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特表2025-503728抗VEGFR2(KDR)改良抗体を含む融合タンパク質及びその用途
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  • 特表-抗VEGFR2(KDR)改良抗体を含む融合タンパク質及びその用途 図1
  • 特表-抗VEGFR2(KDR)改良抗体を含む融合タンパク質及びその用途 図2
  • 特表-抗VEGFR2(KDR)改良抗体を含む融合タンパク質及びその用途 図3A
  • 特表-抗VEGFR2(KDR)改良抗体を含む融合タンパク質及びその用途 図3B
  • 特表-抗VEGFR2(KDR)改良抗体を含む融合タンパク質及びその用途 図4
  • 特表-抗VEGFR2(KDR)改良抗体を含む融合タンパク質及びその用途 図5
  • 特表-抗VEGFR2(KDR)改良抗体を含む融合タンパク質及びその用途 図6
  • 特表-抗VEGFR2(KDR)改良抗体を含む融合タンパク質及びその用途 図7
  • 特表-抗VEGFR2(KDR)改良抗体を含む融合タンパク質及びその用途 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】抗VEGFR2(KDR)改良抗体を含む融合タンパク質及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20250128BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250128BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20250128BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20250128BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12P21/02 C
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/02
A61K45/00
A61K38/16
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61P9/00
A61P35/00
A61K47/68
A61K47/65
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542268
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 KR2023000631
(87)【国際公開番号】W WO2023136648
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2022-0005625
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520364897
【氏名又は名称】ファームアブシン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PHARMABCINE INC.
【住所又は居所原語表記】2F, RESEARCH BUILDING 2, YUSEONG‐DAERO 1689BEON‐GIL 70, YUSEONG‐GU, DAEJEON 34047, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】ナム ジュリョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ヨンエ
(72)【発明者】
【氏名】イ ウォンソプ
(72)【発明者】
【氏名】ユ ジンサン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076CC11
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA53
4C084DC50
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZC412
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA25
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、向上した特性を示す抗VEGFR2(KDR)改良抗体又はその抗原結合断片を含む融合タンパク質及びその用途に関する。具体的には、本発明は、VEGFR2/KDRに特異的に結合するヒト抗体の重鎖FR(framework regoin)をVH1からVH3に置換、及び軽鎖FR(framework regoin)をVL1からVK1に置換し、突然変異を誘導させて抗原に対する親和度を増加させた抗VEGFR2(KDR)抗体の末端にDLL4(Delta-like ligand 4)結合タンパク質ドメインを結合した融合タンパク質、前記融合タンパク質を含む新生血管形成(angiogenesis)関連疾患の診断又は治療用の組成物、腫瘍又は癌の予防又は治療用の組成物、及び前記融合タンパク質以外の治療剤と併用投与するための組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
VEGFR2/KDRに結合する抗体又はその抗原結合断片;及びDLL4(Delta-like ligand 4)結合タンパク質ドメインを含む融合タンパク質であって、
前記VEGFR2/KDRに結合する抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2、及び配列番号6の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む、融合タンパク質。
【請求項2】
前記VEGFR2/KDRに結合する抗体は、配列番号8の重鎖可変領域及び配列番号10の軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記DLL4結合タンパク質は、配列番号18の配列を含むNotch1である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記DLL4結合タンパク質ドメインは、VEGFR2/KDRに結合する抗体の軽鎖N末端に結合する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記VEGFR2/KDRに結合する抗体又はその抗原結合断片、及びDLL4結合タンパク質ドメインは、リンカーを介して連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記リンカーは、(GS)(n、mはそれぞれ、1~10)を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項9】
請求項8に記載の発現ベクターを含む形質転換細胞。
【請求項10】
次の段階を含む融合タンパク質の製造方法:
(a)請求項9に記載の細胞を培養して融合タンパク質を生成する段階;及び
(b)前記生成された融合タンパク質を回収する段階。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質を有効成分として含む血管新生疾患の予防又は治療用の組成物。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質を有効成分として含む血管新生疾患診断用の組成物。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質を有効成分として含む腫瘍又は癌の予防又は治療用の組成物。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含む他の治療剤との併用投与用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向上した特性を示す抗VEGFR2(KDR)改良抗体又はその抗原結合断片を含む融合タンパク質及びその用途に関する。具体的には、本発明は、VEGFR2/KDRに特異的に結合するヒト抗体の重鎖FR(framework regoin)をVH1からVH3に置換、及び軽鎖FR(framework regoin)をVL1からVK1に置換し、突然変異を誘導させて抗原に対する親和度を増加させた抗VEGFR2(KDR)抗体の末端にDLL4(Delta-like ligand 4)結合タンパク質ドメインを結合させた融合タンパク質、前記融合タンパク質を含む新生血管形成(angiogenesis)に関連した疾患の診断又は治療用の組成物、腫瘍又は癌の予防又は治療用の組成物、及び前記融合タンパク質以外の治療剤と併用投与するための組成物に関する。
【0002】
【背景技術】
【0003】
VEGFR2/KDRは一次的な血管新生受容体で、VEGFイソ型であるA、C、D及びEと結合し、内皮細胞分化だけでなくVEGFのマイトジェン性、血管新生性及び浸透性-強化効果に重要である。抗VEGFR2抗体は、公知された全てのVEGFイソ型がVEGFR2/KDRに結合してシグナリングを始めることを防止できる。また、腫瘍はより多い数のVEGFを分泌するのに対し、受容体の数は相対的に一定に維持されるため、受容体を標的することは、非常に高いレベルのVEGFイソ型の存在下でさえも完全にシグナリングを抑制する確率を増加させる。
【0004】
新生血管形成(angiogenesis)とは、内皮細胞の成長、分裂、移動などによって既存の血管から新しい血管が生成されることを意味し、成人では、傷の治療、女性の生殖サイクルなどの特別な場合を除いては発生しない。しかし、腫瘍の成長と転移、加齢性黄斑変性(age-related macular denaturation)、リウマチ性関節炎(rheumatoid arthritis)、糖尿病性網膜病症(diabetic retinopathy)、乾癬(psoriasis)及び慢性炎症(chronic inflammation)などのような疾病において過度な新生血管の形成が報告されており(Cameliet and Jain,Nature,407:249,2000)、このような理由で、新生血管抑制剤を用いて疾病治療、特に腫瘍の治療をしようとする努力が多く行われている。
【0005】
1971年にDr.J.Folkmanによって、腫瘍の成長と転移は新生血管形成依存的であり、したがって、抗新生血管形成にフォーカスした治療法は固形癌に対する新しい治療剤になり得るとの仮設が提起されて以来、過度な新生血管形成機序の抑制と関連した研究は多数の研究者の関心を集めてきた(Ferrara and Kerbel,Nature,435:967,2005)。新生血管形成過程の進行様相は、新生血管形成誘発因子と新生血管形成阻害因子の総合的なバランスによって決定され、諸段階の複雑かつ順次的な過程によって進行される。その過程について説明すると、まず、腫瘍や傷ついた組織から分泌される血管内皮成長因子(Vasicular Endothelial Growth Factor,VEGF)をはじめとする様々な新生血管形成誘発因子が周辺の既存血管内皮細胞の該当の受容体に結合することにより、血管内皮細胞を活性化させ、血管内皮細胞の透過性を増加させ、基底膜タンパク分解酵素(matrix metalloproteinase,MMP)のようなタンパク質分解酵素を分泌することにより、血管内皮細胞周辺の基底膜と細胞外基質を分解させ、血管内皮細胞が既存の毛細血管から離れて、新生血管形成誘発因子を分泌する組織に向かって移動・増殖することになる。移動・増殖した血管内皮細胞は、血管内チューブ構造をなし、最後に、血管内皮細胞の構造的支持台である血管周囲細胞(pericyte)が流入しながら、安定で成熟した血管形成がなされる。
【0006】
上の血管形成過程において正常血管チューブ形成をなす主要因子の一つがDLL4である。DLL4はVEGFによって特異的に誘導され、Notch受容体に作用して血管新生性発芽を適切に調節する役割を担当する。DLL4を遮断すると血管新生部位末端の細胞において外側抑制(lateral inhibition)の欠失が現れ、過度な発芽がなされる。その結果として、過度に多いであるのに生産性は低下する血管新生反応が高くなり、酸素を供給する灌流が悪くなって癌の周辺に低酸素状態を誘導するとされている。癌実験モデルにおいてもDLL4信号伝達の活性化は血管新生を向上させたが、抑制すると癌の成長が阻害されることが見られた(Lobov IB et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.2007 Feb 27;104(9):3219-24)。
【0007】
前記DLL4は、Notch受容体に対するリガンドの一つであり、哺乳動物には現在まで4種類のNotch受容体(Notch 1~4)と5種類のNotchリガンド(Jagged-1、Jagged-2、DLL1、DLL3、DLL4)が存在することが知られており、Notch信号伝達体系の場合、一つの細胞のNotchリガンドが他の細胞のNotch受容体に結合することによって始まるが、必ず互いに異なる細胞間の直接的な相互作用によってのみ活性化される(Bray SJ,Nat Rev Mol Cell Biol .,7(9):678,2006)。
【0008】
NotchリガンドがNotch受容体に結合すると、まず、ADAMメタロプロテアーゼ(ADAM metalloprotease)が活性化されることにより、Notch受容体の細胞膜外側の近接部位が切断され、続いてガンマ-セクレターゼ(gamma-secretase)複合体が活性化されることにより、Notch受容体の細胞膜内側の近接部位を切断してNICD(Notch Intracellular Domain)が遊離し、NICDは核に移動してRBPJ/CSL転写因子(transcription factor)と結合し、Hes、Heyのような塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス(basic helix-loop-helix)タンパク質などのNotchターゲット遺伝子の発現を誘導する。このように、Notch信号伝達体系は、当該細胞が処している状況によって増殖/分化/自滅(apoptosis)などの運命を決定し、正常幹細胞及び癌幹細胞の維持にも重要な働きをする。
【0009】
基本的に、全てのNotch受容体が全てのNotchリガンドと結合し得るが、このような様々な結合の組合せは、当該細胞が処している微細環境で選択的に調節される。例えば、DLL4は、胎児発達過程で血管新生時に内皮細胞に強く発現し、周辺内皮細胞に発現するNotch1及びNotch4と結合するが、このうち、DLL4-Notch1結合が排他的に最も重要であり(Yan M,Vasc Cell,2011)、この結合によって血管新生が進行される。このような事実は、遺伝子欠乏実験などからよく究明されている(Duarte et al .,Genes Dev ,2004;Gale et al .,PNAS,2004;Krebs et al .,Genes Dev,2004)。
【0010】
したがって、DLL4-Notch1結合を阻害させると血管新生が抑制され、これにより、腫瘍などの様々な疾患が治療できる。既に、癌治療においてアバスチン(ベバシズマブ)などを用いてVEGFを抑制すると血管形成が抑制され、腫瘍の灌流(perfusion)が減少するにつれて腫瘍サイズが減る一方、DLL4を標的にして周辺細胞において発現するNotch1との結合を抑制すると、血管が異常に多く生成(hypersprouting)されるものの正常に機能できず(non-functional)、腫瘍の灌流が減少し、結果的に腫瘍サイズが減る(Thurston et al ,,Nat Rev Cancer ,7(5):327,2007)点が立証されている。
【0011】
したがって、本研究者らは、Notch1、特に、本発明ではNotch1のDLL4結合部位を既存抗体に融合させた二重標的抗体を作製することによって、新生血管形成を効果的に抑制しようとした。
【0012】
新生血管形成に関与する因子には血管内皮細胞成長因子(VEGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、転換成長因子(TGFb)、線維芽細胞成長因子(FGF)などがあり、中でも内皮細胞成長因子は内皮細胞の成長、分化移動に直接に関与する内皮細胞特異的因子で、4種の互いに異なるイソ型(VEGF165、VEGF121、VEGF189、VEGF206)が存在し、胎盤以外の全てのヒト組織でVEGF165が最も豊富なイソ型である(Tisher et al.,J Biol Chem,266:11947,1991)。
【0013】
内皮細胞成長因子(VEGF)は、in situで内皮前駆体(血管母細胞)の分化からの新しい血管形成を調節し、胚芽組織(Breier et al.,Development (Camb)、114:521,1992)、大食細胞、傷治癒期間における増殖上皮角質細胞(Brown et al.,J.Exp.Med.,176:1375,1992)で発現し、炎症と結びついた組織浮腫の原因であり得る(Ferrara et al.,Endocr.Rev.,13:18,1992)。In situハイブリダイゼーション研究によれば、多形成膠芽細胞腫、血管芽細胞腫、中枢神経系新生物及びエイズ-結付カポシ肉腫(Plate et al.,nature 359:845,1992;Plate et al.,Cancer Res.53:5822,1993;Berkman et al.,J.Clin.Invest.91:153,1993;Nakamura et al.,AIDS Weekly.13(1)、1992)を含めて多数のヒト腫瘍株でVEGFが高度に発現するということが証明された。高レベルのVEGFは低酸素症誘導血管新生からも観察された(Shweiki et al.,Nature 359:843,1992)。
【0014】
VEGFの生物学的機能は、VEGFに対して高親和性を有するVEGF受容体によって媒介されるが、前記受容体は、胚芽形成(embryo遺伝子sis)中(Millauer et al.,Cell,72:835,1993)及び腫瘍形成中に内皮細胞で選択的に発現する。一般に、VEGF受容体(VEGFR)は、それのアミノ末端細胞外受容体リガンド-結合ドメインに複数個、一般に5個又は7個の免疫グロブリン様ループを有することを特徴とするクラスIII受容体型チロシンキナーゼである(Kaipainen et al.,J.Exp.Med.,178:2027,1993)。他の2部位は、キナーゼインサートドメインと呼ばれる可変性長の親水性インターキナーゼ配列の挿入によって中断されるカルボキシ末端細胞内触媒ドメイン及び膜通過部位を含む(Terman et al.,Oncogene,6:1677,1991)。VEGFRは、ニューロピリン-1及びニューロピリン-2のような他の受容体もVEGFに結合することはできるが、fms様チロシンキナーゼ受容体(flt-1)、又はVEGFR-1(Shibuya et al.,Onco遺伝子,5:519,1990;WO92/14248;Terman et al.,Onco遺伝子,6:1677,1991)及び 含キナーゼインサートドメイン受容体/胎児間キナーゼ(KDR/flk-1)、又はVEGFR-2(Matthews et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:9026,1991)を含む。他のチロシンキナーゼ受容体であるVEGFR-3(flt-4)は、VEGFホモログであるVEGF-C及びVEGF-Dに結合し、リンパ管の発達において重要な役割を担う。
【0015】
高レベルのFlk-1は、神経膠芽腫を浸潤する内皮細胞によって発現する(Plate et al.,Nature 359:845,1992)。Flk-1レベルは、ヒト膠芽細胞腫によって生成されるVEGFによって特異的に上方調節される(Plate et al.,Cancer Res.53:5822,1993)。膠芽細胞終結部内皮細胞(GAEC)においてFlk-1が高レベルで発現するという事実は、Flk-1転写体が正常脳内皮細胞からはほとんど検出されず、受容体活性が恐らく腫瘍形成中に誘導されるということを示す。このような上方調節は、腫瘍に非常に近接した血管内皮細胞でのみ発生する。中和抗VEGFモノクロナール抗体(mAb)でVEGF活性を遮断すると、ヌードマウスにおいてヒト腫瘍移植片の成長が抑制されるが(Kim et al.,Nature 362:841,1993)、これは、腫瘍関連血管新生におけるVEGFが直接的な役割を担うということを示す。
【0016】
VEGFリガンドが腫瘍細胞において上方調節され、それの受容体が腫瘍浸潤血管内皮細胞において上方調節されるが、血管新生と結び付いていない正常細胞ではVEGFリガンド及びその受容体の発現は低い。したがって、このような正常細胞は、VEGFとそれの受容体間の相互作用を遮断して血管新生を抑制させ、よって、腫瘍成長が起こらない。
【0017】
高レベルのVEGFR-2は、神経膠腫に浸潤する内皮細胞によって発現し、ヒト膠芽細胞腫によって生成されたVEGFによって特異的に上方調節される(Plate et al.,Nature,359:845,1992;Plate et al.,Cancer Res.,53:5822,1993)。VEGFR-2転写体は正常脳内皮細胞ではほとんど検出されないため、膠芽細胞腫関連内皮細胞(GAEC)で高レベルのVEGFR-2が発現することは、腫瘍形成中に受容体活性が誘導されるということを示すす。
【0018】
VEGFは種々の腫瘍で高いレベルで発現し(Plate et al.,Nature,359:8435,1992;Dvorak et al.,J.Exp.Med.,174:1275,1991)、新生の毛細血管はVEGF-生産性腫瘍胞周囲に集まる(Plate et al.,Nature,359:8435,1992)。VEGF発現は、速く成長する腫瘍と関連付いているもののように、低酸素症条件下で強く上方調節される(Shweiki et al.,Nature,359:843,1992)。アバスチン(Avastin)のような抗体によるVEGF中和(Ferrara et al.,Nat Rev Drug Discov.,3(5):391,2004;Avery et al.,Ophthalmology,113(3):363,2006)は、癌又はAMDのような他の血管新生疾患を抑制するために臨床的に承認された療法である。しかし、VEGF遮断に対する耐性が、化学療法と併用され場合ですら発見された。この耐性は、リモデルリングされた脈管構造及び他の血管新生因子の増加した発現と関連があり得る。したがって、当該技術の分野には癌及び血管新生と関連した他の疾患を抑制するための改善された組成物及び方法への必要性が依然として存在する。
【0019】
チロシンキナーゼ抑制剤(TKI)及び抗KDRP抗体の両方ともKDR媒介の血管新生を抑制できるとしても、抗体接近はTKIに比べて長所を有する。TKIとは対照的に、抗KDR抗体はより特異的なKDR標的剤である(すなわち、抗KDR抗体は他のVEGF受容体を抑制しない)。このような高い特異性により、抗KDR抗体は、標的離脱効果(off-target effect)及びより特異的でないTKIによって引起こされた毒性を制限及び/又は回避できる(Witte et al.,Cancer Metastasis Rev.,Jun;17(2):155,1998)。
【0020】
ただ1つのリガンド(VEGF-A)のみと結合するアバスチンとは違い、抗KDR抗体は、全ての公知のVEGFがVEGFR2/KDRに結合することを防止するものと予想される。抗KDR抗体は、単純にVEGF-Aを遮断することよりは腫瘍血管新生に対してより強力な抑制効果を有し得る。抗KDR抗体を用いた療法がアバスチン耐性においては効果的である可能性がある。
【0021】
このような技術的背景下で、本出願の発明者らは、既存VEGFR2/KDRに特異的に結合する抗体を改良するために、重鎖可変領域のFR(framework regoin)をVH1からVH3に置換、及び軽鎖FR(framework regoin)をVL1からVK1に置換し、重鎖と軽鎖のCDR3領域に突然変異を誘導させることで抗原に対する親和度を増加させた新規な抗体を製造したし、抗体末端にNotch1のDLL4結合部位を融合させて融合タンパク質を作製し、本発明を完成するに至った。
【0022】
【0023】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、VEGFR2/KDRに対する向上した結合力を有する抗体末端にDLL4結合タンパク質ドメインが融合された形態の融合タンパク質を提供することにある。
【0025】
本発明の他の目的は、前記融合タンパク質をコードする核酸を提供することにある。
【0026】
本発明の他の目的は、前記核酸を含むベクター、前記ベクターを含む形質転換細胞及びその製造方法を提供することにある。
【0027】
本発明のさらに他の目的は、前記融合タンパク質を含む血管新生疾患の予防又は治療用の組成物を提供することにある。前記融合タンパク質を個体に投与する段階を含む血管新生疾患の予防又は治療方法を提供することにある。前記融合タンパク質を血管新生疾患の予防又は治療用の組成物の製造に使用するための用途を提供することにある。
【0028】
本発明のさらに他の目的は、前記融合タンパク質を含む血管新生疾患診断用の組成物を提供することにある。前記融合タンパク質を個体に投与する段階又はサンプルに融合タンパク質を処理する段階を含む血管新生疾患の診断方法を提供することにある。前記融合タンパク質を血管新生疾患診断用の組成物の製造に使用するための用途を提供することにある。
【0029】
本発明のさらに他の目的は、前記融合タンパク質を含む腫瘍又は癌の予防又は治療用の組成物を提供することにある。前記融合タンパク質を個体に投与する段階を含む腫瘍又は癌の予防又は治療方法を提供することにある。前記融合タンパク質を腫瘍又は癌の予防又は治療用の組成物の製造に使用するための用途を提供することにある。
【0030】
本発明のさらに他の目的は、前記融合タンパク質を含む他の治療剤と併用投与するための組成物を提供することにある。前記融合タンパク質を個体に投与する段階を含む他の治療剤と併用投与するするための方法を提供することにある。前記融合タンパク質を他の治療剤と併用投与するするための組成物の製造に使用するための用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記の目的を達成するために、本発明は、VEGFR2/KDRに結合する抗体又はその抗原結合断片;及び、DLL4(Delta-like ligand 4)結合タンパク質ドメインを含む融合タンパク質であって、
【0032】
前記VEGFR2/KDRに結合する抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2、及び配列番号6の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む融合タンパク質を提供する。
【0033】
本発明は、また、前記融合タンパク質をコードする核酸を提供する。
【0034】
本発明は、また、前記核酸を含むベクターを提供する。
【0035】
本発明は、また、前記ベクターを含む形質転換細胞を提供する。
【0036】
本発明は、また、次の段階を含む前記融合タンパク質の製造方法を提供する:(a)前記細胞を培養して融合タンパク質を生成する段階;及び、(b)前記生成された融合タンパク質を回収する段階。
【0037】
本発明は、また、前記融合タンパク質を含む血管新生疾患の予防又は治療用の組成物を提供する。
【0038】
本発明は、また、前記融合タンパク質を含む血管新生疾患診断用の組成物を提供する。
【0039】
本発明は、また、前記融合タンパク質を含む腫瘍又は癌の予防又は治療用の組成物を提供する。
【0040】
本発明は、また、前記融合タンパク質を含む他の治療剤と併用投与するための組成物を提供する。
【0041】
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】6A6の重鎖CDR配列を移植した配列である。
【0043】
図2】6A6の軽鎖CDR配列を移植した配列である。
【0044】
図3A-3B】作製された融合タンパク質の結合力をSPRによって確認した結果である。
【0045】
図4】2種の抗原への同時結合能力をSPRによって確認した結果である。
【0046】
図5】成長調節因子によるHUVEC細胞の増殖を抑制可能であることを確認した結果である。
【0047】
図6】血管内皮細胞で抗体のVEGFR-2リン酸化抑制効果を確認した結果である。
【0048】
図7】FACSを用いて血管内皮細胞における融合タンパク質の結合能を確認した結果である。
【0049】
図8】細胞表面に発現させたhDLL4に対する融合タンパク質の結合能をFACSを用いて確認した結果である。
【0050】
【0051】
【発明を実施するための形態】
【0052】
特に定義されない限り、本明細書で使われる全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使われる命名法は、本技術分野でよく知られており、通常使われるものである。
【0053】
本発明は、VEGFR2/KDRに結合する抗体又はその抗原結合断片;及び、DLL4結合タンパク質ドメインを含む融合タンパク質であって、前記VEGFR2/KDRに結合する抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2、及び配列番号6の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む融合タンパク質に関する。
【0054】
本発明に係る融合タンパク質において、VEGFR2/KDRに結合する抗体又はその抗原結合断片は、血管内皮成長因子受容体を中和する完全ヒト化抗体の改良抗体である。特に、血管内皮成長因子受容体を中和するヒト単クローン抗体(韓国登録特許10-0883430号)の改良抗体である。
【0055】
本出願の発明者らは、完全ヒト抗体ライブラリーから発明されたし、VEGFR-2/KDRを標的としながら同時にマウス又はラット由来のflk-1(VEGFR-2相同体)に対しても反応性を有する唯一の抗体を改良した。当該抗体は臨床試験からその優秀性が立証されたが、抗体タンパク質の抗原に対する結合力が多少低く、生体内半減期が短い。これを改良し、免疫抗癌剤としての効能増大、血管新生関連疾患における効能増大が予想される。
【0056】
既存VEGFR2/KDRに特異的に結合する抗体を改良するために、重鎖可変領域のFR(framework regoin)をVH1からVH3に置換、及び軽鎖FR(framework regoin)をVL1からVK1に置換し、重鎖と軽鎖のCDR3領域に突然変異を誘導させることで、抗原に対する親和度を増加させた新規な抗体を製造した。その結果、本発明者らは、既存VEGFR2/KDRに特異的に結合する抗体に比べて高い結合力を有し、より細胞内効能に優れた抗体を開発し、抗体が目的とする免疫抗癌剤又は血管新生関連疾病の治療剤として働き得ることを確認した。
【0057】
前記改良抗体は次のような方法でスクリーニングした。まず、6A6のCDR領域配列とフレームワーク(frame work:FR)配列を確認し、CDRグラフト(grafting)手法を用いて、重鎖CDR配列をヒト生殖細胞系(human germline)VH3配列に移植し、軽鎖CDR配列を生殖細胞系VK1に移植した。
【0058】
CDRグラフト(移植)とは、一般に、マウス単クローン抗体の可変部位配列を暗号化するDNAを分離し、遺伝子クローニングによってCDR配列を確保した後、in silico上で適切なヒト抗体配列中にCDR配列を移植して作る方法である(Hou S,et al.Humanization of an anti-CD34 monoclonal antibody by complementarity-determining region grafting based on computer-assisted molecular modelling.J Biochem.2008;144(1):115-20;及び、Kashmiri SV,De Pascalis R,Gonzales NR,Schlom J.SDR grafting--a new approach to antibody humanization.Methods.2005;36(1):25-34)。上の方法を用いて、生殖細胞系VH1/VL1を有する6A6のフレームワークを生殖細胞系VH3/VK1で置換した。
【0059】
前記置換された抗体の親和度を向上させるために、軽鎖と重鎖のCDR3塩基配列に突然変異を誘導するライブラリーを構築し、組換えKDR D1~D3-Fc融合タンパク質を用いて、抗体をスクリーニングした。抗体スクリーニングはファージディスプレイを用いてスクリーニングした。
【0060】
これに基づいて、本発明は、配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2、及び配列番号6の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む、VEGFR2/KDRに結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0061】
本発明の融合タンパク質は、VEGFR2/KDR及びDLL4のそれぞれに特異的に結合してよい。「二特異的」又は「二重特異的」とは、2個の異なるターゲットに特異的に結合してターゲットの活性を調節できる結合タンパク質の特性であり、例えば、各ターゲットに特異的に結合する抗体又はタンパク質、又はその断片によって製造されてよく、2個の区分された抗原結合アーム(arm:2個ターゲットに対する特異性)を保有し、これに結合するそれぞれの抗原に対して1価である。
【0062】
本明細書で使われる用語、「抗体(antibody)」は、VEGFR2/KDRに特異的に結合する抗VEGFR2/KDR抗体を意味する。本発明の範囲には、VEGFR2/KDRに特異的に結合する完全な抗体形態の他、前記抗体分子の抗原結合断片も含まれる。
【0063】
完全な抗体は、2本の全長の軽鎖及び2本の全長の重鎖を有する構造であり、各軽鎖は重鎖とジスルフィド結合で連結されている。重鎖定常領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びエプシロン(ε)のタイプを有し、サブクラスとしてガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及びアルファ2(α2)を有する。軽鎖の定常領域は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)のタイプを有する。
【0064】
抗体の抗原結合断片又は抗体断片とは、抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvなどを含む。抗体断片のうちFabは、軽鎖及び重鎖の可変領域と軽鎖の定常領域及び重鎖の一番目の定常領域(CH1)を有する構造であり、1個の抗原結合部位を有する。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に1つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点でFabと異なる。F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなしながら生成される。Fvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のみを有している最小の抗体断片である。二重鎖Fv(two-chain Fv)は、非共有結合で重鎖可変領域と軽鎖可変領域が連結されており、単鎖Fv(single-chain Fv,scFv)は一般にペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域が共有結合で連結されたり又はC末端で直ちに連結されており、二重鎖Fvのようにダイマーのような構造をなし得る。このような抗体断片は、タンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、全抗体をパパインで制限切断すればFabが得られ、ペプシンで切断すればF(ab’)2断片が得られる)、遺伝子組換え技術によって作製することもできる。
【0065】
一実施例において、本発明に係る抗体は、Fv形態(例えば、scFv)であるか、完全な抗体形態である。また、重鎖定常領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)又はエプシロン(ε)のいずれか一イソタイプから選ばれてよい。例えば、定常領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ3(IgG3)、又はガンマ4(IgG4)である。軽鎖定常領域は、カッパ又はラムダ型であってよい。
【0066】
本明細書で使われる用語、「重鎖」は、抗原に特異性を付与するための十分の可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVH、及び3個の定常領域ドメインCH1、CH2及びCH3を含む、全長重鎖及びその断片のいずれをも意味する。また、本明細書で使われる用語、「軽鎖」は、抗原に特異性を付与するための十分の可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVL及び定常領域ドメインCLを含む、全長軽鎖及びその断片のいずれをも意味する。
【0067】
本発明の抗体は、単クローン抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖Fvs(scFV)、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合Fvs(sdFV)、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、又はこれら抗体のエピトープ結合断片などを含むが、これに限定されるものではない。
【0068】
前記単クローン抗体は、実質的に同質的抗体集団から得た抗体、すなわち、集団を占めている個々の抗体が、微量で存在し得る可能な天然発生的突然変異を除いては同一であるものを指す。単クローン抗体は高度に特異的であるため、単一抗原部位に対抗して誘導される。典型的に互いに異なる決定因子(エピトープ)に対して指示された互いに異なる抗体を含む通常の(ポリクロナール)抗体製剤とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は抗原上の単一決定因子に対して指示される。
【0069】
「エピトープ」は、抗体が特異的に結合し得るタンパク質決定部位(determinant)を意味する。エピトープは、通常、化学的に活性である表面分子群、例えばアミノ酸又は糖側鎖で構成され、一般に、特定の3次元の構造的特徴の他に特定の電荷特性も有する。立体的エピトープ及び非立体的エピトープは、変性溶媒の存在下で前者に対する結合は消失するが、後者に対しては消失しないという点で区別される。
【0070】
前記「ヒト化」形態の非ヒト(例えば、ネズミ科)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。大部分の場合、ヒト化抗体は、受容者の超可変領域からの残基を、目的とする特異性、親和性及び能力を保有している非ヒト種(供与者抗体)、例えばマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類の超可変領域からの残基で代替させたヒト免疫グロブリン(受容者抗体)である。
【0071】
前記「ヒト抗体」とは、ヒト免疫グロブリンに由来する分子であって、相補性決定領域、構造領域を含む抗体を構成する全てのアミノ酸配列全体がヒトの免疫グロブリンで構成されているものを意味する。
【0072】
重鎖及び/又は軽鎖の一部が特別な種に由来するか、特別な抗体部類又は亜部類に属する抗体内の相応する配列と同一であるか又はこれと相同性である一方、残りの鎖は、さらに他の種に由来するか、さらに他の抗体部類又は亜部類に属する抗体内の相応する配列と同一であるか又はこれと相同性である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)の他にも、目的とする生物学的活性を示す前記抗体の断片も含まれる。
【0073】
本願に使われているような「抗体可変領域」は、相補性決定領域(CDR;すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)、及び骨格領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子の軽鎖及び重鎖部分のことを指す。VHは重鎖の可変領域のことを指す。VLは軽鎖の可変領域のことを指す。
【0074】
「相補性決定領域(CDR;すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)」は、抗原結合のために必要な存在である、抗体可変領域のアミノ酸残基のことを指す。各可変領域は典型的に、CDR1、CDR2及びCDR3として確認された3個のCDR領域を有する。本発明は、配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域及び配列番号6の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0075】
本発明にいて、前記VEGFR2/KDR及びDLL4に結合する抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2、及び配列番号6の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含んでよい。
【0076】
「骨格領域(FR)」は、CDR残基以外の可変領域残基である。各可変領域は典型的に、FR1、FR2、FR3及びFR4として確認された4個のFRを有する。
【0077】
「Fv」断片は、完全な抗体認識及び結合部位を含む抗体断片である。このような領域は、1個の重鎖可変領域と1個の軽鎖可変領域が、例えばscFvで堅固に事実上共有的に連合した二量体からなる。
【0078】
「Fab」断片は、軽鎖の可変及び定常ドメインと、重鎖の可変及び第1定常ドメイン(CH1)を含む。F(ab’)2抗体断片は一般に、それらの間にヒンジシステインによってそれらのカルボキシ末端近くに共有的に連結される一対のFab断片を含む。
【0079】
「単一鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含むが、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖内に存在する。Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合のために目的とする構造を形成できるようにするVHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含んでよい。
【0080】
VEGFR2/KDR抗体は、単鎖又は二重鎖を含んでよい。機能的に、VEGFR2/KDR抗体の結合親和性は、10-5M~10-12Mの範囲内にある。例えば、VEGFR2/KDR抗体の結合親和性は、10-6M~10-12M、10-7M~10-12M、10-8M~10-12M、10-9M~10-12M、10-5M~10-11M、10-6M~10-11M、10-7M~10-11M、10-8M~10-11M、10-9M~10-11M、10-10M~10-11M、10-5M~10-10M、10-6M~10-10M、10-7M~10-10M、10-8M~10-10M、10-9M~10-10M、10-5M~10-9M、10-6M~10-9M、10-7M~10-9M、10-8M~10-9M、10-5M~10-8M、10-6M~10-8M、10-7M~10-8M、10-5M~10-7M、10-6M~10-7M、又は10-5M~10-6Mである。
【0081】
本発明は、配列番号8の配列と80%以上の相同性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む、VEGFR2/KDRに結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0082】
本発明は、また、配列番号10の配列と80%以上の相同性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む、VEGFR2/KDRに結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0083】
本発明は、また、配列番号8の配列と80%以上の相同性を有する配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号10の配列と80%以上の相同性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む、VEGFR2/KDRに結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0084】
前記相同性は、請求された配列番号の配列全体と比較して80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の相同性を有してよい。
【0085】
本発明は、明細書に記載された融合タンパク質の配列だけでなく、その生物学的均等物も含んでよい。例えば、融合タンパク質の結合親和度及び/又はその他生物学的特性をより改善させるためにアミノ酸配列に追加的な修飾を与えることができる。このような修飾は、例えば、アミノ酸配列残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む。このようなアミノ酸変異は、アミノ酸側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づいてなされる。アミノ酸側鎖置換体の大きさ、形状及び種類に対する分析によって、アルギニン、リジン及びヒスチジンはいずれも陽電荷を帯びている残基であり;アラニン、グリシン及びセリンは類似の大きさを有し;フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは類似の形状を有する、ということが分かる。したがって、このような考慮事項に基づいて、アルギニン、リジン及びヒスチジン;アラニン、グリシン及びセリン;そしてフェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは、生物学的に機能均等物であるといえる。
【0086】
上述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すると、本発明の融合タンパク質又はこれをコードする核酸分子は、配列番号に記載された配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むものと解釈される。上記の実質的な同一性は、上述した本発明の配列と任意の他の配列を極力対応するようにアラインし、当業界に一般に使用されるアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合に、少なくとも90%の相同性、最も好ましくは少なくとも95%の相同性、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアラインメント方法は、当業界に公知されている。NCBI BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)はNCBIなどから接近可能であり、インターネット上でblastp、blasm、blastx、tblastn及びtblastxのような配列分析プログラムと連動して利用することができる。BLSATは、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で接続可能である。このプログラムを用いて配列相同性比較方法は、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.htmlから確認できる。
【0087】
これに基づいて、本発明の融合タンパク質は、明細書に記載の明示された配列又は全体と比較して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の相同性を有してよい。このような相同性は、当業界に公知された方法による配列比較及び/又は整列によって決定されてよい。例えば、配列比較アルゴリズム(すなわち、BLAST又はBLAST 2.0)、手動整列、肉眼検査を用いて本発明の核酸又はタンパク質のパーセント配列相同性を決定することができる。
【0088】
前記DLL4結合タンパク質ドメインは、DLL4に結合するタンパク質ドメインで、Notch1のDLL4結合部位を含む。例えば、ヒトNotch1のEGF様ドメインを含んでよく、配列番号18の配列を含んでよい。
【0089】
前記DLL4結合タンパク質ドメインは、VEGFR2/KDRに結合する抗体の末端、例えば軽鎖末端、具体的には軽鎖N末端に結合してよい。
【0090】
韓国登録特許第10-1569083号にVEGFR2/KDR及びDLL4結合タンパク質ドメインを含むDIG-KN物質が記載されているが、本発明は、VEGFR2/KDRに特異的に結合するヒト抗体の重鎖FR(framework regoin)をVH1からVH3に置換、及び軽鎖FR(framework regoin)をVL1からVK1に置換し、突然変異を誘導させて抗原に対する親和度を増加させた抗VEGFR2(KDR)抗体を含み、抗VEGFR2(KDR)抗体の軽鎖N末端にDLL4結合タンパク質ドメイン(Notch1EGF様ドメイン)が結合するので、差異がある。
【0091】
前記VEGFR2/KDRに結合する抗体又はその抗原結合断片及びDLL4結合タンパク質ドメインは、リンカーを介して連結されてよい。前記リンカーは、ペプチドリンカーであってよく、約10-25aa長を有してよい。例えば、グリシン及び/又はセリンのような親水性アミノ酸が含まれてよいが、これに限定されるものではない。
【0092】
具体的には、前記リンカーは、例えば、(GS)n、(GGS)n、(GSGGS)n又は(GnS)m(n、mはそれぞれ、1~10)を含んでよいが、前記リンカーは、例えば(GnS)m(n、mはそれぞれ、1~10)であってよい。
【0093】
本発明は、他の観点で、前記融合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0094】
前記核酸は、重鎖可変領域をコードする配列番号7の配列を含んでよい。前記核酸は、軽鎖可変領域をコードする配列番号9の配列を含んでよい。前記核酸は、DLL4結合タンパク質ドメインをコードする配列番号17の配列を含んでよい。
【0095】
本発明の融合タンパク質をコードする核酸を分離して組替え的に生産することができる。核酸を分離し、これを複製可能なベクター内に挿入してさらにクローニングしたり(DNAの増幅)又はさらに発現させる。これに基づいて、本発明は、さらに他の観点において前記核酸を含むベクターに関する。
【0096】
「核酸」は、DNA(gDNA及びcDNA)及びRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸において基本構成単位であるヌクレオチドは、自然のヌクレオチドの他、糖又は塩基部位が修飾された類似体(analogue)も含む。本発明の融合タンパク質をコードする核酸の配列は修飾されてよい。前記修飾は、ヌクレオチドの追加、欠失、又は非保存的置換又は保存的置換を含む。
【0097】
DNAは通常の過程を用いて(例えば、抗体の重鎖と軽鎖を暗号化するDNAと特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に分離又は合成する。多くのベクターが入手可能である。ベクター成分には一般に、次のいずれか1つ以上が含まれるが、それに限定されない:信号配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、増強因子要素、プロモーター、及び転写終結配列。
【0098】
本明細書で使われる用語「ベクター」は、宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための手段であり、プラスミドベクター;コスミドベクター;バクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びアデノ関連ウイルスベクターのようなウイルスベクター;などを含む。前記ベクターにおいて融合タンパク質をコードする核酸はプロモーターと作動的に連結されている。
【0099】
「作動的に連結」は、核酸発現調節配列(例えば、プロモーター、シグナル配列、又は転写調節因子結合位置のアレイ)と他の核酸配列との機能的な結合を意味し、これによって、前記調節配列は前記他の核酸配列の転写及び/又は解読を調節する。
【0100】
原核細胞を宿主とする場合には、転写を進行させ得る強力なプロモーター(例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、lppプロモーター、pLλプロモーター、pRλプロモーター、rac5プロモーター、ampプロモーター、recAプロモーター、SP6プロモーター、trpプロモーター、及びT7プロモーターなど)、解読の開始のためのリポソーム結合部位及び転写/解読終結配列を含むことが一般的である。また、例えば、真核細胞を宿主とする場合には、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオニンプロモーター、β-アクチンプロモーター、ヒトヘモグロビンプロモーター、及びヒト筋肉クレアチンプロモーター)、又は哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーターエプスタインバールウイルス(EBV)のプロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)のプロモーター)が用いられてよく、転写終結配列としてポリアデニル化配列を一般的に有する。
【0101】
場合によって、ベクターは、そのベクターから発現する融合タンパク質の精製を容易にするために他の配列と融合されてよい。融合される配列は、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(Pharmacia,USA)、マルトース結合タンパク質(NEB,USA)、FLAG(IBI,USA)、及び6x His(hexahistidine;Quiagen,USA)などがある。
【0102】
前記ベクターは、選択標識として当業界で通常利用される抗生剤耐性遺伝子を含み、例えば、アンピシリン、ゲンタマイシン、カベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性遺伝子がある。
【0103】
本発明は、さらに他の観点で、前記言及されたベクターで形質転換された細胞に関する。本発明の融合タンパク質を生成させるために使われた細胞は、原核生物、酵母又は高等真核生物の細胞であってよく、これに限定されるものではない。
【0104】
エシェリキアコリ(Escherichia coli)、バチルスサブチリス及びバチルスチューリンゲンシスのようなバチルス属菌株、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)(例えば、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida))、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、及びスタフィロコカス(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコカスカルノサス(Staphylocus carnosus))のような原核宿主細胞を利用できる。
【0105】
ただし、動物細胞に対する関心が最も大きく、有用な宿主細胞株の例は、COS-7、BHK、CHO、CHOK1、DXB-11、DG-44、CHO/-DHFR、CV1、COS-7、HEK293、BHK、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL3A、W138、Hep G2、SK-Hep、MMT、TRI、MRC5、FS4、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6、SP2/0、NS-0、U20S、又はHT1080であってよいが、これに限定されるものではない。
【0106】
本発明は、さらに他の観点で、(a)前記細胞を培養する段階;及び、(b)前記培養された細胞から融合タンパク質を回収する段階を含む、前記融合タンパク質の製造方法に関する。
【0107】
前記細胞は、各種培地で培養できる。市販のいかなる培地も培養培地として使用可能である。当業者に公知されているその他全ての必須補充物が適当な濃度で含まれてよい。培養条件、例えば、温度、pHなどが発現のために選別された宿主細胞と共に既に用いられており、これは当業者に明らかであろう。
【0108】
前記融合タンパク質の回収は、例えば、遠心分離又は限外濾過によって不純物を除去し、その結果物を、例えば親和クロマトグラフィーなどを用いて精製できる。追加のその他精製技術、例えば、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーなどが用いられてよい。
【0109】
前記融合タンパク質中に含まれた抗体は、IgG又は可変領域を含む断片、すなわちScFv、Fabであってよい。また、重鎖の可変領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4であってよい。
【0110】
本発明は、さらに他の観点で、前記融合タンパク質を有効成分として含む血管新生疾患の予防又は治療用の組成物に関する。
【0111】
前記血管新生は、以前に存在する血管から新しい血管の形成又は成長を意味し、「血管新生関連疾患(angiogenesis-related disease)」は、血管新生の発生又は進行と関連した疾患を意味する。前記融合タンパク質で治療可能であれば、その疾病は制限なく血管新生関連疾患の範囲に含まれ得る。血管新生関連疾患の例には、癌、転移(metastasis)、糖尿網膜病症(diabetic retinopathy)、未熟児網膜病症(retinopathy of prematurity)、角膜移植拒否(corneal graft rejection)、黄斑変性(macular degeneration)、血管新生性緑内障(neovascular glaucoma)、全身紅色症(erythrosis)、増殖性網膜症(proliferative retinopathy)、乾癬(psoriasis)、血友病性股関節炎(hemophilic arthritis)、動脈硬化性プラーク(atherosclerotic plaques)の毛細血管形成、ケロイド(keloid)、傷顆粒化(wound granulation)、血管癒着(vascular adhesion)、リウマチ関節炎(rheumatoid arthritis)、退行性関節炎(osteoarthritis)、自己免疫疾患(autoimmune diseases)、クローン病(Crohn’s disease)、レステノシス(restenosis)、粥状動脈硬化症(atherosclerosis)、腸狭窄(intestinal adhesions)、猫ひっかき病(cat scratch disease)、潰瘍(ulcer)、肝硬変症(liver cirrhosis)、腎臓炎(nephritis)、糖尿病性腎臓疾患(diabetic nephropathy)、糖尿病性足部潰瘍(diabetic Foot Ulcers)、慢性腎不全(chronic kidney failure)、真性糖尿病(diabetes mellitus)、炎症疾患(inflammatory diseases)、特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis)、敗血症(sepsis)、急性呼吸困難症候群(Acute respiratory distress syndrome)、及び神経変性疾患(neurodegenerative diseases)を含むが、これに限定されるものではない。
【0112】
また、前記癌は、食道癌(esophageal cancer)、胃癌(stomach cancer)、大腸癌(large intestine cancer)、直腸癌(rectal cancer)、口腔癌(oral cancer)、咽頭癌(pharynx cancer)、喉頭癌(larynx cancer)、肺癌(lung cancer)、結腸癌(colon cancer)、乳癌(breast cancer)、子宮頸癌(uterine cervical cancer)、子宮内膜癌(endometrial cancer)、卵巣癌(ovarian cancer)、前立腺癌(prostate cancer)、精巣癌(testis cancer)、膀胱癌(bladder cancer)、腎臓癌(renal cancer)、肝癌(liver cancer)、膵癌(pancreatic cancer)、骨癌(bone cancer)、結合組織癌(connective tissue cancer)、皮膚癌(skin cancer)、脳腫瘍(brain cancer)、甲状腺癌(thyroid cancer)、白血病(leukemia)、ホジキンリンパ腫(Hodgkin’s lymphoma)、リンパ腫(lymphoma)、及び多発性骨髄血液癌(multiple myeloid blood cancer)からなる群から選ばれるが、これに限定されるものではない。
【0113】
ここで使われる用語「予防(prevention or prophylaxis)」は、本発明の融合タンパク質を投与し、関心疾患の開始を抑制又は遅延させる全ての措置を指す。用語「治療(treatment or therapy)」は、本発明の融合タンパク質を投与し、関心疾患の症状を改善又は好転させる全ての措置を指す。
【0114】
本発明は、例えば、(a)本発明に係る融合タンパク質の薬剤学的有効量;及び、(b)薬剤学的に許容される担体を含む、腫瘍又は癌の予防又は治療用の薬剤学的組成物であってよい。本発明は、また、前記融合タンパク質を腫瘍又は癌患者に投与する段階を含む、腫瘍又は癌の予防又は治療方法であってよい。本発明は、さらに、前記融合タンパク質の機序妨害用途及びこれによる腫瘍又は癌の予防又は治療用途であってよい。
【0115】
治療用として適切な腫瘍又は癌の非制限的な例は、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎臓癌(例えば、透明細胞癌腫)、前立腺癌(例えば、ホルモン不応前立腺癌腫)、膵腺癌腫、乳癌、結腸癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、食道癌、頭頸部扁平細胞癌腫、肝癌、卵巣癌、子宮頸癌、甲状腺癌、膠芽細胞腫、神経膠芽腫、白血病、リンパ腫、及びその他新生物癌腫を含む。さらに、本発明は、融合タンパク質を使用して治療できる不応又は再発の癌を含む。
【0116】
本発明は、例えば、前記融合タンパク質の治療的有効量を、血管新生阻害を必要とする患者に投与する段階を含む、血管新生疾患の治療方法が提供される。前記血管新生疾患の治療は、前記投与段階以前に、血管新生阻害を必要とする患者を確認する段階をさらに含んでよい。さらに他の例において、前記融合タンパク質の治療的有効量を患者に投与する段階を含む、血管新生疾患の予防及び/又は治療方法が提供される。前記予防及び/又は治療方法は、前記投与段階以前に、血管新生疾患の予防及び/又は治療を必要とする患者を確認する段階をさらに含んでよい。
【0117】
前記薬学組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでよく、前記担体は、薬物の製剤化に一般に使用されるものとして、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどからなる群から選ばれる1種以上であってよいが、これに限定されるものではない。前記薬学組成物は、また、薬学組成物の製造に一般に使用される希釈剤、賦形剤、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤からなる群から選ばれる1種以上をさらに含んでよい。
【0118】
前記薬学組成物、又は前記血管新生疾患の有効量は、経口又は非経口で投与できる。非経口投与である場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、皮内投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与及び直腸内投与などで投与できる。経口投与時に、タンパク質又はペプチドは消化されるため、経口用組成物は活性薬剤をコーティングするなどして胃での分解から保護されるように剤形化してよい。また、前記組成物は、活性物質を標的細胞に移動させ得る任意の装置によって投与されてよい。
【0119】
本発明の組成物は、薬学的に有効な量で投与される。ここで使われる用語「薬学的に有効な量(pharmaceutically effective amount)」は、全ての医学的治療に適用可能な合理的な利益と危険の比率(benefit/risk ratio)として十分な疾患治療用薬学的組成物の量を指す。有効量は、治療すべき疾患の重症度、患者の年齢及び性別、疾患の種類、薬剤の活性度、薬剤に対する敏感度、投与時間、投与経路、分泌速度、治療期間、薬剤の共投与及び本分野に周知の他のパラメータを含む様々な要因によって異なる。本発明の組成物は、単独で又は他の治療法との組合で投与されてよい。このような場合に、従来の治療法と一緒に順に又は同時に投与されてよい。また、前記組成物は、1回用量で又は多回用量に分けて投与されてよい。これらの要因を完全に考慮するとき、副作用無しで最大の効果を得るのに十分な最小量を投与することが重要であり、この服量は、分野の専門家によって容易に決定され得る。本発明の薬学的組成物の服量は特に限定されないが、患者の健康状態及び体重、疾患の重症度、薬の種類、投与経路及び投与時間を含む様々な要因によって変更される。組成物は1日に1回用量で又は多回用量でラット、ネズミ、家畜、ヒトなどを含む哺乳類に、典型的に許容された経路、例えば、経口で、直腸で、静脈で(intravenously)、皮下で(subcutaneously)、子宮内に(intrauterinely)又は脳血管内に(intracerebrovascularly)投与されてよい。
【0120】
前記薬学組成物中の融合タンパク質の含有量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与間隔、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々に処方されてよい。例えば、前記融合タンパク質の1日投与量は0.001~1000mg/kg、具体的には0.01~100mg/kg、より具体的には0.1~50mg/kg、さらに具体的には0.1~20mg/kgの範囲であってよいが、これに限定されるものではない。前記1日投与量は単位用量の形態で一つの製剤として製剤化されたり、適切に分量して製剤化されたり、又は多用量容器内に内入させて製造されてよい。
【0121】
前記薬学組成物は、他の血管新生阻害関連疾病の治療剤のような他の薬物と併用投与が可能であり、その投与量、投与方法及び他の薬物の種類は、患者の状態によって適切に処方されてよい。
【0122】
前記薬学的組成物は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液、シロップ剤又は乳化液の形態であるか、エキス剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤などの形態で剤形化でき、剤形化のために分散剤又は安定化剤をさらに含んでよい。
【0123】
特に、前記融合タンパク質を含む薬学組成物は、融合タンパク質を含むので、免疫リポソームとして剤形化できる。融合タンパク質を含むリポソームは、当業界に広く知られた方法によって製造されてよい。前記免疫リポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びポリエチレングリコール-誘導体化されたホスファチジルエタノールアミンを含む脂質組成物であり、逆相蒸発法によって製造されてよい(韓国公開特許10-2015-0089329号)。例えば、抗体のFab’断片は、ジスルフィド交替反応によってリポソームに接合されてよい。
【0124】
また、本発明の融合タンパク質は、他の製剤、抗体又は生物学的活性剤、又は様々な目的のための物質と組み合わせて使用されてよい。本発明は、このような観点で、前記融合タンパク質を含む、他の血管新生疾患治療剤との併用投与用組成物に関する。
【0125】
前記他の血管新生疾患治療剤は、抗血管新生薬物、消炎薬物及び/又は抗癌薬物を挙げることができる。これにより、互いの抵抗性を克服させ、効能を増進させることができる。
【0126】
本発明に係る組成物において、他の血管新生疾患治療剤と併用投与される場合に、融合タンパク質と他の血管新生疾患治療剤は順次又は同時に投与されてよい。例えば、抗血管新生薬物、消炎薬物及び/又は抗癌薬物を対象体に投与した後、活性成分として融合タンパク質を含む組成物を前記対象体に投与するか、又は前記組成物を対象体に投与した後、抗血管新生薬物、消炎薬物及び/又は抗癌薬物を前記対象体に投与する。場合によって、前記組成物を抗血管新生薬物、消炎薬物及び/又は抗癌薬物と同時に対象体に投与してよい。
【0127】
【0128】
実施例
【0129】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものと解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0130】
【0131】
実施例1.CDRグラフト(移植)
【0132】
6A6のCDR配列をKabatナンバリング、IMGTプログラムを用いて確認し、これをヒト生殖器系VH3/VK1に移植するクローニングを行った。図1に重鎖CDR移植配列を表記し、図2に軽鎖CDR移植配列を表記した。
【0133】
【0134】
実施例2.親和度増進のための変異体作製及び選別
【0135】
CDRグラフトされた抗体の親和度増進のための最適化を行った。軽鎖と重鎖のCDR3の元来DNA配列を70%保存しつつランダム化(randomize)させるソフトランダム化(soft-randomization)法を活用して、軽鎖CDR3と重鎖CDR3に無作為変異を導入したプライマーを作製した。これを使用したPCRを用いて変異が導入された軽鎖可変領域、重鎖可変領域コーディングDNA断片を確保した。このDNA断片をそれぞれscFvファージ、ファージミドの軽鎖可変領域及びscFvファージ、ファージミドの重鎖可変領域と置換し、軽鎖CDR3変異体scFvファージライブラリーと重鎖CDR3変異体scFvファージDNAライブラリーをそれぞれ作製した。
【0136】
変異体scFvファージDNAライブラリーをフェノール-クロロホルム精製後に、電気穿孔法を用いて大腸菌株XL-1 Blueに形質転換した。形質転換効率分析及びDNA配列分析によって多様性が確保されたことを確認した後、500ml規模で培養してファージ発現を誘導し、PEG-沈殿法を用いて軽鎖と重鎖のCDR3変異体scFvファージライブラリー作製した。
【0137】
各変異体scFvファージライブラリーを用いてバイオパンニングを行った。96ウェル免疫プレートに抗原(KDR1~3 domian-Fc)を2μg/mlで100μlずつウェルに入れ、4℃で一晩置いた(overnight)。翌日、抗原コーティングプレート(coating plate)はPBST(0.1% tween20)で3回洗浄した後、2% BSA遮断バッファー(blocking buffer)200μlを入れ、室温で2時間反応させた。2x YT-TET(tetracycline10μg/ml)成長培地(growth medium)2mlにXL1-Blueストック(stock)50μlを入れ、37℃、200rpmで2時間程度育てた後、13mlをさらに添加し、OD600が0.5になるまで育てた。遮断(blocking)2時間後に1X PBST(0.1% tween20)で3回洗浄した。洗浄した各ウェルに変異体ライブラリーを4% BSAと同じ量で混ぜた後、200μlずつ添加して室温で30分間ロッキング(rocking)した後、2時間を反応させた。ファージライブラリー反応が終わると、上澄液は捨て、0.1% PBSTで5回洗浄し、PBSで5回洗浄した。各ウェルに100mM TEA(trimethylamine)100μlを入れた後、室温で10分間振盪した。10分経過すると各ウェルに1Mトリス(pH 7.5)50μlを入れて混ぜた。上澄液(supernatant)はOD600が0.5になったXL1-blue 10mlに入れ、37℃で30分間感染(infection)させた。感染が終わると、100μlはアウトプット力価(output titer)として使用し、残りは6,000rpmで10分間遠心分離した。上澄液は捨て、沈殿物はラージスクエアプレート(large square plate:CM 34μg/ml+1%グルコース)にスプレッド(spreading)し、37℃で一晩培養(overningt incubation)した。アウトプット力価として残した100μlは、1/10、1/100、1/1000に希釈(dilution)してCMプレートにスプレッドし、37℃で一晩おいた。翌日、スクエアプレートに育ったコロニー(colony)は2x YT培地50mlを入れた後、ループ(loop)を使ってかき集めた後、6000rpmで10分遠心分離し、上澄液は捨て、沈殿液(precipitate)に対して1次パンニングストック(panning stock)を作り、2x YT培養培地(growth media:CM34μg/ml+1%グルコース)100mlを500ml三角フラスコに入れた後、OD600が0.2となるように細胞を入れ、200rpm、37℃でOD600が0.5になるまで育てた。OD600値が0.5になるまで細胞を培養した後、ヘルパーファージ(helper phage:M13KO7変異体)を細胞の20倍になるように入れた。ヘルパーファージを入れて37℃、30分感染(infection)させた後、6000rpm、10分間遠心分離した。上澄液を捨て、細胞は2xYT培地(CM34μg/ml+Kan.70μg/ml+1mM IPTG+5mM MgCl)100mlに交替して入れた後、200rpm、30℃で一晩置いた。翌日、育った細胞は、7000rpm、10分間遠心分離し、同じ方法でもう1回遠心分離した。集められた上澄液は、上澄液の1/5(v/v)20% PEG/2.5m NaClを入れ、アイス(ice)で1時間沈殿させた。沈殿させた後、9000rpm、1時間遠心分離した。上澄液は捨て、PBS 5mlで沈殿液(precipitate)を解いた後、0.45μmフィルター(filter)に濾過した後に4℃に保管し、これを次回のパンニング(panning)過程で使用した。この過程を3~4回反復し、抗原に結合する抗体をELISAで確認した。
【0138】
その後、選別過程では、結合を保持する能力の定量的評価指標としてscFvの解離速度定数Kdisを測定した。
【0139】
【0140】
実施例3.抗原に対する高親和力を有する抗体選別(Off-rate screening)
【0141】
選別された抗体の抗原に対する結合力をOctet(Fortebio)を用いて測定した。そのために、KDR 1~3ドメインをバイオセンサー(biosensor)に固定(immobilize)した後、scFv形態で発現した候補抗体を入れて結合させた後、解離速度定数を測定した。選別された最適化クローン5種に対する解離速度定数測定結果[表1]とアミノ酸配列[表2及び表3]を示した。
【0142】
[表1]抗原に特異的に結合する抗体の解離速度定数
【0143】
【0144】
実施例4.融合タンパク質作製
【0145】
融合タンパク質の作製のために選別したscFvファージ抗体のうち、最も解離定数の低いD4をIgG形態に転換した。IgG形態転換は、分子生物学的技法を用いて行った。選別したE.Coliクローンからファージミド(Phagemid)を抽出し、PCR技法を用いて可変領域を増幅した。増幅した重鎖可変領域を、重鎖定常領域を含む発現ベクター(Invivogen,pfusess-hchg1)に挿入し、増幅した軽鎖可変領域は軽鎖定常領域を含む発現ベクター(Invivogen,pfuse2ss-hclk)に挿入し、IgG形態のDNAクローニングを完了し、IgG1形態に転換した。上の転換された軽鎖定常領域のN末端にリンカー(G4S配列)を含むDLL4結合ドメイン(Notch1 EGF様ドメイン)を遺伝子合成して融合した。作製された抗体の塩基配列は表2及び表3に示した。
【0146】
[表2]選別された抗体のCDR配列
【0147】
[表3]選別された抗体の配列
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
実施例5.融合タンパク質発現
【0156】
IgG形態の一時発現は、Expi293F発現システムキット(Expi293F expression system kit:Thermo Fisher Scientific,US)を使用した。キットに含まれたExpi293細胞を専用培地を使用して37℃、5%CO環境下で125rpmオビタルシェーカー上で浮遊培養した。3日ごとに3×10cells/mlとなるように継代培養したし、発現ベクター導入時には3×10cells/mlとなるように細胞数を調整して使用した。遺伝子導入は、専用試薬であるExpifectamineを使用したし、細胞懸濁液1ml当たりに発現ベクターDNA 1μgとExpifectamine 2.7μlを含有するLipid-DNA複合体を作製し、細胞懸濁液に添加したし、導入16~18時間後にエンハンサー(Enhancer)1/2を添加して発現を誘導した。その後、同一条件で3~4日間培養後に遠心分離してIgG含有上澄液を取った。
【0157】
【0158】
実施例6.融合タンパク質の精製
【0159】
得られた上澄液をProtein Aカラム(GE Healthcare)に注入し、親和力クロマトグラフィーによってIgGを精製した。カラムを20mM Tris-HCl、50mM NaCl、5mM EDTA(pH 7.0)で平衡化させた後、上澄液を注入し、50mM Tris-HCl、500mM NaCl、5mM EDTA、0.2%ポリソルベート20(pH 7.0)溶液で洗浄した後、50mM NaCl、0.1Mグリシン-HCl(pH 3.5)で溶出した後、1M Trisで中和した。溶出されたタンパク質は、MWCO 10,000 spectra/por透析膜(Spectrum Labs,US)を使用した透析過程によってPBSで溶媒を交換した。その後、Vivaspin(Satorius,DE)を用いて必要濃度に濃縮し、分周後に-80℃で保管した。
【0160】
【0161】
実施例7.融合タンパク質の結合特異性分析
【0162】
選別された融合タンパク質の抗原に対する結合力をSPR(Biacore T200,Cytiva)を用いて測定した。融合タンパク質をキャプチャー(capture)し、抗原タンパク質を分析物(analyte)として使用して分析した。タンパク質Aチップ(Protein A chip)を用いて、メーカーの指示(manufacturer’s instruction)にしたがって表面に融合タンパク質を固定した。前記センサーチップ(senser chip)に融合タンパク質を5ug/mlの濃度でPBS-Tランニングバッファー(running buffer)に希釈し、10ul/minの流速で注入し、約200RUに到達するようにする。抗原を濃度別にPBS-Tランニングバッファーに希釈し、30ul/minの流速で4分間注入し、解離時間は10分として)分析した。毎サイクルごとに結合している融合タンパク質を除去するために 再生溶液(regeneration solution)(10mMグリシン-HCl、pH 1.5)を30ul/minの流速で1分間注入した。実験結果はBIA評価ソフトウェアバージョン1.0の1:1結合モデル(binding model)を用いて算出した。表4に結合力を示し、図3A及び図3BにSPRセンサグラム示した。
【0163】
[表4]抗原に特異的に結合する融合タンパク質の結合力
【0164】
【0165】
実施例8.抗原に対する融合タンパク質の同時結合能力確認
【0166】
選別された融合タンパク質が2種の抗原に対して同時結合可能であることを、SPR(Biacore T200,Cytiva)を用いて確認した。タンパク質Aチップ(Protein A chip)を用いて、メーカーの指示(manufacturer’s instruction)にしたがって表面に融合タンパク質を固定した。上のセンサーチップ(senser chip)に融合タンパク質を5ug/mlの濃度でPBS-Tランニングバッファーに希釈し、約200RUに到達するようにする。まず、PBS-Tランニングバッファーに希釈された100nM hKDR-ECDを30ul/minの流速で注入して120秒間結合させた後、PBS-Tランニングバッファーを使って60秒、30ul/minの流速で流す。再生(Regeneration)無しでPBS-Tランニングバッファーに希釈された200nM hDLL4を30ul/minの流速で注入して120秒間結合させた後、PBS-Tランニングバッファーを用いて60秒、30ul/minの流速で流す。両抗原の同時結合の結果は図4に示した。
【0167】
【0168】
実施例9.融合タンパク質のHUVECsの増殖能確認
【0169】
作製された融合タンパク質の血管内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cell,HUVEC)の増殖能変化を比較するために、融合タンパク質及び比較対照群抗体(6A6、6A6xDLL4、D4、Minod-Fc)を血管内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cell,HUVEC)に処理した。6A6xDLL4は、表5に記載された通りである。Minod-Fcは、配列番号18のNotch1とFcを融合させたタンパク質である。
【0170】
[表5]
【0171】
簡略に要約すれば、HUVEC(LONZA,Cat No.C2519A)細胞は、VascuLife medium complete kit(Lifeline cell technology,Cat No.#LCT-LL-0005)培地を使用して2%ゼラチンがコートされたプレートで培養した。培地は、37℃、5% CO条件で培養(incubation)した。分析(assay)に使用したHUVECsは、継代(passage)10以内の細胞を使用したし、0.5%熱不活性された(heat inactivated)FBSが含まれたM199培地(Gibco,Cat No.#11043-023)で96ウェルプレートに1X10cells/wellを接種した。各抗体を250nM、50nM、10nM、2nMに希釈し、分析プレート(assay assay plate)の当該ウェルに処理した後、30分間培養した。その後、VEGF165(R&D systems,Cat No.293-VE)をウェルごとに100ng/mLの濃度で処理した。VEGFと薬物を処理していない陰性対照群(VEGF-/Ab-,)と、VEGFのみを処理した陽性対照群(VEGF+/Ab-)を含めて3日間37℃ CO培養器(incubator)で培養した。生存度(Viability)測定は、CellTier Glo-Luminescent Cell viability Assay kit(Promega,Cat No.G7571)を用いて生きている細胞内のATPを検出して測定した。
【0172】
試験の結果、6A6比較群及び6A6バックボーン(backbone)を有する6A6xDLL4比較群に比べて、最適化抗体であるD4比較群、及びD4バックボーンを有するD4xDLL4試験群において、VEGF165に媒介されるHUVEC増殖能をより大きく阻害したし、これらはいずれも濃度依存的な様相を示した。この結果を図5に示した。
【0173】
【0174】
実施例10.融合タンパク質のVEGFR-2リン酸化抑制変化
【0175】
融合タンパク質のKDR(VEGFR-2)脱リン酸化能力を確認するために、融合タンパク質及び対照群抗体(6A6、6A6xDLL4、D4、Minod-Fc)をウェスタンブロット分析(Western blot analysis)によって比較した。
【0176】
要するに、HUVEC(LONZA,Cat No.C2519A)細胞培養は、VascuLife medium complete kit(Lifeline cell technology,Cat No.#LCT-LL-0005)培地を用いて、6ウェルプレートに8X10cells/wellの濃度で接種したし、37℃、5% CO条件で一日培養した。HUVEC細胞に各抗体を125nM、25nMで30分間処理した後、VEGF165(R&D,Cat No.293-VE)を各ウェルごとに50ng/mLの濃度で10分間処理した。VEGFと薬物を処理していない陰性対照群(VEGF-/Ab-)とVEGFのみを処理した陽性対照群(VEGF+/Ab-)を含めた。薬物を処理したHUVECは、リン酸緩衝液(Phosphate-buffered saline)で洗浄後に、溶解バッファー(lysis buffer)(Thermo scientific,RIPAバッファー及びホスファターゼ抑制剤)を入れ、氷上で10分間細胞溶解(cell lysis)させた。溶解した(lysed)細胞は、細胞スクレイパー(cell scraper)を用いてかき集めた後、13,000rpm、4℃で10分間遠心分離して上澄液のみを得た。得られた上澄液は、BCAタンパク質定量法を用いて総タンパク質(total protein)を定量した後、4~15% grade SDS-PAGE gelに20μgずつローディング(loading)して電気泳動した。電気泳動が終わった後、ウェスタンブロット分析のためにニトロセルロース膜(Bio-rad,Trans-Blot Turbo Transfer System)にトランスファーした。ニトロセルロース膜ブロットに遮断バッファー[5%スキムミルク/TBS-T(0.1% Tween20,Tris-based saline)]を加え、常温で1時間の間ブロッキングした。TBS-Tバッファーで洗浄した後、1次抗体(p-VERFR2(Y1175)、cell signaling)を1:1000に希釈し、常温で1時間反応させ、洗浄した。2次抗体(anti-rabbit-HRP)は1:5000に希釈し、常温で1時間反応させた。TBS-Tバッファーで洗浄した後、ECL(Enhanced chemiluminescence)溶液(Thermo Fisher Scientific,Cat No.34096)を処理して反応させた後、Luminescent Image Analyzer(GE Healthcare,Amersham Imager 680)を用いてイメージを得た。
【0177】
試験の結果、6A6比較群及び6A6xDLL4比較群においてVEGF165に媒介されるVEGFR2リン酸化が濃度依存的な様相で部分的に阻害(partial inhibition)することを示したのに対し、最適化抗体であるD4比較群とD4xDLL4を同量処理した試験群では、VEGFR2がほぼ完全に(almost completely)脱リン酸化されることを示した。この結果は図6に示した。
【0178】
【0179】
実施例11.FACSを用いたKDR(VEGFR-2)結合能確認
【0180】
融合タンパク質のHUVECに対する結合活性を調べるために、融合タンパク質及び対照群抗体(6A6、6A6xDLL4、D4、Minod-Fc)を用いてFACS分席を行った。
【0181】
要するに、HUVEC(LONZA,Cat No.C2519A)細胞は、VascuLife medium complete kit(Lifeline cell technology,Cat No.#LCT-LL-0005)培地と2%ゼラチン(gelatin)がコート(coating)されたプレート(plate)を用いて、37℃、5% CO条件で培養した。細胞をFACSバッファー(0.5% FBS, PBS中0.05%アジ化ナトリウム)に2×10cells/mlの濃度で調製し、FACSチューブに50uLずつ分注した。5nM濃度の各抗体を100ulずつFACSチューブに混ぜた後、4℃で30分反応させた。反応が終わった後、各チューブにFACSバッファーを2mLずつ添加し、1500rpm、3分間遠心分離した。上澄液は除去し、細胞を懸濁した(re-suspension)後、抗ヒトIgG-PE抗体(1:200,Bethyl,#A80-248PE)を100ulずつ入れ、4℃で20分間反応させた。各FACSチューブにFACSバッファーを2mLずつ添加した後、1500rpm、3分間遠心分離した。分離された上澄液を除去し、FACSバッファーを200ulずつ入れて懸濁した後、FACS(Beckton Dickinson,Lyric)を用いて結合活性を分析した。
【0182】
試験の結果、Minod-Fc以外は、VEGFR2をターゲットとする6A6と6A6xDLL4、D4、D4xDLL4がいずれもHUVECに結合することを確認した。また、D4とD4xDLL4が6A6と6A6xDLL4比べて結合活性が改善されていることが見られた。この結果は図7に示した。
【0183】
【0184】
実施例12.細胞表面に発現するhDLL4と抗体の結合能確認
【0185】
細胞表面にDLL4が発現する細胞を作製するために、HEK293細胞にpcDNA-hDLL4を形質転換させた。
【0186】
要するに、GeneArtにおいて合成されたpcDNA-hDLL4ベクターをHEK293細胞にリポフェクタミンTM2000(Invitrogen #1168-019,USA)を用いて形質注入(transfection)したし、ネオマイシン(Gibco #10131、50mg/mL)を添加して選別した後、育っている全ての細胞を集めてプール状態で培養した。その後、限外希釈(Limiting dilution)方法を用いて培養し、単一コロニー23種を得たし、単一コロニーのうち、hDLL4をよく発現させる(highly overexpressed)細胞株を1種選択して実験を行った。選別された細胞をFACSバッファー(0.5% FBS、 PBS中0.05%アジ化ナトリウム)に2×10cells/mLの濃度で調製し、FACSチューブに50uLずつ分注した。5nM濃度の融合タンパク質及び対照群抗体(6A6、6A6xDLL4、D4、D4xDLL4、Minod-Fc)を、細胞が入っているFACSチューブに100uLずつ入れ、4℃で30分反応させた。反応が終わった後、各チューブにFACSバッファーを2mLずつ添加した後、1500rpm、3分間遠心分離する。上澄液を除去し、細胞をよく懸濁した後、抗ヒトIgG-PE抗体(1:200,BioLegend,#A80-248PE)を100ulずつ入れ、4℃で20分反応させた。反応が終わった後、各FACSチューブにFACSバッファーを2mLずつ添加した後、1500rpm、3分間遠心分離した。分離された上澄液を除去し、FACSバッファーを200ulずつ入れて懸濁した後、FACS(Beckton Dickinson,Lyric)を用いて結合活性を分析した。
【0187】
試験の結果、DLL4をターゲットとするMinodドメインを含んでいるMinod-Fc、6A6xDLL4及びD4xDLL4のみが、DLL-4が発現しているHEK293(DLL4-overexpressed HEK293)細胞に結合したし、Minod-Fc単独よりは、融合タンパク質6A6xDLL4、D4xDLL4でよく結合することが見られた。6A6とD4は、DLL-4が発現しているHEK293に結合しなかった。この結果は図8に示した。
【0188】
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明は、VEGFR2/KDR、DLL4を同時に標的な融合タンパク質であって、既存のVEGFR2/KDRを標的とする抗体に比べて親和度がより向上した抗体を含むことにより、腫瘍の治療において既存の治療剤に比べてより効能のよい併用治療及び単独治療法を提供することができる。VEGFR2/KDRへの向上した結合力を示し、目的とする癌/腫瘍又は血管新生阻害に関連した疾病の予防又は治療に有用に使用可能であり、Notch1によるDLL4の活性を同時に阻害することによって、単独処理に比べて優れた新生血管阻害能力を有する。
【0190】
【0191】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述してきたが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は好ましい実施態様に過ぎず、これによって本発明の範囲が限定される点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付する請求項とそれらの等価物によって定義されるといえよう。
【0192】
配列目録フリーテキスト
【0193】
電子ファイルとして添付
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2025503728000001.xml
【国際調査報告】