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特表2025-503824負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/205 20170101AFI20250130BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C01B32/205
C01B33/18 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567071
(86)(22)【出願日】2023-09-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 CN2023117767
(87)【国際公開番号】W WO2024139392
(87)【国際公開日】2024-07-04
(31)【優先権主張番号】202211679854.8
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉張坤
(72)【発明者】
【氏名】何鵬
(72)【発明者】
【氏名】肖称茂
(72)【発明者】
【氏名】任建国
(72)【発明者】
【氏名】賀雪琴
【テーマコード(参考)】
4G072
4G146
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072BB05
4G072GG02
4G072HH14
4G072TT01
4G072UU30
4G146AA02
4G146AB02
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AD23
4G146AD24
4G146BA11
4G146BC04
4G146BC25
4G146BC33B
(57)【要約】
【課題】本願は負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池に関する。
【解決手段】前記負極材料は炭素材料を含み、前記炭素材料は炭素シェル層を含み、前記炭素材料の内部にチャンバーを有し、前記チャンバーは前記炭素シェル層に取り囲まれるように形成され、前記炭素シェル層に孔を有し、少なくとも一部の前記孔は前記炭素シェル層を貫通する。本願の負極材料において、炭素材料は、内部に位置するチャンバーと、炭素シェル層に位置する孔とを有することにより、負極材料は、リチウム挿入の膨張応力に耐えるために十分な空間を確保することができ、負極材料の耐膨張性能及びサイクル性能を向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極材料であって、
前記負極材料は炭素材料を含み、前記炭素材料は炭素シェル層を含み、前記炭素材料の内部にチャンバーを有し、前記チャンバーは前記炭素シェル層に取り囲まれるように形成され、前記炭素シェル層に孔を有し、少なくとも一部の前記孔は前記炭素シェル層を貫通する、ことを特徴とする負極材料。
【請求項2】
前記炭素材料は球状を呈し、前記炭素シェル層は、黒鉛化炭素材料を含み、前記黒鉛化炭素材料は、層状構造であり、前記黒鉛化炭素材料の層状構造は、前記炭素材料の半径方向に沿って積層して設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
前記負極材料は、ケイ素材料をさらに含み、前記ケイ素材料は、前記炭素材料内に分布している、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の負極材料。
【請求項4】
前記ケイ素材料の少なくとも一部は、前記炭素シェル層の間に位置する、ことを特徴とする請求項3に記載の負極材料。
【請求項5】
前記ケイ素材料の一部は、前記チャンバー及び/又は前記孔に位置する、ことを特徴とする請求項3に記載の負極材料。
【請求項6】
前記負極材料は、以下の特徴(1)~(13)のうちの少なくとも1つを満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記炭素材料の間に層状黒鉛が設けられること;
(2)少なくとも一部の前記孔は、前記炭素シェル層を貫通すること;
(3)前記炭素材料のメディアン径は、5nm~200nmであること;
(4)前記炭素シェル層の黒鉛化炭素材料の層数は、20未満であること;
(5)前記炭素シェル層の厚さは、1.2nm~5.2nmであること;
(6)前記負極材料は、波長532nmの測定光源を用いてラマン分光法により得られたラマンスペクトルに示され、1300-1~1400-1にDバンドが観察され、1500-1~1600-1にGバンドが観察され、Dバンドのピーク強度IとGバンドのピーク強度Iとの比I/Iが0.5より大きいこと;
(7)前記チャンバーの平均内径は3.8nm~198.8nmであること;
(8)前記孔の平均孔径は0.42nm~2nmであること;
(9)隣接する前記炭素材料の間の距離は0nm~40nmであること;
(10)前記炭素材料の球形度は0.6~1であること;
(11)前記ケイ素材料は、前記負極材料に対して、5質量%~80質量%であること;
(12)前記ケイ素材料のメディアン径は、1nm~15nmであること;
(13)前記ケイ素材料は、結晶シリコンおよびアモルファスシリコンの少なくとも一方を含むこと。
【請求項7】
前記負極材料は、以下の特徴(1)~(5)のうちの少なくとも1つを満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記炭素材料の弾性率は、0.1TPa~0.8TPaであること;
(2)前記炭素材料の引張強度は、15GPa~110GPaであること;
(3)前記炭素材料の空孔率は65%~96%であること;
(4)前記負極材料の空孔率は、7%~50%であること;
(5)隣接する前記炭素材料の間のπ-πスタッキング(π-πstacking)ファンデルワールス力は1kJ/mol~50kJ/molであること。
【請求項8】
負極材料の製造方法であって、
金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料と炭素源とを含む混合物を第1熱処理し、前記炭素源の黒鉛化を触媒し、第1前駆体を得るステップ、
前記第1前駆体をエッチング処理して第2前駆体を得て、前記エッチング処理のエッチング剤は酸化性酸であるステップ、
前記第2前駆体における少なくとも一部のシリコン酸素原料をケイ素材料に還元して、負極材料を得るステップを含む、ことを特徴とする負極材料の製造方法。
【請求項9】
前記金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料は以下の方法により製造される、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
シリコン酸素原料と金属塩触媒とを含む混合物を還元雰囲気中で第2熱処理し、前記金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料を得る。
【請求項10】
以下の特徴(1)~(14)のうちの少なくとも1つを満たす、ことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
(1)前記シリコン酸素原料は、二酸化ケイ素及び一酸化ケイ素のうちの少なくとも1種を含むこと;
(2)前記シリコン酸素原料のメディアン径は、5nm~200nmであること;
(3)前記金属塩触媒は、Fe3+、Co2+、Ni2+、Cu2+及びAu3+の少なくとも1種を含むこと;
(4)前記金属塩触媒は、Fe(NO、FeCl、Co(NO、CoCl、Ni(NO、NiCl、Cu(NO、CuCl及びHAuClのうちの少なくとも1種を含むこと;
(5)前記シリコン酸素原料と金属塩触媒との質量比は、1:(0.08~5.00)であること;
(6)前記シリコン酸素原料と金属塩触媒とを含む混合物は、溶媒をさらに含むこと;
(7)前記シリコン酸素原料及び金属塩触媒を含有する混合物は、溶媒をさらに含み、前記溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール及び水のうちの少なくとも1種を含むこと;
(8)前記シリコン酸素原料及び金属塩触媒を含有する混合物は、溶媒をさらに含み、前記溶媒の添加量は、前記シリコン酸素原料及び金属塩触媒の総質量の50倍~1000倍であること;
(9)前記シリコン酸素原料と金属塩触媒とを含む混合物は、第2熱処理を行う前に、前記混合物を乾燥、研磨するステップをさらに含むこと;
(10)前記還元雰囲気は、水素ガス及びアンモニアガスの少なくとも1種を含むこと;
(11)前記還元雰囲気の導入流量は、10sccm~150sccmであること;
(12)前記第2熱処理の温度は、400℃~1000℃であること;
(13)前記第2熱処理の保温時間は5min~30minであること;
(14)前記第2熱処理の昇温速度は100℃/h~1200℃/hであること。
【請求項11】
以下の特徴(1)~(9)のうちの少なくとも1つを満たす、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
(1)前記炭素源は、気相炭素源及び固相炭素源を含むこと;
(2)前記炭素源は、気相炭素源及び固相炭素源を含み、前記気相炭素源は、メタン、エタン及びアセチレンのうちの少なくとも1種を含むこと;
(3)前記炭素源は、気相炭素源及び固相炭素源を含み、前記固相炭素源は、ピッチ、グルコース、スクロース、セルロース、グリシン、アラニン及びフェニルアラニンのうちの少なくとも1種を含むこと;
(4)前記炭素源は気相炭素源及び固相炭素源を含み、前記固相炭素源と前記金属触媒粒子との質量比は、1:(10~10000)であること;
(5)前記炭素源は、気相炭素源と固相炭素源とを含み、前記気相炭素源の導入流量は10sccm~250sccmであること;
(6)前記第1熱処理の温度は、600℃~1000℃であること;
(7)前記第1熱処理の保温時間は1min~30minであること;
(8)前記金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料と炭素源とを含む混合物に第1熱処理を行う前に、金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料と炭素源とを含む混合物に水素ガスを通気することをさらに含むこと;
(9)前記金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料と炭素源とを含む混合物に第1熱処理を行う前に、金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料と炭素源とを含む混合物に水素ガスを通気し、前記水素ガスの導入流量は10sccm~90sccmであることをさらに含むこと。
【請求項12】
以下の特徴(1)~(6)のうちの少なくとも1つを満たす、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
(1)前記酸化性酸は、硫酸、硝酸及び過酸化水素の少なくとも1種を含むこと;
(2)前記酸化性酸は、硫酸と硝酸との混酸を含むこと;
(3)前記酸化性酸は、硫酸と硝酸との混酸を含み、前記混酸における前記硫酸の濃度は、0.1mol/L~4mol/Lであること;
(4)前記酸化性酸は、硫酸と硝酸との混酸を含み、前記混酸における前記硝酸の濃度は、0.1mol/L~4mol/Lであること;
(5)前記エッチング処理の時間は2h~24hであること;
(6)前記第2前駆体における少なくとも一部のシリコン酸素原料をケイ素材料に還元する前に、前記第2前駆体を固液分離し、得られた固体を第1水洗及び第1乾燥する工程を行うステップをさらに含むこと。
【請求項13】
前記第2前駆体中の少なくとも一部のシリコン酸素原料をケイ素材料に還元することは、前記第2前駆体と還元剤とを混合した後に第3熱処理を行う工程を含み、
以下の特徴(1)~(9)のうちの少なくとも1つを満たす、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
(1)前記還元剤は、金属マグネシウム及び金属アルミニウムの少なくとも1種を含むこと;
(2)前記第2前駆体と前記還元剤との質量比は(1.25~2.00):1であること;
(3)前記第3熱処理は、不活性ガス雰囲気中で行うこと;
(4)前記第3熱処理は、不活性ガス雰囲気中で行い、前記不活性ガスは、窒素ガス及びアルゴンガスのうちの少なくとも1種を含むこと;
(5)前記第3熱処理の温度は、600℃~800℃であること;
(6)前記第3熱処理の保温時間は0.5h~5hであること;
(7)前記第2前駆体と還元剤に対して第3熱処理を行った後に、第3熱処理で得られた材料を不活性化処理する工程をさらに含むこと;
(8)前記第2前駆体と還元剤に対して第3熱処理を行った後に、第3熱処理で得られた材料に不活性化処理を行う工程をさらに含み、前記不活性化処理のガスはアンモニアガスを含むこと;
(9)前記第2前駆体と還元剤に対して第3熱処理を行った後に、第3熱処理で得られた材料に不活性化処理を行い、不活性化処理で得られた材料に対して酸洗い、第2水洗及び第2乾燥する工程を行うステップをさらに含むこと。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか一項に記載の負極材料又は請求項8~13のいずれか一項に記載の製造方法で製造される負極材料を含む、ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年12月26日付で中国専利局に提出し、出願番号が202211679854.8、出願の名称が「負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全ての内容を本明細書に援用する。
【0002】
本願は、負極材料の技術分野に属し、具体的には、負極材料及び製造方法、並びにリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
多孔質炭素負極材料は、リチウムイオン電池のサイクル膨張性能を改善する最も重要な材料の1つである。従来の一般的な多孔質炭素負極材料は、その内部の大きなチャンバー又は孔構造によってリチウムへの担持を実現し、それによる体積膨張を抑制する。これらの多孔質炭素材料は、通常、簡単な高温炭化によって合成され、高温炭化によって直接形成される多孔質構造は、不連続な黒鉛結晶格子構造を有し、このような構造は、炭素材料自身の機械的特性及び黒鉛π-πスタッキングに由来する炭素材料粒子間のファンデルワールス力を低下させ、粒子細孔及び粒子間の隙間がリチウム挿入の膨張応力に耐えられなくなるため、負極材料に余分な接着剤を添加する必要があり、これは、負極多孔質炭素材料のエネルギー密度をある程度低下させる。同時に、多孔質炭素負極材料は、十分な機械的強度を提供するために厚い孔壁を必要とすることが多く、炭素の利用効率を低下させ、容量の発揮に不利である。
【0004】
そのため、現在、高容量、低膨張の負極材料の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池を提供する。本願の負極材料は、材料における炭素の利用効率を向上させ、材料の容量及びサイクル能力をさらに向上させることができるとともに、優れる耐膨張性能を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本願の第1技術案は以下のとおりであり:本願の実施例は負極材料を提供し、上記負極材料は炭素材料を含み、上記炭素材料は炭素シェル層を含み、上記炭素材料の内部にチャンバーを有し、上記チャンバーは上記炭素シェル層に取り囲まれるように形成され、上記炭素シェル層に孔を有し、少なくとも一部の上記孔は上記炭素シェル層を貫通する。
【0007】
本願の第2技術案は以下の通りであり:本願の実施例は、負極材料の製造方法を提供し、
金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料と炭素源とを含む混合物を第1熱処理し、前記炭素源の黒鉛化を触媒し、第1前駆体を得て、
前記第1前駆体をエッチング処理して第2前駆体を得て、前記エッチング処理のエッチング剤は酸化性酸であり、
前記第2前駆体における少なくとも一部のシリコン酸素原料をケイ素材料に還元して、負極材料を得ることを特徴とするステップを含む。
【0008】
本願の第3技術案は以下の通りであり:
本願の実施例は、リチウムイオン電池を提供し、上記リチウムイオン電池は、第1態様に記載の負極材料又は第2態様に記載の製造方法で製造される負極材料を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の技術手段は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0010】
本願の負極材料において、炭素材料は、炭素シェル層の内部に位置するチャンバーと、炭素シェル層に位置する孔とを備え、チャンバー及び孔の存在により、炭素材料が多孔質の中空ハウジングとなり、このような構造は、充填されたケイ素材料が膨張する際に十分な空間を確保することができる。ケイ素材料が膨張して炭素材料を押圧する場合、炭素材料は、リチウム挿入の膨張応力に耐えるために、炭素シェル層上の孔を介して内部ガス又は電解液を排出して歪みを形成し、ケイ素材料がリチウムを放出し収縮する場合、歪みの炭素材料は、炭素シェル層上の孔を介してガス又は電解液を吸収して形態を回復することにより、負極材料の耐膨張性能及びサイクル性能を向上させる。
【0011】
本願は、触媒金属粒子担持のシリコン酸素原料と炭素源とを含む混合物に第1熱処理を行うことにより、炭素源が第1熱処理中に黒鉛化分解して炭素原子を生成し、一部の炭素原子は触媒金属粒子の内部で溶解することができ、飽和まで溶解して触媒表面に析出して、析出した炭素原子が炭素シェル層に成長し、他の一部の炭素原子は、触媒金属粒子の触媒作用によって金属粒子の表面に沿って成長して炭素シェル層を形成することができ、触媒金属粒子が炭素シェル層の内部に封止される構造を形成し、一方、シリコン酸素原料は炭素源材料に対する触媒能力が悪いため、シリコン酸素原料が炭素シェル層の外部に分布し、炭素シェル層に封入された金属粒子の間に分散し、第1前駆体を得る。次に、第1前駆体をエッチング処理し、炭素シェル層内部の触媒金属粒子がエッチングされてチャンバーを形成し、同時に、エッチング処理された酸化性酸は、炭素シェル層の欠陥と酸化還元反応してC-O、C=O、C-N及びC-Sなどの結合を形成して孔を形成し、内部に中空を有する多孔質炭素材料(即ち、第2前駆体)を形成し、最後に、第2前駆体における少なくとも一部のシリコン酸素原料をケイ素材料に還元し、負極材料を得る。本願の製造方法では、第1熱処理条件下で、炭素源が金属触媒粒子を介してシェル層構造に触媒成長し、さらにエッチング処理により前記炭素シェル層構造の内部にチャンバーを有し、炭素シェル層には孔があるようになり、それによって材料の耐膨張性能を向上させ、最後に、本願ではシリコン酸素原料をエッチングする必要がなく、シリコン酸素原料を直接ケイ素材料に還元し、シリコン酸素原料の無駄を低減するとともに負極材料の容量を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本願を更に説明する。
図1】本願に係る負極材料の構成を示す模式図である。
図2】炭素材料の断面構成を示す模式図である。
図3】本願に係る負極材料の製造フローチャートである。
図4】本願に係る金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料及び炭素源に第1熱処理を行って第1前駆体を得る調製過程図である。
図5】本願に係る金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料の製造過程図1である。
図6】本願に係る金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料の製造過程図2である。
図7】本願に係る第1前駆体をエッチング処理して第2前駆体を得る製造過程図である。
図8】第2前駆体と還元剤とを混合して第3熱処理を行って負極材料を得る製造過程図である。
図9】本願に係る負極材料のシミュレーション構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の技術案をよりよく理解するために、以下は、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0014】
説明される実施例は、本願の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではないことを明確にすべきである。本願における実施例に基づいて、当業者が創造的な労力をせずに成し得るすべての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0015】
本願の実施例で使用される用語は、特定の実施例を説明するためだけに使用され、本発明を制限することは意図されていない。本発明の実施例及び特許請求の範囲に使用される単数形の「1つ」、「前記」及び「該」は、文脈で他の意味を明確に示さない限り、複数形式も含むことが意図される。
【0016】
理解すべきことは、本明細書で使用される用語の「及び/又は」は、関連対象の関連関係を説明するものだけであり、三種類の関係が存在可能であることを示す。例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在し、AとBが同時に存在し、Bが単独で存在するという三種類の状況を示すことができる。また、本明細書における文字“/”は、一般的に前後関連対象が“又は”の関係であることを示す。
【0017】
本願は負極材料10を提供し、図1に示すように、負極材料10は炭素材料1を含み、炭素材料1は炭素シェル層12を含み、炭素材料1の内部にはチャンバー11が形成され、チャンバー11は炭素シェル層12を取り囲むように形成される。炭素シェル層12には孔13があり、少なくとも一部の孔13が炭素シェル層12を貫通する。
【0018】
上記技術案において、本願の負極材料10において、炭素材料1は、炭素シェル層12の内部に位置するチャンバー11と、炭素シェル層12に位置する孔13とを備え、チャンバー11及び孔13の存在により、炭素材料1は多孔質を有する中空ハウジングとなり、このような構造は、充填されたケイ素材料が膨張する時に十分な空間を保留することができ、ケイ素材料が膨張して炭素材料1を押圧する場合、炭素材料1は、リチウム挿入の膨張応力に耐えるために、炭素シェル層12上の孔13を介して内部ガス又は電解液を排出して歪みを形成し、ケイ素材料がリチウムを放出し収縮する場合、歪みの炭素材料1は、炭素シェル層12上の孔13を介してガス又は電解液を吸収して形態を回復することにより、負極材料10がリチウム挿入の膨張応力に耐えるために十分な空間を保留することができ、負極材料10の耐膨張性能及びサイクル性能を向上させる。
【0019】
さらに、負極材料10はケイ素材料2をさらに含み、ケイ素材料2は炭素材料1内に分布している。炭素材料1は、充填されたケイ素材料2の膨張に十分な空間を確保し、充填されたケイ素材料2は、負極材料10の利用空間を向上させるとともに、負極材料10の容量を向上させることができる。
【0020】
好ましくは、少なくとも一部のケイ素材料2は炭素シェル層12の間に分布する。
【0021】
図2に示すように、1つの実施例において、炭素材料1は球状であり、炭素シェル層12は黒鉛化炭素材料14を含み、黒鉛化炭素材料14は層状構造であり、黒鉛化炭素材料14の層状構造は炭素材料1の半径方向に沿って積層して設置されるため、炭素シェル層12は優れる弾性率と引張強度を有し、炭素シェル層12が歪みを発生する時に分解することなく収縮して形態を回復することに寄与する。
【0022】
炭素材料1の構成を示す模式図は図2を参照すると、黒鉛化炭素材料14の層状構造の積層方向は炭素材料1の半径方向に沿って延びており、即ち、黒鉛化炭素材料14の層状構造の長さ方向は炭素材料1の半径方向に対して垂直であり、黒鉛化炭素材料14の厚さ方向(即ち、積層方向)は炭素シェル層12の延びる方向に対して垂直であり、炭素材料1の半径方向と一致している。
【0023】
黒鉛化炭素材料は、黒鉛およびグラフェンの少なくとも1種を含む。好ましくは、黒鉛化炭素材料はグラフェンであり、グラフェンにおける層状構造の層数は20未満であり、具体的には、1層、2層、3層、5層、8層、10層、12層、15層、18層又は19層などであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定しない。
【0024】
1つの実施例において、黒鉛化炭素材料は黒鉛であり、黒鉛は複数層のグラフェンの堆積であり、黒鉛における層状構造の層数は20以上であり、具体的には、20層、30層、50層、80層、100層、120層、150層、180層又は200層などであってもよく、もちろん上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定しない。
【0025】
いくつかの実施形態において、ケイ素材料の一部は、チャンバー11及び/又は孔13に位置し、負極材料10の容量を向上することができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、炭素材料1の間に層状黒鉛(層状黒鉛は図面に示されていない)が設けられ、層状黒鉛構造の存在により、負極材料10の導電性ネットワークが強化され、それにより負極材料10の導電性が向上する。
【0027】
炭素材料はいくつかの実施形態において、炭素材料1のメディアン径は、5nm~200nmであり、具体的には、炭素材料1のメディアン径は、例えば、5nm、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、120nm、150nm、180nm及び200nmなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0028】
いくつかの実施形態において、炭素シェル層12の厚さは、1.2nm~5.2nmであり、具体的には、炭素シェル層12の厚さは、例えば、1.2nm、1.5nm、2nm、2.5nm、3nm、3.5nm、4nm、5nm及び5.2nmなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0029】
本願における炭素シェル層12の厚さは1.2nm~5.2nmであり、黒鉛化炭素材料14は層状構造を有し、本願の炭素シェル層12が一定の剛性を有するとともに、一定の弾性を有し、材料のリチウム挿入による体積膨張に抵抗できることを示す。
【0030】
いくつかの実施形態において、負極材料は、波長532nmの測定光源を用いてラマン分光法により得られるラマンスペクトルに示され、1300cm-1~1400cm-1にDバンドが観察され、1500cm-1~1600cm-1にGバンドが観察され、Dバンドのピーク強度IとGバンドのピーク強度Iとの比I/Iが0.5より大きい。具体的には、I/Iは、0.6、0.7、0.8、0.9などであってもよく、もちろん、上記の範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。上記の限定される範囲内において、本願の負極材料の黒鉛化度が高く、炭素材料1の間に強いπ-πスタッキングファンデルワールス力を持たせ、このような構造はリチウム挿入による膨張応力に抵抗でき、それによって炭素材料1間の細孔のリチウム挿入能力を発揮し、炭素の利用効率を高めることができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、チャンバー11の平均内径は、3.8nm~198.8nmであり、具体的には、チャンバー11の平均内径は、例えば、3.8nm、10nm、30nm、50nm、80nm、100nm、120nm、150nm、180nm及び198.8nmなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願では、ここで限定されず、炭素材料1が球状であり、チャンバー11も球状であり、チャンバー11の平均内径は、球状のチャンバー11における内円の直径の平均値を指すことが理解される。
【0032】
いくつかの実施形態において、孔13の平均孔径は、0.42nm~2nmであり、具体的には、孔13の平均孔径は、0.42nm、0.5nm、1nm、1.5nm、1.8nm及び2nmなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0033】
いくつかの実施形態において、隣接する炭素材料1の間の距離は、0nm~40nmであり、具体的には、隣接する炭素材料1の間の距離は、例えば、0.34nm、1nm、5nm、10nm、20nm、30nm及び40nmなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願ではここで限定されず、本願の負極材料10において、隣接する炭素材料1の間の距離が近いと、材料のリチウム挿入過程におけるバルクリチウムの形成及びリチウム放出過程におけるケイ素材料2の漏れを低減することに有利であり、いくつかの隣接する炭素材料1の間の距離は、0nmであってもよいことが理解される。
【0034】
いくつかの実施形態において、炭素材料1の球形度は、0.6~1.0であり、具体的には、炭素材料1の球形度は、0.6、0.7、0.8、0.9及び1.0などであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願は、ここで限定しない。本願の炭素材料1の球形度が高く、材料の加工性能の向上に有利である。
【0035】
いくつかの実施形態において、負極材料10におけるケイ素材料2の質量比は、5%~80%であり、具体的には、負極材料10におけるケイ素材料2の質量比は、例えば、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%及び80%などであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0036】
いくつかの実施形態において、ケイ素材料2のメディアン径は、1nm~15nmであり、例示的に、ケイ素材料2のメディアン径は、1nm、3nm、5nm、8nm、10nm、12nm、14nm及び15nmなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0037】
いくつかの実施形態において、ケイ素材料2は、結晶シリコンおよびアモルファスシリコンのうちの少なくとも1種を含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、炭素材料1の弾性率は、0.1TPa~0.8TPaであり、具体的には、炭素材料1の弾性率は、例えば、0.1TPa、0.2TPa、0.3TPa、0.4TPa、0.5TPa、0.6TPa、0.7TPa及び0.8TPaなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願では限定されず、炭素材料1の弾性率が0.1TPa以下であると、炭素材料1が崩壊しやすく、炭素材料1の弾性率が0.8Tpa以上であると、炭素材料1の剛性が増大し、リチウム挿入の膨張に空間を提供しにくい。
【0039】
いくつかの実施形態において、炭素材料1の引張強度は、15GPa~110GPaであり、具体的には、炭素材料1の引張強度は、例えば、15GPa、30GPa、50GPa、60GPa、80GPa、100GPa及び110GPaなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。上記範囲内において、本願の炭素材料1は、優れた機械的特性を有し、これは、本願における炭素材料1のシェル層の厚さが薄く、黒鉛化度が高く、炭素材料1の間の距離が短いため、π-πスタッキングファンデルワールス力が強くなり、それにより炭素材料1の間の隙間構造が良好な安定性を有し、このような安定性がリチウム挿入による膨張応力に抵抗でき、粒子間の細孔のリチウム挿入能力を発揮し、炭素の利用効率を向上させるからである。炭素材料1の引張強度が15GPa未満であると、炭素材料がリチウム挿入膨張時に破砕しやすく、炭素材料1の引張強度が110GPaを超えると、リチウム挿入膨張のために空間を提供しにくい。
【0040】
いくつかの実施形態において、炭素材料1の空孔率は65%~96%であり、具体的には、炭素材料1の空孔率は、例えば、65%、70%、75%、80%、85%、90%及び96%などであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願ではここで限定されず、炭素材料1の空孔率は、炭素材料1におけるチャンバー11及び孔13の体積割合を指すことが理解される。
【0041】
いくつかの実施形態において、負極材料10の空孔率は、7%~50%であり、具体的には、負極材料10の空孔率は、例えば、7%、10%、15%、20%、30%、40%及び50%などであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願では限定されず、負極材料10の空孔率は、チャンバー11、孔13及び炭素材料1の間の空隙が負極材料10に占める体積割合を指すことが理解される。本願の負極材料10の空孔率が大きいため、負極材料10は優れる耐膨張性能を有する。
【0042】
いくつかの実施形態において、隣接する炭素材料1の間のπ-πスタッキングファンデルワールス力は、1kJ/mol~50kJ/molであり、具体的には、隣接する炭素材料1の間のπ-πスタッキングファンデルワールス力は、1kJ/mol、5kJ/mol、10kJ/mol、20kJ/mol、30kJ/mol、40kJ/mol及び50kJ/molなどであり、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。本願の炭素材料1の間に強いπ-πスタッキングファンデルワールス力を有することにより、炭素材料1の間の隙間がリチウム挿入の膨張応力に耐えることができ、追加の接着剤を添加することなく、負極材料10のエネルギー密度を向上させることができる。
【0043】
本願は上記負極材料10の製造方法をさらに提供し、図3に示すように、本願の負極材料10の製造フローチャートであり、
金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料と炭素源とを含む混合物を第1熱処理し、炭素源の黒鉛化を触媒し、第1前駆体を得て、
第1前駆体をエッチング処理して第2前駆体を得て、エッチング処理のエッチング剤は酸化性酸を含み、
第2前駆体における少なくとも一部のシリコン酸素原料をケイ素材料に還元して、負極材料10を得るステップを含む。
【0044】
上記技術案において、本願は、触媒金属粒子担持のシリコン酸素原料と炭素源とを含む混合物に第1熱処理を行うことにより、炭素源が第1熱処理中に黒鉛化分解して炭素原子を生成し、一部の炭素原子は触媒金属粒子の内部で溶解することができ、飽和まで溶解して触媒表面に析出して、析出した炭素原子が炭素シェル層12に成長し、他の一部の炭素原子は、触媒金属粒子の触媒作用によって金属粒子の表面に沿って成長して炭素シェル層12を形成することができ、触媒金属粒子が炭素シェル層12の内部に封止される構造を形成し、一方、シリコン酸素原料は炭素源材料に対する触媒能力が悪いため、シリコン酸素原料が炭素シェル層12の外部に分布し、炭素シェル層12に封入された金属粒子の間に分散し、第1前駆体を得る。次に、第1前駆体にエッチング処理を行い、炭素シェル層内部の触媒金属粒子がエッチングされてチャンバー11が形成され、同時に、エッチング処理された酸化性酸は、炭素シェル層12の欠陥と酸化還元反応を起こし、炭素原子を徐々に剥離して孔13を形成し、酸化還元終了時に孔のエッジにC-O、C=O、C-N及びC-S等の結合を形成し、内部にチャンバー11を有する多孔質炭素材料1(即ち、第2前駆体)を形成し、最後に、第2前駆体における少なくとも一部のシリコン酸素原料をケイ素材料に還元し、負極材料10を得る。本願の製造方法では、第1熱処理条件下で、炭素源が金属触媒粒子を介してシェル層構造に触媒成長し、シェル層構造は、大きな孔容積及びリチウム挿入能力を備え、さらにエッチング処理により前記炭素シェル層12構造の内部にチャンバー11を有し、炭素シェル層12には孔13があり、それによって材料の耐膨張性能を向上させ、最後に、本願ではシリコン酸素原料をエッチングする必要がなく、シリコン酸素原料を直接ケイ素材料2に還元し、シリコン酸素原料の無駄を低減するとともに負極材料10の容量を向上させる。
【0045】
以下、実施例を合わせて本発明の製造方法を具体的に説明する。
ステップS100において、図4に示すように、金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料と炭素源とを含む混合物を第1熱処理し、炭素源の黒鉛化を触媒し、第1前駆体を得る。いくつかの実施形態において、炭素源は、気相炭素源及び固相炭素源を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、気相炭素源は、メタン、エタンおよびアセチレンのうちの少なくとも1種を含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、固相炭素源は、ピッチ、グルコース、スクロース、セルロース、グリシン、アラニン及びフェニルアラニンのうちの少なくとも1種を含む。固体炭素源を用いて第1熱処理を行う場合、固体炭素源は気体炭素源に比べて均一性が悪いため、局所炭素源が過剰になり、炭素材料1の間に層状の黒鉛構造が形成され、層状黒鉛構造の存在により、負極材料10の導電性ネットワークを強化し、負極材料10の導電性を向上させることができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、固相炭素源と金属触媒粒子との質量比は、1:(10~10000)であり、具体的には、固相炭素源と金属触媒粒子との質量比は、例えば、1:10、1:50、1:100、1:500、1:1000、1:5000及び1:10000などであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。上記範囲内において、金属触媒粒子の添加量が多く、炭素源が金属触媒粒子の表面に薄いシェル層構造を生成するのに寄与する。固相炭素源と金属触媒粒子との質量比が1:10より大きいと、過剰なアモルファスカーボンが生成されてしまい、材料の性能向上に不利である。固相炭素源と金属触媒粒子との質量比が1:10000未満であると、炭素源の添加量が少なすぎて、炭素源が金属触媒粒子を完全に被覆できない。
【0049】
いくつかの実施形態において、気相炭素源の導入流量は、10sccm~250sccmであり、具体的には、気相炭素源の導入流量は、10sccm、30sccm、50sccm、100sccm、150sccm、200sccm及び250sccmなどであり、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。気相炭素源の導入流量を増加させると、炭素シェル層12の厚さが増加し、さらに炭素シェル層12の引張強度及び弾性率が増加し、導入流量が250sccmを超えると、炭素シェル層12の成長が速くなり、欠陥が多く、引張弾性率及び弾性率が低下することが理解される。
【0050】
いくつかの実施形態において、第1熱処理の温度は、600℃~1000℃であり、具体的には、第1熱処理の温度は、例えば、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃、850℃、900℃、950℃及び1000℃などであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0051】
いくつかの実施形態において、第1熱処理の保温時間は、1min~30minであり、具体的には、第1熱処理の保温時間は、例えば、1min、5min、10min、20min及び30minなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願は、ここで限定しない。
【0052】
いくつかの実施形態において、第1熱処理のプロセスにおいて水素ガスを導入し、水素ガスの導入流量は10ccm~290sccmであり、例示的に、水素ガスの導入流量は10sccm、30sccm、50sccm、80sccm、90sccm、150sccm、200sccm、250sccm及び290sccmなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。水素ガスの導入流量を上記範囲内に制御することで、炭素源の分解を低減し、分解された炭素原子の濃度を減少させ、さらに炭素原子が炭素シェル層を生成する速度を遅くし、欠陥サイトの含有量を低下させ、負極材料のI/Iを0.5より大きく制御することができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料は、シリコン酸素原料と金属塩触媒とを含む混合物を還元雰囲気中で第2熱処理し、金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料を得る。
具体的には、図5に示すように、シリコン酸素原料及び金属塩触媒を含む混合材料は、
溶媒、シリコン酸素原料及び金属塩触媒を混合して混合物を得て、混合物を乾燥・研磨して金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料を得て、乾燥処理後に得られた材料は塊状固体であり、予備用のためにさらに粉末に研磨する必要があることが理解されるステップを含む。
【0054】
本ステップにおいて、図6に示すように、還元性ガス雰囲気においてシリコン酸素原料と金属塩触媒とを含む混合物における触媒金属イオンを触媒金属ナノ粒子に還元することにより、一方では、シリコン酸素原料をテンプレート剤として、シリコン酸素原料が金属塩触媒に担持サイトを提供することができ、他方では、シリコン酸素原料を分散剤として、シリコン酸素原料は触媒金属イオンが金属ナノ粒子に還元して成長する過程において金属ナノ粒子の融合を制限することができ、触媒金属ナノ粒子が比較的均一で制御可能なサイズを有する。もちろん、本願は、他の通常の方法によって金属触媒粒子担持のシリコン酸素原料を得ることもでき、例示的には、ドライ又はウエットプロセスによって金属触媒粒子とシリコン酸素原料とを直接的に混合して得られ、本願はここで限定せず、金属触媒粒子は、鉄、コバルト、ニッケル、銅、金、鉄合金、コバルト合金、ニッケル合金、銅合金及び金合金のうちの少なくとも1種を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、シリコン酸素原料は、二酸化ケイ素及び一酸化ケイ素のうちの少なくとも1種を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、シリコン酸素原料のメディアン径は、5nm~200nmであり、具体的には、シリコン酸素原料のメディアン径は、例えば、5nm、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、120nm、150nm、180nm及び200nmなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0057】
いくつかの実施形態において、金属塩触媒は、Fe3+、Co2+、Ni2+、Cu2+及びAu3+のうちの少なくとも1種を含む。例示的には、金属塩触媒は、Fe(NO、FeCl、Co(NO、CoCl、Ni(NO、NiCl、Cu(NO、CuCl、及びHAuClの少なくとも1種を含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、シリコン酸素原料と金属塩触媒との質量比は1:(0.08~5)であり、具体的には、シリコン酸素原料と金属塩触媒との質量比は、1:0.08、1:0.1、1:0.5、1:1、1:2、1:3、1:4及び1:5等であってもよく、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0059】
いくつかの実施形態において、溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール及び水のうちの少なくとも1種を含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、溶媒の添加量は、シリコン酸素原料及び金属塩触媒の総質量の50倍~1000倍であり、具体的には、溶媒の添加量は、シリコン酸素原料及び金属塩触媒の総質量の50倍、100倍、200倍、500倍、700倍、800倍、900倍及び1000倍等であり、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0061】
いくつかの実施形態において、混合の方式は、研磨及び超音波のうちの少なくとも1種を含み、例示的には、超音波のパワーは、40W~50Wであり、超音波のパワーは、例えば、40W、42W、45W、48W及び50Wなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。超音波の保温時間は、0.5h~5hであり、超音波の保温時間は、例えば、0.5h、1h、2h、3h、4h及び5hなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願は、ここで限定しない。上記範囲内において、シリコン酸素原料と金属塩触媒との十分な混合を確保でき、金属塩触媒粒子を均一的に担持するシリコン酸素原料の形成に有利である。
【0062】
いくつかの実施形態において、乾燥の方式は蒸発乾燥を含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、還元性ガス雰囲気は、水素ガス及びアンモニアガスのうちの少なくとも1種を含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、還元性ガス雰囲気の導入流量は、10sccm~150sccmであり、具体的には、還元性ガス雰囲気の導入流量は、例えば、10sccm、30sccm、50sccm、80sccm、100sccm、120sccm及び150sccmなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0065】
いくつかの実施形態において、第2熱処理の温度は、400℃~1000℃であり、具体的には、第2熱処理の温度は、例えば、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃及び1000℃などであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0066】
いくつかの実施形態において、第2熱処理の保温時間は、5min~30minであり、具体的には、第2熱処理の保温時間は、例えば、5min、10min、15min、20min、25min及び30minなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願は、ここで限定しない。
【0067】
いくつかの実施形態において、第2熱処理の昇温速度は、100℃/h~1200℃/hであり、具体的には、第2熱処理の昇温速度は、100℃/h、300℃/h、500℃/h、800℃/h、1000℃/h及び1200℃/hなどであり、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0068】
ステップS200において、図7に示すように、第1前駆体をエッチング処理して第2前駆体を得て、エッチング処理のエッチング剤は酸化性酸を含む。第2前駆体は炭素材料1を含み、炭素材料1は炭素シェル層12を含み、炭素シェル層12はチャンバー11を有し、炭素シェル層12には孔13があり、炭素材料1の間にはシリコン酸素原料が充填されている。
【0069】
本ステップにおいて、炭素シェル層12の内部の触媒金属粒子がエッチングされるように、第1前駆体をエッチング処理し、それによりチャンバー11及び孔13が形成され、エッチング処理中に、一部のシリコン酸素原料がチャンバー11及び/又は孔13に入ることができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、酸化性酸は、硫酸、硝酸および過酸化水素のうちの少なくとも1種を含む。一方、酸化性酸を用いて炭素シェル層12内部の触媒金属粒子をエッチングしてチャンバー11を形成することができ、一方では、酸化性酸は炭素材料1の欠陥と酸化還元反応を起こしてC-O、C=O、C-N及びC-S等の結合を形成し、孔13を形成することができる。例示的には、鉄、コバルト、鉄合金、コバルト合金などの腐食しにくい材質の金属触媒粒子に対して、硫酸と硝酸との混合酸をエッチング剤として用いてエッチング処理を行い、必要に応じてエッチング処理の過程で加熱処理を行うことにより、腐食効果を向上させることができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、混酸における硫酸の濃度は、0.1mol/L~4mol/Lであり、具体的には、混酸における硫酸の濃度は、0.1mol/L、0.5mol/L、1mol/L、2mol/L、3mol/L及び4mol/Lなどであり、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願では限定されない。
【0072】
いくつかの実施形態において、混酸における硝酸の濃度は、0.1mol/L~4mol/Lであり、具体的には、混酸における硝酸の濃度は、0.1mol/L、0.5mol/L、1mol/L、2mol/L、3mol/L及び4mol/Lなどであり、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0073】
いくつかの実施形態において、エッチング処理の時間は、2h~24hであり、具体的には、エッチング処理の時間は、2h、5h、10h、12h、15h、18h、20h及び24hなどであり、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願は、ここで限定しない。
【0074】
いくつかの実施形態において、エッチング処理後に得られる材料は固液混合相であり、エッチング処理によって得られる材料を固液分離する必要があり、それにより得られる固体に第1水洗及び第1乾燥を行い、第2前駆体を得る。第2前駆体は炭素材料1を含み、炭素材料1のシェル層構造の内部にチャンバー11がエッチングされ、炭素材料1のシェル層構造に孔13がエッチングされ、リチウムが挿入される膨張応力に耐えられるように十分な空間を確保することができ、負極材料10の耐膨張性能を向上させる。
【0075】
いくつかの実施形態では、固液分離は、例えば、遠心分離またはろ過であってもよい。
【0076】
いくつかの実施形態において、第1水洗の回数は1回以上であり、好ましくは、第1水洗の回数は3回~10回である。
【0077】
いくつかの実施形態において、第1乾燥の温度は、50℃~80℃であり、具体的には、第1乾燥の温度は、50℃、60℃、70℃及び80℃などであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0078】
いくつかの実施形態において、第1乾燥の時間は6h~24hであり、具体的には、第1乾燥の時間は6h、8h、10h、12h、15h、18h、20h及び24hなどであり、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0079】
ステップS300において、第2前駆体における少なくとも一部のシリコン酸素原料をケイ素材料に還元して負極材料10を得て、具体的には、図8に示すように、第2前駆体において還元剤と混合してから第3熱処理を行うことにより、第2前駆体におけるシリコン酸素原料をケイ素材料2に還元することができ、得られる負極材料10のシミュレーション構造は図9に示す。
【0080】
いくつかの実施形態において、還元剤は、マグネシウム粉末及びアルミニウム粉末のうちの少なくとも1種を含み、還元剤の還元作用下で、第2前駆体中のシリコン酸素原料をケイ素材料2に還元させ、シリコン酸素原料をエッチングする必要がなく、負極材料10の容量を向上させるとともに、資源の無駄を減少させる。
【0081】
いくつかの実施形態において、第2前駆体と還元剤との質量比は(1.25~2.00):1であり、具体的には、第2前駆体と還元剤との質量比は、1.25:1、1.50:1、1.75:1及び2.00:1などであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。上記範囲内であれば、シリコン酸素原料をできるだけいケイ素材料2に還元することができ、負極材料10の容量向上に寄与する。
【0082】
いくつかの実施形態において、第3熱処理は、不活性ガス雰囲気中で行われる。
【0083】
いくつかの実施形態において、不活性ガスは、窒素ガスおよびアルゴンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、第3熱処理の温度は、600℃~800℃であり、具体的には、第3熱処理の温度は、600℃、630℃、650℃、680℃、700℃、730℃、750℃、780℃、790℃及び800℃などであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0085】
いくつかの実施形態において、第3熱処理の保温時間は、0.5h~5hであり、具体的には、第3熱処理の保温時間は、0.5h、1h、2h、3h、4h及び5hなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願はここで限定しない。
【0086】
いくつかの実施形態において、第3熱処理した後は、第3熱処理で得られる材料を不活性化処理して、ケイ素材料2を不活性化し、ケイ素材料2の酸化を減少させ、材料の容量を向上させるステップをさらに含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、不活性化処理されるガスはアンモニアガスを含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、不活性化処理の後に、不活性化処理によって得られた材料に対して酸洗いを行い、第2水洗し、第2乾燥するステップをさらに含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、酸洗いの試薬は塩酸を含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、酸洗いの時間は、2h~24hであり、具体的には、酸洗いの時間は、例えば、2h、5h、8h、10h、12h、15h、18h及び24hなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、本願は、ここで限定しない。
【0091】
いくつかの実施形態において、第2水洗の回数は5回~10回である。
【0092】
いくつかの実施形態において、第2乾燥の方式は、凍結乾燥を含む。
【0093】
第3態様において、本願は、上記負極材料10又は上記製造方法で製造された負極材料10を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0094】
当業者にとって明らかなように、以上で説明されたリチウムイオン電池の製造方法は実施例に過ぎない。本発明の内容を逸脱しない範囲内において、当該分野で通常使用される他の方法を採用することができる。
【0095】
以下、複数の実施例を分けて本発明の実施例を更に説明する。但し、本発明は、以下の具体的な実施例に限定されない。主請求項の範囲を変更せずに、適宜変更してもよい。
【0096】
実施例1
【0097】
(1)800mLメタノールに、まず1gSiOを加え、次に2.10gCo(NO2・6HOを加えて混合溶液を得った後、混合溶液を40Wの超音波パワーで4h超音波する。次に、超音波後の混合溶液を蒸発させ、12h乾燥させて塊状の固体を得て、最後に、塊状の固体を粉末状に粉砕して、触媒Co2+を担持した二酸化ケイ素SiO@Coを得る。
【0098】
(2)(1)におけるSiO@Co粉末をCVD管状炉内に入れ、流量が90sccmであるH環境において、1200℃/hの昇温速度で800℃まで昇温した後、20min保温し、SiO@Coを還元してコバルトナノ粒子を担持した二酸化ケイ素SiO-CoNPs粉末を形成する。
【0099】
(3)800℃の高温条件下で、Hの流量を10sccmに調整し、流量が150sccmであるメタンを導入し、10min導入した後、Hとメタンをオフにし、Arガスを導入して室温まで降温し、複数層黒鉛封止コバルトナノ粒子を担持した二酸化ケイ素SiO-Co@GNPs粉末を得る。
【0100】
(4)SiO-Co@GNPs粉末を1mol/L硫酸と1mol/L硝酸の混酸溶液中に置き、8hエッチングし、遠心分離した後、多孔質中空黒鉛を担持した二酸化ケイ素SiO-MGNPs沈殿を得て、複数回水洗した後、8h乾燥し、SiO-MGNPs粉末を得る。
【0101】
(5)SiO-MGNPs粉末とマグネシウム粉末を1.5:1の質量比で混合し、高温管状炉中に置き、650℃のArガス雰囲気中で高温還元反応を2時間行い、その後室温まで降温する。次に、アンモニアガスを1h導入した後、アンモニアガスを閉じ、さらにArガスを0.5h導入した後、Arガスを閉じ、混合粉末を取り出す。最後に、混合粉末に対して1mol/L塩酸中で2h酸洗いを行い、遠心分離水洗し、凍結乾燥した後、Si-MGNPs粉末を得る。
【0102】
本実施例で製造される負極材料は、球状の炭素材料と、炭素材料の間に位置するケイ素材料とを含み、炭素材料は、炭素シェル層を含み、炭素シェル層が取り囲んでチャンバーを形成し、炭素シェル層には孔があり、炭素シェル層は、複数層の黒鉛化炭素材料を含み、複数層の黒鉛化炭素材料は、炭素材料の半径方向に沿って積層して設けられる。炭素シェル層の黒鉛化炭素材料の層数、炭素シェル層の厚さ、チャンバーの平均内径、孔の平均孔径、負極材料の空孔率及び厚さの数値を表1に示す。
【0103】
実施例2
【0104】
実施例1と異なるのは、ステップ(1)におけるCo(NO2・6HOをCu(NOに置き換えることである。
【0105】
本実施例で製造される負極材料は、炭素材料と、炭素材料の間に位置するケイ素材料とを含み、炭素材料は、炭素シェル層を含み、炭素シェル層が取り囲んでチャンバーを形成し、炭素シェル層には孔があり、炭素シェル層は、黒鉛化炭素材料を含み、黒鉛化炭素材料は、層状構造であり、黒鉛化炭素材料の層状構造は、炭素材料の半径方向に沿って積層して設けられる。炭素シェル層の黒鉛化炭素材料の層数、炭素シェル層の厚さ、チャンバーの平均内径、孔の平均孔径、負極材料の空孔率及び厚さの数値を表1に示す。
【0106】
実施例3
【0107】
実施例1と異なるのは、ステップ(1)におけるCo(NO2・6HOをFe(NOに置き換えることである。
【0108】
本実施例で製造される負極材料は、炭素材料と、炭素材料の間に位置するケイ素材料とを含み、炭素材料は、炭素シェル層を含み、炭素シェル層が取り囲んでチャンバーを形成し、炭素シェル層には孔があり、炭素シェル層は、黒鉛化炭素材料を含み、黒鉛化炭素材料は、層状構造であり、黒鉛化炭素材料の層状構造は、炭素材料の半径方向に沿って積層して設けられる。炭素シェル層の黒鉛化炭素材料の層数、炭素シェル層の厚さ、チャンバーの平均内径、孔の平均孔径、負極材料の空孔率及び厚さの数値を表1に示す。
【0109】
実施例4
【0110】
実施例1と異なるのは、ステップ(1)におけるCo(NO2・6HOをNiClに置き換えることである。
【0111】
本実施例で製造される負極材料は、炭素材料と、炭素材料の間に位置するケイ素材料とを含み、炭素材料は、炭素シェル層を含み、炭素シェル層が取り囲んでチャンバーを形成し、炭素シェル層には孔があり、炭素シェル層は、黒鉛化炭素材料を含み、黒鉛化炭素材料は、層状構造であり、黒鉛化炭素材料の層状構造は、炭素材料の半径方向に沿って積層して設けられる。炭素シェル層のグラフェン層の数、炭素シェル層の厚さ、チャンバーの平均内径、孔の平均孔径、負極材料の空孔率及び厚さの数値を表1に示す。
【0112】
実施例5
【0113】
実施例1と異なるのは、ステップ(1)及びステップ(2)を行わず、1g二酸化ケイ素、0.43gコバルト金属ナノ粒子及び800mlメタノールを混合した後、40 Wの超音波パワーで4h超音波し、乾燥後、コバルトナノ粒子を担持した二酸化ケイ素SiO-CoNPs粉末を得ることである。得られたSiO-CoNPsについて、実施例1の(3)~(5)のステップをさらに行った。
【0114】
本実施例で製造される負極材料は、炭素材料と、炭素材料の間に位置するケイ素材料とを含み、炭素材料は、炭素シェル層を含み、炭素シェル層が取り囲んでチャンバーを形成し、炭素シェル層には孔があり、炭素シェル層は、黒鉛化炭素材料を含み、黒鉛化炭素材料は、層状構造であり、黒鉛化炭素材料の層状構造は、炭素材料の半径方向に沿って積層して設けられる。炭素シェル層のグラフェン層の数、炭素シェル層の厚さ、チャンバーの平均内径、孔の平均孔径、負極材料の空孔率及び厚さの数値を表1に示す。
【0115】
実施例6
【0116】
(1)800mLメタノールに、まず1gSiOを加え、次に2.10gCo(NO2・6HO及び20mgフェニルアラニン(Phe)を加えて、混合溶液を得て、そして、混合溶液を40Wの超音波パワーで4h超音波する。次に、超音波後の混合溶液を蒸発させ、12h乾燥させて塊状の固体を得て、最後に、塊状の固体を粉末状に粉砕して、触媒Co2+及び固体炭素源Pheを担持した二酸化ケイ素SiO@Co-Pheを得る。
【0117】
(2)(1)におけるSiO@Co-Phe粉末をCVD管状炉内に入れ、流量が90sccmであるH環境において、1200℃/hの昇温速度で800℃まで昇温した後、20min保温し、SiO@Coを還元してコバルトナノ粒子を担持した二酸化ケイ素SiO-CoNPs粉末を形成する(この過程で、固体炭素源Pheはすでに分解し始める)。
【0118】
(3)800℃の高温条件下で、Hの流量を10sccmに調整し、Pheの分解過程を継続し、10min導入した後、Hをオフにし、Arガスを導入して室温まで降温し、複数層黒鉛封止コバルトナノ粒子を担持した二酸化ケイ素SiO-Co@GNPs粉末を得る。
【0119】
(4)SiO-Co@GNPs粉末を1mol/L硫酸と1mol/L硝酸の混酸溶液中に置き、8hエッチングし、遠心分離した後、多孔質中空黒鉛を担持した二酸化ケイ素SiO-MGNPs沈殿を得て、複数回水洗した後、8h乾燥し、SiO-MGNPs粉末を得る。
【0120】
(5)SiO-MGNPs粉末とマグネシウム粉末を1.5:1の質量比で混合し、高温管状炉中に置き、650℃のArガス雰囲気中で高温還元反応を2時間行い、その後室温まで降温する。次に、アンモニアガスを1h導入した後、アンモニアガスを閉じ、さらにArガスを0.5h導入した後、Arガスを閉じ、混合粉末を取り出す。最後に、混合粉末に対して1mol/L塩酸中で2h酸洗いを行い、遠心分離水洗し、凍結乾燥した後、Si-MGNPs粉末を得る。
【0121】
本実施例で製造される負極材料は、炭素材料と、炭素材料の間に位置するケイ素材料とを含み、炭素材料は、炭素シェル層を含み、炭素シェル層が取り囲んでチャンバーを形成し、炭素シェル層には孔があり、炭素シェル層は、黒鉛化炭素材料を含み、黒鉛化炭素材料は、層状構造であり、黒鉛化炭素材料の層状構造は、炭素材料の半径方向に沿って積層して設けられる。炭素シェル層のグラフェン層の数、炭素シェル層の厚さ、チャンバーの平均内径、孔の平均孔径、負極材料の空孔率及び厚さの数値を表1に示す。
【0122】
実施例7
【0123】
実施例1と異なるのは、メタンの導入流量が8sccmであり、導入保温時間が5minであることである。
【0124】
本実施例で製造される負極材料は、炭素材料と、炭素材料の間に位置するケイ素材料とを含み、炭素材料は、炭素シェル層を含み、炭素シェル層が取り囲んでチャンバーを形成し、炭素シェル層には孔があり、炭素シェル層は、複数層のグラフェンを含み、複数層のグラフェンは、炭素材料の半径方向に沿って積層して設けられる。炭素シェル層のグラフェン層の数、炭素シェル層の厚さ、チャンバーの平均内径、孔の平均孔径、負極材料の空孔率及び厚さの数値を表1に示す。
【0125】
実施例8
【0126】
実施例1と異なるのは、メタンの導入流量が10sccmであり、導入保温時間が30minであることである。
【0127】
本実施例で製造される負極材料は、炭素材料と、炭素材料の間に位置するケイ素材料とを含み、炭素材料は、チャンバー炭素シェル層を含み、炭素シェル層はチャンバーを有し、炭素シェル層には孔があり、炭素シェル層は、黒鉛化炭素材料を含み、黒鉛化炭素材料は、層状構造であり、黒鉛化炭素材料の層状構造は、炭素材料の半径方向に沿って積層して設けられる。炭素シェル層のグラフェン層の数、炭素シェル層の厚さ、チャンバーの平均内径、孔の平均孔径、負極材料の空孔率及び厚さの数値を表1に示す。
【0128】
実施例9
【0129】
実施例1と異なるのは、メタンの導入流量が50sccmであり、導入保温時間が20minであることである。
【0130】
本実施例で製造される負極材料は、炭素材料と、炭素材料の間に位置するケイ素材料とを含み、炭素材料は、チャンバー炭素シェル層を含み、炭素シェル層はチャンバーを有し、炭素シェル層には孔があり、炭素シェル層は、黒鉛化炭素材料を含み、黒鉛化炭素材料は、層状構造であり、黒鉛化炭素材料の層状構造は、炭素材料の半径方向に沿って積層して設けられる。炭素シェル層のグラフェン層の数、炭素シェル層の厚さ、チャンバーの平均内径、孔の平均孔径、負極材料の空孔率及び厚さの数値を表1に示す。
【0131】
実施例10
【0132】
実施例1と異なるのは、メタンの導入流量が250sccmであり、導入保温時間が1minであることである。
【0133】
本実施例で製造される負極材料は、炭素材料と、炭素材料の間に位置するケイ素材料とを含み、炭素材料は、チャンバー炭素シェル層を含み、炭素シェル層はチャンバーを有し、炭素シェル層には孔があり、炭素シェル層は、黒鉛化炭素材料を含み、黒鉛化炭素材料は、層状構造であり、黒鉛化炭素材料の層状構造は、炭素材料の半径方向に沿って積層して設けられる。炭素シェル層のグラフェン層の数、炭素シェル層の厚さ、チャンバーの平均内径、孔の平均孔径、負極材料の空孔率及び厚さの数値を表1に示す。
【0134】
実施例11
【0135】
実施例1と異なるのは、メタンの導入流量が300sccmであり、導入保温時間が10minであることである。
【0136】
本実施例で製造される負極材料は、炭素材料と、炭素材料の間に位置するケイ素材料とを含み、炭素材料は、チャンバー炭素シェル層を含み、炭素シェル層はチャンバーを有し、炭素シェル層には孔があり、炭素シェル層は、黒鉛化炭素材料を含み、黒鉛化炭素材料は、層状構造であり、黒鉛化炭素材料の層状構造は、炭素材料の半径方向に沿って積層して設けられる。炭素シェル層のグラフェン層の数、炭素シェル層の厚さ、チャンバーの平均内径、孔の平均孔径、負極材料の空孔率及び厚さの数値を表1に示す。
【0137】
比較例1
【0138】
(1)1gSiO粉末と0.5gピッチ粉末を均一に混合した後、混合粉末を高温箱型炉に入れ、N雰囲気下で1200℃/hの昇温速度で800℃まで昇温し、その後、10minの恒温を保持して炭化し、炭素封止された二酸化ケイ素SiO-C粉末を形成する。
【0139】
(2)SiO-C粉末を1mol/L硫酸と1mol/L硝酸との混酸溶液に置き、8hエッチングし、遠心分離して多孔質炭素被覆される二酸化ケイ素SiO-MCNPs沈殿を得て、その後、SiO-MCNPs沈殿を20wt%フッ化水素酸に置いて、二酸化ケイ素を8hエッチングし、多孔質炭素材料MCNPs粉末を得る。
【0140】
(3)MGNPs粉末、SiO及びマグネシウム粉末を1:2:2の質量比で混合し、高温管状炉中に置き、650℃のN雰囲気中で高温還元反応を2h行い、その後室温まで降温する。次に、アンモニアガスを1h導入した後、アンモニアガスを閉じ、さらにNを0.5h導入した後、Nを閉じ、混合粉末を取り出す。最後に、混合粉末に対して1mol/L塩酸中で2h酸洗いを行い、遠心分離水洗し、凍結乾燥した後、Si-MCNPs粉末を得る。
【0141】
本比較例で製造される負極材料は、炭素材料と、炭素材料の間に位置するケイ素材料とを含み、炭素材料は、炭素シェル層を含み、炭素シェル層はチャンバーを有し、炭素シェル層には孔があり、炭素シェル層はアモルファスカーボンである。炭素シェル層の厚さ、チャンバーの平均内径、孔の平均孔径、負極材料の空孔率及び厚さの数値を表1に示す。
【0142】
比較例2
【0143】
実施例1と異なるのは、ステップ(4)における1mol/L硫酸と1mol/L硝酸との混酸溶液をHFに置き換えることである。
【0144】
本比較例で製造される負極材料は、黒鉛粒子及び黒鉛粒子の間に位置するケイ素材料を含み、黒鉛粒子は、中実金属コア及び中実金属コアの表面に位置する黒鉛シェル層を含む。負極材料の各測定パラメータを表1に示す。
【0145】
性能測定
【0146】
(1)BET細孔分布を用いてチャンバー及び孔の孔容積寸法を測定し、炭素材料の空孔率及び負極材料の空孔率を計算し、炭素材料の空孔率を測定する前に、負極材料中のケイ素材料をHFでエッチング除去する必要がある。
【0147】
(2)負極材料におけるケイ素材料をエッチングする前に、負極材料の質量Mを測定し、HFを用いてケイ素材料をエッチングした後測定された負極材料の質量はMであり、(M-M)/Mは、即ち、負極材料におけるケイ素材料の質量割合である。
【0148】
(3)高分解能透過型電子顕微鏡を用いて炭素シェル層のグラフェンの層数、炭素シェル層の厚さ及び隣接する炭素材料の間の距離を測定する。
【0149】
(4)HFを用いて負極材料におけるケイ素材料をエッチングした後、ゼータサイザーを用いて炭素材料の球形度及びメディアン径を測定する。
【0150】
(5)HFを用いて負極材料におけるケイ素材料をエッチングした後、ナノインデンターを用いて炭素材料の弾性率及び引張強度を測定する。
【0151】
(6)二重偏光干渉測定器を用いて炭素材料の間のπ-πスタッキングファンデルワールス力を測定する
【0152】
(7)チャンバーの平均孔径の測定方法:透過型電子顕微鏡画像の炭素材料における200個のチャンバーの孔径を数学的に統計して平均値を算出する。
【0153】
(8)孔の平均孔径の測定方法:HFを用いて負極材料におけるケイ素材料をエッチングした後、米国Micromeritics ASAP 2460全自動比表面及び細孔率分析計を用いて孔の平均孔径を測定し、測定時に使用されるガスはCOである。
【0154】
(9)ケイ素材料のメディアン径の測定方法:透過型電子顕微鏡画像のケイ素材料の直径を数学的に統計する。
【0155】
(10)以下の方法で負極材料の電気化学特性を測定する。
製造されたケイ素-炭素負極材料、導電剤及び接着剤を94:1:5の質量比で溶媒に混合してスラリー(固体含有量が50%)とし、銅箔集電体に塗布し、真空乾燥させ、負極極片を製造する;次に負極極片、従来の成熟プロセスで製造された三元正極極片、1mol/LのLiPF/エチレンカーボネート+ジメチルカーボネート+エチルメチルカーボネート(v/v=1:1:1)電解液、Celgard2400セパレータ、電池ハウジングを通常の製造プロセスで18650円筒単電池に組み立てる。円筒電池の充放電試験は、Wuhan LAND electronics Co.,Ltd.製のLAND電池用テストシステムで行い、条件は、常温下0.2Cで定電流充放電し、充放電電圧を2.75V~4.2Vとすることである。試験結果を表1及び表2に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
表1及び表2に示すように、本願の実施例1~実施例11に示す製造方法では、第1熱処理条件下で、炭素源が金属触媒粒子を介して炭素シェル層12に触媒成長し、さらにエッチング処理により炭素シェル層12の構造の内部にチャンバー11を有し、炭素シェル層12に孔13が形成されるようになり、炭素材料が大きな孔容積及びリチウム挿入能力を有するようにし、それによって炭素材料の耐膨張性能が向上し、また、本願の製造方法においてシリコン酸素原料をエッチングする必要がなく、シリコン酸素原料を直接ケイ素材料に還元し、シリコン酸素原料の無駄を低減するとともに負極材料の容量を向上させる。
【0159】
実施例1、実施例7~実施例11において、本願では、ステップ(3)における気相炭素源の導入流量及び第1熱処理の保温時間を調整することにより、生成された炭素シェル層12の厚さ(即ち、炭素シェル層12のグラフェン層数)を調整し、実施例7において、気相炭素源の導入流量が少ないため、炭素シェル層12の厚さが薄くなり、炭素材料1の引張強度が低下し、それによって負極材料10のサイクル性能及び耐膨張性能が低下し、実施例11において、気相炭素源の導入流量が大きすぎるため、炭素シェル層12の厚さが厚くなり、炭素材料1の引張強度が増加するが、柔軟性が低下し、炭素材料1の間の隙間が減少し、ケイ素材料2の量が減少し、負極材料10の容量が低下する。
【0160】
比較例1で製造された負極材料において、触媒金属粒子が添加されていないため、得られる炭素材料は連続黒鉛結晶格子構造を有さないアモルファスカーボンとなり、得られる負極材料の機械的性能が悪く、さらに耐膨張性及びサイクル安定性が悪い。
【0161】
比較例2において、HFを用いてエッチング処理を行い、炭素シェル層がHFを遮断することができるため、炭素材料にチャンバー及び孔がなく、且つHFのエッチングによって材料中のケイ素材料の含有量が減少され、さらに材料の比容量が悪くなり、チャンバー及び孔がないと材料の体積膨張が増大するが、該比較例で得られる負極材料におけるケイ素の量が少ないため、総合的には体積膨張が比較的小さい。
【0162】
上記は、本願の好ましい実施例にすぎず、本願を限定することを意図するものではなく、当業者にとって、本願は、様々な修正および変更を有し得る。本願の精神と原則内で、行われたいかなる修正、同等置換、改善などは、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0163】
10-負極材料
1-炭素材料
11-チャンバー
12-炭素シェル層
13-孔
14-黒鉛化炭素材料
2-ケイ素材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】