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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】適応聴覚ヘルス制御
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024515700
(86)(22)【出願日】2023-01-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 SE2023050078
(87)【国際公開番号】W WO2023146464
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】2250090-4
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521501130
【氏名又は名称】オウディオド アーベー(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ルンドバック ヨナス
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AA01
5D220AB08
(57)【要約】
聴取者の音響線量を制御するためのシステム(200)が提示される。システム(200)は、複数のオーディオプロファイルを記憶するように構成されたリモートストレージ(220)に動作可能に接続されたクラウドサーバ(210)を備え、オーディオプロファイルのそれぞれは、システム(200)の特定ユーザに関連する音圧データ及び聴覚プロファイルを含む。システム(200)は、トランスデューサ(15)と、コントローラ(100)と、聴取者(40)が経験する最新音圧(p)を測定するように配置されたマイクロホン(17)とを備える1つ以上のオーディオ再生構成(10)をさらに備える。前記1つ以上のオーディオ再生構成(10)のクラウドサーバ(210)及び/又はコントローラ(100)は、音圧データ等に基づいて、聴取者の音響線量が音響線量閾値を超えるまでの推定時間を表す最新推定期間を推定させる制御回路を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴取者(40)の音響線量(D)を制御するためのシステム(200)であって、前記システム(200)は、
複数のオーディオプロファイル(50)を記憶するように構成されたリモートストレージ(220)に動作可能に接続されたクラウドサーバ(210)であって、前記複数のオーディオプロファイル(50)のそれぞれが前記システム(200)の特定ユーザ(40)に関連する音圧データ(52)及び聴覚プロファイル(54)を含む、クラウドサーバ(210)と、
トランスデューサ(15)と、コントローラ(100)と、前記聴取者(40)が経験する最新音圧(p)を測定するように配置されたマイクロホン(17)とを備える1つ以上のオーディオ再生構成(10)であって、前記1つ以上のオーディオ再生構成(10)は、前記クラウドサーバ(210)に動作可能に接続され、前記聴取者(40)のアイデンティティを決定するように構成され、前記システム(200)は、前記アイデンティティを前記システム(200)の特定ユーザ(40)に関連付けるように構成される、1つ以上のオーディオ再生構成(10)と、
を備え、
前記1つ以上のオーディオ再生構成(10)の前記クラウドサーバ(210)及び/又は前記コントローラ(100)は、制御回路を備え、前記制御回路は、
前記聴取者(40)のための音圧データ(52)及び聴覚プロファイル(54)を含むオーディオプロファイル(50)を取得するステップ(310)と、
前記聴取者(40)が経験する最新音圧(p)を取得するステップ(320)と、
前記聴取者(40)の前記音圧データ(52)、前記聴覚プロファイル(54)及び前記最新音圧(p)に基づいて、前記聴取者(40)の前記音響線量(D)が音響線量閾値(L)を超えるまでの推定時間を表す最新推定期間(Tce)を、前記聴取者(40)の前記聴覚プロファイル(54)に基づく前記最新音圧(p)の周波数重み付け(325)によって、推定するステップ(330)と、
前記最新推定期間(Tce)が前記音響線量閾値(L)に関連付けられた線量期間(T)を下回ることに応答して、
前記音圧データ(52)及び前記最新音圧(p)に基づいて、前記聴取者(40)の前記音響線量(D)が前記音響線量閾値(L)を超えるまでの推定時間を表す最新更新済期間(Tcu)が前記線量期間(T)を満たすか又は超える更新済音圧(p)を計算するステップ(340)と、
前記更新済音圧(pcu)を満たすように前記最新音圧(p)を制御するための命令(60)を提供するステップ(350)と、
を行わせるように構成される、システム(200)。
【請求項2】
前記オーディオプロファイル(50)の前記音圧データ(52)は、前記聴取者(40)が経験した以前の音圧を含む履歴音圧データ(52)を含む、請求項1に記載のシステム(200)。
【請求項3】
前記オーディオプロファイル(50)の前記音圧データ(52)は、前記聴取者(40)が経験した累積音圧(52)を含む、請求項1又は2に記載のシステム(200)。
【請求項4】
前記オーディオプロファイル(50)の前記音圧データ(52)は、前記聴取者(40)が経験した音圧傾向を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【請求項5】
前記最新音圧(p)は、前記聴取者(40)の耳(42、44)に配置されたマイクロホン(17)から取得される(320)、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【請求項6】
前記聴取者(40)の前記音響線量(D)が前記音響線量閾値(L)を超えるまでの前記推定時間を表す最新推定期間(Tce)を推定するステップ(330)は、予測モデル(56)を決定するステップ(335)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【請求項7】
前記予測モデル(56)は、平均モデルを含む、請求項6に記載のシステム(200)。
【請求項8】
前記予測モデル(56)は、回帰型ニューラルネットワーク(RNN)モデルを含む、請求項5又は7に記載のシステム(200)。
【請求項9】
前記制御回路は、前記最新音圧(p)に基づいて、前記聴取者(40)のための前記オーディオプロファイル(50)の前記音圧データ(52)を更新するステップ(360)を行わせるように、さらに構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【請求項10】
前記制御回路は、前記聴取者(40)の左耳(42)及び/又は右耳(44)に対する前記最新音圧(p)を制御するための命令(60)を提供するステップ(350)を行わせるように構成され、前記オーディオプロファイル(50)は、前記聴取者(40)の前記左耳(42)及び前記右耳(44)のそれぞれに対する別個の音圧データ(52)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴覚ヘルスに関し、より詳細には、聴取者の音響線量の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
あらゆる形式のオーディオへのアクセスは、Walkman(登録商標)及びその後の携帯電話等の携帯電子機器の導入に伴って大きく増加している。オーディオブック、お気に入りの歌又は興味深いポッドキャストは、いつでも手の届くところにある。これは、産業、交通等からの一般的な環境騒音の増大と相まって、人間の大部分の聴覚ヘルスの悪化に対する意識の高まりにつながっている。
【0003】
世界保健機関(WHO)は、いくつかの研究を提供し、長期間にわたって大音量で聴取することの危険性を報告している。例えば、WHOによれば、12~35歳の10億人以上の若者は、娯楽目的で大音量にさらされることにより難聴になるリスクがある。WHOは、引き続き、未治療の難聴による年間コストを全世界で9800億ドルと推定している。WHOは、50%の難聴が公衆衛生措置によって予防され得ると推定している。いくつかの予防戦略は、大きな音及び音楽への暴露、又は耳栓等の保護機器の装着等の個人のライフスタイルの選択を対象としている。これは、パーソナルオーディオシステム及びデバイスのためのオーディオ規格を実装することによって支援することができる。
【0004】
その結果、国際電気通信連合(ITU)は、「安全なリスニングデバイス/システムのためのガイドライン」と題する勧告ITU-T H.870を発行している。本明細書では、どのように音の線量、又は音響線量が計算され、安全な聴取を示す限界と比較されるかについて説明している。さらなるガイドラインは、例えば、様々な国及び地域の労働安全衛生の行政、労働安全衛生のための他の国立研究所よって発行されている。
【0005】
耳の損傷を防ぐために、家庭用電化製品用のヘッドホンには、所定の最大出力レベルが提供されている。この鈍的アプローチは、聴取持続時間を考慮していないので、ユーザは、長すぎる期間にわたって、高すぎるレベルで聴取することにより、長期的に聴覚ヘルス問題を引き起こす危険性がある。
【0006】
以上より、改善の余地があることが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術よりも改善され、上述の欠点を排除又は少なくとも軽減する新しいタイプのオーディオ制御を提供することである。より具体的には、本発明の目的は、聴取者のための音響線量を監視するためのシステムで、聴取者にとって便利で、聴取者の聴覚を傷つけるリスクを低減するものを提供することである。これらの目的は、添付の独立請求項に記載される技術によって達成され、好ましい実施形態は、それに関連する従属請求項に定義される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の態様では、聴取者の音響線量を制御するためのシステムが提示される。システムは、リモートストレージに動作可能に接続されたクラウドサーバを備える。リモートストレージは、複数のオーディオプロファイルを記憶するように構成される。各オーディオプロファイルは、システムの特定ユーザに関連付けられた音圧データ及び聴覚プロファイルを含む。システムは、トランスデューサと、コントローラと、マイクロホンとを備える1つ以上のオーディオ再生構成をさらに備える。マイクロホンは、聴取者が経験する最新音圧を測定するように配置される。1つ以上のオーディオ再生構成は、クラウドサーバに動作可能に接続され、聴取者のアイデンティティを決定するように構成される。システムは、決定されたアイデンティティをシステムの特定ユーザに関連付けるように構成される。1つ以上のオーディオ再生構成のクラウドサーバ及び/又はコントローラは、制御回路を備え、制御回路は、聴取者のための音圧データ及び聴覚プロファイルを含むオーディオプロファイルを取得するステップと、聴取者が経験する最新音圧を取得するステップとを行わせるように構成される。音圧データ、聴取者の聴覚プロファイル、及び最新音圧に基づいて、制御回路は、聴取者の聴覚プロファイルに基づいて最新音圧を周波数重み付けすることによって、聴取者の音響線量が音響線量閾値を超えるまでの推定時間を表す最新推定期間を推定するステップを行わせるようにさらに構成される。最新推定期間が、音圧データ及び最新音圧に基づいて、音響線量閾値に関連付けられた線量期間を下回ることに応答して、制御回路は、聴取者の音響線量が音響線量閾値を超えるまでの推定時間を表す最新更新済期間が線量期間を満たすか又は超える更新済音圧を計算するステップを行わせるようにさらに構成される。制御回路は、更新済音圧を満たすように最新音圧を制御するための命令を提供するステップを行わせるようにさらに構成される。
【0009】
一変形形態では、オーディオプロファイルの音圧データは、聴取者が経験した以前の音圧を含む履歴音圧データを含む。これによって、最新推定期間の推定がより正確になるので有益である。
【0010】
一変形形態では、オーディオプロファイルの音圧データは、聴取者が経験する累積音圧を含む。これによって、累積音圧の記憶及び共有が可能になるので有益である。取得された累積音圧は、例えば、聴取者が他のオーディオ再生構成を聴取している間に累積されてもよい。
【0011】
一変形形態では、オーディオプロファイルの音圧データは、聴取者が経験した音圧傾向を含む。これによって、最新推定期間の推定がより正確になるので有益である。
【0012】
一変形形態では、最新音圧は、聴取者の耳に配置されたマイクロホンから取得される。これによって、最新音圧を過度の処理なしに直接取得できるので有益である。
【0013】
一変形形態では、聴取者の音響線量が音響線量閾値を超えるまでの推定時間を表す最新推定期間を推定するステップは、予測モデルを決定するステップを含む。これによって、最新推定期間の推定がより正確になるので有益である。
【0014】
一変形形態では、予測モデルは、平均モデルを含む。これによって、最新推定期間の推定がより正確になるので有益である。
【0015】
一変形形態では、予測モデルは、回帰型ニューラルネットワーク(RNN)モデルを含む。これによって、最新推定期間の推定がより正確になるので有益である。
【0016】
一変形形態では、制御回路は、最新音圧に基づいて聴取者のためのオーディオプロファイルの音圧データを更新するステップを行わせるようにさらに構成される。これによって、例えば、累積音圧の記憶及び共有が簡素化されるので有益である。
【0017】
一変形形態では、制御回路は、聴取者の左耳及び/又は右耳に対する最新音圧を制御するための命令を提供するステップを行わせるように構成され、オーディオプロファイルは、聴取者の左耳及び右耳のそれぞれに対する別個の音圧データを備える。これによって、音響線量の制御がより正確になるので有益である。
【0018】
第二の態様では、聴取者の音響線量を制御するための方法が提示される。方法は、聴取者の音圧データを含むオーディオプロファイルを取得するステップと、聴取者が経験する最新音圧を取得するステップとを含む。方法は、音圧データ及び最新音圧に基づいて、聴取者の音響線量が音響線量閾値を超えるまでの推定時間を表す最新推定期間を推定するステップをさらに含む。最新推定期間が、音響線量閾値に関連付けられた線量期間を下回る場合、方法は、音圧データ及び最新音圧に基づいて、聴取者の音響線量が音響線量閾値を超えるまでの推定時間を表す最新更新済期間が線量期間を満たすか又は超える更新済音圧を計算するステップと、更新済音圧を満たすように最新音圧を制御するための命令を提供するステップと、を含む。
【0019】
一変形形態では、オーディオプロファイルの音圧データは、聴取者が経験した以前の音圧を含む履歴音圧データを含む。これによって、最新推定期間の推定がより正確になるので有益である。
【0020】
一変形形態では、オーディオプロファイルの音圧データは、聴取者が経験する累積音圧を含む。これによって、累積音圧の記憶及び共有が可能になるので有益である。取得された累積音圧は、例えば、聴取者が他のオーディオ再生構成を聴取している間に累積されてもよい。
【0021】
一変形形態では、オーディオプロファイルの音圧データは、聴取者が経験した音圧傾向を含む。これによって、最新推定期間の推定がより正確になるので有益である。
【0022】
一変形形態では、最新音圧は、聴取者の耳に配置されたマイクロホンから取得される。これによって、最新音圧を過度の処理なしに直接取得できるので有益である。
【0023】
一変形形態では、オーディオプロファイルは、聴取者の聴覚プロファイルをさらに含む。この変形形態では、最新推定時間は、さらに、聴取者の聴覚プロファイルに基づいて最新音圧に周波数重み付けすることによって、聴取者の聴覚プロファイルに基づいてもよい。これによって、重み付けされた最新音圧は、聴取者が知覚する実際の音圧になるので、有益である。極端な例として、聴取者が特定の周波数帯域で聴取できない場合、これらの周波数帯域での音圧は、聴取者にとって実質的に無害である。
【0024】
一変形形態では、聴取者の音響線量が音響線量閾値を超えるまでの推定時間を表す最新推定期間を推定するステップは、予測モデルを決定するステップを含む。これによって、最新推定期間の推定がより正確になるので有益である。
【0025】
一変形形態では、予測モデルは、平均モデルを含む。これによって、最新推定期間の推定がより正確になるので有益である。
【0026】
一変形形態では、予測モデルは、回帰型ニューラルネットワーク(RNN)モデルを含む。これによって、最新推定期間の推定がより正確になるので有益である。
【0027】
一変形形態では、方法は、最新音圧に基づいて聴取者のためのオーディオプロファイルの音圧データを更新するステップをさらに含む。これによって、例えば、累積音圧の記憶及び共有が簡素化されるので有益である。
【0028】
一変形形態では、オーディオプロファイルは、リモートストレージから取得される。これによって、例えば、オーディオプロファイルの記憶及び共有が簡素化されるので有益である。
【0029】
一変形形態では、方法は、聴取者の左耳及び/又は右耳に対して実行され、オーディオプロファイルは、聴取者の左耳及び右耳のそれぞれに対する別個の音圧データを含む。これによって、音響線量の制御がより正確になるので有益である。
【0030】
第三の態様では、オーディオ再生構成を制御するコントローラが提示される。オーディオ再生構成は、オーディオトランスデューサと、オーディオ再生構成の聴取者が経験する最新音圧を測定するように配置されたマイクロホンとを備える。コントローラは、制御回路を備え、制御回路は、聴取者のための音圧データを含むオーディオプロファイルを取得するステップと、聴取者が経験する最新音圧を取得するステップとを行わせるように構成される。音圧データ及び最新音圧に基づいて、コントローラは、聴取者の音響線量が音響線量閾値を超えるまでの推定時間を表す最新推定期間を推定するステップを行わせるように構成される。最新推定期間が音響線量閾値に関連付けられた線量期間を下回ることに応答して、コントローラは、音圧データ及び最新音圧に基づいて、聴取者の音響線量が音響線量閾値を超えるまでの推定時間を表す最新更新済期間が線量期間を満たすか又は超える更新済音圧を計算するステップを行わせるように構成される。コントローラは、更新済音圧を満たすように最新音圧を制御するための命令を提供するステップを行わせるようにさらに構成される。
【0031】
第四の態様では、第二の態様のコントローラを備えるオーディオ再生構成が提示される。
【0032】
一変形形態では、オーディオ再生構成は、オーディオトランスデューサと、オーディオ再生構成の聴取者が経験する最新音圧を測定するように配置されたマイクロホンとをさらに備える。
【0033】
一変形形態では、コントローラは、聴取者のための音圧データを含むオーディオプロファイルを取得するステップと、聴取者が経験する最新音圧を取得するステップとを行うように構成される。音圧データ及び最新音圧に基づいて、コントローラは、聴取者の音響線量が音響線量閾値を超えるまでの推定時間を表す最新推定期間を推定するステップを行うように構成される。最新推定期間が、音響線量閾値に関連付けられた線量期間を下回る場合、コントローラは、音圧データ及び最新音圧に基づいて、聴取者の音響線量が音響線量閾値を超えるまでの推定時間を表す最新更新済期間が線量期間を満たすか又は超える更新済音圧を計算するステップを行うように構成される。コントローラは、更新済音圧を満たすように最新音圧を制御するための命令を提供するステップを行うようにさらに構成される。
【0034】
一変形形態では、コントローラは、第一の態様による方法を実行するようにさらに構成される。
【0035】
一変形形態では、コントローラは、コントローラによって受信されたソース信号Sを再生するために、オーディオトランスデューサを制御するようにさらに構成される。
【0036】
一変形形態では、コントローラは、ソース信号を処理してソース信号の明瞭度を調整するようにさらに構成される。
【0037】
一変形形態では、オーディオ再生構成は、外部マイクロホンをさらに備え、ソース信号の明瞭度は、外部マイクロホンから取得された背景雑音に基づいて調整される。
【0038】
一変形形態では、オーディオプロファイルは、聴取者の聴覚障害を記述する聴覚プロファイルをさらに含み、コントローラは、聴覚プロファイルに基づいてソース信号を処理するようにさらに構成される。これによって、重み付けされた最新音圧は、聴取者が知覚する実際の音圧になるので、有益である。極端な例として、聴取者が特定の周波数帯域で聴取できない場合、これらの周波数帯域での音圧は、聴取者にとって実質的に無害である。
【0039】
一変形形態では、コントローラは、更新済音圧を満たすように最新音圧を制御するための命令に基づいて、トランスデューサを制御するようにさらに構成される。
【0040】
第五の態様では、聴取者の音響線量を制御するためのシステムが提示される。システムは、聴取者のための音圧データを含むオーディオプロファイルを記憶するように構成されたリモートストレージに動作可能に接続されたクラウドサーバと、トランスデューサと、コントローラと、聴取者が経験する最新音圧を測定するように配置されたマイクロホンとを備える1つ以上のオーディオ再生構成とを備える。前記1つ以上のオーディオ再生構成は、クラウドサーバに動作可能に接続され、クラウドサーバ及び/又は前記1つ以上のオーディオ再生構成は、第二の態様のコントローラを備える。
【0041】
変形形態では、リモートストレージは、複数のオーディオプロファイルを記憶するように構成され、そのそれぞれは、システムの個々のユーザに関連する音圧データを含む。前記1つ以上のオーディオ再生構成は、聴取者のアイデンティティを決定するように構成される。システムは、前記アイデンティティをシステムの個々のユーザに関連付けるように、さらに構成される。これによって、オーディオ再生構成が複数の聴取者間で共有されてもよく、及び/又は聴取者が異なるオーディオ再生構成を使用してもよく、それでも、音響線量の正確な制御を伴っているので、有益である。
【0042】
第六の態様では、非一時的コンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品が提示される。コンピュータ可読媒体は、プログラム命令を含むコンピュータプログラムをその上に有する。コンピュータプログラムは、コントローラにロード可能であり、コンピュータプログラムがコントローラによって実行されると、第一の態様による方法を行わせるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明の実施形態について、以下で、本発明の概念をどのように実施することができるかの非限定的な例を示す添付の図式的図面を参照しながら、説明する。
【0044】
図1】本開示の実施形態のブロック図である。
図2a】本開示の実施形態による音響線量の時系列プロットである。
図2b】本開示の実施形態による音響線量の時系列プロットである。
図3a】本開示の実施形態によるオーディオ再生構成の概略図である。
図3b】本開示の実施形態によるオーディオ再生構成の概略図である。
図3c】本開示の実施形態によるオーディオ再生構成の概略図である。
図3d】本開示の実施形態によるオーディオ再生構成の概略図である。
図4】本開示の実施形態によるシステムのブロック図である。
図5】本開示の実施形態によるシステムのシグナリング図である。
図6】本開示の実施形態による音響線量の時系列プロットである。
図7】本開示の実施形態による方法のブロック図である。
図8a】本開示の実施形態によるコントローラの概略図である。
図8b】本開示の実施形態によるコントローラの概略図である。
図8c】本開示の実施形態によるコントローラの概略図である。
図8d】本開示の実施形態によるコントローラの概略図である。
図8e】本開示の実施形態によるコントローラの概略図である。
図9】本開示の実施形態によるコンピュータプログラムの概略図である。
図10a】本開示の実施形態によるコンピュータプログラムの概略図である。
図10b】本開示の実施形態によるコンピュータプログラムの概略図である。
図10c】本開示の実施形態によるコンピュータプログラムの概略図である。
図10d】本開示の実施形態によるコンピュータプログラムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下では、特定の実施形態について、添付の図面を参照して、より詳細に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、例として提供されるが、それは、本開示が徹底的かつ完全なものであり、添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の範囲を当業者に十分に伝えるためである。
【0046】
「結合された」という用語は、接続されたものとして定義されるが、必ずしも直接的ではなく、必ずしも機械的なものではない。「結合された」2つ以上のアイテムは、互いに一体であってもよい。「1つの(a)」及び「1つの(an)」という用語は、本開示が別途明示的に必要としない限り、1つ以上として定義される。「実質的に」、「およそ」、及び「約」という用語は、当業者によって理解されるように、概ねその特定されたものであると定義されるが、必ずしも完全にその特定されたものである必要はない。「備える」(及びその任意の形態、例えば「備えて」及び「備えている」)、「有する」(及びその任意の形態、例えば「有して」及び「有している」)、「含む」(及びその任意の形態、例えば「含んで」及び「含んでいる」)及び「含有する(及びその任意の形態、例えば「含有し」及び「含有している」)いう用語は、オープンエンドの連結動詞である。その結果、1つ以上のステップを「備える」、「有する」、「含む」、又は「含有する」方法は、それらの1つ以上のステップを所持するが、それらの1つ以上のステップのみを所持することに限定されない。
【0047】
本明細書では、再生システム、再生デバイス、又は再生音量という用語は、受信されたオーディオデータを再生するという意味での再生を意味するものとする。この用語は、記憶されたオーディオ又はメディアを再生する限定形態での再生を意味するものではなく、全ての形態のメディア、例えば、リアルタイムメディア、記憶されたメディア、ストリーミングされたメディア、漸進的にダウンロードされたメディア等の再生を包含するものである。これに加えて、補償という用語は、その最も広い形態での補償を意味するものとし、本開示では、処理という用語と同義であると見なすことができる。これは、アクションを記述するときだけでなく、この用語がオブジェクト、例えば、補償フィルタを記述するために使用されるときにも適用可能である。
【0048】
図1から開始して、本開示は、聴取者40が経験する音響線量Dを制御して、その聴取者の聴力に対する損傷又は負傷のリスクが低減されるようにすることに関する。目的は、聴取者40の聴取経験及び聴取快適性を過度に制限することなく、これを達成することである。音響線量Dは、特定の期間にわたって聴取者が経験する累積音圧の尺度である。音響線量Dは、
【数1】
として、「安全なリスニングデバイス/システムのためのガイドライン」と題する先に引用したITU-T H.870に従って計算することができ、ここで、p(t)は、時間tにおいて経験されるA重み付き拡散場補正音圧である。一般に知られているように、A重み付けは、概して、人間の耳によって知覚される相対的な音量を考慮に入れるために、計器測定音圧に適用される。時間の関数としての音響線量Dは、線量プロファイルとして参照されてもよい。音圧は、通常、その対数尺度である音圧レベル(SPL)を基準とする。音圧は、測定された二乗平均平方根(rms)値であり、国際的に合意された基準prefは、pref.dB=2・10-5N/m=20μPaであり、対応してdB単位で、pref.dB=20log10(pref)≒93.9794dB SPLである。これに対応して、Pascal単位での音圧pは、
【数2】
として計算されるSPLを有する。
【0049】
本開示において言及される聴取者40は、オーディオ再生構成10を現在使用している、すなわち現在聴取している特定のユーザを意味することに言及すべきである。
【0050】
聴取者40は、オーディオ再生構成10を聴取しており、これは、本開示の他のセクションでさらに詳細に説明され、最新音圧pを受けている。聴取者40が経験する最新音圧pの少なくとも一部は、オーディオスピーカ構成10のトランスデューサデバイス15、略してトランスデューサ15によって引き起こされてもよい。最新音圧pは、好ましくは、オーディオ再生構成10の1つ以上のマイクロホン17から取得される。
【0051】
好ましくは、最新音圧pは、A加重音圧であるが、これは、1つの好ましい実施形態にすぎない。音圧のA加重尺度は、業界標準であり、制限及び推奨は、典型的には、A加重音圧として通信され、あるいはSPLに変換される場合、dBAで提示されるSPLとして通信される。しかしながら、当業者は、最新音圧pがA重み付けされた音圧である必要はなく、重み付けされていない音圧又は任意の他の適切な方法で重み付けされた音圧であってもよいことを理解するであろう。本開示では、音圧表記が好ましいが、当業者は、これが、それぞれの計算において正しい表現が使用される限り、SPLと交換可能であることを理解するであろう。
【0052】
最新音圧pを経時的に累積して、聴取者の音響線量Dを計算する。音響線量Dは、図2aに示すように、線量期間Tの間に蓄積される最新音圧pであり、最新音圧pのサンプルが音響線量Dに対して経時的にどのように蓄積されるかを例示する。音響線量Dは、線量期間Tにわたって二乗された最新音圧pのスライディング平均として記述されてもよい。聴取者40の負担に対する不快感、負傷又は損傷を回避するために、音響線量Dは、図2aに破線で示す音響線量閾値Lを超えてはならない。鈍力アプローチは、オーディオ再生構成10を単純に制御して、トランスデューサ15へのオーディオの提供を停止し、それによって、オーディオ再生構成10からのオーディオをミュートし、最新音圧pを背景音まで下げることである。そのようなミュートは、音響線量Dが音響線量閾値Lを下回るまで有効でなければならず、聴取者40のオーディオ体験を大幅に低下させるであろう。
【0053】
図2bは、図2aに示されたグラフの部分図であるが、最新音圧pが除去されている。第一の時点aにおいて、聴取者40は、オーディオ再生構成10の音量を増加させ、最新音圧pが増加する。これは、図2bの実線である音響線量Dを増加させ、第二の時点bにおいて、実際の最新期間Tの後、音響線量Dは、図2bの破線である音響線量閾値Lを超える。鈍力アプローチでは、聴取者40は、第三の時点cで線量期間Tが経過するまでオーディオをさらに聴取することができない。しかしながら、聴取者40が経験する最新音圧pと、第一の時点aにおいて蓄積された音響線量Dとに基づいて、本開示の教示を通して、聴取者40の音響線量Dが音響線量閾値Lを超えるまでの推定時間を表す最新推定期間Tcuを推定することが可能である。図2bでは、推定は、第四の時点dにおいて線量閾値Lを超える点線によって示されている。最新推定期間Tceが線量期間Tよりも短いので、聴取者40は、最新音圧pが低下していないと仮定すると、聴取者40の聴覚を損なう可能性がある音響線量Dを受けることになる。しかしながら、最新音圧pが更新済音圧pに低減され、最新更新済期間Tcuが線量期間Tと同じか又はそれよりも長くなるような場合、聴取者40は、聴覚を損なうリスクを伴うことなく、以前と実質的に同じ音量でオーディオを楽しむことができる。図2bでは、これは、第三の時点cにおいて音響線量閾値Lと交差する一点鎖線によって示されている。最新更新済期間Tcuは、更新済音圧pと最新音量Dとに基づいて算出されることが好ましい。
【0054】
図2a及び図2bを参照して与えられた説明に基づいて、図1に関連するいくつかのさらなる詳細を提供する。図1では、聴取者40に関連するオーディオプロファイル50が提供されることが好ましい。オーディオプロファイル50は、聴取者40のための音圧データ52を含む。音圧データ52は、音響線量Dの形で1つ以上の累積音圧を含んでもよい。さらに、音圧データ52は、異なる線量期間TD1,2,…,nの間に蓄積される複数の異なる音響線量D1,2,…,nを含んでもよい。音圧データ52は、累積音響線量D、すなわち最新音響線量Dの形態のデータを含んでもよいが、追加又は代替として、聴取者40が経験した一連の以前の音圧データを含んでもよい。一連の以前の音圧データは、タイムスタンプされたデータであっても、あるいは特定の期間中に聴取者40が経験する平均音圧を示す平均化されたデータサンプルであってもよい。音圧データ52は、言い換えれば、多くの適切な方法で提示されてもよく、本開示は、上記で与えられた特定の例に限定されない。
【0055】
オーディオプロファイル50は、聴取者40の聴覚プロファイル54をさらに含んでもよい。聴覚プロファイル54は、1つ以上の周波数における聴取者40の聴覚能力を記述する聴覚図であってもよい。聴覚プロファイル54は、聴取者40によって実行される聴覚テスト及び/又は例えば年齢、性別、音楽の嗜好等に関する統計データに基づいてもよい。
【0056】
これに加えて、いくつかの実施形態では、オーディオプロファイル50は、聴取者40のための予測モデル56をさらに含む。予測モデル56は、音響線量プロファイル予測56又は聴取モデル56として記述されてもよい。予測モデル56は、聴取者40の聴取挙動を予測するために使用可能なモデルである。予測モデル56は、本開示の他の場所でさらに詳細に説明されるが、任意の好適な方法で形成されてもよい。いくつかの実施形態では、予測モデル56は、最新推定期間Tceを推定するために使用可能な以前の音圧データの時間導関数を含む。追加又は代替として、予測モデル56は、平均モデルであってもよい。追加又は代替として、予測モデル56は、回帰型ニューラルネットワーク(RNN)モデルであってもよい。予測モデル56の例示的な実施形態は、例えば、平均モデル及びRNNを含む予測モデル56を形成するために、組み合わせてもよい。予測モデル56は、オーディオプロファイル50に含まれる必要はないが、本開示のデバイスのいずれかによっていつでも決定され得ることに言及すべきである。
【0057】
例えば図2bを参照して説明したように、概してオーディオプロファイル50、特にオーディオプロファイル50の音圧データ52を、最新音圧pと組み合わせて使用することによって、本明細書で教示するように、聴取者40の音響線量Dが音響線量閾値Lを超えるまでの推定時間を表す最新推定期間Tceを計算することが可能である。
【0058】
より具体的には、図1に示すように、コントローラ100は、オーディオ再生構成10の聴取者40が経験する音響線量Dを制御するために設けられる。これは、コントローラ100が、聴取者40に関連付けられたオーディオプロファイル50と、オーディオ再生構成10のマイクロホン17からの最新音圧pとを取得することによって達成されてもよい。オーディオプロファイル50及び最新音圧pに基づいて、コントローラ100は、どのくらい長い時間、すなわち、以前に提示された最新推定期間Tceを決定又は推定するように構成されてよく、聴取者40は、音響線量Dが音響線量閾値Lを超えるまで、最新音圧pをそれ自体にかけ続けることができる。最新推定期間Tceが線量期間Tよりも短い場合、コントローラ100は、更新済音圧pを決定させるように構成されてもよい。更新済音圧pは、更新済音圧pに基づいて推定される最新更新期間Tcuが線量期間Tと実質的に等しいか、それよりも長くなるように構成されることが好ましい。コントローラ100は、更新済音圧pを満たすように最新音圧pの制御を可能にする命令60をオーディオ再生構成10に提供するように、さらに構成されてもよい。
【0059】
図1を参照して言及されたオーディオ再生構成10は、任意の適切なオーディオ再生構成10であってもよく、本明細書に列挙されたオーディオ再生構成10に限定されないことに言及すべきである。好ましくは、オーディオ再生構成10は、オーディオトランスデューサ15及びマイクロホン17を備えるか、又はそれらに動作可能に接続される。1つ又は複数のマイクロホン17は、オーディオ再生構成10の聴取者40が経験する最新音圧pを測定するように配置される。
【0060】
図3a~dでは、本発明の実施形態によるオーディオ再生構成10の例示的な実施形態が提示される。これらの実施形態は、非限定的なものであり、当業者は、本開示を読んだ後、多くの他の形状、形態又は構成のオーディオ再生構成10が可能であり、本開示の教示とともに使用可能であることを理解するであろう。
【0061】
図3aでは、オーディオ再生構成10は、一対のヘッドホン10の形態で示されている。オーディオ再生構成10は、少なくとも1つのオーディオトランスデューサ15、又は略してトランスデューサ15を含む。トランスデューサ15は、電気信号を人間の耳42、44によって検出可能な振動に変換するように構成された任意の形態のスピーカ15とすることができる(図3d参照)。オーディオ再生構成10は、概して、2つのトランスデューサ15を備えるが、1つのみのトランスデューサ15又は3つ以上のトランスデューサ15を有する実施形態も実現可能である。オーディオ再生構成10は、1つ以上のコントローラ100をさらに備える。コントローラ100は、オーディオトランスデューサ15を制御するように構成されるが、他の制御、処理及び/又は通信関連タスクを非常に良好に実行してもよい。ヘッドホン10は、好ましくは、ヘッドホン10のユーザの耳42、44に配置された1つ以上のマイクロホン17を備える。マイクロホン17は、聴取者40の耳42、44における最新音圧pを測定するように構成可能である。マイクロホン17は、例えば、ノイズキャンセル等に使用可能な聴取者40の耳42、44におけるノイズ測定値を提供する等、他の機能を実行又は支援するように非常によく構成されてもよい。
【0062】
図3bには、オーディオ再生構成10の別の実施形態が示されている。この実施形態でも、オーディオ再生構成10は、トランスデューサ15と、最新音圧pを測定するためのマイクロホン17と、コントローラ100とを備える一対のヘッドホン10である。この実施形態では、コントローラ100は、インターフェース20を介して電子デバイス30と通信するように構成されたトランシーバ(図示せず)を備えるか、又はそれに動作可能に接続される。電子デバイスは、携帯電子デバイス30、好ましくは図3bに示すような携帯電話30、携帯音楽プレーヤ、タブレット、ラップトップ等の任意の適切なレンダリングデバイスであってもよい。コントローラ100は、インターフェース20を介してオーディオストリームを受信するように構成されてもよい。代替又は追加として、コントローラ100は、インターフェース20を介して動作データを送信及び/又は受信するように構成されてもよい。動作データは、オーディオ再生構成10の動作及び/又は制御に関する任意のデータであってもよい。インターフェース20は、有線又は無線インターフェース20であってもよく、さらにデジタル又はアナログインターフェースであってもよい。
【0063】
図3cには、オーディオ再生構成10の別の実施形態が示されている。この実施形態では、トランシーバ35は、マイクロホン37から離れているが、マイクロホン37は、それでも聴取者40の最新音圧pを測定するように構成される。この特定の実施形態では、マイクロホン17は、シート18のヘッドレストに配置される。シート18は、車両のシート18、オフィスチェア、ラウンジチェア等であってもよい。図3cに示す特定の実施形態では、シート18は、自動車の形態の車両のシートであり、トランスデューサ35は、自動車のオーディオスピーカである。コントローラ100は、別個のコントローラ100であってもよく、又は自動車の他の処理タスクを実行するように構成されたコントローラ100であってもよい。コントローラ100は、オーディオ再生構成10を、例えば、リモートサーバ(本開示の他のセクションで説明する)に動作可能に接続するインターフェース20を備えることができる。
【0064】
図3dには、オーディオ再生構成10のさらに別の実施形態が示されている。この実施形態では、トランスデューサ15及びマイクロホン17は、コントローラ100に物理的に接続されるのではなく、コントローラ100に動作可能に接続されるように配置されている。マイクロホン17は、好ましくは、聴取者40の耳42、44の近位に配置され、その結果、聴取者40の耳42、44における最新音圧70を測定することができるようなっている。トランスデューサ15及びマイクロホン17のそれぞれは、単独のデバイスであってもよく、トランスデューサ15は、例えば、Bluetooth(登録商標)スピーカ及び/又はスマートスピーカであってもよく、マイクロホン17は、例えば、聴取者40の耳42、44の近位に装着されるように構成された補聴器、ヘッドセット又は孤立マイクロホン17の一部であってもよい。コントローラ100は、ローカル接続(WIFI、Bluetooth(登録商標)等)を介して直接的に、又はクラウドサーバを介して間接的にマイクロホン17及びトランスデューサ15と通信するように構成された携帯電話等の携帯電子デバイス30であってもよい。コントローラ100は、例えば、スマートホーム機能、音声制御等を提供するように構成された接続ゲートウェイであってもよい。いくつかの実施形態では、コントローラ100は、クラウドサーバ210(図4参照)に含まれる。
【0065】
図3a~dに見られるように、オーディオ再生構成10は、多数の異なる方法で配置されてもよく、図示の実施形態は、任意の適切な方法で非常によく組み合わされても、あるいは拡張されてもよい。オーディオ再生構成10間の1つの共通の特徴は、聴取者40が経験する最新音圧pを測定するように構成されたマイクロホン17を含むことである。これは、マイクロホン17を聴取者40の耳42、44の近位に配置することによって達成してもよい。いくつかの実施形態では、例えば、オーディオ再生構成10が一対のインイヤ型ヘッドホン10である場合、マイクロホン17は、聴取者40の耳空洞又は外耳道に配置されてもよい。マイクロホン17は、聴取者40から遠位に非常に良好に配置されてもよく、例えば、指向性制御によって、聴取者40の耳42、44における最新音圧pを測定するように構成されてもよいことに言及すべきである。マイクロホン17は、任意選択で、聴取者40の耳42、44における最新音圧70を測定するように構成されたマイクロホンのアレイであってもよい。
【0066】
本開示の実施形態は、概して、例えば、携帯電子デバイス30からオーディオストリームを受信するように構成されたオーディオ再生構成10を用いて説明される。しかしながら、いくつかの実施形態では、オーディオ再生構成10は、耳42、44毎にマイクロホン17のうちの少なくとも1つによって感知される音が、オーディオプロファイル50に従ってさらに増強され、ヘッドホントランスデューサ15によってレンダリングされ得る、ヒアスルーモードのために構成されてもよい。
【0067】
ほとんどの実施形態は、1つの音響線量D、1つの線量閾値L、及び1つの線量期間Tに言及するが、全ての実施形態は、2つ以上の音響線量Dを含むように拡張されてもよく、その場合、各音響線量Dは、線量閾値L及び線量期間Tと関連付けられてもよい。
【0068】
図4を参照して、聴取者40の音響線量Dを制御するためのシステム200を説明する。システム200は、リモートストレージ220であり得るストレージ220に動作可能に接続されたクラウドサーバ210を備えてもよい。ストレージ220は、代替又は追加として、本明細書に提示されるオーディオ再生構成10及び/又は携帯電子機器30に部分的又は全体的に配置されてもよい。ストレージ220は、聴取者40の音圧データ52を含むオーディオプロファイル50を記憶するように構成されてもよい。システム200は、1つ以上のオーディオ再生構成10をさらに備え、そのそれぞれは、トランスデューサ15及びマイクロホン17を備える。ここで、マイクロホン17は、聴取者40が経験する最新音圧pを測定するように配置される。システム200は、1つ以上のコントローラ100をさらに備え、コントローラ100は、システム200の全てのデバイスにわたって分散されても、あるいはシステム200のデバイスのうちの1つ以上に配置されてもよい。図4では、コントローラ100は、クラウドサーバ210及びオーディオ再生構成10に配置されるように示されている。これは、1つの例示的な実施形態にすぎず、コントローラ100は、さらに、独立型であってもよく、あるいは携帯電子デバイス30に部分的又は全体的に配置されてもよいことを理解すべきである。いずれにせよ、1つ以上のオーディオ再生構成10は、クラウドサーバ210に動作可能に接続され、携帯電子機器30が存在する場合、それに動作可能に接続される。1つ以上のオーディオ再生構成10は、いくつかの実施形態では、携帯電子機器30を介してクラウドサーバ210に動作可能に接続されてもよい。
【0069】
好ましくは、リモートストレージ220は、1人以上の聴取者40のオーディオプロファイル50を記憶するように構成される。クラウドサーバ210は、特定の聴取者40に関連付けられたオーディオプロファイルを検索及び/又は記憶するためにリモートストレージ220にアクセス及び/又は制御するように構成されてもよい。クラウドサーバは、例えば、オーディオ再生構成10の1つ以上のデバイスから、特定の聴取者40のオーディオプロファイルを提供する要求を受信してもよい。オーディオ再生構成10は、各特定の聴取者が他の聴取者40と区別されるように、聴取者40を識別するように構成されてもよい。そのような方法の1つは、聴取者40がオーディオを聴くことができる前に、オーディオ再生構成10の前で自分自身を識別しなければならないことである。代替又は追加として、オーディオ再生構成10は、例えば、聴取者40の外耳道の音響フットプリントを測定し、音響フットプリントに基づいて聴取者40を識別するように構成されてもよい。
【0070】
上記のようなシステム200の構成は、何人かの聴取者40が同じオーディオ再生構成10を共有すること、及び/又は同じ聴取者40が異なるオーディオ再生構成10を使用することを可能にし、それでもなお音響線量Dが所与の線量期間Tにわたって線量閾値Lを超えないことを保証するので、非常に有益である。例示すると、聴取者40は、クラウドサーバ210を介して聴取者のオーディオプロファイル50にアクセスする一対のヘッドホン10を介して音楽を楽しんでもよい。聴取が進むにつれて、ヘッドホン10は、最新音圧p及び/又は音響線量Dをクラウドサーバ210と共有してもよい。聴取者40は、しばらくして、オーディオ再生構成10をヘッドホン10の異なる一対に、車のオーディオ再生構成10(図3c)に、又はホームシアター10(図3d)に変更してもよい。オーディオ再生構成10のいずれかは、聴取者40を識別し、クラウドサーバ210を介して聴取者のオーディオプロファイル50にアクセスし、聴取者が経験する最新音圧pに基づいて、最新音圧pが線量閾値Lを超えないように、最新音圧pを監視及び/又は制御してもよい。言い換えれば、聴取者40がどのオーディオ再生構成10を選択して使用するかにかかわらず、本開示の教示によって、音響線量Dが線量閾値Lを超えないように、音響線量Dを制御することが可能になる。
【0071】
図4のシステム200の説明から明らかなように、サブコンポーネント、モジュール、デバイス及びブロックへの分割は、固定されていない。言い換えれば、1つ以上の論理デバイスは、1つ以上の物理デバイスに含まれてもよい。図4に提示される論理分割は、例示目的で提供され、当業者は、本開示の教示をダイジェストした後、異なるレイアウトを有するが、等しい目的で、すなわち、聴取者40の音響線量Dを制御するために、いくつかの異なるシステム200を構築することができる。
【0072】
一実施形態では、携帯電子機器30は、レンダリングデバイス30と呼ばれるいくつかの実施形態では、復号されコントローラ100に中継されるオーディオデータを記憶又は受信する。レンダリングデバイス30はさらに、聴取者のためのオーディオプロファイル50を受信し、クラウドサーバ210に送信してもよい。オーディオプロファイル50は、聴取者40の音圧データ52を含むが、例えば聴取者40の聴覚及び特に聴覚ヘルスに関する更なるデータを非常によく含んでもよい。前述のように、レンダリングデバイス30は、携帯型電子機器30、携帯電話、カーステレオであっても、あるいは遠隔場所に接続し、オーディオを受信し、アンパック及び/又は復号する能力を有する任意の他のものであってもよい。アンパック及び/又は復号されたオーディオは、ソース信号S(図5参照)として参照されてもよく、モノラル、ステレオ又は任意の他の形態のマルチチャネル信号であってもよい。
【0073】
コントローラ100は、オーディオストリーム、好ましくは、マイクロホン17から来るマイクロホン信号17’(図5参照)と共にレンダリングデバイス30から来るソース信号Sを有するストリームを処理するように構成されてもよい。コントローラ100は、マイクロホン信号17’、オーディオプロファイル50のデータ、及び/又は任意の他の適切な処理パラメータのうちの1つ以上に基づいて構成された処理を使用して、ソース信号Sを処理してもよい。処理は、モノラルであってもステレオであってもよい。処理されたソース信号15’(図4参照)は、トランスデューサデバイス15に送られる。処理されたソース信号15’は、デジタル式であっても、アナログ形式であってもよく、アナログ形式の場合、トランスデューサ15は、好ましくは、デジタルオーディオ信号15’をアナログオーディオ信号に変換し、アナログ信号を1つ以上の物理的トランスデューサ15に出力するように構成される。トランスデューサ15は、モノラル、例えば、Bluetooth(登録商標)スピーカであってもよく、ステレオ、例えば、一対のヘッドホンであってもよい。カーステレオ又はホームシアターでは、多数のトランスデューサ15が存在してもよい。
【0074】
記録デバイス17は、少なくとも1つのマイクロホン17から構成され、少なくとも1つのマイクロホン17は、前述のように、好ましくは、耳基準(ER)点に位置し、すなわち、聴取者40の耳42、44に物理的に近接して位置する。一対のヘッドホン10において、好ましくは、少なくとも2つのマイクロホン17があり、各マイクロホンは、それぞれ左右のER点でオーディオを記録する。
【0075】
図4のシステム200のクラウドサーバ210は、サーバ210、リモートサーバ210、又はクラウドサービス210と呼んでもよい。クラウドサーバ210は、適宜、聴覚ヘルスデータを受信するように構成されてもよく、聴覚ヘルスデータは、好ましくは、聴取者40のためのオーディオプロファイル50に含まれる。聴覚ヘルスデータ、又は略して聴覚データは、オーディオプロファイル50に含まれ、聴取者40による使用、例えば、聴取レベル及び持続時間に基づいて計算されてもよい。すなわち、サーバ210は、音響線量D、最新音圧p、及び/又は任意の他の音圧データ52を受信するように構成されてもよい。クラウドサービス210は、聴取者40に関連付けられた受信聴覚データの全部又は一部をストレージ220に記憶するように構成されてもよい。サーバ210は、さらに、聴覚データの分析を実行し、分析の結果を、好ましくはストレージ220に記憶するように構成されてもよい。分析の結果は、聴取者40が聴取者40に関連付けられた聴覚ヘルス、すなわち、オーディオプロファイル50にアクセスし、それを見ることができるように、聴取者40にアクセス可能にされてもよい。サーバ210は、更新された聴覚ヘルスモデル及び音響線量Dバジェット、すなわち、音響線量閾値Lを超えることなく聴取者40がどれだけの累積音圧にさらされ得るかを提供するように構成されてもよい。これらの全ては、聴取者のオーディオプロファイル50に含まれてもよい。聴覚ヘルスモデルは、好ましくは、オーディオプロファイル50に含まれ、例えば、所定のスキームに従って、又はレンダリングデバイス30及び/又はオーディオ再生構成10からの要求に応じて、レンダリングデバイス30及び/又はオーディオ再生構成10に提供されてもよい。所定のスキームは、例えば、その日の最初の接続時等に例示されてもよい。
【0076】
図5において、例示的なシグナリングブロック図は、例えば、本開示のコントローラ100、システム200及び/又はオーディオ再生構成10の実施形態のいずれかと共に使用可能である。図5を参照して提示される具体的な詳細及び実施形態は、本開示の任意の実施形態で使用可能であり、この具体的な例に限定されない。説明のために、非限定的な例として、図5のブロック図が、システム200上で使用されると仮定し、ここでは、サンプルの第一のフレームNがレンダリングデバイス30から、コントローラ100であり得る処理デバイスを介してトランスデューサデバイス15に搬送される。さらに、第二のフレームのサンプルNが記録デバイス17から処理ブロック410に搬送されると仮定する。
【0077】
システム200における様々な信号のサンプルレートならびにフレームサイズN及びNは、例えば、ハードウェア能力、信号品質及び/又は電力消費要件に応じて変化してもよい。例えば、アンチエイリアシングフィルタリング及びシンク補間に基づく周知のリサンプリング技術を用いて、サンプルレートアライメント及びサンプルアライメントを容易に取得してもよい。一般性を失うことなく、N=Nであると仮定する。両方とも、サンプルアライメント及び再サンプリング動作の典型的な動作である。
【0078】
図2のシステム200は、2つのトランスデューサ15及び2つのマイクロホン17を使用して示されている。システム200は、図3bに示すようなオーディオ再生構成10を含むと仮定する。システム200は、ステレオ又は2チャネル再生のために構成されると仮定される。1つのチャネル、すなわちモノラル再生は、ソース信号Sがトランスデューサ15に供給される前に2つの同一のステレオチャネルに分割される特別な場合である。
【0079】
図5の上部において、ソース信号Sは、例えばレンダリングデバイス30(図5には図示せず)から受信され、処理ブロック410内のエンハンスメントによって処理されてもよい。エンハンスメントは、時間及び周波数適応型であってもよく、処理制御ブロック415によって制御されてもよい。ソース信号Sがエンハンスされると、結果として得られるオーディオ信号15’は、再生のためにトランスデューサ15に中継される。
【0080】
ソース信号Sの各チャネルは、個別に処理されてもよい。処理されたソース信号は、1つ以上のトランスデューサ15に中継されてもよく、例えば、一対のヘッドホン10の場合、モノソース信号Sは、個別に処理され、対応する左右のヘッドホントランスデューサ15上にレンダリングされる2つのチャネルに分割される。対応することは、各耳42、44の近くで、例えば自動車のシート18に配置されたトランスデューサ15にも当てはまる。
【0081】
さらなる処理がデジタルトランスデューサ信号15’に適用されないシステム内の点において、すなわちDA変換のみが残っている場合、トランスデューサ信号15’は、信号基準として処理制御ブロック415に提供されてもよい。信号基準は、例えば、線形エコーキャンセルを用いる信号分離に使用可能である。
【0082】
マイクロホン15、好ましくは耳42、44当たり少なくとも1つのマイクロホン17は、各耳42、44に到達する音を感知する(例えば、記録する、測定する等)。能動雑音制御(ANC)を使用するヘッドホン10の場合、マイクロホン17は、概して、トランスデューサ15に隣接して、イヤヘッドホン空洞内に完全に位置付けられる。自動車では、各マイクロホンの好ましい配置は、シート18の頭部支持体にあり、好ましくは、1つのマイクロホン17が聴取者40の頭部の各側にある。
【0083】
各マイクロホン信号17’は、片耳42、44が受信した音を記述する信号を表す。マイクロホン信号17’を使用して、音響線量Dは、本開示の他の箇所で説明されるように、音響線量計算ブロック420において、好ましくは各耳42、44に対して別々に計算される。算出された音響線量Dが記憶される。音響線量Dは、オーディオ再生デバイス10及び/又はレンダリングデバイス30のローカルストレージ220にローカルに記憶されてもよい。好ましくは、計算された音響線量Dは、サーバ210又はクラウドサービス210に動作可能に接続されたリモートストレージ220に追加的に記憶される(すなわち、バックアップ、ミラーリング、複製等される)。計算された音響線量Dは、レンダリングデバイス30、すなわち携帯電子機器30によってクラウドサービス210に転送されてもよい。前述のように、音響線量Dは、いくつかの異なる線量期間Tについて計算されてもよい。マイクロホン信号17’のサンプリングのレート、利用可能なストレージの量、音響線量Dを伝達するための利用可能な帯域幅等は、ソース信号Sのエンハンスメントを正確かつ的確に制御するために音響線量が好ましくは計算される最小期間Tを決定する際に有用であってもよい。最小期間Tの例示的で非限定的な設定は、1分である。
【0084】
一実施形態では、音響線量Dの計算は、オーディオフレームごとに行われ、最小期間Tごとに最小音響線量Dを形成するように集約される。他の線量期間Tについての音響線量Dは、最小音響線量Dの数の合計として計算される。線量期間Tが1時間であり、最小期間Tが1分である場合、1時間当たりの音の音響線量は、
【数3】
である。その結果、累積音響線量Dは、単調増加する。
【0085】
前述の「安全なリスニングデバイス/システムのためのガイドライン」と題するITU-T H.870によれば、推奨音響線量Dは、7日の線量期間Tで与えられる。成人の場合、週DR7(7日)あたりの推奨音響線量は、DR7=1.6Paとして計算されてもよい。これは、通常、基準線量として知られている。基準線量DR7は、80dBAの平均SPLに相当する。これは、40時間聴取の間の
【数4】
の音圧及び
【数5】
の音圧平方に相当し、
【数6】
が得られる。当業者は、本開示を読んだ後、音響線量D及び線量期間Tが、各用途に対して適切に設定されてもよく、上記で与えられた例に限定されないことを理解するであろう。
【0086】
音響線量制御ブロック430は、特定の時間に、例えば、周期的に、又は例えば、レンダリングデバイス30又はストレージ220からの要求時に、音響線量Dをサーバ210又はクラウドサービス210にアップロードするように構成されてもよい。音響線量制御ブロック430は、さらに、音響線量プロファイル予測56のためのモデル、すなわち予測モデル56を要求、決定、及び/又は直接受信するように構成されてもよい。このモデル56は、前述したように、オーディオプロファイル50に含まれてもよく、聴取者40のための履歴及び/又は最新音圧データ52に基づいて決定されてもよい。音響線量制御ブロック430は、さらに、更新された予測モデル56を要求、決定、及び/又は直接受信するように構成されてもよい。
【0087】
予測モデル56を使用して、音響線量制御ブロック430は、特定の線量期間T中の最新累積音響線量Dが関連付けられた線量閾値Lの超過をもたらすかどうかをチェックするように構成されてもよい。これは、線量閾値L、すなわち推奨最大線量が線量期間Tの終わりに超えられるかどうかを予測する。あるいは、前述のように、最新推定期間Tceが線量期間Tよりも短い場かどうかを予測する。予測が線量閾値Lを超えない(Tce>T)と結論付ける場合、アクションを講じる必要はない。予測の結果が線量閾値Lを超える(Tce<T)、最新音圧pを下げるアクションが講じられてもよい。
【0088】
機能、ブロック、及び特徴は、本明細書で、例えば、処理、制御、計算等に関して説明され、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組合せで実装されてもよい。処理ブロック410、処理制御ブロック415、音響線量計算ブロック420、音響線量制御ブロック430、及び/又はストレージ220は、コントローラ100に含まれてもよい。ブロックは、分散システムの一部を形成してもよく、代替又は追加として、いくつかの機能又はブロックは、コントローラ100内に完全に又は部分的に含まれてもよい。
【0089】
図6は、本開示の実施形態の作業のさらなる開示のために提示される非限定的な例を示す。図6では、線量期間Tは168時間(7日)であり、線量期間T中の最大推奨線量、すなわち線量閾値Lは、1.6Pahである。図6の下側の一点鎖線の曲線は、線量期間Tの間の線量プロファイルを示す。見られるように、この一点鎖線の曲線Itは、最大限界線量閾値Lに到達しない。一点鎖線の上の長線曲線は、線量期間Tが経過する前に音響線量Dが線量閾値Lを超える聴取挙動の例である。これは、長期的には、聴覚障害につながり得る。
【0090】
図6を引き続き参照すると、音響線量Dの予測を例示するために、実線の曲線は、本開示の教示による予測アルゴリズムによって現在時刻Tに評価される聴取挙動に対応する。評価の結果は、図6の上部点線の曲線である。現在時刻Tにおける評価に基づく推定音響線量Dは、線量期間Tの終了前に線量閾値Lを明らかに超えている(Tce<T)。これに応答して、処理ブロック410の適応周波数伝達関数が調整され、すなわち、新しい推定音響線量Dが調整された周波数伝達関数に基づいて計算され、結果として生じる聴取プロファイルが図6の短線曲線に示される。図6に見られるように、調整は、短線曲線が線量期間T内に線量閾値Lを超えないようなものである(Tce>T)。その結果、聴取者40の聴覚が損なわれるリスクが低減される。周波数伝達関数は、さらに、例えば、背景雑音、ユーザの聴覚障害等を考慮して、オーディオストリームの明瞭度を最大化するように調整されてもよい。
【0091】
調整された周波数伝達関数は、聴取者40が経験する最新音圧pを効果的に低減する全ての周波数にわたって減衰だけを含んでいなくてもよいことに言及すべきである。代替として、処理ブロック410は、ソース信号S、背景雑音、聴取者40の聴覚障害、累積音響線量D、及び/又は処理パラメータに基づいて、適切な適応処理、すなわちエンハンスメントを計算するように構成されてもよい。処理パラメータは、聴取者40の聴覚能力を記述する聴覚図及び/又は明瞭度モードを含んでもよいが、それらに限定されない。処理パラメータは、聴取者40のためのオーディオプロファイル50に含まれてもよい。明瞭度モードパラメータは、どの明瞭度尺度を改善すべきかを示すように構成されてもよく、明瞭度尺度は、本開示の他の箇所でより詳細に提示される。
【0092】
以下では、本明細書で提示される実施形態のいずれかで使用可能ないくつかの追加の実装形態の詳細が与えられる。マイクロホン17の標準的な較正を仮定すると、最新音圧pは、マイクロホン17からの信号に基づいて計算されてもよい。したがって、線量時間T中の音響線量Dは、
【数7】
として計算されてもよく、fsはマイクロホン信号17’のサンプリング周波数であり、N=Tである。信号z(n)及びz(n)は、A加重音圧レベルに変換された後(標準マイクロホン較正及び線形周波数重み付け)の左右の耳42、44に対応するマイクロホン信号17’である。マイクロホン17は、典型的には、聴取者40の鼓膜に配置されないため、拡散場補正は、概して、必要とされない。線量期間Tにおける音響線量Dは、最小期間T毎に、DAck=DAck+Dとして累積される。時間の関数としての音響線量Dは、単調に増加する。
【0093】
線量期間T中の音響線量プロファイルの予測は、履歴音響線量データ、特徴セット、例えば、時間、日付、音量インデックス、及びデバイス識別、最新線量期間Tの音響線量Dの現在値及び過去値、並びにこれらの組合せ及び均等物のうちの1つ以上に基づいてもよい。
【0094】
1つの例示的な予測子は、いくつかの以前の線量プロファイルの平均、すなわち
【数8】
から構築される平均予測子であり、D(k)は、H個の以前の音響線量プロファイルのうちの1つであり、h=1,…,Hである。インデックスkは、それぞれの線量プロファイルk=1,…,Kにおける固有の時間間隔Tに対応する計算(時間)インデックスである。Kは、線量期間Tの最後の計算インデックスであり、Tに対応する。AVG(*)は平均演算子である。
【0095】
第二の例示的な予測子は、最大ベースの予測子
【数9】
である。
【0096】
予測子を使用する一実施形態では、線量期間Tの終わりにおける音響線量Dは、
【数10】
として推定されてもよい。
【0097】
第三の例示的な予測子は、回帰モデルである。回帰モデルは、回帰型ニューラルネットワーク(RNN)、マルコフ連鎖(Markow Chain)、又は自己回帰プロセスであってもよい。RNNは、長短期記憶(LSTM)又はゲート付き回帰型ユニット(GRU)に基づいてもよい。LSTMを用いたRNNは、多変量多段階時系列予測に適している。
【0098】
概して、RNNのベクトル及び出力ベクトルは、多数の方法で選択されてもよく、2つの選択、RNNのサイズは、トレーニングデータ品質及びRNNのトレーニングとともにRNNの性能と、入力(特徴)データを与えられた場合に所望の出力データを出力するその能力とを決定する。
【0099】
特徴セットは、上述のように、最新線量期間T中の音響線量Dの過去値及び現在値、日時、音量インデックス、及びデバイス識別、例えば、そのオーディオ装置10の識別子を含んでもよい。音響線量Dの入力は、予測モデルの作業にとって有益であり、これに加えて、日時は、音響線量Dの増加が、例えば、オフィス時間中、週末等にのみ測定される時間依存であり得るので、動的挙動に影響を及ぼすことがある。
【0100】
これに加えて、音への長時間の暴露は、聴取者40の聴覚を飽和させること、及び/又は一時的に悪化させることもある。結果として、聴取者40は、オーディオ再生構成10の音量を増大させるように傾けることができる。さらに、時間に応じて、聴取者40は、例えば、昼食中等に大きなカフェテリアを訪れる等、多かれ少なかれバックグラウンドノイズを有する様々な場所に位置することがある。したがって、線量プロファイルを予測するために時間、日及び/又は音量インデックスのうちの1つ以上を使用することは、有益である。
【0101】
予測された線量プロファイル
【数11】
は、いくつかの実施形態では、G(k)が処理ブロック410においてソース信号Sに適用される場合、
【数12】
であり、音響線量Dが単調に増加するので、
【数13】
であり、すなわち、ソース信号Sは減衰する(減衰はG(k)<1で表される)ような利得
【数14】
を提供する際に使用可能であり得る。いくつかの実施形態では、利得G(k)は、周波数依存利得G(k,f)であってもよく、ソース信号Sは、いくつかの周波数において増加し、他の周波数において減衰してもよいが、依然として、上記に列挙された基準を満たす。
【0102】
利得G(k)の計算は、一定の間隔、例えば、最小期間T毎に更新されてもよい。利得G(k)に関する考慮事項は、例えば、ソース信号Sの周波数変換の安定性に対する更新レートを含んでもよい。オーディオ信号の利得が比較的速く大きく変化すると、オーディオ品質の低下が生じる可能性がある。
【0103】
いくつかの実施形態では、利得
【数15】
は、線量期間Tの残りの間、すなわちT-Tの間に適用される場合、音響線量Dを効果的に減少させるように構成されてもよく、Tは、現在時刻である(図6参照)。これは、最新音響線量Dに対する利得を参照する、次の最小期間Tにおける最大SPLを
【数16】
として計算するために、使用してもよい。したがって、Lsplは、音響線量計算から得られる最大SPLである。
【0104】
利得G(k)及び後続の最大SPL Lsplの追加の実施形態は、例えば、利得G(k)を適用して音圧の低下をもたらすか否かを記述する規則を含むことができる。いくつかの実施形態では、最新音圧pに対する制限は、音響線量Dが最新音圧pと音響線量閾値Lとの間にある制限閾値を上回る場合にのみ呼び出されてもよい。さらなる実施形態では、コントローラ100は、制限閾値を超えるまで最新音圧pを周波数に依存して制限するように構成されてもよい。これは、ソース信号Sのより高い周波数成分等を減衰させることによって最新音圧pを減少させることを含んでもよい。当業者にとって、音圧制限を制御する規則のセットは、本開示の教示をダイジェストした後に容易に確立され得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、音響線量プロファイル予測56は、線量期間T中の聴取者40の挙動を考慮する。これらの実施形態では、本明細書の教示に従って最新音圧pを減少させることは、聴取者40が典型的により高い平均音圧を受けるある時間インデックスkにおいて実行されてもよい。追加又は代替として、最新音圧pの減少は、重要でない周波数成分及び/又は聴取者40によって聞こえない周波数成分が除去又は減衰されるように、ソース信号Sの周波数重み付けを調整することによって実行されてもよい。これにより、重要でない周波数成分、及び聴取者40が聞くことのできる範囲外の周波数成分は、音響線量に寄与しなくなる。これを行うことにより、音響線量Dが線量閾値Lを超え、それによって聴取者40の聴覚に損傷を与えるリスクは、聴取者40のオーディオ体験を損なうことなく低減される。
【0106】
図5に示すように、コントローラに含まれ得るSDC430は、好ましくは、音響線量プロファイル予測56を実行し、予測モデル56が正しいことを主張する。データがサーバ210又はクラウドサービス210に送信されると、音響線量プロファイル予測56は、遠隔で更新され、レンダリングデバイス30を介してSDC430にダウンロードされてもよい。予測モデル56のタイプに応じて、予測モデル56の更新又は構築は、追加又は代替として、例えば、処理ブロック430又はレンダリングデバイス30によってローカルに行われ得る。上記で例示される平均予測モデルは、再帰的に更新されてもよく、ローカルに更新されるとき、処理及び記憶をほとんど必要としなくてもよい。RNN予測モデル56は、概して、より多くのリソースを必要とし、好ましくは、遠隔で更新される。予測モデル更新は、例えば、設定された時間間隔で定期的に、又は設定された安定性条件が満たされなかったときに、トリガされてもよい。予測子モデル56は、好ましくは聴取者40に関連付けられ、その結果、聴取者40が変わると変化する。
【0107】
以下のさらなる実装形態の詳細では、本明細書で提示される実施形態のいずれかで使用可能なものが与えられる。本開示の他の箇所で言及されるように、サーバ210又はクラウドサービス210は、ユーザデータ及び音響線量データ、すなわち聴取者40のためのオーディオプロファイル50の遠隔記憶のために構成されてもよい。予測モデル56は、携帯電子機器30によって更新及び/又は検索されてもよい。予測モデル56は、パラメータ、例えば、RNN又は自己回帰プロセスのパラメータとして送信されてもよい。サーバ210又はクラウドサービス210は、いくつかの実施形態では、予測モデル56の記憶及び/又は計算を提供するためのシステム200の一部として説明されてもよい。
【0108】
処理制御ブロック415は、各マイクロホン信号17’について、トランスデューサ信号15’及びマイクロホン信号17’を使用して音響環境の安定性を推定してもよい。これは、多くの方法で達成することができる。一実施形態では、これは、周波数帯域当たりの時間単位当たりの短時間パワースペクトル変化を評価することによって行われる。別の実施形態では、これは、短い期間中に平均化されたSPLを、比較的長い期間中に平均化されたSPLと比較することによって行われ、それによると、等しい量は、少なくとも半定常音響環境を示す。
【0109】
処理制御ブロック415は、聴取者40が音をどのように知覚したかをモデル化するために、聴覚モデル、好ましくは聴取者40の聴覚プロファイル54をマイクロホン信号17’にさらに適用してもよい。ソース信号Sをエンハンスするパラメータは、知覚された音及び/又は聴覚モデル54に基づいて計算されてもよい。
【0110】
マイクロホン信号17’は、好ましくは離散周波数変換(DFT)によって、すなわちDFTのFFT実装を使用して、時間領域から周波数領域に変換される。各1/3オクターブ周波数帯域について、DFTの隣接する周波数ビンは、結果として得られる1/3オクターブ周波数表現が全ての信号について得られるように累積された振幅二乗平均である。
【0111】
音響伝搬の推定は、いくつかの方法で実行されてもよい。いくつかの実施形態では、トランスデューサ信号15’は、例えば、最小平均二乗(LMS)適応に基づく線形エコーキャンセル機能に入力される。これは、エコー経路、すなわちトランスデューサ15とマイクロホン17との間の音響経路を推定するために使用可能であり得る。いくつかの実施形態では、音響経路は、ANC用途で使用される二次経路として推定される。いくつかの実施形態では、音響経路は、音響測定機器を使用して測定され、周波数関数又はフィルタとしてモデル化され、動作中の使用のために記憶される。後者は、線形エコーキャンセル又はANCと比較して単純な構成であるが、あまり柔軟性がなく、通常動作下で考慮される各音響経路に対して1つのモデルが必要となり得る。
【0112】
背景雑音を推定するために、マイクロホン信号17’は、いくつかの実施形態では、信号分離を介して、伝搬ソース信号(エコー)と背景雑音とに分割されてもよい。信号分離は、例えば、エコーコントローラを使用して実行され、信号部分空間分割、例えば、ソース信号の共分散行列が既知であり、音響伝搬計算からおおよそのエコー経路が得られるので好適なKarhunen-Loeve変換を使用して、伝搬されたソース信号を除去してもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、背景雑音は、ソース信号Sがゼロであるとき、又はソース信号Sが設定閾値未満であるとき、マイクロホン信号17’として測定されてもよい。ソース信号Sがスピーチである場合、スピーチ信号には自然な休止があるが、音楽である場合、そうでないことがある。音楽の場合、背景雑音の推定は、好ましくは、マイクロホン信号17’から伝搬ソース信号Sを除去することによって実行される。後者の特徴は、ソース信号Sにおける休止を使用するよりも多くのリソースを必要とするが、音声信号に対しても使用可能である。
【0114】
聴覚モデル54は、好ましくは、マイクロホン信号17’を入力として受け取るように構成される。マイクロホン信号17’は、例えば、音響線量Dの計算からの変換関数を使用して、同等の音圧値に変換してもよい。次いで、聴取者40のオーディオグラム、すなわち聴覚モデル54に依存するソース信号Sをどのように聴取者40が知覚するかをモデル化する周波数及びレベル依存利得を計算してもよい。各1/3オクターブ周波数帯域について、帯域通過レベルを測定してもよく、聴取者40が聴覚障害に起因して経験するであろう信号の減衰を表す利得を計算してもよい。いくつかの実施形態では、周波数帯域ごとの利得H(b)を、以下に示すように計算してもよい。
【数17】
【0115】
マイクロホン信号17’は、例えば、音響線量Dの計算からの変換関数を使用して、同等の音圧値に変換してもよい。
【0116】
本開示で使用可能な聴覚モデル54は多数あり、本明細書の教示は、列挙されたモデルに限定されない。聴覚モデル54は、伝導性聴覚損失及び感音性聴覚損失のいずれか又は両方を考慮する聴覚障害をモデル化するように構成されてもよい。伝導障害は、概して、例えば、外耳道の閉塞の結果であり、障害の程度に等しい音量低下として現れる。伝導性難聴は、多くの場合、医学的又は外科的手段によって首尾よく治療される。感音難聴は、概して、中耳における感覚能力の低下によるものであり、より一般的には、蝸牛の欠損による内耳における感覚能力の低下によるものである。一般に、このクラスは、難聴のほとんどの症例を占める。感音難聴の原因は、例えば、遺伝的因子、疾患、高レベルの騒音又は音曝露、及び老化(老人性難聴)過程である。
【0117】
上記で提示された聴覚モデル54は、ラウドネス補充聴力損失を近似する。当業者は、本開示を熟考した後、聴覚モデル54を、追加の考慮事項、例えば、振幅感度の低減、周波数範囲の低減、ダイナミックレンジの損失、スペクトル細部の区別の損失、及び/又は前述のものの任意の組み合わせで置換及び/又は拡張することができるであろう。
【0118】
音声明瞭度を推定するために使用可能ないくつかの方法、例えば、信号対雑音比(SNR)、音声明瞭度指数(SII)又はコヒーレンス信号明瞭度指数(CSII)、短期客観的明瞭度(STOI)等が当技術分野に存在する。明瞭度の方法のほとんどは、類似性尺度、すなわち、ソース信号S(基準)と処理された信号(ノイズ中の信号又はそうでなければ劣化したソース信号)との間の相関又はコヒーレンスを使用する。明瞭度のための方法の選択は、処理ブロック100、410、415、420、430のほとんどに影響を及ぼし得るが、当業者にとって、これは、当業者の専門知識の範囲内である。本開示では、相関ベースの明瞭度尺度が提示されるが、当業者は、明瞭度尺度を容易に置き換えることができる。
【0119】
音声について、ソース信号Sと聴覚障害マイクロホン信号17’との間の周波数領域における相関係数を、明瞭度尺度として考える。相関が比較的高いことは、概して、明瞭度が高いことに対応し、相関が比較的低いことは、概して、明瞭度が低いことに対応する。したがって、周波数帯域ごとに相関が比較的高いことが望まれる。音楽の場合、相関ベースの明瞭度尺度は、あまり明白ではなく、客観的明瞭度方法において成分を失う可能性がある。しかしながら、SNRベースの方法は直感的に適切であり、本明細書の適用は絶対値に依存しないため、相関尺度も適切である。処理コンポーネントは、例えば構成のためのエンハンスメントパラメータを使用する周波数選択性及び適応性エンハンスメントサブコンポーネントから構成されてもよい。
【0120】
以下では、本開示の他の教示とともに使用可能な例示的な実施形態として、周波数帯域当たりの所望の利得を計算する。周波数帯域ごとの所望の利得は、線形位相又は最小位相を有する有限インパルス応答(FIR)フィルタを使用してソース信号Sに適用されるべきである。さらに、それは、例えば、無限インパルス応答フィルタのセットから構成されるパラメータ化されたイコライズであってもよい。しかしながら、後者は、設計に応じて、比較的高いオーディオ歪みを引き起こすことがある。したがって、FIRフィルタが好ましい選択である。以下の計算は、簡潔にするために、1つのチャネルについて説明されるが、2つのチャネルへの拡張は当業者にとって自明である。ソース信号S及びマイクロホン信号17’のサンプルの各フレームについて、周波数帯域W(b)ごとの新しい重みの計算が、好ましくは、実行される。周波数帯域毎の音圧レベルを表すマイクロホン信号17’をM(b)とし、周波数帯域毎の音圧レベルを表すソース信号SをX(b)とする。次に、M(b)=E(b)H(b)W(b)X(b)+H(b)V(b)であり、E(b)は、エコー経路周波数伝達関数であり、式中、H(b)は、聴取者40の聴覚障害(聴覚プロファイル54に含まれる)による減衰であり、W(b)は、処理ブロック410によって適用される(適応)周波数利得であり、V(b)は、マイクロホン17によって受信される背景雑音である。行列形式では、同じ式は、M=EHWX+HVであり、式中、M,X,Vは、各要素が帯域bに対応するベクトルであり、E,H,Wは、対角行列であり、全ての要素は、対角を除いてゼロである。要約すると、Eは、EXがマイクロホン17によって測定されるソース信号Sに等しくなるように、エコー経路を記述する行列である。
【0121】
明瞭度の尺度の例として、ソース信号とマイクロホン信号との間の相関行列の対角線の和が使用され、すなわち、了解度は、I=tr(TXM)であり、式中、RXM=E(XM)=EHWRXX+HRXVであり、RXVは、ソース信号と背景雑音との間の相関行列であり、Tは、重み行列である。RXXは、ソース信号Sの相関行列であり、正規化されていないため、対角要素は、周波数帯域毎に二乗した音圧に相当する。この明瞭度尺度を使用して、ソース信号Sは、Wを使用して周波数調整され得るが、RXVは、影響を受けない。言い換えれば、Wは、周波数利得行列であり、この周波数利得行列は、好ましくは、処理ブロック410においてソース信号Sに適用される。
【0122】
選択された明瞭度を最適化し、聴覚障害、背景雑音及び音響線量を考慮に入れるために、またRXVは重みWから独立しているので、以下の最適化を定式化することができる。w=arg max I=arg max tr(TXM)=arg max tr(TEHWRXX
【0123】
重み及び増幅に対する制約を加えることによって、最適化は、音圧が制限されるか否かに応じて制約が変化する二次コーンプログラムとして定式化されてもよい。
【0124】
音圧が制限される場合:
【数18】
【0125】
あるいは、音圧が制限されない場合:
【数19】
【0126】
増幅制約Γは、構成によって設定され、処理パラメータの一部としてもよく、聴取者40の聴覚プロファイル54を調整するときにレベルの増加が予想される状態とすることができる。T,Tは、残りに対していくつかの周波数帯域を強調するために使用される重み行列である。典型的には、スピーチ周波数が明瞭度に対して異なる重要性を有するスピーチ用途において使用される。注目すべき重み行列T,Tの要素(周波数帯域)は1に設定され、それ以外の重要度の低い要素は1から0までの範囲である。典型的には、重要な周波数帯域は、100~4000Hzであり、4~8kHzは、快適度及び部分的に明瞭度にとって重要であり、8~12kHzは、いくつかの詳細を提供するが、明瞭度はほとんどなく、12kHzを超えるコンテンツは、研究に供される。
【0127】
いくつかの実施形態では、最大利得への制限が追加されてもよく、
【数20】
であり、例えば、Γ=4は、二乗平均平方根増幅の最大4倍に等しい。
【0128】
周波数利得Wは、次いで、周波数サンプリング方法を使用してFIRフィルタに変換されてもよい。フィルタの所望の周波数応答がWによって与えられるので、他の設計方法又は同等のフィルタ構成も可能である。
【0129】
好ましくは、適応処理ブロック410は、ソース信号Sのフレームを処理するように構成されたFIRフィルタを含む。
【0130】
図7を参照すると、本開示の実施形態による聴取者40の音響線量を制御するための方法300が提示される。方法300は、本開示内に列挙される任意の好適な特徴をさらに備えるように拡張されてもよい。この方法は、聴取者40のための音圧データ52を含む以前に提示されたオーディオプロファイル50を取得するステップ310を含む。オーディオプロファイル50は、リモート又はローカルストレージ220から取得されてもよい。オーディオプロファイル50が利用可能でない場合、オーディオプロファイル50を取得するステップ310は、オーディオプロファイル50を作成することを含んでもよい。方法300は、聴取者40が経験する最新音圧pを取得するステップ320をさらに含む。これは、本開示内で開示される任意の手段、又は方法300を実施するときに当業者によって使用可能な任意の他の好適な手段によって実行されてもよい。音圧データ52及び最新音圧pに基づいて、方法300は、最新推定期間Tceを推定するステップ330を含む。最新推定期間Tceは、聴取者40の音響線量Dが音響線量閾値Lを超えるまでの推定時間を表す。典型的には、本開示内で教示されるように、複数の音響線量閾値Lが使用されてもよい。各音響線量閾値Lは、1つの別個の線量期間T及び/又は音圧データ52の1つの別個のセットに関連付けられてもよい。教示されるように、最新推定期間Tceの推定330は、任意選択で、1つ又は複数の予測モデル56に基づいてもよく、推定330は、予測モデル56を決定すること335を含んでもよい。
【0131】
最新推定期間Tceが音響線量閾値Lに関連付けられた線量期間Tを下回る場合、方法300は、音圧データ52及び最新音圧pに基づいて、更新済音圧pを計算するステップ340をさらに含む。本開示で説明するように、更新済音圧pは、最新更新された期間Tcuが線量期間(T)以上となる音圧である。方法300は、更新済音圧pcuに合致するように最新音圧pを制御するための命令60を提供するステップ350をさらに含んでもよい。
【0132】
更新済音圧pcuに合致するように最新音圧pを制御するための命令60は、トランスデューサ15に提供される信号レベルを低減するためにオーディオ再生構成10によって直接使用可能な任意の適切な命令60であり得ることに言及すべきである。一実施形態では、命令60は、好ましくはオーディオ再生構成10に、特にオーディオ再生構成10のコントローラ100に提供される。追加又は代替として、命令60は、聴取者に対して、オーディオ再生構成10の再生音量を低減するようにという指示又は促しであってもよい。命令10は、オーディオ再生構成10によって再生可能な可聴命令及び/又は例えば携帯電子機器30によって提示される視覚命令であってもよい。
【0133】
方法300において使用可能な得られたオーディオプロファイル50及び音圧データ52は、任意の好適な形状又は形態であってもよく、本開示内で提示される任意の実施形態又は特徴に従ってもよい。
【0134】
方法300のいくつかの実施形態では、オーディオプロファイル50は、聴取者40の聴覚プロファイル54を含んでもよい。そのような実施形態では、最新推定期間Tceはさらに、聴取者40の聴覚プロファイル54に基づいて最新音圧pを周波数重み付けするステップ325によって聴覚プロファイル54に基づいてもよい。周波数重み付けするステップ325は、聴取者40が経験する最新音圧pを取得するステップ320の一部として実行されてもよい。
【0135】
方法は、任意選択で、最新音圧pに基づいて、聴取者40のためのオーディオプロファイル50の音圧データ52を更新するステップ360を含んでもよい。
【0136】
図8a~eには、オーディオ再生構成10を制御するためのコントローラ100が示されている。コントローラ100は、例えば、図7を参照して説明した方法300を行わせるように構成することができる。概して、コントローラ100は、任意の実施形態によると、図7に関連して説明される方法300の1つ以上のステップを実行させる(例えば、実行する)ように構成されてもよい。これは、例えば、実際の取得、プロビジョニング、計算等がコントローラ100によって実行されなくてもよいことを意味し、コントローラは、他のデバイス、モジュール、又はブロックに実際の動作を行わせるように構成されてもよい。しかしながら、コントローラ100は、図7に関連して説明した方法300の1つ以上のステップを実行するように非常によく構成されてもよい。好ましい実施形態では、コントローラ100は、図7に関連して説明した方法300の1つ以上のステップを実行するように構成され、図7を参照して説明した方法300の残りのステップを行わせるように構成される。
【0137】
例えば、図8bに示すように、コントローラ100は、第一の装置10内に構成可能であってもよく、例えば、含まれてもよい。第一の装置は、オーディオ再生構成10、例えば、図3a~dを参照して提示されたオーディオ再生構成10のいずれかであってもよい。
【0138】
代替又は追加として、コントローラ100は、図8cに示すように、電子デバイス30内に構成可能であってもよく、例えば、含まれてもよい。電子デバイス30は、図3b、図4の携帯電子デバイス30及び/又は図5を参照して説明したレンダリングデバイス30であってもよい。電子デバイス30は、聴取者40の音響線量Dを制御するのに適した任意の電子デバイス30であってもよい。
【0139】
代替又は追加として、コントローラ100は、図8dに示すように、サーバ210又はクラウドサーバ210内に構成可能であっても、例えば、含まれてもよい。クラウドサーバ210は、図4のクラウドサーバ210であってもよい。クラウドサーバ210は、聴取者40の音響線量Dを制御するのに適した任意のサーバ210であってもよい。
【0140】
代替又は追加として、コントローラ100は、システム200内に構成可能であってもよく、例えば、含まれてもよい。システム200は、聴取者40の音響線量Dを制御するのに適した任意のシステム200であってもよく、例えば、図4及び図5を参照して提示されたシステム200であってもよい。
【0141】
当業者が本開示の教示を企図した後で理解するように、説明される実施形態及びそれらの均等物は、ソフトウェア又はハードウェア、あるいはそれらの組合せで実現されてもよい。実施形態は、汎用回路によって実行されてもよい。汎用回路の例は、デジタル信号プロセッサ(DSP)、中央処理装置(CPU)、コプロセッサユニット、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及び他のプログラマブルハードウェアを含む。代替又は追加として、実施形態は、特定用途向け集積回路(ASIC)等の専用回路によって実行されてもよい。汎用回路及び/又は専用回路は、例えば、オーディオ装置10に関連付けられても、あるいはそれに含まれてもよい。
【0142】
いくつかの実施形態によれば、図8に示すように、コンピュータプログラム600は、コンピュータプログラム製品500を形成するために、非一時的コンピュータ可読媒体510上に記憶される。コンピュータプログラム製品500は、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体510と、1つ以上のコンピュータプログラム600とを備える。非一時的コンピュータ可読媒体は、任意の好適な非一時的コンピュータ可読媒体であってもよく、ユニバーサルシリアルバス(USB)メモリ、コンパクトディスク(CD)ROM、プラグインカード、埋め込みドライブ、又は読み取り専用メモリ(ROM)によって例示されるが、それらに限定されない。図9aは、ビンテージ5,25インチフロッピーディスク510の形態の例示的なコンピュータ可読媒体を示す。コンピュータ可読媒体510は、プログラム命令610を含むコンピュータプログラム600を記憶している。コンピュータプログラム600は、コントローラ100にロード可能であり(図9b参照)、コントローラは、例えば、電子デバイス(図9c参照)及び/又はオーディオ再生構成10(図9d参照)に含まれてもよい。コントローラ100にロードされると、コンピュータプログラム600は、コントローラ100に関連付けられた、又はそれに含まれるメモリ110に記憶されてもよい。いくつかの実施形態によると、コンピュータプログラム600は、コントローラ100にロードされ、それによって実行されると、例えば、図7に図示される方法300、又は本明細書で別様に説明される方法による方法ステップの実行を引き起こしてもよい。
【0143】
前述の説明及び関連する図面に提示される教示の利益を有する当業者には、説明される実施形態の修正形態及び他の変形形態が思い浮かぶであろう。したがって、実施形態は、本開示で説明される特定の例示的実施形態に限定されず、修正及び他の変形例が、本開示の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。さらに、特定の用語が本明細書で使用され得るが、それらは包括的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定を目的としない。したがって、当業者は、添付の特許請求の範囲内に依然として入る、説明された実施形態に対する多数の変形を認識するであろう。さらに、個々の特徴は異なる請求項(又は実施形態)に含まれ得るが、これらは場合によっては有利に組み合わされてもよく、異なる請求項(又は実施形態)の包含は、特徴の組み合わせが実現可能及び/又は有利ではないことを意味するものではない。さらに、単数形の言及は、複数形を除外しない。最後に、特許請求の範囲における参照符号は、単に明確な例として提供され、特許請求の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【実施例
【0144】
以下は、番号を付された具体的な実装例であり、その全ては、本開示の範囲内にある。
(実施例1)
聴取者40の音響線量Dを制御するための方法300であって、前記方法300は、
前記聴取者40のための音圧データ52を含むオーディオプロファイル50を取得するステップ310と、
前記聴取者40が経験する最新音圧pを取得するステップ320と、
前記聴取者40の前記音圧データ52及び前記最新音圧pに基づいて、前記聴取者40の前記音響線量Dが音響線量閾値Lを超えるまでの推定時間を表す最新推定期間Tceを推定するステップ330と、
前記最新推定期間Tceが前記音響線量閾値Lに関連付けられた線量期間Tを下回ることに応答して、
前記音圧データ52及び前記最新音圧pに基づいて、前記聴取者40の前記音響線量Dが前記音響線量閾値Lを超えるまでの推定時間を表す最新更新済期間Tcuが前記線量期間Tを満たすか又は超える更新済音圧pを計算するステップ340と、
前記更新済音圧pcuを満たすように前記最新音圧pを制御するための命令60を提供するステップ350と、
を含む、方法300。
(実施例2)
前記オーディオプロファイル50の前記音圧データ52は、前記聴取者40が経験した以前の音圧を含む履歴音圧データ52を含む、実施例1に記載の方法300。
(実施例3)
前記オーディオプロファイル50の前記音圧データ52は、前記聴取者40が経験した累積音圧52を含む、実施例1又は2に記載の方法300。
(実施例4)
前記オーディオプロファイル50の前記音圧データ52は、前記聴取者40が経験した音圧傾向を含む、実施例1~3のいずれか一実施例に記載の方法300。
(実施例5)
前記最新音圧pは、前記聴取者40の耳42、44に配置されたマイクロホン17から取得される320、実施例1~4のいずれか一実施例に記載の方法300。
(実施例6)
前記オーディオプロファイル50は、前記聴取者40の聴覚プロファイル54をさらに含み、前記最新推定時間Tceは、前記聴取者40の前記聴覚プロファイル54に基づいて前記最新音圧pを周波数重み付け325することによって前記聴取者40の前記聴覚プロファイル54にさらに基づく、実施例1~5のいずれか一実施例に記載の方法300。
(実施例7)
前記聴取者40の前記音響線量Dが前記音響線量閾値Lを超えるまでの前記推定時間を表す最新推定期間Tceを推定するステップ330は、予測モデル56を決定すること335を含む、実施例1~6のいずれか一実施例に記載の方法300。
(実施例8)
前記予測モデル56は、平均モデルを含む、実施例7に記載の方法300。
(実施例9)
前記予測モデル56は、回帰型ニューラルネットワーク(RNN)モデルを含む、実施例7又は8の方法300。
(実施例10)
前記最新音圧pに基づいて、前記聴取者40のための前記オーディオプロファイル50の前記音圧データ52を更新するステップ360をさらに含む、実施例1~9のいずれか一実施例に記載の方法300。
(実施例11)
前記オーディオプロファイル60は、リモートストレージ220から取得される、実施例1~10のいずれか一実施例に記載の方法300。
(実施例12)
前記方法300は、前記聴取者40の左耳42及び/又は右耳44に対して実行され、前記オーディオプロファイル50は、前記聴取者40の前記左耳42及び前記右耳44のそれぞれに対する別個の音圧データ52を含む、実施例1~11のいずれか一実施例に記載の方法300。
(実施例13)
オーディオ再生構成10を制御するためのコントローラ100であって、前記オーディオ再生構成10は、オーディオトランスデューサ15と、前記オーディオ再生構成10の聴取者40が経験する最新音圧pを測定するように配置されたマイクロホン17とを備え、前記コントローラ100は、制御回路を備え、前記制御回路は、
前記聴取者40のための音圧データ52を含むオーディオプロファイル50を取得するステップ310と、
前記聴取者40が経験する最新音圧pを取得するステップ320と、
前記音圧データ52及び前記最新音圧pに基づいて、前記聴取者40の前記音響線量Dが音響線量閾値Lを超えるまでの推定時間を表す最新推定期間Tceを推定するステップ330と、
前記最新推定期間Tceが前記音響線量閾値Lに関連付けられた線量期間Tを下回ることに応答して、
前記音圧データ52及び前記最新音圧pに基づいて、前記聴取者40の前記音響線量Dが前記音響線量閾値Lを超えるまでの推定時間を表す最新更新済期間Tcuが前記線量期間Tを満たすか又は超える更新済音圧pを計算するステップ340と、
前記更新済音圧pcuを満たすように前記最新音圧pを制御するための命令60を提供するステップ350と、
を行わせるように構成される、コントローラ100。
(実施例14)
実施例13に記載のコントローラ100を備える、オーディオ再生構成10。
(実施例15)
オーディオトランスデューサ15と、前記オーディオ再生構成10の聴取者40が経験する最新音圧pを測定するように配置されたマイクロホン17とをさらに備える、実施例14に記載のオーディオ再生構成10。
(実施例16)
前記コントローラ100は、
前記聴取者40のための音圧データ52を含むオーディオプロファイル50を取得するステップと、
前記聴取者40が経験する最新音圧pを取得するステップと、
前記音圧データ52及び前記最新音圧pに基づいて、前記聴取者40の前記音響線量Dが音響線量閾値Lを超えるまでの推定時間を表す最新推定期間Tceを推定するステップと、
前記最新推定期間Tceが前記音響線量閾値Lに関連付けられた線量期間Tを下回ることに応答して、
前記音圧データ52及び前記最新音圧pに基づいて、前記聴取者40の前記音響線量Dが前記音響線量閾値Lを超えるまでの推定時間を表す最新更新済期間Tcuが前記線量期間Tを満たすか又は超える更新済音圧pを計算するステップ340と、
前記更新済音圧pcuを満たすように前記最新音圧pを制御するための命令60を提供するステップ350と、
を行うように構成される、実施例15のオーディオ再生構成10。
(実施例17)
前記コントローラ100は、実施例2~12のいずれか一実施例に記載の方法300を実行するようにさらに構成される、実施例16に記載のオーディオ再生構成10。
(実施例18)
前記コントローラ100は、前記コントローラ100によって受信されたソース信号Sを再生するために、前記オーディオトランスデューサ10を制御するようにさらに構成される、実施例16又は17に記載のオーディオ再生構成10。
(実施例19)
前記コントローラ100は、前記ソース信号Sを処理して前記ソース信号Sの明瞭度を調整するようにさらに構成され、任意選択で、前記オーディオ再生構成10は、外部マイクロホン17をさらに備え、前記ソース信号Sの前記明瞭度は、前記外部マイクロホン17から取得された背景雑音に基づいて調整される、実施例18に記載のオーディオ再生構成10。
(実施例20)
前記オーディオプロファイル50は、前記聴取者40の聴覚障害を記述する聴覚プロファイル54をさらに含み、前記コントローラ100は、前記聴覚プロファイル54に基づいて前記ソース信号Sを処理するようにさらに構成される、実施例18又は19に記載のオーディオ再生構成10。
(実施例21)
前記コントローラ100は、前記更新済音圧pを満たすように前記最新音圧pを制御するための前記命令60に基づいて、前記トランスデューサ15を制御するようにさらに構成される、実施例16~20のいずれか一実施例に記載のオーディオ再生構成10。
(実施例22)
聴取者40の音響線量Dを制御するためのシステム200であって、前記システム200は、
前記聴取者40のための音圧データ52を含むオーディオプロファイル50を記憶するように構成されたリモートストレージ220に動作可能に接続されたクラウドサーバ210と、
トランスデューサ15と、コントローラ100と、前記聴取者40が経験する最新音圧pを測定するように配置されたマイクロホン17とを備える1つ以上のオーディオ再生構成10と、
を備え、
前記1つ以上のオーディオ再生構成10は、前記クラウドサーバ210に動作可能に接続され、前記クラウドサーバ210及び/又は前記1つ以上のオーディオ再生構成10は、実施例13に記載のコントローラを備える、システム200。
(実施例23)
前記リモートストレージ220は、複数のオーディオプロファイル50を記憶するように構成され、そのそれぞれは、前記システム200の個々のユーザ40に関連する音圧データ52を含み、
前記1つ以上のオーディオ再生構成10は、前記聴取者40のアイデンティティを決定するように構成され、
前記システム200は、前記アイデンティティを前記システム200の個々のユーザ40に関連付けるようにさらに構成される、実施例22に記載のシステム200。
(実施例24)
非一時的コンピュータ可読媒体510を備えるコンピュータプログラム製品500であって、前記非一時的コンピュータ可読媒体510は、プログラム命令600を含むコンピュータプログラム600をその上に有し、前記コンピュータプログラム600は、コントローラ100にロード可能であり、前記コンピュータプログラム600が前記コントローラ100によって実行されると、実施例1~12のいずれか一実施例に記載の方法の行わせるように構成される、コンピュータプログラム製品。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図9
図10a
図10b
図10c
図10d
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴取者(40)の音響線量(D)を制御するためのシステム(200)であって、前記音響線量(D)は、線量期間(T )にわたって二乗された最新音圧(p )のスライディング平均を表し、前記システム(200)は、
複数のオーディオプロファイル(50)を記憶するように構成されたリモートストレージ(220)に動作可能に接続されたクラウドサーバ(210)であって、前記複数のオーディオプロファイル(50)のそれぞれが前記システム(200)の特定ユーザ(40)に関連する音圧データ(52)及び聴覚プロファイル(54)を含む、クラウドサーバ(210)と、
トランスデューサ(15)と、コントローラ(100)と、前記聴取者(40)が経験する最新音圧(p)を測定するように配置されたマイクロホン(17)とを備える1つ以上のオーディオ再生構成(10)であって、前記1つ以上のオーディオ再生構成(10)は、前記クラウドサーバ(210)に動作可能に接続され、前記聴取者(40)のアイデンティティを決定するように構成され、前記システム(200)は、前記アイデンティティを前記システム(200)の特定ユーザ(40)に関連付けるように構成される、1つ以上のオーディオ再生構成(10)と、
を備え、
前記1つ以上のオーディオ再生構成(10)の前記クラウドサーバ(210)及び/又は前記コントローラ(100)は、制御回路を備え、前記制御回路は、
前記聴取者(40)のための音圧データ(52)及び聴覚プロファイル(54)を含むオーディオプロファイル(50)を取得するステップ(310)と、
前記聴取者(40)が経験する最新音圧(p)を取得するステップ(320)と、
前記聴取者(40)の前記音圧データ(52)、前記聴覚プロファイル(54)及び前記最新音圧(p)に基づいて、前記聴取者(40)の前記音響線量(D)が前記線量期間(T )に関連付けられた音響線量閾値(L)を超えるまでの推定時間を表す最新推定期間(Tce)を、前記聴取者(40)の前記聴覚プロファイル(54)に基づく前記最新音圧(p)の周波数重み付け(325)によって、推定するステップ(330)と、
前記最新推定期間(Tce)が前記音響線量閾値(L)に関連付けられた線量期間(T)を下回ることに応答して、
前記音圧データ(52)及び前記最新音圧(p)に基づいて、前記聴取者(40)の前記音響線量(D)が前記音響線量閾値(L)を超えるまでの推定時間を表す最新更新済期間(Tcu)が前記線量期間(T)を満たすか又は超える更新済音圧(p)を計算するステップ(340)と、
前記更新済音圧(pcu)を満たすように前記最新音圧(p)を制御するための命令(60)を提供するステップ(350)と、
を行わせるように構成される、システム(200)。
【請求項2】
前記オーディオプロファイル(50)の前記音圧データ(52)は、前記聴取者(40)が経験した以前の音圧を含む履歴音圧データ(52)を含む、請求項1に記載のシステム(200)。
【請求項3】
前記オーディオプロファイル(50)の前記音圧データ(52)は、前記聴取者(40)が経験した累積音圧(52)を含む、請求項1に記載のシステム(200)。
【請求項4】
前記オーディオプロファイル(50)の前記音圧データ(52)は、前記聴取者(40)が経験した音圧傾向を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【請求項5】
前記最新音圧(p)は、前記聴取者(40)の耳(42、44)に配置されたマイクロホン(17)から取得される(320)、請求項1~のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【請求項6】
前記聴取者(40)の前記音響線量(D)が前記音響線量閾値(L)を超えるまでの前記推定時間を表す最新推定期間(Tce)を推定するステップ(330)は、予測モデル(56)を決定するステップ(335)を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【請求項7】
前記予測モデル(56)は、平均モデルを含む、請求項6に記載のシステム(200)。
【請求項8】
前記予測モデル(56)は、回帰型ニューラルネットワーク(RNN)モデルを含む、請求項に記載のシステム(200)。
【請求項9】
前記制御回路は、前記最新音圧(p)に基づいて、前記聴取者(40)のための前記オーディオプロファイル(50)の前記音圧データ(52)を更新するステップ(360)を行わせるように、さらに構成される、請求項1~のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【請求項10】
前記制御回路は、前記聴取者(40)の左耳(42)及び/又は右耳(44)に対する前記最新音圧(p)を制御するための命令(60)を提供するステップ(350)を行わせるように構成され、前記オーディオプロファイル(50)は、前記聴取者(40)の前記左耳(42)及び前記右耳(44)のそれぞれに対する別個の音圧データ(52)を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【国際調査報告】