(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】医薬組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/22 20060101AFI20250128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250128BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250128BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20250128BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20250128BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20250128BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20250128BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20250128BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20250128BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20250128BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20250128BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
A61K38/22
A61P43/00 111
A61P11/00
A61P29/00
A61K9/19
A61K9/12
A61K47/26
A61K47/22
A61K47/18
A61K47/06
A61K47/04
A61K9/72
A61P7/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541899
(86)(22)【出願日】2023-01-11
(85)【翻訳文提出日】2024-09-03
(86)【国際出願番号】 US2023010549
(87)【国際公開番号】W WO2023137033
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】503208552
【氏名又は名称】マンカインド コーポレイション
【住所又は居所原語表記】1 Casper Street, Danbury CT 06810, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ソラコ、ライアン ディー
(72)【発明者】
【氏名】フリーマン、ジョン ジェイ ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ペナロラ、ローガン ディー
(72)【発明者】
【氏名】グラント、マーシャル エル
(72)【発明者】
【氏名】ストーウェル、グレイソン ダブリュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA29
4C076BB22
4C076BB27
4C076CC15
4C076CC30
4C076DD21
4C076DD51
4C076DD58
4C076DD67
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF63
4C076GG06
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084CA17
4C084CA30
4C084CA32
4C084DB01
4C084MA05
4C084MA13
4C084MA23
4C084MA44
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA57
4C084NA03
4C084NA13
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZC031
4C084ZC032
4C084ZC412
(57)【要約】
肺疾患の治療における送達のためのペプチド及びタンパク質、低分子並びに方法を含む、安定化された生体分解性物質を送達するための安定な液体、懸濁液及び乾燥粉末組成物並びに方法が本明細書に開示される。具体的には前記組成物は、炎症、急性及び慢性の肺損傷及び肺浮腫を含む、呼吸器疾患及び/又は肺疾患を治療するための肺吸入用血管作動性腸ペプチドを含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管作動性腸ペプチド、その誘導体、その類似体、又はその塩、1又は複数のアミノ酸、1又は複数の抗酸化剤、及び/又は、医薬的に許容される担体又は賦形剤を含む吸入可能な乾燥粉末医薬製剤を含む、肺疾患治療用の乾燥粉末。
【請求項2】
前記血管作動性腸ペプチドは治療セッションあたり最大300μgである、請求項1に記載の乾燥粉末。
【請求項3】
前記医薬的に許容される担体は、マンノース、マンニトール、トレハロース及びソルビトールからなる群から選択される糖である、請求項1に記載の乾燥粉末。
【請求項4】
前記医薬的に許容される担体はマンニトールである、請求項1に記載の乾燥粉末。
【請求項5】
前記医薬的に許容される担体はジケトピペラジンである、請求項1に記載の乾燥粉末。
【請求項6】
前記ジケトピペラジンは、フマリルジケトピペラジン又はスクシニルジケトピペラジンである、請求項4に記載の乾燥粉末。
【請求項7】
前記1又は複数のアミノ酸は、リジン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、トリロイシン、ヒスチジン及びメチオニンからなる群から選択される、請求項1に記載の乾燥粉末。
【請求項8】
前記1又は複数のアミノ酸はロイシン及びメチオニンである、請求項7に記載の乾燥粉末。
【請求項9】
前記1又は複数のアミノ酸又は抗酸化剤はメチオニンである、請求項1に記載の乾燥粉末。
【請求項10】
前記1又は複数の抗酸化剤は、アスコルビン酸、ビタミンE、セレン、メチオニン及びカロテノイド類からなる群から選択される、請求項1に記載の乾燥粉末。
【請求項11】
前記吸入可能な乾燥粉末医薬製剤の投与量は、血管作動性腸ペプチド、その誘導体、その類似体、又はその塩の最大200μg、及び、最大90重量%のマンニトールである、請求項1に記載の乾燥粉末。
【請求項12】
マンニトール、ロイシン及びメチオニンと、対象の浮腫の治療のための最大200μgの投与量の、血管作動性腸ペプチド、その誘導体、又はその類似体とを含む、吸入可能な医薬製剤。
【請求項13】
少なくとも1日1回投与される投与量で製造される、請求項12に記載の吸入可能な医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示されるのは、ペプチド及びタンパク質を含む生分解性物質を送達するための安定な医薬組成物及び方法、並びに肺疾患の治療において乾燥粉末を送達するための方法である。具体的には、炎症、浮腫、急性及び慢性肺傷害を含む呼吸器障害及び/又は肺の疾患を治療するための肺吸入用溶液、懸濁液及び乾燥粉末を企図する。
【背景技術】
【0002】
病気を治療するための不安定な薬物の送達は、長年にわたって大きな問題となってきた。多くの化合物は経口投与された場合、効果がなかったり、効力が低かったり変動したりする。不安定な化合物の経口投与では、消化管で遭遇する条件下で化合物の吸収が低下し、その結果、標的部位に到達する前に活性が低下する可能性がある。薬剤を経口投与することは、多くの場合、特に投与の容易さ、患者のコンプライアンス、及びコストの減少の点で望ましいが、薬剤含量の増加は副作用につながる可能性があるため、錠剤又はカプセル1個あたりに使用される薬剤含量を減少させるための代替方法が必要である。生物学的製剤、特にペプチドやタンパク質の場合、ほとんどのタンパク質が容易に分解されるため、胃内の酸性環境はその機能を維持する上で有害である。
【0003】
タンパク質及びペプチドを含む単離された生物学的物質を含む不安定な薬物を含む薬物製剤は、注射剤として最も一般的に製剤化されている。しかし、注射剤では、静脈循環に入り、これらの不安定な化合物が代謝される肝臓を通過することにより、これらの不安定な化合物は、容易に変性を受け、機能活性を完全に失う可能性がある。例えば、いくつかの生物学的製剤は、-20℃の保存から取り出して室温に短時間置くだけで、機能活性を失う。その他の単離されたタンパク質及びペプチドは、プロテアーゼ阻害剤を加えずに4℃で保存すると、酸化か、偏在するプロテアーゼかにより、著しい分解を受ける。ほとんどの哺乳類のタンパク質及びペプチドは、43℃超で分解する。55℃では、ほとんどのタンパク質が約1-2時間で完全な変性を起こすことがよく知られている。場合によっては、単離されたタンパク質の完全な変性及び不安定化は室温でも起こる。
【0004】
現在、局所及び全身疾患を治療するための活性薬剤として不安定な薬剤を含む製剤を肺に送達するためには、主に注射用組成物、並びにネブライゼーション用の溶液及び懸濁液が利用可能である。注射用製剤の調製及び必要とされる特別な保存は、特に、大きな必要性があり、冷蔵及び滅菌が必ずしも容易に利用できない亜熱帯及び熱帯気候において、それらの使用を禁止するような課題を生じる。特に、Covid-19を含むコロナウイルス病のような疾病の流行発生時を含めて、被験者の治療のための生物学的由来の製剤を安定化するための代替方法及び製剤が必要とされる。
【0005】
ペプチド、例えばインスリン(AFREZZA(登録商標))の肺吸入及び全身投与用の乾燥粉末組成物は、使用前に低温保存が必要である。AFREZZAは短期間、例えば数週間から数ヶ月間、周囲温度で保存することができるが、乾燥粉末製品中のペプチドの安定性を改善する需要が依然として存在する。同様に、肺への送達を意図した乾燥粉末組成物、特に生物学的分子を含む組成物の安定性を改善し、保存期間をさらに延長し、特に冷蔵が利用できない場合には、患者使用前の保管及び送達を容易にすることへの需要がある。
【0006】
したがって、特に疾患の治療において肺に送達するための生物学的分子を含む医薬製剤の開発には改善の余地がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、炎症、肺線維症、Covid-19病を含むウイルス感染を含む、急性又は慢性の肺疾患又は障害を治療するための方法を提供する。本方法は、不安定な活性薬剤を含む、吸入用の懸濁液及び乾燥粉末組成物を含む医薬組成物を対象に投与すること含み、前記組成物は、活性薬剤の分解によって生物学的活性を実質的に失うことなく、室温又はそれよりも高い温度で長期間における、溶液又は懸濁液を含む活性薬剤の安定性が改善される。
【0008】
1の実施態様では、不安定で、急速に分解する、低分子又は高分子を含む、吸入用の乾燥粉末を含む、吸入可能な医薬製剤が提供され、ここで、ペプチド、タンパク質、特に合成由来のペプチド、タンパク質を含む生物学的分子は、水溶液又は懸濁液中で容易に不安定化する。例示的な実施態様では、医薬製剤は、局所肺組織への吸入のために製造される。前記製剤は、交換可能な単位用量カートリッジ又はカプセルと共に使用することができる複数回使用吸入器を含む乾燥粉末吸入システムを使用して肺に送達するために提供される。代替的に、単回使用のための製剤を含む一体的に内蔵された容器を有する単回使用吸入器が提供され得、又は、多回使用のために吸入器と一体的に構成された複数の用量を有する多回使用吸入器も提供され得る。
【0009】
別の実施態様では、タンパク質又はペプチドを含む乾燥粉末、並びに1又は複数の医薬的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む、安定な吸入可能な医薬製剤が提供され、前記製剤は、室温、高温及び/又は高湿度において安定である。1の実施態様では、医薬製剤は、例えば、4℃を超える温度、10℃を超える温度、20℃を超える温度、又は35℃を超える温度で長期間安定である。1の実施態様では、製剤は、相対湿度が5%より高い、10%より高い、30%より高い、50%より高い、60%より高い、70%より高い環境のような相対湿度の環境でも安定である。
【0010】
例示的な実施態様では、肺疾患の治療方法において使用するための医薬製剤は、1又は複数の医薬的に許容される担体及び/若しくは賦形剤、又はそれらの組み合わせによって安定化され、例えば、緩衝剤、塩、ミネラル、ビタミン、抗酸化剤、ポリマー、マンニトール、キシリトールを含む糖、ジケトピペラジン及び/又はそれらの塩等を含む。1の実施態様では、乾燥粉末組成物は、任意で、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート80及びTweenなどの界面活性剤を含むことができる。
【0011】
特定の実施態様では、製剤は、血管作動性腸ペプチド(VIP)(酢酸アビプタジルを含む)、その誘導体、その類似体、その医薬的に許容される塩、又はそれらの組み合わせを含む、肺水腫のような炎症性疾患を治療するための治療用ペプチド、及びペプチド安定化剤を含む1若しくは複数の医薬賦形剤並びに/又は担体を含む乾燥粉末を含む。例示的な実施態様では、医薬的に許容される担体及び/又は賦形剤は、経口吸入用に製剤化することができ、これは、吸入に適した粒子、例えば、フマリルジケトピペラジンを含むジケトピペラジンを形成することができ、ここで前記粒子は、非晶質粉末、結晶性粉末、又は結晶性複合粉末を形成する。
【0012】
1の実施態様では、医薬的に許容される担体又は賦形剤は、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、及びトレハロースを含む1又は複数の糖、アルギニン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、トリロイシン、システイン、リジン、メチオニン、及びヒスチジンを含む1又は複数のアミノ酸、ポリソルベート80を含む界面活性剤、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛を含む1価、2価、及び3価の塩を含むカチオン塩、クエン酸塩及び酒石酸塩を含む緩衝剤、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEを含むビタミン類、又は1若しくは複数の担体及び/又は賦形剤の組み合わせ等を含む。
【0013】
特定の実施態様では、医薬乾燥粉末組成物は、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸又はビタミンC、ビタミンE、セレン、β-カロテン、リコピン、ルテイン、及びゼアキサンチンを含むカロテノイド類、グルタチオン、フェノール類、ポリフェノール類、及びフラボノイド類を含む、1つ又は複数の医薬賦形剤及び/又は担体を含む。
【0014】
特定の実施態様では、医薬乾燥粉末組成物は、血管作動性腸ペプチド(VIP)、その誘導体、その類似体、その医薬的に許容される塩、及び/又はそれらの組み合わせを含み、アビプタジル、酢酸アビプタジル、糖、アミノ酸、及び/又は抗酸化剤を含み、ここで、糖はマンニトール、又はトレハロースであり、アミノ酸はロイシン、イソロイシン、メチオニン、又はそれらの組み合わせである。本発明の特定の実施態様では、医薬乾燥粉末組成物は、ビタミンC、ビタミンE、セレン、及びグルタチオンからなる群より選択される抗酸化剤をさらに含む。
【0015】
例示的な実施態様では、医薬乾燥粉末組成物は、アビプタジル、酢酸アビプタジルを含む、血管作動性腸ペプチド(VIP)、その誘導体、その類似体、その医薬的に許容される塩、及び/又はそれらの組み合わせを含み、前記1又は複数の医薬的に許容される担体及び/又は賦形剤は、マンニトール、メチオニン、ロイシン及びアスコルビン酸を含む。
【0016】
他の実施形態において、吸入可能な医薬乾燥粉末は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、又はそれらの組み合わせを含む、無機塩又は有機塩又はそれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0017】
1の実施態様では、吸入可能な乾燥粉末組成物は、緩衝剤、及び1価又は2価のカチオン塩を含むことができる。特定の実施態様では、製剤は、VIP、VIP誘導体、VIP類似体、若しくはそれらの塩、緩衝剤、並びに/又は、クエン酸亜鉛、酢酸亜鉛、酒石酸二ナトリウム、酒石酸一ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、塩化亜鉛、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化ナトリウム等を含む塩によって提供される二価カチオン若しくは一価カチオンを含む乾燥粉末を含む。1の実施態様では、組成物中の一価陽イオンは、ナトリウム、カリウム及びリチウムを含む。代替的な実施態様では、製剤は賦形剤としてクエン酸を含むことができる。
【0018】
特定の実施態様では、組成物中に40wt%未満、30wt%未満、20wt%未満、又は10wt%未満の量の血管作動性腸ペプチドのような活性剤と、90wt%未満、85wt%未満、又は50wt%未満の量の糖とを含む、乾燥粉末組成物が提供される。特定の実施態様では、組成物中のアミノ酸成分は、組成物中に最大約20wt%、最大約15wt%、又は最大約10wt%の量である。1の実施態様では、組成物中の酸化防止剤の量は、組成物中に最大約10%、最大約5wt%、又は最大約3%であり得る。
【0019】
特定の実施態様では、肺の急性又は慢性感染を含む肺疾患の治療のための吸入可能な乾燥粉末組成物は、最大50wt%の量の血管作動性腸ペプチドを含み、ここで医薬的に許容される賦形剤又は担体は、マンニトール、ロイシン及びアスコルビン酸である。
【0020】
ペプチド若しくはタンパク質又はその類似体を含む溶液を混合又はホモジナイズすること、及び、前記溶液を噴霧乾燥して乾燥粉末を形成することを含む乾燥粉末製剤の製造方法であって、前記溶液は、マンニトールを含む糖と、ロイシン又はイソロイシンを含む1又は複数のアミノ酸と、及びアスコルビン酸又はグルタチオンを含む抗酸化剤とをさらに含む、乾燥粉末製剤の製造方法。
【0021】
肺疾患の治療方法であって、治療を必要とする対象に、乾燥粉末吸入器を用いて、1日に1回又は複数回、乾燥粉末組成物の用量を吸入により投与することを含み、該組成物が、血管作動性腸ペプチド、その類似体又はその誘導体、アミノ酸、糖及び抗酸化剤を含む、方法。1の実施態様では、治療は、1回につき1又は複数用量の乾燥粉末組成物を投与することを含む。本発明の1の実施態様では、組成物の用量は、セッションあたり最大約500μg、300μg、200μg、又は100μgの血管作動性腸ペプチドを含む。
【0022】
例示的な実施態様では、肺疾患を治療するための方法は、肺水腫を含む治療を必要とする対象に、マンニトール、ロイシン、メチオニン及び血管作動性腸ペプチド、その類似体、又はその誘導体を含む吸入可能な医薬製剤を、少なくとも1日1回、1回あたり最大200μgの用量で投与することを含む。1の実施態様では、医薬製剤は、吸入用の溶液、懸濁液、又は乾燥粉末とすることができ、また、ネブライゼーション、定量吸入器、又は乾燥粉末吸入器により投与することができる。
【0023】
本明細書に説明する他の実施態様では、血管作動性腸ペプチド、その誘導体、その類似体、又はそれらの組み合わせ、及び他の急速に分解される生物活性薬剤を含む安定な組成物の製造方法、若しくは肺又は全身由来の疾患及び/又は障害の治療において組成物を使用する方法が開示される。例示的な実施態様では、前記組成物を含む肺疾患の治療のための単回用量使用のための高抵抗吸入器を含む吸入システムが提供される。
【0024】
別の実施態様では、治療方法は、治療を必要とする対象に、マンニトール、ロイシン、メチオニン及び血管作動性腸ペプチド、その類似体、又はそれらの誘導体を含む吸入可能な医薬製剤を、少なくとも1日1回、1回あたり最大200μgの用量で投与することを含む。1の実施態様では、医薬製剤は、吸入用の溶液、懸濁液、又は乾燥粉末とすることができ、ネブライゼーション、定量吸入器、又は乾燥粉末吸入器によって投与することができる。本実施態様及び他の実施態様では、治療される疾患は、例えば、肺水腫、クローン病、心不全、神経変性疾患等を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本明細書に開示される実施例の特定の局面をさらに示すために含まれる。本開示は、本明細書に提示される特定の実施態様の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1又は複数を参照することにより、より良く理解される場合がある。
【0026】
【
図1A】フマリルジケトピペラジン及び血管作動性腸ペプチド(VIP)の結晶粒子を含んでなり、異なる量のVIPペプチドを含む、乾燥粉末の走査電子顕微鏡画像(SEM)。
【
図1B】フマリルジケトピペラジン及び血管作動性腸ペプチド(VIP)の結晶粒子を含んでなり、異なる量のVIPペプチドを含む、乾燥粉末の走査電子顕微鏡画像(SEM)。
【
図1C】フマリルジケトピペラジン及び血管作動性腸ペプチド(VIP)の結晶粒子を含んでなり、異なる量のVIPペプチドを含む、乾燥粉末の走査電子顕微鏡画像(SEM)。
【
図2】実験からのデータの乾燥粉末中のVIPの標準曲線を表すグラフ。
【
図3】実験に使用されたVIPペプチドのHPLCクロマトグラム。
【
図4】本明細書の実施例1に説明された方法によって製造された試料由来の結晶FDKP及びVIPを含む乾燥粉末の内容物のHPLCクロマトグラム。
【
図5】実施例2に説明されるさまざまなタイプの血管作動性腸ペプチド(VIP)を含む溶液又は懸濁液をテストするために実施された製剤実験であって、さまざまなメチオニン含量の組成物中のVIPの対照試料に対する安定性を示す、製剤実験のグラフ。
【
図6】さまざまなタイプの、血管作動性腸ペプチド(VIP)を含む溶液又は懸濁液(以下の表2を参照せよ。)をテストするために実施された製剤実験であって、さまざまな医薬的に許容される賦形剤を有する組成物中の安定性を示す、製剤実験のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本明細書に開示されるのは、血管作動性腸ペプチドを含む吸入用の医薬乾燥粉末、及び肺疾患の治療のための粉末組成物の製造方法である。本明細書に開示される実施態様は、血管作動性腸ペプチドを含む迅速な生分解性がある活性薬剤が、肺水腫を含む肺疾患を治療するための組成物中で安定であるように製剤化され得ることを示す。
【0028】
安定化された血管作動性腸管ペプチドを含む乾燥粉末製剤を製造する方法が提供され、これは疾患、特に肺疾患の治療におけるVIPの使用を容易にする。安定化VIPの製造方法及びそれから得られる乾燥粉末組成物も提供される。
【0029】
本明細書で用いる用語「微粒子」は、正確な外部又は内部の構造に関係なく、直径が約0.5~約1000μmの粒子を指す。約0.5ないし約10ミクロンの直径を有する微粒子は、自然の障壁のほとんどをうまく通過して肺に到達することができる。喉の曲がり角を通過するには約10ミクロン未満の直径が必要であり、呼気による排出を避けるには約0.5ミクロン以上の直径が必要である。最も効率的な吸収が起こると考えられている肺深部(又は肺胞領域)に到達するためには、「吸入性画分」(RF)に含まれる粒子の割合を最大にすることが好ましい。この割合は、空気力学的直径が約0.5ないし約6ミクロンの粒子であると一般に認められているが、いくつかの文献では、例えばアンダーソン・カスケード・インパクター(Anderson Cascade Impactor)を用いる標準的な技術で測定した値として、多少異なる範囲を用いる。吸入性画分が類似の空気力学的サイズ、例えば<6.4μmで定義されるNEXT GENERATION IMPACTOR(商標)(NGI(商標)、MSP Corporation)のような空気力学的粒子径を測定するために、他のインパクターを使用することもできる。いくつかの実施態様では、粒子径を決定するためにレーザー回折装置、例えば、2010年3月18日に出願された米国特許出願第12/727,179号(関連する教示のためにその全体が本明細書に取り込まれる)に開示されたレーザー回折装置が用いられ、吸入システムの性能を評価するために粒子の体積中央幾何学直径(VMGD)が測定される。例えば、さまざまな実施態様では、≧80%、≧85%、又は≧90%のカートリッジの空充填率(cartridge emptying)、及び、≦12.5μm、≦7.0μm、又は≦4.8μmの放出粒子のVMGDが、漸進的により良好な空気力学的性能を示すことができる。
【0030】
本明細書で用いられる用語「約」は、値を決定するために採用される装置又は方法について、値が測定値の標準偏差を含むことを示すために用いられる。
【0031】
充填時の吸入性画分(RF/fill)は、用量として使用するために充填された粉末含有物の排出時に吸入器から放出され、呼吸に適する、用量中の粉末の割合、すなわち、充填された用量から肺送達に適したサイズで放出される粒子の百分率を表し、これは微小粒子の空気力学的性能の尺度である。本明細書に説明されるとおり、40%又は40%を超えるRF/充填値は、許容可能な空気力学的性能特性を反映する。本明細書に開示される特定の実施態様では、充填時の吸入性画分は50%を超え得る。例示的な実施態様では、充墳時の吸入性画分は、最大約80%であり得、ここで、充墳時の約80%は、標準的な技術を使用して測定される粒径<5.8μmで放出される。
【0032】
本明細書で用いる用語「乾燥粉末」は、推進剤又は他の液体に懸濁又は溶解していない微粒子組成物を指す。必ずしも水分子が全くないことを意味するものではない。
【0033】
本明細書で用いる「非晶質粉末」とは、明確な繰り返し形態、形状又は構造を有しない乾燥粉末を指し、全ての非結晶性粉末を含む。
【0034】
1の実施態様では、乾燥粉末は、最適な脱凝集条件を必要とする比較的凝集性が高い粉末である。1の実施態様では、吸入システムは、予め計量された用量の乾燥粉末製剤を含む単回使用カートリジと併用する、再使用可能な小型の呼吸動力式吸入器を提供する。
【0035】
本明細書で用いる用語「単位用量吸入器」は、乾燥粉末製剤を含む単一の容器を収容する又は含むように適合され、容器から吸入により乾燥粉末製剤の単一用量を使用者に送達する吸入器を指す。いくつかの場合には、指定された用量を使用者に提供するために複数の単位用量が必要とされるだろう。1の実施態様では、吸入器は乾燥粉末吸入器であり、これは1回使用の使い捨てとすることができ、又は単一の単位用量容器で複数回の再使用可能とすることができる。
【0036】
本明細書で用いる用語「複数用量吸入器」は、複数の容器を含む吸入器を指し、各容器は予め計量された用量の乾燥粉末医薬品を含み、吸入器は任意の1回に単回用量の医薬品粉末を吸入により送達する。
【0037】
本明細書で用いる「容器」は、乾燥粉末製剤を保持または含有するように構成された筐体、粉末含有筐体であり、蓋を有する構造又は蓋を有しない構造とすることができる。この容器は、吸入器とは別個に提供され得るか、又は吸入器内に構造的に一体化され得る(例えば、取り外し不可能)。さらに、容器は乾燥粉末で充填することができる。カートリッジも容器を含むことができる。
【0038】
本明細書で用いる「粉末塊(powder mass)」とは、幅、直径、及び長さのような形状が不規則な粉末粒子の凝集体又は凝集塊を指す。
【0039】
本明細書で用いる用語「微粒子」は、正確な外部構造又は内部構造に関係なく、直径が約0.5~約1000μmの粒子を指す。しかし、10μm未満の4個の肺送達微粒子が一般に望まれ、特に平均粒子径が約5.8μm未満の肺送達微粒子が望ましい。
【0040】
1の実施態様では、血管作動性腸ペプチドと、3,6-ビス(4-フマリル-4-アミノブチル)-2,5-ジケトピペラジン又はその塩を含む、ジケトピペラジンとを含む医薬組成物が提供される。
【0041】
代替的な実施態様では、間質性肺疾患、例えば、特発性肺線維症、炎症、急性又は慢性呼吸窮迫症候群を含む、肺の疾患を治療するための方法であって、治療を必要とする対象に、血管作動性腸ペプチドと、
式:
【化1】
のジケトピペラジンとを含む吸入可能な組成物を投与することを含み、任意で、製剤に関して上記で定義した1又は複数の医薬賦形剤及び/又は担体を含む、方法が提供される。本発明の1の実施態様では、製剤は、血管作動性腸ペプチド、並びに3,6-ビス(4-フマリル-4-アミノブチル)-2,5-ジケトピペラジン等のジケトピペラジン、又はその塩、及び任意で、イソロイシン、ロイシン、トリロイシン、シスチン、システイン、グリシン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、又はメチオニンである、1又は複数のアミノ酸、及び、ラクトース、マンニトール、マンノース、ソルビトール、トレハロース等を含む1又は複数の糖を含む。この実施態様及び他の実施態様では、ジケトピペラジンは、製剤中で使用するために水中で懸濁液を作る前に乾燥結晶担体の形態であるが、他の実施態様では、ラクトース、トレハロース、マンノース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖類、オリゴ糖類、又は多糖類、クエン酸亜鉛及びアスコルビン酸を含む他の担体を使用することができ、ここで、製剤は、溶液中及び噴霧乾燥方法によって製造され、ここで、ペプチドは、pH3.5からpH約7まで、又はpH4.5ないしpH6.5の範囲のpHを有する緩衝溶液中に存在することができる。
【0042】
さらなる実施態様では、製剤は、血管作動性腸ペプチドを含むフマリルジケトピペラジン二ナトリウムの微粒子と、界面活性剤と、上記に開示したアミノ酸とを含む、非晶質乾燥粉末である。実施態様では、製剤は、血管作動性腸ペプチドを含む、熱感受性ペプチドを含むペプチドを含む結晶性乾燥粉末を含み、ここで、前記乾燥粉末は、pH3.5から約pH5.0までの範囲の調整されたpHの結晶性粒子のジケトピペラジン懸濁液を含む溶液中に血管作動性腸ペプチドを混合し、前記懸濁液を噴霧乾燥することによって形成される。
【0043】
例示的な実施態様では、ペプチド又はタンパク質を含む、乾燥粉末製剤が提供され、ここで、前記ペプチド又はタンパク質は、酸化又は熱による分解を受けやすい。特定の実施態様では、前記乾燥粉末製剤は、血管作動性腸ペプチド、その誘導体、又はその類似体を含むペプチドと、ロイシン、イソロイシン、及びメチオニンを含む1又は複数のアミノ酸と、マンニトール、キシリトール、及びトレハロースを含む1又は複数の糖と、任意で、アスコルビン酸、セレン、カロテノイド、及びビタミンEを含む1又は複数の抗酸化剤とを含む。本発明の1の実施態様では、乾燥粉末製剤は、血管作動性腸ペプチド、糖、少なくとも1種のアミノ酸、及び任意で抗酸化剤を含み、アミノ酸はメチオニン及び/又はロイシンであり、抗酸化剤はアスコルビン酸であり、糖はマンニトールである。
【0044】
代替的な実施形態において、1又は複数の医薬的に許容される担体は、糖、例えば、糖類、二糖類、オリゴ糖類、アミノ酸から選択され、ここで、糖は、例えば、トレハロース、マンノース、マンニトール又はソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びフマリルジケトピペラジン、スクシニルジケトピペラジン、マレイルジケトピペラジン、マロニルジケトピペラジン及びオキサリルジケトピペラジン、又はそれらの二ナトリウム塩、又はマグネシウム塩、及びそれらの誘導体を含む、微粒子を形成することができるジケトピペラジンである。
【0045】
1の実施態様では、安定な製剤は、ネブライゼーション用の溶液又は懸濁液として、又は吸入用の乾燥粉末として使用するために提供される。実施態様では、製剤は、血管作動性腸ペプチド及び/又は、トレプロスチニルのような誘導体又は類似体を含むプロスタグランジンPG I2を含む、肺炎症の治療のための1又は複数の不安定ペプチドと、イソロイシン、ロイシン、トリロイシン、シスチン、システイン、グリシン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、又はメチオニンである1又は複数のアミノ酸と、ラクトース、マンニトール、マンノース、ソルビトール、トレハロース等を含む1又は複数の糖とを含む。本実施態様及び他の実施態様では、担体は、ラクトース、トレハロース、マンノース、マンニトール、又はソルビトールを含む、糖類、オリゴ糖類、又は多糖類と、クエン酸亜鉛と、アスコルビン酸とであり得、ここで製剤は、溶液中及び噴霧乾燥方法によって製造され、ここで、前記ペプチドは、pH約3.5からpH約7まで、又はpH4.5ないしpH6.5の範囲のpHを有する緩衝溶液中であり得る。本実施態様では、血管作動性腸ペプチドの量は、1剤形あたりの組成物中、最大約300μgであり、及びトレプロスチニルの量は、最大約200μgである。
【0046】
本実施態様では、例えば、血管作動性腸管ペプチドを含むペプチド、又はタンパク質の含有量は、約0.1%(w/w)から約50%(w/w)まで、約0.5%(w/w)から約40%(w/w)まで、約0.5%(w/w)から約20%(w/w)まで、又は約1%(w/w)から約10%(w/w)までの範囲の量で製剤中に提供され得る。
【0047】
1の実施態様では、治療を必要とする対象に、最大200μg、又は10wt%の血管作動性腸ペプチド、最大約90wt%のマンニトール、最大約15wt%のロイシン、及び最大約5wt%のアスコルビン酸を含む乾燥粉末を含む製剤を含むカートリッジを含む吸入器を含む吸入システムを提供することを含む、対象の肺に製剤を効果的に送達する方法が提供される。本実施態様及び他の実施態様では、吸入システムは、8μm未満の体積中央幾何学直径(VMGD)を有する粒子を含む粉末プルームを送達する。例示的な実施態様では、微粒子のVMGDは、約4μmから約6μmまでの範囲であり得る。例示的な実施態様では、粉末粒子のVMGDは、乾燥粉末の充填質量が1mg及び10mgの範囲の製剤の1回の吸入では、3μmから約6μmまでであり得る。本実施態様及び他の実施態様では、吸入システムは、カートリッジから乾燥粉末製剤の40%超、又は60%超を送達する。本明細書の特定の実施形態では、乾燥粉末製剤は、組成物中に、VIPを含む活性剤の10μgから約20μgまで、約20μgから約50μgまで、約50μgから約100μgまで、約100μgから約150μgまで、又は約150μgから約200μgまでを含むことができる。いくつかの実施態様では、乾燥粉末製剤は、患者の必要性に応じて200μg超を含むことができる。
【0048】
さらなる実施態様は、吸入器と、単位用量乾燥粉末医薬品容器と、血管作動性腸ペプチド、メチオニン及びアスコルビン酸を含む製剤を含む本明細書に開示される熱感受性ペプチドを含む乾燥粉末とを含む薬物送達システムに関する。1の実施態様では、本明細書中の製剤は、血管作動性腸ペプチド、ロイシン、メチオニン及びアスコルビン酸を含む。
【0049】
1の実施態様では、血管作動性腸ペプチド、その誘導体、又はその類似体を含む製剤であって、製剤が、約67m2/g未満の比表面積を有するフマリルジケトピペラジンの微粒子を含む、ジケトピペラジン微粒子をさらを含む、製剤を開示する。別の実施態様では、95%信頼限界内で、比表面積が約35m2/gから約67m2/gまでであるジケトピペラジン微粒子を含む。別の実施態様では、比表面積が約35m2/gから約62m2/gまでであるジケトピペラジン微粒子を含む。別の実施態様では、比表面積が約40m2/gから約62m2/gまでであるジケトピペラジン微粒子を含む。1の実施態様では、ジケトピペラジンは、45%から約59%まで、又は約52%から約57%までのトランス異性体含有量を有する。
【0050】
代替的な実施態様では、FDKP微粒子は、溶液又は懸濁液中で不安定な薬物又は活性剤を含む。FDKP微粒子のさまざまな代替的な実施態様では、薬物は、例えば、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン、エキセンジン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、オキシントモジュリン、それらの誘導体及び/又は類似体、及びこれらを含むペプチドであり得る。FDKP微粒子を用いる1の実施態様では、ペプチド含量は下流の処理条件によって変化し得る。特定の実施例では、FDKP微粒子又は他の担体粒子は、目標とする又は送達される用量に応じて変化し得る薬物/ペプチド含量を有するように調製され得る。例えば、薬物が血管作動性腸ペプチドである場合、ペプチド含量成分は、粉末製剤中の用量あたり約1μgから約300μgまで、10μgから約200μgまで、30μgから150μgまで、又は50μgから100μgまでとすることができる。特定の実施態様では、医薬的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む懸濁液中の微粒子は、安定な製剤を作製するために噴霧乾燥され得る。
【0051】
さらなる実施態様は、吸入器、単位用量乾燥粉末医薬品容器、例えば、カートリッジ又はカプセルの組み合わせを含み、活性剤と共に本明細書に開示される乾燥粉末製剤を含む、薬物送達システムに関する。1の実施態様では、乾燥粉末とともに使用するための送達システムは、粉末を脱凝集して分注するための導管を通る空気流に高い抵抗を与える空気導管を有する高抵抗吸入器を含む吸入システムを含む。1の実施態様では、吸入システムは、例えば、毎分約0.065(√kPa)/リットルから約0.200(√kPa)/リットルまでの抵抗値を有する。特定の実施態様では、乾燥粉末は、ピーク吸入圧力差が約2Paから約20kPaまでの範囲であり得る吸入システムを用いて吸入により効果的に送達され得、これは、毎分約7リットル及び約70リットルの間の結果として生じるピーク流量を生じ得る。実施態様では、吸入システムは、吸入器から粉末を連続流として、又は患者に送達される粉末の1又はそれ以上のパルスとして吐出することによって、1回分の用量を提供するように構成される。本明細書に開示されるいくつかの実施態様では、乾燥粉末吸入器システムは、吸入器内の所定の質量流量バランスを含む。例えば、吸入器から出て患者に送られる全流量の約10%ないし70%の流量バランスは、1又は複数の分注ポートによって送達され、その気流は粉末製剤を含む領域を通過し、約30%ないし90%の気流は吸入器の他の導管から生成される。さらに、バイパス流、又はカートリッジを通してのような粉末封入領域に出入りしない流れは、吸入器内の粉末分注ポートから出る流れと再結合して、マウスピースから出る前に流動化粉末を希釈し、加速し、最終的に脱凝集させることができる。1の実施態様では、毎分約7リットルから約70リットルまでの流速により、容器又はカートリッジ内容物の75%超が、1mg及び50mg、又は1mg及び30mgの間の充填質量で分注される。特定の実施態様では、上記で説明した吸入システムは、1回の吸入で40%超、50%超、60%超、又は70%超の百分率で、粉末用量の吸入性画分/充填物を放出することができる。
【0052】
特定の実施態様では、乾燥粉末吸入器及び乾燥粉末製剤を含む吸入システムが提供される。吸入システムのこの実施態様のいくつかの局面では、乾燥粉末製剤は単位用量カートリッジで提供される。代替的に、乾燥粉末製剤は吸入器に予め装填することができる。本実施態様では、吸入システムの構造の構成は、吸入器の脱凝集機構が50%超の吸入性画分を生成することを可能にする、すなわち、吸入器(カートリッジ)に含まれる粉末の半分超が5.8μm未満の粒子として排出される。吸入器は、投与中に容器内に含まれる粉末医薬の85%以上を排出することができる。特定の実施態様では、吸入器は、1回の吸入で含まれる粉末医薬の85%超を排出することができる。1の実施態様では、吸入器は、最大30mgの範囲の充填質量で、2及び5kPaの間の圧力差で、3秒未満でカートリッジ内容物又は容器内容物の90%以上を吐出することができる。
【0053】
本明細書に開示される別の実施態様は、ジケトピペラジン微粒子を含む担体粒子を含む、乾燥粉末製剤として肺投与に適した微粒子を製造する方法を含む。本実施態様及び他の実施態様では、乾燥粉末製剤は、不安定ペプチドを含む溶液を噴霧乾燥することによって得られ、ここで、1又は複数の賦形剤は、亜鉛塩及びクエン酸塩を含む水溶液に溶解され、混合され、次いで、混合しながらペプチドの量を添加して供給溶液を形成し、約120℃ないし150℃の入口温度及び約60℃ないし65℃、又は50℃ないし75℃の出口温度で、溶液の流れを乾燥窒素ガス流中に噴霧する。
【0054】
いくつかの実施態様では、約67m2/g未満の比表面積、及び/又は約45%ないし65%のトランス異性体比を有するジケトピペラジン微粒子を製造する方法であって、式2,5-ジケト-3,6-ビス(N-X-4-アミノブチル)ピペラジン二ナトリウム塩又はマグネシウム塩を有するジケトピペラジンを利用し、式中、Xは、フマリル、スクシニル、マレイル、及びグルタリルからなる群から選択される。例示的な実施態様では、ジケトピペラジンは、式(ビス-3,6-(N-フマリル-4-アミノブチル)-2,5-ジケトピペラジン又は2,5-ジケト-3,6-ビス(N-フマリル-4-アミノブチル)ピペラジンを有する。
【0055】
本明細書で開示される別の実施態様は、薬物、例えば、血管作動性腸ペプチドのようなペプチドを薬物送達を必要とする患者に送達する方法であって、患者が乾燥粉末を吸入する乾燥粉末吸入器を用いて吸入により乾燥粉末を肺深部に投与することを含む、方法を含み、ここで、乾燥粉末は、血管作動性腸ペプチド、メチオニン及びクエン酸緩衝液を含むジケトピペラジン微粒子を含み、ここで、微粒子はジケトピペラジンで形成され、約35m2/gから約67m2/gまで又は約40m2/gから約67m2/gまでの範囲の表面積を有し、及び/又は、約45%から約65%までのトランス異性体含量を有する(in microparticles having a trans isomer content raging from about 45% to about 65%)。
【0056】
さらなる実施態様は、治療を必要とする患者に乾燥粉末を投与することを含む肺水腫の治療方法であって、エアロゾル形態の乾燥粉末が肺に到達するように、乾燥粉末を含む呼吸動力式吸入器から乾燥粉末を患者に吸入させることを含む、方法を含む。いくつかの実施態様では、乾燥粉末は、治療セッションごとに1回又は複数回の吸入で送達される。特定の実施態様では、治療は、用量あたり1回の吸入で乾燥粉末を送達することを含む。
【0057】
ジケトピペラジンが担体又は賦形剤として使用される実施態様では、フマリルジケトピペラジン3,6-ビス(N-フマリル-4-アミノブチル)-2,5-ジケト-ジケトピペラジン、FDKP)が肺用途に好ましいジケトピペラジンであり、これは式
【化2】
(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジン、又は二ナトリウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩及びカリウム塩を含む医薬的に許容されるその塩である。
【0058】
約0.5ミクロン及び約10ミクロンの間の直径を有するFDKP微粒子は、肺に到達し、自然の障壁のほとんどをうまく通過することができる。このサイズの粒子は、FDKP(Xがスクシニル、グルタリル又はマレイルである2,5-ジケト-3,6-ジ(4-X-アミノブチル)ピペラジンのような関連分子も含む)のカルボキシレート基のような酸性基を持つジケトピペラジンから容易に調製できる。酸沈殿により、結晶プレートの凝集体から構成される自己組織化粒子が得られる。これらのプレートのサイズは粒子の比表面積に関係し、これは粒子の構造、負荷容量、及び空気力学的性能に影響する。
図1は、(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジン及び血管作動性腸ペプチドの結晶板を含む乾燥粉末粒子の走査型電子顕微鏡画像を示す。顕微鏡画像に見られるように、乾燥粉末粒子は実質的に均質に見える。
【0059】
本明細書に開示される実施態様は、約67m2/g未満の比表面積を有する微粒子が、改善された空気力学的性能のような肺への薬物の送達に有益な特性を示すことを示す。約62m2/g未満の比表面積を有する代替的な実施態様は、粒子のバッチが最低限の空気力学的性能基準を満たすことをより確実にする。SSAは薬物担持/含有容量にも影響するため、さまざまな実施態様では、薬物吸着容量を向上させるためにSSA≧35、40、又は45m2/gを必要とする。いくつかの実施態様では、SSAは、使用される活性剤に応じて35m2/g未満であり得る。
【0060】
本明細書に記載される微粒子は、1又は複数の活性剤を含むことができる。本明細書で用いる「活性剤」は、「薬剤」と互換的に用いられ、小分子医薬品、生物学的製剤及び生物活性剤を含む医薬物質を指す。活性剤は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸、有機高分子、合成有機化合物、多糖類及びその他の糖類、脂肪酸、脂質を含む天然由来、組換え、又は合成由来のものであることができる。不安定な活性薬剤は、さまざまな生物学的活性及びクラスに分類することができ、血管作動性薬剤、神経作動性薬剤、ホルモン、抗凝固剤、免疫調節剤、細胞毒性薬剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗原、感染性薬剤、炎症メディエーター、ホルモン、及び細胞表面抗原を含み、さまざまな疾患又は障害の治療に使用することができる。本明細書の特定の実施態様では、肺水腫を含む肺の炎症性疾患を治療するための血管作動性腸ペプチドを用いた組成物を例示する。
【0061】
送達される薬物含量は、対象の必要性及び薬物の効力に依存する。特定の実施態様では、45%及び65%の間のトランス異性体含量が典型的には0.01%より大きいFDKPから形成された微粒子が使用される。1の実施態様では、前記トランス異性体含量を有する微粒子で送達される薬物含量は、約0.01%から約50%の範囲まで可能であり、これは血管作動性腸管ペプチドのようなペプチドに典型的である。
【0062】
送達される薬物含量の範囲は、治療される疾患及び患者の疾患の重症度に依存する。例えば、肺送達の場合、使用される製剤中の薬物含量は、送達される薬物の形態及び大きさ並びに必要とされる用量の効力に依存して、典型的には約0.01%から約90%までの間である。血管作動性腸ペプチドの場合、好ましい負荷量は約0.5wt%から約50wt%まで、又は約1wt%から約20wt%までである。いくつかの実施態様では、製剤は代替的な吸入器の実施態様で送達され得る。
【0063】
[実施例]
以下の実施例は、開示された製剤及び方法の実施態様を説明するために含まれる。以下に続く実施例において開示される技術は、本開示の実施において良好に機能することが本発明者によって発見された技術を表し、従って、その実施のための好ましい態様を構成すると考えることができることを、当業者は理解すべきである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、開示されている1の実施態様では多くの変更を加えることができ、それでもなお同様又は類似の結果を得ることができることを理解すべきである。
【0064】
実施例1
血管作動性腸管ペプチド乾燥粉末の調製、特性評価及び安定性:
血管作動性腸ペプチド(VIP)はアミノ酸残基28個からなるペプチドで、カリフォルニア州サニーベールのAmerican Peptide Company社から購入した。フマリルジケトピペラジン(FDKP)の結晶粒子を調製し、水に懸濁してVIP溶液と混合した後、液体窒素中でペレットとして瞬間凍結し、凍結乾燥して試料粉末を作製した。標的ペプチドの負荷量又は含量が5%、10%及び20%の3種類の粉末を調製し、測定したとき、VIP含量が5.6%、10.7%及び20.8%の粉末が得られた(下記表1)。RF/充填率(カートリッジの空充填率)は、5%、10%及び20%のそれぞれの目標負荷量について、56%(88%)、47%(76%)及び22%(95%)であり、エアロゾル化され、肺送達に適した粒子を形成できることが示された。調製した粉末の試料は、走査型電子顕微鏡(SEM)分析(RJ Lee Group, Inc.)にも使用した。これらの実験の結果は、以下及び
図1に関して説明する。
図1A、1B及び1Cは、それぞれ5.6wt%、10.7wt%及び20.8wt%のさまざまな量のVIPを含む結晶性FDKP粉末形態の物理的特性を示す。SEMから、VIPペプチドの量が異なっても粒子は同一のままのように見え、その形態に識別可能な変化はないように見える。
【0065】
VIP粉末の調製:
以下本実施例で作製した粉末はすべて、目標収量1000mgまで同一のやり方で作製した。例えば、10%の目標含量の場合、FDKP粒子懸濁液(9012mg 10.00%固形分=901.2mg FDKP結晶粒子)を20mLの透明ガラスバイアルに秤量した。懸濁液に栓をして、沈殿物の沈降を防ぐためにマグネチックスターラーを用いて混合した。VIP溶液(3wt%酢酸中10%ペプチド1001mg)をバイアルに添加し、混合した。最終的な組成比は、VIP粒子:FDKP粒子で約10:90であった。VIP-FDKP懸濁液は、15%アンモニア水溶液のアリコートを加えてpH4.49に調整した。液体窒素を入れた小さな結晶化皿にこの懸濁液をペレットにした。この皿を凍結乾燥機に入れ、凍結乾燥した。棚温度を-45℃から25℃まで上昇させ、25℃で約10時間保持した。材料を透明ガラスバイアルに移した。バイアルに移した後の粉末の総収量は993mgであった。すべての粉末の実際の収量は985mg及び1000mgの間であった(収量98.5~100%)。さまざまな粉末の試料を採取し、さまざまな方法で分析した。
【0066】
粉末分析:
ペプチド含量の百分率の決定は、Phenomenex Gemini C18カラム及び0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む水の移動相A及び0.1%(TFA)を含むアセトニトリルを用いる高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により行い、得られたデータはWatersEmpower(商標)ソフトウェアを用いて分析した。
【0067】
試料粉末は200mMリン酸ナトリウム(pH7.5)中1mg/mLで調製した。VIP原薬(API)から独立に4種類のVIP標準物質を200mMリン酸ナトリウム、pH7.5で調製した。標準曲線を
図2に示すが、製剤中のVIP含量は、FDKP粒子が試験量で飽和に達することなく直線的であることを示す。
図3は、VIP標準物質のHPLCクロマトグラムから得られたデータであり、試験した標準物質ごとに単一のピークを示す。
図4は、さまざまな結晶性FDKP-VIP標的含有量、すなわち5%(1=______)、10%(2= __ __ __ )及び20%(3= - - - )を含んでなる試料乾燥粉末と、それらに対応するHPLCクロマトグラムを示す。表1は、製造された粉末の特性の一部及び乾燥粉末吸入器を用いた試験における粉末の性能を示す。
【表1】
【0068】
データは、5.6%から20%までのVIP含量を使用した乾燥粉末吸入器からの粉末が、76%から95%までの含量で送達されたことを示し、粉末がエアロゾル化可能であったことを意味する。RF/充填率は、粒径のために肺に到達できる粒子の百分率を示す。前記データは、5.6%の試料が56%と最も高い割合で肺に到達する粒子を含むことを実証する。前記データはまた、乾燥粉末を正確に充填できたこと、及び空気力学的性能はペプチド含有量が増加するにつれて低下することを実証する。
【0069】
実施例2
メチオニンを含むVIP FDKP-懸濁液:
(0.0gから0.0358gまでのレベルで添加した)メチオニン(血管作動性腸ペプチド(VIP):メチオニンのモル比が1:0、1:1、1:4、1:8、1:16及び1:32になるようにメチオニンを添加した)を3%酢酸水溶液に溶解した(酢酸溶液は、酢酸溶液中で5%又は10%VIP溶液を調製するために使用したVIP負荷に応じて0.54gから1.08gまでのレベルで添加した)。VIPの10%溶液は、3%酢酸水溶液中のメチオニンにVIP(VIPは0.05gから0.25gまでの範囲のレベルで添加)を添加することで調製した。結晶(T)FDKP懸濁液(使用したT懸濁液の量は9.8gから23.46gまでの範囲で、懸濁液に添加したメチオニンとVIPとの量に基づいて変化した)(使用したT懸濁液は8.61%の固形分を含んでいた)をVIP/メチオニン/酢酸溶液に添加した。これらの混合物を、均一な懸濁液が得られるまで撹拌した。懸濁液の試料を逆相(RP)HPLCでVIP含量の安定性について測定し、Met(O)-VIPの形成レベルをモニターした。残りの懸濁液は噴霧乾燥又は凍結乾燥して粉末とした。安定性試料を分析し、その結果を、対照と比較して、さまざまな濃度のメチオニンを添加した5wt%及び10wt%のVIPについて
図5に示す。
図5は、溶液中のメチオニン含量を増加させると、溶液又は懸濁液中のVIPペプチドの安定性が増加し、従って乾燥粉末の安定性も増加するであろうことを実証する。
【0070】
実施例3
10%VIPメチオニンFDKP-粉末の調製:
メチオニン(メチオニン負荷は0.18gと0.36gの間で変化させ、VIP:メチオニンのモル比はそれぞれ1:16及び1:32とした)を3%酢酸水溶液に溶解した(3%酢酸水溶液4.05gは低レベルでメチオニンを溶解するのに使用し、6.75gは高レベルのメチオニンを溶解するのに使用した)。VIP(0.25g)をメチオニン/酢酸溶液に添加し、完全に溶解するまで撹拌した。T-懸濁液(固形分8.61%)(T-懸濁液のチャージは、低いメチオニン量を含む製剤では23.46gであり、高いメチオニンチャージを含む製剤では21.37gであった)をVIP/メチオニン/酢酸溶液に添加した。得られた懸濁液を均一になるまで撹拌した後、液体窒素中にペレットにした。ペレットにした懸濁液は、完全真空下で-40℃から開始し、0.2℃/分で25℃まで温度を上昇させ、各粉末が完全に乾燥するまで温度を保持するプログラムを用いて凍結乾燥により乾燥させた。
【0071】
実施例4
マンニトールを含むVIP粉末の調製:
10%VIP乾燥粉末製剤をシミュレートしたいくつかのVIP含有溶液を調製し、これらの溶液の化学的安定性を評価するために逆相(RP)HPLCで定期的に分析した。マンニトール単独、ロイシン単独、及びその組み合わせを含む溶液を評価した。2種類の抗酸化剤、メチオニン及びアスコルビン酸を含む2種類の溶液も評価した。
【0072】
溶液の調製:
実験では、以下の表2に示すように、すべての溶液を10%VIP粉末製剤を標的として調製した。例えば、10%マンニトール溶液は、9gの水に1gのマンニトールを加えて調製し、1%ロイシン溶液は、9.9gの水に0.1gのロイシンを加えて調製した。XC懸濁液の固形分は1.97%であった。各溶液について、5mgのVIPを小バイアルに秤量し、下記の表2に従って他の試薬を加えた。溶液は室温で連続的に撹拌した。各時点で少量のアリコートを取り、希釈液(0.2Mリン酸ナトリウム、3mMメチオニン、pH7)に希釈し、RP-HPLCで分析した。FDKP-VIP結晶性複合体(XC)粒子懸濁液も上記と同様に調製し、本明細書と同様に分析した。
【表2】
【0073】
溶液安定性実験を上記で説明したとおりに実行し、マンニトール、ロイシン、メチオニン及びXC懸濁液を用いた結果を
図6に示す。
図6に示されるとおり、マンニトール(試料A)ロイシン(試料B)及びマンニトール+ロイシン試料(試料D)を含む試料は、2時間の経過にわたってほとんど分解を示さなかった。抗酸化剤メチオニンを含む試料(試料E)も、2時間にわたってほとんど分解が見られなかった。試料CのXC懸濁液は、アスコルビン酸を添加した懸濁液(試料F)よりも劣化が少なかった。意外なことに、アスコルビン酸(試料F)の結果は、脱酸素剤であるVIPの分解をより多く示した。おそらく、これは実施例で使用した濃度によるものであろう。
【0074】
発明の説明の文脈で(特に以下の特許請求の範囲の文脈で)用いられる用語「a」及び「an」及び「the」並びに類似の指示物(referents)は、本明細書に記載される場合又は文脈によって明らかに矛盾する場合を除き、単数及び複数の両方をカバーするものと解釈される。本明細書における値の範囲の記載は、単に、範囲内に入る各個別の値を個別に参照するための略記法としての役割を果たすことを意図している。本明細書において別段の指示がない限り、各個別の値は、本明細書において個々に記載されているかのように本明細書に取り込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で特に示されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行され得る。本明細書で用いるあらゆる例、又は例示的な文言(例えば「~のような」)は、単に本発明をより良く説明するためのものであり、特許請求される発明の範囲を制限するものではない。本明細書中のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠な非請求要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0075】
特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、選択肢のみを言及することが明示的に示されない限り、又は選択肢が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するものとして使用されるが、本開示は、選択肢及び「及び/又は」のみに言及する定義を支持する。
【0076】
本明細書に開示された本発明の代替的な構成要素又は実施態様のグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、又はグループの他のメンバー若しくは本明細書で見出される他の構成要素との任意の組み合わせで、参照及び請求される場合がある。利便性及び/又は特許性の理由から、グループの1又は複数のメンバーがグループに含まれる又はグループから削除される場合があることが予想される。そのような包含又は削除が行われるとき、本明細書では、添付の特許請求の範囲において用いられる全てのマークシュグループの記載を満たすように変更されたグループを含むものとみなされる。
【0077】
本発明を実行するための本発明者らに知られた最良の態様を含む、本発明の好ましい実施態様を本明細書に記載する。もちろん、それらの好ましい実施態様に対する変形は、前記の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。本発明者は、当業者がそのような変形を適宜採用することを期待しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載される以外に本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用される法律により許容される、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載される対象における全ての変更及び均等物を含む。さらに、本明細書に記載されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、上記構成要素のすべての可能な変形における任意の組み合わせは、本発明に包含される。
【0078】
本明細書で開示される特定の実施態様は、特許請求の範囲において、「からなる(consisting of)」又は「から本質的になる(consisting essentially of)」の文言を用いてさらなる限定がなされる場合がある。特許請求の範囲において使用されるとき、出願時のものであれ、補正により追加されたものであれ、移行用語「からなる」は、特許請求の範囲において特定されていない構成要素、ステップ、又は成分を除外する。移行用語「から本質的になる」は、特許請求の範囲を、特定された材料又はステップ、及び基本的かつ新規な特性に重大な影響を与えないものに限定する。このように、特許請求の範囲に記載の本発明の実施態様は、本明細書に本質的又は明示的に記載され、実施可能である。
【0079】
さらに、本明細書全体を通して、特許及び印刷刊行物を多数引用した。上記引用文献及び印刷刊行物の各々は、本明細書において、参照によりその全体が個別に取り込まれる。
【0080】
さらに、本明細書に開示された本発明の実施態様は、本発明の原理を例示するものであることを理解すべきである。採用される場合がある他の変更は、本発明の範囲内である。従って、限定ではなく例示として、本発明の代替的な構成が、本明細書の教示に従って利用される場合がある。従って、本発明は、正確に図示及び説明をしたものに限定されない。
【0081】
(付記)
(付記1)
血管作動性腸ペプチド、その誘導体、その類似体、又はその塩、1又は複数のアミノ酸、1又は複数の抗酸化剤、及び/又は、医薬的に許容される担体又は賦形剤を含む吸入可能な乾燥粉末医薬製剤を含む、肺疾患治療用の乾燥粉末。
【0082】
(付記2)
前記血管作動性腸ペプチドは治療セッションあたり最大300μgである、付記1に記載の乾燥粉末。
【0083】
(付記3)
前記医薬的に許容される担体は、マンノース、マンニトール、トレハロース及びソルビトールからなる群から選択される糖である、付記1に記載の乾燥粉末。
【0084】
(付記4)
前記医薬的に許容される担体はマンニトールである、付記1に記載の乾燥粉末。
【0085】
(付記5)
前記医薬的に許容される担体はジケトピペラジンである、付記1に記載の乾燥粉末。
【0086】
(付記6)
前記ジケトピペラジンは、フマリルジケトピペラジン又はスクシニルジケトピペラジンである、付記4に記載の乾燥粉末。
【0087】
(付記7)
前記1又は複数のアミノ酸は、リジン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、トリロイシン、ヒスチジン及びメチオニンからなる群から選択される、付記1に記載の乾燥粉末。
【0088】
(付記8)
前記1又は複数のアミノ酸はロイシン及びメチオニンである、付記7に記載の乾燥粉末。
【0089】
(付記9)
前記1又は複数のアミノ酸又は抗酸化剤はメチオニンである、付記1に記載の乾燥粉末。
【0090】
(付記10)
前記1又は複数の抗酸化剤は、アスコルビン酸、ビタミンE、セレン、メチオニン及びカロテノイド類からなる群から選択される、付記1に記載の乾燥粉末。
【0091】
(付記11)
前記吸入可能な乾燥粉末医薬製剤の投与量は、血管作動性腸ペプチド、その誘導体、その類似体、又はその塩の最大200μg、及び、最大90重量%のマンニトールである、付記1に記載の乾燥粉末。
【0092】
(付記12)
マンニトール、ロイシン及びメチオニンと、対象の浮腫の治療のための最大200μgの投与量の、血管作動性腸ペプチド、その誘導体、又はその類似体とを含む、吸入可能な医薬製剤。
【0093】
(付記13)
少なくとも1日1回投与される投与量で製造される、付記12に記載の吸入可能な医薬製剤。
【国際調査報告】