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特表2025-503929光学基板のコーティング用高屈折率組成物およびその使用
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  • 特表-光学基板のコーティング用高屈折率組成物およびその使用 図1
  • 特表-光学基板のコーティング用高屈折率組成物およびその使用 図2
  • 特表-光学基板のコーティング用高屈折率組成物およびその使用 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】光学基板のコーティング用高屈折率組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20250130BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20250130BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20250130BHJP
   C08F 4/00 20060101ALI20250130BHJP
   C08F 292/00 20060101ALI20250130BHJP
   C08F 290/00 20060101ALI20250130BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20250130BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20250130BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20250130BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20250130BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C09D201/00
C08F2/44 A
C08F2/44 B
C08F20/00 510
C08F4/00
C08F292/00
C08F290/00
C09D201/02
C09D7/61
C09D7/40
C09D4/00
C08J5/18 CEY
C08J5/18 CFC
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543554
(86)(22)【出願日】2023-01-23
(85)【翻訳文提出日】2024-08-23
(86)【国際出願番号】 FI2023050049
(87)【国際公開番号】W WO2023139315
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】20225053
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516381895
【氏名又は名称】インクロン オサケユキチュア
【氏名又は名称原語表記】INKRON OY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100228120
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 蓮太朗
(72)【発明者】
【氏名】ヤルゥコー ヘイッキネン
(72)【発明者】
【氏名】ミッコ プータネン
(72)【発明者】
【氏名】ティア アシカイネン
(72)【発明者】
【氏名】ユハ イェスケライネン
【テーマコード(参考)】
4F071
4J011
4J015
4J026
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4F071AA33
4F071AA42
4F071AA67
4F071AB03
4F071AB18
4F071AC10
4F071AE19
4F071AF29Y
4F071AF31Y
4F071AG02
4F071AG15
4F071AG23
4F071AG34
4F071AH12
4F071AH13
4F071AH16
4F071BA02
4F071BA03
4F071BB02
4F071BB12
4F071BC01
4F071BC12
4J011AA05
4J011AC04
4J011BA04
4J011PA03
4J011PA07
4J011PB22
4J011PB25
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA03
4J011QB25
4J011SA65
4J011TA03
4J011TA06
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J015EA02
4J015EA03
4J015EA04
4J026AC00
4J026BA27
4J026BA50
4J026DB06
4J026DB30
4J026DB36
4J026FA05
4J026FA09
4J026GA02
4J038FA001
4J038FA011
4J038FA111
4J038HA026
4J038HA036
4J038HA196
4J038HA216
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA07
4J038KA08
4J038MA14
4J038MA15
4J038PA17
4J038PB08
4J038PC03
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB131
4J127BB221
4J127BC051
4J127BC131
4J127BD281
4J127BE591
4J127BE59Y
4J127BF711
4J127BF71Y
4J127BG381
4J127BG38Y
4J127CB151
4J127CB152
4J127CC031
4J127CC092
4J127DA02
4J127DA06
4J127EA13
4J127FA08
4J127FA21
(57)【要約】
光学基板上の黒色コーティング、そのようなコーティングを製造するための組成物、ならびにエッジの黒色化および迷光制御のための組成物の使用を提供する。本発明のコーティングは、ナノ粒子および黒色顔料を混合した硬化性組成物によって形成されたフィルムを備え、フィルムの屈折率は、1.75超である。本発明の硬化組成物は、0~50重量部の硬化性ポリマー、0~50重量部の硬化性モノマー、50~100重量部のナノ粒子、および黒色顔料0.1~20重量部を含み、ナノ粒子および黒色顔料は、硬化性ポリマーおよびモノマーと混合される。本発明の組成物は、高屈折率ガラス基板の屈折率値と一致する屈折率値を示し、同時に効率的なエッジの黒色化特性を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色コーティングであって、
金属酸化物ナノ粒子と黒色顔料とを混合した光硬化性組成物によって形成されたフィルムを備え、当該硬化固体フィルムは、45%超の金属酸化物ナノ粒子の重量割合を有する、黒色コーティング。
【請求項2】
前記フィルムは、1.75超の屈折率を有し、前記屈折率は、589nmで測定される、請求項1に記載の黒色コーティング。
【請求項3】
前記フィルムは、1~300μmの厚さを有する、請求項1または2に記載の黒色コーティング。
【請求項4】
前記フィルムは、400~740nmの波長において2超の光学濃度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の黒色コーティング。
【請求項5】
ナノ粒子は、非吸収性金属酸化物粒子、例えば二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、二酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、二酸化ゲルマニウム、チタン酸バリウム、酸化ニオブおよびそれらの組み合わせから選択され、1~200nm、特に2~100nmのZ平均粒子径を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の黒色コーティング。
【請求項6】
前記黒色コーティングは、屈折率を有し、前記屈折率の複素部は、0.05未満である、請求項1から5のいずれか一項に記載の黒色コーティング。
【請求項7】
ナノ粒子と硬化性成分との重量比は、95:5~50:50、特に90:10~50:50、例えば85:15~50:50である、請求項1から6のいずれか一項に記載の黒色コーティング。
【請求項8】
前記黒色顔料は、すす、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、有機顔料、金属錯体染料、および金属酸化物粒子、ならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の黒色コーティング。
【請求項9】
前記黒色顔料は、1.5%未満、特に1.0%未満の拡散反射率を有する黒色コーティングを得るために選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の黒色コーティング。
【請求項10】
前記フィルムは、光学基板上にあり、前記フィルムの屈折率は、光学基板の屈折率と等しく、特にフィルムの屈折率は、前記光学基板の屈折率から±0.4単位以下、特に±0.1単位以下、特に±0.05単位以下であり、前記屈折率は、589nmで測定される、請求項1から9のいずれか一項に記載の黒色コーティング。
【請求項11】
前記フィルムは、1.75超、特に1.80超の屈折率を有する光学基板または光学基板のスタック上に堆積される、請求項1から10のいずれか一項に記載の黒色コーティング。
【請求項12】
前記光学基板と前記コーティング膜との界面での全反射は、400~740nmで2%未満である、請求項1から11のいずれか一項に記載の黒色コーティング。
【請求項13】
前記組成物は、UV光によって硬化される、請求項1から12のいずれか一項に記載の黒色コーティング。
【請求項14】
前記組成物は、
0~50重量部の硬化性ポリマーと、
最大50重量部の量のモノマーと、
50~100重量部のナノ粒子と、
0.1~20重量部、特に0.5~5重量部の黒色顔料と、を備え、
前記ナノ粒子および黒色顔料は、硬化性ポリマーおよび硬化性モノマーと混合されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の黒色コーティング。
【請求項15】
前記硬化性ポリマーは、存在する場合、特にエポキシ、グリシジル、ビニル、アリル、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の反応性基を示し、好ましくは、500~2,500g/molの分子量(M)を有するプレポリマーを含み、
前記硬化性モノマーは、エポキシ、グリシジル、ビニル、アリル、アクリレート、メタクリレート、およびそれらの組み合わせなどの架橋可能な反応性基を有する化合物から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の黒色コーティング。
【請求項16】
光学基板の硬化固体コーティング用組成物であって、
0~50重量部の硬化性ポリマーと、
最大50重量部の量のモノマーと、
50~100重量部のナノ粒子と、
0.1~20重量部の黒色顔料と、を備え、
前記ナノ粒子および黒色顔料は、硬化性ポリマーおよび硬化性モノマーと混合されている、光学基板の硬化固体コーティング用組成物。
【請求項17】
前記硬化性ポリマーは、500~100,000g/molの分子量(M)を有し、エポキシ、グリシジル、ビニル、アリル、アクリレート、ヒドリド、チオール、メタクリレートおよびそれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の反応性基を示すプレポリマーから選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記硬化性モノマーは、エポキシ、グリシジル、ビニル、アリル、アクリレート、ヒドリド、チオール、メタクリレート、およびそれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の反応性基を示す、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
前記ナノ粒子は、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、二酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、二酸化ゲルマニウム、チタン酸バリウム、酸化ニオブおよびそれらの組み合わせなどの金属酸化物粒子から選択される、1~200nm、特に2~100nmのZ平均粒子径を有する、請求項16から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記ナノ粒子と硬化性成分との重量比は、95:5~50:50、特に90:10~50:50、例えば85:15~50:50である、請求項16から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
溶媒を除いた組成物の総重量から計算して、0.1~10%、例えば0.5~6%などの濃度の黒色顔料を含む、請求項16から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
組成物の粘度を変更するための溶媒を含み、前記溶媒は、必要に応じて前記黒色顔料を溶解することも可能である、請求項16から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
組成物の固形分含有量は、60~100重量%、特に80~100重量%であり、残りは溶媒を含む、請求項16から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
光重合開始剤または光重合開始剤の組み合わせを、組成物の総重量の0.1~25%、例えば1~10%含む、請求項16から23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
濡れ性、接着性、チキソ性、発泡性、およびそれらの組み合わせの群から選択される、組成物の特性を調整することが可能である添加剤を含む、請求項16から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
レオメーターを使用して25°、10s-1のせん断速度で、5mPas~1,000,000mPasの動粘度、例えば、約50~50,000mPasの動粘度を有する、請求項16から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
最大50重量部、特に1~15重量部の、(1種以上の)硬化性ポリマーと、
最大50重量部、特に10~40重量部の、(1種以上の)硬化性モノマーと、
50~100重量部のナノ粒子と、
0.1~20重量部、特に0.5~5重量部の黒色顔料と、
必要に応じて、組成物の総重量から計算して0.1~50%、特に1~30%の溶媒と、
を備える、請求項16から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
組成物の総重量から計算して5%未満の溶媒を含む、請求項16から27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
請求項1から15のいずれか一項に記載の黒色コーティングを備える光学基板。
【請求項30】
シートを規定するエッジを有するシートを備え、前記黒色コーティングは、前記シートの前記エッジに隣接する領域を少なくとも覆う、請求項29に記載の光学基板。
【請求項31】
幅、長さおよび面積を有するシートを備え、前記黒色コーティングは、シートの全面積の50%以下、特に25%以下を覆う、請求項29または30に記載の光学基板。
【請求項32】
前記黒色コーティングは、シートの幅および長さに沿って延在し、シートのエッジに隣接する前記基板の全面積の5~20%を覆う一体層を含む、請求項29から31のいずれか一項に記載の光学基板。
【請求項33】
請求項16から28のいずれか一項に記載の組成物の、高屈折率材料の高屈折率のエッジの黒色化または迷光制御用の使用。
【請求項34】
前記高屈折率材料は、前記組成物がコーティングされる光学基板、特にガラス基板を含む、請求項33に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填剤を含有する硬化性組成物を用いた光学基板のコーティングに関する。より具体的には、本発明は、光学基板上の黒色コーティング、そのようなコーティングを製造するための組成物、ならびにエッジの黒色化および迷光制御のための組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エッジの黒色化コーティングは、光学基板のエッジ、または光学基板の特定の限られた場所、具体的には基板内部で光が伝播する基板に適用される。通常、コーティングは、レンズ、プリズム、ビームスプリッター、導波管、または回折光学素子などの光学構成要素に塗布され、光学基板内部を伝播する光の基板と空気の界面からの不要な反射を最小限に抑える。さらに、エッジの黒色化によって、コーティングされた領域から光学基板に入る光を最小限に抑える。エッジ領域は、通常、研磨されていない粗い表面を備える。エッジから反射する光は、通常、迷光につながり、光学システムの性能を制限する一般的な要因となる。
【0003】
基板と空気の界面に到達する光の反射は、エッジの黒色化コーティングを施すことで最小限に抑えられ得、最適なパフォーマンスを得るには、図1に示す3つの効果をコーティングによって最小限に抑える必要がある。これらは、1)基板とコーティングとの界面での反射、2)コーティングと空気との界面での反射またはコーティングの外部からの光による光学コーティング内からの基板への光の入射、および3)光学コーティング内の散乱による光学基板への再入射である。
【0004】
基板とコーティングとの界面(図1の成分1)での反射を適切に低減するには、コーティングに使用する材料の屈折率、より具体的には複素屈折率の実部が、基板の屈折率と一致することが必要である。しかし、従来のエッジの黒色化コーティングは屈折率が高くないため、高屈折率(RI)基板ではうまく機能しない。k値、つまりRIの複素部は、黒色材料、つまり吸収材料では常に非ゼロであり、反射率に部分的に影響する。光学基板は、通常、必要な波長の光の透過性が非常に高く、k値がゼロに近いことを示す。例えば、垂直入射の場合、透明基板と吸収コーティングとの界面における反射率Rは、次の式で表される。
【0005】
【数1】
【0006】
ここで、nとnとは、それぞれ基板とコーティングの複素屈折率の実部であり、kは、コーティングの屈折率の複素部である。コーティングのk値が高い(0.05超)場合、RIの実部が一致していても、k値の不一致による反射率は、反射の成分1に有意な寄与を有する。
【0007】
光が光学コーティングに入ると、材料の光吸収特性、つまり材料の黒さによって、光が光学基板に再入射することが防止される(図1の成分2)。必要な光の波長、通常は可視光の波長、における材料の吸光度または光学密度は、黒色コーティングから最小限の強度の光が再入射するだけであるように十分に高くあるべきである。別の再入射メカニズムは、エッジの黒色化コーティング(図1の成分3)での散乱であり、入射光の拡散反射を引き起こす。
【0008】
屈折率は、通常、高屈折率フィラーを使用することによって増加する。屈折率を1.75超、特に589nmで1.80超に増加させると、フィラー粒子の必要重量含有量が大きくなり、配合物のバランスを慎重に取らない限り、粘度が高くコーティング特性が悪いため、材料の使用が制限される。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、高屈折率ナノ粒子および黒色顔料を混合した硬化性ポリマーおよび硬化性モノマーの組成物を硬化させることによって形成されたフィルムを備える黒色コーティングを提供するという考えに基づいている。
【0010】
一実施形態では、黒色コーティングは、金属酸化物ナノ粒子および黒色顔料を混合した光硬化性組成物によって形成されたフィルムを含み、硬化した固体フィルムは、45%超、特に50%超の、金属酸化物ナノ粒子の重量百分率を有する。
【0011】
光学基板上にコーティングを形成するための組成物は、通常、
(1種以上の)硬化性モノマーと、
必要に応じて1種以上の硬化性ポリマーと、
ナノ粒子と、
黒色顔料と、
必要に応じて添加剤と、を含む。
【0012】
ナノ粒子、黒色顔料、および任意の添加剤は、通常、硬化性モノマーおよび任意の硬化性ポリマーと混合される。
【0013】
本組成物は、高屈折率材料のエッジの黒色化または迷光制御に使用され得る。特に、本成物は、光学基板を含む高屈折率材料のエッジの黒色化に有用である。
【0014】
より具体的には、本発明は、独立請求項に記載された事項によって特徴づけられる。
【0015】
本発明によって、顕著な利点が得られる。
【0016】
本発明の組成物は、光学基板とコーティングとの界面での光の反射を最小限に抑え、効率的なエッジの黒色化特性を提供する特性を示す。これらの特性は、高RIガラス基板と一致するRI値、k値の不一致による反射を最小限に抑え、かつ、散乱による光の再入射を最小限に抑えながら、さまざまな厚さでコーティング内の光を吸収する調整可能な光学密度である。
【0017】
通常、硬化した材料は、高屈折率を有し、例えば、589nmで測定した場合、1.75超、または1.80~2.3の範囲のRIを有する。
【0018】
ナノ粒子を充填剤として使用することによって、さまざまな基板のRIに合わせてRIを調整し得る。光学密度、つまり透過率の逆数の10を底とする対数は、黒色顔料によって変更され得る。本発明の樹脂組成物は、組成物の重量の45%を超えるナノ粒子、特に金属酸化物ナノ粒子を組み込むことを可能にする。
【0019】
組成物は、溶剤を含まない製品を可能にするために、溶剤を含まない形態で提供され得る。
【0020】
粘度は、組成、特に(1種以上の)ポリマーと(1種以上の)モノマーとの相対量を変えることによって調整され得、また、必要に応じて溶媒を利用して、さまざまな接触法および非接触法による塗布を可能にすることによって調整され得る。材料は、通常、光活性化、特にUV光を使用して硬化される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、高光学密度の黒色コーティングが光学基板と黒色コーティングとの界面での光反射率をどのように低減するかを示す現象を示す図である。
図2図2は、異なる黒色充填剤配合物のガラスコーティングの界面の全反射率を示す図である。
図3図3は、異なる黒色充填剤配合物のガラスコーティングの界面の拡散反射率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本書で使用されている単数形の「a」、「an」および「the」には、文脈上明らかに別の意味がない限り、複数の指示対象も含まれることに留意されたい。さらに、本明細書で使用される用語「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、記載された特徴、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの追加を排除するものではないことを理解されたい。
【0023】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連する技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を持つものとして解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想化された意味または過度に形式的な意味で解釈されないことを理解されたい。
【0024】
本明細書で別途記載されている場合または文脈から明らかな場合を除き、本明細書で言及されているパーセンテージは、それぞれの組成物の総重量に基づく重量パーセントとして表される。
【0025】
特に明記しない限り、ここで実験的に測定または決定された特性は、室温で測定または決定されている。特に明記しない限り、室温は25℃である。
【0026】
本明細書において使用される「約」という用語は、記載された値の±5%の値を指す。
【0027】
特に明記しない限り、ここで実験的に測定または決定された特性は、大気圧下で測定または決定されている。
【0028】
本明細書において、特に断りのない限り、「平均分子量」という用語は、重量平均分子量(「M」または「Mw」とも略記される)を指す。
【0029】
本明細書において、分子量は、ポリスチレン基準を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されている。
【0030】
ここで示される「粒子サイズ」および「平均粒子サイズ」は、粒子の最大線形寸法(「直径」とも呼ばれる)に基づく数平均粒子サイズを指す。これは光散乱、特に動的光散乱によって決定される。報告される平均値はZ平均、つまり流体力学的径の強度加重平均である。
【0031】
本明細書において使用される「平均粒子サイズ」という用語は、粒子の体積の50%がその値未満の径を有する累積体積分布曲線のD50値を指す。
【0032】
本明細書において、特に明記しない限り、「粘度」という用語は、25℃において2.5s-1のせん断速度でレオメーターによって測定された動粘度を意味する。
【0033】
本文脈において、「黒色顔料」という用語は、可視光線の範囲、すなわち約380~740nmで吸収係数を有し、視覚的に黒く見える顔料または粒子を指す。例えば、黒色顔料が50μmの厚さのコーティング中に4%の濃度で存在する場合、コーティングの光学濃度は、2を超える。
【0034】
本文脈において、「黒色コーティング」という用語は、黒色顔料を含有するコーティングを意味し、そのコーティングは、分光光度計で測定された可視光線の範囲、すなわち約380~740nmの範囲で2を超える光学濃度を有する。
【0035】
本文脈において、「光学基板」は、内部透過率が高く(90%超)、使用される光の波長(通常は可視波長)での散乱または発光による減衰レベルが低い(10%未満)材料または材料のスタックを指す。本文脈において、コーティングが施される光学基板は、高屈折率を有し、特に、光学基板の屈折率は、波長589nmにおいて、1.75以上、特に1.8以上、特に約1.8~2.5、通常1.85~2.3である。
【0036】
光学基板は、ガラスなどの非晶質材料、鉱物結晶材料などの結晶材料、ポリマー材料、またはポリマーマトリックスに埋め込まれた無機充填剤などを含む光学コーティングを含み得る。光学基板は、例えば、ウェーハ材料の形態であり得、光学基板は単層で構成され得、または多層構造で構成され得る。
【0037】
一実施形態では、光学基板は、フリントガラスまたはクラウンガラスなどの光学ガラスである。さらに、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化バリウム、蛍石、鉛、またはそれらの組み合わせなどの添加剤を含有し得る。
【0038】
本技術の実施形態は、高RIのエッジの黒色化および/または迷光制御材料を提供する。
【0039】
実施形態は、さらに、ガラスウェーハなどの光学基板上に塗布して黒色コーティングを実現し得る配合物を提供する。
【0040】
実施形態では、本発明の配合物は、硬化性ポリマー、特にシロキサンポリマーなどの架橋基を有するプレポリマー、アクリレート基などの架橋基を有する硬化性モノマーなどの結合剤を含むまたはそれらからなる、もしくは実質的にそれらからなり、結合剤は、光学基板の屈折率(RI)と一致するように屈折率(RI)を調整するために二酸化チタンなどのナノ粒子と混合され、黒色顔料(すすまたはカーボンブラックなど)と混合されて高い光学密度を達成する。
【0041】
実施形態では、本黒色コーティングは、金属酸化物ナノ粒子と黒色顔料とを混合した光硬化性組成物によって形成されたフィルムを含み、硬化した固体フィルムは、フィルムの重量から計算して、45%超、特に50%超、例えば55~90%、または55~80%の金属酸化物ナノ粒子の割合を有する。
【0042】
一実施形態では、黒色コーティングは、厚さ1~300μmのフィルムを備える。一実施形態では、黒色コーティングは、厚さ5~100μm、例えば10~50μmのフィルムを備える。一実施形態では、黒色コーティングは、膜厚50μmで、400~740nmの波長において2超の光学密度を示すフィルムを備える。
【0043】
一実施形態では、硬化性モノマーは、架橋基を含む化合物から選択される。このような架橋基の例としては、エポキシ、グリシジル、ビニル、アリル、アクリレート、メタクリレート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
(1種以上の)硬化性ポリマーと(1種以上の)硬化性モノマーとの重量比は、概して、1:100~100:1、例えば10:100~100:10、特に15:50~50:15である。
【0045】
一実施形態では、ナノ粒子は、可視光波長において0.05未満のk値を有する非吸収性金属酸化物粒子から選択される。このような粒子の例には、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、二酸化ハフニウム、二酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化ニオブ、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0046】
一実施形態では、ナノ粒子は、二酸化チタンおよび酸化ジルコニウムなどの金属酸化物粒子から選択される。
【0047】
一実施形態では、ナノ粒子は、1~200nm、特に2~100nmのZ平均粒子サイズを有する。
【0048】
ナノ粒子のZ平均粒子サイズは、最終配合物の粘度および屈折率に影響する。通常、大きいサイズのナノ粒子は、小さい粒子サイズのナノ粒子よりも屈折率が高く、粘度が低くなる。例えばナノ粒子の粒子サイズを選択して粘度を制御および調整することによって、最終配合物をさまざまな塗布方法に適合させ、実用的な配合物が得られ得る。
【0049】
一実施形態では、ナノ粒子は、概して、凝集体を含まない。
【0050】
一実施形態では、ナノ粒子はコーティングされたナノ粒子として使用されており、コーティングは、粒子の凝集を防ぐために使用される。通常のナノ粒子のコーティングは、メタクリレートプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシランなどのさまざまなシランモノマーである。ナノ粒子のコーティングには、光触媒に対してナノ粒子をさらに安定化させるために、ZrO、Al、TiOなどの他の酸化物コーティングも使用され得る。
【0051】
一実施形態では、ナノ粒子は、乾燥しない分散液として提供される。
【0052】
一実施形態では、(1種以上の)硬化性ポリマーおよび(1種以上の)硬化性モノマーによって形成される硬化性組成物に対するナノ粒子の重量比は、95:5~50:50、特に90:10~50:50、例えば85:15~50:50である。
【0053】
一実施形態では、黒色顔料は、すす、カーボンブラック、グラファイト、合成グラファイト、カーボンナノチューブ、金属錯体染料、金属酸化物粒子、およびそれらの組み合わせから選択される。黒色顔料は、黒色有機顔料をも含み得る。
【0054】
フィルム中の黒色顔料の濃度は、硬化性ポリマーおよびナノ粒子の重量から計算して、0.1~20%、例えば0.5~10%の範囲で選択され、所望のコーティング厚さでの硬化コーティングの光学密度を調整する。
【0055】
黒色顔料、例えばカーボンブラックは、通常、一次粒子の平均粒子サイズが約10~100nmであり、一方、凝集体などの二次粒子の粒子サイズは、約1~100μmである。黒色顔料は、顔料および凝集体などの二次粒子による光の散乱を最小限に抑えるように選択される。
【0056】
一実施形態では、組成物は、非凝集黒色顔料を含む。
【0057】
一実施形態では、フィルムは、ガラスウェーハ上に、特にガラスウェーハの研磨されていない表面に堆積される。
【0058】
一実施形態では、フィルムは、589nmで1.75超、または1.8超、特に1.8~2.3、例えば1.80~2.1の屈折率を有する光学基板または光学基板のスタック上に堆積される。一実施形態では、フィルムは、589nmで1.80~2.05、または1.90~2.1、または1.95~2.1の屈折率を有する。
【0059】
光学基板上に堆積されたフィルムの屈折率は、光学基板のそれと一致するかまたは等しい。したがって、一実施形態では、フィルムの屈折率は、589nmにおける光学基板の屈折率と±0.4単位以下、特に±0.1単位以下、特に±0.05単位以下で異なる。
【0060】
一実施形態では、平らなガラスウェーハ上に塗布されたフィルムは、光学基板とコーティングとの界面における反射率の全反射と拡散反射との比が10:1超、特に100:1超であり、通常最大1000:1である。
【0061】
一実施形態では、1.5%未満、特に1.0%未満の拡散反射率を有する黒色コーティングが得られるように黒色顔料が選択される。
【0062】
光学基板の厚さは、通常、100μm~10,000μmの範囲、例えば300~1500μmを有する。
【0063】
一実施形態では、コーティング膜の厚さは5~100μmであり、厚さ100~1500μmの光学基板上に堆積される。
【0064】
一実施形態では、光学基板とコーティング膜との界面における全反射は2%未満であり、特に420~740nmで1.0%未満である。
【0065】
一実施形態では、黒色コーティングを含む光学基板は、シートを画定するエッジを有するシートをさらに備え、当該黒色コーティングは、当該シートの当該エッジに隣接する領域を少なくとも覆う。
【0066】
好ましくは、シートは、幅、長さおよび面積を有し、黒色コーティングはシートの全面積の50%以下、特に25%以下を覆う。一実施形態では、黒色コーティングは、シートの幅および長さに沿って延在し、シートのエッジに隣接する基板の全面積の5~20%を覆う一体型層を備える。
【0067】
一実施形態では、光学基板のコーティング用組成物は、
最大50重量部の(1種以上の)硬化性ポリマーと、
最大50重量部の(1種以上の)硬化性モノマーと、
最大50~100重量部、例えば55~90重量部または55~85重量部の、金属酸化物ナノ粒子と、
0.1~20重量部、特に0.5~10重量部の黒色顔料と、
を備えるか、これらからなるか、または実質的にこれらからなる。
【0068】
組成物において、ナノ粒子および黒色顔料は、通常、硬化性ポリマーと混合され、特に均一に混合される。
【0069】
一実施形態では、組成物は、少なくともいくつかの硬化性モノマーと必要に応じて硬化性ポリマーとを常に含有する。
【0070】
上記の成分に加えて、組成物は、いくつかの実施形態では、硬化性ポリマーおよび必要に応じてモノマーを少なくとも部分的に溶解することができる溶媒を含む。通常、溶媒は組成物の総重量の0.1~50%、例えば組成物の全重量の1~30%を形成する。
【0071】
一実施形態では、光学基板のコーティング用組成物は、
最大50重量部の(1種以上の)硬化性ポリマーと、
最大50重量部の(1種以上の)硬化性モノマーと、
50~100重量部、例えば55~90重量部または55~85重量部の金属酸化物ナノ粒子と、
0.1~20重量部、特に0.5~10重量部の黒色顔料と、
組成物の重量に対して0.1~50%、例えば1~30%の、硬化性ポリマーおよび必要に応じてモノマーを少なくとも部分的に溶解することが可能である液体と、
の混合物を含むか、からなるか、またはから実質的になる。
【0072】
一実施形態では、溶媒を除いた組成物の総重量から計算して、0.1~10%、例えば0.5~6%の、濃度の黒色顔料を含む組成物が示される。
【0073】
上記の実施形態では、さらに、下記に説明するように、全組成物の重量から計算して、通常0.1~25%、例えば1~10%の光重合開始剤または光重合開始剤の組み合わせが存在する。
【0074】
一実施形態では、組成物は、溶媒を含まないか、または実質的に溶媒を含まない形態で提供される。特に、組成物は、組成物の総重量から計算して5%未満、特に2%未満の溶媒を含む。
【0075】
溶媒を含まない組成物および溶媒を含有する組成物は、0~25重量部、例えば1~15重量部のポリマーまたはポリマー類と、5~50重量部、例えば10~40重量部のモノマーまたはモノマー混合物と、0.1~20重量部の黒色顔料とを組み合わせた混合物を含むか、それらからなるか、または実質的にそれらからなる。通常、それらは、全組成物の重量から計算して0.1~25%、例えば1~10%の(1種以上の)光重合開始剤をさらに含有する。
【0076】
一実施形態では、硬化性ポリマーの分子量(M)は、500~100,000g/molである。通常、硬化性ポリマーは、硬化中にポリマーの架橋を可能にする反応性基を示す。
【0077】
一実施形態では、硬化性ポリマーは、シロキサンポリマーを含む。
【0078】
シロキサンポリマーを製造するために、化学式SiR 4-aを有する第1の化合物が提供され、ここで、aは1~3であり、Rは反応性基であり、Rはアルキル基またはアリール基である。また、化学式SiR 4-(b+c)を有する第2の化合物も提供され、ここで、Rは架橋官能基であり、Rは反応基であり、Rはアルキルまたはアリール基であり、b=1~2であり、c=1~(4-b)である。必要に応じた第3の化合物は、第1および第2の化合物とともに提供され、それらと共に重合される。また、必要に応じた第4の化合物は、第1、第2および第3の化合物とともに提供され、それらと共に重合される。第3および第4の化合物は、化学式SiR 10 を有し、ここでRは反応基であり、f=1~4であり、R10はアルキルまたはアリール基であり、g=4-fである。第1および第2の化合物とともに第3および第4の化合物の両方が提供される場合、第3および第4の化合物は同一ではない。第1、第2、第3および第4の化合物は、任意の順序で提供され得、これらの化合物のいずれかのオリゴマー部分重合型を、上記のモノマーの代わりに提供し得る。
【0079】
第1、第2、第3および第4の化合物、および下記に記載される任意の化合物において、そのような化合物が複数のアリール基またはアルキル基、複数の反応性基、または複数の架橋官能基などの複数の単一タイプの「R」基を有する場合、複数のR基は、出現ごとに同一または異なるように独立して選択される。例えば、第1の化合物がSiR である場合、複数のR基は、互いに同一または異なるように独立して選択される。同様に、複数のR基は、互いに同一または異なるように独立して選択される。明示的に別途記載がない限り、本明細書に記載の他の化合物についても同様である。
【0080】
触媒も提供される。触媒は、塩基触媒、または下記に記載する他の触媒であり得る。提供される触媒は、第1の化合物と第2の化合物とを共に重合する可能であるべきである。前述のように、化合物と触媒の添加順序は任意の順序であり得る。一緒に提供される様々な成分は、所望の分子量および粘度を有するシロキサンポリマー材料を生成するために重合される。重合後、マイクロ粒子、ナノ粒子、またはその他の所望の粒子などの粒子が、カップリング剤、触媒、安定剤、接着促進剤などの他の必要に応じた成分とともに添加される。組成物の成分の組み合わせは、任意の順序で行われ得る。
【0081】
より具体的には、一例では、シロキサンポリマーは、第1の化合物と第2の化合物とを重合することによって製造され、第1の化合物は、化学式Iを有する。
【0082】
【数2】
【0083】
aは、1~3の整数であり、
は、反応性基であり、
は、アルキル基またはアリール基である。
【0084】
第2の化合物は、化学式IIを有する。
【0085】
【数3】
【0086】
は、架橋官能基であり、
は、反応基であり、
は、アルキルまたはアリール基であり、
bは、1~2の整数であり、
cは、1~(4-b)の整数である。
【0087】
第1の化合物は、化合物中のシリコンに結合した1~3個のアルキルまたはアリール基(R)を有し得る。異なるアルキル基の組み合わせ、異なるアリール基の組み合わせ、またはアルキルおよびアリール基の両方の組み合わせが可能である。アルキル基の場合、アルキルは好ましくは1~18個、より好ましくは1~14個、特に好ましくは1~12個の炭素原子を含有する。1~6個の炭素(例えば、2~6個の炭素原子)などのより短いアルキル基が想定される。アルキル基は、アルファ位またはベータ位で、1個以上、好ましくは2個のC~Cアルキル基で分岐され得る。特に、アルキル基は、1~6個の炭素原子を含有する低級アルキルであり、メチルおよびハロゲンから選択される1~3個の置換基を必要に応じて有する。メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチルおよびt-ブチルが特に好ましい。シクロヘキシル、アダマンチル、ノルボルネンまたはノルボルニルのような環状アルキル基も可能である。
【0088】
がアリール基である場合、アリール基は、環上にハロゲン、アルキルまたはアルケニルから選択される1~5個の置換基を必要に応じて有するフェニル、または環構造上にハロゲン、アルキルまたはアルケニルから選択される1~11個の置換基を必要に応じて有するナフチルであり得、置換基は必要に応じてフッ素化(パーフルオロ化または部分フルオロ化を含む)され得る。アリール基が多環芳香族基である場合、多環芳香族基は、例えば、アントラセン、ナフタレン、フェナンテール、テトラセンであり、これらは、必要に応じて1~8個の置換基を有し得、また、必要に応じて、1~12個の炭素を含むアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基によってシリコン原子から「離隔」し得る。フェニルなどの単環構造も、このようにシリコン原子から離隔し得る。
【0089】
シロキサンポリマーは、第1の化合物と第2の化合物との間で重合反応、好ましくは塩基触媒重合反応を行うことによって製造される。下記に示す必要に応じた追加化合物を重合反応の一部として含め得る。
【0090】
第1の化合物は、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシ、カルボキシル、アミンまたはアシルオキシ基などの任意の適切な反応基Rを有し得る。例えば、第1の化合物の反応基が-OH基である場合、第1の化合物のより具体的な例としては、ジフェニルシランジオール、ジメチルシランジオール、ジイソプロピルシランジオール、ジ-n-プロピルシランジオール、ジ-n-ブチルシランジオール、ジ-t-ブチルシランジオール、ジイソブチルシランジオール、フェニルメチルシランジオールおよびジシクロヘキシルシランジオールなどのシランジオールが挙げられる。
【0091】
第2の化合物は、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシ、カルボキシル、アミン、またはアシルオキシ基などの任意の適切な反応性基Rを有し得、これらの反応性基は、第1の化合物の反応性基と同一または異なり得る。一例では、反応基は、第1の化合物または第2の化合物(またはシロキサンポリマーを形成する重合反応に参加する任意の化合物、例えば第3の化合物など)のいずれにおいても-Hではなく、その結果得られるシロキサンポリマーは、シロキサンポリマー中のSiに直接結合した任意のH基が存在しない、または実質的に存在しない。R基は、第2の化合物中に存在する場合、独立して、第1の化合物のR基のようなアルキルまたはアリール基である。アルキルまたはアリール基Rは、第1の化合物のR基と同じでも異なっていてもよい。
【0092】
第2の化合物の架橋反応基Rは、酸、塩基、ラジカルまたは熱触媒反応によって架橋できる任意の官能基であり得る。これらの官能基は、例えば、任意のエポキシド、オキセタン、アクリレート、アルケニル、アルキニルまたはチオール基であり得る。
【0093】
エポキシ基の場合、酸、塩基、熱触媒反応を使用して架橋し得る3個の環原子を有する環状エーテルであり得る。これらのエポキシド含有架橋基の例は、グリシドキシプロピル基および(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基などを含む。
【0094】
オキセタン基の場合、酸、塩基、熱触媒反応を使用して架橋し得る4個の環原子を有する環状エーテルであり得る。このようなオキセタン含有シランの例として、3-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)プロピルトリエトキシシラン、3-(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)プロピルトリエトキシシラン、3-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)プロピルトリメトキシシラン、または3-(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)プロピルトリメトキシシランなどを含む。
【0095】
アクリレート基の場合、これは、ラジカル開始剤を使用して架橋し得るアクリレートまたはメタクリレートであり得、UV光または熱のいずれかで活性化され得る。このようなアクリレート含有シランの例としては、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルアクリレート、3-(ジメトキシメチルシリル)プロピルメタクリレート、または3-(メトキシジメチルシリル)プロピルメタクリレートなどがある。
【0096】
アルケニル基の場合、このような基は、好ましくは2~18個、より好ましくは2~14個、特に好ましくは2~12個の炭素原子を有し得る。エチレン基、すなわち二重結合で結合した2個の炭素原子は、好ましくは分子中のSi原子に対して2位以上に位置する。分岐アルケニルは、好ましくは、アルファ位またはベータ位で、1個以上、好ましくは2個のC~Cアルキル、アルケニルまたはアルキニル基、必要に応じてフッ素化または過フッ素化アルキル、アルケニルまたはアルキニル基で分岐している。
【0097】
アルキニル基の場合、好ましくは2~18個、より好ましくは2~14個、特に好ましくは2~12個の炭素原子を有し得る。エチレン基、すなわち三重結合で結合した2個の炭素原子基は、好ましくは分子中のSiまたはM原子に対して2位以上に位置する。分岐アルキニルは、好ましくは、アルファ位またはベータ位で、1個以上、好ましくは2個の、C~Cアルキル、アルケニルまたはアルキニル基、必要に応じて過フッ素化アルキル、アルケニルまたはアルキニル基で分岐している。
【0098】
チオール基の場合、炭素結合スルフィドリル基を含有する任意の有機硫黄化合物であり得る。チオール含有シランの例としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランおよび3-メルカプトプロピルトリエトキシシランがある。
【0099】
第2の化合物の反応基は、アルコキシ基であり得る。アルコキシ基のアルキル残基は、直鎖状または分岐状であり得る。好ましくは、アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、およびt-ブトキシ基などの1~6個の炭素原子を有する低級アルコキシ基からなる。第2の化合物の特定の例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、または3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0100】
第3および第4の化合物は、第1および第2の化合物とともに提供され、それらと重合される。第3および第4の化合物は、独立して化学式IIIを有し得る。
【0101】
【数4】
【0102】
は、反応性基であり、
f=1~4であり、
10は、アルキルまたはアリール基であり、
g=4~fである。
【0103】
そのような一例は、テトラメトキシシランである。その他の例としては、フェニルメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、プロピルエチルトリメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシランシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、プロピルエチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどを含む。
【0104】
第1、第2、および第3の化合物に加えて第4の化合物も提供される場合、第4の化合物は、第3の化合物とは異なる。
【0105】
第1の化合物と第2の化合物の重合は、酸触媒を使用して行い得るが、塩基触媒が好ましい。第1の化合物と第2の化合物との間の塩基触媒重合に使用される塩基触媒は、任意の適切な塩基性化合物であり得る。これらの塩基性化合物の例としては、トリエチルアミンなどの任意のアミンおよび、水酸化バリウム、水酸化バリウム一水和物、水酸化バリウム八水和物などの任意の水酸化バリウムなどがある。その他の塩基触媒としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、アンモニア、過塩素酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、イミダゾン、またはn-ブチルアミンなどが含まれる。特定の例では、塩基触媒は、Ba(OH)である。塩基触媒は、第1の化合物と第2の化合物とを合わせた量に対して、0.5%未満の重量パーセントでまたは0.1%未満の重量パーセントなどのより低い量で提供され得る。
【0106】
重合は、溶融相または液体媒体で行われ得る。温度は、約20~200℃の範囲で、通常は約25~160℃、特に約40~120℃である。概して、重合は、常圧で行われ、最高温度は使用する溶媒の沸点によって決まる。重合は、還流条件で実施され得る。他の圧力および温度も使用可能である。第1の化合物と第2の化合物とのモル比は、95:5~5:95、特に90:10~10:90、好ましくは80:20~20:80である。好ましい例では、第1の化合物と第2の化合物(または第2の化合物と重合反応に関与するその他の化合物、すなわち下記を参照)とのモル比は少なくとも40:60、または45:55以上である。
【0107】
一例では、第1の化合物は、反応基として-OH基を有し、第2の化合物は、反応基としてアルコキシ基を有する。好ましくは、添加される第1の化合物の量に対する-OH基の総数は、第2の化合物中の反応基、例えばアルコキシ基の総数以下であり、好ましくは第2の化合物中の反応基の総数(または、第2の化合物と、アルコキシ基が添加された他の化合物、例えば、本明細書で述べたように、添加されたテトラメトキシシランまたは重合反応に関与する他の第3の化合物)より少ない。アルコキシ基の数がヒドロキシル基の数を上回ると、アルコキシシランがメトキシシランの場合はメタノール、アルコキシシランがエトキシシランの場合はエタノールなど、すべてまたは実質的にすべての-OH基が反応してシロキサンから除去される。第1の化合物中の-OH基の数と第2の化合物中の反応性基(好ましくは-OH基以外)の数とは実質的に同じであり得るが、第2の化合物中の反応性基の総数は、第1の化合物中の-OH基の10%以上、好ましくは25%以上多いことが好ましい。いくつかの実施形態では、第2の化合物の反応基の数は、第1の化合物の-OH基の数より40%以上、または60%以上、75%以上、または100%以上多い。選択された化合物に応じて、重合反応のメタノール、エタノール、またはその他の副産物は、重合後に除去され、好ましくは乾燥チャンバー内で蒸発される。
【0108】
シロキサンポリマーは、まず、重量平均分子量が例えば500~5,000g/mol、例えば750~3,000g/molであるプレポリマーの形態で提供される。
【0109】
硬化すると、分子量は、通常、最大200,000g/molである。
【0110】
特定の一実施形態では、硬化性ポリマーは、500~2500g/モルの分子量(M)のシロキサンプレポリマーであり、シロキサンプレポリマーは、特にエポキシ、グリシジル、ビニル、アリル、アクリレート、メタクリレート、およびそれらの組み合わせから選択される1つ以上の反応性基を示すことが好ましい。
【0111】
一実施形態では、硬化性モノマーは、エポキシ、グリシジル、ビニル、アリル、アクリレート、メタクリレート、およびそれらの組み合わせなどの架橋可能な反応性基を有する化合物から選択される。
【0112】
これらのモノマーの例としては、いくつか例を挙げると、メチルアクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンジアクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、エチル2-シアノアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-カルボキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパン(EO)nトリアクリレート、カプロラクトンアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、フェノキシベンジルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、o-フェニルフェノールEOアクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ビフェニルメチルアクリレートアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルアクリレート、ラウリルテトラデシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、フェノール(EO)アクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノール(EO)2アクリレート、フェノール(EO)4アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ノニルフェノール(PO)2アクリレート、ノニルフェノール(EO)4アクリレート、ノニルフェノール(EO)8アクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、メトキシPEG600メタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオール(EO)nジアクリレート、ポリプロピレングリコール400ジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ポリプロピレングリコール700(EO)6ジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオール(EO)nジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA(EO)10ジアクリレート、ビスフェノールA(EO)10ジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコール(PO)2ジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールA(EO)30ジアクリレート、ビスフェノールA(EO)30ジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールA(EO)4ジアクリレート、ビスフェノールA(EO)4ジメタクリレート、ビスフェノールA(EO)3ジアクリレート、ビスフェノールA(EO)3ジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジメタクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート、ポリエチレングリコール300ジアクリレート、ポリエチレングリコール600ジアクリレート、ポリエチレングリコール600ジメタクリレート、ビスフェノールF(EO)4ジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパン(EO)3トリアクリレート、トリメチロールプロパン(EO)15トリアクリレート、トリメチロールプロパン(EO)6トリアクリレート、トリメチロールプロパン(EO)9トリアクリレート、グリセリン(PO)3トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパン(PO)3トリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトール(EO)nテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどがある。
【0113】
一実施形態では、硬化性ポリマーおよびモノマーは、フリーラジカル硬化によって硬化される。
【0114】
通常、モノマーおよびポリマーは、可視光線、電子線、特に紫外線(UV)などの活性エネルギー線を使用した光重合によって硬化可能である。
【0115】
本技術の実施形態では、組成物はさらに、少なくとも(1種以上の)光重合開始剤、および必要に応じて(1種以上の)スペクトル増感剤などの共開始剤、および必要に応じて還元剤を含む。
【0116】
一実施形態では、組成物は、硬化性ポリマーの硬化を達成するための光重合開始剤またはその組み合わせ、特にUV開始剤またはUV開始剤の組み合わせを含む。光重合開始剤およびUV開始剤の例には、芳香族ケトンなどのカルボニル化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、ケトキシムエステル、ホウ酸塩化合物、アジニウム化合物、ならびにメタロセン化合物、活性エステル化合物およびアルキルアミン化合物が含まれる。
【0117】
一実施形態では、ケトキシムエステルは、光重合開始剤として使用される。
【0118】
通常、光重合開始剤またはUV開始剤の含有量は、組成物の0.1~25重量%、特に0.5~20重量%、例えば0.5~10重量%である。
【0119】
組成物は、好ましくは、組成物の特性を調整し得る添加剤を含む。このような添加剤は、組成物の濡れ性、接着性、チキソ性、発泡性、およびそれらの組み合わせを調整し得る添加剤の群から選択され得る。通常、添加剤の濃度は、溶媒を含む組成物の総重量の0.01~15%、特に約0.1~10%である。
【0120】
一実施形態では、組成物は硬化性ポリマー用の溶媒を含む。溶媒は、特に有機黒色顔料が使用されているときには、黒色顔料を溶解することも可能であるように、必要に応じて選択され得る。
【0121】
一実施形態では、溶媒は主に硬化性ポリマーを溶解するが、ナノ粒子および黒色顔料は液相中に溶解されるのではなく分散される。
【0122】
組成物の25℃における動粘度は、概して、5mPas~1,000,000mPasまたは5mPas~500,000mPasの範囲であり、例えば約50~50,000mPasまたは約100~200,000mPas、特に200~100,000mPas、例えば250~10,000mPasであり、2.5s-1のせん断速度でレオメーターで測定される。
【0123】
塗布に際しては、組成物の粘度は、例えば組成物の固形分含有量を調整することによって調整され得る。概して、固形分含有量は、組成物全体の10~100重量%、特に約30~100重量%、例えば40~100重量%、または60~100重量%、特に80~100重量%の範囲である。
【0124】
一実施形態では、組成物の粘度は、硬化性ポリマーの溶媒の量を調整することによって調整される。したがって、粘度は、ポリマー、ナノ粒子および黒色顔料によって形成された固形分100重量部に対して、硬化性ポリマーを溶解することが可能である液体を10~200重量部添加することによって調整され得る。
【0125】
溶媒は、例えば、ケトン、エーテル、アルコール、エステルなどの有機溶媒の群から選択される。具体的な例としては、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、メタノール、エタノール、2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル(PnP)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルPGMEが挙げられる。
【0126】
一実施形態では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(略して「PGMEA」)が使用されている。
【0127】
一実施形態では、モノマーの量を調整することによって組成物の粘度が調整される。これによって、所定の粘度を有する無溶剤組成物の提供が可能になる。より具体的には、一実施形態では、コーティングの硬化性成分の50~100%が組成物中のモノマーによって提供され、その割合は硬化性成分、特に(1種以上の)ポリマーおよび(1種以上の)モノマーの総重量から計算される。
【0128】
一実施形態では、1.9以上のRIを有するコーティングを製造するための組成物において、コーティングの硬化性成分の80~100%が組成物中のモノマーによって提供される。
【0129】
一実施形態では、光学基板のコーティング用組成物は、
(1種以上の)硬化性モノマーおよび(1種以上の)硬化性ポリマーに金属酸化物ナノ粒子を液相で加えて混合物を得るステップと、
液相の少なくとも一部または全部を蒸発させるステップと、
混合物に黒色顔料、硬化触媒および添加剤を加えるステップと、
によって提供される。
【0130】
ポリマーとモノマーとナノ粒子との混合物は、通常、溶媒の蒸発後に粘性液体またはシロップになる。
【0131】
一実施形態では、黒色顔料を他の成分によって形成された混合物に加えて改質混合物を形成し、次いでこれを粉砕して黒色顔料を分散または溶解する。
【0132】
一実施形態では、組成物の調製中に、黒色顔料の凝集が防止される。
【0133】
組成物は、いくつかの塗布方法によって基板の表面上に塗布され得る。
【0134】
一実施形態では、塗布方法は、非接触または接触方法からなる群から選択され、特に、ディスペンシング、スプレー、スリットコーティング、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング、カーテンコーティング、非接触または接触塗装および印刷、例えばフレキソ印刷またはスクリーン印刷の群から選択される。
【0135】
次に、組成物をUV光などの光硬化にかけることで硬化させ、硬化膜を形成する。その結果、ポリマーおよびモノマーが硬化し、表面に架橋ネットワークを形成する。このポリマーマトリックスが表面に付着し、ナノ粒子および黒色顔料をそこに結合させる。
【0136】
光硬化を達成するために使用されるUV光は、通常、250nm~450nmの範囲にピークを示し、LEDなどの単一波長UV光を使用する場合、波長は、通常、285nm、300nm、310nm、365nm、385nm、395nm、および405nmのうちの1つ以上から選択される。UV光のエネルギー量は、一実施形態によれば、1~500J/cm、例えば5~100J/cm、例えば10~50J/cmの範囲である。
【0137】
一実施形態では、組成物は、高屈折率材料の高屈折率のエッジの黒色化に使用される。通常、高屈折率材料は、ガラス基板、特に組成物が塗布される研磨されていない粗い表面を有するガラス基板を備える。
【0138】
溶剤を含まない形態の組成物を塗布することによって、硬化中に溶剤が蒸発しないか、または実質的に蒸発しない。その結果、表面に均一なフィルムが形成され、ナノ粒子および黒色顔料が表面に均一に分布する。
【0139】
下記の非限定的な例は、いくつかの実施形態を示す。
【実施例
【0140】
(シロキサンポリマーの合成)
【0141】
撹拌子と還流冷却器とを備えた500mL丸底フラスコに、ジフェニルシランジオール(60g、45mol%)、[3-(メタクリロイルオキシ)プロピル]トリメトキシシラン(55.12g、36.7mol%)およびテトラメトキシシラン(17.20g、18.3mol%)を充填した。フラスコを窒素雰囲気下で80℃に加熱し、1mLのメタノール中に溶解した0.08gの水酸化バリウム一水和物をシランの混合物に滴下した。シラン混合物を80℃で30分間撹拌し、その間にジフェニルシランジオールがアルコキシシランと反応した。30分後、生成されたメタノールを真空下で蒸発させた。シロキサンポリマーの粘度は1200mPas、Mは1200g/molであった。
【0142】
(組成物の形成)
【0143】
前のステップのシロキサンポリマーを硬化性モノマーおよびPGMEA中のTiOナノ粒子溶液と混合し、ポリマーとナノ粒子との所定の比を達成した。ロータリーエバポレーターを使用して真空下で溶剤を蒸発させ、硬化触媒、添加剤、黒色吸収顔料を加えて配合物を十分に混合した。最後に、3本ロールミルを使用して組成物を粉砕し、均質な混合物を得る。
【0144】
3種類の異なるナノ粒子含有量と2種類のTiOナノ粒子(Z平均37nmのナノ粒子AとZ平均81nmのナノ粒子B)とを使用して、6種類の異なる配合物(配合物1~6)を作成した。重量パーセントによる組成を表1に記載する。
【0145】
配合物の屈折率を、黒色吸収顔料を添加する前の配合物から測定した。シロキサンポリマーおよびナノ粒子溶液のサンプルをシリコンウェーハ上にスピンコートし、405nmのUV-LEDと20J/cmの線量で硬化させた。屈折率を、エリプソメーター(Woollam alpha-SE)を使用して波長589nmで測定した。最終配合物の粘度を、レオメーターを使用してせん断速度10 1/sで測定した。
【0146】
【表1】
【0147】
結果は、TiOの粒子サイズが、溶媒のない状態での配合物の粘度と屈折率との両方を制御する上で重要であることを示す。TiO粒子サイズが小さい場合、配合物の粘度は、粒子サイズが大きい配合物よりも高くなる。ナノ粒子含有量が最も多い場合(配合物3および6)には、ナノ粒子の小さい配合物は乾燥しており、粘度を測定することすらできない。
【0148】
もう一つの発見は、配合物の屈折率である。より大きい粒子サイズのTiOナノ粒子は、同じ配合物でより小さい粒子サイズのナノ粒子よりも屈折率が高くなる。配合物においては、散乱断面積が低いため、粒子サイズが小さい方が有利であり、性能が向上する。大きなナノ粒子による散乱は、拡散反射を生じさせることによって、光学基板とコーティングとの界面での反射率に寄与する。
【0149】
別の組成物セットを、使用される黒色顔料/充填剤を変更することによって作成する。配合物7~11を、配合物1と同様に作成したが、顔料の種類/充填剤を変更した。Kremer Pigment製ファーネスブラック47250、三菱化学製MA11カーボンブラック(平均粒子サイズ29nm)、Cabot製M1100カーボンブラック(分散性向上のため表面処理済み)の、3種類のカーボンブラック粉末をテストした。BASFの黒色顔料X55を1つテストし、またMA11のPGMEA分散液を、PGMEA溶液(総固形分20%)でMA11を30重量%のEfka製PX4310とともにロックミリングすることによって製造した。MA11分散液の場合、分散液から余分なPGMEAを除去するために、溶媒蒸発ステップの前にカーボンブラックを添加した。配合物7~11の重量パーセントによる組成を表2に示す。
【0150】
【表2】
【0151】
反射率調査のために、配合物を、ドクターブレード法によって高屈折率ガラス基板(589nmでRI1.8)上に60μmの層として塗布した。薄膜として塗布した後、20J/cmのUV線量で405nmのUV-LEDを使用してフィルムをUV硬化させた。配合物を硬化させると、空気表面に対して反射する滑らかな黒い表面が形成される。
【0152】
配合物がエッジの黒色化材料として機能することは、高屈折率ガラスと配合物7~11との界面からの反射率を測定することによって示される。反射率は、積分球を使用し、拡散反射率と全反射率を測定し得るコニカミノルタCM-3600A分光光度計を使用して測定した。光の入射角は、8°である。サンプルを、コーティングされていないガラス側を光線に向けて装置に配置した。この設定では、空気とガラスとの界面からの反射率なしではガラスコーティングの界面の反射率を測定できないことに留意されたい。そのため、この反射は次のように反射率データから補正される。
【0153】
まず、清浄な基板の反射率を測定する。基板の反射率R、は鏡面反射成分のみを有すると仮定する。清浄な基板は、反射率rを有する2つの同一の表面を有し、測定された反射率は反射率から次のように近似し得る。
【0154】
【数5】
【0155】
単一界面反射率は、測定された基板データから前の式を使用して計算される。
【0156】
空気とガラスとの界面の反射率rとガラスコーティングの界面の反射率rとから、サンプルコーティングの反射率は次のように近似され得る。
【0157】
【数6】
【0158】
測定された拡散反射成分は、簡略化された補正係数(1-r-2で乗算され、空気とガラスとの界面での入射光の強度損失、およびガラスと空気との界面での散乱光の反射を補正する。散乱光の反射の補正は、8°の入射角で測定された空気とガラスとの界面の反射率と同じ反射率を使用することで簡略化されるが、これによって補正が過小評価される。
【0159】
ガラスコーティングと界面との計算された反射率値rは、図2(全反射率)および図3(拡散反射率)に示される。コーティングされていないガラスの基準値は、反射率rである。
【0160】
結果は、黒色顔料/充填剤が全反射率、特に全反射率値に含まれる拡散反射率に大きな影響を与えることを示す。これは、黒色顔料充填剤によって引き起こされる散乱がエッジの黒色化材料の性能にどの程度影響するかを示す。測定によって、屈折率の差が最小限に抑えられているため、拡散反射率が全反射率の大部分を占めていることが示されている。
【0161】
最も低い全反射率と鏡面反射率は、樹脂系に溶解するX55黒色顔料で得られ、そのため黒色顔料からの散乱は非常に低くなる。2番目に低い全反射率と鏡面反射率は、分散性を向上させるために表面処理されたCabot M1100カーボンブラックで得られる。三菱MA11は、分散剤を使用してカーボンブラックをPGMEAに分散すると拡散反射率が明らかに向上するが、全反射率では粉末として使用したMA11よりも高い結果になる。未処理の高粒子径カーボンブラック47250では、樹脂と黒色フィラーの間で光散乱が大きくなり得るため、より高い反射率が得られる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】