(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】ガソリン微粒子フィルター
(51)【国際特許分類】
B01D 53/94 20060101AFI20250128BHJP
C01F 7/021 20220101ALI20250128BHJP
B01J 21/04 20060101ALI20250128BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20250128BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20250128BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20250128BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20250128BHJP
B01D 46/00 20220101ALN20250128BHJP
【FI】
B01D53/94 241
C01F7/021 ZAB
B01J21/04 A
B01D39/20 D
B01D53/94 245
B01D53/94 222
B01D53/94 280
F01N3/022 C
F01N3/035 A
F01N3/28 301A
B01D46/00 302
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541103
(86)(22)【出願日】2023-01-28
(85)【翻訳文提出日】2024-07-08
(86)【国際出願番号】 CN2023073523
(87)【国際公開番号】W WO2023143493
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/074566
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】シアーニ、アッティリオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チェンユー
(72)【発明者】
【氏名】ウー、イーヒュイ
(72)【発明者】
【氏名】デン、チェンハオ
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
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【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、微粒子フィルターであって、入口端から出口端まで延在する複数の平行流路を形成するように長手方向に延在する複数の多孔質壁を含む基材であって、流路のうちのある量は、入口端で開き、出口端で閉じている入口流路であり、流路のうちのある量が、入口端で閉じ、出口端で開いている出口流路である、基材と、入口流路及び/又は出口流路内、好ましくは少なくとも入口流路内の多孔質壁の表面上に装填された無機粒子の層であって、無機粒子が、5.0~14.0ミクロンの範囲のD90を有する、無機粒子の層と、を含む、微粒子フィルターに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子フィルターであって、この微粒子フィルターは、
入口端から出口端まで延在する複数の平行流路を形成するように長手方向に延在する複数の多孔質壁を備える基材であって、前記流路のうちのある量が、前記入口端で開き前記出口端で閉じる入口流路であり、前記流路のうちのある量が、前記入口端で閉じ前記出口端で開く出口流路である、基材と、
前記入口流路及び/又は出口流路内、好ましくは少なくとも前記入口流路内の前記多孔質壁の表面上に装填された無機粒子の層とを含み、
前記無機粒子が、5.0~14.0ミクロンの範囲のD
90を有する、微粒子フィルター。
【請求項2】
前記無機粒子が、1つ又は複数の非PGM成分、例えば、アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、シリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、又はそれらの組合せ若しくは複合体を含む、請求項1に記載の微粒子フィルター。
【請求項3】
前記無機粒子が、アルミナ、酸化亜鉛、ジルコニア、又はこれらの組合せ若しくは複合体を含む、請求項2に記載の微粒子フィルター。
【請求項4】
前記無機粒子がアルミナを含む、請求項3に記載の微粒子フィルター。
【請求項5】
前記無機粒子の層が三元変換触媒活性を示さない、請求項1~4のいずれか一項に記載の微粒子フィルター。
【請求項6】
前記無機粒子の層がPGM成分を含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載の微粒子フィルター。
【請求項7】
前記無機粒子が、5.5~9.5ミクロンの範囲のD
90を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の微粒子フィルター。
【請求項8】
前記無機粒子が、5.8~9.0ミクロンの範囲のD
90を有する、請求項7に記載の微粒子フィルター。
【請求項9】
三元変換触媒(TWC)コート、好ましくはTWC組成物を含むウォッシュコートを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の微粒子フィルター。
【請求項10】
前記三元変換触媒コートが、前記基材の前記入口流路及び/又は出口流路の少なくとも一部にある、請求項9に記載の微粒子フィルター。
【請求項11】
前記無機粒子の層を、0.005~0.83g/in
3(すなわち、約0.3~50g/L)、又は0.01~0.33g/in
3(すなわち、約0.6~20g/L)、又は0.02~0.17g/in
3(すなわち、約1.2~10g/L)、又は0.025~0.1g/in
3(すなわち、約1.5~6g/L)の装填量で含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の微粒子フィルター。
【請求項12】
ガソリン微粒子フィルターである、請求項1~11のいずれかに記載の微粒子フィルター。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の微粒子フィルターの製造方法であって、
入口端から出口端まで延在する複数の平行流路を形成するように長手方向に延在する複数の多孔質壁を含む基材を提供することであって、前記流路のうちのある量は、前記入口端で開き、前記出口端で閉じる入口流路であり、前記流路のうちのある量は、前記入口端で閉じ、前記出口端で開く出口流路である、基材を提供すること、
前記入口流路及び/又は出口流路内の前記多孔質壁の表面上に無機粒子を適用することであって、前記無機粒子が、5.0~14.0ミクロン、好ましくは5.5~9.5μm、より好ましくは5.8~9.0μmの範囲のD
90を有する、無機粒子を適用することとを含む、微粒子フィルターの製造方法。
【請求項14】
前記無機粒子が、乾式コーティングプロセス又はウォッシュコートプロセスによって、好ましくは乾式コーティングプロセスによって適用される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記無機粒子は、前記無機粒子又はその前駆体を使用して適用される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ガソリンエンジンの下流に配置された、請求項1~12のいずれか一項に記載の微粒子フィルター、又は請求項13~15のいずれか一項に記載の方法から得ることができるか若しくは得られた微粒子フィルターを含む、排気処理システム。
【請求項17】
ガソリンエンジンからの排気流を処理する方法であって、前記排気流を、請求項1~12のいずれか一項に記載の微粒子フィルター又は請求項16に記載の排気処理システムと接触させることを含む、ガソリンエンジンからの排気流を処理する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粉末粒子コーティングを含む、ガソリンエンジンからの排気流を処理するための微粒子フィルターに関する。本発明はまた、微粒子フィルターを含むガソリンエンジン排気処理システム及びガソリンエンジンからの排気流を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン排気は、実質的に、未燃焼炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)などのガス状汚染物質、並びに粒子状物質(PM)から成る。ガソリンエンジンに関して、ガス状汚染物質用の三元変換触媒(以下、TWC触媒又はTWCと互換的に呼ばれる)及び粒子状物質(PM)用のフィルターは、排気ガスが排出規制を満たすことを確実にするための周知の排出後処理手段である。
【0003】
ディーゼルリーンバーンエンジンによって生成される微粒子とは対照的に、ガソリン直噴エンジンなどのガソリンエンジンによって生成される微粒子は、より微細であり、より少ない量である傾向がある。これは、ディーゼルエンジンと比較してガソリンエンジンの燃焼条件が異なるためである。また、炭化水素成分は、ディーゼルエンジンと比較して、ガソリンエンジンの排出量が異なる。ガソリンエンジンからのエンジン排気を効果的に処理するために、ガソリンエンジン専用の微粒子フィルターが数十年にわたって開発されてきた。
【0004】
例えば、国際公開第2018/024547(A1)号は、微粒子フィルターの壁に浸透するTWC触媒材料を含む触媒化微粒子フィルターを記載している。フィルター上又はフィルター内にTWC触媒材料をコーティングすると、背圧の影響が生じてもよい。完全な三元変換機能を提供しながら、背圧の過度な増加を回避するために、特定のコーティングスキームが特許出願で提案された。触媒化微粒子フィルターは、微粒子フィルターのコーティングされていない多孔率よりも小さいコーティングされた多孔率を有することが必要とされる。
【0005】
英国特許第2560663(B)号では、ガソリンエンジンの排気処理システムにおいて使用するための微粒子フィルターを記載しており、このフィルターは、入口側及び出口側を有し、少なくとも入口側には、例えば5μm未満のD90を有し、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、セリウムジルコニウム(混合)酸化物、酸化ジルコニウム、酸化セリウム及び水和アルミナのうちの1つ又は複数を含む合成灰が装填されている。粒子分布は、かなりの量の合成灰が多孔質基材の細孔に入るのを防ぐのに役立ってもよいことが記載されている。
【0006】
ガソリン微粒子フィルターの濾過性能は、主にフィルターの入口側の壁への灰及び煤の蓄積の結果として、フィルターの寿命にわたって改善されることが知られている。また、試験サイクルのコールドスタート段階中に発生した放出物の粒子数は、試験中に放出された全粒子の主要部分を表すことが確認された。したがって、フレッシュ濾過効率とも呼ばれる、初期濾過段階での粒子濾過性能は、ガソリン微粒子フィルターを開発するための主要な関心事である。
【0007】
ガソリンエンジンからの微粒子排出物は、Euro 6及びChina 6などのより厳格な規制を受けているので、車両製造業者、すなわち相手先商標製品製造業者(OEM)は、ガソリン微粒子フィルターが、望ましい低い背圧と共に高いフレッシュ濾過効率を有することが要求される。
【0008】
低い背圧下でより高いフレッシュ濾過効率を提供することができる、ガソリンエンジンからの排気ガスを処理する改善された微粒子フィルターを提供する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、許容できない背圧上昇を被ることなく、より高いフレッシュ濾過効率を提供する、ガソリンエンジンからの排気流を処理する微粒子フィルターを提供することである。
【0010】
驚くべきことに、本発明の目的は、フィルターの入口流路、入口流路及び/又は出口流路内に無機粉末粒子の層を含む微粒子フィルターによって達成されることが見出された。
【0011】
したがって、第1の態様では、本発明は、微粒子フィルターであって、
-入口端から出口端まで延在する複数の平行流路を形成するように長手方向に延在する複数の多孔質壁を備える基材であって、流路のうちのある量が、入口端で開き出口端で閉じる入口流路であり、流路のうちのある量が、入口端で閉じ出口端で開く出口流路である、基材と、
-入口流路及び/又は出口流路内の多孔質壁の表面上に装填された無機粒子の層とを含み、
無機粒子が、5.0~14.0ミクロンの範囲のD90を有する、微粒子フィルターを提供する。
【0012】
第2の態様では、本発明は、微粒子フィルターの製造方法であって、
-入口端から出口端まで延在する複数の平行流路を形成するように長手方向に延在する複数の多孔質壁を含む基材を提供することであって、流路のうちのある量は、入口端で開き、出口端で閉じる入口流路であり、流路のうちのある量は、入口端で閉じ、出口端で開く出口流路である、基材を提供することと、
-入口流路及び/又は出口流路内の多孔質壁の表面上に無機粒子を適用することであって、無機粒子が、5.0~14.0ミクロンの範囲のD90を有する、無機粒子を適用することとを含む、微粒子フィルターの製造方法を提供する。
【0013】
第3の態様では、本発明は、ガソリンエンジンの下流に配置された、第1の態様に記載の微粒子フィルター又は第2の態様に記載の方法から得られることができる又は得られた微粒子フィルターを含む排気処理システムを提供する。
【0014】
第4の態様では、本発明は、ガソリンエンジンからの排気流を処理する方法であって、排気流を第1の態様に記載の微粒子フィルター又は第3の態様に記載の排気処理システムと接触させることを含む、ガソリンエンジンからの排気流を処理する方法を提供する。
【0015】
本明細書ではガソリン微粒子フィルターとも呼ばれる、ガソリンエンジンからの排気ガスを処理するための微粒子フィルターは、従来技術の対応物と比較して改善されたフレッシュ濾過効率を提供することができる一方、著しい背圧の増加は観察されなかったことが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】入口端及び出口端を有するウォールフロー基材の外観図を示す。
【
図2】基材の入口端から出口端まで長手方向に延在する複数の多孔質壁を有する例示的なウォールフロー基材の長手方向断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、本明細書の以下に詳細に記載されるであろう。本発明は、多くの異なる方法で実施され得、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0018】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」などの用語は、「含有する(contain)」、「含有している(containing)」などと互換的に使用され、非限定的なオープンな方式で解釈されるべきである。すなわち、例えば、更なる成分又は要素が存在し得る。「から成る(consists of)」という表現又は同族語は、「含む(comprises)」又は同族語に包含されてもよい。
【0019】
本明細書では、例えば無機粒子の層の文脈内の「層」という用語は、基材のブランク又は予めコーティングされた壁に装填された材料の薄いガス透過性コーティングを意味することを意図している。層は、基材の壁上に充填された粒子の形態であってもよく、それらの間にガスが透過することを可能にする間隙を有する。
【0020】
「D90」という用語は、累積粒度分布において、小粒径側からの累積体積が90%に達する点を指す、それらの通常の意味を有する。D90は、粒度分布を測定することによって決定される値である。粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いることによって測定される。
【0021】
「パラジウム成分」、「白金成分」及び「ロジウム成分」などの白金族金属(PGM)成分についての用語は、任意の可能な原子価状態のそれぞれの白金族金属の存在を説明することを意図しており、これは、例えば、触媒活性形態としての金属又は金属酸化物であってもよく、又は例えば、触媒の焼成若しくは使用時に分解するか、そうでなければ触媒活性形態に変換する金属化合物、錯体などであってもよい。
【0022】
「担体」という用語は、1つ又は複数のPGM成分、並びに任意で安定剤、促進剤及び結合剤などの1つ又は複数の他の成分を受容及び担持するための、粒子の形態の材料を指す。
【0023】
本明細書では、g/ft3又はg/in3の単位での装填量への言及は、それらが装填される基材又は基材部分の単位体積当たりの特定の成分、コート又は層の重量を意味することを意図している。
【0024】
本発明の第1の態様によれば、微粒子フィルターであって、
-入口端から出口端まで延在する複数の平行流路を形成するように長手方向に延在する複数の多孔質壁を備える基材であって、流路のうちのある量が、入口端で開き出口端で閉じる入口流路であり、流路のうちのある量が、入口端で閉じ出口端で開く出口流路である、基材と、
-入口流路及び/又は出口流路内の多孔質壁の表面上に装填された無機粒子の層とを含み、
無機粒子が、5.0~14.0ミクロンの範囲のD90を有する、微粒子フィルターが提供される。
【0025】
本明細書で使用される基材とは、燃焼エンジンからの排気流で遭遇する条件に耐えるのに適した構造を指し、それ自体が微粒子フィルターとして機能することができ、機能性材料、例えば、本明細書に記載の無機粒子の層などの濾過改善層、及び任意で任意の他の層を装填することもできる。
【0026】
基材は、入口端から出口端まで延在する複数の平行流路を形成するように長手方向に延在する複数の多孔質壁を備え、流路のうちのある量が、入口端で開き出口端で閉じる入口流路であり、入口流路とは異なる流路のうちのある量が、入口端で閉じ出口端で開く出口流路である。ウォールフロー基材とも呼ばれる基材の構成は、入口流路内のエンジン排気が基材の多孔質壁を通って出口流路内に流れて出口端に到達することを必要とする。
【0027】
一般に、基材は、交互の流路が両端のプラグで塞がれた、ハニカム構造を示してもよい。
【0028】
基材の多孔質壁は一般に、セラミック材料又は金属材料から作製される。基材を構築するために使用される好適なセラミック材料としては、任意の好適な耐火性材料、例えば、コージェライト、ムライト、コージェライト-アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、シリマナイト、ペタライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム及びアルミノシリケートを挙げてもよい。典型的には、基材の多孔質壁はコージェライト又は炭化ケイ素から作製される。
【0029】
基材を構築するのに好適な金属材料は、チタン及びステンレス鋼などの耐熱性金属及び金属合金、並びに鉄が実質的又は主要な成分である他の合金を含んでもよい。そのような合金は、1つ又は複数のニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを含有してもよく、これらの金属の総量は、有利には、少なくとも15重量%の合金、例えば、10~25重量%のクロム、3~8重量%のアルミニウム、及び最大20重量%のニッケルを含んでもよい。合金は、マンガン、銅、バナジウム、チタンなどの1つ又は複数の金属を少量又は微量含有してもよい。基材の表面上に酸化物層を形成して、合金の耐食性を改善し、金属表面へのウォッシュコート層の接着を促進するために、金属基材の表面を、例えば1000℃以上の高温で酸化してもよい。
【0030】
閉じた端部の流路は、シーラント材料のプラグで塞がれる。任意の適切なシーラント材料を、限定することなく使用してもよい。
【0031】
基材の流路は、円形、楕円形、三角形、長方形、正方形、六角形、台形又は他の多角形などの任意の適切な断面形状及びサイズであることができる。基材は、断面1平方インチ当たり700個までの流路(すなわちセル)を有してもよい。例えば、基材は、100~500セル/平方インチ(cells per square inch、「cpsi」)、典型的には200~400cpsiを有してもよい。基材の壁は様々な厚さを有してもよく、典型的な範囲は2ミル~0.1インチである。好ましくは、基材は、出口流路の数に等しい数の入口流路を有し、流路は、基材全体に均一に分布される。
【0032】
図1及び
図2は、複数の入口及び出口流路を含む典型的なウォールフロー基材を示す。
【0033】
図1は、排気流(13)が基材に入る入口端(01)と、処理された排気が出る出口端(02)とを有するウォールフロー基材の外観図を示す。交互の流路は、プラグで塞がれて、図示されるように入口端(01)に市松模様を形成し、図示されない出口端(02)に反対の市松模様を形成する。
【0034】
図2は、入口端(01)で開いており、出口面(02)で閉じている第1の複数の流路(11)と、出口端(02)で開いており、入口端(01)で閉じている第2の複数の流路(12)とを含む、ウォールフロー基材の長手方向断面図を概略的に示す。流路は、流路間に一定の壁厚を提供するために互いに平行であることが好ましい。入口端から第1の複数の流路に入る排気流は、多孔質壁(10)を通って第2の複数の流路内に拡散することなく基材から出ることができない。
【0035】
本発明による微粒子フィルターは、入口流路及び/又は出口流路における多孔質壁の表面に装填された無機粒子の層を備えてもよい。言い換えれば、無機粒子の層は、入口流路のみ、入口流路のみ、又は入口流路及び出口流路の両方で、多孔質壁上に装填されてもよい。特に、無機粒子の層は、入口流路のみ、又は入口流路及び出口流路の両方、より好ましくは入口流路のみで多孔質壁上に装填されてもよい。
【0036】
無機粒子の層は、入口及び/又は出口流路内の多孔質壁の表面上に装填されることが意図されており、これは「オンウォール」コートとも呼ばれるが、少量の無機粒子が多孔質壁内の細孔内に浸透してもよいことが理解されよう。
【0037】
典型的には、無機粒子は、1つ又は複数の非PGM成分、例えば、アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、シリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、又はそれらの組合せ若しくは複合体を含む。好ましくは、無機粒子は、アルミナ、酸化亜鉛、ジルコニア、又はそれらの組合せ若しくは複合体を含む。より好ましくは、無機粒子はアルミナを含む。
【0038】
無機粒子は、任意で、パラジウム成分及び/又は白金成分などのPGM成分を含んでもよい。PGM成分は、存在する場合、上述のように非PGM成分上に担持されてもよく、又は非PGM成分から分離して存在してもよい。
【0039】
本明細書では、基材の入口及び/又は出口流路内の多孔質壁上に装填された無機粒子の層は、特に、TWC活性をほとんど又は全く示さない、好ましくは全く示さない層を指すが、1つ又は複数のPGM成分が無機粒子中に含まれる場合、特定の触媒活性を示してもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、無機粒子は、PGM成分を含まず、好ましくは、アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、シリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、又はこれらの組合せ若しくは複合体から成り、これらのうち、アルミナ、酸化亜鉛、ジルコニア、又はこれらの組合せ若しくは複合体がより好ましく、アルミナが最も好ましい。
【0041】
本発明者らは、D90で表される無機粒子の粒度分布が、本発明による微粒子フィルターのフレッシュ濾過効率に影響を与える重要な因子であることを見出した。
【0042】
したがって、基材の入口及び/又は出口流路内の多孔質壁上に装填された無機粒子は、5.5~9.5μmの範囲のD90を有することが好ましい。
【0043】
より好ましくは、基材の入口及び/又は出口流路内の多孔質壁上に装填された無機粒子は、5.8~9.0μmの範囲のD90を有する。
【0044】
微粒子フィルターは、0.005~0.83g/in3(すなわち、約0.3~50g/L)、又は0.01~0.33g/in3(すなわち、約0.6~20g/L)、又は0.02~0.17g/in3(すなわち、約1.2~10g/L)、又は0.025~0.1g/in3(すなわち、約1.5~6g/L)の装填量で無機粒子の層を含んでもよい。
【0045】
無機粒子の層は、乾式コーティングプロセス及びウォッシュコートプロセスなどの任意の既知のプロセスによって基材の多孔質壁の表面上に適用されてもよい。
【0046】
乾式コーティングプロセスは周知であり、一般に、キャリアガス流によって無機粒子又は粒子形態のその好適な前駆体を開放端から基材の流路内に吹き込み、コーティングされた基材を焼成することによって行われる。このプロセスによって、液体キャリアは使用されない。無機粒子は典型的には、粒子床の形態で流路の多孔質壁の表面上に分布する。
【0047】
いくつかの実施形態では、無機粒子又はその好適な前駆体は、流路の開放端から閉鎖端に向かって入口流路内に吹き込まれてもよい。入口流路内に形成された粒子床は、入口流路の多孔質壁上に配置されてもよく、また、流路を遮断するプラグに対して配置されてもよい。上述したように、微粒子床、すなわち無機粒子の層はガス透過性であり、このことは排気流の粒子状物質(PM)の捕捉に寄与し、排気流の気体汚染物質がそこを透過することを可能にすることができる。
【0048】
粒子床の形態の無機粒子の層は、無機粒子が装填される流路の多孔質壁に沿って延在してもよい。粒子床は、流路の多孔質壁の全長に沿って、又は流路の多孔質壁の長さの一部のみに沿って延在してもよいことが理解されるであろう。
【0049】
ウォッシュコートプロセスも周知であり、一般に、液体溶媒(例えば、水)中に無機粒子又はその好適な前駆体及び任意の助剤を含むスラリーを、開放端から基材の流路内にコーティングし、コーティングされた基材を乾燥させ、焼成することによって行われる。ウォッシュコートによって適用された無機粒子の層は、多孔質コーティングの形態であってもよく、無機粒子が装填される流路の多孔質壁に沿って延在してもよい。また、多孔質コーティングは、流路の多孔質壁の全長に沿って、又は流路の多孔質壁の長さの一部のみに沿って延在してもよい。
【0050】
本発明による微粒子フィルターは、基材の入口流路及び/又は出口流路の少なくとも一部にTWCコートを更に含んでもよい。特に、TWCコートは、基材の入口流路及び出口流路の両方に存在する。
【0051】
TWCコートは典型的には、「インウォール」コートとも呼ばれる、TWC組成物を含むウォッシュコートの形態である。
【0052】
TWCコートは、流路の多孔質壁の細孔内に装填されることが意図されているが、かなりの量のTWC組成物が、コーティングされた流路内の多孔質壁の表面上にも見出されてもよいことが理解されよう。
【0053】
微粒子フィルターに含まれるTWCコートに有用なTWC組成物に特に制限はない。典型的には、TWC組成物は、触媒活性種としての白金族金属成分、例えばロジウム成分、並びに白金成分及びパラジウム成分の一方又は両方を含み、これらは担体粒子上に担持されている。担体として有用な材料は、耐火性金属酸化物、酸素貯蔵成分及びそれらの任意の組合せであってもよい。
【0054】
耐火性金属酸化物の例としては、アルミナ、ランタナドープアルミナ、バリアドープアルミナ、セリアドープアルミナ、ジルコニアドープアルミナ、セリア-ジルコニアドープアルミナ、ランタナ-ジルコニアドープアルミナ、バリア-ランタナドープアルミナ、バリア-セリアドープアルミナ、バリア-ジルコニアドープアルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミアドープアルミナ、ランタナ-セリアドープアルミナ、及びこれらの任意の組合せを挙げてもよいが、これらに限定されない。
【0055】
酸素貯蔵成分(OSC)の例としては、セリアなどの還元性希土類金属酸化物を挙げてもよいが、これらに限定されない。酸素貯蔵成分はまた、セリアとの複合酸化物を構成するために、ランタナ、プラセオジミア、ネオジミア、ユーロピア、サマリア、イッテルビア、イットリア、ジルコニア、及びハフニアのうちの1つ又は複数を含んでもよい。特に、酸素貯蔵成分は、セリア-ジルコニア複合酸化物及び安定化セリア-ジルコニア複合酸化物から選択される。
【0056】
本発明による微粒子フィルターは、0.1~5.0g/in3(すなわち、約6.1~305.1g/L)、又は0.5~3.0g/in3(すなわち、約30.5~183.1g/L)、又は0.8~2g/in3(すなわち、約49~122g/L)の装填量でTWCコートを含んでもよい。
【0057】
TWCコートは、それぞれのPGM元素として計算して、1.0~50.0g/ft3(すなわち、約0.04~1.8g/L)、又は5.0~20.0g/ft3(すなわち、約0.18~0.71g/L)の総装填量でPGM成分を含んでもよい。
【0058】
TWCコートは、任意の既知のプロセスによって、典型的にはウォッシュコートプロセスによって、基材上に適用されてもよい。ウォッシュコートプロセスは一般に、溶媒(例えば水)中の担持されたPGM成分のTWC触媒粒子及び任意で助剤を含むスラリーをコーティングし、コーティングされた基材を乾燥させ、焼成することによって実施される。
【0059】
TWCコートは、存在する場合、上述のように無機粒子の層を装填する前に基材上に適用される。
【0060】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明による微粒子フィルターは、
-入口端から出口端まで延在する複数の平行流路を形成するように長手方向に延在する複数の多孔質壁を備える基材であって、流路のうちのある量が、入口端で開き出口端で閉じる入口流路であり、流路のうちのある量が、入口端で閉じ出口端で開く出口流路である、基材と、
-少なくとも入口流路内の多孔質壁の表面上に装填された無機粒子の層と、
-任意で、TWCコート、好ましくはTWC組成物を含むウォッシュコートを備え、
無機粒子は、5.0~14.0ミクロンの範囲のD90を有し、アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、シリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、又はそれらの組合せ若しくは複合体を含む。
【0061】
更なる例示的な実施形態では、本発明による微粒子フィルターは、
-入口端から出口端まで延在する複数の平行流路を形成するように長手方向に延在する複数の多孔質壁を備える基材であって、流路のうちのある量が、入口端で開き出口端で閉じる入口流路であり、流路のうちのある量が、入口端で閉じ出口端で開く出口流路である、基材と、
-少なくとも入口流路内の多孔質壁の表面上に装填された無機粒子の層と、
-任意で、TWC組成物を含むウォッシュコートを備え、
無機粒子が、5.5~9.5ミクロンの範囲のD90を有し、アルミナ、酸化亜鉛、ジルコニア、又はこれらの組合せ若しくは複合体を含む。
【0062】
いくつかの他の例示的な実施形態では、本発明による微粒子フィルターは、
-入口端から出口端まで延在する複数の平行流路を形成するように長手方向に延在する複数の多孔質壁を備える基材であって、流路のうちのある量が、入口端で開き出口端で閉じる入口流路であり、流路のうちのある量が、入口端で閉じ出口端で開く出口流路である、基材と、
-少なくとも入口流路内の多孔質壁の表面上に装填された無機粒子の層と、
-任意で、TWC組成物を含むウォッシュコートを備え、
無機粒子が、5.8~9.0ミクロンの範囲のD90を有し、アルミナ、酸化亜鉛、ジルコニア、又はこれらの組合せ若しくは複合体を含む。
【0063】
上述の例示的な実施形態では、無機粒子の層はPGM成分を含まないことが好ましい。
【0064】
微粒子フィルターは、エンジンの排気システムの他の部分と動作可能に関連付けられ、流体連通してもよい、排気流のための入口及び出口を有するシェル内に収容されてもよい。
【0065】
本発明の第2の態様によれば、微粒子フィルターの製造方法であって、
-入口端から出口端まで延在する複数の平行流路を形成するように長手方向に延在する複数の多孔質壁を含む基材を提供することであって、流路のうちのある量は、入口端で開き、出口端で閉じる入口流路であり、流路のうちのある量は、入口端で閉じ、出口端で開く出口流路である、基材を提供することと、
-入口流路及び/又は出口流路内の多孔質壁の表面上に無機粒子を適用することであって、無機粒子が、5.0~14.0ミクロン(μm)、好ましくは5.5~9.5μm、より好ましくは5.8~9.0μmの範囲のD90を有する、無機粒子を適用することとを含む、微粒子フィルターの製造方法が提供される。
【0066】
無機粒子は、第1の態様で上述したような乾式コーティングプロセス又はウォッシュコート、好ましくは乾式コーティングプロセスによって多孔質壁の表面上に適用されてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、微粒子フィルターの製造方法は、多孔質壁の表面上に無機粒子を適用する前に、基材の入口及び/又は出口流路の少なくとも一部の多孔質壁にTWCコートを適用することを更に含む。TWCコートは、上述のウォッシュコートプロセスによって適用されてもよい。
【0068】
第1の態様における無機粒子及びTWCコートについて上述された任意の一般的な説明及び選択されたものは、参照により本明細書に適用可能である。
【0069】
第3の態様によれば、ガソリンエンジンの下流に配置された、第1の態様に記載の微粒子フィルター又は第2の態様に記載の方法から得られることができる又は得られた微粒子フィルターを含む排気処理システムが提供される。
【0070】
第4の態様によれば、ガソリンエンジンからの排気流を処理する方法であって、排気流を第1の態様に記載の微粒子フィルター又は第3の態様に記載の排気処理システムと接触させることを含む、方法が提供される。
【0071】
実施形態
様々な実施形態が以下に列挙される。以下に列挙される実施形態は、本発明の範囲に従って全ての態様及び他の実施形態と組み合わされ得ることが理解されるであろう。
【0072】
実施形態1.微粒子フィルターであって、この微粒子フィルターは、
-入口端から出口端まで延在する複数の平行流路を形成するように長手方向に延在する複数の多孔質壁を備える基材であって、流路のうちのある量が、入口端で開き出口端で閉じる入口流路であり、流路のうちのある量が、入口端で閉じ出口端で開く出口流路である、基材と、
-入口流路及び/又は出口流路内、好ましくは少なくとも入口流路内の多孔質壁の表面上に装填された無機粒子の層とを含み、
無機粒子が、5.0~14.0ミクロンの範囲のD90を有する、微粒子フィルター。
【0073】
実施形態2.無機粒子が、1つ又は複数の非PGM成分、例えば、アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、シリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、又はそれらの組合せ若しくは複合体を含む、実施形態1に記載の微粒子フィルター。
【0074】
実施形態3.無機粒子が、アルミナ、酸化亜鉛、ジルコニア、又はそれらの組合せ又は複合体を含む、実施形態2に記載の微粒子フィルター。
【0075】
実施形態4.無機粒子がアルミナを含む、実施形態3に記載の微粒子フィルター。
【0076】
実施形態5.無機粒子の層が三元変換触媒活性を示さない、実施形態1~4のいずれか1つに記載の微粒子フィルター。
【0077】
実施形態6.無機粒子の層がPGM成分を含まない、実施形態1~5のいずれかに1つに記載の微粒子フィルター。
【0078】
実施形態7.無機粒子が、5.5~9.5ミクロンの範囲のD90を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の微粒子フィルター。
【0079】
実施形態8.無機粒子が、5.8~9.0ミクロンの範囲のD90を有する、実施形態7に記載の微粒子フィルター。
【0080】
実施形態9.三元変換触媒(TWC)コート、好ましくはTWC組成物を含むウォッシュコートを更に含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の微粒子フィルター。
【0081】
実施形態10.三元変換触媒コートが、基材の入口流路及び/又は出口流路の少なくとも一部にある、実施形態9に記載の微粒子フィルター。
【0082】
実施形態11.無機粒子の層を、0.005~0.83g/in3(すなわち、約0.3~50g/L)、又は0.01~0.33g/in3(すなわち、約0.6~20g/L)、又は0.02~0.17g/in3(すなわち、約1.2~10g/L)、又は0.025~0.1g/in3(すなわち、約1.5~6g/L)の装填量で含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の微粒子フィルター。
【0083】
実施形態12.ガソリン微粒子フィルターである、実施形態1~11のいずれか1つに記載の微粒子フィルター。
【0084】
実施形態13.実施形態1~12のいずれか1つに記載の微粒子フィルターの製造方法であって、
-入口端から出口端まで延在する複数の平行流路を形成するように長手方向に延在する複数の多孔質壁を含む基材を提供することであって、流路のうちのある量は、入口端で開き、出口端で閉じる入口流路であり、流路のうちのある量は、入口端で閉じ、出口端で開く出口流路である、基材を提供することと、
-入口流路及び/又は出口流路内の多孔質壁の表面上に無機粒子を適用することであって、無機粒子が、5.0~14.0ミクロン、好ましくは5.5~9.5μm、より好ましくは5.8~9.0μmの範囲のD90を有する、無機粒子を適用することとを含む、微粒子フィルターの製造方法。
【0085】
実施形態14.無機粒子が、乾式コーティングプロセス又はウォッシュコートプロセスによって、好ましくは乾式コーティングプロセスによって適用される、実施形態13に記載の方法。
【0086】
実施形態15.無機粒子は、無機粒子又はその前駆体を使用することによって適用される、請求項14に記載の方法。
【0087】
実施形態16.ガソリンエンジンの下流に配置された、実施形態1~12のいずれか1つに記載の微粒子フィルター、又は実施形態13~15のいずれか1つに記載の方法から得ることができるか若しくは得られた微粒子フィルターを含む、排気処理システム。
【0088】
実施形態17.ガソリンエンジンからの排気流を処理する方法であって、排気流を、実施形態1~12のいずれか1つに記載の微粒子フィルター又は実施形態16に記載の排気処理システムと接触させることを含む、ガソリンエンジンからの排気流を処理する方法。
【実施例】
【0089】
本発明の態様は、以下の実施例によってより十分に説明され、これらの実施例は、本発明の特定の態様を説明するために記載されており、それらを限定するとして解釈されるべきではない。
【0090】
I.微粒子フィルターの作製
参考例1
Corningから入手したガソリン微粒子フィルターコージェライト基材を、参照フィルター(ブランクフィルター)として使用し、これは、143.8mm(D)×123.2mm(L)のサイズ、2.0Lの体積(約122.1in3)、1平方インチ当たり300セルのセル密度(cpsi)、8ミルの壁厚、65%の気孔率、及び水銀圧入測定によって決定される直径20μmの平均細孔径を有する。
【0091】
比較例1
TWCコートを有する微粒子フィルターを、参考例1のブランクフィルターと同じフィルター基材から、ブランクフィルターの入口流路及び出口流路の両方にTWCウォッシュコートを適用することによって調製した。
【0092】
30.22gの9.68重量%硝酸ロジウム水溶液を、遊星型ミキサー(P-ミキサー)中で255gの高表面積のガンマアルミナ粉末に含浸させて、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成した。14.27gの20.5重量%硝酸パラジウム水溶液を、遊星型ミキサー(P-ミキサー)中で711gのセリア/ジルコニア(40%セリア)複合粉末上に含浸させて、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成した。上記2つの湿潤粉末を1280gの脱イオン水と混合することによって水性スラリーを形成し、これに78gの水酸化バリウム八水和物及び66gの21.5重量%硝酸ジルコニウム水溶液を添加した。スラリーのpHを硝酸で3.6に調整した。スラリーを4.5μmの粒径D90に粉砕し、次いで、50%のウォッシュコート装填量でブランクフィルターの入口流路及び出口流路内にコーティングし、残りの50%のウォッシュコート装填量でブランクフィルターの出口流路内にコーティングした。次いで、コーティングされた基材を150℃の温度で1時間乾燥させた後、550℃の温度で1時間焼成した。
【0093】
約0.99g/in3(60g/L)のウォッシュコート装填量及び約10.0g/ft3(約0.35g/L)の総PGM装填量及び5/5のPd/Rh比を用いて、インウォールTWCコートを得た。
【0094】
比較例2
TWCコート及び無機粒子の層を有する微粒子フィルターを調製した。
【0095】
まず、比較例1に記載のものと同じプロセスを繰り返すことにより、TWCコートを有する微粒子フィルターを作製した。次に、高表面積のガンマアルミナ粉末を担体ガスと混合し、室温で600m3/hの流量でフィルターの入口流路に吹き込んだ。アルミナ粉末は、Sympatec HELOSレーザー回折粒径分析器によって測定される4.8μmの粒径D90に乾式粉砕することによって前処理されており、空気中1100℃で4時間焼成した後の比表面積(BETモデル、77K窒素吸着測定)は61m2/gであった。コーティング後、入口流路内に無機粒子の層を有するフィルターを、450℃の温度で30分間焼成した。無機粒子の層中のアルミナ粒子の装填量は、3g/L(0.05g/in3)であった。
【0096】
比較例3
アルミナ粉末を15.2μmの粒径D90に乾式粉砕したことを除いて、比較例2に記載したのと同じプロセスを繰り返すことによって、TWCコート及び無機粒子の層を有する微粒子フィルターを作製した。
【0097】
本発明の実施例1
アルミナ粉末を5.8μmの粒径D90に乾式粉砕したことを除いて、比較例2に記載したのと同じプロセスを繰り返すことによって、TWCコート及び無機粒子の層を有する微粒子フィルターを作製した。
【0098】
本発明の実施例2
アルミナ粉末を9.0μmの粒径D90に乾式粉砕したことを除いて、比較例2に記載したのと同じプロセスを繰り返すことによって、TWCコート及び無機粒子の層を有する微粒子フィルターを作製した。
【0099】
II.濾過性能
II.1 背圧
上記の実施例からの微粒子フィルターを、600m3/hの冷気流下でSuperFlow SF-1020フローベンチによって測定される背圧について調査した。
【0100】
II.2 濾過効率
「BS EN ISO 29463-5:2018-Part 5:Test method for filter elements」に定義された標準手順に従って、600m3/hの冷気流を有する固定空気フィルター性能試験ベンチ上で、セバシン酸ジ(2-エチル-ヘキシル)エアロゾルを粒子として使用して、フレッシュ状態(0km、又は未使用状態)での上記実施例からの微粒子フィルターの濾過効率を測定した。0.10~0.15μmの範囲の粒子の粒子数(PN)を、試験されるフィルターの上流及び下流の両方についてPNカウンターによって記録した。フレッシュ濾過効率(FFE)は、以下の式に従って計算した。
【0101】
【0102】
上記実施例からの各微粒子フィルターの試験結果を以下の表に要約する。
【0103】
【0104】
比較例1と参照例1との間の比較から、TWCコートを有する微粒子フィルターは、ブランクフィルターよりも低いフレッシュ濾過効率(FFE)を有するが、同等の低い背圧が維持されることが分かり、これは、TWC成分が微粒子フィルターの基材の多孔質壁に浸透するためである。
【0105】
フレッシュ濾過効率は、比較例2及び3に示されるように、微粒子フィルターの基材の入口流路の多孔質壁上に無機粒子の層を適用することによって、背圧の許容可能な増加を伴って、改善されてもよい。
【0106】
驚くべきことに、フレッシュ濾過効率は、微粒子フィルターの基材の多孔質壁上に適用された無機粒子のD90を制御することによって更に改善されてもよいことが見出された。実施例1及び2の微粒子フィルターは、D90が小さい(4.8μm)無機粒子の層を有する比較例2の微粒子フィルター及びD90が大きい(15.2μm)無機粒子の層を有する比較例3の微粒子フィルターよりも明らかに高いフレッシュ濾過効率を示すが、有意に増加することなく維持された。
【0107】
本明細書における本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途の単なる例示であることを理解されたい。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の方法及び装置に対して様々な修正及び変形を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内にある修正及び変形を含むことが意図される。
【国際調査報告】