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特表2025-503587資産価格を視覚化し、取引パラメータを定義する情報密度の高いユーザインターフェース
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】資産価格を視覚化し、取引パラメータを定義する情報密度の高いユーザインターフェース
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/06 20120101AFI20250128BHJP
   G06Q 40/04 20120101ALI20250128BHJP
【FI】
G06Q40/06
G06Q40/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540683
(86)(22)【出願日】2023-01-04
(85)【翻訳文提出日】2024-08-29
(86)【国際出願番号】 IB2023050062
(87)【国際公開番号】W WO2023131879
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】63/296,413
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/092,863
(32)【優先日】2023-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517309766
【氏名又は名称】ゴールドマン サックス アンド カンパニー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エム.チャーチマン
【テーマコード(参考)】
5L040
【Fターム(参考)】
5L040BB57
(57)【要約】
様々なユーザインターフェースが開示される。ポーリングユーザインターフェースは、ユーザが資産価格を予測することを可能にする。価格予測ユーザインターフェースは、資産の過去の価格データを、その資産の価格予測の対応する分布のインジケーション(例えば、ポーリングユーザインターフェースを介してユーザによって提供されるもの)に重ねて表示する。デリバティブ定義ユーザインターフェースを使用すると、ユーザは1つ以上の資産に関連するデリバティブ取引のパラメータを定義できる。デリバティブ定義ユーザインターフェースでは、ユーザが取引の実行を要求することもできる(例えば、取引パラメータを取引プラットフォームに送信するなど)。注文配置ユーザインターフェースにより、ユーザはデリバティブの注文を定義して配置できるようになる。注文配置ユーザインターフェースは、注文のプロセスに関するイントラトレード更新(例えば、実行された約定や価格アクションの通知など)も提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報密度の高いユーザインターフェースにおいてデリバティブのパラメータを定義する方法であって、
前記情報密度の高いユーザインターフェースの表示を提供することであって、前記情報密度の高いユーザインターフェースは、履歴データ部分及びパラメータ定義部分を含み、前記履歴データ部分は、前記デリバティブについての履歴価格データを表し、前記パラメータ定義部分は、前記デリバティブのパラメータのデフォルト値を示すために配置された前記パラメータの視覚的表現を含む、ことと、
前記パラメータの第1のパラメータに対応する前記視覚的表現の第1の視覚的表現を初期位置から更新された位置に移動させるユーザ入力を受信することであって、前記初期位置は、前記第1のパラメータのデフォルト値を示し、前記更新された位置は、前記第1のパラメータの更新された値を示す、ことと、
前記第1のパラメータの更新された値を使用して、前記デリバティブの1つ以上の追加パラメータの更新された値を決定することと、
前記デリバティブの1つ以上の追加パラメータの更新された値を含むように前記情報密度の高いユーザインターフェースを更新することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記パラメータ定義部分は、前記デリバティブの対応する将来価格に基づいて、将来時点での前記デリバティブの予想利益または損失を示す輪郭のセットをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記第1の視覚的表現は、実質的に水平な線を含み、前記第1のパラメータは、前記デリバティブに関連付けられる価格であり、前記第1の視覚的表現を移動することは、前記実質的に水平な線を、前記価格の第1の値に対応する第1のy座標から、前記価格の第2の値に対応する第2のy座標に移動することを含む、請求項1または請求項2の方法。
【請求項4】
前記デリバティブに関連付けられる価格は、プット価格、スポット価格、上位ノックアウト価格、下位ノックアウト価格、またはストライク価格のうちの1つである、請求項3の方法。
【請求項5】
前記第1の視覚的表現は、実質的に垂直な線を含み、前記第1のパラメータは、前記デリバティブに関連付けられる時間であり、前記第1の視覚的表現を移動することは、前記実質的に垂直な線を、第1の時間に対応する第1のx座標から第2の時間に対応する第2のx座標に移動することを含む、請求項1乃至4のいずれか一項の方法。
【請求項6】
前記デリバティブに関連付けられる時間は、有効期限、下位ノックアウト価格の開始時間、前記下位ノックアウト価格の終了時間、上位ノックアウト価格の開始時間、または上位ノックアウト価格の終了時間のうちの1つである、請求項5の方法。
【請求項7】
デリバティブのタイプを示すユーザ入力を受信することと、
前記デリバティブのタイプについての事前計算された価格データをデータストアから検索することであって、前記情報密度の高いユーザインターフェースは、前記事前計算された価格データから決定された前記デリバティブについての初期価格を含む、請求項1乃至6のいずれか一項の方法。
【請求項8】
前記デリバティブの更新された価格を決定することは、前記事前計算された価格データから前記更新された価格を補間することを含む、請求項7の方法。
【請求項9】
前記デリバティブを実装するために1つ以上の注文を行うことをさらに含む、請求項1乃至8のいずれか一項の方法。
【請求項10】
ユーザが、前記情報密度の高いユーザインターフェースにおいて前記追加パラメータのロックされたパラメータの値をロックするロックコントロールを選択したことを示すインジケーションを受信することであって、前記デリバティブの1つ以上の追加パラメータの更新された値を決定することは、前記ロックされたパラメータの値を変更せずに、前記追加パラメータの他のパラメータについて更新された値を計算することを含む、請求項1乃至9のいずれか一項の方法。
【請求項11】
前記ロックされたパラメータは、前記デリバティブを取得するためのコストである、請求項10の方法。
【請求項12】
情報密度の高いユーザインターフェースを使用してデリバティブを実装する方法であって、
前記情報密度の高いユーザインターフェースの表示を提供することであって、前記情報密度の高いユーザインターフェースは、パラメータ定義部分及び1つ以上の約定方法を開始するための1つ以上のコントロールを含み、前記パラメータ定義部分は、前記デリバティブのパラメータの値を定義する、ユーザ入力に応じて移動可能な前記デリバティブのパラメータの視覚的表現を含む、ことと、
前記1つ以上のコントロールを介して、前記1つ以上の約定方法のうちの選択された約定方法の開始を要求するユーザ入力を受信することと、
前記選択された約定方法を実行するために1つ以上の注文を取引プラットフォームに送信することと、
を含む方法。
【請求項13】
前記ユーザインターフェースは、前記デリバティブについての履歴価格データを表す履歴データ部分をさらに含む、請求項12の方法。
【請求項14】
前記パラメータ定義部分は、前記デリバティブの価格が将来の対応する範囲にある確率を示す輪郭のセットをさらに含む、請求項12または請求項13の方法。
【請求項15】
第1の視覚的表現は、実質的に水平な線を含み、第1のパラメータは、前記デリバティブに関連付けられる価格であり、前記第1の視覚的表現を移動することは、前記実質的に水平な線を、第1の価格に対応する第1のy座標から、第2の価格に対応する第2のy座標に移動することを含む、請求項12乃至14のいずれか一項の方法。
【請求項16】
前記デリバティブに関連付けられる価格は、プット価格、スポット価格、上位ノックアウト価格、下位ノックアウト価格、またはストライク価格のうちの1つである、請求項15の方法。
【請求項17】
第1の視覚的表現は、実質的に垂直な線を含み、第1のパラメータは、前記デリバティブに関連付けられる時間であり、前記第1の視覚的表現を移動することは、前記実質的に垂直な線を、第1の時間に対応する第1のx座標から第2の時間に対応する第2のx座標に移動することを含む、請求項12乃至14のいずれか一項の方法。
【請求項18】
前記デリバティブに関連付けられる時間は、有効期限、下位ノックアウト価格の開始時間、前記下位ノックアウト価格の終了時間、上位ノックアウト価格の開始時間、または上位ノックアウト価格の終了時間のうちの1つである、請求項17の方法。
【請求項19】
前記ユーザインターフェースは、前記1つ以上の注文の進行状況を示すイントラトレード部分を含む、請求項12乃至18のいずれか一項の方法。
【請求項20】
前記イントラトレード部分は、実行された約定または価格アクションの1つ以上の視覚的なインジケーションを含む、請求項19の方法。
【請求項21】
前記視覚的なインジケーションは、約定アクションが発生した時間に対応するx軸上の位置、および前記約定アクションが実行された価格に対応するy軸上の位置に配置された幾何学的形状を含む、請求項20の方法。
【請求項22】
資産の履歴価格データ及び価格予測分布を備えた情報密度の高いユーザインターフェースを生成する方法であって、
前記資産の履歴価格データを検索することと、
前記資産の履歴パフォーマンス予測を検索することと、
前記資産の将来のパフォーマンスの予測を提供するように一連のユーザをポーリングすることと、
前記資産の将来のパフォーマンスの予測を前記一連のユーザの少なくとも一部から受信することと、
前記情報密度の高いユーザインターフェースの表示を提供することであって、前記情報密度の高いユーザインターフェースは、前記履歴パフォーマンス予測の第1の分布のインジケーション及び受信した前記資産の将来のパフォーマンスの予測の第2の分布のインジケーションと重ねられた前記資産の経時的な履歴価格の視覚的表現を含む、ことと、
を含む方法。
【請求項23】
前記履歴パフォーマンス予測の第1の分布のインジケーションは、幾何学的形状のセットを含み、それぞれの幾何学的形状は、対応する価格範囲に従って配置され、資産価格が対応する価格範囲内にあると予測したユーザの数に対応する視覚的プロパティを有する、請求項22の方法。
【請求項24】
それぞれの幾何学的形状は、時間範囲を示すx軸の位置と価格予測を示すy軸の位置を有し、視覚的なプロパティは、シェーディングの強度である、請求項23の方法。
【請求項25】
受信した前記資産の将来のパフォーマンスの予測の第2の分布のインジケーションは、幾何学的形状のセットを含み、それぞれの幾何学的形状は、対応する価格範囲に従って配置され、資産価格が対応する価格範囲内にあると予測したユーザの数に対応する視覚的プロパティを有する、請求項22乃至24のいずれか一項の方法。
【請求項26】
それぞれの幾何学的形状は、価格予測を示すy軸の位置を有し、視覚的なプロパティは、シェーディングの強度である、請求項25の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明される主題は、一般に、ユーザインターフェースに関し、特に、多数のシナリオに基づいた計算を使用して資産価格データを視覚化し、並びにトランザクションのパラメータを監視し、及び定義する情報密度の高いユーザインターフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の資産の価格が時間の経過とともにどのように変化するかをうまく予測することは、非常に収益性が高い場合がある。逆に、資産価格の不正確な予測に頼っているトレーダは、投資金の全てまたはかなりの割合を失う場合がある。しかし、多くの資産の価格は多くの要因によって左右され、予測の精度と信頼性は大きく異なる。既存のシステムの中には、トレーダに価格予測へのアクセスを提供するものもあるが、予測を表示するだけでは、予測を評価したり、それらの予測の歴史的背景を理解したりすることが困難になる。
【0003】
資産のデリバティブを取得することの潜在的な結果を理解することは、おそらくさらに複雑な問題である。デリバティブは、プット価格、スポット価格、上位ノックアウト価格及び対応する時間枠(例えば、開始時間及び終了時間)、下位ノックアウト価格及び対応する時間枠(例えば、開始時間及び終了時間)、ストライク価格、有効期限などの複数のパラメータで定義することができる。これらのパラメータの特定の値は、デリバティブの価格だけでなく、潜在的な損益シナリオの世界をもたらす。既存のシステムは、トレーダがシナリオの世界を理解したり、それらのシナリオを歴史的な文脈に置いたりすることを非常に困難にする。通常、関連する情報は、利用可能であれば、複数のスプレッドシート、アプリケーション、及びデータベースに分散され、トレーダはデリバティブ取引のリスクと報酬のバランスを理解するために切り替えて解釈する必要がある。従って、そのようなシステムを効果的に使用するには、多くのスキルと経験(従ってトレーニング時間)が必要であり、効果的に使用されても、トレーダがスプレッドシート内の異なるデータ間の相関関係を正しく描画しないことに起因するヒューマンエラーの傾向が高い。
【0004】
従って、そのようなシステムを効果的に使用するには、多くのスキルと経験(従ってトレーニング時間)が必要であり、効果的に使用されても、トレーダがスプレッドシート内の異なるデータ間の相関関係を正しく描画しないことに起因するヒューマンエラーの傾向が高い。これにより、既存のシステムの問題がさらに強調される。単一の小さな画面上で複数のスプレッドシートで大規模なデータセットをナビゲートすると、トレーダをイライラさせる可能性があり、重要な相関関係が見逃されるリスクも高まる。これらの小さな画面は、情報及びユーザコントロールを提示するために利用可能な画面スペースの量が限られているため、ユーザインターフェースにも制限を課している。
【発明の概要】
【0005】
上記及び他の問題は、情報密度の高いユーザインターフェースを有するコンピューティングシステムによって対処され得る。様々な実施形態では、ユーザインターフェースは、履歴データ部分及びパラメータ定義部分を含む。履歴データ部分は、1つ以上の資産の価格に関連する履歴データを視覚化する一方で、パラメータ定義部分は、ユーザが1つ以上の資産のデリバティブのパラメータを定義することを可能にする。履歴データ部分、パラメータ定義部分、またはその両方は、資産または定義されたデリバティブに関する追加情報を提供する1つまたは複数のオーバーレイ/アンダーレイを含み得る。従って、ユーザインターフェースは、単一の(潜在的に小さい)画面上に大量の情報を同時に提示することができ、ユーザがデリバティブのコンテキスト及びデリバティブに対するパラメータ変化の潜在的な影響を迅速かつ直感的に理解することを可能にする。
【0006】
いくつかの実施形態では、ユーザインターフェースは、定義された資産またはデリバティブに対してユーザが注文することを可能にするプレトレードビュー内のコントロールを含む。注文は、実装される取引プラットフォームに送信され得る。実装中、ユーザインターフェースは、発注された注文の実装に関する実質的にリアルタイムの情報を表示するイントラトレードビューに遷移し得る。例えば、注文が進むにつれて、実行された約定及び価格アクション(executed fills and price actions)を説明する情報(例えば、ビジュアルインジケータ)がユーザインターフェースに追加されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る、情報密度の高いユーザインターフェースを有する取引アプリを提供するのに適したネットワーク化コンピューティング環境のブロック図を示す。
図2】一実施形態に係る、図1に示される分析サーバのブロック図である。
図3】一実施形態に係る、図1に示されるクライアントデバイスの1つのブロック図である。
図4A】資産の履歴価格データと他のユーザによって提供された価格予測の分布を重ね合わせる情報密度の高いユーザインターフェースの第1の実施形態を示す。
図4B】資産の履歴価格データと価格予測分布を重ね合わせた情報密度の高いユーザインターフェースの第2の実施形態を示す。
図4C】一実施形態に係る、ユーザが価格予測を入力できるようにする例示的な情報密度の高いユーザインターフェースの第1の部分を示す。
図4D】一実施形態に係る、図4Cの例示的な情報密度の高いユーザインターフェースの第2の部分を示す。
図5A】一実施形態に係る、バニラプット取引のパラメータを設定するために使用される情報密度の高いユーザインターフェースの例を示す。
図5B】一実施形態に係る、コールスプレッド取引のパラメータを設定するために使用される情報密度の高いユーザインターフェースを示す。
図5C】一実施形態に係る、1x2x1コールフライ取引のパラメータを設定するために使用される情報密度の高いユーザインターフェースを示す。
図5D】一実施形態に係る、コールリバースノックアウト(RKO)取引のパラメータを設定するために使用される情報密度の高いユーザインターフェースを示す。
図5E】一実施形態に係る、コールウィンドウノックアウト(WKO)取引のパラメータを設定するために使用される情報密度の高いユーザインターフェースを示す。
図5F】一実施形態に係る、複数の基礎資産を使用して取引のパラメータを設定するために使用される情報密度の高いユーザインターフェースを示す。
図6A】一実施形態に係る、プット取引の可能な結果を示す輪郭を含む情報密度の高いユーザインターフェースのスマートフォンバージョンを示す。
図6B】一実施形態に係る、プットスプレッド取引の可能な結果を示す輪郭を備えた情報密度の高いユーザインターフェースのスマートフォンバージョンを示す。
図6C】一実施形態に係る、WKO取引の可能な結果を示す輪郭を備えた情報密度の高いユーザインターフェースのスマートフォンバージョンを示す。
図7A】一実施形態に係る、デリバティブの注文を行う前に、その注文を行うための情報密度の高いユーザインターフェースを示す。
図7B】一実施形態に係る、ポップアップメニューを使用して図7Aの情報密度の高いユーザインターフェースをカスタマイズする様子を示す。
図7C】一実施形態に係る、注文が行われた後の図7Aの情報密度の高いユーザインターフェースを示す。
図8図5Aから図7Cの情報密度の高いユーザインターフェースに示されるデータの一部を含むスプレッドシートの一部を示す。
図9】一実施形態に係る、資産の履歴価格データに価格予測分布を重ね合わせた情報密度の高いユーザインターフェースを生成する方法のフローチャートである。
図10】一実施形態に係る、情報密度の高いユーザインターフェースを使用して取引のパラメータを更新する方法のフローチャートである。
図11】一実施形態に係る、情報密度の高いユーザインターフェースを使用してデリバティブを実行するために1つ以上の注文を出し、注文の進行状況に関するイントラトレード更新を受信する方法のフローチャートである。
図12】一実施形態に係る、図1のネットワーク化コンピューティング環境で用いるのに適した例示的なコンピュータのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面及び以下の説明は、例示のみを目的として特定の実施形態を説明する。当業者は、以下の説明から、説明された原理から逸脱することなく、構造及び方法の代替実施形態を採用することができることを容易に認識するであろう。実行可能な限り、類似または同様の機能を示すために、類似または同様の参照番号が、図で使用される。要素が共通の数字を共有し、その後に別の文字が続く場合、これは要素が類似または同様であることを示す。文脈が別段の指示をしない限り、数字単独への言及は、一般に、そのような要素のいずれか1つまたはいずれかの組み合わせを指す。
【0009】
システムの例
図1は、情報密度の高いユーザインターフェースを有する取引アプリを提供するのに適したネットワーク化コンピューティング環境100の一実施形態を示す。示される実施形態では、ネットワーク化コンピューティング環境100は、分析サーバ110、マーケットデータデータストア130、1つ以上のクライアントデバイス140A、140B、…、140N、及び取引プラットフォーム150を含み、これらは全てネットワーク170を介して接続される。他の実施形態では、ネットワーク化コンピューティング環境100は、異なる要素及び/または追加要素を含む。さらに、機能は、説明とは異なる方法で要素間に分散され得る。
【0010】
分析サーバ110は、情報密度の高いユーザインターフェースを駆動するメトリクスを取得するためにマーケットデータを分析する1つまたは複数のコンピューティングデバイスを含む。一実施形態では、分析サーバ110によって使用されるメトリクスは、1つ以上の期間にわたる1つ以上の資産の履歴価格データを含む。例えば、分析サーバ110は、関心のある領域(例えば、先月、過去半年間、昨年、過去5年間など)にわたる各日、週、または他の期間の資産の最小価格、最大価格、開始価格及び終了価格を取得し得る。各期間中の中央値または平均価格など、他の関心のあるメトリクスが計算され得る。分析サーバ110はまた、将来の期間(例えば、翌日または翌週)の少なくともいくつかの資産の価格の予測のためにユーザのセット(例えば、トレーダまたは金融アナリスト)を定期的にポーリングし、ユーザインターフェースに表示するために予測を集約することができる。さらに、分析サーバ110は、様々な異なるパラメータを使用して1つまたは複数のデリバティブの価格設定を事前に計算し、ユーザが所望のデリバティブを取得することを可能にし得る。事前計算は、複数の金融商品の価格を決定することと、異なるシナリオにおける各商品の様々な統計的尺度(例えば、支払比率、感応度/ギリシャ指標の進化(evolution of sensitivities/Greeks)など)を計算することとを含むことができる。一実施形態では、分析サーバ110は、パラメータ値のセットを使用して価格設定及び統計的尺度を計算し、補間ルーチンを使用して、実質的にリアルタイムでパラメータ値から直接計算されるよりも高い情報密度を有する価格設定及び統計的尺度を提供する。分析サーバ110の様々な実施形態は、図2を参照して以下でより詳細に説明される。
【0011】
マーケットデータデータストア130は、資産価格を含むマーケットデータを格納する1つ以上のコンピュータ可読媒体を含む。マーケットデータデータストア130は、別個のエンティティとして示されるが、マーケットデータデータストアは、分析サーバ110の一部であってもよい。さらに、マーケットデータデータストア130は単一のエンティティとして示されているが、説明された機能は、(例えば、分散データベースとして)一緒に動作する複数のデバイスによって提供され得る。一実施形態では、マーケットデータは、分析サーバ110によって追跡される1つまたは複数の資産を含む1つまたは複数の取引所で行われる各取引に関する情報を含む。取引に関する情報は、取引された1つまたは複数の資産、価格、取引がいつ発生したかを示すタイムスタンプ、及びボラティリティ曲面及び割引曲線などの導出データを含み得る。取引に関する情報は、買い手の識別子、売り手の識別子、取引が発生した取引プラットフォームまたは取引所の識別子などの追加データを含み得る。マーケットデータデータストア130は、定期的なバッチ(例えば、1時間に1回または1日に1回)で(例えば、取引所または取引プラットフォーム150のコンピューティングシステムから)マーケットデータを受信することができる。追加的または代替的に、マーケットデータは、1つまたは複数の連続的または半連続的なデータストリームで受信されることができる。
【0012】
クライアントデバイス140は、分析サーバ110と対話するように構成された任意のコンピューティングデバイスであり得る。図1は、3つのクライアントデバイス140(第1のクライアントデバイス140A、第2のクライアントデバイス140B、及びN番目のクライアントデバイス140N)を示すが、ネットワーク化されたコンピューティング環境は、任意の数のそのようなデバイスを含むことができる。クライアントデバイス140は、分析サーバ110によって生成された資産に関する情報を表示するための1つ以上のユーザインターフェースを提示する。様々な実施形態では、クライアントデバイス140は、ポーリングユーザインターフェース、価格予測分布ユーザインターフェース、デリバティブ定義ユーザインターフェース、または注文配置ユーザインターフェースのうちの1つ以上を提供する。
【0013】
ポーリングユーザインターフェースは、資産価格を予測するために指定されたユーザのサブセットに関連付けられたクライアントデバイスに提供され、それらのユーザに、今後の期間(例えば、翌日または翌週)の1つまたは複数の資産価格を予測するように促す。価格予測ユーザインターフェースは、(例えば、ポーリングユーザインターフェースを介してユーザによって提供されるように)資産の価格予測の対応する分布の表示にオーバーレイされた資産の履歴価格データを表示する。デリバティブ定義ユーザインターフェースは、ユーザが、1つまたは複数の資産に関連するデリバティブ取引のパラメータを定義することを可能にする。デリバティブ定義ユーザインターフェースはまた、ユーザが(例えば、取引パラメータを取引プラットフォーム150に送信することによって)取引の実行を要求することを可能にし得る。あるいは、注文配置ユーザインターフェースは、ユーザがデリバティブの注文を定義して配置することを可能にし得る。注文配置ユーザインターフェースはまた、注文のプロセスに関するイントラトレード更新(例えば、実行された約定及び価格アクションの通知)を提供し得る。クライアントデバイス140及びユーザインターフェースの様々な実施形態は、図3から図7Cを参照して、以下でより詳細に説明される。
【0014】
取引プラットフォーム150は、定義された取引を実行するために(例えば、クライアントデバイス140から直接または分析サーバ110を介して)取引パラメータを受信する1つまたは複数のコンピューティングデバイスを含む。例えば、トレーダは、クライアントデバイス140上に表示されるユーザインターフェースを使用して、EURUSDプット、RKO、またはWKOなどのパラメータを定義し、ユーザインターフェース内のコントロールを使用して、取引が実行されることを要求することができる。取引プラットフォーム150は、クライアントデバイス140から要求(定義されたパラメータを含む)を受信し、要求されたデリバティブを取得することができる。取引プラットフォームは、進捗状況または注文ステータスに関する他のメタデータ(例えば、実行された約定、時間制限、及び価格アクションの通知)を示す更新をクライアントデバイス140または分析サーバ110に提供することができる。
【0015】
ネットワーク170は、ネットワーク化コンピューティング環境100の他の要素が通信する通信チャネルを提供する。ネットワーク170は、有線及び/または無線通信システムを使用して、ローカルエリア及び/またはワイドエリアネットワークの任意の組み合わせを含むことができる。一実施形態では、ネットワーク170は、標準的な通信技術及び/またはプロトコルを使用する。例えば、ネットワーク170は、イーサネット、802.11、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、3G、4G、CDMA(code division multiple access)、DSL(digital subscriber line)などの技術を使用した通信リンクを含むことができる。ネットワーク170を介して通信するために使用されるネットワークプロトコルの例には、MPLS(multiprotocol label switching)、TCP/IP(transmission control protocol/Internet protocol)、HTTP(hypertext transport protocol)、SMTP(simple mail transfer protocol)及びFTP(file transfer protocol)が含まれる。ネットワーク170を介して交換されたデータは、HTML(hypertext markup language)またはXML(extensible markup language)などの任意の適切なフォーマットを使用して表され得る。いくつかの実施形態では、ネットワーク170の通信リンクの一部または全ては、1つ以上の任意の適切な技術を使用して暗号化されてもよい。
【0016】
図2は、分析サーバ110の一実施形態を示す。示される実施形態では、分析サーバ110は、取り込みモジュール210、ポーリングモジュール220、取引インターフェースモジュール230、価格設定モジュール240、実装モジュール250、及び分析データストア260を含む。他の実施形態では、分析サーバ110は、異なるまたは追加の要素を含む。さらに、機能は、説明とは異なる方法で要素間に分配され得る。
【0017】
取り込みモジュール210は、(例えば、マーケットデータデータストア130から)1つ以上の資産に関するデータを取得する。取り込みモジュール210は、資産価格のローデータ、価格のローデータから計算されたメトリクス(例えば、最大価格、最小価格、開始価格、及び終了価格)、またはその両方を取得することができる。価格のローデータが取得される場合、取り込みモジュール210は、メトリクスの一部または全てを計算することができる。さらに、取り込みモジュール210は、外部ソースから取得されたメトリクスを使用して追加の二次メトリクスを作成し得る。例えば、取り込みモジュール210がマーケットデータデータストア130から日平均価格を取得する場合、取り込みモジュール210は、日平均価格から週平均価格及び月平均価格を計算することができる。取り込みモジュール210は、(例えば、分析データストア260内に)取得されたデータ及び任意の計算されたメトリクスのローカルコピーを格納することができる。
【0018】
ポーリングモジュール220は、価格予測分布を有する資産の履歴価格データをオーバーレイするユーザインターフェースを生成する。様々な実施形態では、ポーリングモジュール220は、今後の期間における1つ以上の資産の価格の予測を周期的に受信する。例えば、ポーリングモジュール220は、関心のある1つ以上の資産の価格の予測を提供するように指定されたユーザに属するクライアントデバイス140のセットを識別することができる。同じユーザは、関心のある資産の全てについて予測を提供するように促されてもよく、または異なるユーザは、異なる資産ついて促されてもよい。ユーザは、前の期間または複数の前の期間について最も正確な予測を提供したユーザのリーダーボードを提供するなど、ゲーミフィケーション技術を使用して予測を提供するように動機付けられ得る(例えば、より最近の期間は、それより過去の期間よりも重み付けされる)。さらに、いくつかの実施形態では、価格予測分布に対するユーザによって提供される予測の寄与は、それらの以前の予測の精度に基づいて重み付けされ得る。
【0019】
一実施形態では、ポーリングモジュール220は、セット内のクライアントデバイス140に要求を送信し、クライアントデバイス140が、ユーザに、今後の期間の対象となる資産のうちの1つ以上の資産の価格の予測を提供するように促す。ユーザは、予測を入力するために様々なユーザインターフェース及びアプローチを使用することができる。一実施形態では、ユーザは、クライアントデバイス上で実行されているアプリ内で、自分の予測を提出するようにプロンプトされ、予測を入力するための対応するインターフェースが提供される。例えば、ユーザは、対応するスライダのセットをウィンドウに配置するか、またはそれらをフォームに入力することによって、資産のセットの価格推定値を入力することができる。あるいは、ポーリングモジュール220は、電子メールまたはインスタントメッセンジャーなどの他のチャネルを介して要求を送信することができる。ユーザは、今後の期間の価格を推定するのを助けるために、前の期間における資産の価格を示すチャート(例えば、先週、先月、ここ6ヶ月、または昨年などの資産の毎日または毎週の最小価格、最大価格、開始価格、及び終了価格を示すロウソク足チャート)を示され得る。別の実施形態では、クライアントデバイス140上で動作するソフトウェアは、ユーザに予測を提供するように促し、ポーリングモジュール220は、提出された予測を受動的に受信する。
【0020】
資産についての予測がどのように取得されるかにかかわらず、ポーリングモジュール220は、予測を集約して、対応する期間における資産の予想価格の分布を生成する。一実施形態では、ポーリングモジュール220は、予想される価格及び履歴デバイスデータの分布からユーザインターフェイスデータを決定する。ユーザインターフェイスデータは、価格予測ユーザインターフェースを駆動するために、1つまたは複数のクライアントデバイス140に提供されることができる。図4A図4Cは、ポーリングモジュール220によって生成されたデータによって駆動され得る例示的な価格予測ユーザインターフェースを示す。
【0021】
図4Aに示される実施形態では、価格予測ユーザインターフェースは、一連の期間の最小価格、最大価格、開始価格、及び終了価格を示すローソク足チャートに履歴価格メトリックを表示する。折れ線グラフ、マウスオーバーまたはクリックによってトリガーされるポップアップ、及びオーバーレイ/アンダーレイなど、履歴価格メトリックを表示するための他のアプローチが使用され得る。ユーザは、価格メトリックが表示される時間範囲を選択することができ、時間期間はそれに応じて動的に調整されることができる。例えば、時間範囲が1ヶ月以下である場合、日足価格メトリックが表示されてもよく、表示される時間範囲が1ヶ月~1年の間である場合、週足価格メトリックが表示されてもよく、時間範囲が1年を超える場合、月足価格メトリックが表示されてもよい。ユーザは、クライアントデバイス140のタッチスクリーン上のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)への単一またはマルチタッチ入力などの任意の適切なユーザインターフェースを使用して時間範囲を選択することができる。ローソク足の視覚的側面(図4Aの場合、ローソク足の本体が黒色または白色で満たされているかどうか)は、その期間中に価格が上昇または下降したかどうかを示すことができる。他の実施形態では、履歴メトリックは、様々な補間スキームを有する折れ線グラフなどの異なるフォーマットで表示される。
【0022】
価格予測の過去の分布は、アンダーレイまたはオーバーレイとしてユーザインターフェースに表されることができる。図4Aにおいて、分布は、各週の異なる価格でのシェーディングの強度によって示される。9月17日から始まる1週間、大多数のユーザは、価格がレンジバウンド(一定の値幅を上下し続けること)のままであると考えており、実際にレンジバウンドのままであった(その週の資産の実際の価格の周りに強いシェーディングがあることが示されている)。翌週、大多数のユーザは、価格がほぼ同じ水準にとどまるか、少し上がると考えていたが、実際には価格は大幅に下落した。10月1日から始まる週に、大多数のユーザは、価格が反発すると考えていたが、そうではなかった。翌週、ユーザの間では価格がさらに下落するか、反発するかの予想がほぼ均等に分かれた。今週の実際の価格データはまだ入手できないため、チャートには示されていない。従って、チャートは、価格がどのように変化しているか、他のユーザが何が起こる可能性があると考えているか、及び最近の資産に対するユーザ予測の正確さについての洞察をユーザに提供し、これらは全て、現在の期間中に資産を売買するかどうかの選択を通知するのに役立つ。いくつかの実施形態では、ユーザは、追加の洞察を得るために価格予測分布を掘り下げることができてもよい(例えば、価格が反発すると予測するユーザが、価格がさらに下落すると予測するユーザよりも歴史的に正確であったか、または正確でなかったかを確認するために)。
【0023】
過去の価格データの右側には、ユーザが送信した、今週末の価格の予測が表示される場合がある。予測は、価格関数、以前に提出されたユーザ予測、またはその両方の組み合わせを使用してアルゴリズム的に生成され得る。図4Aに示される実施形態では、現在の期間(例えば、今週)の終わりに価格が一連の範囲のそれぞれにある確率は、y軸上の対応する価格の隣のボックスのシェーディング強度によって示される。例えば、最も濃い色のボックスは、最も高い確率で予測された価格を示し、より薄い色のボックスは、より低い可能性の値を示すことができる。ボックスはまた、現在の期間の終了時に価格が対応する値になる可能性の数値(例えば、パーセンテージ)を含むこともできる。
【0024】
図4Bは、価格予測ユーザインターフェースの代替的な実施形態を示す。図4Aに示されるユーザインターフェースによって表示される情報に加えて、本実施形態はまた、他のユーザによってなされた予測の表示を含む。右側のy軸スケールに直接隣接するボックスは、図4Aの右側のボックス及び数字と同様に、現在の期間の終了時における価格の確率を示す。様々な価格の可能性を示すボックスの内側には、他のユーザの予測を示すボックスの第2のセットがある。これらのボックスは、シェーディング、数値、またはその両方を使用して、それぞれの予測を行った他のユーザの数を示すことができる(例えば、数値は、値を選択したユーザのパーセンテージまたは生の数値を示すことができ、シェーディングは、人気のある選択についてはより濃くなり、一般的でない選択についてはそれほど強くなくてもよい)。
【0025】
図4C及び図4Dは、価格予測と予測を行う際のユーザの履歴精度についての情報を含む例示的な価格予測ユーザインターフェースの第1の部分及び第2の部分を示す。図4Cに示される例では、図4Bの価格予測ユーザインターフェースが左側に示され、資産の過去の価格及び現在の期間(例えば、週)の終了時における価格の現在の予測に関する情報をユーザに提供する。価格予測ユーザインターフェースは、ユーザの「称賛(kudos)」のチャートを含み、これは、ユーザの以前の予測がどれほど正確であったかを示すスコアである(例えば、より高い称賛はより正確な履歴予測に対応し、逆もまた同様である)。図4Cに示される要素の一部または全てと併せて(例えば、以下に)表示され得る図4Dでは、ユーザは、資産のセット及びそれらの資産の価格を予測するユーザの過去のパフォーマンスに対応するバーを示される。一実施形態では、ユーザは、特定の資産に対応するバーをクリックしてその資産を選択することができ、図4Cに示されるユーザインターフェースは、選択された資産に関する情報を提供するように更新される。
【0026】
図2に戻って参照すると、取引インターフェースモジュール230は、ユーザがデリバティブを定義することができるユーザインターフェースを駆動するためのデータを生成する。いくつかの具体的な例が説明されているが、ユーザインターフェースは、一般に、幅広いデリバティブに適用可能であり、開示された原理から逸脱することなく、任意のタイプのデリバティブに適合させることができる。一実施形態では、取引インターフェースモジュール230は、ユーザがクライアントデバイス140から定義したいデリバティブのタイプのインジケーションを受信し、ユーザインターフェースを駆動するためのデータを生成/取得する。
【0027】
様々な実施形態では、ユーザインターフェースは、2つの部分、すなわち、履歴データ部分及びパラメータ定義部分を含む。履歴データ部分は、ポーリングモジュール220によって生成されたユーザインターフェースに類似しており、(例えば、ローソク足チャートを使用して)過去の期間のセットのデリバティブの基礎となる資産の価格を示す。このインターフェースを駆動するために、取引インターフェースモジュール230は、(例えば、分析データストア260から)定義されているデリバティブのタイプの基礎となる1つまたは複数の資産の価格データを取得する。パラメータ定義部分は、現在定義されているデリバティブに関する情報を提供し、ユーザがデリバティブの1つまたは複数のパラメータを変更し、変更の効果をほぼ即座に見ることを可能にするコントロールを提供する。取引インターフェースモジュール230は、選択されたタイプのデリバティブに関連する全てのパラメータにデフォルト値を割り当てることができる。デフォルトパラメータは、グローバルデフォルト(そのタイプの全てのデリバティブに対して選択される)、ユーザデフォルト(デリバティブを定義するユーザによって、またはユーザのために選択されたデフォルト値)、同じタイプのデリバティブに使用される最新のパラメータ、または任意の他の適切な技術を使用して選択されるパラメータのいずれかであってよい。例えば、一実施形態では、デフォルトパラメータの一部または全ては、ユーザのプロファイル、ユーザの過去のパラメータ選択、現在の市場状況、市場が暗示する可能性のあるまたは現実的な結果、または前述の要因または他の関連要因の任意の組み合わせを考慮して、可能性のあるパラメータを予測するようにトレーニングされた機械学習モデル(例えば、ニューラルネットワーク)によって選択されることができる。あるいは、初期パラメータ値の一部または全ては、クライアントデバイス140から受信した要求で指定されることができる。例えば、ユーザは、クライアントデバイス140または分析サーバ110上の自然言語処理エンジンによってパラメータを抽出するように処理される自然言語入力を使用してパラメータを指定することができる。
【0028】
取引インターフェースモジュール230は、デリバティブのタイプのインジケーション及び初期パラメータを価格設定モジュール240に渡し、価格設定モジュール240は、初期パラメータを使用してデリバティブの価格を計算する。価格設定モジュール240はまた、パラメータの可能性のある代替値を使用して、デリバティブの価格を事前に計算することができる。パラメータの可能性のある代替値と見なされるものは、一連のルール、機械学習モデル、またはその両方の組み合わせによって決定されることができる。例えば、ルールは、デリバティブの有効期限が現在の日付から整数週数になる可能性が高いが、現在の日付から11日または13日である可能性は低いと予測し得るため、価格設定モジュール240は、有効期限が現在の日付から1週間、2週間、3週間などのデリバティブの価格を計算する。同様に、機械学習モデルは、ユーザの過去の選択、デリバティブの種類、及び現在の市場状況を考慮して、ユーザが選択する可能性が高いパラメータ値を予測するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、価格設定モジュール240はまた、デルタ、ベガ、ガンマ、及びシータ値などのデリバティブの1つまたは複数の他のメトリックを計算し、ゼロコスト構造などのメカニズムを介して用語を解決する能力を提供する。
【0029】
取引インターフェースモジュール230は、価格設定モジュール240によって生成された価格を受信し、それらを、ユーザインターフェースを駆動するために使用される他のデータ(例えば、基礎となる資産の履歴価格データ、パラメータのために選択された任意のデフォルト値など)と共にクライアントデバイス140に提供する。ユーザがユーザインターフェースと対話して1つまたは複数のパラメータの値を修正すると、クライアントデバイス140は、更新された値を取引インターフェースモジュール230に提供することができる。ユーザが、価格がまだ計算されていないパラメータ値を選択する場合、取引インターフェースモジュール230は、更新されたパラメータ値を価格設定モジュール240に提供することができ、価格設定モジュール240は、更新されたパラメータを用いてデリバティブの価格を計算し、クライアントデバイス140に提供する。更新された価格が計算されている間、ユーザインターフェースは、(例えば、価格が既に計算されているパラメータ値からの線形外挿を使用して)推定価格または価格範囲を表示することができ、現在表示されている価格が推定価格であるというインジケーションをユーザに提供することができる。同様に、価格設定モジュール240は、更新されたパラメータ値に基づいてユーザが選択する可能性が高い新しいパラメータ値を予測することができる。例えば、ユーザが有効期限をより遅い日付に徐々に変更している場合、価格設定モジュール240は、最初に計算されたよりも後の有効期限の価格を積極的に計算することができる。
【0030】
実装モジュール250は、取引プラットフォーム150と相互作用して、定義されたデリバティブを実装する。一実施形態では、注文配置ユーザインターフェースは、クライアントデバイス140に表示される。実装モジュール250は、ユーザが所望のデリバティブを定義することを可能にするために、取引インターフェースモジュール230によって提供されるユーザインターフェースと同一または類似の部分を有するユーザインターフェースを提供することができる。所望のデリバティブの実装を要求するコントロール(または複数のコントロール)のユーザ選択に応答して、実装モジュール250は、所望のデリバティブを実装するために1つまたは複数の注文を行うための命令を取引プラットフォームに送信する。いくつかの実施形態では、デリバティブの実装が開始されると、注文配置ユーザインターフェースは、1つまたは複数の注文の進捗状況が実質的にリアルタイムで表示されるイントラトレード構成に移行することができる。
【0031】
クライアントデバイス140及びユーザインターフェースの様々な実施形態は、図3及び図5Aから図7Cを参照して、以下でより詳細に説明される。
【0032】
様々な実施形態では、デリバティブパラメータがユーザの満足のいくように設定されると、ユーザは、ユーザインターフェース内のコントロールを選択して、取引プラットフォーム150へ直接要求する、または取引インターフェースモジュール230に要求を送信し、次に、取引プラットフォーム150に要求を送信することによって、デリバティブを取得することができる。いくつかの実施形態では、取引インターフェースモジュール230は、デリバティブに関連する特定の基準が満たされる場合、(例えば、プッシュ通知、電子メール、またはインスタントメッセージなどを介して)通知をユーザに提供することができる。例えば、RKOまたはWKOデリバティブでは、現在の価格がノックアウト値の予め指定された閾値内にある場合、ユーザに通知が送られ、ユーザは、損失を出して直ちに撤退するか、またはウィンドウの期限が切れる前に価格がノックアウト価格に達しない可能性と引き換えにさらに大きな損失を被るリスクを負って保有するかを決定することができる。別の例として、現在の価格が、初期投資額の3倍または4倍などの予め指定された曲線を超える場合にユーザに通知されてもよく、従って、ユーザは、オプションを直ちに行使してかなり大きな利益を得るか、または待つことによってさらに大きな利益を得る賭けをするかを決定することができる。
【0033】
分析データストア260は、分析サーバ110によって使用されるデータを格納する1つまたは複数のコンピュータ可読媒体を含む。例えば、分析データストア260は、分析サーバ110によって提供される様々なユーザインターフェースを駆動するために使用される履歴価格データ、価格予測、及びデリバティブ価格のコピーを含むことができる。分析データストア260はまた、ユーザの好み(例えば、デフォルトパラメータ)を示すユーザプロファイルデータ、ユーザによって定義されたデリバティブに関する履歴データ、ユーザが価格予測を提供するように指定されている1つまたは複数のデリバティブなど、分析サーバ110が使用する他のデータを含むことができる。分析データストア260は、分析サーバ110内の単一のエンティティとして示されているが、この機能は、複数のデータストアによって提供されることができ、それらの一部または全ては、分析サーバ110から物理的に分離され、ネットワーク170を介してアクセスされることができる。
【0034】
図3は、分析サーバ110と対話するために使用され得るクライアントデバイス140の一実施形態を示す。示される実施形態では、クライアントデバイスは、取引アプリ310及びローカルデータストア320を含む。他の実施形態では、クライアントデバイス140は、異なるまたは追加の要素を含む。さらに、機能は、説明とは異なる方法で要素間に分散され得る。
【0035】
取引アプリ310は、分析サーバ110との対話を可能にするためにクライアントデバイス140上で実行されるソフトウェアである。取引アプリ310は、通信モジュール312及びレンダリングエンジン314を含むことができる。取引アプリ310は、通信モジュール312及びレンダリングエンジン314を含むことができる。レンダリングエンジン314は、クライアントデバイス140に、分析サーバ110によって提供されるデータによって駆動される様々なユーザインターフェースを表示させ、ユーザ要求にサービスを提供するために追加のデータが必要であるかどうかを判定させる。レンダリングエンジン314は、ユーザインターフェースを生成するために、1つ以上のグラフィック処理ユニット(GPU)と対話してもよく、または1つ以上のグラフィック処理ユニット(GPU)によって実行されてもよい。ローカルデータストア320は、クライアントデバイス140によって使用されるデータを格納する1つ以上のコンピュータ可読媒体を含む。例えば、ローカルデータストア320は、分析サーバ110から受信した履歴価格データ及びデリバティブ価格データのキャッシュされたコピーを含むことができる。
【0036】
様々な実施形態では、ユーザは、取引アプリ310を開き、メニューから開始するユーザインターフェースを選択することができる。例えば、ユーザは、ポーリングユーザインターフェースを開始して、ユーザがそのような予測を提供するように指定されている任意の資産の将来の価格の予測を提供することができる。別の例として、ユーザは、価格予測分布ユーザインターフェースを開始して、資産を選択し、履歴価格データ及び価格予測分布(図4に示される例示的なユーザインターフェースなど)を表示することができる。さらなる例として、ユーザは、デリバティブ定義ユーザインターフェースを開始して、デリバティブのオプションを探索し、必要に応じて選択されたパラメータを用いてデリバティブを取得することができる。
【0037】
一実施形態では、ユーザは、ドロップダウンリスト(例えば、お気に入りのリストまたは最近定義されたデリバティブのタイプ)から選択することによって、またはテキストボックスにデリバティブのタイプの可能性のある部分的な定義を入力することによってなど、定義するデリバティブのタイプを選択することによって、デリバティブ定義ユーザインターフェースを開始する。後者の場合、自然言語処理は、ユーザが定義したいデリバティブのタイプを識別するために使用されることができる。関連するデータがクライアントデバイス140においてまだ利用可能ではない(例えば、ローカルデータストア320にキャッシュされていない)と仮定して、通信モジュール312は、1つ以上の基礎となる資産及びデリバティブのタイプを識別する要求を分析サーバ110に送信する。デリバティブ価格設定モジュール240は、最初に、基礎となる1つ以上の資産の履歴価格データ、デフォルトのパラメータセットを使用したデリバティブの価格設定データ、及び任意選択で、ユーザによって選択される可能性が高い1つ以上の追加のパラメータセットの価格設定データを提供する。さらに、価格設定モジュール240は、追加のパラメータセットの価格設定データを生成し続け、それを通信モジュール312に提供することができる。
【0038】
レンダリングエンジン314は、クライアントデバイス140に、選択されたユーザインターフェースを表示させる。デリバティブ定義ユーザインターフェースの場合、分析サーバ110の価格設定モジュール240がユーザが選択する可能性があるパラメータ値を決定する代わりに、レンダリングエンジン314は、(テイラー展開または補間技術などの価格設定モジュール240または近似を参照して上述したものと同じまたは類似の技術を使用して)これらの決定を行い、関連する価格設定データを分析サーバ110に要求することができる。
【0039】
先に説明したように、デリバティブ定義ユーザインターフェースは、履歴価格部分及びパラメータ定義部分を含むことができる。履歴価格部分は、1つ以上の原資産の履歴価格のチャート(例えば、ローソク足チャートや折れ線グラフ)を含む。履歴価格部分はまた、ポーリングモジュール220によって生成される価格予測分布の表現を含むことができる。履歴データ部分は、他の資産の価格、資産の価格に影響を与え得る重要なイベントの発生、または履歴価格データを文脈化するためにユーザに有用であり得る任意の他の情報などの他の情報を伝える追加のオーバーレイ/アンダーレイをさらに含むことができる。オーバーレイ/アンダーレイによって伝えられる情報の例には、非農業部門雇用者数発表、金利会議、企業収益、または他の経済的または資産固有の発表などの重要なマクロ経済イベントの発生;移動平均、相対的強度指数、取引量、顧客セグメント別の活動などを含むテクニカル指標;及び市場暗示確率、アット・ザ・マネー・オプションの価格のパーセンタイルランクなどのデリバティブ価格情報が含まれる。
【0040】
パラメータ定義部分は、対応するスケールまたは軸上の現在のパラメータ値の視覚的表現を提供する。ユーザは、対応する視覚的表現と対話することによって、例えば、表現上で指をクリックまたは指を保持し、異なる位置にドラッグすることによって、パラメータ値を修正することができる。パラメータ定義部分はまた、時間の経過に伴う様々な資産価格の収益率を表す等高線、価格/収益率に影響を与えると予想されるイベントの垂直線(または他のインジケータ)(例えば、金利変更が発表されると予想される日付など)、時間の経過に伴う資産価格の推定確率など、様々な情報を提供するオーバーレイ/アンダーレイを含むことができる。図5A図5Fは、例示的なパラメータ定義ユーザインターフェースを使用して、様々なタイプのデリバティブのパラメータを設定することを示す。
【0041】
図5Aは、EURUSD通貨ペアのバニラプットオプションの定義を示している。左側には、過去6ヶ月間のEURUSDの週ごとの値が示されている。右側では、第1の水平線は資産スポット価格(1.179)を示し、第2の水平線はプットオプションの行使価格(1.190)を示し、第3の水平線は構造の損益分岐点価格(1.197)を示している。垂直線は、プットオプションの有効期限を示している。様々な線は、色、破線パターン、及び太さなどの1つ以上の視覚プロパティの変化を使用して視覚的に区別することができる。例えば、プット価格は、第1の色(例えば、緑色)の実線によって示されてもよく、資産スポット価格は、同じ色または異なる色(例えば、灰色)のより細い線または破線によって示されてもよい。ユーザは、対応する線を上下にドラッグすることによってプット価格を変更することができ、他のパラメータ値は自動的に更新される(例えば、損益分岐点は、追加のユーザ入力なしで自動的に再計算され、対応する線はそれに応じて移動される。
【0042】
示される実施形態では、パラメータ定義部分は、価格及び有効期限の様々な組み合わせについてのドットを表示するオーバーレイを有する。ドットは、色やサイズなど、様々な視覚的属性が異なる。ドットのサイズは、各レベルのバニラプレミアムに対応し得る。ドットの色は、そのオプションが過去の履歴と比較してどれだけ安いかまたは高いかを表すことができる(例えば、EURUSDの3か月、1%otmsコールが過去2年間と比較して5パーセンタイルにある場合は緑色になる)。この場合、資産のスポット価格または先物価格の片側ではドットがもう片側よりも大きくなるため、スキュー(skew)が目に見えることに注意されたい(サーフェスがコールに対して入札されている場合、視覚的に手前に表示される)。
【0043】
図5Bは、EURUSDコールスプレッドのパラメータを定義するためのユーザインターフェースのバージョンを示す。上限及び下限の行使価格は、視覚的に区別され得る(例えば、異なる色で表示される)一対の水平線によって表され、ユーザは両方の線を異なる位置に移動して対応する値を変更することができる。同様に、図5Cは、コールフライを表すために少し複雑さが増し、3本の垂直線が示されており、ユーザはこれを移動して行使価格のそれぞれを設定することができる。図5Aと同様に、図5Bまたは図5Cの垂直線のうちの1つが移動されると、影響を受けるパラメータ値が自動的に更新され、それに応じてUIが更新される。
【0044】
図5D及び図5Eは、それぞれ、コールRKO及びコールWKOのためのユーザインターフェースのバージョンを示す。そして2本の垂直線がある。1つは有効期限を設定し、もう1つはノックアウトウィンドウの終了を設定する。ノックアウト価格を示す1本(RKO)または2本(WKO)の垂直線(この場合は破線)もある。これらの線の全ては、ユーザが自分の好みに合わせてデリバティブを調整するために再配置することができる(影響を受けるパラメータは、以前と同様に自動的に更新される)。これらの例は、ユーザインターフェースのパワーの特に強力な例を提供する。ノックアウト価格及びウィンドウの長さの視覚的表現と併せて原資産の履歴価格データを表示することによって、ユーザは、ウィンドウ中に資産価格がノックアウト価格のうちの1つに到達する可能性をより良く推定することができる。さらに、ユーザは継続的に取引を管理し、必要に応じて取引を再構築することができる。
【0045】
図5Fは、2つの基礎となる資産が存在するユーザインターフェースのバージョンを示す。ユーザは、線を再配置することによって、それぞれの基礎となる資産に関連するパラメータを変更することができ、影響を受けるパラメータ値は、他の例と同様に自動的に更新される。この場合、ユーザインターフェースは、両方の資産の値を表す2次元サーフェスを示す追加の部分を含み、サーフェスの周りを移動する資産のペアの履歴価格をプロットし、より高い不透明度線はより最近の価格水準を示す。従って、ユーザは、過去の価格の勢いに基づいて、資産価格の組み合わせがサーフェスの収益性の高い領域(この場合、右下の象限)にある可能性をよりよく推定することができる。いくつかの実施形態では、ターゲット日に特定の値を有する資産価格の組み合わせの暗黙の確率は、オーバーレイを使用して表示されることができる。
【0046】
追加または代替のオーバーレイ/アンダーレイは、ユーザインターフェースのパラメータ定義部分に含まれることができる。例えば、各個別のボックス(日付及びスポット範囲によって定義される)におけるスポット着地確率のピクセル化されたヒストグラム、配当性向、ギリシャ指標の進化(シータ減衰など)、市場の暗示確率、代替実装のコスト、同等の上場市場の未決済約定、シナリオベースの損益(PnL)(例えば、スポットとボラティリティの株式市場の上昇と下降)、予想されるイベント(例えば、金利変更の発表が予定されている日付や資産価格に影響を与える可能性のあるその他のイベント)など。別の例として、配当輪郭(payout contour)が、パラメータ定義部分にオーバーレイされる場合がある。輪郭は、様々なレベルのスポットと時間の経過に伴うプレミアムの倍数を表す。ユーザがパラメータを変更すると、輪郭が自動的に再計算されて更新されることができる。一実施形態では、更新プロセスの遅延を減らすために、可能性のあるパラメータセットの輪郭が(例えば、分析サーバ110の価格設定モジュール240によって)事前に計算される場合がある。
【0047】
図6A図6Cは、輪郭オーバーレイを含むスマートフォンによって表示される例示的なユーザインターフェースを示す。図6Aにおいて、ユーザインターフェースは、プットを定義するために使用されている。輪郭は、原資産の様々な時期と様々な価格でプットが行使された場合の相対的な投資収益率を示している。利益に対応する輪郭は、1つの色(例えば、緑色)で示されてもよく、損失に対応する輪郭は、異なる色(例えば、赤色)で表示されてもよく、損益分岐点の輪郭は、第3の色(例えば、黄色)で表示されてもよい。従って、ユーザは、有効期限前のある時点で原資産が収益性のある範囲にある可能性、及びプットに関連する損失のリスクの程度を迅速かつ容易に推定することができる。このケースでは、ユーザが原資産の価格の大幅な低下を期待していない限り、プットで大きな利益を上げる可能性は低いようである。
【0048】
図6Bにおいて、ユーザインターフェースは、プットスプレッドを定義するために使用されている。ここでは、収益性の高い原資産の価格範囲が拡大しているが、そのことはユーザインターフェースのより大きな割合を占める緑色の輪郭領域によって示されている。従って、ユーザは、プットオプションとプットスプレッドオプションを直感的に比較することができる。
【0049】
図6Cにおいて、ユーザインターフェースは、コールWKOを定義するために使用されている。輪郭は、ユーザがウィンドウを正常に操作した場合、いつでも行使価格を上回ることで、潜在的に元の投資の何倍もの利益が得られる可能性があることを示している。さらに、ユーザは、ノックアウト値のうちの1つに当たるリスクが十分に低いことにユーザが満足するまで、表示された履歴データを考慮してノックアウト値またはウィンドウの長さを調整することができる。また、ユーザは、ウィンドウを正常に操作した場合、これらの調整が潜在的な配当にどのように影響するかを即座に確認できるため、リスクと報酬の直感的なバランスをとることができる。
【0050】
図6A図6Cに示される実施形態では、ユーザインターフェースはまた、1つ以上のパラメータの値をロックするために使用され得るロックボタンを含む。パラメータがロックされている場合、ユーザが別のパラメータの値を調整すると、ロックされているパラメータの値を維持するために、ユーザがさらなる入力をしなくても、残りのロックされていないパラメータの値も自動的に調整される。例えば、ユーザは、コストのかからないカラー戦略(collar strategy)のために価格をゼロに固定することができる。一方のレグのストライク価格が動くと、他方のストライク価格が自動的に更新されて、コストがゼロに保たれる。
【0051】
図7A図7Cは、例示的な注文配置ユーザインターフェースを示す。示される実施形態では、注文はEURUSDデリバティブに関連するが、示される原理は、広範囲のデリバティブの注文を定義するために使用され得ることを理解されたい。図7Aにおいて、デリバティブの過去の価格データは、ユーザインターフェースの左側に示されている。右側には、スポット価格が時間の経過とともに様々な範囲にある可能性を示す輪郭がオーバーレイとして表示される。このため、ユーザは、異なるパラメータを使用して取引に関連付けられるリスク及び報酬の直感的な推定を迅速に得ることができる。注文配置ユーザインターフェースは、ユーザが1つ以上の約定方法を使用して注文することを可能にするコントロールを含む(図7Aの場合、2つの方法が利用可能である:1つは動的ハイブリッドアルゴリズムを使用し、もう1つはリスク転送アプローチを使用する)。ユーザは、対応するコントロールをクリックするか、またはそうでなければ選択することによって、これらの方法のうちの1つを実行することができる。
【0052】
図7Bは、注文配置ユーザインターフェースが、様々なオーバーレイ及びアンダーレイを含むか、または省略するようにカスタマイズされ得ることを示す。示される例では、ユーザは、Depthオーバーレイと、Paid&Givens及びオーダーブックアンダーレイの両方を含むことを選択している。ユーザインターフェースで利用可能な情報をユーザに提示するために、広範囲のアンダーレイ及びオーバーレイをモジュール方式で定義できることを理解されたい。
【0053】
図7Cは、ユーザが定義されたデリバティブを実装する方法の実行を要求した後の注文配置ユーザインターフェースのイントラトレードモードへの移行を示す。図7Aのように、ユーザインターフェースの左側は、デリバティブの過去の価格データを表示する。ユーザインターフェースの中央部分は、実行が要求されてから価格がどのように変化したかを表示するイントラトレード部分であり、実行された約定と価格アクションの視覚的な表示(indication)を含んでいる。視覚的な表示は、アクションが発生した時間に対応するx軸上の位置及びアクションが実行された価格に対応するy軸上の位置に配置された幾何学的形状(例えば、三角形)であり得る。ユーザインターフェースの右側は、図7Aと同様に、将来のデリバティブの様々な値の予測/推定された可能性を表示し続ける。
【0054】
図8は、図5Aから図7Cのユーザインターフェースが従来のアプローチに比べて優れている点を示している。図8は、WKO及びバニラプットオプションのパラメータを示すスプレッドシートインターフェースの一部を示している。このインターフェースには、ストライク価格とスポット価格、オプションの有効期限、ノックアウトウィンドウの値と有効期限などの基本情報が含まれている。しかしながら、それは、過去の価格データのコンテキスト情報、様々なアンダーレイ及びオーバーレイによって提供される追加情報、または様々な値がどのように相互に関連しているかを直感的に視覚化する機能を完全に欠いている。さらに、スマートフォンの画面上に快適に表示することができる図5A図7Cのユーザインターフェースとは対照的に、スクロールバーを必要とせずに通常のコンピュータモニタに情報を快適に表示することはできない。要するに、開示されたユーザインターフェースは、わずかな画面領域にはるかに大量の情報を直感的に表示できるようにすることで、従来のシステムと比較して大幅に改善されている。
【0055】
例示的な方法
図9は、一実施形態に係る、価格予測分布とオーバーレイされた資産の履歴価格データを有する情報密度の高いユーザインターフェースを生成する方法900を示す。図9のステップは、方法900を実行する分析サーバ110の観点から示されている。しかしながら、ステップの一部または全ては、他のエンティティまたはコンポーネントによって実行され得る。加えて、いくつかの実施形態は、並行してステップを実行してもよく、異なる順序でステップを実行してもよく、または異なるステップを実行してもよい。
【0056】
示される実施形態では、方法900は、分析サーバ110が資産の履歴データを検索することから始まる(910)。履歴データには、1か月、6か月または1年などの期間にわたる資産の価格データが含まれる。時間範囲は、日、週または月などの複数の期間に分割される。履歴データは、時間範囲内の期間の一部または全てにおける資産の最大価格、最小価格、開始価格、及び終了価格を含むことができる。あるいは、履歴データは生の価格であってよく、分析サーバ110は、履歴データを所定の期間に対応するバケットに分割し、各期間の最大価格、最小価格、開始価格、及び終了価格を計算することができる。
【0057】
分析サーバ110は、資産の履歴パフォーマンス予測を検索する(920)。パフォーマンス予測には、ユーザがそれらの期間に先立って行った、その期間の資産価格の予測が含まれる。分析サーバ110はまた、資産の将来のパフォーマンスの予測についてユーザをポーリングする(930)。分析サーバは、(例えば、図4A~4Cに示されるようなローソク足プロットにおいて)過去予測の分布のインジケーションと履歴データをオーバーレイするユーザインタフェースを生成する(940)。ユーザインターフェースは、将来価格の確率分布、将来の値を正しく予測する際のユーザに対する称賛値、ユーザが誤って予測した場合に失われる可能性のある称賛値、他のユーザによってなされた予測の分布、またはユーザにとって有用な情報の任意の他の組み合わせを示すこともできる。分析サーバ110は、(例えば、クライアントデバイス140において)表示のためのユーザインターフェースを提供する(950)。従って、ユーザは、履歴予測を対応する履歴価格と比較し、将来パフォーマンスの予測がどの程度信頼できるかを評価することができる。
【0058】
図10は、一実施形態に係る、情報密度の高いユーザインターフェースを使用して取引のパラメータを更新する方法(1000)を示す。図10のステップは、方法1000を実行する分析サーバ110の観点から示されている。しかしながら、ステップの一部または全ては、他のエンティティまたはコンポーネントによって実行され得る。加えて、いくつかの実施形態は、並行してステップを実行してもよく、異なる順序でステップを実行してもよく、または異なるステップを実行してもよい。
【0059】
示される実施形態では、方法1000は、分析サーバ110が、定義されるデリバティブのタイプを選択するユーザ入力のインジケーションを受信すること(1010)から始まる。ユーザは、ネットワーク170を介して分析サーバ110にその選択を提供するクライアントデバイス140を使用して、デリバティブのタイプを選択してもよい。分析サーバ110は、デリバティブのタイプについて事前計算された価格データを検索する(1020)。事前計算された価格データは、デフォルトパラメータを有する選択されたタイプのデリバティブについてのデータであってよい。デフォルトパラメータは、ハードコードされてもよく、ユーザによってプリファレンスとして提供されてもよく、同じタイプのデリバティブに対してユーザが以前に使用したパラメータであってもよく、または現在の市場状況、ユーザに関する情報、またはその両方に基づくモデル(例えば、機械学習モデル)を使用して決定されてもよい。分析サーバ110は、デフォルトパラメータを有する1つまたは複数のタイプのデリバティブの価格を周期的に(例えば、毎時、毎日など)計算することができる。いくつかの実施形態では、分析サーバ110は、入力されていない任意のパラメータを解決するために、オンザフライでデリバティブの用語及び価格を計算することができる。例えば、ユーザがストライク価格を入力しない場合、分析サーバ110は、それに応じて、アットザマネーのストライク価格及び価格を計算する場合がある。分析サーバ110は、価格、感度、輪郭情報などの全ての関連付けられた価格データを照会または計算することもできる。
【0060】
分析サーバ110は、事前計算された価格データを使用して表示するためのユーザインターフェースを提供する(1030)。ユーザインターフェースは、デフォルトパラメータの視覚的な表現と、価格データから決定された価格とを含むことができる(例えば、図5Aから図6Cに示されるように)。分析サーバ110は、デリバティブのパラメータのうちの1つ以上を更新するユーザ入力のインジケーションを受信する(1040)。例えば、ユーザは、クライアントデバイス140上のユーザインターフェースで価格または有効期限を示す線を移動し、クライアントデバイス140は、更新されたパラメータの値を分析サーバ110に送信することができる。
【0061】
分析サーバ110は、更新されたパラメータを有するデリバティブについて既に事前計算された価格データがあるかどうかを判定する。価格データがない場合、分析サーバ110は、更新されたパラメータを使用して追加価格データを計算する(1050)。分析サーバ110は、更新されたデリバティブ価格を表示するための更新されたユーザインターフェースを提供する(1060)。あるいは、分析サーバ110は、ユーザが選択する可能性が高いパラメータ値について追加の事前計算された価格データをクライアントデバイス140にプロアクティブに提供することができる。従って、クライアントデバイス140は、関連する価格設定データがクライアントデバイス140で既に利用可能であり得るため、ユーザが1つまたは複数のパラメータを更新するときに、追加の価格設定情報を要求しないことができる。
【0062】
このプロセスは反復されることが可能であり、ユーザはパラメータを更新し続け、更新された価格データを受信する。ユーザがデリバティブパラメータに満足すると、ユーザは、(例えば、ユーザインターフェース内のボタンを選択することによって)定義されたデリバティブを取得することを要求し得る(1070)。分析サーバ110は、クライアントデバイス140からデリバティブを取得するユーザの意図のインジケーションを受信し、(例えば、取引プラットフォーム150に注文することによって)デリバティブを取得する(1070)。あるいは、クライアントデバイス140は、取引プラットフォーム150と直接デリバティブの注文を行ってもよい。
【0063】
図11は、一実施形態に係る、情報密度の高いユーザインターフェースを使用してデリバティブを実装するために1つ以上の注文を配置し、注文の進捗に関するイントラトレード更新を受信する方法1100を示す。図11のステップは、方法1100を実行する分析サーバ110の観点から示されている。しかしながら、ステップの一部または全ては、他のエンティティまたはコンポーネントによって実行されてもよい。加えて、いくつかの実施形態は、並行してステップを実行してもよく、異なる順序でステップを実行してもよく、または異なるステップを実行してもよい。
【0064】
示される実施形態では、方法1100は、分析サーバ110がデリバティブのタイプのインジケーション及び対応するパラメータを受信すること(1110)から始まる。例えば、ユーザは、図10を参照して説明したアプローチと同様のアプローチを使用して、所望のデリバティブを定義し、所望のデリバティブの価格データを取得することができる。デリバティブの価格は、ユーザインターフェースに表示され得る(1120)。
【0065】
分析サーバ110は、約定方法を選択するユーザ入力を受信する(1130)。例えば、ユーザは、所望の約定方法を実装するためにボタンをクリックする、またはそうでなければボタンを選択することができる。図7Aに示されるように、ユーザインターフェースは、複数の可能な約定方法の中から選択するためのボタン(または他のコントロール)を含むことができる。約定方法の選択時に、分析サーバ110は、1つ以上の注文を行うことによって選択された約定方法を実装するために、取引プラットフォーム150に命令を送信する(1140)。ユーザインターフェースは、発注された注文のステータスを表示するように更新され得る(1150)(例えば、図7Cに示されるように、発注された注文の実行された約定及び価格アクションの視覚的インジケータがユーザインターフェースに表示され得る)。注文が完了すると、ユーザインターフェースは、それに応じて更新されて、デリバティブが実行されたことを示し、結果として生じる任意の利益または損失についてユーザを更新することができる。
【0066】
コンピューティングシステムアーキテクチャ
図12は、分析サーバ110、クライアントデバイス140、または取引プラットフォーム150などとしての使用に適した例示的なコンピュータ1200のブロック図である。例示的なコンピュータ1200は、チップセット1204に結合された少なくとも1つのプロセッサ1202を含む。チップセット1204は、メモリコントローラハブ1220及び入力/出力(I/O)コントローラハブ1222を含む。メモリ1206及びグラフィックアダプタ1212は、メモリコントローラハブ1220に結合され、ディスプレイ1218は、グラフィックアダプタ1212に結合される。記憶装置1208、キーボード1210、ポインティングデバイス1214、及びネットワークアダプタ1216は、I/Oコントローラハブ1222に結合される。コンピュータ1200の他の実施形態は、異なるアーキテクチャを有する。
【0067】
図12に示される実施形態では、記憶装置1208は、ハードドライブ、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、DVD、またはソリッドステートメモリデバイスなどの非一時的なコンピュータ可読記憶媒体である。メモリ1206は、プロセッサ1202によって使用される命令及びデータを保持する。ポインティングデバイス1214は、マウス、トラックボール、タッチスクリーンまたは他のタイプのポインティングデバイスであり、キーボード1210(オンスクリーンキーボードであってもよい)と組み合わせて使用され、コンピュータシステム1200にデータを入力することができる。グラフィックアダプタ1212は、画像及び他の情報をディスプレイ1218に表示する。ネットワークアダプタ1216は、コンピュータシステム1200を、ネットワーク170などの1つ以上のコンピュータネットワークに結合する。
【0068】
図1図3のエンティティによって使用されるコンピュータのタイプは、実施形態及びエンティティに必要な処理能力に応じて異なる場合がある。例えば、マーケットデータデータストア130は、記載された機能を提供するために一緒に動作する複数のブレードサーバを含むことができる。さらに、コンピュータは、キーボード1210、グラフィックアダプタ1212、及びディスプレイ1218などの上述のコンポーネントのいくつかを欠くことができる。
【0069】
追加の考慮事項
上記の説明は、ユーザに様々な情報を効率的に提示するための情報密度の高いユーザインターフェースの技術的詳細に焦点を当てている。これは、特定の実施形態が関連する規制要件に準拠してどのように実装されるかに焦点を当てたり、表現したりするものではない。特定の実施形態は、ユーザインターフェースが使用される管轄区域の関連する金融規制及び他の規制を考慮し、それらに準拠する。
【0070】
上記の説明のいくつかの部分は、アルゴリズムプロセスまたは動作の観点から実施形態を説明する。これらのアルゴリズムの説明及び表現は、コンピューティング技術の当業者によって、その作業の内容を他の当業者に効果的に伝えるために一般的に使用される。これらの動作は、機能的、計算的または論理的に説明されている一方で、プロセッサまたは等価電気回路、マイクロコードなどによる実行のための命令を含むコンピュータプログラムによって実行されると理解される。さらに、普遍性も失うことなく、ときにはこれらの機能操作の配置をモジュールと呼ぶことが便利な場合もある。
【0071】
本明細書で使用される場合、「一実施形態」または「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の要素、特徴、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書における様々な場所において、「一実施形態において」という表現の記載は、必ずしも全てが同じ実施形態を示しているわけではない。同様に、要素または構成要素の前にある「a」または「an」の使用は、単に便宜上のために行われる。この説明は、それ以外の意味であることが明らかでない限り、要素または構成要素のうちの1つまたは複数が存在することを意味すると理解されるべきである。
【0072】
値が「約」または「実質的に」(またはそれらの派生物)として説明される場合、文脈から別の意味が明らかでない限り、そのような値は+/-10%の精度で解釈されるべきである。例から「約10」は「9~11の範囲」を意味すると理解されるべきである。
【0073】
本明細書で用いられる場合、「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」またはそれらの任意の他の変形例は、非排他的な包含を含むことが意図されている。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるわけではなく、明示的に記載されていない、またはそのようなプロセス、方法、物品または装置に内在する他の要素を含んでよい。さらに、それとは反対に明示的に述べられていない限り、「または」は、包括的な「または」を参照するものであり、排他的な「または」を参照しない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つによって満たされる。Aは真(または存在する)でBは偽(または存在しない)であり、Aは偽(または存在しない)で、Bは真(または存在する)であり、さらにA及びBの両方が真(または存在する)である。
【0074】
本開示を読むと、当業者は、情報密度の高いユーザインターフェースを提供するためのシステム及びプロセスのさらに追加の代替的な構造及び機能設計を理解するであろう。従って、特定の実施形態及び用途が例示され、及び説明されているが、説明された主題は、開示された正確な構造及び構成要素に限定されないことを理解されたい。保護の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ制限されるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】