IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国科学院金属研究所の特許一覧 ▶ 独立行政法人物質・材料研究機構の特許一覧

特表2025-503857希土類フッ化物単結晶の磁気冷凍への応用
<>
  • 特表-希土類フッ化物単結晶の磁気冷凍への応用 図1
  • 特表-希土類フッ化物単結晶の磁気冷凍への応用 図2
  • 特表-希土類フッ化物単結晶の磁気冷凍への応用 図3
  • 特表-希土類フッ化物単結晶の磁気冷凍への応用 図4
  • 特表-希土類フッ化物単結晶の磁気冷凍への応用 図5
  • 特表-希土類フッ化物単結晶の磁気冷凍への応用 図6
  • 特表-希土類フッ化物単結晶の磁気冷凍への応用 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】希土類フッ化物単結晶の磁気冷凍への応用
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/01 20060101AFI20250130BHJP
   F25B 21/00 20060101ALI20250130BHJP
   C01F 17/36 20200101ALI20250130BHJP
【FI】
H01F1/01 120
F25B21/00 A
C01F17/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538358
(86)(22)【出願日】2023-03-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 CN2023081822
(87)【国際公開番号】W WO2023207400
(87)【国際公開日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】202210435306.4
(32)【優先日】2022-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522094967
【氏名又は名称】中国科学院金属研究所
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲びん▼
(72)【発明者】
【氏名】原 東升
(72)【発明者】
【氏名】劉 鵬
(72)【発明者】
【氏名】ガールシア ヴィローラ,エンカーネション アントニア
(72)【発明者】
【氏名】張 志東
(72)【発明者】
【氏名】島村 清史
【テーマコード(参考)】
4G076
5E040
【Fターム(参考)】
4G076AA04
4G076AB04
4G076CA02
4G076CA29
4G076DA07
5E040AB10
5E040CA20
(57)【要約】
本発明は、希土類フッ化物単結晶の磁気冷凍への応用、磁気冷凍方法及び磁気冷凍装置を開示し、磁気機能材料の分野に属する。該一連の磁気熱量材料は、リチウム希土類フッ化物であり、化学式は、LiREFであり、REは、希土類元素ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム及びイッテルビウムのうちの1種又は複数種である。該一連の磁気熱量材料の単結晶は、極めて強い磁気異方性を有し、磁気熱量材料の磁化容易軸方向に0~20kOeの変化磁場を印加することにより、LiGdF、LiTbF、LiHoF、LiDyF、LiErF、LiYbF、LiTmFは、1.8K、4K、4K、1.8K、1.8K、1.8K、及び18Kで、50.35J・kg-1・K-1、21.12J・kg-1・K-1、24.98J・kg-1・K-1、24.45J・kg-1・K-1、21.95J・kg-1・K-1、14.7J・kg-1・K-1及び0.692J・kg-1・K-1の等温磁気エントロピー変化を得る。LiTbFとLiErFの25Kでの熱伝導率は、50W・K-1・m-1に達する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム希土類フッ化物単結晶の磁気冷凍への応用。
【請求項2】
前記リチウム希土類フッ化物の化学式は、LiREFであり、REは、希土類元素である、ことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項3】
前記希土類元素REは、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム及びイッテルビウムのうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項2に記載の応用。
【請求項4】
前記リチウム希土類フッ化物は、正方晶灰重石構造を有し、磁気異方性を有する単結晶である、ことを特徴とする請求項3に記載の応用。
【請求項5】
LiGdF、LiTbF及びLiHoFの磁化容易方向は、C軸に平行であり、LiDyF、LiErF、LiYbF及びLiTmFの磁化容易方向は、C軸に垂直である、ことを特徴とする請求項4に記載の応用。
【請求項6】
LiGdFは常磁性を示し、LiTmFは、ヴァン・ヴレック常磁性を示し、LiTbF及びLiHoFは、それぞれ2.87K及び1.53Kのキュリー温度未満で強磁性秩序を示し、LiDyF、LiErF及びLiYbFは、それぞれ0.62K、0.38K及び0.128Kのネール温度未満で反強磁性秩序を示す、ことを特徴とする請求項3に記載の応用。
【請求項7】
リチウム希土類フッ化物単結晶の適用温度区間は、20K未満の低温区間である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の応用。
【請求項8】
リチウム希土類フッ化物単結晶サンプルの磁化容易方向に沿って0~20kOeの変化磁場を印加すると、リチウム希土類フッ化物単結晶は、大きな等温磁気エントロピー変化を示し、LiGdF、LiTbF、LiHoF、LiDyF、LiErF、LiYbF、LiTmFは、1.8K、4K、4K、1.8K、1.8K、1.8K、及び18Kで、50.35J・kg-1・K-1、21.12J・kg-1・K-1、24.98J・kg-1・K-1、24.45J・kg-1・K-1、21.95J・kg-1・K-1、14.7J・kg-1・K-1及び0.692J・kg-1・K-1の等温磁気エントロピー変化を得る、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の応用。
【請求項9】
LiTbF及びLiErFの25Kでの熱伝導率は、50W・K-1・m-1に達する、ことを特徴とする請求項5に記載の応用。
【請求項10】
リチウム希土類フッ化物単結晶を磁気作業物質とし、磁気作業物質に磁場を印加及び除去することにより、磁気作業物質の温度が変化し、熱交換体との熱の移動を実現して、冷凍の目的を達成する、ことを特徴とするリチウム希土類フッ化物単結晶に基づく磁気冷凍方法。
【請求項11】
前記リチウム希土類フッ化物単結晶は、LiGdF、LiTbF、LiHoF、LiDyF、LiErF、LiYbF及びLiTmFのうちの1種又は複数種であり、
複数種の場合、異なるリチウム希土類フッ化物単結晶を混合して配列することにより、低温冷凍区間の拡張を実現する、ことを特徴とする請求項10に記載の磁気冷凍方法。
【請求項12】
前記リチウム希土類フッ化物の化学式は、LiREFであり、REは、希土類元素であり、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbからなる群より選ばれる少なくとも2種以上の希土類元素であり、低温冷凍区間の拡張を実現する、ことを特徴とする請求項10に記載の磁気冷凍方法。
【請求項13】
磁気作業物質としてリチウム希土類フッ化物単結晶を含む、ことを特徴とする小磁場駆動による磁気冷凍装置。
【請求項14】
磁気作業物質であるリチウム希土類フッ化物単結晶は、LiGdF、LiTbF、LiHoF、LiDyF、LiErF、LiYbF及びLiTmFのうちの1種又は複数種であり、
複数種の場合、異なるリチウム希土類フッ化物単結晶を混合して配列することにより、低温冷凍区間の拡張を実現する、ことを特徴とする請求項13に記載の磁気冷凍装置。
【請求項15】
前記リチウム希土類フッ化物の化学式は、LiREFであり、REは、希土類元素であり、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbからなる群より選ばれる少なくとも2種以上の希土類元素である、ことを特徴とする請求項13に記載の磁気冷凍装置。
【請求項16】
磁場印加部材と、熱スイッチと、ヒートシンクと、負荷とをさらに含む、ことを特徴とする請求項13に記載の磁気冷凍装置。
【請求項17】
前記磁気冷凍装置における磁場印加部材は、永久磁石を用い、熱スイッチは、超伝導熱スイッチを用いる、ことを特徴とする請求項13に記載の磁気冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気機能材料の分野に属し、具体的には、低温区間において小磁場で駆動可能な巨大磁気熱量効果材料に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、冷凍技術は、人々に知られており、エアコン、冷蔵庫、農業及び医療などの日常生活に広く応用されている。冷凍技術において、液体水素よりも温度が低い温度区間は、低温区間と呼ばれ、宇宙通信、量子コンピュータ又は化学工業におけるガス液化、及び空間における超高感度検出器などに適用されてもよい。その冷凍技術は、いずれもヘリウムガスを用いる必要があり、例えば、断熱消磁冷凍の冷凍装置に磁場を提供する超伝導磁石は、液体ヘリウムで冷却する必要があり、3He/4He希釈冷凍機とHe吸着式冷凍機は、ヘリウムガスなしでは全く機能しない。磁気熱量効果に基づく新型の磁気冷凍技術は、従来の冷凍方法に比べて、環境に優しく、冷凍効率が高く、エネルギー消費が少なく、低騒音で、汚染がなく、安定して信頼できるなどの利点を有する。そのため、研究者の注目を集めている。
【0003】
現在、低温磁気冷凍において成熟した磁気作業物質は、ガーネットシリーズ(GdGa12(GGGと略称)、DyAl12(DAGと略称))である。しかしながら、大きな磁気エントロピー変化を取得するために、通常、磁気作業物質に大きな変化磁場(0~50kOe)を印加する必要があるが、このような磁場は、体積の大きい電磁石と超伝導磁石に依存する必要があるが、装置の高いコスト、複雑な装置設計及び大きなサイズは、磁気冷凍技術の普及を著しく阻害する。したがって、低温区間において小磁場で駆動されて大きな磁気エントロピー変化を得ることができる磁気作業物質を探すことは、低温磁気冷凍の鍵となる。
【0004】
上記問題に対して、本発明は、小磁場で駆動し、大きな磁気エントロピー変化を得ることができる磁気熱量材料を提供し、該磁気熱量材料は、リチウム希土類フッ化物単結晶である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、希土類フッ化物単結晶の磁気冷凍への応用を開示することであり、該希土類フッ化物単結晶は、リチウム希土類フッ化物単結晶であり、低温区間において該材料の磁化容易方向に0~20kOeの変化磁場を印加することにより、大きな磁気エントロピー変化を得ることができ、かつ該一連の材料は、良好な熱伝導能力を有する。この材料の発見は、低温磁気冷凍装置の簡略化及び幅広い適用の可能性をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術的手段は、以下のとおりである。
【0007】
リチウム希土類フッ化物単結晶の磁気冷凍への応用である。
【0008】
リチウム希土類フッ化物単結晶サンプルは、外部磁場の作用下で、磁気モーメントが乱雑状態から秩序状態になり、原子磁気モーメントの間及び外部磁場との間の相互作用エネルギーが低減し、その磁気エントロピーが減少して外部に放熱する。逆に、磁場を除去する過程において、リチウム希土類フッ化物単結晶の磁気モーメントが秩序状態から乱雑状態になり、磁気エントロピーが増加し、外部からエネルギーを吸収する。サンプル断熱の場合、リチウム希土類フッ化物単結晶サンプルそのものの温度変化として現れる。
【0009】
好ましい技術的手段として、
前記リチウム希土類フッ化物の化学式は、LiREFであり、REは、希土類元素である。
【0010】
前記希土類元素REは、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)及びイッテルビウム(Yb)のうちの1種又は複数種である。
【0011】
前記リチウム希土類フッ化物は、正方晶灰重石構造を有する。
【0012】
前記リチウム希土類フッ化物は、極めて強い磁気異方性を有する単結晶である。
【0013】
LiGdF、LiTbF及びLiHoFの磁化容易方向は、C軸に平行であり、LiDyF、LiErF、LiYbF及びLiTmFの磁化容易方向は、C軸に垂直である。
【0014】
LiGdFは、常磁性を示し、LiTmFは、ヴァン・ヴレック常磁性を示し、LiTbF及びLiHoFは、それぞれ2.87K及び1.53Kのキュリー温度未満で強磁性秩序を示し、LiDyF、LiErF及びLiYbFは、それぞれ0.62K、0.38K及び0.128Kのネール温度未満で反強磁性秩序を示す。
【0015】
リチウム希土類フッ化物単結晶の適用温度区間は、20K未満の低温区間である。
【0016】
等温磁気エントロピー変化ΔSは、磁気熱量材料の性能を評価する重要なパラメータである。したがって、本発明は、超伝導量子干渉計を用いてリチウム希土類フッ化物単結晶サンプルの磁化容易方向における異なる温度の磁化曲線を測定する。その後、Maxwell関係式を用いて、取得された異なる温度の磁化曲線データを処理し、磁気エントロピー変化の温度変化に伴う関係を求める。リチウム希土類フッ化物単結晶サンプルの磁化容易方向に0~20kOeの小さな変化磁場を印加することにより、リチウム希土類フッ化物単結晶は、大きな等温磁気エントロピー変化を示し、LiGdF、LiTbF、LiHoF、LiDyF、LiErF、LiYbF、LiTmFは、1.8K、4K、4K、1.8K、1.8K、1.8K、及び18Kで、50.35J・kg-1・K-1、21.12J・kg-1・K-1、24.98J・kg-1・K-1、24.45J・kg-1・K-1、21.95J・kg-1・K-1、14.7J・kg-1・K-1及び0.692J・kg-1・K-1の等温磁気エントロピー変化を得る。
【0017】
固体磁気冷凍分野において、磁気熱量材料の熱伝導率は、装置全体の冷凍効率と密接な関係がある。リチウム希土類フッ化物単結晶の熱伝導率の測定は、総合物性測定システムの熱輸送オプションにより行う。リチウム希土類フッ化物単結晶サンプルの熱伝導率は、低温で高いため、誤差を低減するために4線法で測定し、サンプルの形状は、針状に類似した直方体形状であり、降温測定の方法を用いる。LiTbFとLiErFの25Kでの熱伝導率は、50W・K-1-1に達する。
【0018】
リチウム希土類フッ化物単結晶に基づく磁気冷凍方法は、リチウム希土類フッ化物単結晶を磁気作業物質とし、磁気作業物質に磁場を印加及び除去することにより、磁気作業物質の温度が変化し、熱交換体との熱の移動を実現して、冷凍の目的を達成することを特徴とする。
【0019】
好ましい技術的手段として、
前記磁気作業物質であるリチウム希土類フッ化物単結晶は、LiGdF、LiTbF、LiHoF、LiDyF、LiErF、LiYbF及びLiTmFのうちの1種又は複数種であってもよく、複数種の場合、異なるリチウム希土類フッ化物単結晶を混合して配列することにより、低温冷凍区間の拡張を実現する。
【0020】
リチウム希土類フッ化物単結晶を製造する過程において、2種又は2種以上の複数種の希土類元素(Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYb)を添加して、低温冷凍区間の拡張を実現することができる。
【0021】
小磁場駆動による磁気冷凍装置は、磁気作業物質としてリチウム希土類フッ化物単結晶を含むことを特徴とする。
【0022】
好ましい技術的手段として、
前記磁気作業物質であるリチウム希土類フッ化物単結晶は、LiGdF、LiTbF、LiHoF、LiDyF、LiErF、LiYbF及びLiTmFのうちの1種又は複数種であってもよく、複数種の場合、異なるリチウム希土類フッ化物単結晶を混合して配列することにより、低温冷凍区間の拡張を実現する。
【0023】
リチウム希土類フッ化物単結晶を製造する過程において、2種又は2種以上の複数種の希土類元素(Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYb)を添加して、低温冷凍区間の拡張を実現することができる。
【0024】
該冷凍装置は、磁場印加部材、熱スイッチ、ヒートシンク、負荷をさらに含み、磁場印加部材は、永久磁石、電磁石又は超伝導磁性体であってもよく、好ましくは、永久磁石であり、装置の体積を効果的に簡略化し、設計を最適化することができ、熱スイッチは、機械的接触式、超伝導式、ガス式又は磁気抵抗式熱スイッチであってもよく、好ましくは、超伝導熱スイッチである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の技術的効果は、以下のとおりである。
【0026】
1、リチウム希土類フッ化物単結晶は、低温で相転移するため、磁気冷凍装置における磁気作業物質として使用される場合、磁気冷凍装置の冷凍温度区間を20K未満の低温区間内に保つことができる。
【0027】
2、リチウム希土類フッ化物単結晶は、極めて強い磁気異方性を有し、磁化容易軸方向に小磁場を印加すると飽和に達することができ、小磁場を提供する部材、例えば、一般的な永久磁石などは、安価で、体積が小さく、冷凍装置のコストを大幅に低減するだけでなく、冷凍装置の設計を最適化することができ、磁気冷凍装置の応用範囲を大科学実験装置及び任意の低温及び極低温環境を必要とする装置及び操作に広げることができる。
【0028】
3、本発明は、複数のリチウム希土類フッ化物単結晶を混合して配列することにより、冷凍区間を効果的に拡張し、異なる冷凍区間のニーズを満たし、応用範囲をさらに拡大することができる。或いは、リチウム希土類フッ化物単結晶を製造する過程において一定量の他の希土類元素(Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYb)を添加することによって、冷凍区間の拡張を実現することもできる。
【0029】
4、現在主流で使用されているGdGa12の17.5J・kg-1・K-1の等温磁気エントロピー変化に比べて、LiGdF、LiTbF、LiHoF、LiDyF、LiErF、LiYbF、及びLiTmFは、1.8K、4K、4K、1.8K、1.8K、1.8K、及び18Kで、50.35J・kg-1・K-1、21.12J・kg-1・K-1、24.98J・kg-1・K-1、24.45J・kg-1・K-1、21.95J・kg-1・K-1、14.7J・kg-1・K-1及び0.692J・kg-1・K-1の磁気エントロピー変化を得る。これらの優れた性能により、リチウム希土類フッ化物単結晶は、これらの主流材料を完全に代替することができ、ガス液化、極低温科学装置及び航空宇宙などの低温磁気冷凍分野に広く応用され、低コスト、高効率、無汚染の低温磁気冷凍を実現する。リチウム希土類フッ化物単結晶は、低温冷凍区間において高い熱伝導率を有し、LiTbFとLiErFの25Kでの熱伝導率は、50W・K-1・m-1に達し、磁気熱量材料の熱交換速度を加速し、磁気冷凍装置全体の効率を向上させる効果を奏することができる。
【0030】
5、リチウム希土類フッ化物単結晶の製造プロセスが成熟し、大規模な工業化生産が可能であり、該材料の使用コスト及び冷凍システムの製造コストを大幅に低減させ、迅速かつ広範囲に普及して応用されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】リチウム希土類フッ化物の結晶構造である。
図2】磁気冷凍の原理図である。
図3】ガドリニウムガリウムガーネット及びリチウム希土類フッ化物単結晶の磁化容易軸方向に沿って0~10kOeの変化磁場を印加した場合の磁気エントロピー変化曲線である。
図4】ガドリニウムガリウムガーネット及びリチウム希土類フッ化物単結晶の磁化容易軸方向に沿って0~20kOeの変化磁場を印加した場合の磁気エントロピー変化曲線である。
図5】LiTbF単結晶の熱伝導率の温度変化に伴う関係を示す図である。
図6】LiErF単結晶の熱伝導率の温度変化に伴う関係を示す図である。
図7】磁気冷凍装置の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
リチウム希土類フッ化物単結晶の応用装置であって、具体的には、磁場駆動下での磁気冷凍装置であり、その磁気作業物質としてリチウム希土類フッ化物単結晶を選択し、具体的には、LiGdF、LiTbF、LiHoF、LiDyF、LiErF、LiYbF及びLiTmFのうちの1種又は複数種である。
【0033】
該装置は、磁場印加部材、熱スイッチ、ヒートシンク(heat-sink)、及び負荷(load)などをさらに含む。磁場印加部材は、永久磁石、電磁石又は超伝導磁性体であってもよく、熱スイッチは、機械的接触式、超伝導式、ガス式又は磁気抵抗式熱スイッチであってもよく、負荷の機能は、冷凍を実現し、ヒートシンクは、放熱効果を奏する。初期状態において、リチウム希土類フッ化物単結晶は、ゼロ磁場状態でヒートシンクの温度状態と同じであり、その後、熱スイッチがオフ状態のままで磁場を高くし、等温磁化過程において、熱が磁気作業物質からヒートシンクに流れ、エントロピーが減少する。磁場が最大に上昇すると、熱スイッチをオンにし、その後、磁場を低くし、磁気作業物質の温度が負荷に必要な温度まで低下すると、依然として、いくつかの磁場が残され、磁場の継続的な低下に伴い、磁気作業物質は、負荷から熱を吸い上げて負荷を降温させ、降温の目的を達成し、装置全体の冷凍機能を実現する。
【0034】
複数の異なるリチウム希土類フッ化物単結晶を混合して配列すると、冷凍区間範囲を効果的に拡張することができる。例えば、一実施形態において、LiErFとLiTbFとを混合して配列することにより、冷凍区間を単独のLiErF時の6K以下の温度区間から15K以下の温度区間に拡張することができ、別の実施形態において、LiDyFとLiTbFとを混合して配列することにより、冷凍区間を単独のLiDyF時の4K以下の温度区間から15K以下の温度区間に拡張することができ、或いは、リチウム希土類フッ化物単結晶を製造する過程において他の希土類元素(Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYb)を一定量添加することにより、2種以上の希土類元素を含むリチウム希土類フッ化物単結晶を製造する際に、低温冷凍区間の拡張を実現することもできる。
【0035】
以下の実施例は、それぞれLiGdF、LiTbF、LiHoF、LiDyF、LiErF、LiYbF及びLiTmFに対して磁気熱量性能試験を行い、試験結果は、20K未満の低温区間において、LiGdF、LiTbF、LiHoF、LiDyF及びLiErFは、いずれも従来のGGG材料の17.5J・kg-1・K-1より優れた等温磁気エントロピー変化を示す。LiTbF及びLiErFは、低温区間において、いずれも50W・K-1-1に達する熱伝導率を示す。
(実施例1)
【0036】
LiGdF単結晶の磁気熱量性能試験
磁気試験において、まず、メスを用いて大きなLiGdF単結晶サンプルから小さなサンプルを切り出し、電子天秤で秤量し、サンプルの質量が7.35mgである。サンプルを両面テープでプラスチックサンプル管に固定する。次に、サンプルの磁化容易方向に沿ってM-H測定を行い、1.8Kの温度でM-H曲線を測定し、2K~10Kの温度範囲内で、1KおきにM-H曲線を測定する。10K~24Kの温度範囲内で、2KおきにM-H曲線を測定する。各測定されたM-H曲線において、0~10kOeの磁場で500Oeおきに1つのデータ点を測定し、10kOe~20kOeの磁場で1000Oeおきに1つのデータ点を測定する。
【0037】
上記磁気試験により得られた異なる温度でのM-H曲線に基づいて、Maxwell方程式により、LiGdFサンプルに磁化容易方向に沿って0~10kOeと0~20kOeの変化磁場を印加した後の磁気エントロピー変化の温度変化に伴う関係を求める。LiGdFサンプルは、0~20kOeの変化磁場下で50.35J・kg-1・K-1の磁気エントロピー変化を得る。
(実施例2)
【0038】
LiTbF単結晶の磁気熱量性能試験
磁気試験において、計器の測定範囲に限定されるため、メスを用いて大きなLiTbF単結晶サンプルから小さなサンプルを切り出し、電子天秤で秤量し、サンプルの質量が5.4mgである。サンプルを両面テープでプラスチックサンプル管に固定する。次に、サンプルの磁化容易方向に沿ってM-H測定(即ち、磁化曲線測定)を行い、1.85K~2.85Kの温度範囲内で、0.2Kおきに1本のM-H曲線を測定する。4K~22Kの温度範囲内で、2KおきにM-H曲線を測定する。各測定されたM-H曲線において、0~10kOeの磁場で500Oeおきに1つのデータ点を測定し、10kOe~20kOeの磁場で1000Oeおきに1つのデータ点を測定する。
【0039】
上記磁気試験により得られた異なる温度でのM-H曲線に基づいて、Maxwell方程式により、LiTbFサンプルに磁化容易方向に沿って0~10kOeと0~20kOeの変化磁場を印加した後の磁気エントロピー変化の温度変化に伴う関係を求める。LiTbF単結晶サンプルは、0~20kOeの変化磁場下で21.12J・kg-1・K-1の磁気エントロピー変化を得る。
【0040】
LiTbF単結晶サンプルの熱伝導率測定において、総合物性測定システムの熱輸送オプションによりLiTbFサンプルのC軸方向に沿った熱伝導率を測定し、サンプルの形状は、矩形である。断面積が9.63mmであり、表面積が109.8mmであり、電極間距離が1.5mmであり、放熱係数が1である4線法により測定する。測定の温度範囲が25K~50Kであり、速度が0.1K/minである降温測定を行い、その後、LiTbFサンプルの熱伝導率が温度によって変化する関係を得て、かつ25Kで熱伝導率が50W・K-1・m-1に達する。
(実施例3)
【0041】
LiDyF単結晶の磁気熱量性能試験
磁気試験において、まず、メスを用いて大きなLiDyF単結晶サンプルから小さなサンプルを切り出し、電子天秤で秤量し、サンプルの質量が1.48mgである。サンプルを両面テープでプラスチックサンプル管に固定する。次に、サンプルの磁化容易方向に沿ってM-H測定を行い、1.8Kの温度でM-H曲線を測定し、2K~10Kの温度範囲内で、1KおきにM-H曲線を測定する。10K~24Kの温度範囲内で、2KおきにM-H曲線を測定する。各測定されたM-H曲線において、0~10kOeの磁場で500Oeおきに1つのデータ点を測定し、10kOe~20kOeの磁場で1000Oeおきに1つのデータ点を測定する。
【0042】
上記磁気試験により得られた異なる温度でのM-H曲線に基づいて、Maxwell方程式により、LiDyFサンプルに磁化容易方向に沿って0~10kOeと0~20kOeの変化磁場を印加した後の磁気エントロピー変化の温度変化に伴う関係を求める。LiDyFサンプルは、0~20kOeの変化磁場下で24.45J・kg-1・K-1の磁気エントロピー変化を得る。
(実施例4)
【0043】
LiHoF単結晶の磁気熱量性能試験
磁気試験において、まず、メスを用いて大きなLiHoF単結晶サンプルから小さなサンプルを切り出し、電子天秤で秤量し、サンプルの質量が6.35mgである。サンプルを両面テープでプラスチックサンプル管に固定する。次に、サンプルの磁化容易方向に沿ってM-H測定を行い、1.8Kの温度でM-H曲線を測定し、2K~10Kの温度範囲内で、1KおきにM-H曲線を測定する。10K~24Kの温度範囲内で、2KおきにM-H曲線を測定する。各測定されたM-H曲線において、0~10kOeの磁場で500Oeおきに1つのデータ点を測定し、10kOe~20kOeの磁場で1000Oeおきに1つのデータ点を測定する。
【0044】
上記磁気試験により得られた異なる温度でのM-H曲線に基づいて、Maxwell方程式により、LiHoFサンプルに磁化容易方向に沿って0~10kOeと0~20kOeの変化磁場を印加した後の磁気エントロピー変化の温度変化に伴う関係を求める。LiHoF単結晶サンプルは、0~20kOeの変化磁場下で24.98J・kg-1・K-1の磁気エントロピー変化を得る。
(実施例5)
【0045】
LiErF単結晶の磁気熱量性能試験
磁気試験において、まず、メスを用いて大きなLiErF単結晶サンプルから小さなサンプルを切り出し、電子天秤で秤量し、サンプルの質量が2.55mgである。サンプルを両面テープでプラスチックサンプル管に固定する。次に、サンプルの磁化容易方向に沿ってM-H測定を行い、1.8Kの温度でM-H曲線を測定し、2K~10Kの温度範囲内で、1KおきにM-H曲線を測定する。10K~24Kの温度範囲内で、2KおきにM-H曲線を測定する。各測定されたM-H曲線において、0~10kOeの磁場で500Oeおきに1つのデータ点を測定し、10kOe~20kOeの磁場で1000Oeおきに1つのデータ点を測定する。
【0046】
上記磁気試験により得られた異なる温度でのM-H曲線に基づいて、Maxwell方程式により、LiErFサンプルに磁化容易方向に沿って0~10kOeと0~20kOeの変化磁場を印加した後の磁気エントロピー変化の温度変化に伴う関係を求める。LiErFサンプルは、1.8Kの温度及び20kOeの変化磁場下で21.95J・kg-1・K-1の磁気エントロピー変化を得る。
【0047】
LiErF単結晶の熱伝導率測定を行い、総合物性測定システムの熱輸送オプションによりLiErFサンプルのC軸方向に沿った熱伝導率を測定し、サンプルの形状は、矩形である。断面積が9.3mmであり、表面積が104.37mmであり、電極間距離が1.87mmであり、放熱係数が1である4線法により測定する。測定の温度範囲が25K~300Kであり、速度が0.1K/minである降温測定を行い、その後、LiErFサンプルの熱伝導率が温度によって変化する関係を得て、かつ25Kで熱伝導率が50W・K-1・m-1に達する。
(実施例6)
【0048】
LiTmF単結晶の磁気熱量性能試験
磁気試験において、まず、メスを用いて大きなLiTmF単結晶サンプルから小さなサンプルを切り出し、電子天秤で秤量し、サンプルの質量が82.63mgである。サンプルを両面テープでプラスチックサンプル管に固定する。次に、サンプルの磁化容易方向に沿ってM-H測定を行い、1.8Kの温度でM-H曲線を測定し、2K~10Kの温度範囲内で、1KおきにM-H曲線を測定する。10K~24Kの温度範囲内で、2KおきにM-H曲線を測定する。各測定されたM-H曲線において、0~10kOeの磁場で500Oeおきに1つのデータ点を測定し、10kOe~20kOeの磁場で1000Oeおきに1つのデータ点を測定する。
【0049】
上記磁気試験により得られた異なる温度でのM-H曲線に基づいて、Maxwell方程式により、LiTmFサンプルに磁化容易方向に沿って0~10kOeと0~20kOeの変化磁場を印加した後の磁気エントロピー変化の温度変化に伴う関係を求める。LiTmFサンプルは、0~20kOeの変化磁場下で0.692J・kg-1・K-1の磁気エントロピー変化を得る。
(実施例7)
【0050】
LiYbF単結晶の磁気熱量性能試験
磁気試験において、まず、メスを用いて大きなLiYbF単結晶サンプルから小さなサンプルを切り出し、電子天秤で秤量し、サンプルの質量が4.81mgである。サンプルを両面テープでプラスチックサンプル管に固定する。次に、サンプルの磁化容易方向に沿ってM-H測定を行い、1.8Kの温度でM-H曲線を測定し、2K~10Kの温度範囲内で、1KおきにM-H曲線を測定する。10K~24Kの温度範囲内で、2KおきにM-H曲線を測定する。各測定されたM-H曲線において、0~10kOeの磁場で500Oeおきに1つのデータ点を測定し、10kOe~20kOeの磁場で1000Oeおきに1つのデータ点を測定する。
【0051】
上記磁気試験により得られた異なる温度でのM-H曲線に基づいて、Maxwell方程式により、LiYbFサンプルに磁化容易方向に沿って0~10kOeと0~20kOeの変化磁場を印加した後の磁気エントロピー変化の温度変化に伴う関係を求める。LiYbFサンプルは、0~20kOeの変化磁場下で14.7J・kg-1・K-1の磁気エントロピー変化を得る。
【0052】
以上の実施例は、当業者が本発明の内容を理解して実施することができるように、本発明の技術的思想及び特徴を説明するためのものにすぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。本発明の趣旨に基づいて成された同等の変形や改善は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【0053】
また、本明細書では、本発明の概念を不必要に混乱させないように、公知の構造及び技術の説明を省略する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】