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特表2025-503765ハロプジノンを有効成分として含有する神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】ハロプジノンを有効成分として含有する神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/517 20060101AFI20250128BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20250128BHJP
【FI】
A61K31/517 ZNA
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/16
A61P21/00
A61P43/00 111
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543121
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-09-13
(86)【国際出願番号】 KR2022020102
(87)【国際公開番号】W WO2023140505
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0007094
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521001526
【氏名又は名称】キュラミス インク
【住所又は居所原語表記】2F, 21, Daehak-ro 12-gil, Jongno-gu Seoul Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】516011833
【氏名又は名称】ソウル ナショナル ユニバーシティ ホスピタル
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY HOSPITAL
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ジョンジュン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヨンナム
(72)【発明者】
【氏名】イ、ドヨン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC46
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA94
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明はハロプジノン(Halofuginone)を有効成分として含有する神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用組成物に関するものであって、具体的に筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、ALS)細胞モデル及び動物モデルでハロプジノンが線維症を抑制し、骨格筋の生成を向上させ関節の構築を改善し、中枢神経系の炎症反応や神経細胞死滅を抑制する二重効果を示し、ALSの症状進行を遅延させ、遂行能力及び生存期間を向上させることができることを確認したので、前記ハロプジノンは、ALSを含む神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用組成物の有効成分として有用に利用されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロフジノン(Halofuginone)又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、神経退行性又は運動神経疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記ハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩はTGF-β抑制剤である、請求項1に記載の神経退行性又は運動神経疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記ハロプジノンは、下記[化学式1]で記載される化合物である、請求項1に記載の神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用薬学組成物:
[化学式1]
.
【請求項4】
前記ハロプジノンは関節滑膜腔の線維症を緩和し、骨格筋生成を向上するものである、請求項1に記載の神経退行性又は運動神経疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記ハロプジノンは中枢神経系の炎症反応および神経細胞死滅を抑制するものである、請求項1に記載の神経退行性又は運動神経疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記ハロプジノンは神経退行性又は運動神経疾患の症状悪化を遅延させ、遂行能力および生存期間を向上させるものである、請求項1に記載の神経退行性又は運動神経疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記神経退行性又は運動神経疾患は筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋肉緊張異常症、脊髄性筋萎縮症又は炎症性神経病症である、請求項1に記載の神経退行性又は運動神経疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項8】
ハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、神経退行性又は運動神経疾患予防又は改善用保健機能食品組成物。
【請求項9】
ハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩を個体に投与する段階を含む、神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療方法。
【請求項10】
神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用薬剤として製造するためのハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩の用途。
【請求項11】
神経退行性又は運動神経疾患の予防又は改善用健康機能食品組成物として製造するためのハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロプジノン(Halofuginone)を有効成分として含有する神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、ALS)、アルツハイマー病(Alzheimer's disease)、パーキンソン病(Parkinson's disease)、ハンチントン病(Huntington's disease)、多発性硬化症(Multiple sclerosis)などは代表される退行性神経疾患又は運動神経疾患で、現在臨床的に使用されている治療剤が極めて制限的である。
【0003】
ALSは筋萎縮、関節拘縮及び痛みの進行によって生の質と死の質を低下させる。また、遺伝的突然変異、蛋白質恒常性障害、ミトコンドリア機能障害、神経機能障害及び神経炎症を含む様々な病態生理学的メカニズムにより、臨床経過及び予後が異質である。
【0004】
TGF-β(Transforming growth factor-β)は、細胞成長、分化および細胞死滅のような細胞調節に関与する多機能サイトカインで、TGF-βとALSの間の関連性が現れた後、ALS進行におけるTGF-βの役割が明らかになり始めた。骨格筋でTGF-βは損傷した筋肉を回復する役割をし、一般的に筋形成、成長および分化を調節する。しかし、TGF-βが持続的に増加すると、筋形成が減少し、筋肉線維化及び萎縮が促進される。ALSのミューリンモデルを使用した以前の研究は、症状段階で向上したTGF-β信号伝達経路を示し、繊維/脂肪生成前駆体の増加により、豊富な細胞外基質(extracellular matrix、ECM)生成が現れた。同様に、正常な神経系では興奮毒性(excitotoxic)及び酸化的損傷からニューロンを保護し、神経発生に重要な役割をすると知られている。しかし、持続的に上昇したTGF-βは、ALS疾患の進行促進と関連があると報告された。
【0005】
また、TGF-β信号伝達経路はALSだけでなく、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症とも関連性があると報告された。
【0006】
そこで、持続的なTGF-βによるALSを含む神経退行性又は運動神経疾患の加速化を防ぎ、治療効果を示すことができる治療剤の開発に努力した結果、ALS細胞モデルおよび動物モデルでハロプジノン(Halofuginone)がTGF-β上昇による線維症を抑制し、骨格筋の生成を向上させて関節構築を改善し、中枢神経系の炎症反応および神経細胞死滅を抑制する二重効果を示し、ALSの症状進行を遅延させ、遂行能力および生存期間を向上させることができることを確認し、前記ハロプジノンをALSを含む神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用組成物の有効成分として有用に利用できることを明らかにすることによって、本出願に至ることになった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Katsuno,M.et al。Transforming growth factor-βsignaling in motor neuron diseases。Current molecular medicine 11,48-56,2011。
【非特許文献2】Kashima,R.&Hata,A。The role of TGF-βsuperfamily signaling in neurological disorders。Acta biochimica et biophysica Sinica 50,106-120,2018。
【非特許文献3】Peters,S.et al。The TGF-βSystem As a Potential Pathogenic Player in Disease Modulation of Amyotrophic Lateral Sclerosis。Frontiers in neurology 8,669,2017。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的はハロプジノン(Halofuginone)又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、神経退行性又は運動神経疾患予防又は治療用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するために、本発明はハロプジノン(Halofuginone)又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用の薬学組成物を提供する。
【0010】
また、本発明はハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、神経退行性又は運動神経疾患予防又は改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0011】
また、本発明はハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩を個体に投与する段階を含む、神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0012】
また、本発明は神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療に使用するためのハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩を含有する薬学組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は神経退行性又は運動神経疾患の予防又は改善に使用するためのハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩を含有する健康機能食品組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用薬剤として製造するためのハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【0015】
併せて、本発明は神経退行性又は運動神経疾患予防又は改善用健康機能食品組成物で製造するためのハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【0016】
【発明の効果】
【0017】
本発明者らは筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、ALS)細胞モデル及び動物モデルにおいて、ハロフジノン(Halofuginone)が線維症を抑制し、骨格筋の生成を向上させて関節構築を改善し、中枢神経系の炎症反応及び神経細胞の死滅を抑制する二重効果を示し、ALSの症状進行を遅延させ、遂行能力及び生存期間を向上させることができることを確認したので、前記ハロプジノンは、ALSを含む神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用組成物の有効成分として有用に利用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例によって筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、ALS)動物モデルにハロプジノン(Halofuginone)を投与する方法を模式化した図である。
図2a】筋芽細胞(myoblast)にTGF-β1(Transforming growth factor-β1)刺激後、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、α-SMA、MyoD mRNA発現(図2a)及びTGF-β1、α-SMA、MyoD蛋白質発現(図2b)を確認した図である。
図2b】筋芽細胞(myoblast)にTGF-β1(Transforming growth factor-β1)刺激後、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、α-SMA、MyoD mRNA発現(図2a)及びTGF-β1、α-SMA、MyoD蛋白質発現(図2b)を確認した図である。
図3a】筋芽細胞に様々な濃度のハロプジノン処理(図3a)、又はTGF-β1及び様々な濃度のハロプジノン処理(図3b)後の細胞生存率を確認し、p-Smad2/Samd2比率、TGF-β1、α-SMA、MyoD、コラーゲンI蛋白質発現(図3c)を確認した図である。
図3b】筋芽細胞に様々な濃度のハロプジノン処理(図3a)、又はTGF-β1及び様々な濃度のハロプジノン処理(図3b)後の細胞生存率を確認し、p-Smad2/Samd2比率、TGF-β1、α-SMA、MyoD、コラーゲンI蛋白質発現(図3c)を確認した図である。
図3c】筋芽細胞に様々な濃度のハロプジノン処理(図3a)、又はTGF-β1及び様々な濃度のハロプジノン処理(図3b)後の細胞生存率を確認し、p-Smad2/Samd2比率、TGF-β1、α-SMA、MyoD、コラーゲンI蛋白質発現(図3c)を確認した図である。
図4a】筋芽細胞にTGF-β1及びハロプジノン処理後、TGF-β1、α-SMA、MyoD、コラーゲンI(collagenI)mRNA発現(図4a)及びTGF-β1、α-SMA、MyoD、コラーゲンI蛋白質発現(図4b)を確認し,免疫細胞化学分析によりα-SMA,MyoD発現(図4c)を確認した図である。
図4b】筋芽細胞にTGF-β1及びハロプジノン処理後、TGF-β1、α-SMA、MyoD、コラーゲンI(collagenI)mRNA発現(図4a)及びTGF-β1、α-SMA、MyoD、コラーゲンI蛋白質発現(図4b)を確認し,免疫細胞化学分析によりα-SMA,MyoD発現(図4c)を確認した図である。
図4c】筋芽細胞にTGF-β1及びハロプジノン処理後、TGF-β1、α-SMA、MyoD、コラーゲンI(collagenI)mRNA発現(図4a)及びTGF-β1、α-SMA、MyoD、コラーゲンI蛋白質発現(図4b)を確認し,免疫細胞化学分析によりα-SMA,MyoD発現(図4c)を確認した図である。
図5a】ALS動物モデルから分離した線維芽細胞にハロプジノン処理後、TGF-β1、α-SMA、コラーゲンImRNA発現(図5a)及びp-Smad2/Samd2の比率、TGF-β1、α-SMA、コラーゲンI蛋白質発現(図5b)を確認した図である。
図5b】ALS動物モデルから分離した線維芽細胞にハロプジノン処理後、TGF-β1、α-SMA、コラーゲンImRNA発現(図5a)及びp-Smad2/Samd2の比率、TGF-β1、α-SMA、コラーゲンI蛋白質発現(図5b)を確認した図である。
図6a】ALS動物モデルにハロプジノン投与後の運動機能及び体重変化(図6a)及び症状発病変化(図6b及び図6c)を確認した図である。
図6b】ALS動物モデルにハロプジノン投与後の運動機能及び体重変化(図6a)及び症状発病変化(図6b及び図6c)を確認した図である。
図6c】ALS動物モデルにハロプジノン投与後の運動機能及び体重変化(図6a)及び症状発病変化(図6b及び図6c)を確認した図である。
図7a】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、90日齢の雌(図7a)及び雄(図7b)、120日齢の雌(図7c)及び雄(図7d)にTGF-β1、α-SMA、MyoD、コラーゲンIの発現を免疫組織化学分析により確認した図である。
図7b】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、90日齢の雌(図7a)及び雄(図7b)、120日齢の雌(図7c)及び雄(図7d)にTGF-β1、α-SMA、MyoD、コラーゲンIの発現を免疫組織化学分析により確認した図である。
図7c】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、90日齢の雌(図7a)及び雄(図7b)、120日齢の雌(図7c)及び雄(図7d)にTGF-β1、α-SMA、MyoD、コラーゲンIの発現を免疫組織化学分析により確認した図である。
図7d】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、90日齢の雌(図7a)及び雄(図7b)、120日齢の雌(図7c)及び雄(図7d)にTGF-β1、α-SMA、MyoD、コラーゲンIの発現を免疫組織化学分析により確認した図である。
図8a】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、生後120日に膝関節滑膜腔において関節可動範囲(ROM)を確認し(図8a)、p-Smad2/Samd2の割合、TGF-β1、α-SMA、MyoD、コラーゲンI蛋白質発現(図8b)を確認した図である。
図8b】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、生後120日に膝関節滑膜腔において関節可動範囲(ROM)を確認し(図8a)、p-Smad2/Samd2の割合、TGF-β1、α-SMA、MyoD、コラーゲンI蛋白質発現(図8b)を確認した図である。
図9a】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、生後120日に腰椎脊髄における微細阿膠細胞活性(図9a)、星状膠細胞活性(図9b)、IL-1β発現(図9c)、ChAT陽性運動ニューロン数(図9d)、ChATmRNA発現(図9e)、ChAT蛋白質発現(図9f)を確認した図である。
図9b】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、生後120日に腰椎脊髄における微細阿膠細胞活性(図9a)、星状膠細胞活性(図9b)、IL-1β発現(図9c)、ChAT陽性運動ニューロン数(図9d)、ChATmRNA発現(図9e)、ChAT蛋白質発現(図9f)を確認した図である。
図9b】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、生後120日に腰椎脊髄における微細阿膠細胞活性(図9a)、星状膠細胞活性(図9b)、IL-1β発現(図9c)、ChAT陽性運動ニューロン数(図9d)、ChATmRNA発現(図9e)、ChAT蛋白質発現(図9f)を確認した図である。
図9c】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、生後120日に腰椎脊髄における微細阿膠細胞活性(図9a)、星状膠細胞活性(図9b)、IL-1β発現(図9c)、ChAT陽性運動ニューロン数(図9d)、ChATmRNA発現(図9e)、ChAT蛋白質発現(図9f)を確認した図である。
図9d】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、生後120日に腰椎脊髄における微細阿膠細胞活性(図9a)、星状膠細胞活性(図9b)、IL-1β発現(図9c)、ChAT陽性運動ニューロン数(図9d)、ChATmRNA発現(図9e)、ChAT蛋白質発現(図9f)を確認した図である。
図9e】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、生後120日に腰椎脊髄における微細阿膠細胞活性(図9a)、星状膠細胞活性(図9b)、IL-1β発現(図9c)、ChAT陽性運動ニューロン数(図9d)、ChATmRNA発現(図9e)、ChAT蛋白質発現(図9f)を確認した図である。
図9f】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、生後120日に腰椎脊髄における微細阿膠細胞活性(図9a)、星状膠細胞活性(図9b)、IL-1β発現(図9c)、ChAT陽性運動ニューロン数(図9d)、ChATmRNA発現(図9e)、ChAT蛋白質発現(図9f)を確認した図である。
図10a】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、生後90日に腰椎脊髄から微細阿膠細胞活性(図10a)及びChAT陽性運動ニューロン数(図10b)を確認した図である。
図10b】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、生後90日に腰椎脊髄から微細阿膠細胞活性(図10a)及びChAT陽性運動ニューロン数(図10b)を確認した図である。
図11a】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、生後120日に腰椎脊髄においてTGF-β、iNOS、CD86、アルギナーゼ1(arginase1)、IFN-α、IL-6、IL-1β,TNF-α,カスパーゼ3(caspase-3),bcl2,bax mRNA発現(図11a)及び切断されたカスパーゼ3,bcl2,bax蛋白質発現(図11a)を確認した図である。
図11b】ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、生後120日に腰椎脊髄においてTGF-β、iNOS、CD86、アルギナーゼ1(arginase1)、IFN-α、IL-6、IL-1β,TNF-α,カスパーゼ3(caspase-3),bcl2,bax mRNA発現(図11a)及び切断されたカスパーゼ3,bcl2,bax蛋白質発現(図11a)を確認した図である。
【発明の実施のための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0020】
本発明において用語"予防"とは、本発明の組成物投与で疾患の発生及び加速化、症状の拡散及び再発を抑制させたり遅延させるすべての行為を意味し、用語"治療"とは、本発明の組成物投与で前記疾患の症状が好転したり、有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0021】
本発明において用語"投与"は任意の適切な方法で患者に所定の物質を提供することを意味し、本発明の組成物の投与経路は目的組織に到達できる限り一般的なすべての経路を通じて経口又は非経口投与されることができる。また、組成物は活性物質が標的細胞に移動できる任意の装置によって投与されることができる。
【0022】
本発明はハロプジノン(Halofuginone)又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用の薬学組成物を提供する。
【0023】
また、本発明はハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩を個体に投与する段階を含む、神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0024】
また、本発明は神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療に使用するためのハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩を含有する薬学組成物を提供する。
【0025】
また、本発明は神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用薬剤として製造するためのハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【0026】
本発明で、前記ハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩はTGF-β抑制剤で、下記[化学式1]で記載される化学構造を有する:
[化学式1]
.
【0027】
また、前記ハロプジノンは市販のもの、合成したものにすべて無頓着に使用できる。
【0028】
本発明で、前記の神経退行性又は運動神経疾患は筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋肉緊張異常症、脊髄性筋萎縮症又は炎症性神経病症であり得るが、これに制限されるわけではない。
【0029】
具体的に、前記の神経退行性又は運動神経疾患において、ハロプジノンはTGF-β刺激による関節滑膜腔の線維症を緩和し、骨格筋生成を向上させ、疾患を予防又は治療することができる。
【0030】
また、前記の神経退行性又は運動神経疾患において、ハロプジノンはTGF-β刺激による中枢神経系の炎症反応および神経細胞死滅を抑制し、疾患を予防又は治療することができる。より具体的に、前記ハロプジノンは中枢神経系で抗炎症因子、例えばアルギナーゼ1(arginase1)の発現を増加させ、伝炎因子、例えばiNOS、CD86、IFN-α、TNF-α、IL-1β又はIL-6の発現を減少させて疾患を予防又は治療することができる。また、前記ハロプジノンは中枢神経系で抗神経細胞死滅因子、例えばbcl-2の発現を増加させ、神経細胞死滅因子、例えばカスパーゼ3(caspase-3)及びbaxの発現を減少させて疾患を予防又は治療することができる。
【0031】
また、前記の神経退行性又は運動神経疾患において、ハロプジノンは症状悪化を遅延させ、遂行能力および生存期間を向上させることができる。
【0032】
本発明の具体的な実施例で、本発明者たちは筋芽細胞(myoblast)でTGF-β1刺激により線維症が誘導され、筋形成が低下する反面、ハロプジノンを処理する場合、TGF-β1刺激による線維症誘導及び筋形成低下が抑制されることを確認した。
【0033】
また、本発明者たちは筋萎縮性側索硬化症(ALS)動物モデルから線維芽細胞を分離した後、ハロプジノンを処理した結果、線維芽細胞で線維症および筋肉転写因子の低下が抑制されることを確認した。
【0034】
また、本発明者らはALS動物モデルにハロプジノンを投与した結果、ALS発病が遅延し、遂行能力及び生存期間が向上することを確認した。また、ハロプジノンを投与したALS動物モデルで関節滑膜腔の線維症が減少し、骨格筋の生成が向上して関節構築が改善されることを確認した。併せて、ハロプジノンを投与したALS動物モデルの中枢神経系(CNS)で抗炎症及び神経細胞死滅抑制効果が現れることを確認した。
【0035】
したがって、本発明者たちはALS細胞モデル及び動物モデルでハロプジノンが線維症を抑制し、骨格筋生成を向上して関節構築を改善し、中枢神経系の炎症反応及び神経細胞死滅を抑制する二重効果を示し、ALSの症状進行を遅延させて遂行能力及び生存期間を向上させることができることを確認したので、前記ハロプジノンはALSを含む神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用薬学組成物の有効成分として有用に利用されることができる。
【0036】
本発明のハロプジノンは、薬学的に許容可能な塩、これから製造できる可能な溶媒和物、水和物、ラセミ体、又は立体異性体をすべて含む。
【0037】
発明のハロプジノンは薬学的に許容可能な塩の形態で使用でき、塩としては薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩が有用である。酸付加塩は塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨード化水素酸、亜硝酸又は亜リン酸のような無機酸類と脂肪族モノおよびジカルボンレート、フェニル置換アルカノエイト、ヒドロキシアルカノエイトおよびアルカンジオエイト、芳香族酸類、脂肪族および芳香族スルホン酸類のような無毒性有機産から得られる。このような薬学的に無毒な塩類としては、ソルフェイト、ピロソルフェイト、バイソルフェイト、サルファイト、バイサルファイト、ニットレート、ホスフェート、モノハイドロゲンホスフェート、ジヒドロゲンホスフェート、メタホスフェート、ピロホスフェイトクロライド、ブロマイド、アイオダイド、フルオロド、アセテート、プロピオネート、デカノエイト、カプリレート、アクリレート、ポメート、イソブチレート、カフレート、ヘプタノエイト、プロピオレート、オキサレート、マロネート、ソクシネート、スベレート、セバケート、プーマレート、マリエイト、ブチン-1、4-ジオエイト、ヘキサン-1、6-ジオエイト、ベンゾエイト、クロロベンゾエイト、メチルベンゾエイト、ジニトロベンゾエイト、ヒドロキシベンゾエイト、メトキシベンゾエイト、フタレート、テレフタレート、ベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、クロロベンゼンスルホネート、キシレンスルホネート、フェニルアセテート、フェニルプロピオネート、フェニルブチレート、シトレート、ラクテート、ヒドロキシ酪酸塩、グリコレート、マレート、タートレート、メタンスルホネート,プロパンスルホネート,ナフタレン-1-スルホネート、ナフタレン-2-スルホネート又はマンデレートを含む。
【0038】
本発明による酸付加塩は、通常の方法、例えば、本発明の化合物を過量の酸水溶液中に溶解させ、この塩を水混化性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトン又はアセトニトリルを使用して沈殿させて製造することができる。また、この混合物で溶媒や過量の酸を蒸発させて乾燥したり、又は析出された塩を吸入濾過させて製造することもできる。
【0039】
また、塩基を使用して薬学的に許容可能な金属塩を作ることができる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩は、例えば化合物を過量のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解し、非溶解して化合物塩をろ過し、余液を蒸発、乾燥させて得る。この時、金属塩としてはソジウム、カリウム又はカルシウム塩を製造することが制約上適している。また、これに対応する銀塩はアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を適当な銀塩(例、硝酸銀)と反応させて得る。
【0040】
本発明のハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩は、治療的に有効な量で、および薬学的に許容可能な担体を含むことができる。
【0041】
本明細書で使用された"有効な量又は有効量"は、神経退行性および/又は運動神経疾患を遅らせたり、又は最小化したり;又は神経退行性および/又は運動神経疾患の治療又は管理において治療上の利点を提供するのに十分な本発明の化合物の量をいう。
【0042】
前記薬学的に許容可能な担体としては、例えば、経口投与用担体又は非経口投与用担体が使用されることがある。経口投与用担体は、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、マグネシウムステアレート、ステアリン酸などを含むことができる。また、非経口投与用担体は水、適合するオイル、食塩水、水性グルコース及びグリコール等を含むことができ、安定化剤および保存剤を追加で含むことができる。適した安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、又はアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。適切な保存剤としてはベンズアルコニウムクロライド、メチル-又はプロピル-パラベンおよびクロロブタノールがある。その他の薬学的に許容される担体としては、次の文献に記載されていることを参考にすることができる(Remington's Pharmaceutical Sciences,19thed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,1995)。
【0043】
本発明の薬学組成物は、人間をはじめとする哺乳動物にいかなる投与経路でも投与できる。経口又は非経口的に投与できる。
【0044】
非経口的な投与方法としては,例えば,静脈内,筋肉内,動脈内,骨髄内,硬膜内,心臓内,経皮,皮下,腹腔内,鼻腔内,腸管,局所,舌下又は直腸内投与であることがあるが,これに限定されるものではない。例えば、本発明の薬学組成物を注射型剤形で製造し、これを30ゲージの細い注射針で皮膚を軽く端子(prick)する方法、又は皮膚に直接的に塗布又は付着する方法で投与されることもできる。
【0045】
本発明の薬学組成物は、上述したような投与経路によって経口投与用又は非経口投与用製剤として剤形化することができる。
【0046】
経口投与用製剤の場合に本発明の組成物は、粉末、顆粒、精製、環剤、糖衣精製、カプセル剤、液剤、ゲル剤,シロップ剤,スラリー剤,懸濁液などで当業界に公示された方法を利用して剤形化することができる。例えば、経口用製剤は活性成分を固体賦形剤と配合した後、これを粉砕して適合した補助剤を添加した後、顆粒混合物に加工することによって精製を収得ることができる。適合する賦形剤の例としては、ラクトース、デキストロス、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール及びマルチトール等を含む糖類とトウモロコシのでんぷん、小麦でんぷん、米でんぷん及びジャガイモでんぷんン等を含むデンプン類、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチル-セルロース等を含むセルロース類、ゼラチン、ポリビニルピロリドンなどの充電剤が含まれることがある。また、場合により架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はナトリウムアルギネートなどを崩壊剤として添加することができる。さらに、本発明の薬学組成物は、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤および防腐剤などを追加で含むことができる。
【0047】
非経口投与用製剤の場合は、注射剤、クリーム剤、ローション剤、外用軟膏剤、オイル剤、保湿剤、ゲル剤、パッチ剤、エアロゾルおよび鼻腔吸入剤の形で当業界に公示された方法で剤形化することができる。これらの剤形はすべての製薬化学に一般的に知られている処方書である文献(Remington's Pharmaceutical Science,15th Edition,1975.Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania 18042,Chapter 87:Blaug,Seymour)に記載されている。
【0048】
本発明の薬学組成物の総投与量は、単一投与量(single dose)で患者に投与することができ、より具体的には、単一投与量で長期間多重投与することができ、又は多重投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)によって投与することができる。本発明の薬学組成物は、疾患の症状によって有効成分の含量を異にすることができる。具体的には、本発明の組成物の全体容量は、1日当たりの患者の体重1kg当たり約0.01μgないし1,000mg、より具体的には0.1μgないし100mgであることができる。しかし、前記本発明の薬学組成物の用量は投与経路及び治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌、排泄率など多様な要因を考慮して当分野の通常的な知識を持つ者が適切な有効投与量を決定することができるだろう。本発明による薬学組成物は、本発明の効果を示す限り、その剤形、投与経路及び投与方法に特に制限されない。
【0049】
また、本発明の薬学組成物は、個別治療剤として投与されるか、他の治療剤と併用して投与されることができる。他の治療剤と併用して投与される場合、本発明の組成物と他の治療剤は同時に、個別に又は順次投与することができる。この時、他の治療剤というのは神経退行性および/又は運動神経疾患の治療又は改善効果を持つことがすでに知られている物質である可能性がある。本発明の薬学組成物が他の治療剤と併用して投与される場合、本発明の組成物と他の治療剤はそれぞれ別途の容器に分離させて剤形化されたり、同じ剤形で共に複合剤形化されることができる。
【0050】
また、本発明はハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、神経退行性又は運動神経疾患予防又は改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0051】
また、本発明は神経退行性又は運動神経疾患予防又は改善用健康機能食品組成物として使用するためのハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【0052】
併せて、本発明は神経退行性又は運動神経疾患予防又は改善用健康機能食品組成物で製造するためのハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【0053】
本発明で、前記ハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩、神経退行性又は運動神経疾患に対する内容は前述した通りであるので、具体的な説明は前記内容を援用し、以下では健康機能食品組成物の特有な構成についてのみ説明するようにする。
【0054】
一方、本発明者たちはALS細胞モデル及び動物モデルでハロフジノンが線維症を抑制し、骨格筋生成を向上して関節構築を改善し、中枢神経系の炎症反応及び神経細胞死滅を抑制する二重効果を示し、ALSの症状進行を遅延させ、遂行能力及び生存期間を向上させることができることを確認したので、前記ハロフジノンはALSを含む神経退行性又は運動神経疾患の予防又は改善用健康機能食品組成物の有効成分として有用に利用されることができる。
【0055】
本発明の健康機能食品組成物は、粉末、顆粒、環、精製、カプセル、キャンディ、シロップおよび飲料の中から選択されたいずれかの剤形で製造されることができるが、これに制限されない。
【0056】
前記健康機能食品組成物は、神経退行性又は運動神経疾患を予防又は改善するために摂取できるものであれば、特に制限されない。本発明の健康機能食品組成物を食品添加物として使用する場合、前記の健康機能食品組成物をそのまま添加したり、他の食品又は食品成分と共に使用することができ、通常の方法によって適切に使用することができる。有効成分は,その使用目的(予防又は改善)に応じて適切に使用することができる。一般的に、食品又は飲料の製造時に本発明の健康機能食品組成物に対して15重量部以下、好ましくは10重量部以下の量で添加される。しかし、健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記の量は前記の範囲以下であり、安全性の面で何の問題もないため、有効成分は前記の範囲以上の量で使用できる。前記食品の種類には特別な制限はない。前記健康機能食品組成物を添加できる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、お茶ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤などがあり、通常の意味での健康食品をすべて含む。また、本発明の健康機能食品組成物は、食品、特に機能性食品として製造されることができる。
【0057】
本発明の機能性食品は、食品製造時に通常添加される成分を含み、例えば、蛋白質、炭水化物、脂肪、栄養素および調味剤を含む。例えば、ドリンク剤で製造される場合には、有効成分以外に天然炭水化物又は香味剤を追加成分として含むことができる。前記天然炭水化物はモノサカライド(例えば、グルコース、フラクトースなど)、ジサカライド(例えば、マルトス、スクロースなど)、オリゴ糖、ポリサカライド(例えば、デキストリン,シクロデキストリンなど)又は糖アルコール(例えばキシリトール,ソルビトール,エリスリトールなど)であることが望ましい。前記香味剤は、天然香味剤(例えば、タウマーティン、ステビア抽出物など)と合成香味剤(例えば、サッカリン、アスパルタムなど)を利用することができる。前記の健康機能食品の組成物の他に、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクト酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸,保護性コロイド増粘剤,pH調節剤,安定化剤,防腐剤,グリセリン,アルコール,炭酸飲料に使われる炭酸化剤などをさらに含有することができる。
【0058】
以下、本発明を実施例および実験例によって詳しく説明する。
【0059】
ただし、下記の実施例および実験例は本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
【0060】
<実施例1>筋芽細胞(myoblast)培養、及びTGF-β1(Transforming growth factor-β1)及びハロフジノン(halofuginone)処理
【0061】
TGF-β(Transforming growth factor-β)が筋芽細胞(myoblast)に及ぼす影響及びハロプジノン(halofuginone)による効果を調べるために、マウス筋芽細胞を培養し、前記細胞にTGF-β1及びハロプジノンを処理した。
【0062】
具体的には、マウス筋芽細胞としてC2C12細胞(CRL-1772)をATCC(American Type Culture Collection)で購入し、10%(v/v)小胎児血清(FBS;Gibco)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S;Gibco)が含まれたDEM培地(Welgene)で37℃、5%CO条件下に維持した。C2C12細胞を6ウェル-プレート(3×10細胞/ウェル)に移し、24時間分注した後、24時間後に無血清培地に交換し、5ng/mlのrhTGF-β1(組換えヒトTGF-β1;R&D Systems)に刺激した。刺激後、細胞を24時間無血清培地で多様な濃度(0[control]又は1,2.5、5(低濃度)、10(高濃度)、20、50、100ng/ml)のハロプジノン(halofuginone;Sigma)を処理した。
【0063】
<実施例2>細胞生存力分析
【0064】
細胞計数キット-8(CCK-8キット)分析(Enzo Life Sciences,ALX-850-039)を使用して、C2C12細胞に対して無血清条件でrhTGF-β1又はハロプジノン処理後の細胞生存力を測定した。
【0065】
具体的に、前記<実施例1>のC2C12細胞を96ウェル-プレート(10細胞/ウェル)に24時間培養し、24時間で5ng/mlのrhTGF-β1に刺激した。刺激後、ハロプジノンを様々な濃度(0[control]又は1,2.5,5,10,20,50,100ng/ml)で24時間処理した。24時間後、各ウェルに10μlのCCK-8溶液を添加し、37℃で1時間培養した。その後、VersaMaxマイクロプレート読み取り機(Molecular Devices)を利用して450nmで吸光度を測定した。細胞生存率は対照群(未処理)細胞の生存率で表現した。ハロプジノンの各濃度について,六つのウェルから得られた平均吸光度の平均値を計算した。
【0066】
<実施例3>免疫細胞化学分析
【0067】
前記<実施例1>のように、C2C12細胞に対して無血清条件でrhTGF-β1又はハロプジノン処理後、免疫細胞化学分析を行った。
【0068】
具体的に、C2C12細胞をカバースリップのある6ウェルプレートにプレーティングし、無血清培地でrhTGF-β1に刺激した。刺激24時間後、細胞を24時間無血清培地で低濃度又は高濃度のハロプジノンを処理した。細胞をPBSで3回洗浄し、室温で15分間4%パラホルムアルデヒドで固定した。続いて、固定された細胞をPBSで3回洗浄し、0.5%Triton X-100で5分間処理した後、室温で1時間0.3%PBS-Tで5%消血清アルブミンでブロッキングした。細胞を4℃のブロッキング緩衝液において、抗-α-SMA抗体(1:200;abcam cat#ab7817)、抗-MyoD抗体(1:200;Santa Cruz, cat#sc377460)それぞれと24時間インキュベーションし、PBSで3回洗浄した後、Alexa Fluor2次抗体と室温で1時間インキュベーションした。核DNAをDAPI(4,6-diamino-2-phenylindole、1:1,000;Sigma)で染色しPBSで2回洗浄した後、カバースリップをDako蛍光マウンティング培地(Dako)を使用してガラススライドにマウンティングした。40×対物レンズを使ってLeica TCS SP8共焦点顕微鏡(Leica Microsystems,Wetzlar,Germany)で画像を観察した。また、Leica Application Suite X ソフトウェア(Leica Microsystems)を使用してブラインド方式で定量化した。
【0069】
<実施例4>筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、ALS)動物モデル遺伝子検査
【0070】
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、ALS)におけるハロプジノンの効能を調べるために、ALS動物モデルを使用した。
【0071】
具体的に、すべての動物実験はソウル大学動物病院動物管理委員会の指針(IACUC、承認番号SNU-200220-1-2)に従って行われた。ALS動物モデルで、人間G93A突然変異SOD1遺伝子(B6SJL-Tg(SOD1-G93A)1Gur/J)を発現する形質転換マウスは、ジャクソン研究所(Bar Harbor、ME、USA)で購入した。mtSOD1(G93A)H1高発現者菌株(Jackson Laboratories、Bar Harbor、ME、USA)の雄形質転換ALSマウスを雌マウス(B6/SJLF1)と交配させた。マウスは一定の温度(22±1℃)、相対湿度(40%)及び12時間明暗周期の標準条件下で飼育し、食べ物と水に自由に接近できるようにした。遺伝子型は下記[表1]のプライマーを使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で確認し、移植遺伝子のコピー数を確認した。その後、G93A突然変異SOD1形質転換マウスを時点によって60日齢(無症状)、90日齢(初期症状)及び120日齢(後期症状)の3段階に分けた。計96匹のマウスを実験に使用した。比較群として非-形質転換マウスを用いた。
【0072】
【表1】
<実施例5>ALS動物モデル由来の線維芽細胞培養及びハロプジノン処理
【0073】
ALSにおけるハロプジノンの効能を調べるために、前記<実施例4>でG93A突然変異SOD1遺伝子を確認したALS動物モデルから線維芽細胞を分離し、前記細胞にハロプジノンを処理した。
【0074】
具体的に、前記<実施例4>の120日齢の非-形質転換又はG93A突然変異SOD1形質転換マウスの骨格筋から1次線維芽細胞を分離した。切除された組織をカルシウム及びマグネシウムのないHBSS(Hanks'Balanced Salt Solution;Gibco、cat#14175095)とペニシリン-ストレプトマイシン(Cat#15070-063、Thermo Fisher Scientific)が含まれた100mm培養皿に置いた。筋肉組織を氷ブロックから切断した。その後、組織を1mm彫刻に切り、37℃で1時間0.2%IV型コラゲナーゼ(collagenase type IV;Sigma)で酵素反応させた。10mlのFBS(Gibco)を添加して酵素反応を中断した。組織混合物を5分間、4℃から1,800rpmに遠心分離し、10%FBSが含まれたDMEM培地(Welgene)で再現した。細胞を70μm細胞ろ過器(BDBiosciences、San Jose、CA)を通じてろ過し、10%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシンが含まれたDMEM培地で0.2%ゼラチン(Sigma)コーティングされたプレートで培養した。その後、前記<実施例1>に記載された方法と同じ方法でハロフジノンを処理した。
【0075】
<実施例6>ALS動物モデルにハロプジノン投与
【0076】
ALSにおけるハロプジノンの効能を調べるために、前記<実施例4>でG93A突然変異SOD1遺伝子を確認したALS動物モデルにハロプジノンを投与した。
【0077】
具体的に、図1の模式図のように、前記<実施例4>の性別及び年齢が一致するマウスを無作為に3つのグループに分け、下記表2に示すように、DMSOTG群及びHalTG群は、G93A突然変異SOD1形質転換マウスにビヒクル(DMSO、Duchefa Biochemie、D1370)及びハロプジノン(Sigma、S8144)それぞれ10週齢(初期段階)に10週以上の注射を行った。比較群としてDMSONon-TG群は、非-形質転換マウスに同じ期間同じ方法でビヒクル(DMSO)を腹腔内(i.p.)注射した。
【0078】
【表2】
一方、生化学分析に使用されるG93A突然変異SOD1形質転換マウス又は非形質転換マウスを生後90日および120日に犠牲にし、すべての実験は三重で行った。
【0079】
<実施例7> ALS動物モデルの疾病進行、生存及び運動機能分析
【0080】
ALSにおけるハロプジノンの効能を調べるために、前記<実施例6>のようにALS動物モデルにハロプジノンを投与した後、行動実験を単一盲検方式で行った。
【0081】
具体的に、前記<実施例6>のマウスの臨床状態と体重を出生後83日目から週3回評価した。病気の発病は、尻尾を空中にぶら下がった時にマウスの手足が震えると定義し、これは上部運動ニューロンシステムの臨床的関連によるものと報告されている[S.Nagano,Y。Fujii,T.Yamamoto,M.TaniyamaK. Fukada,T.Yanagihara,et al。The efficacy of trientine or ascorbate alone compared to that of the combined treatment with these two agents in familial amyotrophic lateral sclerosis model mice Exp Neurol,179(2003),pp.176-180]。終結年齢は、動物が平らな表面に横に倒された後、30秒以内に自らを正すことができないものと決定した。この時点でマウスが死んだと見た[C.Zheng,I.Nennesmo,B.Fadeel,J.I.Henter Vascular endothelial growth factor prolongs survival in a transgenic mouse model of ALS Ann Neurol,56(2004),pp.564-567]。マウスの運動機能は、ロタロード装置(JD-A-07M、JEUNG DO BIO &PLANT CO.,LTD.)を用いて検証した。マウスは記録を始める前に1週間訓練された。約8.3秒ごとに1rpmずつ増加させながら、300秒にわたって4rpmの速度で始まり、40rpmまで加速するロードにマウスを乗せた。ロタロードテストは生後83日から1週間に3回ずつ平均3回測定し、連続3回ロタロードに10秒以上留まることができない時点まで測定した。
【0082】
<実施例8> 免疫組織化学分析
【0083】
ALSにおけるハロプジノンの効能を調べるために、前記<実施例6>のようにALS動物モデルにハロプジノンを投与した後、腰椎脊髄(lumbar spinal cords)と膝関節組織を利用して免疫組織化学分析を行った。
【0084】
具体的に、前記<実施例6>のマウスを生後90日及び120日に4%パラホルムアルデヒド(PFA)を貫流し、腰椎脊髄と膝関節を分離した。24時間PFAに固定した後、膝関節を流れる水道の水で24時間すすぎ、脱灰溶液(decalcifying solution、Calci-Clear、HS-104、National Diagnostics)と共に4℃で持続的に振りながらインキュベーションした。針で骨が簡単に貫通する脱灰(decalcification)過程が完了するまで、脱灰溶液を毎日新しい溶液に交換した。その後、脱灰された膝関節を流れる水道の水で24時間すすぎ、脊髄と膝関節をサンプルが沈むまで30%子糖に処理した後、凍結保護した後、連続的に切断した(14μm)。腰椎脊髄及び膝関節組織切片をPBSで3回洗浄し、0.5%Triton X-100で5分間透過した後、室温で1時間0.3%PBS-Tの5%消血清アルブミンでブロックした。膝関節組織の切片は、 抗-TGF-β1抗体(1:200;Santa Cruz, cat#sc130348)、抗-α-SMA抗体(1:200;abcam cat#ab7817)、抗-MyoD抗体(1:200;SantaCruz,cat#sc377460)、抗-コラーゲンI抗体(1:200;abcam cat#ab21286)それぞれと、腰椎脊髄切片は,抗-GFAP抗体(1:200;Dakocat#Z0334)、抗-Iba1抗体(1:200;Wakocat#016)-20001)、抗-TGF-β1抗体(1:200;Santa Cruz,cat#sc130348)、抗-TGF-β1抗体(1:200;abcam,cat#ab92486)、抗 -IL-1β抗体(1:200;R&D Systems cat#AF-401-NA)それぞれと4℃で24時間追加でインキュベーションした。切片をPBSで3回洗浄した後、Alexa Fluor2次抗体と暗室で1時間室温にインキュベーションした。染色および洗浄された脊髄切片を室温で10分間DAPI(DAPI;1:1,000;sigma)で染色した後、PBSで2回すすぎ、カバースリップをDako蛍光マウンティング培地(Dako)でマウンティングし、膝関節は7.5倍対物レンズを利用し、脊髄は9.75倍対物レンズを利用してLeica TCS SP8共焦点顕微鏡(Leica Microsystems、Wetzlar、Germany)で観察した。また、Leica Application Suite X ソフトウェア(Leica Microsystems)を用いて分析した。
【0085】
<実施例9>腰椎脊髄の運動神経細胞係数
【0086】
ALSにおけるハロプジノンの効能を調べるために、前記<実施例6>のようにALS動物モデルにハロプジノンを投与した後、腰椎脊髄を分離して運動神経細胞を計数した。
【0087】
具体的には、前記「実施例6」のマウスの臨床状態に応じて、様々な視点(90日及び120日)にマウスを犠牲にした。各マウスに冷たいPBSに続き、冷たい4%パラホルムアルデヒド(PFA)を経心貫流し、腰椎脊髄を分離した。サンプルを4%パラホルムアルデヒドに後-固定し、冷たい30%自糖溶液に処理した後、凍結保護した後、14μm厚さの横断面セクションを連続的に収得した。組織切片をPBSで洗浄し、0.3%過酸化水素(H)を含むPBSに15分間浸漬して耐因性ペルオキシダーゼ活性を除去した。切片をPBSで洗浄し、0.5%Triton X-100で5分間透過し、室温で1時間0.3%PBS-Tの5%消血清アルブミンでブロックした。各セットの組織セクションを1次抗体として抗ChAT抗体(1:400;Millipore,cat#AB144P)と共に24時間インキュベーションした。PBSで洗浄した後、切片をビオチン化された末抗-塩素IgG(H+L)抗体(1:200;Vector Laboratories,cat#BA-9500)と共に1時間インキュベーションし、PBSで洗浄した後、ペルオキシダーゼ結合アビジン-ビオチン複合体(ABCキット;1:200;Vector Laboratories,cat#PK4000)と共に室温で1時間の間 インキュベーションした。徹底した洗浄の後、ジアミノベンジジン(diaminobenzidine,DAB,ImmPACT(登録商標)
DAB Vector Laboratories,cat#SK-4105)でセクションをインキュベーションしてペルオキシダーゼ染色を視覚化した。セクションを脱水及び空気乾燥し、トルエン可溶性Permountマウンティング培地(Fisher Scientific、cat#SP15-500)でマウンティングした。4×倍率でコンピュータ補助顕微鏡(Olympus BX53)及びソフトウェア(cellSensソフトウェア)を使用してChAT染色セクションで運動神経を計算した。係数はグループ当たり計3匹のマウスで脊髄前角(per ventral horn)を行った。分析されたフィールドは、各半球の灰白質に明確に表示された免疫染色セクションの背側半分に位置したすべてのChAT+プロファイルだった。
【0088】
<実施例 10> 関節可動範囲(ROM)測定
【0089】
ALSにおけるハロプジノンの効能を調べるために、前記<実施例6>のようにALS動物モデルにハロプジノンを投与した後、膝関節の関節可動範囲(ROM)を測定した。
【0090】
具体的に、膝の伸展(knee extension)角度を決定するために解剖学的指標を使用した。疾病年齢末期(120日)に2D角度分析システムであるRandom Two-lineを使用して手動膝関節ROMを測定した。前記<実施例6>のマウスに1%イソフルラン(isoflurane)を吸入して麻酔させた後、アクリルプレートに置いて後ろ足の皮膚を剃った。大腿骨をプレートに固定し、マウス当たりの膝関節に一定の力の伸展モーメントを加えた。その後、大転子、膝の外側上と、外側のくるぶしにマーカーを付着して撮影映像のマーカーを得た。大腿骨の軸(膝の外側関節空間に対する大転子)と腓骨(膝の外側関節空間から外側のくるぶしまで)の間の角度を膝の伸展ROMで測定した。各群で16匹のマウスを分析し、対照群として120日目に群でDMSOを注射した非-形質転換マウスの膝を使用した。
【0091】
<実施例11> リアルタイムqRT-PCR分析
【0092】
前記<実施例1>でTGF-β1に刺激した後、ハロプジノンを処理した筋芽細胞、前記<実施例5>でALS動物モデルから分離してハロプジノンを処理した線維芽細胞、又は前記<実施例6>のようにALS動物モデルにハロプジノンを投与した後、分離した腰椎脊髄を利用してリアルタイムqRT-PCR分析を行った。
【0093】
具体的に、総RNAをFavorPrepTMTri-RNA Reagent(Favorgen)を用いて、前記<実施例1>のC2C12細胞、<実施例5>の線維芽細胞及び<実施例6>のマウスの腰椎脊髄から分離した。前記腰椎脊髄は<実施例6>のマウスから分離した後、実験前まで-80℃で凍結保管した。総RNAの濃度は260nm吸光度で分光光光度計(NanoDrop Spectrophotometer ND-2000、Thermo Scientific)で測定した。cDNA はメーカーのプロトコルに従ってReverTra Ace-α-TM(Toyobo)を使って1μgの総RNAを用いて合成した。SYBR green Excel TaqTM2X Fast Q-PCR Master Mix(TQ1200、Smobio)を使用して、サーモサイクラーCFX Connect Real-Time PCR Detection System(BIO-RAD)で下表3のプライマーを使用して定量的RT-PCRを行った。蛍光データはBio-Rad CFX Manager 3.1ソフトウェアで分析し、2(-ΔΔCT)方法で対照群対相対的mRNA発現を計算した。すべてのサンプルに対して4回実験を行った。すべてのプライマーはPrimer3オンラインソフトウェアを使用して設計し、対照群としてGAPDHを使用した。
【0094】
【表3】
【0095】
<実施例12>蛋白質抽出及びウエスタンブロット分析
【0096】
前記<実施例1>でTGF-β1に刺激した後、ハロプジノンを処理した筋芽細胞、前記<実施例5>でALS動物モデルから分離してハロプジノンを処理した線維芽細胞又は前記<実施例6>のようにALS動物モデルにハロプジノンを投与した後、分離した腰椎脊髄又は膝関節を利用してウエスタンブロット分析を行った。
【0097】
具体的に、前記<実施例6>のマウスの腰椎脊髄又は膝関節を分離し、直ちに-80℃に凍結した。その後、各腰椎脊髄又は膝関節を均質化して化学処理して細胞を獲得した。前記化学処理された細胞、前記<実施例1>のC2C12細胞又は<実施例5>の線維芽細胞をRIPA緩衝液(Thermo、MA、USA)からプロテアーゼ抑制剤およびホスファターゼ抑制剤(Roche、IN、USA)に溶解させ、氷の上で30分間インキュベーションした。溶解物を4℃から13,000rpmに20分間遠心分離した後、不溶性物質を除去した。BCA分析(Pierce Biotechnology)によりタンパク質濃度を測定した。同量の細胞溶解物を電気泳動のためにSDS-PAGEゲルにローディングし、ニトロセルロースメンブレン(nitrocellulose membrane、Amersham Protran 0.2um NC、Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ、USA)に移した。その次、メンブレンを室温で1時間、1X TBSTの5%(w/v)スキームミルクでブロックした。ブロッキング後、メンブレンに1次抗体として抗-β-アクチン抗体(1:5000;Santa Cruz, cat#sc47778)、抗-Smad2抗体(1:1000;Cell Signaling,cat#5339)、抗-p-Smad2抗体(1:1000;Cell Signaling,cat#3108)、抗-TGF-β1抗体(1:1000;Santa Cruz,cat#sc130348)、抗-α-SMA抗体(1:10000;abcam cat#ab7817)、抗-MyoD抗体(1:1000;Santa Cruz,cat#sc377460)、抗-コラーゲンI抗体(1:1000;abcam cat#ab21286)、抗-切断されたカスパーゼ3抗体(1:1000;Cell Signaling,cat#9661)、抗-bax抗体(1:500;Santa Cruz,cat#sc493)、抗-bcl2抗体(1:1000;Novus Biologicals,cat#NB100-56098)、抗-ChAT抗体(1:1000;Millipore、cat#AB144P)それぞれを処理し、4℃で一晩中インキュベーションした。その後、1X TBSTで数回洗浄した後、メンブレンを室温(RT)で1時間ブロッキング緩衝液でホースラディッシュペルオキシダーゼ-接合二次抗体(抗-マウス、ウサギ又はヤギ、1:5000;GE Healthcare)と共にインキュベーションした。その後、メンブレンを洗浄し、メーカーの手順に従ってSuperSignal West Pico Plus Chemiluminescent Substrate(Pierce Biotechnology)と共に簡単にインキュベーションし、イメージ分析器(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ、USA)に定量化した。内部対照群としてβ-アクチンを使用した。タンパク質強度の濃度測定はImage J(National Institutes of Health)を用いて定量化した。
【0098】
<実施例13> 統計分析
【0099】
すべてのデータは少なくとも3回の独立した実験に基づく平均および平均の標準誤差(SEM)で表示し、対照群値の割合で表示した。グループ間の違いの有意性は、Student's t-test又はone-way ANOVAに続き、Tukey's post hoc comparisonで分析した。p-値<0.05は統計的に有意なものとみなした。KaplanMeier curveを使用して症状発病、ロタロード不全及び疾病終末点の累積確率を分析した。すべての分析はGraphPad Prismを使って行った。
【0100】
<実験例1> 筋芽細胞におけるTGF-β1刺激による線維症の増進及び筋形成抑制の確認
【0101】
TGF-β1が筋芽細胞に及ぼす影響を調べるために、C2C12マウス筋芽細胞株にTGF-β1刺激後、リアルタイムqRT-PCR分析及びウェスタンブロット分析を行った。
【0102】
具体的には、前記<実施例1>のようにC2C12細胞にTGF-β1を24時間処理した後、前記<実施例11>に記載された方法と同じ方法でリアルタイムqRT-PCRを行い、TGF-β1、2及び3、α-SMA及びMyoDmRNAの発現を確認し(図2a)、前記<実施例12>に記載された方法と同じ方法でウエスタンブロット分析を行い、TGF-β1及びMyo蛋白質及びα-SMAの自己分泌(autocrine)発現を確認した(図2b)。
【0103】
その結果、図2aに示すように、C2C12細胞株にTGF-β1刺激24時間後、TGF-β1、2及び3のmRNAレベルが対照群に比べて有意に増加した。また、TGF-β刺激による筋線維芽細胞への筋芽細胞の活性化をα-SMAのmRNA発現の有意な増加と確認した。対照的に、MyoDのmRNAレベルはTGF-β刺激後に有意に減少した(図2a)。
【0104】
また、図2bに示すように、C2C12細胞株にTGF-β1刺激24時間後、TGF-β1及びα-SMA蛋白質の発現が有意に増加した。対照的に、MyoDの蛋白質発現はTGF-β刺激後に有意に減少した(図2b)。
【0105】
前記の結果を通じて、筋芽細胞でTGF-β1刺激による線維症増進及び筋形成抑制が誘発されることが分かる。
【0106】
<実験例2> ハロプジノン(halofuginone)の細胞毒性確認
【0107】
筋芽細胞におけるハロプジノン(halofuginone)の細胞毒性を調べるために、細胞生存力分析及びウエスタンブロット分析を行った。
【0108】
具体的には、前記<実施例2>に記載された方法と同じ方法で、C2C12細胞にTGF-β1刺激又は無刺激後ハロプジノンを処理し、CCK-8分析を通じて細胞生存力分析を行い(図3a及び図3b)、<実施例12>に記載された方法と同じ方法でウエスタンブロット分析を行い、p-Smad2、Smad2、TGF-β1、MyoD、コラーゲンI蛋白質及びα-SMAの発現も確認した(図3c)。
【0109】
その結果、図3a及び図3bに示したように、1ng/mlないし10ng/mlのハロプジノン濃度において細胞生存率が大きく変わらないことを確認した(図3a及び図3b)。
【0110】
また、図3cに示すように、5ng/ml及び10ng/mlのハロプジノン濃度において、TGF-β1刺激によるp-Smad2/Smad2の割合、TGF-β1、α-SMA及びコラーゲンI蛋白質レベルの上昇が有意に減少し、TGF-β1刺激によるMyoD蛋白質レベルの減少が有意に回復した(図3c)。
【0111】
これにより、C2C12細胞におけるハロプジノンの最適濃度により、低濃度は5ng/ml、高濃度は10ng/ml処理を決定した。
【0112】
<実験例3> TGF-β1刺激筋芽細胞におけるハロプジノンによる線維症の増進及び筋形成抑制の緩和を確認
【0113】
筋芽細胞におけるTGF-β1による変化がTGF-β抑制剤としてハロプジノンによって抑制されるかどうかを調査するために、C2C12マウス筋芽細胞細胞株にTGF-β1刺激後ハロプジノンを処理し、リアルタイムqRT-PCR分析、ウエスタンブロット分析及び免疫細胞化学分析を行った。
【0114】
具体的には、前記<実施例1>のように、C2C12細胞をTGF-β1で24時間刺激した後、ハロプジノンを24時間処理し、前記<実施例11>に記載された方法と同じ方法でリアルタイムqRT-PCRを行い、TGF-β1、α-SMA、MyoD及びコラーゲンI(Col-I)mRNAの発現を確認した(図4a)。また、前記<実施例12>に記載された方法と同じ方法でウエスタンブロット分析を行い、TGF-β1、α-SMA、MyoD及びコラーゲンI蛋白質の発現を確認した(図4b)。併せて、前記<実施例3>に記載された方法と同じ方法で免疫細胞化学分析を行い、α-SMA及びMyoDの発現を確認した(図4c)。
【0115】
その結果、図4a及び図4bに示すように、低濃度又は高濃度のハロフジノンを処理した群において、TGF-β1刺激によるTGF-β1、α-SMA及びコラーゲンImRNAレベルの上昇が有意に減少し、TGF-β1刺激によるMyoDmRNAレベルの減少は有意に回復した(図4a)。蛋白質の発現も同様の様相を呈した(図4b)。
【0116】
また、図4cに示すように、免疫蛍光染色及び共焦点顕微鏡を用いてハロプジノン低濃度又は高濃度処理によりα-SMAが減少した強度とMyoDが回復した強度を確認した(図4c)。
【0117】
前記の結果を通じて、筋芽細胞でTGF-β1刺激による線維症の増進及び筋形成抑制をTGF-β抑制剤としてハロプジノンを使用して予防できることが分かる。
【0118】
<実験例4> ALS動物モデル由来の線維芽細胞からハロフジノンによる線維症抑制を確認
【0119】
ALS動物モデル由来の線維芽細胞におけるTGF-β1の変化及びハロプジノンの効果を調べるために、ALS動物モデル由来の線維芽細胞にハロプジノンを処理した後、リアルタイムqRT-PCR分析及びウエスタンブロット分析を行った。
【0120】
具体的には、前記<実施例5>に記載された方法と同じ方法でALS動物モデルから線維芽細胞を分離し、ハロプジノンを処理した後、前記<実施例11>に記載された方法と同じ方法でリアルタイムqRT-PCRを行い、TGF-β1、α-SMA及びコラーゲンI(Col-I)mRNAの発現を確認した(図5a)。また、前記<実施例12>に記載された方法と同じ方法でウエスタンブロット分析を行い、p-Smad2、Smad2、TGF-β1、α-SMA及びコラーゲンI蛋白質の発現を確認した(図5b)。対照群として非-形質転換マウスから分離した線維芽細胞を利用した。
【0121】
その結果、図5a及び図5bに示したように、p-Smad2/Smad2の割合、及びTGF-β、α-SMA及びCol-Iの蛋白質発現だけでなく、mRNAのレベルは非形質転換マウス由来の線維芽細胞(Non-TG)に比べてG93A突然変異SOD1マウス由来の線維芽細胞において有意に上昇した。このような変化は、24時間の間、低濃度又は高濃度ハロプジノン処理により弱まることを確認した(図5a及び図5b)。
【0122】
前記の結果を通じて、ALSマウスモデルの線維芽細胞で線維症が増進され、ハロフジノン処理によって線維症が抑制されることができることが分かる。
【0123】
<実験例5> ALS動物モデルでハロプジノン投与によるALS発病遅延及び遂行能力向上確認
【0124】
生体内でハロプジノンの効果を評価するために、ALS動物モデルにハロプジノンを投与して疾病進行、生存及び運動機能分析を行った。
【0125】
具体的に、前記<実施例6>に記載された方法と同じ方法でALS動物モデルにハロプジノンを投与し、前記<実施例7>に記載された方法と同じ方法で疾病進行、生存及び運動機能分析を行った。
【0126】
その結果、図6aに示すように、症状段階の各TG群はnon-TG群に比べてロタロッドで有意に時間が短縮される様相を呈した。一方、TG群の中で、DMSOを投与したTG群(DMSO TG群)と比較してハロプジノンを投与したTG群(Hal TG群)はロタロードで有意に長い時間を示した。体重はnon-TG群と比較してTG群で有意に減少し、DMSO TG群とHal TG群の間には有意な差がみられなかった(図6a)。
【0127】
また、図6b及び図6cに示すように、DMSO TG群とHal TG群との間に症状発症の差があり、Hal TG群の症状発症はDMSO TG群に比べて有意に遅延した(平均±標準偏差[SD]、113±3.6 vs94.2±5.7、p<それぞれ0.5)。また、ロタロッド不全に到達する年齢は、DMSO TG群よりHal TG群で遅れ(それぞれ124.3±3.5vs116.5±3.1、p<0.001)、終結年齢も有意に増加した(141.8±それぞれ9.8vs129.3±7.6、図6bおよび図6c)。
【0128】
<実験例6> ALS動物モデルの疾病初期段階でハロプジノン投与による滑膜腔の線維症減少及び骨格筋生成向上確認
【0129】
ALS発病におけるハロプジノン効果を評価するために、ALS動物モデルにハロプジノンを投与し、疾病初期と後期に膝関節滑膜腔の変化を免疫組織化学分析(IHC)で確認した。
【0130】
具体的に、前記<実施例6>に記載された方法と同じ方法でG93A突然変異SOD1マウスにALS発病初期(73日)からハロプジノンを投与し、前記<実施例8>に記載された方法と同じ方法で疾病初期雌及び雄(90日齢、図7a及び図7b)と後期雌及び雄(120日齢、図7c及び図7d)膝関節を利用して免疫組織化学分析を行った。
【0131】
その結果、図7a及び図7bに示すように、DMSO Non-TG群と比較して、DMSO TG群は性別に関係なく疾病の初期段階で膝関節滑膜腔におけるTGF-β1の有意な増加を確認した。また、DMSONon-TG群に比べ、DMSO TG群の滑膜腔におけるTGF-β1の増加とともに、α-SMA及びCol-Iが増加し、MyoDは減少することを確認した。一方、HalTG群においては、疾病の初期段階においてTGF-βの増加が抑制され、これによりα-SMA及びCol-Iの発現もDMSOTG群に比べて著しく低いことが確認された(図7a及び図7b)。
【0132】
また、図7c及び図7dに示すように、Hal TG群ではDMSO TG群と比較して滑膜腔において有意に低いTGF-β1、α-SMA、Col-I及びより高いMyoDが疾病後期段階で持続的に維持されることを確認した。また、雌ハルTG群においてTGF-β1、MyoD及びCol-1の強度はDMSO non-TG群の強度と差がなく、雄Hal TG群のMyoD強度はDMSO non-TG群に比べて多少増加することを確認した(図7c及び図7d)。
【0133】
前記の結果から、TGF-βの増加によるALSマウスの滑膜腔での筋線維芽細胞の活性化及び強化された線維化がハロプジノン投与によって改善できることがわかる。また、ALSマウスの滑膜腔で減少する骨格筋の筋形成もハロプジノン投与で予防できることがわかる。さらに、ALSマウスの疾病初期段階でハロプジノンの投与が性別に関係なく滑膜腔の線維症を有意に減少させ、筋肉形成を向上させることが分かる。
【0134】
<実験例7>ハロプジノン投与によるALS動物モデルの関節構築改善確認
【0135】
ALSにおいて、線維症による機能抵抗及びこれに対するハロプジノンの効果を調べるために、ALS動物モデルにハロプジノンを投与した後、膝関節の関節可動範囲(ROM)を測定し、ウエスタンブロット分析を行った。
【0136】
具体的に、前記<実施例6>に記載された方法と同じ方法でG93A突然変異SOD1マウスにハロプジノンを投与し、前記<実施例10>に記載された方法と同じ方法で膝関節のROM測定を行った(図8a)。また、膝関節組織を利用して、前記<実施例12>に記載された方法と同じ方法でウエスタンブロット分析を行い、p-Smad2、Smad2、TGF-β1、α-SMA、MyoD及びコラーゲンI蛋白質の発現を確認した(図8b)。
【0137】
その結果、図8aに示すように、120日のDMSONon-TG群に比べてDMS OTG群でROMが有意に減少し、Hal TG群ではROMが変化しないことが確認した(図8a)。
【0138】
また、図8bに示すように、DMSO Non-TG群と比較して、DMSO TG群におけるp-Smad2/Smad2の割合、TGF-β、α-SMA、Col-Iの有意な増加とMyoDの減少を確認した。また、HalTG群のp-Smad2/Smad2の割合、及びTGF-β1、α-SMA及びMyoDの発現レベルはDMSO non-TGマウスと同様に保存され、Col-1の発現レベルはむしろ減少した(図8b)。
【0139】
前記の結果を通じて、ALSマウスでTGF-βの増加が膝関節内の線維症を強化して関節収縮を誘導する反面、ハロプジノン投与でこれを改善できることが分かる。
【0140】
<実験例8>ALS動物モデルの中枢神経系(CNS)組織におけるハロプジノン投与による抗炎症及び神経細胞死滅抑制効果の確認
【0141】
ALSにおけるハロプジノン投与による中枢神経系(CNS)内の効果を調査するために、ALS動物モデルにハロプジノンを投与した後、腰椎脊髄を利用して免疫組織化学分析、腰椎脊髄の運動神経細胞係数及びウエスタンブロット分析を行った。
【0142】
具体的に、前記<実施例6>に記載された方法と同じ方法でG93A突然変異SOD1マウスにハロプジノンを投与し、生後120日マウスを犠牲にした後、前記<実施例8>に記載された方法と同じ方法で免疫組織化学分析を行い、腰椎脊髄でTGF-β1及び神経膠細胞(glial cell)を確認した。星?膠細胞(astrocyte)から派生したTGF-βがALSマウスで病気を加速化すると報告されたことを勘案して、免疫組織化学分析時に各グループの脊髄をTGF-βとGFAPに共同染色した。また、微細阿膠細胞(microglia)の活性を確認するためにIBA1染色を行った(図9a及び図9b)。
【0143】
また、TGF-βとCNSの神経膠細胞変化が炎症に及ぼす影響を調べるために、免疫組織化学分析時に代表的な伝染性サイトカインであるIL-1βをGFAPで同時染色した(図9c)。
【0144】
また、脊髄の運動神経源を調べるために、前記<実施例9>に記載された方法と同じ方法で腰椎脊髄の運動神経細胞を観察及び計数し(図9d)、前記<実施例11>及び<実施例12>に記載された方法と同じ方法でリアルタイムqRT-PCR及びウェスタンブロット分析を行い、ChAT mRNA(図9e)及びChAT蛋白質(図9f)発現を定量的に分析した。
【0145】
併せて、前記<実施例6>に記載された方法と同じ方法でG93A突然変異SOD1マウスにハロプジノンを投与し、生後90日マウスを犠牲した後、前記と同じ方法で微細阿膠細胞の活性を確認するためにIba1染色を行い(図10a)、運動神経細胞を観察および計数した(図10b)。
【0146】
その結果、図9a及び図9bに示すように、120日齢マウスのDMSO TG群では、DMSO Non-TG群に比べてGFAP強度が有意に増加し、同一部位においてTGF-β1も増加した。星?膠細胞活性及びTGF-β1のこの増加は、HalTG群において顕著に減少することを確認した(図9b)。一方、微細阿膠細胞はDMSO TG群で有意な増加を示し、Hal TG群でも微細阿膠細胞が持続的に増加することを確認した(図9a)。
【0147】
また、図9cに示すように、120日齢マウスのDMSO Non-TG群と比較して、DMSO TG群ではGFAP活性とともにIL-1βが増加して活性化した炎症を示し、この活性化された炎症はHal TG群で抑制された(図9c)。
【0148】
また、図9dないし図9fに示すように、120日齢マウスのDMSO TG群において、ChATのすべてのmRNA水準、ChAT陽性運動神経細胞の数及びChAT発現がDMSO Non-TG群より有意に低く現れるのに対し、Hal TG群ではDMSO Non-TG群と同様に保存されることを確認した(図9dないし図9f)。
【0149】
併せて、図10aおよび図10bに示したように、前記のような変化は90日齢マウスでも類似している(図10aおよび図10b)。
【0150】
前記の結果から、ALSマウスのCNSにおけるTGF-βの増加が炎症反応の増加及びそれに伴う運動神経細胞の減少と関連があり、この過程はハロプジノン投与によって抑制されることがわかる。
【0151】
<実験例9>ALS動物モデルにおけるハロプジノン投与によるCNSの慢性炎症及び神経細胞死滅抑制を確認
【0152】
ALSにおけるハロプジノン投与がCNSの炎症反応に及ぼす影響を調べるために、ALS動物モデルにハロプジノンを投与した後、腰椎脊髄を利用してリアルタイムqRT-PCR分析及びウェスタンブロット分析を行った。
【0153】
具体的に、前記<実施例6>に記載された方法と同じ方法でG93A突然変異SOD1マウスにハロプジノンを投与し、生後120日マウスを犠牲にした後、腰椎脊髄を分離した。その次に、CNSの炎症関連因子および神経細胞死滅関連因子のmRNA発現を前記<実施例11>に記載された方法と同じ方法でリアルタイムqRT-PCT分析を行って確認し(図11a)、神経細胞死滅関連因子の蛋白質発現を前記<実施例12>に記載された方法と同じ方法でウエスタンブロット分析を行って確認した(図11b)。微細阿膠細胞のM1又はM2亜型によって役割(伝染症又は抗炎症効果)が異なるため、CNSの炎症関連因子としてはM1マーカー(iNOS、CD86)、M2マーカー(arginase1)と伝染症因子(IFN-a、TNF-a、IL-1b、IL-6)の発現を確認した。また、神経細胞死滅関連因子としてcaspase-3、bax、bcl-2の発現を確認した。
【0154】
その結果、図11aに示すように、DMSOTG群においてTGF-βのmRNAレベルに応じてM1マーカー及び伝染性因子のmRNAレベルが有意に増加し、これはハロプジノンによって抑制されることを確認した。また、抗神経細胞死滅因子であるbcl-2のmRNA水準はDMSONon-TG群に比べてDMSO TG群で減少し、Hal TG群で保存されることを確認した(図11a)。
【0155】
また、図11bに示すように、DMSO Non-TG群と比較してDMSOTG群で神経細胞死滅因子である切断されたカスパーゼ3(cleaved caspase-3)及びbaxの蛋白質発現は増加し、抗神経細胞死滅因子であるbcl-2は減少し、このような変化はHal TG群で改善されることが確認された(図11b)。
【0156】
前記の結果から、ハロプジノンがALSマウスで持続的に増加したTGF-βを遮断し、CNSで抗炎症効果を示し、神経細胞死滅を抑制できることがわかる。
【0157】
前記<実験例1>ないし<実験例9>の結果を通じてハロプジノンがALSにおいてTGF-β増加による関節構築改善及びCNSの慢性炎症及び神経細胞死滅抑制という二重治療効果を示すことを確認した。したがって、前記ハロプジノンはALSを含むTGF-β増加による神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療に利用されることができる。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明では筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、ALS)細胞モデルおよび動物モデルでハロフジノン(Halofuginone)が繊維症を抑制し骨格筋の生成を向上させ、関節の構築を改善し中枢神経系の炎症反応及び神経細胞死滅を抑制する二重効果を示し、ALSの症状進行を遅延させ、遂行能力及び生存期間を向上させることができることを確認しましたので、前記ハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩は、ALSを含む神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用組成物の有効成分として有用に利用されることができる。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図7d
図8a
図8b
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e
図9f
図10a
図10b
図11a
図11b
【配列表】
2025503765000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロフジノン(Halofuginone)又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、神経退行性又は運動神経疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記ハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩はTGF-β抑制剤である、請求項1に記載の神経退行性又は運動神経疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記ハロプジノンは、下記[化学式1]で記載される化合物である、請求項1に記載の神経退行性又は運動神経疾患の予防又は治療用薬学組成物:
[化学式1]
.
【請求項4】
前記ハロプジノンは関節滑膜腔の線維症を緩和し、骨格筋生成を向上するものである、請求項1に記載の神経退行性又は運動神経疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記ハロプジノンは中枢神経系の炎症反応および神経細胞死滅を抑制するものである、請求項1に記載の神経退行性又は運動神経疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記ハロプジノンは神経退行性又は運動神経疾患の症状悪化を遅延させ、遂行能力および生存期間を向上させるものである、請求項1に記載の神経退行性又は運動神経疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記神経退行性又は運動神経疾患は筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋肉緊張異常症、脊髄性筋萎縮症又は炎症性神経病症である、請求項1に記載の神経退行性又は運動神経疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項8】
ハロプジノン又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、神経退行性又は運動神経疾患予防又は改善用保健機能食品組成物。
【国際調査報告】