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特表2025-5040407-アザスピロ[4,5]デカン-6,10-ジオン化合物の結晶形及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】7-アザスピロ[4,5]デカン-6,10-ジオン化合物の結晶形及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 221/20 20060101AFI20250130BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20250130BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20250130BHJP
   A61K 31/45 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C07D221/20 CSP
A61P9/04
A61P9/00
A61K31/45
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544999
(86)(22)【出願日】2023-01-16
(85)【翻訳文提出日】2024-09-20
(86)【国際出願番号】 CN2023072433
(87)【国際公開番号】W WO2023143205
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210103134.0
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211017556.2
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523320526
【氏名又は名称】ソーター・バイオファーマ・プライベイト・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SOTER BIOPHARMA PTE. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100221523
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】顔 小兵
(72)【発明者】
【氏名】来 巍
(72)【発明者】
【氏名】銭 文遠
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC21
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZA36
(57)【要約】
本発明において、7-アザスピロ[4,5]デカン-6,10-ジオン化合物類の結晶形及びその調製方法が開示される。具体的には、式(I)の化合物及びその結晶形の調製方法、並びに前記化合物及びその結晶形の使用が開示される。
(I)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
18.283±0.200°、19.662±0.200°、及び22.420±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを有するX線粉末回析パターン(XPRD)で特徴づけられる、式(I):
【化1】
(I)
の化合物の結晶形A。
【請求項2】
11.143±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、26.259±0.200°、及び28.056±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを有するX線粉末回析パターン(XPRD)で特徴づけられる、請求項1に記載の結晶形A。
【請求項3】
11.143±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、26.259±0.200°、27.261±0.200°、28.056±0.200°、及び30.256±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを有する粉末X線回折パターンで特徴づけられる、請求項2に記載の結晶形A。
【請求項4】
11.143±0.200°、16.522±0.200°、17.053±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、23.909±0.200°、26.259±0.200°、27.261±0.200°、28.056±0.200°、30.256±0.200°、及び33.761±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを有するX線粉末回析パターンで特徴づけられる、請求項3に記載の結晶形A。
【請求項5】
次に示す角度:11.143±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、26.259±0.200°、27.261±0.200°、28.056±0.200°、及び30.256±0.200°から選択される角度2θに代表される、少なくとも5、6、7、または8個の特徴的な回折ピーク、を含むX線粉末回析パターンで特徴づけられる、請求項1に記載の結晶形A。
【請求項6】
11.143°、13.260°、14.860°、16.163°、16.522°、17.053°、17.537°、18.283°、19.662°、22.420°、23.568°、23.909°、26.259°、26.726°、27.261°、28.056°、29.008°、30.256°、31.219°、31.646°、32.037°、32.438°、32.807°、33.761°、34.534°、35.404°、36.856°、37.813°、及び39.456°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを有するX線粉末回析パターンで特徴づけられる、請求項5に記載の結晶形A。
【請求項7】
実質的に図1に示すXRPDパターンを有する、請求項1に記載の結晶形A。
【請求項8】
249.53±3℃及び306.12±3℃に吸熱ピークのピーク値を持つ示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の結晶形A。
【請求項9】
実質的に図2に示すDSC曲線を有する、請求項1に記載の結晶形A。
【請求項10】
200±3℃において最大0.075%の重量減少を伴い、250±3℃において最大0.164%の重量減少を伴う熱重量分析(TGA)曲線を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の結晶形A。
【請求項11】
実質的に図3に示すTGA曲線を有する、請求項1に記載の結晶形A。
【請求項12】
1)アルコール溶媒、酢酸エチル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、またはジクロロメタンに、式(I)の化合物を加えること;
2)15~100℃で1~168時間攪拌すること;
3)濾過し、濾過ケークを回収し、濾過ケークを30~45℃で0.5~2時間真空乾燥させ、あるいは、濾過ケークを35℃で1時間真空乾燥させること;
を含む、請求項1に記載の式(I)の化合物の結晶形Aを調製する方法であって、ここで、前記式(I)の化合物が式(I):
【化2】
(I)
である、方法。
【請求項13】
治療的有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または式(I)の化合物の結晶形A及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項14】
心筋ミオシン阻害剤としての医薬の製造における、請求項1~11のいずれか一項に記載の式(I)の化合物若しくは式(I)の化合物の結晶形A、または請求項13に記載の医薬組成物の使用。
【請求項15】
心不全及び肥大型心筋症の治療のための医薬の製造における、請求項1~11のいずれか一項に記載の式(I)の化合物若しくは式(I)の化合物の結晶形A、または請求項13に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は;
2022年1月27日に出願されたCN202210103134.0;
2022年8月23日に出願されたCN202211017556.2
の優先権を主張する。
【0002】
本出願は、7-アザスピロ[4,5]デカン-6,10-ジオン化合物類の結晶形及びその調製方法を開示し、具体的には、式(I)の化合物及びその結晶形の調製方法及び使用を開示する。
【背景技術】
【0003】
肥大型心筋症(HCM)は、心筋の肥大で特徴づけられる心疾患であり、しばしば心室間隔壁を浸食し、心室腔を狭め、左心室に血液が充填することを妨げ、左心室の拡張期伸展性を低下させる。肥大型心筋症は、遺伝などに関連する可能性がある、左心室流出路の閉塞の有無によって、閉塞性肥大型心筋症と非閉塞性肥大型心筋症に分けられる。全世界におけるHCMの事例は約1/500で、HCMの臨床症状は多岐にわたる。これは無症状性であり得、あるいは動悸、労作性呼吸困難、前胸部の鈍痛、倦怠感、失神及び突然死さえ惹起し得る。末期段階では、心臓の左側に心不全の症状が見受けられる。
【0004】
現在、HCMの治療のための薬剤は限られている。HCMの治療は主に、ベータブロッカーまたはカルシウムチャネルブロッカーを介して症状を改善することであるが、原因を標的にできず、心筋肥大の進行を遅らせることもできず、予後を改善することもできない。前記治療効果は限られている。
【0005】
ミオシン及びアクチンは、心筋収縮の基盤となる物質である。ミオシンのクロスブリッジは、アクチンに周期的に結合及び解離し、筋フィラメントの滑りを駆動し、心筋収縮を惹起する。ミオシンはATPase活性を有し、ATP加水分解によって心筋収縮の動力を提供する。ミオシン変異はミオシンとアクチンの結合時間の延長、左心室心筋の過剰収縮及び弛緩障害をもたらし、左心室肥大及び繊維症をもたらし、HCMを誘発する。MYK-461は、心筋ミオシンのアロステリック調節因子であり、リン酸の加水分解速度を減速し、ミオシンとアクチンの結合時間を短縮し、陰性変力作用をもたらし、病理変化、例えば、左心室心筋の過剰収縮によって惹起される心筋肥大を軽減する。しかしながら、前記薬剤はゆっくりと体内から排出され、体内に留まる時間があまりに長く、用量を素早く調整することが困難である。従って、より良好な活性と、より理想的な薬物動態的特性とを有するミオシン阻害剤の開発には、重大な臨床的価値と意義がある。
【0006】
さらに、心筋サルコメアの異常は、様々な心疾患及び症状、例えば、駆出率が保たれた拡張期心不全、虚血性心疾患、狭心症、及び拘束型心筋症などの駆動要因であると特定されている。ミオシンATPase阻害剤は、心筋収縮を阻害することによって、上記疾患の病理過程を軽減することにおいて、潜在的治療効果を有する可能性もある。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、18.283±0.200°、19.662±0.200°、及び22.420±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ、粉末X線回折パターン(XRPD)で特徴づけられる、式(I);
【化1】
(I)
の化合物の結晶形Aを提供する。
【0008】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Aは、11.143±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、26.259±0.200°、及び28.056±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ、粉末X線回折パターンを有する。
【0009】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Aは、11.143±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、26.259±0.200°、27.261±0.200°、28.056±0.200°、及び30.256±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ、粉末X線回折パターンを有する。
【0010】
本開示の幾つかの実施態様では、次に示す角度:11.143±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、26.259±0.200°、27.261±0.200°、28.056±0.200°、及び30.256±0.200°から選択される角度2θに代表される、少なくとも5、6、7または8個の特徴的な回折ピーク、を含む粉末X線回折パターンで特徴づけられる上記結晶形Aが開示される。
【0011】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Aは、11.143±0.200°、16.522±0.200°、17.053±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、23.909±0.200°、26.259±0.200°、27.261±0.200°、28.056±0.200°、30.256±0.200°、及び33.761±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ、粉末X線回折パターンを有する。
【0012】
本開示の幾つかの実施態様では、次に示す角度:11.143±0.200°、16.522±0.200°、17.053±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、23.909±0.200°、26.259±0.200°、27.261±0.200°、28.056±0.200°、30.256±0.200°、及び33.761±0.200°から選択される角度2θに代表される、少なくとも5、6、7、8、9、10、11または12個の特徴的な回折ピーク、を含む粉末X線回折パターンで特徴づけられる上記結晶形Aが開示される。
【0013】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Aは、11.143±0.200°、13.260±0.200°、16.522±0.200°、17.053±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、23.568±0.200°、23.909±0.200°、26.259±0.200°、27.261±0.200°、28.056±0.200°、29.008±0.200°、30.256±0.200°、33.761±0.200°、及び35.404±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ、粉末X線回折パターンを有する。
【0014】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Aは、11.143±0.200°、13.260±0.200°、14.860±0.200°、16.163±0.200°、16.522±0.200°、17.053±0.200°、17.537±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、23.568±0.200°、23.909±0.200°、26.259±0.200°、26.726±0.200°、27.261±0.200°、28.056±0.200°、29.008±0.200°、30.256±0.200°、31.219±0.200°、31.646±0.200°、32.037±0.200°、32.438±0.200°、32.807±0.200°、33.761±0.200°、34.534±0.200°、35.404±0.200°、36.856±0.200°、37.813±0.200°、及び39.456±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ、粉末X線回折パターンを有する。
【0015】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Aは、11.143±0.100°、13.260±0.100°、14.860±0.100°、16.163±0.100°、16.522±0.100°、17.053±0.100°、17.537±0.100°、18.283±0.100°、19.662±0.100°、22.420±0.100°、23.568±0.100°、23.909±0.100°、26.259±0.100°、26.726±0.100°、27.261±0.100°、28.056±0.100°、29.008±0.100°、30.256±0.100°、31.219±0.100°、31.646±0.100°、32.037±0.100°、32.438±0.100°、32.807±0.100°、33.761±0.100°、34.534±0.100°、35.404±0.100°、36.856±0.100°、37.813±0.100°、及び39.456±0.100°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ、粉末X線回折パターンを有する。
【0016】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Aは、11.143°、13.260°、14.860°、16.163°、16.522°、17.053°、17.537°、18.283°、19.662°、22.420°、23.568°、23.909°、26.259°、26.726°、27.261°、28.056°、29.008°、30.256°、31.219°、31.646°、32.037°、32.438°、32.807°、33.761°、34.534°、35.404°、36.856°、37.813°、及び39.456°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ、粉末X線回折パターンを有する。
【0017】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Aは、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、及び/または11.143±0.200°、及び/または13.260±0.200°、及び/または14.860±0.200°、及び/または16.163±0.200°、及び/または16.522±0.200°、及び/または17.053±0.200°、及び/または17.537±0.200°、及び/または23.568±0.200°、及び/または23.909±0.200°、及び/または26.259±0.200°、及び/または26.726±0.200°、及び/または27.261±0.200°、及び/または28.056±0.200°、及び/または29.008±0.200°、及び/または30.256±0.200°、及び/または31.219±0.200°、及び/または31.646±0.200°、及び/または32.037±0.200°、及び/または32.438±0.200°、及び/または32.807±0.200°、及び/または33.761±0.200°、及び/または34.534±0.200°、及び/または35.404±0.200°、及び/または36.856±0.200°、及び/または37.813±0.200°、及び/または39.456±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ、粉末X線回折パターンを有する。
【0018】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Aは、18.283±0.100°、19.662±0.100°、22.420±0.100°、及び/または11.143±0.100°、及び/または13.260±0.100°、及び/または14.860±0.100°、及び/または16.163±0.100°、及び/または16.522±0.100°、及び/または17.053±0.100°、及び/または17.537±0.100°、及び/または23.568±0.100°、及び/または23.909±0.100°、及び/または26.259±0.100°、及び/または26.726±0.100°、及び/または27.261±0.100°、及び/または28.056±0.100°、及び/または29.008±0.100°、及び/または30.256±0.100°、及び/または31.219±0.100°、及び/または31.646±0.100°、及び/または32.037±0.100°、及び/または32.438±0.100°、及び/または32.807±0.100°、及び/または33.761±0.100°、及び/または34.534±0.100°、及び/または35.404±0.100°、及び/または36.856±0.100°、及び/または37.813±0.100°、及び/または39.456±0.100°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ、粉末X線回折パターンを有する。
【0019】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形AのXRPDパターンは、実質的に図1に示す通りである。
【0020】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形AにおけるXRPDパターンの解像度データを表1に示す。
表1 式(I)の化合物の結晶形AにおけるXRPDパターンの解像度データ
【表1】
【表2】
【0021】
本開示の幾つかの実施態様では、249.53±8℃及び306.12±8℃に、吸熱ピークのピーク値を持つ示差走査熱量測定曲線を有する、上記結晶形Aが開示される。
【0022】
本開示の幾つかの実施態様では、249.53±3℃及び306.12±3℃に、吸熱ピークのピーク値を持つ示差走査熱量測定曲線を有する、上記結晶形Aが開示される。
【0023】
本開示の幾つかの実施態様では、実質的に図2に示すDSC曲線を有する、上記結晶形Aが開示される。
【0024】
本開示の幾つかの実施態様では、200±3℃において最大0.075%の重量減少、及び250±3℃において最大0.164%の重量減少を伴う熱重量分析曲線を有する、上記結晶形Aが開示される。
【0025】
本開示の幾つかの実施態様では、実質的に図3に示すTGA曲線を有する、上記結晶形Aが開示される。
【化2】
(I)
【0026】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Bは、12.861±0.200°、14.135±0.200°、17.788±0.200°、18.099±0.200°、21.659±0.200°、21.912±0.200°、22.410±0.200°、及び25.218±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ粉末X線回折パターンを有する。
【0027】
本開示の幾つかの実施態様では、次に示す角度:12.861±0.200°、14.135±0.200°、17.788±0.200°、18.099±0.200°、21.659±0.200°、21.912±0.200°、22.410±0.200°、及び25.218±0.200°から選択される角度2θに代表される、少なくとも5、6、7または8個の特徴的な回折ピーク、を含む粉末X線回折パターンで特徴づけられる上記結晶形Bが開示される。
【0028】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Bは、8.262±0.200°、12.861±0.200°、14.135±0.200°、16.303±0.200°、17.788±0.200°、18.099±0.200°、19.053±0.200°、21.659±0.200°、21.912±0.200°、22.410±0.200°、25.218±0.200°、27.230±0.200°、27.526±0.200°、及び28.132±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ粉末X線回折パターンを有する。
【0029】
本開示の幾つかの実施態様では、次に示す角度:8.262±0.200°、12.861±0.200°、14.135±0.200°、16.303±0.200°、17.788±0.200°、18.099±0.200°、19.053±0.200°、21.659±0.200°、21.912±0.200°、22.410±0.200°、25.218±0.200°、27.230±0.200°、27.526±0.200°、及び28.132±0.200°から選択される角度2θに代表される、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13または14個の特徴的な回折ピーク、を含む粉末X線回折パターンで特徴づけられる上記結晶形Bが開示される。
【0030】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Bは、7.240±0.200°、8.262±0.200°、9.189±0.200°、10.841±0.200°、12.861±0.200°、13.269±0.200°、14.135±0.200°、14.651±0.200°、15.907±0.200°、16.303±0.200°、16.770±0.200°、17.788±0.200°、18.099±0.200°、19.053±0.200°、21.659±0.200°、21.912±0.200°、22.410±0.200°、22.829±0.200°、24.408±0.200°、25.218±0.200°、26.009±0.200°、27.230±0.200°、27.526±0.200°、28.132±0.200°、29.630±0.200°、32.150±0.200°、32.961±0.200°、及び33.645±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ粉末X線回折パターンを有する。
【0031】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Bは、7.240±0.100°、8.262±0.100°、9.189±0.100°、10.841±0.100°、12.861±0.100°、13.269±0.100°、14.135±0.100°、14.651±0.100°、15.907±0.100°、16.303±0.100°、16.770±0.100°、17.788±0.100°、18.099±0.100°、19.053±0.100°、21.659±0.100°、21.912±0.100°、22.410±0.100°、22.829±0.100°、24.408±0.100°、25.218±0.100°、26.009±0.100°、27.230±0.100°、27.526±0.100°、28.132±0.100°、29.630±0.100°、32.150±0.100°、32.961±0.100°、及び33.645±0.100°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ粉末X線回折パターンを有する。
【0032】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Bは、7.240°、8.262°、9.189°、10.841°、12.861°、13.269°、14.135°、14.651°、15.907°、16.303°、16.770°、17.788°、18.099°、19.053°、21.659°、21.912°、22.410°、22.829°、24.408°、25.218°、26.009°、27.230°、27.526°、28.132°、29.630°、32.150°、32.961°、及び33.645°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ粉末X線回折パターンを有する。
【0033】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Bは、17.788°±0.200°、18.099±0.200°、21.659±0.200°、及び/または21.912±0.200°、及び/または7.240±0.200°、及び/または8.262±0.200°、及び/または9.189±0.200°、及び/または10.841±0.200°、及び/または12.861±0.200°、及び/または13.269±0.200°、及び/または14.135±0.200°、及び/または14.651±0.200°、及び/または15.907±0.200°、及び/または16.303±0.200°、及び/または16.770±0.200°、及び/または19.053±0.200°、及び/または22.410±0.200°、及び/または22.829±0.200°、及び/または24.408±0.200°、及び/または25.218±0.200°、及び/または26.009±0.200°、及び/または27.230±0.200°、及び/または27.526±0.200°、及び/または28.132±0.200°、及び/または29.630±0.200°、及び/または32.150±0.200°、及び/または32.961±0.200°、及び/または33.645±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ粉末X線回折パターンを有する。
【0034】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形Bは、17.788°±0.100°、18.099±0.100°、21.659±0.100°、及び/または21.912±0.100°、及び/または7.240±0.100°、及び/または8.262±0.100°、及び/または9.189±0.100°、及び/または10.841±0.100°、及び/または12.861±0.100°、及び/または13.269±0.100°、及び/または14.135±0.100°、及び/または14.651±0.100°、及び/または15.907±0.100°、及び/または16.303±0.100°、及び/または16.770±0.100°、及び/または19.053±0.100°、及び/または22.410±0.100°、及び/または22.829±0.100°、及び/または24.408±0.100°、及び/または25.218±0.100°、及び/または26.009±0.100°、及び/または27.230±0.100°、及び/または27.526±0.100°、及び/または28.132±0.100°、及び/または29.630±0.100°、及び/または32.150±0.100°、及び/または32.961±0.100°、及び/または33.645±0.100°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを持つ粉末X線回折パターンを有する。
【0035】
本開示の幾つかの実施態様では、上記結晶形BのXRPDパターンの解像度データが表2に示されている。
表2 式(I)の化合物の結晶形BにおけるXRPDパターンの解像度データ
【表3】
【表4】
【0036】
本開示の幾つかの実施態様では、249.48±8℃に、吸熱ピークのピーク値を持つ示差走査熱量測定曲線を有する、上記結晶形Bが開示される。
【0037】
本開示の幾つかの実施態様では、249.48±3℃に、吸熱ピークのピーク値を持つ示差走査熱量測定曲線を有する、上記結晶形Bが開示される。
【0038】
本開示の幾つかの実施態様では、実質的に図6に示す通りのDSC曲線を有する、上記結晶形Bが開示される。
【0039】
本開示は:
1)式(I)の化合物を、アルコール溶媒である酢酸エチル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、またはジクロロメタンに加えることと;
2)15~100℃で1~168時間攪拌することと;
3)濾過し、濾過ケークを回収し、前記濾過ケークを、30~45℃で0.5~2時間真空乾燥し、あるいは前記濾過ケークを、35℃で1時間真空乾燥することと;
を含む、式(I)の化合物の結晶形Aを調製する方法であって、ここで、式(I)の化合物が式(I):
【化3】
(I)
である方法も提供する。
【0040】
本開示の幾つかの実施態様では、上記アルコール溶媒は、メタノール及びエタノールから選択される。
【0041】
本開示は、LSD1関連疾患を治療するための医薬の製造における、上記式(I)の化合物、上記式(I)の化合物の結晶形A、上記式(I)の化合物の結晶形Bの使用、または式(I)の化合物の結晶形Aを調製する方法、も提供する。
【0042】
本開示は、LSD1関連疾患を治療するための医薬の製造における、上記式(I)の化合物、上記式(I)の化合物の結晶形Aの使用、または式(I)の化合物の結晶形Aを調製する方法、も提供する。
【0043】
本開示は、治療的有効量の、上記式(I)の化合物、上記式(I)の化合物の結晶形A、または上記式(I)の化合物の結晶形Bと、薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬組成物も提供する。
【0044】
本開示は、治療的有効量の、上記式(I)の化合物または上記式(I)の化合物の結晶形Aと、薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬組成物も提供する。
【0045】
本開示は、心筋ミオシン阻害剤としての医薬の製造における、上記式(I)の化合物の使用、上記式(I)の化合物の結晶形Aの使用、上記式(I)の化合物の結晶形Bの使用、または上記医薬組成物の使用、も提供する。
【0046】
本開示は、心筋ミオシン阻害剤としての医薬の製造における、上記式(I)の化合物の使用、上記式(I)の化合物の結晶形Aの使用、または上記医薬組成物の使用、も提供する。
【0047】
本開示は、心不全及び肥大型心筋症を治療するための医薬の製造における、上記式(I)の化合物の使用、上記式(I)の化合物の結晶形Aの使用、上記式(I)の化合物の結晶形Bの使用、または上記医薬組成物の使用、も提供する。
【0048】
本開示は、心不全及び肥大型心筋症を治療するための医薬の製造における、上記式(I)の化合物の使用、上記式(I)の化合物の結晶形Aの使用、または上記医薬組成物の使用、も提供する。
【0049】
本開示は、治療が必要な対象の心筋ミオシン阻害剤関連疾患を治療する方法であって、有効用量の、式(I)の化合物、式(I)の化合物の結晶形A、式(I)の化合物の結晶形B、または上記技術的解決手段のいずれかにおいて定義される医薬組成物、を前記対象に提供することを含む方法、も提供する。
【0050】
本開示は、治療が必要な対象の心筋ミオシン阻害剤関連疾患を治療する方法であって、有効用量の、式(I)の化合物、式(I)の化合物の結晶形A、または上記技術的解決手段のいずれかにおいて定義される医薬組成物、を前記対象に提供することを含む方法、も提供する。
【0051】
本開示は、治療が必要な対象の心不全及び肥大型心筋症を治療する方法であって、有効用量の、式(I)の化合物、式(I)の化合物の結晶形A、式(I)の化合物の結晶形B、または上記技術的解決手段のいずれかにおいて定義される医薬組成物、を前記対象に提供することを含む方法、も提供する。
【0052】
本開示は、治療が必要な対象の心不全及び肥大型心筋症を治療する方法であって、有効用量の、式(I)の化合物、式(I)の化合物の結晶形A、または上記技術的解決手段のいずれかにおいて定義される医薬組成物、を前記対象に提供することを含む方法、も提供する。
【0053】
(技術的効果)
本開示における、式(I)の化合物の結晶形Aは得られやすく、良好な物理的安定性及び化学的安定性、ならびに高い産業上の利用価値及び経済価値を有する。本開示の化合物は、心筋ミオシンATPaseに対し良好な阻害効果を有し、優れた薬物動態的特性を有する。
【0054】
(定義及び説明)
特に断らない限り、本明細書で使用される下記の用語及び語句は、下記の意味を有するものとする。ある特定の語句または用語は、個別の定義が無いために、不明確または不明瞭であると判断されるべきではなく、慣用的な意味で理解されるべきである。本明細書で商品名が出現する場合、その対応する商品またはその活性成分を指すものとする。
【0055】
文脈上特に断らない限り、または本開示に明らかに矛盾しない限り、本明細書及び別記特許請求の範囲において使用される、本開示の内容(特に、別記特許請求の範囲の内容)中の、単数形「a」、「an」、「the」及び類語は、単数形と複数形をどちらも含むものとして解釈されるべきであることは留意されたい。すなわち、例えば「前記化合物(the compound)」への言及は1つ以上の化合物等への言及を含む。
【0056】
用語「非晶質」または「非晶質形態」は、当該物質、成分または生成物が、特徴的な結晶形状または結晶構造を持たず、例えばXRPD(粉末X線回折)で決定する場合に、実質的に結晶ではないこと、あるいは当該物質、成分または生成物が、例えば偏光顕微鏡を用いて観察した場合に、複屈折性でも立方体でもないこと、あるいは粉末X線回折パターンにおいてシャープなピークを持たないこと、を意味するものである。特定の実施態様では、物質の非晶質形を含むサンプルは、実質的に他の非晶質形及び/または結晶形から遊離していてよい。
【0057】
本開示の結晶形の示差走査熱量測定(DSC)には、実験誤差があり、前記サンプルの乾燥度合によって、僅かに影響を受ける。吸熱ピークの位置及びピーク値は、機械ごとに、及びサンプルごとに、僅かに異なってよい。前記実験誤差または値の違いは、10℃以下、または9℃以下、または8℃以下、または7℃以下、または6℃以下、または5℃以下、または4℃以下、または3℃以下、または2℃以下、または1℃以下であってよい。従って、DSC吸熱ピークのピーク位置またはピーク値を絶対的であるとみなすことはできない。
【0058】
本開示の中間体化合物は、当業者に公知である様々な合成方法によって調製され得て、下記の特定の実施態様、下記の特定の実施態様と他の化学合成法とを組み合わせて形成される実施態様、及び当業者に公知である別の同等な方法が含まれる。別の実施態様として、限定はされないが、本開示の実施例が挙げられる。
【0059】
特に断らない限り、二重結合構造、例えば、炭素-炭素二重結合、炭素-窒素二重結合及び窒素-窒素二重結合、が化合物中に存在し、前記二重結合上の各原子が2つの異なる置換基(窒素原子を含む二重結合中、窒素原子の非共有電子対は、それに結合する置換基と判断される)に結合し、前記化合物において二重結合上の原子及びその置換基が構造:
【化4】
で表される場合、これは前記化合物の(Z)異性体若しくは(E)異性体、または前記2つの異性体の混合物を表す。
【0060】
本明細書で開示される化合物の構造は、当業者に公知である従来法によって決定され得る。本開示が化合物の絶対配置に関する場合、その絶対配置は当技術分野の従来技術、例えば単結晶X線回折(SXRD)によって決定され得る。単結晶X線回折(SXRD)において、育成した単結晶の回折強度データを、BrukerのD8 venture回折計(CuKα放射線、φ/ωスキャンモード)を使用して収集し、関連データを収集後、前記結晶構造を直接法(ShelXs97)によって更に分析し、その絶対配置を決定する。
【0061】
本開示の特定の実施態様における化学反応は、適切な溶媒中で完了し、前記溶媒は、本開示の化学変化並びに必要な試薬及び原料にとって適切でなければならない。本開示の化合物を得るために、当業者は、既存の実施態様に基づいて、合成工程または反応スキームを、修正または選択することが必要な場合がある。
【0062】
本開示は実施例を通して、以下で詳細に記載されるが、いかなる場合でも実施例は本開示を限定するものではない。
【0063】
本開示で使用される全ての溶媒は市販されており、更に精製することなく使用され得る。
【0064】
本開示で使用される溶媒は市販されている。
【0065】
本開示において、次の略号が使用される:TEAはトリエチルアミンを表す;DIEAはN,N-ジイソプロピルエチルアミンを表す;PEは石油エーテルを表す;EtOAcは酢酸エチルを表す;EAは酢酸エチルを表す;THFはテトラヒドロフランを表す;MeOHはメタノールを表す;MTBEはメチルtert-ブチルエーテルを表す;DCMはジクロロメタンを表す;EtOHはエタノールを表す;iPrOHはイソプロピルアルコールを表す;BocOは二炭酸ジ-tert-ブチルを表す;L-selectrideはリチウム水素化トリsec-ブチルホウ素を表す;TCFHはN,N,N’,N’-テトラメチルクロロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェートを表す;FAはギ酸を表す;TFAはトリフルオロ酢酸を表す;ACNはアセトニトリルを表す;TLCは薄層クロマトグラフィーを表す;HPLCは高速液体クロマトグラフィーを表す;LCMSは液体クロマトグラフィー-マススペクトロメトリーを表す;DMSOはジメチルスルホキシドを表す;DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを表す;LDAはリチウムジイソプロピルアミドを表す;DMACはN,N-ジメチルアセトアミドを表す;PEG-400はポリエチレングリコール400を表す;EGTAはエチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-テトラ酢酸を表す;DMSO-dは重水素化ジメチルスルホキシドを表す;CDClは重水素化クロロホルムを表す;BIDは1日に2回を表す;QDは1日に1回を表す;POは経口投与を表す;IVは静脈内投与を表す。
【0066】
化合物は手動で、あるいはChemDraw(登録商標)ソフトウェアを使用して命名され、市販の化合物はその供給元のディレクトリ名で命名されている。
【0067】
(本開示における装置及び分析方法)
本開示における粉末X線回折(XRPD)法1:試験した結晶形Aのテストパラメータを表3に示す。
表3 XRPDのテストパラメータ
【表5】
【0068】
本開示における粉末X線回折(XRPD)法2:Brukerの装置D2 Phaserによってデータを得た。テストパラメータを表4に示す。
表4 XRPDのテストパラメータ
【表6】
【0069】
本開示における示差走査熱量測定(DSC)法1:テストパラメータを表5に示す。
表5 DSCのテストパラメータ
【表7】
【0070】
本開示における示差走査熱量測定(DSC)法2:テストパラメータを表6に示す。
表6 DSCのテストパラメータ
【表8】
【0071】
本開示における熱重量分析(TGA)法1:テストパラメータを表7に示す。
表7 TGAのテストパラメータ
【表9】
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1:Cu-Kα放射線を用いた、式(I)の化合物の結晶形AのXRPDパターン。
図2図2は、式(I)の化合物の結晶形AのDSC曲線を示す。
図3図3は、式(I)の化合物の結晶形AのTGA曲線を示す。
図4図4は、式(I)の化合物の単結晶X線回折(SC-XRD)における、三次元構造の楕円体図面を示す。
図5図5は、Cu-Kα放射線を用いた、式(I)の化合物の結晶形BのXRPDパターンを示す。
図6図6は、式(I)の化合物の結晶形BのDSC曲線を示す。
【0073】
(詳細な説明)
本開示の内容をより理解するために、特定の実施例と併せて、本開示が以下で更に例示されるが、前記特定の実施例は本開示の内容を制限するものではない。
【実施例
【0074】
式(I):
【化5】
(I)
合成経路:
【化6】
【0075】
工程A:1-2(4.66g、38.43mmol、1.2当量)及びチタン酸テトラエチル(21.92g、96.07mmol、19.92mL、3当量)を、1-1(5g、32.02mmol、4.07mL、1当量)のTHF(50mL)溶液に、20℃で加えた。前記反応溶液を60℃で16時間攪拌した。酢酸エチル(100mL)を前記反応溶液に加えた。前記混合液を0℃まで冷却し、その後、水(20mL)をゆっくりと加えた。前記混合液を0.5時間攪拌し、濾過した。前記濾液を飽和食塩水(50mL×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、その後濃縮して、化合物1-3を得た。
【0076】
工程B:L-selectride(1M、41.65mL、1.2当量)を1-3(9g、34.71mmol、1当量)のTHF(100mL)溶液に、-78℃で窒素条件下において、ゆっくりと滴加した。前記反応溶液を-78℃で2時間攪拌し、その後、飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)にゆっくりと加えた。前記混合液をEA(100mL×2)で抽出した。合一した有機層を飽和食塩水(100mL×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、その後濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=5:1~3:1)によって分離し、化合物1-4を得た。
【0077】
工程C:HCl/MeOH(200mmol、50mL、7.92当量)を、1-4(6.6g)のMeOH(50mL)溶液に、20℃で加えた。前記反応溶液を16時間攪拌し、その後濃縮し、化合物1-5の塩酸塩を得た。
【0078】
工程D:1-6(1.51g、7.74mmol、1.5当量、HCl)及びDIEA(4.00g、30.96mmol、5.40mL、6当量)を、1-5の塩酸塩(1g)のEtOH(10mL)溶液に20℃で加えた。前記反応溶液を20℃で16時間攪拌し、濃縮して化合物1-7を得た。
【0079】
工程E:TEA(2.45g、24.24mmol、3.37mL、3当量)を、1-7(1.54g、8.08mmol、1当量)のDCM(15mL)溶液に、-20℃で窒素条件下において加えた。その後、1-8(1.39g、5.14mmol、6.37e-1当量)のDCM(15mL)溶液を加えた。前記反応溶液を、20℃で16時間攪拌し、その後濃縮した。残渣を、EA(30mL)を加えて希釈し、その後飽和食塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、その後濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=10:1~5:1)によって分離し、化合物1-9を得た。
【0080】
工程F:ナトリウムメトキシド(1M、6.43ml、1当量)を、1-9(0.648g、1.53mmol、1当量)のMeOH(7.6mL)溶液に、窒素条件下において加えた。前記反応溶液を20℃で16時間攪拌した。1Mの塩酸希釈液を前記反応溶液に加え、pHを約5に調整し、その後、前記混合液を、EA(20mL)を加えて抽出した。前記有機層を飽和食塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、その後濃縮して化合物1-10を得た。
【0081】
工程G:塩酸(4M、4mL、17.40当量)を、1-10(348mg、919.74μmol、1当量)の1,4-ジオキサン(4mL)溶液に加えた。前記反応溶液を50℃で16時間攪拌した。EA(30mL)を前記反応溶液に加え、その後、1Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを約8に調整した。前記層を分離した。その後、前記有機層を飽和食塩水(50mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、その後濃縮した。MeOH(10mL)を前記残渣に加え、前記混合液を20分間攪拌し、濾過した。前記濾過ケークを高真空下で乾燥させ、式(I)の化合物を得た。XPRD試験後、得られた式(I)の化合物は式(I)の化合物の結晶形Aであった。1H NMR (DMSO-d6、400 MHz): δ ppm 9.60 - 9.47 (m、1H)、7.34 - 7.26 (m、2H)、7.25 - 7.16 (m、1H)、6.96 (br d、J = 6.0 Hz、1H)、4.82 - 4.71 (m、1H)、4.44 - 4.34 (m、1H)、1.93 - 1.81 (m、4H)、1.70 (br s、4H)、1.48 (br d、J = 6.4 Hz、3H); LCMS(ESI) m/z: 321.2(M+1)。
【実施例
【0082】
(式(I)の化合物の結晶形Aの調製)
式(I)の化合物(80mg、249.74μmol)をエタノール(3mL)に加え、前記混合液を80℃で16時間攪拌した。前記混合液を室温まで冷却し、その後濾過した。前記固体を真空乾燥し、式(I)の化合物の結晶形Aを得た。1H NMR (DMSO-d6、400 MHz): δ ppm 9.60 - 9.47 (m、1H)、7.34 - 7.26 (m、2H)、7.25 - 7.16 (m、1H)、6.96 (br d、J = 6.0 Hz、1H)、4.82 - 4.71 (m、1H)、4.44 - 4.34 (m、1H)、1.93 - 1.81 (m、4H)、1.70 (br s、4H)、1.48 (br d、J = 6.4 Hz、3H); LCMS(ESI) m/z: 321.2(M+1)。式(I)の化合物の結晶形AにおけるXRPD、DSC及びTGAを、対応する方法1を用いて全て試験し、その試験結果パターン及び曲線をそれぞれ図1、2及び3に示す。
【0083】
上記溶媒エタノールをメタノール、ジクロロメタン、酢酸エチル、またはテトラヒドロフランに置き換え、式(I)の化合物の結晶形Aを、それぞれの場合において、室温または加熱温度下において得た。前記アッセイ結果を表8に示す。
表8 異なる溶媒中の攪拌によって得られる結晶形のアッセイ
【表10】
【実施例
【0084】
(式(I)の化合物の結晶形Bの調製)
約60mgの前記結晶形Aを秤量し、室温(20~25℃)から250℃まで、10℃/分の速度で、TGAを用いて加熱し、その後、室温まで自然冷却(冷却過程中、冷却速度は制御しなかった)し、式(I)の化合物の結晶形Bを得た。1H NMR (DMSO-d6、400 MHz): δ ppm 9.57 (s、1H)、7.32 - 7.27 (m、2H)、7.22 - 7.15 (m、1H)、6.96 (br d、J = 6.4 Hz、1H)、4.78 - 4.72 (m、1H)、4.38 (s、1H)、1.86 - 1.82 (m、4H)、1.70 - 1.67 (m、4H)、1.47 (br d、J = 6.8 Hz、3H)。式(I)の化合物の結晶形BにおけるXRPD及びDSCを、対応する方法2を用いてどちらも試験し、その試験結果パターン及び曲線をそれぞれ図5及び6に示す。
【実施例
【0085】
(式(I)の化合物の単結晶X線回折分析)
1.装置パラメータ及びデータ収集
製造者:Bruker Corporation;
装置モデル:Bruker D8 VENTURE;
X線源: 高強度マイクロフォーカス回転陽極光源を使用した;
Cu回転標的:λ=1.54184Å;
電力:2.5kw;
管電圧:50kV;
管電流:50mA;
ゴニオメーター:4軸(Kappa、ω、2θ、φ)ゴニオメーター;
検出器:大面積photonII検出器、検出器の有効面積14cm×10cm
検出器からサンプルまでの距離:d=45mm。
【0086】
2.結晶育成
14.3mgのサンプルを秤量し、MeOH(2mL)に加えた。前記サンプルは不溶性であった。その後、DMSO(1mL)を滴加し、完全に溶解するまで前記混合物を攪拌した。溶解したサンプルを4mLの半密閉サンプルバイアルに移し、室温でゆっくりと蒸発気化した。7日後、無色のブロック結晶を得て、単結晶試験に供した。
【0087】
3.結晶データの表
表9 式(I)の化合物の単結晶構造データ
【表11】
【0088】
4.結論
前記単結晶データは、前記単結晶が式(I)の化合物であることを示した。
式(I)の化合物の単結晶X線回折(SC-XRD)における、三次元構造の楕円体図を図4に示す。式(I)の化合物の単結晶構造データ及びパラメータを表9に示す。
【0089】
生物学的アッセイデータ:
アッセイ実施例1:心筋ミオシンATPase活性に対する阻害効果のアッセイ
アッセイ試薬:
心筋トロポミオシン/トロポニン複合体(Cytoskeleton、Cat.#TT05)
心筋ミオシンS1(Cytoskeleton、Cat.#MYS03)
心筋アクチン(Cytoskeleton、Cat.#AD99-A)
ATPaseアッセイbiochemキット(Cytoskeleton、Cat.#BK051)
【0090】
アッセイ工程:
1)化合物の調製
a)前記化合物をEcho中、DMSOを用いて4倍ずつ8段階の濃度に系列希釈し、前記化合物の各濃度を、それぞれ200nLずつ96穴プレート(Corning-3696)に移した。
b)前記プレートを、1000rpmで15秒間遠心分離し、後で使用するために密閉した。
2)Fアクチンの調製
a)5mMのPipes-KOH緩衝液(pH7.0)、500μMのATP、及び500μMのジチオトレイトールを調製し、2.5mLの前記緩衝液を加え、1mgのFアクチンを溶解し、タンパク質濃度を0.4mg/mLとした。
b)前記混合液を室温下に10分間置き、タンパク質を完全に溶解した。
c)2.0mMのMgCl及び2.0mMのEGTAを加え、前記混合液を室温下に20分間置き、タンパク質ポリマーを形成させた。
3)細いフィラメントの調製
a)200μLの氷水を加え、1mgの心筋トロポミオシン/トロポニン複合体を溶解し、タンパク質濃度を5mg/mLとした。
b)工程1で調製した、1000μLのFアクチンを加え、よく混合した。
c)前記混合液を室温下に20分間置いた。
d)前記混合液を、87K×gで4℃下において1,5時間遠心分離した。
e)PM12緩衝液(12mMのPipes-KOH、pH7.0、2mMのMgCl)を調製し、1200μLの前記緩衝液を加えて、前記タンパク質を再懸濁した。
4)反応溶液の調製及びアッセイの開始
a)250μLの氷冷PM12緩衝液を、250μgのS1ミオシンに加え、タンパク質濃度を1mg/mLとした。
b)前記試薬を次の順番で連続的に加え、混合して反応混合液を得た:
400μLのPM12、
400μLの5×MSEG(前記ATPaseアッセイのbiochemキットより)、
1200μLのアクチン/心筋トロポミオシン/トロポニン複合体、
40μLのミオシンS1、
40μLの100×PNP(前記ATPaseアッセイのbiochemキットより)、
10.4μLの100mM ATP。
c)10μLの440μM CaCl溶液を、前記96穴プレートに加え、前記プレートを、37℃のインキュベーターに移して予熱を加えた。
d)100μLの前記反応混合液を、前記96穴プレートに加え、前記プレートを1000rpmで10秒間遠心分離した。
e)前記プレートを、装置温度37℃及び波長360nmのSpectraMax340PCで、30秒間隔で10分間読み取り続けた。
【0091】
データ分析:
Prismを用いてデータを分析し、前記アッセイ結果を表10に示す。
表10 アッセイ結果:本開示の化合物の、心筋ミオシンATPase活性に対する阻害効果であるIC50
【表12】
結論:本開示の化合物は、心筋ミオシンATPaseに対する良好な阻害活性を有する。
【0092】
アッセイ実施例2:ラットにおける薬物動態評価
アッセイの目的:
ラットにおける、本開示の化合物の薬物動態パラメータを測定した。
アッセイスキーム:
1)アッセイ薬剤:本開示の化合物;
2)アッセイ動物:4匹のオスSDラット(7~9週齢)を、各群に2匹のラットを含むように無作為に2群に分けた;
3)薬剤調製:適切な量の前記薬剤を秤量し、混合溶媒(DMAC:PEG-400:2-HP-β-CD(30%)=5:25:70で0.2mg/mLに調製)に溶解した;
アッセイ手順:
群1の動物に、尾静脈注射1回につき0.2mg/kgの用量で、0.2mg/mLの濃度で、薬剤を投与した。群2の動物に、強制給餌によって、1mg/kgの用量で、0.2mg/mLの濃度で、前記化合物を投与した。投与から0.0833(尾静脈注射群のみ)、0.25、0.5、1、2、4、6、8、及び24時間後に、血漿サンプルを前記動物から回収した。
データ分析:
血漿サンプル中の薬剤濃度を、LC-MS/MS法を用いて決定した。前記アッセイ薬剤の、得られた薬物動態アッセイ結果を表11に示す。
表11 本開示の化合物の薬物動態アッセイ結果
【表13】
--はデータが無いことを示す。
結論:本開示の化合物はラットにおいて、良好な薬物動態的特性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
18.283±0.200°、19.662±0.200°、及び22.420±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを有するX線粉末回析パターン(XPRD)で特徴づけられる、式(I):
【化1】
(I)
の化合物の結晶形A。
【請求項2】
11.143±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、26.259±0.200°、及び28.056±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを有するX線粉末回析パターン(XPRD)で特徴づけられる;
あるいは、11.143±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、26.259±0.200°、27.261±0.200°、28.056±0.200°、及び30.256±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを有する粉末X線回折パターンで特徴づけられる;
あるいは、11.143±0.200°、16.522±0.200°、17.053±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、23.909±0.200°、26.259±0.200°、27.261±0.200°、28.056±0.200°、30.256±0.200°、及び33.761±0.200°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを有するX線粉末回析パターンで特徴づけられる;
あるいは、次に示す角度:11.143±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、26.259±0.200°、27.261±0.200°、28.056±0.200°、及び30.256±0.200°から選択される角度2θに代表される、少なくとも5、6、7、または8個の特徴的な回折ピーク、を含むX線粉末回析パターンで特徴づけられる;
あるいは、次に示す角度:11.143±0.200°、18.283±0.200°、19.662±0.200°、22.420±0.200°、26.259±0.200°、27.261±0.200°、28.056±0.200°、及び30.256±0.200°から選択される角度2θに代表される、少なくとも5、6、7、または8個の特徴的な回折ピーク、を含むX線粉末回析パターンで特徴づけられ、及び11.143°、13.260°、14.860°、16.163°、16.522°、17.053°、17.537°、18.283°、19.662°、22.420°、23.568°、23.909°、26.259°、26.726°、27.261°、28.056°、29.008°、30.256°、31.219°、31.646°、32.037°、32.438°、32.807°、33.761°、34.534°、35.404°、36.856°、37.813°、及び39.456°の角度2θにおける特徴的な回折ピークを有するX線粉末回析パターンで特徴づけられる;
あるいは、実質的に図1に示すXRPDパターンを有する、
請求項1に記載の結晶形A。
【請求項3】
249.53±8℃及び306.12±8℃に吸熱ピークのピーク値を持つ示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する;
あるいは、249.53±3℃及び306.12±3℃に吸熱ピークのピーク値を持つ示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する;
あるいは、実質的に図2に示すDSC曲線を有する、
請求項1に記載の結晶形A。
【請求項4】
200±3℃において最大0.075%の重量減少を伴い、250±3℃において最大0.164%の重量減少を伴う熱重量分析(TGA)曲線を有する;
あるいは、実質的に図3に示すTGA曲線を有する、
請求項1に記載の結晶形A。
【請求項5】
200±3℃において最大0.075%の重量減少を伴い、250±3℃において最大0.164%の重量減少を伴う熱重量分析(TGA)曲線を有する;
あるいは、実質的に図3に示すTGA曲線を有する、
請求項3に記載の結晶形A。
【請求項6】
1)アルコール溶媒、酢酸エチル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、またはジクロロメタンに、式(I)の化合物を加えること;ここで、前記アルコール溶媒は適宜、メタノール及びエタノールから選択される;
2)15~100℃で1~168時間攪拌すること;
3)濾過し、濾過ケークを回収し、濾過ケークを30~45℃で0.5~2時間真空乾燥させ、あるいは、濾過ケークを35℃で1時間真空乾燥させること;
を含む、請求項1に記載の式(I)の化合物の結晶形Aを調製する方法であって、ここで、前記式(I)の化合物が式(I):
【化2】
(I)
である、方法。
【請求項7】
治療的有効量の請求項1~5のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または式(I)の化合物の結晶形A、及び薬学的に許容可能な担体、を含む医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または式(I)の化合物の結晶形Aを含む、心筋ミオシン阻害剤として使用するための医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または式(I)の化合物の結晶形Aを含む、心不全または肥大型心筋症を治療するための医薬組成物。
【国際調査報告】