(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】圧力媒体オーバーフローを有する作動シリンダ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/14 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
F15B15/14 340Z
F15B15/14 310
F15B15/14 380A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542928
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2024-08-27
(86)【国際出願番号】 DE2022000011
(87)【国際公開番号】W WO2023147797
(87)【国際公開日】2023-08-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178522
【氏名又は名称】ビューマッハ エンジニアリング インターナショナル ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブエター、ジョセフ
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA02
3H081AA03
3H081BB02
3H081CC29
3H081DD22
3H081EE28
(57)【要約】
本発明は、加圧媒体オーバーフローを有する作動シリンダに関し、ピストンは、シールを有する第1の内側環状溝と、シリンダ管内壁に弾性的に当接し、ピストン・リング間隙を有する、ピストン・リング・ベアリングを有する第2の内側環状溝とを備え、第1の内側環状溝内のシールは、軸方向移動の遊びを有し、シリンダ管は、シリンダ管内壁において、ピストンが第1の閉鎖部に向かう端位置にある時に凹部が第1の内側環状溝に対向して位置するように軸方向に配置された、シリンダ・チューブ内壁における凹部を有し、作動シリンダは、オーバーフロー動作状態のため、及び昇降動作状態のために設計され、オーバーフロー動作状態において、ピストンは、第1の閉鎖部に向かう端位置に位置し、シールは、加圧によって、第1の閉鎖部の方向において遠位であるその軸方向運動の遊びの遊び端位置に位置し、シールの径方向限界と凹部との間のオーバーフロー断面が、開放され、オーバーフロー流路が、開放され、昇降動作状態において、シールは、加圧によって、遠位側遊び端位置の反対側の近位側遊び端位置に位置し、オーバーフロー断面及びオーバーフロー流路は、閉鎖される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ・チューブ(1)と、第1及び第2の閉鎖部(3、4)と、内部(2)と、第1及び第2の作動室(5、6)と、第1及び第2の圧力媒体接続(7、8)と、ピストン・ユニット(9)と、を備える、圧力媒体オーバーフローを有する作動シリンダであって、
前記内部(2)が、前記シリンダ・チューブ(1)及び前記閉鎖部(3、4)によって形成され、
前記第1の圧力媒体接続(7)が、前記第1の作動室(5)に割り当てられ、前記第2の圧力媒体接続(8)が、前記第2の作動室(6)に割り当てられ、
前記ピストン・ユニット(9)が、配置されたピストン(9.1)及びピストン・ロッド(9.2)を有し、前記ピストン(9.1)が、前記内部に配置され、そこで前記第1及び前記第2の作動室(5、6)を形成し、円周状の第1の内側リング溝(10)と、前記第1の内側リング溝(10)内に配置され、前記シリンダ・チューブ(1)のシリンダ内壁(1.1)に接し、前記第1及び前記第2の作動室(5、6)を互いに分離する、シール(11)と、を有する、
圧力媒体オーバーフローを有する作動シリンダにおいて、
前記第1の内側リング溝(10)内の前記シール(11)が、軸方向運動の遊びを有し、
前記ピストン(9.1)が、円周状の第2の内側リング溝(12)と、前記第2の内側リング溝(12)内に配置され、前記シリンダ・チューブの前記内壁(1.1)に弾性的に接し、ピストン・リング間隙(13.1)を有する、ピストン・リング(13)と、を有し、
前記シリンダ・チューブ(1)が、前記シリンダ・チューブの前記内壁(1.1)において、前記第1の閉鎖部(3)における前記ピストン(9.1)の端位置において前記第1の内側リング溝(10)に対向して位置するように軸方向に配置された、凹部(14)を有し、
前記作動シリンダが、オーバーフロー動作状態のため、及びストローク動作状態のために設計され、
前記オーバーフロー動作状態において、
前記ピストン(9.1)が、前記第1の閉鎖部(3)における端位置に位置し、前記シール(11)が、前記第2の作動室(6)の加圧によって、前記第1の閉鎖部(3)の方向のその軸方向運動の遠位側遊び端位置に位置し、オーバーフロー断面(14.1)が、前記シール(11)の径方向限界と前記凹部(14)との間に開放され、オーバーフロー流路が、前記第2の圧力媒体接続(8)から、前記第2の作動室(6)を介して、前記オーバーフロー断面(14.1)及び前記ピストン・リング間隙(13.1)を介して、前記第1の作動室(5)を介して、前記第1の圧力媒体接続(7)まで開放され、
前記ストローク動作状態において、
前記シール(11)が、前記第1の作動室(5)の加圧によって、前記遠位側遊び端位置の反対側の近位側遊び端位置に位置し、前記オーバーフロー断面及び前記オーバーフロー流路が、閉鎖される
ことを特徴とする、圧力媒体オーバーフローを有する作動シリンダ。
【請求項2】
前記シリンダ・チューブ(1)が、前記シリンダ・チューブの前記内壁(1.1)において、前記第2の閉鎖部(4)における前記ピストン(9.1)の端位置において前記第1の内側リング溝(10)に対向して位置するように軸方向に配置された、更なる凹部(15)を有し、
前記作動シリンダが、更なるオーバーフロー動作状態のため、及び更なるストローク動作状態のために設計され、
前記更なるオーバーフロー動作状態において、
前記ピストン(9.1)が、前記第2の閉鎖部(4)における端位置に位置し、前記シール(11)が、前記第1の作動室(5)の加圧によって、前記第2の閉鎖部(4)の方向のその軸方向運動の遊びの遠位側遊び端位置に位置し、更なるオーバーフロー断面(15.1)が、前記シール(11)の前記径方向限界と前記更なる凹部(15)との間に開放され、更なるオーバーフロー流路が、前記第1の圧力媒体接続(7)から、前記第1の作動室(5)を介して、前記更なるオーバーフロー断面(15.1)及び前記ピストン・リング間隙(13.1)を介して、前記第2の作動室(6)を介して、前記第2の圧力媒体接続(8)まで開放され、
前記更なるストローク動作状態において、
前記シール(11)が、前記第2の作動室(6)の加圧によって、前記更なる遠位側遊び端位置の反対側の更なる近位側遊び端位置に位置し、前記更なるオーバーフロー断面(15.1)及び前記更なるオーバーフロー流路が、閉鎖される
ことを特徴とする、請求項1に記載の圧力媒体オーバーフローを有する作動シリンダ。
【請求項3】
前記ピストン・リング間隙(13.1)の断面が、前記オーバーフロー断面(14.1)又は前記更なるオーバーフロー断面(15.1)より小さい
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の圧力媒体オーバーフローを有する作動シリンダ。
【請求項4】
前記凹部(14)又は前記更なる凹部(15)が、冷間成形された型押し部分として設計される
ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の圧力媒体オーバーフローを有する作動シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくはピストンの両端位置において、作動室間での圧力媒体オーバーフローを有する、複動式油圧作動シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
現況技術によると、ピストンの一方又は双方の端位置において作動シリンダ内での圧力媒体のオーバーフローを容認する解決策が知られている。これらの解決策は、例えば漏れ流損失を補償するため、又は圧力均等化をもたらすために、マスタ-スレーブ・システム又は油圧アキュムレータを有するシステムなどの特定の用途において、一方の圧力室から他方の圧力室へと圧力媒体を移送するという要求に基づく。
【0003】
例えば、作動シリンダのピストン内に配置され、タペットを含むばね付勢弁体を装備した弁システムが、従来技術において知られている。ピストンのストローク位置において、弁体は、作動されず閉鎖される。ピストンが端位置に到達すると、シリンダ・チューブの閉鎖部の内側と圧接し弁体を作動させるタペットによって、対応する弁が開放され、圧力媒体が加圧された作動室から他方の作動室へと流入することができるようになる。
【0004】
公報DE3013381C2は、そのような解決策の1つを記載する。この開示では、タペットによって作動される2つの弁が、作動ピストン内に配置され、各々が、シリンダ・チューブの閉鎖部におけるピストンのそれぞれの端止めが動作される直前に開放され、部品への損傷を防ぐために、開放して作動室を逆流接続と接続する。
【0005】
DE8324442U1は、油圧アキュムレータを伴う圧力均等化のため、ピストン内への逆止弁、ピストン内の内部接続ライン、及び複動式ピストン-シリンダ・ユニットのピストン・ロッドの配置を記載する。作動シリンダの主接続を介した圧力媒体によって圧力が加えられる時、油圧アキュムレータ充填、及び、ピストン室とピストン・ロッド室の間の圧力媒体損失均等化が、ピストンの後退端位置において起こる。
【0006】
公報DE1279908Aでは、ピストンの両側から突出する弁軸を有する複動式油圧昇降シリンダが、開示されている。ピストンのそれぞれの端位置に到達した時に、作動室間の2段階の圧力均等化が達成されるように、弁軸は、異なる長さを有する。
【0007】
公報DE2245129Aにおいて、作動シリンダのピストン内へのタペット制御弁の更なる配置が、開示される。ピストンの端位置付近において、閉鎖部の内壁と接触した対応するタペットが、弁を開放し、圧力媒体のオーバーフローによって圧力均等化が起こるように、作動シリンダの両方の作動室が、互いに接続される。
【0008】
公報DE102005008070A1の主題は、そのピストンが作動室間の圧力均等化のための弁配置を有する、油圧シリンダである。弁はまた、ピストンの端位置付近において、タペットの支援によって、油圧シリンダの作動室間で圧力媒体がオーバーフローすることができるように、開放される。
【0009】
上述の全ての作動シリンダのピストン内への弁配置は、作動室間の接続が確立され、圧力均等化のために圧力媒体がオーバーフローすることを許容されるように、ピストンがそれぞれの端位置に到達する直前に、ばね付勢弁体をその座から持ち上げるためにタペットを使用する、対称的に設計された弁配置を有する。
【0010】
設計関連の複雑さ及び圧力媒体のオーバーフローのための相対的に小さな断面、並びにピストン内の空間条件による弁部品のために利用可能な設置空間が、記載される解決策の用途のあり得る範囲を制限する。
【0011】
公報EP3610160B1は、Bumach Engineering International B.V.によって考案され、オーバーフロー断面の正確な調整を可能とする複動式オーバーフロー弁を設けられる、新たな解決策を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】DE3013381C2
【特許文献2】DE8324442U1
【特許文献3】DE1279908A
【特許文献4】DE2245129A
【特許文献5】DE102005008070A1
【特許文献6】EP3610160B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、画定可能な位置における、特にピストンの端位置における、複動式油圧作動シリンダの作動室間での画定可能な圧力媒体オーバーフローを許容し、高い動作信頼性及び低摩耗を特徴とする構造に関する有利な解決策を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
課題は、請求項1に記載される特徴によって解決される。好ましい実施の形態が、下位請求項から生じる。
【0015】
本発明による圧力媒体オーバーフローを有する作動シリンダは、シリンダ・チューブと、第1及び第2の閉鎖部と、内部と、第1及び第2の作動室と、第1及び第2の圧力媒体接続と、ピストン・ユニットとを有する。
【0016】
圧力流によって駆動され、ピストン・ユニットの直線運動をもたらすのが、作動シリンダである。好ましくは、作動シリンダは、油圧シリンダとして設計される。特に、差動作動シリンダであってもよいが、同期シリンダ又は別の設計のシリンダであってもよい。
【0017】
作動シリンダの内部は、シリンダ・チューブ及び2つの閉鎖部によって形成される。動作状態により、圧力媒体が、2つの圧力媒体接続を介してシリンダに出入りするように誘導される。第1の圧力媒体接続は、第1の作動室に割り当てられ、第2の圧力媒体接続は、第2の作動室に割り当てられる。圧力媒体接続は、特に油圧ホース又は油圧ラインのために、外部接続の選択肢を与える。
【0018】
ピストン・ユニットは、はめ合い又は圧入方式で長手軸において互いに接続されるピストン及びピストン・ロッドからなる。ピストン・ユニットは、モノリシック設計を有してもよい。ピストンは、内部に配置され、シリンダの長手軸に沿って運動する。長手軸は、内部を、第1の作動室と第2の作動室に分割する。ピストン・ユニットのピストン・ロッドは、ガイド閉鎖部として設計された閉鎖部を通過し、内部の外にある部品への力伝達の可能性を与える。
【0019】
ピストンは、シリンダ・チューブの内側面に対する摺動面であるピストンの外側面において、円周状の第1の内側リング(環状)溝を有する。この第1の内側リング溝内に配置され、シリンダ・チューブの内側シリンダ壁に接するシールが、第1の作動室を第2の作動室から分離し、それらを互いに対して封止する。
【0020】
ピストン・ユニットは、交互の流れ、及び作動室に出入りする圧力媒体の流れの結果として、ストローク運動を行い、シールはまた、ストローク運動の間、シリンダ・チューブの内壁に対して摺動することによって、作動室が分離された状態を維持する。
【0021】
本発明によると、圧力媒体オーバーフローを有する作動シリンダは、特に以下に記載される特徴によって特徴付けられる。
【0022】
本発明によると、第1の内側リング溝内のシールは、軸方向運動の遊びを有する。これは、溝の幅によって画定される、第1の内側リング溝内の異なる軸方向位置をとることができるということを意味する。
【0023】
更に、ピストンは、円周状の第2の内側リング溝と、その中に配置されたピストン・リングと、を有する。ピストン・リングは、シリンダ・チューブの内壁に弾性的に接する。本発明によると、ピストン・リングは、ピストン・リング間隙を有し、ピストン・リング間隙が開口断面を形成するようになっている。
【0024】
本発明によると、シリンダ・チューブはまた、シリンダ・チューブの内壁において、第1の閉鎖部におけるピストンの端位置において第1の内側リング溝に対向して位置するように軸方向に配置された、凹部を有する。好ましくは、凹部は、深さの浅い単純な穿孔であってもよい。キー溝、半円溝、螺旋溝、又は他の凹んだ外形などの他の設計も可能である。凹部は、第1の内側リング溝が凹部と正確に対向して位置する時に、シールの軸方向位置により、ひいては運動の遊びにより、以降オーバーフロー断面と呼ばれる圧力媒体のための開口断面をもたらすように、常に設計され、位置付けられる。
【0025】
更に、作動シリンダは、オーバーフロー動作状態のために及びストローク動作状態のために設計される。
【0026】
オーバーフロー動作状態において、ピストンは、第1の閉鎖部における端位置に軸方向に位置する。オーバーフロー動作状態において、これは、第2の作動室によって作動されるストロークのストローク端位置である。
【0027】
オーバーフロー動作状態において、シールは、第2の作動室の加圧によって、第1の閉鎖部の方向のその軸方向運動の遊びの端位置に位置する。結果として、オーバーフロー断面が、シールの径方向限界と凹部との間に開放されるように作り出される。更に、オーバーフロー流路が、第2の圧力媒体接続から、第2の作動室を介して、オーバーフロー断面及びピストン・リング間隙を介して、第1の作動室に沿って、第1の圧力媒体接続まで形成される。本発明は、オーバーフロー流路内の圧力媒体が最初にオーバーフロー断面を通じて流れ、その後ピストン・リング間隙を通じて流れるか、その逆かに関わらず、オーバーフロー断面とピストン・リング間隙の任意の順次配置を包含する。
【0028】
本発明の本質的特徴によると、ピストン・リング間隙が、オーバーフロー断面における圧力媒体のための絞り断面を形成し、したがって、オーバーフロー断面においてシールを解放する。
【0029】
ストローク動作状態において、ピストンは、ストローク端位置から外れている。ストローク動作状態において、圧力が、第1の作動室に加えられる。シールは、第1の作動室の加圧によって、遠位側遊び端位置の反対側の近位側遊び端位置に位置する。オーバーフロー断面が、したがってオーバーフロー流路が、閉鎖される。結果として、ストローク開始位置において既に完全な封止が達成されており、圧力流の損失なく、ストローク開始位置から外れる運動が可能とされる。
【0030】
ピストンのストローク端位置における圧力媒体のオーバーフローにより、ピストン・リングの画定されたリング間隙と合わせて、制限された圧力媒体オーバーフローが、もたらされる。
【0031】
この利点は、端位置に到達する時に、システム全体が解放されるように、油圧システム全体の圧力が急激に最大油圧まで増加しないということである。
【0032】
別の利点は、オーバーフロー断面における流れの条件が、続いて絞りとして働くピストン・リング間隙によって解放されるという事実によって与えられる。第1に、オーバーフロー断面の壁の一部を形成する比較的繊細なシールが、オーバーフロー断面自体が絞り効果をもたらさなければならない場合よりも有意に少ない摩耗しか受けないように、直接保護される。第2に、圧力媒体がオーバーフロー断面をオーバーフローする時に、圧力媒体の圧力変動及び剪断応力が、減少される。
【0033】
この設計は、現況技術においては引き起こされる可能性がある、ディーゼル効果を回避するという具体的な利点を有する。ディーゼル効果が起こると、泡において形成された空気と油のエアゾールが、高圧ピークによって圧縮され、しばしば、圧力媒体内のキャビテーションと相互作用し、泡内の油粒子が自己着火し、過熱によって燃焼する。悪影響としては、圧力媒体の早期劣化とは別に、油圧システム自体への損傷の可能性が含まれる。
【0034】
本発明では、圧力媒体の圧力を解放するオーバーフロー可能性のおかげで、このような効果が、排除される。更に、それを通じて圧力媒体が流れる、全てのシステム部品の摩耗が、最小化される。
【0035】
有利には、同じサイズのいくつかの並列作動シリンダからなる配置に対しても、全てのシリンダが、端位置に到達するということを保証することができる。減衰、摩擦、製造公差、又は他の外乱影響によって引き起こされる、並列に接続された作動シリンダの運動のわずかに減少された速度を、オーバーフローによって補償することができ、全てのシリンダが、端位置に到達する。
【0036】
更に、本発明による圧力媒体オーバーフローを有する作動シリンダは、マスタ-スレーブ構成におけるマスタ・シリンダとして使用することもでき、それによって、マスタ・シリンダ及びスレーブ・シリンダの正常動作を確実にすることができる。
【0037】
請求項1による圧力媒体オーバーフローを有する作動シリンダの有利な更なる開発によると、この作動シリンダは、シリンダ・チューブが、シリンダ・チューブの内壁において、更なる凹部を有するということを特徴とする。この凹部は、第2の閉鎖部における凹部がピストンの端位置において第1の内側リング溝に対向して位置するように、軸方向に配置される。したがって、作動シリンダは、更なるオーバーフロー動作状態のため、及び更なるストローク動作状態のために設計される。更なるオーバーフロー動作状態において、ピストンは、第2の閉鎖部における端位置に位置する。シールは、第1の作動室の加圧によって、第2の閉鎖部の方向において遠位であるその軸方向運動の遊びの遊び端位置に位置する。更なるオーバーフロー断面が、シールの径方向限界と更なる凹部との間に開放される。この結果として、更なるオーバーフロー流路が、第1の圧力媒体接続から、第1の作動室を介して、更に更なるオーバーフロー断面及びピストン・リング間隙を介して、第2の作動室を介して、第2の圧力媒体接続まで開放される。
【0038】
更なるストローク動作状態において、シールは、第2の作動室の加圧によって、更なる遠位側遊び端位置の反対側の更なる近位側遊び端位置に位置する。このプロセスでは、更なるオーバーフロー断面及び更なるオーバーフロー流路が、閉鎖される。
【0039】
本出願において、遠位及び近位という位置表示は、動作状態に依存して使用される。遠位という用語は、それぞれの端位置から見て軸方向外側の方向を指す。
【0040】
この更なる開発によると、作動シリンダは、対向する端位置におけるシリンダ・チューブの内壁における更なる凹部により、両端位置におけるオーバーフローを可能とするという利点を有する。対応するように、オーバーフロー動作状態に関する記載内容は、更なるオーバーフロー動作状態に当てはまり、ストローク動作状態に関する記載内容は、更なるストローク動作状態に当てはまる。
【0041】
このように、請求項1に明記される圧力媒体のオーバーフローの利点を、前進及び後退ピストン位置両方において利用することができる。したがって特に、いくつかの並列シリンダ又はマスタ-スレーブ構成のシリンダの並列前進及び後退が、全てのシリンダの端位置に到達するまで保証される。
【0042】
前の請求項の内の1つによる圧力媒体オーバーフローを有する作動シリンダの別の有利な更なる開発によると、これは、ピストン・リング間隙の断面が、オーバーフロー断面又は更なるオーバーフロー断面より小さいということを特徴とする。
【0043】
したがって、圧力媒体の圧力によって生じる使用中のシールにかかる負荷が、最小化され得る。シールをオーバーフローする時に、圧力媒体はわずかに剪断されるのみであるため、ピストン・リングの画定されたリング間隙によって達成される圧力制限が、シールを解放する。低剪断により、シールを越えて流れる時の摩擦及び温度変化が、最小化される。これはひいては、シールの寿命の増加につながり、一貫したオーバーフロー挙動を保証する。シールは丈夫な部品であるため、ピストン・リングのピストン・リング間隙における絞り効果によってより高い負荷があっても、無害である。有利には、流量が、ピストン・リング間隙によって、非常に正確で構造的に単純な方式で調整され得る。
【0044】
特に、切換弁のために要求される低流量を提供することができる。この低流量は、油圧で作動される切換弁のための切換プロセスを動作させるために必要であり得る。このように、弁の信頼性のある切換プロセスが、制御された圧力媒体オーバーフローのおかげで確実にされる。
【0045】
前の請求項の内の1つによる圧力媒体オーバーフローを有する作動シリンダの別の有利な更なる開発によると、これは、凹部又は更なる凹部が、冷間成形された型押し部分として設計されるということを特徴とする。
【0046】
生産中のシリンダ・チューブの加工の労力を最適化し、より費用効率をよくするために、凹部は、冷間成形された型押しとして設けられてもよい。またこの解決策は、動作中にシールに対する損傷を引き起こす可能性がある切りくず又は生産バリがシリンダ・チューブ内に残らないという利点も有する。更に、この更なる開発により、シールの寿命が、増加する。凹部における減少された断面における材料構造の追加の圧縮で、シリンダ・チューブの一定の強度を維持することができる。有利には、対応してより薄いシリンダ・チューブの外面又は外皮を使用することができる。この更なる開発によると、有利には、そうでなければ加工された凹部による弱化のために与える必要がある一切の許容差を省略することができる。
【0047】
本発明は、添付の図面により、例示的な実施の形態としてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】圧力媒体オーバーフローを有する作動シリンダの概略断面図である。
【
図3】オーバーフロー動作状態、詳細A.1における詳細図としての概略断面図である。
【
図4】ストローク動作状態、詳細A.2における詳細図としての概略断面図である。
【
図5】更なるオーバーフロー動作状態、詳細B.1における詳細図としての概略断面図である。
【
図6】更なるストローク動作状態、詳細B.2における詳細図としての概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
ここで、様々な図における同じ参照番号は、同じ特徴又は構成要素を指す。また参照番号は、それらが関連する図において示されない場合の説明においても使用される。
【0050】
図1は、圧力媒体オーバーフローを有する例示的な作動シリンダを、概略断面図において示す。本例示的な実施の形態は、オーバーフローが両端位置において可能である作動シリンダの有利な更なる開発である。
【0051】
作動シリンダは、両側における2つの閉鎖部3、4によって軸方向に制限されて内部2を形成する、シリンダ・チューブ1を有して示される。例示的な実施の形態では、第1の閉鎖部3は、基部閉鎖部として設計され、第2の閉鎖部4は、ガイド閉鎖部として設計される。
【0052】
ピストン・ユニット9は、ピストン・ロッド9.2及びピストン9.1からなる。ピストン9.1は、内部2を直線運動することができるように支持される。ピストン9.1は、作動シリンダの内部2を、ストローク方向によって圧力媒体が流入する又は排出される2つの作動室5、6へと分割する。2つの作動室5、6は、シール11により互いに分離される。圧力媒体は、作動室5、6に割り当てられた対応する圧力媒体接続7、8を通じて、それぞれの作動室5、6に流入又は流出する。第1の圧力媒体接続7は、この場合にはピストン室である第1の作動室5に割り当てられ、第2の圧力媒体接続8は、この場合にはピストン・ロッド室である第2の作動室に割り当てられる。
【0053】
シール11は、ピストン9.1の第1の内側リング溝10内に配置され、ここではエラストマーから作られたOリングとして設計される。シール11が軸方向に可動であるように、第1の内側リング溝10の軸方向幅は、シール11の幅より大きい。
【0054】
更に、ピストン9.1は、第2の内側リング溝12を有する。ピストン・リング13が、この溝内に搭載される。ピストン・リング13は、圧力媒体のためのオーバーフローの可能性を与えるピストン・リング間隙13.1を有する。
【0055】
第1の閉鎖部3に面するシリンダ・チューブ1の端部分において、凹部14が、シリンダ・チューブの内壁1.1に配置される。他の凹部15が、第2の閉鎖部4に割り当てられるシリンダ・チューブの反対側の端位置に設けられる。ピストン9.1の運動の方向によって、シール11が凹部14又は更なる凹部15に対向して位置することで、ストロークの端において圧力媒体のためのオーバーフローの可能性を与える。
【0056】
図2は、作動シリンダの様々な動作状態を、概要イメージシーケンスにおいて示す。A及びBと標識された拡大部分の割り当てが、同時に示されている。
【0057】
ピストンが端位置へと動かされた時、シール11は、シリンダ・チューブの内壁1.1の凹部14、15を越えて動く。結果として、圧力媒体は、凹部14、15を介して2つの作動室5、6間で流れる機会を与えられる。作動シリンダのストローク運動が逆転されるように圧力媒体の流入方向が変化する場合、シール11は、第1の内側リング溝10内で再配置される。結果として、シール11の外側径方向限界は、再び円周のようにシリンダ・チューブの内壁1.1に接し、作動室5、6は、再び互いに対して封止される。ピストン9.1のストローク運動は、圧力媒体オーバーフローなしに、次の端位置まで続けられる。
【0058】
このプロセスは、ピストン9.1の一部分と、ピストン・リング13の領域におけるシリンダ・チューブの内壁1.1と、それぞれの凹部14、15の上のシール11の概略断面図において、
図3~
図6によって詳細に図示される。
図3及び
図4は、第1の閉鎖部3におけるストローク端位置を参照し、
図5及び
図6は、第2の閉鎖部4における更なるストローク端位置を参照する。
図3及び
図5は、2つのオーバーフロー動作状態を示す。
図4及び
図6は、2つのストローク動作状態を、それぞれの開始において示す。
【0059】
図3は、詳細A.1のオーバーフロー動作状態における作動シリンダを示す。ピストン9.1は、第1の閉鎖部3における端位置にある。シール11は、第1の内側リング溝10内で軸方向に可動であるように支持される。第2の作動室6内の余剰圧力により、シール11は、遠位端位置にある第1の閉鎖部3の方向の第1の内側リング溝10の遠位側壁に接する。
図3~
図6では、余剰圧力は、第1の内側リング溝10の自由運動空間内の3本の平行な矢印によって図示される。
【0060】
圧力媒体は、ピストン・リング13のピストン・リング間隙13.1を介して第1の作動室5に流入することができ、続いて、シール11と凹部14との間に径方向に形成されたオーバーフロー断面14.1を介して流れることができる。これが、オーバーフロー流路を表す。圧力媒体は、ピストン・リング間隙13.1の画定された断面によって絞られ、シール11は、解放される。
【0061】
図4は、詳細A.2のストローク動作状態を示す。ここで、ストローク動作状態は、その開始にある。ピストン9.1は、まだ第1の閉鎖部3における端位置にある。圧力媒体は、第1の圧力媒体接続7を通じて第1の作動室5に流入する。余剰圧力が、シール11を軸方向に第2の閉鎖部4の方向に動かし、第1の内側リング溝10の近位側壁に対して押す。結果として、シール11の外側径方向限界は、もはや凹部14に対向するように軸方向に直接位置せず、再び少なくとも部分的にシリンダ・チューブの内壁1.1に接する。したがって、2つの作動室5、6は、再び封止するように互いに分離され、ストロークは、オーバーフローなしに行われ得る。
【0062】
図5は、詳細B.1の更なるオーバーフロー動作状態における作動シリンダを示す。ピストン9.1は、第2の閉鎖部4における端位置にある。第1の作動室5内の余剰圧力により、シール11は、遠位側遊び端位置において、第2の閉鎖部4の方向の第1の内側リング溝10の遠位側壁に接する。シールは、外側径方向限界がもはやそこで円周のようにシリンダ内壁に到達しないように、軸方向に更なる凹部15に対向し、更なるオーバーフロー断面15.1が、形成される。
【0063】
圧力媒体は、シール11と更なる凹部15との間に径方向に形成された更なるオーバーフロー断面15.1を介して、続いてピストン・リング13のピストン・リング間隙13.1を介して、第1の作動室5から第2の作動室6へと流入することができる。これが、更なるオーバーフロー流路を表す。この逆オーバーフロー方向でも、圧力媒体は、ピストン・リング間隙13.1の画定された断面によって絞られ、シール11は、解放される。
【0064】
図6は、詳細B.2の更なるストローク動作状態を示す。ここで、更なるストローク動作状態は、その開始にある。ピストン9.1は、まだ第2の閉鎖部4における端位置にある。圧力媒体は、第2の圧力媒体接続8を通じて第1の作動室6へと流入する。余剰圧力により、シール11は、軸方向に第1の閉鎖部3の方向に動かされ、第1の内側リング溝10の近位側壁に対して押される。結果として、シール11の外側径方向限界は、もはや更なる凹部15に対向するように軸方向に直接接さず、再び少なくとも部分的にシリンダ・チューブの内壁1.1に接する。結果として、2つの作動室5、6は、再び封止するように互いに分離され、ストロークは、オーバーフローなしに実行され得る。
【符号の説明】
【0065】
1 シリンダ・チューブ
1.1 シリンダ・チューブの内壁
2 内部
3 第1の閉鎖部
4 第2の閉鎖部
5 第1の作動室
6 第2の作動室
7 第1の圧力媒体接続
8 第2の圧力媒体接続
9 ピストン・ユニット
9.1 ピストン
9.2 ピストン・ロッド
10 第1の内側リング溝
11 シール
12 第2の内側リング溝
13 ピストン・リング
13.1 ピストン・リング間隙
14 凹部
14.1 オーバーフロー断面
15 更なる凹部
15.1 更なるオーバーフロー断面
【国際調査報告】