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特表2025-504058合成開口レーダ画像のアンビギュイティの低減
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】合成開口レーダ画像のアンビギュイティの低減
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/90 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
G01S13/90 135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545144
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2022087007
(87)【国際公開番号】W WO2023143828
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】2201195.1
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523132594
【氏名又は名称】アイサイ オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ドーガン オザン
(72)【発明者】
【氏名】イグナテンコ ヴラディミール
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC01
5J070AC02
5J070AF06
5J070AF08
5J070BE02
(57)【要約】
合成開口レーダ「SAR」を動作させて画像形成用のSARエコーデータを取得する方法であって、プラットフォームの天底の天底アンビギュイティインデックスを計算するステップと、天底アンビギュイティインデックスに基づいてSARによって送信される波形の連続パルスに対する周波数掃引方向シーケンスを決定するステップと、波形の連続パルスに対する相対位相シーケンスを取得するステップと、決定された周波数掃引方向シーケンスと相対位相シーケンスを用いて波形を符号化するステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成開口レーダ「SAR」を動作させて、画像形成用のSARエコーデータを取得する方法であって、前記SARは、地球の表面に対して移動するプラットフォーム上に搭載され、地球の表面に向けられ、前記方法は、
プラットフォームの天底に対する天底アンビギュイティインデックスを計算するステップと、
天底アンビギュイティインデックスに基づいて、SARによって送信される波形の連続パルスに対する周波数掃引方向シーケンスを決定するステップと、
前記波形の連続パルスに対する相対位相シーケンスを取得するステップと、
前記決定された周波数掃引方向シーケンスおよび相対位相シーケンスを用いて波形を符号化するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記決定は、前記複数の周波数掃引方向シーケンスから周波数掃引方向シーケンスを選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
天底アンビギュイティインデックスは、画像化されるターゲットエリアの遠距離までの斜距離、プラットフォームから天底までの推定距離、および波形のパルス繰り返し率のうちの1つまたは複数に依存する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記天底アンビギュイティインデックスが奇数であるすべてのインスタンスに対して同じ周波数掃引方向シーケンスが決定され、天底アンビギュイティインデックスの異なる偶数値に対して複数の異なる周波数掃引方向シーケンスが決定される、前記請求項のいずれかの方法。
【請求項5】
波形の連続パルスに対する相対位相シーケンスを取得する前記ステップは、天底以外の不明な領域内の点についてレンジアンビギュイティインデックスを計算し、前記レンジアンビギュイティインデックスに基づいて波形の相対位相シーケンスを決定するステップを含む、前記請求項のいずれかの方法。
【請求項6】
前記相対位相シーケンスの決定は、レンジアンビギュイティインデックスが奇数であるか偶数であるかに依存する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
受信した生のエコーSARデータを不明な画像および明確な画像に従って処理するステップを含み、前記不明な画像は天底以外の画像である、前述請求項のいずれかの方法。
【請求項8】
前記天底エコーに合わせたフィルタを用いてSAR画像データをフォーカシングするステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記SARデータの天底を検出するステップと、
前記SARデータから前記天底を抑制するステップと、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記SARデータから天底を抽出するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記不明なエコー信号に従って前記SARデータを二重にフォーカシングするステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
二重にフォーカシングする前記ステップは、
天底エコー信号に合わせたフィルタの共役を用いて逆フォーカシングするステップと、
前記不明なエコー信号に合わせたフィルタを用いて前記SARデータをフォーカシングし、フォーカシングされた不明な画像を生成するステップと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記SARデータの焦点が合った不明な画像を検出するステップと、
前記SARデータから焦点が合った不明な画像を抑制するステップと、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記SARデータから不明な領域の焦点が合った画像を抽出するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記明確なエコー信号に従って前記SARデータを二重にフォーカシングするステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記明確なエコー信号に従って前記SARデータを二重にフォーカシングする前記ステップは、
前記SARデータを逆フォーカシングするステップと、
前記明確なエコー信号に合わせたフィルタを用いて前記SARデータをフォーカシングし、前記SARデータから焦点が合った不明な画像を生成するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
不明なエコー信号に合わせたフィルタを用いてSARデータをフォーカシングし、焦点が合った不明な画像を生成するステップをさらに含み、前記フォーカシングは、
前記不明なエコー信号に合わせたフィルタを用いてレンジを圧縮するステップと、
レンジセル移行補正のステップであって、前記不明なエコー信号のレンジエンベロープ内のレンジセル移行項は、不明な領域までの距離の関数である、前記ステップと、
前記天底までの距離に対して方位角を圧縮するステップであって、前記不明なエコー信号の方位角パルス数は、アンビギュイティインデックスと天底までの距離の関数である、前記ステップと、を含む請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記SARデータの焦点が合った不明な画像を検出するステップと、
前記SARデータから焦点が合った不明な画像を抑制するステップと、
前記SARデータから焦点が合った不明な画像を抽出するステップと、を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記明確なエコー信号に合わせたフィルタを用いてSARデータをフォーカシングし、焦点が合った明確な画像を得るステップをさらに含み、前記フォーカシングは、
前記明確なエコー信号に合わせたフィルタを用いてレンジを圧縮するステップと、
レンジセル移行補正のステップであって、明確なエコー信号のレンジエンベロープ内のレンジセル移行項は、不明な領域までの距離の関数である、前記ステップと、
前記天底までの距離に対して方位角を圧縮するステップであって、前記明確なエコー信号の方位角パルス数は、アンビギュイティインデックスと天底までの距離の関数である、前記ステップと、を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記明確なエコー信号に従って前記SARデータを二重にフォーカシングするステップをさらに含む、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記明確なエコー信号に従って前記SARデータを二重にフォーカシングする前記ステップは、
前記SARデータを逆フォーカシングするステップと、
前記明確なエコー信号に合わせたフィルタを用いて前記SARデータをフォーカシングし、前記SARデータから焦点が合った明確な画像を生成するステップと、を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記明確なエコー信号に合わせたフィルタを用いて前記SARデータをフォーカシングし、焦点が合った明確な画像を生成するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項23】
前記SARデータの焦点が合った明確な画像を検出するステップと、
前記SARデータから焦点が合った明確な画像を抑制するステップと、をさらに含む、請求項21または請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記不明なエコー信号に従って前記SARデータを二重にフォーカシングするステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記不明なエコー信号に従って前記SARデータを二重にフォーカシングする前記ステップは、
前記SARデータを逆フォーカシングするステップと、
前記明確なエコー信号に合わせたフィルタを用いてSARデータをフォーカシングし、焦点が合った明確な画像を生成するステップと、を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記明確なエコー信号に合わせたフィルタを用いて前記SARデータをフォーカシングし、焦点が合った明確な画像を生成するステップを含み、前記フォーカシングは、
前記明確なエコー信号に合わせたフィルタを用いてレンジを圧縮するステップと、
レンジセル移行補正のステップであって、明確なエコー信号のレンジエンベロープ内のレンジセル移行項は、明確な領域までの距離の関数である、前記ステップと、
前記天底までの距離に対して方位角を圧縮するステップであって、前記明確なエコー信号の方位角パルス数は、アンビギュイティインデックスと天底までの距離の関数である、前記ステップと、を含む、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項27】
前記SARデータの焦点が合った明確な画像を検出するステップと、
前記SARデータから焦点が合った明確な画像を抑制するステップと、をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記不明なエコー信号に合わせたフィルタを用いて前記SARデータをフォーカシングし、焦点が合った不明な画像を取得するステップをさらに含み、前記フォーカシングは、
前記不明なエコー信号に合わせたフィルタを用いてレンジを圧縮するステップと、
レンジセル移行補正のステップであって、不明なエコー信号のレンジエンベロープ内のレンジセル移行項は、不明な領域までの距離の関数である、前記ステップと、
前記天底までの距離に対して方位角を圧縮するステップであって、前記不明なエコー信号の方位角パルス数は、アンビギュイティインデックスと天底までの距離の関数である、前記ステップと、を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の方法に従って動作するようにSARを制御するように構成されたコンピューティングシステム。
【請求項30】
SAR動作システムの一部を形成するコンピューティングシステムで実装されると、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法に従ってシステムを動作させる命令を含むコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項31】
請求項1~28のいずれか一項に記載の方法に従って連続電波パルスを送信してターゲットエリアを照明するように構成されたSARシステム。
【請求項32】
地球の表面に対して移動するプラットフォームに搭載されたSARシステムから送信されるパルス無線波形であって、前記波形は、放射の連続パルスに対する周波数掃引方向シーケンスを用いて符号化されており、前記周波数掃引方向シーケンスは、前記プラットフォームの天底におけるアンビギュイティに応じて変化する、パルス無線波形。
【請求項33】
前記波形は、前記放射の連続パルスに対する相対位相シーケンスを用いて符号化されている、請求項32に記載の波形。
【請求項34】
前記相対位相シーケンスは、天底以外の不明な領域内の点のアンビギュイティに応じて変化する、請求項33に記載の波形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成開口レーダを用いた画像化の分野である。
【背景技術】
【0002】
合成開口レーダ(SAR)は、レーダビームを送信し、送信されたビームからのリターンエコーを記録することで、地球上のエリア域(ターゲットエリアとも呼ばれる)を画像化するために使用できる。SARシステムは、航空機などの空中プラットフォームだけでなく、宇宙から動作される衛星にも設置できる。SARの動作には、ストリップマップ、スポットライト、ScanSAR(走査型合成開口レーダ)、TOPSAR(プログレッシブスキャンSARによる地球観測)など、さまざまなモードを使用できる。
【0003】
通常、SARシステムは無線周波数放射をパルスで送信し、返ってきたエコーを記録する。サンプリングされたデータは、画像を形成するために処理するために保存される。SARのパルス動作の結果、たとえば、天底やターゲット画像化エリア外の他の点から後方散乱したレーダエコーによって、画像にアンビギュイティが生じる可能性がある。これらのアンビギュイティは、レーダビームをターゲット画像化エリアのみに完全に向けることが困難なために生じる可能性がある。実際には、レーダビームには、望ましい画像化エリア外のエリアも照明するサイドローブがあり、これらの「不明な」エリアからのレーダエコーが「明確な」エリアからの反射と混ざり合うことになる。望ましくない領域から散乱された、以前および後で送信されたパルスのこれらのエコーには、現在の位置にあるSARプラットフォーム(衛星など)の真下の点である天底が含まれる場合がある。この場合、SAR画像は、明確な画像(望ましい画像)、部分的に焦点が合った不明な画像、および天底を組み合わせたものである。
【0004】
レンジが不明な領域からのアンビギュイティの問題を克服する1つの方法は、仰角方向のアンテナのサイズを大きくすることである。これにより、ビームの幅が狭くなり、ビームのサイドローブが低減され、不明な領域から後方散乱された信号も低減される。しかし、アンテナのサイズを大きくすることは、小型衛星のサイズ、重量、電力の「SWAP」要件、および高解像度で広いレンジを画像化する必要性と矛盾する。
【0005】
特に天底のアンビギュイティを抑制するために使用できる別の方法は、パルス繰り返し周波数「PRF」を調整して、天底エコー時間がレーダの受信ウィンドウから外れるようにすることである。ほとんどの場合、これは非現実的であり、スワス幅を最大化し、方位角のアンビギュイティと信号の比率を最小化するように既に最適化されているPRFに追加の制約が課せられる。さらに、ブラインドレンジ外にある不明なターゲットについては、PRFチューニングでは抑制できない。固定または微調整されたPRFを適用する代わりに、前後のパルスまでの時間レンジが連続的に変化するため、異なるレンジラインに対して異なるレンジにアンビギュイティが配置されるスタッガードSARシステムを使用する方法もある。したがって、不明なエネルギーはドップラー領域で非コヒーレントに統合され、結果としてぼやけが発生する。残念ながら、レンジのアンビギュイティの抑制率は一般的なシステムパラメータでは非常に制限されており、方位角方向で等レンジのサンプリングを実現するには追加の信号処理アルゴリズムが必要である。
【0006】
いくつかのアンビギュイティ抑制方法は、リターン信号からアンビギュイティを識別して抑制できるようにするために多様な波形を送信すること、そして不明なリターン信号を分離する処理によって残りのアンビギュイティを抑制することに重点を置いている。以下では、特に明記しない限り、「フォーカシング」という用語は、たとえば光学フォーカシングではなく、統計的または数学的なフィルタリングプロセスを指すために使用されている。フィルタリングの例としては、送信信号と受信信号の共役の畳み込みがある。
【0007】
波形ダイバーシティの基本的な考え方は、特定のリターン信号が由来する送信パルスを「マーク」または識別する機能を得ることである。これを実現するには、システムは異なるマークの信号を送信し、それに応じて散乱信号を識別できる必要がある。文献では少なくとも3つの異なる波形が提案されている:アップアンドダウンチャープ(UDC)、方位角位相コーディング(APC)、および周期周波数(CF)。
【0008】
UDC(アップアンドダウンチャープ)波形ダイバーシティは、天底抑制に使用でき、高品質のSAR画像を抽出できる。ただし、エネルギーは抑制されず、レンジ方向にぼやける。これにより、特に後方散乱特性が強いターゲットの場合、画像にレンジストライプが表示されることがある。信号は抑制されるのではなくぼやけるため、不明な信号の総エネルギーが大幅に減少することはない。実際、特定のターゲットの総信号電力を考慮すると、UDCの抑制能力は、点ターゲットの場合は3dB、拡張ターゲットの場合は0dBと低くなる可能性がある。
【0009】
UDCのこれらの問題のいくつかを克服するために、文献では二重フォーカシング技術に基づくいくつかの後処理アルゴリズムが提案されている。これらの技術では、生データは不明な領域に応じてフォーカシングされる。次に、不明な領域の画像はしきい値化され、複雑なデータは抑制され、より高い後方散乱は不明なターゲットを表すと想定される。この技術の欠点の1つは、有用な信号も失われる可能性があることである。最後のステップは、生データに焦点を戻して、明確な領域に従って生データをフォーカシングすることである。ただし、このアルゴリズムは計算量が多い可能性があるため、計算がそれほど複雑でない後処理アルゴリズムが望まれる。
【0010】
別の波形ダイバーシティ方法はAPC(方位角位相コーディング)である。この方法では、送信された各パルスの位相が交互になり、明確なターゲット信号のドップラー帯域幅が処理帯域外にシフトされる。このアイデアは、信号の明確なドップラー帯域幅と不明なドップラー帯域幅が分離されるようにPRFを十分に高く設定することに基づいている。残念ながら、これによりスワス幅が狭くなったり、方位角解像度が低下したりするが、どちらもSAR画像化には望ましくない。
【0011】
CF(周期周波数)は、送信パルスの周波数を周期的にシフトして直交波形を生成する方法である。ただし、この場合、必要な急速な周波数ホップにより、急激な電力ドリフト、ハードウェア実装の複雑さ、キャリブレーション負荷の増加などの実際的な問題が発生する。さらに、SARシステムでは、個別の波形を保存するためのメモリが限られている場合がある。たとえば、TerraSAR-X衛星は、1回の取得で最大8つの異なる波形しか保存できない。
【0012】
最近、UDCとAPCを組み合わせて天底抑制性能を向上させる取り組みがいくつか行われているが、これらの波形はいずれもSAR画像における天底とレンジの両方のアンビギュイティの抑制に対応するようには設計されていない。以下で説明する本発明のいくつかの実施形態は、これらの問題のいくつかを解決する。しかしながら、本開示はこれらの問題の解決に限定されず、記載されているいくつかの実施形態は他の問題も解決することができる。
【発明の概要】
【0013】
本要約は、以下の詳細な説明でさらに説明する概念の選択を簡略化した形で紹介するために提供される。本要約は、主張対象の主要特徴または本質的特徴を特定することを目的としたものではなく、主張対象のレンジを決定するために使用することを目的としたものではない。
【0014】
以下では、合成開口レーダ「SAR」を動作させて、画像形成用のSARエコーデータを取得する方法であって、SARは、地球の表面に対して移動するプラットフォーム上に搭載され、地球の表面に向けられ、この方法は、プラットフォームの天底に対する天底アンビギュイティインデックスを計算するステップと、天底アンビギュイティインデックスに基づいて、SARによって送信される波形の連続パルスに対する周波数掃引方向シーケンスを決定するステップと、波形の連続パルスに対する相対位相シーケンスを取得するステップと、決定された周波数掃引方向シーケンスおよび相対位相シーケンスを用いて波形を符号化するステップと、を含む方法が開示されている。以下でさらに詳しく説明するように、周波数掃引方向および位相によるこの符号化は、SAR画像のアンビギュイティを低減するために使用することができる。
【0015】
ここで説明した方法のいずれも、すでに軌道上にある衛星を動作させるために実装することができ、したがって、SARの動作を制御するように構成されたコンピューティングシステムの形式で実装することができる。コンピューティングシステムは、たとえばSARシステムを搭載したプラットフォーム上に搭載されているか、またはたとえばプラットフォームと地上局の間に分散されている可能性がある。
【0016】
また、本明細書では、SAR動作システムの一部を形成するコンピューティングシステムで実装されると、本明細書で説明した方法のいずれかをシステムに実行させる命令を含むコンピュータ読み取り可能な媒体も提供される。
【0017】
また、本明細書では、本明細書で説明した方法のいずれかに従って、連続電波パルスを送信してターゲット領域を照明するように構成されたSARシステムも提供される。
【0018】
また、地球の表面に対して移動するプラットフォームに搭載されたSARシステムから送信されるパルス無線波形であって、前記波形は、連続放射パルスの周波数掃引方向シーケンスを用いて符号化されており、周波数掃引方向シーケンスは、プラットフォームの天底におけるアンビギュイティに応じて変化する、パルス無線波形も提供される。周波数掃引方向シーケンスは、たとえば、プラットフォームから天底までのレンジに応じて変化してもよい。波形は、ここで説明した方法のいずれかに従って符号化することができる。
【0019】
パルス波形を送信するように構成されたSARシステムも提供される。
【0020】
波形は、放射の連続パルスに対する相対位相シーケンスを用いて符号化することができ、これは、天底以外の不明な領域内の点のアンビギュイティに応じて変化する可能性がある。相対位相シーケンスは、プラットフォームから天底外の点までのレンジに応じて変化する可能性がある。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、衛星オペレーティングシステムの一部を構成するコンピューティングシステムに実装された場合、システムがここで説明する方法またはプロセスのいずれかを実行させるようなアルゴリズムの形態の命令を含むコンピュータ読み取り可能な媒体が提供される。
【0022】
本発明の様々な態様および実施形態の特徴は、熟練者に明らかなように適宜組み合わせてもよく、また、本発明のいずれかの態様と組み合わせてもよい。
本発明の実施形態について、実施例としてのみ、以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】地球上空の軌道上の衛星の概略斜視図である。
図2】宇宙で動作する衛星、画像化されるターゲットエリア、天底点、およびいくつかの不明なエリア域の概略図である。
図3a】明確な点ターゲットと不明な領域内の点ターゲットのレンジ圧縮データのプロットである。
図3b】不明な領域内の明確な点ターゲットと拡張ターゲットのレンジ圧縮データのプロットである。
図4a】ダブル二重フォーカシング法を用いてSARデータから明確な画像を抽出する方法のフローチャートである。
図4b】デルタフォーカシング法を用いてSARデータから明確な画像を抽出する方法のフローチャートである。
図5a】焦点が合った天底画像における被検細胞と背景の比率を閾値処理して抽出した検出点のプロットである。
図5b】焦点があった天底画像の各レンジビンにおけるテスト対象セルと背景の比率の合計のプロットである。
図6a】本発明のいくつかの実施形態による代替方法を示すフローチャートである。
図6b】本発明のいくつかの実施形態による別の代替方法を示すフローチャートである。
図7】本発明のいくつかの実施形態によるSARデータ内の天底を検出する方法を示すフローチャートである。
図8a】強い天底エコー、不明な領域リターン、および強い散乱体のある山岳地帯を示すSAR画像である。
図8b】レンジ方向にぼやける天底リターンを示すSAR画像である。
図8c】天底が完全に抑制された後処理後のSAR画像である。
図8d】両方が抑制された後処理後のSAR画像であり、天底とレンジのアンビギュイティが完全に抑制されている。
図9a】波形ダイバーシティで収集されたSAR画像から天底を検出したグラフである。
図9b】波形ダイバーシティで収集されたSARデータの不明な画像である。
図9c】波形ダイバーシティで収集されたSAR画像からレンジが不明な領域からアンビギュイティを検出したグラフである。
図10a】波形ダイバーシティとレンジストライプを用いて収集されたSAR画像である。
図10b図10aの中央部分について、レンジ方向のエネルギーの合計と方位角をデフォルト画像と比較したグラフである。
図10c図10aの右側のセクションについて、レンジ方向のエネルギーの合計と方位角をデフォルト画像と比較したグラフである。
図11a】高入射角と高パルス繰り返し率のSAR画像で、不明な領域から生じるアンビギュイティを示している。
図11b図11aのSAR画像の不明な画像で、レンジのアンビギュイティを抑制していない。
図11c図11aの画像のアンビギュイティのないSAR画像で、レンジのアンビギュイティを抑制していない。
図11d図11aのデフォルト画像と比較した、レンジ方向と方位角のエネルギーの合計の比較グラフである。 図面全体を通して共通の符号を用いて、類似の特徴を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態は、単なる例として以下に説明される。これらの例は、出願人に現在知られている発明を実践するための最良の方法を表しているが、これを達成できる唯一の方法ではない。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態は、地球上のエリアの画像を取得するためにSAR(合成開口レーダ)システムを動作させるシステムおよび方法を提供する。この目的のために、SARは地球の表面に対して進行するプラットフォームに搭載されてもよい。たとえば、SARシステムは一般的に衛星に搭載されている。ただし、ここで説明する方法およびシステムは宇宙に限定されず、航空機またはその他の適切なプラットフォームを用いて実行してもよい。
【0026】
以下の説明では、明確な信号という用語は、ここでは「望ましい」画像エリアとも呼ばれる、ターゲット画像領域から取得される信号を指すために使用される。不明な信号は、望ましい画像化エリア領以外の不明な領域から取得される信号を指すために使用される。不明な信号は明確な信号と混ざり合う可能性があり、結果として得られる画像にアンビギュイティを引き起こす可能性がある。最終的には、アンビギュイティをできるだけ少なくして、明確な領域(ターゲット画像エリア)の画像を取得することが望まれる。本開示で説明されている方法のいくつかによると、これには、本開示では不明な画像と呼ばれる不明な領域の画像を取得するステップが含まれる場合がある。これは、その領域の画像を取得するために、不明な領域のパラメータでフォーカシングされたSAR生データを指す。不明な画像自体にも価値がある。なぜなら、わずかな追加コストで別のエリアの追加画像を提供できるからである。同様に、天底信号は衛星の真下の点から返される信号を指す。天底は不明な信号の特殊なケースであり、明確な領域の画像を取得する過程で天底領域の画像も作成できる。
【0027】
図1は、本明細書で説明される方法およびシステムで使用され得るプラットフォームの一例として、地球上の軌道上の衛星100の斜視図である。衛星は、本体110と「翼」160を含む。1つまたは複数のアンテナ要素が衛星の翼に取り付けられる場合がある。衛星100は、さらに、太陽電池パネル150の反対側の面の本体110に取り付けられているように示されている推進システム190を含む。推進システムは、一般に衛星100を特定の軌道に維持するために動作されるスラスタ205、210、215、220を含む。たとえば、スラスタ205、210、215、220は、地球に対して特定の方向に衛星100を推進するために使用できる。他の箇所で述べたように、ここで説明する方法は、衛星に搭載されたSARに関連して実施するのに特に適しているが、それだけには限らない。
【0028】
本体110には、当業者によく知られているように、コンピューティングシステムおよび制御装置が収容されている。図1には、受信したSARデータを後処理するように構成された地上局コンピューティングシステム195も概略的に示されている。ここで説明する方法のステップの一部は、地上局コンピューティングシステムで実施することができる。
【0029】
当業者で知られているように、放射線のパルスが地球の表面に向かう送信モードと、地球の表面から反射された放射線が受信される受信モードとを周期的に交互に運転する。
【0030】
当技術分野で知られているように、SAR画像を作成するには、電波の連続パルスを送信してターゲットシーンを「照明」し、各パルスのエコーを受信して記録する。パルスを送信し、エコーを1つのビーム形成アンテナで受信することができる。SARは衛星等の移動プラットフォームに搭載されてターゲットに対して移動すると、ターゲットに対するアンテナの位置が時間とともに変化し、受信信号の周波数がドップラー効果により変化する。連続的に記録されたレーダエコーの信号処理により、複数のアンテナ位置からの記録を組み合わせることが可能になり、合成開口アンテナ(SAR)を形成して高解像度の画像を作成できる。
【0031】
SARによって画像化される領域はフットプリントと呼ばれる。SARの飛行方向に沿った方向は、通常、方位角またはアロングトラック方向と呼ばれる。飛行方向を横切る方向は、通常、レンジ、仰角、またはクロストラック方向と呼ばれる。飛行方向と反対の方向が後進方位に相当する。
【0032】
図2を参照すると、衛星100が方位方向の飛行経路200に沿って移動している様子が示されている。衛星は「サイドスキャン」モードで動作しており、画像化される領域は衛星の真下ではなく、衛星の飛行経路の横にある。これはSAR衛星では一般的であり、衛星の真下にある物体からの鏡面反射による明るい反射により、天底領域の画像を形成することが困難になる。影付きのエリア201は、画像化されるエリア(明確な領域)を表す。点202は天底点、つまり衛星の真下の点である。エリア204、205、および206は、レーダビームのローブによるレーダ反射がSAR画像にアンビギュイティを引き起こす可能性がある不明な領域である。点203は、画像が望まれる明確なエリア201に隣接する、不明なエリア204内の点である。図2は、衛星100が従来のストリップマップモードで動作している様子を示している。このモードでは、衛星が軌道を移動すると、SARビームが地面に沿って1スワスに沿って掃引される。ただし、現在の開示による例は、スポットライトモード、ScanSAR(走査型合成開口レーダ)モード、およびTOPSAR(プログレッシブスキャンSARによる地形観測)モードなど、任意のSARモードに同様に適用できる。収集されたSARデータは通常、明確な領域、不明な領域、および天底からのエコー信号で構成され、それぞれ明確な画像、不明な画像、および天底画像に対応する。
【0033】
本開示による例では、改善された波形シーケンスおよび波形ダイバーシティの使用方法が説明されている。例では、アップ/ダウンチャープの波形コーディング(UDC)と方位角位相エンコーディング(APC)を一緒に適用して、望ましい画像化エリアに近接するゾーンから生じる天底リターンとアンビギュイティの両方を抑制し、改善されたSAR画像を生成する。
【0034】
UDCの場合、単一の周波数でレーダパルスを送信するのではなく、各パルスの周波数はパルスの持続時間にわたって上または下に掃引され、「アップチャープ」または「ダウンチャープ」のいずれかを作成する。衛星100によって送信される信号は、初期位相および電力項を無視すると、次のように記述できる。
【数1】
【0035】
【数2】
【0036】
ここで、stuとstdはそれぞれアップアンドダウンチャープを伴う送信信号を表し、αはチャープレート、tは高速時間(またはレンジ方向に沿った時間)、Tpはパルス幅、redは矩形関数である。
【0037】
リターンエコーはアップまたはダウンの「シグネチャ」のいずれかを運び、リターンがアップチャープを伴う送信パルスからのものか、ダウンチャープを伴う送信パルスからのものかを示す。たとえば、アップチャープが問題の画像化エリアに送信される。画像化エリアまでの距離と光速が与えられれば、その領域からのリターンエコーが予想される時間は分かる。ただし、望ましい画像化エリアからのリターンと混ざって、より近いエリアまたはより遠いエリアからのリターンが存在する可能性がある。たとえば、天底ははるかに近いため、後で送信されたパルスからのリターンが、画像化エリアまで移動して戻ってきたパルスとともに表示される可能性がある。これはアンビギュイティの例である。アップアンドダウンチャープのシーケンスを慎重に選択して、たとえば、特定の時点での明確な画像リターンがすべてアップチャープで、天底リターンがダウンチャープになるようにすると、合わせたフィルタを用いて天底リターンをフィルタリングすることが可能になる。
【0038】
アップチャープの基準信号によるダウンチャープの合わせたフィルタ出力は次のようになる。
【0039】
【数3】
【0040】
逆の場合(アップチャープの合わせたフィルタ出力とダウンチャープの基準信号)は、インデックス関数内で逆位相符号を持つ。したがって、明確な基準信号に従ってフォーカシングすると、送信信号(1)および(2)と比較して、パルス(2Tp)幅が2倍になり、チャープレートが半分(α/2)になる、不明な信号が焦点を合わなくなる。数学的には、ここでのフォーカシングは、送信信号と受信信号の共役の畳み込みである。なお、上または下のいずれかの線形周波数掃引を伴うチャープまたはパルスが例として説明されているが、現在の開示によれば、他のタイプの周波数掃引も同様に使用できる。パルスを識別するために使用できる周波数変更の他の例としては、非線形周波数掃引、三角周波数掃引、放物線周波数掃引、または周期的周波数掃引などがあるが、これらに限定されない。
【0041】
図3aは、送信波形がUDC符号化されている、明確な点ターゲットと不明な点ターゲットを比較したシミュレートされた合わせたフィルタ出力のプロットを示している。図3bは、不明な拡張ターゲット(各レンジサンプリング間隔で点ターゲットを持つ80メートルの長さのターゲット)を使用した、同じ明確な点ターゲット出力を示している。シミュレーションパラメータは、以下の表1に示されている。UDC波形は、エネルギーをぼかすことで点ターゲットを抑制できることがわかる。ただし、ターゲットの後方散乱が十分に強い場合は、画像にレンジの縞模様が現れることが予想される。拡張ターゲットの場合、ターゲットのサイズによっては、UDCが不明な信号を大幅に削減するのに役立たない可能性があることが3bからわかる。この問題に対処するために、以下で説明するように、波形をさらに変更することが提案されている。
【0042】
【表1】
【0043】
本開示による例では、UDCは方位角位相コーディング(APC)と組み合わされ、天底から生じるアンビギュイティ、および望ましい画像化エリアに近い不明な領域、特に上記のように拡張されたターゲットから生じるアンビギュイティをより効果的に低減する。APCの基本的な考え方は、レンジが不明な領域から生じるアンビギュイティのドップラースペクトルをシフトして、SARフォーカシング動作中にそれらを緩和できるようにすることである。ただし、APCを単独で適用すると、スワス幅が狭くなったり、方位分解能が低下したりするなどの制限がある。
【0044】
以下では、プラットフォームの天底のアンビギュイティインデックスを計算し、この天底のアンビギュイティインデックスに基づいて周波数掃引方向シーケンスを決定する方法について説明する。次に、波形は、決定された周波数掃引方向シーケンスと、波形の連続パルスに対する相対位相シーケンス(APC)と、を用いて符号化される。
【0045】
天底のアンビギュイティインデックスは、正または負の整数である。言い換えれば、天底リターンのアンビギュイティインデックスである第1のアンビギュイティインデックスに基づいて、異なる周波数掃引方向シーケンスまたはUDCシーケンスが適用される。
【0046】
さらに、第2アンビギュイティインデックス、たとえば最も強い反射を持つ不明な領域(天底以外)のアンビギュイティインデックスに基づいて、異なる相対位相シーケンスまたはAPCシーケンスを適用することができる。アンビギュイティインデックスが1に等しい不明な領域は通常最も強い反射であるため、これを第2アンビギュイティインデックスとして使用することができる。
【0047】
波形ダイバーシティを作成するこの方法は、天底反射と望ましい画像化エリアに近い不明な領域の両方からのアンビギュイティを低減するために使用することができる。天底領域がレーダエコーリターンのレンジ外にある場合、波形のUDC部分とAPC部分の両方は、最も強いレーダエコーがあると予想される不明な領域のアンビギュイティインデックス(ここではレンジアンビギュイティインデックスと呼ぶ)に基づいて選択することができる。
【0048】
周波数掃引方向シーケンスの決定は、複数の周波数掃引方向シーケンスから周波数掃引方向シーケンスを選択することを含むことができる。
【0049】
天底または他の領域のアンビギュイティインデックスは、斜距離、プラットフォームから不明な点までの推定距離、および波形のパルス繰り返し率の1つまたは複数に依存することができる。
【0050】
地球が平坦であると仮定した場合の不明な点のアンビギュイティインデックスは、次のように表すことができる。
【0051】
【数4】
ここで、Rは、計画されたシーンまたは画像化されるターゲットエリアの遠距離までの斜距離(つまり、明確な領域)、Rnは、不明な点までの推定距離、cは光速、PRIはパルス繰り返し間隔、
はフロア演算子である。アンビギュイティインデックスは整数の場合があり、正または負になることもある。
【0052】
アンビギュイティインデックスは、天底とその他の不明な領域内の任意の点に対して計算できる。図2を参照すると、線210は、画像化される明確なエリア(エリア201)の遠距離までの距離を表し、この例ではRである。点203は、画像化されるエリア201の外側にある不明なゾーン204内の点である。点203のRnは、線211で表される距離である。例では、点203のアンビギュイティインデックスは1である。実際、不明なエリア204に含まれるすべての点のアンビギュイティインデックスは1になる。アンビギュイティインデックスは、レンジのアンビギュイティの順序を示す。最も強いアンビギュイティは、通常、天底点202から生じるアンビギュイティである。不明なエリア203は、明確なエリア201に最も近いゾーンであるため、アンビギュイティインデックス1の点は、次に強いアンビギュイティ信号を引き起こす可能性が最も高くなる(ただし、常にそうであるとは限りらない)。この例では、不明なエリア205の点のアンビギュイティインデックスは-1になる。不明なエリア206内の点のアンビギュイティインデックスは2になる。天底点202の場合、推定距離Rnは、線212で表された距離で示されるように、単に地上からの衛星の高さになる。以下では、記号Nnadirは天底アンビギュイティインデックスを示すために使用され、Nrangeは他の不明な領域内の点のアンビギュイティインデックスを示すために使用される。天底点202のアンビギュイティインデックスは、シーンの形状、線210で表された画像化されるターゲットエリアまでの距離、および衛星100から天底点202までの距離(地上からの衛星の高さに相当)によって異なる。
【0053】
なお、特定の点のNambは、画像化されるターゲットエリアの位置によって異なり、画像取得ごとに異なる場合がある。たとえば、不明なゾーン206が実際に画像化されるターゲット領域である場合、天底点202のアンビギュイティインデックスは、エリア201が画像化されるターゲット領域である例よりも低くなる。衛星から一定の距離にある点のアンビギュイティインデックスは、1回の軌道の途中で複数回変化する可能性がある。これは、衛星が軌道のさまざまな部分で、飛行経路200に近い領域または遠いエリアを画像化するようにタスクを課される場合があるためである。直感的には、Nambは、不明な領域と明確な領域の空間的順序を示すものと考えることができる。不明な領域が明確な領域から遠いほど、その不明な領域のNambは高くなる。RとRnの値も、衛星の構成とミッション計画によって異なることが理解される。たとえば、アンテナの仰角パターンは、ターゲットまでの距離よりも受信信号電力に大きく影響する場合がある。したがって、前述のように、天底以外の不明な領域からの最も強いアンビギュイティは、通常、レンジのアンビギュイティインデックスNrange=1を持つ第1(正の)アンビギュイティの数である。この領域では、他のいくつかの不明な領域がSARプラットフォームに近いにもかかわらず、アンテナゲインは他の不明な領域よりも高くなる。不明な領域からのアンビギュイティは主にNrange=1から発生するため、本発明のいくつかの実施形態では、固定レンジアンビギュイティインデックス(Nrange>=1)および変化する天底アンビギュイティインデックスNnadirに従って波形ダイバーシティが設定される。後者の場合、式4のRnは、天底点までの推定距離になる。
【0054】
以下の例に示すように、波形をUDCとAPCの両方で符号化すると、天底反射とその他の不明な領域の反射の両方を抑制することができる。天底散乱は、SAR画像内の数ピクセル以内に入る明るいターゲットである。その結果、天底は点ターゲット(レンジ方向)として定義でき、UDCを用いてこれを効果的に抑制できる。レンジが不明な領域からの残りのアンビギュイティは、APCで抑制できる。
【0055】
表2では、UDCとAPCを組み合わせた3つの異なる波形シーケンスが、Nnadir(第1列)と奇数のNrange(第2列)の異なる値に対して定義されている。これらのシーケンスでは、UDCシーケンスは天底のアンビギュイティを抑制するように定義され、APCはレンジが不明な領域からのアンビギュイティを抑制するように定義されている。アンビギュイティインデックスは5に制限されているが、同じ理由で簡単に増やすことができる。
【0056】
【表2】
【0057】
例として、Nnadirが4と計算されたとする。これは、受信信号が送信信号に対して4パルスシフトされていることを意味する。この場合、送信パルスと受信パルスのすべてでチャープ方向に不一致があるため、天底抑制はうまく機能する(表3を参照)。
【0058】
【表3】
【0059】
これは、天底を比較的簡単に抑制できることを意味する。レンジが不明な領域の場合、最も強い反射は通常、画像化されている領域と衛星に最も近い領域、つまりレンジのアンビギュイティインデックスが1であるレンジが不明な領域で発生する。レンジのアンビギュイティインデックスが1の場合、最も関心のある不明な領域から受信したすべてのパルスは、送信パルスに対して次のように1ずつシフトされる。
【0060】
【表4】
【0061】
したがって、受信されたレンジが不明な信号については、送信された信号との不一致を示すパルスは8個中2個のみ(UとD、位相(π)符号化は今のところ無視)、一致しているパルスは6個(UとD)である。このため、本開示による例では、0またはπの位相シフトを追加することにより、波形が方位角位相コーディング(またはAPC)でさらに符号化され、レンジあいまい領域からのアンビギュイティを軽減するのに役立つ。APCの主なアイデアは、レンジアンビギュイティのドップラースペクトルをシフトして、SARフォーカシング動作中にレンジアンビギュイティが軽減されるようにすることである。ドップラースペクトルをPRF(パルス繰り返し周波数)/2だけシフトするには、送信パルスと受信パルスの間に0、π、0、π、0、π、0、π、...位相差が必要である。これは、Nrangeが奇数の場合、送信されるアップアンドダウンチャープがさらに0, 0, π, π, 0 0, π π,...位相エンコーディングで変調される場合に実現できる(上記の表4を参照。)。位相を考慮すると、8つのうち6つに不一致があるため、後処理で奇数レンジが不明な領域からの信号をさらに識別して除去できるようになる。Nrangeが偶数で2に等しい場合、送信パルスはAPCを用いて0,0,0、π、0,0,0、π....に変調できる。Nrangeが4に等しい場合、パルスシーケンスは0,0,0,0,0π、0.πに変調できる。したがって、この例では、Nnadirを用いて波形のUDCパターンを定義し、Nrangeを用いて波形のAPCパターンを定義する。結合された波形により、最下点からのアンビギュイティ、および奇数または偶数の不明な領域からのアンビギュイティを抑制できる。
【0062】
波形シーケンスは、上記のものに限定されない。他のシーケンスも可能である。たとえば、アップ/ダウンチャープ(UDC)方向波形符号化の場合、次のような他の周波数方向シーケンスが可能である。
●Nnadirが奇数の場合、チャープ方向シーケンスは「UDUDUDUD....」または「DUDUDUDU...」になる。
●Nnadir=2の場合、チャープ方向シーケンスは「UUDDUUDD....」または「DDUUDDUU...」になる。
●Nnadir=4の場合、チャープ方向シーケンスは「UUUUDDDD....」または「DDDDUUUU...」になる。
【0063】
ここで、「U」は「アップ」である。チャープ変調は「D」で、ダウンチャープ変調は「D」である。これらのアンビギュイティの電力は通常重要ではないため、より高い偶数は無視できる。したがって、周波数掃引方向シーケンスまたはUDCの決定は、天底アンビギュイティインデックスに応じて複数の可能なシーケンスからシーケンスを選択することを含む場合がある。
【0064】
一般に、位相波形エンコーディング(APC)の場合、位相シーケンスは次の式で決定できる。
【0065】
【数5】
【0066】
ここで、φkはk番目のパルスの位相である。なお、最初のNabm位相では、波形の開始位相を0またはπから選択できる。例えば、
●Nrangeが奇数の場合、位相コーディングシーケンスは次のいずれかとして選択できる。
o ‘0,0,π,π,0,0,π,π...’,
o ‘π,π,0,0,π,π,0,0...’
●Nrangeが2の場合、位相コーディングシーケンスは次のいずれかとして選択できる。
o ‘0,0,0,π,0,0,0,π...’およびシフトバージョン‘π.0,0,0,π,0,0,0...’,‘0π.0,0,0,π,0,0,および‘0,0,π.0,0,0,π,0,
o ‘π,π,π,0,π,π,π,0...’およびシフトバージョン
●Nレンジが4の場合、位相コーディングシーケンスは次のいずれかとして選択できる。
o ‘0,0,0,0,0,π,0,π’およびシフトバージョン
o ‘0,0,π,π,0,π,π,0’およびシフトバージョン
o ‘0,π,π,π,0,0,π,0’およびシフトバージョン
o ‘π,π,π,π,π,0,π,0’およびシフトバージョン
【0067】
したがって、1以外のレンジのアンビギュイティインデックスを考慮するために、例によれば、レンジのアンビギュイティインデックスが奇数、2、または4のいずれであるかに基づいて、相対位相シーケンスを決定できることがわかった。N天底が奇数であるすべてのインスタンスに1つの周波数掃引方向シーケンスを使用できる。また、N天底の異なる偶数値に対して、より大きな周波数掃引方向シーケンスのセットを利用できる。0とπのシフトが示されているが、パルスは必ずしもπ、シフトする必要はなく、-π/2やπ/2などの他の値も可能である。π未満のシフトも実行できるが、レンジが不明な領域からのアンビギュイティを抑制するパフォーマンスはそれほど良くない場合がある。
【0068】
UパルスとDパルスの例は、式(1)と(2)ですでに示されている。完全性のために、U+πとD+πの定義は次のように表すことができる。
【0069】
【数6】
【0070】
【数7】
【0071】
SARデータが収集された後、例えばUDCとAPCを、アンビギュイティの指標に基づいて選択された周波数掃引方向シーケンスおよび/または相対位相シーケンスと組み合わせることによって、後処理を行って、天底とレンジのアンビギュイティを抑制することができる。
【0072】
受信した生のエコーデータは、明確な領域、不明な領域、および天底に対応する。処理には、二重フォーカシングプロセスで天底データと不明なデータを抽出することが含まれる場合がある。
【0073】
図4aと図4bに、2つの異なる後処理アルゴリズムフローの例を示す。これらの図は、二重フォーカシングを用いて、天底のアンビギュイティやレンジが不明な領域から生じるアンビギュイティを除去する後処理方法を示している。一般的に、SARデータは最初に天底を検出して抑制するように処理され、次に天底のプロットが抽出される。その後、データは不明な画像を検出して抑制し、レンジが不明な画像を抽出するように処理される。最後に、明確な領域のSAR画像が抽出される。この処理の後、天底のアンビギュイティや他のレンジが不明な領域からのアンビギュイティが実質的になくなるか、大幅に減少する。
【0074】
ここで説明する方法は、図示された動作の順序に限定されない。特に、不明な画像の抽出は、天底画像の抽出の前に行われ、またはその逆の場合もある。
【0075】
まず図4aに注目すると、アルゴリズムの入力はSAR生データであり、これは天底、不明な領域、および明確な領域からのデータに対応する。第1動作410は、天底のエコーに従ってSARデータをフォーカシングし、天底の焦点が合った画像を取得する。画像内の天底には2つの大きな特徴がある。第1に、送信された信号が天底にある物体から直接反射されるため、信号電力が高くなる。第2に、レンジは方位時間で狭い領域内でのみ逸脱し、連続する方位ビンではほとんど同じレンジビン内である。動作412では、天底が検出され、抑制される。天底を検出するために、レンジスライディングウィンドウが適用され、テスト対象のセルと背景の比率が抽出される。結果は図5aに示されており、これは天底の焦点が合った画像における検出プロットを示している。この比率は各レンジビンについて合計され、図5bに示されているように天底を検出する。天底レンジビンは6200~6500の間であり、この領域外のプロットは有用な信号である可能性があることが明確にわかった。
【0076】
天底検出には2つの利点がある。1つ目は有用な信号を抑制する可能性が低いこと、2つ目は衛星の地上高度が測定され、レーダ高度測定の目的で使用できることである。その後、データを時間帯域幅積で除算することにより、天底のアンビギュイティが抑制される。さらに、動作414で天底のプロットが抽出される。
【0077】
動作416では、SARデータが逆フォーカシングされ、生のSARデータ(天底エコーなし)が抽出される。逆フォーカシングは、生データをフォーカシングするために使用されたフィルタの共役を、天底パラメータに従って適用することによって実現される。フォーカシングと逆フォーカシングの連続適用は、抑制が実行されない限り、位相と振幅が保存される。この実装に関する主な課題は、天底の影響を受けない望ましい信号を保存することである。このターゲットを達成するために、フォーカシングと逆フォーカシングが実装され、信号の全帯域幅が処理される。もう1つの課題は、天底を検出して、天底の影響を受ける特徴のみが抑制されるようにすることである。フォーカシングには、レンジ圧縮(RC)、レンジ上限移行補正(RCMC)、および方位角圧縮(AC)が含まれる。このコンテキストでは、RCは、合わせたフィルタリングと、送信パルスに対するレンジのアンビギュイティインデックスでシフトされた参照パルス番号を持つデータを使用する。RCMCは、位相乗算として実装される。ACの参照関数は、対応するレンジを用いて推定される。
【0078】
動作418では、SARデータは、レンジが不明なエコーに合わせたフィルタでフォーカシングされる。動作420では、レンジのアンビギュイティが検出され、抑制される。レンジのアンビギュイティの検出は、多くの側面を持つ問題である。レンジのアンビギュイティの最も重要な特徴は、信号の電力が十分に高いため、ターゲットの焦点が合っていない画像でさえ、明確な画像に表示されることである。この場合、順序統計定数誤報率(またはOSCFAR)法[1]で検出の問題に対処できる。ただし、OSCFARでは、明確なターゲットが支配する領域で誤報が発生する可能性がある。セル平均化(CA)CFAR法[2]では、誤報を減らすことができるが、検出漏れが増えるというトレードオフがある。本発明のいくつかの実施形態では、OSCFAR法が適用される。次のステップはCACFAR法である。明確なターゲットのエネルギーは、不明なターゲットに焦点を合わせている間に、レンジ方向にぼやける。その結果、リング内の背景を推定する代わりに、背景はレンジ方向に推定され、誤報が減少する。
【0079】
動作422では、SARデータから不明な画像が抽出される。次に、SARデータは動作424で再フォーカシングされ、その後、ステップ426でレンジの明確なエコーに従ってフォーカシングされ(明確なエコー信号に合わせたフィルタを使用)、SARデータから、天底とレンジのアンビギュイティのない明確な画像が抽出される。前と同様に、逆フォーカシングは、不明な領域パラメータに従って生のデータをフォーカシングするために使用されたフィルタの共役を適用することによって実現される。フォーカシングと逆フォーカシングを連続的に適用すると、抑制が実行されない限り、位相と振幅が保持される。
【0080】
図4bは、上記の方法の代替実施形態を示している。逆フォーカシングと再フォーカシングのステップを含む二重フォーカシングの代わりに、図4bで説明した方法では、これらの動作を「デルタフォーカシング」と呼ばれる単一のフォーカシング動作に置き換える。言い換えると、動作413では、SARデータ(上限なし)は、二重フォーカシングではなく、不明なエコーに従ってデルタフォーカシングされる。同様に、動作421では、SARデータは、アンビギュイティのない明確な画像を抽出するために、二重フォーカシングではなく、明確なエコーに従ってデルタフォーカシングされる。基本的な考え方は、SAR生データを天底パラメータに従ってフォーカシングした後(両方の方法で動作410)、データは、不明な領域および/または明確な領域のターゲットに対して異なる構成を持つフォーカシングされていないSARデータであり、適切なパラメータでフォーカシングして、不明なSAR画像および/または明確なSAR画像を抽出できるものである。その結果、デルタフォーカシングを使用すると計算負荷が約半分になる。UDCおよびAPCを用いて符号化された波形は、両方の後処理方法(つまり、ダブル二重フォーカシングおよびデルタフォーカシング)と互換性がある。
【0081】
図6aは、本発明のいくつかの実施形態による代替方法を示すフローチャートである。この場合、生のSARデータは、最初に動作510で明確なエコー信号に従ってフォーカシングされる。動作512で、SAR内の明確な画像が検出され、抑制される。次に、SARデータは動作514で逆フォーカシングされ(明確なデータはなくなる)、その後、動作516で不明なエコー信号に従って再度フォーカシングされる。これにより、SARデータから不明な画像を抽出できる。
【0082】
図6bは、本発明のいくつかの実施形態による別の代替方法を示すフローチャートである。ここで、生のSARデータは、最初に、SARデータから天底を除去し、天底のプロットを取得するために処理され(動作502-506)、その後、動作508で逆フォーカシングされる。その後、図6aに示されている動作と同じ動作510-516が実行され、SARデータから不明な画像が得られるが、この画像には天底は含まれていない。前と同様に、別の実施形態では、図6bの逆フォーカシング508とフォーカシング510の動作は、計算効率のために単一のデルタフォーカシング動作に置き換えることができる。プロセス6aと6bの両方で、不明な領域の画像を抽出することができることは、開示された方法の追加の予想外の利点である。不明な領域の画像は、SARデータのエンドユーザーにとって有用な、より広いエリアの追加画像を提供する。
【0083】
図7は、CACFARを用いてSARデータ内の天底を検出する方法を示すフローチャートである。最初のタスクは、ガードセルとバックグラウンドセルの数、および望ましい誤報率を決定することである。ガードセルは、テスト対象セル(CUT)に隣接して、その前と後に配置される。これらのガードセルの目的は、信号(天底)成分がバックグラウンドセルに漏れてノイズ推定の精度に影響するのを防ぐことである。本発明の一部の実施形態では、ガードセルとバックグラウンドセルの数はそれぞれ5と15に設定され、望ましい誤報率は0.001に設定される。ただし、これらの値は、方法の特定の要件に応じて変わる可能性があることは理解できる。SARデータを天底に従ってフォーカシングした後(図4aおよび4bの動作410)、動作610で、各レンジインデックスに対して信号対背景平均比「R」が追加される。動作612で、天底ピークが検出され、動作614で天底の幅が検出される。天底ピークインデックスを基準とした天底開始(N1)および終了(N2)インデックスは、式7に示す関数を用いて検出される。
【0084】
【数8】
ここで、Nmaxは、スラントレンジ間隔と地球の最大傾斜の仮定の関数である最大許容天底角、kmaxは天底角リターンピークインデックス、Sは動作610で計算された信号アレイであり、レンジインデックスKの関数である。argmax関数は、括弧内の関数を最大化する1とN2の値を返す。N1は(-Nmax/2+1,kmax-1)のレンジ内の負の整数値であり、N2は(kmax+1,Nmax/2-1)のレンジ内の正の整数である。動作616では、この方法は、天底マージン幅(kmax+N1,Nmax+N2)の外側にある検出をすべて除外する。動作618はオプション(点線のボックスで示されている)であり、曲線フィッティングと曲線までのプロットの距離測定が含まれる。
【0085】
さらに、前述のように、レンジのアンビギュイティを検出するためにOSCFARとCAFARの両方が適用される。本発明のいくつかの実施形態では、OSCFARの場合、望ましい誤報率は0.001に設定され、ノイズ電力はN番目の大きいセルの選択に基づいて推定される。ここで、NはSARデータサンプルの数の3/4倍である。その後適用されるCACFARの場合、望ましい誤警報率はOSCFARと同じであるが、ガードセルの数は1000に設定され、バックグラウンドセルはNチャープ-1000に設定される。ここで、Nチャープはパルス幅xサンプリングレートである。
【0086】
前述の方法のアルゴリズムは、低スクイントケースについて以下に導出されるが、より一般的なケースに拡張できる。明確なターゲットのベースバンド受信信号は、次のように近似できる。
【0087】
【数9】
【0088】
ここで、ωrおよびωωaは、方位角および仰角におけるアンテナパターンを表す。それぞれ、A0は信号の振幅、ηは低速(または方位角)時間、Kaは方位角パルス数、R(η)はターゲットまでのレンジ、R0はターゲットまでの最小レンジ、Xは波長である。
【0089】
不明なパルス数に従ってフォーカシングする第1動作410は、明確な信号のパルス数を半分にしながら、パルス幅を2倍にする。レンジ圧縮と方位方向のフーリエ変換の後、レンジドップラーデータは次のように表すことができる。
【0090】
【数10】
【0091】
レンジエンベロープ内のレンジセル移動(RCM)項は、天底距離に応じて表される。
【0092】
【数11】
【0093】
RCMは、線形位相乗算によってレンジフーリエ領域で補正できる。
【0094】
【数12】
【0095】
RCMCの後、信号は次のように記述される。
【0096】
【数13】
【0097】
最後のステップは、天底レンジに対する方位角圧縮である。この場合、方位角パルス数は次のように表すことができる。
【0098】
【数14】
【0099】
最後に、方位角圧縮後の明確なターゲットの抽出画像は次のように記述できる。
【0100】
【数15】
【0101】
その結果、不明な領域に対応するパラメータに従ってフォーカシングされた後の信号は、異なる構成で収集されたと見なすことができるSAR生データであり、信号をデフォーカシングしてから再フォーカシングする必要はなく、代わりに直接フォーカシングして明確な画像を抽出できる。
【0102】
提案されたレンジのアンビギュイティの抑制方法を検証するために、フィンランドのエスポーにあるICEYEOy製のSAR衛星を用いて、一連のSAR取得が実行された。画像化されたシーンには、図8aに示すように、強い天底エコー、不明な領域の反射、および強い散乱体のある山岳地帯と一致すると予想される静かな水面が含まれている。図8aに示すSAR画像は、現在の開示で説明されているように、UDCとAPCの組み合わせを用いて波形ダイバーシティで収集されているが、天底とその他の不明な領域からのアンビギュイティを除去するための後処理はまだ行われていない。ミッション計画は、スワスのほぼ中央に天底線を取得するように行われた。入射角は、レンジが不明な領域からの誇張されたアンビギュイティの観測を保証するために37.3度に選択された。図8aに示す画像では、明確な信号、天底、および不明な信号がすべてSARデータ内に含まれていることは明らかである。この例では、天底のアンビギュイティインデックスは5である。
【0103】
図8bは、天底反射とレンジが不明な領域からのアンビギュイティを抑制するための処理を行った同じSAR画像を示している。天底反射とレンジのアンビギュイティが大幅に抑制されていることがわかった。ただし、画像の中央には、天底反射と一致するレンジの縞模様があり、画像の右側には、強いレンジのアンビギュイティの反射と一致する縞模様がある。
【0104】
残りのレンジの縞模様を抑制するために、さらに後処理が適用される。まず、図9aに示すように、天底が検出される。推定された天底は570005.8mで、実際の測定値に非常に近い値である。天底としてラベル付けされた強い散乱体は、サンプルを時間帯域幅積に単純に分割することによって抑制される。次に、天底のない生データに焦点を合わせて、明確な画像を抽出する。図8cには、波形ダイバーシティと後処理の両方の結果が示されている。画像中央のレンジ縞は天底と関連しており、完全に抑制されていることがわかった。
【0105】
次の動作は、レンジのアンビギュイティを検出して抑制することである。不明な画像は図9bに示され、レンジのアンビギュイティの検出は図9cに示されている。不明な画像内の強い散乱体と検出結果を比較すると、アルゴリズムはレンジが不明な領域内のターゲットの検出に非常に優れている一方で、明確な領域内の散乱体をターゲットとして検出していないことがわかった。もう1つの観察結果は、前の動作で天底が正常に抑制されたにもかかわらず、抑制する必要のない天底分がまだ残っていることである。この部分は、前の動作で抽出された天底情報を用いてフィルタリングできる。
【0106】
レンジのアンビギュイティを検出して抑制した後、SAR画像が抽出され、図8dに示されている。定性的に、天底とレンジが不明な領域から生じるアンビギュイティが正常に除去されていることがわかった。残念ながら、レンジのアンビギュイティ抑制のパフォーマンスを定量化することは、完全に簡単ではない。図10a、10b、および10cは比較を示している。図10aには、レンジのストライプがあるSAR画像が表示されている。不明なターゲットのエネルギーは、レンジ方向にぼやける。したがって、レンジ方向のエネルギーの合計は、アルゴリズムのパフォーマンスの指標となる。図10bと10cには、図10aの領域1(長い破線と点で囲まれたエリア)の天底に対するレンジ合計のグラフと、図10aのエリア2(短い破線と点で囲まれたエリア)のレンジのアンビギュイティ(対方位角)のグラフがそれぞれ示されており、デフォルト画像のレンジ合計(対方位角)のグラフと比較されている。デフォルト画像は、波形ダイバーシティを用いて取得された画像であるが、波形ダイバーシティを用いて天底とレンジのアンビギュイティを抑制する処理ステップの前の画像である。処理後、望ましい信号が天底のリターンによって支配されている領域内で、天底のアンビギュイティが定量的にも定性的にも抑制されていることが観察される。図10cには、レンジのアンビギュイティ抑制のパフォーマンスが示されている。定性的にはレンジのアンビギュイティは大幅に抑制されているように見えるが、レンジが不明な領域内の背景反射は、この方法を用いて4dBを超える抑制性能を定量的に検証できるほど低くはない。
【0107】
より多くの性能データを取得するために、非常に高い入射角とPRFを使用した別の実験が設計された。この場合、天底はスワス内にないが、図11a、11b、および11cに示すように、レンジのアンビギュイティは非常に強くなっている。明らかに、図11aに示すデフォルト画像は、レンジのアンビギュイティの影響を強く受けている。図11bに示す不明な画像は、デフォルト画像の異常がレンジのアンビギュイティの結果であることを証明している。図11cで定性的に見られるように、望ましい画像におけるレンジのアンビギュイティは劇的に抑制されている。電力を定量化するために、図11dで領域のレンジの合計をデフォルトと比較する。電力は確かに抑制されているが、背景の反射率が再び非常に高いため、この方法がレンジのアンビギュイティを除去するために明らかに機能しているにもかかわらず、抑制率が8dB以上で定量化されるのを妨げている。最後に、明確な領域内の強力なターゲットも、誤報の結果として抑制される可能性がある。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態では、新しい天底およびレンジのアンビギュイティ抑制方法が提案されている。この方法は、APCと組み合わせたUDCに基づく波形ダイバーシティと、天底およびレンジのアンビギュイティの検出を含むダブル二重フォーカシング技術を使用することに基づいている。天底を抑制しながら望ましい信号を保存するだけでなく、衛星高度、高度測定などを必要とするアプリケーションでも天底を検出できることが示されている。レンジが不明な画像も提示され、不明でない画像内の異常がレンジの不明さの結果であることを証明している。この方法は、実際のSARデータによって実証および検証される。
【0109】
上記には、ここで説明した動作方法のいずれかを実施するのに適した衛星が記載されている。すでに軌道上にある衛星またはその他のプラットフォームの場合、ここで説明する方法は、適切なコンピューティングシステムを用いて地上からなど、衛星を適切に制御することによって実装できる。言い換えれば、SARは地上から動作し、ここで説明する方法のいくつかはソフトウェアに実装されてもよい。したがって、本発明は、コンピューティングシステム内のプロセッサによって実装された場合、ここで説明する方法のいずれかに従って、コンピューティングシステムにSARを動作させる命令を含むコンピューティングリーダブル媒体が提供されてもよい。
【0110】
ここで説明する本発明のいくつかの実施形態は、ここで説明する方法のいずれかに従ってSARを動作させるように構成された地上局コンピューティングシステムを提供する。
【0111】
本発明の実施形態のいずれにおいても、衛星は地球低軌道内を進行するか、または地球低軌道内を進行するように構成されてもよい。
【0112】
ここで説明するコンピューティングシステムはいずれも、複数の機能を備えた単一のコンピューティングシステムに組み合わせてもよい。同様に、本明細書で説明するいずれかのコンピューティングシステムの機能は、複数のコンピューティングシステムに分散されてもよい。
【0113】
本明細書に記載された方法の一部の動作は、例えば、機械読み取り可能な形態、例えばコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラムの形態でソフトウェアによって実行されてもよい。したがって、本発明のいくつかの態様は、コンピューティングシステムに実装された場合、本発明のいずれかの方法の動作の一部または全部をシステムに実行させるコンピューティングシステムに読み取り可能な媒体を提供する。コンピュータ読み取り可能な媒体は、ディスク、サムドライブ、メモリカードなどの記憶媒体など、一時的または有形(または非一時的)の形態であってもよい。ソフトウェアは、方法ステップを任意の適切な順序でまたは同時に実行することができるように、パラレルプロセッサまたはシリアルプロセッサ上で実行するように適合されていてもよい。
【0114】
本用途では、ファームウェアおよびソフトウェアが個別に取引可能な価値のある商品であることを認識している。これは、望ましい機能を実行するために、「ダム」または標準的なハードウェア上で演算または制御されるソフトウェアを含むように設計されている。また、望ましい機能を実行するためにシリコンチップを設計したり汎用プログラマブルチップを構成したりするHDL(ハードウェア記述言語)ソフトウェアなど、ハードウェア構成を「記述」したり定義したりするソフトウェアも含まれることを目指している。
【0115】
上記実施形態は、ほぼ自動化されている。いくつかの例では、システムのユーザまたはオペレータは、実行すべき方法のいくつかの動作を手動で指示すことができる。
【0116】
本発明の実施形態においては、本発明において、本発明において他に記載されているように、システムは、いずれの形態のコンピューティングおよび/または電子システムとしても実装され得る。例えば、地上局は、このようなコンピューティングおよび/または電子システムを備えてもよい。ここのようなデバイスは、ルーティング情報を収集および記録するためにデバイスの動作を制御するためのコンピュータ実行可能命令を処理するためのマイクロプロセッサ、コントローラ、または任意の他の適切なタイプのプロセッサであり得る1つまたは複数のプロセッサを備えていてもよい。いくつかの例では、例えばシステムオンチップアーキテクチャを使用する場合、プロセッサは、(ソフトウェアまたはファームウェアではなく)ハードウェアで方法の一部を実装する1つまたは複数の固定機能ブロック(アクセラレータとも呼ばれる)を含んでもよい。オペレーティングシステムまたは任意の他の適切なプラットフォームソフトウェアを含むプラットフォームソフトウェアは、用途ソフトウェアがデバイス上で実行されることを可能にするために、コンピューティングベースのデバイスにおいて提供され得る。
【0117】
ここで、「コンピューティングシステム」とは、命令を実行できる処理能力を有する任意のデバイスを指すために用いられる。当業者であれば、このような処理能力は多くの異なるデバイスに組み込むことができ、したがって「コンピューティングシステム」という用語にはPC、サーバー、スマート携帯電話、携帯情報端末、および他の多くのデバイスが含まれることが理解される。
【0118】
上記の利点および優位性は、1つの実施形態に関連してもよく、またはいくつかの実施形態に関連してもよいことが理解されるべきである。複数の実施形態は、言及された問題のいずれか又は全てを解決するもの、又は言及された利点と長所を有するものに限定されるものではない。
【0119】
「アイテム」または「ピース」へのいずれかの言及は、特に記載されていない限り、これらのアイテムの1つまたは複数を指す。ここで使用される「含む」という用語は、特定された方法のステップまたは動作または要素を含むことを意味するが、そのようなステップまたは動作または要素は排他的なリストを構成するものではなく、方法または装置は追加のステップまたは動作または要素を含む場合がある。
【0120】
さらに、「包含」という用語が詳細な説明または特許請求のレンジ内で使用される程度については、「包含」という用語が特許請求のレンジ内で過渡的な用語として解釈されるので、この用語は、「包含」という用語と同様の包含性を有することを意図している。
【0121】
添付の図面は、例示的な方法を示す。方法は、特定の順序で実行される一連の動作として示され、説明されているが、方法は順序によって制限されないことを理解し、理解されるべきである。例えば、いくつかの演算は、本明細書に記載されたものとは異なる順序で発生することができる。また、ある行動は、別の行動と同時に発生することができる。さらに、場合によっては、本明細書に記載された方法を実装するためにすべての演算が必要とされないこともある。
【0122】
本明細書に記載された方法のステップまたは動作の順序は例示であるが、ステップまたは動作は任意の適切な順序で実行することも、適切な場合には同時に実行することもできる。さらに、本明細書に記載された主題のレンジから逸脱することなく、ステップまたは動作を追加または置換したり、個々のステップまたは動作をいずれかの方法から削除したりすることができる。上記のいずれかの実施例の態様と、上記の他の実施例のいずれかの態様とを組み合わせて、さらに実施例を形成してもよい。
【0123】
上記の好ましい実施形態の説明は、例としてのみ示されており、当業者が様々な修正を加えることができることを理解されたい。上記した内容は、1つまたは複数の実施形態の一例を含む。もちろん、上記の態様を説明するために、上記のデバイスまたは方法のそれぞれの考えられる修正および修正を説明することは不可能であるが、当業者であれば、様々な態様の多くのさらなる修正および配置が可能であることを認識するであろう。したがって、記載された態様は、添付の特許請求のレンジ内に含まれるすべてのそのような変更、修正、および変形を含むことが意図されている。
参考文献一覧
[1]Herman Rohling, “Radar CFAR Thresholding in Clutter and Multiple Target Situations,” IEEE Transactions on Aerospace and Electronic Systems, vol. 19, pp. 608-621, 1983.
[2]X. Wen, X. Qiu,B.Han, C.Ding , B. Lei and Q. Chen, “A Range Ambiguity Suppression Processing Method for Spaceborne SAR with Up and Down Chirp Modulation”, Sensors 2018, 18, 1454.https://doi.org/10.3390/s18051454
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図10c
図11a
図11b
図11c
図11d
【国際調査報告】