(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】自閉症関連障害の処置のための液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/485 20060101AFI20250130BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250130BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20250130BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20250130BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20250130BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20250130BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20250130BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20250130BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20250130BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20250130BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20250130BHJP
【FI】
A61K31/485
A61P25/00
A61K9/10
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/46
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/10
A61K47/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543877
(86)(22)【出願日】2023-01-26
(85)【翻訳文提出日】2024-09-19
(86)【国際出願番号】 US2023011649
(87)【国際公開番号】W WO2023146983
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522113590
【氏名又は名称】アードバーク・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AARDVARK THERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】リー,ティエン-リー
(72)【発明者】
【氏名】ジェン,ジェンフアン
(72)【発明者】
【氏名】トゥ,ユー-シン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA94
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD09F
4C076DD38
4C076DD43T
4C076DD45R
4C076DD67T
4C076EE03A
4C076EE23F
4C076EE30
4C076EE32H
4C076EE33H
4C076EE36H
4C076EE38
4C076EE57H
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB23
4C086GA13
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA23
4C086MA52
4C086NA06
4C086NA12
4C086ZA02
(57)【要約】
樹脂中約1.0mg/ml~約10.0mg/mlのナルトレキソンを含む、液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン懸濁液製剤であって、投与されたナルトレキソン総用量の30%以下が、1時間以内に放出され、投与されたナルトレキソン総用量の60%以下が、2時間以内に放出される、製剤を開示する。具体的には、樹脂中約1.0mg/ml~約10.0mg/mlのナルトレキソンを含む液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン懸濁液製剤をティースプーン約1杯(約5ml)用いて、自閉症型障害の小児を処置するための方法であって、投与されたナルトレキソン総用量の30%以下が、1時間以内に放出され、投与されたナルトレキソン総用量の60%以下が、2時間以内に放出される、方法を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂中約1.0mg/ml~約10.0mg/mlのナルトレキソンを含む、液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン懸濁液製剤であって、投与されたナルトレキソン総用量の30%以下が、1時間以内に放出され、投与されたナルトレキソン総用量の60%以下が、2時間以内に放出される、製剤。
【請求項2】
(a)ナルトレキソンHClと、ポリスチレン、ポリスチレンとジビニルベンゼンのコポリマーからなる群より選択されるイオン交換樹脂とを含む、樹脂コア;(b)樹脂コアをコーティングして粒子を形成する材料であって、コーティング材料が、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒプロメロースフタレート(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;HPMCP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP);セルロースアセテートトリメリテート;ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート;アルギン酸ナトリウム;アルギン酸、シェラックおよびこれらの組合せからなる群より選択される、材料;および(c)粒子を懸濁するための水性で濃厚な風味と甘味のある液体を含む、請求項1に記載の液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン懸濁液製剤。
【請求項3】
イオン交換樹脂が、ポリスチレンである、請求項1に記載の液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン液体懸濁液製剤。
【請求項4】
樹脂コアをコーティングして粒子を形成する材料が、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート(CAP)からなる群より選択されるセルロースアセテートである、請求項1に記載の液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン液体懸濁液製剤。
【請求項5】
粒子を懸濁するための水性で濃厚な風味と甘味のある液体が、水、約300~約500g/Lのスクロース、約0.1~約0.3g/Lのクエン酸(無水)、約30~約55g/Lのデンプン、約150~約350g/Lのプロピレングリコール、約3~約5g/Lのパラベン、約2.0~約5.0のキサンタンガム、約0.5%~約2%のツイーン80を含む、請求項1に記載の液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン液体懸濁液製剤。
【請求項6】
樹脂中約1.0mg/ml~約10.0mg/mlのナルトレキソンを含む液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン懸濁液製剤をティースプーン約1杯(約5ml)用いて、自閉症型障害の小児を処置するための方法であって、投与されたナルトレキソン総用量の30%以下が、1時間以内に放出され、投与されたナルトレキソン総用量の60%以下が、2時間以内に放出される、方法。
【請求項7】
液状樹脂製剤が、(a)ナルトレキソンHClと、ポリスチレン、ポリスチレンとジビニルベンゼンのコポリマーからなる群より選択されるイオン交換樹脂とを含む、樹脂コア;(b)樹脂コアをコーティングして粒子を形成する材料であって、コーティング材料が、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒプロメロースフタレート(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;HPMCP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP);セルロースアセテートトリメリテート;ポリメタクリレート類(例えば、Eudragit(登録商標)Lシリーズ、Eudragit(登録商標)Sシリーズ、Eudragit(登録商標)FS、Kollicoat(登録商標)MAE 100P、Acryl-EZE(登録商標)93A、Acryl-EZE(登録商標)MP);ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC AS;Aqoat(登録商標));アルギン酸ナトリウム;アルギン酸、シェラックおよびこれらの組合せからなる群より選択される、材料;および(c)粒子を懸濁するための水性で濃厚な風味と甘味のある液体を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン懸濁液製剤をqAM(起床時)投与する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
樹脂中約1.0mg/ml~約10.0mg/mlのナルトレキソンを含む液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン懸濁液製剤をティースプーン約1杯(約5ml)用いて、稀な小児疾患であるシャーフ・ヤング症候群(SYS)またはボッシュ・ブーンストラ・シャーフ視神経委縮症候群(BBSOAS)の小児を処置するための方法であって、投与されたナルトレキソン総用量の30%以下が、1時間以内に放出され、投与されたナルトレキソン総用量の60%以下が、2時間以内に放出される、方法。
【請求項10】
液状樹脂製剤が、(a)ナルトレキソンHClと、ポリスチレン、ポリスチレンとジビニルベンゼンのコポリマーからなる群より選択されるイオン交換樹脂とを含む、樹脂コア;(b)樹脂コアをコーティングして粒子を形成する材料であって、コーティング材料が、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒプロメロースフタレート(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;HPMCP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP);セルロースアセテートトリメリテート;ポリメタクリレート類(例えば、Eudragit(登録商標)Lシリーズ、Eudragit(登録商標)Sシリーズ、Eudragit(登録商標)FS、Kollicoat(登録商標)MAE 100P、Acryl-EZE(登録商標)93A、Acryl-EZE(登録商標)MP);ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC AS;Aqoat(登録商標));アルギン酸ナトリウム;アルギン酸、シェラックおよびこれらの組合せからなる群より選択される、材料;および(c)粒子を懸濁するための水性で濃厚な風味と甘味のある液体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン懸濁液製剤をqAM(起床時)投与する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂中約1.0mg/mL~約10.0mg/mLのナルトレキソンを含む、液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン懸濁液製剤であって、投与された総用量の30%以下が、1時間以内に放出され、投与された総用量の60%以下が、2時間以内に放出される、製剤を提供する。具体的には、本開示は、樹脂中約1.0mg/ml~約10.0mg/mlのナルトレキソンを含む液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン懸濁液製剤をティースプーン約1杯(約5mL)用いて、自閉症型障害の小児を処置するための方法であって、投与された総用量の30%以下が、1時間以内に放出され、投与された総用量の60%以下が、2時間以内に放出される、方法を提供する。さらに具体的には、本開示は、投与されたナルトレキソン総用量の30%以下を1時間以内に放出し、投与されたナルトレキソン総用量の60%以下を2時間以内に放出するナルトレキソン製剤であって、(a)ナルトレキソンHClと、ポリスチレン、ポリスチレンとジビニルベンゼンのコポリマーからなる群より選択されるイオン交換樹脂とを含む、樹脂コア;(b)樹脂コアをコーティングして粒子を形成する材料であって、コーティング材料が、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒプロメロースフタレート(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;HPMCP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP);セルロースアセテートトリメリテート;ポリメタクリレート類(例えば、Eudragit(登録商標)Lシリーズ、Eudragit(登録商標)Sシリーズ、Eudragit(登録商標)FS、Kollicoat(登録商標)MAE 100P、Acryl-EZE(登録商標)93A、Acryl-EZE(登録商標)MP);ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC AS;Aqoat(登録商標));アルギン酸ナトリウム;アルギン酸、シェラックおよびこれらの組合せからなる群より選択される、材料;および(c)粒子を懸濁するための水性で濃厚な風味と甘味のある液体を含むナルトレキソン製剤を達成する、液状樹脂製剤を提供する。好ましくは、液状樹脂ナルトレキソン製剤をqAM(起床時)投与する。
【背景技術】
【0002】
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、米国で40人に1人の子供が罹患する一般的な小児の健康問題であり、社会的コミュニケーションおよび社会的交流の持続的な欠陥、ならびに行動、興味および活動の制限された反復的なパターンを特徴とする生物学的神経発達障害であり、症状は一般的に生後2年間に観察される(Ozonoff et al. 2008, Autism Res, 1: 320-8)。自閉症は、とりわけ社会的交流およびコミュニケーション能力の領域における脳の正常な発達を妨げる、複雑な発達障害である。典型的には、生後3年間に現れ、脳の機能に影響を及ぼす神経障害の結果である。典型的には、自閉症の子供および大人は、言語的および非言語的コミュニケーション、社会的交流および余暇または遊びの活動に困難を伴う。
【0003】
過去数十年にわたり、オピオイド過剰説を含む、ASDの病因に関する幅広い理論が提唱されてきた。この理論は、1979年にPankseppによって提唱され、自閉症は脳の過剰なオピオイド活動によって引き起こされる感情障害であるというものである(Panksepp, 1979, Trends in Neurosciences, 2: 174-77)。脳において、オピオイド活性は、オピオイド受容体を介した内因性オピオイドシグナル伝達の活性化に依存する。オピオイド受容体は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)の大きなファミリーに属し、μ、δ、κオピオイド受容体の3つのメンバーを含む(Pellissier et al. 2018, Br. J. Pharmacol., 175: 2750-69)。内因性オピオイドペプチドであるエンケファリン、エンドルフィンおよびダイノルフィンは、それぞれオピオイド受容体の活性化を促進する優先的リガンドである。オピオイド過剰理論の主な前提によれば、特にグルテンおよびカゼインを含む食物源に由来するオピオイド活性を有するペプチドは、異常な透過性の腸膜を通過して中枢神経系(CNS)に入る。このようなペプチドは、神経調節機能を発揮し、脳内のオピオイド受容体活性のバランスを損ない、過剰なおよび/または長期のオピオイド刺激を引き起こす。この理論は、社会行動に有害な影響を及ぼす(Shattock and Whiteley 2002, Expert Opin. Ther. Targets, 6: 175-83)。
【0004】
高用量のオピエートへの曝露は、長期的には社会行動に影響を及ぼし、漸増用量のモルヒネまたはヘロインに曝露されたマウスは、処置中止後最大7週間まで社会的交流の障害を示した(Pellissier et al. 2018, Br. J. Pharmacol., 175: 2750-69)。臨床所見としては、自閉症の小児群の脳脊髄液(CSF)中のエンドルフィン分画のレベル上昇と、末梢血単核細胞(PBMC)中のβエンドルフィンレベル上昇が研究で報告されている(Cazzullo et al. 1999, Eur. Neuropsychopharmacol., 9: 361-6; and Gillberg et al., 1985., Arch. Gen. Psychiatry, 42: 780-3)。家族的な関係の可能性を示す証拠も出てきている。Leboyerら(Leboyer et al. 1992, J. Autism Dev. Disord., 22: 309-19)は、自閉症児の母親の半数以上でβエンドルフィンタンパク質の免疫反応性のレベルが上昇していることを発見した。したがって、これらの所見に基づいて、ナルトレキソンのようなオピオイド拮抗薬は、ASDの処置に有益であると考えられる。
【0005】
小児の稀な疾患にシャフ・ヤン症候群(SYS)があり、これは、プラダー・ウィリー重要領域15q11-15q13に位置するMAGEL2の切断変異によって引き起こされる神経発達遺伝障害である。SYSは、人生の初期段階ではプラダー・ウィリー症候群(PWS)と臨床的に重複するが、小児期から思春期にかけて次第に異なるようになる。特徴としては、知的障害/発達遅延、自閉症が挙げられる。表現型の重症度の変動は、切断変異の特定の位置に依存する可能性がある。これらの症候群(すなわち、SYSおよびPWS)は、主に乳児期に、新生児筋緊張低下、摂食困難/発育不良、呼吸困難およびDD/ID(発達遅延/知的障害)を含む共通の特徴を共有する。しかしながら、症候群間の差異は出生前から始まり、発達を通じて増大する。SYSの最初期の顕著な特徴は、関節拘縮の存在であり、これはSYSでは頻繁に見られるが、PWS表現型では通常みられない。SYS患者は、PWS患者より、運動および言語の発達においてより著しい遅れを示し、より重度の知的障害を呈する傾向がある。SYSに対する処置はない。
【0006】
別の関連する稀な小児障害は、ボッシュ・ブーンストラ・シャーフ視神経委縮症候群(BBSOAS)である。これは、NR2F1遺伝子の病原性変異によって引き起こされる、極めて稀な(50例未満しか知られていない)常染色体優性障害である。特徴としては、発達遅延/中程度知的発達障害、視神経委縮および自閉症が挙げられる。BBSOASに対する処置はない。
【0007】
自閉症には治療法がなく、治療の選択肢が限られている。自閉症に関連する症状の処置に使用される薬物の例としては、うつ病、強迫性行動および不安症の処置に使用されているセロトニン再取り込み阻害薬(例えばクロミプラミン、フルボキサミンおよびフルオキセチン)が挙げられる。ADHDの小児の多動症の処置に使用されるリタリン、アデロールおよびデキセジンなどの刺激薬も使用されてきた。これらは集中力を高め、特に高機能自閉症児において衝動性および多動性を軽減し得る。残念ながら、有害な行動上の副作用がしばしば観察される。このような薬物には様々な副作用が伴う。
【0008】
ナルトレキソン(即放性)およびASD
1984年に最初に承認されて以来、経口の即放性ナルトレキソンの治療効果は、ASDを含む小児患者において臨床で試験されてきた。二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験において、年齢3.4~8.3歳(平均5.4歳)のASDの小児13名(男児12名、女児1名)が、1日1回、ナルトレキソン1.0mg/kgの即時放出経口投与またはプラセボをクロスオーバー方式で投与され、各処置フェーズの処置期間は12日間または14日間であった(Kolmen et al. 1995, J. Am. Acad. Child Adolesc. Psychiatry, 34: 223-31)。親の測定値(臨床全般印象(CGI)、コナーズ衝動性・多動性因子(IHF)および副作用SE・落ち着きのなさ)と教師のCGIの変化は、統計学的有意であった。23名のASD小児(3~7歳)を対象とした別の二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験において、すべての被験者が4週間、1日あたり20mgの即放性ナルトレキソンを投与され(男児1名は1日あたり40mgの調整した用量を投与された)、20名が最終分析を完了した(Willemsen-Swinkels et al., 1996, Biol. Psychiatry, 39: 1023-31)。ナルトレキソン処置は、教師による行動評価(異常行動チェックリスト(ABC)スコア)に大きな変化をもたらした。教師のCGI評価にも有意差が得られた。高用量の即時放出経口ナルトレキソン(0.5、1.0および2.0mg/kg)は、自閉症行動と視線回避を逆転させることが示されている(Lensing et al., Neuropsychobiology. 1995; 31: 16-23)。ASD患者のオピオイド緊張の減少は、処置反応と相関していた(Cazullo et al., Eur. Neuropsychopharmacol. 1999; 9: 361-6)。
【0009】
主な副作用としては、睡眠障害、不安、吐き気および頭痛が挙げられる。オピオイドまたはアルコールをまだ服用している人の場合、オピオイド離脱症状が起こり得る。肝不全の人への使用は推奨されない。妊娠中の使用が安全かどうかは不明である。これらの有害作用はオピオイド離脱症状に類似している。ナルトレキソンの発生率ごとの副作用は次のとおりである:
・10%超:睡眠障害、不安、神経過敏、腹痛/痙攣、悪心および/または嘔吐、活力減退、関節/筋肉の痛みおよび頭痛。
・10%未満:食欲不振、下痢、便秘、口渇、活力亢進、気分の落ち込み、イライラ、めまい、皮疹、遅精、勃起不全および悪寒。
【0010】
したがって、副作用を軽減するか、またはその影響を少なくするために、Cmaxピークを小さくするようにナルトレキソンの投与をより良好にする必要がある。
【0011】
ヒトでの薬物動態および代謝
ナルトレキソン即放錠(50mg)の臨床薬物動態プロファイルは知られており、REVIA(登録商標)添付文書およびNational Institute on Drug Abuse Research Monograph(NIDA Research Monograph 28, 1981)にまとめられている。ナルトレキソンは、経口でよく吸収され、著しい初回通過代謝を受け、経口バイオアベイラビリティは5~40%と推定される。ナルトレキソンの活性は、親化合物と6β-ナルトレキソール代謝物の両方によるものと考えられている。親薬物と代謝物は両方とも主に腎臓から排泄される(投与量の53%~79%)。未変化のナルトレキソンの尿中排泄量は、即放性製剤に基づく経口投与量の2%未満である。糞便排泄は、マイナーな排泄経路である。即放性経口ナルトレキソンおよび6-β-ナルトレキソールの平均消失半減期(t1/2)値は、それぞれ4時間および13時間である。ナルトレキソンおよび6-β-ナルトレキソールは、50~200mgの範囲でAUCおよびCmaxに関して用量比例しており、1日100mg用量以降は蓄積しない。
【0012】
ANDA#075434で報告されているデータによると、REVIA(登録商標)50mg錠を36名の健康な成人男性ボランティアに1回投与した後、REVIA(登録商標)およびその代謝物6-β-ナルトレキソールのCmaxは、それぞれ、7.3ng/mL(62.5%)および85.6ng/ml(33.4%)であり、AUC(0-inf)は、23.1ng・h/mL(55.1%)および717.3ng・h/mL(21.8%)であり、これは、6-β-ナルトレキソールの全身曝露は、ナルトレキソンと比較して10倍以上高いことを示唆している。ナルトレキソン即放錠の複数回投与PK(REVIA(登録商標)50mg錠を24名の健康な成人ボランティアに7日間1日1回投与(Mason et al. 2002, Neuropsychopharmacology, 27: 596-606))については、REVIA(登録商標)およびその代謝物6-β-ナルトレキソールのCmaxは、それぞれ、11.8±6.55ng/mLおよび96.1±21.05ng/mLであり、AUC(0-τ)は、38.6±16.53ng・h/mLおよび788±134.8ng・h/mLであった。したがって、経口投与後、ナルトレキソンは急速にほぼ完全に吸収され、投与量の約96%が消化管から吸収される。ナルトレキソンと6-β-ナルトレキソールの両方の血漿レベルのピークは、投与後1時間以内に生じる。ANDA#075434で報告されているデータによると、REVIA(登録商標)50mg錠を36名の健康な成人男性ボランティアに1回投与した後、ナルトレキソンのTmaxの平均Mean(CV%)は1.07時間(27.7%)、6-β-ナルトレキソールのTmaxの平均Mean(CV%)は1.05時間(27.9%)であった。
【0013】
プラセボ対照臨床試験において、1日1回50mgのナルトレキソンの処置は、プラセボと比較して、有意に多い副作用を生じ(1、5および8週間でそれぞれ、ボンフェローニ補正後p=0.003、p=0.049、およびp=0.004)、服薬コンプライアンスが低下し(無作為化処置期間の11週目の終了時にナルトレキソン対プラセボで約50%対70%)、早期処置中止率が高かった(Kranzler et al. Neuropsychopharmacology. 2000; 22(5):493-503)。さらに、ANDA#075434で報告されているデータは、50mg即放性錠剤のナルトレキソンのCmaxを含むPKパラメーターを提供する。
【0014】
理論に拘束されるものではないが、ナルトレキソンの有害作用は、全身曝露、特にCmaxが高いことに由来する可能性がある。ある研究では、アルコール依存症被験者における徐放性ナルトレキソン皮下注射製剤の耐性をテストした。徐放性製剤の注射後、ナルトレキソンの血漿濃度は、21日間平均1ng/mLを超えた(1~6ng/mLの範囲)が、これは、ナルトレキソン50mg即放錠を投与した場合の血漿Cmax濃度(11.8ng/mL)より低かった。このPKプロファイルの下で、徐放性製剤によって生じる有害作用の頻度はプラセボに比べて高かったが、統計的有意差はなかった。また、注射期間中に重篤な訴えは報告されなかった。すべての有害作用は自然に解消した(Kranzler et al. Alcohol Clin. Exp. Res. 1998; 22(5):1074-9)。
【0015】
したがって、ナルトレキソン処置の副作用を考慮すると、当該技術分野では、(1)自閉症の子供/患者に投与でき、かつ(2)ナルトレキソン処置に関連する副作用を軽減する、自閉症小児/患者のためのナルトレキソン製剤を提供することが必要とされている。本開示は、上記両方のニーズに対処するナルトレキソン製剤を提供する。したがって、ナルトレキソンの曝露プロファイルを減弱し、即時性ナルトレキソン製剤の経口投与に関連する望ましくない急性副作用を軽減する徐放性経口製剤が当該技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0016】
本開示は、ナルトレキソンの副作用を軽減するために、特に液体製剤で、新規かつ薬物動態が改善されたナルトレキソンの製剤をどのように利用して、特に様々な自閉症スペクトラム障害の症状を処置するために、小児に投与できるようにするかという問題に対処するものである。具体的には、本開示は、樹脂中約1.0mg/ml~約10.0mg/mlのナルトレキソンを含む、液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン懸濁液製剤であって、投与されたナルトレキソン総用量の30%以下が、1時間以内に放出され、投与されたナルトレキソン総用量の60%以下が、2時間以内に放出される、製剤を提供する。具体的には、本開示は、投与されたナルトレキソン総用量の30%以下を1時間以内に放出し、投与されたナルトレキソン総用量の60%以下を2時間以内に放出するナルトレキソン製剤であって、(a)ナルトレキソンHCl、およびポリスチレン、ポリスチレンとジビニルベンゼンのコポリマーからなる群より選択されるイオン交換樹脂を含む樹脂コア;キレート剤および造粒剤(b)セルロースアセテート含有ポリマーおよび可塑剤を含む樹脂コアをコーティングして粒子を形成する材料であって、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒプロメロースフタレート(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;HPMCP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP);セルロースアセテートトリメリテート;ポリメタクリレート類(例えば、Eudragit(登録商標)Lシリーズ、Eudragit(登録商標)Sシリーズ、Eudragit(登録商標)FS、Kollicoat(登録商標)MAE 100P、Acryl-EZE(登録商標)93A、Acryl-EZE(登録商標)MP);ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC AS;Aqoat(登録商標));アルギン酸ナトリウム;アルギン酸、シェラックおよびこれらの組合せからなる群より選択される、材料;(c)粒子を懸濁するための水性で濃厚な風味と甘味のある液体、および所望により(d)防腐剤を含むナルトレキソン製剤を達成する、液状樹脂製剤を提供する。
【0017】
本開示はさらに、樹脂中約1.0mg/ml~約10.0mg/mlのナルトレキソンを含む液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン懸濁液製剤をティースプーン約1杯(約5ml)用いて、自閉症型障害の小児を処置するための方法であって、投与されたナルトレキソン総用量の30%以下が、1時間以内に放出され、投与されたナルトレキソン総用量の60%以下が、2時間以内に放出される、方法を提供する。好ましくは、液状樹脂製剤は、(a)ナルトレキソンHClと、ポリスチレン、ポリスチレンとジビニルベンゼンのコポリマーからなる群より選択されるイオン交換樹脂とを含む、樹脂コア;(b)樹脂コアをコーティングして粒子を形成する材料であって、コーティング材料が、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒプロメロースフタレート(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;HPMCP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP);セルロースアセテートトリメリテート;ポリメタクリレート類(例えば、Eudragit(登録商標)Lシリーズ、Eudragit(登録商標)Sシリーズ、Eudragit(登録商標)FS、Kollicoat(登録商標)MAE 100P、Acryl-EZE(登録商標)93A、Acryl-EZE(登録商標)MP);ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC AS;Aqoat(登録商標));アルギン酸ナトリウム;アルギン酸、シェラックおよびこれらの組合せからなる群より選択される、材料;および(c)粒子を懸濁するための水性で濃厚な風味と甘味のある液体を含む。好ましくは、液状樹脂ナルトレキソン製剤をqAM(起床時)投与する。
【0018】
本開示はさらに、樹脂中約1.0mg/ml~約10.0mg/mlのナルトレキソンを含む液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン懸濁液製剤をティースプーン約1杯(約5ml)用いて、稀な小児疾患であるシャーフ・ヤング症候群(SYS)またはボッシュ・ブーンストラ・シャーフ視神経委縮症候群(BBSOAS)の小児を処置するための方法であって、投与されたナルトレキソン総用量の30%以下が、1時間以内に放出され、投与されたナルトレキソン総用量の60%以下が、2時間以内に放出される、方法を提供する。好ましくは、液状樹脂製剤は、(a)ナルトレキソンHClと、ポリスチレン、ポリスチレンとジビニルベンゼンのコポリマーからなる群より選択されるイオン交換樹脂とを含む、樹脂コア;(b)樹脂コアをコーティングして粒子を形成する材料であって、コーティング材料が、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒプロメロースフタレート(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;HPMCP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP);セルロースアセテートトリメリテート;ポリメタクリレート類(例えば、Eudragit(登録商標)Lシリーズ、Eudragit(登録商標)Sシリーズ、Eudragit(登録商標)FS、Kollicoat(登録商標)MAE 100P、Acryl-EZE(登録商標)93A、Acryl-EZE(登録商標)MP);ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC AS;Aqoat(登録商標));アルギン酸ナトリウム;アルギン酸、シェラックおよびこれらの組合せからなる群より選択される、材料;および(c)粒子を懸濁するための水性で濃厚な風味と甘味のある液体を含む。好ましくは、液状樹脂ナルトレキソン製剤をqAM(起床時)投与する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、ナルトレキソン(50mg)の即時放出(IR)および持続放出(ER)の放出速度を示し、ER製剤は本明細書の実施例1に記載されている。
【
図2】
図2は、ジェネリックANDA申請からのナルトレキソン即放性50mg錠のモデル化および観測された一次放出モデル薬物動態を示す。一次放出モデルを次のように計算した:dA/dt=-A*kr、A(0)=100%@t=0。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、ナルトレキソンおよび初回通過肝代謝物6-β-ナルトレキソールの単回投与経口IRおよび本開示のER製剤についての1日目の薬物動態曲線シミュレートを示す。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、ナルトレキソンおよび初回通過肝代謝物6-β-ナルトレキソールの経口IRおよび本開示のER製剤を1日1回投与した場合の10日目の薬物動態曲線シミュレートを示す。
【
図5】
図5は、即放性ナルトレキソンおよび本開示の徐放性液体経口懸濁液の薬物放出曲線を示す。
【
図6】
図6は、異なる粒子コーティングを有する3つの液体ナルトレキソン徐放性製剤の薬物放出プロファイルを示す。図中、CABは表3のセセルロースアセテートブチレートコーティング粒子製剤、CABおよびHPMCP(ヒプロメロースフタレート)は表6の製剤、EC(エチルセルロース)は表7の製剤である。EC製剤は、1時間以内に投与されたナルトレキソン総用量の25%以下、および2時間以内に投与されたナルトレキソン総用量の60%以下という本願基準を満たすと考えられる。
【
図7】
図7は、実施例8の表18および表19に記載の経口ナルトレキソンの薬部動態プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
薬物動態
自閉症スペクトラム障害の処置方法は、起床したらできるだけ早くqAM(1日1回朝)投与することである。ナルトレキソンの半減期は約4時間しかないが、主な代謝物である6-βナルトレキソールはオピオイド拮抗薬としても活性を有し、半減期は最大13時間である。qAM投与スケジュール、試験期間、および目標とする製剤特性には様々な理由がある:
1. 行動上の問題が最も重大な日中に薬物の効果がピークに達するように、朝に投与する。ただし、睡眠を妨げないように、就寝前に薬物の効果が弱まるようにする。
2. 現在承認されているナルトレキソン錠製剤は、15分で発現し、1時間で血漿濃度がピークに達する。したがって、本明細書で提供する現在の液状樹脂製剤および薬物動態モデルは、臨床試験において、本製剤が副作用(吐き気、痛覚過敏、めまい)を軽減するのに役立つことを示している。オピオイド作動薬は、血清曝露に対する「勾配」が最も急なときに多幸感と鎮痛に最大の効果を有し、すなわち、オピオイドの注射は、吸収が遅い経口投与した同用量相当量より劇的な効果を有する。同様に、ナルトレキソンは、曝露に対する「勾配」が急であり、最も副作用を誘発する。PKモデルが示すように、開示する液状樹脂製剤のナルトレキソン放出特性は、副作用を著しく軽減するためにより優れた勾配およびC
max特性を提供しながら、用量等価のIR(即放性)市販承認製剤と実質的に同じAUC(曲線下面積)を提供する。しかし、開示するER(徐放性)製剤は、より低いC
maxと、より小さい濃度/時間曲線の傾斜を示している(
図2および3)。このタイプの薬物プロファイルは、
図4の10日目のモデルに示されているように、処置に対して生じる可能性のある耐性を遅らせ、鈍らせる。
【0021】
本開示はさらに、イオン交換樹脂中に約1mg/ml~約10mg/mlを含み、徐放性ポリマーでコーティングされ、自閉症の症状のスペクトラムにわたる自閉症を有する小児にティースプーン1杯(約5ml)を投与するための液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン液体懸濁液製剤であって、ナルトレキソンが、コーティングしたナルトレキソン-アニオン交換樹脂の複合体内であり、樹脂複合体が、水不溶性ポリマーもしくはコポリマーまたは親水性ポリマーを有するマトリックス中であり、(a)医薬的に許容される水不溶性アニオン交換樹脂と結合して、ナルトレキソン-イオン交換樹脂のコーティング粒子を形成する、ナルトレキソンを含み;ナルトレキソンが、ナルトレキソン-イオン交換樹脂の複合体-マトリックスの約40重量%~約75重量%を構成する、液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン液体懸濁液製剤を提供する。好ましくは、イオン交換樹脂は、スチレンと、第四級アンモニウム官能基を含むジビニルベンゼンとを含む共重合体である。好ましくは、アニオン交換樹脂は、コレスチラミン樹脂である。好ましくは、放出制御バリアコーティングは、水透過性かつ水不溶性のポリマーおよび可塑剤を含む。より好ましくは、バリアコーティング中の水透過性かつ水不溶性のポリマーはポリビニルアセテートを含む。好ましくは、マトリックスは、ナルトレキソン-アニオン交換樹脂の複合体および親水性ポリマーを含む。より好ましくは、マトリックス中の親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドンを含む。好ましくは、マトリックスは、粒子状薬物-アニオン交換樹脂の複合体、ポリビニルピロリドンおよび界面活性剤を含む。
【0022】
本開示はさらに、実施例8で達成された薬物動態パラメーターに基づくコーティング顆粒の以下の実施態様を提供する:
【0023】
コーティングした薬物-イオン交換樹脂の複合体顆粒が、下記特徴a~e:
a)約5~約7時間、例えば約5時間、約6時間または約7時間のTmax;
b)約5~約12時間、例えば約5~約11時間;約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間または約11時間のT1/2;
c)約1.5~約4時間、例えば約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間または約4時間のCmax;
d)約26~約32hr・ng/mL、例えば約26、約27、約28、約29、約30、約31または約32hr・ng/mLのAUCt;および
e)約28~約35hr・ng/mL、例えば約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34または約35hr・ng/mLのAUC∞
の1つ以上を有する薬物動態プロファイルを提供する、コーティング顆粒1。
【0024】
コーティングした薬物-イオン交換樹脂の複合体顆粒が、特徴a~eの2つ以上、または特徴a~eの3つ以上、または特徴a~eの4つ以上、または特徴a~eの5つすべてを有する薬物動態プロファイルを有する、コーティング顆粒1.1。より具体的には、コーティングした薬物-イオン交換樹脂の複合体顆粒が、実施例8または
図7における製剤1または製剤2に実質的に従った薬物動態プロファイルを有する。あるいは、投与後2.5時間から投与後4時間までの時間にわたる患者の平均血漿ナルトレキソン濃度(ng/ml)が、少なくとも4%;または約4%~約20%;または約4%~約15%;または約4%~約12%、または約5%~約12%、または約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%または約12%増加する。
【0025】
投与後4時間から投与後6時間までの時間にわたる患者の平均血漿ナルトレキソン濃度(ng/ml)が、少なくとも約80%;または約80%~約120%;または約80%~約110%;または約85%~約105%、または約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、約101%、約102%、約103%、約104%または約105%増加する、先行コーティング顆粒のいずれか。
【0026】
投与後6時間から投与後8時間までの時間にわたる患者の平均血漿ナルトレキソン濃度(ng/ml)が、約40%以下;または約15%~約40%;または約20%~約35%;または約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%減少する、先行コーティング顆粒のいずれか。
【0027】
投与3時間後の患者の平均血漿ナルトレキソン濃度(Ct;ng/ml)と最大血漿ナルトレキソン濃度(Cmax;ng/ml)の比が、約0.4~約0.6;例えば、約0.4~約0.55、例えば約0.45~約0.5である、先行コーティング顆粒のいずれか。
【0028】
投与6時間後の患者の平均血漿ナルトレキソン濃度(Ct;ng/ml)と最大血漿ナルトレキソン濃度(Cmax;ng/ml)の比が、約0.8~約1.2;例えば、約0.9~約1.1、例えば約0.95~約1.05である、先行コーティング顆粒のいずれか。
【0029】
投与8時間後の患者の平均血漿ナルトレキソン濃度(Ct;ng/ml)と最大血漿ナルトレキソン濃度(Cmax;ng/ml)の比が、約0.5~約0.9;例えば、約0.6~約0.8、例えば約0.65~約0.8である、先行コーティング顆粒のいずれか。
【0030】
投与10時間後の患者の平均血漿ナルトレキソン濃度(Ct;ng/ml)と最大血漿ナルトレキソン濃度(Cmax;ng/ml)の比が、約0.4~約0.8;例えば、約0.5~約0.7である、先行コーティング顆粒のいずれか。
【0031】
投与12時間後の患者の平均血漿ナルトレキソン濃度(Ct;ng/ml)と最大血漿ナルトレキソン濃度(Cmax;ng/ml)の比が、約0.3~約0.7;例えば、約0.4~約0.6である、先行コーティング顆粒のいずれか。
【0032】
患者の平均血漿ナルトレキソン濃度(Ct;ng/ml)と最大血漿ナルトレキソン濃度(Cmax;ng/ml)の比が、下記a~e:
a)投与3時間後、約0.4~約0.6;例えば、約0.4~約0.55、例えば約0.45~約0.5;
b)投与6時間後、約0.8~約1.2;例えば、約0.9~約1.1、例えば約0.95~約1.05;
c)投与8時間後、約0.5~約0.9;例えば、約0.6~約0.8、例えば約0.65~約0.8;
d)投与10時間後、約0.4~約0.8;例えば、約0.5~約0.7;および
e)投与12時間後、約0.3~約0.7;例えば、約0.4~約0.6
の1つ以上である、先行コーティング顆粒のいずれか。
【0033】
あるいは、患者の平均血漿ナルトレキソン濃度(Ct;ng/ml)と最大血漿ナルトレキソン濃度(Cmax;ng/ml)の比が、
a)投与3時間後、約0.4~約0.6;例えば、約0.4~約0.55、例えば約0.45~約0.5;および
b)投与6時間後、約0.8~約1.2;例えば、約0.9~約1.1、例えば約0.95~約1.05
である。
【0034】
あるいは、患者の平均血漿ナルトレキソン濃度(Ct;ng/ml)と最大血漿ナルトレキソン濃度(Cmax;ng/ml)の比が、
b)投与6時間後、約0.8~約1.2;例えば、約0.9~約1.1、例えば約0.95~約1.05;および
c)投与8時間後、約0.5~約0.9;例えば、約0.6~約0.8、例えば約0.65~約0.8
である。
【0035】
あるいは、患者の平均血漿ナルトレキソン濃度(Ct;ng/ml)と最大血漿ナルトレキソン濃度(Cmax;ng/ml)の比が、
a)投与3時間後、約0.4~約0.6;例えば、約0.4~約0.55、例えば約0.45~約0.5;および
b)投与6時間後、約0.8~約1.2;例えば、約0.9~約1.1、例えば約0.95~約1.05;および
c)投与8時間後、約0.5~約0.9;例えば、約0.6~約0.8、例えば約0.65~約0.8;および
d)投与10時間後、約0.4~約0.8;例えば、約0.5~約0.7
である。
【0036】
好ましくは、イオン交換樹脂は、ポリスチレンポリマー、またはポリスチレンとジビニルベンゼンのコポリマー、またはポリスチレンが約8%のジビニルベンゼンと架橋したスルホン酸化ポリマーのマトリックスを含む。好ましくは、イオン交換樹脂は、約4.5~5.5meq/g乾燥樹脂のイオン交換容量を有する。ここで、コーティング顆粒中に存在するイオン交換樹脂対ナルトレキソンまたはその医薬的に許容される塩のw/w比は、約5:1~1:5、例えば約3:1~1:3、例えば約2:1~1:2、例えば約2:1である。
【0037】
好ましくは、セルロースアセテート含有ポリマーは、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートプロピオネート、およびこれらの組合せからなる群より選択される。より好ましくは、セルロースアセテート含有ポリマーは、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、およびこれらの組合せより選択される。最も好ましくは、セルロースアセテート含有ポリマーは、セルロースアセテートブチレートを含む。
【0038】
好ましくは、コーティングした薬物-イオン交換樹脂の複合体顆粒は、腸溶性ポリマーをさらに含み;腸溶性ポリマーは、フタレート含有ポリマー;セルロースアセテートトリメリテート;ポリメタクリレート類;ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC AS;Aqoat(登録商標));アルギン酸ナトリウム;アルギン酸;シェラックおよびこれらの組合せからなる群より選択される。
【0039】
好ましくは、コーティングした薬物-イオン交換樹脂の複合体顆粒は、付着防止剤をさらに含み;例えば、タルク、モノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸マグネシウムまたはカオリンであるが、これらに限定されない。
【0040】
好ましくは、コーティングした薬物-イオン交換樹脂の複合体顆粒は、ベンゾフェノン、ブチルフタリルブチルグリコレート、樟脳、α-クレシル-p-トルエンスルホネート、シクロヘキシル-p-トルエンスルホンアミド、フタル酸ジアミル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジブチル、酒石酸ジブチル、アジピン酸ジエトキシエチル、フタル酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジエチル、ジエチレングリコールプロピオネート、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、アジピン酸ジメトキシエチル、フタル酸ジメトキシエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジプロピル、安息香酸エチルベンゾイル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート、エチレングリコールプロピオネート、エチルフタリルエチルグリコレート、安息香酸メチルベンゾイル、メチルフタリルエチルグリコレート、o-またはp-トルエンエチルスルホンアミド、トリアセチン、クエン酸トリブチル、リン酸トリブチル、トリブチリン、リン酸トリクレシル、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジブチレート、トリエチレングリコールジプロピオネート、リン酸トリフェニル、トリプロピオニン、トリメリテート類(例えば、トリ-(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリ-(イソノニル)トリメリテート、トリ-(イソデシル)トリメリテート、トリ-(イソトリデシル)トリメリテート)、アジピン酸類(例えば、ビス(2-エチルヘキシル)アジピン酸)、セバシン酸類(例えば、セバシン酸ジブチル、ジ-(2-エチルヘキシル)セバシン酸)、グリセロールトリアセテート、クエン酸アルキル類(クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、トリ(2-エチルヘキシル)クエン酸、クエン酸アセチルトリオクチル、クエン酸トリヘキシル、クエン酸ブチリルトリヘキシル)、植物油、エポキシ化ダイズ油、エポキシ化リノール油、アゼライン酸類、ジ安息香酸類、テレフタル酸類、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、アルキルスルホン酸フェニルエステル、有機リン酸類(例えば、トリクレシル(メチルフェニル)ホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート)、グリコール類(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコールジ-2ヘキサノエート)トリアセチン、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、植物油、脂質類およびこれらの組合せより選択される造影剤をさらに含む。好ましくは、造粒剤は、ポリエチレングリコールである。
【0041】
好ましくは、コーティング中の可塑剤は、ベンゾフェノン、ブチルフタリルブチルグリコレート、樟脳、α-クレシル-p-トルエンスルホネート、シクロヘキシル-p-トルエンスルホンアミド、フタル酸ジアミル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジブチル、酒石酸ジブチル、アジピン酸ジエトキシエチル、フタル酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジエチル、ジエチレングリコールプロピオネート、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、アジピン酸ジメトキシエチル、フタル酸ジメトキシエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジプロピル、安息香酸エチルベンゾイル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート、エチレングリコールプロピオネート、エチルフタリルエチルグリコレート、安息香酸メチルベンゾイル、メチルフタリルエチルグリコレート、o-またはp-トルエンエチルスルホンアミド、トリアセチン、クエン酸トリブチル、リン酸トリブチル、トリブチリン、リン酸トリクレシル、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジブチレート、トリエチレングリコールジプロピオネート、リン酸トリフェニル、トリプロピオニン、トリメリテート類(例えば、トリ-(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリ-(イソノニル)トリメリテート、トリ-(イソデシル)トリメリテート、トリ-(イソトリデシル)トリメリテート)、アジピン酸類(例えば、ビス(2-エチルヘキシル)アジピン酸)、セバシン酸類(例えば、セバシン酸ジブチル、ジ-(2-エチルヘキシル)セバシン酸)、グリセロールトリアセテート、クエン酸アルキル類(クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、トリ(2-エチルヘキシル)クエン酸、クエン酸アセチルトリオクチル、クエン酸トリヘキシル、クエン酸ブチリルトリヘキシル)、植物油、エポキシ化ダイズ油、エポキシ化リノール油、アゼライン酸類、ジ安息香酸類、テレフタル酸類、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、アルキルスルホン酸フェニルエステル、有機リン酸類(例えば、トリクレシル(メチルフェニル)ホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート)、グリコール類(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコールジ-2ヘキサノエート)トリアセチン、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、植物油、脂質類およびこれらの組合せより選択される。好ましくは、可塑剤は、コーティング中の固体の約2.5~約25%w/w、または約5~約15%w/w、または約8~約12%w/w、または約10%w/wを構成する。
【0042】
ナルトレキソン粒子
粒子は、ポリマーコーティングで囲まれた樹脂コアを有するナコーティングしたナルトレキソン-イオン交換樹脂(薬物樹脂複合体)である。ナルトレキソン樹脂複合体は、ナルトレキソンHClと樹脂(例えばポリスチレンスルホン酸樹脂)を混合して、ナルトレキソンHCl(塩形態または遊離塩基形態)のプロトン化と、それに続く樹脂ポリマーとナルトレキソン間の結合(例えばイオン結合)を促進することによって形成される。この反応は、薬物が樹脂ポリマーに結合しなくなるまで、過剰の薬物で実施し得る。薬物樹脂複合体を、ろ過によって回収し、適切な溶媒で洗浄して、未結合薬物または副生成物を除去する。複合体を、トレイ、流動床乾燥機または他の適切な乾燥機で室温または高温にて空気乾燥し得る。
【0043】
様々な実施形態において、樹脂に負荷し得る薬物の量は、薬物イオン交換樹脂粒子の約1重量%~約75重量%の範囲である。いくつかの実施態様において、薬物イオン交換樹脂粒子の約10重量%~約40重量%、例えば約15重量%~約30重量%の薬物負荷が達成され得る。
【0044】
ポリマーコーティングは、セルロースアセテート含有ポリマーの組合せを単独または1つ以上の腸溶性ポリマーとの組合せで含む。本明細書で用いる用語「セルロースアセテート含有ポリマー」は、少なくとも1つのモノ-、ジ-またはトリ-アセチル化セルロース(すなわち、β(1→4)結合グルコース)モノマーを含むポリマーを意味する。セルロースアセテート含有ポリマーは、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートプロピオネート、およびこれらの組合せからなる群より選択される。好ましくは、セルロースアセテートポリマーは、セルロースアセテートまたはセルロースアセテートブチレートである。
【0045】
所望により、セルロースアセテートポリマーは、ナルトレキソン-イオン交換樹脂の複合体のより均一なコーティングを容易にする、および/またはバリアコーティングの引張強度を高めるために、フタレート含有ポリマーと混合され、ここで、フタレート含有ポリマーは、フタレート含有ポリマー;セルロースアセテートトリメリテート;ポリメタクリレート類;ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS;Aqoat(登録商標));アルギン酸ナトリウム;アルギン酸;シェラック、モノマーのジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジアリルフタレート、ジ-n-プロピルフタレート、ジ-n-ブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ブチルシクロヘキシルフタレート、ジ-n-ペンチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジ-n-ヘキシルフタレート、ジイソヘキシルフタレート、ジイソヘプチルフタレート、ブチルデシルフタレート、ジブトキシエチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジ(n-オクチル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、n-オクチルn-デシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジ(2-プロピルヘプチル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジイソウンデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジイソトリデシルフタレート、ポリエチレンテレフタレート、セルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、およびこれらの組合せからなる群より選択される。
【0046】
ポリマーコーティングは、コーティングされていないナルトレキソン-イオン交換樹脂の複合体顆粒の約1重量%~約30重量%、例えば、非コーティング薬物樹脂複合体の約3重量%~約25重量%、約10重量%~約20重量%または約15重量%を構成する。
【0047】
液状樹脂製剤
コーティングしたナルトレキソン-イオン交換樹脂粒子は、液体懸濁液などの完成した摂取可能な剤形に製剤化される。また、液体組成物に使用する場合、薬物-イオン交換樹脂の複合体のフィルム形成コーティングは、液体懸濁液に製剤化されるとき、子供が服用する医薬品に使用される着色剤の存在下で、液体中の懸濁粒子の望ましくない凝集および色移りを生じないことも観察されている。
【0048】
適切な香料としては、天然および人工香料の両方が挙げられ、ミント、例えばペパーミント、メントール、人工バニラ、シナモン、各種フルーツ香料(個別および混合の両方)、エッセンシャルオイル(すなわち、チモール、ユーカリプトール、メントールおよびメチルサリチル酸)などが企図される。使用される香料の量は、通常、香料の種類、個々の香料および望ましい強さなどの要因に応じて好みの問題になる。したがって、最終製品で望ましい結果を得るために、量は変化し得る。香料は、一般に、個々の香料に応じて変化する量で用いられ、例えば、最終組成物重量の体積当たり約0.01重量%~約3重量%の量の範囲であり得る。
【0049】
着色剤は、二酸化チタンなどの顔料を含み、これは約1重量/体積%まで、好ましくは約0.6重量/体積%までの量で組み込まれ得る。また、着色剤は、食品、医薬品、化粧品用途に適した染料を含み得て、これはD&CおよびFD&C染料として知られている。前記の使用範囲に許容される材料は、好ましくは水溶性である。具体例としては、FD&C Blue No.2として知られるインディゴイド染料が挙げられ、5,5'インジゴチンジスルホン酸の二ナトリウム塩である。同様に、FD&C Green No.1として知られる染料は、トリフェニルメタン染料を含み、4-[4-N-エチルp-スルホベンジルアミノ)ジフェニルメチレン]-[1-(N-エチル-N-p-スルホニウムベンジル)-2,5-シクロヘキサジエンイミン]の一ナトリウム塩である。すべてのFD&CおよびD&Cならびにそれらの対応する化学構造の完全な説明は、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, Volume 5, Pages 857-884(この内容は出典明示により本明細書に組み込まれる)で見つけられる。
【0050】
使用可能な適切な油および脂肪としては、部分的に水素化された植物性または動物性の脂肪、例えばココナッツ油、パーム核油、牛脂およびラードが挙げられる。これらの成分は、一般的に、食用製品に対して、最終製品の約7.0重量%まで、好ましくは約3.5重量%までの量で用いられる。
【0051】
疎水性成分の分散を促進するために、湿潤剤もまた使用し得る。組成物中の湿潤剤の濃度は、実現可能な最低濃度の湿潤剤で組成物内の成分の最適な分散を達成するように選択する必要がある。過剰濃度の湿潤剤は、懸濁液としての組成物を凝集させ得ることに留意する必要がある。適切な湿潤剤は、米国薬局方29に記載されている。
【0052】
ナルトレキソンHCl
ナルトレキソンHClは、ノロキシモルホンから様々な直接および間接アルキル化法により製造できる。1つの方法は、シクロプロピルメチルブロミドを用いたノロキシモルホンの直接アルキル化である。この製造方法は、WO91/05768(この開示は出典明示により本明細書に組み込まれる)に開示されている。WO2008/034973(この開示は出典明示により本明細書に組み込まれる)には、炭酸水素ナトリウムの存在下でジメチルアセトアミド中のシクロプロピルメチルブロミドを用いてノロキシモルホン塩酸塩を反応させることにより88.6%の収率でナルトレキソンを得る製造方法が記載されている。WO2008/138605(この開示は出典明示により本明細書に組み込まれる)には、炭酸水素ナトリウムの存在下でN-メチル-ピロリドン中のシクロプロピルメチルブロミドを用いてノロキシモルホンをN-アルキル化することが記載されている。WO2010/039209(この開示は出典明示により本明細書に組み込まれる)には、非プロトン性溶媒の存在下でシクロプロピルメチルブロミドを用いてノロキシモルホンをN-アルキル化することが記載されている。WO2010/039209の具体的には、非プロトン性溶媒として水、イソプロパノールまたはエタノールを添加することが記載されている。
【0053】
ナルトレキソンは、シクロプロピルメチルハロゲン化物を用いたアルキル化により、ノロキシモルホン[4,5-α-エポキシ-3,14-ジヒドロキシ-モルヒナン-6-オン]からナルトレキソン[17-(シクロプロピルメチル)-4,5α-エポキシ-3,14-ジヒドロキシ-モルヒナン-6-オン]を製造することにより合成され得る。ナルトレキソンは、様々な製造方法により製造でき、例えばWO91/05768、WO2008/034973、WO2008/138605、WO2010/039209、およびWO2010/039209(これら開示の各々は出典明示により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【実施例】
【0054】
実施例1
この実施例は、樹脂中約1.0mg/ml~約10.0mg/mlを含む、液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン懸濁液製剤を達成する液状樹脂ナルトレキソン製剤であって、投与された総用量の25%超を1時間以内に放出し、投与された総用量の60%以下が、2時間以内に放出される、液状樹脂ナルトレキソン製剤を提供する。具体的には、ナルトレキソン樹脂複合体を、表1に示す処方に従ってコーティングした。
【表1】
【0055】
精製水を容器に注ぎ、ナルトレキソンHClを加え、溶解するまで混合した。ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(Amberlite IRP69樹脂)をタンクに加えて混合した。得られた分散体をろ紙に通し、保持された薬物樹脂複合体を精製水で洗浄した。薬物樹脂複合体をオーブンに入れて、水分が10%未満になるまで乾燥した。
【0056】
表1の処方を用いて、下記表2に要約するナルトレキソン樹脂複合体顆粒を製造した。ポリエチレングリコールを精製水に加え、溶解するまで混合した。得られたPEG溶液を湿潤樹脂複合体上に噴霧し、高せん断造粒機を用いて造粒した。湿潤顆粒を、水分が15%~20%に達するまでオーブン中で乾燥した。部分的に乾燥した顆粒を、400μmメッシュスクリーンを備えたコミルを用いて、粉砕した。通過顆粒を、水分が7%未満に達するまで乾燥した。
【表2】
【0057】
得られた複合体をコーティングして、下記表3に要約する製剤を形成した。アセトンおよび精製水を容器に加え、よく混合した。ポリエチレングリコールを容器に加え、溶解するまで混合した。セルロースアセテートブチレートを加え、溶解するまで混合した。コーティング液を、表2のナルトレキソン樹脂複合体顆粒上に、流動層装置を用いて15%の重量増加を達成するまで噴霧した。
【表3】
【0058】
その後、得られた製剤を用いて、下記表4に要約するナルトレキソン徐放性懸濁液を製造した。精製水を含むメイン容器にスクロースを加え、溶解するまで混合し、続いて、クエン酸を加えることにより、プラセボベースを製造した。デンプンを容器中で分散させ、よく混合した。別の容器で、メチルパラベンおよびプロピルパラベンをプロピレングリコールに加え、完全に溶解するまで混合した。キサンタンガムを防腐剤溶液に加え、均一に分散するまでよく混合した。このガム分散液をメイン容器にゆっくり加え、よく混合した。ピロ亜硫酸ナトリウムおよびツイーン80をメイン容器に加え、溶解するまで混合した。精製水をメイン容器に加えて、最終容量を1.2Lにした。メイン容器に、コーティングしたナルトレキソン樹脂複合体を連続混合下で加えて、ナルトレキソンER懸濁液を形成した。
【表4】
【0059】
実施例2 インビトロでの薬物放出
コーティングしたナルトレキソン樹脂複合体を、実施例1に従って製造した。この実施例において、チェリーフレーバーおよびFD&C red 40を用いて、最終懸濁液を製造した。アスコルビン酸を、ピロ亜硫酸ナトリウムの代わりに抗酸化剤として用いた。
【表5】
【0060】
精製水をメイン容器に加え、続いて、スクロースおよび、溶解するまで混合した。クエン酸をメイン容器に加え、溶解するまで混合した。その後、デンプンを容器中で分散させ、よく混合した。別の容器で、メチルパラベンおよびプロピルパラベンをプロピレングリコールに加え、完全に溶解するまで混合した。キサンタンガムを防腐剤溶液に加え、均一に分散するまでよく混合した。キサンタンガム分散液をメイン容器にゆっくり加え、よく混合した。アスコルビン酸およびツイーン80をメイン容器に加え、溶解するまで混合した。精製水をメイン容器に加えて、最終懸濁液ベース容量を1.6Lにした。500mLの懸濁液ベースに、FD&C red番号40、チェリーフレーバーおよびコーティングしたナルトレキソン樹脂を連続混合下で加え、ナルトレキソンER懸濁液を形成した。ナルトレキソンER懸濁液を、インビトロでの薬物放出についてUSP装置II、0.4M KH
2PO
4、900mL、50rpm、37±0.5℃を用いて試験した。結果を
図5に要約する。
【0061】
実施例3 コーティングした薬物イオン交換粒子
ナルトレキソン樹脂複合体顆粒を、実施例1に従って製造した。この実施例において、セルロースアセテートブチレートおよびヒプロメロースフタレートを用いて、ナルトレキソン樹脂複合体顆粒をコーティングした。製剤を表6に従って製造した。
【表6】
【0062】
容器に、アセトンおよび精製水を加え、よく混合した。ポリエチレングリコールを容器に加え、溶解するまで混合した。セルロースアセテートブチレートを加え、溶解するまで混合した。その後、ヒプロメロースフタレートを加え、溶解するまで混合した。コーティング溶液を、ナルトレキソン樹脂複合体顆粒上に、流動床装置を用いて15w/w%の重量増加を達成するまで噴霧した。
【0063】
実施例4
ナルトレキソン樹脂複合体顆粒を、実施例1に従って製造した。この実施例において、エチルセルロース(EC)を用いて、ナルトレキソン樹脂複合体顆粒をコーティングした。製剤を表7に従って製造した。
【表7】
【0064】
容器に、アセトンおよび精製水を加え、よく混合した。Myvacet 9-45を加え、溶解するまで混合した。エチルセルロースを加え、溶解するまで混合した。合計1502gのコーティング溶液を、ナルトレキソン樹脂複合体顆粒上に、流動床装置を用いて15w/w%の重量増加を達成するまで噴霧した。
【0065】
実施例4に従って製造したコーティングしたナルトレキソン樹脂を、インビトロでの薬物放出についてUSP装置II、0.4M KH
2PO
4、900mL、50rpm、37±0.5℃を用いて試験した。結果を
図6に要約する。
【0066】
実施例5
表8に示す処方に従って、ナルトレキソン樹脂複合体を製造した。
【表8】
【0067】
精製水を容器に注ぎ、ナルトレキソンHClを加え、溶解するまで混合した。ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(Amberlite IRP69樹脂)をタンクに加えて混合した。得られた分散液からの上清をデカントし、続いて精製水で洗浄し、最後に分散液をフィルターハウジングを用いてろ過した。湿潤薬物樹脂複合体を、水分含量が約15%になるまで流動床プロセッサーを用いて乾燥した。
【0068】
表8の処方を用いて、下記表9に要約するナルトレキソン樹脂複合体顆粒を製造した。EDTAを精製水に加え、溶解するまで混合した。ポリエチレングリコールを容器に加え、溶解するまで混合した。得られたPEG溶液を湿潤樹脂複合体上に噴霧し、高せん断造粒機を用いて造粒した。湿潤顆粒を、水分が15%~20%に達するまで流動床プロセッサーを用いて乾燥した。部分的に乾燥した顆粒を、813μmメッシュスクリーンを備えたコミルを用いて、粉砕した。通過顆粒を、水分が7%未満に達するまで流動床プロセッサーを用いて乾燥した。
【表9】
【0069】
得られた複合体をコーティングして、下記表10に要約する製剤を形成した。アセトンおよび精製水を容器に加え、よく混合した。ポリエチレングリコールを容器に加え、溶解するまで混合した。セルロースアセテートブチレートを加え、溶解するまで混合した。コーティング溶液を、表9のナルトレキソン樹脂複合体顆粒上に、流動床プロセッサーを用いて15w/w%の重量増加を達成するまで噴霧した。
【表10】
【0070】
得られたコーティングしたナルトレキソン樹脂を用いて、下記表11に要約するナルトレキソン徐放性懸濁液を製造した。グリセリンを容器に加えることにより、懸濁液を製造し、45~60℃に加熱した。メチルパラベンおよびプロピルパラベンを容器に加え、溶解するまで混合した。キサンタンガムを防腐剤溶液に加え、均一に分散するまで混合した(ガム分散液)。精製水、スクロース、EDTAおよびクエン酸を含むメイン容器に加え、溶解するまで混合した。デンプンをメイン容器に加え、および、均一に分散するまで混合した。ガム分散液をメイン容器にゆっくり加え、よく混合した。ツイーン80、着色剤および香料をメイン容器に加え、よく混合した。コーティングしたナルトレキソン樹脂をメイン容器に加え、精製水を加えて、最終懸濁液用量を1.6Lにした。
【表11】
【0071】
実施例6
コーティングしたナルトレキソン樹脂を、実施例5に従って製造した。ナルトレキソン徐放性懸濁液を、下記表12に要約するとおり製造した。グリセリンを容器に加えることにより、懸濁液を製造し、45~55℃に加熱した。メチルパラベンおよびプロピルパラベンを容器に加え、溶解するまで混合した。キサンタンガムを防腐剤溶液に加え、均一に分散するまで混合した(ガム分散液)。精製水、EDTAおよびクエン酸を含むメイン容器に加え、溶解するまで混合した。ツイーン80を加え、よく混合した。デンプンおよびスクロースを一緒にメイン容器に加え、均一に分散するまで混合した。ガム分散液を連続混合下でメイン容器にゆっくり加えた。着色剤および香料をメインに加え、よく混合した。コーティングしたナルトレキソン樹脂をメイン容器に加え、精製水を加えて、最終懸濁液用量を1.6Lにした。
【表12】
【0072】
実施例7
この実施例は、コーティングされていない樹脂懸濁液と溶液中のナルトレキソンである即放性ナルトレキソンの(IR、急勾配の青線)経時的な薬物放出プロファイルを提供し、実施例1に記載の徐放性製剤を「コーティングした樹脂複合体」と呼び、赤線である。
図5は、2つの製剤間の放出速度の比較を示す。
【0073】
実施例8
ナルトレキソン樹脂複合体を、表13に示す処方に従って製造した。
【表13】
【0074】
精製水を容器に注ぎ、ナルトレキソンHClを加え、溶解するまで混合した。ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(Amberlite IRP69樹脂)をタンクに加えて混合した。得られた分散液からの上清をデカントし、続いて精製水で洗浄し、最後に分散液をフィルターハウジングを用いてろ過した。湿潤薬物樹脂複合体を、水分含量が約15%になるまで流動床プロセッサーを用いて乾燥した。
【0075】
表13の処方を用いて、下記表14に要約するナルトレキソン樹脂複合体顆粒を製造した。EDTAを精製水に加え、溶解するまで混合した。ポリエチレングリコール(PEG)を容器に加え、溶解するまで混合した。PEG溶液を湿潤樹脂複合体上に噴霧し、高せん断造粒機を用いて造粒した。湿潤顆粒を、水分が15%~20%に達するまで流動床プロセッサーを用いて乾燥した。部分的に乾燥した顆粒を、#20メッシュスクリーンに通し、水分が7%未満に達するまで流動床乾燥機を用いて乾燥した。部分的に乾燥した顆粒を、813μmメッシュスクリーンを備えたコミルを用いて、粉砕した。これらの乾燥顆粒を、813μmメッシュスクリーンを備えたコミルを用いて、粉砕した。
【表14】
【0076】
得られた複合体を、表15に示すコーティング組成物を用いて、様々に重量を増やすためにコーティングした。アセトンおよび精製水を容器に加え、よく混合した。ポリエチレングリコールを容器に加え、溶解するまで混合した。セルロースアセテートブチレートを加え、溶解するまで混合した。コーティング溶液を、表14のナルトレキソン樹脂複合体顆粒上に、流動床プロセッサーを用いて15%w/wおよび20%w/wのコーティング重量増加を達成するまで噴霧した。
【表15】
【0077】
得られたコーティングしたナルトレキソン樹脂を用いて、下記表16に要約するナルトレキソン徐放性懸濁液を製造した。精製水、ツイーン80、没食子酸プロピル、安息香酸ナトリウム、EDTAおよび無水クエン酸を含むメイン容器に加え、溶解するまで混合した。キサンタンガム、デンプンおよびスクロースを一緒に混合し、メインタンクに加え、均一に分散するまで混合した。着色剤溶液をメインタンクに混合しながら加えた。コーティングしたナルトレキソン樹脂および香料をメイン容器に加え、精製水を加えて、最終懸濁液容量を4Lにした。
【表16】
【0078】
表16の製剤1と製剤2を比較する臨床薬物動態試験を実施した。この試験は、絶食状態の健康な成人(n=18)における非盲検単回投与無作為化3期間3処置3系列クロスオーバー比較バイオアベイラビリティ試験であった。
処置A - 製剤1:5mg/mL経口懸濁液10mL(総投与量=ナルトレキソンHCl 50mg)を、少なくとも10時間の一晩絶食後に投与した。
処置B - 製剤2:5mg/mL経口懸濁液10mL(総投与量=ナルトレキソンHCl 50mg)を、少なくとも10時間の一晩絶食後に投与した。
処置C - 参照製剤:ナルトレキソンHCl 50mg錠(MallinckrodtTM、SpecGx LLC):50mg錠1つを、少なくとも10時間の一晩絶食後に投与した。
【0079】
ナルトレキソンおよびその活性代謝物(6-β-ナルトレキソール)の両方を分析した。
【0080】
ナルトレキソンおよび6-β-ナルトレキソールについて得られたAUC
t、AUC
∞、C
max、T
maxおよびT
1/2値を表17に示す:
【表17】
【0081】
平均血漿ナルトレキソンおよび平均血漿6-β-ナルトレキソール濃度をそれぞれ表18および表19に示す:
【表18】
【表19】
【0082】
ナルトレキソン製剤1および2ならびに市販製剤(ナルトレキソンHCl 50mg錠;Mallinckrodt
TM、SpecGx LLC)の薬物動態プロファイルを
図8に示す。結果は、全体として、開示の製剤は市販の即放性製剤と比較して良好なバイオアベイラビリティ(約50%高いバイオアベイラビリティ)を示すことを示している。ナルトレキソンについては、製剤1ではC
maxが約65%減少し、製剤2ではC
maxが約75%減少した。これは、即放性製剤の血漿濃度の急激な上昇によって引き起こされる副作用を著しく軽減する。
【0083】
Tmaxは、参照中間放出(IR)錠剤の1時間未満から、製剤1と2の両方で約6時間に遅延し、これは試験製剤の徐放性特性を示している。製剤1および2の有効性の持続時間は、血漿濃度の上昇と下降が遅いため、即放性参照製剤と比較して長くなった。製剤1および2は、経口摂取後約16時間、血漿濃度を0.75ng/mL超に維持するが、参照製剤の場合は約6時間のみである。
【0084】
6-β-ナルトレキソールについては、製剤1ではCmaxが約66%減少し、製剤2ではCmaxが約77%減少した。これは、即放性製剤の血漿濃度の急激な上昇によって引き起こされる副作用を著しく軽減する。ナルトレキソンの血漿プロファイルのパターンと同様に、製剤1および2由来の活性代謝物である6-β-ナルトレキソールは、参照製剤と比較してCmaxが低く、Tmaxが長くなった。しかしながら、製剤1および2ならびに参照製剤では同等のバイオアベイラビリティが観察された。
【0085】
6-β-ナルトレキソールの生物学的半減期は、製剤1および2と参照製剤間で同等である。徐放性製剤1および2の血漿プロファイルは、経口摂取後10時間以降は参照製剤よりも高い濃度を示す。
【0086】
実施例9(予言的)
この実施例は、液状樹脂徐放性経口ナルトレキソン製剤が自閉症スペクトラム障害(ASD)の小児において試験する臨床プロトコルを提供する。薬物製剤は、ナルトレキソンHClの徐放性経口懸濁液製剤である。活性成分であるナルトレキソンを、カチオン交換樹脂であるポリスチレンスルホン酸ナトリウム(DuPontTM AmberliteTM IRP69)と複合体化して、ナルトレキソン樹脂複合体を形成する。薬物樹脂複合体をさらに造粒し、続いて徐放性ポリマー(ポリエチレングリコール)でコーティングする。22.6mg/5mLまたは11.3mg/5mLの用量強度(5mg/mLまたは2.5mg/mLナルトレキソンHClに相当)を提供するように、コーティングしたナルトレキソン樹脂粒子を懸濁液ベースに分散させることにより、最終懸濁液を製造した。最終懸濁液を、24mmの白色のチャイルドレジスタントクロージャー(CRC)が付いた8オンス(240mL)の高密度ポリエチレン(HDPE)ボトルに包装した。プラセボの組成は、25mg/5mLの懸濁液と質的に同じであるが、活性医薬成分であるナルトレキソンHClを含まない。
【0087】
主要評価項目:
1. Social Responsiveness Scale(SRS)によって定義されるASD症状の重症度が軽減した参加者の数。
2. ベースラインからのSocial Responsiveness Scale(SRS)スコアの30%以上の減少と提示されるASD症状の重症度が軽減した参加者の数。
SRSは、自然な環境で発生する自閉症スペクトラム症状の重症度を測定するために、情報提供者が記入する65項目の評価尺度である。
【0088】
副次評価項目:
1. NIMH Clinical Global Impression for Pervasive Developmental Disorders(CGI-PDD)改善スコアによって定義されるASD症状の重症度が軽減した参加者の数。
2. NIMH Clinical Global Impression(CGI)Pervasive Developmental Disorder(PDD)改善スコアが2以下と定義されるASD症状の重症度が軽減した参加者の数。
CGI改善は、臨床医が評価する改善の尺度である。PDDのスコアの範囲は1(極めて改善)から7(極めて悪化)である。
【0089】
組入れ
・12歳超の男性および女性の外来患者。
・Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 5th Edition(DSM-5)基準を用いたゴールドスタンダード臨床面接とAutism Diagnostic Observation Schedule-2、Module 3または4の実施によって確認されるASDの診断確定。
・被験者および/またはその法定代理人は、治験責任医師および試験コーディネーターと知的にコミュニケーションをとり、プロトコルで要求されるすべての試験および検査に協力するのに十分な理解力を有しなければならない。
・被験者および/またはその法定代理人は、信頼できる報告者であるとみなされなければならない。
・各被験者および/またはその委任法定代理人は、試験の性質を理解しなければならない。被験者および/またはその法定代理人は、インフォームドコンセント文書に署名しなければならない。
・被験者は、必須の採血に参加できなければならない。
・被験者は、計量した液体製剤を飲むことができなければならない。
・気分障害、不安障害または破壊的行動障害のある被験者は、除外基準を満たさない限り、試験への参加が認められる。
【0090】
除外
・IQ<85。
・ナルトレキソンに対するアレルギーまたは過敏症。
・言葉が全く話せない。
・治験責任医師による、関連する胃食道逆流疾患。
・臨床的に不安定な精神状態にある、または深刻な自殺の危険性があると判断される。
・現在、精神病性障害または不安定双極性障害と診断。
・最近または現在(過去30日間)、処置を必要とする臨床的に重大なうつ病または不安障害の病歴。
・現在、統合失調症と診断。
・過去3か月以内に、物質使用歴(ニコチンまたはカフェインを除く)。
・肝臓、腎臓、消化器、呼吸器、心血管(虚血性心疾患を含む)、内分泌、神経、免疫または血液疾患を含む、重篤で安定または不安定な全身疾患。
・重度の肝機能障害(LFTがULNの3倍を超える)のある被験者、および重度の腎機能障害(eGFR<30)のある被験者。
・未処置の甲状腺機能低下症または甲状腺機能亢進症。
・未処置および/または不安定な糖尿病の患者。
・原因が明確なく、解決していない非熱性発作。
・妊娠中または授乳中の女性。
・重度のアレルギーまたは複数の薬物有害反応。
・医師が決定した適切な用量での処置後の、メマンチンに不反応または不耐性の病歴。
・治験責任医師、およびその配偶者、親、子、祖父母または孫と定義される治験責任医師の近親。
【0091】
主要評価項目:
1. 不適応行動の変化
Aberrant Behavior Checklist(ABC)で測定される不適応行動の頻度および強度の変化を示す。このチェックリストは、行動に関する20の質問で構成されており、報告される合計スコアは0から60の段階である。より低いスコアは、望ましくない行動の頻度が少ないおよび/または強度が低いと解釈できる。以下の値は、ベースラインから8週間までのABCスコアの差である。負の差は、行動の改善を示す。
2. 主要安全性評価項目
重篤な有害事象の数
【0092】
副次評価項目:
1. 攻撃的行動の変化
Overt Aggression Scale(OAS)で測定される攻撃的行動の減少傾向を示す。これは0から40までのスケールで構成されており、より低いスコアは、望ましくない行動の頻度が少ないおよび/または強度が低いと解釈できる。ベースラインから8週間までのスコアの平均差が報告される。正のスコアはより攻撃的な行動を示し、負のスコアはより攻撃的でない行動を示す。
【国際調査報告】