(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】分泌タンパク質細胞ライブラリーにおける可溶性タンパク質機能の分析、スクリーニングおよび選択
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20250128BHJP
C12Q 1/6897 20180101ALI20250128BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20250128BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20250128BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20250128BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20250128BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20250128BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20250128BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20250128BHJP
C12N 15/65 20060101ALN20250128BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20250128BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20250128BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12Q1/6897 Z ZNA
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6869 Z
G01N33/53 M
G01N33/53 D
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
G01N33/536 D
G01N33/536 C
C12N15/12
C12N15/65 Z
C12N15/13
C12N15/63 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541964
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-09-11
(86)【国際出願番号】 US2022079745
(87)【国際公開番号】W WO2023136945
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506365393
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(71)【出願人】
【識別番号】516385790
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ カンザス
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】デコスキー ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】グティエレス マティアス エフ.
(72)【発明者】
【氏名】チュン チェンユ
(72)【発明者】
【氏名】ファハド アーメッド
(72)【発明者】
【氏名】ボイル ニコレーン
(72)【発明者】
【氏名】ジン シュヤン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045AA40
2G045CB01
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
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(57)【要約】
本明細書には、単一細胞形式での可溶性ポリペプチドの機能試験に関連する方法、組成物、システムおよびキットが開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)単離され、遺伝子操作された単一の細胞におけるレポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出することを含み、
前記細胞が細胞表面タンパク質を提示し、
前記細胞が、
(i)異種試験ポリペプチドを分泌し、
(ii)前記試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化する場合にレポーター分子を発現するように操作される、
スクリーニング方法。
【請求項2】
(a)単離され、遺伝子操作された単一の細胞におけるレポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出することを含み、
前記細胞が細胞表面タンパク質を提示し、
前記細胞が、
(i)異種試験ポリペプチドを分泌し、
(ii)前記試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化しない場合にレポーター分子を発現するように操作される、
スクリーニング方法。
【請求項3】
(a)単離され、遺伝子操作された単一の細胞を試験試薬と接触させる工程であって、
前記細胞が細胞表面タンパク質を提示し、
前記細胞が、
(i)異種試験ポリペプチドを分泌し、
(ii)前記試験ポリペプチドまたは前記試験試薬のうちの1つが前記細胞表面タンパク質を活性化する場合にレポーター分子を発現するように操作されている工程、
(b)前記レポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出する工程を含む、
スクリーニング方法。
【請求項4】
(a)単離され、遺伝子操作された単一の細胞をレポーター分子を含む試験試薬と接触させる工程であって、
前記細胞が細胞表面タンパク質を提示し、
前記試験試薬が、前記細胞によって提示される前記細胞表面タンパク質に結合し、試薬-タンパク質複合体を形成することができ、試薬-受容体複合体が形成されると、前記試験試薬が前記細胞への侵入を獲得し、
前記細胞が、
(i)異種試験ポリペプチドを分泌するように操作されている工程、
(b)前記細胞における前記レポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出する工程を含む、
スクリーニング方法。
【請求項5】
前記細胞が、哺乳動物細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、酵母細胞、植物細胞または細菌細胞を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞表面タンパク質が内因性受容体を含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が、前記細胞表面タンパク質を発現するように操作される、請求項1~4に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞表面タンパク質が異種受容体を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記試験ポリペプチドの分泌が構成的である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記試験ポリペプチドの分泌が誘導性である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
単離され、遺伝子操作された単一の前記細胞が、マルチウェルプレートのウェル内にある、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
単離され、遺伝子操作された単一の前記細胞が、マイクロチップのチャンバ内にある、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
単離され、遺伝子操作された単一の前記細胞が、エマルジョン液滴などのマイクロ流体液滴中にある、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
単離され、遺伝子操作された単一の前記細胞が、Nanopen(商標)内にある、請求項1~4に記載の方法。
【請求項15】
前記レポーター分子が、蛍光マーカー、酵素、タグ付きタンパク質、または核酸配列を含む、請求項1~4に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞がヒト細胞を含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記レポーター分子が、核酸配列、場合によりバーコード配列を含み、前記レポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出することが、増幅反応および配列決定反応、場合により単一細胞配列決定反応の1つまたは複数を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記レポーター分子が蛍光部分を含み、前記レポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出することが蛍光活性化細胞を選別することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
異種試験ポリペプチドをコードするDNAを配列決定することをさらに含む、請求項1~4に記載の方法。
【請求項20】
異種試験ペプチドが受容体リガンドのバリアントを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記バリアントがリガンドバリアントのライブラリーに由来する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質リガンドのバリアントを含み、前記試験試薬が野生型リガンドによる受容体活性化のアゴニストまたはアンタゴニストを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項23】
前記試験試薬が細胞表面タンパク質リガンドを含み、前記試験ポリペプチドが、リガンドによる受容体活性化の潜在的アゴニストまたはアンタゴニストのライブラリーに由来する、請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記試験ポリペプチドが、抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記抗体または抗原結合断片が、抗体または抗原結合断片のライブラリーに由来する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記試験試薬が、ウイルス、ウイルス様粒子、偽ウイルスおよび組換えウイルス粒子のうちの1つまたは複数を含み、前記細胞表面タンパク質が、細胞へのウイルス侵入の構成要素を含む、請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記ウイルスが、コロナウイルスA、B、CまたはD、フラビウイルス、レンチウイルス、インフルエンザA、BまたはCから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ウイルスが、HIV、SARS-CoV-2、エスプタイン-バーウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デングウイルス、および黄熱ウイルスから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記ウイルスがSARS-CoV-2ウイルスを含み、前記細胞表面タンパク質がヒトアンジオテンシン変換酵素2(hACE2)を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞が、膜貫通セリンプロテアーゼ2(TMPRSS2)を発現するように操作される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項1~4のいずれかに記載の前記遺伝子操作された細胞を含む組成物、キットまたはシステム。
【請求項32】
(a)異種試験ポリペプチドをコードするベクター、
(b)レポーター分子をコードするベクターであって、その発現が、前記異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化すると活性化されるベクターを含むキットであって、
前記ベクターの1つ以上が発現ベクターであってもよく、または前記ベクターの1つ以上がインテグレーションベクターであってもよい、
キット。
【請求項33】
(a)異種試験ポリペプチドをコードするベクター、
(b)レポーター分子をコードするベクターであって、その発現が、前記異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化しないと活性化されるベクターを含むキットであって、
前記ベクターの1つ以上が発現ベクターであってもよく、または前記ベクターの1つ以上がインテグレーションベクターであってもよい、
キット。
【請求項34】
(1)試験試薬、および(2)
(a)異種試験ポリペプチドをコードするベクター、
(b)レポーター分子をコードするベクターであって、その発現が、前記異種試験ポリペプチドまたは試験試薬のいずれかが細胞表面タンパク質を活性化すると活性化されるベクターを含むキットであって、
前記ベクターの1つ以上が発現ベクターであってもよく、または前記ベクターの1つ以上がインテグレーションベクターであってもよい、
キット。
【請求項35】
(1)レポーター分子を含む試験試薬、および(2)
(a)異種試験ポリペプチドをコードするベクターを含むキットであって、
前記ベクターの1つ以上が発現ベクターであってもよく、または前記ベクターの1つ以上がインテグレーションベクターであってもよい、
キット。
【請求項36】
前記1つ以上の核酸が、(c)細胞表面タンパク質をさらにコードする、請求項32~34のいずれかに記載のキット。
【請求項37】
前記異種試験ポリペプチドがプロモーターに作動可能に連結されている、請求項32~34のいずれかに記載のキット。
【請求項38】
前記プロモーターが構成的プロモーターである、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
前記プロモーターが誘導性プロモーターである、請求項37に記載のキット。
【請求項40】
前記レポーター分子が、蛍光マーカー、酵素、タグ付きタンパク質、または核酸配列を含む、請求項32~34のいずれかに記載のキット。
【請求項41】
前記試験試薬が、ウイルス、ウイルス様粒子、偽ウイルス、および組換えウイルス粒子の1つまたは複数を含む、請求項35に記載のキット。
【請求項42】
前記ウイルスが、コロナウイルスA、B、CまたはD、フラビウイルス、レンチウイルス、およびインフルエンザA、BまたはCから選択される、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
前記ウイルスが、HIV、SARS-CoV-2、エスプタイン-バーウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デングウイルス、および黄熱ウイルスから選択される、請求項41に記載のキット。
【請求項44】
前記偽ウイルスが、コロナウイルスA、B、CもしくはD、フラビウイルス、レンチウイルス、またはインフルエンザA、BもしくはCに由来するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含む、請求項41に記載のキット。
【請求項45】
前記偽ウイルスが、HIV、SARS-CoV-2、エスプタイン-バーウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デングウイルス、または黄熱ウイルスに由来するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含む、請求項41に記載のキット。
【請求項46】
前記異種試験ペプチドが、抗体またはその一部を含む、請求項32~34のいずれか一項に記載のキット。
【請求項47】
前記異種試験ペプチドが、単鎖可変領域フラグメント(scFv)またはナノボディである、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、
(2)(a)レポーターをコードする核酸であって、その発現が、前記異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化すると活性化される核酸を含む
遺伝子操作された細胞を含む、
キット。
【請求項49】
(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、
(2)(a)レポーターをコードする核酸であって、その発現が、前記異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化しないと活性化される核酸を含む
遺伝子操作された細胞を含む、
キット。
【請求項50】
(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、
(2)(a)レポーターをコードする核酸であって、その発現が、前記異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化すると活性化される核酸を含む、
遺伝子操作された細胞、および場合により
(3)試験試薬を含む、
キット。
【請求項51】
(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、
(2)遺伝子操作された細胞、
(3)レポーター分子を含む試験試薬、
を含むキットであって、
前記試験試薬が、前記細胞によって提示される細胞表面タンパク質に結合し、試薬-表面タンパク質複合体を形成することができ、前記試験試薬は前記試薬-タンパク質複合体が形成されると前記細胞への侵入を獲得する、
キット。
【請求項52】
前記遺伝子操作された細胞が、
(c)異種細胞表面タンパク質をコードする核酸をさらに含む、
請求項48~51のいずれかに記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2022年1月13日に出願された米国仮出願第63/299,315号および2022年8月15日に出願された米国仮出願第63/398,085号の優先権を主張する。両出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する記載]
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与されたDP5OD23118の下、政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
[電子的配列リストの参照]
電子的配列表(631020.00153.xml;サイズ:36,358バイト;作成日2022年11月8日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
本技術は、一般に、例えば、創薬の分野に適用される可溶性ペプチドの分析およびスクリーニングに有用な方法および組成物に関する。本明細書中に開示される方法、システム、キットおよび組成物は、抗体、タンパク質またはペプチドの大きなライブラリーから活性な抗体、タンパク質またはペプチドを迅速、効率的かつ正確にスクリーニングおよび選択するためのツールを提供する。
【背景技術】
【0005】
可溶性タンパク質の機能を分析する創薬のための多くのアッセイは、かなりの量の精製タンパク質を必要とし、ロースループットまたはミディアムスループット(<10,000)アッセイを使用してウェルプレート中でタンパク質の機能を試験する。例としては、細胞ベースのアッセイ、ウイルス中和アッセイ、または細胞活性ベースのタンパク質機能活性化アッセイが挙げられる。バイオテクノロジー発見目的にとって最も重大なことに、タンパク質を発現、精製および分析するプロセスは、バリアントライブラリーからの機能性タンパク質またはペプチドバリアントの直接選択と容易に適合しない。機能を試験するために可溶性スクリーニングまたは細胞活性ベースのアッセイを頻繁に必要とする薬物クラスの重要な例としては、ウイルスを中和する抗体、タンパク質またはペプチド、表面細胞受容体を活性化する抗体、タンパク質またはペプチド、および表面細胞受容体の活性化を遮断する抗体、タンパク質またはペプチドが挙げられる。したがって、可溶性タンパク質またはペプチド機能についての改善された迅速なアッセイに対する需要が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本明細書には、単一細胞形式での可溶性ポリペプチドの機能試験に関連する方法、組成物、システムおよびキットが開示される。
【0007】
いくつかの態様では、スクリーニング方法が提供される。
【0008】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)単離され、遺伝子操作された単一の細胞におけるレポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出することを含み、細胞は、細胞表面タンパク質を提示し、細胞は、(i)異種試験ポリペプチドを分泌し、(ii)試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化する場合にレポーター分子を発現するように操作される。
【0009】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)単離され、遺伝子操作された単一の細胞におけるレポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出することを含み、細胞は、細胞表面タンパク質を提示し、細胞は、(i)異種試験ポリペプチドを分泌し、(ii)試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化しない場合にレポーター分子を発現するように操作される。
【0010】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)単離され、遺伝子操作された単一の細胞を試験試薬と接触させる工程であって、細胞が表面タンパク質を提示し、細胞が(i)異種試験ポリペプチドを分泌し、(ii)試験ポリペプチドまたは試験試薬の1つが細胞表面タンパク質を活性化する場合にレポーター分子を発現するように操作されている工程;(b)レポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出する工程を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)単離され、遺伝子操作された単一の細胞をレポーター分子を含む試験試薬と接触させる工程であって、細胞が細胞表面タンパク質を提示し、試験試薬が、細胞によって提示される細胞表面タンパク質に結合し、試薬-受容体複合体を形成することができ、試薬-受容体複合体が形成されると、試験試薬が細胞への侵入を獲得し、細胞が、(i)異種試験ポリペプチドを分泌するように操作されている工程;(b)細胞におけるレポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出する工程を含む。
【0012】
前述の方法のいくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞または細菌細胞を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、細胞表面タンパク質は、内因性タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞表面タンパク質を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞表面タンパク質は、異種タンパク質を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、試験ポリペプチドの分泌は構成的である。いくつかの実施形態では、試験ポリペプチドの分泌は誘導性である。
【0015】
いくつかの実施形態では、単離され、遺伝子操作された単一の細胞は、マルチウェルプレートのウェル内、マイクロ流体液滴、例えばエマルジョン液滴中のマイクロチップのチャンバ内、またはNanopen(商標)内にある。
【0016】
前述の方法のいくつかの実施形態では、レポーター分子は、蛍光マーカー、酵素、タグ付きタンパク質、または核酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、細胞はヒト細胞を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、レポーター分子は、核酸配列、場合によりバーコード配列を含み、レポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出することは、増幅反応および配列決定反応、場合により単一細胞配列決定反応の1つまたは複数を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、レポーター分子は蛍光部分を含み、レポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出することは蛍光活性化細胞選別を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、方法は、異種試験ポリペプチドをコードする核酸を配列決定することをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、異種試験ペプチドは、受容体リガンドのバリアントを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、バリアントは、リガンドバリアントのライブラリーに由来する。
【0023】
いくつかの実施形態では、試験ポリペプチドは、細胞表面タンパク質リガンドのバリアントを含み、試験試薬は、野生型リガンドによるタンパク質活性化のアゴニストまたはアンタゴニストを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、試験試薬は細胞表面タンパク質リガンドを含み、試験ポリペプチドは、リガンドによる受容体活性化の潜在的アゴニストまたはアンタゴニストのライブラリーに由来する。いくつかの実施形態では、試験ポリペプチドは、抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、抗体または抗原結合断片のライブラリーに由来する。
【0025】
いくつかの実施形態では、試験試薬は、ウイルス、ウイルス様粒子、偽ウイルスおよび組換えウイルス粒子のうちの1つまたは複数を含み、細胞表面タンパク質は、細胞へのウイルス侵入の構成要素を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスは、コロナウイルスA、B、CまたはD、フラビウイルス、レンチウイルス、インフルエンザA、BまたはCから選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスは、HIV、SARS-CoV-2、エスプタイン-バーウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デングウイルス、および黄熱ウイルスから選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスはSARS-CoV-2ウイルスを含み、細胞表面タンパク質はヒトアンジオテンシン変換酵素2(hACE2)を含み、いくつかの実施形態では、細胞は膜貫通セリンプロテアーゼ2(TMPRSS2)を発現するように操作される。
【0026】
いくつかの態様では、前述の実施形態のいずれかの遺伝子操作された細胞を含む組成物、キットまたはシステムが提供される。
【0027】
いくつかの態様では、キットが提供される。
【0028】
いくつかの実施形態では、キットは、(a)異種試験ポリペプチドをコードするベクター;(b)レポーター分子をコードするベクターであって、その発現が、異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化すると活性化されるベクターを含み、ベクターの1つ以上は発現ベクターであってもよく、またはベクターの1つ以上はインテグレーションベクターであってもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、キットは、(a)異種試験ポリペプチドをコードするベクター;(b)レポーター分子をコードするベクターであって、その発現が、異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化しないと活性化されるベクターを含み、ベクターの1つ以上は発現ベクターであってもよく、またはベクターの1つ以上はインテグレーションベクターであってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、キットは、(1)試験試薬、および(2)(a)異種試験ポリペプチドをコードするベクター;(b)レポーター分子をコードするベクターであって、その発現が、異種試験ポリペプチドまたは試験試薬のいずれかが細胞表面タンパク質を活性化すると活性化されるベクターを含み、ベクターの1つ以上は発現ベクターであってもよく、またはベクターの1つ以上はインテグレーションベクターであってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、キットは、(1)レポーター分子を含む試験試薬、および(2)(a)異種試験ポリペプチドをコードするベクターを含み、ベクターの1つ以上は発現ベクターであってもよく、またはベクターの1つ以上はインテグレーションベクターであってもよい。
【0032】
前述のキットのいずれかのいくつかの実施形態において、1つ以上の核酸は、(c)細胞表面タンパク質をさらにコードする。いくつかの実施形態では、異種試験ポリペプチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。
【0033】
いくつかの実施形態では、レポーター分子は、蛍光マーカー、酵素、タグ付きタンパク質、または核酸配列を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、試験試薬は、ウイルス、ウイルス様粒子、偽ウイルス、および組換えウイルス粒子を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスは、コロナウイルスA、B、CまたはD、フラビウイルス、レンチウイルス、およびインフルエンザA、BまたはCから選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスは、HIV、SARS-CoV-2、エスプタイン-バーウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デングウイルス、および黄熱ウイルスから選択される。いくつかの実施形態では、偽ウイルスは、コロナウイルスA、B、CもしくはD、フラビウイルス、レンチウイルス、またはインフルエンザA、BもしくはCに由来するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、偽ウイルスは、HIV、SARS-CoV-2、エスプタイン-バーウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デングウイルスまたは黄熱ウイルスに由来するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、異種試験ペプチドは、抗体またはその一部を含む。いくつかの実施形態では、異種試験ペプチドは、単鎖可変領域フラグメント(scFv)またはナノボディである。
【0036】
いくつかの実施形態では、キットは、(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、(2)(a)レポーターをコードする核酸であって、その発現が、異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化すると活性化される核酸を含む遺伝子操作された細胞を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、キットは、(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、(2)(a)レポーターをコードする核酸であって、その発現が、異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化しない場合に活性化される核酸を含む遺伝子操作された細胞を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、キットは、(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、(2)(a)レポーターをコードする核酸であって、その発現が、異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化すると活性化される核酸を含む、遺伝子操作された細胞、および場合により(3)試験試薬を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、キットは、(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、(2)遺伝子操作された細胞、(3)レポーター分子を含む試験試薬であって、細胞によって提示される細胞表面タンパク質に結合し、試薬-受容体複合体を形成することができ、試薬-受容体複合体が形成されると、細胞への侵入を獲得する試験試薬を含む。
【0040】
前述のキットのいずれかのいくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞は、(c)異種細胞表面タンパク質をコードする核酸をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1a-b】
図1aは、細胞株を修飾してウイルスまたは偽ウイルスの侵入を許容させるために使用される(a)SARS-CoV-2。
図1bは、細胞株を修飾してウイルスまたは偽ウイルスの侵入を許容させるために使用される(b)HIVの受容体発現プラスミド。
【
図2】抗体分泌も可能である、SARS-CoV-2感染に対してACE2およびTMPRSS2を発現する細胞の生成であり、抗体SARS-CoV-2の大規模な区画ベースのライブラリースクリーニングを可能にする。
【
図3】細胞株の生成は、ACE2、TMPRSS2およびIgG遺伝子を含み、感染についての機能的読み出しと共に、タンパク質分泌(この場合、IgG)をウイルス感染に連結することによって単一細胞ベースで中和アッセイを行うことを可能にする。
【
図4a】単一細胞SARS-CoV-2中和アッセイのための細胞株の開発。(a)導入遺伝子挿入のための部位特異的TARGATT細胞株へのACE2およびTMPRSS2の組み込み。
【
図4b】単一細胞SARS-CoV-2中和アッセイのための細胞株の開発。(b)TARGATT細胞における対になったVH:VLライブラリークローニング。
【
図5】フローサイトメトリー分析による、異なる量のウイルスを使用したSARS-CoV-2偽ウイルス感染力の評価。
【
図6a-b】
図6aは、タンパク質またはペプチドの分泌を可能にすることができるベクターの2つの例である、(a)pCMV-EF1aベクター。この場合、分泌タンパク質はIgGである。
図6bは、タンパク質またはペプチドの分泌を可能にすることができるベクターの2つの例である、(b)pBIベクターのベクターマップ。この場合、分泌タンパク質はIgGである。
【
図7】一過性IgG発現についてのIgG収量のELISA定量化比較。異なるリーダーペプチド配列の組み合わせは、異なるレベルの分泌タンパク質発現を提供することができる。
【
図8】IgG発現のためのFRT/FLPベースの部位特異的インテグレーションシステム。
【
図9】IgG発現のためのインテグラーゼベースの部位特異的インテグレーションシステム。
【
図10】可溶性タンパク質機能の分析のための細胞株へのIgG発現のためのCRISPR/Cas9相同組換え修復システム。
【
図11】分泌タンパク質アッセイのために哺乳動物細胞中にライブラリーをクローニングするための、いくつかの可能な分泌タンパク質発現プラットフォームの概要。
【
図12a-b】
図12aは、単一方向形式でのIgGの発現。(a)単鎖可変領域フラグメントとしてのIgGの発現。
図12bは、単一方向形式でのIgGの発現。(b)p2A切断ペプチドによるバイシストロニック形式での完全IgGの発現。
【
図13】HEKACE2細胞のフローサイトメトリーによるVRC01および910-30の中和活性。
【
図14a-b】
図14aは、中和アッセイのために連結された抗体分泌およびSARS-CoV-2感染。(a)HEK293-ACE2によって分泌されたIgGのELISA標準曲線。分泌mAbの濃度を各バーの上に報告する。IgG分泌細胞は偽ウイルス感染を予防した。910-30 SARS-CoV-2 IC
50は約0.2μg/mLである。
図14bは、中和アッセイのために連結された抗体分泌およびSARS-CoV-2感染。(b)2つの異なるリーダーペプチド(LP4またはLP5)を用いた、中和mAb(第1、第2、第5、第6群)または非中和mAb(第3および第4群)を発現するHEK293-ACE2細胞の96ウェル中和アッセイ。分泌mAbの濃度を各バーの上に報告する。IgG分泌細胞は偽ウイルス感染を予防した。910-30 SARS-CoV-2 IC
50は約0.2μg/mLである。
【
図15a-b】
図15aは、単一細胞単離およびエマルジョン液滴内での抗体分泌。(a)単一細胞を80μmの液滴にカプセル封入し、光学顕微鏡によって分析した。上清を回収し、ELISAによって分析して抗体濃度を決定した(avg.+/-st.dev.)。液滴中の濃度は、2日目までに急速に0.5μg/mLを超えた。*外挿が標準曲線をわずかに上回る。
図15bは、単一細胞単離およびエマルジョン液滴内での抗体分泌。(b)細胞をバルク細胞培養または液滴内のいずれかでインキュベートし、抗体を分泌させた。上清を回収し、ELISAによって分析して抗体濃度を決定した(avg.+/-st.dev.)。液滴中の濃度は、2日目までに急速に0.5μg/mLを超えた。*外挿が標準曲線をわずかに上回る。
【
図16a-b】
図16aは、多様なSARS-CoV-2バリアントに対する自然に対となったヒト抗体をマッピングするためのハイスループット単一細胞中和アッセイの例。(a)抗体を分泌する単一のTARGATT-HEK293-ACE2細胞をエマルジョン液滴の内部に捕捉する。選別されたライブラリーのDNAアンプリコンは、定量分析およびその後の抗体発現のために回収される。再生可能ライブラリーを多様なSARS-CoV-2偽ウイルスに対して別々に、または偽ウイルスパネルに対して繰り返しスクリーニングして、広範vs.株特異的抗体のために選択をすることができる。
図16bは、多様なSARS-CoV-2バリアントに対する自然に対となったヒト抗体をマッピングするためのハイスループット単一細胞中和アッセイの例。(b)約24時間の抗体分泌後、単一細胞液滴がSARS-CoV-2偽ウイルス液滴と混同される。十分な濃度で中和抗体を分泌する細胞は、感染から保護される。非感染GFP-細胞は、複数回のスクリーニングラウンドに進めることができる。選別されたライブラリーのDNAアンプリコンは、定量分析およびその後の抗体発現のために回収される。再生可能ライブラリーを多様なSARS-CoV-2偽ウイルスに対して別々に、または偽ウイルスパネルに対して繰り返しスクリーニングして、広範vs.株特異的抗体のために選択をすることができる。
【
図16c】多様なSARS-CoV-2バリアントに対する自然に対となったヒト抗体をマッピングするためのハイスループット単一細胞中和アッセイの例。(c)細胞をGFP-集団とGFP+集団とに分類する。非感染GFP-細胞は、複数回のスクリーニングラウンドに進めることができる。選別されたライブラリーのDNAアンプリコンは、定量分析およびその後の抗体発現のために回収される。再生可能ライブラリーを多様なSARS-CoV-2偽ウイルスに対して別々に、または偽ウイルスパネルに対して繰り返しスクリーニングして、広範vs.株特異的抗体のために選択をすることができる。
【
図17】黄熱ウイルス(YFV)の、抗YFVモノクローナル抗体分泌細胞における中和検出。mAb-17を分泌する細胞は、YFV RVP感染から保護された。mAb-17を発現していない細胞は、RVP曝露後に発現したGFPによって実証されるようにRVPに感染した。
【
図18a-b】
図18aは、異なるリーダーペプチドおよびプロモーター組み合わせを使用した抗体発現のELISA定量化。(a)リーダーペプチドアミノ酸配列およびリーダーペプチド対名の表。
図18bは、異なるリーダーペプチドおよびプロモーター組み合わせを使用した抗体発現のELISA定量化。(b)抗体の重鎖および軽鎖の発現を駆動するための最小ヒトサイトメガロウイルス(miniCMV)双方向プロモーター、ならびに抗体の重鎖を発現するためのCMVおよび軽鎖の発現を駆動するヒト伸長因子-1アルファ(Ef1α)からなる二重プロモーターのプラスミド図。
【
図18c-d】
図18cは、異なるリーダーペプチドおよびプロモーター組み合わせを使用した抗体発現のELISA定量化。(c)各ベクターにおける異なるリーダーペプチドの組み合わせを用いたVRC01一過性発現レベルのサンドイッチELISA定量化。
図18dは、異なるリーダーペプチドおよびプロモーター組み合わせを使用した抗体発現のELISA定量化。(d)各ベクターにおける異なるリーダーペプチドの組み合わせを用いたCR3022一過性発現レベルのサンドイッチELISA定量化。
【
図19】哺乳動物細胞における抗体分泌のためのCRISPR-Cas9インテグレーションシステム。
【
図20】抗体分泌のためのCRISPR-Cas9インテグレーションシステムを使用して中和を実証した。
【
図21】細胞分泌抗体の定量化により、CRISPR-Cas9の使用で抗体分泌が達成されることを実証した。
【
図22】抗体遺伝子の哺乳動物細胞へのCRISPR-Cas9ベースのゲノム挿入の検証。
【
図23】mAb 2-15配列のTARGATT遺伝子インテグレーション。
【
図24】TARGATT12-15細胞から分泌された抗SARS-CoV2抗体、2-15の中和活性。
【
図25】TARGATT2-15細胞からの抗体分泌の定量化。
【
図26a-b】
図26aは、(a)ダウンストリームプライマーセットを使用したゲノムPCRのゲル電気泳動により、TARGATT2-15細胞の遺伝子インテグレーションの成功を検証する。
図26bは、(b)インターナルPCRコントロールとしてヒトコントロールプライマーセットを用いたPCR反応(パネルb)。
【
図27】抗HIV-1モノクローナル抗体を分泌する細胞におけるHIV-1中和検出。VRC34を分泌する細胞はHIV-1偽ウイルス感染から保護された;VRC34を発現しない細胞は、W6M.EnV.C2 HIV-1偽ウイルス曝露後に発現したGFPによって実証されるように、偽ウイルスに感染した。各条件でn=2反復を実行した。初期細胞密度は2,500細胞/ウェルであった。偽ウイルス粒子で希釈物を作製した;細胞数および抗体濃度は、偽ウイルス希釈物全体で一定に保持された。WT-野生型、NC-陰性対照(偽ウイルス粒子を添加しない)。
【
図28】電気融合を用いた液滴混同上:液滴混同がオフである。細胞を含有する液滴およびローダミンを含有する液滴は、明視野においてもローダミン蛍光を測定する場合でも明確に分離されている。下:1.6Vの設定で電場を使用して液滴混同がオンである。細胞を含有する液滴は、ローダミン110チャネルに示すように、顕微鏡を使用した視認性のためにローダミン110色素と混同する。矢印は、液滴内の細胞の存在を示す。液滴混同電圧が「オフ」である場合、ローダミンは細胞含有液滴中に存在せず、液滴混同電圧が「オン」である場合、ローダミンは細胞を含有する液滴内に存在し、液滴の混同に成功したことを示す。
【
図29】ハイスループットアッセイで分析された細胞株由来の可変重鎖配列のPCR増幅。細胞集団ライブラリーを、DNA回収の前にフローサイトメーターを使用してGFP-発現またはGFP+発現について選別した。これらのデータは、ハイスループット液滴ベースの細胞分泌タンパク質機能アッセイにおいて利用される細胞のDNA配列を回収する、本発明者らの能力を実証する。
【
図30】合成ライブラリーを用いたSARS-CoV-2液滴中和アッセイの実施。VRC01、CR3022 910-30またはmAb 1-20のいずれかを発現するHEK293/ACE2細胞をプールし、単一細胞を捕捉し、24時間抗体を分泌させた。細胞および抗体を含有する液滴を、SARS-CoV-2 D614G RVPを含有する液滴と混同させ、24時間感染させた。感染後、細胞を液滴から回収し、放置した。2日後、GFP-/mCherry+(細胞感染無し/mAb産生)およびGFP+/mCherry+(細胞感染/mAb産生)細胞を選別した。配列決定のために両方の集団からgDNAを抽出し、回収したGFP-/mCherry+細胞の10%を液滴中和アッセイの第2ラウンド用に増殖させた。GFP+集団ではいくつかのクローンについて観察されたリードがゼロであり、これらの中和抗体クローンの感染事象の完全な欠如を反映し、非常に高いアッセイ精度で予想される結果を提供した。(GFP-リード有病率/GFP+リード有病率)として定義されるリード倍率変化のクローン画分のための割り算は、利用可能なリードがゼロである場合(例えば、特定の抗体クローンの液滴内の完全な中和を示している)、ゼロで除算するエラーが生じ得る。数学的には、ゼロによる除算の最も近い近似は無限大であるが、これらの倍率変化は、他のクローンとの比較のために、ここでは9,999の値で人工的に推定された。
【
図31】合成ライブラリーを用いたHIV-1偽ウイルスを使用する液滴中和アッセイ。72A1、VRC01またはVRC34のいずれかを発現するTZM/GFP細胞をプールした。次に、単一細胞を捕捉し、24時間抗体を分泌させた。細胞および抗体を含有する液滴を次に、HIV偽ウイルス(配列BG505.W6M.Env.C2を用いて生成)を含有する液滴と混同させ、24時間感染させた。感染後、細胞を液滴から回収し、放置した。2日後、GFP-/mCherry+(細胞感染無し/mAb産生)およびGFP+/mCherry+(細胞感染/mAb産生)細胞を選別した。gDNAを両方の集団から抽出した。非中和抗体(72A1)はGFP+集団において高度に濃縮され、低い中和活性を示した。この図は、選別された細胞ライブラリーのNGS分析を使用して、HIV-1偽ウイルスアッセイのための液滴内の中和アッセイを首尾よく実施する能力を実証する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、以下、本出願全体を通して示されるいくつかの定義を使用して本明細書に記載される。
【0043】
特に指定または文脈によって示されない限り、「a」、「an」、および「the」という用語は「1つ以上」を意味する。例えば、「腫瘍細胞凝集の阻害剤」は、「腫瘍細胞凝集の1つ以上の阻害剤」を意味すると解釈されるべきである。
【0044】
本明細書で使用される場合、「約」、「およそ」、「実質的に」、および「有意に」は、当業者によって理解され、それらが使用される文脈上である程度変動する。これらの用語が使用される文脈を考慮すると、当業者には明確でないこれらの用語の使用がある場合、「約」および「およそ」は、特定の用語の±10%以下を意味し、「実質的に」および「有意に」は、特定の用語の±10%超を意味する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「含む(include)」および「含む(including)」という用語は、「含む(comprise)」および「含む(comprising)」という用語と同じ意味を有し、これらの後者の用語は「オープン」移行句であり、これらの移行句に続く列挙された要素のみに特許請求の範囲を限定しない。「からなる(consisting of)」という用語は、「含む(comprising)」という用語に包含されるが、特許請求の範囲をこの移行句に続く列挙された要素のみに限定する「クローズド」移行句として解釈されるべきである。「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、「含む(comprising)」という用語に包含されるが、この移行句に続く追加の要素を可能にするが、それらの追加の要素が特許請求の範囲の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響しない場合に限り、「部分的クローズド」移行句として解釈されるべきである。
【0046】
本明細書で使用される場合、「タンパク質、」、「ペプチド、」および「ポリペプチド」という用語は互換的に使用される。
【0047】
本明細書で使用される場合、「マイクロウェル」という用語は、0.1ミクロン~4,999ミクロンの少なくとも一次元の直径または幅を有する密閉または部分的に密閉された区画として定義される。マイクロウェルの他の次元のうちの1つ、2つが開放され、より広いリザーバに接続されてもよく、されなくてもよい。
【0048】
可溶性タンパク質ライブラリーの機能的スクリーニングのための、迅速、ハイスループットかつ費用効果的な方法、組成物、システムおよびキットが本明細書に開示される。
【0049】
例として、本明細書に記載されるように、ウイルス感染および同時の抗体分泌を許容する細胞株を生成して、産生された抗体のウイルス中和特徴を分析した。
【0050】
いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2感染に感受性であり、抗体またはその抗原結合断片も分泌する細胞株が作製される。いくつかの実施形態では、抗体分泌細胞のウイルス感染(SARS-coV-2感染)を中和、予防、または低減する分泌抗体の能力が分析される。
【0051】
いくつかの実施形態では、HIV感染症に感受性であり、抗HIV抗体も分泌する細胞株が作製される。いくつかの実施形態では、抗体分泌細胞のウイルス感染(HIV感染)を中和、予防、または低減する分泌抗体の能力が分析される。
【0052】
いくつかの実施形態では、既にウイルス感染に対して許容可能な細胞株(例えば、黄熱ウイルス組換えウイルス粒子を有するRaji-DC-SIGN)が使用される。
【0053】
いくつかの実施形態では、抗体発現は、自然にウイルス感染することができる哺乳動物細胞株中に操作され得る。いくつかの実施形態では、細胞株は、ウイルス侵入の少なくとも1つの構成要素(例えば、異種細胞表面分子)を発現するように操作される。
【0054】
いくつかの実施形態では、異種ポリペプチド(潜在的リガンドまたは潜在的リガンド受容体アンタゴニストもしくはアゴニストなど)は、リガンド受容体アゴニズムまたはアンタゴニズムの分析(例えば、PD-1表面受容体について)を目的として作製された細胞株において発現される。
【0055】
[スクリーニング方法]
【0056】
先行技術で現在知られている分泌ポリペプチド分子の機能分析のための代替アプローチは、(例えば、AbCheck社によって販売されているマイクロ流体機能的選別サービスによって、同様にLin et al.による例(Lin,W.et al.,(2022).Rapid microfluidic platform for screening and enrichment of cells secreting virus neutralizing antibodies.Lab on a Chip,22(13),2578-2589)によって示されるように、センサー細胞およびポリペプチド分泌細胞の選別と共に、多細胞液滴区画化を必要とする。これらの単一液滴内二重細胞アプローチは、単一細胞液滴システムと比較して、一般にスループットがはるかに低い。さらに、これらのプラットフォームは、複数の細胞を含有する液滴の選別および選択を可能にするための、技術的複雑さを呈する。対照的に、本発明者らのアプローチは、抗体の活性に関連する選択マーカーに連結されたポリペプチド分泌細胞の回収を可能にし、所望の活性を示す細胞の容易な選択を可能にする。
【0057】
いくつかの代替的な公開されたアプローチは、ウイルス中和(例えば、ACE2のSARS-CoV-2融合タンパク質への結合の遮断(例えば、Shiakolas,A.R.,Kramer,K.J.,Johnson,N.V.,Wall,S.C.,Suryadevara,N.,Wrapp,D.,Periasamy,S.,Pilewski,K.A.,Raju,N.,Nargi,R.,Sutton,R.E.,Walker,L.M.,Setliff,I.,Crowe,J.E.,Bukreyev,A.,Carnahan,R.H.,McLellan,J.S.&Georgiev、I.S.Efficient discovery of SARS-CoV-2-neutralizing antibodies via B cell receptor sequencing and ligand blocking.Nat Biotechnol(2022).doi:10.1038/s41587-022-01232-2を参照されたい)を含む、ポリペプチド活性のプロキシシグナルとしての受容体結合の妨害について、分泌ポリペプチドをスクリーニングし得る。
【0058】
しかしながら、受容体結合阻害についてのスクリーニングは、中和について直接スクリーニングするものではなく、受容体結合の妨害についてのスクリーニング時に選択ラウンドから見逃されるであろう多くの抗体が存在する。さらに、リガンド遮断についてのスクリーニングは、アゴニスト抗体を効率的に選択することができない。対照的に、本明細書では、本発明者らは、現在の技術を直接使用して中和およびアゴニスト抗体についてスクリーニングする能力を実証する。
【0059】
本明細書に開示されるように、スループットおよびアッセイの簡便性を向上させるために、液滴内の複数の細胞ではなく単一の細胞を使用してハイスループットアッセイを実現することが非常に有利である。さらに、液滴の選別ではなく、単一の細胞の選別ができることは有利であり、なぜなら、液滴の選別が多くの場合、実施するために特殊化され、かつ/またはカスタマイズされた装置を必要とするのに対して、単一の細胞は、より広範囲の細胞装置(例えば、複数の異なるベンダから入手可能な多様なタイプのFACSマシン)を使用して選別され得るからである。
【0060】
いくつかの代替アプローチは、液滴内のポリペプチド分泌細胞(例えば、Gerard,A.,Woolfe,A.,Mottet,G.,Reichen,M.,Castrillon,C.,Menrath,V.,Ellouze,S.,Poitou,A.,Doineau,R.,Briseno-Roa,L.,Canales-Herrerias,P.,Mary,P.,Rose,G.,Ortega,C.,Delince,M.,Essono,S.,Jia,B.,Iannascoli,B.,Goff,O.R.-L.,Kumar,R.,Stewart,S.N.,Pousse,Y.,Shen,B.,Grosselin,K.,Saudemont,B.,Sautel-Caille,A.,Godina,A.,McNamara,S.,Eyer,K.,Millot,G.A.,Baudry,J.,England,P.,Nizak,C.,Jensen,A.,Griffiths,A.D.,Bruhns,P.&Brenan,C.High-throughput single-cell activity-based screening and sequencing of antibodies using droplet microfluidics.Nature Biotechnology 1-7(2020).doi:10.1038/s41587-020-0466-7を参照のこと)、例えば、抗体を分泌する形質細胞についての結合アッセイスクリーニングを行う。しかしながら、これらの技術は、複雑で非効率的な液滴ベースの選別を必要とし、形質細胞の使用は、中和アッセイ、およびGPCRのような膜タンパク質に対するアゴニストまたはアンタゴニスト分子の選択の大部分を妨げる。対照的に、本発明者らのアプローチは、標準的なFACS装置を使用して細胞を直接選別することを可能にし、膜タンパク質ベースの選択およびウイルス中和アッセイの広範囲に順応性があることは、先行技術に記載された技術と比較して大きな利点を示す。
【0061】
本明細書に記載の手順は、必要に応じて、手順の1つの変形例としてマイクロ流体チップ上で細胞液滴を選別する(例えば、エマルジョンを破壊して細胞を回収する前に液滴を選別する)ことによって実施することができる。
【0062】
本開示の一態様では、スクリーニング方法が提供される。いくつかの実施形態では、スクリーニング方法は、(a)単離され、遺伝子操作された単一の細胞におけるレポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出することを含み、細胞は、細胞表面タンパク質を提示し、細胞は、(i)異種試験ポリペプチドを分泌し、(ii)試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化する場合にレポーター分子を発現するように操作される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「細胞表面タンパク質を提示する」とは、目的の細胞が細胞表面に局在する細胞表面タンパク質を有することを指す。細胞表面タンパク質の局在化は、細胞表面タンパク質自体の固有の分子特性に依存し得る。さらに、細胞表面タンパク質の局在化は、タンパク質の機能のために必要とされ得る。いくつかの実施形態では、細胞表面タンパク質は、内在性膜タンパク質である。いくつかの実施態様では、細胞表面タンパク質は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)部分によって細胞表面に局在化される。いくつかの実施形態では、細胞表面タンパク質は、細胞膜を越えて細胞内にシグナルを伝達することができる。他の実施形態では、細胞表面タンパク質は、例えばレポーター分子を含み得る試験試薬の侵入を可能にするために存在する。いくつかの実施形態では、細胞表面タンパク質は細胞によって発現され、次いで細胞膜に局在する。他の実施形態では、細胞表面タンパク質は、当技術分野で公知の手段、例えばエキソソーム、マイクロベシクル、リポソーム、などによって細胞に送達される。
【0064】
本明細書で使用される場合、「細胞表面タンパク質」は、任意の細胞表面関連タンパク質またはポリペプチドである。いくつかの実施形態では、細胞表面タンパク質は、受容体ライゲーション時に細胞内でシグナルを伝達することができるリガンドのためのタンパク質である。したがって、いくつかの実施形態では、細胞表面タンパク質は、細胞表面受容体を含む。
【0065】
本明細書で使用される場合、「検出する」は、細胞内の1つ以上のレポーターによって提供される情報を取得することを指す。したがって、いくつかの実施形態では、検出は、自動化された装置、例えば、フローサイトメーター、蛍光光度計、ルミノメーター、顕微鏡、デジタルカメラ、プレートリーダなどによって、またはヒトの目によって実行され得る。他の実施形態では、検出は、核酸の配列決定に関連する技術、例えばサンガーシーケンシング、次世代シーケンシング(NGS)、単一細胞RNAシーケンシング(scRNA-seq)などを使用して行われる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「レポーター分子」は、細胞の特定の分子状態を示す目的の細胞によって発現される分子を指す。例えば、いくつかの実施形態では、細胞株は、受容体アゴニズムまたはアンタゴニズムに応答してシグナル(例えば、レポーター分子の発現)を提供するように操作される。したがって、レポーター分子は、細胞の状態、すなわち、目的の受容体がライゲーションされているか、またはライゲーションされるのを防止されているかを示す。例示的なレポーター分子には、蛍光タンパク質、発光タンパク質、酵素、タグ付きタンパク質、核酸配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
例示的な蛍光タンパク質には、以下に提供される分子およびその機能的バリアントが含まれるが、これらに限定されない:
【0068】
以下の配列を有する緑色蛍光タンパク質(GFP):
MSKGEELFTG VVPILVELDG DVNGHKFSVS GEGEGDATYG KLTLKFICTT GKLPVPWPTL 60
VTTFSYGVQC FSRYPDHMKQ HDFFKSAMPE GYVQERTIFF KDDGNYKTRA EVKFEGDTLV 120
NRIELKGIDF KEDGNILGHK LEYNYNSHNV YIMADKQKNG IKVNFKIRHN IEDGSVQLAD 180
HYQQNTPIGD GPVLLPDNHY LSTQSALSKD PNEKRDHMVL LEFVTAAGIT HGMDELYK(配列番号1)
【0069】
以下の配列を有する赤色蛍光タンパク質(RFP):
MRGSHHHHHH GSAHGLTDDM TMHFRMEGCV DGHKFVIEGN GNGNPFKGKQ FINLCVIEGG 60
PLPFSEDILS AAFXNRLFTE YPEGIVDYFK NSCPAGYTWH RSFRFEDGAV CICSADITVN 120
VRENCIYHES TFYGVNFPAD GPVMKKMTTN WEPSCEKIIP INSQKILKGD VSMYLLLKDG 180
GRYRCQFDTI YKAKTEPKEM PDWHFIQHKL NREDRSDAKN QKWQLIEHAI ASRSALP(配列番号2)
【0070】
以下の配列を有する黄色蛍光タンパク質(YFP):
KGEELFTGVV PILVELDGDV NGHKFSVSGE GEGDATYGKL TLKFICTTGK LPVPWPTLVT 60
TFXLQCFARY PDHMKRHDFF KSAMPEGYVQ ERTIFFKDDG NYKTRAEVKF EGDTLVNRIE 120
LKGIDFKEDG NILGHKLEYN YNSHNVYIMA DKQKNGIKVN FKIRHNIEDG SVQLADHYQQ 180
NTPIGDGPVL LPDNHYLSYQ SALSKDPNEK RDHMVLLEFV TAAGI(配列番号3)
【0071】
以下の配列を有する青色蛍光タンパク質(BFP):
MSKGEELFTG VVPILVELDG DVNGHKFSVS GEGEGDATYG KLTLKFICTT GKLPVPWPTL 60
VTTFXVQCFS RYPDHMKRHD FFKSAMPEGY VQERTIFFKD DGNYKTRAEV KFEGDTLVNR 120
IELKGIDFKE DGNILGHKLE YNFNSHNVYI MADKQKNGIK VNFKIRHNIE DGSVQLADHY 180
QQNTPIGDGP VLLPDNHYLS TQSALSKDPN EKRDHMVLLE FVTAAGITHG MDELYK(配列番号4)
【0072】
以下の配列を有するシアン蛍光タンパク質(CFP):
MVSKGEELFT GVVPILVELD GDVNGHKFSV SGEGEGDATY GKLTLKFICT TGKLPVPWPT 60
LVTTLXVQCF ARYPDHMKQH DFFKSAMPEG YVQERTIFFK DDGNYKTRAE VKFEGDTLVN 120
RIELKGIDFK EDGNILGHKL EYNAISDNVY ITADKQKNGI KANFKIRHNI EDGSVQLADH 180
YQQNTPIGDG PVLLPDNHYL STQSALSKDP NEKRDHMVLL EFVTAAGITL GMDELYK(配列番号5)
または
MVSKGEELFT GVVPILVELD GDVNGHKFSV SGEGEGDATY GKLTLKFICT TGKLPVPWPT 60
LVTTLXVQCF SRYPDHMKQH DFFKSAMPEG YVQERTIFFK DDGNYKTRAE VKFEGDTLVN 120
RIELKGIDFK EDGNILGHKL EYNYISHNVY ITADKQKNGI KANFKIRHNI EDGSVQLADH 180
YQQNTPIGDG PVLLPDNHYL STQSALSKDP NEKRDHMVLL EFVTAAGITL GMDELYK(配列番号6)
【0073】
以下の配列を有するmCherry:
MVSKGEEDNM AIIKEFMRFK VHMEGSVNGH EFEIEGEGEG RPYEGTQTAK LKVTKGGPLP 60
FAWDILSPQF MYGSKAYVKH PADIPDYLKL SFPEGFKWER VMNFEDGGVV TVTQDSSLQD 120
GEFIYKVKLR GTNFPSDGPV MQKKTMGWEA SSERMYPEDG ALKGEIKQRL KLKDGGHYDA 180
EVKTTYKAKK PVQLPGAYNV NIKLDITSHN EDYTIVEQYE RAEGRHSTGG MDELYK(配列番号7)
【0074】
例示的な発光タンパク質には、限定されないが、以下が含まれる:
【0075】
以下の配列を有するウミシイタケルシフェラーゼ:
MTSKVYDPEL RKRMITGPQW WARCKQMNVL DSFINYYDSE KHAENAVIFL HGNAASSYLW 60
RHVVPHVEPV ARCIIPDLIG MGKSGKSGNG SYRLLDHYKY LTEWFKHLNL PKKIIFVGHD 120
WGACLAFHYC YEHQDRIKAV VHAESVVDVI ESWDEWPDIE EDIALIKSEE GEKMVLENNF 180
FVETMLPSKI MRKLEPEEFA AYLEPFKEKG EVRRPTLSWP REIPLVKGGK PDVVEIVRNY 240
NAYLRASHDL PKMFIESDPG FFSNAIVEGA KKFPNTEFVK VKGLHFSQED APDEMGNYIK 300
SFVERVLKNE Q(配列番号8)
【0076】
以下の配列を有するホタル(Photinus pyralis)ルシフェラーゼ:
MEDAKNIKKG PAPFYPLEDG TAGEQLHKAM KRYALVPGTI AFTDAHIEVN ITYAEYFEMS 60
VRLAEAMKRY GLNTNHRIVV CSENSLQFFM PVLGALFIGV AVAPANDIYN ERELLNSMNI 120
SQPTVVFVSK KGLQKILNVQ KKLPIIQKII IMDSKTDYQG FQSMYTFVTS HLPPGFNEYD 180
FVPESFDRDK TIALIMNSSG STGSPKGVAL PHRTACVRFS HARDPIFGNQ IIPDTAILSV 240
VPFHHGFGMF TTLGYLICGF RVVLMYRFEE ELFLRSLQDY KIQSALLVPT LFSFFAKSTL 300
IDKYDLSNLH EIASGGAPLS KEVGEAVAKR FHLPGIRQGY GLTETTSAIL ITPEGDDKPG 360
AVGKVVPFFE AKVVDLDTGK TLGVNQRGEL CVRGPMIMSG YVNDPEATNA LIDKDGWLHS 420
GDIAYWDEDE HFFIVDRLKS LIKYKGCQVA PAELESILLQ HPNIFDAGVA GLPGDDAGEL 480
PAAVVVLEHG KTMTEKEIVD YVASQVTTAK KLRGGVVFVD EVPKGLTGKL DARKIREILI 540
KAKKGGKSKL(配列番号9)
【0077】
本明細書で使用される場合、「発現」は、DNAを含む核酸のRNAへの転写、またはRNAのタンパク質もしくはポリペプチドへの翻訳のいずれか、またはDNAのRNAへの転写とRNAのタンパク質もしくはポリペプチドへの翻訳の両方を指す。
【0078】
本明細書に開示される方法は、候補分子の迅速なハイスループット試験を可能にする、効率的な単一細胞プラットフォームを利用する。したがって、本明細書で使用される場合、「単一の単離された細胞」は、反応容器、例えば、マルチウェルプレート、マイクロチップ、マイクロ流体チップ、Nanopen(商標)等の中の他の細胞から物理的に分離された細胞を指す。
【0079】
本開示の方法、組成物、システムおよびキットは、「遺伝子操作された細胞」を利用する。本明細書で使用される場合、「遺伝子操作された」またはその文法的変形は、人の手によって行われる1つまたは複数の遺伝子組換えを有する細胞を指す。そのような組換えは、例えば、導入された核酸または外因性核酸の発現を含む。外因性核酸を導入する方法は、当技術分野で公知であり、トランスフェクション、リポフェクション、ウイルス形質導入、例えばレトロウイルス、レンチウイルスまたはアデノウイルス形質導入を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞は、細胞のゲノムに組み込まれた核酸を含み、他の実施形態では、遺伝子操作された細胞は、エピソームに含有される核酸を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞は、1つ以上のプロモーターまたは1つ以上のエンハンサー配列によって作動可能に制御される目的の遺伝子をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、プロモーターは構成的活性を有し得る、すなわち、プロモーターはその制御下の核酸の転写を連続的に指示する。例示的な構成的プロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよび伸長因子1α(EF1a)プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。他の実施形態において、1つ以上のプロモーターは誘導性であり、それらが別の分子の付加に応答することを意味している。例示的な誘導性プロモーターとしては、テトラサイクリン誘導性プロモーター、クメート誘導性プロモーターおよびエストロゲン受容体ベースのタモキシフェン誘導性プロモーターが挙げられる。いくつかの実施形態では、プロモーターは、下流配列の発現レベルが比較的高い「強」プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、下流配列の発現レベルが比較的低い「弱」プロモーターである。限定ではなく例として、哺乳動物CMVプロモーターは、一般に、当業者によって強プロモーターであるとみなされる。
【0081】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、単一細胞を、目的のタンパク質「細胞表面タンパク質」、および「異種試験ペプチド」と呼ばれる潜在的な目的のリガンドの両方の発現源として使用する。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え細胞は、異種試験ペプチドによる目的の受容体のライゲーションの成功、いくつかの例では下流シグナル伝達に応答してレポーターを発現する。スクリーニングされる各細胞は、受容体自体に加えて、目的の受容体のための異なる潜在的リガンド、および受容体のライゲーションを示すレポーター分子を発現するように操作される。したがって、多くのそのような細胞のスクリーニングは、受容体のための複数のリガンドを明らかにする。
【0082】
いくつかの実施形態では、異種試験ペプチドは、抗体またはその抗原結合断片、例えば単鎖可変領域フラグメント(scFv)、ナノボディまたはFab断片である。本明細書で使用される場合、「単鎖可変領域フラグメント(scFv)」は、リンカーによって融合された単一の免疫グロブリン重鎖および単一の免疫グロブリン軽鎖を指す。本明細書で使用される場合、「ナノボディ」は、単一のモノマー可変抗体ドメインを含むタンパク質を指す。「Fab」断片は、抗体の抗原結合領域を指す。
【0083】
いくつかの実施形態では、細胞表面タンパク質のリガンドは公知であり、異種試験ポリペプチドの構造または配列は、公知のリガンドのものに基づく。
【0084】
いくつかの実施形態では、スクリーニング方法は、(a)単離され、遺伝子操作された単一の細胞におけるレポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出することを含み、細胞は、細胞表面タンパク質を提示し、細胞は、(i)異種試験ポリペプチドを分泌し、(ii)試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化しない場合にレポーター分子を発現するように操作される。したがって、そのような実施形態では、細胞表面タンパク質の活性化の防止は、レポーター分子の発現によって明らかにされる。
【0085】
スクリーニング方法のいくつかの実施形態では、スクリーニング方法は、(a)単離され、遺伝子操作された単一細胞を試験試薬と接触させる工程であって、細胞が細胞表面タンパク質を提示し、細胞が(i)異種試験ポリペプチドを分泌し、(ii)試験ポリペプチドまたは試験試薬のうちの1つが細胞表面タンパク質を活性化すれば、レポーター分子を発現するように操作されている工程、(b)レポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出する工程を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、試験試薬は、細胞表面タンパク質のリガンドであり、異種試験ポリペプチドは、細胞表面タンパク質の潜在的なアゴニストまたはアンタゴニストである。他の実施形態では、試験試薬は、細胞表面タンパク質のアゴニストまたはアンタゴニストであり、異種試験ポリペプチドは、細胞表面タンパク質の潜在的なリガンドである。
【0087】
いくつかの実施形態では、スクリーニング方法は、(a)単離され、遺伝子操作された単一の細胞をレポーター分子を含む試験試薬と接触させる工程であって、細胞が細胞表面タンパク質を提示し、試験試薬が、細胞によって提示される細胞表面タンパク質に結合し、試薬-タンパク質複合体を形成することができ、試薬-タンパク質複合体が形成されると、試験試薬が細胞へ侵入することができ、細胞が、(i)異種試験ポリペプチドを分泌するように操作されている工程;(b)細胞におけるレポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出する工程を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、試験試薬は感染性因子であるか、または感染性因子に由来する。いくつかの実施形態では、試験試薬はウイルスであるか、またはウイルスに由来する。例示的な非限定的なウイルスとしては、例えば、コロナウイルスA、B、C、D、フラビウイルス、レンチウイルス、インフルエンザA、B、CまたはDウイルス、エプスタイン・バーウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デングウイルスが挙げられる。いくつかの実施形態では、試験試薬は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、黄熱ウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)、エプスタイン-バーウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、またはデングウイルスであるか、それらに由来する。いくつかの実施形態では、試験試薬は偽ウイルスである。本明細書で使用される場合、「偽ウイルス」は、多くの場合レトロウイルス、レンチウイルス、例えばHIV、または水疱性口内炎ウイルスに基づく複製能力のないウイルスまたはウイルス様粒子を指し、別のウイルス由来の重要なウイルス因子、例えばSARS-CoV-2表面糖タンパク質(スパイクタンパク質)をさらに含む。したがって、偽ウイルスを使用する研究者への感染のリスクが、野生型ウイルスの使用と比較して軽減される一方、本明細書に開示される方法、組成物およびキットのように、野生型ウイルスに対する新規中和剤の発見のためのツールとして有用である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、哺乳動物、魚、鳥類、植物、昆虫、酵母または細菌に感染することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、試験試薬はレポーター分子を含む。したがって、レポーター分子を含む試験薬剤が細胞表面タンパク質に結合し、細胞内への侵入を得ると、細胞はレポーター分子を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、細胞表面タンパク質は、試験試薬と複合体を形成し、試験試薬の細胞への侵入を触媒するために必要な受容体である。いくつかの実施形態では、細胞表面タンパク質は、受容体ライゲーション時に細胞内でシグナルを伝達することができるリガンドのための受容体である。
【0091】
例示的な細胞表面タンパク質には、限定されないが、以下が含まれる:
【0092】
以下のアミノ酸配列を有する、ヒトアンジオテンシン変換酵素2(hACE-2):
MSSSSWLLLS LVAVTAAQST IEEQAKTFLD KFNHEAEDLF YQSSLASWNY NTNITEENVQ 60
NMNNAGDKWS AFLKEQSTLA QMYPLQEIQN LTVKLQLQAL QQNGSSVLSE DKSKRLNTIL 120
NTMSTIYSTG KVCNPDNPQE CLLLEPGLNE IMANSLDYNE RLWAWESWRS EVGKQLRPLY 180
EEYVVLKNEM ARANHYEDYG DYWRGDYEVN GVDGYDYSRG QLIEDVEHTF EEIKPLYEHL 240
HAYVRAKLMN AYPSYISPIG CLPAHLLGDM WGRFWTNLYS LTVPFGQKPN IDVTDAMVDQ 300
AWDAQRIFKE AEKFFVSVGL PNMTQGFWEN SMLTDPGNVQ KAVCHPTAWD LGKGDFRILM 360
CTKVTMDDFL TAHHEMGHIQ YDMAYAAQPF LLRNGANEGF HEAVGEIMSL SAATPKHLKS 420
IGLLSPDFQE DNETEINFLL KQALTIVGTL PFTYMLEKWR WMVFKGEIPK DQWMKKWWEM 480
KREIVGVVEP VPHDETYCDP ASLFHVSNDY SFIRYYTRTL YQFQFQEALC QAAKHEGPLH 540
KCDISNSTEA GQKLFNMLRL GKSEPWTLAL ENVVGAKNMN VRPLLNYFEP LFTWLKDQNK 600
NSFVGWSTDW SPYADQSIKV RISLKSALGD KAYEWNDNEM YLFRSSVAYA MRQYFLKVKN 660
QMILFGEEDV RVANLKPRIS FNFFVTAPKN VSDIIPRTEV EKAIRMSRSR INDAFRLNDN 720
SLEFLGIQPT LGPPNQPPVS IWLIVFGVVM GVIVVGIVIL IFTGIRDRKK KNKARSGENP 780
YASIDISKGE NNPGFQNTDD VQTSF(配列番号10)
【0093】
以下の配列を有する、ヒトプログラム細胞死1タンパク質(PD-1):
MEDAKNIKKG PAPFYPLEDG TAGEQLHKAM KRYALVPGTI AFTDAHIEVN ITYAEYFEMS 60
VRLAEAMKRY GLNTNHRIVV CSENSLQFFM PVLGALFIGV AVAPANDIYN ERELLNSMNI 120
SQPTVVFVSK KGLQKILNVQ KKLPIIQKII IMDSKTDYQG FQSMYTFVTS HLPPGFNEYD 180
FVPESFDRDK TIALIMNSSG STGSPKGVAL PHRTACVRFS HARDPIFGNQ IIPDTAILSV 240
VPFHHGFGMF TTLGYLICGF RVVLMYRFEE ELFLRSLQDY KIQSALLVPT LFSFFAKSTL 300
IDKYDLSNLH EIASGGAPLS KEVGEAVAKR FHLPGIRQGY GLTETTSAIL ITPEGDDKPG 360
AVGKVVPFFE AKVVDLDTGK TLGVNQRGEL CVRGPMIMSG YVNDPEATNA LIDKDGWLHS 420
GDIAYWDEDE HFFIVDRLKS LIKYKGCQVA PAELESILLQ HPNIFDAGVA GLPGDDAGEL 480
PAAVVVLEHG KTMTEKEIVD YVASQVTTAK KLRGGVVFVD EVPKGLTGKL DARKIREILI 540
KAKKGGKSKL(配列番号11)
【0094】
以下の配列を有する、ヒト細胞傷害性Tリンパ球タンパク質4(CTLA-4):
MACLGFQRHK AQLNLATRTW PCTLLFFLLF IPVFCKAMHV AQPAVVLASS RGIASFVCEY 60
ASPGKATEVR VTVLRQADSQ VTEVCAATYM MGNELTFLDD SICTGTSSGN QVNLTIQGLR 120
AMDTGLYICK VELMYPPPYY LGIGNGTQIY VIDPEPCPDS DFLLWILAAV SSGLFFYSFL 180
LTAVSLSKML KKRSPLTTGV YVKMPPTEPE CEKQFQPYFI PIN(配列番号12)
【0095】
以下の配列を有する、ヒト4-1BB:
MGNSCYNIVA TLLLVLNFER TRSLQDPCSN CPAGTFCDNN RNQICSPCPP NSFSSAGGQR 60
TCDICRQCKG VFRTRKECSS TSNAECDCTP GFHCLGAGCS MCEQDCKQGQ ELTKKGCKDC 120
CFGTFNDQKR GICRPWTNCS LDGKSVLVNG TKERDVVCGP SPADLSPGAS SVTPPAPARE 180
PGHSPQIISF FLALTSTALL FLLFFLTLRF SVVKRGRKKL LYIFKQPFMR PVQTTQEEDG 240
CSCRFPEEEE GGCEL(配列番号13)
【0096】
以下の配列を有する、ヒトA型肝炎ウイルス細胞性受容体2(TIM-3):
MFSHLPFDCV LLLLLLLLTR SSEVEYRAEV GQNAYLPCFY TPAAPGNLVP VCWGKGACPV 60
FECGNVVLRT DERDVNYWTS RYWLNGDFRK GDVSLTIENV TLADSGIYCC RIQIPGIMND 120
EKFNLKLVIK PAKVTPAPTR QRDFTAAFPR MLTTRGHGPA ETQTLGSLPD INLTQISTLA 180
NELRDSRLAN DLRDSGATIR IGIYIGAGIC AGLALALIFG ALIFKWYSHS KEKIQNLSLI 240
SLANLPPSGL ANAVAEGIRS EENIYTIEEN VYEVEEPNEY YCYVSSRQQP SQPLGCRFAM 300
P(配列番号14)
【0097】
以下の配列を有する、ヒトリンパ球活性化遺伝子3(LAG3):
MWEAQFLGLL FLQPLWVAPV KPLQPGAEVP VVWAQEGAPA QLPCSPTIPL QDLSLLRRAG 60
VTWQHQPDSG PPAAAPGHPL APGPHPAAPS SWGPRPRRYT VLSVGPGGLR SGRLPLQPRV 120
QLDERGRQRG DFSLWLRPAR RADAGEYRAA VHLRDRALSC RLRLRLGQAS MTASPPGSLR 180
ASDWVILNCS FSRPDRPASV HWFRNRGQGR VPVRESPHHH LAESFLFLPQ VSPMDSGPWG 240
CILTYRDGFN VSIMYNLTVL GLEPPTPLTV YAGAGSRVGL PCRLPAGVGT RSFLTAKWTP 300
PGGGPDLLVT GDNGDFTLRL EDVSQAQAGT YTCHIHLQEQ QLNATVTLAI ITVTPKSFGS 360
PGSLGKLLCE VTPVSGQERF VWSSLDTPSQ RSFSGPWLEA QEAQLLSQPW QCQLYQGERL 420
LGAAVYFTEL SSPGAQRSGR APGALPAGHL LLFLILGVLS LLLLVTGAFG FHLWRRQWRP 480
RRFSALEQGI HPPQAQSKIE ELEQEPEPEP EPEPEPEPEP EPEQL(配列番号15)
【0098】
hACE-2はSARS-CoV-2の細胞への侵入に必要であり、一方、TMPRSS2は細胞へのウイルスの侵入を促進する。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、hACE-2およびTMPRSS2の両方を含み得る。
【0099】
以下の配列を有する、ヒト膜貫通セリンプロテアーゼ2(TMPRSS2):
MALNSGSPPA IGPYYENHGY QPENPYPAQP TVVPTVYEVH PAQYYPSPVP QYAPRVLTQA 60
SNPVVCTQPK SPSGTVCTSK TKKALCITLT LGTFLVGAAL AAGLLWKFMG SKCSNSGIEC 120
DSSGTCINPS NWCDGVSHCP GGEDENRCVR LYGPNFILQV YSSQRKSWHP VCQDDWNENY 180
GRAACRDMGY KNNFYSSQGI VDDSGSTSFM KLNTSAGNVD IYKKLYHSDA CSSKAVVSLR 240
CIACGVNLNS SRQSRIVGGE SALPGAWPWQ VSLHVQNVHV CGGSIITPEW IVTAAHCVEK 300
PLNNPWHWTA FAGILRQSFM FYGAGYQVEK VISHPNYDSK TKNNDIALMK LQKPLTFNDL 360
VKPVCLPNPG MMLQPEQLCW ISGWGATEEK GKTSEVLNAA KVLLIETQRC NSRYVYDNLI 420
TPAMICAGFL QGNVDSCQGD SGGPLVTSKN NIWWLIGDTS WGSGCAKAYR PGVYGNVMVF 480
TDWIYRQMRA DG(配列番号16)
【0100】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)は、免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIMS)および免疫受容体チロシン系スイッチモチーフを含有する膜貫通タンパク質であり、PD-1がT細胞受容体TCRシグナルを負に調節することを示唆する。したがって、PD-1シグナル伝達を遮断する薬剤は、T細胞エフェクター機能を増加させ、癌を治療するために首尾よく使用されている。
【0101】
ヒト細胞傷害性Tリンパ球タンパク質4(CTLA-4)は、抗原提示細胞(APC)上の共刺激分子CD80およびCD86に結合し、共阻害シグナルをT細胞に伝達する膜貫通タンパク質である。したがって、CTLA-4シグナル伝達を遮断する薬剤は、T細胞エフェクター機能を増加させ、癌を治療するために首尾よく使用されている。
【0102】
4-1BB(CD137、またはTNFRSF9)は、T細胞のエフェクター機能を刺激するように作用する膜タンパク質である。したがって、4-1BBシグナル伝達を調節する薬剤は、ヒト疾患の治療に有用であり得る。例えば、4-1BBを刺激する薬剤は、腫瘍浸潤リンパ球を活性化して癌細胞を破壊するのに有用であり得、一方、4-1BBシグナル伝達に拮抗する薬剤は、ヒトにおいて自己免疫を予防するか、または移植関連症状を治療するのに有用であり得る。
【0103】
ヒトA型肝炎ウイルス細胞性受容体2(TIM-3)は、T細胞において阻害性分子として作用する膜貫通タンパク質である。したがって、TIM-3シグナル伝達を低減または遮断する薬剤は、癌免疫療法に有用であり得る。
【0104】
ヒトリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)は、T細胞において阻害性分子として作用する膜貫通タンパク質である。したがって、LAG3シグナル伝達を低減または遮断する薬剤は、癌免疫療法において有用であり得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、細胞によって分泌される異種試験ペプチドは、ウイルスを中和するかまたは細胞機能を変化させてウイルス感染を予防し得る任意のタンパク質を含む。例示的な分泌タンパク質には、インターフェロンバリアント、グリフィシン、ペプチド、受容体トラップ(例えば、SARS-CoV-2の可溶性ACE2バリアント、またはHIV-1の可溶性CD4バリアント)が含まれ得る。
【0106】
スクリーニング方法のいくつかの実施形態では、方法は、異種試験ポリペプチドをコードする核酸を増幅および/または配列決定することをさらに含む。したがって、いくつかの実施形態では、レポーター分子を発現する細胞が、当該分野で公知の方法、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気ビーズ濃縮によってレポーター分子を発現しない細胞から分離され得、各群を配列決定して、所与のシステムにおけるレポーターの発現または発現の欠如に関連する異種試験ポリペプチドをコードする配列のライブラリーを作製する。
【0107】
いくつかの実施形態では、レポーター分子は核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸配列はバーコード配列を含む。本明細書で使用される場合、「バーコード」または「バーコード配列」は、特定の状態、例えば細胞表面タンパク質のライゲーションを識別するために使用される固有のヌクレオチド配列を指す。バーコード配列は、適切には、バーコードが容易に識別できるように発現される細胞に存在するゲノム、トランスクリプトーム、外因性発現ベクターなどには見られない配列を含む。
【0108】
本技術は、特定の細胞型または特定の細胞株に限定されず、原核細胞(例えば、細菌)、酵母、哺乳動物、鳥類、魚類、または植物細胞を含む任意の適切な細胞が、ウイルス感染中和アッセイおよびポリペプチド-受容体活性(例えば、抗体、リガンド、受容体、アゴニスト、アンタゴニストなど)の試験の両方に使用され得る。本明細書に開示されるスクリーニングアッセイ、例えば中和アッセイに有用な例示的な非限定的細胞株には、CHO、BHK、Cos-7 NS0、SP2/0、YB2/0、HEK293、HT-1080、Huh-7、PER.C6、およびそれらのバリアントなどが含まれる。いくつかの実施形態では、B細胞株、例えばRaji、ARH-77、MOPC-315、MOPC-21、その他を使用することができる。
【0109】
例として、いくつかの実施形態では、昆虫細胞を、昆虫細胞と適合性のレポーターと共に使用することができる。いくつかの実施形態では、レポーターは、昆虫細胞ウイルスによって誘導され得る。いくつかの実施形態では、細菌細胞は、細菌細胞と適合性のレポーターと共に使用され得る。いくつかの実施形態では、レポーターは、バクテリオファージ感染によって誘導され得る。いくつかの実施形態では、植物細胞は、植物細胞と適合性のレポーターと共に使用され得る。いくつかの実施形態では、レポーターは、植物細胞ウイルスによって誘導され得る。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、哺乳動物細胞に適合するレポーター、例えば蛍光マーカー、酵素、タグ付きタンパク質、または核酸の発現と共に使用され得る。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、レポーターは、哺乳動物細胞ウイルスによって誘導され得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、アッセイ読み出しはフルオロフォア発現であり得る。いくつかの実施形態において、アッセイ読み出しは、次世代シーケンシング(「NGS」)NGSベースのシグナルまたは集積化NGSバーコードに基づいてもよい。いくつかの実施形態では、アッセイ読み出しは、細胞増殖または細胞死であり得る。
【0111】
いくつかの例では、選択マーカーを使用して、抗体および/またはウイルス侵入受容体をコードする核酸で形質転換された細胞を選択することができる。
【0112】
本明細書で使用される場合、「選択マーカー」は、選択マーカーをコードする核酸および目的の核酸を含む所望の核酸を発現する細胞の選択を可能にする任意の分子を指す。例えば、一実施形態では、本開示の細胞は、抗体をコードし、蛍光分子、例えば蛍光タンパク質(選択マーカー)をコードする核酸を含む核酸を発現する。したがって、前述の例では、所望の核酸を発現している細胞を、その核酸を発現していない細胞から当該分野で公知の蛍光分子を発現している細胞を分離する方法、例えば蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して分離することができる。選択マーカーを発現している細胞を分離する他の方法は、当技術分野で公知であり、限定されないが、抗体および磁気ビーズ分離を含む。いくつかの実施形態では、選択マーカーは、目的の核酸を発現している細胞に生存優位性を付与する。例えば、いくつかの実施形態では、選択マーカーは、抗生物質、例えばブラストサイジン、ハイグロマイシンB、ピューロマイシン、zeocin、G418/ジェネテシン、または(1)その他に対する耐性を付与する。したがって、耐性を付与する分子が目的の核酸にコードされている抗生物質で細胞を処理すると、目的の核酸を発現している細胞を選択し、したがって選択マーカーとして作用する。
【0113】
したがって、いくつかの実施形態では、レポーターは選択マーカーを含む。しかしながら、レポーターは、いくつかの実施形態において、選択マーカーを含み得るが、レポーターは、開示された組成物またはキットを使用して開示された方法を実施する当業者に、レポーターが発現される細胞の状態の変化、例えば、ウイルスによる感染、細胞シグナル伝達事象の存在、細胞シグナル伝達事象の欠如などを示すように機能する。
【0114】
いくつかの実施形態では、タンパク質またはペプチドバリアントのライブラリーからの最適なタンパク質またはペプチド機能の選択を可能にする、細胞によって発現される選択マーカーが使用され得る。いくつかの実施形態では、分泌タンパク質機能の選択マーカーは、細胞株で通常発現されない蛍光タンパク質であり得、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(RFP)、mCherry、青色蛍光タンパク質(BFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)などを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、選択マーカーは、親和性に基づく選択のために表面タンパク質の発現を誘導し得、いくつかの例には、CD19、CD4、CD34および他の表面タンパク質が含まれ得る。他の実施形態では、選択マーカーは、細胞生存を可能にする酵素を含み得、これらに限定されないが、アポトーシス経路遺伝子、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、抗生物質耐性マーカー、ブレオマイシン、アデノシンデアミナーゼ、キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、または(1)その他を含む。いくつかの実施形態では、選択マーカーは、染色体変化をもたらすCre-loxまたはCRISPR遺伝子活性化の結果として読み取られ得る。いくつかの実施形態では、インテグラーゼを使用して、ライブラリーをクローニングするために遺伝子を細胞に挿入することができる。他の実施形態では、安定な細胞プールを使用して、トランスフェクトされたプラスミドからライブラリーを生成することができる。他の実施形態では、分泌タンパク質ライブラリーは、インテグラーゼを使用して生成され得る。他の実施形態では、分泌タンパク質ライブラリーは、トランスポザーゼを使用して生成され得る。いくつかの実施形態では、アッセイの読み出しは、スクリーニング後の細胞集団の配列決定に基づいてもよい。いくつかの実施形態では、そのアッセイ読み出しは、抗体またはウイルス感染バリアントそれぞれの固有の識別子として、抗体および/またはウイルスまたはウイルス感染モデルによってコードされるDNAバーコードの同定を含み得る。他の実施形態では、アッセイの読み出しは、蛍光マーカー、およびフローサイトメトリーによる選別に基づいてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、異種試験ポリペプチドは抗体バリアントであり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、以下の形式:IgG、IgM、IgA、Fab、ScFv、Fab2’のうちの1つ以上のものであり得る。いくつかの実施形態では、抗体は二重特異性抗体であり得る。他の実施形態では、抗体は三重特異性抗体であり得る。いくつかの実施形態では、分泌タンパク質は、抗体天然重:軽(2,3,4)対を含み得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、異種試験ポリペプチドは、ランダムに対になった重鎖および軽鎖を含み得る。いくつかの実施形態では、抗体の重:軽の発現は、同じmRNA転写物上にあり得る。他の実施形態では、抗体の重鎖および軽鎖は、別々のmRNA上で発現され得る。いくつかの実施形態では、重鎖mRNAと軽鎖mRNA(3)との間に双方向プロモーターを使用することができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、異種試験ポリペプチドは、天然ヒト免疫ライブラリーのスクリーニングによって開発されたヒト患者由来の抗体遺伝子ライブラリーに見られる抗体を含む。他の実施形態では、抗体遺伝子ライブラリーは、マウス、トランスジェニックマウス、ラクダ(camellid)、サメ、非ヒト霊長類、モルモット、または他の動物を含む動物源に由来し得る。いくつかの実施形態では、抗体遺伝子ライブラリーを合成的に生成することができる。特定の実施形態では、ライブラリーは、(例えば、標的変異誘発、部位飽和変異誘発、DNAシャッフリング、エラープローンPCR、体細胞超変異、または他の多様性導入機構によって)多様性が導入された、合成的に生成されたライブラリーを含み得る。いくつかの実施形態では、タンパク質ライブラリーは、既知の活性を有する抗体遺伝子に基づいてもよい。いくつかの実施形態では、開示されるスクリーニング方法を使用して、既知のベースライン活性を有する抗体に由来する多様化ライブラリーの改善された効力、選択性、または幅を選択することができる。いくつかの実施形態では、異種試験ポリペプチドは、マウス、非ヒト霊長類、モルモット、フェレット、ブタおよびヒトを含むがこれらに限定されない任意の種によって発現される細胞受容体にアゴナイズするか、または拮抗する能力について選択され得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、異種試験ポリペプチドまたは異種試験ポリペプチドライブラリーバリアントは、いくらかのベースライン活性を有し得、記載される機能的スクリーニングは、その効力、選択性または活性の幅を改善するために使用される。いくつかの実施形態では、出発タンパク質またはペプチドライブラリーは、特徴付けられていない活性を有し得、本明細書に記載の機能アッセイを使用して、タンパク質またはペプチドライブラリー中のバリアントの機能活性を特徴付け、所望の機能的バリアントを選択する。
【0119】
いくつかの実施形態では、細胞は、選択ラウンドの間に分泌ポリペプチド(異種試験ポリペプチド)に遺伝的多様性を導入するように操作され得る。遺伝的多様性を導入するためのいくつかの機構が当業者に公知であり、活性化誘導シチジンデアミダーゼ(AID)の発現、エラープローンポリメラーゼの発現、または直交性プラスミド複製システムの使用が含まれる。
【0120】
いくつかの実施形態では、異種試験ポリペプチド発現プロモーターを変更して分泌タンパク質濃度を調節することができ、その場合、より強いプロモーターが分泌濃度に影響を及ぼす。より弱いプロモーターを使用して、より強力な分泌タンパク質選択を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質分泌の時間量を変化させて、同様に分泌タンパク質濃度を調整することができる。いくつかの実施形態では、例として、ウイルスの添加前のインキュベーション時間を短くすると、上清中の可溶性ポリペプチド濃度を低下させ、それにより、より強力に活性または保護性な分泌分子を選択することができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、レポーター(例えば、GFP発現)をもたらす機能アッセイは、ウイルス感染に由来してもよく、アッセイは、細胞によって発現および分泌される異種ポリペプチドが抗体または抗原結合断片である、ウイルス中和アッセイを含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、機能アッセイは、細胞受容体(例えば、Gタンパク質共役受容体、T細胞受容体、キメラ抗原受容体、アポトーシスマーカー、免疫調節剤、例えばPD-1、LAG-3、TIM、4-1BB、またはその他)を介した結合および活性化またはシグナル伝達を含み得る。そのような実施形態では、機能アッセイは、細胞受容体を活性化し、シグナル伝達を誘導することができる分泌タンパク質のスクリーニングを含み得る。シグナル伝達事象は、所望の細胞受容体活性化に対する分泌タンパク質の機能的効果の読み出しを可能にする任意のレポーター(例えば、蛍光タンパク質発現、アポトーシスマーカー、細胞表面マーカー発現、Cre-LoxもしくはCRISPR発現、またはmRNAベースのマーカー)に連結され得る。いくつかの実施形態では、分泌タンパク質は、活性化部分(例えば、細胞によって天然に産生されるか、細胞によって産生されるように操作されるか、または細胞と接触するように添加されるリガンド)の存在下で表面受容体を遮断し、その活性化を防止し、結果として機能的読み出し、例えばレポーターが生じる。他の実施形態では、分泌タンパク質は、表面受容体を直接活性化し得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、分泌されたタンパク質の機能的スクリーニングのために、単一細胞を区画に単離する。いくつかの実施形態では、区画は96または384ウェルプレートであり得る。いくつかの実施形態では、区画は、印刷された
(4,5)マイクロウェル、オープンマイクロチャンバ、またはNanopen(商標)であってもよい。Nanopenは、アレイ状に配置されたナノライタースケールのウェルを含む細胞含有デバイスであり、Berkeley Light社から購入可能である。他の実施形態では、区画は、エマルジョン
(6)液滴であり得る(例えば、
図15、
図16、
図18、
図28、および
図29を参照されたい)。いくつかの実施形態では、一定の時間が経過して所望の分泌試験ポリペプチドが液滴内に蓄積した後に、追加の試薬を区画に添加することができる。ウェルプレートでは、流体添加によって試薬添加が起こり得る。印刷された
(4,5)マイクロウェル、オープンマイクロチャンバ、またはNanopen(商標)では、試薬添加は、非封止区画の近くでの洗浄または流体フローによって達成され得る。エマルジョン液滴では、液滴の混同によって試薬の添加が起こり得る。いくつかの実施形態では、液滴混同は、電気融合(実施例26、
図29を参照されたい)、印刷されたピラー抵抗、または誘導された液滴融合の他の手段によって達成され得る。特定の実施形態では、分泌タンパク質バリアントを含むライブラリー細胞の最初の封入後の試薬の添加は必要ない場合がある。
【0124】
いくつかの実施形態では、区画に添加される試薬は、ウイルスまたは偽ウイルスを含有し得、その場合、アッセイはウイルス中和アッセイであり得る。いくつかの実施形態では、単一のウイルスまたは偽ウイルスのみが添加され得る。他の実施形態では、複数のウイルスまたはウイルスバリアントを加えてもよい。いくつかの実施形態では、ウイルスまたは偽ウイルスは、感染ウイルスを同定するために異なる選択マーカーでバーコード化され得る。いくつかの実施形態では、ウイルスまたは偽ウイルスは、1つまたは複数の異なる蛍光マーカー、DNAバーコード、または細胞表面タンパク質でバーコード化、タグ付け、または標識され得る。いくつかの実施形態では、ウイルスまたは偽ウイルス感染は細胞死を引き起こし得、ウイルスまたは偽ウイルスを中和する保護的分泌タンパク質をコードする細胞のみがアッセイ後に生存することができる。
【0125】
抗体工学および発見における長年の課題は、膜タンパク質に対するアゴニスト抗体またはアンタゴニスト抗体を同定する必要性である。膜タンパク質相互作用を使用して細胞挙動を操作することは、癌生物学および自己免疫疾患治療を含む現代医学における重要な目標である。重要な膜タンパク質標的のいくつかの例としては、表面マーカー4-1BB、OX40、PD-L1、PD-1、CTLA-4、LAG-3、Gタンパク質共役受容体(GPCR)、およびイオンチャネルが挙げられる。膜タンパク質を標的とする抗体の発見に対する最大の課題のうちの2つには、1)膜タンパク質は、可溶性形式で発現されると天然ではないので、膜結合タンパク質の可溶性バージョンを発現および精製する能力、および2)単に結合についてスクリーニングするのではなく、(7)タンパク質の天然の膜結合バージョンに結合する抗体の機能についてスクリーニングすることは技術的に複雑であること、が含まれる。同じ細胞における分泌試験タンパク質発現を標的タンパク質の膜表面発現として関連付けるための本記載のアプローチは、スクリーニングのために非天然可溶化形式で膜タンパク質を発現および精製する必要がなく、また、細胞ベースの活性化マーカー(蛍光マーカー発現またはルシフェラーゼ発現など)の使用が、単一細胞によって分泌される試験タンパク質の機能活性の直接的な読み出しを提供することができるので、これらの2つの従来の課題に見事に対処する。したがって、分泌タンパク質分析のための本明細書に記載のアプローチは、表面タンパク質、ならびに4-1BB、OX40、PD-L1、PD-1、CTLA-4、LAG-3、Gタンパク質共役受容体(GPCR)、およびイオンチャネルなどの受容体を含む、重要な膜標的に使用することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、分泌タンパク質活性は、受容体活性のアゴニストまたはアンタゴニストであり得る。特定の実施形態では、試薬は、区画に添加されてもよく、例えば受容体アゴニスト、例えばPD-1受容体に対するPD-L1であってもよい。他の実施形態では、区画に添加される試薬は、結合時に受容体活性化を防止する受容体アンタゴニストであり得る。これらの実施形態のいくつかにおいて、受容体活性化をレポーター発現、例えば蛍光部分発現と関連させて、タンパク質受容体活性を調節する抗体を分泌する能力について細胞をスクリーニングする。蛍光シグナル、ルシフェラーゼシグナル、または受容体活性を示す他のシグナルを含む受容体活性化レポーターを有する特定の細胞株が生成され、それらは分析および選択のために分泌タンパク質のライブラリーで適切に形質転換されると、この目的のために使用され得る。
【0127】
以下は、本出願の態様を利用し得る、または本出願の態様によって利用され得るアッセイのセットである。アッセイは、Promega社などの様々な会社から購入可能であり得る。膜結合タンパク質および/または分泌タンパク質の検出および/または特徴付けに使用されるアッセイの例は、4-1BBアッセイである。腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーである4-1BB(CD137/TNFRSF9)は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞および自然免疫細胞集団上に発現される誘導性共刺激受容体である。細胞表面上に存在する場合、4-1BBは4-1BBリガンド(4-1BBL)と相互作用し、特にT細胞およびNK細胞において、その後の細胞増殖ならびにインターフェロンガンマ(IFNγ)およびインターロイキン-2(IL-2)の産生を誘導する。膜結合タンパク質および/または分泌タンパク質の検出および/または特徴付けに使用されるアッセイの別の例は、OX40アッセイである。OX40バイオアッセイは、OX40を結合して活性化することができるリガンドまたはアゴニスト抗体の効力および安定性を測定する、生物発光細胞に基づくアッセイである。OX40(CD134/TNFRSF4)は、腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーのメンバーであり、主に活性化T細胞上、より少ない程度で好中球およびナチュラルキラー(NK)細胞上に発現される共刺激受容体である。細胞表面に存在する場合、OX40は、特にT細胞において、OX40リガンド(OX40L)と相互作用し、その後の細胞増殖、生存およびサイトカインの産生を誘導する。
【0128】
膜結合タンパク質および/または分泌タンパク質の検出および/または特徴付けに使用されるアッセイの別の例は、PD-1/PD-L1アッセイである。PD-1は、活性化T細胞およびB細胞上に発現される免疫阻害性受容体であり、腫瘍抗原および自己抗原に対する免疫応答を調節するのに重要な役割を果たす。PD-1の、隣接細胞上のそのリガンド、PD-L1またはPD-L2のいずれかによる係合は、TCRシグナル伝達およびTCR媒介増殖、転写活性化およびサイトカイン産生を阻害する。PD-1/PD-L1相互作用を遮断するように設計された治療用抗体およびFc融合タンパク質は、様々な癌の治療のための臨床試験において有望な結果を示す。膜結合タンパク質および/または分泌タンパク質の検出および/または特徴付けに使用されるアッセイの別の例は、CTLA-4アッセイである。CD152としても知られるCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)は、構成的に制御性T細胞(Treg)上に発現され、活性化T細胞において上方制御される免疫阻害性受容体である。CTLA-4は、腫瘍抗原および自己抗原に対する免疫応答の調節において重要な役割を果たす。CTLA-4発現がT細胞の表面上で上方制御されると、T細胞はより高いアビディティーでB7に結合し、したがってCD28からの正の共刺激シグナルを打ち負かす。さらに、CTLA-4の、隣接する抗原提示細胞(APC)上のそのリガンド、CD80(B7-1)またはCD86(B7-2)のいずれかによる係合は、T細胞活性化、細胞増殖およびサイトカイン産生のCD28共刺激を阻害する。
【0129】
膜結合タンパク質および/または分泌タンパク質の検出および/または特徴付けに使用されるアッセイの別の例は、LAG-3/MHCII Blockade Bioassayアッセイである。LAG-3/MHCII Blockade Bioassayは、LAG-3とその最良に特徴付けられたリガンドである主要組織適合遺伝子複合体II(MHCII)との相互作用を遮断するように設計された抗体および他の生物製剤の効力および安定性を測定する生物発光細胞に基づくアッセイである。CD223としても知られるLAG-3は、活性化CD4+およびCD8+T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞上に発現される免疫チェックポイント受容体である。LAG-3は、腫瘍抗原および自己抗原に対する免疫応答の調節において重要な役割を果たす。MHCIIによるLAG-3の係合は、TCRシグナル伝達、サイトカイン産生および活性化T細胞の増殖を阻害する。LAG-3/MHCII相互作用を遮断するように設計された治療用抗体は、様々な癌の治療のための臨床試験において有望な結果を示す。
【0130】
[組成物]
【0131】
本開示の一態様では、組成物が提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、単離され、遺伝子操作された単一の細胞を含み、細胞は、細胞表面タンパク質を提示し、細胞は、(i)異種試験ポリペプチドを分泌し、(ii)試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化する場合にレポーター分子を発現するように操作される。
【0132】
いくつかの実施形態では、組成物は、単離され、遺伝子操作された単一の細胞を含み、細胞は、細胞表面タンパク質を提示し、細胞は、(i)異種試験ポリペプチドを分泌し、(ii)試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化しない場合にレポーター分子を発現するように操作される。
【0133】
いくつかの実施形態では、組成物は、単離され、遺伝子操作された単一の細胞、および場合により試験試薬を含み、細胞は、細胞表面タンパク質を提示し、細胞は、(i)異種試験ポリペプチドを分泌し、(ii)試験ポリペプチドまたは試験試薬のうちの1つが細胞表面タンパク質を活性化する場合にレポーター分子を発現するように操作される。
【0134】
いくつかの実施形態では、組成物は、単離され、遺伝子操作された単一の細胞、および場合によりレポーター分子を含む試験試薬を含み、細胞は細胞表面タンパク質を提示し、試験試薬は、細胞によって提示される細胞表面タンパク質に結合し、試薬-受容体複合体を形成することができ、試薬-受容体複合体が形成されると、試験試薬が細胞への侵入を獲得し、細胞は、(i)異種試験ポリペプチドを分泌するように操作される。
【0135】
いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、酵母細胞、植物細胞または細菌細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞はヒト細胞を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、細胞表面タンパク質は、内因性受容体を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞表面タンパク質を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞表面タンパク質は、異種タンパク質を含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、試験ポリペプチドの分泌は構成的である。いくつかの実施形態では、試験ポリペプチドの分泌は誘導性である。
【0138】
いくつかの実施形態では、単離され、遺伝子操作された単一の細胞は、マルチウェルプレートのウェル内にある。いくつかの実施形態では、単離され、遺伝子操作された単一の細胞は、マイクロチップのチャンバ内にある。いくつかの実施形態では、単離され、遺伝子操作された単一の細胞は、エマルジョン液滴などのマイクロ流体液滴中にある。いくつかの実施形態では、単離され、遺伝子操作された単一の細胞は、Nanopen(商標)内にある。
【0139】
いくつかの実施形態では、レポーター分子は、蛍光マーカー、酵素、タグ付きタンパク質、または核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、レポーター分子は核酸配列、場合によりバーコード配列を含む。いくつかの実施形態では、レポーター分子は蛍光部分を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、異種試験ペプチドは、受容体リガンドのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、バリアントは、リガンドバリアントのライブラリーに由来する。いくつかの実施形態では、異種試験ポリペプチドは、潜在的な受容体アゴニストまたはアンタゴニストを含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、試験試薬は、受容体活性化のアゴニストまたはアンタゴニストを含む。いくつかの実施形態では、試験試薬は細胞表面タンパク質リガンドを含み、異種試験ポリペプチドは、受容体活性化の潜在的アゴニストまたはアンタゴニストのライブラリーに由来する。
【0142】
いくつかの実施形態では、異種試験ポリペプチドは、抗体、VHH(例えば、ノノボディ(nonobody)と呼ばれる重鎖のみの抗体の抗原結合断片)またはその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、抗体または抗原結合断片のライブラリーに由来する。
【0143】
いくつかの実施形態において、試験試薬はウイルスを含み、細胞表面タンパク質は細胞へのウイルス侵入の構成要素を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスは、コロナウイルスA、B、C、またはD、フラビウイルス、レンチウイルス、インフルエンザA、B、またはCから選択される1つまたは複数である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、HIV、SARS-CoV-2、および黄熱ウイルスから選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスはSARS-CoV-2ウイルスを含み、細胞表面タンパク質はヒトアンジオテンシン変換酵素2(hACE2)を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、膜貫通セリンプロテアーゼ2(TMPRSS2)を発現するように操作される。
【0144】
いくつかの実施形態では、細胞はまた、選択ラウンドの間に異種試験ポリペプチドに新たな遺伝子多様性を導入するように操作される。遺伝的多様性を導入するためのいくつかの機構が当業者に公知であり、活性化誘導シチジンデアミダーゼ(AID)の発現、エラープローンポリメラーゼの発現、または直交性プラスミド複製システムの使用が含まれる。
【0145】
[キット]
【0146】
本開示の別の態様では、キットが提供される。いくつかの実施形態では、キットは、(a)細胞内の異種試験ポリペプチドの発現のためのベクター;(b)レポーター分子をコードするベクターであって、その発現が、異種試験ポリペプチドが細胞上に提示される細胞表面タンパク質を活性化すると活性化されるベクターを含み、ベクターの1つ以上は発現ベクターであるか、またはベクターの1つ以上はインテグレーションベクターであってもよい。
【0147】
いくつかの実施形態では、キットは、(a)細胞中の異種試験ポリペプチドの発現のためのベクター;(b)レポーター分子をコードするベクターであって、その発現が、異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化しないと活性化されるベクターを含み、ベクターの1つ以上は発現ベクターであるか、またはベクターの1つ以上はインテグレーションベクターであってもよい。
【0148】
いくつかの実施形態では、キットは、(1)試験試薬;および(2)(a)細胞中の異種試験ポリペプチドの発現のためのベクター;(b)レポーター分子をコードするベクターであって、その発現が、異種試験ポリペプチドまたは試験試薬のいずれかが細胞表面タンパク質を活性化すると活性化されるベクターを含み、ベクターの1つ以上は発現ベクターであるか、またはベクターの1つ以上はインテグレーションベクターであってもよい。
【0149】
いくつかの実施形態において、キットは、(1)レポーター分子を含む試験試薬、および(2)(a)細胞において試験ポリペプチドを発現させるためのベクターであって、発現ベクターであってもよく、またはインテグレーションベクターであってもよいベクターを含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、キットは、追加的または代替的に、(c)細胞表面タンパク質の発現のための1つまたは複数のベクターを含む。いくつかの実施形態では、異種試験ポリペプチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。いくつかの実施形態では、レポーター分子は蛍光マーカーおよびバーコードのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、レポーター分子は誘導性プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、試験試薬はウイルスまたは偽ウイルスを含む。いくつかの実施形態では、ウイルスは、コロナウイルスA、B、C、またはD、フラビウイルス、レンチウイルス、およびインフルエンザA、B、またはCの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスは、HIV、SARS-CoV-2、および黄熱ウイルスから選択される。いくつかの実施形態では、偽ウイルスは、コロナウイルスA、B、CもしくはD、フラビウイルス、レンチウイルス、またはインフルエンザA、BもしくはCの1つ以上に由来するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、偽ウイルスは、HIV、SARS-CoV-2、または黄熱ウイルスに由来するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、異種試験ペプチドは、抗体またはその一部を含む。いくつかの実施形態では、異種試験ペプチドは、単鎖可変領域フラグメント(scFv)またはナノボディである。
【0151】
いくつかの実施形態では、キットは、(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、(2)(a)レポーターをコードする核酸であって、その発現が、異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化すると活性化される核酸を含む遺伝子操作された細胞を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、キットは、(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、(2)(a)レポーターをコードする核酸であって、その発現が、異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化しない場合に活性化される核酸を含む遺伝子操作された細胞を含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、キットは、(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、(2)(a)レポーターをコードする核酸であって、その発現が、異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化すると活性化される核酸を含む、遺伝子操作された細胞、および場合により(3)試験試薬を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、キットは、(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、(2)遺伝子操作された細胞、(3)レポーター分子を含む試験試薬であって、細胞によって提示される細胞表面タンパク質に結合し、試薬-受容体複合体を形成することができ、試薬-受容体複合体が形成されると、細胞へ侵入することができる、試験試薬を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞は、(c)異種細胞表面タンパク質をコードする核酸をさらに含む。
【0156】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」は、ベクター上にコードされた目的の核酸配列を発現するために使用されるベクターを指す。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、核酸をRNA産物として発現する。いくつかの実施形態では、RNA発現産物はポリペプチドまたはタンパク質へと翻訳される。
【0157】
本明細書で使用される場合、「インテグレーションベクター」は、目的のヌクレオチド配列を標的細胞のゲノムに組み込むために使用されるベクターを指す。核酸を細胞のゲノムに組み込む例示的な方法は、当技術分野で公知であり、例えば、CRISPR Cas9ベースの相同組換え、レトロウイルスまたはレンチウイルス形質導入である。
【0158】
[例示的な実施形態]
【0159】
分泌タンパク質のライブラリーの機能的スクリーニングに有用なシステム、キット、方法および組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、システム、キット、方法および/または組成物は、1つ以上の試験ポリペプチドを発現し、1つ以上のレポーター分子を条件付きで発現することができる1つ以上の操作された細胞を含む。以下に説明する実施形態は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
1.タンパク質またはペプチド発見のためのアッセイであって、
a.各々が分泌タンパク質またはペプチドバリアントをコードする、細胞のライブラリーが生成され、
b.各細胞が区画に隔離され、
c.ライブラリー中のコードされたバリアントペプチドまたはタンパク質各々の機能活性が、タンパク質またはペプチドバリアントを分泌する細胞の分析に基づいて分析される、アッセイ。
2.1,000個超の細胞が同時にスクリーニングされる、上記。
3.10,000個超の細胞が同時にスクリーニングされる、上記。
4.タンパク質またはペプチド分泌細胞の分析が、GFP、YFP、mCherry、および他の蛍光タンパク質を含むがこれらに限定されない蛍光タンパク質発現の検出を含む、上記のいずれか。
5.タンパク質またはペプチド分泌細胞の分析が、ルシフェラーゼおよびセイヨウワサビペルオキシダーゼを含むがこれらに限定されない酵素発現の検出を含む、上記のいずれか。
6.タンパク質またはペプチド分泌細胞の分析が、そのタンパク質をコードする核酸の検出を含む、上記のいずれか。
7.タンパク質またはペプチド分泌細胞の分析が、タンパク質またはペプチド分泌細胞に関連する核酸配列の検出を含む、上記のいずれか。
8.核酸配列またはバーコードが分泌タンパク質またはペプチドバリアントを示す、上記のいずれか。
9.核酸配列またはバーコードがウイルスまたは偽ウイルス感染事象を示す、上記のいずれか。
10.検出されるタンパク質機能がウイルス中和である、上記のいずれか。
11.区画がエマルジョン液滴、印刷マイクロウェル、nanopen、96ウェルプレート、または384ウェルプレートを含む、上記のいずれか。
12.機能活性がウイルス感染を遮断する能力である、上記のいずれか。
13.機能活性が、タンパク質を分泌する同じ細胞における受容体活性化に基づく、上記のいずれか。
14.機能活性が、タンパク質を分泌する同じ細胞における受容体不活性化に基づく、上記のいずれか。
15.タンパク質分泌、およびウイルス感染の機能アッセイの両方が可能な細胞ライブラリーの生成。
16.タンパク質分泌、および操作された受容体活性の機能分析の両方が可能な細胞ライブラリーの生成。
17.分泌タンパク質が抗体、Fab、IgG、IgM、IgA、ScFv、Fab’2、Fab2’、VHH、または他の抗体または免疫グロブリン発現形式である、上記のいずれか。
18.DNAバーコードを使用して分泌タンパク質の配列を追跡することができる、上記のいずれか。
19.DNAバーコードを使用してウイルスまたは偽ウイルス感染事象を追跡することができる、上記のいずれか。
20.ウイルス中和アッセイの読み出しが、ウイルス、偽ウイルス、ウイルス様粒子または組換えウイルス粒子による細胞へのDNAの挿入である、上記のいずれか。
21.挿入されたDNAがDNAバーコードを含む、上記のいずれか。
22.ウイルス中和アッセイの読み出しが、ウイルス、偽ウイルス、ウイルス様粒子または組換えウイルス粒子による蛍光マーカーの発現である、上記のいずれか。
23.ウイルス中和アッセイの読み出しが、ウイルス、偽ウイルス、ウイルス様粒子または組換えウイルス粒子による表面タンパク質レポーターの発現である、上記のいずれか。
24.ウイルス中和アッセイの読み出しが、ウイルス、偽ウイルス、ウイルス様粒子または組換えウイルス粒子による成長選択マーカーの発現である、上記のいずれか。
25.操作された受容体アゴニズムまたはアンタゴニズムの読み出しが、ウイルス、偽ウイルス、ウイルス様粒子または組換えウイルス粒子による蛍光マーカーの発現である、上記のいずれか。
26.操作された受容体アゴニズムまたはアンタゴニズムの読み出しが、ウイルス、偽ウイルス、ウイルス様粒子または組換えウイルス粒子による表面タンパク質レポーターの発現である、上記のいずれか。
27.操作された受容体アゴニズムまたはアンタゴニズムの読み出しが、ウイルス、偽ウイルス、ウイルス様粒子または組換えウイルス粒子による成長選択マーカーの発現である、上記のいずれか。
28.細胞が哺乳動物細胞である、上記のいずれか。
29.細胞が昆虫細胞である、上記のいずれか。
30.細胞が植物細胞である、上記のいずれか。
31.細胞が細菌細胞である、上記のいずれか。
32.(a)単離され、遺伝子操作された単一の細胞におけるレポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出することを含むスクリーニング方法であって、細胞が細胞表面タンパク質を提示し、細胞が、(i)異種試験ポリペプチドを分泌し、(ii)試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化する場合にレポーター分子を発現するように操作される。
33.(a)単離され、遺伝子操作された単一の細胞におけるレポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出することを含むスクリーニング方法であって、細胞が細胞表面タンパク質を提示し、細胞が、(i)異種試験ポリペプチドを分泌し、(ii)試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化しない場合にレポーター分子を発現するように操作される。
34.(a)単離され、遺伝子操作された単一の細胞を試験試薬と接触させる工程であって、細胞が細胞表面タンパク質を提示し、細胞が(i)異種試験ポリペプチドを分泌し、(ii)試験ポリペプチドまたは試験試薬のうちの1つが細胞表面タンパク質を活性化するとレポーター分子を発現するように操作されている工程、(b)レポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出する工程を含む、スクリーニング方法。
35.(a)単離され、遺伝子操作された単一の細胞をレポーター分子を含む試験試薬と接触させる工程であって、細胞が細胞表面タンパク質を提示し、試験試薬が、細胞によって提示される細胞表面タンパク質に結合し、試薬-タンパク質複合体を形成することができ、試薬-受容体複合体が形成されると、試験試薬が細胞への侵入を獲得し、細胞が(i)異種試験ポリペプチドを分泌するように操作されている工程;(b)細胞におけるレポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出する工程を含む、スクリーニング方法。
36.細胞が、哺乳動物細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、酵母細胞、植物細胞または細菌細胞を含む、実施形態32~35のいずれかに記載の方法。
37.細胞表面タンパク質が内因性受容体を含む、前述の実施形態のいずれかに記載の方法。
38.細胞が、細胞表面タンパク質を発現するように操作される、前述の実施形態のいずれかに記載の方法。
39.細胞表面タンパク質が異種受容体を含む、実施形態38記載の方法。
40.試験ポリペプチドの分泌が構成的である、前述の実施形態のいずれかに記載の方法。
41.試験ポリペプチドの分泌が誘導性である、実施形態32~39のいずれかに記載の方法。
42.単離され、遺伝子操作された単一の細胞が、マルチウェルプレートのウェル内にある、前述の実施形態のいずれかに記載の方法。
43.単離され、遺伝子操作された単一の細胞が、マイクロチップのチャンバ内にある、実施形態32~42のいずれか1つに記載の方法。
44.単離され、遺伝子操作された単一の細胞が、エマルジョン液滴などのマイクロ流体液滴中にある、実施形態32~42のいずれか1つに記載の方法。
45.単離され、遺伝子操作された単一の細胞が、Nanopen(商標)内にある、実施形態32~42のいずれか1つに記載の方法。
46.レポーター分子が、蛍光マーカー、酵素、タグ付きタンパク質、または核酸配列を含む、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
47.細胞がヒト細胞を含む、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
48.レポーター分子が、核酸配列、場合によりバーコード配列を含み、レポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出することが、増幅反応および配列決定反応、場合により単一細胞配列決定反応の1つまたは複数を含む、前述の実施形態のいずれかに1つ記載の方法。
49.レポーター分子が蛍光部分を含み、レポーター分子の発現の存在および/またはレベルを検出することが蛍光活性化細胞を選別することを含む、実施形態32~48のいずれか1つに記載の方法。
50.異種試験ポリペプチドをコードする核酸を配列決定することをさらに含む、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
51.異種試験ペプチドが受容体リガンドのバリアントを含む、実施形態1~3または5~19のいずれか1つに記載の方法。
52.バリアントがリガンドバリアントのライブラリーに由来する、実施形態51に記載の方法。
53.試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質リガンドのバリアントを含み、試験試薬が野生型リガンドによる受容体活性化のアゴニストまたはアンタゴニストを含む、実施形態3、または5~19のいずれか1つに記載の方法。
54.試験試薬が細胞表面タンパク質リガンドを含み、試験ポリペプチドが、リガンドによる受容体活性化の潜在的アゴニストまたはアンタゴニストのライブラリーに由来する、実施形態3、または5~19のいずれか1つに記載の方法。
55.試験ポリペプチドが、抗体、抗体由来形式、ナノボディ、VHH、またはその抗原結合断片を含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
56.抗体または抗体由来形式、ナノボディ、VHH、抗原結合断片が、抗体または抗原結合断片のライブラリーに由来する、実施形態24に記載の方法。
57.試験試薬が、ウイルス、ウイルス様粒子、偽ウイルスおよび組換えウイルス粒子のうちの1つまたは複数を含み、細胞表面タンパク質が、細胞へのウイルス侵入の構成要素を含む、実施形態4、5~19または24~25のいずれかに記載の方法。
58.ウイルスが、コロナウイルスA、B、CまたはD、フラビウイルス、レンチウイルス、インフルエンザA、BまたはCから選択される、実施形態26記載の方法。
59.ウイルスが、HIV、SARS-CoV-2、エスプタイン-バーウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デングウイルス、および黄熱ウイルスから選択される、実施形態26に記載の方法。
60.ウイルスがSARS-CoV-2ウイルスを含み、細胞表面タンパク質がヒトアンジオテンシン変換酵素2(hACE2)を含む、実施形態26に記載の方法。
61.細胞が、膜貫通セリンプロテアーゼ2(TMPRSS2)を発現するように操作される、実施形態29に記載の方法。
62.前述の実施形態のいずれかの遺伝子操作された細胞を含む組成物、キットまたはシステム。
63.(a)異種試験ポリペプチドをコードするベクター;(b)レポーター分子をコードするベクターであって、その発現が、異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化すると活性化されるベクターを含むキットであって、ベクターの1つ以上は発現ベクターであってもよく、またはベクターの1つ以上はインテグレーションベクターであってもよい。
64.(a)異種試験ポリペプチドをコードするベクター;(b)レポーター分子をコードするベクターであって、その発現が、異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化しないと活性化されるベクターを含むキットであって、ベクターの1つ以上は発現ベクターであってもよく、またはベクターの1つ以上はインテグレーションベクターであってもよい。
65.(1)試験試薬、および(2)(a)異種試験ポリペプチドをコードするベクター;(b)レポーター分子をコードするベクターであって、その発現が、異種試験ポリペプチドまたは試験試薬のいずれかが細胞表面タンパク質を活性化すると活性化されるベクターを含むキットであって、ベクターの1つ以上は発現ベクターであってもよく、またはベクターの1つ以上はインテグレーションベクターであってもよい。
66.(1)レポーター分子を含む試験試薬、および(2)(a)異種試験ポリペプチドをコードするベクターを含むキットであって、ベクターの1つ以上は発現ベクターであってもよく、またはベクターの1つ以上はインテグレーションベクターであってもよい。
67.1つ以上の核酸が、(c)細胞表面タンパク質をさらにコードする、実施形態36~35のいずれか1つに記載のキット。
68.異種試験ポリペプチドがプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態63~66のいずれか1つに記載のキット。
69.プロモーターが構成的プロモーターである、実施形態68に記載のキット。
70.プロモーターが誘導性プロモーターである、実施形態68に記載のキット。
71.レポーター分子が、蛍光マーカー、酵素、タグ付きタンパク質、または核酸配列を含む、実施形態63~70のいずれかに記載のキット。
72.試験試薬が、ウイルス、ウイルス様粒子、偽ウイルス、および組換えウイルス粒子の1つまたは複数を含む、実施形態66~71のいずれかに記載のキット。
73.ウイルスが、コロナウイルスA、B、CまたはD、フラビウイルス、レンチウイルス、およびインフルエンザA、BまたはCから選択される、実施形態72記載のキット。
74.ウイルスが、HIV、SARS-CoV-2、エスプタイン-バーウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デングウイルス、および黄熱ウイルスから選択される、実施形態72に記載のキット。
75.偽ウイルスが、コロナウイルスA、B、CもしくはD、フラビウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスまたはインフルエンザA、BもしくはCに由来するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含む、実施形態72に記載のキット。
76.偽ウイルスが、HIV、SARS-CoV-2、エスプタイン-バーウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デングウイルス、または黄熱ウイルスに由来するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含む、実施形態72に記載のキット。
77.異種試験ペプチドが、抗体またはその一部を含む、実施形態63~65または68~71のいずれかに記載のキット。
78.異種試験ペプチドが、単鎖可変領域フラグメント(scFv)またはナノボディである、実施形態77に記載のキット。
79.(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、(2)(a)レポーターをコードする核酸であって、その発現が、異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化すると活性化される核酸を含む遺伝子操作された細胞を含む、キット。
80.(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、(2)(a)レポーターをコードする核酸であって、その発現が、異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化しないと活性化される核酸を含む遺伝子操作された細胞を含む、キット。
81.(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、(2)(a)レポーターをコードする核酸であって、その発現が、異種試験ポリペプチドが細胞表面タンパク質を活性化すると活性化される核酸を含む、遺伝子操作された細胞、および場合により(3)試験試薬を含む、キット。
82.(1)異種試験ポリペプチドを発現させるためのベクター、(2)遺伝子操作された細胞、(3)レポーター分子を含む試験試薬であって、細胞によって提示される細胞表面タンパク質に結合し、試薬-表面タンパク質複合体を形成することができ、試薬-タンパク質複合体が形成されると細胞への侵入を獲得する、試験試薬を含む、キット。
83.遺伝子操作された細胞が、(c)異種細胞表面タンパク質をコードする核酸をさらに含む、実施形態79~82のいずれかに記載のキット。
【実施例】
【0160】
以下の実施例は例示であり、特許請求される主題の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0161】
[実施例1: 同時のmAb分泌およびウイルス感染のための細胞株の確立]
【0162】
この実施例では、SARS-CoV-2受容体/補助受容体および抗SARS-CoV-2抗体を、同じ細胞株を用いてタンパク質分泌およびウイルス感染の両方について同時に実施される中和アッセイの適用例として使用した。抗ウイルス抗体およびそれらのそれぞれのウイルス侵入受容体または補助受容体を発現して、抗体分泌と同時にウイルス感染を可能にする、Aa哺乳動物細胞株を開発した。一例として、ウイルス適用、抗SARS-CoV-2抗体ならびにその受容体ヒトアンジオテンシン変換酵素2(hACE2)および/または膜貫通セリンプロテアーゼ2(TMPRSS2)を哺乳動物細胞株において発現させた(
図1)。ヒトサイトメガロウイルスのプロモーター、SARS-CoV-2感染のACE2表面受容体、内部リボソーム進入部位(IRES)およびTMPRSS2遺伝子を含有するバイシストロニックベクターを構築し、哺乳動物発現ベクターにおいてhACE2およびTMPRSS2を共発現させた。(TMPRSS2遺伝子は任意であり、SARS-CoV-2感染に必要ではないが、ウイルスの(8)いくつかの細胞に感染する能力を高めることができる)。この発現カセットを、プラスミドトランスフェクションのための選択マーカーを有するベクターにクローニングし、選択マーカーを使用した形質転換細胞選択を可能にした。本発明者らは、このプラスミドHEK293細胞を、プラスミドをリポフェクタミントランスフェクション試薬と混合することによってトランスフェクトした。2日後、細胞培養培地を補充し、選択プロセスを開始するために、選択マーカーに対応する選択試薬を培養培地に添加した。7~14日後、本発明者らは、選択試薬に耐性のある安定な細胞プールを得た。次いで、この細胞プールを、蛍光コンジュゲート抗ACE2および蛍光コンジュゲート抗TMPRSS2の両方で染色した(
図2)。細胞をACE2およびTMPRSS2発現について選別し、細胞を回復のために静置した。通常の成長による細胞回復後、限界希釈クローニングを実施して単一クローンを単離した。10~15日後、単一クローンが細胞コロニーを形成し、これを24ウェルプレートに移して細胞を増殖させた。細胞増殖後、クローンを抗ACE2および抗TMPRSS2で染色し、ACE2およびTMPRSS2の発現が最も高いクローンを選択した(HEKACE2/TMPRSS2と名付けた)。
【0163】
次いで、これらの細胞を形質転換して、既知のSARS-CoV-2中和能を有する抗体の完全なIgGを発現させた。あるいは、他のIgGフラグメント、例えば単鎖可変領域フラグメント(Scfv)、抗原結合断片(Fab)または二重特異性抗体を発現することができた。所望の抗体または抗体フラグメントを、選択マーカーと共に哺乳動物ベクターにクローニングした。トランスフェクション、および選択マーカー試薬による選択に続いて、IgG発現HEKACE2/TMPRSS2の安定プールを限界希釈クローニングに供して、この場合は抗体IgGである、クローンを発現する個々の分泌タンパク質を単離した。10~15日の細胞増殖後、50uLの細胞培養培地を移して、IgG発現を直接ELISAによって評価した。ELISAを、IgGを96ウェルプレートに一晩コーティングすることによって行った。プレートを0.05% Tween 20(PBST)を含むリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、PBST中5% BSAで2時間ブロッキングした。プレートをPBSTで3回洗浄し、HRPコンジュゲートウサギ抗ヒトFc抗体をウェルに添加し、2時間インキュベートした。プレートをPBSTで4回洗浄し、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン液体基質をHRP反応のために添加し、検出のために2M H2SO4で停止させた。プレートリーダを使用して450nmの吸光度波長でプレートを分析した。次いで、HEKACE2/TMPRSS2安定クローンによって発現されたIgGの吸光度をIgG標準と比較して、相対IgG発現収量を推定した。IgG発現が最も高いクローンを本発明者らの候補クローンとして選択した。単一細胞で中和アッセイを行うことを可能にする、ACE2、TMPRSS2およびIgGを含む細胞株を生成した(
図3)。細胞株開発のためのいくつかの戦略を使用することができる(
図4)。
【0164】
[実施例2: 可溶性タンパク質を分泌できる修飾哺乳動物細胞株におけるウイルスまたは偽ウイルスに対する感染の定量化]
【0165】
HEK293細胞株は、ラボ実験におけるタンパク質発現または分泌のために使用することができる。この実施例では、偽ウイルス中和アッセイのために、ACE2を発現するがTMPRSS2を発現しないHEK293細胞株を使用した(HEKACE2と命名)。ウイルス発現ベクター中の、GFPレポーター遺伝子を含むウイルス表面上のSARS-CoV-2CoV2スパイクタンパク質をコードするレンチウイルスベースの偽ウイルスの株にHEKACE2を感染させた。したがって、SARS-CoV-2偽ウイルス感染細胞はGFPを発現するだろう。0.05%トリプシンでHEKACE2細胞を剥離し、10% FBSを含むDMEM培地でのトリプシン反応を停止させた。次いで、細胞密度をカウントし、細胞を3×10
5細胞/mLの密度に再懸濁し、100μLの細胞懸濁液を96ウェルプレートの各ウェルに添加した。凍結偽ウイルスのアリコートを回収し、様々な量のウイルス(15μL、30μL、60μLおよび90μL)を96ウェルに添加した。96ウェルプレートを37℃で48~72時間インキュベートした後、フローサイトメトリーを使用してGFPシグナルを取得することによって中和を定量した。
図5に示すように、偽ウイルス感染HEKACE2細胞の割合は、GFP陽性細胞の割合によって反映され、添加されたウイルスの量と相関した(
図5)。
【0166】
[実施例3: コードされたタンパク質バリアントのライブラリーを用いて、単一細胞におけるタンパク質分泌を可能にする。]
【0167】
この実施例では、後のタンパク質分泌およびアッセイベースの選択のための単一細胞におけるタンパク質分泌を可能にする方法を示す。この実施例では、分泌タンパク質は抗体IgGである。自然に対になった抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域(VH:VL)のライブラリーは、McDaniel et alのプロトコルに記載されているように、患者のSARS-CoV-2感染から得ることができる
(3)。対になったVH:VL配列を、以前に記載された形式と同様に、1つのCMVプロモーターおよび1つのEF1alpaプロモーターを有するプラスミドベクター(pCMV-EF1a、
図6)または双方向プロモーターを有するベクター(
図6、pBI)にクローニングした
(10,11,12,13,14)。pCMV-EF1aおよびpBIへのVH:VLライブラリーのクローニングは、NotIおよびNheI切断部位を利用してアンプリコンをプロモーター無しのバックボーンベクターにクローニングし、次いで、重鎖および軽鎖のリーダーペプチド領域上のNheIおよびNcoI部位をそれぞれ使用して、二重プロモーター(CMVおよびEF1a)または双方向ベクター(Bi-CMV)にクローニングする。以前の研究では、タンパク質のリーダーペプチドを変化させると、タンパク質発現のレベルを調節できることが示されている
10、11、12、13、14)。種々のリーダーペプチドを設計して、様々なレベルのタンパク質分泌を達成した。重鎖のためのNheI切断部位を含む3つのリーダーペプチド(Le11、Alb2およびL2B)および軽鎖のためのNcoI切断部位を含む2つのリーダーペプチド(Le12およびAlb1)を設計した(表1)。6つの異なる重鎖および軽鎖リーダーペプチドの組み合わせ(表2)を有する2つの抗体(抗HIV抗体VRC01および抗SARS-CoV抗体、CR3022)を2つの異なるベクター(pBIまたはpCMV-EF1a)で発現させた。リポフェクタミンを使用して、これらの24個のIgG構築物をHEKACE2細胞(TMPRSS2発現無し)にトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後、実施例1に記載されるELISAによってIgG発現を検出した。
図6に示すように、VRC01およびCR3022抗体の両方について、すべてのリーダーペプチドの組み合わせがIgG発現を可能にすること、および所望の分泌抗体の濃度を調節するために、種々のリーダーペプチドの組み合わせが選択され得ることが観察された。LP4およびLP5を用いて、最も高い2つのIgG発現がpCMV-EF1aベクターにおいて観察された(
図7)。5μg/mLの最終濃度までブラストサイジンを添加することによって、安定なIgG発現プールを生成した。
【0168】
【0169】
【0170】
あるいは、自然に対になったVH:VLを、FRT部位でのFlpリコンビナーゼ媒介インテグレーションを介して、Flip-In HEK293キットから誘導されたHEKACE2に発現させることができた(
図8)。そのためには、まずIgG発現遺伝子カセットをpcDNA5/FRTベクターにクローニングする。次いで、操作されたpcDNA5/FRTベクターをFlpリコンビナーゼベクターpOG44と共に、ACE2発現を有するHEK-Flp-In 293に同時トランスフェクトする。ハイグロマイシン選択によって、IgG発現細胞のライブラリーを生成する。Flp媒介クローニングは、単一のタンパク質バリアントのみが各細胞によってコードされるという利点を有し、これは、アッセイの実施に厳密には必要でないが、本発明者らのアッセイの選択性に有益である。
【0171】
別の実施例では、インテグラーゼベースの遺伝子インテグレーションシステムを使用して、TARGATT(商標)-HEK293マスター細胞株に由来するHEK293ACE細胞からIgGを発現させた。IgG発現遺伝子カセットを、インテグラーゼ認識部位、attB、ブラストサイジン耐性マーカーおよびmCherryを含むドナーベクターにクローニングした(
図9)。次いでドナープラスミドおよびインテグラーゼ発現プラスミドを、ACE2を安定に発現する操作されたHEK細胞株に同時トランスフェクトした。attPランディングパッドは、hH11遺伝子座にあった。
【0172】
別の実施例では、CRISPR相同組換え修復プラットフォームシステムを使用して、HEK-ACE2細胞にIgGを発現させた。ドナーIgG発現カセット(二重プロモーターまたは双方向プロモーターを有するVH:VL配列)を相同アームと共に同時トランスフェクトした(
図10)。gRNA/Cas9発現ベクターは、自然に対になったVH:VL配列のセーフハーバー遺伝子座へのインテグレーションをもたらした。標的セーフハーバー遺伝子座には、CCR5、AAVS1およびHipp11が含まれる(
図10)。
【0173】
クローニングおよび形質転換の方法は、目的の細胞株および細胞ベースの機能活性モデルに適切に適合させることができる。分泌タンパク質のライブラリーを哺乳動物または他の細胞中に生成するために、いくつかの異なるクローニングおよび形質転換方法を適切に使用することができる(
図11)。他の種類のクローニングを使用して、タンパク質分泌のための核酸を宿主細胞に挿入することができ、これには限定されないが、レンチウイルス遺伝子導入、感染性分子クローン、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、化学的DNAトランスフェクション、化学的RNAトランスフェクション、ナノ粒子によってカプセル封入されたmRNA、ナノ粒子によってカプセル封入されたDNA、または所望のタンパク質およびプラスミドベクターの細胞発現を誘導するための当技術分野で公知の他の方法が含まれ得る。
【0174】
[実施例4: VH:VL双方向形式でのクローニングおよび可溶性抗体機能分析のための抗体タンパク質ライブラリーの生成]
【0175】
この予言的例(prophetic example)では、ランダムに対になったVH:VLライブラリーまたは変異VH:VLライブラリーを、抗体のVHおよびVL遺伝子がDNAリンカーによって連結される、遺伝子合成サービスを介して合成することができる。あるいは、VH:VL遺伝子ライブラリーは、以前に報告されたように、ヒト、マウス、または非ヒト霊長類試料から直接増幅することができる
(15)。いくつかの実施形態では、エラープローンPCR、部位飽和変異誘発、および/またはDNAシャッフリングを使用して、ライブラリーに多様性を導入することができる。NotIとNcoIとの組み合わせを使用してVHライブラリーをクローニングし、二重プロモーターでNheIとAscIとの組み合わせを使用してVLライブラリーをクローニングすることができ(連続形式)、または、以前の報告と同様に、第1のNotIおよびAscIを使用して完全な構築物をクローニングし、次いでNcoIおよびNheIを使用して双方向プロモーター内でクローニングすることによって、
図6に示すような双方向プロモーター形式を維持することができる
(16、17)。このプラスミドを、IgG発現のためにHEKACE2細胞にトランスフェクトすることができる。あるいは、遺伝子カセット(重鎖および軽鎖を有する二重プロモーターまたは双方向プロモーター)を、FLP/FRTベースの遺伝子インテグレーションドナープラスミド(
図8)、インテグラーゼベースのドナープラスミド(
図9)、またはセーフハーバー遺伝子座への安定なIgGインテグレーションのためのCRISPR/Cas9ドナープラスミド(
図10)にクローニングすることができる。いくつかの可能なクローニング戦略を双方向抗体発現に使用することができる(
図11)。
【0176】
[実施例5: 標準的な一方向形式で合成的に生成された抗体発現を可能にする方法]
【0177】
遺伝子合成サービスを介して、ランダムに対になったVH:VLライブラリーまたは変異VH:VLライブラリーを合成することができる。次に、
図12aに示すように、VHおよびVLを哺乳動物発現ベクターに別々にクローニングし、IgGを一方のオープンリーディングフレームで発現させることができる。
【0178】
IgGは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間にGSリンカーを用いて単鎖可変領域フラグメント形式で発現させることができる。
【0179】
あるいは、完全IgGを、IgG重鎖と軽鎖との間にp2A切断ペプチドを有するバイシストロニック形式で発現させることができる(
図12B)(以下の黄熱の実施例を参照されたい)。プラスミドをトランスフェクトし、IgGを発現させた。
【0180】
IgGの一方向形式をセーフハーバー遺伝子座発現部位にインテグレーションすることができる。インテグレーションのための選択肢としては、FLP/FRTベースの遺伝子インテグレーション(
図8)、インテグラーゼベースのドナープラスミド(
図9)、トランスポゾンベースのインテグレーション、または安定なIgGインテグレーションのためのCRISPR/Cas9ドナープラスミドの使用(
図10)が挙げられる。分泌タンパク質に使用される細胞株および機能モデルに応じて、いくつかのクローニングおよび形質転換方法が好適である(例えば、
図11)。
【0181】
[実施例6: 区画としてのウェルプレートにおける、ウイルス中和特性を有する抗体を選択するための分泌タンパク質アッセイの適用]
【0182】
この実施例では、分泌タンパク質を同じ細胞株における分泌タンパク質活性の読み出しと共に使用する機能アッセイを示す。この例では、分泌タンパク質は抗体であり、アッセイされる活性はSARS-CoV-2偽ウイルスの中和であり、選択マーカーはGFPである。
【0183】
2×104個のHEKACE2細胞を、トランスフェクション時に70%の細胞密集度に達するように96ウェルプレートに播種した。Lipofectamine(商標)3000 Reagent Kit(Invitrogen)に含まれるプロトコルに従って、哺乳動物発現ベクターpBI中のmAb 100ng/ウェルを5μLのOpti-MEM(商標)Reduced Serum Media(Thermo Fisher Scientific)に希釈し、0.2μLのP3000(商標)Reagentを添加した。別に、0.2μLのLipofectamine(商標)3000 Reagentも5μLのOpti-MEM(商標)に希釈した。希釈したDNAを、希釈したLipofectamine(商標)3000 Reagentに添加し、室温で12分間インキュベートした。次いで、このDNA-脂質複合体をHEKACE2細胞に添加し、37℃で3日間インキュベートした。pBIベクターはmAbの軽鎖上にmCherryを含むので、トランスフェクション後に蛍光顕微鏡またはフローサイトメトリーを用いて細胞を可視化して、遺伝子発現を確認することができた。トランスフェクションの3日後、抗体の中和活性を以下のように測定した。
【0184】
SARS-CoV-2 Wuhan Hu-1 GFPレポーターウイルス粒子(Integral Molecular)を解凍し、氷上に置き、60μLのレポーターウイルス粒子を細胞培地に直接添加した。96ウェルプレートを37℃で48~72時間インキュベートした後、フローサイトメトリーを使用してGFPシグナルを取得することによって中和を定量した。IgG発現のELISA分析は、VCR01が、抗SARS-CoV-2抗体である抗体910-30
(17)よりも高いIgG発現レベルを有することを示した。中和アッセイは、VCR01を発現するHEKACE2が、910-30を発現するHEKACE2細胞よりも高いGFP集団を示すことを示した(
図13)。実験を繰り返すと、同様の結果が得られた(
図14)。
【0185】
[実施例7: 抗体分泌および偽ウイルス感染の両方が可能な細胞によってコードされる抗体のライブラリーからの中和抗体の選択]
【0186】
この予言的例(prophetic example)では、実施例6に記載されているように、分泌VRC01および910-30を発現する安定な細胞株の混合物を生成する。限界希釈単離を実施して、96ウェルプレート中に単一細胞を、ウェルあたり平均0.25個の細胞で生成する。細胞を限界希釈クローニング後40日間増殖させ、次いで直接中和アッセイのために30μLの偽ウイルスを添加する。細胞を回収し、それらが分泌する抗体によって感染から保護されなかった(すなわち、非中和抗体を発現していた)細胞について濃縮されたGFP+集団を選別する。GFP-集団も選別して、感染から保護された(すなわち、中和抗体を発現している)細胞を濃縮する。RNAを抽出し、抗体遺伝子についてRT-PCRを行うことによって(22)、GFP-集団およびGFP+集団から対になった抗体DNA遺伝子配列を回収する。ハイスループットシーケンシングを行って、GFP-集団およびGFP+集団におけるVH:VL情報を得る。各集団における抗体バリアントの頻度を比較し、集団(21)プール中の各抗体の中和能を決定する。GFP+ウイルス感染群でVRC01配列が比較的濃縮されたのに対して、GFP-群では910-30配列が比較的濃縮されたことを見出し、これらの選択の定量的シグナルは、本発明者らの分泌タンパク質アッセイの、細胞によって分泌されるコードされた抗体のウイルス中和能を試験する能力を実証する。
【0187】
自然に対になったVH:VL抗体をB細胞から直接発見するために、実施例3、実施例4および実施例5に記載されるように、SARS-CoV-2ヒト患者試料からの天然VH:VLライブラリーをIgG発現ベクターにクローニングし、HEKACE2細胞に発現させる。単一細胞を、ウェルあたり1つの細胞で96ウェルに限界希釈クローニング単離する。限界希釈クローニングの40日間後、直接中和アッセイのために30μLの偽ウイルスを添加する。非中和抗体が濃縮されたGFP+集団を選別する。GFP-集団を選別して、集団を中和抗体について濃縮する。RNAを抽出し、抗体遺伝子についてRT-PCRを行うことによって(22)、GFP-集団およびGFP+集団から対になった抗体DNA遺伝子配列を回収する。ハイスループットシーケンシング分析を行って、VH:VL情報を得る。各集団における抗体バリアントの頻度を比較して、集団(21)における中和抗体の同定を決定する。
【0188】
[実施例8: 区画としての印刷されたマイクロチャンバにおける分泌タンパク質機能アッセイの適用]
【0189】
この予言的例(prophetic example)では、最初に、実施例3、実施例4、および実施例5に記載される方法の1つによって、対になったVH:VLを発現するHEKACE2細胞を生成する。細胞の集団を、ポリジメチルシロキサン(PDMS)スライド(2)で成形された125plウェルに加える。各スライドは1.7×105ウェルを含む。4つのスライドを、68,000個のIgG発現HEKACE2/TMPRSS2細胞を約1:10の細胞対ウェル比占有率で含むように同時に処理し、ポアソン統計学による95%超の確率での単一細胞/ウェルを可能にする。スライドを37℃、5% CO2のインキュベーターで一晩インキュベートし、IgGを分泌させる。SARS-CoV-2偽ウイルスをマイクロウェル上に沈着させて内部に拡散させ、PDMSスライドを透析膜で密封する。スライドを16時間インキュベートし、ウイルスを細胞へ侵入させる。スライドを洗浄し、高濃度(1mg/mL)の可溶性910-30中和IgGの存在下でスライドから生細胞を回収して、細胞が一緒にプールされた後のウイルス感染を防ぐ。細胞を24ウェルプレートに播種して、37℃の5% CO2インキュベーターで2日間回復および増殖させる。細胞を遠心分離し、FACS緩衝液に再懸濁する。GFP-集団およびGFP+集団を回収し、RNAを抽出し、抗体遺伝子についてRT-PCRを行う(22)。ハイスループットシーケンシング分析を行って、VH:VL情報を得る。実施例6に記載されているように、各集団における抗体バリアントの頻度を比較して、集団(3、21)における中和抗体の同定を決定する。
【0190】
あるいは、Lightning Optofluidic Systemによって抗SARS-CoV-2中和抗体をスクリーニングする。IgG発現HEKACE2/TMPRSS2細胞を、NanoPen(商標)チャンバを備えたOptoSelect(商標)チップにロードして、チャンバ毎に1つの細胞ベースで単離し、細胞を一晩インキュベートして、抗体を分泌させる。SARS-CoV-2偽ウイルスをチャンバに添加し、3日間インキュベートする。高濃度(1mg/mL)の可溶性910-30中和IgGの存在下でNanopen(商標)から生細胞を回収して、細胞が一緒に回収されると、その後のウイルス感染を防ぐ。蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用してGFP-集団およびGFP+集団を単離し、RNAを抽出し、抗体遺伝子についてRT-PCRを行う(22)。ハイスループットシーケンシング分析を行って、VH:VL情報を得る。実施例6に記載されているように、各集団における抗体バリアントの頻度を比較して、集団(3、21)における中和抗体の同定を決定する。
【0191】
[実施例9: エマルジョン液滴システムにおけるアッセイの適用]
【0192】
この実施例では、マイクロ流体デバイスを使用して、IgG発現HEKACE2細胞を細胞分泌培地にカプセル封入して、液滴あたり1つの細胞を含む液滴を形成した
(6、25、26)。抗体分泌のために一過性にトランスフェクトされたCHO細胞を使用した、細胞単離および抗体分泌の例を
図15に示す。
【0193】
HEKACE2細胞を使用するSARS-CoV-2分泌タンパク質中和アッセイのためにこのシステムを実行した。エマルジョン液滴内でタンパク質を分泌する細胞を使用する中和アッセイのワークフローを
図16に示す。より広域の時間尺度を使用することもできるが、本発明者らは液滴を4~96時間インキュベートし、液滴内で分泌タンパク質(この例では、IgG)を分泌させた。続いて、SARS-CoV-2偽ウイルスを含有する第2の液滴を、IgG発現HEKACE2細胞を含む液滴に混同した。本発明者らは、電気融合を使用して液滴を混同したが
(24)、別の液滴混同方法も当業者に知られており、マイクロピラー抵抗アレイを含む。混同された液滴をさらに4~96時間インキュベートして、偽ウイルスの感染または中和の発生を可能にしたが、より広域な時間尺度を使用することもできる。液滴を破壊し、細胞を回収した。
【0194】
液滴は、1H、1H、2H、2H-パーフルオロ-1-オクタノールを含む化学試薬、または当業者に公知の他の方法を使用して破壊することができる。場合により、強力に中和する化合物(例えば、高濃度の中和抗体)をシステムに添加して、液滴が一緒に混同された後の新たな偽ウイルス感染を防ぐことができる。顕著な一例として、液滴を破壊し、高濃度(1mg/mL)の可溶性910-30中和IgGの存在下で液滴から生細胞を回収して、細胞が一緒に回収された後のウイルス感染を防ぐ。場合により、回収された細胞は、スクリーニングの前にさらに数時間、数日間、数週間または数ヶ月間培養することができる。次に、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用してGFP-細胞およびGFP+細胞を単離し、RNAを抽出し、抗体遺伝子についてRT-PCRを行った(22)。ハイスループットシーケンシング分析を行って、GFP-細胞およびGFP+細胞におけるVH:VL情報を得る。実施例6に記載されているように、各集団における抗体バリアントの頻度を比較して、集団(3,21)における中和抗体の同定を決定し、ここでGFP-細胞は、SARS-COV-2偽ウイルス感染に対する防御を提供するコード抗体について濃縮されているのに対して、GFP+細胞は、SARS-CoV-2に対して防御しない、または使用されるアッセイ条件下で液滴内に防御を提供するのに十分な量で発現しないコード抗体について濃縮されている。
【0195】
[実施例10: 天然抗体ライブラリー(9、16、17、19)からの中和抗体発見]
【0196】
この予言的例(prophetic example)では、自然に対になったVH:VL配列決定プラットフォームを使用して、自然に対になったVH:VLライブラリーを得る。VH:VLアンプリコンは、実施例3に記載されているように、プラスミドトランスフェクションおよび耐性遺伝子マーカー選択を使用したランダム遺伝子インテグレーション、ならびに部位特異的インテグレーションを介して、IgGまたはIgGフラグメントとして送達することができる。ウェルプレート(実施例7)、印刷チャンバ(実施例8)またはマイクロ流体液滴(実施例9)への単一細胞単離を含む、単一細胞単離のための複数の方法を使用して強力なSARS-CoV-2中和抗体をスクリーニングする。次いで、GPF-HEKACE2細胞およびGFP+HEKACE2細胞を選別し、RT-PCRを実施して、各細胞集団から対のVH:VLアンプリコンを得る。以前に説明されているように(16、17、19)、PCRを実行して、抗体集団の次世代配列分析のためのプライマーバーコードを付加する。GFP陰性集団において濃縮された、遺伝子合成のための最も一般的なVH:VLクローンのうちの10個を選択する。次いで、プラスミドの一過性トランスフェクションを行って、Expi293細胞の懸濁液中でIgGを発現させた。トランスフェクションの7日後、培養物を遠心分離し、上清を50mL遠心管に移す。0.5mLのプロテインGレジンを添加し、反応をベンチローテーターで2時間進行させる。次いで、反応混合物をポリプロピレンカラムに注ぎ、プロテインGレジンを保持する。次いで、0.1Mグリシン-HCl(pH2.7)でIgGを溶出し、1M Tris-HCl(pH9.0)でpHを中和する。次いで、精製されたIgGを濃縮し、個々のIgGの中和アッセイ分析に供する。BCAタンパク質アッセイによってIgGタンパク質濃度を定量した。次いで、2μgの精製IgGをSDS-page試料緩衝液と混合し、TGX Stain-Freeプレキャストゲルに通すことによってIgGの純度を分析する。10μg/mLから0.001μg/mLの最終濃度まで抗体の段階希釈を行う。連続希釈した抗体を30μLのSARS-CoV-2偽ウイルスと合わせ、反応物を37℃で一時間インキュベートする。次いで、ウイルス-抗体混合物を、2×105のACE発現HEK293細胞を含む96ウェルに添加する。37℃の5% CO2で3日間インキュベートする。GFPシグナルのフローサイトメトリー分析によって抗体の中和活性を分析して、GFP-細胞集団において濃縮されている中和抗体の回収を実証する。
【0197】
[実施例11: 強力な中和抗体のための抗体ライブラリーバリアント発現および指向性進化選択]
【0198】
この予言的例(prophetic example)では、抗SARS-CoV-2抗体を、DNAシャッフリング、エラープローンPCR、単一部位特異的変異誘発からの方法の1つによって変異させて、抗体バリアントライブラリーを生成する。変異のランドスケープを増やすために、組み合わせ変異および/または逐次変異をさらに行うことができる。合成抗体変異体ライブラリーを実施例3に記載のHEKACE2細胞にクローニングする。実施例7、実施例8および実施例9に叙述されたアプローチの1つによって、SARS-CoV 2中和抗体をスクリーニングする。GFP-細胞およびGFP+細胞を選別し、続いてGFP陰性IgG発現HEKACE2細胞(中和抗体の分泌に富む)からRT-PCRによってVH:VL配列情報を回収した後、スクリーニングされたVH:VL遺伝子を、その後のスクリーニングラウンドのために、実施例3に詳述されているIgG発現ベクター内に再送達する(濃縮IgGライブラリーと命名)。スクリーニングラウンド間の多様性を高めるために、DNAシャッフリング、エラープローンPCR、単一部位特異的変異誘発を使用して逐次変異を行うこともできる。他のDNA配列決定およびライブラリー多様性生成戦略も使用することができ、当業者に公知である。実施例3に示すように、IgG発現プラットフォーム上で濃縮ライブラリーおよび濃縮+変異IgGライブラリーの両方を発現する。実施例7、実施例8または実施例9に記載される方法を使用して中和抗体VH:VL配列を再スクリーニングし、得る。その後のラウンドのための濃縮されたライブラリーの再送達およびスクリーニングを繰り返して、所望の中和効力を有する分子が得られるまで中和効力についてさらに濃縮する。再スクリーニング、変異および再送達のこのプロセスは、抗体を強力に中和するための指向性進化選択を可能にする。
【0199】
[実施例12: 多数のウイルス株を逐次的に中和する抗体バリアント]
【0200】
この予言的例(prophetic example)では、SARS-CoV-2 Wuhan Hu-1株を中和分析のための偽ウイルスとして使用して、実施例10および11に記載される方法から中和抗体を単離する。GFP-細胞の回収を介して、中和IgGライブラリー発現HEKACE2細胞を回収することができる。S-D614Gバリアントなど、別のウイルス変異バリアントを使用して、実施例7、実施例8または実施例9に記載の細胞単離プラットフォームを介して逐次中和スクリーニング(第2ラウンドとして定義される)を実施する。スクリーニングの第2ラウンド後、集団を、Wuhan Hu-1およびD614Gの両方に対する中和能を示す抗体について濃縮する。
【0201】
あるいは、GFP陰性細胞の選別後のFACS後に、これらの細胞からRNAを抽出し、RT-PCRを実施してVH:VL配列を得る。次いで、VH:VL対を実施例3に記載のHEKACE2細胞に再送達して、単一ライブラリー選別後に分泌タンパク質ライブラリーを生成する。次いで、D614変異を含有する偽ウイルスバリアントを使用して、スクリーニングの第2ラウンドを実施する。これらの方法は、目的の複数のウイルス株を標的とする中和抗体の選択を可能にする。
【0202】
[実施例13: 多数のウイルス株を同時に用いる抗体バリアントの中和]
【0203】
この予言的例(prophetic example)では、同時に複数のウイルス株を使用して偽ウイルス中和を実施する。まず、SARS-CoV-2、SARS-Cov-2-D614G、SARS-CoV-1、MERS-CoVを含む広範なコロナウイルス株由来の等量のウイルスを混合し、各偽ウイルスは、それぞれYFP、GFP、DsRedおよびCFPを含有する。あるいは、すべて異なるSARS-CoV-2バリアント(例えば、B.1.1.7、B.1.351、P.1、B.1.427、およびB.1.429)に由来する異なるウイルス株を使用することができる。いくつかの実施形態では、すべてのウイルスが同じレポーター(例えば、GFP)をコードする。いくつかの実施形態では、各ウイルスは、感染後に標的細胞が発現する異なるDNAまたはRNAバーコードをコードする。いくつかの実施形態では、真正ウイルスが使用される。別の実施形態では、偽ウイルスが使用される。実施例7(マルチプルウェルプレートベース)、実施例8(マイクロチャンバベース)または実施例9(マイクロ流体液滴ベース)に記載のアプローチに基づいて、ウイルス株の混合物を含む抗体ライブラリーの中和アッセイを行う。実施例7のマルチプルウェルプレートアッセイのために、広範な中和を有する抗体を発現する候補細胞として、YFP、GFP、DsRedおよびCFPを示さなかった細胞を含有するウェルを選択した。他の蛍光マーカーを使用することができ、当業者に公知である。マイクロチャンバベースの方法(実施例8)およびマイクロ流体液滴ベースの方法(実施例9)の両方で、マイクロチャンバ(実施例8)または液滴(実施例9)のいずれかから細胞を回収した後、さらに48時間静置して細胞を増殖させる(細胞は、実験の優先度に応じて0時間~複数ヶ月の間の任意の期間静置することができる)。YFP、GFP、DsRedおよびCFPを発現しない細胞、ならびにフルオロフォア発現を示す細胞(すなわち、感染した)を選別する。RT-PCR遺伝子回収およびハイスループットシーケンシングによって各集団のVH:VL対合情報を得る。両方のスクリーニング集団の配列を比較し、次いで、HEK293Expi細胞からのYFP、GFP、DsRedおよびCFPが無い集団で濃縮された候補抗体を発現させ、定量化のために抗体を精製する。実施例10に記載される方法に従って、SARS-CoV-2、SARS-Cov-2-D614G、SARS-CoV-1、およびMERS-CoVに対する個々の抗体の中和能を評価する。
【0204】
[実施例14: 多数の異なるウイルスを同時に用いる抗体バリアントの中和]
【0205】
この予言的例(prophetic example)では、同時に複数の異なるウイルス型を使用して偽ウイルス中和を実施する。まず、SARS-CoV-2、SARS-Cov-2-D614G、YFV、およびDENV-1を含む異なる株由来の等量のウイルスを混合し、各偽ウイルスは、それぞれYFP、GFP、DsRedおよびCFPを含有する。いくつかの実施形態では、すべてのウイルスが同じレポーター(例えば、GFP)をコードする。いくつかの実施形態では、各ウイルスは、感染後に標的細胞が発現する異なるDNAまたはRNAバーコードをコードする。いくつかの実施形態では、真正ウイルスが使用される。別の実施形態では、偽ウイルスが使用される。使用されるウイルスのいずれかに感染され得る細胞株が生成される。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2、SARS-Cov-2-D614G、YFV、およびDENV-1に感染され得る細胞は、Raji-DC-SIGN細胞で開始することによって生成することができ、それは、YFVおよびDENV-1組換えウイルス粒子(RVP)によるインビトロ感染に使用され、Raji-DC-SIGNを、SARS-CoV-2による感染も可能にするACE2タンパク質を発現するように修飾する。次に、修飾Raji-DC-SIGN-ACE2細胞から抗体を発現および分泌するために抗体のライブラリーをクローニングし、実施例7(マルチプルウェルプレートベース)、実施例8(マイクロチャンバベース)または実施例9(マイクロ流体液滴ベース)に記載のアプローチに基づいて、ウイルスの混合物を含む抗体ライブラリーの中和アッセイを行う。実施例7のマルチプルウェルプレートアッセイのために、広範な中和を有する抗体を発現する候補細胞として、YFP、GFP、DsRedおよびCFPを示さなかった細胞を含有するウェルを選択した。マイクロチャンバベースの方法(実施例8)およびマイクロ流体液滴ベースの方法(実施例9)の両方で、マイクロチャンバ(実施例8)または液滴(実施例9)のいずれかから細胞を回収した後、さらに48時間静置して細胞を増殖させる(が、細胞は、実験の優先度に応じて、0時間~複数ヶ月の間のどこからでも静置することができる)。YFP、GFP、DsRedおよびCFPを発現しない細胞、ならびにフルオロフォア発現を示す細胞(すなわち、感染した)を選別する。RT-PCR遺伝子回収およびハイスループットシーケンシングによって各集団のVH:VL対合情報を得る。両方のスクリーニング集団の配列を比較し、次いで、HEK293Expi細胞からのYFP、GFP、DsRedおよびCFPが無い集団で濃縮された候補抗体を発現させて、ハイスループットアッセイを使用して中和抗体の配列を決定する。いくつかの実施形態では、各ウイルスは、ウイルス型をコードする細胞特異的バーコードをコードし、感染または非感染抗体集団の抗体遺伝子配列のハイスループット分析に加えて、バルクまたは単一細胞のライブラリー内に感染するウイルスのハイスループットDNAベースの読み出しを可能にする。いくつかの実施形態では、単一細胞の配列決定を使用して、感染ウイルスのバーコードを抗体のDNA配列に直接連結する。
【0206】
[実施例15: 4-1BBを活性化する分泌タンパク質の迅速なハイスループット発見]
【0207】
この予言的例(prophetic example)では、細胞株は、4-1BBが活性化されると蛍光マーカーの発現を引き起こすレポーターまたは他のレポーター(例えば、GFPまたは当技術分野で公知の他の細胞選択マーカー)と共に、4-1BB発現のために使用される。4-1BB細胞外ドメインの融合タンパク質は、4-1BBが活性化されるとGFP発現を引き起こす内部活性化シグナルと共に生成される。タンパク質ライブラリーは、各細胞にタンパク質バリアントを分泌させる細胞株(細胞毎に1つのタンパク質バリアント)にコードされる。細胞を単一細胞として区画内に単離し、4時間インキュベートさせて分泌タンパク質を蓄積する(しかし、時間は、実験の条件および目標に応じて、数秒から数ヶ月の範囲に及ぶことができる)。いくつかの実施形態では、区画はエマルジョン液滴で構成される。4-1BBを活性化するタンパク質を分泌する細胞は、蛍光マーカー発現を活性化する(例えば、GFP)。細胞回収後、マーカー+細胞およびマーカー-細胞をフローサイトメトリーによって単離し、それらの同一性をDNA配列決定によって特徴付けて、4-1BBを機能的に活性化することができるライブラリー内のタンパク質バリアントを決定する。代替アプローチとして、蛍光細胞選別の代わりにルシフェラーゼ検出システムを使用して、目的の機能活性を有する分泌タンパク質を検出することができる。目的の機能活性を有する適切な分泌タンパク質の同定後、発見されたタンパク質は、癌または他の疾患の治療のために4-1BBを活性化する免疫療法としての可能性を有する。
【0208】
[実施例16: プログラム死受容体1(PD-1)活性化を遮断する分泌タンパク質の迅速なハイスループット発見]
【0209】
この予言的例(prophetic example)では、細胞株は、PD-1が活性化されると蛍光レポーターまたは他のレポーター(例えば、GFPまたは当技術分野で公知の他の細胞選択マーカー)の発現を引き起こす選択マーカーと共に、PD-1発現のために生成される。PD-1細胞外ドメインの融合タンパク質は、PD-1が活性化されるとGFP発現を引き起こす内部活性化シグナルと共に生成される。タンパク質ライブラリーは、各細胞にタンパク質バリアントを分泌させる細胞株(細胞毎に1つのタンパク質バリアント)にコードされる。細胞を単一細胞として区画内に単離し、4時間インキュベートさせて分泌タンパク質を蓄積する(しかし、時間は、実験の条件および目標に応じて、数秒から数ヶ月の範囲に及ぶことができる)。いくつかの実施形態では、区画はエマルジョン液滴で構成される。次いで、PD-L1を区画に添加して、PD-1のライゲーションおよび活性化を誘導する。PD-L1結合を遮断し、かつ/またはPD-1活性化を妨げるタンパク質を分泌する細胞は、蛍光マーカーの発現を妨げる。細胞回収後、GFP-細胞をフローサイトメトリーによって単離し、それらの同一性をDNA配列決定によって特徴付けて、PD-L1を介してPD-1の活性化を遮断することができるライブラリー内のタンパク質バリアントを決定する。代替アプローチとして、蛍光細胞選別の代わりにルシフェラーゼ検出システムを使用して、目的の機能活性を有する分泌タンパク質を検出することができる。目的の機能活性を有する適切な分泌タンパク質の同定後、発見されたタンパク質は、癌治療のための免疫療法チェックポイント阻害剤となる潜在的能力を有する。
【0210】
[実施例17: GPCR活性化を遮断する分泌タンパク質の迅速なハイスループット発見]
【0211】
この予言的例(prophetic example)では、細胞株は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)発現のために、GPCRが活性化されると蛍光マーカーの発現を引き起こすレポーターまたは他のレポーター(例えば、GFPまたは当技術分野で公知の他の細胞選択マーカー)と共に生成される。GPCRは、GPCRが活性化されると内部活性化シグナルを活性化する細胞株において発現される。例示的な細胞株は、例えば、GPCR細胞株を販売するEurofins DiscoverX社から購入可能であり、または同様に構築することができる。分泌タンパク質ライブラリーはまた、各細胞にタンパク質バリアントを分泌させる細胞株(細胞毎に1つのタンパク質バリアント)にコードされる。細胞を単一細胞として区画内に単離し、4時間インキュベートさせて分泌タンパク質を蓄積する(しかし、時間は、実験の条件および目標に応じて、数秒から数ヶ月の範囲に及ぶことができる)。いくつかの実施形態では、区画はエマルジョン液滴で構成される。次いで、GPCRアゴニストを区画に添加して、GPCRのライゲーションおよび活性化を誘導する。GPCRアゴニスト結合を遮断し、かつ/またはGPCR活性化を妨げるタンパク質を分泌する細胞は、蛍光マーカーの発現を妨げる。細胞回収後、活性化細胞および非活性化細胞をフローサイトメトリーによって単離し、それらの同一性をDNA配列決定によって特徴付けて、GPCRの活性化を遮断することができるライブラリー内のタンパク質バリアントを決定する。代替アプローチとして、蛍光細胞選別の代わりにルシフェラーゼ検出システムを使用して、目的の機能活性を有する分泌タンパク質を検出することができる。目的の機能活性を有する適切な分泌タンパク質の同定後、発見されたタンパク質は、GPCR活性化を遮断する薬物として有望な候補であろう。
【0212】
[実施例18: GPCR活性化を誘導する分泌タンパク質の迅速なハイスループット発見]
【0213】
この予言的例(prophetic example)では、細胞株は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)発現のために、GPCRが活性化されると蛍光レポーターの発現を引き起こすレポーターまたは他のレポーター(例えば、GFPまたは当技術分野で公知の他の細胞レポーター)と共に生成される。GPCRは、GPCRが活性化されると内部活性化シグナルを生成する細胞株において発現される。例示的な細胞株は、例えば、GPCR細胞株を販売するEurofins DiscoverX社から購入可能であり、または同様に構築することができる。分泌タンパク質ライブラリーは、各細胞にタンパク質バリアントを分泌させる細胞株(細胞毎に1つのタンパク質バリアント)にコードされる。細胞を単一細胞として区画内に単離し、4時間インキュベートさせて分泌タンパク質を蓄積する(しかし、時間は、実験の条件および目標に応じて、数秒から数ヶ月の範囲に及ぶことができる)。GPCRを活性化するタンパク質を分泌する細胞は、それらの同じ細胞において蛍光マーカーを発現させる。細胞回収後、活性化細胞および非活性化細胞をフローサイトメトリーによって単離し、それらの同一性をDNA配列決定によって特徴付けて、GPCRを活性化するライブラリー内のタンパク質バリアントを決定する。代替アプローチとして、蛍光細胞選別の代わりにルシフェラーゼ検出システムを使用して、目的の機能活性を有する分泌タンパク質を検出することができる。目的の機能活性を有する適切な分泌タンパク質の同定後、発見されたタンパク質は、GPCRを活性化する薬物として有望な候補であろう。
【0214】
[実施例19: 黄熱ウイルスの中和のための分泌タンパク質分析]
【0215】
この実施例では、Raji-DCSIGNR細胞を使用して、黄熱ウイルス(YFV)を中和する分泌タンパク質の能力を試験した。この実施例では、レンチウイルス形質導入を使用して遺伝子を分泌のための細胞に挿入して、実施例5に記載のp2aモチーフを使用してバイシストロニック形式で抗体を発現させた。Raji-DCSIGNR細胞のレンチウイルス形質導入を利用して、ハイスループット単一細胞中和アッセイでのそれらの能力を評価した。Raji-DCSIGNR細胞
(16)に、抗体分泌のための黄熱ウイルス中和抗体mAb-17、または抗体発現を誘導しない空のプラスミドを形質導入した。96ウェルプレートで4日間の抗体分泌後の細胞株を試験し、その後YFV組換えウイルス粒子(RVP)を添加して、分泌抗体がYFV RVPからの保護を提供することを検証する(
図17)。mAb 17を発現する細胞はYFV RVP感染から保護されたが、mAb 17を発現しない細胞は感染から保護されなかった。これらのデータは、抗体分泌タンパク質の機能的中和特性を、迅速かつハイスループット方法での抗YFV抗体中和の直接スクリーニングのための細胞株プラットフォームとして、GFPベースのレポーター(RVP感染事象の後に発現される)に結び付けることができることを立証した。
【0216】
[実施例20: 異なるリーダーペプチドおよびプロモーターの組み合わせによる抗体発現]
【0217】
この実施例では、ACE2を発現するHEK293細胞の、抗体分泌のために異なるリーダーペプチド組み合わせ(LP1、LP4、LP5およびLP6)で発現された910-30を含有するプラスミドで一過性にトランスフェクトされる能力を試験した。リポフェクタミン3000を、96ウェルプレート中で逆トランスフェクションプロトコルに従ってトランスフェクション試薬として使用し、37℃で2日間インキュベートした。トランスフェクションの2日後、GFPレポーター遺伝子を有するSARS-CoV-2偽ウイルス40μLを細胞に添加し、37℃でさらに3日間インキュベートした。偽ウイルスを添加した3日後、分泌されたIgGを含有する上清を、ELISA抗体定量化に使用するために細胞から除去する。ELISAの読み出しを
図18に示す。多数のペプチドの組み合わせによって発現される抗体VRC01およびCR3022は、抗体発現の成功を示し、異なるリーダーペプチドおよびプロモーター配列を使用した抗体の分泌の成功を示した。
【0218】
[実施例21: 可溶性タンパク質細胞分泌プラットフォームに抗体をクローニングするためのCRISPR-Cas9の使用]
【0219】
この実施例では、System Biosciences製のドナーベクターAAVS1 Safe Harbor Targeting Knock-in HR Donor 2ベクターGE622A-1に抗SARS-Cov2モノクローナル抗体、2-15をクローニングした。2-15モノクローナル抗体を含むドナープラスミドをpGE622A2-15と命名した。次いで、2-15ドナープラスミド(pGE622A2-15)およびAll-in-one Cas9 Smart Nuclease AAVS1 Targeting Plasmid(System Bioscience #CAS601A-1)をExpi293細胞に同時トランスフェクトした。トランスフェクション後のCas9ヌクレアーゼおよびgRNAの発現は、Expi293細胞AAVS1ゲノム部位で二重株破壊を起こした。ドナープラスミドからの2-15遺伝子配列を、相同組換え事象に起因してAAVS1遺伝子座にインテグレーションした(以下の2-15遺伝子インテグレーションの説明を参照)。トランスフェクションの1週間後にピューロマイシン選択(5μg/mLの濃度)を開始して、ランダムインテグレーションExpi293細胞を減らした。2~15個の遺伝子インテグレーションを有する安定な細胞プールをExpi2-15と命名した。
【0220】
Expi2-15およびExpi293細胞を、ウェルあたり3.2×104細胞の密度で96ウェルプレートに播種した。次いで細胞を、これらの細胞(Expi2-15およびExpi293の両方)を播種した直後に、ACE2/TMRPSS2発現プラスミドでトランスフェクトした。中和アッセイの陽性対照のために、精製した91030抗体(最終濃度5μg/mL)をACE2/TMRPSS2発現Expi293細胞に添加した。さらなるIgG定量化分析のために、各ウェルから20μLの培養培地を分注した。スパイクタンパク質D614G変異およびルシフェラーゼレポーター遺伝子を有する80μLのSARS CoV-2レポーターウイルス粒子を、ACE2/TMPRSS2発現Expi2-15細胞(ACE2/TMPRSS2+Expi2-15)、ACE2/TMPRSS2発現野生型Expi293細胞(ACE/TMPRSS2+Expi293)、および5μg/mLの91030を含むACE/TMPRSS2発現野生型Expi293細胞(ACE/TMPRSS2+Expi293+91030)に添加した。
【0221】
レポーターウイルスを添加した3日後、培養培地を取り出し、30μLのPBSおよび30μLの希釈Renilla-Gloアッセイ基質(アッセイ緩衝液中に1:100で希釈したRenilla-Gloアッセイ基質)を添加した。次いで、室温で10分間インキュベートした後、ルミノメーターで発光を検出した。各群のルミノメーター読み取りの平均相対発光量(RLU)を計算した。以下の図に示すように、ACE2/TMPRSS2+Expi2-15群およびACE/TMPRSS2+Expi293+91030(陽性対照)群の両方が、ACE/TMPRSS2+Expi293群と比較して相対発光量の有意な減少を示し、Expi2-15細胞から分泌された2-15がSARS-CoV2偽ウイルスを中和することができることを示している(
図20)。
【0222】
ACE2/TMPRSS2+Expi2-15群の抗体発現レベルをELISAによって検証した。平均抗体発現レベルは、ACE/TMPRSS 2+Expi2-15からの0.23μg/mL(n=6)抗体発現であり、Expi2-15細胞が機能的に活性な2-15を分泌できることを示唆している(
図21)。5ug/mLの精製91030モノクローナル抗体(精製91030のナノドロップに基づいて計算)を含有する群、ACE/TMPRSS2+Expi293+91030を、本発明者らのELISAアッセイのインターナルコントロールとして3.9μg/mLの濃度でELISAによって測定した。
【0223】
ゲノムPCRをさらに実行して、Expi2-15細胞株への2-15 mab遺伝子配列決定のインテグレーションを検証した。最初に、野生型Expi293およびExpi2-15細胞株からゲノムDNAを単離した。次いで、GoTaq2ホットスタートポリメラーゼ(Promega#M7405)、およびSystem Bioscienceによって検証され、提供されるプライマー(上流プライマーセット、フォワード5’ TCCTGAGTCCGGACCACTTT 3’(配列番号25)およびリバース5’ CACCGCATGTTAGAAGACTTCC 3’(配列番号26))を使用してPCR増幅を行って、上流遺伝子インテグレーション領域を増幅した。Expi2-15細胞からの1000b.p.アンプリコンは、野生型Expi293細胞からのPCR増幅無しと比較して遺伝子インテグレーションの成功を示した(
図22aを参照のこと)。
【0224】
インターナルPCRコントロールのためのヒトコントロールプライマーセット(フォワード5’-ACCTCCAGTTAGGAAAGGGGACT-3’(配列番号27)リバース5’-AAGTTTTTCTTGAAAACCCATGGAA-3’(配列番号28))を使用する別個のPCR反応(
図22b)。
【0225】
[実施例22: 可溶性タンパク質細胞分泌プラットフォームに抗体をクローニングするためのTARGATT特異的インテグレーションの使用]
【0226】
この実施例では、TARGATT(商標)HEKマスター細胞株ノックインキットの取扱説明書に従い、抗SARS-Cov2モノクローナル抗体、2-15をTARGATT 24 CMV-MCS-attBにクローニングしてドナープラスミドを作製した(pTARGATT2-15と命名)。次いで、2-15ドナープラスミド(pTARGATT2-15)およびインテグラーゼプラスミドをTARGATT HEKマスター細胞に同時トランスフェクトした。インテグラーゼは、2-15モノクローナル抗体、mCherryおよびブラストサイジン選択マーカーのゲノムへのインテグレーションを可能にする、遺伝子組換え事象を触媒する(
図23参照)。
【0227】
トランスフェクションの3日後、トランスフェクト細胞を1:20の分割比で継代培養した。継代培養の24時間後、10μg/mLの濃度のブラストサイジンを添加し、ブラストサイジン選択圧を2週間維持した。次いで細胞選別を実施して、2-15組み込み細胞が濃縮したmCherry陽性細胞を単離した(TARGATT2-15と命名)。TARGATT2-15細胞の回収後、TARGATT2-15および野生型TARGATT細胞を、ウェルあたり3.2×10
4細胞の密度で96ウェルプレートに播種した。次いで細胞を播種した直後に、(実施例1および
図2に記載されるように)ACE2/TMRPSS2発現プラスミドで細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、偽ウイルス中和アッセイに先立って、精製91030抗体(最終濃度5μg/mL)を陽性対照として未修飾TARGATT細胞に添加した。さらなるIgG定量化分析のために、各ウェルから20μLの培養培地を分注した。
【0228】
スパイクタンパク質D614G変異およびルシフェラーゼレポーター遺伝子を有する80μLのSARS CoV-2レポーターウイルス粒子を、ACE2/TMPRSS2発現TARGATT2-15細胞(ACE2/TMPRSS2+TARGATT2-15)、ACE2/TMPRSS2発現野生型TARGATT細胞(ACE/TMPRSS2+TARGATTWT)、および5μg/mLの精製91030を含むACE/TMPRSS2発現野生型TARGATT細胞(ACE/TMPRSS2+91030)に添加した。レポーターウイルスを添加した3日後、培養培地を取り出し、30μLのPBSおよび30μLの希釈Renilla-Gloアッセイ基質(アッセイ緩衝液中に1:100で希釈したRenilla-Gloアッセイ基質)を添加した。次いで、室温で10分間インキュベートした後、ルミノメーターで発光を検出した。各群のルミノメーター読み取りの平均相対発光量(RLU)を計算した。以下の図に示すように、ACE2/TMPRSS2+2-15群およびACE/TMPRSS2+91030群の両方が、ACE/TMPRSS2+WT群と比較して相対発光量の有意な減少を示し、TARGATTHEK2-15細胞から分泌された2-15がSARS-CoV2偽ウイルスを中和することができることを示している(
図24)。
【0229】
ACE2/TMPRSS2+TARGATT2-15群の抗体発現レベルをELISAによって検証した。平均抗体発現レベルは、TARGATT2-15からの0.44μg/mL(n=6)抗体発現であり、TARGATT2-15細胞が機能的に活性な2-15を分泌できることを示唆している(
図25)。5μg/mLの精製91030モノクローナル抗体(精製91030のナノドロップに基づいて計算)を含有する群、ACE/TMPRSS2+91030を、本発明者らのELISAアッセイのインターナルコントロールとして2.74μg/mLの濃度でELISAによって測定した。
【0230】
ゲノムPCRをさらに実行して、TARGATT2-15細胞株への2-15 mab遺伝子配列決定のインテグレーションを検証した。最初に、野生型TARGATTおよびTARGATT2-15細胞株からゲノムDNAを単離した。次いでPCR増幅を実行して、GoTaq2ホットスタートポリメラーゼ(Promega#M7405)、およびApplied StemCell,Inc.によって検証され、提供されたプライマー配列(下流プライマーセット、フォワード5’ CCTTGTAGATGAACTCGCCGT 3’(配列番号29)およびリバース5’ GGTGTCGTGATTATTCGAAGGG 3’(配列番号30))を使用して下流遺伝子インテグレーション領域を増幅した。TARGATT2-15群からの500b.p.アンプリコンは、野生型TARGATT細胞からのPCR増幅無しと比較して、遺伝子インテグレーションの成功を示した(
図26)。
【0231】
[実施例23: 次世代シーケンシングを使用して中和抗体を同定するための迅速液滴ベースアッセイの使用]
【0232】
この予言的例(prophetic example)では、抗体をRaji-DCSIGNR細胞にクローニングし、合成ライブラリー混合物を生成して、液滴ベースのスクリーニングの、黄熱ウイルス(YFV)を標的とする中和抗体を同定する能力を試験する。Raji-DCSIGNR細胞のレンチウイルス形質導入を利用して、ハイスループット単一細胞中和アッセイに使用されるそれらの能力を評価した。Raji-DCSIGNR細胞に、抗体分泌のための黄熱ウイルス中和抗体mAb-17、またはYFVを中和しない他の抗体(910-30、VRC01、および2-15)を形質導入する。細胞をマイクロ流体液滴にカプセル封入し、それらを24時間インキュベートして(ただし、インキュベーション時間は実験の目的に応じて数分から数週間に及んでもよい)、液滴内での抗体の分泌および蓄積を促進する。次に、電気融合技術を使用して液滴を混同し(液滴混同のための他の技術も使用することができ、当業者に公知である)、37℃で一晩インキュベートして、分泌抗体によって保護されていない任意の細胞を偽ウイルスに感染させる(インキュベーション時間およびインキュベーション温度は、実験の目的に応じて変更してもよい)。液滴を破壊し、細胞を回収する。短時間のインキュベーション時間(実験の目的に応じて、0分~数週間の範囲であり得る)の後、フローサイトメーターでGFP+細胞およびGFP-細胞を選別して、中和細胞と非中和細胞とを分離する。細胞を回収し、PCRベースの増幅のためにゲノムDNAを抽出する。
【0233】
データセット内の各抗体クローンの有病率を定量する次世代シーケンシングのためにDNAが送られる。中和抗体はGFP-細胞のセットで濃縮され、GFP+細胞で枯渇し、これらの濃縮特徴に基づいて中和抗体を同定することができた。これらのデータは、抗体分泌タンパク質の機能的中和特性を、迅速かつハイスループット方法での抗YFV抗体中和の直接スクリーニングのための細胞株プラットフォームとして、レポーター(組換えウイルス粒子、RVP感染事象の後に発現される)に結び付けることができること、さらに、中和抗体の配列を次世代シーケンシング分析を使用して検出できることを立証するであろう。
【0234】
[実施例24: HIV-1の中和のための分泌タンパク質分析]
【0235】
この実施例では、TZM-GFP細胞を使用して、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)を中和する分泌タンパク質の能力を試験した。レンチウイルス形質導入TZM-GFP細胞を利用して、ハイスループット単一細胞中和アッセイでのそれらの能力を評価した。TZM-GFP細胞
(23)に、抗体分泌のためのHIV-1中和抗体VRC34、またはHIV-1を中和しない対照抗体(72A1)を形質導入した。HIV-1偽ウイルス粒子(株W6M.EnV.C2)を添加する前に、96ウェルプレートで2日間抗体を分泌させた後に細胞株を試験して、分泌抗体がHIV-1偽ウイルスからの保護を提供することを確認した(
図27)。VRC34を発現する細胞はHIV-1偽ウイルス感染から保護されたが、VRC34を発現しない細胞は感染から保護されなかった。これらのデータは、抗体分泌タンパク質の機能的中和特性を、迅速かつハイスループット方法での抗HIV-1抗体中和の直接スクリーニングのための細胞株プラットフォームとして、GFPベースのレポーター(偽ウイルス感染事象の後に発現される)に結び付けることができることを立証した。
【0236】
[実施例25: 分泌タンパク質細胞ライブラリーを用いて液滴内の可溶性分泌アッセイを可能にする液滴混同技術]
【0237】
この実施例では、液滴混同技術を適用して、カプセル封入および液滴混同、ならびに分泌細胞アッセイを可能にする、細胞ライブラリーからのDNAの回収を実証する。最初に合成細胞ライブラリーを生成し、そこで各細胞は、別個の抗体クローンを分泌し、分泌タンパク質機能をスクリーニングするために使用され得るACE2も発現する。抗体クローンを発現する4つの異なる細胞群を単一のライブラリーに混合した(表3)。
【0238】
表3.既知の抗体クローンを発現する細胞を混合し、人工細胞ライブラリーとして使用した。ACE2を発現するHEK293-Tクローンおよび異なるモノクローナル抗体クローンを、5%ウシ胎児血清および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充した高グルコースDMEMにおいて1×106細胞/mLで示されるように混合した。
【0239】
【0240】
直径約80μmの液滴を生成する液滴ジェネレーター(F02-HPB-8x、uFluidix、カナダ)を使用して、細胞を単一細胞エマルジョンに捕捉した。次に、電場を適用して液滴の混同を誘導する、液滴混同デバイスに液滴をロードした。このデバイスはまた、細胞液滴と混同するためのローダミン110(直径:約40μm、#83695、Sigma-Aldrich、米国)を含有する液滴を生成する(
図28)。
【0241】
[実施例26: 可溶性タンパク質分泌アッセイ後に異なる選択マーカーで選別された細胞集団中の分泌タンパク質を同定するためのDNAの回収]
【0242】
この実施例では、液滴混同技術を適用して、カプセル封入および液滴混同、ならびに分泌細胞アッセイを可能にする、細胞ライブラリーからのDNAの回収を実証する。4つの異なる抗体クローンを含む合成細胞ライブラリー(表3)を生成し、選別したが、その一部のみがSARS-CoV-2を強力に中和することができる。
【0243】
感染細胞においてGFP発現を誘導するSARS-CoV-2偽ウイルスとの液滴混同後、細胞をエマルジョンから回収し、ライブラリー中の分泌抗体間の機能的性能差を示すGFPマーカーの発現について選別した。この場合、機能的スクリーニングにより、GFP-細胞集団において比較的濃縮された中和抗体が同定され、非中和抗体がGFP+細胞集団に含まれていた。
【0244】
ゲノムDNAを、Quick-DNA Miniprep Kit(Zymo Research、米国)を使用してHEK細胞から単離した。次に、サイトメガロウイルスプロモーターの3’領域および重定常鎖の5’領域を固定するプライマーを使用する、Platinum Taq DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific、米国)を使用して重鎖可変領域を増幅した。使用したプライマー配列は、フォワード:5’-GGTGGGAGGTCTATATAAGCA-3’(配列番号31)、リバース:5’-CCAGAGGTGCTCTTGGAG-3’(配列番号32)であった。ポリメラーゼ連鎖反応を、アニーリング温度として51℃を使用して40サイクル中に行った。PCR産物を、1%アガロースゲル中で、1 Kb DNAラダー(#N0550S、New England BioLabs、米国)を用いて分解し、サイズを調節した。得られたDNAゲルを
図29に示す。これらのデータは、ハイスループット液滴ベースの細胞分泌タンパク質機能アッセイにおいて利用される細胞からDNA配列を回収する、本発明者らの能力を実証する。
【0245】
[実施例27: エマルジョン液滴システム内のSARS-CoV-2に対する既知の中和特性を有する抗体の合成ライブラリーを使用する単一細胞アッセイの適用]
【0246】
この実施例は、SARS-CoV-2偽ウイルスの中和のための抗体分子を分泌する合成細胞ライブラリーのスクリーニングの成功に関する。最初に、異なるモノクローナル抗体を発現するHEK-ACE2を混合して、4つの抗体産生細胞(以前に報告された抗体VRC01、CR3022、910-30およびmAb1-20)からなる合成ライブラリーを生成した。VRC01はSARS-CoV-2を中和せず、陰性対照の役割を果たす。マイクロ流体デバイスを使用して合成ライブラリーをDMEM培地でカプセル封入し、液滴あたり1つの細胞を含む液滴を形成した。液滴を24時間インキュベートし、抗体蓄積のために液滴内でIgGを分泌させた。続いて、D614G SARS-CoV-2偽ウイルスを含有する第2の液滴を、IgG発現HEK-ACE2細胞を含む液滴に混同した。電気融合を使用して液滴を混同したが、マイクロピラー抵抗アレイの使用を含む、液滴を混同する代替方法が報告されている。混同された液滴をさらに24時間インキュベートして、偽ウイルスの感染または中和を発生させた。次いで液滴を破壊し、細胞を回収する。細胞を48時間回復させた。蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用してGFP-集団およびGFP+集団を単離し、細胞アリコートからgDNAを抽出し、PCRを実行してNGS分析用の抗体遺伝子ライブラリーを回収した。GFP-細胞も回収し、中和クローンについてさらに濃縮するためのその後のスクリーニングラウンドの入力として使用した。
【0247】
GFP-細胞およびGFP+細胞の選別された各ライブラリーに対してハイスループット配列決定分析を実施して、重鎖配列情報を得た。各集団における重鎖抗体バリアントの頻度を比較して、集団における中和抗体および非中和抗体に対する液滴中和アッセイの効果を決定した(
図30、表4)。
【0248】
【0249】
[実施例28: エマルジョン液滴システム内のHIV偽ウイルスに対する既知の中和特性を有する抗体の合成ライブラリーを使用する単一細胞アッセイの適用]
【0250】
この実施例は、HIV偽ウイルスの中和のための抗体分子を分泌する合成細胞ライブラリーのスクリーニングの成功に関する。最初に、異なるモノクローナル抗体を発現するTZM-GFP細胞を混合して、3つの抗体産生細胞(以前に報告された抗体72A1、VRC01およびVRC34)からなる合成ライブラリーを生成した。72A1はHIV-1を中和せず、陰性対照の役割を果たす。マイクロ流体デバイスを使用して合成ライブラリーを培地でカプセル封入し、液滴あたり1つの細胞を含む液滴を形成した。液滴を24時間インキュベートし、抗体蓄積のために液滴内でIgGを分泌させた。続いて、HIV-1 BG505.W6M.Env.C2偽ウイルスを含有する第2の液滴を、IgG発現TZM-GFP細胞を含む液滴に混同した。電気融合を使用して液滴を混同したが、マイクロピラー抵抗アレイの使用を含む、液滴を混同する代替方法が報告されている。混同された液滴をさらに24時間インキュベートして、偽ウイルスの感染または中和を発生させた。次いで液滴を破壊し、細胞を回収する。細胞を48時間回復させた。蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用してGFP-集団およびGFP+集団を単離し、細胞アリコートからgDNAを抽出し、PCRを実行してNGS分析用の抗体遺伝子ライブラリーを回収した。GFP-細胞も回収し、中和クローンについてさらに濃縮するためのその後のスクリーニングラウンドの入力として使用した。
【0251】
GFP-細胞およびGFP+細胞の選別された各ライブラリーに対してハイスループット配列決定分析を実施して、重鎖配列情報を得た。各集団における重鎖抗体バリアントの頻度を比較して、集団における中和抗体および非中和抗体に対する液滴中和アッセイの効果を決定した(
図31、表5)。
【0252】
【0253】
[引用文献]
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【0254】
本発明の範囲および意図から逸脱することなく、本明細書に開示された発明に対して様々な置換および修正を行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。本明細書に例示的に記載された本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の限定がない状態で適切に実施され得る。使用されている用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用において、示され説明された特徴またはその一部の均等物を除外する意図はないが、本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明は特定の実施形態および任意選択の特徴によって例示されているが、本明細書に開示された概念の修正および/または変形が当業者によって行われてもよく、そのような修正および変形は本発明の範囲内にあるとみなされることを理解されたい。
【0255】
本明細書では、多数の特許および非特許文献を引用することができる。引用された文献はいずれも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。引用された文献における用語の定義と比較して、本明細書における用語の定義に不一致がある場合、その用語は、本明細書における定義に基づいて解釈されるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】