(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】アノード活物質と集電体との間に導電層を含むアノード、およびそのようなアノードを組み込んだ電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20250130BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20250130BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20250130BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20250130BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20250130BHJP
H01M 4/74 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/66 A
H01M4/70 A
H01M4/74 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544426
(86)(22)【出願日】2023-01-25
(85)【翻訳文提出日】2024-09-20
(86)【国際出願番号】 IB2023050642
(87)【国際公開番号】W WO2023144729
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521500812
【氏名又は名称】エスイーエス ホールディングス ピーティーイー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SES Holdings Pte. Ltd.
【住所又は居所原語表記】1 Robinson Road,18-00 AIA Tower,Singapore,Singapore 048542
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】アルンクマル ティルバンナマライ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンギュ ソン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ローク
(72)【発明者】
【氏名】ジャクリン ホン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017CC05
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE06
5H017EE09
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5H017HH03
5H050AA19
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
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5H050CA12
5H050CA20
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA02
5H050EA08
5H050EA23
5H050FA02
5H050FA17
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA08
(57)【要約】
【解決手段】 金属箔を集電体に積層し、前記金属箔から構成され、インターパッチ領域によって互いに間隔を空けてアノード活物質パッチを作製することによって、電気化学デバイス用アノードを形成する方法であって、各インターパッチ領域は、完成したアノードの1つ以上の電気タブを形成するための場所を提供する。この方法は、前記金属箔を前記集電体に積層する前に、導電性コーティングパッチを集電体に塗布することをさらに含むことができ、各導電性コーティングパッチは、アノード活物質パッチの1つに対応する。いくつかの実施形態において、導電性コーティングパッチは、アノード活物質パッチの形成を補助することができ、および/または、それを用いて作製されたアノードを使用して作製された電気化学デバイスのサイクル性能を向上させることができる。アノード活物質を含むアノードと集電体に塗布される導電性コーティングも開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みおよび活性領域を有し、前記活性領域が、前記厚みを挟んで対向する第1および第2の面を有する集電体と、
前記活性領域の前記第1の面において前記集電体に固定される第1のアノード活性金属層と、
ポリアクリル酸を含み、前記集電体と前記第1のアノード活性金属層との間に位置し、前記第1のアノード活性金属層を前記集電体に固定する第1の導電層と
を含む、電気化学デバイス用アノード。
【請求項2】
前記第1の導電層は、導電性粒子をさらに含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項3】
前記導電性粒子は、導電性炭素粒子を含む、請求項2に記載のアノード。
【請求項4】
前記導電性粒子は、導電性金属粒子をさらに含む、請求項3に記載のアノード。
【請求項5】
前記導電性粒子は、導電性金属粒子を含む、請求項2に記載のアノード。
【請求項6】
前記ポリアクリル酸は、前記第1の導電層内で前記導電性粒子を結着する、請求項2に記載のアノード。
【請求項7】
前記導電性粒子は、前記第1の導電層の約50重量%から約90重量%の量で存在する、請求項2に記載のアノード。
【請求項8】
前記導電性粒子は、前記第1の導電層の約60重量%から約90重量%の量で存在する、請求項2に記載のアノード。
【請求項9】
前記第1のアノード活性金属層は、第1の金属箔を含み、前記第1の導電層は、前記第1の金属箔を前記集電体に固定する、請求項1に記載のアノード。
【請求項10】
前記第1の導電層は、本質的に、導電性粒子と、前記ポリアクリル酸を含み、前記第1の導電層中の前記導電性粒子を結着するバインダーとからなる、請求項1に記載のアノード。
【請求項11】
前記バインダーは、ポリアクリル酸からなる、請求項10に記載のアノード。
【請求項12】
前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム、およびこれらの混合物からなる群から選択される物質をさらに含む、請求項10に記載のアノード。
【請求項13】
前記導電層は、約0.1μmから約5μmの範囲内の厚みを有する、請求項1に記載のアノード。
【請求項14】
前記第1の導電層は、約0.5μmから約2μmの範囲内の厚みを有する、請求項1に記載のアノード。
【請求項15】
前記第1の導電層は、約1μmの厚みを有する、請求項1に記載のアノード。
【請求項16】
前記第1の導電層は、約0.1g/m
2から約2g/m
2の面積重量で存在する、請求項1に記載のアノード。
【請求項17】
前記集電体は、銅を含み、前記第1のアノード活性金属層はリチウムを含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項18】
前記集電体は、約4μmから約10μmの範囲内の厚みを有し、
前記第1の金属箔は、約15μmから約25μmの範囲内の厚みを有する、請求項17に記載のアノード。
【請求項19】
前記第1の導電層は、本質的に、導電性炭素粒子と、前記ポリアクリル酸を含み、前記第1の導電層中で前記導電性炭素粒子を結着するバインダーとからなる、請求項17に記載のアノード。
【請求項20】
前記導電性炭素粒子は、前記導電性炭素層の約50重量%から約90重量%の量で存在する、請求項19に記載のアノード。
【請求項21】
前記第1の導電層は、約0.1μmから約5μmの範囲内の厚みを有する、請求項17に記載のアノード。
【請求項22】
前記第1の導電層は、約0.5μmから約2μmの範囲内の厚みを有する、請求項17に記載のアノード。
【請求項23】
前記第1の導電層は、約1μmの厚みを有する、請求項17に記載のアノード。
【請求項24】
前記第1の導電層は、約0.1g/m
2から約2g/m
2の面積重量で存在する、請求項17に記載のアノード。
【請求項25】
前記活性領域の前記第2の面において前記集電体に固定された第2のアノード活性金属層と、
前記集電体と前記第2のアノード活性金属層との間に位置し、前記第2のアノード活性金属層を前記集電体に固定する第2の導電層と
をさらに含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項26】
前記第2のアノード活性金属層は、第2の金属箔を含む、請求項25に記載のアノード。
【請求項27】
前記第2の導電層が、請求項1から23のいずれか1項に記載の前記第1の導電層と同一である、請求項25に記載のアノード。
【請求項28】
前記第1のアノード活性金属層は、少なくとも20mmの幅と、少なくとも120mmの長さとを有するリチウム箔を含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項29】
前記集電体は、銅を含む、請求項28に記載のアノード。
【請求項30】
前記集電体は、固体金属箔を含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項31】
前記集電体は、穿孔された金属箔を含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項32】
前記集電体は、金属メッシュを含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項33】
前記集電体は、約4μmから約10μmの範囲内の厚みを有する、請求項1に記載のアノード。
【請求項34】
カソードと、電解質と、請求項1から33のいずれか1項に記載のアノードとを含む、電気化学デバイス。
【請求項35】
厚みおよび活性領域を有し、前記活性領域が、前記厚みを挟んで対向する第1および第2の面を有する集電体と、
前記活性領域の前記第1の面において前記集電体に固定される第1のアノード活性金属層と、
前記集電体と前記第1のアノード活性金属層との間に位置する第1の導電層であって、前記第1の導電層中で約50重量%から約90重量%の範囲内の量で存在する導電性材料と、前記第1の導電層中で前記導電性材料を結着するバインダーとを含み、前記第1のアノード活性金属層を前記集電体に固定する第1の導電層と
を含む、電気化学デバイス用アノード。
【請求項36】
前記導電性材料は、約60重量%から約90重量%の範囲内の量で前記第1の導電性層中に存在する、請求項35に記載のアノード。
【請求項37】
前記導電性材料は、導電性粒子を含む、請求項35に記載のアノード。
【請求項38】
前記導電性粒子は、導電性炭素粒子を含む、請求項37に記載のアノード。
【請求項39】
前記導電性粒子は、導電性金属粒子をさらに含む、請求項38に記載のアノード。
【請求項40】
前記導電性粒子は、導電性金属粒子を含む、請求項37に記載のアノード。
【請求項41】
前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム、ポリアクリル酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項35に記載のアノード。
【請求項42】
前記バインダーが前記ポリアクリル酸を含む、請求項41に記載のアノード。
【請求項43】
前記第1のアノード活性金属層は、第1の金属箔を含み、前記第1の導電層は、前記第1の金属箔を前記集電体に固定する、請求項35に記載のアノード。
【請求項44】
前記導電層は、約0.1μmから約5μmの範囲内の厚みを有する、請求項35に記載のアノード。
【請求項45】
前記第1の導電層は、約0.5μmから約2μmの範囲内の厚みを有する、請求項35に記載のアノード。
【請求項46】
前記第1の導電層は、約1μmの厚みを有する、請求項35に記載のアノード。
【請求項47】
前記第1の導電層は、約0.1g/m
2から約2g/m
2の面積重量で存在する、請求項35に記載のアノード。
【請求項48】
前記集電体は、銅を含み、前記第1のアノード活性金属層は、リチウムを含む、請求項35に記載のアノード。
【請求項49】
前記集電体は、約4μmから約10μmの範囲内の厚みを有し、前記第1の金属箔は、約15μmから約25μmの範囲内の厚みを有する、請求項48に記載のアノード。
【請求項50】
前記第1の導電層は、本質的に、導電性炭素粒子と、ポリアクリル酸を含み、前記第1の導電層中で前記導電性炭素粒子を結着するバインダーとからなる、請求項48に記載のアノード。
【請求項51】
前記第1の導電層は、約0.1μmから約5μmの範囲内の厚みを有する、請求項48に記載のアノード。
【請求項52】
前記第1の導電層は、約0.5μmから約2μmの範囲内の厚みを有する、請求項48に記載のアノード。
【請求項53】
前記第1の導電層は、約1μmの厚みを有する、請求項48に記載のアノード。
【請求項54】
前記第1の導電層は、約0.1g/m
2から約2g/m
2の面積重量で存在する、請求項48に記載のアノード。
【請求項55】
前記活性領域の前記第2の面において前記集電体に固定される第2のアノード活性金属層と、
前記集電体と前記第2のアノード活性金属層との間に位置し、前記第2のアノード活性金属層を前記集電体に固定する第2の導電層と
をさらに含む、請求項35に記載のアノード。
【請求項56】
前記第2のアノード活性金属層は、第2の金属箔を含む、請求項55に記載のアノード。
【請求項57】
前記第2の導電層は、請求項1から23のいずれか1項に記載の前記第1の導電層と同一である、請求項55に記載のアノード。
【請求項58】
前記第1のアノード活性金属層は、少なくとも20mmの幅と、少なくとも120mmの長さとを有するリチウム箔を含む、請求項35に記載のアノード。
【請求項59】
前記集電体は、銅を含む、請求項58に記載のアノード。
【請求項60】
前記集電体は、固体金属箔を含む、請求項35に記載のアノード。
【請求項61】
前記集電体は、穿孔された金属箔を含む、請求項35に記載のアノード。
【請求項62】
前記集電体は、金属メッシュを含む、請求項35に記載のアノード。
【請求項63】
前記集電体は、約4μmから約10μmの範囲内の厚みを有する、請求項35に記載のアノード。
【請求項64】
カソードと、電解質と、請求項35から63のいずれか1項に記載のアノードと
を含む、電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年1月26日に出願された「アノード活性材料と集電体との間に導電層を含むアノード、およびそのようなアノードを組み込んだ電気化学デバイス」という名称の米国特許出願第17/585,120号の優先権の利益を主張する。この出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、電気化学デバイスの分野に関する。特に、本開示は、アノード活物質と集電体との間に導電層を含むアノード、およびそのようなアノードを組み込んだ電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
再充電可能や二次電池であるリチウム金属電池は、現在のリチウムイオン電池よりも高い体積エネルギー密度および重量エネルギー密度を提供する。黒鉛などのインターカレート材料から形成されたアノード(負極)を含むリチウムイオン電池とは異なり、通常のリチウム金属二次電池では、リチウム箔(アノード活物質)が銅箔(集電体)の両面に積層され、従来のリチウム-銅-リチウム(Li/Cu/Li)アノード構造を形成する。しかしながら、リチウムは柔らかくて粘着性があり、従来のロールミル工程では、幅が120mmを超える極薄(厚み50μm未満)のリチウム箔を製造することは困難である。この幅の制約が、結果として、積層技術を使用して製造できるアノードやセルのサイズを制限している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1Aおよび
図1Bは、ウェブ状アノード前駆体18を形成するために、銅箔ウェブ16の両面に極薄リチウム箔リボン14Aおよび14Bを連続的に積層することを含むロールツーロールプロセス12を使用して、従来のLi/Cu/Liアノード(破線領域10で表される)を製造する従来の手法を示す。銅箔ウェブ16の幅Wwは、通常、リチウム箔の幅Wfよりも広く、積層構造は、通常、銅箔ウェブの少なくとも1つの縁部に沿って無被覆銅領域16Aを有する。無被覆銅領域16Aは、Li/Cu/Liアノードが電気化学セルの積層された「ゼリーロール」に組み立てられるときに、ウェブ状アノード前駆体18から打ち抜かれるLi/Cu/Liアノード10への電気的接触を可能にするための電気タブ10Aを形成するために設けられる。電気タブ10Aがないと、積層されたゼリーロール内のLi/Cu/Liアノード10の複数の層を、完成した電気化学セル内の外部電気リード(図示せず)に接続することが困難になる。上述したように、リチウムの物理的特性により、所望の極薄リチウム箔を使用する場合、リチウム箔ウェブ16の幅Wfは約120mmに制限され、これにより、従来のロールツーロール積層技術を使用して作製することができる
図1Aおよび
図1BのLi/Cu/Liアノード10などのLi/Cu/Liアノードのサイズが制限され、この制限により、リチウム金属電気化学セル(図示せず)、例えば、極薄リチウム金属アノードを用いて作製することができる二次リチウム金属電池セルのサイズが著しく制限される。その結果、この制限が、電気自動車など、実用的な運用のために大容量の電池を必要とする用途のためのリチウム金属二次電池の開発の妨げとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本開示は、電気化学デバイス用のアノードに関する。アノードは、厚みおよび活性領域を有し、活性領域が厚みを挟んで対向する第1および第2の面を有する集電体と、活性領域の第1の面において集電体に固定される第1のアノード活性金属層と、ポリアクリル酸を含み、集電体と第1のアノード活性金属層との間に位置し、第1のアノード活性金属層を集電体に固定する第1の導電層とを含む。
【0006】
別の実施形態において、本開示は、電気化学デバイス用のアノードに関する。アノードは、厚みおよび活性領域を有し、活性領域が厚みを挟んで対向する第1および第2の面を有する集電体と、活性領域の第1の面において集電体に固定される第1のアノード活性金属層と、集電体と第1のアノード活性金属層との間に位置する第1の導電層であって、第1の導電層中で約50重量%から約90重量%の範囲内の量で存在する導電性材料と、第1の導電層中で導電性材料を結着するバインダーとを含み、第1のアノード活性金属層を集電体に固定する第1の導電層とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の態様を例示する目的で、図面は、本開示の1つ以上の実施形態の特徴および/または特性を例示する。しかしながら、本開示は、図面に示される正確な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【
図1A】従来のロールツーロール積層工程における従来のウェブ状アノード前駆体の一部の平面図であり、Li/Cu/Liアノードがウェブ状アノード前駆体から打ち抜かれる前のLi/Cu/Liアノードを示す。
【
図1B】ウェブ状アノード前駆体からアノードが打ち抜かれる前の、
図1Aの線1B-1Bに沿って切り取られた従来のLi/Cu/Liウェブ状アノード前駆体の拡大誇張断面図である。
【
図2】本開示のアノード形成積層方法の例を示すフロー図である。
【
図3A】
図2の方法を使用して作製することができる例示的なウェブ状アノード前駆体およびそこから除去された例示的なアノードの部分平面図であり、ウェブ状アノード前駆体は、任意の導電性コーティングパッチの塗布から、アノード活物質パッチの積層、ウェブ状アノード前駆体からのアノードの除去までの、異なる処理段階で示されている。
【
図3B】
図3Aの線3B-3Bに沿って切り取られた
図3Aの例示的なアノードの拡大誇張断面図である。
【
図4】
図2の例示的なアノード形成積層方法を実施する例示的なロールツーロール積層工程の高レベルの概略図である。
【
図5A】ウェブ状アノード前駆体上のアノード領域およびアノード活物質パッチ(および、使用される場合には導電性コーティングパッチ)の代替的な配置の例を示す、異なるウェブ状アノード前駆体の一部の平面図である。
【
図5B】ウェブ状アノード前駆体上のアノード領域およびアノード活物質パッチ(および、使用される場合には導電性コーティングパッチ)の代替的な配置の例を示す、異なるウェブ状アノード前駆体の一部の平面図である。
【
図5C】ウェブ状アノード前駆体上のアノード領域およびアノード活物質パッチ(および、使用される場合には導電性コーティングパッチ)の代替的な配置の例を示す、異なるウェブ状アノード前駆体の一部の平面図である。
【
図5D】ウェブ状アノード前駆体上のアノード領域およびアノード活物質パッチ(および、使用される場合には導電性コーティングパッチ)の代替的な配置の例を示す、異なるウェブ状アノード前駆体の一部の平面図である。
【
図5E】ウェブ状アノード前駆体上のアノード領域およびアノード活物質パッチ(および、使用される場合には導電性コーティングパッチ)の代替的な配置の例を示す、異なるウェブ状アノード前駆体の一部の平面図である。
【
図6】本開示の導電性コーティング層を用いて作製されたLi/Cu/Liアノードの例と、導電性コーティング層を用いずに作製されたLi/Cu/Liアノードの例とのサイクル寿命性能を比較する、放電容量とサイクル寿命との関係を示したグラフである。
【
図7】本開示に従って作製された複数のアノードを使用して作製された電気化学セルの高レベル断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
いくつかの態様において、本開示は、特定の積層技術を使用して1つ以上の電気化学デバイス用アノードを形成する方法に関する。本開示のアノード形成積層方法から利益を得ることができる電気化学デバイスの例としては、とりわけ、金属系二次電池およびスーパーキャパシタが挙げられる。この文脈において、「金属系」とは、問題の電気化学デバイスが、アノード活物質である少なくとも1つの金属層をそれぞれ含む1つ以上のアノードを有することを意味する。金属層に使用することができる金属の例としては、特に限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびアルミニウム、またはそのような金属(複数可)を含む合金が挙げられる。後述するように、いくつかの実施形態において、本開示のアノード形成積層方法は、金属アノード、特に、リチウム金属アノードなどのアルカリ金属アノードを、同じアノード活性金属を使用して作製された従来の積層アノードよりも大きなサイズで作製することを可能にする。このようなより大きなサイズは、例えば、従来の二次電池の限界を克服する、より高容量の二次電池につながる。当業者であれば容易に理解するように、本明細書に開示される積層技術は、費用効率が高く、電気自動車などの高エネルギー需要の用途に必要な大容量二次電池を製造するには、製造費用は、特に重要なパラメータである。
【0009】
いくつかの態様において、本開示は、集電体と、集電体の片面または両面の金属アノード活性層と、集電体と各金属アノード活性層との間に配置された導電性コーティング(または、単に「導電性コーティング」)とを含むアノードに関する。いくつかの実施形態では、導電性コーティングは、導電性炭素系コーティングであり、これは、1つ以上の形態の導電性炭素、バインダー、および任意に1つ以上の金属の粒子を含むことができる。他の実施形態では、導電性コーティングは、1つ以上の金属の粒子およびバインダーのみを含むことができる。いくつかの実施形態において、導電性コーティングは、集電体へのアルカリ金属層の固定性を改善する。例えば、当業者であれば、従来の方法で製造されている積層アノードにおいて、銅集電体に適用されたリチウム金属層は、必ずしも銅集電体に良好に結着せず、取り扱い中に銅集電体から剥離することを理解するであろう。本開示の導電性コーティングを使用することにより、この層間剥離を防止することができる。また、本開示の導電性コーティングは、リチウム金属層のほとんどがサイクル時に多孔質の苔状構造に変換される場合にも、リチウム金属層との接触を維持する機能を果たすことができる。また、本開示の導電性コーティングを使用することにより、集電体ウェブ上のアノード活物質の金属箔シートの位置決めを補助することもでき、および/または導電性コーティングのいくつかの実施形態の優れた付着特性を活用する新しい製造技術を可能にすることもできる。導電性コーティングを含む本開示の金属系アノードは、本明細書に開示されるアノード形成積層法のいずれか1つ、または任意の適切な従来の方法などの任意の適切な方法を使用して作製することができる。
【0010】
さらに他の態様において、本開示は、本明細書に開示される方法のいずれかを使用して、および/または本明細書に開示される導電性コーティング含有アノードのいずれかを使用して、電気化学デバイスを作製する方法、ならびに本開示の方法を使用して、および/または本明細書に開示される導電性コーティング含有アノードのいずれかを使用して作製される電気化学デバイスに関する。本開示の上記の態様および他の態様を以下に詳細に記載する。
【0011】
より詳細な説明に進む前に、本開示全体を通して、用語「約」は、対応する数値と共に使用される場合、その数値の±20%、通常はその数値の±10%、多くの場合はその数値の±5%、より多くの場合はその数値の±2%を指すことに留意されたい。いくつかの実施形態では、用語「約」は、数値自体を指すこともある。また、本開示のアノード、層、コーティング、箔、ウェブ、リボン、または本開示のアノードを形成するために使用される本開示のアノードの任意の他の構成要素もしくはその領域、または任意の他の構造もしくはその領域を指すときの「面」という用語は、その構成要素または構造の厚みに垂直な方向にその構成要素または構造の縁の間に延在する構成要素または構造の広がりを指すことに留意されたい。言い換えれば、本開示の文脈において、構成要素または構造の「面」は、構成要素または構造の厚みによって分離される。
【0012】
次に、
図2、3A、3B、及び4を参照し、それに対応して、各要素番号の最初の桁が、その要素に最初に示される図に対応することに留意すると、
図2は、1つ以上の電気化学デバイス(図示せず)用アノード300(1つのみが分離して示される)を形成する例示的なアノード形成積層方法200を示し、
図3Aおよび3Bは、ウェブ状アノード前駆体304およびこの方法を使用して作製されたアノード300を示し、
図4は、アノード形成積層方法200の様々な工程を実施するための例示的なロールツーロール(R2R)処理システム400を示す。アノード形成積層方法200は、全てが互いに同じサイズであってもよく、または異なるサイズを有してもよい複数のアノード300を形成するために使用されてもよい。各アノード300は、活物質領域308Aを有する集電体308と、活物質領域の延長として形成された導電性タブ、または、単に「タブ」308Bとを含む。活物質領域308Aは、アノード設計の要件に応じて、集電体308の片面または両面でアノード300に積層されたアノード活物質312を含む。活物質領域308Aは、活物質領域からのタブ308Bの延在方向Dtに平行な方向に長さLaを有し、長さLaは、例えば、活物質312の厚みTamが約50μm以下、約15μmから約25μmの範囲内、または約20μm以下であるとき、約50mmから約800mm、約100mmから約600mm、または約100mm以上などの任意の適切な長さであることができる。活物質領域308Aの幅Waは、長さLaに対して垂直な方向において、任意の適切な幅であり得、例えば、厚みTamが約50μm以下、約15μmから約25μmの範囲内、または約20μm以下であるとき、約10mmから約200mm、約20mmから約150mm、または約120mm未満などの任意の適切な幅であり得る。いくつかの実施形態において、幅Waは、200mmを超える幅を含み、従来の箔形成技術を使用して選択されたアノード活物質から形成することができる所与の厚みでの箔の最大幅であり得る。例えば、現在のリチウム箔の最大幅は、約50μm以下の厚みで約120mmであるが、将来の技術では、より大きな幅が可能になる可能性があり、本明細書に開示された技術は、それらの技術に容易に対応できる。
【0013】
本開示の方法は、特に、現在の実質的な限界である120mmを超える幅を有するリチウム箔の製造方法を産業界が考案する場合に、例えば、厚みTamが約50μm以下である場合、面積寸法が最大約150mm(Wa(
図3A))×約600mm(La(
図3A))以上であるアノード300のリチウム系バージョンなどのリチウムアノードの製造を可能にする。一例では、従来の積層工程では、20μmのリチウムの厚みで約53mm×45mmの面積サイズのLi/Cu/Liアノードが得られたが、本開示の積層方法、例えば、
図2の積層方法200では、同じリチウムの厚み(Tam)で550mmの活性領域長さLaと107mmの活性領域幅を有するアノード300が得られた。任意の導電性コーティングパッチ328(下記参照)の有無に関わらず、本開示に従って作製されたアノード300を用いて組み立てられた二次電池の場合、セル容量(Ah)およびエネルギー(Wh)は、アノードサイズに比例して、はるかに高くなる(例えば、最大25倍、50倍、またはそれ以上)。電気自動車のような高エネルギー需要の用途に必要とされる100Ah以上の容量を有するリチウム金属二次電池は、開示された方法を用いて製造することができる。一例の比較として、同じ積層数の場合、53mm×45mmのアノードは、約4Ahまでのセルを形成し、一方、550mm×107mmのアノードは、100Ahまでのセルを形成する。さらに、大型のセルほど包装は少なくて済むので、これらの電池の重量エネルギー密度(Wh/Kg)および体積エネルギー密度(Wh/L)もより高くなる。例えば、前述の例では、約4Ahのセルと約100Ahのセルとを比較すると、より小型のセルからより大型セルへと移行することで、重量エネルギー密度が約400Wh/kgから約410Wh/kgへと増加するであろう。
【0014】
いくつかの実施形態において、アノード300は、アノード活物質が存在する集電体の両面で、アノード活物質312と集電体308との間に導電性コーティング316を含んでもよい。導電性コーティング316が存在する場合には、通常、導電性コーティング316およびアノード活物質312が、活物質領域308Aとほぼ同じ範囲にわたること、すなわち、対応する活物質領域の長さLaおよび幅Waとほぼ同じ長さLccおよび幅Wccを有することが望ましい。
図3Aに示されるように、アノード300は、ウェブ状アノード前駆体304から対応するアノード領域320(1)を取り除いた状態で示されている。
図3Aには、ウェブ状アノード前駆体304上に、そこから取り除かれた後に2つの追加のアノード(図示せず)を形成する、2つの追加のアノード領域320(2)および320(3)も示されている。各アノード領域320(1)から320(3)は、活性領域部320A(1)から320A(3)と、タブ部320B(1)から320B(3)とを含む。
図3Aでは、アノード領域320(2)は、アノード活物質を含み、対応するアノードが取り除かれる準備はできている一方で、アノード領域320(3)は、まだアノード活物質を含んでいない。集電体308、アノード活物質312、および導電性コーティング316のそれぞれの材料の例は、上記および下記に記載されている。
【0015】
ブロック205において、アノード形成積層方法200は、集電体ウェブ324を提供することを含む。一実施形態では、
図4に示すように、集電体ウェブ324は、
図4のR2R処理システム400に適した集電体材料のリボン404として提供されてもよい。他の実施形態では、集電体ウェブ324は、集電体材料が個々のシートとして提供されるシート形態など、別の形態で提供されてもよい。集電体ウェブ324は、例えば、とりわけ、銅、ニッケル、チタン、あるいはステンレス鋼などの金属、または任意の適切な金属合金などの任意の適切な導電性材料で作製されてもよい。基本的に、集電体ウェブに使用される材料の種類は限定されない。集電体ウェブ324は、とりわけ、固体箔、穿孔箔、織メッシュ、または拡張メッシュなどの様々な形態を有してもよい。基本的に、集電体ウェブ324の形態は限定されない。任意のメッシュまたは他の開放構造における総面積に対する開放面積の割合が約5%から約95%の範囲内であってもよい。穿孔メッシュが使用される場合、従来の穿孔法、回転ダイカット、電鋳、フォトエッチング、およびレーザカットなど、様々な工程によって作製することができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、集電体ウェブ324は、特に、アノード活物質の厚みTamが約50μm以下であり、活物質がリチウムなどのアルカリ金属である場合、約20mmから約200mmの範囲内、約120mmから約200mmの範囲内、約150mmから約300mmの範囲内、またはそれ以上の幅Wwを有する。集電体ウェブ324の長さは、
図2のリボン系の工程またはシート系の工程におけるアノード形成積層方法200のような、本開示のアノード形成積層方法を実施するのに適した任意の長さであってもよい。
【0016】
アノード300の集電体308のタブ308Bは、集電体ウェブ304の無被覆領域324A、すなわち、アノード活物質が存在しない領域から形成される場合があり、また、任意の導電性コーティング316が使用される場合、導電性コーティング材料も存在しない集電体ウェブの領域から形成されてもよい。その結果、後述するように、ウェブ状アノード前駆体304のアノード領域320のタブ部分320B(1)から320B(3)を無被覆であることが必要である。
【0017】
任意のブロック210では、例えば、完成したアノード300が集電体ウェブの片面または両面にアノード活物質を有するか否かに応じて、任意の導電性コーティングパッチ328が集電体ウェブ324の片面または両面に塗布される。
図3Aでは、導電性コーティングパッチ328が1つだけ示されているが、この例では、同様の導電性コーティングパッチは、また、集電体ウェブ324に対向して設けられている。導電性コーティングが提供される場合、導電性コーティングパッチ328が設けられ、アノード領域320のタブ部分320Bが配置する/配置することになる、およびアノード300のタブ308Bが形成される/形成されることになる、集電体ウェブ324の無被覆部分であるインターパッチ領域304Aが形成される。各インターパッチ領域304Aは、それぞれのアノード300上の対応するタブ308Bの長さLt以上のギャップ幅Wgを有し得る。いくつかの実施形態では、ギャップ幅Wgは、同一または類似の寸法であるタブ308Bの長さLtに基づいて、約10mmから約30mmの範囲内であってもよい。他の実施形態では、各インターパッチ領域304Aのギャップ幅Wgは、特定のアノード設計に適合するように、約30mmを超えるか、約10mm未満である場合がある。
【0018】
導電性コーティングパッチ328が集電体ウェブ324の両面に設けられる場合、同一のアノード300に対する導電性コーティングパッチは互いに一致して配置されるため、導電性コーティングパッチおよびインターパッチ領域304Aが集電体ウェブ324の長さに沿って互いに同じ位置にある。いくつかの実施形態では、各導電性コーティングパッチ328の幅Wccpは、無駄を最小限にするために、アノード300の活物質領域308Aの幅Waにほぼ等しい。いくつかの実施形態では、各導電性コーティングパッチ328の幅Wccpは、アノード300がウェブ状アノード前駆体304から取り除かれる際に、導電性材料がアノードの切断された縁部に残るようにするために、活物質領域308Aの両面で、活物質領域308Aの幅Waよりも約1mmから約3mm、または、それ以上大きく設定されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、各導電性コーティングパッチ328の幅Wccpは、特に、方法200を使用してアノード領域320の単一のラインからアノード300を作製する場合、集電体ウェブ324の幅Wwにほぼ等しい。いくつかの実施形態では、各導電性コーティングパッチ328の幅Wccpは、廃棄物の処理を容易にするために、集電体ウェブ324の幅の約95%未満に設定され、集電体ウェブの一部が十分に残されるようにする。例えば、
図4のR2Rシステム400のようなR2Rシステムにおいてアノード300を取り除いた後に集電体ウェブ324が十分に残っている場合、廃棄物材料は廃棄物収集ロール(図示せず)上に巻き取ることができる。いくつかの実施形態では、各導電性コーティングパッチ328の幅Wccpおよび/またはアノード活物質パッチ336に対応する幅Waampは、例えば、約0.9Ww<Wccpおよび/またはWaamp<Ww、約0.95Ww<Wccpおよび/またはWaamp<Ww、あるいは約0.98Ww<Wccpおよび/またはWaamp<Wwなど、集電体ウェブ324の幅Wwの100%未満に設定される。いくつかの実施形態では、各集電体パッチ328の長さLccpは、無駄を最小限にするために、アノード300の活物質領域308Aの長さLaにほぼ等しくなるように作製される。いくつかの実施形態では、各導電性コーティングパッチ328の長さLccpは、活物質領域308Aの各面で約1mmから約3mmだけ活性材料領域308Aの長さLaよりも広く設定され、アノード300がウェブ状アノード前駆体304から取り除かれるときに、切断されたアノードの縁部に導電性材料が存在することが保証される。タブ308Bが設けられている導電性コーティングパッチ328の縁部に沿って、導電性コーティングは、通常は、アノード活性材料パッチ336と同一平面であるか、または最大で約1mmアノード活物質パッチ336を越えて延びる。通常は、導電性コーティングパッチ328およびアノード活物質パッチ336は、タブ308B上に約1.5mm以上重ならないことが好ましい。そうでなければ、その「過剰な」材料は、タブの溶接工程を妨げる可能性がある。
【0020】
各導電性コーティングパッチ328は、対応するアノード活物質パッチ336に対してプライマーとして作用し、最終的なアノード300におけるアノード活物質312と集電体308との間の接触抵抗を低く維持しながら、それらの間の付着性を向上させるのに役立つ。提供される場合、各導電性コーティングパッチ328は、1つ以上の種類の導電性炭素粒子と、粒子を互いに結着させ、集電体ウェブ324に結着させるための適切なバインダーとを含む導電性炭素材料などの任意の適切な導電性材料で作製されてもよい。他の実施形態では、導電性炭素粒子は、金属粒子で増強することができ、さらに他の実施形態では、金属粒子のみを適切なバインダーとともに使用されてもよい。
【0021】
導電性炭素材料が使用される場合、導電性炭素とバインダー材料とを水性または有機溶媒媒体中で混合することによって調製されたスラリーとして提供されてもよく、これは、集電体ウェブ324に塗布された後に最終的に乾燥される。導電性炭素材料としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、またはこれらの混合物を用いることができる。導電性を高めるために、粉末状の銀などの金属を導電性炭素と混合することもできる。バインダー材料の例としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVDF-HFP(ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、PAA(ポリアクリル酸)、およびこれらの任意の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
上述したように、導電性コーティングパッチ328中のバインダーは、アノード活物質パッチ336が集電体ウェブ324に良好に付着するのを助けることができ、取り扱い中および使用中に集電体ウェブおよび集電体308からアノード活物質が剥離するのを防止する。導電性コーティング中の導電性材料は、完成したアノード300においてアノード活物質312と集電体308との間の接触抵抗を低く維持するのに役立ち、これにより、より良好な付着性とともに、そのような導電性材料を組み込んだアノードを使用して作製された二次電池におけるセルサイクル性能を向上させるのに役立つ。
【0023】
各導電性コーティングパッチ328の厚みは、例えば、約0.1μmから約5μmの範囲内、約0.5μmから約2μmの範囲内、および約1μmの厚みであってもよく、他の範囲および値であってもよい。いくつかの実施形態では、アノード活物質の表面粗さ(Ra、算術平均粗さ)がXμmである場合、そのコーティングの厚みは、約0.2Xμmから約2Xμmの範囲内であってもよい。現在の証拠は、いくつかの実施形態(リチウム箔がアノード活物質パッチ336に使用される実施形態を含むにおいて、各導電性コーティングパッチ328の厚みが約1μmであることが最適である可能性があることを示しており、その理由は以下の考察に基づく。導電性コーティングパッチ328は、付着性および導電性を向上させるのに実質的に十分である必要がある。しかしながら、コーティングをより厚くすると、副反応が生じ、セルに不必要な重量と体積を加える可能性がある。さらに、アノード活物質(例えば、リチウム)の平均表面粗さのばらつきに対応する最小の厚みが存在する可能性がある。この関係は、多くの要因によって正比例または反比例する可能性がある。例えば、リチウムの場合、リチウム金属は容易に変形し、より高い粗さを有するリチウム箔は、例えば、銅表面に容易に付着する場合があり、薄い導電性コーティングで十分な場合がある。しかしながら、元のリチウム表面は、銅表面に良好に結着する場合があるが、ほとんどのリチウム箔は、供給業者ごとの特定の製造工程に応じて、化学組成や厚みの値が異なる表面不動態化層を有するため、この関係は、リチウム箔の表面上に存在する任意の不動態化層によってさらに複雑になる場合がある。その結果、最適な厚みについては、関係する特定の事実によってばらつきがある可能性がある。
【0024】
いくつかの実施形態では、各導電性コーティングパッチ328中の導電性コーティング材料の面積重量は、約0.1g/m2から約2g/m2の範囲内であってよく、いくつかの実施形態では、約0.5g/m2であってよい。いくつかの実施形態では、各導電性コーティングパッチ328の表面抵抗は、約1μmのコーティング厚みに対して約30Ω/sq以下であってもよく、表面抵抗率は、約3×10-3Ω・cm以下であってもよい。一般に、表面抵抗の単位は、Ω/sqであり、表面抵抗は、各導電性コーティングパッチ328の厚みに依存し、導電性コーティングパッチが厚いほど、抵抗は低くなる。したがって、約1μm以外の厚みでは、表面抵抗は30Ω/sqとは異なる。いくつかの実施形態では、導電性コーティング材料中の導電性材料(例えば、導電性炭素、導電性金属、またはそれらの組合せ)の量は、約5重量%から約95重量%の範囲内、約50重量%から約90重量%の範囲内、約60重量%から約90重量%の範囲内、または約70重量%から約90重量%の範囲内であってもよい。
【0025】
導電性コーティングパッチ328を使用する利点の一例として、アノード活物質がリチウムであり、集電体ウェブ324が銅である場合、新しいリチウムは、通常、銅表面に良好に付着する。しかしながら、従来のリチウム箔の表面上に通常存在する不動態化層は、銅への付着を阻害する。不動態化層の組成は、リチウム箔が製造時に最初にさらされた雰囲気に依存し、通常は、炭酸リチウム、水酸化リチウム、酸化リチウム、および窒化リチウムなどの塩でできている。さらに、リチウム箔の表面には、リチウム箔を形成するために使用されたロールミル工程からの残留潤滑剤も存在することがある。表面に不動態化層および/または油の残留物が存在すると、積層時にリチウム箔が銅に良好に付着するのを妨げる。導電性コーティングパッチ328を設けることで、集電体ウェブ324に良好に付着し、アノード活物質パッチ336が良好に付着する層を形成するため、この問題を克服するのに役立つ。
【0026】
例えば、銅箔(集電体)にリチウム箔(アノード活物質)を加圧積層した試料(リチウム箔を銅箔に直接貼り付けたものと、リチウム箔と銅箔の間に導電性カーボンコーティングを施したもの)の剥離試験を行った。SCOTCH(登録商標)テープ(3M Corporation, St. Paul, Minnesotaから入手可能)を各試料のリチウム箔上に軽く押し付け、ゆっくりと剥がした。片方の試料に導電性コーティングが存在することを除いて、2つの試料間で積層条件が同じであったにもかかわらず、銅箔に直接積層されたリチウム箔は、テープと共に銅箔から剥がれたのに対し、導電性炭素コーティングに積層されたリチウム箔は、テープと共に剥がれず、導電性炭素コーティングと導電性炭素コーティングの下の銅箔に積層されたままであった。なお、SCOTCH(登録商標)テープ以外の感圧テープを用いてもよい。リチウム箔が銅箔に良好に付着していれば、剥離力は、通常、約200N/mよりも大きくなる。
【0027】
任意の導電性コーティングパッチ328を集電体ウェブ324に塗布するために、例示的なR2Rシステム400は、問題となっている導電性コーティング材料の種類に適したコーティング塗布装置408を含んでもよい。例えば、コーティング塗布装置408は、特に、ナイフ型塗布機、スプレー塗布機、またはローラー塗布機などのコーティング塗布装置408A(1)および408A(2)を1つ以上含んでいてもよい。使用することができる例示的なコーティング工程としては、スロットダイキャスティング、テープキャスティング、グラビア、コンマ、スプレーコーティング、およびディップコーティングなどが挙げられる。基本的に、導電性コーティングパッチ328を塗布することができる方法に制限はない。コーティング塗布装置408は、導電性コーティングパッチが所望のサイズであることを確実にするために、特に、オープンマスクまたはシルクスクリーンなどのパターニング装置408B(1)および408B(2)を1つ以上含んでいてもよい。当業者であれば、ウェブ状アノード前駆体304上の適切な位置で、任意に選択された導電性コーティングパッチ328を集電体ウェブ324に塗布する方法、およびそのような塗布に必要な適切なコーティング塗布装置408を容易に理解するので、当業者であれば、過度な実験を行うことなく本発明を最大限に実施するため、それぞれの詳細な説明は不要である。
【0028】
ブロック215では、金属箔332が、対応するアノード活物質パッチ336(1つのみが図示されているが、この例では、別のアノード活物質パッチが、集電体ウェブに対向して存在する)として、集電体ウェブ324の片面または両面に積層される。金属箔332の積層は、最初に、特定の用途に使用されるか否かに応じて、導電性コーティングパッチ328を使用して、または使用せずに、金属箔332を集電体ウェブ324と係合させることを含んでもよい。金属箔332の係合は、例えば、一時的な保持基板からの移送を介して、またはピックアンドプレース工程を介してなど、任意の適切な方法で行われることができる。いくつかの実施形態では、金属箔332は、集電体ウェブ324と、存在する場合には、各対応する導電性コーティングパッチ328としっかりと係合するように押圧されてもよい。このようなプレスは、例えば、とりわけ、ローラープレスまたは固定プレスを使用するなどの任意の適切な方法で実施されてもよい。いくつかの実施形態では、金属箔332の積層は、ロールミルまたはカレンダー加工機を使用して行われてもよく、積層圧力は、ロール間のギャップ設定によって決定される。いくつかの実施形態では、ローラーによって加えらされる圧力は、金属箔332を著しく変形させるべきではなく、すなわち、リチウム箔の厚みの無視できる減少、または幅および/もしくは長さの増加があるべきである。例えば、導電性コーティングパッチ328が存在する場合、対応するアノード活物質パッチ336の金属箔332は、下層にある導電性コーティングパッチのフットプリント内にほぼ留まることが通常望ましい。いくつかの実施形態では、金属箔332の厚みの減少は、金属箔の元の厚みの約10%未満であることが望ましく、金属箔の長さおよび/または幅の増加は、約2%未満であることが望ましい。基本的に、金属箔332をウェブ状アノード前駆体304上に押し付けることができる方法には制限はない。
【0029】
金属箔332は、いくつかの実施形態では、約15μmから約25μmの範囲内の厚みを有していてもよく、いくつかの実施形態では、約20μmであってもよく、いくつかの実施形態では、約10μmから約50μmの範囲内の厚みを有していてもよく、いくつかの実施形態では、約1μmから約100μmの範囲内の厚みを有していてもよく、その他の範囲および値の厚みを有してもよい。これらの厚みは、特に、純リチウムを含むリチウム含有箔、一般に、アルカリ金属系の箔、および1つ以上の他の金属系の箔に適用可能である。現在の証拠は、リチウム金属箔を含む金属箔332の約20μmの厚みが、アノード300を使用して作製された電気化学セルの厚みに追加されると同時に、サイクル寿命、取り扱い性、コスト、重量、およびめっきを含む様々の要因の最適なトレードオフであり得ることを実証している。いくつかの実施形態では、集電体ウェブ324の厚みは、他の範囲および値の中でも、集電体ウェブが銅箔である場合を含めて、約4μmから10μmの範囲内、および、いくつかの実施形態では、約6μmであってもよい。現在の証拠は、集電体の厚みが6μmであることが、例えば、重量、強度、エネルギー密度、積層の複雑さ、コスト、および厚みなどの最適なトレードオフであり得ることを実証している。
【0030】
いくつかの実施形態では、金属箔332は、アノード領域320(1)から320(3)の活性領域部分320A(1)から320A(3)のサイズ、または対応する導電性コーティングパッチ328のサイズ、またはその両方とほぼ等しくなるように予めサイズ決定されてもよい。このようなサイジングは、例えば、一時的な基板からの転写プロセスにおいて、または適切に穏やかな真空を使用するピックアンドプレース工程などのピックアンドプレース工程において使用され得る。いくつかの実施形態では、金属箔332は、連続シートまたはリボンで提供されてもよい。例えば、導電性コーティングパッチ328が使用され、それらが集電体ウェブ324の無被覆部分に対して金属箔の著しい付着性を提供する場合、アノード活物質パッチ336は、連続シートまたはリボンを集電体ウェブに押圧し、金属箔が十分に付着しない集電体ウェブの以前の無被覆部分から金属箔332の部分を除去することによって形成されてもよい。いくつかの実施形態では、各アノード活物質パッチ336の幅Waampは、無駄に最小限にするために、アノード300の活物質領域308Aの幅Waにほぼ等しい。いくつかの実施形態では、各アノード活物質パッチ336の幅Waampは、アノード300がウェブ状アノード前駆体304から除去されるときに、アノードの切断端に導電性材料が存在することを確実にするために、活物質領域308Aの各面で約1mmから約3mmだけ活物質領域308Aの幅Waよりも大きい。
【0031】
いくつかの実施形態では、導電性コーティングパッチ328が使用され、使用される導電性コーティング材料が適切な特性を導電性コーティングパッチに提供する場合、方法200は、任意のサブブロック215Aにおいて、導電性コーティングパッチを使用して、金属箔332のシートを導電性コーティングパッチと位置合わせすることを含んでもよい。例えば、導電性コーティングパッチ328が、導電性コーティングパッチと下層にある集電体ウェブ324との間に、光学的コントラストなどの機械検出可能なコントラストを提供する場合、そのコントラストを感知し、導電性コーティングパッチとの金属箔332のシートの位置合わせを制御する制御システムに位置情報を提供するために、適切な検出システムを提供することができる。検出システムの一例としては、各導電性コーティングパッチ328の1つ以上の縁部を検出して位置を特定することができるマシンビジョンシステムがある。
【0032】
図4および例示的なR2Rシステム400を参照すると、R2Rシステムは、金属箔332(
図4では一部のみに符号が付されている)が集電体ウェブ324と係合し、集電体ウェブ324に積層される積層領域412を含むことができる。上述したように、積層領域412は、例えば、金属箔332が集電体ウェブ324に供給される方法、導電性コーティングパッチ328が使用されるか否か、および金属箔が集電体ウェブに押し付けられる方法に応じて、多種多様な形態のいずれかをとってもよい。
図4に示す実施形態では、金属箔332は、集電体ウェブリボン404の各面に1つずつ設けられた一対の一時的な支持リボン420(1)および420(2)上に個々の箔シート416として供給され、集電体ウェブリボンに積層される前に箔シートを比較的緩く保持する。図示された実施形態は、箔シート416を集電体ウェブリボン404にしっかりと係合するように押圧してアノード活物質パッチ336を形成するローラープレス424も含む。
【0033】
この実施形態では、箔シート416は、例えば、箔シートの集電体ウェブリボンへの転写を効果的にするために比較的少量の圧力を加えることができる一対の転写ローラー428(1)および428(2)を使用して、集電体ウェブリボン404に供給される。箔シート416と集電体ウェブリボン404との間、特に導電性コーティングパッチ328が存在する場合は、箔シートと一時的な支持リボン420(1)および420(2)との間よりも付着力が大きいため、一時的な支持リボンは、ウェブ状アノード前駆体304の一部となったアノード活物質パッチ336から容易に剥離することができる。いくつかの実施形態では、一時的な支持リボン420(1)および420(2)上の箔シート416間の間隔は、インターパッチ領域304Aに正確に一致する。他の実施形態では、一時的な支持リボン420(1)および420(2)上の箔シート416間の間隔は、インターパッチ領域304Aと一致しなくてもよい。いくつかの実施形態では、一時的な支持リボン420(1)および420(2)上の箔シート416間の間隔がインターパッチ領域304Aに正確に一致する場合、一時的な支持リボン420(1)および420(2)ならびに集電体ウェブリボン404の全てをローラープレス424に通してもよい。この場合、搬送ローラー428(1)、428(2)は省略されてもよい。
【0034】
さらに
図4を参照すると、導電性コーティングパッチ328が使用される場合、例示的なR2Rシステム400は、導電性コーティングパッチを利用して、箔シート416を導電性コーティングパッチの対応するそれぞれのものと正確に位置合わせする位置合わせシステム432を任意に含んでいてもよい。この位置合わせにより、アノード活物質シートがローラープレス424によってしっかりと積層されて対応するアノード活物質パッチ328を形成される前に、各箔シート416を導電性コーティングパッチ336の対応するものと正確に位置合わせされる。導電性コーティングパッチ328が、集電体ウェブ324の無被覆材料に対して、導電性炭素コーティングなどの視覚的に高コントラストの材料を含む場合、位置合わせシステム432は、各導電性コーティングパッチの少なくとも1つの縁部を検出して位置合わせするための1つ以上の光学センサ、ここでは2つの光学センサ432A(1)および432A(2)を含んでもよい。アライメントシステム432は、1つ以上のコントローラ432B(1つのみ図示)と、コントローラが制御して一時的な支持リボン420(1)および420(2)のそれぞれを正確に前進させるステッピングモータ(図示せず)などの1つ以上のアクチュエータとを含んでもよい。コントローラ432Bは、光センサ432A(1)および432A(2)からの1つ以上の縁部の位置情報と、一時的な支持リボン420(1)および420(2)の位置情報とを使用して、導電性被覆パッチ324の対応するものとの箔シート416の位置合わせを正確に制御するようにプログラムしてもよい。当業者であれば、過度の実験を行うことなく、導電性コーティングパッチ328を使用して、箔シート416と導電性コーティングパッチ328との位置合わせを補助することができる様々な種類の位置合わせシステムを実施する方法を理解するであろう。
【0035】
例示的な方法200には、ウェブ状アノード前駆体304からアノード300を形成するブロック220がさらに含まれる。アノードは、アノード領域、例えば、アノード領域320(1)から320(3)でウェブ状アノード前駆体304を打ち抜き、剪断し、または他の方法で切断して、そこから得られるアノード300を形成し、切り取ることなど、任意の適切な方法でウェブ状アノード前駆体304から形成することができる。これに関連して、
図4は、一度にアノード300を1つ以上形成するように構成され得る、任意の適切な自動打ち抜き機、剪断機、または他の切断装置(複数可)を含み得るアノード形成装置436を含むものとして、例示的なR2Rシステム400を示す。当業者であれば、過度の実験を必要とすることなく、適切なアノード形成装置436を実施する方法を容易に理解するであろう。形成されたアノード300は、このように形成されたアノード300を使用して1つ以上の電気化学デバイス(図示せず)を作製する次のステップで使用する準備が整っていてもよい。
【0036】
図5Aから
図5Eは、
図3Aのウェブ状アノード前駆体304上のアノード領域320およびアノード活物質パッチ336(および存在する場合には導電性コーティングパッチ328)の配置の代わりに使用することができる様々なウェブ状アノード前駆体上のアノード領域およびアノード活物質パッチ(および存在する場合には下層にある導電性コーティングパッチ)のいくつかの例示的な代替配置を示す。
図3Aのウェブ状アノード前駆体304に関して示される配置の代替は、
図5Aから5Eの代替配置に限定されず、むしろ、これらは、本開示によるアノードを形成する方法の柔軟性を示すために提供される例示的な配置であることに留意されたい。以下の
図5Aから
図5Eの説明では、説明を簡略化するために導電性コーティングパッチについては言及していない。しかし、上述したように、導電性コーティングパッチは、例えば、
図2から
図4に関連して上述した方法で、対応するアノード活物質パッチの下に実際に存在してもよい。また、
図5Aから
図5Eの代替配置は、図に示されるように、アノード活物質パッチがウェブ状アノード前駆体の表面のみに配置されているかのように説明されていることにも留意されたい。そうである一方、ウェブ状アノード前駆体の裏面にも、ウェブ状アノード前駆体の表面のアノード活物質パッチと一致するアノード活物質パッチ(および任意の導電性コーティングパッチ)が同様に存在し得る。さらに、アノード領域およびアノード活物質パッチの異なる配置以外のすべての点、例えば、材料、厚み、面積、および作製工程などにおいて、
図5Aから
図5Eのアノード領域は、
図3Aのアノード領域320(1)から320(3)など、本開示の他の箇所で説明されているアノード領域と同じか類似していてもよいことにさらに留意されたい。
【0037】
図5Aは、アノード活物質パッチ504(1)から504(5)(実線)が、下層にある集電体ウェブ508上に1本の線で設けられている、ウェブ状アノード前駆体500の例を示す。この例では、各アノード活物質パッチ504(1)から504(5)は、最終的にウェブ状アノード前駆体500から除去されて対応するアノード(図示せず、
図3Aおよび
図3Bのアノード300に類似)を形成する単一のアノード領域512(1)から512(5)(破線)を形成するために設けられている。
【0038】
図5Aを
図3Aと比較すると分かるように、
図5Aのウェブ状アノード前駆体500と
図3Aのウェブ状アノード前駆体304との間の違いは、アノード領域512(2)から512(5)の直接隣接する対のタブ部分512A(ここでは512A(2)から512A(5))が、同じインターパッチ領域516(ここでは516(1)と516(2))中に配置されていることである。インターパッチ領域520(ここでは520(1)と520(2))を、タブ部分512A(2)から512A(5)の対を含むインターパッチ領域516よりも小さくすることができるため、集電体ウェブ508の無駄が少なくできる。
【0039】
図5Bは、概ね
図5Aと類似しているが、
図5Bでは、インターパッチ領域520(
図5A)の大きさを最小化する特徴が極限まで追求され、これらのインターパッチ領域が完全に排除されている。このようにして、
図5Aのインターパッチ領域520(
図5A)に対向するアノード活物質パッチ504(1)から504(4)の各対は、
図5Bにおいて実質的に1つのアノード活物質パッチ524に結合されており、この例では、アノード活物質パッチ524(1)と524(2)は、それぞれ
図5Aのアノード活物質パッチ504(1)から504(5)の約2倍の大きさとなっている。この構成において、
図5Bの各アノード活物質パッチ524は、2つのアノード領域528を形成するために提供されており。ここでは、アノード活物質パッチ524(1)にはアノード領域528(1)と528(2)が、アノード活物質パッチ524(2)にはアノード領域528(3)と528(4)が形成されている。使用するアノード活物質の処理能力が、必要とされるアノード領域の大きさに対して制約となる場合、
図5Bの構成は実現できない場合がある。例えば、アノード活物質がリチウムである場合、処理能力の制限により、
図5Aおよび
図5Bに示されるアノード活物質パッチ504および524の長さが制限される場合がある。そのような場合、アノード活物質パッチと、そこから作られるアノード領域の数が1:1で対応するような異なる構成を使用する必要があるかもしれず、例えば、その構成としては
図3Aおよび
図5Aに示されているものが含まれる。
【0040】
図5Cから
図5Eは、それぞれ、
図3A、
図5A、および
図5Bに示された例示的な構成のマルチライン変形例530、550、および570を示す。
図5Cから
図5Eのマルチライン変形例530、550、および570を検討する際、読者は、これらのマルチライン変形例が、それぞれ534、554、および574というより大きな(例えば、より幅の広い)集電体ウェブから開始し、そのようなより大きな集電体ウェブ上で対応するシングルライン構成を複数回繰り返すことによって作製できるので、対応するシングルライン構成に関する情報については、
図3A、5A、および5Bならびに対応する説明を参照することができる。
図5Cから
図5Eに示される変形例530、550、および570は、それぞれアノード活物質パッチ542(ここでは542(1)から542(6))、562(ここでは562(1)から562(10))、および582(ここでは582(1)および582(4))の2つのライン538(1)および538(2)、558(1)および558(2)、578(1)および578(2)を示しているが、他の実施形態では、より多くのラインが設けられる可能性があることに留意されたい。一般に、実装されるライン538、558、および578の数に対する唯一の制限は、十分に大きな集電体ウェブ534、554、および574の利用可能性、ならびに対応する製造装置を作製する能力である。また、本明細書に開示される他の実施形態と同様に、集電体ウェブ534、554、および574のそれぞれは、使用される処理装置の種類に応じて、例えば、シートタイプまたはリボンタイプであってもよいことに留意されたい。例えば、リボンタイプの集電体ウェブは、
図4のR2Rシステム400のようなR2R処理に容易に適合する。
【0041】
図3Aから
図5Eに示されるすべての実施形態において、すべてのアノード領域、およびそれに対応するアノード活物質パッチ、存在する場合には任意の導電性コーティングパッチおよびそれらから形成されるアノードが、各図において大きさが均一であることに留意されたい。しかしながら、これは、一般的な大きさの電気化学セルの製造工程では通常のことであるかもしれないが、必ずしもそうである必要はない。例えば、本開示のアノード形成方法のいくつかの実施形態は、同じウェブ状アノード前駆体上に異なる大きさのアノードを作製するように調整されてもよい。
【0042】
図6は、本開示の導電性コーティングの使用の有無による、リチウム-銅(Li/Cu)アノード(厚み20μmのリチウム、両面に塗布された厚み8μmの銅、厚み1μmのコーティングで、そのコーティングは約70%から約90%のカーボンブラックとPVDFからなる)を用いたセルサイクル寿命性能を、放電容量とサイクル数の関係で比較したグラフである。このグラフのデータを生成するために、ニッケル-マンガン-コバルト(NMC)酸化物系カソードと、多孔性ポリオレフィン系セパレータで構成された多層パウチセルでサイクル寿命試験を実施した。カソードおよびセパレータの孔は、Li
+伝導性電解質で満たされている。電解質は、通常、カーボネートまたはエーテル系溶媒中に溶解されたLiPF
6やLiFSIなどのリチウム塩を含まれている。セルは、2.5Vから4.3Vの範囲で、C/5から1Cの充放電レートでサイクルされた。
【0043】
図6に示されるように、本開示の導電性コーティングを銅集電体上に含めることで、リチウムアノードを有するセルのサイクル寿命性能が向上することが見出された。サイクル数が増加するにつれて、高密度のリチウムは徐々により多孔質の構造となり、導電性コーティングは、多孔質リチウムと銅集電体基板との間の良好な電気的接触を維持するのに役立った。これにより、電流密度分布がより均一になり、リチウムのメッキ/剥離も均一になった結果、サイクル寿命性能がさらに向上した。銅集電体上に導電性コーティングを施した銅集電体を用いて作製されたセルの初期の面積比インピーダンス(ASI)は、未コーティングの銅集電体を含むセルと比較して高く(コーティングされたものは約38Ω・cm
2であるのに対し、未コーティングのものは約28Ω・cm
2)、セルのサイクル数が増加するにつれてその差は徐々に減少し、500サイクル後には、導電性コーティングを施した銅集電体を用いて作製されたセルの相対的なASIは、未コーティングの銅集電体を含むセルと比較して低いことが確認された(コーティングされたものは約85Ω・cm
2であるのに対し、未コーティングのものは約92Ω・cm
2)。
【0044】
図3Aの例示的なアノード300の任意の導電性コーティング316のような本開示の導電性コーティングがアノード内に存在する場合、アノードは、本開示の積層方法を使用して作製される必要はないことに留意されたい。例えば、アノード300のアノード活物質312と同等のアノード活物質は、開発中であるか、または開発される可能性のある他の潜在的な技術の中でも、蒸着などの他の方法を使用して適用されてもよい。
【0045】
図7は、本開示に従って作製された例示的な二次電池700を示す。特に、例示的な電池700は、
図3Aの導電性コーティング316のような本開示の導電性コーティング(図示せず)を含むか、
図2の積層方法200のような本開示の積層方法を使用して作製されるか、またはその両方である複数のアノード708を含む積層されたゼリーロール704を含む。例示的な二次電池700の新規性は、アノード708自体に含まれる固有の導電性コーティング層(図示されていないが、例えば、
図3Aおよび
図3Bの導電性コーティング316を参照)によるもの、および/または、その面積が、従来から製造されている積層アノードの面積よりも大きいこと、さらに、従来の構成および製造方法のアノードと比較して得られる向上したサイクル寿命性能、および/または、より高い重量エネルギー密度および体積エネルギー密度によって生じ得る。積層されたゼリーロール704はまた、複数のセパレータ層716と、セパレータ層によってアノード708から電気的に分離された複数のカソード720とを含む。
【0046】
この例では、積層されたゼリーロール704が、適切な電解質(図示されていないが、少なくともセパレータ層716内に存在しており(すべて表示されているわけではない)、固体またはゲル状電解質が使用されている場合は、ポリマー電解質の一部と見なすことができる)とともに、ケーシング、ここでは、パウチ型ケーシング712内に封入されている。他の実施形態では、パウチ型ケーシング712は、特に、剛性壁筐体などの異なる種類のケーシングと置き換えられてもよい。基本的に、ケーシングの種類は、積層されたゼリーロール704および電解質を収容するための密閉容積を提供することを含む、必要な機能性を提供する程度にのみ重要である。当業者は、パウチ型ケーシング712または特定の設計が含み得る他の種類のケーシングを構築するための技術および材料に精通している。したがって、当業者が過度の実験を行うことなく二次電池700を具体化するために、ケーシング712に関するさらなる詳細は本明細書では必要ではない。
【0047】
上述したように、各アノード708は、上述した例示的なアノード300と同様に、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、もしくはアルミニウム、またはそれらの任意の適切な組合せなどの任意の適切なアノード活性金属を含むことができる。例えば、リチウム-金属、ナトリウム-金属、リチウム-空気、リチウム-硫黄などの電池の種類に応じて、各カソードは、適切なカソード活物質を含む。1つ以上の実施形態において、カソードは、LixMyOzの一般式を有し、式中、Mは、Co、Mn、Ni、V、Fe、またはCrなどの遷移金属である。
【0048】
1つ以上の実施形態において、各カソード720は、LiCoO2、Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O2、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、LiMn2O4、Li(Mn1.5Ni0.5)2O4、またはそれらのリチウム豊富なバージョンを含む群から選択される層状またはスピネル酸化物材料を含んでもよい。1つ以上の実施形態において、各カソード720は、LixMyPOzの一般式を有してもよく、ここで、Mは、Co、Mn、Ni、V、Fe、またはCrのような遷移金属元素である。1つ以上の実施形態において、各カソード720は、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、またはLiMnPO4を含む群から選択されるリン酸塩材料であってもよい。1つ以上の実施形態において、各カソード720は、カソード活物質粉末、PVDFなどの高分子バインダー、およびカーボンブラックなどの導電性希釈剤を含む多孔質コーティングを含んでもよい。1つ以上の実施形態において、各カソード720は、アルミニウム箔上に多孔性コーティングを備えてもよい。1つ以上の実施形態において、各カソード720は、リチウムコバルト酸化物(またはコバルト酸リチウム)、リチウムマンガン酸化物(スピネルまたはマンガン酸リチウムとしても知られる)、リン酸鉄リチウム、ならびにリチウムニッケルマンガンコバルト(またはNMC)および/またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(またはNCA)を含んでもよい。1つ以上の実施形態では、各カソード720は、とりわけ、硫黄含浸コア-シェル階層的多孔質炭素(HPC)複合材料、硫黄/グラフェンナノシート(GNS)複合材料、サキュール状構造を有する硫黄@rGO(還元グラフェン酸化物)複合材料、および高分子球状ネットワーク構造を有するC-S@PANi(ポリアニリン)複合材料などのナノサイズおよびナノ構造の硫黄系複合材料を含んでもよい。1つ以上の実施形態において、各カソード720は、集電体の周囲に挟まれた炭素層を含んでいてもよく、PTFEフィルムなどのポリマーフィルムで覆われた炭素層を含んでいてもよい。炭素層は、酸素還元速度を高め、カソード720の比容量を増加させる金属触媒を含んでいてもよい。金属触媒の例としては、マンガン、コバルト、ルテニウム、白金、銀、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
1つ以上の実施形態において、電解質が液体である場合、各セパレータ層716は、少なくとも1つが誘電体である、任意の1つ以上の材料から作製されてもよい。例えば、1つ以上の実施形態において、各セパレータ層716は、ポリプロピレンもしくはポリエチレン、またはそれらの任意の適切な組み合わせ(例えば、混合物、層、コーティングなど)から作製されてもよい。当業者であれば、各セパレータ層716を作製するために使用することができる様々な材料および構造を理解するであろう。
【0050】
電解質に関して、一実施例では、二次電池700はリチウム金属電池であり、アノード708がリチウム金属を含み、それぞれ充放電サイクル中にリチウムイオンが析出および剥離されることを意味する。これに対応して、電解質は、充放電サイクル中に積層されたゼリーロール704内のアノードとカソード720との間を流れるリチウムイオン(図示せず)を含有する。その結果、この例では、電解質は、とりわけ、溶液、共融混合物、または溶融形態などの適切な形態の1つ以上のリチウム系塩を含む。いくつかの実施形態では、電解質は、とりわけ、1つ以上の溶媒、1つ以上の性能および/または特性向上添加剤、および/または1つ以上のポリマーを含有してもよい。電解質は、液体、ゲル、または固体状態などの任意の適切な物質の状態であってもよい。電解質の組成は、二次電池700のリチウム金属をベースとするバージョンであろうと、他の種類の金属(例えば、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウムなど)をベースとするバージョンであろうと、問題となっている特定の用途に適した任意の組成とすることができ、二次電池の特定の具体化を設計した者によって決定することができる。
【0051】
電解質に使用することができる塩の例としては、特に、LiFSI、LiTFSI、およびリチウムフルオロスルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiFTFSI)、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiBOB、Li-トリフレート、ならびにこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態において、例えば、第1の塩X1
+Y1
-と、第2の塩X2
+Y2
-とを含む共晶混合物のような2つ以上の塩を共晶混合物として組み合わせることができ、ここで、第2の塩X1+とX2
+は、それぞれ異なるアルカリ金属カチオンであり、Y1
-とY2
-は、それぞれ異なるスルホンイミドアニオンである。1つ以上の実施形態において、Y1
-およびY2
-は、FSO2N-SO2F(FSI-)およびFSO2N-SO2CF3(FTFSI-)からなる群から選択されてもよく、ならびに/またはX1
+およびX2
+は、Li+、Na+、K+、Rb
+、およびCs+からなる群から選択されてもよい。1つ以上の実施形態において、共晶混合物は、第3の塩X3
+Y3
-をさらに含んでもよく、X3
+は、X1
+およびX2
+のそれぞれとは異なる。1つ以上の実施形態において、Y1
-、Y2
-、およびY3
-は、FSO2N-SO2F(FSI-)およびFSO2N-SO2CF3(FTFSI-)からなる群から選択されてもよく、ならびに/またはX1
+、X2
+、およびX3
+は、Li+、Na+、K+、Rb+、およびCs+からなる群から選択されてもよい。
【0052】
1つ以上の実施形態において、電解質は、イミド塩、例えば、非プロトン性溶媒中のリチウムビスフルオロスルホニルイミド(LiN(FSO2)2)、および過塩素酸塩を含んでいてもよい。フルオロスルホニル(FSO2)基を有する他のリチウムイミド塩、例えば、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(FSO2)(C2F5SO2)を、リチウムビスフルオロスルホニルイミド(LiN(FSO2)2)の代わりに、またはそれとの任意の組み合わせで使用することができる。1つ以上の実施形態において、過塩素酸塩はLiClO4を含んでいてもよい。1つ以上の実施形態において、過塩素酸塩は、有機溶媒の0.05Mモル/リットルから0.50Mモル/リットルの濃度を有する。1つ以上の実施形態において、過塩素酸塩は、LiClO4、Ca(ClO4)2、Sr(ClO4)2、Mg(ClO4)2、Ba(ClO4)2、およびそれらの任意の組み合わせまたは混合物からなる群から選択される。
【0053】
電解質は、式R1-(O-CH2-CH2)n-O-R2のグライムを含んでもよく、式中、n=1~4であり、R1およびR2の少なくとも一方は、少なくとも2個の炭素原子を有する炭化水素側鎖である。1つ以上の実施形態において、そのような電解質は、フッ素化グライムおよびフッ素化エーテルからなる群から選択される希釈剤をさらに含んでもよい。フッ素化希釈剤により、より安定した長い側鎖を持つグライム系溶媒、例えば、DEE(1、2-ジエトキシエタンまたはエチレングリコールジエチルエーテル)、DPE(1、2-ジプロポキシエタンまたはエチレングリコールジプロピルエーテル)、DBE(1、2-ジブトキシエタンまたはエチレングリコールジブチルエーテル)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジプロピルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテルなどの使用が可能となる。1つ以上の実施形態において、希釈剤は、フッ素化エーテル1、1、2、2-テトラフルオロエチル-2、2、3、3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、またはフッ素化エーテルビス(2、2、2-トリフルオロエチル)エーテル(BTFE)であってもよい。1つ以上の実施形態において、希釈剤は、少なくとも1つの酸素(-O-)結合および少なくとも1つのフッ素(-F)置換を有する適切な炭化水素分子を含んでいてもよい。具体例では、DEEおよびTFEが互いに組み合わされる。1つ以上の実施形態において、本段落に従って作製された電解質の溶媒:希釈剤の比は、約10:90から100:0の範囲内であってもよい。1つ以上の実施形態において、溶媒:希釈剤の比は、約40:60から約90:10の範囲内であることが望まれる場合があり、1つ以上の実施形態において、溶媒:希釈剤の比は、約60:40から約80:20の範囲内であることが望まれる場合がある。
【0054】
1つ以上の実施形態において、電解質は、本質的に、リチウムスルホンイミド塩の分子と少なくとも1つの無水エーテル系溶媒の分子との付加物からなる、溶媒を含まない液体リチウムスルホンイミド塩組成物であってもよい。そのような実施形態(複数可)において、無水リチウムスルホニミド塩に使用できるリチウムスルホニミド塩組成物の例としては、LiFSI、LiTFSI、およびLiFTFSIが挙げられるが、これらに限られるわけではなく、また、1つ以上の無水エーテル系溶媒に使用できる無水エーテル系溶媒の例としては、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、ジオキサン、およびクラウンエーテルなどが挙げられるが、これらに限られるわけではない。一般に、任意のエーテル系溶媒を使用することができる。そのような実施形態(複数可)において、少なくとも1つのエーテル系溶媒の実質的に全ての分子は、少なくとも1つのリチウムスルホンイミド塩の分子と配位結合される。1つ以上の実施形態において、少なくとも1つのエーテル系溶媒は、無溶媒のリチウムスルホンイミド塩組成物中に、無溶媒のリチウムスルホンイミド塩組成物の重量の5%未満の量で存在する。
【0055】
1つ以上の実施形態において、電解質は、有機溶媒として、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、およびその誘導体を含む。1つ以上の実施形態において、電解質は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートまたはエチルメチルカーボネートなどの直鎖カーボネートを含む。1つ以上の実施形態において、電解質は、有機溶媒として、テトラヒドロフランやテトラヒドロピランなどの環状エーテルおよびその誘導体を含む。1つ以上の実施形態において、電解質は、有機溶媒としてメトキシエタン、ジエトキシエタン、トリグライムまたはテトラグライムなどのグライム、およびそれらの誘導体を含む。1つ以上の実施形態において、電解質は、有機溶媒として、ジエチルエーテル、またはメチルブチルエーテルなどのエーテル、およびそれらの誘導体を含む。1つ以上の実施形態において、電解質は、有機溶媒として、N、N-ジアルキルスルファモイルフルオリドおよびそれらの誘導体、ならびにそれらの組み合わせなどのスルホニル溶媒を含む。1つ以上の実施形態において、電解質は、同種の有機溶媒の混合物、または2種以上の有機溶媒の混合物を含む。
【0056】
1つ以上の実施形態において、電解質は、リチウムシリケート、リチウムボレート、リチウムアルミネート、リチウムフォスフェート、リチウムオキシナイトライド、リチウムオキシボライド、リチウムシリコスルフィド、リチウムボロスルフィド、リチウムアルミノスルフィド、リチウムフォスフォスルフィド、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の無機電解質を含んでいてもよい。1つ以上の実施形態において、電解質は、AlドープLLZO(Li6.25Al0.25La3Zr2O12)ガーネット酸化物、ペロブスカイト(Li0.29La0.57TiO3)、LISICON(Li14ZnGe4O16)、NASICION(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3)、チオ-LISICON(Li10GeP2S12)、または他のガラス(LiPON)もしくはガラスセラミック(70Li2S・30P2S5)系材料、またはそれらの混合物などの1つ以上の固体のセラミック電解質を含んでいてもよい。1つ以上の実施形態において、電解質は、PEO(ポリエチレンオキシド)、PPO(ポリプロピレンオキシド)、PAN(ポリアクリロニトリル)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVDF-HFP(ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、(ポリアクリル酸)、またはそれらの任意の混合物を有する固体またはゲル系ポリマー電解質を含んでいてもよい。
【0057】
電解質の前述の例は、主にリチウム系の塩に基づいているが、当業者は、リチウム系の塩が適切な非リチウム系の塩で置き換えられ得ることを理解するであろう。
【0058】
概して、本開示の電解質は、約0.1M以上約10Mの範囲内の塩濃度を有してもよく、一方、いくつかの実施形態において、塩濃度は、約1M以上約5M以下の範囲内であることが好ましく、他の実施形態において、塩濃度は、約2M以上約3M以下の範囲内であることが好ましい。
【0059】
例示的な二次電池700は、また、対応する電極728(1)から728(5)を介してカソード720の各々に電気的に接続された正極端子724を含む。同様に、リチウム金属電池は、対応する電極736(1)から736(4)を介してアノード708のタブ708Aに電気的に接続された負極端子732をさらに含む。
【0060】
本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および追加を行うことができる。上述の様々な実施形態のそれぞれの特徴は、関連する新たな実施形態における多数の特徴の組み合わせを提供するために、必要に応じて、他の記載された実施形態の特徴と組み合わされてもよい。さらに、上記では、いくつかの別個の実施形態について説明したが、本明細書に説明されているものは、本発明の原理の適用を単に例示するものに過ぎない。さらに、本明細書における特定の方法は、特定の順序で実行されるものとして図示および/または説明されることがあるが、その順序は、本開示の態様を達成するために、当業者の範囲内で非常に可変である。したがって、本明細書は、例示の方法としてのみ解釈されることを意味し、本発明の範囲を限定することを意味しない。
【0061】
いくつかの態様において、本開示は、電気化学デバイス用アノードに関する。このアノードは、厚みおよび活性領域を有し、活性領域が厚みを挟んで対向する第1および第2の面を有する集電体と、活性領域の第1の面において集電体に固定された第1の金属箔と、集電体と第1の金属箔との間に位置し、第1の金属箔を集電体に固定する第1の導電層とを含む。
【0062】
アノードの1つ以上の実施形態において、第1の導電層は、導電性炭素層を含む。
【0063】
アノードの1つ以上の実施形態において、導電性炭素層は、本質的に、導電性炭素粒子およびバインダーからなる。
【0064】
アノードの1つ以上の実施形態において、導電性炭素粒子は、前記導電性炭素層の約50重量%から約90重量%、約60重量%から約90重量%、または約70重量%から約90重量%の量で存在する。
【0065】
アノードの1つ以上の実施形態において、導電層は、約0.1μmから約5μmの範囲内の厚みを有する。
【0066】
アノードの1つ以上の実施形態において、導電層は、約0.5μmから約2μmの範囲内の厚みを有する
【0067】
アノードの1つ以上の実施形態において、導電層は、約1μmの厚みを有する。
【0068】
アノードの1つ以上の実施形態において、導電層は、約0.1g/m2から約2g/m2の面積重量で存在する。
【0069】
アノードの1つ以上の実施形態において、集電体は、銅を含み、第1の金属箔は、リチウムを含む。
【0070】
アノードの1つ以上の実施形態において、集電体は、約4μmから約10μmの範囲内の厚みを有し、第1の金属箔は、約15μmから約25μmの範囲内の厚みを有する。
【0071】
アノードの1つ以上の実施形態では、アノードは、活性領域の第2の面で集電体に固定された第2の金属箔と、集電体と第2の金属箔との間に位置し、第2の金属箔を集電体に固定する第2の導電層を含む。
【0072】
いくつかの態様において、本開示は、カソードと、電解質と、本明細書に記載されたアノードのいずれか1つのアノードとを含む電気化学デバイスに関する。
【0073】
例示的な実施形態が、上記で開示され、添付の図面に示されている。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に具体的に開示されたものに対して様々な変更、省略および追加がなされ得ることは、当業者であれば理解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みおよび活性領域を有し、前記活性領域が、前記厚みを挟んで対向する第1および第2の面を有する集電体と、
前記活性領域の前記第1の面において前記集電体に固定される第1のアノード活性金属層と、
ポリアクリル酸を含み、前記集電体と前記第1のアノード活性金属層との間に位置し、前記第1のアノード活性金属層を前記集電体に固定する第1の導電層と
を含む、電気化学デバイス用アノード。
【請求項2】
前記第1の導電層は、導電性粒子をさらに含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項3】
前記導電性粒子は、導電性炭素粒子を含む、請求項2に記載のアノード。
【請求項4】
前記導電性粒子は、導電性金属粒子をさらに含む、請求項3に記載のアノード。
【請求項5】
前記導電性粒子は、導電性金属粒子を含む、請求項2に記載のアノード。
【請求項6】
前記ポリアクリル酸は、前記第1の導電層内で前記導電性粒子を結着する、請求項2に記載のアノード。
【請求項7】
前記導電性粒子は、前記第1の導電層の約50重量%から約90重量%の量で存在する、請求項2に記載のアノード。
【請求項8】
前記導電性粒子は、前記第1の導電層の約60重量%から約90重量%の量で存在する、請求項2に記載のアノード。
【請求項9】
前記第1のアノード活性金属層は、第1の金属箔を含み、前記第1の導電層は、前記第1の金属箔を前記集電体に固定する、請求項1に記載のアノード。
【請求項10】
前記第1の導電層は、本質的に、導電性粒子と、前記ポリアクリル酸を含み、前記第1の導電層中の前記導電性粒子を結着するバインダーとからなる、請求項1に記載のアノード。
【請求項11】
前記バインダーは、ポリアクリル酸からなる、請求項10に記載のアノード。
【請求項12】
前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム、およびこれらの混合物からなる群から選択される物質をさらに含む、請求項10に記載のアノード。
【請求項13】
前記導電層は、約0.1μmから約5μmの範囲内の厚みを有する、請求項1に記載のアノード。
【請求項14】
前記第1の導電層は、約0.5μmから約2μmの範囲内の厚みを有する、請求項1に記載のアノード。
【請求項15】
前記第1の導電層は、約1μmの厚みを有する、請求項1に記載のアノード。
【請求項16】
前記第1の導電層は、約0.1g/m
2から約2g/m
2の面積重量で存在する、請求項1に記載のアノード。
【請求項17】
前記集電体は、銅を含み、前記第1のアノード活性金属層はリチウムを含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項18】
前記集電体は、約4μmから約10μmの範囲内の厚みを有し、
前記第1の金属箔は、約15μmから約25μmの範囲内の厚みを有する、請求項17に記載のアノード。
【請求項19】
前記第1の導電層は、本質的に、導電性炭素粒子と、前記ポリアクリル酸を含み、前記第1の導電層中で前記導電性炭素粒子を結着するバインダーとからなる、請求項17に記載のアノード。
【請求項20】
前記導電性炭素粒子は、前記導電性炭素層の約50重量%から約90重量%の量で存在する、請求項19に記載のアノード。
【請求項21】
前記第1の導電層は、約0.1μmから約5μmの範囲内の厚みを有する、請求項17に記載のアノード。
【請求項22】
前記第1の導電層は、約0.5μmから約2μmの範囲内の厚みを有する、請求項17に記載のアノード。
【請求項23】
前記第1の導電層は、約1μmの厚みを有する、請求項17に記載のアノード。
【請求項24】
前記第1の導電層は、約0.1g/m
2から約2g/m
2の面積重量で存在する、請求項17に記載のアノード。
【請求項25】
前記活性領域の前記第2の面において前記集電体に固定された第2のアノード活性金属層と、
前記集電体と前記第2のアノード活性金属層との間に位置し、前記第2のアノード活性金属層を前記集電体に固定する第2の導電層と
をさらに含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項26】
前記第2のアノード活性金属層は、第2の金属箔を含む、請求項25に記載のアノード。
【請求項27】
前記第2の導電層が、請求項1から23のいずれか1項に記載の前記第1の導電層と同一である、請求項25に記載のアノード。
【請求項28】
前記第1のアノード活性金属層は、少なくとも20mmの幅と、少なくとも120mmの長さとを有するリチウム箔を含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項29】
前記集電体は、銅を含む、請求項28に記載のアノード。
【請求項30】
前記集電体は、固体金属箔を含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項31】
前記集電体は、穿孔された金属箔を含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項32】
前記集電体は、金属メッシュを含む、請求項1に記載のアノード。
【請求項33】
前記集電体は、約4μmから約10μmの範囲内の厚みを有する、請求項1に記載のアノード。
【請求項34】
カソードと、電解質と、請求項1から
23のいずれか1項に記載のアノードとを含む、電気化学デバイス。
【請求項35】
厚みおよび活性領域を有し、前記活性領域が、前記厚みを挟んで対向する第1および第2の面を有する集電体と、
前記活性領域の前記第1の面において前記集電体に固定される第1のアノード活性金属層と、
前記集電体と前記第1のアノード活性金属層との間に位置する第1の導電層であって、前記第1の導電層中で約50重量%から約90重量%の範囲内の量で存在する導電性材料と、前記第1の導電層中で前記導電性材料を結着するバインダーとを含み、前記第1のアノード活性金属層を前記集電体に固定する第1の導電層と
を含む、電気化学デバイス用アノード。
【請求項36】
前記導電性材料は、約60重量%から約90重量%の範囲内の量で前記第1の導電性層中に存在する、請求項35に記載のアノード。
【請求項37】
前記導電性材料は、導電性粒子を含む、請求項35に記載のアノード。
【請求項38】
前記導電性粒子は、導電性炭素粒子を含む、請求項37に記載のアノード。
【請求項39】
前記導電性粒子は、導電性金属粒子をさらに含む、請求項38に記載のアノード。
【請求項40】
前記導電性粒子は、導電性金属粒子を含む、請求項37に記載のアノード。
【請求項41】
前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム、ポリアクリル酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項35に記載のアノード。
【請求項42】
前記バインダーが前記ポリアクリル酸を含む、請求項41に記載のアノード。
【請求項43】
前記第1のアノード活性金属層は、第1の金属箔を含み、前記第1の導電層は、前記第1の金属箔を前記集電体に固定する、請求項35に記載のアノード。
【請求項44】
前記導電層は、約0.1μmから約5μmの範囲内の厚みを有する、請求項35に記載のアノード。
【請求項45】
前記第1の導電層は、約0.5μmから約2μmの範囲内の厚みを有する、請求項35に記載のアノード。
【請求項46】
前記第1の導電層は、約1μmの厚みを有する、請求項35に記載のアノード。
【請求項47】
前記第1の導電層は、約0.1g/m
2から約2g/m
2の面積重量で存在する、請求項35に記載のアノード。
【請求項48】
前記集電体は、銅を含み、前記第1のアノード活性金属層は、リチウムを含む、請求項35に記載のアノード。
【請求項49】
前記集電体は、約4μmから約10μmの範囲内の厚みを有し、前記第1の金属箔は、約15μmから約25μmの範囲内の厚みを有する、請求項48に記載のアノード。
【請求項50】
前記第1の導電層は、本質的に、導電性炭素粒子と、ポリアクリル酸を含み、前記第1の導電層中で前記導電性炭素粒子を結着するバインダーとからなる、請求項48に記載のアノード。
【請求項51】
前記第1の導電層は、約0.1μmから約5μmの範囲内の厚みを有する、請求項48に記載のアノード。
【請求項52】
前記第1の導電層は、約0.5μmから約2μmの範囲内の厚みを有する、請求項48に記載のアノード。
【請求項53】
前記第1の導電層は、約1μmの厚みを有する、請求項48に記載のアノード。
【請求項54】
前記第1の導電層は、約0.1g/m
2から約2g/m
2の面積重量で存在する、請求項48に記載のアノード。
【請求項55】
前記活性領域の前記第2の面において前記集電体に固定される第2のアノード活性金属層と、
前記集電体と前記第2のアノード活性金属層との間に位置し、前記第2のアノード活性金属層を前記集電体に固定する第2の導電層と
をさらに含む、請求項35に記載のアノード。
【請求項56】
前記第2のアノード活性金属層は、第2の金属箔を含む、請求項55に記載のアノード。
【請求項57】
前記第2の導電層は、請求項
35から
56のいずれか1項に記載の前記第1の導電層と同一である、請求項55に記載のアノード。
【請求項58】
前記第1のアノード活性金属層は、少なくとも20mmの幅と、少なくとも120mmの長さとを有するリチウム箔を含む、請求項35に記載のアノード。
【請求項59】
前記集電体は、銅を含む、請求項58に記載のアノード。
【請求項60】
前記集電体は、固体金属箔を含む、請求項35に記載のアノード。
【請求項61】
前記集電体は、穿孔された金属箔を含む、請求項35に記載のアノード。
【請求項62】
前記集電体は、金属メッシュを含む、請求項35に記載のアノード。
【請求項63】
前記集電体は、約4μmから約10μmの範囲内の厚みを有する、請求項35に記載のアノード。
【請求項64】
カソードと、電解質と、請求項35から
56のいずれか1項に記載のアノードと
を含む、電気化学デバイス。
【国際調査報告】