(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】改良粒子被覆法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/21 20170101AFI20250130BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20250130BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C01B32/21
H01M4/587
H01M4/36 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534678
(86)(22)【出願日】2023-01-24
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2023051682
(87)【国際公開番号】W WO2023139286
(87)【国際公開日】2023-07-27
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523373669
【氏名又は名称】レイン カーボン ビーブイ
(71)【出願人】
【識別番号】520307687
【氏名又は名称】レイン カーボン ジャーマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Rain Carbon Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】スパール,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】クント,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】クラーズ,ジョリス
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AB01
4G146AC07B
4G146AD23
4G146AD24
4G146AD25
4G146BA02
4G146BC03
4G146BC34B
5H050AA02
5H050AA19
5H050BA17
5H050CB08
5H050GA02
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、炭素被覆粒子又は炭素被覆粒子の凝集体の製造方法であって、- 被覆される多数の粒子を提供することと、- 中間溶融ピッチ製品を製造することと、- 粒子上に中間ピッチ製品を直接分散することと、- その後、粒子を炭化することと、を含む、方法に関する。さらに、本発明は、前記炭素被覆粒子又は前記炭素被覆粒子の凝集体を製造するための前記方法を含む、電池電極の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素被覆粒子の製造方法であって、
- 被覆される多数の粒子を提供することと、
- まだ溶融状態にある製造されたばかりのピッチ製品である、中間ピッチ製品を製造することと、
- 前記粒子上に前記中間ピッチ製品を直接分散することと、
- その後、前記粒子を炭化することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記中間ピッチ製品が分散前に固化されず、溶解されず、再溶解されない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中間ピッチ製品が、さらに以下の特性:
- 溶融粘度:DIN 53019に従って測定した場合、処理温度において10~3000mPas
- ASTM D3104に従って測定した場合、メトラー軟化点<200℃
を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記中間ピッチ製品が、さらに以下の特性:
- ASTM D4715に従って測定した場合、アルカン(Alcan)コークス価30~70%
- ISO 3679に従って測定した場合、引火点>200℃
- DIN 51921に従って測定した場合、キノリン不溶分2重量%未満
を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記中間ピッチ製品が石油ベースの原料をベースとする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ピッチ製品が、250℃を超える引火点及び100~200℃のメトラー軟化点を特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記中間ピッチ製品が、コールタールベース若しくは石油ベースの蒸留残渣、又はそれらのブレンド、又は蒸留残渣と130~300℃のメトラー軟化点を有する石油ベースのピッチとのブレンドであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記蒸留残渣が、コールタール蒸留残渣ベース又は石油蒸留残渣ベースであり、70~120℃のメトラー軟化点及び40~59%(ALCAN)のコーキング値を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ピッチが、さらに、110~270℃のメトラー軟化点を有する石油ベースのピッチを含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
分散させることが、前記中間ピッチ製品を、一方では流動化されている前記粒子に噴霧することを含むか、又は分散させることが、前記溶融中間ピッチ製品と前記粒子とをインテンシブ混合によって混合することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
炭化が、不活性ガス雰囲気中、550~1400℃の温度での熱処理によって行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記粒子上に分散した中間ピッチ製品の量が少なくとも10重量%であり、それにより炭素被覆粒子の凝集体が得られる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
- 被覆される多数の粒子を提供することと、
- 請求項1~12のいずれか一項に記載の方法に従って前記粒子を被覆することと、
- 前記被覆された粒子を結合することと、
- 電池電極を形成するためのさらなる成形及び黒鉛化
を含む、電池電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般に、炭素被覆粒子及び炭素被覆粒子の凝集体の製造に関し、特に電池電極、より具体的にはリチウムイオン電池の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
商業的に供給される負極材料は、従来、黒鉛をベースとしているが、酸化ケイ素、金属ケイ素、ケイ素合金、及び炭素又は黒鉛と、ケイ素、錫、及び他の元素をベースとする材料との複合体もますます多くなっている。
【0003】
これらの負極材料の多くは、炭素前駆体としてコールタールピッチ及び石油ベースのピッチを用いて薄い炭素被膜で被覆されている。適切な被覆を得るために、いくつかのプロセスが知られている。例えば、米国特許第9096473B2号(CONOCO PHILLIPS)に記載されているように、乾燥して粉砕したピッチを溶媒に溶解することを含む湿式プロセスを使用することができる。もう1つの技術は、粉砕した微細ピッチ粉末を水中に分散させ、その溶液又は懸濁液を粒子と混合し、混合物を乾燥させた後、いずれの場合も不活性ガス雰囲気中600℃~1300℃の高温で熱処理し、ピッチ被覆の炭化を行うものである。さらに、微粉砕ピッチを電極材料粒子と高せん断エネルギーで混合する乾式被覆プロセスも使用される。その後、混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱して表面炭素層を形成し、最終的に炭化又は必要に応じて黒鉛化する。
【0004】
上記の技術の一般的な問題点は、コールタール及び石油ベースの前駆体材料の粉砕は、固体材料が十分に脆い場合、通常は120℃より高い軟化点で、又は低温粉砕が適用される場合はそれより低い温度でのみ実行可能であるということである。粉砕プロセスが製品に加える費用に加え、材料が装置で機械的に衝撃を受けることで、炭素前駆体及び得られる電極材料に不要な不純物である鉄及びステンレス鋼などの金属不純物による混入が生じる。人体及び環境に有害で、空気に曝露されると粉塵爆発を起こしやすいピッチダストが発生する可能性があるため、粉砕時には、例えば、密閉ケーシング(又は格納容器)の使用、耐圧衝撃装置の使用、及び/又は窒素雰囲気での粉砕などの特別な注意が必要であり、その結果、製造コストが増加する。
【0005】
コールタール及び石油ベースの前駆体材料の粉砕を回避する被覆方法は、メタン、プロパン、アセチレン若しくは気化ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの炭化水素ガス又は蒸気を窒素ガス流と混合し、600℃より高い温度で炭素粒子の流動床中に挿入する化学気相成長法(CVD)に基づくものである。均質な被覆を形成するためには、各粒子の表面を反応性ガスで取り囲む必要がある。したがって、反応性ガス/キャリアガス混合物中で粒子を良好に流動化させることが不可欠であり、これは一般的に流動床プロセスで実現される。炭化水素ガス又は蒸気を用いたCVD被覆は、液体又は固体の炭化水素前駆体を用いた被覆よりも、粒子表面により多くの閉じ込められた炭素被覆をもたらすが、ガス状前駆体の炭素収率は通常低い。
【0006】
しかしながら、CVDベースの方法の欠点は、ピッチベースの炭素前駆体を用いた被覆に比べ、炭素被覆による目標とされるBET比表面積(BET SSA)の減少がCVDの場合効率的でないことである。さらに、CVDプロセスの間に形成される炭素の種類、いわゆる熱分解炭素は、電池で使用される電解質との相溶性が低いことが判明したため、通常、炭素粉末のBET SSAを減少するために必要とされる炭素被覆を増加させると、電気化学的性能は特定の炭素濃度で最適に達するが、炭素量が増加すると再び悪化する。加えて、CVDプロセスの拡張性には限界があるため、流動床プロセスのような工業的CVDプロセスは、通常、製品に多大なコストを追加する。
【0007】
さらに、乾式ピッチ被覆に特に関連する問題は、炭素被覆が電極粒子表面上に必ずしも均質に分布していないことであり、BET比表面積、界面面積及び電解液に対する黒鉛電極の反応性を低下させるためには、粒子表面を完全に被覆するために比較的多量の炭素、すなわち比較的厚い炭素膜が必要となる。低表面積の炭素被膜は、電荷損失を減少させ、セルの安全性及び充放電サイクルの安定性を向上させることにより、黒鉛質炭素粒子の電気化学的パラメーターを改善する。しかしながら、粒子表面に形成される炭素は、黒鉛粒子コアと比較して電極材料の可逆容量への寄与が小さく、炭素層の厚さもバルク中のリチウムイオンの挿入速度に影響するため、より薄い被覆が好ましい。低表面積炭素被覆による電気化学的性能の向上は、ケイ素含有微粒子電極材料に関しても報告されている。
【0008】
溶媒ベースの技術は、乾式プロセスの場合よりも均質且つ薄い炭素被覆層が得られることが知られているが、溶媒の取り扱い、特にほとんどの適切な溶媒の引火点が低いことによる安全性への配慮、及び蒸発した溶媒の乾燥及び凝縮が必要なため、溶媒ベースの技術はコストが高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のことから、本発明の一般的な目的は、プロセスコストが低減され、より環境に優しい炭素被覆粒子を製造するための代替方法を提供することである。
【0010】
特に、本発明の目的は、乾式被覆技術によって典型的に達成される被覆層よりも薄い被覆層を有し、溶媒の使用を回避する炭素被覆粒子の製造方法を提供することである。被覆される粒子は、平均粒径1~50ミクロンのミクロン径である。典型的な被覆の厚さは数十ナノメートルの範囲であるが、一般的なルールとして、均質な被覆を形成するのに必要な最小限の炭素量で均質な被覆が薄いほど、電気化学的性能が向上する。
【0011】
本発明の別の目的は、形成される被覆層の品質が向上した炭素被覆粒子を製造する方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の一般的な目的は、電池電極、特にリチウムイオン電池において、目標とする電極材料の同様のプロセス及び性能をもたらす炭素被覆粒子の製造方法を提供することである。
【0013】
別の一般的な目的は、本発明の被覆方法に適用するために適切な炭素前駆体を提供することである。
【0014】
さらに、本発明の一般的な目的は、プロセスコストが低減され、より環境に優しい炭素被覆粒子の凝集体を製造するための代替方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
概要
本発明は、炭素被覆粒子の製造方法であって、
- 被覆される多数の粒子を提供することと、
- 中間溶融ピッチ製品を製造することと、
- 粒子上に中間溶融(液体)ピッチ製品を直接分散することと、
- その後、粒子を炭化することと
を含む方法に関する。
【0016】
本発明の一実施形態において、粒子上に分散される中間溶融ピッチ製品の量は、少なくとも10重量%であり、それにより前記炭素被覆粒子の凝集体が得られる。
【0017】
さらに、本発明は、前記炭素被覆粒子の前記製造方法又は炭素被覆粒子の凝集体の前記製造方法を含む電池電極の製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
本発明の第1の実施形態において、
- 被覆される多数の粒子を提供することと、
- 中間溶融ピッチ製品を製造することと、
- 粒子上に中間溶融ピッチ製品を直接分散することと、
- その後、粒子を炭化することと
を含む、炭素被覆粒子の製造方法が提供される。
【0019】
本発明に関して、被覆される粒子は、家電用電池、電気自動車、再生可能電力用エネルギー貯蔵装置などの電池用電極の製造分野、特にリチウムイオン電池の負極の製造分野で使用される全種類の粒子であってよい。被覆される粒子は、炭素質又は複合体であってもよい。粒子材料は、天然又は合成黒鉛、酸化ケイ素、金属ケイ素、ケイ素合金、及び炭素又は黒鉛とケイ素及び錫をベースとする材料との複合体であってもよい。平均粒径は通常10~25ミクロンで、最大粒径は通常50ミクロンまでである。
【0020】
本発明の一実施形態において、被覆される粒子は、中間溶融ピッチ製品の十分な湿潤性を確保するために、プロセスの必要性に応じて予熱されてもよい。
【0021】
本発明に関して、中間溶融ピッチ製品は、まだ溶融状態にある製造されたばかりのピッチ製品であり、炭素被覆前駆体として使用されるのに適切であり、製造されたばかりの状態で直接粒子上に分散されるのに適切な、すなわち、まだ溶融(液体)状態で分散されるのに適切な任意の炭素残渣形成ピッチ製品であってよい。このような中間溶融ピッチ製品は、固化も溶解もせず(すなわち、添加された溶媒を含まない)、分散前に再溶解もされない。本発明に関して、製造されたばかりの溶融ピッチ製品とは、原料から製造されたピッチ製品が溶融状態に保たれ、固化、造粒、粉砕、溶解又は再溶解を含む中間プロセスステップを経ることなく分散されることを意味する。
【0022】
本発明の一実施形態において、被覆される粒子上に中間溶融ピッチ製品を分散させることは、噴霧、例えば、スプレーノズルを通したエアレススプレーを含み得る。任意選択的に、その間、粒子は、適切な混合器、撹拌機、又はガス流によって流動化され得る。或いは、分散は、溶融ピッチ製品と粒子とのインテンシブ混合、例えば、インテンシブ混合ユニットによるインテンシブ混合を含み得る。任意選択的に、撹拌しながら粒子混合物を室温まで冷却することにより、溶融ピッチ製品で被覆された粒子を単離してもよい。
【0023】
分散後、粒子上に分散した溶融ピッチ製品を炭化する。一実施形態において、この方法ステップは、混合器又は撹拌機によって粒子混合物が依然として運動状態に保持されている間、窒素不活性ガス雰囲気中での550~1400℃の間で1回又は数回の熱処理ステップを含む。或いは、冷却された粒子混合物は、トンネル炉、ローラーキルン炉、チャンバー炉、又はロータリーキルン炉であることが可能な炉で炭化される。
【0024】
任意選択的に、被覆層の結晶化度を高める目的で、炭化の後に2000℃より高い温度で黒鉛化を行うこともある。
【0025】
本発明の一般的な利点は、中間冷却及び固化、造粒、粉砕、溶解又は再溶解することなく、溶融状態の中間ピッチ製品を粒子上に直接分散させることにより、従来の炭素被覆粒子の製造における多くの方法ステップが合理化され、その結果、方法コスト、安全問題及び環境への影響が大幅に削減されることである。
【0026】
本発明による方法の別の利点は、本被覆方法によって良好な粒子表面の被覆性が得られ、数十ナノメートルの均質な炭素膜が形成されるため、他の被覆技術と比較して、BET比表面積が減少し、電極性能が向上し得る。また、溶媒ベースの被覆技術で使用されるテトラヒドロフラン又はトルエンなどの有機溶媒の使用を避けることができ、これに伴い、ピッチの溶媒への溶解や、被覆する粒子塊にピッチ溶液を混合した後の乾燥プロセス、溶媒の回収プロセスを省くことができる。これにより、被覆プロセスの設置が容易になり、コストが削減される。
【0027】
本発明の一実施形態において、中間溶融ピッチ製品はコールタール及び/又は石油ベースである。
【0028】
本発明による実施形態において、本発明で使用される中間溶融ピッチ製品は、260℃未満、好ましくは150℃未満、最も好ましくは120℃未満のメトラー(Mettler)軟化点を有することができ、これにより、より低いプロセス温度が可能となる。
【0029】
さらに、中間溶融ピッチ製品は、効率的な分散を可能にするために、使用温度で10~3000mPa・s、又は好ましくは使用温度で50~1000mPa・sの溶融粘度を有し得る。
【0030】
本発明による別の実施形態において、中間溶融ピッチ製品は、さらに以下の特性:
- 30~70%のアルカン(Alcan)コークス価
- 200℃より高い、好ましくは250℃より高い引火点
- 2%未満、好ましくは1%未満のキノリン不溶分
の1つ以上を有し得る。
【0031】
十分に高い引火点は、安全性の問題を制限することが知られており、一方、十分に低いキノリン不溶解分は、中間溶融ピッチ製品を噴霧により分散させる場合に、噴霧ノズルの目詰まりを回避する。
【0032】
好ましくは、本発明で使用される溶融中間ピッチ製品は、低温で低粘度を有し、高いコーキング収率及び引火点と組み合わせて低い軟化点を有し得る。これらのパラメーターは、炭化の改善、安全性の問題の低減、溶融状態での容易な処理と組み合わせて低い処理温度、高い被覆率、及び粒子表面の良好な湿潤性の組み合わせに寄与し、その結果、被覆される粒子のBET比表面積が大幅に低減される。さらに、炭素被覆粒子の製造コストが大幅に削減される。さらに、被覆プロセスは密閉反応器内で行われ、ミクロン径の粒子へのピッチ粉砕によって生じる固体ピッチダストが回避されるため、環境への影響も低減される。
【0033】
好ましい実施形態において、使用される中間溶融ピッチ製品は、120℃未満のメトラー軟化点;140℃で1000mPa・s未満の溶融粘度;30~70%のアルカン(Alcan)コークス値;250℃より高い引火点;及び1%未満のキノリン不溶解分を有し得る。
【0034】
本発明の特定の実施態様において、使用される中間溶融ピッチ製品は、石油ベースの原料をベースとし得る。より具体的には、このピッチ製品は、250℃より高い引火点、及び100~200℃、より好ましくは120~180℃のメトラー軟化点を特徴とし得る。このようなピッチは、発癌性ベンゾ[a]ピレン(B[a]P)含有量が大幅に低減されたコールタールベースのピッチに類似した高い引火点及びコークス価を有し得るのみならず、溶融被覆材の要件を満たす低粘度を有し得る。
【0035】
本発明による別の特定の実施形態において、使用される中間溶融ピッチ製品は、コールタールベースの若しくは石油ベースの蒸留残渣、又はそれらのブレンド、或いは好ましくは、コールタール又は石油蒸留の重質留分をベースとする蒸留残渣、又はそれらのブレンドであってもよい。
【0036】
より具体的には、コールタール又は石油蒸留の重質留分フラクションの蒸留残渣は、70~120℃のメトラー軟化点、及び40~59%又は44~59%(ALCAN)のコーキング価を有し得る。このような被覆材料は、非常に少量の固体粒子を含むか、又は実質的に固体粒子を含まない。このことは、ノズルの目詰まりが回避されるだけでなく、粒子表面での均質な薄層被覆の形成を補助するため、噴霧方法において有利である。
【0037】
任意選択的に、コールタール又は石油蒸留の重質留分フラクションのそのような蒸留残渣は、110~270℃、好ましくは130~180℃のメトラー軟化点を有する石油ベースのピッチをさらに含み得る。石油ベースのピッチは、コールタールピッチ含有ブレンドのB[a]P含有量を低減する。
【0038】
本発明の追加の実施形態において、粒子上に分散された中間溶融ピッチ製品の量は、少なくとも10重量%であり、それにより炭素被覆粒子の凝集体が得られる。分散された溶融ピッチ製品の量によって、粒子が被覆されているか、被覆され凝集しているかを決定することができる。被覆凝集粒子の場合、必要な分散溶融ピッチ量は炭素被覆粒子の少なくとも10重量%、又は少なくとも12重量%、好ましくは15~20重量%である。その結果、被覆されているが凝集していない粒子の場合、分散溶融ピッチの必要量は、炭素被覆粒子の12重量%未満、又は10重量%未満、さらには8重量%未満であってもよい。溶融ピッチ量が好ましくは10重量%を超えると、粒子が凝集して粒径が大きくなり、被覆粒子の凝集体が生じ得る。典型的な平均粒径よりも微細な粒子は、凝集しやすく、典型的な粒径の被覆粒子の凝集体を生じ得る。
【0039】
さらに、本明細書を通して説明されたような炭素被覆粒子の製造方法を含む電池電極の製造方法が提供される。このような方法は、被覆される多数の粒子を提供すること、本明細書を通して記載される炭素被覆粒子の製造方法に従って粒子を被覆すること、被覆された粒子を結合すること、電池電極を形成するためにさらに成形し、黒鉛化することを含み得る。これらの電極は、家庭用電子機器、電気自動車、再生可能電力用蓄電装置用の電池、特にリチウムイオン電池の負極として適切な電極となり得る。
【0040】
以下の実施例1及び実施例2は、それぞれ、本発明による方法の一実施形態を示す。
【実施例】
【0041】
実施例1:メトラー軟化点が87.4℃の中間熱液体ピッチ製品446gを、加熱したインテンシブ混合器中で予熱した球状黒鉛(6m2/gのBET SSA)4.5kgに添加した。両材料を170℃の温度において高強度で5分間混合し、その後、混合強度を下げ、使用したピッチ製品の軟化点よりも材料温度が20℃低くなるまで混合器を冷却した。材料を取り出し、室温まで冷却した後、るつぼに移し、1100℃で5時間、100℃/hの加熱速度で炭化させた。
【0042】
本明細書に記載した被覆方法により、初期の球状黒鉛の初期BET SSA 6m2/gを、被覆球状黒鉛の2.3m2/gまで低減することができた。
【0043】
【0044】
【0045】
実施例2:以下の表は、本発明で使用される中間ピッチ製品の特定の実施形態の製品パラメーターを示す。
【0046】
【0047】
以下の表は、本明細書で使用される製品パラメーターの分析手順の概要を示す。
【0048】
【国際調査報告】