(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】金属帯材を横切断する方法及び金属帯材を横切断するシャーを有する圧延設備
(51)【国際特許分類】
B21B 37/74 20060101AFI20250130BHJP
B21B 1/26 20060101ALI20250130BHJP
B21B 45/00 20060101ALI20250130BHJP
B21B 15/00 20060101ALI20250130BHJP
B22D 11/12 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B21B37/74 A
B21B1/26 Z
B21B45/00 Z
B21B15/00 B
B22D11/12 A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024543558
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 EP2023050620
(87)【国際公開番号】W WO2023143924
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】102022200939.8
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SMS group GmbH
【住所又は居所原語表記】Am SMS Campus 1, 41069 Moenchengladbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】キンチャー・ビェルン
【テーマコード(参考)】
4E002
4E124
【Fターム(参考)】
4E002AD01
4E002BC07
4E002BD02
4E002CA08
4E002CA09
4E124AA07
4E124AA08
4E124BB07
4E124EE14
(57)【要約】
本発明は、圧延設備(1)において少なくとも1つのシャーを用いて金属帯材を横切断する方法に関し、以下の方法ステップ:A)金属帯材の目標長さに応じて圧延設備の切削位置において少なくとも1つの目標切削時点を求める、B)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度を求める、C)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が、シャーについて与えられた金属帯材の限界せん断強度以下であるとき、目標切断時点で切断を作動させる、又はD)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が限界せん断強度より大きいとき、目標切断時点で切断をブロックする、方法ステップを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延設備(1)において少なくとも1つのシャーを用いて金属帯材を横切断する方法において、以下の方法ステップ
A)金属帯材の目標長さに応じて圧延設備の切削位置で少なくとも1つの目標切削時点を求める、
B)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度を求める、
C)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が、シャーについて与えられた金属帯材の限界せん断強度以下であるとき、目標切断時点で切断を作動させる、又は
D)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が限界せん断強度より大きいとき、目標切断時点で切断をブロックする、
方法ステップを有する、方法。
【請求項2】
E)方法ステップD)に従って切断がブロックされたら新たな目標切断時点を確定する、
方法ステップをさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
目標切断時点で切断位置における金属帯材の温度に応じて、目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度を求めることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
目標切断時間での切断位置における温度を、測定された温度及び/又は金属帯材の少なくとも1つの部分長さにわたる演算された温度経過に基づいて継続的に求めることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
目標切断時点を、切断長さを最適化する少なくとも1つのコンピュータ実装されたアルゴリズムによって演算することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
金属帯材の温度並びに金属帯材の厚さ及び/又は金属帯材の幅に応じて、並びに金属帯材の材料組成に応じて、目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度を求めることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
圧延設備(1)において、
少なくとも1つの圧延装置を有する少なくとも1つの圧延ラインにおいて金属帯材を定尺切断及び圧延する手段と、
圧延方向の上流及び/又は下流に配置されていて、所定の長さの部分に金属帯材を分離するように構成された少なくとも1つのシャーと、
圧延設備を自動化するための上位の少なくとも1つのプロセス制御部(9)と、
を備え、
プロセス制御部(9)は、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法に従って少なくとも1つのシャーを制御する手段を有する、圧延設備(1)。
【請求項8】
シャーは、連続鋳造設備(2)のすぐ下流で、少なくとも1つの圧延装置の上流に置かれた加熱装置のすぐ上流に配置されていることを特徴とする、請求項7に記載の圧延設備(1)。
【請求項9】
プロセス制御部(9)は、連続鋳造設備(2)と第1の圧延装置の上流に置かれた加熱装置との間の金属帯材の金属帯材の温度プロファイル及び/又は温度経過を演算する手段を有することを特徴とする、請求項8に記載の圧延設備(1)。
【請求項10】
プロセス制御部(9)は、シャーの切断領域への金属帯材の入口における金属帯材の温度、厚さ及び/又は幅に応じて、及び/又は金属帯材の材料組成に応じて、金属帯材のせん断強度を少なくとも近似的に特定する手段と、金属帯材のシャー固有の限界せん断強度を上回るとシャーをブロックする手段とを有する、請求項7から9のいずれか一項に記載の圧延設備(1)。
【請求項11】
プロセス制御部(9)は、切断作動がブロックされると、シャーに対する変更された目標切断時点を決定するように構成された、金属帯材の切断長さを最適化する装置を有することを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の圧延設備(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延設備において少なくとも1つのシャーを用いて金属帯材を横切断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
さらに本発明は、少なくとも1つの圧延装置と、所定の長さの部分に金属帯材を分離するように構成された少なくとも1つのシャーと、設備を自動化するための上位の少なくとも1つのプロセス制御部とを有する少なくとも1つの圧延ラインにおいて金属帯材を定尺切断及び圧延する手段を備える、圧延設備に関する。
【0003】
圧延設備は、特に、スラブをほぼ連続的に鋳造及び圧延するためのいわゆるCSP(R)設備(Compact Strip Production)として構成されている。
【0004】
出願人によって開発されたCSP(R)方法は、液状の鋼が連続鋳造機においていわゆるスラブへと鋳造される方法である。鋳造ストリップは、シャーによってスラブへと分離され、炉内で圧延温度へと均一化され、場合によっては加温され、そしてこれに続いて熱間圧延ラインにおいて圧延される。連続的に機械から退出するストリップから個々のスラブを切断するシャーは、要求の高いプロセス条件下でも、すなわち温度レベルが低いとき、高強度材料を加工するとき、そして切断幅が大きいときでも熱間ストリップを分離できるように設計されている。切断条件に応じて、シャーは、高い摩耗にさらされ得る。最も不利な条件下では、シャーが損傷して、故障につながるおそれがある。
【0005】
従来技術において、方法を導くことによって、設備構成要素の摩耗特性の改善を実現することが知られている。
【0006】
高合金鋼の後続加工に際して設備構成要素の摩耗特性を改善するそのような方法及び高合金鋼を加工する設備は、例えば独国特許出願公開第102016109489号明細書から公知である。この文献から公知の方法は、鋳造製品の横断面における最高温度が、鋳造機の終端でかつ最初の変形ステップの上流であるが少なくともシャーによる鋳造製品の機械的な定尺切断の上流における無縁性遷移温度を、少なくとも一時的にそれぞれの処理ステップのために下回るように、鋳造製品の冷却を制御するように設定されている。特に、金属帯材の二次冷却が的確に制御されるので、ストリップが、シャーによる切断中に無延性遷移温度の範囲にないように設定されている。これによって、特にシャーが早期の摩耗から保護される。
【0007】
金属帯材を横切断する方法は、例えば欧州特許第3177412号公報からも公知である。この方法は、金属帯材を横切断する前に、帯材先端及び帯材後端における的確な温度プロファイルの調整にも関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102016109489号明細書
【特許文献2】欧州特許第3177412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の基礎をなす課題は、同様にシャーの摩耗特性の改善に寄与する、冒頭で述べたタイプの金属帯材を横切断する方法を提供することである。
【0010】
さらに本発明は、摩耗の少ないシャーの運転が保証されているように構成された圧延設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法を提供すること、及び請求項7の特徴を有する圧延設備を提供することによって解決される。本発明の有利な形態は、従属請求項から明らかである。
【0012】
本発明の一側面は、圧延設備において少なくとも1つのシャーを用いて金属帯材を横切断する方法に関し、以下の
A)金属帯材の目標長さに応じて、圧延設備の切削位置において少なくとも1つの目標切削時点を求める、
B)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度を求める、
C)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が、シャーについて与えられた金属帯材の限界せん断強度以下であるとき、目標切断時点で切断を作動させる、又は
D)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が限界せん断強度より大きいとき、目標切断時点で切断をブロックする
方法ステップを有する。
【0013】
この方法で使用されるシャーは、ペンデュラムシャー、クランクシャー又はドラムシャー等として構成されてよい。
【0014】
本発明の観点で、金属帯材とは、スラブ、ブロック、棒の形態で半製品として連続的又は非連続的に圧延設備に供給され、加工前及び/又は加工中に圧延設備において切断されるべき平らな金属製品と解される。「金属帯材」という用語には、圧延設備に接続される連続鋳造機の出口から退出し、圧延設備においてスラブへと切断され、帯材へとさらに圧延される、例えば熱間帯材又は鋳造ストリップ度等の中間製品及び一次製品も含まれる。
【0015】
この方法は、特に300°Cを超える温度での金属帯材の横切断に関する。
【0016】
本発明による圧延設備は、好ましくは例えば40mmから180mm、好適には50mmから150mmの厚さと800mmから2500mmの幅とを有してよい鋳造されたスラブからなる0.6mmから25.4mmの最終厚さの帯材を製造する圧延設備である。
【0017】
本発明の主要な観点は、切断位置における金属帯材の熱間せん断強度を好ましくは継続的に演算することによるシャーの機械保護である。目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が、確定された限界せん断強度より大きいと、本発明によれば、シャーの切断が、具体的には好ましくは金属帯材のせん断強度がシャーについて所与された限界せん断強度以下になるまでブロックされる。
【0018】
この方法は、モデル及び規則に基づいて実行してよい。従来技術で公知の方法のときとは異なり、温度プロファイルは、金属帯材の横切断の前に影響を受けないが、金属帯材のせん断強度は、継続的に演算され、その際、せん断強度は、金属帯材の温度、材料組成、厚さ及び幅の関数である。
【0019】
この方法の好適な態様では、金属帯材の限界せん断強度を上回るので切断がブロックされると、新たな目標切断時点を確定するように設定されている。
【0020】
目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度は、目標切断時点で切断位置における金属帯材の温度に応じて求めることができる。
【0021】
そのために、金属帯材の少なくとも1つの部分長さにわたって測定された温度及び/又は演算された温度経過に基づいて、目標切断時間で切削位置における温度が継続的に求められるように設定されてよい。目標切断時点は、切断長さを最適化するための少なくとも1つのコンピュータ実装されたアルゴリズムを用いて演算できる。コンピュータ実装されたアルゴリズムは、例えば上位のプロセス制御部の一部である。
【0022】
目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度は、好ましくは金属帯材の温度並びに金属帯材の厚さ及び/又は幅並びに金属帯材の材料組成に応じて求められる。オンラインプロセスモデルが、金属帯材の温度経過を演算できる。CSP(R)設備では、オンラインプロセスモデルは、例えば鋳造機から下流に置かれた炉又は下流に置かれた加熱装置への入口までの温度経過を演算できる。材料組成は、圧延物の分析から取得され、プロセス制御部又はプロセス自動化部に格納されてよい。
【0023】
せん断強度とは、特に比較的高い温度での、金属帯材のせん断強度(kN/mm2)と解され、この場合、せん断強度とは、固体が特に接線方向のせん断力に対する抵抗と解される。
【0024】
不都合なプロセス条件によって金属帯材の熱間せん断強度が高くなると、圧延工程又は場合によっては上流でなされる他のプロセスステップの臨界範囲についてのオートメーションが、シャーをロックするので、シャーは損傷を受けない。この臨界範囲は、レベル1又はレベル2のオートメーションでも可視化でき、オペレータに適切な警告を出力できる。切断長さを最適化するためのモデルベースの演算を介して、生じるプロセスの妨害ができるだけ小さくなるように、元々計画された目標切断を新たに設定できる。
【0025】
本発明の一観点によれば、圧延設備が提供され、圧延設備は、少なくとも1つの圧延装置を有する少なくとも1つの圧延ラインにおいて金属帯材を定尺切断及び圧延する手段を有し、この場合、少なくとも1つのシャーが、好ましくは連続鋳造設備の直ぐ下流に配置されていて、この場合、所定の長さの部分へと金属帯材を分離するシャーが形成されていて、この場合、圧延設備は、自動化のための上位のプロセス制御部を有し、この場合、プロセス制御部は、前述の方法に従って少なくとも1つのシャーを制御する手段を有する。
【0026】
シャーは、連続鋳造設備の直ぐ下流に、かつ少なくとも1つの圧延装置の上流に置かれた炉の上流に配置されてよい。炉は、例えばトンネル炉として構成されてよい。
【0027】
本発明による圧延設備は、特にプロセス制御部を有してよく、プロセス制御部は、温度プロファイル及び/又は連続鋳造設備と第1の圧延装置の上流に置かれた加熱装置との間の金属帯材の温度経過を演算する手段を有する。
【0028】
プロセス制御部は、シャーの切断領域への金属帯材の入口における金属帯材の温度、厚さ及び/又は幅、及び/又は金属帯材の材料組成に応じて、金属帯材のせん断強度を少なくとも近似的に特定する手段と、金属帯材のシャー固有の限界せん断強度を上回るとシャーをブロックする手段とを有してよい。
【0029】
好適には、プロセス制御部は、切断作動がブロックされると、シャーに対する変更された目標切断時点を決定するように構成された、金属帯材の切断長さを最適化する装置を有する。切断長さの最適化は、好ましくはモデルベースである。モデルは、機械学習法、特に人工ニューラルネットワーク等に基づいてよい。
【0030】
本発明を、以下、図面に示された実施例を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1には、鋳造圧延設備として構成された、本発明による圧延設備の一部が概略的に示されている。鋳造圧延設備1は、連続鋳造設備2と、連続鋳造設備2の下流に配置された、ペンデュラムシャー3の形態のシャーと、ペンデュラムシャー3の下流に配置された、トンネル炉4の形態の加熱装置と、少なくとも1つの圧延ラインに配置された図示されていない圧延スタンドとを有する。
【0033】
連続鋳造設備2は、図示されていない取鍋と金型5とを有する。金型5から退出する鋳造ストリップ6は、ストリップガイド7を介して方向転換され、ストリップガイド7の下流で、ペンデュラムシャー3によって、トンネル炉4の上流で定尺切断され、その際、スラブ又は鋳造ストリップ6は、ペンデュラムシャー3の上流で40mmから180mmの厚さと800mmから2500mmの幅とを有し得る。ペンデュラムシャー3への入口における鋳造ストリップ6の平均温度は、約1000°C、すなわち外側で約900°C及び中心部では約1200°Cでなければならない。鋳造ストリップ6は、好ましくは2m/sから7m/sの速度でペンデュラムシャー3に供給される。ペンデュラムシャー3は、開ループ式又は閉ループ式の制御装置8によって制御される。開ループ式又は閉ループ式の制御装置8は、スラブの目標長さに応じて目標切断時点で切断を作動させる。
【0034】
本発明による方法は、鋳造ストリップの温度、鋳造ストリップの材料組成並びに鋳造ストリップの厚さ及び幅の関数として、分離されるべき鋳造ストリップ6又は金属帯材のせん断強度を継続的に演算することを含む。
【0035】
鋳造ストリップ6のせん断強度又は熱間せん断強度は、どのようなせん断力又は切断力をペンデュラムシャー3が切断面に対して平行に及ぼさなければならないかについて決定的である。特に、ペンデュラムシャー3への入口の領域で鋳造ストリップ6の温度が特定のレベルを下回ると、その結果、熱間せん断強度が増加し得る。ペンデュラムシャー3は、特定のせん断力又は切断力に対して設計されているので、鋳造ストリップ6の限界せん断強度を上回ると、ペンデュラムシャー3が損傷する又は高い摩耗にさらされると推測できる。本発明による方法では、トンネル炉4への入口までの鋳造ストリップ6の温度経過に基づいて、鋳造ストリップ6のせん断強度を継続的に演算するような設定がなされている。この方法は、鋳造ストリップ6の所定の目標長さに応じて、ペンデュラムシャー3の目標切断時点を求めることを含む。分離されるべき金属帯材又は分離されるべきスラブの目標長さは、プロセス制御部9によって設定される。さらに、開ループ式及び閉ループ式の制御装置8は、鋳造ストリップ6の熱間せん断強度の監視から、制御インパルスを取得する。制御インパルスは、所定の限界せん断強度と鋳造ストリップ6のせん断強差との比較から導出される。ペンデュラムシャー3への入口の領域で鋳造ストリップ6のせん断強度がその時点で限界せん断強度より大きいと、ペンデュラムシャー3がロック又はブロックされる。切断長さを最適化するモデルに基づいて、プロセス制御部9は、開ループ式及び閉ループ式の制御装置8を指示し、新たなスラブ切断を行わせる。
【0036】
図2には、本発明の第2の実施例による熱間圧延設備10の一部が概略的に示されている。この熱間圧延設備10の上流に必ずしも連続鋳造設備2が設けられなくてよい。この実施例では、同一の構成部材に同一の参照符号が与えられている。熱間帯材12が連続的又は非連続的に供給される熱間圧延設備10は、複数の加熱装置、すなわち誘導加熱装置13及び2つのトンネル炉4と、圧延スタンド12を具備する2つの圧延ラインと、様々な帯材厚さについて設計された複数のシャー14とを有する。簡素化の理由から、別の公知の構成部材の図示及び列記は省かれている。圧延設備には、これより多少の数のシャーが配置されてよく、設備内の位置も変更されてよい。
【0037】
熱間帯材12は、複数のドラムシャー14のうちのいずれかに供給される。ドラムシャー14は、目標切断時点で帯材の目標長さに応じて切断を作動させる開ループ式及び閉ループ式の制御装置8によってそれぞれ制御される。
【0038】
本発明による方法は、材料の温度、材料組成並びに熱間帯材12又は鋳造ストリップ6の厚さ及び幅の関数として、分離されるべき熱間帯材12又は鋳造ストリップ6(
図1参照)のせん断強度を継続的に演算することを含む。
【0039】
金属帯材のせん断強度又は熱間せん断強度は、どのようなせん断力又は切断力を切断面に対して平行にそれぞれシャーに及ぼさなければならないかについて決定的である。特に、シャーへの入口の領域で熱間帯材12の温度が特定のレベルを下回ると、これに基づいて、熱間せん断強度が増加する。シャーは、特定のせん断力又は切断力に対して設計されているので、熱間帯材12の限界せん断強度を上回ると、該当するシャーが損傷する又は高い摩耗にさらされると推測できる。
【0040】
本発明による方法では、熱間帯材12のせん断強度を継続的に熱間帯材12の温度経過に基づいて演算するように設定されている。このことは、熱間圧延設備10の部分領域について限定的であってよい、又は包括的に熱間圧延設備10全体にわたっていてよい。この方法は、熱間帯材12の所定の目標長さに応じて、それぞれのシャーについて目標切断時点を求めることを含む。分離されるべき熱間帯材12の目標長さは、プロセス制御部9によって設定される。さらに、開ループ式及び閉ループ式の制御装置8は、熱間帯材12の熱間せん断強度の監視から制御インパルスを取得する。制御インパルスは、熱間帯材12のせん断強度と所定の限界せん断強度との比較から導出される。目標切断時点でそれぞれのシャーへの入口の領域で熱間帯材12のせん断強度が限界せん断強度よりも大きいとき、シャーは、ロック又はブロックされる。せん断長さを最適化するモデルに基づいて、プロセス制御部9は、開ループ式及び閉ループ式の制御装置8を指示し、新たな切断を行わせる。
【符号の説明】
【0041】
1 鋳造圧延設備
2 連続鋳造設備
3 ペンデュラムシャー
4 トンネル炉
5 金型
6 鋳造ストリップ
7 ストリップガイド
8 開ループ式及び閉ループ式の制御装置
9 プロセス制御部
10 熱間圧延設備
11 圧延スタンド
12 熱間帯材
13 誘導加熱装置
14 シャー
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延設備を自動化するための上位の少なくとも1つのプロセス制御部を用いて圧延設備(1)において少なくとも1つのシャーを用いて金属帯材を横切断する方法において、以下の方法ステップ
A)金属帯材の目標長さに応じて圧延設備の切削位置で少なくとも1つの目標切削時点を求める、
B)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度を求める、
C)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が、シャーについて与えられた金属帯材の限界せん断強度以下であるとき、目標切断時点で切断を作動させる、又は
D)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が限界せん断強度より大きいとき、目標切断時点で切断をブロックする
、
E)方法ステップD)に従って切断がブロックされたら新たな目標切断時点を確定し、その際、目標切断時点を、切断長さを最適化するための少なくとも1つのコンピュータ実装されたアルゴリズムによって演算する
方法ステップをさらに有する方法ステップを有する、方法。
【請求項2】
目標切断時点で切断位置における金属帯材の温度に応じて、目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度を求めることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
目標切断時間での切断位置における温度を、測定された温度及び/又は金属帯材の少なくとも1つの部分長さにわたる演算された温度経過に基づいて継続的に求めることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
金属帯材の温度並びに金属帯材の厚さ及び/又は金属帯材の幅に応じて、並びに金属帯材の材料組成に応じて、目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度を求めることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
圧延設備(1)において、
少なくとも1つの圧延装置を有する少なくとも1つの圧延ラインにおいて金属帯材を定尺切断及び圧延する手段と、
圧延方向の上流及び/又は下流に配置されていて、所定の長さの部分に金属帯材を分離するように構成された少なくとも1つのシャーと、
圧延設備を自動化するための上位の少なくとも1つのプロセス制御部(9)と、
を備え、
プロセス制御部(9)は、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法に従って少なくとも1つのシャーを制御する手段
と、シャーの切断領域への金属帯材の入口における金属帯材の温度、厚さ及び/又は幅に応じて、及び/又は金属帯材の材料組成に応じて、金属帯材のせん断強度を少なくとも近似的に特定する手段と、金属帯材のシャー固有の限界せん断強度を上回るとシャーをブロックする手段とを有し、プロセス制御部(9)は、切断作動がブロックされると、シャーに対する変更された目標切断時点を決定するように構成された、金属帯材の切断長さを最適化する装置を有する、圧延設備(1)。
【請求項6】
シャーは、連続鋳造設備(2)のすぐ下流に、かつ少なくとも1つの圧延装置の上流に置かれた加熱装置のすぐ上流に配置されていることを特徴とする、請求項
5に記載の圧延設備(1)。
【請求項7】
プロセス制御部(9)は、連続鋳造設備(2)と第1の圧延装置の上流に置かれた加熱装置との間の金属帯材の温度プロファイル及び/又は温度経過を演算する手段を有することを特徴とする、請求項
6に記載の圧延設備(1)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延設備において少なくとも1つのシャーを用いて金属帯材を横切断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
さらに本発明は、少なくとも1つの圧延装置と、所定の長さの部分に金属帯材を分離するように構成された少なくとも1つのシャーと、設備を自動化するための上位の少なくとも1つのプロセス制御部とを有する少なくとも1つの圧延ラインにおいて金属帯材を定尺切断及び圧延する手段を備える、圧延設備に関する。
【0003】
圧延設備は、特に、スラブをほぼ連続的に鋳造及び圧延するためのいわゆるCSP(R)設備(Compact Strip Production)として構成されている。
【0004】
出願人によって開発されたCSP(R)方法は、液状の鋼が連続鋳造機においていわゆるスラブへと鋳造される方法である。鋳造ストリップは、シャーによってスラブへと分離され、炉内で圧延温度へと均一化され、場合によっては加温され、そしてこれに続いて熱間圧延ラインにおいて圧延される。連続的に機械から退出するストリップから個々のスラブを切断するシャーは、要求の高いプロセス条件下でも、すなわち温度レベルが低いとき、高強度材料を加工するとき、そして切断幅が大きいときでも熱間ストリップを分離できるように設計されている。切断条件に応じて、シャーは、高い摩耗にさらされ得る。最も不利な条件下では、シャーが損傷して、故障につながるおそれがある。
【0005】
従来技術において、方法を導くことによって、設備構成要素の摩耗特性の改善を実現することが知られている。
【0006】
高合金鋼の後続加工に際して設備構成要素の摩耗特性を改善するそのような方法及び高合金鋼を加工する設備は、例えば独国特許出願公開第102016109489号明細書から公知である。この文献から公知の方法は、鋳造製品の横断面における最高温度が、鋳造機の終端でかつ最初の変形ステップの上流であるが少なくともシャーによる鋳造製品の機械的な定尺切断の上流における無縁性遷移温度を、少なくとも一時的にそれぞれの処理ステップのために下回るように、鋳造製品の冷却を制御するように設定されている。特に、金属帯材の二次冷却が的確に制御されるので、ストリップが、シャーによる切断中に無延性遷移温度の範囲にないように設定されている。これによって、特にシャーが早期の摩耗から保護される。
【0007】
金属帯材を横切断する方法は、例えば欧州特許第3177412号公報からも公知である。この方法は、金属帯材を横切断する前に、帯材先端及び帯材後端における的確な温度プロファイルの調整にも関する。
【0008】
独国特許出願公開第102019217839号明細書には、少なくとも1つの分離装置を用いて金属帯材を横切断する方法が開示されている。この文献に記載された方法では、製造されるべき金属製品について、金属製品の割合長い部分にわたる特性値の実際値を演算するように設定されていて、その際、特性値は、分離又は変形工程に対する金属製品の抵抗を表す。金属製品の特性値の実際値が閾値よりも小さいとき、すなわち装置の性能が、金属製品を分離又は変形するのに十分であるとき、実際の分離又は変形も行われる。これによって、分離又は変形装置の目下の過負荷又は損傷を回避することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第102016109489号明細書
【特許文献2】欧州特許第3177412号公報
【特許文献3】独国特許出願公開第102019217839号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の基礎をなす課題は、同様にシャーの摩耗特性の改善に寄与する、冒頭で述べたタイプの金属帯材を横切断する方法を提供することである。
【0011】
さらに本発明は、摩耗の少ないシャーの運転が保証されているように構成された圧延設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法を提供すること、及び請求項5の特徴を有する圧延設備を提供することによって解決される。本発明の有利な形態は、従属請求項から明らかである。
【0013】
本発明の一側面は、圧延設備において少なくとも1つのシャーを用いて金属帯材を横切断する方法に関し、以下の
A)金属帯材の目標長さに応じて、圧延設備の切削位置において少なくとも1つの目標切削時点を求める、
B)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度を求める、
C)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が、シャーについて与えられた金属帯材の限界せん断強度以下であるとき、目標切断時点で切断を作動させる、又は
D)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が限界せん断強度より大きいとき、目標切断時点で切断をブロックする
方法ステップを有する。
【0014】
この方法で使用されるシャーは、ペンデュラムシャー、クランクシャー又はドラムシャー等として構成されてよい。
【0015】
本発明の観点で、金属帯材とは、スラブ、ブロック、棒の形態で半製品として連続的又は非連続的に圧延設備に供給され、加工前及び/又は加工中に圧延設備において切断されるべき平らな金属製品と解される。「金属帯材」という用語には、圧延設備に接続される連続鋳造機の出口から退出し、圧延設備においてスラブへと切断され、帯材へとさらに圧延される、例えば熱間帯材又は鋳造ストリップ度等の中間製品及び一次製品も含まれる。
【0016】
この方法は、特に300°Cを超える温度での金属帯材の横切断に関する。
【0017】
本発明による圧延設備は、好ましくは例えば40mmから180mm、好適には50mmから150mmの厚さと800mmから2500mmの幅とを有してよい鋳造されたスラブからなる0.6mmから25.4mmの最終厚さの帯材を製造する圧延設備である。
【0018】
本発明の主要な観点は、切断位置における金属帯材の熱間せん断強度を好ましくは継続的に演算することによるシャーの機械保護である。目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が、確定された限界せん断強度より大きいと、本発明によれば、シャーの切断が、具体的には好ましくは金属帯材のせん断強度がシャーについて所与された限界せん断強度以下になるまでブロックされる。
【0019】
この方法は、モデル及び規則に基づいて実行してよい。従来技術で公知の方法のときとは異なり、温度プロファイルは、金属帯材の横切断の前に影響を受けないが、金属帯材のせん断強度は、継続的に演算され、その際、せん断強度は、金属帯材の温度、材料組成、厚さ及び幅の関数である。
【0020】
本発明による方法では、金属帯材の限界せん断強度を上回るので切断がブロックされると、新たな目標切断時点を確定するように設定されている。
【0021】
目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度は、目標切断時点で切断位置における金属帯材の温度に応じて求めることができる。
【0022】
そのために、金属帯材の少なくとも1つの部分長さにわたって測定された温度及び/又は演算された温度経過に基づいて、目標切断時間で切削位置における温度が継続的に求められるように設定されてよい。
【0023】
目標切断時点は、本発明によれば、切断長さを最適化するための少なくとも1つのコンピュータ実装されたアルゴリズムを用いて演算される。コンピュータ実装されたアルゴリズムは、例えば上位のプロセス制御部の一部である。
【0024】
目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度は、好ましくは金属帯材の温度並びに金属帯材の厚さ及び/又は幅並びに金属帯材の材料組成に応じて求められる。オンラインプロセスモデルが、金属帯材の温度経過を演算できる。CSP(R)設備では、オンラインプロセスモデルは、例えば鋳造機から下流に置かれた炉又は下流に置かれた加熱装置への入口までの温度経過を演算できる。材料組成は、圧延物の分析から取得され、プロセス制御部又はプロセス自動化部に格納されてよい。
【0025】
せん断強度とは、特に比較的高い温度での、金属帯材のせん断強度(kN/mm2)と解され、この場合、せん断強度とは、固体が特に接線方向のせん断力に対する抵抗と解される。
【0026】
不都合なプロセス条件によって金属帯材の熱間せん断強度が高くなると、圧延工程又は場合によっては上流でなされる他のプロセスステップの臨界範囲についてのオートメーションが、シャーをロックするので、シャーは損傷を受けない。この臨界範囲は、レベル1又はレベル2のオートメーションでも可視化でき、オペレータに適切な警告を出力できる。切断長さを最適化するためのモデルベースの演算を介して、生じるプロセスの妨害ができるだけ小さくなるように、元々計画された目標切断を新たに設定できる。
【0027】
本発明の一観点によれば、圧延設備が提供され、圧延設備は、少なくとも1つの圧延装置を有する少なくとも1つの圧延ラインにおいて金属帯材を定尺切断及び圧延する手段を有し、この場合、少なくとも1つのシャーが、好ましくは連続鋳造設備の直ぐ下流に配置されていて、この場合、所定の長さの部分へと金属帯材を分離するシャーが形成されていて、この場合、圧延設備は、自動化のための上位のプロセス制御部を有し、この場合、プロセス制御部は、前述の方法に従って少なくとも1つのシャーを制御する手段を有する。
【0028】
シャーは、連続鋳造設備の直ぐ下流に、かつ少なくとも1つの圧延装置の上流に置かれた炉の上流に配置されてよい。炉は、例えばトンネル炉として構成されてよい。
【0029】
本発明による圧延設備は、特にプロセス制御部を有してよく、プロセス制御部は、温度プロファイル及び/又は連続鋳造設備と第1の圧延装置の上流に置かれた加熱装置との間の金属帯材の温度経過を演算する手段を有する。
【0030】
プロセス制御部は、シャーの切断領域への金属帯材の入口における金属帯材の温度、厚さ及び/又は幅、及び/又は金属帯材の材料組成に応じて、金属帯材のせん断強度を少なくとも近似的に特定する手段と、金属帯材のシャー固有の限界せん断強度を上回るとシャーをブロックする手段とを有する。
【0031】
さらに、プロセス制御部は、切断作動がブロックされると、シャーに対する変更された目標切断時点を決定するように構成された、金属帯材の切断長さを最適化する装置を有する。切断長さの最適化は、好ましくはモデルベースである。モデルは、機械学習法、特に人工ニューラルネットワーク等に基づいてよい。
【0032】
本発明を、以下、図面に示された実施例を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1には、鋳造圧延設備として構成された、本発明による圧延設備の一部が概略的に示されている。鋳造圧延設備1は、連続鋳造設備2と、連続鋳造設備2の下流に配置された、ペンデュラムシャー3の形態のシャーと、ペンデュラムシャー3の下流に配置された、トンネル炉4の形態の加熱装置と、少なくとも1つの圧延ラインに配置された図示されていない圧延スタンドとを有する。
【0035】
連続鋳造設備2は、図示されていない取鍋と金型5とを有する。金型5から退出する鋳造ストリップ6は、ストリップガイド7を介して方向転換され、ストリップガイド7の下流で、ペンデュラムシャー3によって、トンネル炉4の上流で定尺切断され、その際、スラブ又は鋳造ストリップ6は、ペンデュラムシャー3の上流で40mmから180mmの厚さと800mmから2500mmの幅とを有し得る。ペンデュラムシャー3への入口における鋳造ストリップ6の平均温度は、約1000°C、すなわち外側で約900°C及び中心部では約1200°Cでなければならない。鋳造ストリップ6は、好ましくは2m/sから7m/sの速度でペンデュラムシャー3に供給される。ペンデュラムシャー3は、開ループ式又は閉ループ式の制御装置8によって制御される。開ループ式又は閉ループ式の制御装置8は、スラブの目標長さに応じて目標切断時点で切断を作動させる。
【0036】
本発明による方法は、鋳造ストリップの温度、鋳造ストリップの材料組成並びに鋳造ストリップの厚さ及び幅の関数として、分離されるべき鋳造ストリップ6又は金属帯材のせん断強度を継続的に演算することを含む。
【0037】
鋳造ストリップ6のせん断強度又は熱間せん断強度は、どのようなせん断力又は切断力をペンデュラムシャー3が切断面に対して平行に及ぼさなければならないかについて決定的である。特に、ペンデュラムシャー3への入口の領域で鋳造ストリップ6の温度が特定のレベルを下回ると、その結果、熱間せん断強度が増加し得る。ペンデュラムシャー3は、特定のせん断力又は切断力に対して設計されているので、鋳造ストリップ6の限界せん断強度を上回ると、ペンデュラムシャー3が損傷する又は高い摩耗にさらされると推測できる。本発明による方法では、トンネル炉4への入口までの鋳造ストリップ6の温度経過に基づいて、鋳造ストリップ6のせん断強度を継続的に演算するような設定がなされている。この方法は、鋳造ストリップ6の所定の目標長さに応じて、ペンデュラムシャー3の目標切断時点を求めることを含む。分離されるべき金属帯材又は分離されるべきスラブの目標長さは、プロセス制御部9によって設定される。さらに、開ループ式及び閉ループ式の制御装置8は、鋳造ストリップ6の熱間せん断強度の監視から、制御インパルスを取得する。制御インパルスは、所定の限界せん断強度と鋳造ストリップ6のせん断強差との比較から導出される。ペンデュラムシャー3への入口の領域で鋳造ストリップ6のせん断強度がその時点で限界せん断強度より大きいと、ペンデュラムシャー3がロック又はブロックされる。切断長さを最適化するモデルに基づいて、プロセス制御部9は、開ループ式及び閉ループ式の制御装置8を指示し、新たなスラブ切断を行わせる。
【0038】
図2には、本発明の第2の実施例による熱間圧延設備10の一部が概略的に示されている。この熱間圧延設備10の上流に必ずしも連続鋳造設備2が設けられなくてよい。この実施例では、同一の構成部材に同一の参照符号が与えられている。熱間帯材12が連続的又は非連続的に供給される熱間圧延設備10は、複数の加熱装置、すなわち誘導加熱装置13及び2つのトンネル炉4と、圧延スタンド12を具備する2つの圧延ラインと、様々な帯材厚さについて設計された複数のシャー14とを有する。簡素化の理由から、別の公知の構成部材の図示及び列記は省かれている。圧延設備には、これより多少の数のシャーが配置されてよく、設備内の位置も変更されてよい。
【0039】
熱間帯材12は、複数のドラムシャー14のうちのいずれかに供給される。ドラムシャー14は、目標切断時点で帯材の目標長さに応じて切断を作動させる開ループ式及び閉ループ式の制御装置8によってそれぞれ制御される。
【0040】
本発明による方法は、材料の温度、材料組成並びに熱間帯材12又は鋳造ストリップ6の厚さ及び幅の関数として、分離されるべき熱間帯材12又は鋳造ストリップ6(
図1参照)のせん断強度を継続的に演算することを含む。
【0041】
金属帯材のせん断強度又は熱間せん断強度は、どのようなせん断力又は切断力を切断面に対して平行にそれぞれシャーに及ぼさなければならないかについて決定的である。特に、シャーへの入口の領域で熱間帯材12の温度が特定のレベルを下回ると、これに基づいて、熱間せん断強度が増加する。シャーは、特定のせん断力又は切断力に対して設計されているので、熱間帯材12の限界せん断強度を上回ると、該当するシャーが損傷する又は高い摩耗にさらされると推測できる。
【0042】
本発明による方法では、熱間帯材12のせん断強度を継続的に熱間帯材12の温度経過に基づいて演算するように設定されている。このことは、熱間圧延設備10の部分領域について限定的であってよい、又は包括的に熱間圧延設備10全体にわたっていてよい。この方法は、熱間帯材12の所定の目標長さに応じて、それぞれのシャーについて目標切断時点を求めることを含む。分離されるべき熱間帯材12の目標長さは、プロセス制御部9によって設定される。さらに、開ループ式及び閉ループ式の制御装置8は、熱間帯材12の熱間せん断強度の監視から制御インパルスを取得する。制御インパルスは、熱間帯材12のせん断強度と所定の限界せん断強度との比較から導出される。目標切断時点でそれぞれのシャーへの入口の領域で熱間帯材12のせん断強度が限界せん断強度よりも大きいとき、シャーは、ロック又はブロックされる。せん断長さを最適化するモデルに基づいて、プロセス制御部9は、開ループ式及び閉ループ式の制御装置8を指示し、新たな切断を行わせる。
【符号の説明】
【0043】
1 鋳造圧延設備
2 連続鋳造設備
3 ペンデュラムシャー
4 トンネル炉
5 金型
6 鋳造ストリップ
7 ストリップガイド
8 開ループ式及び閉ループ式の制御装置
9 プロセス制御部
10 熱間圧延設備
11 圧延スタンド
12 熱間帯材
13 誘導加熱装置
14 シャー
【手続補正書】
【提出日】2024-07-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延設備を自動化するための上位の少なくとも1つのプロセス制御部を用いて圧延設備(1)において少なくとも1つのシャーを用いて金属帯材を横切断する方法において、以下の方法ステップ
A)金属帯材の目標長さに応じて圧延設備の切削位置で少なくとも1つの目標切削時点を求める、
B)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度を求める、
C)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が、シャーについて与えられた金属帯材の限界せん断強度以下であるとき、目標切断時点で切断を作動させる、又は
D)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が限界せん断強度より大きいとき、目標切断時点で切断をブロックする、
E)方法ステップD)に従って切断がブロックされたら新たな目標切断時点を確定し、その際、目標切断時点を、切断長さを最適化するための少なくとも1つのコンピュータ実装されたアルゴリズムによって演算する
方法ステップをさらに有する方法ステップを有する、方法。
【請求項2】
目標切断時点で切断位置における金属帯材の温度に応じて、目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度を求めることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
目標切断時間での切断位置における温度を、測定された温度及び/又は金属帯材の少なくとも1つの部分長さにわたる演算された温度経過に基づいて継続的に求めることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
金属帯材の温度並びに金属帯材の厚さ及び/又は金属帯材の幅に応じて、並びに金属帯材の材料組成に応じて、目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度を求めることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
圧延設備(1)において、
少なくとも1つの圧延装置を有する少なくとも1つの圧延ラインにおいて金属帯材を定尺切断及び圧延する手段と、
圧延方向の上流及び/又は下流に配置されていて、所定の長さの部分に金属帯材を分離するように構成された少なくとも1つのシャーと、
圧延設備を自動化するための上位の少なくとも1つのプロセス制御部(9)と、
を備え、
プロセス制御部(9)は、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法に従って少なくとも1つのシャーを制御する手段と、シャーの切断領域への金属帯材の入口における金属帯材の温度、厚さ及び/又は幅に応じて、及び/又は金属帯材の材料組成に応じて、金属帯材のせん断強度を少なくとも近似的に特定する手段と、金属帯材のシャー固有の限界せん断強度を上回るとシャーをブロックする手段とを有し、プロセス制御部(9)は、切断作動がブロックされると、シャーに対する変更された目標切断時点を決定するように構成された、金属帯材の切断長さを最適化する装置を有する、圧延設備(1)。
【請求項6】
シャーは、連続鋳造設備(2)のすぐ下流に、かつ少なくとも1つの圧延装置の上流に置かれた加熱装置のすぐ上流に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の圧延設備(1)。
【請求項7】
プロセス制御部(9)は、連続鋳造設備(2)と第1の圧延装置の上流に置かれた加熱装置との間の金属帯材の温度プロファイル及び/又は温度経過を演算する手段を有することを特徴とする、請求項6に記載の圧延設備(1)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
本発明による方法では、熱間帯材12のせん断強度を継続的に熱間帯材12の温度経過に基づいて演算するように設定されている。このことは、熱間圧延設備10の部分領域について限定的であってよい、又は包括的に熱間圧延設備10全体にわたっていてよい。この方法は、熱間帯材12の所定の目標長さに応じて、それぞれのシャーについて目標切断時点を求めることを含む。分離されるべき熱間帯材12の目標長さは、プロセス制御部9によって設定される。さらに、開ループ式及び閉ループ式の制御装置8は、熱間帯材12の熱間せん断強度の監視から制御インパルスを取得する。制御インパルスは、熱間帯材12のせん断強度と所定の限界せん断強度との比較から導出される。目標切断時点でそれぞれのシャーへの入口の領域で熱間帯材12のせん断強度が限界せん断強度よりも大きいとき、シャーは、ロック又はブロックされる。せん断長さを最適化するモデルに基づいて、プロセス制御部9は、開ループ式及び閉ループ式の制御装置8を指示し、新たな切断を行わせる。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下を含む。
1.
圧延設備(1)において少なくとも1つのシャーを用いて金属帯材を横切断する方法において、以下の方法ステップ
A)金属帯材の目標長さに応じて圧延設備の切削位置で少なくとも1つの目標切削時点を求める、
B)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度を求める、
C)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が、シャーについて与えられた金属帯材の限界せん断強度以下であるとき、目標切断時点で切断を作動させる、又は
D)目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度が限界せん断強度より大きいとき、目標切断時点で切断をブロックする、
方法ステップを有する、方法。
2.
E)方法ステップD)に従って切断がブロックされたら新たな目標切断時点を確定する、
方法ステップをさらに有する、上記1の方法。
3.
目標切断時点で切断位置における金属帯材の温度に応じて、目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度を求めることを特徴とする、上記1又は2の方法。
4.
目標切断時間での切断位置における温度を、測定された温度及び/又は金属帯材の少なくとも1つの部分長さにわたる演算された温度経過に基づいて継続的に求めることを特徴とする、上記1から3のいずれか一つの方法。
5.
目標切断時点を、切断長さを最適化する少なくとも1つのコンピュータ実装されたアルゴリズムによって演算することを特徴とする、上記1から4のいずれか一つの方法。
6.
金属帯材の温度並びに金属帯材の厚さ及び/又は金属帯材の幅に応じて、並びに金属帯材の材料組成に応じて、目標切断時点で切断位置における金属帯材のせん断強度を求めることを特徴とする、上記1から5のいずれか一つの方法。
7.
圧延設備(1)において、
少なくとも1つの圧延装置を有する少なくとも1つの圧延ラインにおいて金属帯材を定尺切断及び圧延する手段と、
圧延方向の上流及び/又は下流に配置されていて、所定の長さの部分に金属帯材を分離するように構成された少なくとも1つのシャーと、
圧延設備を自動化するための上位の少なくとも1つのプロセス制御部(9)と、
を備え、
プロセス制御部(9)は、上記1から5のいずれか一つの方法に従って少なくとも1つのシャーを制御する手段を有する、圧延設備(1)。
8.
シャーは、連続鋳造設備(2)のすぐ下流で、少なくとも1つの圧延装置の上流に置かれた加熱装置のすぐ上流に配置されていることを特徴とする、上記7の圧延設備(1)。
9.
プロセス制御部(9)は、連続鋳造設備(2)と第1の圧延装置の上流に置かれた加熱装置との間の金属帯材の金属帯材の温度プロファイル及び/又は温度経過を演算する手段を有することを特徴とする、上記8の圧延設備(1)。
10.
プロセス制御部(9)は、シャーの切断領域への金属帯材の入口における金属帯材の温度、厚さ及び/又は幅に応じて、及び/又は金属帯材の材料組成に応じて、金属帯材のせん断強度を少なくとも近似的に特定する手段と、金属帯材のシャー固有の限界せん断強度を上回るとシャーをブロックする手段とを有する、上記7から9のいずれか一つの圧延設備(1)。
11.
プロセス制御部(9)は、切断作動がブロックされると、シャーに対する変更された目標切断時点を決定するように構成された、金属帯材の切断長さを最適化する装置を有することを特徴とする、上記7から10のいずれか一つの圧延設備(1)。
【国際調査報告】