(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】異種移植のための遺伝子改変
(51)【国際特許分類】
A01K 67/0278 20240101AFI20250130BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250130BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20250130BHJP
A61K 35/54 20150101ALI20250130BHJP
A61K 35/52 20150101ALI20250130BHJP
A61K 35/34 20150101ALI20250130BHJP
A61K 35/22 20150101ALI20250130BHJP
A61K 35/39 20150101ALI20250130BHJP
A61K 35/407 20150101ALI20250130BHJP
A61K 35/42 20150101ALI20250130BHJP
A61K 35/37 20150101ALI20250130BHJP
A61K 35/36 20150101ALI20250130BHJP
A61K 35/30 20150101ALI20250130BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20250130BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250130BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20250130BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250130BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20250130BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20250130BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20250130BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20250130BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20250130BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250130BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20250130BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20250130BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20250130BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20250130BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20250130BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20250130BHJP
【FI】
A01K67/0278 ZNA
C12N5/10
A61K35/12
A61K35/54
A61K35/52
A61K35/34
A61K35/22
A61K35/39
A61K35/407
A61K35/42
A61K35/37
A61K35/36
A61K35/30
A61K35/28
A61P43/00 105
A61P15/00
A61P9/00
A61P13/12
A61P1/18
A61P1/16
A61P11/00
A61P17/00
A61P1/04
A61P11/04
A61P27/02
A61P7/00
A61P19/08
A61P37/06
A61K45/00
A61P43/00 121
A61L27/36 100
A61L27/36 300
A61L27/36 320
A61L27/38 100
A61L27/38 120
A61L27/38 200
A61L27/38 300
A61L27/40
A61L27/58
C12N15/09 100
C12N15/09 110
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543485
(86)(22)【出願日】2023-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 US2023061434
(87)【国際公開番号】W WO2023147462
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306018457
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100227329
【氏名又は名称】延原 愛
(72)【発明者】
【氏名】サイクス,ミーガン
(72)【発明者】
【氏名】ホーリー,ロバート,ジェイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C081
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA44
4C081AB02
4C081AB11
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4C081AB15
4C081AB21
4C081CD34
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4C084ZC751
4C087AA01
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4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZA96
4C087ZB21
4C087ZC75
(57)【要約】
本明細書に提供するのは、内因性のブタCD47及びSIRPAを発現しないが、該内因性のブタCD47及びSIRPAと同じ調節エレメント下で、ヒトまたはヒト化CD47及びヒトまたはヒト化SIRPAを発現する組み換えミニブタである。同様に提供するのは、かかる組み換えミニブタに由来する細胞、組織、及び臓器である。さらに、本明細書に提供するのは、第一のドナーのかかる組み換えミニブタに由来する移植片を、第二のドナーのかかる組み換えミニブタ由来の骨髄とともにまたはそれを使用せずに移植する方法である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み換えミニブタであって、
(a)(i)ブタCD47をコードする内因性遺伝子の欠失または機能的な不活性化、ここで、前記ブタCD47をコードする内因性遺伝子の発現がブタCD47調節エレメントによって調節されるもの、及び
(ii)ブタゲノム内に挿入されたヒトCD47をコードする導入遺伝子、ここで、前記ヒトCD47をコードする導入遺伝子の発現が前記ブタCD47調節エレメントによって調節されるもの、
ならびに、
(b)(i)ブタSIRPαをコードする内因性遺伝子の欠失または機能的な不活性化、ここで、前記ブタSIRPαをコードする内因性遺伝子の発現がブタSIRPA調節エレメントによって調節されるもの、及び
(ii)ブタゲノム内に挿入されたヒトSIRPαをコードする導入遺伝子、ここで、前記ヒトSIRPαをコードする導入遺伝子の発現が前記ブタSIRPA調節エレメントによって調節されるもの
を含む、前記組み換えミニブタ。
【請求項2】
前記ミニブタが、アルファ-1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ欠損ミニブタである、請求項1に記載の組み換えミニブタ。
【請求項3】
前記アルファ-1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ欠損ミニブタが、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)近交系ミニブタである、請求項2に記載の組み換えミニブタ。
【請求項4】
前記ヒトCD47が、配列番号1、2、または3を含む、請求項1に記載の組み換えミニブタ。
【請求項5】
前記ヒトSIRPAが、配列番号4または5を含む、請求項1に記載の組み換えミニブタ。
【請求項6】
前記ヒトSIRPα及びヒトCD47をコードする導入遺伝子が、相同組み換えによって前記ミニブタのゲノムに挿入される、請求項1に記載の組み換えミニブタ。
【請求項7】
前記ヒトSIRPα及びヒトCD47をコードする導入遺伝子が、非相同末端結合によって前記ブタゲノムに挿入される、請求項1に記載の組み換えミニブタ。
【請求項8】
前記ヒトSIRPα及びヒトCD47をコードする導入遺伝子が、リコンビナーゼ媒介型のカセット交換によって前記ブタゲノムに挿入される、請求項1に記載の組み換えミニブタ。
【請求項9】
前記ヒトSIRPα及びヒトCD47をコードする導入遺伝子が、部位特異的ヌクレアーゼによって前記ブタゲノムに挿入される、請求項6~8のいずれか1項に記載の組み換えミニブタ。
【請求項10】
前記部位特異的ヌクレアーゼが、ジンクフィンガー、ZFN二量体、ZFニッカーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びCRISPR/Cas9からなる群から選択される、請求項9に記載の組み換えミニブタ。
【請求項11】
前記ヒトCD47をコードする導入遺伝子の発現が、NCBI遺伝子ID:397042のブタCD47調節エレメントによって調節される、請求項1に記載の組み換えミニブタ。
【請求項12】
前記ヒトSIRPαをコードする導入遺伝子の発現が、NCBI遺伝子ID:494566のブタSIRPA調節エレメントによって調節される、請求項1に記載の組み換えミニブタ。
【請求項13】
ヒトCD47タンパク質の発現が、免疫組織化学によって特定される、内因性のブタCD47の発現パターンと実質的に同様である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組み換えミニブタ。
【請求項14】
ヒトSIRPαタンパク質の発現が、免疫組織化学によって特定される、内因性のブタSIRPαの発現パターンと実質的に同様である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組み換えミニブタ。
【請求項15】
組み換えミニブタであって、
(a)ヒト化CD47遺伝子、及び/または
(b)ヒト化SIRPA遺伝子
を含む、前記組み換えミニブタ。
【請求項16】
前記ヒト化CD47遺伝子が、ヒトCD47のエクソン2を含むブタCD47遺伝子を含む、請求項15に記載の組み換えミニブタ。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の組み換えミニブタに由来する細胞。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか1項に記載の組み換えミニブタに由来する卵母細胞。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか1項に記載の組み換えミニブタに由来する精子。
【請求項20】
請求項1~16のいずれか1項に記載の組み換えミニブタに由来する組織。
【請求項21】
請求項1~16のいずれか1項に記載の組み換えミニブタに由来する臓器。
【請求項22】
第一の組み換えミニブタに由来する移植片を霊長類に移植する方法であって、
(a)請求項1~16のいずれか1項に記載の第一の組み換えミニブタから移植片を採取すること、及び
(b)前記移植片を前記霊長類に移植することを
含む、前記方法。
【請求項23】
前記霊長類がヒトである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記移植片が、細胞、組織、または臓器を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記臓器が、心臓、腎臓、膵島、肝臓、膵臓、肺、腸、皮膚、気管、及び角膜、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
さらに、請求項1~16のいずれか1項に記載の第二の組み換えミニブタから骨髄を採取すること、及び前記骨髄を同じ霊長類に移植することを含む、請求項22~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記骨髄が、前記第一の組み換えブタからの移植の少なくとも28日前に移植される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第一の組み換えミニブタと前記第二の組み換えミニブタが、同じ組み換えブタである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記第一の組み換えミニブタと前記第二の組み換えミニブタが、高度近交系のミニブタの群に由来する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記第一の組み換えミニブタと前記第二の組み換えミニブタが、遺伝的に適合性のあるミニブタである、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記第一の組み換えミニブタと前記第二の組み換えミニブタは、MHCが適合している、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記第一の組み換えミニブタ由来の移植片が、前記レシピエント内で、少なくとも6ヶ月、1年、5年、10年、15年、または20年間生存する、請求項22~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記第一の組み換えミニブタ由来の移植片が、前記レシピエント内で、少なくとも6ヶ月、1年、5年、10年、15年、または20年間機能する、請求項22~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記レシピエントにおいて、必要な免疫抑制療法が、90%、80%、70%、60%、または50%低減される、請求項22~31のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願の相互参照
本出願は、2022年1月28日に出願された米国仮出願第63/304,220号の利益を主張する。当該仮出願の全開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
2.電子的に提出された配列表の参照
本出願は、本出願とともにXMLファイルフォーマットで提出されたコンピュータで読み取り可能な配列表を含む。当該配列表の全内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。本出願とともに提出された当該配列表のXMLファイルは、「14648-006-228_SequenceListing.xml」という表題であり、2023年1月24日に作成され、16,653バイトのサイズである。
【0003】
3.技術分野
本明細書に提供するのは、内因性のブタCD47もSIRPAも発現せず、ヒトまたはヒト化CD47及びヒトまたはヒト化SIRPAを発現する、組み換えミニブタである。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組み換えミニブタにおけるヒトまたはヒト化CD47及びヒトまたはヒト化SIRPAの発現は、内因性のブタCD47及びSIRPAと同じ調節エレメント下である。同様に提供するのは、かかる組み換えミニブタに由来する細胞、組織、及び臓器である。さらに、本明細書に提供するのは、第一のドナーのかかる組み換えミニブタに由来する移植片を、第二のドナーのかかる組み換えミニブタ由来の骨髄とともにまたはそれを使用せずに移植する方法である。
【背景技術】
【0004】
4.背景技術
同種異系ドナーの深刻な不足により、現在、実施される臓器移植の数は限られている。この需要と供給の不均衡は、他の種由来の臓器(異種移植片)の使用によって補正される場合がある。非ヒト霊長類の使用に関連する倫理的問題及び非現実性を考慮すると、ブタがヒトにとって最も適切なドナー種であると考えられる。ヒトとの臓器サイズ及び生理学的類似性に加えて、ブタを急速に繁殖及び近親交配することができることが、ブタをヒトに対する移植片ドナーとして機能する能力を改善し得る遺伝子改変に特に適したものにする。例えば、Sachs(1994),Path.Biol.42:217-219及びPiedrahita et al.(2004),Am.J.Transplant,4 Suppl.6:43-50を参照されたい。
【0005】
非特異的免疫抑制療法と組み合わせた移植は、早期の高い移植片受容率と関連するが、臨床臓器移植の成功に対する主な制限は、後期移植片喪失であり、主に移植物の慢性拒絶反応に起因する。したがって、異種移植片拒絶反応を予防するために必要な生涯にわたる免疫抑制のレベルは、許容できないほど毒性が高すぎる可能性があるため、免疫寛容は、移植の主要な目標であり、臨床異種移植を成功させるためにさらに重要になる。さらに、患者において免疫寛容が達成されたかどうかを確実に示すマーカーは同定されていないため、免疫抑制の離脱の基礎となる検査値は存在しない。
【0006】
したがって、異種移植における目標は、免疫寛容の達成を含む。これは、異種胸腺移植によって、またはドナー動物に由来する混合キメラ細胞が異種レシピエントに移植された後の該細胞の耐久性を最適化すること、及び該ドナー動物の健康及び生存能力を維持することによって達成され得る。
【0007】
混合キメリズムは、当該レシピエントのT細胞、B細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞のレベルで当該ドナーに対する寛容を誘導することができる。例えば、Griesemer et al.(2014),Immunol.Rev.258:241-258、Sachs et al.(2014),Cold Spring Harb.Perspect.Med.4:a015529を参照されたい。
【0008】
CD47、別名インテグリン会合タンパク質(IAP)は、遍在的に発現される50-kDaの細胞表面糖タンパク質であり、シグナル調節タンパク質SIRPα(別名CD172a、及びSHPS-1、その遺伝子はSIRPAである)のリガンドとして機能する。例えば、Brown(2002),Curr.Opin.Cell.Biol.,14:603-7、及びBrown and Frazier(2001),Trends Cell Biol.,111130-5を参照されたい。CD47及びSIRPαは、細胞遊走、B細胞の接着、及びT細胞活性化を含めた様々な細胞プロセスにおいて重要な役割を果たす細胞間連絡系を構成する。例えば、Liu et al.(2002),J.Biol.Chem.277:10028、Motegi et al.(2003),EMBO 122:2634、Yoshida et al.(2002),J.lmmunol.168:3213、及びLatour et al.(2001),J.lmmunol.167:2547を参照されたい。さらに、該CD47-SIRPα系は、マクロファージによる貪食の負の調節に関与している。一部の細胞型(すなわち、赤血球、血小板または白血球)の表面のCD47は、マクロファージによる貪食を阻害した。貪食の阻害におけるCD47-SIRPα相互作用の役割は、初代野生型マウスマクロファージが、CD47欠損マウスから得たオプソニン化されていない赤血球(RBC)を急速に貪食するが、野生型マウス由来のものは貪食しないという観察によって説明されている。例えば、Oldenborg et al.(2000),Science 288:2051を参照されたい。また、CD47は、その受容体であるSIRPαを介して、Fcγ及び補体の両受容体媒介性の貪食を阻害することも報告されている。例えば、Oldenborg et al.(2001),J.Exp.Med.193:855を参照されたい。CD47KO細胞は、同系野生型(WT)マウスへの注入後にマクロファージによって激しく拒絶されることから、CD47がマクロファージに「don’t eat me」シグナルを提供することが実証される。例えば、Oldenborg PA,et al.(2000),Science,288:2051-4、及びWang et al.(2007),Proc Natl Acad Sci U S A.104:13744を参照されたい。移植源としてブタを使用する異種移植は、臨床移植における主要な制限因子であるヒト臓器ドナーの深刻な不足を解決する可能性を有する。例えば、Yang et al.(2007),Nature Reviews Immunology.7:519-31を参照されたい。マクロファージによる異種細胞の強い拒絶反応(例えば、Abe(2002),The Journal of Immunology 168:621参照)は、主にドナーCD47とレシピエントSIRPαとの間の機能的相互作用の欠如によって引き起こされること(例えば、Wang et al.(2007),Blood;109:836-42、Ide et al.(2007),Proc Natl Acad Sci USA 104:5062-6、及びNavarro-Alvarez(2014),Cell transplantation,23:345-54参照)が、ヒトCD47トランスジェニックブタの開発につながっている(例えば、Tena et al.(2017),Transplantation 101:316-21、及びNomura et al.(2020),Xenotransplantation 2020;27:e12549参照)。マクロファージに加えて、DCの亜集団もまたSIRPαを発現する(例えば、Wang et al.(2007),Proc Natl Acad Sci U S A.104:13744-9、及びGuilliams et al.(2016),Immunity.45:669-84参照)。CD47-SIRPαのシグナル伝達はまた、DCの活性化及びそれらがT細胞を感作する能力を阻害し、ドナー特異的輸血(DST)または肝細胞移植によるT細胞寛容の誘導において重要な役割を果たす。例えば、Wang et al.(2007),Proc Natl Acad Sci U S A.104:13744-9、Wang et al.(2014),Cell transplantation 23:355-63、及びZhang et al.(2016),Sci Rep.6:26839を参照されたい。このように、CD47-SIRPαシグナル伝達を介した拒絶反応を受けない異種移植用の安全かつ寛容性良好なドナー材料(例えば、臓器、組織、細胞等)を生成するための満たされていないニーズが存在する。
【発明の概要】
【0009】
5.発明の概要
1つの態様では、本明細書に提供するのは、組み換えミニブタであり、該組み換えミニブタは、(a)(i)ブタCD47をコードする内因性遺伝子の欠失または機能的な不活性化、ここで、該ブタCD47をコードする内因性遺伝子の発現がブタCD47調節エレメントによって調節されるもの、及び(ii)ブタゲノムに挿入されたヒトCD47をコードする導入遺伝子、ここで、該ヒトCD47をコードする導入遺伝子の発現が該ブタCD47調節エレメントによって調節されるもの、ならびに(b)(i)ブタSIRPαをコードする内因性遺伝子の欠失または機能的な不活性化、ここで、該ブタSIRPαをコードする内因性遺伝子の発現がブタSIRPA調節エレメントによって調節されるもの、及び(ii)ブタゲノムに挿入されたヒトSIRPαをコードする導入遺伝子、ここで、該ヒトSIRPαをコードする導入遺伝子の発現が該ブタSIRPA調節エレメントによって調節されるものを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、該ミニブタは、アルファ-1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ欠損ミニブタである。
【0011】
いくつかの実施形態では、該アルファ-1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ欠損ミニブタは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)近交系ミニブタである。
【0012】
いくつかの実施形態では、該ヒトCD47は、配列番号1、2、または3を含む。いくつかの実施形態では、該ヒトSIRPAは、配列番号4または5を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、該ヒトSIRPα及びヒトCD47をコードする導入遺伝子は、相同組み換えによってミニブタのゲノムに挿入される。いくつかの実施形態では、該ヒトSIRPα及びヒトCD47をコードする導入遺伝子は、非相同末端結合によって該ブタゲノムに挿入される。いくつかの実施形態では、該ヒトSIRPα及びヒトCD47をコードする導入遺伝子は、リコンビナーゼ媒介型のカセット交換によって該ブタゲノムに挿入される。いくつかの実施形態では、該ヒトSIRPα及びヒトCD47をコードする導入遺伝子は、部位特異的ヌクレアーゼによって該ブタゲノムに挿入される。いくつかの実施形態では、該部位特異的ヌクレアーゼは、ジンクフィンガー、ZFN二量体、ZFニッカーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びCRISPR/Cas9からなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、該ヒトCD47をコードする導入遺伝子の発現は、NCBI遺伝子ID:397042のブタCD47調節エレメントによって調節される。前記ヒトSIRPαをコードする導入遺伝子の発現が、NCBI遺伝子ID:494566のブタSIRPA調節エレメントによって調節される、請求項1に記載の組み換えミニブタ。
【0015】
いくつかの実施形態では、該ヒトCD47タンパク質の発現は、免疫組織化学によって特定される、内因性のブタCD47の発現パターンと実質的に同様である。いくつかの実施形態では、該ヒトSIRPαタンパク質の発現は、免疫組織化学によって特定される、内因性のブタSIRPαの発現パターンと実質的に同様である。
【0016】
別の態様では、本明細書に提供するのは、ヒト化CD47遺伝子、及び/または(b)ヒト化SIRPA遺伝子を含む組み換えミニブタである。いくつかの実施形態では、該組み換えミニブタは、ヒト化CD47遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、該組み換えミニブタは、ヒト化SIRPA遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、該組み換えミニブタは、ヒト化CD47遺伝子及びヒト化SIRPA遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、該ヒト化CD47遺伝子は、ヒトCD47のエクソン2を含むブタCD47遺伝子を含む。
【0017】
別の態様では、本明細書に提供するのは、本明細書に提供する組み換えミニブタに由来する細胞である。
【0018】
別の態様では、本明細書に提供するのは、本明細書に提供する組み換えミニブタに由来する卵母細胞である。
【0019】
別の態様では、本明細書に提供するのは、本明細書に提供する組み換えミニブタに由来する精子である。
【0020】
別の態様では、本明細書に提供するのは、本明細書に提供する組み換えミニブタに由来する組織である。
【0021】
別の態様では、本明細書に提供するのは、本明細書に提供する組み換えミニブタに由来する臓器である。
【0022】
さらに別の態様では、本明細書に提供するのは、第一の組み換えミニブタに由来する移植片を霊長類に移植する方法であり、該方法は、(a)本明細書に提供する第一の組み換えミニブタから移植片を採取すること、及び(b)該移植片を該霊長類に移植することを含む。いくつかの実施形態では、該霊長類は、ヒトである。いくつかの実施形態では、該移植片は、細胞、組織、または臓器を含む。いくつかの実施形態では、該臓器は、心臓、腎臓、膵島、肝臓、膵臓、肺、腸、皮膚、気管、及び角膜、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0023】
いくつかの実施形態では、該方法はさらに、本明細書に提供する第二の組み換えミニブタから骨髄を採取すること、及び該骨髄を同じ霊長類に移植することを含む。いくつかの実施形態では、該骨髄は、該第一の組み換えブタからの移植の少なくとも28日前に移植される。
【0024】
いくつかの実施形態では、該第一の組み換えミニブタと該第二の組み換えミニブタは、同じ組み換えブタである。いくつかの実施形態では、該第一の組み換えミニブタと該第二の組み換えミニブタは、高度近交系のミニブタの群に由来する。いくつかの実施形態では、該第一の組み換えミニブタと該第二の組み換えミニブタは、遺伝的に適合性のあるミニブタである。いくつかの実施形態では、該第一の組み換えミニブタと該第二の組み換えミニブタは、MHCが適合している。
【0025】
いくつかの実施形態では、該第一の組み換えミニブタ由来の移植片は、レシピエント内で、少なくとも6ヶ月、1年、5年、10年、15年、または20年間生存する。いくつかの実施形態では、該第一の組み換えミニブタ由来の移植片は、レシピエント内で、少なくとも6ヶ月、1年、5年、10年、15年、または20年間機能する。
【0026】
いくつかの実施形態では、該レシピエントにおいては、必要な免疫抑制療法が、90%、80%、70%、60%、または50%低減される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
6.図面の簡単な説明
【
図1A】ガイドペアなしのブタCD47の発現レベルを示す。
【
図1B】ガイドペア番号1に従うブタCD47の発現レベルを示す。
【
図1C】ガイドペア番号2に従うブタCD47の発現レベルを示す。
【
図1D】ガイドペア番号3に従うブタCD47の発現レベルを示す。
【
図2】抗CD47モノクローナル抗体B6H12(ヒトのみ)への結合に基づいてソートしたトランスフェクト細胞についてのCD47染色の結果を示す。ヒト特異的モノクローナルB6H12でブロックした場合、ヒト及びブタCD47の両方に結合する抗CD47モノクローナル抗体CC26で染色することにより、集団の非常に高いパーセンテージがブタCD47に対してヌルであることがさらに実証された。
【発明を実施するための形態】
【0028】
7.発明を実施するための形態
本明細書に提供するのは、ヒトまたはヒト化CD47及びヒトまたはヒト化SIRPAを発現するが、内因性のブタCD47もブタSIRPAも発現しない、組み換えミニブタである。特定の態様では、ヒトもしくはヒト化CD47及び/またはヒトもしくはヒト化SIRPAの発現は、それぞれの内因性のブタ遺伝子と同じ調節エレメント下にある。該組み換えミニブタの生成は、セクション7.1に記載されている。同様に提供するのは、かかる組み換えミニブタに由来する細胞、組織、及び臓器であり、これは、セクション7.2に記載されている。さらに、本明細書に提供するのは、第一のドナーのかかる組み換えミニブタに由来する移植片を、第二のドナーのかかる組み換えミニブタ由来の骨髄とともにまたはそれを使用せずに移植する方法であり、これは、セクション7.3に記載されている。
【0029】
7.1 組み換えミニブタの生成
本明細書に提供するのは、ヒトまたはヒト化CD47及びヒトまたはヒト化SIRPAを発現するが、内因性のブタCD47もブタSIRPAも発現しない、遺伝子改変ブタである。特定の態様では、該遺伝子改変ブタにおけるヒトもしくはヒト化CD47及び/またはヒトもしくはヒト化SIRPAの発現は、内因性の調節エレメント(すなわち、それぞれ、ブタCD47及びブタSIRPA調節エレメント)によって調節される。かかる遺伝子改変ブタの細胞、組織、及び臓器は、霊長類への移植に使用され得る。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、かかる移植は、ドナーブタ及び移植される移植片の健康を確保するだけでなく、霊長類に移植された後の移植片の長期生存率を最大化する。
【0030】
内因性のブタCD47及びSIRPAを欠失または不活性化し、ヒトホモログまたはその一部を挿入することは、当技術分野で既知の様々な方法、例えば、セクション7.1.1または実施例に記載の方法を使用して達成され得る。ある特定の実施形態では、内因性のブタCD47及びSIRPA遺伝子またはその一部を欠失するようにブタゲノムを改変すること、ならびにヒトCD47及びSIRPA遺伝子(セクション7.1.2に記載のヒトホモログ等)またはその一部を挿入することは、単一のステップで行われ得る。ある特定の実施形態では、内因性のブタCD47及びSIRPA遺伝子またはその一部を欠失するようにブタゲノムを改変すること、ならびにヒトCD47及びSIRPA遺伝子またはその一部を挿入することは、2つ以上のステップで行われ得る。挿入されるヒトCD47及びSIRPAの配列の表は、表1に見出すことができる。いくつかの実施形態では、ブタCD47のエクソン2が、ヒトCD47のエクソン2で置換される。該組み換えブタの生成の成功を実験的に判断する方法は、セクション7.1.3に記載されている。さらに、該ドナーミニブタは、さらなる遺伝子改変、例えば、セクション7.1.4に記載の遺伝子改変を担持し得る。
【0031】
特定の実施形態では、該ドナーミニブタは、該ドナー動物の内因性のCD47及びSIRPA遺伝子がノックアウトされた場合にのみ発現されるヒトCD47及びSIRPA導入遺伝子を担持する。いくつかの実施形態では、該ドナー動物の内因性のCD47及びSIRPA遺伝子は、移植のための移植片が採取される直前にノックアウトされる。この「遺伝子スイッチ」は、該ドナーミニブタが、その生涯の大部分の間健康を維持することを可能にすると同時に、ヒトレシピエントにおける最適な移植寛容のためのヒト導入遺伝子の発現を可能にする。
【0032】
特定の実施形態では、該ドナーミニブタは、ヒトのCD47及びSIRPAの生理学的レベルに匹敵するレベルでCD47及びSIRPAを発現する。例えば、ドナーミニブタの腎臓で発現されるCD47及びSIRPαタンパク質のレベルは、健康なヒト対象の腎臓で発現されるCD47及びSIRPαタンパク質のレベルに匹敵する。タンパク質発現は、当技術分野で既知の、または本明細書に記載の方法によって測定され得る。
【0033】
特定の実施形態では、該ドナーミニブタの一方の腎臓のみがCD47及びSIRPαタンパク質を発現する。
【0034】
7.1.1 内因性のブタ遺伝子の欠失及びヒトホモログの挿入
7.1.1.1 内因性のブタ遺伝子の欠失または不活性化
1つの態様では、本明細書に提供するのは、内因性のブタCD47及びSIRPAを欠失または不活性化し、ヒトまたはヒト化CD47及びヒトまたはヒト化SIRPAを挿入する方法である。
【0035】
相同組み換え(HR)とは、ヌクレオチド配列が、2つの類似または同一のDNA分子間で交換される遺伝子組み換えである。いくつかの実施形態では、内因性のブタCD47及びSIRPAは、該内因性のブタCD47及びSIRPAの一部が置換されるように、HRベースの方法で欠失または不活性化される。いくつかの特定の実施形態では、該内因性のブタCD47及びSIRPAの一部の置換により、該内因性のブタCD47及びSIRPAの開始コドンが破壊される。他の特定の実施形態では、該内因性のブタCD47及びSIRPAの一部の置換により、そのオープンリーディングフレームが破壊される。他の特定の実施形態では、該内因性のブタCD47及びSIRPAの一部の置換は、転写を無視できるレベルまでブロック、阻止、または低減する。他の特定の実施形態では、該内因性のブタCD47及びSIRPAの一部の置換により、翻訳産物がもたらされないか、または非機能的転写産物がもたらされる。いくつかの実施形態では、内因性のブタCD47及びSIRPAは、該内因性のブタCD47及びSIRPAの全長が非CD47及び非SIRPA遺伝子で置換されるように、HRベースの方法で欠失または不活性化される。いくつかの実施形態では、ブタCD47及び/またはSIRPAの一部(例えば、1つ以上のエクソン)は、それぞれ、ヒトCD47及び/またはSIRPAの相同領域で置換される。いくつかの特定の実施形態では、該非CD47及び非SIRPA遺伝子は選択遺伝子である。特定の実施形態では、非CD47及び非SIRPA遺伝子は、薬剤耐性遺伝子である。
【0036】
特定の実施形態では、ブタCD47及びSIRPAのオープンリーディングフレームが欠失され、ヒトCD47及びSIRPAのオープンリーディングフレームで置換される。特定の実施形態では、ブタCD47及びSIRPAのエクソンが欠失され、ヒトCD47及びSIRPAのエクソンで置換される。
【0037】
理論に拘束されることを望むものではないが、ブタCD47及びSIRPAのオープンリーディングフレーム、またはブタCD47及びSIRPAのエクソンの欠失、ならびにそれらをそれぞれのヒト対応物で置換することにより、ヒトCD47及びSIRPAが、それぞれ、CD47及びSIRPAのブタ調節エレメントの制御下で発現される。それぞれのブタ遺伝子のブタ調節エレメントの制御下でのヒトCD47及びSIRPAの調節により、内因性のブタCD47及びSIRPAの発現パターン及びレベルと同様のヒトCD47及びSIRPAの発現パターン及びレベルがもたらされる。遺伝子発現レベルは、例えば、定量的PCR、リアルタイムPCR、サザンブロッティングまたはRNAシーケンシングを含めた当技術分野で既知の任意の適切な方法を使用して特定され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、ブタ調節エレメントの制御下でのヒトまたはヒト化CD47の発現レベルは、内因性のブタCD47の発現レベルと実質的に同様である(例えば、内因性のブタCD47の発現よりもわずか約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、もしくは約20%高いか、または低い)。いくつかの実施形態では、ブタ調節エレメントの制御下でのヒトまたはヒト化SIRPAの発現レベルは、内因性のブタSIRPAの発現レベルと実質的に同様である(例えば、内因性のブタSIRPAの発現よりもわずか約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、もしくは約20%高いか、または低い)。いくつかの実施形態では、ブタ調節エレメントの制御下でのヒトまたはヒト化CD47及びヒトまたはヒト化SIRPAの両発現レベルは、それぞれ、内因性のブタCD47及び内因性のブタSIRPAの発現レベルと実質的に同様である(例えば、内因性のブタCD47及び内因性のブタSIRPAの発現よりもわずか約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、もしくは約20%高いか、または低い)。
【0039】
いくつかの実施形態では、ブタ調節エレメントの制御下でのヒトまたはヒト化CD47の空間的発現パターンは、内因性のブタCD47の空間的発現パターンと実質的に同様である。いくつかの実施形態では、ブタ調節エレメントの制御下でのヒトまたはヒト化SIRPAの空間的発現パターンは、内因性のブタSIRPAの空間的発現パターンと実質的に同様である。いくつかの実施形態では、ブタ調節エレメントの制御下でのヒトまたはヒト化CD47及びヒトまたはヒト化SIRPAの両空間的発現パターンは、それぞれ、内因性のブタCD47及び内因性のブタSIRPAの空間的発現パターンと実質的に同様である。
【0040】
空間的遺伝子発現パターンは、例えば、シングルセルシーケンシング、単分子蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、または空間トランスクリプトミクスを含めた当技術分野で既知の任意の適切な方法を使用して特定され得る。特殊な遺伝子発現パターンを分析するための例示的な方法が記載されており、例えば、Sun et al.,Nat Methods.2020 February;17(2):193-200及びDries et al.,Genome Biology(2021)22:78を参照されたい。
【0041】
いくつかの実施形態では、ブタ調節エレメントの制御下でのヒトまたはヒト化CD47の時間的発現パターンは、内因性のブタCD47の時間的発現パターンと実質的に同様である(例えば、内因性のブタCD47の発現と比較して、わずか約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、もしくは約20%遅延または加速する)。いくつかの実施形態では、ブタ調節エレメントの制御下でのヒトまたはヒト化SIRPAの時間的発現パターンは、内因性のブタSIRPAの時間的発現パターンと実質的に同様である(例えば、内因性のブタSIRPAの発現と比較して、わずか約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、もしくは約20%遅延または加速する)。いくつかの実施形態では、ブタ調節エレメントの制御下でのヒトまたはヒト化CD47及びヒトまたはヒト化SIRPAの両時間的発現パターンは、それぞれ、内因性のブタCD47及び内因性のブタSIRPAの時間的発現パターンと実質的に同様である(例えば、内因性のブタCD47及び内因性のブタSIRPAの発現と比較して、わずか約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、もしくは約20%遅延または加速する)。
【0042】
リコンビナーゼは、介在ポリヌクレオチドの横に位置する特定のポリヌクレオチド配列(リコンビナーゼ認識部位)を認識し、相互ストランド交換を触媒して、介在ポリヌクレオチドの反転または切除をもたらす酵素である。例えば、Araki et al.(1995),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:160-164を参照されたい。いくつかの実施形態では、内因性のブタCD47及びSIRPAは、リコンビナーゼベースの方法及び同じ方向のリコンビナーゼ認識部位を用いて欠失または不活性化される。いくつかの特定の実施形態では、同じ方向のリコンビナーゼ認識部位の位置は、全長ブタ遺伝子全体が欠失されるように設計される。いくつかの特定の実施形態では、同じ方向のリコンビナーゼ認識部位の位置は、該ブタ遺伝子の一部が欠失されることによって、異常な転写または翻訳がもたらされるように設計される。他の実施形態では、内因性のブタCD47及びSIRPAは、リコンビナーゼベースの方法及び逆方向のリコンビナーゼ認識部位を用いて欠失または不活性化される。いくつかの特定の実施形態では、該逆方向のリコンビナーゼ認識部位の位置は、全長ブタ遺伝子全体が反転されることによって、異常な転写または翻訳がもたらされるように設計される。いくつかの特定の実施形態では、該逆方向のリコンビナーゼ認識部位の位置は、該ブタ遺伝子の一部が反転されることによって、異常な転写または翻訳がもたらされるように設計される。
【0043】
配列特異的エンドヌクレアーゼとしては、RNA誘導型DNAヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas9系)、ZFN、ZFN二量体、ZFニッカーゼ、及びTALENが挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、内因性のブタCD47及びSIRPAは、配列特異的エンドヌクレアーゼベースの方法により欠失または不活性化される。いくつかの特定の実施形態では、該配列特異的エンドヌクレアーゼは、内因性のブタCD47及びSIRPAの開始コドンを破壊することを目的とするように設計される。他の特定の実施形態では、該配列特異的エンドヌクレアーゼは、内因性のブタCD47及びSIRPAの正常なオープンリーディングフレームを破壊することを目的とするように設計される。他の特定の実施形態では、該配列特異的エンドヌクレアーゼは、転写産物がもたらされないことを目的とするように設計される。さらに他の特定の実施形態では、該配列特異的エンドヌクレアーゼは、翻訳産物がもたらされないか、または非機能的転写産物がもたらされることを目的とするように設計される。
【0044】
7.1.1.2 ヒト遺伝子をブタゲノムに挿入する
いくつかの実施形態では、ブタCD47を置換するために使用される導入遺伝子は、ヒトCD47のゲノム配列またはその一部である。ゲノムDNAを使用することにより、すべてのヒトCD47アイソフォームが発現され得る。他の実施形態では、ブタCD47を置換するために使用される導入遺伝子は、ヒトCD47の既知のスプライスバリアントのメッセージRNA(mRNA)の相補的DNAである。他の実施形態では、ブタCD47を置換するために使用される導入遺伝子は、ヒトCD47の既知のスプライスバリアントのコード配列(CDS)である。ヒトCD47をコードする核酸配列は、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:NC_000003.12。ヒトCD47アイソフォーム1をコードするmRNAのcDNAは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:NM_001777.4。ヒトCD47アイソフォーム2をコードするmRNAのcDNAは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:NM_198793.3。ヒトCD47アイソフォーム3をコードするmRNAのcDNAは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:NM_001382306.1。ヒトCD47アイソフォーム1をコードするCDSは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:CCDS43126.1または配列番号1、これは、アミノ酸配列NP_001768.1に対応する。ヒトCD47アイソフォーム2をコードするCDSは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:CCDS43125.1または配列番号2、これは、アミノ酸配列NP_942088.1に対応する。ヒトCD47アイソフォーム3をコードするCDSは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:配列番号3、これは、アミノ酸配列NP_001369235.1に対応する。いくつかの実施形態では、ブタCD47を置換するために使用される導入遺伝子は、1つ以上のヒトエクソン(例えば、ヒトCD47のエクソン2)である。
【0045】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物に使用されるヒトCD47をコードする導入遺伝子は、下記表1に列挙される導入遺伝子である。ある特定の実施形態では、該ヒトCD47をコードする導入遺伝子は、配列番号1のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、該ヒトCD47をコードする導入遺伝子は、配列番号2のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、該ヒトCD47をコードする導入遺伝子は、配列番号3のヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、該ヒトCD47をコードする導入遺伝子は、配列番号1と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一であるヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、該ヒトCD47をコードする導入遺伝子は、配列番号2と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一であるヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、該ヒトCD47をコードする導入遺伝子は、配列番号3と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、該導入遺伝子は、ヒトCD47のゲノム配列であり、該導入遺伝子は、最初のエクソンから最後のエクソンまで拡大するブタCD47のゲノム配列を置換する。他の実施形態では、該導入遺伝子は、ヒトCD47のcDNAであり、該導入遺伝子は、最初のエクソンから最後のエクソンまで拡大するブタCD47のゲノム配列を置換する。他の実施形態では、該導入遺伝子は、ヒトCD47のcDNAであり、該導入遺伝子は、ブタCD47をインタクトなブタ5’UTR及び3’UTRで置換する。さらに他の実施形態では、該導入遺伝子は、ヒトCD47のCDSであり、該導入遺伝子は、ブタCD47をインタクトなブタ5’UTR及び3’UTRで置換する。いくつかの実施形態では、該導入遺伝子は、ヒトCD47の一部(例えば、ヒトCD47のエクソン2)である。
【0047】
本明細書で提供されるように、ある特定の態様では、該CD47導入遺伝子は、ヒト化CD47である。いくつかの実施形態では、該ヒト化CD47は、ヒトCD47の対応する1つ以上の相同エクソンで置換された1つ以上のエクソンを含む内因性のブタCD47である。例えば、いくつかの実施形態では、該CD47導入遺伝子は、ブタCD47のエクソン1がヒトCD47のエクソン1で置換されたヒト化CD47である。いくつかの実施形態では、該CD47導入遺伝子は、ブタCD47のエクソン2がヒトCD47のエクソン2で置換されたヒト化CD47である。いくつかの実施形態では、該CD47導入遺伝子は、ブタCD47のエクソン3がヒトCD47のエクソン3で置換されたヒト化CD47である。いくつかの実施形態では、該CD47導入遺伝子は、ブタCD47のエクソン4がヒトCD47のエクソン4で置換されたヒト化CD47である。いくつかの実施形態では、該CD47導入遺伝子は、ブタCD47のエクソン5がヒトCD47のエクソン5で置換されたヒト化CD47である。いくつかの実施形態では、該CD47導入遺伝子は、ブタCD47のエクソン6がヒトCD47のエクソン6で置換されたヒト化CD47である。いくつかの実施形態では、該CD47導入遺伝子は、ブタCD47のエクソン7がヒトCD47のエクソン7で置換されたヒト化CD47である。いくつかの実施形態では、該CD47導入遺伝子は、ブタCD47のエクソン8がヒトCD47のエクソン8で置換されたヒト化CD47である。いくつかの実施形態では、該CD47導入遺伝子は、ブタCD47のエクソン9がヒトCD47のエクソン9で置換されたヒト化CD47である。いくつかの実施形態では、該CD47導入遺伝子は、ブタCD47のエクソン10がヒトCD47のエクソン10で置換されたヒト化CD47である。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の一部が、該ヒトCD47のコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の約10%が、該ヒトCD47の対応する相同部分のコード配列の約10%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の一部が、該ヒトCD47のコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の約20%が、該ヒトCD47の対応する相同部分のコード配列の約20%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の一部が、該ヒトCD47のコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の約30%が、該ヒトCD47の対応する相同部分のコード配列の約30%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の一部が、該ヒトCD47のコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の約40%が、該ヒトCD47の対応する相同部分のコード配列の約40%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の一部が、該ヒトCD47のコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の約50%が、該ヒトCD47の対応する相同部分のコード配列の約50%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の一部が、該ヒトCD47のコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の約60%が、該ヒトCD47の対応する相同部分のコード配列の約60%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の一部が、該ヒトCD47のコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の約70%が、該ヒトCD47の対応する相同部分のコード配列の約70%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の一部が、該ヒトCD47のコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の約80%が、該ヒトCD47の対応する相同部分のコード配列の約80%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の一部が、該ヒトCD47のコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の約90%が、該ヒトCD47の対応する相同部分のコード配列の約90%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の一部が、該ヒトCD47のコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタCD47のコード配列の約95%が、該ヒトCD47の対応する相同部分のコード配列の約95%で置換される。
【0048】
いくつかの実施形態では、ブタSIRPAを置換するために使用される導入遺伝子は、ヒトSIRPAのゲノム配列である。ゲノムDNAを使用することにより、すべてのヒトSIRPAアイソフォームが発現され得る。他の実施形態では、ブタSIRPAを置換するために使用される導入遺伝子は、ヒトSIRPAの既知のスプライスバリアントのメッセージRNA(mRNA)の相補的DNAである。他の実施形態では、ブタSIRPAを置換するために使用される導入遺伝子は、ヒトSIRPAの既知のスプライスバリアントのコード配列(CDS)である。ヒトSIRPαをコードする核酸配列は、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:NC_000020.11。ヒトSIRPαアイソフォーム1をコードするmRNAのcDNAは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:NM_080792.3、NM_001040022.1またはNM_001040023.2。ヒトSIRPαアイソフォーム2をコードするmRNAのcDNAは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:NM_001330728.1。ヒトSIRPαアイソフォーム1をコードするCDSは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:CCDS13022.1または配列番号4、これは、アミノ酸配列NP_001035111.1、NP_001035112.1、またはNP_542970.1に対応する。ヒトSIRPαアイソフォーム2をコードするCDSは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:CCDS82593.1または配列番号5、これは、アミノ酸配列NP_001317657.1に対応する。いくつかの実施形態では、該導入遺伝子は、ヒトSIRPAの一部である。
【0049】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物に使用されるヒトSIRPαをコードする導入遺伝子は、下記表1に列挙される導入遺伝子である。ある特定の実施形態では、該ヒトSIRPαをコードする導入遺伝子は、配列番号4のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、該ヒトSIRPαをコードする導入遺伝子は、配列番号5のヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、該ヒトSIRPαをコードする導入遺伝子は、配列番号4と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一であるヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、該ヒトSIRPαをコードする導入遺伝子は、配列番号5と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、該導入遺伝子が、ヒトSIRPAのゲノム配列である場合、該導入遺伝子は、最初のエクソンから最後のエクソンまで拡大するブタSIRPAのゲノム配列を置換する。他の実施形態では、該導入遺伝子が、ヒトSIRPAのcDNAである場合、該導入遺伝子は、最初のエクソンから最後のエクソンまで拡大するブタSIRPAのゲノム配列を置換する。他の実施形態では、該導入遺伝子が、ヒトSIRPAのcDNAである場合、該導入遺伝子は、ブタSIRPAをインタクトなブタ5’UTR及び3’UTRで置換する。さらに他の実施形態では、該導入遺伝子が、ヒトSIRPAのCDSである場合、該導入遺伝子は、ブタSIRPAをインタクトなブタ5’UTR及び3’UTRで置換する。いくつかの実施形態では、該導入遺伝子は、ブタSIRPAの相同なエクソンを置換する(例えば、ヒトSIRPAのエクソン2は、ブタSIRPAのエクソン2を置換する)。
【0051】
本明細書で提供されるように、ある特定の態様では、該SIRPA導入遺伝子は、ヒト化SIRPAである。いくつかの実施形態では、該ヒト化SIRPAは、ヒトSIRPAの対応する1つ以上の相同エクソンで置換された1つ以上のエクソンを含む内因性のブタSIRPAである。例えば、いくつかの実施形態では、該SIRPA導入遺伝子は、ブタSIRPAのエクソン1がヒトSIRPAのエクソン1で置換されたヒト化SIRPAである。例えば、いくつかの実施形態では、該SIRPA導入遺伝子は、ブタSIRPAのエクソン2がヒトSIRPAのエクソン2で置換されたヒト化SIRPAである。例えば、いくつかの実施形態では、該SIRPA導入遺伝子は、ブタSIRPAのエクソン3がヒトSIRPAのエクソン3で置換されたヒト化SIRPAである。例えば、いくつかの実施形態では、該SIRPA導入遺伝子は、ブタSIRPAのエクソン4がヒトSIRPAのエクソン4で置換されたヒト化SIRPAである。例えば、いくつかの実施形態では、該SIRPA導入遺伝子は、ブタSIRPAのエクソン5がヒトSIRPAのエクソン5で置換されたヒト化SIRPAである。例えば、いくつかの実施形態では、該SIRPA導入遺伝子は、ブタSIRPAのエクソン6がヒトSIRPAのエクソン6で置換されたヒト化SIRPAである。例えば、いくつかの実施形態では、該SIRPA導入遺伝子は、ブタSIRPAのエクソン7がヒトSIRPAのエクソン7で置換されたヒト化SIRPAである。例えば、いくつかの実施形態では、該SIRPA導入遺伝子は、ブタSIRPAのエクソン8がヒトSIRPAのエクソン8で置換されたヒト化SIRPAである。例えば、いくつかの実施形態では、該SIRPA導入遺伝子は、ブタSIRPAのエクソン9がヒトSIRPAのエクソン9で置換されたヒト化SIRPAである。例えば、いくつかの実施形態では、該SIRPA導入遺伝子は、ブタSIRPAのエクソン10がヒトSIRPAのエクソン10で置換されたヒト化SIRPAである。例えば、いくつかの実施形態では、該SIRPA導入遺伝子は、ブタSIRPAのエクソン11がヒトSIRPAのエクソン11で置換されたヒト化SIRPAである。例えば、いくつかの実施形態では、該SIRPA導入遺伝子は、ブタSIRPAのエクソン12がヒトSIRPAのエクソン12で置換されたヒト化SIRPAである。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の一部が、該ヒトSIRPAのコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の約10%が、該ヒトSIRPAの対応する相同部分のコード配列の約10%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の一部が、該ヒトSIRPAのコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の約20%が、該ヒトSIRPAの対応する相同部分のコード配列の約20%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の一部が、該ヒトSIRPAのコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の約30%が、該ヒトSIRPAの対応する相同部分のコード配列の約30%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の一部が、該ヒトSIRPAのコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の約40%が、該ヒトSIRPAの対応する相同部分のコード配列の約40%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の一部が、該ヒトSIRPAのコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の約50%が、該ヒトSIRPAの対応する相同部分のコード配列の約50%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の一部が、該ヒトSIRPAのコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の約60%が、該ヒトSIRPAの対応する相同部分のコード配列の約60%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の一部が、該ヒトSIRPAのコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の約70%が、該ヒトSIRPAの対応する相同部分のコード配列の約70%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の一部が、該ヒトSIRPAのコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の約80%が、該ヒトSIRPAの対応する相同部分のコード配列の約80%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の一部が、該ヒトSIRPAのコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の約90%が、該ヒトSIRPAの対応する相同部分のコード配列の約90%で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の一部が、該ヒトSIRPAのコード配列の一部で置換される。いくつかの実施形態では、該ブタSIRPAのコード配列の約95%が、該ヒトSIRPAの対応する相同部分のコード配列の約95%で置換される。
【0052】
発現カセットは、一般に、調節エレメント及び導入遺伝子を含む。調節エレメントは、例えば、プロモーターであり得る。いくつかの実施形態では、該ヒトまたはヒト化CD47のプロモーターは、構成的に活性なプロモーターである。他の実施形態では、該ヒトまたはヒト化CD47のプロモーターは、内因性のブタCD47プロモーターである。
【0053】
いくつかの実施形態では、該ヒトCD47及びSIRPA導入遺伝子は、該ブタゲノムの遺伝子座にランダムに挿入される。いくつかの実施形態では、該ヒトCD47及びSIRPA導入遺伝子は、該ブタゲノムのセーフハーバー遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、該ヒトCD47導入遺伝子は、ブタCD47遺伝子(NCBI遺伝子ID:397042)の近くに挿入され、該ブタCD47遺伝子は欠失されない。いくつかの実施形態では、該ヒトCD47導入遺伝子は、該内因性のブタCD47遺伝子に挿入され、該ブタCD47遺伝子は欠失される。いくつかの実施形態では、該ヒトSIRPA導入遺伝子は、ブタSIRPA遺伝子(NCBI遺伝子ID:494566)の近くに挿入され、該ブタSIRPA遺伝子は欠失されない。いくつかの実施形態では、該ヒトSIRPA導入遺伝子は、該内因性のブタSIRPA遺伝子に挿入され、該ブタSIRPA遺伝子は欠失される。いくつかの実施形態では、ヒトCD47またはSIRPAの一部は、それぞれ、ブタCD47またはSIRPAの相同エクソンを置換する。
【0054】
7.1.1.3 送達媒体及び方法
いくつかの実施形態では、セクション7.1.1.1及び7.1.1.2に記載の構成要素を担持するプラスミドまたはベクターは、ウイルスベクターで送達され、該ウイルスベクターとしては、アデノ随伴ウイルス(AAV)、自己相補型アデノ随伴ウイルス(scAAV)、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス(例えば、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、または改変ヒト免疫不全ウイルス)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、アルファウイルス、ワクシニアウイルスが挙げられるがこれらに限定されない。ウイルスベクターは、さらに、他のエレメント、例えば、ポリ(A)部位、転写終結部位、またはウイルス特異的エレメント、例えば、末端逆位反復配列を含み得る。例えば、Buard et al.(2009),British Journal of Pharmacology 157:153-165を参照されたい。他の実施形態では、セクション7.1.1.1及び7.1.1.2に記載の構成要素を担持するプラスミドまたはベクターの一部は、トランスポザーゼを介して送達され、該トランスポザーゼとしては、sleeping beauty及びpiggybackが挙げられるがこれらに限定されない。
【0055】
該ヒトまたはヒト化CD47及びSIRPA遺伝子を動物の生殖細胞系列に導入する方法としては、体細胞核移植(SCNT)、前核マイクロインジェクション、精液媒介遺伝子導入(SMGT)、卵母細胞形質導入、及び卵細胞質内精子注入法による遺伝子組み換えが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、Yum et al.(2016)J Vet Sci 2016,17:261-268、Whyte and Prather(2011),Mol Reprod Dev 78:879-891、Sachs and Gali(2009)を参照されたい。前核マイクロインジェクションは、前核内へのDNAの直接注入を含む。これらの目的のための卵は、過排卵した雌から採取され、次いで胚移植によってレシピエントブタに移植され得る。例えば、Whyte and Prather(2011),Mol Reprod Dev 78:879-891を参照されたい。SMGTは、目的の導入遺伝子のための遺伝子を精子とともに培養することを含み、これらがその後、受精に使用される。例えば、Lavitrano et al.,(2002),Proc Nat Acad Sci USA.99:14230-14235を参照されたい。卵母細胞形質導入は、無血清の既知組成成熟培地にて、インビトロでブタ卵母細胞を成熟させることを含み、続いてこれをインビトロで複製欠損性偽型レトロウイルスに感染させ、受精させ、培養した後、レシピエント雌に移植する。例えば、Cabot et al.,(2001),Anim Biotechnol;12(2):205-14を参照されたい。卵細胞質内精子注入法による遺伝子組み換えは、卵細胞質内精子注入法によって受精させるインビトロ成熟ブタ卵母細胞を包含する。例えば、Lai et al.,(2001)Zygote;9(4):339-46を参照されたい。
【0056】
7.1.2 内因性のブタ遺伝子のヒトホモログによる置換
導入遺伝子の発現のための構築物は、一般に、当該導入遺伝子、例えば、セクション7.1.2.1に記載されるように、ヒトもしくはヒト化CD47またはSIRPαをコードするヌクレオチド配列を含む。さらに、導入遺伝子の発現のための構築物は、セクション7.1.2.2に記載の選択された置換技術に関与する他のエレメント、及び潜在的な選択可能マーカー(陽性及び/または陰性)を含む。セクション7.1.2.1の構築物及びセクション7.1.2.2の置換の戦略を用いて、ヒトまたはヒト化CD47がNCBI遺伝子ID:397042(内因性のブタCD47)の同じ調節エレメント下に挿入され、ヒトまたはヒト化SIRPAがNCBI遺伝子ID:494566(内因性のブタSIRPA)の同じ調節エレメント下に挿入される。
【0057】
7.1.2.1 ヒトCD47及びSIRPAの配列
いくつかの実施形態では、ブタCD47またはその一部を置換するために使用される導入遺伝子は、ヒトCD47のゲノム配列またはその一部である。ゲノムDNAを使用することにより、すべてのヒトCD47アイソフォームが発現され得る。他の実施形態では、ブタCD47またはその一部を置換するために使用される導入遺伝子は、ヒトCD47の既知のスプライスバリアントのメッセージRNA(mRNA)の相補的DNAまたはその一部である。他の実施形態では、ブタCD47またはその一部を置換するために使用される導入遺伝子は、ヒトCD47の既知のスプライスバリアントのコード配列(CDS)またはその一部である。ヒトCD47またはその一部をコードする核酸配列は、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:NC_000003.12。ヒトCD47アイソフォーム1をコードするmRNAのcDNAは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:NM_001777.4。ヒトCD47アイソフォーム2をコードするmRNAのcDNAは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:NM_198793.3。ヒトCD47アイソフォーム3をコードするmRNAのcDNAは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:NM_001382306.1。ヒトCD47アイソフォーム1をコードするCDSは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:CCDS43126.1または配列番号1、これは、アミノ酸配列NP_001768.1に対応する。ヒトCD47アイソフォーム2をコードするCDSは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:CCDS43125.1または配列番号2、これは、アミノ酸配列NP_942088.1に対応する。ヒトCD47アイソフォーム3をコードするCDSは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:配列番号3、これは、アミノ酸配列NP_001369235.1に対応する。
【0058】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物に使用されるヒトCD47をコードする導入遺伝子は、下記表1に列挙される導入遺伝子である。ある特定の実施形態では、該ヒトCD47をコードする導入遺伝子は、配列番号1のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、該ヒトCD47をコードする導入遺伝子は、配列番号2のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、該ヒトCD47をコードする導入遺伝子は、配列番号3のヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、該ヒトCD47をコードする導入遺伝子は、配列番号1と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該ヒトCD47をコードする導入遺伝子は、配列番号2と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該ヒトCD47をコードする導入遺伝子は、配列番号3と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、該導入遺伝子は、ヒトCD47のゲノム配列であり、該導入遺伝子は、最初のエクソンから最後のエクソンまで拡大するブタCD47のゲノム配列を置換する。他の実施形態では、該導入遺伝子は、ヒトCD47のcDNAであり、該導入遺伝子は、最初のエクソンから最後のエクソンまで拡大するブタCD47のゲノム配列を置換する。他の実施形態では、該導入遺伝子は、ヒトSIRPAのcDNAであり、該導入遺伝子は、ブタCD47をインタクトなブタ5’UTR及び3’UTRで置換する。さらに他の実施形態では、該導入遺伝子は、ヒトCD47のCDSであり、該導入遺伝子は、ブタCD47をインタクトなブタ5’UTR及び3’UTRで置換する。いくつかの実施形態では、該導入遺伝子は、ブタCD47の一部(例えば、単一のエクソン)をヒトCD47の一部(例えば、相同エクソン)で置換する。
【0060】
他の実施形態では、該CD47導入遺伝子のDNA配列は非ヒトである。例えば、該CD47のDNA配列は、非ヒトCD47配列の群から選択されるDNA配列に対応し、該群は、NCBI遺伝子ID番号:460569(Pan troglodytesまたはチンパンジー)、704980(Macaca mulattaまたはアカゲザル)、478552(Canis lupus familiarisまたはイヌ)、282661(Bos taurusまたはウシ)、16423(Mus musculusまたはイエハツカネズミ)、29364(Rattus norvegicusまたはドブネズミ)、418408(Gallusまたはニワトリ)、100926819(Sarcophilus harrisiiまたはタスマニアデビル)、102089340(Columba liviaまたはカワラバト)、101681023(Mustela putorius furoまたはフェレット)、109691157(Castor canadensisまたはアメリカビーバー)、及び101836211(Mesocricetus auratusまたはゴールデンハムスター)を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、ブタSIRPAまたはその一部を置換するために使用される導入遺伝子は、ヒトSIRPAのゲノム配列またはその一部である。ゲノムDNAを使用することにより、すべてのヒトSIRPαアイソフォームが発現され得る。他の実施形態では、ブタSIRPAまたはその一部を置換するために使用される導入遺伝子は、ヒトSIRPαの既知のスプライスバリアントのメッセージRNA(mRNA)の相補的DNAまたはその一部である。他の実施形態では、ブタSIRPAまたはその一部を置換するために使用される導入遺伝子は、ヒトSIRPαの既知のスプライスバリアントのコード配列(CDS)またはその一部である。ヒトSIRPαをコードする核酸配列は、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:NC_000020.11。ヒトSIRPαアイソフォーム1をコードするmRNAのcDNAは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:NM_080792.3、NM_001040022.1またはNM_001040023.2。ヒトSIRPαアイソフォーム2をコードするmRNAのcDNAは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:NM_001330728.1。ヒトSIRPαアイソフォーム1をコードするCDSは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:CCDS13022.1または配列番号4、これは、アミノ酸配列NP_001035111.1、NP_001035112.1、またはNP_542970.1に対応する。ヒトSIRPαアイソフォーム2をコードするCDSは、以下のNCBI RefSeqアクセッション番号で見出され得る:CCDS82593.1または配列番号5、これは、アミノ酸配列NP_001317657.1に対応する。
【0062】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の構築物に使用されるヒトSIRPαをコードする導入遺伝子は、下記表1に列挙される導入遺伝子である。ある特定の実施形態では、該ヒトSIRPαをコードする導入遺伝子は、配列番号4のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、該ヒトSIRPαをコードする導入遺伝子は、配列番号5のヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、該ヒトSIRPαをコードする導入遺伝子は、配列番号4と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一であるヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、該ヒトSIRPαをコードする導入遺伝子は、配列番号5と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、該導入遺伝子は、ヒトSIRPAのゲノム配列であり、該導入遺伝子は、最初のエクソンから最後のエクソンまで拡大するブタSIRPAのゲノム配列を置換する。他の実施形態では、該導入遺伝子は、ヒトSIRPAのcDNAであり、該導入遺伝子は、最初のエクソンから最後のエクソンまで拡大するブタSIRPAのゲノム配列を置換する。他の実施形態では、該導入遺伝子は、ヒトSIRPAのcDNAであり、該導入遺伝子は、ブタSIRPAをインタクトなブタ5’UTR及び3’UTRで置換する。さらに他の実施形態では、該導入遺伝子は、ヒトSIRPAのCDSであり、該導入遺伝子は、ブタSIRPAをインタクトなブタ5’UTR及び3’UTRで置換する。いくつかの実施形態では、該導入遺伝子は、ブタSIRPAの一部(例えば、単一のエクソン)をヒトSIRPAの一部(例えば、相同エクソン)で置換する。
【0064】
他の実施形態では、該SIRPA導入遺伝子のDNA配列は非ヒトである。例えば、該SIRPAのDNA配列は、非ヒトSIRPA配列の群から選択されるDNA配列に対応し、該群は、NCBI遺伝子ID番号:458039(Pan troglodytesもしくはチンパンジー)、717811(Macaca mulattaもしくはアカゲザル)、101926317(Macaca fascicularisもしくはカニクイザル)、609452(Canis lupus familiarisもしくはイヌ)、327666(Bos taurusもしくはウシ)、19261(Mus musculusもしくはイエハツカネズミ)、25528(Rattus norvegicusもしくはドブネズミ)、118618252(Molossusもしくはパラスオヒキコウモリ)、109692903(Castor canadensisもしくはアメリカビーバー)、101677644(Mustela putorius furoもしくはフェレット)、101839275(Mesocricetus auratusもしくはゴールデンハムスター)、100067339(Equus caballusもしくはウマ)、118536470(Halichoerus grypusもしくはハイイロアザラシ)、118011325(Mirounga 23dminisもしくはミナミゾウアザラシ)、116739680(Phocoena sinusもしくはコガシラネズミイルカ)、116641565(Phoca vitulinaもしくはゼニガタアザラシ)、116563017(Sapajus apellaもしくはフサオマキザル)、または116461231(Hylobates molochもしくはワウワウテナガザル)を含む。
【0065】
7.1.2.2 置換の戦略
ブタCD47及びSIRPAまたはその一部のヒトCD47及びSIRPAまたはその一部による遺伝子置換は、当技術分野で既知の様々な方法で行われ得る。例えば、1つの非限定的な例示的な技術としては、相同組み換えが挙げられる。HRは、遺伝子の標的化及びトランスジェニック動物の作製において、研究者によって広く使用されている。HRは、ヌクレオチド配列が、2つの類似または同一のDNA分子間で交換される遺伝子組み換えである。胚性幹細胞における相同組み換えによる遺伝子標的化は、かつてない精度を可能にし、それによって遺伝子を操作すること及びこの操作の効果を調べることができる。
【0066】
ブタCD47及びSIRPAまたはその一部をヒトCD47及びSIRPAまたはその一部で遺伝子置換する上で適した別の例示的な技術としては、非相同末端結合(NHEJ)が挙げられる。NHEJは、DSBの末端に直接ライゲートし、HRと比較して、相同配列がほとんどまたは全くない。それは、一部の研究者によって利用され、部位特異的エンドヌクレアーゼと併用することで、目的の遺伝子を組み込むことに成功している。例えば、Schiermeyer et al.(2019)Plant Direct.;3(7):e00153を参照されたい。
【0067】
ブタCD47及びSIRPAまたはその一部をヒトCD47及びSIRPAまたはその一部で遺伝子置換する上で適したさらに別の例示的な技術としては、リコンビナーゼ媒介型のカセット交換(RMCE)が挙げられる。RCME技術は、大きなゲノム領域のスワッピングを可能にする。この技術は一般に、同じ親胚性幹細胞クローンを使用したヒト化モデル及びいくつかの変異体の生成に推奨される。RMCEは、ゲノムDNAの組み込みに容易に特異的に適合し得ることから、RMCE技術により、宿主ゲノムの大きなゲノム領域を、同時に存在するヒトゲノム領域で置換することが可能になる。
【0068】
いくつかの実施形態では、該ブタCD47及びSIRPAまたはその一部のヒトCD47及びSIRPAまたはその一部に対する遺伝子置換は、DNAのDSBを促進する酵素を使用して生成され得る。いくつかの実施形態では、該DNAのDSBを促進する酵素は、配列特異的エンドヌクレアーゼを含む。特定の実施形態では、該配列特異的エンドヌクレアーゼは、RNA誘導型DNAヌクレアーゼ、例えば、CRISPR/Cas9系を含む。
【0069】
CRISPR/Cas9(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)系は、RNA誘導型DNA結合及び標的DNAの配列特異的切断を利用する。ガイドRNA(gRNA)(例えば、20個のヌクレオチドを含む)は、ゲノムPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)部位(NNG)及び定常RNA足場領域の上流の標的ゲノムDNA配列に相補的である。Cas(CRISPR関連)タンパク質は、gRNA及びgRNAが結合する標的DNAに結合し、PAM部位の上流の所定位置に二本鎖切断を導入する。例えば、Geurts et al.(2009),Science 325:433、Mashimo et al.(2010),PloS ONE 5,e8870、Carbery et al.(2010),Genetics 186:451-459、Tesson et al.(2011),Nat.Biotech.29:695-696、Wiedenheft et al.(2012),Nature 482,331-338、Jinek et al.(2012),Science 337:816-821、Mali et al.(2013),Science 339:823-826、Cong et al.(2013),Science 339:819-823を参照されたい。CRISPR/Cas9系のさらなる改善には、20ヌクレオチド長未満のより短い標的相補的領域を有する切断型gRNAの使用が含まれ、これにより、オンターゲットゲノム編集効率を犠牲にすることなく、オフターゲット部位での望ましくない変異誘発を5000倍以上減少させることができる。例えば、Fu et al.(2014)Nat Biotechnol.;32(3):279-284を参照されたい。修飾CRISPR/Cas9介在HRは、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)を修復鋳型として使用し(別名、「easiCRISPR」)、効率的な編集及びヒト対応物による宿主遺伝子の置換には十分である。その利点としては、選択の必要性がないため、ゲノムの瘢痕化がないことが挙げられる。例えば、Quadros et al.(2017)Genome.Biol.18,92、Codner et al.(2018)BMC Biol.16,70を参照されたい。
【0070】
いくつかの実施形態では、該配列特異的エンドヌクレアーゼは、ZFN、ZFN二量体、及び/またはZFニッカーゼを含む。ZFNは、別々のDNA結合ドメイン及びDNA切断ドメインを有する。該切断ドメインは、明らかな配列特異性を有さず、その切断は、別々のDNA結合ドメインによって方向を向け直される場合がある。例えば、Kim et al.(1994);Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:883-887、Kim et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:1156-1160、Kim et al.(1998)Biol.Chem.379:489-495を参照されたい。ジンクフィンガー(ZF)の約30アミノ酸の各単位は、亜鉛の単一原子に結合する。DNAに結合した3つのフィンガーのセットの結晶構造により、各フィンガーが主に3bpのDNAと顕著にモジュール方式で接触することが分かった。例えば、Pavletich and Pabo(1991)Science 252:809-817を参照されたい。これは、ZFの新規なアセンブリを作製することによって、多くの異なる配列が攻撃され得ることを示唆している。例えば、Carroll(2011),Genetics.;188(4):773-782を参照されたい。一方、ZFニッカーゼは、二本鎖切断に必要なZFN二量体の1つのZFN単量体の触媒活性を不活性化することによって創出される。ZFニッカーゼは、インビトロで鎖特異的ニッキング活性を示し、ひいてはDNAに高度に特異的な一本鎖切断を提供する。例えば、Ramirez et al.(2012);Nucleic Acids Research.40(7):5560-5568を参照されたい。
【0071】
いくつかの実施形態では、該配列特異的エンドヌクレアーゼは、TALENを含む。TALENは、TALENが本質的に任意の配列を標的とすることができるように操作され得るDNA結合ドメインに融合された非特異的DNA切断ヌクレアーゼを含む。TALENのDNA結合ドメインは、転写活性化因子様エフェクター(TALE)に由来する高度に保存されたリピートで構成される。研究者は、該DNA結合TALEドメインを標的結合部位における個々の塩基に関連付ける単純な「タンパク質DNAコード」を使用する。したがって、TALENは、その設計の容易性、高い切断活性率、及び本質的に無限の標的化範囲により、標的化DSBの導入及びゲノム編集においてその人気を得ている。例えば、Joung et al.(2013)Nat Rev Mol Cell Biol.;14(1):49-55を参照されたい。
【0072】
いくつかの実施形態では、該ミニブタのゲノム内の内因性のブタCD47遺伝子と同じ調節エレメント下でのヒトCD47及びSIRPA導入遺伝子の配列特異的挿入(またはノックイン)は、HR、NHEJ、及び/またはRMCEによって達成され得る。好ましい実施形態では、該ミニブタのゲノム内の内因性のブタCD47遺伝子と同じ調節エレメント下でのヒトCD47及びSIRPA導入遺伝子の配列特異的挿入(またはノックイン)は、配列特異的エンドヌクレアーゼによって促進されるHRによって達成され得る。好ましい実施形態では、該ミニブタのゲノム内の内因性のブタCD47遺伝子と同じ調節エレメント下でのヒトCD47及びSIRPA導入遺伝子の配列特異的挿入(またはノックイン)は、配列特異的エンドヌクレアーゼによって促進されるNHEJによって達成され得る。好ましい実施形態では、該ミニブタのゲノム内の内因性のブタCD47遺伝子と同じ調節エレメント下でのヒトCD47及びSIRPA導入遺伝子の配列特異的挿入(またはノックイン)は、配列特異的エンドヌクレアーゼと組み合わせたRMCEによって達成され得る。例えば、Meyer et al.(2010),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 107:15022-15026、Cui et al.(2010),Nat.Biotechnol.29:64-67、Moehle et al.(2007),Proc Natl Acad Sci USA 104:3055-3060を参照されたい。このプロセスは、かかる配列を認識してそれに結合し、ミニブタ細胞の核酸分子に二本鎖切断を誘導するエンドヌクレアーゼで特定の遺伝子配列を標的化することに依存する。該二本鎖切断はその後修復される。例えば、鋳型(例えば、該ヒトCD47を含む構築物及び該ヒトSIRPAを含む別の構築物)がトランスで提供される場合、該二本鎖切断は、提供された鋳型を使用して修復され得る。したがって、該ヒトCD47またはSIRPAを含む発現カセットは、特定の遺伝子座で該ゲノムに組み込まれる。該エンドヌクレアーゼの非限定的な例としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、ZFN二量体、ZFニッカーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはRNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas9)が挙げられる。
【0073】
いくつかの実施形態では、1つのエンドヌクレアーゼが使用され、その標的部位は、所望の置換領域の上流である。他の実施形態では、1つのエンドヌクレアーゼが使用され、その標的部位は、所望の置換領域の下流である。他の実施形態では、1つのエンドヌクレアーゼが使用され、その標的部位は、所望の置換領域の中にある。いくつかの実施形態では、2つ以上のエンドヌクレアーゼが使用され、各エンドヌクレアーゼの標的部位は、所望の置換領域の上流である。他の実施形態では、2つ以上のエンドヌクレアーゼが使用され、各エンドヌクレアーゼの標的部位は、所望の置換領域の下流である。他の実施形態では、2つ以上のエンドヌクレアーゼが使用され、各エンドヌクレアーゼの標的部位は、所望の置換領域の中にある。さらに他の実施形態では、2つ以上のエンドヌクレアーゼが使用され、少なくとも1つの標的部位は、所望の置換領域の上流であり、少なくとも1つの標的部位は、所望の置換の下流である。いくつかの実施形態では、2つ以上のエンドヌクレアーゼが使用され、少なくとも1つの標的部位は、所望の置換領域の上流であり、少なくとも1つの標的部位は、所望の置換の中にある。いくつかの実施形態では、2つ以上のエンドヌクレアーゼが使用され、少なくとも1つの標的部位は、所望の置換領域の下流であり、少なくとも1つの標的部位は、所望の置換の中にある。いくつかの実施形態では、3つ以上のエンドヌクレアーゼが使用され、少なくとも1つの標的部位は、所望の置換領域の上流であり、少なくとも1つの標的部位は、所望の置換の中にあり、少なくとも1つの標的部位は、所望の置換領域の下流である。
【0074】
いくつかの実施形態では、先行する段落に記載したエレメントを含むプラスミド及び/またはベクターを調製した後、該プラスミド及び/またはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。トランスフェクション技術としては、物理的トランスフェクション法(例えば、エレクトロポレーション、直接注入、バイオリスティック粒子送達、レーザー照射、ソノポレーション、磁性ナノ粒子)、化学的トランスフェクション法(例えば、リン酸カルシウム、カチオン性ポリマー、例えば、リポフェクタミンまたはリポフェクチン、カチオン性脂質)、及び生物学的トランスフェクト法(例えば、ウイルスを介した送達)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0075】
いくつかの実施形態では、該細胞のトランスフェクション後、含まれる選択可能な標識に応じて、正または/及び負の選択が行われる。
【0076】
ある特定の態様では、本明細書に提供するのは、内因性のブタCD47及びSIRPAの欠失または不活性化、ならびに組み換えミニブタの生成における使用に適したヒトCD47及びSIRPA導入遺伝子を含む、ブタ細胞である。トランスジェニック動物(例えば、ミニブタ)を作製する様々な方法が当技術分野で既知である。例えば、Hryhorowicz et al.(2020),Genes 2020,11,670を参照されたい。非限定的な例示的な方法が本明細書において以下に記載されている。
【0077】
ある特定の実施形態では、近交系のミニブタの群に由来するミニブタが使用される。該トランスジェニック動物は、当技術分野で既知の任意の適切な方法によって産生され得る。例えば、該遺伝子発現構築物は、例えば、SCNTを使用して、当該動物の生殖細胞系列に導入され得る。SCNTは、ドナー細胞の核を、染色体が除去された卵母細胞または初期胚に移植することを含む。例えば、Wilmut and Taylor(2015),Phil.Trans.R.Soc.B 370:20140366を参照されたい。再構築された胚は、発情期にある代理母ブタの卵管に外科的に移植される。該組み換えミニブタは、該代理母ブタから生まれる。該トランスジェニックブタにおける該導入遺伝子の発現を試験及び検証する方法は、セクション7.1.3で論じられている。
【0078】
特定の実施形態では、2つの相同アームのうちの一方が該ブタCD47遺伝子配列の上流であり、他方がブタCD47遺伝子の下流配列である、2つの相同アームが横に位置するヒトCD47配列を含むプラスミドまたはベクターが生成される。いくつかの実施形態では、2つの相同アームのうちの一方が該ブタCD47遺伝子配列の標的部分の上流であり、他方が該ブタCD47遺伝子の標的部分の下流である、2つの相同アームが横に位置するヒトCD47配列の一部を含むプラスミドまたはベクターが生成される。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタCD47の該ヒトCD47配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0079】
他の特定の実施形態では、2つの相同アームのうちの一方が該ブタCD47遺伝子配列の上流であり、他方がブタCD47遺伝子の下流配列である、2つの相同アームが横に位置するヒトCD47配列を含むプラスミドまたはベクターが生成される。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。Cas9を含むプラスミド、及びgRNAを含む1つ以上のプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、該1つ以上のgRNAは、所望の置換領域の上流の部位を標的とする。他の実施形態では、該1つ以上のgRNAは、所望の置換領域の下流の部位を標的とする。さらに他の実施形態では、該1つ以上のgRNAは、所望の28dminister28n領域の上流及び下流の部位を標的とする。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタCD47の該ヒトCD47配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0080】
他の特定の実施形態では、2つの相同アームのうちの一方が該ブタCD47遺伝子配列の上流であり、他方が該ブタCD47遺伝子の下流である、2つの相同アームが横に位置するヒトCD47配列を含むプラスミドまたはベクターが生成される。いくつかの実施形態では、1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。Cas9を含むプラスミド、及びgRNAを含む少なくとも2つのプラスミドが生成される。2つのssODNが生成される。一方のssODNは、(1)該ヒトCD47配列の上流のプラスミドまたはベクターの領域、及び(2)宿主CD47遺伝子の先頭を含む。他方のssODNは、(1)該宿主CD47遺伝子の末端、及び(2)該ヒトCD47配列の下流のプラスミドまたはベクターの領域を含む。いくつかの実施形態では、該2つ以上のgRNAは、所望の29dminister29n領域の上流及び下流の部位を標的とする。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタCD47の該ヒトCD47配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0081】
他の特定の実施形態では、2つの相同アームのうちの一方が該ブタCD47遺伝子配列の上流であり、他方がブタCD47遺伝子の下流配列である、2つの相同アームが横に位置するヒトCD47配列を含むプラスミドまたはベクターが生成される。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。ZFN、ZFN二量体、ZFニッカーゼをコードする1つ以上のプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、該1つ以上のZFNまたはZFニッカーゼは、所望の置換領域の上流の部位を標的とする。他の実施形態では、該1つ以上のZFNまたはZFニッカーゼは、所望の置換領域の下流の部位を標的とする。さらに他の実施形態では、該1つ以上のZFNまたはZFニッカーゼは、所望の置換領域の上流及び下流の部位を標的とする。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタCD47の該ヒトCD47配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0082】
他の特定の実施形態では、2つの相同アームのうちの一方が該ブタCD47遺伝子配列の上流であり、他方がブタCD47遺伝子の下流配列である、2つの相同アームが横に位置するヒトCD47配列を含むプラスミドまたはベクターが生成される。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。TALENをコードする1つ以上のプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、該1つ以上のTALENは、所望の置換領域の上流の部位を標的とする。他の実施形態では、該1つ以上のTALENは、所望の置換領域の下流の部位を標的とする。さらに他の実施形態では、該1つ以上のTALENは、所望の置換領域の上流及び下流の部位を標的とする。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタCD47の該ヒトCD47配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0083】
他の特定の実施形態では、Cas9を含むプラスミド、及びgRNAを含む2つ以上のプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、該2つ以上のgRNAは、該Cas9エンドヌクレアーゼが、該ブタCD47配列の始まりの上流の部位にて、ある特定の塩基対分切断するように、及びCas9エンドヌクレアーゼが、該ブタCD47配列の末端の下流の部位にて、ある特定の塩基対分切断するように、該ブタCD47配列の上流及び下流の部位を標的とする。いくつかの実施形態では、該塩基対の数は、50bp未満である。他の実施形態では、該塩基対の数は、50~100bpである。さらに他の実施形態では、該塩基対の数は、100~150bpである。さらに他の実施形態では、該塩基対の数は、150~200bpである。さらに他の実施形態では、該塩基対の数は、200bpを超える。上記の塩基対に加えて、該2つのCas9切断部位が横に位置するヒトCD47配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタCD47の該ヒトCD47配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0084】
他の特定の実施形態では、ZFNまたはZFニッカーゼをコードする2つ以上のプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、ZFNまたはZFニッカーゼは、該ブタCD47配列の始まりの上流の部位にて切断し、ZFNまたはZFニッカーゼは、該ブタCD47配列の末端の下流の部位にて切断する。いくつかの実施形態では、該開始部位の上流の塩基対の数は、50bp未満である。いくつかの実施形態では、該終結部位の下流の塩基対の数は、50bp未満である。いくつかの実施形態では、該開始部位の上流の塩基対の数は、50~200bpである。いくつかの実施形態では、該終結部位の下流の塩基対の数は、50~200bpである。いくつかの実施形態では、該開始部位の上流の塩基対の数は、50~100bpである。いくつかの実施形態では、該終結部位の下流の塩基対の数は、50~100bpである。いくつかの実施形態では、該開始部位の上流の塩基対の数は、100~150bpである。いくつかの実施形態では、該終結部位の下流の塩基対の数は、100~150bpである。いくつかの実施形態では、該開始部位の上流の塩基対の数は、150~200bpである。いくつかの実施形態では、該終結部位の下流の塩基対の数は、150~200bpである。いくつかの実施形態では、該開始部位の上流の塩基対の数は、200bpを超える。いくつかの実施形態では、該終結部位の下流の塩基対の数は、200bpを超える。
【0085】
上記の塩基対に加えて、該2つのZFNまたはZFニッカーゼ切断部位が横に位置するヒトCD47配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタCD47の該ヒトCD47配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0086】
他の特定の実施形態では、TALENをコードする2つ以上のプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、TALENは、該ブタCD47配列の始まりの上流、及び該ブタCD47配列の末端の下流の部位にてある特定の塩基対分切断する。いくつかの実施形態では、該TALENは、該開始部位から50bp未満上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該TALENは、該終結部位から50bp未満下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該TALENは、該開始部位から50~100bp上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該TALENは、該終結部位から50~100bp下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該TALENは、該開始部位から100~150bp上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該TALENは、該終結部位から100~150bp下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該TALENは、該開始部位から150~200bp上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該TALENは、該終結部位から150~200bp下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該TALENは、該開始部位から200bp超上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該TALENは、該終結部位から200bp超下流の部位で切断する。
【0087】
上記の塩基対に加えて、該2つのTALEN切断部位が横に位置するヒトCD47配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタCD47の該ヒトCD47配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0088】
他の特定の実施形態では、一対の異種特異的リコンビナーゼ認識部位が、該ブタCD47配列またはその一部の横に位置するように挿入される。該リコンビナーゼ認識部位の同一の対が横に位置するヒトCD47配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。対応するリコンビナーゼをコードするプラスミドが生成される。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタCD47の該ヒトCD47配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0089】
他の特定の実施形態では、一対の異種特異的リコンビナーゼ認識部位が横に位置するローディングパッドが、第一に該ブタCD47配列またはその一部の近くに挿入される。該リコンビナーゼ認識部位の同一の対が横に位置するヒトCD47配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。対応するリコンビナーゼをコードするプラスミドが生成される。Cas9を含むプラスミド、及びgRNAを含む2つ以上のプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、該2つ以上のgRNAは、該ブタCD47配列が、挿入されたヒトCD47配列を残して欠失されるように、該ブタCD47配列の上流及び下流を標的とする。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタCD47の該ヒトCD47配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0090】
他の特定の実施形態では、一対の異種特異的リコンビナーゼ認識部位が横に位置するローディングパッドが、第一に該ブタCD47配列またはその一部の近くに挿入される。該リコンビナーゼ認識部位の同一の対が横に位置するヒトCD47配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。対応するリコンビナーゼをコードするプラスミドが生成される。ZENまたはZFニッカーゼの対をコードするプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、該ZENまたはZFニッカーゼは、該ブタCD47配列が、挿入されたヒトCD47配列を残して欠失されるように、該ブタCD47配列の上流及び下流を標的とする。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタCD47の該ヒトCD47配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0091】
他の特定の実施形態では、一対の異種特異的リコンビナーゼ認識部位が横に位置するローディングパッドが、第一に該ブタCD47配列またはその一部の近くに挿入される。該リコンビナーゼ認識部位の同一の対が横に位置するヒトCD47配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。対応するリコンビナーゼをコードするプラスミドが生成される。TALENの対をコードするプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、該TALENは、該ブタCD47配列が、挿入されたヒトCD47配列を残して欠失されるように、該ブタCD47配列の上流及び下流の部位を標的とする。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタCD47の該ヒトCD47配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0092】
特定の実施形態では、2つの相同アームのうちの一方が該ブタSIRPA遺伝子配列の上流であり、他方が該ブタSIRPA遺伝子配列の下流である、2つの相同アームが横に位置するヒトSIRPA配列を含むプラスミドまたはベクターが生成される。いくつかの実施形態では、2つの相同アームのうちの一方が該ブタSIRPA遺伝子配列の標的部分の上流であり、他方が該ブタSIRPA遺伝子の標的部分の下流である、2つの相同アームが横に位置するヒトSIRPA配列の一部を含むプラスミドまたはベクターが生成される。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタSIRPAの該ヒトSIRPA配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0093】
他の特定の実施形態では、2つの相同アームのうちの一方が該ブタSIRPA遺伝子配列の上流であり、他方が該ブタSIRPA遺伝子配列の下流である、2つの相同アームが横に位置するヒトSIRPA配列を含むプラスミドまたはベクターが生成される。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。Cas9を含むプラスミド、及びgRNAを含む1つ以上のプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、該1つ以上のgRNAは、所望の置換領域の上流の部位を標的とする。いくつかの実施形態では、該1つ以上のgRNAは、所望の置換領域の下流の部位を標的とする。さらに他の実施形態では、該1つ以上のgRNAは、所望の34dminister34n領域の上流及び下流の部位を標的とする。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタSIRPAの該ヒトSIRPA配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0094】
他の特定の実施形態では、2つの相同アームのうちの一方が該ブタSIRPA遺伝子配列の上流であり、他方が該ブタSIRPA遺伝子配列の下流である、2つの相同アームが横に位置するヒトSIRPA配列を含むプラスミドまたはベクターが生成される。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。Cas9を含むプラスミド、及びgRNAを含む少なくとも2つのプラスミドが生成される。2つのssODNが生成される。一方のssODNは、(1)該ヒトSIRPA配列の上流のプラスミドまたはベクターの領域、及び(2)宿主SIRPA遺伝子の先頭を含む。他方のssODNは、(1)該宿主SIRPA遺伝子の末端、及び(2)該ヒトSIRPA配列の下流のプラスミドまたはベクターの領域を含む。いくつかの実施形態では、該2つ以上のgRNAは、所望の35dminister35n領域の上流及び下流の部位を標的とする。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタSIRPAの該ヒトSIRPA配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0095】
他の特定の実施形態では、2つの相同アームのうちの一方が該ブタSIRPA遺伝子配列の上流であり、他方が該ブタSIRPA遺伝子配列の下流である、2つの相同アームが横に位置するヒトSIRPA配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。ZFN、ZFN二量体、ZFニッカーゼをコードする1つ以上のプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、該1つ以上のZFNまたはZFニッカーゼは、所望の置換領域の上流の部位を標的とする。他の実施形態では、該1つ以上のZFNまたはZFニッカーゼは、所望の置換領域の下流の部位を標的とする。さらに他の実施形態では、該1つ以上のZFNまたはZFニッカーゼは、所望の35dminister35n領域の上流及び下流の部位を標的とする。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタSIRPAの該ヒトSIRPA配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0096】
他の特定の実施形態では、2つの相同アームのうちの一方が該ブタSIRPA遺伝子配列の上流であり、他方が該ブタSIRPA遺伝子配列の下流である、2つの相同アームが横に位置するヒトSIRPA配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。TALENをコードする1つ以上のプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、該1つ以上のTALENは、所望の置換領域の上流の部位を標的とする。他の実施形態では、該1つ以上のTALENは、所望の置換領域の下流の部位を標的とする。さらに他の実施形態では、該1つ以上のTALENは、所望の35dminister35n領域の上流及び下流の部位を標的とする。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタSIRPAの該ヒトSIRPA配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0097】
他の特定の実施形態では、Cas9を含むプラスミド、及びgRNAを含む2つ以上のプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、該2つ以上のgRNAは、該Cas9エンドヌクレアーゼが、該ブタSIRPA配列の始まりの上流の部位にて切断するように、及びCas9エンドヌクレアーゼが、該ブタSIRPA配列の末端の下流の部位にて切断するように、該ブタSIRPA配列の上流及び下流を標的とする。いくつかの実施形態では、該Cas9エンドヌクレアーゼは、該ブタSIRPA配列の始まりの上流、及び該ブタSIRPA配列の末端の下流の部位にて切断する。いくつかの実施形態では、該Cas9エンドヌクレアーゼは、該開始部位から50bp未満上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該Cas9エンドヌクレアーゼは、該終結部位から50bp未満下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該Cas9エンドヌクレアーゼは、該開始部位から50~100bp上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該Cas9エンドヌクレアーゼは、該終結部位から50~100bp下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該Cas9エンドヌクレアーゼは、該開始部位から100~150bp上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該Cas9エンドヌクレアーゼは、該終結部位から100~150bp下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該Cas9エンドヌクレアーゼは、該開始部位から150~200bp上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該Cas9エンドヌクレアーゼは、該終結部位から150~200bp下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該Cas9エンドヌクレアーゼは、該開始部位から200bp超上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、該Cas9エンドヌクレアーゼは、該終結部位から200bp超下流の部位で切断する。
【0098】
上記の塩基対に加えて、該2つのCas9切断部位が横に位置するヒトSIRPA配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタSIRPAの該ヒトSIRPA配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0099】
他の特定の実施形態では、ZFNまたはZFニッカーゼをコードする2つ以上のプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、ZFNまたはZFニッカーゼは、該ブタSIRPA配列の始まりの上流の部位にて切断し、ZFNまたはZFニッカーゼは、該ブタSIRPA配列の末端の下流の部位にて切断する。いくつかの実施形態では、ZFNまたはZFニッカーゼは、該開始部位から50bp未満上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、ZFNまたはZFニッカーゼは、該終結部位から50bp未満下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、ZFNまたはZFニッカーゼは、該開始部位から50~100bp上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、ZFNまたはZFニッカーゼは、該終結部位から50~100bp下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、ZFNまたはZFニッカーゼは、該開始部位から100~150bp上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、ZFNまたはZFニッカーゼは、該終結部位から100~150bp下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、ZFNまたはZFニッカーゼは、該開始部位から150~200bp上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、ZFNまたはZFニッカーゼは、該終結部位から150~200bp下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、ZFNまたはZFニッカーゼは、該開始部位から200bp超上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、ZFNまたはZFニッカーゼは、該終結部位から200bp超下流の部位で切断する。
【0100】
上記の塩基対に加えて、該2つのZENまたはZFニッカーゼ切断部位が横に位置するヒトSIRPA配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタSIRPAの該ヒトSIRPA配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0101】
他の特定の実施形態では、TALENをコードする2つ以上のプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、TALENは、該ブタSIRPA配列の始まりの上流の部位にて切断し、TALENは、該ブタSIRPA配列の末端の下流の部位にて切断する。いくつかの実施形態では、該Cas9エンドヌクレアーゼは、該開始部位から50bp未満上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、TALENは、該終結部位から50bp未満下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、TALENは、該開始部位から50~100bp上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、TALENは、該終結部位から50~100bp下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、TALENは、該開始部位から100~150bp上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、TALENは、該終結部位から100~150bp下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、TALENは、該開始部位から150~200bp上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、TALENは、該終結部位から150~200bp下流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、TALENは、該開始部位から200bp超上流の部位で切断する。いくつかの実施形態では、TALENは、該終結部位から200bp超下流の部位で切断する。
【0102】
上記の塩基対に加えて、該2つのTALEN切断部位が横に位置するヒトSIRPA配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタSIRPAの該ヒトSIRPA配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0103】
他の特定の実施形態では、一対の異種特異的リコンビナーゼ認識部位が、該ブタSIRPA配列またはその一部の横に位置するように挿入される。該リコンビナーゼ認識部位の同一の対が横に位置するヒトSIRPA配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。対応するリコンビナーゼをコードするプラスミドが生成される。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタSIRPAの該ヒトSIRPA配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0104】
他の特定の実施形態では、一対の異種特異的リコンビナーゼ認識部位が横に位置するローディングパッドが、第一に該ブタSIRPA配列またはその一部の近くに挿入される。該リコンビナーゼ認識部位の同一の対が横に位置するヒトSIRPA配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。対応するリコンビナーゼをコードするプラスミドが生成される。Cas9を含むプラスミド、及びgRNAを含む2つ以上のプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、該2つ以上のgRNAは、該ブタSIRPA配列が、挿入されたヒトSIRPA配列を残して欠失されるように、該ブタSIRPA配列の上流及び下流を標的とする。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタSIRPAの該ヒトSIRPA配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0105】
他の特定の実施形態では、一対の異種特異的リコンビナーゼ認識部位が横に位置するローディングパッドが、第一に該ブタSIRPA配列またはその一部の近くに挿入される。該リコンビナーゼ認識部位の同一の対が横に位置するヒトSIRPA配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。対応するリコンビナーゼをコードするプラスミドが生成される。ZENまたはZFニッカーゼの対をコードするプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、該ZENまたはZFニッカーゼは、該ブタSIRPA配列が、挿入されたヒトSIRPA配列を残して欠失されるように、該ブタSIRPA配列の上流及び下流を標的とする。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタSIRPAの該ヒトSIRPA配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0106】
他の特定の実施形態では、一対の異種特異的リコンビナーゼ認識部位が横に位置するローディングパッドが、第一に該ブタSIRPA配列またはその一部の近くに挿入される。該リコンビナーゼ認識部位の同一の対が横に位置するヒトSIRPA配列を含むプラスミドまたはベクター。1つ以上の選択マーカーが該プラスミドまたは該ベクターに含まれる。対応するリコンビナーゼをコードするプラスミドが生成される。TALENの対をコードするプラスミドが生成される。いくつかの実施形態では、該TALENは、該ブタSIRPA配列が、挿入されたヒトSIRPA配列を残して欠失されるように、該ブタSIRPA配列の上流及び下流を標的とする。上記のプラスミドまたはベクターは、培養されたブタ胎仔線維芽細胞が挙げられるがこれに限定されない細胞にトランスフェクトされる。該選択マーカー(複数可)をマッチさせる選択ステップを用いて、ブタSIRPAの該ヒトSIRPA配列による置換が成功した細胞を、当技術分野で周知の技術を使用して単離し、増殖させ、検証する。SCNTまたは他の同等の技術を使用して、組み換えミニブタを生成することができる。
【0107】
別の態様では、本明細書に提供するのは、組み換えミニブタを生成する方法であり、この場合、内因性のブタCD47またはその一部は、そのタンパク質産物が、内因性のブタSIRPA及びヒトSIRPAの両方に機能的に結合してこれらを活性化し、マクロファージによる貪食の負の調節を引き出すことができるような方法で遺伝子改変される。
【0108】
7.1.3 組み換えミニチュアブタにおける導入遺伝子の発現を試験する方法
様々な方法が、該導入遺伝子の発現を試験及び検証するために使用され得るとともに、当技術分野で既知である。ある特定の実施形態では、ヒトまたはヒト化CD47及びSIRPAの発現レベルは、例えば、セクション7.1.3.1に記載の方法によって、RNA(例えば、mRNA)レベルで特定され得る。ある特定の実施形態では、ヒトまたはヒト化CD47及びSIRPAの発現レベルは、例えば、セクション7.1.3.2に記載の方法によって、タンパク質レベルで特定され得る。
【0109】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーミニブタの任意の細胞、組織、または臓器における差次的遺伝子発現を検出及び測定する方法を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーミニブタの任意の細胞、組織、または臓器におけるヒトまたはヒト化CD47及びSIRPAの差次的mRNAレベルを検出及び測定する方法を含む。他の実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーミニブタの任意の細胞、組織、または臓器におけるヒトまたはヒト化CD47及びSIRPAの差次的タンパク質レベルを検出及び測定する方法を含む。
【0110】
組織特異的発現は、目的の組織を物理的に単離した後、ヒトまたはヒト化CD47及びSIRPAのタンパク質またはmRNAのレベルを測定し(例えば、異なる組織もしくは臓器の生検、またはある特定の細胞型のフローサイトメトリー)、例えば、以下の方法を、ヒトまたはヒト化CD47及びSIRPAのタンパク質またはmRNAのレベルをインビトロで測定するために適用することによって特定され得る。別の方法として、可視化標識が、ヒトまたはヒト化CD47及びSIRPA遺伝子と同時に発現するように操作される場合、蛍光顕微鏡法等の画像技術を使用して、特定の組織におけるヒトまたはヒト化CD47及びSIRPAのタンパク質発現を可視化及び測定してもよい。シングルセルqPCRを使用して、特定の組織におけるヒトまたはヒト化CD47及びSIRPA遺伝子の発現を測定してもよい。
【0111】
7.1.3.1 組み換えミニブタにおけるmRNAレベルの検出方法
ある特定の実施形態では、セクション7.1.1及び7.1.2に記載の組み換えミニブタに由来するヒトまたはヒト化CD47及びSIRPAのmRNAは、本明細書に記載の技術によって検出される。いくつかの実施形態では、セクション7.1.1及び7.1.2に記載の組み換えミニブタに由来するブタCD47及びSIRPAのmRNAは、本明細書に記載の技術を使用して不検出である。
【0112】
mRNAレベルを検出または定量するいくつかの方法が当技術分野で既知である。例示的な方法としては、ノーザンブロット、リボヌクレアーゼ保護アッセイ、PCRベースの方法(例えば、定量的PCR)、RNAシーケンシング、Fluidigm(登録商標)分析等が挙げられるがこれらに限定されない。ヒトまたはヒト化CD47及びSIRPAのmRNA配列を使用して、ヒトmRNA配列の特定の断片に少なくとも部分的に相補的であるが、ブタの対応物には相補的でないプローブを調製することができる。同様に、ブタCD47及びSIRPAのmRNA配列を使用して、ブタmRNA配列の特定の断片に少なくとも部分的に相補的であるが、ヒトの対応物には相補的でないプローブを調製することができる。その後、該プローブを使用して、サンプル中のヒトまたはヒト化及びブタCD47及びSIRPAのmRNAの存在を、任意の適切なアッセイ、例えば、PCRベースの方法、ノーザンブロッティング、dipstickアッセイ、TaqMan(商標)アッセイ等を使用して検出することができる。
【0113】
他の実施形態では、生体サンプルにおけるヒトまたはヒト化CD47及びSIRPA発現を調べるための核酸アッセイが調製され得る。アッセイは通常、固体支持体及び該支持体に接触する少なくとも1つの核酸を含む。該核酸は、ヒトCD47及びSIRPAに固有であるが、ブタ対応物には存在しないmRNAの少なくとも一部に対応する。同様に、該核酸は、ブタCD47及びSIRPAに固有であるが、ヒト対応物には存在しないmRNAの少なくとも一部に対応する。該アッセイは、該サンプル中の該mRNAの発現の変化を検出するための手段も有し得る。該アッセイ法は、所望のmRNA情報のタイプに応じて変化させることができる。例示的な方法としては、ノーザンブロット及びPCRベースの方法(例えば、qRT-PCR)が挙げられるがこれらに限定されない。qRT-PCR等の方法は、サンプル中の該mRNAの量を正確に定量することもできる。
【0114】
典型的なmRNAのアッセイ法は、(1)表面に結合した対象プローブを得るステップ、(2)特異的結合を与える上で十分な条件下、mRNAの集団を該表面結合プローブにハイブリダイズするステップ、(3)該表面結合プローブに特異的に結合していない核酸を除去するため、ハイブリダイゼーション後に洗浄するステップ、及び(4)ハイブリダイズされたmRNAを検出するステップを含み得る。これらのステップの各々で使用される試薬及びそれらの使用のための条件は、特定の用途に応じて変化させてもよい。
【0115】
他の方法、例えば、PCRベースの方法もまた、ヒトまたはヒト化CD47及びSIRPAの発現を検出するために使用することができる。PCR法の例は、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,927,024号に見出すことができる。RT-PCR法の例は、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第7,122,799号に見出すことができる。蛍光インサイチュPCRの方法は、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第7,186,507号に記載されている。
【0116】
いくつかの実施形態では、定量的逆転写PCR(qRT-PCR)が、RNA標的の検出及び定量化の両方に使用され得る(Bustin et al.,Clin.Sci.2005,109:365-379)。いくつかの実施形態では、qRT-PCRベースのアッセイは、細胞ベースのアッセイの過程でmRNAレベルを測定する上で有用であり得る。qRT-PCRベースの方法の例は、例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第7,101,663号に見出すことができる。
【0117】
通常の逆転写PCR及びアガロースゲルによる分析とは対照的に、qRT-PCRは、定量的結果を与える。qRT-PCRのさらなる利点は、使用の相対的な容易さ及び利便性である。qRT-PCR用の機器、例えば、Applied Biosystems 7500が市販されており、試薬、例えば、TaqMan(登録商標)Sequence Detection Chemistryも市販されている。例えば、TaqMan(登録商標)Gene Expression Assaysを、製造業者の説明書に従って使用することができる。これらのキットは、ヒト、マウス、及びラットのmRNA転写産物の迅速、確実な検出及び定量化のためにあらかじめ調合された遺伝子発現アッセイである。例示的なqRT-PCRプログラムは、例えば、50℃2分間、95℃10分間、95℃15秒間の40サイクル、その後60℃1分間である。
【0118】
7.1.3.2 組み換えミニブタにおけるポリペプチドまたはタンパク質レベルの検出方法
1つの態様では、本明細書に提供するのは、組み換えミニブタ、例えば、セクション7.1.1及び7.1.2に記載の組み換えミニブタで生成されたヒトまたはヒト化CD47及びSIRPαポリペプチドまたはタンパク質を検出する方法である。本明細書に提供するいくつかの実施形態では、ブタCD47及びSIRPαのポリペプチドまたはタンパク質は、本明細書に記載の7.1.1及び7.1.2に記載の組み換えミニブタにおいて不検出である。
【0119】
様々なタンパク質の検出及び定量方法を使用して、ヒトまたはヒト化CD47及びSIRPαのレベルを測定することができる。任意の適切なタンパク質定量法が使用され得る。いくつかの実施形態では、抗体ベースの方法が使用される。使用され得る例示的な方法としては、免疫ブロッティング(ウエスタンブロット)、ELISA、免疫組織化学、免疫蛍光、フローサイトメトリー、サイトメトリービーズアレイ、質量分析等が挙げられるがこれらに限定されない。直接ELISA、間接ELISA及びサンドイッチELISAを含めた、いくつかのタイプのELISAが一般に使用される。
【0120】
7.1.4 他の遺伝子改変
本明細書に提供する組み換えミニブタは、CD47及びSIRPAに加えてさらに改変され得る。かかるさらなる改変としては、例えば、α-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼのノックアウト及びサイトカイン受容体の改変が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するミニブタは、α-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現しない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するミニブタはさらに、ヒトCD55、ヒトCD46、ヒトCD59、IL-3R、またはそれらの何らかの組み合わせを発現する。例えば、Nomura et al.(2020),Xenotransplantation.2020;27:e12549、米国特許第9,883,939号及び米国特許第9,980,471 B2号を参照されたい。
【0121】
セクション7.3の移植方法を参照すると、かかるさらなる遺伝子改変は、臓器移植のドナーであるミニブタに関連して使用され得るとともに、かかるさらなる改変は、造血幹細胞のドナーであるミニブタに関連しても使用され得る(例えば、骨髄移植の場合)。
【0122】
7.2 組み換えミニブタに由来する細胞、組織、臓器
セクション7.1に記載のトランスジェニックドナーミニブタの細胞、組織、臓器または体液は、移植(例えば、異種移植)の方法に使用され得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、セクション7.1に記載のトランスジェニックドナーミニブタの細胞は、移植(例えば、異種移植)の方法に使用され得る。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する赤血球が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する顆粒球が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する無顆粒白血球が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する血小板が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来するニューロンが使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来するグリア細胞が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する筋細胞が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する軟骨細胞が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する骨細胞が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する皮膚細胞が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する内皮細胞が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する上皮細胞が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する脂肪細胞が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する精子が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する卵子が使用される。
【0124】
いくつかの実施形態では、セクション7.1に記載のトランスジェニックドナーミニブタの組織は、移植(例えば、異種移植)の方法に使用され得る。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する結合組織が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する上皮組織が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する筋組織が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する神経組織が使用される。
【0125】
いくつかの実施形態では、セクション7.1に記載のトランスジェニックドナーミニブタの臓器は、移植(例えば、異種移植)の方法に使用され得る。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する骨格が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する関節が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する靭帯が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する腱が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する唾液腺が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する食道が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する気管が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する胃が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する小腸が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する大腸が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する肝臓が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する胆嚢が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する腸間膜が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する膵臓が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する肺が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する心臓が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する膵島が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する腎臓が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する膀胱が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する尿道が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する子宮が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する下垂体が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する松果腺が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する甲状腺が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する副甲状腺が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する皮膚が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する副腎が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する動脈が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する静脈が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する毛細血管が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来するリンパ管が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来するリンパ節が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する骨髄が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する胸腺が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する脾臓が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する角膜が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する網膜が使用される。いくつかの特定の実施形態では、トランスジェニックドナーミニブタに由来する虹彩が使用される。
【0126】
7.3 移植方法
本明細書に提供するのは、第一のドナー、例えば、セクション7.1に記載の組み換えミニブタに由来する移植片を、第二のドナー、例えば、セクション7.1に記載の組み換えミニブタに由来する骨髄とともにまたはそれを使用せずに移植する方法である。特に、トランスジェニックドナーミニブタの細胞、組織、及び臓器を採取する方法は、セクション7.3.1に記載されている。該移植の調製、該移植のプロセス、及び該移植後の手順は、セクション7.3.2に記載されている。レシピエントの患者群はセクション7.3.3に記載されている。異種移植片の寛容は、セクション7.3.4に記載の方法によって改善され得る。移植の結果は、セクション7.3.7に記載の通りに測定され得る。
【0127】
7.3.1 移植片の採取方法
いくつかの態様では、本明細書に提供する方法は、セクション 7.1に記載の組み換えミニブタから移植片を採取することを含む。
【0128】
ミニブタから移植片を採取するための外科的手術に関しては、当技術分野で周知である。例えば、Tena et al.(2017),Transplantation 101:316-21、及びNomura et al.(2020),Xenotransplantation 2020;27:e12549。上記の内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0129】
いくつかの実施形態では、該移植片がドナー動物から取り出された後であるがレシピエントに移植される前の移行期間中、該移植片は、該移植片の生存を維持するためのある特定の容器で保管される。いくつかの特定の実施形態では、該容器は、該移植片の有効寿命を延長するために、暖める温度及び/または低温での該移植片の灌流が可能なものである。いくつかの特定の実施形態では、該移植片は、適切な流体サンプルとともに該容器で保管される。いくつかの特定の実施形態では、該移植片は、十分な酸素を供給して該容器で保管される。参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,673,594号。
【0130】
7.3.2 移植片の移植方法
いくつかの態様では、本明細書に提供する、組み換えミニブタに由来する移植片をレシピエントに移植する方法は、(a)セクション7.1に記載の通り、該移植片を該組み換えミニブタから採取すること、及び(b)該移植片を該霊長類に移植することを含む。いくつかの実施形態では、該レシピエントは、霊長類である。いくつかの特定の実施形態では、該レシピエントは、ヒトである。いくつかの実施形態では、該移植片は、細胞、組織、または臓器であり、該臓器は、心臓、腎臓、膵島、肝臓、膵臓、肺、腸、皮膚、小腸、気管、角膜、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0131】
いくつかの態様では、本明細書に提供する移植方法は、(a)セクション7.1に記載の通り、組み換えミニブタから骨髄を採取すること、(b)該骨髄をレシピエントに移植すること、(c)セクション7.1に記載の通り、別の組み換えミニブタから同じレシピエントに対する移植片を採取すること、及び(d)該移植片を同じレシピエントに移植することを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、該造血幹細胞ならびに該ドナーの細胞、組織、及び臓器は、同じドナー動物から取り出される。他の実施形態では、該造血幹細胞ならびに該ドナーの細胞、組織、及び臓器は、2匹の異なるが遺伝的に適合するドナー動物から採取される。本明細書で使用される、「遺伝的に適合する」は、遺伝子、例えば、MHC遺伝子間の相同性を指す場合がある。いくつかの実施形態では、該遺伝的に適合するドナー動物は、MHCに関して完全に適合する。いくつかの実施形態では、該造血幹細胞ならびに該ドナーの細胞、組織、及び臓器は、同じ高度近交系の群の2匹の異なる動物から取り出される。
【0133】
ある特定の実施形態では、ミニブタからドナー細胞、組織、及び臓器を移植するステップは、別のミニブタから造血幹細胞(例えば、骨髄)を移植するステップの少なくとも7日後に実施される。ある特定の実施形態では、ミニブタからドナー細胞、組織、及び臓器を移植するステップは、別のミニブタから造血幹細胞(例えば、骨髄)を移植するステップの少なくとも14日後に実施される。ある特定の実施形態では、ミニブタからドナー細胞、組織、及び臓器を移植するステップは、別のミニブタから造血幹細胞(例えば、骨髄)を移植するステップの少なくとも21日後に実施される。ある特定の実施形態では、ミニブタからドナー細胞、組織、及び臓器を移植するステップは、別のミニブタから造血幹細胞(例えば、骨髄)を移植するステップの少なくとも28日後に実施される。ある特定の実施形態では、ミニブタからドナー細胞、組織、及び臓器を移植するステップは、別のミニブタから造血幹細胞(例えば、骨髄)を移植するステップの少なくとも35日後に実施される。ある特定の実施形態では、ミニブタからドナー細胞、組織、及び臓器を移植するステップは、別のミニブタから造血幹細胞(例えば、骨髄)を移植するステップの少なくとも42日後に実施される。ある特定の実施形態では、ミニブタからドナー細胞、組織、及び臓器を移植するステップは、別のミニブタから造血幹細胞(例えば、骨髄)を移植するステップの少なくとも49日後に実施される。ある特定の実施形態では、ミニブタからドナー細胞、組織、及び臓器を移植するステップは、別のミニブタから造血幹細胞(例えば、骨髄)を移植するステップの少なくとも56日後に実施される。本開示は、ドナー細胞におけるヒトCD47のトランスジェニック発現のためのWatanabe et al.,Xenotransplantation,2020,27:e12552及びNomura et al.,Xenotransplantation,2020,27:e12549に記載の方法及び技術を含む。
【0134】
該造血幹細胞は、任意の細胞型であり得る。ある特定の実施形態では、該細胞は、造血幹細胞、リンパ球、または骨髄細胞である。いくつかの実施形態では、造血細胞の混合集団は、第一のドナー動物(例えば、ミニブタ)からレシピエントに移植される。ある特定の実施形態では、該ブタ造血幹細胞は、骨髄、末梢血、臍帯血、胎仔肝臓または胚性幹細胞から得られる。該造血幹細胞は、当技術分野で既知の任意の適切な方法によって、例えば、以下のセクション7.3.4.3に記載の方法によって移植され得る。いくつかの実施形態では、該造血幹細胞は、例えば、Watanabe et al.(2019),Xenotransplantation.2019;00:e12552に記載の骨内骨髄移植によって、該レシピエントに移植される。
【0135】
7.3.3 移植のレシピエント
好ましい実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者(例えば、1つ以上のドナー移植片のレシピエント)は、ヒト患者である。本明細書で使用される、「対象」及び「患者」という用語は、同義で使用され、任意のヒトまたは非ヒト哺乳類を含む。非限定的な例としては、ヒト、ウマ、ブタ、ウシ、クマネズミ属、マウス、イヌ、及びネコ種の成員が挙げられる。いくつかの実施形態では、該対象は、非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態では、該対象は、ヒトである。特定の実施形態では、該対象は、ヒト成体である。いくつかの実施形態では、該対象は、ヒト小児である。特定の実施形態では、該対象は、ヒトであり、ブタドナーから1つ以上のドナー移植片を受け取る。他の特定の実施形態では、該対象は、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、カニクイザル、またはアカゲザル)であり、ブタドナーから1つ以上の移植片を受け取る。
【0136】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、腎移植を必要とする。患者は、腎不全またはドナー腎臓の拒絶反応により、腎移植を必要とし得る。腎不全は、高血圧(高血圧症)、物理的損傷、糖尿病、腎臓病(多発性嚢胞腎、糸球体疾患)及び自己免疫障害、例えば、ループスが挙げられるがこれらに限定されないいくつかの原因を有し得る。腎不全は、急性の場合も慢性の場合もある。腎不全はまた、臨床検査、例えば、糸球体ろ過量、血中尿素窒素、及び血清クレアチニンによって、画像試験(超音波、コンピュータ断層撮影法)または腎生検によっても診断され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、ステージ1、2、3、4、または5の腎疾患を有する。
【0137】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、心臓移植を必要とする。患者は、心不全または冠動脈疾患により、心臓移植を必要とし得る。心不全または冠動脈疾患は、拡張型心筋症、拘束型筋疾患、肥大型心筋症、心臓弁膜症、先天性心疾患、心室性不整脈が挙げられるがこれらに限定されないいくつかの原因を有し得る。末期心不全または重度の冠動脈疾患は、急性の場合も慢性の場合もある。心不全及び冠動脈疾患は、臨床検査、例えば、血液検査、胸部X線、心電図(ECG)、心エコー図、負荷テスト、心臓コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、磁気共鳴イメージング(MRI)、冠動脈造影図、心筋生検、心臓カテーテル法、及び血管造影図によって診断され得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、膵島移植を必要とする。患者は、1型糖尿病が挙げられるがこれに限定されないいくつかの原因を有する可能性があるインスリン産生能力の欠如のために膵島移植を必要とし得る。患者は、臨床検査、例えば、糖化ヘモグロビン(A1C)検査、随時血糖値検査、及び空腹時血糖値検査で診断され得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、肝臓移植を必要とする。患者は、肝不全または肝癌により肝移植を必要とし得る。肝不全または肝癌は、肝硬変、B型肝炎感染症、C型肝炎感染症、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、肝臓に影響を及ぼす遺伝性疾患、例えば、これらに限定するものではないが、ヘモクロマトーシス及びウィルソン病、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎ならびに胆管閉鎖が挙げられるがこれらに限定されないいくつかの原因を有し得る。肝不全は、急性の場合も慢性の場合もある。肝不全は、臨床検査、例えば、血液検査、超音波、CTスキャン、MRI、及び肝生検で診断され得る。
【0140】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、膵臓移植を必要とする。患者は、1型糖尿病が挙げられるがこれに限定されないいくつかの原因を有する可能性があるインスリン産生能力の欠如のために膵臓移植を必要とし得る。患者は、臨床検査、例えば、糖化ヘモグロビン(A1C)検査、随時血糖値検査、及び空腹時血糖値検査で診断され得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、肺移植を必要とする。患者は、肺不全または肺癌により肺移植を必要とし得る。肺不全または肺癌は、肺気腫、肺塞栓症、肺線維症、肺高血圧、及び嚢胞性線維症を含めた慢性閉塞性肺疾患(COPD)が挙げられるがこれらに限定されないいくつかの原因を有し得る。肺不全は、急性の場合も慢性の場合もある。肺不全は、臨床検査、例えば、身体検査、パルスオキシメトリによる検査、及び動脈血ガス検査で診断され得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、腸移植を必要とする。患者は、腸管不全のために腸移植を必要とし得る。腸管不全は、短腸症候群(SBS)、慢性腸管偽閉塞(CIPO)、腹腔内非転移性腫瘍、虚血、クローン病、外傷、運動障害、腸軸捻、壊死性腸炎、腹壁破裂、臍帯ヘルニア、腸閉塞、微絨毛封入体病、乳児難治性下痢症、自己免疫性腸炎、及び腸ポリポーシスが挙げられるがこれらに限定されないいくつかの原因を有し得る。腸管不全は、急性の場合も慢性の場合もある。腸管不全は、臨床検査、例えば、腹部コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、腹部X線、バリウム注腸/下部消化管撮影、血液検査、結腸内視鏡検査、S状結腸鏡検査、胃内容排出検査、胃十二指腸内圧測定、胃調節シンチグラフィー、上部内視鏡検査、ワイヤレスカプセル胃腸モニタリングシステムによって診断され得る。
【0143】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、皮膚移植を必要とする。皮膚移植を必要とし得る患者は、皮膚感染症、深部熱傷、大きな開放創、褥瘡、皮膚の潰瘍、または皮膚癌が挙げられるがこれらに限定されないいくつかの原因に起因し得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、気管移植を必要とする。患者は、気道損傷のために気管移植を必要とし得る。気道損傷は、結核、粘膜表皮癌、腺様嚢胞癌、気管支軟化症、気管食道瘻、及び気管切開術が挙げられるがこれらに限定されないいくつかの原因を有し得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、角膜移植を必要とする。患者は、重度の視力障害のために角膜移植を必要とし得る。重度の視力障害は、眼の感染症、眼の炎症、角膜の薄化、変性視力疾患、例えば、フックスジストロフィー、円錐角膜、角膜穿孔、角膜瘢痕化、及び水疱性角膜症が挙げられるがこれらに限定されないいくつかの原因を有し得る。重度の視力障害は、急性の場合も慢性の場合もある。重度の視力障害は、臨床検査、例えば、総合的な眼科検診及び角膜トポグラフィーによって診断され得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、血管組織移植を必要とする。患者は、機能が低下した、罹患または欠損血管のために血管組織移植を必要とし得る。提供される血管組織の種類は、下肢からの伏在静脈及び大腿血管、ならびに腹部からの大動脈腸骨動脈であり得るがこれらに限定されない。血管組織の移植を受ける原因は、末梢血管疾患、慢性透析治療、重度の血栓形成、及び腹部大動脈瘤が挙げられるがこれらに限定されないいくつかであり得る。
【0147】
7.3.4 異種移植片の寛容を改善する方法
さらなる処理が、本明細書に記載の移植方法の前、それと同時、またはその後に使用され得る。さらなる処理は、一般に、レシピエントにおける異種移植片の寛容を改善することを目的とするが、他の処理が企図される。したがって、本明細書に提供する移植方法は、1つ以上の追加の処理、例えば、T細胞を阻害する、補体をブロックする、または他の場合には該移植片に対する該レシピエントの免疫応答を下方制御する処理を施すことを含み得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、レシピエントは、胸腺摘出及び/または脾臓摘出される。
【0149】
いくつかの実施形態では、レシピエントは、放射線、例えば、全身照射を受ける。特定の実施形態では、レシピエントは、5~10Gyまたは10~15Gyの照射を受ける。いくつかの実施形態では、胸腺照射が使用され得る。いくつかの実施形態では、該レシピエントは、低線量の放射線(例えば、致死未満量の100rad~400radの全身照射)を施される。局所胸腺放射線照射を使用してもよい。
【0150】
本明細書に記載の方法による移植を受けている対象の血液は、異種移植片を標的とする抗体を含む場合がある。かかる抗体は、臓器灌流、及び/または寛容誘導性骨髄の移植によって排除され得る。自然抗体は、ドナー種の肝臓の血液灌流によってレシピエントの血液から吸収され得る。同様に、抗体産生細胞は、当該レシピエントに存在し得る。かかる抗体産生細胞は、例えば、照射または薬物処理によって排除され得る。ある特定の実施形態では、移植に使用される移植片、細胞、組織、または臓器は、セクション7.1.4の通り、宿主に存在する抗体によってそれらが認識されない(例えば、該細胞がa-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ欠損である)ように遺伝子改変され得る。
【0151】
いくつかの実施形態では、ドナーの間質組織が投与される。ある特定の実施形態では、該ドナーの間質組織は、胎仔肝臓、胸腺、及び/または胎仔脾臓から得られ、当該レシピエントに、例えば、腎臓被膜内に移植される。
【0152】
7.3.4.1 免疫抑制療法
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って異種移植を受ける患者は、免疫抑制療法を受ける。該免疫抑制療法は、移植拒絶反応を減少させる、及び/または異種移植の転帰を改善することが示されている任意のFDAが承認した治療であり得る。免疫抑制療法の非限定的な例としては、カルシニューリン阻害剤(例えば、タクロリムスまたはシクロスポリン)、抗増殖剤(例えば、ミコフェノール酸、6-メルカプトプリンまたはそのプロドラッグであるアザチオプリン等の代謝拮抗薬)、哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)の阻害剤(例えば、シロリムス、ラパマイシン)、ステロイド(例えば、プレドニゾン)、細胞周期阻害剤(アザチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチル)、リンパ球枯渇剤(例えば、抗胸腺細胞グロブリンまたは抗体、例えば、アレムツズマブ、シプリズマブもしくはバシリキシマブ)、及び共刺激遮断剤(例えば、ベラタセプト)が挙げられる。例えば、Chung et al(2020).,Ann Transl Med.Mar;8(6):409、van der Mark et al.(2020),Eur Respir Rev;29:190132及びBenvenuto et al.(2018),J Thorac Dis 10:3141-3155を参照されたい。
【0153】
免疫抑制療法は、導入療法(周術期、または手術直後)、維持用量として投与される場合もあれば、急性拒絶反応に対して投与される場合もある。導入療法は、一般に、バシリキシマブ、抗胸腺細胞グロブリンまたはアレムツズマブを含む。免疫抑制療法はまた、多くの場合、レシピエントの生涯にわたって継続することが必要とされる維持療法として施され得る。維持免疫抑制療法は、一般に、カルシニューリン阻害剤(タクロリムスまたはシクロスポリン)、抗増殖剤(ミコフェノール酸またはアザチオプリン)、及びコルチコステロイドを含む。急性拒絶反応に対する免疫抑制療法は、一般に、サイモグロブリンまたはミコフェノール酸を含む。例えば、Chung et al.(2020),Ann Transl Med.Mar;8:409及びBenvenuto et al.,(2018)J Thorac Dis 10:3141-3155を参照されたい。
【0154】
免疫抑制剤の非限定的な例としては、(1)代謝拮抗薬、例えば、プリン合成阻害剤(イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)阻害剤、例えば、アザチオプリン、ミコフェノール酸、及びミコフェノール酸モフェチル等)、ピリミジン合成阻害剤(例えば、レフルノミド及びテリフルノミド)、ならびに葉酸代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート)、(2)カルシニューリン阻害剤、例えば、タクロリムス、シクロスポリンA、ピメクロリムス、及びボクロスポリン、(3)TNF-アルファ阻害剤、例えば、サリドマイド及びレナリドマイド、(4)IL-1受容体アンタゴニスト、例えば、アナキンラ、(5)哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)の阻害剤、例えば、ラパマイシン(シロリムス)、デフォロリムス、エベロリムス、テムシロリムス、ゾタロリムス、及びバイオリムスA9、(6)コルチコステロイド、例えば、プレドニゾン、ならびに(7)いくつかの細胞または血清標的のいずれか1つに対する抗体(抗リンパ球グロブリン及び抗胸腺細胞グロブリンを含む)が挙げられる。
【0155】
非限定的な例示的な細胞標的及びそれらのそれぞれの阻害化合物としては、補体成分5(例えば、エクリズマブ)、腫瘍壊死因子(TNF)(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、アフェリモマブ及びゴリムマブ)、IL-5(例えば、メポリズマブ)、IgE(例えば、オマリズマブ)、BAYX(例えば、ネレリモマブ)、インターフェロン(例えば、ファラリモマブ(faralimomab))、IL-6(例えば、エルシリモマブ(elsilimomab))、IL-12及びIL-13(例えば、レブリキズマブ及びウステキヌマブ)、CD3(例えば、ムロモナブ-CD3、オテリキシズマブ、テプリズマブ、ビシリズマブ)、CD4(例えば、クレノリキシマブ、ケリキシマブ及びザノリムマブ)、CDI la(例えば、エファリズマブ)、CD18(例えば、エルリズマブ(erlizumab))、CD20(例えば、アフツズマブ、オクレリズマブ、パスコリズマブ)、CD23(例えば、ルミリキシマブ)、CD40(例えば、テネリキシマブ、トラリズマブ)、CD62L/L-セレクチン(例えば、アセリズマブ(aselizumab))、CD80(例えば、ガリキシマブ)、CD147/ベイシジン(例えば、ガビリモマブ(gavilimomab))、CD154(例えば、ルプリズマブ)、BlyS(例えば、ベリムマブ)、CTLA-4(例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ)、CAT(例えば、ベルチリムマブ、レルデリムマブ(lerdelimumab)、メテリムマブ)、インテグリン(例えば、ナタリズマブ)、IL-6受容体(例えば、トシリズマブ)、LFA-1(例えば、オデュリモマブ(odulimomab))、ならびにIL-2受容体/CD25(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ、イノリモマブ)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0156】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供する移植方法は、例えば、混合キメリズムを誘導することによって、レシピエントにおいて寛容を誘導するステップを含む。「混合キメリズム」は、一般に、同種異系造血幹細胞のレシピエントのリンパ造血系が宿主細胞とドナー細胞の混合物を含む状態を説明するものと理解されている。この状態は通常、骨髄または動員末梢血幹細胞の移植のいずれかにより達成される。混合キメリズムは、一過性の場合もあれば、安定した場合もある。例えば、Sachs et al.(2014),Cold Spring Harb Perspect Med 2014;4:a015529、米国特許第6,296,846号及び米国特許第6,306,651号を参照されたい。混合キメリズムはまた、ドナー動物からの胸腺組織の同時移植によっても達成され得る。例えば、国際特許出願公開第WO2020/061272号を参照されたい。
【0157】
7.3.4.2 血管新生化胸腺移植
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、血管新生化胸腺移植を受ける。例えば、国際特許出願公開第PCT WO2020/061272号を参照されたい。胸腺組織は、血管再生のため、自己腎臓被膜下に埋め込むことによって、移植用に調製され得る。血管新生化胸腺移植物は、例えば、「胸腺腎臓」、すなわち、ドナー自体の腎臓被膜下に、該ドナー由来の胸腺組織を移植することによって調製された腎臓であり得る。例えば、Yamada et. al.,Transplantation 68(11):1684-1692(1999)、Yamada et al.,J Immunol 164:3079-3086(2000)及びYamada et al.,Transplantation 76(3):530-536(2003)を参照されたい。血管新生化胸腺移植物はまた、腎臓とは別に移植された血管新生化胸腺葉であり得る。例えば、LaMattina et al.,Transplantation 73(5):826-831(200)及びKamano et al.,Proc Natl Acad Sci U S A 101(11):3827-3832(2004)を参照されたい。
【0158】
7.3.4.3 造血幹細胞移植
異なる種の障壁を越えた幹細胞の生着及び造血は、ドナー種からの造血間質環境を提供することによって増強され得る。間質マトリックスは、造血幹細胞とその間質環境との相互作用に必要とされる種特異的因子、例えば、造血成長因子、接着分子、及びそれらのリガンドを供給する。
【0159】
肝臓は、胎仔における主要な造血部位であるため、胎仔肝臓は、造血幹細胞の供給源として骨髄の代替としても機能し得る。移植の代替または補助として、胎仔肝細胞が流体懸濁液で投与され得る。胸腺は、T細胞成熟の主要部位である。各臓器は、宿主に移植されるそれぞれの未分化幹細胞の分化を支援することができる臓器特異的間質マトリックスを含む。胸腺間質組織は、移植前に照射され得る。
【0160】
ブタ造血キメラは、混合リンパ球反応におけるドナー特異的な非反応性、抗ドナーIgG抗体産生の欠如、及びドナー移植片の受容を導き得る。したがって、混合キメリズムは、高度に異なる異種の組み合わせにおいて寛容を誘導することが可能であり、異種移植片拒絶反応を予防する臨床的可能性を有し得る。例えば、Griesemer et al.,Immunol.Rev.2014;258(1):241-258、Sachs et al.(2014),Cold Spring Harb Perspect Med 2014;4:a015529を参照されたい。混合キメリズムを誘導するために、ドナーの骨髄細胞(BMC)、または別の造血幹細胞源、例えば、胎仔肝懸濁液を当該レシピエントに注射することができる。該造血幹細胞は、任意の供給源、例えば、骨髄または末梢血幹細胞から採取され得る。例えば、Sachs et al.(2014),Cold Spring Harb Perspect Med 2014;4:a015529を参照されたい。ドナーのBMCは、レシピエントの適切な部位に向かって進み、残りの宿主細胞と隣接して成長及び増殖し、キメラリンパ造血集団を形成する。このプロセスにより、新たに形成されたB細胞(及びそれらが産生する抗体)がドナー抗原に曝露され、その結果、当該移植物が自己として認識される。該ドナーに対する寛容はまた、造血幹細胞、例えば、骨髄細胞の生着が達成された動物のT細胞レベルでも観察される。胸腺組織(例えば、血管新生化胸腺または胸腺腎臓)の移植は、異種移植片に対して反応しないT細胞レパートリーを生成することによってT細胞寛容を誘導することができる。異種ドナーの使用は、同じ動物、または遺伝的に適合する動物に由来する骨髄細胞及び臓器を使用する可能性を与える。骨髄移植の場合、該レシピエントには、低線量の放射線が投与され得る。場合によっては、該レシピエントは、コブラ毒因子等の補体を枯渇させる薬剤で処置され得る(例えば、-1日目)。
【0161】
7.3.5 移植の評価方法
いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、当該レシピエントへの免疫抑制療法の投与が、現在の標準治療と比較して、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の移植後に減少する。いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の短期的な拒絶反応の発生が、現在の標準治療と比較して減少する。いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の長期的な拒絶反応の発生が、現在の標準治療と比較して減少する。いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存が、現在の標準治療と比較して延長される。いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器を受けたレシピエントにおいて、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の機能が、現在の標準治療と比較して良好になる。いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器を受けたレシピエントにおいて、該移植が介在することを目標とする対応する疾患が、対応するバイオマーカー(複数可)によって表示して、現在の標準治療と比較して改善される。いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器を受けたレシピエントにおいて、他の標的とされていない臓器系の機能は正常になる。いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器を受けたレシピエントの生存率が、現在の標準治療と比較して高くなる。いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器を受けたレシピエントの生活の質が、現在の標準治療と比較して高くなる。
【0162】
特定の実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の量が、相当する移植レシピエント(例えば、同性かつ、同年齢、身長、及び/または体重の人)に対して一般に投与される免疫抑制剤の量と比較して減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の量が10%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の量が10~20%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の量が20~30%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の量が30~40%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の量が40~50%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の量が50~60%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の量が60~70%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の量が70~80%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の量が80~90%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の量が90%超減少する。
【0163】
いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、当該レシピエントに対する免疫抑制療法の投与頻度が、相当するレシピエント(例えば、同性かつ、同年齢、身長、及び/または体重の人)に対して通常投与されるものと比較して減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の頻度が10%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の頻度が10~20%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の頻度が20~30%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の頻度が30~40%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の頻度が40~50%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の頻度が50~60%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の頻度が60~70%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の頻度が70~80%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の頻度が80~90%減少する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制剤の頻度が90%超減少する。
【0164】
いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、当該レシピエントに投与される免疫抑制療法の治療期間が、相当するレシピエント(例えば、同性かつ、同年齢、身長、及び/または体重の人)に対して通常投与されるものと比較して短縮される。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制療法の治療期間が10%短縮される。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制療法の治療期間が10~20%短縮される。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制療法の治療期間が20~30%短縮される。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制療法の治療期間が30~40%短縮される。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制療法の治療期間が40~50%短縮される。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制療法の治療期間が50~60%短縮される。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制療法の治療期間が60~70%短縮される。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制療法の治療期間が70~80%短縮される。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制療法の治療期間が80~90%短縮される。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法により、当該レシピエントに投与される免疫抑制療法の治療期間が90%超短縮される。
【0165】
いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、セクション7.1に記載のドナーの細胞、組織、及び/または臓器の短期的な拒絶反応の発生が、CD47のみが操作された(すなわち、ブタCD47遺伝子が欠失または不活性化され、ヒトCD47遺伝子が挿入された)組み換えミニブタに由来するものと比較して減少する。他の実施形態では、本明細書に記載の移植方法により、セクション7.1に記載のドナーの細胞、組織、及び/または臓器の長期的な拒絶反応の発生が、CD47のみが操作された(すなわち、ブタCD47遺伝子が欠失または不活性化され、ヒトCD47遺伝子が挿入された)組み換えミニブタに由来するものと比較して減少する。
【0166】
いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器(例えば、セクション7.1に記載のドナーの細胞、組織、及び/または臓器)の短期的な拒絶反応の発生が、同種異系ドナーの細胞、組織、及び/または臓器と比較して減少する。他の実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器(例えば、セクション7.1に記載のドナーの細胞、組織、及び/または臓器)の長期的な拒絶反応の発生が、同種異系ドナーの細胞、組織、及び/または臓器と比較して減少する。
【0167】
いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、本明細書に記載の組み換えミニブタから得られるドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存が、CD47のみが操作された(すなわち、ブタCD47遺伝子が欠失または不活性化され、ヒトCD47遺伝子が挿入された)組み換えミニブタから得られるドナーの細胞、組織、及び/または臓器と比較して延長される。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を10%未満延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を10~25%未満延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を25~50%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を50~75%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を75~100%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を100~200%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を200~300%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を300%超延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を1~5年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を5~10年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を10~15年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を15~20年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を20~25年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を25~30年延長する。
【0168】
他の実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、セクション7.1に記載の組み換えミニブタに由来するドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存が、同種異系ドナーの細胞、組織、及び/または臓器と比較して延長される。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を10%未満延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を10~25%未満延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を25~50%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を50~75%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を75~100%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を100~200%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を200~300%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を300%超延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を1~5年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を5~10年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を10~15年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を15~20年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を20~25年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の生存を25~30年延長する。
【0169】
いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器は、当該レシピエントにおいて、少なくとも6ヶ月間生存することが可能になる。他の実施形態では、本明細書に提供する方法により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器は、当該レシピエントにおいて、少なくとも1年間生存することが可能になる。他の実施形態では、本明細書に提供する方法により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器は、当該レシピエントにおいて、少なくとも5年間生存することが可能になる。他の実施形態では、本明細書に提供する方法により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器は、当該レシピエントにおいて、少なくとも10年間生存することが可能になる。他の実施形態では、本明細書に提供する方法により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器は、当該レシピエントにおいて、少なくとも15年間生存することが可能になる。他の実施形態では、本明細書に提供する方法により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器は、当該レシピエントにおいて、少なくとも20年間生存することが可能になる。
【0170】
いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、移植後の該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の機能が、CD47のみが操作された(すなわち、ブタCD47遺伝子が欠失または不活性化され、ヒトCD47遺伝子が挿入された)組み換えミニブタに由来するものと比較して良好になる。他の実施形態では、本明細書に提供する方法により、移植後の該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の機能が、同種異系ドナーの細胞、組織、及び/または臓器と比較して良好になる。
【0171】
いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器を受けたレシピエントにおいて、該移植が介在することを目標とする対応する疾患が、対応するバイオマーカー(複数可)によって表示して、CD47のみが操作された(すなわち、ブタCD47遺伝子が欠失または不活性化され、ヒトCD47遺伝子が挿入された)組み換えミニブタに由来するものと比較して改善される。他の実施形態では、本明細書に提供する方法により、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器を受けたレシピエントにおいて、該移植が介在することを目標とする対応する疾患が、対応するバイオマーカー(複数可)によって表示して、同種異系ドナーの細胞、組織、及び/または臓器と比較して改善される。
【0172】
いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、セクション7.1に記載の組み換えミニブタに由来するドナーの細胞、組織、及び/または臓器を受けたレシピエントにおける他の標的とされていない臓器系の機能は、CD47のみが操作された(すなわち、ブタCD47遺伝子が欠失または不活性化され、ヒトCD47遺伝子が挿入された)組み換えミニブタに由来するものを受けたレシピエントと比較して正常になる。他の実施形態では、本明細書に提供する方法により、セクション7.1に記載の組み換えミニブタに由来するドナーの細胞、組織、及び/または臓器を受けたレシピエントにおける他の標的とされていない臓器系の機能は、同種異系ドナーの細胞、組織、及び/または臓器を受けたレシピエントと比較して正常になる。
【0173】
いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、本明細書に記載の組み換えミニブタ(例えば、セクション7.1に記載の組み換えミニブタ)に由来するドナーの細胞、組織、及び/または臓器を受けたレシピエントの生存が、CD47のみが操作された(すなわち、ブタCD47遺伝子が欠失または不活性化され、ヒトCD47遺伝子が挿入された)組み換えミニブタに由来する移植物と比較して延長される。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を10%未満延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を10~25%未満延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を25~50%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を50~75%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を75~100%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を100~200%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を200~300%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を300%超延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を1~5年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を5~10年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を10~15年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を15~20年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を20~25年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を25~30年延長する。
【0174】
いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、本明細書に記載の組み換えミニブタ(例えば、セクション7.1に記載の組み換えミニブタ)に由来するドナーの細胞、組織、及び/または臓器を受けたレシピエントの生存が、同種異系ドナーの細胞、組織、及び/または臓器と比較して延長される。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を10%未満延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を10~25%未満延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を25~50%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を50~75%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を75~100%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を100~200%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を200~300%延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を300%超延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を1~5年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を5~10年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を10~15年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を15~20年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を20~25年延長する。1つの実施形態では、本明細書に提供する方法は、該レシピエントの生存を25~30年延長する。
【0175】
いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される移植物を使用した異種移植により、セクション7.1に記載の組み換えミニブタに由来するドナーの細胞、組織、及び/または臓器を受けたレシピエントの生活の質が、CD47のみが操作された(すなわち、ブタCD47遺伝子が欠失または不活性化され、ヒトCD47遺伝子が挿入された)組み換えミニブタに由来するものを受けたレシピエントと比較して高くなる。他の実施形態では、本明細書に提供する方法により、セクション7.1に記載の組み換えミニブタに由来するドナーの細胞、組織、及び/または臓器を受けたレシピエントの生活の質が、同種異系ドナーの細胞、組織、及び/または臓器を受けたレシピエントと比較して高くなる。
【0176】
特定の実施形態では、本開示に従って産生される組み換えミニブタに由来するドナーの細胞、組織、及び/または臓器を使用したヒヒへの異種移植は、CD47のみが操作された(すなわち、ブタCD47遺伝子が欠失または不活性化され、ヒトCD47遺伝子が挿入された)組み換えミニブタに由来するドナーの細胞、組織、及び/または臓器を使用したヒヒへの異種移植と比較して有利である。例えば、いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される組み換えミニブタに由来するドナーの細胞、組織、及び/または臓器を使用したヒヒへの異種移植により、CD47のみが操作された組み換えミニブタに由来するドナーの細胞、組織、及び/または臓器を使用したヒヒへの異種移植と比較して、免疫抑制療法の投与が減少し、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の短期的な拒絶反応の発生が減少し、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の長期的な拒絶反応の発生が減少し、生存が延長され、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の機能が良好になり、他の標的とされていない臓器系の機能が正常になり、該ヒヒの生存が延長され、該ヒヒの生活の質が高くなり、または上記のいずれかの組み合わせがもたらされる。
【0177】
別の特定の実施形態では、本開示に従って産生される組み換えミニブタに由来するドナーの細胞、組織、及び/または臓器を使用したヒトへの異種移植は、操作されていないドナーの細胞、組織、及び/または臓器を使用した移植と比較して有利である。例えば、いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される組み換えミニブタに由来するドナーの細胞、組織、及び/または臓器を使用したヒトへの異種移植により、操作されていないドナーの細胞、組織、及び/または臓器を使用した移植と比較して、免疫抑制療法の投与が減少し、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の短期的な拒絶反応の発生が減少し、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の長期的な拒絶反応の発生が減少し、生存が延長され、該ドナーの細胞、組織、及び/または臓器の機能が良好になり、対応するバイオマーカー(複数可)によって表示して、対応する疾患が改善され、他の標的とされていない臓器系の機能が正常になり、該ヒトレシピエントの生存が延長され、該ヒトレシピエントの生活の質が高くなり、または上記のいずれかの組み合わせがもたらされる。
【0178】
タンパク尿は、尿中のタンパク質レベルの上昇を特徴とし、腎機能の低下の症状及び潜在的に腎不全であり得る。さらに他の特定の実施形態では、セクション7.1に記載の組み換えミニブタに由来する腎臓をレシピエントに移植した場合、タンパク尿は観察されない。さらに他の特定の実施形態では、セクション7.1に記載の組み換えミニブタに由来する腎臓をレシピエントに移植した場合、タンパク尿の重症度が低下する。
【0179】
いくつかの実施形態では、該タンパク尿の重症度が、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または95%超低下する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供する方法に従って治療される患者は、1日当たり150mgを超えるタンパク質の尿中への排出として定義されるタンパク尿を経験しない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供する方法に従って治療される患者は、移植後1、2、3、3~7、7~10、10~14日、または1~2、2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8週、または1、2、3、4、5、6ヶ月で消失する一過性のタンパク尿を経験し得る。
【0180】
いくつかの実施形態では、タンパク尿を発症する本明細書に記載の方法で治療されるレシピエントの尿中の総タンパク質濃度は、1日当たり約60mg未満、1日当たり約80mg未満、1日当たり約100mg未満、1日当たり約120mg、1日当たり約140mg未満、1日当たり約160mg未満、1日当たり約200mg未満、1日当たり約220mg未満、1日当たり約240mg未満、1日当たり約260mg未満、1日当たり約280mg未満、1日当たり約300mg未満、1日当たり約320mg未満、1日当たり約340mg未満、1日当たり約360mg未満、1日当たり約380mg未満または1日当たり約400mg未満である。
【0181】
いくつかの実施形態では、タンパク尿を発症する本明細書に記載の方法で治療されるレシピエントの尿中のアルブミン濃度は、1日当たり約5mg未満、1日当たり約10mg未満、1日当たり約20mg未満、1日当たり約30mg未満、1日当たり約40mg未満、1日当たり約50mg未満、1日当たり約60mg未満、1日当たり約70mg未満、1日当たり約80mg未満、1日当たり約90mg未満、または1日当たり約100mg未満である。
【0182】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者の24時間尿サンプル中のタンパク質対クレアチニン比は、約0.2未満、約0.4未満、約0.6未満、約0.8未満または約1未満である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者の24時間尿サンプル中のアルブミン対クレアチニン比は、約0.02未満、約0.04未満、約0.06未満、約0.08未満または約0.1未満である。
【0183】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で治療されるレシピエントのタンパク尿を発症するリスクは、内因性のブタCD47のみがヒトホモログで置換されたドナーの腎臓のレシピエントのリスクと比較して約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%減少する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【実施例】
【0184】
8.実施例
以下は、本明細書に記載の方法及び組成物の利点を実証するために使用することができる例示的なプロトコルの説明である。これらのプロトコルは、本発明者らが本発明者らの開示とみなすものの範囲を限定することを意図しておらず、また、以下の実験が行われたこと、及び行われ得る実験のすべてであることを表すことも意図していない。
【0185】
8.1 実施例1
組み換えミニブタを、内因性のブタCD47及びSIRPAをヒトホモログで置換することによって生成する。簡潔には、胎仔線維芽細胞を、α-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼノックアウトミニブタから収集する。該細胞を、(i)相同組み換えに必要なブタCD47配列の2つの相同DNAアームが横に位置する、ヒトCD47のCDS配列を担持するベクター、(ii)相同組み換えに必要なブタSIRPA配列の2つの相同DNAアームが横に位置する、ヒトSIRPAのCDS配列を担持するベクター、(iii)Cas9を担持するベクター、(iv)マウスCD47遺伝子を標的とするsgRNAを担持するベクター、及び(v)マウスSIRPA遺伝子を標的とするsgRNAを担持するベクターでトランスフェクトする。このトランスフェクションの前に、上記のベクターを配列解析によって確認する。トランスフェクション後、細胞を回収用の培地にて培養する。回収後、細胞を単一細胞に分割し、さらに数日間培養してコロニーを形成させる。陽性コロニーをPCR及び配列解析によって選択し、内因性のブタCD47及びSIRPAのヒトホモログによる置換の成功を確認する。ミニブタの卵母細胞を、体細胞核移植用に収集する。露出した卵母細胞を除核し、上記の陽性コロニー由来の細胞を、ドナー細胞として使用して、卵母細胞の囲卵腔に注入する。DCパルスを細胞融合に使用する。再構築された胚を、代理母ブタの卵管に外科的に移植し、これが異種移植用の組み換えミニブタを生む。配列解析を行って、得られた組み換えミニブタにおいて、内因性のブタCD47及びSIRPAが、それらのヒトホモログによって実際に置換されていることを確認する。
【0186】
内因性のブタCD47及びSIRPAがヒトホモログで置換された上記の組み換えミニブタから腎臓を収集し、同じミニブタ由来の骨髄とともにレシピエントのヒヒに移植する。比較として、内因性のブタCD47のみがヒトホモログで置換された組み換えミニブタから腎臓を収集し、同じミニブタ由来の骨髄とともに別の群のレシピエントのヒヒに移植する。以下のパラメータを測定し、2群間で比較する:(i)移植後に尿中タンパク質濃度を測定することによって評価するタンパク尿、(ii)移植された腎臓の拒絶反応の証拠がない生存期間、(iii)レシピエントのヒヒの他の臓器系の包括的な身体検査と併せた炎症反応、例えば、全身性浮腫及び血清サイトカインレベル(例えば、IL-6)、(iv)レシピエントのヒヒの寿命、ならびに(v)移植された腎臓の任意の可能性のある萎縮及び異常に関する死後分析。
【0187】
8.2 実施例2-ヒト化ブタCD47
以下の実施例は、ブタCD47の一部をヒトCD47の一部で置換することによって、ブタCD47をヒト化することができることを実証する。具体的には、ブタCD47を、ブタエクソン2をヒトエクソン2で置換することによりヒト化し、トランスジェニックブタにおいて、適切な系統及び時間的発現パターン下で、天然のブタCD47プロモーターからのヒト化CD47の発現を可能にした。
【0188】
簡潔には、エクソン2の置換をもたらすための相同組み換えベクター47X2Rを開発した。47X2Rベクターは、ブタCD47イントロン1の最後の1000bp、続いてヒトCD47のエクソン2、続いてブタイントロン2の最初の1020bpから構成した(配列番号6)。ヒトCD47エクソン2のサイレントヌクレオチド置換(ベクターの1095位がGからA、及び1314位から始まるCAGAがACGC)を行って、ベクター内の潜在的なCRISPRガイド部位でのCRISPR/Cas9切断を防止した。
【0189】
イントロン1とエクソン2の接合部近傍の3つの潜在的なRNAガイドペアを、ブタCD47遺伝子に二本鎖切断を導入するためのCas9 D10Aニッカーゼと組み合わせてRNP複合体として使用するために同定した。配列番号7を参照する試験されたガイドペア配列は、(1)47US-F1(nt43~63)と47US-R1(nt6~25の相補体)、(2)47US-F3(nt138~157)と47US-R3(nt95~114の相補体)、及び(3)47US-F3と47US-R4(nt113~132の相補体)であった。
【0190】
上記のガイドペア及びCas9 D10Aから構成されるRNP複合体を、ブタ胎仔線維芽細胞にヌクレオフェクトし、両方のCD47対立遺伝子での同時の機能喪失に起因するCD47発現の消失の効率を、抗CD47モノクローナル抗体CC2C6で染色したトランスフェクト細胞のFACS分析を使用して評価した。ガイドペア47US-F3/47US-R3及び47US-F3/47US-R4は両方とも、高いパーセンテージのCD47ヌル細胞をもたらした(
図1C及び
図1D、表2)。
【0191】
【0192】
次に、ベクター47X2R及びCRISPR/Cas9 D10Aを使用して、CD47エクソン2の相同置換を実施した。ガイドペア47US-F3/47US-R3を、例示的なガイドペアのセットとして使用した。具体的には、ベクター及びRNP複合体を、ヒトCD55及びCD59についてトランスジェニックなミニブタ胎仔由来の線維芽細胞にヌクレオフェクトした。トランスフェクト細胞を、ヒトCD47に結合するがブタCD47には結合しない抗CD47モノクローナル抗体B6H12への結合に基づいてソートした。ソートされた集団の分析により、非常に高いパーセンテージのこの集団がヒト化CD47を発現することが実証された。ヒト特異的モノクローナルB6H12でブロックした場合、ヒト及びブタCD47の両方に結合する抗CD47モノクローナル抗体CC26で染色することにより、この集団の非常に高いパーセンテージがブタCD47に対してヌルであることがさらに実証された(おそらく、標的とされていないCD47対立遺伝子のCas9切断によって導入された変異に起因する)(
図2)。ブタCD47機能の喪失が、この改変の望ましい結果である。
【0193】
まとめると、本実施例は、ブタCD47を、ヒトCD47の一部(例えば、ヒトCD47のエクソン2)をブタCD47の相同領域に導入することによってヒト化することができることを実証している。
【0194】
8.3 実施例3-ヒト化ブタSIRPA
ヒト化ブタCD47細胞を、ヒト化CD47胎仔を生成するための体細胞核移植におけるドナー細胞として使用する。本プロセスでは、体細胞の核を、除核卵母細胞(例えば、中期II卵母細胞)に移植し、次いで、この複合体を活性化する。次に、再構築された胚を培養し、妊娠と同期させたレシピエントに移植する。次に、この集団を、ゲノム分析、RNA分析(例えば、RT-PCR)、及び/またはタンパク質分析に供し、例えば、トランスジェニック遺伝子座の予想される構造、RNA、及びタンパク質発現を確認し、ブタCD47がこのプロセスで変更されたかどうかを判断する。
【0195】
このCD47胎仔は、実施例2に記載のものと同様の方法を使用したSIRPA遺伝子のヒト化のための出発材料である。
【0196】
9.均等物
本開示は、その特定の実施形態を参照しながら、詳細に説明されているが、機能的に均等である変形が、本開示の範囲内であることが理解されよう。実際、本明細書に示され、説明されるものに加えて、本開示の様々な修正は、前述の説明から当業者には明らかとなるであろう。かかる修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書に記載の本開示の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し、または確認することができるであろう。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0197】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、それぞれの個別の刊行物、特許または特許出願が、参照により全体として本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されたものと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】