(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-06
(54)【発明の名称】安定抗体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20250130BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20250130BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20250130BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20250130BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250130BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20250130BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20250130BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20250130BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20250130BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20250130BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20250130BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20250130BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20250130BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20250130BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250130BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20250130BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20250130BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20250130BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20250130BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20250130BHJP
【FI】
A61K39/395 W
A61K39/395 D
A61K39/395 Y
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/18
A61K9/08
A61K9/19
A61P11/06
A61P37/08
A61P17/00
A61P19/02
A61P31/22
A61P11/00
A61P7/00
A61P37/02
A61P7/06
A61P27/02
A61P31/06
A61P13/12
A61P37/06
A61P35/00
A61P11/02
A61P17/04
C07K16/24 ZNA
C07K16/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545182
(86)(22)【出願日】2023-04-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 CN2023088385
(87)【国際公開番号】W WO2023226617
(87)【国際公開日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】202210561675.8
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522500387
【氏名又は名称】南京融捷康生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】REGENECORE BIOTECH CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Building 07, 16 Tree-House, Tanmi Rd., Jiangbei New Area Nanjing, Jiangsu 210000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】蘇 志鵬
(72)【発明者】
【氏名】汪 洋
(72)【発明者】
【氏名】謝 維
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076BB13
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4C076CC17
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4H045AA11
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4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は免疫学の分野に属し、安定抗体製剤に関連する。安定抗体製剤は、治療有効量の抗体分子と、等張化剤と、バッファ剤と、充填剤と、界面活性剤とを含み、そのpHは4.5~5.5である。前記抗体分子はIL-5およびIL-4Rαの両方に同時に特異的に結合することができ、IL-4Rα分子に特異的に結合することができる第一免疫グロブリン可変ドメインとIL-5に特異的に結合することができる第二免疫グロブリン可変ドメインとを有する少なくとも二つの免疫グロブリン可変ドメインを含む。抗体製剤中の抗体は、保存中において物理的および化学的な安定性、およびその完全性を実質的に保持する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の抗体分子、等張化剤、バッファ剤、および界面活性剤を含み、製剤のpHが4.5~5.5であり、抗体分子がIL-5およびIL-4Rαの両方に特異的に結合することができる、安定抗体製剤であって、IL-4Rα分子に特異的に結合することができる第一免疫グロブリン可変ドメインとIL-5に特異的に結合することができる第二免疫グロブリン可変ドメインとを有する少なくとも二つの免疫グロブリン可変ドメインを含む、安定抗体製剤。
【請求項2】
前記製剤のpHが4.7から5.3である、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項3】
第一免疫グロブリン可変ドメインが第一単一ドメイン抗体分子であり、SEQ ID NO:1に記載のCDR1と、SEQ ID NO:2に記載のCDR2と、SEQ ID NO:3に記載のCDR3とを有し、第二免疫グロブリン可変ドメインが第二単一ドメイン抗体分子であり、SEQ ID NO:4に記載のCDR1と、SEQ ID NO:5に記載のCDR2と、SEQ ID NO:6に記載のCDR3とを有する、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項4】
抗体分子が、第一単一ドメイン抗体分子と第二単一ドメイン抗体分子との間のリンカーグループを含まないポリペプチド融合体である、請求項3に記載の安定抗体製剤。
【請求項5】
抗体分子が生体適合性ポリマーを含むポリペプチド融合体であり、ポリペプチド融合体の第一単一ドメイン抗体分子と第二単一ドメイン抗体分子とは、生体適合性ポリマーをリンカーグループとしてライゲーションされる、請求項3に記載の安定抗体製剤。
【請求項6】
第一単一ドメイン抗体分子と第二単一ドメイン抗体分子とがヒトIgG Fc領域を介してライゲーションされ、抗体分子はホモ二量体構造を有し、4E9V10-2B3V2と名付けられ、各単鎖Fc融合タンパク質は第一免疫グロブリン可変ドメインと、ヒトIgG Fc領域と、第二免疫グロブリン可変ドメインとからなる、請求項3に記載の安定抗体製剤。
【請求項7】
前記ヒトIgG Fc領域がヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来である、請求項6に記載の安定抗体製剤。
【請求項8】
前記ヒトIgG Fc領域がヒトIgG4領域から誘導され、Fc領域は、SEQ ID NO: 13に記載のアミノ酸配列を有するまたはSEQ ID NO: 9の116位から356位に位置する、請求項6に記載の安定抗体製剤。
【請求項9】
第一免疫グロブリン可変ドメインがSEQ ID NO:7に記載のアミノ酸配列を有し、第二免疫グロブリン可変ドメインがSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項10】
治療有効量の抗体分子、等張化剤、バッファ剤、および界面活性剤を含み、製剤のpHが4.5~5.5であり、抗体分子がSEQ ID NO: 9または10に記載のアミノ酸配列を有する融合タンパク質を含む、安定抗体製剤。
【請求項11】
バッファ剤が酢酸-酢酸ナトリウムバッファであり、等張化剤がショ糖であり、界面活性剤がポリソルベートである、請求項1または10に記載の安定抗体製剤。
【請求項12】
グリシンと塩酸アルギニンを含む充填剤をさらに有する、請求項11に記載の安定抗体製剤。
【請求項13】
酢酸-酢酸ナトリウムの濃度が10から20mmol/Lであり、および/または塩酸アルギニンの濃度が25から100mmol/Lであり、および/またはショ糖の濃度が80から120mmol/Lであり、および/またはグリシンの濃度が50から75mmol/Lであり、および/またはポリソルベート80の濃度が0.02から0.05w/v%である、請求項11に記載の安定抗体製剤。
【請求項14】
メチオニンをさらに有する、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項15】
メチオニンを10mmol/Lの濃度でさらに有する、請求項14に記載の安定抗体製剤。
【請求項16】
前記抗体分子が120mg/mL未満の量で存在する、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項17】
前記抗体分子の濃度が約0.01から約100mg/mlである、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項18】
100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、20mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、50mmol/Lのグリシンと、50mmol/Lの塩酸アルギニンと、100mmol/Lのショ糖と、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHが5.0から5.2である、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項19】
100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、20mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、50mmol/Lのグリシンと、50mmol/Lの塩酸アルギニンと、100mmol/Lのショ糖と、10mmol/Lのメチオニンと、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHが5.0から5.2である、請求項2に記載の安定抗体製剤。
【請求項20】
100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、10mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、50mmol/Lのグリシンと、50mmol/Lの塩酸アルギニンと、120mmol/Lのショ糖と、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHが5.0から5.2である、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項21】
100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、10mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、75mmol/Lのグリシンと、25mmol/Lの塩酸アルギニンと、120mmol/Lのショ糖と、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHが5.0から5.2である、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項22】
100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、20mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、100mmol/Lの塩酸アルギニンと、80mmol/Lのショ糖と、0.02w/v%のポリソルベート80とを含み、pHが5.0から5.2である、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項23】
防腐剤および/または添加物から選択される一つ以上をさらに含む、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項24】
前記製剤のモノマーの含有量が、摂氏約37度で14日間の保存後に5%以上減少しない、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項25】
摂氏-20度、摂氏5度、揺動、または凍結と解凍の条件下で、サンプル中のモノマーの含有量が1.5%以上変化しない、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項26】
請求項1~25に記載の安定抗体製剤を含むコンテナ。
【請求項27】
ガラス、プラスチック、またはポリマー材料のいずれか1つ以上で作られたシリンジまたはボトルを有する、請求項26に記載のコンテナ。
【請求項28】
請求項1~25のいずれかに記載の安定抗体製剤または請求項26に記載のコンテナを有する、密封パッケージ。
【請求項29】
請求項1~25のいずれかに記載の抗体製剤と、抗体製剤を含むコンテナとを有するキット。
【請求項30】
自己免疫疾患の予防および/または治療のための医薬品の調製に使用される、請求項1~25のいずれかに記載の抗体製剤または請求項29に記載のキット。
【請求項31】
疾患を治療するための医薬品を調製するための請求項1~25のいずれかに記載の安定抗体製剤の使用であって、前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、成人多発血管炎性好酸球性肉芽腫症の治療、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、季節性アレルギー性鼻炎である、安定抗体製剤の使用。
【請求項32】
前記医薬品が静脈内または皮下経路で投与される医薬品である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
請求項1~25のいずれかに記載の安定抗体製剤を用いて疾患を治療する方法であって、前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、成人多発血管炎性好酸球性肉芽腫症の治療、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、季節性アレルギー性鼻炎である、方法。
【請求項34】
請求項1~25のいずれかに記載の安定抗体製剤を有するデリバリーシステムであって、該デリバリーシステムが使い捨てシリンジから選択される、デリバリーシステム。
【請求項35】
請求項1~25のいずれかに記載の安定抗体製剤を調製する方法であって、抗体分子を調製するステップ1と、治療有効量の抗体分子を、張力等張化剤、バッファ剤、界面活性剤および/または他の必要な成分と混合して、安定溶液を形成するステップ2とを有する方法。
【請求項36】
請求項1~25のいずれかに記載の安定抗体製剤を含み、疾患の治療に用いられる医薬品であって、前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、成人多発血管炎性好酸球性肉芽腫症の治療、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、季節性アレルギー性鼻炎である、医薬品。
【請求項37】
請求項1~25のいずれかに記載の安定抗体製剤の調製におけるグリシンの使用であって、前記抗体分子の濃度が抗体製剤中で100mg/mlに達しても抗体分子が安定して存在する、使用。
【請求項38】
液体製剤中の高濃度抗体の安定性を向上させる、請求項1~25のいずれかに記載の抗体製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は医薬の分野に関連する。より具体的には、本開示は安定抗体製剤の調製に関連する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジーの進歩により、組み換えDNA技術を用いて、医薬の用途に使用するためのさまざまなタンパク質を生成することが可能になった。タンパク質は従来の有機または無機の薬剤よりも大きく複雑な傾向があるため、タンパク質の製剤化には特有の問題が存在する。
【0003】
液体の抗体製品は有効期限が短く、保存中の化学的および物理的不安定性により、抗体が生物学的に無効化されるおそれがある。化学的不安定性は、脱アミド化、ラセミ化、加水分解、酸化、β-脱離、またはジスルフィド結合の交換に起因し、物理的不安定性は、抗体の変性、凝集、沈殿、または吸着に起因する。これらのうち、凝集、脱アミド化、酸化が抗体劣化の最も一般的な原因として知られている(Wangら、「J. of Parenteral Science & Technology」 42 (Suppl)、S4-S26、1988年、およびClelandら、「Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems」 10(4): 307-377、1993年参照)。したがって、安定抗体の液体製剤が必要であり、特に高濃度の安定抗体の液体製剤が必要である。
【発明の概要】
【0004】
本開示の目的は、保存および提供時に安定した抗体製剤を提供することである。本開示によれば、安定した製剤とは、含有される抗体が保存時に物理的および化学的な安定性と完全性を本質的に保持している製剤のことを指す。皮下投与や点滴静注などの投与に適した安定した液体抗体製剤を提供することもさらなる目的である。
【0005】
一般的に、皮下注射には少量の医薬製剤の使用が好まれる。抗体を含む製剤の場合、例えば高用量の抗体療法では、皮下投与には高濃度の抗体製剤が必要となる。高い抗体濃度が必要であるため、抗体を含む製剤は、抗体の物理的および化学的安定性、凝集物の形成、製造の難しさ、保存、および抗体製剤の配送に関連する課題を抱えている。
【0006】
一般的に、副産物や分解物の形成や生物学的不活性化が、保存期間を決定する主な要因である。本開示の製剤により、これらの望ましい安定性レベルが達成される。
【0007】
十分な物理的および化学的安定性に加え、製剤は受容限度内のpH値と浸透圧を持たなければならない。また、高濃度の抗体では、製剤の粘度と凝集が増加することが知られている。本開示による適切な医薬製剤は、所望の適切な粘度を有している。
【0008】
本開示によれば、抗体の活性を長期間の保存中に保持する点で有利な特性を有し、凝集を防止し、高濃度の抗体にも適切な粘度を有した、特に安定抗体の製剤が利用可能となることが分かった。本開示は、最も広範な観点で、抗体を有効成分とする医薬製剤(本開示の製剤)を提供する。この組成物には、バッファシステム、スタビライザー、および界面活性剤が含まれる。本開示の製剤は液体(例えば、水溶液)であるが、凍結乾燥され、その後、抗体濃度が低い、同じ、または高い液体製剤に成形されることにも適している。
【0009】
1.概略
【0010】
1.1 本開示の第一の態様は、以下の安定した製剤を提供する。
【0011】
(1) 治療有効量の少なくとも一つの抗体分子と、少なくとも一つの等張化剤と、少なくとも一つのバッファ剤と、少なくとも一つの界面活性剤を含む製剤であって、該組成物(すなわち製剤)のpHは4.5から5.5である。
【0012】
(2) 治療有効量の少なくとも一つの抗体分子と、少なくとも一つの等張化剤と、少なくとも一つのバッファ剤と、少なくとも一つの界面活性剤を含む製剤であって、該組成物のpHは4.7から5.3である。
【0013】
(3) 実質的に、治療有効量の少なくとも一つの抗体分子と、少なくとも一つの等張化剤と、少なくとも一つのバッファ剤と、少なくとも一つの界面活性剤からなる製剤であって、該組成物のpHは5.0から5.2である。
【0014】
組成(1)ないし(3)の抗体分子は、IL-5およびIL-4Rαの両方に特異的に結合することができ、IL-4Rα分子に特異的に結合することができる第一免疫グロブリン可変ドメインとIL-5に特異的に結合することができる第二免疫グロブリン可変ドメインとを有する少なくとも二つの免疫グロブリン可変ドメインを含む。
【0015】
「治療(treatment)」は治療と予防的治療の両方を意味する。治療が必要な人には、障害を患っている人だけでなく、障害を予防したい人も含まれる。治療における「哺乳類」は、哺乳類に分類されるあらゆる動物を指し、人間や、犬、馬、猫、牛などの、家畜および畜産用動物、動物園の動物、スポーツ用動物、ペット動物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0016】
本開示の文脈において、薬理学的な意味での抗体の「治療有効量」とは、その抗体が効果的に治療できる障害に対して治療効果または予防効果を持つ量を指す。「障害」とは、抗体による治療の恩恵を受ける可能性のある任意の条件を指す。これには、慢性および急性の障害や疾患が含まれる。また、その病態条件によって哺乳類が該当の障害にかかりやすくなるものも含まれる。好ましい実施形態において、「障害」は、IL-4Rおよび/またはIL-5の発現を伴う疾患を指す。
【0017】
本開示による製剤は、溶液中で高濃度の生物活性抗体を安定して支持するという利点を備え、静脈内、筋肉内、または皮下注射を含む経口投与に適している。
【0018】
本開示の好ましい実施形態において、pHは4.5から5.5の範囲内であり、pH4.5に近い値からpH4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、または5.5のいずれかに近い値の間であることが望ましい。
【0019】
好ましくは、pHは、pH4.6からpH4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、または5.5のいずれかに近い値の間のpH値から選ばれる。さらに好ましくは、pHは、pH4.7に近い値からpH4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、または5.5のいずれかに近い値の間のpH値から選ばれる。さらに好ましくは、pHは、pH4.8に近い値からpH4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、または5.5のいずれかに近い値の間のpH値から選ばれる。さらに好ましくは、pHは、pH4.9に近い値からpH5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、または5.5のいずれかに近い値の間のpH値から選ばれる。さらに好ましくは、pHは、pH5.0に近い値からpH5.1、5.2、5.3、5.4、または5.5のいずれかに近い値の間のpH値から選ばれる。さらに好ましくは、pHは、pH5.1に近い値からpH5.2、5.3、5.4、または5.5のいずれかに近い値の間のpH値から選ばれる。好ましい実施形態において、pHはpH5.2に近い値からpH5.3、pH5.4、またはpH5.5のいずれかに近い値の範囲、pH5.3に近い値からpH5.4またはpH5.5に近い値からの範囲、または、pH5.4からpH5.5の範囲であってもよい。
【0020】
より好ましくは、pHは約4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、または5.5のいずれかのpH値から選択可能であり、最も好ましくはpHはpH5.0±0.2である。pH値がこれらの範囲にあるとき、抗体の凝集や断片化からの保護が強化された製剤が庭上され、またpHが注射時の痛みやアナフィラクトイド副作用のリスクを軽減するための生理的なpH(約7.2~7.4)に近い。
【0021】
本開示のさらに好ましい実施形態によれば、等張化剤は、好ましくはポリオール、糖類、炭水化物、ナトリウムクロライドなどの塩、またはそれらの混合物を含むことが望ましい。好ましくは、ポリオールの分子量は約600kD未満であることが望ましい(例えば、約120から約400kDの範囲であることが望ましい)。また、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、グリセリン、ラクチトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、イノシトール、またはそれらの混合物から選ばれることが望ましい。好ましくは、糖類または炭水化物は、単糖類、二糖類、多糖類およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、糖類または炭水化物は、果糖、ブドウ糖、マンノース、蔗糖、ソルボース、キシロース、乳糖、マルトース、ショ糖、デキストラン、プルララン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、水溶性グルカン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、等張化剤は、還元糖、非還元糖およびそれらの混合物からなる群から選択される糖類を含む。さらに好ましくは、等張化剤は、非還元糖である糖類を含み、好ましくはスクロース、トレハロース、およびそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、等張化剤はスクロースを含む。
【0022】
等張化剤の濃度は、約1mg/mlから約300mg/mlの範囲、約1mg/mlから約200mg/mlの範囲、または約1mg/mlから約100mg/mlの範囲にわたる。より好ましくは、液体組成物中の等張化剤の濃度は、約60mg/ml、約65mg/ml、約70mg/ml、約75mg/ml、約80mg/ml、約81mg/ml、約82mg/ml、約83mg/ml、約84mg/ml、約85mg/ml、約86mg/ml、約87mg/ml、約88mg/ml、約89mg/ml、約90mg/ml、約91mg/ml、約92mg/ml、約93mg/ml、約94mg/ml、約95mg/ml、約96mg/ml、約97mg/ml、約98mg/ml、約99mg/ml、約100mg/ml、約105mg/ml、約110mg/ml、約120mg/ml、または約130mg/mlである。
【0023】
本開示の好ましい実施形態によれば、バッファ剤は、アセテート、サクシネート、グルコネート、クエン酸、ヒスチジン、酢酸、リン酸塩、リン酸、アスコルビン酸、酒石酸、マレイン酸、グリシン、乳酸塩、乳酸、アスコルビン酸、イミダゾール、重炭酸塩および炭酸、コハク酸、ベンゾ酸ナトリウム、ベンゾ酸、グルコネート、エデト酸、アセテート、リンゴ酸、イミダゾール、トリス、リン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択可能である。
【0024】
本開示によれば、特に好ましいバッファ剤として酢酸バッファを用いることで、液体組成物に生理的pHに近いpHが与えられるので、注射時の痛みやアナフィラキトイド副作用のリスクが低減され、また抗体の安定性や凝集、酸化、断片化に対する耐性が向上する。
【0025】
バッファ剤の濃度は、約0.1ミリモル(mM)から約100ミリモル(mM)までの範囲をとることができる。好ましくはバッファ剤の濃度は約0.5mMから約50mMまであり、より好ましくは約1mMから約30mMまでであり、より好ましくは約1mMから約20mMまでであり、より好ましくは約10mMから約20mMまでである。好ましくは、バッファ剤の濃度は約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約10mM、約18mM、約19mM、または約20mMである。
【0026】
本文中の「界面活性剤」という用語は、両親媒性構造を持つ有機物質、つまり、典型的には油に可溶な炭化水素鎖と水に可溶なイオン性基という、相反する溶解傾向を持つグループからなる有機物質を意味する。界面活性剤は、表面活性部位の電荷に基づいて、アニオン性の界面活性剤、カチオン性の界面活性剤、およびさまざまな医薬組成物や生物材料製剤のための分散剤に分類可能である。
【0027】
本開示のさらに好ましい実施形態によれば、本開示において適切に使用される界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、およびゼッターイオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。本開示において使用される典型的な界面活性剤の限定的な例としては、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン)、トリオレイン酸ソルビタン、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノカプリル酸グリセリン、モノミリスチン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールテトラステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、ポリエチレングリコールジステアレート)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(例えばポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油)、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールミツロウ)、ポリオキシエチレンラノリン誘導体(例えば、ポリオキシエチレンラノリン)、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド(例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド)、C10-C18アルキル硫酸塩(例えばセチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム)、平均2~4モルのエチレンオキシド単位が付加されたポリオキシエチレンC10-C18アルキルエーテル硫酸塩(例えば、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム)、C10-C18アルキルスルホコハク酸塩(例えばラウリルスルホコハク酸ナトリウム)、およびレシチン、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリンなど)、C12-C18脂肪酸のショ糖エステルなどの天然界面活性剤。組成物はこれらの界面活性剤のうちの一つ以上を含んでいてもよい。好ましい界面活性剤は、例えばポリソルベート20、40、60、または80のようなポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。ポリソルベート80(ツイーン80)は特に使いやすい。本開示によれば、界面活性剤、特にポリソルベート80は、液体組成物において抗体の安定性を向上させ、凝集と断片化に対する耐性を付与する。
【0028】
界面活性剤の濃度は、一般的に、約0.01mg/mlから約10mg/ml、約0.01mg/mlから約5.0mg/ml、約0.01mg/mlから約2.0mg/ml、約0.01mg/mlから約1.5mg/ml、約0.01mg/mlから約01.0mg/ml、約0.01mg/mlから約0.5mg/ml、約0.01mg/mlから約0.4mg/ml、約0.01mg/mlから約0.3mg/ml、約0.01mg/mlから約0.2mg/ml、約0.01mg/mlから約0.15mg/ml、約0.01mg/mlから約0.1mg/ml、または約0.01mg/mlから約0.05mg/mlである。さらに好ましくは、界面活性剤の濃度は、約5mg/ml、約0.5mg/ml、約0.6mg/ml、約0.7mg/ml、約0.8mg/ml、約0.9mg/ml、約1mg/ml、約1.1mg/ml、約1.2mg/ml、約1.3mg/ml、約1.4mg/ml、約1.5mg/ml、約1.6mg/ml、約1.7mg/ml、約1.8mg/ml、約1.9mg/ml、または約2mg/mlである。
【0029】
1.2 本開示の一部の実施形態において、第一免疫グロブリン可変ドメインは第一単一ドメイン抗体分子であり、第一単一ドメイン抗体分子は、IL-4Rαに結合し、三つの相補的決定領域(CDR)を含み、CDR1は、SEQ ID NO: 1に記載されるアミノ酸配列を有し、CDR2はSEQ ID NO:2に記載されるアミノ酸配列を有し、CDR3はSEQ ID NO:3に記載されるアミノ酸配列を有する、またはCDRは、前記複数のCDRと比較して、3、2もしくは1未満のアミノ酸置換(例えば保存的置換)を有するCDRである。第二免疫グロブリン可変ドメインは第二単一ドメイン抗体分子であり、第二単一ドメイン抗体分子は、IL-5に結合し、三つの相補的決定領域(CDR)を含み、CDR1は、SEQ ID NO: 4に記載されるアミノ酸配列を有し、CDR2はSEQ ID NO:5に記載されるアミノ酸配列を有し、CDR3はSEQ ID NO:6に記載されるアミノ酸配列を有する、またはCDRは、前記複数のCDRと比較して、3、2もしくは1未満のアミノ酸置換(例えば保守的置換)を有するCDRである。
【0030】
1.3 本開示の一部の実施形態では、抗体分子は、第一単一ドメイン抗体分子と第二単一ドメイン抗体分子との間にリンカーグループを含まないポリペプチド融合体である。
【0031】
1.4 本開示の一部の実施形態において、抗体分子は、第一単一ドメイン抗体分子と第二単一ドメイン抗体分子がライゲーションされるためのリンカーグループとして、1~100個の原子を有する生体適合性ポリマーを含むポリペプチド融合体である。リンカーグループは、当業者にとって自明の任意のリンカーグループでよい。実施形態において、リンカーグループはポリグリシン、ポリアラニン、ポリセリン、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリイソロイシン、ポリアルギニン残基、またはこれらの組み合わせを含む、またはこれらで構成される。例えば、ポリグリシンまたはポリセリンのリンカーは、少なくとも5、7、8、9、10、12、15、20、30、35、40のグリシンとセリンの残基を含むことができる。使用可能なリンカーとして、Gly-Ser反復、例えば一回、二回、三回、四回、五回、六回、七回、またはそれ以上の反復のGly)4-Serが挙げられる。多くの実施形態において、リンカーは以下の配列を有する。(GIy)4-Ser-(Gly)3-Serまたは((Gly)4-Ser)n、ここでnは4、5、または6。
【0032】
1.5 一部の実施形態では、第一単一ドメイン抗体分子と第二単一ドメイン抗体分子は、ヒトIgG Fc領域を介してライゲーションされる。ホモ二量体構造を持ち、4E9V10-2B3V2という名前の抗体分子は、二つの同一の単鎖Fc融合タンパク質を含む。各単鎖Fc融合タンパク質は、第一免疫グロブリン可変ドメインと、ヒトIgG Fc領域と、第二免疫グロブリン可変ドメインとからなる。各単鎖Fc融合タンパク質は、各単鎖と略される。
【0033】
上記抗体の作製手順は、配列合成により抗IL-4Rα単一ドメイン抗体をコードする遺伝子配列または抗IL-5単一ドメイン抗体をコードする遺伝子配列をそれぞれ(中国特許出願CN202010576200.7「ANTI-IL-4RΑ SINGLE-DOMAIN ANTIBODY AS WELL AS APPLICATION AND DRUG」んび記載の方法で得られた)ベクターに導入し、遺伝子組換え技術により二本鎖抗体分子を作製する手順を含む。
【0034】
第一単一ドメイン抗体分子と第二免疫グロブリン可変ドメインは、天然に存在する軽鎖を持たない分子(例えば、VHH、ナノボディ、ラクダ由来の抗体)から誘導することができる。単一ドメイン抗体分子は、ラクダ、リャマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、またはグアナコなどのラクダ科動物から誘導することができる。他の実施形態において、SDAB分子は、他の自然由来の単一ドメイン分子、例えばサメの単一ドメインポリペプチド(サメ免疫グロブリン新抗原受容体(IgNAR))や単一ドメインスキャフォールド(例えばフィブロネクチンスキャフォールド)を含んでいてもよい。単一ドメイン分子はサメから誘導してもよい。
【0035】
1.6 本開示の一部の実施形態において、抗体分子は、対になりかつ互いに対してライゲーションされた二つの同一の単鎖Fc融合タンパク質からなる二重鎖抗体分子であり、それぞれの単鎖Fc融合タンパク質は第一免疫グロブリン可変ドメインと、ヒトIgG Fc領域と、第二免疫グロブリン可変ドメインとからなる。
【0036】
本出願において、二重特異抗体が認識可能な抗原の一つはIL-5タンパク質であり、もう一つはIL-4Rαタンパク質である。
【0037】
1.7 本開示の一部の実施形態において、ヒトIgG Fc領域はヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4から誘導される。
【0038】
1.8 本開示の一部の実施形態において、ヒトIgG Fc領域はヒトIgG4領域から誘導されたアミノ酸であり、Fc領域は、SEQ ID NO: 13に記載のアミノ酸配列を有するまたはSEQ ID NO: 9の116位から356位に位置する。
【0039】
1.9 本開示の一部実施形態において、第一免疫グロブリン可変ドメインがSEQ ID NO:7に記載のアミノ酸配列を有し、第二免疫グロブリン可変ドメインがSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列を有する。
【0040】
SEQ ID NO:7に記載の第一免疫グロブリン可変ドメインは、ヒト化単一ドメイン抗体分子である。SEQ ID NO:8に記載の第二免疫グロブリン可変ドメインは、ヒト化単一ドメイン抗体分子である。SEQ ID NO: 7 (4E9V10)は、中国特許出願CN202010576200.7「ANTI-IL-4RΑ SINGLE-DOMAIN ANTIBODY AS WELL AS APPLICATION AND DRUG」の単一ドメイン抗体4E9のアミノ酸配列のヒト化から誘導される。SEQ ID NO: 8 (2B3V2)は、中国特許出願CN202010843501.1「IL-5 BINDING MOLECULES AND PREPARATION METHODS AND APPLICATIONS THEREOF」の単一ドメイン抗体2B3のアミノ酸配列のヒト化から誘導される。単一ドメイン抗体2B3のヒト化方法は、中国特許出願CN202010843501.1「「IL-5 BINDING MOLECULES AND PREPARATION METHODS AND APPLICATIONS THEREOF」に記載されている。
【0041】
単一ドメイン抗体4E9のヒト化方法は、ビッグデータ分析の結果に基づいて構築された抗体フレームワーク領域変異ライブラリの高スループットスクリーニングによるヒト化である。詳細なステップは以下の通りである。
【0042】
(1) ヒト/ラクダの抗体のデータのシーケンス解析:NCBIのウェブサイトからバッチダウンロードされた13,873件のNbケース(ヒト)のシーケンスに対してアミノ酸の優先度分析を実施し、申請者の2,000個の単一ドメイン抗体のシーケンスに対してもアミノ酸の優先度分析を実施して、フレームワーク領域の各部位のアミノ末端比率データを取得する。
【0043】
(2) ヒト/ラクダ抗体の包括的重み付け解析:IMGTの番号付け規則に従って上記のヒト/ラクダ抗体の配列に番号を付け、配列を1対1でマッチングさせ、ヒト抗体の90%とラクダ抗体の10%の重量に基づいて重み付け解析を行い、各部位におけるアミノ酸の重み付け割合を計算し、割合を高いものから低いものへとランク付けし、フレームワーク領域の単一部位における最終的な加重結果に従って、10%を超えるアミノ酸種のみを保持し、全体の保持割合を1とする基準に基づいて、10%を超える割合を持つアミノ酸の最終的な重みを計算し、以降のカスタマイズされたアミノ酸ライブラリの設計の基礎とする。
【0044】
(3) カスタマイズされたアミノ酸ライブラリのスキーム設計:変異させる単一の部位について、10%を超えるアミノ酸の数をnとし、10%を超えるアミノ酸の最高比率と最低比率の比をVとし、変異させる部位の性質を決定し、V≧3かつn≦2の場合、その部位を「高濃度部位」と見なし、それ以外の場合、その部位を「中低濃度部位」と見なす。この方法によれば、カスタマイズされたアミノ酸ライブラリは、「高/中濃度ライブラリ」と「低濃度ライブラリ」に分けられ、両方がカスタマイズされたアミノ酸ライブラリの構築に使用される。上述の(2)の最終重量が、ライブラリ内のアミノ酸種の種類と比率の基準となる。
【0045】
(4) カスタマイズされたアミノ酸ライブラリの高スループットスクリーニング
【0046】
非ヒト化4E9に対してヒト化抗体ライブラリを構築し、構築したライブラリを対応する抗原でパニングすることにより、親和性が高く、ヒト化度の高い抗体配列を最終的に得る。
【0047】
好ましくは、4E9V10はFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の構造を有する。FR1はSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を有し、FR2はSEQ ID NO:15のアミノ酸配列を有し、FR3はSEQ ID NO:16のアミノ酸配列を有し、FR4はSEQ ID NO:17のアミノ酸配列を有する。
【0048】
2B3V2はFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の構造を有する。FR1はSEQ ID NO:18のアミノ酸配列を有し、FR2はSEQ ID NO:19のアミノ酸配列を有し、FR3はSEQ ID NO:20のアミノ酸配列を有し、FR4はSEQ ID NO:21のアミノ酸配列を有する。
【0049】
ここで、「ヒト化抗体」とは、標的抗体(動物抗体など)の重鎖可変ドメインとヒト抗体の定常領域とを融合して得られる抗体、標的抗体の相補性決定領域(CDR1~3配列)をヒト抗体の可変領域にグラフト導入して得られる抗体、またはヒト抗体のフレームワーク領域(FR1~4)の特性に応じて標的抗体にアミノ酸変異を施して得られる抗体をいう。ヒト化抗体を合成または部位特異的突然変異誘発によって得てもよい。
【0050】
項目1.9中の上記抗体を調製する工程は、抗IL-4Rαヒト化シングルドメイン抗体(4E9V10)の遺伝子配列(SEQ ID NO: 11または12の1位から345位のヌクレオチド)または抗IL-5ヒト化シングルドメイン抗体(2B3V2と命名)の遺伝子配列(SEQ ID NO11または12の1069位から1434位のヌクレオチド)を、配列合成により(中国特許出願CN202010576200.7「ANTI-IL-4RΑ SINGLE-DOMAIN ANTIBODY AS WELL AS APPLICATION AND DRUG」に記載の方法によって得られた)ベクターに導入して遺伝子改変プラスミドを得て、そのプラスミドから二本鎖抗体を発現させる工程を含むことができる。
【0051】
1.10 本開示の一部の実施形態において、安定抗体製剤は、治療有効量の抗体分子、等張化剤、バッファ剤、および界面活性剤を含み、製剤のpHが4.5~5.5であり、抗体分子がSEQ ID NO: 9または10に記載のアミノ酸配列を有する融合タンパク質を含む。好ましくは、抗体分子は二重鎖抗体であり、二重鎖抗体分子を構成する各単鎖は、SEQ ID NO. 9またはSEQ ID NO. 10に記載のアミノ酸配列を有する。二つの単鎖Fc領域は自動的に結合して二重鎖抗体分子を形成する。
【0052】
本開示の一部の実施形態において、「4E9V10-2B3V2」と称される抗体分子は、SEQ ID NO:9もしくは10に記載のアミノ酸配列、またはそれと実質的に同一のアミノ酸配列(例えば少なくとも85%、90%、95%以上同一であるか、またはSEQ ID NO:9もしくは10に記載のアミノ酸配列に対して最大20、15、10、5、4、3、2、1個のアミノ酸改変(例えば、欠失、挿入または置換(例えば、保存的置換)を有するアミノ酸配列)である。
【0053】
4E9V10-2B3V2は、SEQ ID NO: 9または10に記載のアミノ酸配列を有し、対応するヌクレオチド配列はSEQ ID NO: 11または12に記載の通りである。4E9V10-2B3V2は三つのセグメントを含む(4E9V10-Fcセグメント-2B3V2)。ここで、4E9V10はアミノ末端(SEQ ID NO.9または10の1位から115位)に位置し、FcセグメントはSEQ ID NO.9または10の116位から356位に位置し、2B3V2はカルボキシル末端(SEQ ID NO.9または10の357位から478位)に位置する。
【0054】
4E9V10-2B3V2は、4E9V10-2B3V2-1(すなわち、SEQ ID NO: 9に記載のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO: 11に記載のヌクレオチド配列を有する)と、4E9V10-2B3V2-2(すなわち、SEQ ID NO: 10に記載のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO: 12に記載のヌクレオチド配列を有する)を含む。
【0055】
2.処方
【0056】
2.1 本開示の一部の実施形態において、項目1.1の調製バッファ剤は酢酸ナトリウム-酢酸バッファであり、等張化剤にはショ糖が含まれ、界面活性剤にはポリソルベートが含まれる。
【0057】
2.2 本開示の一部の実施形態では、製剤はグリシンを含む充填剤と塩酸アルギニンをさらに含む。
【0058】
2.3 酢酸-酢酸ナトリウム本開示の一部の実施形態において、製剤は(任意に)10~20mmol/Lの濃度の酢酸-酢酸ナトリウム、例えば、約10mmol/L~19mmol/L、約10mmol/L~18mmol/L、約10mmol/L~17mmol/L、約10mmol/L~16mmol/L、約10mmol/L~15mmol/L、約10mmol/L~約14mmol/L、約10mmol/L~約13mmol/L、約10mmol/L~約12mmol/L、約10mmol/L~約11mmol/L、約10mmol/L、約11mmol/L、約12mmol/L、約13mmol/L、約14mmol/L、約15mmol/L、約16mmol/L、約17mmol/L、約18mmol/L、約19mmol/L、または約20mmol/Lの濃度の酢酸-酢酸ナトリウムを含む。製剤中の酢酸の全体的な濃度と酢酸ナトリウムの濃度は、10~20mmol/Lである。
【0059】
好ましくは、酢酸と酢酸ナトリウムの質量比は(0.2~2):(1~10)である。より好ましくは、酢酸と酢酸ナトリウムの質量比は2:9である。
【0060】
2.4 塩酸アルギニン本開示の一部の実施形態において、製剤は(任意に)25~100mmol/Lの濃度の塩酸アルギニン、例えば、約25mmol/L~90mmol/L、約25mmol/L~80mmol/L、約25mmol/L~70mmol/L、約25mmol/L~60mmol/Lの濃度、約25mmol/L~約50mmol/L、約25mmol/L~約40mmol/L、約25mmol/L~約30mmol/L、約25mmol/L、約30mmol/L、約40mmol/L、約50mmol/L、約60mmol/L、約70mmol/L、約80mmol/L、約90mmol/L、または約100mmol/Lの濃度の塩酸アルギニンを含む。
【0061】
2.5 ショ糖本開示の一部の実施形態において、製剤は等張化剤として(任意に)80~120mmol/Lの濃度のショ糖、例えば、約80mmol/L~約118mmol/L、約80mmol/L~約115mmol/L、約80mmol/L~約110mmol/L、約80mmol/L~約105mmol/L、約80mmol/L~約100mmol/L、約80mmol/L~約95mmol/L、約80mmol/L~約90mmol/L、約80mmol/L、約85mmol/L、約90mmol/L、約95mmol/L、約100mmol/L、約110mmol/L、約115mmol/L、または約120mmol/Lの濃度のショ糖を含む。
【0062】
2.6 グリシン本開示の一部の実施形態において、製剤はタンパク質安定剤として(任意に)50~75mmol/Lの濃度のグリシン、例えば、約50mmol/L~約73mmol/L、約50mmol/L~約70mmol/L、約50mmol/L~約67mmol/L、約50mmol/L~約64mmol/L、約50mmol/L~約60mmol/L、約50mmol/L~約55mmol/L、約50mmol/L、約55mmol/L、約60mmol/L、約64mmol/L、約67mmol/L、約70mmol/L、または約75mmol/Lの濃度のグリシンを含む。
【0063】
2.7 ポリソルベート80本開示の一部の実施形態において、製剤は界面活性剤として(任意に)約0.02%~0.03%(w/v、g/ml)の濃度のポリソルベート80、例えば、約0.02%~約0.03%、約0.02%~約0.04%、約0.03%~約0.04%、約0.03%~約0.05%、約0.04%~約0.05%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、または約0.05%の濃度のポリソルベート80を含む。
【0064】
2.8 本開示の好ましい実施形態において、製剤はさらに酸化防止剤が含んでいてもよい。酸化防止剤は、メチオニン、亜硫酸ナトリウム、カタラーゼ、および白金からなる群から選択されることが望ましい。最も望ましいのはメチオニンである。
【0065】
2.9 酸化防止剤の濃度は通常、約0.01mg/mlから約50mg/ml、約0.01mg/mlから約10.0mg/ml、約0.01mg/mlから約5.0mg/ml、約0.01mg/mlから約1.0mg/ml、または約0.01mg/mlから約0.02mg/mlの範囲である。酸化防止剤の濃度は、約0.01mg/ml、0.02mg/ml、0.03mg/ml、約0.04mg/ml、約0.05mg/ml、約0.06mg/ml、約0.07mg/ml、0.08mg/ml、0.09mg/ml、約0.10mg/ml、0.11mg/ml、0.12mg/ml、0.13mg/ml、約0.14mg/ml、約0.15mg/ml、約0.16mg/ml、約0.17mg/ml、0.18mg/ml、0.19mg/ml、約0.20mg/ml、約0.25mg/ml、0.3mg/ml、0.4mg/ml、0.5mg/ml、0.6mg/ml、0.7mg/ml、0.8mg/ml、0.9mg/ml、または1.0mg/mlであることが望ましい。
【0066】
2.10 本開示の一部の実施形態において、製剤はメチオニンを10mmol/Lの濃度で含む。
【0067】
2.11 本開示の実施形態において、抗体分子は120mg/ml未満の量で存在し、好ましくは100mg/ml以下の量で存在する。
【0068】
本開示の好ましい実施形態では、抗体分子の濃度は約0.1から約120mg/mlの範囲であってもよい。好ましくは、抗体の濃度は、約0.5mg/ml、約1mg/ml、約2mg/ml、約2.5mg/ml、約3mg/ml、約3.5mg/ml、約4mg/ml、約4.5mg/ml、約5mg/ml、約5.5mg/ml、約6mg/ml、約6.5mg/ml、約7mg/ml、約7.5mg/ml、約8mg/ml、約8.5mg/ml、約9mg/ml、約9.5mg/ml、約10mg/ml、約11mg/ml、約12mg/ml、約13mg/ml、約14mg/ml、約15mg/ml、約16mg/ml、約17mg/ml、約18mg/ml、約19mg/ml、約20mg/ml、約21mg/ml、約22mg/ml、約23mg/ml、約24mg/ml、約25mg/ml、約26mg/ml、約27mg/ml、約28mg/ml、約29mg/ml、約30mg/ml、約31mg/ml、約32mg/ml、約33mg/ml、約34mg/ml、約35mg/ml、約36mg/ml、約37mg/ml、約38mg/ml、約39mg/ml、約40mg/ml、約41mg/ml、約42mg/ml、約43mg/ml、約44mg/ml、約45mg/ml、約46mg/ml、約47mg/ml、約48mg/ml、約49mg/ml、約50mg/ml、約51mg/ml、約52mg/ml、約53mg/ml、約54mg/ml、約55mg/ml、約56mg/ml、約57mg/ml、約58mg/ml、約59mg/ml、約60mg/ml、約70mg/ml、約80mg/ml、約90mg/ml、約100mg/ml、約110mg/ml、または約120mg/mlである。
【0069】
2.12 本開示の一部の実施形態において、抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体の濃度は100mg/mlである。
【0070】
2.13 本開示の一部の実施形態において、製剤は100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、20mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、50mmol/Lのグリシンと、50mmol/Lの塩酸アルギニンと、100mmol/Lのショ糖と、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHは5.0から5.2である。
【0071】
2.14 本開示の一部の実施形態において、製剤は100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、20mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、50mmol/Lのグリシンと、50mmol/Lの塩酸アルギニンと、100mmol/Lのショ糖と、10mmol/Lのメチオニンと、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHは5.0から5.2である。
【0072】
2.15 本開示の一部の実施形態において、製剤は100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、10mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、50mmol/Lのグリシンと、50mmol/Lの塩酸アルギニンと、120mmol/Lのショ糖と、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHは5.0から5.2である。
【0073】
2.16 本開示の一部の実施形態において、製剤は100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、10mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、75mmol/Lのグリシンと、25mmol/Lの塩酸アルギニンと、120mmol/Lのショ糖と、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHは5.0から5.2である。
【0074】
2.17 本開示の一部の実施形態において、製剤は100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、20mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、100mmol/Lの塩酸アルギニンと、80mmol/Lのショ糖と、0.02w/v%のポリソルベート80とを含み、pHは5.0から5.2である。
【0075】
2.18 本開示の一部の実施形態において、製剤は防腐剤および/または添加物から選択される一つ以上をさらに含む。
【0076】
2.19 本開示の一部の実施形態において、製剤は防腐剤を含んでいてもよい。好ましくは、防腐剤はフェノール、m-クレゾール、ベンジルアルコール、ベンズアルコニウムクロライド、ベンザルトニウムクロライド、フェノキシエタノール、メチルパラベンから選択される。一般的に防腐剤の濃度は、約0.001mg/mlから約50mg/ml、約0.005mg/mlから約15.0mg/ml、約0.008mg/mlから約12.0mg/ml、または約0.01mg/mlから約10.0mg/mlの範囲である。好ましくは、防腐剤の濃度は、0.1mg/ml、0.2mg/ml、0.3mg/ml、約0.4mg/ml、約0.5mg/ml、約0.6mg/ml、約0.7mg/ml、約0.8mg/ml、約0.9mg/ml、約1.0mg/ml、約2.0mg/ml、約3.0mg/ml、約4.0mg/ml、約5.0mg/ml、約6.0mg/ml、約7.0mg/ml、約8.0mg/ml、約9.0mg/ml、約9.1mg/ml、約9.2mg/ml、約9.3mg/ml、約9.4mg/ml、約9.5mg/ml、約9.6mg/ml、約9.7mg/ml、約9.8mg/ml、約9.9mg/ml、または約10.0mg/mlである。最も好ましくは、防腐剤の濃度は約0.1mg/mlまたは9.0mg/mlである。
【0077】
本開示の一部の実施形態において、製剤は酸化防止剤を含まない。
【0078】
本開示の一部の実施形態において、製剤は防腐剤を含まない。
【0079】
3.1 粘度
【0080】
タンパク質製剤の粘度が上昇すると、加工性、例えば液体での患者への薬物投与における加工性に悪影響を及ぼす。例えば高粘度の場合、液体の製剤が注射針のゲージを通過しにくくなり、患者に不快感を与える。さらに、製造、保存、投与が容易であることの前提条件として、比較的高濃度であるが適度に低粘度の抗体製剤が望まれる。ここで使用される用語「粘度」は、「動粘度」または「絶対粘度」である。一般に、動粘度はセンチストーク(cSt)で表される。動粘度のSI単位はmm2/sで、1cStに相当する。絶対粘度の単位はセンチポイズ(cP)である。絶対粘度のSI単位はミリパスカル秒(mPa-s)で、1cP=1mPa.sである。
【0081】
本開示による適切な医薬製剤の粘度は16mPa.s未満、より好ましくは7mPa.s未満、好ましくは5.7~6.1mPa.sである。
【0082】
3.2 浸透圧
【0083】
本開示の一部の実施形態において、本開示の製剤は等張性である。
【0084】
「等張性」という用語は、対象の製剤が人間の血液とほぼ同じ浸透圧を持つことを意味する。実施形態において、本開示の等張性製剤は一般的に299から331mOsmの浸透圧を有する。例えば、等張性は蒸気圧や凝固点測定器を使用して測定することができる。
【0085】
3.3 安定性
【0086】
本開示の一部の実施形態において、本開示の製剤は、摂氏約2度から摂氏約25度(例えば、摂氏約4度または摂氏約25度)の温度で、少なくとも3、6、9、12ヶ月(例えば少なくとも24、30、36ヶ月)安定する。一部の実施形態において、抗体分子は、製剤内において少なくとも3、6、9、12ヶ月(例えば、少なくとも24、30、36ヶ月)、摂氏約2度から摂氏約25度(例えば、摂氏約4度または摂氏約25度)の温度で保管した後、完全なまま保たれる。例えば、製剤中の抗体は、摂氏約2度から摂氏約25度(例えば、摂氏約4度または摂氏約25度)の温度で保存した後、抗体分子の生物学的活性、例えば結合活性を、少なくとも50%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または最大100%保持する。一部の実施形態において、製剤は、少なくとも3、6、9、12ヶ月(例えば、少なくとも24、30、36ヶ月)、摂氏約2度から摂氏約25度(例えば、摂氏約4度または摂氏約25度)の温度で保存した後、10%以下、9%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下の高分子量(HMW)種を含む。別の実施形態において、製剤は、少なくとも3、6、9、12ヶ月(例えば、少なくとも24、30、36ヶ月)、摂氏約2度から摂氏約25度(例えば、摂氏約4度または摂氏約25度)の温度で保存した後、10%以下、9%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下の低分子量(LMW)種を含む。
【0087】
さらに別の実施形態において、製剤は、少なくとも3、6、9、12ヶ月(例えば、少なくとも24、30、36ヶ月)、摂氏約2度から摂氏約25度(例えば、摂氏約4度または摂氏約25度)の温度で保存した後、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下の酸性種を含む。さらに別の実施形態において、製剤は、少なくとも3、6、9、12ヶ月(例えば、少なくとも24、30、36ヶ月)、摂氏約2度から摂氏約25度(例えば、摂氏約4度または摂氏約25度)の温度で保存した後、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下の基本種を含む。製剤中のHMW種、LMW種、酸性種および基本種は、本開示のサイズ排除-高速液体クロマトグラフ法(SEC-HPLC)などの標準的な技術を用いて検出することができる。
【0088】
一部の実施形態では、凍結乾燥された抗体製剤の再構成時に、製剤は凍結乾燥前の製剤と比較して、少なくとも80%、90%、95%以上の抗体分子の構造を保持する。抗体分子の構造は、例えば結合アッセイ、バイオアッセイ、またはHMW種とLMW種との比率によって導出される。
【0089】
本開示の一部の実施形態において、製剤溶液のモノマーの含有量は、摂氏約37度で14日間の保存後に5%以上減少しない。本開示において、モノマーは二重鎖抗体分子を意味する。
【0090】
本開示の一部の実施形態において、摂氏-20度、摂氏5度、揺動、凍結、解凍の条件下では、サンプル中のモノマーの含有量は1.5%を超えて変動することはない。
【0091】
4.製品
【0092】
液体製剤は、取扱説明書付きの装置、シリンジ、バイアルなどの製品に含まれていてもよい。特定の実施形態において、シリンジまたはバイアルはガラス、プラスチック、または環状オレフィンポリマーやコポリマーなどのポリマー材料で作られる。他の実施形態では、製剤は注入可能なデバイスに存在してもよい。
【0093】
例えば、シリンジはプリフィルドシリンジである。シリンジは、例えば、自動注射器(例えば、ペン型注射器)、および/または取扱説明書を含む単一バイアルシステムとして、個別投与に適合させることができる。対象(例えば、患者)に、注入(例えば末梢注入)によってこの製剤を投与することができる。
【0094】
本開示の一部の実施形態において、前記安定した二重特異抗体製剤を含むコンテナが提供される。
【0095】
本開示の一部の実施形態において、前記コンテナはガラス、プラスチック、またはポリマー材料のいずれかで作られたシリンジまたはボトルを含む。
【0096】
本開示の一部の実施形態において、前記安定した二重特異抗体製剤またはコンテナのいずれかを有する密封パッケージが提供される。
【0097】
本開示の一部の実施形態において、前記安定抗体製剤を含む配送システムが提供され、使い捨てのシリンジから選択される。
【0098】
本開示の一部の実施形態において、前記安定抗体製剤を含む疾患の治療のための医薬品が提供される。
【0099】
5.疾患への適用と治療方法
【0100】
本開示の一部の実施形態が提供するのは、疾患の治療のための医薬品の調製への安定抗体製剤の使用である。前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、成人多発血管炎性好酸球性肉芽腫症の治療、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、季節性アレルギー性鼻炎を含む。
【0101】
本開示の一部の実施形態において、前記医薬品は静脈内または皮下経路で投与される医薬品である。
【0102】
本開示の一部の実施形態で提供されるのは、前記抗体製剤のいずれかを使用して疾患を治療するための方法である。前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、成人多発血管炎性好酸球性肉芽腫症の治療、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、季節性アレルギー性鼻炎を含む。
【0103】
本開示の一部の実施形態が提供するのは、安定抗体製剤の調製におけるグリシンの使用であって、前記抗体分子の濃度が抗体製剤中で100mg/mlに達しても抗体分子が安定して存在する、使用である。
【0104】
本開示の一部の実施形態が提供するのは、液体製剤中の高濃度抗体の安定性を向上させる、抗体製剤の使用である。
【0105】
6.準備プロセス
【0106】
本開示が提供するのは安定抗体製剤を調製する方法であって、抗体分子を調製するステップ1と、治療有効量の抗体分子を、等張化剤、バッファ剤、界面活性剤および/または他の必要な成分と混合して、安定溶液を形成するステップ2とを有する方法である。別の観点において、本開示に記載の製剤の調製方法またはプロセスについて説明する。この方法またはプロセスは以下を含む。細胞培養物中で抗体分子を発現させること、例えば、抗体分子をクロマトグラフィまたは他の類似の精製ステップ、限外濾過/透析濾過ステップの少なくとも1つに通すことで抗体分子を精製すること、および、製剤バッファ剤を使用して抗体分子の濃度を、例えば、約10~100mg/mLに調整し、製剤のpHを約4.5~5.3、例えば4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2または5.3に調整すること。
【0107】
定義
【0108】
「タンパク質製剤」または「抗体製剤」という用語は、有効成分の生物学的活性が明白に有効であるような形態であり、製剤とともに投与される被験者に毒性のある追加成分を含まない製剤を指す。
【0109】
「医学的に許容される」添加物(媒体、添加剤)とは、哺乳動物に投与して有効量の有効成分を摂取させることが合理的に可能なものである。例えば、注射の受容性には、添加物の濃度も関連している。
【0110】
「安定した」製剤とは、その中に含まれるタンパク質が保存時において物理的および/または化学的な安定性および/または生物活性を実質的に保持しているものを指す。タンパク質の安定性を測定するための当業者に利用可能な様々な解析技術は例えば、Peptide and Protein Drug Delivery, 247-301, Vincent Lee Ed., Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Pubs (1991)やJones, A. Adv. Drug Delivery Rev. 10: 29-90 (1993)に記載されている。選択された温度で選択された期間について、安定性を測定することができる。さらに、製品の凍結(例えば、-80°Cまで)および解凍後も、製剤は安定している。
【0111】
バイオ医薬品の製剤において、タンパク質が「物理的な安定性を保持する」とは、凝集、沈殿、および/または変性が、色および/または透明度の視覚的観察、(可視の凝集物を測定する)UV光散乱による測定、またはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による測定において、ほとんど変化しないことを意味する。SECは、必ずしも可視凝集体の前駆体ではない可溶性凝集物の測定に使用可能である。ある時点におけるタンパク質の化学的安定性が、以下に定義するように、そのタンパク質が生物学的活性を保持すると考えられるようなものである場合、タンパク質は、バイオ医薬品製剤において「化学的安定性を保持する」。化学的安定性は、タンパク質の化学的に変化した形態を検出し定量化することによって評価することができる。化学的変化は、サイズの変更(例:クリッピング)を含んでもよい。これは、SEC、SDS-PAGE、および/またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化法/飛行時間型質量分析法(MALDI/TOF MS)を使用して評価することができる。他の種類の化学的変化は、電荷の変化(例えば、脱アミド化の結果として発生)を含む。これは、例えばイオン交換クロマトグラフィによって評価することができる。
【0112】
抗体が医薬製剤中で「その生物学的活性を保持する」場合とは、ある時点での抗体の生物学的活性の変化が、医薬製剤が例えば抗原結合アッセイで導出されたものとして調製された時に示された生物学的活性から約10%以内(アッセイ誤差内)である場合である。抗体の「生物学的活性」に関するその他のアッセイについては以下に詳述する。
【0113】
単一ドメイン抗体(sdAb、開発元のAblynxではNanobodyまたはVHHとも呼ばれる)は当業者によく知られている。単一ドメイン抗体とは、相補性決定領域がシングルドメインポリペプチドの一部である抗体である。単一ドメイン抗体は、よって単一相補性決定領域(CDR)1と、単一CDR2と、単一CDR3とを有する。単一ドメイン抗体の例として、重鎖のみを持つ抗体(つまり、元々軽鎖を含まない抗体)、従来の抗体から派生した単一ドメイン抗体、およびエンジニアリングされた抗体が挙げられる。
【0114】
マウス、ヒト、ラクダ、リャマ、ヤギ、ウサギ、およびウシを含む、いかなる種からでも単一ドメイン抗体を派生させることができる。例えば、自然発生のVHH分子は、ラクダ、リャマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、グアナコなどのラクダ科動物から誘導することができる。未変化の抗体と同様に、シングルドメイン抗体は特定の抗原に選択的に結合することができる。単一ドメイン抗体は、CDR1、CDR2、CDR3およびフレームワーク領域を有する免疫グロブリン鎖の可変ドメインのみを含んでいてもよい。
【0115】
本開示における「配列相同性」という用語は、二つの(核酸またはアミノ酸の)配列がアラインメントにおいて同じ位置で同一の残基を持つ程度を示し、しばしばパーセンテージで表される。好ましくは、相同性は比較される配列の全体の長さにわたって導出される。したがって、まったく同じ配列の二つのコピーは100%の相同性を持つ。
【0116】
本開示において、二重特異性抗体は、本開示に示すCDR1~3の配列と高い相同性を有する配列からも得ることができる。実施形態の一部において、SEQ ID NO:1~6に記載の配列と「少なくとも80%の相同性」、「少なくとも85%の相同性」、「少なくとも90%の相同性」、「少なくとも95%の相同性」、または「少なくとも98%の相同性」を有する配列もまた、本開示の目的を達成し得る。
【0117】
実施形態の一部において、前記の配列と比較して、一つだけまたは数個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された配列(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の保存的なアミノ酸の置換を含む)でも、本開示の目的を達成することができる。これらの変異形態には、1個以上(典型的には1~50個、好ましくは1~30個、より好ましくは1~20個、最も好ましくは1~10個)のアミノ酸の欠失、挿入および/または置換、ならびにC末端および/またはN末端における1個または数個(典型的には20個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下)のアミノ酸の付加が含まれるが、これらに限定されない。実際、当業者は、二つのアミノ酸配列間の配列相同性の程度を決定する際や、単一ドメイン抗体のCDR1、CDR2、CDR3の組み合わせを決定する際に、いわゆる「保守的」アミノ酸置換を考慮することがある。置換の場合、置換はできるだけ保存的なアミノ酸の置換が好ましい。アミノ酸の保守的な置換は、一般的には、化学的構造が類似しており、ポリペプチドの機能、活性、または他の生物学的特性にほとんどまたは本質的に影響を与えない別のアミノ酸残基によって置き換えられるアミノ酸残基として説明可能である。保存的アミノ酸置換は、当該技術分野において一般的に使用され、例えば、保存的アミノ酸置換は、以下の群(a)~(d)内の1つまたは数個のアミノ酸が、同じ群内の別のまたは数個のアミノ酸残基で置換される置換である。(a)極性、負荷電残基およびそれらの非荷電アミド:Asp、Asn、GluおよびGln、(b)極性、正荷電残基:His、Arg、Lys、(c)芳香族残基:Phe、Tyr、Trp、(d)小さな脂肪族、非極性またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Gly、Pro、Met、Leu、Ile、Val、Cys。特に好ましい保存的アミノ酸置換は以下の通りである。AspからGluへ、AsnからGlnまたはHisへ、GluからAspへ、GlnからAsnへ、HisからAsnまたはGlnへ、ArgからLysへ、LysからArg、Glnへ、PheからMet、Leu、Tyrへ、TrpからTyrへ、TyrからPhe、Trpへ、AlaからGlyまたはSerへ、SerからThrへ、ThrからSerへ、GlyかららAlaまたはProへ、MetからLeu、TyrまたはIleへ、LeuからIleまたはValへ、IleからLeuまたはValへ、ValからIleまたはLeuへ、CysからSerへ。さらに、当業者であれば、単一ドメイン抗体の発明性はCDR1~3領域に反映され、フレームワーク配列FR1~4は不変ではないことを知っている。本開示に開示された配列の保守的配列変異体を、FR1~4の配列は採用することができる。
【0118】
本開示は以下の観点に関連する。
【0119】
1.治療有効量の抗体分子、等張化剤、バッファ剤、および界面活性剤を含み、製剤のpHが4.5~5.5であり、抗体分子がIL-5およびIL-4Rαの両方に特異的に結合することができる、安定抗体製剤であって、IL-4R等張化剤α分子に特異的に結合することができる第一免疫グロブリン可変ドメインとIL-5に特異的に結合することができる第二免疫グロブリン可変ドメインとを有する少なくとも二つの免疫グロブリン可変ドメインを含む、安定抗体製剤である。
【0120】
2.前記製剤のpHが4.7から5.3である、項目1に記載の抗体製剤である。
【0121】
3.第一免疫グロブリン可変ドメインが第一単一ドメイン抗体分子であり、SEQ ID NO:1に記載のCDR1と、SEQ ID NO:2に記載のCDR2と、SEQ ID NO:3に記載のCDR3とを有し、第二免疫グロブリン可変ドメインが第二単一ドメイン抗体分子であり、SEQ ID NO:4に記載のCDR1と、SEQ ID NO:5に記載のCDR2と、SEQ ID NO:6に記載のCDR3とを有する、項目1に記載の抗体製剤である。
【0122】
4.抗体分子が、第一単一ドメイン抗体分子と第二単一ドメイン抗体分子との間のリンカーグループを含まないポリペプチド融合体である、項目3に記載の抗体製剤である。
【0123】
5.抗体分子がポリペプチド融合体であり、ポリペプチド融合体の第一単一ドメイン抗体分子と第二単一ドメイン抗体分子とは、生体適合性ポリマーをリンカーグループとしてライゲーションされる、項目3に記載の抗体製剤である。
【0124】
6.第一単一ドメイン抗体分子と第二単一ドメイン抗体分子とがヒトIgG Fc領域を介してライゲーションされ、抗体分子はホモ二量体構造を有し、4E9V10-2B3V2と名付けられ、各単鎖Fc融合タンパク質は第一免疫グロブリン可変ドメインと、ヒトIgG Fc領域と、第二免疫グロブリン可変ドメインとからなる、項目3に記載の抗体製剤である。
【0125】
7.前記ヒトIgG Fc領域がヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来である、項目6に記載の抗体製剤である。
【0126】
8.前記ヒトIgG Fc領域がヒトIgG4領域から誘導され、Fc領域は、SEQ ID NO: 13に記載のアミノ酸配列を有するまたはSEQ ID NO: 9の116位から356位に位置する、項目6に記載の抗体製剤である。
【0127】
9.第一免疫グロブリン可変ドメインがSEQ ID NO:7に記載のアミノ酸配列を有し、第二免疫グロブリン可変ドメインがSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列を有する、項目1に記載の抗体製剤である。
【0128】
10.治療有効量の抗体分子、等張化剤、バッファ剤、および界面活性剤を含み、製剤のpHが4.5~5.5であり、抗体分子がSEQ ID NO: 9または10に記載のアミノ酸配列を有する融合タンパク質を含む、安定抗体製剤である。
【0129】
11.バッファ剤が酢酸-酢酸ナトリウムバッファであり、等張化剤がショ糖であり、界面活性剤がポリソルベートである、項目1に記載の抗体製剤である。
【0130】
12.グリシンと塩酸アルギニンを含む充填剤をさらに有する、項目11に記載の抗体製剤である。
【0131】
13.酢酸-酢酸ナトリウムの濃度が10から20mmol/Lであり、および/または塩酸アルギニンの濃度が25から100mmol/Lであり、および/またはショ糖の濃度が80から120mmol/Lであり、および/またはグリシンの濃度が50から75mmol/Lであり、および/またはポリソルベート80の濃度が0.02から0.05w/v%である、項目11に記載の抗体製剤である。
【0132】
14.メチオニンをさらに有する、項目1に記載の抗体製剤である。
【0133】
15.メチオニンを10mmol/Lの濃度でさらに有する、項目14に記載の抗体製剤である。
【0134】
16.前記抗体分子が120mg/mL未満の量で存在する、項目1に記載の抗体製剤である。
【0135】
17.抗体分子の濃度が約0.01から約100mg/mlである、項目1に記載の抗体製剤である。
【0136】
18.100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、20mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、50mmol/Lのグリシンと、50mmol/Lの塩酸アルギニンと、100mmol/Lのショ糖と、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHが5.0から5.2である、項目1に記載の抗体製剤である。
【0137】
19.100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、20mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、50mmol/Lのグリシンと、50mmol/Lの塩酸アルギニンと、100mmol/Lのショ糖と、10mmol/Lのメチオニンと、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHが5.0から5.2である、項目2に記載の抗体製剤である。
【0138】
20.100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、10mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、50mmol/Lのグリシンと、50mmol/Lの塩酸アルギニンと、120mmol/Lのショ糖と、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHが5.0から5.2である、項目1に記載の抗体製剤である。
【0139】
21.100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、10mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、75mmol/Lのグリシンと、25mmol/Lの塩酸アルギニンと、120mmol/Lのショ糖と、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHが5.0から5.2である、項目1に記載の抗体製剤である。
【0140】
22.100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、20mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、100mmol/Lの塩酸アルギニンと、80mmol/Lのショ糖と、0.02w/v%のポリソルベート80とを含み、pHが5.0から5.2である、項目1に記載の抗体製剤である。
【0141】
23.防腐剤および/または添加物から選択される一つ以上をさらに含む、項目1に記載の抗体製剤である。
【0142】
24.前記製剤のモノマーの含有量が、摂氏約37度で14日間の保存後に5%以上減少しない、項目1に記載の抗体製剤である。
【0143】
25.摂氏-20度、摂氏5度、揺動、または凍結と解凍の条件下で、サンプル中のモノマーの含有量が1.5%以上変化しない、項目1に記載の抗体製剤である。
【0144】
26.項目1~25に記載の安定抗体製剤を含むコンテナである。
【0145】
27.ガラス、プラスチック、またはポリマー材料のいずれか1つ以上で作られたシリンジまたはボトルを有する、項目26に記載のコンテナである。
【0146】
28.項目1~25のいずれかに記載の抗体製剤または項目26に記載のコンテナを有する、密封パッケージである。
【0147】
29.項目1~25のいずれかに記載の抗体製剤と、項目1~25のいずれかに記載の抗体製剤を含むコンテナとを有するキットである。
【0148】
30.自己免疫疾患の予防および/または治療のための医薬品の調製に使用される、項目1~25のいずれかに記載の抗体製剤または項目29に記載のキットである。
【0149】
31.疾患を治療するための医薬品を調製するための項目1~25のいずれかに記載の抗体製剤の使用であって、前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患 アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、成人多発血管炎性好酸球性肉芽腫症の治療、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、季節性アレルギー性鼻炎である、安定抗体製剤の使用である。
【0150】
32.前記医薬品が静脈内または皮下経路で投与される医薬品である、項目31に記載の使用である。
【0151】
33.項目1~25のいずれかに記載の抗体製剤を用いて疾患を治療する方法であって、前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、成人多発血管炎性好酸球性肉芽腫症の治療、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、季節性アレルギー性鼻炎である、方法である。
【0152】
34.請求項1~25のいずれかに記載の安定抗体製剤を有するデリバリーシステムであって、該デリバリーシステムが使い捨てシリンジから選択される、デリバリーシステムである。
【0153】
35.項目1~25のいずれかに記載の抗体製剤を調製する方法であって、抗体分子を調製するステップ1と、治療有効量の抗体分子を、張力等張化剤、バッファ剤、界面活性剤および/または他の必要な成分と混合して、安定溶液を形成するステップ2とを有する方法である。
【0154】
36.項目1~25のいずれかに記載の安定抗体製剤を含み、疾患の治療に用いられる医薬品であって、前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、成人多発血管炎性好酸球性肉芽腫症の治療、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、季節性アレルギー性鼻炎である、医薬品である。
【0155】
37.項目1~25のいずれかに記載の抗体製剤の調製におけるグリシンの使用であって、前記抗体分子の濃度が抗体製剤中で100mg/mlに達しても抗体分子が安定して存在する、使用である。
【0156】
38.液体製剤中の高濃度抗体の安定性を向上させる、項目1~25のいずれかに記載の抗体製剤の使用である。
【0157】
本開示の抗体製剤は、既存の技術と比較して、IL-4RαとIL-5の両方に特異的に結合することができる。保存中の製剤中の抗体分子の濃度は、約0.01mg/mlから120mg/mlである。この濃度範囲内では、特に高濃度の抗体(例えば、100mg/ml)において、製剤は物理的および化学的安定性を保ち、完全な形で保たれる。製剤溶液のモノマーの含有量は、摂氏約37度で14日間の保存後に5%以上減少しない。摂氏-20度、摂氏5度、揺動、凍結、解凍の条件下では、サンプル中のモノマーの含有量は1.5%を超えて変動することはなく、高濃度抗体製剤の用途要件を満たしている。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【
図1】IL-4RαからIL-4の結合をブロックするIL-4Rα/IL-5二重特異抗体4E9V10-2B3V2-1のアッセイ結果(ELISA)を示す。
【0159】
【
図2】IL-5RからIL-5の結合をブロックするIL-4Rα/IL-5二重特異抗体4E9V10-2B3V2-1のアッセイ結果(ELISA)を示す。
【0160】
【
図3】IL-4誘導TF-1増殖を中和するIL-4Rα/IL-5二重特異性抗体4E9V10-2B3V2-1のアッセイ結果を示す。
【0161】
【
図4】IL-13誘導TF-1増殖を中和するIL-4Rα/IL-5二重特異性抗体4E9V10-2B3V2-1のアッセイ結果を示す。
【0162】
【
図5】IL-5誘導TF-1増殖を中和するIL-4Rα/IL-5二重特異性抗体4E9V10-2B3V2-1のアッセイ結果を示す。
【0163】
【
図6】IL-4およびIL-5(4:1)混合物誘導TF-1増殖を中和するサンプルB(4E9V10-2B3V2-2)の用量効果曲線である。
【0164】
【
図7】IL-4およびIL-5(4:1)混合物誘導TF-1増殖を中和するサンプルB(4E9V10-2B3V2-2)の用量効果曲線である。
【0165】
【
図8】IL-4およびIL-5(3:1)混合物誘導TF-1増殖を中和するサンプルB(4E9V10-2B3V2-2)の用量効果曲線である。
【0166】
【
図9】IL-4およびIL-5(3:1)混合物誘導TF-1増殖を中和するサンプルB(4E9V10-2B3V2-2)の用量効果曲線である。
【0167】
【
図10】IL-4およびIL-5(2:1)混合物誘導TF-1増殖を中和するサンプルB(4E9V10-2B3V2-2)の用量効果曲線である。
【0168】
【
図11】IL-4およびIL-5(2:1)混合物誘導TF-1増殖を中和するサンプルB(4E9V10-2B3V2-2)の用量効果曲線である。
【0169】
【
図12】IL-4およびIL-5(1:1)混合物誘導TF-1増殖を中和するサンプルB(4E9V10-2B3V2-2)の用量効果曲線である。
【0170】
【
図13】IL-4およびIL-5(1:1)混合物誘導TF-1増殖を中和するサンプルB(4E9V10-2B3V2-2)の用量効果曲線である。
【0171】
【
図14】IL-4およびIL-5(1:2)混合物誘導TF-1増殖を中和するサンプルB(4E9V10-2B3V2-2)の用量効果曲線である。
【0172】
【
図15】IL-4およびIL-5(1:2)混合物誘導TF-1増殖を中和するサンプルB(4E9V10-2B3V2-2)の用量効果曲線である。
【0173】
【
図16】IL-4およびIL-5(1:3)混合物誘導TF-1増殖を中和するサンプルB(4E9V10-2B3V2-2)の用量効果曲線である。
【0174】
【
図17】IL-4およびIL-5(1:3)混合物誘導TF-1増殖を中和するサンプルB(4E9V10-2B3V2-2)の用量効果曲線である。
【0175】
【
図18】IL-4およびIL-5(1:4)混合物誘導TF-1増殖を中和するサンプルB(4E9V10-2B3V2-2)の用量効果曲線である。
【0176】
【
図19】IL-4およびIL-5(1:4)混合物誘導TF-1増殖を中和するサンプルB(4E9V10-2B3V2-2)の用量効果曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0177】
実施例を参照しつつ本開示を以下でさらに詳細に説明するので、当業者であればこの説明に従って本開示を実施することが可能である。
【0178】
実施例1
【0179】
抗IL-4Rα/IL-5二重特異性単一ドメイン抗体のためのFc融合抗体真核発現ベクターの構築
【0180】
4E9V10-2B3V2-1について
【0181】
(1) 抗IL-4Rαヒト化単一ドメイン抗体(4E9V10)のコドン最適化遺伝子配列(SEQ ID NO: 11の1位から345位)および抗IL-5ヒト化単一ドメイン抗体(2B3V2と命名)のコドン最適化遺伝子配列(SEQ ID NO: 11の1069位から1434位)を、配列合成により合成し、ベクターRJK-V4-3(中国特許出願番号CN202010576200.7「ANTI-IL-4RΑ SINGLE-DOMAIN ANTIBODY AS WELL AS APPLICATION AND DRUG」が開示する方法に従って得られた)にそれぞれ挿入した。
【0182】
ベクターRJK-V4-3は、本出願人により、ヒトIgG4の重鎖コード配列のFcセグメントを、Invitrogenによる市販のベクターpCDNA3.4(このベクターに関する情報は次のウェブサイトから入手可能:https://assets.thermofisher.com/TFS-Assets/LSG/manuals/pcdna3_4_topo_ta_cloning_kit_man.pdf)、すなわち、IgG4重鎖のヒンジ領域、CH2およびCH3領域を含むベクターに基づいて融合することにより得られた。この手順は以下のように行われた。
【0183】
(1) pcDNA3.4上の制限部位XbaIとAgeIとを選択した。
【0184】
(2) マルチプルクローニング部位(MCS)と6×Hisタグは、Fcフラグメントのコーディング配列の5’と3’の末端に、オーバーラップPCRを介してそれぞれ導入した。
【0185】
(3) 上述のフラグメントは、XbaIとAgeIの制限部位を持つプライマー対を用いてPCRによって増幅された。
【0186】
(4) pcDNA3.4と(3)の組換えDNAフラグメントとをそれぞれ制限エンドヌクレアーゼXbaIとAgeIで消化した。
【0187】
(5) 消化したベクターをT4リガーゼの作用下で挿入フラグメントとライゲーションし、ライゲーションしたものをE.coliに変換して増幅し、検証のためにシーケンス解析を行い、組換えプラスミドを得た。
【0188】
融合ヒトIgG4の重鎖コード配列のFcセグメントは、SEQ ID NO: 11の346位~1068位に示されるようなヌクレオチド配列を有する。
【0189】
(2) 構築された組み換え真核発現ベクターは、DH5α E. coliに変換され、培養され、プラスミドマキシプレップ抽出によりエンドトキシンの除去を受けた。
【0190】
(3) 抽出されたプラスミドを同定するために再度配列を決定した。
【0191】
(4) 同定後、抗IL-4Rα/IL-5二重特異単一ドメイン抗体の真核発現ベクターを以下のように構築した。抗IL-4Rα抗体の配列が存在する箇所である真核発現ベクターを、制限エンドヌクレアーゼXbaIとBamHIによって消化し、消化された抗IL-4Rα抗体を、抗IL-5抗体の配列を含み、同じ制限エンドヌクレアーゼの粘着末端を持つ真核発現ベクターにライゲーションし、ライゲーション産物を変換し、同定のためにシーケンスした。配列によって確認されたクローンを、エンドトキシンを除去するためにプラスミドマキシプレップ抽出にかけた。抽出されたプラスミドを同定するために再度配列を決定した。確認された組み換えベクターは、後の真核細胞への転染と発現のために準備された。
【0192】
4E9V10-2B3V2(特に4E9V10-2B3V2-1)と命名された抗IL-4Rα/IL-5二重特異性抗体(二重特異性抗体の各単鎖は、SEQ ID NO.9に記載のアミノ酸配列を有し、SEQ ID NO:11に記載の対応する遺伝子配列を有する)は、3つのセグメントを含む(4E9V10-Fcセグメント-2B3V2)。ここで、4E9V10はアミノ末端(SEQ ID NO.9の1位から115位)に位置し、FcセグメントはSEQ ID NO.9の116位から356位に位置し、2B3V2はカルボキシル末端(SEQ ID NO.9の357位から478位)に位置する。
【0193】
4E9V10-2B3V2-2について
【0194】
(1) 抗IL-4Rαヒト化単一ドメイン抗体(4E9V10)のコドン最適化遺伝子配列(SEQ ID NO: 12の1位から345位)および抗IL-5ヒト化単一ドメイン抗体(2B3V2と命名)のコドン最適化遺伝子配列(SEQ ID NO: 12の1069位から1434位)を、配列合成により合成し、ベクター(中国特許出願番号CN202010576200.7「ANTI-IL-4RΑ SINGLE-DOMAIN ANTIBODY AS WELL AS APPLICATION AND DRUG」が開示する方法に従って得られた)にそれぞれ挿入した。
【0195】
ここでのベクターは前述のRJK-V4-3と基本的に同一だが、融合されるヒトIgG4の重鎖コーディング配列のFcセグメントのヌクレオチド配列が、SEQ ID NO.12の346位~1068位の位置に示されるヌクレオチドで置換された点で異なっている。
【0196】
(2) 構築された組み換え真核発現ベクターを、DH5α E.coliに変換し、培養し、プラスミドマキシプレップ抽出によりエンドトキシンを除去した。
【0197】
(3) 抽出したプラスミドを同定するために再度配列を決定した。
【0198】
(4) 同定による確認後、抗IL-4Rα/IL-5二重特異単一ドメイン抗体の真核発現ベクターを以下のように構築した。抗IL-4Rα抗体の配列が存在する箇所である真核発現ベクターを、制限エンドヌクレアーゼXbaIとBamHIによって消化し、消化された抗IL-4Rα抗体を、抗IL-5抗体の配列を含み、同じ制限エンドヌクレアーゼの粘着末端を持つ真核発現ベクターにライゲーションし、ライゲーションされたベクターを変換し、同定のためにシーケンスした。配列によって確認したクローンを、エンドトキシンを除去するためにプラスミドマキシプレップ抽出にかけた。抽出したプラスミドを同定するために再度配列を決定した。確認された組み換えベクターは、後の真核細胞への転染と発現のために準備された。
【0199】
4E9V10-2B3V2(特に4E9V10-2B3V2-2)と命名された抗IL-4Rα/IL-5二重特異性抗体(二重特異性抗体の各単鎖は、SEQ ID NO.10に記載のアミノ酸配列を有し、SEQ ID NO:12に記載の対応する遺伝子配列を有する)は、3つのセグメントを含む(4E9V10-Fcセグメント-2B3V2)。ここで4E9V10はアミノ末端(SEQ ID NO.10の1位から115位)に位置し、FcセグメントはSEQ ID NO.10の116位から356位に位置し、2B3V2はカルボキシル末端(SEQ ID NO.10の357位から478位)に位置する。
【0200】
実施例2
【0201】
抗IL-4Rα/IL-5二重特異単一ドメイン抗体を、中国特許番号CN202010576200.7「ANTI-IL-4RΑ SINGLE-DOMAIN ANTIBODY AS WELL AS APPLICATION AND DRUG」に記載のアッセイ方法に基づいて、懸濁ExpiCHO-S細胞で発現させた。二重特異抗体4E9V10-2B3V2-1(サンプルA)と二重特異抗体4E9V10-2B3V2-2(サンプルB)とをそれぞれ発現・取得した。
【0202】
実施例3
【0203】
抗IL-4Rα/IL-5二重特異単一ドメイン抗体を、中国特許番号CN202010576200.7「Anti-IL-4Rα single-domain antibody as well as application and drug」に記載のアッセイ方法に基づいて、懸濁293F細胞で発現させた。二重特異抗体4E9V10-2B3V2-1(サンプルA)と二重特異抗体4E9V10-2B3V2-2(サンプルB)とをそれぞれ発現させた。
【0204】
実施例4
【0205】
抗IL-4Rα/IL-5二重特異単一ドメイン抗体を、中国特許番号CN202010576200.7「ANTI-IL-4RΑ SINGLE-DOMAIN ANTIBODY AS WELL AS APPLICATION AND DRUG」に記載のアッセイ方法に基づいて精製した。二重特異抗体4E9V10-2B3V2-1(サンプルA)と二重特異抗体4E9V10-2B3V2-2(サンプルB)とをそれぞれ得た。
【0206】
以下の実施例で使用されるサンプルAとサンプルBは、対応する組み換えベクターの発現を懸濁293F細胞で行い、実施例4で精製したものである。
【0207】
実施例5
【0208】
二重特異抗体4E9V10-2B3V2-1(サンプルA)による受容体-リガンド結合のブロッキングアッセイ
【0209】
(1) 受容体タンパク質(IL-4RαまたはIL-5R)をタンパク質希釈バッファで1μg/mlに希釈し、プレートに4°Cで一晩コーティングした。
【0210】
(2) プレートを洗浄し、摂氏37度で5%のスキムミルクによりブロックした。
【0211】
(3) バイオチン結合リガンドタンパク質(IL-4またはIL-5)を、そのEC80濃度に対して2倍希釈し、抗体は初期濃度に対して2倍希釈し、その後5倍の勾配希釈を行った。リガンドタンパク質と希釈された抗体(デュピルマブ、4E9V10-2B3V2-1、4E9-V0または2B3、レスリズマブ)とhIgGを、それぞれ1:1で新しいディスペンシングプレートに移し、よく混ぜた。4E9V0は、中国特許出願番号CN202010576200.7「ANTI-IL-4RΑ SINGLE-DOMAIN ANTIBODY AS WELL AS APPLICATION AND DRUG」に記載の抗体4E9である。また、2B3は、中国特許出願番号CN202010843501.1「IL-5 BINDING MOLECULES AND PREPARATION METHODS AND APPLICATIONS THEREOF」に記載の非ヒト化単一ドメイン抗体2B3である。この実施例および実施例6~8で使用したレスリズマブとデュピルマブは、申請者によって作成された総抗体である。この実施例および実施例6~8で使用したレスリズマブは、中国特許出願番号CN202010843501.1「IL-5 BINDING MOLECULES AND PREPARATION METHODS AND APPLICATIONS THEREOF」に記載の方法に基づいて調製された。この実施例および実施例6~8で使用したデュピルマブは、中国特許出願番号CN202010576200.7「ANTI-IL-4RΑ SINGLE-DOMAIN ANTIBODY AS WELL AS APPLICATION AND DRUG」に記載の方法に基づいて調製された。
【0212】
(4)プレートを洗浄し、希釈したリガンドタンパク質と抗体の混合物をELISAプレートに二度繰り返し移し、摂氏37度でインキュベートした。
【0213】
(5)プレートを洗浄し、希釈したストレプトアビジン[HRP]を加え、混合物を摂氏37度でインキュベートした。
【0214】
(6) プレートを洗浄し、暗所において室温で発色のために単成分TMBを追加した。
【0215】
(7)停止液添加後、直ちにマイクロプレートリーダーでOD450を読み取り、プロットしてEC50を算出した。4E9-V0 2B3は非ヒト化抗IL-5単一ドメイン抗体であり、コントロールとしてデュピルマブ、レスリズマブ、およびhIgGを使用し、その結果はそれぞれ表1および表2と
図5および
図6に示す。
【0216】
【0217】
【0218】
結果は、ヒト化二重特異抗体が非減衰であり、非ヒト化抗体よりもIL-4/IL-4RαまたはIL-5/IL-5R受容体ーリガンド結合をブロックする点で、わずかに有利であることを示している。対応する商業薬品と比較して、ヒト化二重特異抗体はほぼ同じまたはわずかに有利なブロッキング能力を有している。
【0219】
実施例6
【0220】
二重特異抗体4E9V10-2B3V2-1によるIL-4誘導またはIL-13誘導TF1細胞増殖のアッセイ(サンプルA)
【0221】
(1) 回収後3~4回継代培養したTF-1細胞を96ウェルプレートに10000細胞/ウェルでプレーティングした。
【0222】
(2) 10μg/mLの総抗体または二重特異抗体の溶液をそれぞれ調製し、5倍の勾配希釈にかけた。
【0223】
(3) 総抗体(中国特許出願番号CN202010576200.7「ANTI-IL-4RΑ SINGLE-DOMAIN ANTIBODY AS WELL AS APPLICATION AND DRUG」が開示する方法で得られた)と勾配希釈したサンプルAを、中国特許出願番号CN202010576200.7「Anti-IL-4Rα single-domain antibody as well as application and drug」が開示する増殖アッセイで得られたEC80濃度のIL-4またはIL13と1:1で混合し、混合溶液を調製した。
【0224】
(4) 前のステップで混合した溶液を、細胞培養液と同体積で細胞培養ウェルに追加した。
【0225】
(5) 72時間培養後、発光細胞生存率アッセイキットを用いて細胞生存率を検出した。
【0226】
(6) アッセイ結果に基づいて、異なる抗体のIL-4誘導またはIL-13誘導TF-1細胞増殖を中和するためのEC50濃度を計算した。
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
実施例7
【0231】
ヒト組換えIL-5タンパク質誘導TF1細胞増殖および増殖を中和するツール抗体(総抗体)のアッセイ
【0232】
A.ヒト組換えIL-5タンパク質誘導TF1細胞増殖
【0233】
(1) 回収後3~4回継代培養したTF-1細胞を96ウェルプレートに10000細胞/ウェルでプレーティングした。
【0234】
(2) 最大濃度が500ng/mLのヒトIL-5タンパク質の溶液を作成し、5倍の勾配希釈を行った。
【0235】
(3) IL-5タンパク質溶液を勾配希釈した後、細胞培養液と同じ体積で細胞培養ウェルに添加した。
【0236】
(4) 72時間培養後、発光細胞生存率アッセイキットを用いて細胞生存率を検出した。
【0237】
(5) IL-5誘導TF-1細胞の増殖に対するEC80濃度をアッセイ結果に基づいて計算した。計算結果は2.96ng/mLとなった。
【0238】
B.総抗体中和ヒトIL-5誘導TF1細胞増殖のアッセイ
【0239】
(1) 回収後3~4回継代培養したTF-1細胞を96ウェルプレートに10000細胞/ウェルでプレーティングした。
【0240】
(2) 10μg/mLの総抗体を調製し、5倍の勾配希釈にかけた。
【0241】
(3) 勾配希釈を受けた総抗体を、増殖アッセイで得られたEC80濃度のIL-5と1:1で混合し、混合溶液を得た。
【0242】
(4) 混合溶液を細胞培養液と同体積で細胞培養ウェルに追加した。
【0243】
(5) 72時間培養後、発光細胞生存率アッセイキットを用いて細胞生存率を検出した。
【0244】
(6) アッセイ結果に基づいて、IL-5誘導TF-1細胞の増殖を中和する総抗体のEC50濃度を計算した。
【0245】
実施例8
【0246】
IL-5誘導TF1細胞増殖を中和するヒト化二重特異単一ドメイン抗体4E9V10-2B3V2-1のアッセイ
【0247】
(1) 回収後3~4回継代培養したTF-1細胞を96ウェルプレートに10000細胞/ウェルでプレーティングした。
【0248】
(2) 10μg/mLの総抗体または前記4E9V10-2B3V2-1抗体の溶液を調製し、5倍の勾配希釈にかけた。
【0249】
(3) 勾配希釈した総抗体および4E9V10-2B3V2-1抗体を、実施例7で得たEC80濃度のIL-5タンパク質と1:1で混合し、混合溶液を得た。
【0250】
(4) 混合溶液を細胞培養液と同体積で細胞培養ウェルに追加した。
【0251】
(5) 72時間培養後、発光細胞生存率アッセイキットを用いて細胞生存率を検出した。
【0252】
(6) IL-5誘導TF-1細胞の増殖を中和する異なる抗体のEC50濃度は、アッセイ結果に基づいて計算した。アッセイ結果を表5および
図5に示す。
【0253】
【0254】
結果は、ヒト化二重特異抗体が非減衰であり、非ヒト化抗体よりも、IL-5誘導TF-1細胞の増殖を中和する点で、わずかに有利であることを示している。対応する商業薬品と比較して、ヒト化二重特異抗体はほぼ同じブロッキング能力を有している。
【0255】
実施例9
【0256】
ヒト化二重特異抗体4E9V10-2B3V2-1のアフィニティーカイネティックアッセイを以下のように行った。
【0257】
(1) SDバッファの準備:適量のウシ血清アルブミンとツイーン20を1 x PBS(pH7.4)に溶解し、ウシ血清アルブミンとツイーン20の質量(または体積)分率がそれぞれ0.1%と0.02%になるようにした。前述の4E9V10-2B3V2-1抗体は、濃度10μg/mLのSDバッファに調製した。
【0258】
(2) 抗原作業溶液の準備:まず、抗原をSDバッファに200nMの濃度で調製し、その後2倍の勾配希釈を行った。SDバッファをブランクコントロールとして、合計5つの濃度勾配を設定した。
【0259】
(3) 再生溶液の準備:適量の0.1Mのグリシンのストック溶液を脱イオン水で10倍に希釈し、よく混合して再生溶液を得た。
【0260】
アッセイの手順:対応するコンピュータでオクテット96とデータ収集ソフトウェアを実行した。取得プローブの下面と側面を適量の75%エタノールを含ませたレンズティッシュで清掃し、器具を15分以上予熱した。センサの事前湿潤:アッセイの前に、後の使用のためにセンサを10分以上SDバッファに浸した。その後、アッセイの実施のために、機械の動作をベースライン→抗体→ベースライン→抗原結合→抗原解離→センサ再生と設定した。アッセイ結果を表6に示す。
【0261】
【0262】
結果は、IL4RαとIL-5を標的とする二重特異抗体の親和性が二つの抗原でそれぞれ決定され、対応する親和性はどちらも1nM未満であることを示している。
【0263】
実施例10
【0264】
この実験では、混合ヒトIL-4およびIL-5誘導TF-1細胞増殖を中和する4E9V10-2B3V2-2(サンプルB)の活性を測定するために、増殖中和アッセイを確立した。便宜上、以降の説明では4E9V10-2B3V2-2をサンプルBとする。
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
サンプルの作成方法
【0269】
テストバッファ:テスト媒体、RPMI-1640+10%FBSを、後の使用のために摂氏2~8度で保存した。
【0270】
ヒトIL-4の準備:ヒトIL-4を無菌の超純水に100μg/mlで溶解した。後の使用のため、準備したタンパク質を摂氏ー80度で保存した。
【0271】
ヒトIL-5の準備:ヒトIL-5を無菌の超純水に100μg/mlで溶解した。後の使用のため、準備したタンパク質を摂氏ー80度で保存した。
【0272】
3.テストの方法と手順
【0273】
3.1細胞培養(TF-1)
【0274】
細胞培養媒体:RPMI-1640+10%FBS+2ng/ml GM-CSFで、通行路濃度は3E4から7E5とした。
【0275】
3.2 細胞懸濁の準備:良好な成長状態にある適量のTF-1細胞を、1×105から4×105細胞/mlの濃度で15mlの遠心チューブに入れ、1200rで5分間遠心分離した。上清を捨て、沈殿を1~2mlのアッセイバッファに再懸濁した。
【0276】
3.3 細胞の計数とシーディング:細胞を再懸濁した細胞懸濁液で計数し、細胞密度を2×105細胞/mlに調製し、透明な底面と白い縁を持つ96ウェル細胞培養プレートに50μl/ウェルずつ、または1×104細胞/ウェルずつ播種した。
【0277】
3.4 IL-4とIL-5を以下の比率(4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4)で、総タンパク質濃度が100μg/mlになるように混合した。100μg/mlの混合タンパク質は、後の使用のために、テストバッファで3.11ng/ml、2.6928ng/ml、3.1532ng/ml、5.184ng/ml、15.568ng/ml、6.84ng/ml、および3.9116ng/mlに希釈した。コントロールまたはサンプルを、テストバッファで4×10μg/mlに希釈し、その後9段階の濃度勾配で5倍希釈し、10番目のウェルは0μg/mlとなった。各濃度は二度繰り返し設定した。各比率でのIL-4とIL-5の混合物を、希釈されたサンプルと1:1で混合した。
【0278】
3.5 上述の混合サンプルを50μl/ウェルで、細胞がプレートされている96ウェルプレートに追加した。
【0279】
3.6 96ウェルプレートを、摂氏37度および5%のCO2の細胞培養インキュベーターに置いて、72時間培養した。
【0280】
3.7 セルプレートをインキュベーターから取り出し、各ウェルに100μlのCellTiter-Gloを加え、室温の暗所で15分間インキュベーションし、多機能マイクロプレートリーダーで各ウェルの細胞生存率を測定した。
【0281】
このアッセイでは、ポジティブコントロールとしてデュピルマブ、メポリズマブ、デュピルマブ+メポリズマブ(1:1で混合)を使用し、ヒトIgGをネガティブコントロールとして、サンプルB(4E9V10-2B3V2-2)をテスト対象のサンプルとして使用した。各サンプルは二度繰り返し設定した。初期濃度が4*10μg/mlのサンプルを、5倍の勾配希釈によって9つの濃度に希釈した。各グループの最後の重複ウェルは、濃度0μg/mlであった。96ウェルセルプレートでは、2列目の濃度は10μg/ml、3列目の濃度は2μg/ml、4列目の濃度は0.4μg/ml、5列目の濃度は0.08μg/ml、6列目の濃度は0.016μg/ml、7列目の濃度は0.0032μg/ml、8列目の濃度は0.00064μg/ml、9列目の濃度は0.000128μg/ml、10列目の濃度は0.0000256μg/ml、11列目の濃度は0μg/mlであった。以下の比率(4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4)で混合しれたIL-4とIL-5を、後の使用のために3.11ng/ml、2.6928ng/ml、3.1532ng/ml、5.184ng/ml、15.568ng/ml、6.84ng/ml、および3.9116ng/mlに調製し、前記サンプルと1:1で混合した。続いて、混合物と細胞を1:1の体積比で混合し、CO2インキュベーターで72時間培養した(摂氏37度、5%CO2)。最後に、多機能マイクロプレートリーダーを使用して読み取りを行い、データを処理して結論を導いた。
【0282】
GraphPad Prismを使用し、モル濃度を横軸、相対光度単位(RLU)を縦軸として、EC50および用量効果曲線を得るために、4つのパラメータの非線形回帰曲線フィッティングを行った。
図6~
図19は用量効果曲線を図示している。
【0283】
4.主な器具と試薬
【0284】
【0285】
【0286】
5.結果の要約
【0287】
【0288】
結果が示すように、IL4:IL5=4:1の場合、プレート1ではポジティブコントロールデュピルマブのテストウィンドウは1.77倍、EC50は0.8127nM、メポリズマブのテストウィンドウは1.02倍、EC50は0.001298nM、サンプルB二価抗体のテストウィンドウは1.59倍、EC50は0.4245nMであった。プレート2では、サンプルBのテストウィンドウは1.78倍で、EC50は0.3212nM、ポジティブコントロールデュピルマブ+メポリズマブのウィンドウは1.68倍で、EC50は約0.8250nM、ネガティブコントロールヒトIgGのウィンドウは1.01倍で、EC50は約0.1051nMであった。上述のデータに基づいた適合曲線を
図6、7に示す。
【0289】
IL4:IL5=3:1の場合、プレート3ではポジティブコントロールデュピルマブのテストウィンドウは1.83倍、EC50は0.4481nM、メポリズマブのテストウィンドウは1.05倍、EC50は0.001322nM、サンプルB二価抗体のテストウィンドウは1.53倍、EC50は0.2429nMであった。プレート4では、サンプルB二価抗体のテストウィンドウは1.60倍で、EC50は0.2186nM、ポジティブコントロールデュピルマブ+メポリズマブのウィンドウは1.67倍で、EC50は約0.9652nM、ネガティブコントロールヒトIgGのウィンドウは1.02倍で、EC50は約0.0009147nMであった。上述のデータに基づいた適合曲線を
図8、9に示す。
【0290】
IL4:IL5=2:1の場合、プレート5ではポジティブコントロールデュピルマブのテストウィンドウは1.60倍、EC50は0.4519nM、メポリズマブのテストウィンドウは0.99倍、EC50は2.936nM、サンプルB二価抗体のテストウィンドウは1.55倍、EC50は0.2402nMであった。プレート6では、サンプルB二価抗体のテストウィンドウは1.63倍で、EC50は0.2127nM、ポジティブコントロールデュピルマブ+メポリズマブのウィンドウは1.76倍で、EC50は約1.279nM、ネガティブコントロールヒトIgGのウィンドウは0.99倍で、EC50は計算不能であった。上述のデータに基づいた適合曲線を
図10、11に示す。
【0291】
IL4:IL5=1:1の場合、プレート7ではポジティブコントロールデュピルマブのテストウィンドウは1.77倍、EC50は0.5701nM、メポリズマブのテストウィンドウは1.11倍、EC50は14.89nM、サンプルB二価抗体のテストウィンドウは1.71倍、EC50は0.3692nMであった。プレート8では、サンプルB二価抗体のテストウィンドウは1.70倍で、EC50は0.3709nM、ポジティブコントロールデュピルマブ+メポリズマブのウィンドウは1.92倍で、EC50は約1.733nM、ネガティブコントロールヒトIgGのウィンドウは1.07倍で、EC50は約14.70nMであった。上述のデータに基づいた適合曲線を
図12、13に示す。
【0292】
IL4:IL5=1:2の場合、プレート9ではポジティブコントロールデュピルマブのテストウィンドウは1.68倍、EC50は0.8986nM、メポリズマブのテストウィンドウは1.06倍、EC50は0.001038nM、サンプルB二価抗体のテストウィンドウは1.58倍、EC50は0.5947nMであった。プレート10では、サンプルB二価抗体のテストウィンドウは1.64倍で、EC50は0.7358nM、ポジティブコントロールデュピルマブ+メポリズマブのウィンドウは1.62倍で、EC50は約1.960nM、ネガティブコントロールヒトIgGのウィンドウは0.99倍で、EC50は約0.002641nMであった。上述のデータに基づいた適合曲線を
図14、15に示す。
【0293】
IL4:IL5=1:3の場合、プレート11ではポジティブコントロールデュピルマブのテストウィンドウは1.53倍、EC50は0.3429nM、メポリズマブのテストウィンドウは1.01倍、EC50は0.001468nM、サンプルB二価抗体のテストウィンドウは1.50倍、EC50は0.1523nMであった。プレート12では、サンプルB二価抗体のテストウィンドウは1.74倍で、EC50は0.1077nM、ポジティブコントロールデュピルマブ+メポリズマブのウィンドウは1.76倍で、EC50は約0.8805nM、ネガティブコントロールヒトIgGのウィンドウは0.95倍で、EC50は約0.001926nMであった。上述のデータに基づいた適合曲線を
図16、17に示す。
【0294】
IL4:IL5=1:4の場合、プレート13ではポジティブコントロールデュピルマブのテストウィンドウは1.58倍、EC50は0.1562nM、メポリズマブのテストウィンドウは1.14倍、EC50は1.105nM、サンプルB二価抗体のテストウィンドウは1.50倍、EC50は0.07883nMであった。プレート14では、サンプルB二価抗体のテストウィンドウは1.67倍で、EC50は0.04987nM、ポジティブコントロールデュピルマブ+メポリズマブのウィンドウは1.79倍で、EC50は約0.3949nM、ネガティブコントロールヒトIgGのウィンドウは1.03倍で、EC50は約0であった。上述のデータに基づいた適合曲線を
図18、19に示す。
【0295】
結論:上述のアッセイ条件下で、異なる比率での混合IL-4およびIL-5のアッセイにおいて、二価抗体サンプルBのウィンドウはデュピルマブおよび混合デュピルマブ+メポリズマブそれぞれのウィンドウと比較可能であり、EC50はデュピルマブおよび混合デュピルマブ+メポリズマブそれぞれのそれよりも顕著に低かった。このように、二価抗体サンプルBの中和活性はデュピルマブと類似しており、混合デュピルマブ+メポリズマブよりも優れていた。
【0296】
実施例11
【0297】
製剤
【0298】
1.実施例4で準備したIL-4RαおよびIL-5を標的とする二重特異抗体(4E9V10-2B3V2-2)の水溶液製剤は、以下のように調製された。
【0299】
1.1 ツイーンを含まないバッファ(10mM酢酸ナトリウム酢酸、120mMショ糖、75mMグリシン、25mM塩酸アルギニン、pH5.0)は以下のように調製された。
【0300】
1) 酢酸ナトリウム、ショ糖、グリシン、および塩酸アルギニンを、表13に従って正確に量り取り、約800mlの超純水に溶解してよく混合した。
【0301】
2) 50mlのビーカーを用意し、酢酸を表13に従って量り、超純水で繰り返し洗浄し、すべての酢酸を上述のステップ1で得られた溶液に移し、よく混合した。
【0302】
3) 溶液を1Lのメスフラスコに移し、正確に定容した後、メスフラスコを繰り返し反転させてよく混合した。
【0303】
【0304】
1.2 高濃度のツイーンストックバッファ(10mM酢酸ナトリウム酢酸、120mMショ糖、75mMグリシン、25mM塩酸アルギニン、5%ポリソルベート80、pH5.0)は以下のように調製された。酢酸ナトリウムは酢酸ナトリウム三水和物である。
【0305】
a) 酢酸ナトリウム、ショ糖、グリシン、および塩酸アルギニンを、表14に従って正確に量り取り、約100mlの超純水に溶解してよく混合した。
【0306】
b) 50mlのビーカーを用意し、酢酸を表14に従って量り、超純水で繰り返し洗浄し、すべての酢酸を上述のステップa)で得られた溶液に移し、よく混合した。
【0307】
c) 50mlの遠心チューブを二本用意し、ポリソルベート80を表14に従って正確に量り取った。上述のステップb)で得られた溶液35mlを使用し、ポリソルベート80をボルテックスで溶解し、よく混合し、上述のステップb)で得られた溶液で繰り返し洗浄し、すべてのポリソルベート80を上述のステップb)で得られた溶液に移し、よく混合した。
【0308】
3) 溶液を250mlのメスフラスコに移し、正確に定容した後、メスフラスコを繰り返し反転させてよく混合した。
【0309】
【0310】
1.3 フォーミュレーションバッファ(10mMアセテート-酢酸ナトリウム、120mMスクロース、75mMグリシン、25mM塩酸アルギニン、0.05%ポリソルベート80、pH5.0)を調製した。
【0311】
以下のステップを実行した。1.1で準備された1Lのツイーンを含まないバッファと、1.2で準備した10.101mlの高濃度ツイーンストックバッファをよく混合した。
【0312】
注:各バッファは、必要に応じて調製量を増やしたり減らしたりすることができる。
【0313】
望ましい製剤を準備するために、抗体タンパク質を製剤バッファに添加して、望ましい濃度の製剤を得ることができる。
【0314】
2.アッセイの方法は以下の通りである。
【0315】
2.1 pH測定
【0316】
中華人民共和国薬局方(2015年版、第IV部)の一般章0631「Measurement of pH Value」に従って測定が行われた。
【0317】
2.2 タンパク質の濃度測定
【0318】
測定はUV分光光度計を用いて行った。純水を量り、サンプルを希釈した。続いて、希釈されたサンプル溶液の吸光度を280nmで測定した。各サンプルのテストのために、並列に2つの溶液を準備した。タンパク質の含有量は、以下の式に従って計算された。C(mg/ml)=A×D/ε ここでAは溶液の吸光度値、Dは希釈倍率、εは消光係数:1.666(mg/ml)-1.cm-1タンパク質の含有量は、二つの並行計算の平均値として表現した。
【0319】
2.3 浸透圧(モル濃度アッセイ)
【0320】
中華人民共和国薬局方(2015年版、第IV部)の一般章0632「Molar concentration assay for osmotic pressure」に従って測定が行われた。
【0321】
2.4 粘度
【0322】
タンパク質の粘度は、RheoSenseのmicroVISC粘度計を使用して測定した。
【0323】
2.5 純度(SEC-HPLC)
【0324】
高速液体クロマトグラフ法を使用して測定を行った。50mmol/Lリン酸バッファ+300mmol/L NaCl+10%アセトニトリル、pH6.8(7.8gのNaH2PO4・2H2Oと17.53gのNaClを秤量して800mlの超純水に溶解し、よく混合した後、100mlのアセトニトリルを加え、NaOHでpH6.8に調整し、1000mlの容量にし、0.22μmのフィルター膜でろ過し、室温で保存)を移動相とするサイズ排除クロマトグラフィーカラムで分離を行った。流速は0.5ml/分、検出波長は280nm、カラム温度は摂氏25度とした。被検サンプルは超純水で2mg/mlに希釈して被検サンプル溶液とし、作業基準は超純水で2mg/mlに希釈してシステム適用溶液とした。サンプルバッファは超純水で同じ倍率で希釈し、希釈したサンプルバッファをブランク溶液として使用した。50μlずつのブランク溶液、システム適用性溶液、および被験サンプル溶液を使用し液体クロマトグラフに注入した。
【0325】
2.6 純度(nrCE-SDS)
【0326】
測定はキャピラリーゲル電気泳動法を用いて行った。電気泳動の前に、キャピラリーカラムをそれぞれ0.1mol/Lの水酸化ナトリウム、0.1mol/Lの塩酸、超純水、および電気泳動ゲル70psiで洗浄した。被検サンプル(タンパク質約100μg含有)を適量秤量し、pH6.0のサンプルバッファ93μl(0.44gのNa2HPO4・12H2Oと1.36gのNaH2PO4・2H2Oを50ml遠沈管に秤量し、超純水90mlを加えて完全に溶解させ、よく混合した後、超純水を加えて100mlとし、リン酸バッファを調製した。リン酸バッファ200μlを正確に量り、10%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液100μlと超純水700μlを加えてよく混合し、サンプルバッファを得た)、2μl内部標準(10 kDa)、および5μl 250mmol/L NEM(31mgのN-エチルマレイミドを秤量し、1mlの超純水に溶解)を加え、よく混合した後、摂氏70度で10分間加熱し、室温まで冷却した後、サンプルバイアルに移し、被検サンプル溶液とした。被験サンプルと同じ体積のサンプルバッファを使用し、同じ運用を行ってブランク溶液を作成した。サンプルの注入条件:5kV、20秒、分離電圧:15kV、35分。キャピラリーカラムの温度は摂氏25度に制御し、テストウィンドウの幅は100×800μmとした。
【0327】
2.7 チャージバリアント(icIEF)
【0328】
測定はイメージングキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)を用いて行った。キャピラリーの内径は100μmで、総長さは5cmである。サンプルの電気泳動を行う前に、キャピラリーカラムを0.5%のMC(メチルセルロース)溶液と超純水で洗浄する必要がある。サンプルは55秒間真空注入することにより充填した。プレフォーカス電圧は1.5KVで1分間、フォーカシング電圧は3KVで7分間であった。サンプルディスクの温度は摂氏10度、キャピラリーカラムの温度は室温、検出波長は280nmとした。500mmol/Lのアルギニン溶液を陰極安定剤として使用し、10mol/Lの尿素溶液をタンパク質の溶解性を改善するために使用し、0.5%のMC溶液をタンパク質とキャピラリーの接着を減少させるために使用した。濃縮および脱塩処理した被験サンプルを、超純水で1.0mg/mlに希釈した。希釈(1.0mg/ml)された20μlのサンプルに、35μlの1%MC溶液、4μlの両性電解質(pH3から10)、2μlの陰極安定剤、3μlの10mol/L尿素溶液、34μlの超純水、1μlのpI6.82メーカー、1μlのpI 9.91メーカーを混ぜて、被験サンプル溶液を作成した。サンプルバッファと作業基準溶液をそれぞれ使用して、ブランク溶液と基準溶液を同様の方法で準備した。
【0329】
2.8 結合活性(ELISA法)
【0330】
400μg/mlのIL-5抗原を1×ELISAコーティング溶液で0.5μg/mlに希釈し、96ウェルプレートに50.0μl/ウェルでコーティングし、摂氏2~8度で一晩放置した。コーティングされたELISAプレートを取り出して、コーティング溶液を廃棄した。ELISA洗浄液を250μl/ウェルで加え、プレートを30秒間放置し、その後ELISA洗浄液を廃棄した。洗浄は4回繰り返し行った。ELISA作業溶液を250μl/ウェルでブロッキング用に追加し、プレートを室温で2時間インキュベーションした。インキュベーション後、勾配希釈サンプルを50.0μl/ウェルで96ウェルプレートに二度繰り返し転送し、室温で1時間インキュベーションした。0.5ug/mlの希釈されたバイオチニル化ヒトIL-4Rを50.0μl/ウェルで96ウェルプレートに移し、室温で1時間インキュベーションした。第二抗体の作業溶液は、ELISA作業溶液中のストレプトアビジンHRPを1:10000に希釈することで得られた。第二抗体の作業溶液を50.0μl/ウェルで加え、室温で1時間インキュベーションした。二次抗体作業溶液と反応した96ウェルプレート内の反応溶液は廃棄した。ELISA洗浄溶液を250μl/ウェルで加えた後、廃棄した。洗浄は4回繰り返し行った。プレートを清潔な吸収紙で叩いて乾かした。TMB発色溶液を100μl/ウェルで加え、室温で10分間放置した。発色後、96ウェルマイクロプレートに50μl/ウェルで2mol/lのH2SO4を加え、色反応を停止した。450nmで吸光度値をマイクロプレートリーダーを用いて読み取り、参照波長をして630nmとした。濃度を横軸、OD450-630 nmを縦軸として、Graphpad Prismを使用して四つのパラメータ曲線をフィットさせ、EC50とR2を直接取得した。被験サンプルの相対的な結合活性は、以下の処方に従って計算することができる(結合活性の結果は四捨五入した)。
【0331】
【0332】
3.添加物比率の最適化
【0333】
3.1 処方の設計
【0334】
表15に示すように合計6つのグループの処方を設計した。
【0335】
【0336】
タンパク質4E9V10-2B3V2-2を濃縮し、各処方にバッファ交換した。バッファ交換が完了した後、濃度を調整して目標物(4E9V10-2B3V2-2)の濃度を約100mg/mlにした(4E9V10-2B3V2-2の添加による各製剤のpHは、表18のT0列に記載)。バッファ交換終了後、5mlのFlexboy保存袋に入れた凍結融解検査用サンプルを除き、残りを2R中型ホウケイ酸ガラス管製のインジェクションバイアルに入れ、表16に従って検査した。
【0337】
【0338】
注:-:検査点なし T0は始点(ゼロポイントまたは開始点)
【0339】
3.2 試験結果
【0340】
以下の結果において、Agtは撹拌(650rpm)を意味する。Ft-5cycは五つの凍結-解凍サイクル(摂氏-80度/室温)を表す。
【0341】
(1) 外観検査結果
【0342】
超遠心チューブを使用したバッファ交換中にD05に明らかな層状化が見られたため、このグループの処方は調査対象から除外した。他の処方の外観結果を表17に示す。5回の凍結-解凍サイクル後、すべての処方のサンプルは、外観上、透明で無色だった。
【0343】
サンプルはバッグの内側に平らに置かれていたため、サンプル自体のわずかに黄色い色合いが薄まった。
【0344】
D01、D02、およびD03のサンプルの処方では、T0の時点およびさまざまな温度において、すべて乳白色でわずかに黄色であった。D04のサンプルの処方では、T0の時点で透明でわずかに黄色であり、さまざまな温度においてわずかに乳白色かつわずかに黄色だった。D06のサンプルの処方では、T0の時点およびさまざまな温度において強く乳白色かつわずかに黄色だった。
【0345】
【0346】
注:0:透明で無色(少量のため、サンプルを取り出すことなく、またペニシリンバイアルに入れることなく、直接凍結保存バッグ内で観察した)。+:透明でわずかに黄色。++:わずかに乳白色でわずかに黄色。+++:乳白色でわずかに黄色。++++:強く乳白色でわずかに黄色。
【0347】
(2) pHテストの結果
【0348】
pH結果を表18に示す。各処方グループの各検査点でのサンプルのpHには、T0と比較して顕著な差はみられなかった(すべて±0.3の許容範囲内)。
【0349】
【0350】
(3) タンパク質濃度の計測結果
【0351】
タンパク質濃度の結果を表19に示す。各グループのサンプルのタンパク質濃度には、ポイントT0と比較して顕著な変化は見られなかった(すべて許容範囲の±10%以内)。
【0352】
【0353】
粘度と浸透圧の結果を表20に示す。全ての処方における粘度は5.7mから6.1mPa.sの範囲内であり、浸透圧は299mOsmol/kgから331mOsmol/kgの範囲内だった。
【0354】
【0355】
(4) 純度(SEC-HPLC)検査結果
【0356】
SEC-HPLC(サイズ排除高速液体クロマトグラフ法)の結果を表21から表23に示す。摂氏25度で48時間の揺動を行って14日観察すると、T0と比較してモノマー含有量は減少したが、減少率は1.0%以内だった。摂氏-20度、摂氏5度、または凍結解凍検査の条件下では、基本的にすべての処方におけるサンプルのモノマー含有量に差異は見られなかった。T0と比較して、モノマー含有量は0.2%以内で変化した。(SEC-HPLCによる)純度測定結果から、成分間には大きな差は見られなかった。
【0357】
[表21]
【0358】
【0359】
【0360】
【0361】
(5) 純度(nrCE-SDS)検査結果
【0362】
nrCE-SDS(非還元キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム)の結果を表24から表26に示す。T0と比較して、検査条件下におけるD01からD04のサンプルの処方のメインピーク含有量は1.0%未満で変動した。揺動検査後のD06サンプルの処方のメインピーク含有量は著しく減少した。
【0363】
【0364】
【0365】
【0366】
(6) チャージバリアント(icIEF)検査結果
【0367】
icIEFは、全カラムイメージングキャピラリー等電点電気泳動である。表27から表29にチャージバリアント(icIEF)結果を示す。表の結果によると、D04サンプルの処方のメインピーク含有量の値は比較的変動が少ないことが分かるので、D04の処方を代替処方として用いることができる。
【0368】
【0369】
【0370】
【0371】
T0と比較して、モノマー含有量(SEC-HPLC)とメインピーク含有量(nrCE-SDS)は1.0%以内で変動していることが純度(SEC-HPLC、nrCE-SDS)の結果から分かる。また、チャージバリアント(icIEF)の結果から、D04サンプル処方のメインピーク含有量は比較的変動が少ないことが分かる。
【0372】
処方E01(DO4)(10mmol/L酢酸-酢酸ナトリウム、75mmol/Lグリシン、25mmol/Lアルギニン塩酸塩、120mmol/Lスクロース、0.05%PS80、pH5.0、タンパク質濃度100mg/ml)の配合を確認した。
【0373】
確認手順を表30に示す。タンパク質を濃縮し、各処方にバッファ交換した。バッファ交換終了後、5mlのFlexboy保存袋に入れた凍結融解検査用サンプルを除き、残りを2R中型ホウケイ酸ガラス管製のインジェクションバイアルに入れ、表30に従って検査した。
【0374】
【0375】
注:―:検査点なし
【0376】
実験結果
【0377】
(1) 粘度と浸透圧のテスト結果
【0378】
粘度と浸透圧の結果を表31に示す。粘度は4.590mPa.sであった。浸透圧は286mOsmol/kgであった。
【0379】
【0380】
(2) 外観、pH、およびタンパク質濃度のテスト結果
【0381】
表32に、外観、pH、およびタンパク質濃度の結果を示す。各検査条件下で、外観は透明かつ黄色であった。サンプルのソースの違いにより、確認時の処方の外観は、スクリーニング時の処方D04のサンプルの状態よりも良かった。様々に異なった検査条件下でも、pH(許容範囲内の±0.3)およびタンパク質濃度(許容範囲内の±10%)には顕著な差は見られなかった。
【0382】
【0383】
(4) 純度(SEC-HPLC)検査結果
【0384】
純度(SEC-HPLC)検査の結果を表33に示す。摂氏37度で14日観察すると、モノマー含有量は2.6%減少した。摂氏-20度、摂氏5度、揺動、凍結、解凍の条件下では、サンプル中のモノマーの含有量は1.5%を超えて変動することはなかった。
【0385】
【0386】
(4) 純度(nrCE-SDS)検査結果
【0387】
純度(nrCE-SDS)検査の結果を表34に示す。摂氏37度で14日観察すると、モノマー含有量は1.9%減少した。摂氏-20度、摂氏5度、揺動、凍結、解凍の条件下では、サンプル中のモノマーの含有量は1.0%を超えて変動することはなかった。
【0388】
【0389】
(5)チャージバリアント(icIEF)検査結果
【0390】
表35にチャージバリアント(icIEF)検査結果を示す。摂氏37度で14日間調査した結果、T0と比較して、主要ピークの含有量が5.2%減少した。これは、サンプル中のチャージバリアントの各成分の含有量が高温条件下で変動したことを示している。摂氏-20度、摂氏5度、揺動、凍結、解凍の条件下では、サンプル中のメインピーク含有量は2.0%を超えて変動することはなかった。
【0391】
【0392】
(6) 結合活性検査結果
【0393】
結合活性(ELISA)検査の結果を表36に示す。4E9V10-2B3V2-2タンパク質を摂氏-20度および摂氏5度で30日間および91日間検査した後、結合活性(ELISA)の結果はすべて合格となった(判定基準:70%~130%)。
【0394】
【0395】
(7) 概要
【0396】
すべての処方確認の結果から、摂氏-20度、摂氏5度、揺動、凍結、解凍の条件下の検査では、各成分はほとんど変化せず、摂氏-20度および摂氏5度での91日間の検査後、結合活性は合格基準を満たしていた。このことから、処方E01(D04)を含む製剤における4E9V10-2B3V2-2は、摂氏5度、摂氏-20度、振動、凍結、解凍の条件下で良好な安定性を示していることが分かった。
【0397】
前記実施形態において開示された本開示の実施形態は、その記載および実施形態が列挙する事例に限定されるものではない。実施形態は本開示に適したさまざまな分野に適用することが可能である。付加的な変更は当業者によって容易に実施することができ、また本開示は請求項およびそれと同等の範囲によって定義される一般的概念から逸脱することなく、特定の詳細に限定されるものではない。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0100
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0100】
本開示の一部の実施形態が提供するのは、疾患の治療のための医薬品の調製への安定抗体製剤の使用である。前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、多発血管炎性好酸球性肉芽腫症、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、季節性アレルギー性鼻炎を含む。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
本開示の一部の実施形態で提供されるのは、前記抗体製剤のいずれかを使用して疾患を治療するための方法である。前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、多発血管炎性好酸球性肉芽腫症、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、季節性アレルギー性鼻炎を含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0149
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0149】
31.疾患を治療するための医薬品を調製するための項目1~25のいずれかに記載の抗体製剤の使用であって、前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患 アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、多発血管炎性好酸球性肉芽腫症、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、季節性アレルギー性鼻炎である、安定抗体製剤の使用である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0151
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0151】
33.項目1~25のいずれかに記載の抗体製剤を用いて疾患を治療する方法であって、前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、多発血管炎性好酸球性肉芽腫症、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、季節性アレルギー性鼻炎である、方法である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0154
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0154】
36.項目1~25のいずれかに記載の安定抗体製剤を含み、疾患の治療に用いられる医薬品であって、前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、多発血管炎性好酸球性肉芽腫症、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、季節性アレルギー性鼻炎である、医薬品である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の抗体分子、等張化剤、バッファ剤、および界面活性剤を含み、製剤のpHが4.5~5.5であり、抗体分子がIL-5およびIL-4Rαの両方に特異的に結合することができる、安定抗体製剤であって、IL-4Rα分子に特異的に結合することができる第一免疫グロブリン可変ドメインとIL-5に特異的に結合することができる第二免疫グロブリン可変ドメインとを有する少なくとも二つの免疫グロブリン可変ドメインを含む、安定抗体製剤。
【請求項2】
前記製剤のpHが4.7から5.3である、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項3】
第一免疫グロブリン可変ドメインが第一単一ドメイン抗体分子であり、SEQ ID NO:1に記載のCDR1と、SEQ ID NO:2に記載のCDR2と、SEQ ID NO:3に記載のCDR3とを有し、第二免疫グロブリン可変ドメインが第二単一ドメイン抗体分子であり、SEQ ID NO:4に記載のCDR1と、SEQ ID NO:5に記載のCDR2と、SEQ ID NO:6に記載のCDR3とを有する、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項4】
抗体分子が、第一単一ドメイン抗体分子と第二単一ドメイン抗体分子との間のリンカーグループを含まないポリペプチド融合体である、請求項3に記載の安定抗体製剤。
【請求項5】
抗体分子が生体適合性ポリマーを含むポリペプチド融合体であり、ポリペプチド融合体の第一単一ドメイン抗体分子と第二単一ドメイン抗体分子とは、生体適合性ポリマーをリンカーグループとしてライゲーションされる、請求項3に記載の安定抗体製剤。
【請求項6】
第一単一ドメイン抗体分子と第二単一ドメイン抗体分子とがヒトIgG Fc領域を介してライゲーションされ、抗体分子はホモ二量体構造を有し、
各単鎖Fc融合タンパク質は第一免疫グロブリン可変ドメインと、ヒトIgG Fc領域と、第二免疫グロブリン可変ドメインとからなる、請求項3に記載の安定抗体製剤。
【請求項7】
前記ヒトIgG Fc領域がヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来である、請求項6に記載の安定抗体製剤。
【請求項8】
前記ヒトIgG Fc領域がヒトIgG4領域から誘導され、Fc領域は、SEQ ID NO: 13に記載のアミノ酸配列を有するまたはSEQ ID NO: 9の116位から356位に位置する、請求項6に記載の安定抗体製剤。
【請求項9】
第一免疫グロブリン可変ドメインがSEQ ID NO:7に記載のアミノ酸配列を有し、第二免疫グロブリン可変ドメインがSEQ ID NO:8に記載のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項10】
治療有効量の抗体分子、等張化剤、バッファ剤、および界面活性剤を含み、製剤のpHが4.5~5.5であり、抗体分子がSEQ ID NO: 9または10に記載のアミノ酸配列を有する融合タンパク質を含む、安定抗体製剤。
【請求項11】
バッファ剤が酢酸-酢酸ナトリウムバッファであり、等張化剤がショ糖であり、界面活性剤がポリソルベートである、請求項1または10に記載の安定抗体製剤。
【請求項12】
グリシンと塩酸アルギニンを含む充填剤をさらに有する、請求項11に記載の安定抗体製剤。
【請求項13】
酢酸-酢酸ナトリウムの濃度が10から20mmol/Lであり、および/または塩酸アルギニンの濃度が25から100mmol/Lであり、および/またはショ糖の濃度が80から120mmol/Lであり、および/またはグリシンの濃度が50から75mmol/Lであり、および/またはポリソルベート80の濃度が0.02から0.05w/v%である、請求項11に記載の安定抗体製剤。
【請求項14】
メチオニンをさらに有する、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項15】
メチオニンを10mmol/Lの濃度でさらに有する、請求項14に記載の安定抗体製剤。
【請求項16】
前記抗体分子が120mg/mL未満の量で存在する、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項17】
前記抗体分子の濃度が約0.01から約100mg/mlである、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項18】
a)100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、20mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、50mmol/Lのグリシンと、50mmol/Lの塩酸アルギニンと、100mmol/Lのショ糖と、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHが5.0から5.2である、
b)100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、20mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、50mmol/Lのグリシンと、50mmol/Lの塩酸アルギニンと、100mmol/Lのショ糖と、10mmol/Lのメチオニンと、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHが5.0から5.2である、
c)100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、10mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、50mmol/Lのグリシンと、50mmol/Lの塩酸アルギニンと、120mmol/Lのショ糖と、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHが5.0から5.2である、
d)100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、10mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、75mmol/Lのグリシンと、25mmol/Lの塩酸アルギニンと、120mmol/Lのショ糖と、0.05w/v%のポリソルベート80とを含み、pHが5.0から5.2である、又は、
e)100mg/mLの抗IL-4Rα/IL-5二重特異抗体と、20mmol/Lの酢酸ナトリウムアセテートと、100mmol/Lの塩酸アルギニンと、80mmol/Lのショ糖と、0.02w/v%のポリソルベート80とを含み、pHが5.0から5.2である、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項19】
前記製剤のモノマーの含有量が、摂氏約37度で14日間の保存後に5%以上減少しない、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項20】
摂氏-20度、摂氏5度、揺動、または凍結と解凍の条件下で、サンプル中のモノマーの含有量が1.5%以上変化しない、請求項1に記載の安定抗体製剤。
【請求項21】
請求項1~
10、14~20のいずれかに記載の抗体製剤と、抗体製剤を含むコンテナとを有するキット。
【請求項22】
疾患を治療
又は予防するための医薬品を調製するための請求項1~
10、14~20のいずれかに記載の安定抗体製剤の使用であって、前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、
多発血管炎性好酸球性肉芽腫症、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、
又は季節性アレルギー性鼻炎
から選択される、安定抗体製剤の使用。
【請求項23】
前記医薬品が静脈内または皮下経路で投与される医薬品である、請求項
22に記載の使用。
【請求項24】
請求項1~
10、14~20のいずれかに記載の安定抗体製剤を用いて
、ヒトではない対象の疾患を治療する方法であって、前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、
多発血管炎性好酸球性肉芽腫症、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、
又は季節性アレルギー性鼻炎
から選択される、方法。
【請求項25】
請求項1~
10、14~20のいずれかに記載の安定抗体製剤を有するデリバリーシステムであって、該デリバリーシステムが使い捨てシリンジから選択される、デリバリーシステム。
【請求項26】
請求項1~
10、14~20のいずれかに記載の安定抗体製剤を調製する方法であって、抗体分子を調製するステップ1と、治療有効量の抗体分子を、張力等張化剤、バッファ剤、界面活性剤および/または他の必要な成分と混合して、安定溶液を形成するステップ2とを有する方法。
【請求項27】
請求項1~
10、14~20のいずれかに記載の安定抗体製剤を含み、疾患の治療に用いられる医薬品であって、前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、ヘルペス、慢性原発性じんま疹、強皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、バセドウ病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、腎臓病、自己免疫疾患、
多発血管炎性好酸球性肉芽腫症、重症好酸球性喘息、好酸球増多症候群、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープを伴わないコントロール不能な慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、結節性痒疹、家族性寒冷蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、慢性寒冷蕁麻疹、ピーナッツアレルギー、花粉アレルギー、好酸球性食道炎、ケロイド、そう痒症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、
又は季節性アレルギー性鼻炎
から選択される、医薬品。
【請求項28】
請求項1~
10、14~20のいずれかに記載の安定抗体製剤の調製におけるグリシンの使用であって、前記抗体分子の濃度が抗体製剤中で100mg/mlに達しても抗体分子が安定して存在する、使用。
【国際調査報告】