(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】多機能光電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H10K 65/00 20230101AFI20250130BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20250130BHJP
H05B 44/00 20220101ALI20250130BHJP
H10K 85/50 20230101ALI20250130BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20250130BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20250130BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20250130BHJP
H10K 59/121 20230101ALI20250130BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250130BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20250130BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20250130BHJP
G09G 3/32 20160101ALI20250130BHJP
H10K 30/60 20230101ALI20250130BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20250130BHJP
H10F 55/00 20250101ALI20250130BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20250130BHJP
【FI】
H10K65/00
H05B33/22 A
H05B33/22 C
H05B44/00
H10K85/50
H10K50/15
H10K50/16
H05B33/14 Z
H10K59/121
G09F9/30 365
G09F9/30 349Z
G09F9/33
G09G3/20 691D
G09G3/20 691E
G09G3/20 612C
G09G3/32 A
G09G3/20 611F
G09G3/20 642F
H10K30/60
H10K30/40
H01L31/12 E
H10K101:40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544780
(86)(22)【出願日】2023-01-31
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 SE2023050081
(87)【国際公開番号】W WO2023149831
(87)【国際公開日】2023-08-10
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523463937
【氏名又は名称】リンクソール・エービー
【氏名又は名称原語表記】LinXole AB
【住所又は居所原語表記】C/O Feng Wang, Rattaregatan 82, LGH 1101, 583 33 Linkoping, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】バオ、チュンション
(72)【発明者】
【氏名】ガオ、フェン
(72)【発明者】
【氏名】ユエン、ジョンチョン
【テーマコード(参考)】
3K107
5C080
5C094
5C380
5F149
5F889
【Fターム(参考)】
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5F889BB08
(57)【要約】
本発明は、発光モード及び感知モードで交互に動作するように構成された少なくとも1つの光応答性ペロブスカイト発光ダイオード(LED1)を備える多機能光電子デバイス(10)に関する。少なくとも1つのペロブスカイトLED(1)は、カソード(2)と、最低空分子軌道(LUMO)レベルおよび最高被占分子軌道(HOMO)レベルを有する電子輸送層(ETL3)と、伝導帯(CB)および価電子帯(VB)を有するペロブスカイト層(4)と、LUMOレベルおよびHOMOレベルを有する正孔輸送層(HTL5)と、アノード(6)とを備える。ETL(3)のLUMOレベルはペロブスカイト層のCBのボトムより低く、HTL(5)のHOMOレベルは、ペロブスカイト層(4)のVBのトップより高い。多機能デバイス(10)は、少なくとも1つのペロブスカイトLED(1)を通る電流を決定するように構成されたセンサを備える感知回路と、少なくとも1つのペロブスカイトLED(1)を通る電流の関数としてペロブスカイトLED(1)の発光モードと感知モードと間で選択するように構成されたスイッチとをさらに備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多機能光電子デバイス(10)であって、
発光モード及び感知モードで交互に動作するように構成された少なくとも1つの光応答性のペロブスカイト発光ダイオード(LED、1)を備え、前記少なくとも1つのペロブスカイトLED(1)は、カソード(2)と、最低空分子軌道(LUMO)レベル及び最高被占分子軌道(HOMO)レベルを有する電子輸送層(ETL、3)と、伝導帯(CB)及び価電子帯(VB)を有するペロブスカイト層(4)と、LUMOレベル及びHOMOレベルを有する正孔輸送層(HTL、5)と、アノード(6)とを備え、前記ETL(3)の前記LUMOレベルは、前記ペロブスカイト層の前記CBのボトムより低く、前記HTL(5)の前記HOMOレベルは、前記ペロブスカイト層(4)の前記VBのトップより高く、
前記多機能光電子デバイス(10)は、前記少なくとも1つのペロブスカイトLED(1)を通る電流を決定するように構成されたセンサを備える感知回路と、前記少なくとも1つのペロブスカイトLED(1)を通る電流の関数として前記ペロブスカイトLED(1)の前記発光モードと前記感知モードとの間を選択するように構成されたスイッチとをさらに備える、
多機能光電子デバイス(10)。
【請求項2】
前記ペロブスカイト層(4)は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを備える、請求項1に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項3】
前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、一般式AM
IIX
3を有する金属ハロゲン化物ペロブスカイト、一般式A
2M
IM
IIIX
6を有するダブルペロブスカイト、一般式A’A
nM
nX
3n+1を有する層状ペロブスカイト、又はそれらの組合せである、請求項2に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項4】
Aは小さな一価カチオンであり、A’は大きな一価カチオンであり、M
Iは一価金属カチオンであり、M
IIは二価金属カチオンであり、M
IIIは三価金属カチオンであり、Xはアニオンである、請求項3に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項5】
前記小さな一価カチオンは、メチルアンモニウム(MA
+)、ホルムアミジニウム(FA
+)、Cs
+、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項4に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項6】
前記大きな一価カチオンは、脂肪族又は芳香族アルキルアンモニウムである、請求項4又は5に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項7】
前記一価金属カチオンは、Ag
+であり、及び/若しくは前記二価金属カチオンは、Pb
2+、Sn
2+、Ga
2+、Ge
2+、及びそれらの組合せからなる群から選択され、並びに/又は前記三価金属カチオンは、Bi
3+、In
3+、Sb
3+、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項4~6のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項8】
前記アニオンは、ハロゲン化物アニオンである、請求項4~7のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項9】
前記アニオンは、臭化物(Br
-)、ヨウ化物(I
-)、及び塩化物(Cl
-)の混合物である、請求項8に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項10】
前記ペロブスカイト層(4)は、不動態化剤を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項11】
前記不動態化剤は、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエチルアミン(EDEA)、2,2’-(オキシビス(エチレンオキシ))ジエチルアミン(ODEA)、5-アミノ吉草酸(5-AVA)、5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩(5-AVAI)、もしくは5-アミノ吉草酸臭化水素酸塩(5-AVABr)、又はそれらの組合せである、請求項10に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項12】
前記多機能光電子デバイス(10)は駆動回路を備え、前記感知回路は、前記駆動回路に一体化される、請求項1~11のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項13】
前記ETL(3)及び/又は前記HTL(5)の厚さは、20nmから100nmであり、前記ペロブスカイト層(4)の厚さは、50nmから500nmである、請求項1~12のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項14】
前記ETL(3)は、エトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)改質された、又は純粋な酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO
2)、又は酸化チタン(TiO
2)である、請求項1~13のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項15】
前記HTL(5)は、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-コ-N-(4-sec-ブチルフェニル)-ジフェニルアミン)(TFB)/酸化モリブデン(MoO
x)である、請求項1~14のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多機能光電子デバイス、詳細には多機能ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ画面は、スマートフォン、スマートウォッチ、ラップトップ、タブレットコンピュータなど現代の電子機器における、通常、大面積の不可欠な構成要素である。従来、液晶ディスプレイ(LCD)および有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイを含むディスプレイは、単一の機能、すなわち情報表示を実施するように設計される。したがって、電子製品においてほぼ常に必須であるタッチ制御、周辺光感知、および指紋感知など補助機能は、通常、対応する追加のセンサによって達成され、これは必然的にコストを増大し、デバイスを複雑かつ面倒なものにする。
【0003】
高い画面対本体比を有する超薄型ディスプレイ画面を使用することが、現在、消費者向け電子機器の開発傾向の1つである。追加のセンサによって提供される補助機能をディスプレイのピクセルに一体化することは、厚さを低減し、ディスプレイの画面対本体比を増大するための効果的な方策である。しかし、従来のディスプレイデバイス、たとえばLCDおよびOLEDディスプレイは、ピクセルにおける感知機能が不十分であるか、またはそれがないことにより、この応用例を効果的に実現することができない。
【0004】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、それらの高い色純度、高効率、ならびに溶液堆積および真空蒸着プロセスとの両立性により、高品質ディスプレイのための有望な発光体として認識されている。さらに、高い光吸収、低い励起子結合エネルギー、および顕著なキャリア輸送能力の組合せにより、ペロブスカイトは、光応答性LEDのための有望な材料になる。しかし、以前報告されている可視光ペロブスカイトLEDは、不十分な光応答性を示していた。
【0005】
上記に鑑みて、優れた発光特性を光応答性と組み合わせ、したがってデバイス内での補助機能の一体化を可能にする光電子デバイス、特にディスプレイが求められている。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、そのような多機能デバイスを開示する。具体的には、本発明は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトLEDピクセルなどペロブスカイトLEDピクセルに基づく多機能ディスプレイに関する。ペロブスカイトの高い光応答性を利用して、ディスプレイは、下記でより詳細に述べるように、イメージセンサまたはタッチスクリーンなど補助機能を含むことが可能である。
【0007】
本発明の多機能デバイスの主機能は、ディスプレイとしての動作であり得、一方、補助機能は、タッチセンサ、指紋センサ、太陽電池、またはそれらの組合せであり得る。主機能も補助機能も共にペロブスカイトLEDによって提供されることに留意されたい。本発明の多機能デバイスは、ペロブスカイトLEDによって提供されない他の機能をさらに備え得る。
【0008】
したがって、本発明は、発光モードおよび感知モードで交互に動作するように構成された少なくとも1つの光応答性ペロブスカイト発光ダイオード(LED)を備え、少なくとも1つのペロブスカイトLEDは、カソードと、最低空分子軌道(LUMO)レベルおよび最高被占分子軌道(HOMO)レベルを有する電子輸送層(ETL)と、伝導帯(CB)および価電子帯(VB)を有するペロブスカイト層と、LUMOレベルおよびHOMOレベルを有する正孔輸送層(HTL)と、アノードとを備え、ETLのLUMOレベルは、ペロブスカイト層のCBのボトムより低く、HTLのHOMOレベルは、ペロブスカイト層のVBのトップより高い、多機能光電子デバイスを開示する。
【0009】
本発明の多機能デバイスは、複数のペロブスカイトLEDを備え得る。「複数」という用語は、少なくとも2つと理解される。
【0010】
ETLのLUMOレベルがペロブスカイトのCBのボトムより低く、HTLのHOMOレベルがペロブスカイトのVBのトップより高いことにより、電荷輸送層とペロブスカイト層との間にキャリア分離障壁はない。この障壁は、光生成キャリアの分離を阻止し、デバイスの光応答性を著しく低減することになる。
【0011】
本発明による少なくとも1つのペロブスカイトLEDは、光を示すように構成される。少なくとも1つのペロブスカイトLEDによって発光された光は、好ましくは可視スペクトルにあり、すなわち、380nmから750nmの範囲内の波長を有する。さらに、本発明の少なくとも1つのペロブスカイトLEDを、光検出器として機能するように構成することができる。
【0012】
本発明の多機能デバイスは、少なくとも1つのペロブスカイトLEDを通る電流を決定するように構成されたセンサを備える感知回路と、少なくとも1つのペロブスカイトLEDを通る電流の関数としてペロブスカイトLEDの発光モードと感知モードとの間で選択するように構成されたスイッチとをさらに備える。センサは、電流センサまたは電圧センサであってよい。
【0013】
換言すれば、感知回路は、各ペロブスカイトLED、またはピクセルについて電流を読み出し、回路内のバイアスを制御するように構成される。感知回路は、基板内に設計することができ、またはディスプレイの外部駆動回路であってもよい。
【0014】
本発明による多機能デバイスは、いくつかの利点を提供する。第1に、多機能ペロブスカイトディスプレイ内のピクセルは、発光モードでも感知モードでも共に機能することができる。第2に、感知回路は、特にピクセルがセンサモードにあるとき、ピクセルの光電流を読み出すように設計される。このデータから、多機能ディスプレイは、タッチ位置、画像(指紋センサまたはスキャナとして働く)、または光通信からの情報を感知することができる。さらに、ピクセルを、デバイスを充電するために光エネルギーを電気に変換するための太陽電池として使用することができる。
【0015】
上述のように、ペロブスカイトLEDの場合、適切な性能を得るために、ペロブスカイト層内での電荷キャリア再結合を抑えるために電荷閉じ込め構造が常に導入される。しかし、これらのデバイスの光応答は、光生成キャリアが電極によって分離および収集されるのではなくペロブスカイト層に閉じ込められることにより、常に強く制限される。良好な感知性能を達成するために電荷輸送層とペロブスカイト層との間に低いエネルギー障壁を有するデバイスが望ましい。しかし、そのようなデバイスでは、キャリアの非発光性再結合の比率が増大することになり、発光効率が低下することになる。非発光性再結合センタを低減することは、これらのデバイスが良好な発光と感知性能を共に得るために特に重要である。そのために、多機能デバイスのペロブスカイト層は、不動態化剤を備え得る。不動態化剤は、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエチルアミン(EDEA)、2,2’-(オキシビス(エチレンオキシ))ジエチルアミン(ODEA)、5-アミノ吉草酸(5-AVA)、5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩(5-AVAI)、または5-アミノ吉草酸臭化水素酸塩(5-AVABr)であり得る。不動態化剤を追加することが非発光性再結合センタを著しく低減し、したがって、高いフォトルミネッセンス量子効率(PLQE)を有するペロブスカイト層をもたらす。具体的には、PLQEは、40%を超え得る。
【0016】
本発明によれば、ペロブスカイト層は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを備え得る。金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、一般式AMIIX3を有する金属ハロゲン化物ペロブスカイト、一般式A2MIMIIIX6を有するダブルペロブスカイト、一般式A’AnMnX3n+1を有する層状ペロブスカイト、またはそれらの組合せであり得る。
【0017】
一般式において、上記Aは小さい一価カチオンであり、A’は大きい一価カチオンであり、MIは一価金属カチオンであり、MIIは二価金属カチオンであり、MIIIは三価金属カチオンであり、Xはアニオンである。
【0018】
小さい一価カチオンは、メチルアンモニウム(MA+)、ホルムアミジニウム(FA+)、Cs+、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0019】
大きい一価カチオンは、脂肪族または芳香族アルキルアンモニウムであり得る。具体的には、大きい一価カチオンは、n-ブチルアンモニウム(n-BA+)、2-フェニルエチルアンモニウム(PEA+)、1-ナフチルメチルアンモニウム(NMA+)、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0020】
一価金属カチオンは、それだけには限らないが、Ag+であり得る。代替として、または追加として、二価金属カチオンは、Pb2+、Sn2+、Ga2+、Ge2+、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。さらに、三価金属カチオンは、Bi3+、In3+、Sb3+、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0021】
アニオンは、ハロゲン化物アニオンであり得る。具体的には、アニオンは、臭化物(Br-)、ヨウ化物(I-)、および塩化物(Cl-)の混合物であり得る。
【0022】
特定の実施形態によれば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、APbI2Brであり、ここでAはCs+、FA+、またはそれらの組合せである。適正なI:Brの比率は、発光ピークが約650nmに位置するようにし、これは、飽和赤色および良好な輝度効率を約束する。低いエネルギー障壁を有する共不動態化(co-passivated)APbI2Brペロブスカイトに基づくデバイスは、高発光と感知効率を同時に達成することができる。
【0023】
本発明による多機能デバイスは、従来のディスプレイに加えて、ハードウェアに基づくもう1つの信号入力または感知方法を提供する。それは、プログラム設計を通じて可能なものとすることができる多くの新しい応用の可能性を開く。いくつかの例は、追加のデバイスまたはセンサの無いタッチインターフェース、指紋読取り、および周辺光感知の機能を含む。これは、高い画面対本体比を有する超薄型画面を達成する助けとなる。さらに、デバイスを充電するための太陽電池、および画面を通じたデータ通信など、いくつかの新しい機能を、このディスプレイを使用して開発することができる。
【0024】
本発明による多機能デバイスは、駆動回路を備え得る。そのような実施形態では、感知回路は、駆動回路に一体化され得る。
【0025】
ETLおよび/またはHTLの厚さは、20nmから100nmであり得る。さらに、ペロブスカイト層の厚さは、50nmから500nmであり得る。実際には、ペロブスカイトLEDの層の厚さは、所望の性能を達成するために変わり得る。
【0026】
ETLは、エトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)改質された、または純粋な酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、または酸化チタン(TiO2)であり得る。HTLは、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-コ-N-(4-sec-ブチルフェニル)-ジフェニルアミン)(TFB)/酸化モリブデン(MoOx)である。
【0027】
上述のように、本発明による多機能デバイスは、ペロブスカイトLEDによって提供される補助機能を備えるディスプレイであり得る。多機能ディスプレイの画面対本体比は最大化されることが望ましい。具体的には、多機能デバイスは、少なくとも90%の画面対本体比を有し得る。
【0028】
上記から明らかなように、十分な欠陥不動態化を通じて顕著な発光性能を保ちながら、可視領域で発光するペロブスカイトLEDの光応答性が著しく高められる。これらのピクセルの発光および光応答両方における優れた性能により、これらのピクセルは、タッチスクリーン、周辺光センサ、および指紋センサなど一体化された補助機能を備える多機能ディスプレイの作製に成功をもたらし、したがって、著しく低減されたコストで超薄型ディスプレイを提供するための有望な候補となる。さらに、充電機能がディスプレイに一体化され得、周辺光のエネルギーを電気に変換するためにディスプレイを使用してバッテリが充電され得る。別の応用例は、ディスプレイを信号送受信機として使用するデバイス間通信機能である。最後に、ディスプレイピクセルを光源および検出器と使用する心拍数およびオキシメータセンサが提供され得る。
【0029】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して例として述べる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2b】光応答性ペロブスカイトLEDのエネルギー図。
【
図3】多機能ペロブスカイトディスプレイにおける駆動/感知回路の概略構造の図。
【
図4】本発明による多機能ペロブスカイトディスプレイの図。
【
図5】ペロブスカイトLEDのJ-Vおよび輝度-電圧曲線の図。
【
図6】ペロブスカイトLEDのEQEおよびエネルギー変換効率の図。
【
図7a】AM1.5ソーラシミュレータ下で太陽電池として機能するペロブスカイトデバイスのJ-V曲線の図。
【
図7b】白色LEDランプ(4000K、1000ルクス)からの照明下で太陽電池として機能するペロブスカイトデバイスのJ-V曲線の図。
【
図8】ゼロバイアス下で光検出器テストとして機能するペロブスカイトデバイスの比検出能スペクトルの図。
【
図9a】光検出器として機能する異なる面積を有するペロブスカイトデバイスの過渡光電流(TPC)曲線の図。
【
図9b】異なる面積のデバイスについてTPC曲線をフィッティングすることによって得られた応答時間の図。
【
図10】ペロブスカイトLEDディスプレイの概略構造の図。
【
図11a】ペロブスカイトLEDディスプレイのタッチ位置感知の図。
【
図11b-d】ペロブスカイトLEDディスプレイにタッチすることによって情報を入力するイメージの図。
【
図12a】ペロブスカイトディスプレイのイメージセンサ機能の図。
【
図12b】イメージセンサとして機能するときペロブスカイトディスプレイによって得られた画像。
【
図13】緑色III-V LEDビードおよびSiフォトダイオードを備える商用PPGセンサとペロブスカイトディスプレイのPPG結果の図。
【
図14a】ペロブスカイトLEDを電力源として使用するスーパーキャパシタの充電曲線の図。
【
図14b】ペロブスカイトLEDを電力負荷として使用するスーパーキャパシタの放電曲線の図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明によるペロブスカイトLED1は、以下のように調製された。予めパターニングされた酸化インジウムスズ(ITO)基板2が洗浄剤で洗浄され、脱イオン水でリンスされ、基板を空気流で乾燥した後、15分のUVオゾン処理を続けた。当技術分野で知られている手順に従ってエタノール中の酸化亜鉛(ZnO)懸濁液が合成および調製された。ZnO懸濁液を洗浄済みITO基板2上に4000rpmでスピンコーティングしてから窒素充填グローブボックスに移送することによってZnO層3が調製された。PbI
2(0.125M)、CsBr(0.25M)、FAI(0.25M)をDMF内で混合し、60℃で1時間攪拌することによってペロブスカイト前駆体溶液が調製された。さらに、処理添加剤として異なる量の5AVAI(0~0.038M)が導入される。ペロブスカイト前駆体溶液がZnO層の上に4000rpm30秒間でコーティングされ、次いでホットプレート上で120℃10分間でアニールされ、このようにしてペロブスカイト層4を形成した。冷却後、TFB層5(クロロベンゼン中12mg/mL)がHTLとしてさらにコーティングされた。サーマルエバポレータ内で、2×10
-6Paのチャンバ圧力下でMoO
x(7nm)およびAu(50nm)を電極6として蒸着することによってデバイスが仕上げられた。LEDおよびPVデバイスピクセルは、7.25mm
2のサイズを有し、これらはシャドーマスクによって画定された。ペロブスカイトLED1の斜視図および断面図がそれぞれ
図1および
図2aに示されている。ペロブスカイトLEDのLEDモードが白色矢印7によって示されており、一方、光検出/太陽電池モードが黒色矢印8によって示されている。
【0032】
光生成キャリアを効果的に分離および収集することができることを確実にするために、ZnOおよびTFBは、それぞれ電子輸送層3および正孔輸送層5とされ、これらは共に、高性能ペロブスカイト太陽電池における効率的な電荷輸送層として実証されている。ここで、3次元(3D)混合ハロゲン化物FAyCs1-yPbI3-xBrxペロブスカイト膜が光活性層および発光層として使用されている。デバイスがPVモデルにおいて機能しているとき、FAyCs1-yPbI3-xBrxペロブスカイト膜内の光生成キャリアをアノードおよびカソードによって出力回路に効率的に収集することができる。LEDモードにある間は、外部回路からの注入された電子および正孔がペロブスカイト層内で再結合し、発光する。
【0033】
上述のように、
図2bの右に示されているように、また
図2aの左部分に示されている従来のデバイスのエネルギー図に比べて、ETL3のLUMOレベルは、ペロブスカイト層4のCBのボトムより低く、HTL5のHOMOレベルは、ペロブスカイト層4のVBのトップより高い。
【0034】
図3に示されている破線は、感知ユニットおよび回路内の制御バイアスを示す。電圧制御は、ペロブスカイトLEDのLEDモードと感知モードとの間で選択する。電圧制御の値がハイであるとき、LEDモードがONであり、一方、電圧制御の値がローであるとき、センサモードがONである。
【0035】
図4には、本発明の多機能ディスプレイによって実現されるいくつかの機能が提示されている。わかるように、多機能ディスプレイは、周辺光センサ、太陽電池、タッチスクリーン、データ輸送、光電容積脈波法(PPG)、およびオキシメータなどいくつかの補助機能を組み込み得る。
【0036】
本発明によるデバイスは、以下のように調査された。LED試験用プラットフォーム上で、ペロブスカイトLEDのJ-V曲線、EQE、および輝度が測定され、ここで、積分球(FOIS1)と結合された分光計(QE Pro、Ocean Optics)およびソースメータ(Keithley2400)がグローブボックス内における異なる走査電圧でデバイス発光および電気データを測定するために使用された。太陽電池性能は、AM1.5太陽光シミュレータまたは商用LEDランプ下で、ソースメータ(Keithley2400)を使用して測定された。デバイスの光電流変換EQEは、0Vバイアスで太陽電池スペクトル応答測定システム(QE-R3011、Enli Technology)を使用して測定された。デバイスの暗電流ノイズは、低ノイズ前置増幅器(SR570、Stanford Research System)と結合されたロックイン増幅器(SR830、Stanford Research System)を使用して測定された。デバイスの過渡光電流曲線は、デバイスがパルスレーザ(337nm、パルス幅約3.8ns)によって励起されたとき50Ωの入力インピーダンスでオシロスコープによって記録された。
【0037】
赤色LEDの性能が
図5および
図6に示されている。約233mA cm
-2の駆動電流密度で9.8%のピークEQE、および1600Cd cm
-2の輝度を得ることができる。本発明のデバイスの明るさおよびEQEは、高輝度ディスプレイにおける実用的な応用にとって十分である。
【0038】
ディスプレイにおける発光ピクセルとしての潜在的な応用例に加えて、本発明者らのデバイスは、
図7aおよび
図7bに示されているように、注目すべき光応答を示し、太陽電池および光検出器として機能することができる。界面およびペロブスカイト層を最適化することを通じて、AM1.5Gで5.34%、および屋内光(白色LED、4000K、1000ルクス)で7.80%の電力変換効率が達成された。屋内光でのより高い効率は、EQEと白色LEDを使用する照明の発光スペクトルとの間の良好なフィッティングの恩恵を受ける。デバイスの顕著な光応答は、デバイスの潜在的な光感知応用例をも示す。
【0039】
光検出性能を調査するために、デバイスの暗電流ノイズが測定された。ペロブスカイト層4の顕著な欠陥不動態化により、最適化されたデバイスは、475nmで0.23A W
-1のピーク光応答性(
図8)、約10fA Hz
-0.5の注目すべき低い暗電流ノイズを示す。低いノイズ等価電力(NEP)高いピーク比検出能を、それぞれ44fW Hz
-0.5および6.08×10
12ジョーンズとして得ることができ、これらは、最も高感度なペロブスカイト光検出器のうちにある。
【0040】
光信号発光または検出デバイスとして、光信号を発光または受光する能力は重要である。したがって、光信号発光および受光デバイスとしてのデバイスの応答速度が決定された。
図9aは、光検出器モードで機能するときの、異なる面積を有するデバイスの過渡光電流(TPC)曲線を示す。約0.12mm
2の面積を有するデバイスの場合、応答時間は、立ち下がり時間によって見かけ上決定される。TPC曲線を単一指数関数とフィッティングすることを通じて、立ち下がり時間は、7.25mm
2面積のデバイスについての520nsから0.12mm
2面積のデバイスについての7.5nsに立ち下がり時間が減少することを示す
図9bに示されているように得られた。デバイス面積がさらに0.06mm
2に減少したとき、立ち上がり時間は、立ち下がり時間と同等であった。
【0041】
さらに、ペロブスカイトLED多機能ディスプレイの潜在的な応用例が実証された。1024個のピクセル1を含む概念実証ディスプレイデバイス10が
図10に概略的に示されている。発光層および電荷輸送層が、パターニングされたITOガラス上にスピンコーティングされ、Au電極が、パターニングされたマスクを使用して堆積された。ピクセルは、ITOおよびAu電極の重なりによって画定される。情報は、シフトレジスタを使用してピクセル1のオンオフ状態を制御することを通じて表示される。この実証は、実用的な小面積パッシブマトリクスディスプレイ応用例にとってペロブスカイトLEDが明るさおよび動作速度において十分なものであることを示す。
【0042】
タッチスクリーン機能を概念実証ディスプレイによって実際的に実現することができる。各ピクセルの光電流を検出することによって、ディスプレイ上のタッチ位置を感知することができる。
図11aは、タッチを受けているディスプレイの光電流マッピングを示し、これは、明確にタッチ位置を示す。
図11b~dは、光応答ディスプレイのタッチスクリーン機能を通じて情報を入力するイメージを示す。
【0043】
光応答性ディスプレイピクセルアレイ10は、撮像センサとしても使用することができる。
図12aは、光応答性ディスプレイを使用する接触表面の撮像プロセスを概略的に示す。光検出器モードで機能するピクセルは、LEDモードで機能する近くのピクセルによって発光され接触物の表面によって反射された光を受光する。本発明者らのディスプレイの撮像機能は、ディスプレイを画面ベースのスキャナ用として有望なものにする。
図12bは、概念実証ディスプレイ10によって走査された画像を示す。フルカラー光応答ディスプレイに基づいて、フルカラーが容易に実現されるようにサポートされる。
【0044】
本発明のディスプレイの撮像機能の別の印象的な潜在的応用例は、ディスプレイ上の光学指紋センサとして働くことである。指紋認識は、消費者向け電子機器において最も歓迎されるセキュリティおよびアクセス制御方策の1つである。一般に、指紋リーダが固定されている特定の位置で、指紋だけを読み取ることができる。多点指紋認識解決策は、異なる特定のアプリのための暗号化およびロック解除および指紋を用いた連署など、それが作り出すことができる魅力的な新しいユーザ体験により注目されている。本明細書に記載のデバイスに基づくディスプレイは、ディスプレイの任意の部分で指紋を読み取ることができ、これにより、本発明者らのデバイスに基づくディスプレイは、画面内多点指紋認識用として有望な解決策になる。
【0045】
LEDモードで機能する本発明のデバイスの高輝度、および検出器モードで機能する高い感光性は、光電容積脈波法(PPG)およびオキシヘモグロビン飽和を監視するためにディスプレイを使用することを可能にし、これは、健康監視において有益なものになるだけでなく、PPG信号の活動性を監視することによって指紋認識のセキュリティレベルを改善することもできる。本発明者らは、10×10ピクセルをLEDとして、また別の10×10ピクセルを検出器として使用する概念実証ディスプレイによって取り込まれたPPG信号を示している(
図13)。III-V LEDおよびSi光検出器に基づく商用PPGセンサによって取り込まれた同時PPG信号も比較のために示されている。商用のものに比較して本発明のデバイスによって得られた同様のPPG信号は、PPGセンサとして使用するとき本発明者らのデバイスが適切な信号/ノイズ比を示すことを示す。
【0046】
屋内光における本明細書に記載のデバイスの高い電力変換効率は、光を電気に変換することによって電子製品を充電するための光起電能力を本発明者らのディスプレイにもたらす。
図14aは、AM1.5G太陽光シミュレータ下で太陽電池として機能する本発明者らのデバイスを使用するスーパーキャパシタの充電曲線を示す。
図14bは、LEDとして機能するデバイスを駆動するときの充電されたスーパーキャパシタの放電曲線を示す。
【0047】
本発明者らは、ピクセルとしての光応答性ペロブスカイトLEDに基づく多機能ディスプレイを提案している。この多機能ディスプレイは、大抵の場合に電子製品において不可欠な機能であるタッチスクリーン、周辺光感知、および指紋感知として同時に働くことが可能であることが実証されている。さらに、ピクセルの高い光応答性により、ディスプレイ画面は、マンマシンインタラクションおよび通信機能開発のためのプラットフォームになる。例として、画面ベースのスキャナ、画面ベースのデータ転送、PPG感知、および画面を通じた充電などの機能が現実世界における概念実証デバイスを使用して実証されている。
【0048】
上述のように、効果的な欠陥不動態化および界面工学を通じて、本発明者らは、7.8%の値で屋内LED光(4000K、1000ルクス)に対する赤色ピクセルの電力変換効率を著しく改善しており、これは、ディスプレイが機器を充電するための光起電力デバイスとして働くことを可能にする。ピクセルの光応答速度は数十MHzに達する可能性があり、これは、ディスプレイを通じたデータ伝送を実現することを可能にする。これらの結果は、ディスプレイ分野において利用されるときのペロブスカイトLEDの魅力的な利点を実証する。
【0049】
本発明について様々な実施形態を参照して述べたが、本発明の範囲から逸脱することなく変更がなされ得ることを当業者なら理解するであろう。詳細な説明は例示的なものとみなされること、およびすべての均等物を含む添付の特許請求の範囲は本発明の範囲を規定しようとするものであることが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多機能光電子デバイス(10)であって、
発光モード及び感知モードで交互に動作するように構成された少なくとも1つの光応答性のペロブスカイト発光ダイオード(LED、1)を備え、前記少なくとも1つのペロブスカイトLED(1)は、カソード(2)と、最低空分子軌道(LUMO)レベル及び最高被占分子軌道(HOMO)レベルを有する電子輸送層(ETL、3)と、伝導帯(CB)及び価電子帯(VB)を有するペロブスカイト層(4)と、LUMOレベル及びHOMOレベルを有する正孔輸送層(HTL、5)と、アノード(6)とを備え、前記ETL(3)の前記LUMOレベルは、前記ペロブスカイト層の前記CBのボトムより低く、前記HTL(5)の前記HOMOレベルは、前記ペロブスカイト層(4)の前記VBのトップより高く、
前記多機能光電子デバイス(10)は、前記少なくとも1つのペロブスカイトLED(1)を通る電流を決定するように構成されたセンサを備える感知回路と、前記少なくとも1つのペロブスカイトLED(1)を通る電流の関数として前記ペロブスカイトLED(1)の前記発光モードと前記感知モードとの間を選択するように構成されたスイッチとをさらに備える、
多機能光電子デバイス(10)。
【請求項2】
前記ペロブスカイト層(4)は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを備える、請求項1に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項3】
前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、一般式AM
IIX
3を有する金属ハロゲン化物ペロブスカイト、一般式A
2M
IM
IIIX
6を有するダブルペロブスカイト、一般式A’A
nM
nX
3n+1を有する層状ペロブスカイト、又はそれらの組合せである、請求項2に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項4】
Aは小さな一価カチオンであり、A’は大きな一価カチオンであり、M
Iは一価金属カチオンであり、M
IIは二価金属カチオンであり、M
IIIは三価金属カチオンであり、Xはアニオンである、請求項3に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項5】
前記小さな一価カチオンは、メチルアンモニウム(MA
+)、ホルムアミジニウム(FA
+)、Cs
+、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項4に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項6】
前記大きな一価カチオンは、脂肪族又は芳香族アルキルアンモニウムである、請求項
4に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項7】
前記一価金属カチオンは、Ag
+であり、及び/若しくは前記二価金属カチオンは、Pb
2+、Sn
2+、Ga
2+、Ge
2+、及びそれらの組合せからなる群から選択され、並びに/又は前記三価金属カチオンは、Bi
3+、In
3+、Sb
3+、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項4~6のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項8】
前記アニオンは、ハロゲン化物アニオンである、請求項4~
6のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項9】
前記アニオンは、臭化物(Br
-)、ヨウ化物(I
-)、及び塩化物(Cl
-)の混合物である、請求項8に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項10】
前記ペロブスカイト層(4)は、不動態化剤を備える、請求項1~
6のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項11】
前記不動態化剤は、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエチルアミン(EDEA)、2,2’-(オキシビス(エチレンオキシ))ジエチルアミン(ODEA)、5-アミノ吉草酸(5-AVA)、5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩(5-AVAI)、もしくは5-アミノ吉草酸臭化水素酸塩(5-AVABr)、又はそれらの組合せである、請求項10に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項12】
前記多機能光電子デバイス(10)は駆動回路を備え、前記感知回路は、前記駆動回路に一体化される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項13】
前記ETL(3)及び/又は前記HTL(5)の厚さは、20nmから100nmであり、前記ペロブスカイト層(4)の厚さは、50nmから500nmである、請求項1~
6のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項14】
前記ETL(3)は、エトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)改質された、又は純粋な酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO
2)、又は酸化チタン(TiO
2)である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【請求項15】
前記HTL(5)は、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-コ-N-(4-sec-ブチルフェニル)-ジフェニルアミン)(TFB)/酸化モリブデン(MoO
x)である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
本発明について様々な実施形態を参照して述べたが、本発明の範囲から逸脱することなく変更がなされ得ることを当業者なら理解するであろう。詳細な説明は例示的なものとみなされること、およびすべての均等物を含む添付の特許請求の範囲は本発明の範囲を規定しようとするものであることが意図されている。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[C1]
多機能光電子デバイス(10)であって、
発光モード及び感知モードで交互に動作するように構成された少なくとも1つの光応答性のペロブスカイト発光ダイオード(LED、1)を備え、前記少なくとも1つのペロブスカイトLED(1)は、カソード(2)と、最低空分子軌道(LUMO)レベル及び最高被占分子軌道(HOMO)レベルを有する電子輸送層(ETL、3)と、伝導帯(CB)及び価電子帯(VB)を有するペロブスカイト層(4)と、LUMOレベル及びHOMOレベルを有する正孔輸送層(HTL、5)と、アノード(6)とを備え、前記ETL(3)の前記LUMOレベルは、前記ペロブスカイト層の前記CBのボトムより低く、前記HTL(5)の前記HOMOレベルは、前記ペロブスカイト層(4)の前記VBのトップより高く、
前記多機能光電子デバイス(10)は、前記少なくとも1つのペロブスカイトLED(1)を通る電流を決定するように構成されたセンサを備える感知回路と、前記少なくとも1つのペロブスカイトLED(1)を通る電流の関数として前記ペロブスカイトLED(1)の前記発光モードと前記感知モードとの間を選択するように構成されたスイッチとをさらに備える、
多機能光電子デバイス(10)。
[C2]
前記ペロブスカイト層(4)は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを備える、C1に記載の多機能光電子デバイス(10)。
[C3]
前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、一般式AM
II
X
3
を有する金属ハロゲン化物ペロブスカイト、一般式A
2
M
I
M
III
X
6
を有するダブルペロブスカイト、一般式A’A
n
M
n
X
3n+1
を有する層状ペロブスカイト、又はそれらの組合せである、C2に記載の多機能光電子デバイス(10)。
[C4]
Aは小さな一価カチオンであり、A’は大きな一価カチオンであり、M
I
は一価金属カチオンであり、M
II
は二価金属カチオンであり、M
III
は三価金属カチオンであり、Xはアニオンである、C3に記載の多機能光電子デバイス(10)。
[C5]
前記小さな一価カチオンは、メチルアンモニウム(MA
+
)、ホルムアミジニウム(FA
+
)、Cs
+
、及びそれらの組合せからなる群から選択される、C4に記載の多機能光電子デバイス(10)。
[C6]
前記大きな一価カチオンは、脂肪族又は芳香族アルキルアンモニウムである、C4又は5に記載の多機能光電子デバイス(10)。
[C7]
前記一価金属カチオンは、Ag
+
であり、及び/若しくは前記二価金属カチオンは、Pb
2+
、Sn
2+
、Ga
2+
、Ge
2+
、及びそれらの組合せからなる群から選択され、並びに/又は前記三価金属カチオンは、Bi
3+
、In
3+
、Sb
3+
、及びそれらの組合せからなる群から選択される、C4~6のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
[C8]
前記アニオンは、ハロゲン化物アニオンである、C4~7のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
[C9]
前記アニオンは、臭化物(Br
-
)、ヨウ化物(I
-
)、及び塩化物(Cl
-
)の混合物である、C8に記載の多機能光電子デバイス(10)。
[C10]
前記ペロブスカイト層(4)は、不動態化剤を備える、C1~9のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
[C11]
前記不動態化剤は、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエチルアミン(EDEA)、2,2’-(オキシビス(エチレンオキシ))ジエチルアミン(ODEA)、5-アミノ吉草酸(5-AVA)、5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩(5-AVAI)、もしくは5-アミノ吉草酸臭化水素酸塩(5-AVABr)、又はそれらの組合せである、C10に記載の多機能光電子デバイス(10)。
[C12]
前記多機能光電子デバイス(10)は駆動回路を備え、前記感知回路は、前記駆動回路に一体化される、C1~11のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
[C13]
前記ETL(3)及び/又は前記HTL(5)の厚さは、20nmから100nmであり、前記ペロブスカイト層(4)の厚さは、50nmから500nmである、C1~12のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
[C14]
前記ETL(3)は、エトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)改質された、又は純粋な酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO
2
)、又は酸化チタン(TiO
2
)である、C1~13のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
[C15]
前記HTL(5)は、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-コ-N-(4-sec-ブチルフェニル)-ジフェニルアミン)(TFB)/酸化モリブデン(MoO
x
)である、C1~14のいずれか一項に記載の多機能光電子デバイス(10)。
【国際調査報告】