(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】少量のクエン酸によるタンパク質製剤におけるポリソルベート分解の低減
(51)【国際特許分類】
A61K 47/26 20060101AFI20250128BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250128BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
A61K47/26
A61K39/395
A61K47/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024542932
(86)(22)【出願日】2023-01-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2023050944
(87)【国際公開番号】W WO2023139043
(87)【国際公開日】2023-07-27
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391003864
【氏名又は名称】ロンザ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LONZA LIMITED
(71)【出願人】
【識別番号】509035130
【氏名又は名称】ロンザ バイオロジックス ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・フェドロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】レナ・ハートマン
(72)【発明者】
【氏名】アタナス・コウロヴ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトリア・シュライナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルジニ・ル・ブラン
(72)【発明者】
【氏名】アバス・ラズヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ジーン・オーカンプ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヤーン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076DD42
4C076DD46
4C076FF36
4C085AA01
4C085EE01
(57)【要約】
本発明は、タンパク質製剤における少量のクエン酸によるポリソルベート分解を低減するための方法、及び低減したポリソルベート分解を有する少量のクエン酸を有するタンパク質製剤に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪分解活性を有さないタンパク質及びポリソルベートを含むタンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減するための方法であって、クエン酸又はその塩を前記タンパク質製剤に約0.01mM~約9mMの濃度で添加することを含む、方法。
【請求項2】
前記ポリソルベートが、ポリソルベート-20、ポリソルベート-80、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脂肪分解活性を有さない前記タンパク質が、治療用タンパク質である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質製剤が、皮下注射のためのものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
脂肪分解活性を有さないタンパク質及びポリソルベートを含むタンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減するためのクエン酸又はその塩の使用であって、クエン酸又はその塩が、前記タンパク質製剤に少なくとも約0.01mMの濃度で添加される、使用。
【請求項6】
クエン酸又はその塩が、前記タンパク質製剤に約0.01mM~約40mMの濃度で添加される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記ポリソルベートが、ポリソルベート-20、ポリソルベート-80、又はそれらの混合物を含む、請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
脂肪分解活性を有さない前記タンパク質が、治療用タンパク質である、請求項5~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記タンパク質製剤が、皮下注射のためのものである、請求項5~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
低減したポリソルベート分解を有するタンパク質製剤であって、脂肪分解活性を有さないタンパク質と、ポリソルベートと、約0.01mM~約0.9mMの濃度のクエン酸又はその塩と、を含む、タンパク質製剤。
【請求項11】
前記ポリソルベートが、ポリソルベート-20、ポリソルベート-80、又はそれらの混合物を含む、請求項10に記載のタンパク質製剤。
【請求項12】
脂肪分解活性を有さない前記タンパク質が、治療用タンパク質である、請求項10又は11に記載のタンパク質製剤。
【請求項13】
前記タンパク質製剤が、皮下注射のためのものである、請求項10~12のいずれか一項に記載のタンパク質製剤。
【請求項14】
前記タンパク質製剤が、脂肪分解活性の唯一の供給源として宿主細胞タンパク質(HCP)を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法、使用、又はタンパク質製剤。
【請求項15】
タンパク質製剤が、前記タンパク質製剤の重量に基づいて、100ppm以下の量でHCPを含む、請求項14に記載の方法、使用、又はタンパク質製剤。
【請求項16】
前記タンパク質製剤が、少なくとも1μg/mlの脂肪分解活性を有さない前記タンパク質を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法、使用、又はタンパク質製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質製剤における少量のクエン酸によるポリソルベート分解を低減するための方法、及び低減したポリソルベート分解を有する少量のクエン酸を有するタンパク質製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
過去25年で、抗体は、製薬業界において大きな意義を獲得した。Strickley et al.,“A review of Formulations of Commercially Available Antibodies”,J Pharm Sci.2021;Jul;110(7):2590-2608は、1986年~2021年にグローバルに承認された126の市販の抗体のレビューを提供し、薬学的タンパク質製剤の重要性を強調している。
【0003】
ポリソルベートは、タンパク質凝集又は沈殿をもたらし得る、界面応力を最小化するために薬学的タンパク質製剤に添加される界面活性剤である。したがって、ポリソルベートは、薬学的タンパク質製剤における重要な安定剤である。薬学的タンパク質製剤に使用される最も一般的なポリソルベートは、ポリソルベート20(PS20)及びポリソルベート80(PS80)であり、これらは、脱水ソルビトール、すなわち、ポリエトキシル化され、脂肪酸、主にPS20中のラウリン酸及びPS80中のオレイン酸でエステル化される、ソルビタン及びイソソルビドの混合物のコアからなる。
【0004】
しかしながら、PS20及びPS80などのポリソルベートは、保存中に薬物物質(DS)又は薬物製品(DP)中で分解されやすい。ポリソルベートの分解は、(a)ポリソルベート分解物の不溶性物質に起因する目に見える及び/又は目に見えない粒子の発生、(b)ラウリン酸によるタンパク質酸化又は誘導されたタンパク質凝集をもたらす過酸化物などの、ポリソルベート分解に起因するタンパク質品質への悪影響、(c)特に界面応力に対するタンパク質の不十分な保護につながる可能性がある、界面活性剤濃度の低減した濃度、並びに(d)例えば、分解されたポリソルベートに起因する、製品の安全性考慮事項の潜在的な差異の観点から、製品品質に負の影響を及ぼし得る。
【0005】
天然源からの単離の他に、治療用タンパク質は、宿主細胞が標的タンパク質を発現する、哺乳動物又は微生物宿主細胞培養物を使用して主に産生される。活性タンパク質に加えて、宿主細胞はまた、例えば、Jahn,M.et al.,PHARMACEUTICAL RESEARCH 2020,37,118、又はChampion,K.,et al.,BIOPROCESS INTERNATIONAL,2005,52-57に記載されるように、部分的には宿主細胞培養上清に含有される、宿主細胞タンパク質(HCP)を産生する。下流精製プロセスは、典型的には、治療用タンパク質を捕捉及び研磨するための様々なクロマトグラフ及び(超)濾過ステップを含み、精製プロセスは、少なくとも患者の安全性への影響が除外され得る程度まで、HCPの大部分を枯渇させることができるべきである。しかしながら、平衡に基づく、分離方法及び精製方法の自然原理により、HCPの100%枯渇は、不可能である。これは、特定の量のHCPがバルク薬物物質(DS)に存在し、したがってDPにも存在することを意味する。
【0006】
ポリソルベート分解の1つの根本的な原因は、HCPに存在するリパーゼによって触媒される分解であることが見出された。例えば、Hall et al.,“Polysorbates 20 and 80 degradation by group XV lysosomal phospholipase A2 isomer X1 in monoclonal antibody formulations”.J Pharm Sci.2016;105:1633-42は、最終DP製剤に含有されるHCPの一部としてのリパーゼの残留触媒活性が、脂肪酸エステル結合の加水分解によるポリソルベート分解をもたらし得ることを報告した。
【0007】
したがって、標的タンパク質の下流精製プロセス中の最適下限枯渇に起因するHCPに存在するリパーゼによって発揮されるDS及びDPにおける残留脂肪分解活性は、ポリソルベート界面活性剤の加水分解をもたらし得、最終的な治療用薬物製品の品質の低下をもたらす。
【0008】
残留脂肪分解活性によるポリソルベート分解の問題を解決するための潜在的な選択肢は、1)脂肪分解酵素を効率的に除去するための下流精製プロセスの改善、2)細胞が脂肪分解酵素の発現を欠く、活性タンパク質の発現のためのノックアウト細胞株の生成、及び3)ある程度のポリソルベート分解を受け入れ、それに応じてDPの貯蔵寿命を限定することである。
【0009】
しかしながら、これらの潜在的な選択肢は、1)開発作業のための追加の努力、時間、及びコストが必要であり、より複雑で時間がかかり、より高価な下流プロセス、2)複雑で時間がかかるプロテオミクス研究におけるポリソルベート分解に関与するリパーゼの特定が必要であり、ノックアウト細胞株を生成し、得られる細胞の潜在的に低減した生存率及び効率をもたらすための追加の開発作業が必要であり、3)提出物の潜在的な却下を伴う低減した製品品質に関する保健当局の懐疑が予想され得るか、又は限定された貯蔵寿命を有するDPのための複雑なサプライチェーンの実装を必要とし得るという意味で、いくつかの欠点を有する。
【0010】
これは、コスト及び時間のかかる措置を必要とせずに、又は上記で説明される妥協したタンパク質製剤を受け入れることなく、タンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減することを保証する。
【0011】
したがって、タンパク質製剤におけるポリソルベート分解を容易かつ効果的に低減する方法を提供し、低減したポリソルベート分解を有するタンパク質製剤を提供する必要性がある。
【0012】
本発明者らは、驚くべきことに、特定の量でクエン酸又はその塩を使用することによって、タンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減することができることを見出した。したがって、上記の必要性は、本発明の主題によって満たされる。
【発明の概要】
【0013】
一態様において、本発明は、脂肪分解活性を有さないタンパク質及びポリソルベートを含むタンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減するための方法を提供し、方法は、クエン酸又はその塩をタンパク質製剤に少なくとも約0.01mMの濃度で添加することを含む。
【0014】
更なる態様において、本発明は、脂肪分解活性を有さないタンパク質及びポリソルベートを含むタンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減するためのクエン酸又はその塩の使用を提供し、クエン酸又はその塩は、タンパク質製剤に少なくとも約0.01mMの濃度で添加される。
【0015】
更なる態様において、本発明は、低減したポリソルベート分解を有するタンパク質製剤を提供し、タンパク質製剤は、脂肪分解活性を有さないタンパク質と、ポリソルベートと、約0.01mM~約9mM若しくは約0.01mM~約0.9mMの濃度のクエン酸又はその塩と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】40℃で2週間及び4週間のインキュベーション後に異なるクエン酸塩濃度を有するタンパク質製剤中のPS80含有量である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本発明が容易に理解されるために、本発明の経過において使用される用語のいくつかの定義を以下に示す。
【0018】
「タンパク質」という用語は、アミノ酸の配列で構成される巨大分子を意味する。タンパク質は、天然タンパク質、すなわち、天然に存在する細胞及び非組換え細胞によって産生されるタンパク質であり得るか、又は遺伝子操作された細胞若しくは組換え細胞によって産生され得、天然タンパク質のアミノ酸配列を有する分子、又は天然配列の1つ以上のアミノ酸からの欠失、それへの付加、及び/若しくはその置換を有する分子、又は天然タンパク質とは関係のないタンパク質のアミノ酸配列を有する分子を含み得る。用語はまた、1つ以上のアミノ酸が、対応する天然に存在するアミノ酸ポリマーの化学的類似体であるアミノ酸ポリマーを含む。タンパク質は、例えば、抗体、構造タンパク質、酵素、膜タンパク質、膜関連タンパク質、及び/又は膜貫通タンパク質、トランスポーター、受容体、シグナル伝達タンパク質などを含み得る。タンパク質はまた、例えば、薬物、標的化部分、タグ、例えば、可視化タグなどのような、1つ以上の非ペプチド物質にコンジュゲートされた、修飾タンパク質を包含する。本発明のタンパク質は、例えば、疾患又は障害の診断、治療、及び/又は予防において使用される、治療用タンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリソルベートは、薬学的製剤におけるタンパク質の安定性を改善することができる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重鎖(H)及び2つの軽鎖(L)を含む糖タンパク質、又はその抗体断片(抗原結合部分)を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)で構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2、及びCH3の3つのドメインで構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に更に細分することができる。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRで構成され、以下の順にアミノ末端からカルボキシ末端に向かって配置される。FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む、宿主細胞又は因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。本発明の抗体は、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)及びポリクローナル抗体、全抗体、抗体-薬物コンジュゲート、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重又は複数の抗原又はエピトープ特異性を有するヒト抗体又はハイブリッド抗体、任意の免疫グロブリンのハイブリッド断片、又は特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する任意の天然、合成、若しくは遺伝子操作されたタンパク質のハイブリッド断片を含む、抗体断片及び抗体部分断片、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、断片などを含む。
【0020】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」及び「からなる(consisting of)」の両方を包含するものとして解釈されるものとし、両方の意味は、本発明による実施形態が具体的に意図され、したがって個々に開示される。「含む(including)」、同様に「有する(having)」又は「含有する(containing)」の意味での「含む(comprising)」は、包括的又はオープンエンドであり、追加の、列挙されていない要素又は方法ステップを除外しない。
【0021】
本明細書で使用される場合、要素又は構成要素に先行する冠詞「a」及び「an」は、要素又は構成要素の例(すなわち、出現)の数に関して非制限的であることが意図される。したがって、「a」又は「an」は、1つ又は少なくとも1つを含むように読み取られるものとし、要素又は構成要素の単数形は、数値が明らかに単数であることを意味しない限り、複数も含む。例えば、脂肪分解活性を有さないタンパク質を含む本発明によるタンパク質製剤は、当該タンパク質が必ずしもタンパク質製剤に含まれる唯一のタンパク質であることを意味するわけではないが、脂肪分解活性を有さないタンパク質とは異なる更なるタンパク質、例えば、脂肪分解活性を有するタンパク質もタンパク質製剤に含まれ得ることが理解されるものとする。したがって、本明細書で使用される場合、「脂肪分解活性を有さないタンパク質」という用語は、1つ以上の「脂肪分解活性を有さないタンパク質(複数可)」、例えば、脂肪分解活性を有さない1つ、2つ、3つ、又は4つのタンパク質、好ましくは1つ又は2つ、より好ましくは1つを含む。
【0022】
本明細書で使用される場合、使用される物質、成分、構成要素、又はパラメータの量を修飾する「約」という用語は、例えば、典型的な測定及び取扱手順、例えば、濃縮物又は溶液を作製するために使用される液体取扱手順を通して、生じ得る数値量の変動を指す。更に、変形は、測定手順における不注意な誤り、本発明を実施するために用いられる成分の製造、供給源、若しくは純度における相違から生じ得る。一実施形態において、「約」という用語は、報告される数値の10%以内を意味する。より具体的な実施形態において、「約」という用語は、報告される数値の5%以内を意味する。
【0023】
特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、選択肢のみを指すことが明示的に示されるか、又は選択肢が互いに排他的でない限り、「及び/又は」を意味するように使用されるが、本開示は、選択肢のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。
【0024】
「例えば(for example)」という用語及びその対応する略語「例えば(e.g.)」(斜体であるかどうかにかかわらず)の使用は、列挙された特定の用語が、別途明示的に記載されない限り、参照又は引用される特定の例に限定されることを意図しない、本開示の代表的な例及び実施形態であることを意味する。
【0025】
本発明の文脈において、「宿主細胞タンパク質(HCP)」は、「脂肪分解活性を有さないタンパク質」を指さず、それを含まないと理解されるものとする。むしろ、「宿主細胞タンパク質(HCP)」は、治療用タンパク質などの、「脂肪分解活性を有さないタンパク質」の製造中に宿主生物に由来する低レベルの、プロセス関連の望ましくないタンパク質不純物である。本発明の文脈において、「脂肪分解活性を有さないタンパク質」は、「標的タンパク質」とも称され得、標的タンパク質は、脂肪分解活性を有さないタンパク質である。したがって、「標的タンパク質」及び「脂肪分解活性を有さないタンパク質」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、標的タンパク質は、脂肪分解活性を有さない。
【0026】
本発明の1つの特定の態様、例えば、本発明の方法の文脈で記載される全ての実施形態、効果、及び発見は、本発明の使用及び本発明のタンパク質製剤などの本発明の全ての他の態様に同様に適用されるべきであることが理解されるものとする。例えば、本発明の方法の文脈に記載される驚くべき発見は、同様に、本発明の使用及び本発明のタンパク質製剤に適用される。
【0027】
上記で既に概説されたように、本発明は、脂肪分解活性を有さないタンパク質及びポリソルベートを含むタンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減するための方法に関し、方法は、クエン酸又はその塩をタンパク質製剤に少なくとも約0.01mMの濃度で添加することを含む。
【0028】
本発明者らは、驚くべきことに、特定の量でクエン酸又はその塩を使用することによって、タンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減することができることを見出した。本発明による方法は、よって、タンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減するための優れた方法を提供する。本発明の方法を使用することによって、ポリソルベート分解に関する煩雑な根本原因調査は、細胞株又は精製プロセスの時間のかかる高価な開発を必要とすることなく、タンパク質製剤におけるポリソルベート分解を直接低減することによって、回避することができる。したがって、本発明による方法は、タンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減するための便利で効率的な方法を提供する。
【0029】
本発明は更に、脂肪分解活性を有さないタンパク質及びポリソルベートを含むタンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減するためのクエン酸又はその塩の使用に関し、クエン酸又はその塩は、タンパク質製剤に少なくとも約0.01mMの濃度で添加される。
【0030】
本発明はまた、低減したポリソルベート分解を有するタンパク質製剤に関し、タンパク質製剤は、脂肪分解活性を有さないタンパク質と、ポリソルベートと、約0.01mM~約9mM若しくは約0.01mM~約0.9mMの濃度のクエン酸又はその塩と、を含む。
【0031】
一実施形態において、脂肪分解活性を有さないタンパク質及びポリソルベートを含むタンパク質製剤中のクエン酸の存在は、ポリソルベートの分解を、クエン酸を有さない同様の製剤と比較されるとき、40℃で2週間の保存後、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、及び/又は40℃で4週間の保存後、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、更により好ましくは少なくとも50%低減する。
【0032】
具体的には、本発明者らは、驚くべきことに、既に低濃度のクエン酸又はその塩が、タンパク質製剤におけるポリソルベート分解を効果的に低減することを見出した。
【0033】
本発明によれば、クエン酸又はその塩は、タンパク質製剤に少なくとも約0.01mMの濃度で添加される。好ましくは、クエン酸又はその塩は、タンパク質製剤に少なくとも約0.05mMの濃度で添加される。好ましくは、クエン酸又はその塩は、タンパク質製剤に少なくとも約0.1mMの濃度で添加される。
【0034】
一実施形態において、クエン酸又はその塩は、タンパク質製剤に少なくとも約0.01mM、好ましくは少なくとも約0.02mM、好ましくは少なくとも約0.03mM、好ましくは少なくとも約0.04mM、好ましくは少なくとも約0.05mM、好ましくは少なくとも約0.06mM、好ましくは少なくとも約0.07mM、好ましくは少なくとも約0.08mM、好ましくは少なくとも約0.09mMの濃度で添加される。
【0035】
一実施形態において、クエン酸又はその塩は、タンパク質製剤に最大約40mM、好ましくは最大約35mM、好ましくは最大約30mM、好ましくは最大約25mM、好ましくは最大約20mM、好ましくは最大約15mM、好ましくは最大約12.5mM、好ましくは最大約10mM、好ましくは最大約9mM、好ましくは最大約8mM、好ましくは最大約7mM、好ましくは最大約6mM、好ましくは最大約5mM、好ましくは最大約4mM、好ましくは最大約3mM、好ましくは最大約2mM、好ましくは最大約1mM、又は最大約0.9mMの濃度で添加される。
【0036】
下限のいずれかを、上限のいずれかと組み合わせることができる。
【0037】
一実施形態において、クエン酸又はその塩は、タンパク質製剤に約0.01mM~約40mM、好ましくは約0.05mM~約40mM、例えば、約0.1mM~約40mMの濃度で添加される。したがって、クエン酸又はその塩の好適な濃度は、約0.06mM~約35mM、約0.07mM~約30mM、約0.08mM~約25mM、又は約0.1mM~約20mMを含む。
【0038】
好ましくは、クエン酸又はその塩は、タンパク質製剤に約0.1mM~約20mM、例えば、約0.1mM、約1mM、約5mM、約10mM、約15mM、又は約20mMの濃度で添加される。一実施形態において、クエン酸は、タンパク質製剤に約0.1mM~約20mMの濃度で添加される。一実施形態において、クエン酸又はその塩は、タンパク質製剤に約0.01mM~約9mMの濃度で添加される。一実施形態において、クエン酸又はその塩は、タンパク質製剤に約0.01mM~約0.9mMの濃度で添加される。
【0039】
したがって、タンパク質製剤中のクエン酸又はその塩の好ましい濃度は、約0.1mM~約20mM、約0.1mM~約15mM、約0.1mM~約10mM、約0.1mM~約9mM、約0.1mM~約8mM、約0.1mM~約7mM、約0.1mM~約6mM、約0.1mM~約5mM、約0.1mM~約4mM、約0.1mM~約3mM、約0.1mM~約2mM、約0.1mM~約1mM、及び約0.1mM~約0.9mMを含む。
【0040】
本発明の目的のための「クエン酸又はその塩」は、無水形態のクエン酸及びクエン酸の塩、並びに一水和物、二水和物、三水和物、四水和物、及び五水和物などのそれらの水和物形態を指すことが理解されるものとする。「クエン酸又はその塩」という用語は、1つのタイプのクエン酸又はその塩のみ、並びに異なるタイプのクエン酸(すなわち、異なる水和物形態)及び/又はその異なる塩の組み合わせを指すと理解されるものとする。「クエン酸又はその塩」という用語は更に、クエン酸、クエン酸の1つ以上の塩、及びそれらの任意の混合物を指すと理解されるものとする。
【0041】
クエン酸の好適な塩は、クエン酸の単塩基性塩、二塩基性塩、及び三塩基性塩、並びにそれらの混合物、また任意にクエン酸と組み合わされたものを含む。クエン酸塩に好適なカチオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、N+R1R2R3R4を含み、式中、
R1、R2、R3、及びR4は、同一であるか、又は異なっており、互いから独立して、H、C1~4アルキル、(CH2)nOHからなる群から選択され、
nは、2、3、又は4である。
【0042】
一実施形態において、クエン酸又はその塩は、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。好適なクエン酸ナトリウムは、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、及びそれらの組み合わせを含む。好適なクエン酸カリウムは、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム、及びそれらの組み合わせを含む。好適なクエン酸カルシウムは、二クエン酸三カルシウムを含む。
【0043】
好ましくは、クエン酸又はその塩は、クエン酸無水物、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム二水和物、及びそれらの組み合わせから、より好ましくはクエン酸から選択される。したがって、一実施形態において、本発明は、脂肪分解活性を有さないタンパク質及びポリソルベートを含むタンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減するための方法に関し、方法は、クエン酸をタンパク質製剤に本明細書で定義される濃度で、また全てのその実施形態で、例えば、少なくとも約0.01mMの濃度で添加することを含む。一実施形態において、クエン酸は、タンパク質製剤に約0.01mM~約40mM、好ましくは約0.05mM~約40mM、例えば、約0.1mM~約40mMの濃度で添加される。一実施形態において、クエン酸は、タンパク質製剤に約0.06mM~約35mM、約0.07mM~約30mM、約0.08mM~約25mM、約0.1mM~約20mM、約0.1mM~約10mM、約0.01mM~約9mM、約0.01mM~約8mM、約0.01mM~約7mM、約0.01mM~約6mM、約0.01mM~約5mM、約0.01mM~約4mM、約0.01mM~約3mM、約0.01mM~約2mM、約0.01mM~約1mM、又は約0.01mM~約0.9mMの濃度で添加される。
【0044】
1つの好ましい実施形態において、タンパク質製剤は、液体タンパク質製剤である。そのような好ましい実施形態において、本発明による方法は、クエン酸又はその塩をタンパク質製剤に少なくとも約0.01mMの濃度で添加することによって、液体タンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減することに関する。同様に、そのような好ましい実施形態において、クエン酸又はその塩は、クエン酸又はその塩をタンパク質製剤に少なくとも約0.01mMの濃度で添加することによって、液体タンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減するために使用される。したがって、そのような好ましい実施形態において、本発明によるタンパク質製剤は、クエン酸又はその塩を約0.01mM~約9mM、又は約0.01mM~約0.9mMの濃度で含む液体タンパク質製剤である。
【0045】
一実施形態において、ポリソルベートは、ポリソルベート-20、ポリソルベート-80、又はそれらの混合物を含む。一実施形態において、ポリソルベートは、ポリソルベート-20、ポリソルベート-80、又はそれらの混合物である。一実施形態において、ポリソルベートは、ポリソルベート-20である。一実施形態において、ポリソルベートは、ポリソルベート-80である。したがって、一実施形態において、ポリソルベート分解を低減することは、ポリソルベート-20及び/又はポリソルベート-80の分解を低減することを含む。
【0046】
タンパク質製剤中のポリソルベートの量は、高速液体クロマトグラフィー蛍光ミセルアッセイ(HPLC-FMA)などの、蛍光ミセルアッセイ(FMA)を使用して測定することができる。一般に、当該技術分野で知られている、PS20及びPS80などのポリソルベートを検出するために好適なHPLCと結合した全てのFMAを使用することができる。HPLC-FMAは、例えば、アイソクラティックポンプ、オートサンプラー、編込反応器コイル(1mL;Supelco #57410-U)、及び蛍光検出器(Waters 2475 FLR検出器)を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システム(Waters Alliance e2695)を使用して実施することができる。
【0047】
タンパク質、特に治療用タンパク質は、主に、細胞が標的タンパク質を発現する、哺乳動物又は微生物細胞培養物を使用して産生される。タンパク質に加えて、細胞はまた、細胞培養上清中に含有される部分にある、宿主細胞タンパク質(HCP)を産生する。下流精製プロセスは、典型的には、HCPの100%を枯渇させることができない。これは、小さなパーセンテージのHCPがタンパク質製剤中に存在することを示す。ポリソルベート分解の1つの根本的な原因は、HCPに存在するリパーゼによって触媒される分解であることが知られている。
【0048】
一実施形態において、ポリソルベート分解は、脂肪分解活性によって引き起こされ得る。一実施形態において、脂肪分解活性は、リパーゼによって発揮され得る。一実施形態において、リパーゼは、宿主細胞タンパク質(HCP)に由来し得る。
【0049】
一実施形態において、タンパク質製剤は、宿主細胞タンパク質(HCP)を含む。一実施形態において、脂肪分解活性は、宿主細胞タンパク質(HCP)によって発揮される。一実施形態において、脂肪分解活性は、宿主細胞タンパク質(HCP)に由来するリパーゼによって発揮される。
【0050】
本発明の意味での脂肪分解活性は、望ましくない残留脂肪分解活性である。
【0051】
タンパク質製剤中のHCPの量は、例えば、USP 39 NF 34 - General Chapter<1132>“Residual Host Cell Protein Measurement in Biopharmaceuticals”に従って、当業者に知られている、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定することができる。
【0052】
一実施形態において、タンパク質製剤は、タンパク質製剤の重量に基づいて、微量の不純物、例えば、100ppm以下の宿主細胞タンパク質としてHCPを含む。一実施形態において、タンパク質製剤は、タンパク質製剤の重量に基づいて、95ppm以下、例えば、90ppm以下、85ppm以下、80ppm以下、75ppm以下、70ppm以下、65ppm以下、又は60ppm以下の、宿主細胞タンパク質(HCP)を含む。一実施形態において、タンパク質製剤は、タンパク質製剤の重量に基づいて、1~100ppmの宿主細胞タンパク質(HCP)を含む。
【0053】
好ましくは、タンパク質製剤は、脂肪分解活性を有さないタンパク質の重量に基づいて、100ppm以下の宿主細胞タンパク質(HCP)を含む。脂肪分解活性を有さない2つ以上のタンパク質がタンパク質製剤中に存在する場合、HCPの量は、タンパク質製剤中に存在する脂肪分解活性を有さないタンパク質の総合重量に基づくと理解されるものとする。一実施形態において、タンパク質製剤は、脂肪分解活性を有さないタンパク質の重量に基づいて、95ppm以下、例えば、90ppm以下、85ppm以下、80ppm以下、75ppm以下、70ppm以下、65ppm以下、又は60ppm以下の、宿主細胞タンパク質(HCP)を含む。一実施形態において、タンパク質製剤は、脂肪分解活性を有さないタンパク質の重量に基づいて、1~100ppmの宿主細胞タンパク質(HCP)を含む。
【0054】
好ましくは、タンパク質製剤は、標的タンパク質の重量に基づいて、100ppm以下の宿主細胞タンパク質(HCP)を含む。タンパク質製剤中に2つ以上の標的タンパク質が存在する場合、HCPの量は、タンパク質製剤中に存在する標的タンパク質の総合重量に基づく。一実施形態において、タンパク質製剤は、標的タンパク質の合計重量に基づいて、95ppm以下、例えば、90ppm以下、85ppm以下、80ppm以下、75ppm以下、70ppm以下、65ppm以下、又は60ppm以下の、宿主細胞タンパク質(HCP)を含む。一実施形態において、タンパク質製剤は、標的タンパク質の合計重量に基づいて、1~100ppmの宿主細胞タンパク質(HCP)を含む。
【0055】
一実施形態において、タンパク質製剤は、少なくとも1μg/mlの脂肪分解活性を有さないタンパク質を含む。一実施形態において、タンパク質製剤は、少なくとも10μg/mlの脂肪分解活性を有さないタンパク質を含む。一実施形態において、タンパク質製剤は、少なくとも100μg/mlの脂肪分解活性を有さないタンパク質を含む。一実施形態において、タンパク質製剤は、少なくとも500μg/mlの脂肪分解活性を有さないタンパク質を含む。一実施形態において、タンパク質製剤は、少なくとも1000μg/mlの脂肪分解活性を有さないタンパク質を含む。
【0056】
一実施形態において、タンパク質製剤は、少なくとも1μg/mlの標的タンパク質を含む。一実施形態において、タンパク質製剤は、少なくとも10μg/mlの標的タンパク質を含む。一実施形態において、タンパク質製剤は、少なくとも100μg/mlの標的タンパク質を含む。一実施形態において、タンパク質製剤は、少なくとも500μg/mlの標的タンパク質を含む。一実施形態において、タンパク質製剤は、少なくとも1000μg/mlの標的タンパク質を含む。
【0057】
タンパク質製剤は、好ましくは、脂肪分解活性の唯一の供給源としてHCPを有する。
【0058】
本発明によれば、タンパク質製剤は、脂肪分解活性を有さないタンパク質を含む。したがって、当該タンパク質は、リパーゼではない。したがって、タンパク質製剤は、脂肪分解活性を有さないタンパク質及びポリソルベートを含む。したがって、タンパク質製剤は、リパーゼではないタンパク質及びポリソルベートを含む。一実施形態において、タンパク質は、治療用タンパク質である。そのような実施形態において、治療用タンパク質は、脂肪分解活性を有さない、すなわち、リパーゼではない。好ましくは、治療用タンパク質は、抗体である。一実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体である。好ましくは、抗体は、抗CD20抗体である。一実施形態において、抗体は、リツキシマブである。
【0059】
タンパク質製剤は、典型的には、それを必要とする対象に投与されることが意図される。本発明のタンパク質製剤の投与経路は、特に限定されない。一実施形態において、タンパク質製剤は、それを必要とする対象に投与される。一実施形態において、タンパク質製剤は、皮下注射のためのものである。一実施形態において、タンパク質製剤は、皮下注射のための液体タンパク質製剤である。一実施形態において、液体タンパク質製剤は、それを必要とする対象に皮下注射として投与される。
【0060】
通常は高濃度のクエン酸塩で緩衝されるタンパク質製剤は、皮下(sc)注射として投与されるとき、注射部位疼痛を引き起こす欠乏を有する。本発明は、低濃度(例えば、0.1mM~20mM)のクエン酸又はその塩を使用することによってこれを回避し、sc投与後に注射部位疼痛は観察されない可能性が高いが、依然としてポリソルベート分解の優れた低減は驚くほど達成される。したがって、タンパク質製剤が皮下注射を意図しているとき、クエン酸又はその塩は、本発明においてポリソルベート分解を低減するためにタンパク質製剤中低濃度で使用され、任意に、sc注射のための追加の緩衝剤をタンパク質製剤に含めることができる。
【0061】
よって、一実施形態において、タンパク質製剤は、緩衝剤、塩、安定剤、又はそれらの組み合わせを更に含む。
【0062】
好適な緩衝剤は、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩、コハク酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせを含む。好適な安定剤は、トレハロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、メチオニン、ヒスチジン、グリシン、アルギニン、及びそれらの組み合わせを含む。
【0063】
上記の実施形態及び項目は、複数の可能性の例を示すのみであり、これらの特徴及び構成の限定を形成すると理解されるべきではない。記載される特徴の任意の可能な組み合わせ及び構成は、本発明の範囲に従って選択することができる。本発明の1つの特定の態様に関連して本明細書に記載される全ての実施形態及び好ましい実施形態は、同様に、本発明による使用又は方法などの本発明の全ての他の態様に適用されるものとする。
【0064】
本発明は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない、以下の例によって更に例示される。
【実施例】
【0065】
以下において、タンパク質製剤におけるポリソルベート分解に対する様々なクエン酸塩濃度の効果を調査した。
【0066】
材料
クエン酸一水和物(ACS試薬、≧99.0%)、スクロース(≧99.5%)、及びL-ヒスチジン(L-His、≧98.5%)は、Sigma-Aldrich(現Merck KGaA)から入手した。L-ヒスチジン一塩酸塩一水和物(L-His HCl、99%)は、AlfaAesarから入手した。ポリソルベート80(PS80、NF、Multi-Compendial)は、J.T.Bakerから入手した。
【0067】
18g/Lでのリツキシマブタンパク質A:溶出液の下流精製試料は、以下のように得た。
細胞培養材料は、リツキシマブを発現するCHO SSIクローンから得た。細胞培養物は、帯電デプスフィルターを使用して清澄化した。生成物は、次世代PrA樹脂上で捕捉した。プロテインA溶出液材料は、pH7.5にし、0.2μmの膜で濾過し、-20℃で保存した。材料は、更なる精製なしに使用した。
【0068】
タンパク質製剤試料の調製のための一般的な手順
pH6.0の25mMのL-His/L-His HCl、600mMのスクロース、及び0.05%(w/v)のPS80を含有する製剤緩衝液を調製した。溶液を、0.22μm PVDF Durapore(登録商標)滅菌フィルターで濾過した。
【0069】
pH6.0の40mMクエン酸の第2の溶液を調製し、0.22μm PVDF Durapore(登録商標)滅菌フィルターで濾過した。40mMのクエン酸ストック溶液に加えて、水を使用した20mM、2mM、及び0.2mMの目標濃度の40mMのクエン酸溶液の希釈液を調製した。
【0070】
5つのタンパク質製剤試料は各々、320μLの下流精製試料(リツキシマブプロテインA溶出液、18g/L)を、5つの異なる粒子を含まないNalgeneボトルにおいて1680μLの上記調製された製剤緩衝液にスパイクすることによって調製した。その後、2000μLの上記で調製されたそれぞれのクエン酸溶液(40mM、20mM、2mM、及び0.2mM)を、5つのボトルのうちの4つに添加した。5つの異なるクエン酸濃度(20mM、10mM、1mM、0.1mM、及び0mM)を有する最終的なタンパク質製剤を、2mLのHPLCバイアルにアリコートした。
【0071】
5つのタンパク質製剤試料の最終組成は、6のpH、それぞれ、20mM、10mM、1mM、0.1mM、及び0mMの最終クエン酸濃度で、10.5mM L-His/L-His HCl、250mMスクロース、0.02%(w/v)PS80、1.4mg/mLのリツキシマブプロテインA溶出液であった。
【0072】
タンパク質製剤試料におけるポリソルベート分解の分析
1.2mLのタンパク質製剤試料の各々を、粒子を含まないNalgeneチューブにアリコートし、40℃安定性チャンバーに入れた。試料を、水中のインタクトなPS80の標準曲線に対して、HPLC-FMAを使用したインキュベーションの2週間及び4週間後に分析した。
【0073】
HPLC-FMA測定は、アイソクラティックポンプ、蛍光検出器(Waters 2475 FLR検出器)、オートサンプラー、及び編込反応コイル1mL(Supelco #57410-U)を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システム(Waters Alliance e2695)を使用して実施した。試料を、pH8の150mMのNaCl、50mMのTRIS、5%(v/v)のアセトニトリルの溶液に溶解された5μMのN-フェニル-1-ナプチルアミン(NPN)、15ppm(w/v)のBrij(登録商標)35を含有する移動相に注射した。蛍光を、λex=350nm及びλem=420nmで測定した。ピーク積分及び分析を、Empower 3クロマトグラフデータシステム(CDS)を使用して実施した。
【0074】
40℃で2週間及び4週間保存後の5つの異なるクエン酸濃度(20mM、10mM、1mM、0.1mM、及び0mM)を有するタンパク質製剤の結果を
図1に示す。
【0075】
図1に見ることができるように、クエン酸を有さない(0mM)タンパク質製剤試料において、PS80濃度は、0.1mM、1mM、10mM、及び20mMのクエン酸を含むタンパク質製剤試料と比較して、40℃での2週間及び4週間のインキュベーション後に著しく低かった。これは、少量のクエン酸がポリソルベート分解を低減することにおいて予想外に効果的であることを実証する。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪分解活性を有さないタンパク質及びポリソルベートを含むタンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減するための方法であって、クエン酸又はその塩を前記タンパク質製剤に約0.1mM~約5mM、又は約0.1mM~約0.9mMの濃度で添加することを含む、方法。
【請求項2】
前記ポリソルベートが、ポリソルベート-20、ポリソルベート-80、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脂肪分解活性を有さない前記タンパク質が、治療用タンパク質である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質製剤が、皮下注射のためのものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
脂肪分解活性を有さないタンパク質及びポリソルベートを含むタンパク質製剤におけるポリソルベート分解を低減するためのクエン酸又はその塩の使用であって、クエン酸又はその塩が、前記タンパク質製剤に約0.1mM~約5mM、又は約0.1mM~約0.9mMの濃度で添加される、使用。
【請求項6】
前記ポリソルベートが、ポリソルベート-20、ポリソルベート-80、又はそれらの混合物を含む、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
脂肪分解活性を有さない前記タンパク質が、治療用タンパク質である、請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
前記タンパク質製剤が、皮下注射のためのものである、請求項5~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
低減したポリソルベート分解を有するタンパク質製剤であって、脂肪分解活性を有さないタンパク質と、ポリソルベートと、約0.1mM~約5mM若しくは約0.1mM~約0.9mMの濃度のクエン酸又はその塩と、を含む、タンパク質製剤。
【請求項10】
前記ポリソルベートが、ポリソルベート-20、ポリソルベート-80、又はそれらの混合物を含む、請求項9に記載のタンパク質製剤。
【請求項11】
脂肪分解活性を有さない前記タンパク質が、治療用タンパク質である、請求項9又は10に記載のタンパク質製剤。
【請求項12】
前記タンパク質製剤が、皮下注射のためのものである、請求項9~11のいずれか一項に記載のタンパク質製剤。
【請求項13】
前記タンパク質製剤が、脂肪分解活性の唯一の供給源として宿主細胞タンパク質(HCP)を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法、使用、又はタンパク質製剤。
【請求項14】
タンパク質製剤が、前記タンパク質製剤の重量に基づいて、100ppm以下の量でHCPを含む、請求項13に記載の方法、使用、又はタンパク質製剤。
【請求項15】
前記タンパク質製剤が、少なくとも1μg/mlの脂肪分解活性を有さない前記タンパク質を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法、使用、又はタンパク質製剤。
【国際調査報告】