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特表2025-503656流動床反応装置でアルコールを対応するオレフィンに変換する電気化プロセス
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  • 特表-流動床反応装置でアルコールを対応するオレフィンに変換する電気化プロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】流動床反応装置でアルコールを対応するオレフィンに変換する電気化プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/24 20060101AFI20250128BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20250128BHJP
   B01J 8/42 20060101ALI20250128BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250128BHJP
【FI】
C07C1/24
C07C11/02
B01J8/42
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541599
(86)(22)【出願日】2023-01-03
(85)【翻訳文提出日】2024-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2023050067
(87)【国際公開番号】W WO2023143877
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】22315020.2
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178393
【氏名又は名称】トタルエナジーズ・ワンテック
【氏名又は名称原語表記】TOTALENERGIES ONETECH
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ミノー,デルフィン
(72)【発明者】
【氏名】ベルメイレン ワルター
(72)【発明者】
【氏名】ベリヤソフ,グレブ
【テーマコード(参考)】
4G070
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB06
4G070BA02
4G070BB32
4G070CA03
4G070CA06
4G070CA09
4G070CA13
4G070CA15
4G070CB13
4G070CC02
4G070DA30
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC13
4H006BA55
4H006BA71
4H006BA91
4H006BC10
4H006BD81
4H006DA10
4H006DA12
4H039CA29
4H039CG10
(57)【要約】
本発明は、a)一つの流動床反応装置と粒子を含むベッドとを用意し、b)粒子を流動状態にして流動床を形成し、c)流動床を200℃~500℃の温度に加熱する工程を含む、少なくとも2個の炭素原子を有するアルコールを触媒脱水してオレフィンにする方法であって、ベッドの粒子が導電性粒子と種または複数の固体酸触媒の粒子とを含み、ベッドの粒子の総重量に対して粒子の少なくとも10重量%が導電性粒子で、400℃で0.001オ-ム・cm~500オ-ム・cmの抵抗率を有し、流動床を加熱する工程c)が流動床に電流を流すことによって行われることを特徴とする方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a) 少なくとも2つの電極と粒子を含むベッドとを有する少なくとも1つの流動床反応装置を用意し、
b) 上記ベッドに流体流を上向きに通過させることによってベッドの粒子を流動状態にして流動床を形成し、
c) 流動床を200℃~500℃の範囲の温度に加熱して少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールを含むアルコール含有原料を一種または複数のオレフィンに触媒脱水し、。
d) 必要に応じて、上記の一種または複数のオレフィンを回収する、
を含む、少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールを一種または複数のオレフィンに触媒脱水する方法であって、
ベッドの粒子が導電性粒子と触媒組成物の粒子とを含み、ベッドの粒子の総重量に対して粒子の少なくとも10重量%が導電性粒子で、400℃で0.001オ-ム・cm~500オ-ム・cmの範囲の抵抗率を有し、触媒組成物が一種または複数の固体酸触媒を含み、流動床を加熱する工程c)が流動床に電流を流すことによって実行されることを特徴はとする方法。
【請求項2】
、ベッドの導電性粒子が一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体、一種または複数のリン酸電解質および/またはこれらの任意の混合物から選択される一種または複数を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ベッドの導電性粒子がシリコンカーバイドである非金属抵抗体とシリコンカーバイドとは異なる導電性粒子との混合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ベッドの導電性粒子がベッドの導電性粒子の総重量に対して10重量%~99重量%のシリコンカーバイドを含み、および/または、
- シリコンカーバイドとは異なる上記導電性粒子が一種または複数の炭素含有粒子である、
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
炭化ケイ素とは異なる上記導電性粒子が一種または複数の炭素含有粒子であることを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
ベッドの導電性粒子が一種または複数の金属合金および/または一種または複数の超イオン伝導体を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ベッドの導電性粒子がLiAlSiO4、Li10GeP212、Li3.6Si0.60.44、ナトリウム超イオン伝導体またはナトリウムベータアルミナから選択される一種または複数の超イオン伝導体を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2個の炭素原子を有する1種または複数のアルコールがエタノール、n-プロパノ-ル、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ヘキサン-1-オ-ル、ヘキサン-2-オ-ル、ヘキサン-3-オ-ル、2-メチルペンタン-1-オ-ル、3-メチルペンタン-1-オ-ル、4-メチルペンタン-1-オ-ル、2-メチルペンタン-2-オ-ル、3-メチルペンタン-2-オ-ル、4-メチルペンタン-2-オ-ル、2-メチルペンタン-3-オ-ル、3-メチルペンタン-3-オ-ル、2,2-ジメチルブタン-1-オ-ル、2-3-ジメチルブタン-1-オ-ル、3,3-ジメチルブタン-1-オ-ル、2,3-ジメチルブタン-2-オ-ル、3,3-ジメチルブタン-2-オ-ル、2-エチルブタン-1-オ-ルまたはこれらの任意の組み合わせの中から選択されることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
流動床反応装置内で少なくとも2個の炭素原子を有する1種または複数のアルコールを1種または複数のオレフィンに触媒脱水する前に、流動床反応装置をガス流で予熱する工程を含み、好ましくは、上記ガス流が窒素、アルゴン、ヘリウム、最大10個の炭素原子を有する飽和炭化水素またはこれらの任意の組み合わせから選択される1種または複数の不活性ガスの流であり、かつ/または、100℃~300℃の温度を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の一項に方法。
【請求項10】
工程a)で用意される少なくとも1つの流動床反応装置が加熱ゾーンと反応ゾーンとを有し、工程b)で提供される流体流が加熱ゾーンに提供され、工程c)で流動床を200℃~500℃の温度に加熱して少なくとも2つの炭素原子を有する1種または複数のアルコールを含むアルコール含有原料を1種または複数のオレフィンに吸熱触媒脱水する工程が以下のサブ工程を含むことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の方法:
- 少なくとも1つの流動床の加熱ゾーンに電流を流すことによって流動床を200℃~500℃の温度に加熱し、
- 加熱された粒子を加熱ゾーンから反応ゾーンに輸送し、
- 反応ゾーンにおいて、アルコール含有原料と、任意成分の1種または複数の不活性ガスおよび/または1種または複数の希釈ガスとを含む流体流を反応ゾーンのベッドに上向きに流すことによって、加熱された粒子を流動状態にして流動床を形成し、アルコール含有原料を1種または複数のオレフィンに吸熱触媒脱水する。
【請求項11】
工程a)で用意する少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)が加熱ゾーン(27)と反応ゾーン(29)とを有し、流動床(25)を加熱する工程c)が以下のサブ工程を含むことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の方法:
- 流動床(25)の粒子(25)を上向きに通過させて流動化流(温度が100℃~300℃のガス流)を流動床(25)の温度に100℃~300℃に予熱し、
- 少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)の加熱ゾーン(27)に電流を流すことによって流動床(25)を200℃~500℃の範囲の温度に加熱し、
- 加熱された粒子を加熱ゾーン(27)から反応ゾーン(29)へ輸送し、
- 反応ゾーン(29)にアルコール含有原料を含む流体流を反応ゾーン(29)のベッド(25)を通して上向きに通過させることによって加熱された粒子を流動化状態にして流動床(25)を形成して少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールを一種または複数のオレフィンに吸熱触媒脱水し、
- 任意選択的に、粒子を反応ゾーン(29)から回収して加熱ゾーン(27)へリサイクルする。
【請求項12】
一種または複数の固体酸触媒がN2吸着測定によって測定した表面積が50m2/g~800m2/gの範囲にあり、および/または、触媒組成物の粒子の含有量がベッドの粒子の総重量に対して15重量%~90重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
一種または複数の固体酸触媒が一種または複数の酸化物、一種または複数の混合酸化物、一種または複数のリン酸塩、一種または複数のゼオライト、一種または複数のシリコアルミノリン酸塩分子ふるいまたはこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
一種または複数の固体酸触媒が結合剤(バインダ-)と混合されることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
上記結合剤が1種または複数の粘土、シリカ、1種または複数の金属ケイ酸塩、1種または複数の金属酸化物、1種または複数のゲルまたはこれらの組み合わせから選択される無機材料であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(d)が実行され、工程(d)で回収された1種または複数のオレフィンの一部をオリゴマー化する工程(e)を含み、さらに、
1種または複数の芳香族化合物を提供する工程(f)と、1種または複数の芳香族化合物を工程(d)で回収された1種または複数のオレフィンの別の部分でアルキル化する工程(g)とをさらに含み、この工程(g)が工程(e)と同時に実行されることを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも2つの炭素原子を有する1種または複数のアルコールをオレフィンに触媒脱水する請求項1~16のいずれか一項に記載の方法を実行するための、少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)内の粒子を含むベッド(25)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応が流動床反応装置内で外部加熱装置を必要とせずに行われる、流動床反応装置内で少なくとも2つの炭素原子を有するアルコールを触媒脱水して対応するオレフィンにする方法に関するものである。
本発明の目的は、化石炭素ベ-スの燃料加熱装置の使用の置き換えに貢献することにある。
本発明は化学産業の電化(electrification)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学的生産およびリサイクルプロセスにおける化石炭素系燃料をより環境に優しい脱炭素エネルギー源に置き換えることは気候変動および進行中のエネルギー源移行の観点から必須となっている。
【0003】
この点でアルコールは有望なプラットフォーム分子であると思われる。すなわち、それを対応するオレフィンへ脱水することで、従来の石油ルートで得られるモノマーと同じモノマーが得られ、それと同時に炭素の排出量を削減することができる。従って、アルコールをオレフィンに変換することはカーボンニュートラルに貢献する重要なプロセスである。
【0004】
アルコールをオレフィンに変換する技術のほとんどでは従来の固定床反応器が使用されている。〔特許文献1〕(米国特許第US4,134,926号明細書)に記載のエタノールを脱水する流動床プロセスではバーナー、オーブンまたはその他の従来の加熱手段の使用を回避することはできず、温室効果ガスの排出につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第US4,134,926号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、化学産業などの産業への適用に適した、従来技術で遭遇する一種または複数の問題に対する大規模な解決策を提供することにある。
本発明の他の目的は、流動床反応装置における化石炭素ベースの燃料加熱装置の使用の置き換えに貢献することにある。
本発明は、電気を唯一のエネルギー源として使用してアルコールをオレフィンに触媒脱水するための解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の実施態様では、本発明は少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールを一種または複数のオレフィンに触媒脱水するプロセス(方法)を提供する。この本発明プロセスは以下の工程:
a) 少なくとも2つの電極と粒子を含むベッドとを含む少なくとも1つの流動床反応装置を用意する工程と、
b) 流体流を上記ベッドに上向きに通過させることによってベッドの粒子を流動状態にして流動床を作る工程と、
c) 流動床を200℃~500℃の範囲の温度に加熱して、少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールを含むアルコール含有原料を一種または複数のオレフィンに触媒脱水する工程と、
を含み、ベッドの粒子は導電性粒子と触媒組成物の粒子とを含み、ベッドの粒子の総重量に対して粒子の少なくとも10重量%が導電性粒子で、400℃で0.001オ-ム・cm~500オ-ム・cmの範囲の抵抗率を有し、触媒組成物が一種または複数の固体酸触媒を含み、流動床を加熱する工程c)が流動床に電流を流すことによって実行される点に特徴がある。
【0008】
驚くべきことに、一種または複数の流動床反応装置でシリコンカーバイドやグラファイトなどの導電性粒子を使用し、それに電気を通すことで、外部加熱装置を必要とせずに、200℃~500℃の範囲の温度反応等の条件を必要とする少なくとも2つの炭素原子を有する1種または複数のアルコールをアルコールと同じ数の炭素を有する1種または複数のオレフィンに触媒脱水するのに十分な温度を維持できるということが分かった。
【0009】
ベッドの粒子内に少なくとも10重量%の導電性粒子を使用すると、電圧を印加したときの熱損失を最小限に抑えることができる。ジュール効果によって電気エネルギーの全てではないにしても、ほとんどが熱に変換され、反応器媒体の加熱に使用される。例えば、導電性粒子は、一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体、一種または複数のリン酸電解質および/またはこれらの任意の混合物から選択される1種以上であるか、またはこれらを含む。
【0010】
好ましい実施形態では、導電性粒子は一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体およびこれらの任意の混合物から選択される1種以上であるか、または、これらを含む。
【0011】
有利には、本発明プロセスは一種または複数のオレフィンを回収する工程(d)をさらに含む。この工程(d)は工程(c)の後に実行される。
【0012】
一つの実施形態では、本発明プロセスは、工程(d)を実行し、工程(d)で回収された1種または複数のオレフィンをオリゴマー化する工程(e)をさらに含む。
【0013】
別の実施形態では、本発明プロセスが上記工程(d)を実行し、さらに一種または複数の芳香族化合物を提供する工程(f)と、工程(d)で回収された芳香族化合物の他の一部で一種または複数のオレフィンでアルキル化する工程(g)をさらに含む。
【0014】
別の代替実施形態では、上記工程(d)が実行され、上記プロセスは、工程(d)で回収された一種または複数のオレフィンの一部をオリゴマー化する工程(e)を含み、上記プロセスは、一種または複数の芳香族化合物を提供する工程(f)および一種または複数の芳香族化合物を工程(d)で回収された一種または複数のオレフィンの別の部分でアルキル化する工程(g)をさらに含み、この工程(g)は工程(e)と同時に実行される。いずれの実施形態を選択しても、本発明プロセスは、工程(e)および/または(g)が実行した後に、オレフィンを水素化するオプションの工程(h)をさらに含む。
【0015】
工程(f)で提供される芳香族化合物に対するオリゴマー化工程(e)および/またはアルキル化工程(g)およびオプションの水素化工程(h)は一種または複数のオレフィンを回収する工程(d)の後に実行され、これはジェット燃料を生成し、航空産業を脱炭素化することを可能にする。
【0016】
好ましい実施形態では、体積熱発生率(volumetric heat generation rate)は流動床の導電性粒子から生じる体積熱で0.1MW/m3より大きく、より好ましくは1MW/m3より大きく、特に3MW/m3より大きい。
【0017】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの流動床反応装置には加熱手段がない。例えば、少なくとも1つの流動床反応装置は容器(vessel)を含み、この容器の周囲または内部に配置された加熱手段はない。例えば、少なくとも1つの流動床反応装置にはオーブン、ガスバーナー、ホットプレートまたはこれらの任意の組み合わせから選択される加熱手段がない。例えば、全ての流動床反応装置にはオーブン、ガスバーナー、ホットプレート、またはこれらの任意の組み合わせから選択される加熱手段がない。
【0018】
例えば、導電性粒子の含有量は15重量%~95重量%、より好ましくは20重量%~90重量%、さらにより好ましくは25重量%~80重量%、最も好ましくは30重量%~75重量%の範囲である。
【0019】
例えば、ベッドの総重量に対する導電性粒子の含有量は、ベッドの粒子の総重量に対して少なくとも12重量%であり、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、さらに好ましくは少なくとも25重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%または少なくとも40重量%または少なくとも50重量%または少なくとも60重量%である。
【0020】
例えば、導電性粒子は400℃で0.005~400オ-ム・cmの範囲の抵抗率を有し、好ましくは400℃で0.01~300オ-ム・cmの範囲、より好ましくは400℃で0.05~150オ-ム・cmの範囲、最も好ましくは400℃で0.1~100オ-ム・cmの範囲である。
【0021】
例えば、導電性粒子は400℃で少なくとも0.005オ-ム・cmの抵抗率を有し、好ましくは400℃で少なくとも0.01オ-ム・cm、より好ましくは400℃で少なくとも0.05オ-ム・cm、さらに好ましくは400℃で少なくとも0.1オ-ム・cm、最も好ましくは400℃で少なくとも0.5オ-ム・cmである。
【0022】
例えば、導電性粒子は400℃で最大400オ-ム・cmの抵抗率を有し、好ましくは400℃で最大300オ-ム・cm、より好ましくは400℃で最大200オ-ム・cmの抵抗率を有する。さらに好ましくは、400℃で最大150オ-ム・cm、最も好ましくは、400℃で最大100オ-ム・cmである。ベッドの粒子の総重量に対する導電性粒子の含有量と所定抵抗率の導電性粒子の選択が流動床が到達する温度に影響を与える。従って、当業者は、目標温度に達しない場合には、粒子ベッドの密度、ベッドの粒子の総重量に対する導電性粒子の含有量を増加させ、および/または、より低い抵抗率の導電性粒子を選択して、流動床が到達する温度を上昇させることができる。
【0023】
例えば、触媒組成物の粒子の含有量は、15重量%~95重量%、より好ましくは20重量%~90重量%、さらに好ましくは25重量%~80重量%、最も好ましくは30重量%~75重量%の範囲である。
【0024】
例えば、粒子層の密度は空隙率(void fraction)として表される。この空隙率またはベッド多孔度は粒子間の空隙の容積をベッドの総容積で割ったものである。流動化開始速度では空隙率は通常0.4~0.5である。空隙率は高速流動層では最大0.98まで増加し、底部では約0.5と低く、ベッドの上部では0.9より高くなる。空隙率は流動化ガスの線速度によって制御でき、上部で回収されて流動層の底部に戻される固体粒子をリサイクルすることで減少させることができ、それによってベッド外への固体粒子の随伴が補われる。
【0025】
空隙率VFは、粒子ベッド内の空隙の体積率として定義され、次の式に従って決定される:
VF=(Vt-Vp)/Vt (1)
(ここで、Vtはベッドの総容積で、以下で求められる:
Vt=AH (2)
ここで、Aは流動床の断面積、Hは流動床の高さ、
Vpは流動床内の粒子の総容積である)
【0026】
例えば、ベッドの空隙率は0.5~0.8の範囲、好ましくは0.5~0.7の範囲、さらに好ましくは0.5~0.6の範囲である。粒子ベッドの密度を高くするには空隙率を低下させる必要がある。
【0027】
例えば、ベッドの粒子はASTM D4513-11に従ったふるい分けによって測定された平均粒子サイズが5~300μmの範囲であり、好ましくは10~200μmの範囲であり、より好ましくは20~200μmまたは30~150μmの範囲である。
【0028】
ASTM D4513-11に従ってふるい分けによって測定することが好ましいが、粒子の平均サイズが20μm未満の場合は、平均サイズの測定をASTM D4464-15に従ったレーザー光散乱によって行うこともできる。
【0029】
例えば、ベッドの導電性粒子はASTM D4513-11に従ったふるい分けによって測定された平均粒子サイズが5~300μmの範囲、好ましくは10~200μmの範囲、より好ましくは30~150μmの範囲である。
【0030】
一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子は、ベッドの導電性粒子の総重量に対して50重量%~100重量%、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらにより好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%が金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体、一種または複数のリン酸電解質から選択される一種または複数である。
【0031】
好ましくは、ベッドの導電性粒子は、金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体から選択される1つ以上であるか、またはそれらを含み、好ましくは、ベッドの導電性粒子の総重量に対して50重量%~100重量%の含有量であり、好ましくは60重量%~100重量%であり、より好ましくは70重量%~100重量%であり、さらにより好ましくは80重量%~100重量%であり、最も好ましくは90重量%~100重量%である。
【0032】
好ましくは、ベッドの導電性粒子は、非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体から選択される1つ以上であるか、またはそれらを含み、好ましくは、ベッドの導電性粒子の総重量に対して50重量%~100重量%の含有量であり、好ましくは60重量%~100重量%であり、より好ましくは70重量%~100重量%であり、さらにより好ましくは80重量%~100重量%であり、最も好ましくは90重量%~100重量%である。
【0033】
あるいは、ベッドの導電性粒子は、ベッドの導電性粒子の総重量に対して好ましくは50重量%~100重量%の含有量であり、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらにより好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%が、一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体(ただし、非金属抵抗体はシリコンカーバイドではない)、一種または複数の金属カーバイド、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体、一種または複数のリン酸電解質およびこれらの任意の混合物から選択される一種または複数の粒子である。例えば、ベッドの導電性粒子は一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の炭素含有粒子およびこれらの任意の混合物から選択される1つ以上であるか、またはそれらを含む。
【0034】
例えば、ベッドの導電性粒子は一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の炭素含有粒子、およびそれらの任意の混合物から選択される一種または複数のであるか、またはこれらを含み、ベッドの導電性粒子の総重量にたいした好ましくは50重量%~100重量%の含有量であり、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらにより好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%の含有量である。
【0035】
例えば、ベッドの導電性粒子は一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の炭素含有粒子およびこれらの任意の混合物から選択される1種以上であるか、またはこれらを含み、その含有量はベッドの導電性粒子の総重量に対して好ましくは50重量%~100重量%の含有量、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらに好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%である。
【0036】
例えば、上記の一種または複数の金属合金はNi-Cr、Fe-Ni-Cr、Fe-Ni-Alまたはこれらの混合物から選択される。好ましくは、この金属合金が少なくともクロムを含む場合、クロム含有量は少なくともクロムを含む上記金属合金の全モル含有量の少なくとも15モル%、より好ましくは少なくとも20モル%、さらに好ましくは少なくとも25モル%、最も好ましくは少なくとも30モル%である。さらに有利には、金属合金中の鉄含有量は、金属合金の全モル含有量に対して最大2.0%、好ましくは最大1.5モル%、より好ましくは最大1.0モル%、さらに好ましくは最大0.5モル%である。
【0037】
例えば、非金属抵抗体は炭化ケイ素(SiC)、二ケイ化モリブデン(MoSi2)、ケイ化ニッケル(NiSi)、ケイ化ナトリウム(Na2Si)、ケイ化マグネシウム(Mg2Si)、ケイ化白金(PtSi)、ケイ化チタン(TiSi2)、ケイ化タングステン(WSi2)またはこれらの混合物であり、好ましくは炭化ケイ素である。
【0038】
例えば、上記の一種または複数の金属炭化物は炭化鉄(Fe3C)および/または炭化モリブデン(MoCとMo2Cの混合物など)から選択される。
【0039】
例えば、上記の一種または複数の金属窒化物は窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化タングステン(W2N、WNおよびWN2の混合物など)、窒化バナジウム(VN)、窒化タンタル(TaN)、および/または窒化ニオブ(NbN)から選択される。
【0040】
例えば、上記一種または複数の金属リン化物(metallic phosphide)は、リン化銅(Cu3P)、リン化インジウム(InP)、リン化ガリウム(GaP)、リン化ナトリウム(Na3P)、リン化アルミニウム(AlP)、リン化亜鉛(Zn32)および/またはリン化カルシウム(Ca32)から選択される。
【0041】
例えば、上記の一種または複数の炭素含有粒子はグラファイト、カーボンブラック、石油コークス、コークス、またはこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0042】
例えば、上記の一種または複数の超イオン伝導体(superionic conductors)はLiAlSiO4、Li10GeP212、Li3.6Si0.60.44、Na3Zr2PSi212などのナトリウム超イオン伝導体(NaSICON)またはNaAl1117、Na1.6Al1117.3および/またはNa1.76Li0.38Al10.6217などのナトリウムベータアルミナから選択される。
【0043】
例えば、上記の一種または複数のリン酸電解質(phosphate electrolytes)は、LiPO4またはLaPO4から選択される。
【0044】
例えば、ベッドの導電性粒子は、シリコンカーバイドである非金属抵抗体であるか、またはそれを含む。
【0045】
例えば、ベッドの導電性粒子はシリコンカーバイドである非金属抵抗体とシリコンカーバイドとは異なる導電性粒子との混合物であるか、またはそれを含む。ベッド内にシリコンカーバイドとは異なる導電性粒子が存在することは任意である。シリコンカーバイドは室温での抵抗率が高すぎてベッドの加熱を開始できないことが分かったため、ベッドの加熱開始材料として存在することができる。シリコンカーバイドとは異なる導電性粒子の存在の代わりに、反応を開始するために、一定時間反応装置に熱を供給することもできる。
【0046】
例えば、シリコンカーバイドは焼結シリコンカーバイド、窒化物結合シリコンカーバイド、再結晶シリコンカーバイド、反応結合シリコンカーバイドおよびこれらの混合物から選択される。シリコンカーバイド材料の種類は、アルコールを1種または複数のオレフィンに触媒脱水する反応熱を供給するために必要な加熱電力に応じて選択される。
【0047】
例えば、ベッドの導電性粒子は、シリコンカーバイドである非金属抵抗器とシリコンカーバイドとは異なる導電性粒子との混合物であるか、またはこの混合物を含み、ベッドの導電性粒子は、ベッドの導電性粒子の総重量に対して10重量%~99重量%のシリコンカーバイドを含み、好ましくは15重量%~95重量%、より好ましくは20重量%~90重量%、さらに好ましくは25重量%~80重量%、最も好ましくは30重量%~75重量%のシリコンカーバイドを含む。
【0048】
例えば、ベッドの導電性粒子は一種または複数の金属合金であるか、または金属合金を含む。好ましくは、一種または複数の金属合金は、Ni-Cr、Fe-Ni-Cr、Fe-Ni-Alまたはそれらの混合物から選択される。
【0049】
好ましくは、上記金属合金が少なくともクロムを含む場合、クロム含有量は少なくともクロムを含む金属合金の全モル含有量の少なくとも15モル%、より好ましくは少なくとも20モル%、さらに好ましくは少なくとも25モル%、最も好ましくは少なくとも30モル%である。さらに有利には、金属合金中の鉄含有量は、上記金属合金の全モル含有量に対して最大2.0%、好ましくは最大1.5モル%、より好ましくは最大1.0モル%、さらに好ましくは最大0.5モル%である。
【0050】
例えば、ベッドの導電性粒子は、シリコンカーバイドである非金属抵抗体とシリコンカーバイドとは異なる粒子との混合物であるか、またはそれを含み、シリコンカーバイドとは異なる粒子はモリブデンジシリサイドであるか、またはそれを含む。好ましくは、このモリブデンジシリサイドは、ASTM D4513-11 に従ってふるい分けして測定した平均粒子サイズが5~300μmの範囲、より好ましくは10~200μmの範囲、最も好ましくは30~150μmの範囲であるモリブデンジシリサイド粒子である。
【0051】
例えば、少なくとも2個の炭素原子を有する1種または複数のアルコールの1種または複数のオレフィンへの触媒脱水は、200℃~500℃の範囲、好ましくは240℃~490℃の範囲、より好ましくは260℃~480℃の範囲の温度で行われる。
【0052】
例えば、少なくとも2つの炭素原子を有する1種または複数のアルコールのオレフィンへの触媒脱水は0.05MPa~3MPa、好ましくは0.05MPa~1.5MPa、より好ましくは0.12MPa~0.8MPa、または0.12MPa~0.5MPaの範囲の圧力で行われる。この圧力は中程度の圧力と考えられる。
【0053】
例えば、アルコール含有原料の分圧は0.12MPa~0.7MPaの範囲である。
【0054】
一つの実施形態では、本発明プロセスは、流動床反応装置内で少なくとも2つの炭素原子を有する1種または複数のアルコールの1種または複数のオレフィンへの触媒脱水を行う前に、流動床反応装置をガス流で予熱する工程を含む。好ましくは、このガス流は1種または複数の不活性ガスの流であり、および/または、100℃~300℃の温度を有する。この実施形態は、システムにエネルギーを与える、および/または、ベッドの粒子が室温で抵抗率が高すぎてベッドの電気加熱を開始できない場合に重要である。例えば、一種または複数の不活性ガスは触媒に悪影響を与えないガスである。例えば、一種または複数の不活性ガスは窒素、アルゴン、ヘリウム、最大10個の炭素原子を有する飽和炭化水素またはこれらの任意の組み合わせから選択される。より好ましくは、一種または複数の不活性ガスは最大10個の炭素原子を有する飽和炭化水素であるか、またはそれらを含み、さらに好ましくは、3~7個の炭素原子、または4~6個の炭素原子を有する飽和炭化水素である。例えば、一種または複数の不活性ガスはブタン、ペンタン、ナフサ、またはこれらの任意の組み合わせであるか、またはそれらを含む。
【0055】
一つの実施形態では、本発明プロセスはアルコール含有原料を一種または複数の希釈剤で希釈する工程を含む。例えば、この一種または複数の希釈剤は蒸気(スチ-ム)、水素、メタン、二酸化炭素またはこれらの任意の組み合わせから選択される。一種または複数の希釈剤により、反応の選択性を管理することができる。
【0056】
アルコール含有原料は少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールと、任意選択事項である一種または複数の不活性ガスおよび/または一種または複数の希釈剤とを含む。アルコール含有原料が少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールを含むと特定することで、アルコール含有原料中にメタノールが存在する場合、メタノールはオレフィンに変換できないことを意味する。好ましくは、アルコール含有原料はメタノールを含まない。例えば、アルコール含有原料中の少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールの量は、アルコール含有原料の全重量に対して5重量%~100重量%の範囲である。例えば、アルコール含有原料の一種または複数のアルコールは2~10個の炭素原子を有する一種または複数のアルコールであるか、またはそれらを含む。例えば、アルコール含有原料の1種または複数のアルコールはエタノール、n-プロパノ-ル、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ヘキサン-1-オ-ル、ヘキサン-2-オ-ル、ヘキサン-3-オ-ル、2-メチルペンタン-1-オ-ル、3-メチルペンタン-1-オ-ル、4-メチルペンタン-1-オ-ル、2-メチルペンタン-2-オ-ル、3-メチルペンタン-2-オ-ル、4-メチルペンタン-2-オ-ル、2-メチルペンタン-3-オ-ル、3-メチルペンタン-3-オ-ル、2,2-ジメチルブタン-1-オ-ル、2-3-ジメチルブタン-1-オ-ル、3,3-ジメチルブタン-1-オ-ル、2,3-ジメチルブタン-2-オ-ル、3,3-ジメチルブタン-2-オ-ル、2-エチルブタン-1-オ-ルまたはこれらの任意の組み合わせであるか、またはそれらを含む。例えば、アルコール含有原料中の1種または複数の不活性ガスの量はアルコール含有原料の総重量に対して0重量%~95重量%の範囲である。例えば、アルコール含有原料中の1種または複数の希釈剤の量は、アルコール含有原料の総重量に対して0重量%~95重量%の範囲である。
【0057】
例えば、少なくとも2個の炭素原子を有する1種または複数のアルコールの1種または複数のオレフィンへの触媒脱水の反応流の重量空間速度(weight hourly space velocit)は0.1h-1~100h-1、好ましくは1.0h-1~50h-1、より好ましくは1.5h-1~10h-1、さらに好ましくは2.0h-1~6.0h-1である。重量空間速度は反応流の質量流量と流動床内の固体粒子状物質の質量との比として定義される。
【0058】
特に、本発明プロセスで得られる1種または複数の生成物には1種または複数のオレフィン、水、未変換アルコール(存在する場合)、1種または複数の不活性ガス(存在する場合)および1種または複数の希釈剤(存在する場合)が含まれ得る。例えば、1種または複数のオレフィンは分留手段によって回収され、および/または、1種または複数の不活性ガス(存在する場合)は反応器入口へリサイクルされる。例えば、未変換アルコールは反応器入口へリサイクルされる。
【0059】
好ましい実施形態では、反応器の流動床セクションにおけるアルコール含有原料の滞留時間は温度が260~500℃で0.1~10秒の範囲にすることができる。
【0060】
例えば、アルコール含有原料が少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールを含み、工程a)で用意される少なくとも1つの流動床反応装置が加熱ゾーンおよび反応ゾーンを含み、工程b)で提供される流体流が加熱ゾーンに提供され、任意選択事項の一種または複数の不活性ガスおよび/または1つ??以上の希釈ガスを含み、工程c)で流動床を200℃~500℃の温度に加熱してアルコール含有原料を一種または複数のオレフィンに吸熱触媒脱水する場合には、以下のサブ工程を含む:
- 少なくとも1つの流動床の加熱ゾーンに電流を流すことによって流動床を200℃~500℃の温度に加熱する工程、
- 加熱された粒子を加熱ゾーンから反応ゾーンに輸送する工程、
- 反応ゾーンにおいて、アルコール含有原料を含む流体流、必要な場合には1種または複数の不活性ガスおよび/または1種または複数の希釈ガスをそれに混合したものを反応ゾーンの上記ベッドに上向きに流すことによって、加熱された粒子を流動状態にして流動床を形成し、アルコール含有原料を1種または複数のオレフィンに吸熱触媒脱水する工程、
- 任意工程としての反応ゾーンから粒子を回収し、加熱ゾーンにリサイクルする工程。
【0061】
例えば、流動床を加熱する工程は流動床に300V以下、好ましくは200V以下、より好ましくは150V以下、さらに好ましくは120V以下、最も好ましくは100V以下、さらに最も好ましくは90V以下の電圧の電流を流すことによって行われる。
【0062】
流体流はガス流および/または気化流にすることができる。
【0063】
工程c)ではアルコール含有原料を1種または複数のオレフィンに触媒脱水する工程をアルコール含有原料に対して行う。これはアルコール含有原料が提供されることを意味する。
【0064】
例えば、加熱ゾーンと反応ゾーンが混合されている場合(すなわち、同じゾーンである場合)、工程b)で提供される流体流はアルコール含有原料を含む。
【0065】
例えば、加熱ゾーンと反応ゾーンが分離したゾーンである場合、工程b)で加熱ゾーンに供給される流体流にはアルコール含有原料が含まれない。例えば、本発明プロセスが少なくとも1つの流動床反応装置を加熱ゾーンとして提供し、少なくとも1つの流動床反応装置を反応ゾーンとして提供する場合、工程b)で加熱ゾーンに供給される流体流にアルコール含有原料が含まれず、工程b)で反応ゾーンに供給される流体流にアルコール含有原料が含まれる。
【0066】
アルコール含有原料は反応ゾーンに供給され、加熱ゾーンが反応ゾーンから分離されている場合には、アルコール含有原料は加熱ゾーンに供給されないということは理解されよう。反応ゾーンに供給されるアルコール含有原料に加えて、上記のように蒸気を反応ゾーンで推奨される蒸気対炭化水素比に達するように反応ゾーンに供給できるということは理解されよう。
【0067】
例えば、工程a)で用意される少なくとも1つの流動床反応装置が加熱ゾーンと反応ゾーンとを備え、流動床を加熱する工程c)は以下のサブ工程を含む:
- 100℃~300℃の範囲の温度を有するガス流を流動床の粒子を上向きに通過させて、流動床を100℃~300℃の範囲の温度に予熱する。
- 少なくとも1つの流動床反応装置の加熱ゾーンに電流を流すことによって流動床の粒子を200℃~500℃の範囲の温度に加熱する。
- 加熱された粒子を加熱ゾーンから反応ゾーンに輸送する。
- 反応ゾーンでアルコール含有原料を含む流体流を反応ゾーンのベッドに上向きに通過させることによって加熱された粒子を流動状態にして流動床を形成し、少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールを一種または複数のオレフィンに吸熱触媒脱水する。
- 任意選択事項として、粒子を反応ゾーンから回収して加熱ゾーンにリサイクルする。
【0068】
触媒反応を行うために、ベッド粒子は一種または複数の固体酸触媒である触媒をさらに含む。例えば、触媒組成物の粒子の含有量はベッドの粒子の15重量%~90重量%の範囲であり、より好ましくは20重量%~85重量%、さらに好ましくは25重量%から80重量%、最も好ましくは30重量%~75重量%の範囲である。
【0069】
例えば、一種または複数の固体酸触媒は、N2吸着測定によって測定された表面積が50m2/g~800m2/gの範囲であり、好ましくは100m2/gから750m2/gの範囲であり、より好ましくは150m2/gから700m2/gの範囲である。
【0070】
例えば、一種または複数の固体酸触媒は一種または複数の酸化物である。好ましくは、この一種または複数の酸化物はγ-Al23、β-Al23、η-Al23、δ-Al23、非晶質Al23、塩素含有アルミナ、フッ素含有アルミナ、リン含有アルミナ、ZrO2、酸処理ジルコニア、酸処理チタニア、酸化ニオブ、酸化タングステンまたはこれらの任意の組み合わせから選択される一種または複数の酸化物である。
【0071】
例えば、一種または複数の固体酸触媒は一種または複数の混合酸化物である。好ましくは、一種または複数の混合酸化物はSiO2-Al23、SiO2-TiO2、SiO2-SnO2、SiO2-ZrO2、SiO2-BeO、SiO2-MgO、SiO2-CaO、SiO2-SrO、SiO2-ZnO、SiO2-Ga23、SiO2-Y23、SiO2-La23、SiO2-WO3、SiO2-ThO2、Al23-MgO、Al23-ZnO、Al23-ThO2、Al23-TiO2、Al23-ZrO2、Al23-MoO3、Al23-WO3、Al23-Cr23、Al23-Mn23、Al23-Fe23、TiO2-MgO、TiO2-ZnO、TiO2-ZrO2、TiO2-SnO2、TiO2-Sb25、TiO2-V25、TiO2-Cr23、TiO2-MoO3、TiO2-WO3、WO3-son2、WO3-ZrO2、Nb25-Al23、Nb25-WO3、Nb25-MoO3、Nb25-ZrO2、Nb25-TiO2、TiO2-Fe23およびこれらの任意の組み合わせの中から選択される。
【0072】
例えば、一種または複数の固体酸触媒は一種または複数のリン酸塩である。好ましくは、この一種または複数のリン酸塩はリン酸チタン、リン酸ジルコニウム、リン酸鉄またはこれらの任意の組み合わせから選択される一種または複数のリン酸塩である。
【0073】
例えば、一種または複数の固体酸触媒はMFI、MEL、MOR、FER、MTT、MWW、TON、EUO、HEU、MFSおよびMREファミリーのグループおよびこれらの任意の組み合わせから選択される一種または複数のゼオライトである。
【0074】
例えば、一種または複数の固体酸触媒はX線蛍光分光法によって決定されるSi/Al比が少なくとも10である一種または複数のゼオライトである。
【0075】
例えば、一種または複数の固体酸触媒はAEI、CHAおよびAELファミリーのグループおよびこれらの任意の組み合わせから選択される一種または複数のシリカアルミノホスフェート分子ふるいである。
【0076】
触媒酸部位(catalyst acid sites)の測定はブレンステッドによって定義されるプロトンを与える能力として、またはルイスによって定義される電子対を受け入れる能力として定義できる。酸性度(acidity)の測定はアンモニアの温度プログラム脱着または赤外線分光法によって行われる。これらの方法は下記の〔非特許文献1〕〔非特許文献2〕に記載されている。
【非特許文献1】「Studies in Surface Science and Catalysis」, Kozo TANABE, Makoto MISONO, Yoshio ON0, Hideshi HATTORI, Vol. 51, NEW SOLID ACIDS AND BASES - THEIR CATALYTIC PROPERTIES, by KODANSHA LTD. and ELSEVIER SCIENCE PUBLISHERS, 1989
【非特許文献2】「Solid Acid Catalysis - From Fundamentals to Applications」, Hideshi Hattori & Yoshio Ono, by Taylor & Francis Group, 2015.
【0077】
例えば、一種または複数のゼオライトは、工程(c)で使用する前に蒸気処理し、その後、必要に応じて浸出して一種または複数のゼオライトが脱アルミニウム化する。言い換えると、一種または複数のゼオライトは脱アルミニウム化されていない一種または複数のゼオライトを基準として少なくとも10重量%未満のアルミニウムを含む。
【0078】
例えば、一種または複数のゼオライトは、少なくとも1つの10員環を有する構造を含む。
【0079】
例えば、一種または複数のゼオライトはMFI、MEL、MOR、FER、MTT、MWW、TON、EUO、HEU、MFSおよびMREファミリーの群およびこれらの任意の組み合わせから選択される。好ましくは、一種または複数のゼオライトはMFI、MELファミリーの群およびこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0080】
例えば、一種または複数のゼオライトはホウ素をさらに含む。
【0081】
例えば、一種または複数のゼオライトは一種または複数のリン修飾ゼオライトである。
【0082】
有利には、一種または複数のゼオライトはH型である。換言すれば、一種または複数のゼオライトの総重量に対して50重量%未満、好ましくは45重量%未満または40重量%未満が好ましくはNa、Mg、Ca、La、Ni、Ce、Zn、Coまたはこれらの任意の組み合わせから選択される一種または複数の金属イオンを含む。
【0083】
本発明の第2の態様から、本発明は第1の態様によって少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールを一種または複数のオレフィンに吸熱触媒脱水する設備を提供する。この設備は以下のi)~iv):
i)下記を含む少なくとも1つの流動床反応装置を備えた通電流動床ユニット:
- 少なくとも2つの電極、
- 反応容器、
- 少なくとも1つの流動床反応装置内に少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールと、任意成分の一種または複数の不活性ガスおよび/または一種または複数の希釈ガスとを含むアルコール含有原料を導入するための一つまたは複数の流体ノズル、および
- 粒子を含むベッド、
ii) 生成物回収ユニット、
iii) オレフィンオリゴマー化ユニットまたは芳香族アルキル化ユニットまたはオレフィンオリゴマー化および芳香族アルキル化ユニットから選択されるオレフィン変換ユニット(生成物回収は、通電流動床ユニットの下流で、オレフィン変換ユニットの上流で行われる)、
iv) 任意構成要素としての水素化ユニット(この水素化ユニットが存在する場合にはオレフィン変換ユニットの下流にある)、
を含み、ベッドの粒子は導電性粒子と触媒組成物の粒子とを含み、ベッドの粒子の総重量に対してベッドの粒子の少なくとも10重量%が導電性で、400℃の温度で0.001 Ohm・cm~500 Ohm・cmの範囲の抵抗率を有し、触媒組成物は一種または複数の固体酸触媒を含むという点に特徴がある。
【0084】
好ましくは、少なくとも2つの電極はタンタルを含むか、またはタンタルで作られる。
【0085】
例えば、導電性粒子は一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体、一種または複数のリン酸電解質、およびこれらの任意の混合物から選択される1種以上である。
【0086】
有利には、少なくとも1つの流動床反応装置には加熱手段がない。例えば、少なくとも1つの流動床反応装置には、反応容器の周囲または内部に配置された加熱手段がない。例えば、全ての流動床反応装置には加熱手段がない。少なくとも1つの流動床反応装置に「加熱手段」がないとは、オーブン、ガスバーナー、ホットプレートなどの「古典的な」加熱手段が無いことを意味する。すなわち、流動床反応装置自体の少なくとも2つの電極以外の加熱手段はない。例えば、少なくとも1つの流動床反応装置にはオーブン、ガスバーナー、ホットプレートまたはこれらの任意の組み合わせから選択される加熱手段がない。例えば、全ての流動床反応装置にはオーブン、ガスバーナー、ホットプレートまたはこれらの任意の組み合わせから選択される加熱手段がない。
【0087】
好ましい実施形態では、少なくとも2つの電極と粒子を含むベッドを含む少なくとも1つの流動床反応装置にはパッキング(packing)がない。
【0088】
例えば、流動化ガスは、一種または複数の希釈ガスである。
【0089】
例えば、少なくとも1つの反応容器は少なくとも100cm、好ましくは少なくとも200cm、より好ましくは少なくとも300cmの内径を有する。
【0090】
好ましくは、反応容器は耐腐食性材料で作られた反応容器壁を備え、有利には、反応容器壁の材料はニッケル(Ni)、SiAlONセラミック、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、正方晶多結晶ジルコニア(TZP)および/または正方晶多結晶ジルコニア(TPZ)を含む。
【0091】
好ましくは、電極の1つは反応容器またはガス分配器であり、および/または、少なくとも2つの電極はステンレス鋼またはニッケルクロム合金またはニッケルクロム鉄合金で作られる。
【0092】
例えば、少なくとも1つの流動床反応容器は加熱ゾーンと、反応ゾーンと、アルコール含有原料を反応ゾーンに供給するための一つまたは複数の流体ノズルと、反応ゾーンから加熱ゾーンへベッドの粒子を輸送するための手段(任意構成)とを備える。
【0093】
例えば、本発明設備は互いに連結された少なくとも2つの流動床反応装置を備え、少なくとも2つの流動床反応装置のうちの少なくとも1つの反応器は加熱ゾーンであり、少なくとも2つの流動床反応装置のうちの少なくとも他の1つの反応器は反応ゾーンである。好ましくは、本発明設備は反応ゾーンである少なくとも1つの流動床反応装置にアルコール含有原料を注入するように配置された一つまたは複数の流体ノズルと、必要に応じて設けられる加熱ゾーンから反応ゾーンにベッドの粒子を輸送する手段および反応ゾーンから加熱ゾーンに粒子を戻すための手段(オプション)とを含む。この構成は所与の粒子床が少なくとも2つの流動床反応装置に共通であるという点で重要である。
【0094】
例えば、少なくとも1つの流動床反応装置は加熱ゾーンが流動床反応装置の底部であり、反応ゾーンが流動床反応装置の上部である単一の流動床反応装置である。好ましくは、本発明設備は2つのゾーンの間にアルコール含有原料を注入するための一つまたは複数の流体ノズルを含む。加熱ゾーンと反応ゾーンの直径は下部ゾーンでの加熱に最適な条件と上部ゾーンでの脱水反応に最適な条件を達成するために異なっていてもよい。粒子は加熱ゾーンから反応ゾーンへ随伴(entrainment)によって移動することができ、その逆の場合には重力によって反応ゾーンから加熱ゾーンへ戻すことができる。オプションとして、粒子は上部加熱ゾーンから収集され、別の移送ラインによって下部加熱ゾーンへ移送できる。
【0095】
例えば、少なくとも1つの流動床は外側ゾーンと内側ゾーンの少なくとも2つの横方向ゾーンを含み、外側ゾーンは内側ゾーンを取り囲み、外側ゾーンは加熱ゾーンであり、内側ゾーンは反応ゾーンである。あまり好ましくない構成では、外側ゾーンが反応ゾーンで、内側ゾーンが加熱ゾーンである。好ましくは、本発明設備は反応ゾーンにアルコール含有原料を注入するための一つまたは複数の流体ノズルを含む。
【0096】
一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子の総重量に対してベッドの導電性粒子の50重量%~100重量%は一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体、一種または複数のリン酸電解質およびこれらの任意の混合物から選択される一種または複数であり、好ましくは、ベッドの導電性粒子の比率は60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらにより好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90量%~100重量%である。
【0097】
第3の態様から、本発明は、第1の態様に従った少なくとも2個の炭素原子を有する1種または複数のアルコールを1種または複数のオレフィンに触媒脱水するための、少なくとも1つの流動床反応装置における粒子を含むベッドの使用を提供する。この使用は、ベッドの粒子が導電性粒子と触媒組成物の粒子とを含み、ベッドの粒子の総重量に対してベッドの粒子の少なくとも10重量%が導電性で、400℃の温度で0.001オ-ム・cm~500オ-ム・cmの範囲の抵抗率を有し、触媒組成物は1種または複数の固体酸触媒を含むという点に特徴がある。
【0098】
例えば、導電性粒子は、一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体、一種または複数のリン酸電解質およびこれらの任意の混合物から選択される1つ以上であるか、またはこれらを含む。
【0099】
例えば、本発明の使用は、第1の反応器内で粒子を含むベッドを200℃~500℃の範囲の温度に加熱し、加熱された粒子ベッドを第1の反応器から第2の反応器に移送し、アルコール含有原料を第2の反応器に供給することを含む。好ましくは、少なくとも第2の反応器は流動床反応装置であり、および/または、少なくとも第2の反応器は加熱手段を欠いている。より好ましくは、第1の反応器および第2の反応器が流動床反応装置であり、および/または、第1および第2の反応器が加熱手段を欠いている。例えば、第2の反応器は電極を欠いている。一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子の総重量に対してベッドの導電性粒子の50重量%~100重量%は一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体、一種または複数のリン酸電解質およびこれらの任意の混合物から選択される一種または複数であり、好ましくは、ベッドの導電性粒子の比率は60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらにより好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%である。
【0100】
第4の態様から、本発明は、少なくとも2個の炭素原子を有する1種または複数のアルコールを1種または複数のオレフィンに触媒脱水するための少なくとも1個の流動床反応装置を含む設備であって、設備が第2の態様によるものであるという点に特徴を有する使用を提供する。好ましくは、この設備の使用では、少なくとも2個の炭素原子を有する1種または複数のアルコールを1種または複数のオレフィンに触媒脱水する少なくとも1個の流動床反応装置での反応を第1の態様によるプロセスで行う。
【0101】
本発明では、一つまたは複数の実施形態における特定の特徴、構造、特性または実施形態は任意の適切な方法で組み合わせることができるということは当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1】従来技術の設備を示す図。
図2】加熱ゾーンと反応ゾーンが同じである1つの反応器を備えた本発明設備を示す図。
図3】加熱ゾーンと反応ゾーンが上下に配置された1つの反応器を備えた本発明設備を示す図。
図4】加熱ゾーンと反応ゾーンが互いに横に並んで配置された1つの反応装置を備えた本発明設備を示す図。
図5】2つの反応装置を備えた本発明設備を示す図。
図6】温度プログラム脱着(TPD)法の設定の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0103】
以下、本発明での定義を示す。
本発明で使用される「含む」、「有する」および「構成される」という用語は「含む」と同義であり、包括的またはオープンエンドで、記載されていない追加の構成、要素または方法工程を除外するものではない。「含む」、「有する」および「から構成される」という用語には「のみで構成される(consisting of)」という用語も含まれる。
【0104】
エンドポイントによる数値範囲の記載には全ての整数と、適切な場合はその範囲内に含まれる分数が含まれる(例えば、1~5には、例えば要素の数を指す場合には1、2、3、4、5が含まれ、例えば測定値を指す場合には1.5、2、2.75、3.80も含まれる)。エンドポイントの記載には記載されたエンドポイント値自体も含まる(例えば、1.0~5.0には1.0と5.0の両方が含まれる)。ここに記載の数値範囲はそこに含まれる全てのサブ範囲を含む。
【0105】
ゼオライトコ-ド(例:CHA)は下記の〔非特許文献3〕に従って定義される。本出願ではこれを参照する。
【非特許文献3】「Atlas of Zeolite Framework Types」, 6th revised edition, 2007, Elsevier
【0106】
ゼオライトのSi/Al原子比は1つのシリコン原子に対して2つのアルミニウム原子があるという事実からSiO2量をAl23の量で割った値に対応する。シリコン対アルミニウム比(SARとも表記)は、ゼオライトの化学式におけるSi原子とAl原子の比率ではなくSiO2の量をAl23の量で割った値に対応する。従って、SAR値は常にSi/Al原子比の値の2倍に対応する。
【0107】
本発明は、以下の工程を含む、少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールを一種または複数のオレフィンに触媒脱水するプロセスを提供する:
a) 少なくとも2つの電極と粒子を含むベッドを含む少なくとも1つの流動床反応装置とを用意し、
b) 流体流を上記ベッドに上向きに通すことによってベッドの粒子を流動状態にして流動床を形成し、
c) 流動床を200℃~500℃の温度に加熱して、少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールを含むアルコール含有原料を触媒脱水して一種または複数のオレフィンとし、
d) 任意工程として、一種または複数のオレフィンを回収する。
本発明プロセスでは、ベッドの粒子が導電性粒子と触媒組成物の粒子とを含み、ベッドの粒子の総重量に対して粒子の少なくとも10重量%が導電性で、400℃で0.001・Ohm.cm~500Ohm・cmの範囲の抵抗率を有し、触媒組成物は一種または複数の固体酸触媒を含み、流動床を加熱する工程c)は流動床に電流を流すことによって実行される点に特徴がある。
【0108】
例えば、一種または複数のオレフィンは、一種または複数のアルコールと同じ数の炭素を有する。アルコール含有原料にメタノ-ルが存在する場合には当該メタノ-ルをオレフィンに変換できない理由はそのためである。好ましくは、アルコール含有原料はメタノールを含まない。
【0109】
例えば、ベッドの導電性粒子は一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体、一種または複数のリン酸電解質およびこれらの任意の混合物から選択される一種または複数であるか、またはこれらを含む。
【0110】
一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子の総重量に対して、ベッドの導電性粒子の50重量%~100重量%は、一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体、一種または複数のリン酸電解質およびこれらの任意の混合物から選択される一種または複数であり、好ましくは、その含有量は60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらにより好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%である。
【0111】
上記流体流はガス流および/または気化流にすることができる。
【0112】
例えば、流動床を加熱する工程は、流動床に300V以下、好ましくは200V以下、より好ましくは150V以下、さらに好ましくは120V以下、最も好ましくは100V以下、さらに最も好ましくは90V以下の電圧の電流を流すことによって行われる。
【0113】
流動床反応装置内の固体粒子状物質は、通常、ディストリビュータ(distributor、分配装置)と呼ばれる多孔板、穿孔板、ノズルまたは煙突を備えた板によって支えられている。流体はディストリビュータを通って押し上げられ、固体粒子状物質間の空隙を通過する。流体速度が低い場合、流体が物質の空隙を通過する間、固体は沈殿したままである。これを充填床反応器(packed bed reactor)と呼ばれる。流体速度が増加すると、粒子状固体は、固体に対する流体の力が固体粒子状物質の重量を相殺するのに十分である段階に到達する。この段階は初期流動化と呼ばれ、この最小流動化速度で生じる。この最小速度を超えると、反応器床の内容物が膨張し始め、流動化する。反応器では動作条件と固相の特性に応じてさまざまな流動様式が観察される。ベッドの拡張に必要な最小流動化速度は、粒子のサイズ、形状、多孔度、密度および上昇する流体の密度と粘度によって異なる。
【0114】
下記の〔非特許文献4〕ではGeldartによって平均粒子に対して4つの異なる流動化カテゴリが区別され、以下の流動化レジ-ムが決定される:
- タイプA、エアレ-ション可能な流動化(流動化しやすい中サイズ、中密度の粒子。通常30~100μmの粒子、密度約1500kg/m3
- タイプB、砂のような流動化(流動化が難しい重い粒子。通常100~800μm の粒子、密度1500~4000kg/m3
- タイプC、凝集流動化(典型的な粉末状の固体粒子の流動化、粒子内力または凝集力が優勢な微細粒子(約20μm));および
- タイプD、噴出可能な流動化(密度が高く、粒子が約1~4mmと大きく、密度が高く、噴出可能)。
【非特許文献4】P.R. Gunjal, V.V. Ranade, in Industrial Catalytic Processes for Fine and Specialty Chemicals, (2016)
【0115】
流動化は均質流動化と不均質流動化の2つの領域に大まかに分類できる(〔非特許文献5〕)。均質流動化または粒子流動化では粒子は明確な空隙なく均一に流動化される。不均質流動化またはバブリング流動化では固体を含まないガス泡が明確に観察される。これらの空隙はガス液体流の泡のように動作し、媒体中を上昇しながらサイズと形状を変えながら周囲の均質媒体とガスを交換する。粒子流動化では粒子が大きく移動してベッドがスム-ズに膨張し、ベッド表面が明確に規定される。粒子流動化は、Geldart-Aタイプの粒子でのみ観察される。バブリング流動化領域は均質流動化よりもはるかに高速で観察され、識別可能なガス泡がディストリビュータ-から成長し、他の泡と合体して最終的にベッドの表面で破裂する。これらの気泡は固体とガスの混合を強め、流動化速度が上昇するにつれて気泡のサイズがさらに大きくなる傾向にある。気泡の直径が反応器の直径まで大きくなると、スラグ化状態が観察されます。乱流状態では、気泡が成長し、ベッドの膨張とともに分解し始める。この条件下ではベッドの上部表面はもはや区別できない。高速流動化または空気流動化では明確なベッド表面は観察されず、粒子はベッドから運び出され、反応器に戻してリサイクルする必要がある。
【非特許文献5】Fluid Bed Technology in Materials Processing, 1999 by CRC Press
【0116】
流動床反応装置には以下の利点がある:
均一な粒子混合:
固体粒子材料が本質的に流体のような動作をするので、流動床では充填床のように混合が不十分になることはない。半径方向および軸方向の濃度勾配がなくなるため、反応効率と品質に不可欠な、より良好な流体と固体の接触が可能になる。
均一な温度勾配:
多くの化学反応では熱の追加または除去が必要であるが、流動化状況では反応床内の局所的な高温または低温スポットは回避される。
反応装置を連続的に操作する能力:
反応装置の流動床特性によって、生成物を連続的に取り出し、新しい反応物を反応容器に導入することができる。化学反応の連続操作に加えて、流動可能な固体粒子材料であるため、流動床では連続的または特定の頻度で固体材料を取り出したり、連続的または特定の頻度で新しい新鮮な固体材料を追加したりすることもできる。
【0117】
電気を熱に変換するのに十分な高い抵抗率(抵抗)を有する導電性材料に電流を流すことで熱を発生させることができる。電気抵抗率(比電気抵抗または体積抵抗率とも呼ばれ、形状やサイズとは無関係な固有の特性である)とその逆の電気伝導率は電流の抵抗または伝導強度を定量化する材料の基本的な特性である(電気抵抗率のSI単位はオーム・メ-トル(Ω・?m)、伝導率はシ-メンス/メ-トル(S/m)である)。
【0118】
十分な抵抗率を有する導電性粒子状固体の固定床に電気を流すと、ベッドは電流の流れに対して抵抗を示す。この抵抗は固体の性質、ベッド内の粒子間の結合の性質、ベッドの空隙率、ベッドの高さ、電極の形状などの多くのパラメ-タに依存する。固定床にガスを流して流動化させるとベッドの抵抗が増加する。導電性粒子によって与えられる抵抗によってベッド内に熱が発生し、ベッドを等温状態に維持できる(電熱流動床(electrothermal fluidized bed)または電気流体反応装置(electrofluid reactor)と呼ばれる)。電気流体反応装置は多くの高温反応で反応中にその場(in situ)での加熱に有利であり、特に吸熱反応装置の運転に操作するのに有利であり、外部加熱や熱伝達が不要なためエネルギーを節約できる。固体粒子材料の少なくとも一部が導電性であることが前提条件であるが、非導電性の固体粒子を混合しても十分な熱が発生する。このような非導電性または非常に高い抵抗率の固体は化学変換において触媒の役割を果たすことができる。電荷抵抗型の発熱であるためベッド材の特性によって粒子の固有抵抗がベッド抵抗に影響し、電熱流??動床炉の抵抗が決まる。粒子のサイズ、形状、組成およびサイズ分布もベッド抵抗の大きさに影響する。また、ベッドが流動化されると粒子間に空隙が生じ、ベッド抵抗が増加する。ベッドの総抵抗は電極接触抵抗(すなわち、電極とベッドの間の抵抗)とベッド抵抗の2つの要素の合計である。接触抵抗が大きいと電極付近で局所的な加熱が広範囲に発生するが、ベッドの残りの部分はむしろ冷たいままである。接触抵抗は電流密度、流動化速度、ベッド材の種類、電極サイズおよび電極に使用される材料の種類などの要因によって決まる。電極組成物は、有利には、鉄、鋳鉄、その他の鋼合金、銅、銅系合金、ニッケル、ニッケル系合金または耐火性金属、金属間化合物またはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wの合金またはセラミックのような炭化物、窒化物などの金属にすることができる。流動床材料と電極との接触面積は電極の浸漬度と流動床内の粒子状材料の量に応じて調整可能である。従って、これらの変数を調整することによって電気抵抗および電力レベルを操作することができる。有利には、流動床と比較して電極が過熱するのを防止するために、電極の抵抗率は流動床の粒子状材料よりも低く(従って、ジュ-ル熱も低く)しなければならない。好ましい実施形態では、より冷たい流体を電極の内側または外側に通すことによって電極を冷却することができる。この流体は加熱されたガス流によって蒸発する液体であれば何でもよく、流動床に入る前に最初に電極を冷却する低温の原料の一部であってもよい。
【0119】
ベッド抵抗はオ-ムの法則で予測できる。流動床における電流伝達のメカニズムは低い動作電圧での導電性粒子の連続鎖(continuous chains)に沿った電流の流れによって発生すると考えられている。高電圧では導電性粒子の鎖と電極とベッドの間のア-ク放電および粒子間のア-ク放電(ガスをイオン化してベッド抵抗を下げる可能性がある)の組み合わせによって電流伝達が行われる。ベッド内部でのア-ク放電は電気効率と熱効率を低下させるため、原則として望ましない。ガス速度はベッド抵抗に大きく影響し、ガス流量が増加すると、沈降床から先の抵抗が急激に増加する。最大値は初期流動化速度の近くで発生し、その後、速度が上がると減少する。スラッギング(slugging)を開始するのに十分なガス流量で抵抗は再び増加する。平均粒子サイズと形状は、粒子間の接触点に影響を与えるため、抵抗に影響します。一般に、ベッドの抵抗率は沈降ベッド(例えば、グラファイトの場合は20Ohm・cm)から流動化初期(グラファイトの場合は60Ohm・cm)まで2~5倍に増加し、沈降ベッドから流動化初期速度の2倍(グラファイトの場合は300Ohm・cm)まで10~40倍に増加する。導電性粒子に非導電性または導電性の低い粒子を追加することもできる。導電性固??体分率が少ない場合、電極間の導電性固体の連鎖の結合が切断されるため、ベッドの抵抗率が高くなる。非導電性固体分率のサイズが細かい場合、それよりより大きな導電性固体の隙間または空隙を埋めるためベッドの抵抗が高くなります。
【0120】
一般に、低電圧の高電流で必要な高加熱電力を得るのが望ましい。電源はACまたはDCのいずれかである。十分な加熱電力に達するための電熱流動ベッドに適用される電圧は通常100V未満である。電熱流動床は、次の3つの方法で制御できる:
1. ガス流量の調整:
ベッドの導電性はベッド内の空隙またはガス気泡の程度に依存するため、ガス流量が変化すると電力レベルが変わる。従って、流動化ガス流量を調整することで温度は制御できる。最適パフォーマンスに必要な流量は、最小流動化速度に等しいか、わずかに上回る速度に対応する。
2. 電極浸漬度の調整:
ベッドの導電性は導電性粒子と電極の接触面積に依存するため、ベッド内の電極浸漬レベルを変更することで電力レベルを制御することもできる。電流が流れる電極の表面積は電極の浸漬度とともに増加し、全体的な抵抗が減少する。
3. 印加電圧の調整:
印加電圧を上げるよりも、地の最初の2つの方法を使用して電力レベルを変更する方が手頃または経済的であることが多いが、電熱流動床では生成される加熱電力を制御するために3つの変数が使用できる。
【0121】
反応装置の壁は一般的にセラミック(SiC等)、高融点金属または合金で作られる。これらは用途が広く、産業上の多くの高温反応と互換性がある。反応の雰囲気は、酸化雰囲気では炭素材料が燃焼したり、金属または合金の上に非導電性の金属酸化物層が形成されたりする可能性があるため、中性または還元性に制限されることがよくある。壁および/または分配プレート自体は反応装置の電極として機能する。流動化固体はモリブデンジシリサイド、シリコンカーバイドまたはその他の高融点の導電性粒子にすることができる。通常、ベッドに浸漬されるその他の電極も高融点金属、金属間化合物または合金である。
【0122】
導電性粒子および/または触媒粒子を、原料炭化水素がほとんどまたは実質的に存在せず、希釈ガスのみが存在する反応装置の別のゾーンで加熱して、必要な反応熱を生成することが有利な場合がある。その利点は、導電性粒子のベッドに電流を流すことによって熱を発生させるための適切な流動化条件を最適化できると同時に、炭化水素変換中の最適な反応条件を反応器の他のゾーン用に選択できることにある。最適な空隙率および線速度のこのような条件は加熱目的と化学変換目的とで異なる可能性がある。
【0123】
本発明の一つの実施形態では、本発明設備は直列に配置された2つのゾーン、すなわち第1ゾーンが加熱ゾーンで、第2ゾーンが反応ゾーンで、導電性粒子および触媒粒子が第1ゾーンから第2ゾーンへ、またはその逆に連続的に移動または輸送される。第1ゾーンと第2ゾーンは流動床の異なる部分であってもよく、または互いに接続された別々の流動床反応装置内に配置してもよい。
【0124】
上記実施形態では、少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールを一種または複数のオレフィンに触媒脱水するプロセスが以下の工程を含む:
a) 少なくとも2つの電極と粒子を含むベッドとを有する少なくとも1つの流動床反応装置を用意し、
b) 流動流を上記ベッドに上向きに通すことによって粒子を流動状態にして流動床を形成し、
c) 流動床を200℃~500℃の範囲の温度に加熱して少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールを含むアルコール含有原料を触媒脱水して一種または複数のオレフィンにし、
d) 必要に応じて、上記の一種または複数のオレフィンを回収し、
上記粒子はベッドの粒子の総重量に対してその少なくとも10重量%が導電性粒子で、400℃で0.001Ohm・cm~500Ohm・cmの範囲の抵抗率を有し、工程a)で用意する少なくとも1つの流動床反応装置は加熱ゾーンと反応ゾーンとを含み、工程b)で提供される流体流は加熱ゾーンに供給され、任意選択事項の一種または複数の希釈ガスおよび/または一種または複数の不活性ガスを含み、工程c)で流動床を200℃~500℃の温度に加熱してアルコール含有原料を一種または複数のオレフィンに触媒脱水する工程は以下のサブ工程を含む:
- 少なくとも1つの流動床の加熱ゾーンに電流を流すことによって流動床を200℃~500℃の温度に加熱し、
- 加熱された粒子を加熱ゾーンから反応ゾーンに輸送し、
- 反応ゾーンにおいてアルコール含有原料と任意選択成分の希釈ガスを含む流体流を上記反応ゾーンのベッドに上向きに通過させることによって加熱された粒子を流動状態にして流動床を形成し、アルコール含有原料の吸熱触媒脱水を行ってアルコール含有原料を1種または複数のオレフィンに転換し、
- オプションとして、反応ゾーンから粒子を回収し、加熱ゾーンにリサイクルする。
【0125】
例えば、導電性粒子は一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体、一種または複数のリン酸電解質および/またはこれらの混合物から選択される一種または複数であるか、またはこれらを含む。
【0126】
例えば、一種または複数の不活性ガスは、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、最大10個の炭素原子を有する飽和炭化水素、またはこれらの任意の組み合わせから選択される。より好ましくは、一種または複数の不活性ガスは、最大10個の炭素原子を有する飽和炭化水素であるか、またはそれらを含む。さらに好ましくは、3~7個の炭素原子、または4~6個の炭素原子を有する飽和炭化水素である。例えば、一種または複数の不活性ガスは、ブタン、ペンタン、ナフサまたはこれらの組み合わせであるか、またはそれらを含む。
【0127】
例えば、上記の一種または複数の希釈剤は蒸気(スチ-ム)、水素、メタンまたはこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0128】
流体流はガス流および/または気化流にすることができる。
【0129】
例えば、少なくとも1つの流動床反応装置は互いに連結された少なくとも2つの流動床反応装置で、少なくとも2つの流動床反応装置のうち少なくとも1つは加熱ゾーンで、少なくとも2つの流動床反応装置のうち少なくとももう1つは反応ゾーンである。好ましくは、加熱ゾーンである少なくとも1つの流動床反応装置は、粒子を加熱ゾーンから反応ゾーンに輸送するための重力または空気圧輸送手段を備え、および/または、本発明設備は、反応ゾーンである少なくとも1つの流動床反応装置にアルコール含有原料を注入するように構成された手段を備えている。この設備には加熱ゾーンである少なくとも1つの流動床反応装置にアルコール含有原料を注入する手段はない。
【0130】
例えば、少なくとも1つの流動床反応装置は加熱ゾーンが流動床反応装置の底部であり、反応ゾーンが流動床反応装置の上部である単一の流動床反応装置である。好ましくは、本発明設備は2つのゾーンの間にアルコール含有原料および/または希釈剤を注入する手段を含む。加熱ゾーンおよび反応ゾーンの直径は底部ゾーンでの加熱に最適な条件と上部ゾーンでの炭化水素変換に最適な条件を達成するために異なっていてもよい。粒子はエントレインメントによって加熱ゾーンから反応ゾーンに移動し、その逆に、重力によって反応ゾーンから加熱ゾーンに戻ることができる。任意選択事項として、粒子は上部加熱ゾーンから収集され、別の移送ラインによって下部加熱ゾーンに戻るように移送されてもよい。
【0131】
工程c)では、少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールの一種または複数のオレフィンへの触媒脱水がアルコール含有原料上で行われる。これはアルコール含有原料が提供されることを意味する。アルコール含有原料は反応ゾーンに供給され、加熱ゾーンが反応ゾーンとは分離されている場合、好ましくは、アルコール含有原料は加熱ゾーンに供給されないということは理解できよう。加熱ゾーンと反応ゾーンが混合されている場合(すなわち、同じゾーンである場合)は、工程b)で提供される流体流がアルコール含有原料を含む。
【0132】
粒子-触媒粒子を含むベッド
ベッド粒子は触媒反応を行うためにさらに一種または複数の固体酸触媒である触媒を含む。例えば、この触媒粒子の含有量はベッドの粒子の総重量に対して15重量%~90量%の範囲であり、より好ましくは20重量%~85重量%の範囲であり、さらに好ましくは25重量%~80重量%の範囲であり、最も好ましくは30重量%~75重量%の範囲である。
【0133】
例えば、一種または複数の固体酸触媒はN2吸着測定によって測定された表面積が50m2/g~800m2/gの範囲であり、好ましくは100m2/g~750m2/gの範囲であり、さらに好ましくは150m2/g~700m2/gの範囲である。
【0134】
ベッドで使用される触媒は多種多様な脱水触媒のいずれか1つにすることができる。この触媒は当技術分野で一般に知られており、本発明を完全に理解するためには、この点に関する詳細は不要であると考えられる。例示的な脱水触媒としてはアルミナ、シリカ-アルミナ、活性粘土、ゼオライト、改質ゼオライトが挙げられる。
【0135】
より具体的には、触媒組成物は一種または複数のゼオライトおよび/または一種または複数のシリコアルミノホスフェート分子ふるいを含む。好ましくは、一種または複数のゼオライトのXRF分光法で測定したSi/Al比は少なくとも10、より好ましくは少なくとも15、さらにより好ましくは少なくとも50、最も好ましくは少なくとも100、さらに最も好ましくは少なくとも150、または少なくとも180、または少なくとも200である。好ましくは、一種または複数のゼオライトはXRF分光法で測定して最大1000のSi/Al比を有する。例えば、一種または複数のゼオライトはXRF分光法によって測定されたSi/Al比が10~1000または15~1000または50~1000または100~1000または180~1000または200~1000の範囲である。本明細書で「Si/Al比」または「シリコン/アルミニウム原子比」または「シリコン/アルミニウム比」という用語は材料全体のSi/Al原子比を意味し、これは材料の溶解時の元素分析またはX線蛍光(XRF)分光法によって測定できる。特に、結晶性ケイ酸塩材料の場合、記載されたSi/Al比は、結晶性ケイ酸塩のSi/Alフレ-ムワ-クだけでなく、材料全体に適用される。
【0136】
好ましくは、一種または複数のゼオライトは比較的低い酸性度を有する。一種または複数の触媒ゼオライトの酸性度はアンモニアの温度プログラム脱着(TPD)によって、触媒上の酸部位に吸着するアンモニアと触媒との接触後に触媒上に残留するアンモニアの量を示差熱重量分析によって測定することで決定できる。
【0137】
例えば、一種または複数のゼオライトは、工程(c)で使用する前に蒸気処理され、その後、必要に応じて浸出されて、一種または複数のゼオライトが脱アルミニウム化される。言い換えれば、一種または複数のゼオライトは、脱アルミニウム化されていない一種または複数のゼオライトを基準として少なくとも10%未満のアルミニウムを含む。好ましくは、1種または複数のゼオライトは425℃~870℃の温度、より好ましくは540℃~815℃の温度および/または大気圧(すなわち、約0.1MPa)および/または13kPa~200kPaの水分圧で蒸気処理(steaming)される。好ましくは、この蒸気処理は雰囲気の総体積を基準として5~100体積%の蒸気を含む雰囲気中で行われる。蒸気は、好ましくは、蒸気の総体積を基準として5~100体積%の蒸気と、0~95体積%の不活性ガスとを含む。例えば、不活性ガスは窒素である。より好ましい雰囲気は雰囲気の総体積を基準として72体積%の蒸気と28体積%の窒素、すなわち、1気圧の圧力で72kPaの蒸気を含む。蒸気処理は、好ましくは1~200時間、より好ましくは20~100時間の範囲の時間で行われる。上記のように、蒸気処理はアルミナを形成することによって結晶性ケイ酸塩骨格中の四面体アルミニウムの量を減らすものである。
【0138】
例えば、一種または複数のゼオライトは少なくとも1つの10員環を有する構造を含む。
【0139】
例えば、一種または複数のゼオライトはMFI、MEL、MOR、FER、MTT、MWW、TON、EUO、HEU、MFSおよびMREファミリーの群、およびこれらの任意の組み合わせから選択される。好ましくは、一種または複数のゼオライトはMFI、MEL、FER、MTT、MWW、TON、EUO、MFSおよびMREファミリーの群およびこれらの任意の組み合わせから選択される。より好ましくは、一種または複数のゼオライトはMFI、MELおよびこれらの任意の組み合わせの群から選択される。
【0140】
例えば、ゼオライトがMFIである場合、MFIゼオライトは固体形態の一種または複数のゼオライトのX線蛍光分光法によって測定されたSi/Al比が少なくとも100であることが好ましい。
【0141】
例えば、ゼオライトがFERである場合、FERゼオライトは固体状態の一種または複数のゼオライトのX線蛍光分光法によって測定されたSi/Al比が少なくとも10、より好ましくは少なくとも15であるのが好ましい。
【0142】
上記の値を超えるSi/Al比ではアルコールがオレフィンに脱水され、アルデヒド、飽和炭化水素または望ましくない成分につながる副反応はほとんど起こらない。
【0143】
好ましくは、MFIファミリーのゼオライトはZSM-5、シリカライト-1、ボラライトCまたはTS-1から選択される1種以上である。より好ましくは、MFIファミリーのゼオライトはZSM-5またはシリカライト-1から選択される1種以上である。さらに好ましくは、MFIファミリーのゼオライトはZSM-5である。
【0144】
好ましくは、MELファミリーのゼオライトはZSM-11、シリカライト-2、ボラライトD、TS-2またはSSZ-46から選択される1種以上であり、より好ましくは、MELファミリーのゼオライトはZSM-11である。
【0145】
好ましくは、MORファミリーのゼオライトはUZM-14である。
【0146】
好ましくは、FERファミリーのゼオライトはフェリエライト、FU-9またはZSM-35から選択される1種以上である。
【0147】
好ましくは、MTTファミリーのゼオライトはZSM-23である。
【0148】
好ましくは、MWWファミリーのゼオライトはMCM-22、PSH-3、ITQ-1またはMCM-49から選択される1種以上である。
【0149】
好ましくは、TONファミリーのゼオライトはZSM-22、Theta-1、またはNU-10 から選択される1種以上である。
【0150】
好ましくは、EUOファミリーのゼオライトはZSM-50またはEU-1から選択される。
【0151】
好ましくは、HEUファミリーのゼオライトはクリノピロタイトである。
【0152】
好ましくは、MFSファミリーのゼオライトはZSM-57である。
【0153】
好ましくは、MREファミリーのゼオライトはZSM-48である。
【0154】
例えば、一種または複数のゼオライトはさらにホウ素を含む。
【0155】
例えば、一種または複数のゼオライトは、一種または複数のリン修飾ゼオライトである。
【0156】
例えば、一種または複数のゼオライトは、脱アルミニウム化ゼオライトである。
【0157】
有利には、一種または複数のゼオライトはH型である。言い換えれば、一種または複数のゼオライトの総重量に対して50重量%未満、好ましくは45重量%未満または40重量%未満が、好ましくはNa、Mg、Ca、La、Ni、Ce、Zn、Coまたはこれらの任意の組み合わせから選択される一種または複数の金属イオンを含む。
【0158】
以下は、一種または複数のゼオライト(すなわち、一種または複数の結晶性ケイ酸塩)についてより詳細に説明する。
【0159】
一種または複数のゼオライトは、酸素イオンを共有することで互いに結合したXO4四面体のフレ-ムワ-クをベ-スにした微細孔のある結晶性無機ポリマ-である。ここで、Xは3価(例:Al、B??、...)または4価(例:Ge、Si、...)である。結晶性ケイ酸塩の結晶構造は四面体単位のネットワ-クが互いに結合した特定の順序によって定義される。結晶性ケイ酸塩の細孔開口部のサイズは細孔を形成するのに必要な四面体単位または酸素原子の数と、細孔内に存在する陽イオンの性質によって決まる。このゼオライトは高い内部表面積、一種または複数の個別のサイズを有する均一な細孔、イオン交換性、優れた熱安定性および有機化合物を吸着する能力で独自の組み合わせの特性を備えている。この結晶性ケイ酸塩の細孔は実用上重要な多くの有機分子とサイズが似ているため、反応物と生成物の出入りを制御し、触媒反応において特に選択性を示す。MFI構造の結晶性ケイ酸塩は以下の細孔径を有する双方向交差細孔システムを有している:[010]に沿った直線チャネル:0.53-0.56nm、[100]に沿った正弦波チャネル:0.51-0.55nm。MEL構造の結晶性ケイ酸塩は[100]に沿った0.53-0.54nmの細孔径を有する直線チャネルを有する双方向交差直線細孔システムを有している。
【0160】
より具体的な一つの実施形態では、結晶性珪酸塩触媒の脱アルミニウム化を蒸気中で触媒を加熱して結晶性珪酸塩フレ-ムワ-クからアルミニウムを除去し、触媒をアルミニウムの錯化剤と接触させて蒸気処理工程中に堆積したフレ-ムワ-クアルミナの細孔から除去することにより触媒からアルミニウムを抽出し、それによって触媒のシリコン/アルミニウム原子比を増加させることによって行う。本発明の触媒プロセスで使用するための高いシリコン/アルミニウム原子比を有する触媒は、市販の結晶性珪酸塩からアルミニウムを除去することによって製造される。例として、典型的な市販のシリカライトのシリコン/アルミニウム原子比は約120である。本発明では市販の結晶性珪酸塩を改質する。すなわち、蒸気処理によって結晶性珪酸塩フレ-ムワ-ク内の四面体アルミニウムを減少させ、アルミニウム原子をアモルファスアルミナの形態の八面体アルミニウムに変換する。この蒸煮工程では、アルミニウム原子が結晶質珪酸塩フレ-ムワ-ク構造から化学的に除去されてアルミナ粒子が形成される。これらの粒子はフレ-ムワ-ク内の細孔またはチャネルを部分的に閉塞する可能性がある。これは本発明の脱水プロセスを阻害する可能性がある。従って、蒸煮工程に続いて、結晶質珪酸塩を浸出(leaching)すなわち抽出して非晶質アルミナを細孔から除去し、ミクロ細孔容積を少なくとも部分的に回復することができる。水溶性アルミニウム錯体を形成して細孔から非晶質アルミナを除去する浸出工程による物理的除去によって結晶質珪酸塩の脱アルミニウムの全体的な効果が得られる。このように、本発明プロセスは、結晶質珪酸塩フレ-ムワ-クからアルミニウムを除去し、形成されたアルミナを細孔からから除去することによって触媒の細孔表面全体にわたって実質的に均一な脱アルミニウムを達成する。これにより触媒の酸性度が低下する。酸性度の減少は、結晶性珪酸塩フレ-ムワ-ク内に区画された細孔全体にわたって理想的に実質的に均一に起こる。蒸気処理に続いて、浸出で触媒を脱アルミニウム化するための抽出プロセスを行う。アルミナと可溶性錯体を形成する錯化剤(complexing agent)によって結晶性珪酸塩からアルミニウムを抽出するのが好ましい。錯化剤は、その水溶液であることが好ましい。この錯化剤はクエン酸、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、フマル酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸またはこれらの酸の塩(例えば、ナトリウム塩)またはこれらの酸または塩の2つ以上の混合物を含むことができる。錯化剤は硝酸、ハロゲン酸、硫酸、リン酸などの無機酸またはこれらの酸の塩またはこれらの酸の混合物を含むことができる。錯化剤はこれらの有機酸と無機酸の混合物またはこれらの対応する塩を含むこともできる。アルミニウム用の錯化剤は、好ましくはアルミニウムと水溶性錯体を形成し、特に蒸気処理工程中に結晶性ケイ酸塩から形成されるアルミナを除去する。特に好ましい錯化剤はアミン、好ましくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはその塩、特にそのナトリウム塩を含むことができる。好ましい実施形態では、フレ-ムワ-クのシリコン/アルミニウム比は、この方法で約150~1000、より好ましくは少なくとも200~1000の値に増加する。
【0161】
アルミニウム浸出工程の後、結晶性ケイ酸塩は例えば蒸留水で洗浄し、次いで好ましくは高温、例えば約110℃で乾燥することができる。
【0162】
さらに、本発明触媒の製造時にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を使用した場合には、分子ふるいをイオン交換工程にかけることができる。従来、イオン交換はアンモニウム塩または無機酸を使用して水溶液中で行われる。
【0163】
脱アルミニウム工程の後、触媒は、例えば400~800℃の温度および/または大気圧および/または1~10時間の範囲の時間で焼成することができる。
【0164】
脱水に使用する前に、結晶性ケイ酸塩をイオン交換、金属(アルカリ、アルカリ土類、遷移、または希土類元素に限定されない)による改質、外部表面の不動態化、リン化合物による改質、蒸気処理、酸処理またはその他の脱アルミニウム法またはこれらの組み合わせを含む種々の処理にかけることができる。
【0165】
例えば、一種または複数のシリカアルミノホスフェート分子ふるいは、AEI、CHA、およびAELファミリーのグループおよびこれらの任意の組み合わせから選択される。
好ましくは、AEIファミリーから選択される1つのシリカアルミノホスフェート分子ふるいはSAPO-18である。
好ましくは、CHAファミリーから選択される1つのシリカアルミノホスフェート分子ふるいはSAPO-34である。
好ましくは、AELファミリーから選択される1つのシリカアルミノホスフェート分子ふるいはSAPO-11である。
【0166】
SAPO分子ふるいはALPOをベ-スにし、本質的に1原子/原子のAl/P比を有する。合成中にシリコン前駆体が添加してALPOフレ-ムワ-クにシリコンを挿入して10員環ふるいの微細孔の表面に酸性部位を形成する。シリコン含有量は0.1~10原子%(Al+P+Siは100)の範囲である。
【0167】
別の特定の実施形態では、1種または複数の固体酸触媒は例えばペレットに成形される。好ましくは1種または複数のゼオライトを結合剤、好ましくは無機結合剤と混合し、所望の形状、例えばペレットに成形する。結合剤は本発明の脱水プロセスで使用される温度およびその他の条件に耐えるように選択される。結合剤は粘土、シリカ、金属ケイ酸塩、ZrO2および/または金属などの金属酸化物またはシリカと金属酸化物の混合物を含むゲルから選択される無機材料である。結晶性ケイ酸塩と組み合わせて使用??する結合剤自体が触媒活性である場合には、これは触媒の変換および/または選択性を変化させる可能性がある。結合剤として不活性材料を使用すると、それは変換量を制御するための希釈剤として適切に機能し、反応速度を制御するための他の手段を使用せずに製品を経済的かつ秩序正しく得ることができる。良好な粉砕強度を有する触媒を提供することが望ましい。これは、商業的使用において触媒が粉状材料に分解するのを防ぐことが望ましいためである。粘土または酸化物バインダ-は通常、触媒の破砕強度を向上させる目的でのみ使用されている。本発明触媒に特に好ましいバインダ-はシリカを含む。バインダ-の微細結晶性ケイ酸塩材料と無機酸化物マトリックスの相対的割合は幅広く変化し得る。典型的には、バインダ-含有量は複合触媒(複合触媒は一種または複数の固体酸材料とバインダ-との混合物である)の全重量に対して5~95重量%、より典型的には複合触媒の重量に対して20~50重量%の範囲である。このような結晶性ケイ酸塩と無機酸化物バインダ-の混合物は配合結晶性ケイ酸塩(formulated crystalline silicate)とも呼ばれる。触媒をバインダ-と混合する際に、触媒は球状または噴霧乾燥粉末に配合され得る。
【0168】
球状形状は回転造粒機または油滴技術によって作ることができる。さらに、触媒-バインダ-懸濁液を噴霧乾燥することによって小さな球状を作ることができる。配合された結晶性珪酸塩は空気または不活性ガス中で典型的には200~900℃の温度で1~48時間焼成する。
【0169】
バインダ-は、好ましくはアルミナなどのアルミニウム化合物を含まない。これは、上記のように、本発明で使用するための好ましい触媒は結晶性珪酸塩のシリコン/アルミニウム比を高めるために脱アルミニウム化されているためである。バインダ-中にアルミナが存在すると、結合工程がアルミニウム抽出工程の前に行われる場合、他の過剰アルミナが生じる。アルミニウム抽出後にアルミニウム含有バインダ-を結晶性珪酸塩触媒と混合すると、触媒が再アルミニウム化される。
【0170】
さらに、触媒とバインダ-の混合は、蒸煮および抽出工程の前または後のいずれでも行うことができる。
【0171】
別の実施形態では、触媒は、単斜晶構造を有する結晶性ケイ酸塩触媒であり、これは、例えば、ケイ素/アルミニウム原子比が80未満のMFIタイプの結晶性ケイ酸塩を用意し、結晶性ケイ酸塩を蒸気で処理し、その後、浸出剤の水溶液と接触させることによりゼオライトからアルミニウムを浸出させて、触媒中のケイ素/アルミニウム原子比を少なくとも180にし、それによって触媒が単斜晶構造を有するようにする工程を含む方法によって製造されている。好ましくは、蒸気処理工程では、温度は425~870℃、より好ましくは540~815℃、および/または水分圧は13~200kPaである。好ましくは、アルミニウムは、アルミナと可溶性錯体を形成する傾向があるアルミニウムの錯化剤の水溶液とゼオライトを接触させることにより浸出によって除去されて水溶性化合物を形成する。
【0172】
単斜晶系結晶性ケイ酸塩を製造するためのこの好ましい方法では、出発結晶性ケイ酸塩触媒が斜方晶系対称性を有するMFIタイプで、有機テンプレート分子なしで合成できる比較的低いシリコン/アルミニウム原子比を有し、蒸気処理とアルミニウム除去を行った後に得られる結晶性ケイ酸塩触媒は相対的に高いシリコン/アルミニウム原子比と単斜晶系対称性を有する。この結晶性ケイ酸塩はアルミニウム除去工程後にアンモニウムイオンでイオン交換することができる。このMFIタイプ結晶性ケイ酸塩は斜方晶系対称性を示し、空間群Pnmaにあることは当技術分野で知られている。この斜方晶系構造のX線回折図ではd=約0.365nm、d=約0.305nmおよびd=約0.300nmに1つのピ-クがある(欧州特許第EP0146524号公報を参照)。
【0173】
出発材料の結晶性ケイ酸塩のケイ素/アルミニウム原子比は80未満である。典型的なZSM-5触媒は、ZSM-5触媒の総重量に対して3.08重量%のAl23、0.062重量%のNa2Oを有し、100%斜方晶系である。この触媒のケイ素/アルミニウム原子比は26.9である。
【0174】
蒸気処理工程は既に説明した方法で実行される。蒸気処理によってアルミナを形成され、結晶性ケイ酸塩骨格中の四面体アルミニウムの量が減る。アルミニウム浸出または抽出工程も上記のように実行される。アルミニウム浸出工程では結晶性ケイ酸塩を酸性溶液または錯化剤を含む溶液に浸漬した後、好ましくは加熱し、例えば還流条件(凝縮蒸気が完全に戻る沸騰温度)で、例えば18時間の長時間加熱する。アルミニウム浸出工程の後、結晶性ケイ酸塩は、例えば蒸留水で洗浄し、次いで好ましくは高温、例えば約110℃で乾燥する。任意選択事項として、結晶性ケイ酸塩、例えば結晶性ケイ酸塩をNH4Cl水溶液に浸漬してアンモニウムイオンとイオン交換する。
【0175】
触媒は最後に高温、例えば少なくとも400℃の温度で焼成される。焼成時間は通常約3時間である。
【0176】
得られる結晶性ケイ酸塩は単斜晶系対称性を有し、空間群P21/nに属する。単斜晶系構造のX線回折図はd=約0.36、0.31および0.19nmの3つの二重線(doublets)を示す。この二重線の存在は、単斜晶系対称性に特有のものである。より具体的には、d=0.36付近の二重線はd=0.362nmとd=0.365nmの 2つのピ-クから構成される。対照的に、斜方晶構造はd=0.365nmに単一のピ-クを有する。
【0177】
単斜晶構造の存在は、d=0.36nm付近のX線回折線強度を比較することで定量化できる。純粋な斜方晶構造と純粋な単斜晶構造を有するMFI結晶性ケイ酸塩の混合物を調製する場合、混合物の組成は単斜晶度指数(%)として表すことができる。X線回折パタ-ンを記録し、単斜晶の場合はd=0.362nm、斜方晶の場合はd=0.365nmのピ-ク高さを測定し、それぞれImとIoと表記する。未知なサンプルの単斜晶度を測定するために必要な関係は単斜晶度指数とIm/Ioとの間の線形回帰線で与えられる。すなわち、単斜晶度指数%=(axIm/Io-b)x100である。ここでaおよびbは回帰パラメ-タである。
【0178】
このような単斜晶系結晶性ケイ酸塩は、結晶化工程中に有機テンプレート分子を使用せずに、シリコン/アルミニウム原子比が比較的高い、少なくとも100、好ましくは約200を超えるように製造することができる。さらに、単斜晶系結晶性ケイ酸塩の結晶子サイズは比較的小さく、通常は1ミクロン未満、より一般的には約0.5ミクロンに維持できる。これは出発結晶性ケイ酸塩の結晶子サイズが小さく、後のプロセス工程によって大きくならないためである。結晶子サイズを比較的小さく維持できるため、触媒活性もそれに応じて増加する。これは既知の単斜晶系結晶性ケイ酸塩触媒よりも有利である。既知の単斜晶系結晶性ケイ酸塩触媒は有機テンプレート分子の存在下で製造され、結晶子サイズが本質的に大きくなり、結晶子サイズが通常1ミクロンを超え、高いSi/Al比を有するので、本発明単斜晶系結晶性ケイ酸塩触媒は既知の単斜晶系結晶性ケイ酸塩触媒よりも有利です。
【0179】
触媒としての1種または複数のリン修飾ゼオライトは初期Si/Al比が有利には4~500であるMFI、MOR、MEL、HEUまたはFER結晶性アルミノケイ酸塩分子ふるいをベースにして調製できる。このレシピのP修飾ゼオライトは低いSi/Al比(30未満)の安価な結晶性ケイ酸塩をベースにして得ることができる。
【0180】
例として、上記のP修飾ゼオライト(P-modified zeolit)は、以下の順序を有するプロセスで製造できる:
- MFI、MEL、FER、MOR、HEUのH+またはNH4 +型からゼオライト(有利にはSi/Al比が4~500)を選択し、
- 選択されたゼオライトの総重量に対して少なくとも0.05重量%のPを有利に導入するのに有効な条件でPを導入し、
- 液体がある場合は、液体から固体を分離し、
- 任意工程の洗浄工程、乾燥工程または任意工程の乾燥工程後に洗浄工程を行い、
- 焼成工程を行う。
【0181】
上記のSi/Al比が低いゼオライトを、有機テンプレートを直接添加するか、せずに、事前に製造する。
【0182】
オプションとして、上記のP修飾ゼオライトを製造するプロセスは蒸気処理工程を含み、好ましくはその後に浸出工程が続く。このプロセスでは蒸気処理後に浸出を行う。ゼオライトを蒸気処理すると、アルミニウムがゼオライト骨格から離脱し、ゼオライトの細孔の内外に酸化アルミニウムとして残留することは当業者に一般に知られている。この変換はゼオライトの脱アルミニウム化として知られている。蒸気処理したゼオライトを酸溶液で処理すると骨格外の酸化アルミニウムが溶解する。この変化は浸出として知られている。次に、ゼオライトは、有利には濾過によって分離され、任意工程で洗浄される。濾過と洗浄の工程の間に乾燥工程を行うこともできる。洗浄後の溶液は、例えば濾過によって固体から分離するか、蒸発させることができる。
【0183】
リンは任意の手段で導入することができ、例えば下記〔特許文献2〕~〔特許文献3〕に記載のレシピに従って導入できる。
【特許文献2】米国特許第US3911041号明細書
【特許文献3】米国特許第US5573990号明細書
【特許文献4】米国特許第US6797851号明細書
【0184】
P修飾ゼオライトで作られた触媒はP修飾ゼオライト自体であってもよく、または完成した触媒製品に追加の硬度または触媒活性を与える他の材料と組み合わせたP修飾ゼオライト配合触媒であってもよい。
【0185】
上記の液体と固体の分離は0~90℃の温度での濾過、0~90℃の温度での遠心分離、蒸発または同等の方法で行うのが有利である。
【0186】
任意選択事項として、ゼオライトは分離後、洗浄前に乾燥できる。有利には、乾燥は40~600℃の温度で、および/または、有利には1~10時間行われる。この乾燥は静的条件またはガス流のいずれでも処理できる。空気、窒素または任意の不活性ガスを使用することができる。
【0187】
洗浄工程は濾過(分離工程)中に冷水(<40℃)で行うか、温水(>40℃、<90℃)で行うか、固体を水溶液(固体1kg/水溶液4リットル)で処理し、還流条件で0.5~10時間処理した後に、蒸発または濾過することで実行できる。
【0188】
最終焼成工程は、静的条件またはガス流のいずれかで400~700℃の温度で実施するのが有利である。空気、窒素または任意の不活性ガスを使用することができる。
【0189】
特定の一つの実施形態では、リン修飾ゼオライトは以下の工程を含むプロセスによって製造される:
- MFI、MEL、FER、MOR、HEUのH+またはNH4 +形態からゼオライト(有利にはSi/Al比が4~500、特定の実施形態では4~30)を選択し、
- 400~870℃の温度で、および/または、0.01時間~200時間の間、蒸気処理し、
- ゼオライトからAlの大部分を除去するのに有効な条件で、水性酸溶液で浸出し、
- 選択されたゼオライトの総重量に対して少なくとも0.05重量%のPを有利に導入するのに有効な条件でP源を含む水溶液を用いてPを導入し、
- 液体から固体を分離し、
- 任意工程の洗浄工程または任意工程の乾燥または任意工程の乾燥工程後の洗浄工程を行い、
- 焼成する。
【0190】
蒸気処理工程と浸出工程の間に、例えばシリカ粉末との接触および乾燥などの中間工程を任意に設けることができる。
【0191】
有利には、選択したMFI、MEL、FER、MOR、HEU(またはH+またはNH4 +形態のMFI、MEL、FER、MOR、HEU)は、初期原子比Si/Alが100以下であり、特定の実施形態では4~30である。H+またはNH4 +形態への変換はそれ自体公知であり、〔特許文献5〕〔特許文献6〕に記載されている。
【特許文献5】米国特許第US3911041号明細書
【特許文献6】米国特許第US5573990号明細書
【0192】
有利には、最終的なP含有量はリン改質ゼオライトの総重量に対して少なくとも0.05重量%、好ましくは0.3重量%~7重量%である。有利には、リン改質ゼオライトは、浸出によってゼオライトから抽出され除去されているため、親ゼオライトMFI、MEL、FER、MORおよびHEUに対して少なくとも10%未満のAlを含む。
【0193】
次に、ゼオライトは洗浄溶液から分離されるか、または洗浄溶液から分離せずに乾燥される。分離は有利には濾過によって行われる。次に、ゼオライトは、例えば400℃で2~10時間焼成される。
【0194】
蒸気処理工程の温度は好ましくは420~870℃、より好ましくは480~760℃である。圧力は好ましくは大気圧であり、および/または、水分圧を13~100kPaの範囲にできる。蒸気雰囲気は、好ましくは、蒸気雰囲気の全体積に対して、5~100体積%の蒸気と、0~95体積%の不活性ガスを含む。例えば、不活性ガスは窒素である。蒸気処理は、好ましくは0.01~200時間、有利には0.05~200時間、より好ましくは0.05~50時間実施される。この蒸気処理ではアルミナを形成することによって結晶性ケイ酸塩骨格中の四面体アルミニウムの量が減少する。
【0195】
浸出はクエン酸、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、フマル酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸またはこれらの酸の塩(例えば、ナトリウム塩)、またはこれらの酸または塩の2種以上の混合物を用いて行うことができる。他の無機酸は硝酸、塩酸、メタン硫酸、リン酸、ホスホン酸、硫酸などの無機酸またはこれらの酸の塩(例えば、ナトリウム塩またはアンモニウム塩)またはこれらの酸または塩の2種以上の混合物を含むことができる。
【0196】
残留リン含有量は、リン源を含む水性酸溶液中のリン濃度、乾燥条件および洗浄手順(ある場合)によって調整できる。濾過および洗浄工程の間に乾燥工程を行うこともできる。
【0197】
上記のリン修飾ゼオライトはそれ自体を触媒として使用することができる。別の実施形態では、完成した触媒製品に追加の硬度または触媒活性を与える他の材料と組み合わせ、配合して触媒にすることができる。リン修飾ゼオライトと混合することができる材料は各種の不活性または触媒活性材料または各種のバインダ-材料にすることができる。これらの材料にはカオリンやその他の粘土、様々な形態の希土類金属、リン酸塩、アルミナまたはアルミナゾル、チタニア、ジルコニア、石英、シリカまたはシリカゾルおよびこれらの混合物などの組成物が含まれる。これら成分は触媒を高密度化し、配合触媒の強度を高めるのに効果的である。触媒は球状に成形したり、噴霧乾燥粒子にすることもできる。最終触媒製品に含まれるP修飾ゼオライトの量は全触媒の10~90重量パ-セント、好ましくは全触媒の20~70重量パ-セントである。
【0198】
粒子を含むベッド-導電性粒子
一種または複数のアルコールを一種または複数のオレフィンに触媒脱水するのに必要な温度を達成するために、ベッドの粒子の総重量に対して少なくとも10重量%の粒子は導電性で、400℃で0.001Ohm・cm~500Ohm・cmの範囲の抵抗率を有する。
【0199】
例えば、ベッドの導電性粒子は一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体、一種または複数のリン酸電解質およびこれらの任意の混合物から選択される一種または複数であるか、またはこれらを含む。
【0200】
例えば、ベッドの導電性粒子の総重量に対してベッドの導電性粒子の50重量%~100重量%は一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体、一種または複数のリン酸電解質およびこれらの任意の混合物から選択される一種または複数であり、その含有量は好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらにより好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%である。
【0201】
一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子の総重量に対してベッドの導電性粒子の50重量%~100重量%はグラファイトおよび/またはカーボンブラックを含まない。好ましくは、60重量%~95重量%、より好ましくは70重量%~90重量%、さらに好ましくは75重量%~85重量%はグラファイトおよび/またはカーボンブラックを含まない。
【0202】
例えば、導電性粒子の含有量はベッドの粒子の総重量に対して10重量%~100重量%の範囲、好ましくは15重量%~95重量%、より好ましくは20重量%~90重量%、さらに好ましくは25重量%~80重量%、最も好ましくは30重量%~75重量%である。
【0203】
例えば、ベッドの総重量に対する導電性粒子の含有量はベッドの粒子の総重量に対して少なくとも12重量%であり、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、さらに好ましくは少なくとも25重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%または少なくとも40重量%または少なくとも50重量%または少なくとも60重量%である。
【0204】
例えば、導電性粒子は400℃で0.005~400オ-ム・cmの範囲の抵抗率を有し、この抵抗率は好ましくは400℃で0.01~300オ-ム・cmの範囲、より好ましくは400℃で0.05~150オ-ム・cmの範囲、最も好ましくは400℃で0.1~100オ-ム・cmの範囲である。
【0205】
例えば、導電性粒子は400℃で少なくとも0.005オ-ム・cmの抵抗率を有し、この抵抗率は好ましくは400℃で少なくとも0.01オ-ム・cm、より好ましくは400℃で少なくとも0.05オ-ム・cm、さらに好ましくは、400℃で少なくとも0.1オ-ム・cm、最も好ましくは400℃で少なくとも0.5オ-ム・cmである。
【0206】
例えば、導電性粒子は400℃で最大で400オ-ム・cmの抵抗率を有する。この抵抗率は好ましくは400℃で最大で300オ-ム・cm、より好ましくは400℃で最大で200オ-ム・cm、さらに好ましくは400℃で最大で150オ-ム・cm、最も好ましくは400℃で最大で100オ-ム・cmである。
【0207】
例えば、ベッドの粒子はASTM D4513-11に従ったふるい分けによって測定された平均粒子サイズが5~300μm、好ましくは10~200μm、より好ましくは30~150μmである。
【0208】
例えば、ベッドの導電性粒子はASTM D4513-11に従ったふるい分けによって測定された平均粒子サイズが5~300μmの範囲、好ましくは10~200μmの範囲、さらに好ましくは30~150μmの範囲である。
【0209】
電気抵抗はオ-ム計を使用した4プロ-ブDC法によって測定される。円筒形のペレットに成形された高密度の粉末サンプルをプロ-ブ電極間に配置する。抵抗率は測定された抵抗値Rから既知の式ρ=RxA/Lを適用して決定される。ここで、Lはプロ-ブ電極間の距離(通常は数ミリメ-トル)、Aは電極面積である。
【0210】
ベッドの導電性粒子は電子伝導性、イオン伝導性または電子イオン混合伝導性を示す。多くの耐火性化合物のイオン結合により、イオン拡散が可能になり、それに応じて、電界および適切な温度条件の影響下でイオン伝導が可能になる。
【0211】
電気伝導率σは電流密度jと電界Eの比例定数で、次式で表される:
σ=j/E=ΣcixZiqxμ
(ここで、ciはキャリア密度(数/cm3)、iは移動度(cm2/Vs)、Ziqはi番目の電荷キャリアの電荷(q=1.6x10-19C)である)
【0212】
金属、半導体、絶縁体間の桁違いの差は、通常、μではなくcの差に起因する。一方、電子伝導体とイオン伝導体の伝導率が高いのは、通常、電子種の移動度がイオン種の移動度よりもはるかに高いためである。
【0213】
抵抗加熱に使用できる最も一般的な材料は以下の9つのグループに分けられる:
(1) 1200~1400℃までの温度に対応する金属合金、
(2) 1600~1900℃までの炭化ケイ素(SiC)、二ケイ化モリブデン(MoSi2)、ケイ化ニッケル(NiSi)、ケイ化ナトリウム(Na2Si)、ケイ化マグネシウム(Mg2Si)、ケイ化白金(PtSi)、ケイ化チタン(TiSi2)、ケイ化タングステン(WSi2)などの非金属抵抗体、
(3) 炭素含有材料、
(4) 金属炭化物、
(5) 金属窒化物、
(6) 金属リン化物、
(7) 超イオン伝導体、
(8) リン酸電解質。
【0214】
1150~1250℃までの温度で使用される金属合金の第1のグループはFe含有量の低い(0.5~2.0%)Ni-Cr合金、好ましくはNi-Cr合金(80%Ni、20%Cr)および(70%Ni、30%Cr)で構成できる。Cr含有量を増やすと、高温での材料の酸化耐性が向上する。3つの成分を有する金属合金の第2のグループはFe-Ni-Cr合金で、これは酸化雰囲気での最大動作温度が1050~1150℃であるが還元雰囲気でも使用でき、Fe-Cr-Al(化学組成15~30%Cr、2~6%Al、残りFe)はCrとAlの酸化物の表面層によって腐食を防ぎ、酸化雰囲気で1300~1400℃で使用できる。非金属抵抗体としてのシリコンカーバイドは広範囲の抵抗率を示し、その抵抗率を合成方法やアルミニウム、鉄、酸化物、窒素、余分な炭素やシリコンなどの不純物の存在によって制御でき、非化学量論的なシリコンカーバイドになる。一般に、シリコンカーバイドは低温で高い抵抗率を示し、500~1200℃の範囲では良好な抵抗率を示す。別の実施形態では、非金属抵抗体はシリコンカーバイドを含まず、および/または、モリブデンジシリサイド(MoSi2)、ニッケルシリサイド(NiSi)、ナトリウムシリサイド(Na2Si)、マグネシウムシリサイド(Mg2Si)、プラチナシリサイド(PtSi)、チタンシリサイド(TiSi2)、タングステンシリサイド(WSi2)またはこれらの混合物を含むことができる。
【0215】
いくつかの格子不規則酸化物(sublattice disordered oxides)または硫化物は温度の上昇とともに高いイオン輸送能力を示す。これらはLiAlSiO4、Li10GeP212、Li3.6Si0.60.44、NaSICON(ナトリウム(Na)超イオン伝導体)(一般式Na1+xZr23-xSixO12、0<x<3、例えばNa3Zr2PSi212(x=2)またはナトリウムベータアルミナ(NaAl1117、Na1.6Al1117.3および/またはNa1.76Li0.38Al10.6217など)などの超イオン伝導体である。
【0216】
LiPO4またはLaPO4などのリン酸電解質も導電性粒子として使用できる。
【0217】
金属炭化物、金属窒化物および金属リン化物も導電性粒子として選択できる。例えば、金属炭化物は炭化鉄(Fe3C)、炭化モリブデン(MoCとMo2Cの混合物など)から選択される。例えば、一種または複数の遷移金属窒化物は窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化タングステン(W2N、WNおよびWN2の混合物など)、窒化バナジウム(VN)、窒化タンタル(TaN)および/または窒化ニオブ(NbN)から選択される。例えば、一種または複数の金属リン化物はリン化銅(Cu3P)、リン化インジウム(InP)、リン化ガリウム(GaP)、リン化ナトリウム(Na3P)、リン化アルミニウム(AlP)、リン化亜鉛(Zn32)および/またはリン化カルシウム(Ca32)から選択される。
【0218】
本発明の好ましい一つの実施形態は、高温で低い抵抗率しか示さない導電性粒子は、電気による抵抗加熱に代わるまでの十分に高い温度に達する前まで外部手段によって加熱するか、または低温で十分に低い抵抗率の固体と混合し、その混合物の抵抗率によって流動床を所望の反応温度まで加熱することができる。
【0219】
例えば、ベッドの導電性粒子はシリコンカーバイドであるか、またはシリコンカーバイドを含む。例えば、ベッドの導電性粒子の総重量に対して、少なくとも10重量%の導電性粒子がシリコンカーバイド粒子で、400℃で0.001オ-ム・cm~500オ-ム・cmの範囲の抵抗率を有する。
【0220】
ベッドの導電性粒子がシリコンカーバイドであるか、シリコンカーバイドを含む実施形態では、流動床反応装置で吸熱反応を行う前に、流動床反応装置をガス流で予熱する工程を行うのが当業者には有利である。有利には、このガス流は不活性ガスすなわち窒素、アルゴン、ヘリウム、メタン、水素または蒸気の流である。ガス流の温度は少なくとも300℃、または少なくとも350℃または少なくとも400℃または少なくとも450℃、および/または、最大で500℃にすることができる。有利には、ガス流の温度は300℃~500℃の間にする。不活性ガスの上記ガス流は流動化ガスとしても使用することができる。不活性ガスの上記ガス流の予熱は電気エネルギーの使用を含む従来の手段によって行われる。ベッドの予熱に使用されるガス流の温度は反応温度に達する必要はない。
【0221】
実際、常温でのシリコンカーバイドの抵抗率は高いので、反応の開始を容易にするためには流動床を外部手段で加熱するのが有用である。流動床反応装置はは加熱手段を有しないのが好ましい。ベッドが所望の温度に加熱された時には高温ガス流の使用は必要なくなる。
【0222】
しかし、一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子がシリコンカーバイド粒子とシリコンカーバイド粒子とは異なる導電性粒子との混合物であるか、またはこれらを含む。
【0223】
ベッドにシリコンカーバイド粒子とは異なる導電性粒子が存在する場合にも予熱工程を使用することができる。例えば、ベッドの導電性粒子中のシリコンカーバイドの含有量がベッドの粒子の全重量に対して80重量%以上、例えば85重量%以上、例えば90重量%以上、例えば95重量%以上、例えば98重量%以上、例えば99重量%以上である場合に、予熱工程を使用することができる。しかし、ベッド中のシリコンカーバイド粒子の含有量が何であっても、予熱工程を使用することはできる。ベッドの導電性粒子がシリコンカーバイド粒子とシリコンカーバイド粒子とは異なる導電性粒子との混合物であるか、またはそれを含む実施形態では、ベッドの導電性粒子は、ベッドの導電性粒子の全重量に対して10重量%~99重量%のシリコンカーバイド粒子を含むことができる。その含有量は好ましくは15重量%~95重量%、より好ましくは20重量%~90重量%、さらに好ましくは25重量%~80重量%、最も好ましくは30重量%~75重量%である。
【0224】
例えば、ベッドの導電性粒子はシリコンカーバイド粒子とシリコンカーバイド粒子とは異なる導電性粒子との混合物であるか、またはそれらを含み、ベッドの導電性粒子はベッドの導電性粒子の総重量に対して少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、さらに好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%のシリコンカーバイド粒子を含む。
【0225】
一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子はベッドの導電性粒子の総重量に対して10重量%~90重量%、好ましくは15重量%~95重量%、より好ましくは20重量%~90重量%、さらに好ましくは25重量%~80重量%、最も好ましくは30重量%~75重量%のシリコンカーバイド粒子とは異なる導電性粒子を含む。
【0226】
しかし、混合物中のシリコンカーバイド粒子とは異なる導電性粒子の含有量を極めて低く保つことが重量であろう。従って、一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子はシリコンカーバイド粒子とシリコンカーバイド粒子とは異なる導電性粒子との混合物であるか、またはこれらを含み、ベッドの導電性粒子はベッドの導電性粒子の総重量に対してシリコンカーバイドとは異なる導電性粒子を1重量%~20重量%、好ましくは2重量%~15重量%、より好ましくは3重量%~10重量%、さらに好ましくは4重量%~8重量%含む。
【0227】
例えば、ベッドの導電性粒子はシリコンカーバイド粒子とシリコンカーバイド粒子とは異なる粒子との混合物であるか、またはそれらを含み、シリコンカーバイド粒子とは異なる粒子はモリブデンジシリサイド粒子であるか、またはそれを含む。
【0228】
従って、一つの実施形態では、導電性粒子はシリコンカーバイド粒子とモリブデンジシリサイド粒子との組み合わせである。この導電性粒子は流動床反応装置に通電すると加熱され、流動化によって反応器内の温度の上昇および/または維持に寄与する。二ケイ化モリブデンのジュ-ル熱にとって反応物および/または流動床反応装置内に存在する他の粒子の加熱を加速することができる。
【0229】
二ケイ化モリブデンの平均粒子サイズは、ASTM D4513-11に従ったふるい分けで測定して1~400μmの範囲であるのが好ましく、5~300μmの範囲であるのが好ましく、10~200μmの範囲であることがより好ましく、30~150μmの範囲であるのが最も好ましい。
【0230】
ベッド内に二ケイ化モリブデン粒子が存在することで、予熱工程の有無にかかわらず、好ましくは予熱工程なしで、本発明プロセスを適用できる。実際、流動床反応装置に電気が流されると、モリブデン二ケイ化物粒子が加熱され、流動化によって反応器内の所望の温度の上昇および/または維持に貢献する。
【0231】
炭化ケイ素粒子
例えば、炭化ケイ素は焼結炭化ケイ素、窒化物結合炭化ケイ素、再結晶炭化ケイ素、反応結合炭化ケイ素およびこれらの混合物から選択される。
【0232】
焼結SiC(SSiC)は、重量比1%未満の焼結助剤(通常はホウ素)を含む自己結合材料である。
【0233】
再結晶炭化ケイ素(RSiC)は添加物なしで蒸発凝縮プロセスによって焼結された高純度SiC材料である。
【0234】
窒化物結合炭化ケイ素(NBSC)は、炭化ケイ素粒子とともに微細なシリコン粉末を加えるか、最終的には鉱物添加物の存在下で窒素炉で焼結することによって作られる。炭化ケイ素は、窒化中に形成される窒化ケイ素相(Si34)によって結合される。
【0235】
反応結合シリコンカーバイド(RBSC)はシリコン化シリコンカーバイドまたはSiSiCとも呼ばれ、多孔質炭素またはグラファイトと溶融シリコンとの化学反応によって製造されるシリコンカーバイドの一種である。シリコンが炭素と反応してシリコンカーバイドを形成し、シリコンカーバイド粒子を結合する。余分なシリコンはボディ内の残りの細孔を埋め、高密度のSiC-Si複合材料を生成する。シリコンの痕跡が残っているため、反応結合シリコンカーバイドはシリコン化シリコンカーバイド(siliconized silicon carbide)と呼ばれることがよくある。このプロセスは反応結合、反応焼結、自己結合、または溶融浸透などさまざまな名前で知られている。
【0236】
一般に、高純度SiC粒子の抵抗率は1000Ohm.cmを超えるが、焼結、反応結合、窒化結合したものはSiC相の不純物に応じて約100~1000の抵抗率を示す。バルク多結晶SiCセラミックスの電気抵抗率は焼結添加剤と熱処理条件に応じて広範囲の抵抗率を示す(〔非特許文献6〕〔非特許文献7〕)。高純度SiCポリタイプは、バンドギャップエネルギーが大きいため、高い電気抵抗率(>106Ω・cm)を有するが、SiCの電気抵抗率はドーピング不純物の影響を受ける。NとPはn型ドーパントとして機能し、SiCの抵抗率を低下させるが、Al、B、Ga、Scはp型ドーパントとして機能する。Be、O、Vをド-プしたSiCは絶縁性が非常に高くなる。NはSiCの電気伝導性を向上させる最も効率的なドーパントと考えられる。SiCのNドーピング(抵抗率を下げるため)では、Y23およびY23-REM23(REM、希土類金属=Sm、Gd、Lu)が焼結添加剤として使用され、Nドナーを含む導電性SiC粒子を効率的に成長させる。SiC粒子のNドーピングは、窒化物(AlN、BN、Si34、TiN、ZrN)または窒化物とRe23の組み合わせ(AlN_REM23(REM=Sc、Nd、Eu、Gd、Ho、Er)またはTiN_Y23)の添加によって促進される。
【非特許文献6】Journal of the European Ceramic Society, Volume 35, Issue 15, December 2015, Pages 4137;
【非特許文献7】Ceramics International, Volume 46, Issue 4, March 2020, Pages 5454
【0237】
設備
「底部」および「上部」という用語は設備または流動床反応装置の一般的な方向に関して理解される。従って、「底部」は垂直軸に沿って「上部」よりも地面に近いことを意味する。異なる図において同じ参照は同一または類似の要素を示す。
【0238】
図1〕は従来の流動床反応装置1を示し、これは反応容器3、アルコール含有原料を導入するための底部流体ノズル5、材料投入用の任意の入口7、材料排出用の任意の出口9、ガス出口11およびベッド15を含む。〔図1〕の流動床反応装置1では、例えば流動化ガスおよびアルコール含有原料を反応装置に供給するラインのレベルに配置された加熱手段17を使用して、化石燃料の燃焼によって原料を予熱することによって熱が供給される。
【0239】
以下、本発明の設備を〔図2〕~〔図5〕を参照して説明する。図を簡単にするために、当業者に公知の流動床反応装置で使用される内部デバイス、例えばバブルブレーカー、デフレクター、粒子終結装置、サイクロン、セラミック壁コーティング、熱電対など図示していない。
【0240】
図2〕は、加熱ゾーンと反応ゾーンが同じである流動床反応装置19を備えた第1の設備を示し、この流動床反応装置19は、反応容器3、流動化ガスおよびアルコール含有原料を導入するための底部流体ノズル21、材料投入用の任意の入口7、材料排出用の任意の出口9およびガス出口11を有する。〔図2〕の流動床反応装置19にはベッド25中に沈められた2つの電極13が示されている。
【0241】
図3〕は、少なくとも1つの流動床反応装置19が加熱ゾーン27と反応ゾーン29を備え、加熱ゾーン27が底部ゾーン、反応ゾーン29が加熱ゾーン27の上部にある実施形態を示している。1つまたは複数の流体ノズル23は、ディストリビュータ33から反応ゾーンにアルコール含有原料を供給する。〔図3〕から分かるように、1つまたは複数の流体ノズル23はディストリビュータ33に接続され、ベッド25内にアンモニア含有原料を分配することができる。
【0242】
図4〕は、少なくとも1つの流動床反応装置18が少なくとも2つのゾーンを備え、外側ゾーンが加熱ゾーン27で内側ゾーンが反応ゾーン29である設備を示している。ベッド25の加熱された粒子は1つまたは複数の開口部41によって外側ゾーンから内側ゾーンに送られ、アルコール含有原料および/または蒸気と混合される。粒子は反応ゾーンの終わりの所で反応生成物から分離され、加熱ゾーンに移される。
【0243】
図5〕は、少なくとも2つの流動床反応装置(37、39)が互いに接続されていれる設備を示し、ここでは、少なくとも1つの流動床反応装置は加熱ゾーン27で、少なくとも1つの流動床反応装置は反応ゾーン29である。
【0244】
本発明は、少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールを一種または複数のオレフィンに吸熱触媒脱水するプロセスで使用される設備を提供する。本発明設備は以下のi)~iii):
i) 少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)を備えた通電流動床ユニット、このユニットは以下を含む:
- 少なくとも2つの電極13、
- 反応容器3、
- 少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)内に少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールと、任意成分の一種または複数の不活性ガスおよび/または一種または複数の希釈ガスを含むアルコール含有原料を導入するための1つまたは複数の流体ノズル(21、23)、および
- 粒子を含むベッド25、
を含み、ベッド25の粒子は導電性粒子と触媒組成物の粒子を含み、ベッド25の粒子の総重量に対してベッドの粒子の少なくとも10量%は導電性で、400℃で0.001Ohm・cm~500Ohm・cmの範囲の抵抗率を有し、触媒組成物は一種または複数の固体酸触媒を含む。
【0245】
特に、本発明は、少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールを一種または複数のオレフィンに吸熱触媒脱水する設備を提供し、この設備は以下:
i) 以下を有する、少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)を備えた通電流動床ユニット:
- 少なくとも2つの電極(13)、
- 反応容器(3)、
- 少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)内に、少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールと、任意成分の一種または複数の不活性ガスおよび/または一種または複数の希釈ガスを含むアルコール含有原料を導入するための一つまたは複数の流体ノズル(21、23)、
- 粒子を含むベッド(25)、
ii) 生成物回収ユニット、
iii) オレフィンオリゴマー化ユニット、芳香族アルキル化ユニットまたはオレフィンオリゴマー化および芳香族アルキル化ユニットから選択されるオレフィン変換ユニット、
を含み、
上記の生成物回収は通電流動床ユニットの下流、オレフィン変換ユニットの上流にあり、
ベッドの粒子は導電性粒子と触媒組成物の粒子とを含み、ベッドの粒子の総重量に対してベッドの粒子の少なくとも10重量%は導電性で、400℃の温度で0.001オ-ム・cm~500オ-ム・cmの範囲の抵抗率を有し、触媒組成物は一種または複数の固体酸触媒を含む点に特徴がある。
【0246】
好ましくは、少なくとも2つの電極はタンタルを含むか、タンタルで作られる。
【0247】
工程(d)で回収された1種または複数のオレフィンに対して実行することができるオリゴマー化工程(e)すなわちオレフィンオリゴマー化ユニットであるオレフィン変換ユニットに関する詳細は下記の〔非特許文献8〕および〔非特許文献9〕に記載されている。
【非特許文献8】「Applications of light olefin oligomerization to the production of fuels and chemicals」(Nicholas C. P., Applied Catal. A: General, 2017, 543, 82-97)
【非特許文献9】「Hydrocarbon Biorefinery」(ISBN 978-0-12-823306-1).
【0248】
工程(d)で回収された1種または複数のオレフィンに対して実行できる芳香族化合物のアルキル化工程(f)すなわち芳香族アルキル化ユニットであるオレフィン変換ユニットに関する詳細は下記の〔非特許文献10〕および〔非特許文献11〕に記載されている。
【非特許文献10】「Alkylation of aromatics with ethylene and propylene: recent developments in commercial processes」(Degnan Jr. T. F., et al., Applied Catal. A: General, 2001, 221, 283-294)
【非特許文献11】「Recent advances in the industrial alkylation of aromatics: new catalysts and new processes」(Perego C., et al., Catal. Today, 2002, 73, 3-22).
【0249】
芳香族アルキル化ユニットは、工程(d)で回収された1種または複数のオレフィンの他に、工程(f)で提供される1種または複数の芳香族化合物の供給源を受け取るように設計される。有利には、工程(d)で回収された1種または複数のオレフィンに対するオリゴマー化工程(e)と工程(f)で提供される1種または複数の芳香族化合物のアルキル化工程(g)を例えばオレフィンオリゴマー化ユニットおよび芳香族アルキル化ユニットである同じオレフィン変換ユニット内で同時に行うことができる。
【0250】
オレフィンをオレフィンオリゴマー化ユニットまたは芳香族アルキル化ユニットまたはオレフィンオリゴマー化および芳香族アルキル化ユニットで変換した後にオレフィン結合が残っている場合にはそれらを水素化する、特に、オレフィン部分を有する化合物を生成するオリゴマー化工程(e)の後に水素化するのが有用である。これが任意構成の水素化ユニットをオレフィン変換ユニットの下流に配置する理由である。
【0251】
例えば、ベッドの導電性粒子は一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体、一種または複数のリン酸電解質およびこれらの任意の混合物から選択される一種または複数であるか、またはこれらを含む。
【0252】
一つの実施形態では、ベッドの導電性粒子の総重量に対してベッドの導電性粒子の50重量%~100重量%は一種または複数の金属合金、一種または複数の非金属抵抗体、一種または複数の金属炭化物、一種または複数の金属窒化物、一種または複数の金属リン化物、一種または複数の炭素含有粒子、一種または複数の超イオン伝導体、一種または複数のリン酸電解質およびこれらの任意の混合物から選択される一種または複数であり、この含有量は好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、さらに好ましくは80重量%~100重量%、最も好ましくは90重量%~100重量%である。
【0253】
例えば、1つの電極は一つの浸潜(submerged)中央電極であるか、または少なくとも1つの反応装置(18、19、37)の反応容器3内の2つの浸潜電極13である。
【0254】
例えば、流動化ガスは一種または複数の希釈ガスである。
【0255】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)には加熱手段がない。例えば、少なくとも1つの流動床反応装置にはオーブン、ガスバーナー、ホットプレートまたはこれらの任意の組み合わせから選択される加熱手段がない。例えば、全ての流動床反応装置にはオーブン、ガスバーナー、ホットプレートまたはこれらの任意の組み合わせから選択される加熱手段がない。好ましい実施形態では、少なくとも2つの電極と粒子を含むベッドとを含む少なくとも1つの流動床反応装置にはパッキングがない。
【0256】
例えば、反応容器3は少なくとも100cmまたは少なくとも200cmまたは少なくとも400cmの内径を有する。このような大きな直径にすることで、例えば、反応流の重量空間速度(weight hourly space velocity)を0.1h-1~100h-1、好ましくは1.0h-1~50h-1、より好ましくは1.5h-1~10h-1、さらに好ましくは2.0h-1~6.0h-1にして工業規模で化学反応を実行することができる。重量空間速度は反応流の質量流量と流動床内の固体粒子状物質の質量との比として定義される。
【0257】
少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37)は少なくとも2つの電極13を備える。例えば、1つの電極は流動床反応装置の外壁と電気的に接続され、もう1つの電極は流動床25内に沈められる。または、両方の電極13が流動ベッド25内に沈められる。少なくとも2つの電極13は電気的に接続され、電源(図示せず)に接続できる。
【0258】
例えば、少なくとも1つの流動床反応装置は少なくとも1つの電極を冷却するように配置された少なくとも1つの冷却装置を備える。
【0259】
流動床反応装置の使用ときには最大で300V、好ましくは最大で250V、より好ましくは最大で200V、さらに好ましくは最大で150V、最も好ましくは最大で100V、さらに最も好ましくは最大で90Vまたは最大で80Vの電位が印加される。
【0260】
電流のパワ-は調整できるので反応器床内の温度は容易に調整できる。
【0261】
好ましくは、反応器容器3は、耐腐食性材料で作られた反応器壁を備え、有利には、反応器壁材料はニッケル(Ni)、SiAlONセラミック、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、正方晶多結晶ジルコニア(TZP)および/または正方晶多結晶ジルコニア(TPZ)を含む。SiAlONセラミックはシリコン(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)および窒素(N)の元素をベ-スにしたセラミックである。これは窒化ケイ素(Si34)の固溶体であり、Si-N結合がAl-N結合およびAl-O結合に部分的に置き換えられている。
【0262】
例えば、反応容器3は炭化ケイ素と二珪化モリブデンの混合物である電気抵抗材料で作られ、この反応容器3の電気抵抗材料は電気抵抗材料の全重量に対して10重量%~99重量%の炭化ケイ素を含み、その含有量は好ましくは15重量%~95重量%、より好ましくは20重量%~90重量%、さらに好ましくは25重量%~80重量%、最も好ましくは30重量%~75重量%である。
【0263】
例えば、反応容器3は炭化ケイ素と二珪化モリブデンの混合物である電気抵抗材料で作られる。
【0264】
例えば、反応容器3は導電性ではない。例えば、反応容器3はセラミック製である。
【0265】
例えば、少なくとも1つの流動床反応装置(18、19、37、39)は、加熱ゾーン27および反応ゾーン29、分配器31から少なくとも加熱ゾーンに流動化ガスを供給する一つまたは複数の流体ノズル21、分配器33から反応ゾーンにアルコール含有原料を供給する一つまたは複数の流体ノズル23および必要に応じて用いられる加熱ゾーン27から反応ゾーン29に粒子を輸送する手段41および反応ゾーン29から加熱ゾーン27に粒子を輸送するオプションの手段35を含む。
【0266】
例えば、〔図3〕に示すように、少なくとも1つの流動床反応装置は、加熱ゾーン27が流動床反応装置19の底部にあり、反応ゾーン29が流動床反応装置19の上部にある単一の流動床反応装置19である。好ましくは、この設備は、2つのゾーン(27、29)の間または反応ゾーン29にアルコール含有原料を注入するための一つまたは複数の流体ノズル23を備える。流動床反応装置19は、さらに、任意構成の材料投入用の入口7、任意構成の材料排出用の出口9およびガス出口11を備える。好ましくは、流動床反応装置19は加熱手段を備えない。例えば、電極13は流動床反応装置19の底部すなわち加熱ゾーン27に配置される。例えば、流動床反応装置19の上部すなわち反応ゾーン29には電極がない。流動床反応装置19は、例えば流動床反応装置19の上部と底部との間に配置されたラインによって、反応ゾーン29から加熱ゾーン27に粒子を輸送する手段35をオプションで備える。
【0267】
例えば、〔図4〕に示すように、本発明設備は横方向に互いに連結された少なくとも2つの流動床ゾーン(27、29)を備え、このうち少なくとも1つの流動床ゾーン27は加熱ゾーンであり、少なくとも1つの流動床ゾーン29は反応ゾーンである。例えば、加熱ゾーン27は反応ゾーン29を取り囲んでいる。好ましくは、本発明設備は、分配器33によって少なくとも1つの反応ゾーン29にアルコール含有原料および/または蒸気を注入するように配置された一つまたは複数の流体ノズル23を備える。流動床ゾーン(27、29)は、さらに、任意構成の材料投入用の入口7およびガス出口11を備える。好ましくは、加熱ゾーン27である少なくとも1つの流動床ゾーンおよび/または反応ゾーン29である少なくとも1つの流動床ゾーンには加熱手段がない。例えば、反応ゾーン29である少なくとも1つの流動床ゾーンには任意構成の材料排出用出口9が示してある。一つまたは複数の流体ノズル21はディストリビュータ31から少なくとも加熱ゾーンに流動化ガスを供給する。加熱された粒子は一つまたは複数の入口デバイス41によって加熱ゾーン27から反応ゾーン29に輸送され、ダウンカマ-を含む一つまたは複数の手段35によって分離された粒子が反応ゾーン29から加熱ゾーン27へ戻される。加熱ゾーン27の流動化ガスは蒸気、水素、二酸化炭素、メタン、アルゴン、ヘリウム、窒素から選択される一種または複数の不活性希釈剤にすることができる。この構成では加熱ゾーンの流動化ガスに粒子から堆積コークスを燃焼させるための空気または酸素を含ませることもできる。例えば、〔図5〕に示すように、この設備は互いに連結された少なくとも2つの流動床反応装置(37、39)を備え、少なくとも1つの流動床反応装置37は加熱ゾーン27であり、少なくとも1つの流動床反応装置39は反応ゾーン29である。好ましくは、この設備はアルコール含有原料および/または蒸気を反応ゾーン29である少なくとも1つの流動床反応装置39に注入するように配置された一つまたは複数の流体ノズル23を備える。流動床反応装置(37、39)は、さらに、任意構成の材料投入用入口7およびガス出口11を備える。好ましくは、加熱ゾーン27である少なくとも1つの流動床反応装置37および/または反応ゾーン29である少なくとも1つの流動床反応装置39は加熱手段を備えない。例えば、反応ゾーン29である少なくとも1つの流動床反応装置39には任意構成の材料排出用の出口9が示されている。加熱された粒子は入口装置41によって必要に応じて加熱ゾーン27から反応ゾーン29に輸送され、反応ゾーンの後で分離された粒子は装置35によって反応ゾーンから加熱ゾーンに戻される。加熱ゾーンの流動化ガスは蒸気、水素、二酸化炭素、メタン、アルゴン、ヘリウム、窒素から選択される一種または複数の不活性希釈剤にすることができる。この構成では加熱ゾーンの流動化ガスに粒子から堆積コークスを燃焼させるための空気または酸素を含ませることもできる。
【0268】
例えば、加熱ゾーン27である少なくとも1つの流動床反応装置37は少なくとも2つの電極13を含み、反応ゾーン29である少なくとも1つの流動床反応装置39には電極がない。
【0269】
例えば、少なくとも2つの流動床反応装置(37、39)は粒子を加熱ゾーン27から反応ゾーン29に輸送するのに適した一つまたは複数のライン等の手段41によって互いに連結されている。
【0270】
例えば、少なくとも2つの流動床反応装置(37、39)は粒子を反応ゾーン29から加熱ゾーン27に戻すのに適した一つまたは複数のライン等の手段35によって互いに連結されている。
【0271】
少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールの一種または複数のオレフィンへの触媒脱水
例えば、少なくとも2つの炭素原子を有する一種または複数のアルコールの一種または複数のオレフィンへの触媒脱水は200℃~500℃、好ましくは240℃~490℃、より好ましくは260℃~480℃の温度で行われる。
【0272】
例えば、少なくとも2つの炭素原子を有する1種または複数のアルコールの1種または複数のオレフィンへの触媒脱水は0.05MPa~3MPa、好ましくは0.05MPa~1.5MPa、より好ましくは0.12MPa~0.8MPa、または0.12MPa~0.5MPaの範囲の圧力で行われる。この圧力は、達成が容易で経済的な中程度の圧力であると考えられる。
【0273】
例えば、アルコール含有原料の部分圧は0.12MPa~0.7MPaの範囲である。
【0274】
例えば、少なくとも2つの炭素原子を有する1種または複数のアルコールの1種または複数のオレフィンへの触媒脱水は反応流の存在下で行われ、反応流の重量空間速度は0.1h-1~100h-1、好ましくは1.0h-1~50h-1、より好ましくは1.5h-1~10h-1、さらに好ましくは2.0h-1~6.0h-1である。
【0275】
例えば、反応器の流動床セクションにおけるアルコール含有原料の滞留時間は温度が260℃~500℃で0.1~10秒または1~10秒の範囲にすることができる
【0276】
試験および判定方法
触媒の結晶構造を判定するためにX線回折(XRD)を使用した。これは、合成された一種または複数のゼオライトの粉末サンプルに対して実行され、CuKα単色放射線(λ=1.5418ナ、45kV、40mA)を備えたPANalytical X'Pert Pro回折計を使用して行った。サンプルをステップサイズ0.02°で5~50°2θの範囲でスキャンした。ゼオライト粒子の単位格子パラメ-タはJANA2006ソフトウェアを使用し、Bailプロファイル(Bail profile refinement)と擬似Voigtプロファイル関数(pseudo-Voigt profile function)とに基づいた計算によってX線回折デ-タから決定した。さらに、観察されたパタ-ンと構造モデルの計算パタ-ンの差を最小限に抑えるために、JANA2006ソフトウェアを使用してフレ-ムワ-クとフレ-ムワ-ク外構造(構造タイプと原子位置)を求め、定量化した。
【0277】
昇温脱離(Temperature Programmed Desorption、TPD)は表面温度が上昇したときに表面から脱離した分子を観察する方法で、これは〔図6〕に示す加熱シ-ケンスI、II、IIIに従って実行した。各加熱シ-ケンスはそれぞれ活性化、飽和、分析に対応する。簡単に説明すると、最初のステップ(〔図6〕でIでマーク)では、ヘリウム流(速度50cc/分)下で室温(25℃)から始めて温度を20℃/分の速度で徐々に600℃まで上げる。600℃で1時間後に固体酸サンプルは活性化されていると見なし、温度を10℃/分の速度で徐々に100℃まで下げる。次に、2番目のステップ(〔図6〕でIIでマーク)で3時間にわたって温度を100℃に維持し、最初の1時間で10%のアンモニア(NH3)をヘリウム流に追加する(30cc/分に下げる)。これによって固体酸の表面は表面に吸着されたるアンモニア分子で飽和される。温度閾値100℃の最後の2時間でヘリウムの初期流量が再開する。次に、第3のステップ(〔図6〕でIIIでマーク)では、アンモニアを脱着するために、温度を10℃/分の速度で再び600℃まで上昇させる。サンプルをさらに1時間、600℃に維持する。この方法を実行するために異なるパラメ-タ(時間、温度、流量、キャリアガス)を使用できるということは当業者には理解できよう。熱伝導率検出器を使用してアンモニアの量を測定することで固体酸へのアンモニアの各吸着条件を認識でき、酸部位の数などの固体酸の表面の詳細を取得できる。
【0278】
X線蛍光分光法(XRF)
X線蛍光分光法(XRF)測定は、Rh源(15kV、500μA)とシリコンドリフト検出器を備えたOrbis Micro-EDXRF分光計を使用して実施した。XRF測定は、材料そのもの(溶解していない状態)に対して実施した。これをSiO2とAl23の量およびそれに続くSi/Al原子比の測定に利用した。
【0279】
2 吸着測定
2吸着分析は窒素吸着/脱着等温線を決定するためにMicrometrics ASAP 2020容積吸着分析装置を使用して使用した。サンプルは測定前に真空下で350℃で一晩脱ガスした。この測定から固体酸触媒の比表面積を決定した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】