(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】タウオパチーの治療のための小分子ペプチドミメティック
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20250128BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20250128BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250128BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20250128BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20250128BHJP
C07K 5/06 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P25/28
A61P21/00
A61P25/00
A61P3/00
A61P43/00 111
A61K45/06
A61P43/00 121
A61K38/05
C07K5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541262
(86)(22)【出願日】2023-01-09
(85)【翻訳文提出日】2024-09-03
(86)【国際出願番号】 US2023010419
(87)【国際公開番号】W WO2023133321
(87)【国際公開日】2023-07-13
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522012798
【氏名又は名称】ステルス バイオセラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】STEALTH BIOTHERAPEUTICS INC.
(71)【出願人】
【識別番号】593030244
【氏名又は名称】ザ、ジェネラル、ホスピタル、コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】THE GENERAL HOSPITAL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】キーフ デニス
(72)【発明者】
【氏名】ダ シルヴァ マリア カタリナ テロ バプティスタ リマ
(72)【発明者】
【氏名】ハガーティ スティーヴン ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084AA17
4C084AA19
4C084AA20
4C084BA14
4C084CA59
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4C084MA02
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4C084ZC751
4H045AA10
4H045AA30
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4H045FA10
(57)【要約】
本開示は、タウオパチーの治療、予防、改善、阻害及び/又は発症の遅延のための新規の方法を提供する。本方法は、有効量の、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物などの小分子ペプチドミメティックを対象に投与することを含む。
【選択図】11A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タウオパチーの治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症の遅延を必要とする対象においてそれを行うための方法であって、前記対象に、治療有効量の小分子ペプチドミメティック、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記ペプチドミメティックが、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記小分子ペプチドミメティックの投与が、タウ種レベルを低下させ、かつ/又は細胞タウ蓄積に関連する毒性を低下させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記小分子ペプチドミメティックの投与が、タウタンパク質の細胞蓄積によって引き起こされる細胞酸化ストレスを低下させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、アルツハイマー病、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、グローバルグリアタウオパチー、嗜銀顆粒病、家族性英国型認知症、又は家族性デンマーク型認知症を有すると診断されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、原発性加齢関連タウオパチーを有すると診断されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記原発性加齢関連タウオパチーが、神経原線維もつれ型認知症、慢性外傷性脳症(CTE)、及び加齢関連タウアストログリオパチーからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ペプチドミメティックが、2週間以上、毎日投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ペプチドミメティックが、12週間以上、24週間以上、48週間以上、1年以上、2年以上、又は5年以上、毎日投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ペプチドミメティックが、診断の直後から、前記対象の生涯の残りの間、又は前記ペプチドミメティックの投与がもはや有効ではなくなるまで、投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、哺乳動物である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記哺乳動物対象が、ヒトである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ペプチドミメティックが、経口投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ペプチドミメティックが、皮下投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ペプチドミメティックが、局所的、鼻腔内、全身的、静脈内、腹腔内、皮内、眼内、眼科的、髄腔内、脳室内、イオン泳動的、経粘膜的、硝子体内、又は筋肉内に投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象に追加の治療を、別々に、連続して、又は同時に施すことを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記追加の治療が、治療剤又は複数の治療剤の投与を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記治療剤が、タウリン酸化の調節剤、タウアシル化の調節剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、タウグリコシル化の調節剤/阻害剤(例えば、O-GlcNAcase阻害剤)、タウ切断の調節剤(例えば、カプサーゼ阻害剤)、タウ凝集阻害剤、プロテアソーム刺激剤、USP14阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、オートファジー活性化剤、シャペロン調節剤、共シャペロン調節剤、及びタウ指向性多標的特異的リガンドからなる群から選択される小分子である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ペプチドミメティック及び追加の治療剤の組み合わせが、前記タウオパチーの前記治療における相乗効果を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記薬学的に許容される塩が、酒石酸塩、フマル酸塩、モノ酢酸塩、ビス酢酸塩、トリ酢酸塩、モノトリフルオロ酢酸塩、ビストリフルオロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、モノ塩酸塩、ビス塩酸塩、トリ塩酸塩、モノトシル酸塩、ビストシル酸塩、又はトリトシル酸塩を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ペプチドミメティックが、トリスHCl塩、ビスHCl塩、又はモノHCl塩として製剤化される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
タウオパチーの治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症の遅延を必要とする対象においてそれを行うための薬剤の調製における組成物の使用であって、前記組成物が、治療有効量の小分子ペプチドミメティック、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物を含む、使用。
【請求項23】
前記ペプチドミメティックが、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記組成物の使用が、タウ種レベルを低下させ、かつ/又は細胞タウ蓄積に関連する毒性を低下させる、請求項22又は23に記載の使用。
【請求項25】
前記組成物の使用が、タウタンパク質の細胞蓄積によって引き起こされる細胞酸化ストレスを低下させる、請求項22又は23に記載の使用。
【請求項26】
前記対象が、アルツハイマー病、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、グローバルグリアタウオパチー、嗜銀顆粒病、家族性英国型認知症、又は家族性デンマーク型認知症を有すると診断されている、請求項22~25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
前記対象が、原発性加齢関連タウオパチーを有すると診断されている、請求項22~25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
前記原発性加齢関連タウオパチーが、神経原線維もつれ型認知症、慢性外傷性脳症(CTE)、及び加齢関連タウアストログリオパチーからなる群から選択される、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記組成物/薬剤が、2週間以上、毎日投与される、請求項22~28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
前記組成物/薬剤が、12週間以上、24週間以上、48週間以上、1年以上、2年以上、又は5年以上、毎日投与される、請求項22~28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
前記組成物/薬剤が、診断の直後から、前記対象の生涯の残りの間、又は前記組成物の投与がもはや有効ではなくなるまで、投与される、請求項22~28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
前記対象が、哺乳動物である、請求項22~31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記哺乳動物対象が、ヒトである、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記組成物/薬剤が、経口投与用に製剤化される、請求項22~33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記組成物/薬剤が、皮下投与用に製剤化される、請求項22~33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
前記組成物/薬剤が、局所的、鼻腔内、全身的、静脈内、腹腔内、皮内、眼内、眼科的、髄腔内、脳室内、イオン泳動的、経粘膜的、硝子体内、又は筋肉内投与用に製剤化される、請求項22~33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
前記組成物/薬剤が、追加の治療と別々に、連続して、又は同時に使用されるよう意図される、請求項22~36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
前記追加の治療が、治療剤又は複数の治療剤の使用を更に含む、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
前記治療剤が、タウリン酸化の調節剤、タウアシル化の調節剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、タウグリコシル化の調節剤/阻害剤(例えば、O-GlcNAcase阻害剤)、タウ切断の調節剤(例えば、カプサーゼ阻害剤)、タウ凝集阻害剤、プロテアソーム刺激剤、USP14阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、オートファジー活性化剤、シャペロン調節剤、共シャペロン調節剤、及びタウ指向性多標的特異的リガンドからなる群から選択される、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
組成物/薬剤及び追加の治療/治療剤の組み合わせが、前記タウオパチーの前記治療における相乗効果を有する、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
前記組成物/薬剤の製剤化において使用される前記小分子ペプチドミメティックが、酒石酸塩、フマル酸塩、モノ酢酸塩、ビス酢酸塩、トリ酢酸塩、モノトリフルオロ酢酸塩、ビストリフルオロ酢酸塩、トリトリフルオロ酢酸塩、モノ塩酸塩、ビス塩酸塩、トリ塩酸塩、モノトシル酸塩、ビストシル酸塩、及びトリトシル酸塩からなる群から選択される薬学的に許容される塩である、請求項22~40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
前記組成物/薬剤の製剤化において使用される前記ペプチドミメティックが、トリスHCl塩、ビスHCl塩、又はモノHCl塩である、請求項22~40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
タウオパチーの治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症の遅延を必要とする対象においてそれを行うことにおいて使用するための、小分子ペプチドミメティック、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物。
【請求項44】
前記ペプチドミメティックが、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミドである、請求項43に記載のペプチドミメティック。
【請求項45】
前記小分子ペプチドミメティックの使用が、タウ種レベルを低下させ、かつ/又は細胞タウ蓄積に関連する毒性を低下させる、請求項43又は44に記載のペプチドミメティック。
【請求項46】
前記小分子ペプチドミメティックの使用が、タウタンパク質の細胞蓄積によって引き起こされる細胞酸化ストレスを低下させる、請求項43又は44に記載のペプチドミメティック。
【請求項47】
前記対象が、アルツハイマー病、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、グローバルグリアタウオパチー、嗜銀顆粒病、家族性英国型認知症、又は家族性デンマーク型認知症を有すると診断されている、請求項43~46のいずれか一項に記載のペプチドミメティック。
【請求項48】
前記対象が、原発性加齢関連タウオパチーを有すると診断されている、請求項43~46のいずれか一項に記載のペプチドミメティック。
【請求項49】
前記原発性加齢関連タウオパチーが、神経原線維もつれ型認知症、慢性外傷性脳症(CTE)、及び加齢関連タウアストログリオパチーからなる群から選択される、請求項48に記載のペプチドミメティック。
【請求項50】
前記ペプチドミメティックが、2週間以上、毎日投与される、請求項43~49のいずれか一項に記載のペプチドミメティック。
【請求項51】
前記ペプチドミメティックが、12週間以上、24週間以上、48週間以上、1年以上、2年以上、又は5年以上、毎日投与される、請求項43~49のいずれか一項に記載のペプチドミメティック。
【請求項52】
前記ペプチドミメティックが、診断の直後から、前記対象の生涯の残りの間、又は前記ペプチドミメティックの投与がもはや有効ではなくなるまで、投与される、請求項43~49のいずれか一項に記載のペプチドミメティック。
【請求項53】
前記対象が、哺乳動物である、請求項43~52のいずれか一項に記載のペプチドミメティック。
【請求項54】
前記哺乳動物対象が、ヒトである、請求項53に記載のペプチドミメティック。
【請求項55】
前記ペプチドミメティックが、経口投与用に製剤化される、請求項43~54のいずれか一項に記載のペプチドミメティック。
【請求項56】
前記ペプチドミメティックが、皮下投与用に製剤化される、請求項43~54のいずれか一項に記載のペプチドミメティック。
【請求項57】
前記ペプチドミメティックが、局所的、鼻腔内、全身的、静脈内、腹腔内、皮内、眼内、眼科的、髄腔内、脳室内、イオン泳動的、経粘膜的、硝子体内、又は筋肉内投与用に製剤化される、請求項43~54のいずれか一項に記載のペプチドミメティック。
【請求項58】
前記ペプチドミメティックが、追加の治療と別々に、連続して、又は同時に使用されるよう意図される、請求項43~57のいずれか一項に記載のペプチドミメティック。
【請求項59】
前記追加の治療が、治療剤又は複数の治療剤の使用を含む、請求項58に記載のペプチドミメティック。
【請求項60】
前記治療剤が、タウリン酸化の調節剤、タウアシル化の調節剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、タウグリコシル化の調節剤/阻害剤(例えば、O-GlcNAcase阻害剤)、タウ切断の調節剤(例えば、カプサーゼ阻害剤)、タウ凝集阻害剤、プロテアソーム刺激剤、USP14阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、オートファジー活性化剤、シャペロン調節剤、共シャペロン調節剤、及びタウ指向性多標的特異的リガンドからなる群から選択される、請求項59に記載のペプチドミメティック。
【請求項61】
ペプチドミメティック及び追加の治療の組み合わせが、タウオパチーの治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症の遅延における相乗効果を有する、請求項59~60のいずれか一項に記載のペプチドミメティック。
【請求項62】
前記薬学的に許容される塩が、酒石酸塩、フマル酸塩、モノ酢酸塩、ビス酢酸塩、トリ酢酸塩、モノトリフルオロ酢酸塩、ビストリフルオロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、モノ塩酸塩、ビス塩酸塩、トリ塩酸塩、モノトシル酸塩、ビストシル酸塩、又はトリトシル酸塩を含む、請求項43~61のいずれか一項に記載のペプチドミメティック。
【請求項63】
前記ペプチドミメティックが、トリスHCl塩、ビスHCl塩、又はモノHCl塩として製剤化される、請求項43~61のいずれか一項に記載のペプチドミメティック。
【請求項64】
タウオパチーの治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症の遅延を必要とする対象においてそれを行うための薬剤の調製における、小分子ペプチドミメティック、又は小分子ペプチドミメティックを含む組成物の、使用。
【請求項65】
前記ペプチドミメティックが、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物である、請求項64に記載の使用。
【請求項66】
前記薬剤の使用が、タウ種レベルを低下させ、かつ/又は細胞タウ蓄積に関連する毒性を低下させる、請求項64又は65に記載の使用。
【請求項67】
前記薬剤の使用が、タウタンパク質の細胞蓄積によって引き起こされる細胞酸化ストレスを低下させる、請求項64又は65に記載の使用。
【請求項68】
前記対象が、アルツハイマー病、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、グローバルグリアタウオパチー、嗜銀顆粒病、家族性英国型認知症、又は家族性デンマーク型認知症を有すると診断されている、請求項64~67のいずれか一項に記載の使用
【請求項69】
前記対象が、原発性加齢関連タウオパチーを有すると診断されている、請求項64~67のいずれか一項に記載の使用。
【請求項70】
前記原発性加齢関連タウオパチーが、神経原線維もつれ型認知症、慢性外傷性脳症(CTE)、及び加齢関連タウアストログリオパチーからなる群から選択される、請求項69に記載の使用。
【請求項71】
前記薬剤が、2週間以上、毎日投与される、請求項64~70のいずれか一項に記載の使用。
【請求項72】
前記薬剤が、12週間以上、24週間以上、48週間以上、1年以上、2年以上、又は5年以上、毎日投与される、請求項64~70のいずれか一項に記載の使用。
【請求項73】
前記薬剤が、診断の直後から、前記対象の生涯の残りの間、又は前記ペプチドミメティックの投与がもはや有効ではなくなるまで、投与される、請求項64~70のいずれか一項に記載の使用。
【請求項74】
前記対象が、哺乳動物である、請求項64~73のいずれか一項に記載の使用。
【請求項75】
前記哺乳動物対象が、ヒトである、請求項74に記載の使用。
【請求項76】
前記薬剤が、経口投与用に製剤化される、請求項64~75のいずれか一項に記載の使用。
【請求項77】
前記薬剤が、皮下投与用に製剤化される、請求項64~75のいずれか一項に記載の使用。
【請求項78】
前記薬剤が、局所的、鼻腔内、全身的、静脈内、腹腔内、皮内、眼内、眼科的、髄腔内、脳室内、イオン泳動的、経粘膜的、硝子体内、又は筋肉内投与用に製剤化される、請求項64~75のいずれか一項に記載の使用。
【請求項79】
前記薬学的に許容される塩が、酒石酸塩、フマル酸塩、モノ酢酸塩、ビス酢酸塩、トリ酢酸塩、モノトリフルオロ酢酸塩、ビストリフルオロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、モノ塩酸塩、ビス塩酸塩、トリ塩酸塩、モノトシル酸塩、ビストシル酸塩、又はトリトシル酸塩を含む、請求項64~78のいずれか一項に記載の使用。
【請求項80】
前記ペプチドミメティックが、トリスHCl塩、ビスHCl塩、又はモノHCl塩として製剤化される、請求項64~78のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年1月10日に出願された米国仮特許出願第63/298,024号に対する利益及び優先権を主張するものであり、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
共同研究契約の当事者
特許請求の範囲に記載された発明は、共同研究契約の以下の当事者のうちの1つ以上に代わって、及び/又は連携して行われた:Stealth BioTherapeutics Corp,Stealth BioTherapeutics,Inc.、及びThe General Hospital Corporation,d/b/a Massachusetts General Hospital。共同研究契約は、特許請求の範囲に記載された発明が行われた日以前に有効であり、特許請求の範囲に記載された発明は、共同研究契約の範囲内で行われた活動の結果として行われた。
【0003】
本技術は概して、タウオパチーを治療、予防、改善、阻害及び/又は発症を遅延させるための組成物及び方法に関する。タウオパチーは、タウ凝集体、フィラメント、及びもつれの細胞内形成を引き起こす、脳内の異常なタウタンパク質の存在に関連する神経変性障害である。一般に、本技術は、タウオパチーに罹患している対象に、有効量の、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド(以降、化合物1又はComp.1と称される)、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物などの小分子ペプチドミメティック化合物を投与することに関する。
【0004】
序論
以下の説明は、読者の理解を助けるために提供される。提供される情報又は引用される参考文献のいずれも、本明細書で開示される組成物及び方法に対する先行技術であることは認められない。
【0005】
神経変性疾患及び障害は、バランス、運動、会話、呼吸及び/又は心臓機能などの身体の活動に影響を及ぼす。神経変性疾患及び障害は、概して、神経細胞の進行性の変性及び/又は死をもたらす不治で衰弱させる状態である。病状が進行するにつれて、多くの場合罹患した対象の死亡につながり得る。タウオパチーに関連する神経変性疾患のいくつかの例としては以下が挙げられる:アルツハイマー病、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、グローバルグリアタウオパチー(global glial tauopathy)、嗜銀顆粒病(argyrophilic grain disease)、家族性英国型認知症、家族性デンマーク型認知症、並びに神経原線維もつれ型認知症、慢性外傷性脳症(CTE)、及び加齢関連タウアストログリオパチーを含む原発性加齢関連タウオパチー。臨床症状には、前頭側頭型認知症、大脳皮質基底症候群、リチャードソン症候群、パーキンソニズム、すくみ足(gait freezing)を伴う純粋無動症、及びまれに運動ニューロン症状又は小脳性運動失調が挙げられる。疾患状態に関連するタウオパチーに罹患している、又は罹患することが予想される遺伝的、ライフスタイル又は環境的考慮に基づいて罹患している対象を治療するために好適な薬物が現在強く必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本技術の開示は、タウオパチーの治療、予防、改善、阻害及び/又は発症の遅延を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供し、方法は、対象に、治療有効量の小分子ペプチドミメティック、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物である。
【0007】
いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの投与は、タウ種レベルを低下させ、かつ/又は細胞タウ蓄積に関連する毒性を低下させる。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの投与は、タウタンパク質の細胞蓄積によって引き起こされる細胞酸化ストレスを低下させる。
【0008】
いくつかの実施形態において、対象は、アルツハイマー病、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、グローバルグリアタウオパチー、嗜銀顆粒病、家族性英国型認知症、又は家族性デンマーク型認知症を有すると診断されている。いくつかの実施形態において、対象は、原発性加齢関連タウオパチーを有すると診断されている。いくつかの実施形態において、原発性加齢関連タウオパチーは、神経原線維もつれ型認知症、慢性外傷性脳症(CTE)、及び加齢関連タウアストログリオパチーからなる群から選択される。
【0009】
いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、2週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、12週間以上、24週間以上、48週間以上、1年以上、2年以上、又は5年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、診断の直後から、対象の生涯の残りの間、又はペプチドミメティックの投与がもはや有効ではなくなるまで、投与される。
【0010】
いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、哺乳動物対象は、ヒトである。
【0011】
いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、経口投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、皮下投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、局所的、鼻腔内、全身的、静脈内、腹腔内、皮内、眼内、眼科的、髄腔内、脳室内、イオン泳動的、経粘膜的、硝子体内、又は筋肉内に投与される。
【0012】
いくつかの実施形態において、方法は、対象に追加の治療を、別々に、連続して、又は同時に施すことを更に含む。いくつかの実施形態において、追加の治療は、治療剤又は複数の治療剤の投与を含む。いくつかの実施形態において、治療剤は、タウリン酸化の調節剤、タウアシル化の調節剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、タウグリコシル化の調節剤/阻害剤(例えば、O-GlcNAcase阻害剤)、タウ切断の調節剤(例えば、カプサーゼ阻害剤)、タウ凝集阻害剤、プロテアソーム刺激剤、USP14阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、オートファジー活性化剤、シャペロン調節剤、共シャペロン調節剤、及びタウ指向性多標的特異的リガンドからなる群から選択される小分子である。
【0013】
いくつかの実施形態において、ペプチドミメティック及び追加の治療剤の組み合わせは、タウオパチーの治療における相乗効果を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される塩は、酒石酸塩、フマル酸塩、モノ酢酸塩、ビス酢酸塩、トリ酢酸塩、モノトリフルオロ酢酸塩、ビストリフルオロ酢酸塩、トリトリフルオロ酢酸塩、モノ塩酸塩、ビス塩酸塩、トリ塩酸塩、モノトシル酸塩、ビストシル酸塩、又はトリトシル酸塩を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、トリスHCl塩、ビスHCl塩、又はモノHCl塩として製剤化される。
【0015】
一態様において、本技術の開示は、タウオパチーの治療、予防、改善、阻害及び/又は発症の遅延を必要とする対象においてそれを行うための薬剤の調製における組成物の使用を提供し、組成物は、治療有効量の小分子ペプチドミメティック、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物である。
【0016】
いくつかの実施形態において、組成物の使用は、タウ種レベルを低下させ、かつ/又は細胞タウ蓄積に関連する毒性を低下させる。いくつかの実施形態において、組成物の使用は、タウタンパク質の細胞蓄積によって引き起こされる細胞酸化ストレスを低下させる。
【0017】
いくつかの実施形態において、対象は、アルツハイマー病、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、グローバルグリアタウオパチー、嗜銀顆粒病、家族性英国型認知症、又は家族性デンマーク型認知症を有すると診断されている。いくつかの実施形態において、対象は、原発性加齢関連タウオパチーを有すると診断されている。いくつかの実施形態において、原発性加齢関連タウオパチーは、神経原線維もつれ型認知症、慢性外傷性脳症(CTE)、及び加齢関連タウアストログリオパチーからなる群から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態において、組成物/薬剤は、2週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、組成物/薬剤は、12週間以上、24週間以上、48週間以上、1年以上、2年以上、又は5年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、組成物/薬剤は、診断の直後から、対象の生涯の残りの間、又はペプチドミメティックの投与がもはや有効ではなくなるまで、投与される。
【0019】
いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、哺乳動物対象は、ヒトである。
【0020】
いくつかの実施形態において、組成物/薬剤は、経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、組成物/薬剤は、皮下投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、組成物/薬剤は、局所的、鼻腔内、全身的、静脈内、腹腔内、皮内、眼内、眼科的、髄腔内、脳室内、イオン泳動的、経粘膜的、硝子体内、又は筋肉内投与用に製剤化される。
【0021】
いくつかの実施形態において、組成物/薬剤は、追加の治療と別々に、連続して、又は同時に使用されることが意図される。いくつかの実施形態において、追加の治療は、治療剤又は複数の治療剤の更なる使用を含む。いくつかの実施形態において、治療剤は、タウリン酸化の調節剤、タウアシル化の調節剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、タウグリコシル化の調節剤/阻害剤(例えば、O-GlcNAcase阻害剤)、タウ切断の調節剤(例えば、カプサーゼ阻害剤)、タウ凝集阻害剤、プロテアソーム刺激剤、USP14阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、オートファジー活性化剤、シャペロン調節剤、共シャペロン調節剤、及びタウ指向性多標的特異的リガンドからなる群から選択される。
【0022】
いくつかの実施形態において、組成物/薬剤及び追加の治療/治療剤の組み合わせは、タウオパチーの治療における相乗効果を有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、組成物/薬剤の製剤化において使用される小分子ペプチドミメティックは、酒石酸塩、フマル酸塩、モノ酢酸塩、ビス酢酸塩、トリ酢酸塩、モノトリフルオロ酢酸塩、ビストリフルオロ酢酸塩、トリトリフルオロ酢酸塩、モノ塩酸塩、ビス塩酸塩、トリ塩酸塩、モノトシル酸塩、ビストシル酸塩、及びトリトシル酸塩からなる群から選択される薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態において、組成物/薬剤の製剤化において使用されるペプチドミメティックは、トリスHCl塩、ビスHCl塩、又はモノHCl塩である。
【0024】
一態様において、本技術の開示は、タウオパチーの治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症の遅延を必要とする対象においてそれを行うことにおいて使用するための、小分子ペプチドミメティック、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物を提供する。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミドである。
【0025】
いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの使用は、タウ種レベルを低下させ、かつ/又は細胞タウ蓄積に関連する毒性を低下させる。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの使用は、タウタンパク質の細胞蓄積によって引き起こされる細胞酸化ストレスを低下させる。
【0026】
いくつかの実施形態において、対象は、アルツハイマー病、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、グローバルグリアタウオパチー、嗜銀顆粒病、家族性英国型認知症、又は家族性デンマーク型認知症を有すると診断されている。いくつかの実施形態において、対象は、原発性加齢関連タウオパチーを有すると診断されている。いくつかの実施形態において、原発性加齢関連タウオパチーは、神経原線維もつれ型認知症、慢性外傷性脳症(CTE)、及び加齢関連タウアストログリオパチーからなる群から選択される。
【0027】
いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、2週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、12週間以上、24週間以上、48週間以上、1年以上、2年以上、又は5年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、診断の直後から、対象の生涯の残りの間、又はペプチドミメティックの投与がもはや有効ではなくなるまで、投与される。
【0028】
いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、哺乳動物対象は、ヒトである。
【0029】
いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、皮下投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、局所的、鼻腔内、全身的、静脈内、腹腔内、皮内、眼内、眼科的、髄腔内、脳室内、イオン泳動的、経粘膜的、硝子体内、又は筋肉内投与用に製剤化される。
【0030】
いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、追加の治療と別々に、連続して、又は同時に使用されることが意図される。いくつかの実施形態において、追加の治療は、治療剤又は複数の治療剤の使用を含む。いくつかの実施形態において、治療剤は、タウリン酸化の調節剤、タウアシル化の調節剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、タウグリコシル化の調節剤/阻害剤(例えば、O-GlcNAcase阻害剤)、タウ切断の調節剤(例えば、カプサーゼ阻害剤)、タウ凝集阻害剤、プロテアソーム刺激剤、USP14阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、オートファジー活性化剤、シャペロン調節剤、共シャペロン調節剤、及びタウ指向性多標的特異的リガンドからなる群から選択される。
【0031】
いくつかの実施形態において、ペプチドミメティック及び追加の治療の組み合わせは、タウオパチーの治療、予防、改善、阻害及び/又は発症の遅延における相乗効果を有する。
【0032】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される塩は、酒石酸塩、フマル酸塩、モノ酢酸塩、ビス酢酸塩、トリ酢酸塩、モノトリフルオロ酢酸塩、ビストリフルオロ酢酸塩、トリトリフルオロ酢酸塩、モノ塩酸塩、ビス塩酸塩、トリ塩酸塩、モノトシル酸塩、ビストシル酸塩、又はトリトシル酸塩を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、トリスHCl塩、ビスHCl塩、又はモノHCl塩として製剤化される。
【0033】
一態様において、本技術の開示は、タウオパチーの治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症の遅延を必要とする対象においてそれを行うための薬剤の調製における、小分子ペプチドミメティック、又は小分子ペプチドミメティックを含む組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物である。
【0034】
いくつかの実施形態において、薬剤の使用は、タウ種レベルを低下させ、かつ/又は細胞タウ蓄積に関連する毒性を低下させる。いくつかの実施形態において、薬剤の使用は、タウタンパク質の細胞蓄積によって引き起こされる細胞酸化ストレスを低下させる。
【0035】
いくつかの実施形態において、対象は、アルツハイマー病、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、グローバルグリアタウオパチー、嗜銀顆粒病、家族性英国型認知症、又は家族性デンマーク型認知症を有すると診断されている。いくつかの実施形態において、対象は、原発性加齢関連タウオパチーを有すると診断されている。いくつかの実施形態において、原発性加齢関連タウオパチーは、神経原線維もつれ型認知症、慢性外傷性脳症(CTE)、及び加齢関連タウアストログリオパチーからなる群から選択される。
【0036】
いくつかの実施形態において、薬剤は、2週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、薬剤は、12週間以上、24週間以上、48週間以上、1年以上、2年以上、又は5年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、薬剤は、診断の直後から、対象の生涯の残りの間、又はペプチドミメティックの投与がもはや有効ではなくなるまで、投与される。
【0037】
いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、哺乳動物対象は、ヒトである。
【0038】
いくつかの実施形態において、薬剤は、経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、皮下投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、局所的、鼻腔内、全身的、静脈内、腹腔内、皮内、眼内、眼科的、髄腔内、脳室内、イオン泳動的、経粘膜的、硝子体内、又は筋肉内投与用に製剤化される。
【0039】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される塩は、酒石酸塩、フマル酸塩、モノ酢酸塩、ビス酢酸塩、トリ酢酸塩、モノトリフルオロ酢酸塩、ビストリフルオロ酢酸塩、トリトリフルオロ酢酸塩、モノ塩酸塩、ビス塩酸塩、トリ塩酸塩、モノトシル酸塩、ビストシル酸塩、又はトリトシル酸塩を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、トリスHCl塩、ビスHCl塩、又はモノHCl塩として製剤化される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】タウオパチーの治療に有用であることが証明され得る小分子ホスファターゼ活性化剤、キナーゼ阻害剤、及びアセチル化阻害剤の構造の図である。
【
図2】タウオパチーの治療に有用であることが証明され得る小分子ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤及びO-GlcNAcase阻害剤の構造の図である。
【
図3】タウオパチーの治療に有用であることが証明され得るタウ切断の小分子調節剤及びタウ凝集阻害剤の構造の図である。
【
図4】タウオパチーの治療に有用であることが証明され得る追加の小分子タウ凝集阻害剤の構造の図である。
【
図5】タウオパチーの治療に有用であることが証明され得る小分子プロテアソーム刺激剤、USP14阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、及びPROTACの構造の図である。
【
図6】タウオパチーの治療に有用であることが証明され得る小分子オートファジー活性化剤の構造の図である。
【
図7】タウオパチーの治療に有用であることが証明され得る小分子Hsp70調節剤の構造の図である。
【
図8】タウオパチーの治療に有用であることが証明され得る小分子Hsp90調節剤及び共シャペロン調節剤の構造の図である。
【
図9】タウオパチーの治療に有用であることが証明され得るタウ指向性多標的特異的リガンドの構造の図である。
【
図10A-H】MAPT P301L変異(タウ-P301Lニューロン)を有する患者に由来するiPSC由来のニューロンモデルにおけるタウオパチー神経細胞生存能及びストレス誘発性細胞死に対する保護に対するペプチドミメティック(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド(「化合物1」又は「Comp.1」)の効果を示すチャートである。
【
図10A】タウ-P301Lニューロン(MAPT P301L変異を有するヒト対象に由来するiPSC由来ニューロン細胞)の生存率に対する化合物1の用量効果を示すチャートである。
【
図10B】ミトコンドリアストレス因子誘発性の前頭側頭型認知症(FTD)患者由来ニューロンの生存能喪失に対する化合物1の保護効果を試験するストレスレスキューアッセイの概要を提供する概略図である。8週間の分化におけるタウ-P301Lニューロンを、1nM、10nM、100nM、1μM、10μM、50μM、及び100μMの用量で化合物1で8時間前処置した後、ストレス因子、ロテノン(2μM及び5μM)又はピエリシジンA(5μM及び10μM)を16時間添加し、ミトコンドリアのストレス及び神経細胞生存能力の喪失を促進する。次いで、ニューロン生存率をAlamar Blue HSアッセイ(すなわち、ストレス因子添加の16時間後;化合物1による24時間の総処置)で測定する。
【
図10C】タウ-P301Lニューロンの生存能力に対する様々な濃度のミトコンドリアストレス因子、ロテノン(10C)及びピアリシジンA(10D)の効果を示すチャートである。
【
図10D】タウ-P301Lニューロンの生存能力に対する様々な濃度のミトコンドリアストレス因子、ロテノン(10C)及びピアリシジンA(10D)の効果を示すチャートである。
【
図10E】ストレスレスキューアッセイにおける、タウ-P301Lニューロンに対する、2μMのロテナン(10E)及び5μMのロテナン(10F)に対する化合物1の保護効果を示すチャートである。ロテノンに対する脆弱性は、神経生存能力の50%超の損失によって明らかにされる。n=2回の生物学的反復;各々3回の技術的反復。
【
図10F】ストレスレスキューアッセイにおける、タウ-P301Lニューロンに対する、2μMのロテナン(10E)及び5μMのロテナン(10F)に対する化合物1の保護効果を示すチャートである。ロテノンに対する脆弱性は、神経生存能力の50%超の損失によって明らかにされる。n=2回の生物学的反復;各々3回の技術的反復。
【
図10G】ストレスレスキューアッセイを使用して、タウ-P301Lニューロンに対する、5μMのピエリシジンA(10G)及び10μMのピエリシジンA(10H)に対する化合物1の保護効果を示すチャートである。ピエリシジンAに対する脆弱性は、神経生存能の70%超の損失によって明らかにされる。n=2回の生物学的反復;各々3回の技術的反復。
【
図10H】ストレスレスキューアッセイを使用して、タウ-P301Lニューロンに対する、5μMのピエリシジンA(10G)及び10μMのピエリシジンA(10H)に対する化合物1の保護効果を示すチャートである。ピエリシジンAに対する脆弱性は、神経生存能の70%超の損失によって明らかにされる。n=2回の生物学的反復;各々3回の技術的反復。
【
図11A】タウ-P301Lニューロンにおける、S396抗体によって検出された高分子量(MW)オリゴマーP-タウを含む、部位Ser396(P-タウS396)及びSer202/Thr205(P-タウAT8)における総タウ(タウ5)及びリン酸化タウに対する化合物1(「Comp.1」)の用量効果を示す。5μMのロテノン用量を、ミトコンドリアストレスに対する対照として使用した。ウェスタンブロットであり、
図11Bは、タウ-P301Lニューロンにおける総タウ(タウ5)及びリン酸化タウP-タウS396(単量体及びオリゴマータウの検出)及びP-タウAT8レベルに対する化合物1の効果を示すそれぞれの密度測定チャートである。
【
図11B】タウ-P301Lニューロンにおける、S396抗体によって検出された高分子量(MW)オリゴマーP-タウを含む、部位Ser396(P-タウS396)及びSer202/Thr205(P-タウAT8)における総タウ(タウ5)及びリン酸化タウに対する化合物1(「Comp.1」)の用量効果を示す。5μMのロテノン用量を、ミトコンドリアストレスに対する対照として使用した。
【
図11C】タウ-P301Lニューロンにおける、S396抗体によって検出された高分子量(MW)オリゴマーP-タウを含む、部位Ser396(P-タウS396)及びSer202/Thr205(P-タウAT8)における総タウ(タウ5)及びリン酸化タウに対する化合物1(「Comp.1」)の用量効果を示す。5μMのロテノン用量を、ミトコンドリアストレスに対する対照として使用した。ウェスタンブロットであり、
図11Dは、タウ-P301Lニューロンにおける総タウ(タウ5)及びリン酸化タウP-タウS396(単量体及びオリゴマータウの検出)及び0.1μMのロテノンで併用処置されたタウ-P301LニューロンにおけるP-タウAT8レベルに対する化合物1の効果を示すそれぞれの密度測定チャートである。
【
図11D】タウ-P301Lニューロンにおける、S396抗体によって検出された高分子量(MW)オリゴマーP-タウを含む、部位Ser396(P-タウS396)及びSer202/Thr205(P-タウAT8)における総タウ(タウ5)及びリン酸化タウに対する化合物1(「Comp.1」)の用量効果を示す。5μMのロテノン用量を、ミトコンドリアストレスに対する対照として使用した。
【
図11E】タウ-P301Lニューロンにおける、S396抗体によって検出された高分子量(MW)オリゴマーP-タウを含む、部位Ser396(P-タウS396)及びSer202/Thr205(P-タウAT8)における総タウ(タウ5)及びリン酸化タウに対する化合物1(「Comp.1」)の用量効果を示す。5μMのロテノン用量を、ミトコンドリアストレスに対する対照として使用した。ウェスタンブロットであり、
図11Fは、タウ-P301Lニューロンにおける総タウ(タウ5)及びリン酸化タウP-タウS396(単量体及びオリゴマータウの検出)及び0.5μMのロテノンで併用処置されたタウ-P301LニューロンにおけるP-タウAT8レベルに対する化合物1の効果を示すそれぞれの密度測定チャートである。
【
図11F】タウ-P301Lニューロンにおける、S396抗体によって検出された高分子量(MW)オリゴマーP-タウを含む、部位Ser396(P-タウS396)及びSer202/Thr205(P-タウAT8)における総タウ(タウ5)及びリン酸化タウに対する化合物1(「Comp.1」)の用量効果を示す。5μMのロテノン用量を、ミトコンドリアストレスに対する対照として使用した。
【
図11G】タウ-P301Lニューロンにおける、S396抗体によって検出された高分子量(MW)オリゴマーP-タウを含む、部位Ser396(P-タウS396)及びSer202/Thr205(P-タウAT8)における総タウ(タウ5)及びリン酸化タウに対する化合物1(「Comp.1」)の用量効果を示す。5μMのロテノン用量を、ミトコンドリアストレスに対する対照として使用した。タウ-P301Lニューロンにおける総タウ(タウ5)及びリン酸化タウ(P-タウS396;P-タウAT8)レベルに対する実験にわたって使用されるロテノン用量の効果を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本技術のある特定の態様、様式、実施形態、変形及び特徴は、本技術の実質的な理解を提供するために、様々なレベルの詳細で以下に記載されることが理解されるべきである。本明細書において使用されるある特定の用語の定義を以下に提供する。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、概して、本技術が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0042】
本技術の実践においては、分子生物学、タンパク質生化学、細胞生物学、免疫学、微生物学、及び組換えDNAにおける多くの従来の技法が使用される。これらの技法は周知であり、例えば、以下において説明されている。それぞれ、Current Protocols in Molecular Biology,Vols.I-III,Ausubel,Ed.(1997)、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)、DNA Cloning:A Practical Approach,Vols.I and II,Glover,Ed.(1985)、Oligonucleotide Synthesis,Gait,Ed.(1984)、Nucleic Acid Hybridization,Hames & Higgins,Eds.(1985)、Transcription and Translation,Hames & Higgins,Eds.(1984)、Animal Cell Culture,Freshney,Ed.(1986)、Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press,1986)、Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning、the series,Meth.Enzymol.,(Academic Press,Inc.,1984)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells,Miller & Calos,Eds.(Cold Spring Harbor Laboratory,N Y,1987)、及びMeth.Enzymol.,Vols.154 and 155,Wu & Grossman,and Wu,Eds.。
【0043】
I.化学物質定義:
特定の官能基及び化学用語の定義を、以下により詳細に記載する。化学元素は、元素周期表、GASバージョン、Handbook of Chemistry and Physics,7Sh Ed.、表紙内側に従って同定される。追加的に、有機化学の一般的な法則、並びに特定の官能部分及び反応性は、Thomas Sorrell,Organic Chemistry,University Science Books,Sausalito,1999;Smith and March,March’s Advanced Organic Chemistry,5th Edition,John Wiley & Sons,Inc.,New York,2001;Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers,Inc.,New York,1989;及びCarruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,3rd Edition,Cambridge University Press,Cambridge,1987に記載されている。
【0044】
本明細書で使用される略語は、化学及び生物学の分野内のそれらの従来の意味を有する。本明細書に記載の化学構造及び式は、化学の分野で既知の化学原子価の標準規則に従うよう意図される。値の範囲が列挙されている場合、範囲内の各値及びサブ範囲を包含することが意図される。例えば、「C1-C6アルキル」は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C1-C6、C1-C5、C1-C4、C1-C3、C1-C2、C2-C6、C2-C5、C2-C4、C2-C3、C3-C5、C3-C4、C4-C6、C4-C5、及びC5-C6アルキルを包含することが意図されている。
【0045】
本出願のある特定の化合物は、非溶媒和の形態並びに水和形態を含む溶媒和の形態で、存在することができる。溶媒和形態は、例えば、合成後の化合物から溶媒を全て除去することが困難又は不可能であるために存在する可能性がある。概して、溶媒和形態は、非溶媒和形態と相当であり、本出願の範囲内に包含される。本出願のある特定の化合物は、複数の結晶形態又は非晶質形態で存在し得る。本出願のある特定の化合物は、様々な互変異性形態で存在し得る。本出願のある特定の化合物は、様々な塩形態で存在し得る。一般に、全ての物理的形態は、本出願によって企図される使用と同等であり、本開示の範囲内にあることが意図される。
【0046】
本明細書で使用される場合、「水和物」という用語は、水と会合した化合物を指す。化合物の水和物中に含まれる水分子の数は、水和物中の化合物分子の数に対して確定された比率であってもよい(又はそうでなくてもよい)。
【0047】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に記載の化合物に認められる特定の置換基に応じて、比較的非毒性の酸又は塩基によって調製することができる治療活性化合物の塩を指す。化合物が比較的酸性の官能基を含有する場合、塩基付加塩は、このような化合物の中性形態を、ニート又は好適な不活性溶媒のいずれかで、十分な量の所望の塩基と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、若しくはマグネシウム塩、又は同様の塩が挙げられる。化合物が比較的塩基性の官能基を含有する場合、酸付加塩は、このような化合物の中性形態を、ニート又は好適な不活性溶媒のいずれかで、十分な量の所望の酸と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される無機塩基に由来する塩には、アンモニウム、カルシウム、銅、第2鉄、第1鉄、リチウム、マグネシウム、第2マンガン、第1マンガン、カリウム、ナトリウム、及び亜鉛塩などが含まれる。薬学的に許容される有機塩基に由来する塩には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン(piperazine)、ピペラジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリメチルアミン(NEt3)、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなど、プロトン化された形態の有機塩基(例えば、[HNEt3]+)を塩が含む場合など、置換アミン、環状アミン、天然アミンなどを含む、一級、二級、及び三級アミンの塩が含まれる。薬学的に許容される無機酸に由来する塩には、ホウ酸、炭酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸又はヨウ化水素酸)、硝酸、リン酸、スルファミン酸及び硫酸の塩が含まれる。薬学的に許容される有機酸に由来する塩には、脂肪族ヒドロキシル酸(例えば、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、及び酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸、及びトリフルオロ酢酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、p-クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチシン酸、馬尿酸、及びトリフェニル酢酸)、芳香族ヒドロキシル酸(例えば、o-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、1-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸及び3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、及びコハク酸)、グルクロン酸、マンデル酸、粘液性、ニコチン酸、オロチン酸、パモン酸、パントテン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、エジシル酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、p-トルエンスルホン酸(PTSA))、キシナホ酸などが含まれる。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される対イオンは、酢酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物、カンファースルホン酸塩、塩化物、クロロテオフィリナート(chlorotheophyllinate)、クエン酸塩、エタンジスルホン酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルコロナート(glucoronate)、馬尿酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフトエ酸塩、サプシラート(sapsylate)、硝酸塩、オクタデカン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、ポリガラクツロ酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、及びトリフルオロ酢酸塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、塩は、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、スベラート塩、乳酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、マレイン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、塩酸塩、又はトシル酸塩である。アルギネートなどのアミノ酸の塩、及びグルクロン酸又はガラクツロン酸等の有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge et al,Journal of Pharmaceutical Science 66:1-19(1977)を参照)。本出願のある特定の化合物は、化合物を塩基付加塩又は酸付加塩のいずれかに変換することを可能にする塩基性官能基及び酸性官能基の両方を含み得るか、又は双性イオン形態で存在し得る。これらの塩は、当該技術分野の当業者に既知の方法によって調製することができる。当業者に既知の他の薬学的に許容される担体も、本技術に好適である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ペプチドミメティック」という用語は、式(I)の化合物:
【化1】
、
又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物であって、WIPO公開出願:第WO2019/118878号においてより完全に記載され、及び/若しくは特許請求される、薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物を指す(変数AA
1、AA
2、R
1、R
2a、R
2b、R
3及びXの定義については、以下を参照のこと)。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド(以下に例示されるような化合物1)、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物である。
【0049】
本明細書で使用される場合、「小分子」という用語は、分子量が900ダルトン未満の生物学的プロセスに影響を与える任意の有機化合物を指す。本定義の目的のために、分子量は、塩、水、又は他の溶媒分子などの任意の関連する(すなわち、非共有結合)分子を参照することなく計算されることを理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「小分子ペプチドミメティック」は、900ダルトン未満の遊離塩基分子量を有するペプチドミメティックである。そのような小分子ペプチドミメティックの例は、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド(CAS番号2356106-71-1:607.76の遊離塩基分子量)、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物である。
【0050】
本明細書で使用される場合、「溶媒和物」という用語は、場合によっては加溶媒分解反応によって溶媒と会合した化合物の形態を指す。この物理的会合は、水素結合を含み得る。従来の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸、酢酸エチル、アセトン、ヘキサン(複数可)、DMSO、THF、ジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0051】
本明細書で使用される場合、「互変異性体」という用語は、特定の化合物構造の交換可能な形態であり、水素原子及び電子の転位が変化する化合物を指す。したがって、2つの構造は、π電子及び原子(通常はH)の移動を介して平衡状態であり得る。例えば、エノール及びケトンは、酸又は塩基のいずれかでの処置によって急速に相互変換されるため、互変異性体である。互変異性形態は、目的の化合物の最適な化学反応性及び生物活性の達成に関連し得る。
【0052】
II.他の定義:
本技術のある特定の態様、様式、実施形態、変形及び特徴は、本技術の実質的な理解を提供するために、様々なレベルの詳細で以下に記載されることが理解されるべきである。本明細書において使用されるある特定の用語の定義を以下に提供する。別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、概して、本技術が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0053】
本明細書及び添付の実施形態で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、その内容が別途明確に指示していない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「細胞(a cell)」への言及は、2つ以上の細胞の組み合わせなどを含む。
【0054】
本明細書で使用される場合、対象への剤(すなわち、治療剤)又は化合物/薬物生成物(組成物を含む)の「投与すること」又は「投与」は、対象に、その意図された機能を実施するための化合物/薬物生成物を導入又は送達する任意の経路を含む。投与は、経口投与などの任意の好適な経路によって実施され得る。投与は、皮下に実施され得る。投与は、静脈内に実施され得る。投与は、眼内に実施され得る。投与は、全身的に実施され得る。代替的に、投与は、局所的、鼻腔内、腹腔内、皮内、眼科的、髄腔内、脳室内、イオン泳動的、経粘膜的、硝子体内、又は筋肉内に実施され得る。投与は、自己投与、別の者による投与、又はデバイス(例えば、注入ポンプ)の使用による投与を含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、統計的試料又は特定の対象において疾患、障害、又は状態(例えば、タウオパチー)を「改善する」又は「改善すること」は、対照の試料又は対象と比較して、治療剤を投与された試料又は対象において、疾患、障害、又は状態(又はその徴候、症状、若しくは状態)の発生をより良好か又はより忍容性にする結果を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「担体」及び「薬学的に許容される担体」という用語は、化合物/薬物生成物/組成物(薬剤を含む)がともに投与されるか、あるいは投与のためにともに製剤化される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。そのような薬学的に許容される担体の非限定的例としては、水、生理食塩水、及び油などの液体、ゴムアカシア、ゼラチン、デンプンのり、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、シリカ粒子(ナノ粒子又はマイクロ粒子)ウレアなどの固体が挙げられる。加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤、香味剤、及び着色剤を使用することができる。好適な薬学的担体の他の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences by E.W.Martinに記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「の発症を遅延させること」という語句は、統計的試料において、対照の試料又は対象と比較して、治療剤を投与された試料又は対象において、疾患、障害、若しくは状態の発生を延期、妨害すること、又は疾患、障害、若しくは状態の1つ以上の徴候若しくは症状を正常よりも遅く引き起こすことを指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、所望の治療及び/又は予防効果を達成するのに十分な量の化合物/組成物/薬物生成物、例えば、疾患、障害又は病態、又は疾患又は病態の生理学的徴候、症状又は病態の発症を治療、予防、阻害、改善、又は遅延させる量を指す。治療的又は予防的用途の文脈において、いくつかの実施形態において、対象に投与される化合物/組成物/薬物生成物の量は、疾患の種類及び重症度、並びに一般的な健康、年齢、性別、体重及び薬物に対する耐性などの個体の特徴に依存する。いくつかの実施形態において、それはまた、疾患の程度、重症度、及び種類にも依存するであろう。当業者は、これらの因子及び他の因子に応じて適切な投薬量を決定することができるであろう。化合物/組成物/薬物生成物はまた、1つ以上の追加の治療用化合物/剤と組み合わせて投与することもできる(いわゆる「同時投与」であり、例えば、追加の治療剤は、同時に、連続して、又は別々の投与によって投与することができる)。1つ以上の追加の治療剤は、例えば、タウリン酸化の活性化剤/調節剤、キナーゼ阻害剤、タウアシル化の調節剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、タウグリコシル化の調節剤/阻害剤(例えば、O-GlcNAcase阻害剤)、タウ切断の調節剤(例えば、カプサーゼ阻害剤)、タウ凝集/線維化阻害剤、プロテアソーム刺激剤、USP14阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、キメラを標的とするタンパク質分解(PROTAC)、オートファジー活性化剤、Hsp70調節剤、Hsp90調節剤、共シャペロン調節剤、及びタウ指向性多標的特異的リガンドからなる群から選択される小分子治療剤であり得る(レビュー論文:Wang,L.,et al.「Small molecule therapeutics for tauopathy in Alzheimer’s disease:Walking the path of most resistance」,European Journal of Medicinal Chemistry,209(2021)112915を参照されたい)。1つ以上の追加の治療剤は、例えば、SS-20又はSS-31(別名、エラミプレチド(elamipretide)又はベンダビア(bendavia)などのSzeto-Schillerペプチドであり得る。
【0059】
本明細書に記載の方法のいくつかにおいて、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド、又はその薬学的に許容される塩、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物は、タウオパチーに関連する1つ以上の徴候、症状、若しくは状態を有する対象に投与されてもよい。例えば、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミドなどの小分子ペプチドミメティックの「治療有効量」は、タウオパチーに関連する疾患又は障害の1つ以上の徴候、症状、又は状態(例えば、危険因子)の存在、頻度、又は重症度が、対象において治療、予防、阻害、改善、又は遅延されるレベルを含む。いくつかの実施形態において、治療有効量の、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミドなどの小分子ペプチドミメティックの投与は、タウオパチーに関連する疾患、障害又は病態の生理学的効果を治療、阻害、改善、予防又は遅延させる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「阻害する」又は「阻害すること」は、対照と比較して、客観的に測定可能な量又は程度による、疾患、障害、又は状態に関連する徴候、症状、又は状態(例えば、リスク因子)における低下を指す。一実施形態において、阻害する、又は阻害することは、対照(又は対照の対象)と比較して少なくとも統計的に有意な量までの低下を指す。一実施形態において、阻害する、又は阻害することは、対照(又は対照の対象)と比較して少なくとも5パーセントまでの低下を指す。様々な個々の実施形態において、阻害する、又は阻害することとは、対照(又は対照の対象)と比較して、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、33、40、50、60、67、70、75、80、90、95、又は99パーセントまでの低下を指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「同時の」治療的使用という用語は、少なくとも2つの活性成分を、同じ経路によって、かつ同じ時間に、又は実質的に同じ時間に投与することを指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、「別々の」治療的使用という用語は、少なくとも2つの活性成分を、異なる経路によって、同じ時間に、又は実質的に同じ時間に投与することを指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「連続的」治療的使用という用語は、異なる時間での少なくとも2つの活性成分の投与を指し、投与経路は同一であるか、又は異なる。より具体的には、連続的使用は、他又は複数の他の投与が開始される前の活性成分のうちの1つの投与全体を指す。したがって、活性成分のうちの1つを、他の活性成分又は複数の活性成分を投与の数分、数時間、又は数日前にわたって投与することが可能である。この定義では、同時治療はない。
【0064】
本明細書で使用される場合、「対象」は、生きている動物を指す。様々な実施形態において、対象は、哺乳動物である。様々な実施形態において、対象は、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ、ブタ、ミニブタ、ウマ、ウシ、又は非ヒト霊長動物を含むが、これらに限定されない非ヒト哺乳動物である。ある特定の実施形態において、対象は、ヒトである。
【0065】
本明細書で使用される場合、「治療すること」又は「治療」という用語は、治療的処置を指し、目的は、既存の疾患若しくは障害、又はその関連する徴候、症状、若しくは状態を低下させるか、緩和するか、又は遅延させる(弱める)ことである。例として、限定するものではないが、有効量の化合物/組成物/薬物生成物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物を受けた後、対象が、疾患、障害、又は状態に関連する1つ以上の徴候、症状、又は状態の観察可能な低下及び/若しくは測定可能な低下、又は不存在を示す場合、対象は、疾患(例えば、タウオパチー)について成功裏に「治療」されている。例えば、対象の治療は、対象における細胞性タウ蓄積に関連するタウ種レベルを低下させ、及び/又は毒性を低下させ得る。治療はまた、例えば、タウタンパク質の細胞蓄積によって引き起こされる細胞酸化ストレスを低下させてもよい。記載される医学的状態の治療の様々な様式は、疾患又は障害の状態、徴候、又は症状の全体的な緩和を含む、「実質的な」、並びにいくらかの生物学的又は医学的に関連する結果が達成される「部分的な」を意味することが意図されることも認識されるべきである。
【0066】
本明細書で使用される場合、疾患、障害、又はタウオパチーに関連する状態の「予防」又は「予防すること」は、統計的試料において、対照の試料又は対象と比較して、治療剤を投与された試料若しくは対象における疾患、障害、若しくは状態の発生における低下を示すか、又は対照の試料若しくは対象に対して、疾患、障害、若しくは状態の1つ以上の症状の発症における遅延を示す結果を指す。かかる予防は、ときとして予防的治療と呼ばれる。
【0067】
III.キラル/立体化学の考慮事項
本明細書に記載される化合物は、1つ以上の不斉中心を含有することができ、したがって、様々な異性体形態、例えば、鏡像異性体及び/又はジアステレオマー(すなわち、立体異性体)で存在することができる。図示の構造(実施形態を含む)におけるキラル中心は、本明細書において、アスタリスク(*)を使用することによって特定してもよい。別段の記載がある場合を除き、本明細書に記載される化合物は、個々の鏡像異性体、ジアステレオマー、若しくは幾何異性体の形態であってもよく、あるいはラセミ混合物及び1つ以上の立体異性体が豊富な混合物を含む立体異性体の混合物の形態であってもよい。異性体は、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及びキラル塩の形成及び結晶化を含む、当業者に既知の方法によって混合物から単離し得るか、又は好ましい異性体は、不斉合成によって調製され得る。例えば、Jacques et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley lnterscience,New York,1981)、Wilen et al.,Tetrahedron 33:2725(1977)、Eliel,Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill,NY,1962)、及びWilen,Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)を参照されたい。本出願の本開示は、実質的に他の異性体を含まない個々の異性体として、及び代替的に、様々な異性体の混合物として、本明細書に記載される化合物を追加的に包含してもよい。
【0068】
本明細書で使用される場合、純粋なエナンチオマー化合物は、化合物の他のエナンチオマー又は立体異性体を実質的に含まず(すなわち、エナンチオマー過剰である):純度は、100%純度を達成することが非常に困難であるという意味で相対的な用語である。言い換えれば、化合物の「S」体は、化合物の「R」体を実質的に含まず、したがって、「R」体のエナンチオマー過剰である。アミノ酸(「D」及び「L」エナンチオマーに関してより一般的に記載される)に関して、ほとんどの場合、「D」アミノ酸については、配置が「R」であり、「L」アミノ酸については、配置が「S」であることを理解される必要がある。いくつかの実施形態において、「実質的に含まない」とは以下を指す。(i)2%未満の「R」体を含む「S」体化合物のアリコート、又は(ii)2%未満の「S」体を含む「R」体化合物のアリコート。「エナンチオマー的に純粋な」又は「純粋なエナンチオマー」という用語は、化合物が、具体的に特定されたエナンチオマー(例えば、他のエナンチオマーと比較して)の90重量%超、91重量%超、92重量%超、93重量%超、94重量%超、95重量%超、96重量%超、97重量%超、98重量%超、99重量%超、99.5重量%超、又は99.9重量%超のエナンチオマーを含むことを意味する。ある特定の実施形態において、相対的な重量は、目的の化合物のある特定の立体中心に対するR体及びS体にのみ基づく。ある特定の実施形態において、相対的な重量は、化合物の全ての鏡像異性体、ジアステレオマー又は立体異性体の総重量に基づいている。
【0069】
本明細書に提供される組成物において、鏡像異性体的に純粋な化合物は、他の活性成分又は不活性成分とともに存在することができる。例えば、エナンチオマー的に純粋な「S」体化合物を含む薬学的組成物は、例えば、約90%の賦形剤及び約10%のエナンチオマー的に純粋な「S」体化合物を含むことができる。ある特定の実施形態において、そのような組成物中のエナンチオマー的に純粋な「S」体化合物は、例えば、化合物の総重量に対して、少なくとも約95重量%の「S」体化合物、及び最大約5重量%の「R」体化合物を含むことができる。ある特定の実施形態において、活性成分は、ほとんど又はまったく賦形剤又は担体を用いず製剤化することができる。
【0070】
IV.薬学的組成物、投与経路、及び投薬:
いくつかの実施形態において、本出願は、薬学的組成物に関する。いくつかの実施形態において、組成物は、本出願の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む。ある特定の実施形態において、薬学的組成物は、本出願の複数の化合物(例えば、小分子ペプチドミメティック)と、薬学的に許容される担体とを含む。薬学的組成物は、薬剤であり得る。
【0071】
ある特定の実施形態において、本出願の薬学的組成物は、小分子ペプチドミメティック以外の少なくとも1つの追加の治療剤を更に含み得る。少なくとも1つの追加の治療剤は、ミトコンドリア疾患又はタウオパチーの治療において有用な剤であり得る。したがって、いくつかの実施形態において、本出願の薬学的組成物は、例えば、本出願の1つ以上の化合物(例えば、小分子ペプチドミメティック)を薬学的に許容される担体及び任意選択で、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせることによって調製することができる。
【0072】
本出願の薬学的組成物は、本明細書に記載される有効量の治療用化合物/剤(又は化合物/剤)を含有してもよく、任意選択で、薬学的に許容される担体中に(例えば、溶解され、懸濁されるか、又は別の方法で)分注されてもよい。薬学的組成物(複数可)の成分はまた、所望の薬学的効率を実質的に損なうような相互作用がないような方法で、本出願の化合物と、及び互いに混合することができる。
【0073】
上記のように、「有効量」は、所望の生物学的効果を達成するのに十分な任意の量の活性化合物(又は化合物;単独で、又は製剤化されたもの)を指す。本明細書で提供される教示と組み合わせて、効力、相対的な生物学的利用能、患者体重、有害な副作用の重症度、及び投与方法などの様々な活性化合物及び計量因子の中から選択することによって、実質的に望ましくない毒性を引き起こさないが、特定の対象の特定の状態又は疾患を治療するのに有効である有効な予防的(すなわち、予防的)又は治療的処置レジメンを計画することができる。任意の特定の適応症に対する有効量は、治療される疾患、障害又は状態、投与される特定の化合物又は化合物、対象のサイズ、又は疾患、障害又は状態の重症度などの要因に応じて変化し得る。有効量は、前臨床試験及び臨床試験中に、医師及び臨床医に精通した方法によって決定され得る。当業者であれば、不適切な実験を必要とすることなく、特定の化合物及び/又は他の治療剤(複数可)の有効量を経験的に決定することができる。いくつかの医学的判断に従って、最大用量、すなわち最高安全用量を使用することができる。化合物の適切な全身レベルを達成するために、1日当たり複数回投与が企図され得る。適切な全身レベルは、例えば、薬物の患者のピーク又は持続的な血漿レベルの測定によって決定することができる。「用量」及び「投与量」は、本明細書では互換的に使用される。用量は、自分自身によって、別のものによって、又はデバイス(例えば、ポンプ)によって投与され得る。
【0074】
本明細書に記載される任意の化合物について、治療有効量は、例えば、最初に、動物モデルから決定され得る。治療的に有効な用量は、ヒトで試験された化合物、及び他の関連する活性剤などの同様の薬理学的活性を示すことが知られている化合物のヒトデータからも決定され得る。非経口投与には、より高い用量が必要になる場合がある。適用用量は、投与された化合物の相対的な生物学的利用能及び効力に基づいて調整され得る。上記の方法及び当該技術分野において既知であるような他の方法に基づいて、ヒトにおいて最大の有効性を達成するために用量を調整することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0075】
療法又は予防での使用のための化合物(単独で又は薬学的組成物に製剤化されたもの)は、好適な動物モデル系で試験することができる。好適な動物モデル系としては、ヒト対象における試験の前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ、ブタ、ミニピッグなどが挙げられるが、これらに限定されない。インビボ試験において、当該技術分野で既知の動物モデル系のうちのいずれかを、ヒト対象への投与前に使用することができる。いくつかの実施形態において、投薬は、ヒトにおいて直接試験することができる。
【0076】
任意の治療用化合物/剤、組成物(例えば、製剤又は薬剤)、他の治療剤、又はそれらの混合物の投薬量、毒性及び治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%に治療的有効な用量)を決定するために、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順によって、決定され得る。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指標であり、それは、比LD50/ED50として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が有利である。毒性の副作用を示す化合物を使用してもよいが、そのような場合、未感染細胞への潜在的損傷を最小限に抑え、それによって副作用を低下するために、かかる化合物を罹患組織の部位に標的化する送達システムを設計することが用意周到で慎重であり得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、治療又は予防効果を達成するために十分な本明細書に開示される治療用化合物/剤の有効量は、1日当たり体重1キログラム当たり約0.000001mg~1日当たり体重1キログラム当たり約10,000mgの範囲であり得る。好適には、用量範囲は、1日当たり体重1キログラム当たり約0.0001mg~1日当たり体重1キログラム当たり約100mgである。例えば、投薬量は、毎日、2日毎若しくは3日毎に1mg/kg体重若しくは100mg/kg体重、又は毎週、2週間毎若しくは3週間毎に1~100mg/kgの範囲内であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される治療用化合物/剤の単回投薬量は、体重1kg当たり0.001~10,000マイクログラムの範囲である。いくつかの実施形態において、担体中に溶解又は懸濁された本明細書に開示される治療用化合物/剤は、送達された1ミリリットル当たり0.2~2000マイクログラムの範囲である。いくつかの実施形態において、用量レジメンは、標的組織中の薬物動態標的濃度を満たして、所望の治療結果を達成する。
【0078】
例示的な治療レジメンは、1日に1回、1日に2回、1日に3回、1週間に1回、又は1ヶ月に1回の投与を伴い得る。治療用途では、疾患の進行が低下若しくは終了するまで、又は対象が疾患の症状の部分的若しくは完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い投薬量が必要とされることがある。その後、患者は、予防レジメンを施され得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される治療有効量の治療用化合物/剤は、10-12~10-4モル、例えば、およそ10-7モルの標的組織で存在する化合物の濃度として定義され得る。この濃度は、0.001~100mg/kgの全身用量又は体表面積による相当用量によって送達され得る。用量のスケジュールは、単回の毎日又は毎週の単回投与によってなど、標的組織での治療濃度を維持するように最適化されるだろうが、継続的投与(例えば、経口、全身、局所、皮下、鼻腔内、非経口注入又は経皮的適用)も含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、化合物(単独で、又は製剤化されたものとして)の静脈内又は皮下投与は、典型的には、0.01μg/kg/日~80mg/kg/日であり得る。いくつかの実施形態において、化合物(単独で、又は製剤化されたものとして)の静脈内又は皮下投与は、典型的には、0.01μg/kg/日~100μg/kg/日であり得る。いくつかの実施形態において、化合物(単独で、又は製剤化されたものとして)の静脈内又は皮下投与は、典型的には、0.1μg/kg/日~10mg/kg/日であり得る。いくつかの実施形態において、化合物(単独で、又は製剤化されたものとして)の静脈内又は皮下投与は、典型的には、10μg/kg/日~2mg/kg/日であり得る。いくつかの実施形態において、化合物(単独で、又は製剤化されたものとして)の静脈内又は皮下投与は、典型的には、500μg/kg/日~5mg/kg/日であり得る。いくつかの実施形態において、化合物(単独で、又は製剤化されたものとして)の静脈内又は皮下投与は、典型的には、1mg/kg/日~100mg/kg/日であり得る。いくつかの実施形態において、化合物(単独で、又は製剤化されたものとして)の静脈内又は皮下投与は、典型的には、1mg/kg/日~50mg/kg/日であり得る。
【0081】
一般に、化合物(単独で、又は製剤化されたものとして)の毎日の経口用量は、ヒト対象について、1日当たり約0.01マイクログラム/kg~250マイクログラム/kg/日であろう。いくつかの実施形態において、化合物(単独で、又は製剤化されたものとして)の毎日の経口用量は、ヒト対象について、1日当たり約1ミリグラム/kg~100ミリグラム/kg、又は1日当たり約10ミリグラム/kg~75ミリグラム/kgであるか、又は1日当たり1回以上の投与において、0.1~50ミリグラム/kgの範囲の化合物(単独で、又は製剤化されたものとして)の経口用量が、治療結果をもたらすであろう。投与量は、投与様式に応じて、所望の局所的又は全身的な薬物レベルを達成するように適切に調整され得る。例えば、静脈内投与は、1日当たり1桁分から数桁分低い用量であることが予想される。対象における応答がそのような用量では不十分である場合、患者の忍容性が許容する範囲で、更に高い用量(又は異なる、より局所的な送達経路による効果的な高い用量)が用いられてもよい。化合物の適切な全身レベルを達成するために、1日当たり複数回の用量が企図される。
【0082】
療法で使用するために、有効量の化合物(単独で、又は製剤化されたものとして)は、化合物を所望の表面に送達する任意のモードによって対象に投与され得る。薬学的組成物の投与は、当業者に知られている任意の手段によって達成され得る。投与経路には、経口、局所、鼻腔内、全身、静脈内、皮下、腹腔内、皮内、眼内、眼科、髄腔内、脳室内、イオン泳動、経粘膜、硝子体内、又は筋肉内の投与が挙げられるが、これらに限定されない。投与には、自己投与、別の者による投与、及びデバイスによる投与が含まれる。
【0083】
本明細書に開示される治療用化合物/剤は、製剤又は薬剤(すなわち、薬学的組成物)で対象に送達され得る。製剤及び薬剤は、例えば、本明細書に開示される治療用化合物/剤を、水、薬学的に許容される担体、塩(例えば、NaCl又はリン酸ナトリウム)、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、アジュバント、及び任意選択で他の治療的に許容される成分に溶解又は懸濁させることによって調製することができる。
【0084】
薬学的組成物(例えば、製剤又は薬剤)は、担体(薬学的に許容される担体)を含み得、それは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含む溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合、必要とされる粒子サイズの維持によって、かつ界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物作用の予防は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チオメラゾールなどによって達成され得る。グルタチオン及び他の酸化防止剤を含んで酸化を予防することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖(例えば、トレハロース)、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、又は塩化ナトリウムを組成物中に含むことが有利である。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0085】
非経口、皮内、皮下、又は眼内適用のために使用される溶液又は懸濁物(例えば、製剤又は薬剤)は、以下の成分:注射用水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒などの滅菌希釈剤、ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝液、及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張性の調整のための剤を含むことができる。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調整することができる。非経口調製物を、ガラス又はプラスチックで作製されたアンプル、使い捨てシリンジ、又は複数用量バイアルに封入することができる。患者又は治療する医師の便宜のために、投薬する製剤は、単独で、又は治療経過(例えば、治療の1、2、3、4、5、6、7日間以上)の間に必要な全ての備品(例えば、薬物のバイアル、希釈剤のバイアル、シリンジ、及び針)を含むキットで提供することができる。
【0086】
治療用化合物/剤又は薬学的組成物は、それらを全身的に送達することが望ましい場合、注射、例えば、ボーラス注射又は連続注入(例えば、IV注射によって、又は定義された時間にわたって投与を計量するためのポンプを介して)による非経口投与用に製剤化され得る。注射のための製剤は、単位剤形で、例えば、添加された防腐剤とともに、アンプル中又は複数回用量容器中で提供され得る。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルションなどの形態をとり得、懸濁剤、安定剤、及び/又は分散剤などの製剤化剤を含有し得る。追加的に、活性化合物の懸濁液を、適切な油性注入懸濁液として調製し得る。好適な親油性溶媒又はビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが含まれる。水性注射懸濁液には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなど、懸濁液の粘度を高める物質が含まれている場合がある。任意選択で、懸濁液はまた、化合物の溶解度を増加させて高濃度の溶液の調製を可能にする好適な安定剤又は剤を含み得る。
【0087】
全身性配合物としては、注射による投与用に設計されたもの、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内、又は腹腔内注射、並びに経皮、経粘膜経口、又は肺投与用に設計されたものが挙げられる。
【0088】
静脈内及び他の非経口投与経路のために、化合物は、凍結乾燥調製物として、リポソームインターカレートされた、又はカプセル化された活性化合物の凍結乾燥調製物として、水性懸濁液中の脂質複合体として、又は塩複合体として製剤化され得る。凍結乾燥製剤は、一般に、投与の直前に、好適な水溶液、例えば、滅菌水又は生理食塩水中で再構成される。
【0089】
注射用に好適な薬学的組成物(例えば、製剤又は薬剤)は、滅菌水溶液(水溶性の場合)、又は滅菌注射用溶液若しくは分散液を即時調製するための分散液及び滅菌粉末を含むことができる。静脈内投与の場合、好適な担体として、生理食塩水、静菌水、クレモフォールEL(商標)(BASF、Parsippany,N.J.)、又はリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。注射による投与のための組成物は、一般に無菌であり、容易に注射可能である範囲までの流体である必要がある。それは製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護され得る。
【0090】
滅菌注射用溶液(例えば、製剤又は薬剤)は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した成分の1つ又は組み合わせを含む適切な溶媒に組み込んだ後、濾過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒及び上に挙げたものから必要な他の成分を含有する無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、典型的な調製方法は、予め滅菌濾過したその溶液から活性成分に加えて任意の追加の所望の成分の粉末を得ることができる真空乾燥及び凍結乾燥を含む。
【0091】
経口投与の場合、化合物は、活性化合物(複数可)を、当該技術分野において周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって容易に製剤化することができる。そのような担体は、本出願の化合物を、治療される対象による経口摂取のために、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することを可能にする。錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、以下の成分:微結晶性セルロース、トラガカントガム、若しくはゼラチン等の結合剤;デンプン若しくはラクトース等の賦形剤;アルギン酸、Primogel(登録商標)、若しくはトウモロコシデンプン等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム若しくはステレート(sterate)などの滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動剤;スクロース若しくはサッカリンなどの甘味剤;又はペパーミント、サリチル酸メチル、若しくはオレンジ香味料などの香味剤、あるいはそれらと同様の性質の化合物のうちのいずれかを含有することができる。
【0092】
経口使用のための薬学的調製物は、固体賦形剤として得られ、任意選択で得られた混合物を粉砕し、所望の場合、好適な助剤を添加した後、顆粒の混合物を処理して、錠剤又は糖衣錠コアを得ることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物である。所望に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸、又はその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤が添加されてもよい。任意選択で、経口製剤は、生理食塩水又は緩衝液、例えば、内部酸条件を中和するためのEDTA中に製剤化されてもよく、又は任意の担体なしで投与されてもよい。
【0093】
誘導体の経口送達が有効であるように化学的に修飾され得る上記の経口剤形もまた具体的に企図される。一般に、企図される化学修飾は、治療剤(複数可)、成分(複数可)、及び/又は賦形剤(複数可)への少なくとも1つの部分の付着であり、当該部分は、(a)酸加水分解の阻害、及び(b)胃又は腸からの血流への取り込みを可能にする。また、治療剤(複数可)、成分(複数可)、及び/又は賦形剤(複数可)の全体的な安定性の増加、並びに体内の循環時間の増加が所望される。そのような部分の例としては、ポリエチレングリコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びポリプロリンが挙げられる。Abuchowski and Davis,“Soluble Polymer-Enzyme Adducts”,In:Enzymes as Drugs,Hocenberg and Roberts,eds.Wiley-Interscience,New York,N.Y.,pp.367-383(1981);Newmark et al.J Appl Biochem 4:185-9(1982)。使用され得る他のポリマーは、ポリ-1,3-ジオキソラン及びポリ-1,3,6-チオキソカンである。薬学的使用のために、上記のように、様々な分子量のポリエチレングリコール(PEG)部分が好適である。
【0094】
治療剤(複数可)、成分(複数可)、及び/又は賦形剤(複数可)の製剤について、放出の位置は、胃、小腸(十二指腸、空腸、又は回腸)、又は大腸であり得る。当業者は、胃内に溶解しないが、十二指腸又は腸内の他の場所で物質を放出する利用可能な製剤を有する。好ましくは、この放出は、本出願の化合物(又は誘導体)の保護、又は腸内などの胃環境を超えた生物学的活性物質の放出のいずれかによって、胃環境の有害な影響を回避する。
【0095】
コーティング又はコーティングの混合物は、胃に対する保護を意図していない錠剤にも使用され得る。これには、砂糖コーティング、又は錠剤を飲みやすくするコーティングが含まれる。カプセルは、乾燥治療薬(例えば、粉末)の送達のための硬質シェル(ゼラチンなど)からなってもよく、液体形態の場合、軟質ゼラチンシェルを使用してもよい。カシェ剤のシェル材料は、厚いデンプン又は他の食用紙であり得る。丸薬、ロゼンジ、成形錠剤又は錠剤研和(tablet triturates)には、湿ったマッシング技術を使用することができる。
【0096】
治療用化合物/剤又は薬学的組成物は、約1~2mmの粒径の顆粒又はペレットの形態の微細な多粒子として製剤に含まれ得る。カプセル投与用の材料の製剤はまた、粉末、軽く圧縮されたプラグ、又は錠剤としてさえあり得る。治療用化合物/剤又は薬学的組成物は、圧縮によって調製され得る。
【0097】
着色剤及び香料剤は全て含まれ得る。例えば、本出願の化合物又は薬学的組成物(又は誘導体)は、配合され、次に、着色剤及び香料剤を含む冷蔵飲料などの食用製品内に更に含有され得る。
【0098】
1つは、治療用化合物/剤又は薬学的組成物を不活性材料とともに希釈するか、又は体積を増加させることができる。これらの希釈剤は、炭水化物、特にマンニトール、ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、改変デキストラン、及びデンプンを含み得る。三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム及び塩化ナトリウムを含むある特定の無機塩もまた、充填剤として使用され得る。いくつかの市販の希釈剤は、Fast-Flo(登録商標)、Emdex(登録商標)、STARCH 1500(登録商標)、Emcompress(登録商標)、及びAvicel(登録商標)である。
【0099】
崩壊剤は、治療用化合物/剤又は組成物の固体剤形への製剤中に含まれてもよい。崩壊剤として使用される材料には、デンプンに基づく市販の崩壊剤であるExplotabを含むデンプンが含まれるが、これらに限定されない。デンプングリコール酸ナトリウム、Amberlite(登録商標)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラミロペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸性カルボキシメチルセルロース、天然スポンジ及びベントナイト全てを使用してもよい。崩壊剤の別の形態は、不溶性陽イオン交換樹脂である。粉末ゴムは、崩壊剤及び結合剤として使用され得、これらには、寒天、カラヤゴム又はトラガカントなどの粉末ゴムが含まれ得る。アルギン酸及びそのナトリウム塩は、崩壊剤としても有用である。
【0100】
結合剤を使用して、化合物、治療剤、ペプチド、ペプチドミメティック、又はそれらの混合物を不活性材料とともに保持して硬質錠剤を形成し、アカシア、トラガカント、デンプン及びゼラチンなどの天然生成物由来の材料を含み得る。他には、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。ポリビニルピロリドン(PVP)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、両方とも、治療薬を造粒するためにアルコール溶液中で使用され得る。
【0101】
抗摩擦剤は、製剤化プロセス中の付着を予防するために、化合物、治療剤、ペプチド、ペプチドミメティック、又はそれらの混合物の製剤中に含まれてもよい。潤滑剤は、治療剤と打ち型の壁との間の層として使用され得、これらには、マグネシウム及びカルシウム塩を含むステアリン酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液体パラフィン、植物油及びワックスが含まれ得るがこれに限定されない。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、様々な分子量のポリエチレングリコール(PEG)、Carbowax(商標)4000及び6000などの可溶性潤滑剤も使用され得る。
【0102】
製剤化中に薬物の流動特性を改善し、圧縮中の再配置を補助し得る流動促進剤を添加し得る。流動促進剤は、デンプン、タルク、焼成シリカ、及び水和シリコアルミナートを含み得る。
【0103】
治療用化合物/剤又は組成物(例えば、薬剤)を水性環境に溶解させるのを助けるために、界面活性剤を湿潤剤として添加してもよい。界面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、及びスルホン酸ジオクチルナトリウムなどの陰イオン性洗剤が含まれ得る。使用可能であり、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムを含むことができる陽イオン性洗剤。界面活性剤として製剤に含まれ得る潜在的な非イオン性洗剤には、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油10、50、及び60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65、及び80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースが含まれる。これらの界面活性剤は、本出願の化合物、又は誘導体の製剤中に、単独で又は異なる比率の混合物としてのいずれかで存在し得る。
【0104】
経口で使用され得る薬学的調製物には、ゼラチンで作られたプッシュフィットカプセル、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤とで作られた軟質の密封カプセルが含まれる。プッシュフィットカプセルは、活性成分を、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、並びに任意選択で安定剤と混合した活性成分に含むことができる。軟質カプセルにおいて、活性化合物を、脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解又は懸濁し得る。加えて、安定剤を添加してもよい。経口投与用に製剤化したマイクロスフェアも使用し得る。そのようなマイクロスフェアは、当該技術分野において十分に定義されている。経口投与のための全ての製剤は、そのような投与に好適な投薬量である必要がある。
【0105】
頬側投与の場合、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤又はロゼンジの形態をとり得る。
【0106】
局所投与の場合、化合物は、当技術分野で周知のように、溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液などとして製剤化され得る。溶液、ゲル、軟膏、クリーム、又は懸濁液は、局所投与され得る。化合物は、例えば、ココアバター又は他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を含有する坐薬又は保持浣腸剤などの直腸若しくは膣組成物中に製剤化され得る。
【0107】
本出願による使用のための吸入による化合物又は組成物(例えば、薬剤)の投与では、好適な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適なガスを使用して、加圧されたパック又はネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で便宜的に送達され得る。いくつかの実施形態において、製剤、薬剤、又は治療用化合物/剤は、好適な推進剤、例えば、二酸化炭素などのガスを含む加圧された容器若しくはディスペンサー又はネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で送達され得る。そのような方法には、米国特許第6,468,798号に記載されているものが含まれる。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。例えば、吸入器又は注入器においての使用のための例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、治療用化合物/剤及びラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤の粉末混合物を含んで製剤化され得る。あるいは、活性化合物は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、滅菌の発熱物質を含まない水で構成するための粉末形態であり得る。
【0108】
本出願の治療用化合物/剤又は薬学的組成物の鼻腔送達も企図される。鼻腔送達は、治療用化合物/剤又は薬学的組成物を鼻に投与した直後に、治療用化合物/剤又は薬学的組成物を血流に通過させることを可能にし、製品を肺に沈着させる必要はない。鼻腔送達のための製剤としては、デキストラン又はシクロデキストランを有するものが挙げられる。
【0109】
鼻腔投与のために、有用なデバイスは、定量噴霧器が取り付けられた小型の硬いボトルである。いくつかの実施形態において、計量用量は、本出願溶液の薬学的組成物を規定の容積のチャンバに引き込むことによって送達され、このチャンバは、チャンバ内の液体が圧縮されたときにスプレーを形成することによって、エアロゾル化及びエアロゾル製剤をエアロゾル化するように寸法決定された開口を有する。チャンバは、治療用化合物/剤又は薬学的組成物を投与するように圧縮される。特定の実施形態において、チャンバは、ピストン配列である。そのようなデバイスは市販されている。
【0110】
あるいは、搾り出されたときにスプレーを形成することによってエアロゾル製剤をエアロゾル化するように寸法決めされた開口又は開口部を有するプラスチックスクイーズボトルが使用される。開口部は、通常、ボトルの上部に見出され、上部は、一般的に、エアロゾル製剤の効率的な投与のために、鼻の通路に部分的に適合するように先細りである。好ましくは、鼻吸入器は、測定された用量の治療用化合物/剤又は薬学的組成物の投与のために、計量された量のエアロゾル製剤を提供する。
【0111】
本明細書に開示される化合物の肺送達もまた、本明細書に企図される。化合物又は薬学的組成物は、吸入中に哺乳動物の肺に送達され、肺上皮内層を横断して血流にわたることができる。吸入された分子の他の報告には、Adjei et al.,Pharm Res 7:565-569(1990)、Adjei et al.,Int J Pharmaceutics 63:135-144(1990)(酢酸ロイプロリド)、Braquet et al.,J Cardiovasc Pharmacol 13(suppl.5):143-146(1989)(エンドセリン-1)、Hubbard et al.,Annal Int Med 3:206-212(1989)(α1-抗トリプシン)、Smith et al.,1989,J Clin Invest 84:1145-1146(a-1-プロテイナーゼ)、Oswein et al.,1990,”Aerosolization of Proteins”,Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II,Keystone,Colorado,March,(組換えヒト成長ホルモン)、Debs et al.,1988,J Immunol 140:3482-3488(インターフェロンガンマ及び腫瘍壊死因子アルファ)及びPlatzら、米国特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子、参照により組み込まれる)が挙げられる。全身効果のための薬物の肺内送達のための方法及び組成物は、Wongらに1995年9月19日に発行された米国特許第5,451,569号(参照により組み込まれる)に記載されている。
【0112】
本技術の実施において使用が企図されるのは、ネブライザー、計量用量吸入器、及び粉末吸入器が含まれるがこれらに限定されない治療用生成物の肺送達のために設計された広範囲の機械器具であり、これらは全て、当業者に精通している。
【0113】
本技術の実施に好適な市販の器具のいくつかの具体例は、Mallinckrodt,Inc.、St.Louis,Mo.によって製造されたUltravent(商標)ネブライザー、Marquest Medical Products、Englewood,Colo.によって製造されたAcorn II(登録商標)ネブライザー、Glaxo,Inc.、Research Triangle Park,North Carolinaによって製造されたVentolin(登録商標)計量用量吸入器、及びFisons Corp.、Bedford,Mass.によって製造されたSpinhaler(登録商標)粉末吸入器である。
【0114】
そのようなデバイスは全て、化合物(複数可)/治療剤(複数可)の分注に好適な製剤の使用を必要とする。典型的には、各製剤は、用いられるデバイスのタイプに特有であり、治療に有用な通常の希釈剤、アジュバント、及び/又は担体に加えて、適切な推進剤材料の使用を含み得る。また、リポソーム、マイクロカプセル、マイクロスフェア、ナノ粒子、ナノスフェア、包接錯体、又は他のタイプの担体の使用が企図される。本出願の化学修飾化合物はまた、化学修飾の種類又は使用されるデバイスの種類に応じて、異なる製剤で調製され得る。
【0115】
ジェット又は超音波のいずれかのネブライザーとの使用に好適な製剤は、例えば、1mLの溶液当たり約0.01~50mgの生物学的に活性な化合物の濃度で水中に溶解した本出願の化合物/治療剤(又は誘導体)を含むことができる。製剤はまた、緩衝液及び単糖(例えば、阻害剤の安定化及び浸透圧の調節のための)を含んでもよい。ネブライザー製剤はまた、エアロゾルを形成する際の溶液の霧化によって引き起こされる本出願の化合物の表面誘発凝集を低下又は防止するために、界面活性剤を含有し得る。
【0116】
定量吸入器デバイスとともに使用するための製剤は、一般に、界面活性剤の助けを借りて推進剤中に懸濁した本出願の化合物(又は誘導体)を含有する微細化粉末を含んでもよい。推進剤は、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、又はトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン、又はそれらの組み合わせを含む炭化水素など、この目的のために使用される任意の従来の材料であり得る。好適な界面活性剤としては、トリオレイン酸ソルビタン及び大豆レシチンが挙げられる。オレイン酸は、界面活性剤としても有用であり得る。
【0117】
粉末吸入器デバイスから分注するための製剤は、本出願の化合物(又は誘導体)を含有する微細化乾燥粉末を含み得、また、デバイスからの粉末の分散を促進する量、例えば、製剤の50~90重量%で、ラクトース、ソルビトール、スクロース、又はマンニトールなどの増量剤を含み得る。本出願の化合物(複数可)/治療剤(複数可)(又は誘導体)は、有利には、肺深部への最も効果的な送達のために、10マイクロメートル(μm)未満、最も好ましくは0.5~5μmの平均粒度を有する粒子又はナノ粒子形態で調製することができる。
【0118】
眼科的又は眼内適応症については、治療用化合物/剤又は薬学的組成物を眼又は眼の近くの領域に送達する任意の好適なモードを使用することができる。眼科用製剤については、概してMitra(ed.),Ophthalmic Drug Delivery Systems,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.(1993)及びまた、Havener,W.H.,Ocular Pharmacology,C.V.Mosby Co.,St.Louis(1983)を参照されたい。眼内又は眼付近への投与に好適な薬学的組成物の非限定的な例としては、眼用インサート、ミニタブレット、及び点眼薬、軟膏、及びインサイチュゲルなどの局所製剤が挙げられるが、これに限定されない。一実施形態において、コンタクトレンズは、本明細書に開示される治療用化合物/剤を含む薬学的組成物でコーティングされる。いくつかの実施形態において、単回用量は、眼に投与される0.1ng~5000μg、1ng~500μg、又は10ng~100μgの治療用化合物/剤又は薬学的組成物を含む。
【0119】
点眼薬は、眼に直接的に投与することができる無菌液体製剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、点眼剤は、本明細書に開示される少なくとも1つの治療用化合物/剤を含み、1つ以上の保存剤を更に含んでもよい。いくつかの実施形態において、点眼薬の最適pHは、涙液のpHに等しく、約7.4である。点眼剤の場合、治療用化合物/剤は、約0.1%~約5%(活性成分の物理的性質(すなわち、固体又は液体)に応じて、w/v又はv/v)の滴溶液中に存在し得る。いくつかの実施形態において、治療用化合物/剤は、約1%~約3%(適宜、w/v又はv/v)の液滴溶液中に存在することができる。
【0120】
インサイチュゲルは粘性のある液体であり、適切なpH、温度、及び電解質の存在などの外部要因によって影響を受けた場合に、ゾルからゲルへの転移する能力を示す。この特性は、眼球表面からの薬物排出が遅延し、活性成分の生物学的利用能が増加する。インサイチュゲル製剤に一般的に使用されるポリマーには、ジェランガム、ポロキサマー、シリコーン含有配合物、ケイ素ベースの配合物及び酢酸セルロースフタレートが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、治療用化合物/剤は、(薬学的組成物/薬剤としての)インサイチュゲルに製剤化される。
【0121】
局所的な眼投与の場合、治療用化合物/剤又は薬学的組成物は、当該技術分野で周知のように、溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液などとして製剤化され得る。軟膏は、眼又は皮膚についての局所使用などの外部使用のための半固体剤形である。いくつかの実施形態において、軟膏は、ヒトの中心部温度に近い融点又は軟化点の固体又は半固体炭化水素基材を含む。いくつかの実施形態において、眼に塗布された軟膏は、小さな滴に分解され、これは、結膜嚢内でより長い期間滞留し、したがって、生物学的利用能を増加させる。
【0122】
眼用インサートは、従来の眼科用薬物形態の欠点を有さない固体又は半固体剤形である。それらは、鼻涙管を通る流出のような防御機構に影響を受けにくく、結膜嚢に長期間滞留する能力を示し、従来の剤形よりも安定している。これらはまた、1つ以上の治療用化合物/剤の正確な投薬、1つ以上の治療用化合物/剤の一定の速度でのゆっくりとした放出、及び1つ以上の治療用化合物/剤の全身吸収の制限などの利点を提供する。いくつかの実施形態において、眼用インサートは、本明細書に開示されるような1つ以上の治療用化合物/剤及び1つ以上のポリマー材料を含む。ポリマー材料は、メチルセルロース及びその誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC))、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP K-90)、ポリビニルアルコール、キトサン、カルボキシメチルキトサン、ゼラチン、並びに前述のポリマーの様々な混合物を含むことができるが、これらに限定されない。眼用インサートは、シリカを含むことができる。眼用インサートは、分解性又は生分解性ポリマーのリポソーム、ナノ粒子又はマイクロ粒子を含むことができる(以下でより詳細に説明されるように)。
【0123】
ミニタブレットは、生分解性の固体薬物形態であり、結膜嚢への適用後にゲル中に移行し、それによって活性成分(すなわち、本明細書に開示される治療用化合物/剤)と眼球表面との間の接触期間が延長され、次いで治療用化合物/剤の生物学的利用能を増加させる。ミニタブレットの利点としては、結膜嚢への適用が容易であること、鼻涙管を通る涙又は流出のような防御機構への耐性があること、粘膜接着性ポリマーの存在によって引き起こされる角膜とのより長い接触、及び外側担体層の膨張により適用場所において製剤から活性成分が漸進的に放出されることが挙げられる。ミニタブレットは、本明細書に開示される治療用化合物/剤のうちの1つ以上と、1つ以上のポリマーとを含むことができる。ミニタブレット製剤中における使用に好適なポリマーの非限定的な例としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースのようなセルロース誘導体、アクリレート(例えば、ポリアクリル酸及びその架橋形態)、Carbopol(登録商標)又はカルボマー、キトサン、及びデンプン(例えば、ドラム乾燥蝋状トウモロコシデンプン)が挙げられる。いくつかの実施形態において、ミニタブレットは、1つ以上の賦形剤を更に含む。賦形剤の非限定的な例としては、マンニトール及びステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
【0124】
眼科用又は眼内用製剤及び薬剤は、使用中に非傷害性である抗菌成分、例えば、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、メチル及びプロピルパラベン、臭化ベンジルドデシニウム、ベンジルアルコール、又はフェニルエタノールなどの非毒性補助物質;塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、又はグルコン酸緩衝液などの緩衝成分;並びにソルビタンモノラウラート、トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチラート、エチレンジアミン四酢酸などの他の従来の成分を含み得る。
【0125】
いくつかの実施形態において、1つ以上の治療用化合物/剤を含む眼用製剤の粘度を増加させて、眼の角膜との接触及び生物学的利用能を改善する。粘度は、生体膜を介して拡散せず、水中で三次元ネットワークを形成する高分子量の親水性ポリマーを添加することによって増加させることができる。そのようなポリマーの非限定的な例としては、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、ヒアルロン酸、カルボマー、並びに多糖、セルロース誘導体、ゲランガム、及びキサンタンガムが挙げられる。
【0126】
上記の製剤に加えて、本明細書に開示される治療用化合物/剤もまた、デポー調製物として製剤化され得る。そのような長時間作用型製剤は、好適なポリマーの又は疎水性の材料(例えば、許容される油中のエマルションとして)若しくはイオン交換樹脂で、又は難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として製剤化され得る。
【0127】
いくつかの実施形態において、治療剤(複数可)は、デポー製剤として投与され、活性治療剤(複数可)は、シリカベースのマイクロ粒子によって封入されるか、又はその中に配置される。いくつかの実施形態において、眼用製剤は、例えば、ゾルゲル(例えば、シリカゾルゲル)として眼に注入され得る。いくつかの実施形態において、眼用製剤は、制御放出製剤などのデポー製剤である(以下を参照)。そのような制御放出製剤は、マイクロ粒子又はナノ粒子のような粒子を含んでもよい。
【0128】
薬学的組成物はまた、好適な固体若しくはゲル相の担体又は賦形剤を含み得る。かかる担体又は賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、シリカ/シリコーン、及びポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
好適な液体又は固体の薬学的調製物形態は、例えば、吸入用の水性又は生理食塩水溶液、マイクロカプセル化、渦巻形に内包化(encochleated)、微細な金粒子上のコーティング、リポソームに内包、噴霧化、エアロゾル、皮膚への埋め込みペレット、又は皮膚を引っ掻くための鋭器上の乾燥形態などである。薬学的組成物はまた、顆粒、粉末、錠剤、コーティング錠、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ剤、エマルション、懸濁液、クリーム、点滴剤、又は、活性化合物が持続放出される製剤も挙げられ、該製剤において、賦形剤及び添加剤、及び/又は、例えば、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、潤滑剤、香味剤、甘味剤又は可溶化剤などの助剤が、上述のように慣用的に用いられる。薬学的組成物は、様々な薬物送達システムでの使用に好適であり得る。薬物送達のための方法の簡単な概説については、Langer R,Science 249:1527-33(1990)を参照されたい。
【0130】
本明細書に開示される治療用化合物/剤を具体的に含むがこれらに限定されない治療剤(複数可)は、粒子内に提供され得る。本明細書で使用する場合、粒子は、本明細書に記載の治療用化合物/剤又は他の治療剤(複数可)の全体又は一部からなることができるナノ粒子又はマイクロ粒子(又はいくつかの例ではより大きな粒子)を意味する。粒子は、腸溶性コーティングを含むがこれらに限定されないコーティングによって囲まれた中心部内に治療用化合物(複数可)/剤(複数可)を含み得る。治療用化合物(複数可)/剤(複数可)はまた、粒子全体に分散されてもよい。治療用化合物(複数可)/剤(複数可)はまた、粒子内に吸着されてもよい。粒子は、ゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、持続放出、即時放出、及びそれらの任意の組み合わせなどを含む、任意の次数の放出動態であり得る。粒子は、治療用化合物(複数可)/剤(複数可)に加えて、薬学及び医薬の分野で慣例的に使用されるそれらの材料のうちのいずれかを含んでもよく、これらには、侵食性、非侵食性、生分解性、又は非生分解性の材料、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。粒子は、溶液中又は半固体状態の治療用化合物(複数可)/剤(複数可)を含有するマイクロカプセルであってもよい。粒子は、実質的に任意の形状であってもよい。
【0131】
非生分解性及び生分解性ポリマー材料の両方を、治療用化合物(複数可)/剤(複数可)を送達するための粒子の製造に使用し得る。そのようなポリマーは、天然又は合成ポリマーであり得る。ポリマーは、放出が望まれる期間に基づいて選択される。特定の目的の生体接着性ポリマーには、Sawhney H S et al.(1993)Macromolecules 26:581-7に記載されている生体侵食性ヒドロゲルが含まれ、これらの教示は本明細書に組み込まれる。これらには、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ酸無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール)酸(PLGA)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)及びポリ(ε-カプロラクトン)又は前述のうちの2つ以上の混合物が含まれる。
【0132】
治療用化合物/剤又は他の治療剤(複数可)、若しくはそれらの混合物は、担体系において製剤化され得る。担体はコロイド系であり得る。担体又はコロイド系は、リポソーム、リン脂質二重層ビヒクルであり得る。一実施形態において、治療用化合物(複数可)/剤(複数可)又は他の治療剤(複数可)若しくはそれらの混合物は、治療用化合物(複数可)/剤(複数可)又は他の治療剤(複数可)若しくはそれらの混合物の完全性を維持しながら、リポソーム内に封入され得る。当業者は、リポソームを調製するための様々な方法があることを理解するであろう。(Lichtenberg,et al.,Methods Biochem.Anal.,33:337-462(1988)、Anselem,et al.,Liposome Technology,CRC Press(1993)を参照されたい)。リポソーム製剤は、クリアランスを遅延させ、細胞取り込みを増加させることができる(Reddy,Ann.Pharmacother.,34(7-8):915-923(2000)を参照されたい)。例えば、活性剤はまた、可溶性、不溶性、透過性、不透過性、生分解性、又は消化促進性ポリマー又はリポソームを含むがこれらに限定されない、薬学的に許容される成分から調製される粒子内に担持され得る。そのような粒子には、ナノ粒子、生分解性ナノ粒子、マイクロ粒子、生分解性マイクロ粒子、ナノスフェア、生分解性ナノスフェア、マイクロスフェア、生分解性マイクロスフェア、カプセル、エマルション、リポソーム、ミセル、及びウイルスベクター系が含まれるが、これらに限定されない。
【0133】
担体はまた、ポリマー、例えば、生分解性の生体適合性ポリマーマトリックスであり得る。一実施形態において、治療用化合物又は他の治療剤若しくはそれらの混合物は、組成の完全性を維持しながら、ポリマーマトリックスに埋め込まれ得る。ポリマーは、治療剤又は剤を封入するマイクロ粒子又はナノ粒子であり得る。ポリマーは、ポリペプチド、タンパク質若しくは多糖類などの天然物、又はポリα-ヒドロキシ酸などの合成物であってもよい。例としては、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、多糖類、フィブリン、ゼラチン、及びそれらの組み合わせで作られた担体が挙げられる。一実施形態において、ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸/グリコール酸(PLGA)又はそれらの混合物である。ポリマーマトリックスは、マイクロスフェア及びナノスフェアを含む様々な形態及びサイズで調製及び単離され得る。ポリマー製剤は、治療効果の持続期間の延長をもたらし得る。(Reddy,Ann.Pharmacother.,34(7-8):915-923(2000)を参照されたい)。ヒト成長ホルモン(hGH)についてのポリマー製剤は、臨床試験において使用されている。(Kozarich and Rich,Chemical Biology,2:548-552(1998)を参照されたい)。
【0134】
ポリマーマイクロスフェア持続放出製剤の例は、PCT公開第99/15154号(Tracyら)、米国特許第5,674,534号及び同第5,716,644号(いずれもZaleら)、PCT公開第96/40073号(Zaleら)、並びにPCT公開第00/38651号(Shahら)に記載されている。米国特許第5,674,534号及び同第5,716,644号、並びにPCT公開第96/40073号は、塩との凝集に対して安定化されたエリスロポエチンの粒子を含むポリマーマトリックスを記載している。
【0135】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子又はマイクロ粒子は、シリカベース又はシランベースであり得る(例えば、WO2002/080977:表題「Biodegradable carrier and method for preparation thereof」を参照されたい)。
【0136】
いくつかの実施形態において、治療用化合物(複数可)/剤(複数可)又は他の治療剤(複数可)若しくはそれらの混合物は、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤など、身体からの急速な排除から治療用化合物(複数可)/剤(複数可)又は他の治療剤(複数可)又はそれらの混合物を保護する担体とともに調製される。生分解性の生体適合性ポリマー、例えば、酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を使用することができる。そのような製剤は、既知の技法を使用して調製され得る。材料を、例えば、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に得ることもできる。リポソーム懸濁物(細胞特異的抗原に対するモノクローナル抗体を有する特定の細胞に標的化されるリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用され得る。これらを、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるように、当業者に既知の方法に従って調製し得る。
【0137】
治療用化合物(複数可)/剤(複数可)は、制御放出系に含まれ得る。「制御放出」という用語は、製剤からの薬物放出の様式及びプロファイルが制御される任意の薬物を含む製剤を指すことが意図される。これは、即時並びに非即時放出製剤を指し、非即時放出製剤には、持続放出及び遅延放出製剤が含まれるが、これらに限定されない。「持続放出(sustained release)」(「徐放(extended release)」とも称される)という用語は、その従来の意味で使用され、長期間にわたって薬物の漸進的放出を提供し、好ましくは、必ずしもそうではないが、長期間にわたって薬物の実質的に一定の血中レベルをもたらす薬物製剤を指す。「遅延放出」という用語は、その従来の意味で使用され、製剤の投与とそこからの薬物の放出との間に時間の遅延があり、それによって、対象に利用可能にする薬物製剤を指す。「遅延放出」は、長期間にわたる薬物の漸進的放出を伴っても、又は伴わなくてもよく、したがって、「持続放出」であっても、又はそうでなくてもよい。
【0138】
長期持続放出性インプラント又はデポー製剤の使用は、慢性疾患の治療に特に好適であり得る。「インプラント」及び「デポー製剤」という用語は、単一の組成物(メッシュなど)、又は複数の成分(例えば、いくつかの個々のメッシュ材料から構築された繊維性メッシュ)を含む組成物、又は複数の個々の組成物を含むように意図されており、複数の組成物は局在化されたままであり、複数の組成物の凝集物から生じる長期的な持続放出を提供する。「長期」放出は、本明細書で使用する場合、インプラント又はデポー製剤が、少なくとも2日間、活性成分(複数可)の治療又は予防レベルを送達するように構築及び配置されることを意味する。いくつかの実施形態において、インプラント又はデポー製剤は、少なくとも7日間、治療又は予防レベルの活性成分(複数可)を送達するように構築及び配置される。いくつかの実施形態において、インプラント又はデポー製剤は、少なくとも14日間、治療又は予防レベルの活性成分(複数可)を送達するように構築及び配置される。いくつかの実施形態において、インプラント又はデポー製剤は、少なくとも30日間、治療又は予防レベルの活性成分(複数可)を送達するように構築及び配置される。いくつかの実施形態において、インプラント又はデポー製剤は、少なくとも60日間、治療又は予防レベルの活性成分(複数可)を送達するように構築及び配置される。いくつかの実施形態において、インプラント又はデポー製剤は、少なくとも90日間、治療又は予防レベルの活性成分を送達するように構築及び配置される。いくつかの実施形態において、インプラント又はデポー製剤は、少なくとも180日間、治療又は予防レベルの活性成分(複数可)を送達するように構築及び配置される。いくつかの実施形態において、インプラント又はデポー製剤は、少なくとも1年間、治療又は予防レベルの活性成分(複数可)を送達するように構築及び配置される。いくつかの実施形態において、インプラント又はデポー製剤は、15~30日間、治療又は予防レベルの活性成分(複数可)を送達するように構築及び配置される。いくつかの実施形態において、インプラント又はデポー製剤は、30~60日間、治療又は予防レベルの活性成分(複数可)を送達するように構築及び配置される。いくつかの実施形態において、インプラント又はデポー製剤は、60~90日間、治療又は予防レベルの活性成分(複数可)を送達するように構築及び配置される。いくつかの実施形態において、インプラント又はデポー製剤は、90~120日間、治療又は予防レベルの活性成分(複数可)を送達するように構築及び配置される。いくつかの実施形態において、インプラント又はデポー製剤は、120~180日間、治療又は予防レベルの活性成分(複数可)を送達するように構築及び配置される。いくつかの実施形態において、インプラント又はデポー製剤は、治療又は予防レベルの活性成分(複数可)を最大1年間送達するように構築及び配置される。いくつかの実施形態において、長期持続放出性インプラント又はデポー製剤は、当業者に周知であり、上述の放出系のいくつかを含む。いくつかの実施形態において、かかるインプラント又はデポー製剤は、外科的に投与され得る。いくつかの実施形態において、かかるインプラント又はデポー製剤は、局所的に、又は注射によって投与することができる。
【0139】
V.本明細書に開示される方法、使用及び薬剤の実施において有用な化合物及び組成物
小分子ペプチドミメティック
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に開示される方法を実施するための、式(I)のペプチドミメティック化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物を提供する:
【化2】
(式中、
AA
1は、
【化3】
から選択され、
AA
2は、
【化4】
から選択され、
R
1は、
【化5】
から選択され、
R
2aは、
【化6】
から選択され、
R
2bは、H又はMeであり、
R
3及びR
4は、独立して、H及び(C
1-C
6)アルキルから選択され、
R
5及びR
6は、独立して、H、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、若しくはシクロブチルであり、又はR
5及びR
6は、それらが結合するN原子とともに、4~6員ヘテロシクリルを形成し、
R
7は、H、(C
1-C
6)アルキル、シクロアルキル、及びアリールから選択され、
R
8及びR
9は、独立して、H、(C
1-C
6)アルキル、シクロアルキル、及びアリールから選択され、又はR
8及びR
9は、それらが結合するN原子とともに、4~6員ヘテロシクリルを形成し、
nは、1、2、又は3であり、
Xは、
【化7】
から選択され、
※は、R
1へのXの結合点を表す。
【0140】
いくつかの実施形態において、AA
1は、
【化8】
である。いくつかの実施形態において、AA
1は、
【化9】
である。いくつかの実施形態において、AA
1は、
【化10】
である。いくつかの実施形態において、AA
1は、
【化11】
である。いくつかの実施形態において、AA
1は、
【化12】
である。いくつかの実施形態において、AA
1は、
【化13】
である。
【0141】
いくつかの実施形態において、AA
2は、
【化14】
である。いくつかの実施形態において、AA
2は、
【化15】
である。いくつかの実施形態において、AA
2は、
【化16】
である。いくつかの実施形態において、AA
2は、
【化17】
である。
【0142】
いくつかの実施形態において、R
1は、
【化18】
、又は
である。いくつかの実施形態において、R
1は、
【化19】
である。いくつかの実施形態において、R
1は、
【化20】
である。いくつかの実施形態において、R
1は、
【化21】
である。
【0143】
いくつかの実施形態において、R
1は、
【化22】
である。いくつかの実施形態において、R
1は、
【化23】
である。いくつかの実施形態において、R
1は、
【化24】
、
、又は
である。
【0144】
いくつかの実施形態において、R
1は、
【化25】
、
、
、又は
である。
【0145】
いくつかの実施形態において、R
1は、
【化26】
である。
【0146】
いくつかの実施形態において、R
2aは、
【化27】
である。いくつかの実施形態において、R
2aは、
【化28】
である。
【0147】
いくつかの実施形態において、R
2aは、
【化29】
、又は
である。いくつかの実施形態において、R
2aは、
【化30】
である。いくつかの実施形態において、R
2aは、
【化31】
又は
である。いくつかの実施形態において、R
2aは、
【化32】
又は
である。いくつかの実施形態において、R
2aは、
【化33】
、
、又は
である。いくつかの実施形態において、R
2aは、
【化34】
、
、又は
である。
【0148】
いくつかの実施形態において、R2bは、Hである。いくつかの実施形態において、R2bは、メチルである。
【0149】
いくつかの実施形態において、R3は、Hである。いくつかの実施形態において、R3は、(C1-C6)アルキルである。いくつかの実施形態において、R3は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、又はt-ブチルである。いくつかの実施形態において、R3は、メチルである。いくつかの実施形態において、R3は、エチルである。
【0150】
いくつかの実施形態において、R4は、Hである。いくつかの実施形態において、R4は、(C1-C6)アルキルである。いくつかの実施形態において、R4は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、又はt-ブチルである。いくつかの実施形態において、R4は、メチルである。いくつかの実施形態において、R4は、エチルである。
【0151】
いくつかの実施形態において、R3及びR4は、同じである。いくつかの実施形態において、R3及びR4は、異なる。
【0152】
いくつかの実施形態において、R5は、Hである。いくつかの実施形態において、R5は、メチルである。
【0153】
いくつかの実施形態において、R6は、Hである。いくつかの実施形態において、R6は、メチルである。
【0154】
いくつかの実施形態において、R5及びR6は、同じである。いくつかの実施形態において、R5及びR6は、異なる。いくつかの実施形態において、R5及びR6は、Hである。
【0155】
いくつかの実施形態において、R5及びR6は、それらが結合するN原子とともに、4~6員ヘテロシクリルを形成する。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリルは、4~6員環である。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリルは、アゼチジニル、ピロリジニル、又はピペリジニルである。
【0156】
いくつかの実施形態において、R7は、Hである。いくつかの実施形態において、R7は、(C1-C6)アルキルである。いくつかの実施形態において、R7は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、又はt-ブチルである。いくつかの実施形態において、R7は、メチルである。
【0157】
いくつかの実施形態において、R7は、シクロアルキルである。いくつかの実施形態において、R7は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロプロピル、又はシクロヘキシルである。いくつかの実施形態において、R7は、アリールである。いくつかの実施形態において、R7は、フェニルである。
【0158】
いくつかの実施形態において、R8は、Hである。いくつかの実施形態において、R8は、(C1-C6)アルキルである。いくつかの実施形態において、R8は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、又はt-ブチルである。いくつかの実施形態において、R8は、メチルである。
【0159】
いくつかの実施形態において、R9は、Hである。いくつかの実施形態において、R9は、(C1-C6)アルキルである。いくつかの実施形態において、R9は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、又はt-ブチルである。いくつかの実施形態において、R9は、メチルである。
【0160】
いくつかの実施形態において、R8及びR9は、同じである。いくつかの実施形態において、R8及びR9は、異なる。いくつかの実施形態において、R8及びR9は、Hである。
【0161】
いくつかの実施形態において、R8及びR9は、それらが結合するN原子とともに、4~6員ヘテロシクリルを形成する。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリルは、4~6員環である。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリルは、アゼチジニル、ピロリジニル、又はピペリジニルである。
【0162】
いくつかの実施形態において、Xは、
【化35】
である。いくつかの実施形態において、Xは、
【化36】
である。いくつかの実施形態において、Xは、
【化37】
又は
である。いくつかの実施形態において、Xは、
【化38】
である。いくつかの実施形態において、Xは、
【化39】
又は
である。いくつかの実施形態において、Xは、
【化40】
、
、
、又は
である。
【0163】
いくつかの実施形態において、nは、1である。いくつかの実施形態において、nは、2である。いくつかの実施形態において、nは、3である。
【0164】
いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、900ダルトン未満の遊離塩基(すなわち、任意の関連する塩(複数可)、水分子(複数可)、又は溶媒分子(複数可)を含まない)分子量を有し、それによって、それを小分子ペプチドミメティックにする。
【0165】
本明細書で開示されるペプチドミメティックのキラル中心は、R又はS配置のいずれかにあってもよい。本明細書に記載のペプチドミメティックは、1つ以上の不斉中心を含み得、したがって、様々な異性体形態、例えば、エナンチオマー及び/又はジアステレオマーで存在し得る。例えば、本明細書に記載の化合物は、個々のエナンチオマー、ジアステレオマー又は幾何異性体の形態であり得るか、又はラセミ混合物及び1つ以上の立体異性体に富む混合物を含む立体異性体の混合物の形態であり得る。異性体は、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及びキラル塩の形成及び結晶化を含む、当業者に既知の方法によって混合物から単離し得るか、又は好ましい異性体は、不斉合成によって調製され得る。例えば、Jacques et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley lnterscience,New York,1981)、Wilen et al.,Tetrahedron 33:2725(1977)、Eliel,Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill,NY,1962)、及びWilen,Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)を参照されたい。追加的に、ペプチドミメティックは、実質的に他の異性体を含まない個々の異性体として、代替的に様々な異性体の混合物として本明細書に記載される化合物を包含する。
【0166】
いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、(式(II)を有する)化合物1)であり、文献において:(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド」、(2R)-2-アミノ-N-[(1S)-1-{[(1S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル]カルバモイル}-2-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)エチル]-5-カルバムイミドアミドペンタンアミド、又は「(D-Arg-DMT-NH((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンタ-1-イル)として知られている:
【化41】
【0167】
用語(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド」、(2R)-2-アミノ-N-[(1S)-1-{[(1S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル]カルバモイル}-2-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)エチル]-5-カルバムイミドアミドペンタンアミド、又は「(D-Arg-DMT-NH((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンタ-1-イル)は、例えば、以下の式(IIa)のトリ-(又はトリス)-HCl塩などの薬学的に許容される塩形態を含むことが意図される:
【化42】
【0168】
化合物1(すなわち、式(II)又は(IIa))は、血液脳関門を通過することが以前に示されており、それによって、神経変性疾患の治療のための良好な候補となっている(WO2021/016462、特に
図5A及びパラグラフ[0238]を参照されたい)。
【0169】
小分子ペプチドミメティックの合成
本明細書に記載のペプチドミメティック化合物は、従来の液相(溶液相としても知られる)ペプチド合成若しくは固相ペプチド合成などの周知のペプチド合成方法を使用して、又は自動化ペプチド合成装置によるペプチド合成によって、全体的又は部分的に調製され得る(Kelley et al.,Genetics Engineering Principles and Methods,Setlow,J.K.eds.,Plenum Press NY.(1990) Vol.12,pp.1 to 19;Stewart et al.,Solid-Phase Peptide Synthesis (1989) W.H.;Houghten,Proc.Natl.Acad.Sci.USA (1985) 82:p.5132)。このようにして生成されたペプチドミメティックを、慣例の方法、例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、及びHPLCなどのクロマトグラフィー、硫酸アンモニウム分画、限外濾過、並びに免疫吸着によって収集又は精製し得る。
【0170】
固相ペプチド合成において、ペプチドは、典型的には、アミノ酸鎖のカルボニル基側(C末端)からアミノ基側(N末端)に合成される。ある特定の実施形態において、アミノ保護されたアミノ酸は、アミノ酸のカルボキシル基を介して、典型的にはエステル又はアミド結合を介して、及び任意選択で連結基を介して、固体支持材料に共有結合される。アミノ基を脱保護し、カップリング試薬を使用して第2のアミノ保護されたアミノ酸のカルボニル基と反応させて(すなわち、「カップリング」させて)、固体支持体に結合したジペプチドを生成し得る。カップリング後、任意選択で樹脂をキャッピング試薬で処置し、それによって任意の未反応のアミン基をキャップする(後続のカップリングステップに向かって不活性にする)。これらのステップ(すなわち、脱保護、カップリング、及び任意選択でキャッピング)を繰り返して、所望のペプチド鎖を形成し得る。所望のペプチド鎖が完成すると、ペプチドは固体支持体から切断され得る。
【0171】
ある特定の実施形態において、アミノ酸残基(ペプチド及び/又はペプチドミメティック)のアミノ基に使用される保護基は、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)及びt-ブチルオキシカルボニル(Boc)を含む。Fmoc基は塩基でアミノ末端から除去され、Boc基は酸で除去される。代替的な実施形態において、アミノ保護基は、ホルミル、アクリリル(Acr)、ベンゾイル(Bz)、アセチル(Ac)、トリフルオロアセチル、ベンジルオキシカルボニル(Z)、p-クロロベンジルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、2(p-ビフェニリル)イソプロピルオキシカルボニル、2-(3,5-ジメトキシフェニル)イソプロピルオキシカルボニル、p-フェニルアゾベンジルオキシカルボニル、トリフェニルホスホノエチルオキシカルボニル又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)などのアラルキルオキシカルボニル型の置換された又は非置換の基、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)、tert-アミルオキシカルボニル、ジイソプロピルメチルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2メチルスルホニルエチルオキシカルボニル又は2,2,2-トリクロロエチルオキシカルボニル基などのアルキルオキシカルボニル型の置換された又は非置換の基、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル又はイソボルニルオキシカルボニル基などのシクロアルキルオキシカルボニル型の基、及びベンゼンスルホニル、p-トルエンスルホニル、メシチレンスルホニル、メトキシトリメチルフェニルスルホニル、2-ニトロベンゼンスルホニル、2-ニトロベンゼンスルフェニル、4-ニトロベンゼンスルホニル又は4-ニトロベンゼンスルフェニル基などのヘテロ原子を含む基であり得る。
【0172】
多くのアミノ酸は側鎖に反応性官能基を有する。ある特定の実施形態において、そのような官能基は、入ってくるアミノ酸と官能基とが反応することを予防するために保護される。これらの官能基とともに使用される保護基は、ペプチド及び/又はペプチドミメティック合成の条件に対して安定でなければならないが、固体支持体からのペプチドの切断(支持体が結合している場合)の前、後、若しくはそれに付随して、又は溶液相合成の場合には最終的な脱保護時に除去され得る。更に、以下についても参照される。ペプチド合成において一般的に使用される保護基の包括的なレビューとして、Isidro-Llobet,A.,Alvarez,M.,Albericio,F.,“Amino Acid-Protecting Groups”;Chem.Rev.,109:2455-2504 (2009)(この保護基は、ペプチドミメティックがペプチドに見られる官能基を含むペプチドミメティック合成においても使用できる)。
【0173】
ある特定の実施形態において、固相ペプチド合成方法において使用される固体支持体材料は、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、又はポリエチレングリコールなどのゲル型支持体である。代替的に、制御された孔ガラス、セルロース繊維、又はポリスチレンなどの材料は、それらの表面で官能化され、ペプチド合成のための固体支持体を提供し得る。
【0174】
本明細書に記載の固相(又は溶液相)ペプチド合成において使用され得るカップリング試薬は、典型的にはカルボジイミド試薬である。カルボジイミド試薬の例としては、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)及びそのHCl塩(EDC・HCl)、N-シクロヘキシル-N’-イソプロピルカルボジイミド(CIC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N-tert-ブチル-N’-メチルカルボジイミド(BMC)、N-tert-ブチル-N’-エチルカルボジイミド(BEC)、ビス[[4-[(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソリル)]-メチル]カルボジイミド(BDDC)、及びN,N-ジクロペンチルカルボジイミドが挙げられるが、これらに限定されない。DCCは好ましいカップリング試薬である。他のカップリング剤としては、概してDIEAなどの有機塩基及びルチジン又はコリジンなどのヒンダードピリジン型塩基と組み合わせて使用されるHATU及びHBTUが挙げられる。
【0175】
いくつかの実施形態において、Fuller et al.,Urethane-Protected α-Amino Acid N-Carboxyanhydrides and Peptide Synthesis,Biopolymers(Peptide Science),Vol.40,183-205(1996)及びWO2018/034901に記載されているように、アミノ酸は、N-カルボキシ無水物を形成することによって、ペプチド又はペプチドミメティックへのカップリングに向けて活性化され得る。
【0176】
一般式(I)の代表的な小分子ペプチドミメティック、より具体的には式(II)及び(IIa)の化合物の調製方法は、参照により本明細書に組み込まれるWO2019/118878を見出すことができる。より具体的には、化合物1aの合成は、WO2019/118878に、そこに記載されている化合物7aの合成に関して具体的に記載されている。
【0177】
製剤及び薬剤:
本明細書に開示される小分子ペプチドミメティック(例えば、式(I)、(II)、又は(IIa)の化合物)は、タウオパチーに罹患している対象のニーズに対処するために、単独で、又は他の治療活性成分と組み合わせて使用することができる。投与を必要とする対象に投与するために、小分子ペプチドミメティックは、一般に、好適な投与経路用に製剤化される必要がある。製剤化された生成物は、小分子ペプチドミメティック及び任意選択で1つ以上の追加の活性治療剤を含む組成物又は薬剤と見なすことができる。例えば、小分子ペプチドミメティック(単独で、又は別の活性成分と組み合わせて)が注射によって対象に投与される場合、それは、典型的には、注射可能な液体又は液体懸濁液中に製剤化される。例えば、これは、本明細書に先に記載されるように、任意選択で1つ以上の任意選択で1つ以上の追加の活性治療剤とともに、小分子ペプチドミメティックを好適な希釈剤、アジュバント、賦形剤、ビヒクル、又は薬学的に許容される担体に溶解させるか、又は懸濁させることによって達成され得る(上記の薬学的組成物、投与経路、及び投薬と表題が付けられたセクションを参照されたい)。いくつかの実施形態において、希釈剤、アジュバント、賦形剤、ビヒクル、又は薬学的に許容される担体は、水、生理食塩水、又は緩衝水溶液であり得る。
【0178】
同様に、小分子ペプチドミメティック(単独で、又は別の活性成分若しくは複数の活性成分と組み合わせて)が経口形態で対象に投与される場合、選択された活性成分(複数可)は、「薬学的組成物、投与経路、及び投薬」と表題が付けられたセクションに上述されるように、又は当業者に知られている他の方法のように、丸剤、錠剤、カプセル、又はそのような投与のための他のビヒクルに製剤化され得る。同様に、分子ペプチドミメティック(単独で、又は他の活性成分若しくは複数の活性成分と組み合わせて)は、眼投与、口腔投与、局所投与、鼻腔投与、又は本明細書で以前に論じられた、又は当業者に知られている任意の他の投与様式用に製剤化することができる。
【0179】
要約すると、(医療処置を必要とするある特定の苦痛又は病状を有する対象への投与用に製剤化された場合、薬剤又は組成物とも称され得る)製剤のうちのいずれかは、「薬学的組成物、投与経路、及び投薬」は、それを必要とする対象への投与に好適な組成物(すなわち、製剤又は薬剤)を製造するために適用することができる。したがって、いくつかの実施形態において、本出願は、タウオパチーに罹患している、又は罹患していると考えられる対象への投与に好適な組成物、製剤、及び薬剤に関する。
【0180】
VII.治療方法及び関連する用途
併用療法
タウオパチーの治療に好適な可能な治療剤として、いくつかの小分子が調査中である。これらの小分子#は、異なる種類の活性剤に分類することができる。そのようなカテゴリーには、タウリン酸化の調節剤、キナーゼ阻害剤、タウアシル化の調節剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、タウグリコシル化の調節剤/阻害剤(例えば、O-GlcNAcase阻害剤)、タウ切断の調節剤(例えば、カプサーゼ阻害剤)、タウ凝集阻害剤、プロテアソーム刺激剤、USP14阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、オートファジー活性化剤、シャペロン調節剤、共シャペロン調節剤、及びタウ指向性多標的特異的リガンドが含まれる(レビュー論文:Wang,L.,et al.“Small molecule therapeutics for tauopathy in Alzheimer’s disease:Walking the path of most resistance”,European Journal of Medicinal Chemistry,209(2021)112915;#この文献で特定されている「小分子」の一部は、900ダルトンを超える分子量で構成されているが、Wangらによってそのように分類されているため、本明細書では「小分子」と称される)。
【0181】
タウリン酸化の好適な調節剤のいくつかの例としては、メマンチン、フィンゴリモド(FTY720)、SEW2871、ゲニステイン、メトホルミン、レスベラトロール、モロニシド及びローガニンが挙げられる(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図1)。
【0182】
好適なキナーゼ阻害剤のいくつかの例としては、チデグルシブ(tideglusib)及びサラカチニブ(saracatinib)/AZD0530が挙げられる(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図1)。
【0183】
タウアシル化の好適な調節剤のいくつかの例としては、サルサレート、サリチル酸塩、C646、CGP3466B(オミガピル)及びA03が挙げられる(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図1)。
【0184】
好適なヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤のいくつかの例としては、ACY-738、CKD-504、グリコデオキシコール酸、PubChem ID:38028580、PubChem ID:16399643及びRGFP-966(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図2)。
【0185】
タウグリコシル化の好適な調節剤/阻害剤(例えば、O-GlcNAcase阻害剤)のいくつかの例としては、PUGNAc、NAG-チアゾリン、NButGT、チアメット-G、MK-8719及びASN120290が挙げられる(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図2)。
【0186】
タウ切断の好適な調節剤(例えば、カプサーゼ阻害剤)のいくつかの例としては、Z-VAD-FMK、Z-VAD(OMe)-FMK、Q-VD-OPh及びミノサイクリンが挙げられる(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図3)。
【0187】
好適なタウ凝集阻害剤のいくつかの例としては、メチレンブルー、LMTM、クルクミン、PE859、TAI-1、TAI-2、クルクミン-糖-コンジュゲート、N744、RH-1、TAI-3、TAI-4、TAI-5、TAI-6、TAI-7、シンナムアルデヒド、エピカテキン、クロシン
##、VB-008及びCL-NQTrpが挙げられる(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.並びに
図3及び
図4;
##この化合物の質量は、900ダルトンを超えるが、それにもかかわらず、Wangらによって、小分子として特徴付けられる)。
【0188】
好適なプロテアソーム刺激剤のいくつかの例としては、クロルプロマジン及びTCH-165が挙げられる(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図5)。
【0189】
好適なUSP14阻害剤のいくつかの例としては、IU1、IU1-47が挙げられる(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図5)。
【0190】
好適なホスホジエステラーゼ阻害剤及びPROTACのいくつかの例としては、ロリプラム、BPN14770、シロスタゾール、シルデナフィル及びQC-01-175が挙げられる(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図5)。
【0191】
好適なオートファジー活性化剤のいくつかの例としては、ラパマイシン
##、テムシロリムス
##、トレハロース、ニロチニブ、ピモジド及びロナファミブが挙げられる(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図6)。
【0192】
好適なシャペロン調節剤のいくつかの例としては、メチレンブルー(上記を参照)、アズールC、ミリセチン、MKT-077、YM-01、YM-08、JG-48、JG-98、VER-155008、116-9E、ALSB-2970等のHSP70調節剤、及び17-AAG、EC102、PUDZ8、PU24FCl、LA1011、KU-32及びセラストロール等のPES及びHsp90調節剤が挙げられる(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.並びに
図7及び
図8)。
【0193】
好適な共シャペロン調節剤のいくつかの例としては、スルフォラファン及びKU-177が挙げられる(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図8)。
【0194】
好適なタウ指向性多標的特異的リガンドのいくつかの例としては、ショガオイ-ヒュープリンハイブリッド、レベチラセタム-ハイプリンヒドリッド、AChE/GSK3β二重阻害剤(タクリン-バルメリンハイブリド)、BACE/GSK3β二重阻害剤、GSK3β/HDAC二重阻害剤、HDAC/PD5E二重阻害剤(CM-414)、MTDL-1、LM-031及びMTDL-2が挙げられる(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図9)。
【0195】
したがって、いくつかの実施形態において、本出願は、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミドなどの小分子ペプチドミメティックを、タウリン酸化の調節剤、キナーゼ阻害剤、タウアシル化の調節剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、タウグリコシル化の調節剤、タウ切断の調節剤、タウ凝集阻害剤、プロテアソーム刺激剤、USP14阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤及びPROTAC、オートファジー活性化剤、シャペロン調節剤、共シャペロン調節剤、及び/又はタウ指向性多標的特異的リガンドと組み合わせて、各々有効量で対象に同時投与し、タウオパチーを治療、阻害、改善、又は発症を遅延させることができることを予想する。かかる同時投与は、同時又は連続的な投与によるものであり得る。かかる同時投与は、同じ製剤によって、又は異なる製剤によるものであり得る。かかる同時投与は、同じ経路又は投与によって、又は異なる投与経路によるものであり得る。
【0196】
高血糖症が神経炎症の悪化に重要な役割を果たす可能性があり、酸化ストレスがアルツハイマー病の発症及び進行に寄与する可能性があることが文献で示唆されている。エラミプレチド(SS-31、MTP-131及びベンダビアとしても知られる)及びSzeto-SchillerペプチドSS-20などのペプチドは、抗酸化作用を示すか、又はそうでなければ抗酸化作用を促進することが報告されている。したがって、いくつかの実施形態において、本出願は、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミドなどの小分子ペプチドミメティックを、エラミプレチド及び/又はSS-20と組み合わせて、各々有効量で対象に同時投与し、タウオパチーを治療、予防、阻害、改善又は発症を遅延させることができることを予想する。かかる同時投与は、同時又は連続的な投与によるものであり得る。かかる同時投与は、同じ製剤によって、又は異なる製剤によるものであり得る。かかる同時投与は、同じ経路又は投与によって、又は異なる投与経路によるものであり得る。
【0197】
治療方法
いくつかの実施形態において、本出願は、タウオパチーの治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症の遅延を必要とする対象においてそれを行うための方法であって、対象に、治療有効量の小分子ペプチドミメティック、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物を投与することを含む、方法に関する。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの当該投与は、タウ種レベルを低下させ得る。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの当該投与は、細胞タウ蓄積に関連する毒性を低下させ得る。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの当該投与は、タウタンパク質の細胞蓄積によって引き起こされる細胞酸化ストレスを低下させ得る。
【0198】
いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの投与によって対処されるタウオパチーは、アルツハイマー病である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの投与によって対処されるタウオパチーは、ピック病である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの投与によって対処されるタウオパチーは、大脳皮質基底変性症である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの投与によって対処されるタウオパチーは、進行性核上麻痺である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの投与によって対処されるタウオパチーは、グローバルグリアタウオパチーである。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの投与によって対処されるタウオパチーは、嗜銀顆粒病である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの投与によって対処されるタウオパチーは、家族性英国型認知症である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの投与によって対処されるタウオパチーは、家族性デンマーク型認知症である。
【0199】
いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの投与によって対処されるタウオパチーは、原発性加齢関連タウオパチーである。例えば、原発性加齢関連タウオパチーは、神経原線維もつれ型認知症、慢性外傷性脳症(CTE)、及び加齢関連タウアストログリオパチーからなる群から選択され得る。
【0200】
上記開示される方法によれば、いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、2週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、12週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、24週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、48週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、1年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、2年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、5年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、1年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、診断の直後から、対象の生涯の残りの間、又はペプチドミメティックの投与がもはや有効ではなくなるまで、投与される。
【0201】
上記開示される方法によれば、いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。
【0202】
上記開示される方法によれば、いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、経口投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、皮下投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、局所投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、鼻腔内投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、全身投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、静脈内投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、腹腔内投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、経皮投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、眼球内投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、眼投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、くも膜下腔内投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、脳室内投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、イオン導入投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、経粘膜投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、硝子体内投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティックは、筋肉内投与される。
【0203】
上記開示される方法によれば、いくつかの実施形態において、方法は、対象に、追加の治療を、別々に、連続して、又は同時に施すことを含み、追加の治療は、追加の治療剤又は複数の治療剤の投与(すなわち、小分子ペプチドミメティックと組み合わせた第2の治療剤又は複数の治療剤の同時投与)を含み得る。いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、タウリン酸化の調節剤、タウアシル化の調節剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、タウグリコシル化の調節剤/阻害剤(例えば、O-GlcNAcase阻害剤)、タウ切断の調節剤(例えば、カプサーゼ阻害剤)、タウ凝集阻害剤、プロテアソーム刺激剤、USP14阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、オートファジー活性化剤、シャペロン調節剤、共シャペロン調節剤、及びタウ指向性多標的特異的リガンドからなる群から選択される小分子である。
【0204】
いくつかの実施形態においては、タウリン酸化の調節剤は、メマンチン、フィンゴリモド(FTY720)、SEW2871、ゲニステイン、メトホルミン、レスベラトロール、モロニシド及びローガニンからなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図1)。
【0205】
いくつかの実施形態においては、キナーゼ阻害剤は、チデグルシブ及びサラカチニブ/AZD0530からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図1)。
【0206】
いくつかの実施形態において、タウアシル化の調節剤は、サルサレート、サリチル酸塩、C646、CGP3466B(オミガピル)、及びA03からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図1)。
【0207】
いくつかの実施形態において、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は、ACY-738、CKD-504、グリコデオキシコール酸、PubChem ID:38028580、PubChem ID:16399643及びRGFP-966からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図2)。
【0208】
いくつかの実施形態において、タウグリコシル化の調節剤/阻害剤(例えば、O-GlcNAcase阻害剤)は、PUGNAc、NAG-チアゾリン、NButGT、チアメット-G、MK-8719、及びASN120290からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図2)。
【0209】
いくつかの実施形態において、タウ切断の好適な調節剤(例えば、カプサーゼ阻害剤)は、Z-VAD-FMK、Z-VAD(OMe)-FMK、Q-VD-OPh及びミノサイクリンが挙げられる(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図3)。
【0210】
いくつかの実施形態において、タウ凝集阻害剤は、メチレンブルー、LMTM、クルクミン、PE859、TAI-1、TAI-2、クルクミン-糖-コングゲート(congugate)、N744、RH-1、TAI-3、TAI-4、TAI-5、TAI-6、TAI-7、シンナムアルデヒド、エピカテキン、クロシン##、VB-008及びCL-NQTrpからなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.並びに
図3及び
図4)。
【0211】
いくつかの実施形態において、プロテアソーム刺激剤は、クロルプロマジン及びTCH-165からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図5)。
【0212】
いくつかの実施形態において、USP14阻害剤は、IU1、IU1-47からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図5)。
【0213】
いくつかの実施形態において、ホスホジエステラーゼ阻害剤及びPROTACは、ロリプラム、BPN14770、シロスタゾール、シルデナフィル、及びQC-01-175からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図5)。
【0214】
いくつかの実施形態において、オートファジー活性化剤は、ラパマイシン、テムシロリムス、トレハロース、ニロチニブ、ピモジド、及びロナファミブからなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図6)。
【0215】
いくつかの実施形態において、シャペロン調節剤は、PESのメチレンブルー(上記参照)、アズールC、ミリセチン、MKT-077、YM-01、YM-08、JG-48、JG-98、VER-155008、116-9E、ALSB-2970などのHsp70調節剤、又は17-AAG、EC102、PUDZ8、PU24FCl、LA1011、KU-32、及びセラストロールなどのHsp90調節剤である(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.並びに
図7及び
図8)。
【0216】
いくつかの実施形態において、共シャペロン調節剤は、スルフォラファン又はKU-177である(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図8)。
【0217】
いくつかの実施形態において、タウ指向性多標的特異的リガンドは、ショガオイ-ヒュープリンハイブリッド、レベチラセタム-ハイプリンヒドリッド、AChE/GSK3β二重阻害剤(タクリン-バルメリンハイブリド)、BACE/GSK3β二重阻害剤、GSK3β/HDAC二重阻害剤、HDAC/PD5E二重阻害剤(CM-414)、MTDL-1、LM-031及びMTDL-2からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図9)。
【0218】
上記開示される方法によれば、いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティック及び追加の治療的処置/剤の組み合わせは、タウオパチーの処置における相乗効果を有する。
【0219】
上記開示された方法によれば、いくつかの実施形態において、小分子ペプチドは、薬学的に許容される塩の形態で投与される。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される塩は、酒石酸塩、フマル酸塩、モノ酢酸塩、ビス酢酸塩、トリ酢酸塩、モノトリフルオロ酢酸塩、ビストリフルオロ酢酸塩、トリトリフルオロ酢酸塩、モノ塩酸塩、ビス塩酸塩、トリ塩酸塩、モノトシル酸塩、ビストシル酸塩、又はトリトシル酸塩である。
【0220】
いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、トリスHCl塩、ビスHCl塩、又はモノHCl塩として製剤化される。
【0221】
組成物及び薬剤に関連する治療的使用:
いくつかの実施形態において、本出願は、タウオパチーの治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症の遅延を必要とする対象において、それを行うことを目的として対象への投与に好適な組成物及び/又は薬剤に製剤化される、本明細書に開示される小分子治療剤の治療的使用に関し、組成物/薬剤は、治療上有効な量の小分子ペプチドミメティック、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物を含む。したがって、いくつかの実施形態において、本出願は、タウオパチーの治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症の遅延を必要とする対象においてそれを行うための薬剤の調製における組成物の使用に関し、本組成物は、治療有効量の小分子ペプチドミメティック、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物を含む。いくつかの実施形態において、当該使用に好適な小分子ペプチドミメティックは、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物である。いくつかの実施形態において、組成物/薬剤の当該使用は、対象におけるタウ種レベルを低下させ得る。いくつかの実施形態において、組成物/薬剤の当該使用は、対象における細胞タウの蓄積に関連する毒性を低下させ得る。いくつかの実施形態において、組成物/薬剤の当該使用は、対象におけるタウタンパク質の細胞蓄積によって引き起こされる細胞酸化ストレスを低下させ得る。
【0222】
いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、アルツハイマー病である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、ピック病である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、大脳皮質基底変性症である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、進行性核上麻痺である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、グローバルグリアタウオパチーである。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、嗜銀顆粒病である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、家族性英国型認知症である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、家族性デンマーク型認知症である。
【0223】
いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、原発性加齢関連タウオパチーである。例えば、原発性加齢関連タウオパチーは、神経原線維もつれ型認知症、慢性外傷性脳症(CTE)、及び加齢関連タウアストログリオパチーからなる群から選択され得る。
【0224】
上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、2週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、12週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、24週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、48週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、1年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、2年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、5年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、1年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、診断の直後から、対象の生涯の残りの間、又はペプチドミメティックの投与がもはや有効ではなくなるまで、投与される。
【0225】
上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。上記開示される使用のいくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。
【0226】
上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、皮下投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、局所投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、鼻腔内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、全身投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、静脈内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、腹腔内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、皮内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、眼内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、眼科投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、くも膜下腔内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、脳室内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、イオン導入投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、経粘膜投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、硝子体内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤は、筋肉内投与用に製剤化される。
【0227】
上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、使用は、追加の治療を別々に、連続して、又は同時に使用することを含み、追加の治療は、追加の治療剤又は複数の治療剤の投与を含み得る。いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、タウリン酸化の調節剤、タウアシル化の調節剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、タウグリコシル化の調節剤/阻害剤(例えば、O-GlcNAcase阻害剤)、タウ切断の調節剤(例えば、カプサーゼ阻害剤)、タウ凝集阻害剤、プロテアソーム刺激剤、USP14阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、オートファジー活性化剤、シャペロン調節剤、共シャペロン調節剤、及びタウ指向性多標的特異的リガンドからなる群から選択される小分子である。
【0228】
いくつかの実施形態においては、タウリン酸化の調節剤は、メマンチン、フィンゴリモド(FTY720)、SEW2871、ゲニステイン、メトホルミン、レスベラトロール、モロニシド及びローガニンからなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図1)。
【0229】
いくつかの実施形態においては、キナーゼ阻害剤は、チデグルシブ及びサラカチニブ/AZD0530からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図1)。
【0230】
いくつかの実施形態において、タウアシル化の調節剤は、サルサレート、サリチル酸塩、C646、CGP3466B(オミガピル)、及びA03からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図1)。
【0231】
いくつかの実施形態において、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は、ACY-738、CKD-504、グリコデオキシコール酸、PubChem ID:38028580、PubChem ID:16399643及びRGFP-966からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図2)。
【0232】
いくつかの実施形態において、タウグリコシル化の調節剤/阻害剤(例えば、O-GlcNAcase阻害剤)は、PUGNAc、NAG-チアゾリン、NButGT、チアメット-G、MK-8719、及びASN120290からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図2)。
【0233】
いくつかの実施形態において、タウ切断の調節剤(例えば、カプサーゼ阻害剤)は、Z-VAD-FMK、Z-VAD(OMe)-FMK、Q-VD-OPh及びミノサイクリンが挙げられる(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図3)。
【0234】
いくつかの実施形態において、タウ凝集阻害剤は、メチレンブルー、LMTM、クルクミン、PE859、TAI-1、TAI-2、クルクミン-糖-コングゲート(congugate)、N744、RH-1、TAI-3、TAI-4、TAI-5、TAI-6、TAI-7、シンナムアルデヒド、エピカテキン、クロシン##、VB-008及びCL-NQTrpからなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.並びに
図3及び
図4)。
【0235】
いくつかの実施形態において、プロテアソーム刺激剤は、クロルプロマジン及びTCH-165からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図5)。
【0236】
いくつかの実施形態において、USP14阻害剤は、IU1、IU1-47からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図5)。
【0237】
いくつかの実施形態において、ホスホジエステラーゼ阻害剤及びPROTACは、ロリプラム、BPN14770、シロスタゾール、シルデナフィル、及びQC-01-175からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図5)。
【0238】
いくつかの実施形態において、オートファジー活性化剤は、ラパマイシン、テムシロリムス、トレハロース、ニロチニブ、ピモジド、及びロナファミブからなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図6)。
【0239】
いくつかの実施形態において、シャペロン調節剤は、PESのメチレンブルー(上記参照)、アズールC、ミリセチン、MKT-077、YM-01、YM-08、JG-48、JG-98、VER-155008、116-9E、ALSB-2970などのHsp70調節剤、又は17-AAG、EC102、PUDZ8、PU24FCl、LA1011、KU-32、及びセラストロールなどのHsp90調節剤である(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.並びに
図7及び
図8)。
【0240】
いくつかの実施形態において、共シャペロン調節剤は、スルフォラファン又はKU-177である(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図8)。
【0241】
いくつかの実施形態において、タウ指向性多標的特異的リガンドは、ショガオイ-ヒュープリンハイブリッド、レベチラセタム-ハイプリンヒドリッド、AChE/GSK3β二重阻害剤(タクリン-バルメリンハイブリド)、BACE/GSK3β二重阻害剤、GSK3β/HDAC二重阻害剤、HDAC/PD5E二重阻害剤(CM-414)、MTDL-1、LM-031及びMTDL-2からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図9)。
【0242】
上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む組成物/薬剤と追加の治療的処置/剤との組み合わせは、タウオパチーの処置における相乗効果を有する。
【0243】
上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、組成物/薬剤の製剤化において使用される小分子ペプチドミメティックは、薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される塩は、酒石酸塩、フマル酸塩、モノ酢酸塩、ビス酢酸塩、トリ酢酸塩、モノトリフルオロ酢酸塩、ビストリフルオロ酢酸塩、トリトリフルオロ酢酸塩、モノ塩酸塩、ビス塩酸塩、トリ塩酸塩、モノトシル酸塩、ビストシル酸塩、又はトリトシル酸塩である。
【0244】
いくつかの実施形態において、組成物/薬剤の製剤化において使用される小分子ペプチドミメティックは、トリスHCl塩、ビスHCl塩、又はモノHCl塩である。
【0245】
更に他の実施形態において、本出願は、タウオパチーの治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症の遅延を必要とする対象においてそれを行うことにおいて使用するための、小分子ペプチドミメティック、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物に関する。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの当該使用は、対象におけるタウ種レベルを低下させる。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの当該使用は、対象における細胞タウの蓄積に関連する毒性を低下させる。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの当該使用は、対象におけるタウタンパク質の細胞蓄積によって引き起こされる細胞酸化ストレスを低下させる。
【0246】
いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの使用によって対処されるタウオパチーは、アルツハイマー病である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの使用によって対処されるタウオパチーは、ピック病である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの使用によって対処されるタウオパチーは、大脳皮質基底変性症である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの使用によって対処されるタウオパチーは、進行性核上麻痺である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの使用によって対処されるタウオパチーは、グローバルグリアタウオパチーである。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの使用によって対処されるタウオパチーは、嗜銀顆粒病である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの使用によって対処されるタウオパチーは、家族性英国型認知症である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの使用によって対処されるタウオパチーは、家族性デンマーク型認知症である。
【0247】
いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックの使用によって対処されるタウオパチーは、原発性加齢関連タウオパチーである。例えば、原発性加齢関連タウオパチーは、神経原線維もつれ型認知症、慢性外傷性脳症(CTE)、及び加齢関連タウアストログリオパチーからなる群から選択され得る。
【0248】
上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、2週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、12週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、24週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、48週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、1年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、2年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、5年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、1年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、診断の直後から、対象の生涯の残りの間、又はペプチドミメティックの投与がもはや有効ではなくなるまで、投与される。
【0249】
上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。上記開示される使用のいくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。
【0250】
上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、皮下投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、局所投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、鼻腔内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、全身投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、静脈内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、腹腔内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、皮内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、眼内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、眼科用投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、くも膜下腔内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、脳室内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、イオン導入投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、経粘膜投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、硝子体内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、筋肉内投与用に製剤化される。
【0251】
上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、使用は、追加の治療を別々に、連続して、又は同時に使用することを含み、追加の治療は、追加の治療剤又は複数の治療剤の投与を含み得る。いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、タウリン酸化の調節剤、タウアシル化の調節剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、タウグリコシル化の調節剤/阻害剤(例えば、O-GlcNAcase阻害剤)、タウ切断の調節剤(例えば、カプサーゼ阻害剤)、タウ凝集阻害剤、プロテアソーム刺激剤、USP14阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、オートファジー活性化剤、シャペロン調節剤、共シャペロン調節剤、及びタウ指向性多標的特異的リガンドからなる群から選択される小分子である。
【0252】
いくつかの実施形態においては、タウリン酸化の調節剤は、メマンチン、フィンゴリモド(FTY720)、SEW2871、ゲニステイン、メトホルミン、レスベラトロール、モロニシド及びローガニンからなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図1)。
【0253】
いくつかの実施形態においては、キナーゼ阻害剤は、チデグルシブ及びサラカチニブ/AZD0530からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図1)。
【0254】
いくつかの実施形態において、タウアシル化の調節剤は、サルサレート、サリチル酸塩、C646、CGP3466B(オミガピル)、及びA03からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図1)。
【0255】
いくつかの実施形態において、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は、ACY-738、CKD-504、グリコデオキシコール酸、PubChem ID:38028580、PubChem ID:16399643及びRGFP-966からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図2)。
【0256】
いくつかの実施形態において、タウグリコシル化の調節剤/阻害剤(例えば、O-GlcNAcase阻害剤)は、PUGNAc、NAG-チアゾリン、NButGT、チアメット-G、MK-8719、及びASN120290からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図2)。
【0257】
いくつかの実施形態において、タウ切断の調節剤(例えば、カプサーゼ阻害剤)は、Z-VAD-FMK、Z-VAD(OMe)-FMK、Q-VD-OPh及びミノサイクリンからなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図3)。
【0258】
いくつかの実施形態において、タウ凝集阻害剤は、メチレンブルー、LMTM、クルクミン、PE859、TAI-1、TAI-2、クルクミン-糖-コングゲート(congugate)、N744、RH-1、TAI-3、TAI-4、TAI-5、TAI-6、TAI-7、シンナムアルデヒド、エピカテキン、クロシン##、VB-008及びCL-NQTrpからなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.並びに
図3及び
図4)。
【0259】
いくつかの実施形態において、プロテアソーム刺激剤は、クロルプロマジン及びTCH-165からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図5)。
【0260】
いくつかの実施形態において、USP14阻害剤は、IU1、IU1-47からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図5)。
【0261】
いくつかの実施形態において、ホスホジエステラーゼ阻害剤及びPROTACは、ロリプラム、BPN14770、シロスタゾール、シルデナフィル、及びQC-01-175からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図5)。
【0262】
いくつかの実施形態において、オートファジー活性化剤は、ラパマイシン、テムシロリムス、トレハロース、ニロチニブ、ピモジド、及びロナファミブからなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図6)。
【0263】
いくつかの実施形態において、シャペロン調節剤は、PESのメチレンブルー(上記参照)、アズールC、ミリセチン、MKT-077、YM-01、YM-08、JG-48、JG-98、VER-155008、116-9E、ALSB-2970などのHsp70調節剤、又は17-AAG、EC102、PUDZ8、PU24FCl、LA1011、KU-32、及びセラストロールなどのHsp90調節剤である(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.並びに
図7及び
図8)。
【0264】
いくつかの実施形態において、共シャペロン調節剤は、スルフォラファン又はKU-177である(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図8)。
【0265】
いくつかの実施形態において、タウ指向性多標的特異的リガンドは、ショガオイ-ヒュープリンハイブリッド、レベチラセタム-ハイプリンヒドリッド、AChE/GSK3β二重阻害剤(タクリン-バルメリンハイブリド)、BACE/GSK3β二重阻害剤、GSK3β/HDAC二重阻害剤、HDAC/PD5E二重阻害剤(CM-414)、MTDL-1、LM-031及びMTDL-2からなる群から選択される(以下を参照されたい:Wang,L.,et al.及び
図9)。上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティック及び追加の治療的処置/剤の組み合わせは、タウオパチーの処置における相乗効果を有する。
【0266】
上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される塩は、酒石酸塩、フマル酸塩、モノ酢酸塩、ビス酢酸塩、トリ酢酸塩、モノトリフルオロ酢酸塩、ビストリフルオロ酢酸塩、トリトリフルオロ酢酸塩、モノ塩酸塩、ビス塩酸塩、トリ塩酸塩、モノトシル酸塩、ビストシル酸塩、又はトリトシル酸塩である。
【0267】
いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックは、トリスHCl塩、ビスHCl塩、又はモノHCl塩である。
【0268】
いくつかの実施形態において、本出願は、タウオパチーの治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症の遅延を必要とする対象においてそれを行うための薬剤の調製における、小分子ペプチドミメティック、又は小分子ペプチドミメティックを含む組成物の使用に関する。いくつかの実施形態において、当該使用に好適な小分子ペプチドミメティックは、(R)-2-アミノ-N-((S)-1-(((S)-5-アミノ-1-(3-ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ペンチル)アミノ)-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-1-オキソプロパン-2-イル)-5-グアニジノペンタンアミド、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体、水和物、及び/若しくは溶媒和物である。いくつかの実施形態において、薬剤の当該使用は、対象におけるタウ種レベルを低下させ得る。いくつかの実施形態において、薬物の当該使用は、対象における細胞タウの蓄積に関連する毒性を低下させ得る。いくつかの実施形態において、薬剤の当該使用は、対象におけるタウタンパク質の細胞蓄積によって引き起こされる細胞酸化ストレスを低下させ得る。
【0269】
いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、アルツハイマー病である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、ピック病である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、大脳皮質基底変性症である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、進行性核上麻痺である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、グローバルグリアタウオパチーである。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、嗜銀顆粒病である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、家族性英国型認知症である。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、家族性デンマーク型認知症である。
【0270】
いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む/薬剤の使用によって対処されるタウオパチーは、原発性加齢関連タウオパチーである。例えば、原発性加齢関連タウオパチーは、神経原線維もつれ型認知症、慢性外傷性脳症(CTE)、及び加齢関連タウアストログリオパチーからなる群から選択され得る。
【0271】
上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤は、2週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤は、12週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤は、24週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤は、48週間以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤は、1年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤は、2年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤は、5年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤は、1年以上、毎日投与される。いくつかの実施形態において、小分子ペプチドミメティックを含む薬剤は、診断の直後から、対象の生涯の残りの間、又はペプチドミメティックの投与がもはや有効ではなくなるまで、投与される。
【0272】
上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。上記開示される使用のいくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。
【0273】
上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、薬剤は、経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、皮下投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、局所投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、全身投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、静脈内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、腹腔内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、皮内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、眼内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、眼投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、くも膜下腔内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、脳室内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、イオン導入投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、経粘膜投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、硝子体内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬剤は、筋肉内投与用に製剤化される。
【0274】
上記開示される使用によれば、いくつかの実施形態において、薬剤の製剤化において使用される小分子ペプチドミメティックは、薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される塩は、酒石酸塩、フマル酸塩、モノ酢酸塩、ビス酢酸塩、トリ酢酸塩、モノトリフルオロ酢酸塩、ビストリフルオロ酢酸塩、トリトリフルオロ酢酸塩、モノ塩酸塩、ビス塩酸塩、トリ塩酸塩、モノトシル酸塩、ビストシル酸塩、又はトリトシル酸塩である。
【0275】
いくつかの実施形態において、薬剤の製剤化において使用される小分子ペプチドミメティックは、トリスHCl塩、ビスHCl塩、又はモノHCl塩である。
【実施例】
【0276】
本技術は、以下の実施例によって更に例示され、これは、いかなる形でも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0277】
実施例1-タウオパチー神経細胞生存率及びストレス誘発性細胞死に対する保護に対する化合物1の効果
この実施例は、ミトコンドリアストレス因子にさらされたときに、MAPT P301L変異(タウ-P301Lニューロン)を有する患者に由来するiPSC由来のニューロンモデルにおける化合物1の神経保護効果を実証する。
【0278】
方法
ヒト神経前駆細胞の培養及び分化。ヒト対象及び誘導多能性幹細胞(iPSC)を用いた研究の承認は、マサチューセッツ総合病院/MGB承認IRBプロトコル#2010P001611/MGHの下で得られた。この研究で使用された主な細胞株は、FTDと診断され、細胞株MGH2046-RC1(DOI:10.1038/s41467-020-16984-1、DOI:10.7554/eLife.45457)として分類された、常染色体優性突然変異P301L(c.C1907T NCBI NM_001123066、rs63751273)を有する50代の女性個体に由来した。タウ-P301L株1及び株2と称される2つの独立したクローン株が生成されている(言及されない場合、株1が利用されるものである)。簡潔に述べると、線維芽細胞は、非組み込み方法によってiPSCに再プログラムされ、これらはその後、皮質濃縮神経前駆細胞(NPC)(DOI:10.1016/j.stemcr.2016.08.001、DOI:10.1002/cphg.33)に変換された。NPCを、DMEM/F12-B27細胞培地[70%のDMEM(Gibco)、30%のHam’s-F12(Fisher Scientific Corning)、2%のB27(Gibco)、1%のペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)]中で、POLコーティングプレートと称される、ポリオルニチン(水中の20μg/mL、Sigma)及びラミニン(PBS中の5μg/mL)でコーティングされた6ウェル(Fisher Scientific Corning)又は黒の96ウェルクリアボトム(Fisher Scientific Corning)プレートで培養した。培地にEGF(20ng/mL、Sigma)、FGF(20ng/mL、Stemgent)及びヘパリン(5μg/mL、Sigma)を補充して、NPC増殖を促進した。NPC分化のために、成長因子を細胞培地から省略し、細胞を数週間培養し、週に2回、培地の半量を変更した(DOI:10.1038/s41467-020-16984-1;DOI:10.7554/eLife.45457;DOI:10.1016/j.stemcr.2016.08.001)。
【0279】
ニューロン生存率。NPCを、黒いPOLコーティングされた96ウェルクリアボトムプレート(Fisher Scientific Corning)中、200μLのDMEM/F12-B27培地中で、110,000細胞/cm2の開始密度でプレーティングし、8週間分化させた。8週間後、100μLの培地/ウェルを吸引し、ニューロンを、化合物1又はビヒクル単独(DMSO、すなわち、0μMの化合物)で処置し、細胞培地に直接添加した(最終体積は100μL)。24時間のインキュベーション後、アラマーブルー細胞生存率試薬(Life Technologies)で1:10の希釈を用いて、37℃で4時間インキュベーション後、生存率を製造業者の説明書に従って、及び以前に公開されたように測定した(DOI:10.1038/s41467-020-16984-1;DOI:10.7554/eLife.45457;DOI:10.1016/j.stemcr.2016.08.001)。読み取りは、EnVisionマルチラベルプレートリーダー(Perkin Elmer)で行った。Microsoft Excelを使用して計算を行い、GraphPad Prism 9においてグラフをプロットした。
【0280】
ストレス脆弱性アッセイ。NPCを、黒いPOLコーティングされた96ウェルクリアボトムプレート(Fisher Scientific Corning)において、200μLのDMEM/F12-B27培地で、110,000細胞/cm2の密度でプレーティングし、8週間分化させた。そのとき、各ウェルから100μLの培地を吸引し(最終体積100μLの培地中で処置)、ストレス因子ロテノン(Sigma)又はピエリシジンA(Enzo Lifesciences)を、1nM~5μMの濃度で細胞培地に直接添加した。DMSO単独(0μMストレス因子)を、100%生存率の対照として使用した。ニューロンを37℃で16時間(一晩)インキュベートし、次いで、EnVisionマルチラベルプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して、アラマーブルー細胞生存率試薬(Life Technologies)で生存率を測定した(DOI:10.1038/s41467-020-16984-1;DOI:10.7554/eLife.45457;DOI:10.1016/j.stemcr.2016.08.001)。Microsoft Excelで計算を行い、GraphPad Prism 9においてグラフをプロットした。
【0281】
追加の細胞株を、以下のように、ロテナン及びピエリシジンを用いた対照試験に含めた(DOI:10.1038/s41467-020-16984-1;DOI:10.7554/eLife.45457;DOI:10.1016/j.stemcr.2016.08.001):細胞株対照-1、対照株1、又は8330-8-RC1として分類される、60代の男性個体に由来する、罹患していない対照タウ-WT;細胞株対照-2、対照株2、又はMGH2069-RC1として分類される40代の女性個体に由来する、罹患していない対照タウ-WT;及び細胞株対照-3、対照株3、又はCTR2-L17-RC2として分類される、50代の男性個体に由来する、罹患していない対照タウ-WT(DOI:10.1016/j.celrep.2012.09.007)。MAPT-Kd株:ヒトタウがノックダウンされる神経細胞株(DOI:10.1016/j.stemcr.2016.08.001)。
【0282】
ミトコンドリアストレス脆弱性レスキューアッセイ。NPCを、黒いPOLコーティングされた96ウェルクリアボトムプレート(Fisher Scientific Corning)において、200μLのDMEM/F12-B27培地で、110,000細胞/cm
2の密度でプレーティングし、分化させた。8週間で、各ウェルから100μLの培地を吸引し、最終体積100μLの培地中で化合物処置を行った。1nM~100μMの間の化合物1の濃度の増加、並びにビヒクル(DMSO)単独を培地に直接添加し、37℃で8時間インキュベートした(生物学的反復当たり4反復)。次いで、ストレッサーロテノン(2μM又は5μM)又はピエリシジンA(5μM又は10μM)、並びにDMSO単独を、各々、化合物1の1nM~100μMの用量範囲を表すウェルの群に添加し、追加で16時間インキュベートした。24時間で、生存率を、アラマーブルー細胞生存率試薬(Life Technologies)及びEnVisionマルチラベルプレートリーダー(Perkin Elmer)で測定した。Microsoft Excelで計算及び統計を行い、GraphPad Prism 9においてグラフをプロットした。ミトコンドリアストレス因子誘発性の前頭側頭型認知症(FTD)患者由来ニューロンの生存能喪失に対する化合物1の保護効果を試験するストレスレスキューアッセイの概要を提供する概略図を
図10Bに示す。
【0283】
結果
ニューロン生存率。
図10Aに示されるように、化合物1単独では、より高い濃度(例えば、100μM)を除き、タウ-P301Lニューロンの生存率に悪影響を及ぼさない。
【0284】
ストレス脆弱性アッセイ。
図10C及び10Dに示されるように、対照ニューロン株(対照株1、2、及び3、並びにMAPT-Kd)と比較して、Tau-P301Lニューロンは、比較的低濃度のミトコンドリアストレッサー、ロテノン(
図10C)及びピアリシジンA(
図10D)に対して高い感受性を示す。
【0285】
ミトコンドリアストレス脆弱性レスキューアッセイ。
図10E~10Hに示されるように、ミトコンドリアストレス因子、ロテノン(
図10E及び10F)及びピエリシジンA(
図10G及び10H)の添加前に神経培養培地に添加すると、化合物1は、タウ-P301Lニューロンに対する神経保護効果を示す。
【0286】
したがって、これらの結果は、化合物1が、タウオパチーの治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症の遅延を必要とする対象においてそれを行うための方法において有用であることを実証する。
【0287】
実施例2-タウタンパク質蓄積に対する化合物1の効果
この実施例は、化合物1が、MAPT P301L変異(タウ-P301Lニューロン)を有する患者に由来するiPSC由来ニューロンモデルにおけるタウタンパク質の病理学的形態のレベルを低下させることを示す。
【0288】
方法
ニューロン処置及びタウタンパク質分析。NPCを、分化のためにDMEM/F12-B27培地を有する6ウェルPOLプレート上に、75,000細胞/cm2の平均密度でプレーティングした。8週間で、ニューロンを、化合物1単独で、1nM~10μMの用量で、又は低用量のロテノン(0.1μM又は0.5μM)に加えて24時間処置した。インキュベーション後、ニューロンを洗浄し、PBS(Corning)中に収集し、3000xgでペレット化した。細胞ペレットを再懸濁し、SDS試料ローディング緩衝液(NEB)を用いて5倍のペレット体積で溶解し、室温で15分間インキュベートし、15分間沸騰させた。ウェスタンブロットによるタウタンパク質分析は、以前に開発されたアッセイに従った(DOI:10.1038/s41467-020-16984-1;DOI:10.7554/eLife.45457;DOI:10.1016/j.stemcr.2016.08.001)。分析の前に、溶解物をスピンダウンし、次いでSDS-PAGEゲルに充填した。電気泳動をNovex NuPAGE SDS-PAGEゲルシステム(Invitrogen)を用いて行った。タンパク質を、標準的な手順を使用して、ゲルからPVDF膜(EMD Millipore)に移した。膜を、Tween-20(TBST、Boston Bio-Products)を有するTris緩衝生理食塩水中の5%(w/v)BSA(Sigma)中でブロックし、4℃で一次抗体(以下)と一晩インキュベートし、続いて、1:4000希釈(Cell Signaling Technology)で対応するHRP結合二次抗体でインキュベートした。ブロットは、SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate(ThermoFisher)を用いて製造業者の説明書に従って発色させ、オートラジオグラフィーフィルム(ThermoFischerによるLabScientific)に曝露し、Epson Perfection V800フォトスキャナーでスキャンした。タンパク質バンドの密度測定、すなわち、X線フィルムスキャン上の各タンパク質バンドの任意の単位(a.u.)におけるピクセル平均強度をAdobe Photoshop 2021ヒストグラム機能で測定し、内部対照β-アクチンバンドのそれぞれの強度に正規化した(Microsoft Excelでの計算)。化合物処置については、次いで、各条件のバンドの強度をDMSOに対して正規化した。GraphPad Prism 9において、グラフを調整した。
【0289】
使用される抗体:総タウタウ5(Invitrogenカタログ番号AHB0042)、P-タウS396(Invitrogen/Thermoカタログ番号44752G)、P-タウAT8(Thermo Scientificカタログ番号MN1020)、及びβ-アクチン(Sigmaカタログ番号A1978)。
【0290】
結果
図11A(ビヒクルレーン)に示すように、Tau-P301Lニューロンには、有意なオリゴマー及びリン酸化タウタンパク質負荷がある。
図11A及び11Bに示されるように、化合物1での処置は、タウ-P301Lニューロンにおけるタウタンパク質(P-タウS396;P-タウAT8)の病理学的形態を低下させる。加えて、
図11C~11Fに示されるように、化合物1は、ニューロンが低濃度のロテノンで独立してストレスを受けた状態で、病理学的タウタンパク質レベルを低下させた。
図11Gは、タウタンパク質レベルに対するロテノン単独の効果を示す。
【0291】
これらの結果は、化合物1が、タウオパチーの治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症の遅延を必要とする対象においてそれを行うための方法において有用であることを実証する。
【0292】
実施例3-ヒト対象におけるタウオパチーを治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症を遅延させるのための方法における化合物1の使用
この実施例は、タウオパチーの治療、予防、改善、阻害、及び/又は発症の遅延を必要とする対象における有効量の化合物1の使用を実証し、対象は、タウオパチーと診断されているか、タウオパチーの発症のリスクがあるか、又はタウオパチーを有する疑いがある。
【0293】
方法
タウオパチーを有する疑いがあるか、又はタウオパチーと診断された対象は、任意の好適な投与経路(例えば、皮下、静脈内など)を介して、任意の好適な期間、化合物1(例えば、0.5~5.0mg/kg/日)を投与される。対象は、前頭側頭型認知症、滞納皮質基底症候群、リチャードソン症候群、パーキンソニズム、歩行凍結を伴う純粋な運動障害、及び運動ニューロン症状又は小脳運動失調を含むが、これらに限定されない、タウオパチーの徴候及び症状の存在及び/又は重症度について定期的に(例えば、毎週、隔週、毎月、毎月など)評価される。処置は、少なくともタウオパチーの1つ以上の徴候又は症状が改善又は排除されるまで維持される。
【0294】
結果
タウオパチーを有する疑いがあるか、又は有すると診断され、治療上有効な量の化合物1を受ける対象は、タウオパチーの1つ以上の徴候又は症状の重症度の低下又は排除を示すと予測される。
【0295】
したがって、これらの結果は、タウオパチーを有すると疑われる対象、タウオパチーを発症するリスクがある対象、又はタウオパチーを有すると診断された対象におけるタウオパチーの発症を治療、予防、改善、阻害、及び/又は遅延させるための方法において、化合物1が有用であることを実証するであろう。
【0296】
実施例4-FTDニューロンモデル及びマウスタウオパチーモデルにおける化合物1の効果
この実施例は、FTDニューロンモデル及びマウスタウオパチーモデルにおける様々なアッセイによって評価される化合物1の効果を実証するであろう。
【0297】
FTDニューロンモデル及びマウスタウオパチーモデル
この実験は、タウ-P301Lを発現するFTD患者iPSC由来細胞株(例えば、MGH2046-RC1)を使用する。
【0298】
ニューロンは、8週間分化され、これは、突然変異体タウ特異的表現型、具体的にはタウ媒介性毒性を明らかにするために事前に決定された時点であり、その時点でニューロンは、化合物1で処置され、以下に記載される意図されるアッセイ(複数可)が実行される。マウスプリオン(Prnp)プロモーターの制御下で、完全長ヒトタウ-P301S(1N4Rアイソフォーム)を発現するPS19マウスから採取した脳組織試料を分析する。
【0299】
化合物処置表現型アッセイ
アッセイ1:ヒト及びマウスモデルからのFTDニューロンにおけるカーディオリピン(CL)レベルを調べる。このアッセイは、FTD(タウ-P301L)患者iPSC由来ニューロンが、FTD臨床バイオマーカー研究(Angelique Camilleri et al.2020 Biomembranes)に以前に記載されているように、対照(タウ-WT)ニューロンと比較して、カルジオリピン(CL)のレベルの変化を示すかどうかを決定する。カルジオリピン(CL)ELISAアッセイ(抗体カタログ番号ABIN6954370)、並びにニューロンミトコンドリア画分の濃縮及び溶解のためのプロトコルを実装する。並行して、タウ-P301Sマウスタウオパチーモデルから単離された脳組織中のCLレベルを測定する。
【0300】
アッセイ2:化合物1によってレスキューすることができるタウ又は他のFTD関連毒性を明らかにするミトストレッサーを特定する。このアッセイは、ミトコンドリアストレス因子(例えば、ロテナン、パラコート、過酸化水素、ヒドロキノン又はBSO/ブチオニンスルホキシミン)及びそれらの変異型タウ媒介性神経毒性の増悪を評価する。
【0301】
8週間の分化したニューロンは、ストレス因子(最低3回の投与)で一晩(18時間)処置される。応力効果は、以下によって測定される:
●2.1.CLレベルの変化(ELISA);
●2.2.ニューロン生存率の変化(アラマーブルーHSによるストレスアッセイに対する脆弱性、既に実装済み)
●2.3.顕微鏡イメージング並びにmitoTracker、mitoView、及び/又はJC1(電位依存性ミトコンドリア染料)などのミトコンドリア特異的染料の使用によるミトコンドリア数、形態及び局在の変化。
【0302】
アッセイ3:FTDニューロンCLレベルに対する化合物1処置の試験効果。8週間分化したタウ-P301Lニューロンは、化合物1の用量範囲1nM~10μMで24時間、アッセイ2からの±ミトストレッサーで処置される。
●3.1.CL ELISAアッセイを使用して、FTDニューロンのCLレベルに対する化合物1濃度効果を測定する。
●3.2.化合物1による顕微鏡画像の変化/レスキューのために、アッセイ2から最も最適化されたミト根ドリア用染料を利用する。
【0303】
アッセイ4:作用モードの読み出しとして、ミトコンドリアホメオスタシスにおける化合物1の変化を調べる。8週間分化したタウ-P301Lニューロンは、表現型の効果/レスキューを示した(24時間)アッセイ1~2の用量で化合物1で処置され、ミトコンドリアの代謝状態の変化は、糖分解経路活性、酸素消費、ATPレベルの変化を測定する市販のアッセイを実装することによって調査される。
【0304】
等価物
本技術は、本出願に記載される特定の実施形態に関して限定されるものではなく、本技術の個々の態様の単一の例示として意図される。当業者には明らかであろうように、本技術の多くの修正及び変形は、その趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に列挙されるものに加えて、本技術の範囲内の機能的に等価な方法及び装置は、前述の説明から当業者には明白であろう。かかる修正及び変形は、添付の実施形態の範囲内に入ることを意図する。本技術は、特定の方法、試薬、化合物組成物、又は生物学的システムに限定されず、これは、もちろん、変動し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0305】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群の観点から記載される場合、当業者は、本開示が、それによってマーカッシュ群のいずれかの個々のメンバー又はメンバーのサブグループの観点からも記載されることを認識するであろう。
【0306】
当業者によって理解されるであろうように、いずれか又は全ての目的のために、特に書面による説明を提供するという観点から、本明細書に開示される全ての範囲はまた、いずれか及び全ての可能な部分範囲並びにそれらの部分範囲の組み合わせを包含する。任意の列挙された範囲は、同じ範囲が少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解されることを十分に説明し、可能にするものとして容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で論じられる各範囲は、下3分の1、中3分の1、及び上3分の1などに容易に分解することができる。また、当業者によって理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」などの全ての言語は、列挙された数を含み、その後上述の部分的範囲に分解されることができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるであろうように、範囲は、各個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1、2、又は3個の細胞を有する群を指す。同様に、1~5個の細胞を有する群は、1、2、3、4、又は5個の細胞を有する群を指す。
【0307】
本明細書で言及又は引用される全ての特許、特許出願、仮出願、及び刊行物は、それらが本明細書の明示的な教示と矛盾しない限り、全ての図及び表を含む、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0308】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内に記載される。
【国際調査報告】