与するための指示書
から選択される1つ又は組み合わせと
を含む、キット。
【請求項16】
前記薬剤が、副交感神経興奮薬、運動促進剤、オピオイドアンタゴニスト、下痢止め、及び抗生物質から選択される、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記薬剤が、ネオスチグミン、ベタネコール、メトクロプラミド、シサプリド、及びロペラミドから選択される、請求項15に記載のキット。
【請求項18】
前記化合物及び前記薬剤が、共包装されている、請求項15に記載のキット。
【請求項19】
前記化合物及び前記薬剤が、共製剤化されている、請求項15に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35 USC119(e)に従って2022年1月3日に出願され、その全体が参照により組み込まれる米国仮出願第63/296,151号の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する声明
本発明は、国立衛生研究所(NIH)によって授与された助成金番号DP2NS116769及びR01CA240984、並びに国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所によって授与された助成金番号R01DK121169の下で、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
腸神経系(ENS)は、自律神経系の最大かつ最も複雑な区域である(De Giorgio,2006)。5億を超える腸ニューロン及び約7倍の腸グリアが、腸壁内の2つの異なる層に埋め込まれた、相互接続された腸ガングリアを形成し、縦筋と環状筋との間に存在する腸筋神経叢、及び環状筋と粘膜との間に存在する粘膜下神経叢である(Grubisic and Gulbransen,2017、Grundmann et al.,2019、Hamnett et al.,2021、Sasselli et al.,2012)。
【0004】
ENSは、消化(GI)管の機能を司るために、中枢神経系(CNS)からの入力に依存しない(Furness et al.,2014)。この自律性は、体から除去された腸のセグメントがエクスビボで複雑な運動パターンを生成し続ける研究によって例示される。ENS自律性は、調和して協働する異なる神経化学的シグネチャを有する非常に多様なニューロン及びグリア細胞型の結果である(Brehmer,2021、Qu et al.,2008、Fung and Vanden Berghe,2020)。したがって、ENSは、運動性、分泌、吸収、血流調節、及びバリア機能のサポートを含む複雑な腸機能を制御するように装備されている。更にENSは、活力及び適切な腸の恒常性を維持するために、CNS、腸内分泌系、免疫系、及び腸内細菌叢と外在的に通信する(Furness et al.,2014、Long-Smith et al.,2020、Muller et al.,2014、Obata and Pachnis,2016、Schneider et al.,2019、Yoo and Mazmanian,2017)。
【0005】
ENSの神経化学的及び機能的複雑性は、CNS(Gershon,1999)に類似しているが、ENS研究の分野における進歩ははるかに遅い。末梢神経系の最大かつ最も複雑な区域であり、腸神経障害及び腸脳軸疾患の発症及び進行において中心的な役割を果たすにもかかわらず、ENS研究は、複数の長年にわたる技術的課題によって不当に影響を受けている。例えば、腸ニューロンは、GI管全体で希釈され、腸組織の1%未満を構成する(Drokhlyansky et al.,2020)。したがって、科学者は、ENS組織にアクセスするために、より日常的なGI生検ではなく、GI切除手術中に収集された試料に依存しなければならない。更に、壊れやすい神経突起を損傷する過酷な組織解離技術に関連する著しいサンプリングバイアスなしにENSを単離することは困難であり、腸ニューロン及びグリアのFACS精製に好適な信頼性の高い表面マーカーを欠いている。
【0006】
ENSの複雑な発達プロセス及び精巧な細胞構造、並びに身体の他の部分との顕著なコミュニケーションにより、異常が発生する幅広い可能性が提供される。最も困難な臨床障害のいくつかを含む、腸脳相互作用障害(DGBI)としても知られる腸神経障害は、ENS細胞型の喪失、変性、又は機能障害に起因する(De Giorgio et al.,2016、Niesler et al.,2021)。ENSの発達及び機能のこの不完全な理解は、GI疾患の長期的な罹患率及び死亡率、並びに治療介入の限られた利用可能性に責任がある。具体的には、一酸化窒素(NO)を放出して、平滑筋組織を弛緩させ、GI運動性を促進する腸窒素作動性ニューロン(NOニューロン)のより良い理解を得ることに並外れた関心がある。これは、食道無弛緩症、乳児肥大性幽門狭窄症、及び胃不全麻痺を含む、異なる形態のDGBIにおけるNOニューロンの選択的機能障害及び変性に起因する(Bodi et al.,2019、Rivera et al.,2011)。したがって、NOニューロン活性を調節することができる化合物及び組成物、並びにそれらを作製及び使用する方法に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0007】
概要
本開示の目的(複数可)によれば、本明細書に具体化され、広く記載されるように、本開示は、いくつかの実施形態では、例えば、失弛緩症、ヒルシュスプルング病、腸偽閉塞、胃食道逆流症(GERD)、機能性嚥下障害、機能性消化不良、過敏性腸症候群(IBS)、胃不全麻痺、機能性便秘、機能性下痢、及び便失禁などの腸運動性障害の治療に有用な化合物及び組成物に関する。
【0008】
したがって、本明細書に提供されるのは、腸運動性障害の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、本方法は、対象に、有効量の、カルプロフェン、メフェナム酸、フェナセチン、バルデコキシブ、フェノルドパムメシル酸塩、フルフェナジン塩酸塩、ブピバカインHCl、フェナゾピリジンHCl、アルベリンクエン酸塩、ニテンピラム、4-アミノ酪酸(GABA)、PF-3845、エスモロールHCl、シメチジン、コニバプタンHCl、(+)-MK-801マレイン酸塩、MK-0752、R04929097、ロスマリン酸、テオフィリン、アリピプラゾール、フロプロピオン、ラトレピルジン2HCl、ADX-47273、MPEP、ネホパムHCl、フェナゾピリジンHCl、エピネフリン、(+)-マトリン、フェノチアジン、ナプロキセンナトリウム、AMG-517、イソリキリチゲニン、ニルバジピン、プレドニゾン、及びシンバスタチン、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物を投与することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、化合物は、アリピプラゾール、デクスメデトミジン、マトリン、及びMPEP、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される。いくつかの実施形態では、化合物は、デクスメデトミジンである。いくつかの実施形態では、腸運動性障害は、無弛緩症、ヒルシュスプルング病、腸偽閉塞、胃食道逆流症(GERD)、機能性嚥下障害、機能性消化不良、過敏性腸症候群(IBS)、胃不全麻痺、機能性便秘、機能性下痢、及び便失禁から選択される。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、投与ステップの前に、腸運動性障害の治療の必要性があると診断されている。いくつかの実施形態では、本方法は、腸運動性障害の治療を必要とする対象を特定することを更に含む。いくつかの実施形態では、有効量は、治療有効量である。いくつかの実施形態では、有効量は、予防有効量である。
【0010】
腸運動性障害を有する対象においてNOニューロン活性を調節する方法も提供され、本方法は、対象に、有効量の、カルプロフェン、メフェナム酸、フェナセチン、バルデコキシブ、フェノルドパムメシル酸塩、フルフェナジン塩酸塩、ブピバカインHCl、フェナゾピリジンHCl、アルベリンクエン酸塩、ニテンピラム、4-アミノ酪酸(GABA)、PF-3845、エスモロールHCl、シメチジン、コニバプタンHCl、(+)-MK-801マレイン酸塩、MK-0752、R04929097、ロスマリン酸、テオフィリン、アリピプラゾール、フロプロピオン、ラトレピルジン2HCl、ADX-47273、MPEP、ネホパムHCl、フェナゾピリジンHCl、エピネフリン、(+)-マトリン、フェノチアジン、ナプロキセンナトリウム、AMG-517、イソリキリチゲニン、ニルバジピン、プレドニゾン、及びシンバスタチン、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物を投与することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、化合物は、アリピプラゾール、デクスメデトミジン、マトリン、及びMPEP、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される。いくつかの実施形態では、化合物は、デクスメデトミジンである。いくつかの実施形態では、NOニューロン活性を調節することは、結腸活性を誘導する。
【0012】
また、提供されるのは、カルプロフェン、メフェナム酸、フェナセチン、バルデコキシブ、フェノルドパムメシル酸塩、フルフェナジン塩酸塩、ブピバカインHCl、フェナゾピリジンHCl、アルベリンクエン酸塩、ニテンピラム、4-アミノ酪酸(GABA)、PF-3845、エスモロールHCl、シメチジン、コニバプタンHCl、(+)-MK-801マレイン酸塩、MK-0752、R04929097、ロスマリン酸、テオフィリン、アリピプラゾール、フロプロピオン、ラトレピルジン2HCl、ADX-47273、MPEP、ネホパムHCl、フェナゾピリジンHCl、エピネフリン、(+)-マトリン、フェノチアジン、ナプロキセンナトリウム、AMG-517、イソリキリチゲニン、ニルバジピン、プレドニゾン、及びシンバスタチンから選択される化合物と、(a)腸運動性障害を治療するために知られている薬剤、(b)腸運動性障害を治療するための説明書、及び(c)腸運動性障害を治療することに関連して化合物を投与するための指示書から選択される1つ以上と、を含む、キットである。
【0013】
いくつかの実施形態では、薬剤は、副交感神経興奮薬、運動促進剤、オピオイドアンタゴニスト、下痢止め、及び抗生物質から選択される。いくつかの実施形態では、薬剤は、ネオスチグミン、ベタネコール、メトクロプラミド、シサプリド、及びロペラミドから選択される。いくつかの実施形態では、化合物及び薬剤は、共包装される。いくつかの実施形態では、化合物及び薬剤は、共製剤化される。
【0014】
本開示の更に他の目的及び利点は、以下の詳細な説明から当業者によって容易に明らかになるであろう。ここでは、それは、単に最良のモードの例示として、好ましい実施形態のみが示され、説明される。実現されるように、本開示は、他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、本開示から逸脱することなく、様々な明らかな観点での修正が可能である。したがって、説明は、本質的に例示とみなされるものであり、限定とみなされるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を成す添付の図面は、いくつかの態様を例証し、説明とともに本開示の原理を説明する役割を果たす。
【0016】
【
図1A】
図1A~Hは、機能的ハイスルーアウトスクリーニングによる腸NOニューロン調節物質の特定を例示する代表的なデータを示す。具体的には、
図1Aは、エピネフリンに応答したステージ2の腸ガングリオイドcFOS発現のフローサイトメトリー定量化を示す。平均及びSEM誤差バーが示される。****:p値<0.0001。
図1B~Cは、ステージ1の腸ガングリオイドにおけるエピネフリンに応答した、多電極アレイ(MEA)分析(
図1B)及びニューロン発射の変化の定量化(
図1C)を示す。
図1Dは、HTSによる、ステージ2の腸ガングリオイドNOニューロンにおいてcFOS発現を誘導する候補神経調節物質の特定を示す。
図1Eは、HTSによる、ステージ1の2D ENS培養NOニューロンにおいてNO放出を誘導する候補神経調節物質の特定を示す。
図1Fは、cFOS誘導及びNO放出スクリーンにおいて特定されたヒットの予測される標的及びFDA承認ステータスを示す。
図1Gは、ステージ1の腸ガングリオイドのNOサブタイプにおける受容体遺伝子を促進する、全ての予測されるNOニューロン活性に関するモジュールスコアリングのsnRNA-seq分析バイオリンプロットを、他のニューロンと比較して示す。
図1Hは、受容体遺伝子カテゴリーを促進する、NOニューロン活性の個々のカテゴリーに関する平均モジュールスコアのsnRNA-seq分析ドットプロットを示す。
【
図2A】
図2A~Nは、NOニューロン特異的機能スクリーニングが結腸運動性の調節物質を特定することを例示する代表的なデータを示す。具体的には、
図2Aは、hESC由来のステージ2の腸ガングリオイドNOニューロンにおいてcFOS発現を誘導する化合物を特定するための、ハイスループットフローサイトメトリーベースのスクリーニングの概略図を示す。
図2Bは、腸NOニューロンcFOS誘導スクリーニング(
図1D、赤い点)で特定されたヒットの標的クラスを示す。
図1Cは、hESC由来のステージ1の2D ENS培養物においてNO放出を誘導する化合物を特定するための、ハイスループットカロリメトリーベースのスクリーニングの概略図を示す。
図2Dは、NO放出スクリーニング(
図1E、赤い点)で特定されたヒットの標的クラスを示す。(
図2B)と共通するタンパク質クラスは、アスタリスクで示される。
図1Eは、神経伝達物質受容体遺伝子ファミリーのモジュールスコアリングによる、神経伝達物質に対するサブクラスタ化されたステージ1のガングリオイド腸NOニューロンの予測される応答性を示す特徴プロットを示す。
図2Fは、hESC由来のステージ1及び一次ヒト腸窒素作動性ニューロンのサブタイプにおける、
図2B及び
図2Dに示される標的クラスに属する遺伝子の発現を、他の全てのニューロンと比較して示す。
図2Gは、共有されたタンパク質クラスを示す、選択されたスクリーニングヒットについての組み合わせたタンパク質標的分析を示す。カラーコードは、
図2B及び
図2Dの標的クラスと一致する。
図2Hは、エクスビボにおけるマウス結腸運動性に対する選択された候補ヒット((
図2G)に列挙される)の効果を試験する概略図を示す。
図2Iは、10分間にわたる近位-遠位軸に沿ったマウス結腸収縮の代表的な時空間マップを示す。
図2Jは、選択されたヒット化合物についての結腸移動運動複合体(CMMC)累積パーセンテージの75パーセンタイルでのCMMC区間(
図3A)の定量化を示す。
図2Kは、エクスビボでのマウス結腸運動性に対する選択された候補ヒットの効果を測定するための実験設計を示す。26分間にわたる近位-遠位軸に沿ったマウス結腸収縮の代表的な時空間マップ。3つの代表的な縦収縮事象(LCE)が条件ごとに示される(矢印)。
図2Lは、デクスメデトミジンの75パーセンタイルでのCMMC累積パーセンタイル及びCMMC間隔(2つの連続した収縮間の時間差)の定量化の図を示す。5つの対の未処置及び薬物処置されたマウス結腸の平均及びSEM誤差バーを示す。
図2Mは、時空間マップから測定された5つのデクスメデトミジン処置されたマウス結腸についての各6分間の処置条件内の結腸縦収縮事象(LCE)の総数を示す。*:p値<0.05。
図2Nは、各6分間の処置内の3つのLCEについて計算されたLCE持続時間の平均を示す(各時空間マップの初めに1つ、中間に1つ、及び終わりに1つ。(
図2K)を参照のこと)。データを、5つのデクスメデトミジン処置されたマウス結腸について示す。SEM誤差バーが示される。
【
図3A】
図3A~Cは、エクスビボでのマウス結腸運動性アッセイにおける選択されたHTSヒットの試験を例示する代表的なデータを示す。具体的には、
図3A~Bは、CMMC(
図3A)及び低速波(
図3B)の累積パーセンタイルの図を示す。
図3Cは、選択されたHTSヒットについての75パーセンタイルでの低速波の間の潜時の定量化を示す。左から:アリピプラゾール、デクスメデトミジン、ラトレピルジン、マトリン、MPEP、及びナプロキセン。一方向性SEM誤差バーを
図3A~Bに示す。
【
図4A】
図4A~Fは、エクスビボでのマウス結腸移動運動複合体(CMMC)に対する候補薬物の効果を例示する代表的なデータを示す。具体的には、
図4A~Fは、アリピプラゾール(
図4A~B)、マトリン(
図4C~D)、及びMPEP(
図4E~F)についてのCMMC累積パーセンタイル及び75パーセンタイルでのCMMC間隔の定量の図を示す。化合物を1μMで使用し、平均及び一方向性SEM誤差バーを
図4A、
図4C、及び
図4Eに示す。
【
図5A】
図5A~Bは、75パーセンタイルにおけるエクスビボでのマウス結腸CMMC及び低速波間隔に対する候補薬物の効果を例示する代表的なデータを示す。具体的には、
図5A~Bは、デクスメデトミジン、アリピプラゾール、マトリン、及びMPEPについての75パーセンタイルでのCMMC(
図5A)及び低速波(
図5B)間隔(2つの連続した収縮間の時間差)の定量を示す。各パネルにおいて、最上部の列(青色)は、対照結腸を示し、最下部の列(赤色)は、各対内の処置結腸を示す。化合物を1μMで使用した。
【
図6A】
図6A~Hは、エクスビボでのマウス結腸低速波に対する候補薬物の効果を例示する代表的なデータを示す。具体的には、
図A~Hは、アリピプラゾール(
図6A~B)、デクスメデトミジン(
図6C~D)、マトリン(
図6E~F)、及びMPEP(
図6G~H)についての低速波累積パーセンタイル及び75パーセンタイルでの低速波間の潜時の定量化の図を示す。化合物を1μMで使用し、平均及び一方向性SEM誤差バーを
図6A、
図6C、
図6E、及び
図6Gに示す。
【
図7A】
図7A~Pは、PDGFR阻害が腸NOニューロン誘導を促進することを例示する代表的なデータを示す。具体的には、
図7Aは、hESC由来の2D ENS培養物中のNOニューロンを濃縮する化合物を特定するための、ハイスループット薬理学的スクリーニングの概略図を示す。
図7Bは、構造的に類似したヒット間の共有されたタンパク質クラスを示す、HTS上位12ヒットの組み合わせたタンパク質標的分析を示す。
図7Cは、NOS1::GFP誘導効率に対するPP121処置期間の効果を示す。
図7Dは、15日目~20日目に、PP121の有無にかかわらず処置されたステージ1の腸ガングリオドにおけるNOS1及びニューロンTUBB3の免疫蛍光染色を示す。
図7Eは、ステージ1の対照(上部)及びPP121処置された(下部)腸ガングリオド培養物中に存在する細胞型のスプリットUMAPを示す。
図7Fは、PP121処置されたガングリオドルサブタイプにおける対照のみの腸ガングリオドサブタイプ転写シグネチャの平均モジュールスコアのドットプロットを示す。
図7Gは、ステージ1の対照(上部)及びPP121処置された(下部)腸ガングリオド培養物中に存在するニューロンサブタイプのsplut UMPAを示す。
図7Hは、PP121処置されたガングリオドニューロンサブタイプにおける対照のみのニューロンサブタイプ転写シグネチャの平均モジュールスコアのドットプロットを示す。
図7Iは、対照におけるNOニューロンサブタイプの分布を、PP121処置されたステージ1の腸ガングリオド培養物と比較して示す。
図7Jは、ステージ1の対照(上部)及びPP121処置された(下部)腸ガングリオド培養物中に存在するサブクラスタ化されたNOサブタイプのsplut UMAPを示す。
図7Kは、PP121処置されたガングリオドNOニューロンサブタイプにおける対照のみのNOニューロンサブタイプ転写シグネチャの平均モジュールスコアのドットプロットを示す。
図7Lは、D15サブクラスタ化された腸クレストスフィアにおけるERBB、PDGFR、及びVEGFRの発現を示す特徴プロットを示す。
図7Mは、受容体チロシンキナーゼ(RTK)天然アゴニスト、及びNOニューロンを濃縮する上位ヒットPP121を含む選択された薬理学的アンタゴニストの概略図を示す。
図7Nは、ステージ1の腸ガングリオドNOニューロン誘導に対するRTKリガンド処置の効果を示す。
図7O及び
図7Pは、フローサイトメトリーによって測定される、ステージ1の腸ガングリオドNOニューロン濃縮に対する、D15腸クレストスフィアにおけるPDGFRA(
図7O)及びPDGFRB(
図7P)のノックアウトの効果を示す。
【
図8A】
図8A~Dは、小分子ハイスループットスクリーニングが、hESC由来のENS培養物においてNOニューロンを濃縮する化合物を特定することを例示する代表的なデータを示す。具体的には、
図8Aは、ステージ1の2D ENS培養物中のNOニューロンを濃縮する候補化合物の特定を示す。
図8Bは、NOS1+細胞のパーセンテージにおいて8.0倍超の増加を伴うHTSヒットを示す。
図8C及び
図8Dは、NOS1発現のPP121誘導が、用量及び時間に依存することを示す。培養物を、D15~D20において異なるPP121濃度(
図8C)で、又は異なる時間枠にわたって2μMのPP121で処置した(
図8D)場合の、ステージ1の腸ニューロンにおけるNOS1発現を示す代表的なフロー図。
【
図9-1】
図9A~Fは、PP121処置がニューロンの全体的な細胞の多様性に影響を与えることなく、NOニューロンを濃縮することを例示する代表的なデータを示す。具体的には、
図9Aは、対照における細胞型の分布を、PP121処置されたステージ1の腸ガングリオイド培養物と比較して示す。
図9Bは、一致した対照における平均遺伝子発現の相関を、PP121処置された腸ガングリオイド細胞型と比較して示す。
図9Cは、対照におけるニューロンサブタイプの分布を、PP121処置されたステージ1の腸ガングリオイド培養物と比較して示す。
図9Dは、一致した対照における平均遺伝子発現の相関を、PP121処置された腸ガングリオイドニューロンサブタイプと比較して示す。
図9Eは、対照におけるNOニューロンサブタイプの分布を、PP121処置されたステージ1の腸ガングリオイド培養物と比較して示す。
図9Fは、一致した対照における平均遺伝子発現の相関を、PP121処置された腸ガングリオイドNOニューロンサブタイプと比較して示す。
【
図10A】
図10A~Eは、ヒト表面マーカー抗体スクリーニングがNOニューロン特異的表面マーカーを特定することを例示する代表的なデータを示す。具体的には、
図10Aは、フローサイトメトリーベースのハイスループット抗体スクリーニングによって、濃縮された腸NOニューロン培養物を使用して、それらの特異的表面マーカーを特定する概略図を示す。
図10Bは、少なくとも50%のNOS1+細胞で発現された、すなわち、50%超の感受性(上部)を示す表面マーカーを、NOS1+細胞に対するそれらの特異性(全ての染色された細胞の少なくとも70%がNOS1+、すなわち、70%超の特異性、中間である)に基づいてフィルタリングしたことを示す。
図10Cは、腸NOニューロンを特定するための最高特異性並びに感度を有する表面マーカースクリーニング上位ヒットを示す。
図10Dは、対照及びPP121処置されたNOニューロンサブタイプにおける表面マーカースクリーンヒットの、発現を示す(左)バイオリンプロットスタック及びスケーリングされた平均発現(右)を、他のニューロンと比較して示す。
図10Eは、成人ヒトNOニューロンサブタイプにおける表面マーカースクリーンヒットの発現を、他のニューロンと比較して示すバイオリンプロットスタックを示す。
図10Fは、成人ヒト一次結腸組織におけるニューロンマーカーTUBB3、NOS1、及びCD47の発現についての免疫蛍光分析を示す。腸筋神経叢ガングリオンが示される。矢印は、CD47及びNOS1の共局在化を示す。
図10Gは、潜在的な汎ENS細胞マーカーとして全細胞の少なくとも70%を染色した表面マーカーを示す。
図10Hは、PP121処置された試料及び未処置試料におけるステージ1の腸ガングリオイドクラスタにおけるCD24発現を示す。
図10Iは、腸筋神経叢ガングリオンを示す、ヒト一次結腸切片におけるCD24及びニューロンマーカーTUBB3発現の代表的な免疫蛍光分析を示す。
【
図11A】
図11A~Cは、成体マウス結腸におけるhESC由来のガングリオドの広範な生着を例示する代表的なデータを示す。具体的には、
図11Aは、hESC由来のステージ1の腸ガングリオイドのマウス近位結腸への移植を示す概略図を示す。
図11Bは、赤色のヒト細胞質マーカーSC121の発現によって示されるように、hESC由来のステージ1の腸ガングリオイド細胞のマウス結腸の全長への生着を示す。
図11Cは、移植8週間後のNos1-/-マウス結腸におけるヒト細胞質タンパク質SC121、及びNOニューロンマーカーNOS1の免疫組織化学分析を示す。
【
図12】成体マウス結腸に生着したhESC由来腸ガングリオドを例示する代表的なデータを示す。具体的には、Nos1-/-マウス結腸(シクロスポリンAで処置されていない、操作されていない、上部)における移植後8週間(下部)におけるニューロンTUBB3、ヒト細胞質タンパク質SC121、及びNOニューロンマーカーNOS1の免疫組織化学分析を示す。紫色の矢印は、NOS1+細胞を指す。
【0017】
本開示の更なる利点は、以下の説明に部分的に記載され、部分的に、説明から明らかになるか、又は本開示の実施によって学ぶことができる。本開示の利点は、添付の特許請求の範囲で特に示される要素及び組み合わせによって実現及び達成されるであろう。前述の概要及び以下の詳細な説明の両方は両方とも、単に例示的及び説明的であり、特許請求される本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
本発明は、本開示の以下の詳細な説明及びその中に含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解することができる。
【0019】
本化合物、組成物、物品、システム、デバイス、及び/又は方法が開示及び記載される前に、それらは、別段の指定がない限り、特定の合成方法に限定されるものではなく、又は別段の指定がない限り、特定の試薬に限定されるものではなく、それ自体が、当然、変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載するためのものであるにすぎず、限定的であることは意図されないこともまた理解されたい。本明細書に記載のものと同様又は同などのいかなる方法及び材料も、本開示の実施形態の実施又は試験で使用され得るが、例となる方法及び材料が、ここで説明される。
【0020】
本発明の実施形態は、システム法定クラスなどの特定の法定クラスで説明及び請求することができるが、これは便宜上のみであり、当業者は、本発明の各実施形態がいかなる法定クラスでも説明及び請求することができることを理解するであろう。別段明確に述べられない限り、本明細書において説明されるいかなる方法又は実施形態も、そのステップが特定の順序で遂行されることを要求するものとして解釈されるようには一切意図されない。したがって、ステップを特定の順序に限定すべきことが請求項又は説明において、方法クレームによって具体的に定められていない場合には、いかなる点においても、順序を定めるようには意図されていない。このことは、ステップ若しくは作業フローの構成に関する論理事項、文法構成若しくは句読法に由来する一般的意味、又は本明細書に記載される実施形態の数若しくは種類を含め、あらゆる考え得る非明示的な解釈基準についても同様である。
【0021】
本出願を通して、様々な刊行物が参照される。本明細書に関連する最新技術をより完全に記載するために、これらの刊行物の開示は、参照により本出願に組み込まれる。開示された参照文献はまた、参照が依拠される文章で論じられているそれらに含まれる材料について、参照により本明細書に個々に及び具体的に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本開示が先行発明によってそのような開示に先行する権利を有さないことを認めるものと解釈されるべきではない。更に、本明細書に提供される刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、独立した確認を必要とする場合がある。
【0022】
A.定義
以下に、本発明を説明するために使用される様々な用語の定義を列挙する。これらの定義は、特定の場合において個別に又はより大きな群の一部として限定されない限り、本明細書の全体を通じて使用されるとき、用語に適用される。
【0023】
本明細書で使用される場合、「a」又は「an」という用語は、文脈が別段の指示をしない限り、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味する。本明細書及び特許請求の範囲で使用される「及び/又は」という語句は、そのように結合された要素の「いずれか又は両方」、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」句によって具体的に特定される要素以外の他の要素は、それとは反対の明確な指示がない限り、それらの具体的に特定される要素に関連するか、又は関連しないかにかかわらず、任意選択的に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む」などのオープンエンドの言語と併せて使用される場合、様々な実施形態では、BなしのA(任意選択的にB以外の要素を含む)を指すことができ、別の実施形態では、AなしのB(任意選択的にA以外の要素を含む)を指すことができ、更に別の実施形態では、AとBの両方(任意選択的に他の要素を含む)を指すことができる。
【0024】
本明細書で使用される「又は」という用語は、排他性の用語、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、又は「まさにそのうちの1つ」が先行する場合、排他的な選択肢(すなわち、「一方又は他方であるが、両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるべきである。
【0025】
本明細書で使用される場合、「含むこと(comprising)」(並びに「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprised)」などの任意の形態の含む)、「有すること(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」などの任意の形態の有する)、「含むこと(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)などの任意の形態の含む)、又は「含有すること(containing)」(並びに「含有する(contains」及び「含有する「contain」などの任意の形態の含有する)という用語は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法ステップを除外しない。
【0026】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、数値が近似値であり、小さな変動が、開示される実施形態の実践に著しく影響しないであろうことを意味する。数値制限が使用される場合、文脈によって別段の指示がない限り、「約」は、数値が±10%変動し得、開示された実施形態の範囲内に留まり得ることを意味する。
【0027】
本明細書で使用される略語は、化学的及び生物学的分野内のそれらの従来の意味を有する。本明細書に記載の化学構造及び式は、化学的分野に公知の化学原子価の標準規則に従って構築される。
【0028】
本明細書及び結論の特許請求の範囲における組成物中の特定の要素又は構成要素の重量部への言及は、要素又は構成要素と、重量部が表される組成物又は物品中の任意の他の要素又は成分との間の重量関係を示す。したがって、構成要素Xの2重量部及び構成要素Yの5重量部を含有する化合物において、X及びYは、2:5の重量比で存在し、追加の構成要素が化合物中に含有されるかどうかにかかわらず、そのような比率で存在する。
【0029】
構成要素の重量パーセント(重量%)は、別途特に記載されていない限り、その構成要素が含まれる製剤又は組成物の総重量に基づく。
【0030】
本明細書で使用される場合、「任意選択的な」又は「任意選択的に」という用語は、その後に記載される事象又は状況が、発生する場合又は発生しない場合があること、及び当該事象又は状況が、発生する例と発生しない例が記載に含まれることを意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「診断された」という用語は、当業者、例えば、医師による身体検査を受け、診断され得るか、又は本明細書に開示される化合物、組成物、若しくは方法によって治療され得る状態を有することが見出されたことを意味する。開示される方法のいくつかの実施形態では、対象は、投与ステップの前に、例えば、腸運動性障害などのNOニューロン活性と関連付けられる障害の治療の必要性があると診断されている。本明細書で使用される場合、「障害のための治療を必要とすることが特定される」などの語句は、障害の治療の必要性に基づいて対象を選択することを指す。特定は、いくつかの実施形態では、診断を行う人とは異なる人によって実行され得ることが企図される。更なる実施形態では、投与は、その後に投与を行った者によって行うことができることも企図される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「投与すること」及び「投与」という用語は、対象に薬学的製剤を提供する任意の方法を指す。そのような方法は、当業者に周知であり、経口投与、経皮投与、吸入による投与、鼻腔投与、局所投与、膣内投与、眼内投与、耳内投与、脳内投与、直腸投与、並びに静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、及び皮下投与などの注射用のものを含む非経口投与を含むが、これらに限定されない。投与は、連続的であっても間欠的であってもよい。様々な実施形態では、調製物は、治療的に投与することができ、すなわち、既存の疾患又は状態を治療するために投与することができる。更なる様々な実施形態では、調製物は、予防的に投与することができ、すなわち、疾患又は状態の予防のために投与することができる。
【0033】
本明細書で使用される「接触する」という用語は、化合物が標的の活性(例えば、受容体、細胞など)に直接的(すなわち、標的自体との相互作用による)又は間接的(すなわち、標的の活性が依存する別の分子、補因子、因子、又はタンパク質との相互作用による)のいずれかで影響を与えることができるような方法で、開示された化合物及び細胞、標的受容体、又は他の生物学的実体を一緒にすることを指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「IC50」は、タンパク質、サブユニット、オルガネル、リボ核タンパク質などを含む、生物学的プロセス、又はプロセスの構成要素の50%の阻害に必要な物質(例えば、化合物又は薬物)の濃度を指すように意図されている。いくつかの実施形態では、IC50は、本明細書の他の場所で更に定義されるように、インビボでの50%の阻害に必要な物質の濃度を指すことができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「EC50」は、タンパク質、サブユニット、オルガネル、リボ核タンパク質などを含む、生物学的プロセス、又はプロセスの構成要素の半分最大応答(すなわち、最大応答の50%)をもたらす物質(例えば、化合物又は薬物)の濃度を指すよう意図されている。いくつかの実施形態では、EC50は、本明細書の他の場所で更に定義されるように、インビボで最大応答の50%を達成するために必要な物質の濃度を指すことができる。
【0036】
本開示による化合物は、アルコキシ、アミノ酸などの基をプロドラッグ形成部分として使用して、ヒドロキシル又はアミノ官能基でプロドラッグを形成し得る。例えば、ヒドロキシメチル位置は、一リン酸塩、二リン酸塩、又は三リン酸塩を形成し得、この場合も同様に、これらのリン酸塩は、プロドラッグを形成し得る。そのようなプロドラッグ誘導体の調製は、様々な文献ソースで論じられている(例は次のとおりである:Alexander et al.,J.Med.Chem.1988,31,318、Aligas-Martin et al.,PCT WO2000/041531,p.30)。これらの誘導体を調製する際に変換される窒素官能基は、本開示の化合物の窒素原子のうちの1つ(又は複数)である。
【0037】
本明細書に開示される化合物の「誘導体」は、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、重水素化形態、放射性標識化形、異性体、溶媒和物、及びそれらの組み合わせである。この文脈で言及される「組み合わせ」とは、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、重水素化形態、放射性標識化形、異性体、及び溶媒和物の群のうちの少なくとも2つに該当する誘導体を指す。放射性標識化形の例として、トリチウム、リン-32、ヨウ素-129、炭素-11、フッ素-18などで標識された化合物が挙げられる。
【0038】
「脱離基」という用語は、結合電子を取り込んで、安定した種として置き換えることができる電子吸引能力を有する原子(又は原子群)を指す。適切な脱離基の例には、トリフレート、メシル酸塩、トシル酸塩、ブロシル酸塩、及びハロゲン化物を含むスルホン酸エステルが含まれる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むと考えられる。広い実施形態では、許容される置換基としては、有機化合物の非環式及び環式、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、並びに芳香族及び非芳香族置換基が挙げられる。例示的な置換基は、例えば、以下に記載されるものを含む。許容される置換基は、1つ以上で、同じ又は異なる適切な有機化合物であり得る。本開示の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、及び/又はヘテロ原子の価を満たす本明細書に記載の有機化合物の任意の許容される置換基を有し得る。本開示は、有機化合物の許容される置換基によっていかなる方法でも限定されることを意図していない。また、「置換」又は「で置換された」という用語は、そのような置換が置換された原子及び置換基の許容された価に従い、置換が安定した化合物、例えば、再配置、環化、排除などによって自発的に変換を受けない化合物をもたらすという暗黙の条件を含む。また、いくつかの実施形態では、それとは反対に明示的に示されない限り、個々の置換基は、更に任意に置換され得る(すなわち、更に置換されるか、又は置換されない)。
【0040】
様々な用語を定義する際に、「A1」、「A2」、「A3」、及び「A4」は、様々な特定の置換基を表す一般的な記号として本明細書で使用される。これらのシンボルは、本明細書に開示されるものに限定されない、任意の置換基であり得、一例において、それらがある特定の置換基であると定義される場合、別の例では、それらは、いくつかの他の置換基として定義することができる。
【0041】
本明細書で使用される「ハロ」及び「ハロゲン」という用語は、フッ素(フルオロ、-F)、塩素(クロロ、-Cl)、臭素(ブロモ、-Br)、及びヨウ素(ヨウ素、-I)から選択される原子を指す。
【0042】
「脂肪族」又は「脂肪族基」という用語は、本明細書で使用される場合、直鎖(すなわち、非分岐)、分岐、又は環状(縮合、架橋、及びスピロ融合多環式を含む)であってもよく、完全飽和であってもよいか、又は不飽和の1つ以上の単位を含有してもよいが、芳香族ではない炭化水素部分を示す。特に明記しない限り、脂肪族基は、1~20個の炭素原子を含有する。脂肪族基には、線状又は分岐状のアルキル、アルケニル、及びアルキニル基、並びに(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、又は(シクロアルキル)アルケニルなどのそれらのハイブリッドが含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、別段の定めがない限り、1~6個の炭素原子を有する、一価の飽和、直鎖又は分岐鎖の炭化水素ラジカルを指す。アルキルラジカルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル、sec-イソペンチル、ヘキシル、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメンティブタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基は、置換又は非置換であり得る。例えば、アルキル基は、本明細書に記載されるように、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホオキソ、又はチオールを含むが、これらに限定されない、1つ以上の基で置換することができる。「低級アルキル」基は、1~6個(例えば、1~4つ)の炭素原子を含有するアルキル基である。アルキル基という用語は、C1アルキル、C1-C2アルキル、C1-C3アルキル、C1-C4アルキル、C1-C5アルキル、C1-C6アルキル、C1-C7アルキル、C1-C8アルキル、C1-C9アルキル、C1-C10アルキルなどであってもよく、最大でC1-C24アルキルを含む。
【0044】
本明細書を通して、「アルキル」は、一般に、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方を指すために使用されるが、しかしながら、置換アルキル基はまた、本明細書において、アルキル基上の特定の置換基(複数可)を特定することによって具体的に言及される。例えば、「ハロゲン化アルキル」又は「ハロアルキル」という用語は、1つ以上のハロゲン化物、例えば、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素で置換されたアルキル基を具体的に指す。代替として、「モノハロアルキル」という用語は、具体的には、単一のハロゲン化物、例えば、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素で置換されたアルキル基を指す。「ポリハロアルキル」という用語は、具体的には、2つ以上のハロゲン化物で独立して置換されているアルキル基を指し、すなわち、各ハロゲン化物置換基は、別のハロゲン化物置換基と同じハロゲン化物である必要はなく、ハロゲン化物置換基の複数の場合も、同じ炭素上にある必要はない。「アルコキシアルキル」という用語は、具体的には、以下に記載されるように、1つ以上のアルコキシ基で置換されたアルキル基を指す。「アミノアルキル」という用語は、具体的には、1つ以上のアミノ基で置換されたアルキル基を指す。「ヒドロキシアルキル」という用語は、具体的には、1つ以上のヒドロキシ基で置換されたアルキル基を指す。「アルキル」が一例で使用され、「ヒドロキシアルキル」などの特定の用語が別の例で使用される場合、「アルキル」という用語が「ヒドロキシアルキル」などの特定の用語を指さないことを意味するものではない。
【0045】
この慣行は、本明細書に記載される他の基にも使用される。すなわち、「シクロアルキル」などの用語は、非置換及び置換シクロアルキル部分の両方を指すが、加えて、置換部分は、本明細書で特異的に特定することができ、例えば、特定の置換シクロアルキルは、例えば、「アルキルシクロアルキル」と称され得る。同様に、置換アルコキシは、例えば、「ハロゲン化アルコキシ」と具体的に称されてもよく、特定の置換アルケニルは、例えば、「アルケニルアルコール」であり得る、などである。繰り返しになるが、「シクロアルキル」などの一般的な用語、及び「アルキルシクロアルキル」などの特定の用語を使用する慣行は、一般的な用語が特定の用語も含まないことを意味するものではない。
【0046】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する構造式を有する2~24つの炭素原子の炭化水素基である。(A1A2)C=C(A3A4)などの非対称構造は、E異性体とZ異性体の両方を含むことが意図される。これは、非対称アルケンが存在するか、又は結合記号C=Cによって明示的に示される本明細書の構造式において推定され得る。アルケニル基は、本明細書に記載されるように、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホオキソ、又はチオールを含むが、これらに限定されない1つ以上の基で置換され得る。
【0047】
本明細書で使用される「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する構造式を有する2~24個の炭素原子の炭化水素基である。アルキニル基は、本明細書に記載されるように、非置換であるか、又はアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジ化物、ニトロ、シリル、スルホオキソ、若しくはチオールを含むが、これらに限定されない1つ以上の基で置換することができる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキル」という用語は、少なくとも1つのヘテロ原子を含有するアルキル基を指す。好適なヘテロ原子には、これらに限定されないがO、N、Si、P、及びSが含まれ、窒素原子、リン原子、及び硫黄原子は、任意選択的に酸化され、窒素ヘテロ原子は、任意選択的に四級化される。ヘテロアルキルは、アルキル基について上記で定義されるように置換され得る。
【0049】
「ハロアルキル」という用語は、モノ、ポリ、及びペルハロアルキル基を含み、ハロゲンは、独立して、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素から選択される。
【0050】
「アルコキシ」は、酸素リンカー(-O(アルキル))を介して別の部分に結合しているアルキル基である。非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシが挙げられる。
【0051】
「ハロアルコキシ」は、例えば、限定されないが、-OCHCF2又は-OCF3などの酸素原子を介して別の部分に結合しているハロアルキル基である。
【0052】
「9~10員カルボシクリル」という用語は、飽和又は部分不飽和である9員又は10員単環式、二環式(例えば、架橋又はスピロ二環式環)、多環式(例えば、三環式)、又は縮合炭化水素環系を意味する。「9~10員カルボシクリル」という用語はまた、1つ以上の芳香族又は部分飽和炭化水素環(例えば、ジヒドロインデニル及びテトラヒドロナフタレニル)に縮合される飽和又は部分不飽和炭化水素環を含む。架橋二環式シクロアルキル基としては、限定されないが、ビシクロ[4.3.1]デカニルなどが挙げられる。スピロ二環式シクロアルキル基としては、例えば、スピロ[3.6]デカニル、スピロ[4.5]デカニル、スピロ[4.4]ノニルなどが挙げられる。縮合シクロアルキル環としては、例えば、デカヒドロナフタレニル、ジヒドロインデニル、デカヒドロアズレニル、オクタヒドロアズレニル、テトラヒドロナフタレニルなどが挙げられる。特定された場合、カルボシクリル上の任意選択的な置換基(例えば、任意に置換されたシクロアルキルの場合)は、任意の置換可能な位置に存在し得、例えば、カルボシクリル基が結合している位置を含むことが理解されるであろう。
【0053】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、少なくとも3つの炭素原子からなる非芳香族炭素系環である。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ノルボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、上記で定義されたシクロアルキル基の一種であり、「シクロアルキル」という用語の意味の中に含まれ、環の炭素原子のうちの少なくとも1つが、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄、又はリンなどのヘテロ原子で置き換えられている。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、置換又は非置換であり得る。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、本明細書に記載のアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホオキソ、又はチオールを含むが、これらに限定されない1つ以上の基で置換することができる。様々な態様では、シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、単環式、二環式(例えば、架橋、例えば、ビシクロ[4.3.1]デカニルなど、又はスピロ、例えば、スピロ[3.6]デカニル、スピロ[4.5]デカニル、スピロ[4.4]ノニルなど)、多環式(例えば、三環式)、又は飽和若しくは部分的に不飽和である縮合炭化水素環系(例えば、デカヒドロナフタレニル、ジヒドロインデニル、デカヒドロアズレニル、オクタヒドロアズレニル、テトラヒドロナフタレニル)であり得る。
【0054】
本明細書で使用される「シクロアルケニル」という用語は、少なくとも3つの炭素原子で構成され、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、すなわち、C=Cを含有する非芳香族炭素系環である。シクロアルケニル基の例としては、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、ノルボルネニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、上記で定義されたシクロアルケニル基の一種であり、「シクロアルケニル」という用語の意味の中に含まれ、環の炭素原子のうちの少なくとも1つが、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄、又はリンなどのヘテロ原子で置き換えられる。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、置換又は非置換であり得る。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、本明細書に記載のアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホオキソ、又はチオールを含むが、これらに限定されない1つ以上の基で置換することができる。
【0055】
本明細書で使用される「シクロアルキニル」という用語は、少なくとも7つの炭素原子で構成され、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する非芳香族炭素系環である。シクロアルキニル基の例としては、シクロヘプチニル、シクロオクチニル、シクロノニニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロシクロアルキニル」という用語は、上記で定義されたシクロアルケニル基の一種であり、「シクロアルキニル」という用語の意味の中に含まれ、環の炭素原子のうちの少なくとも1つが、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄、又はリンなどのヘテロ原子で置き換えられる。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、置換又は非置換であり得る。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、本明細書に記載のアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホオキソ、又はチオールを含むが、これらに限定されない1つ以上の基で置換することができる。
【0056】
本明細書で使用される「複素環」又は「ヘテロシクリル」という用語は、互換的に使用することができ、環メンバーのうちの少なくとも1つが炭素以外である単一及び多環式芳香族又は非芳香族環系を指す。したがって、この用語は、「ヘテロシクロアルキル」、「ヘテロアリール」、「二環式複素環」、及び「多環式複素環」を含むが、これらに限定されない。複素環は、単環式、二環式(例えば、スピロ又は架橋)、多環式、又は飽和若しくは部分的に飽和した縮合系であり得る。複素環には、ピリジン、ピリミジン、フラン、チオフェン、ピロール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、オキサゾール(1,2,3-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、及び1,3,4-オキサジアゾールを含む)、チアジアゾール(1,2,3-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、及び1,3,4-チアジアゾールを含む)、トリアゾール(1,2,3-トリアゾール、1,3,4-トリアゾールを含む)、テトラゾール(1,2,3,4-テトラゾール及び1,2,4,5-テトラゾールを含む)、ピリダジン、ピラジン、トリアジン(1,2,4-トリアジン及び1,3,5-トリアジンを含む)、テトラジン(1,2,4,5-テトラジンを含む)、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、アゼチジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが含まれる。ヘテロシクリル基という用語はまた、C2ヘテロシクリル、C2-C3ヘテロシクリル、C2-C4ヘテロシクリル、C2-C5ヘテロシクリル、C2-C6ヘテロシクリル、C2-C7ヘテロシクリル、C2-C8ヘテロシクリル、C2-C9ヘテロシクリル、C2-C10ヘテロシクリル、C2-C11ヘテロシクリルなどであってもよく、最大でC2-C18ヘテロシクリルを含む。例えば、C2ヘテロシクリルは、アジリジニル、ジアゼチジニル、ジヒドロジアゼチル、オキシラニル、チアラニルなどを含むがこれらに限定されない、2つの炭素原子及び少なくとも1つのヘテロ原子を有する基を含む。代替として、例えば、C5ヘテロシクリルは、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ジアゼパニル、ピリジニルなどを含むがこれらに限定されない、5つの炭素原子及び少なくとも1つのヘテロ原子を有する基を含む。ヘテロシクリル基は、化学的に可能な場合、環内のヘテロ原子、又はヘテロシクリル環を含む炭素のうちの1つのいずれかを介して結合され得ることが理解される。
【0057】
本明細書で使用される「二環式複素環」又は「二環式ヘテロシクリル」という用語は、環メンバーのうちの少なくとも1つが炭素以外である環系を指す。二環式ヘテロシクリルは、芳香環が別の芳香環と縮合している環系、又は芳香環が非芳香環と縮合している環系を包含する。二環式ヘテロシクリルは、ベンゼン環が、1、2、又は3つの環ヘテロ原子を含有する5員若しくは6員環に縮合されるか、又はピリジン環が、1、2、又は3つの環ヘテロ原子を含有する5員若しくは6員環に縮合される環系を包含する。二環式複素環基としては、インドリル、インダゾリル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジニル、ベンゾフラニル、キノリニル、キノキサリニル、1,3-ベンゾジオキソリル、2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシニル、3,4-ジヒドロ-2H-クロメニル、1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-3-イル;1H-ピロロ[3,2-b]ピリジン-3-イル;及び1H-ピラゾロ[3,2-b]ピリジン-3-イルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本明細書で使用される「ヘテロシクロアルキル」という用語は、3~8つの原子の単環並びに二環式及び三環式環系を含む、脂肪族、部分不飽和又は完全飽和の3~14員環系を指す。ヘテロシクロアルキル環系は、酸素、窒素、及び硫黄から独立して選択される1~4つのヘテロ原子を含み、窒素及び硫黄ヘテロ原子は、任意選択的に酸化され得、窒素ヘテロ原子は、任意選択的に置換され得る。代表的なヘテロシクロアルキル基としては、ピロリジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、及びテトラヒドロフリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
「9員縮合ヘテロシクリル」という用語は、少なくとも1つの酸素ヘテロ原子、及び任意選択的に、N、O、及びSから独立して選択される2~4つの追加のヘテロ原子を含む9員飽和又は部分不飽和縮合単環式複素環を意味する。「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環基」、「複素環部分」、及び「複素環ラジカル」という用語は、本明細書で互換的に使用される。ヘテロシクリル環は、安定な構造をもたらす任意のヘテロ原子又は炭素原子でそのペンダント基に結合され得る。少なくとも1つの酸素原子を含む縮合飽和又は部分不飽和複素環式ラジカルの例としては、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロフロピリジニル、オクタヒドロベンゾフラニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。任意選択的に置換されていると特定されている場合、ヘテロシクリル上の置換基(例えば、任意選択的に置換されているヘテロシクリルの場合)は、任意の置換可能な位置に存在し得、例えば、ヘテロシクリル基が結合している位置を含む。
【0060】
本明細書で使用される「芳香族基」という用語は、分子の平面の上及び下に非局在化π電子の環状雲を有する環構造を指し、ここで、π雲は、(4n+2)π電子を含有する。芳香族性の更なる考察は、参照により本明細書に組み込まれる、Morrison and Boyd,Organic Chemistry,(5th Ed.,1987),第13章「芳香族性」,477-497ページに見出される。「芳香族基」という用語は、アリール基及びヘテロアリール基の両方を含む。
【0061】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、ベンゼン、ナフタレン、フェニル、ビフェニル、アントラセンなどを含むが、これらに限定されない、任意の炭素系芳香族基を含有する基である。アリール基は、置換又は非置換であり得る。アリール基は、本明細書に記載のアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、-NH2、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジ化物、ニトロ、シリル、スルホオキソ、又はチオールを含むが、これらに限定されない1つ以上の基で置換することができる。「ビアリール」という用語は、特定のタイプのアリール基であり、「アリール」の定義に含まれる。更に加えて、アリール基は、単一の環構造であり得るか、又は縮合環構造であるか、又は炭素-炭素結合などの1つ以上の架橋基を介して結合している複数の環構造を含むことができる。例えば、ビアリールは、ナフタレンのように縮合環構造を介して一緒に結合しているか、又はビフェニルのように1つ以上の炭素-炭素結合を介して結合している2つのアリール基であり得る。
【0062】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、芳香族基の環内に組み込まれる少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族基を指す。ヘテロ原子の例としては、窒素、酸素、硫黄、及びリンが挙げられるが、これらに限定されず、N-酸化物、硫黄酸化物、及び二酸化物は、許容されるヘテロ原子置換である。ヘテロアリール基は、置換又は非置換であり得る。ヘテロアリール基は、これらに限定されないが、本明細書に記載のアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホオキソ、又はチオールを含む1つ以上の基で置換することができる。ヘテロアリール基は、単環式、又は代替として、縮合環系であり得る。ヘテロアリール基としては、フリル、イミダゾリル、ピリミジニル、テトラゾリル、チエニル、ピリジニル、ピロリル、N-メチルピロリル、キノリニル、イソキノリニル、ピラゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンゾオキソリル、ベンゾチオフェニル、インドリル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピラゾロピリジニル、及びピラゾロピリミジニルが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基の更なる限定されない例としては、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、チオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、ベンゾ[d]オキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾリル、キノリニル、キナゾリニル、インダゾリル、イミダゾ[1,2-b]ピリダジニル、イミダゾ[1,2-a]ピラジニル、ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾリル、ベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾリル、及びピリド[2,3-b]ピラジニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
「5員又は6員のヘテロアリール」という用語は、N、O、及びSから選択される1~4つのヘテロ原子を含有する5員又は6員の芳香族ラジカルを指す。非限定的な例としては、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニルなどが挙げられる。特定される場合、ヘテロアリール基上の任意選択的な置換基は、任意の置換可能な位置に存在し得、例えば、ヘテロアリールが結合される位置を含む。
【0064】
本明細書で使用される「アルデヒド」という用語は、式-C(O)Hで表される。本明細書を通して、「C(O)」は、カルボニル基、すなわち、C=Oの速記表記である。
【0065】
本明細書で使用される「アミン」又は「アミノ」という用語は、式-NA1A2によって表され、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載される水素又はアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、又はヘテロアリール基であり得る。アミノの具体例は、-NH2である。
【0066】
本明細書で使用される「アルキルアミノ」という用語は、式-NH(-アルキル)で表され、アルキルは、本明細書に記載のaである。代表的な例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、(sec-ブチル)アミノ基、(tert-ブチル)アミノ基、ペンチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、(tert-ペンチル)アミノ基、ヘキシルアミノ基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書で使用される「ジアルキルアミノ」という用語は、式-N(-アルキル)2で表され、アルキルは、本明細書に記載されるaである。代表的な例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ(sec-ブチル)アミノ基、ジ(tert-ブチル)アミノ基、ジペンチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、ジ(tert-ペンチル)アミノ基、ジヘキシルアミノ基、N-エチル-N-メチルアミノ基、N-メチル-N-プロピルアミノ基、N-エチル-N-プロピルアミノ基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書で使用される「カルボン酸」という用語は、式-C(O)OHで表される。
【0069】
本明細書で使用される「エステル」という用語は、式-OC(O)A1又は-C(O)OA1によって表され、式中、A1は、本明細書に記載のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、又はヘテロアリール基であり得る。本明細書で使用される「ポリエステル」という用語は、式-(A1O(O)C-A2-C(O)O)a-又は-(A1O(O)C-A2-OC(O))a-で表され、式中、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、又はヘテロアリール基であり得、「a」は、1~500の整数である。「ポリエステル」は、少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物と少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物との間の反応によって生成される基を記述するために使用される用語である。
【0070】
本明細書で使用される「エーテル」という用語は、式A1OA2で表され、式中、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、又はヘテロアリール基であり得る。本明細書で使用される「ポリエーテル」という用語は、式-(A1O-A2O)a-によって表され、式中、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、又はヘテロアリール基であり得、「a」は、1~500の整数である。ポリエーテル基の例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びポリブチレンオキシドが挙げられる。
【0071】
本明細書に記載されるように、本開示の化合物は、「任意に置換された」部分を含有し得る。一般に、「置換された」という用語は、「任意に」という用語が前に付されるか否かにかかわらず、指定された部分の1つ以上の水素が好適な置換基で置き換えられることを意味する。別段の指示がない限り、「任意に置換された」基は、基の各置換可能な位置に好適な置換基を有してもよく、任意の所与の構造における2つ以上の位置が、特定の基から選択される2つ以上の置換基で置換され得る場合、置換基は、全ての位置で同じであっても異なってもよい。本発明によって想定される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定な又は化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。また、ある特定の実施形態では、反対に明示的に示されない限り、個々の置換基は、更に任意に置換され得る(すなわち、更に置換されるか、又は非置換である)。
【0072】
いくつかの実施形態では、化合物の構造は、以下の式:
によって表すことができ、以下の式と同等であると理解され、
式中、nは、典型的には整数である。すなわち、R
nは、5つの独立した置換基、R
n(a)、R
n(b)、R
n(c)、R
n(d)、R
n(e)を表すと理解される。各々のそのような場合では、5つのR
nの各々は、水素又は列挙された置換基であり得る。「独立した置換基」とは、各R置換基が独立して定義され得ることを意味する。例えば、1つの例において、R
n(a)がハロゲンである場合、その例においては、R
n(b)は、必ずしもハロゲンとは限らない。
【0073】
なおも更なるいくつかの実施形態では、化合物の構造は、以下の式:
によって表すことができ、式中R
yは、例えば、A
1、A
2、及びA
3から選択される0~2つの独立した置換基を表し、これらは、以下の式の基と同等であると理解され、
【0074】
繰り返しになるが、「独立した置換基」とは、各々のR置換基が独立して定義され得ることを意味する。例えば、1つの例では、Ry1がA1である場合、その例では、Ry2は必ずしもA1とは限らない。
【0075】
いくつかの更なる実施形態では、化合物の構造は、以下の式:
によって表すことができ、式中、例えば、Qは、水素及びAから独立して選択される3つの置換基を含み、これらは、以下の式と同等であると理解される。
【0076】
繰り返しになるが、「独立した置換基」とは、各々のQ置換基が、独立して、水素又はAとして定義されることを意味し、これらは、以下の式の基と同等であると理解され、
【0077】
いくつかの実施形態では、開示される化合物は、幾何異性体として存在する。「幾何異性体」とは、シクロアルキル環、すなわち、シス又はトランス異性体との関係で置換基原子の配向が異なる異性体を指す。開示される化合物が特定のシス又はトランス幾何異性体形態を示すことなく構造によって命名又は描写される場合、その名称又は構造は、他の幾何異性体、幾何異性体の混合物、又は対応する幾何異性体と比較して1つの幾何異性体が濃縮された混合物を含まない1つの幾何異性体を包含することが理解されるべきである。特定の幾何異性体、すなわち、シス又はトランスが描写される場合、描写される異性体は、他の幾何異性体と比較して、少なくとも約60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、又は99.9重量%純粋である。
【0078】
本明細書に記載の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で存在してもよい。医薬における使用に関して、本明細書に記載の化合物の塩は、非毒性の「薬学的に許容される塩」を指す。薬学的に許容される塩の形態には、薬学的に許容される酸性/アニオン性又は塩基性/カチオン性の塩が含まれる。本明細書に記載の化合物の好適な薬学的に許容される酸付加塩としては、例えば、無機酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、及び硫酸など)の塩、及び有機酸(酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸など)の塩が挙げられる。薬学的に許容される塩基付加塩の例には、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、又はマグネシウム塩が含まれる。
【0079】
「薬学的に許容される担体」という用語は、製剤化される化合物の薬理学的活性を破壊しない、非毒性の担体、アジュバント、又はビヒクルを指す。本明細書に記載の組成物で使用され得る薬学的に許容される担体、アジュバント又はビヒクルとしては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば、プロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレンポリキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及びウール脂肪が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに好適であるそれらの化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を意味する。いくつかの実施形態では、「薬学的に許容される」とは、動物において、より具体的にはヒトにおいて使用するために、連邦政府若しくは州政府の規制機関によって承認されたか、又は米国薬局方若しくは他の一般に認識されている薬局方に列挙されていることを意味する。
【0081】
疾患、障害、及び状態は、本明細書で交換可能に使用される。
【0082】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療する」、及び「治療すること」という用語は、本明細書に記載されるように、疾患若しくは障害、又はそれらの1つ以上の症状の発症を逆転させること、緩和すること、遅らせること、それらの進行を低減すること、改善すること、予防すること、若しくは阻害することを指す。「治療すること」は、本明細書に記載の化合物、組成物、又は薬学的組成物の投与を指し得る。「治療すること」には、「緩和すること」の概念が含まれ、これは、腸運動性障害に関連する任意の症状又は他の悪影響の発生若しくは再発の頻度、又はそれらの重症度を軽減することを指す。「治療すること」という用語はまた、「管理する」という概念を包含し、これは、患者における特定の疾患又は障害の重症度を低減させること、又はその再発を遅延させること、例えば、疾患に罹患していた患者における寛解期間を延長させることを指す。除外されないが、障害又は状態を治療することは、障害、状態、又はそれらに関連する症状を完全に排除することを必要としないことが理解される。いくつかの実施形態では、治療は、1つ以上の症状が発症した後に施されてもよく、すなわち、療法的治療である。他の実施形態では、治療は、症状の不在下で施されてもよい。例えば、治療は、症状の発症前に(例えば、症状の病歴に照らして、及び/又は特定の生物への曝露、若しくは他の感受性因子に照らして)影響を受けやすい個体に施されてもよく、すなわち、予防的治療である。治療はまた、症状が解決した後に、例えば、それらの再発を遅らせるために継続されてもよい。
【0083】
本明細書で使用される場合、「予防する(prevent)」又は「予防すること(preventing)」という用語は、特に事前の行動によって、何かが起こるのを不可能にする、回避する、未然に防ぐ、防ぐ、停止する、又は妨げることを指す。本明細書において、低減、阻害、又は防止が使用される場合、特に断りのない限り、他の2つの単語の使用もまた、明示的に開示されることが理解される。「予防すること」という用語は、疾患、障害、及び/若しくは状態の素因を有し得るが、まだそれを有すると診断されていないヒト若しくは動物において、疾患、障害、若しくは状態が発生するのを予防すること、並びに/又は疾患、障害、又は状態を阻害すること、すなわち、その発生を阻止することを指す。
【0084】
本明細書で使用される「治療効果」という用語は、障害(例えば、腸運動性障害)の症状のうちの1つ以上又はその関連する病状の、ある程度の緩和を指すことを意味する。「有効量」又は「治療有効量」という用語は、所望の結果を達成するのに十分な量(例えば、対象の生物学的応答又は医学的応答を誘発するであろう、例えば、0.01~100mg/kg体重/日の投薬量)、又は望ましくない状態に影響を及ぼすのに十分な量を指す。例えば、「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するのに十分であるか、又は望ましくない症状に効果を有するが、一般に、有害な副作用を引き起こすのに十分ではない量を指す。任意の特定の患者に対する具体的な治療有効用量レベルは、治療する障害及び障害の重症度;用いる特定の組成物;患者の年齢、体重、全体の健康状態、性別、及び食事;投与時間;投与経路;用いる特定の化合物の排出率;治療期間;用いる特定の化合物と組み合わせてか、又はそれと同時に使用する薬物、並びに医学分野で周知の同様の因子を含む様々な因子に依存するであろう。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要なレベルよりも低いレベルで化合物の投薬を開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増加させることは、十分当業者の範囲内である。必要に応じて、有効な1日用量は、投与の目的のために複数の用量に分けることができる。したがって、単回用量組成物は、そのような量又はその約数を含有して、1日用量を構成することができる。投薬量は、いかなる禁忌の場合にも、個々の医師によって調整され得る。投薬量は、異なり得、1日又は数日間、1日1回以上の用量投与で投与することができる。ガイダンスは、所与のクラスの医薬品に対する適切な投薬量について文献中に見出すことができる。更なる様々な実施形態では、調製物は、「予防有効量」、すなわち、疾患又は状態の予防に有効な量で投与することができる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、一般に、限られた量のものを指し、これは、そのものに類似し、そのもののより多くの量を表すよう意図されている。本開示では、試料は、腸運動性障害の不在、存在、又は等級付けについて試験する、収集物、スワブ、ブラッシング、剥離物、生検、除去された組織、又は外科的切除である。いくつかの実施形態では、試料は、腸運動性障害を有すると考えられる患者又は対象から採取される。
【0086】
本明細書で使用される場合、「塩」という用語は、本開示の方法で使用される化合物の酸又は塩基塩を指す。許容される塩の例示的な例は、無機酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸など)塩、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸など)塩、四級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチルなど)塩である。
【0087】
「対象」及び「患者」という用語は、互換的に使用され得、治療を必要とする哺乳動物、例えば、コンパニオン動物(例えば、イヌ、ネコなど)、農場動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギなど)、及び実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)を意味する。典型的には、対象は、治療を必要とするヒトである。
【0088】
疾患と関連付けられる物質又は物質の活性若しくは機能の文脈における、「関連」又は「と関連付けられる」という用語(例えば、タンパク質関連疾患、腸運動性障害と関連付けられる症状、NOニューロン活性と関連付けられる症状)は、物質又は物質の活性若しくは機能によって、その疾患(例えば、腸運動性障害)が(全体的に又は部分的に)引き起こされるか、又はその疾患の症状が引き起こされることを意味する。例えば、腸運動性疾患又は状態の症状は、NOニューロン活性の調節(例えば、結腸運動性の誘導)に(完全に又は部分的に)起因する症状であり得る。本明細書で使用される場合、疾患と関連付けられると記載されているものは、原因物質である場合、疾患の治療の標的であり得る。例えば、腸運動性障害は、NOニューロン活性を調節するのに有効な(例えば、結腸運動性を誘導するのに有効な)薬剤(例えば、本明細書に記載の化合物)で治療することができる。
【0089】
「対照」又は「対照実験」は、その平易な通常の意味に従って使用され、実験の手順、試薬、又は変数の省略を除いて、実験の対象又は試薬が並行実験のように扱われる実験を指す。場合によっては、対照は、実験の効果を評価する際の比較の基準として使用される。
【0090】
「接触すること」は、その平易な通常の意味に従って使用され、少なくとも2つの異なる種(例えば、生体分子を含む化学化合物、又は細胞)が、反応、相互作用、又は物理的に触れるのに十分に近接するようになることを可能にするプロセスを指す。しかしながら、得られた反応生成物は、添加された試薬間の反応から、又は反応混合物中で生成され得る、添加された試薬のうちの1つ以上からの中間体から直接生成することができることが理解されるべきである。「接触すること」という用語は、2つの種が反応、相互作用、又は物理的に触れることを可能にすることを含み得、2つの種は、本明細書に記載される化合物及びタンパク質又は酵素(例えば、PINK1)であり得る。いくつかの実施形態では、接触することは、本明細書に記載の化合物が、シグナル伝達経路に関与するタンパク質又は酵素と相互作用することを可能にすることを含む。
【0091】
本明細書で使用される場合、タンパク質-阻害剤(例えば、アンタゴニスト)相互作用に関連する「阻害」、「阻害する」、「阻害すること」などの用語は、阻害剤の不在下でのタンパク質の活性又は機能と比較して、タンパク質の活性又は機能に悪影響を及ぼす(例えば、減少させる)ことを意味する。いくつかの実施形態では、阻害とは、疾患又は疾患の症状の低減を指す。いくつかの実施形態では、阻害とは、シグナル伝達経路又はシグナル伝達経路の活性の低減を指す。したがって、阻害には、少なくとも部分的に、刺激を部分的若しくは完全に遮断すること、活性化を減少、防止、若しくは遅延すること、又はシグナル伝達若しくは酵素活性若しくはタンパク質の量を不活性化、脱感作、若しくは下方調節することが含まれる。
【0092】
記号
は、分子又は化学式の残りの部分への化学部分の結合点を示す。
【0093】
本明細書で使用される場合、タンパク質-活性化剤(例えば、アゴニスト)相互作用に関連する「活性化」、「活性化させる」、「活性化させること」などの用語は、活性化剤の不在下でのタンパク質の活性又は機能と比較して、タンパク質の活性又は機能に悪影響を及ぼす(例えば、増加させる)ことを意味する。いくつかの実施形態では、活性化とは、シグナル変換経路又はシグナル伝達経路の活性の増加を指す。したがって、活性化には、少なくとも部分的に、刺激を部分的又は完全に増加させること、活性化を増加若しくは可能にすること、又はシグナル変換若しくは酵素活性若しくは疾患において減少したタンパク質の量を活性化、感作、若しくは上方調節することが含まれ得る。活性化は、少なくとも部分的に、刺激を部分的に若しくは完全に増加させること、活性化を増加若しくは可能にすること、又はシグナル変換若しくは酵素活性若しくはタンパク質の量を活性化、感作、若しくは上方調節することを含み得、これは、別のタンパク質のレベルを調節し得るか、又は細胞生存を増加させ得る。
【0094】
「調節物質」という用語は、標的分子のレベル又は標的分子の機能を増加又は減少させる組成物を指す。いくつかの実施形態では、調節物質は、NOニューロン活性の調節物質である。いくつかの実施形態では、調節物質は、NOニューロン活性の調節物質であり、NOニューロン活性と関連付けられる疾患の1つ以上の症状の重症度を低減する化合物である。いくつかの実施形態では、調節物質は、NOニューロン活性によって引き起こされないか、又はそれを特徴としないが、NOニューロン活性の調節(例えば、結腸運動性の誘導)から利益を得ることができる腸運動性障害の1つ以上の症状の重症度を低減する化合物である。
【0095】
「患者」又は「それを必要とする対象」とは、本明細書に提供されるような化合物又は薬学的組成物の投与によって治療することができる疾患又は状態に罹患しているか又は罹患しやすい生物を指す。非限定的な例には、ヒト、他の哺乳動物、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、ウシ、シカ、及び他の非哺乳動物が含まれる。いくつかの実施形態では、患者は、ヒトである。
【0096】
「疾患」又は「状態」は、本明細書で提供される化合物、薬学的組成物、又は方法で治療することが可能な患者又は対象の存在状態又は健康状態を指す。いくつかの実施形態では、疾患は、NOニューロン活性の調節に関連する疾患である(例えば、それを特徴とする)。いくつかの実施形態では、疾患は、腸運動性障害である。
【0097】
本明細書で使用される「シグナル伝達経路」という用語は、1つの成分の変化を1つ以上の他の成分に伝達し、次に、変化を更なる成分に伝達し得、任意選択的に他のシグナル伝達経路成分に任意に伝播される、細胞成分及び任意選択的に細胞外成分(例えば、タンパク質、核酸、小分子、イオン、脂質)間の一連の相互作用を指す。
【0098】
「調製物」という用語は、担体としての封入材料を伴う活性化合物の製剤を含むことを意図されており、他の担体の有無にかかわらず活性化合物が担体に取り囲まれているために、担体がそれと会合しているカプセルを提供する。同様に、カシェ及びロゼンジが含まれる。錠剤、粉末、カプセル、丸薬、カシェ、及びロゼンジは、経口投与に好適な固形剤形として使用され得る。
【0099】
本明細書で使用される場合、「投与すること」という用語は、対象への、経口投与、座薬としての投与、局所接触、静脈内、非経口、腹腔内、筋肉内、病変内、髄腔内、鼻腔内、若しくは皮下投与、又は対象への徐放デバイス、例えば、ミニ浸透圧ポンプの移植を意味する。投与は、非経口及び経粘膜(例えば、口腔、舌下、口蓋、歯肉、鼻、膣、直腸、又は経皮)を含む任意の経路によるものである。非経口投与としては、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、皮内、皮下、腹腔内、心室内、及び頭蓋内が挙げられる。他の送達様式としては、リポソーム製剤の使用、静脈内注入、経皮パッチなどが挙げられるが、これらに限定されない。「同時投与する」とは、本明細書に記載の組成物が、1つ以上の追加の治療薬(例えば、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、エナリプリル、リシノプリル)、アンジオテンシン受容体遮断薬(例えば、ロサルタン、バルサルタン)、ベータ遮断薬(例えば、ロプレッサー、トップロール-XL)、ジゴキシン、若しくは利尿薬(例えば、ラシックスを含む心筋症の治療薬、又は例えば、レボドーパ、ドーパミンアゴニスト(例えば、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、ピリベジル、カベルゴリン、アポモルフィン、リスリド)、MAO-B阻害剤(例えば、セレギリン又はラサギリン)、アマンタジン、アンチコリン作動剤、抗炎症薬(例えば、クロザピン)、コリンテラーゼ阻害剤、モダフィン、若しくは非ステロイド抗炎症薬を含むパーキンソン病の療法治療薬)の投与と同時に、直前に、又は直後に投与されることを意味する。
【0100】
本開示の化合物は、単独で投与することができるか、又は患者に同時投与することができる。同時投与は、化合物を個別又は組み合わせて(2つ以上の化合物又は薬剤)、同時又は逐次投与することを含むことを意味する。したがって、調製物は、必要に応じて、他の活性物質(例えば、代謝分解を低下させるための)と組み合わせることもできる。本開示組成物は、経皮的に、局所経路によって送達され得るか、又はアプリケータースティック、溶液、懸濁液、エマルション、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、塗料、粉末、及びエアロゾルとして製剤化され得る。経口調製物には、患者による摂取に好適な錠剤、丸薬、粉末、糖衣錠、カプセル、液体、ロゼンジ、カシェ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などが含まれる。固体形態調製物としては、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、カシェ、座薬、及び分散性顆粒が挙げられる。液体形態調製物は、溶液、懸濁液、及びエマルション、例えば、水又は水/プロピレングリコール溶液を含む。本開示組成物は、持続放出及び/又は快適性を提供する成分を更に含み得る。そのような成分としては、高分子量、アニオン性粘液模倣ポリマー、ゲル化多糖、及び細かく分割された薬物担体基質が挙げられる。これらの成分は、米国特許第4,911,920号、同第5,403,841号、同第5,212,162号、及び同第4,861,760号においてより詳細に考察される。これらの特許の全体の内容は、全ての目的のために、それらの全体が参照により本明細書に援用される。本開示組成物はまた、体内での徐放のためにマイクロスフェアとして送達することもできる。例えば、マイクロスフェアは、皮下で徐放される薬物含有マイクロスフェアの皮内注射を介して(Rao,J.Biomater Sci.Polym.Ed.7:623-645,1995を参照のこと、生分解性及び注射用ゲル製剤として(例えば、Gao Pharm.Res.12:857-863,1995を参照のこと)、又は経口投与のための微粒子として(例えば、Eyles,J.Pharm.Pharmacol.49:669-674,1997を参照のこと)投与することができる。いくつかの実施形態では、本開示の組成物の製剤は、細胞膜と融合するか、又は取り込まれたリポソームの使用によって、すなわち、エンドサイトーシスをもたらす細胞の表面膜タンパク質受容体に結合するリポソームに結合された受容体リガンドを用いることによって、送達することができる。リポソームを使用することによって、特に、リポソーム表面が標的細胞に特異的な受容体リガンドを担持している場合、又はそうでなければ特定の臓器に優先的に向けられている場合、本開示の組成物のインビボでの標的細胞への送達に焦点を当てることができる。(例えば、Al-Muhammed,J.Microencapsul.13:293-306,1996、Chonn,Curr.Opin.Biotechnol.6:698-708,1995、Ostro,Am.J.Hosp.Pharm.46,1576-1587,1989を参照のこと)。本開示の組成物は、ナノ粒子として送達することもできる。
【0101】
本開示によって提供される薬学的組成物は、有効成分(例えば、実施形態又は実施例を含む、本明細書に記載の化合物)が、治療有効量、すなわち、その意図する目的を達成するのに有効な量で含有される組成物を含む。特定の用途に有効な実際の量は、とりわけ、治療される状態に依存するであろう。疾患を治療する方法で投与する場合、そのような組成物は、所望の結果、例えば、標的分子の活性を調節する、及び/又は疾患症状の進行を減少、排除、若しくは遅延させるのに有効な、ある量の有効成分を含有する。本開示の組成物の治療有効量の決定は、特に本明細書における詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0102】
哺乳動物に投与される投薬量及び頻度(単回用量又は複数回用量)は、様々な要因、例えば、哺乳動物が別の疾患に罹患しているかどうか、及びその投与経路、レシピエントのサイズ、年齢、性別、健康状態、体重、体重指数、及び食事、治療されている疾患の症状の性質及び程度(例えば、腸運動性障害の症状)、並行治療の種類、治療されている疾患からの合併症、又は他の健康関連の問題に応じて変化し得る。他の治療レジメン又は薬剤は、出願人の開示の方法及び化合物と併せて使用され得る。確立された投薬量(例えば、頻度及び持続時間)の調整及び操作は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0103】
本明細書に記載のいかなる化合物についても、治療有効量は、最初に細胞培養アッセイから決定され得る。標的濃度は、本明細書に記載の方法又は当該技術分野で既知の方法を使用して測定して、本明細書に記載の方法を達成することが可能である活性化合物(複数可)の濃度であろう。
【0104】
当該技術分野で周知であるように、ヒトで使用される治療有効量は、動物モデルからも決定され得る。例えば、ヒトの用量は、動物において有効であることが見出されている濃度を達成するように製剤化され得る。ヒトでの投薬量は、上記のように、化合物の有効性を監視し、投薬量を上方又は下方に調整することによって調整され得る。上記の方法及び他の方法に基づいて、ヒトにおいて最大有効性を達成するように用量を調整することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0105】
投薬量は、患者の必要条件及び使用される化合物に応じて異なり得る。本開示に照らして、患者に投与される用量は、有益な治療応答を患者において経時的にもたらすのに十分であるべきである。用量のサイズは、任意の有害な副作用の存在、性質、及び程度によっても決定されるであろう。特定の状況に対する適切な投薬量の決定は、当業者の能力の範囲内である。一般に、治療は、より少ない投薬量から開始され、これは、化合物の最適な用量未満である。その後、投薬量を、状況下で最適な効果に達するまで少しずつ増加させる。
【0106】
投薬量及び間隔は、治療されている特定の臨床的適応に有効な投与化合物のレベルを提供するように個別に調整され得る。これにより、個体の病状の重症度にふさわしい療法レジメンが提供されるであろう。
【0107】
本明細書に提供される教示を利用して、実質的な毒性を引き起こさないが、特定の患者によって実証される臨床症状を治療するのに有効である効果的な予防的又は療法的治療レジメンを計画することができる。この計画は、化合物の効力、相対バイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の存在及び重症度、好ましい投与様式、並びに選択された薬剤の毒性プロファイルなどの要因を考慮することによって、活性化合物の慎重な選択を伴うべきである。
【0108】
本明細書に記載の化合物は、互いと組み合わせて、本明細書に更に記載の腸運動性障害の治療に有用であることが知られている他の活性剤と組み合わせて、又は単独では有効ではない可能性があるが活性剤の有効性に寄与し得る補助剤と組み合わせて、使用することができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、同時投与には、1つの活性剤を、第2の活性剤の約0.5、1、2、4、6、8、10、12、16、20、又は24時間以内に投与することが含まれる。同時投与には、2つの活性剤を同時に、ほぼ同時に(例えば、互いの約1、5、10、15、20、又は30分以内に)、又は任意の順序で連続して投与することが含まれる。いくつかの実施形態では、同時投与は、同時製剤化、すなわち、両方の活性剤を含む単一の薬学的組成物を調製することによって達成することができる。他の実施形態では、活性剤は、別々に製剤化することができる。いくつかの実施形態では、活性剤及び/又は補助剤は、互いに結合又は抱合させてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、手術などの神経変性のための治療と組み合わせてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、手術などの心筋症のための治療と組み合わせてもよい。
【0110】
「誘導体」という用語は、リン酸塩含有、一リン酸、二リン酸、又は三リン酸基又は部分に適用される場合、そのような基の化学修飾を指し、修飾は、リン酸塩含有、一リン酸、二リン酸、又は三リン酸基又は部分の1つ以上の原子の付加、除去、又は置換を含み得る。いくつかの実施形態では、そのような誘導体は、対象、患者、細胞、生体試料への投与後、又は対象、患者、細胞、生体試料、若しくはタンパク質(例えば、酵素)との接触後に、誘導体からリン酸塩含有、一リン酸、二リン酸、又は三リン酸基又は部分に変換される、リン酸塩含有、一リン酸、二リン酸、又は三リン酸基又は部分のプロドラッグである。一実施形態では、三リン酸誘導体は、ガンマ-チオ三リン酸塩である。一実施形態では、誘導体は、ホスホルアミデートである。いくつかの実施形態では、リン酸塩含有、一リン酸、二リン酸、又は三リン塩基又は部分の誘導体は、Murakami et al.J.Med Chem.,2011,54,5902、Sofia et al.,J.Med Chem.2010,53,7202、Lam et al.ACC,2010,54,3187、Chang et al.,ACS Med Chem Lett.,2011,2,130、Furman et al.,Antiviral Res.,2011,91,120、Vernachio et al.,ACC,2011,55,1843、Zhou et al,AAC,2011,44,76、Reddy et al.,BMCL,2010,20,7376、Lam et al.,J.Virol.,2011,85,12334、Sofia et al.,J.Med.Chem.,2012,55,2481,Hecker et al.,J.Med.Chem.,2008,51,2328、又はRautio et al.,Nature Rev.Drug.Discov.,2008,7,255に記載されるとおりであり、これらの全ては、全ての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
本明細書で使用される場合、「動物」という用語には、ヒト、並びに野生動物、家畜、及び農場の動物などの非ヒト脊椎動物が含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
本明細書で使用される場合、「拮抗する」又は「拮抗すること」という用語は、効果を低減又は完全に排除することを意味する。
【0113】
本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、化合物とともに投与される希釈剤、アジュバント、又は賦形剤を意味する。薬学的担体は、液体、例えば、水及び油であってもよく、石油、動物、植物、又は合成に由来するもの、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などが含まれる。薬学的担体はまた、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などであり得る。加えて、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤、及び着色剤を使用することができる。
【0114】
本明細書で使用される場合、「含むこと(comprising)」(並びに「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprised)」などの任意の形態の含む)、「有すること(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」などの任意の形態の有する)、「含むこと(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)などの任意の形態の含む)、又は「含有すること(containing)」(並びに「含有する(contains」及び「含有する「contain」などの任意の形態の含有する)という用語は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法ステップを除外しない。
【0115】
本明細書で使用される場合、「接触すること」という用語は、インビトロ系又はインビボ系で2つの要素を一緒にすることを意味する。例えば、本明細書に開示される化合物を個体又は患者又は細胞と「接触させる」ことは、ヒトなどの個体又は患者への化合物の投与、並びに例えば、細胞又は本明細書に開示される化合物又は薬学的組成物を含有する精製された調製物を含有する試料に化合物を導入することを含む。
【0116】
本明細書で使用される場合、「個体」、「対象」、又は「患者」という用語は、互換的に使用され、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ウマ、又はヒトなどの霊長類などの哺乳動物を含む任意の動物を意味する。
【0117】
本明細書で使用される場合、「それを必要とする」という語句は、動物又は哺乳動物が、特定の方法又は処置の必要性を有すると特定されていることを意味する。いくつかの実施形態では、特定は、いかなる診断手段によってもよい。本明細書に記載の方法及び処置のいずれにおいても、動物又は哺乳動物は、それを必要とし得る。いくつかの実施形態では、動物又は哺乳動物は、特定の疾患、障害、又は状態が蔓延する環境にあるか、又はその環境に移動するであろう。
【0118】
本明細書で使用される場合、「XからYの整数」という語句は、エンドポイントを含む任意の整数を意味する。例えば、語句「1~5の整数」は、1、2、3、4、又は5を意味する。
【0119】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、本明細書に記載の化合物が、(a)植物若しくは細胞などの天然源、又は(b)例えば、従来の技術による合成有機化学反応混合物のいずれかの他の成分から分離されることを意味する。
【0120】
本明細書で使用される場合、「哺乳動物」という用語は、げっ歯類(すなわち、マウス、ラット、又はモルモット)、サル、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、又はヒトを意味する。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
【0121】
本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、公知の直接作用薬物の誘導体を意味し、その誘導体は、薬物と比較して、増強された送達特性及び治療価値を有し、酵素的又は化学的プロセスによって活性薬物に変換される。本明細書に記載の化合物はまた、プロドラッグと呼ばれる誘導体を含み、これは、修飾が、ルーチン操作又はインビボのいずれかで、親化合物に切断されるように、化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製することができる。プロドラッグの例としては、化合物のヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、又はカルボキシル基に付加された1つ以上の分子部分を含有し、患者に投与されると、それぞれ、遊離ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、又はカルボキシル基を形成するためにインビボで切断する、本明細書に記載される本開示の化合物が挙げられる。プロドラッグの例としては、本開示の化合物中のアルコール及びアミン官能基の酢酸、ギ酸、及び安息香酸誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。プロドラッグの調製及び使用は、T.Higuchi et al.,“Pro-drugs as Novel Delivery Systems,”A.C.S.Symposium Seriesの第14巻、及びBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987で考察され、いずれも、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0122】
本明細書で使用される場合、「精製された」という用語は、単離したときに、単離物が、単離物の重量で少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の本明細書に記載の化合物を含有することを意味する。
【0123】
本明細書で使用される場合、「可溶化剤」という語句は、ミセル溶液又は薬物の真の溶液の形成をもたらす薬剤を意味する。
【0124】
本明細書で使用される場合、「溶液/懸濁液」という用語は、液体マトリクス中の懸濁液中で、活性剤の第1の部分が溶液中に存在し、活性剤の第2の部分が粒子形態で存在する液体組成物を意味する。
【0125】
本明細書で使用される場合、「実質的に単離された」という用語は、化合物が形成又は検出される環境から少なくとも部分的に、又は実質的に分離された化合物を意味する。
【0126】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という語句は、研究者、獣医師、医師、又は他の臨床医によって、組織、系、動物、個体、又はヒトにおいて求められている生物学的又は薬学的応答を誘発する活性化合物又は薬剤の量を意味する。治療効果は、治療される障害又は所望の生物学的効果に依存する。したがって、治療効果は、障害と関連付けられる症状の重症度の低下及び/又は障害の進行の阻害(部分的又は完全)、又は障害若しくは副作用の改善された治療、治癒、障害の予防、若しくは排除であり得る。治療応答を誘発するのに必要な量は、対象の年齢、健康状態、サイズ、及び性別に基づいて決定され得る。最適量は、治療に対する対象の応答の監視に基づいて決定され得る。
【0127】
別個の実施形態の文脈で記載されていることを明確にするために、本明細書に記載のある特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることが更に理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載されている様々な特徴はまた、別々に又は任意の好適な組み合わせの構成要素で提供され得る。
【0128】
本開示の任意の実施形態は、主題を特許請求する目的で、1つ以上の実施形態を任意選択的に除外することができることに留意されたい。
【0129】
いくつかの実施形態では、化合物又はその塩は、実質的に単離される。部分分離は、例えば、本開示の化合物で濃縮された組成物を含むことができる。実質的な分離は、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、又は少なくとも約99重量%の本開示の化合物、又はその塩を含有する組成物を含むことができる。化合物及びそれらの塩を単離するための方法は、当技術分野では日常的である。
【0130】
B.腸運動性障害を治療する方法
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物及び組成物は、腸運動性障害を治療するのに有用である。したがって、本明細書では、腸運動性障害を治療する方法が開示され、それを必要とする対象に、治療有効量の本明細書に記載の化合物(例えば、COXの調節物質、ドーパミン受容体、ナトリウムチャネル、セロトニン受容体、アセチルコリン受容体、GABA受容体、FAAH、アドレナリン作動性受容体、ヒスタミン受容体、バソプレシン受容体、NMDAR、ベータアミロイド、ガンマ-セクレターゼ、IxB/IKK、グルタミン酸受容体、オピオイド受容体、TRPV、アルドースレダクターゼ、カルシウムチャネル、グルココルチコイド受容体、及び/又はHMG-CoAレダクターゼ)、若しくはそれらの薬学的に許容される塩、又は開示される化合物若しくはそれらの薬学的に許容される塩を含む組成物を投与することを含む。本発明の化合物及び組成物によって治療可能な障害としては、例えば、無弛緩症、ヒルシュスプルング病、腸偽閉塞、胃食道逆流症(GERD)、機能性嚥下障害、機能性消化不良、過敏性腸症候群(IBS)、胃不全麻痺、機能性便秘、機能性下痢、及び便失禁が挙げられる。
【0131】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示の上記に開示される方法のうちのいずれかに関し、投与ステップは、(i)開示される化合物のうちのいずれかの薬学的有効量と、(ii)薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物を投与することを含む。
【0132】
したがって、様々な実施形態では、腸運動性障害を治療することを必要とする対象において腸運動性障害を治療するための方法が開示され、本方法は、対象に、有効量の、カルプロフェン、メフェナム酸、フェナセチン、バルデコキシブ、フェノルドパムメシル酸塩、フルフェナジン塩酸塩、ブピバカインHCl、フェナゾピリジンHCl、アルベリンクエン酸塩、ニテンピラム、4-アミノ酪酸(GABA)、PF-3845、エスモロールHCl、シメチジン、コニバプタンHCl、(+)-MK-801マレイン酸塩、MK-0752、R04929097、ロスマリン酸、テオフィリン、アリピプラゾール、フロプロピオン、ラトレピルジン2HCl、ADX-47273、MPEP、ネホパムHCl、フェナゾピリジンHCl、エピネフリン、(+)-マトリン、フェノチアジン、ナプロキセンナトリウム、AMG-517、イソリキリチゲニン、ニルバジピン、プレドニゾン、及びシンバスタチン、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物を投与することを含む。更なる実施形態では、化合物は、アリピプラゾール、デクスメデトミジン、マトリン、及びMPEP、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される。なお更なる実施形態では、化合物は、デクスメデトミジンである。
【0133】
更なる実施形態では、化合物は、FDA承認されている。
【0134】
更なる実施形態では、投与することは、経口投与、非経口投与、舌下投与、経皮投与、直腸投与、経粘膜投与、局所投与、吸入、頬投与、胸膜内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、髄腔内投与、及び関節内投与、又はそれらの組み合わせによって達成される。
【0135】
様々な実施形態では、本方法は、腸運動性障害の治療と関連付けられる有効量の薬剤を投与することを更に含む。
【0136】
したがって、様々な実施形態では、本方法は、腸運動性障害の治療のために知られている薬剤を投与することを更に含む。腸運動性障害の治療のために知られている薬剤の例としては、副交感神経興奮薬、運動促進剤(促進剤とも呼ばれる)、オピオイドアンタゴニスト、下痢止め、及び抗生物質が挙げられるが、これらに限定されない。更なる実施形態では、薬剤は、ネオスチグミン、ベタネコール、メトクロプラミド、シサプリド、及びロペラミドから選択される。
【0137】
いくつかの実施形態では、化合物及び薬剤は、同時に投与される。いくつかの実施形態では、化合物及び薬剤は、順次投与される。
【0138】
いくつかの実施形態では、化合物及び薬剤は、共包装されている。いくつかの実施形態では、化合物及び薬剤は、共製剤化される。
【0139】
C.対象におけるNOニューロン活性を調節する方法
いくつかの実施形態では、対象におけるNOニューロン活性の調節方法が開示され、本方法は、対象に、治療有効量の少なくとも1つの開示される化合物(例えば、COXの調節物質、ドーパミン受容体、ナトリウムチャネル、セロトニン受容体、アセチルコリン受容体、GABA受容体、FAAH、アドレナリン受容体、ヒスタミン受容体、バソプレシン受容体、NMDAR、ベータアミロイド、ガンマ-セクレターゼ、IxB/IKK、グルタミン酸受容体、オピオイド受容体、TRPV、アルドースレダクターゼ、カルシウムチャネル、グルココルチコイド受容体、及び/又はHMG-CoAレダクターゼ)、又はそれらの薬学的に許容される塩を投与するステップを含む。
【0140】
したがって、様々な実施形態では、腸運動性障害を有する対象におけるNOニューロン活性を調節するための方法が開示され、本方法は、対象に、有効量の、カルプロフェン、メフェナム酸、フェナセチン、バルデコキシブ、フェノルドパムメシル酸塩、フルフェナジン塩酸塩、ブピバカインHCl、フェナゾピリジンHCl、アルベリンクエン酸塩、ニテンピラム、4-アミノ酪酸(GABA)、PF-3845、エスモロールHCl、シメチジン、コニバプタンHCl、(+)-MK-801マレイン酸塩、MK-0752、R04929097、ロスマリン酸、テオフィリン、アリピプラゾール、フロプロピオン、ラトレピルジン2HCl、ADX-47273、MPEP、ネホパムHCl、フェナゾピリジンHCl、エピネフリン、(+)-マトリン、フェノチアジン、ナプロキセンナトリウム、AMG-517、イソリキリチゲニン、ニルバジピン、プレドニゾン、及びシンバスタチン、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物を投与することを含む。更なる実施形態では、化合物は、アリピプラゾール、デクスメデトミジン、マトリン、及びMPEP、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される。なお更なる実施形態では、化合物は、デクスメデトミジンである。
【0141】
更なる実施形態では、NOニューロン活性を調節することは、結腸活性を誘導する。
【0142】
本明細書で使用される場合、「調節」は、特定の活性の阻害又は増強のいずれかを指すことができる。例えば、NOニューロン活性の調節は、結腸運動性の増加などのNOニューロン依存性活性の阻害及び/又は活性化を指すことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、結腸運動性を約1%~約50%の因子で増加させる。NOニューロンの活性は、本明細書に記載の方法を含むがこれらに限定されない任意の方法によって測定することができる。
【0143】
更なる実施形態では、調節することは、結腸運動性を誘導することである。
【0144】
更なる実施形態では、対象は、哺乳動物である。なお更なる実施形態では、対象は、ヒトである。
【0145】
更なる実施形態では、対象は、投与ステップの前に、腸運動性障害の治療の必要性があると診断されている。なお更なる実施形態では、本方法は、投与ステップの前に、腸運動性障害を発症するリスクがある対象を特定するステップを更に含む。
【0146】
更なる実施形態では、投与することは、経口投与、非経口投与、舌下投与、経皮投与、直腸投与、経粘膜投与、局所投与、吸入、頬投与、胸膜内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、髄腔内投与、及び関節内投与、又はそれらの組み合わせによって達成される。
【0147】
様々な実施形態では、本方法は、腸運動性障害の治療と関連付けられる有効量の薬剤を投与することを更に含む。
【0148】
したがって、様々な実施形態では、本方法は、腸運動性障害の治療のために知られている薬剤を投与することを更に含む。腸運動性障害の治療のために知られている薬剤の例としては、副交感神経興奮薬、運動促進剤、オピオイドアンタゴニスト、下痢止め、及び抗生物質が挙げられるが、これらに限定されない。更なる実施形態では、薬剤は、ネオスチグミン、ベタネコール、メトクロプラミド、シサプリド、及びロペラミドから選択される。
【0149】
いくつかの実施形態では、化合物及び薬剤は、同時に投与される。いくつかの実施形態では、化合物及び薬剤は、順次投与される。
【0150】
いくつかの実施形態では、化合物及び薬剤は、共包装される。いくつかの実施形態では、化合物及び薬剤は、共製剤化される。
【0151】
D.薬学的組成物
本明細書に開示される化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物も本明細書に提供される。したがって、様々な実施形態では、治療有効量の少なくとも1つの開示される化合物(例えば、COXの調節物質、ドーパミン受容体、ナトリウムチャネル、セロトニン受容体、アセチルコリン受容体、GABA受容体、FAAH、アドレナリン受容体、ヒスタミン受容体、バソプレシン受容体、NMDAR、ベータアミロイド、ガンマ-セクレターゼ、IxB/IKK、グルタミン酸受容体、オピオイド受容体、TRPV、アルドースレダクターゼ、カルシウムチャネル、グルココルチコイド受容体、及び/又はHMG-CoAレダクターゼ)、及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物が開示される。更なる実施形態では、治療有効量の少なくとも1つの開示される化合物を含む薬学的組成物を提供することができる。なお更なる実施形態では、予防有効量の少なくとも1つの開示される化合物を含む薬学的組成物を提供することができる。なお更なる実施形態では、本開示は、薬学的に許容される担体と、開示される化合物と、を含む薬学的組成物に関し、当該化合物は、有効量で存在する。より更なる実施形態では、薬学的組成物は、NOニューロン活性を調節する(例えば、結腸運動性を誘導する)のに有用である。なお更なる実施形態では、薬学的組成物は、腸運動性障害を治療するのに有用である。
【0152】
したがって、様々な実施形態では、カルプロフェン、メフェナム酸、フェナセチン、バルデコキシブ、フェノルドパムメシル酸塩、フルフェナジン塩酸塩、ブピバカインHCl、フェナゾピリジンHCl、アルベリンクエン酸塩、ニテンピラム、4-アミノ酪酸(GABA)、PF-3845、エスモロールHCl、シメチジン、コニバプタンHCl、(+)-MK-801マレイン酸塩、MK-0752、R04929097、ロスマリン酸、テオフィリン、アリピプラゾール、フロプロピオン、ラトレピルジン2HCl、ADX-47273、MPEP、ネホパムHCl、フェナゾピリジンHCl、エピネフリン、(+)-マトリン、フェノチアジン、ナプロキセンナトリウム、AMG-517、イソリキリチゲニン、ニルバジピン、プレドニゾン、及びシンバスタチン、若しくはそれらの薬学的に許容される塩から選択される治療有効量の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬学的組成物が本明細書に提供される。
【0153】
化合物の薬学的に許容される塩は、従来の酸付加塩又は塩基付加塩であり、これらは、化合物の生物学的有効性及び特性を保持し、好適な非毒性の有機若しくは無機酸又は有機若しくは無機塩基から形成される。例示的な酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、及び硝酸などの無機酸に由来するもの、並びにp-トルエンスルホン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸などの有機酸に由来するものが挙げられる。例示的な塩基付加塩としては、例えば、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、及び例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの水酸化四級アンモニウムに由来するものが挙げられる。薬学的化合物の塩への化学修飾は、化合物の改善された物理的及び化学的安定性、吸湿性、流動性、並びに溶解性を得るための既知の技術である。例えば、H.Ansel et.al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(6th Ed.1995)の196及び1456~1457ページを参照のこと。
【0154】
薬学的組成物は、薬学的に許容される担体中に化合物を含む。薬学的に許容される担体は、滅菌水性若しくは非水性溶液、分散物、懸濁液、又はエマルション、並びに使用の直前に滅菌の注射用溶液又は分散液に再構築するための滅菌粉末を指す。適切な水性及び非水性の担体、希釈剤、溶媒、又はビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース及びそれらの適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)、並びにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。化合物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1995で開示されるものなどの従来の技術に従って、薬学的に許容される担体又は希釈剤、並びに他の任意の既知のアジュバント及び賦形剤を用いて製剤化することができる。
【0155】
更なる実施形態では、薬学的組成物は、哺乳動物に投与される。なお更なる実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。より更なる実施形態では、ヒトは、患者である。
【0156】
更なる実施形態では、薬学的組成物は、NOニューロン活性と関連付けられる障害の治療を必要とする哺乳動物の特定後に投与される。なお更なる実施形態では、哺乳動物は、投与ステップの前に、NOニューロン活性と関連付けられる障害の治療の必要性があると診断されている。
【0157】
更なる実施形態では、薬学的組成物は、腸運動性障害の治療を必要とする哺乳動物の特定後に投与される。なお更なる実施形態では、哺乳動物は、投与ステップの前に、腸運動性障害の治療の必要性があると診断されている。
【0158】
様々な実施形態では、開示される薬学的組成物は、活性成分としての開示される化合物(その薬学的に許容される塩(複数可)を含む)、薬学的に許容される担体、及び任意選択的に、他の治療成分又はアジュバントを含む。本組成物には、経口、直腸、局所、及び非経口(皮下、筋肉内、及び静脈内を含む)投与に好適な組成物が含まれるが、任意の所与の場合において最も好適な経路は、特定の宿主、並びに活性成分が投与される状態の性質及び重症度に依存するであろう。薬学的組成物は、単位剤形で簡便に提供され、薬学の分野で周知の方法のうちのいずれかによって調製され得る。
【0159】
担体の選択は、組成物を投与するために使用される特定の方法によって部分的に決定され得る。したがって、本発明の薬学的組成物の多種多様な好適な製剤が存在する。経口、エアロゾル、非経口、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、直腸、及び膣投与のための以下の製剤は、単なる例示であり、決して限定的ではない。
【0160】
経口投与に好適な製剤は、(a)水、生理食塩水、又はオレンジジュースなどの希釈剤に溶解された有効量の化合物などの液体溶液、(b)各々が固体又は顆粒として所定量の有効成分を含有するカプセル、サシェ、錠剤、ロゼンジ、及びトローチ、(c)粉末、(d)適切な液体中の懸濁液、及び(e)好適なエマルションからなることができる。液体製剤は、薬学的に許容される界面活性剤、懸濁剤、又は乳化剤の添加の有無にかかわらず、水、シクロデキストリン、ジメチルスルホキシド、及びアルコール、例えば、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、及びポリエチレングリコールを含むポリエチレングリコール類などの希釈剤を含み得る。カプセル形態は、例えば、界面活性剤、滑沢剤、及び不活性充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、及びトウモロコシデンプンを含有する、通常の硬殻又は軟殻ゼラチンタイプであり得る。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、保湿剤、保存剤、香料、及び薬理学的に適合する担体のうちの1つ以上を含むことができる。ロゼンジ形態は、フレーバー中の有効成分、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント、並びに不活性基剤中の活性成分、例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカディア、エマルション、及び不活性基剤中の活性成分への添加を含有するゲル、例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカディア、エマルション、及び活性成分に加えて、当該技術分野で既知のような担体を含有するゲルを含むキャンディーを含むことができる。
【0161】
本開示の化合物は、単独で、又は他の好適な成分と組み合わせて、吸入を介して投与されるエアゾル製剤にすることができる。これらのエアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、及び窒素などの加圧された許容可能な推進剤中に配置することができる。それらはまた、ネブライザー又は噴霧器などの非加圧調製物用の医薬品として製剤化され得る。
【0162】
非経口投与に好適な製剤には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の等張無菌注射液、並びに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び保存剤を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁液が含まれる。化合物は、滅菌液又は液体の混合物などの薬学的担体中の生理学的に許容される希釈剤で投与することができ、これには、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、及び関連する糖溶液、アルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、若しくはヘキサデシルアルコール、グリコール、例えば、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール、例えば、ポリ(エチレングリコール)400、グリセロールケタール、例えば、2,2-ジメチル-1、3-ジオキソラン-4-メタノール、エーテル、油、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド、又は石鹸又は洗剤などの薬学的に許容される界面活性剤の添加を伴うか、若しくは伴わないアセチル化脂肪酸グリセリド、懸濁剤、例えば、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、若しくはカルボキシメチルセルロース、又は乳化剤、並びに他の薬学的補助剤が含まれる。
【0163】
非経口製剤で使用することができる油には、石油、動物、植物、又は合成油が含まれる。油の具体例としては、ピーナッツ、大豆、ゴマ、綿実油、トウモロコシ、オリーブ、ワセリン、及びミネラルが挙げられる。非経口製剤で使用するのに好適な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルは、好適な脂肪酸エステルの例である。非経口製剤に使用するための好適な石鹸としては、脂肪アルカリ金属、アンモニウム、及びトリエタノールアミン塩が挙げられ、好適な洗剤としては、(a)例えば、ハロゲン化ジメチルジアルキルアンモニウム、及びハロゲン化アルキルピリジニウムなどのカチオン性洗剤、(b)例えば、アルキル、アリール、及びオレフィンスルホネート、アルキルオレフィン、エーテル、及びモノグリセリド硫酸塩、並びにスルホコハク酸塩などのアニオン性洗剤、(c)例えば、脂肪アミン酸化物、脂肪酸アルカノールアミド、及びポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマーなどの非イオン性洗剤、(d)例えば、アルキルβ-アミノプロピオン酸塩、及び2-アルキルイミダゾリン四級アンモニウム塩などの両性洗剤、並びに(e)それらの混合物が挙げられる。
【0164】
非経口製剤は、典型的には、約0.5重量%~約25重量%の活性成分を溶液中に含有する。好適な保存剤及び緩衝液をそのような製剤で使用することができる。注射部位での刺激を最小限に抑えるか、又は排除するために、そのような組成物は、約12~約17の親水性-親油性バランス(HLB)を有する1つ以上の非イオン性界面活性剤を含有し得る。そのような製剤中の界面活性剤の量は、約5重量%~約15重量%の範囲である。好適な界面活性剤としては、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ソルビタンモノオレイン酸塩、及びプロピレングリコールとプロピレンオキシドの凝縮によって形成される、疎水性塩基を有するエチレンオキシドの高分子量付加物が挙げられる。
【0165】
薬学的に許容される賦形剤は、当業者にも周知である。賦形剤の選択は、特定の化合物、並びに組成物を投与するために使用される特定の方法によって部分的に決定されるであろう。したがって、本開示の薬学的組成物の多種多様な好適な製剤が存在する。以下の方法及び賦形剤は単なる例示であり、決して限定的ではない。薬学的に許容される賦形剤は、好ましくは、活性成分の作用を妨げず、有害な副作用を引き起こさない。好適な担体及び賦形剤としては、水、アルコール、及びプロピレングリコールなどの溶媒、固体吸収剤及び希釈剤、表面活性剤、懸濁剤、錠剤化結合剤、潤滑剤、香味料、及び着色剤が挙げられる。
【0166】
製剤は、アンプル及びバイアルなどの単位用量又は複数回用量密封容器で提示することができ、使用直前に、注射用の滅菌液体賦形剤、例えば、水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時注射溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製することができる。注射用組成物のための有効な薬学的担体に関する要件は、当業者に周知である。Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Co.,Philadelphia,PA、Banker and Chalmers,Eds.,238-250(1982)、及びASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,4th ed.,622-630(1986)を参照のこと。
【0167】
局所投与に好適な製剤としては、香味料中の有効成分、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカントを含むロゼンジ;不活性基剤中の有効成分、例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアを含むパスティル;並びに適切な液体担体中の有効成分を含む口腔洗浄液;並びに有効成分に加えて、当該技術分野で既知であるような担体を含有するクリーム、エマルション、及びゲルが挙げられる。
【0168】
更に、直腸投与に好適な製剤は、乳化基剤又は水溶性基剤などの様々な基剤と混合することによって座薬として提示され得る。膣投与に好適な製剤は、有効成分に加えて、適切であるように、当該技術分野で知られているような担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又はスプレー式として提示され得る。
【0169】
当業者であれば、本開示の化合物を動物に外因的に投与する好適な方法が利用可能であり、2つ以上の経路を使用して、特定の化合物を投与することができるが、特定の経路が別の経路よりも即時かつより効果的な反応を提供することができることを理解するであろう。
【0170】
これらの用途に関して、本方法は、腸運動性障害の治療(例えば、予防的又は治療的)に有効な治療有効量の化合物の、動物、特に哺乳動物、より具体的にはヒトへの投与を含む。本方法はまた、腸運動性障害に罹患する素因を有する患者の治療のための、治療効果量の化合物の投与を含む。本発明に関連して、動物、特にヒトに投与される用量は、合理的な時間枠で動物における治療応答に影響を与えるのに十分であるべきである。当業者は、投薬量が、動物の状態、動物の体重、並びに障害の重症度及びステージを含む様々な要因に依存することを認識するであろう。
【0171】
典型的な処置において投与される本開示の化合物の総量は、好ましくは、1日用量当たり、マウスでは約1mg/kg体重~約100mg/kg体重、及びヒトでは約10mg/kg体重~約50mg/kg体重、及び約20mg/kg体重~約40mg/kg体重である。いくつかの実施形態では、対象はヒトであり、用量は約10mg/kg体重~約90mg/kg体重である。いくつかの実施形態では、対象はヒトであり、用量は約10mg/kg体重~約80mg/kg体重である。いくつかの実施形態では、対象はヒトであり、用量は約10mg/kg体重~約70mg/kg体重である。いくつかの実施形態では、対象はヒトであり、用量は約10mg/kg体重~約60mg/kg体重である。いくつかの実施形態では、対象はヒトであり、用量は約1mg/kgヒトの体重~約300mg/kgヒトの体重である。この総量は、必ずしもそうではないが、典型的には、約24ヶ月の期間にわたって1日当たり約1回~1日当たり約3回、及び約12ヶ月の期間にわたって1日当たり2回の一連のより小さい用量として投与される。
【0172】
用量のサイズは、投与の経路、タイミング、及び頻度、並びに化合物の投与に随伴し得る任意の有害な副作用の存在、性質、及び程度、並びに所望の生理学的効果によっても決定されるであろう。当業者であれば、様々な状態又は疾患状態、特に慢性状態又は疾患状態が、複数回の投与を伴う長時間の治療を必要とし得ることを理解するであろう。
【0173】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、そのような組成物を必要とする患者に投与するために製剤化される。本明細書に記載の組成物は、経口、非経口、吸入スプレーにより、局所、直腸、鼻、頬、膣、又は移植されたリザーバを介して投与され得る。本明細書で使用される「非経口」という用語には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、くも膜下腔内、肝臓内、病変内、及び頭蓋内の注射又は注入技術が含まれる。いくつかの実施形態では、組成物は、経口、腹腔内、又は静脈内に投与される。本明細書に記載の組成物の滅菌の注射用形態は、水性又は油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、当該技術において知られている技術に従って製剤化され得る。
【0174】
任意の特定の患者に対する特定の投薬量及び治療レジメンは、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全体の健康状態、性別、食事、投与時間、排出率、薬物の組み合わせ、及び治療を行う医師の判断、並びに治療される特定の疾患の重症度を含む、様々な因子に依存するであろう。組成物中の本明細書に記載の化合物の量も、組成物中の特定の化合物に依存するであろう。
【0175】
本明細書に記載の化合物は、単独で投与することができるか、又は追加の治療剤と同時投与することができる。したがって、調製物は、必要に応じて、他の活性物質(例えば、代謝分解を低下させるための)と組み合わせることもできる。追加の治療剤としては、本明細書に更に記載される腸運動性障害を治療するのに有用であることが知られている他の活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0176】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、小胞、特にリポソームで送達することができる(Langer,Science,1990,249,1527-1533、Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez-Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353-365(1989)のTreat et al.、Lopez-Berestein,ibid.,pp.317-327を参照のこと。一般に同書を参照のこと)。
【0177】
好適な組成物としては、限定されないが、経口非吸収組成物が挙げられる。好適な組成物としては、生理食塩水、水、シクロデキストリン溶液、及びpH3~9の緩衝溶液も含まれるが、これらに限定されない。
【0178】
本明細書に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、多数の賦形剤とともに製剤化することができ、これには、精製水、プロピレングリコール、PEG 400、グリセリン、DMA、エタノール、ベンジルアルコール、クエン酸/クエン酸ナトリウム(pH3)、クエン酸/クエン酸ナトリウム(pH5)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンHCl(pH7.0)、0.9%生理食塩水、1.2%生理食塩水、酢酸塩、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩、酸性酒石酸塩、臭化物、カムシレート、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、デカン酸塩、エデト酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、ヘキサン酸塩、ヒドロキシナフト酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、硫酸メチル、粘液、ナプシル酸塩、硝酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、及びこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、賦形剤は、プロピレングリコール、精製水、及びグリセリンから選択される。
【0179】
いくつかの実施形態では、製剤は、固体に凍結乾燥させ、使用前に、例えば、水で再構成することができる。
【0180】
哺乳動物(例えば、獣医学的使用のための動物又は臨床使用のためのヒト)に投与する場合、化合物は、単離された形態で投与され得る。
【0181】
ヒトに投与する場合、化合物は、無菌であり得る。式Iの化合物を静脈内に投与する場合、水が好適な担体である。特に注射用溶液には、生理食塩水及び水性デキストロース及びグリセロール溶液も液体担体として使用される。好適な薬学的担体としてはまた、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどの賦形剤も挙げられる。所望な場合、本組成物はまた、少量の湿潤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することができる。
【0182】
本明細書に記載の組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸薬、ペレット、カプセル、液体を含有するカプセル、粉末、徐放性製剤、座薬、エアロゾル、スプレー、又は使用に好適な他の任意の形態をとることができる。好適な薬学的担体の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,A.R.Gennaro(Editor)Mack Publishing Co.に記載されている。
【0183】
いくつかの実施形態では、化合物は、ヒトへの投与に適した薬学的組成物として、通常の手順に従って製剤化される。典型的には、化合物は、無菌の等張性水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、組成物はまた、可溶化剤を含み得る。静脈内投与用の組成物は、注射部位の痛みを和らげるためのリドカインなどの局所麻酔薬を任意選択的に含み得る。一般に、成分は、例えば、活性剤の量を示すアンプル又はサシェなどの密封容器中の乾燥した凍結乾燥粉末又は水を含まない濃縮物として、別々に又は単位剤形で一緒に混合されてのいずれかで供給される。化合物が注入によって投与される場合、それは、例えば、滅菌医薬品グレードの水又は生理食塩水を含有する注入ボトルを用いて分注され得る。化合物が注射によって投与される場合、注射用の滅菌水又は生理食塩水のアンプルが、成分が投与前に混合され得るように提供され得る。
【0184】
薬学的組成物は、単位剤形であり得る。そのような形態において、組成物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に分けることができる。単位剤形は、パッケージ化された調製物であり得、パッケージは、別個の量の調製物、例えば、パケット化された錠剤、カプセル、及びバイアル又はアンプル中の粉末を含有する。単位剤形はまた、カプセル、カシェ、又は錠剤自体であり得るか、又はこれらのパッケージ化された形態のうちのいずれかの適切な数であり得る。
【0185】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、液体の形態であり、活性剤は、溶液中、懸濁液中、乳濁液として、又は溶液/懸濁液として存在する。いくつかの実施形態では、液体組成物は、ゲルの形態である。他の実施形態では、液体組成物は、水性である。他の実施形態では、組成物は、軟膏の形態である。
【0186】
いくつかの実施形態では、組成物は、固体物品の形態である。例えば、いくつかの実施形態では、眼組成物は、眼とまぶたとの間などの眼の中の好適な位置に、又は結膜嚢に挿入することができる固体物品であり、それは、例えば、米国特許第3,863,633号、同第3,867,519号、同第3,868,445号、同第3,960,150号、同第3,963,025号、同第4,186,184号、同第4,303,637号、同第5,443,505号、及び同第5,869,079号に記載される活性剤を放出する。そのような物品から、通常、固体物品が一般的に密接に接触している、角膜の表面を浸す涙液を介してか、又は直接、角膜自体のいずれかを介して角膜へ放出する。そのような方法で眼に移植するのに好適な固体物品は、一般に、主にポリマーで構成され、生体侵食性又は非生体侵食性であり得る。本開示に従う本明細書に記載の化合物のうちの1つ以上を担持する眼インプラントの調製に使用することができる生体侵食性ポリマーとしては、脂肪族ポリエステル、例えば、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド)、ポリ(イプシロンカプロラクトン)、ポリ-(ヒドロキシ酪酸塩)、及びポリ(ヒドロキシバレレート)のポリマー及びコポリマー、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアン無水物、脂肪族ポリカーボネート、並びにポリエーテルラクトンが挙げられるが、これらに限定されない。好適な非生物侵食性ポリマーとしては、シリコーンエラストマーが挙げられる。
【0187】
本明細書に記載の組成物は、保存剤を含有することができる。好適な保存剤としては、これらに限定されないが、フェニル水銀酸塩(例えば、酢酸フェニル水銀酸塩、ホウ酸塩、及び硝酸塩)及びチメロサールなどの水銀含有物質;安定化二酸化塩素;塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、及び塩化セチルピリジニウムなどの四級アンモニウム化合物;イミダゾリジニル尿素;メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、及びブチルパラベンなどのパラベン、並びにそれらの塩;フェノキシエタノール;クロロフェノキシエタノール;フェノキシプロパノール;クロロブタノール;クロロレゾール;フェニルエチルアルコール;EDTA二ナトリウム;並びにソルビン酸、並びにそれらの塩が挙げられる。
【0188】
開示される組成物は、開示される化合物から調製することができることが理解される。開示される組成物は、開示された使用方法で使用することができることも理解される。
【0189】
E.キット
いくつかの実施形態では、開示される化合物(例えば、COXの調節物質、ドーパミン受容体、ナトリウムチャネル、セロトニン受容体、アセチルコリン受容体、GABA受容体、FAAH、アドレナリン受容体、ヒスタミン受容体、バソプレシン受容体、NMDAR、ベータアミロイド、ガンマ-セクレターゼ、IxB/IKK、グルタミン酸受容体、オピオイド受容体、TRPV、アルドースレダクターゼ、カルシウムチャネル、グルココルチコイド受容体、及び/又はHMG-CoAレダクターゼ)、又はそれらの薬学的に許容される塩と、(a)腸運動性障害を治療するために知られている薬剤、(b)腸運動性障害を治療するための説明書、及び(c)腸運動性障害を治療することに関連して化合物を投与するための指示書から選択される1つ以上と、を含む、キットが開示される。
【0190】
したがって、様々な実施形態では、カルプロフェン、メフェナム酸、フェナセチン、バルデコキシブ、フェノルドパムメシル酸塩、フルフェナジン塩酸塩、ブピバカインHCl、フェナゾピリジンHCl、アルベリンクエン酸塩、ニテンピラム、4-アミノ酪酸(GABA)、PF-3845、エスモロールHCl、シメチジン、コニバプタンHCl、(+)-MK-801マレイン酸塩、MK-0752、R04929097、ロスマリン酸、テオフィリン、アリピプラゾール、フロプロピオン、ラトレピルジン2HCl、ADX-47273、MPEP、ネホパムHCl、フェナゾピリジンHCl、エピネフリン、(+)-マトリン、フェノチアジン、ナプロキセンナトリウム、AMG-517、イソリキリチゲニン、ニルバジピン、プレドニゾン、及びシンバスタチン、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される化合物と、(a)腸運動性障害を治療するために知られている薬剤、(b)腸運動性障害を治療するための説明書、及び(c)腸運動性障害を治療することに関連して化合物を投与するための指示書から選択される1つ以上と、を含む、キットが開示される。
【0191】
更なる実施形態では、キットは、腸運動性障害の治療のために知られている薬剤を含む。腸運動性障害の治療のために知られている薬剤の例としては、副交感神経興奮薬、運動促進剤、オピオイドアンタゴニスト、下痢止め、及び抗生物質が挙げられるが、これらに限定されない。なお更なる実施形態では、腸運動性障害の治療のために知られている薬剤は、ネオスチグミン、ベタネコール、メトクロプラミド、シサプリド、及びロペラミドから選択される。
【0192】
更なる実施形態では、化合物及び少なくとも1つの薬剤は、共製剤化される。更なる実施形態では、化合物及び少なくとも1つの薬剤は、共包装される。
【0193】
キットはまた、他の成分と共包装、共製剤化、及び/又は共送達される化合物及び/又は生成物を含むことができる。例えば、薬剤製造業者、薬剤再販業者、医師、調合店、又は薬剤師は、開示される化合物及び/又は生成物、並びに患者に送達するための別の成分を含むキットを提供することができる。
【0194】
開示されるキットは、開示される化合物、生成物、及び薬学的組成物から調製することができることが理解される。開示されるキットは、開示される使用方法に関連して使用できることも理解される。
【0195】
前述の説明は、本開示を例示し、説明する。更に、本開示は、好ましい実施形態のみを示し、説明するが、上記のように、本開示は、様々な他の組み合わせ、修正、及び環境で使用することが可能であり、本明細書に表される開示の概念の範囲内で、上記の教示及び/又は関連技術のスキル若しくは知識に見合った変更又は修正が可能であることを理解されたい。本明細書に上述される実施形態は、出願人によって知られている最良のモードを説明し、他の当業者がそのような又は他の実施形態において、及びその特定の用途又は使用によって必要とされる様々な修正を用いて本開示を利用することを可能にすることを更に意図している。したがって、説明は、本開示を本明細書に開示される形態に限定することを意図しない。また、添付の特許請求の範囲は、代替の実施形態を含むと解釈されることが意図される。
【0196】
本明細書で引用される全ての刊行物及び特許出願は、各々個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されたかのように、ありとあらゆる目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。本開示と、参照により本明細書に組み込まれるいかなる出版物又は特許出願との間に矛盾がある場合、本開示が制御する。
【実施例】
【0197】
F.実施例
腸神経系(ENS)は、腸の生理学、及び胃腸(GI)管と他の臓器との間のクロストークを媒介することにおいて中心的な役割を果たす。ヒトENSは、理解しがたいままであり、インビトロでのモデリング及びマッピングの青写真の必要性を強調している。ここでは、偏りのないスクリーンを実施し、NOニューロンの活性を調節する薬物候補を特定した。次に、運動性を促進するそれらの可能性が、エクスビボでのマウス結腸組織において実証された。NOニューロン仕様に関与する発達プログラムを定義するために、ハイスループット戦略が作成され、PDGFR阻害が腸ガングリオイドにおけるNOニューロンの誘導を促進することが発見された。NOニューロン欠損マウスの結腸におけるこれらのガングリオイドの移植は、広範囲の組織生着をもたらし、インビボでのヒトENSの研究のための異種移植モデル、及び神経変性GI障害のための細胞ベースの治療の開発を提供する。これらの研究は、ヒトENSの基本的特徴を解読し、腸神経障害を治療するための効果的な戦略を設計するための枠組みを提供する。
【0198】
開示される化合物の代表的な例は、以下の非限定的な方法、スキーム、及び実施例に例示される。
【0199】
1.方法
a.未分化ヒト幹細胞の培養及び維持
ヒト胚性幹細胞(hESC)株H9(WAe009-A、及び誘導体hSYN::ChrR2-EYFP、NOS1::GFPを発現するレポーター)及び人工多能性幹細胞(hiPSC)株WTC-11(UCSFi001-A)を、Geltrex(商標)コーティングされたプレート上に播種し、以前に記載されたように(Barber et al.,2019)化学的に定義された培地(E8)に維持した。維持培養物を、30日ごとにマイコプラズマについて試験した。
【0200】
b.腸神経堤(ENC)誘導
hPSCの単層培養が約70%の密集度に達したとき、以前に確立された12日間の腸神経堤(ENC)誘導プロトコルを、維持培地(E8)を吸引し、それを神経堤誘導培地A[エッセンシャル6培地中のBMP4(1ng ml<2049>-1</2049>)、SB431542(10μM)、及びCHIR99021(600nM)の]に置き換えることによって開始した(Barber et al.,2019、Fattahi et al.,2016)(D0)。その後、ENC誘導日D2及びD4に、神経堤誘導培地B[Essential 6培地中のSB431542(10μM)及びCHIR99021(1.5μM)]を、D6、D8、及びD10に、培地C[レチノイン酸(1μM)を含む培地B]を培養物に供給した。次に、ENCクレストスフィアをD12~D15中に形成して、ENC系統のための選択、及び我々の培養物中でのそれらを汚染に対する選択を容易にした。その際、ENC誘導クレスト培地CをD12に除去し、アキュターゼを使用してENC単層を分離した(30分、37℃、5%CO2)。試料を290×gで1分間遠心分離した後、ENC細胞を、NC-C培地[FGF2(10ng ml-1)、CHIR 99021(3μM)、N2サプリメント(10μl ml-1)、B27サプリメント(20μl ml-1)、グルタグロ(10μl ml-1)、及びMEM NEAA(10μl ml-1)]に再懸濁し、超低付着プレートに移して、自由浮遊3D腸クレストスフィアを形成した。D14では、自由浮遊する腸クレストスフィアを観察することができたとき、それらを渦巻き動作を使用して各ウェルの中央に穏やかに集めた。次に、古い培地を、クレストスフィアを除去することなく、各ウェルの周囲から慎重に吸引した。新鮮なNC-C培地を添加した後、腸ニューロン誘導期の前に、培養物を24時間(37℃及び5%CO2)インキュベートした。
【0201】
c.腸神経堤からの腸ニューロン誘導
15日目に、腸クレストスフィアを、渦巻き動作を使用してウェルの中央に集め、NC-C培地を、P1000マイクロピペットを使用してゆっくりとした円動作で除去し、自由浮遊するクレストスフィアを回避した。このステップでは、プロトコルは、最終的に所望される培養レイアウト(2D ENS培養物対3D腸ガングリオイド)に応じて変化した。2D ENS培養物については、PBSで腸クレストスフィアを洗浄した後、アキュターゼ(Stemcell Technologies、07920)を添加し、プレートを37℃で30分間インキュベートして、クレストスフィアを解離した。次に、残りのスフェロイドを、ENC培地[神経基底培地中のGDNF(10ng ml-1)、アスコルビン酸(100μM)、N2サプリメント(10μl ml-1)、B27サプリメント(20μl ml-1)、グルタグロ(10μl ml-1)、及びMEM NEAA(10μl ml-1)]をピペットすることによって破壊した。細胞を回転させ(2分間、290×g、20~25℃)、上清を除去した。ペレットをENC培地に再懸濁し、細胞をポリ-L-オルニチン(PO)/ラミニン/フィブロネクチン(FN)プレートに1cm<2091>2</2091>当たり100,000個の生細胞で播種した。3D腸ガングリオイドについては、アキュターゼ処置を避け、腸クレストスフィアに、同じ体積のENC培地[神経基底培地中のGDNF(10ng ml-1)、アスコルビン酸(100μM)、N2サプリメント(10μl ml-1)、B27サプリメント(20μl ml-1)、グルタグロ(10μl ml-1)、及びMEM NEAA(10μl ml-1)]を供給した。D30~D40まで隔日でENC培地を供給し続け、その後、供給頻度は、週に1~2回に低減することができるが、培地の量を多くした。
【0202】
d.免疫蛍光
免疫蛍光(IF)染色のために、細胞を、最初にPBS中の4%PFA中に固定し(30分、室温(RT)、次いで、RTで更に30分間、透過緩衝液(PB)(Foxp3/転写因子染色緩衝液セット、00-5523)によって遮断及び透過化した。固定及び透過化ステップの後、細胞を、一次抗体溶液中で、4℃で一晩インキュベートし、次いで、室温でフルオロフォア抱合二次抗体とインキュベートする前に、PBで3回洗浄した。撮像前に、染色した細胞をDAPI蛍光核染色とインキュベートし、更に3回洗浄した。抗体及び作用希釈物のリストは示されていない。
【0203】
e.腸ガングリオイド凍結切片の調製
hPSC由来のガングリオイドを、ステージ1(37~50日目)及びステージ2(70~90日目)で収集し、PBS中で2回すすぎ、4%PFA(SCBT sc-281692)中で3時間氷上に固定し、続いて4℃で最長6ヶ月間保管するために、上清の90%をPBSに置き換えた。ガングリオイドを、PBS中の5%スクロース(RPI Research Products 524060)で、室温で10分間、続いてPBS中の10%スクロースで、室温で2時間、及び20%スクロースで、4℃で一晩処置した。スクロース処置されたガングリオイドをクライオモールド(Tissue-Tek(登録商標)Cryomold(登録商標)培地、VWR25608-924)中に配置し、全ての20%スクロースを除去し、2:1の20%スクロース:OCT(Tissue Plus O.C.T.Compound Fisher HealthCare 5484)中で室温で2時間インキュベートした後、エタノール/ドライアイスでフラッシュ凍結した。1220μMの切片を、Superfrost(登録商標)Plus Micro Slide、Premium(VWR 48311-703)に付着したクライオスタット(Leica 3050S)上に採取し、42℃のスライドドライヤー上で最長2時間乾燥させた後、-80℃で最長1年間保管した。
【0204】
f.パラフィン包埋ヒト結腸切片の調製
ヒトS状結腸組織は、生物医学研究目的のために臓器を獲得する組織から非移植性臓器を提供するthe International Institute for the Advancement of Medicine(IIAM)から受け取った。結腸組織を滅菌条件下で得、等張溶液で洗い流し、臓器移植溶液に浸し、死後24時間以内に氷上で実験室に出荷した。全厚組織片(約2cm2)を、10%中性緩衝ホルマリン(Cancer Diagnostics、FX1003)中で一晩(24時間未満)固定した。パラフィン包埋(Leica ASP6025、組織プロセッサ)の前に、試料を70%エタノールに移した。約5μMの厚さの横断組織切片を、コーティングされたガラススライド(Superfrost(登録商標)Plus Micro Slide;VWR、48311-703)上に切断し、一晩空気乾燥させた。以下のスライド調製ステップを、全て室温で実行した。パラフィン切片を有するスライドを、きれいなキシレン代替物(Sigma A5597)で3回洗浄し、次いで、各々100%エタノール、95%エタノール、及び70%エタノールで1回洗浄した。次いで、スライドを、家屋の脱イオン水の下に5分間通した後、4℃で最長4週間保管するために1×PBS中に配置した。染色の前に、パラフィン切片を、クエン酸緩衝液(Vector Laboratories Antigen Unmasking Solution H-3300)又はTE緩衝液(Thermo 17890、1MのNaOHでpH9.0にした)のいずれかで抗原回復を受けた。400ワットに設定したPelco BioWave Pro+を使用して、スライドを緩衝液中で、95℃で10分間インキュベートした。
【0205】
g.腸ガングリオイド凍結切片及びパラフィン包埋ヒト結腸切片の染色
別段の定めがない限り、全てのステップは、室温で実行した。ガングリオイド凍結切片及びパラフィン包埋ヒト正常結腸切片を上記のように調製し、次いでPBS中で3回洗浄し、0.5%(v/v)Triton X-100(VWR0694)を含む血清(10%ロバ又は10%ヤギ)中で1~2時間遮断した。次いで、スライドを、0.1%Triton X-100を含む血清中で希釈された一次抗体(10%ロバ又は10%ヤギ)と4℃で12~20時間インキュベートした。スライドを、0.1%Tween-20(Sigma P1379)を含むPBS中で、各々、20分間6回洗浄し、Alexa Fluor抱合二次抗体と1時間インキュベートした。希釈した二次抗体溶液を除去し、水中の1.0μg/mLのDAPIで10分間置き換えた。スライドを、0.1%Tween-20を含むPBS中で、各々、20分間6回洗浄し、カバースリップをFluoromount-G(Southern Biotech 0100-01)で取り付けた。抗体及び作用希釈物のリストは示されていない。画像を、Leica SP8反転共焦点又はEcho Revolveで取得した。LeicaのLAS Xタイル特徴又はFIJI用のグリッド/ペアワイズステッチプラグイン(PMID19346324)を、ステッチした画像に使用した。
【0206】
h.2光子蛍光撮像
撮像実験は、μManagerソフトウェア(San Francisco,CA)で動作するカスタム構築の直立2光子顕微鏡で実施した。励起源は、760nmで動作する2光子Coherent Chameleon Vision IIレーザー(Coherent、Santa Clara,CA)であった。画像は、Olympus LWD 1.05 NA水浸レンズ(Olympus、Tokyo Japan)を使用して収集した。DAPIを撮像するために、380nm~420nmの光を収集する放出フィルタ(Chroma、Bellow Falls VT)を使用したが、Alexa 568の蛍光放出は、565nm~635nmのフィルタ(Chroma、Bellow Falls VT)を使用して収集した。
【0207】
i.マクロ蛍光撮像
画像は、長作動距離低倍率レンズで構成されたNikon AZ100M「マクロ」レーザー走査共焦点で撮影した。顕微鏡は、標準的な405nm、488nm、561nm、及び640nmのレーザー線を備え、400~700nmの検出範囲を有するPMT検出器を有する。画像エッジでの信号の低下を低減するために、光学ズーム係数2.1倍を使用し、デジタルズーム係数1.873倍を使用して横方向の解像度を増加させた。
【0208】
j.フローサイトメトリー
フローサイトメトリー分析のための試料の調製のために、細胞を、最初に、アキュターゼ処置(Stemcell Technologies、07920、30~60分、37℃、5%CO2)によって単一細胞懸濁液に解離し、次いで固定/透過緩衝液(Foxp3/転写因子染色緩衝液セット、00-5523)を使用して固定及び透過化した。免疫蛍光について上述したように、細胞を一次抗体及び二次抗体で染色した。フローサイトメトリーは、BD LSRFortessa細胞分析装置を使用して実施し、データは、Flowjo(商標)(FlowJo(商標)ソフトウェア バージョン8.7)を使用して分析した。抗体及び作用希釈物のリストは示されていない。
【0209】
k.ヒトシナプシン::CHANNELRHODOPSIN2-EYFP腸ガングリオイドブルーライト活性化
腸ガングリオイドは、青色光(100%レーザー強度、30秒間隔で3×1分の曝露、EVOS FL)に曝露したか、又は周囲光に放置したかのいずれかであった。次いで、腸ガングリオイドを37℃で45分間インキュベートし、その後、フローサイトメトリーのために解離、固定、及び透過化した(上記参照)。細胞を、cFos(abcam、ab190289)及びTUBB3(Biolegend、801202)に対する抗体を使用して染色した。
【0210】
l.バルクRNA-seqデータ分析
PureLink(商標)RNAミニキットを使用して、全RNAを抽出した。次いで、第1の鎖cDNAを、LexogenのQuantseq Forward Library調製キットで合成した。Illumina適合性RNA配列決定ライブラリをQuantseqで調製し、UCSF Center for Advanced TechnologyのIllumina Hiseq 4000プラットフォーム上でプールし、配列決定した。umi_toolsを使用してfastqファイルからUMIを抽出し、cutadaptを使用して、短いリード及び低品質のリードを除去した。リードを、STARアライナーを使用してヒトGENCODE v.34参照ゲノムに整列させ、重複リードを、umi_toolsを使用して折り畳んだ。遺伝子レベル数を、HTSeqを使用して測定し、DESeq2を使用して比較した。
【0211】
m.単一細胞及び単一核RNA配列決定試料調製及びデータ収集
細胞収穫に使用される全てのチューブ及びピペットチップを、1×PBS中の1%BSAで前処置した。細胞をAccutase(Stem Cell)中で、単一の細胞懸濁液が得られるまで、10分単位で、エンドツーエンドの回転で、37℃で解離した。細胞を細胞染色緩衝液(Biolegend)で洗浄し、氷上で30分間、TotalSeq HTO抗体で染色した。細胞を細胞染色緩衝液中で2回洗浄し、40μmのピペットチップストレーナー(BelArt)を通して濾過した。Trypan Blue染料及び血球計を使用して細胞を計数し、配列決定のためにプールした。scRNA-seqライブラリを、TotalSeq HTO配列のカスタム増幅(Biolegend)を用いて、Chromium Next GEM Single Cell 3′ Kit v3.1(10× Genomics)で調製した。ライブラリを、Center for Advanced Technologies(UCSF)のIllumina NovaSeqシーケンサ上で配列決定した。細胞特徴マトリクスを、kallisto/bustoolsを使用して抽出し、seuratを使用して脱多重化した。
【0212】
n.品質管理及び細胞濾過
データセットを、R v4.0.3において、Seurat v4で分析した(Hao et al.,2021)。「PercentageFeatureSet」機能を使用して、1つの細胞当たりのミトコンドリア及びリボソーム遺伝子転写産物にマッピングするリード数を計算した。細胞を低品質として特定し、その後、1つの細胞当たりに捕捉された独自の特徴の数、1つの細胞当たりに捕捉されたUMIの数、及び1つの細胞当たりのミトコンドリア転写産物にマッピングされたリードのパーセンテージに基づいて、各データセットについて独立して除去した。データセット特異的の品質管理指標カットオフは示されていない。
【0213】
o.次元削減、クラスタ化、及び注釈
該当する場合、生物学的複製試料を、最初に、塩基R「merge」機能を使用して統合した。カウントマトリクスを10,000のスケーリング係数で対数正規化し、「vst」方法を使用して2,000個の可変特徴を特定した。デフォルトパラメータを有するSeurat統一機能を使用して、生物学的複製試料のカウントマトリクスを統一した。「cc.genes」に提供されるSeuratのS及びG2M特徴を有する「CellCycleScoring」機能を使用して、細胞周期を予測した。可変特徴セットをスケーリングし、中央に配置し、以下の変数を回帰させた:nFeatures、nCounts、ミトコンドリア遺伝子パーセンテージ、リボソーム遺伝子パーセンテージ、Sスコア、及びG2Mスコア。主成分分析(PCA)を、デフォルト設定を使用して実行し、Uniform Manifold Approximation and Projection(UMAP)次元削減を、PCA削減を使用して実行した。共有最近傍(SNN)グラフを、デフォルト設定を使用して計算し、細胞クラスタ化を、デフォルトのルーベンアルゴリズムを使用して実行した。低品質の細胞のクラスタを特定及び除去するために、クラスタごとに品質管理メトリックを視覚化した(平均nFeatures又はnCounts未満、及び平均ミトコンドリア及びリボソーム遺伝子パーセンテージよりも高い)。上記のパイプラインは、いかなる低品質の細胞クラスタをも除去した後、腸神経堤、腸ニューロン、窒素作動性ニューロン、及び腸グリアのサブクラスタ化分析のために、データセット上で再び実施した。UMAP削減及びSNN計算に使用される主成分の数は、主成分の標準偏差によって決定し、各データセットについて変化した。SNN及びUMAP計算に使用される主成分の数、及び各データセットのクラスタ化に使用される分解能は示されていない。クラスタマーカーを、ウイルコクソンの順位和検定を使用して見出し、クラスタは、既知の細胞型マーカー遺伝子の発現に基づいて注釈付けした。細胞型注釈に続いて、遺伝子ドロップアウト値を、適応的にしきい値化された低ランク近似(ALRA)を使用して帰属させた(Linderman et al.,2018)。ランク-k近似を、各データセットに対して自動的に選択し、他の全てのパラメータをデフォルト値として設定した。帰属した遺伝子発現は、全てのプロットに示し、特に指定されない限り、全ての下流分析で使用した。
【0214】
p.公開されたデータセットの分析
品質管理。各データセットの元の著者によって使用される基準を使用して、低品質の細胞を特定し、除去した。データセット固有の品質管理指標カットオフは示されていない。
【0215】
次元削減及びクラスタ化。元の著者によって説明された方法及びパラメータを使用して、Seuratを用いてデータセットを分析した。
【0216】
Morarach et al.:全てのデータセットについて、カウントマトリクスを正規化し、ミトコンドリア遺伝子パーセンテージを回帰させ、「SCTransform」関数を使用して3000個の可変特徴を返した。PCAを実行する前に、可変特徴リストから高発現性特異的及び前初期遺伝子(Xist、Gm13305、Tsix、Eif253y、Ddx3y、Uty、Fos、Jun、Junb、Egr1)を除去した。「RunUMAP」、「FindNeighbors」、及び「FindClusters」機能に使用されるデータセット特異的パラメータは表示されていない。著者によって決定された細胞注釈を、細胞型及びニューロンサブタイプについて使用した。
【0217】
Drokhlyansky et al.:全てのデータセットについて、カウントマトリクスを10,000のスケーリング係数で対数正規化し、「vst」方法を使用して2,000個の可変特徴を特定した。「Unique_ID」によるバッチ補正を、「RunFastMNN」Seurat Wrappers機能を用いて、相互最近傍補正(MNN)を使用して行った。「RunUMAP」、「FindNeighbors」、及び「FindClusters」機能に使用されるデータセット特異的パラメータは表示されていない。著者によって決定された細胞注釈を、細胞型及びニューロンサブタイプについて使用した。比較の一貫性のために、遺伝子ドロップアウト値を、自動的に決定されたランク-k近似及び他の全てのデフォルト値を使用して、全ての公開されたデータセットについてALRAを使用して帰属させた。帰属した遺伝子発現は、全てのプロットに示し、特に指定されない限り、全ての下流分析で使用した。
【0218】
グリアサブクラスタ化分析。グリアを、上記の各著者によって説明された元の分析パイプラインに類似した方法を使用してサブクラスタ化した。
【0219】
Morarach et al.:E18データセットは、単一の転写的に均質なグリアクラスタを含んだため、グリア及び前駆体集団を一緒にサブクラスタ化して、下流分析に必要な比較細胞集団を提供した。次に、サブセットデータセットを正規化し、ミトコンドリア遺伝子パーセンテージを回帰させ、「SCTransform」機能を使用して3000個の可変特徴を返した。PCAを実行する前に、可変特徴リストから高発現性特異的及び前初期遺伝子(Xist、Gm13305、Tsix、Eif253y、Ddx3y、Uty、Fos、Jun、Junb、Egr1)を除去した。「RunUMAP」、「FindNeighbors」、及び「FindClusters」機能に使用されるデータセット特異的パラメータは表示されていない。
【0220】
Drokhlyansky et al.:グリアサブセットデータセットを、10,000のスケーリング係数で対数正規化し、「vst」方法を使用して2,000個の可変特徴を特定した。「Unique_ID」によるバッチ補正を、「RunFastMNN」Seurat Wrappers機能を用いて、相互最近傍補正(MNN)を使用して行った。「RunUMAP」、「FindNeighbors」、及び「FindClusters」機能に使用されるデータセット特異的パラメータは表示されていない。
【0221】
q.遺伝子群発現の特徴付け
遺伝子リストは、10個の異なる官能基(転写因子、神経伝達物質合成、神経ペプチド、神経伝達物質受容体、神経ペプチド受容体、サイトカイン、サイトカイン受容体、分泌シグナル伝達リガンド、リガンド受容体、及び表面マーカー)に属する遺伝子についてまとめた。各データセットについて、遺伝子リストをフィルタリングして、少量の遺伝子(各クラスタの細胞の25%未満で検出された)を除去した。これらのリストからの遺伝子は、単一のクラスタのみの細胞の25%を超える細胞が遺伝子を発現した場合、クラスタによって排他的に発現されることが決定された。
【0222】
r.細胞型転写シグネチャスコアリング
2つのデータセット間の転写的に類似した細胞集団を見つけるために、まず、参照データセットの差次的に発現した(DE)遺伝子を、ウイルコクソンの順位和検定を使用して、「FindAllMarkers」機能を用いて非帰属遺伝子数から計算し、正の倍率変化を有する遺伝子のみを返した。DE遺伝子リストを最初にフィルタリングして、クエリデータセットに存在しない遺伝子を除去した。次いで、参照データセットの各細胞クラスタについて、転写シグネチャ遺伝子リストを、調整されたp値を増加させることによって選別された上位100個のDE遺伝子から作製する。次いで、クエリデータセットを、クエリデータセットの帰属した遺伝子数に基づいて、「AddModuleScore」機能を使用して、各参照データセットの細胞クラスタの転写シグネチャ遺伝子リストについてスコアリングする。
【0223】
s.スピアマンの順位相関係数
2つのデータセットにおける細胞クラスタの転写相関を、非帰属遺伝子数から計算し、Seuratの統一機能を利用して、正準相関分析の最初の30個の次元に基づいて3,000個のアンカー特徴を最初に見つけ、次いで、同じ数の次元を使用して2つのデータセットを統一した。次いで、これらの3000個のアンカー特徴の発現をスケーリングし、統合されたデータオブジェクトの中心に配置し、各アンカー特徴のスケーリングされた平均発現を、「AverageExpression」機能を使用して、各データセットの関心のある細胞クラスタについて計算した。全ての細胞クラスタを全ての細胞クラスタと比較するスピアマン相関マトリクスを、3000個のアンカー特徴のスケーリングされた平均発現に基づいて生成した。
【0224】
t.SWNE投影
参照及びクエリデータセットのカウントマトリクスは、両方のデータセットで検出された遺伝子のみを含むように、最初にフィルタリングする。次いで、SWNE v0.6パッケージを使用して、参照データセットに対して、同様に重み付けされた非負の埋め込み(SWNE)を生成する。まず、非負のマトリクス因数分解(NFM)は、参照データセットの非帰属遺伝子数から計算された3000個の可変特徴から構成因子を生成する。二次元の構成因子埋め込みを、サモンマッピングを使用して計算し、細胞及び特定されたキー遺伝子を、構成因子に対して二次元に埋め込む。最後に、SNNネットワークを、参照データセットから計算し、細胞の位置を平滑化するために使用する。次いで、クエリデータセットは、最初にクエリデータセットを参照データセットのNFM因子に投影することによって、参照データセットの2D構成因子空間にマッピングする。次いで、結果として生じるクエリデータセットの細胞埋め込みを、参照データセットのSNNネットワーク上への投影によって平滑化する。
【0225】
u.腸筋及び粘膜下スコアリング
著者によって公開された患者メタデータを使用して、組織層起源によってニューロン又はグリアを別々にグループ化した。汎ニューロン及び汎グリアの腸筋及び粘膜下遺伝子シグネチャは、ウイルコクソンの順位和検定を実行して、筋膜細胞群と粘膜下細胞群との間のDE遺伝子を特定することによって作成した。ニューロン及びグリアデータセットを、最初に、調整されたp値を増加させ、スコアリングされるデータセットで検出されない遺伝子を除去することによって遺伝子リストを順序付けすることによって、細胞型特異的組織層シグネチャを用いてスコアリングした。次いで、「AddModuleScore」機能を使用して、各組織層の100個の最も著しく濃縮された遺伝子について細胞をスコアリングした。
【0226】
v.ニューロンの神経化学的特定
ニューロンの神経化学的特定を、複数の神経化学的同一性に対応するために、各神経伝達物質について独立して行った。各神経伝達物質について、レート制限合成酵素(複数可)、代謝酵素、及び輸送タンパク質からなる遺伝子のコアセットを選択した。最初に、「AddModuleScore」機能を使用して、各神経伝達関連遺伝子セットについて細胞をスコアリングした。次に、レート制限酵素の細胞の発現が0よりも大きく、対応する遺伝子セットの細胞のモジュールスコアが0よりも大きい場合、細胞を「x-作動性」として注釈付けした。両方の基準が満たされなかった場合、細胞は、「その他」として注釈付けした。複数の神経化学的同一性を、各細胞の個別に決定された単一の神経化学的同一性を連結することによって決定した。1つのデータセット当たりの各神経化学的同一性の全体的な普及は、各単一の同一性について注釈付けされた細胞の総数を合計し、この合計から各「x-作動性」同一性のパーセンテージを計算することによって計算した。
【0227】
w.神経伝達物質反応スコアリング
各神経伝達物質によって活性化される全ての受容体を含有する別個の遺伝子リストを作成した。「AddModuleScore」機能を使用して、各神経伝達物質受容体ファミリー遺伝子セットの発現について、細胞をスコアリングした。
【0228】
x.グリア遺伝子セット濃縮分析(GSEA)階層的クラスタ化
各サブクラスタ化グリアデータセットについて、各グリアサブタイプのDE遺伝子を、「FindAllMarkers」機能を使用して計算した。MSigDB遺伝子オントロジーセットについてのGSEAを、fgsea v1.16を使用してlog2倍率変化を減少させることによって選別された各グリアサブタイプの上方制御されたDE遺伝子(正のlog2倍率変化のみ)に対して行った。正規化濃縮スコア(NES)を、DE遺伝子リスト内の少なくとも15個の遺伝子を含有する遺伝子セットについて、scoreTypeが「陽性」に設定された状態で計算した。各グリアサブタイプのGSEA結果を、生物学的プロセス遺伝子セットのみを含むように濾過したが、結果を、最も高い倍率変化遺伝子で濃縮された経路に限定しないように有意性に基づいてフィルタリングしなかった。次に、全てのグリアサブタイプについてのフィルタリングされたGSEA結果のNESを統合し、グリアサブタイプで検出されなかった経路を0のNESに割り当てた。次いで、NESに基づいて階層的クラスタ化を行い、遺伝子オントロジー経路及びグリアサブタイプの両方をクラスタ化した。グリアクラスがクラスタ化によって決定された後、各クラスで濃縮された経路を、所与のクラスの全てのサブタイプにおいて1.1を超えるNESを有する経路についてフィルタリングすることによって特定した。
【0229】
y.PP121対対照遺伝子発現相関
対照とPP121処置された細胞型、ニューロンサブタイプ、及びNOニューロンサブタイプの遺伝子発現を比較するために、各細胞型及びサブタイプ注釈のサブセットデータセットを最初に作成した。次いで、各サブセットについて、「AverageExpression」機能及びプロットのために変換された自然対数を使用して、対照及びPP121処置された細胞について、全ての遺伝子の非帰属平均発現を計算した。対照及びPP121自然対数発現値を比較するR2値を、「y~x」式を使用して線形モデリングから計算した。
【0230】
z.CFOの発現スクリーニング
ステージ2の腸ガングリオイドをアキュターゼを使用して解離し、単一細胞懸濁液(ENC培地中)をV底96ウェルプレートのウェルに分布した。ピンツールを使用して、ニューロンシグナル伝達化合物ライブラリ(Selleckchem、USA)からの化合物を1pMで添加し、細胞を37℃で75分間インキュベートした。その後、細胞をPBSで洗浄し、フローサイトメトリーのために直ちに固定した。
【0231】
aa.NO放出アッセイ
一酸化窒素(NO)放出のハイスループット測定のために、ステージ1の2D ENS培養物(96ウェルプレート)を使用した。細胞をタイロード溶液[NaCl(129mM)、KCl(5mM)、CaCl2(2mM)、MgCl(1mM)、グルコース(30mM)、及びHEPES(25mM)、pH7.4]で洗浄した後、70pl/ウェルのタイロード溶液を各ウェルに添加する。ニューロンシグナル伝達化合物(Selleckchem、USA)を、ピンツールを使用して1pMで添加した。37℃で45分間インキュベーションした後、NOアッセイキット(Invitrogen、EMSNO)を使用して、上清を使用して、NO放出を決定する。簡潔に述べると、キットは、硝酸を、後に540nmで光を吸収する着色アゾ色素として検出される亜硝酸に変換する酵素硝酸レダクターゼを使用する。各化合物のNO放出は、ビヒクル(DMSO)に対してA540nmとして提示する。
【0232】
bb.NOニューロンを濃縮する化合物を特定するためのハイスループットスクリーニング
15日目のH9 hESC由来の腸クレストスフィアを単一の細胞に解離し(アキュターゼ、Stemcell Technologies、07920、30分、37℃)させ、ENC培地に再懸濁し、384ウェルプレートに移した。プレートを、細胞が付着するように2時間インキュベートした。ピンツールを使用して、1694個の阻害剤(SelleckChem、USA)のライブラリからの薬物を1pMの最終濃度でウェルに添加し、プレートをD20まで薬物とインキュベートし、培地を、薬物を含まないENCに変更した。40日目に、細胞を固定し、NOS1について染色し、InCellAnalyzer 2000(GE Healthcare、USA)を使用して撮像した。ヒットは、ビヒクル(DMSO)で処置したウェルと比較したNOS1+細胞のパーセンテージの倍増に基づいて選択した。
【0233】
cc.表面マーカースクリーニング
ヒト表面マーカースクリーニングのために、4つの独立した分化からのPP121処置されたNOS1::GFP腸ガングリオイドをプールし、単一の細胞に解離し(アキュターゼ、Stemcell Technologies、07920、30~60分、37℃、5%CO2)、固定した(Foxp3/転写因子染色緩衝液セット、00-5523、30分、4℃)。抗GFP抗体(abcam、ab13970、4℃)とのインキュベーションの前に、細胞を透過化し、遮断した(同じ染色キット)。3回洗浄した後、細胞をAlexa Fluor 488抱合二次抗体で染色した(40分、RT)。二次抗体溶液を除去し(3回洗浄)、細胞をPBS及び2%FBSを含有するブロック緩衝液でインキュベートした(30分、氷上)。細胞を、マウス及びラットで産生されたライブラリ抗体の数に対応する240:16の比率で分割し、それぞれ抗マウス及び抗ラットAlexa Fluor 647抱合二次抗体を受けた。次いで、それらをV底96ウェルプレートに分配し、氷上で30分間ライブラリ抗体で処置した(BD Biosciences、560747)。2回洗浄した後、表面マーカー及びGFPシグナルを、ハイスループットフローサイトメトリー(BD LSRFortessa)によって定量した。最高感度(CD+GFP+細胞の最高パーセンテージ)及び最高特異性(CD+GFP-細胞の最低パーセンテージ)に基づいて、NOニューロン特異的表面マーカーは特定された。
【0234】
dd.薬物標的相互作用予測
ヒットの正準SMILESをPubChem(De Giorgio et al.,2016、Niesler et al.,2021)から得、それらの既知の標的及び予測される標的のリストを、以下のデータベースからのデータを組み合わせることによって生成した。BindingDB(https://www.bindingdb.org/)、Carlsbad(http://carlsbad.health.unm.edu/)、DINIES
(https://www.genome.jp/tools/dinies/)、PubChem BioAssay(https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/、アクティブな相互作用のためにフィルタリング済み)、SEA(http://sea.bkslab.org/、0.4を超えるMaxTC用にフィルタリング済み)、SuperDRUG2(http://cheminfo.charite.de/superdrug2/)、及びSwissTargetPrediction(http://www.swisstargetprediction.ch/)。
【0235】
ee.インビボでの細胞移植
特定病原体除去(SPF)ホモ接合体ニューロン一酸化窒素合成酵素ノックアウトマウス(B6.129S4-Nos1tm1Plh/J、nNos1-/-)を、個々に換気されたケージ(IVC)内で、レシピエントとして使用するために繁殖及び維持した。英国動物(科学的手順)法1986に従って、これらの研究に使用した動物を維持し、実験を実施し、University College London Biological Services Ethical Review Processによって承認された。UCL Biological Servicesの畜産は、英国内務省指定証明書に準拠していた。Nos1-/-マウスは免疫能力があるため、シクロスポリンA(飲料水中250μg/ml)を、移植の2日前に経口投与して、ドナーヒト細胞の拒絶反応の可能性を低減させた。シクロスポリンA処置されたNos1-/-マウスを同腹仔群内からランダムに選択し、ステージ1の腸ガングリオイドを、イソフルラン麻酔下で開腹術を介してP23~P27マウスの中に移植した。簡潔に述べると、遠位結腸を曝露し、続いて、引っ張ったガラスマイクロピペットを使用して、口ピペットによって、0.5~1Mの細胞を含む腸ガングリオイドを遠位結腸の漿膜表面に移植した。移植された各組織は、典型的には、適切な位置決めを確実にするために、30Gの針の斜角を用いて、遠位結腸の表面上で操作された3つのガングリオイドを受けた。移植されたNos1-/-マウスを、シクロスポリンA(250jig/ml)処置された飲料水への継続的な自由アクセスとともに、移植後最大8週間維持して、分析用に屠殺し、結腸を除去する前に、免疫抑制の延長を確実にした。シクロスポリンAは、いくつかのシグナル伝達経路に影響を及ぼし、遺伝子発現変化を誘導することができるため、追跡研究において、シクロスポリンA処置された移植されていない動物からの組織などの適切な対照を使用して免疫蛍光結果を検証することが重要である。加えて、他の免疫不全背景(例えば、NSG)は、これらの生着結果を更に検証するために重要であろう。
【0236】
ff.組織の調製及び固定
切除後、結腸全体をSylgard(Dow、MI,USA)ライニングされたペトリ皿にピン留めし、腸間膜境界に沿って開いた。その後、粘膜を鋭利な解剖によって除去し、組織を、更なる処理のためにPBS中の4%PFAで固定した(45分~1時間、22℃)で固定した。
【0237】
gg.組織染色
結腸縦筋腸筋神経叢(LMMP)組織を、4%PFA、Thermo Scientific、J19943-K2)で固定し(氷上で1時間)、1%BSA及び1%Triton X-100(PBS中、45分、RT)を含有する緩衝液で遮断及び透過化した。次いで、組織を、一次抗体溶液(同じ緩衝液中、一晩、4℃)でインキュベートし、フルオロフォア抱合二次抗体で処置(1時間、RT)する前に、3回洗浄した。試料をDAPIで染色し、vectashield(Vector Laboratories、H-1400)を使用して取り付け前に洗浄した。抗体のリストは示されていない。
【0238】
hh.多電極アレイ(MEA)分析
データ取得:ニューロン活性を、各条件について1時間の記録セッションで、Cytoview MEA24ウェルプレート上のAxion Maestro Edgeを用いて記録した。神経調節物質又はビヒクルを、プレートをMaestro Edgeから取り外し、2倍濃縮の神経調節物質又はビヒクルで、予熱した培地を半分に交換し、直ちにプレートをAxionに戻して、記録を再開することによって添加した。光遺伝学的刺激をAxion Lumosアタッチメントで行い、プレートの全てのウェルを488nmの光を用いて50%の強度、1秒間のオン、4秒間のオフで30回刺激した。
【0239】
データ処理:生データは、最初に、振幅、波形形状、発射頻度、及びスパイク間隔の汚染に基づいて手動でスコアリングすることによって高品質のユニットを特定するために、MountainSortを使用してSpikeInterface(https://github.com/SpikeInterface)の修正バージョンで選別した。薬理学実験のために、スパイクスコアリング後に特定の電極上で検出された全てのユニットを調べ、同一の波形を有するユニットを特定することによって、ビヒクルと神経調節物質の記録との間でニューロンを一致させた。処置を受けた全てのウェルからのこれらの「対」ユニットの発射頻度を、対照及び神経調節物質の条件にわたって比較した。陽性応答物は、+0.1Hzを超える発射頻度変化を有するユニットであり、陰性応答物は、-0.1Hz未満の発射頻度変化を有し、中立応答物は、-0.1~+0.1Hzの間の発射頻度変化を有した。光遺伝学実験のために、個々の単位を再びSpikeInterfaceで抽出し、手動でスコアリングした。記録を、LEDがアクティブであったときの「オン」時間と、LEDがアクティブでなかったときの「オフ」時間に分けた。全てのユニットをまとめ、各ユニットの発射頻度をオン及びオフウィンドウ中に比較した。
【0240】
ii.エクスビボでの結腸運動性アッセイ
溶液の調製:クレブス緩衝液[NaCl(117mM)、KCl(4.7mM)、NaH2PO4(1.2mM)、MgCl2(1.5mM)、CaCl2.2H2O(2.5mM)、NaHCO3(25mM)、グルコース(11mM)、pH7.4]を37℃の水槽に入れ、実験開始前に95%O2及び5%CO2(炭素)ガス混合物で少なくとも30分間通気した。「薬物」処置溶液を、データ取得を開始する前に、薬物化合物をKrebs緩衝液に添加することによって新たに調製した。NOS1阻害剤を含む溶液を、Nオメガ-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル塩酸塩(L-NAME)を「Drug+L-NAME」を作製する薬剤溶液に添加することによって調製した。
【0241】
組織解離:各実験複製について、1対の8週間齢の野生型C57BL6マウス(雄)を密閉チャンバに入れ、CO2窒息、続いて頸部脱臼を使用して安楽死させた。下部GI管(盲腸及び結腸)を除去し、直ちに、糞便物質がまだ内部にある状態で37℃の炭化クレブス緩衝液に移した。脂肪組織及び腸間膜を、胃腸運動モニター(GIMM)装置の臓器浴リザーバに結腸を配置する前に除去した。GIMMは、対照の同時取得を可能にし、薬物処置された結腸を可能にする2つのリザーバを有した。
【0242】
実験的セットアップ及び手順:GIMMは、以前に報告されたモデルに基づいて設計した(Swaminathan et al.,2016)。GIMMの臓器リザーバは、2つの標本を同時に記録するための2つのチャンバを有する。4チャンネル蠕動ポンプ(WPI、PERIPRO-4LS)を介して37℃に保たれた作業溶液に接続されている。下部GI管を採取し、クレブス緩衝液が流れている臓器浴に移した。盲腸を近位先端でピン留めし、結腸の遠位端を漿膜/腸間膜を通してピン留めした。2/3インチ16mm f/1.4Cマウント固定焦点レンズ(Fujinon HF16SA1)に接続された、高解像度モノクロマティックファイアワイヤ工業用カメラ(Imaging Source(登録商標)、DMK41AF02)を備えたICキャプチャソフトウェア(Imaging Source)を使用して、5つの10分(最初の実験の場合)又は逐次6分(L-NAMEの存在下及び非存在下での逐次薬物治療の場合)のビデオを記録した。対照チャンバ内の組織は、クレブス溶液にのみ曝露されたが、実験チャンバ内の溶液の順序は、クレブス、薬物化合物、クレブス(各々6分)、L-NAME(2分)、薬物化合物の存在下でのL-NAME(6分)、及びクレブス(6分)であった。各取得後にチャンバを掃除した。
【0243】
データ及び統計分析:VolumetryG9aを使用して、各取得の時空間マップ(STM)を生成した(Spear et al.,2018)。低速波(SW)及び結腸移動運動複合体(CMMC)データをSTMから生成した。統計分析は、PRISMを使用して実施した。
【0244】
2.hPSC由来のENSモデルは、結腸運動性を促進するNOニューロンの調節物質を特定する
広範囲の先天性及び後天性腸神経障害(Bodi et al.,2019、Rivera et al.,2011)におけるGI運動性における腸NOニューロンの重要な役割及びそれらの選択的脆弱性を考慮すると、それらの機能を調節するための戦略を確立することに大きな関心がある。NOニューロン活性を調節し、NO放出を増加させる因子は、腸神経障害の治療のための潜在的な薬物標的の特定を容易にするであろう。したがって、当社のスケーラブルなENS培養プラットフォームを利用して、NOニューロン活性を誘導する化合物についてスクリーンした。
【0245】
NOニューロン活性のためのスクリーニング戦略は、読み出しとしてのcFOS発現の誘導に基づいて開発された。cFOSを、神経化学的誘導活性の正確な読み出しとして評価するために、腸ニューロンを刺激することが知られているエピネフリンで処置した培養物において、cFOSフローサイトメトリー解析及びMEAニューロン発射測定を並行して行った。エピネフリンは、ニューロンcFOS発現を誘導し、ガングリオイドニューロンの電気発射の増加をもたらした。これは、ハイスループットスクリーンに好適な活性のスケーラブルな読み出しを提供する。(
図1A~C)。
【0246】
最初に、cFos誘導スクリーンを実施し、ここで、NOS1::GFP腸ガングリオイドを582個の神経調節物質(Selleck neuronal signaling library(商標))のライブラリに曝露し、cFOS及びGFPの共発現を測定して、NOニューロン活性を定量化した(
図2A及び
図1D)。cFOS
+細胞におけるNOニューロンの比率を増加させた20個の化合物を特定し、zスコアは、1.5を超えていた。NOニューロンにおけるcFOS発現に関与する機序を特定するために、標的タンパク質のリストをまとめて、分類し、複数の共有タンパク質クラスを発見した。特に、これらのタンパク質は、セロトニン受容体、ナトリウムチャネル、アセチルコリン受容体、グルタミン酸受容体、アドレナリン受容体、ヒスタミン及びオピオイド受容体、並びにドーパミン受容体に収束した(
図2B)。
【0247】
独立した機能スクリーンでは、NOニューロン活性を評価するためのハイスループット読み出しを確立した。培地中でのNO検出を可能にする市販のキットを利用した。培地に放出されると、NOは、自発的に硝酸塩に酸化される。このキットは、硝酸レダクターゼを使用して、硝酸塩を、後に着色アゾ色素として検出される亜硝酸塩に変換する。2D ENS培養物を神経調節物質ライブラリとインキュベートし、熱量測定を使用してNO放出を測定した(
図2C)。上清中のNO濃度を著しく増強した17個の化合物を特定し、zスコアは、2.0を超えていた(
図1E)。ENS培養物でNO放出を誘導した神経調節物質は多様であったが、セロトニン受容体、ナトリウムチャネル、アセチルコリン受容体、グルタミン酸受容体、アドレナリン受容体、及びオピオイド受容体を含む一般的な標的タンパク質クラスを予測した(
図2D)。
【0248】
興味深いことに、cFOS誘導からの予測される標的とNO放出スクリーンとの間には、高い程度の類似性があった(
図2B、
図2D、及び
図1F)。これらの標的には、セロトニン及びドーパミンなどの神経伝達物質の受容体が含まれていた。hPSC由来のステージ1の腸NOニューロンsnRNA-seqデータにおける神経伝達物質受容体遺伝子ファミリーをスコアリングするモジュールは、NOニューロンがNO、セロトニン、GABA、グルタミン酸、アセチルコリン、又はドーパミンに対する受容体を広範囲に発現することを確認した(
図2E)。興味深いことに、他のニューロンサブタイプと比較して、ステージ1のNOニューロンクラスタは、全ての予測されたヒット標的について濃縮された(
図1G)。特に、NO 3クラスタは、NOニューロン調節因子標的クラスの大部分の発現について高いスコアを記録した(
図1H)。ガングリオイド及び一次ヒトENSにおける各標的タンパク質カテゴリーの個々の遺伝子の発現をプロファイリングすると、NOニューロン間の顕著なサブタイプ特異的発現パターンが明らかになった。例えば、GABA受容体遺伝子は、主に、NO 2、NO 3、及びpNO 4サブタイプによって発現されたが、アセチルコリン受容体遺伝子の発現は、特定のサブタイプに対してそれほど特異的ではなかった(
図2F)。
【0249】
次に、異なる標的クラスを表すヒットのサブセットを選択し、追跡分析のために、FDAが承認した化合物を優先した(
図2K及び
図1F)。選択された化合物について、報告された実験データ(結合DB)及び計算方法(SEA、Carlsbad、Dinies、Swisstarget、Superdrug、Pubchem Bioassays、
図2G)を組み合わせることによって、より包括的で統一された標的分析を行った。これらの化合物の効果を、臓器浴アッセイで結腸運動性に対して試験した(
図2H)。これらのアッセイでは、マウス結腸の切除されたセグメントを生理学的緩衝液中で維持して、ビデオ記録を使用して運動性パターンを研究した。最初の実験では、全ての選択された薬物候補の効果を、エクスビボで、マウス結腸運動性について試験した(
図2I)。各実験において、未処置の対照及び薬物処置された結腸試料を、5回の連続した10分間の取得中に並行して試験した。各取得について、一般的に可変である糞便出力を分析する代わりに、洗練された収縮分析を、経時的な結腸直径の変化に基づいてビデオデータから時空間マップを生成することによって行い、結腸移動運動複合体(CMMC)及び低速波(SW)の速度を計算するために使用した。CMMCは、ENSによって開始される律動的な推進収縮であるが、SWは、Cajalの間質細胞のペースメーキング活性を通して媒介される(Barajas-Lopez and Huizinga,1989、Burns et al.,1996、Fida et al.,1997、Lyster et al.,1995、Smith et al.,1987)。各取得中のCMMC及びSW事象の力学を調べるために、累積パーセントグラフを生成し(
図3A~B)、間隔を75パーセンタイルで計算した(
図2J及び
図3C)。未処置状態と比較してCMMC間隔の低下に有望な効果を示した化合物を、追跡評価のために選択した(すなわち、アリピプラゾール、デクスメデトミジン、マトリン、MPEP)(
図2J及び
図3A~C)。化合物がNO放出を調節することによってCMMCに対するそれらの効果を媒介したかどうかを評価するために、NOS1阻害剤N(オメガ)-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル(L-NAME)の存在下及び非存在下で連続的な薬物処置を行った。各実験は、対照群及び薬物処置群における5つの独立した試料対についての4回の6分間の取得からなる(
図2K)。試験薬物のうち、アドレナリン作動性受容体アゴニストデクスメデトミジンは、5つの結腸試料のうちの4つでCMMC間隔を減少させ、結腸をデクスメデトミジン+L-NAMEで同時に処置した場合には存在しなかった効果である(
図2L、
図4A~F、及び
図5A~B)。SWは、薬物処置の影響を受けなかった(
図6A~H)。CMMCに加えて、時空間マップで検出された順行性収縮事象を注釈付け及び測定することによって、結腸運動性に対する化合物の効果を定量化した。これらの事象は、「縦収縮事象」(LCE)と称され、
図2Kの代表的な矢印によって強調された。デクスメデトミジン処置された結腸では、LCEの総数の減少(
図2M)及びそれらの平均持続時間の増加傾向(
図2N)が、5つの反復の全てにおいて観察された。これらの効果は、薬物除去後に逆転され、L-NAME共処置によって遮断された(
図2M~N)。これらの結果は、インビトロでのヒトENSモデルを活用して、特定のENS集団を標的とする療法を特定することができるGI運動性を調節する機序を明らかにするためのブループリントを提供する。
【0250】
3.ハイスループットの小分子スクリーンは、NOニューロン誘導のドライバーとしてのPDGFR阻害を明らかにする
ヒトENS発達をモデル化するためのhPSC由来の培養物の可能性を評価するために、インビトロでのNOニューロン仕様の機序を定義することを決定した。NOニューロン分化を調節する経路を探索し、ハイスループットの小分子スクリーニングを行った。NOニューロン誘導を促進する異なる経路及び化学調節因子を特定することは、NOニューロン発達に関する洞察を提供し、NOニューロンが濃縮されたENS培養物を導出するための戦略を提供することができる。
【0251】
NOニューロン分化を誘導する化合物を特定するために、腸クレストスフィアをSelleck inhibitor library(商標)中の1694個の化合物で処置し、NOS1
+ニューロンの比率を少なくとも8倍増加させた12個のヒット化合物を特定した(
図7A及び
図8A~B)。これらのヒット化合物がNOニューロン誘導を増強した機序を明らかにするために、報告された実験データ(結合DB)及び計算方法(SEA、Carlsbad、Dinies、Swisstarget、Superdrug、Pubchem Bioassays)を組み合わせることによって、標的予測分析を行った(
図7B)。予測されたタンパク質標的をクラスタ化した後、化合物のサブセットについて共通のパターンが出現した。例えば、PP121、イブルチニブ、アファチニブ、及びAMG-458は全て、とりわけ、EGFR、ERBB、MAP、及びTECファミリーキナーゼと相互作用すると予測された(
図7B)。追跡分析のために、化合物のこのサブセットにおいて最も高い%NOS1
+倍の増加を有するヒットであるPP121に焦点を当てるように選択した。PP121は、フローサイトメトリーによって測定されるように、NOニューロン誘導効率に対して用量依存的な効果を示した(
図8C)。PP121誘導性NOニューロン誘導のための最も効果的な処置期間を見つけるために、分化中の培養物を様々な時点で5日間処置した。ステージ1のNOS1::GFP腸ガングリオイドにおけるGFPシグナルの測定は、15~20日目に処置された細胞について最高の誘導効率を示した(
図7C~D及び
図8D)。
【0252】
濃縮プロトコルを信頼できるものにするために、PP121処置が細胞型の同一性を変更しないことを確認することが重要であった。PP121処置及び未処置のステージ1の腸ガングリオイドを単一細胞分解能で比較するために、snRNA-seqを行い、両方のデータセットを組み合わせた。この分析は、全ての細胞型が両方の条件で提示されたことを明らかにした(
図7E~F及び
図9A)。重要なことに、一致したPP121処置された細胞型及び未処置の細胞型についての全ての遺伝子の平均発現の比較は、非常に類似したトランスクリプトームを示し(R2相関>0.91)、PP121処置が細胞型の転写同一性を変化させなかったことを示した(
図9B)。興味深いことに、統合された対照及びPP121処置されたニューロンのサブクラスタ化は、9つのニューロンサブタイプEN A-Iを明らかにした(
図7G)。PP121処置されたデータセットサブタイプは、対照のみのデータセットのEN1~8との高い転写類似性を示した(
図7H)。ENクラスタIは、主にPP121処置された細胞からなり、対照細胞はほとんどなく、対照のみのENクラスタ4と中程度の転写類似性を示し、このニューロンサブタイプは対照培養物中に存在するがまれであり、これらのニューロンを最も類似したサブタイプ、EN 4とクラスタ化させることを示唆している(
図7H及び
図9C)。およそ25%の窒素作動性であるEN Iとともに、PP121処置はまた、ニューロンサブタイプEN D及びH(それぞれおよそ50%及び25%の窒素作動性)の培養物を濃縮したが、EN A及びGはそれほど提示されなかった(
図7I及び
図9C)。再度、サブタイプ存在量の変化にもかかわらず、同じサブタイプの対照及びPP121処置されたニューロンは、類似のトランスクリプトームを示した(R2相関>0.88)(
図9D)。統合された対照及びPP121処置された窒素作動性ニューロンの更なるサブクラスタ化は、窒素作動性B(対照のみの窒素作動性2に最も類似する)及び希少な集団、窒素作動性C(対照のみの窒素作動性3に最も類似する)の濃縮を明らかにした(
図7-K及び
図9E)。トランスクリプトームの比較は、同じサブタイプの対照及びPP121処置された窒素作動性ニューロンの非常に類似した遺伝子発現を再び示し(R2相関>0.7)、窒素作動性Cニューロン間の最大の分散を伴い、これは、このクラスタ内の少数のニューロンに起因する可能性が高い(
図9F)。まとめると、このデータは、PP121によるガングリオイドの早期処置が、生じるサブタイプの遺伝子発現パターンに影響を与えることなく、通常は未処置の培養物に見出されるニューロンサブタイプの存在量の変化を引き起こすことを示唆している。
【0253】
腸NOニューロンを精製する能力は、特に、細胞療法などの用途のために、非常に関心のあるものである。NOS1::GFPレポーター株へのアクセス、及びPP121を使用してNOニューロンに向かって分化を方向付ける能力は、これらの細胞についてFACS適合性表面マーカーを検索することを可能にした。242個の抗体のパネルをヒト細胞表面分子(BD lyoplate)についてスクリーニングし、GFP及び表面抗原発現シグナルをフローサイトメトリーによって測定した(
図10A)。NOS1ニューロンの少なくとも50%を染色した27個の抗体を特定した(GFP
+集団における%CD
+GFP
+、
図10B、上)。これらのヒットの中で最も特異的な候補を特定するために、70%超のCD
+GFP
+対CD
+染色比(
図10B、下)を有する抗体を特定した。CD47、CD49e、CD59、CD90、及びCD181は、両方の基準を満たした(
図10C)。CD47、CD49e、CD59、及びCD90の発現及び濃縮は、ヒト一次snRNA-seqデータセットにおけるステージ1のガングリオイド及びNOニューロンクラスタにおいて更に確認された(
図10D~E)。一例として、CD47の局在は、免疫組織化学を使用して、ヒト一次結腸筋ガングリアにおけるNOニューロンにおいて更に確認された(
図10F)。NOニューロンを特異的に濃縮する抗体を特定することに加えて、ガングリオイド細胞の70%超を染色し、汎腸ニューロン表面マーカー(CD24、CD45RA、CD57、CD63、CD71、CD121b、CD147、CD164、CD184、CD193、CD243、CD275)として機能し得る12個の抗体を見出した(
図10G)。CD24の濃縮発現が、腸ニューロン(snRNA-seqデータ)及び一次ヒト結腸筋ガングリオン(
図10H~I)においても確認された。
【0254】
PP121がガングリオイドにおいてNOニューロン濃縮を誘導した機序を決定するために、薬理学的アプローチと遺伝的アプローチとの組み合わせを使用した。PP121は、PDGFR、VEGFR、及びEGFRに対する阻害活性が既知である多標的受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤である(Apsel et al.,2008)。クレストスフィアsnRNA-seq分析は、PDGFRA、PDGFRB、ERBB2、及びERBB3の発現を確認したが、VEGFRのmRNAは検出不可能であった(
図7L)。PDGF(PDGFRアゴニスト)、スニチニブ(PDGFR及びVEGFRアンタゴニスト)、NRG1(ERBBアゴニスト)、及びサピチニブ(ERBBアンタゴニスト)に応答して、NOニューロンの誘導効率を評価した(
図7M)。NRG1及びサピチニブは、NOニューロン誘導に対して著しい効果を示さなかったが、PDGF及びスニチニブによる処置は、それぞれ、より低いNOニューロン比率及びより高いNOニューロン比率をもたらした(
図7N)。NOニューロン誘導におけるPDGFRシグナル伝達の役割を遺伝的に確認するために、CRISPR-Cas9を使用して、腸クレストスフィアにおけるPDGFRA及びPDGFRBをノックアウトし、ステージ1のガングリオイドにおけるNOニューロンのパーセンテージを分析した。PDGFRA及びPDGFRBノックアウト培養物の両方において、NOニューロンは濃縮され、PP121の作用機序を更に確認した(
図7O~P)。
【0255】
4.hESC由来NOS1ニューロンは、NOS1
-/-マウス結腸に生着する
ヒトENSをインビボで研究するための実験システムを開発することは、幅広い基礎科学及び臨床の機会を開く。例えば、ヒトENS異種移植は、インビボでのヒトニューロン回路の研究、並びにENS-CNS及びENS-免疫系-マイクロバイオーム通信の調査を可能にするであろう。それらはまた、疾患モデリングや薬剤開発のためのプラットフォームを提供する。加えて、ENSの限定された再生能力は、ニューロンの失われた集団を置き換えるための細胞療法アプローチを開発することの重要性を強調する。現在、ヒルシュスプルング病及び糖尿病などの遺伝性及び後天性のENS病態によって引き起こされる損傷又は喪失したニューロンを置き換えるための臨床的介入は存在しない。hPSC由来のENC前駆体がインビボでの生着に成功することが以前に示された(Fattahi et al.,2016)。McCann et al.はまた、Nos1
-/-マウスにおいて、移植されたエクスビボ培養マウスニューロスフェアが、GI運動性欠損を救済することができることを示した(McCann et al.,2017)。しかしながら、これらのニューロスフェアは、わずかなパーセンテージのNOニューロンのみを含有する不均一な集団である。更に、ヒト一次組織から十分な数のニューロスフェアを得ることは、最終的な再生応用に著しい制限をもたらす。ENC前駆体と比較して、成熟ニューロンの移植は、腫瘍形成の低い臨床的リスクを有する細胞の有糸分裂後の供給源を提供する。高濃縮NOニューロン培養物を得ることは、評価される腸ガングリオイドの移植可能性を促進した。PP121処置された腸ガングリオイドを、Nos1
-/-(B6.129S4-Nos1
tm1Plh/J)マウスの遠位結腸の壁に注射した。手術から8週間後に動物を屠殺し、蛍光顕微鏡法によって、結腸縦筋腸筋神経叢(LMMP)調製物を評価した(
図11A)。移植された細胞を、ヒト細胞質マーカーSC121の発現によって区別した。特に、結腸の長さに沿って統一された顕著な数のSC121
+細胞が観察された(
図11B)。生着した細胞は、筋腸ガングリアの内外で検出され、多くがNOS1を発現し、NOの運命決定を確認し(
図11C及び
図12)。臨床的に有意な細胞療法の適用に加えて、開発されたヒト腸ガングリオイド異種移植片は、インビボでのヒトENSの発達、生理学、及び病理生理学を理解することに対する、これまで達成できなかった機会を提供する。
【0256】
5.考察
hPSC由来の培養物の例外的な利点は、それらのスケーラビリティである。これは、所望の細胞型がまれであり、神経組織などの再生及び増殖能力が非常に限られている場合に特に重要である。本明細書で使用されるENS培養プラットフォームは、ハイスループットスクリーンなど、実装が非常に困難であろう適用と適合性のあるENS細胞型のスケーラブルな供給源を提供することにおいて信頼性があることが繰り返し証明されている。特に、2D ENS培養物を使用して、臨床的に価値のあるNOニューロンに向かって分化を方向付ける化合物を特定するために、数千の阻害剤をスクリーニングした。上位ヒットの作用機序を調べることで、NOニューロン運命決定仕様において重要である経路が明らかになった。薬理学的アプローチと遺伝的アプローチとの組み合わせを使用して、そのような経路の1つであるPDGFRシグナル伝達がNOニューロンを誘導することに寄与することを発見し、これは、発達機序を明らかにするためのhPSCベースのプラットフォームの顕著な可能性を強調する。
【0257】
本明細書では、機能的スクリーニングプラットフォームを使用して、NOニューロンの活性を特異的に調節する候補薬物を明らかにしている。興味深いことに、ヒット化合物は、一般に、アドレナリン作動性、コリン作動性、及びセロトニン作動性受容体、並びにナトリウムチャネルを標的とする。特に、これらの標的は、NOニューロンにおいて過剰に提示され、これらの化合物の特異性、及びGI適応症のための更なる療法開発の可能性を強調する。これらの神経調節物質のサブセットを試験することによって、これらの候補薬物が、エクスビボ臓器浴アッセイにおいて結腸運動性パターンに影響を及ぼすことが可能であることが更に実証された。これは、特定の腸ニューロンサブタイプを標的とすることによってGI運動性を調節するための候補薬物を特定する最初の例である。これらの知見は、hPSC由来のENSモデルの信頼性、堅牢性、及びスケーラビリティを示す。
【0258】
G.参考文献
Alhawaj,A.F.(2021).Stem cell-based therapy for hirschsprung disease,do we have the guts to treat? Gene Ther.
【0259】
Apsel,B.,Blair,J.A.,Gonzalez,B.,Nazif,T.M.,Feldman,M.E.,Aizenstein,B.,Hoffman,R.,Williams,R.L.,Shokat,K.M.,and Knight,Z.A.(2008).Targeted polypharmacology:discovery of dual inhibitors of tyrosine and phosphoinositide kinases.Nat.Chem.Biol.4,691-699.
【0260】
Baetge,G.,and Gershon,M.D.(1989).Transient catecholaminergic(TC)cells in the vagus nerves and bowel of fetal mice:relationship to the development of enteric neurons.Dev.Biol.132,189-211.
【0261】
Baetge,G.,Pintar,J.E.,and Gershon,M.D.(1990).Transiently catecholaminergic(TC)cells in the bowel of the fetal rat:precursors of noncatecholaminergic enteric neurons.Dev.Biol.141,353-380.
【0262】
Barajas-Lopez,C.,and Huizinga,J.D.(1989).Different mechanisms of contraction generation in circular muscle of canine colon.Am.J.Physiol.256,G570-580.
【0263】
Barber,K.,Studer,L.,and Fattahi,F.(2019).Derivation of enteric neuron lineages from human pluripotent stem cells.Nat.Protoc.14,1261-1279.
【0264】
Bergner,A.J.,Stamp,L.A.,Gonsalvez,D.G.,Allison,M.B.,Olson,D.P.,Myers,M.G.,Anderson,C.R.,and Young,H.M.(2014).Birthdating of myenteric neuron subtypes in the small intestine of the mouse.J.Comp.Neurol.522,514-527.
【0265】
Bodi,N.,Szalai,Z.,and Bagyanszki,M.(2019).Nitrergic Enteric Neurons in Health and Disease-Focus on Animal Models.Int.J.Mol.Sci.20,E2003.
【0266】
Bondurand,N.,and Southard-Smith,E.M.(2016).Mouse models of Hirschsprung disease and other developmental disorders of the enteric nervous system:Old and new players.Dev.Biol.417,139-157.
【0267】
Bredt,D.S.,Hwang,P.M.,and Snyder,S.H.(1990).Localization of nitric oxide synthase indicating a neural role for nitric oxide.Nature 347,768-770.
【0268】
Brehmer,A.(2021).Classification of human enteric neurons.Histochem.Cell Biol.156,95-108.
【0269】
Bullitt,E.(1990).Expression of c-fos-like protein as a marker for neuronal activity following noxious stimulation in the rat.J.Comp.Neurol.296,517-530.
【0270】
Bult,H.,Boeckxstaens,G.E.,Pelckmans,P.A.,Jordaens,F.H.,Van Maercke,Y.M.,and Herman,A.G.(1990).Nitric oxide as an inhibitory non-adrenergic non-cholinergic neurotransmitter.Nature 345,346-347.
【0271】
Burns,A.J.,and Douarin,N.M.(1998).The sacral neural crest contributes neurons and glia to the post-umbilical gut:spatiotemporal analysis of the development of the enteric nervous system.Dev.Camb.Engl.125,4335-4347.
【0272】
Burns,A.J.,Lomax,A.E.,Torihashi,S.,Sanders,K.M.,and Ward,S.M.(1996).Interstitial cells of Cajal mediate inhibitory neurotransmission in the stomach.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93,12008-12013.
【0273】
Burns,A.J.,Goldstein,A.M.,Newgreen,D.F.,Stamp,L.,Schaefer,K.-H.,Metzger,M.,Hotta,R.,Young,H.M.,Andrews,P.W.,Thapar,N.,et al.(2016).White paper on guidelines concerning enteric nervous system stem cell therapy for enteric neuropathies.Dev.Biol.417,229-251.
【0274】
Camilleri,M.(2021).Gastrointestinal motility disorders in neurologic disease.J.Clin.Invest.131,143771.
【0275】
Camilleri,M.,Bharucha,A.E.,and Farrugia,G.(2011).Epidemiology,mechanisms,and management of diabetic gastroparesis.Clin.Gastroenterol.Hepatol.Off.Clin.Pract.J.Am.Gastroenterol.Assoc.9,5-12; quiz e7.
【0276】
De Giorgio,R.(2006).The Enteric Nervous System,J.B.Furness.Blackwell Publishing,Oxford(2006),(274 pp.,Price GBP 55.00,ISBN 1-4051-3376-7).Dig.Liver Dis.38,441.
【0277】
De Giorgio,R.,Bianco,F.,Latorre,R.,Caio,G.,Clavenzani,P.,and Bonora,E.(2016).Enteric neuropathies:Yesterday,Today and Tomorrow.Adv.Exp.Med.Biol.891,123-133.
【0278】
Drokhlyansky,E.,Smillie,C.S.,Van Wittenberghe,N.,Ericsson,M.,Griffin,G.K.,Eraslan,G.,Dionne,D.,Cuoco,M.S.,Goder-Reiser,M.N.,Sharova,T.,et al.(2020).The Human and Mouse Enteric Nervous System at Single-Cell Resolution.Cell 182,1606-1622.e23.
【0279】
Fattahi,F.,Steinbeck,J.A.,Kriks,S.,Tchieu,J.,Zimmer,B.,Kishinevsky,S.,Zeltner,N.,Mica,Y.,El-Nachef,W.,Zhao,H.,et al.(2016).Deriving human ENS lineages for cell therapy and drug discovery in Hirschsprung disease.Nature 531,105-109.
【0280】
Fida,R.,Lyster,D.J.,Bywater,R.A.,and Taylor,G.S.(1997).Colonic migrating motor complexes(CMMCs)in the isolated mouse colon.Neurogastroenterol.Motil.Off.J.Eur.Gastrointest.Motil.Soc.9,99-107.
【0281】
Fung,C.,and Vanden Berghe,P.(2020).Functional circuits and signal processing in the enteric nervous system.Cell.Mol.Life Sci.CMLS 77,4505-4522.
【0282】
Furness,J.B.,Callaghan,B.P.,Rivera,L.R.,and Cho,H.-J.(2014).The enteric nervous system and gastrointestinal innervation:integrated local and central control.Adv.Exp.Med.Biol.817,39-71.
【0283】
Gershon,M.D.(1999).The enteric nervous system:a second brain.Hosp.Pract.1995 34,31- 32,35-38,41-42 passim.
【0284】
Grubisic,V.,and Gulbransen,B.D.(2017).Enteric glia:the most alimentary of all glia.J.Physiol.595,557-570.
【0285】
Grundmann,D.,Loris,E.,Maas-Omlor,S.,Huang,W.,Scheller,A.,Kirchhoff,F.,and Schaefer,K.-H.(2019).Enteric Glia:S100,GFAP,and Beyond.Anat.Rec.Hoboken NJ 2007 302,1333- 1344.
【0286】
Hamnett,R.,Dershowitz,L.B.,Sampathkumar,V.,Wang,Z.,Andrade,V.D.,Kasthuri,N.,Druckmann,S.,and Kaltschmidt,J.A.(2021).Regional cytoarchitecture of the adult and developing mouse enteric nervous system.
【0287】
Hao,Y.,Hao,S.,Andersen-Nissen,E.,Mauck,W.M.,Zheng,S.,Butler,A.,Lee,M.J.,Wilk,A.J.,Darby,C.,Zager,M.,et al.(2021).Integrated analysis of multimodal single-cell data.Cell 184,3573-3587.e29.
【0288】
Heanue,T.A.,and Pachnis,V.(2007).Enteric nervous system development and Hirschsprung’s disease:advances in genetic and stem cell studies.Nat.Rev.Neurosci.8,466-479.
【0289】
Hunt,S.P.,Pini,A.,and Evan,G.(1987).Induction of c-fos-like protein in spinal cord neurons following sensory stimulation.Nature 328,632-634.
【0290】
Lai,F.P.-L.,Lau,S.-T.,Wong,J.K.-L.,Gui,H.,Wang,R.X.,Zhou,T.,Lai,W.H.,Tse,H.-F.,Tam,P.K.-H.,Garcia-Barcelo,M.-M.,et al.(2017).Correction of Hirschsprung-Associated Mutations in Human Induced Pluripotent Stem Cells Via Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats/Cas9,Restores Neural Crest Cell Function.Gastroenterology 153,139153.e8.
【0291】
Lake,J.I.,and Heuckeroth,R.O.(2013).Enteric nervous system development:migration,differentiation,and disease.Am.J.Physiol.- Gastrointest.Liver Physiol.305,G1-G24.
【0292】
Long-Smith,C.,O’Riordan,K.J.,Clarke,G.,Stanton,C.,Dinan,T.G.,and Cryan,J.F.(2020).Microbiota-Gut-Brain Axis:New Therapeutic Opportunities.Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.60,477-502.
【0293】
Lyster,D.J.,Bywater,R.A.,and Taylor,G.S.(1995).Neurogenic control of myoelectric complexes in the mouse isolated colon.Gastroenterology 108,1371-1378.
【0294】
McCann,C.J.,Cooper,J.E.,Natarajan,D.,Jevans,B.,Burnett,L.E.,Burns,A.J.,and Thapar,N.(2017).Transplantation of enteric nervous system stem cells rescues nitric oxide synthase deficient mouse colon.Nat.Commun.8,15937.
【0295】
Morarach,K.,Mikhailova,A.,Knoflach,V.,Memic,F.,Kumar,R.,Li,W.,Ernfors,P.,and Marklund,U.(2021).Diversification of molecularly defined myenteric neuron classes revealed by single-cell RNA sequencing.Nat.Neurosci.24,34-46.
【0296】
Muller,P.A.,Koscso,B.,Rajani,G.M.,Stevanovic,K.,Berres,M.-L.,Hashimoto,D.,Mortha,A.,Leboeuf,M.,Li,X.-M.,Mucida,D.,et al.(2014).Crosstalk between muscularis macrophages and enteric neurons regulates gastrointestinal motility.Cell 158,300-313.
【0297】
Nagy,N.,and Goldstein,A.M.(2017).Enteric nervous system development:A crest cell’s journey from neural tube to colon.Semin.Cell Dev.Biol.66,94-106.
【0298】
Niesler,B.,Kuerten,S.,Demir,I.E.,and Schaefer,K.-H.(2021).Disorders of the enteric nervous system - a holistic view.Nat.Rev.Gastroenterol.Hepatol.18,393-410.
【0299】
Obata,Y.,and Pachnis,V.(2016).The Effect of Microbiota and the Immune System on the Development and Organization of the Enteric Nervous System.Gastroenterology 151,836-844.
【0300】
Obermayr,F.,Stamp,L.A.,Anderson,C.R.,and Young,H.M.(2013).Genetic fate-mapping of tyrosine hydroxylase-expressing cells in the enteric nervous system.Neurogastroenterol.Motil.Off.J.Eur.Gastrointest.Motil.Soc.25,e283-291.
【0301】
Paridaen,J.T.M.L.,and Huttner,W.B.(2014).Neurogenesis during development of the vertebrate central nervous system.EMBO Rep.15,351-364.
【0302】
Pesce,M.,Borrelli,O.,Saliakellis,E.,and Thapar,N.(2018).Gastrointestinal Neuropathies:New Insights and Emerging Therapies.Gastroenterol.Clin.North Am.47,877-894.
【0303】
Qu,Z.-D.,Thacker,M.,Castelucci,P.,Bagyanszki,M.,Epstein,M.L.,and Furness,J.B.(2008).Immunohistochemical analysis of neuron types in the mouse small intestine.Cell Tissue Res.334,147-161.
【0304】
Rao,M.,and Gershon,M.D.(2018).Enteric nervous system development:what could possibly go wrong? Nat.Rev.Neurosci.19,552-565.
【0305】
Rivera,L.R.,Poole,D.P.,Thacker,M.,and Furness,J.B.(2011).The involvement of nitric oxide synthase neurons in enteric neuropathies.Neurogastroenterol.Motil.Off.J.Eur.Gastrointest.Motil.Soc.23,980-988.
【0306】
Rothman,T.P.,Tennyson,V.M.,and Gershon,M.D.(1986).Colonization of the bowel by the precursors of enteric glia:studies of normal and congenitally aganglionic mutant mice.J.Comp.Neurol.252,493-506.
【0307】
Rowitch,D.H.,and Kriegstein,A.R.(2010).Developmental genetics of vertebrate glial-cell specification.Nature 468,214-222.
【0308】
Santos,P.L.,Brito,R.G.,Matos,J.P.S.C.F.,Quintans,J.S.S.,and Quintans-Junior,L.J.(2018).Fos Protein as a Marker of Neuronal Activity:a Useful Tool in the Study of the Mechanism of Action of Natural Products with Analgesic Activity.Mol.Neurobiol.55,4560-4579.
【0309】
Sasselli,V.,Pachnis,V.,and Burns,A.J.(2012).The enteric nervous system.Dev.Biol.366,64-73.
【0310】
Schneider,S.,Wright,C.M.,and Heuckeroth,R.O.(2019).Unexpected Roles for the Second Brain:Enteric Nervous System as Master Regulator of Bowel Function.Annu.Rev.Physiol.81,235-259.
【0311】
Serbedzija,G.N.,Burgan,S.,Fraser,S.E.,and Bronner-Fraser,M.(1991).Vital dye labelling demonstrates a sacral neural crest contribution to the enteric nervous system of chick and mouse embryos.Dev.Camb.Engl.111,857-866.
【0312】
Smith,T.K.,Reed,J.B.,and Sanders,K.M.(1987).Origin and propagation of electrical slow waves in circular muscle of canine proximal colon.Am.J.Physiol.252,C215-224.
【0313】
Spear,E.T.,Holt,E.A.,Joyce,E.J.,Haag,M.M.,Mawe,S.M.,Hennig,G.W.,Lavoie,B.,Applebee,A.M.,Teuscher,C.,and Mawe,G.M.(2018).Altered gastrointestinal motility involving autoantibodies in the experimental autoimmune encephalomyelitis model of multiple sclerosis.Neurogastroenterol.Motil.Off.J.Eur.Gastrointest.Motil.Soc.30,e13349.
【0314】
Steinbeck,J.A.,Jaiswal,M.K.,Calder,E.L.,Kishinevsky,S.,Weishaupt,A.,Toyka,K.V.,Goldstein,P.A.,and Studer,L.(2016).Functional Connectivity under Optogenetic Control Allows Modeling of Human Neuromuscular Disease.Cell Stem Cell 18,134-143.
【0315】
Swaminathan,M.,Hill-Yardin,E.,Ellis,M.,Zygorodimos,M.,Johnston,L.A.,Gwynne,R.M.,and Bornstein,J.C.(2016).Video Imaging and Spatiotemporal Maps to Analyze Gastrointestinal Motility in Mice.J.Vis.Exp.JoVE 53828.
【0316】
Ward,S.M.,Xue,C.,Shuttleworth,C.W.,Bredt,D.S.,Snyder,S.H.,and Sanders,K.M.(1992).NADPH diaphorase and nitric oxide synthase colocalization in enteric neurons of canine proximal colon.Am.J.Physiol.263,G277-284.
【0317】
Wu,Y.,Tamayo,P.,and Zhang,K.(2018).Visualizing and Interpreting Single-Cell Gene Expression Datasets with Similarity Weighted Nonnegative Embedding.Cell Syst.7,656666.e4.
【0318】
Yarandi,S.S.,and Srinivasan,S.(2014).Diabetic gastrointestinal motility disorders and the role of enteric nervous system:current status and future directions.Neurogastroenterol.Motil.Off.J.Eur.Gastrointest.Motil.Soc.26,611-624.
【0319】
Yoo,B.B.,and Mazmanian,S.K.(2017).The Enteric Network:Interactions between the Immune and Nervous Systems of the Gut.Immunity 46,910-926.
【0320】
Young,H.M.,Furness,J.B.,Shuttleworth,C.W.,Bredt,D.S.,and Snyder,S.H.(1992).Co-localization of nitric oxide synthase immunoreactivity and NADPH diaphorase staining in neurons of the guinea-pig intestine.Histochemistry 97,375-378.
【0321】
Young,H.M.,Bergner,A.J.,and Mueller,T.(2003).Acquisition of neuronal and glial markers by neural crest-derived cells in the mouse intestine.J.Comp.Neurol.456,1-11.
【0322】
本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、本発明に様々な修正及び変形がなされ得ることは、当業者には明らかであろう。本開示の他の実施形態は、本明細書に開示される本開示の仕様及び実践の考慮から、当業者には明らかであろう。本明細書及び実施例は、単なる例示とみなされることが意図されており、本開示の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
【国際調査報告】