(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】自動車のシートベルト装置用のベルトリトラクタ
(51)【国際特許分類】
B60R 22/34 20060101AFI20250128BHJP
【FI】
B60R22/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540691
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2022086270
(87)【国際公開番号】W WO2023138853
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】102022101203.4
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ダールクイスト,ベングト
(72)【発明者】
【氏名】ペテルソン,レナート
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018GA00
(57)【要約】
【課題】シートベルトの巻き取り及び巻き戻しプロセスが改善されるベルトリトラクタの提供。
【解決手段】フレームに回転可能に取り付けられ、シートベルトを巻き取り、フレームが、互いに平行に配向された2つの対向する壁部分(3、4)を有し、各々が軸受開口部(12、13)を有し、壁部分内にベルトシャフト(2)が回転可能に取り付けられる、ベルトシャフト(2)と、壁部分(3、4)のうちの1つに固定され、その中に配置された戻しばね(53)を有し、戻しばね(53)が、第1の端部(55)においてばねハウジング(51)に接続され、第2の端部(54)においてベルトシャフト(2)と回転可能に固定されるように接続されているばねハウジング(51)と、を備え、ばねハウジング(51)が、壁部分(3、4)上に半径方向に弾性的に保持される、自動車のシートベルト装置用のベルトリトラクタ(1)。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のシートベルト装置用のベルトリトラクタ(1)であって、
フレームに回転可能に取り付けられ、前記シートベルト装置のシートベルトを巻き取るためのベルトシャフト(2)であって、前記フレームが、互いに平行に配向された2つの対向する壁部分(3、4)を有し、各々が軸受開口部(12、13)を有し、前記壁部分内に前記ベルトシャフト(2)が回転可能に取り付けられる、ベルトシャフトと、
前記壁部分(3、4)のうちの1つに固定されたばねハウジング(51)であって、その中に配置された戻しばね(53)を有し、前記戻しばね(53)が、第1の端部(55)において前記ばねハウジング(51)に接続され、第2の端部(54)において前記ベルトシャフト(2)と共同回転するように接続されている、ばねハウジングと、
を備え、
前記ばねハウジング(51)が、前記壁部分(3、4)上に半径方向に弾性的に保持されることを特徴とする、
ベルトリトラクタ(1)。
【請求項2】
前記ばねハウジング(51)が、半径方向外側に配置された締結部分(59)を有する主ハウジング(511)を有し、
前記締結部分(59)が、弾性変形部分(591、592)を介して前記主ハウジング(511)に接続されていることを特徴とする、
請求項1に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項3】
前記締結部分(59)が各々、2つの変形部分(591、592)を介して前記主ハウジング(511)に接続され、
前記締結部分(59)が、その上に設けられた前記変形部分(591、592)とともに、前記主ハウジング(511)に対して自由空間(593)を各々画定することを特徴とする、
請求項2に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項4】
4つの締結部分(59)が設けられ、各場合において、2つの締結部分(59)が、前記ベルトリトラクタ(1)の中心軸(M)に対して互いに対称に配置されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項5】
前記締結部分(59)が、各々止め具を形成するように配置され、前記止め具が、前記弾性変形部分(591、592)によって可能になる前記ばねハウジング(51)の半径方向の撓みを制限することを特徴とする、請求項2に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項6】
前記ばねハウジング(51)が、前記壁部分(3、4)に面する側で前記ばねハウジング(51)に堅固に接続されたカバー(52)を有し、
前記カバー(52)が、環状で軸方向に突出するカラー(521)を有し、前記カラーが、前記軸受開口部(12、13)に係合し、前記軸受開口部(12、13)を通過する前記ベルトシャフト(2)の前記部分を取り囲むように配置されることを特徴とする、
請求項1に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項7】
前記壁部分(3、4)が、前記軸受開口部(12、13)の領域において、前記ベルトシャフト(2)の軸方向に厚くなっていることを特徴とする、請求項1に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項8】
前記戻しばね(53)が、共同回転のために前記ベルトシャフト(2)に接続された結合片(56)に共同回転のために前記第2の端部(54)によって接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項9】
前記結合片(56)と前記ベルトシャフト(2)との間には、前記結合片(56)を前記ばねハウジング(51)の軸受(57)内に付勢する軸方向ばね(15)が設けられていることを特徴とする、請求項8に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項10】
前記軸受(57)が、前記ばねハウジング(51)内の半球又は部分球の形態の球面軸受であることを特徴とする、請求項9に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項11】
前記軸方向ばね(15)が、円錐ばねであることを特徴とする、請求項9又は10に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項12】
前記円錐ばねの大きい方の直径が、前記ベルトシャフト(2)上に支持されていることを特徴とする、請求項11に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項13】
前記フレームのブロック壁部分(7)に対してブロック爪(9)によってブロックされ得るプロファイルヘッド(8)を有する力制限装置(6)が設けられ、
前記軸受開口部(12、13)を有する前記壁部分(3、4)が、前記ブロック壁部分(7)の一方の側に配置され、
前記ブロック壁部分(7)からの距離(L3)が大きい方の前記壁部分(3)における前記軸受開口部(12)の軸受隙間(D2)が、前記ブロック壁部分(7)からの距離(L1)が小さい方の前記壁部分(4)における前記軸受開口部(13)の軸受隙間(D1)よりも大きいことを特徴とする、
請求項1に記載のベルトリトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の特徴を有する、自動車のシートベルト装置用のベルトリトラクタに関する。
【0002】
自動車のシートベルト装置のベルトリトラクタは、車両に固定的に締結され、シートベルト装置のシートベルトを巻き取ることができる回転可能に取り付けられたベルトシャフトを有する。ベルトシャフトは、車両に固定的に締結されたフレームに回転可能に取り付けられ、フレームは、同時に、ベルトリトラクタを車両、車両構造、又は車両シートに固定的に締結する役割を果たす。更に、ベルトリトラクタのフレームに支持され、ベルトシャフトをシートベルトの巻き取り方向にばね付勢する戻しばねが設けられており、その結果、シートベルトは、戻しばねを引っ張ることによって引き出され得、ベルトシャフトを巻き取り方向に駆動することによって引き出された後、引っ張られた戻しばねによって引き込まれる。戻しばねを、ばねハウジング内に配置された渦巻きばねによって形成することが有用であることが証明されており、ばねハウジングは、ベルトリトラクタのフレームに共同回転するように固定され、渦巻きばねの外側端部を締結する役割も果たす。ばねコアとも呼ばれる渦巻きばねの内側端部は、共同回転するようにベルトシャフトに接続される。更に、渦巻きばねは、ばねコアを介して巻き方向にベルトシャフトに予張力を与えるように巻かれ、ばねハウジングを介してフレームの外側端部によって車両に固定的に支持される。戻しばねは、ばねハウジング内に予め組み立てられて固定され、ばねカセットとしても既知である予め組み立てられたアセンブリとして、ばねハウジングとともにベルトリトラクタに取り付けられる。
【0003】
フレームは、互いに平行に配向されたフレームの脚部に各々配置された2つの対向する軸受開口部を有し、ベルトシャフトは軸受フランジによって半径方向に軸受開口部内に取り付けられる。組み立て中、ばねカセットは、ベルトシャフトの中央軸方向延長部上にばねコアとともに横方向に配置され、共同回転のために接続され、ばねハウジングを介してフレームの脚部の1つに締結される。ばねカセットは、ベルトシャフトの延長部が軸方向に+/-1mmの軸受隙間でばねコアに接続され得るように設計される。
【0004】
独国特許出願公開第2720959号明細書によれば、ベルトシャフトが、ばねコアが保持されている軸方向延長部を介してばねハウジング内の点軸受に付加的に取り付けられているベルトリトラクタが既知である。
【0005】
独国特許出願公開第102004008278号明細書からは、組み立てを単純化するためにばねコアがロック要素によってばねカセット内に固定され、次いで、ばねコアがベルトシャフトの軸方向延長部に接続されると取り外されるか又は破壊されるベルトリトラクタも既知である。
【0006】
独国特許出願公開第3108632号明細書から、ばねカセットが、ばねハウジングに設けられた複数の拡張ピンを介してフレームの脚部に固定されているベルトリトラクタも既知である。
【0007】
基本的な問題は、渦巻きばねとして設計された戻しばねがベルトシャフトに周方向の力を加えるだけではないことである。戻しばねは、その形状と、ベルトシャフトへの半径方向内側の締結と関連したばねハウジングへの半径方向外側の締結とに起因して、ベルトシャフト及びばねハウジングに半径方向の力も加える。これらの半径方向の力は、ベルトシャフトの軸受によっても吸収されなければならず、例えばベルトシャフトの軸受における摩擦を増加させることによって、シートベルトの巻き取り及び巻き戻しプロセスに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
この背景に対して、本発明の目的は、シートベルトの巻き取り及び巻き戻しプロセスに関して改善されるベルトリトラクタを提供することである。
【0009】
目的を達成するために、請求項1の特徴を有するシートベルトリトラクタが提案されている。本発明の更なる好ましい展開は、従属請求項、図、及び関連する説明から得ることができる。
【0010】
請求項1によれば、この目的を達成するために、自動車のシートベルト装置用のベルトリトラクタが提案され、ベルトシャフトは、シートベルト装置のシートベルトを巻き取るためのフレームに回転可能に取り付けられ、フレームは、互いに平行に配向され、ベルトシャフトが回転可能に取り付けられる軸受開口部を各々有する2つの対向する壁部分と、壁部分の1つに固定され、第1の端部でばねハウジングに接続され、第2の端部でベルトシャフトに共同回転するように固定された戻しばねを内部に配置するばねハウジングとを有し、ばねハウジングは、壁部分に半径方向に弾性的に保持される。
【0011】
ベルトリトラクタのフレーム又はフレームの壁部分にばねハウジングを半径方向に弾性的に保持することにより、ばねハウジング、したがって、ばねハウジングに保持された戻しばねの第1の端部も、少なくとも僅かな半径方向運動を行うことができ、その結果、逆に、ベルトシャフトに作用する半径方向力を減少させることができる。特に、これにより、戻しばね自体によって加えられる半径方向の力を補償することができ、戻しばねは、第1の端部が半径方向外向き又は内向きに撓むことを可能にすることによって、実際にそれ自体を変形させる。
【0012】
ばねハウジングは、好ましくは、半径方向外側に配置された締結部分を有する主ハウジングを有することができ、締結部分は、好ましくは、弾性変形部分を介して主ハウジングに接続することができる。したがって、ばねハウジングの締結は、一方では意図的に固定されるように設計され、他方では半径方向に弾性的であり、締結部分を介した締結は対応して固定され、ばねハウジングの半径方向に弾性的な可動性は、主ハウジングと締結部分との間に意図的に設けられた変形部分によって達成される。ばねハウジングの半径方向弾性可動性は、具体的には、変形部分の設計及び配置によって達成され、一方、締結部分は、ばねハウジングの機能的に信頼性があり、それに対応して確実な締結に関して設計することができる。
【0013】
更に、締結部分が各々2つの変形部分を介して主ハウジングに接続され、締結部分が、締結部分に設けられた変形部分とともに、各々主ハウジングに対する自由空間を画定することが提案される。この解決策の利点は、変形部分のうちの1つに損傷がある場合であっても、主ハウジングが、依然として、機能的に信頼できる方法で他の変形部分を介して締結部分に接続されることである。更に、変形部分及び締結部分は、それらが主ハウジングに対する自由空間を画定するように互いに補完し、したがって、変形部分は、それらの間に配置された締結部分とともに連続的な接続線を形成し、可動性は、主ハウジングに対して形成された自由空間及び変形部分の変形性によって達成される。
【0014】
更に、4つの締結部分が設けられ、各々の場合2つの締結部分がベルトリトラクタの中心軸に対して互いに対称に配置されることが提案される。提案された締結部分の数及び配置は、ばねハウジングの対応する撓み運動によって、中心軸線に対して方向中立的に、半径方向力の非常に均一なバランスを可能にする。
【0015】
更に、締結部分が各々止め具を形成するように配置されており、止め具が、変形部分によって可能になるばねハウジングの半径方向の撓みを制限することが提案される。したがって、ばねハウジングの半径方向弾性締結は、最大ばね行程に制限される。ばねハウジングの弾性ばね行程は、好ましくは、軸受開口部におけるベルトシャフトの軸受隙間よりも大きくなるように寸法決めされ、その結果、シートベルトによってベルトシャフトに加えられる半径方向力は、ベルトシャフトをその軸受点において延ばし、この場合、ばねハウジングは締結部分と接触しないので、締結部分には負荷がかからない。
【0016】
更に、ばねハウジングが、壁部分に向いた側でばねハウジングに堅固に接続されたカバーを備え、このカバーが、軸方向に突出した環状のカラーを有しており、このカラーが、軸受開口部内に係合して、軸受開口部を貫通するベルトシャフトの部分を取り囲むように配置されていることが提案される。この場合、軸方向に突出するカラーは、ベルトシャフトのための軸受開口部内に拡大軸受面を有する軸受リングを更に形成する。したがって、軸受開口部における追加の軸受シェル又は軸受リングを省略することができる。
【0017】
更に、軸受開口部の領域における壁部分がベルトシャフトの軸方向に厚くなることが提案される。提案された更なる展開により、壁部分自体が、ベルトシャフト又は軸受リングのための拡大された接触面又は乗り上げ面を形成する。
【0018】
更に、戻しばねは、ベルトシャフトと共同回転するように接続された結合片に共同回転するように第2の端部で接続されることが提案される。結合片は、ベルトシャフトに接続する役割を果たし、この目的のために、例えば、複歯形又は多角形を個別に備え、一方、戻しばねは、第2の端部によって結合片にしっかりと付着されるか、又は留められる。
【0019】
更に、結合片とベルトシャフトとの間に、結合片をばねハウジングの軸受内へ付勢する軸方向ばねが設けられることが提案される。結合片は、共同回転のためにベルトシャフトに接続され、したがって、ベルトシャフトの回転運動も実行する。提案された解決策は、結合片のその運動における軸受を改善し、固定ばねハウジングが軸受のために意図的に使用され、同時に戻しばねの第1の端部のための取り付け点を形成する。軸受点は、好ましくは、ばねハウジング内の半球又は部分球の形態の球面軸受であり、この球面軸受は、その形状に起因して、好ましくは軸方向力及び半径方向力の両方を方向中立的に吸収することができる。
【0020】
更に、軸方向ばねが円錐ばねであり、円錐ばねは、その形状に起因して、軸受点に対して軸方向及び半径方向の両方に結合片に予張力を与えることが提案される。結合片の予張力又は結合片の半径方向のセンタリングは、より大きな直径を有する円錐ばねがベルトシャフトに当接することによって、特に容易に達成することができる。その結果、より小さい直径を有する円錐ばねが結合片に当接し、同時に結合片をセンタリングさせる。
【0021】
更に、フレームのブロック壁部分に対してブロック爪によってブロックされ得るプロファイルヘッドを有する力制限装置が設けられ、軸受開口部を有する壁部分がブロック壁部分の一方の側に配置され、ブロック壁部分からより大きな距離にある壁部分における軸受開口部の軸受隙間が、ブロック壁部分からより小さな距離にある壁部分における軸受開口部の軸受隙間よりも大きいことが提案される。提案された更なる展開は、ベルトシャフトがある角度で撓み、それでもなお軸受開口部内で均一に延びることを可能にすることによって、力制限装置の作動中に作用する軸受力に関して軸受を改善することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明について、添付の図を参照して、好ましい実施形態を使用して以下で説明する。図面は以下の通りである。
【0023】
【
図1】ベルトシャフトと力制限装置とを有するベルトリトラクタをベルトシャフトの断面図で示す。
【
図2】第1の斜視図におけるベルトリトラクタの分解図を示す。
【
図3】第2の斜視図におけるベルトリトラクタの分解図を示す。
【
図4】ベルトシャフト及びばねカセットを有するベルトリトラクタの断面図を示す。
【
図5】結合片の領域におけるばねカセットの拡大断面図を示す。
【
図6】結合片及びベルトシャフトの領域におけるばねカセットの拡大断面図を示す。
【
図7】ばねハウジングに向かって左から見た
図4のばねカセットを示す。
【
図8】ベルトシャフトを挿入する前に右から見た、壁部分に締結された後の
図4のばねカセット5を示す。
【
図9】厚くなった壁部分を有する軸受開口部を備えたベルトリトラクタを示す。
【
図10】半径方向の環状カラーを有するカバーを備えたばねカセットを有するベルトリトラクタを示す。
【0024】
図1は、ベルトシャフト2と力制限装置6とを有する本発明によるベルトリトラクタ1を示す。ベルトシャフト2及び力制限装置6は各々、互いに平行に配向された壁部分3及び4に取り付けられている。壁部分3及び4は固定され、1つ以上の成形レールから形成されるフレーム(図示せず)の内部を分割する。あるいは、壁部分3及び4は、U字形のフレームの折り曲げられた脚部によって形成されてもよい。壁部分3及び4は、ベルトリトラクタ1が車両に締結された状態にあるとき、車両に固定的に締結される。
【0025】
力制限装置6は、ブロック爪9を介してブロック壁部分7において車両に固定されたブロック可能なプロファイルヘッド8と、一端がプロファイルヘッド8に接続され、他端がベルトシャフト2に接続され又は接続され得る1つ以上のトーションバー(図示せず)とを備え、プロファイルヘッド8がブロックされると、塑性変形によってシートベルトの力制限されたベルトウェビング延長を可能にし、それによってベルトシャフト2の延長方向への回転を可能にする。
【0026】
更に、ばねカセット5が壁部分3の左前外側に締結されており、その構造については以下でより詳細に説明する。ばねカセット5は、ベルトリトラクタ1の壁部分3に予め組み立てられ、アセンブリとして締結されている。
【0027】
図2及び
図3では、同じベルトリトラクタ1を異なる視点からの分解図で見ることができるが、
図1の力制限装置6及び右ブロック壁部分7はない。壁部分3及び4の各々には軸受開口部12及び13が設けられており、軸受開口部12及び13の各々には軸受リング10及び11が配置されている。軸受リング10及び11は、軸受開口部12及び13においてベルトシャフト2のために利用可能な軸受面を増加させ、したがって軸受全体を改善する。更に、壁部分3及び4の各々には、4つの締結開口部14が設けられており、ばねカセット5は、締結ピン58によって締結開口部14に締結される。
【0028】
図4は、ばねカセット5及び壁部分3及び4を有するベルトシャフト2を断面図で示す。ベルトシャフト2は、軸受リング10及び11が配置されている軸受開口部12及び13を通って延在している。軸受リング10及び11は、プラスチック射出成形部品として設計され、軸受開口部12及び13を通過するベルトシャフト2の部分のための軸受面を拡大する。ばねカセット5は、一方の側が開いたフード状のばねハウジング51を有しており、このばねハウジング51は、ディスク状のカバー部52によって開いた側が閉じられている。したがって、ばねハウジング51は、カバー部52によって覆われた空洞を有し、その中に渦巻き状の戻しばね53が配置される。戻しばね53は、その第1の半径方向外側端部55によってばねハウジング51に接続され、その第2の半径方向内側端部54によって結合片56に共同回転するように接続され、それによってベルトシャフト2に共同回転するように接続される。この目的のために、結合片56は、
図5に見ることができる多歯形を有する中央開口部561を有し、その中にベルトシャフト2が対応して輪郭形成された延長部21と係合して共同回転接続を実現する。
【0029】
ばねカセット5は、戻しばね53の半径方向内側の第2の端部54とともに結合片56を戻しばね53の半径方向外側の第1の端部に対して回転させ、次いで保持クリップ16によってばねハウジング51に対して所定の予張力が加えられた位置に固定することによって、予張力が加えられた戻しばね53と予め組み立てられる。結合片56は、予め配向された結合片56及びその中に配置された多歯形を有するばねカセット5が延長部21の対向プロファイル上に押し込まれることができるような位置に、かつばねハウジング51の締結ピン58が壁部分3の締結開口部14と位置合わせされ、その中に挿入することができるような位置に固定される。ばねカセット5が設置された後、保持クリップ16は、遅くともベルトリトラクタ1が車両に設置された後に取り外され、その結果、戻しばね53は弛緩することができ、それによってベルトシャフト2上にシートベルトを巻き取るために必要な引き込み力を加えることができる。
【0030】
更に、円錐ばねの形態の軸方向ばね15が設けられ、軸方向ばね15は、ばねカセット5が設置される前に延長部21上に配置される。軸方向ばね15は円錐形状を有し、より大きな直径の巻線を有する延長部21上に押し付けられ、その結果、軸方向ばね15は、この巻線を有するベルトシャフト2上に軸方向に載置する。ばねカセット5が装着されると、ばねカセット5は、より小さい直径を有する軸方向ばね15の巻線上の結合片56と軸方向に接触する。軸方向ばね15は、その円錐形状のために、それ自体及び結合片56に対してセンタリング効果を有し、結合片56をばねハウジング51内のドーム形状の軸受点57に対して軸方向に押圧する。結合片56は、軸受点57に面する側に部分的に球状の延長部を有し、それによって、
図5及び
図6に見られるように、球面軸受として設計された軸受点57の表面上に載置し、したがって軸方向及び半径方向の両方に支持される。
【0031】
ベルトシャフト2及び結合片56は、結合片56を有するばねカセット5がベルトシャフト2に対して+/-1mmの軸方向公差で取り付けられ得るように設計される。
【0032】
図7では、
図4のばねカセット5をばねハウジング51に向かって左から見ることができる。
図8において、
図4のばねカセット5は、壁部分3に締結された後、ベルトシャフト2を挿入する前に右から見ることができる。ばねカセット5は、締結ピン58によって壁部分3の締結開口部14内に挿入される。保持クリップ16は、ベルトシャフト2が延長部21とともに所定の向きで挿入されることができるように、開口部561及びその中に設けられた多歯形を有する結合片56を固定する。
【0033】
固定ピン58は、固定部分59から軸方向に延在しており、弾性変形部分591及び592を介してばねハウジング51に接続されているので、固定部分59とともに自由空間593を各々取り囲む。変形部分591及び592は、湾曲した薄肉ウェブとして設計される。更に、変形部分591及び592は、プラスチック射出成形部品としてばねハウジング51と一体に形成される。変形部分591及び592は、その寸法、形状及び材料特性に基づいて、戻しばね53の第1の端部55が付着されたばねハウジング51が締結部分59に対して僅かな半径方向運動を行うことができる程度に弾性的に変形可能である。締結部分59は各々、ばねハウジング51に面する側で平坦にされて停止面594を形成し、その結果、ばねハウジング51の可能な半径方向運動が制限される。無負荷状態、すなわち外部負荷のない初期状態における停止面594とばねハウジング51との間の間隙は、ベルトシャフト2と軸受リング10及び11との間の間隙よりも大きいので、ベルトシャフト2の半径方向運動は、ばねハウジング51を停止面594に接触させることができず、ベルトシャフト2は、半径方向運動の間に事前に、軸受リング10及び11上を延びる。これにより、締結部分59の停止面594が、シートベルトによってベルトシャフト2に加えられる半径方向の力によって負荷を受けることを防止することができる。したがって、停止面594は、戻しばね53によって加えられる半径方向の力によってばねハウジング51が負荷を受けて撓むときにのみ負荷を受ける。
【0034】
図9は、軸受リング10及び11が設けられていない代替的な実施形態を示す。その代わりに、壁部分3及び4は、深絞り又は打ち抜きプロセスなどの再成形によって軸受部分31及び41に変形され、軸受部分31及び41は、軸方向に厚くされ、対応して拡大された半径方向軸受面を有する。
【0035】
図10は、軸受リング10及び11が設けられていない更に代替的な実施形態を示す。その代わりに、ばねカセット5のカバー52は、環状で軸方向に突出するカラー521を有し、このカラーは、左壁部分3の軸受開口部12内に突出し、軸受開口部12を通過する部分においてベルトシャフト2を包囲する。
【0036】
ベルトシャフト2の軸受を改善するための
図9及び
図10の両方の解決策は、ばねハウジング51の可動性とは独立した特徴を表し、これは、以前に設けられた軸受リング10及び11を省略することができるという利点を有する。
【0037】
設けられた変形部分591及び592によるばねハウジング51の提案された可動性は、ばねハウジング51自体が撓むことができ、それによって、戻しばね53によって加えられる半径方向の力を補償することができるので、ベルトシャフト2に作用する半径方向の力を少なくとも低減することができるという利点を有する。理想的には、戻しばね53はベルトシャフト2に周方向の力のみを作用させるので、巻き取り及び巻き戻し中のベルトシャフト2の回転運動を著しく改善することができる。これにより、ベルトシャフト2の走行及び支持を、より容易に、特に、より少ない摩擦で実現することができる。
【0038】
図1に見られるように、壁部分3及び4は、同じ側に、この場合はブロック壁部分7の左側に配置される。この場合、図示の軸受開口部13を有する右手壁部分4は、ブロック壁部分7からより小さい距離L1にあり、図示の軸受開口部12を有する左手壁部分3は、ブロック壁部分7からより大きい距離L3にある。軸受開口部12及び13を有する2つの壁部分3及び4の間の距離L2は、大きい方の距離L3と小さい方の距離L1との間の差に対応する。
【0039】
ブロック壁部分7に対してより大きい距離L3にある壁部分3の軸受開口部12は、より小さい軸受隙間D1(この場合は0.7mm)を有するブロック壁部分7に対してより小さい距離L1にある壁部分4の軸受開口部13よりも大きい軸受隙間D2(この場合は1.07mm)を有する。軸受隙間D1及びD2の提案された寸法により、ベルトシャフト2は、プロファイルヘッド8がブロックされ、ベルトシャフト2がブロックヘッド8に対してある角度で撓むときでさえ、壁部分3及び4の軸受開口部12及び13内で可能な限り均一に延び、これは、次に、軸受開口部12及び13の領域における壁部分3及び4ならびにベルトシャフト2のより均一な負荷をもたらす。
【0040】
また、壁部分3及び4間の距離L2と、右壁部分4からブロック壁部分7までの距離L1との比は、約2:1、すなわち2/3~1/3に相当する。したがって、右壁部分4とブロック壁部分7との間の距離L1と、左壁部分3とブロック壁部分7との間の距離L3との比は、2:3であり、理想的には、右壁部分4の軸受開口部13における軸受隙間D1と、左壁部分3の軸受開口部12における軸受隙間D2との比0.7/1.07とほぼ同じである。
【国際調査報告】