(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】化粧建築ボードのための顔料インク受容層
(51)【国際特許分類】
C09D 133/04 20060101AFI20250130BHJP
C09D 7/42 20180101ALI20250130BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20250130BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20250130BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20250130BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20250130BHJP
B41M 5/52 20060101ALI20250130BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20250130BHJP
B41M 5/50 20060101ALI20250130BHJP
C04B 41/48 20060101ALI20250130BHJP
C04B 41/82 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C09D133/04
C09D7/42
C09D7/61
C09D7/63
B05D7/00 L
B05D7/24 302P
B05D7/24 303L
B41M5/52 100
B41M5/00 120
B41M5/50 120
C04B41/48
C04B41/82 A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024544964
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2024-09-13
(86)【国際出願番号】 CN2022075281
(87)【国際公開番号】W WO2023142139
(87)【国際公開日】2023-08-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523036041
【氏名又は名称】ホイバッハ・ホールディング・スウィッツァーランド・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】リュー・チェン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ・チンボー
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ジエンピン
【テーマコード(参考)】
2H186
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
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4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、インク受容層を含むコーティングされた建築ボードを製造するための方法に関し、
i) 建築ボードの表面の少なくとも一部に以下を含む水性コーティング組成物を塗布すること、
a) 前記コーティング組成物の5~40質量%のアクリルポリマー、
b) 前記コーティング組成物の1~6質量%のモレキュラーシーブ、および
c) 前記コーティング組成物の1~30質量%の顔料、
ii) コーティング組成物を硬化させること、
を少なくとも含む。
本発明はまた、アクリルポリマー、モレキュラーシーブおよび顔料を含むインク受容層を製造するための水性組成物、およびその使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク受容層を含むコーティングされた建築ボードを製造するための方法であって、
i) 建築ボードの表面の少なくとも一部に以下を含む水性コーティング組成物を塗布すること、
a) 前記コーティング組成物の5~40質量%のアクリルポリマー、
b) 前記コーティング組成物の1~6質量%のモレキュラーシーブ、および
c) 前記コーティング組成物の1~30質量%の顔料、
ii) コーティング組成物を硬化させること、
を少なくとも含む前記方法。
【請求項2】
水性コーティング組成物が塗布される建築ボードの表面が、着色プライマー層を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水性コーティング組成物が塗布された建築ボードの表面が、シーリング層を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
モレキュラーシーブがマイクロポーラスモレキュラーシーブであり、好ましくはゼオライトから成る群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
モレキュラーシーブの細孔の少なくとも90%が、0.1nm~2nmの間の孔径を有し、好ましくはモレキュラーシーブが3Å、4Åまたは5Åのゼオライトである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
アクリルポリマーが、アクリルモノマー組成物のフリーラジカル重合によって得られるアクリルポリマーを含み、ここで、アクリルモノマーは、アクリレート、メタクリレート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、エポキシアルキルアクリレート、エポキシアルキルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸およびこれらの混合物、ならびに任意にエチレン性不飽和コモノマーから成る群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
顔料が、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、鉛白、アンチモンホワイト、炭酸カルシウムおよびリトポンから成る群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
水性コーティング組成物が、フィルム形成剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、中和剤、殺生物剤、艶消し剤および保湿剤から成る群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
水性コーティング組成物が艶消し剤を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
艶消し剤が、二酸化ケイ素およびワックス粉末の少なくとも一つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
水性コーティング組成物が保湿剤を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水性コーティング組成物がフィルム形成剤を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
a) 5~40質量%のアクリルポリマー、
b) 1~6質量%のモレキュラーシーブ、および
c) 1~30質量%の顔料
を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項14】
a) 5~40質量%のアクリルポリマー、
b) 1~6質量%のモレキュラーシーブ、
c) 1~30質量%の顔料、
d) 任意に0~2質量%の消泡剤、
e) 任意に0~2質量%の分散剤または湿潤剤、
f) 任意に0~15質量%の艶消し剤、
g) 任意に0~10質量%のフィルム形成剤、
h) 任意に0~2質量%の増粘剤、
i) 任意に0~1質量%の殺生物剤、
j) 任意に0~1質量%の中和剤、および
k) 任意に0~5質量%の保湿剤
を含む、請求項13に記載の水性コーティング組成物。
【請求項15】
a) 10~35質量%のアクリルポリマー、
b) 2~5.5質量%のモレキュラーシーブ、
c) 2.5~25質量%の顔料、
d) 0.1~2質量%の消泡剤、
e) 0.1~2質量%の分散剤または湿潤剤、
f) 0.1~15質量%の艶消し剤、
g) 0.1~10質量%のフィルム形成剤、
h) 0.1~2質量%の増粘剤、
i) 0.05~1質量%の殺生物剤、
j) 0.05~1質量%の中和剤、および
k) 0.1~5質量%の保湿剤
を含む、請求項14に記載の水性コーティング組成物。
【請求項16】
建築ボードの表面の少なくとも一部に、請求項1~15の1つに記載の硬化されたコーティング組成物のインク受容層を含む、コーティングされた建築ボード。
【請求項17】
建築ボードがセメント板、石膏板、セラミック板、金属板、木材板、ポリマー樹脂板、ケイ酸カルシウム板、珪藻土板、および、ポリスチレン板である請求項16記載のコーティングされた建築ボード。
【請求項18】
水性インクによるインクジェット印刷のための基材としての請求項16および17のいずれか1項に記載の建築ボードの使用。
【請求項19】
水性インクによるインクジェット印刷のための基材として使用される建築ボード上のインク受容層を製造するための、請求項1~15の1項に記載の水性コーティング組成物の使用。
【請求項20】
水性コーティング組成物が、着色プライマー層を含まない建築ボードの表面に塗布される、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、化粧建築ボードの製造のための水性インク用の顔料インク受容層、および顔料インク受容層を含むコーティングされた建築ボードの製造方法に関する。より具体的には、本発明は、アクリルポリマー、モレキュラーシーブおよび顔料を含有する、コーティングされた建築ボードを製造するための水性コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
例えば、各種化粧建築ボードにはインクジェット印刷で着色パターン(色柄)を付けることができ、これによって、効率的な生産と個性的なデザインが可能となる。溶剤系インクやUVインクに比べ、水性インクは耐候性の高い顔料を使用できるため、外壁用途に適しており、注目されている。さらに、重要な利点としては水性インクは環境に優しいという点がある。
【0003】
一方、水性インクは溶剤インクやUVインクに比べて硬化しにくいため、水性インクジェット印刷を行うことは困難である。そのため、水性インクは、特に基材が多孔質の場合は基材に浸透しやすく、基材が非多孔質の場合は表面に広がりやすい。そのため、画像の品質が低下する。
【0004】
水性インクで化粧建築ボード上に印刷した画像の発色強度を改善させるために、特開2007-154433号公報は、建築ボード表面にインク受容層を設けることを提案している。インク受容層は、エクステンダー顔料と吸湿性樹脂を含む水性塗料である。特開2007-167826号公報には、インクジェット印刷のインク消費量を低減するために、このようなコーティング組成物を使用することが記載されている。インク受容層へのインクの浸透を抑制し、インクを安定に定着させるために、ポリシロキサンを含むインク受容層が特開2015-051549号公報に提案されている。
【0005】
特開2008-273055号公報には、コーティング層の耐久性を向上させるために、コーティング組成物の固形分中20~80質量%の雲母フィラーを含むインク受容層用コーティング組成物が開示されている。
【0006】
特開2008-063832号公報は、インク受理層へのインク定着性を高め、層の強度低下を防止する化粧建築ボードを提供する。所望の効果を得るために、インク受理層は、アスペクト比が3~70の高アスペクト比のフィラーを含み、層表面で細かく分割することができる。
【0007】
コーティングされた建築ボードは、通常、建築ボードの表面のシーリング層と着色されたプライマー層を含む。したがって、水性コーティング組成物が塗布されえちる建築ボードの表面は、このようなプライマー層によって形成される。プライマー層は、特に顔料を含まないカラーイメージング層をその後に塗布する場合に、背景色を提供するために使用される。建築ボードは通常、シーリング層と白色プライマー層からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-154433号公報
【特許文献2】特開2007-167826号公報
【特許文献3】特開2015-051549号公報
【特許文献4】特開2008-273055号公報
【特許文献5】特開2008-063832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、水性インクジェットインクで印刷した高品質の画像の基材として使用できる建築ボードを提供することである。特に、印刷画像の解像度、色強度、および画像の安定性を向上させることである。これらの目標を達成するために、建築ボードへの水性インクの浸透を低減して低い色強度を回避し、印刷パターンの解像度の向上を達成するために色のにじみを回避する必要がある。
【0010】
一般に、コーティングされた建築ボードの製造工程は、以下のステップ(1)~(10)を含む:
(1) シーリング層をスプレーコーティングする;
(2) シーリング層を乾燥させる;
(3) 着色されたプライマー層をスプレーコーティングする;
(4) プライマー層を乾燥させる;
(5) インク受理層をスプレーコーティングする;
(6) インク受容層を乾燥させる;
(7) インクジェット印刷;
(8) 乾燥;
(9) トップコートをスプレーコーティングする;
(10) トップコートを乾燥させる。
【0011】
実際的な理由(スプレー室とスプレーコート機の数に限りがある)により、ステップ(4)と(5)の間に、プレコートされた建築ボードを製造ラインから取り外して脇に置き(ステープル留め)、スプレーコート機にインク受容層コーティング組成物を装填し、その後、ステープル留めされたプレコートされた建築ボードをさらに処理しなければならないことが非常に多く、これには多数の追加ステップが含まれる。この製造工程を簡略化することも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の説明
この課題は、アクリルポリマー、モレキュラーシーブ、顔料を含むインク受容層(カラーイメージング層)によって解決される。
【0013】
より具体的には、この課題は、インク受容層(カラーイメージング層)を含むコーティングされた建築ボードの製造方法によって解決され、この方法は、少なくとも以下を含む:
i) 建築ボード(建築板)の表面の少なくとも一部に以下を含む水性コーティング組成物の塗布する
a) コーティング組成物の5~40質量%のアクリルポリマー、
b) コーティング組成物の1~6質量%のモレキュラーシーブ、および
c) コーティング組成物の1~30質量%の顔料、
建築ボードの表面の少なくとも一部に形成する工程と
ii) コーティング組成物を硬化させる。
【0014】
この課題は、
a) コーティング組成物の5~40質量%のアクリルポリマー、
b) コーティング組成物の1~6質量%のモレキュラーシーブと
c) コーティング組成物の1~30質量%の顔料。
を含む水性コーティング組成物によっても解決される。
【0015】
好ましくは、水性コーティング組成物が塗布される建築ボードの表面は、着色プライマー層を含まない。
【0016】
しかしながら、水性コーティング組成物が塗布される建築ボードの表面は、好ましくはシーリング層を含む。
【0017】
顔料をインク受容層に含有させることで、着色プライマー層が不要となり、以下のように製造工程が簡略化される:
(1) シーリング層をスプレーコーティングする;
(2) シーリング層を乾燥させる;
(3) インク受理層をスプレーコーティングする;
(4) インク受容層を乾燥させる;
(5) インクジェット印刷;
(6) 乾燥;
(7) トップコートをスプレーコーティングする;
(8) トップコートを乾燥させる。
【0018】
さらに、プレコートされた建築ボードを生産ラインから取り出して脇に置き、スプレーコーティング機にさらなるコーティング組成物を再装填し、さらなる処理のためにプレコートされたボードを生産ラインに再装填するという追加の工程は必要ない。したがって、製造工程はより単純になる。
【0019】
本発明のコーティングされた建築ボードは、アクリルポリマーエマルジョン、モレキュラーシーブおよび顔料を含む水性コーティング組成物によって得られ、建築ボードの表面で硬化させることができる。
【0020】
本発明の水性コーティング組成物は、アクリルポリマーエマルジョンを含む。アクリルエマルションは、アクリルモノマー組成物のフリーラジカル重合によって得られるアクリルポリマーa)を含み、ここで、アクリルモノマーは、アクリレート、メタクリレート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、エポキシアルキルアクリレート、エポキシアルキルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸およびこれらの混合物、ならびに任意にエチレン性不飽和コモノマーから成る群から選択される。
【0021】
好ましいアクリルポリマーa)は、アクリレート、メタクリレート、(C1-C4)-アルキルアクリレート、(C1-C4)-アルキルメタクリレート、アクリル酸およびこれらの混合物、ならびに任意にエチレン性不飽和コモノマーから成る群のモノマーから誘導される。
【0022】
好ましいコモノマーは、(C1-C6)-アルキレン、特にエチレン、プロピレンおよびブチレン、ならびにスチレンの群から選択される。
【0023】
アクリルポリマーエマルジョンには、アクリルシリコーン樹脂のエマルジョンも含まれる。
【0024】
アクリルモノマー組成物は、好ましくは少なくとも50質量%のアクリルモノマーと50質量%未満のエチレン性不飽和コモノマーを含む。
【0025】
アクリルエマルジョン中の固体アクリルポリマーa)の含有量は、一般に20~75質量%、好ましくは30~70質量%、特に好ましくは30~60質量%の範囲である。
【0026】
アクリルポリマーエマルジョンの含水率は、一般に25~80質量%、好ましくは30~70質量%、特に好ましくは40~70質量%である。
【0027】
本発明の水性コーティング組成物は、モレキュラーシーブb)をさらに含む。
【0028】
モレキュラーシーブは、比較的均一な大きさの孔を持つ多孔質材料である。モレキュラーシーブの孔径は低分子と同程度であるため、例えば水のような低分子とは逆に高分子は吸着できない。モレキュラーシーブの孔径はÅ(オングストローム)またはnm(ナノメートル)で表される。モレキュラーシーブは、孔径が2nm(20Å)未満のマイクロポーラス材料、孔径が2~50nm(20~500Å)のメソポーラス材料、孔径が50nm(500Å)を超えるマクロポーラス材料に分類される。200nm(2000Å)を超える細孔径を有するマクロポーラス材料は、本発明の意味においてモレキュラーシーブとはみなされない。
【0029】
本発明の所望の効果を達成するためには、マイクロポーラスモレキュラーシーブの使用が好ましい。好ましいモレキュラーシーブb)は、狭い孔径分布を有し、モレキュラーシーブの孔の少なくとも90%が0.1nm~2nm、より好ましくは0.2nm~0.8nmの孔径を有する。
【0030】
マイクロポーラスモレキュラーシーブは、例えば、アルミノケイ酸塩鉱物(ゼオライト)、リン変性小孔質ゼオライト、多孔質ガラス、活性炭、およびモンモリロナイトのような小孔質粘土の群から選択することができる。
【0031】
好ましいモレキュラーシーブb)は、0.5nm以下の有効径を有する分子、例えば、水を吸着することができる。有用なシーブは、モレキュラーシーブの重量と比較して、20℃で少なくとも5質量%の水、より好ましくは10質量%超の水を吸着することができる。
【0032】
好ましいマイクロポーラスモレキュラーシーブは、ゼオライトの群から選択される。特に好ましいのは、3Å、4Åまたは5Åのゼオライトである。
【0033】
好適なゼオライトは、一般式(I)
Mn+
x/n・[(AlO2)-
x・(SiO2)y]・zH2O (I)
ここで
nは、1、2、3または4であり、好ましくはnは1または2であり;
Mは、一価、二価、三価、または、四価の金属またはそれらの混合物の群から選択され、好ましくはMはアルカリ金属、アルカリ土類金属およびそれらの混合物の群から選択され、カリウム、ナトリウム、マグネシウムおよびカルシウムの群の金属が最も好ましく;
xは、1~10の間、好ましくは1~3の間であり、
式(I)のゼオライトの比x/yは1~5、より好ましくは1~3、最も好ましくは約2、すなわち1.8~2.2である。
【0034】
ゼオライトの含水率は広い範囲で変化し得る。例えば、ゼオライトの構造を破壊することなく、加熱によってゼオライトから水を除去することができる。その逆に、ゼオライトは化合物の容量がなくなるまで水を吸収することができる。例えば、好ましいゼオライトタイプ(xおよびx/yは1~3の範囲)の乾燥ゼオライトは、ゼオライトの重量と比較して最大30質量%の水を吸着することができる。式(I)のゼオライトの含水率zは、典型的には0~50、好ましくは1~30の範囲である。好ましいゼオライトの場合、xが1~3の範囲であり、x/y比が1~3の範囲であり、zは典型的には10未満である。
【0035】
ゼオライトタイプの最も好ましいモレキュラーシーブb)は、3Å、4Åまたは5Åのゼオライトシーブスである。
【0036】
典型的な3Åシーブの化学式
x’K2O・x’’Na2O・Al2O3・ySiO2・zH2O
ここで
x’とx’’は、0.3~0.7の範囲にあり、x’+x’’は1であり;
yは、1.8~2.2の範囲であり、好ましくは、yは2であり、そして
zは、8未満であり、zは好ましくは3~6の範囲、典型的には4.5である。
【0037】
典型的な4Åシーブの化学式
Na2O・Al2O3・ySiO2・zH2O
ここで
yは、1.8~2.2の範囲であり、好ましくは、yは2であり、そして
zは、8未満であり、zは好ましくは3~6の範囲、典型的には4.5である。
【0038】
典型的な5Åシーブの化学式
x’CaO・x’’Na2O・Al2O3・ySiO2・zH2O
ここで
x’は、0.6から0.8の範囲であり、
x’’は、0.2~0.4の範囲にあり、
x’+x’’は、1であり;
yは、1.8~2.2の範囲であり、好ましくは、yは2であり、そして
zは、8未満であり、zは好ましくは3~6の範囲、典型的には4.5である。
【0039】
3Å、4Å、5Åのゼオライトを含む多種多様なマイクロポーラスモレキュラーシーブが市販されている。しかしながら、4Åシーブは、ケイ酸ナトリウムとアルミン酸ナトリウムの水溶液を80℃で混合することで製造することができる。その後、400℃で焼成してシーブを活性化する。3Åおよび5Åシーブは、4Åシーブからナトリウムとカリウム(3Åシーブ用)またはナトリウムとカルシウム(5Åシーブ用)の陽イオン交換によって製造することができる。
【0040】
メソポーラスモレキュラーシーブは、例えば二酸化ケイ素である。マクロポーラスモレキュラーシーブの例としては、孔径200~1000Åの多孔性シリカ化合物が挙げられる。
【0041】
モレキュラーシーブの孔(細孔)の大きさは、材料自体の格子の大きさに依存し、主にカチオンイオンの大きさによって決まる。チャネル(細孔)のサイズを含む多種多様なゼオライトの構造は、’’Atlas of Zeolite Framework Types’’ (Baerlocher et al.. Elsevier. Sixth Revised Edition. 2007)にまとめられている。
【0042】
好ましいモレキュラーシーブb)は、0.5nm以下の有効径を有する分子、例えば水などを吸着することができる。有用なシーブは、モレキュラーシーブの重量と比較して、少なくとも5質量%の水、より好ましくは10質量%以上の水を吸着することができる。
【0043】
モレキュラーシーブは、好ましくは粉末の状態で水性コーティング組成物に適用される。好ましい粉末は、0.1μm~250μmの範囲の平均粒径を有し、好ましくは、平均粒径は1μm~50μmである。粒子の少なくとも80%、特に少なくとも90%の平均粒径がこの範囲内にあることが好ましい。
【0044】
モレキュラーシーブ粒子の粒度分布は、レーザー回折分析によって測定することができる。平均粒径は、例えばHoribaのLA 940やMalvern社のMastersizer 3000を用いて、「Mie散乱理論」評価によるレーザー光散乱法により決定することができる。異なる長さの軸を有する粒子、例えば楕円体または円盤の形状を有する粒子の場合、最大の軸が平均粒径を決定する。本発明の粒子は、好ましくはガウス形状の狭い粒度分布を有する。好ましくは、粒度分布の標準偏差は、平均粒径の10%~120%である。より好ましくは、標準偏差は20%~90%である。
【0045】
水性コーティング組成物は、好ましくは2~6質量%、より好ましくは2~5.5質量%、特に好ましくは3~5質量%のモレキュラーシーブを含む。アクリルポリマーの量(固形分)は、水性コーティング組成物の総重量に基づいて、好ましくは10~35質量%の範囲、より好ましくは10~30質量%の範囲、特に好ましくは15~30質量%の範囲である。
【0046】
本発明の水性コーティング組成物は、顔料c)をさらに含む。顔料は、無機顔料または有機顔料から選択することができる。使用され得る顔料は、エマルション塗料のための当業者に公知の全ての顔料である。好ましい顔料は、二酸化チタン、好ましくはルチル形態、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛、三酸化アンチモンおよびリトポン(硫化亜鉛および硫酸バリウム)である。しかしながら、水性製剤は着色顔料、例えば酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト、発光顔料、亜鉛イエロー、亜鉛グリーン、ウルトラマリン、マンガンブラック、アンチモンブラックまたはマンガンバイオレットを含むこともできる。有機顔料は、例えば、アゾ染料、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリノン、セピア、ガンボージ、インジゴ、アントラキノイド、インジゴイド染料、ジオキサジン、金属錯体顔料などである。
【0047】
最も好ましい顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、鉛白(ヒドロキシ炭酸鉛、2PbCO3・Pb(OH)2)、アンチモンホワイト(酸化アンチモン(III)、Sb2O3)、炭酸カルシウム(チョーク)およびリトポンである。特に好ましいのは二酸化チタンである。
【0048】
顔料は、水性コーティング組成物の総重量に基づいて、1~30質量%、好ましくは2.5~25質量%、より好ましくは5~25質量%の量で水性コーティング組成物に添加される。
【0049】
水性コーティング組成物は、任意の添加剤を含んでいてもよい。有用な添加剤の例としては、消泡剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、フィルム形成剤、艶消し剤、中和剤、殺生物剤および保湿剤が挙げられる。添加剤は、アクリルポリマーエマルジョンまたはエマルジョンを含む水性コーティング組成物に適用することができる。
【0050】
慣例的な添加剤としては、消泡添加剤d)、例えば脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、シラン化シリカ、パラフィンオイルを含むパラフィン、ポリエーテル、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはEO/POコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0051】
消泡添加剤d)は、例えば脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、シラン化シリカ、パラフィンオイルを含むパラフィン、ポリエーテル、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはEO/POコポリマー、アルキングリコール、例えばアセチレンジオール、およびこれらの混合物である。
【0052】
消泡剤d)は、通常、水性コーティング組成物の総量を基準として、0.1~2質量%の量で使用される。
【0053】
慣用の添加剤にはさらに、分散剤または湿潤剤e)、例えばナトリウム、カリウムまたはアンモニウムポリホスフェート、ポリアクリル酸およびポリマレイン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、スチレン無水マレイン酸コポリマー、ポリホスホネート、アミノアルコール、例えば-2-アミノ2-メチルプロパノールが含まれ。分散剤または湿潤剤は、好ましくは、水性コーティング組成物の総重量に基づいて、2質量%までの量で使用される。
【0054】
通常、アクリルポリマーエマルジョンのアクリルポリマーは自己乳化性である。したがって、追加の分散剤の量は少なくてよい。水性コーティング組成物中の分散剤の含有量は、通常、水性コーティング組成物の総重量に基づいて、0.1~2質量%、好ましくは0.1~1質量%の範囲である。
【0055】
艶消し剤f)は、コーティング組成物の総重量に基づいて、0.1~15質量%の量で水性コーティング組成物中に存在し得る。好ましいくは、2~15質量%の艶消し剤の含有量である。好適な艶消し剤は、二酸化ケイ素、ワックスおよびセルロースのような多糖類である。
【0056】
好ましい水性コーティング組成物は、1種以上の艶消し剤f)を含む。好ましくは、艶消し剤は、二酸化ケイ素およびセルロースのような多糖類の少なくとも一方、特にそれらの両方を含む。
【0057】
好適なフィルム形成剤g)は、例えばポリビニルピロリドン、グリコールエーテルまたはグリコールエステルまたはそれらの組み合わせである。グリコールエーテルの例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ポリエチレングリコールエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、および、エチレングリコールジブチルエーテルである。グリコールエステルとしては、例えばエチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、および、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0058】
フィルム形成添加剤g)の含有量は、典型的には、水性コーティング組成物の総量を基準にして、0.1~10質量%である。0.5~5質量%の範囲の量が好ましい。
【0059】
好ましい水性コーティング組成物は、1種以上のフィルム形成剤g)を含む。
【0060】
水性コーティング組成物に使用することができる増粘剤h)は、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、さらにカゼイン、アラビアガム、デンプン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、スチレン/無水マレイン酸ポリマー、ポリエーテルウレタン、これらは親水変性することでき、疎水的に修飾されたアクリル酸コポリマー(HASE)、ポリアクリル酸ナトリウム、有機シリコーン、およびポリエーテルポリオールである。
【0061】
アクリル酸および(メタ)アクリル酸をベースとする水溶性コポリマー、例えば、アクリル酸/アクリルアミドおよび(メタ)アクリル酸/アクリル酸エステルコポリマーなども増粘性があり、好適である。
【0062】
例えばベントナイトのような無機増粘剤を使用することもできる。
【0063】
アクリルポリマーとポリウレタンのグループの増粘剤の使用が特に好ましい。
【0064】
コーティング組成物の全重量に基づく増粘剤h)の量は、典型的には0.1~2質量%である。
【0065】
慣用の添加剤はさらに殺生物剤i)である。好適な殺生物剤は、例えば5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンおよびブロモポール(2-ブロモ-2-ニトロ-1.3-プロパンジオール、CAS番号:52-51-7)である。殺生物剤は一般に0.05~1質量%、好ましくは0.05~0.5質量%の量で存在する。
【0066】
用途によっては、水性コーティング組成物のpH値の調整が望まれる。pH値を調整するために、一般的な中和剤j)を使用することができる。中和剤の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはアミン誘導体である。ほとんどの用途では、7~11の範囲のpH値が望ましい。中和剤は、所望のpH値になるまでコーティング組成物に添加される。中和剤は通常、0.05~1質量%の量で存在する。
【0067】
水性コーティング組成物は、任意に、1種以上の保湿剤k)を含む。保湿剤は添加剤組成物の一部であってもよい。保湿剤の量は、コーティング組成物の総重量に基づいて、典型的には0.1~5質量%、好ましくは0.5~5質量%である。
【0068】
好適なのは水混和性保湿剤で、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジ-エチレングリコール、プロピレングリコール、ジ-プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびエチレングリコールまたはプロピレングリコールのモノ-メチルエーテルまたはジ-メチルエーテルである。
【0069】
好ましい水性コーティング組成物は、1種以上の保湿剤k)、例えば1.2-プロパンジオールを含む。
【0070】
特に好ましい水性コーティング組成物は、アクリルポリマーa)、モレキュラーシーブb)および顔料c)に加えて、少なくとも艶消し剤e)、少なくともフィルム形成剤g)および少なくとも1種の保湿剤k)を、好ましくは上記で規定した量で含む。
【0071】
モレキュラーシーブをアクリルポリマーエマルジョンに添加して、水性コーティング組成物を得ることができる。モレキュラーシーブは、シーブが完全に分散するまで攪拌することにより、アクリルポリマーエマルションに単に組み込むことができる。添加剤や顔料は、通常、攪拌下で段階的に添加することができる。
【0072】
アクリルポリマーエマルジョン中に既に存在する水の他に、適切であれば、追加の水を水性コーティング組成物に加えることができる。しかしながら、コーティング組成物中の水の全体含有量は75質量%を超えてはならず、一般的には30~75質量%である。好ましくは、本発明の水性コーティング組成物の全体の水の含有量は、35~65質量%、特に40~60質量%の範囲である。
【0073】
一般に、本発明の水性コーティング組成物は、以下を含む。
a) 5~40質量%のアクリルポリマー、
b) 1~6質量%のモレキュラーシーブ、
c) 1~30質量%の顔料、
d) 任意に0~2質量%の消泡剤、
e) 任意に0~2質量%の分散剤または湿潤剤、
f) 任意に0~15質量%の艶消し剤、
g) 任意に0~10質量%のフィルム形成剤、
h) 任意に0~2質量%の増粘剤、
i) 任意に0~1質量%の殺生物剤、
j) 任意に0~1質量%の中和剤、および
k) 任意に0~5質量%の保湿剤。
【0074】
本発明の好ましい水性コーティング組成物は、以下を含む。
a) 10~35質量%のアクリルポリマー、
b) 2~5.5質量%のモレキュラーシーブ、
c) 2.5~25質量%の顔料、
d) 0.1~2質量%の消泡剤、
e) 0.1~2質量%の分散剤または湿潤剤、
f) 0.1~15質量%の艶消し剤、
g) 0.1~10質量%のフィルム形成剤、
h) 0.1~2質量%の増粘剤、
i) 0.05~1質量%の殺生物剤、
j) 0.05~1質量%の中和剤、および
k) 0.1~5質量%の保湿剤。
【0075】
本発明の特に好ましい水性コーティング組成物は、以下を含む。
a) 10~30質量%のアクリルポリマー、
b) 2~5質量%のモレキュラーシーブ、
c) 5~25質量%の顔料、
d) 0.1~1質量%の消泡剤、
e) 0.1~1質量%の分散剤または湿潤剤、
f) 2~15質量%の艶消し剤、
g) 0.5~5質量%のフィルム形成剤、
h) 0.1~2質量%の増粘剤、
i) 0.05~0.5質量%の殺生物剤、
j) 0.05~1質量%の中和剤、および
k) 0.5~5質量%の保湿剤。
【0076】
水性コーティング組成物は、例えばスプレーガンなどのスプレー装置によって建築ボードの表面に塗布することができる。あるいは、コーティング組成物を表面にブラッシングしたり、ドクターブレードで塗布したりすることもできる。
【0077】
典型的には、水性コーティング組成物は、10g/m2~300g/m2、好ましくは20g/m2~200g/m2の範囲で塗布される。
【0078】
次いで、建築ボードに塗布された水性コーティング組成物を硬化させて、建築ボードの表面にカラーイメージング層(インク受容層)を得る。硬化は、70℃~300℃の温度で1分~1時間コーティングを乾燥させることによって達成することができる。得られたカラーイメージング層が水性インクを取り込むことができれば、コーティングは十分に乾燥している。コーティングされた建築ボードはオーブンで乾燥してもよい。150℃~250℃の温度で2分~150分間乾燥させるのが好ましい。
【0079】
建築ボード上のカラーイメージング層の厚さは、通常5μm~500μmの間、好ましくは10μm~200μmの間である。
【0080】
カラーイメージング層が表面に十分に固定できる限り、さまざまな建築材料が建築ボードとして使用できる。例えば、セメント板、石膏板、セラミック板、金属板、木材板、高分子樹脂板などが適している。好ましくは、セメントまたは石膏を含む建築ボードが使用される。これらの板では、カラーイメージング層の接着性が優れている。また、繊維強化建築ボード、特にガラス繊維またはポリマー繊維を含むセメント板も好適である。
【0081】
コーティングされた建築ボードは、好ましくはシーリング層を含む。シーリング層は、建築ボードの表面に塗布することができる。したがって、水性コーティング組成物が塗布される建築ボードの表面は、このような層によって形成される。典型的なシーラーは、水ベースのまたは溶剤ベースのアクリル樹脂、エポキシ/ウレタン系、シラン、ケイケート、シリコネート、シロキサンなどである。
【0082】
本発明のさらなる実施形態は、上記のような硬化コーティング組成物のカラーイメージング層(インク受容層)を含むコーティングされた建築ボードである。
【0083】
コーティングされた建築ボードは、水性インクでカラーイメージング層にカラーパターンや画像を印刷するのに特に有用である。水性インクは、例えばインクジェット印刷によってカラーイメージング層に直接印刷することができる。印刷模様は容易に個性化できる。コーティングされた建築ボードは、DIY(Do it yourself)印刷に適している。
【0084】
水性インクをカラーイメージング層に塗布すると、インクが素早く定着し、色のにじみが大幅に減少する。印刷されたパターンや画像の解像度が向上する。さらに、カラーイメージング層への水性インクの浸透が速いため、高い色強度を得ることができる。
【0085】
いかなる理論に束縛されることなく、水性インクからのモレキュラーシーブによる水の吸着が促進され、同時に、水性インクの成分として提供される着色剤および顔料のカラーイメージング層への浸透が著しく遅延されることによって、所望の効果が達成される。これにより、低色のにじみと高い色強度が得られる。
【0086】
カラーイメージング層は、水分含有量が40~70質量%で、顔料含有量が0.1~20質量%の範囲の水性インクを塗布するのに特に有用である。典型的な水性インクは、さらに40質量%までの保湿剤、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、30質量%までの界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびpH調整剤を含む。任意に、水性インクは20質量%までのアクリル樹脂を含むことができる。
【0087】
したがって、本発明のさらなる実施形態は、水性インクを用いたインクジェット印刷のための基材として、本明細書に記載のカラーイメージング層を含む建築ボードを使用することである。
【0088】
本発明はまた、建築ボードの表面の少なくとも一部に、本明細書に記載の硬化されたコーティング組成物のカラーイメージング層を含む、コーティングされた建築ボードにも関する。好ましくは、建築ボードは、セメント板、石膏板、セラミック板、金属板、木材板、ポリマー樹脂板、ケイ酸カルシウム板、珪藻土板、ポリスチレン板であるとよい。
【0089】
本発明はまた、水性インクによるインクジェット印刷のための基材として使用される被覆された建築ボード上にカラーイメージング層(インク受容層)を製造するための、本明細書に記載されるような水性コーティング組成物の使用にも関する。好ましくは、そして最も有利には、水性コーティング組成物は、着色プライマー層を含まない建築ボードの表面に塗布される。
【0090】
例
例1~5
実施例1から5の組成物を調製するために使用した成分を、以下の表1に要約する。
【0091】
【0092】
例1
30.1質量部のアクリルエマルジョン(Mowilith DN 7070、Archroma Co. Ltd.製)、15質量部の二酸化チタン(Colanyl White TQ-CN、Clariant Chemicals Ltd.製)、0.15質量部の消泡剤(TEGO FOAMEX 810))、1.35質量部の保湿剤(1.2-プロパンジオール)、1.13質量部の二酸化ケイ素(ACEMATT TS 100;艶消し剤)、4.72質量部のモレキュラーシーブ(W.R.Grace & Co.製のSYLOSIV A 3)、2.71質量部のワックスパウダー(Clariant Chemicals Ltd.製のCeridust 8090 VITA;艶消し剤)、5.83質量部の二酸化ケイ素(W.R.Grace & Co.製のSYLOID W 300;艶消し剤)および1.85質量部の脱イオン化水を、分散機により1300rpmの剪断速度で60分間混合した、
【0093】
次に、15.05質量部のアクリルエマルジョン(Mowilith DN 7070、Archroma Co Ltd製)、18.05質量部の脱イオン水および2.26質量部のフィルム形成剤、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(DPnB、Dow Chemical製)0.15質量部の消泡剤(Surfynol DF-110D、Evonik製)、0.20質量部の殺生物剤(Acticide LA 0614、Thor Chemie製)、0.15質量部の中和剤2-アミノ-2-メチル-1-プロピルアルコール(Dow ChemicalからのAMP 95)の混合物、および0.50質量部の脱イオン水および0.50質量部の増粘剤(Dow ChemicalからのAcrysol TT-615)の混合物を、1300rpmの剪断速度で30分間、完全に分散するまで混合し、コーティング組成物を生成した。
【0094】
実施例1の組成を以下の表2にまとめた。
【0095】
【0096】
実施例2~5によるコーティング組成物を適宜製造した。
実施例1~5の組成物に配合された成分を以下の表3にまとめた。
【0097】
【0098】
コーティング組成物をセメント繊維板に150g/m3の量でスプレーし、200oCの温度において3分間オーブン中で硬化させ、カラーイメージング層を形成した。セメント繊維板は、シーリングコーティングで前処理した。
【0099】
特性評価:
コンテナ内の状態:
硬いブロックがなく、混合後均一。
評価基準
A:適正がある
B:適正なし
【0100】
凍結融解安定性:
GB/T9268-2008に従って:サンプルタンクを冷凍庫に入れ、温度を-5±2°Cに保ち、隣接するサンプルタンクの間およびサンプルタンクとタンク壁の間に少なくとも25mmの隙間を空ける。サンプルタンクは冷蔵庫に18時間入れた後取り出し、23±2℃で6時間を1サイクルとし、3サイクル後に劣化がなく、ハードブロック、凝集、水の成層化などの劣化がないこと。
評価基準
A:適正がある
B:適正なし
【0101】
乾燥時間:
GB/T1728-1979規格の表B法に従い、塗膜の表面を指で軽く触る。指で軽く触ってみて、ベタつきを感じるものの、塗料が指につかないようであれば、塗膜の表面は乾いていると認識する。
評価基準
表面乾燥から2時間以内。
【0102】
接着:
GB/T9286規格に従って:シングルエッジカッターを使用し、プレートの長辺の平行方向と垂直方向に沿って3つの平行なパスを切断する。各パスの間隔は3mm、グリッド数は4である。テープ断裂試験を実施する。試験面を観察すると、ノッチの交点/またはノッチの縁に沿ってコーティングの剥離がある。影響を受ける切断面積は明らかに15%未満である場合、試験結果の等級は≦2である。
【0103】
評価基準
(0) カットのエッジは完全に滑らかで、格子のどの正方形も切り離されていない。
(1) カットの交点でコーティングの小片が剥離すること。5%以下のクロスカット面積が影響を受けている。
(2) エッジに沿って、および/または、カットの交差点で、コーティングが剥がれている。クロスカットの面積が5%超え、15%以下が影響を受けている。
(3) カットの縁に沿って、部分的または全体的に、大きなリボン状にコーティングが剥がれている、および/または、正方形の異なる部分で部分的または全体的にコーティングが剥がれている。クロスカットの面積が15%超、35%以下が影響を受けている。
(4) カットの縁に沿って、コーティングが部分的または全体的に、大きなリボン状に剥がれた、および/または、コーティングが正方形の異なる部分で部分的または全体的に剥がれた。クロスカットの面積が35%超、65%以下が影響を受けている。
(5) 分類4でも分類できない程度の剥がれ。
【0104】
カラーパフォーマンス:
得られた建築ボードを、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色の水性インクを搭載したインクジェット装置の下に配置した。ノズルからの4色のインクの吐出と懸濁は、制御装置によって個別に制御されている。インクジェット印刷は、あらかじめデザインされた画像を建築ボードに直接印刷することで行われた。その後、温度200℃のオーブンで3分間乾燥させ、イメージング層を硬化させた。好ましくは、保護のために、硬化したイメージング層上に透明なトップコートをスプレーする。得られた画像を目視で評価する。
【0105】
評価基準
1(非常に低い)から5(高い)までの色の強さ
解像度は1(非常にぼやけ、鈍く、画像が認識しにくい)~5(画像はきれいで鮮明)まで。
【0106】
性能評価の結果は以下の表4にまとめられている。
【0107】
【国際調査報告】