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特表2025-503978正極材料前駆体、正極材料、その調製方法およびナトリウムイオン電池
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  • 特表-正極材料前駆体、正極材料、その調製方法およびナトリウムイオン電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】正極材料前駆体、正極材料、その調製方法およびナトリウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20250130BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20250130BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20250130BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20250130BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
H01M4/525
C01G53/00 A
H01M4/505
H01M10/054
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544489
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 CN2022115053
(87)【国際公開番号】W WO2024000777
(87)【国際公開日】2024-01-04
(31)【優先権主張番号】202210760281.5
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508149663
【氏名又は名称】▲荊▼▲門▼市格林美新材料有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522263633
【氏名又は名称】格林美股▲ブン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GEM CO,. LTD
【住所又は居所原語表記】NUMBER 2008, 20F BLOCK A, MARINA BAY CENTER, SOUTH OF XINGHUA RD., BAO’AN CENTER, SHENZHEN, GUANGDONG 518101, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】許 開 華
(72)【発明者】
【氏名】薛 暁 斐
(72)【発明者】
【氏名】張 坤
(72)【発明者】
【氏名】華 文 超
(72)【発明者】
【氏名】李 聡
(72)【発明者】
【氏名】範 亮 ▲ジャオ▼
(72)【発明者】
【氏名】李 雪 倩
【テーマコード(参考)】
4G048
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AK03
5H029CJ08
5H029CJ28
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ10
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA15
5H050CA08
5H050CA09
5H050DA02
5H050FA18
5H050GA10
5H050GA14
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA10
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】本開示は、正極材料前駆体、正極材料、その調製方法およびナトリウムイオン電池を開示する。
【解決手段】前記正極材料前駆体は、コアと、前記コアの外周を包むシェルとを含み、前記コアはNiFeMn1-x-y(OH)であり、ただし、0.2≦x≦0.7であり、0.2≦y≦0.5であり、前記シェルはMMn1-a(OH)であり、ただし、Mはニッケルまたは鉄であり、0.05≦a≦0.7であり、前記コアおよび前記シェルは、いずれもフレーク状一次粒子で堆積されてなる。本願に係る正極材料前駆体は、コアおよびシェルの成分を制御し、フレーク状一次粒子で堆積された疎構造と合わせることにより、O3相コアとP2相シェルを有するヘテロ構造の正極材料を得ることができ、2相構造の相乗作用により、高い容量と高いサイクル安定性とを両立させ、ナトリウムイオン電池の電気化学性能を更に向上させることができる。また、本願に係る正極材料の調製方法は簡単で、コストが低く、工業化大規模生産に適する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極材料前駆体であって、
前記正極材料前駆体は、コアと、前記コアの外周を包むシェルとを含み、前記コアはNiFeMn1-x-y(OH)であり、ただし、0.2≦x≦0.7であり、0.2≦y≦0.5であり、前記シェルはMMn1-a(OH)であり、ただし、Mはニッケルまたは鉄であり、0.05≦a≦0.7であり、前記コアおよび前記シェルは、いずれもフレーク状一次粒子で堆積されてなる、
正極材料前駆体。
【請求項2】
前記正極材料前駆体の中のコアの形態は、球形または類球形を含む、
請求項1に記載の正極材料前駆体。
【請求項3】
前記正極材料前駆体の中のコアの粒径は2~4.5μmである、
請求項1または2に記載の正極材料前駆体。
【請求項4】
前記正極材料前駆体の形態は、球形または類球形を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の正極材料前駆体。
【請求項5】
前記正極材料前駆体の粒径は2.5~4.5μmである、
請求項1~4のいずれか1項に記載の正極材料前駆体。
【請求項6】
第1金属塩混合溶液、錯化剤溶液および沈殿剤溶液を同時に反応装置中に注入し、注入過程で一次共沈反応を行って正極材料前駆体のコアを取得し、その後、第2金属塩混合溶液、前記錯化剤溶液および前記沈殿剤溶液を同時に前記反応装置中に注入し、注入過程で二次共沈反応を行い、前記正極材料前駆体を取得することを含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の正極材料前駆体の調製方法。
【請求項7】
前記第1金属塩混合溶液は、ニッケル塩、鉄塩、マンガン塩および溶剤で混合して調製される、
請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
前記第1金属塩混合溶液の中の金属イオンの総濃度は1~4mol/Lである、
請求項6または7に記載の調製方法。
【請求項9】
前記ニッケル塩、前記鉄塩および前記マンガン塩のモル比はx:y:(1-x-y)であり、ただし、0.2≦x≦0.7であり、0.2≦y≦0.5である、
請求項6~8のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項10】
前記ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケルまたは硝酸ニッケルのうちのいずれか1種を含み、
好ましくは、前記鉄塩は硫酸第一鉄または塩化第一鉄を含み、
好ましくは、前記マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガンまたは硝酸マンガンのうちのいずれか1種を含み、
好ましくは、前記溶剤は脱イオン水を含み、
好ましくは、前記錯化剤の濃度は1~3mol/Lであり、
好ましくは、前記錯化剤はアンモニア水錯化剤を含み、
好ましくは、前記沈殿剤の濃度は1~3mol/Lであり、
好ましくは、前記沈殿剤はアルカリ溶液を含み、
好ましくは、前記アルカリ溶液は、水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液を含む、
請求項6~9のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項11】
前記一次共沈反応において、前記第1金属塩混合溶液を8~12kg/hの流量で前記反応装置中に注入し、
好ましくは、前記一次共沈反応において、前記錯化剤溶液を1~3kg/hの流量で前記反応装置中に注入し、
好ましくは、前記一次共沈反応において、前記沈殿剤溶液を2.4~3kg/hの流量で前記反応装置中に注入し、
好ましくは、前記一次共沈反応は40~60℃で行われ、
好ましくは、前記一次共沈反応の過程において、前記反応装置中の溶液のpHは9.5~11であり、
好ましくは、前記一次共沈反応の過程において、前記反応装置中の溶液内の錯化剤の濃度は7~11g/Lであり、
好ましくは、前記一次共沈反応は撹拌下で行われ、
好ましくは、前記一次共沈反応の撹拌回転数は300~380r/minであり、
好ましくは、前記一次共沈反応の時間は60~90hであり、
好ましくは、前記一次共沈反応の前に、まず、前記反応装置中に脱イオン水、前記錯化剤溶液および前記沈殿剤溶液を加えて前記一次共沈反応のベース液とする、
請求項6~10のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項12】
前記第2金属塩混合溶液は、ニッケル塩、マンガン塩および溶剤で混合して調製され、または前記第2金属塩混合溶液は、鉄塩、マンガン塩および溶剤で混合して調製され、
好ましくは、前記第2金属塩混合溶液内の金属イオンの総濃度は1~4mol/Lであり、
好ましくは、前記ニッケル塩と前記マンガン塩とのモル比はa:(1-a)であり、または前記鉄塩と前記マンガン塩とのモル比はa:(1-a)であり、ただし、0.05≦a≦0.7であり、
好ましくは、前記ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケルまたは硝酸ニッケルのうちのいずれか1種を含み、
好ましくは、前記鉄塩は硫酸第一鉄または塩化第一鉄を含み、
好ましくは、前記マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガンまたは硝酸マンガンのうちのいずれか1種を含み、
好ましくは、前記溶剤は脱イオン水を含み、
好ましくは、前記二次共沈反応において、前記第2金属塩混合溶液を8~12kg/hの流量で前記反応装置中に注入し、
好ましくは、前記二次共沈反応において、前記錯化剤溶液を1~3kg/hの流量で前記反応装置中に注入し、
好ましくは、前記二次共沈反応において、前記沈殿剤溶液を2.4~3kg/hの流量で前記反応装置中に注入し、
好ましくは、前記二次共沈反応は40~60℃で行われ、
好ましくは、前記二次共沈反応の過程において、前記反応装置中の溶液のpHは8.5~11であり、
好ましくは、前記二次共沈反応の過程において、前記反応装置中の溶液内の錯化剤の濃度は8~12g/Lであり、
好ましくは、前記二次共沈反応は撹拌下で行われ、
好ましくは、前記二次共沈反応の撹拌回転数は250~350r/minであり、
好ましくは、前記二次共沈反応の時間は2~8hである、
請求項6~11のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項13】
正極材料であって、
前記正極材料は、請求項1~5のいずれか1項に記載の正極材料前駆体で調製され、
前記正極材料は、O3相コアと、前記O3相コアの外周を包むP2相シェルとを含み、前記O3相コアはNa(NiFeMn1-x-y)Oであり、ただし、0.2≦x≦0.7であり、0.2≦y≦0.5であり、前記P2相シェルはNa(MMn1-a)Oであり、ただし、Mはニッケルまたは鉄であり、0.05≦a≦0.7であり、0.67≦b≦0.78であり、前記O3相コアおよび前記P2相シェルは、いずれもフレーク状一次粒子で堆積されてなる、
正極材料。
【請求項14】
正極材料前駆体、分散剤およびナトリウム源を混合してから焼成し、前記正極材料を取得することを含む、
請求項13に記載の正極材料の調製方法。
【請求項15】
前記分散剤はポリビニルピロリドンを含み、
好ましくは、前記ナトリウム源は炭酸ナトリウムを含み、
好ましくは、前記正極材料前駆体、前記分散剤および前記ナトリウム源を乳鉢中で研磨混合し、
好ましくは、前記焼成の温度は800~1000℃であり、
好ましくは、前記焼成の時間は12~20hである、
請求項14に記載の調製方法。
【請求項16】
請求項13に記載の正極材料を含む、
ナトリウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施例は、電池生産製造の技術分野に関し、例えば、正極材料前駆体、正極材料、その調製方法およびナトリウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムと化学的性質が類似するナトリウム元素は、資源埋蔵量が豊富であるだけでなく、広く分布しているため、ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池の代わりに大規模エネルギー貯蔵分野で広く適用されることが最も有望な二次電池と考えられる。それとともに、リチウムイオン電池と比べて、ナトリウムイオン電池はさらにコストメリットを持ち、且つ、ナトリウムイオン電池に毒性重金属が含まれておらず、電池の構造がより簡単で、回収再利用もより容易にとなるため、持続可能な発展の潜在力を更に有する。
【0003】
しかし、ナトリウムイオンはリチウムイオンよりも半径が大きいため、正極材料は充放電過程で複雑な多重相転移に直面し、リチウムイオン電池と比べて構造がより不安定で、比容量もリチウムイオン電池よりも低い。現在、通常、層状の正極材料をナトリウムイオン電池の正極材料として採用し、ナトリウムイオン配位環境の違いによって、層状の正極材料は主にP2相およびO3相に分けられる。この中、P2相は、ナトリウム欠乏型の化合物であり、開放的な角柱形通路を有し、迅速なイオン伝導率および高い構造安定性を提供することができるが、その容量が低い。一方、O3相は高い比容量の優位性を持っているが、構造安定性が悪いことで、サイクル安定性が悪くなる。両者も高い構造安定性と高い比容量とを両立させることができない。従って、如何にナトリウムイオン電池のサイクル安定性と比容量とを同時に向上させるかは、ナトリウムイオン電池の大規模適用が直面している重要な問題となる。
【0004】
CN108987708Aは、ナトリウムイオン電池の正極材料、その調製方法およびナトリウムイオン電池を開示し、P2相のNa0.67Ni0.167Co0.167Mn0.67基体に1層のZrOを被覆し、被覆層の質量が基体材料の質量の1~5%である。ニッケル塩、コバルト塩およびマンガン塩と、NaCOおよびアンモニア水錯化剤とを共沈し、球形粒子前駆体を取得し、焼成して基体材料Na0.67Ni0.167Co0.167Mn0.67を取得し、基体とZr(CO)とを混合させて溶剤を蒸発させ、ZrOで被覆されたナトリウムイオン正極材料を取得し、該方法は、被覆時に溶剤を蒸発乾固させる必要があり、処理プロセスが複雑であり、環境に優しくない。
【0005】
CN113921809Aは、P2型層状ナトリウムイオン電池の正極材料およびその調製方法を開示し、Naイオンは遷移金属層の中間に位置し、アルカリ金属層を形成し、Naサイトに遷移金属サイトと共ドープし、材料の電気化学性能を向上させ、正極材料の化学式はNa0.67-xMn1-yであり、M=Zn、Al、Mg、K、Ca、Liで、N=Fe、Cr、V、Ni、Ti、Cu、Nb、Coである。該方法は、ゾル・ゲル法により微量元素を定量的にドープし、分子間のドープを実現するが、依然としてP2単相構造であり、比容量が高くないとともに、ゾル・ゲル法が実験室での調製のみに適用され、大規模生産に適用されない。
【0006】
CN113292113Aは、ナトリウムイオン電池のO3相層状酸化物正極材料およびその調製方法を開示し、前記調製方法は、遷移金属塩と可溶性ナトリウム塩とを脱イオン水に溶解して混合し、混合塩溶液を取得することと、前記混合塩溶液を噴霧熱分解し、ナトリウム含有酸化物前駆体を取得することと、前記ナトリウム含有酸化物前駆体をシート状にプレス成形させてから高温固相焼結し、O3相層状酸化物正極材料を取得することとを含む。該調製方法で得られた層状の正極材料は、依然として単相構造であり、電池の充放電中に正極材料の層間滑りが発生しやすく、構造安定性が悪いという問題を解決できない。
【0007】
従って、如何に調製プロセスが簡単で、工業化大規模生産を実現しやすい上で、ナトリウムイオン電池の正極材料のサイクル安定性と比容量とを同時に向上させるかは、ナトリウムイオン電池の大規模適用の実現に非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下は、本稿で詳細に説明する主題に対する概要である。本概要は、特許請求の範囲を制限するものではない。
【0009】
本願の実施例は、正極材料前駆体、正極材料、その調製方法およびナトリウムイオン電池を提供し、正極材料前駆体は、コアおよびシェルの成分を制御し、かつフレーク状一次粒子で堆積された疎構造と合わせることにより、O3相コアとP2相シェルを有するヘテロ構造の正極材料を得ることができ、更にナトリウムイオン電池の正極材料のサイクル安定性と比容量とを同時に向上させる効果を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
態様1において、本願の実施例は、正極材料前駆体であって、
前記正極材料前駆体はコアと、前記コアの外周を包むシェルとを含み、前記コアはNiFeMn1-x-y(OH)であり、ただし、0.2≦x≦0.7であり、0.2≦y≦0.5であり、前記シェルはMMn1-a(OH)であり、ただし、Mはニッケルまたは鉄であり、0.05≦a≦0.7であり、前記コアおよび前記シェルは、いずれもフレーク状一次粒子で堆積されてなる、
正極材料前駆体を提供する。
【0011】
本願において、正極材料前駆体のコアおよびシェルの成分は異なり、且つ、そのコアおよびシェルは、いずれもフレーク状一次粒子で堆積された疎構造であり、このような疎構造は、後にその内部へのナトリウムイオンの拡散に寄与する。正極材料前駆体のコアおよびシェルの成分を制御し、フレーク状一次粒子で堆積された疎構造と合わせることにより、後でO3相コアとP2相シェルを有するへテロ構造の正極材料を取得することに寄与し、この中、O3相コアが高い容量を提供し、P2相シェルが安定な界面層を構築し、2相構造の相乗作用により、比容量とサイクル安定性とを両立させる効果を達成し、正極材料の電気化学性能を著しく向上させる。なお、本願におけるコアおよびシェルがいずれもフレーク状一次粒子で堆積された疎構造であることは、コアおよびシェルのサブユニットの形態がフレーク状であり、結晶相により定義された層状構造と異なり、且つ、コアおよびシェルがいずれも疎構造であり、同様に層状構造と異なることを意味する。
【0012】
また、本願において、正極材料前駆体は、NiFeMn1-x-y(OH)@MMn1-a(OH)と表すことができ、その意味は、MMn1-a(OH)がNiFeMn1-x-y(OH)の外面に被覆されることである。
【0013】
本願に係る正極材料前駆体は、コアおよびシェルの成分を制御し、フレーク状一次粒子で堆積された疎構造と合わせることにより、後にO3相コアおよびP2相シェルを有するへテロ構造の正極材料を形成することを促し、ナトリウムイオン電池の正極材料のサイクル安定性と比容量とを同時に向上させる効果を実現する。
【0014】
本願の1つの好ましい技術案として、前記正極材料前駆体の中のコアの形態は、球形または類球形を含む。
【0015】
好ましくは、前記正極材料前駆体の中のコアの粒径は2~4.5μmであり、例えば、2μm、2.5μm、3μm、3.5μm、4μmまたは4.5μmであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0016】
好ましくは、前記正極材料前駆体の形態は、球形または類球形を含む。
好ましくは、前記正極材料前駆体の粒径は2.5~4.5μmであり、例えば、2.5μm、3μm、3.5μm、4μmまたは4.5μmであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0017】
また、本願において、正極材料前駆体のコア粒径および正極材料前駆体の粒径は、いずれも平均粒径を意味する。
【0018】
態様2において、本願の実施例は、
第1金属塩混合溶液、錯化剤溶液および沈殿剤溶液を同時に反応装置中に注入し、注入過程で一次共沈反応を行って正極材料前駆体のコアを取得し、その後、第2金属塩混合溶液、前記錯化剤溶液および前記沈殿剤溶液を同時に前記反応装置中に注入し、注入過程で二次共沈反応を行い、前記正極材料前駆体を取得することを含む、
態様1に記載の正極材料前駆体の調製方法を提供する。
【0019】
本願において、一次共沈反応を行う時、第1金属塩溶液、錯化剤溶液および沈殿剤溶液をそれぞれ一定の流量で同時に反応装置中に注入し、注入しながら一次共沈反応を行い、各成分の注入が停止すると、一次共沈反応が終了し、必要な第1金属塩溶液、錯化剤溶液および沈殿剤溶液を全て反応装置に入れてから共沈反応を開始することではない。同様して、本願における二次共沈反応の操作過程は、一次共沈反応の操作過程と同じである。つまり、本願における一次共沈反応および二次共沈反応は、いずれも連続注入、連続反応の過程である。
【0020】
本願は、連続注入、連続反応の段階的な共沈過程を採用するため、正極材料前駆体のコアおよびシェルの成分をより効果的に制御するとともに、共沈過程における反応装置中の混合溶液の沈殿剤濃度および錯化剤濃度をより効果的に調整制御することもでき、結晶の核生成速度と成長速度とのバランスを調整制御し、更にコアおよびシェルにいずれもフレーク状一次粒子で堆積された疎構造を形成させる。
【0021】
本願の1つの好ましい技術案として、前記第1金属塩混合溶液は、ニッケル塩、鉄塩、マンガン塩および溶剤で混合して調製される。
【0022】
好ましくは、前記第1金属塩混合溶液の中の金属イオンの総濃度は1~4mol/Lであり、例えば、1mol/L、1.5mol/L、2mol/L、2.5mol/L、3mol/L、3.5mol/Lまたは4mol/Lであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0023】
好ましくは、前記ニッケル塩、前記鉄塩および前記マンガン塩のモル比はx:y:(1-x-y)であり、ただし、0.2≦x≦0.7であり、0.2≦y≦0.5であり、例えば、xは0.2、0.3、0.4、0.5、0.6または0.7であってもよく、yは0.2、0.3、0.4または0.5であってもよい。
【0024】
好ましくは、前記ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケルまたは硝酸ニッケルのうちのいずれか1種を含む。
【0025】
好ましくは、前記鉄塩は硫酸第一鉄または塩化第一鉄を含む。
好ましくは、前記マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガンまたは硝酸マンガンのうちのいずれか1種を含む。
【0026】
好ましくは、前記溶剤は脱イオン水を含む。
好ましくは、前記錯化剤の濃度は1~3mol/Lであり、例えば、1mol/L、1.5mol/L、2mol/L、2.5mol/Lまたは3mol/Lであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0027】
好ましくは、前記錯化剤はアンモニア水錯化剤を含む。
本願において、アンモニア水と脱イオン水とを混合させてアンモニア水錯化剤溶液を調製する。
【0028】
好ましくは、前記沈殿剤の濃度は1~3mol/Lであり、例えば、1mol/L、1.5mol/L、2mol/L、2.5mol/Lまたは3mol/Lであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0029】
好ましくは、前記沈殿剤はアルカリ溶液を含む。
好ましくは、前記アルカリ溶液は、水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液を含む。
【0030】
本願において、沈殿剤粒子を脱イオン水に溶解して沈殿剤溶液を調製する。
本願の1つの好ましい技術案として、前記一次共沈反応において、前記第1金属塩混合溶液を8~12kg/hの流量で前記反応装置中に注入し、例えば、8kg/h、8.5kg/h、9kg/h、9.5kg/h、10kg/h、10.5kg/h、11kg/h、11.5kg/hまたは12kg/hであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0031】
好ましくは、前記一次共沈反応において、前記錯化剤溶液を1~3kg/hの流量で前記反応装置中に注入し、例えば、1kg/h、1.5kg/h、2kg/h、2.5kg/hまたは3kg/hであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0032】
好ましくは、前記一次共沈反応において、前記沈殿剤溶液を2.4~3kg/hの流量で前記反応装置中に注入し、例えば、2.4kg/h、2.5kg/h、2.6kg/h、2.7kg/h、2.8kg/h、2.9kg/hまたは3kg/hであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0033】
本願は、一次共沈反応における第1金属塩混合溶液の流量を8~12kg/h、錯化剤溶液の流量を1~3kg/h、沈殿剤溶液の流量を2.4~3kg/hに限定し、その原因として、第1金属塩溶液、錯化剤溶液および沈殿剤溶液の流量の連携により、一次共沈反応のpHの安定性(即ち、反応装置中の溶液内の沈殿剤濃度の安定性)および反応装置中の溶液内の錯化剤濃度の安定性を維持することができ、一次共沈反応全過程の系の安定性を維持し、フレーク状一次粒子で堆積された疎なコア構造の形成に寄与することであり、必要な第1金属塩混合溶液、錯化剤溶液および沈殿剤溶液を全て反応装置に入れてから共沈を行い、沈殿剤および錯化剤の持続的消費により共沈反応のpHおよび錯化剤濃度が徐々に低下し、系の安定性が悪いため、コアの成分および形態を精確に制御できないという問題を回避する。
【0034】
好ましくは、前記一次共沈反応は40~60℃で行われ、例えば、40℃、45℃、50℃、55℃または60℃であってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0035】
好ましくは、前記一次共沈反応の過程において、前記反応装置中の溶液のpHは9.5~11であり、例えば、9.5、10、10.5または11であってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0036】
好ましくは、前記一次共沈反応の過程において、前記反応装置中の溶液内の錯化剤の濃度は7~11g/Lであり、例えば、7g/L、7.5g/L、8g/L、8.5g/L、9g/L、9.5g/L、10g/L、10.5g/Lまたは11g/Lであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0037】
本願は、第1金属塩溶液、錯化剤溶液および沈殿剤溶液の流量の連携により、一次共沈反応のpHを9.5~11、錯化剤濃度を7~11g/Lに制御することができ、ここで、pHは、主に一次共沈反応における結晶の核生成速度を調整制御することに用いられ、錯化剤濃度は、主に一次共沈反応における結晶の成長速度を調整制御することに用いられ、これにより、pHおよび錯化剤濃度を適当な範囲内に制御することにより、結晶の核生成と結晶の成長の速度を動的にバランスさせることができ、フレーク状一次粒子で堆積された疎なコア構造を取得することに寄与するとともに、コア粒径の均一性を効果的に制御する。
【0038】
好ましくは、前記一次共沈反応は撹拌下で行われる。
好ましくは、前記一次共沈反応の撹拌回転数は300~380r/minであり、例えば、300r/min、310r/min、320r/min、330r/min、340r/min、350r/min、360r/min、370r/minまたは380r/minであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0039】
本願は、一次共沈反応の撹拌回転数を300~380r/minに限定し、回転数が300r/minよりも低いと、二次粒子の凝集現象が厳しくなり、球形度が悪い。回転数が380r/minよりも高いと、共沈過程で粒径が成長しにくくなるとともに、微粉が発生しやすく、正極材料の電気化学性能に影響を及ぼす。
【0040】
本願において、一次共沈反応過程における反応装置中の溶液のpHおよび錯化剤濃度を調整制御し、適当な撹拌回転数と合わせることによれば、フレーク状一次粒子で堆積された球形/類球形コアをより良く取得することができる。
【0041】
好ましくは、前記一次共沈反応の時間は60~90hであり、例えば、60h、65h、70h、75h、80h、85hまたは90hであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0042】
好ましくは、前記一次共沈反応の前に、まず、前記反応装置中に脱イオン水、前記錯化剤溶液および前記沈殿剤溶液を加えて前記一次共沈反応のベース液とする。
【0043】
本願において、反応装置中に一定量の脱イオン水、錯化剤溶液および沈殿剤溶液を加えてベース液とし、結晶の核生成および成長が溶液系で行われることを確保し、後の共沈反応系の安定性を維持し、ベース液のpHが10.5~11であり、錯化剤の濃度が7~10である。200Lの反応釜を反応装置として採用する場合、ベース液の総量が100Lであってもよい。
【0044】
本願の1つの好ましい技術案として、前記第2金属塩混合溶液は、ニッケル塩、マンガン塩および溶剤で混合して調製され、または前記第2金属塩混合溶液は、鉄塩、マンガン塩および溶剤で混合して調製される。
【0045】
好ましくは、前記第2金属塩混合溶液内の金属イオンの総濃度は1~4mol/Lであり、例えば、1mol/L、1.5mol/L、2mol/L、2.5mol/L、3mol/L、3.5mol/Lまたは4mol/Lであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0046】
好ましくは、前記ニッケル塩と前記マンガン塩とのモル比はa:(1-a)であり、または前記鉄塩と前記マンガン塩とのモル比はa:(1-a)であり、ただし、0.05≦a≦0.7であり、例えば、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6または0.7であってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0047】
好ましくは、前記ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケルまたは硝酸ニッケルのうちのいずれか1種を含む。
【0048】
好ましくは、前記鉄塩は硫酸第一鉄または塩化第一鉄を含む。
好ましくは、前記マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガンまたは硝酸マンガンのうちのいずれか1種を含む。
【0049】
好ましくは、前記溶剤は脱イオン水を含む。
好ましくは、前記二次共沈反応において、前記第2金属塩混合溶液を8~12kg/hの流量で前記反応装置中に注入し、例えば、8kg/h、8.5kg/h、9kg/h、9.5kg/h、10kg/h、10.5kg/h、11kg/h、11.5kg/hまたは12kg/hであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0050】
好ましくは、前記二次共沈反応において、前記錯化剤溶液を1~3kg/hの流量で前記反応装置中に注入し、例えば、1kg/h、1.5kg/h、2kg/h、2.5kg/hまたは3kg/hであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0051】
好ましくは、前記二次共沈反応において、前記沈殿剤溶液を2.4~3kg/hの流量で前記反応装置中に注入し、例えば、2.4kg/h、2.5kg/h、2.6kg/h、2.7kg/h、2.8kg/h、2.9kg/hまたは3kg/hであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0052】
同様に、本願は、第2金属塩溶液、錯化剤溶液および沈殿剤溶液の流量の連携により、二次共沈反応のpHの安定性および錯化剤濃度の安定性を維持することができ、二次共沈反応全過程の系の安定性を維持し、コアの外面にフレーク状一次粒子で堆積された疎なシェル構造を形成することに寄与しており、必要な第2金属塩混合溶液、錯化剤溶液および沈殿剤溶液を全て反応装置に入れてから共沈を行い、沈殿剤および錯化剤の持続的消費により共沈反応のpHおよび錯化剤濃度が徐々に低下し、系の安定性が悪いため、コアの成分および形態を精確に制御できないという問題を回避する。また、二次共沈反応に採用される錯化剤溶液および沈殿剤溶液は、それぞれ一次共沈反応に採用される錯化剤溶液および沈殿剤溶液と同じである。
【0053】
好ましくは、前記二次共沈反応は40~60℃で行われ、例えば、40℃、45℃、50℃、55℃または60℃であってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0054】
好ましくは、前記二次共沈反応の過程において、前記反応装置中の溶液のpHは8.5~11であり、例えば、8.5、9、9.5、10、10.5または11であってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0055】
好ましくは、前記二次共沈反応の過程において、前記反応装置中の溶液内の錯化剤の濃度は8~12g/Lであり、例えば、8g/L、8.5g/L、9g/L、9.5g/L、10g/L、10.5g/Lまたは11g/Lであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0056】
同様に、本願において、pHは、主に二次共沈反応における結晶の核生成速度を調整制御することに用いられ、錯化剤濃度は、主に二次共沈反応における結晶の成長速度を調整制御することに用いられ、これにより、pHおよび錯化剤濃度を適当な範囲内に制御することにより、結晶の核生成と結晶の成長の速度を調整制御することができ、コア表面にフレーク状一次粒子で堆積された疎なシェル構造を形成することに寄与する。二次共沈過程において、コア表面の結晶粒子をそのまま種結晶として成長してシェルを形成することができ、且つ、二次共沈過程において、結晶成長がより困難であるため、二次共沈は、pHが一次共沈よりもやや低いが、錯化剤濃度が一次共沈よりもやや高い。
【0057】
好ましくは、前記二次共沈反応は撹拌下で行う。
好ましくは、前記二次共沈反応の撹拌回転数は250~350r/minであり、例えば、250r/min、260r/min、270r/min、280r/min、290r/min、300r/min、310r/min、320r/min、330r/min、340r/minまたは350r/minであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0058】
本願は、二次共沈反応の撹拌回転数を250~350r/minに限定し、回転数が250r/minよりも低いと、二次粒子の凝集現象が厳しくなり、球形度が悪いとともに、被覆が不均一になり、回転数が350r/minよりも高いと、粒子の成長速度が限られるとともに、微粉が発生しやすく、正極材料の電気化学性能に影響を及ぼす。
【0059】
本願において、二次共沈反応過程における反応装置中の溶液のpHおよび錯化剤濃度を調整制御し、及び適当な撹拌回転数と合わせることによれば、フレーク状一次粒子で堆積されたシェルをより良く取得することができ、球形/類球形の正極材料前駆体を取得する。
【0060】
好ましくは、前記二次共沈反応の時間は2~8hであり、例えば、2h、3h、4h、5h、6h、7hまたは8hであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0061】
態様3において、本願の実施例は、
態様1に記載の正極材料前駆体で調製される、
正極材料を提供する。
【0062】
前記正極材料は、O3相コアと、前記O3相コアの外周を包むP2相シェルとを含み、前記O3相コアはNa(NiFeMn1-x-y)Oであり、ただし、0.2≦x≦0.7であり、0.2≦y≦0.5であり、前記P2相シェルはNa(MMn1-a)Oであり、ただし、Mはニッケルまたは鉄であり、0.05≦a≦0.7であり、0.67≦b≦0.78であり、前記O3相コアおよび前記P2相シェルは、いずれもフレーク状一次粒子で堆積されてなる。
【0063】
本願に係る正極材料は、P2相シェルでO3相コアを包む構造であり、O3相の高い容量およびP2相の高い安定性の利点は、結晶構造レベルでナトリウムイオン正極材料が直面している容量と安定性とを両立させることができないという問題を解決する。また、本願に係る正極材料の粒径と正極材料前駆体の粒径と差は大きくない。
【0064】
また、本願において、正極材料は、Na(NiFeMn1-x-y)O@Na(MaMn1-a)Oと表すことができ、その意味は、Na(MaMn1-a)OでNa(NiFeMn1-x-y)Oの外面を包むことである。
【0065】
態様4において、本願の実施例は、
正極材料前駆体、分散剤およびナトリウム源を混合してから焼成し、前記正極材料を取得することを含む、
態様3に記載の正極材料の調製方法を提供する。
【0066】
本願は、正極材料前駆体とナトリウム源との混合過程で分散剤を加え、高温でナトリウムイオンが正極材料前駆体粒子の内部へ拡散することを促し、更にコアがO3相、シェルがP2相の正極材料構造の形成を促し、且つ、調製方法が簡単で、コストが低く、工業化大規模生産に適する。
【0067】
本願の1つの好ましい技術案として、前記分散剤はポリビニルピロリドンを含む。
好ましくは、前記ナトリウム源は炭酸ナトリウムを含む。
【0068】
好ましくは、前記正極材料前駆体、前記分散剤および前記ナトリウム源を乳鉢中で研磨混合する。
【0069】
好ましくは、前記焼成の温度は800~1000℃であり、例えば、800℃、820℃、850℃、880℃、900℃、920℃、950℃、980℃または1000℃であってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0070】
好ましくは、前記焼成の時間は12~20hであり、例えば、12h、13h、14h、15h、16h、17h、18h、19hまたは20hであってもよいが、列挙された数値に限定されず、該数値範囲内の列挙されていない他の数値も同様に適用される。
【0071】
態様5において、本願の実施例は、
態様3に記載の正極材料を含む、
ナトリウムイオン電池を提供する。
【0072】
本願に係る正極材料で調製されたナトリウムイオン電池は、その比容量およびサイクル安定性がいずれも著しく向上し、ナトリウムイオン電池の電気化学性能を更に向上させ、ナトリウムイオン電池の産業化発展を促進する。
【発明の効果】
【0073】
関連技術と比べ、本願の実施例の有益な効果は、以下のとおりである。
本願の実施例に係る正極材料前駆体は、コアおよびシェルの成分を制御し、フレーク状一次粒子で堆積された疎構造が焼成過程でナトリウムイオンの内部への拡散に寄与する特徴と合わせることにより、O3相コアとP2相シェルを有するヘテロ構造の正極材料を得ることができ、この中、O3相コアは高い容量を提供し、P2相シェルは安定な界面層を構築し、2相構造の相乗作用により、高い容量と高いサイクル安定性とを両立させ、ナトリウムイオン電池の電気化学性能を更に向上させることができる。また、本願に係る正極材料の調製方法は簡単で、コストが低く、工業化大規模生産に適する。
【0074】
図面および詳細な説明を閲読して理解してから、他の態様も理解できる。
図面は、本発明の実施例の技術案に対するさらなる理解を提供するためのものであり、明細書の一部を構成し、本願の実施例と共に本発明の技術案を解釈するためのものであり、本発明の技術案を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】本願の実施例1に係る正極材料前駆体のSEM図である。
図2】本願の実施例1に係る正極材料前駆体の断面のSEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下、具体的な実施形態により本願の技術案について更に説明する。当業者であれば、前記実施例は、本願を理解するためのものに過ぎず、本願を具体的に制限するものではない。
【実施例1】
【0077】
本実施例は、正極材料の調製方法を提供し、前記調製方法は、以下のステップを含む。
(1)硫酸ニッケル、硫酸第一鉄および硫酸マンガンを0.25:0.5:0.25のモル比で脱イオン水に溶解して金属イオンの総濃度が1mol/Lの第1金属塩混合溶液を調製し、硫酸第一鉄および硫酸マンガンを0.5:0.5のモル比で脱イオン水に溶解して金属イオンの総濃度が2mol/Lの第2金属塩混合溶液を調製し、それとともに、濃度が1mol/Lのアンモニア水錯化剤溶液および濃度が2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を調製した。
【0078】
(2)200Lの反応釜に、脱イオン水、ステップ(1)で得られたアンモニア水錯化剤溶液および水酸化ナトリウム溶液を加えてベース液として系の安定を維持し、ここで、ベース液の全体積は100Lであり、ベース液内のアンモニア水錯化剤の濃度を9~10g/Lの範囲内に制御し、pHを10.6~11の範囲内に制御し、その後、それぞれ8kg/h、2kg/hおよび2.5kg/hの流量で第1金属塩混合溶液、アンモニア水錯化剤溶液および水酸化ナトリウム溶液を同時に反応釜中に注入し、45℃の温度、340r/minの撹拌回転数で一次共沈反応を80h行い、平均粒径3.8μmの正極材料前駆体のコアNi0.25Fe0.5Mn0.25(OH)を取得し、ここで、一次共沈反応過程で反応釜中の溶液のpHを9.5~10の範囲内に維持し、反応釜中の溶液内の錯化剤濃度を8~10g/Lの範囲内に維持した。
【0079】
(3)それぞれ8kg/h、2.3kg/hおよび2.4kg/hの流量で第2金属塩混合溶液、アンモニア水錯化剤溶液および水酸化ナトリウム溶液を同時に反応釜中に注入し、45℃の温度、280r/minの撹拌速度で二次共沈反応を4h行い、平均粒径4.2μmの正極材料前駆体Ni0.25Fe0.5Mn0.25(OH)@Fe0.5Mn0.5(OH)を取得し、図1および図2に示した。ここで、二次共沈反応過程で反応釜中の溶液のpHを9.5~10.5の範囲内に維持し、反応釜中の溶液内の錯化剤濃度を9~11g/Lの範囲内に維持した。
【0080】
(4)ステップ(3)で得られた正極材料前駆体、ポリビニルピロリドンおよび炭酸ナトリウムを乳鉢中で均一に混合させ、その後、800℃の温度で18h焼成し、化学式がNa(Ni0.25Fe0.5Mn0.25)O@Na2/3(Fe0.5Mn0.5)Oの正極材料を取得した。
【実施例2】
【0081】
本実施例は、正極材料の調製方法を提供し、前記調製方法は、以下のステップを含む。
(1)硫酸ニッケル、硫酸第一鉄および硫酸マンガンを1/3:1/3:1/3のモル比で脱イオン水に溶解して金属イオンの総濃度が1mol/Lの第1金属塩混合溶液を調製し、硫酸第一鉄および硫酸マンガンを0.7:0.3のモル比で脱イオン水に溶解して金属イオンの総濃度が2mol/Lの第2金属塩混合溶液を調製し、それとともに、濃度が2mol/Lのアンモニア水錯化剤溶液および濃度が2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を調製した。
【0082】
(2)200Lの反応釜に、脱イオン水、ステップ(1)で得られたアンモニア水錯化剤溶液および水酸化ナトリウム溶液を加えてベース液として系の安定を維持し、ここで、ベース液の全体積は100Lであり、ベース液内のアンモニア水錯化剤の濃度を7~8g/Lの範囲内に制御し、pHを10.5~11の範囲内に制御し、その後、それぞれ10kg/h、2.5kg/hおよび2.8kg/hの流量で第1金属塩混合溶液、アンモニア水錯化剤溶液および水酸化ナトリウム溶液を同時に反応釜中に注入し、52℃の温度、350r/minの撹拌回転数で一次共沈反応を75h行い、平均粒径が3.6μmの正極材料前駆体のコアNi1/3Fe1/3Mn1/3(OH)を取得し、ここで、一次共沈反応過程で反応釜中の溶液のpHを9.8~10.6の範囲内に維持し、反応釜中の溶液内の錯化剤濃度を8~10g/Lの範囲内に維持した。
【0083】
(3)それぞれ10kg/h、3kg/hおよび2.6kg/hの流量で第2金属塩混合溶液、アンモニア水錯化剤溶液および水酸化ナトリウム溶液を同時に反応釜中に注入し、52℃の温度、300r/minの撹拌速度で二次共沈反応を8h行い、平均粒径が4μmの正極材料前駆体Ni1/3Fe1/3Mn1/3(OH)@Fe0.7Mn0.3(OH)を取得し、ここで、二次共沈反応過程で反応釜中の溶液のpHを9.5~10.5の範囲内に維持し、反応釜中の溶液内の錯化剤濃度を9~11g/Lの範囲内に維持した。
【0084】
(4)ステップ(3)で得られた正極材料前駆体、ポリビニルピロリドンおよび炭酸ナトリウムを乳鉢中で均一に混合させ、その後、900℃の温度で16h焼成し、化学式がNa(Ni1/3Fe1/3Mn1/3)O@Na0.7(Fe0.7Mn0.3)Oの正極材料を取得した。
【実施例3】
【0085】
本実施例は、正極材料の調製方法を提供し、前記調製方法は、以下のステップを含む。
(1)硫酸ニッケル、硫酸第一鉄および硫酸マンガンを0.2:0.5:0.3のモル比で脱イオン水に溶解して金属イオンの総濃度が3mol/Lの第1金属塩混合溶液を調製し、硫酸ニッケルおよび硫酸マンガンを0.6:0.4のモル比で脱イオン水に溶解して金属イオンの総濃度が1mol/Lの第2金属塩混合溶液を調製し、それとともに、濃度が1mol/Lのアンモニア水錯化剤溶液および濃度が3mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を調製した。
【0086】
(2)200Lの反応釜に、脱イオン水、ステップ(1)で得られたアンモニア水錯化剤溶液および水酸化ナトリウム溶液を加えてベース液として系の安定を維持し、ここで、ベース液の全体積は100Lであり、ベース液内のアンモニア水錯化剤の濃度を9~10g/Lの範囲内に制御し、pHを10.6~11の範囲内に制御し、その後、それぞれ12kg/h、3kg/hおよび2.4kg/hの流量で第1金属塩混合溶液、アンモニア水錯化剤溶液および水酸化ナトリウム溶液を同時に反応釜中に注入し、40℃の温度、380r/minの撹拌回転数で一次共沈反応を60h行い、平均粒径が2μmの正極材料前駆体のコアNi0.2Fe0.5Mn0.3(OH)を取得し、ここで、一次共沈反応過程で反応釜中の溶液のpHを9.8~11の範囲内に維持し、反応釜中の溶液内の錯化剤濃度を7~9g/Lの範囲内に維持した。
【0087】
(3)それぞれ12kg/h、3kg/hおよび2.4kg/hの流量で第2金属塩混合溶液、アンモニア水錯化剤溶液および水酸化ナトリウム溶液を同時に反応釜中に注入し、40℃の温度、350r/minの撹拌速度で二次共沈反応を2h行い、平均粒径が2.5μmの正極材料前駆体Ni0.2Fe0.5Mn0.3(OH)@Ni0.6Mn0.4(OH)を取得し、ここで、二次共沈反応過程で反応釜中の溶液のpHを8.5~9.5の範囲内に維持し、反応釜中の溶液内の錯化剤濃度を8~10g/Lの範囲内に維持した。
【0088】
(4)ステップ(3)で得られた正極材料前駆体、ポリビニルピロリドンおよび炭酸ナトリウムを乳鉢中で均一に混合させ、その後、1000℃の温度で12h焼成し、化学式がNa(Ni0.2Fe0.5Mn0.3)O@Na0.78(Ni0.6Mn0.4)Oの正極材料を取得した。
【実施例4】
【0089】
本実施例は、正極材料の調製方法を提供し、前記調製方法は、以下のステップを含む。
(1)硫酸ニッケル、硫酸第一鉄および硫酸マンガンを0.7:0.2:0.1のモル比で脱イオン水に溶解して金属イオンの総濃度が4mol/Lの第1金属塩混合溶液を調製し、硫酸第一鉄および硫酸マンガンを0.1:0.9のモル比で脱イオン水に溶解して金属イオンの総濃度が4mol/Lの第2金属塩混合溶液を調製し、それとともに、濃度が1mol/Lのアンモニア水錯化剤溶液および濃度が3mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を調製した。
【0090】
(2)200Lの反応釜に、脱イオン水、ステップ(1)で得られたアンモニア水錯化剤溶液および水酸化ナトリウム溶液を加えてベース液として系の安定を維持し、ここで、ベース液の全体積は100Lであり、ベース液内のアンモニア水錯化剤の濃度を9~10g/Lの範囲内に制御し、pHを10.6~11の範囲内に制御し、その後、それぞれ11kg/h、1kg/hおよび3kg/hの流量で第1金属塩混合溶液、アンモニア水錯化剤溶液および水酸化ナトリウム溶液を同時に反応釜中に注入し、60℃の温度、300r/minの撹拌回転数で一次共沈反応を90h行い、平均粒径が4μmの正極材料前駆体のコアNi0.7Fe0.2Mn0.1(OH)を取得し、ここで、一次共沈反応過程で反応釜中の溶液のpHを9.5~11の範囲内に維持し、反応釜中の溶液内の錯化剤濃度を9~11g/Lの範囲内に維持した。
【0091】
(3)それぞれ11kg/h、1kg/hおよび3kg/hの流量で第2金属塩混合溶液、アンモニア水錯化剤溶液および水酸化ナトリウム溶液を同時に反応釜中に注入し、60℃の温度、250r/minの撹拌速度で二次共沈反応を6h行い、平均粒径が4.5μmの正極材料前駆体Ni0.7Fe0.2Mn0.1(OH)@Fe0.1Mn0.9(OH)を取得し、ここで、二次共沈反応過程で反応釜中の溶液のpHを10~11の範囲内に維持し、反応釜中の溶液内の錯化剤濃度を10~12g/Lの範囲内に維持した。
【0092】
(4)ステップ(3)で得られた正極材料前駆体、ポリビニルピロリドンおよび炭酸ナトリウムを乳鉢中で均一に混合させ、その後、800℃の温度で20h焼成し、化学式がNa(Ni0.7Fe0.2Mn0.1)O@Na2/3(Fe0.1Mn0.9)Oの正極材料を取得した。
【実施例5】
【0093】
本実施例と実施例1との区別は、ステップ(2)における水酸化ナトリウム溶液の流量が3.5kg/hとなり、一次共沈反応過程で反応釜中の溶液のpHを11.5~12.5の範囲内に維持したことであり、残りのプロセスパラメータおよび操作条件は実施例1と同じである。
【実施例6】
【0094】
本実施例と実施例1との区別は、ステップ(2)における水酸化ナトリウム溶液の流量が2kg/hとなり、一次共沈反応過程で反応釜中の溶液のpHを8~9.2の範囲内に維持したことであり、残りのプロセスパラメータおよび操作条件は実施例1と同じである。
【実施例7】
【0095】
本実施例と実施例1との区別は、ステップ(2)におけるアンモニア水錯化剤溶液の流量が4kg/hとなり、一次共沈反応過程で反応釜中の溶液内の錯化剤濃度を11.5~13.5の範囲内に維持したことであり、残りのプロセスパラメータおよび操作条件は実施例1と同じである。
【実施例8】
【0096】
本実施例と実施例1との区別は、ステップ(2)におけるアンモニア水錯化剤溶液の流量が0.5kg/hとなり、一次共沈反応過程で反応釜中の溶液内の錯化剤濃度を5~6.5の範囲内に維持したことであり、残りのプロセスパラメータおよび操作条件は実施例1と同じである。
【実施例9】
【0097】
本実施例と実施例1との区別は、ステップ(3)における水酸化ナトリウム溶液の流量が3.5kg/hとなり、二次共沈反応過程で反応釜中の溶液のpHを11.7~12.5の範囲内に維持したことであり、残りのプロセスパラメータおよび操作条件は実施例1と同じである。
【実施例10】
【0098】
本実施例と実施例1との区別は、ステップ(3)における水酸化ナトリウム溶液の流量が2kg/hとなり、二次共沈反応過程で反応釜中の溶液のpHを6.5~8の範囲内に維持したことであり、残りのプロセスパラメータおよび操作条件は実施例1と同じである。
【実施例11】
【0099】
本実施例と実施例1との区別は、ステップ(3)におけるアンモニア水錯化剤溶液の流量が4.5kg/hとなり、一次共沈反応過程で反応釜中の溶液内の錯化剤濃度を12.5~14.5の範囲内に維持したことであり、残りのプロセスパラメータおよび操作条件は実施例1と同じである。
【実施例12】
【0100】
本実施例と実施例1との区別は、ステップ(3)におけるアンモニア水錯化剤溶液の流量が0.3kg/hとなり、一次共沈反応過程で反応釜中の溶液内の錯化剤濃度を6~7.5の範囲内に維持したことであり、残りのプロセスパラメータおよび操作条件は実施例1と同じである。
【実施例13】
【0101】
本実施例と実施例1との区別は、ステップ(4)でポリビニルピロリドンの添加を省略したことであり、残りのプロセスパラメータおよび操作条件は実施例1と同じである。
【比較例1】
【0102】
本比較例と実施例1との区別は、ステップ(2)で必要な第1金属塩混合溶液、アンモニア水錯化剤溶液および水酸化ナトリウム溶液を全て反応釜に入れてから一次共沈反応を行ったことであり、残りのプロセスパラメータおよび操作条件は実施例1と同じである。
【比較例2】
【0103】
本比較例と実施例1との区別は、ステップ(3)で必要な第2金属塩混合溶液、アンモニア水錯化剤溶液および水酸化ナトリウム溶液を全て反応釜に入れてから二次共沈反応を行ったことであり、残りのプロセスパラメータおよび操作条件は実施例1と同じである。
【0104】
実施例1~13および比較例1~2で調製された正極材料をコイン電池に組み立て、電気化学性能試験を行った。
【0105】
性能試験のパラメータは以下のとおりである。
(1)可逆容量試験:12.5(0.1C)の電流密度での半電池の初期充電/放電曲線であり、電圧範囲は2~4.2Vであった。
【0106】
(2)サイクル性能試験:半電池は1Cで100回サイクルし、電圧範囲は2~4.2Vであった。
【0107】
実施例1~13および比較例1~2で調製された正極材料をコイン電池に組み立て、その電気化学性能試験構造は表1を参照する。
【0108】
【表1】
【0109】
表1のデータから、以下のことが分かった。
(1)実施例1~4で調製された正極材料が高い可逆容量および優れたサイクル性能を持つことは、本願に係る調製方法を用いてO3相コアとP2相シェルを有するヘテロ構造の正極材料を得ることができることを意味し、この中、O3相コアが高い容量を提供し、P2相シェルが安定な界面層を構築し、2相構造の相乗作用により、高い容量と高いサイクル安定性とを両立させ、ナトリウムイオン電池の電気化学性能を更に向上させることができる。
【0110】
(2)実施例5~8で調製された正極材料の容量およびサイクル性能はいずれも実施例1よりも低く、その原因として、実施例5で一次共沈の沈殿剤の流量が高すぎ、実施例6で一次共沈の沈殿剤の流量が低すぎ、実施例7で一次共沈の錯化剤の流量が高すぎ、実施例8で一次共沈の錯化剤の流量が低すぎるためであり、これにより、本願は、一次共沈の沈殿剤および錯化剤の流量をそれぞれ適当な範囲内に制御することで、一次共沈反応全過程の系の安定性をより良く維持でき、フレーク状一次粒子で堆積された疎なコア構造の形成に寄与し、正極材料の電気化学性能を更に向上させることを意味した。
【0111】
(3)実施例9~12で調製された正極材料の容量およびサイクル性能はいずれも実施例1よりも低く、その原因として、実施例9で二次共沈の沈殿剤の流量が高すぎ、実施例10で二次共沈の沈殿剤の流量が低すぎ、実施例11で二次共沈の錯化剤の流量が高すぎ、実施例12で二次共沈の錯化剤の流量が低すぎるためであり、これにより、本願は、二次共沈の沈殿剤および錯化剤の流量をそれぞれ適当な範囲内に制御することで、二次共沈反応全過程の系の安定性を維持し、コアの外面におけるフレーク状一次粒子で堆積された疎なシェル構造の形成に寄与し、正極材料の電気化学性能を更に向上させることを意味した。
【0112】
(4)実施例13で調製された正極材料の容量およびサイクル性能はいずれも実施例1よりも低く、その原因として、実施例13において、焼成過程で分散剤の添加を省略し、焼成過程でナトリウムイオンの正極材料前駆体粒子の内部への拡散を効果的に促進することができず、正極材料の電気化学性能に影響を及ぼすためである。
【0113】
(5)比較例1~2で調製された正極材料の容量およびサイクル性能はいずれも実施例1よりも低く、その原因として、比較例1で第1金属塩混合溶液、錯化剤溶液および沈殿剤溶液を全て反応釜に入れて一次沈淀反応を行うため、比較例2で第2金属塩混合溶液、錯化剤溶液および沈殿剤溶液を全て反応釜に入れて二次沈淀反応を行うためであり、一次共沈反応および二次共沈反応のpHの安定性および錯化剤濃度の安定性を効果的に維持できず、一次共沈反応および二次共沈反応における結晶の核生成および結晶の成長の速度を調整制御できず、フレーク状一次粒子で堆積された疎構造持ち正極材料前駆体を取得することができず、更に正極材料の電気化学性能に影響を及ぼす。
【0114】
以上の説明は、本願の具体的な実施形態に過ぎないが、本願の保護範囲はこれに限定されるものではなく、当業者であれば、当業者が本願に開示された技術的範囲内に容易に想到可能な変更または置換は、全て本願の保護範囲および公開範囲内に含まれることを理解すべきであることを出願人より声明する。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-08-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極材料前駆体であって、
前記正極材料前駆体は、コアと、前記コアの外周を包むシェルとを含み、前記コアはNiFeMn1-x-y(OH)であり、ただし、0.2≦x≦0.7であり、0.2≦y≦0.5であり、前記シェルはMMn1-a(OH)であり、ただし、Mはニッケルまたは鉄であり、0.05≦a≦0.7であり、前記コアおよび前記シェルは、いずれもフレーク状一次粒子で堆積されてなり、
前記正極材料前駆体の調製方法は、
第1金属塩混合溶液、錯化剤溶液および沈殿剤溶液を同時に反応装置中に注入し、注入過程で一次共沈反応を行って正極材料前駆体のコアを取得し、その後、第2金属塩混合溶液、前記錯化剤溶液および前記沈殿剤溶液を同時に前記反応装置中に注入し、注入過程で二次共沈反応を行い、前記正極材料前駆体を取得することを含む、
正極材料前駆体。
【請求項2】
前記正極材料前駆体の中のコアの形態は、球形または類球形を含む、
請求項1に記載の正極材料前駆体。
【請求項3】
前記正極材料前駆体の中のコアの粒径は2~4.5μmである、
請求項1に記載の正極材料前駆体。
【請求項4】
前記正極材料前駆体の形態は、球形または類球形を含む、
請求項1に記載の正極材料前駆体。
【請求項5】
前記正極材料前駆体の粒径は2.5~4.5μmである、
請求項1に記載の正極材料前駆体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の正極材料前駆体の調製方法であって、
前記調製方法は、第1金属塩混合溶液、錯化剤溶液および沈殿剤溶液を同時に反応装置中に注入し、注入過程で一次共沈反応を行って正極材料前駆体のコアを取得し、その後、第2金属塩混合溶液、前記錯化剤溶液および前記沈殿剤溶液を同時に前記反応装置中に注入し、注入過程で二次共沈反応を行い、前記正極材料前駆体を取得することを含み、
前記一次共沈反応の過程において、前記反応装置中の溶液のpHは9.5~11であり、
前記一次共沈反応の過程において、前記反応装置中の溶液内の錯化剤の濃度は7~11g/Lであり、
前記一次共沈反応は撹拌下で行われ、前記撹拌の回転数は300~380r/minであり、
前記二次共沈反応の過程において、前記反応装置中の溶液のpHは8.5~11であり、
前記二次共沈反応の過程において、前記反応装置中の溶液内の錯化剤の濃度は8~12g/Lであり、
前記二次共沈反応は撹拌下で行われ、前記撹拌の回転数は250~350r/minである、
調製方法。
【請求項7】
前記第1金属塩混合溶液は、ニッケル塩、鉄塩、マンガン塩および溶剤で混合して調製される、
請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
前記第1金属塩混合溶液の中の金属イオンの総濃度は1~4mol/Lである、
請求項6に記載の調製方法。
【請求項9】
前記ニッケル塩、前記鉄塩および前記マンガン塩のモル比はx:y:(1-x-y)であり、ただし、0.2≦x≦0.7であり、0.2≦y≦0.5である、
請求項7に記載の調製方法。
【請求項10】
前記ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケルまたは硝酸ニッケルのうちのいずれか1種を含む、
請求項7に記載の調製方法。
【請求項11】
前記鉄塩は硫酸第一鉄または塩化第一鉄を含む、
請求項7に記載の調製方法。
【請求項12】
前記マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガンまたは硝酸マンガンのうちのいずれか1種を含む、
請求項7に記載の調製方法。
【請求項13】
前記溶剤は脱イオン水を含む、
請求項7に記載の調製方法。
【請求項14】
前記錯化剤の濃度は1~3mol/Lである、
請求項7に記載の調製方法。
【請求項15】
前記錯化剤はアンモニア水錯化剤を含む、
請求項7に記載の調製方法。
【請求項16】
前記沈殿剤の濃度は1~3mol/Lである、
請求項7に記載の調製方法。
【請求項17】
前記沈殿剤はアルカリ溶液を含む、
請求項7に記載の調製方法。
【請求項18】
前記アルカリ溶液は、水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液を含む、
請求項7に記載の調製方法。
【請求項19】
前記一次共沈反応において、前記第1金属塩混合溶液を8~12kg/hの流量で前記反応装置中に注入する、
請求項6に記載の調製方法。
【請求項20】
前記一次共沈反応において、前記錯化剤溶液を1~3kg/hの流量で前記反応装置中に注入する、
請求項6に記載の調製方法。
【請求項21】
前記一次共沈反応において、前記沈殿剤溶液を2.4~3kg/hの流量で前記反応装置中に注入する、
請求項6に記載の調製方法。
【請求項22】
前記一次共沈反応は40~60℃で行われる、
請求項6に記載の調製方法。
【請求項23】
前記一次共沈反応の時間は60~90hである、
ことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項24】
前記一次共沈反応の前に、まず、前記反応装置中に脱イオン水、前記錯化剤溶液および前記沈殿剤溶液を加えて前記一次共沈反応のベース液とする、
ことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項25】
前記第2金属塩混合溶液は、ニッケル塩、マンガン塩および溶剤で混合して調製され、または前記第2金属塩混合溶液は、鉄塩、マンガン塩および溶剤で混合して調製される、
請求項6に記載の調製方法。
【請求項26】
前記第2金属塩混合溶液内の金属イオンの総濃度は1~4mol/Lである、
ことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項27】
前記ニッケル塩と前記マンガン塩とのモル比はa:(1-a)であり、または前記鉄塩と前記マンガン塩とのモル比はa:(1-a)であり、ただし、0.05≦a≦0.7である、
ことを特徴とする請求項25に記載の調製方法。
【請求項28】
前記ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケルまたは硝酸ニッケルのうちのいずれか1種を含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の調製方法。
【請求項29】
前記鉄塩は硫酸第一鉄または塩化第一鉄を含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の調製方法。
【請求項30】
前記マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガンまたは硝酸マンガンのうちのいずれか1種を含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の調製方法。
【請求項31】
前記溶剤は脱イオン水を含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の調製方法。
【請求項32】
前記二次共沈反応において、前記第2金属塩混合溶液を8~12kg/hの流量で前記反応装置中に注入する、
ことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項33】
前記二次共沈反応において、前記錯化剤溶液を1~3kg/hの流量で前記反応装置中に注入する、
ことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項34】
前記二次共沈反応において、前記沈殿剤溶液を2.4~3kg/hの流量で前記反応装置中に注入する、
ことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項35】
前記二次共沈反応は40~60℃で行われる、
ことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項36】
前記二次共沈反応の時間は2~8hである、
ことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項37】
正極材料であって、
前記正極材料は、請求項1~5のいずれか1項に記載の正極材料前駆体で調製され、
前記正極材料は、O3相コアと、前記O3相コアの外周を包むP2相シェルとを含み、前記O3相コアはNa(Ni Fe Mn 1-x-y )O であり、ただし、0.2≦x≦0.7であり、0.2≦y≦0.5であり、前記P2相シェルはNa (M Mn 1-a )O であり、ただし、Mはニッケルまたは鉄であり、0.05≦a≦0.7であり、0.67≦b≦0.78であり、前記O3相コアおよび前記P2相シェルは、いずれもフレーク状一次粒子で堆積されてなる、
正極材料。
【請求項38】
正極材料前駆体、分散剤およびナトリウム源を混合してから焼成し、前記正極材料を取得することを含む、
請求項37に記載の正極材料の調製方法。
【請求項39】
前記分散剤はポリビニルピロリドンを含む、
請求項38に記載の調製方法。
【請求項40】
前記ナトリウム源は炭酸ナトリウムを含む、
ことを特徴とする請求項38に記載の調製方法。
【請求項41】
前記正極材料前駆体、前記分散剤および前記ナトリウム源を乳鉢中で研磨混合する、
ことを特徴とする請求項38に記載の調製方法。
【請求項42】
前記焼成の温度は800~1000℃である、
ことを特徴とする請求項38に記載の調製方法。
【請求項43】
前記焼成の時間は12~20hである、
ことを特徴とする請求項38に記載の調製方法。
【請求項44】
請求項37に記載の正極材料を含む、
ナトリウムイオン電池。
【国際調査報告】