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特表2025-503585物質のサンプルの熱分析のためのコンピュータ実装方法、システム、及びコンピュータプログラム
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  • 特表-物質のサンプルの熱分析のためのコンピュータ実装方法、システム、及びコンピュータプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】物質のサンプルの熱分析のためのコンピュータ実装方法、システム、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/20 20060101AFI20250128BHJP
   G06N 3/04 20230101ALI20250128BHJP
【FI】
G01N25/20 E
G06N3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540645
(86)(22)【出願日】2023-01-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2023050336
(87)【国際公開番号】W WO2023131709
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】22150763.5
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599082218
【氏名又は名称】メトラー-トレド ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】ヴュスト,ユアーズ
(72)【発明者】
【氏名】イェリマン,ユアーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヘシュメール,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】シェープ,ティル
(72)【発明者】
【氏名】カスタニス,イアーソン
(72)【発明者】
【氏名】ベンディネッリ,トマソ
(72)【発明者】
【氏名】ベイヤー,クリスチャン
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AA02
2G040AB01
2G040AB12
2G040BA29
2G040CA02
2G040CA29
2G040DA03
2G040EA02
2G040EC01
2G040EC06
2G040HA01
2G040HA05
2G040HA16
(57)【要約】
【課題】本発明は、物質のサンプルの熱分析のためのコンピュータ実装方法に関する。
【解決手段】上記方法は、第1のデータを第1のソフトウェアモジュール(6)に提供することを含み、上記第1のデータは、観測可能な応答を発生させる励起にさらされた上記サンプルの観測可能な応答信号と、上記励起とを時間の関数として表し、上記応答信号は、上記サンプルに起因する熱効果を表しており、上記第1のソフトウェアモジュール(6)は、上記第1のデータを入力として受信することと、上記第1のデータから熱分析測定曲線を算出することと、上記測定曲線を表すのに適した第2のデータを出力することとを行うように構成されており、上記熱分析測定曲線は、上記熱効果の特定を可能にし、方法はさらに、上記第2のデータを第2のソフトウェアモジュールに提供することを含み、上記第2のソフトウェアモジュールは、熱効果の自動的な特定のために構成された人工知能エンジン(9)を含み、上記第2のソフトウェアモジュールは、上記第2のデータを入力として受信することと、上記人工知能エンジン(9)によって自動的に特定された上記熱効果を表す第3のデータを出力することとを行うように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質のサンプルの熱分析のためのコンピュータ実装方法であって、前記方法は、第1のデータを第1のソフトウェアモジュール(6)に提供するステップを含み、前記第1のデータは、観測可能な応答を発生させる励起にさらされた前記サンプルの観測可能な応答信号と、前記励起とを時間の関数として表し、前記応答信号は、前記サンプルに起因する熱効果を表しており、前記第1のソフトウェアモジュール(6)は、前記第1のデータを入力として受信することと、前記第1のデータから熱分析測定曲線を算出することと、前記測定曲線を表すのに適した第2のデータを出力することとを行うように構成されており、前記熱分析測定曲線は、前記熱効果の特定を可能にし、前記方法はさらに、前記第2のデータを第2のソフトウェアモジュールに提供するステップを含み、前記第2のソフトウェアモジュールは、熱効果の自動的な特定のために構成された人工知能エンジン(9)を有し、前記第2のソフトウェアモジュールは、前記第2のデータを入力として受信することと、前記人工知能エンジン(9)によって自動的に特定された前記熱効果を表す第3のデータを出力することとを行うように構成されていることを特徴とする、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記人工知能エンジン(9)は、前記熱効果の自動的な特定のための少なくとも1つのニューラルネットワーク(10a、10b、10c、10d)を含み、前記少なくとも1つのニューラルネットワーク(10a、10b、10c、10d)は、前記第2のデータを受信するための入力ニューロンの入力層と、前記第3のデータを出力するための出力ニューロンの出力層とを含み、前記第2のデータは、前記入力層に提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記人工知能エンジン(9)は、前記熱効果の自動的な特定のための、好ましくはニューラルネットワーク(10a、10b、10c、10d)である少なくとも2つのサブエンジン(10a、10b、10c、10d)を含み、前記第2のソフトウェアモジュールはさらに、前記熱効果の自動的な特定のための前記サブエンジンのうちの1つを選択するために選択データを受信することと、前記選択されたサブエンジン(10a、10b、10c、10d)の入力に前記第2のデータを提供することとを行うように構成されており、これは、前記サブエンジン(10a、10b、10c、10d)がニューラルネットワーク(10a、10b、10c、10d)である好ましい実施形態において、前記選択されたニューラルネットワーク(10a、10b、10c、10d)の入力層に前記第2のデータを提供することによって行われるものであり、前記選択データは、前記第2のソフトウェアモジュールに提供される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法はさらに、少なくとも1つのサブエンジンを前記第2のソフトウェアモジュールに配備するステップ、及び/又は、少なくとも1つのサブエンジンを前記第2のソフトウェアモジュールから取り除くステップ、及び/又は、前記第2のソフトウェアモジュール内の少なくとも1つのサブエンジンの動作を停止させるステップを含み、好ましくは、前記サブエンジンはニューラルネットワークである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法はさらに、好ましくは訓練されたニューラルネットワークである訓練されたサブエンジンを作成するための訓練ソフトウェアモジュールの使用と、前記訓練されたサブエンジンを前記第2のソフトウェアモジュールに配備するステップとを含み、それによって、
前記訓練ソフトウェアモジュールは、
訓練物質の少なくとも1つの訓練サンプルに関連付けられたエキスパート訓練データを用いることによって、前記訓練されたサブエンジンを作成するように構成されており、前記エキスパート訓練データは、第2及び第3の訓練データのデータセットを含み、前記第2の訓練データは、前記訓練サンプルに起因する訓練測定曲線を表すのに適しており、前記訓練測定曲線は、その訓練サンプルに起因する少なくとも1つの熱訓練効果の特定を可能にし、前記第3の訓練データは、前記熱訓練効果を表しており、
前記訓練ソフトウェアモジュールはさらに、エンジンパラメータのセットによって規定された内容で入力データを出力データにリンクするサブエンジンテンプレートを提供することによって、及び、
前記データセットの大部分に対して、前記データセットの前記第2の訓練データが前記訓練されたサブエンジンに入力されたとき、前記エンジンパラメータを用いて前記訓練されたサブエンジンによって出力された前記第3のデータが、前記データセットのうちの1つの前記第3の訓練データに本質的に等しいように前記エンジンパラメータを決定することによって、前記訓練されたサブエンジンを作成するように構成されており、
それによって、前記サブエンジンテンプレートは、好ましくは、前記第2のデータを受信するための入力層、前記第3のデータを出力するための出力層、及び好ましくは1つ又は複数の中間層、並びに、前記入力層と前記出力層と好ましくは中間層との間の接続を表すおもりを含むブランクニューラルネットワークであり、
前記エンジンパラメータは、好ましくは、前記データセットの大部分に対して、前記データセットの前記第2の訓練データが前記入力層によって受信されたとき、前記出力層によって出力された前記第3のデータが、前記データセットのうちの1つの前記第3の訓練データと本質的に等しいように決定されるおもりであり、それによって、前記決定されたおもりは前記訓練されたニューラルネットワークを規定する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記訓練測定曲線は、熱分析測定結果を前記訓練サンプルに適用することによって取得され、及び/又は、前記訓練測定曲線は、前記訓練サンプルに対応する理論測定曲線であり、前記第3の訓練データは、前記訓練測定曲線内に存在する前記熱訓練効果のヒト特定によって取得される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第3のデータは、励起範囲、及び前記熱効果のタイプを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法はさらに、前記測定曲線を表すのに適した前記第3のデータ及び第4のデータを評価ソフトウェアモジュールに提供するステップを含み、前記評価ソフトウェアモジュールは、前記第3のデータ及び第4のデータを入力として受信することと、前記第4のデータにより、前記少なくとも1つの熱効果と関連付けられた少なくとも1つの特質量の値を算出することとを行うように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法はさらに、前記熱分析測定曲線、及び/又は、前記熱効果の励起範囲と関連付けられたデータ、及び/又は、前記熱効果のタイプと関連付けられたデータ、及び/又は、少なくとも1つの特質量の値のグラフィカル描写を表示手段上に表示するステップを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記励起は、可変温度に対応する励起量、及び/又は、可変電力に対応する励起量、及び/又は、可変圧力に対応する励起量、及び/又は、可変放射線量に対応する励起量、及び/又は、可変応力若しくは歪に対応する励起量、及び/又は、気体の可変雰囲気に対応する励起量、及び/又は、可変磁場に対応する励起量を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記応答は、動的熱分析方法の温度差に対応する応答量、及び/又は、動的熱分析方法の熱流に、特に、前記物質のサンプルへの熱流と既知のリファレンスへの熱流との差によって引き起こされる熱流に対応する応答量、及び/又は、動的電力補償熱分析方法の加熱電力における差に対応する応答量、及び/又は、動的熱機械分析方法の長さの変化に対応する応答量、及び/又は、動的熱重量分析方法の重量の変化に対応する応答量、及び/又は、動的機械分析方法の力に対応する応答量、及び/又は、動的機械分析方法の長さの変化に対応する応答量、及び/又は、動的誘電分析方法の電圧の変化に対応する応答量を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
物質のサンプル(3a、3b、3c)の熱分析のためのシステム(1)であって、前記システム(1)は、
測定手段(2a、2b、2c)であって、前記測定手段(2a、2b、2c)は、観測可能な応答を発生させる励起にさらされたサンプルの応答信号を測定するように、並びに、前記応答信号及び前記励起を時間の関数として表す第1のデータを出力するように動作し、前記応答信号は、前記サンプルに起因する熱効果を表している、測定手段(2a、2b、2c)と、
第1のソフトウェアモジュール(6)を有するデータ処理手段(4a、4b)であって、前記第1のソフトウェアモジュール(6)は、前記第1のデータを入力として受信することと、前記第1のデータから熱分析測定曲線を算出することと、前記測定曲線を表すのに適した第2のデータを出力することとを行うように構成されており、前記熱分析測定曲線は前記熱効果の特定を可能にする、データ処理手段(4a、4b)とを備え、前記データ処理手段(4a、4b)はさらに、熱効果の自動的な特定のために構成された人工知能エンジン(9)を含む第2のソフトウェアモジュールを有しており、前記第2のソフトウェアモジュールは、前記第2のデータを入力として受信することと、前記人工知能エンジン(9)によって特定された前記熱効果を表す第3のデータを出力することとを行うように構成されていることを特徴とする、システム(1)。
【請求項13】
物質のサンプルの熱分析のためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、第1のソフトウェアモジュール(6)を含み、前記第1のソフトウェアモジュール(6)は、観測可能な応答を発生させる励起にさらされた前記サンプルの応答信号と、前記励起とを時間の関数として表す第1のデータを入力として受信することと、前記熱効果の特定を可能にする熱分析測定曲線を算出することと、前記測定曲線を表すのに適した第2のデータを出力することとを行うように構成されており、前記応答信号は、前記サンプルに起因する熱効果を表しており、前記コンピュータプログラムはさらに、熱効果の自動的な特定のために構成された人工知能エンジン(9)を含む第2のソフトウェアモジュールを含み、前記第2のソフトウェアモジュールは、前記第2のデータを入力として受信することと、前記人工知能エンジン(9)によって特定された前記熱効果を表す第3のデータを出力することとを行うように構成されることを特徴とする、コンピュータプログラム。
【請求項14】
物質のサンプルの熱分析のためのコンピュータプログラムの訓練ソフトウェアモジュールであって、前記訓練ソフトウェアモジュールは、第2及び第3の訓練データのデータセットを含むエキスパート訓練データを受信するように構成されており、前記第2の訓練データは、訓練サンプルに起因する訓練測定曲線を表すのに適しており、前記訓練測定曲線は、前記訓練サンプルに起因する少なくとも1つの熱訓練効果の特定を可能にし、前記第3の訓練データは、前記熱訓練効果を表しており、
及び/又は、前記訓練ソフトウェアモジュールはさらに、請求項13に記載の第1のソフトウェアモジュールから少なくとも1つの熱訓練効果の特定を可能にする熱分析測定曲線を表すのに適した第2のデータを受信するように構成されていることと、前記少なくとも1つの熱訓練効果のヒト特定を表すヒト入力から関連する第3のデータを作成するように構成されていることとによって前記エキスパート訓練データを作成するように構成されており、
それによって、前記訓練ソフトウェアモジュールは、前記訓練データに基づいて、訓練されたサブエンジン、好ましくは訓練されたニューラルネットワークを作成し、前記訓練されたサブエンジンは、請求項13に記載の第2のソフトウェアモジュールに配備されるのに適しており、
それによって、前記訓練ソフトウェアモジュールは、好ましくは、請求項13に記載のコンピュータプログラムの一部である、訓練ソフトウェアモジュール。
【請求項15】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを記憶しているコンピュータ可読データ担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質のサンプルの熱分析のためのコンピュータ実装方法に関し、上記方法は、第1のデータを第1のソフトウェアモジュールに提供することを含み、上記第1のデータは、観測可能な応答を発生させる励起にさらされた上記サンプルの観測可能な応答信号と、上記励起とを時間の関数として表し、上記応答信号は、上記サンプルに起因する熱効果を表しており、上記第1のソフトウェアモジュールは、上記第1のデータを入力として受信することと、上記第1のデータから熱分析測定曲線を算出することと、上記測定曲線を表すのに適した第2のデータを出力することとを行うように構成されており、上記熱分析測定曲線は、上記熱効果の特定を可能にする。さらに、本発明は、物質のサンプルの熱分析のためのシステム、物質のサンプルの熱分析のためのコンピュータプログラム、熱分析のためのコンピュータプログラムの訓練ソフトウェアモジュール、及び、上記コンピュータプログラムを記憶しているコンピュータ可読データ担体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱分析は、物質の物理的特性及び化学的特性が温度とともに変化するときの物質の物理的特性及び化学的特性を研究する。国際熱分析連合(International Confederation for Thermal Analysis and Calorimetry)によると、熱分析は、物質が制御された温度プログラムにさらされる間に、物質の物理的特性が温度の関数として測定される技法のグループである。すなわち、熱分析においては、上記物質のサンプルは、観測可能な応答を発生させる励起にさらされる。上記観測可能な応答に対応する応答信号は、測定手段を用いて測定される。応答信号及び励起を両方共時間の関数として含む第1のデータ(すなわち、励起及び応答信号の時系列)が用いられて、熱分析測定曲線が算出され、それによって、上記熱効果の特定が可能になる。特に、第1のデータに含まれる応答信号、及び場合によっては励起は、熱効果が存在する場合、熱効果が観測可能な単位(複数の単位)に変換される。応答信号が変換される単位は、用いられる熱分析技法及び/又は検出されるべき熱効果に依存する。この単位は、通常、物理的単位(サイズを含む)及び化学的単位のうちの1つである。励起が変換される単位は、まだこの単位でなければ、秒などの時間、又は℃、°F、若しくはKなどの温度を表す単位である。多くの熱分析技法において、したがって、本発明の多くの実施形態において、励起が変換される単位は、励起がまだこの単位でない場合、温度を表す。
【0003】
励起は、熱分析測定曲線の独立変数、及び、さらに下記で論じられる第2のデータ又は第4のデータなどの熱分析測定曲線を表すデータの独立変数を提供すると考えられてもよく、応答信号は、熱分析測定曲線の従属変数、及び、第2のデータ又は第4のデータなどの熱分析測定曲線を表すデータの従属変数を提供すると考えられてもよく、これは独立変数に従属する変数を意味する。
【0004】
言及したように、多くの熱分析技法において、したがって、本発明の多くの実施形態において、独立変数は、温度を表す単位を有する。
【0005】
熱分析技法、応答、及び応答量、並びに励起及び励起量の例は、さらに下記で与えられる。
【0006】
熱分析のためのコンピュータ実装方法において、第1のデータは、第1のソフトウェアモジュールに提供されてもよく、上記第1のソフトウェアモジュールは、第1のデータから上記測定曲線を算出するように構成される。第1のソフトウェアモジュールは、測定曲線を表すのに適した第2のデータを出力するようにさらに構成されてもよい。すなわち、第2のデータは、測定曲線の曲線形状及び/又は曲線推移を表すことを可能にするデータを含む。
【0007】
特に、第2のデータは、曲線形状が詳細に再現され得る様式で測定曲線を表すことを可能にし、これは、曲線形状が、ピーク、傾斜の変化などの凸凹が第2のデータの使用によって見えるようにさせることができるような様式で再現させることができることを意味する。言い換えれば、第2のデータは、測定曲線の直接描写、特にその曲線形状及び曲線推移の、特に直接的なグラフィカルな描写を可能にするデータを含む。
【0008】
例えば、第2のデータはデータ点のタプルを含んでもよい。独立変数が、温度を表す単位を有する実施形態では、独立変数を表すタプルの値は、温度を表す単位で与えられる。
【0009】
それぞれ測定曲線である第2のデータのグラフィカル描写は、表示手段上に表示されてもよい。上述の第1のソフトウェアモジュールは、従来技術において、例えば、Mettler-ToledoのSTARe Softwareとして知られる。
【0010】
熱分析の一例は、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)である。DSC実験では、物質のサンプル、及び、典型的には空のるつぼである、知られているリファレンスは、温度プログラムを含む励起にさらされる。励起の励起量は、あらかじめ定められた周波数及び振幅を有する周期的温度変調と重ね合わせられた線形温度スロープの形態であってもよい。これは、サンプルへの熱流とリファレンスへの熱流との差によって引き起こされる熱流に対応する応答量を含む観測可能な応答を発生させる。上記熱流は、測定手段を用いることによって、例えば、応答信号である熱電電圧を介して測定されてもよい。時間の関数としての応答信号と、時間の関数としての上記温度プログラムの温度とを含む第1のデータにより、DSC曲線、すなわち測定曲線を算出することができる。DSCに関する詳細は、例えば、G.Hoehne,W.Hemminger、H.-J.Flammersheimによる、標準教本「示差走査熱量測定-開業医向け序論:Differential Scanning Calorimetry - An Introduction for Practitioners」で見出され得る。
【0011】
一旦測定曲線が算出されると、測定曲線は、例えば表示手段上に表示されてもよく、ヒューマンエキスパートによって熱効果について調査されてもよい。DSCの場合には、そのような熱効果は、ガラス転移、低温結晶化、又は溶融を含むことができる。熱効果は、例えば、ピーク、くぼみ、段などとして、対応する測定曲線の形状に反映される。しかしながら、測定曲線の解釈及びそのような曲線における熱効果の特定は困難なタスクである。曲線の分析及び解釈には、熱分析におけるかなりの量の経験のみならず、特定のサンプルが受ける場合がある起こり得る反応の知識も必要である。重なり合う効果及びアーチファクトにより、このプロセスはさらに一層困難になる。したがって、熱分析は、困難であり、厄介であり、誤差がありがちである。
【0012】
過去に、電子データ処理が、熱分析測定曲線の分析に有用なツールであることが判明した。DE102013011730B3は、電子データ処理手段を用いることによって、熱分析測定曲線を評価するための方法を開示している。測定曲線は、測定曲線内に存在する特質の変化に応じて区分され、これらの変化によって反映された熱効果に関連付けられた特徴が計算されて、それにより特徴ベクトルを得る。この特徴ベクトルは、アルゴリズムを用いることによって、データベースに記憶された既知の物質の特徴ベクトルと比較されて、それにより一致確率を得る。US2011/0301860A1は、類似性メトリックを用いてDSCプラズマサーモグラムを類別して、あらかじめ特徴付けられた炎症性疾患を特定するためのコンピュータ実装方法を開示している。
【0013】
さらに、人工知能を活用する従来技術における熱分析のためのコンピュータ実装方法が存在する。CN105823863Aでは、石炭の熱重量測定曲線が、上記曲線と関連付けられた特徴点の値を抽出するために最初に分析される。次いで、これらの値は、石炭の品質に関係付けられたデータを出力するニューラルネットワークの入力として用いられる。BRPI0604102Aは、エキスパートシステムを用いて、分子片を、熱重量分析によって決定された質量損失に関連付けている。これらの方法はモデルに基づくので、改善の余地が残される。
【0014】
人工知能を活用するコンピュータ実装方法に関する関心は、近年激しく増大してきた。いくつかの関係する文書は、熱分析及び熱分析測定には関係なく、サンプルの温度挙動に関するものである。例えば、CN113760660Aは、三次元マルチコアチップの予想される将来の温度分布を予測するため、特に、潜在的な高温スポットの位置を予測するため、履歴温度情報がニューラルネットワークに入力される三次元マルチコアチップ温度予測法を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、効率的且つ信頼性が高い熱分析のためのコンピュータ実装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によると、本目的は、上述の方法がさらに、上記第2のデータを第2のソフトウェアモジュールに提供することを含むことにより達成されるものであり、上記第2のソフトウェアモジュールは、熱効果の自動的な特定のために構成された人工知能エンジンを含み、上記第2のソフトウェアモジュールは、上記第2のデータを入力として受信し、上記人工知能エンジンによって自動的に特定された上記熱効果を表す第3のデータを出力するように構成される。
【0017】
第3のデータは、通常、上記熱効果の名称又は識別子などのタイプを含む。溶融、気化、結晶化、再結晶化、及びガラス転移などの相転移、分解、熱分解、解重合、減成、重合、架橋結合、昇華、並びに脱離は、熱効果の例である。
【0018】
第3のデータは、特定された熱効果に関連付けられたアーチファクトに関する情報及び/又は信頼度値と、上記熱効果の励起範囲、特に、熱分析測定曲線又は第2のデータにおける励起範囲などの情報とのうちの少なくとも一方をさらに含んでもよい。励起範囲は、励起範囲の下限値及び上限値によって規定されてもよく、熱効果は、上記下側値と上側値との間で生じることがある。
【0019】
本発明の第1の態様による人工知能エンジンによる測定曲線における熱効果の特定は、ヒューマンエキスパートによって実行される特定よりも素早く、誤差が少なくなりがちである。さらに、それは、例えば、CN105823863Aにおいて開示されているように、測定曲線からの特徴点の値の抽出を必要とせず、したがってさらに、人工知能を用いる、知られているコンピュータ実装方法よりも素早く、誤差が少なくなりがちである。
【0020】
本発明の第1の態様による方法はモジュール式手法を用いる。第1のソフトウェアモジュールは、実験データ、すなわち、観測可能な応答信号及び励起から熱分析測定曲線を算出し、第2のソフトウェアモジュールは、人工知能を用いることによって、第2のデータに反映された熱効果を特定する。そのようなモジュール式手法は、2つのソフトウェアモジュールがそれらのそれぞれのタスクに対して最適化され得るので、非常に効率的である。さらに、Mettler-ToledoのSTARe softwareのような、熱分析測定曲線を算出するように構成された、知られているソフトウェアモジュールが、第1のソフトウェアモジュールとして使用されてもよい。
【0021】
さらに、第1のソフトウェアモジュールと第2のソフトウェアモジュールとは互いに、明確に規定されたデータインターフェースを介して通信し、第1のソフトウェアモジュールの出力である第2のデータは、第2のソフトウェアモジュールによって、入力として受け入れられる。したがって、第2のデータのデータ構造が変わらずに保持されている限り、本方法の機能に影響を与えることなく、第1及び第2のソフトウェアモジュールの構成要素、サブルーチンなどを変更することができる。このように、本発明の方法は非常に柔軟である。例えば、第1のソフトウェアモジュールは、熱分析のための基本ソフトウェアと理解されてもよい。この基本ソフトウェアは、いくつかのメインプログラムを、例えば、器材をセットアップし、ユーザを作成し、リファレンス材料に関するデータを登録するためのインストレーションプログラムと、測定手段又は測定はかりを表し、ルーチン動作のための方法及び実験を作成することをできるようにする制御プログラムと、上記熱分析測定曲線を算出するための計算プログラムとを含むことができる。リファレンス材料は、較正及び調整のために使用され得る。上記計算プログラムは、上記第1のデータを入力として受け入れ、上記第2のデータを出力するように構成されてもよい。第1のソフトウェアモジュールの異なるプログラムの更新は、第2のデータのデータ構造が変わらずに保持されている限り、本発明の第1の態様による方法に影響を与えない。
【0022】
本発明の第1の態様による方法によって分析される物質は、純物質又は混合物を含む、いかなる物質であってもよい。熱効果は、いかなる熱効果であってもよく、アーチファクトを含むことがある。アーチファクトの事例では、第3のデータは、熱効果がアーチファクトであるという情報を含むことがある。
【0023】
第1のデータは、上記サンプルに、示差走査熱量測定(DSC)、示差熱分析(DTA:Differential Thermal Analysis)、熱重量分析(TGA:Thermogravimetric Analysis)、発生気体分析(EGA:Evolved Gas Analysis)、熱機械分析(TMA:Thermomechanical Analysis)、又は動的機械分析(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)(これらに限定するものではないが)を含む熱分析測定を受けさせることによって得られるデータを含んでもよい。第1のデータは、これらの測定法のうちの1つだけを適用することによって得ることができ、又は、これらの測定法のうちの2つ以上を同時に適用することによって得ることができる。
【0024】
励起、特に時間の関数としての励起(すなわち、励起は時間依存であり得る)は、あらかじめ知られ得るので、その値の測定は必要ではない。別の実施形態では、励起はあらかじめ知られ得ない。したがって、特に時間の関数としての上記励起の値を測定するための測定手段が提供され得る。熱分析測定については、励起は、可変温度に対応する励起を含んでもよい。
【0025】
応答信号は上記熱効果を表す。応答信号と観測可能な応答との間には関数の関係がある。例えば、DSCの場合、応答は、サンプルへの熱流とリファレンスへの熱流との差によって引き起こされる熱流に対応する応答量を含むことがあり、応答信号は、熱流に対応する熱電電圧を含むことがある。したがって、熱流は、熱電電圧から算出されてもよい。
【0026】
第1のデータは、データタプルを、特に、励起と、時間的にある特定の時期における対応する応答信号と、それぞれの時刻とを含む時間順データタプルを含んでもよい。
【0027】
第1及び第2のソフトウェアモジュールは、データ処理手段によって実行される。第1及び第2のソフトウェアモジュールは、同じデータ処理手段によって実行されてもよく、又は、異なるロケーションに配置され得る異なるデータ処理手段によって実行されてもよい。第1のソフトウェアモジュールは、クラウドコンピュータ上にインストールされてもよい。第1のソフトウェアモジュールは、マルチユーザアプリケーションであってもよい。第1のソフトウェアモジュールは、複数の第1のソフトウェアモジュールを含んでもよい。複数の第1のソフトウェアモジュールのそれぞれは、別個のデータ処理手段によって、例えば、複数のユーザのうちの一人のパーソナルコンピュータによって実行されてもよい。第2のソフトウェアモジュールは、例えば、ソフトウェアプロバイダ若しくはユーザの所在地又はどこか他に配置されてもよいサーバ又はクラウドコンピュータによって実行されてもよい。第1のソフトウェアモジュールは、ラボ情報管理システム(LIMS:Laboratory Information Management System)内に統合されてもよい。第1のソフトウェアモジュールは、熱分析のための測定手段の一部であるデータ処理手段によって実行されてもよい。
【0028】
第1のデータを取得するために行われる測定は、本発明の第1の態様による方法のユーザによって行われてもよい。この場合、方法はさらに、上記サンプルを、観測可能な応答を発生させる励起にさらすことと、上記サンプルの対応する観測可能な応答信号を時間の関数として測定することとを含んでもよい。代替的に、測定は第三者によって実行されてもよく、第1のデータは、熱分析のための本発明の第1の態様による方法のユーザに提供されてもよい。観測可能な応答信号及び励起を両方共時間の関数として表す第1のデータは、第1のソフトウェアモジュールに提供される。第1のソフトウェアモジュールは、第1のデータから熱分析測定曲線を算出するように構成される。
【0029】
第1のソフトウェアモジュールによって算出された測定曲線は二次元曲線であってもよい。そのような測定曲線は、ある特定の励起又は時刻と対応する観測可能な応答との間に関係性を確立する。例えば、DSCの場合、測定曲線は、温度又は時間と熱流との関係性を確立することができる。
【0030】
しかしながら、測定曲線はさらに多次元であってもよい。測定曲線は、1つだけの多次元曲線を含んでもよい。代替的に、測定曲線は、2つ以上の二次元曲線を含んでもよい。両方の場合、測定曲線は、ある特定の励起又は時刻と、複数の対応する観測可能な応答のそれぞれとの関係性を確立する。例えば、DSCの場合、測定曲線は、時刻と、熱流と、リファレンス温度と、サンプル温度との間の関係性を確立することができる。
【0031】
第1のソフトウェアモジュールの出力である第2のデータは、上記測定曲線の形状を表すいかなるデータを含んでも、又は、であってもよい。例えば、測定曲線は、温度T及び/又は時刻t並びに何らかの物理量Q、例えば観測可能な応答の間の関係性を確立することができる。次いで、第2のデータは、データ点の値のタプルの集合(t,T,Q)を含むことができる。追加的に又は代替的に、第2のデータは、測定曲線のグラフィカル描写のピクセルデータを含んでもよい。DSCの場合、第2のデータは、データ点のタプル(t,Φ,T,T)を含むことができ、ここでtは時刻であり、Φは熱流であり、Tはサンプル温度であり、Tはリファレンスの温度である。リファレンスは空のるつぼであってもよい。データペア(t,Φ)はDSC曲線を表すことができる。
【0032】
第2のデータは第2のソフトウェアモジュールに提供される。第2のソフトウェアモジュールは、熱効果の自動的な特定のために構成された人工知能エンジンを含む。人工知能エンジンは、第2のデータ及び/又は測定曲線に反映される熱効果の特有の特徴を検出するように動作することができる。人工知能エンジンは、少なくとも1つの人工知能アルゴリズム、特に機械学習アルゴリズムを含むことができる。機械学習アルゴリズムは、訓練データを用いて訓練されてもよい。すなわち、機械学習アルゴリズムは、最初に、訓練データを用いて訓練され、次いで、熱効果の特定のために使用されてもよい。機械学習アルゴリズムは、教師あり学習アルゴリズムを含んでもよい。すなわち、機械学習アルゴリズムは、訓練入力データを受け入れ、基礎となるモデル/関数に基づいて予測を行うことができ、訓練出力データに照らしてそれらの予測が間違っているとき、機械学習アルゴリズムは補正される。特に、教師あり学習アルゴリズムは分類アルゴリズムを含むことができる。
【0033】
訓練データは、以下の様式で作成されてもよい:既知の訓練物質が、観測可能な応答を発生させる励起にさらされてもよく、対応する応答信号及び励起を両方共時間の関数として含む第1のデータが作成される。第1のデータが使用されて熱分析測定曲線を算出する。次いで、測定曲線の形状を表すのに適した第2の訓練データ、例えば、曲線のデータ点のタプル、又は測定曲線のグラフィカル描写のピクセルデータが作成される。さらに、測定曲線及び/又は第2のデータは、第2のデータ及び/又は測定曲線内に存在する熱効果について、例えばヒューマンエキスパートによって分析される。このようにして、測定曲線に反映された熱訓練効果を表す第3の訓練データが決定されてもよい。第3の訓練データは、例えば、測定曲線内の効果のタイプ及び効果のロケーションを含んでもよい。
【0034】
次いで、第2及び第3の訓練データが使用されて、人工知能エンジンの人工知能アルゴリズム、例えば、機械学習アルゴリズムが訓練される。訓練データで訓練されるべき人工知能アルゴリズムのテンプレートが提供されてもよい。人工知能アルゴリズムテンプレートは、第2のデータを入力として受け入れ、エンジンパラメータによって規定されている様式で、第3のデータを出力する。第2の訓練データは、入力として人工知能アルゴリズムテンプレートに提供され、アルゴリズムの出力は第3の訓練データと比較される。次いで、エンジンパラメータは、アルゴリズムの出力が第2の訓練データに関連付けられた第3の訓練データと実質的に等しくなるまで、変更される。「実質的に等しい」とは、出力と第3の訓練データとの距離が、何らかの標準内の何らかの閾値の値よりも小さいことを意味する。このようにして、人工知能エンジン内で用いられる人工知能アルゴリズムは、訓練され、次いで、第2のソフトウェアモジュールに配備されてもよい。
【0035】
第3のデータは、上記人工知能エンジンによって自動的に特定された上記熱効果を表すいかなるデータであってもよい。第3のデータは、特定された効果に関連付けられた信頼度値を含んでもよい。
【0036】
本発明の第1の態様による方法の1つの実施形態において、上記人工知能エンジンは、上記熱効果の自動的な特定のための少なくとも1つのニューラルネットワークを含んでもよく、上記少なくとも1つのニューラルネットワークは、上記第2のデータを受信するための入力ニューロンの入力層と、上記第3のデータを出力するための出力ニューロンの出力層とを含み、上記第2のデータは、上記入力層の入力ニューロンに提供されてもよい。次いで、上記熱効果を表す第3のデータは、少なくとも1つのニューラルネットワークの出力層において出力として取得されてもよい。さらに、ニューラルネットワークは、1つ又は複数の隠れ層を含んでもよい。ニューラルネットワークの各層は、複数の人工ニューロンを含む。連続する層内のニューロンは、調節可能なおもりを伴う重み付きリンクによって接続されてもよい。各ニューロンは、入力値を受信し、非線形関数を入力値に適用することによって出力値を生成する。出力値は、連続する中間層内のニューロンに伝送される、又は出力層においてニューラルネットワークの出力として提示される。
【0037】
ニューラルネットワークのニューロンはS字形ニューロンであってもよい。S字形ニューロンは、関連するおもりwを伴うN個の入力xを受け入れ、
【数1】
を出力することができる。但し、bはいわゆるバイアスである。
【0038】
本発明による人工知能エンジンは、1つ、2つ、3つ又はそれ以上のニューラルネットワークを含むことができる。2つ以上のニューラルネットワークがある場合、ニューラルネットワークは、そのネットワークアーキテクチャにおいて、例えば、入力及び/若しくは出力ニューロンの個数において、並びに/又は、隠れ層の枚数において、並びに/又は、おもりにおいて、並びに/又は、バイアスにおいて、並びに/又は、トポロジーにおいて異なってもよい。本発明の方法は、任意のネットワークアーキテクチャのために機能する。
【0039】
一実施形態では、上記人工知能エンジンは、上記熱効果の自動的な特定のために、好ましくはニューラルネットワークである少なくとも2つのサブエンジンを含むことができ、上記第2のソフトウェアモジュールはさらに、熱効果の自動的な特定のための上記サブエンジンのうちの1つを選択するために選択データを受信し、選択されたサブエンジンの入力に第2のデータを提供するように構成されてもよく、これは、サブエンジンがニューラルネットワークである好ましい実施形態において、選択されたニューラルネットワークの入力層に第2のデータを提供することによって行われるものであり、上記選択データは、上記第2のソフトウェアモジュールに提供されてもよい。少なくとも2つのサブエンジンは、例えば、異なる材料クラス(例えば、金属、重合体など)内の物質の熱効果の特定のために構成されてもよく、選択データは、上記材料クラスと関連付けられたデータを含んでもよい。しかしながら、さらに、サブエンジンのそれぞれと関連付けられた他の特有の特性があってもよく、選択データは、所望のサブエンジンを選択することを可能にするデータを含んでもよい。例えば、サブエンジンがニューラルネットワークである場合、サブエンジンは、ニューロンのタイプ、層の枚数、トポロジー、バージョン番号、それぞれのニューラルネットワークの訓練のために用いられる訓練データのタイプなどにおいて異なることがある。第2のデータは選択データを含むことができる。ユーザは、選択データを第1及び/又は第2のソフトウェアモジュールに入力することができる。熱効果の自動的な特定のためにサブエンジンのうちの1つの選択を可能にすることによって、ある特定の物質内に存在する熱効果の特定に最も適したサブエンジンが前もって選択され得るので、本方法の効率及び精度は改善され得る。
【0040】
本発明の第1の態様による方法の一例において、上記方法はさらに、少なくとも1つのサブエンジンを上記第2のソフトウェアモジュールに配備すること、及び/又は、少なくとも1つのサブエンジンを上記第2のソフトウェアモジュールから取り除くこと、及び/又は、上記第2のソフトウェアモジュール内の少なくとも1つのサブエンジンの動作を停止させることを含むことができ、好ましくはサブエンジンはニューラルネットワークである。このようにして、人工知能エンジンは、ユーザ固有になされ得る。少なくとも1つのサブエンジンを上記第2のソフトウェアモジュールに配備することによって、ユーザ固有のサブエンジン及び/又は更新されたサブエンジンなどは、第2のソフトウェアモジュールに提供されてもよく、熱効果の自動的な評価のために使用されてもよい。サブエンジンのうちの少なくとも1つを取り除き、次いでサブエンジンを配備する、又はそれを逆に行うことによって、サブエンジンは、人工知能エンジンにおいて置き換えられてもよい。第1のソフトウェアモジュールと第2のソフトウェアモジュールとの間には明確に規定されたインターフェースがあるので、上述のように、少なくとも1つのサブエンジンを配備すること、及び/若しくは、取り除くこと、並びに/又は、少なくとも1つのサブエンジンの動作を停止させることは、実現可能であり、本発明の第1の態様による方法の機能原理に影響を及ぼさない。さらに、例えば、熱測定曲線の計算ルーチンの更新によって、又は、第2のデータのデータ構造が変更されない限り、第1のソフトウェアモジュール内の任意の他のルーチンの更新によって、第1のソフトウェアモジュールを変更することができる。したがって、本発明の第1の態様による方法は、第1のソフトウェアモジュールと第2のソフトウェアモジュールとの間のデータインターフェースが変更されない限り、サブエンジン及び第1のソフトウェアモジュールの両方が、方法の機能原理に影響を及ぼさずに、更新又は変更され得るので、非常に柔軟である。
【0041】
本発明の第1の態様による方法の別の実施形態において、上記方法は、好ましくは訓練されたニューラルネットワークである訓練されたサブエンジンを作成するための訓練ソフトウェアモジュールの使用と、訓練されたサブエンジンを上記第2のソフトウェアモジュールに配備することとをさらに含むことができ、それによって、訓練ソフトウェアモジュールは、訓練物質の少なくとも1つの訓練サンプルに関連付けられたエキスパート訓練データを用いることによって訓練されたサブエンジンを作成するように構成されており、上記エキスパート訓練データは、第2及び第3の訓練データのデータセットを含み、上記第2の訓練データは、上記訓練サンプルに起因する訓練測定曲線を表すのに適しており、上記訓練測定曲線は、その訓練サンプルに起因する少なくとも1つの熱訓練効果の特定を可能にし、上記第3の訓練データは、上記熱訓練効果を表しており、訓練ソフトウェアモジュールはさらに、エンジンパラメータのセットによって規定された内容で入力データを出力データにリンクするサブエンジンテンプレートを提供することによって、及び、データセットの大部分に対して、上記データセットの第2の訓練データが上記訓練されたサブエンジンに入力されたとき、エンジンパラメータを用いて訓練されたサブエンジンによって出力された第3のデータが、データセットのうちの1つの第3の訓練データに本質的に等しいようにエンジンパラメータを決定することによって、訓練されたサブエンジンを作成するように構成されており、それによって、サブエンジンテンプレートは、好ましくは、上記第2のデータを受信するための入力層、上記第3のデータを出力するための出力層、及び好ましくは1つ又は複数の中間層、並びに、入力層と出力層と好ましくは中間層との間の接続を表すおもりを含むブランクニューラルネットワークであり、エンジンパラメータは、好ましくは、データセットの大部分に対して、上記データセットの第2の訓練データが入力層によって受信されたとき、出力層によって出力された第3のデータが、データセットのうちの1つの第3の訓練データと本質的に等しいように決定されるおもりであり、それによって、決定されたおもりは訓練されたニューラルネットワークを規定する。
【0042】
訓練されたサブエンジンは、サブエンジンテンプレートから開始することによって作成される。そのようなテンプレートは、エンジンパラメータのセットによって規定された内容で入力データを出力データにリンクする。すなわち、入力データと出力データとの間には関数の関係がある。訓練されたサブエンジンが訓練されたニューラルネットワークであるとき、サブエンジンテンプレートは、第2のデータを受信するための入力ニューロンの入力層と、第3のデータを出力するための出力ニューロンの出力層とを含むブランクニューラルネットワークである。さらに、ブランクニューラルネットワークは、入力層と出力層との間に連続して配置された、ニューロンの1つ又は複数の中間層を含むことができる。連続層内のニューロンは、エンジンパラメータであるおもりと関連付けられたリンクによって接続される。
【0043】
エンジンパラメータは、データセットの大部分に対して、上記データセットの第2の訓練データが上記訓練されたサブエンジンに入力されたとき、訓練されたサブエンジンによって出力された第3のデータが、データセットのうちの1つの第3の訓練データと本質的に等しいように選択される。ここで、「本質的に等しい」とは、第3のデータと第3の訓練データとの何らかの標準内の差が、閾値の値よりも小さいことを意味することがある。
【0044】
最適化ルーチンは、適宜、エンジンパラメータを選択するために使用されてもよい。例えば、訓練の開始時に、エンジンパラメータは何らかの初期値に設定されてもよい。これらの値は、例えば、ランダムに選択されてもよい。次いで、データセットのうちの1つの第2の訓練データは、入力データとしてサブエンジンテンプレートに提供されてもよく、サブエンジンテンプレートのそれぞれの出力は、例えば、何らかの標準内の距離を介して、第3の訓練データと比較されてもよい。次いで、エンジンパラメータは、サブエンジンテンプレートの出力が、第3の訓練データを上記標準内の所望の精度に近づけるように、修正されてもよい。ここで、勾配最適化方法が使用されてもよい。
【0045】
サブエンジンがニューラルネットワークの場合、エンジンパラメータはおもりであってもよい。次いで、これらのおもりは、データセットの大部分に対して、上記データセットの第2の訓練データが入力層によって受信されたとき、出力層によって出力された第3のデータが、データセットのうちの1つの第3の訓練データに本質的に等しいように、選択されてもよい。次いで、決定されたおもりは訓練されたニューラルネットワークを規定する。
【0046】
エキスパート訓練データは、1つの特定の訓練物質の1つ又は複数の訓練サンプルのデータセットを含むことができる。代替的に、エキスパート訓練データは、いくつかの異なる訓練物質の1つ又は複数の訓練サンプルのデータセットを含むことができる。訓練物質は、1つの材料クラス、例えば、重合体、PET、金属などに属してもよい。次いで、訓練されたサブエンジンは、上記材料クラスに属する物質に起因する熱効果の特定に十分ふさわしいことがある。代替的に、訓練物質は異なる材料クラスに属してもよい。
【0047】
訓練されたサブエンジンは、サブエンジンテンプレートから、好ましくはブランクニューラルネットワークから、ユーザによって提供されたエキスパート訓練データを用いることによって作成されてもよい。このようにして、ユーザ固有のサブエンジン、好ましくは、ユーザ固有のニューラルネットワークが作成されてもよい。ニューラルネットワークを発生させる様式は、例えば、US2021/0012206A1に開示されている。
【0048】
人工知能エンジンが2つ以上のサブエンジンを含む場合、上記第2のソフトウェアモジュールがさらに、熱効果の自動的な特定のためのサブエンジンのうちの1つを選択するために選択データを受信し、第2のデータを選択されたサブエンジンに提供するように構成されると、有益である場合があり、上記で説明されたように、上記選択データは、上記第2のソフトウェアモジュールに提供されてもよい。したがって、ユーザは、例えば、対応する選択データを第2のソフトウェアモジュールに提供することによって、訓練されたサブエンジンを選択することができる。
【0049】
一例によると、上記訓練測定曲線は、熱分析測定結果を上記訓練サンプルに適用することによって得られることがあり、及び/又は、上記訓練測定曲線は、上記訓練サンプルに対応する理論測定曲線であってもよく、上記第3の訓練データは、上記訓練測定曲線内に存在する熱訓練効果のヒト特定によって取得されてもよい。すなわち、測定曲線は、あり得る熱効果に関してヒューマンエキスパートによって分析されてもよく、及び/又は、熱訓練効果を含む理論測定曲線が、ヒューマンエキスパートによって作成され分析されてもよく、これらの測定曲線は、訓練されたサブエンジンの訓練のために使用されてもよい。一実施形態では、熱分析測定によって得られた測定曲線及び上記訓練サンプルに対応する理論測定曲線は、両方共、訓練されたサブエンジンを訓練するために使用されてもよい。
【0050】
第3のデータは、上記人工知能エンジンによって自動的に特定された上記熱効果を表すいかなるデータであってもよい。一例では、上記第3のデータは、励起範囲、及び上記熱効果のタイプを含んでもよい。励起範囲は、励起範囲の下限値及び上限値によって規定されてもよく、熱効果は、上記下側値と上側値との間で生じることがある。効果のタイプは、例えば、ガラス転移、融点、及び低温結晶化ピークを含むことがある。熱効果がアーチファクトである場合、第3のデータはこの情報を含むことがある。
【0051】
一実施形態において、方法はさらに、上記測定曲線を表すのに適した上記第3のデータ及び第4のデータを評価ソフトウェアモジュールに提供することを含み、上記評価ソフトウェアモジュールは、上記第3及び第4のデータを入力として受信し、上記第4のデータにより、上記少なくとも1つの熱効果と関連付けられた少なくとも1つの特質量の値を算出するように構成される。第4のデータは、第1のソフトウェアモジュールによって提供されてもよい。第4のデータは、第2のデータと等しくてもよい、又は第2のデータを含んでもよい。しかしながら、第4のデータはさらに、第2のデータとは異なってもよい。上記で説明されたように、例えば、第2のデータが、測定曲線を表すピクセルデータを含むとき、第4のデータは、時刻t、温度T、及び物理量Qのデータ点の値のタプル(t,Ti,Q)を含むことができる。
【0052】
評価ソフトウェアモジュールはさらに、上記特質量を出力するように構成されてもよい。特質量は、上記熱効果と関連付けられたいかなる物理量であってもよい。例えば、第3のデータは、効果のタイプ及び対応する励起範囲を含むことができる。例えば、DSCの場合、特質量は、効果のタイプに応じて、ガラス転移温度、熱効果の開始温度、溶融点温度、ピーク値、中間点温度、積分などを含むことができる。
【0053】
言い換えれば、評価ソフトウェアモジュールは、評価ソフトウェアモジュールに提供された第3のデータ及び第4のデータから値を決定するように構成されてもよく、値は、第4のデータにおいて観測可能な熱効果の特質であり、第3のデータにおいて列挙されている。評価ソフトウェアモジュールはさらに、上記値を出力するように構成されてもよい。
【0054】
第1、第2、及び評価ソフトウェアモジュールは、明確に規定されたデータインターフェースを介して互いに通信する-第1のソフトウェアモジュールの出力である第2のデータは、第2のソフトウェアモジュールによって入力として受け入れられ、第2のソフトウェアモジュールの出力である第3のデータ、及び第4のデータは、評価ソフトウェアモジュールによって入力として受け入れられる。したがって、第2、第3、及び第4のデータのデータ構造が変わらずに保持される限り、本方法の機能に影響を及ぼさずに、第1、第2、及び評価ソフトウェアモジュールの構成要素、サブルーチンなどを変更することができる。
【0055】
評価ソフトウェアモジュールは、第1及び第2のソフトウェアモジュールとは独立したソフトウェアモジュールであってもよい。しかしながら、評価モジュールはさらに、第1のソフトウェアモジュール内のルーチンとして実装されてもよく、第1のソフトウェアモジュールはさらに、上記第3のデータを入力として受信するように構成されてもよい。
【0056】
本発明の第1の態様による方法はさらに、熱分析測定曲線、及び/又は、熱効果の励起範囲と関連付けられたデータ、及び/又は、上記熱効果のタイプと関連付けられたデータ、及び/又は、少なくとも1つの特質量の値のグラフィカル描写を表示手段上に表示することを含んでもよい。これにより、熱分析の結果のグラフィカル描写が可能になる。
【0057】
励起は、1つ又は複数の励起量を含んでもよい。上記励起は、可変温度に対応する励起量を含んでもよい。可変温度は温度プログラムであってもよい。追加的に又は代替的に、励起は、可変電力に対応する励起量、及び/又は、可変圧力に対応する励起量、及び/又は、可変放射線量に対応する励起量、及び/又は、可変応力若しくは歪に対応する励起量、及び/又は、気体の可変雰囲気に対応する励起量、及び/又は、可変磁場に対応する励起量を含んでもよい。このようにして、示差走査熱量測定(DSC)、示差熱分析(DTA)、熱重量分析(TGA)、発生気体分析(EGA)、熱機械分析(TMA)、又は動的機械分析(DMA)を含む熱分析測定が行われてもよい。これらの測定のうちの1つのみが実行されてもよく、又はこれらの測定のうちの2つ以上が同時に実行されてもよい。励起が1つの励起の量を超える励起量を含むとき、2つ以上の熱分析方法がサンプルに同時に適用される。
【0058】
応答は、1つ又は複数の応答量を含んでもよい。応答は、動的熱分析方法の温度差に対応する応答量、及び/又は、動的熱分析方法の熱流、特に、物質のサンプルへの熱流と既知のリファレンスへの熱流との差によって引き起こされる熱流に対応する応答量、及び/又は、動的電力補償熱分析方法の加熱電力における差に対応する応答量、及び/又は、動的熱機械分析方法の長さの変化に対応する応答量、及び/又は、動的熱重量分析方法の重量の変化に対応する応答量、及び/又は、動的機械分析方法の力に対応する応答量、及び/又は、動的機械分析方法の長さの変化に対応する応答量、及び/又は、動的誘電分析方法の電圧の変化に対応する応答量を含んでもよい。
【0059】
本発明の第2の態様によると、物質のサンプルの熱分析のためのシステムが提供されており、上記システムは、
測定手段であって、上記測定手段は、観測可能な応答を発生させる励起にさらされたサンプルの応答信号を測定するように、並びに、応答信号及び上記励起を時間の関数として表す第1のデータを出力するように動作し、上記応答信号は、上記サンプルに起因する熱効果を表している、測定手段と、
第1のソフトウェアモジュールを有するデータ処理手段であって、上記第1のソフトウェアモジュールは、第1のデータを入力として受信することと、第1のデータから熱分析測定曲線を算出することと、上記測定曲線を表すのに適した第2のデータを出力することとを行うように構成されており、上記熱分析測定曲線は上記熱効果の特定を可能にし、上記データ処理手段はさらに、熱効果の自動的な特定のために構成された人工知能エンジンを含む第2のソフトウェアモジュールを有しており、上記第2のソフトウェアモジュールは、上記第2のデータを入力として受信することと、上記人工知能エンジンによって特定された上記熱効果を表す第3のデータを出力することとを行うように構成されている、データ処理手段とを備える。
【0060】
本発明の第2の態様による方法は、本発明の第1の態様による方法を実装するように適合される。本発明の第1の態様による方法に関して上記のように言われた全てが、本発明の第2の態様によるシステムにも適用される。
【0061】
システムは、1つの測定手段又は複数の測定手段を含んでもよい。好ましくは、測定手段は、熱流センサ又は温度センサなどのセンサである。複数の測定手段のそれぞれは、特定の観測可能な応答を発生させる特定の励起にさらされたサンプルの特定のタイプの応答信号を測定するように動作してもよく、上記特定の応答信号は、上記サンプルに起因する熱効果を表す。例えば、測定手段のうちの1つは、DSC測定を実施するように動作してもよく、別の測定手段は、TGA測定を実施するように動作してもよい、などである。しかしながら、システムはさらに、同じタイプの応答信号を測定するように動作するいくつかの測定手段を含んでもよい。複数の測定手段の各測定手段は、データ処理手段と通信することができ、第1のデータをデータ処理手段に提供するように動作することができる。測定手段は、第1のデータをデータ処理手段に送信するための送信ユニットを含んでもよく、データ処理手段は、第1のデータを受信するための受信ユニットを含んでもよい。
【0062】
データ処理手段は、単一のデータ処理手段であってもよく、又は複数のデータ処理手段を含んでもよい。例えば、第1のデータ処理手段は、第1のソフトウェアモジュールを実行するように動作してもよく、第2のデータ処理手段は、第2のソフトウェアモジュールを実行するように動作してもよい。さらに、第1のデータ処理手段は、サーバ又はクラウドコンピュータを含んでもよく、何人かのユーザによってアクセス可能であってもよい。このようにして、マルチユーザ環境が作成されてもよい。一実施形態では、測定手段は、第1のデータ処理手段及び/又は第2のデータ処理手段を含んでもよい。
【0063】
本発明の第3の態様によると、物質のサンプルの熱分析のためのコンピュータプログラムが提供されており、上記コンピュータプログラムは、第1のソフトウェアモジュールを含み、上記第1のソフトウェアモジュールは、観測可能な応答を発生させる励起にさらされた上記サンプルの応答信号と、上記励起とを時間の関数として表す第1のデータを入力として受信することと、上記熱効果の特定を可能にする熱分析測定曲線を第1のデータから算出することと、上記測定曲線を表すのに適した第2のデータを出力することとを行うように構成されており、上記応答信号は、上記サンプルに起因する熱効果を表しており、上記コンピュータプログラムはさらに、熱効果の自動的な特定のために構成された人工知能エンジンを含む第2のソフトウェアモジュールを含み、上記第2のソフトウェアモジュールは、上記第2のデータを入力として受信することと、上記人工知能エンジンによって特定された上記熱効果を表す第3のデータを出力することとを行うように構成される。
【0064】
本発明の第3の態様によるコンピュータプログラムは、本発明の第1の態様による方法を実装するように適合され、本発明の第2の態様によるシステムで使用されるように適合される。本発明の第1の態様による方法及び本発明の第2の態様によるシステムに関して上記のように言われた全てが、本発明の第3の態様によるコンピュータプログラムにも適用される。
【0065】
本発明の第4の態様によると、物質のサンプルの熱分析のためのコンピュータプログラムの訓練ソフトウェアモジュールが提供されており、上記訓練ソフトウェアモジュールは、第2及び第3の訓練データのデータセットを含むエキスパート訓練データを受信するように構成されており、上記第2の訓練データは、訓練サンプルに起因する訓練測定曲線を表すのに適しており、上記訓練測定曲線は、上記訓練サンプルに起因する少なくとも1つの熱訓練効果の特定を可能にし、上記第3の訓練データは、上記熱訓練効果を表しており、
及び/又は、上記訓練ソフトウェアモジュールはさらに、本発明の第3の態様による第1のソフトウェアモジュールから少なくとも1つの熱訓練効果の特定を可能にする熱分析測定曲線を表すのに適した第2のデータを受信するように構成されていることと、少なくとも1つの熱訓練効果のヒト特定を表すヒト入力から関連する第3のデータを作成するように構成されていることとによってエキスパート訓練データを作成するように構成されており、
それによって、訓練ソフトウェアモジュールは、訓練データに基づいて、訓練されたサブエンジン、好ましくは訓練されたニューラルネットワークを作成し、訓練されたサブエンジンは、本発明の第3の態様による第2のソフトウェアモジュールに配備されるのに適しており、
それによって、訓練ソフトウェアモジュールは、好ましくは、本発明の第3の態様によるコンピュータプログラムの一部である。
【0066】
本発明の第4の態様による訓練ソフトウェアモジュールは、エキスパート訓練データを用いることによって訓練されたサブエンジンを作成するように構成される。本発明の第1の態様による方法に関して上記で説明されたように、この訓練されたサブエンジンは、エンジンパラメータのセットによって規定された内容で入力データを出力データにリンクするサブエンジンテンプレートを提供することによって、及び、データセットの大部分に対して、上記データセットの第2の訓練データが上記訓練されたサブエンジンに入力されたとき、エンジンパラメータを用いて訓練されたサブエンジンによって出力された第3のデータが、データセットのうちの1つの第3の訓練データに本質的に等しいようにエンジンパラメータを決定することによって、作成されてもよい。上記で説明されたように、訓練されたサブエンジンは、ユーザ固有のサブエンジン、特に、ユーザ固有のニューラルネットワークであり得る。
【0067】
一例では、サブエンジンテンプレートは、上記第2のデータを受信するための入力ニューロンの入力層と、上記第3のデータを出力するための出力ニューロンの出力層と、好ましくは、ニューロンの1つ又は複数の中間層とを含むブランクニューラルネットワークであってもよい。異なる層内のニューロンは、関連するおもりを伴う接続によってリンクされてもよく、おもりはエンジンパラメータである。おもりは、データセットの大部分に対して、上記データセットの第2の訓練データが入力層によって受信されたとき、出力層によって出力された第3のデータが、データセットのうちの1つの第3の訓練データに本質的に等しいように決定され、それによって、決定されたおもりは訓練されたニューラルネットワークを規定する。
【0068】
エンジンパラメータは、本発明の第1の態様による方法に関して上記で説明されたように決定されてもよい。
【0069】
本発明の第5の態様によると、本発明の第3の態様によるコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読データ担体が提供される。
【0070】
以下の説明では、本発明は、図面を参照して、例によって一層詳細に明記されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】本発明の第2の態様によるシステムの概略の描写を示す図である。
図2】本発明の第1の態様による方法の実施形態のフローチャートを示す図である。
図3a】第1のソフトウェアモジュールによって算出されたDSC測定曲線の例を示す図である。
図3b図3aに示される測定曲線を示し、第2のソフトウェアモジュールによって特定された熱効果と、評価モジュールによって算出された関連する特質量とが表示されている図である。
図4】本発明による人工知能エンジンで使用されるニューラルネットワークを訓練するフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1は、本発明の第2の態様によるシステム1の概略的な描写である。システムは、3つの測定手段2a、2b、2cを含み、測定手段2a、2b、2cのそれぞれは、観測可能な応答を発生させる励起にさらされるサンプルの応答信号を測定するように動作し、上記応答信号は、上記サンプルに起因する熱効果を表す。例えば、測定手段2aは、DSC測定を実施するように動作することができる。次いで、励起は、温度プログラムの形態の可変温度を含むことができる。観測可能な応答は、物質のサンプルへの熱流と既知のリファレンスへの熱流との差によって引き起こされる熱流を含むことができ、既知のリファレンスは典型的には空のるつぼである。対応する応答信号は、測定手段2aによって測定される熱電電圧であってもよい。測定手段2bは、例えば、TGA測定を実施するように動作することができ、測定手段2cは、例えば、TMA測定を実施するように動作することができる。代替的に、全ての3つの測定手段2a、2b、2cは、DSC測定を実施するように動作することができる。図1では、測定手段2a、2b、2cのそれぞれは、それぞれのサンプル3a、3b、3c上で熱分析測定を実施する。サンプル3a、3b、3cは、同じ物質のサンプルであってもよく、又は異なる物質のサンプルであってもよい。
【0073】
測定手段2a、2b、2cのそれぞれは、応答信号及び上記励起を両方共時間の関数として表す第1のデータを出力するように動作する。例えば、DSC測定を実施するように構成された測定手段2aの場合、第1のデータは、サンプル3a及びリファレンス(図示せず)への熱流と、サンプル3aの温度と、リファレンスの温度とを全て時間の関数として表す熱電電圧を含むことができる。好ましくは、第1のデータは時間順である。
【0074】
測定手段2a、2b、2cのそれぞれは、データ処理手段と通信することができる。データ処理手段は、いくつかのユーザPC11a、11bによってアクセス可能であってもよい。データ処理手段は、互いに通信する第1のデータ処理手段4a及び第2のデータ処理手段4bを含むことができる。第1のデータ処理手段4aは、CPU5を含むことができ、第1のソフトウェアモジュール6、評価ソフトウェアモジュール7、及び、任意選択で、1つ又は複数の他のソフトウェアモジュール8を実行するように動作することができる。これらの他のソフトウェアモジュールのうちの1つは、器材をセットアップし、ユーザを作成し、リファレンス材料に関するデータを登録するためのインストレーションプログラムを含むことができる。これらのソフトウェアモジュールのうちの別の1つは、測定手段又は測定はかりを表しルーチン動作のための方法及び実験を作成することをできるようにする制御プログラムを含むことができる。すなわち、第1のデータ処理手段4aは、指令を測定手段2a、2b、2cに送信することができる(第1のデータ処理手段4aから測定手段2a、2b、2cへの矢印A1a、A2a、A3a参照)。代替的に、図1には示されていないが、各測定手段は、第1のソフトウェアモジュールを実行する第1のデータ処理手段を含んでもよい。
【0075】
測定手段2a、2b、2cは、それぞれの第1のデータを第1のデータ処理手段4aに送信するように動作することができる(矢印A1b、A2b、A3b参照)。測定手段2a、2b、2cのそれぞれは、第1のデータを第1のデータ処理手段4aに送信するための送信ユニットを含むことができる。第1のデータ処理手段4aは、第1のデータを受信するための受信ユニットを含むことができる。第1のソフトウェアモジュール6は、上記第1のデータを入力として受信し、上記熱効果の特定を可能にする熱分析測定曲線を算出し、上記測定曲線を表すのに適した第2のデータを出力するように構成される。例えば、DSCの場合、測定曲線は、プローブの温度と熱流との関係性を含むことができる。第2のデータは、この測定曲線を表すデータを含むことができる。例えば、第2のデータは、サンプル温度T(t)及び熱流Φ(T(t))のデータ点のペア(T(t),Φ(T(t)))をサンプルの時間依存温度T(t)の関数として含むことができ、但しtは時間における点であるのみならずリファレンスの温度、時刻t、及び材料クラスである。
【0076】
第1のデータ処理手段4aは、第2のデータを第2のデータ処理手段4bに送信するように動作することができる(矢印A4参照)。第1のデータ処理手段4aは、第2のデータを第2のデータ処理手段4bに送信するための送信ユニットを含むことができる。第2のデータ処理手段4bは、上記第2のデータを受信するための受信ユニットを含むことができる。第2のデータ処理手段4bは、第2のソフトウェアモジュールを含む。第2のソフトウェアモジュールは、熱効果の自動的な特定のために構成された人工知能エンジン9を含み、上記第2のソフトウェアモジュールは、上記第2のデータを入力として受信し、上記人工知能エンジン9によって特定された上記熱効果を表す第3のデータを出力するように構成される。
【0077】
人工知能エンジン9は、少なくとも1つのニューラルネットワークを含むことができる。図1において、人工知能エンジン9は、DSC測定曲線における熱効果の特定のための4つのニューラルネットワーク10a、10b、10c、10dと、任意選択で、同じ又は他の熱分析測定法、例えば、TGA及びTMAによって得られた測定曲線における熱効果の特定のためのさらなるニューラルネットワーク(図示せず)とを含む。4つのニューラルネットワーク10a、10b、10c、10dは、異なる材料クラスに属する材料の熱効果の特定のために構成されてもよい。例えば、第1のニューラルネットワーク10aは、重合体の熱効果の特定のために構成されてもよく、第2のニューラルネットワーク10bは、金属の熱効果の特定のために構成されてもよく、第3のニューラルネットワーク10cは、一般的な熱効果の特定のためのニューラルネットワークであってもよく、第4のニューラルネットワーク10dは、さらに下記に明記されたユーザ固有のニューラルネットワークであってもよい。第2のソフトウェアモジュールは、第2のデータを入力として受信するように、及び、第2のデータに含まれる材料クラスを規定する選択データに応じて、熱効果の自動的な特定のためのニューラルネットワークのうちの1つを選択するように動作する。例えば、選択データが「重合体」であるとき、第1のニューラルネットワーク10aは、熱効果の特定のために選択される。さらに、上記で説明された人工知能エンジンの例に関するあり得る選択データは、「金属」、「一般」、及び「ユーザ固有」を指定することができる。
【0078】
ニューラルネットワーク10a、10b、10c、10dのそれぞれは、第2のデータを入力として受け入れ、上記ニューラルネットワークによって特定された上記熱効果を表す第3のデータを出力するように構成される。第3のデータは、励起範囲及び上記熱効果のタイプを含むことができる。例えば、DSCの場合、第3のデータは、温度範囲の下側温度値及び上側温度値、並びに上記熱効果のタイプ、例えばガラス転移を含むことができる。
【0079】
次いで、第3のデータは、第1のデータ処理手段4aによって実行される評価ソフトウェアモジュール7に送信される(矢印A5参照)。第2のソフトウェアモジュールは、第3のデータを評価ソフトウェアモジュール7に送信するための送信ユニットを含むことができる。第1のソフトウェアモジュールは、第3のデータを受信するための受信ユニットを含むことができる。評価ソフトウェアモジュール7は、上記測定曲線を表すのに適した上記第3のデータ及び第4のデータを入力として受信し、上記第4のデータにより、上記少なくとも1つの熱効果と関連付けられた少なくとも1つの特質量の値を算出するように構成される。評価ソフトウェアモジュール7は、第1のソフトウェアモジュール内のルーチンとして実装されてもよく、第1のソフトウェアモジュールはさらに、上記第3のデータを入力として受信するように構成されてもよい。例えば、DSCの場合、第3のデータは、「ガラス転移」によって規定される特定された熱効果、並びに、この効果が生じる範囲の下側温度値及び上側温度値を含んでもよく、評価ソフトウェアモジュール7は、ガラス転移の開始温度及び中間点温度を特質量として算出するように構成されてもよい。
【0080】
図2は、本発明の第1の態様による方法の実施形態のフローチャートを示している。ステップS1では、物質のサンプルは、観測可能な応答を発生させる励起にさらされる。対応する応答信号は、上記サンプルに起因する熱効果を表す。DSCの場合、物質のサンプル及びリファレンスは、温度プログラムにさらされる。これは、観測可能な応答、すなわち、サンプルへの熱流とリファレンスへの熱流との差によって引き起こされる熱流を発生させる。DSC測定では、熱流は、応答信号である熱電電圧を介して測定される。熱流は上記熱電電圧に比例する。このようにして、励起及び応答信号を両方共時間の関数として含む第1のデータが取得される。すなわち、DSC測定については、第1のデータは、時刻t、温度T、及び熱電電圧Vで成り立つ時間順データを含むことができる。
【0081】
ステップS2では、第1のデータは第1のソフトウェアモジュールに提供される。第1のソフトウェアモジュールは、データ処理手段によって、例えば、図1に示される第1のデータ処理手段4aによって実行される。
【0082】
ステップS3では、第1のソフトウェアモジュールは、上記第1のデータを入力として受信し、上記第1のデータから上記熱効果の特定を可能にする熱電測定曲線を算出する。例えば、DSCの場合、測定曲線は、温度又は時間と熱流との関係性を表す。図3では、PETサンプルに関して得られた第1のデータから算出されたDSC曲線(x軸上の温度、y軸上の熱流)のグラフィカル描写が描かれている。サンプルは、30℃から290℃まで加熱される。この温度範囲には、3つの特質変化、すなわち、段、ピーク、及びくぼみが見える。これらの特質変化のそれぞれは熱効果に対応する。第1のソフトウェアモジュールは、測定曲線を表すのに適した第2のデータを出力する。例えば、第2のデータは、測定曲線のx値及びy値のデータ点のペア(x,y)を含むことができる。代替的に、第2のデータは、測定曲線のグラフィカル描写のピクセルデータを含んでもよい。
【0083】
ステップS4では、第2のソフトウェアモジュールは第2のデータを受信する。第2のソフトウェアモジュールは、熱効果の自動的な特定のために構成された人工知能エンジンを含む。図1を参照して上記で説明されたように、人工知能エンジンは、少なくとも1つのニューラルネットワークを含むことができる。第2のソフトウェアモジュールは、第2のデータを入力として受信し、上記人工知能エンジンによって自動的に特定された上記熱効果を表す第3のデータを出力するように構成される。第3のデータは、励起範囲、及び関連する熱効果のタイプを含むことができる。例えば、図3aに描かれた測定曲線については、第3のデータは、以下の情報、すなわち、温度範囲[70℃,100℃]におけるガラス転移、温度範囲[120℃,180℃]における結晶化、温度範囲[210℃,270℃]における溶融を含むことができる。
【0084】
図3a及び3bは、例として、10時間の間65℃でアニールされた、PETの例について、測定曲線と、特定された熱効果の描写とを、関連する算出された特質量と一緒に示している。小さな矢印は、サンプルの発熱挙動を表す縦軸に沿った方向を示している。図3a及び3bでは、矢印は上向きを指し、それによって、上昇曲線は、エネルギーがサンプルからその周囲に提供されるプロセスを説明している。サンプルのそのような発熱プロセスは、多くの化学反応であるか、又は今回の場合、結晶化である。サンプルが周囲からエネルギーを消費する吸熱プロセス、例えば、図解された事例における溶融又はガラス転移は傾斜曲線のように見える。
【0085】
ステップS5において、評価ソフトウェアモジュールは、上記測定曲線を表すのに適した上記第3のデータ及び第4のデータを受信する。第4のデータは、測定曲線のx値及びy値のデータ点のペア(x,y)を含むことができる。評価ソフトウェアモジュールは、上記第3のデータ及び第4のデータを入力として受信し、上記第4のデータにより、上記少なくとも1つの熱効果と関連付けられた少なくとも1つの特質量の値を算出するように構成される。この計算の結果は、例えば測定曲線と組み合わせて、表示手段上に表示されてもよい。そのような描写の例が図3bに示されている。そこには、測定曲線において、3つの特質変化が、「ガラス転移」、「結晶化」、及び「溶融」として特定され、「ガラス転移」、「結晶化」、及び「溶融」とラベル付けされる。ガラス転移について、以下の特質量が算出される:開始温度(「開始」)、ISO11357-2、第3編、2020年に出版された(「中間点ISO:Midpoint ISO」)による中間点温度、Richardson(「中間点Richardson:Midpoint Richardson」)による中間点温度、Richardson(「Delta cp Richardson」)によるガラス転移の段高さ。結晶化については、結晶化の範囲において、測定された曲線と基線との間のピーク面積を表す積分が計算される。溶融については、溶融の範囲において、測定された曲線と基線との間のピーク面積を表す積分が計算される。
【0086】
図4は、本発明によるニューラルネットワークを訓練するフローチャートを描いている。第1のステップS11では、熱分析測定が訓練サンプルに対して実施される。すなわち、訓練サンプルは、観測可能な応答を発生させる励起にさらされる。例えば、DSCの場合、材料のサンプル、及び、空のるつぼなどのリファレンスが、温度プログラムにさらされる。これは、サンプルへの熱流とリファレンスへの熱流との差によって引き起こされる熱流の形態の観測可能な応答に帰着する。DSC測定においては、熱流は、応答信号である熱電電圧を介して測定されてもよい。このようにして、励起及び応答信号を両方共時間の関数として含む第1のデータが取得されてもよい。
【0087】
ステップS12において、第1のデータが第1のソフトウェアモジュールに入力されて、上記第1のデータから熱分析測定曲線、例えばDSC曲線が算出され、上記測定曲線を表すのに適した第2の訓練データを出力する。熱分析測定曲線は、サンプル内に存在する熱効果を特定することを可能にする。第2のデータは、例えば、測定曲線のx値及びy値のデータ点のペア(x,y)を含むことができる。
【0088】
ステップS13において、ヒューマンエキスパートが、熱分析測定曲線内に存在する熱効果を特定する。例えば、第1のソフトウェアモジュールを用いて取得された熱分析測定曲線は、表示手段上に表示されてもよい。ヒューマンエキスパートは、測定曲線内に反映された熱効果のロケーション及びタイプを特定することができる。このようにして、上記熱効果を表しており、例えば、測定曲線内に反映された熱効果のタイプ及びロケーションを含む第3の訓練データが取得されてもよい。
【0089】
ステップ14において、おもりを伴うリンクによって接続された少なくとも入力ニューロンの入力層と出力ニューロンの出力層とを含むブランクニューラルネットワークが提供される。ニューラルネットワークはさらに、入力層と出力層との間に連続して配置された1つ又は複数の、ニューロンの中間層を含んでもよい。入力層は、第2のデータを入力として受け入れ、第3のデータを出力する。
【0090】
ステップS15において、ブランクニューラルネットワークは、第2及び第3の訓練データを含むエキスパート訓練データを用いて訓練される。この目的のため、ニューラルネットワークのおもりは、何らかの初期値に設定される。次いで、第2の訓練データは、ニューラルネットワークの入力層に提供され、第3のデータがニューラルネットワークの出力層で取得される。第3のデータは第3の訓練データと比較され、おもりは、第3のデータが第3の訓練データと本質的に等しくなるまで調整される。従来技術で知られるように、おもりを調整するため、勾配最適化方法が使用されてもよい。このようにして、訓練されたニューラルネットワークを発生させる。
【0091】
ステップS16において、訓練されたニューラルネットワークは、人工知能エンジンを含む第2のソフトウェアモジュールに配備される。第2のソフトウェアモジュールは、本発明による方法、システム、及びコンピュータプログラムのために使用されてもよい。
図1
図2
図3a
図3b
図4
【国際調査報告】