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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】多層セパレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/403 20210101AFI20250130BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20250130BHJP
   H01M 50/406 20210101ALI20250130BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20250130BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20250130BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20250130BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20250130BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20250130BHJP
   H01M 50/494 20210101ALI20250130BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20250130BHJP
   C08J 9/26 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
H01M50/403 C
B32B27/32 E
H01M50/406
H01M50/403 B
H01M50/403 Z
H01M50/417
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/429
H01M50/44
H01M50/494
H01M50/489
C08J9/26 102
C08J9/26 CES
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543864
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 KR2022017324
(87)【国際公開番号】W WO2023146073
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2022-0011988
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519103067
【氏名又は名称】ダブル・スコープコリア カンパニー,リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522268535
【氏名又は名称】ダブル-スコープ チュンジュ プラント カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】リュウ キョン サン
(72)【発明者】
【氏名】チェ クワン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ビョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン レ
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
5H021
【Fターム(参考)】
4F074AA17
4F074AA18
4F074AA22
4F074AA98
4F074AB01
4F074CB34
4F074CB44
4F074DA08
4F074DA20
4F074DA23
4F074DA49
4F074DA54
4F100AJ06A
4F100AJ06B
4F100AK02A
4F100AK02B
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK08A
4F100AK08B
4F100AK21A
4F100AK21B
4F100AK23A
4F100AK23B
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK62A
4F100AK62B
4F100AK68A
4F100AK68B
4F100AL05A
4F100AL05B
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CA01A
4F100CA01B
4F100EH17A
4F100EH17B
4F100EJ17
4F100EJ37A
4F100EJ37B
4F100EJ38
4F100EJ82
4F100JA07A
4F100JA07B
4F100JB05A
4F100JB05B
4F100JK01
4F100JK02
4F100JK08
4F100JL02
5H021BB02
5H021BB05
5H021BB11
5H021BB13
5H021BB20
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE11
5H021EE15
5H021EE17
5H021EE37
5H021HH01
5H021HH06
5H021HH07
5H021HH10
(57)【要約】
本発明の一態様は、(a)第1ポリオレフィンおよび第1気孔形成剤を含む第1組成物を押出し、第1シートを製造する工程;(b)第2ポリオレフィンおよび第2気孔形成剤を含む第2組成物を押出し、第2シートを製造する工程;(c)前記第1および第2シートをそれぞれ縦方向(MD)に延伸し、第1および第2前駆フィルムを製造する工程;(d)前記第1および第2前駆フィルムをラミネートし、積層体を得る工程;および(e)前記積層体を横方向(TD)に延伸した後、前記積層体から前記第1および第2気孔形成剤を除去する工程;を含む多層セパレータの製造方法を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1ポリオレフィンおよび第1気孔形成剤を含む第1組成物を押出し、第1シートを製造する工程;
(b)第2ポリオレフィンおよび第2気孔形成剤を含む第2組成物を押出し、第2シートを製造する工程;
(c)前記第1および第2シートをそれぞれ縦方向(MD)に延伸し、第1および第2前駆フィルムを製造する工程;
(d)前記第1および第2前駆フィルムをラミネートし、積層体を得る工程;および
(e)前記積層体を横方向(TD)に延伸した後、前記積層体から前記第1および第2気孔形成剤を除去する工程;を含む、多層セパレータの製造方法。
【請求項2】
前記第1および第2ポリオレフィンは、それぞれポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテンおよびこれらのうち2以上の組み合わせまたは共重合体からなる群から選択された1つを含む、請求項1に記載の多層セパレータの製造方法。
【請求項3】
前記第1および第2ポリオレフィンの重量平均分子量は、それぞれ300,000~2,000,000である、請求項2に記載の多層セパレータの製造方法。
【請求項4】
前記第1および第2気孔形成剤は、それぞれ40℃で動粘度が50~100cStのパラフィンオイルである、請求項1に記載の多層セパレータの製造方法。
【請求項5】
前記第1または第2組成物は、親水性高分子をさらに含む、請求項1に記載の多層セパレータの製造方法。
【請求項6】
前記第1または第2組成物中の前記親水性高分子の含有量は、0.1~5重量%である、請求項5に記載の多層セパレータの製造方法。
【請求項7】
前記親水性高分子は、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体、グリセロールおよびこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選択された1つである、請求項6に記載の多層セパレータの製造方法。
【請求項8】
前記ラミネート時に前記第1および第2前駆フィルムが互いに面接するように加圧し、前記第1および第2前駆フィルムの界面のうち少なくとも一部を付着させる、請求項1に記載の多層セパレータの製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の製造方法で製造された多層セパレータであって、
下記式により測定される最外層の厚さ偏差が10%以下である、多層セパレータ:
<式>
厚さ偏差(%)={(厚さの最大値)-(厚さの最小値)}/(厚さの最小値)×100
上記式中、前記厚さ偏差は、前記多層セパレータを100mm×100mm(MD×TD)に裁断した後、縦方向(MD)に5等分し、20mm×100mm(MD×TD)のサイズを有する5個の試験片を得る工程;前記試験片の横方向(TD)の中央部で前記最外層の厚さを測定する工程;および前記厚さの最大値および最小値に基づいて前記式により厚さ偏差を算出する工程:を含む方法によって決定される。
【請求項10】
前記多層セパレータは、下記(i)~(vi)による条件のうち少なくとも1つを満たす、請求項9に記載の多層セパレータ:
(i)厚さ1~15μm、
(ii)穿孔強度600gf以上、
(iii)縦方向(MD)引張強度1,300~2,000kgf/cm
(iv)横方向(TD)引張強度3,000~6,000kgf/cm
(v)縦方向(MD)引張伸び150~450%、および
(vi)横方向(TD)引張伸び30~100%。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層セパレータの製造方法に関し、詳細には、多層セパレータを構成する各層の構造的物性を均一化し、セパレータに要求される機械的物性を向上させることができる多層セパレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、スマートフォン、ノートパソコン、タブレットPCなど小型化、軽量化が要求される各種電気製品の電源に広く用いられており、スマートグリッド、電気自動車用中大型バッテリーに至るまでその適用分野が拡大するにつれて、容量が大きく、寿命が長く、安定性が高いリチウム二次電池の開発が要求されている。
【0003】
最近、リチウム二次電池の高エネルギー密度化に伴い、電池に対する負荷が大きくなっていて、セパレータに対しても高度な安全性が要求されており、これによって、セパレータの機械的物性だけでなく、安全性を確保することができる耐熱性に対する重要性も浮かび上がっている。
【0004】
従来、リチウム二次電池のセパレータとしてポリオレフィン系微細多孔膜が使用されてきた。ポリオレフィン系微細多孔膜のうち、特に、ポリエチレン系樹脂からなる微細多孔膜は、電池の温度が上昇したとき、多孔膜の微細孔が閉塞し、電流の流れを遮断するシャットダウン機能に優れていると知られている。ただし、シャットダウン機能が作動した後、さらに電池温度が上昇する場合があり、この場合、セパレータの溶融(メルトダウン)が進行され、電池の内部で短絡が発生し、これに伴って、大量の熱を発生させて、発煙、発火、爆発のような危険が発生する問題があるので、シャットダウン温度より高い温度でも短絡の危険を抑制する必要がある。
【0005】
セパレータのシャットダウン特性とメルトダウン特性を両立させるために、ポリエチレンとポリプロピレンをブレンドしたり、ポリエチレン系樹脂からなる微細多孔膜とポリプロピレン系樹脂からなる微細多孔膜を積層させる方案が提案された。
【0006】
例えば、特許文献1、特許文献2などは、2以上の樹脂組成物を共押出して多層セパレータを製造する方法を開示し、これを通じて製造された多層セパレータの機械的強度および耐熱性を均衡的に改善することができることを開示するが、延伸によって気孔構造が形成される前の工程で共押出によって層間ラミネートが行われる、すなわち、積層が行われるので、後続の延伸、抽出などの製膜工程で各層の構造的物性が不均一になる問題がある。具体的には、多層セパレータの最外層の領域別の厚さ偏差が大きくなるにつれて、セパレータ自体の機械的物性が不均一になることがあり、特に、セパレータを用いた電池の組立時に周辺領域に比べて厚さが顕著に薄い部位が容易に破損、破断するなどの問題がある。このような問題は、最近、電池の集積化、高容量化の傾向に対応するための薄膜型セパレータ(厚さが約15μm以下、好ましくは、約10μm以下)においてさらに目立つ。
【0007】
また、特許文献3は、図1のように、押出、延伸、抽出、熱固定を経て完全に製膜された2以上のセパレータをラミネートし、積層して多層セパレータを製造する方法を開示するが、この場合、十分な層間結合力を付与することができないので、それぞれの層が容易に剥離する問題がある。これを改善するために、2以上のセパレータをラミネートし、積層した後、再延伸、熱固定する工程を追加することができるが、追加された設備および工程によって生産性、経済性が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国特許公開第10-2005-0120689号公報
【特許文献2】韓国特許公開第10-2016-0094448号公報
【特許文献3】韓国特許公開第10-2008-0028444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、厚さが約15μm以下、好ましくは、約10μm以下の薄膜型多層セパレータを製造するに際して、多層セパレータを構成する各層の構造的物性を均一化し、セパレータに要求される機械的物性を安定的に確保すると同時に、生産性と経済性を向上させることができる多層セパレータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、(a)第1ポリオレフィンおよび第1気孔形成剤を含む第1組成物を押出し、第1シートを製造する工程;(b)第2ポリオレフィンおよび第2気孔形成剤を含む第2組成物を押出し、第2シートを製造する工程;(c)前記第1および第2シートをそれぞれ縦方向(MD)に延伸し、第1および第2前駆フィルムを製造する工程;(d)前記第1および第2前駆フィルムをラミネートし、積層体を得る工程;および(e)前記積層体を横方向(TD)に延伸した後、前記積層体から前記第1および第2気孔形成剤を除去する工程;を含む多層セパレータの製造方法を提供する。
【0011】
一実施形態において、前記第1および第2ポリオレフィンは、それぞれポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテンおよびこれらのうち2以上の組み合わせまたは共重合体からなる群から選択された1つを含んでもよい。
【0012】
一実施形態において、前記第1および第2ポリオレフィンの重量平均分子量は、それぞれ300,000~2,000,000であってもよい。
一実施形態において、前記第1および第2気孔形成剤は、それぞれ40℃で動粘度が50~100cStのパラフィンオイルであってもよい。
【0013】
一実施形態において、前記第1または第2組成物は、親水性高分子をさらに含んでもよい。
一実施形態において、前記第1または第2組成物のうち前記親水性高分子の含有量は、0.1~5重量%であってもよい。
【0014】
一実施形態において、前記親水性高分子は、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体、グリセロールおよびこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選択された1つであってもよい。
【0015】
一実施形態において、前記ラミネート時に前記第1および第2前駆フィルムが互いに面接するように加圧し、前記第1および第2前駆フィルムの界面のうち少なくとも一部を付着させることができる。
【0016】
本発明の他の一態様は、前記製造方法で製造された多層セパレータにおいて、下記式により測定される最外層の厚さ偏差が10%以下である多層セパレータを提供する。
<式>
厚さ偏差(%)={(厚さの最大値)-(厚さの最小値)}/(厚さの最小値)×100
【0017】
上記式中、前記厚さ偏差は、前記多層セパレータを100mm×100mm(MD×TD)に裁断した後、縦方向(MD)に5等分し、20mm×100mm(MD×TD)のサイズを有する5個の試験片を得る工程;前記試験片の横方向(TD)の中央部で前記最外層の厚さを測定する工程;および前記厚さの最大値および最小値に基づいて前記式により厚さ偏差を算出する工程:を含む方法によって決定される。
【0018】
一実施形態において、前記多層セパレータは、下記(i)~(vi)による条件のうち少なくとも1つを満たすことができる。
【0019】
(i)厚さ1~15μm、(ii)穿孔強度600gf以上、(iii)縦方向(MD)引張強度1,300~2,000kgf/cm、(iv)横方向(TD)引張強度3,000~6,000kgf/cm、(v)縦方向(MD)引張伸び150~450%、および(vi)横方向(TD)引張伸び30~100%。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様による多層セパレータの製造方法は、(a)第1ポリオレフィンおよび第1気孔形成剤を含む第1組成物を押出し、第1シートを製造する工程;(b)第2ポリオレフィンおよび第2気孔形成剤を含む第2組成物を押出し、第2シートを製造する工程;(c)前記第1および第2シートをそれぞれ縦方向(MD)に延伸し、第1および第2前駆フィルムを製造する工程;(d)前記第1および第2前駆フィルムをラミネートし、積層体を得る工程;および(e)前記積層体を横方向(TD)に延伸した後、前記積層体から前記第1および第2気孔形成剤を除去する工程;を含むことによって、厚さが約15μm以下、好ましくは、約10μm以下の薄膜型多層セパレータの製造時に、多層セパレータを構成する各層の構造的物性を均一化し、セパレータに要求される機械的物性を安定的に確保すると同時に、生産性と経済性を向上させることができる。
【0021】
本発明の効果は、上記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または請求範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来技術による多層セパレータの製造方法を示す。
図2】本発明の一実施形態による多層セパレータの製造方法を示す。
図3】本発明の一実施形態による多層セパレータの厚さ偏差を測定する方法を示す。
図4】本発明の一比較例による多層セパレータの製造方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明を説明する。しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で実現することができ、したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。また、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係ない部分を省略し、明細書全般において類似の部分に対しては類似の参照符号を付けた。
【0024】
明細書全体において、任意の部分が他の部分と「連結」されているというとき、これは、「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を介在し、「間接的に連結」されている場合も含む。また、任意の部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに備えてもよいことを意味する。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態による多層セパレータの製造方法を示す。図2を参照すると、本発明の一態様による多層セパレータの製造方法は、(a)第1ポリオレフィンおよび第1気孔形成剤を含む第1組成物を押出し、第1シートを製造する工程;(b)第2ポリオレフィンおよび第2気孔形成剤を含む第2組成物を押出し、第2シートを製造する工程;(c)前記第1および第2シートをそれぞれ縦方向(MD)に延伸し、第1および第2前駆フィルムを製造する工程;(d)前記第1および第2前駆フィルムをラミネートし、積層体を得る工程;および(e)前記積層体を横方向(TD)に延伸した後、前記積層体から前記第1および第2気孔形成剤を除去する工程;を含んでもよい。
【0026】
前記(a)および(b)工程で、組成が同じか異なる前記第1および第2組成物をそれぞれ独立して押出し、前記第1および第2シートを製造することができる。前記押出は、互いに並列配置された独立的な2台の押出機(第1および第2押出機)を用いて行うことができる。前記第1および第2押出機の構造、構成、規格、容量などは、互いに同一であってもよく、必要に応じて、前記第1および第2押出機を相異に設計し、前記第1および第2組成物の組成と物性、それにより前記多層セパレータを構成する各層の物性を最適化することができる。前記第1および第2押出機において前記第1および第2組成物を溶融、混練することができ、前記第1および第2押出機の後段に設置されたT-ダイのような装置ないし設備を介して既定の厚さで吐出し、前記第1および第2シートを製造することができる。
【0027】
前記第1および第2ポリオレフィンは、それぞれポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテンおよびこれらのうち2以上の組み合わせまたは共重合体からなる群から選択された1つ、好ましくは、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレン、さらに好ましくは、ポリエチレンを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0028】
前記第1および第2ポリオレフィンの重量平均分子量は、それぞれ300,000~2,000,000であってもよく、分子量分布(Mw/Mn)は、3~7であってもよい。前記第1および第2ポリオレフィンは、同種および/または同質のものであってもよく、必要に応じて、異種および/または異質のものであってもよい。前記第1および第2ポリオレフィンの分子量分布が3未満であれば、前記第1および第2気孔形成剤との分散性が低下し、製造された多層セパレータの均一性が低下することがあり、7より大きければ、多層セパレータの機械的物性が低下することがある。
【0029】
前記第1および第2ポリオレフィンが異質の場合、前記第1ポリオレフィンは、当該重量平均分子量が300,000~800,000の高密度ポリエチレン(HDPE)であってもよく、前記第2ポリオレフィンは、その重量平均分子量が1,000,000~2,000,000の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)であってもよい。一般的に、前記高密度ポリエチレンは、セパレータの引張強度、引張伸び、穿孔強度のような機械的物性に寄与することができ、前記超高分子量ポリエチレンは、セパレータの耐熱性に寄与することができるので、両者の組み合わせによってセパレータの機械的物性および耐熱性を互いに補完的に実現することができるが、これらの作用効果が必ず互いに補完的なものではなく、場合によって、機械的物性および/または耐熱性をさらに改善することもできる。
【0030】
前記第1ポリオレフィンの重量平均分子量に対する前記第2ポリオレフィンの重量平均分子量の比は、0.5~2、好ましくは、0.65~1.5であってもよい。前記比が0.5未満または2より大きければ、前記多層セパレータにおいて前記第1および第2組成物に由来した層の構造的、機械的物性および/または耐熱性の偏差が許容可能な範囲を外れ、電池に対する相溶性が低下することがある。
【0031】
前記第1および第2気孔形成剤は、それぞれ40℃で動粘度が50~100cStのパラフィンオイルであってもよい。前記第1および第2気孔形成剤は、同種および/または同質のものであってもよく、必要に応じて、異種および/または異質のものであってもよい。前記第1および第2気孔形成剤の40℃での動粘度が前記範囲を外れると、前記第1および第2組成物の粘度が低すぎたり、高すぎたりするので、加工性と分散性が低下することがある。また、前記第1および第2気孔形成剤は、それぞれ前記パラフィンオイルに加えて、パラフィンワックス、鉱油、固体パラフィン、大豆油、菜種油、パーム油、ヤシ油、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ビス(2-プロピルヘプチル)フタレート、ナフテンオイルおよびこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選択された1つであってもよいが、これに限定されるものではない。前記第1および第2組成物は、それぞれ前記第1および第2ポリオレフィン20~50重量%および前記気孔形成剤50~80重量%を含んでもよい。
【0032】
前記第1または第2組成物は、親水性高分子をさらに含んでもよい。前記第1および第2ポリオレフィンのみからなるセパレータは、本質的に疎水性であるが、セパレータの製造時にポリオレフィンと一定量の親水性高分子を溶融、混練することにより、前記セパレータに所定の親水性を付与することができる。この場合、前記ポリオレフィンの分子量と前記セパレータ中の前記親水性高分子の含有量を最適化して必要なレベルの電解液含浸性を実現する変数で導き出し、組み合わせることによって、前記親水性高分子を前記ポリオレフィンと溶融、混練するための工程の生産性、前記セパレータの親水性およびそれによる電解液含浸性を均衡的に実現することができる。
【0033】
前記多層セパレータのうち前記親水性高分子をさらに含む層は、前記ポリオレフィンを含む疎水性領域および前記疎水性領域中に分散した親水性高分子を含む親水性領域を有することができる。前記層中の前記親水性領域の含有量は、0.1~7.5重量%であってもよく、前記第1または第2組成物中の前記親水性高分子の含有量を0.1~5重量%の範囲に調節することによって実現することができる。
【0034】
前記層において前記第1または第2ポリオレフィンからなる前記疎水性領域と前記親水性高分子からなる前記親水性領域は、それぞれ連続相および不連続相を構成することができる。前記層において前記親水性領域は、前記疎水性領域からなるマトリックス中に均一に分散していて、前記層の面積および/または厚さ方向による全領域に実質的に均一な親水性を付与することができ、これによって、前記層の電解液に対する含浸性を改善することができる。本明細書に使用された用語「マトリックス」は、2種以上の成分を含む層またはセパレータにおいて連続相を構成する成分を意味する。すなわち、前記層において前記ポリオレフィンを含む前記疎水性領域が連続相で存在し、その内部で前記親水性高分子を含む前記疎水性領域が不連続相で分散して存在していてもよい。
【0035】
前記層中の前記親水性領域の含有量は、0.1~7.5重量%、好ましくは、1~6重量%、さらに好ましくは、3~6重量%であってもよい。前記親水性領域の含有量が0.1重量%であれば、必要なレベルの電解液含浸性を実現することができず、7.5重量%より大きければ、電解液含浸性をさらに改善することができるのに対し、前記ポリオレフィンを通じて実現することができるセパレータの機械的物性、耐熱性が低下することがある。また、前記親水性領域の含有量が7.5重量%より大きければ、前記親水性高分子の分散性が低下し、前記層の表面において周辺と異なる明度を有し、2mm以上のサイズを有する表面欠点の数が増加し、外観品質が低下することがあり、前記層の表面および/または内部で前記親水性高分子が任意に凝集した部位および/または領域で抵抗が急変し、電池の電気化学的特性に悪影響を与える恐れがある。
【0036】
前記親水性高分子と混合する前記第1または第2ポリオレフィンが高密度ポリエチレン(HDPE)の場合、前記ポリエチレンの重量平均分子量は、200,000~800,000,好ましくは、250,000~600,000、さらに好ましくは、300,000~500,000であってもよく、前記高密度ポリエチレンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比は、0.1×10-5~1.1×10-5、好ましくは、0.2×10-5~1×10-5、さらに好ましくは、0.5×10-5~1×10-5であってもよい。
【0037】
前記高密度ポリエチレンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比が0.1×10-5未満であれば、必要なレベルの電解液含浸性を実現することができず、1.1×10-5より大きければ、電解液含浸性がかえって低下するだけでなく、前記高密度ポリエチレンを通じて実現することができるセパレータの機械的物性、耐熱性が低下することがある。また、前記高密度ポリエチレンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比が1.1×10-5より大きければ、前記親水性高分子の分散性が低下し、前記セパレータの表面において周辺と異なる明度を有し、2mm以上のサイズを有する表面欠点の数が増加し、外観品質が低下することがあり、前記セパレータの表面および/または内部において前記親水性高分子が任意に凝集した部位および/または領域において抵抗が急変し、電池の電気化学的特性に悪影響を与える恐れがある。
【0038】
なお、前記親水性高分子と混合する前記第1または第2ポリオレフィンが超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の場合、前記ポリエチレンの重量平均分子量は、1,000,000~2,000,000、好ましくは、1,000,000~1,500,000であってもよく、前記超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比は、0.1×10-5~0.75×10-5、好ましくは、0.15×10-5~0.6×10-5、さらに好ましくは、0.3×10-5~0.6×10-5であってもよい。
【0039】
前記超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比が0.1×10-5未満であれば、必要なレベルの電解液含浸性を実現することができず、0.75×10-5より大きければ、電解液含浸性がかえって低下するだけでなく、前記超高分子量ポリエチレンを通じて実現することができるセパレータの機械的物性、耐熱性が低下することがある。また、前記超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比が0.75×10-5より大きければ、前記親水性高分子の分散性が低下し、前記層の表面において周辺と異なる明度を有し、2mm以上のサイズを有する表面欠点の数が増加し、外観品質が低下することがあり、前記層の表面および/または内部において前記親水性高分子が任意に凝集した部位および/または領域において抵抗が急変し、電池の電気化学的特性に悪影響を与える恐れがある。
【0040】
前記親水性高分子は、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体、グリセロールおよびこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選択された1つであってもよく、好ましくは、エチレンビニルアセテートであってもよく、さらに好ましくは、ビニルアセテートの含有量が15~30重量%のエチレンビニルアセテートであってもよいが、これに限定されるものではない。エチレンビニルアセテートのうちビニルアセテートの含有量が15重量%未満であれば、セパレータの機械的物性と親水性が低下することがあり、30重量%より大きければ、加工性とそれによる前記親水性高分子の分散性が低下することがある。なお、前記親水性高分子として、前述のものに加えて、主鎖および/または側鎖に親水性官能基であるアミン基、アミド基、ヒドロキシル基、カルボン酸基などを有する多様な種類の高分子を親水性高分子として適用することもできる。
【0041】
なお、前記親水性高分子のうち前記エチレンビニルアセテートは、前記第1および第2ポリオレフィンに軟質特性、すなわち、所定の柔軟性を付与し、前記第1および第2組成物に由来するそれぞれの層とこれを含む前記多層セパレータの引張伸びを改善するだけでなく、前記多層セパレータを構成するそれぞれの層の層間結合力を高めることにより、穿孔強度のような機械的物性を改善するのに寄与することもできる。
【0042】
前記(c)工程において、前記第1および第2シートをそれぞれ縦方向(MD)に延伸し、第1および第2前駆フィルムを製造することができる。前記第1および第2シートの縦方向(MD)延伸は、それぞれ前記第1および第2押出機の後段に設置された第1および第2延伸機を用いて行われ得る。
【0043】
前記第1および第2延伸機は、それぞれ前記第1および第2押出機から吐出した前記第1および第2シートを前記工程ラインで前記第1および第2シートの移送方向に沿って延伸する装置であり、前記第1および第2延伸機による前記第1および第2シートの延伸方向を縦方向(MD,mechanical direction)と定義することができる。前記第1および第2延伸機は、それぞれロール延伸機であってもよい。前記ロール延伸機は、シートの移送方向に沿って複数のロールを含み、前段に位置するロールに比べて後段に位置するロールをさらに速く回転させる方式でシートを縦方向(MD)に沿って既定の倍率で延伸することができる。前記第1および第2シートの延伸倍率は、それぞれ2~20倍、好ましくは、5~10倍であってもよい。また、前記第1および第2シートの延伸倍率は、同じでも異なっていてもよく、好ましくは、前記(c)工程で製造された前記第1および第2前駆フィルムの付着力とそれによる層間結合力を考慮してこれらの延伸倍率を同一に設定することができるが、これに限定されるものではない。
【0044】
前記(d)工程で、前記第1および第2前駆フィルムをラミネートし、積層体を得ることができる。前記ラミネートは、所定のラミネーターによって行われ得る。前記ラミネーターは、前記第1および第2延伸機によって製造された前記第1および第2前駆フィルムを互いにラミネートする設備ないし装置である。前記ラミネート時に前記第1および第2前駆フィルムが互いに面接するように加圧し、前記第1および第2前駆フィルムの界面のうち少なくとも一部、好ましくは、全部を付着させることができる。前記付着は、前記第1および第2前駆フィルムの表面のうち少なくとも一部、好ましくは、全部に印加される熱、超音波、高周波、レーザーのような物理的手段によって行われ得、前記付着を通じて後続の延伸(TD)、抽出、熱固定のための設備ないし装置を通過する前記積層体の走行安定性を向上させることができ、これにより、従来の多層セパレータの最外層に現れる構造的不均一、例えば、最外層の厚さ、気孔率などの過度な偏差を効果的に解消することができる。
【0045】
前記(e)工程で、前記積層体を横方向(TD)に延伸した後、前記積層体から前記第1および第2気孔形成剤を除去することができる。前記積層体の横方向(TD)延伸は、第3延伸機によって行われ得る。
【0046】
前記第3延伸機は、前記積層体を横方向(TD)に延伸することができる。前記第3延伸機は、テンター延伸機であってもよい。前記テンター延伸機は、前記積層体の横方向の両末端をチャック、クリップのような所定の部材で固定した状態で当該部材を横方向に離隔させる方式で前記積層体を既定の倍率で延伸することができる。前記第3延伸機による前記積層体の横方向(TD)延伸倍率は、2~20倍、好ましくは、5~10倍であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0047】
その後、前記積層体に所定の抽出溶媒を適用し、前記積層体から、具体的には、前記積層体を構成する前記第1および第2前駆フィルムから前記第1および第2気孔形成剤を同時に選択的に抽出、除去することができる。前記抽出溶媒を含む溶液が担持された含浸タンクに前記積層体を既定の時間の間浸漬することによって、前記第1および第2気孔形成剤を抽出、除去することができる。
【0048】
抽出後、前記積層体の表面および/または内部に残留する前記気孔形成剤の含有量は、1重量%以下であってもよい。前記抽出溶媒は、例えば、メチルエチルケトン、ヘキサン、ジクロロメタンなどであってもよいが、これに限定されるものではない。前記第1および第2気孔形成剤の抽出、除去に所要する時間は、前記積層体の厚さ、気孔率などによって決定することができるが、前記積層体の厚さおよび気孔率がそれぞれ1~15μmおよび40~70体積%である場合、10分以下、好ましくは、5分以下であってもよい。
【0049】
また、前記第1および第2気孔形成剤が抽出、除去された前記積層体を加熱し、前記積層体に残留する前記抽出溶媒を除去することができる。前記(e)工程で適用された前記抽出溶媒のうち一部は、前記積層体の表面および/または内部に残留することがある。残留する前記抽出溶媒は、後続工程とこれを通じて製造されるセパレータの物性を悪化させることができるので、前記積層体を前記抽出溶媒の沸点以上の温度で適切に加熱し、前記積層体に残留する前記抽出溶媒を除去することができる。
【0050】
前記多層セパレータの製造方法は、前記(e)工程後に、(e’)前記積層体を熱固定する工程をさらに含んでもよい。前記熱固定は、前記積層体を固定させた状態で熱を加えて、収縮しようとする積層体を強制的に固定し、残留応力を除去する工程を意味する。熱固定温度が高いことが、収縮率を低減するのに有利であるが、当該温度が高すぎる場合、前記積層体が部分的に溶融し、形成された気孔が閉鎖し、透過度が低下することがある。
【0051】
熱固定温度は、前記積層体の結晶部分の10~30重量%が溶ける範囲で選択されることが好ましい。熱固定温度が前記範囲で選択されると、前記積層体内のポリオレフィン分子の再配列が不十分で、フィルムの残留応力除去効果がない問題と、部分的溶融によって気孔が閉鎖し、透過度が低下する問題とを防止することができる。例えば、熱固定温度は、120~140℃、好ましくは、123~135℃であってもよく、熱固定時間は、5秒~1分であってもよい。
【0052】
本発明の他の一態様は、前記製造方法で製造された多層セパレータにおいて、下記式により測定される最外層の厚さ偏差が10%以下、好ましくは、1~8.5%、3~6.5%である多層セパレータを提供する。
<式>
厚さ偏差(%)={(厚さの最大値)-(厚さの最小値)}/(厚さの最小値)×100
【0053】
従来、多層セパレータの製造方法は、延伸によって気孔構造が形成される前の工程で共押出によって層間ラミネートが行われる、すなわち、積層が行われ得るので、後続の延伸、抽出などの製膜工程で各層の構造的物性が不均一になる問題がある。具体的には、多層セパレータの最外層の領域別の厚さ偏差が大きくなるにつれて、多層セパレータ自体の機械的物性が不均一になることがあり、特に、多層セパレータを用いた電池の組立時に周辺領域に比べて厚さが顕著に薄い部位が容易に破損、破断するなどの問題がある。このような問題は、最近、電池の集積化、高容量化の傾向に対応するための薄膜型セパレータ(厚さが約15μm以下、好ましくは、約10μm以下)においてさらに目立つ。
【0054】
これに対し、前記多層セパレータは、縦方向(MD)に延伸して所定の気孔構造が形成された前記第1および第2前駆フィルムをラミネートして得た前記積層体を横方向(TD)に延伸した後、前記第1および第2気孔形成剤を抽出、除去する方法で製造されるので、前記多層セパレータを構成する各層の構造的物性を均一化し、機械的物性を安定的に確保すると同時に、前記多層セパレータを製造するのに必要な延伸機の数を最小化し、生産性と経済性を向上させることができる。
【0055】
図3は、本発明の一実施形態による多層セパレータの厚さ偏差を測定する方法を示す。図3を参照すると、前記最外層の厚さ偏差は、次の方法を通じて測定された各試験片の厚さと前記式を通じて算出することができる。上記式中、前記厚さ偏差は、前記多層セパレータを100mm×100mm(MD×TD)に裁断した後、縦方向(MD)に5等分し、20mm×100mm(MD×TD)のサイズを有する5個の試験片を得る工程;前記試験片の横方向(TD)の中央部で前記最外層の厚さを測定する工程;および前記厚さの最大値および最小値に基づいて前記式により厚さ偏差を算出する工程:を含む方法によって決定される。
【0056】
また、前記多層セパレータは、下記(i)~(vi)による条件のうち少なくとも1つ、好ましくは、全部を満たすことができる。
【0057】
(i)厚さ1~15μm、好ましくは、5~12μm、(ii)穿孔強度600gf以上、好ましくは、700~1,000gf、さらに好ましくは、750~900gf、(iii)縦方向(MD)引張強度1,300~2,000kgf/cm、好ましくは、1,400~1,800kgf/cm、(iv)横方向(TD)引張強度3,000~6,000kgf/cm、好ましくは、3,500~5,500kgf/cm、さらに好ましくは、4,000~5,400kgf/cm、(v)縦方向(MD)引張伸び150~450%、好ましくは、200~400%、さらに好ましくは、230~350%、および(vi)横方向(TD)引張伸び30~100%、好ましくは、40~90%。
以下、本発明の実施例に関して詳細に説明する。
【0058】
実施例1
重量平均分子量が600,000の高密度ポリエチレン(HDPE)28重量部、40℃での動粘度が70cStのパラフィンオイル72重量部を混合した第1組成物を2軸押出機(第1押出機、内径58mm、L/D=56)に投入した。スクリュー回転速度120rpm、210℃の条件で前記第1押出機から幅が400mmのT-ダイ(T-Die)で吐出させた後、温度が70℃のキャストロール(casting roll)を通過させて、厚さが800μmの第1シートを製造した。
【0059】
前記第1組成物と同じ第2組成物を前記第1押出機と同じ構成を有し、かつ並列配置された2軸押出機(第2押出機、内径58mm、L/D=56)に投入した。スクリュー回転速度120rpm、210℃の条件で前記第2押出機から幅が400mmのT-ダイ(T-Die)で吐出させた後、温度が70℃のキャストロール(casting roll)を通過させて、厚さが800μmの第2シートを製造した。
【0060】
前記第1および第2シートをそれぞれ互いに並列配置された第1および第2延伸機(ロール延伸機)に投入し、120℃で縦方向(MD)に8倍延伸して、第1および第2前駆フィルムを製造した。ここで、前記第1および第2延伸機は、それぞれ前記第1および第2押出機の後段に設けられた延伸機を意味する。
【0061】
前記第1および第2前駆フィルムを前記第1および第2延伸機の後段に設置されたラミネーターに投入し、前記第1および第2前駆フィルムが互いに面接してラミネートした積層体を得た。
【0062】
前記積層体を第3延伸機(テンター延伸機)に投入し、126℃で横方向(TD)に9倍延伸した後、25℃のジクロロメタン浸出タンクに1分間含浸し、パラフィンオイルを抽出、除去し、38℃で5分間乾燥した。前記積層体を138℃で横方向(TD)に1.5倍延伸した後、10%弛緩させて、熱固定して、セパレータを得た。
【0063】
実施例2
前記第2組成物のうち重量平均分子量が600,000の高密度ポリエチレン(HDPE)を重量平均分子量が1,000,000の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)に変更したことを除いて、前記実施例1と同じ方法でセパレータを製造した。
【0064】
実施例3
前記第2組成物が、ビニルアセテートの含有量が28重量%のエチレンビニルアセテート(EVA,HTC社)をさらに含み、前記第2組成物中の前記高密度ポリエチレン、エチレンビニルアセテートおよびパラフィンオイルの含有量(重量部)をそれぞれ30.4重量部、1.6重量部および68.0重量部に変更したことを除いて、前記実施例1と同じ方法でセパレータを製造した。
【0065】
実施例4
前記第2組成物のうち重量平均分子量が600,000の高密度ポリエチレン(HDPE)を重量平均分子量が1,000,000の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)に変更したことを除いて、前記実施例3と同じ方法でセパレータを製造した。
【0066】
実施例5
ラミネート時に前記積層体の全面に50kHzの超音波を印加し、前記積層体の界面を接合(融着)する過程を加えたことを除いて、前記実施例1と同じ方法でセパレータを製造した。
【0067】
実施例6
ラミネート時に前記積層体の全面に50kHzの超音波を印加し、前記積層体の界面を接合(融着)する過程を加えたことを除いて、前記実施例2と同じ方法でセパレータを製造した。
【0068】
実施例7
ラミネート時に前記積層体の全面に50kHzの超音波を印加し、前記積層体の界面を接合(融着)する過程を加えたことを除いて、前記実施例3と同じ方法でセパレータを製造した。
【0069】
実施例8
ラミネート時に前記積層体の全面に50kHzの超音波を印加し、前記積層体の界面を接合(融着)する過程を加えたことを除いて、前記実施例4と同じ方法でセパレータを製造した。
【0070】
比較例1
重量平均分子量が2,000,000の超高分子量ポリエチレン60重量%および重量平均分子量が560,000の高密度ポリエチレン40重量%を含む混合物25重量部と、40℃での動粘度が35cStのパラフィンオイル75重量部を2軸押出機(第1押出機、内径58mm、L/D=56)に投入し、スクリュー回転速度250rpm、230℃の条件で溶融混練して、第1ポリオレフィン溶液を製造した。
【0071】
重量平均分子量が560,000の高密度ポリエチレン50重量%および重量平均分子量が1,600,000のポリプロピレン50重量%を含む混合物30重量部と、40℃での動粘度が35cStのパラフィンオイル70重量部を前記第1押出機と同じ構成を有し、かつ並列配置された2軸押出機(第2押出機、内径58mm、L/D=56)に投入し、同一条件で溶融混練して、第2ポリオレフィン溶液を製造した。
【0072】
前記第1および第2ポリオレフィン溶液をそれぞれ前記第1および第2押出機から3層用T-ダイに供給し、第1/第2/第1ポリオレフィン溶液の層厚さの割合が35/30/35となるように押出した。押出成形体を37℃の冷却ロール(直径500mm)で引き取りながら冷却させて、ゲル状3層シートを製造した。前記ゲル状3層シートを114℃で5×5倍(MD×TD)に同時2軸延伸した後、25℃のジクロロメタン浸出タンクに5分間含浸し、パラフィンオイルを抽出、除去して、多孔膜を製造した。前記多孔膜をテンター延伸機に投入し、124℃で横方向(TD)に1.4倍再延伸した後、熱固定して、セパレータを製造した。
【0073】
比較例2
重量平均分子量(Mw)が350,000の高密度ポリエチレン29.5重量部、シラン変性高密度ポリエチレン0.5重量部、および40℃での動粘度が70cStのパラフィンオイル70重量部を混合し、2軸押出機(内径58mm、L/D=56)に投入した。架橋触媒であるジブチルスズラウレートを前記パラフィンオイル中の一部に事前に分散させ、前記2軸押出機を通過する物質の総重量を基準として0.5重量%となるように前記2軸押出機のサイドインジェクターを介して投入した。スクリュー回転速度40rpm、200℃の条件で前記2軸押出機から幅が300mmのT-ダイで吐出させた後、温度が40℃のキャストロールを通過させて、厚さが800μmのベースシートを製造した。
【0074】
前記ベースシートを110℃のロール延伸機で縦方向(MD)に6倍延伸し、125℃のテンター延伸機で横方向(TD)に7倍延伸して、フィルムを製造した。前記フィルムを25℃のジクロロメタン浸出タンクに含浸し、1分間パラフィンオイルを抽出、除去し、50℃で5分間乾燥して、多孔性フィルムを製造した。その後、テンター延伸機で、125℃で加熱した後、横方向(TD)に1.45倍延伸後に弛緩させて、延伸前に比べて1.25倍となるように熱固定させた。前記フィルムを85℃、湿度85%の恒温恒湿タンクで72時間架橋させて、セパレータを製造した。
【0075】
比較例3
重量平均分子量(Mw)が1,000,000の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)64重量%および重量平均分子量(Mw)が1,500,000の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)36重量%を含む混合物30重量部および40℃での動粘度が70cStのパラフィンオイル70重量部を混合し、2軸押出機(内径58mm,L/D=56)に投入した。スクリュー回転速度40rpm、200℃の条件で前記2軸押出機から幅が300mmのT-ダイ(T-Die)で吐出させた後、温度が40℃のキャストロール(casting roll)を通過させて、厚さが800μmのベースシートを製造した。
【0076】
前記ベースシートを110℃のロール延伸機で縦方向(MD)に6倍延伸し、125℃のテンター延伸機で横方向(TD)に7倍延伸し、フィルムを製造した。前記フィルムを25℃のジクロロメタン浸出タンクに1分間含浸し、パラフィンオイルを抽出、除去し、50℃で5分間乾燥し、多孔性フィルムを製造した。その後、テンター延伸機で、125℃で加熱した後、横方向(TD)に1.45倍延伸後に弛緩させて、延伸前に比べて1.25倍となるように熱固定して、セパレータを製造した。
【0077】
比較例4
重量平均分子量(Mw)が600,000の高密度ポリエチレン(HDPE)42重量%および重量平均分子量(Mw)が1,500,000の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)58重量%を含む混合物30重量部および40℃での動粘度が70cStのパラフィンオイル70重量部を混合し、2軸押出機(内径58mm、L/D=56)に投入したことを除いて、前記比較例3と同じ方法でセパレータを製造した。
【0078】
比較例5
重量平均分子量が1,000,000の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)90重量%、および重量平均分子量が380,000の高密度ポリエチレン(HDPE)10重量%を含む混合物100重量部を2軸押出機(第1押出機、内径58mm、L/D=42)に投入した。前記第1押出機のサイドインジェクターを介してパラフィンオイル250重量部を供給し、210℃および100rpmの条件で溶融混練して、第1ポリエチレン溶液を製造した。
【0079】
重量平均分子量が1,000,000の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)10重量%、および重量平均分子量が380,000の高密度ポリエチレン(HDPE)90重量%を含む混合物100重量部を2軸押出機(第2押出機、内径58mm,L/D=42)に投入した。前記第2押出機のサイドインジェクターを介してパラフィンオイル250重量部を供給し、210℃および100rpmの条件で溶融混練して、第2ポリエチレン溶液を製造した。
【0080】
前記第1および第2ポリエチレン溶液を押出機のマルチブロック(多層化装置)を通過させて、前記第1および第2ポリエチレン溶液を交互に積層した後、T-ダイを介して20層からなる多層構造を吐出させた。
【0081】
前記多層構造を40℃に調節された冷却ロールを通過させながら、厚さが1,100μmのゲル状のベースシートを製造した。前記ベースシートを124℃で8×8倍(MD×TD)に同時2軸延伸した後、25℃のジクロロメタン浸出タンクに10分間含浸し、パラフィンオイルを抽出、除去し、50℃で5分間乾燥して、多孔膜を製造した。前記多孔膜をテンター延伸機に投入し、125℃で横方向(TD)に1.4倍再延伸した後、熱固定して、セパレータを製造した。
【0082】
比較例6
図4による方法で次のようにセパレータを製造した。重量平均分子量が600,000の高密度ポリエチレン(HDPE)28重量部、40℃での動粘度が70cStのパラフィンオイル72重量部を混合した第1組成物を2軸押出機(第1押出機、内径58mm,L/D=56)に投入した。スクリュー回転速度120rpm、210℃の条件で前記第1押出機から幅が400mmのT-ダイ(T-Die)で吐出させた後、温度が70℃のキャストロール(casting roll)を通過させて、厚さが800μmの第1シートを製造した。
【0083】
前記第1組成物と同じ第2組成物を前記第1押出機と同じ構成を有し、かつ並列配置された2軸押出機(第2押出機、内径58mm、L/D=56)に投入した。スクリュー回転速度120rpm、210℃の条件で前記第2押出機から幅が400mmのT-ダイ(T-Die)で吐出させた後、温度が70℃のキャストロール(casting roll)を通過させて、厚さが800μmの第2シートを製造した。
【0084】
前記第1および第2シートを前記第1および第2押出機の後段に設置されたラミネーターに投入し、前記第1および第2シートが互いに面接してラミネートした積層体を得た。前記積層体を延伸機(ロール延伸機)に投入し、120℃で縦方向(MD)に8倍延伸し、前駆フィルムを製造した。前記前駆フィルムをテンター延伸機に投入し、126℃で横方向(TD)に9倍延伸した後、25℃のジクロロメタン浸出タンクに1分間含浸し、パラフィンオイルを抽出、除去し、38℃で5分間乾燥した。前記積層体を138℃で横方向(TD)に1.5倍延伸した後、10%弛緩させて熱固定して、セパレータを得た。
【0085】
実験例1
前記実施例および比較例で製造されたそれぞれのセパレータを100mm×100mmに裁断した後、裁断したセパレータ試験片を縦方向(MD)に5等分し、20mm×100mm(MD×TD)の試験片1~5を得た。
【0086】
SEMを用いて各試験片の断面を撮影し、これを通じて、各試験片の横方向(TD)の中央部で最外層の厚さ(μm)を測定し、これに基づいて下記式で定義される厚さ偏差を算出し、下記の表1に示した。
<式>
厚さ偏差(%)={(厚さの最大値)-(厚さの最小値)}/(厚さの最小値)×100
【0087】
実施例1~8および比較例6の場合、前記第1組成物由来の層を、比較例1および5の場合、前記第1ポリオレフィン溶液由来の層を、それぞれ前記最外層に選択し、前記比較例2~4によるセパレータは、単層構造を有するので、測定対象から除外した。
【0088】
【表1】
【0089】
実験例2
前記実施例および比較例で製造されたセパレータの厚さ、穿孔強度、引張強度および引張伸びを次のような方法で測定した。温度に対する別段の言及がない場合、常温(25℃)で測定し、その結果を下記表2に示した。
【0090】
-厚さ(μm):微細厚さ測定機を用いて支持体試験片の厚さを測定した。
-穿孔強度(gf):穿孔強度測定機を用いてサイズが100mm×50mmのセパレータ試験片に対してスティック(Stick)で力を加えて試料が穿孔するまで加えられた力を測定した。
【0091】
-引張強度(kgf/cm):引張強度試験機を用いてサイズが20mm×200mmのセパレータ試験片に対して縦方向(machine direction,MD)および横方向(transverse direction,TD)に破断が起こるまで加えられた応力を測定した。
【0092】
-引張伸び(%):引張強度試験機を用いてサイズが20mm×200mmのセパレータ試験片に対して縦方向(machine direction,MD)および横方向(transverse direction,TD)に破断が起こるまで試験片が伸びた割合を測定した。
【0093】
【表2】
【0094】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型と説明されている各構成要素は、分散して実施されることもでき、同様に、分散したものと説明されている構成要素も、結合した形態で実施されることもできる。
【0095】
本発明の範囲は、後述する請求範囲によって示され、請求範囲の意味および範囲そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解すべきである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】