(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】外科手術ロボットアームの制御
(51)【国際特許分類】
A61B 34/30 20160101AFI20250130BHJP
【FI】
A61B34/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543348
(86)(22)【出願日】2023-12-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 GB2023053285
(87)【国際公開番号】W WO2024134170
(87)【国際公開日】2024-06-27
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516263638
【氏名又は名称】シーエムアール サージカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CMR SURGICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,デイビッド クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート,グレゴリー ビンセント
(72)【発明者】
【氏名】タッカー,エドワード ジェイムズ ワイルディン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジョナサン マン チウ
(72)【発明者】
【氏名】ティル,ジョン ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C130
【Fターム(参考)】
4C130AA02
4C130AA04
4C130AA24
4C130AD08
4C130AD09
4C130BA14
4C130CA02
4C130CA03
(57)【要約】
外科手術ロボットアームの運動を制御するための制御ユニットであって、制御ユニットが、外科手術ロボットアームを制御するための外科医入力デバイスから入力信号を受信し、かつ外科手術ロボットアームに出力信号を送信して、外科手術ロボットアームの運動を引き起こすように構成されており、制御ユニットが、外科手術ロボットアームに対する衝突を検出し、衝突を検出することに応答して、外科手術ロボットアームの運動に対して制限を課し、外科手術ロボットアームを制御するための外科医入力デバイスから入力信号を受信し、かつ制限に従って外科手術ロボットアームの運動を制御するように、外科手術ロボットアームに出力信号を送信するように更に構成されている、制御ユニット。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術ロボットアームの運動を制御するための制御ユニットであって、前記制御ユニットが、前記外科手術ロボットアームを制御するための外科医入力デバイスから入力信号を受信し、かつ前記外科手術ロボットアームに出力信号を送信して、前記外科手術ロボットアームの運動を引き起こすように構成されており、前記制御ユニットが、
前記外科手術ロボットアームに対する衝突を検出し、
前記衝突を検出することに応答して、前記外科手術ロボットアームの前記運動に対して制限を課し、かつ
前記外科手術ロボットアームを制御するための前記外科医入力デバイスから入力信号を受信し、かつ前記制限に従って前記外科手術ロボットアームの運動を制御するように、前記外科手術ロボットアームに出力信号を送信するように更に構成されている、制御ユニット。
【請求項2】
前記外科手術ロボットアームが、基部と末端アームセグメントとの間に延在する、複数の従動ジョイントによって連結された複数のアームセグメントを備え、
前記外科手術ロボットアームの前記末端セグメントが、器具に連結するように構成されている、請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項3】
前記外科手術ロボットアームが、基部と末端アームセグメントとの間に延在する、複数の従動ジョイントによって連結された複数のアームセグメントを備え、前記制限が、前記末端アームセグメントの運動の速度の最大値までの規制を含み、前記最大値が、ゼロよりも大きい、請求項1又は2に記載の制御ユニット。
【請求項4】
前記外科手術ロボットアームに関して検出される前記衝突が、前記外科手術ロボットアーム上の衝突、又は前記外科手術ロボットアームに連結された器具上の衝突である、請求項2又は3に記載の制御ユニット。
【請求項5】
前記器具が、外科手術機器又は内視鏡である、請求項2又は請求項2に従属する場合の請求項3若しくは4に記載の制御ユニット。
【請求項6】
前記外科手術ロボットアームに対する衝突を検出することが、
前記複数のジョイントの各々におけるトルクを表すトルク値を決定し、決定された前記トルク値に基づいてパラメータを決定し、かつ前記パラメータが第1のトルク閾値を超えていると決定すること、並びに
前記外科手術ロボットアームの一部又は前記外科手術ロボットアームに連結された前記器具の一部の位置誤差を決定し、かつ決定された前記位置誤差が第1の位置誤差閾値を超えていると決定すること、のうちの一方又は両方を含む、請求項2又は請求項2に従属する場合の請求項3~5のいずれか一項に記載の制御ユニット。
【請求項7】
前記制御ユニットが、前記外科手術ロボットアームに対する検出された前記衝突が重度の衝突であるかどうかを決定するように更に構成されており、前記検出された衝突が重度の衝突であるかどうかを決定することが、
決定された前記パラメータが第2のトルク閾値を超えている及び/又は前記決定された位置誤差が第2の位置誤差閾値を超えていると決定することを含み、
前記第2のトルク閾値が、前記第1のトルク閾値よりも大きく、前記第2の位置誤差閾値が、前記第1の位置誤差閾値よりも大きい、請求項6に記載の制御ユニット。
【請求項8】
前記制御ユニットが、前記検出された衝突が重度の衝突であると決定することに応答して、第1の持続期間の間、前記外科手術ロボットアームの前記運動に対して第1の制限を課すように構成されており、前記第1の制限が、末端アームセグメントの前記運動の速度の完全な規制であり、
前記制御ユニットが、前記第1の持続期間後の第2の持続期間の間、前記外科手術ロボットアームの前記運動に対して第2の制限を課すように更に構成されており、前記第2の制限が、前記末端アームセグメントの前記運動の速度の最大値までの規制であり、前記最大値が、ゼロよりも大きい、請求項7に記載の制御ユニット。
【請求項9】
前記第2の持続期間が、2秒である、請求項8に記載の制御ユニット。
【請求項10】
前記制限が、前記外科手術ロボットアームの前記運動の速度の規制、及び前記外科手術ロボットアームの運動の方向の規制のうちの一方又は両方を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の制御ユニット。
【請求項11】
前記外科手術ロボットアームの前記運動の速度の前記規制が、前記末端アームセグメントの運動を一時停止するように、前記末端アームセグメントの前記運動の速度の完全な規制を含む、請求項2に従属する場合の請求項10に記載の制御ユニット。
【請求項12】
前記制御ユニットが、0.75秒間、前記末端アームセグメントの前記運動の速度に対して前記完全な規制を課すように構成されている、請求項11に記載の制御ユニット。
【請求項13】
前記外科手術ロボットアームの前記運動の速度の前記規制が、前記末端アームセグメントの前記運動の速度の最大値までの規制であり、前記最大値が、ゼロよりも大きい、請求項2に従属する場合の請求項10に記載の制御ユニット。
【請求項14】
前記制御ユニットが、前記衝突が前記外科手術ロボットアームの特定のジョイントの運動又は前記器具の運動に影響を与えるかどうかを決定するように更に構成されており、前記衝突が前記外科手術ロボットアームの前記特定のジョイントの前記運動又は前記器具の前記運動に影響を与えるかどうかを決定することが、
前記特定のジョイントでの力を決定し、かつ決定された前記力が力閾値を超えていると決定すること、並びに
前記器具の遠位端の位置誤差を決定し、かつ決定された前記位置誤差が器具位置誤差閾値を超えていると決定すること、のうちの一方又は両方を含む、請求項2又は請求項2に従属する場合の請求項3~13のいずれか一項に記載の制御ユニット。
【請求項15】
前記制御ユニットが、前記衝突が前記外科手術ロボットアームの前記特定のジョイントの前記運動又は前記器具の前記運動に影響を与えると決定することに応答して、前記衝突に関連付けられたベクトルを決定するように構成されている、請求項14に記載の制御ユニット。
【請求項16】
前記衝突に関連付けられた前記ベクトルが、方向及び先端を有し、前記ベクトルの前記方向が、前記外科手術ロボットアーム又は器具上に加わる前記衝突の方向を表し、前記ベクトルの前記先端が、前記衝突が加わる前記外科手術ロボットアーム又は器具上の点を表す、請求項15に記載の制御ユニット。
【請求項17】
前記衝突が加わる前記外科手術ロボットアーム又は器具上の前記点が、前記特定のジョイント、前記末端アームセグメント、前記特定のジョイントに連結されたアームセグメント、又は前記器具上の点である、請求項16に記載の制御ユニット。
【請求項18】
前記制限が、仮想円錐内及び前記仮想円錐の頂点から離れる方向に運動するための、前記外科手術ロボットアーム又は器具上の前記点の前記運動の方向の規制であり、前記仮想円錐の前記頂点が、前記衝突が加わる前記外科手術ロボットアーム又は器具上の前記点に位置し、前記仮想円錐の中心軸が、前記衝突に関連付けられた前記ベクトルと同一直線上にある、請求項16又は17に記載の制御ユニット。
【請求項19】
前記仮想円錐の頂角が、40~100度の範囲内である、請求項18に記載の制御ユニット。
【請求項20】
前記複数の従動ジョイントが、ロールジョイントではない、前記従動ジョイントのうちの最も遠位にある手首ジョイントを含み、
前記複数の従動ジョイントのうちの前記特定のジョイントが、前記手首ジョイントである、請求項14~19のいずれか一項に記載の制御ユニット。
【請求項21】
前記手首ジョイントに対する前記力閾値が、35Nであり、前記器具位置誤差閾値が、15mmである、請求項20に記載の制御ユニット。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の制御ユニットと、外科手術ロボットアームと、を備える、外科手術システム。
【請求項23】
前記外科手術ロボットアームが、内視鏡に連結された末端アームセグメントを備える、請求項22に記載の外科手術システム。
【請求項24】
前記システムが、1つ以上の更なる外科手術ロボットアームを備え、前記制御ユニットが、
前記1つ以上の更なる外科手術ロボットアームの各々について、前記外科手術ロボットアームを制御するための前記外科医入力デバイスから入力信号を受信し、前記外科手術ロボットアームに出力信号を送信して前記外科手術ロボットアームの運動を引き起こし、かつ
前記衝突を検出することに応答して、前記1つ以上の更なる外科手術ロボットアームの各々の前記運動に対して制限を課すように構成されており、前記制限が、前記1つ以上の更なる外科手術ロボットアームのうちのその1つの前記末端アームセグメントの運動を一時停止するように、前記1つ以上の更なる外科手術ロボットアームのうちのその1つの前記末端アームセグメントの運動の速度の完全な規制を含む、請求項23に記載の外科手術システム。
【請求項25】
外科手術ロボットアームの運動を制御するための方法であって、前記方法が、
前記外科手術ロボットアームに対する衝突を検出することと、
前記衝突を検出することに応答して、前記ロボットアームの前記運動に対して制限を課すことと、
前記外科手術ロボットアームを制御するための外科医入力デバイスから入力信号を受信すること、及び前記制限に従って、前記外科手術ロボットアームの運動を制御するように、前記外科手術ロボットアームに出力信号を送信することと、を含む、方法。
【請求項26】
非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、コンピュータシステムで実行されたときに、前記コンピュータシステムに請求項25に記載の方法を実施させるコンピュータ可読命令を前記非一時的コンピュータ可読記憶媒体上に記憶している、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
外科手術を補助及び実施するためにロボットを使用することが知られている。
図1は、基部101を備え、器具103に取り付けられた外科手術ロボットアーム102を示している。基部は、外科手術ロボットアームの架台を支持し、それ自体が、例えば、手術室の床、手術室の天井、又はトロリに堅固に取り付けられている。アームは、基部101と末端アームセグメント105tとの間に延在する、複数の従動ジョイント104によって連結された複数のアームセグメント105を更に備える。外科手術ロボットアーム102は、アームセグメント間の複数の従動ジョイント104によって関節接合されており、複数の従動ジョイント104は、患者に対して器具103を所望の場所及び向きに位置決めするために使用される。従動ジョイント104は、肘104e及び手首104wを含む。
図1に見られるように、ロールジョイント104rは、末端アームセグメント105tを手首ジョイント104wから分離する。したがって、手首ジョイント104wは、ロールジョイントではないアームにおける最遠位ジョイントである。
【0002】
器具103は、ロボットアームの末端アームセグメント105tの遠位端に取り付けられている。動作中、器具は外科手術部位にアクセスするように、ポートにおいて患者の身体を貫通することができる。
図1に見られる例では、器具は、一対のジョーを有する外科手術機器である。他の外科手術機器は、ナイフ、焼灼器、フック、電気外科手術機器、及び一対のはさみを含み得る。他の例では、器具は内視鏡であり得る。
【0003】
図1は、外科手術ロボットアーム102が、外科医コマンドインターフェース106(外科医コンソールと称され得る)及び制御ユニット107も含む、システム100の一部を形成することを示している。制御ユニットは、プロセッサ108及びメモリ109を備える。制御ユニット107のメモリ109は、アーム102を所望のように動かすように、プロセッサ108によって実行可能であるソフトウェアを非一時的な様式で記憶する。制御ユニットは、外科手術ロボットアーム102内のアクチュエータ(図示せず)に結合されている。アクチュエータは、アクチュエータを駆動することがジョイントの角度を変化させ、アームを動かすように、ロボットアーム内のジョイント104に結合されている。したがって、制御ユニット107は、ソフトウェアの実行によって生成された出力に従って、ロボットアーム102の運動をもたらすことができる。
【0004】
制御ユニット107は、アーム102から遠隔であっても遠隔でなくてもよい。
【0005】
制御ユニット107のプロセッサ108は、外科医コマンドインターフェース106からの入力に依存して、ソフトウェアを実行してアームを駆動することができる。外科医コマンドインターフェース106は、1つ以上の外科医入力デバイスを備えることができ、それによって、ユーザ(外科医)は所望の様式で器具の運動を要求することができる。制御ユニット107は、外科医入力デバイス106から入力信号を受信するように構成されている。入力デバイスは、例えば、ハンドコントローラ若しくはジョイスティックなどの手動で操作可能な機械的入力デバイスであり得るか、又は光学ジェスチャセンサなどの非接触型入力デバイスであり得る。以下の説明では、外科医入力デバイスは、一組のハンドコントローラである。外科医は、器具の所望の運動を要求するように、ハンドコントローラを動かすことができる。制御ユニット107のメモリ109内に記憶されたソフトウェアは、外科医入力デバイスから受信した入力信号に応答するように構成されており、プロセッサ108は、ソフトウェアを実行して、外科手術ロボットアームのアクチュエータに出力信号を送信するように構成されている。したがって、制御ユニットは、出力信号を送信して、外科医入力デバイスから受信した入力信号に従ってアームのジョイントを動かして、器具の要求された運動を達成するように構成されている。換言すれば、入力信号は、器具の特定の位置及び向きに対する要求を構成し、制御ユニットは、アーム内のジョイントを要求された器具の位置及び向きを達成するために必要な角度に動かす出力信号に要求を変換するように構成されている。
【0006】
外科手術ロボットアームが適合モードにあるとき、プロセッサはまた、アーム102に作用する外力に依存して、ソフトウェアを実行してアームを駆動することができる。制御ユニット107は、アームに作用する外力の結果として入力信号を受信するように構成されており、入力信号は、アームに作用する外力の力、位置、及び方向を示す。例えば、制御ユニット107は、臨床チームのメンバーがアームの一部上を押すことに応答してアームを動かし、それによって、臨床チームのメンバーがアームを物理的に動かしているという印象を与えることができる。
【0007】
図1に示されるシステム100は、1つ以上の更なる外科手術ロボットアームを含む、より大きなシステムの一部であり得る。各外科手術ロボットアームは、それ自体の基部を含み得る。このようなシステムでは、制御ユニット107は、外科手術ロボットアームの各々に対して、外科医入力デバイスから入力信号を受信するように構成されている。制御ユニットのメモリ109に記憶されたソフトウェアは、それらの入力に応答するように構成されており、プロセッサ108は、ソフトウェアを実行して出力信号を1つ以上の更なる外科手術ロボットアームのうちのいずれかのアクチュエータに送信し、それによってそれぞれのアームのジョイントを外科医入力デバイスからの入力信号に従って動かすように構成されている。それによって、外科医は、外科医入力デバイスを使用して外科手術ロボットアームの各々の運動を制御することができる。前述の制御ユニット107及び外科医コマンドインターフェース106と同様に、より大きな外科手術システムは、外科手術機器(機器アーム)に連結された
図1に示される外科手術ロボットアーム102を含んでもよく、内視鏡(内視鏡アーム)に連結された第2のロボットアームを含んでもよい。外科医コマンドインターフェース106は、外科医が内視鏡から受信した信号によって外科手術部位を観察することができるディスプレイを含む。
【0008】
特に、複数の外科手術ロボットアームを含むシステムでは、衝突が発生することが一般的である。例えば、外科手術ロボットアームは、外科的処置が実行されている間に衝突を経験し得る。以下でより詳細に説明するように、衝突という用語は、(例えば、外科手術ロボットアーム又は取り付けられた器具の運動及び/又は位置を制御するための)外科手術ロボットアームの通常の動作が不可能である可能性があることを示す、1つ以上の条件が満たされた状況を指すために本明細書で使用される。衝突が発生すると、外科手術ロボットアームがもはや所望のように駆動されることができなくなることがよくある。例えば、衝突は、外科医入力デバイスを使用して外科医によって要求された器具の位置と器具の達成位置との間に誤差をもたらし得る。したがって、衝突が発生した後、外科医は、外科手術ロボットアームを制御して器具を所望の場所に位置決めすることがもはやできなくなり得る。衝突は、外科手術ロボットアームと別の物体との間のぶつかり合いによって引き起こされ得、例えば、衝突は、2つの外科手術ロボットアーム間のぶつかり合いによって引き起こされ得る。衝突は、器具と、別の器具又は外科手術ロボットアームなどの別の物体との間のぶつかり合いによって引き起こされ得る。衝突は、ぶつかり合いによって引き起こされない場合がある。
【0009】
衝突に応答して、外科医入力デバイスは、外科医入力デバイスの動きが外科手術ロボットアームの位置に影響を与えないように、外科手術ロボットアームから係合解除され得る。次に、外科医入力デバイスが係合解除されている間に衝突は解決され得、例えば、臨床チームのメンバーは、外科手術ロボットアームを物理的に動かして、別の物体とのぶつかり合いを停止し得る。衝突が解決されたとき、外科医入力デバイスは、外科医入力デバイスの動きが外科手術ロボットアームの位置を再び制御できるように、外科手術ロボットアームと再係合され得る。
【0010】
本出願は、外科手術ロボットアームに対する衝突への応答の改善に関する。
【発明の概要】
【0011】
第1の実施形態によれば、外科手術ロボットアームの運動を制御するための制御ユニットであって、制御ユニットが、外科手術ロボットアームを制御するための外科医入力デバイスから入力信号を受信し、かつ外科手術ロボットアームに出力信号を送信して、外科手術ロボットアームの運動を引き起こすように構成されており、制御ユニットが、外科手術ロボットアームに対する衝突を検出し、衝突を検出することに応答して、外科手術ロボットアームの運動に対して制限を課し、外科手術ロボットアームを制御するための外科医入力デバイスから入力信号を受信し、かつ制限に従って外科手術ロボットアームの運動を制御するように、外科手術ロボットアームに出力信号を送信するように更に構成されている、制御ユニットが提供される。
【0012】
外科手術ロボットアームは、基部と末端アームセグメントとの間に延在する、複数の従動ジョイントによって連結された複数のアームセグメントを備え得、外科手術ロボットアームの末端セグメントは、器具に連結するように構成され得る。
【0013】
外科手術ロボットアームに関して検出される衝突は、外科手術ロボットアーム上の衝突、又は外科手術ロボットアームに連結された器具上の衝突であり得る。
【0014】
器具は、外科手術機器か又は内視鏡であり得る。
【0015】
外科手術ロボットアームに対する衝突を検出することは、複数のジョイントの各々におけるトルクを表すトルク値を決定し、決定されたトルク値に基づいてパラメータを決定し、かつパラメータが第1のトルク閾値を超えていると決定すること、並びに外科手術ロボットアームの一部又は外科手術ロボットアームに連結された器具の一部の位置誤差を決定し、かつ決定された位置誤差が第1の位置誤差閾値を超えていると決定すること、のうちの一方又は両方を含み得る。
【0016】
制御ユニットは、外科手術ロボットアームに対する検出された衝突が重度の衝突であるかどうかを決定するように更に構成され得、検出された衝突が重度の衝突であるかどうかを決定することは、決定されたパラメータが第2のトルク閾値を超えている及び/又は決定された位置誤差が第2の位置誤差閾値を超えていると決定することを含み、第2のトルク閾値は、第1のトルク閾値よりも大きく、第2の位置誤差閾値は、第1の位置誤差閾値よりも大きい。
【0017】
制御ユニットは、検出された衝突が重度の衝突であると決定することに応答して、第1の持続期間の間、外科手術ロボットアームの運動に対して第1の制限を課すように構成され得、第1の制限は、末端アームセグメントの運動の速度の完全な規制であり制御ユニットは、第1の持続期間後の第2の持続期間の間、外科手術ロボットアームの運動に対して第2の制限を課すように更に構成されており、第2の制限は、末端アームセグメントの運動の速度の最大値までの規制であり、最大値は、ゼロよりも大きい。
【0018】
第2の持続期間は、2秒であり得る。
【0019】
制限は、外科手術ロボットアームの運動の速度の規制、及び外科手術ロボットアームの運動の方向の規制のうちの一方又は両方を含み得る。
【0020】
外科手術ロボットアームの運動の速度の規制は、末端アームセグメントの運動を一時停止するように、末端アームセグメントの運動の速度の完全な規制を含み得る。
【0021】
制御ユニットは、0.75秒間、末端アームセグメントの運動の速度に対して完全な規制を課すように構成され得る。
【0022】
外科手術ロボットアームの運動の速度の規制は、末端アームセグメントの運動の速度の最大値までの規制であり得、最大値は、ゼロよりも大きい。
【0023】
制御ユニットは、衝突が外科手術ロボットアームの特定のジョイントの運動又は器具の運動に影響を与えるかどうかを決定するように更に構成され得、衝突が外科手術ロボットアームの特定のジョイントの運動又は器具の運動に影響を与えるかどうかを決定することは、特定のジョイントでの力を決定し、かつ決定された力が力閾値を超えていると決定すること、並びに器具の遠位端の位置誤差を決定し、かつ決定された位置誤差が器具位置誤差閾値を超えていると決定すること、のうちの一方又は両方を含む。
【0024】
制御ユニットは、衝突が外科手術ロボットアームの特定のジョイントの運動又は器具の運動に影響を与えると決定することに応答して、衝突に関連付けられたベクトルを決定するように構成され得る。
【0025】
衝突に関連付けられたベクトルは、方向及び先端を有し得、ベクトルの方向は、外科手術ロボットアーム又は器具上に加わる衝突の方向を表し、ベクトルの先端は、衝突が加わる外科手術ロボットアーム又は器具上の点を表す。
【0026】
衝突が加わる外科手術ロボットアーム又は器具上の点は、特定のジョイント、末端アームセグメント、特定のジョイントに連結されたアームセグメント、又は器具上の点であり得る。
【0027】
制限は、仮想円錐内及び仮想円錐の頂点から離れる方向に運動するための、外科手術ロボットアーム又は器具上の点の運動の方向の規制であり得、仮想円錐の頂点は、衝突が加わる外科手術ロボットアーム又は器具上の点に位置し、仮想円錐の中心軸は、衝突に関連付けられたベクトルと同一直線上にある。
【0028】
仮想円錐の頂角は、40~100度の範囲内であり得る。
【0029】
複数の従動ジョイントは、ロールジョイントではない、従動ジョイントのうちの最も遠位にある手首ジョイントを含み得、複数の従動ジョイントのうちの特定のジョイントは、手首ジョイントである。
【0030】
手首ジョイントの力閾値は、35Nであり得、器具位置誤差閾値は、15mmであり得る。
【0031】
第2の実施形態によれば、前述の制御ユニットと、外科手術ロボットアームと、を備える外科手術システムが提供される。
【0032】
外科手術ロボットアームは、内視鏡に連結された末端アームセグメントを備え得る。
【0033】
システムは、1つ以上の更なる外科手術ロボットアームを備え得、制御ユニットは、1つ以上の更なる外科手術ロボットアームの各々について、外科手術ロボットアームを制御するための外科医入力デバイスから入力信号を受信し、外科手術ロボットアームに出力信号を送信して外科手術ロボットアームの運動を引き起こし、かつ衝突を検出することに応答して、1つ以上の更なる外科手術ロボットアームの各々の運動に対して制限を課すように構成されており、制限は、1つ以上の更なる外科手術ロボットアームのうちのその1つの末端アームセグメントの運動を一時停止するように、1つ以上の更なる外科手術ロボットアームのうちのその1つの末端アームセグメントの運動の速度の完全な規制を含む。
【0034】
第3の実施形態によれば、外科手術ロボットアームの運動を制御するための方法であって、方法が、外科手術ロボットアームに対する衝突を検出することと、衝突を検出することに応答して、ロボットアームの運動に対して制限を課すことと、外科手術ロボットアームを制御するための外科医入力デバイスから入力信号を受信すること、及び制限に従って、外科手術ロボットアームの運動を制御するように、外科手術ロボットアームに出力信号を送信することと、を含む、方法が提供される。
【0035】
第4の実施形態によれば、非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、コンピュータシステムで実行されたときに、コンピュータシステムに前述の方法を実施させるコンピュータ可読命令を非一時的コンピュータ可読記憶媒体上に記憶している、非一時的コンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】外科手術ロボットアームと、制御ユニットと、を含む外科手術システムを示す。
【
図2】衝突に応答して外科手術ロボットアームの運動を制御するために制御ユニットによって実施される一般の方法を示す。
【
図3】衝突が検出されたときに制御ユニットによって実施される特定の方法の第1の段階を示す。
【
図4】衝突が重度の衝突であると決定されたときに制御ユニットによって実施される特定の方法の段階を示す。
【
図5】衝突が重度の衝突ではないと決定されたときに制御ユニットによって実施される特定の方法の段階を示す。
【
図6】衝突が外科手術ロボットアームの手首又は外科手術ロボットアームに取り付けられた器具の運動に影響を与えないと決定されたときに、制御ユニットによって実施される特定の方法の段階を示す。
【
図7】衝突が外科手術ロボットアームの手首又は外科手術ロボットアームに取り付けられた器具の運動に影響を与えると決定されたときに、制御ユニットによって実施される特定の方法の段階を示す。
【
図8】外科手術ロボットアームの遠位端、及び
図7の方法の一部として決定された仮想量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1に対して上述したように、外科手術ロボットアームが適合モードにあるとき、制御ユニット106は、外科医コマンドインターフェース106で外科医入力デバイスから受信した入力信号に応答して、及びアームの一部に作用する外力の結果として受信した入力信号に応答して(例えば、臨床チームのメンバーがそれを押すことによって)、外科手術ロボットアーム102を駆動するように構成されている。
【0038】
前述したように、ロボットアーム上で衝突が発生すると、外科手術ロボットアームがもはや所望のように駆動されることができなくなる可能性がある。例えば、衝突は、外科医入力デバイスを使用して外科医によって要求された器具の位置と器具の達成位置との間に誤差をもたらし得る。衝突がぶつかり合いによって引き起こされる場合、位置誤差は、ロボットアームの要求された運動に対する障害物として作用する外部物体に起因して生じ得る。したがって、外科的処置中に衝突が発生した場合、例えば、更なるぶつかり合いを避けるようにアームを再位置決めすることによって、衝突を解決し、ロボットアームの通常の制御を再開することができる必要がある。更に、衝突が発生した後、かつそれが解決される前に、外科医が外科手術ロボットアームの運動を制御し続けることを可能にすることは、外科医によって要求された器具の所望の運動が、必ずしも器具の達成位置に効果的につながるわけではないため、危険であり得る。したがって、衝突が発生した後、及び衝突が解決される前に、外科手術ロボットアームの運動を、外科的処置の安全性を改善する方法で制御することが望ましい。
【0039】
上記の背景技術セクションで言及したように、外科的処置の安全性を改善する1つのアプローチは、衝突が発生したことを検出すること、及び衝突が発生したことを検出することに応答して、制御ユニットが外科医入力デバイスから受信した入力信号に応答して外科手術ロボットアームをもはや駆動しないように、制御ユニットから外科医入力デバイスを切り離すことである。換言すれば、外科医は、ロボットアームから係合解除され、取り付けられた器具の運動をもはや指示することができなくなる。外科医が外科手術ロボットアームから係合解除されたとき、例えば、そのワークスペースを増加させるか、又はメニューを閲覧するために、ハンドコントローラを移動することができてもよいが、このような動きは、外科手術ロボットアームの位置に対していかなる変化ももたらさないこととなる。このようなアプローチを採用することは、制御ユニットが、アームに作用する外力の結果として受信された入力信号に応答してのみ外科手術ロボットアームを駆動することができるが、外科医入力デバイスから受信した入力信号に応答しては駆動することができないことを意味し得る。このような場合、衝突が検出された場合、外科医はロボットアームの運動に影響を与えることがもはやできなくなるため、衝突は、アーム上に外力を与えることによってのみ解決され得る。いくつかの例によれば、アームは、アームを移動させるために臨床チームのメンバーによって作動可能であり得る、アーム上の制御装置を備え得る。換言すれば、臨床チームのメンバーは、衝突を解決するためにアームを再位置決めする必要がある。このアプローチを採用することは、外科的処置の安全性を改善することができるが、アプローチは、外科医がロボットアームから頻繁に係合解除されることに起因して、外科的処置に著しい遅延をもたらし得る。外科医が係合解除されるたびに、外科医は外科医入力デバイス上の制御装置を作動させることによって、ロボットアームを再係合する必要がある。処置に遅延を引き起こすだけでなく、外科医は頻繁な係合解除に苛立ちを感じ、それによって外科手術システムに対する満足度を低下させることが見出された。更に、外科医は、衝突を解決するようにロボットアームをどのように再位置決めすればよいかを知る上で、傍らのチームよりも有利な立場にある場合があり得る。
【0040】
したがって、外科的処置中の遅延を最小化しながら、外科的処置の安全性を改善する、本明細書に記載の代替的なアプローチが開発されている。このアプローチは、外科医がロボットアームから完全に係合解除されることを必要としないが、代わりに、外科医入力デバイスによって制御可能なロボットアームの運動に対して制限を課す。換言すれば、衝突が検出された後、制御ユニットは、外科医入力デバイスから入力信号を受信し続けるが、外科手術ロボットアームの運動に対して制限を課し、したがって、制限に従ってロボットアームの運動を引き起こす出力信号をロボットアームに発報ことによって、外科医入力デバイスからの入力信号の受信に応答する。概して、外科医入力デバイスによって制御可能な運動は、検出された衝突を安全に解決することを可能にする運動に制限される。したがって、衝突は、臨床チーム及び外科医の両方によって取られた行動に基づいて解決され得る。換言すれば、外科医は、衝突を解決するために臨床チームのメンバーに依存する必要はなく、したがって、外科手術システムに対する制御が増大された。これは、いくつかの衝突をより迅速に解決することを可能にし、外科手術システムに対する外科医の満足度の改善をもたらしたことが見出された。
【0041】
図2は、衝突が発生した後の外科手術ロボットアーム102の運動を制御するために、制御ユニット107によって実施される方法を示している。制御ユニットによって実施される方法の第1のステップ201は、外科手術ロボットアームに対する衝突を検出することである。
【0042】
外科手術ロボットアームに対する衝突を検出することは、外科手術ロボットアームの一部又は取り付けられた器具の一部が、外科手術ロボットアーム又は器具の運動及び/又は位置に関連する1つ以上の条件を満たすことを検出することを意味するものとして、本明細書で使用される。例えば、外科手術ロボットアームに対する衝突を検出することは、ロボットアーム又は器具の運動及び/又は位置に関連する変数の値を決定することと、その値を変数の閾値の値と比較することと、を含み得る。
【0043】
外科手術ロボットアームに対する衝突を検出することは、複数のジョイントの各々におけるトルクを表すトルク値を決定することと、決定されたトルク値に基づいてパラメータを決定することと、パラメータが第1のトルク閾値を超えていると決定することと、を含み得る。
【0044】
図1に見られる外科手術ロボットアーム102は、従動ジョイント104の各々に1つ以上のトルクセンサ(図示せず)を更に含み得る。したがって、複数のジョイントの各々におけるトルクを表すトルク値を決定することは、トルクセンサのうちの1つ以上から測定値を受信することを含み得る。トルク値は、従動ジョイントの各々で測定されたトルクの大きさを含むベクトルを含み得る。従動ジョイントの各々で測定されたトルクの大きさは、ロボットアームの質量に起因する重力から結果的に生じるトルク、内部ギヤの逆数である。トレインの伸張から結果的に生じるトルク、並びに/又はポート及び外科手術部位と相互作用する取り付けられた器具から結果的に生じる反作用トルクのうちの1つ以上を除去するように調整され得る。したがって、決定されたトルク値に基づくパラメータは、複数のジョイントのうちの1つ以上に対する補正され調整されたトルクであり得る。トルクセンサは、定期的な時間間隔で各ジョイントのトルクを決定するように構成され得る。したがって、決定されたトルク値に基づいてパラメータを決定することは、異なる時間間隔で決定されたトルク値間の差を決定することを含み得る。決定されたトルク値に基づくパラメータは、連続する時間間隔で決定されたトルク値間の差であり得る。したがって、パラメータは、連続するトルク測定値間の1つ以上のジョイントでのトルクの変化を表し得る。決定されたトルク値に基づくパラメータは、連続する時間間隔で決定された重力補正され調整されたトルク間の差であってもよい。
【0045】
外科手術ロボットアームに対する衝突を検出することは、外科手術ロボットアームの一部又は器具の一部の位置誤差を決定することと、決定された位置誤差が第1の位置誤差閾値を超えていると決定することと、を含み得る。
【0046】
図1に見られる外科手術ロボットアーム102は、1つ以上のアームセグメント、ジョイント、又は器具に、1つ以上の位置センサ(図示せず)を更に含み得る。したがって、外科手術ロボットアーム又は器具の一部の位置誤差を決定することは、位置センサのうちの1つ以上から測定値を受信することを含み得る。
【0047】
位置誤差が決定される外科手術ロボットアームの一部は、複数のジョイントのうちのジョイントであり得る。位置誤差は、複数のジョイントのうちの1つ以上のジョイント角度の誤差であり得る。ジョイント角度の誤差は、ジョイントを駆動するために使用されるアクチュエータの入力位置から導出されたジョイント角度と実際の出力ジョイント角度との間の差であり得る。ジョイント角度の誤差は、(外科医入力デバイスから受信した信号の結果として)要求されたジョイント角度と実際の出力ジョイント角度との間の差であってもよい。したがって、第1の位置誤差閾値は、複数のジョイントのうちのジョイントのうちの1つ以上に対応するジョイント角度誤差閾値を含み得る。
【0048】
位置誤差が決定される器具の一部は、器具の先端であり得る。位置誤差は、(外科医入力デバイスから受信した信号の結果として)器具の先端の要求された位置と器具の先端の実際の位置との間の距離であり得る。器具の先端の実際の位置は、アーム上に存在する位置センサのうちの1つ以上によって決定され得、第1の位置誤差閾値は、20mmの距離であり得る。位置誤差が決定される器具の一部は、器具の長手方向軸であり得る。位置誤差は、器具の長手方向軸と、器具があちこちに移動するように制御される外科手術部位内の選択された点との間の距離であり得る。位置誤差は、器具の長手方向軸と外科手術部位内の仮想ピボット点との間の距離であってもよい。第1の位置誤差閾値は、15mmの距離であり得る。
【0049】
外科手術ロボットアーム102は、外科的処置を実施することができる展開位置にあるように
図1に示されている。アームが使用されていないとき、保管目的のために、アームをよりコンパクトな構成に折り畳むことができる。衝突を検出するために使用される外科手術ロボットアームの運動及び/又は位置に関連する1つ以上の条件は、アームがコンパクトな折り畳まれた構成にあるとき、又はアームが折り畳まれているか若しくは展開されているときのいずれかの、アームの運動及び/又は位置に関連し得る。
【0050】
外科手術ロボットアームが8つのジョイントを有し、ジョイントが基部からの順番で番号付けされている一例によれば、外科手術ロボットアームに対する衝突を検出することは、以下の条件(1)~(7)のうちのいずれか1つ以上が真であると決定することを含み得る。
【0051】
1. すなわち、ジョイント1~8のいずれかについて、そのジョイントの周りの重力補正され調整されたトルクの大きさは、ジョイントの閾値の値を超える。以下の閾値が使用され得る。
【表1】
2. すなわち、複数のジョイント中の第1の7つのジョイントのうちの任意の2つのジョイントについて、連続する時間間隔での重力補正され調整されたトルク値間の差は、それらのジョイントの閾値の値を超える。以下の閾値が使用され得る。
【表2】
3. すなわち、ジョイント6及び7のうちの一方又は両方について、入力アクチュエータ位置から導出されたジョイント角度と実際の出力ジョイント角度との間の差は、ジョイントの閾値の値を超える。以下の閾値が使用され得る。
【表3】
4. すなわち、ジョイント3~8のうちの1つ以上のジョイントについて、要求されたジョイント角度と実際の出力ジョイント角度との間の差は、ジョイントの閾値の値を超える。以下の閾値が使用され得る。
【表4】
5. すなわち、器具の先端の要求された位置と器具の先端の実際の位置との間の距離は、15mmを超える。
6. すなわち、器具の長手方向軸と外科手術部位内の仮想ピボット点との間の距離は、15mmを超える。
7. すなわち、アームがコンパクトな折り畳まれた構成にある間、又はアームが折り畳まれているか若しくは展開されておりかつアームの手首ジョイント104wがその最終の折り畳まれた位置から10cm未満である間のいずれかにおいて、
- ジョイント6の要求されたジョイント角度とジョイント6の実際の出力ジョイント角度との間の差が、0.01ラジアンを超えるか、又は
- ジョイント6に関する重力補正され調整されたトルクの大きさが、1.5Nmを超えるかのいずれかである。
【0052】
以下でより詳細に説明するように、制御ユニットは、定期的な時間間隔で衝突をチェックし続けてもよい。これにより、制御ユニットは、検出された衝突がいつ解決されたかを決定することができる。衝突が解決されたと決定することは、外科手術ロボットアームのいずれの部分も、又は取り付けられた器具のいずれの部分も、上述の外科手術ロボットアーム又は器具の運動及び/又は位置に関連する1つ以上の条件を満たすことを検出することを必要とし得る。
【0053】
衝突が検出された後、制御ユニットは、外科医及び臨床チームのメンバーに衝突が検出されたことを警報するために、外科手術システムによる可聴警報を発報させる信号を送信し得る。制御ユニットは、外科医コマンドインターフェースに信号を送信し得、それによって、衝突が検出されたことを示すアイコンがインターフェースのディスプレイ上に示される。
【0054】
図2に見られるように、衝突が検出された後、ステップ202で、制御ユニットは、外科手術ロボットアームの運動に対して制限を課す。以下でより詳細に説明するように、制限は、外科手術ロボットアームの運動の速度の規制であり得る。制限は、外科手術ロボットアームの運動の方向の規制であってもよい。制限は、外科手術ロボットアームの運動の速度及び方向の両方の規制であってもよい。外科手術ロボットアームの運動の速度の規制は、外科手術ロボットアームの一部の運動を一時停止するように、外科手術ロボットアームの一部の完全な規制であり得る。外科手術ロボットアームの運動の速度の規制は、末端アームセグメントの運動を一時停止するように、末端アームセグメント105tの運動の速度の完全な規制であり得る。
【0055】
制限が外科手術ロボットアームの運動に課せられた後、ステップ203で、制御ユニットは、外科医入力デバイス106から入力信号を受信し続けるが、制限に従って外科手術ロボットアームの運動を制御するように、出力信号を外科手術ロボットアームに送信する。したがって、衝突が検出された後、かつ衝突が解決される前に、外科医入力デバイスを使用して外科医によって要求されたアームの運動は、アームの実際の運動に完全には変換されない。
【0056】
図3~
図7は、衝突が発生した後、かつ衝突が解決される前に、外科手術ロボットアームの運動を制御するために制御ユニットによって実施され得る例示的な方法の様々な段階を示している。
【0057】
図3は、方法の第1の段階を示しており、第1の段階は、4つのステップ301~304を含む。概して、この第1の段階は、衝突を検出することと、衝突を検出することに応答して、制御ユニットが衝突が重度の衝突であるかどうかを決定することができるまで、アームの末端セグメントを一定時間静止状態に保持することと、を伴う。換言すれば、アームの末端セグメントは、衝突を検出した結果として、ある期間静止状態に保持される。第1のステップ301は、外科手術ロボットアームに対する衝突を検出することである。ステップ301は、前述のように、
図2のステップ201と同じ方法で実行され得る。
【0058】
第2のステップ302は、末端アームセグメントの運動に対して完全な規制を課すことである。ステップ303は、制御ユニットは外科医入力デバイスから入力信号を受信し続けるが、制御ユニットから外科手術ロボットアームに送信される出力信号は、末端アームセグメントの運動を一時停止するようにあると述べている。末端アームセグメントの運動に対して完全な規制を課すこと、及びその制限に従って出力信号をアームに送信することは、末端アームセグメントの運動が一時停止されることを意味する。換言すれば、末端アームセグメントの位置及び向きは、固定される。
【0059】
上述のように、通常の動作下で、外科医入力デバイスから制御ユニットによって受信された入力信号は、器具の特定の位置及び向きの要求を構成し、制御ユニットは、アーム内のジョイントを、要求された器具の位置及び向きを達成するために必要な角度に移動させる出力信号に要求を変換するように構成されている。しかしながら、末端アームセグメントの運動の完全な規制の制限がアームの運動に課せられると、外科医は、外科医入力デバイスでハンドコントローラを移動させ続けてもよいが、このような動きは、末端アームセグメント(又は取り付けられた器具)の位置又は向きには影響を及ぼさない。
【0060】
ステップ303の一部として、末端アームセグメントの運動は、0.75秒間一時停止される。0.75秒の期間は、衝突を一瞬誘発し得るが、その後の介入なしですぐに自然に解決することとなる、一時的な衝突を考慮して選択されている。一時的な衝突は、アームが、例えば、別のアーム又は臨床チームのメンバーなどの外部物体とのつかの間のぶつかり合いを経験する状況で発生し得る。一時的な衝突はまた、アームが上述の閾値(1)~(7)のうちの1つ以上に近いがわずかに下回る状況、及び例えばアーム位置の小さな変化により、1つ以上の閾値が短期間超えるという状況でも発生し得る。他の例によれば、出力信号は、異なる長さの時間に対する制限に従って移動するように外科手術ロボットアームに命令し得る。したがって、末端アームセグメントの運動は、例えば、0.5又は1秒など、より長い又は短い時間一時停止され得る。この期間中、末端アームセグメントの位置及び向きは変化しない。
【0061】
この方法で利用されるロボットアームは、冗長な方法で移動させられ得、これは、末端アームセグメント(及び取り付けられた器具)の位置が、他のアームセグメントの位置が変更されている間、一定に保たれ得ることを意味する。したがって、アームの他のセグメント及びジョイント(その動きは、末端アームセグメント位置に影響を与えない)は、末端アームセグメントの運動が一定に保たれる期間中に移動することが可能になり得る。例えば、制御ユニットは、アームに作用する外力の結果として入力信号を受信し、アームの他のセグメントの運動を制御するために、外科手術ロボットアームに出力信号を送信することが依然として可能であり得る。したがって、アームの冗長性により、臨床チームのメンバーは、末端アームセグメントの位置が一定に保持されている間に、アームセグメントの別の部分を再位置決めすることが可能になり得る。
【0062】
0.75秒経過した後、ステップ304で、制御ユニットは、検出された衝突が重度の衝突であるかどうかを決定する。
【0063】
前述のように、衝突を検出することは、ロボットアーム又は器具の運動及び又は位置に関連する変数の値を決定することと、その値を変数の閾値の値と比較することと、を伴い得る。衝突が重度の衝突であるかどうかを決定することは、同じ変数をその変数のより高い閾値の値と比較することを伴い得る。例えば、外科手術ロボットアームに対する衝突を検出することは、複数のジョイントの各々におけるトルクを表すトルク値を決定し、決定されたトルク値に基づいてパラメータを決定し、かつパラメータが第1のトルク閾値を超えていると決定すること、並びに外科手術ロボットアームの一部又は器具の一部の位置誤差を決定し、かつ決定された位置誤差が第1の位置誤差閾値を超えていると決定すること、のうちの一方又は両方を含み得る。したがって、検出された衝突が重度の衝突であるかどうかを決定することは、決定されたパラメータが第2のトルク閾値を超えている及び/又は決定された位置誤差が第3の位置誤差閾値を超えていると決定することを含み得、第2のトルク閾値は第1のトルク閾値よりも大きく、第3の位置誤差閾値は第1の位置誤差閾値よりも大きい。換言すれば、検出された衝突が重度の衝突であるかどうかを決定することは、以前に決定された変数を新しいより高い閾値と比較することを伴い得る。前述のように、外科手術ロボットアームに対する衝突を検出することは、外科手術ロボットアームの一部又は取り付けられた器具の一部が、外科手術ロボットアーム又は器具の運動及び/又は位置に関連する1つ以上の条件を満たすことを検出することを意味するように、本明細書で使用される。
【0064】
外科手術ロボットアームが8個のジョイントを有し、ジョイントが基部からの順番で番号付けされている上述の同じ例によれば、衝突の検出に使用される同じ条件は、衝突が重度の衝突であるかどうかを決定する際に使用され得る。別の例によれば、異なる条件が使用されてもよい。
【0065】
同じ条件が使用される例では、それらの条件のうちの1つ以上を異なる閾値と比較して、衝突が重度であるかどうかを決定し得る。
【0066】
具体的には、衝突が重度の衝突であるかどうかを決定することは、以下の条件(1)~(5)のうちのいずれかが真であると決定することを含み得る。
【0067】
1. すなわち、複数のジョイントのうちの第1の7つのジョイントのうちのいずれかについて、そのジョイントの周りの重力補正され調整されたトルクの大きさは、ジョイントの閾値の値を超える。以下の閾値が使用され得る。
【表5】
2. すなわち、複数のジョイント中の第1の7つのジョイントのうちの任意の2つのジョイントについて、連続する時間間隔での重力補正され調整されたトルク値間の差は、それらのジョイントの閾値の値を超える。以下の閾値が使用され得る。
【表6】
3. すなわち、ジョイント6及び7のうちの一方又は両方について、入力アクチュエータ位置から導出されたジョイント角度と実際の出力ジョイント角度との間の差は、ジョイントの閾値の値を超える。以下の閾値が使用され得る。
【表7】
4. すなわち、ジョイント3~8のうちの1つ以上のジョイントについて、要求されたジョイント角度と実際の出力ジョイント角度との間の差は、ジョイントの閾値の値を超える。以下の閾値が使用され得る。
【表8】
5. すなわち、器具の先端の要求された位置と器具の先端の実際の位置との間の距離は、20mmを超える。
【0068】
検出された衝突が重度の衝突であると決定された場合、制御ユニットは、
図4に示される方法を実施する。検出された衝突が重度の衝突ではないと決定された場合、制御ユニットは、
図5に示される方法を実施する。
【0069】
図4は、制御ユニットが(
図3の)ステップ304を実施し、上述の方法に従って検出された衝突が重度の衝突であると(ステップ401で)決定した際に、制御ユニットによって実施され得る方法の一例を示している。制御ユニットが、検出された衝突が重度の衝突であると決定すると、ユニットは、(ステップ402で)末端アームセグメントの運動に対する完全な規制の制限を課し続け、外科医入力デバイスからの入力信号を受信し続け、(ステップ403で)末端アームセグメントの運動を一時停止するように、出力信号を外科手術ロボットアームに送信する。換言すれば、制御ユニットは、外科手術ロボットアームに、末端アームセグメントの位置及び向きを保つように命令し続ける。制御ユニットは、この制限に従って第1の持続期間にわたって出力信号を送信する。したがって、末端アームセグメントの運動は、第1の持続期間にわたって一時停止される。
【0070】
衝突が重度であると決定された場合、これは、末端アームセグメント(及び器具)が、患者へ損傷を与えるのを避けるために固定位置に保持されることが重要であることを意味する。したがって、このシナリオでは、外科医がアームの末端アームセグメントを移動させることによって衝突を解決することは得策ではない。したがって、衝突が重度であると決定された場合、衝突は、アームに外力を与えるか、又はアーム上の制御装置(例えば、ボタン)を作動させる臨床チームのメンバーによってのみ解決され得る。
【0071】
前述したように、この方法で利用されるアームは、冗長な方法で移動することができ、これは、末端アームセグメント(及び取り付けられた器具)の位置が一定に保たれている間に他のアームセグメントの位置を変更することができることを意味する。ステップ401で衝突が重度であると決定された後、第1の持続期間中、制御ユニットは、アームに作用する外力の結果として入力信号を受信し、外科手術ロボットアームに出力信号を送信して、末端アームセグメントではないアームのセグメントの運動を制御することが依然として可能である。したがって、アームの冗長性により、臨床チームのメンバーは、衝突を解決するように、末端アームセグメントの位置が一定に保持されている間に1つ以上のアームセグメント(末端アームセグメントではない)を再位置決めすることができる。末端セグメントの運動は、衝突が臨床チームのメンバーによって解決されるまで一時停止され得る。換言すれば、第1の持続期間は、衝突が重度の衝突であると決定することと、衝突が解決されたと決定することとの間の時間の長さであり得る。衝突が解決されたと決定することは、以前に検出された衝突がもはや存在しないと決定することを含み得る。
【0072】
上述のように、制御ユニットは、定期的な時間間隔で衝突をチェックし続けてもよい。例えば、制御ユニットは、ステップ402及び403全体を通して衝突をチェックし続けてもよい。これにより、制御ユニットは、検出された衝突がいつ解決されたかを決定することが可能になる。ステップ403で、制御ユニットは、衝突が解決されたと決定する。
【0073】
衝突が解決されたと決定することは、外科手術ロボットアームのいずれの部分も、又は取り付けられた器具のいずれの部分も、上述の外科手術ロボットアーム又は器具の運動及び/又は位置に関連する1つ以上の条件を満たすことを検出することを必要とし得る。例えば、衝突が解決されたと決定することは、ロボットアーム又は器具の運動及び/又は位置に関連する変数の値を決定することと、その値を変数の閾値の値と比較することと、その変数の値が変数の閾値の値を超えないと決定することと、を含み得る。衝突が解決されたと決定することは、ロボットアーム又は器具の運動及び/又は位置に関連する各変数に対してこのプロセスを繰り返すことと、これらの変数の値のいずれもそれらのそれぞれの閾値を超えないと決定することと、を含み得る。
【0074】
外科手術ロボットアームに対する衝突が解決されたと決定することは、複数のジョイントの各々におけるトルクを表すトルク値を決定することと、決定されたトルク値に基づいてパラメータを決定することと、パラメータがジョイントのうちのいずれかに関連付けられたいかなる閾値も超えないと決定することと、外科手術ロボットアームの一部又は器具の一部の位置誤差を決定することと、決定された位置誤差がアーム又は器具の部分のうちのいずれかに関連付けられたいかなる閾値も超えないと決定することと、を含み得る。一例によれば、衝突が解決されたと決定することは、条件(1)~(7)のうちのいずれも真ではないと決定することを含み得る。あるいは、衝突が解決されたと決定することは、以前に真であると決定された条件(1)~(7)のうちの1つ以上がもはや真ではないと決定することを含み得る。
【0075】
したがって、ステップ405は、第1の持続期間の後に実施される。制御ユニットは、衝突が解決されたと決定された後、ステップ405を実施する。ステップ405で、制御ユニットは、末端アームセグメントの運動の完全な規制を解除する。ステップ405で、制御ユニットは、外科手術ロボットアームの運動に対して(異なる)制限を課す。具体的には、制御ユニットは、末端アームセグメントの運動の速度に対して規制を課す。
図4に見られる例では、制限は、末端アームセグメントの速度を最大0.02m/sに規制することである。他の例によると、末端アームセグメントの速度は、0.01m/s、0.015m/s、0.025m/s、0.03m/sに制限され得る。
【0076】
ステップ406で、制御ユニットは、外科医入力デバイスから入力信号を受信し続ける。制御ユニットは、制限に従って末端アームセグメントの運動の速度を制限するように、出力信号を外科手術ロボットアームに更に送信する。換言すれば、制御ユニットは、末端アームセグメントが0.02m/sの最大速度で移動することができるように外科手術ロボットアームが移動するように命令する。末端アームセグメントの運動の速度は制限されるが、この期間中の末端アームセグメントの運動の方向には制限は課されない。したがって、外科医は、外科医入力デバイスを使用して、末端アームセグメントを任意の所望の位置及び向きに位置付けすることができるが、末端アームセグメントの任意の動きは、0.02m/sの最大速度に制限される。プロセスのこのステップは、外科医が再び外科手術ロボットアームの運動を引き起こすことができるようになったときに、ハンドコントローラをあまりにも速く移動させることによって患者にいかなる損傷もすぐに引き起こさないことを保証するために、有利である。
【0077】
図4に示される例では、制御ユニットは、出力信号を外科手術ロボットアームに送信し続けて、末端アームセグメントの運動の速度を2秒間制限する。制御ユニットは、衝突が解決されたと決定されてから2秒が経過するまで、末端アームセグメントの速度を0.02m/sに制限し得る。他の例では、末端アームセグメントの運動の速度は、より長い又はより短い期間制限され得る。例えば、制御ユニットは、衝突が解決されたと決定された後、1秒間又は3秒間、末端アームセグメントの運動の速度を制限するように出力信号を外科手術ロボットアームに送信し得る。
【0078】
衝突が解決されてから2秒経過した後、ステップ407で、制御ユニットは規制を解除する。規制は、即座に解除され得る。あるいは、規制は、末端アームセグメントの許容される運動の速度が0.02m/sから通常の許容される動作速度までゆっくりと上昇するように、ある期間にわたって徐々に解除され得る。ステップ408で、制御ユニットは、外科医入力デバイスから入力信号を受信し続けるが、ここで、規制なく外科手術ロボットアームの運動を制御するように、出力信号を外科手術ロボットアームに送信する。ステップ407の後、制御ユニットは、外科手術ロボットアームの運動にいかなる制限も課さない。したがって、ステップ408で、制御ユニットは通常の動作に戻る。換言すれば、制御ユニットは、衝突が検出される前のように動作する。ステップ408後に更なる衝突が検出された場合、制御ユニットは、ステップ301で開始する方法を再開することになる。本明細書に記載のアームの許容される運動の速度に対する任意の変化は、即座に実施されてもよく、ある期間にわたって徐々に実施されてもよいことに留意されたい。
【0079】
図5は、制御ユニットが(
図3の)ステップ304を実施し、検出された衝突が重度の衝突ではないと(ステップ501で)決定された際に、制御ユニットによって実施され得る方法のステップの一例を示している。検出された衝突が重度の衝突ではないと決定された後、制御ユニットはステップ502を実施する。ステップ502で、制御ユニットは、衝突が外科手術ロボットアームの手首ジョイントの運動、又は外科手術ロボットアームに取り付けられた器具の運動に影響を及ぼすかどうかを決定する。以下の説明は、方法が、衝突が外科手術ロボットアームの手首ジョイントの運動に影響を及ぼすかどうかを決定することを伴う一例に関するが、他の例によると、方法は、衝突が外科手術ロボットアーム内の複数のジョイントのうちの任意の特定のジョイントの運動に影響を及ぼすかどうかを決定することを伴い得ることが理解されよう。
【0080】
衝突が外科手術ロボットアームの手首ジョイントの運動又は外科手術ロボットアームに取り付けられた器具の運動に影響を及ぼすかどうかを決定することは、手首ジョイントでの力を決定することと、決定された手首力が手首力閾値を超えていると決定することと、を含み得る。手首ジョイントにおける力を決定することは、アーム上のトルクセンサのうちの1つ以上から測定値を受信することを含み得る。手首力閾値は、20N~50Nであり得る。手首力閾値は、35Nの力であり得る。
【0081】
衝突が手首又は器具の運動に影響を及ぼすかどうかを決定することは、器具の遠位端の位置誤差を決定することと、決定された位置誤差が器具位置誤差閾値を超えていると決定することと、を含み得る。位置誤差は、(外科医入力デバイスから受信した信号の結果として)器具の先端の要求された位置と器具の先端の実際の位置との間の距離であり得、これは、アーム上に存在する位置センサのうちの1つ以上によって決定され得る。器具位置誤差閾値は、10mm~20mmであり得る。器具位置誤差閾値は、15mmの距離であり得る。衝突が外科手術ロボットアームの手首ジョイントの運動又はアームに取り付けられた器具の運動に影響を与えると決定することは、アームの手首ジョイントの力が手首力閾値を超えている、及び/又は器具の遠位端の位置誤差が器具位置誤差閾値を超えていると決定することを含み得る。
【0082】
ステップ502で、衝突が外科手術ロボットアームの手首ジョイントの運動、又は外科手術ロボットアームに取り付けられた器具の運動に影響を与えないと決定された場合、制御ユニットは、
図6に示される方法を実施するように進行する。衝突が外科手術ロボットアームの手首ジョイントの運動、又は外科手術ロボットアームに取り付けられた器具の運動に影響を及ぼすと決定された場合、制御ユニットは、
図7に示される方法を実施するように進行する。
【0083】
図6は、衝突が外科手術ロボットアームの手首ジョイントの運動又は外科手術ロボットアームに取り付けられた器具の運動に影響を与えないと(ステップ601で)決定されたときに、制御ユニットによって実施され得る方法の一例を示している。このような衝突の一例は、肘ジョイント104eと、別の外科手術ロボットアーム又は装置の他の部品の一部との間のぶつかり合いであり得る。制御ユニットが、ステップ602で、衝突が外科手術ロボットアームの手首ジョイントの運動又は外科手術ロボットアームに取り付けられた器具の運動に影響を与えないと決定した後、制御ユニットは、末端アームセグメントの運動の速度に対する完全な規制を解除する。ステップ602で、制御ユニットは、外科手術ロボットアームの運動に対して(異なる)制限を課す。具体的には、制御ユニットは、末端アームセグメントの運動の速度に対して規制を課す。
図6に見られる例では、制限は、末端アームセグメントの速度を最大0.02m/sに規制する。他の例によると、末端アームセグメントの速度は、0.01m/s、0.015m/s、0.025m/s、0.03m/sに制限され得る。
【0084】
ステップ603で、制御ユニットは、外科医入力デバイスから入力信号を受信し続ける。制御ユニットは、制限に従って、末端アームセグメントの運動の速度を制限させるように、出力信号を外科手術ロボットアームに更に送信する。換言すれば、制御ユニットは、末端アームセグメントが0.02m/sの最大速度で移動することができるように外科手術ロボットアームが移動するように命令する。末端アームセグメントの運動の速度は制限されるが、この期間中、末端アームセグメントの運動の方向には規制は課されない。したがって、外科医は、外科医入力デバイスを使用して、末端アームセグメントを任意の所望の位置及び向きに位置決めすることができるが、末端アームセグメントの任意の動きは、0.02m/sの速度に制限される。
【0085】
衝突が重度の衝突ではなく、衝突が外科手術ロボットアームの手首ジョイントの運動又は外科手術ロボットアームに取り付けられた器具の運動に影響を与えると決定された後、制御ユニットは、外科医入力デバイスから入力信号を受信し、末端アームセグメントの運動の速度を最大0.02m/sに制限するように、出力信号を外科手術ロボットアームに送信することができる。制御ユニットはまた、アームの一部に作用する外力の結果として入力信号を受信し、アームの運動を制御するために、出力信号を外科手術ロボットアームに送信することができる。末端アームセグメントの運動は、0.02m/sに制限されるが、他のアームセグメントは、0.02m/s超の速度で移動するように制御され得る。
【0086】
前述したように、
図4で衝突が重度であると決定された場合、制御ユニットは、衝突がアームに力を与える臨床チームのメンバーによって、又はアーム上の制御装置を作動させることによってのみ解決され得るように、外科手術ロボットアームを制御する。対照的に、衝突が重度ではないと決定された場合、衝突は、アームに外力を与えるか若しくはアーム上の制御装置を作動させる臨床チームのメンバーによって、又は外科医入力デバイスを使用して末端アームセグメントを移動させる外科医によって解決され得る。外科医は、衝突を解決しようとするために、末端アームセグメントを最大0.02m/sの速度で任意の方向に移動させることができる。
【0087】
ステップ604で、制御ユニットは、衝突が解決されたと決定する。制御ユニットは、前述の方法のうちのいずれかに従って衝突が解決されたと決定し得る。
【0088】
ステップ605は、衝突が解決されたと決定してから2秒が経過したときに実施される。ステップ605で、外科手術ロボットアームの運動に対する規制が解除される。他の例によると、制御ユニットは、衝突が解決されたことを検出した後、より迅速に又はよりゆっくりと規制を解除し得る。例えば、制御ユニットは、衝突が解決されたと決定された後、1秒間又は3秒間、末端アームセグメントの運動の速度を制限するように、出力信号を外科手術ロボットアームに送信し得る。規制を解除するステップ605は、即座に実施され得る。あるいは、規制は、末端アームセグメントの許容される運動の速度が0.02m/sから通常の許容される動作速度までゆっくりと上昇するように、ある期間にわたって徐々に解除され得る。
【0089】
ステップ606で、制御ユニットは、外科医入力デバイスから入力信号を受信し続けるが、ここでは、規制なく外科手術ロボットアームの運動を制御するように、出力信号を外科手術ロボットアームに送信する。ステップ605の後、制御ユニットは、外科手術ロボットアームの運動に対していかなる制限も課さない。したがって、ステップ606で、制御ユニットは通常の動作に戻る。換言すれば、制御ユニットは、衝突が検出される前のように動作する。ステップ606後に更なる衝突が検出された場合、制御ユニットは、ステップ301で開始する方法を再開することになる。
【0090】
図7は、衝突が外科手術ロボットアームの手首ジョイントの運動、又は外科手術ロボットアームに取り付けられた器具の運動に影響を与えると(ステップ701で)決定されたときに、制御ユニットによって実施され得る方法の一例を示している。衝突が手首ジョイント又は器具の運動に影響を与えるシナリオの一例は、外科手術ロボットアームの末端アームセグメントと、別のロボットアーム又は他の装置の部品との間のぶつかり合いである。
【0091】
制御ユニットが、ステップ702で、衝突が外科手術ロボットアームの手首ジョイントの運動又は外科手術ロボットアームに取り付けられた器具の運動に影響を与えると決定した後、制御ユニットは、衝突に関連付けられたベクトルを決定する。衝突に関連付けられたベクトルは、衝突の方向を示す。衝突に関連付けられたベクトルは、衝突が加わるアーム又は器具上の点を示す。
【0092】
図8は、末端アームセグメント105t及び手首ジョイント104wを含む、
図1に見られる外科手術ロボットアームの遠位端を示している。
図8はまた、末端アームセグメント105tに取り付けられた器具103を示している。
図8は、末端アームセグメント105t上に加わる衝突に関連付けられたベクトル801を示している。衝突に関連付けられたベクトルは、外科手術ロボットアーム又は器具上に加わる衝突の方向を表す方向を有する。ベクトル801の方向は、末端アームセグメント105t上に加わる衝突の方向を表す。衝突に関連付けられたベクトルは、衝突が加わる外科手術ロボットアーム又は器具上の点を表す先端を有する。ベクトル801の先端802は、衝突が加わる末端アームセグメント105t上の点を表す。ベクトルは、外科手術ロボットアームの手首ジョイントの運動、又は外科手術ロボットアームに取り付けられた器具の運動に影響を与えると決定された衝突に関連付けられている。したがって、衝突が加わる外科手術ロボットアーム又は器具上の点は、その点上に加わる衝突が手首又は器具の運動に影響を与えることになる任意の点であり得る。したがって、衝突が加わる点は、手首ジョイント、末端アームセグメント、手首ジョイントに連結されたアームセグメント、又は器具上の点であり得る。
【0093】
制御ユニットは、以下の方法に従って、衝突に関連付けられたベクトルを決定し得る。
【0094】
前述したように、外科手術ロボットアーム102は、アームの各ジョイント104に位置決めされた一連のトルクセンサを備え得、各トルクセンサは、各トルクセンサが位置するジョイント上に及ぼされたトルクを測定するように構成されている。外科手術ロボットアーム102は、ジョイントに及ぼされたトルクの測定値を制御ユニット107に送信するように構成されている。制御ユニットは、トルクセンサから受信したトルク測定値を使用して、衝突に関連付けられたベクトルを決定する。
【0095】
衝突に関連付けられたベクトルを決定することは、外科手術ロボットアームから複数のジョイントの各々におけるトルクの測定値を受信することを含み得る。制御ユニットは、衝突から生じないトルクを考慮するように、受信したトルク測定値を処理し得る。例えば、受信されたトルク測定値は、ロボットアームの質量に起因する重力から結果的に生じるトルク、内部ギヤトレインの伸張から結果的に生じるトルク、並びに/又はポート及び外科手術部位と相互作用する取り付けられた器具から結果的に生じる反作用トルクを除去するように調整され得る。該処理の結果は、アーム又は器具上に加わる衝撃から生じるトルクのみである。換言すれば、制御ユニットは、衝突から生じる複数のジョイントの各々におけるトルクを含むトルクベクトルτを決定する。
【0096】
次に、制御ユニットは、衝突が発生した結果として衝突が加わるアーム又は器具の点上に作用する、結果として生じる合力fを計算し得る。合力fを計算することは、トルクτを使用して、ロボットアームに沿った一連の点で作用する合力に対応する力ベクトルfを計算することを含み得る。力ベクトルfは、仮想作業の原理を決定されたジョイントトルクτに適用することによって計算され得る。
【0097】
仮想作業の原理によれば、アーム又は器具上の点Pを距離
【数1】
(
【数2】
は、単位ベクトル)だけ移動させるには、ジョイントJを角度
【数3】
だけ移動させることを必要とし、したがって、力が
【数4】
の方向に点Pで加えられる場合、ジョイントJによって見られるトルク
【数5】
は、
【数6】
にわたる変位に比例する。これは、ヤコビ行列J
pに書かれ得る。
【数7】
式中、τは、外科手術ロボットアームのn個のジョイントの各々に作用するトルクのベクトルであり、τは、各ジョイントに作用するトルクであり、
【数8】
は、ロボットアーム又は器具に沿った一連の点によって方向xに移動させられた距離であり、
【数9】
は、ジョイントnによって移動させられた角度であり、fは、ロボットアーム又は器具に沿った一連の点に作用する合力に対応する力ベクトルである。ヤコビ行列J
pは、アームの幾何学的形状及び姿勢の関数である。
【0098】
方向x,y及びzにおける解決の結果は、次のとおりである:
【数10】
これは、次の形態に再編成され得る:
f=Kτ (式3)
式中、Kは
【数11】
の逆数である。
【0099】
したがって、衝突に関連付けられたベクトルを決定することは、変位及びジョイント角変位のヤコビ行列
【数12】
を計算することと、
【数13】
の逆数を求めてヤコビアンKを得ることと、Kに外科手術ロボットアームのn個のジョイントの各々に作用するトルクを乗じて、ロボットアームに沿った一連の点で作用する合力を表すベクトルfを計算することと、を含み得る。
【0100】
前述したように、
図1に示される外科手術ロボットアーム102は、外科手術ロボットアームに沿った複数の点に位置する位置センサ(図示せず)を備え得る。各位置センサは、各位置センサが位置する外科手術ロボットアーム上の点の位置を測定するように構成されている。外科手術ロボットアームは、アームに沿った点における位置の測定値を制御ユニットに送信するように構成されている。制御ユニットは、位置センサによる位置の測定値、及び外科手術ロボットアームの幾何学的形状の知識から、ジョイントnの各々の角度を推測するように構成され得る。したがって、ヤコビアンJ
pは、外科手術ロボットアームから受信された測定値に従って、制御ユニットによって生成され得る。
【0101】
上述のように、外科手術ロボットアームτのn個のジョイントの各々に作用するトルクのベクトルに逆ヤコビアンKを乗じた結果は、ロボットアームに沿った一連の点に作用する合力に対応するベクトルfである。制御ユニットは、合力が作用するアーム又は器具上の点をベクトルfから推定するように構成され得る。したがって、制御ユニットは、衝突が加わったアーム又は器具上の点をベクトルfから推定するように構成され得る。したがって、計算された合力は衝突を表す。制御ユニットは、ベクトルfを使用して、衝突に関連付けられたベクトルを決定するように構成されている。衝突に関連付けられたベクトルは、合力の方向と同じ方向を有すると決定され得る。衝突に関連付けられたベクトルの先端は、合力が作用することが見出されたアーム又は器具上の点と同じ位置を有すると決定され得る。
【0102】
衝突に関連付けられたベクトルが決定されると、ステップ703で、制御ユニットは仮想円錐を決定する。
図8は、仮想円錐803を示している。仮想円錐は、衝突が加わる外科手術ロボットアーム又は器具上の点に位置する頂点を有する。換言すれば、仮想円錐の頂点は、衝突に関連付けられたベクトルの先端に位置する(すなわち、
図8の点802に位置する)。仮想円錐は、中心軸804を有する。仮想円錐の中心軸は、衝突に関連付けられたベクトルと同一直線上にある。
図8に見られるように、仮想円錐803の中心軸804は、ベクトル801と同一直線上にある。
【0103】
ステップ704で、制御ユニットは、末端アームセグメントの運動の速度に対する完全な規制を解除する。ステップ704で、制御ユニットは、外科手術ロボットアームの運動に対して(異なる)制限を課す。制御ユニットは、衝突が加わる外科手術ロボットアーム又は器具上の点の運動の方向及び速度に対して規制を課す。この制限は、衝突が加わるアーム又は器具上の点(
図8の801)が、移動するように外科医によって制御され得る、運動の方向の規制である。具体的には、制限は、該点の運動の方向を、仮想円錐の頂点から離れる方向の仮想円錐内の運動に規制するものである。制限はまた、該点の運動の速度の規制である。
図7の例では、制限は、末端アームセグメントの速度を最大0.02m/sに規制する。
【0104】
ステップ705で、制御ユニットは、外科医入力デバイスから入力信号を受信し続け、アーム又は器具上の点の運動の方向を仮想円錐内で仮想円錐の頂点から離れる運動に制限し、かつ点の運動の速度を最大0.02m/sに制限するように、出力信号を外科手術ロボットアームに送信する。仮想円錐内でのみ動きを可能にする目的は、外科医が、衝突を解決するのに役立つこととなるが、衝突を解決しない(又は衝突を強化する)こととなるような方法で点を移動させることができない方法でのみ、点を制御して移動させることができることである。
【0105】
したがって、
図8に見られる例では、外科医は、外科医入力デバイスを使用して、衝突を解決するのに役立つこととなる方向に末端アームセグメントを移動することができるが、末端アームセグメントのあらゆる動きは、0.02m/sの最大速度に制限される。
図8に見られる例では、外科医は、末端アームセグメント上の点802が0.02m/sの速度で仮想円錐803内の点802の開始位置から離れるように移動して、衝突を解決しようとするように、末端アームセグメントを移動させることができる。
【0106】
前述したように、外科医入力デバイス106は、外科医が移動させて外科手術ロボットアームの運動を引き起こすことができるハンドコントローラを備え得る。
図7の方法によれば、ステップ704が実施され、制御ユニットが外科手術ロボットアームの運動の方向及び速度に対して規制を課した後、外科医は、ハンドコントローラを自由に移動させる能力を持ち続けるが、仮想円錐803内及び円錐の頂点802から離れる方向の点802の運動に変換するハンドコントローラの運動のみが、点の運動を引き起こすこととなる。外科医によるハンドコントローラの他の運動は、点802のいかなる動きにも変換されないこととなる。衝突の解決に役立つことになる点の運動を引き起こすハンドコントローラの運動のみが、外科手術ロボットアームのあらゆる動きをもたらすこととなる。換言すれば、ステップ705で、制御ユニットは、仮想円錐の内側及び外側の両方の所望の運動を表す外科医入力デバイスからの入力信号を受信し得るが、仮想円錐内及び仮想円錐の頂点から離れる点の運動を引き起こす出力信号のみ外科手術ロボットアームに送信することとなる。
【0107】
頂角は、
図8において角度
【数14】
として示されている。仮想円錐の頂角は、円錐の対向する側間の円錐の頂点の角度である。円錐内の、かつ円錐の頂点から離れる点802の運動が、衝突が解決される結果をもたらすために、頂角は180度以下でなければならない。頂角が非常に小さい(例えば、40度未満)場合、すなわち、円錐が非常に狭い場合、点802の許容される運動は非常に制限されており、外科医が外科手術ロボットアームの任意の運動を引き起こすことがより困難になることを意味する。したがって、外科医が衝突を解決するのはより困難であり、衝突を解決するために臨床チームに置かれる依存がより高まる。これにより、外科医が苛立ちを感じ始め、システムに対する全体的な外科医の満足度が低減され得る。
【0108】
しかしながら、頂角が180度に等しいか又は180度に近い場合、すなわち円錐が非常に広い場合、これは他の問題をもたらし得る。例えば、衝突が点802と別の表面との間のぶつかり合いから生じる場合、外科医が180の頂角を有する円錐内の点を移動することを可能にすると、点は、表面の端部、例えば、縁部に到達するまで表面に沿って摺動する場合がある。この時点で、点は、表面から「落ちて」、アームの遠位端の動きの揺れにつながり得ることが見出された。このような揺れは、器具の突然の制御不能な動きに起因して、患者に損傷を引き起こし得る。したがって、円錐の頂角は180度に近くないことが望ましい。仮想円錐の頂角が40度~100度の範囲内であることが最適であること見出された。特に、仮想円錐の頂角は60度であり得る。他の好適な頂角は、100、90、80、70、50、又は40度であり得る。
【0109】
前述したように、衝突が重度であると決定された場合、制御ユニットは、衝突が、アームに力を与えるか又はアーム上の制御装置を作動させる臨床チームのメンバーによってのみ解決され得るように、外科手術ロボットアームを制御する。対照的に、衝突が重度ではないと決定された場合、衝突は、アームに外力を与える臨床チームのメンバーによって、又はアーム上の制御装置を作動させることによって、又は外科医により外科医入力デバイスを使用して末端アームセグメントを移動させることによって解決され得る。外科医は、仮想円錐内で衝撃が加わったアーム又は器具上の点を、円錐の頂点から離れる方向の任意の方向に0.02m/sの速度で移動させて、衝突を解決しようとすることができる。
【0110】
ステップ706で、制御ユニットは、衝突が解決されたと決定する。制御ユニットは、前述の方法に従って衝突が解決されたと決定し得る。
【0111】
ステップ707は、衝突が解決されたと決定してから2秒が経過したときに実施される。ステップ707で、外科手術ロボットアームの運動に対する規制が解除される。他の例によると、制御ユニットは、衝突が解決されたことを検出した後、より迅速に又はよりゆっくりと規制を解除し得る。例えば、制御ユニットは、衝突が解決されたと決定された後、1秒間又は3秒間、末端アームセグメントの運動の速度を制限するように、出力信号を外科手術ロボットアームに送信し得る。規制を解除するステップ707は、即座に実施され得る。あるいは、規制は、末端アームセグメントの許容される運動の速度が0.02m/sから通常の許容される動作速度までゆっくりと上昇するように、ある期間にわたって徐々に解除され得る。
【0112】
ステップ708で、制御ユニットは、外科医入力デバイスから入力信号を受信し続けるが、ここでは、規制なく外科手術ロボットアームの運動を制御するように、出力信号を外科手術ロボットアームに送信する。ステップ707の後、制御ユニットは、外科手術ロボットアームの運動に対していかなる制限も課さない。したがって、ステップ708で、制御ユニットは通常の動作に戻る。換言すれば、制御ユニットは、衝突が検出される前のように動作する。ステップ708後に更なる衝突が検出された場合、制御ユニットは、ステップ301で開始する方法を再開することになる。
【0113】
前述したように、
図1に示されるシステム100は、1つ以上の更なる外科手術ロボットアームを含む、より大きなシステムの一部であり得る。このようなシステムでは、制御ユニット107は、外科手術ロボットアームの各々に対して、外科医入力デバイスから入力信号を受信するように構成されている。制御ユニットのメモリ109内に記憶されたソフトウェアは、これらの入力に応答するように構成されており、プロセッサ108は、ソフトウェアを実行して、出力信号を1つ以上の更なる外科手術ロボットアームのうちのいずれかのアクチュエータに送信し、それによってそれぞれのアームのジョイントを外科医入力デバイスからの入力信号に従って移動させるように構成されている。それによって、外科医は、外科医入力デバイスを使用して、外科手術ロボットアームの各々の運動を制御することができる。前述の制御ユニット107及び外科医コマンドインターフェース106と同様に、より大きな外科手術システムは、外科手術機器に連結された任意の数の外科手術ロボットアーム(機器アーム)、及び内視鏡に連結された任意の数の外科手術ロボットアーム(内視鏡アーム)を含み得る。内視鏡は、外科医コマンドインターフェース106のディスプレイに信号を提供し、それによって、外科医は外科手術部位を観察することができる。
【0114】
制御ユニットは、システム内の外科手術ロボットアームのうちのいずれかを制御するために、外科医入力デバイスから入力信号を受信するように構成されている。制御ユニットは、出力信号をロボットアームのうちのいずれかに送信して、それぞれのアームの運動を引き起こすように構成されている。内視鏡アームに対して衝突が検出されたとき、衝突を検出することに応答して(すなわち、衝突を検出した結果として)、制御ユニットは、内視鏡アーム及びシステム内の他の外科手術ロボットアームのうちのいくつか又は全ての運動に対して制限を課すように構成されている。制限は、システム内の外科手術ロボットアームのうちのいくつか又は全ての末端アームセグメントの運動の速度の完全な規制であり得、それによって、該末端アームセグメントの動きが一時停止される。
【0115】
制御ユニットは、様々な手段を使用して、機器アームと内視鏡アームとを区別することができる。したがって、制御ユニットは、機器アームに対する衝突と内視鏡アームに対する衝突とを区別することができる。
【0116】
内視鏡アームに対して衝突が発生した場合、内視鏡からの制御ユニットで受信された信号は、外科医が外科医コマンドインターフェースで外科手術部位を観察する能力に悪影響が及ぶように妨げられ得る。結果として患者に損傷が起こらないことを保証し、外科的処置の安全性を改善するために、衝突が内視鏡アーム上に加わったとき、内視鏡及びシステム内のあらゆる外科手術機器の運動を防止することが望ましい。したがって、システム内の全てのロボットアームの末端アームセグメントの運動を制限することが有利である。
【0117】
システムが1つの内視鏡アーム及び3つの機器アームを含み、制御ユニットが内視鏡アームに対する衝突を検出する一例によると、制御ユニットは、
図3~
図7に示される方法及び上述の方法に従って進むが、ロボットアームの末端アームセグメントの完全な規制を課す又は解除することを伴う任意のステップは、システム内の4つのロボットアーム全てに適用される同じステップに置き換えられる。例えば、ステップ302で、内視鏡アームの末端アームセグメントの運動に対して完全な規制を課すことに加えて、制御ユニットは、3つの機器アームの末端アームセグメントの運動に対して同じ規制を課す。したがって、ステップ303は、ステップ304で衝突が重度の衝突であるかどうかを決定する前に、4つのアーム全ての末端アームセグメントの運動を0.75秒間一時停止するように、制御ユニットによって実施される。他の例では、制御は、システム内のロボットアームのうちのいくつかの末端アームセグメントの運動を一時停止させることのみを引き起こし得る。
【0118】
図1のメモリ109は、コンピュータシステム、例えばプロセッサ108で実行されたとき、コンピュータシステムに本明細書に記載された方法のうちのいずれかを実施させるコンピュータ可読命令を記憶する非一時的コンピュータ可読記憶媒体であり得る。
【0119】
本明細書に記載のロボットアームは、外科手術以外の目的で使用され得ることを理解されたい。例えば、外科手術ロボットアームは、患者の一部ではない組織を操作するために、例えば、死体又は任意の他の物体の組織を操作するために制御され得る。別の例として、ロボットアームは、自動車エンジンなどの製造された物品の内側を観察するための観察機器を制御し得る。
【0120】
本明細書によって、本出願人は、本明細書に記載された各個々の特徴及び2つ以上のかかる特徴の任意の組み合わせを、かかる特徴又は組み合わせが当業者に共通する常識に照らして全体として本明細書に基づいて実施されることができるような程度まで、かかる特徴又は特徴の組み合わせが本明細書に開示されたいずれかの課題を解決するか否かにかかわらず、かつ特許請求の範囲を限定することなく、別個に開示する。本出願人は、本発明の態様が、任意のかかる個々の特徴又は特徴の組み合わせからなり得ることを示している。前述の説明を考慮すると、本発明の範囲内で様々な変形が行われ得ることは当業者には明らかであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術ロボットアームの運動を制御するための制御ユニットであって、前記制御ユニットが、前記外科手術ロボットアームを制御するための外科医入力デバイスから入力信号を受信し、かつ前記外科手術ロボットアームに出力信号を送信して、前記外科手術ロボットアームの運動を引き起こすように構成されており、前記制御ユニットが、
前記外科手術ロボットアームに対する衝突を検出し、
前記衝突を検出することに応答して、前記外科手術ロボットアームの前記運動に対して制限を課し、かつ
前記外科手術ロボットアームを制御するための前記外科医入力デバイスから入力信号を受信し、かつ前記制限に従って前記外科手術ロボットアームの運動を制御するように、前記外科手術ロボットアームに出力信号を送信するように更に構成されている、制御ユニット。
【請求項2】
前記外科手術ロボットアームが、基部と末端アームセグメントとの間に延在する、複数の従動ジョイントによって連結された複数のアームセグメントを備え、
前記外科手術ロボットアームの前記末端セグメントが、器具に連結するように構成されている、請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項3】
前記外科手術ロボットアームが、基部と末端アームセグメントとの間に延在する、複数の従動ジョイントによって連結された複数のアームセグメントを備え、前記制限が、前記末端アームセグメントの運動の速度の最大値までの規制を含み、前記最大値が、ゼロよりも大きい、請求項1又は2に記載の制御ユニット。
【請求項4】
前記外科手術ロボットアームに対する衝突を検出することが、
前記複数のジョイントの各々におけるトルクを表すトルク値を決定し、決定された前記トルク値に基づいてパラメータを決定し、かつ前記パラメータが第1のトルク閾値を超えていると決定すること、並びに
前記外科手術ロボットアームの一部又は前記外科手術ロボットアームに連結された前記器具の一部の位置誤差を決定し、かつ決定された前記位置誤差が第1の位置誤差閾値を超えていると決定すること、のうちの一方又は両方を含む、請求項
2に記載の制御ユニット。
【請求項5】
前記制御ユニットが、前記外科手術ロボットアームに対する検出された前記衝突が重度の衝突であるかどうかを決定するように更に構成されており、前記検出された衝突が重度の衝突であるかどうかを決定することが、
決定された前記パラメータが第2のトルク閾値を超えている及び/又は前記決定された位置誤差が第2の位置誤差閾値を超えていると決定することを含み、
前記第2のトルク閾値が、前記第1のトルク閾値よりも大きく、前記第2の位置誤差閾値が、前記第1の位置誤差閾値よりも大きい、請求項
4に記載の制御ユニット。
【請求項6】
前記制御ユニットが、前記検出された衝突が重度の衝突であると決定することに応答して、第1の持続期間の間、前記外科手術ロボットアームの前記運動に対して第1の制限を課すように構成されており、前記第1の制限が、末端アームセグメントの前記運動の速度の完全な規制であり、
前記制御ユニットが、前記第1の持続期間後の第2の持続期間の間、前記外科手術ロボットアームの前記運動に対して第2の制限を課すように更に構成されており、前記第2の制限が、前記末端アームセグメントの前記運動の速度の最大値までの規制であり、前記最大値が、ゼロよりも大きい、請求項
5に記載の制御ユニット。
【請求項7】
前記制限が、前記外科手術ロボットアームの前記運動の速度の規制、及び前記外科手術ロボットアームの運動の方向の規制のうちの一方又は両方を含む、
請求項1又は2に記載の制御ユニット。
【請求項8】
前記制御ユニットが、前記衝突が前記外科手術ロボットアームの特定のジョイントの運動又は前記器具の運動に影響を与えるかどうかを決定するように更に構成されており、前記衝突が前記外科手術ロボットアームの前記特定のジョイントの前記運動又は前記器具の前記運動に影響を与えるかどうかを決定することが、
前記特定のジョイントでの力を決定し、かつ決定された前記力が力閾値を超えていると決定すること、並びに
前記器具の遠位端の位置誤差を決定し、かつ決定された前記位置誤差が器具位置誤差閾値を超えていると決定すること、のうちの一方又は両方を含む、請求項
2に記載の制御ユニット。
【請求項9】
前記制御ユニットが、前記衝突が前記外科手術ロボットアームの前記特定のジョイントの前記運動又は前記器具の前記運動に影響を与えると決定することに応答して、前記衝突に関連付けられたベクトルを決定するように構成されている、請求項
8に記載の制御ユニット。
【請求項10】
前記衝突に関連付けられた前記ベクトルが、方向及び先端を有し、前記ベクトルの前記方向が、前記外科手術ロボットアーム又は器具上に加わる前記衝突の方向を表し、前記ベクトルの前記先端が、前記衝突が加わる前記外科手術ロボットアーム又は器具上の点を表す、請求項
9に記載の制御ユニット。
【請求項11】
前記制限が、仮想円錐内及び前記仮想円錐の頂点から離れる方向に運動するための、前記外科手術ロボットアーム又は器具上の前記点の前記運動の方向の規制であり、前記仮想円錐の前記頂点が、前記衝突が加わる前記外科手術ロボットアーム又は器具上の前記点に位置し、前記仮想円錐の中心軸が、前記衝突に関連付けられた前記ベクトルと同一直線上にある、請求項1
0に記載の制御ユニット。
【請求項12】
前記複数の従動ジョイントが、ロールジョイントではない、前記従動ジョイントのうちの最も遠位にある手首ジョイントを含み、
前記複数の従動ジョイントのうちの前記特定のジョイントが、前記手首ジョイントである、請求項
8~
11のいずれか一項に記載の制御ユニット。
【請求項13】
請求項1
又は2に記載の制御ユニットと、外科手術ロボットアームと、を備える、外科手術システム。
【請求項14】
外科手術ロボットアームの運動を制御するための方法であって、前記方法が、
前記外科手術ロボットアームに対する衝突を検出することと、
前記衝突を検出することに応答して、前記ロボットアームの前記運動に対して制限を課すことと、
前記外科手術ロボットアームを制御するための外科医入力デバイスから入力信号を受信すること、及び前記制限に従って、前記外科手術ロボットアームの運動を制御するように、前記外科手術ロボットアームに出力信号を送信することと、を含む、方法。
【請求項15】
非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、コンピュータシステムで実行されたときに、前記コンピュータシステムに請求項
14に記載の方法を実施させるコンピュータ可読命令を前記非一時的コンピュータ可読記憶媒体上に記憶している、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【国際調査報告】