IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ワイディー バイオラブス カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2025-504052酵素による核酸又はポリヌクレオチド(polynucleotide)合成方法、及びその方法を実施するためのキット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】酵素による核酸又はポリヌクレオチド(polynucleotide)合成方法、及びその方法を実施するためのキット
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/34 20060101AFI20250130BHJP
   C12N 9/12 20060101ALN20250130BHJP
   C12N 9/22 20060101ALN20250130BHJP
【FI】
C12P19/34 Z
C12N9/12 ZNA
C12N9/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545092
(86)(22)【出願日】2023-01-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 US2023060847
(87)【国際公開番号】W WO2023147239
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】63/304,282
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524120011
【氏名又は名称】ワイディー バイオラブス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YD BioLabs CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】4F., No. 2, Sec. 2, Shengyi Rd., Zhubei City, Hsinchu County 302058, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チェン-ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,イー-ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ツ-イン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウェン-ティン
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AF27
4B064CA21
4B064CC30
4B064DA13
(57)【要約】
【課題】酵素によるポリヌクレオチド(polynucleotide)合成方法、及びその方法を実施するためのキットを提供する。
【解決手段】遊離3’-ヒドロキシル基を有するイニシエーターを有し、イニシエーターにヌクレオチドモノマーが取り込まれることにより、遊離3’-ヒドロキシル基から核酸鎖のポリメラーゼを形成し、前記核酸鎖は、エンドヌクレアーゼにより認識されるガイドヌクレオチド(guiding nucleotide)を含み、且つ、前記エンドヌクレアーゼが前記核酸鎖を切断することにより、所定のポリヌクレオチドを放出すると共に、残りの前記核酸鎖における3’-末端に新しい遊離3’-ヒドロキシル基が形成され、前記残りの核酸鎖は、再使用可能なイニシエーターとする。前記ポリヌクレオチド合成方法を実施するためのキットも提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離3’-ヒドロキシル基を有する3’-末端ヌクレオチドを含むイニシエーターを用意する工程と、
ポリメラーゼによってヌクレオチドモノマーを前記イニシエーターに取り込んで、前記遊離3’-ヒドロキシル基から核酸鎖を伸長させる工程であって、前記ヌクレオチドモノマーは、エンドヌクレアーゼにより認識されるガイドヌクレオチドを含み、前記ガイドヌクレオチドが前記核酸鎖の特定の位置に取り込まれるようにする工程と、
前記ガイドヌクレオチドの位置に従い前記エンドヌクレアーゼに前記核酸鎖を切断させて、所定のポリヌクレオチドを放出すると共に、新しい遊離3’-ヒドロキシル基を有する残りの前記核酸鎖を残すようにする工程とを含む酵素によるポリヌクレオチド合成方法であって、
前記エンドヌクレアーゼは、前記ガイドヌクレオチドの位置を特異的に認識し、前記ガイドヌクレオチドの3’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、前記ガイドヌクレオチドの5’末端側にある1番目のホスホジエステル結合、前記ガイドヌクレオチドの5’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、又は前記ガイドヌクレオチドの5’末端側にある3番目のホスホジエステル結合を切断することで、前記所定のポリヌクレオチドが得られ、前記新しい遊離3’-ヒドロキシル基を有する前記残りの核酸鎖は、次のラウンドにおけるポリヌクレオチド合成のために保留して使用される新しいイニシエーターとする、酵素によるポリヌクレオチド合成方法。
【請求項2】
前記核酸鎖が、鋳型非依存性方法で合成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記核酸鎖が、鋳型指向性方法で合成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ガイドヌクレオチドの核酸塩基が、ウラシル、キサンチン又はヒポキサンチンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ガイドヌクレオチドが、ウラシル又はイノシンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリメラーゼが、ファミリーB型DNAポリメラーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記エンドヌクレアーゼが、サーモコッカス・バロフィルス(Thermococcus barophilus,Tba)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus,Pfu)、メタノサルシナ・アセチボランス(Methanosarcina acetivorans,Mac)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus,Bpu)、ピロコッカス・アビッシ(Pyrococcus abyssi,Pab)、サーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakarensis,Tko)、サーモコッカス・ガンマトレランス(Thermococcus gammatolerans,Tga)又は枯草菌(Bacillus subtilis,Bsu)に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記エンドヌクレアーゼが、サーモコッカス・バロフィルスエンドヌクレアーゼV(Tba Endo V)、枯草菌エンドヌクレアーゼV (Bsu Endo V)、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼV (Pfu Endo V)、サーモコッカス・コダカラエンシスエンドヌクレアーゼV(Tko Endo V)、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼ Q (Pfu Endo Q)、メタノサルシナ・アセチボランスエンドヌクレアーゼ Q(Mac Endo Q)、バチルス・プミルスエンドヌクレアーゼQ(Bpu Endo Q)、ピロコッカス・アビッシ NucS エンドヌクレアーゼ(Pab NucS)、サーモコッカス・コダカラエンシス EndoMS エンドヌクレアーゼ(Tko EndoMS、配列番号17)、サーモコッカス・ガンマトレランス NucS エンドヌクレアーゼ(Tga NucS)及びこれらの変異体からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガイドヌクレオチド3’末端側にある2番目のホスホジエステル結合を切断するために、前記エンドヌクレアーゼが、枯草菌エンドヌクレアーゼV(Bsu Endo V)、大腸菌エンドヌクレアーゼV(Eco Endo V)、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼV (Pfu Endo V)、サーモコッカス・バロフィルスエンドヌクレアーゼV(Tba Endo V)、サーモコッカス・コダカラエンシスエンドヌクレアーゼV(Tko Endo V)及びこれらの酵素変異体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ガイドヌクレオチド5’末端側にある1番目のホスホジエステル結合を切断するために、前記エンドヌクレアーゼが、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼ Q (Pfu Endo Q)、メタノサルシナ・アセチボランスエンドヌクレアーゼ Q(Mac Endo Q)、バチルス・プミルスエンドヌクレアーゼQ(Bpu Endo Q)及びこれらの酵素変異体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ガイドヌクレオチド5’末端側にある2番目のホスホジエステル結合を切断するために、前記エンドヌクレアーゼが、サーモコッカス・ガンマトレランスNucSエンドヌクレアーゼ(Tga NucS)、ピロコッカス・アビッシNucSエンドヌクレアーゼ(Pab NucS)及びこれらの酵素変異体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ガイドヌクレオチド5’末端側にある3番目のホスホジエステル結合を切断するために、前記エンドヌクレアーゼが、サーモコッカス・コダカラエンシスEndoMSエンドヌクレアーゼ(Tko EndoMS)及びこれらの酵素変異体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
10℃~100℃の範囲の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記イニシエーターが、5’末端で固相担体に固定化される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
エンドヌクレアーゼにより特異的に認識されるガイドヌクレオチドを有する合成ポリヌクレオチドを用意する工程と、
所定のポリヌクレオチドを放出するために、前記ガイドヌクレオチドの位置に従い合成ポリヌクレオチドをエンドヌクレアーゼに切断させる工程とを含む酵素によりポリヌクレオチドを得る方法であって、
前記エンドヌクレアーゼは、前記ガイドヌクレオチドを認識すると共に、前記ガイドヌクレオチドの3’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、前記ガイドヌクレオチドの5’末端側にある1番目のホスホジエステル結合、前記ガイドヌクレオチドの5’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、或いは前記ガイドヌクレオチドの5’末端側にある3番目のホスホジエステル結合を切断することで、所定のポリヌクレオチドが得られる、酵素によりポリヌクレオチドを得る方法。
【請求項16】
遊離3’-ヒドロキシル基を有する3’-末端ヌクレオチドを含む核酸イニシエーターと、
ヌクレオチドモノマーを前記イニシエーターに取り込んで前記遊離3’-ヒドロキシル基から核酸鎖を伸長させるためのポリメラーゼであって、前記ヌクレオチドモノマーがガイドヌクレオチドを含み、前記ガイドヌクレオチドが前記核酸鎖に取り込まれるようにするポリメラーゼと、
前記ガイドヌクレオチドの位置に従い前記核酸鎖を切断して所定の前記ポリヌクレオチドを放出すると共に、残りの核酸鎖の3’末端に新しい遊離3’-ヒドロキシル基を残すエンドヌクレアーゼとを含む酵素によるポリヌクレオチドを合成するためのキットであって、
前記エンドヌクレアーゼは前記ガイドヌクレオチドを特異的に認識すると共に、前記ガイドヌクレオチド3’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、前記ガイドヌクレオチド5’末端側にある1番目のホスホジエステル結合、前記ガイドヌクレオチド5’末端側にある2番目のホスホジエステル結合又は前記ガイドヌクレオチド5’末端側にある3番目のホスホジエステル結合を切断することで、前記所定のポリヌクレオチドが得られ、前記新しい遊離3’-ヒドロキシル基を有する前記残りの核酸鎖は、次のラウンドのポリヌクレオチド合成のために保留して使用される新しいイニシエーターとする、酵素によるポリヌクレオチドを合成するためのキット。
【請求項17】
ガイドヌクレオチドを有する合成ポリヌクレオチドと、
前記合成ポリヌクレオチドを切断して所定のポリヌクレオチドを放出するためのエンドヌクレアーゼとを含む酵素によりポリヌクレオチドを得るためのキットであって、
前記エンドヌクレアーゼは前記ガイドヌクレオチドの位置を認識すると共に、前記ガイドヌクレオチド3’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、前記ガイドヌクレオチド5’末端側にある1番目のホスホジエステル結合、前記ガイドヌクレオチド5’末端側にある2番目のホスホジエステル結合又は前記ガイドヌクレオチド5’末端側にある3番目のホスホジエステル結合を切断することで、前記所定のポリヌクレオチドが得られる、酵素によりポリヌクレオチドを得るためのキット。
【請求項18】
前記ガイドヌクレオチドが、ウラシル又はイノシンを含む、請求項16又は17に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2022年01月28日に出願された米国仮出願番号第63/304,282号の優先権を主張し、その全内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表に関する記載)
37CFR§1.831-835に従い本出願は、XML形式で電子的に提出され、以下の提出内容の全体が、参照により本明細書に組み込まれる:コンピュータ可読形態の配列表(XML形式のファイル名:Sequence Listing.xml、該テキストファイル作成日:2023年1月18日、サイズ:20.8kb)。
【0003】
本開示は、異なる条件下で酵素による核酸又はポリヌクレオチド(polynucleotide)合成方法、及びその方法を実施するためのキットに関するものである。
【背景技術】
【0004】
酵素法を用いた核酸デノボ(de novo)合成方法は、使用者定義の配列及長さに従い核酸又はポリヌクレオチドを製造するための様々な新たな応用分野(合成生物学、次世代シーケンシング、核酸に基づく治療、診断、ワクチン、DNAデータ記憶など)における急増する需要を満たすため、急速に開発されている。
【0005】
現在酵素による核酸合成法は、例えば、イニシエーターにヌクレオチドを反復的に付加するターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(terminal deoxynucleotidyl transferase;TdT)などの鋳型非依存性(template-independent)ポリメラーゼに依存しなければならない。イニシエーターは通常、新しい核酸又はポリヌクレオチド合成の開始点として一本鎖核酸又はポリヌクレオチドで構成される。通常、合成イニシエーターは固相担体上に固定化する必要がある。したがって酵素による核酸合成は、所望の長さと配列が得られるまで、イニシエーターから核酸鎖又はポリヌクレオチド鎖を伸長し続けることができる。
【0006】
このような核酸の酵素合成の実用的実施を考案する場合、主要な課題の1つは、固相担体上に固定されたイニシエーターから新たに合成されたオリゴヌクレオチド/ポリヌクレオチド生成物を効率的に得ることである。例えば米国特許第10,683,536 B2号では新たに合成された核酸又はポリヌクレオチドを核酸イニシエーターから切り離す(decouple)ために、アルカリ溶液、金属イオン及びII型制限エンドヌクレアーゼ(type II restriction endonuclease)などの特定の切断試薬を必要とするポリヌクレオチドを合成するための酵素法を記載している。しかし、アルカリ溶液を利用して新生核酸又はポリヌクレオチドを放出するには、部位特異的切断反応(site-specific cleavage reaction)のために、新たに合成された核酸とイニシエーターとの間に固有の化学リンカーを使用する必要があるため、日常的な実施には不便である。一方、II型制限エンドヌクレアーゼを使用してイニシエーターから新生核酸又はポリヌクレオチドを切断することに関する前記の記述には、実現可能性を証明する例がまだ欠けている。また、本技術分野において知られたII型制限エンドヌクレアーゼが機能するには配列特異的認識部位に依存しなければならず、例えば、典型的には4~8塩基の回文配列(palindromic sequence)を使用してDNA鎖を切断するために、酵素によるデノボ核酸合成におけるその広範な適応が制限されている。
【0007】
また、米国特許出願公開第2021/0254114 A1号には、鋳型非依存的酵素核酸合成のポリヌクレオチド産物を切断する方法が記載されており、この方法では、イニシエーターは、部位特異的な(site-specific)3’末端から2番目のデオキシイノシン(dI)を保持するように考案されている。このイニシエーター内のdIの位置は、エンドヌクレアーゼV(EndoV)により認識されるため、EndoVがイニシエーターから新たに合成されたDNA鎖を正確に切断するためのガイドとして機能する。この開示によれば、DNA鎖切断活性は、大腸菌エンドヌクレアーゼV(EcoEndoV)のみによって達成され、全体的な性能は、大腸菌ウラシルDNAグリコシラーゼ(uracil-DNA glycosylase)のデオキシウリジンによるデオキシイノシンの切除(excision)と、エンドヌクレアーゼVIII(endonuclease VIII)によるDNA鎖切断を組み合わせることにより、イニシエーターからDNA鎖を解放する2酵素ベースのUSER法に相当する。ただし、EcoEndoV法とUSER法の両方は、核酸イニシエーターの部位特異的認識において、それぞれデオキシイノシンとデオキシウリジンの使用必要に制限されている。さらに、EcoEndoV及びUSERの酵素反応は、中程度の反応温度(<50℃)で実行する必要があり、高温(≧50℃)での核酸切断反応には適していない。これら2つの酵素システムの切断能力は、異なる条件や用途でデノボポリヌクレオチド合成(de novo polynucleotide synthesis)を採用するという使用者の要求を満たすことができない。
【0008】
したがって、新たに合成された核酸鎖又はポリヌクレオチド鎖を得ると共に、遊離ヒドロキシル基を有するイニシエーターを同じ工程で再生することで、次のラウンドの酵素による核酸合成を可能にする、より効率的で、より多様で、コスト利益がより高く、耐熱性のある方法が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本明細書では、例えばカスタムポリヌクレオチド、DNAプローブ、又はRNAプローブの調製用など、複数の用途向けに合成ポリヌクレオチドを調製するための方法及びキットを開示する。
【0010】
本明細書では、使用者の意図に応じて所定の配列及び長さのポリヌクレオチドを得るための部位特異的取得方法及びキットを開示する。本明細書で開示された方法を採用することにより、使用者は、所定のポリヌクレオチドの配列及び長さ、ならびに新たに合成された核酸内のガイドヌクレオチドの位置を設定し、単一の酵素を使用した部位特異的ポリヌクレオチド切断によって、所望の所定のポリヌクレオチドを直接得ることができる。したがって、本明細書で開示された方法及びキットによれば、使用者は、所定の配列及び長さのポリヌクレオチドを正確かつ効率的に得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書で提供される方法は、酵素によるポリヌクレオチド合成方法である。前記方法は、遊離3’-ヒドロキシル基を有する3’-末端ヌクレオチドを含むイニシエーターを用意する工程と、ポリメラーゼによってヌクレオチドモノマーをイニシエーターに取り込んで、遊離3’-ヒドロキシル基から核酸鎖を伸長させる工程であって、前記ヌクレオチドモノマーは、エンドヌクレアーゼにより認識されるガイドヌクレオチドを含み、ガイドヌクレオチドが新たに合成された核酸鎖の特定の位置に取り込まれるようにする工程と、前記ガイドヌクレオチドの位置に従いエンドヌクレアーゼに核酸鎖を切断させて、所定の配列及び長さのポリヌクレオチドを放出すると共に、遊離3’-ヒドロキシル基を有する残りの核酸鎖又はイニシエーターを残すようにする工程とを含み、エンドヌクレアーゼは、新たに合成された核酸鎖中のガイドヌクレオチドの位置を特異的に認識し、ガイドヌクレオチドの3’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、ガイドヌクレオチドの5’末端側にある1番目のホスホジエステル結合、ガイドヌクレオチドの5’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、又はガイドヌクレオチドの5’末端側にある3番目のホスホジエステル結合を切断することで、所定の配列及び長さの所望のポリヌクレオチドが得られ、残りの核酸鎖は、遊離3’-ヒドロキシル基を有し、これは、次のラウンドのポリヌクレオチド合成のために使用される新しいイニシエーターとする。
【0012】
一部の実施形態において、本明細書で提供される方法は、鋳型非依存性(template-independent)又は鋳型依存性(すなわち、鋳型指向性(template-directed))ポリヌクレオチド合成に使用することができる。鋳型非依存性ポリヌクレオチド合成において、イニシエーターは、新生核酸鎖を伸長するための遊離3’-ヒドロキシル基を有する一本鎖核酸である。鋳型依存性(template-dependent)ポリヌクレオチド合成において、イニシエーターは、相補鋳型核酸とアニール(anneal)してプライマー-鋳型二重鎖(primer-template duplex)を形成し、ポリメラーゼによる核酸合成を誘導する一本鎖プライマーである。ポリメラーゼは、鋳型の配列情報に従いプライマーを伸長する。
【0013】
一部の実施形態において、ガイドヌクレオチドは、天然的、非天然又は修飾を受けたヌクレオチドであり、ヌクレオチドの核酸塩基は、例えばウラシル、キサンチン又はヒポキサンチンである。
【0014】
一部の実施形態において、ガイドヌクレオチドは、天然的、非天然又は修飾を受けたヌクレオチドであり、例えばウラシル又はイノシンを含むヌクレオチドである。
一部の実施形態において、本明細書で提供される方法は、鋳型非依存性ポリメラーゼ又は鋳型依存性ポリメラーゼの使用を含み、前記鋳型非依存性ポリメラーゼは、例えばファミリーB型DNAポリメラーゼであり得る。
【0015】
本明細書では、酵素によりポリヌクレオチドを得る方法が提供され、この方法は、エンドヌクレアーゼにより特異的に認識されるガイドヌクレオチドを有する合成ポリヌクレオチドを用意する工程と、所定の配列及び長さのポリヌクレオチドを放出するために、合成ポリヌクレオチドを前記エンドヌクレアーゼに切断させる工程とを含み、前記エンドヌクレアーゼは、合成ポリヌクレオチド中のガイドヌクレオチドの位置を認識し、ガイドヌクレオチドの3’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、ガイドヌクレオチドの5’末端側にある1番目のホスホジエステル結合、ガイドヌクレオチドの5’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、或いは前記ガイドヌクレオチドの5’末端側にある3番目のホスホジエステル結合を切断することで、所定の配列及び長さのポリヌクレオチドが得られる。
【0016】
一部の実施形態において、エンドヌクレアーゼが、サーモコッカス・バロフィルス(Thermococcus barophilus、Tba)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus、Pfu)、メタノサルシナ・アセチボランス(Methanosarcina acetivorans、Mac)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus、Bpu)、ピロコッカス・アビッシ(Pyrococcus abyssi、Pab)、サーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakarensis、Tko)、サーモコッカス・ガンマトレランス(Thermococcus gammatolerans、Tga)又は枯草菌(Bacillus subtilis、Bsu)に由来する。
【0017】
一部の実施形態において、本明細書で提供される方法は、新たに合成された核酸鎖又はポリヌクレオチド鎖中に取り込まれたガイドヌクレオチドを特異的に認識することができる超好熱性(hyperthermophilic)或いは中温性(mesophilic)のエンドヌクレアーゼの使用を含み、したがって、前記エンドヌクレアーゼは、核酸鎖又はポリヌクレオチド鎖中のガイドヌクレオチドの位置に従い核酸鎖又はポリヌクレオチド鎖を切断し、ガイドヌクレオチドの3’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、ガイドヌクレオチドの5’末端側にある1番目のホスホジエステル結合、ガイドヌクレオチドの5’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、又はガイドヌクレオチドの5’末端側にある3番目のホスホジエステル結合は、それぞれ対応するエンドヌクレアーゼにより特異的に切断され得る。
【0018】
一部の実施形態において、超好熱性エンドヌクレアーゼが、サーモコッカス・バロフィルスエンドヌクレアーゼV(Tba Endo V)、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼV(Pfu Endo V)、サーモコッカス・コダカラエンシスエンドヌクレアーゼV(Tko Endo V)、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼ Q(Pfu Endo Q)、メタノサルシナ・アセチボランスエンドヌクレアーゼQ(Mac Endo Q)、ピロコッカス・アビッシNucS エンドヌクレアーゼ(Pab NucS)、サーモコッカス・コダカラエンシスEndoMSエンドヌクレアーゼ(Tko EndoMS)、サーモコッカス・ガンマトレランスNucSエンドヌクレアーゼ(Tga NucS)及びこれらの酵素変異体或は突然変異体からなる群に由来する。
【0019】
一部の実施形態において、本明細書で提供される方法は、新たに合成された核酸鎖又はポリヌクレオチド鎖において、枯草菌エンドヌクレアーゼV(Bsu Endo V;配列番号11)、バチルス・プミルスエンドヌクレアーゼQ(Bpu Endo Q;配列番号12)及びこれらの酵素変異体などの群からの中温性エンドヌクレアーゼの使用を含む。
【0020】
一部の実施形態において、エンドヌクレアーゼが、枯草菌エンドヌクレアーゼV(Bsu Endo V)、大腸菌エンドヌクレアーゼV(Eco Endo V;配列番号7)、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼV(Pfu Endo V;配列番号8)、サーモコッカス・バロフィルスエンドヌクレアーゼV(Tba Endo V;配列番号10)、サーモコッカス・コダカラエンシスエンドヌクレアーゼV(Tko Endo V、配列番号16)又はこれらの酵素変異体からなる群から選択され、かつガイドヌクレオチドの3’末端側にある2番目のホスホジエステル結合を特異的に切断する。
【0021】
一部の実施形態において、前記エンドヌクレアーゼが、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼQ(Pfu Endo Q;配列番号9)、メタノサルシナ・アセチボランスエンドヌクレアーゼQ(Mac Endo Q、配列番号14)、バチルス・プミルスエンドヌクレアーゼQ(Bpu Endo Q、配列番号12)及びこれらの酵素変異体からなる群から選択され、新たに合成された核酸鎖又はポリヌクレオチド鎖中のガイドヌクレオチドの5’末端側にある1番目のホスホジエステル結合を特異的に切断する。
【0022】
一部の実施形態において、前記エンドヌクレアーゼが、サーモコッカス・ガンマトレランスNucSエンドヌクレアーゼ(Tga NucS;配列番号15)、ピロコッカス・アビッシNucSエンドヌクレアーゼ(Pab NucS;配列番号13)及びこれらの酵素変異体からなる群から選択され、新たに合成された核酸鎖又はポリヌクレオチド鎖中のガイドヌクレオチドの5’末端側にある2番目のホスホジエステル結合を特異的に切断する。
【0023】
一部の実施形態において、前記エンドヌクレアーゼが、サーモコッカス・コダカラエンシスEndoMSエンドヌクレアーゼ(Tko EndoMS、配列番号17)及びこれらの酵素変異体からなる群から選択され、新たに合成された核酸鎖又はポリヌクレオチド鎖中のガイドヌクレオチドの5’末端側にある3番目のホスホジエステル結合を特異的に切断する。
【0024】
一部の実施形態において、ガイドヌクレオチドに近くの特定のホスホジエステル結合で切断するために、前記エンドヌクレアーゼは、新生核酸ストランド又は合成ポリヌクレオチド中のガイドヌクレオチドを認識する。一部の実施形態において、本明細書で提供される方法は、従来に使用されている方法よりも高い温度で実施することができる。実施のための温度範囲は、例えば10℃~100℃、50℃~90℃、又は70℃~90℃であり得る。一部の実施形態において、本明細書で提供される方法において核酸イニシエーターは、遊離型であり、または本明細書に開示される方法に従いその 5’末端を介して固相担体に付着と固定化される、二重鎖構造(duplex)の合成/合成ポリヌクレオチドを形成する。固相担体は、例えば顆粒、樹脂、ビーズ、スライド、チップ、アレイ、膜、マトリックス、フローセル、ウェル、チャンバー、マイクロ流体チャンバー、チャネル、マイクロ流体チャネル、ゲル、合成ポリマー或いは合成核酸鎖又はポリヌクレオチドを付着させることができる任意の表面であり得る。
【0025】
本開示は、酵素によりポリヌクレオチドを合成するためのキットをさらに提供する。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドの配列及び長さは、予め決定されているか、又は設計されている。本開示の予め決定された配列及び長さのオリゴヌクレオチドを合成するためのキットは、遊離3’-ヒドロキシル基を有する3’-末端ヌクレオチドを含む核酸イニシエーターと、複数のヌクレオチドモノマーをイニシエーターに取り込んでイニシエーターの遊離3’-ヒドロキシル基から核酸鎖を伸長させるためのポリメラーゼとを含み得、ヌクレオチドモノマーは、エンドヌクレアーゼにより特異的に認識されるガイドヌクレオチドを含むことで、ガイドヌクレオチドを核酸鎖の指定された位置に取り込ませる。そして、エンドヌクレアーゼは、ガイドヌクレオチドの位置に従い核酸鎖を切断して、所望の配列及び長さのポリヌクレオチドを放出すると共に、残りの核酸鎖の3’末端に遊離の3’-ヒドロキシル基を残す。エンドヌクレアーゼは、ガイドヌクレオチドを特異的に認識すると共に、それぞれガイドヌクレオチドの3’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、ガイドヌクレオチドの5’末端側にある1番目のホスホジエステル結合、ガイドヌクレオチドの5’末端側にある2番目のホスホジエステル結合又はガイドヌクレオチドの5’末端側にある3番目のホスホジエステル結合を切断する。したがって、所望の配列及長さのポリヌクレオチドが得られ、新しい遊離3’-ヒドロキシル基を有する残りの核酸鎖は、新しいイニシエーターとして次のラウンドのポリヌクレオチド合成に使用されることができる。
【0026】
本開示は、さらに、酵素により所定の配列及び長さのポリヌクレオチドを得るためのキットを提供する。一部の実施形態において、切断しようとする標的ポリヌクレオチドは、事前に調製された任意の合成ポリヌクレオチドである。一部の実施形態において、前記キットは、部位特異的なガイドヌクレオチドを有する合成ポリヌクレオチドと、合成ポリヌクレオチドを切断して所定のポリヌクレオチドを放出するエンドヌクレアーゼとを含み、エンドヌクレアーゼは、ポリヌクレオチド中のガイドヌクレオチドの位置を認識し、それぞれガイドヌクレオチドの3’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、ガイドヌクレオチドの5’末端側にある1番目のホスホジエステル結合、ガイドヌクレオチドの5’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、又はガイドヌクレオチドの5’末端側にある3番目のホスホジエステル結合を切断することで、所望の所定のポリヌクレオチドが得られる。
【0027】
一部の実施形態において、核酸ストランド又はポリヌクレオチド鎖にウラシル或いはイノシンを含むガイドヌクレオチドは、既存のものであるか、若しくは化学法又は酵素法を用いて新たに合成されるものであってもよい。
〔図面の簡単な説明〕
図1〕本開示の少なくとも1つの実施形態による概略図である[イニシエーター(3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を有する)から鋳型非依存性(template-independent)一本鎖DNA(ssDNA)デノボ合成を行い、新たに合成されたDNA鎖を切断して所望の配列及び長さのポリヌクレオチドを得、合成されたDNA鎖を切断した後、残った核酸鎖から新しい遊離3’-ヒドロキシル基を再生して所定のポリヌクレオチドを得ると共に、残りの核酸鎖を核酸合成の次のラウンドで新しい再利用可能なイニシエーターとして使用することを示す。核酸合成反応の前に、イニシエーターの5’末端が固相担体(SS)に固定される。Xは、ガイドヌクレオチドを表し、核酸鎖内のヌクレオチド位置に番号を付ける起点として使用される。Nは、取り込まれたヌクレオチドモノマーを表し、下付き添字番号は、核酸鎖の3’末端側又は下流に向かって昇順(例:N、N、N、N及びN)、下付き添字番号は、核酸鎖の5’末端側又は上流に向かって降順(例:N-1、N-2及N-3)になる。E1~E4は、異なるエンドヌクレアーゼを表す。E1、E2、E3又はE4酵素によりそれぞれNとNとの間、XとN-1との間、N-1とN-2との間又はN-2とN-3との間のホスホジエステル結合で切断できることを含み、イニシエーターの5’末端は、固相担体(SS)に連結される酵素核酸合成プロセスを概略で説明する。]。
図2A及び図2B〕本開示の少なくとも1つの実施形態による概略図である[イニシエーター(3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を有する)(すなわちプライマー)からの鋳型指向性(template-directed)DNA合成、所望の配列及び長さのポリヌクレオチドを得るための新生DNA鎖の切断、及び次のラウンドの核酸合成のための新しい再利用可能なイニシエーターを形成するための残りの核酸鎖の3’末端の遊離3’-ヒドロキシル基の再生を示す。イニシエーターの5’末端は、核酸合成反応の前に固相担体(SS)に固定される。したがって、鋳型DNAは、3’末端を介して固相担体に連結されるか(図2A)、又はアニーリング(annealing)法或いは他の既知のハイブリダイゼーション技術によりイニシエーターに部分的にハイブリダイズされる(図2B)。Xは、ガイドヌクレオチドを表し、核酸鎖に番号を付ける起点として使用される。Nは、取り込まれたヌクレオチドモノマーを表し、下付き添字番号は、核酸鎖の3’末端側又は下流に向かって昇順(例:N、N、N、N及びN)で、下付き添字番号は、核酸鎖の5’末端側又は上流に向かって降順(例:N-1、N-2及N-3)になる。E1~E4は、異なるエンドヌクレアーゼを表す。E1、E2、E3又はE4酵素によりそれぞれNとNとの間、XとN-1との間、N-1とN-2との間又はN-2とN-3との間のホスホジエステル結合で切断できることを含む酵素核酸合成手段を概略で説明する。]。
図3〕本開示の少なくとも1つの実施形態による鋳型非依存性核酸合成の実現可能性を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像である[レーン(lane)Sは、イニシエーターDNAのみ(ビオチン-FAM-45マーssDNA)を示す。レーン1は、ポリメラーゼにより3’-O-(アジドメチル)-2’-デオキシウリジン(U)で伸長されたイニシエーターDNAを示す。レーン2は、各ヌクレオチド取り込み及び3’-脱保護工程の後に、3’-O-(アジドメチル)-2’-デオキシウリジン(U)及び3’-O-(アジドメチル)-2’-デオキシグアノシン(G)で連続的に伸長されたイニシエーターDNAを示す。レーン3は、3’-脱保護工程後に3’-O-(アジドメチル)-2’-デオキシウリジンで伸長され、続いてdNTP(dATP、dCTP、dGTP、及びdTTPの混合物)で伸長されたイニシエーターDNAを示す。]。
図4A及び図4B〕それぞれ実施例1及び2の結果を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像であり、37℃又は70℃で、例示的な酵素でそれぞれデオキシイノシン(I、図4A)或いはデオキシウリジン(U、図4B)を優先的又は特異的に認識することにより、遊離型(図4A(1)及び図4B(1))又は固定化型(図4A(2)及び図4B(2))の一本鎖DNA(ssDNA)、及び遊離型(図4A(3) 及び図4B(3))又は固定化型(図4A(4)及び図4B(4))の二本鎖DNA(dsDNA)の部位特異的切断を示している。Sは、基質DNAのみを意味する。Eco EndoVは、米国特許出願第2021/0254114 A1号を参照して実施できる自製の大腸菌エンドヌクレアーゼVを意味する。Pfu EndoVは、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼVを意味する。C1は、New England Biolabsから商業的に入手したエンドヌクレアーゼV(NEB Eco EdoV)(Cat.#M0305S,Ipswitch,MA)を意味する。C2は、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラーぜ(human alkyladenine DNA glycosylase,hAAG)及びエンドヌクレアーゼVIII(EndoVIII)を含む自製の酵素混合物を意味する。C3は、New England Biolabsからのウラシル特異的切除試薬(NEB USER)(Cat.#M5505S,Ipswich,MA)を意味する。]。
図5A及び図5B〕それぞれ実施例3及び4の結果を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像である[37℃又は70℃で、例示的な酵素でそれぞれデオキシイノシン(I、図5A)或いはデオキシウリジン(U、図5B)を優先的又は特異的に認識することにより、遊離型(図5A(1)及び図5B(1))又は固定化型(図5A(2)及び図5B(2))の一本鎖DNA(ssDNA)、及び遊離型(図5A(3)及び図5B(3))又は固定化型(図5A(4)及び図5B(4))の二本鎖DNA(dsDNA)の部位特異的切断を示している。Pfu EndoQは、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼQを意味する。C1は、New England Biolabsから商業的に入手したエンドヌクレアーゼV(NEB Eco EdoV)(Cat.#M0305S,Ipswitch,MA)を意味する。C2は、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラー(hAAG)及びEndoVIIIを含む自製の酵素混合物を意味する。C3は、New England Biolabsからのウラシル特異的切除試薬(NEB USER)(Cat.#M5505S,Ipswich,MA)を意味する。]。
図6A及び6B〕それぞれ実施例5及び6の結果を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像である[37℃又は70℃で、例示的な酵素でそれぞれデオキシイノシン(I、図6A)或いはデオキシウリジン(U、図6B)を優先的又は特異的に認識することにより、遊離型(図6A(1)及び図6B(1))又は固定化型(図6A(2)及び図6B(2))の一本鎖DNA(ssDNA)、及び遊離型(図6A(3)及び図6B(3))又は固定化型(図6A(4)及び図6B(4))の二本鎖DNA(dsDNA)の部位特異的切断を示している。Sは、基質DNAのみを意味する。Eco EndoVは、米国特許出願第2021/0254114 A1号を参照して実施できる自製の大腸菌エンドヌクレアーゼVを意味する。Tba Endo Vは、サーモコッカス・バロフィルスエンドヌクレアーゼVを意味する。C1は、New England Biolabsから商業的に入手したエンドヌクレアーゼV(NEB Eco EdoV)(Cat.#M0305S,Ipswitch,MA)を意味する。C2は、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラー(hAAG)及びEndoVIIIを含む自製の酵素混合物を意味する。C3は、New England Biolabsからのウラシル特異的切除試薬(NEB USER)(Cat.#M5505S,Ipswich,MA)を意味する。]。
図7〕それぞれ実施例7の結果を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像である[37℃で、例示的な酵素でデオキシウリジン(U)を優先的又は特異的に認識することにより、遊離型(図7(1)の一本鎖DNA(ssDNA)、及び遊離型の二本鎖DNA(dsDNA)(図7(2)の部位特異的切断を示している。Sは、基質DNAのみを意味する。Eco EndoVは、米国特許出願第2021/0254114 A1号を参照して実施できる自製の大腸菌エンドヌクレアーゼVを意味する。Bsu Endo Vは、枯草菌エンドヌクレアーゼVを意味する。C1は、New England Biolabsから商業的に入手したエンドヌクレアーゼV(NEB Eco EdoV)(Cat.#M0305S,Ipswitch,MA)を意味する。C3は、New England Biolabsからのウラシル特異的切除試薬(NEB USER)(Cat.#M5505S,Ipswich,MA)を意味する。]。
図8A及び図8B〕実施例8の結果を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像である[37℃、55℃及/又は60℃で、例示的な酵素でそれぞれデオキシイノシン(I,図8A(1)、8A(2)、8B(1)、及び8B(2))及びデオキシウリジン(U,図8A(3)、8A(4)、8B(3)、及び8B(4))を優先的又は特異的に認識することにより、遊離型(図8A(1)、8A(3)、8B(1)、及8B(3))の一本鎖DNA(ssDNA)又は固定化型(図8A(2)、8A(4)、8B(2)、及8B(4))の一本鎖DNA(ssDNA)からの伸長DNA鎖産物の部位特異的切断を示す。Sは、基質DNAのみを意味する。Eco EndoVは、米国特許出願第2021/0254114 A1号を参照して実施できる自製の大腸菌エンドヌクレアーゼVを意味する。Pfu Endo Vは、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼVを意味する。Tbaは、サーモコッカス・バロフィルスエンドヌクレアーゼVを意味する。Pfu Endo Qは、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼQを意味する。Bpu Endo Qは、バチルス・プミルスエンドヌクレアーゼQを意味する。]。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の実施形態は、本発明を詳細に説明するために提供される。当業者は、本明細書の開示を読んだ後、本開示の利点及び効果を容易に理解することができ、且つ他の異なる実施形態で実現及び使用することができる。したがって、本明細書の開示を実現するために、異なる態様又は用途に対して、本発明の範囲に離脱しない前提で、以下の実施形態を調整及び/又は変更することができ、本明細書に開示された内容の範囲内における任意の要素或いは方法は、本明細書の他の実施形態における他の任意の要素若しくは方法と組み合わせることができる。
【0029】
本明細書で使用されるように、単数形「一つ」、及び「該」は、文脈上明らかに単数形であることが示されない限り、複数形も同様に含むことを意図することである。用語「又は」は、文脈上明らかにそうでないとされる限り、用語「及び/又は」と互換的に使用されている。
【0030】
本明細書で使用されるように、用語「包括する」、「含む」、「含有する」及びこれらのいかなる変形用語も、非排他的な包含を網羅するものとする。例えば物体が制限条件を「含む」と記述する場合、特に指定がない限り、他の成分、要素、組成物/コンポーネント、構造、領域、部品、デバイス、システム、ステップ、或いは連結などが追加で含まれることができ、しかも他の制限は除外されない。
【0031】
本明細書で用いられる数値範囲は、包括的かつ組み合わせ可能であり、本明細書の数値範囲内にある任意の数値を最大値又は最小値として、そこからサブ範囲を導き出すことができる。例えば、「10℃~100℃」という数値範囲は、最小値10℃から最大値100℃までの任意のサブ範囲、例えば10℃~50℃、60℃~100℃、70℃~90℃などのサブ範囲を含む。なお、本明細書で用いられる複数の数値を、最大値及び最小値として任意に選択して、数値範囲を導き出すことができる。例えば、37℃、55℃、及び70℃の数値範囲から、37℃~55℃、37℃~70℃、55℃~70℃等の数値範囲を導き出すことができる。
【0032】
本明細書で使用されている「約」という用語は、一般的に包含するように意図される数値を意味し、その範囲は、与えられた数値又は与えられた数値範囲から±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、又は±0.1%の変動をカバーする。数値のこのような変動は、例えば、実験誤差や、化合物、組成物、濃縮物、或いは製剤を製造するための測定若しくは取り扱い手順における典型的な誤差や、本開示で使用される出発材料又は成分の供給源、製造又は純度の差や、同様の考慮事項により発生する可能性がある。或いは、用語「約」は、当業者が考慮した場合に、その値が平均値の許容可能な標準誤差内にあることを意味する。特に明記しない限り、本明細書で開示されている材料の量、時間の長さ、温度、動作条件、量の比率などの数値範囲、量、値、及びパーセンテージは、全ての場合において「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。
【0033】
本明細書で使用されるように、用語「核酸」、「核酸配列」及び「核酸断片」とは、一本鎖又は二本鎖の形態のヌクレオチド或いはリボヌクレオチド配列を指し、その供給源は本明細書に限定されず、一般的に天然ヌクレオチド或いは人工の化学模倣物が含まれる。本明細書で使用される用語「核酸」は、天然又は非天然の「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」、「遺伝子」、「cDNA」、「RNA」、及び「mRNA」を含む用語と互換的に使用されることができる。
【0034】
本明細書で使用される核酸には、核酸類似体も含まれる。核酸類似体という用語は、天然に存在するRNA及びDNAと機能的又は構造的に同等である化合物或いは人工核酸を表すことが知られている。核酸類似体は、1つ又は複数の修飾を受けたヌクレオチド部分(リン酸骨格、五炭糖、核酸塩基)を有する場合がある。ヌクレオチド上のこれらの修飾は、核酸の構造、幾何学的形状、及びそれと核酸ポリメラーゼとの相互作用を変化させる。核酸類似体は、天然物とは異なる新種の形態(new-to-nature)の糖骨格を持つように設計された異種核酸(xeno nucleic acid、XNA)などなどの、新たなカテゴリーの人工核酸もカバーする。
【0035】
核酸類似体の例としては、4つの標準塩基すべてと塩基対を形成できる、イノシン、3-ニトロピロール(3-nitropyrrole)及び5-ニトロインドール(5-nitroindole)などのユニバーサル塩基(universal base)と、核酸の骨格特性に影響を与えるペプチド核酸(PNA)などのリン酸-糖骨格類似体と、アミン反応性アミノアリルヌクレオチド(amine-reactive aminoallyl nucleotide)、チオール(thiol-containing)含有ヌクレオチド、ビオチン(biotin)結合ヌクレオチド、ローダミン(rhodamine)結合ヌクレオチド及びシアニン(cyanine)結合ヌクレオチドなどの化学リンカー又はフルオロフォア結合類似体と、2-アミノプリン(2-aminopurine,2-AP)、3-メチルイソキサントプテリン(3-methylisoxanthopterin、3-MI)、6-メチルイソキサントプテリン(6-methylisoxanthopterin、6-MI)、4-アミノ-6-メチルイソキサントプテリン(4-amino-6-methylisoxanthopterin、6-MAP)及び4-ジメチルアミノピリジン(4-dimethylaminopyridine、DMAP)などの蛍光塩基類似体と、蛍光レポーター色素に結合したオリゴヌクレオチド(ALEXA、FAM、TET、TAMRA、CY3、CY5、VIC、JOE、HEX、NED、PET、ROX、Texas Red など)及び/又は蛍光クエンチャー(fluorescent quenchers)(BHQ)などの各種遺伝子使用の核酸プローブと、ステムループ(stem-loop)構造及びフルオロフォアとクエンチャーで二重標識される一本鎖核酸プローブを含む分子ビーコン(MB)と、核酸アプタマー(aptamer)とが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド」は、ポリリボヌクレオチド、ポリデオキシリボヌクレオチドヌクレオチド、又はプリン或いはピリミジン塩基を有するN-グリコシドからなる他のポリヌクレオチドを含む、あらゆる種類のポリヌクレオチドの総称である。本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は、長さの違いを指すものでなく、これらの分子構造のみを指すため、本明細書では互換的に使用されることができる。オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、天然のヌクレオチド、損傷されたヌクレオチド、或いは修飾を受けたヌクレオチドをさらに含み得る。オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドに含まれる核酸塩基としては、例えばアデニン、チミン、シトシン、グアニン、ウラシル、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン(isocytosine)、イソグアニン(isoguanine)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、5-ヒドロキシメチルウラシル(5-hydroxymethyluracil)、5-ホルミルシトシン(5-formylcytosine)、5-カルボキシルシトシン(5-carboxylcytosine)、3-メチルアデニン(3-methyladenine)、3-メチルグアニン(3-methylguanine)、7-メチルアデニン(7-methyladenine)、7-メチルグアニン(7-methylguanine)、N6-メチルアデニン(N6-methyladenine)、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニン(8-oxo-7,8-dihydroguanine)、5-ヒドロキシルシトシン(5-hydroxylcytosine)、5-ヒドロキシルラシル(5-hydroxyluracil)、ジヒドロキシウラシル(dihydroxyuracil)、エテノシトシン(ethenocytosine)、エテノアデニン(ethenoadenine)、チミングリコール(thymine glycol)、シトシングリコール(cytosine glycol)、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-N-メチルホルムアミドピリミジン(2,6-diamino-4-hydroxy-5-N-methylformamidopyrimidine)、アデニンのホルムアミドピリミジン(formamidopyrimidine)誘導体、グアニンのホルムアミドピリミジン誘導体、グアニンの反対側のアデニン(adenine opposite guanine)、グアニンの反対側のウラシル、アデニンの反対側のウラシル、グアニンの反対側のチミン、グアニンの反対側のエテノシトシン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニンの反対側のアデニン及びグアニンの反対側の2-ヒドロキシルアデニンであり得る。
【0037】
本明細書で使用される用語「エンドヌクレアーゼ活性」は、特定の認識可能な核酸部位での結合を切断し、一本鎖又は二本鎖DNAの切断反応を引き起こす酵素活性を指す。エンドヌクレアーゼ活性は、天然に存在する酵素及びその修飾を受けた誘導体により提供され得る。修飾を受けた誘導体の例としては、具酵素活性を有する変異体/変異体、酵素断片、エンドヌクレアーゼ活性を有する酵素に由来する組換えタンパク質が挙げられる。例えば、エンドヌクレアーゼは、一方で一本鎖DNAを切断すると共に、5’-リン酸(5’-monophosphate)を持つオリゴヌクレオチド/ポリヌクレオチドを放出し、、他方で残りの核酸ストランドに遊離の3’-ヒドロキシル基を残すことができる。
【0038】
用語の「脱塩基(abasic)」、「脱プリン/脱ピリミジン(apurinic/apyrimidinic)」及びDスペーサー(D-spacer)は、塩基が存在しないが、糖リン酸骨格がそのまま残っている部位を示すために、互換的に使用することができる。したがって、脱塩基部位エンドヌクレアーゼは、脱プリン/脱ピリミジン部位エンドヌクレアーゼとしても知られている。
【0039】
本明細書で使用される用語「鋳型」は、所望の又は未知の標的ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド或いはポリヌクレオチド模倣物を指す。場合によっては、用語の「標的配列」、「鋳型ポリヌクレオチド」、「標的核酸」、「標的ポリヌクレオチド」、「核酸鋳型」、「鋳型配列」、及びこれらの変形は、互換的に使用されることができる。例えば、用語「鋳型」は、鋳型依存性(template-dependent)又は鋳型指向性(template-directed)核酸ポリメラーゼによる複製を介してヌクレオチド或いはヌクレオチド類似体から相補的コピー(complimentary copy)が合成される核酸鎖を指す。核酸二重らせん(nucleic acid duplex)構造では、慣習的な定義により鋳型鎖が「下側」鎖として描かれ、説明される。同様に、非鋳型鎖は、「上側」鎖として描かれ、説明される。「鋳型」鎖は、「センス(sense)」又は「プラス(plus)」鎖と呼ばれることもあり、非鋳型鎖は、「アンチセンス(antisense)」又は「マイナス(minus)」鎖と呼ばれることもある。
【0040】
本明細書で使用される「イニシエーター」という用語は、核酸ポリメラーゼが核酸のデノボ(de novo)合成を開始するモノヌクレオシド、モノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、又は修飾を受けた類似体を指す。「イニシエーター」という用語は、XNA又は3’-ヒドロキシル基を有するペプチド核酸(peptide nucleic acid,PNA)を指す場合もある。本明細書で使用される用語「プライマー」は、鋳型と組み合わせ、核酸ポリメラーゼによる核酸合成を開始するために使用される短い一本鎖オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、或いは修飾を受けた核酸類似体を指す。
【0041】
本明細書に開示されるヌクレオチドモノマーには、典型的なヌクレオチド及びヌクレオチド類似体が含まれる。「ヌクレオチド類似体」という用語は、典型的なヌクレオチドの構造模倣物である化学的に修飾されたヌクレオチド又は人工ヌクレオチドを指すことが当業者に知られている。これらのヌクレオチド類似体は、核酸を合成するための核酸ポリメラーゼの基質として使用できる。ヌクレオチド類似体は、ヌクレオチドの1つ又は複数の変更されたヌクレオチド成分(例:リン酸骨格、五炭糖及び核酸塩基)を有する場合があり、これらはヌクレオチドの構造及び立体配置を変更すると共に、該ヌクレオチド類似体と他の核酸塩基及び核酸ポリメラーゼとの相互作用に影響を与える。例えば、変更された核酸塩基を有するヌクレオチド類似体は、DNA又はRNAに別の塩基対合(base-pairing)及び塩基スタッキング(base-stacking)特性を与えることができる。また、例として、塩基の修飾により、イノシン(inosine)、メチル-5-デオキシシチジン(methyl-5-deoxycytidine)、デオキシウリジン(deoxyuridine)、ジメチルアミノ-5-デオキシウリジン(dimethylamino-5-deoxyuridine)、ジアミノ-2,6-プリン(diamino-2,6-purine)又はブロモ-5-デオキシウリジン(bromo-5-deoxyuridine)などのヌクレオシド、及びハイブリダイゼーションを可能にする他の任意の類似体を生成することができる。他の例示的な態様において、修飾は、糖部分(sugar moiety)(例えば、類似体によるデオキシリボースの置換)及び/又はリン酸基(例えば、ボロン酸塩、アルキルホスホン酸塩、或いはホスホロチオエート誘導体)で行うことができる。ヌクレオチド類似体モノマーは、一リン酸(monophosphate)、二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸、及び六リン酸を有するリン酸基から選択され得る。
【0042】
ヌクレオチド類似体の他の例としては、除去可能なブロッキング部分(removable blocking moiety)を有するヌクレオチドが挙げられる。除去可能なブロッキング部分の例としては、3’-O-ブロッキング部分(3’-O-blocking moiety)、塩基ブロッキング部分(base blocking moiety)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。3’-O-ブロッキング部分の例としては、O-アジド(O-N)、O-アジドメチル(O-azidomethyl)、O-アミノ(O-amino)、O-アリル(O-allyl)、O-フェノキシアセチル(O-phenoxyacetyl)、O-メトキシアセチル(O-methoxyacetyl)、O-アセチル(O-acetyl)、O-(p-トルエン)スルホン酸塩[O-(p-toluene)sulfonate]、O-リン酸塩(O-phosphate)、O-硝酸塩(O-nitrate)、O-[4-メトキシ]-テトラヒドロチオピラニル{O-[4-methoxy]-tetrahydrothiopyranyl}、O-テトラヒドロチオピラニル(O-tetrahydrothiopyranyl)、O-[5-メチル]-テトラヒドロフラニル{O-[5-methyl]-tetrahydrofuranyl}、O-[2-メチル,4-メトキシ]-テトラヒドロピラニル {O-[2-methyl,4-methoxy]-tetrahydropyranyl}、O-[5-メチル]-テトラヒドロピラニル{O-[5-methyl]-tetrahydropyranyl}及びO-テトラヒドロチオフラニル(O-tetrahydrothiofuranyl)、O-2-ニトロベンジル(O-2-nitrobenzyl)、O-メチル(O-methyl)及びO-アシル(O-acyl)が挙げられるが、これらに限定されない。塩基ブロッキング部分の例としては、可逆的ダイターミネーター(reversible dye-terminator)が挙げられる。可逆的ダイターミネーターの例としては、Illumina MiSeqの可逆的ダイターミネーター、Illumina HiSeqの可逆的ダイターミネーター、Illumina Genome Analyzer IIXの可逆的ダイターミネーター、Helicos Biosciences Heliscopeの可逆的ダイターミネーター、及びLaserGenのライトニングターミネーター(lightning terminator)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用される用語「ポリメラーゼ」は、天然に存在する酵素及びその修飾を受けた誘導体を含むDNAポリメラーゼを総称するものである。例えば、5’から3’又は3’から5’エキソヌクレアーゼ活性を除去するための配列修飾をポリメラーゼに使用することができる。ポリメラーゼの性能を改善する手段には、ポリメラーゼの官能基或いは配列に対する突然変異若しくは欠失も含まれる。
【0044】
本開示によれば、ポリメラーゼは、鋳型依存性ポリメラーゼ又は鋳型非依存性ポリメラーゼであり得る。ポリメラーゼは、ファミリーA DNAポリメラーゼ(例:T7 DNAポリメラーゼ、Pol I、Pol γ、θ及び ν)、ファミリーB DNAポリメラーゼ(例:Pol II、Pol B、 Pol ζ、Pol α、δ及びε)、ファミリーC DNAポリメラーゼ(例:Pol III)、ファミリーD DNAポリメラーゼ(例:PolD)、ファミリーX DNAポリメラーゼ(例:Pol β、Pol σ、Pol λ、Pol μ及びターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ)、ファミリーY DNAポリメラーゼ(例:Pol ι、Pol κ、Pol η、DinB、Pol IV及びPol V)、逆転写酵素(例え:テロメラーゼ和B型肝炎ウイルス)及びこれらの酵素活性を有する断片からなる群から選択され得る。
【0045】
広く使用される鋳型依存性ポリメラーゼの非限定的な例としては、DNA依存性のDNAポリメラーゼであるT7ファージのT7 DNAポリメラーゼ及びT3ファージのT3 DNAポリメラーゼと、DNA依存性のRNAポリメラーゼであるT7ファージのT7 RNAポリメラーゼ及びT3ファージのT3 RNAポリメラーゼと、DNA依存性のDNAポリメラーゼである大腸菌のDNAポリメラーゼI(DNA polymerase I)又はクレノウ(Klenow)断片と呼ばれるその断片と、熱安定的なDNA依存性のDNAポリメラーゼであるサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ及びVent DNAポリメラーゼと、DNA依存性のDNAポリメラーゼである真核生物DNAポリメラーゼβと、RNA依存性のDNAポリメラーゼであるテロメラーゼと、修飾を受けたRNA(リボザイム(ribozyme);Unrau&Bartel,1998)などの非タンパク質触媒分子、及び鋳型依存性ポリメラーゼ活性を持つDNAとが挙げられる。
【0046】
鋳型非依存性ポリメラーゼの非限定的な例としては、逆転写酵素、ポリAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼθ(θ)、DNAポリメラーゼμ(μ)、DpoIVポリメラーゼ、及びターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼが挙げられる。核酸合成及び連結ヌクレオチドの付加に適したポリメラーゼは、当業者の専門知識及び従来技術の範囲内で理解できるはずであるため、簡潔にするために、ここでその詳細な説明を省略する。
【0047】
一部の実施形態において、本明細書で提供される方法は、ファミリーBポリメラーゼの使用を含む。ファミリーBポリメラーゼの例としては、大腸菌のDNAポリメラーゼII(DNA polymerase II,Eco)、緑膿菌のDNAポリメラーゼII(Pae)、エシェリヒアファージRB69のDNAポリメラーゼ(RB69)、エシェリヒアファージT4のDNAポリメラーゼ(T4)、バチルスファージ(Bacillus)Phi29のDNAポリメラーゼ(Phi29)、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のDNAポリメラーゼデルタ触媒サブユニット(ScePOLD)、ヒトDNAポリメラーゼデルタ触媒p125サブユニット(hPOLD)、スルホロブス・ソルファタリカスSulfolobus solfataricus)のDNAポリメラーゼ(Sso)、ピロバキュラム・イスランジカム(Pyrobaculum islandicum)のDNAポリメラーゼ (Pis)、超好熱菌Thermococcus sp.(9°N-7株)のDNAポリメラーゼ(9°N)、サーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis)のDNAポリメラーゼ(Kod1)、メタノコッカス・マリパルディス(Methanococcus maripaludis)のDNAポリメラーゼ(Mma)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)のDNAポリメラーゼ(Pfu)、サーモコッカスゴルゴナリウス(Thermococcus gorgonarius)のDNAポリメラーゼ(Tgo)、及びサーモコッカスリトラリス(Thermococcus litoralis)のDNAポリメラーゼ(Vent)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書に記載されるヌクレオチドモノマーは、除去可能なブロッキング部分を有してもよい。該除去可能なブロッキング部分の例としては、3’-O-ブロッキング部分、塩基ブロッキング部分及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。該除去可能なブロッキング部分を有するヌクレオチドモノマーは、可逆的ターミネーター(reversible terminator)とも呼ばれる。したがって、該3’-O-ブロッキング部分を有するヌクレオチドモノマーは、3’-ブロックされた可逆的ターミネーター(3’-blocked reversible terminator)又は3’-O-修飾された可逆的ターミネーター(3’-O-modified reversible terminator)とも呼ばれ、該塩基ブロック部分を有するヌクレオチドモノマーは、3’ブロックされていない可逆的ターミネーター(3’-unblocked reversible terminator)又は3’-OHブロックされていない可逆的ターミネーター(3’-OH unblocked reversible terminator)とも呼ばれる。本明細書で使用される用語「可逆的ターミネーター」は、化学修飾されたヌクレオチドモノマーを意味する。この可逆的ターミネーターがポリメラーゼにより成長中の核酸に取り込まれると、ポリメラーゼによる別のヌクレオチドモノマーのさらなる取り込みをブロックする。このような「可逆的ターミネーター」塩基及び核酸は、化学的又は物理的処理により脱保護(deprotected)することができ、このような脱保護後、該核酸は、ポリメラーゼによりさらに伸長することができる。3’-O-ブロッキング部分の例としては、O-アジドメチル、O-アミノ、O-アリル、O-フェノキシアセチル、O-メトキシアセチル、O-アセチル、O-(p-トルエン)スルホン酸エステル、O-リン酸エステル、O-硝酸エステル、O-[4-メトキシ]-テトラヒドロチオピラニル、O-テトラヒドロチオピラニル、O-[5-メチル]-テトラヒドロフラニル、O-[2-メチル、4-メトキシ]-テトラヒドロピラニル、O-[5-メチル]-テトラヒドロピラニル、及びO-テトラヒドロチオフラニル、O-2-ニトロベンジル、O-メチルメチル及びO-アシルアシルが挙げられるが、これらに限定されない。3’-ブロックされていない可逆的ターミネーターの例としては、7-[(S)-1-(5-メトキシ-2-ニトロフェニル)-2,2-ジメチル-プロピルオキシ]メチル-7-デアザ-dATP {7-[(S)-1-(5-methoxy-2-nitrophenyl)-2,2-dimethyl-propyloxy] methyl-7-deaza-dATP}、5-[(S)-1-(5-メトキシ-2-ニトロフェニル)-2,2-ジメチル-プロピルオキシ]メチル-dCTP{5-[(S)-1-(5-methoxy-2-nitrophenyl)-2,2-dimethyl-propyloxy] methyl-dCTP}、1-[(5-メトキシ-2-ニトロフェニル)-2,2-ジメチル-プロピルオキシ]-5-メチル-7-デアザ-dGTP{1-[(5-methoxy-2-nitrophenyl)-2,2-dimethyl-propyloxy]-5-methyl-7-deaza-dGTP}、5-[(S)-1-(5-メトキシ-2-ニトロフェニル)-2,2-ジメチル-プロピルオキシ]メチル-dUTP {5-[(S)-1-(5-methoxy-2-nitrophen-yl)-2,2-dimethyl-propyloxy] methyl-dUTP}及び5-[(S)-1-(2-ニトロフェニル)-2,2-ジメチル-プロピルオキシ]メチル-dUTP{5-[(S)-1-(2-nitrophenyl)-2,2-dimethyl-propyloxy] methyl-dUTP}が挙げられるが、これらに限定されない。該塩基ブロック部分は、可逆的ダイターミネーター(reversible dye-terminator)であってもよい。可逆的ダイターミネーターの例としては、Illumina NovaSeqの可逆的ダイターミネーター、Illumina NextSeqの可逆的ダイターミネーター、Illumina MiSeqの可逆的ダイターミネーター、Illumina HiSeqの可逆的ダイターミネーター、Illumina Genome Analyzer IIXの可逆的ダイターミネーター、LaserGenのライトニングターミネーター、及びHelicos Biosciences Heliscopeの可逆的ダイターミネーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
一部の実施形態において、ガイドヌクレオチドは、天然、非天然又は修飾を受けたヌクレオチドであり、該ヌクレオチドの核酸塩基は、例えば、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、ウラシル、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニン、5-フルオロウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、5-ホルミルシトシン、5-カルボキシルシトシン、3-メチルアデニン、3-メチルグアニン、7-メチルアデニン、7-メチルグアニン、N6-メチルアデニン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニン、5-ヒドロキシルシトシン、5-ヒドロキシルラシル、ジヒドロキシウラシル、エテノシトシン、エテノアデニン、チミングリコール、シトシングリコール、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-N-メチルホルムアミドピリミジン、アデニンのホルムアミドピリミジン誘導体、グアニンのホルムアミドピリミジン誘導体、グアニンの反対側のアデニン、グアニンの反対側のウラシル、アデニンの反対側のウラシル、グアニンの反対側のチミン、グアニンの反対側のエテノシトシン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニンの反対側のアデニン及びアデニンの反対側の2-ヒドロキシルアデニンであり得る。少なくとも1つの実施形態において、ガイドヌクレオチドは、ウラシル、キサンチン、ヒポキサンチン、シトシン、及グアニンからなる群から選択される核酸塩基を含有する。一部の実施形態において、ガイドヌクレオチドは、脱プリン/脱ピリミジン損傷を含有し、該脱プリン/脱ピリミジン損傷は、脱塩基部位又はDスペーサーである。
【0050】
可逆的ターミネーターは、当業者にとって周知でありながら、一般に使用されているものであるため、簡潔にするために本明細書ではさらなる詳細を省略する。それにも関わらず、適用可能な3’-ブロックされた可逆的ターミネーター、適用可能な3’-ブロックされていない可逆的ターミネーター、及び保護と脱保護に適用できる条件(すなわち、該除去可能なブロッキング部分を付加又は除去するための条件)は、例えば、Gardner et al. (2012), Nucleic Acids Research, 40(15):7404-7415、Litosh et al. (2011)、Nucleic Acids Research, 39(6):e39及びChen et al. (2013), Genomics Proteomics Bioinformatics, 11:34-40などの文献で見つけることができる。
【0051】
本開示によれば、イニシエーター又はプライマー-鋳型二重鎖(primer-template duplex)は、核酸合成のための出発物質として使用され得る。該イニシエーター/プライマー-鋳型二重鎖の5’末端は、固相担体と連結できる。イニシエーターは、固相担体に直接付着することもできるし、リンカーを介して固相担体に付着することもできる。固相担体の例としては、マイクロアレイ(microarrays)、ビーズ(コーティング或いは非コーティング)、カラム、光ファイバー、ワイプ(wipes)、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、石英、ジアゾ化膜(diazotized membranes)(紙又はナイロン)、シリコーン樹脂(silicones)、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、紙、セラミックス、金屬、半金属(metalloids)、半導体材料、磁性顆粒、プラスチック(例:ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)及びポリスチレン(polystyrene))、ゲル-形成材料(例:ゼラチン)、リポ多糖類、ケイ酸塩(silicates)、アガロース(agarose)、ポリアクリルアミド(polyacrylamides)、メタクリル酸メチルポリマー(methyl methracrylate polymers)、ゾルゲル、多孔質ポリマー、ヒドロゲル、ナノ構造表面ナノチューブ(nanostructured surfaces nanotubes)(例:カーボンナノチューブ)、及びナノ顆粒(例:金ナノ顆粒又は量子ドット(quantum dots))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
具体的には、開示された方法が酵素による核酸合成のシナリオの下で使用され、ポリメラーゼは、イニシエーターに複数のヌクレオチドモノマーを付加することにより核酸鎖を伸長することができ、ヌクレオチドモノマーには、部位特異的で認識可能なヌクレオチドモノマーが含まれる。所定の核酸塩基又は脱プリン/脱ピリミジン損傷は、ガイドヌクレオチドとして定義される。酵素による核酸合成の間、指定の位置でガイドヌクレオチドを核酸鎖に取り込み、続いて部位特異的な酵素切断が行われることにより、新たに合成された核酸鎖から所望の目標ポリヌクレオチドが得られる。したがって、所望の配列及び長さのポリヌクレオチドを効果的に得る前、核酸鎖の配列及び長さ、並びに対応する切断酵素を事前に柔軟に設計及びカスタマイズすることができる。
【0053】
使用者の設計に応じて、得られる所望の核酸鎖又はポリヌクレオチドにおいて、新たに合成された核酸を含んでもよく、或いは市販のすぐに使用できる(ready-to-use)合成核酸を使用してもよい。本明細書に開示される切断酵素は、指定された核酸鎖を特定の位置で優先的に又は特異的に切断することにより、所望の配列及び長さのポリヌクレオチドを放出する。
【0054】
本開示は、酵素による規定の配列及び長さのポリヌクレオチドの合成方法を提供し、この方法は、3’末端に遊離の3’-ヒドロキシル基を有するイニシエーター、ポリメラーゼにより新たに合成された核酸鎖、及び新たに合成された核酸鎖内の特定のホスホジエステル結合を切断する、ポリヌクレオチド切断活性を有する酵素/エンドヌクレアーゼの使用を含む。具体的には、ポリメラーゼは、遊離の3’-ヒドロキシル基から核酸鎖を伸長させるために、ガイドヌクレオチドを含むヌクレオチドモノマーをイニシエーターに取り込む。したがって、ポリメラーゼの取り込みにより、ガイドヌクレオチドは、伸長された核酸鎖上の特定の位置にある。次いで、選択されたエンドヌクレアーゼは、ガイドヌクレオチドを認識すると共に、ガイドヌクレオチドの位置に従って新たに合成された核酸鎖を切断することにより、所望の又は所定の配列及び長さのポリヌクレオチドを放出する。
【0055】
新たに合成された核酸鎖を切断することによって所定の、又は所望の配列及び長さを有するポリヌクレオチドは、選択されたエンドヌクレアーゼで新生核酸鎖におけるガイドヌクレオチドの位置を特異的に認識し、それぞれガイドヌクレオチドの3’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、ガイドヌクレオチドの5’末端側にある1番目のホスホジエステル結合、ガイドヌクレオチのド5’末端側にある2番目のホスホジエステル結合又はガイドヌクレオチドの5’末端側にある3番目のホスホジエステル結合を優先的に切断する。また、エンドヌクレアーゼで核酸鎖を切断することにより、遊離3’-ヒドロキシル基を有する残りの核酸鎖を残したため、次のラウンドの核酸合成の新しいイニシエーター又は使用可能なイニシエーターとして使用することができる。
【0056】
なお、好熱性エンドヌクレアーゼを利用して、新生核酸鎖内のガイドヌクレオチドの位置を認識することにより、部位特異的核酸切断を実行することができる。好熱性酵素自体の耐熱性により、熱安定化したエンドヌクレアーゼは、反応温度の上昇などのさまざまな反応条件下で核酸の切断を加速することができる。一部の実施形態において、本開示のエンドヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼV、エンドヌクレアーゼQ、NucSエンドヌクレアーゼ又はEndoMSエンドヌクレアーゼである。
【0057】
本明細書で提供される方法は、切断に使用できる核酸鎖を制限せず、使用者はさまざまなシナリオですぐに使用できる出発物質を入手できるため、本明細書は、酵素により所定の配列及び長さのポリヌクレオシドを得る方法も提供する。この方法は、選択されたエンドヌクレアーゼにより特異的に認識されるように配置設定されたガイドヌクレオチドを含む合成核酸を用意する工程と、核酸内のガイドヌクレオチドの位置に従いエンドヌクレアーゼに合成核酸を切断させ、所定又は所望の配列及び長さのポリヌクレオチドを放出する工程とを含む。前述のように、エンドヌクレアーゼは、核酸内のガイドヌクレオチドの位置を特異的に認識し、それぞれガイドヌクレオチドの3’末端側にある2番目のホスホジエステル結合、ガイドヌクレオチドの5’末端側にある1番目のホスホジエステル結合、ガイドヌクレオチドの5’末端側にある2番目のホスホジエステル結合又はガイドヌクレオチドの5’末端側にある3番目のホスホジエステル結合を優先的に切断することにより、所定のポリヌクレオチドが得られる。
【0058】
本明細書に開示される方法によれば、本発明は、所定のポリヌクレオチドを合成及び得るためのキットを提供する。酵素を用いた核酸合成シナリオの下で、該キットは、3’-末端ヌクレオチドに遊離の3’ヒドロキシル基を有するイニシエーターと、ヌクレオチドモノマー(ガイドヌクレオチドモノマーを含む)をイニシエーターに取り込んで遊離3’-ヒドロキシル基から核酸鎖を伸長させ、ガイドヌクレオチドを新たに合成された核酸鎖の指定された位置に取りみ込まれるようにするためのポリメラーゼと、新たに合成された核酸鎖中のガイドヌクレオチドを認識し、ガイドヌクレオチドの位置に従って核酸鎖を切断して、所定の、又は所望の配列及び長さのポリヌクレオチドを放出することで、残りの核酸鎖に新しい遊離3’-ヒドロキシル基を有させて、次のラウンドの核酸合成の新しいイニシエーターとして容易に使用できるエンドヌクレアーゼとを含み得る。酵素を用いてポリヌクレオチドを得るシナリオの下で、該キットは、指定されたガイドヌクレオチドを有する合成ポリヌクレオチドと、ガイドヌクレオチドを認識し、合成ポリヌクレオチドを切断して、所定の又は所望の配列及び長さのポリヌクレオチドを放出するエンドヌクレアーゼとを含み得る。エンドヌクレアーゼは、ガイドヌクレオチドを認識すると共に、合成ポリヌクレオチド中のガイドヌクレオチドの位置に従って特定のホスホジエステル結合を切断することにより、所望の又は所定の配列及び長さのポリヌクレオチドが得られる。どちらのシナリオにおいても、キットに含まれるエンドヌクレアーゼの部位特異性特性(site specificity)は、前述したとおりである。
【0059】
以下により詳細に例示されるように、本発明により提供される方法及びキットは、Pfu Endo V、Pfu Endo Q又はBpu Endo Q、Bsu Endo V或いはTba Endo V、及び核酸イニシエーター若しくはプライマー-鋳型二重鎖を利用して、異なる固有のガイドヌクレオチドを含む核酸鎖を生成し、そのガイドヌクレオチドは、部位特異的認識に使用され、かつホスホジエステル結合の切断反応は、一般的な酵素反応温度(例えば周囲温度(例:10℃~40℃)、37℃)で実行することができ、高温の反応温度(例:70℃)で実行することもできる。以下の実施例及び対応する結果は、本発明により提供される方法及びキットが、核酸イニシエーター又はプライマー-鋳型二重鎖を利用して、固有のガイドヌクレオチドを含む核酸鎖を生成でき、該ガイドヌクレオチドが認識及び部位特異的核酸切断のために用いられ、所定の、又は所望の配列及び長さのポリヌクレオチド鎖を広範囲の反応温度で正確に放出することにより、酵素による核酸合成の応用及び有用性が広がることができることを示す。
【0060】
エンドヌクレアーゼは、ヌクレオチドを接続するホスホジエステル結合で核酸(例えば、DNA又はRNA)を切断する酵素であり、生物学的機能(例:核酸ミスマッチ修復(mismatch repair))の維持に重要な役割を果たしている。エンドヌクレアーゼは、DNA操作用途にも使用される。T7エンドヌクレアーゼIは、ミスマッチ修復やゲノム編集(突然変異や欠失など)に広く使用されている。該酵素は、DNAミスマッチを認識すると共に、ミスマッチ位置の5’末端側にある1番目、2番目、又は3番目のホスホジエステル結合を切断する。大腸菌エンドヌクレアーゼV(Eco Endo V)は、DNA部位を特異的に認識して核酸鎖を切断できるもう1つの酵素である。大腸菌EndoVは、DNA内のデオキシイノシン(dI)損傷を認識すると共に、dI損傷の3’末端側にある2番目のホスホジエステル結合を切断することにより、DNA鎖切断を生じる。上述したように、大腸菌Endo Vは、イニシエーターと新たに合成されたDNAの間のホスホジエステル結合を切断するために、酵素法によるデノボDNA合成に使用されている。しかし、大腸菌Endo Vは、基質特異性が狭く、耐熱性が限られているため、その有用性は限られており、新たな酵素DNA合成で広く使用されることが困難になっている。
【0061】
他のエンドヌクレアーゼ、例えば、ピロコッカス・フリオサス(Pfu)又はサーモコッカス・バロフィルス(Tba)由来のエンドヌクレアーゼVや、それぞれピロコッカス・フリオサス(Pfu)、メタノサルシナ・アセチボランス(Mac)及バチルス・プミルス(Bpu)由来のエンドヌクレアーゼQや、それぞれピロコッカス・アビッシ(Pab)及びサーモコッカス・ガンマトレランス(Tga)由来のNucS エンドヌクレアーゼや、サーモコッカス・コダカラエンシス(Tko)由来のEndoMSエンドヌクレアーゼなどは、大腸菌Endo Vよりも広い基質範囲を持っている。これらのエンドヌクレアーゼは、例えば核酸内のデオキシウリジンやデオキシイノシンなど、さまざまな脱アミノ化(deaminated)又は酸化された塩基を認識する。また、これらのエンドヌクレアーゼは、例えば脱塩基部位や構造的に脱塩基部位に類似したdSpacer(脱塩基フランともよばれる)などの、DNA内の脱プリン/脱ピリミジン損傷を認識することもできる。
【0062】
なお、これらのエンドヌクレアーゼ群は、耐熱性がより高い。Pfu Endo V、Tba Endo V、Pfu Endo Q、Mac Endo Q、Pab NucS、Tko EndoMS、及びTga NucSによってDNA鎖を切断するための反応温度範囲は、大腸菌Endo Vよりもはるかに広く、例示的な結果に示すように、例えば10℃~100℃、20℃~30℃、30℃~40℃、40℃~50℃、50℃~60℃、60℃~70℃、70℃~80℃、80℃~90℃、90℃~100℃の温度範囲である。従来技術に対して、本明細書に開示される方法及びキットは、異なる種類の脱アミノ化又は酸化された塩基(例:核酸鎖の部位特異的認識及び切断のためのデオキシウリジン又はデオキシイノシン)を含む核酸イニシエーター又はプライマーを利用する、エンドヌクレアーゼベースに基づく核酸鎖切断が改良された方法を提供する。さらに、本明細書に開示される方法及びキットは、酵素による核酸合成の用途及び有用性を広げるため、より広い範囲の反応温度で実施することができる、熱安定性エンドヌクレアーゼに基づく核酸切断が改良された方法を提供する。また、所定の又は所望の配列及び長さの核酸鎖或いはポリヌクレオチド鎖の放出後、正常な3’-ヒドロキシル基を有する核酸イニシエーター或いはプライマーを再生できる。したがって、該核酸イニシエーター或いはプライマーは、新しいラウンドの酵素による核酸合成に再利用できる。
【0063】
図1図2A及び図2Bは、鋳型非依存性(図1)及び鋳型指向性/鋳型依存性(図2A及び図2B)の核酸合成における本発明の例示的なスキームを示す。図1図2A、及び図2Bに示すように、固相担体に付着したイニシエーター(ssDNA)を提供する。鋳型非依存性の核酸合成に対して、鋳型指向性/鋳型依存性の核酸合成は、核酸鋳型を固相担体に付着させるか(図2A)、接着法或いは他の既知のハイブリダイゼーション技術によりイニシエーターにハイブリダイズさせる必要がある(図2B)。一部の実施形態において、鋳型依存性シナリオの下で、プライマーと鋳型と組み合わせて使用することにより、DNA合成用のプライマー/鋳型二重鎖(P/T二本鎖と略称する)を生成する。スキーム例では、イニシエーター又はプライマーの伸長は、それぞれ通常の3’-ヒドロキシル或いは3’-ブロッキング化学部分を含むヌクレオチドモノマー(N)を使用し、鋳型非依存性又は鋳型依存性ポリメラーゼ(ファミリーB型DNAポリメラーゼなど)により所望の配列(N-3~N)を有するオリゴヌクレオチド/ポリヌクレオチド鎖を合成する。核酸鎖配列は、選択されたエンドヌクレアーゼによる認識するために、所定の核酸塩基又は所定の脱プリン/脱ピリミジン(AP)損傷を有する少なくとも1つのガイドヌクレオチド(X)を含むように構成される。一部の実施形態において、所定の核酸塩基は、デオキシウリジン又はデオキシイノシンであってもよく、脱プリン/脱ピリミジン損傷は、脱塩基部位或いはdSpacerであり得、認識可能な各デオキシヌクレオチド残基は異なる種類の対応するエンドヌクレアーゼにより特異的に認識され得る。よって、この方法及びキットは、使用者のニーズに応じて部位特異的に切断できるために、ポリメラーゼによりヌクレオチドモノマー(典型的ヌクレオチド及び非典型的ヌクレオチドを含む)をイニシエーターに取り込ことにより、カスタマイズのポリヌクレオシドを合成して得られるスキームを提供する。
【0064】
本発明者らは、意外に本明細書に開示されるエンドヌクレアーゼの核酸切断活性が、特定部位の切断可能領域(部位特異的切断可能領域)においてガイドヌクレオチドを認識できることを発見した。所望の核酸鎖を生成するためにヌクレオチドの付加/取り込みを複数のサイクルに十分に行った後、エンドヌクレアーゼに基づく切断反応を利用して、ガイドヌクレオチドに近く且つ部位特異性切断可能領域に含まれる核酸鎖又はポリヌクレオチド鎖を切断及び/又は変性する。部位特異的切断可能領域におけるエンドヌクレアーゼに基づく認識するために用いられるガイドヌクレオチド(X)に対して、対応するエンドヌクレアーゼを使用して核酸切断が行われる。本開示の少なくとも1つの実施形態において、部位特異的切断可能領域を有する核酸鎖は、それぞれデオキシイノシン又はデオキシウリジンを含み、エンドヌクレアーゼで処理して所定の伸長核酸鎖を放出することができる。使用されるエンドヌクレアーゼは、ピロコッカス・フリオサス(Pfu)、メタノサルシナ・アセチボランス(Mac)又はバチルス・プミルス(Bpu)由来のエンドヌクレアーゼQや、枯草菌(Bsu)、大腸菌(Eco)、ピロコッカス・フリオサス(Pfu)又はサーモコッカス・バロフィルス(Tba)由来のエンドヌクレアーゼVや、サーモコッカス・ガンマトレランス(Tga)又はピロコッカス・アビッシ(Pab)由来のNucSエンドヌクレアーゼや、サーモコッカス・コダカラエンシス(Tko)由来のEndoMSエンドヌクレアーゼであり得る。スキーム例では、エンドヌクレアーゼE1~E4は、ガイドヌクレオチド(X)を認識すると共に、NとNとの間、XとN-1との間、N-1とN-2との間及びN-2とN-3との間のホスホジエステル結合をそれぞれ切断する。一部の実施形態において、Xは、デオキシイノシン又はデオキシウリジンであってもよく、E1は、Bsu EndoV、Eco EndoV、Pfu EndoV或いはTba EndoVであってもよく、E2は、Pfu EndoQ、Mac EndoQ、Bpu Endo Qであってもよく、E3は、Tga NucSであってもよく、E4は、Tko EndoMSであってもよいが、本開示は、これらに限定されない。また、本明細書に開示されるエンドヌクレアーゼの熱安定性特性により、核酸鎖切断反応を広範囲の反応温度にわたって実施することが可能になる。本明細書に開示されるエンドヌクレアーゼの有利な特性と組み合わせて、本開示の方法は、酵素による核酸合成の様々な状況及び用途に使用することができる。エンドヌクレアーゼによる新たに合成された核酸鎖又はポリヌクレオチド鎖の部位特異的切断は、所望のポリヌクレオチド断片を放出するだけでなく、残りの核酸鎖の3’末端に新しい遊離3’-ヒドロキシル基も生成され、該3’-ヒドロキシル基は、新たな合成反応ラウンドで使用される。したがって、ヌクレオチドモノマー付加の適切な設計と設定と組み合わせると、追加の酵素処理(ホスファターゼによる脱リン酸化など)に中断されることなく、酵素合成をサイクル効率的に行うことができる。したがって、本開示は、所定の核酸鎖又はポリヌクレオチド鎖を得ると共に、同じ工程で遊離ヒドロキシル基を有する再利用可能な核酸イニシエーターを再生してユーザーに需要の核酸合成を加速することにより、正確で、効率的で、コスト利益が高く、熱安定性の高い方法を提供する。
【実施例
【0065】
本開示は、以下の実施例を介して詳細に説明される。しかしながら、これらの実施例は、本開示を単に例示するものであり、本開示の範囲及び意味をいかなる形によって限定するものではない。実際には、本明細書を読むと、当業者にとっては、本開示の多くの調整及び変形を明らかに理解でき、その範囲から逸脱することなく調整及び変形を行うことができる。
【0066】
〔A.ヌクレオチドモノマーをイニシエーターに取り込むための核酸ポリメラーゼによる核酸合成〕
次の合成ポリヌクレオチドイニシエーターであるFAM-45-mer DNAイニシエーターを本実施例における鋳型非依存性DNA合成に使用する。
【0067】
FAM-45-mer DNAイニシエーター:
【0068】
【化1】
【0069】
この一本鎖45-merポリヌクレオチドイニシエーターは、5’末端でビオチン基を用いて修飾されており、その内部における23番目のチミン塩基(下線T)がフルオレセインアミダイト(fluorescein amidite,FAM)色素を含み、且つその3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を有する。また、イニシエーターの5’末端は、DynabeadsTM M-280ストレプトアビジン(Streptavidin)ビーズに固定化されている。それにもかかわらず、他の実施形態において、該イニシエーターは、本明細書に開示されるヘキサクロロフルオレセイン(HEX)又はその他の蛍光レポーター色素で内部標識をすることができ、且つ該イニシエーターは、遊離形態となってもよく、或いは5’末端が本明細書に開示されるDynabeadsTM -280ストレプトアビジンビーズ以外の他の固相担体に固定化されていてもよい。
【0070】
又、ファミリーB型DNAポリメラーゼ(1μM)を使用して鋳型非依存性核酸合成反応を実施することにより、連結した3’-O-(アジドメチル)-2’-デオキシウリジン三リン酸(100μM)をイニシエーターの3’末端に取り込み、反応は、15分間続いた。合成イニシエーターの3’末端にデオキシウリジン一リン酸(dUMP)を取り込んだ直後に鋳型非依存性核酸合成が可能であることを実証するために、ファミリーB型DNAポリメラーゼ(1μM)を使用して3’-O-(アジドメチル)-2’-デオキシグアノシン三リン酸(100μM)又はdNTP混合物(dATP、dCTP、dGTP及dTTP)(100μM)を3’末端にデオキシウリジン(U)が含まれたイニシエーターに段階的に取り込んだ。10mMのマンガンカチオンを添加することによって合成反応を開始し、次いで75℃で15分間インキュベートした。10μLの2×クエンチ(quench)溶液(95%脱イオンホルムアミド及び25mM EDTA)を加えることによって反応を停止させ、98℃で10分間熱変性を行う。反応生成物を15%変性尿素ポリアクリルアミドゲルで分析し、ゲルの分析結果がAmersham Typhoonスキャナー(GE Healthcare Life Sciences,Marlborough,MA.,United States)に示される。
【0071】
図3に示すように、レーンSは、イニシエーターのみを示し、レーン1は、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)がBファミリーDNAポリメラーゼによりイニシエーターの3'末端に効率的に取り込まれたことを示す。また、レーン2及びレーン3は、ファミリーB型DNAポリメラーゼが、イニシエーターの3’末端にデオキシウリジン(U)を取り込んだ直後に、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)及びdNTP(N1、N2など)をそれぞれ取り込むことができることを示す。レーン1及びレーン2のポリヌクレオチドサンプルは、それぞれ配列番号2及び配列番号3に示される配列を有する。
【0072】
したがって、実施例は、使用者のニーズに応じて、少なくとも1つの例示的なガイドヌクレオチド(エンドヌクレアーゼによる認識のためにユーザーの所望の位置に位置する)を含むカスタマイズのポリヌクレオチド鎖を合成するために、ポリメラーゼにより典型(例えばdNTP)又は非典型ヌクレオチド(例えばデオキシウリジン或いはデオキシグアノシン三リン酸)をイニシエーターに取り込む方法を実証した。
【0073】
上述の実施例は、鋳型非依存性核酸合成の結果を実証したが、他の実施形態において、イニシエーターを鋳型依存性核酸合成用に設計することにより、同様の結果を達成することもできる。例えば、イニシエーターの相補的な鋳型核酸は、固相担体に付着されるか(図2A)、或いはイニシエーターにハイブリダイズして二重鎖又は二本鎖を形成することができる(図2B)。
【0074】
〔B.エンドヌクレアーゼにより新たに合成されたポリヌクレオチドを切断又は変性して、所望の核酸断片を放出し、次のラウンドの核酸合成のためのイニシエーターを再生〕
エンドヌクレアーゼによる、新しく合成されたポリヌクレオチドの切断/変性と合成イニシエーターの再生の実現可能性を実証するために、上記のセクションAで述べた方法を使用してデオキシウリジン(U)又はデオキシイノシン(I)を含む、Hex色素で標識された一本鎖38-merポリヌクレオチドを合成し、それぞれHex-Top-U38-mer及びHex-Top-I38-merと呼ばれる。これら2つのポリヌクレオチドは、鋳型非依存性核酸合成により得られた核酸生成物を表しており、該核酸生成物には、イニシエーターと新たに合成されたポリヌクレオチドとが含まれている。また、鋳型依存性核酸合成により得られた核酸生成物(イニシエーターと新たに合成したポリヌクレオチドを含む)を例示するために、該Hex-Top-U38-merとHex-Top-I38-mer、及び相補的な一本鎖38merの核酸(Bot-A38-mer)を、100mM NaClを含む1xTE緩衝液の中で1:1.5のモル比でハイブリダイズさせた。Bio-RadサーマルサイクラーマシンでDNAアニール反応を実施し、サンプル混合物を95℃に3分間加熱し、徐々に4℃まで冷却(5°C/30秒)することにより、二重鎖及び二本鎖の38-mer核酸を形成した。以下の実施例において、これら2つの核酸生成物をDNA基質として使用した。
【0075】
実施例のポリヌクレオチド配列、緩衝液及び溶液シリーズを以下の表に示す。Hex-Top-U38-mer及びHex-Top-I38-merは、5’末端にヘキサクロロフルオレセイン(HEX)標識を有し、3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を有するが、本発明はこの態様に限定されない。他の実施形態において、イニシエーターの5’末端は、フルオレセインアミダイト(FAM)又は本明細書に開示される他の蛍光レポーター色素によって標識され得る。また、イニシエーターは、遊離型であっても、又は本明細書に開示される異なる実施形態の固相担体に固定化されてもよい。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
鋳型非依存性合成又は鋳型依存性核酸合成により得られた、新たに合成されたポリヌクレオチド(所定の核酸塩基又は脱プリン/脱ピリミジン(AP)損傷を有するガイドヌクレオチドを含む)が認識され、切断されて次のラウンドの核酸合成のイニシエーターを再生できるかどうかをテストするため、次の実験手順を実施した。
【0079】
実施例1:2つの異なる反応温度においてPfu Endo Vによるデオキシイノシンの認識及びDNA鎖の切断
サンプル群には、(1)陰性対照群となるDNA基質(S)のみ、(2)米国特許出願公開第2021/0254114 A1号を参照して実施可能な自製の大腸菌エンドヌクレアーゼV型(Eco EndoV)(配列番号7)、(3)ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼV(Pfu Endo V)(配列番号8)、(4)New England BioLabs(Ipswich,MA)から入手した大腸菌エンドヌクレアーゼV(C1)、及び(5)核酸生成物中のデオキシイノシン切除及びガイドヌクレオチド位置でDNA鎖切断の結果を表し、陽性対照群となるヒトアルキルアデニンDNAグリコシラー(hAAG)及びEndoVIIIを含む酵素混合物(C2)が含まれた。各サンプル群について、100nMの一本鎖Hex-Top-I38-mer DNA基質又は二本鎖Hex-Top-I38-mer/Bot-A38-mer DNA基質を含むサンプル混合物(10μL)と400nMのエンドヌクレアーゼを酵素反応緩衝液中でインキュベートした。サンプル混合物をそれぞれ37℃及び70℃で20分間インキュベートし、等量(10μL)の2×クエンチ溶液を添加することにより、各酵素反応を停止させた。
【0080】
合計20μLのサンプルを95℃で10分間変性し、各サンプル混合物を、1×TBE緩衝液(90mM Tris-アルカリ、90mM 硼酸及び2mM EDTA)で8M尿素を含む20%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した(各サンプル4μL)。次に、Amersham Typhoonスキャナーでゲルイメージングの結果を分析した。
【0081】
図4A及び以下の表3に示すように、Eco EndoV、Pfu Endo V、及びC1は、37℃の反応温度でデオキシイノシン(I)を効率的に認識すると共に、デオキシイノシン(I)からDNAの3’末端(又は下流)へ数えて1番目のヌクレオチド(G)と2番目のヌクレオチド(C)との間のホスホジエステル結合を切断して、15-merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出し、残りの23-merの一本鎖又は二本鎖DNAの末端に遊離3’-ヒドロキシル基があるため、直ちに次のラウンドにおける核酸合成の新しい(或いは再利用可能な)イニシエーターとして使用できる。これに対して、C2は、37℃の反応温度でデオキシイノシン(I)の切除とDNA鎖の切断のみを実施して15-merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出したが、残りの21-merの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を生成できなかったため、新しいラウンドの核酸合成には使用できなかった。この実施例では、Pfu Endo Vだけが、反応温度70℃で上記のようにDNA鎖を効率的に切断或いは変性できることも示した。
【0082】
【表3】
【0083】
実施例2:2つの異なる反応温度におけるPfu Endo Vによるデオキシウリジンの認識及びDNA鎖の切断
サンプル群には、(1)陰性対照群となるDNA基質(S)のみ、(2)米国特許出願公開第2021/0254114 A1号を参照して実施可能な自製の大腸菌エンドヌクレアーゼV型(Eco EndoV)、(3)ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼV(Pfu Endo V)、(4)New England BioLabs(Ipswich,MA)から入手した大腸菌エンドヌクレアーゼV(C1)、及び(5)陽性対照群となるNew England Biolabsから入手したウラシル特異的切除試薬(Cat.#M5505S,Ipswich,MA)(C3)が含まれた。サンプル混合物(10μL)は、100nMの一本鎖Hex-Top-U38mer DNA基質又は二本鎖Hex-Top-U38-mer/Bot-A38-mer DNA基質を含んだ。サンプルは、実施例1に記載されているように処理及び分析され、簡潔にするために、ここでその詳細な説明を省略する。
【0084】
図4B及び以下の表4に示すように、Pfu Endo Vは、37℃又は70℃の反応温度でデオキシウリジン(U)を効率的に認識すると共に、デオキシウリジン(U)からDNAの3’末端(又は下流)へ数えて1番目のヌクレオチド(G)と2番目のヌクレオチド(C)との間のホスホジエステル結合を切断して、15-merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出し、残りの23-merの一本鎖又は二本鎖DNAの末端に遊離3’-ヒドロキシル基があるため、直ちに次のラウンドの核酸合成の新しい(或いは再利用可能な)イニシエーターとして使用できる。これに対して、Eco EndoV及びC1は、このような部位特異的な切断或いは変性を示せなかった。又、C3は、37℃の反応温度でデオキシウリジン(U)からDNAの5’末端(又は上流)へ数えてデオキシウリジン(U)と1番目のヌクレオチド(G)との間のホスホジエステル結合のみを切断することにより、17-merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出したが、残りの21-merの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を生成できなかったため、新しいラウンドの核酸合成に使用できなかった。
【0085】
【表4】
【0086】
実施例3:2つの異なる反応温度におけるPfu Endo Qによるデオキシイノシンの認識及びDNA鎖の切断
サンプル群には、(1)ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼQ(Pfu Endo Q)(配列番号9)、(2)New England BioLabs(Ipswich,MA)から入手した大腸菌エンドヌクレアーゼV(C1)、(3)核酸生成物中のデオキシイノシン切除及びガイドヌクレオチド位置でDNA鎖切断の結果を表し、陽性対照群となるヒトアルキルアデニンDNAグリコシラー(hAAG)及びEndoVIIIを含む酵素混合物(C2)が含まれた。サンプル混合物(10μL)は、100nMの一本鎖Hex-TOP-I38mer DNA基質又は二本鎖Hex-Top-I38-mer/Bot-A38-mer DNA基質を含んだ。サンプルは、実施例1に記載されているように処理及び分析され、簡潔にするために、ここでその詳細な説明を省略する。
【0087】
図5A及び以下の表5に示すように、Pfu Endo Qは、37℃又は70℃の反応温度でデオキシイノシン(I)を効率的に認識すると共に、デオキシイノシン(I)からDNAの5’末端へ数えてデオキシイノシン(I)と1番目のヌクレオチド(C)との間のホスホジエステル結合を切断して、17-merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出し、残りの21-merの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基があるため、直ちに次のラウンドの核酸合成の新しい(或いは再利用可能な)イニシエーターとして使用できる。C1は、デオキシイノシン(I)も認識でき、37℃の反応温度でデオキシイノシン(I)からDNAの3’末端へ数えて1番目のヌクレオチド(G)と2番目のヌクレオチド(G)との間のホスホジエステル結合を切断して、15-merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出し、残りの23-merの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基があるため、直ちに次のラウンドの核酸合成の新しい(或いは再利用可能な)イニシエーターとして使用できる。だだし、C1は、70℃の反応温度でこのようなDNAでの部位特異的な切断を示せなかった。また、C2は、デオキシイノシン(I)の切除とDNA鎖の切断を行って15-merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出することだけが示されており、残りの21-merの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を生成できなかったため、新しいラウンドの核酸合成に使用できなかった。
【0088】
【表5】
【0089】
実施例4:2つの異なる反応温度におけるPfu Endo Qによるデオキシウリジンの認識及びDNA鎖の切断
サンプル群には、(1)ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼQ(Pfu Endo Q)、(2)New England BioLabs(Ipswich,MA)から入手した大腸菌エンドヌクレアーゼV(C1)、(3)陽性対照群となるNew England Biolabsから入手したウラシル特異的切除試薬(Cat.#M5505S,Ipswich,MA)(C3)が含まれた。サンプル混合物(10μL)は、100nMの一本鎖Hex-Top-U38mer DNA基質又は二本鎖Hex-Top-U38-mer/Bot-A38-mer DNA基質を含んだ。サンプルは、実施例1に記載されているように処理及び分析され、簡潔にするために、ここでその詳細な説明を省略する。
【0090】
図5B及び以下の表6に示すように、Pfu Endo Qは、37℃又は70℃の反応温度でデオキシウリジン(U)を効率的に認識すると共に、デオキシイノシン(I)からDNAの5’末端へ数えてデオキシウリジン(U)と1番目のヌクレオチド(C)との間のホスホジエステル結合を切断して、17-merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出し、残りの21-merの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基があるため、直ちに次のラウンドの核酸合成の新しい(或いは再利用可能な)イニシエーターとして使用できる。DNAを部位特異的に切断するC3の能力は、17merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出できるPfu Endo Qの能力と類似しているが、C3は、残りの21-merの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を生成できなかったため、新しいラウンドの核酸合成に使用できなかった。これに対して、C1は、37℃又は70℃の反応温度でDNA上での部位特異的切断を示せなかった。
【0091】
【表6】
【0092】
実施例5:2つの異なる反応温度におけるTba Endo Vによるデオキシイノシンの認識及びDNA鎖の切断
サンプル群には、(1)陰性対照群となるDNA基質(S)のみ、(2)米国特許出願公開第2021/0254114 A1号を参照して実施可能な自製の大腸菌エンドヌクレアーゼV型(Eco EndoV)、(3)サーモコッカス・バロフィルスエンドヌクレアーゼV(Tba Endo V)(配列番号10)、(4)核酸生成物中のデオキシイノシン切除及びガイドヌクレオチド位置でDNA鎖切断の結果を表し、陽性対照群となるヒトアルキルアデニンDNAグリコシラー(hAAG)及びEndoVIIIを含む酵素混合物(C2)が含まれた。サンプル混合物(10μL)は、100nMの一本鎖Hex-TOP-I38mer DNA基質又は二本鎖Hex-Top-I38-mer/Bot-A38-mer DNA基質を含んだ。サンプルは、実施例1に記載されているように処理及び分析され、簡潔にするために、ここでその詳細な説明を省略する。
【0093】
図6A及び以下の表7示すように、Eco EndoV、Tba Endo V、及びC1は、37℃の反応温度でデオキシイノシン(I)を効率的に認識すると共に、デオキシイノシン(I)からDNAの3’末端へ数えて1番目のヌクレオチド(G)と2番目のヌクレオチド(C)との間のホスホジエステル結合を切断して、15-merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出し、残りの23-merの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基があるため、直ちに次のラウンドの核酸合成の新しい(或いは再利用可能な)イニシエーターとして使用できる。これに対して、C2は、反応温度でデオキシイノシン(I)の切除とDNA鎖の切断のみが示され、15-merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出したが、残りの21-merの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を生成できなかったため、新しいラウンドの核酸合成には使用できなかった。また、Eco EndoV及びC1に比較して、Tba Endo Vのみは、上記のように70℃の反応温度で効率よくDNA鎖を切断或いは変性することがわかった。
【0094】
【表7】
【0095】
実施例6:2つの異なる反応温度におけるTba Endo Vによるデオキシイノシンの認識及びDNA鎖の切断
サンプル群には、(1)陰性対照群となるDNA基質(S)のみ、(2)米国特許出願公開第2021/0254114 A1号を参照して実施可能な自製の大腸菌エンドヌクレアーゼV型(Eco EndoV)、(3)サーモコッカス・バロフィルスエンドヌクレアーゼV(Tba Endo V)、(4)陽性対照群となるNew England Biolabsから入手したウラシル特異的切除試薬(Cat.#M5505S,Ipswich,MA)(C3)が含まれた。サンプル混合物(10μL)は、100nMの一本鎖Hex-Top-U38mer DNA基質又は二本鎖Hex-Top-U38-mer/Bot-A38-mer DNA基質を含んだ。サンプルは、実施例1に記載されているように処理及び分析され、簡潔にするために、ここでその詳細な説明を省略する。
【0096】
図6B及び以下の表8に示すように、Tba Endo Vは、70℃の反応温度でデオキシウリジン(U)を効率的に認識すると共に、デオキシイノシン(I)からDNAの3’末端へ数えて1番目のヌクレオチド(G)と2番目のヌクレオチド(C)との間のホスホジエステル結合を切断して、15-merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出し、残りの23-merの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基があるため、直ちに次のラウンドの核酸合成の新しい(或いは再利用可能な)イニシエーターとして使用できる。これに対して、Eco EndoV及C1は、70℃の反応温度でDNAの部位特異的切断を示せなかった。また、C3は、DNAにPfu Endo Qと同様の部位特異的切断を示せて、17-mer一本鎖又は二本鎖DNAを放出したが、C3は、残りの21-merの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を生成できなかったため、新しいラウンドの核酸合成に使用できなかった。
【0097】
【表8】
【0098】
Tba Endo Vの実験結果は、Pfu Endo V及びPfu Endo Qと同様である。実施例5及び実施例6に示すように(それぞれ図6A及び6Bを参照)、Tba Endo Vは、デオキシイノシン又はデオキシウリジンを含むDNAイニシエーター/プライマーからDNA鎖を効率的かつ部位特異的に切断した。逆に、大腸菌Endo Vは、デオキシイノシンを含むDNAイニシエーター/プライマーのみからDNA鎖を切断した。また、Tba Endo Vは、37℃及び70℃の両方の温度でデオキシイノシン又はデオキシウリジンを含むDNAイニシエーター/プライマーからDNA鎖を効率的かつ部位特異的に切断したが、大腸菌Endo Vは、37℃のみでDNA鎖を切断した。同様に、Tba Endo Vは、デオキシイノシン又はデオキシウリジンを含むプライマー鋳型DNA二重鎖も効率的に切断した。本明細書のhAAGプラスEndoVIII及びNEB USERの個々の結果、及び市販のNEB Eco Endo V酵素の結果に基づいて、完全なDNA断片及びTba Endo V切断により生成されたDNA断片のゲルにおける相対的な位置を確認した。
【0099】
実施例1~6(それぞれ図4A~6Bを参照)に示すように、Pfu Endo V、Pfu Endo Q、及びTba Endo Vは、デオキシイノシン又はデオキシウリジンを含む、合成された一本鎖又は二本鎖DNAのDNA鎖を効率的かつ部位特異的に切断した。逆に、Eco Endo Vは、デオキシイノシンを含むDNAのみからDNA鎖を切断した。また、Pfu Endo V、Pfu Endo Q、及びTba Endo Vは、37℃及び70℃の両方の温度でDNAを効率的かつ部位特異的に切断できるが、大腸菌Endo Vは、37℃のみでDNA鎖を切断した。また、イニシエーターが遊離型であっても固定化型であっても、Pfu Endo V、Pfu Endo Q、及びTba Endo VのDNA切断活性に影響を与えなかった。なお、陽性対照群C2及びC3は、どちらもDNAを切断できたが、残りの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を生成できず、且つ新しいラウンドの核酸合成に使用できない。上述をまとめて、Pfu Endo V、Pfu Endo Q、及びTba Endo Vは、広い範囲の反応温度(超高温反応温度を含む)でガイドヌクレオチドを部位特異的に認識し、ガイドヌクレオチドの位置により核酸鎖を切断し、3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を有するイニシエーターを効果的に再生できる。
【0100】
実施例7:Bsu Endo Vによるデオキシウリジンの認識及びDNA鎖の切断
サンプル群には、(1)陰性対照群となるDNA基質(S)のみ、(2)米国特許出願公開第2021/0254114 A1号を参照して実施可能な自製の大腸菌エンドヌクレアーゼV型(Eco EndoV)、(3)枯草菌エンドヌクレアーゼV(Bsu Endo V)(配列番号11)、(4)New England BioLabs(Ipswich,MA)から入手した大腸菌エンドヌクレアーゼV(C1)、(5)陽性対照群となるNew England Biolabsから入手したウラシル特異的切除試薬(Cat.#M5505S,Ipswich,MA)(C3)が含まれた。サンプル混合物(10μL)は、100nMの一本鎖Hex-Top-U38mer DNA基質又は二本鎖Hex-Top-U38-mer/Bot-A38-mer DNA基質を含んだ。サンプルは、実施例1に記載されているように処理及び分析され、簡潔にするために、ここでその詳細な説明を省略する。
【0101】
図7及び以下の表9に示すように、Bsu Endo Vは、デオキシウリジン(U)を効率的に認識すると共に、デオキシウリジン(U)からDNAの3’末端へ数えて1番目のヌクレオチド(G)と2番目のヌクレオチド(C)との間のホスホジエステル結合を切断して、15-merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出し、残りの23-merの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基があるため、直ちに次のラウンドの核酸合成の新しい(或いは再利用可能な)イニシエーターとして使用できる。これに対して、Eco EndoV及びC1は、このような部位特異的な切断或いは変性を示せなかった。また、C3は、デオキシウリジン(U)からDNAの5’末端へ数えてデオキシウリジン(U)と1番目のヌクレオチド(G)との間のホスホジエステル結合のみを切断して、17-merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出したが、残りの21-merの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を生成できなかったため、新しいラウンドの核酸合成に使用できなかった。したがって、Bsu Endo Vは、ガイドヌクレオチドを部位特異的に認識し、ガイドヌクレオチドの位置により核酸鎖を切断すると共に、3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を有するイニシエーターを効果的に再生できる。
【0102】
【表9】
【0103】
実施例8:3つの異なる反応温度におけEndo V及びEndo Qによるデオキシイノシンとデオキシウリジンの認識及びDNA鎖の切断
サンプル群には、(1)陰性対照群となるDNA基質(S)のみ、(2)米国特許出願公開第2021/0254114 A1号を参照して実施可能な自製の大腸菌エンドヌクレアーゼV型(Eco EndoV)、(3)ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼV(Pfu Endo V)、(4)ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼQ(Pfu Endo Q)、(5)サーモコッカス・バロフィルスエンドヌクレアーゼV(Tba Endo V)、及び(6)バチルス・プミルスエンドヌクレアーゼ Q(Bpu Endo Q)(配列番号12)が含まれた。各サンプル群について、100nMの一本鎖Hex-Top-U38mer DNA基質又はHex-Top-I38mer DNA基質を含むサンプル混合物(10μL)と、200nMのエンドヌクレアーゼとを酵素反応緩衝液中でインキュベートした。サンプル混合物は、それぞれ37℃、55℃或いは60℃で20分間インキュベートされる。等量(10μL)の2×クエンチ溶液を添加することにより、各酵素反応を停止させた。
【0104】
合計20μLのサンプルを95℃で10分間変性し、各サンプル混合物を、1×TBE緩衝液(90mM Tris-アルカリ、90mM 硼酸及び2mM EDTA)で8M尿素を含む20%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した(各サンプル4μL)。次に、Amersham Typhoonスキャナー(Cytiva, Marlborough, MA)でゲルイメージングの結果を分析した。
【0105】
結果は、Pfu Endo V及びPfu Endo Qが55℃及び60℃で、デオキシイノシン又はデオキシウリジンを含む遊離型及固定化型のDNA鎖の両方を部位特異的に切断したこと、Tba Endo Vが55℃でデオキシウリジンを含む遊離型及び固定化型のDNA鎖の両方を部位特異的に切断したこと及びBpu Endo Qが37℃でデオキシイノシン又はデオキシウリジンを含む遊離型及び固定化型のDNA鎖の両方を部位特異的に切断したことを示している。逆に、大腸菌Endo Vは、37℃でデオキシイノシンを含むDNA鎖のみを切断したが、デオキシウリジンを含むDNA鎖を切断しなかった。
【0106】
図8A図8B及び以下の表10と表11に示すように、Pfu Endo V及びTba Endo Vは、デオキシイノシン(I)又はデオキシウリジン(U)を効率的に認識すると共に、デオキシイノシン(I)又はデオキシウリジン(U)からDNAの3’末端へ数えて1番目のヌクレオチド(G)と2番目のヌクレオチド(C)との間のホスホジエステル結合を切断して、15-merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出し、残りの23-merの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基があるため、直ちに次のラウンドの核酸合成の新しい(或いは再利用可能な)イニシエーターとして使用できる。これに対して、Eco EndoVは、デオキシイノシンを含むDNAのみに対してこのような活性を示せた。また、Pfu Endo Q及びBpu Endo Qは、どちらもデオキシイノシン(I)又はデオキシウリジン(U)を効率的に認識すると共に、デオキシイノシン(I)又はデオキシウリジン(U)からDNAの5’末端へ数えてデオキシイノシン(I)又はデオキシウリジン(U)と1番目のヌクレオチド(C)との間のホスホジエステル結合を切断して、17-merの一本鎖又は二本鎖DNAを放出し、残りの21-merの一本鎖又は二本鎖DNAの3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基があるため、直ちに次のラウンドの核酸合成の新しい(或いは再利用可能な)イニシエーターとして使用できる。
【0107】
更に、Pfu Endo V及びPfu Endo Qは、両方とも、55℃及び60℃でデオキシイノシン又はデオキシウリジンを含むDNA鎖を部位特異的かつ効率的に切断し、Tba Endo Vは55℃及び60℃でデオキシイノシン又はデオキシウリジンを含むDNA鎖を部位特異的かつ効率的に切断し、Bpu Endo Qは、37℃でデオキシイノシン又はデオキシウリジンを含むDNA鎖を部位特異的かつ効率的に切断した。これに対して、大腸菌EndoVは、37℃でデオキシウリジンを含むDNA鎖のみを切断した。
【0108】
上述をまとめて、Pfu Endo V、Pfu Endo Q、Tba Endo V、及びBpu Endo Qは、広い範囲の反応温度(周囲反応温度を含む)でガイドヌクレオチドを部位特異的に認識し、ガイドヌクレオチドの位置により核酸鎖を切断し、3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を有するイニシエーターを効果的に再生できる。
【0109】
【表10】
【0110】
【表11】
【0111】
本発明は、その実施形態により説明されたが、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の実施形態を様々に変更できることが理解されるべきである。したがって、記載された実施形態は、本開示の範囲内の変更を網羅することを意図するものであり、本発明を限定するものではない。したがって、特許請求の範囲は、そのような全ての変更を含むように最も広範に解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0112】
図1】本開示の少なくとも1つの実施形態による概略図である[イニシエーター(3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を有する)から鋳型非依存性(template-independent)一本鎖DNA(ssDNA)デノボ合成を行い、新たに合成されたDNA鎖を切断して所望の配列及び長さのポリヌクレオチドを得、合成されたDNA鎖を切断した後、残った核酸鎖から新しい遊離3’-ヒドロキシル基を再生して所定のポリヌクレオチドを得ると共に、残りの核酸鎖を核酸合成の次のラウンドで新しい再利用可能なイニシエーターとして使用することを示す。核酸合成反応の前に、イニシエーターの5’末端が固相担体(SS)に固定される。Xは、ガイドヌクレオチドを表し、核酸鎖内のヌクレオチド位置に番号を付ける起点として使用される。Nは、取り込まれたヌクレオチドモノマーを表し、下付き添字番号は、核酸鎖の3’末端側又は下流に向かって昇順(例:N、N、N、N及びN)、下付き添字番号は、核酸鎖の5’末端側又は上流に向かって降順(例:N-1、N-2及N-3)になる。E1~E4は、異なるエンドヌクレアーゼを表す。E1、E2、E3又はE4酵素によりそれぞれNとNとの間、XとN-1との間、N-1とN-2との間又はN-2とN-3との間のホスホジエステル結合で切断できることを含み、イニシエーターの5’末端は、固相担体(SS)に連結される酵素核酸合成プロセスを概略で説明する。]。
図2A】本開示の少なくとも1つの実施形態による概略図である[イニシエーター(3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を有する)(すなわちプライマー)からの鋳型指向性(template-directed)DNA合成、所望の配列及び長さのポリヌクレオチドを得るための新生DNA鎖の切断、及び次のラウンドの核酸合成のための新しい再利用可能なイニシエーターを形成するための残りの核酸鎖の3’末端の遊離3’-ヒドロキシル基の再生を示す。イニシエーターの5’末端は、核酸合成反応の前に固相担体(SS)に固定される。したがって、鋳型DNAは、3’末端を介して固相担体に連結されるか(図2A)、又はアニーリング(annealing)法或いは他の既知のハイブリダイゼーション技術によりイニシエーターに部分的にハイブリダイズされる(図2B)。Xは、ガイドヌクレオチドを表し、核酸鎖に番号を付ける起点として使用される。Nは、取り込まれたヌクレオチドモノマーを表し、下付き添字番号は、核酸鎖の3’末端側又は下流に向かって昇順(例:N、N、N、N及びN)で、下付き添字番号は、核酸鎖の5’末端側又は上流に向かって降順(例:N-1、N-2及N-3)になる。E1~E4は、異なるエンドヌクレアーゼを表す。E1、E2、E3又はE4酵素によりそれぞれNとNとの間、XとN-1との間、N-1とN-2との間又はN-2とN-3との間のホスホジエステル結合で切断できることを含む酵素核酸合成手段を概略で説明する。]。
図2B】本開示の少なくとも1つの実施形態による概略図である[イニシエーター(3’末端に遊離3’-ヒドロキシル基を有する)(すなわちプライマー)からの鋳型指向性(template-directed)DNA合成、所望の配列及び長さのポリヌクレオチドを得るための新生DNA鎖の切断、及び次のラウンドの核酸合成のための新しい再利用可能なイニシエーターを形成するための残りの核酸鎖の3’末端の遊離3’-ヒドロキシル基の再生を示す。イニシエーターの5’末端は、核酸合成反応の前に固相担体(SS)に固定される。したがって、鋳型DNAは、3’末端を介して固相担体に連結されるか(図2A)、又はアニーリング(annealing)法或いは他の既知のハイブリダイゼーション技術によりイニシエーターに部分的にハイブリダイズされる(図2B)。Xは、ガイドヌクレオチドを表し、核酸鎖に番号を付ける起点として使用される。Nは、取り込まれたヌクレオチドモノマーを表し、下付き添字番号は、核酸鎖の3’末端側又は下流に向かって昇順(例:N、N、N、N及びN)で、下付き添字番号は、核酸鎖の5’末端側又は上流に向かって降順(例:N-1、N-2及N-3)になる。E1~E4は、異なるエンドヌクレアーゼを表す。E1、E2、E3又はE4酵素によりそれぞれNとNとの間、XとN-1との間、N-1とN-2との間又はN-2とN-3との間のホスホジエステル結合で切断できることを含む酵素核酸合成手段を概略で説明する。]。
図3】本開示の少なくとも1つの実施形態による鋳型非依存性核酸合成の実現可能性を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像である[レーン(lane)Sは、イニシエーターDNAのみ(ビオチン-FAM-45マーssDNA)を示す。レーン1は、ポリメラーゼにより3’-O-(アジドメチル)-2’-デオキシウリジン(U)で伸長されたイニシエーターDNAを示す。レーン2は、各ヌクレオチド取り込み及び3’-脱保護工程の後に、3’-O-(アジドメチル)-2’-デオキシウリジン(U)及び3’-O-(アジドメチル)-2’-デオキシグアノシン(G)で連続的に伸長されたイニシエーターDNAを示す。レーン3は、3’-脱保護工程後に3’-O-(アジドメチル)-2’-デオキシウリジンで伸長され、続いてdNTP(dATP、dCTP、dGTP、及びdTTPの混合物)で伸長されたイニシエーターDNAを示す。]。
図4A】それぞれ実施例1及び2の結果を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像であり、37℃又は70℃で、例示的な酵素でそれぞれデオキシイノシン(I、図4A)或いはデオキシウリジン(U、図4B)を優先的又は特異的に認識することにより、遊離型(図4A(1)及び図4B(1))又は固定化型(図4A(2)及び図4B(2))の一本鎖DNA(ssDNA)、及び遊離型(図4A(3) 及び図4B(3))又は固定化型(図4A(4)及び図4B(4))の二本鎖DNA(dsDNA)の部位特異的切断を示している。Sは、基質DNAのみを意味する。Eco EndoVは、米国特許出願第2021/0254114 A1号を参照して実施できる自製の大腸菌エンドヌクレアーゼVを意味する。Pfu EndoVは、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼVを意味する。C1は、New England Biolabsから商業的に入手したエンドヌクレアーゼV(NEB Eco EdoV)(Cat.#M0305S,Ipswitch,MA)を意味する。C2は、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラーぜ(human alkyladenine DNA glycosylase,hAAG)及びエンドヌクレアーゼVIII(EndoVIII)を含む自製の酵素混合物を意味する。C3は、New England Biolabsからのウラシル特異的切除試薬(NEB USER)(Cat.#M5505S,Ipswich,MA)を意味する。]。
図4B】それぞれ実施例1及び2の結果を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像であり、37℃又は70℃で、例示的な酵素でそれぞれデオキシイノシン(I、図4A)或いはデオキシウリジン(U、図4B)を優先的又は特異的に認識することにより、遊離型(図4A(1)及び図4B(1))又は固定化型(図4A(2)及び図4B(2))の一本鎖DNA(ssDNA)、及び遊離型(図4A(3) 及び図4B(3))又は固定化型(図4A(4)及び図4B(4))の二本鎖DNA(dsDNA)の部位特異的切断を示している。Sは、基質DNAのみを意味する。Eco EndoVは、米国特許出願第2021/0254114 A1号を参照して実施できる自製の大腸菌エンドヌクレアーゼVを意味する。Pfu EndoVは、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼVを意味する。C1は、New England Biolabsから商業的に入手したエンドヌクレアーゼV(NEB Eco EdoV)(Cat.#M0305S,Ipswitch,MA)を意味する。C2は、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラーぜ(human alkyladenine DNA glycosylase,hAAG)及びエンドヌクレアーゼVIII(EndoVIII)を含む自製の酵素混合物を意味する。C3は、New England Biolabsからのウラシル特異的切除試薬(NEB USER)(Cat.#M5505S,Ipswich,MA)を意味する。]。
図5A】それぞれ実施例3及び4の結果を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像である[37℃又は70℃で、例示的な酵素でそれぞれデオキシイノシン(I、図5A)或いはデオキシウリジン(U、図5B)を優先的又は特異的に認識することにより、遊離型(図5A(1)及び図5B(1))又は固定化型(図5A(2)及び図5B(2))の一本鎖DNA(ssDNA)、及び遊離型(図5A(3)及び図5B(3))又は固定化型(図5A(4)及び図5B(4))の二本鎖DNA(dsDNA)の部位特異的切断を示している。Pfu EndoQは、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼQを意味する。C1は、New England Biolabsから商業的に入手したエンドヌクレアーゼV(NEB Eco EdoV)(Cat.#M0305S,Ipswitch,MA)を意味する。C2は、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラー(hAAG)及びEndoVIIIを含む自製の酵素混合物を意味する。C3は、New England Biolabsからのウラシル特異的切除試薬(NEB USER)(Cat.#M5505S,Ipswich,MA)を意味する。]。
図5B】それぞれ実施例3及び4の結果を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像である[37℃又は70℃で、例示的な酵素でそれぞれデオキシイノシン(I、図5A)或いはデオキシウリジン(U、図5B)を優先的又は特異的に認識することにより、遊離型(図5A(1)及び図5B(1))又は固定化型(図5A(2)及び図5B(2))の一本鎖DNA(ssDNA)、及び遊離型(図5A(3)及び図5B(3))又は固定化型(図5A(4)及び図5B(4))の二本鎖DNA(dsDNA)の部位特異的切断を示している。Pfu EndoQは、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼQを意味する。C1は、New England Biolabsから商業的に入手したエンドヌクレアーゼV(NEB Eco EdoV)(Cat.#M0305S,Ipswitch,MA)を意味する。C2は、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラー(hAAG)及びEndoVIIIを含む自製の酵素混合物を意味する。C3は、New England Biolabsからのウラシル特異的切除試薬(NEB USER)(Cat.#M5505S,Ipswich,MA)を意味する。]。
図6A】それぞれ実施例5及び6の結果を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像である[37℃又は70℃で、例示的な酵素でそれぞれデオキシイノシン(I、図6A)或いはデオキシウリジン(U、図6B)を優先的又は特異的に認識することにより、遊離型(図6A(1)及び図6B(1))又は固定化型(図6A(2)及び図6B(2))の一本鎖DNA(ssDNA)、及び遊離型(図6A(3)及び図6B(3))又は固定化型(図6A(4)及び図6B(4))の二本鎖DNA(dsDNA)の部位特異的切断を示している。Sは、基質DNAのみを意味する。Eco EndoVは、米国特許出願第2021/0254114 A1号を参照して実施できる自製の大腸菌エンドヌクレアーゼVを意味する。Tba Endo Vは、サーモコッカス・バロフィルスエンドヌクレアーゼVを意味する。C1は、New England Biolabsから商業的に入手したエンドヌクレアーゼV(NEB Eco EdoV)(Cat.#M0305S,Ipswitch,MA)を意味する。C2は、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラー(hAAG)及びEndoVIIIを含む自製の酵素混合物を意味する。C3は、New England Biolabsからのウラシル特異的切除試薬(NEB USER)(Cat.#M5505S,Ipswich,MA)を意味する。]。
図6B】それぞれ実施例5及び6の結果を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像である[37℃又は70℃で、例示的な酵素でそれぞれデオキシイノシン(I、図6A)或いはデオキシウリジン(U、図6B)を優先的又は特異的に認識することにより、遊離型(図6A(1)及び図6B(1))又は固定化型(図6A(2)及び図6B(2))の一本鎖DNA(ssDNA)、及び遊離型(図6A(3)及び図6B(3))又は固定化型(図6A(4)及び図6B(4))の二本鎖DNA(dsDNA)の部位特異的切断を示している。Sは、基質DNAのみを意味する。Eco EndoVは、米国特許出願第2021/0254114 A1号を参照して実施できる自製の大腸菌エンドヌクレアーゼVを意味する。Tba Endo Vは、サーモコッカス・バロフィルスエンドヌクレアーゼVを意味する。C1は、New England Biolabsから商業的に入手したエンドヌクレアーゼV(NEB Eco EdoV)(Cat.#M0305S,Ipswitch,MA)を意味する。C2は、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラー(hAAG)及びEndoVIIIを含む自製の酵素混合物を意味する。C3は、New England Biolabsからのウラシル特異的切除試薬(NEB USER)(Cat.#M5505S,Ipswich,MA)を意味する。]。
図7】それぞれ実施例7の結果を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像である[37℃で、例示的な酵素でデオキシウリジン(U)を優先的又は特異的に認識することにより、遊離型(図7(1)の一本鎖DNA(ssDNA)、及び遊離型の二本鎖DNA(dsDNA)(図7(2)の部位特異的切断を示している。Sは、基質DNAのみを意味する。Eco EndoVは、米国特許出願第2021/0254114 A1号を参照して実施できる自製の大腸菌エンドヌクレアーゼVを意味する。Bsu Endo Vは、枯草菌エンドヌクレアーゼVを意味する。C1は、New England Biolabsから商業的に入手したエンドヌクレアーゼV(NEB Eco EdoV)(Cat.#M0305S,Ipswitch,MA)を意味する。C3は、New England Biolabsからのウラシル特異的切除試薬(NEB USER)(Cat.#M5505S,Ipswich,MA)を意味する。]。
図8A】実施例8の結果を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像である[37℃、55℃及/又は60℃で、例示的な酵素でそれぞれデオキシイノシン(I,図8A(1)、8A(2)、8B(1)、及び8B(2))及びデオキシウリジン(U,図8A(3)、8A(4)、8B(3)、及び8B(4))を優先的又は特異的に認識することにより、遊離型(図8A(1)、8A(3)、8B(1)、及8B(3))の一本鎖DNA(ssDNA)又は固定化型(図8A(2)、8A(4)、8B(2)、及8B(4))の一本鎖DNA(ssDNA)からの伸長DNA鎖産物の部位特異的切断を示す。Sは、基質DNAのみを意味する。Eco EndoVは、米国特許出願第2021/0254114 A1号を参照して実施できる自製の大腸菌エンドヌクレアーゼVを意味する。Pfu Endo Vは、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼVを意味する。Tbaは、サーモコッカス・バロフィルスエンドヌクレアーゼVを意味する。Pfu Endo Qは、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼQを意味する。Bpu Endo Qは、バチルス・プミルスエンドヌクレアーゼQを意味する。]。
図8B】実施例8の結果を示す尿素ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像である[37℃、55℃及/又は60℃で、例示的な酵素でそれぞれデオキシイノシン(I,図8A(1)、8A(2)、8B(1)、及び8B(2))及びデオキシウリジン(U,図8A(3)、8A(4)、8B(3)、及び8B(4))を優先的又は特異的に認識することにより、遊離型(図8A(1)、8A(3)、8B(1)、及8B(3))の一本鎖DNA(ssDNA)又は固定化型(図8A(2)、8A(4)、8B(2)、及8B(4))の一本鎖DNA(ssDNA)からの伸長DNA鎖産物の部位特異的切断を示す。Sは、基質DNAのみを意味する。Eco EndoVは、米国特許出願第2021/0254114 A1号を参照して実施できる自製の大腸菌エンドヌクレアーゼVを意味する。Pfu Endo Vは、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼVを意味する。Tbaは、サーモコッカス・バロフィルスエンドヌクレアーゼVを意味する。Pfu Endo Qは、ピロコッカス・フリオサスエンドヌクレアーゼQを意味する。Bpu Endo Qは、バチルス・プミルスエンドヌクレアーゼQを意味する。]。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
【配列表】
2025504052000001.xml
【国際調査報告】