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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】自動車の前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20250130BHJP
   B60R 19/18 20060101ALI20250130BHJP
   B60R 19/34 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B62D25/08 C
B60R19/18 J
B60R19/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544732
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-09-25
(86)【国際出願番号】 IB2023050503
(87)【国際公開番号】W WO2023144675
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2022/050720
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タンダン,ガガン
(72)【発明者】
【氏名】デシュパンデ,ニミッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ゴカレ,ナチケト
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB05
3D203BB16
3D203BB18
3D203BB35
3D203CA23
3D203CA24
3D203CA55
3D203CA73
3D203CB04
3D203CB05
3D203DA22
(57)【要約】
上部シェル(11)および下部シェル(12)を備える、自動車用フロントメンバアセンブリ(1)であって、前記上部および下部シェル(11、12)は、それぞれ、右側、左側、および横断部分を備え、前記上部および下部シェルは、前記右側および左側部分の少なくとも上部および下部輪郭(1121、1122、1221、1222、1131、1132、1231、1232)に沿って前記上部および下部シェルを取り付けることによって一緒に組み付けられている、フロントメンバアセンブリ(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部シェル(11)および下部シェル(12)を備える自動車用フロントメンバアセンブリ(1)であって、上部シェル(11)および下部シェル(12)のそれぞれが略長手方向に延在する右側部分(112、122)および左側部分(113、123)を備え、前記右側および左側部分のそれぞれが、前記左側および右側部分の後部に配置された取付点間で略横断方向に延在する横断部分(114、124)によって互いに連結されており、前記上部および下部右側部分(112、122)は、右側中空容積(20)をに共に画定し、前記上部および下部左側部分(113、123)が、左側中空容積(30)を共に画定し、前記右側および左側中空容積(20、30)は、右側および左側部分の前部から、右側および左側部分のそれぞれの横断部分(114、124)との前記右側および左側部分の取付点まで延在し、前記上部右側および左側部分(112、113)は、下部輪郭内側および外側(1121、1122、1131、1132)によって区画されており、前記下部右側および左側部分(122、123)は、上部輪郭内側および外側(1221、1222、1231、1232)によって区画されており、前記上部および下部シェル(11、12)は、前記対応する下部および上部輪郭の少なくとも一部に沿って前記上部および下部シェル(11、12)を取り付けることによって一緒に組み付けられている、フロントメンバアセンブリ(1)。
【請求項2】
前記上部および下部輪郭(1121、1122、1131、1132、1221、1222、1231、1232)は、平坦なフランジであり、前記上部および下部シェル(11、12)が、前記フランジに沿って前記上部および下部シェル(11、12)を取り付けることによって互いに組み付けられている、請求項1に記載のフロントメンバアセンブリ(1)。
【請求項3】
前記上部および下部シェル(11、12)は、それぞれ、単一の金属板を成形することによって出来ている、請求項1または2に記載のフロントメンバアセンブリ(1)。
【請求項4】
前記上部および下部シェル(11、12)は、それぞれ、ホットスタンピングによって単一のテーラード溶接ブランクを成形することによって出来ている、請求項1~3のいずれか一項に記載のフロントメンバアセンブリ(1)。
【請求項5】
前記上部および下部シェル(11、12)は、それぞれ、前記シェル(112、122、113、123)の右側および左側部分の前部部分にわたって延在する変形可能部分と、前記シェル(112、122、113、123)の右側および左側部分の後部部分にわたって、かつ前記シェルの横断部分(114、124)の少なくとも一部にわたって延在する非変形可能部分と、を備え、前記変形可能部分の塑性変形に対する抵抗が、前記非変形可能部分の塑性変形に対する抵抗よりも低い、請求項1~4のいずれか一項に記載のフロントメンバアセンブリ(1)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のフロントメンバアセンブリ(1)を備える自動車。
【請求項7】
前記フロントメンバアセンブリ(1)は、フロントバンパアセンブリ(5)に組み付けられている、請求項6に記載の自動車。
【請求項8】
前記フロントメンバアセンブリ(1)は、ダッシュパネル(6)に組み付けられている、請求項6または7に記載の自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車メーカは、車両の受動的安全性を高め、内燃機関の場合には温室効果ガスの排出を最小限に抑えるために車両の重量を下げ、電動車両の場合には車両の航続距離を増加させる一方で、製作コストを低く抑えかつ生産速度を高く保つという、これまで以上に要求の厳しい要件にさらされている。
【背景技術】
【0002】
フロントメンバおよびダッシュパネル補強材は、前面衝突の場合に乗員の安全に寄与する自動車の重要な構造的コンポーネントを形成する。フロントメンバは、フロントクラッシュボックスを介してバンパビームによって伝達された衝突エネルギーを取り込み、前記エネルギーの一部を吸収して、車両の前部の乗員を保護しかつエネルギーを車両構造の残りの部分に伝達するように作用する。ダッシュパネルクロスメンバは、乗員室内への侵入をさらに防止しかつ車両構造の2つの側部にエネルギーを分配するように作用し、したがって、ダッシュパネルクロスメンバは効率的に連携する。フロントメンバおよびダッシュパネルクロスメンバは、オフセット前面衝突、すなわち車両の前部の一部のみに衝撃が与えられる前面衝突に対処する場合に特に重要である。実際、フロントメンバは車両の側部に配置されており、オフセット衝撃の場合に強く要求されることとなる。このような衝撃は、実際の衝突では頻繁に発生することが知られており、米国道路安全保険協会(IIHS)のスモールオーバーラップ剛性バリア(SORB)衝突などのいくつかの安全性評価試験の対象であり、ここでは、車両は、64.4km/hで移動する剛性バリアの幅のわずか25%の重なりで衝撃が与えられる。
【0003】
さらに、車両の前部エネルギー吸収および侵入防止構造は、前部燃焼機関を有さない自動車両を設計する場合に特に重要である。これは、例えば、電動車両、燃料電池車両、またはエンジンを後部に有する車両の場合である。実際、前部燃焼機関は、前部衝撃の場合にエネルギーの一部を吸収するが、乗員を保護するために荷重経路から外される必要もある。前部燃焼機関が存在しないことにより、前面衝突管理システムを設計する新しい方法が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、非常に高い衝突管理効率を有するフロントメンバアセンブリのための設計および組付方法を提供することである。このような設計は、前部燃焼機関を有さない車両に有利に用いられることができる。本発明の目的はまた、本発明によるフロントメンバアセンブリを有する車両を提供することである。
【0005】
この発明の目的はまた、現在の設計よりも軽量であり、それによって燃焼機関の場合には燃料を節約し、電気エンジン駆動車両の場合には航続距離を増加させるフロントメンバアセンブリを提供することである。
【0006】
さらに、本発明の目的は、車両製作における生産性の向上、複雑さの低減、およびコストの低減という課題に対応することである。実際、この発明は、参照設計よりも少ない部品を有するフロントメンバアセンブリを提供する。本発明の設計は、参照と比較して非常に少ない製造ステップで製作されかつ組み付けられることができる。製作を単純化することに加えて、製作ステップの数を減らすことはまた、製作プロセスの環境フットプリントを低減し、車両を製造するときの全体的なCO2排出量を低減する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、請求項2~4の特徴が、個別に取り込まれるかまたは任意の可能な組合せに従って任意選択的に含む、請求項1に記載のフロントメンバアセンブリを提供することによって達成される。本発明のさらなる目的は、請求項6および7の特徴を任意選択的に含む、請求項5に記載の自動車両を提供することによって達成される。
【0008】
以下の説明および特許請求の範囲において、方向の用語は、搭載された車両の通常の方向に従って定義される。
【0009】
特に、「頂部」、「上」、「上部」、「上方」、「底部」、「下」、「下部」、「下方」などの用語は、車両の仰角方向に従って確立される。「前部」、「後ろ」、「後部」、「前部」、「前方」、後方」などの用語は、車両の長手方向、すなわち直線を辿るときに車両が移動する方向に従って確立される。「左側」、「右側」、「横断」などの用語は、車両の幅に対して平行な向きに従って確立される。「内側」、「外側」という用語は、車両の幅方向に従って理解されるべきであり、「内側」は、車両の中心軸線に最も近く、すなわち車両の内部に最も近く、一方、「外側」は、車両の前記中心軸線からさらに離れて位置付けされており、事実上、車両の外部により近い。「水平」という用語は、長手方向および横断方向を含む平面の向きを指す。「垂直」という用語は、高さ方向を含む任意の向きを指す。
【0010】
以下の図では、向きおよび空間参照はすべて、X、Y、Z座標参照を用いて行われ、Zは車両の仰角方向であり、Xは車両の長手方向であり、Yは車両の横断方向である。参照は、各図に表されている。図が2D平面表現である場合、図のそれ以外の軸線は、確立された慣例に従って、それが読者の方を向いているときは円内のドットによって表され、それが読者から遠ざかる方に向いているときは円内の十字によって表される。
【0011】
「実質的に平行」または「実質的に垂直」とは、平行または垂直方向から15°以下だけ逸脱することができる方向を意味する。
【0012】
鋼板は、平坦な鋼の板を指す。これは、頂面および底面を有し、頂部側および底部側または頂部表面および底部表面とも呼ばれる。前記面間の距離は、板の厚さとして指定される。厚さは、例えばマイクロメータを使用して測定されることができ、そのスピンドルおよびアンビルは、頂面および底面上に配置される。同様に、厚さは形成された部品上で測定されることもできる。
【0013】
部品のまたは部品の一部の平均厚さとは、最初に平坦板から三次元部品に形成された後の部品を構成する材料の全体の平均厚さを意味する。
【0014】
テーラード溶接ブランクは、その異なる領域における部品の性能を最適化し、全体的な部品重量を低減し、かつ全体的な部品コストを低減するために、例えばレーザ溶接によって一緒に、サブブランクとして知られる鋼の複数の板または切出しブランクを一緒に組み付けることによって作製される。テーラード溶接ブランクを形成するサブブランクは、重なりの有無にかかわらず組み付けられることができ、例えば、レーザ突合せ溶接(重なりなし)されることができ、または互いにスポット溶接(重なりあり)されることができる。
【0015】
テーラード溶接ブランクにとは対照的に、モノリシックブランクは、複数のサブブランクが一緒に組み合わされていない、1つの単一のサブブランクからなるブランクを指す。
【0016】
テーラーロールドブランクは、鋼板製作プロセス中の差動圧延によって得られた複数の板厚を有するブランクである。
【0017】
最大引張強度、降伏強度、および伸びは、2009年10月に発行されたISO規格ISO 6892-1に従って測定される。引張試験片が、平坦領域から切り出される。必要に応じて、部品上の利用可能な平坦領域全体に対応するために、小さなサイズの引張試験サンプルが採取される。
【0018】
曲げ角度は、VDA-238曲げ規格に従って測定される。同じ材料の場合、曲げ角度は、厚さに依存する。簡単にするために、この発明の曲げ角度値は、1.5mmの厚さを指す。厚さが1.5mmと異なる場合、以下の計算によって曲げ角度値は1.5mmに正規化される必要があり、式中、α1.5は1.5mmで正規化された曲げ角度であり、tは厚さであり、αtは厚さtに対する曲げ角度である。
α1.5=(αt×√t)/√1.5
【0019】
ホットスタンピングは、鋼のブランク、または鋼のブランクから作製された予め形成された部品を、鋼の微細構造が少なくとも部分的にオーステナイトに変態する温度まで加熱することと、ブランクまたは予め形成された部品を高温でスタンピングすることによって形成することおよび、同時に形成された部品を急冷して非常に高い強度を有する微細構造を得ることと、を伴い、場合によっては熱処理における追加の分割または焼戻しステップを伴う、鋼の形成技術である。
【0020】
マルチステップホットスタンピングプロセスは、少なくとも1つのスタンピングステップを含みかつ300℃を超える高温で実行される少なくとも2つのプロセスステップからなる、特定のタイプのホットスタンピングプロセスである。例えば、マルチステッププロセスは、第1のスタンピング作業および後続の熱間トリミング作業を含むことができ、その結果、ホットスタンピングプロセスの終了時に、完成部品はさらにトリミングされる必要はない。例えば、マルチステッププロセスは、単一のスタンピング作業を用いて実現されることができるものよりも複雑な形状を有する部品を製造するために、いくつかの連続したスタンピングステップを含むことができる。例えば、部品は、例えばトランスファプレスを使用して、マルチステッププロセスにおいて1つの作業から別の作業に自動的に移送される。例えば、部品は同じ工具内に留まり、この工具は、最初のスタンピングおよび後続の工具内トリミング作業など、さまざまな作業を実行することができる多目的工具である。
【0021】
「ボトリング」という用語は、圧縮荷重にさらされる部品、典型的には細長度が高い部品の変形のモードを指し、部品の連続的な局所的座屈変形の結果として生じる一連の連続波を形成することによって、部品が圧縮荷重の機械的エネルギーを漸進的に吸収する。結果として、圧縮荷重の方向に測定された部品の長さは、変形後、前記方向における部品の初期長さよりも短い。換言すれば、部品が制御された座屈によって圧縮荷重に反応したとき、部品は、圧縮荷重がボトルの頂部と底部との間でその上に加えられたプラスチックボトルと同じ方法で、部品自体の上に折り重なる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明によるフロントメンバアセンブリを有する自動車両の斜視図である。
図2】本発明による自動車両の前部部分の斜視図である。
図3】参照設計によるフロントメンバアセンブリの分解斜視図である。
図4】本発明の一実施形態によるフロントメンバアセンブリの分解斜視図である。
図5】本発明による組み付けられたフロントメンバアセンブリの斜視図である。
図6】この発明の特定の実施形態による下部シェルの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
まず、本発明とは無関係に、完全に組み付けられ、搭載されたフロントメンバアセンブリの一般概念を説明する。次に、フロントメンバアセンブリのおよび前記アセンブリを構成する個々の部品の、従来の設計または参照設計が説明される。最後に、本発明による革新的な設計が開示される。
【0024】
図1を参照すると、この発明は、動力車両100のフロントメンバアセンブリ1に焦点を当てている。前記フロントメンバアセンブリ1は、右側および左側フロントメンバ2、3と、1つまたは複数のダッシュパネルクロスメンバ4と、を備える。図2を参照すると、フロントメンバ2、3は、それらの前部において、直接的または間接的に(すなわち、中間接続部品を介して)フロントバンパアセンブリ5に接続されている。前記フロントバンパアセンブリ5は、例えば、フロントバンパビーム51と、右側および左側クラッシュボックス52と、を備える。フロントバンパアセンブリ5は、前面衝突の場合にインパクタに当たる車両の第1の要素である。フロントメンバアセンブリ1は、フロントバンパアセンブリ5から衝突エネルギーを直ちに取り込むように作用するため、前部荷重経路の重要な要素である。
【0025】
ダッシュパネルクロスメンバ4は、ダッシュパネル6に接続されている。フロントメンバ2、3は、それらの後部において、図に表されていない車両長手方向衝突管理システムにさらに接続されている。例えば、フロントメンバ2、3は、後部フロントメンバに接続されており、後部フロントメンバは、典型的にはその前部の部分に二重屈曲形状を有し、車両のフロアパネル8の下に収まるようにその後部の部分がより低い高さで延びることを可能にする。
【0026】
前面衝突中、フロントメンバアセンブリ1は、塑性変形によって衝突エネルギーを部分的に吸収するように作用することとなり、衝突エネルギーを、乗員室内への侵入を回避しながら車両の構造要素の残りの部分に伝達するようにも作用することとなる。
【0027】
例えば、フロントメンバ2、3は、例えば前記フロントメンバの前部の少なくとも一部上の塑性変形によって、例えばボトリングによって衝突エネルギーを部分的に吸収することとなる。例えば、フロントメンバ2、3の後部の部分およびダッシュパネルクロスメンバ4は、変形および侵入に抵抗して車両の乗員を保護し、残りの衝突エネルギーを車両の構造要素の残りの部分に伝達することとなる。
【0028】
車両のさらなる要素は、フロントメンバアセンブリに接続されることができる。例えば、フロントサスペンション要素7をフロントメンバ2、3に接続することは、車両アーキテクチャにおける通常の慣行である。車両のホワイトボディへのフロントサスペンションの接続も安全のための重要な構造的接続および重要な接続であり、フロントメンバアセンブリ1の重要な構造的役割をさらに強化する。
【0029】
図3を参照して、前部アセンブリモジュール1および前記フロントメンバアセンブリを作製する異なるサブ部品の参照設計の一例がここで説明される。参照設計とは、後に説明する本発明の設計とは対照的に、現在の設計慣行による設計を意味する。
【0030】
右側および左側フロントメンバ2、3は、仰角方向および長手方向に対して実質的に平行な平面に沿って方向付けされた垂直フランジに沿って、内側201、301および外側202、302のフロントメンバを組み付けることによって作製されている。前記フランジは、図3の右側フロントメンバ2の場合にのみ明確にするためにラベル付けされており、上部内側フランジ2011は上部外側フランジ2021に組み付けられており、下部内側フランジ2012は下部外側フランジ2022に組み付けられている。
【0031】
参照フロントメンバアセンブリは、衝突の場合にダッシュパネル6を補強するためにダッシュパネル6に取り付けられるように設計された上部および下部ダッシュパネルクロスメンバ401、402をさらに備える。
【0032】
参照フロントメンバアセンブリは、左側および右側フロントメンバ延長部203、303をさらに備え、左側および右側フロントメンバ延長部203、303は、フロントメンバ2、3とフロントメンバの後部の車両構造の残りの部分との間の中間部品である。
【0033】
フロントメンバアセンブリの上述の参照設計は、8つの異なる部品からなり、これらは各々、特定の工具を用いて独立して製作される必要があり、次いで一緒に組み付けられる必要があるという大きな欠点を呈する。参照設計の異なるサブ部品の組付けは、非常に異なる方向に向けられた平面に沿ってサブ部品を取り付けることによって行われる。内側および外側フロントメンバのフランジは、長手方向に、実質的に垂直に方向付けされており、上部および下部ダッシュパネルクロスメンバは、実質的に横断方向に沿ってフロントメンバに組み付けられており、前部レール延長部は、水平横断方向と垂直横断方向との間の傾斜方向に沿って組み付けられている。これらの分岐しているする組付平面により、フロントメンバアセンブリ設計を単純化して部品の数を削減することが不可能になる。
【0034】
製造の複雑さおよび高いランニングコストの欠点に加えて、フロントメンバアセンブリを製作するために多くの異なる部品を使用することも、構造的弱点の原因となり得る。実際、サブ部品は、例えばスポット溶接を用いて一緒に組み付けられることを必要とする。組付点は、組付プロセス自体の影響による構造的弱点となり得る(例えば、溶接の場合は熱影響ゾーンが存在し、これは冶金学的変形を誘発し、溶接部の中または周囲の領域がより柔らかくなり脆弱になる可能性がある)。組付点はまた、組付プロセスが正しく実行されていないときに弱点の原因となる可能性があり、これは、プロセスの不可避の変動、保守問題などにより工業条件で起こり得る。したがって、組付点は、車両の走行寿命の間または事故の場合に亀裂および故障が発生する領域となり得る。
【0035】
本発明者らは、完全に再設計されたフロントメンバアセンブリ1を開発しており、これにより、部品の数を参照設計の8つのサブ部品から2つのサブ部品のみに削減することが可能になる。これは、製作の複雑さおよび組付点における構造的弱点のリスクを低減する。
【0036】
図4および図5を参照すると、本発明によるフロントメンバアセンブリ1は、上部シェル11および下部シェル12を備える。上部シェル11は、右側部分112および左側部分113を備え、その各々は実質的に長手方向に延在する。前記右側および左側部分112、113は、実質的に横断方向に延在し、かつ前記右側および左側部分に前記部分の後部に配置された取付点で取り付けられている、横断部分114によって一緒に連結されている。下部シェル12は、右側部分122および左側部分123を備え、その各々は実質的に長手方向に延在する。前記右側および左側部分122、123は、実質的に横断方向に延在し、かつ前記右側および左側部分に前記部分の後部に配置された取付点で取り付けられている、横断部分124によって一緒に連結されている。
【0037】
前記上部および下部右側部分112、122は、右側中空容積20を一緒に画定する。前記上部および下部左側部分113、123は、左側中空容積30を一緒に画定する。前記右側および左側中空容積20、30は、右側および左側部分の前部から、右側および左側部分のそれぞれの横断部分114、124との前記右側および左側部分の取付点まで延在する。
【0038】
これらの中空容積20、30は、フロントメンバアセンブリが前面衝突エネルギーに耐え、前面衝突エネルギーを塑性変形によって部分的に吸収し、侵入に抵抗し、かつエネルギーを構造の残りの部分に伝達することを可能にする。
【0039】
上部シェル右側部分112は、前記右側部分の内側側部および外側側部上のそれぞれに前記上部シェル右側部分の下部先端にわたって延在する下部輪郭内側および外側1121および1122を備える。この下部輪郭は、例えば、直線または曲線とすることができる。この下部輪郭は、例えば、図4および図5に示すように、フランジの形態をとることができる。同様に、上部シェル左側部分113は、下部輪郭内側および外側1131および1132を備え、下部シェル右側部分122は、上部輪郭内側および外側1221および1222を備え、下部シェル左側部分123は、上部輪郭内側および外側1231および1232を備える。
【0040】
対応する上部および下部シェル輪郭は、フロントメンバアセンブリを組み付けるときに、上部および下部シェル11、12合わせたときに互いに嵌合するように相補的な形状を有する。より具体的には、上部シェル右側部分下部輪郭内側1121は、下部シェル右側部分上部輪郭内側1221と相補的な形状を有し、上部シェル右側部分下部輪郭外側1122は、下部シェル右側部分上部輪郭外側1222と相補的な形状を有し、上部シェル左側部分下部輪郭内側1131は、下部シェル左側部分上部輪郭内側1231と相補的な形状を有し、上部シェル左側部分下部輪郭外側1132は、下部シェル左側部分上部輪郭外側1232と相補的な形状を有する。上部および下部シェルは、前記上部および下部左側および右側内側および外側輪郭の少なくとも一部に沿って上部および下部シェルを一緒に取り付けることによって組み付けられている。
【0041】
上述の設計のおかげで、頂部および底部シェル11、12の2つの部品のみを使用してフロントメンバアセンブリ全体を組み付けることが可能である。これは、製作およびロジスティクスを大幅に簡素化する。それはまた、右側および左側部分の上部および下部輪郭に限定される組付点の量を削減し、それにより、組付けによって誘発される構造的弱点の量を限定し、したがって、より堅牢なフロントメンバアセンブリ1を製作することを可能にする。
【0042】
さらに、本発明によるフロントメンバアセンブリ1は、車両のフロントモジュール全体のための、独立型アセンブリベースとして機能するのによく適合されている。図2を参照すると、例えば、バンパアセンブリ5およびホイールハウス9がフロントメンバアセンブリ1に取り付けられて、独立型のフロントモジュールユニットを形成することができ、これは、次に最終車両組立工場において、ホワイトボディの残りの部分に直接運ばれることができる。フロントモジュールに一体化されることができるさらなる要素は、場合によってはサスペンション要素7である。このような独立型の前部モジュールの製作は、最終車両組立工場における組付シーケンスを大幅に単純化することができる。本発明によるフロントメンバアセンブリは、長手方向および横断方向の両方において完全に剛性を有する一体構造であるため、このタイプの実施に特に適合されている。この完全に剛性の長手方向および横方向構造は、前部モジュールを構成するすべての異なる部品を一緒に結合することを可能にする。さらに、本発明による設計はまた、フロントメンバアセンブリ1内に他の部品との組付領域を容易に設けることを可能にする。
【0043】
以下は、個別にまたは任意の可能な組合せに従って実施されることができる、上述の本発明の特定の実施形態の説明である。
【0044】
特定の実施形態では、上部および下部シェル11、12は、例えばMIG溶接またはMAG溶接による溶接によって、上部および下部シェル11、12のそれぞれの上部および下部輪郭に沿って取り付けられている。
【0045】
図4および図5に表示する特定の実施形態では、右側および左側上部および下部の上部および下部輪郭は、平坦なフランジからなる。有利には、これにより、抵抗スポット溶接によってそれらを接合することが可能になる。また、レーザ溶接、例えばリモートレーザ溶接による、例えば取付機能によく適合された形状を持ちフランジの長さに沿って再現された短いレーザ溶接であるレーザステッチの形成による組付けも可能になる。
【0046】
特定の実施形態では、フロントメンバアセンブリ1は、前面衝突の場合の抵抗をさらに増加させるために、中空容積20、30内にバルクヘッドをさらに備える。バルクヘッドは、一般に、ほぼ水平面内に延在し、かつ、例えばスポット溶接によってまたはMIG/MAG溶接によって右側および左側部分に組み付けられた平板である。
【0047】
図6に表す特定の実施形態では、下部シェル12は、その後端に、下部シェル横断部分124よりもさらに後ろの後方に延在する左側および右側延長部1225、1235をさらに備える。例えば、図6に示されているように、前記後部延長部1225、1235は、フロアパネルの下に配置された長手方向部材への取付点として機能するために外向きに広がる。実際に、図6に示された、後部延長部1225、1235の外向きの広がりと連動された右側および左側部分122、123の前部から後ろへの内向きの傾斜により、前部でのフロントメンバアセンブリ1の幅を最適化し、後部で車両の構造の長手方向部材の残りの部分を取り込みながら、横断部分4に向かってフロントメンバアセンブリの外側のホイールおよびホイールハウス9のための十分な空間を確保することが可能になる。
【0048】
特定の実施形態では、上部および下部シェル11、12は各々、単一の金属板を成形することによって作製されている。有利には、これにより、材料の取扱いおよびスタンピング作業の数をさらに削減することが可能になる。単一の金属板を使用して上部および下部シェルを製作することはまた、前記シェルのすべての部分間の最適な連携、したがって、例えば前面衝突に耐えるときの最適な性能を保証する。特に、それは、左側部分と横断部分との間、および右側部分と横断部分との間の最適な連携を保証する。このタイプの連携は、スモールオーバーラップの前部衝撃の場合に特に重要であり、この場合には、片側が衝突エネルギーの大部分を取り込むこととなり、横断部分との連携のおかげで、衝突エネルギーが他方の側および車両構造の残りの部分に部分的に伝達されることとなる。
【0049】
特定の実施形態では、上部および下部シェルは各々、例えば、テーラード溶接ブランク用の鋼板サブブランクを使用して、テーラード溶接ブランクからなる単一の金属板を成形することによって作製されている。有利には、これにより、各領域の所望の性能および挙動に従って、上部および下部シェルの異なる領域に材料グレードおよび材料厚さを最適に分布させることが可能になる。これはまた、上部および下部シェルの製作に関わるスクラップを最適化および削減することを可能にする。実際、上部および下部シェルはU字形の設計になっており、これは、部品がモノリシックブランクを使用して作製される場合、U字形の内側に大量のスクラップを切り出すことを伴う。一方、テーラード溶接ブランクに組み合わされた複数のサブブランクを使用する場合、左側および右側および横断部分に略矩形のサブブランクを使用することが可能であり、これは、スクラップがほとんど生成されないことを意味する。本発明者らはまた、上部および下部シェルにレーザ溶接ブランクから作製された単一の金属板を使用することによって、フロントメンバアセンブリの異なる部分間の改善された連携、および個々の部品を一緒に組み付けるための重なり面積の大幅な減少が、15%~20%程度の大幅な重量減少をもたらすことを見出した。
【0050】
特定の実施形態では、上部および下部シェルを製造するために使用されるブランクまたはサブブランクは、テーラーロールドブランクを含む。
【0051】
特定の実施形態では、上部および下部シェル11、12は、前記シェルの右側および左側部分112、122、113、123の前部部分にわたって延在する変形可能部分と、右側および左側部分の後部部分にわたってかつ前記シェルの横断部分114、124の少なくとも一部にわたって延在する非変形可能部分と、をさらに備える。前記変形可能部分の塑性変形に対する抵抗は、前記非変形可能部分の塑性変形に対する抵抗よりも低い。例えば、前記変形可能部分の引張強度と平均厚さとの積は、前記非変形可能部分の引張強度と平均厚さとの積よりも低い。有利には、前部衝撃の場合、これにより、バンパアセンブリ5に近くかつ乗員室から最も遠い変形可能部分に対応する前部部分を有するフロントメンバアセンブリ1を製造することが可能になり、これは、例えばボトリングによって塑性変形を受け、したがって衝突エネルギーの一部を吸収することとなる。同時に、後部に位置付けされており、したがって乗員室に最も近いフロントメンバアセンブリの非変形可能部分は、侵入に抵抗し、したがって乗員を保護し、また衝撃の残りのエネルギーを車両構造の残りの部分に伝達することとなる。
【0052】
特定の実施形態では、上述の変形可能部分は、テーラード溶接ブランクを使用して上部および下部シェルを製造することによって、ならびに前記右側および左側部分の後ろで横断部分に対して使用される材料よりも、左側および右側部分の前部で塑性変形に対する抵抗が低い材料を使用することによって得られる。例えば、前記変形可能部分の引張強度と平均厚さとの積は、前記非変形可能部分の引張強度と平均厚さとの積よりも低い。図4は、変形可能部分および非変形可能部分の材料の境界を定める溶接線が点線112w、113w、122w、および123wによって概略的に表された、そのような一実施形態の一例を表す。
【0053】
特定の実施形態では、上部および下部シェルは各々、場合によってはテーラード溶接ブランクからなる単一の金属板を形成することによって作製されており、ホットスタンピングを用いて製造されている。有利には、これにより、複雑な形状を有しかついかなるスプリングバックの問題もない非常に高い強度の部品を製作することが可能になる。テーラード溶接ブランクを使用する場合、これはまた、組付点、例えばレーザ溶接部またはスポット溶接部がホットスタンピングプロセス中に冶金的変換を受けるため、最終部品の特性に対するサブブランクの組付プロセスの影響を排除することを可能にする。
【0054】
特定の実施形態では、上部および下部シェルのうちの少なくとも一方は、マルチステップホットスタンピングによって作製されている。有利には、これにより、部品に非常に高い機械的特性を保証しながら、さらにより複雑な形状を製造することが可能になる。
【0055】
特定の実施形態では、上部および下部シェルのうちの少なくとも1つは、ホットスタンピングによって製造され、それを製造するために使用されるブランクは、モノリシックブランクの形態で、またはテーラード溶接ブランクの形態で組み合わされたいずれかの、以下の材料のうちの1つを含有する。
【0056】
0.06重量%≦C≦0.1重量%、1重量%≦Mn≦2重量%、Si≦0.5重量%、AI≦0.1重量%、0.02重量%≦Cr≦0.1重量%、0.02重量%≦Nb≦0.1重量%、0.0003重量%≦B≦0.01重量%、N≦0.01重量%、S≦0.003重量%、P≦0.020重量%、0.1重量%未満のCu、Ni、およびMoを含有する組成物を有し、残りは鉄と、精錬から生じる不可避の不純物とである、鋼。この組成範囲では、ホットスタンピング後の対応する領域の降伏強度は、700~950MPaの範囲にあり、引張強度は、950MPa~1200MPaの範囲にあり、曲げ角度は、75°を超える。例えば、この材料は、その高い曲げ角度と高い機械的特性とが組み合わされたことにより、例えばボトリングによって大量の衝突エネルギーを吸収することが可能になるため、フロントメンバアセンブリ1の変形可能部分に使用される。
【0057】
1300MPa~1650MPaの範囲のホットスタンピング後の最大引張強度、および950MPa~1250MPaの範囲の降伏強度を有する鋼。
【0058】
1300MPa~1650MPaの範囲のホットスタンピング後の最大引張強度、950MPa~1250MPaの範囲の降伏強度、および75°を超える曲げ角度を有する鋼。
【0059】
0.20重量%≦C≦0.25重量%、1.1重量%≦Mn≦1.4重量%、0.15重量%≦Si≦0.35重量%、Cr≦0.30重量%、0.020重量%≦Ti≦0.060重量%、0.020重量%≦Al≦0.060重量%、S≦0.005重量%、P≦0.025重量%、0.002重量%≦B≦0.004重量%を含有する組成物を有し、残りは鉄と、精錬から生じる不可避の不純物とである、鋼。この組成範囲では、ホットスタンピング後の部品の対応する領域の最大引張強度は、1300MPa~1650MPaの範囲にあり、降伏強度は、950MPa~1250MPaの範囲にある。例えば、この鋼組成物は、その高い機械的特性のおかげで侵入に耐えることができるようになるため、フロントメンバアセンブリの非変形可能部分に使用される。
【0060】
プレス硬化後の引張強度が1800MPaより高い鋼。
【0061】
0.24重量%≦C≦0.38重量%、0.40重量%≦Mn≦3重量%、0.10重量%≦Si≦0.70重量%、0.015重量%≦Al≦0.070重量%、Cr≦2重量%、0.25重量%≦Ni≦2重量%、0.015重量%≦Ti≦0.10重量%、Nb≦0.060重量%、0.0005重量%≦B≦0.0040重量%、0.003重量%≦N≦0.010重量%、S≦0.005重量%、P≦0.025重量%、重量%を含有する組成物を有し、残りは鉄と、精錬から生じる不可避の不純物とである、鋼。この組成範囲では、ホットスタンピング後のフロントメンバアセンブリの対応する領域の引張強度は、1800MPaよりも高い。例えば、この材料は、非変形領域に使用される。
【0062】
C:0.15~0.25重量%、Mn:0.5~1.8重量%、Si:0.1~1.25重量%、Al:0.01~0.1重量%、Cr:0.1~1.0重量%、Ti:0.01~0.1重量%、B:0.001~0.004重量%、P≦0.020重量%、S≦0.010重量%、N≦0.010重量%を含み、かつ任意選択的に、以下のMo≦0.40重量%、Nb≦0.08重量%、Ca≦0.1重量%の元素のうちの1つ以上を含有する組成物を有し、組成物の残りは鉄と、精錬から生じる不可避の不純物とである、鋼。この組成範囲では、ホットスタンピング後のフロントメンバアセンブリの対応する領域の引張強度は、1350MPaよりも高く、曲げ角度は、70°よりも大きい。
【0063】
C:0.26~0.40重量%、Mn:0.5~1.8重量%、Si:0.1~1.25重量%、Al:0.01~0.1重量%、Cr:0.1~1.0重量%、Ti:0.01~0.1重量%、B:0.001~0.004重量%、P≦0.020重量%、S≦0.010重量%、N≦0.010重量%を含み、かつ任意選択的に、以下のNi≦0.5重量%、Mo≦0.40重量%、Nb≦0.08重量%、Ca≦0.1重量%の元素のうちの1つ以上を含有する組成物を有し、組成物の残りは鉄と、精錬から生じる不可避の不純物とである、鋼。この組成範囲では、ホットスタンピング後のフロントメンバアセンブリの対応する領域の引張強度は1500MPaよりも高く、曲げ角度は、70°よりも大きい。
【0064】
C:0.2~0.34重量%、Mn:0.50~1.24重量%、Si:0.5~2重量%、P≦0.020重量%、S≦0.010重量%、N≦0.010重量%を含み、かつ任意選択的に、以下のAl:≦0.2重量%、Cr≦0.8重量%、Nb≦0.06重量%、Ti≦0.06重量%、B≦0.005重量%、Mo≦0.35重量%の元素のうちの1つ以上を含有する組成物を有し、組成物の残りは鉄および精錬から生じる不可避の不純物である、鋼。この組成範囲では、ホットスタンピング後のフロントメンバアセンブリの対応する領域の引張強度は、1000MPa以上であり、曲げ角度は、55°よりも大きい。
【0065】
C:0.13~0.4%、Mn:0.4~4.2%、Si:0.1~2.5%、Cr≦2%、Mo≦0.65%、Nb≦0.1%、Al≦3.0%、Ti≦0.1%、B≦0.005%、P≦0.025%、S≦0.01%、N≦0.01%、Ni≦2.0%、Ca≦0.1%、W≦0.30%、V≦0.1%、Cu≦0.2%を含有する組成物を有し、以下の114-68*C-18*Mn+20*Si-56*Cr-60*Ni-36*Al+38*Mo+79*Nb-17691*B<20の組合せを検証し、組成物の残りは鉄と、精錬から生じる不可避の不純物とである、鋼。例えば、この組成物は、マルチステッププロセスを用いて部品をホットスタンピングする場合に使用される。
【0066】
アルミニウム系金属コーティングでコーティングされた鋼。アルミニウム系とは、少なくとも50重量%のアルミニウムを含むコーティングを意味する。例えば、金属コーティングは、8~12重量%のSiを含むアルミニウム系コーティングである。例えば、溶融金属浴中に基材を浸漬することによって、金属コーティングが塗布される。有利には、アルミニウム系金属コーティングを適用することにより、ホットスタンピングプロセスの加熱ステップ中に表面スケールの形成を回避し、これにより今度は、その後のサンドブラスト作業なしでホットスタンピングによって部品を製作することが可能になる。さらに、アルミニウム系コーティングはまた、車両での稼働中の部品に対して防食を提供する。
【0067】
2.0~24.0重量%の亜鉛、1.1~12.0重量%のケイ素、任意選択的に0~8.0重量%のマグネシウム、および任意選択的にPb、Ni、Zr、またはHfから選択された追加の元素を含有する、アルミニウム系金属コーティングでコーティングされており、各追加の元素の重量含有率は0.3重量%よりも低く、残りはアルミニウムと、任意選択的に不可避の不純物とである、鋼。有利には、このタイプの金属コーティングは、部品上に非常に良好な防食性、およびホットスタンピング後の良好な表面態様をもたらす。
【0068】
特定の実施形態では、少なくとも上部または下部シェルは、アルミニウム系金属コーティングを有する少なくとも1つのサブブランクを備えるレーザ溶接ブランクをホットスタンピングすることによって聖愛央され、前記アルミニウムコーティングされたサブブランクは、溶接される縁部上の金属コーティングの少なくとも一部をアブレーションすることによって事前に調製される。有利には、これは、溶接シームを汚染しその機械的特性を劣化させ得る、コーティング中に存在するアルミニウムの一部を除去する。
【0069】
特段の実施形態では、少なくとも上部または下部シェルは、少なくとも1つの側面が放射率増加最上層で覆われた少なくとも1つのサブブランクを備えるレーザ溶接ブランクをホットスタンピングすることによって製造されている。前記放射率増加最上層は、前記サブブランクの最外表面上に塗布されている。前記放射率増加最上層は、前記放射率増加最上層でコーティングされていない同じサブブランクと比較して、前記サブブランクの表面がより高い放射率を有することを可能にする。前記放射率増加最上層は、サブブランクの頂面上または底面上のいずれかに適用されることができる。前記放射率増加最上層はまた、前記サブブランクの両側上に塗布されることができる。前記サブブランクが、前述のような金属コーティングを備える場合、放射率増加最上層は、前記金属コーティングの頂部上に塗布される。実際、放射率を増加させる最上層が表面の放射率を増加させるためには、サブブランクの最外表面を覆う必要がある。有利には、前記放射率増加最上層は、前記サブブランクの加熱速度を増加させることを可能にすることとなり、したがって、ホットスタンピングプロセスの加熱ステップの生産性を増加させることとなる。異なる厚さの複数のサブブランクを使用する場合、異なるサブブランク間の加熱時間の差を減少させ、したがって生産性を高め、ホットスタンピングのプロセスウィンドウを拡大し、かつ全体的に均一な表面特性を有する最終部品を得ることを可能にするために、前記放射率増加最上層は、最も厚いサブブランクに有利に適用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-09-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部シェル(11)および下部シェル(12)を備える自動車用フロントメンバアセンブリ(1)であって、上部シェル(11)および下部シェル(12)のそれぞれが略長手方向に延在する右側部分(112、122)および左側部分(113、123)を備え、前記右側および左側部分のそれぞれが、前記左側および右側部分の後部に配置された取付点間で略横断方向に延在する横断部分(114、124)によって互いに連結されており、前記上部および下部右側部分(112、122)は、右側中空容積(20)をに共に画定し、前記上部および下部左側部分(113、123)が、左側中空容積(30)を共に画定し、前記右側および左側中空容積(20、30)は、右側および左側部分の前部から、右側および左側部分のそれぞれの横断部分(114、124)との前記右側および左側部分の取付点まで延在し、前記上部右側および左側部分(112、113)は、下部輪郭内側および外側(1121、1122、1131、1132)によって区画されており、前記下部右側および左側部分(122、123)は、上部輪郭内側および外側(1221、1222、1231、1232)によって区画されており、前記上部および下部シェル(11、12)は、前記対応する下部および上部輪郭の少なくとも一部に沿って前記上部および下部シェル(11、12)を取り付けることによって一緒に組み付けられている、フロントメンバアセンブリ(1)。
【請求項2】
前記上部および下部輪郭(1121、1122、1131、1132、1221、1222、1231、1232)は、平坦なフランジであり、前記上部および下部シェル(11、12)が、前記フランジに沿って前記上部および下部シェル(11、12)を取り付けることによって互いに組み付けられている、請求項1に記載のフロントメンバアセンブリ(1)。
【請求項3】
前記上部および下部シェル(11、12)は、それぞれ、単一の金属板を成形することによって出来ている、請求項1または2に記載のフロントメンバアセンブリ(1)。
【請求項4】
前記上部および下部シェル(11、12)は、それぞれ、ホットスタンピングによって単一のテーラード溶接ブランクを成形することによって出来ている、請求項1または2に記載のフロントメンバアセンブリ(1)。
【請求項5】
前記上部および下部シェル(11、12)は、それぞれ、前記シェル(112、122、113、123)の右側および左側部分の前部部分にわたって延在する変形可能部分と、前記シェル(112、122、113、123)の右側および左側部分の後部部分にわたって、かつ前記シェルの横断部分(114、124)の少なくとも一部にわたって延在する非変形可能部分と、を備え、前記変形可能部分の塑性変形に対する抵抗が、前記非変形可能部分の塑性変形に対する抵抗よりも低い、請求項1または2に記載のフロントメンバアセンブリ(1)。
【請求項6】
請求項1または2に記載のフロントメンバアセンブリ(1)を備える自動車。
【請求項7】
前記フロントメンバアセンブリ(1)は、フロントバンパアセンブリ(5)に組み付けられている、請求項6に記載の自動車。
【請求項8】
前記フロントメンバアセンブリ(1)は、ダッシュパネル(6)に組み付けられている、請求項6に記載の自動車。
【国際調査報告】