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特表2025-503614甲状腺眼疾患を治療するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】甲状腺眼疾患を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20250128BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250128BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C07K16/28
A61K39/395 N ZNA
A61K48/00
A61P27/02
A61K45/00
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540897
(86)(22)【出願日】2023-01-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-21
(86)【国際出願番号】 US2023060207
(87)【国際公開番号】W WO2023133486
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】63/266,549
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524235898
【氏名又は名称】ヴィリディアン セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ベディアン,バヘ
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,ヤン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA58
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA33
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA23
(57)【要約】
IGF-1Rに対する抗体及び組成物、ならびにこれらの使用が本明細書で提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、及び170からなる群から選択される重鎖相補性決定領域(HCDR)配列と、
配列番号171、172、173、174、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、及び198からなる群から選択される軽鎖CDR(LCDR)配列と
を含む、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号1、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64及び65からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)配列と、
配列番号2、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、及び54からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)配列と
を含む、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体が、インスリン様成長因子I受容体(IGF-1R)に結合する、請求項1または2のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が、scFv抗体である、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号1、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64もしくは65に記載されるアミノ酸配列またはその任意のバリアントを含むVHペプチドを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号2、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、もしくは54に記載されるアミノ酸配列、またはその任意のバリアントを含むVLペプチドを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体またはその抗原結合断片が、(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む重鎖可変領域であって、前記HCDR1配列が、配列番号138、139、140、141、142、143、144、145、146、もしくは147アミノ酸配列、前記HCDR2が、配列番号148、149、150、151、152、153、もしくは154のアミノ酸配列、前記HCDR3配列が、配列番号155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、もしくは170のアミノ酸配列、または前述のいずれかのバリアントを有する、前記重鎖可変領域と、(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む軽鎖可変領域であって、前記LCDR1配列が、配列番号171、172、173、174、176、177、178、179、180、もしくは181のアミノ酸配列、前記LCDR2配列が、配列番号182、183、184、185、186、187、188、189、もしくは190のアミノ酸配列、前記LCDR3配列が、配列番号191、192、193、194、195、196、197、もしくは198のアミノ酸配列、または前述のいずれかのバリアントを有する、前記軽鎖可変領域とを含む、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
配列番号66~137のアミノ酸配列またはそのバリアントを含むVH及びVLペアを含む、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、リンカーによって連結されていない、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項12】
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、ペプチドリンカーで連結されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項13】
前記ペプチドリンカーが、次の配列:(GGGGS)(配列番号211)、(GGGGA)(配列番号212)、またはこれらの任意の組み合わせ(式中、各nは独立して1~5である)を含む、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
前記バリアントが、1~10個の置換、欠失、または挿入を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項15】
前記バリアントが、1~10個の保存的置換を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項16】
前記バリアントが、配列番号1~65の配列に対して、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性を有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項17】
前記バリアントが、配列番号66~137の配列に対して、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性を有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項18】
前記バリアントが、配列番号138~198の配列に対して、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項19】
前記抗体が、scFv抗体である、請求項1~18のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項20】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1~19のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項21】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項1~20のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項22】
前記抗体が、Fc領域を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項23】
前記Fc領域が、配列番号199、200、201、202、203、204、205、及び206からなる群から選択される、請求項22に記載の抗体。
【請求項24】
前記Fc領域が、前記Fc領域に連結されたときの前記抗体の半減期を延長する変異を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項25】
前記Fc領域が、S228P、L235E、M252Y、S254T、T256E、M428L、N434S、L234F、P331S変異、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項26】
前記Fc領域が、M252Y、S254T、及びT256E変異を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項27】
前記Fc領域が、S228P及びL235E変異を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項28】
前記Fc領域が、L234F、L235E、及びP331S変異を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項29】
前記Fc領域が、M252Y、S254T、T256E、S228P及びL235E変異を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項30】
前記Fc領域が、S228P、L235E、M428L、及びN434S変異を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項31】
前記Fc領域が、M428L及びN434S変異を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項32】
前記Fc領域が、L234F、L235E、P331S、M252Y、S254T、及びT256E変異を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項33】
前記抗体が、単離抗体である、請求項1~32のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする、核酸分子。
【請求項35】
請求項34に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項36】
請求項34に記載の核酸分子または請求項35に記載のベクターを含む核酸を含む、細胞。
【請求項37】
請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体または前記抗体をコードする核酸分子を含む、医薬組成物。
【請求項38】
前記組成物が、注射可能な医薬組成物である、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記医薬的組成物が、静脈内投与または皮下投与される、請求項37または38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
甲状腺関連眼病(TAO)もしくはTAOの症状の治療方法、またはTAOの重症度もしくはTAOの症状の軽減方法であって、対象に、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体または請求項37~39のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項41】
甲状腺関連眼病(TAO)を患う対象における、目の眼球突出を軽減する方法であって、対象に、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体または請求項37~39のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項42】
対象における甲状腺眼疾患を治療する方法であって、対象に、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体または請求項37~39のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
対象における甲状腺関連眼病(TAO)の臨床活動性スコア(CAS)の低下方法であって、対象に、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体または請求項37~39のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項44】
甲状腺関連眼病(TAO)を患う対象における、a)眼球突出を少なくとも2mm減少させる、及び、b)臨床活動性スコア(CAS)を低下させる方法であって、対象に、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体または請求項37~39のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項45】
眼球突出が少なくとも2mm減少する、請求項40~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
眼球突出が少なくとも3mm減少する、請求項40~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
眼球突出が少なくとも4mm減少する、請求項40~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記対象の臨床活動性スコア(CAS)が少なくとも2ポイント低下する、請求項40~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象の臨床活動性スコア(CAS)が、イチ(1)まで低下する、請求項40~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記対象の臨床活動性スコア(CAS)が、ゼロ(0)まで低下する、請求項40~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
対象に、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体または請求項36~38のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、対象における、甲状腺関連眼病(TAO)の治療方法、またはTAOの重症度の低下方法であって、前記抗体による治療が、(i)目における眼球突出を少なくとも2mm減少させ;(ii)他方(即ち、他眼)における2mm以上の悪化を伴わず;かつ(iii)前記対象におけるCASを、(1)またはゼロ(0)まで低下させる、前記方法。
【請求項52】
甲状腺関連眼病(TAO、グレーブス眼病/グレーブス眼症とも呼ばれる)を患う対象における、生活の質の改善方法であって、対象に、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体または請求項37~39のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項53】
前記生活の質が、グレーブス眼病の生活の質(GO-QoL)調査、または、その目視機能化もしくは外観サブスケールのいずれかにより測定される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記治療が、GO-QoLにおいて8ポイント以上の改善をもたらす、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記治療が、GO-QoLの機能化サブスケールの改善をもたらす、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記治療が、GO-QoLの外観サブスケールの改善をもたらす、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
甲状腺関連眼病(TAO)を患う対象における、複視の治療方法、または複視の重症度の低下方法であって、対象に、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体または請求項37~39のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項58】
前記複視が定常性複視である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記複視が非定常性複視である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記複視が断続性複視である、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
複視の重症度の改善または軽減が、抗体投与を中断した後、少なくとも20週間持続する、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
複視の重症度の改善または軽減が、抗体投与を中断した後、少なくとも50週間持続する、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
前記抗体が、第1用量として約1mg/kg~約5mg/kgの抗体の投与量で投与される、請求項40~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記抗体が、第1用量として約5mg/kg~約10mg/kgの抗体の投与量で投与される、請求項40~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記抗体が、後続用量で約5mg/kg~約20mg/kgの抗体の投与量で投与される、請求項40~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記抗体が次の量:第1用量として約10mg/kgの抗体;及び、後続用量で約20mg/kgの抗体で投与される、請求項40~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記後続用量が、少なくとも21週間の間、3週間ごとに投与される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ヒト抗体、モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、精製抗体、ダイアボディ、一本鎖抗体、多重特異性抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、FvまたはscFvである、請求項40~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記抗体またはその抗原結合断片が、薬学的に許容される希釈剤または賦形剤または担体を追加で含む医薬組成物で投与される、請求項40~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記医薬組成物が、TAOの治療のための、1種以上の薬学的に活性な化合物をさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記医薬組成物が、コルチコステロイド;リツキシマブもしくは他の抗CD20抗体;トシリズマブもしくは他の抗IL-6抗体;または、セレン、インフリキシマブ、もしくは他の抗TNFα抗体、もしくは甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)阻害剤をさらに含む、請求項69または70に記載の方法。
【請求項72】
前記抗体またはその抗原結合断片が、目、目の前眼房、目の硝子体眼房、脈絡膜上空間、または眼窩後腔に直接投与される、請求項4~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記抗体またはその抗原結合断片が、注射により投与される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記注射が、硝子体内注射、眼窩内注射、眼窩後注射、脈絡膜上注射、または腔内注射である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
細胞におけるIGF-1Rの内在化を増加させる方法であって、前記方法が、前記細胞を、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体または請求項37~39のいずれか1項に記載の医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項76】
前記接触させることが、対象に、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体または請求項37~39のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記対象が、甲状腺眼疾患(TED)を有する、または、TEDのリスクを有する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
細胞における、IGF-1刺激受容体リン酸化の阻害方法であって、前記方法が、前記細胞を、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体または請求項37~39のいずれか1項に記載の医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項79】
前記接触させることが、対象に、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体または請求項36~38のいずれか1項を含む医薬組成物を投与することを含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記対象が、甲状腺眼疾患(TED)を有する、または、TEDのリスクを有する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記抗体が、約0.2nm、0.15nm、0.10nm、0.09nm以下のIC50を有する、請求項78~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記IC50が、本明細書で提供するアッセイなどのインビトロアッセイで測定される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記細胞が、A549細胞またはHOCF細胞である、請求項78~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
対象における甲状腺眼疾患の治療方法であって、前記方法が、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体、または請求項37~39のいずれか1項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含み、前記抗体が、前記対象において、投与の少なくとも1、2、または3週間後に、少なくとも、または、約70μg/mL、75μg/mL、80μg/mL、85μg/mL、90μg/mL、95μg/mL、100μg/mL、または105μg/mLの血清濃度を有する、前記方法。
【請求項85】
前記抗体または前記医薬組成物が、静脈内投与される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記抗体または前記医薬組成物が、約20mg/kgの用量で投与される、請求項84~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記抗体または前記医薬組成物が、少なくとも、または約、週に1回、2週に1回、3週に1回、または4週に1回投与される、請求項84~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
細胞におけるIGF-1誘発性の受容体自己リン酸化を少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%または100%阻害する方法であって、前記方法が、前記細胞を、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体、または請求項37~39のいずれか1項に記載の医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項89】
前記IGF-1誘発性の受容体自己リン酸化の阻害が、前記抗体または前記医薬組成物不存在下での誘発性の受容体自己リン酸化と比較して測定される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記接触させることが、対象に、前記抗体、または、前記抗体を含む医薬組成物を投与することを含む、請求項88または89に記載の方法。
【請求項91】
前記対象が、甲状腺眼疾患(TED)を有する、または、TEDのリスクを有する、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
IGF-1誘発性の受容体自己リン酸化を少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%または100%阻害することを、それを必要とする対象において行う方法であって、前記方法が、前記対象に、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体、または請求項37~39のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項93】
前記対象が、甲状腺眼疾患(TED)を有する、または、TEDのリスクを有する、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記抗体または前記医薬組成物が、静脈内投与される、請求項92または93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記抗体が、VRDN-1100のCDRを含む、請求項88~94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記抗体が、VRDN-1100の抗体のCDRまたはVRDN-2700のCDRを含む、請求項88~95のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年1月7日に出願された米国仮出願第63/266,549号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
電子的に提出された配列表への言及
本出願は、XMLファイル形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に援用される。2023年1月4日に作成された当該XMLのコピーは「257635_000802_Seq.XML」という名称であり、サイズは238,594バイトである。
【背景技術】
【0003】
甲状腺眼疾患(TED)、グレーブス眼病または眼症(GO)、甲状腺中毒性眼球突出症、甲状腺機能不全眼病、及び他のいくつかの用語としても知られている、甲状腺関連眼病(TAO)は、甲状腺機能障害と関連した眼症である。TAOは、2種類に分けられる。通常1~3年続く活性TAOは、眼窩の軟組織における、進行性自己免疫/炎症反応を特徴とする。活性TAOは、眼軟組織の膨張及び再構築を担う。活性TAOの自己免疫/炎症反応は自然に解決し、状態は、不活性TAOに移行する。不活性TAOは、活性TAOの長期/永続性続発症を説明するために用いられる用語である。TAOの原因は不明である。TAOは通常、グレーブ甲状腺機能亢進症と関連しているが、甲状腺に影響を及ぼし、眼窩及び眼窩周囲組織、ならびに、稀ではあるが、脛骨前部皮膚(脛骨前部粘液水腫)または指趾(甲状腺棍棒状指端肥大症)における病状を生み出す他の自己免疫性状態の一部としてもまた発症する可能性がある。TAOは、眼窩及び眼周囲軟組織が主に影響を受け、目及び視覚が二次的に影響を受ける、自己免疫性眼症である。TAOでは、眼窩軟組織、主に眼筋及び脂肪の炎症及び膨張の結果として、眼球が、眼窩から前方に押し出される(膨らむ)(眼球突出(proptosis)または眼球突出(exophthalmos)と呼ばれる現象)。TAOの大部分の症例は、失明をもたらさないものの、この病状は、視力を脅かす兎眼性角膜症、面倒な複視(二重視)、及び、圧迫性甲状腺機能不全視神経症を引き起こす可能性がある。TAOは、甲状腺不全の全身性合併症より前に発症する、これと同時に発症する、または、この後に発症する可能性がある。TAOの眼での徴候としては、上まぶたの後退、まぶたの遅れ、腫れ、赤み(紅斑)、結膜炎、及び眼球の膨れ(眼球突出(proptosis)または眼球突出(exophthalmos))、結膜浮腫、眼窩周囲浮腫、ならびに、著しい機能上、社会上、及び美容上の影響を伴う、眼運動性の変化が挙げられる。眼球突出及び眼鬱血を含む、TAOの多くの徴候及び症状は、眼窩脂肪組織及び眼周囲筋の膨張に起因する。脂肪組織の体積は、ある程度は、眼窩脂肪内の脂肪細胞成長(脂肪生成)が原因である。眼窩脂肪組織内、及び眼外筋線維間の筋周囲結合組織内での、親水性グリコサミノグリカン(主にヒアルロン酸)の蓄積は、脂肪区画をさらに膨張させ、眼外筋体を拡張する。ヒアルロン酸は、眼窩脂肪及び眼外筋の中にある線維芽細胞により生成され、インビトロでのヒアルロン酸の合成は、IL-1β、インターフェロンγ、血小板由来成長因子、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及びインスリン様成長因子(IGF-1)を含むいくつかのサイトカイン及び成長因子により刺激される。
【0004】
インスリン様成長因子I受容体(IGF-IR)を活性化する抗体は、活性TAOでもまた検出されており、及び、示唆されている。いかなる理論に束縛されるものでもないが、TSHR及びIGF-IRは、眼窩線維芽細胞内で物理的及び機能的複合体を形成し、IGF-IRを遮断すると、IGF-1及びTSH依存性シグナル伝達の両方が弱められるようであると考えられている。抗体アンタゴニストを用いてIGF-IRを遮断すると、TSHR及びIGF-I依存性シグナル伝達の両方が低下し得、故に、いずれかの受容体でアゴニストとして作用する自己抗体の病理学的活性が妨げられ得ることが示唆されている。
【0005】
IGF-IRは、多くの細胞型において、増殖及び代謝機能の制御に関与する、広範に発現したヘテロ四量体タンパク質である。IGF-IRは、2個のサブユニットを含むチロシンキナーゼ受容体である。IGF-IRαはリガンド結合ドメインを含有する一方で、IGF-IRβはシグナル伝達に関与し、チロシンリン酸化部位を含有する。
【0006】
グレーブス病が原因の甲状腺機能亢進症に対する現行の治療法は、疾患の根本にある、特定の病原性自己免疫機序を標的にする治療法を欠いているために、不完全である。中等度~重症な活性TAOの治療は、さらに一層複雑である。近年では、TAOの病因はよりよく理解されてきているものの、TAOは治療上の課題であり、難問題のままである。活性TAOを治療するための薬剤は、認可されていない。静脈内糖質コルチコイド(ivGC)及び経口糖質コルチコイドを使用して、中等度~重症な活性TAOを患う患者が治療されているが、満足のいく結果がもたらされたことは滅多にない。部分反応は頻発し、投薬中止後の再発(リバウンド)は珍しいことではない。有害事象は実際に生じており、多くの患者は、病状が不活性TAOに移行した際に、結果的にリハビリテーションのための手術を必要とする。したがって、TAO及びその関連症状に対する代替治療法を提供することが、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本明細書において、抗体またはその抗原結合断片が提供される。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、及び170からなる群から選択される重鎖相補性決定領域配列と、配列番号171、172、173、174、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、及び198からなる群から選択される軽鎖CDR配列とを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、配列番号1、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64及び65からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)配列と、配列番号2、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、及び54からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)配列とを含む、抗体またはその抗原結合断片が本明細書で提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される任意の抗体またはその抗原結合断片は、インスリン様成長因子I受容体(IGF-1R)に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、scFv抗体である。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64もしくは65に記載されるアミノ酸配列またはその任意のバリアントを含む、VHペプチドを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、もしくは54に記載されるアミノ酸配列またはその任意のバリアントを含む、VLペプチドを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む重鎖可変領域であって、HCDR1配列が、配列番号138、139、140、141、142、143、144、145、146、もしくは147のアミノ酸配列、HCDR2が、配列番号148、149、150、151、152、153、もしくは154のアミノ酸配列、HCDR3配列が、配列番号155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、もしくは170のアミノ酸配列、または前述のいずれかのバリアントを有する、重鎖可変領域と、(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1配列が、配列番号171、172、173、174、176、177、178、179、180、もしくは181のアミノ酸配列、LCDR2配列が、配列番号182、183、184、185、186、187、188、189、もしくは190のアミノ酸配列、LCDR3配列が、配列番号191、192、193、194、195、196、197、もしくは198のアミノ酸配列、または前述のいずれかのバリアントを有する、軽鎖可変領域とを含む、抗体またはその抗原結合断片が提供される。
【0013】
いくつかの実施形態では、配列番号66~137のアミノ酸配列またはそのバリアントを含むVHとVLのペアを含む、抗体またはその抗原結合断片が提供される。
【0014】
いくつかの実施形態では、甲状腺関連眼病(TAO)もしくはTAOの症状の治療方法、またはTAOの重症度もしくはTAOの症状の軽減方法であって、対象に、本明細書で開示されるいずれかの抗体または本明細書で開示されるいずれかの医薬組成物を投与することを含む、方法が提供される。
【0015】
いくつかの実施形態では、甲状腺関連眼病(TAO)を患う対象における、目の眼球突出を軽減する方法であって、対象に、本明細書で開示されるいずれかの抗体または本明細書で開示されるいずれかの医薬組成物を投与することを含む、方法が提供される。
【0016】
いくつかの実施形態では、対象における甲状腺眼疾患を治療する方法であって、対象に、本明細書で開示されるいずれかの抗体または本明細書で開示されるいずれかの医薬組成物を投与すること、対象への投与を含む、方法が提供される。
【0017】
いくつかの実施形態では、対象における甲状腺関連眼病(TAO)の臨床活動性スコア(CAS)の低下方法であって、対象に、本明細書で開示されるいずれかの抗体または本明細書で開示されるいずれかの医薬組成物を投与することを含む、方法が提供される。
【0018】
いくつかの実施形態では、甲状腺関連眼病(TAO)を患う対象における、a)眼球突出を少なくとも2mm減少させる、及び、b)臨床活動性スコア(CAS)を低下させる方法であって、対象に、本明細書で開示されるいずれかの抗体または本明細書で開示されるいずれかの医薬組成物を投与すること、対象への投与を含む、方法が提供される。
【0019】
いくつかの実施形態では、甲状腺関連眼病(TAO)を患う対象における、複視の治療方法、または複視の重症度の低下方法であって、対象に、本明細書で開示されるいずれかの抗体または本明細書で開示されるいずれかの医薬組成物を投与することを含む、方法が提供される。
【0020】
いくつかの実施形態では、細胞におけるIGF-1Rの内在化を増加させる方法であって、当該方法が、当該細胞を、本明細書で開示されるいずれかの抗体または本明細書で開示されるいずれかの医薬組成物と接触させることを含む、方法が提供される。
【0021】
いくつかの実施形態では、細胞における、IGF-1刺激受容体リン酸化の阻害方法であって、当該方法が、当該細胞を、本明細書で開示されるいずれかの抗体または本明細書で開示されるいずれかの医薬組成物と接触させることを含む、方法が提供される。
【0022】
いくつかの実施形態では、対象における甲状腺眼疾患の治療方法であって、当該方法が、本明細書で開示されるいずれかの抗体または本明細書で開示されるいずれかの医薬組成物を当該対象に投与することを含み、当該抗体が、当該対象において、投与の少なくとも1、2、または3週間後に、少なくとも、または、約70μg/mL、75μg/mL、80μg/mL、85μg/mL、90μg/mL、95μg/mL、100μg/mL、または105μg/mLの血清濃度を有する、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本明細書で提供される様々な抗体及び実施形態の、NHP(非ヒト霊長類)血清濃度を示す。
図2】本明細書で提供される抗体の様々な特性を示す。
図3】本明細書で提供される抗体の様々な特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
IGF-1Rに結合し、IGF-1Rの活性を制御する抗体を本明細書で提供する。抗体を使用して、例えば、甲状腺眼疾患を治療することができる。
【0025】
本明細書で使用する場合、「甲状腺関連眼病」(TAO)、「甲状腺眼疾患」(TED)、「グレーブス眼病」、または「グレーブス眼症」(GO)は、同じ障害または病状を指し、同じ意味で用いられる。これらは全て、いくつかの自己免疫性甲状腺障害、最も一般的には、「グレーブス病」(GD)、しかし場合によっては他の疾患、例えば橋本甲状腺炎と関連する、炎症性眼窩病状を意味する。
【0026】
用語「眼球突出(proptosis)」及び「眼球突出(exophthalmos)(眼球突出(exophthalmos)、眼球突出(exophthalmia)、または眼球突出(exorbitism)としても知られている)は、器官の前方への突起、移動、膨らみ、または突出を意味する。本明細書で使用する場合、この用語は、目の、前方への突起、移動、膨らみ、または、眼窩から前方への突出を意味する。眼球突出(proptosis)及び眼球突出(exophthalmos)は、当業者によっては、同じ意味を持ち、多くの場合交換可能に用いられると考えられているが、中には、その意味にわずかな違いがあるとしている当業者もいる。眼球突出(exophthalmos)は、人によっては、深刻な眼球突出を意味するように;または、内分泌腺関連眼球突出を意味するように用いられる。さらに他の人は、例えば、TAO(TEDまたはGO)を患う対象の目に関連する眼球突出を説明する際に、眼球突出(exophthalmos)という用語を用いる。
【0027】
本明細書で使用する場合、「眼球突出(proptosis)」及び「眼球突出(exophthalmos)」は同じ意味で用いられ、目の、前方への突起、移動、膨らみ、または、眼窩から前方への突出を意味する。眼窩は、拡張のための前方開口部のみを有しているという、堅い骨構造のために、側面、または後部から生じる眼窩軟組織含有量の何らかの増加は、眼球を前方に追い出してしまう。眼球突出(proptosis)または眼球突出(exophthalmos)は、感染症、炎症、腫瘍、外傷、転移、内分泌腺病変、血管疾患、及び眼窩外病変を含むいくつかの疾患プロセスの結果である可能性がある。TAO(TEDまたはGO)は現在、成人における眼球突出の、最も一般的な原因と認識されている。眼球突出は、多くの場合TAO(TEDもしくはGO)に見られるように、両側性、または、(多くの場合眼窩腫瘍で見られるように)片側性のいずれかであることができる。
【0028】
眼球突出の程度の測定は、例えば、目の前方への移動度を測定するために使用される器具である、眼球突出計を使用して実施することができる。この装置により眼窩横縁から角膜前部への距離の測定が可能となる。コンピュータトモグラフィ(CT)走査法、及び磁気共鳴映像法(MRI)もまた、眼球突出(exophthalmos)または眼球突出(proptosis)の程度を計測するために使用することができる。CT走査法は、TAOの診断にとって優れた撮像手法である。拡大した眼外筋の映像化が可能となることに加えて、CTスキャンは、外科医または臨床医に、眼窩減圧が必要となる際に、眼窩の骨解剖の描写をもたらす。MRIは、その多断面及び固有の対比能力により、CTスキャン調査と関連する放射線照射を伴うことなく、眼窩の容積の優れた撮像をもたらす。MRIは、視神経、眼窩脂肪、及び眼外筋のより良い撮像をもたらすが、CTスキャンスキャンは、眼窩の骨構造のより良い眺めをもたらす。高い信頼度を伴って素早く行うことができるため、眼窩超音波検査もまた、TAOの診断及び評価に使用することができる。眼外筋の高反射率及び肥大は容易に測定され、連続超音波画像検査を使用して、眼病の進行または安全性を調査することもまたできる。現在利用可能な科学技術、または、将来的に利用可能となるであろう科学技術に基づき、当業者は、眼球突出(proptosis)または眼球突出(exophthalmos)を診断及び調査するための最良の手段を決定することができる。
【0029】
本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、所望の生物活性を示す任意の形態の抗体を意味する。したがって、この用語は最も広い意味で用いられ、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト化、完全ヒト抗体、キメラ抗体、及びラクダ化単一ドメイン抗体に限定されるものではないが、これらを具体的にカバーする。「親抗体」とは、使用目的のために抗体を修飾する、例えば、ヒト治療用抗体として使用するために抗体をヒト化する前に、免疫系を抗原に曝露することで得られる抗体である。
【0030】
本明細書で使用する場合、特に断りのない限り、「抗体断片」または「抗原結合断片」とは、抗体の抗原結合断片、即ち、完全長抗体により結合される抗原に特異的に結合する能力を維持する抗体断片、例えば、1つ以上のCDR領域を維持する断片を意味する。抗体結合断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子、例えば、sc-Fv;抗体断片から形成されるナノボディ及び多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
「Fab断片」は、1個の軽鎖、ならびに1個の重鎖のC1及び可変領域で構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0032】
「Fc」領域は、抗体のC1及びC2ドメインを含む2個の重鎖断片を含有する。2個の重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合により、及び、C3ドメインの疎水性相互作用により、互いに保持している。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書の抗体、または抗原断片は、Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、Fc領域に結合したときに、抗体の半減期を延ばす変異を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、S228P、L235E、M252Y、S254T、T256E、M428L、N434S、L234F、P331S変異、またはこれらのいずれかの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、M252Y、S254T、及びT256E変異を含む。M252Y、S254T、及びT256E変異(まとめて、「YTE変異」)を含むFc領域の非限定例は、配列番号89の配列に見出すことができる。いくつかの実施形態では、YTE変異を含むFc領域は、配列番号89とは、C末端リジン(K)残基の存在が異なる、配列番号90の配列を含む。Fc領域の番号付けは、Fc領域に関してはKabat番号付けシステムに従うことができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、S228P及びL235E変異を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、L234F、L235E、及びP331S変異を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、M252Y、S254T、T256E、S228P、及びL235E変異を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、S228P、L235E、M428L、及びN434S変異を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、M428L及びN434S変異を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、L234F、L235E、P331S、M252Y、S254T、及びT256E変異を含む。Fc領域における変異は、US2007041972A1、EP2235059B1、米国特許第8,394,925号、及び、Mueller et al,Mol Immunol 1997 Apr;34(6):441-52にもまた記載されており、これらそれぞれの全体が参照により援用されている。本明細書で参照される番号付けは、Fc領域に関しては、Kabat番号付けシステムを指す。
【0035】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、以下から選択される配列を含む:
APELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号199);
APELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号200);
APPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号201);
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号202);
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号203);
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号204);
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号205);または
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号206)。
【0036】
「Fab’断片」は、1個の軽鎖と、Vドメイン及びC1ドメイン、ならびに、C1とC2ドメインとの間の領域もまた含有する、1個の重鎖の一部または断片と、を、鎖間ジスルフィド結合が、2個のFab’断片の2個の重鎖の間に形成されて、F(ab’)分子を形成することができるように含有する。
【0037】
「F(ab’)断片」は、2個の軽鎖と、C1とC ドメインとの間の定常領域の一部を含有する2個の重鎖と、を、鎖間ジスルフィド結合が2個の重鎖間に形成されるように含有する。したがって、F(ab’)断片は、2個の重鎖間のジスルフィド結合により互いに結合した、2個のFab’断片で構成される。
【0038】
「Fv領域」は、重鎖及び軽鎖の両方に由来する可変領域を含むが、定常領域を欠いている。
【0039】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体という用語は、抗体のV及びVドメインを含み、これらのドメインが単一ポリペプチド鎖内に存在する抗体断片を意味する。一般に、Fvポリペプチドは、scFvが、抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする、VとVドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvに関する概説については、例えば、Pluckthun(1994)The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315を参照されたい。また、国際特許出願公報第88/01649号、ならびに米国特許番号第4,946,778号及び同第5,260,203号を参照されたい。
【0040】
「ドメイン抗体」とは、重鎖の可変領域、または、軽鎖の可変領域のみを含有する、免疫学上機能的な免疫グロブリン断片である。場合によっては、2個以上のV領域がペプチドリンカーと共有結合し、二価ドメイン抗体を作製する。二価ドメイン抗体の2個のV領域は、同一または異なる抗原を標的にすることができる。
【0041】
「二価抗体」は、2個の抗原結合部位を含む。場合によっては、2個の結合部位は同じ抗原特異性を有する。しかし、二価抗体は二重特異的であってよい(以下を参照されたい)。
【0042】
特定の実施形態では、本明細書のモノクローナル抗体は、ラクダ化単一ドメイン抗体もまた含む。例えば、Muyldermans et al.(2001)Trends Biochem.Sci.26:230;Reichmann et al.(1999)J.Immunol.Methods 231:25;WO94/04678;WO94/25591;米国特許第6,005,079号を参照されたい。一実施形態では、本発明は、単一ドメイン抗体が形成されるように修飾された、2個のVドメインを含む単一ドメイン抗体を提供する。
【0043】
本明細書で使用する場合、「ダイアボディ」という用語は、2個の抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(V)に接続した重鎖可変ドメイン(V)(V-V、またはV-V)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を生成することができる。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;及びHolliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448により完全に記載されている。組換え抗体バリアントの概説については、Holliger and Hudson(2005)Nat.Biotechnol.23:1126-1136を参照されたい。
【0044】
通常、本明細書で提供する抗体のバリアント抗体または抗原結合断片は、活性がモル基準で発現する際に、(修飾された親抗体と比較すると)そのIGF-1R結合活性の少なくとも10%を保持する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供する抗体のバリアント抗体(もしくはその抗原断片)、または抗原結合断片は、親抗体としてのIGF-1R結合親和性の、少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%、または100%以上を保持する。本明細書に記載するように、本発明の抗体または抗原結合断片は、その生物学的活性を実質的に変化させない、抗体の「保存的バリアント」または「機能保存バリアント」とも呼ぶことができる、保存的または非保存的アミノ酸置換を含むことができることもまた意図される。
【0045】
「単離抗体」とは、精製状態の結合化合物を意味し、このような文脈においては、分子が、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物、または他の物質(細胞破片及び増殖培地など)といった他の生体分子を実質的に含有しないことを意味する。一般に、「単離された」という用語は、本明細書に記載する結合化合物の実験用または治療用の使用と実質的に干渉する量で存在しない限り、そのような物質が完全に存在しないこと、または、水、緩衝液、もしくは塩が存在しないことを意味することを意図しない。
【0046】
本明細書で使用する場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団を意味する、即ち、少量で存在し得る、可能性のある自然に存在する変異を除いて、当該集団を含む抗体分子がアミノ酸配列中で同一である。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は通常、多くの場合、異なるエピトープに対して特異的な、可変ドメイン(特にCDR)に異なるアミノ酸配列を有する、多数の異なる抗体を含む。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明による使用対象のモノクローナル抗体は、Kohler et al(1975)Nature 256:495が初めて述べたハイブリドーマ法によって作製してもよく、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)によって作製してもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)及びMarks et al.(1991)J.Mol.Biol.222:581-597に記載の技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離され得る。例えば、Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731を参照されたい。
【0047】
本明細書で使用する場合、「キメラ抗体」とは、第1の抗体由来の可変ドメインと、第2の抗体由来の定常ドメインと、を有し、第1及び第2抗体が異なる種に由来する、抗体である(米国特許第4,816,567号、及び、Morrison et al.,(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81: 6851-6855)。通常、可変ドメインは、げっ歯類などの実験用動物由来の抗体(「親抗体」)から入手され、定常ドメイン配列はヒト抗体から入手されるため、得られるキメラ抗体は、親(例えば、げっ歯類)抗体よりも、ヒト対象において有害な免疫応答を誘発する可能性が低い。
【0048】
本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト及び非ヒト(例えば、マウス、ラット)抗体の両方に由来する配列を含有する抗体の形態を意味する。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、フレームワーク(FR)領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は任意選択的に、ヒト免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含んでよい。
【0049】
「完全ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を意味する。完全ヒト抗体は、マウス、マウス細胞、または、マウス細胞由来のハイブリドーマで作製される場合、マウス糖鎖を含有してよい。同様に、「マウス抗体」とは、マウス免疫グロブリン配列のみを含む抗体を意味する。あるいは、完全ヒト抗体は、ラット、ラット細胞、または、ラット細胞由来のハイブリドーマで作製される場合、ラット糖鎖を含有してよい。同様に、「ラット抗体」とは、ラット免疫グロブリン配列のみを含む抗体を意味する。
【0050】
一般的に、基本的な抗体構造単位は四量体を含む。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対で構成され、各対は、1つの「軽鎖」(約25kDa)及び1つの「重鎖」(約50~70kDa)を含む。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与する約100~110以上のアミノ酸長の可変領域を含む。重鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を画定し得る。通常、ヒト軽鎖は、κ及びλ軽鎖として分類される。さらに、ヒト重鎖は通常、μ、δ、γ、α、またはεとして分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEとして定義する。軽鎖及び重鎖内では、可変及び定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域により結合され、重鎖は、約10個以上のアミノ酸の「D」領域もまた含む。一般的には、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989)を参照されたい。
【0051】
各軽/重鎖ペアの可変領域は、抗体結合部位を形成する。したがって、一般に、インタクトな抗体は2個の結合部位を有する。二官能性または二重特異性抗体を除いて、2個の結合部位は一般に同じである。
【0052】
通常、重鎖及び軽鎖の両方の可変ドメインは、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)内に位置する、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる3個の超可変領域を含む。CDRは通常、フレームワーク領域によりアラインされ、特定のエピトープへの結合を可能にする。一般に、N末端からC末端にかけて、軽鎖及び重鎖可変ドメインの両方は、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。各ドメインのアミノ酸の割り当ては一般に、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabat,et al.;National Institutes of Health,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91-3242(1991);Kabat(1978) Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabat,et al.,(1977) J.Biol.Chem.252:6609-6616;Chothia,et al.,(1987)J Mol.Biol.196:901-917またはChothia,et al.,(1989)Nature 342:878-883の定義に従う。
【0053】
本明細書で使用する場合、「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」、即ち「CDR」由来のアミノ酸残基(即ち、軽鎖可変ドメイン内の残基24~34(CDRL1)、50~56(CDRL2)、及び89~97(CDRL3)、ならびに、重鎖可変ドメイン内の残基31~35(CDRH1)、50~65(CDRH2)、及び95~102(CDRH3);Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.)、及び/または、「超可変ループ」由来のこれらの残基(即ち、軽鎖可変ドメイン内の残基26~32(CDRL1)、50~52(CDRL2)、及び91~96(CDRL3)、ならびに、重鎖可変ドメイン内の26~32(CDRH1)、53~55(CDRH2)、及び96~101(CDRH3);Chothia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917)を含む。本明細書で使用する場合、「フレームワーク」または「FR」という用語は、CDR残基として本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を意味する。CDRは、抗体を抗原またはエピトープに結合させるための、接触残基の大部分を提供する。対象となるCDRは、ドナー抗体の可変重鎖及び軽鎖配列に由来することができ、自然に存在するCDRのアナログもまた含み、これらのアナログは、これらが由来するドナー抗体と同じ抗原結合特異性及び/または中和能を共有する、または保持する。
【0054】
抗体は、米国特許または特許公報US7,417,130、US2004/132094、US5,831,012、US2004/023334、US7,250,297、US6,818,418、US2004/209243、US7,838,629、US7,186,524、US6,004,746、US5,475,096、US2004/146938、US2004/157209、US6,994,982、US6,794,144、US2010/239633、US7,803,907、US2010/119446、及び/またはUS7,166,697(これらそれぞれの内容全体が、参照により本明細書に援用されている)に記載されているとおり、完全長抗体、単一ドメイン抗体、組換え重鎖のみ抗体(VHH)、一本鎖抗体(scFv)、サメ重鎖のみ抗体(VNAR)、マイクロタンパク質(システインノットタンパク質、ノッティン)、DARPin;テトラネクチン;アフィボディ;トランスボディ;アンチカリン;アドネクチン;アフィリン;マイクロボディ;ペプチドアプタマー;オルタラーゼ;プラスチック抗体;フィロマー;ストラドボディ;マキシボディ;エビボディ;フィノマー、アルマジロ反復タンパク質、Kunitzドメイン、アビマー、アトリマー、プロボディ、イムノボディ、トリオマブ、トロイボディ;ペプボディ;ワクシボディ、ユニボディ;アフィマー、デュオボディ、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、ペプチド模倣分子、または合成分子の形態を取ることができる。参照として本明細書に援用されている、Storz MAbs.2011 May-Jun;3(3):310-317もまた参照されたい。
【0055】
「抗原」という用語とは、本明細書で使用する場合、直接もしくは間接的のいずれかで抗体を生成する、または、抗体に結合する能力を有するあらゆる分子を意味する。「抗原」の定義には、タンパク質コード核酸が含まれる。「抗原」は、抗体の結合パートナーもまた指すことができる。いくつかの実施形態では、抗原は、細胞表面に発現するIGF-1Rタンパク質である。いくつかの実施形態では、細胞はインタクトな細胞である。インタクトな細胞は、洗剤または他の試薬を用いて溶解、または破壊されて開いていない細胞である。細胞膜を破壊する、または、細胞膜に穴を開ける洗剤または他の試薬で処理されている細胞は、インタクトな細胞ではない。例えば、IGF-1Rタンパク質に結合する抗体の生成方法であって、当該方法が、上記IGF-1R抗体をコードする核酸分子を含む細胞を培養することを含む、上記方法を本明細書で提供する。
【0056】
本明細書で使用する場合、「特異的結合」、または「免疫特異的結合」、または「免疫特異的に結合する」とは、抗原に存在する所定の抗原(例えば、IGF-1R)またはエピトープに結合する抗体を意味する。いくつかの実施形態では、抗体は、10-7以下の解離定数(K)で結合し、所定の抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン、または他の非特異的ポリペプチド)に結合するKよりも、少なくとも2倍小さいKで、所定の抗原に結合する。「IGF-1Rを認識する抗体」、及び「IGF-1Rに対して特異的な抗体」という語句は、本明細書では、「IGF-1Rに免疫特異的に結合する抗体」という用語と同じ意味で用いられる。本開示においては、IGF-1Rが参照され得る。抗IGF-1R抗体に対して必要な特異性の程度は、抗体の使用目的に左右され得、いずれにせよ、使用目的に対して使用するための適合性により定義される。いくつかの実施形態では、想到する方法の、抗体の抗原結合部位に由来する抗体、または結合化合物は、任意の他の抗原との親和性よりも、少なくとも2倍大きい、少なくとも10倍大きい、少なくとも20倍大きい、または、少なくとも100倍大きい親和性で、その抗原(IGF-1R)に結合する。
【0057】
拮抗阻害により、mAb特異性及び親和性を測定する方法は、Harlow,et al.,Antibodies: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988),Colligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)、及びMuller,Meth.Enzymol.92:589 601(1983)に見出すことができ、これらの参考文献は、全体が参照により本明細書に援用されている。
【0058】
「ホモログ」という用語は、参照配列に対して、40%~100%の配列相同性または同一性を有するタンパク質配列を意味する。2個のペプチド鎖間の同一性パーセントは、デフォルト設定のVector NTI v.9.0.0のAlignXモジュール(Invitrogen Corp.,Carslbad,Calif.)を使用して、ペアワイズアラインメントにより測定することができる。いくつかの実施形態では、抗体、またはその抗原結合断片は、本明細書に記載する配列に対して、少なくとも50、60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%、または同一性を有する。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書に記載する配列と比較して、保存的置換を有する。例示的な保存的置換は表1に示され、これらは開示される主題の範囲に含まれる。保存的置換は、これらが抗体の性質に悪影響を及ぼさない限り、フレームワーク領域内、または抗原結合部位内に存在することができる。置換を加えて、抗体の性質、例えば、安定性または親和性を改善することができる。保存的置換は、そのような修飾が加えられる分子と同様の機能的及び化学的性質を有する分子を生み出す。例示的なアミノ酸置換を下表に示す。
【表1】
【0059】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供するタンパク質及びペプチドのバリアントを提供する。いくつかの実施形態では、バリアントは置換、欠失、または挿入を含む。いくつかの実施形態では、バリアントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個(例えば、1~10個)の置換を含む。本明細書に記載する置換は保存的置換であることができる。いくつかの実施形態では、置換は非保存的である。いくつかの実施形態では、バリアントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個(例えば、1~10個)の欠失を含む。いくつかの実施形態では、バリアントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個(例えば、1~10個)の挿入を含む。いくつかの実施形態では、置換、欠失、または挿入は、本明細書で提供するCDRに存在する。いくつかの実施形態では、置換、欠失、または挿入は、本明細書で提供するCDRに存在しない。
【0060】
「と組み合わせて」という用語は、本明細書で使用する場合、記載される剤を、混合物と共に、単剤として同時に、または、単剤として任意の順序で連続して、動物または対象に投与することができることを意味する。
【0061】
抗体を大きくして、遊離もしくはコンジュゲート形態で、または、大型タンパク質の文脈で天然配列として提示される場合に、これらの配列を認識して、これらの配列に結合する小型ペプチド配列にする技術は、当該技術分野において周知である。このような抗体としては、当該技術分野において既知のハイブリドーマまたは組換え技術により作製された、マウス、マウス-ヒト、及びヒト-ヒト抗体が挙げられる。抗体は、ヒト、マウス、ヒツジ、ラット、ウサギ、サメ、ラマ、またはニワトリでもまた作製することができる。いくつかの実施形態では、抗体はニワトリで作製される。抗体は、または他の小型動物で作製することもまた可能である。
【0062】
「エピトープ」という用語は、Abの抗原結合領域の1つ以上で、抗体により認識され結合されることが可能である、任意の分子の一部を指すことが意味される。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面分類からなり、特定の3次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。エピトープの例としては、IGF-1Rエピトープを形成する、本明細書に記載する残基が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、エピトープは、非変性タンパク質にのみ存在する。いくつかの実施形態では、エピトープは変性タンパク質にのみ存在する。
【0063】
いくつかの実施形態では、非ヒト抗体をコードするDNAの源としては、抗体を産生する細胞株、例えば、ハイブリドーマとして一般的に知られているハイブリッド細胞株が挙げられる。
【0064】
ハイブリッド細胞は、非ヒト抗体産生細胞、通常、天然もしくは組換え抗原のいずれかに対して免疫化した動物の脾臓細胞、または、抗原タンパク質配列のペプチド断片を融合することにより形成される。あるいは、非ヒト抗体産生細胞は、抗原で免疫化された動物の血液、脾臓、リンパ節、または他の組織から入手したBリンパ球であることができる。
【0065】
不死化機能を付与する第2の融合パートナーは、それ自体は抗体産生細胞ではないが、悪性腫瘍である、リンパ芽球腫細胞または形質細胞腫または骨髄腫細胞であることができる。融合パートナー細胞としては、SP2/0(ATCC CRL1581)と略されるハイブリドーマSP2/0-Ag14、及び、骨髄腫P3X63Ag8(ATCC TIB9)、またはその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、その参考文献の内容全体が参照により本明細書に援用されている、上記Ausubel、上記Harlow、及び上記Colliganを参照されたい。
【0066】
抗体は、本明細書で提供する実施例に従い生成することができる。配列が分かると、抗体は、既知の方法に従い生成することも可能になる。抗体は、異なる種類に転換することもまた可能である、例えば、ヒトIgGなどに転換することも可能である。抗体をヒト抗体に転換することで、ヒト対象は、抗体を外来のものと識別しないはずである。非ヒトIgG抗体をヒトIgG抗体に転換することは周知であり、天然配列が分かると日常的に行うことができる。本明細書で論じるとおり、抗体は既知の方法に従い修飾することができる。このような方法は、例えば、Riechmann L,Clark M,Waldmann H,Winter G(1988).Reshaping human antibodies for therapy”.Nature 332(6162): 332-323;Tsurushita N,Park M,Pakabunto K,Ong K,Avdalovic A,Fu H,Jia A,Vasquez M,Kumar S.(2004)に記載されている。キメラ抗体の抗原結合領域をコードするヌクレオチド配列に関与する抗体産生細胞は、非ヒト、例えば霊長類、またはヒト細胞の形質転換により産生することもまた可能である。例えば、抗体を産生するBリンパ球は、エプスタイン・バールウイルスなどのウイルスに感染して、これで形質転換することにより、不死抗体産生細胞を得ることができる(Kozbor et al.,Immunol.Today 4:72 79(1983))。あるいは、Bリンパ球は、周知のとおり、形質転換遺伝子または形質転換遺伝子産物を提供することにより形質転換することができる。例えば、その参考文献の内容全体が参照により本明細書に援用されている、上記Ausubel、上記Harlow、及び上記Colliganを参照されたい。細胞融合は、免疫学分野の当業者に周知の標準的な手順により実現される。融合パートナーの細胞株、ならびに、ハイブリドーマを融合及び選択し、mAbに対してスクリーニングするための方法が、当該技術分野において周知である。例えば、その参考文献の内容全体が参照により本明細書に援用されている、上記Ausubel、上記Harlow、及び上記Colliganを参照されたい。
【0067】
いくつかの実施形態では、抗体は、IGF-1Rに結合するMAbである。いくつかの実施形態では、抗体は、IGF-1Rのエピトープのアミノ酸に結合する。
【0068】
いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書で提供される配列を含む。
【0069】
抗体の配列を修飾して、ヒトIgG抗体を得ることができる。本明細書で提供する配列の転換を修飾して、他の種類の抗体を得ることができる。CDRは、他の抗体、タンパク質、または分子にもまた結合して、IGF-1Rに結合する抗体断片を作製することができる。これは、抗体薬物コンジュゲート(「ADC」)、多重特異性分子、またはキメラ抗原受容体の形態で存在することができる。本明細書で提供するCDR及び抗体配列は、ヒト化することも可能である、または、既知の方法に従い完全にヒトであることも可能である。配列は、本明細書に記載するキメラ抗体にすることもまた可能である。
【0070】
いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書で提供される配列を含むアミノ酸配列、またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書で提供する1個以上のアミノ酸配列、それらの抗原結合断片、またはそれらのヒトIgGバリアントを含む。「それらのヒトIgGバリアント」とは、開始抗体がヒトIgG抗体でない場合に、修飾してヒトIgGになっている抗体を意味する。
【0071】
本明細書に記載するとおり、既知の配列を用いる抗体の産生は日常的であり、任意の方法によって行うことができる。したがって、いくつかの実施形態では、抗体またはその断片をコードする核酸が提供される。いくつかの実施形態では、核酸は、本明細書で提供される配列をコードする。抗体は、修飾してキメラ抗体またはヒト抗体となることもまた可能である。抗体は、注射可能な医薬組成物で使用することもまた可能である。また本明細書に記載するとおり、抗体は、単離抗体または組換え抗体であることができる
【0072】
。いくつかの実施形態では、抗体、その断片、領域、または誘導体の「誘導体」(この用語は、切頭または修飾遺伝子によりコードされ、免疫グロブリン断片に機能的に似ている分子種を得たタンパク質を含む)が提供される。修飾としては、植物及び細菌毒素などの細胞毒性タンパク質をコードする遺伝子配列の付加が挙げられるが、これに限定されない。修飾としては、蛍光または化学発光タグなどのレポータータンパク質もまた含むことができる。断片及び誘導体は、任意の方法で作製することができる。
【0073】
本明細書に記載するAbにより認識される、これらの抗原結合領域及び/またはエピトープを同定することで、本出願の実施形態に匹敵する、同様の結合特性及び治療または診断実用性を備えた、さらなるモノクローナル抗体を生成するのに必要な情報がもたらされる。
【0074】
本明細書に記載する抗体をコードする核酸配列は、本明細書に記載する可変領域のうちの少なくとも1つをコードする、ゲノムDNAもしくはcDNA、またはRNA(例えば、mRNA)であることができる。V領域抗原結合セグメントをコードするDNAの源として、染色体遺伝子断片の使用に対する便利な代替物は、例えば、Liu et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 84:3439(1987)及びJ.Immunology 139:3521(1987))により報告されている、キメラ免疫グロブリン遺伝子を構築するために、cDNAを使用することであり、これらの参考文献は全体が、参照により本明細書に援用されている。cDNAの使用は、所望のタンパク質の合成を実現するために、宿主細胞に対して好適な遺伝子発現エレメントが遺伝子と組み合わされることを必要とする。cDNA配列の使用は、cDNA配列が、適切なRNAスプライシングシステムを欠く細菌または他の宿主で発現可能であるという点で、(イントロンを含有する)ゲノム配列に有利である。
【0075】
例えば、IGF-1R抗原を検出する、IGF-1R抗原に結合する、または、IGF-1R抗原を中和することができる、V領域抗原結合セグメントをコードするcDNAは、本明細書で提供するアミノ酸配列の使用に基づき、既知の方法を使用して提供することができる。遺伝暗号は縮重しているため、2種類以上のコドンを使用して、特定のアミノ酸をコードすることができる(Watson,et al.上記)。遺伝暗号を使用すると、それぞれがそのアミノ酸をコードすることができる、2つ以上の異なるオリゴヌクレオチドを同定することができる。特定のオリゴヌクレオチドが事実上、実際のXXXコード配列を構成するという確率は、異常な塩基対形成の関係、及び、抗体または断片を発現する真核または原核細胞において、特定のコドンが実際に使用される(ことで、特定のアミノ酸をコードする)頻度を考慮することにより推定することができる。このような「コドン使用規則」は、Lathe,et al.,J.Molec.Biol.183:1 12(1985)により開示されている。Latheの「コドン使用規則」を用いて、抗体可変または定常領域配列をコード可能な、理論上「最も可能性の高い」ヌクレオチド配列を含有する、単一のオリゴヌクレオチド、または一連のオリゴヌクレオチドを同定する。
【0076】
本明細書に記載する可変領域を、ヒト定常領域またはマウス定常領域を含む、任意の種類の定常領域と組み合わせることができる。抗体、断片、及び領域の定常(C)領域をコードするヒト遺伝子は、既知の方法により、ヒト胎児肝臓ライブラリーから得ることができる。ヒトC領域遺伝子は、ヒト免疫グロブリンを発現して産生するものを含む、任意のヒト細胞に由来することができる。ヒトC領域は、γ、μ、α、δ、またはε、及びこれらのサブタイプ、例えば、G1、G2、G3、及びG4を含む、ヒトH鎖の既知のクラスまたはアイソタイプのいずれかに由来することができる。H鎖アイソタイプは、抗体の様々なエフェクター機能を担うため、C領域の選択は、補体固定、または、抗体依存性細胞傷害(ADCC)における活性などの、所望のエフェクター機能により導かれる。好ましくは、C領域は、γ1(IgG1)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、またはμ(IgM)に由来する。ヒトC領域は、ヒトL鎖アイソタイプのκまたはλのいずれかに由来することができる。いくつかの実施形態では、抗体はFc領域ドメインを含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、抗体の半減期を延ばす変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、その全体が参照により本明細書に援用されている、米国特許第7,670,600号に記載されているものなどの変異を含む。いくつかの実施形態では、定常領域は、KabatのEUナンバリングインデックスに従い番号付けされた、野生型ヒトIgG定常ドメインに対応するアミノ酸残基428における位置に変異を含む。任意の特定の理論に束縛されるものではないが、残基428に対応する変異を含む抗体は、野生型ヒトIgG定常ドメインを有するIgGの半減期と比較して、半減期が増加している可能性がある。いくつかの実施形態では、変異は、トレオニン、ロイシン、フェニルアラニン、またはセリンによる、天然残基の置換である。いくつかの実施形態では、抗体は、KabatのEUナンバリングインデックスに従い番号付けした、アミノ酸残基251~256、285~290、308~314、385~389、及び429~436のうちの1つ以上において、対応する野生型ヒトIgG定常ドメインと比較して、1個以上のアミノ酸置換をさらに含む。これらの位置における特定の変異または置換は、米国特許第7,670,600号に記載されており、その全体が参照により援用されている。
【0077】
ヒト免疫グロブリンC領域をコードする遺伝子は、標準的なクローニング技術によりヒト細胞から入手することができる(Sambrook,et al.(Molecular Cloning: A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989) and Ausubel et al.,eds.Current Protocols in Molecular Biology(1987 1993))。ヒトC領域遺伝子は、2つのクラスのL鎖、5つのクラスのH鎖、及びこれらのサブクラスを呈する、既知のクローンを含有する遺伝子から速やかに入手することができる。F(ab’)及びFabなどのキメラ抗体断片は、適切に切頭されたキメラH鎖遺伝子を設計することで、調製することができる。例えば、F(ab’)断片のH鎖部分をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCHドメイン及びヒンジ領域、続いて、翻訳終止コドンをコードするDNA配列を含むことで、切頭分子が得られる。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する抗体、マウス、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体、抗体の断片及び領域は、IGF-1R抗原特異的抗体のH及びL鎖抗原結合領域をコードするDNAセグメントをクローニングし、これらのDNAセグメントをそれぞれ、C及びC領域をコードするDNAセグメントと結合させて、マウス、ヒト、またはキメラ免疫グロブリンコード遺伝子を作製することにより作製される。
【0079】
したがって、いくつかの実施形態では、ヒトC領域の少なくとも一部をコードする第2のDNAセグメントに結合した、結合(J)セグメントを備える機能的に再配列されたV領域などの、少なくとも非ヒト起源の抗原結合領域をコードする第1のDNAセグメントを含む融合キメラ遺伝子が作製される。
【0080】
したがって、抗体V及びC領域をコードするcDNA、本明細書に記載する実施形態のいくつかに従った抗体の産生方法は、以下に例示するいくつかの工程を伴う:1.抗IGF-1R抗原抗体を産生する細胞株に由来する、及び、重及び軽定常領域をもたらす、任意選択的な追加の抗体に由来するメッセンジャーRNA(mRNA)を単離し、これらをクリーニングして、これらからcDNA産生をすること;2.L及びH鎖遺伝子の適切なV及び/またはC領域遺伝子断片が、(i)適切なプローブで同定され、(ii)配列決定され、及び、(iii)キメラ抗体に対して、別の抗体由来のCまたはV遺伝子セグメントとの適合性が加えられることができる、精製mRNA由来の完全長cDNAライブラリーの調製;3.クローン化された特定のV領域遺伝子断片を、上述した、クローン化されたC領域遺伝子に結合することによる、完全なHまたはL鎖コード配列の構築;4.原核及び真核細胞を含む、選択された宿主でのL及びH鎖の発現及び作製により、マウス-マウス、ヒト-マウス、ヒト-ヒト、またはヒト-マウス抗体を提供すること。
【0081】
結合により、トリプレットリーディングフレームの変更または中断を伴わずに、連続して翻訳可能な配列がもたらされる場合、2つのコードDNA配列は、「作動可能に連結している」と言われる。結合が、当該遺伝子発現エレメントの適切な機能をもたらし、コード配列の発現をもたらす場合、DNAコード配列は、遺伝子発現エレメントに作動可能に連結している。
【0082】
本明細書で使用する場合、及び、特に断りのない限り、「約」という用語は、この語が修飾する値の±5%を意味することを意図する。したがって、約100は、95~105を意味する。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する抗体を使用して、抗原の存在を検出する。本抗体を、任意の装置または方法で使用して、抗原の存在を検出することができる。
【0084】
抗体を指す際の「精製された」という用語は、その自然環境において、分子と会合する他の物質を実質的に含まない抗体を意味する。例えば、精製タンパク質は、由来する細胞または組織からの、細胞物質または他のタンパク質を実質的に含まない。この用語は、単離したタンパク質が、分析するのに十分純粋であるか、または、少なくとも70%~80%(w/w)純粋、少なくとも80%~90(w/w)純粋、90~95%純粋;及び、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%(w/w)純粋である場合の調製物を意味する。いくつかの実施形態では、抗体は精製される。
【0085】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマの調製の代わりとして、本明細書に記載するポリペプチドで、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングすることにより、ポリペプチドに結合する免疫グロブリンライブラリーメンバーを単離することにより、ポリペプチドに対するモノクローナル抗体を同定及び単離することができる。ファージディスプレイライブラリーを生成してスクリーニングするための技術、及び市販されているキットは、当業者に周知である。さらに、抗体または抗原結合タンパク質ディスプレイライブラリーを生成し、スクリーニングするために使用するのに特に適している方法及び試薬の例は、文献に見出すことができる。したがって、本明細書に記載するエピトープを使用して、治療上、診断上、または、調査ツールとして使用可能な他の抗体をスクリーニングことができる。
【0086】
抗体コンジュゲート
本明細書で提供する抗体は、化学的部分にコンジュゲートすることもまた可能である。化学的部分はとりわけ、ポリマー、放射性核種、または細胞毒性因子であることができる。いくつかの実施形態では、これは、抗体薬物コンジュゲートと呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、化学的部分は、対象の体内で、抗体分子の抗体を増加させるポリマーである。好適なポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、2kDa、5kDa、10kDa、12kDa、20kDa、30kDa、または40kDa)、デキストラン、及びモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)が挙げられるが、これらに限定されない。Lee,et al.,(1999)(Bioconj.Chem.10:973-981)は、PEGコンジュゲート化一本鎖抗体について開示している。Wen,et al.,(2001)(Bioconj.Chem.12:545-553)は、放射性金属キレーター(ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA))に結合したPEGとの、抗体のコンジュゲート化について開示している。化学部分の例としては、カリケアマイシン(例えば、オゾガマイシン)、モノメチルオーリスタチンE、メルタンシンなどといった抗有糸分裂剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、生物学的に活性な微小管阻害剤、アルキル化剤、及び、DNA副溝結合剤が挙げられるが、これらに限定されない。の他の例を本明細書で、及び以下で示す。化学的部分は、連結基(アミノベンジル)、切断可能なリンカー、例えば、カテプシン切断可能なリンカー(バリン-シトルリン)、及び、いくつかの実施形態では、1個以上のスペーサー(例えば、p-アミノベンジルカルバメート)を介して抗体に結合することができる。任意の特定の理論に束縛されるものではないが、抗体コンジュゲートがIGF-1Rに結合すると、抗体コンジュゲートは内部化されることができ、化学的部分は細胞を殺傷することができる、または別の場合においては細胞の増殖を阻害することができる。いくつかの実施形態では、細胞は甲状腺細胞である。
【0087】
本発明の抗体及び抗体断片は、99Tc,90Y、111In、32P、14C、125I、H、131I、11C、15O、13N、18F、35S、51Cr、57To、226Ra、60Co、59Fe、57Se、152Eu、67CU、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pd、234Th、及び40K、157Gd、55Mn、52Tr、及び56Feなどのラベルによりコンジュゲート化することもまた可能である。
【0088】
抗体及び抗体断片は、希土類元素キレート、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、イソチオシアネート、フィリコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド、フルオレサミン、152Eu、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェリン、ルミナールラベル、イソルミナールラベル、芳香族アクリジニウムエステルラベル、イミダゾールラベル、アクリジニウム塩ラベル、シュウ酸エステルラベル、エクオリンラベル、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ビオチン/アビジン、スピンラベル、ならびに安定したフリーラジカルなどのフルオロフォアを含む、蛍光または化学発光ラベルとコンジュゲート化することもまた可能である。
【0089】
抗体分子は、ジフテリア毒素、Pseudomonas aeruginosaエキソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、αサルシン、Aleurites fordiiタンパク質及び化合物(例えば、脂肪酸)、ジアンチンタンパク質、Phytoiacca americanaタンパク質PAPI、PAPII、及びPAP-S、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、saponaria officinalis阻害剤、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、ならびにエノマイシンなどの細胞毒性因子にもコンジュゲート化することが可能である。
【0090】
Hunter,et al.,(1962)Nature 144:945;David,et al.,(1974)Biochemistry 13:1014;Pain,et al.,(1981)J.Immunol.Meth.40:219;及びNygren,J.,(1982) Histochem.and Cytochem.30:407により記載されている方法を含む、本発明の抗体分子を、様々な部分にコンジュゲート化するための、当該技術分野において既知の任意の方法を用いることができる。抗体をコンジュゲート化する方法は従来のものであり、当該技術分野において非常に周知である。
【0091】
キメラ抗原受容体
本明細書で提供する抗体は、例えば、CAR-T細胞で使用可能なキメラ抗原受容体(「CAR」)に組み込むことも可能である。いくつかの実施形態では、CARの細胞外ドメインは、本明細書で提供される抗体であることができる。いくつかの実施形態では、抗体はscFv形式である。CAR-T細胞は、患者のT細胞が、IGF-1Rを発現する細胞に攻撃するように修飾されている処置の1種である。細胞は、患者の血液から採取される。次に、患者の細胞上の特定のタンパク質に結合する特別な受容体を、実験室内で追加する。いくつかの実施形態では、受容体は、本明細書で提供する抗体の結合領域を用いて、IGF-1Rに結合する。次に、IGF-1R抗体を含むCAR-T細胞を使用して、本明細書で提供するものなどの病状を治療することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗体(例えば、抗IGF-1R抗体)を、本明細書で提供する。いくつかの実施形態では、抗体は、IGF-1Rタンパク質に結合する組換え抗体である。いくつかの実施形態では、IGF-1Rタンパク質はヒトIGF-1Rタンパク質である。いくつかの実施形態では、抗体により認識されるIGF-1Rタンパク質は、天然コンフォメーション(非変性)コンフォメーションとなっている。いくつかの実施形態では、抗体は、変性IGF-1Rタンパク質に特異的に結合しない。本明細書で使用する場合、「組換え抗体」という用語は、自然に存在しない抗体を意味する。いくつかの実施形態では、「組換え抗体」という用語は、ヒト対象から単離されない抗体を意味する。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、ここで、重鎖は、以下の配列:
QVQLVQSGAEVVKPGASVKLSCKASGYTFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGEINPSNGRTNYNQKFQGKATLTVDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYFARGRPDYYGSSKWYFDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号207)を含み、軽鎖は、以下の配列:
DVVMTQTPLSLPVSLGDPASISCRSSQSIVHSNVNTYLEWYLQKPGQSPRLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGAGTDFTLRISRVEAEDLGIYYCFQGSHVPPTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号210)を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、配列番号207の重鎖は、配列番号207のC末端に付加したC末端リジン残基を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、ここで、重鎖は、以下の配列:
QVQLVQSGAEVVKPGASVKLSCKASGYTFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGEINPSNGRTNYNQKFQGKATLTVDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYFARGRPDYYGSSKWYFDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号208)を含み、軽鎖は、配列番号210の配列を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、配列番号208の重鎖は、配列番号208のC末端に付加したC末端リジン残基を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、ここで、重鎖は、以下の配列:
QVQLVQSGAEVVKPGASVKLSSKASGYTFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGEINPSNGRTNYNQKFQGKATLTVDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYFARGRPDYYGSSKWYFDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号209)を含み、軽鎖は、配列番号210の配列を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、配列番号209の重鎖は、配列番号209のC末端に付加したC末端リジン残基を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、抗体は、以下の表に提供されるように、重鎖(HC)もしくは軽鎖(LC)配列、またはHC及びLC配列の組み合わせ、またはそれらのバリアントを含み得る:
【0100】
【表2-1】
【0101】
【表2-2】
【0102】
【表2-3】
【0103】
【表2-4】
【0104】
【表2-5】
【0105】
【表2-6】
【0106】
【表2-7】
【0107】
いくつかの実施形態では、抗体は、以下の表に提供されるように、重鎖可変領域(VH)もしくは軽鎖可変領域(VL)配列、またはVH及びVL配列の組み合わせ、またはバリアントを含み得る:
【0108】
【表3-1】
【0109】
【表3-2】
【0110】
【表3-3】
【0111】
【表3-4】
【0112】
【表3-5】
【0113】
【表3-6】
【0114】
【表3-7】
【0115】
【表3-8】
【0116】
【表3-9】
【0117】
【表3-10】
【0118】
【表3-11】
【0119】
【表3-12】
【0120】
【表3-13】
【0121】
【表3-14】
【0122】
【表3-15】
【0123】
【表3-16】
【0124】
【表3-17】
【0125】
【表3-18】
【0126】
【表3-19】
【0127】
【表3-20】
【0128】
【表3-21】
【0129】
【表3-22】
【0130】
【表3-23】
【0131】
【表3-24】
【0132】
【表3-25】
【0133】
【表3-26】
【0134】
【表3-27】
【0135】
【表3-28】
【0136】
【表3-29】
【0137】
【表3-30】
【0138】
【表3-31】
【0139】
【表3-32】
【0140】
【表3-33】
【0141】
【表3-34】
【0142】
【表3-35】
【0143】
【表3-36】
【0144】
本明細書で提供されるとおり、重鎖は、抗体の半減期に影響を与えることができる変異を有するものを含む、Fc領域に連結することができる。Fc領域の非限定的な変異は、本明細書で提供される。
【0145】
いくつかの実施形態では、LC及びHCは、定常領域の有無にかかわらず、本明細書で提供されるVH及びVLドメインと組み合わせることができる。定常領域は、本明細書で提供されるように置き換えることができる。VH及びVL領域を使用して、本明細書で提供する抗体を形成することができる。VH及びVL配列は、任意のフォーマットであり得、限定するものではないが、VH領域とVL領域がペプチドリンカーで連結されたscFvフォーマットが含まれる。本明細書で提供される様々なペプチドを連結するために使用することができるペプチドリンカーの例としては、(GGGGS)(配列番号211);(GGGGA)(配列番号212)、またはこれらの任意の組み合わせ(式中、各nは独立して1~5である)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、可変領域は、ペプチドリンカーで連結していない。
【0146】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が提供され、ここで、抗体または抗体断片は、以下の表から選択されるペプチドを含む。いくつかの実施形態では、VH領域及びVL領域のCDRは、以下の表から提供される。
【0147】
【表4-1】
【0148】
【表4-2】
【0149】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が提供され、ここで、抗体または抗体断片は、以下の表に提供される重鎖可変領域及び対応する重鎖可変領域CDRを含む。
【0150】
【表5】
【0151】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片が提供され、ここで、抗体または抗体断片は、以下の表に提供される軽鎖可変領域及び対応する軽鎖可変領域CDRを含む。
【0152】
【表6】
【0153】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64及び65からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)配列を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号2、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、及び54からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)配列を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、もしくは137のアミノ酸配列またはそのバリアントを含む、VHとVLのペアを含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号3のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号4のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号5のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号6のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号7のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号8のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号9のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号10のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号11のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号12のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号13のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号14のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号15のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号16のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号17のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号18のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号19のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号20のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号21のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号22のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号23のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号24のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号25のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号26のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号27のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号28のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号29のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号30のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号31のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号32のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号33のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号34のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号35のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号36のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号37のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号38のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号39のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号40のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号41のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号42のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号43のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号44のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号45のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号46のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号47のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号48のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号49のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号50のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号51のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号52のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号53のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号1のVH配列及び配列番号54のVL配列を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号10のVH配列及び配列番号41のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号12のVH配列及び配列番号41のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号18のVH配列及び配列番号41のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号26のVH配列及び配列番号41のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号27のVH配列及び配列番号41のVL配列を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号55のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号56のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号57のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号58のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号59のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号60のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号61のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号62のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号63のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号64のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号65のVH配列及び配列番号41のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号55のVH配列及び配列番号41のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号58のVH配列及び配列番号41のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号61のVH配列及び配列番号41のVL配列を含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、及び170からなる群から選択されるVH相補性決定領域(CDR)配列を含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号171、172、173、174、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、及び198からなる群から選択されるVLCDR配列を含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域であって、HCDR1配列が、配列番号138、139、140、141、142、143、144、145、146、もしくは147のアミノ酸配列、HCDR2が、配列番号148、149、150、151、152、153、もしくは154のアミノ酸配列、HCDR3配列が、配列番号155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、もしくは170のアミノ酸配列、または前述のいずれかのバリアントを有する、重鎖可変領域を含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1配列が、配列番号171、172、173、174、176、177、178、179、180、もしくは181のアミノ酸配列、LCDR2配列が、配列番号182、183、184、185、186、187、188、189、もしくは190のアミノ酸配列、LCDR3配列が、配列番号191、192、193、194、195、196、197、もしくは198のアミノ酸配列、または前述のいずれかのバリアントを有する、軽鎖可変領域を含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号139のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号140のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号141のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号142のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号143のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号144のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、61、もしくは65に記載されるアミノ酸配列またはその任意のバリアントを含む、VHペプチドを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号145のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号146のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号147のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号149のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号150のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号151のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号152のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号153のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号154のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号156のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号157のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号158のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号159のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号160のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号161のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号162のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号163のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号164のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号165のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号166のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号167のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号168のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号169のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号170のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号172のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号173のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号174のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号175のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号176のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号177のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号178のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号179のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号180のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号181のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号183のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号184のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号185のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号186のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号187のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号188のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号189のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号190のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号192のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号193のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号194のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号195のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号196のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号197のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号198のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号146のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号184のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号149のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号184のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号156のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号184のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号164のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号184のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号165のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号184のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号146のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号146のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号156のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号146のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号164のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号146のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号165のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号149のCDR2、及び配列番号156のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号149のCDR2、及び配列番号164のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号149のCDR2、及び配列番号165のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号182のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号146のCDR1、配列番号149のCDR2、及び配列番号165のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号184のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号146のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号155のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号184のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号146のCDR1、配列番号148のCDR2、及び配列番号165のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号184のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、配列番号138のCDR1、配列番号149のCDR2、及び配列番号165のCDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号171のCDR1、配列番号184のCDR2、及び配列番号191のCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、62、63、もしくは64に記載されるアミノ酸配列またはその任意のバリアントを含む、VLペプチドを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1~65の配列に対して、少なくとも少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同性である配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号66~137の配列に対して、少なくとも少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同性である配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号138~198の配列に対して、少なくとも少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同性である配列を含む。
【0176】
これらの特定の組み合わせに加えて、Vペプチド及びVペプチドのいずれかを、互いに組み合わせることができる。
【0177】
これらの特定の組み合わせに加えて、HCペプチド及びLCペプチドのいずれかを、互いに組み合わせることができる。
【0178】
いくつかの実施形態では、抗体は、ATCCクローンPTA-7444の配列、または抗原結合断片を含む。ATCCクローンPTA-7444により産生される抗体の配列は、参照により本明細書に援用され、その抗原結合断片を含む。
【0179】
さらに、本明細書で提供するとおり、抗体は、抗体が、異なるタンパク質を、または、異なるエピトープにおいて同じタンパク質を標的にする、多重結合領域を有するという点で、多重特異性抗体であることができる。いくつかの実施形態では、抗体は二重特異性抗体である。
【0180】
本明細書で提供されるとおり、本明細書に記載される異なるペプチド(VまたはV)は、ペプチドリンカーで連結されてもよいし、ペプチドリンカーで連結されずに、代わりに連続した配列であってもよい。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、次の配列:(GGGGS)(配列番号211);(GGGGA)(配列番号212)、またはこれらの任意の組み合わせ(式中、各nは独立して1~5である)を含む。連結されたペプチドフォーマットは、V-Z-VまたはV-Z-Vの式(式中、Zはペプチドリンカーである)によって表すことができる。いくつかの実施形態では、Zは、(GGGGS)(配列番号211);(GGGGA)(配列番号212)、またはこれらの任意の組み合わせ(式中、各nは独立して1~5である)である。
【0181】
本明細書で提供されるとおり、抗体またはその抗原結合断片は、配列のバリアントであることができる。
【0182】
抗体の他の例としては、それぞれの全体が参照により本明細書に援用されている、US20160096894A1、EP1399483B1、EP2194067B1、US20040202651A1、US20110229933A1、US8137933B2、US8951790B2、US20190270820A1、US7572897B2、US20090275126A1、EP1959014B1、US20080014203A1、US20080226635A1、US20120076778A1、US20190153071A1、WO2011161119A1、US10611825B2、US20120237507A1、EP2681240B1、US9982036B2、US20180312573A1、EP2681239B1、US20160151487A1、US20190225696A1、WO2017011773A2、US20200023076A1、US20190153471A1、US20190194713A1、WO2020006486A1、US20080112888A1、US20150168424A1、EP2032989B2、US9045536B2に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。抗体の他の例としては、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に援用されている、US8153121B2、EP1469879B1、WO2016064716A1、US20190270820A1、US20180280527A1、US20190225696A1、US7998681B2、US20040202651A1、US20050136063A1、US20090285824A1、US20150274829A1、EP2322550B1、US20060286103A1、US20070071675A1、US20100047239A1、US20130004416A1、US20080112888A1、US20150168424A1、US20100143340A1、US20110014117A1、US20100260668A1、US20100074900A1、US20150017168A1、US20110044980A1、US20130330323A1、US20120263722A1、US20120201746A1、US10519245B2、US20180243432A1、US20170218091A1、US20200115460A1、US20100104645A1、US20120065380A1、EP2970433B1、US20160289341A1、US20160289343A1、US20190293656A1に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
医薬組成物
いくつかの実施形態では、抗IGF-1R抗体、または本明細書で提供する他のタンパク質の、医薬または滅菌組成物を調製するために、抗体もしくはその抗原結合断片、または、本明細書で提供する他のタンパク質を、薬学的に許容される担体または賦形剤と混合する。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S.Pharmacopeia:National Formulary,Mack Publishing Company,Easton,PA(1984)を参照されたい。
【0184】
治療及び診断剤の製剤は、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液、または懸濁液の形態の、許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することにより調製することができる(例えば、Hardman,et al.(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw-Hill,New York,NY;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,NY;Avis,et al.(eds.)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;Weiner and Kotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NYを参照されたい)。いくつかの実施形態実施形態では、抗体を、酢酸ナトリウム溶液(pH5~6)中に適切な濃度で希釈し、張性のためにNaClまたはスクロースを添加する。ポリソルベート20またはポリソルベート80などの追加の剤を添加し、安定性を向上させることができる。
【0185】
単独で、または、別の剤と組み合わせて投与される、抗体組成物の毒性及び治療効果は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死性の用量)、及びED50(集団の50%で治療上有効な用量)を測定するための、細胞培養液または実験動物における、標準的な薬学的操作により測定することができる。毒性と治療効果との間の用量比は、治療指数(LD50/ED50)である。特定の態様では、高い治療指数を示す抗体が望ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から入手したデータを、ヒトで使用するための広範な用量を製剤化するのに使用することができる。このような化合物の用量は、好ましくは、毒性がほとんどないか、全くない状態で、ED50を含む血中濃度の範囲内にある。用いる剤形、及び投与経路に応じて、用量はこの範囲内で変動し得る。
【0186】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物を、医師用添付文書集2003(Thomson Healthcare;57th edition(November 1,2002))に従い対象に投与する。
【0187】
投与方法は様々であることができる。好適な投与経路としては、経口、直腸、経粘膜、腸、非経口;筋肉内、皮下、皮内、髄内、髄腔内、直接心室内、静脈内、腹腔内、経鼻、眼内、吸引、吸入、局所、皮膚、経皮、または動脈内が挙げられる。
【0188】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、注射などの侵襲的経路により投与することができる。いくつかの実施形態では、抗体、またはその抗原結合断片、もしくはその医薬組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、動脈内、関節内(例えば、関節炎の関節に)投与される、または、吸引、エアロゾル送達により投与される。非侵襲的経路による(例えば、経口:例えば、丸薬、カプセル、または錠剤内での)投与もまた、本実施形態の範囲内である。
【0189】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、目、目の前眼房、目の硝子体眼房、脈絡膜上空間、または眼窩後腔に直接投与することができる。いくつかの実施形態では、目、目の前眼房、目の硝子体眼房、脈絡膜上空間、または眼窩後腔への投与は、注射による。いくつかの実施形態では、注射は、硝子体内注射、眼窩内注射、眼窩後注射、脈絡膜上注射、または腔内注射である。いくつかの実施形態では、注射は硝子体内注射である。いくつかの実施形態では、注射は眼窩内注射である。いくつかの実施形態では、注射は眼窩後注射である。いくつかの実施形態では、注射は上脈絡膜注射である。いくつかの実施形態では、注射は腔内注射である。
【0190】
いくつかの実施形態では、抗IGF-1R抗体、またはその抗原結合断片は、限定されるものではないが、甲状腺眼疾患を治療するために使用される任意の治療薬などの少なくとも1種の追加の治療剤と組み合わせて投与される。例えば、いくつかの実施形態では、抗IGF-1R抗体、またはその抗原結合断片は、限定されるものではないが、甲状腺眼疾患、または、甲状腺眼疾患と関連する病状を治療するために使用される治療剤などの少なくとも1種の追加の治療剤と組み合わせて投与される。そのような治療薬及び治療剤の例としては、抗甲状腺投薬、糖尿病投薬、βブロッカー、プロピルチオウラシル、メチマゾール、プロプラノロール、アテノロール、メトプロロール、ナドロール、コルチコステロイド、メトホルミン、スルホニル尿素、メグリチニド、チアゾリジンジオン、DPP-4阻害剤、GLP-1受容体アゴニスト、SGLT2阻害剤、レギュラーインスリン、インスリンアスパルト、インスリングルリジン、インスリンリスプロ、インスリンイソフェン、インスリンデグルデク、インスリンデテミル、インスリングラルギン、アカルボース、ミグリトール、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルテオロール、カルベジロール、エスモロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、ネビボロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール、トモロール、眼科領域溶液、シタグリプチン、サクサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン、デュラグルチド、エキセナチド、セマグルチド、リラグルチド、リキシセナチド、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、またはこれらのいずれかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
組成物は、当該技術分野において既知の医療デバイスを用いて投与することができる。例えば、本発明の医薬組成物を、例えば、予充填シリンジまたは自動注射器を含む、皮下注射針を用いる注射により投与することができる。
【0192】
医薬組成物は、米国特許第6,620,135号;同第6,096,002号;同第5,399,163号;同第5,383,851号;同第5,312,335号;同第5,064,413号;同第4,941,880号;同第4,790,824号、または同第4,596,556号に開示されているデバイスなどの、無針皮下注射デバイスを用いて投与することも可能である。
【0193】
医薬組成物は、輸液により投与することもまた可能である。医薬組成物を投与する、周知のインプラント及びモジュール形態の例としては、制御した速度にて薬剤を分配するための、埋込み型マイクロ輸液ポンプについて開示している、米国特許第4,487,603号;正確な輸液速度にて薬剤を送達するための薬剤輸液ポンプについて開示している、同第4,447,233号;連続薬剤送達のための、流れ変更可能な埋込み型輸液装置について開示している、同第4,447,224号;複数のチャンバ区画を有する浸透性ドラッグデリバリーシステムについて開示している、同第4,439,196号が挙げられる。多くの他のそのようなインプラント、デリバリーシステム及びモジュールが、当業者に周知である。
【0194】
あるいは、例えば、抗体を、多くの場合デポー、または持続放出性製剤で、関節炎の関節に、または、免疫病理により同定された病原体誘発性病変に直接注射することで、抗体を全身にではなく局所に投与することができる。さらに、抗体を、例えば、関節炎の関節、または、免疫病理により同定された病原体誘発性病変を標的とする、組織特異的抗体でコーティングしたリポソーム内で、標的化薬物送達システムで投与することができる。リポソームは、患部組織を標的とし、患部組織により選択的に取り込まれる。
【0195】
投与レジメンは、治療用抗体の血清または組織代謝率、症状の度合い、治療用抗体の免疫原性、及び、生物学的マトリックス内での標的細胞の接近可能性を含む複数の因子に応じて変化する。好ましくは、投与レジメンは、望ましくない副作用を同時に最小限に抑えながら、標的病状において改善をもたらすのに十分な治療用抗体を送達する。したがって、送達される生物学的剤の量は、部分的には、特定の治療用抗体、及び、治療されている病状の重症度に応じて変化する。適切な用量の治療用抗体を選択する手引きは、入手可能である(例えば、Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(ed.)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(ed.)(1993)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY;Baert,et al.(2003)New Engl.J.Med.348:601-608;Milgrom et al.(1999)New Engl.J.Med.341:1966-1973;Slamon et al.(2001)New Engl.J.Med.344:783-792;Beniaminovitz et al.(2000)New Engl.J.Med.342:613-619;Ghosh et al.(2003)New Engl.J.Med.348:24-32;Lipsky et al.(2000)New Engl.J.Med.343:1594-1602)を参照されたい)。
【0196】
適切な用量の決定は、例えば、当該技術分野において、治療に影響を及ぼすことが知られている、または疑われるパラメーターまたは因子を用いて、臨床医によりなされる。一般に、用量は、最適用量をいくばくか下回る量で開始し、その後、任意の負の副作用と比較して、所望の、または最適化効果が達成されるまで、少量ずつ増加する。重要な診断指標としては、例えば、炎症の症状の指標、または、産生される炎症性サイトカインの量が挙げられる。一般に、使用される生物学的剤は、治療の標的とされる動物と同じ種に由来することが望ましく、これにより、試薬に対する任意の免疫応答を最小限に抑える。ヒト対象の場合、例えば、キメラ、ヒト化、及び完全ヒト抗体が、望ましい可能性がある。
【0197】
抗体またはその抗原結合断片は、連続輸液により、または、例えば、1週間に1~7回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、半年に1回、1年に1回などで投与される用量により提供することができる。用量は、例えば、静脈内、皮下、局所、経口、経鼻、直腸、筋肉内、脳内、脊髄内で、または、吸入により提供される。いくつかの実施形態では、抗体は、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、または8週間ごとに投与される。いくつかの実施形態では、抗体は4週間ごとに投与される。いくつかの実施形態では、抗体は5週間ごとに投与される。いくつかの実施形態では、抗体は7週間ごとに投与される。いくつかの実施形態では、抗体は6週間ごとに投与される。いくつかの実施形態では、抗体は8週間ごとに投与される。いくつかの実施形態では、抗体は少なくとも21~52週間、またはそれ以上投与される。いくつかの実施形態では、抗体は少なくとも21週間、そのようなスケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、抗体は少なくとも24週間、そのようなスケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、抗体は少なくとも32週間、そのようなスケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、抗体は少なくとも36週間、そのようなスケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、抗体は少なくとも40週間、そのようなスケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、抗体は少なくとも42週間、そのようなスケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、抗体は1回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は2回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は3回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は4回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は5回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は6回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は7回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は8回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は9回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は10回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は11回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は12回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は13回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は14回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は15回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は16回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は17回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は18回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は19回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。いくつかの実施形態では、抗体は20回(例えば、輸液または連続注射で)投与される。抗体が2回以上投与される場合、抗体は、本明細書で提供するスケジュールなどのスケジュールに従って投与することができる。
【0198】
総週用量は、本明細書で提供するとおりであることができる。いくつかの実施形態では、総週用量は、少なくとも0.05μg/kg体重、より一般的には、少なくとも0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.25mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/mL、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kg、またはそれ以上である(例えば、Yang,et al.(2003) New Engl.J.Med.349:427-434;Herold,et al.(2002)New Engl.J.Med.346:1692-1698;Liu,et al.(1999)J.Neurol.Neurosurg.Psych.67:451-456;Portielji,et al.(20003)Cancer Immunol.Immunother.52:133-144を参照されたい)。用量は、対象の血清中で、抗体の所定の目標濃度、例えば、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300μg/mLを達成するように提供することもまた可能である。
【0199】
いくつかの実施形態では、抗体は、対象において、投与の少なくとも1、2、または3週間後に、少なくとも、または、約10μg/mL、または20μg/mL、50μg/mL、70μg/mL、75μg/mL、80μg/mL、85μg/mL、90μg/mL、95μg/mL、100μg/mL、または105μg/mLの血清濃度を有する。
【0200】
いくつかの実施形態では、20mg/kg・IVの用量が投与される。いくつかの実施形態では、用量を使用して、約5週間後に、133ug/mLのCminをもたらす。いくつかの実施形態では、6週間後に102ug/mLのCminをもたらす抗体の用量が投与される。いくつかの実施形態では、抗体の用量は、負荷投与量が10mg/mgであり、後続の用量が負荷投与量以下となるものなど、本明細書で提供されるとおりである。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書で提供されるとおり、少なくとも、または約、100ug/mLのCminを達成する用量で投与される。
【0201】
本明細書で使用する場合、「阻害する」または「治療する」または「治療」は、障害と関連する症状の進行を遅らせること、及び/または、そのような障害の症状の深刻度を低下させることを含む。これらの用語は、既存の、制御されていない、または望ましくない症状を軽減すること、さらなる症状を予防すること、及び、そのような症状の根底にある原因を予防することをさらに含む。したがって、これらの用語は、障害、疾患、もしくは症状を有する、または、そのような障害、疾患、もしくは症状が進行する可能性がある脊椎動物対象において、有益な結果がもたらされたことを表す。
【0202】
本明細書で使用する場合、「治療に有効な量」、「治療的有効用量」、及び「有効量」という用語は、単独で、または、追加の治療剤と共に、細胞、組織、または対象に投与されたときに、疾患もしくは病状の1つ以上の症状の、または、そのような疾患もしくは病状の進行の、測定可能な改善を引き起こすのに効果的な、抗体またはその抗原結合断片の量を意味する。治療的有効用量とは、さらに、症状の少なくとも部分的な軽減、例えば、関連する医学的状態の治療、治癒、予防、もしくは軽減、または、そのような状態の治療、治癒、予防、もしくは軽減の速度の増加をもたらすのに十分な、結合化合物の量を意味する。単独で投与される個別の活性成分に適用される場合、治療的有効用量とは、その成分のみを指す。組み合わせに対して適用される場合、治療的有効用量とは、組み合わせが連続、または同時のいずれかにかかわらず、治療効果をもたらす、有効成分の組み合わせた量を指す。有効量の治療剤は、少なくとも10%;通常、少なくとも20%;好ましくは少なくとも約30%;より好ましくは少なくとも40%、及び最も好ましくは少なくとも50%の、診断指標またはパラメーターの改善をもたらす。有効量は、主観的な指標を用いて疾患の重症度を調査する場合における、主観的な指標の改善もまたもたらすことができる。いくつかの実施形態では、量は、本明細書で提供する病状を治療または軽減するために使用可能な量である場合、治療に有効な量である。
【0203】
全体で使用される「対象」という用語は、哺乳類(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)、及び、例えばヒトを含む動物などの、任意の生体を含む。対象は、患者と呼ぶこともまた可能である。いくつかの実施形態では、対象は、必要とする対象である。「必要とする」対象とは、治療の必要がある病状に対して治療を必要とすると特定され、そのような病状の治療を、特定の目的で治療される対象を意味する。病状は例えば、本明細書に記載する病状のいずれかであることができる。
【0204】
一方で、単離抗体は、IGF-1Rタンパク質、または、本明細書に記載する他のタンパク質のエピトープに結合し、インビトロ及び/またはインビボでのIGF-1R阻害または治療活性を示し、IGF-1R機能を阻害することが可能な抗体またはその抗原結合断片は、ヒト及び動物の両方における、IGF-1R関連病状を治療するための治療剤として好適である。これらの病状としては、甲状腺眼疾患が挙げられる。したがって、そのような病状の治療方法であって、当該方法が、抗体またはその抗原結合断片を、そのような病状を有する対象に投与することを含む、上記方法もまた提供される。
【0205】
いくつかの実施形態では、方法は、治療的または予防的有効量の、本明細書に記載する抗体の、1種以上のモノクローナル抗体または抗原結合断片を、影響を受けやすい対象、または、IGF-1Rが知られている、もしくは、観察される病状の原因であることが疑われる病状を示す対象に投与することを含む。scFv、Fab、及びF(ab’)2断片を含むがこれらに限定されない、任意の活性形態の抗体、ならびに、本明細書で提供する他の形態の抗体を投与することができる。
【0206】
本明細書で使用する場合、IGF-1R関連病状とは、IGF-1Rの調節により引き起こされる状態を指す。これらの状態としては、甲状腺眼疾患、及び、本明細書で提供される他の状態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0207】
いくつかの実施形態では、使用する抗体は、レシピエント種と適合性があるため、MAbに対する免疫応答は、許容されないほど短い循環半減期をもたらさない、または、対象において、MAbに対する免疫応答を誘発しない。
【0208】
個体の治療は、治療上の有効量の、本明細書に記載する抗体を投与することを含んでよい。抗体は、本明細書で提供するものなどのキットで提供することができる。抗体は単独で、または、本明細書で提供するものなどの、別の治療剤、鎮痛剤、もしくは診断剤と混合して使用または投与することができる。患者に、IGF-1Rに結合可能な抗体もしくはその断片、または、レシピエント患者における病状であるIGF-1Rに対して防御可能な抗体を提供する場合、投与される剤の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身状態、以前の病歴などの因子に応じて変化する。
【0209】
IGF-1R活性と関連する病状を治療可能な、または、IGF-1R関連病状を治療するために使用可能な抗体は、IGF-1R関連症状または病状における低減、回復、または軽減に影響を及ぼすのに十分な量で、対象に提供することができる。このような病状として、甲状腺眼疾患などが挙げられる。
【0210】
したがって、いくつかの実施形態では、IGF-1R媒介性障害を患う対象の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書で提供する抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、障害は甲状腺眼疾患である。本明細書で提供されるとおり、抗体またはその抗原結合断片は、他の治療剤と共に投与することができる。これらは同時に、または連続して投与することができる。
【0211】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片を使用して甲状腺眼疾患を治療することができる。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片を使用して、甲状腺関連眼病(TAO)の重症度、またはその症状を治療または軽減することができる。
【0212】
いくつかの実施形態では、甲状腺関連眼病(TAO)を患う対象において、目における眼球突出を軽減する方法または使用を提供する。
【0213】
いくつかの実施形態では、対象は、本明細書で提供するものとは異なる抗体で、以前に治療されている対象である。
【0214】
いくつかの実施形態では、方法または使用は、甲状腺関連眼病(TAO)を有する、または、有することが疑われている対象における、臨床活動性スコア(CAS)に提供される。
【0215】
いくつかの実施形態では、方法または使用は、a)眼球突出を少なくとも2mm減少させる、及び、b)臨床活動性スコア(CAS)を低下させるために提供される。
【0216】
本明細書で使用する場合、臨床活動性スコア(CAS)という用語は、表2に記載し採点する手順を意味する。この手順に従うと、下表で説明されるパラメーターのそれぞれが存在すると、1ポイントが与えられる。ポイント全ての合計が臨床活動性を画定し、CASを提供し、ここで、0または1は不活動性の疾患を構成し、7は深刻な活動性眼病を構成している。
【0217】
【表7】
【0218】
表2に示すように、CASは、7つの構成要素:自然発生的な眼球後部の痛み、目を動かそうとするときの痛み(上、横から横、及び下を凝視;場合によっては「凝視誘発性眼窩疼痛」と呼ばれる)、結膜の赤み、眼瞼の赤み、カルンクル/ヒダの腫れ、ならびに、眼瞼の腫れからなる。各構成要素は、存在する(1ポイント)または存在しない(0ポイント)で採点される。各有効性評価におけるスコアは、存在する項目全ての合計であり、0~7の範囲を与え、0または1は不活動性疾患を、7は深刻な活動性眼病を構成する。2ポイントを超える変化は、臨床的に有意であるとみなされる。
【0219】
自然発生的な眼窩の痛みである項目1は、眼球、または眼球の後ろに痛みがある、または、圧迫を感じる、とすることができる。この痛みは、眼窩組織の体積が、細胞外基質の過剰な合成、液体貯留、ならびに、細胞湿潤及び膨張により増加する際に、眼窩内圧の上昇により引き起こされる可能性がある。凝視誘発性眼窩疼痛の項目2は、上、下、または横を見る、または見ようとする際の、眼内の痛み、即ち、上方、下方もしくは水平の目の動きに伴う、または、目を移動させようとする際の痛みとすることができる。この種の痛みは、特に、上を凝視しようとする際に、炎症した筋肉(複数可)の伸びによって生じる可能性がある。「引き延ばされるような痛み」は、眼窩内圧の増加の徴候であると予測されるため、眼球を指で押すことによって引き起こされない可能性がある。どちらの種類の痛みも、抗炎症治療の後に軽減しない可能性がある。したがって、これらの痛みは、眼窩における自己免疫性炎症と直接関係し、故に、TAO活性の評価に有用であると考えられる。
【0220】
TAOの腫れは、表1の項目6にある結膜浮腫(結膜の浮腫)、ならびに、カルンクル及び/または結膜半月ヒダの腫れとして見られる。共に、TAO活性の徴候である。腫れた眼瞼は、浮腫、眼窩隔膜を介する脂肪の脱出、または線維の退化により引き起こされることができる。腫れに加えて、活性TAOを示す他の症状としては、結膜、眼瞼、カルンクル、及び/または結膜半月ヒダの、赤み及び/または痛みが挙げられる。
【0221】
いくつかの実施形態では、治療される対象は、少なくとも2mm減少する眼球突出を有する。いくつかの実施形態では、治療される対象は、少なくとも3mm減少する眼球突出を有する。いくつかの実施形態では、治療される対象は、少なくとも4mm減少する眼球突出を有する。
【0222】
いくつかの実施形態では、治療された対象においては、対象の臨床活動性スコア(CAS)が少なくとも2ポイント低下する。いくつかの実施形態では、対象の臨床活動性スコア(CAS)は、(1)まで低下する。いくつかの実施形態では、対象の臨床活動性スコア(CAS)は、ゼロ(0)まで低下する。
【0223】
いくつかの実施形態では、対象における甲状腺関連眼病(TAO)の治療方法、またはTAOの重症度の低下方法であって、上記抗体による治療が、(i)目における眼球突出を少なくとも2mm減少させ;(ii)他方(即ち、他眼)における2mm以上の悪化を伴わず;かつ(iii)上記対象におけるCASを、(1)またはゼロ(0)まで低下させる、上記方法を提供する。
【0224】
いくつかの実施形態では、甲状腺関連眼病(TAO、グレーブス眼病/グレーブス眼症とも呼ばれる)を患う対象における生活の質の改善方法を提供する。いくつかの実施形態では、生活の質は、グレーブス眼病の生活の質(GO-QoL)調査、または、その目視機能化もしくは外観サブスケールのいずれかにより測定される。いくつかの実施形態では、治療は、GO-QoLにおいて8ポイント以上の改善をもたらす。いくつかの実施形態では、治療は、GO-QoLの機能化サブスケールの改善をもたらす。いくつかの実施形態では、治療は、GO-QoLの外観サブスケールの改善をもたらす。
【0225】
いくつかの実施形態では、甲状腺関連眼病(TAO)を患う対象における複視の治療方法、またはTAOの重症度の低下方法を提供する。いくつかの実施形態では、複視は定常性複視である。いくつかの実施形態では、複視は非定常性複視である。いくつかの実施形態では、複視は断続性複視である。いくつかの実施形態では、複視の重症度の改善または軽減は、抗体投与を中断した後、少なくとも20週間持続する。いくつかの実施形態では、複視の重症度の改善または軽減は、抗体投与を中断した後、少なくとも50週間持続する。
【0226】
疾患の重症度は、以下の非限定的な実施形態で測定することができる。例えば、眼瞼の開口部に関して、眼瞼縁どうしの距離は、第1眼位、リラックスした座位で、及び離れた固視で見ている患者で測定される(mmで)。眼瞼の腫れに関しては、指標/評価は、「存在しない/不確定」、「適度」、または「深刻」のいずれかである。眼瞼の赤みは、存在しないか、または存在するかのいずれかである。結膜の赤みは、存在しないか、または存在するかのいずれかである。いくつかの実施形態では、結膜浮腫は、存在しないか、または存在するかのいずれかである。いくつかの実施形態では、カルンクルまたはヒダの炎症は、存在しないか、または存在するかのいずれかである。眼球突出は、個別の患者に対して、同じヘルテル眼球突出計、及び、同じ眼角距離を用い、ミリメートル単位で測定される。自覚的な複視は、0~3で採点される(0=複視なし;1=断続的、即ち、疲れたとき、または最初に起床するときの、凝視の第1眼位における複視;2=不定、即ち、極度の凝視における複視;3=一定、即ち、第1眼位または読書眼位における連続した複視)。眼筋の浸潤に関して、ひき運動は角度で測定される。角膜浸潤は、存在しない/斑点状、または角膜症/潰瘍のいずれかである。視神経の浸潤、即ち、最も強制された視力、色覚、視神経乳頭、相対的な求心性瞳孔障害に関して、病状は、存在しないか、または存在するかのいずれかである。加えて、視神経の圧迫が疑われる場合、視野を確認する。いくつかの実施形態では、患者は、以下の重症度分類に従って分類することができる。例えば、視野を脅かす甲状腺眼疾患:甲状腺機能不全による視神経症(DON)、及び/または角膜破損。このカテゴリーは、即座の介入を認めている。適度~深刻な甲状腺眼疾患:眼疾患が日常生活に十分な影響を及ぼすため、免疫抑制(活性である場合)、または外科的介入(不活性である場合)のリスクを正当化する、視野を脅かす疾患を有しない患者。適度~深刻な甲状腺眼疾患を患う患者は通常、以下のうちのいずれか1つを有する:2mm以上の眼瞼の収縮、適度または深刻な軟組織の浸潤、人種及び性別に対して普通以上の、3mm以上の眼球突出、不定または一定の複視。軽度の甲状腺眼疾患:甲状腺眼疾患の特徴が、免疫抑制または外科治療を正当化するには不十分な程度の、日常生活への微小な影響のみを有する患者。この患者は通常、以下のうちの1つ以上のみを有する:わずかな眼瞼の収縮(2mm未満)、軽度の軟組織浸潤、人種及び性別に対して普通以上の、3mm未満の眼球突出、一過性の複視または複視がないこと、ならびに、潤滑剤に応答する角膜露出。
【0227】
いくつかの実施形態では、患者は、グレーブス眼病の生活の質(GO-QoL)スコアにより特徴付けることができる。眼球突出(または眼球突出)及びCASに加えて、生活の質は、GOの生活の質(GO-QoL)アンケートを用いてもまた、調査される。このアンケートは、本明細書で開示する方法による治療の後の、改善された生活の質を測定するように設計されている。いくつかの実施形態では、アンケートは、糖質コルチコイドを用いる治療と比較して、本明細書で開示する方法に従い、抗体、またはその抗原結合断片で治療された後に、副作用が減少、または喪失していることを測定することができる。GO-QoLは、2つのサブセットに分けられ、(i)自身の毎日の身体活動(この活動が、視覚機能に関係するため)、及び(ii)心理社会的機能において、対象により、TEDの知覚される効果を評価するために使用される、16項目の自己管理されるアンケートである。生活の質は、GO QoLアンケートを用いて調査される。GO-QoLアンケート[C.B.Terwee et al,1998]は、治療期間中の1日目、ならびに6、12、及び24週目(またはPW)、ならびに、追跡期間中の7及び12ヶ月目(またはPW)に完了される。GO-QoLは、2つの自己評価サブスケール;一方は、毎日の活動における視覚機能の影響のカバー、他方は、自分で知覚する外観への影響の調査に分けられる、16項目の自己管理アンケートである。視覚機能のサブスケールは、車の運転、屋外の散歩、読書、テレビの視聴などの活動をカバーする。外観のサブスケールは、対象に、眼病が対象の外見を変えたか否か;他人に、対象に対してネガティブな反応を引き起こしたか否か;社会的孤立を引き起こしたな否か;及び、対象に、自身の外見を隠させるようにしたか否かなどの質問を問いかける。各サブスケールは、「はい(非常にそう思う)」、「はい(わずかに)、または「いいえ(全く当てはまらない)」で答える8個の質問を有する。各はそれぞれ0~2で採点され、次いで、そのままの全スコアが、0~100スケールに機械的に変換され、ここで、0は生活の質における最も負の影響を表し、100は影響がないことを表す。0~100スケールにおいて、8ポイント以上の変化は、臨床的に有意であることが示されている。組み合わせたスコアは、両方のサブスケールからのそのままのスコアを利用し、再び、これらを単独の0~100スケールに変換する。アンケートは、2つの自己評価サブスケールを有する。各サブスケールは、(i)「はい(非常にそう思う)」、(ii)「はい(わずかに)、または(iii)「いいえ(全く当てはまらない)」で答える8個の質問を有する。各はそれぞれ0~2で採点され、次いで、そのままの全スコアが、0~100スケールに機械的に変換され、ここで、0は生活の質における最も負の影響を表し、100は影響がないことを表す。0~100スケールにおいて、8ポイントを超える変化は臨床的に有意であるとみなされる。組み合わせたスコアは、両方のサブスケールからのそのままのスコアを利用し、再び、これらを単独の0~100スケールに変換する。
【0228】
患者は、複視のゴーマン等級付けの有無で評価することもできる。主観的な複視のゴーマン評価は、4つのカテゴリー:複視なし(存在しない)、患者が疲れた、または起床するときの複視(断続的)、極度の凝視の際の複視(不定)、及び、第1眼位または読書位置での連続した複視(一定)を含む。患者は、自身が経験している複視の等級に従い採点される。1等級以上の改善は、臨床的に有意であるとみなされる。
【0229】
いくつかの実施形態では、方法は、本明細書で提供するものなどの抗体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、第1用量として、約1mg/kg~約5mg/kgの抗体の投与量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、第1用量として、約5mg/kg~約10mg/kgの抗体の投与量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、後続用量として、約5mg/kg~約20mg/kgの抗体の投与量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体は次の量:第1用量として約10mg/kgの抗体;及び、後続用量で約20mg/kgの抗体で投与される。いくつかの実施形態では、後続用量は、少なくとも21週間の間、3週間ごとに投与される。
【0230】
いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書で提供するものなどの医薬組成物で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、TAOの治療のための、1種以上の薬学的に活性な化合物をさらに含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、コルチコステロイド;リツキシマブもしくは他の抗CD20抗体;トシリズマブもしくは他の抗IL-6抗体;または、セレン、インフリキシマブ、もしくは他の抗TNFα抗体、もしくは甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)阻害剤をさらに含む。
【0231】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する方法は、IGF-IRに特異的に結合し、IGF-IRを阻害する抗体、またはその抗原結合断片を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書で提供するとおりである。
【0232】
本明細書に記載する実施形態を実施するのに有用なキットもまた提供する。本キットは、上述した抗体を含有する、または当該抗体と共にパッケージ化される第1の容器を含む。キットは、実施形態を実施するために必要な、または便利な関連溶液を含む、または、関連溶液にパッケージ化される、別の容器もまた含んでよい。容器は、ガラス、プラスチック、またはホイル製であることができ、バイアル瓶、ボトル、パウチ、チューブ、バッグなどであることができる。キットは、第1の容器手段に含有される試薬の量などの、実施形態を実施するための手順または分析情報などの、書面情報もまた含有することができる。容器は、書面情報と共に、別の容器装置、例えば箱またはバッグの中に存在することができる。
【0233】
生体試料中のIGF-1Rタンパク質を検出するためのキットを、本明細書のさらに別の態様で提供する。キットは、IGF-1Rタンパク質のエピトープに結合する1つ以上の抗体を保持する容器、及び、IGF-1Rタンパク質に結合させて、免疫学的複合体を形成するために抗体を使用し、免疫学的複合体の有無が、試料中でのIGF-1Rタンパク質の有無と相関するように、免疫学的複合体の形成を検出するための取扱説明書を含む。容器の例としては、複数の試料にてIGF-1Rタンパク質の同時検出を可能にする、マルチウェルプレートが挙げられる。
【0234】
いくつかの実施形態では、IGF-1Rタンパク質に結合する抗体を提供する。いくつかの実施形態では、抗体は単離されている。いくつかの実施形態では、抗体は特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、適切にフォールディングされたIGF-1Rタンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、特定のIGF-1Rコンフォメーション状態(オープンまたはクローズ)に対して特異的である。いくつかの実施形態では、抗体は、細胞膜内のIGF-1Rタンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、インタクトな細胞内の細胞膜にあるIGF-1Rタンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、抗体はIGF-1Rタンパク質の機能を阻害する、または中和する。本明細書で使用する場合、「中和する」という用語は、タンパク質の活性または機能が阻害されることを意味する。阻害は完全、または部分的であることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質の活性または機能は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、または99%阻害される。阻害率は、抗体が存在しないタンパク質の機能または活性を基準にすることができる。いくつかの実施形態では、抗体は、IGF-1Rにより促進されるグルコース輸送を阻害する。いくつかの実施形態では、抗体は、IGF-1Rタンパク質の内在化を阻害する。
【0235】
いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書で提供する配列、またはその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書に記載する重鎖CDR、またはその抗原結合断片を含む。重鎖は、本明細書に記載する重鎖の1つ以上であることができる。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書に記載する軽鎖、またはその抗原結合断片を含む。
【0236】
いくつかの実施形態では、IGF-1Rと関連する病状の治療、阻害、または軽減方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載する抗体、または、本明細書に記載する医薬組成物を対象に投与して、IGF-1Rと関連する病状を治療、阻害、または軽減することを含む。いくつかの実施形態では、病状は、本明細書に記載するとおりである。
【0237】
いくつかの実施形態では、試料におけるIGF-1Rの有無の検出方法であって、当該方法が、試料を、本明細書に記載する1種以上の抗体と接触させ、抗体によりIGF-1R抗原への結合を検出することを含む、上記方法を提供する。いくつかの実施形態では、結合が検出されることは、IGF-1R抗原が存在することを示し、または、IGF-1R抗原への結合が検出されないことは、IGF-1R抗原が存在しないことを示す。検出は、バイオセンサー、ELISA、サンドイッチアッセイなどといった任意の既知の方法を用いて行うことができる。しかし、いくつかの実施形態では、方法は、非変性条件にてタンパク質の存在を検出することを含む。非変性条件を使用することで、対象となるタンパク質が、その天然、または適切にフォールディングされた形態で検出されることができる。
【0238】
いくつかの実施形態では、IGF-1Rタンパク質上のエピトープに結合する試験抗体の同定方法であって、当該方法が、試験抗体をIGF-1Rタンパク質上のエピトープと接触させることと、試験抗体がエピトープと結合するか否かを検出することとを含む、上記方法を提供する。いくつかの実施形態では、検出することは、試験抗体がタンパク質に結合し、本明細書で提供する配列を含む抗体により競合阻害されるか否かを検出することを含む。いくつかの実施形態では、検出することは、エピトープまたはタンパク質の1つ以上の残基を変異させることと、変異したエピトープへの試験抗体の結合を測定することと、を含み、非変性エピトープと比較して、変異が試験抗体の結合を低下させる場合、試験抗体は当該エピトープに結合しているとみなされる。
【0239】
いくつかの実施形態では、細胞の表面からの、IGF-1Rの内在化を監視する方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、細胞を、本明細書で提供する抗IGF-1R抗体と接触させることと、細胞内、または細胞の表面でのIGF-1Rの存在を検出することと、を含む。細胞表面での発現の差を測定することができ、内在化を監視して測定することができる。これを使用して、例えば、試験剤などの別の分子が、IGF-1Rタンパク質の内在化を制御する効果を測定することができる。したがって、本明細書で提供する抗体を使用して、IGF-1Rタンパク質の内在化を制御する(増加または減少させる)試験剤を同定することができる。細胞表面のIGF-1Rタンパク質への、抗IGF-1R抗体の結合の低下として測定される、内在化を増加させる試験分子は、本明細書で提供する方法に従い同定することができる。細胞表面のIGF-1Rタンパク質への、抗IGF-1R抗体の結合の増加として測定される、内在化を減少させる試験分子は、本明細書で提供する方法に従い同定することができる。表面での発現は蛍光により測定することができ、この測定は、IGF-1R抗体を認識した二次抗体により、または、本明細書で提供する抗IGF-1R抗体を標識することにより行うことができる。
【0240】
いくつかの実施形態では、細胞における、IGF-1刺激受容体リン酸化の阻害方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、細胞を、本明細書で提供される抗体、または、当該抗体を含む医薬組成物と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、接触させることは、対象に、抗体、または、抗体を含む医薬組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、眼内の細胞である。いくつかの実施形態では、対象は、甲状腺眼疾患(TED)を有する、または、TEDのリスクを有する。いくつかの実施形態では、抗体は、約0.2nm、0.15nm、0.10nm、0.09nm以下のIC50を有する。いくつかの実施形態では、IC50は、実施例で示すものなどの、本明細書で提供するアッセイなどのインビトロアッセイで測定される。いくつかの実施形態では、IC50は、A549細胞またはHOCF細胞である細胞内で測定される。
【0241】
いくつかの実施形態では、対象における甲状腺眼疾患の治療方法であって、当該方法が、本明細書で提供される抗体、または、当該抗体を含む医薬組成物を上記対象に治療することを含み、上記抗体が、上記対象において、少なくとも投与の1、2、または3週間後に、少なくとも、または、約70μg/mL、75μg/mL、80μg/mL、85μg/mL、90μg/mL、95μg/mL、100μg/mL、または105μg/mLの血清濃度を有する、上記方法を提供する。いくつかの実施形態では、血清濃度は、抗体、または、抗体を含む医薬組成物を対象に1、2、もしくは3回投与した後に測定される。
【0242】
いくつかの実施形態では、必要とする対象における、IGF-1誘発性の受容体自己リン酸化を、少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または100%阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、対象に、本明細書で提供される抗体、または、当該抗体を含む医薬組成物を含む。いくつかの実施形態では、IGF-1誘発性の受容体自己リン酸化は、対象の目または眼窩領域で阻害される。いくつかの実施形態では、IGF-1誘発性の受容体自己リン酸化が阻害されることにより、対象の甲状腺眼疾患を治療する、または、本明細書に記載する症状を改善する。
【0243】
列挙された実施形態
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する実施形態としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
1.配列番号138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、及び170からなる群から選択される重鎖相補性決定領域(HCDR)配列と、
配列番号171、172、173、174、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、及び198からなる群から選択される軽鎖CDR(LCDR)配列とを含む、抗体またはその抗原結合断片。
2.配列番号1、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64及び65からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)配列と、
配列番号2、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、及び54からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)配列とを含む、抗体またはその抗原結合断片。
3.前記抗体が、インスリン様成長因子I受容体(IGF-1R)に結合する、実施形態1または2のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片。
4.前記抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の抗体。
5.前記抗体が、ヒト化抗体である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の抗体。
6.前記抗体が、scFv抗体である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の抗体。
7.前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号1、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64もしくは65に記載されるアミノ酸配列またはその任意のバリアントを含むVHペプチドを含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の抗体。
8.前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号2、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、もしくは54に記載されるアミノ酸配列、またはその任意のバリアントを含むVLペプチドを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の抗体。
9.抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体またはその抗原結合断片が、(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む重鎖可変領域であって、前記HCDR1配列が、配列番号138、139、140、141、142、143、144、145、146、もしくは147アミノ酸配列、前記HCDR2が、配列番号148、149、150、151、152、153、もしくは154のアミノ酸配列、前記HCDR3配列が、配列番号155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、もしくは170のアミノ酸配列、または前述のいずれかのバリアントを有する、前記重鎖可変領域と、(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む軽鎖可変領域であって、前記LCDR1配列が、配列番号171、172、173、174、176、177、178、179、180、もしくは181のアミノ酸配列、前記LCDR2配列が、配列番号182、183、184、185、186、187、188、189、もしくは190のアミノ酸配列、前記LCDR3配列が、配列番号191、192、193、194、195、196、197、もしくは198のアミノ酸配列、または前述のいずれかのバリアントを有する、前記軽鎖可変領域とを含む、前記抗体またはその抗原結合断片。
10.配列番号66~137のアミノ酸配列またはそのバリアントを含むVH及びVLペアを含む、抗体またはその抗原結合断片。
【0244】
11.前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、リンカーによって連結されていない、実施形態1~10のいずれか1つに記載の抗体。
12.前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、ペプチドリンカーで連結されている、実施形態1~10のいずれか1つに記載の抗体。
13.前記ペプチドリンカーが、次の配列:(GGGGS)(配列番号211)、(GGGGA)(配列番号212)、またはこれらの任意の組み合わせ(式中、各nは独立して1~5である)を含む、実施形態12に記載の抗体。
14.前記バリアントが、1~10個の置換、欠失、または挿入を有する、実施形態1~13のいずれか1つに記載の抗体。
15.前記バリアントが、1~10個の保存的置換を有する、実施形態1~14のいずれか1つに記載の抗体。
16.前記バリアントが、配列番号1~65の配列に対して、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性を有する、実施形態1~15のいずれか1つに記載の抗体。
17.前記バリアントが、配列番号66~137の配列に対して、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性を有する、実施形態1~15のいずれか1つに記載の抗体。
18.前記バリアントが、配列番号138~198の配列に対して、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する、実施形態1~15のいずれか1つに記載の抗体。
19.前記抗体が、scFv抗体である、実施形態1~18のいずれか1つに記載の抗体。
20.前記抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の抗体。
【0245】
21.前記抗体が、ヒト化抗体である、実施形態1~20のいずれか1つに記載の抗体。
22.前記抗体が、Fc領域を含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載の抗体。
23.前記Fc領域が、配列番号199、200、201、202、203、204、205、及び206からなる群から選択される、実施形態22に記載の抗体。
24.前記Fc領域が、前記Fc領域に連結されたときの前記抗体の半減期を延長する変異を含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載の抗体。
25.前記Fc領域が、S228P、L235E、M252Y、S254T、T256E、M428L、N434S、L234F、P331S変異、またはこれらの任意の組み合わせを含む、実施形態24に記載の抗体。
26.前記Fc領域が、M252Y、S254T、及びT256E変異を含む、実施形態24に記載の抗体。
27.前記Fc領域が、S228P及びL235E変異を含む、実施形態24に記載の抗体。
28.前記Fc領域が、L234F、L235E、及びP331S変異を含む、実施形態24に記載の抗体。
29.前記Fc領域が、M252Y、S254T、T256E、S228P及びL235E変異を含む、実施形態24に記載の抗体。
30.前記Fc領域が、S228P、L235E、M428L、及びN434S変異を含む、実施形態24に記載の抗体。
【0246】
31.前記Fc領域が、M428L及びN434S変異を含む、実施形態24に記載の抗体。
32.前記Fc領域が、L234F、L235E、P331S、M252Y、S254T、及びT256E変異を含む、実施形態24に記載の抗体。
33.前記抗体が、単離抗体である、実施形態1~32のいずれか1つに記載の抗体。
34.実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする、核酸分子。
35.実施形態34に記載の核酸分子を含む、ベクター。
36.実施形態34に記載の核酸分子または実施形態35に記載のベクターを含む核酸を含む、細胞。
37.実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体または前記抗体をコードする核酸分子を含む、医薬組成物。
38.前記組成物が、注射可能な医薬組成物である、実施形態37に記載の医薬組成物。
39.前記医薬的組成物が、静脈内投与または皮下投与される、実施形態37または38に記載の医薬組成物。
40.甲状腺関連眼病(TAO)もしくはTAOの症状の治療方法、またはTAOの重症度もしくはTAOの症状の軽減方法であって、対象に、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体または実施形態37~39のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0247】
41.甲状腺関連眼病(TAO)を患う対象における、目の眼球突出を軽減する方法であって、対象に、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体または実施形態37~39のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
42.対象における甲状腺眼疾患を治療する方法であって、対象に、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体または実施形態37~39のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
43.対象における甲状腺関連眼病(TAO)の臨床活動性スコア(CAS)の低下方法であって、対象に、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体または実施形態37~39のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
44.甲状腺関連眼病(TAO)を患う対象における、a)眼球突出を少なくとも2mm減少させる、及び、b)臨床活動性スコア(CAS)を低下させる方法であって、対象に、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体または実施形態37~39のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
45.眼球突出が少なくとも2mm減少する、実施形態40~44のいずれか1つに記載の方法。
46.眼球突出が少なくとも3mm減少する、実施形態40~44のいずれか1つに記載の方法。
47.眼球突出が少なくとも4mm減少する、実施形態40~44のいずれか1つに記載の方法。
48.前記対象の臨床活動性スコア(CAS)が少なくとも2ポイント低下する、実施形態40~44のいずれか1つに記載の方法。
49.前記対象の臨床活動性スコア(CAS)が、(1)まで低下する、実施形態40~44のいずれか1つに記載の方法。
50.前記対象の臨床活動性スコア(CAS)が、ゼロ(0)まで低下する、実施形態40~44のいずれか1つに記載の方法。
【0248】
51.対象に、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体または実施形態36~38のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む、対象における、甲状腺関連眼病(TAO)の治療方法、またはTAOの重症度の低下方法であって、前記抗体による治療が、(i)目における眼球突出を少なくとも2mm減少させ;(ii)他方(即ち、他眼)における2mm以上の悪化を伴わず;かつ(iii)前記対象におけるCASを、(1)またはゼロ(0)まで低下させる、前記方法。
52.甲状腺関連眼病(TAO、グレーブス眼病/グレーブス眼症とも呼ばれる)を患う対象における、生活の質の改善方法であって、対象に、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体または実施形態37~39のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
53.前記生活の質が、グレーブス眼病の生活の質(GO-QoL)調査、または、その目視機能化もしくは外観サブスケールのいずれかにより測定される、実施形態52に記載の方法。
54.前記治療が、GO-QoLにおいて8ポイント以上の改善をもたらす、実施形態53に記載の方法。
55.前記治療が、GO-QoLの機能化サブスケールの改善をもたらす、実施形態53に記載の方法。
56.前記治療が、GO-QoLの外観サブスケールの改善をもたらす、実施形態53に記載の方法。
57.甲状腺関連眼病(TAO)を患う対象における、複視の治療方法、または複視の重症度の低下方法であって、対象に、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体または実施形態37~39のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
58.前記複視が定常性複視である、実施形態57に記載の方法。
59.前記複視が非定常性複視である、実施形態57に記載の方法。
60.前記複視が断続性複視である、実施形態57に記載の方法。
【0249】
61.複視の重症度の改善または軽減が、抗体投与を中断した後、少なくとも20週間持続する、実施形態57に記載の方法。
62.複視の重症度の改善または軽減が、抗体投与を中断した後、少なくとも50週間持続する、実施形態57に記載の方法。
63.前記抗体が、第1用量として約1mg/kg~約5mg/kgの抗体の投与量で投与される、実施形態40~62のいずれか1つに記載の方法。
64.前記抗体が、第1用量として約5mg/kg~約10mg/kgの抗体の投与量で投与される、実施形態40~62のいずれか1つに記載の方法。
65.前記抗体が、後続用量で約5mg/kg~約20mg/kgの抗体の投与量で投与される、実施形態40~62のいずれか1つに記載の方法。
66.前記抗体が次の量:第1用量として約10mg/kgの抗体;及び、後続用量で約20mg/kgの抗体で投与される、実施形態40~62のいずれか1つに記載の方法。
67.前記後続用量が、少なくとも21週間の間、3週間ごとに投与される、実施形態66に記載の方法。
68.前記抗体またはその抗原結合断片が、ヒト抗体、モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、精製抗体、ダイアボディ、一本鎖抗体、多重特異性抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、FvまたはscFvである、実施形態40~67のいずれか1つに記載の方法。
69.前記抗体またはその抗原結合断片が、薬学的に許容される希釈剤または賦形剤または担体を追加で含む医薬組成物で投与される、実施形態40~68のいずれか1つに記載の方法。
70.前記医薬組成物が、TAOの治療のための、1種以上の薬学的に活性な化合物をさらに含む、実施形態69に記載の方法。
【0250】
71.前記医薬組成物が、コルチコステロイド;リツキシマブもしくは他の抗CD20抗体;トシリズマブもしくは他の抗IL-6抗体;または、セレン、インフリキシマブ、もしくは他の抗TNFα抗体、もしくは甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)阻害剤をさらに含む、実施形態69または70に記載の方法。
72.前記抗体またはその抗原結合断片が、目、目の前眼房、目の硝子体眼房、脈絡膜上空間、または眼窩後腔に直接投与される、実施形態4~71のいずれか1つに記載の方法。
73.前記抗体またはその抗原結合断片が、注射により投与される、実施形態72に記載の方法。
74.前記注射が、硝子体内注射、眼窩内注射、眼窩後注射、脈絡膜上注射、または腔内注射である、実施形態73に記載の方法。
75.細胞におけるIGF-1Rの内在化を増加させる方法であって、前記方法が、前記細胞を、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体または実施形態37~39のいずれか1つに記載の医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
76.前記接触させることが、対象に、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体または実施形態37~39のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む、実施形態74に記載の方法。
77.前記対象が、甲状腺眼疾患(TED)を有する、または、TEDのリスクを有する、実施形態76に記載の方法。
78.細胞における、IGF-1刺激受容体リン酸化の阻害方法であって、前記方法が、前記細胞を、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体または実施形態37~39のいずれか1つに記載の医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
79.前記接触させることが、対象に、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体または実施形態36~38のいずれか1つを含む医薬組成物を投与することを含む、実施形態78に記載の方法。
80.前記対象が、甲状腺眼疾患(TED)を有する、または、TEDのリスクを有する、実施形態79に記載の方法。
【0251】
81.前記抗体が、約0.2nm、0.15nm、0.10nm、0.09nm以下のIC50を有する、実施形態78~80のいずれか1つに記載の方法。
82.前記IC50が、本明細書で提供するアッセイなどのインビトロアッセイで測定される、実施形態81に記載の方法。
83.前記細胞が、A549細胞またはHOCF細胞である、実施形態78~82のいずれか1つに記載の方法。
84.対象における甲状腺眼疾患の治療方法であって、前記方法が、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体、または実施形態37~39のいずれか1つに記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含み、前記抗体が、前記対象において、投与の少なくとも1、2、または3週間後に、少なくとも、または、約70μg/mL、75μg/mL、80μg/mL、85μg/mL、90μg/mL、95μg/mL、100μg/mL、または105μg/mLの血清濃度を有する、前記方法。
85.前記抗体または前記医薬組成物が、静脈内投与される、実施形態84に記載の方法。
86.前記抗体または前記医薬組成物が、約20mg/kgの用量で投与される、実施形態84~85のいずれか1つに記載の方法。
87.前記抗体または前記医薬組成物が、少なくとも、または約、週に1回、2週に1回、3週に1回、または4週に1回投与される、実施形態84~86のいずれか1つに記載の方法。
88.細胞におけるIGF-1誘発性の受容体自己リン酸化を少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%または100%阻害する方法であって、前記方法が、前記細胞を、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体、または実施形態37~39のいずれか1つに記載の医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
89.前記IGF-1誘発性の受容体自己リン酸化の阻害が、前記抗体または前記医薬組成物不存在下での誘発性の受容体自己リン酸化と比較して測定される、実施形態88に記載の方法。
90.前記接触させることが、対象に、前記抗体、または、前記抗体を含む医薬組成物を投与することを含む、実施形態88または89に記載の方法。
【0252】
91.前記対象が、甲状腺眼疾患(TED)を有する、または、TEDのリスクを有する、実施形態90に記載の方法。
92.IGF-1誘発性の受容体自己リン酸化を少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%または100%阻害することを、それを必要とする対象において行う方法であって、前記方法が、前記対象に、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗体、または実施形態37~39のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
93.前記対象が、甲状腺眼疾患(TED)を有する、または、TEDのリスクを有する、実施形態92に記載の方法。
94.前記抗体または前記医薬組成物が、静脈内投与される、実施形態92または93のいずれか1つに記載の方法。
95.前記抗体が、VRDN-1100のCDRを含む、実施形態88~94のいずれか1つに記載の方法。
96.前記抗体が、VRDN-1100の抗体のCDRまたはVRDN-2700のCDRを含む、実施形態88~95のいずれか1つに記載の方法。
【0253】
ここでは、主題を、以下の実施例を参照して説明する。これらの実施例は、説明のみの目的で提供され、特許請求の範囲が、これらの実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書でもたらされる教示の結果として明らかになるものの任意及び全ての改変を包含すると解釈されるべきである。当業者であれば、本質的に同様な結果をもたらすために変更または修正ができるであろう様々な重要性の低いパラメーターがあることを容易に認識することになる。
【実施例
【0254】
実施例1:IGF-1R抗体はIGF-1刺激を遮断する。
IGF-1刺激の遮断は、全てが本明細書で開示されている、IGF-1R抗体VRDN-2700、VRDN-03100、VRDN-02100、VRDN-02200、VRDN-02300、VRDN-02400、及びVRDN-02500の存在下における、ヒアルロナンの分泌により測定される。免疫グロブリンを、グレーブス眼病(GO)を患う患者の血清から精製し、TSHR及び/またはIGF-1R抗体を活性化する能力、ならびに、GO線維芽細胞の一次培養液での、TSHR/IGF-1Rクロストークを試験する。細胞を、全てが本明細書で開示されている、VRDN-2700、VRDN-03100、VRDN-02100、VRDN-02200、VRDN-02300、VRDN-02400、及びVRDN-02500を含むがこれらに限定されない、本明細書で提供するものなどのIGF-1R阻害抗体と共に、またはこれなしで、M22またはGO-Igで処理する。ヒアルロナン(ヒアルロン酸;HA)の分泌を、GO線維芽細胞刺激に対する一次生体応答として測定する。IGF-1R自己リン酸化は、直接IGF-1R活性化の指標として使用する。TSHR活性化は、環状AMP(cAMP)の産生により測定する。本明細書で開示するIGF-1R抗体は、HA分泌を効果的に遮断することが見出され、故に、IGF刺激を遮断することが見出される。
【0255】
実施例2:甲状腺眼疾患を患う患者の治療、及び、甲状腺眼疾患におけるIGF-1R抗体の臨床評価。
全てが本明細書で開示されている、VRDN-2700、VRDN-03100、VRDN-02100、VRDN-02200、VRDN-02300、VRDN-02400、及びVRDN-02500を含むがこれらに限定されない、本明細書で提供するものなどのIGF-1R阻害抗体の輸液を、対象に提供する。輸液回数は、各対象に対して個別化され、治験責任医師の臨床判断に基づく。1日目の訪問は、以前の治験の最終訪問から14日以内に発生する。訪問ウィンドウは、1及び4週目は±1日であり、3、6、9、12、15、18、21、及び24週目は±3日である。フォローアップ期間は、以前の治験において眼球突出非応答者であった対象のみのものである;以前の治験で再発した対象は、フォローアップ期間には参加しなかった。フォローアップ期間中の訪問ウィンドウは、±7日である。
【0256】
治療期間は24週間(6ヶ月)であり、この間に8回、テプロツムマブを輸液で投与する。
【0257】
眼球突出非応答者である対象は、この延長研究で、6ヶ月のフォローアップ期間に参加する予定である;リードイン試験で再発し、この延長研究で再治療される対象は、フォローアップ期間には参加しない。
【0258】
有効性評価を、各評価の時点で、両眼に対して行う。「研究用の目」(即ち、より深刻に影響を受けた目)は、以前の研究のベースライン(1日目)訪問時に特定されたものと同じままである。有効性については両眼を評価するが、研究用の目を使用して、一次アウトカム尺度を評価する。
【0259】
有効性は、眼球突出(測定において、一貫性に対するヘレテル機器を用いて、重症度の臨床尺度の眼球突出評価として測定する)、CAS(7項目スケール)、複視(重症度の臨床尺度の一部として測定する)、及び、重症度の臨床尺度(運動性制限評価を含む)により評価する。
【0260】
生活の質を、GO-QoLアンケートを用いて評価する。
【0261】
安全性はAEにより評価し、付随する投薬では、監視、免疫原性試験、物理的及び眼科領域検査、生命徴候、臨床上の安全性実験室評価(全血球計算、化学現象(甲状腺パネル及びHbA1Cを含む)、ならびに尿検査)、妊娠試験(適用可能な場合)、ならびに心電図(ECG)を用いる。本研究は、データ安全性監視委員会(DSMB)によってもまた監視される。
【0262】
眼球突出評価は、測定における一貫性のために、ヘレテル眼球突出計を用いて実施され、(厳密に避けられない場合を除いて)同じヘレテル機器及び同じ観察者を、研究の全期間にわたって各評価で用いる。さらに、同じ眼角距離(ICD)を、各場合において使用する。
【0263】
眼球突出を、治療期間中の1日目、ならびに6、12、18、及び24週(または、早期離脱(PW))に、ならびに、フォローアップ期間中の7、9、及び12ヶ月目(またはPW)に、それぞれの目で測定する。測定値を、眼球突出の下で、深刻なeCRFの臨床尺度(Clinical Measures of Severity eCRF)に記録する。
【0264】
抗体は、甲状腺眼疾患の治療、及び、本明細書で提供される生活の質の改善においてもまた効果的であることが見出される。
【0265】
実施例3:pKが増加した抗体
カニクイザルに、静脈内または皮下経路のいずれかにより、10mg/kgの量で、FcドメインにYTE変異を有するVRDN-2700のCDRを含む抗体を投与し、試料をELISAにより、PK分析のために、0.5時間、2時間、8時間、ならびに、1、3、7、10、14、21、及び28日目の時点で収集した。テプロツムマブもまた、比較測定子として、10mg/kg・IVで投与した。図1に示す結果は、抗体が、テプロツムマブと比較して著しく高いPKを有したことを示す。この結果は、VRDN-2700のCDRを含む抗体が、皮下投与された場合であっても、テプロツムマブと比較して、低用量で投与される可能性が高いことを示す。これらの結果は、これまで予想することができなかった。
【0266】
実施例4:VRDN-2700
FcドメインにM252Y、S254T、及びT256E変異を有するVRDN-2700は、本明細書に記載するとおり、そのFc領域に、半減期延長修飾を組み込んだ新規の抗IGF-1R抗体であり、甲状腺眼疾患(TED)の治療に使用することができる。このようなFc変異を含むVRDN-2700の薬物動態(PK)パラメーターは、市販されているIGF-1R抗体であるテプロツムマブに対してカニクイザルで測定され、PKモデルを、可能性のあるヒト投与レジメンプロジェクトに対して構築した。
【0267】
TEDは、グレーブス病及び甲状腺機能亢進症と最も一般的に関連する自己免疫性状態であるが、甲状腺機能が正常、または甲状腺機能が低下した患者においても発見されている場合がある。TEDにおける眼症は、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)アゴニスト自己抗体、及び、TSHRとIGF-1Rとのクロストークにより駆動される。眼窩及び眼窩周囲組織の病理学的再構築は、ドライアイ、流涙の増加、局所炎症、眼瞼の後退及び最終的な眼球突出、複視、ならびに、視神経の圧縮を含み得る、様々な症状をもたらし、その後の失明をもたらす。
【0268】
TEDの根底にある病理は、主に、線維細胞及び免疫細胞の動員による、眼窩内での炎症性カスケードの活性化である。IGF-1Rの過剰発現がTED患者の眼窩内で示されており、IGF-1R阻害抗体が、IGF-1RとTSHRのクロストークを破壊し、炎症性カスケードを損なわせ得ることが推測されている。実際、IGF-1Rの拮抗作用は、TED患者に影響を及ぼす炎症の総合的症状の大部分を、劇的に軽減することが示されている。
【0269】
VRDN-2700は、IGF-1が媒介する、IGF-1Rを介するシグナル伝達をサブナノモル効力で阻害し、臨床的に確認されたFc修飾(M252Y、S254T、及びT256E)を組み込んで半減期を延ばす、モノクローナル抗体である。この抗体は、従来のIgG治療抗体よりも、患者に対して負荷の少ない治療パラダイムの可能性を有する、より好ましいPKプロファイルを有することが発見された。
【0270】
Fc変異を有するVRDN-2700を、2、10、及び50mg/kgで30分の静脈内(IV)注射により、ならびに、2及び10mg/kgで皮下(SC)注射により、カニクイザルに投与した。10mg/kgのテプロツムマブも同様に、30分・IV注射で投与した。VRDN-2700及びテプロツムマブの、血清中での濃度を、ヒトIgG特異的ELISAアッセイを使用して測定した。WinNonlin非区画モデルを用いてデータを分析した。標的が媒介する薬剤配置を組み込む半機械的モデルを、入手可能なヒト及びカニクイザルデータを用いて構築した。データを以下に示す。
【0271】
図2の表及びグラフは、より好ましいPKプロファイルを示す。
【0272】
表は、PKパラメーター±SDを示す。標的が媒介する薬剤配置(TMDD)の証拠は、高用量でのTMDDの飽和を報告した、テプロツムマブ及び他のIGF-1R抗体と一致して、2mg/kgでは観察されたが、10及び50mg/kgの用量では観察されなかった。
【0273】
VRDN-2700の半減期を延ばす修飾は、露出を延長する等用量だと、SC投与された、YTE変異を有するVRDN-2700は、静脈内輸液したテプロツムマブよりも露出が大きくなり、予備発見段階の製剤を用いるSC投与よりも、VRDN-2700のバイオアベイラビリティ(F)が62%と推定されるNHPにおいて、約2倍の半減期を達成する。パラメーターは、図3に示す±SDを推定する。
【0274】
3週ごとに10mg/kg、または、6週ごとに20mg/kgでVRDN-2700を投与することにより、認可されたテプロツムマブレジメン(第1用量は10mg/kg、続いて、q3wで7回の20mg/kg投与)と同様に、100ug/mLを超えるCminをもたらすことを、モデル刺激は予測する。10mg/kg・q3wのレジメンでは、Cmax値が低くなる。投与間隔が長くなると、患者の便宜が増大し、治療コストが下がる一方で、用量の少なさ、及びCmaxの値が少ないことは、毒性を緩和する可能性があり得る。さらに、300mgの固定用量で、VRDN-2700を毎週皮下投与することで、約130ug/mLの定常状態のCminが実現される可能性があり、自宅での自己投与を可能にすることをモデルは予測する。Cmin値が低いほうが有効である場合、300mgの固定用量で、VRDN-2700を隔週で皮下投与することで、約50ug/mLの、定常状態でのCminレベルを達成することが予想される。まとめると、VRDN-2700の半減期が延びると、より便利な投与間隔及び投与経路という、より広い選択肢の範囲が患者に提供されると予想される。
【0275】
抗体の調査中に、VRDN-2700の発現を、本明細書に記載するL/S変異などの、Fcドメイン内での変異を有する他の抗体と比較した。予想外なことに、Fcドメイン内での、YTE変異を有する抗体に対する収率(VRDN2700)は、L/S変異を有するものを除く同様の抗体の収率よりもおよそ80%高かった。YTEまたはLS変異を有するIGF-1Rを標的にする、試験した他の抗体が、Fc変異に関係なく同様の発現を有したため、このことは驚くべきことであり、予想されなかった。YTE版は、LS版と比較して、低分子量種が少なかった。したがって、YTE抗体での不純物がより少なく、より均質な組成物であることを示し、これは、LS変異を有する抗体よりも利点をもたらす。調査した別の抗体は、そのような種に対して反対の効果を示したため、これもまた予想できなかった。さらに、精製中に、VRDN-2700と比較して、カチオン交換カラムで精製したときに、LS変異体がより多くのアグリゲートを形成したことが見出された。LS変異体の凝集は、VRDN-2700では観察されなかった、大きな製造上の問題を引き起こす。したがって、この抗体に対する、Fc変異体のこの違いは、予想または予測することはできなかったことであり、VRDN-2700として本明細書で参照される抗体に対して、著しい、かつ予想されない利点をもたらす。
【0276】
便利なSC注射で、または、従来の治療的IgG抗体よりも、必要な治療量及び/または頻度が少ないIV輸液として使用することができ、同じ抗体(同じ可変領域)の、他のFc変異体版と比較して、優れた性質を有することを、VRDN-2700(YTE)の半減期の延長は示す。
【0277】
実施例5:バリアントIGF-1R抗体はIGF-1刺激を遮断する(仮説)。
IGF-1刺激の遮断は、全てが本明細書で開示されている、配列番号67~137のVH及びVL配列を含むIGF-1R抗体の存在下における、ヒアルロナンの分泌により測定される。免疫グロブリンを、グレーブス眼病(GO)を患う患者の血清から精製し、TSHR及び/またはIGF-1R抗体を活性化する能力、ならびに、GO線維芽細胞の一次培養液での、TSHR/IGF-1Rクロストークを試験する。細胞を、全てが本明細書で開示されている、配列番号66~137のVH及びVL配列を含む抗体を含むがこれらに限定されない、本明細書で提供するものなどのIGF-1R阻害抗体と共に、またはこれなしで、M22またはGO-Igで処理する。ヒアルロナン(ヒアルロン酸;HA)の分泌を、GO線維芽細胞刺激に対する一次生体応答として測定する。IGF-1R自己リン酸化は、直接IGF-1R活性化の指標として使用する。TSHR活性化は、環状AMP(cAMP)の産生により測定する。本明細書で開示するIGF-1R抗体は、HA分泌を効果的に遮断することが見出され、故に、IGF刺激を遮断することが見出される。
【0278】
実施例6:甲状腺眼疾患を患う患者の治療、及び、甲状腺眼疾患におけるIGF-1R抗体の臨床評価(仮説)。
全てが本明細書で開示されている、配列番号67~137のVH及びVL配列を含む抗体を含むがこれらに限定されない、本明細書で提供するものなどのIGF-1R阻害抗体の輸液を、対象に提供する。輸液回数は、各対象に対して個別化され、治験責任医師の臨床判断に基づく。1日目の訪問は、以前の治験の最終訪問から14日以内に発生する。訪問ウィンドウは、1及び4週目は±1日であり、3、6、9、12、15、18、21、及び24週目は±3日である。フォローアップ期間は、以前の治験において眼球突出非応答者であった対象のみのものである;以前の治験で再発した対象は、フォローアップ期間には参加しなかった。フォローアップ期間中の訪問ウィンドウは、±7日である。
【0279】
治療期間は24週間(6ヶ月)であり、この間に8回、テプロツムマブを輸液で投与する。
【0280】
眼球突出非応答者である対象は、この延長研究で、6ヶ月のフォローアップ期間に参加する予定である;リードイン試験で再発し、この延長研究で再治療される対象は、フォローアップ期間には参加しない。
【0281】
有効性評価を、各評価の時点で、両眼に対して行う。「研究用の目」(即ち、より深刻に影響を受けた目)は、以前の研究のベースライン(1日目)訪問時に特定されたものと同じままである。有効性については両眼を評価するが、研究用の目を使用して、一次アウトカム尺度を評価する。
【0282】
有効性は、眼球突出(測定において、一貫性に対するヘレテル機器を用いて、重症度の臨床尺度の眼球突出評価として測定する)、CAS(7項目スケール)、複視(重症度の臨床尺度の一部として測定する)、及び、重症度の臨床尺度(運動性制限評価を含む)により評価する。
【0283】
生活の質を、GO-QoLアンケートを用いて評価する。
【0284】
安全性はAEにより評価し、付随する投薬では、監視、免疫原性試験、物理的及び眼科領域検査、生命徴候、臨床上の安全性実験室評価(全血球計算、化学現象(甲状腺パネル及びHbA1Cを含む)、ならびに尿検査)、妊娠試験(適用可能な場合)、ならびに心電図(ECG)を用いる。本研究は、データ安全性監視委員会(DSMB)によってもまた監視される。
【0285】
眼球突出評価は、測定における一貫性のために、ヘレテル眼球突出計を用いて実施され、(厳密に避けられない場合を除いて)同じヘレテル機器及び同じ観察者を、研究の全期間にわたって各評価で用いる。さらに、同じ眼角距離(ICD)を、各場合において使用する。
【0286】
眼球突出を、治療期間中の1日目、ならびに6、12、18、及び24週(または、早期離脱(PW))に、ならびに、フォローアップ期間中の7、9、及び12ヶ月目(またはPW)に、それぞれの目で測定する。測定値を、眼球突出の下で、深刻なeCRFの臨床尺度(Clinical Measures of Severity eCRF)に記録する。
【0287】
抗体は、甲状腺眼疾患の治療、及び、本明細書で提供される生活の質の改善においてもまた効果的であることが見出される。
【0288】
実施例7:pKが増加した抗体(仮説)。
カニクイザルに、静脈内または皮下経路のいずれかにより、10mg/kgの量で、全てが本明細書で開示されている配列番号67~137のVH及びVL配列を含む抗体を投与し、試料をELISAにより、PK分析のために、0.5時間、2時間、8時間、ならびに、1、3、7、10、14、21、及び28日目の時点で収集する。VRDN-02700及び配列番号66もまた、比較測定子として、10mg/kg IVで投与する。配列番号67~137のVH及びVL配列を含む抗体は、対照と比較して、有意に高いPKを有することが示される。
【0289】
実施例8:IGF-1R抗体の結合親和性
IGF-1R抗体の結合親和性を表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定した。SPR測定は、Biacore 8K+装置(Cytiva)により25℃で実施した。全てのBiacore実験において、HBS-EP+(Cytiva)及びNaOH 10mMをそれぞれランニング緩衝液及び再生緩衝液として使用した。抗体捕捉のために、抗huIgG(Fcγ特異的)モノクローナル抗体をCM5 Series S Biacoreチップに固定した。固定化は、アミンカップリングキットを使用して、Biacoreが提供する方法に従って実施した。チップを活性化した後、捕捉抗体を注入し、表面密度をおよそ10,000レゾナンスユニット(RU)とした。抗IGF-1R抗体を、1xHBS-EP+アッセイ緩衝液で希釈した10nMの濃度で、30μL/分の流速で1分間注入し、続いて、1分間安定させた。組換えヒトHisタグ付IGF 1R細胞外ドメインタンパク質の会合について、1xHBS-EP+pH7.4での2倍連続希釈による6.3~100nMの範囲の5つの連続濃度を30μL/分で1分間注入することによって、シングルサイクル分析で決定した。その後、HBS pH7.4またはpH6の緩衝液中での解離を10分間モニタリングした。1mMグリシン(pH1.5)を30μL/分で2回注入することによって、フローセル表面を再生した。Biacore Insight Evaluationソフトウェア(Cytiva)を使用し、1:1結合カイネティクスフィッティングモデルを使用して、カイネティクスパラメーター分析を実施した。結果を以下の表に示す:
【0290】
【表8-1】
【0291】
【表8-2】
【0292】
本明細書で提供されるこれらの実施例及び実施形態のそれぞれは、本明細書で提供する抗体を使用して、TED及びその関連症状を治療することができることを示している。
【0293】
本明細書で引用される参考文献は全て、各個別の公報、データベースエントリー(例えば、Genbank配列もしくはGeneIDエントリー)、特許出願、または特許が具体的かつ個別に示されて、参照により援用されている場合と同程度に、参照により援用されている。この、参考文献の援用の記述は、出願人らにより、37 C.F.R.§1.57(b)(1)に準拠して、それぞれ、及び全ての個別の公報、データベースエントリー(例えば、Genbank配列もしくはGeneIDエントリー)、特許出願、または特許と関係し、これらそれぞれが、そのような引用が参照による援用についての専用の記載と直接隣接していない場合であっても37 C.F.R.§1.57(b)(2)を遵守して明示的に特定されることが意図される。何かしら存在する場合に、参照による援用についての専用の記載が本明細書内に含まれることは、参照による援用についてのこの一般的な記載を、いかなる方法においても弱めるものではない。本明細書での参考文献の引用は、当該参考文献が、適切な先行技術を参照するものであるということを認めるためのものでもなければ、それらの公報または文書の内容または日付について、何かしら認めるものでもない。
【0294】
本実施形態は、本明細書において記載される特定の実施形態による範囲に限定されない。実際、本明細書において記載されるものに加えての様々な修正は、先の記載から当業者らに明白になるであろう。そのような修正は、実施形態、及びあらゆる添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0295】
本明細書は、当業者が実施形態を実施することを可能にするのに十分なものであると考えられる。本明細書で示される、及び記載されるものに加えて、様々な修正が、前述の記載から当業者には明らかとなるであろうし、本開示の範囲、及びあらゆる添付の特許請求の範囲に含まれるであろう。
図1
図2
図3
【配列表】
2025503614000001.xml
【国際調査報告】