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特表2025-503749波長安定化狭線幅モードロックピコ秒レーザシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】波長安定化狭線幅モードロックピコ秒レーザシステム
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20250128BHJP
   H01S 3/1118 20230101ALI20250128BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20250128BHJP
   H01S 3/16 20060101ALI20250128BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
H01S3/067
H01S3/1118
H01S3/10 D
H01S3/16
H01S3/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542410
(86)(22)【出願日】2023-01-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2023050859
(87)【国際公開番号】W WO2023139024
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】22152115.6
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506179491
【氏名又は名称】エヌケイティー フォトニクス アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】NKT PHOTONICS A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン、トマス ベスタガード
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AE03
5F172AF01
5F172AF02
5F172AF03
5F172AF04
5F172AF05
5F172AF06
5F172AM08
5F172DD03
5F172NN09
5F172NN14
5F172NN17
5F172NP04
5F172NP12
5F172NQ24
5F172NQ25
5F172NQ34
5F172NQ53
5F172NS05
5F172NS25
(57)【要約】
波長安定化狭線幅モードロックピコ秒レーザシステムは、増幅器と、モードロック素子と、狭帯域反射器として作用するファイバブラッググレーティングと、を備えるレーザキャビティを備える。前記システムは、前記ファイバブラッググレーティングが張力下で取り付けられているマウントと、前記張力を調節するための張力制御システムと、前記ファイバブラッググレーティングの現在の動作波長に関連する測定出力を提供するための測定デバイスと、を備える。マイクロコントローラまたは他のコントローラは、測定された波長に応答して前記張力制御システムを制御することによって、前記レーザを波長安定化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長安定化狭線幅モードロックピコ秒レーザシステムであって、
レーザキャビティであって、
増幅器と、
モードロック素子と、
狭帯域反射器として作用するファイバブラッググレーティングと、を備えるレーザキャビティと、
前記ファイバブラッググレーティングが張力下で取り付けられているマウントと、
前記ファイバブラッググレーティングの前記張力を調節するための張力制御システムと、
前記ファイバブラッググレーティングの現在の動作波長に関連する測定出力を提供するための測定デバイスと、
前記測定出力に応答して前記張力制御システムを制御することによって前記レーザを波長安定化するためのコントローラであって、前記測定デバイスから導出されたフィードバック信号を受信し、前記張力制御システムを電気的に制御するための応答制御信号を生成するように構成されている、コントローラと、を備え、
前記張力制御システムは、前記マウントの少なくとも一部の前記温度を制御し、前記マウントの前記少なくとも一部の熱膨張または熱収縮を引き起こし、それによって前記ファイバブラッググレーティングの前記張力を調節するための1つまたは複数の温度コントローラを備える、レーザシステム。
【請求項2】
前記張力制御システムは、圧電素子を備えない、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項3】
前記マウントの前記少なくとも一部は、アルミニウムを含む、請求項1または2に記載のレーザシステム。
【請求項4】
前記測定デバイスは、前記マウントの少なくとも一部の温度を測定するように構成されている温度センサを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のレーザシステム。
【請求項5】
前記測定デバイスは、前記レーザキャビティを使用して生成された放射の波長を測定するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のレーザシステム。
【請求項6】
前記レーザキャビティが100ピコ秒未満の持続時間を有するパルスを提供するように構成されているか、前記パルスが30ピコ秒と60ピコ秒との間の持続時間を有するか、またはその両方である、請求項1~5のいずれか一項に記載のレーザシステム。
【請求項7】
前記レーザのスペクトル線幅は200ピコメートル未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載のレーザシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記レーザの前記動作波長を、前記レーザの前記スペクトル線幅の5%以下以内など、前記レーザの前記スペクトル線幅の1%以下以内など、前記レーザの前記スペクトル線幅の10%以下以内に安定化させるように構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のレーザシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記レーザの前記動作波長を所望される動作波長の10ピコメートル以下以内に安定化させるように、または前記レーザの前記動作波長を所望される動作波長の5ピコメートル以下以内に安定化させるように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のレーザシステム。
【請求項10】
前記増幅器は、イッテルビウムファイバ増幅器を含み、前記レーザの前記動作波長は、1020nmと1080nmとの間である、請求項1~9のいずれか一項に記載のレーザシステム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の波長安定化レーザシステムと、
前記レーザシステムの前記動作波長を変換された波長へと変換するための周波数変換器と、を備える装置。
【請求項12】
前記周波数変換器は、1つまたは複数の非線形周波数変換結晶を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記周波数変換器は、前記波長安定化レーザシステムの前記動作波長を300nmよりも短い波長へと変換するように構成されている、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の前記波長安定化レーザシステムと、
前記波長安定化レーザシステムを使用して生成された放射を増幅させるように構成されている固体結晶と、を備えるレーザシステム。
【請求項15】
前記固体結晶はNd:YAG結晶を含む、請求項14に記載のレーザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長安定化狭線幅モードロックピコ秒レーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
モードロックは、レーザシステムにおいて極めて短いパルス(例えば、フェムト秒パルス)を生成するように使用されることが多い。そうしたパルスは、それらの極めて短いパルス持続時間をサポートするのに必要な固有の最小帯域幅を有し、パルスが短いほど、より大きい帯域幅が必要とされる。
【発明の概要】
【0003】
本明細書は、波長安定化狭線幅モードロックピコ秒レーザシステムを記載する。システムは、増幅器と、モードロック素子と、狭帯域反射器として作用するファイバブラッググレーティングとを備えるレーザキャビティを備える。システムは、ファイバブラッググレーティングが張力下で取り付けられているマウントと、張力を調節するための張力制御システムと、レーザシステムの波長安定化に使用するための測定出力を提供する測定デバイスとを備える。マイクロコントローラまたは他のコントローラは、測定出力に応答して張力制御システムを制御することによってレーザを波長安定化する。
【0004】
本明細書に記載される技術およびシステムは、フェムト秒の持続時間の可能性を犠牲にする一方で、レーザキャビティのファイバブラッググレーティング反射器の張力を制御することによってフィードバックループにおいて波長安定化され得る狭い線幅を有する比較的長い(≧1ps)パルスを生成するためにモードロックを採用する。この技術は、レーザの波長を所望の動作波長の例えば5または10ピコメートル以内に安定化させることができる非常に安定した狭い線幅の光源を提供することが分かっている。さらに、記載された技術はモードロックを使用し、したがってパルス出力を提供するので、記載された技術を使用しない他の狭い線幅のシステムと比較して、より高いピークパワーを生成するように使用することができる。このようにして、安定した狭い線幅において高いピークパワーが必要とされる用途に特に適したレーザを提供するために、複数の相互に関連する要因の間でバランスがとられる。そうした用途には、非線形結晶における周波数変換、特に、200ピコメートル程度のレーザ波長の変動が効率の損失をもたらし得る深紫外線への周波数変換が含まれる。
【0005】
測定出力は、ファイバブラッググレーティング(FBG)の現在の動作波長に関連してよい(例えば、測定出力は、FBGの現在の動作波長の尺度であってよい)。いくつかの実装では、測定出力は、レーザシステムの現在の動作波長の尺度であってよく、またはレーザシステムの現在の動作波長に関連してよい。
【0006】
FBGは、均一なグレーティング周期を備えてよい。すなわち、FBGはチャープされなくてよい。
FBGマウントは、アルミニウムなどの正の熱膨張材料から形成されてよく、測定デバイスは、マウントの少なくとも一部の温度を測定するように構成されている温度センサを備えてよい。FBGはマウントに取り付けられるため、FBGの長手方向の張力は、マウントの熱膨張の程度に依存する。ファイバブラッググレーティングの現在の動作波長は、その長手方向の張力に依存するので、マウントの少なくとも一部の温度を測定することは、FBGの現在の動作波長に関連する測定出力を提供する。したがって、マウントの少なくとも一部の温度は、FBGの現在の動作波長を安定化させるためのフィードバック信号として使用され、それによってレーザシステムを波長安定化させることができる。
【0007】
これに代えて、測定デバイスは、レーザキャビティによって生成された(例えば出力された)放射の波長を測定するように構成されている分光計または他の波長測定デバイスを含んでよい。FBGは狭帯域であるので、レーザキャビティによって生成される放射の波長は、FBGの現在の動作波長によって決定され、FBGの現在の動作波長と同じであることが多い。したがって、レーザキャビティによって生成される放射(例えば、出力)の波長を測定することは、FBGの現在の動作波長に関連する測定出力を提供することができ、したがって、レーザシステムを波長安定化するために使用されてよい。いくつかの場合には、レーザキャビティにおける非線形効果は、FBG動作波長と測定された放射の波長との間の変化、例えば、シフトをもたらし得る。このシフト/オフセットにもかかわらず、測定された波長は、それにもかかわらずFBGの現在の動作波長に関連し、したがって、レーザシステムを波長安定化するためのフィードバック信号として使用されてよいことが理解される。
【0008】
いくつかの場合には、分光計または他の波長測定デバイスは、例えば、1つまたは複数の非線形素子における非線形周波数変換後に、レーザキャビティの出力の下流の放射の波長を測定してよい。この状況においても、周波数変換された放射の波長はレーザシステムによって生成された放射の波長に依存するので、測定された波長はFBGの現在の動作波長に関連することが理解される。したがって、レーザキャビティの出力の下流(例えば、1つまたは複数の非線形素子における非線形周波数変換後)の放射の波長を測定することは、FBGの現在の動作波長を安定化させるための、したがってレーザシステムを波長安定化させるためのフィードバック信号を提供することもできる。
【0009】
例えば、UV放射は、レーザシステムの後に1つまたは複数の非線形素子を提供することによって生成されてよい。このUV放射は、ファイバグレーティングの現在の動作波長に関連する測定出力を提供するように測定されてよく、したがって、レーザシステムの現在の動作波長を安定させる際に使用するためのフィードバック信号を提供する。
【0010】
より一般的には、ファイバブラッググレーティングの現在の動作波長に関連する任意の測定出力が、レーザシステムを波長安定化するように張力制御システムを制御する際に使用するためのフィードバック信号として使用されてよい。
【0011】
張力制御システムは、電気的に制御されてよい。特に、コントローラは、測定デバイスから導出されたフィードバック信号を受信し、張力制御システムを制御するための応答制御信号を生成するように構成されてよい。フィードバック信号は、測定出力に基づいてよい(例えば、測定出力を含んでよい)ことが理解される。
【0012】
1つの例では、張力制御システムは、マウントの温度を制御するように構成されている1つまたは複数の温度制御デバイスを備える。マウントの温度が変化すると、マウントは熱膨張/熱収縮し、それによってマウントに取り付けられたFBGの張力を制御する。いくつかの実装では、張力制御システムは、マウントの一部分を別の部分に対して移動させ、それによってFBGの張力を制御するように構成されている圧電アクチュエータを備えてよい。しかしながら、好ましくは、張力制御システムは、マウントの少なくとも一部の温度を制御するための1つまたは複数の温度コントローラを備え、圧電素子(例えば、圧電エキスパンダまたは他の圧電アクチュエータ)を備えない。有利なことに、圧電素子のない張力制御システムを提供することによって、圧電ヒステリシスおよびクリープが回避され、それによってレーザシステムの長期安定性が改善される。圧電クリープは、例えば、歪みゲージを使用することによって調節することができるが、これは、温度ベースの制御を使用することによって回避することができる追加の複雑さを導入する。
【0013】
本発明をより容易に理解できるように、添付の図面を参照してこれより本発明の実施例を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】例示的なレーザシステムの概略図。
図2図1のレーザシステムのFBG取付構成をより詳細に示す図。
図3図1のレーザシステムのマウントの下側を示し、温度コントローラを示す図。
図4】例示的なレーザシステムの概略図。
図5】レーザシステムコントローラによって実行され得る制御ループを示す図。
図6】周波数変換構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図3は、ピコ秒パルスのモードロック列を生成する例示的なレーザシステム100を示す。
図1に示されるように、レーザシステム100は、イッテルビウムドープファイバ増幅器102と、半導体可飽和吸収体ミラー(SESAM)104の形態のモードロック素子と、ファイバブラッググレーティング(FBG)106とを備える線形レーザキャビティを備える。FBG106は、レーザシステム100の線幅を制限し、したがって、適切な持続時間のピコ秒パルスが出力されることを確実にする、狭帯域反射デバイスである。例えば、レーザシステム100の線幅は、200ピコメートル未満であってよい。レーザシステム100によって生成されるパルスは、10psと100psとの間の持続時間を有してよい。
【0016】
FBGは、FBG106内の長手方向の張力によって決定される動作波長付近で狭帯域反射器として作用する。当業者によって理解されるように、レーザシステム100の動作波長(例えば、レーザシステムが動作する中心波長)は、FBG106の動作波長に依存し、この波長は、FBG106内の張力に依存して変化する。
【0017】
レーザシステム100は、環境の変化に起因してドリフトが発生する可能性があるレーザ動作波長のドリフトを防止するように使用される張力制御システムを備える。図2を参照すると、FBGマウント108は、アルミニウムなどの正の熱膨張材料から形成されてよい。マウント108は長尺状の溝110を備え、FBG106は接着剤を使用して張力下で溝110に固定される。FBG106の張力は、図3に示されるように、アルミニウムマウント108の下側に配置された1つまたは複数の熱電冷却器(TEC)112を使用して調節可能である。TEC112は、電気制御信号に応答して、マウントを加熱および冷却するように使用されてよいことが理解される。TECの温度が上昇すると、アルミニウムマウント108が加熱され、アルミニウムマウント108を膨張させる。FBG106はマウント108に固定されており、マウント108の膨張は部分的にFBGの長手方向におけるものであるため、マウントが熱膨張するとFBGの張力が増加する。同様に、TECの温度が低下すると、アルミニウムはより低い温度に冷却され、したがって収縮し、それによってFBGにおける張力が減少する。製造中、FBGは、張力下でマウント108に固定されてよく、一方、アルミニウムマウントの温度は、選択された値に維持され、動作中、これは、FBGの張力が、この選択された値の上下に温度を変化させることによって調整されることを可能にする。
【0018】
図1に戻ると、TEC112は、コントローラ114によって提供される電気信号に応答して加熱または冷却されることができるペルチェデバイスを備える。コントローラ114は、マイクロコントローラを含み、これに加えて、例えば、温度制御信号115をTECの温度を制御するための適切なレベルに増幅するためのさらなる適切な電子機器を含み得る。
【0019】
示されるように、温度センサ116の形態の測定デバイスは、アルミニウムマウントの温度を測定するようにアルミニウムマウントの上に配置される。コントローラ114は、温度センサ116から導出されたフィードバック信号117を受信し、フィードバック信号117に応答してアルミニウムマウントを加熱または冷却するように温度制御信号115を調節することによってレーザを波長安定化するように構成されている。より具体的には、コントローラは、コンピュータ可読命令に従って動作してフィードバックループを実行するように構成されている1つまたは複数のプロセッサを備え、フィードバックループは、温度制御信号を調節して、フィードバック信号117によって決定されるようなアルミニウムマウントの測定温度が、選択されたレベルに、例えば所定の許容範囲内に維持されることを確実にする。
【0020】
アルミニウムマウントの温度を選択されたレベルに維持することによって、FBGの張力も維持され、それによって、FBGの動作波長、したがってレーザシステム100の動作波長を安定させる。
【0021】
レーザシステム100の動作波長は、所望の動作波長が達成されるまで、TEC112を使用してマウント108の温度を変更することによって、より粗く調整されてもよい。レーザが所望の波長に調整されたことを識別するために、波長は、分光計を使用して測定されるか、または温度センサ116によって測定されるようなマウントの温度から推測されてよい。特に、測定された温度とレーザの動作波長との間の関係(ほぼ線形の関係が期待される)を決定するために、適切な較正が行われることができる。
【0022】
レーザシステム100は、所望の波長に調整されると、上述の波長安定化フィードバックループを使用して、この所望の動作波長で安定化される。このようにして、イッテルビウム利得帯域内の任意の所望の波長、例えば1020nmと1080nmとの間の任意の波長で安定した動作を達成することができる。本明細書に記載される技術は、スペクトル線幅の例えば10%、5%または1%以内へのレーザの動作波長の安定化を可能にすることが分かっている。いくつかの例では、波長は、所望の動作波長の10ピコメートルまたは5ピコメートル以内に安定化されてよい。
【0023】
図4は、例示的な波長安定化狭線幅モードロックピコ秒レーザシステム400のより一般的な概略図を示す。レーザシステム400は、増幅器410と、モードロック素子420と、狭帯域反射器として作用するファイバブラッググレーティング(FBG)430とを備えるレーザキャビティを備える。レーザシステム400は、FBG430が張力下で取り付けられているマウント440と、FBG430の張力を調節するように構成されている張力制御システムと、FBG430の現在の動作波長に関連する測定出力を提供する測定デバイス450と、測定出力に応答して張力制御システムを制御することによってレーザを波長安定化させるコントローラ460とをさらに備える。
【0024】
増幅器は、図1から図3に関連して上述したようなイッテルビウムドープファイバ増幅器を含んでよく、またはエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)、ツリウムドープファイバ増幅器、ホルミウムドープファイバ増幅器、またはプラセオジムドープファイバ増幅器などの別の種類のファイバ増幅器を含んでよい。さらにこれに代えて、ファイバ増幅器ではなくバルク増幅器を使用してよい。レーザキャビティは、同じまたは異なる種類の複数の増幅器、例えば増幅器チェーンを備えてよい。
【0025】
モードロック素子420は、図1図3に関連して上述したように、可飽和吸収体、例えば半導体可飽和吸収体ミラー(SESAM)などの適切な受動モードロック素子を含んでよい。いくつかの例では、例えばSESAMが使用される場合、モードロック素子は、FBG430とともにレーザキャビティを形成する反射器425としても作用してよい。しかしながら、これに代えて、別個の反射器が、FBG430とともにキャビティを形成するように提供されてよい。いくつかの例では、モードロック素子420は、受動素子ではなく能動素子を含んでよい。例えば、モードロック素子420は、レーザシステム400のモードロックを引き起こすように周期的な電気信号によって駆動される電気光学変調器または音響光学変調器などの変調器を含んでよい。
【0026】
FBG430はほぼ均一であってよく、例えば、グレーティング周期および/または屈折率変調は、グレーティングの長さに沿って、25%未満など、10%未満など、1%未満など、50%未満だけ変化してよい。当業者によって理解されるように、FBGの屈折率変調は、グレーティングの所望の帯域幅を得るように設定されてよく、グレーティングの長さは、ピーク反射率を設定するように使用されてよい。FBGは、グレーティング周期によって決定される動作波長(例えば、中心波長)付近で反射器として作用する。グレーティング周期は、FBGの長手方向の張力を変化させることによって変化してよく、それによってFBGの動作波長を調整する。FBGの動作波長は、FBGのスペクトル応答がそのピークを有する波長を含んでよい。
【0027】
特に明記しない限り、反射率とも呼ばれるピーク反射は、80%以下など、70%以下など、60%以下など、50%以下など、40%以下など、30%以下など、20%以下など、10%以下など、99%以下であってよい。反射率は、10%以上など、20%以上など、30%以上など、40%以上など、50%以上など、60%以上など、70%以上など、80%以上など、90%以上など、99%以上など、5%以上であってよい。1つの実施形態では、反射率は、99%など、80%と100%との間である。1つの実施形態では、反射率は、75%など、70%と80%との間である。1つの実施形態では、反射率は、15%など、10%と25%との間である。
【0028】
FBGスペクトル応答の幅は、1000ピコメートル未満、例えば500ピコメートル未満、例えば200ピコメートル未満、例えば100ピコメートル未満であってよい。
張力制御システムは、コントローラ460から導出される電気信号に応答して、FBG430内の張力を増加または減少させるように構成されている。張力制御システムは、例えば図1図3に関連して上述したような温度ベースのシステムであってよく、マウントが熱膨張または熱収縮することによってFBG430の張力を調節するように、マウントの少なくとも一部の温度を制御する。しかしながら、これに代えて、FBGは、例えばマウントの1つの部分の別の部分に対する圧電的に作動される移動によって、FGB430の張力を調節するように使用され得るアクチュエータに取り付けられてよい。
【0029】
マウント440は、任意の適切な材料を含んでよい。温度ベースの張力制御のために、マウントは、アルミニウムまたはセラミック材料などの任意の適切な正の熱膨張材料を含んでよい。マウント440は、基板と、FBGが適所に接着されるホルダとを備えてよい。マウントの温度を制御してマウント(または少なくともその一部)の熱膨張または熱収縮を引き起こし、それによってファイバブラッググレーティングの張力を調節するように、1つまたは複数の温度コントローラが提供されてよい。これに代えて、圧電張力制御が使用される場合、マウントは、コントローラ440から導出された電気信号に応答して、1つのFBG430のマウント点を別のマウント点に対して移動させる適切な圧電素子を備えるアクチュエータを備えてよい。いくつかの場合には、FBG430の張力、したがってレーザシステム400の動作波長の改善された制御を達成するために、温度ベースの制御と圧電張力制御の両方が使用されてよい。しかしながら、好ましくは、レーザシステムは、圧電素子を備えず、1つまたは複数の温度コントローラが、マウントの温度を制御するように使用される。このようにして、圧電ヒステリシスおよびクリープを回避することができる。圧電クリープは、例えば、歪みゲージを使用することによって調節されることができるが、これは、もっぱら温度ベースの制御を使用することによって回避することができる追加の複雑さをもたらす。
【0030】
測定デバイス450は、FBG430の現在の動作波長に関連する測定出力を提供する。測定デバイス450は、例えば図1図3に関連して上述したように、マウント440の温度を測定する温度センサを備えてよい。この場合、FBG430内の張力は、マウントが熱膨張または熱収縮した程度に依存し、FBGの動作波長は、その張力に依存するため、マウントの温度は、FBG430の動作波長に関連する。特に、マウントの温度とFBG動作波長との間にはほぼ線形の関係が期待される。
【0031】
しかしながら、これに代えて、測定デバイス450は、レーザシステム400の動作波長を直接測定するように構成されてよい。例えば、測定デバイス450は、レーザキャビティによって生成された放射の一部を(例えば、タップカプラを介して)受信し、その波長を測定する分光計を備えてよく、次いで、これは、FBG430の現在の動作波長と同等とみなすことができる。より一般的には、FBG430またはレーザシステム400の現在の動作波長に関連する任意の測定値が、波長安定化の目的で使用されてよい。
【0032】
コントローラ460は、マイクロコントローラまたは他のデータ処理装置を備えてよい。コントローラ460は、1つまたは複数のプロセッサと、プロセッサによる実行時プロセッサに1つまたは複数の動作を実行させるコンピュータ可読命令を記憶するメモリとを備える。図5は、コントローラ460によって実行され得る波長安定化手順500を示す。示されるように、コントローラは、測定デバイス450から導出された測定信号(例えば、フィードバック信号)を受信する(510)。コントローラ460は、FBG430の現在の動作波長が所望の波長から閾値量を超えて逸脱したことを測定信号が示すかどうかを判定する(520)。そうである場合、コントローラ460は、張力制御システムにFBG430の張力を調節させて、FBG430の現在の動作波長を所望の波長に向かわせる(すなわち、張力を適切に増加または減少させることによって)ように、張力制御システムに制御信号を送信する(530)。処理500は、レーザシステム400の動作波長を高い安定度で所望の波長に、例えば所望の波長の10ピコメートル以内または5ピコメートル以内に維持するように、レーザシステム400の動作中に連続的に実行されてよい。
【0033】
コントローラ460はまた、測定信号が、FBG430の現在の動作波長が所望の波長に対応することを示すまで、張力制御システムを調節することによって、レーザシステム400の現在の動作波長を別の設計波長に調整させるように使用されてもよい。レーザシステム400が所望の波長に調整されると、図5に示される波長安定化手順500を使用して、この所望の動作波長で安定化され得る。このようにして、レーザシステム400を使用して調整可能な波長安定化動作を達成することができる。
【0034】
様々な実装では、本明細書に記載のレーザシステムによって生成されるパルスは、1psよりも長い、例えば10psよりも長い、または20psよりも長い持続時間を有してよい。
【0035】
様々な実装では、本明細書に記載のレーザシステムによって生成されるパルスは、100ps未満、例えば60ps未満または50ps未満の持続時間を有してよい。いくつかの例では、レーザシステムは、30psと60psとの間の持続時間を有するパルスを生成してよい。パルス持続時間は、半値全幅(FWHM)測定に基づいて測定されてよい。
【0036】
様々な実装では、本明細書に記載されるレーザシステムによって生成されるピークパワーは、10kW超または15kW超など、1kW超であってよい。
本明細書に記載されるレーザシステムは、非線形結晶などの非線形素子において効率的な周波数変換を達成するために使用されてよい。当業者に理解されるように、適切な周波数変換構成を使用して、特定の用途のための関心のある様々な波長に到達してよく、例えば、約1マイクロメートルから紫外線または深紫外線(例えば、300nm未満)への変換が、そうした技術を使用して可能である。
【0037】
システム100、400は、周波数変換において高い効率を達成するために協働する複数の特性、特に狭い線幅、波長安定性、およびパルス動作を組み合わせることに留意することが重要である。典型的には狭い線幅しか変換されることができず、位相整合帯域幅の外側のいかなるエネルギーも変換されないままであるので、狭い線幅は、位相整合制約のために効率的な周波数変換をもたらす。CWレーザを使用して狭い線幅が達成され得るが、パルス動作は、より高いピークパワー、したがってより高い効率の変換をもたらす。レーザ波長のいかなる変動も効率損失をもたらし得るので、波長安定性もまた効率につながる。例えば、深紫外線への変換では、わずか200ピコメートルのレーザ波長の変動が、効率の損失をもたらし得る。
【0038】
図6は、上述の波長安定化狭線幅モードロックピコ秒レーザシステム100、400のうちの1つまたは複数を使用する周波数変換構成600を示す。示されるように、レーザシステム100、400からのピコ秒パルスは、1つまたは複数の非線形素子610(例えば、1つまたは複数の非線形結晶)へと発射され(例えば、適切な光学系を使用して)、そこで、高調波発生(例えば、第2高調波発生)などの1つまたは複数の非線形効果による周波数変換を受ける。いくつかの例では、1つの非線形素子において生成された周波数変換された光は、第2の非線形素子において、変換されていない光(または第3の非線形素子において生成された光)と組み合わされて、例えば和周波発生、差周波発生またはパラメトリック周波数変換を使用してさらなる波長を生成してよい。いくつかの場合には、2つ以上の波長安定化狭線幅モードロックピコ秒レーザシステムの出力は、周波数変換構成の非線形素子において一緒に結合されてよく、それによって、生成される波長の可能性をさらに拡張する。
【0039】
本明細書に記載されるような波長安定化レーザシステムはまた、固体結晶における増幅を用いるより大きなレーザシステムにおいて安定したシード源を提供するように使用されてもよい。これは、固体結晶がNd:YAG結晶、または制限された利得帯域幅を有する別の他の固体結晶を含む場合に特に有利であり、これは、そうした場合には、シードのあらゆる波長変動が効率の損失をもたらし得るためである。例えば、1064.35nmで動作する波長安定化レーザシステムは、Nd:YAG結晶における増幅を使用するより大きな(例えば、バルク)レーザシステムにおけるシードとして使用されてよい。
【0040】
本明細書に記載の波長安定化レーザシステムはまた、チャープパルス増幅(CPA)システムのシード源として、またはその一部として使用されてもよい。例えば、CPAシステムは、波長安定化レーザを含むパルス源(例えば、シード源)と、パルスストレッチャと、1つまたは複数の光増幅器と、パルス圧縮器とを備えてよい。動作時、パルス源(例えば、シード源)によって生成された短パルスは、光路に沿って通過し、光路において、パルスは、ストレッチャによって時間的に引き延ばされ(すなわち、時間において引き延ばされ)、1つまたは複数の光増幅器によって増幅され、次いで、パルス圧縮器によって時間的に圧縮される。パルスストレッチャは、パルスのピークパワーを低減し、したがって、1つまたは複数の光増幅器において発生する非線形効果を回避または低減するように、パルスを時間的に引き延ばすように構成されている。1つまたは複数の光増幅器は、光路に沿ってパルスストレッチャの下流に配置され、パルスストレッチャによって引き延ばされたパルスを増幅するように構成されている。パルス圧縮器は、光路に沿って1つまたは複数の増幅器の下流に配置され、1つまたは複数の増幅器によって増幅されたパルスを圧縮することによってシステムの出力において高ピークパワーパルスを生成するように構成されている。ストレッチャ、増幅器および圧縮器のコンポーネントについての様々な特定の可能性は、それ自体当業者に知られており、ここでは詳細に説明しない。例えば、ストレッチャは、パルスを引き延ばすファイバブラッググレーティングにパルスを向けるように構成されているサーキュレータを備えてよく、および/または適切な光学配置に、ある長さの分散ファイバおよび/またはバルク透過または反射グレーティングを備えてよい。1つまたは複数の増幅器は、1つまたは複数の光ファイバ増幅器(例えば、1つまたは複数のイッテルビウム、エルビウム、ツリウム、ホルミウム、またはプラセオジムドープ増幅器)を含んでよく、光学前置増幅器および電力増幅器を含む増幅器チェーン内に配置されてよい。パルス圧縮器は、例えば、適切な光学配置に透過グレーティングおよび/または反射グレーティングを備えてよく、いくつかの場合には、ファイバベースの圧縮器を備えてよい。いくつかの実装では、パルス圧縮器は省略されてよく、すなわち、CPAシステムは、パルス源(例えば、シード源)と、ストレッチャと、1つまたは複数の光増幅器とを備えてよい。
【0041】
本明細書は、以下の項目の主題も含む。
1.波長安定化狭線幅モードロックピコ秒レーザシステムであって、
レーザキャビティであって、
増幅器と、
モードロック素子と、
狭帯域反射器として作用するファイバブラッググレーティングと、を備えるレーザキャビティと、
前記ファイバブラッググレーティングが張力下で取り付けられているマウントと、
前記ファイバブラッググレーティングの前記張力を調節するための張力制御システムと、
前記ファイバブラッググレーティングの現在の動作波長に関連する測定出力を提供するための測定デバイスと、
前記測定出力に応答して前記張力制御システムを制御することによって前記レーザを波長安定化するためのコントローラであって、前記測定デバイスから導出されたフィードバック信号を受信し、前記張力制御システムを電気的に制御するための応答制御信号を生成するように構成されている、コントローラと、を備える、レーザシステム。
【0042】
2.前記張力制御システムは、前記マウントの少なくとも一部の前記温度を制御し、前記マウントの前記少なくとも一部の熱膨張または熱収縮を引き起こし、それによって前記ファイバブラッググレーティングの前記張力を調節するための温度コントローラを備える、項目1のレーザシステム。
【0043】
3.前記マウントの前記少なくとも一部は、アルミニウムを含む、項目2のレーザシステム。
4.前記測定デバイスは、前記マウントの少なくとも一部の温度を測定するように構成されている温度センサを備える、項目1~3のいずれか1つのレーザシステム。
【0044】
5.前記測定デバイスは、前記レーザキャビティを使用して生成された放射の波長を測定するように構成されている、項目1~3のいずれか1つのレーザシステム。
6.前記レーザキャビティが100ピコ秒未満の持続時間を有するパルスを提供するように構成されているか、前記パルスが30ピコ秒と60ピコ秒との間の持続時間を有するか、またはその両方である、項目1~5のいずれか1つレーザシステム。
【0045】
7.前記レーザのスペクトル線幅は200ピコメートル未満である、項目1~6のいずれか1つのレーザシステム。
8.前記コントローラは、前記レーザの前記動作波長を、前記レーザの前記スペクトル線幅の5%以下以内など、前記レーザの前記スペクトル線幅の1%以下以内など、前記レーザの前記スペクトル線幅の10%以下以内に安定化させるように構成されている、項目1~7のいずれか1つのレーザシステム。
【0046】
9.前記コントローラは、前記レーザの前記動作波長を所望される動作波長の10ピコメートル以下以内に安定化させるように、または前記レーザの前記動作波長を所望される動作波長の5ピコメートル以下以内に安定化させるように構成されている、項目1~8のいずれか1つのレーザシステム。
【0047】
10.前記増幅器は、イッテルビウムファイバ増幅器を含み、前記レーザの前記動作波長は、1020nmと1080nmとの間である、項目1~9のいずれか1つのレーザシステム。
【0048】
11.項目1~10のいずれか1つの波長安定化レーザシステムと、
前記レーザシステムの前記動作波長を変換された波長へと変換するための周波数変換器と、を備える装置。
【0049】
12.前記周波数変換器は、1つまたは複数の非線形周波数変換結晶を含む、項目11の装置。
13.前記周波数変換器は、前記波長安定化レーザシステムの前記動作波長を300nmよりも短い波長へと変換するように構成されている、項目11または12の装置。
【0050】
14.項目1~10のいずれか1つの前記波長安定化レーザシステムと、
前記波長安定化レーザシステムを使用して生成された放射を増幅させるように構成されている固体結晶と、を備えるレーザシステム。
【0051】
15.前記固体結晶はNd:YAG結晶を含む、項目14のレーザシステム。
16.チャープパルス増幅(CPA)システムであって、
項目1~10のいずれか1つの波長安定化レーザシステムを備えるパルス源と、
前記パルス源によって生成されたパルスを時間的に引き延ばすように構成されているパルスストレッチャと、
前記パルスストレッチャによって引き延ばされたパルスを増幅するための1つまたは複数の光増幅器と、
前記1つまたは複数の光増幅器によって増幅されたパルスを時間的に圧縮する光圧縮器と、を備える、チャープパルス増幅(CPA)システム。
【0052】
システムの多くの修正および変更および本明細書に記載されている技法が、当業者に明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】