(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】電動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20250130BHJP
B60K 17/12 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B60K17/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544528
(86)(22)【出願日】2023-01-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 CN2023072460
(87)【国際公開番号】W WO2024021543
(87)【国際公開日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/108470
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523284985
【氏名又は名称】浙江極▲け▼智能科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG ZEEKR INTELLIGENT TECHNOLOGY CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】523284996
【氏名又は名称】威睿電動汽車技術(寧波)有限公司
【氏名又は名称原語表記】VIRIDI E-MOBILITY TECHNOLOGY (NINGBO) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 198, Yinwan East Rd., Hangzhou Bay New Zone, Ningbo, Zhejiang China
(71)【出願人】
【識別番号】507362513
【氏名又は名称】浙江吉利控股集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG GEELY HOLDING GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】1760 Jiangling Road, Binjiang District, Hangzhou Zhejiang310000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沈 克清
(72)【発明者】
【氏名】馬 迎国
(72)【発明者】
【氏名】陳 東
(72)【発明者】
【氏名】陳 啓苗
(72)【発明者】
【氏名】李 常珞
【テーマコード(参考)】
3D042
5H125
【Fターム(参考)】
3D042AA08
3D042AB01
3D042AB17
3D042BE01
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA01
5H125CD02
5H125EE08
5H125EE41
5H125EE51
(57)【要約】
本願は、電動車両の分野に属するものであり、具体的には、電動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体に関する。本願に係る電動車のモータ制御方法は、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出するステップと、相対変形量が第1のしきい値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差を決定し、相対変形量が第1のしきい値であることは、駆動歯が伝動システムの被動歯から離脱開始することを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯の被動歯に対する離脱時点での駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が離脱時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であるステップと、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するステップと、出力トルクに従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ動作を制御するステップと、を含む。これによって、モータと伝動システムの振動や騒音が大きいという問題を低減ひいては回避する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出するステップと、
前記相対変形量が第1のしきい値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差を決定するステップであって、前記相対変形量が第1のしきい値であることは、前記駆動歯が前記伝動システムの被動歯から離脱開始することを示すために用いられ、前記第1の駆動歯の回転速度は、前記駆動歯の前記被動歯に対する離脱時点での前記駆動歯の回転速度であり、前記第1の車輪端の換算回転速度は、前記電動車の車輪端の回転速度が前記離脱時点において速度比によって換算されて得られた回転速度である、ステップと、
前記第1の速度差に従い、前記モータの出力トルクを決定するステップと、
前記出力トルクに従い、前記駆動歯の前記被動歯に対する歯寄せ動作を制御するステップと、を含む、ことを特徴とする電動車のモータ制御方法。
【請求項2】
前記第1の速度差に従い、前記モータの出力トルクを決定するステップは、
前記第1の速度差と第1の時間長との積を第1の積として決定するステップであって、前記第1の時間長は、前記離脱時点から前記駆動歯の前記被動歯に対する接触時点までの持続時間である、ステップと、
前記第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、前記出力トルクが第1のトルクと第2のトルクを含むと決定するステップであって、前記第1のトルクと前記第2のトルクは、互いに反対方向であり、前記第1のトルクは、前記離脱時点から前記モータの加速状態と減速状態の変換時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、前記第2のトルクは、前記変換時点から前記接触時点までの時間間隔において必要とされるトルクである、ステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御方法。
【請求項3】
前記第1のトルクと前記第2のトルクは、
前記変換時点において、前記予め設定されたバックラッシ値、前記第1の速度差、及び前記第1の時間長に基づき、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差を決定し、前記第2の車輪端の換算回転速度は、前記電動車の車輪端の回転速度が前記変換時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であること、
前記第2の速度差と前記第2の車輪端の換算回転速度に従い、第2の駆動歯の回転速度を決定し、前記第2の駆動歯の回転速度は前記変換時点での前記駆動歯の回転速度であること、
前記第2の駆動歯の回転速度、前記第1の駆動歯の回転速度、前記離脱時点と前記変換時点の持続時間、及び前記第2の駆動歯の回転速度での前記駆動歯の摺動摩擦力に従い、前記第1のトルクを決定すること、及び
前記第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、前記変換時点と前記接触時点の持続時間、及び前記第3の駆動歯の回転速度での前記駆動歯の摺動摩擦力に従い、前記第2のトルクを決定し、前記第3の駆動歯の回転速度は前記接触時点での前記駆動歯の回転速度であること、によって決定されている、ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御方法。
【請求項4】
前記第1の速度差に従い、前記モータの出力トルクを決定するステップは、
前記第1の積が前記予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、前記第1の速度差と第2の時間長との積を第2の積として決定するステップであって、前記第2の時間長は前記離脱時点から前記変換時点までの持続時間である、ステップと、
前記第2の積が前記予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、前記出力トルクが前記第1のトルクと前記第2のトルクを含むと決定するステップであって、前記第1のトルクと前記第2のトルクは、同じ方向である、ステップと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御方法。
【請求項5】
前記第1の速度差に従い、前記モータの出力トルクを決定するステップは、
前記第2の積が前記予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、目標時点において、第3の車輪端の換算回転速度を決定するステップであって、前記第3の車輪端の換算回転速度は、前記電動車の車輪端の回転速度が前記目標時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であり、前記目標時点は、前記第2の時間長内に前記駆動歯が前記被動歯に再び接触した時点である、ステップと、
前記第3の車輪端の換算回転速度、前記第1の駆動歯の回転速度、及び前記離脱時点と前記目標時点の持続時間に従い、第3のトルクを決定するステップであって、前記第3のトルクは、前記離脱時点から前記目標時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、前記出力トルクは前記第3のトルクを含む、ステップと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項4に記載のモータ制御方法。
【請求項6】
前記モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を決定するステップは、
現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差を決定するステップと、
前記第3の速度差に従い、前記駆動歯の前記被動歯に対する相対変位を決定するステップと、
前記相対変位に従い、前記相対変形量を決定するステップと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のモータ制御方法。
【請求項7】
前記モータの出力トルクを決定するステップは、
運転状態を調整する調整操作に応答し、調整された目標運転状態に対応する運転状態情報を取得するステップと、
前記運転状態情報を変換処理して、デジタル信号を得るステップと、
前記デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得るステップと、
前記トルク信号に従い、前記出力トルクを決定するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御方法。
【請求項8】
デジタル信号は、前記電動車の異なる運転状態を異なる数値で示しており、前記デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得るステップは、
前記デジタル信号が第1の数値である場合に、前記トルク信号が第1の予め設定された信号であると決定するステップと、
前記デジタル信号が第2の数値である場合に、前記トルク信号が第2の予め設定された信号であると決定するステップと、
前記デジタル信号が第1の目標数値である場合に、前記第1の予め設定された信号、前記第2の予め設定された信号、及び前記第1の目標数値に従い、前記トルク信号を目標信号として決定するステップと、を含み、
前記第1の数値は前記第2の数値よりも小さく、前記第1の目標数値は前記第1の数値よりも大きいが前記第2の数値よりも小さく、前記第1の予め設定された信号は、前記電動車の運転状態に対応する感度が最も低いときのトルク信号であり、前記第2の予め設定された信号は、前記電動車の運転状態に対応する感度が最も高いときのトルク信号であり、前記目標信号は、前記電動車の運転状態に対応する感度が最も高い感度と最も低い感度との間にあるときのトルク信号である、ことを特徴とする請求項7に記載のモータ制御方法。
【請求項9】
前記トルク信号が目標信号である場合に、前記トルク信号に従い、前記出力トルクを決定するステップは、
前記第1の予め設定された信号に対応する第4のトルク、前記第2の予め設定された信号に対応する第5のトルクを取得するステップと、
前記第1の目標数値と前記第5のトルクとの第3の積を決定するステップと、
予め設定された値と前記第1の目標数値との第1の目標差を決定して、前記第1の目標差と前記第4のトルクとの第4の積を決定するステップと、
前記第3の積と前記第4の積との和を前記出力トルクとして決定するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項8に記載のモータ制御方法。
【請求項10】
前記第1の目標数値と前記第5のトルクとの第3の積を決定するステップは、
運転状態嗜好係数を示すための予め設定された係数を取得するステップと、
前記第1の目標数値と前記予め設定された係数と前記第5のトルクとの積を、前記第3の積として決定するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項9に記載のモータ制御方法。
【請求項11】
デジタル信号は、前記駆動歯の前記被動歯に対する歯寄せ中の異なる歯寄せ時点を異なる数値で示しており、前記モータ制御方法は、
前記デジタル信号が第3の数値である場合に対応する第1の時点、及び前記デジタル信号が第4の数値である場合に対応する第2の時点を決定するステップと、
前記デジタル信号が第2の目標数値である場合に、前記第1の時点、前記第2の時点、及び前記第2の目標数値に従い、前記駆動歯の前記被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定するステップと、をさらに含み、
前記第3の数値は前記第4の数値よりも小さく、前記第2の目標数値は前記第3の数値よりも大きいが前記第4の数値よりも小さく、前記第1の時点は、前記電動車の運転状態に対応する感度が最も低い時点であり、前記第2の時点は、前記電動車の運転状態に対応する感度が最も高い時点である、ことを特徴とする請求項7に記載のモータ制御方法。
【請求項12】
前記第1の時点、前記第2の時点、及び前記第2の目標数値に従い、前記駆動歯の前記被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定するステップは、
前記第2の目標数値と前記第2の時点との第5の積を決定するステップと、
予め設定された値と前記第2の目標数値との第2の目標差を決定して、前記第2の目標差と前記第1の時点との第6の積を決定するステップと、
前記第5の積と前記第6の積との和を前記目標歯寄せ時点として決定するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項11に記載のモータ制御方法。
【請求項13】
運転状態を調整する調整操作は、
仮想摺動アセンブリを第1の摺動領域において摺動操作し、前記仮想摺動アセンブリは前記電動車表示スクリーンに表示されるアセンブリであり、前記第1の摺動領域は前記表示スクリーンにおける予め設定された領域であり、前記第1の摺動領域における前記仮想摺動アセンブリの異なる位置が、異なる運転状態を示している、操作、
実物の摺動装置を第2の摺動領域において摺動操作し、前記実物の摺動装置は前記電動車に設けられた装置であり、前記第2の摺動領域は前記電動車に設けられた予め設定された領域であり、前記第2の摺動領域における前記実物の摺動装置の異なる位置が、異なる運転状態を示している、操作、及び
予め設定された調整可能な選択肢を選択操作し、前記調整可能な選択肢は、前記表示スクリーンに表示される仮想ボタン及び/又は前記電動車に設けられた実物のボタンを含み、異なる調整可能な選択肢が、異なる運転状態を示している、操作、
のうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項7~12のいずれか1項に記載のモータ制御方法。
【請求項14】
前記調整操作が、予め設定された調整可能な選択肢を選択操作することである場合に、前記調整可能な選択肢は、前記第1の摺動領域及び/又は前記第2の摺動領域における予め設定された位置に対応する、ことを特徴とする請求項13に記載のモータ制御方法。
【請求項15】
前記出力トルクを決定するステップは、
前記調整操作に応答し、前記第1の摺動領域及び/又は前記第2の摺動領域の目標位置に対応する位置信号を取得するステップであって、前記位置信号は、前記電動車の異なる運転状態を異なる数値で示している、ステップと、
前記位置信号が第5の数値である場合に対応する第6のトルク、及び前記デジタル信号が第6の数値である場合に対応する第7のトルクを決定するステップと、
前記位置信号が第3の目標数値である場合に、前記第6のトルク、前記第7のトルク、及び前記第3の目標数値に従い、前記出力トルクを決定するステップと、を含み、
前記第5の数値は前記第6の数値よりも小さく、前記第3の目標数値は前記第5の数値よりも大きいが前記第6の数値よりも小さく、前記第6のトルクは、前記電動車の運転状態に対応する感度が最も低い時点であり、前記第7のトルクは、前記電動車の運転状態に対応する感度が最も高い時点である、ことを特徴とする請求項14に記載のモータ制御方法。
【請求項16】
前記第6のトルク、前記第7のトルク、及び前記第3の目標数値に従い、前記出力トルクを決定するステップは、
前記第3の目標数値と前記第7のトルクとの第7の積を決定するステップと、
予め設定された値と前記第3の目標数値との第3の目標差を決定して、前記第3の目標差と前記第6のトルクとの第8の積を決定するステップと、
前記第7の積と前記第8の積との和を前記出力トルクとして決定するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項15に記載のモータ制御方法。
【請求項17】
検出モジュール、決定モジュール、処理モジュール、及び制御モジュールを含む電動車のモータ制御装置であって、
前記検出モジュールは、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出することに用いられ、
前記決定モジュールは、前記相対変形量が第1のしきい値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差を決定することに用いられ、前記相対変形量が第1のしきい値であることは、前記駆動歯が前記伝動システムの被動歯から離脱開始することを示すために用いられ、前記第1の駆動歯の回転速度は、前記駆動歯の前記被動歯に対する離脱時点での前記駆動歯の回転速度であり、前記第1の車輪端の換算回転速度は、前記電動車の車輪端の回転速度が前記離脱時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であり、
前記処理モジュールは、前記第1の速度差に従い、前記モータの出力トルクを決定することに用いられ、
前記制御モジュールは、前記出力トルクに従い、前記駆動歯の前記被動歯に対する歯寄せ動作を制御することに用いられる、ことを特徴とする電動車のモータ制御装置。
【請求項18】
プロセッサ、及び前記プロセッサと通信可能に接続されているメモリを含む電動車であって、
前記メモリはコンピュータ実行命令を記憶し、
前記プロセッサは、前記メモリに記憶されているコンピュータ実行命令を実行して、請求項1~16のいずれか1項に記載の電動車のモータ制御方法を実現する、ことを特徴とする電動車。
【請求項19】
コンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読記憶媒体にコンピュータ実行命令が記憶されており、前記コンピュータ実行命令は、プロセッサにより実行されるとき、請求項1~16のいずれか1項に記載の電動車のモータ制御方法を実現するために用いられる、ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されるとき、請求項1~16のいずれか1項に記載の電動車のモータ制御方法を実現するために用いられる、ことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電動車両の分野に関し、特に、電動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両技術の発展につれ、電動車両の応用範囲は広くなっている。消費者にとって、運転の快適性は電動車両を選択する主な理由の一つである。電動車両の走行中に、モータの出力トルクが正と負のトルクに変化すると、モータの歯車の噛み合い方向が変化するため、歯打ちは発生し、消費者がはっきりと感じられる振動や騒音は発生し、運転の快適性に影響を及ぼす。また、歯打ちは、歯車やスプラインなどの伝動機構に損傷を与える恐れがある。
【0003】
現在、上記の問題を解決するために、通常、モータの出力トルクを正と負のトルクに変化させるとき、フィルタ処理方法(例えばトルク平滑化処理方法)を用いて、出力トルクを処理して振動や騒音を低減している。しかしながら、このような方法を適用されたところで、振動や騒音が依然として大きく、消費者の運転体験が悪くなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の実施例は、電動車の走行中に、モータ及びその伝動システムの振動や騒音が大きいという問題を解決するために用いられる、電動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本願の実施例は、電動車のモータ制御方法を提供し、前記モータ制御方法は、前記モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出するステップと、相対変形量が第1のしきい値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差を決定するステップであって、相対変形量が第1のしきい値であることは、駆動歯が伝動システムの被動歯から離脱開始することを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯の被動歯に対する離脱時点での駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が離脱時点において速度比によって換算されて得られた回転速度である、ステップと、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するステップと、出力トルクに従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ動作を制御するステップと、を含む。
【0006】
1つの可能な実施形態では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するステップは、第1の速度差と第1の時間長との積を第1の積として決定するステップであって、第1の時間長は、離脱時点から駆動歯の被動歯に対する接触時点までの持続時間である、ステップと、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクを含むと決定するステップであって、第1のトルクと第2のトルクは、互いに反対方向であり、第1のトルクは、離脱時点からモータの加速状態と減速状態の変換時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、第2のトルクは、変換時点から接触時点までの時間間隔において必要とされるトルクである、ステップと、を含む。
【0007】
1つの可能な実施形態では、第1のトルクと第2のトルクは、変換時点において、予め設定されたバックラッシ値、第1の速度差、及び第1の時間長によって、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差を決定し、第2の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が変換時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であること、第2の速度差と第2の車輪端の換算回転速度に従い、第2の駆動歯の回転速度を決定し、第2の駆動歯の回転速度は、変換時点での駆動歯の回転速度であること、第2の駆動歯の回転速度、第1の駆動歯の回転速度、離脱時点と変換時点の持続時間、及び第2の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に従い、第1のトルクを決定すること、及び、第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、変換時点と接触時点の持続時間、及び第3の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に従い、第2のトルクを決定し、第3の駆動歯の回転速度は、接触時点での駆動歯の回転速度であること、によって決定されている。
【0008】
1つの可能な実施形態では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するステップは、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、第1の速度差と第2の時間長との積を第2の積として決定するステップであって、第2の時間長は、離脱時点から変換時点までの持続時間である、ステップと、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクを含むと決定するステップであって、第1のトルクと第2のトルクは、同じ方向である、ステップと、をさらに含む。
【0009】
1つの可能な実施形態では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するステップは、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、目標時点において、第3の車輪端の換算回転速度を決定するステップであって、第3の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が目標時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であり、目標時点は、第2の時間長内に駆動歯が被動歯に再び接触した時点である、ステップと、第3の車輪端の換算回転速度、第1の駆動歯の回転速度、及び離脱時点と目標時点の持続時間に従い、第3のトルクを決定するステップであって、第3のトルクは、離脱時点から目標時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、出力トルクは第3のトルクを含む、ステップと、をさらに含む。
【0010】
1つの可能な実施形態では、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を決定するステップは、モータの出力トルクが変化したと検出されたとき、現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差を決定するステップと、第3の速度差に従い、駆動歯の被動歯に対する相対変位を決定するステップと、相対変位に従い、相対変形量を決定するステップと、をさらに含む。
【0011】
1つの可能な実施形態では、モータの出力トルクを決定するステップは、運転状態を調整する調整操作に応答し、調整された目標運転状態に対応する運転状態情報を取得するステップと、運転状態情報を変換処理して、デジタル信号を得るステップと、デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得るステップと、トルク信号に従い、出力トルクを決定するステップと、を含む。
【0012】
1つの可能な実施形態では、デジタル信号は、電動車の異なる運転状態を異なる数値で示しており、デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得るステップは、デジタル信号が第1の数値である場合に、トルク信号が第1の予め設定された信号であると決定するステップと、デジタル信号が第2の数値である場合に、トルク信号が第2の予め設定された信号であると決定するステップと、デジタル信号が第1の目標数値である場合に、第1の予め設定された信号、第2の予め設定された信号、及び第1の目標数値に従い、トルク信号を目標信号として決定するステップと、を含み、ここで、第1の数値は第2の数値よりも小さく、第1の目標数値は第1の数値よりも大きいが第2の数値よりも小さく、第1の予め設定された信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も低いときのトルク信号であり、第2の予め設定された信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高いときのトルク信号であり、目標信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い感度と最も低い感度との間にあるときのトルク信号である。
【0013】
1つの可能な実施形態では、トルク信号が目標信号である場合に、トルク信号に従い、出力トルクを決定するステップは、第1の予め設定された信号に対応する第4のトルク、第2の予め設定された信号に対応する第5のトルクを取得するステップと、第1の目標数値と第5のトルクとの第3の積を決定するステップと、予め設定された値と第1の目標数値との第1の目標差を決定して、第1の目標差と第4のトルクとの第4の積を決定するステップと、第3の積と第4の積との和を出力トルクとして決定するステップと、を含む。
【0014】
1つの可能な実施形態では、第1の目標数値と第5のトルクとの第3の積を決定するステップは、運転状態嗜好係数を示すための予め設定された係数を取得するステップと、第1の目標数値と予め設定された係数と第5のトルクとの積を第3の積として決定するステップと、を含む。
【0015】
1つの可能な実施形態では、デジタル信号は、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の異なる歯寄せ時点を異なる数値で示しており、モータ制御方法は、デジタル信号が第3の数値である場合に対応する第1の時点、及びデジタル信号が第4の数値である場合に対応する第2の時点を決定するステップと、デジタル信号が第2の目標数値である場合に、第1の時点、第2の時点、及び第2の目標数値に従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定するステップと、をさらに含み、ここで、第3の数値は第4の数値よりも小さく、第2の目標数値は第3の数値よりも大きいが第4の数値よりも小さく、第1の時点は、電動車の運転状態に対応する感度が最も低い時点であり、第2の時点は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い時点である。
【0016】
1つの可能な実施形態では、第1の時点、第2の時点、及び第2の目標数値に従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定するステップは、第2の目標数値と第2の時点との第5の積を決定するステップと、予め設定された値と第2の目標数値との第2の目標差を決定して、第2の目標差と第1の時点との第6の積を決定するステップと、第5の積と第6の積との和を目標歯寄せ時点として決定するステップと、を含む。
【0017】
1つの可能な実施形態では、運転状態を調整する調整操作は、仮想摺動アセンブリを第1の摺動領域において摺動操作し、仮想摺動アセンブリは電動車表示スクリーンに表示されるアセンブリであり、第1の摺動領域は表示スクリーンにおける予め設定された領域であり、第1の摺動領域における仮想摺動アセンブリの異なる位置が、異なる運転状態を示している操作、実物の摺動装置を第2の摺動領域において摺動操作し、実物の摺動装置は電動車に設けられた装置であり、第2の摺動領域は電動車に設けられた予め設定された領域であり、第2の摺動領域における実物の摺動装置の異なる位置が、異なる運転状態を示している操作、予め設定された調整可能な選択肢を選択操作し、調整可能な選択肢は、表示スクリーンに表示される仮想ボタン及び/又は電動車に設けられた実物のボタンを含み、異なる調整可能な選択肢が、異なる運転状態を示している操作のうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
1つの可能な実施形態では、調整操作が、予め設定された調整可能な選択肢を選択操作するという操作である場合に、調整可能な選択肢は、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域における予め設定された位置に対応する。
【0019】
1つの可能な実施形態では、出力トルクを決定するステップは、調整操作に応答し、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域の目標位置に対応する位置信号を取得するステップであって、位置信号は、電動車の異なる運転状態を異なる数値で示している、ステップと、位置信号が第5の数値である場合に対応する第6のトルク、及びデジタル信号が第6の数値である場合に対応する第7のトルクを決定するステップと、位置信号が第3の目標数値である場合に、第6のトルク、第7のトルク、及び第3の目標数値に従い、出力トルクを決定するステップと、を含む。
【0020】
1つの可能な実施形態では、第6のトルク、第7のトルク、及び第3の目標数値に従い、出力トルクを決定するステップは、第3の目標数値と第7のトルクとの第7の積を決定するステップと、予め設定された値と第3の目標数値との第3の目標差を決定して、第3の目標差と第6のトルクとの第8の積を決定するステップと、第7の積と第8の積との和を出力トルクとして決定するステップと、を含む。
【0021】
第2の態様では、本願の実施例は、電動車のモータ制御装置を提供し、前記モータ制御装置は、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出することに用いられる検出モジュールと、相対変形量が第1のしきい値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差を決定することに用いられる決定モジュールであって、相対変形量が第1のしきい値であることは、駆動歯が伝動システムの被動歯から離脱開始することを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯の被動歯に対する離脱時点での駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が離脱時点において速度比によって換算されて得られた回転速度である、決定モジュールと、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定することに用いられる処理モジュールと、出力トルクに従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ動作を制御することに用いられる制御モジュールと、を含む。
【0022】
第3の態様では、本願の実施例は、電動車を提供し、前記電動車は、プロセッサ、及びプロセッサと通信可能に接続されているメモリを含み、メモリはコンピュータ実行命令を記憶し、プロセッサは、メモリに記憶されているコンピュータ実行命令を実行して、第1の態様に係る電動車のモータ制御方法を実現する。
【0023】
第4の態様では、本願の実施例は、コンピュータ可読記憶媒体を提供し、コンピュータ可読記憶媒体にコンピュータ実行命令が記憶されており、コンピュータ実行命令は、プロセッサにより実行されるとき、第1の態様に係る電動車のモータ制御方法を実現するために用いられる。
【0024】
第5の態様では、本願の実施例は、コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品を提供し、コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されるとき、第1の態様に係る電動車のモータ制御方法を実現する。
【発明の効果】
【0025】
本願の実施例により提供される電動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体は、モータの駆動歯の噛み合い方向が変化しているときの動的過程を分析し、モータの高精度の駆動歯位置と回転速度測定及びモータのトルクの迅速な調整という特徴に鑑みて、モータの出力トルクの方向が変化しようとしていることを検出したとき、能動的に歯寄せ動作を行うように駆動歯のトルクを制御することによって、駆動歯が被動歯から離脱した後再び接触したときの速度差を小さくし、慣性衝撃による駆動歯と被動歯との間の振動や騒音を低減ひいては除去する。加えて、本願は、電動車の元のハードウェアを変更したり、新しいセンサーを追加したりする必要がなく、車輪端の回転速度、モータの駆動歯の回転速度、バックラッシを算出することだけで、歯寄せ制御を実現することができる。さらに、本願は、モータの出力トルクの方向が変化しようとしているときの出力トルクの下り勾配又は上り勾配に対する制限を最大限に解除し、消費者の操作や期待に従うモータの出力トルクとすることができ、関連技術における、モータの出力トルクの下り勾配又は上り勾配の制限に起因する、アクセルを緩めた後に加速感が感じるかまたはアクセルを踏むときに電動車の反応が悪いという問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本願の実施例又は関連技術における技術的解決手段をより明確に説明するため、以下、実施例又は関連技術の記述において使用する必要がある図面を簡単に説明する。当然ながら、以下、記載する図面は本願のいくつかの実施例であり、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を想到しうる。
【
図1】関連技術により提供されるトルクフィルタ方法の曲線概略図である。
【
図2】本願の実施例により提供される電動車の構造概略図である。
【
図3】本願の実施例により提供される電動車のモータ制御方法のフローチャートである。
【
図4】本願の実施例により提供される駆動歯と被動歯の運動過程の概略図である。
【
図5】本願の実施例により提供される駆動歯の歯寄せ制御の曲線概略図である。
【
図6】本願の実施例により提供される
図5のハッチング面積の幾何学モデル簡略化処理の実施例1の概略図である。
【
図7】本願の実施例により提供される
図5のハッチング面積の幾何学モデル簡略化処理の実施例2の概略図である。
【
図8】本願の実施例により提供される
図7に対応するモータの出力トルクの曲線概略図である。
【
図9】本願の実施例により提供される
図5のハッチング面積の幾何学モデル簡略化処理の実施例3の概略図である。
【
図10】本願の実施例により提供される
図9に対応するモータの出力トルクの曲線概略図である。
【
図11】関連技術により提供される運転状態決定の概略図である。
【
図12】本願の実施例により提供される運転状態制御装置の概略図である。
【
図13】本願の実施例により提供される出力トルク決定の1つの概略図である。
【
図14】本願の実施例により提供される出力トルク決定の別の概略図である。
【
図15】本願の実施例により提供される出力トルク決定の別の概略図である。
【
図16】本願の実施例により提供されるt
12とt
23によってt
13を決定する概略図である。
【
図17】本願の実施例により提供される歯寄せ時点決定の概略図である。
【
図18】本願の実施例により提供される表示スクリーンにおける仮想スライダー摺動の概略図である。
【
図19】本願の実施例により提供される複数の調整可能な選択肢の概略図である。
【
図20】本願の実施例により提供される電動車のモータ制御装置の構造概略図である。
【
図21】一例示的実施例に基づいて示されている電動車のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本願の実施例の目的、技術的解決手段及び利点をより明瞭にするために、以下、本願の実施例に係る図面を参照しながら、その技術的解決手段について明瞭、且つ完全に説明し、当然のことながら、記載される実施例は本願の実施例の一部にすぎず、そのすべての実施例ではない。当業者が本願における実施例に基づいて本実施例から示唆を受けて想到しうるその他のすべての実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0028】
本願の明細書と特許請求の範囲、及び上記の図面における用語「第1」、「第2」、「第3」、「第4」など(存在している場合)は、類似の対象を区別するためのものであり、特定の順序又は順番を説明するためのものである必要はない。本明細書に説明する本願の実施例を、例えば、本明細書に図示又は説明したもの以外の順序で実施できるように、このように使用されるデータを適宜交換できると理解すべきである。また、「含む」と「有する」という用語、及び、それらのいかなるバリエーションは、いずれも非排他的含有を網羅することを意図し、例えば、一連のステップ又はユニットを含むプロセス、方法、システム、製品、又はデバイスは、明記されているステップ又はユニットに限定される必要はなく、明記されていないか、又は、これらのプロセス、方法、製品又はデバイスに固有の他のステップ又はユニットを含んでもよい。
【0029】
以下、まず、本願に係る用語について解釈する。
【0030】
トルクとは、オブジェクトを回転させる特殊なモーメントを指す。モータトルクとは、モータの出力トルクである。
【0031】
バックラッシとは、一対の歯車が噛み合ったときの歯面同士の隙間を指す。バックラッシは、歯車の噛み合いをスムーズにするために必要なパラメータである。
【0032】
相対変形とは、非剛性材料に力が加えられたときに発生する変形を指し、ねじれ、バイアスなどを含むがこれらに限定されない。
【0033】
背景技術により提供される関連技術において、次の技術的問題が少なくとも存在している。
【0034】
世界各国で炭素排出規制がますます厳しくなり、カーボンピークやカーボンニュートラルの日程が提案され、燃料自動車の販売禁止の時刻表が計画的に提出されている一方、新エネルギー自動車すなわち電動車が強力に奨励・支援されている。当面の新エネルギーの応用範囲の拡大傾向から見ると、電動車の研究開発、生産と応用規模はすべて高速で成長していく。電動車の駆動過程は、完成車コントローラ又はモータコントローラによって決定された目標トルクによって、モータの出力トルクを制御することによって実現されている。モータが正と負のトルクに変化し、すなわちモータの出力トルクの方向が変化したとき、モータの歯車の噛み合い方向が変化したため、力を受ける方向は一致せず、歯打ちは発生し、消費者がはっきりと感じられる振動や騒音は発生し、運転の快適性にも影響を及ぼす。また、歯打ちは、歯車やスプラインなどの伝動機構に損傷を与える恐れがある。
【0035】
上記した問題に対して、関連技術において、モータの出力トルクを正と負のトルクに変化させるとき、フィルタ処理方法を用いて出力トルクを処理することによって振動や騒音を低減し、当該フィルタ方法はトルク平滑化処理方法であってもよい。
図1に示すように、モータの出力トルクを正のトルクから負のトルクに変化させるプロセスを例にとる場合に、駆動歯がバックラッシを通過するときの駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との速度差を時間積分したものは、図のハッチング面積であり、当該ハッチング面積はバックラッシ値である。
図1において、駆動歯の被動歯に対する相対的運動はそれぞれ、
図1の
(以下は、(1)、(2)、(3)、(4)と記する)という4つの段階に分けられ、ここで、(1)段階は正のトルク低下及び弾性圧力解放段階であり、(2)段階は、駆動歯の歯寄せ過程であり、(3)段階は、駆動歯と被動歯の接触及び圧縮の過程であり、(4)段階は、モータの負のトルク増加及び弾性圧力圧縮段階である。
図1のΔN
1は、駆動歯の被動歯に対する離脱時点での、車輪端の換算回転速度と駆動歯の回転速度との速度差を示すためのものである。
【0036】
上記の関連技術において、1)出力トルクを平滑化処理して、小トルク又はゼロトルク出力によって、駆動歯がゆっくりと歯間隙を通過するようにしているため、駆動歯がバックラッシを通過する時間は長くなり、正と負のトルクの変化に時間がかかり、消費者は、モータの出力トルク応答の不連続及び途切れという運転体験があり、動力出力遅延を感知し、運転体験が悪いという問題、2)回転速度差の最大値での駆動歯と被動歯の接触は、依然として慣性衝撃と衝突騒音を発生させ、振動や騒音を大幅に改善していないという問題、3)弾性圧力解放段階での駆動歯と被動歯のトルク勾配が大きすぎるため、ΔN1は大きくなり、駆動歯がバックラッシを通過するときの初速度は過大になり、駆動歯が被動歯と再び接触したときの速度差は大きすぎて、電動車に激しい衝撃及連続的な揺れが生じるため、弾性圧力解放段階でのトルク勾配の低下又は上昇は制限され、消費者がアクセルを緩めた後に電動車が依然として加速しているか、または消費者がアクセルを踏んでも電動車は加速しないため、電動車の動的反応が悪くなるという問題がある。
【0037】
本願は、電動車のモータ制御方法を提供し、伝動システムにおけるモータの駆動歯の噛み合い方向が変化しているときの動的過程を分析し、モータの高精度の駆動歯位置と回転速度測定及びモータのトルクの迅速な調整という特徴に鑑みて、モータの出力トルクの方向が変化したことを検出したとき、駆動歯の歯寄せ動作を制御することによって、駆動歯が被動歯から離脱した後再び接触したときの速度差を小さくし、慣性衝撃による駆動歯と被動歯との間の振動や騒音を低減ひいては除去する。
【0038】
1つの実施例では、1つの応用シーンに当該電動車のモータ制御方法を提供することができる。
図2は、本願の実施例により提供される電動車の構造概略図であり、
図2に示すように、当該電動車は、電子制御ユニット(Electronic Control Unit、ECUとして略称)、左前車輪、左前車輪速センサー、左前伝動軸、フロントモータレゾルバ、フロントモータ、フロントモータ制御駆動装置、フロントモータ減速差動装置、右前伝動軸、右前車輪速センサー、右前車輪、高電圧バッテリ、左リア車輪、左リア車輪速センサー、リアモータレゾルバ、リアモータ、リアモータ制御駆動装置、リアモータ減速差動装置、左リア伝動軸、右リア伝動軸、右リア車輪速センサー、右リア車輪を含むことができる。
【0039】
上記のシーンでは、フロントモータの出力トルクは、フロントモータ減速差動装置によって左前車輪と右前車輪に伝達され、リアモータの出力トルクは、リアモータ減速差動装置によって左リア車輪と右リア車輪に伝達され、そして、左前車輪速センサー、右前車輪速センサー、左リア車輪速センサー、及び右リア車輪速センサーにより、対応する車輪の車輪速を収集する。左前車輪速センサー、右前車輪速センサー、左リア車輪速センサー、及び右リア車輪速センサーから検出された速度値は、ECUで收集されて処理され、ECUは、取得された車輪速により、フロントモータとリアモータの出力トルクのトルク方向が変化したか否かを決定し、トルク方向が変化したとき、駆動歯の歯寄せ動作を制御することによって、駆動歯の回転速度の能動的な制御を実現し、このようにして、駆動歯がバックラッシを通過するときの初速度が大きすぎて、時間がかなりかかるという問題を低減ひいては回避することができるため、動力出力遅延、振動や騒音の問題を低減ひいては回避することができる。
【0040】
上記のシーンを参照して、以下、本願により提供される電動車のモータ制御方法の技術的解決手段について、いくつかの特定の実施例を用いて詳細に説明する。
【0041】
本願は、電動車のモータ制御方法を提供する。
図3は、本願の実施例により提供される電動車のモータ制御方法のフローチャートであり、
図3に示すように、当該方法は、次のステップを含む。
【0042】
S301では、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出する。
【0043】
本ステップでは、モータの出力トルクの方向が変化しようとしているとき、モータの駆動歯と伝動システムの被動歯の噛み合い方向が変化しようとしているか否かを決定することができ、すなわち、モータの出力トルクの方向が変化するとき、駆動歯が被動歯から離脱しようとしていることを示し、すなわち、駆動歯と被動歯との間の弾性力は解放され、弾性力は小さくなり、駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量も小さくなっている。
【0044】
選択的には、モータ稼働中に、モータの駆動歯と被動歯の噛み合い方向を継続的に検出し、駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を継続的に計算することによって、モータの出力トルクの方向が変化しようとしていることを検出したとき、駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を決定することができる。
【0045】
選択的には、駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形は、歯車変形及び軸変形を含む。
【0046】
S302では、相対変形量が第1のしきい値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差を決定する。
【0047】
本ステップでは、相対変形量が第1のしきい値であることは、駆動歯が伝動システムの被動歯から離脱開始することを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯の被動歯に対する離脱時点での駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が離脱時点において速度比によって換算されて得られた回転速度である。相対変形量が第1のしきい値であることは、相対変形量がゼロに等しいことであってもよく、当該時点は、駆動歯が被動歯から離脱開始する離脱時点である。駆動歯が被動歯から離脱してから再び接触する過程は、
図4に示されるようなものであってもよく、
図4は、本願の実施例により提供される駆動歯と被動歯の運動過程の概略図であり、
図4では、当該運動過程は、固定座標系を座標(park)変換によって回転座標系に変換した後の、駆動歯と被動歯との間の運動分解過程であってもよく、ここで、回転座標系の周波数は、車輪速を換算して(車輪速は比較的安定しており、比較的安定した座標系の周波数を取得することができる)得られたものであり、駆動歯と被動歯との間の相対運動は、弾性解放段階、駆動歯が被動歯から離脱開始する時点、駆動歯の自由回転段階、駆動歯が被動歯と再び噛み合い始めた時点、駆動歯が被動歯と接触開始する時点、及び弾性圧縮段階という6つの段階又は時点に等価なものであってもよい。
【0048】
選択的には、駆動歯が被動歯から離脱開始することは、駆動歯と被動歯との間の弾性変形の回復中に、相対変形回復量が弾性変形量に等しいということによって決定され得る。
【0049】
選択的には、相対変形量が第1のしきい値であり、すなわち、駆動歯が被動歯から離脱開始するとき、この時点での第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との速度差を決定し、当該速度差を第1の速度差として記することができる。これによって、当該第1の速度差に従ってモータに必要な出力トルクを決定することは容易になる。
【0050】
S303では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定する。
【0051】
本ステップでは、第1の速度差を決定した後、第1の速度差を用いてモータの出力トルクを算出することができ、
図5に示すように、
図5は、本願の実施例により提供される駆動歯の歯寄せ制御の曲線概略図である。
図5では、モータの出力トルクが正のトルクから負のトルクに変化する場合を例にとると、駆動歯の被動歯に対する相対的運動は3つの段階に分解されることができ、(1)段階は、正のトルク低下及び弾性解放段階であってもよく、(2)段階は、駆動歯の歯寄せ段階であってもよく、(3)段階は、負のトルク増加及び弾性圧縮段階であってもよい。
図5では、
uは、トルク変化速度を示すためのものであり、
T
12は、駆動歯の歯寄せを能動的に制御することに必要な第1のトルクを示すためのものであり、モータ回転子(駆動歯)を加速させ、モータ軸が歯車隙間領域を迅速に通過するようにする役割を果たしているものであり、
T
23は、駆動歯の歯寄せを能動的に制御することに必要な第2のトルクを示すためのものであり、歯車の噛み合い面が接触したときの回転速度差を減らし、これによって回転速度差による慣性衝撃を軽減する役割を果たしているものであり、
T
34は、歯寄せの能動的制御が終了した後の遷移トルク、すなわち歯寄せ制御トルクを安定したトルクに遷移したトルクを示すためのものであり、
T
45は、安定したトルクを示すためのものであり、すなわち、このときのモータの出力トルクは、運転者所望のトルク(又はアクセルペダルに必要なトルク)に等しいものであり、
t
0は、消費者がアクセルを緩めたとき、モータの出力トルクが低下開始する時点を示すためのものであり、
t
1は、駆動歯が被動歯から離脱開始する時点を示すためのものであり、
t
2は、T
12の第1のトルクの機能カットオフ時点を示すためのものであり、当該時点において、駆動歯の回転速度が加速から減速に変化し、予め設定されたタイミングであってもよく、
t
3は、T
23の第2のトルクの機能カットオフ時点、すなわち駆動歯が被動歯に再び接触した時点を示すためのものであり、
t
4は、モータの出力トルクが安定したトルクに達したときの時点を示すためのものであり、
t
5は、モータの出力トルクが安定したトルクに維持されている最後の時点を示すためのものであり、
t
01は、消費者がアクセルを緩めたときから駆動歯が被動歯から離脱開始するときまでの持続時間を示すためのものであり、
t
12は、T
12の第1のトルクが機能する時間長を示すためのものであり、
t
23は、T
23の第2のトルクが機能する時間長を示すためのものであり、
t
13は、t
12+t
23の合計時間、すなわち駆動歯の歯寄せを能動的に制御する処理が機能する時間長を示すためのものであり、
t
34は、T
34のトルクが機能する時間長、すなわち遷移トルクの持続時間を示すためのものであり、
t
45は、T
45のトルクが機能する時間長、すなわちモータの出力トルクが安定したトルクに達したときから数えた持続時間を示すためのものであり、
N
Oは、車輪端の回転速度を速度比によって換算した回転速度を示すためのものであり、車輪端の換算回転速度として略称し、
N
O1は、t
1時点での車輪端の換算回転速度を示すためのものであり、
N
O2は、t
2時点での車輪端の換算回転速度を示すためのものであり、
N
O3は、t
3時点での車輪端の換算回転速度を示すためのものであり、
N
Rは、モータ回転子の回転速度、すなわち駆動歯の回転速度を示すためのものであり、
N
R1は、t
01が終了するときの駆動歯の回転速度、すなわちt
1時点での駆動歯の回転速度を示すためのものであり、
N
R2は、t
12が終了するときの駆動歯の回転速度、すなわちt
2時点での駆動歯の回転速度を示すためのものであり、
ΔN
1は、t
1時点でのN
O1とN
R1との速度差、すなわち駆動歯の被動歯に対する離脱時点での車輪端の換算回転速度と駆動歯の回転速度との回転速度差を示すためのものであり、
ΔN
2は、t
2時点でのN
O2とN
R2との速度差、すなわちT
12の第1のトルクが機能カットオフ時点での車輪端の換算回転速度と駆動歯の回転速度との回転速度差を示すためのものである。
【0052】
選択的には、駆動歯がバックラッシを通過するときの駆動歯と被動歯との速度差を時間積分し、
図5のハッチング面積とすることができる。当該ハッチング面積はバックラッシ値である。第1の速度差、すなわちΔN
1を決定することによって、モータの出力トルク、すなわちT
12とT
23を算出する。
【0053】
選択的には、
図5の(1)段階では、弾性解放変形の積分範囲は、消費者がアクセルを緩めた後に被動歯がそれにつれて離脱するときから、モータの出力トルクが0であるかまたは弾性解放変形の積分値が弾性変形の予め設定された値に等しくなるまでの範囲であってもよい。弾性変形の予め設定された値は、出力トルクと弾性解放変形とのマッピングテーブルで示すことができ、弾性解放変形の累積積分値が弾性変形の予め設定された値に達すると、弾性解放変形が終了すると見なされる。マッピングテーブルを予め設定する方法は、静的条件下で完成車又は伝動システムのアセンブリ上で異なるブロッキングトルクをモータに与え、このブロッキングトルクでのモータ軸の回転角度を測定する方法であってもよい。
【0054】
図5の(2)段階では、バックラッシ積分範囲は、弾性解放変形が終了したときから、バックラッシ積分値が予め設定されたバックラッシ値S又は自己学習バックラッシ値Sに達したときまでの範囲であってもよい。
【0055】
図5の(3)段階では、弾性圧縮変形の積分範囲は、バックラッシ積分が終了したときから、駆動歯が被動歯と再び噛み合うときまでの範囲であってもよい。
【0056】
選択的には、積分計算式は、
L=ΣΔω
Δω=ΔN×2π/60
のように示すことができ、
サンプリング周波数がΔtであるとき、
Lt=Lt-1+Δω×Δtとする。
【0057】
ここで、Lは、駆動歯の被動歯に対する相対位置差の積分を示すためのものであり、弾性変形積分とバックラッシ積分は両方とも当該値で示すことができ、単位はラジアンradであり、ΔNは、駆動歯と被動歯との速度差を示すためのものであり、単位は回転/分rpmであり、ωは、単位換算後の駆動歯と被動歯との速度差を示すためのものであり、単位はrad/sである。
【0058】
S304では、出力トルクに従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ動作を制御する。
【0059】
本ステップでは、駆動歯の回転速度の能動的制御は、モータの出力トルクを制御することによって実現されているため、モータの出力トルクを制御することによって、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ動作を制御し、歯接触時の駆動歯と被動歯との速度差を低下することができ、これによって、歯接触時の慣性衝撃は低減され、振動や騒音はなくされる。
【0060】
本実施例により提供される電動車のモータ制御方法は、モータの出力トルクが変化したときの弾性変形を導入し、弾性変形を計算して、弾性変形に起因する相対初速度を識別することによって、初速度に従って対応するモータの出力トルクの制御策略を実施し、駆動歯の能動的な歯寄せ動作を制御しているため、歯接触時の慣性衝撃を効果的に低減ひいては回避又は解決し、振動や騒音をなくすことができる。また、駆動歯の歯寄せを能動的に制御しているため、トルク平滑化処理策における接触と圧縮段階をなくし、駆動歯がバックラッシを通過する時間を短縮し、歯の噛み合い面の変化過程を短縮し、すなわち、正のトルクと負のトルクの変化時間を減らし、トルク応答を向上させ、より優れた運転性能にすることができる。
【0061】
1つの実施例では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するステップは、第1の速度差と第1の時間長との積を第1の積として決定するステップであって、第1の時間長は、離脱時点から駆動歯の被動歯に対する接触時点までの持続時間である、ステップと、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクを含むと決定するステップと、を含み、第1のトルクと第2のトルクは、互いに反対方向であり、第1のトルクは、離脱時点からモータの加速状態と減速状態の変換時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、第2のトルクは、変換時点から接触時点までの時間間隔において必要とされるトルクである。
【0062】
当該解決策では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するとき、まず、第1の速度差と第1の時間長との積、すなわちΔN
1×(t
12+t
23)を決定することができ、ΔN
1×(t
12+t
23)<2Sである場合(ここで、Sは、デフォルトバックラッシ値を示すためのものであり、予め設定されたバックラッシ値が2Sにする場合は、最適な解決策となる)に、第1の速度差を用いて算出された第1のトルクT
12と第2のトルクT
23は、互いに反対方向であり、この場合、出力トルク曲線は、
図5に示されるものであってもよい。
【0063】
選択的には、モータの出力トルクを決定することによって、駆動歯の回転速度を能動的に制御し、すなわち、減速してから加速する(又は加速してから減速し、これは、モータの出力トルクの変化方向に応じて決定される)場合のトルク制御を実施することによって、駆動歯がバックラッシを通過するときにかかる時間を減らし、動力応答が遅れているという問題を低減ひいては回避することができ、駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯が被動歯に再び接触したときの回転速度差を低下させることによって、理想的には、回転速度差をゼロまで低下させ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0064】
1つの実施例では、第1のトルクと第2のトルクは、変換時点において、予め設定されたバックラッシ値、第1の速度差、及び第1の時間長によって、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差を決定し、第2の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が変換時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であること、第2の速度差と第2の車輪端の換算回転速度に従い、第2の駆動歯の回転速度を決定し、第2の駆動歯の回転速度は、変換時点での駆動歯の回転速度であること、第2の駆動歯の回転速度、第1の駆動歯の回転速度、離脱時点と変換時点の持続時間、及び第2の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に従い、第1のトルクを決定すること、及び、第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、変換時点と接触時点の持続時間、及び第3の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に従い、第2のトルクを決定し、第3の駆動歯の回転速度は、接触時点での駆動歯の回転速度であること、によって決定されている。
【0065】
当該解決策では、
図5のハッチング面積の幾何学モデル簡略化処理を行うことができ、
図6に示すように、
図6に示されている簡略化モデルを用いて、モータの出力トルクを決定することができ、
簡略化モデルからわかるように、N
O1、N
R1、t
12、t
23が決定されたとき、N
O2、N
O3は決定値で、N
R2の時間成分は決定値である。且つ、N
O1、N
O3、N
R1、N
R2で囲まれた面積バックラッシ値Sも決定値である。
【0066】
上記の条件に従ってΔN2、NR2の速度成分を求めることができ、そして、線分NR1NR2について導関数を求めて速度変化率a12を得ることができ、線分NR2NO3について導関数を求めて速度変化率a23を得ることができ、速度変化率a12とa23に従い、第1のトルクT12と第2のトルクT23を決定することができる。次のように式にて示すことができる。
2S=ΔN1×t12+ΔN2×(t12+t23)
ΔN2=(2S-ΔN1×t12)/(t12+t23)
NR2=NO2-ΔN2=NO2-(2S-ΔN1×t12)/(t12+t23)
a12=(NR2-NR1)/t12
a23=(NO3-NR2)/t23
【0067】
モータ回転子の慣性モーメントを知れば、モータ回転子の慣性モーメントIに従って第1のトルクT12と第2のトルクT23を求めることができ、次のように式にて示すことができる。
T12=I×a12+TF
T23=I×a23+TF
【0068】
ここで、電動車の異なる運転モードに応じて1つ又は複数のテーブルを決定することができ、テーブル内には、駆動歯の回転速度(又は車速)とt12及びt23とのマッピング関係を記憶することができるため、t12、t23は、テーブルを照会することによって取得することができ、TFは、現在の駆動歯の回転速度と温度における、駆動歯回転の摺動摩擦力を示すためのものであり、ベンチテストによって取得され得る。
【0069】
選択的には、車輪端の換算回転速度NOは、次の式にて決定され得る。
NO=N*i
【0070】
車速予測式は、次の式にて決定され得る。
V=V1+a×Δt=V1+aF×Δt-sinθ×g×Δt+F/m×Δt
=(NO1+aO×Δt)×2πr/K/i
K=N1×2πr/V1
【0071】
車速加速度式は、次の式にて決定され得る。
a=aF-sinθ×g+F/m
この場合、aF×Δt-sinθ×g×Δt+F/m×Δt=aO×Δt×2πr/K/iである。
【0072】
車輪速加速度式:
aO=a/(Δt×2πr×K)=(-aF-sinθ×g+F/m)/(2πr/K/i)
【0073】
車輪速予測式:
NOΔt=NO1+aO×Δt
=NO1+(-aF-sinθ×g+F/m)×Δt/(2πr/K/i)
【0074】
ここで、Kは、タイヤスリップ係数を示すためのものであり、Nは、車輪車輪速を示すためのものであり、N1は、特定の時点の車輪車輪速を示すためのものであり、NOは、車輪端の換算回転速度を示すためのものであり、Vは、電動車車速を示すために使用することができ、V1は、電動車の特定の時点での車速を示すためのものであり、aは、車速の加速度を示すためのものであり、Fは、車輪端トルクを示すためのものであり、駆動歯がバックラッシを通過する過程では、F=0とし、aFは、完成車の滑走抵抗(風抵抗+車輪端摩擦力+伝動システムの機械摩擦力)による減速度を示すためのものであり、滑走曲線にて取得することができ、aOは、車輪速の加速度を示すためのものであり、rは、車輪の半径を示すためのものであり、θは、傾きを示すためのものであり、iは、車輪とモータ回転子との速度比を示すためのものであり、Δtは、特定の時間帯の時間長を示すためのものであり、gは、重力加速度を示すためのものであり、mは、電動車の質量を示すためのものである。
【0075】
選択的には、t12とt23を決定することによってモータの出力トルクを決定し、歯寄せ動作を完成させるように駆動歯を制御することに加え、与えられたT12とT23の値を用いて駆動歯の歯寄せ動作を完成させることができ、異なる運転モードに応じて1つ又は複数のテーブルを決定することができ、テーブル内には、駆動歯の回転速度(又は車速)とT12及びT23とのマッピング関係が記憶されており、すなわち、T12、T23は、テーブルを照会することによって取得することができ、この場合、T12、T23に対応する時間を決定すれば駆動歯の歯寄せ動作を完成させることができ、次の式にて示すことができる。
a12=I/T12
a23=I/T23
2S=ΔN1×t12+ΔN2×(t12+t23)
ΔN2=ΔN1-a13×t12+a12×t12
ΔN1+a12×t12=a23×t23+a13×(t12+t23)
t23=(ΔN1+a12×t12-a13×t12)/(a13+a23)
2S=ΔN1×t12+(ΔN1-a13×t12+a12×t12)×(t12+(ΔN1+a12×t12-a13×t12)/(a13+a23))
【0076】
a13は、線分NO1NO3について導関数を求めて得られた速度変化率を示すためのものである。
【0077】
上記の式を用いて、第1のトルクT12に対応する時間t12及び第2のトルクT23に対応する時間t23、すなわち、歯寄せ過程全体を決定することができる。
【0078】
選択的には、NO1、NO3、NR1、NR2で囲まれた面積がバックラッシSであると決定されると、NO1とNR1は決定され、T12、T23、t12、t23、t13のうちの任意の2つの量を決定することによって歯寄せ過程全体を決定することもできる。
【0079】
選択的には、駆動歯の回転速度を能動的に制御し、すなわち、減速してから加速する(又は加速してから減速し、これは、モータの出力トルクが変化しようとする方向に応じて決定される)場合のトルク制御を実施することによって、駆動歯がバックラッシを通過するときにかかる時間を減らし、動力応答が遅れているという問題を低減ひいては回避し、駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯が被動歯に再び接触したときの回転速度差を低下させることによって、理想的には、回転速度差をゼロまで低下させることができ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0080】
1つの実施例では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するステップは、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、第1の速度差と第2の時間長との積を第2の積として決定するステップであって、第2の時間長は、離脱時点から変換時点までの持続時間である、ステップと、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクを含むと決定するステップであって、第1のトルクと第2のトルクは、同じ方向である、ステップと、をさらに含む。
【0081】
当該解決策では、算出された第1の積が予め設定されたバックラッシ値2Sよりも大きい又は等しい場合に、第1の速度差と第2の時間長との積を決定する必要があり、すなわち、ΔN1×(t12+t23)≧2Sである場合に、ΔN1×t12を算出することができる。
【0082】
選択的には、ΔN
1×t
12<2Sである場合、この場合、
図5のハッチング面積の幾何学モデル簡略化処理を行うことによって、
図7に示されている簡略化モデルを得ることができ、この場合、第1のトルクT
12と第2のトルクT
23を決定する式は、前述したΔN
1×(t
12+t
23)<2Sの場合と同じであるが、ΔN
1×t
12<2Sである場合に、第1のトルクT
12と第2のトルクT
23は、同じ方向であり、出力トルク曲線は、
図8に示されているものであってもよい。
【0083】
選択的には、
図8では、破線T
1は、出力トルク低下段階の可能なトルク曲線を示すためのものであり、トルク曲線は、トルク変化速度u、駆動歯の被動歯に対する離脱時点t
1、駆動歯が被動歯から離脱したときの初速度差ΔN
1に依存するものであり、uは、消費者がアクセルを緩めて出力トルクが低下開始する時点から駆動歯が被動歯から離脱開始する時点(t
0~t
1)までのトルク低下の平均勾配、すなわちトルク下り勾配を示すためのものであり、トルク変化速度とも呼ばれている。
【0084】
選択的には、駆動歯の回転速度を能動的に制御し、すなわち、減速してから加速する(又は加速してから減速し、これは、モータの出力トルクの変化方向に応じて決定される)場合のトルク制御を行うことによって、駆動歯がバックラッシを通過するときにかかる時間を減らし、動力応答が遅れているという問題を低減ひいては回避し、駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯が被動歯に再び接触したときの回転速度差を低下させることによって、理想的には、回転速度差をゼロまで低下させることができ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0085】
1つの実施例では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するステップは、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、目標時点において、第3の車輪端の換算回転速度を決定するステップであって、第3の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が目標時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であり、目標時点は、第2の時間長内に駆動歯が被動歯に再び接触した時点である、ステップと、第3の車輪端の換算回転速度、第1の駆動歯の回転速度、及び離脱時点と目標時点の持続時間に従い、第3のトルクを決定するステップであって、第3のトルクは、離脱時点から目標時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、出力トルクは第3のトルクを含む、ステップと、をさらに含む。
【0086】
当該解決策では、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しく、すなわち、ΔN
1×t
12≧2Sである場合、
図5のハッチング面積の幾何学モデル簡略化処理を行うことによって、
図9に示されている簡略化モデルを得ることができ、この場合、t
1からt
2’までの時間長において必要とされるトルクを計算するだけでよく、t
2’は、目標時点であり、t
1からt
2までの時間長内に駆動歯が被動歯に再び接触した時点である。
【0087】
選択的には、ΔN1×t12≧2Sである場合に、モータの出力トルク(第3のトルク)を決定することは、次の式にて示すことができる。
ΔN1×t12’=2S
t12’=2S/ΔN1
NO2’=NO1-a13×t12’
a12’=(NO2’-NR1)/t12’
T12’=I×a12’
【0088】
t12’は、t1からt2’までの時間長を示すためのものであり、NO2’は、t2’時点での駆動歯が被動歯に再び接触したときの車輪速換算回転速度を示すためのものであり、a12’は、線分NO1NO2’について導関数を求めて得られた速度変化率を示すためのものであり、T12’は、第3のトルクを示すためのものである。
【0089】
選択的には、ΔN
1×t
12≧2Sである場合に、出力トルク曲線は、
図10に示されているものであってもよい。
図10では、破線T
1は、出力トルク低下段階の可能なトルク曲線を示すためのものであり、トルク曲線は、トルク変化速度u、駆動歯の被動歯に対する離脱時点t
1、駆動歯が被動歯から離脱したときの初速度差ΔN
1に依存するものであり、破線T
2は、t
12’時間長後に、選択可能なトルク曲線を示すためのものである。
【0090】
選択的には、駆動歯の回転速度を能動的に制御し、すなわち、減速してから加速する(又は加速してから減速し、これは、モータの出力トルクの変化方向に応じて決定される)場合のトルク制御を行うことによって、駆動歯がバックラッシを通過するときにかかる時間を減らし、動力応答が遅れているという問題を低減ひいては回避し、駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯が被動歯に再び接触したときの回転速度差を低下させることによって、理想的には、回転速度差をゼロまで低下させることができ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0091】
1つの実施例では、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出するステップは、モータの出力トルクの方向が変化しようとしているか否かを決定するステップと、出力トルクの方向が変化しようとしているとき、モータの駆動歯と被動歯の噛み合い方向が変化しようとしているか否かを決定するステップと、駆動歯と被動歯の噛み合い方向が変化しようとしているとき、相対変形量を決定するステップと、を含む。
【0092】
当該解決策では、駆動歯と車輪との間の伝動システム伝達のトルクは、駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形を引き起こし、駆動歯と車輪端との間の伝動システムの変形によって生じる弾性力は、出力トルク変化中に、駆動歯の回転速度と車輪端の換算回転速度との相対速度差を生じさせ、相対速度差を識別し、異なる相対速度差に対して異なる出力トルク制御策略を実施することによって、関連技術における、「アクセルを緩めた後に車両が依然として加速しているか、またはアクセルを踏んでも車両が加速しない」という問題を効果的に低減ひいては回避することができ、当該解決案は、弾性解放段階のトルク勾配が大きいことを可能にしているため、正と負のトルクの迅速な変化を実現し、電動車の動的応答を最適化することができる。
【0093】
選択的には、モータの出力トルクの方向が変化しようとしているか否かを決定することができ、出力トルクの方向が変化しようとしていることは、出力トルクの方向が正から負に変化する、負から正に変化する、ゼロプラス、ゼロマイナスなどの様々な状況を含むことができ、出力トルクの方向が変化しようとしているとき、モータの駆動歯と被動歯の噛み合い方向が変化しようとしているか否かを決定して、駆動歯と被動歯の噛み合い方向が変化しようとしているとき、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を決定することができる。
【0094】
1つの実施例では、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を決定するステップは、モータの出力トルクの方向が変化したことを検出したとき、現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差を決定するステップと、第3の速度差に従い、駆動歯の被動歯に対する相対変位を決定するステップと、相対変位に従い、相対変形量を決定するステップと、をさらに含む。
【0095】
当該解決策では、出力トルクが変化した場合、この後の駆動歯と被動歯の運動中に、駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差をリアルタイムに計算することができ、複数の連続的な時間帯の各時間帯での速度差を決定し、そして、各時間帯での速度差と対応する時間帯の時間長を用いて、駆動歯の被動歯に対する相対変位を算出し、駆動歯と被動歯の相対変形量を得ることができる。
【0096】
選択的には、異なる相対変形量による駆動歯の相対初速度が異なるため、異なる初速度に対して異なる出力トルク制御策略を実施し、正と負のトルクの迅速な変化を実現し、電動車の動的応答を最適化することができる。
【0097】
本願により提供される電動車のモータ制御方法は、駆動歯と被動歯の噛み合い方向が変化したとき、モータの出力トルクを能動的に制御することによって、駆動歯が被動歯に再び接触するまでにかかる時間を減らし、正と負のトルクの変化を加速させ、動力出力遅延を短縮し、運転性を最適化する一方、駆動歯と被動歯の噛み合い方向が変化したとき、モータの出力トルクを能動的に制御することによって、駆動歯が被動歯に接触したときの速度差をなくし、慣性衝撃による騒音や衝撃をなくす。さらに、減速トルクを付加することによって、駆動歯が被動歯に接触したときの速度差を低下またはなくし、弾性解放段階のトルク勾配を増加し、正と負のトルクの迅速な変化を実現し、アクセルを緩めた後に車両が依然として加速しているまたはアクセルを踏んでも車両が加速しないという問題を低減ひいては回避し、車両の動的応答を最適化することができる。
【0098】
1つの実施例では、さらに、車両の運転状態によって車両の出力トルクを決定することもできる。車両の運転状態は、運転スタイル又は運転モードとも呼ばれ、消費者がアクセルペダルを踏んだ又は緩めたときの車両の加速特徴又は減速特徴を意味する。異なる運転状態の設定に応じて、車両は運転状態が異なり、つまり、異なる運転状態の設定に応じて、車両の動力装置は、トルク出力特徴が異なり、すなわち、出力トルクを制御することによって特定の運転状態を達成する。運転状態は、エコノミー状態(ECO状態)、快適状態(標準状態)、運動状態、及びトラック競技状態を含むことができる。車両運転時の異なる運転状態に対する消費者の需要を満たして適応させるために、運転状態の選択機能を車両に装備することができる。異なる運転状態では、アクセルペダルを踏んだ又は緩めたとき、動力装置はトルク出力の特徴が異なるため、異なる運転状態での車両の異なる加速特徴又は減速特徴の需要を満たす。快適モードとエコノミーモードに比べて、運動モードでは、アクセルペダルを踏んだ又は緩めたとき、車両加速度の変化率はより大きく、運動モードにおける車両は同じ時間内により大きな加速度や減速度を達成するか、又は車両はより短い時間に目標加速度や目標減速度を達成することができる。
【0099】
別の関連技術において、様々な運転状態を実現するために、それぞれの運転状態について1つの対応する実行プログラム(又はロジック)を設定し、消費者がある運転状態を選択した後にその対応するプログラムを実行するのが一般的である。しかし、このような方法を用いると、運転状態の選択は消費者が自由に設定できるものではなくなり、消費者は予め設定されたいくつかの運転状態の中から選択して使用することができる。一方、運転状態の数についても、数の制限がないように予め設定することができず、さもなければ、高価な開発コストと部品コストが生じ、且つ開発サイクルもそれにつれて増加する。また、数が限定された運転状態が予め装備されていたとしても、研究開発コストの増加及び研究開発期間の延長をもたらす。しかし、異なる消費者または異なる運転シーンにおける同一消費者にとっては、車両の加速反応に対して異なる需要を求めているため、数が限定された運転状態でもって消費者の車両加速反応の需要を満たすことができない。例にとって説明すると、
図11に示すように、いくつかの場合において、運動モードにおける車両の加速反応は敏感になる傾向があるが、快適モードにおける車両の加速反応は鈍くなる傾向があり、不適切な車両の加速反応について、消費者は、当該運転モード又は車両反応を学習又は適応するのに時間がかかり、この過程では、消費者は車両運転性の体験が悪くなっている。
【0100】
図11は、関連技術により提供される運転状態決定の概略図であり、
図11では、アクセルペダルを緩めた場合を例にとると、消費者は、アクセルペダルを安定させる状態からアクセルペダルを緩める状態まで、定常状態トルク制御と動的トルク制御に分けられる。ここで、定常状態トルクは、消費者がアクセルペダルを安定させているときのトルク、すなわち、トルクT
0とトルクT
45を示すためのものであり、運転状態を変更するとき、定常状態トルクの大きさを変更することによって異なる定常状態運転の運転状態を実現し、動的トルクは、アクセルペダルの開度変化からトルク安定までの過程におけるトルクを示すためのものであり、動的トルクは、次の3つの段階に分解することができ、
段階(1)は、すなわちt
01時間間隔で、トルク低下過程であり、当該時間間隔がトルクT
01に対応する段階であり、
段階(2)は、すなわちt
13時間間隔で、ゼロトルク又は小トルクの歯寄せ過程であり、当該時間間隔がトルクT
13に対応する段階であり、
段階(3)は、すなわちt
34時間間隔で、トルク増加過程であり、当該時間間隔がトルクT
34に対応する段階である。
【0101】
ΔN1は、t1時点において、駆動歯が被動歯から離脱するときの車輪端の換算回転速度と駆動歯の回転速度との回転速度差を示すためのものである。
【0102】
当該関連技術において、t01時間間隔のトルクの変化速度を決定することによって、t01時間間隔の運転状態を決定し、t13時間間隔のトルクの大きさ及びt13時間間隔の時間長を決定することによって、t13時間間隔の運転状態を決定し、且つ、t13時間間隔のトルクの大きさ、t13時間間隔の時間長、t01時間間隔のトルクの変化速度の三者は、互いにマッチする必要があり、さもなければ、より激しい車両振動が発生し、消費者の運転体験が悪くなる一方、t34時間間隔のトルクの変化速度を決定することによって、t34時間間隔の運転状態を決定し、t34時間間隔のトルクの変化速度は、t13時間間隔のトルクの大きさ、t13時間間隔の時間長、t01時間間隔のトルクの変化速度とマッチする必要があり、さもなければ、より激しい車両振動が発生し、消費者の運転体験が悪くなる。したがって、関連技術において、動的トルク制御の各段階において、トルクの大きさ及びトルク持続時間の制御の精度が高く求められており、予期の効果を達成することが困難であり、校正難易度が高くなり、校正期間が長くなり、研究開発コストが高くなるという問題がある。
【0103】
これに対して、本願では、消費者から入力された運転状態パラメータに従って出力トルクをリアルタイムに制御することができるため、消費者は、自分の好みや習慣に合わせて、許される最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態から車両の運転状態を選択することができるため、車両の運転状態が消費者の運転習慣によりよくマッチされたものとなり、消費者の運転体験感を向上させることができる。また、消費者は運転状態を自由に調整することができ、消費者は、運転状態を調整することによって、消費者の運転習慣に適応した車両にすることができ、消費者の学習コストの低減につながる。さらに、消費者から入力された運転状態パラメータに従って出力トルクをリアルタイムに計算することによって、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0104】
以下、車両の運転状態に応じて車両の出力トルクを決定する技術的解決手段について、いくつかの特定の実施例を参照して詳細に説明する。
【0105】
1つの実施例では、モータの出力トルクを決定するステップは、運転状態を調整する調整操作に応答し、調整された目標運転状態に対応する運転状態情報を取得するステップと、運転状態情報を変換処理して、デジタル信号を得るステップと、デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得るステップと、トルク信号に従い、出力トルクを決定するステップと、を含む。
【0106】
当該解決策では、運転状態制御装置を提供し、
図12に示すように、
図12は、本願の実施例により提供される運転状態制御装置の概略図であり、
図12では、当該運転状態制御装置は、操作コンポーネント1201、確認モジュール1202、及び制御モジュール1203を含むがこれらに限定されない。具体的には、消費者は、操作コンポーネント1201を操作することによって、運転状態を所望の目標運転状態に調整し、操作コンポーネント1201は、消費者が調整した目標運転状態に対応する運転状態情報をデジタル信号に転化した後、確認モジュール1202に伝達し、確認モジュール1202は、デジタル信号を受信した後、目標運転状態に対応するリアルタイムに必要とされているトルク信号を算出するとともに、当該トルク信号を制御モジュール1203に伝達し、制御モジュール1203は、当該トルク信号を受信した後、対応するトルクを出力するようにしている。
【0107】
上記の解決策において、操作コンポーネント1201は、操作素子とフィードバック素子を備える制御ユニットであってもよく、消費者の運転状態に対する調整操作に当該操作コンポーネント1201に頼って応答するとともに、当該調整操作の結果を確認モジュール1202に伝達して消費者にフィードバックすることができる。
【0108】
ここで、操作素子は、触覚操作素子(スイッチ、回転調整器、回転プレス調整器、スライド調整器、トラックボール、ジョイスティック、タッチパッド、タッチスクリーンなど)、音響検出及び/又は分析評価ユニット(マイク、音声認識装置、周波数分析器など)、視線追跡装置(例えばカメラに基づく視線追跡装置)、非接触位置決定ユニット、3D位置決定ユニット、近接センサー、ユーザアイデンティティ(操縦士、副操縦士、乗員など)認識システム、ジェスチャ認識装置などの1つ又は複数を含むことができる。例えば、操作素子は、押圧スイッチ及び/又は回転スイッチ又はタッチ入力ディスプレイとして構成され得る。操作素子1201は、好ましくは操縦士と副操縦士の共同作用範囲内に配置され、選択的には、同車後部座席の乗員の作用範囲内に配置されてもよい。
【0109】
フィードバック素子は、ユーザから入力された目標運転状態に対応する運転状態情報を、デジタル信号(デューティ比、比率、ランク、強度などで変換処理が可能)に変換して確認モジュール1202に伝達する信号変換装置を含み得る。フィードバック素子は、アニメーション、画像、テキスト、サウンド、照明の色、照明の明るさ、照明の数などによって、現在の運転状態をユーザにフィードバックすることができる視覚要素(例えば、ディスプレイ、ライトなど)、発話素子などをさらに含むことができる。
【0110】
上記の解決策において、消費者は、自分の好みや習慣に合わせて、許される最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態から車両の運転状態を選択することができるため、車両の運転状態が消費者の運転習慣によりよくマッチされたものとなり、消費者の運転体験感を向上させることができる。
【0111】
1つの実施例では、デジタル信号は、電動車の異なる運転状態を異なる数値で示しており、デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得るステップは、デジタル信号が第1の数値である場合に、トルク信号が第1の予め設定された信号であると決定するステップと、デジタル信号が第2の数値である場合に、トルク信号が第2の予め設定された信号であると決定するステップと、デジタル信号が第1の目標数値である場合に、第1の予め設定された信号、第2の予め設定された信号、及び第1の目標数値に従い、トルク信号を目標信号として決定するステップと、を含み、第1の数値は第2の数値よりも小さく、第1の目標数値は第1の数値よりも大きいが第2の数値よりも小さく、第1の予め設定された信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も低いときのトルク信号であり、第2の予め設定された信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高いときのトルク信号であり、目標信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い感度と最も低い感度との間にあるときのトルク信号である。
【0112】
当該解決策では、確認モジュールが操作コンポーネントから伝達されたデジタル信号を受信した後、当該デジタル信号は、確認モジュールにおいて、数値で表現することができ、例えば、デジタル信号は、0と1との間の任意の数値であってもよく、デジタル信号の数値がAである場合、
A=0である場合には、運転状態が最も鈍い状態にあることを示すためのものであり、
A=1である場合には、運転状態が最も敏感な状態にあることを示すためのものであり、
0<A<1である場合には、運転状態が最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態にあることを示すためのものである。
【0113】
上記の解決策において、第1の数値は0であってもよく、第1の予め設定された信号は、運転状態が最も鈍い状態にある場合に対応するトルク信号であり、第2の数値は1であってもよく、第2の予め設定された信号は、運転状態が最も敏感な状態にある場合に対応するトルク信号であり、第1の目標数値は、0と1との間の任意の数値であってもよい。消費者から入力された運転状態に応じて出力トルクをリアルタイムに計算しているため、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0114】
1つの実施例では、トルク信号が目標信号である場合に、トルク信号に従い、出力トルクを決定するステップは、第1の予め設定された信号に対応する第4のトルク、第2の予め設定された信号に対応する第5のトルクを取得するステップと、第1の目標数値と第5のトルクとの第3の積を決定するステップと、予め設定された値と第1の目標数値との第1の目標差を決定して、第1の目標差と第4のトルクとの第4の積を決定するステップと、第3の積と第4の積との和を出力トルクとして決定するステップと、を含む。
【0115】
当該解決策では、アクセルペダルを緩めた場合を例にとると(アクセルペダルを踏んでいる場合も同様、アクセルペダルを緩めた場合はトルク低下制御で、アクセルペダルを踏んだ場合はトルク上昇制御であることにおいて相違している)。
【0116】
図5の動的トルクの段階(1)、即ち、トルク低下及び弾性解放段階について、
図13に示すように、t
01時間間隔において、T
01トルクの変化勾配を制御することによって、この段階の運転状態を決定することができる。
【0117】
図13は、本願の実施例により提供される出力トルク決定の1つの概略図であり、
図13には、MAX曲線は、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合のトルク曲線を示すためのものであり、MIN曲線は、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合のトルク曲線を示すためのものであり、ACT曲線は、運転状態が最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態にある場合、すなわち0<A<1である場合のトルク曲線を示すためのものである。MAX曲線とMIN曲線は予め設定された曲線である。
【0118】
動的トルクの段階(1)において、0<A<1である場合に、出力トルクT01_ACTは、次のように示され得る。
T01_ACT=A*T01_MAX+(1-A)*T01_MIN
【0119】
ここで、Aは、第1の目標数値を示すためのものであり、当該第1の目標数値は、0と1との間の任意の数値であってもよく、T01_MAXは、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合の出力トルク、すなわち第5のトルクを示すためのものであり、T01_MINは、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合の出力トルク、すなわち第4のトルクを示すためのものであり、予め設定された値は1であってもよい。
【0120】
図5の動的トルクの段階(3)、すなわち、負のトルク増加及び弾性圧縮段階について、
図14に示すように、t
34時間間隔において、T34トルクの変化勾配を制御することによって、この段階の運転状態を決定する。
【0121】
図14は、本願の実施例により提供される出力トルク決定の別の概略図であり、
図14には、MAX曲線は、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合のトルク曲線を示すためのものであり、MIN曲線は、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合のトルク曲線を示すためのものであり、ACT曲線は、運転状態が最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態にある場合、すなわち0<A<1である場合のトルク曲線を示すためのものである。MAX曲線とMIN曲線は予め設定された曲線である。
【0122】
動的トルクの段階(3)において、0<A<1である場合に、出力トルクT34_ACTは、次のように示され得る。
T34_ACT=A*T34_MAX+(1-A)*T34_MIN
【0123】
ここで、T34_MAXは、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合の出力トルク、すなわち第5のトルクを示すためのものであり、T34_MINは、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合の出力トルク、すなわち第4のトルクを示すためのものであり、予め設定された値は1であってもよい。
【0124】
図5の定常状態トルク、すなわちトルクT
0とトルクT
45について、
図15に示すように、トルクT
0とトルクT
45の大きさを変更することによって、異なる定常状態運転の運転状態を達成することができる。
【0125】
図15は、本願の実施例により提供される出力トルク決定の別の概略図であり、
図15には、1つの一定のアクセルペダルの開度について、MAX曲線は、当該アクセルペダルの開度において、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合のトルク曲線を示すためのものであり、MIN曲線は、当該アクセルペダルの開度において、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合のトルク曲線を示すためのものであり、ACT曲線は、当該アクセルペダルの開度において、運転状態が最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態にある場合、すなわち0<A<1である場合のトルク曲線を示すためのものである。MAX曲線とMIN曲線は予め設定された曲線である。
【0126】
0<A<1である場合に、出力トルクT_ACTは、次のように示され得る。
T_ACT=A*T_MAX+(1-A)*T_MIN
【0127】
ここで、T_MAXは、アクセルペダルの開度において、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合の出力トルク、すなわち第5のトルクを示すためのものであり、T_MINは、アクセルペダルの開度において、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合の出力トルク、すなわち第4のトルクを示すためのものであり、予め設定された値は1であってもよい。
【0128】
上記の解決策において、消費者から入力された運転状態を対応するデジタル信号に変換し、そして当該デジタル信号を用いて出力トルクをリアルタイムに計算することができるため、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0129】
1つの実施例では、第1の目標数値と第5のトルクとの第3の積を決定するステップは、運転状態嗜好係数を示すための予め設定された係数を取得するステップと、第1の目標数値と予め設定された係数と第5のトルクとの積を第3の積として決定するステップと、を含む。
【0130】
当該解決策では、さらに、運転状態嗜好係数を設定することによって、出力トルク計算の精度を向上させることができ、このとき、動的トルクの段階(1)において、0<A<1である場合に、出力トルクT01_ACTは、次のように示され得る。
T01_ACT=A*K*T01_MAX+(1-A)*T01_MIN
【0131】
動的トルクの段階(3)において、0<A<1である場合に、出力トルクT34_ACTは、次のように示され得る。
T34_ACT=A*K*T34_MAX+(1-A)*T34_MIN
【0132】
定常状態トルクについて、0<A<1である場合に、出力トルクT_ACTは、次のように示され得る。
T_ACT=A*K*T_MAX+(1-A)*T_MIN
【0133】
ここで、Kは運転状態嗜好係数を示すために用いられる。
【0134】
上記の解決策において、消費者から入力された運転状態を対応するデジタル信号に変換し、そして当該デジタル信号を用いて出力トルクをリアルタイムに計算することができるため、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0135】
1つの実施例では、デジタル信号は、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の異なる歯寄せ時点を異なる数値で示しており、モータ制御方法は、デジタル信号が第3の数値である場合に対応する第1の時点、及びデジタル信号が第4の数値である場合に対応する第2の時点を決定するステップと、デジタル信号が第2の目標数値である場合に、第1の時点、第2の時点、及び第2の目標数値に従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定するステップと、をさらに含み、第3の数値は第4の数値よりも小さく、第2の目標数値は第3の数値よりも大きいが第4の数値よりも小さく、第1の時点は、電動車の運転状態に対応する感度が最も低い時点であり、第2の時点は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い時点である。
【0136】
当該解決策では、デジタル信号は、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の異なる歯寄せ時点を異なる数値で示してもよく、すなわち、t
12とt
23をそれぞれ設定することによって、歯寄せ過程を決定することもできる。
図5の動的トルクの段階(2)、すなわち、駆動歯の歯寄せ段階について、t
13時間間隔において、t
13時間とT
13トルクを制御することによって、この段階の運転状態を決定することができる。好ましい解決策において、歯寄せ時間変数t
12とt
23を決定することによって歯寄せ過程を制御することができ、
図16に示すように、
図16は、本願の実施例により提供されるt
12とt
23によってt
13を決定する概略図であり、
図16には、時間変数t
12とt
23が決定されると、歯寄せ制御の合計時間t
13時間も決定されたものであり、歯寄せ時点を決定するプロセスは、
図17を参照することができる。
【0137】
図17は、本願の実施例により提供される歯寄せ時点決定の概略図であり、
図17には、t
12又はt
23について、MAXは、運転状態が最も敏感な状態である場合、すなわちA=1である場合の歯寄せ時点に対応する時間パラメータを示すためのものであり、MINは、運転状態が最も鈍い状態である場合、すなわちA=0である場合の歯寄せ時点に対応する時間パラメータを示すためのものであり、ACTは、運転状態が最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態にある場合、すなわち0<A<1である場合の歯寄せ時点に対応する時間パラメータを示すためのものである。MAXとMINは予め設定された値である。
【0138】
上記の解決策において、第3の数値は0であってもよく、第4の数値は1であってもよく、第2の目標数値は0と1との間の任意の数値であってもよい。消費者から入力された運転状態に応じて歯寄せ時点をリアルタイムに計算することによって、歯寄せ時点に応じてモータの出力トルクを決定し駆動歯の歯寄せ動作の完了を制御することができるため、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0139】
1つの実施例では、第1の時点、第2の時点、及び第2の目標数値に従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定するステップは、第2の目標数値と第2の時点との第5の積を決定するステップと、予め設定された値と第2の目標数値との第2の目標差を決定して、第2の目標差と第1の時点との第6の積を決定するステップと、第5の積と第6の積との和を目標歯寄せ時点として決定するステップと、を含む。
【0140】
当該解決策では、0<A<1の場合に、歯寄せ時点t_ACTは、
t_ACT=A*t_MAX+(1-A)*t_MIN
または
t_ACT=A*K*t_MAX+(1-A)*t_MIN
のように示され得る。
【0141】
ここで、Aは、第2の目標数値を示すためのものであり、当該第2の目標数値は0と1との間の任意の数値であってもよく、t_MAXは、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合の歯寄せ時点に対応する時間パラメータ、すなわち第2の時点を示すためのものであり、t_MINは、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合の歯寄せ時点に対応する時間パラメータ、すなわち第1の時点を示すためのものであり、Kは運転状態嗜好係数を示すために使用することができ、予め設定された値は1であってもよい。
【0142】
上記の解決策において、消費者から入力された運転状態に応じて歯寄せ時点をリアルタイムに計算することによって、歯寄せ時点に応じてモータの出力トルクを決定し駆動歯の歯寄せ動作の完了を制御することができるため、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0143】
1つの実施例では、運転状態を調整する調整操作は、仮想摺動アセンブリを第1の摺動領域において摺動操作し、仮想摺動アセンブリは電動車表示スクリーンに表示されるアセンブリであり、第1の摺動領域は表示スクリーンにおける予め設定された領域であり、第1の摺動領域における仮想摺動アセンブリの異なる位置が、異なる運転状態を示している操作、実物の摺動装置を第2の摺動領域において摺動操作し、実物の摺動装置は電動車に設けられた装置であり、第2の摺動領域は電動車に設けられた予め設定された領域であり、第2の摺動領域における実物の摺動装置の異なる位置が、異なる運転状態を示している操作、予め設定された調整可能な選択肢を選択操作し、調整可能な選択肢は、表示スクリーンに表示される仮想ボタン及び/又は電動車に設けられた実物のボタンを含み、異なる調整可能な選択肢が、異なる運転状態を示している操作のうちの少なくとも1つを含む。
【0144】
当該解決策では、操作コンポーネントは、車両における、対話式インタフェースを備える表示スクリーンであってもよく、当該表示スクリーンに仮想摺動アセンブリを設けることができ、当該仮想摺動アセンブリは仮想スライダーであってもよく、且つ、表示スクリーンには、仮想スライダーの第1の摺動領域が設けられており、第1の摺動領域の一方側は、活発(すなわち敏感)な運転状態を示し、その反対側は穏やかな(すなわち鈍い)運転状態を示し、仮想スライダーは、第1の摺動領域において摺動することができ、第1の摺動領域における仮想スライダーの滞在位置が異なることは、異なる運転状態を示すためのものである。具体的には、
図18に示すように、予め設定された運転状態に対応するボタンコントローラを表示スクリーンに予め複数設けてもよい。
【0145】
図18は、本願の実施例により提供される表示スクリーンにおける仮想スライダー摺動の概略図であり、
図18には、表示スクリーンには、第1の摺動領域1801、仮想スライダー1802、第1のボタン1803、第2のボタン1804、及び第3のボタン1805が設けられており、第1の摺動領域1801の最も左側のMINは、最も穏やかな運転状態を示し、最も右側のMAXは、最も活発な運転状態を示し、消費者は、第1の摺動領域1801を摺動するように仮想スライダー1802を制御することによって、運転状態を調整することができる。表示スクリーンには、さらに、ボタン1803~1805が設けられており、3つのボタンはそれぞれ、予め設定された異なる運転状態に対応し、消費者は、3つのボタンを直接に操作することによって対応する運転状態に調整することができる。
【0146】
選択的には、表示スクリーンには、プラスボタンとマイナスボタン、上矢印、下矢印、左矢印、及び右矢印ボタンをさらに設けてもよく、消費者は、これらのボタンを操作することによって仮想スライダーの位置を調整する。
【0147】
当該解決策では、表示スクリーンには、第1のボタン、第2のボタン、第3のボタンなどの複数の調整可能な選択肢をさらに設けてもよく、調整可能な選択肢を選択することによって、第1の摺動領域の対応する位置に直接に調整することができる。
【0148】
選択的には、第1の摺動領域において、複数の記憶設定を設けてもよく、各記憶設定には、消費者が選択したことがある運転状態をマークするために、対応する仮想スライダーの位置を記憶することができる。消費者が記憶設定を選択したとき、当該記憶設定の対応するスライダー位置に仮想スライダーを直接に調整することができる。
【0149】
選択的には、仮想スライダーが第1の摺動領域の特定の位置に滞在しているとき、または消費者が特定の予め設定された運転状態に対応するボタンを選択したとき、または消費者が特定の記憶設定を選択したとき、操作コンポーネントは、このときの仮想スライダーの位置をデジタル信号に転化することができる。当該デジタル信号は、ローカルエリアネットワーク(LIN)、コントローラエリアネットワーク(Controller Area Network、CANとして略称)、イーサネット、ブルートゥース(登録商標)などで次段階の処理ユニットに伝達することができ、前記デジタル信号は、ある程度エンコード又はデコードされた後、その時の運転状態を示すデジタル量に解析されることができ、または、ハードワイヤで次段階の処理ユニットに伝達して、電圧または電流または電気抵抗またはデューティ比の大きさでもって現在の運転状態を示すこともできる。
【0150】
当該解決策では、操作コンポーネントは、車両に配置された機械的操作領域であってもよく、当該機械的操作領域には、機械的スライダー及び対応する第2の摺動領域を含む、実物の摺動装置が設けられている。また、複数の予め設定された運転状態を示すために、複数の調整可能な選択肢に対応する機械的ボタンを設けてもよい。
【0151】
上記の解決策において、消費者は、自分の好みや習慣に合わせて、許される最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態から車両の運転状態を選択することができるため、車両の運転状態が消費者の運転習慣によりよくマッチされたものとなり、消費者の運転体験感を向上させることができる。
【0152】
1つの実施例では、調整操作が、予め設定された調整可能な選択肢を選択操作するという操作である場合に、調整可能な選択肢は、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域における予め設定された位置に対応する。
【0153】
当該解決策では、表示スクリーン又は機械的操作領域において複数の調整可能な選択肢を設けた場合に、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域に対するボタンの位置、ボタンの色、ボタンと第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域との間の線のつながりによって、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域の対応する位置に位置していることを示すことができ、消費者がこれらのボタンを操作すると、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域における仮想スライダーを対応する位置に直接に調整することができる。
【0154】
上記の解決策において、消費者は、自分の好みや習慣に合わせて、許される最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態から車両の運転状態を選択することができるため、車両の運転状態が消費者の運転習慣によりよくマッチされたものとなり、消費者の運転体験感を向上させることができる。
【0155】
1つの実施例では、出力トルクを決定するステップは、調整操作に応答し、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域の目標位置に対応する位置信号を取得するステップであって、位置信号は、電動車の異なる運転状態を異なる数値で示している、ステップと、位置信号が第5の数値である場合に対応する第6のトルク、及びデジタル信号が第6の数値である場合に対応する第7のトルクを決定するステップと、位置信号が第3の目標数値である場合に、第6のトルク、第7のトルク、及び第3の目標数値に従い、出力トルクを決定するステップと、を含み、第5の数値は第6の数値よりも小さく、第3の目標数値は第5の数値よりも大きいが第6の数値よりも小さく、第6のトルクは、電動車の運転状態に対応する感度が最も低い時点であり、第7のトルクは、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い時点である。
【0156】
当該解決策では、第1の摺動領域における仮想スライダーの位置又は第2の摺動領域における機械的スライダーの位置に応じて、出力トルクを決定することもできる。
【0157】
具体的には、
図19に示すように、操作コンポーネント(表示スクリーン又は機械的操作領域であってもよい)において、複数の調整可能な選択肢を設けることによって運転状態を調整することができる。
図19は、本願の実施例により提供される複数の調整可能な選択肢の概略図であり、
図19には、4つの調整可能な選択肢を例にして、1901~1904はそれぞれ、4つの異なる調整可能な選択肢を示し、各調整可能な選択肢に対応するスライダー(
図19においては1905~1908として示されているが、仮想スライダー又は機械的スライダーであってもよい)の摺動領域(
図19においては1909~1912として示されており、仮想スライダーは第1の摺動領域に対応し、機械的スライダーは第2の摺動領域に対応する)における位置は、異なる運転状態を示すように、異なってもよい。操作コンポーネントは、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域の目標位置に対応する位置信号を取得することができる。
【0158】
上記の解決策において、確認モジュールが操作コンポーネントから伝達された位置信号を受信した後、位置信号は確認モジュールにおいて数値で表示されることができ、例えば、位置信号は0と1との間の任意の数値であってもよく、位置信号がAである場合、
A=0である場合には、運転状態が最も鈍い状態にある場合の位置信号を示すためのものであり、
A=1である場合には、運転スタイルが最も敏感な状態にある場合の位置信号を示すためのものであり、
0<A<1である場合には、運転スタイルが最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態にある場合の位置信号を示すためのものである。
【0159】
当該解決策では、第5の数値は0であってもよく、第6の数値は1であってもよく、第3の目標数値は0と1との間の任意の数値であってもよく、位置信号が第5の数値である場合に対応する第6のトルク、及びデジタル信号が第6の数値である場合に対応する第7のトルクを決定して、第3の目標数値に基づき、出力トルクを算出することができる。
【0160】
選択的には、配置され得る調整可能な選択肢は、定常状態最大トルク、定常状態最小トルク、トルク上り勾配、トルク下り勾配、歯寄せ時間、歯寄せトルクなどを含むがこれらに限定されず、且つ、2つ又は複数の調整可能な選択肢を関連付けたり組み合わせたりすることができ、すなわち、1つの調整可能な選択肢を調整すると、関連付けられている調整可能な選択肢を一同に調整することができる。
【0161】
上記の解決策において、消費者から入力された運転状態を摺動領域における対応する位置信号に変換し、そして当該位置信号を用いて出力トルクをリアルタイムに計算することができるため、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0162】
1つの実施例では、第6のトルク、第7のトルク、及び第3の目標数値に従い、出力トルクを決定するステップは、第3の目標数値と第7のトルクとの第7の積を決定するステップと、予め設定された値と第3の目標数値との第3の目標差を決定して、第3の目標差と第6のトルクとの第8の積を決定するステップと、第7の積と第8の積との和を出力トルクとして決定するステップと、を含む。
【0163】
当該解決策では、位置信号を用いてトルクを決定することができると、このとき、0<A<1である場合に、出力トルクT_ACTは、
T_ACT=A*T_MAX+(1-A)*T_MIN
または
T_ACT=A*T_MAX+(1-A)*T_MIN
のように示され得る。
【0164】
ここで、Aは、第3の目標数値を示すためのものであり、当該第3の目標数値は0と1との間の任意の数値であってもよく、T_MAXは、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合の位置信号に対応するトルク、すなわち第7のトルクを示すためのものであり、T_MINは、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合の位置信号に対応するトルク、すなわち第6のトルクを示すためのものであり、Kは運転状態嗜好係数を示すために使用されることができ、予め設定された値は1であってもよい。
【0165】
選択的には、位置信号を用いて歯寄せ時点を決定することもでき、このとき、0<A<1である場合に、歯寄せ時点t_ACTは、
t_ACT=A*t_MAX+(1-A)*t_MIN
または
t_ACT=A*K*t_MAX+(1-A)*t_MIN
のように示され得る。
【0166】
ここで、Aは、第3の目標数値を示すためのものであり、当該第3の目標数値は0と1との間の任意の数値であってもよく、t_MAXは、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合の位置信号に対応する歯寄せ時点を示すためのものであり、t_MINは、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合の位置信号に対応する歯寄せ時点を示すためのものであり、Kは運転状態嗜好係数を示すために使用されることができ、予め設定された値は1であってもよい。
【0167】
上記の解決策において、消費者から入力された運転状態を摺動領域における対応する位置信号に変換し、そして当該位置信号を用いて出力トルク又は歯寄せ時点をリアルタイムに計算することができるため、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0168】
全体的には、本願により提供される技術的解決手段は、電動車の運転性能の最適化を達成することができるだけでなく、慣性衝撃による騒音や衝撃をなくすこともできる技術的手段である。
【0169】
本願は、電動車のモータ制御装置をさらに提供する。
図20は、本願の実施例により提供される電動車のモータ制御装置の構造概略図であり、
図20に示すように、当該電動車のモータ制御装置2000は、検出モジュール2001、決定モジュール2002、処理モジュール2003、及び制御モジュール2004を含み、
検出モジュール2001は、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出することに用いられ、
決定モジュール2002は、相対変形量が第1のしきい値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差を決定することに用いられ、相対変形量が第1のしきい値であることは、駆動歯が伝動システムの被動歯から離脱開始することを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯の被動歯に対する離脱時点での駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が離脱時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であり、
処理モジュール2003は、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定することに用いられ、
制御モジュール2004は、出力トルクに従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ動作を制御することに用いられる。
【0170】
選択的には、処理モジュール2003は、第1の速度差に従ってモータの出力トルクを決定するとき、具体的には、第1の速度差と第1の時間長との積を第1の積として決定し、第1の時間長は、離脱時点から駆動歯の被動歯に対する接触時点までの持続時間であること、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクを含むと決定することに用いられ、第1のトルクと第2のトルクは、互いに反対方向であり、第1のトルクは、離脱時点からモータの加速状態と減速状態の変換時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、第2のトルクは、変換時点から接触時点までの時間間隔において必要とされるトルクである。
【0171】
選択的には、当該電動車のモータ制御装置2000は、第3の決定モジュール(図示しない)をさらに含むことができ、当該第3の決定モジュールは、具体的には、変換時点において、予め設定されたバックラッシ値、第1の速度差、及び第1の時間長によって、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差を決定し、第2の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が変換時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であること、第2の速度差と第2の車輪端の換算回転速度に従い、第2の駆動歯の回転速度を決定し、第2の駆動歯の回転速度は、変換時点での駆動歯の回転速度であること、第2の駆動歯の回転速度、第1の駆動歯の回転速度、離脱時点と変換時点の持続時間、及び第2の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に従い、第1のトルクを決定すること、第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、変換時点と接触時点の持続時間、及び第3の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に従い、第2のトルクを決定し、第3の駆動歯の回転速度は、接触時点での駆動歯の回転速度であることによって、第1のトルクと第2のトルクを決定することに使用されることができる。
【0172】
選択的には、処理モジュール2003は、第1の速度差に従ってモータの出力トルクを決定するとき、具体的には、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、第1の速度差と第2の時間長との積を第2の積として決定し、第2の時間長は、離脱時点から変換時点までの持続時間であること、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクを含むと決定することにさらに用いられ、第1のトルクと第2のトルクは、同じ方向である。
【0173】
選択的には、処理モジュール2003は、第1の速度差に従ってモータの出力トルクを決定するとき、具体的には、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、目標時点において、第3の車輪端の換算回転速度を決定し、第3の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が目標時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であり、目標時点は、第2の時間長内に駆動歯が被動歯に再び接触した時点であること、第3の車輪端の換算回転速度、第1の駆動歯の回転速度、及び離脱時点と目標時点の持続時間に従い、第3のトルクを決定し、第3のトルクは、離脱時点から目標時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、出力トルクは第3のトルクを含むことにさらに用いられる。
【0174】
選択的には、第1の決定モジュール2001は、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を決定するとき、具体的には、モータの出力トルクが変化したと検出されたとき、現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差を決定すること、第3の速度差に従い、駆動歯の被動歯に対する相対変位を決定すること、相対変位に従い、相対変形量を決定することにさらに使用され得る。
【0175】
選択的には、処理モジュール2003は、モータの出力トルクを決定するとき、具体的には、運転状態を調整する調整操作に応答し、調整された目標運転状態に対応する運転状態情報を取得すること、運転状態情報を変換処理して、デジタル信号を得ること、デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得ること、トルク信号に従い、出力トルクを決定することにさらに用いられる。
【0176】
選択的には、デジタル信号は、電動車の異なる運転状態を異なる数値で示しており、処理モジュール2003は、デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得るとき、具体的には、デジタル信号が第1の数値である場合に、トルク信号が第1の予め設定された信号であると決定すること、デジタル信号が第2の数値である場合に、トルク信号が第2の予め設定された信号であると決定すること、デジタル信号が第1の目標数値である場合に、第1の予め設定された信号、第2の予め設定された信号、及び第1の目標数値に従い、トルク信号を目標信号として決定することに用いられ、第1の数値は第2の数値よりも小さく、第1の目標数値は第1の数値よりも大きいが第2の数値よりも小さく、第1の予め設定された信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も低いときのトルク信号であり、第2の予め設定された信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高いときのトルク信号であり、目標信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い感度と最も低い感度との間にあるときのトルク信号である。
【0177】
選択的には、トルク信号が目標信号である場合に、処理モジュール2003は、トルク信号に従い、出力トルクを決定するとき、具体的には、第1の予め設定された信号に対応する第4のトルク、第2の予め設定された信号に対応する第5のトルクを取得すること、第1の目標数値と第5のトルクとの第3の積を決定すること、予め設定された値と第1の目標数値との第1の目標差を決定して、第1の目標差と第4のトルクとの第4の積を決定すること、第3の積と第4の積との和を出力トルクとして決定することに用いられる。
【0178】
選択的には、処理モジュール2003は、第1の目標数値と第5のトルクとの第3の積を決定するとき、具体的には、運転状態嗜好係数を示すための予め設定された係数を取得すること、第1の目標数値と予め設定された係数と第5のトルクとの積を第3の積として決定することに用いられる。
【0179】
選択的には、デジタル信号は、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の異なる歯寄せ時点を異なる数値で示しており、処理モジュール2003は、デジタル信号が第3の数値である場合に対応する第1の時点、及びデジタル信号が第4の数値である場合に対応する第2の時点を決定すること、デジタル信号が第2の目標数値である場合に、第1の時点、第2の時点、及び第2の目標数値に従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定することにさらに用いられ、第3の数値は第4の数値よりも小さく、第2の目標数値は第3の数値よりも大きいが第4の数値よりも小さく、第1の時点は、電動車の運転状態に対応する感度が最も低い時点であり、第2の時点は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い時点である。
【0180】
選択的には、処理モジュール2003は、第1の時点、第2の時点、及び第2の目標数値に従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定するとき、具体的には、第2の目標数値と第2の時点との第5の積を決定すること、予め設定された値と第2の目標数値との第2の目標差を決定して、第2の目標差と第1の時点との第6の積を決定すること、第5の積と第6の積との和を目標歯寄せ時点として決定することに用いられる。
【0181】
選択的には、運転状態を調整する調整操作は、仮想摺動アセンブリを第1の摺動領域において摺動操作し、仮想摺動アセンブリは電動車表示スクリーンに表示されるアセンブリであり、第1の摺動領域は表示スクリーンにおける予め設定された領域であり、第1の摺動領域における仮想摺動アセンブリの異なる位置が、異なる運転状態を示している操作、実物の摺動装置を第2の摺動領域において摺動操作し、実物の摺動装置は電動車に設けられた装置であり、第2の摺動領域は電動車に設けられた予め設定された領域であり、第2の摺動領域における実物の摺動装置の異なる位置が、異なる運転状態を示している操作、及び、予め設定された調整可能な選択肢を選択操作し、調整可能な選択肢は、表示スクリーンに表示される仮想ボタン及び/又は電動車に設けられた実物のボタンを含み、異なる調整可能な選択肢が、異なる運転状態を示している操作のうちの少なくとも1つを含む。
【0182】
選択的には、調整操作が、予め設定された調整可能な選択肢を選択操作するという操作である場合に、調整可能な選択肢は、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域における予め設定された位置に対応する。
【0183】
選択的には、処理モジュール2003は、モータの出力トルクを決定するとき、具体的には、調整操作に応答し、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域の目標位置に対応する位置信号を取得し、位置信号は、電動車の異なる運転状態を異なる数値で示していること、位置信号が第5の数値である場合に対応する第6のトルク、及びデジタル信号が第6の数値である場合に対応する第7のトルクを決定すること、位置信号が第3の目標数値である場合に、第6のトルク、第7のトルク、及び第3の目標数値に従い、出力トルクを決定することにさらに用いられ、第5の数値は第6の数値よりも小さく、第3の目標数値は第5の数値よりも大きいが第6の数値よりも小さく、第6のトルクは、電動車の運転状態に対応する感度が最も低い時点であり、第7のトルクは、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い時点である。
【0184】
選択的には、処理モジュール2003は、第6のトルク、第7のトルク、及び第3の目標数値に従い、出力トルクを決定するとき、具体的には、第3の目標数値と第7のトルクとの第7の積を決定すること、予め設定された値と第3の目標数値との第3の目標差を決定して、第3の目標差と第6のトルクとの第8の積を決定すること、第7の積と第8の積との和を出力トルクとして決定することに用いられる。
【0185】
本実施例により提供される電動車のモータ制御装置は、前述した方法の実施例における電動車のモータ制御方法に係る技術的解決手段を実行するためのものであり、その実装原理及び技術的効果が類似するため、ここで繰り返して説明しない。
【0186】
本願の実施例は、電動車をさらに提供する。
図21は、一例示的実施例に基づいて示されている電動車の構造概略図である。
図21に示すように、当該電動車2100は、
プロセッサ2111、メモリ2112、及びインタラクションインタフェース2113を含み、
プロセッサ2111は、メモリ2112とインタラクションインタフェース2113に接続されており、メモリ2112は、プロセッサ2111により実行可能なコンピュータ実行命令を記憶するためのものであり、プロセッサ2111は、コンピュータ実行可能な命令を実行することによって前述した電動車のモータ制御方法に係る技術的解決手段を実行するように構成されており、インタラクションインタフェース2113は、プロセッサ2111と周辺インタフェースモジュールとの間のインタフェースを提供する。
【0187】
選択的には、メモリ2112は、独立していてもよいし、プロセッサ2111と集積されて配置されてもよい。
【0188】
選択的には、メモリ2112は、プロセッサ2111から独立したデバイスである場合に、電子機器1200は上記のデバイスを接続するためのバスをさらに含むことができる。
【0189】
選択的には、メモリは、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAMとして略称)、読み取り専用メモリ(Read Only Memory、ROMとして略称)、プログラマブル読み取り専用メモリ(Programmable Read-Only Memory、PROMとして略称)、消去可能な読み取り専用メモリ(Erasable Programmable Read-Only Memory、EPROMとして略称)、電気的消去可能な読み取り専用メモリ(Electric Erasable Programmable Read-Only Memory、EEPROMとして略称)などであってもよいが、これらに限定されない。メモリはプログラムを記憶するためのものであり、プロセッサは、実行命令を受信した後、プログラムを実行する。さらに、上記のメモリにおけるソフトウェアプログラムとモジュールは、操作システムをさらに含むことができ、当該操作システムは、システムタスク管理(例えば、メモリ管理、記憶デバイス制御、電源管理など)のための様々なソフトウェアアセンブリ及び/又はドライバを含むことができ、他のソフトウェアアセンブリの実行環境を提供するために様々なハードウェア又はソフトウェアアセンブリと通信することができる。
【0190】
選択的には、プロセッサは、信号の処理能力を有する集積回路チップであってもよい。上記プロセッサは、中央処理装置(Central Processing Unit、CPUとして略称)、ネットワーク処理装置(Network Processor、NPとして略称)などを含む汎用プロセッサであってもよい。本明細書の実施例で開示されている方法、ステップ、及び論理ブロック図を実装又は実行することができる。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよく、または当該プロセッサは、任意の従来のプロセッサなどであってもよい。
【0191】
本願の実施例は、コンピュータ可読記憶媒体をさらに提供し、コンピュータ可読記憶媒体にコンピュータ実行命令が記憶されており、コンピュータ実行命令は、プロセッサにより実行されるとき、前述した方法の実施例により提供される電動車のモータ制御方法に係る技術的解決手段を実現するために用いられる。
【0192】
本願の実施例は、コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品を提供し、コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されるとき、方法の実施例により提供される電動車のモータ制御方法に係る技術的解決手段を実現する。
【0193】
当業者は、上述の各方法の実施例を実施するステップのすべて又は一部は、プログラム命令に関連するハードウェアによって実行され得ることを理解するであろう。前述したプログラムはコンピュータ可読記憶媒体に記憶され得る。当該プログラムは、実行時に、上述の各方法の実施例を含むステップを実行する。一方、前述した記憶媒体は、ROM、RAM、磁気ディスク、光ディスクなど、プログラムコードを記憶可能な様々な媒体を含む。
【0194】
最後に説明すべきものとして、以上の各実施例は、本願の技術的解決手段を説明するためのものであって、これを制限するものではなく、前述した各実施例を参照しながら本願を詳細に説明しているが、当業者であれば、依然として前述した各実施例に記載の技術的解決手段を修正するか、又はそのうちの一部又はすべての技術的特徴に対して等価置換を行うことができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の本質を本願の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱しないと理解すべきである。
【0195】
本願は、2022年07月28日に中国国家知的産権局に提出された、優先権番号がPCT/CN2022/108470であり、発明の名称が「電動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体」である中国特許出願の優先権を主張しており、その内容の全ては、本願に参照によって取り込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電動車両の分野に関し、特に、電動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両技術の発展につれ、電動車両の応用範囲は広くなっている。消費者にとって、運転の快適性は電動車両を選択する主な理由の一つである。電動車両の走行中に、モータの出力トルクが正と負のトルクに変化すると、モータの歯車の噛み合い方向が変化するため、歯打ちは発生し、消費者がはっきりと感じられる振動や騒音は発生し、運転の快適性に影響を及ぼす。また、歯打ちは、歯車やスプラインなどの伝動機構に損傷を与える恐れがある。
【0003】
現在、上記の問題を解決するために、通常、モータの出力トルクを正と負のトルクに変化させるとき、フィルタ処理方法(例えばトルク平滑化処理方法)を用いて、出力トルクを処理して振動や騒音を低減している。しかしながら、このような方法を適用されたところで、振動や騒音が依然として大きく、消費者の運転体験が悪くなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の実施例は、電動車の走行中に、モータ及びその伝動システムの振動や騒音が大きいという問題を解決するために用いられる、電動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本願の実施例は、電動車のモータ制御方法を提供し、前記モータ制御方法は、前記モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出するステップと、相対変形量が第1のしきい値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差を決定するステップであって、相対変形量が第1のしきい値であることは、駆動歯が伝動システムの被動歯から離脱開始することを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯の被動歯に対する離脱時点での駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が離脱時点において速度比によって換算されて得られた回転速度である、ステップと、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するステップと、出力トルクに従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ動作を制御するステップと、を含む。
【0006】
1つの可能な実施形態では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するステップは、第1の速度差と第1の時間長との積を第1の積として決定するステップであって、第1の時間長は、離脱時点から駆動歯の被動歯に対する接触時点までの持続時間である、ステップと、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクを含むと決定するステップであって、第1のトルクと第2のトルクは、互いに反対方向であり、第1のトルクは、離脱時点からモータの加速状態と減速状態の変換時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、第2のトルクは、変換時点から接触時点までの時間間隔において必要とされるトルクである、ステップと、を含む。
【0007】
1つの可能な実施形態では、第1のトルクと第2のトルクは、変換時点において、予め設定されたバックラッシ値、第1の速度差、及び第1の時間長によって、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差を決定し、第2の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が変換時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であること、第2の速度差と第2の車輪端の換算回転速度に従い、第2の駆動歯の回転速度を決定し、第2の駆動歯の回転速度は、変換時点での駆動歯の回転速度であること、第2の駆動歯の回転速度、第1の駆動歯の回転速度、離脱時点と変換時点の持続時間、及び第2の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に従い、第1のトルクを決定すること、及び、第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、変換時点と接触時点の持続時間、及び第3の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に従い、第2のトルクを決定し、第3の駆動歯の回転速度は、接触時点での駆動歯の回転速度であること、によって決定されている。
【0008】
1つの可能な実施形態では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するステップは、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、第1の速度差と第2の時間長との積を第2の積として決定するステップであって、第2の時間長は、離脱時点から変換時点までの持続時間である、ステップと、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクを含むと決定するステップであって、第1のトルクと第2のトルクは、同じ方向である、ステップと、をさらに含む。
【0009】
1つの可能な実施形態では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するステップは、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、目標時点において、第3の車輪端の換算回転速度を決定するステップであって、第3の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が目標時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であり、目標時点は、第2の時間長内に駆動歯が被動歯に再び接触した時点である、ステップと、第3の車輪端の換算回転速度、第1の駆動歯の回転速度、及び離脱時点と目標時点の持続時間に従い、第3のトルクを決定するステップであって、第3のトルクは、離脱時点から目標時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、出力トルクは第3のトルクを含む、ステップと、をさらに含む。
【0010】
1つの可能な実施形態では、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出するステップは、モータの出力トルクが変化したと検出されたとき、現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差を決定するステップと、第3の速度差に従い、駆動歯の被動歯に対する相対変位を決定するステップと、相対変位に従い、相対変形量を決定するステップと、をさらに含む。
【0011】
1つの可能な実施形態では、モータの出力トルクを決定するステップは、運転状態を調整する調整操作に応答し、調整された目標運転状態に対応する運転状態情報を取得するステップと、運転状態情報を変換処理して、デジタル信号を得るステップと、デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得るステップと、トルク信号に従い、出力トルクを決定するステップと、を含む。
【0012】
1つの可能な実施形態では、デジタル信号は、電動車の異なる運転状態を異なる数値で示しており、デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得るステップは、デジタル信号が第1の数値である場合に、トルク信号が第1の予め設定された信号であると決定するステップと、デジタル信号が第2の数値である場合に、トルク信号が第2の予め設定された信号であると決定するステップと、デジタル信号が第1の目標数値である場合に、第1の予め設定された信号、第2の予め設定された信号、及び第1の目標数値に従い、トルク信号を目標信号として決定するステップと、を含み、ここで、第1の数値は第2の数値よりも小さく、第1の目標数値は第1の数値よりも大きいが第2の数値よりも小さく、第1の予め設定された信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も低いときのトルク信号であり、第2の予め設定された信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高いときのトルク信号であり、目標信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い感度と最も低い感度との間にあるときのトルク信号である。
【0013】
1つの可能な実施形態では、トルク信号が目標信号である場合に、トルク信号に従い、出力トルクを決定するステップは、第1の予め設定された信号に対応する第4のトルク、第2の予め設定された信号に対応する第5のトルクを取得するステップと、第1の目標数値と第5のトルクとの第3の積を決定するステップと、予め設定された値と第1の目標数値との第1の目標差を決定して、第1の目標差と第4のトルクとの第4の積を決定するステップと、第3の積と第4の積との和を出力トルクとして決定するステップと、を含む。
【0014】
1つの可能な実施形態では、第1の目標数値と第5のトルクとの第3の積を決定するステップは、運転状態嗜好係数を示すための予め設定された係数を取得するステップと、第1の目標数値と予め設定された係数と第5のトルクとの積を第3の積として決定するステップと、を含む。
【0015】
1つの可能な実施形態では、デジタル信号は、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の異なる歯寄せ時点を異なる数値で示しており、モータ制御方法は、デジタル信号が第3の数値である場合に対応する第1の時点、及びデジタル信号が第4の数値である場合に対応する第2の時点を決定するステップと、デジタル信号が第2の目標数値である場合に、第1の時点、第2の時点、及び第2の目標数値に従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定するステップと、をさらに含み、ここで、第3の数値は第4の数値よりも小さく、第2の目標数値は第3の数値よりも大きいが第4の数値よりも小さく、第1の時点は、電動車の運転状態に対応する感度が最も低い時点であり、第2の時点は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い時点である。
【0016】
1つの可能な実施形態では、第1の時点、第2の時点、及び第2の目標数値に従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定するステップは、第2の目標数値と第2の時点との第5の積を決定するステップと、予め設定された値と第2の目標数値との第2の目標差を決定して、第2の目標差と第1の時点との第6の積を決定するステップと、第5の積と第6の積との和を目標歯寄せ時点として決定するステップと、を含む。
【0017】
1つの可能な実施形態では、運転状態を調整する調整操作は、仮想摺動アセンブリを第1の摺動領域において摺動操作し、仮想摺動アセンブリは電動車表示スクリーンに表示されるアセンブリであり、第1の摺動領域は表示スクリーンにおける予め設定された領域であり、第1の摺動領域における仮想摺動アセンブリの異なる位置が、異なる運転状態を示している操作、実物の摺動装置を第2の摺動領域において摺動操作し、実物の摺動装置は電動車に設けられた装置であり、第2の摺動領域は電動車に設けられた予め設定された領域であり、第2の摺動領域における実物の摺動装置の異なる位置が、異なる運転状態を示している操作、予め設定された調整可能な選択肢を選択操作し、調整可能な選択肢は、表示スクリーンに表示される仮想ボタン及び/又は電動車に設けられた実物のボタンを含み、異なる調整可能な選択肢が、異なる運転状態を示している操作のうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
1つの可能な実施形態では、調整操作が、予め設定された調整可能な選択肢を選択操作するという操作である場合に、調整可能な選択肢は、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域における予め設定された位置に対応する。
【0019】
1つの可能な実施形態では、出力トルクを決定するステップは、調整操作に応答し、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域の目標位置に対応する位置信号を取得するステップであって、位置信号は、電動車の異なる運転状態を異なる数値で示している、ステップと、位置信号が第5の数値である場合に対応する第6のトルク、及びデジタル信号が第6の数値である場合に対応する第7のトルクを決定するステップと、位置信号が第3の目標数値である場合に、第6のトルク、第7のトルク、及び第3の目標数値に従い、出力トルクを決定するステップと、を含み、第5の数値は第6の数値よりも小さく、第3の目標数値は第5の数値よりも大きいが第6の数値よりも小さく、第6のトルクは、電動車の運転状態に対応する感度が最も低い時点での対応するトルクであり、第7のトルクは、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い時点での対応するトルクである。
【0020】
1つの可能な実施形態では、第6のトルク、第7のトルク、及び第3の目標数値に従い、出力トルクを決定するステップは、第3の目標数値と第7のトルクとの第7の積を決定するステップと、予め設定された値と第3の目標数値との第3の目標差を決定して、第3の目標差と第6のトルクとの第8の積を決定するステップと、第7の積と第8の積との和を出力トルクとして決定するステップと、を含む。
【0021】
第2の態様では、本願の実施例は、電動車のモータ制御装置を提供し、前記モータ制御装置は、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出することに用いられる検出モジュールと、相対変形量が第1のしきい値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差を決定することに用いられる決定モジュールであって、相対変形量が第1のしきい値であることは、駆動歯が伝動システムの被動歯から離脱開始することを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯の被動歯に対する離脱時点での駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が離脱時点において速度比によって換算されて得られた回転速度である、決定モジュールと、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定することに用いられる処理モジュールと、出力トルクに従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ動作を制御することに用いられる制御モジュールと、を含む。
【0022】
第3の態様では、本願の実施例は、電動車を提供し、前記電動車は、プロセッサ、及びプロセッサと通信可能に接続されているメモリを含み、メモリはコンピュータ実行命令を記憶し、プロセッサは、メモリに記憶されているコンピュータ実行命令を実行して、第1の態様に係る電動車のモータ制御方法を実現する。
【0023】
第4の態様では、本願の実施例は、コンピュータ可読記憶媒体を提供し、コンピュータ可読記憶媒体にコンピュータ実行命令が記憶されており、コンピュータ実行命令は、プロセッサにより実行されるとき、第1の態様に係る電動車のモータ制御方法を実現するために用いられる。
【0024】
第5の態様では、本願の実施例は、コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品を提供し、コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されるとき、第1の態様に係る電動車のモータ制御方法を実現する。
【発明の効果】
【0025】
本願の実施例により提供される電動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体は、モータの駆動歯の噛み合い方向が変化しているときの動的過程を分析し、モータの高精度の駆動歯位置と回転速度測定及びモータのトルクの迅速な調整という特徴に鑑みて、モータの出力トルクの方向が変化しようとしていることを検出したとき、能動的に歯寄せ動作を行うように駆動歯を制御することによって、駆動歯が被動歯から離脱した後再び接触したときの速度差を小さくし、慣性衝撃による駆動歯と被動歯との間の振動や騒音を低減ひいては除去する。加えて、本願は、電動車の元のハードウェアを変更したり、新しいセンサーを追加したりする必要がなく、車輪端の回転速度、モータの駆動歯の回転速度、バックラッシを算出することだけで、歯寄せ制御を実現することができる。さらに、本願は、モータの出力トルクの方向が変化しようとしているときの出力トルクの下り勾配又は上り勾配に対する制限を最大限に解除し、消費者の操作や期待に従うモータの出力トルクとすることができ、関連技術における、モータの出力トルクの下り勾配又は上り勾配の制限に起因する、アクセルを緩めた後に加速感が感じるかまたはアクセルを踏むときに電動車の反応が悪いという問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本願の実施例又は関連技術における技術的解決手段をより明確に説明するため、以下、実施例又は関連技術の記述において使用する必要がある図面を簡単に説明する。当然ながら、以下、記載する図面は本願のいくつかの実施例であり、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を想到しうる。
【
図1】関連技術により提供されるトルクフィルタ方法の曲線概略図である。
【
図2】本願の実施例により提供される電動車の構造概略図である。
【
図3】本願の実施例により提供される電動車のモータ制御方法のフローチャートである。
【
図4】本願の実施例により提供される駆動歯と被動歯の運動過程の概略図である。
【
図5】本願の実施例により提供される駆動歯の歯寄せ制御の曲線概略図である。
【
図6】本願の実施例により提供される
図5のハッチング面積の幾何学モデル簡略化処理の実施例1の概略図である。
【
図7】本願の実施例により提供される
図5のハッチング面積の幾何学モデル簡略化処理の実施例2の概略図である。
【
図8】本願の実施例により提供される
図7に対応するモータの出力トルクの曲線概略図である。
【
図9】本願の実施例により提供される
図5のハッチング面積の幾何学モデル簡略化処理の実施例3の概略図である。
【
図10】本願の実施例により提供される
図9に対応するモータの出力トルクの曲線概略図である。
【
図11】関連技術により提供される運転状態決定の概略図である。
【
図12】本願の実施例により提供される運転状態制御装置の概略図である。
【
図13】本願の実施例により提供される出力トルク決定の1つの概略図である。
【
図14】本願の実施例により提供される出力トルク決定の別の概略図である。
【
図15】本願の実施例により提供される出力トルク決定の別の概略図である。
【
図16】本願の実施例により提供されるt
12とt
23によってt
13を決定する概略図である。
【
図17】本願の実施例により提供される歯寄せ時点決定の概略図である。
【
図18】本願の実施例により提供される表示スクリーンにおける仮想スライダー摺動の概略図である。
【
図19】本願の実施例により提供される複数の調整可能な選択肢の概略図である。
【
図20】本願の実施例により提供される電動車のモータ制御装置の構造概略図である。
【
図21】一例示的実施例に基づいて示されている電動車のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本願の実施例の目的、技術的解決手段及び利点をより明瞭にするために、以下、本願の実施例に係る図面を参照しながら、その技術的解決手段について明瞭、且つ完全に説明し、当然のことながら、記載される実施例は本願の実施例の一部にすぎず、そのすべての実施例ではない。当業者が本願における実施例に基づいて本実施例から示唆を受けて想到しうるその他のすべての実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0028】
本願の明細書と特許請求の範囲、及び上記の図面における用語「第1」、「第2」、「第3」、「第4」など(存在している場合)は、類似の対象を区別するためのものであり、特定の順序又は順番を説明するためのものである必要はない。本明細書に説明する本願の実施例を、例えば、本明細書に図示又は説明したもの以外の順序で実施できるように、このように使用される用語を適宜交換できると理解すべきである。また、「含む」と「有する」という用語、及び、それらのいかなるバリエーションは、いずれも非排他的含有を網羅することを意図し、例えば、一連のステップ又はユニットを含むプロセス、方法、システム、製品、又はデバイスは、明記されているステップ又はユニットに限定される必要はなく、明記されていないか、又は、これらのプロセス、方法、製品又はデバイスに固有の他のステップ又はユニットを含んでもよい。
【0029】
以下、まず、本願に係る用語について解釈する。
【0030】
トルクとは、オブジェクトを回転させる特殊なモーメントを指す。モータトルクとは、モータの出力トルクである。
【0031】
バックラッシとは、一対の歯車が噛み合ったときの歯面同士の隙間を指す。バックラッシは、歯車の噛み合いをスムーズにするために必要なパラメータである。
【0032】
相対変形とは、非剛性材料に力が加えられたときに発生する変形を指し、ねじれ、バイアスなどを含むがこれらに限定されない。
【0033】
背景技術により提供される関連技術において、次の技術的問題が少なくとも存在している。
【0034】
世界各国で炭素排出規制がますます厳しくなり、カーボンピークやカーボンニュートラルの日程が提案され、燃料自動車の販売禁止の時刻表が計画的に提出されている一方、新エネルギー自動車すなわち電動車が強力に奨励・支援されている。当面の新エネルギーの応用範囲の拡大傾向から見ると、電動車の研究開発、生産と応用規模はすべて高速で成長していく。電動車の駆動過程は、完成車コントローラ又はモータコントローラによって決定された目標トルクによって、モータの出力トルクを制御することによって実現されている。モータが正と負のトルクに変化し、すなわちモータの出力トルクの方向が変化したとき、モータの歯車の噛み合い方向が変化したため、力を受ける方向は一致せず、歯打ちは発生し、消費者がはっきりと感じられる振動や騒音は発生し、運転の快適性にも影響を及ぼす。また、歯打ちは、歯車やスプラインなどの伝動機構に損傷を与える恐れがある。
【0035】
上記した問題に対して、関連技術において、モータの出力トルクを正と負のトルクに変化させるとき、フィルタ処理方法を用いて出力トルクを処理することによって振動や騒音を低減し、当該フィルタ方法はトルク平滑化処理方法であってもよい。
図1に示すように、モータの出力トルクを正のトルクから負のトルクに変化させるプロセスを例にとる場合に、駆動歯がバックラッシを通過するときの駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との速度差を時間積分したものは、図のハッチング面積であり、当該ハッチング面積はバックラッシ値である。
図1において、駆動歯の被動歯に対する相対的運動はそれぞれ、
図1の
(以下は、(1)、(2)、(3)、(4)と記する)という4つの段階に分けられ、ここで、(1)段階は正のトルク低下及び弾性圧力解放段階であり、(2)段階は、駆動歯の歯寄せ過程であり、(3)段階は、駆動歯と被動歯の接触及び圧縮の過程であり、(4)段階は、モータの負のトルク増加及び弾性圧力圧縮段階である。
図1のΔN
1は、駆動歯の被動歯に対する離脱時点での、車輪端の換算回転速度と駆動歯の回転速度との速度差を示すためのものである。
【0036】
上記の関連技術において、1)出力トルクを平滑化処理して、小トルク又はゼロトルク出力によって、駆動歯がゆっくりと歯間隙を通過するようにしているため、駆動歯がバックラッシを通過する時間は長くなり、正と負のトルクの変化に時間がかかり、消費者は、モータの出力トルク応答の不連続及び途切れという運転体験があり、動力出力遅延を感知し、運転体験が悪いという問題、2)回転速度差の最大値での駆動歯と被動歯の接触は、依然として慣性衝撃と衝突騒音を発生させ、振動や騒音を大幅に改善していないという問題、3)弾性圧力解放段階での駆動歯と被動歯のトルク勾配が大きすぎるため、ΔN1は大きくなり、駆動歯がバックラッシを通過するときの初速度は過大になり、駆動歯が被動歯と再び接触したときの速度差は大きすぎて、電動車に激しい衝撃及連続的な揺れが生じるため、弾性圧力解放段階でのトルク勾配の低下又は上昇は制限され、消費者がアクセルを緩めた後に電動車が依然として加速しているか、または消費者がアクセルを踏んでも電動車は加速しないため、電動車の動的反応が悪くなるという問題がある。
【0037】
本願は、電動車のモータ制御方法を提供し、伝動システムにおけるモータの駆動歯の噛み合い方向が変化しているときの動的過程を分析し、モータの高精度の駆動歯位置と回転速度測定及びモータのトルクの迅速な調整という特徴に鑑みて、モータの出力トルクの方向が変化したことを検出したとき、駆動歯の歯寄せ動作を制御することによって、駆動歯が被動歯から離脱した後再び接触したときの速度差を小さくし、慣性衝撃による駆動歯と被動歯との間の振動や騒音を低減ひいては除去する。
【0038】
1つの実施例では、1つの応用シーンに当該電動車のモータ制御方法を提供することができる。
図2は、本願の実施例により提供される電動車の構造概略図であり、
図2に示すように、当該電動車は、電子制御ユニット(Electronic Control Unit、ECUとして略称)、左前車輪、左前車輪速センサー、左前伝動軸、フロントモータレゾルバ、フロントモータ、フロントモータ制御駆動装置、フロントモータ減速差動装置、右前伝動軸、右前車輪速センサー、右前車輪、高電圧バッテリ、左リア車輪、左リア車輪速センサー、リアモータレゾルバ、リアモータ、リアモータ制御駆動装置、リアモータ減速差動装置、左リア伝動軸、右リア伝動軸、右リア車輪速センサー、右リア車輪を含むことができる。
【0039】
上記のシーンでは、フロントモータの出力トルクは、フロントモータ減速差動装置によって左前車輪と右前車輪に伝達され、リアモータの出力トルクは、リアモータ減速差動装置によって左リア車輪と右リア車輪に伝達され、そして、左前車輪速センサー、右前車輪速センサー、左リア車輪速センサー、及び右リア車輪速センサーにより、対応する車輪の車輪速を収集する。左前車輪速センサー、右前車輪速センサー、左リア車輪速センサー、及び右リア車輪速センサーから検出された速度値は、ECUで收集されて処理され、ECUは、取得された車輪速により、フロントモータとリアモータの出力トルクのトルク方向が変化したか否かを決定し、トルク方向が変化したとき、駆動歯の歯寄せ動作を制御することによって、駆動歯の回転速度の能動的な制御を実現し、このようにして、駆動歯がバックラッシを通過するときの初速度が大きすぎて、時間がかなりかかるという問題を低減ひいては回避することができるため、動力出力遅延、振動や騒音の問題を低減ひいては回避することができる。
【0040】
上記のシーンを参照して、以下、本願により提供される電動車のモータ制御方法の技術的解決手段について、いくつかの特定の実施例を用いて詳細に説明する。
【0041】
本願は、電動車のモータ制御方法を提供する。
図3は、本願の実施例により提供される電動車のモータ制御方法のフローチャートであり、
図3に示すように、当該方法は、次のステップを含む。
【0042】
S301では、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出する。
【0043】
本ステップでは、モータの出力トルクの方向が変化しようとしているとき、モータの駆動歯と伝動システムの被動歯の噛み合い方向が変化しようとしているか否かを決定することができ、すなわち、モータの出力トルクの方向が変化するとき、駆動歯が被動歯から離脱しようとしていることを示し、すなわち、駆動歯と被動歯との間の弾性力は解放され、弾性力は小さくなり、駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量も小さくなっている。
【0044】
選択的には、モータ稼働中に、モータの駆動歯と被動歯の噛み合い方向を継続的に検出し、駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を継続的に計算することによって、モータの出力トルクの方向が変化しようとしていることを検出したとき、駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を決定することができる。
【0045】
選択的には、駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形は、歯車変形及び軸変形を含む。
【0046】
S302では、相対変形量が第1のしきい値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差を決定する。
【0047】
本ステップでは、相対変形量が第1のしきい値であることは、駆動歯が伝動システムの被動歯から離脱開始することを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯の被動歯に対する離脱時点での駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が離脱時点において速度比によって換算されて得られた回転速度である。相対変形量が第1のしきい値であることは、相対変形量がゼロに等しいことであってもよく、当該時点は、駆動歯が被動歯から離脱開始する離脱時点である。駆動歯が被動歯から離脱してから再び接触する過程は、
図4に示されるようなものであってもよく、
図4は、本願の実施例により提供される駆動歯と被動歯の運動過程の概略図であり、
図4では、当該運動過程は、固定座標系を座
標変換(Park’s Transformation、パーカー変換)によって回転座標系に変換した後の、駆動歯と被動歯との間の運動分解過程であってもよく、ここで、回転座標系の周波数は、車輪速を換算して(車輪速は比較的安定しており、比較的安定した座標系の周波数を取得することができる)得られたものであり、駆動歯と被動歯との間の相対運動は、弾性解放段階、駆動歯が被動歯から離脱開始する時点、駆動歯の自由回転段階、駆動歯が被動歯と再び噛み合い始めた時点、駆動歯が被動歯と接触開始する時点、及び弾性圧縮段階という6つの段階又は時点に等価なものであってもよい。
【0048】
選択的には、駆動歯が被動歯から離脱開始することは、駆動歯と被動歯との間の弾性変形の回復中に、相対変形回復量が弾性変形量に等しいということによって決定され得る。
【0049】
選択的には、相対変形量が第1のしきい値であり、すなわち、駆動歯が被動歯から離脱開始するとき、この時点での第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との速度差を決定し、当該速度差を第1の速度差として記することができる。これによって、当該第1の速度差に従ってモータに必要な出力トルクを決定することは容易になる。
【0050】
S303では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定する。
【0051】
本ステップでは、第1の速度差を決定した後、第1の速度差を用いてモータの出力トルクを算出することができ、
図5に示すように、
図5は、本願の実施例により提供される駆動歯の歯寄せ制御の曲線概略図である。
図5では、モータの出力トルクが正のトルクから負のトルクに変化する場合を例にとると、駆動歯の被動歯に対する相対的運動は3つの段階に分解されることができ、(1)段階は、正のトルク低下及び弾性解放段階であってもよく、(2)段階は、駆動歯の歯寄せ段階であってもよく、(3)段階は、負のトルク増加及び弾性圧縮段階であってもよい。
図5では、
uは、トルク変化速度を示すためのものであり、
T
12は、駆動歯の歯寄せを能動的に制御することに必要な第1のトルクを示すためのものであり、モータ回転子(駆動歯)を加速させ、モータ軸が歯車隙間領域を迅速に通過するようにする役割を果たしているものであり、
T
23は、駆動歯の歯寄せを能動的に制御することに必要な第2のトルクを示すためのものであり、歯車の噛み合い面が接触したときの回転速度差を減らし、これによって回転速度差による慣性衝撃を軽減する役割を果たしているものであり、
T
34は、歯寄せの能動的制御が終了した後の遷移トルク、すなわち歯寄せ制御トルクを安定したトルクに遷移したトルクを示すためのものであり、
T
45は、安定したトルクを示すためのものであり、すなわち、このときのモータの出力トルクは、運転者所望のトルク(又はアクセルペダルに必要なトルク)に等しいものであり、
t
0は、消費者がアクセルを緩めたとき、モータの出力トルクが低下開始する時点を示すためのものであり、
t
1は、駆動歯が被動歯から離脱開始する時点を示すためのものであり、
t
2は、T
12の第1のトルクの機能カットオフ時点を示すためのものであり、当該時点において、駆動歯の回転速度が加速から減速に変化し、予め設定されたタイミングであってもよく、
t
3は、T
23の第2のトルクの機能カットオフ時点、すなわち駆動歯が被動歯に再び接触した時点を示すためのものであり、
t
4は、モータの出力トルクが安定したトルクに達したときの時点を示すためのものであり、
t
5は、モータの出力トルクが安定したトルクに維持されている最後の時点を示すためのものであり、
t
01は、消費者がアクセルを緩めたときから駆動歯が被動歯から離脱開始するときまでの持続時間を示すためのものであり、
t
12は、T
12の第1のトルクが機能する時間長を示すためのものであり、
t
23は、T
23の第2のトルクが機能する時間長を示すためのものであり、
t
13は、t
12+t
23の合計時間、すなわち駆動歯の歯寄せを能動的に制御する処理が機能する時間長を示すためのものであり、
t
34は、T
34のトルクが機能する時間長、すなわち遷移トルクの持続時間を示すためのものであり、
t
45は、T
45のトルクが機能する時間長、すなわちモータの出力トルクが安定したトルクに達したときから数えた持続時間を示すためのものであり、
N
Oは、車輪端の回転速度を速度比によって換算した回転速度を示すためのものであり、車輪端の換算回転速度として略称し、
N
O1は、t
1時点での車輪端の換算回転速度を示すためのものであり、
N
O2は、t
2時点での車輪端の換算回転速度を示すためのものであり、
N
O3は、t
3時点での車輪端の換算回転速度を示すためのものであり、
N
Rは、モータ回転子の回転速度、すなわち駆動歯の回転速度を示すためのものであり、
N
R1は、t
01が終了するときの駆動歯の回転速度、すなわちt
1時点での駆動歯の回転速度を示すためのものであり、
N
R2は、t
12が終了するときの駆動歯の回転速度、すなわちt
2時点での駆動歯の回転速度を示すためのものであり、
ΔN
1は、t
1時点でのN
O1とN
R1との速度差、すなわち駆動歯の被動歯に対する離脱時点での車輪端の換算回転速度と駆動歯の回転速度との回転速度差を示すためのものであり、
ΔN
2は、t
2時点でのN
O2とN
R2との速度差、すなわちT
12の第1のトルクが機能カットオフ時点での車輪端の換算回転速度と駆動歯の回転速度との回転速度差を示すためのものである。
【0052】
選択的には、駆動歯がバックラッシを通過するときの駆動歯と被動歯との速度差を時間積分し、
図5のハッチング面積とすることができる。当該ハッチング面積はバックラッシ値である。第1の速度差、すなわちΔN
1を決定することによって、モータの出力トルク、すなわちT
12とT
23を算出する。
【0053】
選択的には、
図5の(1)段階では、弾性解放変形の積分範囲は、消費者がアクセルを緩めた後に被動歯がそれにつれて離脱するときから、モータの出力トルクが0であるかまたは弾性解放変形の積分値が弾性変形の予め設定された値に等しくなるまでの範囲であってもよい。弾性変形の予め設定された値は、出力トルクと弾性解放変形とのマッピングテーブルで示すことができ、弾性解放変形の累積積分値が弾性変形の予め設定された値に達すると、弾性解放変形が終了すると見なされる。マッピングテーブルを予め設定する方法は、静的条件下で完成車又は伝動システムのアセンブリ上で異なるブロッキングトルクをモータに与え、このブロッキングトルクでのモータ軸の回転角度を測定する方法であってもよい。
【0054】
図5の(2)段階では、バックラッシ積分範囲は、弾性解放変形が終了したときから、バックラッシ積分値が予め設定されたバックラッシ値S又は自己学習バックラッシ値Sに達したときまでの範囲であってもよい。
【0055】
図5の(3)段階では、弾性圧縮変形の積分範囲は、バックラッシ積分が終了したときから、駆動歯が被動歯と再び噛み合うときまでの範囲であってもよい。
【0056】
選択的には、積分計算式は、
L=ΣΔω
Δω=ΔN×2π/60
のように示すことができ、
サンプリング周波数がΔtであるとき、
Lt=Lt-1+Δω×Δtとする。
【0057】
ここで、Lは、駆動歯の被動歯に対する相対位置差の積分を示すためのものであり、弾性変形積分とバックラッシ積分は両方とも当該値で示すことができ、単位はラジアンradであり、ΔNは、駆動歯と被動歯との速度差を示すためのものであり、単位は回転/分rpmであり、ωは、単位換算後の駆動歯と被動歯との速度差を示すためのものであり、単位はrad/sである。
【0058】
S304では、出力トルクに従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ動作を制御する。
【0059】
本ステップでは、駆動歯の回転速度の能動的制御は、モータの出力トルクを制御することによって実現されているため、モータの出力トルクを制御することによって、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ動作を制御し、歯接触時の駆動歯と被動歯との速度差を低下することができ、これによって、歯接触時の慣性衝撃は低減され、振動や騒音はなくされる。
【0060】
本実施例により提供される電動車のモータ制御方法は、モータの出力トルクが変化したときの弾性変形を導入し、弾性変形を計算して、弾性変形に起因する相対初速度を識別することによって、初速度に従って対応するモータの出力トルクの制御策略を実施し、駆動歯の能動的な歯寄せ動作を制御しているため、歯接触時の慣性衝撃を効果的に低減ひいては回避又は解決し、振動や騒音をなくすことができる。また、駆動歯の歯寄せを能動的に制御しているため、トルク平滑化処理策における接触と圧縮段階をなくし、駆動歯がバックラッシを通過する時間を短縮し、歯の噛み合い面の変化過程を短縮し、すなわち、正のトルクと負のトルクの変化時間を減らし、トルク応答を向上させ、より優れた運転性能にすることができる。
【0061】
1つの実施例では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するステップは、第1の速度差と第1の時間長との積を第1の積として決定するステップであって、第1の時間長は、離脱時点から駆動歯の被動歯に対する接触時点までの持続時間である、ステップと、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクを含むと決定するステップと、を含み、第1のトルクと第2のトルクは、互いに反対方向であり、第1のトルクは、離脱時点からモータの加速状態と減速状態の変換時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、第2のトルクは、変換時点から接触時点までの時間間隔において必要とされるトルクである。
【0062】
当該解決策では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するとき、まず、第1の速度差と第1の時間長との積、すなわちΔN
1×(t
12+t
23)を決定することができ、ΔN
1×(t
12+t
23)<2Sである場合(ここで、Sは、デフォルトバックラッシ値を示すためのものであり、予め設定されたバックラッシ値が2Sにする場合は、最適な解決策となる)に、第1の速度差を用いて算出された第1のトルクT
12と第2のトルクT
23は、互いに反対方向であり、この場合、出力トルク曲線は、
図5に示されるものであってもよい。
【0063】
選択的には、モータの出力トルクを決定することによって、駆動歯の回転速度を能動的に制御し、すなわち、減速してから加速する(又は加速してから減速し、これは、モータの出力トルクの変化方向に応じて決定される)場合のトルク制御を実施することによって、駆動歯がバックラッシを通過するときにかかる時間を減らし、動力応答が遅れているという問題を低減ひいては回避することができ、駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯が被動歯に再び接触したときの回転速度差を低下させることによって、理想的には、回転速度差をゼロまで低下させ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0064】
1つの実施例では、第1のトルクと第2のトルクは、変換時点において、予め設定されたバックラッシ値、第1の速度差、及び第1の時間長によって、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差を決定し、第2の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が変換時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であること、第2の速度差と第2の車輪端の換算回転速度に従い、第2の駆動歯の回転速度を決定し、第2の駆動歯の回転速度は、変換時点での駆動歯の回転速度であること、第2の駆動歯の回転速度、第1の駆動歯の回転速度、離脱時点と変換時点の持続時間、及び第2の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に従い、第1のトルクを決定すること、及び、第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、変換時点と接触時点の持続時間、及び第3の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に従い、第2のトルクを決定し、第3の駆動歯の回転速度は、接触時点での駆動歯の回転速度であること、によって決定されている。
【0065】
当該解決策では、
図5のハッチング面積の幾何学モデル簡略化処理を行うことができ、
図6に示すように、
図6に示されている簡略化モデルを用いて、モータの出力トルクを決定することができ、
簡略化モデルからわかるように、N
O1、N
R1、t
12、t
23が決定されたとき、N
O2、N
O3は決定値で、N
R2の時間成分は決定値である。且つ、N
O1、N
O3、N
R1、N
R2で囲まれた面積バックラッシ値Sも決定値である。
【0066】
上記の条件に従ってΔN2、NR2の速度成分を求めることができ、そして、線分NR1NR2について導関数を求めて速度変化率a12を得ることができ、線分NR2NO3について導関数を求めて速度変化率a23を得ることができ、速度変化率a12とa23に従い、第1のトルクT12と第2のトルクT23を決定することができる。次のように式にて示すことができる。
2S=ΔN1×t12+ΔN2×(t12+t23)
ΔN2=(2S-ΔN1×t12)/(t12+t23)
NR2=NO2-ΔN2=NO2-(2S-ΔN1×t12)/(t12+t23)
a12=(NR2-NR1)/t12
a23=(NO3-NR2)/t23
【0067】
モータ回転子の慣性モーメントを知れば、モータ回転子の慣性モーメントIに従って第1のトルクT12と第2のトルクT23を求めることができ、次のように式にて示すことができる。
T12=I×a12+TF
T23=I×a23+TF
【0068】
ここで、電動車の異なる運転モードに応じて1つ又は複数のテーブルを決定することができ、テーブル内には、駆動歯の回転速度(又は車速)とt12及びt23とのマッピング関係を記憶することができるため、t12、t23は、テーブルを照会することによって取得することができ、TFは、現在の駆動歯の回転速度と温度における、駆動歯回転の摺動摩擦力を示すためのものであり、ベンチテストによって取得され得る。
【0069】
選択的には、車輪端の換算回転速度NOは、次の式にて決定され得る。
NO=N*i
【0070】
車速予測式:
V=V1+a×Δt=V1+aF×Δt-sinθ×g×Δt+F/m×Δt
=(NO1+aO×Δt)×2πr/K/i
K=N1×2πr/V1
【0071】
車速加速度式:
a=aF-sinθ×g+F/m
この場合、aF×Δt-sinθ×g×Δt+F/m×Δt=aO×Δt×2πr/K/iである。
【0072】
車輪速加速度式:
aO=a/(Δt×2πr×K)=(-aF-sinθ×g+F/m)/(2πr/K/i)
【0073】
車輪速予測式:
NOΔt=NO1+aO×Δt
=NO1+(-aF-sinθ×g+F/m)×Δt/(2πr/K/i)
【0074】
ここで、Kは、タイヤスリップ係数を示すためのものであり、Nは、車輪車輪速を示すためのものであり、N1は、特定の時点の車輪車輪速を示すためのものであり、NOは、車輪端の換算回転速度を示すためのものであり、Vは、電動車車速を示すために使用することができ、V1は、電動車の特定の時点での車速を示すためのものであり、aは、車速の加速度を示すためのものであり、Fは、車輪端トルクを示すためのものであり、駆動歯がバックラッシを通過する過程では、F=0とし、aFは、完成車の滑走抵抗(風抵抗+車輪端摩擦力+伝動システムの機械摩擦力)による減速度を示すためのものであり、滑走曲線にて取得することができ、aOは、車輪速の加速度を示すためのものであり、rは、車輪の半径を示すためのものであり、θは、傾きを示すためのものであり、iは、車輪とモータ回転子との速度比を示すためのものであり、Δtは、特定の時間帯の時間長を示すためのものであり、gは、重力加速度を示すためのものであり、mは、電動車の質量を示すためのものである。
【0075】
選択的には、t12とt23を決定することによってモータの出力トルクを決定し、歯寄せ動作を完成させるように駆動歯を制御することに加え、与えられたT12とT23の値を用いて駆動歯の歯寄せ動作を完成させることができ、異なる運転モードに応じて1つ又は複数のテーブルを決定することができ、テーブル内には、駆動歯の回転速度(又は車速)とT12及びT23とのマッピング関係が記憶されており、すなわち、T12、T23は、テーブルを照会することによって取得することができ、この場合、T12、T23に対応する時間を決定すれば駆動歯の歯寄せ動作を完成させることができ、次の式にて示すことができる。
a12=I/T12
a23=I/T23
2S=ΔN1×t12+ΔN2×(t12+t23)
ΔN2=ΔN1-a13×t12+a12×t12
ΔN1+a12×t12=a23×t23+a13×(t12+t23)
t23=(ΔN1+a12×t12-a13×t12)/(a13+a23)
2S=ΔN1×t12+(ΔN1-a13×t12+a12×t12)×(t12+(ΔN1+a12×t12-a13×t12)/(a13+a23))
【0076】
a13は、線分NO1NO3について導関数を求めて得られた速度変化率を示すためのものである。
【0077】
上記の式を用いて、第1のトルクT12に対応する時間t12及び第2のトルクT23に対応する時間t23、すなわち、歯寄せ過程全体を決定することができる。
【0078】
選択的には、NO1、NO3、NR1、NR2で囲まれた面積がバックラッシSであると決定されると、NO1とNR1は決定され、T12、T23、t12、t23、t13のうちの任意の2つの量を決定することによって歯寄せ過程全体を決定することもできる。
【0079】
選択的には、駆動歯の回転速度を能動的に制御し、すなわち、減速してから加速する(又は加速してから減速し、これは、モータの出力トルクが変化しようとする方向に応じて決定される)場合のトルク制御を実施することによって、駆動歯がバックラッシを通過するときにかかる時間を減らし、動力応答が遅れているという問題を低減ひいては回避し、駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯が被動歯に再び接触したときの回転速度差を低下させることによって、理想的には、回転速度差をゼロまで低下させることができ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0080】
1つの実施例では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するステップは、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、第1の速度差と第2の時間長との積を第2の積として決定するステップであって、第2の時間長は、離脱時点から変換時点までの持続時間である、ステップと、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクを含むと決定するステップであって、第1のトルクと第2のトルクは、同じ方向である、ステップと、をさらに含む。
【0081】
当該解決策では、算出された第1の積が予め設定されたバックラッシ値2Sよりも大きい又は等しい場合に、第1の速度差と第2の時間長との積を決定する必要があり、すなわち、ΔN1×(t12+t23)≧2Sである場合に、ΔN1×t12を算出することができる。
【0082】
選択的には、ΔN
1×t
12<2Sである場合、この場合、
図5のハッチング面積の幾何学モデル簡略化処理を行うことによって、
図7に示されている簡略化モデルを得ることができ、この場合、第1のトルクT
12と第2のトルクT
23を決定する式は、前述したΔN
1×(t
12+t
23)<2Sの場合と同じであるが、ΔN
1×t
12<2Sである場合に、第1のトルクT
12と第2のトルクT
23は、同じ方向であり、出力トルク曲線は、
図8に示されているものであってもよい。
【0083】
選択的には、
図8では、破線T
1は、出力トルク低下段階の可能なトルク曲線を示すためのものであり、トルク曲線は、トルク変化速度u、駆動歯の被動歯に対する離脱時点t
1、駆動歯が被動歯から離脱したときの初速度差ΔN
1に依存するものであり、uは、消費者がアクセルを緩めて出力トルクが低下開始する時点から駆動歯が被動歯から離脱開始する時点(t
0~t
1)までのトルク低下の平均勾配、すなわちトルク下り勾配を示すためのものであり、トルク変化速度とも呼ばれている。
【0084】
選択的には、駆動歯の回転速度を能動的に制御し、すなわち、減速してから加速する(又は加速してから減速し、これは、モータの出力トルクの変化方向に応じて決定される)場合のトルク制御を行うことによって、駆動歯がバックラッシを通過するときにかかる時間を減らし、動力応答が遅れているという問題を低減ひいては回避し、駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯が被動歯に再び接触したときの回転速度差を低下させることによって、理想的には、回転速度差をゼロまで低下させることができ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0085】
1つの実施例では、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定するステップは、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、目標時点において、第3の車輪端の換算回転速度を決定するステップであって、第3の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が目標時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であり、目標時点は、第2の時間長内に駆動歯が被動歯に再び接触した時点である、ステップと、第3の車輪端の換算回転速度、第1の駆動歯の回転速度、及び離脱時点と目標時点の持続時間に従い、第3のトルクを決定するステップであって、第3のトルクは、離脱時点から目標時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、出力トルクは第3のトルクを含む、ステップと、をさらに含む。
【0086】
当該解決策では、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しく、すなわち、ΔN
1×t
12≧2Sである場合、
図5のハッチング面積の幾何学モデル簡略化処理を行うことによって、
図9に示されている簡略化モデルを得ることができ、この場合、t
1からt
2’までの時間長において必要とされるトルクを計算するだけでよく、t
2’は、目標時点であり、t
1から
t
2’
までの時間長内に駆動歯が被動歯に再び接触した時点である。
【0087】
選択的には、ΔN1×t12≧2Sである場合に、モータの出力トルク(第3のトルク)を決定することは、次の式にて示すことができる。
ΔN1×t12’=2S
t12’=2S/ΔN1
NO2’=NO1-a13×t12’
a12’=(NO2’-NR1)/t12’
T12’=I×a12’
【0088】
t12’は、t1からt2’までの時間長を示すためのものであり、NO2’は、t2’時点での駆動歯が被動歯に再び接触したときの車輪端の換算回転速度を示すためのものであり、a12’は、線分NO1NO2’について導関数を求めて得られた速度変化率を示すためのものであり、T12’は、第3のトルクを示すためのものである。
【0089】
選択的には、ΔN
1×t
12≧2Sである場合に、出力トルク曲線は、
図10に示されているものであってもよい。
図10では、破線T
1は、出力トルク低下段階の可能なトルク曲線を示すためのものであり、トルク曲線は、トルク変化速度u、駆動歯の被動歯に対する離脱時点t
1、駆動歯が被動歯から離脱したときの初速度差ΔN
1に依存するものであり、破線T
2は、t
12’時間長後に、選択可能なトルク曲線を示すためのものである。
【0090】
選択的には、駆動歯の回転速度を能動的に制御し、すなわち、減速してから加速する(又は加速してから減速し、これは、モータの出力トルクの変化方向に応じて決定される)場合のトルク制御を行うことによって、駆動歯がバックラッシを通過するときにかかる時間を減らし、動力応答が遅れているという問題を低減ひいては回避し、駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯が被動歯に再び接触したときの回転速度差を低下させることによって、理想的には、回転速度差をゼロまで低下させることができ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0091】
1つの実施例では、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出するステップは、モータの出力トルクの方向が変化しようとしているか否かを決定するステップと、出力トルクの方向が変化しようとしているとき、モータの駆動歯と被動歯の噛み合い方向が変化しようとしているか否かを決定するステップと、駆動歯と被動歯の噛み合い方向が変化しようとしているとき、相対変形量を決定するステップと、を含む。
【0092】
当該解決策では、駆動歯と車輪との間の伝動システム伝達のトルクは、駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形を引き起こし、駆動歯と車輪端との間の伝動システムの変形によって生じる弾性力は、出力トルク変化中に、駆動歯の回転速度と車輪端の換算回転速度との相対速度差を生じさせ、相対速度差を識別し、異なる相対速度差に対して異なる出力トルク制御策略を実施することによって、関連技術における、「アクセルを緩めた後に車両が依然として加速しているか、またはアクセルを踏んでも車両が加速しない」という問題を効果的に低減ひいては回避することができ、当該解決案は、弾性解放段階のトルク勾配が大きいことを可能にしているため、正と負のトルクの迅速な変化を実現し、電動車の動的応答を最適化することができる。
【0093】
選択的には、モータの出力トルクの方向が変化しようとしているか否かを決定することができ、出力トルクの方向が変化しようとしていることは、出力トルクの方向が正から負に変化する、負から正に変化する、ゼロプラス、ゼロマイナスなどの様々な状況を含むことができ、出力トルクの方向が変化しようとしているとき、モータの駆動歯と被動歯の噛み合い方向が変化しようとしているか否かを決定して、駆動歯と被動歯の噛み合い方向が変化しようとしているとき、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を決定することができる。
【0094】
1つの実施例では、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出するステップは、モータの出力トルクの方向が変化したことを検出したとき、現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差を決定するステップと、第3の速度差に従い、駆動歯の被動歯に対する相対変位を決定するステップと、相対変位に従い、相対変形量を決定するステップと、をさらに含む。
【0095】
当該解決策では、出力トルクが変化した場合、この後の駆動歯と被動歯の運動中に、駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差をリアルタイムに計算することができ、複数の連続的な時間帯の各時間帯での速度差を決定し、そして、各時間帯での速度差と対応する時間帯の時間長を用いて、駆動歯の被動歯に対する相対変位を算出し、駆動歯と被動歯の相対変形量を得ることができる。
【0096】
選択的には、異なる相対変形量による駆動歯の相対初速度が異なるため、異なる初速度に対して異なる出力トルク制御策略を実施し、正と負のトルクの迅速な変化を実現し、電動車の動的応答を最適化することができる。
【0097】
本願により提供される電動車のモータ制御方法は、駆動歯と被動歯の噛み合い方向が変化したとき、モータの出力トルクを能動的に制御することによって、駆動歯が被動歯に再び接触するまでにかかる時間を減らし、正と負のトルクの変化を加速させ、動力出力遅延を短縮し、運転性を最適化する一方、駆動歯と被動歯の噛み合い方向が変化したとき、モータの出力トルクを能動的に制御することによって、駆動歯が被動歯に接触したときの速度差をなくし、慣性衝撃による騒音や衝撃をなくす。さらに、減速トルクを付加することによって、駆動歯が被動歯に接触したときの速度差を低下またはなくし、弾性解放段階のトルク勾配を増加し、正と負のトルクの迅速な変化を実現し、アクセルを緩めた後に車両が依然として加速しているまたはアクセルを踏んでも車両が加速しないという問題を低減ひいては回避し、車両の動的応答を最適化することができる。
【0098】
1つの実施例では、さらに、車両の運転状態によって車両の出力トルクを決定することもできる。車両の運転状態は、運転スタイル又は運転モードとも呼ばれ、消費者がアクセルペダルを踏んだ又は緩めたときの車両の加速特徴又は減速特徴を意味する。異なる運転状態の設定に応じて、車両は運転状態が異なり、つまり、異なる運転状態の設定に応じて、車両の動力装置は、トルク出力特徴が異なり、すなわち、出力トルクを制御することによって特定の運転状態を達成する。運転状態は、エコノミー状態(ECO状態)、快適状態(標準状態)、運動状態、及びトラック競技状態を含むことができる。車両運転時の異なる運転状態に対する消費者の需要を満たして適応させるために、運転状態の選択機能を車両に装備することができる。異なる運転状態では、アクセルペダルを踏んだ又は緩めたとき、動力装置はトルク出力の特徴が異なるため、異なる運転状態での車両の異なる加速特徴又は減速特徴の需要を満たす。快適モードとエコノミーモードに比べて、運動モードでは、アクセルペダルを踏んだ又は緩めたとき、車両加速度の変化率はより大きく、運動モードにおける車両は同じ時間内により大きな加速度や減速度を達成するか、又は車両はより短い時間に目標加速度や目標減速度を達成することができる。
【0099】
別の関連技術において、様々な運転状態を実現するために、それぞれの運転状態について1つの対応する実行プログラム(又はロジック)を設定し、消費者がある運転状態を選択した後にその対応するプログラムを実行するのが一般的である。しかし、このような方法を用いると、運転状態の選択は消費者が自由に設定できるものではなくなり、消費者は予め設定されたいくつかの運転状態の中から選択して使用することができる。一方、運転状態の数についても、数の制限がないように予め設定することができず、さもなければ、高価な開発コストと部品コストが生じ、且つ開発サイクルもそれにつれて増加する。また、数が限定された運転状態が予め装備されていたとしても、研究開発コストの増加及び研究開発期間の延長をもたらす。しかし、異なる消費者または異なる運転シーンにおける同一消費者にとっては、車両の加速反応に対して異なる需要を求めているため、数が限定された運転状態でもって消費者の車両加速反応の需要を満たすことができない。例にとって説明すると、
図11に示すように、いくつかの場合において、運動モードにおける車両の加速反応は敏感になる傾向があるが、快適モードにおける車両の加速反応は鈍くなる傾向があり、不適切な車両の加速反応について、消費者は、当該運転モード又は車両反応を学習又は適応するのに時間がかかり、この過程では、消費者は車両運転性の体験が悪くなっている。
【0100】
図11は、関連技術により提供される運転状態決定の概略図であり、
図11では、アクセルペダルを緩めた場合を例にとると、消費者は、アクセルペダルを安定させる状態からアクセルペダルを緩める状態まで、定常状態トルク制御と動的トルク制御に分けられる。ここで、定常状態トルクは、消費者がアクセルペダルを安定させているときのトルク、すなわち、トルクT
0とトルクT
45を示すためのものであり、運転状態を変更するとき、定常状態トルクの大きさを変更することによって異なる定常状態運転の運転状態を実現し、動的トルクは、アクセルペダルの開度変化からトルク安定までの過程におけるトルクを示すためのものであり、動的トルクは、次の3つの段階に分解することができ、
段階(1)は、すなわちt
01時間間隔で、トルク低下過程であり、当該時間間隔がトルクT
01に対応する段階であり、
段階(2)は、すなわちt
13時間間隔で、ゼロトルク又は小トルクの歯寄せ過程であり、当該時間間隔がトルクT
13に対応する段階であり、
段階(3)は、すなわちt
34時間間隔で、トルク増加過程であり、当該時間間隔がトルクT
34に対応する段階である。
【0101】
ΔN1は、t1時点において、駆動歯が被動歯から離脱するときの車輪端の換算回転速度と駆動歯の回転速度との回転速度差を示すためのものである。
【0102】
当該関連技術において、t01時間間隔のトルクの変化速度を決定することによって、t01時間間隔の運転状態を決定し、t13時間間隔のトルクの大きさ及びt13時間間隔の時間長を決定することによって、t13時間間隔の運転状態を決定し、且つ、t13時間間隔のトルクの大きさ、t13時間間隔の時間長、t01時間間隔のトルクの変化速度の三者は、互いにマッチする必要があり、さもなければ、より激しい車両振動が発生し、消費者の運転体験が悪くなる一方、t34時間間隔のトルクの変化速度を決定することによって、t34時間間隔の運転状態を決定し、t34時間間隔のトルクの変化速度は、t13時間間隔のトルクの大きさ、t13時間間隔の時間長、t01時間間隔のトルクの変化速度とマッチする必要があり、さもなければ、より激しい車両振動が発生し、消費者の運転体験が悪くなる。したがって、関連技術において、動的トルク制御の各段階において、トルクの大きさ及びトルク持続時間の制御の精度が高く求められており、予期の効果を達成することが困難であり、校正難易度が高くなり、校正期間が長くなり、研究開発コストが高くなるという問題がある。
【0103】
これに対して、本願では、消費者から入力された運転状態パラメータに従って出力トルクをリアルタイムに制御することができるため、消費者は、自分の好みや習慣に合わせて、許される最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態から車両の運転状態を選択することができるため、車両の運転状態が消費者の運転習慣によりよくマッチされたものとなり、消費者の運転体験感を向上させることができる。また、消費者は運転状態を自由に調整することができ、消費者は、運転状態を調整することによって、消費者の運転習慣に適応した車両にすることができ、消費者の学習コストの低減につながる。さらに、消費者から入力された運転状態パラメータに従って出力トルクをリアルタイムに計算することによって、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0104】
以下、車両の運転状態に応じて車両の出力トルクを決定する技術的解決手段について、いくつかの特定の実施例を参照して詳細に説明する。
【0105】
1つの実施例では、モータの出力トルクを決定するステップは、運転状態を調整する調整操作に応答し、調整された目標運転状態に対応する運転状態情報を取得するステップと、運転状態情報を変換処理して、デジタル信号を得るステップと、デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得るステップと、トルク信号に従い、出力トルクを決定するステップと、を含む。
【0106】
当該解決策では、運転状態制御装置を提供し、
図12に示すように、
図12は、本願の実施例により提供される運転状態制御装置の概略図であり、
図12では、当該運転状態制御装置は、操作コンポーネント1201、確認モジュール1202、及び制御モジュール1203を含むがこれらに限定されない。具体的には、消費者は、操作コンポーネント1201を操作することによって、運転状態を所望の目標運転状態に調整し、操作コンポーネント1201は、消費者が調整した目標運転状態に対応する運転状態情報をデジタル信号に転化した後、確認モジュール1202に伝達し、確認モジュール1202は、デジタル信号を受信した後、目標運転状態に対応するリアルタイムに必要とされているトルク信号を算出するとともに、当該トルク信号を制御モジュール1203に伝達し、制御モジュール1203は、当該トルク信号を受信した後、対応するトルクを出力するようにしている。
【0107】
上記の解決策において、操作コンポーネント1201は、操作素子とフィードバック素子を備える制御ユニットであってもよく、消費者の運転状態に対する調整操作に当該操作コンポーネント1201に頼って応答するとともに、当該調整操作の結果を確認モジュール1202に伝達して消費者にフィードバックすることができる。
【0108】
ここで、操作素子は、触覚操作素子(スイッチ、回転調整器、回転プレス調整器、スライド調整器、トラックボール、ジョイスティック、タッチパッド、タッチスクリーンなど)、音響検出及び/又は分析評価ユニット(マイク、音声認識装置、周波数分析器など)、視線追跡装置(例えばカメラに基づく視線追跡装置)、非接触位置決定ユニット、3D位置決定ユニット、近接センサー、ユーザアイデンティティ(操縦士、副操縦士、乗員など)認識システム、ジェスチャ認識装置などの1つ又は複数を含むことができる。例えば、操作素子は、押圧スイッチ及び/又は回転スイッチ又はタッチ入力ディスプレイとして構成され得る。操作素子1201は、好ましくは操縦士と副操縦士の共同作用範囲内に配置され、選択的には、同車後部座席の乗員の作用範囲内に配置されてもよい。
【0109】
フィードバック素子は、ユーザから入力された目標運転状態に対応する運転状態情報を、デジタル信号(デューティ比、比率、ランク、強度などで変換処理が可能)に変換して確認モジュール1202に伝達する信号変換装置を含み得る。フィードバック素子は、アニメーション、画像、テキスト、サウンド、照明の色、照明の明るさ、照明の数などによって、現在の運転状態をユーザにフィードバックすることができる視覚要素(例えば、ディスプレイ、ライトなど)、発話素子などをさらに含むことができる。
【0110】
上記の解決策において、消費者は、自分の好みや習慣に合わせて、許される最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態から車両の運転状態を選択することができるため、車両の運転状態が消費者の運転習慣によりよくマッチされたものとなり、消費者の運転体験感を向上させることができる。
【0111】
1つの実施例では、デジタル信号は、電動車の異なる運転状態を異なる数値で示しており、デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得るステップは、デジタル信号が第1の数値である場合に、トルク信号が第1の予め設定された信号であると決定するステップと、デジタル信号が第2の数値である場合に、トルク信号が第2の予め設定された信号であると決定するステップと、デジタル信号が第1の目標数値である場合に、第1の予め設定された信号、第2の予め設定された信号、及び第1の目標数値に従い、トルク信号を目標信号として決定するステップと、を含み、第1の数値は第2の数値よりも小さく、第1の目標数値は第1の数値よりも大きいが第2の数値よりも小さく、第1の予め設定された信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も低いときのトルク信号であり、第2の予め設定された信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高いときのトルク信号であり、目標信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い感度と最も低い感度との間にあるときのトルク信号である。
【0112】
当該解決策では、確認モジュールが操作コンポーネントから伝達されたデジタル信号を受信した後、当該デジタル信号は、確認モジュールにおいて、数値で表現することができ、例えば、デジタル信号は、0と1との間の任意の数値であってもよく、デジタル信号の数値がAである場合、
A=0である場合には、運転状態が最も鈍い状態にあることを示すためのものであり、
A=1である場合には、運転状態が最も敏感な状態にあることを示すためのものであり、
0<A<1である場合には、運転状態が最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態にあることを示すためのものである。
【0113】
上記の解決策において、第1の数値は0であってもよく、第1の予め設定された信号は、運転状態が最も鈍い状態にある場合に対応するトルク信号であり、第2の数値は1であってもよく、第2の予め設定された信号は、運転状態が最も敏感な状態にある場合に対応するトルク信号であり、第1の目標数値は、0と1との間の任意の数値であってもよい。消費者から入力された運転状態に応じて出力トルクをリアルタイムに計算しているため、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0114】
1つの実施例では、トルク信号が目標信号である場合に、トルク信号に従い、出力トルクを決定するステップは、第1の予め設定された信号に対応する第4のトルク、第2の予め設定された信号に対応する第5のトルクを取得するステップと、第1の目標数値と第5のトルクとの第3の積を決定するステップと、予め設定された値と第1の目標数値との第1の目標差を決定して、第1の目標差と第4のトルクとの第4の積を決定するステップと、第3の積と第4の積との和を出力トルクとして決定するステップと、を含む。
【0115】
当該解決策では、アクセルペダルを緩めた場合を例にとると(アクセルペダルを踏んでいる場合も同様、アクセルペダルを緩めた場合はトルク低下制御で、アクセルペダルを踏んだ場合はトルク上昇制御であることにおいて相違している)。
【0116】
図5の動的トルクの段階(1)、即ち、トルク低下及び弾性解放段階について、
図13に示すように、t
01時間間隔において、T
01トルクの変化勾配を制御することによって、この段階の運転状態を決定することができる。
【0117】
図13は、本願の実施例により提供される出力トルク決定の1つの概略図であり、
図13には、MAX曲線は、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合のトルク曲線を示すためのものであり、MIN曲線は、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合のトルク曲線を示すためのものであり、ACT曲線は、運転状態が最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態にある場合、すなわち0<A<1である場合のトルク曲線を示すためのものである。MAX曲線とMIN曲線は予め設定された曲線である。
【0118】
動的トルクの段階(1)において、0<A<1である場合に、出力トルクT01_ACTは、次のように示され得る。
T01_ACT=A*T01_MAX+(1-A)*T01_MIN
【0119】
ここで、Aは、第1の目標数値を示すためのものであり、当該第1の目標数値は、0と1との間の任意の数値であってもよく、T01_MAXは、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合の出力トルク、すなわち第5のトルクを示すためのものであり、T01_MINは、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合の出力トルク、すなわち第4のトルクを示すためのものであり、予め設定された値は1であってもよい。
【0120】
図5の動的トルクの段階(3)、すなわち、負のトルク増加及び弾性圧縮段階について、
図14に示すように、t
34時間間隔において、T34トルクの変化勾配を制御することによって、この段階の運転状態を決定する。
【0121】
図14は、本願の実施例により提供される出力トルク決定の別の概略図であり、
図14には、MAX曲線は、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合のトルク曲線を示すためのものであり、MIN曲線は、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合のトルク曲線を示すためのものであり、ACT曲線は、運転状態が最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態にある場合、すなわち0<A<1である場合のトルク曲線を示すためのものである。MAX曲線とMIN曲線は予め設定された曲線である。
【0122】
動的トルクの段階(3)において、0<A<1である場合に、出力トルクT34_ACTは、次のように示され得る。
T34_ACT=A*T34_MAX+(1-A)*T34_MIN
【0123】
ここで、T34_MAXは、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合の出力トルク、すなわち第5のトルクを示すためのものであり、T34_MINは、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合の出力トルク、すなわち第4のトルクを示すためのものであり、予め設定された値は1であってもよい。
【0124】
図5の定常状態トルク、すなわちトルクT
0とトルクT
45について、
図15に示すように、トルクT
0とトルクT
45の大きさを変更することによって、異なる定常状態運転の運転状態を達成することができる。
【0125】
図15は、本願の実施例により提供される出力トルク決定の別の概略図であり、
図15には、1つの一定のアクセルペダルの開度について、MAX曲線は、当該アクセルペダルの開度において、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合のトルク曲線を示すためのものであり、MIN曲線は、当該アクセルペダルの開度において、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合のトルク曲線を示すためのものであり、ACT曲線は、当該アクセルペダルの開度において、運転状態が最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態にある場合、すなわち0<A<1である場合のトルク曲線を示すためのものである。MAX曲線とMIN曲線は予め設定された曲線である。
【0126】
0<A<1である場合に、出力トルクT_ACTは、次のように示され得る。
T_ACT=A*T_MAX+(1-A)*T_MIN
【0127】
ここで、T_MAXは、アクセルペダルの開度において、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合の出力トルク、すなわち第5のトルクを示すためのものであり、T_MINは、アクセルペダルの開度において、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合の出力トルク、すなわち第4のトルクを示すためのものであり、予め設定された値は1であってもよい。
【0128】
上記の解決策において、消費者から入力された運転状態を対応するデジタル信号に変換し、そして当該デジタル信号を用いて出力トルクをリアルタイムに計算することができるため、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0129】
1つの実施例では、第1の目標数値と第5のトルクとの第3の積を決定するステップは、運転状態嗜好係数を示すための予め設定された係数を取得するステップと、第1の目標数値と予め設定された係数と第5のトルクとの積を第3の積として決定するステップと、を含む。
【0130】
当該解決策では、さらに、運転状態嗜好係数を設定することによって、出力トルク計算の精度を向上させることができ、このとき、動的トルクの段階(1)において、0<A<1である場合に、出力トルクT01_ACTは、次のように示され得る。
T01_ACT=A*K*T01_MAX+(1-A)*T01_MIN
【0131】
動的トルクの段階(3)において、0<A<1である場合に、出力トルクT34_ACTは、次のように示され得る。
T34_ACT=A*K*T34_MAX+(1-A)*T34_MIN
【0132】
定常状態トルクについて、0<A<1である場合に、出力トルクT_ACTは、次のように示され得る。
T_ACT=A*K*T_MAX+(1-A)*T_MIN
【0133】
ここで、Kは運転状態嗜好係数を示すために用いられる。
【0134】
上記の解決策において、消費者から入力された運転状態を対応するデジタル信号に変換し、そして当該デジタル信号を用いて出力トルクをリアルタイムに計算することができるため、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0135】
1つの実施例では、デジタル信号は、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の異なる歯寄せ時点を異なる数値で示しており、モータ制御方法は、デジタル信号が第3の数値である場合に対応する第1の時点、及びデジタル信号が第4の数値である場合に対応する第2の時点を決定するステップと、デジタル信号が第2の目標数値である場合に、第1の時点、第2の時点、及び第2の目標数値に従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定するステップと、をさらに含み、第3の数値は第4の数値よりも小さく、第2の目標数値は第3の数値よりも大きいが第4の数値よりも小さく、第1の時点は、電動車の運転状態に対応する感度が最も低い時点であり、第2の時点は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い時点である。
【0136】
当該解決策では、デジタル信号は、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の異なる歯寄せ時点を異なる数値で示してもよく、すなわち、t
12とt
23をそれぞれ設定することによって、歯寄せ過程を決定することもできる。
図5の動的トルクの段階(2)、すなわち、駆動歯の歯寄せ段階について、t
13時間間隔において、t
13時間とT
13トルクを制御することによって、この段階の運転状態を決定することができる。好ましい解決策において、歯寄せ時間変数t
12とt
23を決定することによって歯寄せ過程を制御することができ、
図16に示すように、
図16は、本願の実施例により提供されるt
12とt
23によってt
13を決定する概略図であり、
図16には、時間変数t
12とt
23が決定されると、歯寄せ制御の合計時間t
13時間も決定されたものであり、歯寄せ時点を決定するプロセスは、
図17を参照することができる。
【0137】
図17は、本願の実施例により提供される歯寄せ時点決定の概略図であり、
図17には、t
12又はt
23について、MAXは、運転状態が最も敏感な状態である場合、すなわちA=1である場合の歯寄せ時点に対応する時間パラメータを示すためのものであり、MINは、運転状態が最も鈍い状態である場合、すなわちA=0である場合の歯寄せ時点に対応する時間パラメータを示すためのものであり、ACTは、運転状態が最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態にある場合、すなわち0<A<1である場合の歯寄せ時点に対応する時間パラメータを示すためのものである。MAXとMINは予め設定された値である。
【0138】
上記の解決策において、第3の数値は0であってもよく、第4の数値は1であってもよく、第2の目標数値は0と1との間の任意の数値であってもよい。消費者から入力された運転状態に応じて歯寄せ時点をリアルタイムに計算することによって、歯寄せ時点に応じてモータの出力トルクを決定し駆動歯の歯寄せ動作の完了を制御することができるため、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0139】
1つの実施例では、第1の時点、第2の時点、及び第2の目標数値に従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定するステップは、第2の目標数値と第2の時点との第5の積を決定するステップと、予め設定された値と第2の目標数値との第2の目標差を決定して、第2の目標差と第1の時点との第6の積を決定するステップと、第5の積と第6の積との和を目標歯寄せ時点として決定するステップと、を含む。
【0140】
当該解決策では、0<A<1の場合に、歯寄せ時点t_ACTは、
t_ACT=A*t_MAX+(1-A)*t_MIN
または
t_ACT=A*K*t_MAX+(1-A)*t_MIN
のように示され得る。
【0141】
ここで、Aは、第2の目標数値を示すためのものであり、当該第2の目標数値は0と1との間の任意の数値であってもよく、t_MAXは、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合の歯寄せ時点に対応する時間パラメータ、すなわち第2の時点を示すためのものであり、t_MINは、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合の歯寄せ時点に対応する時間パラメータ、すなわち第1の時点を示すためのものであり、Kは運転状態嗜好係数を示すために使用することができ、予め設定された値は1であってもよい。
【0142】
上記の解決策において、消費者から入力された運転状態に応じて歯寄せ時点をリアルタイムに計算することによって、歯寄せ時点に応じてモータの出力トルクを決定し駆動歯の歯寄せ動作の完了を制御することができるため、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0143】
1つの実施例では、運転状態を調整する調整操作は、仮想摺動アセンブリを第1の摺動領域において摺動操作し、仮想摺動アセンブリは電動車表示スクリーンに表示されるアセンブリであり、第1の摺動領域は表示スクリーンにおける予め設定された領域であり、第1の摺動領域における仮想摺動アセンブリの異なる位置が、異なる運転状態を示している操作、実物の摺動装置を第2の摺動領域において摺動操作し、実物の摺動装置は電動車に設けられた装置であり、第2の摺動領域は電動車に設けられた予め設定された領域であり、第2の摺動領域における実物の摺動装置の異なる位置が、異なる運転状態を示している操作、予め設定された調整可能な選択肢を選択操作し、調整可能な選択肢は、表示スクリーンに表示される仮想ボタン及び/又は電動車に設けられた実物のボタンを含み、異なる調整可能な選択肢が、異なる運転状態を示している操作のうちの少なくとも1つを含む。
【0144】
当該解決策では、操作コンポーネントは、車両における、対話式インタフェースを備える表示スクリーンであってもよく、当該表示スクリーンに仮想摺動アセンブリを設けることができ、当該仮想摺動アセンブリは仮想スライダーであってもよく、且つ、表示スクリーンには、仮想スライダーの第1の摺動領域が設けられており、第1の摺動領域の一方側は、活発(すなわち敏感)な運転状態を示し、その反対側は穏やかな(すなわち鈍い)運転状態を示し、仮想スライダーは、第1の摺動領域において摺動することができ、第1の摺動領域における仮想スライダーの滞在位置が異なることは、異なる運転状態を示すためのものである。具体的には、
図18に示すように、予め設定された運転状態に対応するボタンコントローラを表示スクリーンに予め複数設けてもよい。
【0145】
図18は、本願の実施例により提供される表示スクリーンにおける仮想スライダー摺動の概略図であり、
図18には、表示スクリーンには、第1の摺動領域1801、仮想スライダー1802、第1のボタン1803、第2のボタン1804、及び第3のボタン1805が設けられており、第1の摺動領域1801の最も左側のMINは、最も穏やかな運転状態を示し、最も右側のMAXは、最も活発な運転状態を示し、消費者は、第1の摺動領域1801を摺動するように仮想スライダー1802を制御することによって、運転状態を調整することができる。表示スクリーンには、さらに、ボタン1803~1805が設けられており、3つのボタンはそれぞれ、予め設定された異なる運転状態に対応し、消費者は、3つのボタンを直接に操作することによって対応する運転状態に調整することができる。
【0146】
選択的には、表示スクリーンには、プラスボタンとマイナスボタン、上矢印、下矢印、左矢印、及び右矢印ボタンをさらに設けてもよく、消費者は、これらのボタンを操作することによって仮想スライダーの位置を調整する。
【0147】
当該解決策では、表示スクリーンには、第1のボタン、第2のボタン、第3のボタンなどの複数の調整可能な選択肢をさらに設けてもよく、調整可能な選択肢を選択することによって、第1の摺動領域の対応する位置に直接に調整することができる。
【0148】
選択的には、第1の摺動領域において、複数の記憶設定を設けてもよく、各記憶設定には、消費者が選択したことがある運転状態をマークするために、対応する仮想スライダーの位置を記憶することができる。消費者が記憶設定を選択したとき、当該記憶設定の対応するスライダー位置に仮想スライダーを直接に調整することができる。
【0149】
選択的には、仮想スライダーが第1の摺動領域の特定の位置に滞在しているとき、または消費者が特定の予め設定された運転状態に対応するボタンを選択したとき、または消費者が特定の記憶設定を選択したとき、操作コンポーネントは、このときの仮想スライダーの位置をデジタル信号に転化することができる。当該デジタル信号は、ローカルエリアネットワーク(LIN)、コントローラエリアネットワーク(Controller Area Network、CANとして略称)、イーサネット、ブルートゥース(登録商標)などで次段階の処理ユニットに伝達することができ、前記デジタル信号は、ある程度エンコード又はデコードされた後、その時の運転状態を示すデジタル量に解析されることができ、または、ハードワイヤで次段階の処理ユニットに伝達して、電圧または電流または電気抵抗またはデューティ比の大きさでもって現在の運転状態を示すこともできる。
【0150】
当該解決策では、操作コンポーネントは、車両に配置された機械的操作領域であってもよく、当該機械的操作領域には、機械的スライダー及び対応する第2の摺動領域を含む、実物の摺動装置が設けられている。また、複数の予め設定された運転状態を示すために、複数の調整可能な選択肢に対応する機械的ボタンを設けてもよい。
【0151】
上記の解決策において、消費者は、自分の好みや習慣に合わせて、許される最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態から車両の運転状態を選択することができるため、車両の運転状態が消費者の運転習慣によりよくマッチされたものとなり、消費者の運転体験感を向上させることができる。
【0152】
1つの実施例では、調整操作が、予め設定された調整可能な選択肢を選択操作するという操作である場合に、調整可能な選択肢は、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域における予め設定された位置に対応する。
【0153】
当該解決策では、表示スクリーン又は機械的操作領域において複数の調整可能な選択肢を設けた場合に、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域に対するボタンの位置、ボタンの色、ボタンと第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域との間の線のつながりによって、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域の対応する位置に位置していることを示すことができ、消費者がこれらのボタンを操作すると、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域における仮想スライダーを対応する位置に直接に調整することができる。
【0154】
上記の解決策において、消費者は、自分の好みや習慣に合わせて、許される最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態から車両の運転状態を選択することができるため、車両の運転状態が消費者の運転習慣によりよくマッチされたものとなり、消費者の運転体験感を向上させることができる。
【0155】
1つの実施例では、出力トルクを決定するステップは、調整操作に応答し、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域の目標位置に対応する位置信号を取得するステップであって、位置信号は、電動車の異なる運転状態を異なる数値で示している、ステップと、位置信号が第5の数値である場合に対応する第6のトルク、及びデジタル信号が第6の数値である場合に対応する第7のトルクを決定するステップと、位置信号が第3の目標数値である場合に、第6のトルク、第7のトルク、及び第3の目標数値に従い、出力トルクを決定するステップと、を含み、第5の数値は第6の数値よりも小さく、第3の目標数値は第5の数値よりも大きいが第6の数値よりも小さく、第6のトルクは、電動車の運転状態に対応する感度が最も低い時点での対応するトルクであり、第7のトルクは、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い時点での対応するトルクである。
【0156】
当該解決策では、第1の摺動領域における仮想スライダーの位置又は第2の摺動領域における機械的スライダーの位置に応じて、出力トルクを決定することもできる。
【0157】
具体的には、
図19に示すように、操作コンポーネント(表示スクリーン又は機械的操作領域であってもよい)において、複数の調整可能な選択肢を設けることによって運転状態を調整することができる。
図19は、本願の実施例により提供される複数の調整可能な選択肢の概略図であり、
図19には、4つの調整可能な選択肢を例にして、1901~1904はそれぞれ、4つの異なる調整可能な選択肢を示し、各調整可能な選択肢に対応するスライダー(
図19においては1905~1908として示されているが、仮想スライダー又は機械的スライダーであってもよい)の摺動領域(
図19においては1909~1912として示されており、仮想スライダーは第1の摺動領域に対応し、機械的スライダーは第2の摺動領域に対応する)における位置は、異なる運転状態を示すように、異なってもよい。操作コンポーネントは、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域の目標位置に対応する位置信号を取得することができる。
【0158】
上記の解決策において、確認モジュールが操作コンポーネントから伝達された位置信号を受信した後、位置信号は確認モジュールにおいて数値で表示されることができ、例えば、位置信号は0と1との間の任意の数値であってもよく、位置信号がAである場合、
A=0である場合には、運転状態が最も鈍い状態にある場合の位置信号を示すためのものであり、
A=1である場合には、運転状態が最も敏感な状態にある場合の位置信号を示すためのものであり、
0<A<1である場合には、運転状態が最も鈍い状態と最も敏感な状態との間の状態にある場合の位置信号を示すためのものである。
【0159】
当該解決策では、第5の数値は0であってもよく、第6の数値は1であってもよく、第3の目標数値は0と1との間の任意の数値であってもよく、位置信号が第5の数値である場合に対応する第6のトルク、及びデジタル信号が第6の数値である場合に対応する第7のトルクを決定して、第3の目標数値に基づき、出力トルクを算出することができる。
【0160】
選択的には、配置され得る調整可能な選択肢は、定常状態最大トルク、定常状態最小トルク、トルク上り勾配、トルク下り勾配、歯寄せ時間、歯寄せトルクなどを含むがこれらに限定されず、且つ、2つ又は複数の調整可能な選択肢を関連付けたり組み合わせたりすることができ、すなわち、1つの調整可能な選択肢を調整すると、関連付けられている調整可能な選択肢を一同に調整することができる。
【0161】
上記の解決策において、消費者から入力された運転状態を摺動領域における対応する位置信号に変換し、そして当該位置信号を用いて出力トルクをリアルタイムに計算することができるため、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0162】
1つの実施例では、第6のトルク、第7のトルク、及び第3の目標数値に従い、出力トルクを決定するステップは、第3の目標数値と第7のトルクとの第7の積を決定するステップと、予め設定された値と第3の目標数値との第3の目標差を決定して、第3の目標差と第6のトルクとの第8の積を決定するステップと、第7の積と第8の積との和を出力トルクとして決定するステップと、を含む。
【0163】
当該解決策では、位置信号を用いてトルクを決定することができると、このとき、0<A<1である場合に、出力トルクT_ACTは、
T_ACT=A*T_MAX+(1-A)*T_MIN
または
T_ACT=A*T_MAX+(1-A)*T_MIN
のように示され得る。
【0164】
ここで、Aは、第3の目標数値を示すためのものであり、当該第3の目標数値は0と1との間の任意の数値であってもよく、T_MAXは、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合の位置信号に対応するトルク、すなわち第7のトルクを示すためのものであり、T_MINは、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合の位置信号に対応するトルク、すなわち第6のトルクを示すためのものであり、Kは運転状態嗜好係数を示すために使用されることができ、予め設定された値は1であってもよい。
【0165】
選択的には、位置信号を用いて歯寄せ時点を決定することもでき、このとき、0<A<1である場合に、歯寄せ時点t_ACTは、
t_ACT=A*t_MAX+(1-A)*t_MIN
または
t_ACT=A*K*t_MAX+(1-A)*t_MIN
のように示され得る。
【0166】
ここで、Aは、第3の目標数値を示すためのものであり、当該第3の目標数値は0と1との間の任意の数値であってもよく、t_MAXは、運転状態が最も敏感な状態にある場合、すなわちA=1である場合の位置信号に対応する歯寄せ時点を示すためのものであり、t_MINは、運転状態が最も鈍い状態にある場合、すなわちA=0である場合の位置信号に対応する歯寄せ時点を示すためのものであり、Kは運転状態嗜好係数を示すために使用されることができ、予め設定された値は1であってもよい。
【0167】
上記の解決策において、消費者から入力された運転状態を摺動領域における対応する位置信号に変換し、そして当該位置信号を用いて出力トルク又は歯寄せ時点をリアルタイムに計算することができるため、研究開発期間を短縮させ、研究開発コストを低減することができる。
【0168】
全体的には、本願により提供される技術的解決手段は、電動車の運転性能の最適化を達成することができるだけでなく、慣性衝撃による騒音や衝撃をなくすこともできる技術的手段である。
【0169】
本願は、電動車のモータ制御装置をさらに提供する。
図20は、本願の実施例により提供される電動車のモータ制御装置の構造概略図であり、
図20に示すように、当該電動車のモータ制御装置2000は、検出モジュール2001、決定モジュール2002、処理モジュール2003、及び制御モジュール2004を含み、
検出モジュール2001は、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出することに用いられ、
決定モジュール2002は、相対変形量が第1のしきい値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差を決定することに用いられ、相対変形量が第1のしきい値であることは、駆動歯が伝動システムの被動歯から離脱開始することを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯の被動歯に対する離脱時点での駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が離脱時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であり、
処理モジュール2003は、第1の速度差に従い、モータの出力トルクを決定することに用いられ、
制御モジュール2004は、出力トルクに従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ動作を制御することに用いられる。
【0170】
選択的には、処理モジュール2003は、第1の速度差に従ってモータの出力トルクを決定するとき、具体的には、第1の速度差と第1の時間長との積を第1の積として決定し、第1の時間長は、離脱時点から駆動歯の被動歯に対する接触時点までの持続時間であること、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクを含むと決定することに用いられ、第1のトルクと第2のトルクは、互いに反対方向であり、第1のトルクは、離脱時点からモータの加速状態と減速状態の変換時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、第2のトルクは、変換時点から接触時点までの時間間隔において必要とされるトルクである。
【0171】
選択的には、当該電動車のモータ制御装置2000は、第3の決定モジュール(図示しない)をさらに含むことができ、当該第3の決定モジュールは、具体的には、変換時点において、予め設定されたバックラッシ値、第1の速度差、及び第1の時間長によって、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差を決定し、第2の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が変換時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であること、第2の速度差と第2の車輪端の換算回転速度に従い、第2の駆動歯の回転速度を決定し、第2の駆動歯の回転速度は、変換時点での駆動歯の回転速度であること、第2の駆動歯の回転速度、第1の駆動歯の回転速度、離脱時点と変換時点の持続時間、及び第2の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に従い、第1のトルクを決定すること、第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、変換時点と接触時点の持続時間、及び第3の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に従い、第2のトルクを決定し、第3の駆動歯の回転速度は、接触時点での駆動歯の回転速度であることによって、第1のトルクと第2のトルクを決定することに使用されることができる。
【0172】
選択的には、処理モジュール2003は、第1の速度差に従ってモータの出力トルクを決定するとき、具体的には、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、第1の速度差と第2の時間長との積を第2の積として決定し、第2の時間長は、離脱時点から変換時点までの持続時間であること、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクを含むと決定することにさらに用いられ、第1のトルクと第2のトルクは、同じ方向である。
【0173】
選択的には、処理モジュール2003は、第1の速度差に従ってモータの出力トルクを決定するとき、具体的には、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、目標時点において、第3の車輪端の換算回転速度を決定し、第3の車輪端の換算回転速度は、電動車の車輪端の回転速度が目標時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であり、目標時点は、第2の時間長内に駆動歯が被動歯に再び接触した時点であること、第3の車輪端の換算回転速度、第1の駆動歯の回転速度、及び離脱時点と目標時点の持続時間に従い、第3のトルクを決定し、第3のトルクは、離脱時点から目標時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、出力トルクは第3のトルクを含むことにさらに用いられる。
【0174】
選択的には、検出モジュール2001は、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出するとき、具体的には、モータの出力トルクが変化したと検出されたとき、現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差を決定すること、第3の速度差に従い、駆動歯の被動歯に対する相対変位を決定すること、相対変位に従い、相対変形量を決定することにさらに使用され得る。
【0175】
選択的には、処理モジュール2003は、モータの出力トルクを決定するとき、具体的には、運転状態を調整する調整操作に応答し、調整された目標運転状態に対応する運転状態情報を取得すること、運転状態情報を変換処理して、デジタル信号を得ること、デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得ること、トルク信号に従い、出力トルクを決定することにさらに用いられる。
【0176】
選択的には、デジタル信号は、電動車の異なる運転状態を異なる数値で示しており、処理モジュール2003は、デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得るとき、具体的には、デジタル信号が第1の数値である場合に、トルク信号が第1の予め設定された信号であると決定すること、デジタル信号が第2の数値である場合に、トルク信号が第2の予め設定された信号であると決定すること、デジタル信号が第1の目標数値である場合に、第1の予め設定された信号、第2の予め設定された信号、及び第1の目標数値に従い、トルク信号を目標信号として決定することに用いられ、第1の数値は第2の数値よりも小さく、第1の目標数値は第1の数値よりも大きいが第2の数値よりも小さく、第1の予め設定された信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も低いときのトルク信号であり、第2の予め設定された信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高いときのトルク信号であり、目標信号は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い感度と最も低い感度との間にあるときのトルク信号である。
【0177】
選択的には、トルク信号が目標信号である場合に、処理モジュール2003は、トルク信号に従い、出力トルクを決定するとき、具体的には、第1の予め設定された信号に対応する第4のトルク、第2の予め設定された信号に対応する第5のトルクを取得すること、第1の目標数値と第5のトルクとの第3の積を決定すること、予め設定された値と第1の目標数値との第1の目標差を決定して、第1の目標差と第4のトルクとの第4の積を決定すること、第3の積と第4の積との和を出力トルクとして決定することに用いられる。
【0178】
選択的には、処理モジュール2003は、第1の目標数値と第5のトルクとの第3の積を決定するとき、具体的には、運転状態嗜好係数を示すための予め設定された係数を取得すること、第1の目標数値と予め設定された係数と第5のトルクとの積を第3の積として決定することに用いられる。
【0179】
選択的には、デジタル信号は、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の異なる歯寄せ時点を異なる数値で示しており、処理モジュール2003は、デジタル信号が第3の数値である場合に対応する第1の時点、及びデジタル信号が第4の数値である場合に対応する第2の時点を決定すること、デジタル信号が第2の目標数値である場合に、第1の時点、第2の時点、及び第2の目標数値に従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定することにさらに用いられ、第3の数値は第4の数値よりも小さく、第2の目標数値は第3の数値よりも大きいが第4の数値よりも小さく、第1の時点は、電動車の運転状態に対応する感度が最も低い時点であり、第2の時点は、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い時点である。
【0180】
選択的には、処理モジュール2003は、第1の時点、第2の時点、及び第2の目標数値に従い、駆動歯の被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定するとき、具体的には、第2の目標数値と第2の時点との第5の積を決定すること、予め設定された値と第2の目標数値との第2の目標差を決定して、第2の目標差と第1の時点との第6の積を決定すること、第5の積と第6の積との和を目標歯寄せ時点として決定することに用いられる。
【0181】
選択的には、運転状態を調整する調整操作は、仮想摺動アセンブリを第1の摺動領域において摺動操作し、仮想摺動アセンブリは電動車表示スクリーンに表示されるアセンブリであり、第1の摺動領域は表示スクリーンにおける予め設定された領域であり、第1の摺動領域における仮想摺動アセンブリの異なる位置が、異なる運転状態を示している操作、実物の摺動装置を第2の摺動領域において摺動操作し、実物の摺動装置は電動車に設けられた装置であり、第2の摺動領域は電動車に設けられた予め設定された領域であり、第2の摺動領域における実物の摺動装置の異なる位置が、異なる運転状態を示している操作、及び、予め設定された調整可能な選択肢を選択操作し、調整可能な選択肢は、表示スクリーンに表示される仮想ボタン及び/又は電動車に設けられた実物のボタンを含み、異なる調整可能な選択肢が、異なる運転状態を示している操作のうちの少なくとも1つを含む。
【0182】
選択的には、調整操作が、予め設定された調整可能な選択肢を選択操作するという操作である場合に、調整可能な選択肢は、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域における予め設定された位置に対応する。
【0183】
選択的には、処理モジュール2003は、モータの出力トルクを決定するとき、具体的には、調整操作に応答し、第1の摺動領域及び/又は第2の摺動領域の目標位置に対応する位置信号を取得し、位置信号は、電動車の異なる運転状態を異なる数値で示していること、位置信号が第5の数値である場合に対応する第6のトルク、及びデジタル信号が第6の数値である場合に対応する第7のトルクを決定すること、位置信号が第3の目標数値である場合に、第6のトルク、第7のトルク、及び第3の目標数値に従い、出力トルクを決定することにさらに用いられ、第5の数値は第6の数値よりも小さく、第3の目標数値は第5の数値よりも大きいが第6の数値よりも小さく、第6のトルクは、電動車の運転状態に対応する感度が最も低い時点での対応するトルクであり、第7のトルクは、電動車の運転状態に対応する感度が最も高い時点での対応するトルクである。
【0184】
選択的には、処理モジュール2003は、第6のトルク、第7のトルク、及び第3の目標数値に従い、出力トルクを決定するとき、具体的には、第3の目標数値と第7のトルクとの第7の積を決定すること、予め設定された値と第3の目標数値との第3の目標差を決定して、第3の目標差と第6のトルクとの第8の積を決定すること、第7の積と第8の積との和を出力トルクとして決定することに用いられる。
【0185】
本実施例により提供される電動車のモータ制御装置は、前述した方法の実施例における電動車のモータ制御方法に係る技術的解決手段を実行するためのものであり、その実装原理及び技術的効果が類似するため、ここで繰り返して説明しない。
【0186】
本願の実施例は、電動車をさらに提供する。
図21は、一例示的実施例に基づいて示されている電動車の構造概略図である。
図21に示すように、当該電動車2100は、
プロセッサ2111、メモリ2112、及びインタラクションインタフェース2113を含み、
プロセッサ2111は、メモリ2112とインタラクションインタフェース2113に接続されており、メモリ2112は、プロセッサ2111により実行可能なコンピュータ実行命令を記憶するためのものであり、プロセッサ2111は、コンピュータ実行可能な命令を実行することによって前述した電動車のモータ制御方法に係る技術的解決手段を実行するように構成されており、インタラクションインタフェース2113は、プロセッサ2111と周辺インタフェースモジュールとの間のインタフェースを提供する。
【0187】
選択的には、メモリ2112は、独立していてもよいし、プロセッサ2111と集積されて配置されてもよい。
【0188】
選択的には、メモリ2112は、プロセッサ2111から独立したデバイスである場合に、電動車2100は上記のデバイスを接続するためのバスをさらに含むことができる。
【0189】
選択的には、メモリは、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAMとして略称)、読み取り専用メモリ(Read Only Memory、ROMとして略称)、プログラマブル読み取り専用メモリ(Programmable Read-Only Memory、PROMとして略称)、消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(Erasable Programmable Read-Only Memory、EPROMとして略称)、電気的消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(Electric Erasable Programmable Read-Only Memory、EEPROMとして略称)などであってもよいが、これらに限定されない。メモリはプログラムを記憶するためのものであり、プロセッサは、実行命令を受信した後、プログラムを実行する。さらに、上記のメモリにおけるソフトウェアプログラムとモジュールは、操作システムをさらに含むことができ、当該操作システムは、システムタスク管理(例えば、メモリ管理、記憶デバイス制御、電源管理など)のための様々なソフトウェアアセンブリ及び/又はドライバを含むことができ、他のソフトウェアアセンブリの実行環境を提供するために様々なハードウェア又はソフトウェアアセンブリと通信することができる。
【0190】
選択的には、プロセッサは、信号の処理能力を有する集積回路チップであってもよい。上記プロセッサは、中央処理装置(Central Processing Unit、CPUとして略称)、ネットワーク処理装置(Network Processor、NPとして略称)などを含む汎用プロセッサであってもよい。本明細書の実施例で開示されている方法、ステップ、及び論理ブロック図を実装又は実行することができる。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよく、または当該プロセッサは、任意の従来のプロセッサなどであってもよい。
【0191】
本願の実施例は、コンピュータ可読記憶媒体をさらに提供し、コンピュータ可読記憶媒体にコンピュータ実行命令が記憶されており、コンピュータ実行命令は、プロセッサにより実行されるとき、前述した方法の実施例により提供される電動車のモータ制御方法に係る技術的解決手段を実現するために用いられる。
【0192】
本願の実施例は、コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品を提供し、コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されるとき、方法の実施例により提供される電動車のモータ制御方法に係る技術的解決手段を実現する。
【0193】
当業者は、上述の各方法の実施例を実施するステップのすべて又は一部は、プログラム命令に関連するハードウェアによって実行され得ることを理解するであろう。前述したプログラムはコンピュータ可読記憶媒体に記憶され得る。当該プログラムは、実行時に、上述の各方法の実施例を含むステップを実行する。一方、前述した記憶媒体は、ROM、RAM、磁気ディスク、光ディスクなど、プログラムコードを記憶可能な様々な媒体を含む。
【0194】
最後に説明すべきものとして、以上の各実施例は、本願の技術的解決手段を説明するためのものであって、これを制限するものではなく、前述した各実施例を参照しながら本願を詳細に説明しているが、当業者であれば、依然として前述した各実施例に記載の技術的解決手段を修正するか、又はそのうちの一部又はすべての技術的特徴に対して等価置換を行うことができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の本質を本願の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱しないと理解すべきである。
【0195】
本願は、2022年07月28日に中国国家知的産権局に提出された、優先権番号がPCT/CN2022/108470であり、発明の名称が「電動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体」である国際特許出願の優先権を主張しており、その内容の全ては、本願に参照によって取り込まれる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出するステップと、
前記相対変形量が第1のしきい値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差を決定するステップであって、前記相対変形量が第1のしきい値であることは、前記駆動歯が前記伝動システムの被動歯から離脱開始することを示すために用いられ、前記第1の駆動歯の回転速度は、前記駆動歯の前記被動歯に対する離脱時点での前記駆動歯の回転速度であり、前記第1の車輪端の換算回転速度は、前記電動車の車輪端の回転速度が前記離脱時点において速度比によって換算されて得られた回転速度である、ステップと、
前記第1の速度差に従い、前記モータの出力トルクを決定するステップと、
前記出力トルクに従い、前記駆動歯の前記被動歯に対する歯寄せ動作を制御するステップと、を含む、ことを特徴とする電動車のモータ制御方法。
【請求項2】
前記第1の速度差に従い、前記モータの出力トルクを決定するステップは、
前記第1の速度差と第1の時間長との積を第1の積として決定するステップであって、前記第1の時間長は、前記離脱時点から前記駆動歯の前記被動歯に対する接触時点までの持続時間である、ステップと、
前記第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、前記出力トルクが第1のトルクと第2のトルクを含むと決定するステップであって、前記第1のトルクと前記第2のトルクは、互いに反対方向であり、前記第1のトルクは、前記離脱時点から前記モータの加速状態と減速状態の変換時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、前記第2のトルクは、前記変換時点から前記接触時点までの時間間隔において必要とされるトルクである、ステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御方法。
【請求項3】
前記第1のトルクと前記第2のトルクは、
前記変換時点において、前記予め設定されたバックラッシ値、前記第1の速度差、及び前記第1の時間長に基づき、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差を決定し、前記第2の車輪端の換算回転速度は、前記電動車の車輪端の回転速度が前記変換時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であること、
前記第2の速度差と前記第2の車輪端の換算回転速度に従い、第2の駆動歯の回転速度を決定し、前記第2の駆動歯の回転速度は前記変換時点での前記駆動歯の回転速度であること、
前記第2の駆動歯の回転速度、前記第1の駆動歯の回転速度、前記離脱時点と前記変換時点の持続時間、及び前記第2の駆動歯の回転速度での前記駆動歯の摺動摩擦力に従い、前記第1のトルクを決定すること、及び
前記第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、前記変換時点と前記接触時点の持続時間、及び前記第3の駆動歯の回転速度での前記駆動歯の摺動摩擦力に従い、前記第2のトルクを決定し、前記第3の駆動歯の回転速度は前記接触時点での前記駆動歯の回転速度であること、によって決定されている、ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御方法。
【請求項4】
前記第1の速度差に従い、前記モータの出力トルクを決定するステップは、
前記第1の積が前記予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、前記第1の速度差と第2の時間長との積を第2の積として決定するステップであって、前記第2の時間長は前記離脱時点から前記変換時点までの持続時間である、ステップと、
前記第2の積が前記予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合、前記出力トルクが前記第1のトルクと前記第2のトルクを含むと決定するステップであって、前記第1のトルクと前記第2のトルクは、同じ方向である、ステップと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御方法。
【請求項5】
前記第1の速度差に従い、前記モータの出力トルクを決定するステップは、
前記第2の積が前記予め設定されたバックラッシ値よりも大きい又は等しい場合、目標時点において、第3の車輪端の換算回転速度を決定するステップであって、前記第3の車輪端の換算回転速度は、前記電動車の車輪端の回転速度が前記目標時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であり、前記目標時点は、前記第2の時間長内に前記駆動歯が前記被動歯に再び接触した時点である、ステップと、
前記第3の車輪端の換算回転速度、前記第1の駆動歯の回転速度、及び前記離脱時点と前記目標時点の持続時間に従い、第3のトルクを決定するステップであって、前記第3のトルクは、前記離脱時点から前記目標時点までの時間間隔において必要とされるトルクであり、前記出力トルクは前記第3のトルクを含む、ステップと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項4に記載のモータ制御方法。
【請求項6】
前記モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を
検出するステップは、
現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差を決定するステップと、
前記第3の速度差に従い、前記駆動歯の前記被動歯に対する相対変位を決定するステップと、
前記相対変位に従い、前記相対変形量を決定するステップと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のモータ制御方法。
【請求項7】
前記モータの出力トルクを決定するステップは、
運転状態を調整する調整操作に応答し、調整された目標運転状態に対応する運転状態情報を取得するステップと、
前記運転状態情報を変換処理して、デジタル信号を得るステップと、
前記デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得るステップと、
前記トルク信号に従い、前記出力トルクを決定するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御方法。
【請求項8】
デジタル信号は、前記電動車の異なる運転状態を異なる数値で示しており、前記デジタル信号を分析処理して、トルク信号を得るステップは、
前記デジタル信号が第1の数値である場合に、前記トルク信号が第1の予め設定された信号であると決定するステップと、
前記デジタル信号が第2の数値である場合に、前記トルク信号が第2の予め設定された信号であると決定するステップと、
前記デジタル信号が第1の目標数値である場合に、前記第1の予め設定された信号、前記第2の予め設定された信号、及び前記第1の目標数値に従い、前記トルク信号を目標信号として決定するステップと、を含み、
前記第1の数値は前記第2の数値よりも小さく、前記第1の目標数値は前記第1の数値よりも大きいが前記第2の数値よりも小さく、前記第1の予め設定された信号は、前記電動車の運転状態に対応する感度が最も低いときのトルク信号であり、前記第2の予め設定された信号は、前記電動車の運転状態に対応する感度が最も高いときのトルク信号であり、前記目標信号は、前記電動車の運転状態に対応する感度が最も高い感度と最も低い感度との間にあるときのトルク信号である、ことを特徴とする請求項7に記載のモータ制御方法。
【請求項9】
前記トルク信号が目標信号である場合に、前記トルク信号に従い、前記出力トルクを決定するステップは、
前記第1の予め設定された信号に対応する第4のトルク、前記第2の予め設定された信号に対応する第5のトルクを取得するステップと、
前記第1の目標数値と前記第5のトルクとの第3の積を決定するステップと、
予め設定された値と前記第1の目標数値との第1の目標差を決定して、前記第1の目標差と前記第4のトルクとの第4の積を決定するステップと、
前記第3の積と前記第4の積との和を前記出力トルクとして決定するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項8に記載のモータ制御方法。
【請求項10】
前記第1の目標数値と前記第5のトルクとの第3の積を決定するステップは、
運転状態嗜好係数を示すための予め設定された係数を取得するステップと、
前記第1の目標数値と前記予め設定された係数と前記第5のトルクとの積を、前記第3の積として決定するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項9に記載のモータ制御方法。
【請求項11】
デジタル信号は、前記駆動歯の前記被動歯に対する歯寄せ中の異なる歯寄せ時点を異なる数値で示しており、前記モータ制御方法は、
前記デジタル信号が第3の数値である場合に対応する第1の時点、及び前記デジタル信号が第4の数値である場合に対応する第2の時点を決定するステップと、
前記デジタル信号が第2の目標数値である場合に、前記第1の時点、前記第2の時点、及び前記第2の目標数値に従い、前記駆動歯の前記被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定するステップと、をさらに含み、
前記第3の数値は前記第4の数値よりも小さく、前記第2の目標数値は前記第3の数値よりも大きいが前記第4の数値よりも小さく、前記第1の時点は、前記電動車の運転状態に対応する感度が最も低い時点であり、前記第2の時点は、前記電動車の運転状態に対応する感度が最も高い時点である、ことを特徴とする請求項7に記載のモータ制御方法。
【請求項12】
前記第1の時点、前記第2の時点、及び前記第2の目標数値に従い、前記駆動歯の前記被動歯に対する歯寄せ中の目標歯寄せ時点を決定するステップは、
前記第2の目標数値と前記第2の時点との第5の積を決定するステップと、
予め設定された値と前記第2の目標数値との第2の目標差を決定して、前記第2の目標差と前記第1の時点との第6の積を決定するステップと、
前記第5の積と前記第6の積との和を前記目標歯寄せ時点として決定するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項11に記載のモータ制御方法。
【請求項13】
運転状態を調整する調整操作は、
仮想摺動アセンブリを第1の摺動領域において摺動操作し、前記仮想摺動アセンブリは前記電動車表示スクリーンに表示されるアセンブリであり、前記第1の摺動領域は前記表示スクリーンにおける予め設定された領域であり、前記第1の摺動領域における前記仮想摺動アセンブリの異なる位置が、異なる運転状態を示している、操作、
実物の摺動装置を第2の摺動領域において摺動操作し、前記実物の摺動装置は前記電動車に設けられた装置であり、前記第2の摺動領域は前記電動車に設けられた予め設定された領域であり、前記第2の摺動領域における前記実物の摺動装置の異なる位置が、異なる運転状態を示している、操作、及び
予め設定された調整可能な選択肢を選択操作し、前記調整可能な選択肢は、前記表示スクリーンに表示される仮想ボタン及び/又は前記電動車に設けられた実物のボタンを含み、異なる調整可能な選択肢が、異なる運転状態を示している、操作、
のうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項7~12のいずれか1項に記載のモータ制御方法。
【請求項14】
前記調整操作が、予め設定された調整可能な選択肢を選択操作することである場合に、前記調整可能な選択肢は、前記第1の摺動領域及び/又は前記第2の摺動領域における予め設定された位置に対応する、ことを特徴とする請求項13に記載のモータ制御方法。
【請求項15】
前記出力トルクを決定するステップは、
前記調整操作に応答し、前記第1の摺動領域及び/又は前記第2の摺動領域の目標位置に対応する位置信号を取得するステップであって、前記位置信号は、前記電動車の異なる運転状態を異なる数値で示している、ステップと、
前記位置信号が第5の数値である場合に対応する第6のトルク、及び前記デジタル信号が第6の数値である場合に対応する第7のトルクを決定するステップと、
前記位置信号が第3の目標数値である場合に、前記第6のトルク、前記第7のトルク、及び前記第3の目標数値に従い、前記出力トルクを決定するステップと、を含み、
前記第5の数値は前記第6の数値よりも小さく、前記第3の目標数値は前記第5の数値よりも大きいが前記第6の数値よりも小さく、前記第6のトルクは、前記電動車の運転状態に対応する感度が最も低い時点
での対応するトルクであり、前記第7のトルクは、前記電動車の運転状態に対応する感度が最も高い時点
での対応するトルクである、ことを特徴とする請求項14に記載のモータ制御方法。
【請求項16】
前記第6のトルク、前記第7のトルク、及び前記第3の目標数値に従い、前記出力トルクを決定するステップは、
前記第3の目標数値と前記第7のトルクとの第7の積を決定するステップと、
予め設定された値と前記第3の目標数値との第3の目標差を決定して、前記第3の目標差と前記第6のトルクとの第8の積を決定するステップと、
前記第7の積と前記第8の積との和を前記出力トルクとして決定するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項15に記載のモータ制御方法。
【請求項17】
検出モジュール、決定モジュール、処理モジュール、及び制御モジュールを含む電動車のモータ制御装置であって、
前記検出モジュールは、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動システムの相対変形量を検出することに用いられ、
前記決定モジュールは、前記相対変形量が第1のしきい値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差を決定することに用いられ、前記相対変形量が第1のしきい値であることは、前記駆動歯が前記伝動システムの被動歯から離脱開始することを示すために用いられ、前記第1の駆動歯の回転速度は、前記駆動歯の前記被動歯に対する離脱時点での前記駆動歯の回転速度であり、前記第1の車輪端の換算回転速度は、前記電動車の車輪端の回転速度が前記離脱時点において速度比によって換算されて得られた回転速度であり、
前記処理モジュールは、前記第1の速度差に従い、前記モータの出力トルクを決定することに用いられ、
前記制御モジュールは、前記出力トルクに従い、前記駆動歯の前記被動歯に対する歯寄せ動作を制御することに用いられる、ことを特徴とする電動車のモータ制御装置。
【請求項18】
プロセッサ、及び前記プロセッサと通信可能に接続されているメモリを含む電動車であって、
前記メモリはコンピュータ実行命令を記憶し、
前記プロセッサは、前記メモリに記憶されているコンピュータ実行命令を実行して、請求項1~
5のいずれか1項に記載の電動車のモータ制御方法を実現する、ことを特徴とする電動車。
【請求項19】
コンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読記憶媒体にコンピュータ実行命令が記憶されており、前記コンピュータ実行命令は、プロセッサにより実行されるとき、請求項1~
5のいずれか1項に記載の電動車のモータ制御方法を実現するために用いられる、ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
コンピュータプログラ
ムであって、前記コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されるとき、請求項1~
5のいずれか1項に記載の電動車のモータ制御方法を実現するために用いられる、ことを特徴とするコンピュータプログラ
ム。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】