(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】複数の無停電電力供給ユニットの周波数を調整する方法及び対応する無停電電力供給ユニット
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
H02J9/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541054
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(85)【翻訳文提出日】2024-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2022053511
(87)【国際公開番号】W WO2023151822
(87)【国際公開日】2023-08-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】プリカンティ、スリダー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルトン、サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】エリオット、ニック
【テーマコード(参考)】
5G015
【Fターム(参考)】
5G015GA02
5G015GB03
5G015JA01
5G015JA24
5G015JA52
(57)【要約】
本開示の実施形態は、複数の無停電電力供給ユニットの周波数を調整する方法及び対応する無停電電力供給ユニットに関する。前記方法は、各UPSユニットの前記制御部について、対応するUPSユニットの周波数とグリッドの周波数とに基づいて決定された予想される同期方向を、通信リンクを介して他のUPSユニットにブロードキャストすることと、上記通信リンクを介して、他のUPSユニットの予想される同期方向を取得することと、各UPSユニットの予想される同期方向に基づいて、主要な同期方向を決定することと、上記主要な同期方向に基づいて、各UPSユニットの周波数を調整することと、を含む。本開示の実施形態によれば、シンプル、堅牢且つ信頼性の高いパラレルUPS構成を実現することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ制御部を備える複数のUPSユニットの周波数を調整する方法であって、
各UPSユニットの前記制御部について、対応するUPSユニットの周波数とグリッドの周波数とに基づいて決定された予想される同期方向を、通信リンクを介して他のUPSユニットにブロードキャストすることと、
前記通信リンクを介して、他のUPSユニットの予想される同期方向を取得することと、
各UPSユニットの予想される同期方向に基づいて、主要な同期方向を決定することと、
前記主要な同期方向に基づいて、各UPSユニットの周波数を調整することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記対応するUPSユニットと前記グリッドとの間の位相角の差が、180度を中心とする範囲に含まれる角度制限帯内にあると判定したことに応じて、前記UPSユニットの周波数にドリフト周波数を適用する
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各UPSユニットの周波数を調整することは、前記UPSユニットの周波数が前記グリッドの周波数よりも高いと判定したことに応じて、前記UPSユニットの周波数を前記グリッドの周波数と同じになるまで低くすることを含む
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各UPSユニットの周波数を調整することは、前記UPSユニットの周波数が前記グリッドの周波数よりも低いと判定したことに応じて、前記UPSユニットの周波数を前記グリッドの周波数と同じになるまで高くすることを含む
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記範囲が5~15度から選択される
請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記通信リンクが通信バスである
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
負荷(200)と、前記負荷(200)に電力を供給するように設定された電源(300)との間に配置されたスイッチ(102)と、
主エネルギー貯蔵部(112)を備える電力管理モジュール(110)と、
前記電力管理モジュール(110)と前記負荷(200)との間に配置され且つそれらに結合されたインバータ(104)と、
前記電力管理モジュール(110)、前記インバータ(104)及び前記スイッチ(102)に結合された制御部(108)と、を備え、
前記制御部(108)は、
各UPSユニットの前記制御部について、対応するUPSユニットの周波数とグリッドの周波数とに基づいて決定された予想される同期方向を、通信リンクを介して他のUPSユニットにブロードキャストし、
前記通信リンクを介して、他のUPSユニットの予想される同期方向を取得し、
各UPSユニットの予想される同期方向に基づいて、主要な同期方向を決定し、
前記主要な同期方向に基づいて、各UPSユニットの周波数を調整するように設定された
無停電電力供給装置(100)。
【請求項8】
前記制御部(108)は、前記対応するUPSユニットと前記グリッドとの間の位相角の差が、180度を中心とする範囲に含まれる角度制限帯内にあると判定したことに応じて、前記UPSユニットの周波数にドリフト周波数を適用するように設定されている
請求項7に記載の無停電電力供給装置(100)。
【請求項9】
前記制御部(108)はさらに、
前記UPSユニットの周波数が前記グリッドの周波数よりも高いと判定したことに応じて、前記UPSユニットの周波数を前記グリッドの周波数と同じになるまで低くするように設定されている
請求項7に記載の無停電電力供給装置(100)。
【請求項10】
前記制御部(108)はさらに、
前記UPSユニットの周波数が前記グリッドの周波数よりも低いと判定したことに応じて、前記UPSユニットの周波数を前記グリッドの周波数と同じになるまで高くするように設定されている
請求項7に記載の無停電電力供給装置(100)。
【請求項11】
前記範囲が5~15度である
請求項8に記載の無停電電力供給装置(100)。
【請求項12】
前記通信リンクが通信バスである
請求項7に記載の無停電電力供給装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的な実施形態は、全体として無停電電力供給装置の分野に関し、より具体的には、複数の無停電電力供給ユニットの周波数を調整する方法及び対応する無停電電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無停電電力供給装置(UPS:uninterruptible power supply)は、電気設備に安定した電力供給を提供する重要な電気機器である。UPSは、主に2つのモード、即ち電力調節モード及びアイランドモード(island mode)で動作する。UPSに接続された、グリッドである入力が安定している場合、UPSは電力調節モードで動作し、UPSに接続された、負荷である出力に所望の電力を提供する。グリッドが故障した場合、UPSはアイランドモードで動作し、負荷用の電圧源として機能し、バッテリーから電力を供給する。この2つのモードは、UPSに含まれるスイッチによって切り替え可能である。スイッチが閉じたとき、UPSは電力調節モードにあり、UPSと電源との間の電力変化を調整することにより、出力電圧振幅及び周波数を制御する。電力品質イベントが発生した場合、スイッチが開き、UPSがアイランドモードに移行する。このアイランドモードでは、負荷有効電力がインバータを介してエネルギー貯蔵部から流れ、UPSは、所定の電圧振幅及び周波数で出力電圧を制御する。
【0003】
従来では、UPSは、複数のUPSユニットを含んでもよい。グリッド電圧が回復し、UPSがアイランドモードから電力調節モードに移行した場合、UPSユニット間にいくつかの不整合が生じる。例えば、各UPSユニットは、ユニットのローカル情報に基づいて、アイランドモードから電力調節モードへモードを変更するか否かについて異なる決定を行ってもよいか、又は、各UPSユニットは異なる瞬間にそれらの移行決定を行ってもよい(即ち、同期開始の時刻が異なる)。このような不整合は、問題を引き起こす可能性があり、対処される必要がある。
【0004】
したがって、UPS内の複数のUPSユニット間の同期を実現する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の例示的な実施形態は、少なくとも従来技術における問題点及び/又は潜在的な問題点に対処する解決策を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態は、それぞれ制御部を備える複数のUPSユニットの周波数を調整する方法に関し、上記方法は、各UPSユニットの上記制御部について、対応するUPSユニットの周波数とグリッドの周波数とに基づいて決定された予想される同期方向を、通信リンクを介して他のUPSユニットにブロードキャストすることと、上記通信リンクを介して、他のUPSユニットの予想される同期方向を取得することと、各UPSユニットの予想される同期方向に基づいて、主要な同期方向を決定することと、上記主要な同期方向に基づいて、各UPSユニットの周波数を調整することと、を含む。
【0007】
本開示の実施形態によれば、UPSユニット間の同期を実現することができる。
【0008】
いくつかの実施形態において、対応するUPSユニットと上記グリッドとの間の位相角の差が、180度を中心とする範囲に含まれる角度制限帯内にあると判定したことに応じて、上記UPSユニットの周波数にドリフト周波数を適用する。
【0009】
いくつかの実施形態において、各UPSユニットの周波数を調整することは、上記UPSユニットの周波数が上記グリッドの周波数よりも高いと判定したことに応じて、上記UPSユニットの周波数を上記グリッドの周波数と同じになるまで低くすることを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、各UPSユニットの周波数を調整することは、上記UPSユニットの周波数が上記グリッドの周波数よりも低いと判定したことに応じて、上記UPSユニットの周波数を上記グリッドの周波数と同じになるまで高くすることを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記範囲は5~15度から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記通信リンクは通信バスである。
【0013】
本開示の実施形態は、無停電電力供給装置に関し、上記無停電電力供給装置は、負荷と、上記負荷に電力を供給するように設定された電源との間に配置されたスイッチと、主エネルギー貯蔵部を備える電力管理モジュールと、上記電力管理モジュールと上記負荷との間に配置され且つそれらに結合されたインバータと、上記電力管理モジュール、上記インバータ及び上記スイッチに結合された制御部であって、各UPSユニットの上記制御部について、対応するUPSユニットの周波数とグリッドの周波数とに基づいて決定された予想される同期方向を、通信リンクを介して他のUPSユニットにブロードキャストし、上記通信リンクを介して、他のUPSユニットの予想される同期方向を取得し、各UPSユニットの予想される同期方向に基づいて、主要な同期方向を決定し、上記主要な同期方向に基づいて、各UPSユニットの周波数を調整するように設定された上記制御部と、を備える。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記制御部は、対応するUPSユニットと上記グリッドとの間の位相角の差が、180度を中心とする範囲に含まれる角度制限帯内にあると判定したことに応じて、上記UPSユニットの周波数にドリフト周波数を適用するように設定されている。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記制御部はさらに、上記UPSユニットの周波数が上記グリッドの周波数よりも高いと判定したことに応じて、上記UPSユニットの周波数を上記グリッドの周波数と同じになるまで低くするように設定されている。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記制御部はさらに、上記UPSユニットの周波数が上記グリッドの周波数よりも低いと判定したことに応じて、上記UPSユニットの周波数を上記グリッドの周波数と同じになるまで高くするように設定されている。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記範囲は5~15度である。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記通信リンクは通信バスである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付図面を参照して本開示の例示的な実施形態の以下の詳細な説明により、本開示の上述の及びその他の目的、特徴及び利点は、より明らかになる。図面において、本開示の複数の実施形態は実施例により非限定的に説明される。
【
図1】本開示の例示的な実施形態にかかる、無停電電力供給装置の例示的な使用シナリオを示す図である。
【
図2】本開示の例示的な実施形態にかかる、無停電電力供給装置の別の使用シナリオを示す図である。
【
図3】本開示の例示的な実施形態にかかる、複数のUPSユニットの周波数を調整する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、図に示されている様々な例示的な実施形態を参照して、本開示の原理を説明する。これらの実施形態の説明は、単に当業者が本明細書で開示される例示的な実施形態をよりよく理解し、さらに実施することを可能にするだけであり、本明細書で開示される範囲を何らかの方法で限定することを意図しないことを、理解すべきである。実現可能な場合、類似又は同一の参照符号を図面において使用することができ、類似又は同一の参照符号が類似又は同一の機能を表すことができることに注意すべきである。当業者であれば、本明細書で説明される本開示の原理を逸脱することなく、以下の説明から、本明細書で説明された構造及び方法の代替の実施形態を利用できることを容易に認識することができる。
【0021】
本明細書で使用されるように、用語「含む」及びその変型は、「含むが、これらに限定されるものではない」を意味するオープンエンド用語として理解されるべきである。用語「に基づく」は、「に少なくとも部分的に基づく」と理解されるべきである。用語「一実施形態」及び「実施形態」は、「少なくとも1つの実施形態」として理解されるべきである。用語「別の実施形態」は、「少なくとも1つの別の実施形態」として理解されるべきである。用語「第1」、「第2」などは、同一又は異なる対象を指してもよい。以下の文章はまた、他の明示的及び暗黙的な定義を含んでもよい。文脈に示されていない限り、用語の定義は説明全体において一貫している。
【0022】
図1は本開示の例示的な実施形態にかかる、無停電電力供給装置100の例示的な使用シナリオを示す。
図1に示すシナリオはハードパラレル(hard-parallel)構成と称される。実施形態にかかる無停電電力供給装置100は、インピーダンス絶縁型静止変換器タイプである中電圧無停電電力供給装置であってもよい。このタイプの無停電電力供給装置100が、本開示の範囲に対するいかなる限定も示唆することなく、一例に過ぎないことを、理解すべきである。
【0023】
図1に示すように、無停電電力供給装置100は、下流側(「負荷側」とも称される)において負荷200に接続され、上流側(「電力供給側」とも称される)において電源300に接続される。本実施形態において、電源300は、商用電圧を提供するグリッド供給装置である。電源300は、他のタイプの電源であってもよいことを、理解すべきである。負荷200と電源300とは、ケーブル又はバスバーを含む電力バス105により相互接続されている。本実施形態における電力バス105が電源300と負荷200とを相互接続するためのシステム設置の一部であってもよいが、電力バス105は、無停電電力供給装置100の一部としてみなされる。負荷200は、電力バス105に個別に接続された個別の負荷ユニットを含んでもよいことも、理解すべきである。これらの負荷ユニットはともに負荷200を形成する。
【0024】
図1に示すように、破線は、複数のUPSユニット110が無停電電力供給装置100内に含まれていることを表す。UPSユニット110は、同じであってもよい。UPSユニット110は、互いにわずかに異なっているが、ともに無停電電力供給装置100を形成してもよいことを、理解すべきである。各UPSユニット110は、通信バス(図示しない)を介して他のUPSユニット110に接続される。通信バスにより、UPSユニット110は、いくつかの情報(例えば、各UPSユニット110の周波数又は位相角)を他のUPSユニット110と共有することができる。こうして、各UPSユニット110は、他のUPSユニット110の周波数又は位相角を知ることになる。
【0025】
以下では、UPSユニット110の内部構成について説明する。
図1に示すように、UPSユニット110は、電源300と負荷200との間の電力バス105内に配置されたスイッチ102を備える。UPSユニット110は、電力管理モジュール109をさらに備える。電力管理モジュール109は、負荷200に電力を供給するためのエネルギー貯蔵部を備える。UPSユニット110は、インバータ104をさらに含んでもよい。インバータ104は、電力管理モジュール109と負荷200との間に配置され、電力管理モジュール109と負荷200とに結合されてもよい。いくつかの実施形態において、無停電電力供給装置100は、必要に応じて電圧調整を実行するように設定された複数のカップリングトランス(coupling transformer)107-1、107-2、107-3及び107-4をさらに含んでもよい。
【0026】
示された実施形態において、UPSユニット110はまた、制御部108を備える。制御部108は、UPSユニット110のパフォーマンスを制御するように設定されている。他の例示的な実施形態において、制御部108はまた、電源の電力品質イベントを監視するように設定されてもよい。制御部108は、UPSユニット110の他の構成要素から分離されている。代替の実施形態において、インバータ104は、制御部108と一体で提供されてもよい。
【0027】
図1に示すように、制御部108は、通信接続103を介して、スイッチ102、インバータ104に接続されてもよい。示された実施形態において、電力管理モジュール109はまた、通信接続103を介して制御部108に接続されている。通信接続103は、例えば、産業的に堅牢で低遅延且つ/又は長距離の通信リンクであってもよい。通信接続103は、UPSユニット110の全ての構成要素が接続される通信バスとして提供されている。代替の実施形態において、UPSユニット110の全ての構成要素が、制御部108に個別に接続される。
【0028】
全体として、複数のUPSユニット110を備える無停電電力供給装置100は、電力品質イベントが発生した場合、例えば、電源300が故障した場合、負荷200に電力を供給するように設定されている。本明細書で使用されるように、電力品質イベントは、負荷200の運転を危険にさらす可能性のある任意のイベント、特に、電圧低下、電源300の完全な故障、又は電源300の電圧擾乱(voltage disturbance)を指してもよい。本明細書に記載された無停電電力供給装置100は、説明のためのものだけであり、本主題の範囲に対するいかなる限定も示唆しないことを、理解すべきである。
【0029】
図2は本開示の例示的な実施形態にかかる、無停電電力供給装置100の別の使用シナリオを示す。
図2に示すシナリオは、ソフトパラレル(soft-parallel)構成又はリングバス(ring bus)構成と称される。
図2が共通のリングバス構成内の1つのUPSユニット110のみを示し、この構成内の複数のUPSユニットが共通のグリッド接続を共有し且つ全てリングバスポート101に接続されている点において、
図2は、
図1と異なる。
【0030】
図3は、本開示の例示的な実施形態にかかる、複数のUPSユニットの周波数を調整する方法30を示す。
【0031】
制御部108は、ブロック302において、各UPSユニット110について、通信リンクを介して、予想される同期方向を他のUPSユニットにブロードキャストするように設定されている。いくつかの例示的な実施形態において、該予想される同期方向は、順方向又は逆方向を示してもよい。該予想される同期方向は、対応するUPSユニット110の電流周波数とグリッド300の周波数との差に従って決定されてもよい。UPSユニット110の周波数がグリッド300の周波数よりも高い場合、UPSの位相は、グリッド300よりもわずかに速く回転する。UPSユニット110は、その位相をグリッド300に同期させることを望み、その位相がグリッド300の位相に遅れを取っているとみなす場合、UPSユニット110は、その位相をグリッド300に「追い付かせる」ためにその周波数を一時的に高めることができる。これは順方向(forward direction)と称される。他の例示的な実施形態において、該予想される同期方向は、正の周波数オフセット又は負の周波数オフセットを示してもよい。
【0032】
各UPSユニット110は、その予想される同期方向を他のUPSユニット110に向けてブロードキャストすることができる。制御部108は、ブロック304において、通信リンクを介して、他のUPSユニット110の予想される同期方向を得るように設定されている。
【0033】
制御部108は、ブロック306において、各UPSユニット110の予想される同期方向に基づいて、主要な同期方向を決定するように設定されている。例えば、無停電電力供給装置100が9つのUPSユニットを備え、全ての9つのUPSユニット110のうちの3つが順方向に同期することを望むが、他の6つのUPSユニット110が逆方向に同期することを望む場合、その大多数が逆方向に同期するを望むUPSユニット110ということになり、すると、逆方向が主要な同期方向として選択される。結果として、9つのUPSユニット110は全て、主要な同期方向に従って、逆方向に同期する。この場合、これらの6つのUPSユニット110は、それらの予想される同期方向を維持するが、これらの3つのUPSユニット110は、大多数のUPSユニット110との整合性を維持するために、それらの予想される同期方向を変更しなければならない。本明細書に挙げられたUPSユニット110の数は、本開示の範囲に対するいかなる限定も示唆することなく、一例に過ぎないことを、理解すべきである。
【0034】
ブロック308において、制御部108は、UPSユニット110がグリッド300の周波数に追従できるように、主要な同期方向に基づいて各UPSユニット110の周波数を調整するように設定されている。UPSユニット110の位相が既にグリッド300に追い付くと、現在同期されたことになり、UPSユニット110は、その周波数をグリッド300の位相と同じになるように設定する。こうして、UPSユニット110の位相は、グリッド300の位相と異なることはない。
【0035】
いくつかの実施形態において、制御部108が、UPSユニット110の周波数がグリッド300の周波数よりも高いと判定した場合、UPSユニット110の周波数はグリッド300の周波数と同じになるまで低くされる。制御部108が、UPSユニット110の周波数がグリッド300の周波数よりも低いと判定した場合、UPSユニット110の周波数はグリッド300の周波数と同じになるまで高くされる。
【0036】
本開示によれば、各UPSユニット110は、その予想される同期方向を共有し、全てのUPSユニット110は、大多数の同期方向に進むと決定する。これらの配置により、同期プロセス中に、共通の周波数を有するように、全てのUPSユニット110の周波数のトラッキングをグローバルに管理することができる。UPSユニット110間の電力不均衡が最小にすることができる。
【0037】
他の例示的な実施形態において、同期プロセス中に、共通の周波数を有するように、全てのUPSユニット110の位相角のトラッキングをグローバルに管理することができる。こうして、全てのUPSユニット110の位相角は、最小の循環電流でグリッド300の位相角と収束する。
【0038】
該複数のパラレルUPSユニットがグリッドから180度ずれている場合、それらを同期させることは安全ではない。これは、UPSユニットの一部が順方向に同期し、UPSユニットの一部が逆方向に同期するからである。共通の負荷バスを共有するUPSユニットが狭い領域に分散した出力電圧ベクトルを持つと仮定するのは合理的に安全であるが、リングバス構成における異なる負荷及びハードパラレル構成における誤差に起因するバリエーションが存在する。この分散は、角度同期が180度近くで実現された場合、同期を達成するために、一部のUPSユニットが時計回りの回転を選択し、他のUPSユニットが逆の回転を選択することを意味する。これが発生すると、異なるUPSユニットの出力電圧ベクトルは、再び収束する前に発散する。
【0039】
UPSユニット110がグリッドの位相から180度ずれている場合、UPSユニット110は、その周波数を低くすることによりUPSユニット110とグリッド300との角度差をゼロまで減らしてもよいか、又は、その周波数を高くすることにより角度差を0度と同じ360度まで増やしてもよい。したがって、この状況では不確実性が生じる。いくつかの実施形態において、UPSユニット110の位相とグリッド300の位相との間に約180度がある場合の曖昧さに対処するために、角度制限帯が提案されている。この角度制限帯は、180度の近くに設定される。UPSユニットがグリッドの位相から180度近く(例えば、170度)ずれて角度制限帯内に入ったと、UPSユニットの制御部が判定した場合、UPSユニットを180度のポイントから遠ざけるのを助けるために、ドリフト周波数を生成してもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、対応するUPSユニットとグリッドとの位相角の差が角度制限帯内にあると判定したことに応じて、UPSユニットの周波数にドリフト周波数を適用する。こうして、UPSユニット110の位相は180度から十分に離れ、すると、UPSユニット110は位相の増減を決定することができる。したがって、どのように同期するかが明確になり、曖昧さを引き起こすことはない。UPS 110の位相が180度から十分に離れた場合にのみ、制御部108は、どのように同期するかを決定する。
【0041】
いくつかの実施形態において、角度制限帯は、180度を中心とする範囲として選択されてもよく、このような範囲は、5~15度から選択される。別の例示的な実施形態において、この範囲は、180度を中心に10度の範囲(+170~-170度の角度を意味する)であってもよい。本明細書で記載された角度の値は一例に過ぎず、具体的な値は本開示の実施形態に限定されないことを、理解すべきである。
【0042】
無停電電力供給装置100は、スイッチ102と負荷200との間に結合され、負荷を電源の擾乱から分離することにより高調波及び電圧不均衡等の擾乱によるネガティブな影響を取り除くように設定されたシリアルリアクトル106をさらに備えてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、通信リンクは共通の通信バスであってもよい。いくつかの実施形態において、通信接続103は、光ファイバに基づく物理接続を含んでもよい。代替として、いくつの実施形態において、この物理接続は、ツイストペア接続に基づく。通信接続103は、低遅延で高速な長距離通信接続を可能にする。
【0044】
別の態様において、本開示は、対応する無停電電力供給装置100に関する。
図3を参照して説明された方法が無停電電力供給装置100の制御部108と併せて使用されてもよいことを、理解すべきである。簡潔のために、ここではこれ以上の詳細を繰り返さない。
【0045】
従来のアプローチと比較して、本開示にかかるパラレルUPSシステムにおける各UPSユニットの制御部は、他のUPSユニットの制御部と結合して、監督又はシステムレベルの制御部なしで、制御活動を調整する。本明細書で記載された方法は、パラレル構成において、特にハードパラレル構成及びリングバスパラレル構成において、実行することができる。これにより、使用範囲を拡大することができる。例えば、UPSユニット110は、より広い距離に亘ってパラレル構成で設置されることができる。
【0046】
本主題が構造的特徴及び/又は方法論的動作に特有の言語で説明されてきたが、添付の特許請求の範囲において定義された本主題は、必ずしも上記の特定の特徴又は動作に限定されないこと、を理解すべきである。むしろ、上述した特定の特徴及び動作は、特許請求の範囲を実施する例示的な形態として開示されている。
【国際調査報告】